JP2024078589A - 作業機 - Google Patents

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達也 伊藤
Tatsuya Ito
貴史 野田
Takashi Noda
壮希 保科
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Abstract

【課題】作業機において、モータのロータの回転位置を正確に把握できるようにする。【解決手段】作業機10は、複数のコイルからなるステータ(固定子19)と、永久磁石からなるロータ(回転子18)と、を有するモータ16と、前記モータの駆動力によって往復動するピストンと、前記ピストンを往復動可能に収容するシリンダと、前記ロータの回転位置が複数の回転位置パターンのいずれに該当するかを検出する位置パターン検出部(回転子位置検出回路66)と、前記ステータに流れる電流値を検出する電流検出部(モータ電流検出回路68)と、前記ステータの通電パターンを制御する制御部(コントローラ62)と、を備え、前記制御部は、前記位置パターン検出部が検出した前記回転位置パターンと前記電流検出部が検出した前記電流値に基づいて前記回転位置を推定する回転位置推定処理を行う。【選択図】図3

Description

本発明は、作業機に関する。
建築現場等の作業現場においては、釘打ちやねじ打ち等の作業を行うために、可搬型の空気圧縮機から供給される圧縮空気を駆動エネルギーとした空気工具(釘打機やねじ打機等)が広く使用されている。特許文献1には、作業機の一例として、モータの動力によってシリンダ内でピストンを往復動させることで空気を圧縮する圧縮機構と、圧縮機構によって圧縮された高圧空気を貯留する空気タンクと、それらを支持する複数の脚部と、を備える、可搬型の空気圧縮機が記載されている。
特開2010-185447号公報
特許文献1に記載されるような、ピストンが往復動するレシプロ型の空気圧縮機では、モータを停止しても、レシプロ機構の慣性やシリンダ内の残圧によって、ピストンの移動方向に力が作用するため、空気圧縮機自体の移動(自走)が生じる。自走した空気圧縮機は、人手により所定位置に戻す必要があるため、作業効率が低下するという課題があった。一方、モータのロータを特定の回転位置で停止させると、自走を減少できることが知られているので、該特定の回転位置で停止させるために、回転位置を正確に把握することが求められる。
上記課題を鑑み、本発明の目的は、作業機において、モータのロータの回転位置を正確に把握できるようにすることにある。
本発明の一実施形態に係る作業機は、複数のコイルからなるステータと、永久磁石からなるロータと、を有するモータと、前記モータの駆動力によって往復動するピストンと、前記ピストンを往復動可能に収容するシリンダと、前記ロータの回転位置が複数の回転位置パターンのいずれに該当するかを検出する位置パターン検出部と、前記ステータに流れる電流値を検出する電流検出部と、前記ステータの通電パターンを制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記位置パターン検出部が検出した前記回転位置パターンと前記電流検出部が検出した前記電流値に基づいて前記回転位置を推定する回転位置推定処理を行う。
本発明の一実施形態に係る作業機によれば、位置パターン検出部が検出した回転位置パターンと、電流検出部が検出した電流値に基づいて、ロータの回転位置を正確に把握できる。
第1実施形態に係る作業機の外観を示す斜視図である。 第1実施形態に係る作業機の内部構造を示す平面断面図である。 第1実施形態に係る作業機の回路ブロック図である。 第1実施形態に係る作業機の制御部のブロック図である。 第1実施形態に係る作業機におけるモータの始動から停止を示すフローチャートである。 高圧側ピストン位置に対する、モータ回転軸にかかる軸トルクと、シリンダの内部にかかるシリンダ内圧力とを示す図である。 高圧側ピストンの位置に対する、(A)トルク、(B)ホールセンサパターン、(C)電流を示す図である。 第2実施形態に係る作業機の制御部のブロック図である。 第2実施形態に係る作業機におけるモータの始動から停止を示すフローチャートである。 第2実施形態に係る作業機のモータ通電停止位置におけるニューラルネットワークの構造を示すネットワーク構成図である。
本発明の実施形態に係る作業機を、図面を参照して詳細に説明する。なお、実施形態を説明するための全図において、同一部には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
図2,図3,及び図8に示すように、作業機10は、一例として、ステータ(固定子19)とロータ(回転子18)とを有するモータ16と、モータ16の駆動力よって往復動するピストン22a,22bと、ピストン22a,22bを往復動可能に収容するシリンダ21a,21bと、モータ16の駆動を制御する制御部(コントローラ62)と、を備え、ピストン22a,22bの往復動によりシリンダ21a,21b内で圧縮された空気を貯留タンク(空気タンク12a,12b)に貯留する、空気圧縮機(コンプレッサ)である。
そして作業機10は、ロータの回転位置を正確に推定できる点に特徴があり、この作業機10には、いわゆるルールベースで推定を行う第1実施形態と、人工知能(AI)による機械学習で推定を行う第2実施形態とが含まれる。以下、各実施形態について説明する。
(第1実施形態)
図1に示すように、第1実施形態に係る作業機10は、平行となって基台11に取り付けられる2つの空気タンク12a,12bを有しており、それぞれの空気タンク12a,12bの両端部の下面には、脚部13が取り付けられている。
また、作業機10は脚部13の部分で所定の設置箇所に配置され、基台11の両端部にはハンドル部14a,14bが設けられており、作業機10はハンドル部14a,14bを作業者が把持して持ち運ぶことができる。すなわち、作業機10は、可搬型のコンプレッサである。
基台11には、図2に示すように、駆動ボックス15が取り付けられており、この駆動ボックス15にはモータ16が取り付けられている。このモータ16は、永久磁石からなるロータつまり回転子18と、複数のコイルからなる円筒形のステータつまり固定子19とを有しており、電源からの電力の供給によって駆動されるものである。この作業機10で用いられるモータ16は、例えば三相交流ブラシレスモータである。
回転子18にはモータ回転軸17が取り付けられ、モータ回転軸17を介して被駆動部材としての圧縮空気生成部30を駆動する。圧縮空気生成部30は、モータ16の駆動により圧縮空気を生成するものである。
また、固定子19には複数の界磁巻線つまり巻線が回転子18に対向して設けられている。回転子18は固定子19の内部に組み込まれており、このモータ16はインナーロータ型となっている。固定子19はモータ16を収容するハウジングとしての駆動ボックス15に取り付けられる。
モータ回転軸17は駆動ボックス15に回転自在に支持されている。駆動ボックス15には、モータ回転軸17の回転方向に180度の位相をずらして2つのシリンダ21a,21bが取り付けられており、それぞれのシリンダ21a,21bにはピストン22a,22bが軸方向に往復動自在に組み込まれている。
モータ回転軸17の回転運動をピストン22a,22bの軸方向の往復運動に変換するために、それぞれのピストン22a,22bには、コネクティングロッド23a,23bの一端部がピン結合されている。コネクティングロッド23a,23bの他端部には、モータ回転軸17に装着される偏心カム24a,24bが設けられており、それぞれの偏心カム24a,24bはピストン22a,22bの往復動方向に、互いに逆向き(相補的)な位置となるように偏心している。
これにより、一方のピストン22aが駆動室25a,25bを圧縮する方向に駆動されると、他方のピストン22bは駆動室25a,25bの容量を拡大させる方向に駆動される。
それぞれのシリンダ21a,21bに設けられたシリンダヘッド26a,26bには、逆止弁27a,27bが設けられている。ピストン22a,22bが駆動室25a,25bを圧縮させる方向に駆動されると、吐出室28a,28bから配管29a,29bを介して圧縮空気が供給される。
シリンダ21a,21b、及びピストン22a,22b等は、圧縮空気生成部30を構成しており、モータ16の回転子18は、モータ回転軸17を介して圧縮空気生成部30に連結される。モータ16により圧縮空気生成部30が駆動されると、圧縮空気が空気タンク12a,12bに溜められる。
ピストン22bは外気を導入して圧縮する第1段目の低圧側のピストンであり、ピストン22aは低圧側のピストンにより圧縮された空気をさらに圧縮する第2段目の高圧側のピストンである。低圧側のピストン22bにより圧縮された外気は、シリンダ21b内から配管29aを介してシリンダ21a内に供給され、高圧側のピストン22aによりさらに圧縮され、圧縮空気となって、配管29bを介して空気タンク12a,12b内に供給される。
すなわち、圧縮空気生成部30では、モータ16の回転によるピストン22a,22bの往復運動で圧縮空気が生成され、この圧縮空気生成部30で生成された圧縮空気は、空気タンク(貯留タンク)12a,12bに溜められる。空気タンク12aと空気タンク12bの内部は連通しており、両空気タンク内の空気の圧力は均一に保たれる。
ここで図6は、モータ回転軸17の回転角度(°)で表される高圧側ピストン位置に対する、モータ回転軸17にかかる軸トルクと、シリンダ21a,21bの内部にかかるシリンダ内圧力とを示す図である。図6(A)は、高圧側のピストン22aの駆動によってモータ回転軸17にかかる軸トルクTHと、高圧側のシリンダ21a内にかかる圧力PHとを、高圧下死点(0°)から高圧上死点(180°)を経て高圧下死点(360°)に到るまで示している。図6(B)は、低圧側のピストン22bの駆動によってモータ回転軸17にかかる軸トルクTLと、低圧側のシリンダ21b内にかかる圧力PLとを、低圧上死点(0°)から低圧下死点(180°)を経て低圧上死点(360°)に到るまで示している。高圧側のピストン22aと低圧側のピストン22bとは、互いに逆向きの位置となるよう往復動するため、概ね、高圧側の軸トルクTHが増加すると低圧側の軸トルクTLは減少し、高圧側のシリンダ内圧力PHが増加すると低圧側のシリンダ内圧力PLは減少する。
この高圧側の軸トルクTHと低圧側の軸トルクTLとを合算した、高圧側ピストン位置に対する軸トルクを示すと、図7(A)のようになる。
モータ回転軸17の一端部には、モータ16の外側に位置させて冷却ファン31aが取り付けられており、モータ回転軸17の他端部には冷却ファン31bが取り付けられている。冷却ファン31bの外側には制御基板(制御部、制御部材、メイン基板)32が配置されている。
また、冷却ファン31aにより生成される冷却風はモータ16に吹き付けられ、一方、冷却ファン31bにより生成される冷却風は制御基板32に吹き付けられる。基台11にはカバー33が装着されており、圧縮空気生成部30、モータ16及び空気タンク12a,12b等はカバー33によって覆われている。
それぞれの空気タンク12a,12bに溜められた圧縮空気を外部に供給するために、図1に示すように、空気タンク12a,12bの端部上方にはカプラ34a,34bが設けられている。それぞれのカプラ34a,34bから外部に排出される圧縮空気の圧力を調整するために、減圧弁35a,35bが空気タンク12a,12bに設けられており、減圧された空気の圧力は圧力計36a,36b及び表示部37に表示される。
制御基板32では、主に、モータ16の駆動や圧縮空気生成部30における空気の圧縮動作を制御している。これらの制御は、制御基板32に設けられる制御用のマイコンチップである、後述する図3,4に示すコントローラ62によって行われる。
制御基板32は、カバー33の内側(作業機10本体の内部)の奥まった位置に配置されており、表示部37は、作業機10本体のカバー33に取り付けられている。また、表示部37には、表示面がカバー33から露出するように配置されている。
表示部37は、例えばタッチパネルが該当する。そして、表示部37は、空気タンク12a,12b内の空気圧力や作業機10の運転状態、運転モードを作業者に報知し、さらに、操作スイッチ64としても機能する。操作スイッチ64には、運転状態(すなわち、モータ16のオンオフ)を切り替える電源スイッチや、運転モードを通常モードか静音モードに切り替えるモードスイッチが含まれる。また、空気タンク12a,12b内の空気圧力、運転状態、及び運転モードは、コントローラ62が、表示部37に表示する。なお、表示部37に替えて圧力表示用LED、運転状態表示用LED、運転モード表示用LED等を適用するようにしても良い。
図3に示すように、 作業機10は、U相、V相、及びW相の各巻線に対する駆動電流を制御するためのインバータ回路51を有している。インバータ回路51には、商用電源52の交流を直流に整流するための整流回路54と、整流された直流電圧を昇圧してインバータ回路51に供給するための力率改善回路(PFC)55とを介して電力が供給される。力率改善回路55は、MOSFETからなるトランジスタTrにPWM制御信号を出力するIC56を有しており、インバータ回路51のスイッチング素子で発生する高調波電流を制限値以下に抑える。なお、商用電源52と整流回路54との間には、インバータ回路51等で生じたノイズを商用電源52側に伝えないようにするために、雑音対策回路53が設けられている。
インバータ回路51は、3相フルブリッジインバータ回路であり、それぞれ直列に接続された2つのスイッチング素子Tr1、Tr2と、2つのスイッチング素子Tr3、Tr4と、2つのスイッチング素子Tr5、Tr6とを有し、それぞれは、力率改善回路55の正極と負極の出力端子に接続される。正極側に接続される3つのスイッチング素子Tr1、Tr3、Tr5は、ハイサイド側となっており、負極側に接続される3つのスイッチング素子Tr2、Tr4、Tr6は、ロウサイド側となっている。2つのスイッチング素子Tr1、Tr2の間には、U相の巻線の一方の接続端子が接続される。2つのスイッチング素子Tr3、Tr4の間には、V相の巻線の一方の接続端子が接続される。2つのスイッチング素子Tr5、Tr6の間には、W相の巻線の一方の接続端子が接続される。U相、V相、及びW相のそれぞれの巻線の他方の接続端子は、相互に接続されており、各巻線はスター結線となっている。なお、結線方式としては、デルタ結線としても良い。それぞれのスイッチング素子Tr1~Tr6としては、MOSFETが使用されている。
例えば、ハイサイド側のスイッチング素子Tr1と、ロウサイド側のスイッチング素子Tr4のゲートに制御信号が通電されると、U相とV相の巻線に電流が供給される。それぞれのスイッチング素子に供給される制御信号のタイミングを調整することにより、各巻線に対する転流動作が制御される。
作業機10のインバータ回路51に制御信号を演算して出力するモータ制御ユニット61は、コントローラ62を有しており、コントローラ62は図2に示した制御基板32に設けられている。
コントローラ62からは制御信号出力回路63を介してインバータ回路51に制御信号が送られる。操作スイッチ64が作業者による操作を受け付けることにより、モータ16のオンオフの信号や運転モードの切替信号が操作スイッチ検出回路65を介してコントローラ62に送られる。
回転位置検出センサとしてのホール素子S1~S3の検出信号は、回転子位置検出回路66に送られる。回転子位置検出回路66は、位置パターン検出部の一例であって、回転子位置検出回路66では、回転子18(ロータ)の回転位置が複数の回転位置パターン(以下、「ホールセンサパターン」ともいう)のいずれに該当するかが検出される。回転子位置検出回路66の検出値は、図7(B)のように、モータ回転軸17の回転角度(°)で表される高圧側ピストン位置に対する、ホールセンサパターンで示される。本例においては、回転子18と一体的に回転する永久磁石がS極とN極のそれぞれ5個ずつ設けられており、それらを3個のホール素子S1~S3で検出する(図3は一部省略により、永久磁石の個数を少なく記載している)。本例でのホールセンサパターンは、「0」「1」「2」「3」「4」「5」の6パターンである。また、ホールセンサパターンは、ピストン22a,22bの1往復中(すなわちモータ回転軸17の1回転中)に、同じホールセンサパターンが複数回出現する。本例では、B1~B2(1回目)、B2~B3(2回目)、B3~B4(3回目)、B4~B5(4回目)、及びB5~B1(5回目)の5回、同じホールセンサパターンが出現する。回転子位置検出回路66からは、コントローラ62に、ホールセンサパターンに応じた検出信号が送られる。
モータ16の回転数は、回転子18の位置に基づいて、コントローラ62内で算出可能である。
モータ電流検出回路68は、電流検出部の一例であって、モータ16の固定子19(ステータ)に流れる電流値が検出される。モータ電流検出回路68の検出値は、図7(C)のように、モータ回転軸17の回転角度(°)で表される高圧側ピストン位置に対する電流値で示される。軸トルク(すなわち負荷)が増加すると電流値も増加するので、電流値が増加から減少に転ずる変曲点を結んだ波形は、図7(A)に示される軸トルクの波形と、概ね一致する。モータ電流検出回路68からは、コントローラ62に、ステータに流れる電流値に応じた検出信号が送られる。
圧力センサであるタンク圧センサ39からは、空気タンク12a,12b内の空気圧力の検出値がコントローラ62に送られる。
コントローラ62は、制御信号に基づく演算を行うマイクロプロセッサと、制御プログラム、演算式、及びデータなどが格納されるメモリとを有しており、コントローラ62は、巻線に対する通電タイミングを制御する通電相切替制御部と、ホール素子S1~S3の検出信号に基づいて通電タイミングを進めるための進角制御部とを構成している。
モータ回転数は、各巻線に供給される実効電圧を調整することにより制御される。巻線に対する実効電圧制御は、例えば、スイッチング素子をPWM制御することによって、インバータ回路51の各スイッチング素子Tr1~Tr6のゲートに印加されるオン信号のデューティ比を調整することにより行われる。例えば、デューティ比を10%に設定すると、力率改善回路55からの出力電圧の10%の電圧が各巻線に供給され、デューティ比を100%に設定すると、モータ回転数は最大回転数となる。このように、作業機10のコントローラ62は電圧制御部を構成している。
電圧検出回路57は、検出した電圧を本体情報としてコントローラ62に入力する。
次に、コントローラ62について説明する。コントローラ62は、図4に示すように、データ記憶部62a、ロータ回転位置演算部62b、モータ駆動停止制御部62c、本体モード管理部62d、及びモータ制御部62eを有する。
コントローラ62において、モータ電流検出回路68の検出値(図7(C)に示される電流値)データ、回転子位置検出回路66の検出値(図7(B)に示されるホールセンサパターン)データ、及びタンク圧センサ39の検出値データは、データ記憶部62aに記憶される。データ記憶部62aで記憶された電流値データ及びホールセンサパターンデータは、ロータ回転位置演算部62bに入力される。ロータ回転位置演算部62bでは、入力されたホールセンサパターンデータと電流値データに基づいて、ロータの回転位置を推定(演算)する回転位置推定処理が行われる。この回転位置推定処理の詳細については後述する。回転位置推定処理により演算されたロータの回転位置のデータは、モータ駆動停止制御部62cに入力される。
操作スイッチ検出回路65が検出した、モータ16のオン(始動)とオフ(停止)を切り替える信号及び運転モードを切り替える信号は、本体モード管理部62dに入力される。電圧検出回路57が検出した電圧のデータも、本体モード管理部62dに入力される。本体モード管理部62dからは、空気タンク12a,12b内の空気圧力、運転状態、及び運転モードの表示データが、表示部37に入力される。
モータ16を停止する信号が、本体モード管理部62dからモータ駆動停止制御部62cに入力されると、ロータ回転位置演算部62bからモータ駆動停止制御部62cに入力されたロータ回転位置データに基づいて、該モータ駆動停止制御部62cにより、ロータを停止させる所定の回転位置が決定される。該所定の回転位置でのロータの停止を要求する信号が、モータ駆動停止制御部62cからモータ制御部62eに入力されると、該モータ制御部62eからモータ16に、モータ制御信号が入力されて、モータ16のロータが所定の回転位置で停止される。
次に、モータ16の始動から停止について説明する。コントローラ62は、図5に示すように、電源スイッチがオン(始動)操作されると、ステップS11で、モータ16を駆動するモータ制御を行って、ステップS12で、一定時間が経過したか否かを判定する。この一定時間とは、所定のサンプリング期間であり、例えばモータ16が数回転する期間である。ステップS12の判定を行うのは、ロータ回転位置を判別するためには、モータ16の数回転分の電流波形を見る必要があるからである。
コントローラ62は、ステップS12で一定時間を経過していない(NO)と判定した場合に、ステップS13で、電流値データと回転子位置(ホールセンサパターン)データをデータ記憶部62aにて記録・記憶して、ステップS15に進む。一方、コントローラ62は、ステップS12で一定時間を経過している(YES)と判定した場合に、ステップS14で、データ記憶部62aで記憶している電流値データと回転子位置データに基づいて、ロータ回転位置演算部62bにてロータ回転位置を決定(推定)する回転位置推定処理を行う。
具体的には、図7(B)に示すように、モータ回転軸17の1回転中に、ホールセンサパターン「5」はB1,B2,B3,B4,及びB5の5回検出されるため、ホールセンサパターン「5」が検出されただけではモータ回転軸17の回転角度、すなわちロータ回転位置を決定するには至らない。一方、図7(C)に示すように、ホールセンサパターン「5」の前記B1,B2,B3,B4,及びB5に対応する電流値はC1,C2,C3,C4,及びC5で、それぞれ異なる。よって、ホールセンサパターン「5」が検出された場合における電流値がC1,C2,C3,C4,又はC5のいずれであるかを判別することにより、ロータ回転位置を決定(推定)することができる。
ここで、回転位置推定処理での電流値として、波形が上昇から下降に転ずる変曲点Pの電流値を用いれば、該変曲点Pの電流値は一義的であるため、上昇途中あるいは下降途中の電流値を用いる場合に比べて、より正確にロータ回転位置を決定することができる。具体的には、該変曲点Pは高圧側ピストン位置が約140°のときに現れるため、該変曲点Pが検出された際のホールセンサパターンを基準として、ホールセンサパターンとモータ回転軸17の回転角度を紐づけすることで、ロータ回転位置を決定(推定)することができる。
図5に戻り、コントローラ62は、ステップS15で、モータ停止指令があるか否か、すなわち電源スイッチがオフ(停止)操作されたか否かを判定する。コントローラ62は、ステップS15でモータ停止指令がない(NO)と判定した場合に、前記ステップS11の処理を行う。一方、コントローラ62は、ステップS15でモータ停止指令がある(YES)と判定した場合に、ステップS16で、モータ駆動停止制御部62cにてモータ通電停止条件をロータ回転位置より決定する。具体的には、モータ16のロータを特定の回転位置で停止させると、作業機10の自走を減少できることが知られているので、現在のロータ回転位置に基づいて、所定のロータ回転位置で停止するように決定する。
例えば、モータ回転軸17の回転角度が300°でモータ16を停止させると、高圧側のピストン22aが慣性で動き続けても、高圧上死点(180°)を超えることができず、シリンダ21aの内圧により大きく跳ね返されるので、作業機10の自走距離が長くなる。一方、モータ回転軸17の回転角度が120°でモータ16を停止させると、高圧側のピストン22aが慣性で動き続けて、高圧上死点(180°)を超えることができて、シリンダ21aの内圧による跳ね返りは少ないので、作業機10の自走距離が短くて済む。よって、モータ回転軸17の回転角度が120°で停止するように決定するのが好ましい。
なお、タンク圧センサ39で検出されデータ記憶部62aで記憶しているタンク圧データに基づいて、停止するロータ回転位置を異ならせてもよい。例えば、タンク圧が高い場合には、シリンダ21aの内圧も高いので、ピストン22aが高圧上死点を超えられるように、前記120°よりも高圧上死点に近い回転位置でロータが停止するように決定する。
ステップS16で決定されたモータ通電停止条件は、停止制御要求信号として、モータ制御部62eに出力され、ステップS17で、該モータ通電停止条件の回転角度でロータが停止するようにモータ制御部62eからモータ制御信号が出力されて、モータ16が停止される。
(第2実施形態)
第2実施形態は、前記回転位置推定処理を、人工知能(AI)により行うものである。例えば、モータ16の電流値及びホールセンサパターンのデータを予め人工知能に機械学習させ、機械学習によって得られたデータ(学習モデル)を基に、モータ16のロータの回転位置に応じてステータへの通電パターンを制御する。一例として、第2実施形態は、コントローラ62によって、ニューラルネットワーク(以下、「NN」ともいう)を用いた制御を行う。
図8は、第2実施形態に係る作業機10の制御部(コントローラ62)のブロック図である。第2実施形態のコントローラ62は、第1実施形態のコントローラ62のロータ回転位置演算部62bを、学習済みモデル62f及びNN演算部62gに置き換えた構成となっている。学習済みモデル62fは、学習モデルの一例であって、電流値の変化に基づいて回転位置を推定する際に用いられるデータである。また、NN演算部62gは、演算部の一例であって、学習済みモデル62fに基づいて推定された回転位置に応じてステータへの通電パターンを制御する演算回路である。
図9は、第2実施形態に係る作業機10におけるモータ16の始動から停止を示すフローチャートである。第1実施形態のコントローラ62は、ステップS14で、データ記憶部62aで記憶している電流値データと回転子位置データに基づいて、ロータ回転位置演算部62bにてロータ回転位置を決定(推定)する回転位置推定処理を行っていたが、第2実施形態のコントローラ62は、該ステップS14に代えて、ステップS14a及びステップS14bの処理をNN演算部62gにて行う。
ステップS14aでは、データ記憶部62aで記憶している電流値データの変化と回転子位置データ、空気タンク12a,12b内の空気圧力(タンク圧)に基づいて、学習済みモデル62fによりNN演算を行い、ステップS14bでは、該NN演算の結果により、ロータ回転位置を決定(推定)する。
図10は、第2実施形態に係る作業機10の所定のモータ通電停止位置におけるニューラルネットワークの構造を示すネットワーク構成図である。NN演算部62gは、所定のサンプル数の電流値、モータ16の回転数、及び空気タンク12a,12b内の空気圧力(タンク圧)を入力データ111とし、モータ通電停止位置を出力データ112としたNNによって、ロータ回転位置の推定を行う。
図10に示されるNNを用いた推定制御では、一例として、機械学習により複数の入力データ111を第1次絞り込みデータ113に絞り込み、さらに、第2次絞り込みデータ114に絞り込む等して、モータ通電停止位置の出力データ112を算出する。機械学習による複数の入力データ111の絞り込みは、因子の影響や関係性の高さ等によって行われる。すなわち、1次、2次と進むにつれて、影響の小さいものを、係数を小さくすること等で取り除いていき、最終的にモータ通電停止位置の出力データ112を算出する。なお、複数の入力データ111の絞り込みを行う回数は、2回に限定されることはなく、3回以上行ってもよい。
この第2実施形態に係る作業機10によれば、電流値の波形が複雑で変曲点の検出が困難な場合にも精度よくロータ回転位置の推定を行うことが可能になるため、安価に作業機10を提供することができる。
(変形例)
本発明は、上記の第1実施形態及び第2実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
上記の第1実施形態では、図7(B)に示すように、同じ回転位置パターン(ホールセンサパターン)がピストン22a,22bの一往復中に複数回出現する例について説明したが、該ホールセンサパターンは、ピストン22a,22bの一往復中に1回のみ出現するものであってもよい。この場合であっても、本発明によれば、該ホールセンサパターンと、ステータに流れる電流値とにより、ロータ回転位置を正確に把握することができる。
上記の第1実施形態では、図7(C)に示す電流値の変曲点を用いて回転位置推定処理を行う例について説明したが、上昇途中あるいは下降途中の電流値を用いて回転位置推定処理を行ってもよい。
上記の第2実施形態では、学習モデルとして、予め学習させた学習済みモデル62fを搭載する例について説明したが、該学習モデルは、検出された電流値データやホールセンサパターンデータに基づいてさらに学習を重ねることによりロータ回転位置を推定する精度の向上に資するものであってもよい。
上記の実施形態では、図5及び図9のステップS16において、モータ回転軸17の回転角度が120°でモータ16への電力供給を停止するのが好ましい旨を説明したが、他のタイミングでモータ16への電力供給を停止してもよい。一例として、モータ16への電力供給を停止するタイミングによって作業機10の移動方向が異なる場合は、各タイミングによって移動する量と方向をベクトルで表したときに、該ベクトルの大きさの平均が最小となるように停止タイミングを制御することで、多数回停止させたときの総移動量を減少させることができる。
10…作業機、12a,12b…空気タンク、16…モータ、17…モータ回転軸、18…回転子(ロータ)、19…固定子(ステータ)、21a,21b…シリンダ、22a,22b…ピストン、32…制御基板、39…タンク圧センサ、51…インバータ回路、52…商用電源、57…電圧検出回路、61…モータ制御ユニット、62…コントローラ、62a…データ記憶部、62b…ロータ回転位置演算部、62c…モータ駆動停止制御部、62d…本体モード管理部、62e…モータ制御部、62f…学習済みモデル、62g…NN演算部、66…回転子位置検出回路、68…モータ電流検出回路

Claims (6)

  1. 複数のコイルからなるステータと、永久磁石からなるロータと、を有するモータと、
    前記モータの駆動力によって往復動するピストンと、
    前記ピストンを往復動可能に収容するシリンダと、
    前記ロータの回転位置が複数の回転位置パターンのいずれに該当するかを検出する位置パターン検出部と、
    前記ステータに流れる電流値を検出する電流検出部と、
    前記ステータの通電パターンを制御する制御部と、を備え、
    前記制御部は、前記位置パターン検出部が検出した前記回転位置パターンと前記電流検出部が検出した前記電流値に基づいて前記回転位置を推定する回転位置推定処理を行う、作業機。
  2. 前記位置パターン検出部は、前記ピストンの1往復中に複数回出現する同じ前記回転位置パターンを検出する、請求項1に記載の作業機。
  3. 前記制御部は、前記電流検出部が検出した前記電流値の変曲点に基づいて、前記回転位置推定処理を行う、請求項1に記載の作業機。
  4. 前記制御部は、前記回転位置推定処理により推定した前記回転位置に基づいて、所定の回転位置で前記ロータが停止するように前記通電パターンを制御する、請求項1に記載の作業機。
  5. 前記ピストンの往復動により前記シリンダ内で圧縮された空気を貯留する貯留タンクと、
    前記貯留タンク内の空気圧力を検出する圧力センサと、を備え、
    前記制御部は、前記圧力センサの検出値に応じて異なる前記回転位置で前記ロータが停止するように前記通電パターンを制御する、請求項4に記載の作業機。
  6. 前記制御部は、前記電流検出部が検出した前記電流値の変化に基づいて前記回転位置を推定する学習モデルと、前記学習モデルによって推定された前記回転位置に応じて前記通電パターンを制御する演算部と、を含む、請求項1に記載の作業機。
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