JP2024076825A - 電気めっき用陽極並びに金属で物品を電気めっきする方法及びシステム - Google Patents

電気めっき用陽極並びに金属で物品を電気めっきする方法及びシステム Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、付帯設備や陽極液管理を必要とせず、かつ、高価な金属や特殊な金属も必要とせずに比較的容易に作製できる電気めっき用陽極を提供することを目的としている。
【解決手段】本発明は、電気めっき用陽極に関しており、
電源から電力が入力される入力部と、
第1方向に延び、前記第1方向と交差する第2方向に互いに間隔を空けて配置され、前記入力部から電力の供給を受け、めっき液との接液部分が絶縁材料によって被覆されている一対の支持部と、
前記第2方向に延び、一端が前記一対の支持部の一方に接続され、他端が前記一対の支持部の他方に接続され、前記一対の支持部から電力の供給を受ける通電部と
を備え、
前記通電部が、前記第1方向に互いに間隔を空けて配置された複数の電流パスを有しており、
前記通電部の断面積が、前記支持部の断面積よりも小さい。
【選択図】なし

Description

本発明は、電気めっき用陽極、及び、それを用いて金属で物品を電気めっきする方法及びシステムに関し、特に、金属イオンを含むめっき浴に添加される有機化合物添加剤の分解が抑制される電気めっき用陽極、及び、それを用いて金属で物品を電気めっきする方法及びシステムに関する。
亜鉛めっきは、比較的安価な防錆めっきとして使用されており、そのアルカリ性めっき浴には、4級アミンポリマーなどの有機化合物が添加剤として使用されている。この有機化合物が陽極酸化で分解されると密着性の悪いデンドライト析出を引き起こし、良好な亜鉛防錆めっきを形成することができなくなる。
亜鉛合金めっきは、亜鉛めっきに比べて優れた耐食性を有することから、自動車部品などに幅広く使用されている。特に、アルカリ性亜鉛ニッケル合金めっき浴は、高い耐食性が要求される燃料部品や高温環境下に置かれるエンジン部品に使用されている。アルカリ性亜鉛ニッケル合金めっき浴は、所望のニッケル共析率に適したアミン系キレート剤を使用してニッケルを溶解させ、めっき皮膜に亜鉛とニッケルを共析させるものであるが、通電するときに陽極表面でアミン系キレート剤が酸化分解してシュウ酸や炭酸ソーダを生じることが問題となる。ニッケルイオンや鉄イオンなどの鉄系金属イオンが共存する場合、これらが酸化触媒として働き、アミン系キレート剤の酸化分解がさらに促進される。そうすると、アルカリ性亜鉛ニッケル合金めっき浴が陽極と接触することでアミン系キレート剤は急速に分解され、めっき性能が急速に低下することになる。この分解物の蓄積により電流効率の低下、浴電圧の上昇、めっき膜厚の減少、めっき皮膜中のニッケル共析率の低下、めっき可能な電流密度範囲の縮小、光沢の低下、化学的酸素要求量(COD)の上昇など多くの問題が発生する。このため、めっき浴を長期に使用することができず、頻繁に交換しなければならなかった。
特許文献1及び2には、隔膜で覆われたセル内に陽極液を入れ、めっき浴を陽極板と接触させないように仕切ることで有機化合物添加剤の分解を抑えることができる、いわゆるアノードセルシステムが記載されている。このアノードセルシステムでは、めっき浴中で生じたシュウ酸や炭酸ソーダがめっき液からアノードセル内へ移動するため、めっき浴中の分解物を除去する効果も期待される。一方で、アノードセルシステムでは、アノードセル本体、配管、及びポンプなど多くの付帯設備が必要とされる。さらに、陽極液の濃度管理が必要であり、一定通電量ごとに陽極液を更新する必要がある。
特許文献3には、陽極の導電性基材の表面にコーティングを施すことで、有機化合物添加剤の分解を抑制することが記載されている。この場合には、付帯設備や極液管理を必要としないが、陽極を製造するためのコストが問題となる。特許文献4にも、陽極の導電性基材の表面にコーティングを施すことが記載されているが、さらなる改善が求められている。
他方、特許文献5には、導電性基体上に酸化イリジウム系の被覆層を設けてなる電極を特定の陽極電流密度で鉄系電気めっきに用いて、めっき浴中のFe2+イオンの通電酸化を抑制することが記載されており、当該被覆層の形状はメッシュ状であってもよい旨が記載されている。また、特許文献6には、酸化イリジウムなどの電極活性物質の被覆層を有する、エキスパンドメタルなどの形状の多孔性金属陽極が記載されており、当該電極は従来の平板陽極と比較して軽量化されて扱いが容易になるだけでなく、発生ガスの逸散が容易になって電圧の降下に有効である旨などが記載されている。
国際公開第2016/075963号 国際公開第2016/075964号 特許第6582353号 特表2019-530800号公報 特開平5-331696号公報 特開平1-208499号公報
本発明は、付帯設備や陽極液管理を必要とせず、かつ、高価な金属や特殊な金属も必要とせずに比較的容易に作製できる電気めっき用陽極を提供することを目的としている。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、電気めっき用陽極において、電源から電流が入力される入力部と、めっき液に通電する通電部との間に、特定の支持部を設けることで、浴電圧の上昇、及び通電部の発熱による浴温の上昇を抑制できることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は、以下に示す電気めっき用陽極、金属で物品を電気めっきする方法、及び、金属で物品を電気めっきするシステムを提供するものである。
〔1〕電気めっき用陽極であって、
電源から電力が入力される入力部と、
第1方向に延び、前記第1方向と交差する第2方向に互いに間隔を空けて配置され、前記入力部から電力の供給を受け、めっき液との接液部分が絶縁材料によって被覆されている一対の支持部と、
前記第2方向に延び、一端が前記一対の支持部の一方に接続され、他端が前記一対の支持部の他方に接続され、前記一対の支持部から電力の供給を受ける通電部と
を備え、
前記通電部が、前記第1方向に互いに間隔を空けて配置された複数の電流パスを有しており、
前記通電部の断面積が、前記支持部の断面積よりも小さい、電気めっき用陽極。
〔2〕前記通電部が配置されている領域の外形面積(So)に対する前記通電部の接液部分の面積(Sc)の比率(Sc/So)が、0.05~0.5である、前記〔1〕に記載の電気めっき用陽極。
〔3〕前記支持部の断面積(S1)に対する前記通電部の断面積(S2)の比率(S2/S1)が、0.5以下である、前記〔1〕又は〔2〕に記載の電気めっき用陽極。
〔4〕前記通電部が、ワイヤ、エキスパンドメタル、及び/又は、パンチングメタルを含む、前記〔1〕~〔3〕のいずれか1項に記載の電気めっき用陽極。
〔5〕前記通電部が、
- 3~75mm2の断面積(S2)を有し、及び/又は、
- 鉄、ニッケル、ステンレス、及び、カーボンからなる群から選択される少なくとも1種を含み、及び/又は、
- 前記陽極中に均一に分散して配置されており、及び/又は、
- 互いに10cm以下の間隔で配置されている、
前記〔1〕~〔4〕のいずれか1項に記載の電気めっき用陽極。
〔6〕前記支持部が、前記陽極の外周の少なくとも一部を構成しており、及び/又は、
前記支持部の断面積(S1)が、15~1200mm2である、前記〔1〕~〔5〕のいずれか1項に記載の陽極。
〔7〕金属で物品を電気めっきする方法であって、
前記金属のイオンと、有機化合物添加剤とを含むめっき浴において通電する工程を含み、
前記めっき浴が、前記物品を陰極として備え、かつ前記〔1〕~〔6〕のいずれか1項に記載の電気めっき用陽極を備えている、方法。
〔8〕前記通電部の接液部分の面積(Sc)に対する電流の大きさ(陽極電流密度)が、25~150A/dm2であり、及び/又は、
前記通電部の断面積(S2)に対する電流の大きさが、2~75A/mm2である、前記〔7〕に記載の方法。
〔9〕金属で物品を電気めっきするシステムであって、
前記金属のイオンと、有機化合物添加剤とを含むめっき浴を含み、
前記めっき浴が、前記物品を陰極として備え、かつ前記〔1〕~〔6〕のいずれか1項に記載の電気めっき用陽極を備えている、システム。
本発明に従えば、電気めっき用陽極の前記入力部と前記通電部との間に、前記通電部よりも断面積が大きく、めっき液との接液部分が絶縁材料によって被覆されている一対の支持部を設けることによって、浴電圧の上昇を抑制することができる。本発明の電気めっき用陽極は、付帯設備や陽極液管理を必要とするものではなく、かつ、高価な金属や特殊な金属を必要とするものでもないため、電気めっきの低コスト化が可能となる。
本発明の電気めっき用陽極の一態様(梯子型)を示す。ハッチング部位は絶縁材料によって被覆されている。 本発明の電気めっき用陽極の一態様(格子型)を示す。ハッチング部位は絶縁材料によって被覆されている。 本発明の電気めっき用陽極の一態様(網目型)を示す。ハッチング部位は絶縁材料によって被覆されている。 図3のIV部の拡大図を示す。 比較用の電気めっき用陽極を示す。 陰極板のめっき外観を示す。
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明の電気めっき用陽極は、
電源から電力が入力される入力部と、
第1方向に延び、前記第1方向と交差する第2方向に互いに間隔を空けて配置され、前記入力部から電力の供給を受け、めっき液との接液部分が絶縁材料によって被覆されている一対の支持部と、
前記第2方向に延び、一端が前記一対の支持部の一方に接続され、他端が前記一対の支持部の他方に接続され、前記一対の支持部から電力の供給を受ける通電部と
を備えており、前記通電部の断面積は、前記支持部の断面積よりも小さい。従来の単純な平板状の電極で陽極電流密度を高めようとする場合、通電部の外形面積を小さくするか、めっきに必要な電流より過大な電流をかける必要がある。前者の場合、外形面積が小さくなることでめっき浴中の通電領域に偏りが生じ、電流分布が不均一となって、浴電圧の上昇が引き起こされる。更に、外気とめっき液との境界部分で発熱することでも、浴電圧の上昇が引き起こされる。一方、本発明の電気めっき用電極が備える前記支持部は、前記通電部に電力を供給するが、めっき液との接液部分は絶縁材料によって被覆されているため、めっき液に対しては通電せず、外気とめっき液との境界部分での発熱も浴電圧の上昇も起こりにくい。前記支持部は、前記入力部から遠いところに位置する通電部、すなわちめっき液の深部に侵入している通電部まで効率的に電力を供給することができる。そして、前記通電部は、めっき液の深部でも安定して電力の供給を受けることができ、かつ、全体がめっき液中に含まれているため、断面積が小さい導電性部材で構成しても発熱が問題とならず、更に、均一に分散して配置されているため浴の電流分布に偏りが生じない。結果として、めっき液(めっき浴)に均一にかつ効率的に通電することができ、電気めっきの対象の物品に良好なめっき皮膜を形成することが可能となる。なお、ここでいう「断面積」とは、電流が流れる方向と直交する平面における断面積のことをいう。
前記一対の支持部が延びる前記第1方向は、特に制限されないが、前記入力部から延びる方向であってもよい。また、前記第2方向は、前記第1方向と交差する限り特に制限されないが、前記第1方向と直交する方向であってよい。また、前記一対の支持部は、一続きの部材上の離間した部位であってもいいし、離間して存在する別個の部材上の部位であってもよく、その具体的な態様は、前記通電部を間に接続できる限り特に制限されない。ある態様では、前記一対の支持部は、前記陽極の外周の少なくとも一部を構成してもよく、前記外周全体を囲ってもよい。すなわち、本発明の電気めっき用陽極は、追加の支持部をさらに設けてもよく、前記一対の支持部及び前記追加の支持部は、直接的又は間接的に接続して、前記陽極の外周の一部又は全部を構成し、枠(フレーム)を形成してもよい。
前記支持部の断面積(S1)は、特に制限されないが、例えば、約15mm2~約1200mm2であってもよく、約100mm2~約1100mm2であってもよく、又は、約125mm2~約1000mm2であってもよい。また、前記支持部を構成する導電性部材は、通電が可能である限り特に限定されないが、例えば、鉄、ニッケル、ステンレス、カーボン、チタン、銅、及びそれらでコーティングされた部材などからなる群から選択される少なくとも1種を含んでもよい。
前記絶縁材料は、めっき液中での使用に耐えられる限り特に限定されないが、例えば、高分子樹脂、ゴム、絶縁性無機酸化物、絶縁性無機窒化物、絶縁性無機炭化物、及び絶縁性無機ホウ化物からなる群から選択される少なくとも1種を含んでもよい。より具体的には、前記高分子樹脂は、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂アクリル樹脂、ポリスチレン、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロンポリウレタン、メチルペンテン樹脂、又はポリカーボネートなどを含んでもよく、前記ゴムは、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、アクリルゴム、ニトリルゴムエチレン・プロピレンゴム、スチレンゴム、ブチルゴム、ブタジエンゴム、又は天然ゴムなどを含んでもよく、前記絶縁性無機酸化物は、二酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化ベリリウム、酸化チタン、又は酸化タンタルなどを含んでもよい。
本発明の電気めっき用陽極の通電部は、前記第1方向に互いに間隔を空けて配置された複数の電流パスを有している。ここでいう「電流パス」とは、電流が流れる経路のことをいい、前記通電部を構成する導電性部材が複数設置されることで複数の電流パスが形成されてもいいし、前記通電部を構成する導電性部材が分岐構造を有することで複数の電流パスが形成されてもよい。ある態様では、前記複数の電流パスは、前記陽極中で均一に分散して配置されている。
個々の電流パスが互いに間隔を空けて配置されるということは、前記通電部が存在する領域に空隙が形成されているということであるから、当該通電部全体の接液部分の総面積は、すべての通電部が一連の平板だったと仮定したときの接液部分の面積、すなわち前記通電部が配置されている領域の外形面積よりも小さくなる。前記通電部が配置されている領域の外形面積(So)に対する前記通電部の接液部分の面積(Sc)の比率(Sc/So)は、特に制限されないが、例えば、約0.5以下、約0.3以下又は約0.25以下であってもよく、約0.05以上、0.1以上、又は0.125以上であってもよい。
特定の理論に拘束されるものではないが、陽極近傍においては、酸化反応により、酸素発生反応と後述する有機化合物添加剤の分解反応が同時に起きていると考えられるところ、前記電極におけるめっき液中の通電部の面積を制限すると陽極電流密度(陽極の単位通電部面積あたりの電流)が高くなり、この状態においては、陽極電流密度が低い場合と比較して、酸素発生反応が前記有機化合物添加剤の分解反応よりも優先的に起きるため、前記有機化合物添加剤の分解が抑制されると考えられる。さらに、前記陽極において電流パスが互いに間隔を空けて配置されていることにより、めっき浴電圧の上昇を抑えて陰極に対する電流分布を安定に保つことができると考えられる。仮に、従来の平板を陽極として用いて、通電部面積を変えずに陽極電流密度を高くしようとすると、印加電流を大幅に高くする必要があるが、そうすると浴電圧も上昇してしまい、不経済であって、陽極の耐久性にも影響を及ぼし得る。さらには、印加電流を大幅に高くすると陰極電流密度も大幅に高くなってしまうため、めっき品質にも悪影響を及ぼし得る。本態様に係る電気めっき用陽極を用いれば、これらのような不利益なしに陽極電流密度を高めることができ、前記有機化合物添加剤の分解を抑制することができる。
本発明の電気めっき用陽極の通電部の断面積(S2)は、前記支持部の断面積よりも小さい限り特に制限されないが、例えば、約3mm2~約75mm2であってもよく、約4.5mm2~約50mm2であってもよい。また、前記支持部の断面積(S1)に対する前記通電部の断面積(S2)の比率(S2/S1)は、特に制限されないが、例えば、約0.5以下であってもよく、約0.004~約0.25であってもよく、約0.007~約0.16であってもよい。
前記通電部を構成する導電性部材は、通電が可能である限り特に限定されないが、例えば、鉄、ニッケル、ステンレス、カーボン、白金、白金メッキチタン、パラジウム-スズ合金、及びそれらでコーティングされた部材などからなる群から選択される少なくとも1種を含んでもよく、好ましくは鉄、ニッケル、ステンレス、及び、カーボンからなる群から選択される少なくとも1種を含む。前記通電部の形状は、特に制限されないが、例えば、ワイヤ、エキスパンドメタル、パンチングメタル、及び/又は、平板などであってもよく、好ましくはワイヤである。エキスパンドメタル及びパンチングメタルは、分岐構造を有しているため、単体で用いても複数の電流パスを形成することが可能である。
ある態様では、本発明の電気めっき用陽極において、前記通電部は複数配置されていてもよく、複数の前記通電部は、好ましくは前記陽極中で均一に分散して配置されている。そのときの間隔は、特に制限されないが、例えば、前記通電部は、その中心間の距離で、互いに約10cm以下、又は約3cm~約7cmの間隔で配置されていてもよい。また、ある態様では、本発明の電気めっき用陽極は、前記第1方向に延びる通電部をさらに備えてもよい。前記第1方向に延びる通電部は、特に制限されないが、前記第2方向に互いに間隔を空けて配置された複数の電流パスを有していてもよい。
本発明の電気めっき用陽極において、前記通電部を前記支持部に接続する態様は、互いに通電が可能である限り特に制限されないが、例えば、入力部21を上部に備え、下側を除いて電極周囲を囲うように構成された支持部41(フレーム)の両側部の間に、通電部31を梯子状に構成してもよい(梯子型電気めっき用陽極1)。この場合、電流パス311は、支持部41と直交する方向に複数設けられる。あるいは、入力部22を上部に備え、電極周囲全体を囲うように構成された支持部42(フレーム)の内側に、通電部32を格子状に構成してもよい(格子型電気めっき用陽極1A)。この場合、支持部42と直交する方向に電流パス321が複数設けられるだけでなく、支持部42が延びる方向にも電流パス322が複数設けられる。前記通電部の形状がワイヤである場合の梯子型電気めっき用陽極の例を図1に示し、前記通電部及び前記追加の通電部の形状がワイヤである場合の格子型電気めっき用陽極の例を図2に示す。
本発明の電気めっき用陽極は、その目的を損なわない限り、当技術分野で通常使用される任意の修飾、又は、浴電圧の上昇抑制、通電部の発熱による浴温の上昇抑制、若しくは前記有機化合物添加剤の分解抑制に有用な処置などが施されていてもよい。例えば、前記通電部を構成する導電性部材の表面の一部を絶縁材料で被覆し他の一部は露出した状態にすると、前記電極におけるめっき液中の通電部の面積を制限され、陽極電流密度(陽極の単位通電部面積あたりの電流)が高くなり、前記有機化合物添加剤の分解抑制に有用である。
別の態様では、本発明は、金属で物品を電気めっきする方法にも関しており、前記方法は、
前記金属のイオンと、有機化合物添加剤とを含むめっき浴において通電する工程を含み、
前記めっき浴が、前記物品を陰極として備え、かつ上述した本発明の電気めっき用陽極を備えている。本発明の方法に従えば、浴電圧の上昇、及び通電部の発熱による浴温の上昇を抑制しながら、前記めっき浴に均一にかつ効率的に通電することができ、前記物品に良好なめっき皮膜を形成することができる。
前記金属は、電気めっきに利用されるものであれば特に限定されないが、例えば、前記金属は、亜鉛、ニッケル、鉄、銅、コバルト、すず、及びマンガンなどを含んでもよい。前記金属が亜鉛のみであれば、前記物品に亜鉛皮膜が形成され、前記金属が亜鉛及び他の金属を含んでいれば、前記物品に亜鉛合金皮膜が形成される。前記他の金属は、前記亜鉛合金皮膜を形成できる限り特に限定されないが、例えば、ニッケル、鉄、コバルト、すず、及びマンガンなどからなる群より選択される少なくとも1種であってもよい。前記亜鉛合金皮膜は、特に限定されないが、例えば、亜鉛ニッケル合金めっき、亜鉛鉄合金めっき、亜鉛コバルト合金めっき、亜鉛マンガン合金めっき、又はすず亜鉛合金めっきなどであってもよい。
前記物品は、被めっき物であり、当技術分野で通常用いられるものを特に制限されることなく採用することができる。前記物品は、例えば、鉄、ニッケル、銅、亜鉛、アルミニウムなどの各種金属及びこれらの合金であってもよい。また、その形状についても特に制限はなく、例えば鋼板、めっき鋼板などの板状物や、直方体、円柱、円筒、球状物などの形状品など種々のものが挙げられる。当該形状品として具体的には、例えばボルト、ナット、ワッシャーなどの締結部品、燃料パイプなどのパイプ部品、ブレーキキャリパー、コモンレールなどの鋳鉄部品の他、コネクタ、プラグ、ハウジング、口金、シートベルトアンカーなど種々のものが挙げられる。
前記通電工程の条件は、前記物品に前記金属のめっき皮膜を施すことができる限り特に制限されないが、例えば、約15℃~約40℃、好ましくは約25~約35℃の温度で通電してもよく、又は、約0.1~20A/dm2、好ましくは0.2~10A/dm2の陰極電流密度で通電してもよい。また、前記通電部の接液部分の面積(Sc)に対する電流の大きさ(陽極電流密度)は、特に限定されないが、例えば、約25~約150A/dm2、好ましくは約25~約75A/dm2、さらに好ましくは約30~約65A/dm2であってもよい。前記通電部の断面積(S2)に対する電流の大きさは、特に限定されないが、例えば、約2~約75A/mm2、好ましくは約5~約20A/mm2であってもよい。
本明細書に記載の「有機化合物添加剤」とは、電気めっきのためにめっき浴中に添加される有機化合物のことをいう。前記有機化合物添加剤の種類は特に限定されないが、例えば、亜鉛めっきが行われる場合には、前記有機化合物添加剤は、光沢剤、水質調整剤、及び消泡剤などからなる群から選択される少なくとも1種であってもよく、亜鉛合金めっきが行われる場合には、前記有機化合物添加剤は、光沢剤、金属錯化剤、水質調整剤、及び消泡剤などからなる群から選択される少なくとも1種であってもよい。いずれの場合においても、好ましい態様では、前記有機化合物添加剤は光沢剤を含む。
前記光沢剤としては、当技術分野で通常使用されるものを特に制限されることなく採用することができるが、例えば、主にめっき皮膜の被覆力と均一な電着性に寄与するベース成分系光沢剤、主にめっき皮膜の光沢付与に直接的に寄与する光沢成分系光沢剤、及び、主に低電流密度部においてめっき皮膜の光沢付与を補助する補助成分系光沢剤が挙げられる。
前記ベース成分系光沢剤は、特に限定されないが、例えば、(1)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、アセチレングリコールEO付加体などの非イオン系界面活性剤、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩などのアニオン系界面活性剤;(2)ジアリルジメチルアンモニウムクロライドと二酸化硫黄の共重合体などのポリアリルアミン;エチレンジアミンとエピクロルヒドリンとの縮合重合体、ジメチルアミノプロピルアミンとエピクロルヒドリンとの縮合重合体、イミダゾールとエピクロルヒドリンとの縮合重合体、1-メチルイミダゾールや2-メチルイミダゾールなどのイミダゾール誘導体とエピクロルヒドリンとの縮合重合体、アセトグアナミン、ベンゾグアナミンなどのトリアジン誘導体などを含む複素環状アミンとエピクロルヒドリンとの縮合重合体などのポリエポキシポリアミン;3-ジメチルアミノプロピル尿素とエピクロルヒドリンとの縮合重合体、ビス(N,N-ジメチルアミノプロピル)尿素とエピクロルヒドリンとの縮合重合体などのポリアミンポリ尿素樹脂、N,N-ジメチルアミノプロピルアミンとアルキレンジカルボン酸とエピクロルヒドリンとの縮合重合体などの水溶性ナイロン樹脂などのポリアミドポリアミン;ジエチレントリアミン、ジメチルアミノプロピルアミンなどと2,2’-ジクロルジエチルエーテルとの縮合重合体、ジメチルアミノプロピルアミンと1,3-ジクロルプロパンとの縮合重合体、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,3-ジアミノプロパンと1,4-ジクロルブタンとの縮合重合体、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,3-ジアミノプロパンと1,3-ジクロルプロパン-2-オールとの縮合重合体などのポリアルキレンポリアミン;などのポリアミン化合物類;(3)ジメチルアミンなどとジクロロエチルエーテルの縮合重合体;(4)安息香酸又はその塩などの芳香族カルボン酸類;(5)塩化セチルトリメチルアンモニウムなどの含窒素複素環を有さない4級アンモニウム塩類;又は、含窒素複素環4級アンモニウム塩類を含んでもよい。
前記含窒素複素環4級アンモニウム塩類は、例えば、カルボキシ基及び/又はヒドロキシ基を有する含窒素複素環4級アンモニウム塩類である。前記含窒素複素環4級アンモニウム塩類の含窒素複素環は、特に限定されないが、例えば、ピリジン環、ピペリジン環、イミダゾール環、イミダゾリン環、ピロリジン環、ピラゾール環、キノリン環、又はモルホリン環などであってもよく、好ましくはピリジン環である。より好ましくは、前記含窒素複素環4級アンモニウム塩類は、ニコチン酸又はその誘導体の4級アンモニウム塩である。前記含窒素複素環4級アンモニウム塩化合物において、カルボキシ基及び/又はヒドロキシ基は、前記含窒素複素環に直接結合してもいいし、例えばカルボキシメチル基のように他の置換基を介して結合していてもよい。前記含窒素複素環4級アンモニウム塩類は、カルボキシ基及びヒドロキシ基以外に、例えばアルキル基などの追加の置換基を有してもよい。また、前記含窒素複素環4級アンモニウム塩類において、複素環4級アンモニウムカチオンを形成するN置換基は、光沢剤としての効果が妨げられない限り特に制限されず、例えば、置換若しくは非置換のアルキル基、アリール基、又はアルコキシ基などであってもよい。塩を形成する対アニオンは、特に限定されないが、例えば、ハロゲンアニオン、オキシアニオン、ボレートアニオン、スルフォネートアニオン、フォスフェートアニオン、又はイミドアニオンなどを含む化合物であってもよく、好ましくはハロゲンアニオンである。このような4級アンモニウム塩は、分子内に4級アンモニウムカチオンとオキシアニオンを共に含んでいるので、陰イオンとしての挙動も示すため好ましい。
具体的には、前記含窒素複素環4級アンモニウム塩類は、例えば、ピリジニウム、N-ベンジル-3-カルボキシピリジニウムクロリド、N-フェネチル-4-カルボキシピリジニウムクロリド、N-ブチル-3-カルボキシピリジニウムブロミド、N-クロロメチル-3-カルボキシピリジニウムブロミド、N-ヘキシル-6-ヒドロキシ-3-カルボキシピリジニウムクロリド、N-ヘキシル-6-3-ヒドロキシプロピル-3-カルボキシピリジニウムクロリド、N-2-ヒドロキシエチル-6-メトキシ-3-カルボキシピリジニウムクロリド、N-メトキシ-6-メチル-3-カルボキシピリジニウムクロリド、N-プロピル-2-メチル-6-フェニル-3-カルボキシピリジニウムクロリド、N-プロピル-2-メチル-6-フェニル-3-カルボキピリジニウムクロリド、N-ベンジル-3-カルボキメチルピリジニウムクロリド、1-ブチル-3-メチル-4-カルボキシイミダゾロリウムブロミド、1-ブチル-3-メチル-4-カルボキシメチルイミダゾロリウムブロミド、1-ブチル-2-ヒドロキシメチル-3-メチルイミダゾロリウムクロリド、1-ブチル-1-メチル-3-メチルカルボキシピロリジニウムクロライド、又は1-ブチル-1-メチル-4-メチルカルボキシピペリジニウムクロライドなどであってもよい。前記含窒素複素環4級アンモニウム塩類は、単独で用いてもよく、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記めっき浴中での前記ベース成分系光沢剤の濃度は、特に限定されないが、例えば、芳香族カルボン酸類の場合、約1~約500mg/Lであってもよく、好ましくは約5~約100mg/Lであり、その他の場合は、約0.01~約10g/Lであってもよく、好ましくは0.02~5g/Lである。
前記光沢成分系光沢剤は、特に限定されないが、例えば、ベラトルアルデヒド、バニリン、及びアニスアルデヒドなどの芳香族アルデヒド類を含んでもよい。前記めっき浴中での前記光沢成分系光沢剤の濃度は、特に限定されないが、例えば、約1~約500mg/Lであってもよく、好ましくは約5~約100mg/Lである。
前記補助成分系光沢剤は、特に制限されないが、チオウラシル化合物、2-メルカプトベンゾイミダゾールなどのメルカプト化合物、及び、有機酸類などを含んでもよい。前記めっき浴中での前記補助成分系光沢剤の濃度は、特に限定されないが、例えば、約0.01~約50g/Lであってもよい。
前記水質調整剤としては、当技術分野で通常使用されるものを特に制限されることなく採用することができるが、例えば、ケイ酸類などであってもよい。前記めっき浴中での前記水質調整剤の濃度は、特に限定されないが、例えば、約0.01~約50g/Lであってもよい。前記消泡剤としては、当技術分野で通常使用されるものを特に制限されることなく採用することができるが、例えば、界面活性剤などを採用してもよい。前記めっき浴中での前記消泡剤の濃度は、特に限定されないが、例えば、約0.01~約5g/Lであってもよい。
前記金属錯化剤としては、当技術分野で通常使用されるものを特に制限されることなく採用することができるが、例えば、アミン系キレート剤などであってもよい。例えば、前記アミン系キレート剤は、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミンなどのアルキレンアミン化合物;前記アルキレンアミンの、エチレンオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物などのアルキレンオキサイド付加物;エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、エチレンジアミンテトラ-2-プロパノール、N-(2-アミノエチル)エタノールアミン、2-ヒドロキシエチルアミノプロピルアミンなどのアミノアルコール;N-(2-ヒドロキシエチル)-N,N’,N’-トリエチルエチレンジアミン、N,N’-ジ(2-ヒドロキシエチル)-N,N’-ジエチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシエチル)プロピレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミンなどのアルカノールアミン化合物;エチレンイミン、1,2-プロピレンイミンなどから得られるポリ(アルキレンイミン);エチレンジアミン、トリエチレンテトラミンなどから得られるポリ(アルキレンアミン);ポリ(アミノアルコール)などを含んでもよい。好ましくは、前記金属錯化剤は、アルキレンアミン化合物、そのアルキレンオキサイド付加物、及びアルカノールアミン化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む。前記金属錯化剤は、単独で用いてもよく、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。前記めっき浴中での前記金属錯化剤の濃度は、特に限定されないが、例えば、約5~約200g/Lであってもよく、好ましくは約30~約100g/Lである。
本発明の方法は、その目的を損なわない限り、当技術分野で通常使用される任意の工程をさらに含んでもよい。例えば、本発明の方法は、前記通電工程前に前記物品を洗浄する工程、又は、前記通電工程後に前記物品を洗浄する工程などをさらに含んでもよい。
また別の態様では、本発明は、金属で物品を電気めっきするシステムに関しており、当該システムは、
前記金属のイオンと、有機化合物添加剤とを含むめっき浴を含み、
前記めっき浴が、前記物品を陰極として備え、かつ上述した本発明の電気めっき用陽極を備えている。本発明のシステムに従えば、浴電圧の上昇、及び通電部の発熱による浴温の上昇を抑制しながら、前記めっき浴に均一にかつ効率的に通電することができ、前記物品に良好なめっき皮膜を形成することができる。
本発明のシステムの具体的な態様は、本発明の電気めっきする方法に関して詳述したとおりである。本発明のシステムは、その目的を損なわない限り、当技術分野で通常使用される任意の設備をさらに含んでもよい。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
〔作製例1〕
下側が解放されているコの字型の鉄製フレーム(縦620mm×横110mm(内側横寸法80mm)、断面積225mm2)を支持部とし、これに鉄製ワイヤ(直径2.5mm)を水平方向に(梯子状に)30~31mm間隔で19本取り付けた(1本目から19本目までの距離は550mm)。上記鉄製フレームの上部に電源接続部と接する部材(入力部)を取り付けた。そして、前記鉄製フレーム部分だけをスチレン系ブタジエンゴム(絶縁材料)を含むマスキング塗料MR-54(株式会社トーカン製)で被覆して、実施例1の電気めっき用陽極を作製した。この陽極は、前記鉄製ワイヤ部分(通電部;横幅80mm)で通電するものであり、当該陽極を電解槽の壁面に沿わせて全体が電解液に浸かるように設置したときの接液部部分の面積(壁面側を含まない鉄製ワイヤの表面積:Sc)は0.6dm2(=0.025dm×3.14×0.8dm×1/2×19)と計算される。他方、この陽極の接液部分の外形面積(前記鉄製ワイヤが配置されている領域の外形面積:So)は4.4dm2(=5.5dm×0.8dm)と計算されるので、Sc/Soは0.14と計算される。また、前記鉄製フレームの電流方向断面積(S1)に対する前記鉄製ワイヤの電流方向断面積(S2)の比率(S2/S1)は、0.022と計算される。
〔試験例1〕
表1に記載の組成の電解液を含む電解槽に、実施例1の電気めっき用陽極を、電解槽の壁面に沿わせて、かつ通電部である鉄製ワイヤ全体が電解液に浸るように設置した。
Figure 2024076825000001

*1 ディップソール社製アミン系キレート剤(アルキレンアミンのエチレンオキサイド付加物)
実施例1の電気めっき用陽極と同様にして、それと外形面積が同じ鉄板(縦550mm×横80mm;外形面積も接液部分の面積も4.4dm2)又は接液部面積が同じ鉄板(縦550mm×横11mm;外形面積も接液部分の面積も0.6dm2)を、それぞれ比較例1又は2の陽極として電解槽に設置した。そして、各電解槽に酸洗鋼板(SPHC-P鋼板)を陰極として設置して、表2に記載の条件で通電した。通電中は、電解槽をより大きな水槽中に設置し、電解槽の周囲を冷却水及び冷却器で冷却して浴温を維持した。
Figure 2024076825000002
通電前と通電後において、電解液を30mLずつ採取した。そして、IZ-250YBの濃度をイオンクロマトグラフィーによって測定した。また、通電開始直後の浴電圧、及び、通電中の浴温も測定した。結果を表3に示す。
Figure 2024076825000003

*2 通電開始後1時間で浴温が31℃まで上昇したため、25℃になるまで10分間通電を停止し冷却した。以降、この操作を繰り返しながら通電を継続した。
単一の鉄板からなる比較例1の陽極を使用すると、キレート剤であるIZ-250YBが分解されてしまったが、複数の鉄製ワイヤを通電部として用いることで接液部(電解液への通電部)の面積を減らし、かつ当該鉄製ワイヤよりも断面積が大きい絶縁被覆フレームを支持部として備える実施例1の陽極を使用すると、IZ-250YBの分解を抑制することができた。他方、サイズが小さい単一の鉄板からなる比較例2の陽極を使用すると、IZ-250YBの分解を抑制することはできたが、比較例1よりも浴電圧が上昇し、本試験で採用した冷却方法では浴温を維持することができなかった。したがって、外形面積が同じ陽極であれば、支持部を利用して複数の導電性部材を通電部として分離して配置することで、浴電圧及び浴温を上昇させずに、有機化合物添加剤の分解を抑制することができる。
〔作製例2〕
通電部33として利用するエキスパンドメタル(規格SW22、LW50.8、T3.2、W3.5;縦600mm×横100mm;開口率65%)の上部に、電源接続部と接続する銅製の金具(入力部23)を取り付け、かつ、その側面に支持部43としてスチレン系ブタジエンゴムで被覆された銅製の棒(直径5mm、断面積19.6mm2)を取り付けて、図3に示す実施例2の網目型電気めっき用陽極(フレーム有)を作製した。エキスパンドメタル部分(図3のIV部)の拡大図を図4に示す。この枝分かれした経路のそれぞれが電流パスとして機能する。
〔試験例2〕
表4に記載の組成の電解液を含む電解槽に、実施例2の電気めっき用陽極を、電解槽の壁面に沿わせて、かつ通電部であるエキスパンドメタルの下部500mmが電解液に浸るように設置した(浸漬部の陽極の外形面積は5dm2)。
Figure 2024076825000004

*3 ディップソール社製アミン系キレート剤(アルキレンアミンのエチレンオキサイド付加物)
*4 ディップソール社製光沢剤(ポリアミン)
*5 ディップソール社製光沢剤(ニコチン酸の四級アンモニウム塩)
銅製の棒を取り付けなかった以外は実施例2の電気めっき用陽極と同様にして、図5に示す比較例3の電気めっき用陽極(フレーム無)を作製し、実施例2の電気めっき用陽極と同様に電解槽に設置した。そして、各電解槽に幅100mmのSPHC-P酸洗鋼板を陰極として陽極と同様に下部500mmが浸漬するように設置し(極間距離30cm)、表5に記載の条件で電流値を25Aから150Aまで段階的に引き上げて、各電流値で5分ずつ通電した。通電中は、電解槽をより大きな水槽中に設置し、電解槽の周囲を冷却水及び冷却器で冷却して浴温を維持した。
Figure 2024076825000005
各電流値における陽極電流密度を計算し、浴電圧を測定した。結果を表6に示す。
Figure 2024076825000006
フレームのない比較例3の陽極を使用すると、電流値を上げるごとに浴電圧が上昇し、電流値が150Aに達する前に試験装置において電圧の上限に達してしまったため、150Aの条件で通電することができなかった。一方で、フレームのある実施例2の陽極を使用すると、浴電圧の上昇は抑制された。したがって、電気めっき用陽極に通電部と電極接続部をつなぐ支持部を設けると、浴電圧の上昇が抑制される。
〔作製例3〕
下側が解放されているコの字型の鉄製フレーム(縦200mm×横80mm(内側横寸法70mm)、断面積19.6mm2)を支持部とし、これに鉄製ワイヤ(直径2.5mm)を水平方向に(梯子状に)35~36mm間隔で6本取り付けた(1本目から6本目までの距離は179mm)。上記鉄製フレームの上部に電源接続部と接する部材(入力部)を取り付けた。そして、前記鉄製フレーム部分だけをスチレン系ブタジエンゴム(絶縁材料)を含むマスキング塗料MR-54(株式会社トーカン製)で被覆して、実施例3の電気めっき用陽極を作製した。この陽極は、前記鉄製ワイヤ部分(通電部;横幅70mm)で通電するものであり、当該陽極を電解槽の壁面に沿わせて全体が電解液に浸かるように設置したときの接液部部分の面積(壁面側を含まない鉄製ワイヤの表面積:Sc)は0.16dm2(=0.025dm×3.14×0.7dm×1/2×6)と計算される。他方、この陽極の接液部分の外形面積(前記鉄製ワイヤが配置されている領域の外形面積:So)は1.253dm2(=1.79dm×0.7dm)と計算されるので、Sc/Soは0.13と計算される。また、前記鉄製フレームの電流方向断面積(S1)に対する前記鉄製ワイヤの電流方向断面積(S2)の比率(S2/S1)は、0.25と計算される。
〔試験例3〕
表7に記載の組成の電解液(めっき液)を含む電解槽に、実施例3の電気めっき用陽極を、電解槽の壁面に沿わせて、かつ通電部である鉄製ワイヤ全体が電解液に浸るように設置した。
Figure 2024076825000007

*6 ディップソール社製
*7 ディップソール社製
実施例3の電気めっき用陽極と同様にして、それと外形面積が同じ鉄板(縦179mm×横70mm;外形面積も接液部分の面積も1.253dm2)を、比較例4の陽極として電解槽に設置した。そして、各電解槽にSPCC鋼板を陰極として設置して、表8に記載の条件で通電した。この陰極は、めっき液に対する通電量が100Ah/Lとなる時点まで1時間ごとに交換した。また、NiSO4・6H2Oを200g/kAhの速度で補給し、アミン系キレート剤及び含窒素複素環化合物系光沢剤については、50Ah/L通電時及び100Ah/L通電時に、めっき液を高速液体クロマトグラフィー又はキャピラリー電気泳動法によってそれぞれ分析し、通電開始時の濃度を維持するようにこれらの有機化合物添加剤を補給した。亜鉛イオンについては、1時間ごとに滴定分析し、通電開始時の濃度を維持するように金属亜鉛をめっき液中に適宜浸漬させて亜鉛イオンを補給した。なお、通電中は、電解槽をより大きな水槽中に設置し、電解槽の周囲を冷却水及び冷却器で冷却して浴温を維持した。
Figure 2024076825000008
50Ah/L通電時及び100Ah/L通電時に、めっき液の外観を目視によって観察し、めっき液中のシュウ酸の濃度をイオンクロマトグラフィーによって測定し、めっき液中の炭酸ソーダ(Na2CO3)の濃度を滴定によって測定した。
また、通電前のめっき液又は100Ah/L通電後のめっき液を利用して、ハルセル試験(ハルセルロングタイプ)を行った。簡単に説明すると、ハルセル試験用のロングセル(陽極鉄板:65×65×0.5mm、陰極鉄板:65×200×0.5mm)に、通電前又は通電後のめっき液を500mL入れて、2A-20分、25℃の条件でめっき試験を行った。めっき後の陰極を取り出して、その外観を目視によって観察した。そして、陰極板の左端(高電流密度部側端部)から1cm毎のめっき膜厚を蛍光X線分析装置によって測定し、Ni共析率を蛍光X線分析装置によって測定した。
シュウ酸及び炭酸ソーダの濃度を表9に示し、ハルセル試験実施後の陰極の外観写真を図6に示し、めっき膜厚及びニッケル共析率を表10及び11にそれぞれ示す。
Figure 2024076825000009
Figure 2024076825000010
Figure 2024076825000011
単一の鉄板からなる比較例4の陽極を使用すると、キレート剤の分解生成物であるシュウ酸、及び、キレート剤の分解によって発生する二酸化炭素とめっき液中の苛性ソーダが反応して生じる炭酸ソーダの量が多く、めっき液の色も、通電するに従って青紫色から茶褐色に変化した。一方、実施例3の陽極を使用すると、比較例4の場合と比較してシュウ酸及び炭酸ソーダの生成量が少なくなり、めっき液の色も、初期の青紫色が通電後でも維持されていた。これらの結果から、複数の鉄製ワイヤを通電部として用いることで接液部(めっき液への通電部)の面積を減らし、かつ当該鉄製ワイヤよりも断面積が大きい絶縁被覆フレームを支持部として備える実施例3の陽極を使用すると、有機化合物添加剤の分解が抑制されることが確認できた。また、浴電圧の上昇が起こらないことも確認された。
試験例3では、通電開始時の濃度を維持するように有機化合物添加剤を補給していたが、比較例4の陽極で通電した後のめっき液を使用すると、実施例3の陽極で通電した後のめっき液を使用したときよりも、陰極の光沢範囲(図6の陰極の黒い部分)が狭くなり、めっき膜厚及びニッケル共析率が低下した(表10及び11)。これらの結果から、シュウ酸及び炭酸ソーダなどの分解老化物が生成されると、たとえ有機化合物添加剤を補給していても、めっき性能は低下してしまうが、実施例3の陽極を使用すれば、このようなめっき性能の低下を抑制でき、めっき液の使用効率を高めることができると考えられる。
以上より、電気めっき用陽極の前記入力部と前記通電部との間に、前記通電部よりも断面積が大きく、めっき液との接液部分が絶縁材料によって被覆されている一対の支持部を設けることによって、浴電圧の上昇を抑制できることが分かった。このような構成の電気めっき用陽極は、付帯設備や陽極液管理を必要とするものではなく、かつ、高価な金属や特殊な金属を必要とするものでもないため、電気めっきの低コスト化が可能となる。
1 梯子型電気めっき用陽極
21 入力部
31 通電部
311 電流パス
41 支持部
1A 格子型電気めっき用陽極
22 入力部
32 通電部
321 横の電流パス
322 縦の電流パス
42 支持部
1B 網目型電気めっき用陽極
23 入力部
33 通電部
331 電流パス
43 支持部
100 対照の電気めっき用陽極
200 入力部
300 対照の通電部

Claims (9)

  1. 電気めっき用陽極であって、
    電源から電力が入力される入力部と、
    第1方向に延び、前記第1方向と交差する第2方向に互いに間隔を空けて配置され、前記入力部から電力の供給を受け、めっき液との接液部分が絶縁材料によって被覆されている一対の支持部と、
    前記第2方向に延び、一端が前記一対の支持部の一方に接続され、他端が前記一対の支持部の他方に接続され、前記一対の支持部から電力の供給を受ける通電部と
    を備え、
    前記通電部が、前記第1方向に互いに間隔を空けて配置された複数の電流パスを有しており、
    前記通電部の断面積が、前記支持部の断面積よりも小さい、電気めっき用陽極。
  2. 前記通電部が配置されている領域の外形面積(So)に対する前記通電部の接液部分の面積(Sc)の比率(Sc/So)が、0.05~0.5である、請求項1に記載の電気めっき用陽極。
  3. 前記支持部の断面積(S1)に対する前記通電部の断面積(S2)の比率(S2/S1)が、0.5以下である、請求項1に記載の電気めっき用陽極。
  4. 前記通電部が、ワイヤ、エキスパンドメタル、及び/又は、パンチングメタルを含む、請求項1に記載の電気めっき用陽極。
  5. 前記通電部が、
    - 3~75mm2の断面積(S2)を有し、及び/又は、
    - 鉄、ニッケル、ステンレス、及び、カーボンからなる群から選択される少なくとも1種を含み、及び/又は、
    - 前記陽極中に均一に分散して配置されており、及び/又は、
    - 互いに10cm以下の間隔で配置されている、
    請求項1に記載の電気めっき用陽極。
  6. 前記支持部が、前記陽極の外周の少なくとも一部を構成しており、及び/又は、
    前記支持部の断面積(S1)が、15~1200mm2である、請求項1に記載の陽極。
  7. 金属で物品を電気めっきする方法であって、
    前記金属のイオンと、有機化合物添加剤とを含むめっき浴において通電する工程を含み、
    前記めっき浴が、前記物品を陰極として備え、かつ請求項1~6のいずれか1項に記載の電気めっき用陽極を備えている、方法。
  8. 前記通電部の接液部分の面積(Sc)に対する電流の大きさ(陽極電流密度)が、25~150A/dm2であり、及び/又は、
    前記通電部の断面積(S2)に対する電流の大きさが、2~75A/mm2である、請求項7に記載の方法。
  9. 金属で物品を電気めっきするシステムであって、
    前記金属のイオンと、有機化合物添加剤とを含むめっき浴を含み、
    前記めっき浴が、前記物品を陰極として備え、かつ請求項1~6のいずれか1項に記載の電気めっき用陽極を備えている、システム。
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