JP2024082914A - Frp成形品を製造する方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】SMCの端部同士が出会う部分が含まれる予備成形体をワックスからなるコアと共にプレス金型内で硬化させて得られるFRP成形品の強度低下を抑制するための技法を提供すること。【解決手段】補強繊維を含有する熱硬化性成形材料からなり略正味形状を有する予備成形体を、ワックスからなる可融部を含むコアと共にプレス金型内で加熱して硬化させることを含む、FRP成形品の製造方法であって、前記予備成形体が、前記コアの表面に平行に延在する、第一のシートモールディングコンパウンドの縁と第二のシートモールディングコンパウンドの縁との境界、および、含有する補強繊維の少なくとも一部が前記境界をまたぐように配置された補強シートを有し、前記補強シートはUDプリプレグ、ファブリックプリプレグまたはドライファブリックである、方法。【選択図】図2
Description
本発明は、主として、FRP成形品を製造する方法に関する。
繊維強化樹脂(FRP; Fiber Reinforced Plastic)は、軽量かつ力学特性に優れていることから、自動車用の補強部材(reinforcement)を含む様々な用途で使用されており、近年その重要度はますます高くなっている。
プリプレグからなる予備成形体をワックスからなるコアと共にプレス金型に入れて加熱し、ワックスの融解に伴う膨張により発生する高い内圧を加えた状態で硬化させる、中空FRP成形品の製造方法が知られている(特許文献1)。
プリプレグからなる予備成形体をワックスからなるコアと共にプレス金型に入れて加熱し、ワックスの融解に伴う膨張により発生する高い内圧を加えた状態で硬化させる、中空FRP成形品の製造方法が知られている(特許文献1)。
特許文献1に記載する方法でシートモールディングコンパウンド(以下ではSMCとも呼ぶ)からFRP成形品を製造する場合、コアを取り囲むように配置されたSMCからなる、略正味形状の予備形成体が作製される。この予備成形体にはSMCの端部同士が出会う部分が含まれ得る。予備成形体にかかる部分が存在することがFRP成形品の強度に如何なる影響を与えるのかは、未だ明らかでない。
本発明は、かかる状況の下、本発明者等が実験を通して得た知見に基づいてなされたものであり、補強繊維を含有する熱硬化性成形材料を用いて形成される略正味形状の予備成形体に、SMCの端部同士が出会う部分が含まれる場合に、かかる予備成形体をワックスからなるコアと共にプレス金型内で硬化させて得られるFRP成形品の強度低下を抑制するための技法を提供することを、主たる目的とする。
本発明の一態様によれば、補強繊維を含有する熱硬化性成形材料からなり略正味形状を有する予備成形体を、ワックスからなる可融部を含むコアと共にプレス金型内で加熱して硬化させることを含む、FRP成形品の製造方法であって、前記予備成形体が、前記コアの表面に平行に延在する、第一のシートモールディングコンパウンドの縁と第二のシートモールディングコンパウンドの縁との境界、および、含有する補強繊維の少なくとも一部が前記境界をまたぐように配置された補強シートを有し、前記補強シートはUDプリプレグ、ファブリックプリプレグまたはドライファブリックである、製造方法が提供される。
補強繊維を含有する熱硬化性成形材料を用いて形成される略正味形状の予備成形体に、SMCの端部同士が出会う部分が含まれる場合に、かかる予備成形体をワックスからなるコアと共にプレス金型内で硬化させて得られるFRP成形品の強度低下を抑制するための技法が提供される。
以下、本発明のいくつかの実施形態について適宜図面を参照しながら説明する。図面における寸法比は、説明の便宜上のものであり、実際のものとは異なる場合がある。また、図面において同一の構成については同じ符号を用いて示し、重複する構成について説明を省略することがある。
1.成形品の製造方法
FRP成形品として角パイプを製造する場合を例に、実施形態に係る製造方法を説明する。
(1)コアの作製
図1に示すように、ワックスからなる角柱状の可融部1をポリマーフィルム2で密に覆ってなる角柱状コア10を準備する。図1は角柱状コア10の横断面を示している。
ワックスの融解温度は、室温より高ければよいが、好ましくは60℃以上である。ワックスにはフィラーが添加されていてもよい。
ワックスを角柱状に賦形する方法に限定はなく、例としてはモールドや切削が挙げられる。
FRP成形品として角パイプを製造する場合を例に、実施形態に係る製造方法を説明する。
(1)コアの作製
図1に示すように、ワックスからなる角柱状の可融部1をポリマーフィルム2で密に覆ってなる角柱状コア10を準備する。図1は角柱状コア10の横断面を示している。
ワックスの融解温度は、室温より高ければよいが、好ましくは60℃以上である。ワックスにはフィラーが添加されていてもよい。
ワックスを角柱状に賦形する方法に限定はなく、例としてはモールドや切削が挙げられる。
ポリマーフィルムの好ましい材料の例には、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、シリコーン、フッ素ゴムのような合成ポリマーが含まれ、更には、これらのポリマーからなるエラストマーが含まれる。
可融部1をポリマーフィルム2で覆うときの方法には、例えば以下がある。
・可融部をポリマーフィルムで包み、包んだ状態が崩れないように、耐熱テープで止める。耐熱テープで止める代わりに、接着剤を用いてもよいし、ポリマーフィルム同士を融着してもよい。
・可融部をポリマーからなるシュリンクチューブの内側に配置した状態でシュリンクチューブを熱収縮させ、更に該シュリンクチューブの両端を融着で閉じる。この例では、シュリンクチューブがポリマーフィルムに相当する。
・可融部の表面に低温硬化型の液状ゴムを塗布し、コアが融解しない温度で硬化させる。この例では、液状ゴムの硬化物がポリマーフィルムに相当する。
・可融部の表面にUV硬化型エラストマーの原料液を塗布し、UV照射して硬化させる。この例では、UV硬化型エラストマーの硬化物がポリマーフィルムに相当する。
・可融部をポリマーフィルムで包み、包んだ状態が崩れないように、耐熱テープで止める。耐熱テープで止める代わりに、接着剤を用いてもよいし、ポリマーフィルム同士を融着してもよい。
・可融部をポリマーからなるシュリンクチューブの内側に配置した状態でシュリンクチューブを熱収縮させ、更に該シュリンクチューブの両端を融着で閉じる。この例では、シュリンクチューブがポリマーフィルムに相当する。
・可融部の表面に低温硬化型の液状ゴムを塗布し、コアが融解しない温度で硬化させる。この例では、液状ゴムの硬化物がポリマーフィルムに相当する。
・可融部の表面にUV硬化型エラストマーの原料液を塗布し、UV照射して硬化させる。この例では、UV硬化型エラストマーの硬化物がポリマーフィルムに相当する。
(2)予備成形体の作製
図2に示すように、角柱形コア10のひとつの側面上に配置された補強シート3と、角柱形コア10の側面全体を補強シート3ごと覆うように配置されたSMC4とから、略正味形状の予備成形体20を形成する。図2(a)は、角柱形コア10と予備成形体20からなる集合体の横断面を示し、図2(b)は該集合体の側面図である。図2(b)に示す破線は、SMC4の下に隠れた補強シート3の側縁の位置を示している。
図2に示すように、角柱形コア10のひとつの側面上に配置された補強シート3と、角柱形コア10の側面全体を補強シート3ごと覆うように配置されたSMC4とから、略正味形状の予備成形体20を形成する。図2(a)は、角柱形コア10と予備成形体20からなる集合体の横断面を示し、図2(b)は該集合体の側面図である。図2(b)に示す破線は、SMC4の下に隠れた補強シート3の側縁の位置を示している。
補強シート3は、UDプリプレグ(一方向プリプレグ)、ファブリックプリプレグまたはドライファブリックである。補強シート3に含まれる補強繊維の典型例は、炭素繊維、ガラス繊維およびアラミド繊維であるが、限定するものではなく、天然繊維であってもよい。
補強シート3がUDプリプレグまたはファブリックプリプレグである場合、補強繊維を含浸させる樹脂マトリックスは熱硬化性である。
補強シート3がUDプリプレグまたはファブリックプリプレグである場合、補強繊維を含浸させる樹脂マトリックスは熱硬化性である。
SMCは、当業者にはよく知られているように、チョップド繊維束をキャリアフィルム上に散布し堆積させることにより形成されるランダムマットを、熱硬化性の樹脂マトリックスで含浸させることにより得られる、熱硬化性の成形材料である。
チョップド繊維束を構成する繊維の典型例は、炭素繊維、ガラス繊維およびアラミド繊維であるが、限定するものではなく、天然繊維であってもよい。
好適例において、チョップド繊維束を構成する繊維は、補強シート3に含まれる補強繊維と同種の繊維である。つまり、前者と後者の両方が、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維および天然繊維のいずれかであることが好ましい。
一例では、補強シート3に含まれる補強繊維が、チョップド繊維束を構成する繊維よりも高強度であってもよい。
チョップド繊維束を構成する繊維の典型例は、炭素繊維、ガラス繊維およびアラミド繊維であるが、限定するものではなく、天然繊維であってもよい。
好適例において、チョップド繊維束を構成する繊維は、補強シート3に含まれる補強繊維と同種の繊維である。つまり、前者と後者の両方が、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維および天然繊維のいずれかであることが好ましい。
一例では、補強シート3に含まれる補強繊維が、チョップド繊維束を構成する繊維よりも高強度であってもよい。
SMC4は予め所定の大きさに裁断されている。予備成形体20と角柱形コア10との間に殆ど隙間ができないように補強シート3およびSMC4を配置したとき、角柱形コア10の表面に平行に延在する境界BがSMC4の縁E1と縁E2との間で形成される。図2(b)では、境界Bの延在方向を両矢印で示している。
予備成形体20において、補強シート3は境界Bをまたいでいる。補強シート3の一部がSMC4の縁E1を含む部分に積層され、他の一部がSMC4の縁E2を含む部分に積層されているといってもよい。
図3に示すように、SMC4の縁E1側と縁E2側における会合部Mから補強シート3の縁までの距離をそれぞれ距離d1、距離d2としたとき、距離d1と距離d2はそれぞれ好ましくは5mm以上、より好ましくは10mm以上である。
図3に示すように、SMC4の縁E1側と縁E2側における会合部Mから補強シート3の縁までの距離をそれぞれ距離d1、距離d2としたとき、距離d1と距離d2はそれぞれ好ましくは5mm以上、より好ましくは10mm以上である。
補強シート3は境界Bに沿って、境界Bの一端から他端まで連続していることが好ましいが、必須ではない。必要なことは、補強シート3が含有する補強繊維の少なくとも一部が、境界Bをまたいでいることである。
補強シート3は、境界Bをまたぐ補強繊維として、その繊維長がSMC4に含まれるチョップド繊維束のそれの好ましくは0.5倍以上、より好ましくは1倍以上、更に好ましくは1.5倍以上、特に好ましくは2倍以上である補強繊維を含有し得る。繊維長とは繊維フィラメントの長さをいい、チョップド繊維束の繊維長とは、チョップド繊維束を構成する繊維フィラメントの長さをいう。
補強シート3は、境界Bをまたぐ補強繊維として、その繊維長がSMC4に含まれるチョップド繊維束のそれの好ましくは0.5倍以上、より好ましくは1倍以上、更に好ましくは1.5倍以上、特に好ましくは2倍以上である補強繊維を含有し得る。繊維長とは繊維フィラメントの長さをいい、チョップド繊維束の繊維長とは、チョップド繊維束を構成する繊維フィラメントの長さをいう。
(3)成形
図4に示すように、予備成形体20はその内側に配置された角柱状コア10と共にプレス金型30内に置かれる。予備成形体20は略正味形状を有するので、予備成形体20とプレス金型30との間には僅かな隙間しかない。
予備成形体20がこのようにプレス金型30内にぴったり収まるのは、SMC4の端部同士が出会う部位においてSMC同士をオーバーラップさせずに、縁E1と縁E2がぶつかるようにしているからでもある。
図4に示すように、予備成形体20はその内側に配置された角柱状コア10と共にプレス金型30内に置かれる。予備成形体20は略正味形状を有するので、予備成形体20とプレス金型30との間には僅かな隙間しかない。
予備成形体20がこのようにプレス金型30内にぴったり収まるのは、SMC4の端部同士が出会う部位においてSMC同士をオーバーラップさせずに、縁E1と縁E2がぶつかるようにしているからでもある。
SMC4の厚さは通常1mm以上であり、1.5mm以上や2mm以上のこともあるので、SMC同士をオーバーラップさせると局所的に著しく肉厚の部分ができて、予備成形体20がプレス金型30内にぴったり収まらない。
対照的に、補強シート3として用い得るUDプリプレグ、ファブリックプリプレグおよびドライファブリックは、厚さが通常0.5mm以下、典型的には0.3mm以下であり、SMCと比べるとかなり薄い。そのため、予備成形体20をプレス金型30内に置くうえで妨げとならない限り、補強シート3は2枚以上を重ねて使用することも可能である。
対照的に、補強シート3として用い得るUDプリプレグ、ファブリックプリプレグおよびドライファブリックは、厚さが通常0.5mm以下、典型的には0.3mm以下であり、SMCと比べるとかなり薄い。そのため、予備成形体20をプレス金型30内に置くうえで妨げとならない限り、補強シート3は2枚以上を重ねて使用することも可能である。
予備成形体20でチャージする前から、プレス金型30は成形温度に保持される。成形温度は、予備成形体20が所望する時間内にプレス金型30内で硬化するように設定される。通常は、30分以内に予備成形体20が硬化するように、予備成形体20に含まれる成形材料の硬化特性に応じて、成形温度は120~180℃の範囲内で設定される。
予備成形体20は、プレス金型30内に置く前に、オーブン等を用いて予備加熱してもよい。
予備成形体20は、プレス金型30内に置く前に、オーブン等を用いて予備加熱してもよい。
角柱状コア10の可融部1のワックスが加熱によって膨張することにより、プレス金型30内には内圧が発生する。予備成形体20はこの内圧がかかった状態で硬化するので、良好な品質のFRP成形品が得られる。
ワックスの融解温度が成形温度より低い場合には、熱膨張に加えて、ワックスの融解に伴う膨張が内圧の発生に寄与し得る。
成形中にワックスを融解させない場合には、角柱状コア10にポリマーフィルム2は不要である。
ワックスの融解温度が成形温度より低い場合には、熱膨張に加えて、ワックスの融解に伴う膨張が内圧の発生に寄与し得る。
成形中にワックスを融解させない場合には、角柱状コア10にポリマーフィルム2は不要である。
予備成形体が補強シートと隣接するSMC層にSMC同士のオーバーラップによる局所的な厚肉部を有する場合、成形中に該厚肉部が潰れるときにSMCのマトリックス樹脂の大規模な流動が生じ、それに伴い補強シートの補強繊維の曲折が生じる可能性がある。補強シートと隣接するSMC層でSMC同士をオーバーラップさせないことは、この問題を防ぐうえでも有用である。
成形が完了したら、プレス金型30からFRP成形品を取り出し、コア10を抜き取る。図5は、こうして得られるFRP成形品40の斜視図である。図5では、成形前にSMC4の縁E1と縁E2の境界Bがあった場所を点線DLで示している。
FRP成形品40に外力が加わり点線DLが描かれた壁41が撓んだときに、破壊が生じ難くなるよう、補強シート3に由来する補強繊維は点線DLと直角または直角に近い角度で交差していることが望ましい。
従って、補強シート3がUDプリプレグの場合には、予備成形体20において、SMC4の縁E1と縁E2の境界Bの延在方向に対して補強シート3の補強繊維がなす角度が、好ましくは90°±45°、より好ましくは90°±30°、更に好ましくは90°±15°、特に好ましくは90°±5°である。
同様に、補強シート3がファブリックプリプレグまたはドライファブリックの場合、言い換えれば補強シート3がファブリックを含む場合には、予備成形体20において、SMC4の縁E1と縁E2の境界Bの延在方向に対しファブリックの経糸または緯糸のどちらかがなす角度が、好ましくは90°±30°、より好ましくは90°±15°、更に好ましくは90°±5°である。
従って、補強シート3がUDプリプレグの場合には、予備成形体20において、SMC4の縁E1と縁E2の境界Bの延在方向に対して補強シート3の補強繊維がなす角度が、好ましくは90°±45°、より好ましくは90°±30°、更に好ましくは90°±15°、特に好ましくは90°±5°である。
同様に、補強シート3がファブリックプリプレグまたはドライファブリックの場合、言い換えれば補強シート3がファブリックを含む場合には、予備成形体20において、SMC4の縁E1と縁E2の境界Bの延在方向に対しファブリックの経糸または緯糸のどちらかがなす角度が、好ましくは90°±30°、より好ましくは90°±15°、更に好ましくは90°±5°である。
(4)変形例
一変形例においては、図6に示すように、予備成形体20を作製するときに、SMC4の縁E1と縁E2との境界Bが角柱形コア10の稜線に沿って形成されるように、SMC4を配置することができる。図7は、この例で得られるFRP成形品40であり、成形前にSMC4の縁E1と縁E2の境界Bがあった場所は、点線DLで示すように稜線42に沿っている。
一変形例においては、図6に示すように、予備成形体20を作製するときに、SMC4の縁E1と縁E2との境界Bが角柱形コア10の稜線に沿って形成されるように、SMC4を配置することができる。図7は、この例で得られるFRP成形品40であり、成形前にSMC4の縁E1と縁E2の境界Bがあった場所は、点線DLで示すように稜線42に沿っている。
稜線42の近傍で破壊が生じ易いのは、FRP成形品40が捩じれて、点線DLが描かれた部分にせん断力が加わったときである。この破壊を生じ難くするには、補強シート3に由来する補強繊維の方向が、点線DLに対し傾斜していることが望ましい。
従って、補強シート3がUDプリプレグの場合には、予備成形体20に補強シートを複数枚使用し、一部は補強繊維がSMC4の縁E1と縁E2の境界Bの延在方向に対し30~60°の角度をなし、他の一部は補強繊維が該境界Bの延在方向に対し120~150°の角度をなすように、これらを配置することが好ましい。
補強シート3がファブリックプリプレグまたはドライファブリックの場合、言い換えれば補強シート3がファブリックを含む場合には、予備成形体20において、SMC4の縁E1と縁E2の境界Bの延在方向に対しファブリックの経糸および緯糸の一方が45°の角度をなし、他方が135°の角度をなすように、補強シート3を配置することが好ましい。
従って、補強シート3がUDプリプレグの場合には、予備成形体20に補強シートを複数枚使用し、一部は補強繊維がSMC4の縁E1と縁E2の境界Bの延在方向に対し30~60°の角度をなし、他の一部は補強繊維が該境界Bの延在方向に対し120~150°の角度をなすように、これらを配置することが好ましい。
補強シート3がファブリックプリプレグまたはドライファブリックの場合、言い換えれば補強シート3がファブリックを含む場合には、予備成形体20において、SMC4の縁E1と縁E2の境界Bの延在方向に対しファブリックの経糸および緯糸の一方が45°の角度をなし、他方が135°の角度をなすように、補強シート3を配置することが好ましい。
FRP成形品の形状は様々であり得るので、予備成形体においてSMCの縁同士の境界に対し補強シートの補強繊維がなす角度は、その予備成形体から製造されるFRP成形品において該境界に対応する領域がどのような変形を受け易いかに応じて決定することが望ましい。
一変形例では、予備成形体20を作製するときに、複数枚のSMCを積層して用いることができる。例えば、2枚のSMCを積層する例においては、図8に示すように、一方のSMC4Aの縁同士の境界B1の位置と他方のSMC4Bの縁同士の境界B2の位置を一致させないことが好ましい。
図8(a)の例では、境界B1と境界B2が遠く離れているため、境界B1をまたぐ補強繊維を含む補強シート3Aと、境界B2をまたぐ補強繊維を含む補強シート3Bが、分かれている。図8(b)の例では、境界B1と境界B2が比較的近いため、1枚の補強シート3Cが、境界B1をまたぐ補強繊維を含む補強シートと、境界B2をまたぐ補強繊維を含む補強シートを兼用している。
図8(a)と図8(b)のいずれにおいても、補強シートをSMCとSMCの間に挟まずに、SMC層の外側に配置しているのは、補強シートの補強効果を高めるためである。
図8(a)と図8(b)のいずれにおいても、補強シートをSMCとSMCの間に挟まずに、SMC層の外側に配置しているのは、補強シートの補強効果を高めるためである。
一変形例では、予備成形体20を作製するときに、複数枚のSMCを積層しないで用いることができる。図9はその一例であり、仕様が共通する4枚のSMC3Dがそれぞれコア10と接するように配置され、隣り合う他のSMCとの間で縁同士の境界Bを形成している。4つの境界Bはそれぞれコア10の稜線に沿って延在している。
図9に示す予備成形体20では、補強シート3がSMC層の内側(コア10側)ではなく外側に配置されている。このように、補強シートは、SMCの縁同士の境界をまたぐ補強繊維を含有してさえいれば、SMC層の内側と外側のどちらに配置されてもよく、また、両側に配置されてもよい。
図9に示す予備成形体20では、補強シート3がSMC層の内側(コア10側)ではなく外側に配置されている。このように、補強シートは、SMCの縁同士の境界をまたぐ補強繊維を含有してさえいれば、SMC層の内側と外側のどちらに配置されてもよく、また、両側に配置されてもよい。
一変形例では、図10(a)に示すように、予備成形体20がコア10を取り囲んだ部分20aと取り囲んでいない部分20bを有していてもよい。図10(a)に示す予備成形体を硬化させて得られるFRP成形品を図10(b)に示す。つまり、実施形態に係る方法で製造されるFRP成形品は、中空構造を一部にのみ有するものであってもよい。
以上、FRP成形品として角パイプを製造する場合を例に、実施形態に係る製造方法を具体的に説明したが、実施形態に係る製造方法を用いて製造し得るFRP成形品が角パイプに限定されないことは当然である。
実施形態に係る製造方法により製造し得るFRP成形品の形状および構造に限定はなく、例えば、角パイプおよび円形パイプを含む任意の管、曲がった管、折れ曲がった管、枝分かれを有する管、管以外の中空構造、および、C字、L字またはU字の断面を有する構造から選ばれるひとつ以上に該当する構造を少なくとも部分的に含み得る。
実施形態に係る製造方法により製造し得るFRP成形品の形状および構造に限定はなく、例えば、角パイプおよび円形パイプを含む任意の管、曲がった管、折れ曲がった管、枝分かれを有する管、管以外の中空構造、および、C字、L字またはU字の断面を有する構造から選ばれるひとつ以上に該当する構造を少なくとも部分的に含み得る。
2.実施形態のまとめ
本発明の好ましい実施形態には以下が含まれるが、限定するものではない。
[実施形態1]補強繊維を含有する熱硬化性成形材料からなり略正味形状を有する予備成形体を、ワックスからなる可融部を含むコアと共にプレス金型内で加熱して硬化させることを含む、FRP成形品の製造方法であって、前記予備成形体が、前記コアの表面に平行に延在する、第一のシートモールディングコンパウンドの縁と第二のシートモールディングコンパウンドの縁との境界、および、含有する補強繊維の少なくとも一部が前記境界をまたぐように配置された補強シートを有し、前記補強シートはUDプリプレグ、ファブリックプリプレグまたはドライファブリックである、方法。
[実施形態2]前記予備成形体において、前記補強シートが前記境界に沿って前記境界の一端から他端まで連続している、実施形態1に係る方法。
[実施形態3]前記予備成形体において、前記第一のシートモールディングコンパウンド側および前記第二のシートモールディングコンパウンド側における前記境界から前記補強シートの縁までの距離がそれぞれ10mm以上である、実施形態1または2に係る方法。
[実施形態4]前記予備成形体において、前記補強シートが前記境界をまたぐ補強繊維として、その繊維長が前記第一のシートモールディングコンパウンドおよび前記第二のシートモールディングコンパウンドに含まれるチョップド繊維束のそれと同等以上である補強繊維を含有する、実施形態1~3のいずれかに係る方法。
[実施形態5]前記シートモールディングコンパウンドの厚さが1mm以上であり、前記補強シートの厚さが0.3mm以下である、実施形態1~4のいずれかに係る方法。
[実施形態6]前記補強シートがUDプリプレグであり、前記予備成形体において前記境界の延在方向に対し前記補強シートの補強繊維がなす角度が90°±45°、好ましくは90°±30°、より好ましくは90°±15°、更に好ましくは90°±5°である、実施形態1~5のいずれかに係る方法。
[実施形態7]前記補強シートがファブリックを含み、前記予備成形体において前記境界の延在方向に対し前記ファブリックの経糸または緯糸がなす角度が90°±45°、好ましくは90°±30°、より好ましくは90°±15°、更に好ましくは90°±5°である、実施形態1~5のいずれかに係る方法。
[実施形態8]前記予備成形体が、前記補強シートとして、前記境界の延在方向に対し補強繊維が30~60°の角度をなすように配置されたUDプリプレグと、前記境界の延在方向に対し補強繊維が120~150°の角度をなすように配置されたUDプリプレグとを含む、実施形態1~5のいずれかに係る方法。
[実施形態9]前記予備成形体が、前記補強シートとして、前記境界の延在方向に対しファブリックの経糸または緯糸の一方が30~60°の角度をなし、他方が120~150°の角度をなすように配置された、ファブリックプリプレグおよび/またはドライファブリックを含む、実施形態1~5のいずれかに係る方法。
[実施形態10]前記コアが稜線を有し、前記予備成形体において前記境界が前記稜線に沿っている、実施形態8または9に係る方法。
[実施形態11]前記予備成形体において、前記補強シートが第三のシートモールディングコンパウンドを介して前記第一のシートモールディングコンパウンドおよび前記第二のシートモールディングコンパウンドに積層されている、実施形態1~10のいずれかに係る方法。
[実施形態12]前記第一のシートモールディングコンパウンドと前記第二のシートモールディングコンパウンドの仕様が同一である、実施形態1~11のいずれかに係る方法。
[実施形態13]前記第一のシートモールディングコンパウンドと前記第二のシートモールディングコンパウンドが同一である、実施形態1~11のいずれかに係る方法。
[実施形態14]前記第一のシートモールディングコンパウンドおよび前記第二のシートモールディングコンパウンドに含まれるチョップド繊維束を構成する繊維が、前記補強シートに含まれる補強繊維と同種の繊維である、実施形態1~13のいずれかに係る方法。
本発明の好ましい実施形態には以下が含まれるが、限定するものではない。
[実施形態1]補強繊維を含有する熱硬化性成形材料からなり略正味形状を有する予備成形体を、ワックスからなる可融部を含むコアと共にプレス金型内で加熱して硬化させることを含む、FRP成形品の製造方法であって、前記予備成形体が、前記コアの表面に平行に延在する、第一のシートモールディングコンパウンドの縁と第二のシートモールディングコンパウンドの縁との境界、および、含有する補強繊維の少なくとも一部が前記境界をまたぐように配置された補強シートを有し、前記補強シートはUDプリプレグ、ファブリックプリプレグまたはドライファブリックである、方法。
[実施形態2]前記予備成形体において、前記補強シートが前記境界に沿って前記境界の一端から他端まで連続している、実施形態1に係る方法。
[実施形態3]前記予備成形体において、前記第一のシートモールディングコンパウンド側および前記第二のシートモールディングコンパウンド側における前記境界から前記補強シートの縁までの距離がそれぞれ10mm以上である、実施形態1または2に係る方法。
[実施形態4]前記予備成形体において、前記補強シートが前記境界をまたぐ補強繊維として、その繊維長が前記第一のシートモールディングコンパウンドおよび前記第二のシートモールディングコンパウンドに含まれるチョップド繊維束のそれと同等以上である補強繊維を含有する、実施形態1~3のいずれかに係る方法。
[実施形態5]前記シートモールディングコンパウンドの厚さが1mm以上であり、前記補強シートの厚さが0.3mm以下である、実施形態1~4のいずれかに係る方法。
[実施形態6]前記補強シートがUDプリプレグであり、前記予備成形体において前記境界の延在方向に対し前記補強シートの補強繊維がなす角度が90°±45°、好ましくは90°±30°、より好ましくは90°±15°、更に好ましくは90°±5°である、実施形態1~5のいずれかに係る方法。
[実施形態7]前記補強シートがファブリックを含み、前記予備成形体において前記境界の延在方向に対し前記ファブリックの経糸または緯糸がなす角度が90°±45°、好ましくは90°±30°、より好ましくは90°±15°、更に好ましくは90°±5°である、実施形態1~5のいずれかに係る方法。
[実施形態8]前記予備成形体が、前記補強シートとして、前記境界の延在方向に対し補強繊維が30~60°の角度をなすように配置されたUDプリプレグと、前記境界の延在方向に対し補強繊維が120~150°の角度をなすように配置されたUDプリプレグとを含む、実施形態1~5のいずれかに係る方法。
[実施形態9]前記予備成形体が、前記補強シートとして、前記境界の延在方向に対しファブリックの経糸または緯糸の一方が30~60°の角度をなし、他方が120~150°の角度をなすように配置された、ファブリックプリプレグおよび/またはドライファブリックを含む、実施形態1~5のいずれかに係る方法。
[実施形態10]前記コアが稜線を有し、前記予備成形体において前記境界が前記稜線に沿っている、実施形態8または9に係る方法。
[実施形態11]前記予備成形体において、前記補強シートが第三のシートモールディングコンパウンドを介して前記第一のシートモールディングコンパウンドおよび前記第二のシートモールディングコンパウンドに積層されている、実施形態1~10のいずれかに係る方法。
[実施形態12]前記第一のシートモールディングコンパウンドと前記第二のシートモールディングコンパウンドの仕様が同一である、実施形態1~11のいずれかに係る方法。
[実施形態13]前記第一のシートモールディングコンパウンドと前記第二のシートモールディングコンパウンドが同一である、実施形態1~11のいずれかに係る方法。
[実施形態14]前記第一のシートモールディングコンパウンドおよび前記第二のシートモールディングコンパウンドに含まれるチョップド繊維束を構成する繊維が、前記補強シートに含まれる補強繊維と同種の繊維である、実施形態1~13のいずれかに係る方法。
3.実験結果
以下に、本発明者等が行った実験の結果を記す。
以下に、本発明者等が行った実験の結果を記す。
3.1.試験サンプルの作製
炭素繊維SMCとして三菱ケミカル株式会社製STR120N131、炭素繊維ファブリックプリプレグとして三菱ケミカル株式会社製TR3523 368GMPを用いて、以下の手順にて曲げ試験サンプルを作製した。
炭素繊維SMCとして三菱ケミカル株式会社製STR120N131、炭素繊維ファブリックプリプレグとして三菱ケミカル株式会社製TR3523 368GMPを用いて、以下の手順にて曲げ試験サンプルを作製した。
(1)サンプル1
ワックスからなる柱状の可融部を、モールドにより作製した。この可融部をナイロンフィルムで包むことにより柱状コアを作製した。柱状のコアの側面のひとつは、柱状コアの高さ方向に平行な長辺を有する15cm×48cmの長方形であった。以下ではこの側面を「柱状コアの大面積側面」と呼ぶ。
該柱状コアの周囲に、1枚のファブリックプリプレグと複数枚のSMCを以下に記すように配置した。
ワックスからなる柱状の可融部を、モールドにより作製した。この可融部をナイロンフィルムで包むことにより柱状コアを作製した。柱状のコアの側面のひとつは、柱状コアの高さ方向に平行な長辺を有する15cm×48cmの長方形であった。以下ではこの側面を「柱状コアの大面積側面」と呼ぶ。
該柱状コアの周囲に、1枚のファブリックプリプレグと複数枚のSMCを以下に記すように配置した。
ファブリックプリプレグは15cm×48cmの長方形に裁断されたものを、柱状コアの大面積側面を覆うように配置した。その際、補強材であるファブリックの経糸と緯糸を、柱状コアの大面積側面の長辺と短辺にそれぞれ平行とした。
次いで、柱状コアの側方をファブリックプリプレグごと取り囲む、1枚のSMCからなる第一プライ層を形成した。このとき、SMCの縁同士の境界が、ファブリックプリプレグの略中央を通り、かつ、柱状コアの高さ方向と平行に形成されるようにした。その結果、ファブリックプリプレグに含まれるファブリックの緯糸が、この境界と略直交した。
その後、柱状コア全体が2プライのSMCで覆われた状態となるように、第一プライ層の上に他のSMCからなる第二プライ層を形成した。このとき、柱状コアの大面積側面の上方において、第二プライ層がSMCの縁同士の境界を含まないようにした。
こうして作製した予備成形体と柱状コアの集合体を、柱状コアの高さ方向に垂直に切断したときの、柱状コアの大面積側面を含む部分の断面を図11に模式的に示す。
次いで、柱状コアの側方をファブリックプリプレグごと取り囲む、1枚のSMCからなる第一プライ層を形成した。このとき、SMCの縁同士の境界が、ファブリックプリプレグの略中央を通り、かつ、柱状コアの高さ方向と平行に形成されるようにした。その結果、ファブリックプリプレグに含まれるファブリックの緯糸が、この境界と略直交した。
その後、柱状コア全体が2プライのSMCで覆われた状態となるように、第一プライ層の上に他のSMCからなる第二プライ層を形成した。このとき、柱状コアの大面積側面の上方において、第二プライ層がSMCの縁同士の境界を含まないようにした。
こうして作製した予備成形体と柱状コアの集合体を、柱状コアの高さ方向に垂直に切断したときの、柱状コアの大面積側面を含む部分の断面を図11に模式的に示す。
予備成形体と柱状コアの複合体を、柱状コアの大面積側面が上向きとなるように、予め140℃に加熱したプレス金型内に入れ、加圧した状態で9分間保持することにより、予備成形体を硬化させた。
硬化物をプレス金型から取り出した後、ホールソーを用いて壁の一部に排出孔を形成したうえで加熱することでコアに用いたワックスを融解させ、硬化物の内部から取り除いた。こうして、ひとつの側面が概ね15cm×48cmの長方形である柱状の中空FRP成形品を完成させた。以下ではこの側面を「中空FRP成形品の大面積側面」と呼ぶ。
硬化物をプレス金型から取り出した後、ホールソーを用いて壁の一部に排出孔を形成したうえで加熱することでコアに用いたワックスを融解させ、硬化物の内部から取り除いた。こうして、ひとつの側面が概ね15cm×48cmの長方形である柱状の中空FRP成形品を完成させた。以下ではこの側面を「中空FRP成形品の大面積側面」と呼ぶ。
中空FRP物品の大面積側面を構成する壁、すなわち、硬化したファブリックプリプレグを含む壁から、湿式カッターを用いて曲げ試験用の25mm×100mmの矩形の試験片(サンプル1)を6枚切り出した。切り出しの際には、図12に示すように、試験片の長手方向が中空FRP成形品の大面積側面の長手方向と垂直となるように、かつ、この大面積側面の長手方向に平行で、その中央を通る直線(図12中の一点鎖線)が各試験片の中央を横切るようにした。
(2)サンプル2
予備成形体の作製時、SMCの配置が終わった後に、15cm×48cmに裁断されたもう一枚のファブリックプリプレグを、先に配置したファブリックプリプレグとでSMC層を挟むように配置した(図13参照)。その際、補強材であるファブリックの経糸と緯糸を、柱状コアの大面積側面の長辺と短辺にそれぞれ平行とした。
このこと以外は、サンプル1を作製したときと同様にして、中空FRP成形品の作製と、曲げ試験用の試験片(サンプル2)の切り出しを行った。
予備成形体の作製時、SMCの配置が終わった後に、15cm×48cmに裁断されたもう一枚のファブリックプリプレグを、先に配置したファブリックプリプレグとでSMC層を挟むように配置した(図13参照)。その際、補強材であるファブリックの経糸と緯糸を、柱状コアの大面積側面の長辺と短辺にそれぞれ平行とした。
このこと以外は、サンプル1を作製したときと同様にして、中空FRP成形品の作製と、曲げ試験用の試験片(サンプル2)の切り出しを行った。
(3)サンプル3
予備成形体の作製時、第一プライ層を構成するSMCの縁同士の境界の直上に、第二プライ層を構成するSMCの縁同士の境界が形成されるように、第二プライ層を構成するSMCを配置した(図14参照)。このこと以外はサンプル1を作製したときと同様にして、中空FRP成形品の作製と、曲げ試験用の試験片(サンプル3)の切り出しを行った。
予備成形体の作製時、第一プライ層を構成するSMCの縁同士の境界の直上に、第二プライ層を構成するSMCの縁同士の境界が形成されるように、第二プライ層を構成するSMCを配置した(図14参照)。このこと以外はサンプル1を作製したときと同様にして、中空FRP成形品の作製と、曲げ試験用の試験片(サンプル3)の切り出しを行った。
(4)サンプル4
SMC層を挟む2枚のファブリックプリプレグの緯糸方向の幅を、それぞれ20mmとした。更に、予備成形体の作製時、第一プライ層を構成するSMCの縁同士の境界の位置と、各ファブリックプリプレグの長手方向に平行な中央線の位置とが一致するようにした(図15参照)。そのこと以外はサンプル2を作製したときと同様にして、中空FRP成形品の作製と、曲げ試験用の試験片(サンプル4)の切り出しを行った。
SMC層を挟む2枚のファブリックプリプレグの緯糸方向の幅を、それぞれ20mmとした。更に、予備成形体の作製時、第一プライ層を構成するSMCの縁同士の境界の位置と、各ファブリックプリプレグの長手方向に平行な中央線の位置とが一致するようにした(図15参照)。そのこと以外はサンプル2を作製したときと同様にして、中空FRP成形品の作製と、曲げ試験用の試験片(サンプル4)の切り出しを行った。
(5)サンプル5
予備成形体の作製時、ファブリックプリプレグを使用しなかった。また、第一プライ層を構成するSMCを配置するときに、SMCの縁同士の境界が柱状コアの大面積側面上に形成されないようにした(図16参照)。これら以外はサンプル1を作製したときと同様にして、中空FRP成形品の作製と、曲げ試験用の試験片(サンプル5)の切り出しを行った。
予備成形体の作製時、ファブリックプリプレグを使用しなかった。また、第一プライ層を構成するSMCを配置するときに、SMCの縁同士の境界が柱状コアの大面積側面上に形成されないようにした(図16参照)。これら以外はサンプル1を作製したときと同様にして、中空FRP成形品の作製と、曲げ試験用の試験片(サンプル5)の切り出しを行った。
(6)サンプル6
予備成形体の作製時、ファブリックプリプレグを使用しなかった(図17参照)。このこと以外はサンプル1を作製したときと同様にして、中空FRP成形品の作製と、曲げ試験用の試験片(サンプル6)の切り出しを行った。
予備成形体の作製時、ファブリックプリプレグを使用しなかった(図17参照)。このこと以外はサンプル1を作製したときと同様にして、中空FRP成形品の作製と、曲げ試験用の試験片(サンプル6)の切り出しを行った。
(7)サンプル7
予備成形体の作製時、第一プライ層を配置するときに、SMCの縁同士の境界を形成する代わりに、SMCの端部同士をオーバーラップさせた(図18参照)。このこと以外はサンプル6を作製したときと同様にして、中空FRP成形品の作製と、曲げ試験用の試験片(サンプル7)の切り出しを行った。
予備成形体の作製時、第一プライ層を配置するときに、SMCの縁同士の境界を形成する代わりに、SMCの端部同士をオーバーラップさせた(図18参照)。このこと以外はサンプル6を作製したときと同様にして、中空FRP成形品の作製と、曲げ試験用の試験片(サンプル7)の切り出しを行った。
3.2.曲げ試験
作製した試験片に対して5kNインストロン5965による3点曲げ強度試験を行った。試験規格としてはISO14125 Class2を採用した。L/Dは16とし、試験片の2つの面のうち、成形時にコアとは反対の方向を向いていた面(中空FRP成形品における外表面側の面)に荷重を加えた。
サンプル1~7のそれぞれについて6個の試験片で得られた測定値の平均を求めた。
結果を図19に示す。図19では、最も強度が高かったサンプル5の強度を1として、各サンプルの相対的な3点曲げ強度を示している。
作製した試験片に対して5kNインストロン5965による3点曲げ強度試験を行った。試験規格としてはISO14125 Class2を採用した。L/Dは16とし、試験片の2つの面のうち、成形時にコアとは反対の方向を向いていた面(中空FRP成形品における外表面側の面)に荷重を加えた。
サンプル1~7のそれぞれについて6個の試験片で得られた測定値の平均を求めた。
結果を図19に示す。図19では、最も強度が高かったサンプル5の強度を1として、各サンプルの相対的な3点曲げ強度を示している。
以上、本発明を具体的な実施形態に即して説明したが、各実施形態は例として提示されたものであり、本発明の範囲を限定するものではない。本明細書に記載された各実施形態は、発明の効果が奏される範囲内で、様々に変形することができ、かつ、実施可能な範囲内で、他の実施形態により説明された特徴と組み合わせることができる。
実施形態に係る製造方法は、自動車、自動二輪車、自転車、船舶、鉄道車両、有人航空機、無人航空機その他の輸送用機器の他、スポーツ用品、レジャー用品、家電製品、農機具、建材などに用いられる各種のFRP成形品を製造するために好ましく使用することができる。
1 可融部
2 ポリマーフィルム
3 補強シート
4 SMC
10 コア
20 予備成形体
30 プレス金型
31 下型
32 上型
40 FRP成形品
41 壁
42 稜線
B、B1、B2 境界
E1、E2 SMCの縁
2 ポリマーフィルム
3 補強シート
4 SMC
10 コア
20 予備成形体
30 プレス金型
31 下型
32 上型
40 FRP成形品
41 壁
42 稜線
B、B1、B2 境界
E1、E2 SMCの縁
Claims (14)
- 補強繊維を含有する熱硬化性成形材料からなり略正味形状を有する予備成形体を、ワックスからなる可融部を含むコアと共にプレス金型内で加熱して硬化させることを含む、FRP成形品の製造方法であって、前記予備成形体が、前記コアの表面に平行に延在する、第一のシートモールディングコンパウンドの縁と第二のシートモールディングコンパウンドの縁との境界、および、含有する補強繊維の少なくとも一部が前記境界をまたぐように配置された補強シートを有し、前記補強シートはUDプリプレグ、ファブリックプリプレグまたはドライファブリックである、方法。
- 前記予備成形体において、前記補強シートが前記境界に沿って前記境界の一端から他端まで連続している、請求項1に記載の方法。
- 前記予備成形体において、前記第一のシートモールディングコンパウンド側および前記第二のシートモールディングコンパウンド側における前記境界から前記補強シートの縁までの距離がそれぞれ10mm以上である、請求項1または2に記載の方法。
- 前記予備成形体において、前記補強シートが前記境界をまたぐ補強繊維として、その繊維長が前記第一のシートモールディングコンパウンドおよび前記第二のシートモールディングコンパウンドに含まれるチョップド繊維束のそれと同等以上である補強繊維を含有する、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
- 前記シートモールディングコンパウンドの厚さが1mm以上であり、前記補強シートの厚さが0.3mm以下である、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
- 前記補強シートがUDプリプレグであり、前記予備成形体において前記境界の延在方向に対し前記補強シートの補強繊維がなす角度が90°±45°である、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
- 前記補強シートがファブリックを含み、前記予備成形体において前記境界の延在方向に対し前記ファブリックの経糸または緯糸がなす角度が90°±45°である、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
- 前記予備成形体が、前記補強シートとして、前記境界の延在方向に対し補強繊維が30~60°の角度をなすように配置されたUDプリプレグと、前記境界の延在方向に対し補強繊維が120~150°の角度をなすように配置されたUDプリプレグとを含む、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
- 前記予備成形体が、前記補強シートとして、前記境界の延在方向に対しファブリックの経糸または緯糸の一方が30~60°の角度をなし、他方が120~150°の角度をなすように配置された、ファブリックプリプレグおよび/またはドライファブリックを含む、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
- 前記コアが稜線を有し、前記予備成形体において前記境界が前記稜線に沿っている、請求項8または9に記載の方法。
- 前記予備成形体において、前記補強シートが第三のシートモールディングコンパウンドを介して前記第一のシートモールディングコンパウンドおよび前記第二のシートモールディングコンパウンドに積層されている、請求項1~10のいずれかに記載の方法。
- 前記第一のシートモールディングコンパウンドと前記第二のシートモールディングコンパウンドの仕様が同一である、請求項1~11のいずれかに記載の方法。
- 前記第一のシートモールディングコンパウンドと前記第二のシートモールディングコンパウンドが同一である、請求項1~11のいずれかに記載の方法。
- 前記第一のシートモールディングコンパウンドおよび前記第二のシートモールディングコンパウンドに含まれるチョップド繊維束を構成する繊維が、前記補強シートに含まれる補強繊維と同種の繊維である、請求項1~13のいずれかに記載の方法。
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