JP2024077174A - 浮体式洋上風力発電装置の組立て装置及び組立て方法 - Google Patents

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直樹 桑原
Naoki Kuwabara
陽一 森屋
Yoichi Moriya
智史 保木本
Satoshi Hokimoto
隆広 横畠
Takahiro Yokohata
康伸 廣井
Yasunobu Hiroi
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Abstract

【課題】大型の起重機船を用いずに安定して浮体式洋上風力発電装置の組立てを行える浮体式洋上風力発電装置の組立て装置及び組立て方法の提供。【解決手段】この浮体式洋上風力発電装置の組立て装置は、浮体部3又は既設塔部4に昇降可能に支持された部材リフト用架台10と、部材リフト用架台10を昇降させる昇降手段とを備え、部材リフト用架台10は、塔用部材4a~4cが載置される部材載置部22と、部材載置部22に載置された塔用部材4a~4cの下面をスライド可能に支持するスライド支持部23と、塔用部材4a~4cを塔部挿通孔までスライド移動させるスライド手段とを備えている。【選択図】図3

Description

本発明は、浮体式洋上風力発電装置を組み立てるための組立て装置及び組立て方法に関する。
近年、エネルギー政策の一環として再生可能エネルギーが注目され、風力発電は、重要な電源確保手段として位置付けられている。
特に、洋上風力発電は、陸上に比べて風況が良好であること、居住区域から離れているため騒音等の環境負担が少ないこと等から導入が促進されている。
洋上風力発電設備では、一般に、設置水域が外洋等の水深60m以深の場合、水中に浮かべられる浮体部と、浮体部の上端に連結される塔部と、塔部の上端部に支持された風車設備(ナセル・ロータ)とを備えた浮体式のもの(以下、浮体式洋上風力発電装置という)が用いられている。
この浮体式洋上風力発電装置の設置は、浮体部、塔部を構成する複数の塔用部材及び風車設備を一旦静穏状態の海上で仮組立てした後、それぞれ分離した状態で台船等によって設置水域まで運搬し、設置水域の水上で組み立てるようになっている。
具体的には、運搬した浮体部を水中に浮かべ、起立させた状態で水底に設置されたアンカーに連結された係留索に係留した後、大型起重機船等を用いて吊り上げた塔用部材を浮体部の上端にボルト止めにより接合させ、同様に、既設の塔型部材上に順次吊り上げた塔用部材を継ぎ足して接合して塔部を組み立て、最後に塔部の上端に風車設備を取り付ける方法が一般的に採られている(例えば、特許文献1を参照)。
また、大型起重機船を用いずに風車設備を設置する方法として、浮体部上に塔部を接合させた浮体式構造体の上端部にクレーン設備を取り付けた浮体式塔型クレーンを用意し、浮体式塔型クレーンを用いて吊り上げた風車設備を他の浮体部上に取り付けられた塔部の上端部に取り付ける方法も開発されている(例えば、特許文献2を参照)。
特開2014-227966号公報 特開2022-055468号公報
しかしながら、上述の如き従来の技術では、浮体部が波浪等によって揺動するおそれがあるため、起重機船を用いて浮体部上に塔部を構成する塔用部材を順次接合させて組み立てる作業及び塔部の上端に風車設備を取り付ける作業は、起重機船と浮体部の相対揺動量が小さくなる気海象の静穏な日に限られるという問題があった。
また、近年では、風車の大型化が顕著で、規格が15又は20MW級のものに移行しつつあり、既存の大型起重機船ではブーム長が不足し、当該15又は20MW級の洋上風力発電装置への対応が困難になりつつあるという問題があった。
さらに、洋上風力発電装置の大型化に伴い、それに対応して浮体部の喫水が深くなっており、スパー型だけでなく、セミサブ式等においても気海象の穏やかな港湾内での風車取り付け作業が困難となることが予測され、今後、超大型のセミサブ型起重機船を必要とする気海象の影響が大きい港外での作業を余儀なくされ、気海象の静穏な日に限られる作業可能日が非常に少なくなるという問題があった。
一方、特許文献2に記載の従来の技術では、浮体式塔型クレーンを用いて風車設備を吊り上げる際、浮体式塔型クレーンの浮体部より外側で風車設備を吊ることとなり、不安定となり易いという問題がある。
さらに、風車設備を設置する際は、浮体式塔型クレーンの浮体部と風車設備を設置する塔部を支持させた浮体部とを近接させる必要があり、且つ、浮体式塔型クレーンと、風車設備を取り付ける浮体式構造体とで重心位置が異なることから双方の揺動特性が違うため浮体同士の相対揺動が大きく、作業が困難になることが予想される。
そこで、本発明は、このような従来の問題に鑑み、大型の起重機船を用いずに安定して浮体式洋上風力発電装置の組立てを行える浮体式洋上風力発電装置の組立て装置及び組立て方法の提供を目的としてなされたものである。
上述の如き従来の問題を解決するための請求項1に記載の発明の特徴は、水上に上部が突出した状態で起立して浮かぶ浮体部上に順次塔用部材を継ぎ足しながら塔部を組み立て、該塔部の上端部に風車設備を取り付ける浮体式洋上風力発電装置の組立て装置において、前記浮体部上に前記塔用部材を順次継ぎ足して組み立てられる既設塔部が挿通可能な塔部挿通孔を中央に有し、前記浮体部又は前記既設塔部に昇降可能に支持された部材リフト用架台と、該部材リフト用架台を前記既設塔部に沿って昇降させる昇降手段とを備え、該部材リフト用架台は、前記塔部挿通孔の周囲に配置され、前記塔用部材又は前記風車設備が載置される部材載置部と、該部材載置部に載置された前記塔用部材の下面をスライド可能に支持するスライド支持部と、前記塔用部材を前記塔部挿通孔まで前記スライド支持部上をスライド移動させるスライド手段とを備えていることにある。
請求項2に記載の発明の特徴は、請求項1の構成に加え、前記部材リフト用架台は、クレーンを備えていることにある。
請求項3に記載の発明の特徴は、請求項1の構成に加え、前記昇降手段は、前記既設塔部の外周面に上方に向けて敷設された軌道と、前記部材リフト用架台に支持部材を介して回転可能に支持された回転体とを備え、該回転体を前記軌道に沿って回転させることにより前記部材リフト用架台が昇降するようにしたことにある。
請求項4に記載の発明の特徴は、請求項3の構成に加え、前記回転体は、前記軌道を構成するラックギアと係合するピニオンギアで構成され、前記昇降手段がラック・アンド・ピニオン機構によって構成されていることにある。
請求項5に記載の発明の特徴は、請求項3又は4の構成に加え、前記支持部材は、前記回転体を支持する可動腕部と、前記部材リフト用架台に固定され、前記可動腕部を伸縮可能に支持する支持部材基部と、前記部材リフト用架台の昇降動作と連動して前記可動腕部を伸縮させる伸縮手段とを備えていることにある。
請求項6に記載の発明の特徴は、請求項1又は2の構成に加え、前記部材リフト用架台は、前記浮体部又は前記既設塔部の外周面を保持し、前記部材リフト用架台を前記浮体部又は前記既設塔部に支持させる保持手段を備えていることにある。
請求項7に記載の発明の特徴は、請求項6の構成に加え、前記昇降手段は、前記保持手段と上下方向に間隔をおいて配置され、前記浮体部又は前記既設塔部の外周面を保持するリフト用保持手段と、該リフト用保持手段に一端が固定され、他端が前記部材リフト用架台に固定された上下方向に伸縮するリフトユニットとを備え、前記リフト用保持手段で前記浮体部又は前記既設塔部を保持した状態で前記リフトユニットを伸縮させることによって、前記部材リフト用架台が昇降されるようにしたことにある。
請求項8に記載の発明の特徴は、請求項1の構成に加え、前記部材リフト用架台は、前記塔部挿通孔の内周面と前記既設塔部の外周面との間の隙間を塞ぐスライド用閉鎖部材と、該スライド用閉鎖部材上に配置され、前記スライド支持部と接続される継ぎ足し用スライド支持部とを備えていることにある。
請求項9に記載の発明の特徴は、請求項1の構成に加え、前記部材リフト用架台は、少なくとも2以上に分割された複数の架台部材によって構成されていることにある。
請求項10に記載の発明の特徴は、水上に上部が突出した状態で起立して浮かぶ浮体部上に順次塔用部材を継ぎ足しながら塔部を組み立て、該塔部の上端部に風車設備を取り付ける浮体式洋上風力発電装置の組立て方法において、中央に開口した塔部挿通孔の周囲に配置され、前記塔用部材が載置される部材載置部と、該部材載置部に載置された前記塔用部材の下面をスライド可能に支持するスライド支持部と、前記塔用部材を前記塔部挿通孔まで前記スライド支持部上をスライド移動させるスライド手段とを備えている部材リフト用架台を前記浮体部の上部に設けた積込み作業位置に設置した後、前記部材載置部上に事前に載置した前記塔用部材を前記塔部挿通孔まで前記スライド支持部上をスライド移動させ、前記塔用部材を前記浮体部の上端に接合させた後、前記積込み作業位置において前記部材載置部に次の塔用部材を搭載する部材積込み作業と、前記浮体部又は前記既設塔部に沿って前記塔用部材が載置された部材リフト用架台を前記既設塔部の上端部まで上昇させる架台上昇作業と、前記既設塔部の上端部において前記塔用部材を前記塔部挿通孔まで前記スライド支持部上をスライド移動させ、前記塔用部材を前記既設塔部の上端に接合させる部材接合作業と、前記塔用部材を接合させた後、前記部材リフト用架台を前記積込み作業位置まで下降させる架台下降作業と、を順次繰り返し、前記浮体部上に前記塔用部材を順次継ぎ足しながら塔部を組み立てることにある。
請求項11に記載の発明の特徴は、請求項10の構成に加え、前記塔用部材の外周面に軌道部材を予め敷設しておき、前記塔用部材の連結に伴い前記軌道部材を継ぎ足して軌道を形成し、該軌道に沿って前記部材リフト架台を昇降させることにある。
請求項12に記載の発明の特徴は、請求項10の構成に加え、前記部材接合作業において、前記塔部挿通孔の内周面と前記既設塔部の外周面との間に生じた隙間をスライド用閉鎖部材で塞ぐとともに、該スライド用閉鎖部材上に配置される継ぎ足し用スライド支持部を前記スライド支持部と接続することにある。
請求項13に記載の発明の特徴は、請求項10の構成に加え、前記部材リフト用架台に搭載されたクレーンで前記塔用部材を吊り持ちさせ、その状態で前記スライド支持部に沿って前記塔用部材を前記塔部挿通孔までスライド移動させることにある。
請求項14に記載の発明の特徴は、請求項10の構成に加え、前記部材リフト用架台を複数の架台部材に分割しておき、該複数の架台部材を設置水域へ運搬した後に組み立て、前記浮体式洋上風力発電装置の組立てが完了した後、前記複数の架台部材に分解して撤去することにある。
本発明に係る浮体式洋上風力発電装置の組立て装置は、請求項1に記載の構成を具備することによって、作業現場の気海象による影響が小さく、風車の規格によらず浮体式洋上風力発電装置の組立て作業を行うことができる。
また、本発明において、請求項2に記載の構成を具備することによって、起重機船を用いずに浮体式洋上風力発電装置の組立てを行うことができる。
また、本発明において、請求項3に記載の構成を具備することによって、部材リフト用架台を軌道に沿って安定して昇降させることができる。
また、本発明において、請求項4に記載の構成を具備することによって、部材リフト用架台を軌道に沿って好適に昇降させることができるとともに、部材リフト用架台を安定して既設塔部に支持させることができる。
また、本発明において、請求項5に記載の構成を具備することによって、テーパ筒状の塔部にも適応することができる。
また、本発明において、請求項6に記載の構成を具備することによって、停止時に安定して部材リフト用架台を既設塔部に固定することができる。
また、本発明において、請求項7に記載の構成を具備することによって、部材リフト用架台を安定して昇降させることができる。
また、本発明において、請求項8に記載の構成を具備することによって、塔部挿通孔の内径と既設塔部の外径との差によって生じる部材リフト用架台と既設塔部との間に生じる隙間を塞ぎ、安定して既設塔部の上端に新設する塔用部材を移動させることができる。
また、本発明において、請求項9に記載の構成を具備することによって、容易に部材リフト用架台を運搬することができるとともに、塔部に支持された部材リフト用架台を容易に分解して撤去することができる。
また、本発明に係る浮体式洋上風力発電装置の組立て方法は、請求項10に記載の構成を具備することによって、作業現場の気海象による影響が小さく、風車の規格によらず浮体式洋上風力発電装置の組立て作業を行うことができる。
また、本発明において、請求項11に記載の構成を具備することによって、作業現場での作業を簡略化し、効率よく軌道を敷設し、部材リフト用架台を軌道に沿って円滑に昇降させることができる。
また、本発明において、請求項12に記載の構成を具備することによって、塔部挿通孔の内径と既設塔部の外径との差によって生じる部材リフト用架台と既設塔部との間に生じる隙間を塞ぎ、安定して既設塔部の上端に新設する塔用部材を移動させることができる。
また、本発明において、請求項13に記載の構成を具備することによって、塔用部材を安定して既設塔部の上端まで移動させることができる。
また、本発明において、請求項14に記載の構成を具備することによって、部材リフト用架台を容易に運搬することができるとともに、塔部に支持された部材リフト用架台を容易に分解して撤去することができる。
本発明に係る浮体式洋上風力発電装置の組立て装置の使用態様の一例を示す正面図である。 同上の部材リフト用架台を示す要部拡大正面図である。 同上の平面図である。 同上のA-A線矢視断面図である。 同上のスライド用閉鎖部材を取り付けた状態を示す平面図である。 同上の架台本体を分割した状態を示す平面図である。 同上の部材リフト用架台と既設塔部との係合部を示す部分拡大正面図であって、(a)は積込み作業位置での状態、(b)は同塔部の途中部分まで上昇した状態、(c)は最上部まで上昇した状態を示す図である。 本発明に係る浮体式洋上風力発電装置の組立て装置の他の実施を示す拡大正面図である。 (a)~(c)は図8に示す実施態様の昇降手順を示す部分拡大正面図である。 (a)~(c)は本発明に係る浮体式洋上風力発電装置の組立て方法の手順を示す正面図であって、(a)は浮体部を設置した状態、(b)は部材リフト用架台を設置した状態、(c)は同最下段の塔用部材の積込み作業の状態を示す図である。 (d)は同上の最下段の塔用部材の部材接合作業の状態を示す図、(e)は同2段目の塔用部材の積み込み作業の状態を示す図、(f)は同2段目の塔用部材の設置高さまで部材リフト用架台を上昇させた状態を示す図である。 (g)は同上の2段目の塔用部材の部材接合作業の状態を示す図、(h)は同3段目の塔用部材の積み込み作業の状態を示す図、(i)は同3段目の塔用部材の部材接合作業の状態を示す図である。 図12(h)における塔用部材の移送作業の状態を示す平面図である。 (j)は同上の風車設備の積込み作業の状態を示す図、(k)は同風車設備を設置作業高さまで上昇させた状態を示す図、(l)は同風車設備の取り付け作業の状態を示す図である。 (m)は同上の軌道部材の撤去作業の状態を示す図、(n)は同浮体式洋上風力発電装置の組立てが完了した状態を示す図である。
次に、本発明に係る浮体式洋上風力発電装置の組立て装置の実施態様を図1~図7に示した実施例に基づいて説明する。尚、図中符号1は水面、符号2は浮体式洋上風力発電装置である。
浮体式洋上風力発電装置2は、水上に上部が突出した状態で起立して浮かぶ浮体部3と、浮体部3に支持された塔部4とを備え、浮体部3上に順次塔用部材4a,4b,4cを継ぎ足しながら塔部4を組み立て、最後に塔部4の上端部に風車設備5(ナセル・ロータ)を取り付けるようになっている。
浮体部3は、内部に空洞部を備えた上下方向に長い筒状に形成され、上端部に上方に進むにつれて径が小さくなるテーパ筒状の連結部3aを備え、連結部3aに塔部4を構成する最下部の塔用部材4aが接合されるようになっている。
この浮体部3は、空洞部にバラスト水を注排水することによって浮力調整及び重心移動ができるとともに、空洞部の内底部に砂利、鉄鉱石、スラグ、コンクリート等のバラスト材を投入することによって水中において安定して起立するようになっている。
また、この浮体部3は、特に図示しないが、下端が水底に設置されたアンカーに連結された係留索によって係留されている。
塔部4は、上端側に進むにつれて径が小さくなる円錐台筒状に形成され、高さ方向に複数に分割された塔用部材4a,4b,4cを浮体部3の上端に接合される最下段の4aから順次接合することによって組み立てられるようになっている。
塔部4を構成する各塔用部材4a,4b,4cは、後述する部材リフト用架台10に搭載された状態で安定して昇降できる重量となるように分割数が決定されている。
この浮体式洋上風力発電装置2の組立てに使用される装置(以下、組立装置という)は、浮体部3又は既設塔部4に昇降可能に支持された部材リフト用架台10と、部材リフト用架台10を浮体部3及び既設塔部4に沿って昇降させる昇降手段とを備え、浮体部3の上部に設定した積込み作業位置で部材リフト用架台10に塔用部材4a,4b,4cを順次積込み、部材リフト用架台10を昇降手段によって既設塔部4に沿って上昇させ、塔用部材4b又は4cを設置高さまで移動させることができるようになっている。
尚、既設塔部4とは、塔部4を構成する複数の塔用部材4a,4b,4cの内、既に浮体部3上に組み立てられた塔用部材4a,4b,4cによって形成される塔部4を言うものとする。
部材リフト用架台10は、図2~図4に示すように、昇降手段を介して浮体部3又は既設塔部4の外周面部に昇降可能に支持された架台本体11と、架台本体11の上面部に設置されたタワー型のクレーン12とを備え、昇降手段によりクレーン12が部材リフト用架台10と一体となって昇降できるようになっている。また、架台本体11は、浮体式洋上風力発電装置2を組立てる際の作業台としても利用することができ、図中符号13は、架台本体11の上面周辺に設置された安全柵である。
クレーン12は、タワー部14上に旋回可能に支持された旋回部15と、旋回部15に上下方向に回動可能なジブ16とを備え、ジブ16先端より吊りワイヤ17が繰り出されている。尚、クレーン12は、塔用部材4a,4b,4c及び風車設備5の重量を勘案して仕様が設定されている。
架台本体11は、中央に開口した塔部挿通孔18を備えた上面が平坦な矩形台状に形成され、矩形状の外枠19内に塔部挿通孔18を中心にI形鋼等からなる複数の梁部材20,20…が放射状に配置され、外枠19及び梁部材20,20…からなるフレームの上面に平板状の天板部材21が支持されている。
架台本体11上面には、塔部挿通孔18の周囲に部材載置部22が配置され、この部材載置部22に塔用部材4a,4b,4c又は風車設備5を載置できるようになっている。
部材載置部22は、架台本体11上面のクレーン12と反対側に塔用部材4a,4b,4cをそれぞれ起立させた状態で載置できる広さが確保されている。
塔部挿通孔18は、浮体部3の上端外径より稍大きい外径に形成され、塔部挿通孔18の内側面と浮体部3及び塔部4の外側面とが干渉しないようにしている。
また、架台本体11には、部材載置部22に載置された塔用部材4a,4b,4cの下面をスライド可能に支持するスライド支持部23と、塔用部材4a,4b,4cを塔部挿通孔18までスライド支持部23上をスライド移動させるスライド手段とを備え、架台本体11上で既設塔部4上端に塔用部材4a,4b,4cを接合させる作業を行えるようになっている。
尚、塔部4は、上端側に進むにつれて径が小さくなる円錐台筒状である場合、部材リフト用架台10を既設塔部4に沿って上昇させ、塔用部材4b,4cを設置高さまで移動すると塔部挿通孔18の内周面と既設塔部4の外周面との間の隙間が生じる。
そこで、部材リフト用架台10には、図5に示すように、塔部挿通孔18の内周面と既設塔部4の外周面との間の隙間を塞ぐスライド用閉鎖部材24,24と、スライド用閉鎖部材24上に配置され、スライド支持部23と接続される継ぎ足し用スライド支持部25とを備え、部材リフト架台10が設置高さまで移動した後、スライド用閉鎖部材24,24で当該隙間を塞ぐことによって、塔用部材4b,4cが部材載置部22から既設塔部4の上端までスライド移動できるようにしている。
尚、スライド用閉鎖部材24,24は、塔用部材4a,4b,4cの分割数に応じ、各塔用部材4a,4b,4cの設置高さにおける塔部挿通孔18の内周面と既設塔部4の外周面との間の隙間の大きさに基づき複数種用意されている。
また、架台本体11は、図6に示すように、塔部挿通孔18を中心にして少なくとも2以上に分割された複数の架台部材11A,11B(本実施例では2分割)によって構成され、塔部挿通孔18を中心にして各架台部材11A,11Bを組立て及び解体ができるようになっている。
各架台部材11A,11Bは、天板部材21の互いに接合される端縁部に半円状又は円弧状の切り欠きが形成され、架台部材11A,11Bが溶接やボルト締め等によって互いに接合されることにより、架台本体11の中央に円形状の塔部挿通孔18が形成される構造となっている。
スライド支持部23及び継ぎ足し用スライド支持部25の態様は、特に限定されないが、例えば、架台本体11部の上面部の部材載置部22から塔部挿通孔18までの範囲を低摩擦材料からなる塗料で塗装することにより形成してもよく、ステンレス板材やレール等を敷設して形成してもよく、コロなどで塔用部材4a,4b,4cを支持させるようにしてもよい。
スライド手段には、図3に示すように、架台本体11の部材載置部22とは反対側の上面部に配置されたウインチ26を使用し、ウインチ26より繰り出されたワイヤ27を塔用部材4a,4b,4cの外周に掛け回し、先端をウインチ26とは塔部4を挟んで反対側に設置したアンカー部材28に連結させ、ワイヤ27をウインチ26で巻取り、塔用部材4a,4b,4cを塔部挿通孔18まで引き寄せることにより、スライドさせるようになっている。尚、ワイヤ7で塔用部材4a,4b,4cの外周面が傷つかないように塔用部材4a,4b,4cの外周面とワイヤ7との間には、保護部材を設置することが望ましい。
また、塔用部材4a,4b,4cのスライド移動は、塔用部材4a,4b,4cの転倒を防止するため、クレーン12で塔用部材4a,4b,4cを吊り持ちした状態で行うことが望ましい。
昇降手段は、既設塔部4の外周面に上方に向けて敷設され、周方向に間隔をおいて配置された複数の軌道30,30…と、各軌道30,30…と対応する配置に架台本体11の下面部に支持部材31,31…を介して回転可能に支持された回転体32とを備え、回転体32を軌道30,30…に沿って回転させることにより部材リフト用架台10が昇降するようになっている。
軌道30,30…は、少なくとも周方向に間隔を置いて3カ所以上に設置し、4カ所以上に設置することが望ましい。尚、軌道30は、部材リフト用架台10及び各塔用部材4a~4cの重量を勘案し、設置カ所数を決定する。
また、軌道30,30…の設置位置は、軌道30,30…の撤去作業を考慮し、クレーン12による撤去作業が困難な位置を避けて設置することが望ましい。
回転体32は、例えば、図7に示すように、軌道30を構成するラックギアと係合するピニオンギアで構成され、昇降手段たるラック・アンド・ピニオン機構により部材リフト用架台10が昇降するようになっている。尚、図中符号38は、車止めのように軌道30から回転体32が脱落することを防止する脱落防止部材である。
また、回転体32であるピニオンギアは、図示しないサーボ付きモータ等の動力によって回転するとともに、その回転及び停止が制御され、回転することにより部材リフト用架台10を昇降させ、停止することにより部材リフト用架台10を所定の位置(塔用部材4a,4b,4cの設置高さ位置)で浮体部3又は既設塔部4に支持された状態を維持できるようになっている。
支持部材31,31…は、回転体32を支持する先端側が既設塔部4側斜め下向きに所定の角度で傾いた状態で架台本体11(梁部材20)の下面に固定され、部材リフト用架台10及び部材リフト用架台10に載置された塔用部材4a,4b,4cの荷重を負担できるようにしている。
この支持部材31,31…は、回転体32であるピニオンギアを回転可能に支持する可動腕部33と、架台本体11の放射状に配置された梁部材20,20…の下面に沿って固定され、可動腕部33を伸縮可能に支持する支持部材基部34と、部材リフト用架台10の昇降動作と連動して可動腕部33を伸縮させる伸縮手段とを備え、上下方向で外径が変動する円錐台状の浮体部3又は既設塔部4に敷設された軌道30であるラックギアに対し、常に回転体32であるピニオンギアが係合した状態を維持するようになっている。
伸縮手段は、特に限定されないが、昇降手段を構成するラック・アンド・ピニオン機構の動作と同期して制御され、油圧シリンダや、ラック・アンド・ピニオン機構やサーボ付きモータを動力にして支持部材基部34に対し可動腕部33がスライド移動するようにしてもよく、バネ等の弾性体や油圧、空気圧等の流体圧によって常に回転体32であるピニオンギアをラックギア側に付勢する付勢手段を用いてもよい。
また、支持部材31,31…は、図7に示すように、上端が梁部材20,20…に支持され、下端が可動腕部33に接続された可動吊り持ち部材35を備え、伸長した可動腕部33に作用する荷重を可動吊り持ち部材35で負担できるようにしてもよい。
可動吊り持ち部材35は、例えば、梁部材20に沿って移動する台車部36と、台車部36に上端が支持された油圧シリンダ等の伸縮支持部材37とを備え、伸縮支持部材37の下端が可動腕部33に固定されている。
そして、可動吊り持ち部材35は、図7(a)~(c)に示すように、可動腕部33の伸縮に連動して台車部36が梁部材20に沿って移動するとともに、伸縮支持部材37が伸縮することにより、可動腕部33を支持するようになっている。
台車部36の態様は、特に限定されないが、例えば、梁部材20を構成するI形鋼の両フランジ部上を滑走する車輪を有するトロリー方式のものが用いられる。
尚、支持部材31は、特に図示しないが、基端部を架台本体11の下面に上下方向に回動可能な状態で支持させるとともに、一端を架台本体11の下面部に回動可能に支持され、他端を可動腕部33に回動可能に連結した吊り持ち用リンク材を備え、架台本体11、支持部材31及び吊り持ち用リンク材からなるリンク機構によって支持させてもよい。この場合、可動腕部33の伸縮に伴い吊り持ちリンク材が回動するとともに、支持部材31が回動することにより、回転体32であるピニオンギアが軌道30であるラックギアに常に係合した状を維持することができる。
尚、部材リフト用架台10は、昇降手段によって支持されるだけでなく、図8に示すように、昇降手段の他に浮体部3又は既設塔部4の外周面を保持する保持手段40を備え、停止時に部材リフト用架台10を安定して浮体部3又は既設塔部4に固定できるようにしてもよい。
保持手段40には、例えば、部材リフト用架台10の下面部に塔部挿通孔18に沿って周方向に間隔をおいて配置された既設塔部4の半径方向に伸縮する複数のジャッキ装置41,41…等を使用することができる。
各ジャッキ装置41,41…は、シリンダ部42が架台本体11の梁部材20の下面に固定され、シリンダ部42より伸長したロッド部43の先端が浮体部3又は既設塔部4の外周面に当接することにより部材リフト用架台10を浮体部3又は既設塔部4に固定し、ロッド部43を収縮させることによって、ロッド部43の先端が浮体部3又は既設塔部4の外周面より離脱し、部材リフト用架台10が浮体部3又は既設塔部4より固定解除されるようになっている。
尚、上述の実施例では、昇降手段をラック・アンド・ピニオン機構によって構成した場合について説明したが、昇降手段の態様はこれに限定されず、例えば、回転体32として軌道30の表面に沿って回転するタイヤを使用し、軌道30,30…とタイヤとの摩擦によって部材リフト用架台10を浮体又は既設塔部4に支持させ、且つ、タイヤの回転によって部材リフト用架台10を昇降させるようにしてもよい。
また、昇降手段は、図8、図9の実施例に示すように、保持手段40と上下方向に間隔をおいて配置され、浮体部3又は既設塔部4の外周面を保持するリフト用保持手段44と、リフト用保持手段44に一端が固定され、他端が部材リフト用架台10に固定された上下方向に伸縮するリフトユニットとを備え、保持手段40とリフト用保持手段44との相対移動によって部材リフト用架台10を昇降させるもの(以下、上下スライド式昇降手段という)であってもよい。尚、上述の実施例と同様の構成には同一符号を付して説明し、説明を省略する。
リフト用保持手段44は、保持手段40と同様に、周方向に間隔をおいて配置された既設塔部4の半径方向に伸縮する複数のジャッキ装置41,41…等を使用し、各ジャッキ装置41,41…がリフトユニットを構成する各上下動ジャッキ45の下端に固定されている。
リフトユニットを構成する上下動ジャッキ45は、油圧式、機械式等のジャッキ装置によって構成され、上端が部材リフト用架台10の下面部に固定されている。
この上下スライド式昇降手段による部材リフト用架台10の昇降動作は、図9に示す手順によって行う。
先ず、図9(a)に示すように、上下動ジャッキ45を収縮させた状態でリフト用保持手段44を構成するジャッキ装置41,41…を伸長させてロッド部43の先端を浮体部3又は既設塔部4の外周に当接させ、リフト用保持手段44を介して部材リフト用架台10を支持させた後、保持手段40の各ジャッキ装置41,41…を収縮させて保持手段40を浮体部3又は既設塔部4から支持解除させた状態とする。
次に、図9(b)に示すように、上下動ジャッキ45を伸長させ、リフト用保持手段44を介して浮体部3又は既設塔部4に支持された状態で部材リフト用架台10を既設塔部4に沿って上昇させる。
次に、上昇した位置において、図9(c)に示すように、保持手段40を構成する各ジャッキ装置41,41…を伸長させてロッド部43の先端を浮体部3又は既設塔部4の外周に当接させ、保持手段40を介して部材リフト用架台10を既設塔部4に支持させる。
保持手段40を介して部材リフト用架台10が既設塔部4に支持された後、リフト用保持手段44の各ジャッキ装置41,41…を収縮させてリフト用保持手段44を浮体部3又は既設塔部4から支持解除させた状態とし、その状態で上下動ジャッキ45を収縮させてリフト用保持手段44を上方に引き上げる。
そして、図9(a)~(c)に示す動作を繰り返すことによって、部材リフト用架台10が既設塔部4に沿って上昇するようになっている。
尚、この上下スライド式昇降手段では、保持手段40により部材リフト用架台10を既設塔部4に支持させた状態で上下動ジャッキ45を伸長させた後、リフト用保持手段44に浮体部3又は既設塔部4を保持させ、しかる後、保持手段40を既設塔部4から支持解除し、その状態で上下動ジャッキ45を収縮させることによって部材リフト用架台10が下降し、その位置で再度保持手段40により部材リフト用架台10を既設塔部4に支持させる一連の動作を繰り返すことによって部材リフト用架台10が降下するようになっている。
次に、上述の組立装置を使用した浮体式洋上風力発電装置の組立て方法について図10~図15に示す実施例に基づいて説明する。尚、上述の実施例と同様の構成には同一符号を付して説明する。
施工に先立ち、組み立てられる浮体式洋上風力発電装置2の規格を考慮した上で、部材リフト用架台10が安定して昇降できる重量以内になるように、塔部4を構成する塔用部材4a,4b,4cの数量(分割数)を設定し、一番重い塔用部材4aの重量から部材リフト用架台10の大きさ及びクレーン12の仕様を決定する。
また、塔用部材4a,4b,4cの分割数及び部材リフト用架台10の大きさの設定に際しては、塔部4の最上段部分を組立てる際の浮体部3の安定性を検討し、安定性を確保できるように各塔用部材4a,4b,4cの重量及び部材リフト用架台10の大きさを決定する。
次に、各塔用部材4a,4b,4c及び部材リフト用架台10の仕様が決定したら、陸上の製作ヤード等において、浮体部3、各塔用部材4a,4b,4c、風車設備5及び部材リフト用架台10を製作する。
その際、浮体部3の上部及び各塔用部材4a,4b,4cの外周面には、軌道30,30…であるラックギアを構成する軌道部材30a~30cを所定の位置に予め敷設しておき、各塔用部材4a,4b,4cの軌道部材30a~30cの位置を合わせて浮体部3と塔用部材4a又は塔用部材4a,4b,4c同士が接合されることによって、浮体部3及び各塔用部材4a,4b,4cに敷設された軌道部材30a~30cが互いに継ぎ足され、既設塔部4の外周面に上下方向に連続する軌道30,30…が形成されるようにしておく。
また、部材リフト用架台10については、塔部挿通孔18を中心にして組立て及び分解ができるように、架台本体11を複数の架台部材11A,11Bに分割して製作する。
さらに、各架台部材11A,11Bには、支持部材31,31…を介して回転体32であるピニオンギアを所定の位置に取り付けておく。
そして、製作された浮体部3、各塔用部材4a,4b,4c、風車設備5、部材リフト用架台10用の架台部材11A,11B、クレーン12及びその他の備品を台船50やSEP船等に積込み、浮体式洋上風力発電装置2の設置水域まで運搬する。
設置水域における浮体式洋上風力発電装置2の組立ては、先ず、図10(a)に示すように、浮体部3の空洞部の内底部にバラスト水及び砂利、鉄鉱石、スラグ、コンクリート等のバラスト材を投入し、浮体部3を水中において安定して起立させ、下端が水底に設置されたアンカーに連結された係留索によって係留される。
浮体部3の設置方法は、特に限定されないが、既知の方法により設置することができる。
次に、図10(b)に示すように、部材リフト用架台10を浮体部3の上端部に設置し、その位置を積み込み位置に設定する。
部材リフト用架台10は、台船50やSEP船の甲板上等の比較的安定した場所で塔部挿通孔18を構成する切り欠きの位置を合わせて各架台部材11A,11Bを溶接やボルト締め等で接合させて架台本体11を組み立て、安全柵13を設置する。
そして、組み立てた部材リフト用架台10を起重機船やSEP船等のクレーン(図示せず)によって吊り上げ、浮体部3の上部に移動させ、浮体部3に敷設された軌道30の位置に各回転体32であるピニオンギアの位置を合わせ、その状態で積込み作業位置となる位置まで部材リフト用架台10を吊り下ろす。
尚、積込み作業位置は、浮体部3の上端面と架台本体11の上面とが略同一平面上となる位置とする。
そして、積込み作業位置において、可動腕部33を伸長させて回転体32であるピニオンギアを軌道30であるラックギアと係合させることにより、部材リフト用架台10が浮体部3の上部に支持される。
最後に、架台本体11上面の所定の位置にクレーン12を設置し、部材リフト用架台10の設置作業を完了する。
次に、図10(c)に示すように、塔用部材4a,4b,4cを積み込んだ台船50を浮体部3の近くに移動させ、その位置で台船50上に載置された塔部4の最下部を構成する塔用部材4aをクレーン12で吊り上げ、部材リフト用架台10の部材載置部22まで移動させ、部材載置部22上に吊り下ろす(部材積込み作業)。
その際、部材リフト用架台10が浮体部3の水面から近い安定した積込み作業位置に設置され、且つ、部材リフト用架台10に設置されたクレーン12を用いて塔用部材4aの積み替え作業を行うので、気海象条件の影響を受け難く、浮体部3と台船50との相対揺動特性の違いによる影響がなく安定して作業を行うことができる。
そして、ウインチ26より繰り出されたワイヤ27を塔用部材4aの外周に掛け回し、先端をウインチ26と反対側に設置されたアンカー28に接続し、スライド手段を形成する。
次に、図11(d)及び図5に示すように、ウインチ26でワイヤ27を巻取り、塔用部材4aを塔部挿通孔18側に引き寄せ、部材載置部22上に載置した塔用部材4aを塔部挿通孔18までスライド支持部23上をスライド移動させ、塔部挿通孔18内に挿入された浮体部3の上端面上に塔用部材4aの下端面を載せる(部材接合作業)。
スライド移動の際には、クレーン12で塔用部材4aを吊り持ちさせ、その状態で塔用部材4aを塔部挿通孔18までスライド支持部23上をスライド移動させ、塔用部材4aの転倒を防止する。
そして、浮体部3に敷設された軌道30の位置と予め塔用部材4aの外周面に敷設された軌道部材30aの位置とを合わせるように位置を微調整し、その後、浮体部3と最下部の塔用部材4aとを接合させる。
尚、浮体部3と塔用部材4a或いは塔用部材4a,4b,4c同士の接合手段は、特に限定されないが、浮体部3、塔用部材4a,4b,4cの端部の外周又は内周にフランジを設け、フランジ同士をボルト締めにより締結するようにしてもよく、溶接により接合させてもよい。
最下部の塔用部材4aと浮体部3との接合が完了したら、次に、図11(e)に示すように、台船50上に載置された次の塔用部材4bをクレーン12で吊り上げ、部材リフト用架台10の部材載置部22まで移動させ、部材載置部22上に吊り下ろす(部材積込み作業)。
その際、次の塔用部材4bを浮体部3の水面から近い安定した積込み位置で部材リフト用架台10に積み替えるので、気海象条件の影響を受け難く、浮体部3と台船50との相対揺動特性の違いによる影響がなく安定して作業を行うことができる。
尚、次の塔用部材4bは、部材リフト架台10が上昇する際に転倒しないようにワイヤ等で部材リフト用架台10に固定することが望ましい。
次の塔用部材4bの部材リフト用架台10への積込みが完了したら、図11(f)に示すように、昇降手段により部材リフト用架台10を浮体部3及び既設塔部4に沿って上昇させ、部材リフト用架台10の部材載置部22に載置された次の塔用部材4b及びクレーン12を部材リフト用架台10と一体的に上昇させる(架台上昇作業)。
架台上昇作業は、軌道30,30…であるラックギアに係合した回転体32であるピニオンギアを回転させ、ラック・アンド・ピニオン機構により、部材リフト用架台10を上昇させる。
その際、浮体部3の上端部及び既設塔部4が上端側に進むにつれて小径となる円錐台筒状に形成されているので、部材リフト用架台10の上昇に伴い回転体32であるピニオンギアと軌道30であるラックギアとの相対位置が変動するので、上昇動作と連動して可動腕部33を伸長させ、常にラックギアにピニオンギアが係合している状態を維持する。
また、可動腕部33の伸長に伴って、可動吊り持ち部材35の台車部36が梁部材20に沿って塔部挿通孔18側に移動するとともに、伸縮支持部材37が伸長して可動腕部33を支持する。
このように、次の塔用部材4b及びクレーン12を載置した部材リフト用架台10を既設塔部4に沿って上昇させることによって、浮体部3に支持された既設塔部4と同じ揺動特性下において部材リフト用架台10を上昇させることができ、相対的な揺動の影響が抑制されて安全に設置位置まで塔用部材4bを移動させることができる。
そして、図12(g)に示すように、部材リフト用架台10が次の塔用部材4bの設置位置、即ち、既設塔部4の上端面と架台本体11の上面とが略同一高さとなる位置まで到達したら、既設塔部4の外周と塔部挿通孔18の内周縁との間にスライド用閉鎖部材24,24を嵌め込み、部材載置部22から既設塔部4の上端面まで塔用部材4bがスライド移動できるようにする。
しかる後、ウインチ26でワイヤ27を巻取り、塔用部材4bを塔部挿通孔18側に引き寄せ、部材載置部22上に載置した次の塔用部材4bを塔部挿通孔18までスライド支持部23及び継ぎ足し用スライド支持部31上をスライド移動させ、塔部挿通孔18内に挿入された既設塔部4の上端面上に次の塔用部材4bの下端面を載せる(部材接合作業)。
尚、スライド移動の際には、クレーン12で塔用部材4bを吊り持ちさせ、その状態で塔用部材4bを塔部挿通孔18までスライド支持部23上をスライド移動させ、塔用部材4bの転倒を防止する。
その際、塔用部材4bの移動に伴って、部材リフト用架台10を含む浮体式構造体全体の重心が変動するが、塔用部材4bを部材リフト用架台10上をスライド移動させることによって急激な重心変動が抑制されるので、当該浮体式構造体の揺動を最小限に押さえつつ塔用部材4bの接合作業を行うことができる。
そして、塔用部材4a,4b同士の接合作業が完了したら、スライド用閉鎖部材24,24を撤去し、軌道30,30…であるラックギアに係合した回転体32であるピニオンギアを上昇時とは逆回転させ、ラック・アンド・ピニオン機構により、部材リフト用架台10を積み込み作業位置まで下降させる(架台下降作業)。
その際、既設塔部4が下方に進むにつれて大径となる円錐台筒状に形成されているので、部材リフト用架台10の下降に伴いピニオンギアとラックギアとの相対位置が変動するので、下降動作と連動して伸縮手段によって可動腕部33を収縮させ、常にラックギアにピニオンギアが係合している状態を維持する。
また、可動腕部33の収縮に伴って、可動吊り持ち部材35の台車部36が梁部材20,20…に沿って塔部挿通孔18とは反対側に移動するとともに、伸縮支持部材37が収縮して可動腕部33を支持する。
部材リフト用架台10を積込み作業位置まで下降させたら、図12(h)に示すように、台船50上に載置された次の塔用部材4cを部材載置部22上に積み込む(部材積込み作業)。
その際、既設塔部4が一定の高さに到達していると、既設塔部4とクレーン12のジブ16とが干渉し、クレーン12によって台船50から部材載置部22に直接移動させることができない場合がある。
その場合には、図13に示すように、台船50からクレーン12で吊り上げた塔用部材4cをクレーン12のジブ16と既設塔部4とが干渉せずに移動できる位置まで移動させ、その位置で架台本体11の上面に一旦仮置きし、その位置から部材載置部22まで架台本体11の上面上をスライド移動させる。
尚、当該仮置き位置に塔用部材4cを載置しても安定している場合には、仮置き位置を新たな部材載置部22とし、新たな部材載置部22から塔部挿通孔18に向けてスライド支持部23及び継ぎ足しスライド支持部25を設置するようにしてもよい。
この部材積込み作業では、既設塔部4が高くなっても、次の塔用部材4cを浮体部3の水面から近い安定した積込み位置で部材リフト用架台10に積み替えるので、気海象条件の影響を受け難く、浮体部3と台船50との相対揺動特性の違いによる影響がなく安定して作業を行うことができる。
尚、次の塔用部材4cは、部材リフト架台10が上昇する際に転倒しないようにワイヤ等で部材リフト用架台10に固定することが望ましい。
次の塔用部材4cの部材リフト用架台10への積込みが完了したら、図12(i)に示すように、上述した架台上昇作業と同様に、昇降手段により部材リフト用架台10を浮体部3及び既設塔部4に沿って上昇させ、部材リフト用架台10の部材載置部22に載置された次の塔用部材4c及びクレーン12を部材リフト用架台10と一体的に上昇させる(架台上昇作業)。
そして、部材リフト用架台10が次の塔用部材4cの設置位置、即ち、既設塔部4の上端面と架台本体11の上面とが略同一高さとなる位置まで到達したら、既設塔部4の外周と塔部挿通孔18の内周縁との間に塔用部材4cに対応したスライド用閉鎖部材24,24を嵌め込み、部材載置部22から既設塔部4の上端面まで塔用部材4cがスライド移動できるようにする。
しかる後、上述した部材接合作業と同様に、ウインチ26でワイヤ27を巻取り、塔用部材4cを塔部挿通孔18側に引き寄せ、部材載置部22上に載置した次の塔用部材4cを塔部挿通孔18までスライド支持部23及び継ぎ足し用スライド支持部25上をスライド移動させ、塔部挿通孔18内に挿入された既設塔部4の上端面上に次の塔用部材4cの下端面を載せる(部材接合作業)。
塔用部材4b,4c同士の接合作業が完了したら、上述した架台下降作業と同様に、スライド用閉鎖部材24,24を撤去し、軌道30,30…であるラックギアに係合したピニオンギアを上昇時とは逆回転させ、ラック・アンド・ピニオン機構により、部材リフト用架台10を積み込み作業位置まで下降させる(架台下降作業)。
そして、塔用部材4a,4b,4cの分割数に応じて、上述の部材積込み作業、架台上昇作業、部材接合作業及び架台下降作業を繰り返し、塔部4の組立てを完了する。
次に、図14(j)に示すように、部材リフト用架台10を積み込み作業位置まで下降させ、積込み作業位置において、クレーン12で台船50より風車設備5を部材リフト用架台10上に積み込む。
その際、全てのブレードを取り付けた状態で部材リフト用架台10に載置することができないので、一部のブレードを取り外した状態としておく。
そして、図14(k)に示すように、風車設備5を積み込んだ部材リフト用架台10を塔部4に沿って所定の位置まで上昇させ、クレーン12で風車設備5を保持した状態でジャッキやウインチ26を用いて塔部4の上端に移動させ上端部に接合する。
その後、図14(l)に示すように、クレーン12を用いて取り外されていたブレードを台船50から吊り上げて取り付け、浮体式洋上風力発電装置の組立てを完了する。
浮体式洋上風力発電装置の組立てが完了したら、図15(m)に示すように、部材リフト用架台10を所定の位置まで下降させる毎に軌道部材30a~30cの撤去作業を行いつつ積み込み作業位置まで下降させる。
尚、軌道部材30a~30cは、将来の保守や部品交換時に部材リフト架台10やその他の昇降足場を用いることを想定し、撤去せずに塔部4に取り付けたままにしてもよい。軌道部材30a~30cを残置された場合、浮体式洋上風力発電装置2の揺動特性が残置された軌道部材30a~30cが受ける空気抵抗の影響を受けることから、予め軌道部材30a~30cが受ける空気抵抗の影響を考慮して浮体式洋上風力発電装置2を設計する必要がある。
最後に、図15(n)に示すように、積込み作業位置において部材リフト用架台10をクレーン12,各架台部材11A,11Bに分割して撤去し、浮体部3の軌道部材30a~30cを撤去して作業が完了する。
このように構成された本願発明に係る浮体式洋上風力発電装置の組立て装置及びそれを使用した組立て方法では、部材リフト用架台10によって既設塔部4に沿って塔用部材4a,4b,4cを設置高さまで運搬させるので、起重機船等を用いる場合と異なり、揺動特性の違いによる揺れによって生じる起重機船やSEP船によって吊り持ちされた塔用部材4a,4b,4cと既設塔部4との衝突等を好適に回避でき、作業現場の気海象による影響が小さく、風車の規格によらず浮体式洋上風力発電装置2の組立て作業を行うことができる。
また、本発明では、塔用部材4a,4b,4cを架台上をスライド移動させて既設塔部4の上端に接合させるため、急激な重心変動による揺動を抑え、安全に作業を行うことができるようになっている。
尚、上述の組立て方法に係る実施例では、ラック・アンド・ピニオン機構からなる昇降手段を用いた場合について説明したが、図に示す上下スライド式昇降手段等の他の昇降手段を用いた場合であっても、昇降に係る動作は異なるものの同様の手順によって行うことができる。また、昇降手段には、ラック・アンド・ピニオン式昇降手段と上下スライド式昇降手段等の他の昇降手段とを併用してもよい。
また、上述の実施例では、伸縮する可動腕部33を備えた支持部材31,31…を用いた場合について説明したが、軌道30,30…の回転体32と係合する部分を鉛直方向に延伸させ、回転体32を固定された位置に配置するようにしてもよい。
1 水面
2 浮体式洋上風力発電装置
3 浮体部
4 塔部
5 風車設備
10 部材リフト用架台
11 架台本体
12 クレーン
13 安全柵
14 タワー部
15 旋回部
16 ジブ
17 吊りワイヤ
18 塔部挿通孔
19 外枠
20 梁部材
21 天板部材
22 部材載置部
23 スライド支持部
24 スライド用閉鎖部材
25 継ぎ足し用スライド支持部
26 ウインチ
27 ワイヤ
28 アンカー部材
30 軌道(ラックギア)
31 支持部材
32 回転体(ピニオンギア)
33 可動腕部
34 支持部材基部
35 可動吊り持ち部材
36 台車部
37 伸縮支持部材
38 脱落防止部材
40 保持手段
41 ジャッキ装置
42 シリンダ部
43 ロッド部
44 リフト用保持手段
45 上下動ジャッキ
50 台船

Claims (14)

  1. 水上に上部が突出した状態で起立して浮かぶ浮体部上に順次塔用部材を継ぎ足しながら塔部を組み立て、該塔部の上端部に風車設備を取り付ける浮体式洋上風力発電装置の組立て装置において、
    前記浮体部上に前記塔用部材を順次継ぎ足して組み立てられる既設塔部が挿通可能な塔部挿通孔を中央に有し、前記浮体部又は前記既設塔部に昇降可能に支持された部材リフト用架台と、
    該部材リフト用架台を前記既設塔部に沿って昇降させる昇降手段とを備え、
    該部材リフト用架台は、前記塔部挿通孔の周囲に配置され、前記塔用部材又は前記風車設備が載置される部材載置部と、該部材載置部に載置された前記塔用部材の下面をスライド可能に支持するスライド支持部と、前記塔用部材を前記塔部挿通孔まで前記スライド支持部上をスライド移動させるスライド手段とを備えていることを特徴とする浮体式洋上風力発電装置の組立て装置。
  2. 前記部材リフト用架台は、クレーンを備えている請求項1に記載の浮体式洋上風力発電装置の組立て装置。
  3. 前記昇降手段は、前記既設塔部の外周面に上方に向けて敷設された軌道と、前記部材リフト用架台に支持部材を介して回転可能に支持された回転体とを備え、該回転体を前記軌道に沿って回転させることにより前記部材リフト用架台が昇降するようにした請求項1に記載の浮体式洋上風力発電装置の組立て装置。
  4. 前記回転体は、前記軌道を構成するラックギアと係合するピニオンギアで構成され、前記昇降手段がラック・アンド・ピニオン機構によって構成されている請求項3に記載の浮体式洋上風力発電装置の組立て装置。
  5. 前記支持部材は、前記回転体を支持する可動腕部と、前記部材リフト用架台に固定され、前記可動腕部を伸縮可能に支持する支持部材基部と、前記部材リフト用架台の昇降動作と連動して前記可動腕部を伸縮させる伸縮手段とを備えている請求項3又は4に記載の浮体式洋上風力発電装置の組立て装置。
  6. 前記部材リフト用架台は、前記浮体部又は前記既設塔部の外周面を保持し、前記部材リフト用架台を前記浮体部又は前記既設塔部に支持させる保持手段を備えている請求項1又は2に記載の浮体式洋上風力発電装置の組立て装置。
  7. 前記昇降手段は、前記保持手段と上下方向に間隔をおいて配置され、前記浮体部又は前記既設塔部の外周面を保持するリフト用保持手段と、該リフト用保持手段に一端が固定され、他端が前記部材リフト用架台に固定された上下方向に伸縮するリフトユニットとを備え、前記リフト用保持手段で前記浮体部又は前記既設塔部を保持した状態で前記リフトユニットを伸縮させることによって、前記部材リフト用架台が昇降されるようにした請求項6に記載の浮体式洋上風力発電装置の組立て装置。
  8. 前記部材リフト用架台は、前記塔部挿通孔の内周面と前記既設塔部の外周面との間の隙間を塞ぐスライド用閉鎖部材と、該スライド用閉鎖部材上に配置され、前記スライド支持部と接続される継ぎ足し用スライド支持部とを備えている請求項1に記載の浮体式洋上風力発電装置の組立て装置。
  9. 前記部材リフト用架台は、少なくとも2以上に分割された複数の架台部材によって構成されている請求項1に記載の浮体式洋上風力発電装置の組立装置。
  10. 水上に上部が突出した状態で起立して浮かぶ浮体部上に順次塔用部材を継ぎ足しながら塔部を組み立て、該塔部の上端部に風車設備を取り付ける浮体式洋上風力発電装置の組立て方法において、
    中央に開口した塔部挿通孔の周囲に配置され、前記塔用部材が載置される部材載置部と、該部材載置部に載置された前記塔用部材の下面をスライド可能に支持するスライド支持部と、前記塔用部材を前記塔部挿通孔まで前記スライド支持部上をスライド移動させるスライド手段とを備えている部材リフト用架台を前記浮体部の上部に設けた積込み作業位置に設置した後、
    前記部材載置部上に事前に載置した前記塔用部材を前記塔部挿通孔まで前記スライド支持部上をスライド移動させ、前記塔用部材を前記浮体部の上端に接合させた後、
    前記積込み作業位置において前記部材載置部に次の塔用部材を搭載する部材積込み作業と、
    前記浮体部又は前記既設塔部に沿って前記塔用部材が載置された部材リフト用架台を前記既設塔部の上端部まで上昇させる架台上昇作業と、
    前記既設塔部の上端部において前記塔用部材を前記塔部挿通孔まで前記スライド支持部上をスライド移動させ、前記塔用部材を前記既設塔部の上端に接合させる部材接合作業と、
    前記塔用部材を接合させた後、前記部材リフト用架台を前記積込み作業位置まで下降させる架台下降作業と、
    を順次繰り返し、前記浮体部上に前記塔用部材を順次継ぎ足しながら塔部を組み立てることを特徴とする浮体式洋上風力発電装置の組立て方法。
  11. 前記塔用部材の外周面に軌道部材を予め敷設しておき、前記塔用部材の連結に伴い前記軌道部材を継ぎ足して軌道を形成し、該軌道に沿って前記部材リフト架台を昇降させる請求項10に記載の浮体式洋上風力発電装置の組立て方法。
  12. 前記部材接合作業において、前記塔部挿通孔の内周面と前記既設塔部の外周面との間に生じた隙間をスライド用閉鎖部材で塞ぐとともに、該スライド用閉鎖部材上に配置される継ぎ足し用スライド支持部を前記スライド支持部と接続する請求項10に記載の浮体式洋上風力発電装置の組立て方法。
  13. 前記部材リフト用架台に搭載されたクレーンで前記塔用部材を吊り持ちさせ、その状態で前記スライド支持部に沿って前記塔用部材を前記塔部挿通孔までスライド移動させる請求項10に記載の浮体式洋上風力発電装置の組立て方法。
  14. 前記部材リフト用架台を複数の架台部材に分割しておき、該複数の架台部材を設置水域へ運搬した後に組み立て、前記浮体式洋上風力発電装置の組立てが完了した後、前記複数の架台部材に分解して撤去する請求項10に記載の浮体式洋上風力発電装置の組立て方法。
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