JP2024073921A - 駆動制御装置、駆動制御方法 - Google Patents

駆動制御装置、駆動制御方法 Download PDF

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Abstract

【課題】トルクオフセットを防止しつつ、タイヤスリップ時の制振効果を確保できる。【解決手段】駆動制御装置は、駆動部を有する車両に搭載可能な駆動制御装置であって、トルク指令値を取得または生成するトルク指令取得部と、駆動部における共振を制御対象の回転速度に基づき低減するように、補正トルクを用いてトルク指令値を補正するトルク補正部と、タイヤの空転有無に関する情報を取得する空転情報取得部とを備え、トルク補正部は、空転情報取得部によりタイヤ空転発生の情報を取得した後、トルク指令値の大きさが減少すると、補正トルクが大きくなるように、回転速度から補正トルクを決定するパラメータを変更する。【選択図】図4

Description

本発明は、駆動制御装置、および駆動制御方法に関する。
従来、車載の駆動装置からドライブシャフトを介して車輪および該車輪に設けられたタイヤに動力が伝達される車両において、ドライブシャフトのねじれによる共振の影響を考慮しつつ、車輪および該車輪に設けられたタイヤの空転状態を判定して空転抑制する駆動制御技術が知られている。特許文献1には、車輪を駆動する動力源として少なくともモータ/ジェネレータを具え、車輪のスリップ率が所定スリップ率となるよう車輪動力を制御する車輪スリップ制御手段と、前記モータ/ジェネレータから車輪に至る車輪駆動系の回転振動を該モータ/ジェネレータのトルク制御により抑制する制振制御手段とを有した車両において、前記車輪スリップ制御手段の作動中は、前記制振制御手段による制振作用を抑制するよう構成したことを特徴とする車両用制振制御装置が開示されている。
特開2009-273328号公報
特許文献1に記載されている発明では、タイヤスリップ時の処理に改善の余地がある。
本発明の第1の態様による駆動制御装置は、駆動部を有する車両に搭載可能な駆動制御装置であって、トルク指令値を取得または生成するトルク指令取得部と、前記駆動部における共振を制御対象の回転速度に基づき低減するように、補正トルクを用いて前記トルク指令値を補正するトルク補正部と、タイヤの空転有無に関する情報を取得する空転情報取得部とを備え、前記トルク補正部は、前記空転情報取得部によりタイヤ空転発生の情報を取得した後、前記トルク指令値の大きさが減少すると、前記補正トルクが大きくなるように、前記回転速度から前記補正トルクを決定するパラメータを変更する。
本発明の第2の態様による駆動制御方法は、駆動部を有する車両に搭載可能な駆動制御装置が実行する駆動制御方法であって、トルク指令値を取得または生成するトルク指令取得ステップと、前記駆動部における共振を制御対象の回転速度に基づき低減するように、補正トルクを用いて前記トルク指令値を補正するトルク補正ステップと、タイヤの空転有無に関する情報を取得する空転情報取得ステップとを含み、前記トルク補正ステップでは、前記空転情報取得ステップによりタイヤ空転発生の情報が取得された後に、前記トルク指令値の大きさが減少すると、前記補正トルクが大きくなるように、前記回転速度から前記補正トルクを決定するパラメータを変更する。
本発明によれば、トルクオフセットを防止しつつ、タイヤスリップ時の制振効果を確保できる。上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施の形態の説明により明らかにされる。
駆動制御装置を搭載する車両の全体構成図 車両の駆動部を説明する図 粘着時と空転時のモータの挙動を示す図 第1の実施の形態における駆動制御装置のブロック図 シミュレータ追従制御のブロック線図 規範回転速度の補正方法の一例を示す図 規範回転速度の挙動を説明する図 ハイパスフィルタFB方式の制振制御方法を示すブロック線図 FBゲインを変更する手法の概要を示す図 閾値の決定方法の一例を示す図 FBゲインを元に戻す方法の一例を示す図 FBゲインを元に戻す異なる方法を示す図 空転発生時のトルク変化をシミュレーションした結果を示す図 空転発生時のトルク変化をシミュレーションした結果を示す図 空転発生時のトルク変化をシミュレーションした結果を示す図 第2の実施の形態における駆動制御装置のブロック図 車両情報としてブレーキ動作量を取得する場合のトルク補正部の挙動を示す図 車両情報としてタイヤ回転速度を取得する場合のトルク補正部における制振制御の構成 車両情報として上位制御器からの空転情報を取得する場合のトルク補正部の挙動を示す図
―第1の実施の形態―
以下、図1~図15を参照して、駆動制御装置の第1の実施の形態を説明する。
図1は、駆動制御装置1を搭載する車両21の全体構成図である。車両21は、タイヤ20、車輪速センサ31、およびホイルシリンダ36を備える。以下では、車輪および車輪に設けられたタイヤ20をまとめて「車輪」と呼ぶことがある。タイヤ20、車輪速センサ31、およびホイルシリンダ36は、車両21の前方(Front)と後方(Rear)、および左(Left)と右(Right)にそれぞれ備えられ、FとRおよびLとRの組み合わせで位置が特定される。具体的には、FL輪は左前輪、FR輪は右前輪、RL輪は左後輪、RR輪は右後輪をそれぞれ意味し、それぞれのFL輪、FR輪、RL輪、RR輪に、路面と接地(粘着)するタイヤ20FL、20FR、20RL、20RRが装着されている。車輪速センサ31およびホイルシリンダ36も同様にFLやFRなどが付されている。
車両21は、車両21の進行方向の加減速度を制御するための駆動トルク、すなわち駆動力を発生させる駆動装置としてのモータ22を搭載する。駆動制御装置1は、車両21に搭載された不図示のバッテリから電力を受けて、モータ22の電流を制御して後述するトルク指令値に従った駆動トルクを発生させる。モータ22で発生した駆動トルクは、デファレンシャルギヤ23を介して左右のドライブシャフト24L、24Rに伝達され、各ドライブシャフト24L、24Rに直結した前輪左右のタイヤ20FL、20FRに伝達されることで、駆動制御装置1は車両21を加減速させる。なお、ここではモータ22を搭載した電動車両として説明したが、モータ22の代わりにエンジンを駆動装置(駆動源)としてもよい。また、ここでは車両21は前輪駆動として説明したが、後輪駆動や四輪駆動としてもよい。
車両21は、進行方向を制御するためのステアリング制御機構30、ブレーキ制御機構33、駆動制御装置1への指令値を演算する走行制御装置25(上位制御器と呼ぶ場合がある)を備える。また、車両21は、走行制御装置25からの指令値に基づき上記ステアリング制御機構30を制御する操舵制御装置28と、当該指令値に基づき上記ブレーキ制御機構33を制御し各輪のブレーキ力配分を調整する制動制御装置35と、を備える。
駆動制御装置1は、図1に詳細に示していないが、モータ22の電流をスイッチングにより制御するパワー半導体(たとえばIGBT)、パワー半導体のスイッチングを制御するためのCPU、ROM、RAMおよび入出力装置を有する。このROMには、後述する駆動制御を実現するプログラムが格納されている。詳細は後述するが、駆動制御装置1は、走行制御装置25から受信したトルク指令値2と、モータ22に取り付けられた回転角センサ51により取得したモータ回転角60およびモータ回転速度61とを用いて次の演算を行う。すなわち駆動制御装置1は、発生させるべきモータトルクを演算し、このモータトルクが得られるようパワー半導体をスイッチングしてモータ22に流れる電流を制御する。
次に、車両21のブレーキの動作を説明する。ドライバが車両21を運転している状態では、ドライバがブレーキペダル32を踏む踏力を、必要であれば不図示のブレーキブースタで倍力し、不図示のマスタシリンダによって、その力に応じた油圧を発生させる。発生した油圧は、ブレーキ制御機構33を介して、各輪に設けられたホイルシリンダ36FL、36FR、36RL、36RRに供給される。ホイルシリンダ36FL~36RRは、不図示のシリンダ、ピストン、パッド、ディスクロータ等から構成されており、マスタシリンダから供給された作動液によってピストンが推進され、ピストンに連結されたパッドがディスクロータに押圧される。
なおディスクロータは、車輪とともに回転しているため、ディスクロータに作用したブレーキトルクは、車輪と路面との間に作用するブレーキ力となる。以上により、ドライバのブレーキペダル操作に応じて、各輪に制動力を発生させることができる。なお、車両21がブレーキブースタやマスタシリンダを搭載することは必須の構成ではない。たとえば、ブレーキペダル32とブレーキ制御機構33を直結させ、ドライバがブレーキペダル32を踏めば直接ブレーキ制御機構33が動作する機構であってもよい。
制動制御装置35は、図1に詳細に示していないが、例えばCPU、ROM、RAM、および入出力装置を有する。制動制御装置35には、例えば、前後加速度、横加速度、ヨーレートを検出可能なコンバインセンサ34、各輪に設置された車輪速センサ31FL、31FR、31RL、31RR、後述する操舵制御装置28を介したハンドル角検出装置41からのセンサ信号、上述の走行制御装置25からのブレーキ力指令値などが入力される。制動制御装置35の出力は、不図示のポンプ、制御バルブを有するブレーキ制御機構33に接続されており、ドライバのブレーキペダル操作とは独立に、各輪に任意の制動力を発生させることができる。
走行制御装置25が制動制御装置35にブレーキ力指令値を通信することで、車両21に任意のブレーキ力を発生させることができ、ドライバの操作が生じない自動運転においては自動的に制動を行う役割を担っている。ただし、制動制御装置35は車両21に必須の構成ではなく、ブレーキバイワイヤ等のほかのアクチュエータを用いてもよい。
次に、車両21のステアリングの動作を説明する。ドライバがハンドル26を介して入力した操舵トルクとハンドル角はそれぞれ、操舵トルク検出装置27とハンドル角検出装置41が検出する。操舵制御装置28は、検出された操舵トルクとハンドル角に基づいて、操舵用モータ29を制御してアシストトルクを発生させる。なお、操舵制御装置28も、図1に詳細に示していないが、制動制御装置35と同様に、例えばCPU、ROM、RAM、および入出力装置を有する。
上記ドライバの操舵トルクと操舵用モータ29によるアシストトルクの合力により、ステアリング制御機構30が可動し、前輪(FL輪、FR輪)が操作される。一方で、前輪の操作に応じて路面からの反力がステアリング制御機構30に伝わり、路面反力としてドライバに伝わる構成となっている。なお、操舵トルク検出装置27は車両21に必須の構成ではなく、ドライバがハンドル26を操作する際には操舵制御装置28が動作せず、アシストトルクが発生しない(いわゆるオモステの)機構であってもよい。
操舵制御装置28は、ドライバのステアリング操作とは独立に、操舵用モータ29によりトルクを発生させ、ステアリング制御機構30を制御することができる。従って、走行制御装置25は、操舵制御装置28に操舵力指令値を通信することで、前輪を任意の切れ角に制御することができ、ドライバの操作が生じない自動運転においては自動的に操舵を行う役割を担っている。ただし、操舵制御装置28は車両21に必須の構成ではなく、車両21はステアバイワイヤ等のほかのアクチュエータを備えてもよい。
次に、車両21のアクセルの動作を説明する。ドライバのアクセルペダル37の踏み込み量はストロークセンサ38で検出され、走行制御装置25においてトルク指令値2に変換され、駆動制御装置1に入力される。走行制御装置25および駆動制御装置1も、図1に詳細に示していないが、制動制御装置35と同様に、例えばCPU、ROM、RAM、および入出力装置を有する。走行制御装置25は、例えば上記アクセルペダル37の踏み込み量に応じてモータ22のモータトルクを制御する。以上により、ドライバのアクセルペダル操作に応じて車両21を加速させることができる。
また、走行制御装置25は、ドライバのアクセル操作とは独立にモータ22のモータトルクを指令することができる。従って、走行制御装置25は、駆動制御装置1にトルク指令値2を通信することで、モータ22のモータトルクを制御して車両21に任意の加速度を発生させることができ、ドライバの操作が生じない自動運転においては自動的に加速を行う役割を担っている。
また、滑りやすい路面においては、ドライバのアクセルやブレーキ指令によらず、タイヤの空転(以下、「スリップ」とも呼ぶ)を防止するようにトルク指令値2を変更し、スリップ制御(トラクションコントロール)を行う役割を持つ。なお、車両21は主要駆動装置が電気モータである電動車両である必要は必ずしもなく、主要駆動装置がエンジンであってもよい。この場合には走行制御装置25は、上記アクセルペダル37の踏み込み量に応じてスロットル開度を算出し、駆動制御装置1は、スロットル開度を実現するようにエンジン運転状態を制御する。
前述したように、本実施の形態では、走行制御装置25は、車両21に配備された各種センサ等から得られる信号に基づき指令値(ブレーキ力指令値、操舵力指令値、トルク指令値2(加速指令値))を演算し、演算した指令値(ブレーキ力指令値、操舵力指令値、トルク指令値2)を各制御装置(制動制御装置35、操舵制御装置28、駆動制御装置1)に送信することで、車両21のブレーキ力、前輪切れ角、加速度などを制御し、車両21の走行状態を任意に制御することができる。
なお、以上の説明において車両21は、ハンドル26、アクセルペダル37、ブレーキペダル32を備えたが、これら入力装置を備えなくてもよい。この場合は、ドライバの操作が生じない完全自動運転車、遠隔で走行指令を受けて走行する遠隔運転車などとなり、走行制御装置25がその頭脳の役割を果たす。なお、走行制御装置25が存在せず、駆動制御装置1がこの指令値を演算(生成)する構成であってもよい。
以下では説明を簡素化するために、モータ22に連結されて回転駆動される駆動輪に連結されるドライブシャフトをドライブシャフト24、駆動輪に装着されるタイヤをタイヤ20、駆動輪に設置される車輪速を測定するセンサを車輪速センサ31と記載する。
図2および図3を参照して車両21の駆動部を説明する。駆動部は、モータ22、デファレンシャルギヤ23、およびドライブシャフト24を含む。図2(a)は駆動部の部品構成を示し、図2(b)は駆動部の物理モデルを示す。モータ22において発生した駆動トルクは、減速機52を経由してデファレンシャルギヤ23に伝達され、デファレンシャルギヤ23により左右輪に配分される。左右輪に配分された駆動トルクは、ドライブシャフト24を介してタイヤ20に伝達される。
駆動部は、図2(b)に示すように、慣性を有するモータ22およびタイヤ20の間をドライブシャフト24というバネが連結する二慣性系の物理モデルで表される。また、本図では示していないが、タイヤ20は路面と接触し、タイヤ20と路面との間では非線形の摩擦力が生じる。さらに、モータ22はモータマウント53を介して車体に設置されている。モータマウント53は衝撃吸収のための弾性材を有することが一般的であるため、図2(b)に示す通りモータ22と車体との間にもバネ要素が想定される。
図3は粘着時と空転時のモータ22の挙動を示す図である。モータ22のトルクが急激に変動すると、図3に示すようにモータ回転速度61の振動が発生する。図3(a)は粘着時のモータ22の挙動を示す図であり、図3(b)は空転時のモータ22の挙動を示す図である。図3ではいずれも、横軸に時刻、縦軸にモータ回転速度61を示している。図3(a)、(b)では、0.5秒時点からモータ22にステップ状のトルクを発生させている。その結果、0.5秒時点からモータ回転速度61が振動している。
モータ回転速度61の振動は、ドライブシャフト24がバネとして働くことから発生する共振現象である。ただし、モータマウント53のバネ要素により生じている共振現象の場合もある。その際のモータ回転速度61の振動周波数は、タイヤ20が路面に対して粘着しているか、空転しているかによって変動することが知られている。この周波数は、車両21に構成されているタイヤ20やドライブシャフト24の形状によって、すなわち車種によって異なる。図3に示す例では、タイヤ粘着時には図3(a)に示すように4Hz程度の振動が発生し、タイヤ空転時には図3(b)に示すように10Hz程度の振動が発生している。
図4は、駆動制御装置1のブロック図である。駆動制御装置1は、トルク指令取得部3、回転速度算出部4、空転情報取得部5、およびトルク補正部6を備える。
トルク指令取得部3は、上位制御器である走行制御装置25からトルク指令値2を受信する。トルク指令値2は、車両21に所定の加速度を発生させるために、モータ22にモータトルクを発生させるための指令値である。
トルク指令値2は、例えばドライバがアクセルペダル37を踏んでいるときは車両21を加速させるための正の値として受信される。またトルク指令値2は、ドライバがアクセルペダル37を踏んでいないときや、ブレーキペダル32を踏んでいるときは、回生ブレーキまたはエンジンブレーキに相当する負の値として受信される。トルク指令取得部3は、たとえばCAN(Controller Area Network)などのデジタル通信を用いて走行制御装置25からトルク指令値2を受信する。なお前述の通り、走行制御装置25が存在せず、駆動制御装置1が指令値を演算(生成)する構成であってもよい。
回転速度算出部4は、モータ22に取り付けられた回転角センサ51により取得したモータ回転角60を時間微分(単位時間あたりの変化量を算出)し、モータ回転速度61を算出する。回転角センサ51には、一般にエンコーダ、レゾルバなど、モータ22の絶対角度が取得可能なセンサが用いられる。空転情報取得部5は、回転速度算出部4で算出したモータ回転速度61から、タイヤ20が路面に対して空転(スリップ)状態であるか否かを推定する。ただし空転情報取得部5は、後述するように、上位コントローラ(例えば走行制御装置25)から空転検知情報やトラクションコントロール動作情報を取得してもよい。
空転情報取得部5はたとえば、モータ回転速度61から特定の周波数成分を抽出することでタイヤ20の空転有無を推定することができる。例えば図3に示すように、タイヤ粘着時に4Hz程度、タイヤ空転時に10Hz程度の共振周波数となる制御対象では、10Hzの周波数成分、または4Hzと10Hzの周波数成分の両方を抽出する。空転情報取得部5は、抽出されたモータ回転速度61の周波数成分に基づきタイヤ20が粘着状態にあるか空転状態にあるかを判定し、その空転判定結果を空転情報8として出力する。この判定はたとえば、モータ回転速度61における所定の周波数成分の存在の有無や、モータ回転速度61における第1周波数の成分と第2周波数の成分との大小比較に基づき行うことができる。
空転情報取得部5は、バンドパスフィルタやフーリエ変換などを用いて、タイヤ粘着時、タイヤ空転時の共振周波数成分の差異を算出する場合には、タイヤ空転時の共振周波数成分がタイヤ粘着時の共振周波数成分より大きい場合に空転と判定する。またはタイヤ空転時の共振周波数を周波数fとするフーリエ変換で振幅を算出する場合、空転情報取得部5は、その振幅が所定値を超えた場合にタイヤ20が空転状態と判定する。空転情報取得部5による空転情報8は、例えば粘着を0、空転を1とする二進数で表してもよいし、タイヤの推定スリップ率に応じて0(完全粘着)~1(空転)の連続値として表してもよい。
トルク補正部6は、トルク指令取得部3から得たトルク指令値2、モータ回転角60、回転速度算出部4から得たモータ回転速度61、および空転情報取得部5から得た空転情報8に基づき、駆動部における共振を低減するようにトルクを補正し、トルク最終値7を算出する。この算出の詳細は後述する。そして、モータ22がトルク最終値7を発生させるようにパワー半導体をスイッチングしてモータ22に流れる電流を制御する。このとき、モータ22が永久磁石同期モータの場合、モータ回転角60に基づくベクトル制御を行うことが一般的である。モータ22のモータ回転角60は、モータ22に取り付けられた回転角センサ51により取得され、駆動制御装置1の回転速度算出部4に入力される。
図5~図7を参照して、トルク補正部6における共振を低減するトルク補正方法を説明する。
図5は、車両21の駆動制御装置に広く使われているシミュレータ追従制御(SFC: Simulator Following Control)のブロック線図である。本制御手法では、まずトルク指令値2に対してバンド除去フィルタ(ノッチフィルタ)73を適用してトルク指令値2から共振周波数相当の周波数成分を除去する。次に、1サンプル前の後述する補正トルク76を加算し、トルク最終値7を生成する。トルク最終値7は最終的に制御対象であるモータ22が発生するトルクとなるが、同時にトルク補正部6内でトルク最終値7がシミュレータ70に入力される。シミュレータ70は入力されたトルク最終値7に基づき、制御対象の物理モデルを用いて規範回転速度71を生成する。
この規範回転速度71の役割は、振動のない理想的な回転速度を表しており、例えばトルク最終値7を積分してモータ軸まわりに換算した車体重量を除算することで振動成分のない規範回転速度71を得る。そして、規範回転速度71を指令値としてモータ回転速度61との差を算出し、FB(フィードバック)ゲイン72を介して制振制御の補正トルク76とする。FBゲイン72は比例定数の乗算を表すが、位相進みまたは位相遅れ特性を有するフィルタと組み合わせてもよい。一般に、位相進み補償器を入れることでフィードバック制御の安定性が向上する傾向にある。
この規範回転速度71は、制御対象の物理モデルのモデル化誤差や外乱の影響により、モータ回転速度61との定常偏差を生じることがある。この定常偏差は後述の通り、トルク指令値2に対するトルク最終値7のオフセットを生じることになり、不都合である。したがって、シミュレータ70はトルク最終値7だけでなく、モータ回転速度61や空転情報8を取得して規範回転速度71を補正する。
図6は、規範回転速度71の補正方法の一例を示す図である。ここでは同一次元オブザーバを用いた補正方法を説明する。図6の同一次元オブザーバは、制御対象の回転運動方程式が数式1の状態方程式および数式2の出力方程式の形で表せると仮定している。
dx/dt = A x + B u ・・・(数式1)
y = C x ・・・(数式2)
ここでxは状態ベクトル、dx/dtは状態ベクトルの時間微分を表す。また、A、B、Cはいずれも制御対象の物理モデルにより決まる行列、uは制御対象に対する入力、yは制御対象において観測可能な出力である。また、図6においてKはゲイン行列であり、オブザーバによる出力の推定値と、観測された実際の出力との差にK行列を乗算してフィードバックすることで、出力の推定値と実際の出力との誤差を低減する働きをする。図6において、入力uはトルク最終値7、出力yは実際の制御対象においてはモータ回転速度61、オブザーバの出力においてはモータ回転速度61の推定値を表す。例えば駆動部のねじり振動を含まない理想的な回転運動方程式は、数式3の状態方程式および数式4の出力方程式の通り表せる。
Figure 2024073921000002
Figure 2024073921000003
ここで、Jはモータ22のイナーシャ、Jは負荷側のイナーシャを表す。なお、本モデリングにおいてはタイヤの粘着か空転かによらず、Jはタイヤと車体の合計とする。また、ωはモータ回転速度61、Nはモータ回転軸と車軸回転軸の間の減速比、Tは外乱トルク、Tはトルク最終値7を表す。なお減速比は、モータ自体の減速ギヤと差動ギヤの減速比を掛け合わせたものである。この運動方程式は状態ベクトルが2次元のため、以降「2次元オブザーバ」と呼ぶ。
一方、より高次元なモデル化として、モータ22とタイヤ20の慣性に分けて両者間のねじりを含んだ回転運動方程式を立式すると、数式5の状態方程式および数式6の出力方程式の通り表せる。
Figure 2024073921000004
Figure 2024073921000005
ここで、Jはモータ22のイナーシャ、Jは負荷側のイナーシャを表す。ただし負荷側のイナーシャは、タイヤ粘着時はタイヤと車体の合計であり、タイヤ空転時はタイヤのみの値である。また、ωはモータ回転速度61、θはねじり角度(モータ回転角60とタイヤ回転角の差)、ωはタイヤ回転速度63、Kはドライブシャフト24のねじり剛性、Ksdはドライブシャフト24のねじり粘性、Nはモータ回転軸と車軸回転軸の間の減速比、Tは外乱トルク、Tはトルク最終値7を表す。この運動方程式は状態ベクトルが4次元のため、以降「4次元オブザーバ」と呼ぶ。
数式5に示す通り、4次元オブザーバはA行列に負荷側のイナーシャJが含まれており、タイヤ粘着時と空転時で値が異なるモデリングを行っているため、両者間で変数値の変更が必要である。また、K行列は一般に行列A-KCの固有値(オブザーバの極)を所定値とするように設定し、A行列が変わればK行列も変更する必要がある。したがって、図6中に示す通り、空転情報8に基づきA行列およびK行列の値を変更する。このオブザーバの極は、高い数値に設定するほどオブザーバの推定値が実際の値に近くなる特徴を持つ。さらに図6に示すように、数式6に示すC行列とは別に、数式7に示すC行列を用いることで、タイヤ回転速度63の推定値である推定タイヤ回転速度63eを得る。
Figure 2024073921000006
図7を参照して、2次元オブザーバと4次元オブザーバのそれぞれにおける規範回転速度71の挙動を説明する。図7は、シミュレーション結果を示す図である。図7(a)は、2次元オブザーバによる推定値である推定モータ回転速度61eを規範回転速度71とした場合の時間波形を示す図である。図7(b)は4次元オブザーバによる推定値である推定モータ回転速度61eおよび推定タイヤ回転速度63eを示す図である。図7(a)および図7(b)のいずれも、0.2秒時点でタイヤスリップが発生し、その後0.1秒遅れた0.3秒で上位制御器(走行制御装置25)が空転を検知してトルク指令値2を低減させている。このとき、シミュレーションで想定した車両モデルでは12Hzのねじり共振が発生している。
図7(a)に示す2次元オブザーバを用いた場合のシミュレーション結果を説明する。シミュレータ追従制御の規範回転速度71をモータ回転速度61とする場合は、振動成分の影響を避けるためにオブザーバの極を小さくする。図7(a)ではオブザーバの極を2Hzに設定しており、ねじれの共振周波数に比べて十分小さい。したがって、規範回転速度71はねじれの振動がほぼ見えない。ただし実際のモータ回転速度61に対して0.1秒程度の遅延が生じており、この遅延は制振性能に影響する場合があるため、制振効果を最大化するようにオブザーバの極を設計する。2次元オブザーバを用いることには、制御設計の見通しがよく、実装が容易という利点がある。
図7(b)に示す4次元オブザーバを用いた場合のシミュレーション結果を説明する。詳細は後述するが、シミュレータ追従制御の規範回転速度71をタイヤ回転速度63とする場合は、オブザーバの極を十分に高くして高精度かつ低誤差でタイヤ回転速度63を推定することで制振効果が高くなる。ここではオブザーバの極を20Hzと、ねじれの共振周波数に比べて大きい値に設定しており、図7(b)上段ではモータ回転速度61と推定モータ回転速度61eとに乖離は全く見られない。図7(b)下段に示すタイヤ回転速度63も0.3秒以降はタイヤ回転速度63と推定タイヤ回転速度63eとにあまり乖離は見られない。
図7(b)下段の0.2~0.3秒にかけて乖離が生じているのは、この0.1秒間のみ、実際にはタイヤが空転しているがタイヤの空転情報8が粘着状態のままとなっていることからモデル化誤差によるものである。ただし、この時間帯は後述するように制振制御のFBゲイン72を小さくしているため、制振制御には影響が小さい。4次元オブザーバを用いると、オブザーバの極を上げられるため振動を含めたタイヤ回転速度63が得られる。そのためシミュレータ追従制御の規範回転速度71にタイヤ回転速度63を採用する「速度差フィードバック制御」により、高い制振効果が得られるという利点がある。ただし、ここでいう「タイヤ回転速度63」は、モータ22とタイヤ20のギヤ比に起因する回転速度差を乗算してモータ軸に換算した値である。
以上、制振制御としてシミュレータ追従制御を例にとって説明し、オブザーバによる規範回転速度71の修正方法を説明した。ただし、トルク補正部6内部で適用可能な制振制御はシミュレータ追従制御に限定されない。たとえば図8はハイパスフィルタFB方式の制振制御方法を示したものである。モータ回転速度61に2段のハイパスフィルタを適用し、振動成分を抽出してFBゲイン72を乗じ、トルク指令値2に減算してトルク最終値7とする。ハイパスフィルタFB方式は、前述したオブザーバの実装が不要という点で簡便で実装しやすい手法である。
図9~図12を参照して、トルク補正部6がFBゲイン72を変更する方法を説明する。従来から、制振制御がトランクションコントロールなどの車輪スリップ制御の応答性を悪化させる場合があることが知られている。そこで本実施の形態では、トランクションコントロールが空転検知によるトルク変化、すなわちトルクダウンを起こしている最中はFBゲイン72を増加させず、トルクが十分に変化した後にFBゲイン72を増加させて制振効果を高める。
図9は、FBゲイン72を変更する手法の概要を示す図である。図9上段は上位からのトルク指令値2の時間変化を表し、図9下段はFBゲイン72の時間変化を示す。図9上段と図9下段は、縦方向の時刻が一致している。1つ目の一点鎖線で示すタイミングを時刻t11と呼び、2つ目の一点鎖線で示すタイミングを時刻t12と呼ぶ。
図9では、左端の時刻t0からしばらく時間が経過した時刻t11の時点において上位制御器が空転を検知し、その後に上位制御器がトルク指令値2を低減させた。トルク補正部6は、時刻t11の時点ではFBゲイン72を変更させず、その後にトルク指令値2が十分変化した時刻t12からFBゲイン72が増加させている。このようにトルク補正部6は、空転を検知してから所定時間が経過した、または所定の条件を満たした後にFBゲイン72を増加させる。
FBゲイン72を増加させる条件として、たとえば次の3つの条件が考えられる。以下に説明する3つの条件は、いずれか1つのみを採用してもよいし、複数を採用してもよい。複数を採用する場合には、AND条件としてもよいし、OR条件としてもよいし、AND条件とOR条件を組み合わせてもよい。具体的には、第1条件または第2条件が成立し、かつ第3条件が成立した場合にFBゲイン72を増加させてもよい。
第1の条件は、符号81で示すように空転検知後からのトルク指令値2の変化量が閾値を超えることである。たとえばその閾値を100Nmに設定すると、時刻t11におけるトルク指令値2が150Nmであり空転検知してトルクダウンを起こすと、50Nm(150-100)までトルク指令地が減少した時点が時刻t12となる。
第2の条件は、符号82で示すように空転検知後のトルク指令値2が所定の閾値に達することである。たとえばその閾値を30Nmに設定すると、空転を検知した時刻t11の後にトルク指令値2が減少したタイミングが時刻t12となる。この場合は、時刻t11におけるトルク指令値2の大きさは考慮しない。なお、トルク指令値2そのものではなく、時刻t11におけるトルク指令値2を基準とする値を閾値としてもよい。たとえば閾値を1/2(50%)とする場合には、時刻t11のトルク指令値2が150Nmの場合に、その半分の75Nmまでトルクが減少した時点が時刻t12となる。
第3の条件は、符号83で示すように空転検知から所定の閾値の時間経過することである。たとえばその閾値を0.2秒に設定すると、空転検知後からのトルク指令値2の変化によらず、時刻t11から0.2秒経過時点が時刻t12となる。
以上説明した3つの条件は、それぞれ有効なユースケースが異なっており、また組み合わせて使用してもよい。なお、図9では条件を満たすまでFBゲイン72を増加させない例を示したが、空転検知と同時にFBゲイン72の増加を開始し、条件を満たすとFBゲイン72の増加率を増加させてもよい。
図10を参照して、上述した閾値の決定方法の一例を示す。ここでは所定値82、すなわち空転検知後のトルク指令値2の変化後の閾値の設定を説明する。図10は上から、モータ回転速度61、タイヤ力推定値64、トルク指令値2、およびFBゲイン72の時間推移である。ただし図10では、モータ軸のトルクに換算したタイヤ力推定値64を図示している。図10に示す4つの図は縦方向の時刻が一致している。1つ目の破線は時刻t21を示し、2つ目の破線は時刻t22を示す。図10に示す時間推移例は、車両21が加速中に滑りやすい路面である低μ路に突入して時刻t21に駆動輪がスリップし、その後少し遅れて上位制御器が空転を検知してトルク指令値2を減少させた例を示している。
まず、モータ回転速度61に着目すると、時刻t21に空転が発生し、回転速度が急激に上昇している。このとき、タイヤ力推定値64は急激に減少する。これは低μ路で路面摩擦係数が小さいために、タイヤ力が十分生成できなくなるためである。本実施の形態では車両21はモータ駆動を想定しており、モータ22の回転速度ω、モータトルク(トルク最終値7)T、モータ22のイナーシャJを用いることで、数式8に示すようにタイヤ力推定値64がモータ軸換算トルクTとして推定できる。
dω/dt = T - T ・・・(数式8)
この数式8は、モータ22のイナーシャJとモータ22の回転速度ωの積が、モータトルクTとモータ軸換算トルクTの差に等しいことを示している。したがって、空転が発生した直後のタイヤ力推定値64がその路面で発生可能な最大の力と考えられ、スリップを防止するためには少なくともその最大のタイヤ力よりもモータトルクを小さくすることが必須である。したがって、この場合は空転発生直後のタイヤ力推定値64(ただしモータ軸トルクに換算)である符号82Sを所定値82に設定し、トルク指令値2が符号82Sの値を下回った後でFBゲイン72を増加させることで、トラクション制御によるトルクダウンを妨げることなく制振制御の効果を向上できる。
なお、ここまでFBゲイン72を上げ始めるタイミングについて述べてきた。FBゲイン72の増加させ方については、図10までで示してきた例では徐々に増加させているが、その増加率は状況に応じて変化させてもよい。また、徐々にではなくステップ状に急激に増加させてもよい。この場合、トルクの急激な変化が駆動部の共振を誘発する可能性がある一方、FBゲイン72を増加させたことによる制振効果の向上も早期に行われることになる。したがって、総合してどのような上げ方が空転時の振動低減を最も早く完了するかによって変化率を決定する。
ここまでFBゲイン72を増加させることを説明したが、FBゲイン72を元に戻す方法の一例について図11を参照して説明する。図11は上から、トルク最終値7、モータ回転速度61、およびFBゲイン72の時間推移である。図11に示す3つの図は縦方向の時刻が一致している。この時間推移例は、車両21が加速中にある時点で低μ路に突入して時刻t31に駆動輪がスリップし、時刻t32にトルク指令値2の減少が閾値を超えFBゲイン72が増加し、時刻t33にタイヤが再粘着して再びトルク指令値2が増加を開始している。
FBゲイン72を減少させるタイミングは、少なくとも以下の3つのタイミングが考えられる。第1のタイミングは、空転情報取得部5によりタイヤ粘着を判定したタイミングである。第2のタイミングは、タイヤ空転が判定された後からのモータ回転速度61の変化量が所定以内に低減したタイミングである。図11においては、タイヤ空転検知時のモータ回転速度61の大きさを二点鎖線で表しており、FBゲイン72を戻すタイミングは、モータ回転速度61が再び二点鎖線で表される値に戻ってきた時点を示している。第3のタイミングは、所定時間が経過したタイミングである。これは、上位制御器のトラクション制御が正常に働いている場合は、十分に時間が経過すればタイヤスリップが抑制されるという考え方に基づいている。
図12は、トルク補正部6がFBゲイン72を元に戻すもう一つの方法を示している。図12は上から、トルク指令値2、モータ回転速度61、空転情報8、FBゲイン72、およびトルク最終値7の時間推移である。図12に示す5つの図は縦方向の時刻が一致している。この時間推移例では、車両21が加速中である時刻t41にドライバが急にアクセルから足を話してブレーキを踏み、タイヤは粘着状態にもかかわらず、その際の急激なモータ回転速度変化を誤って空転と判定した。時刻t41以降では、ドライバはアクセルから足を離しているためにトルク指令値2が減少しており、FBゲイン72を増加させる条件(閾値)を満たす。そのため、トルク補正部6は時刻t42にFBゲイン72を増加させ、時刻t43に判定の誤りを判断してFBゲイン72を元に戻した。
このように、タイヤが粘着状態であるにも関わらず空転情報取得部5が空転の情報を誤って取得(または判定)し、かつ上位からのトルク指令値2が所定以上に減少する場合にも、トルク補正部6はFBゲイン72を増加させてしまう。この状況におけるFBゲイン72の増加は望ましくないが、本実施の形態ではFBゲイン72の増加を避けることができない。このFBゲイン72の増加により、図12の時刻t42~時刻t43の期間において、トルク最終値7に示すように減速を妨げる方向にトルクオフセットが生じる。そこでトルク補正部6は、FBゲイン72を増加させた時刻t42の後、所定時間の間にトルク指令値2とトルク最終値7との偏差の平均値を算出し、この平均値が一定値以上になると空転を誤認識していると判断してFBゲイン72の値を元の値に戻す。
たとえば空転判断に誤りがなく正常な制御が行われている場合には、トルク最終値7は、トルク指令値2に略一致するか、トルク指令値2を中心に増加と減少を繰り返す。これに対して、図12の時刻t42のトルク最終値7はトルク指令値2との偏差が広がり続けているので、時刻t43において偏差の時刻平均が閾値を超えてトルク補正部6は誤認識と判断した。このように、空転情報8が実際のタイヤの状態と異なる場合や、上位制御器の空転判断と異なる場合には、トルク補正部6が誤ってFBゲイン72を増加させる可能性があり、これを是正する仕組みが必要となる。
なお、同様の条件で、上位制御器または実際のタイヤ状態が「空転」、空転情報8が「粘着」と誤判定した場合には、FBゲイン72が増加しないため制振効果は改善しないが、干渉すなわちトルクオフセットは生じにくい。また、上位制御器または実際のタイヤ状態が「粘着」、空転情報8が「空転」となって、かつ上位からのトルク指令値2に大きな変化がない場合は同様にFBゲイン72は増加せず、トルクオフセットの発生は想定しにくい。
また、図11および図12において、FBゲイン72の戻し方については徐々に戻す方法を例示しているが、その変化率は前述したFBゲイン72を増加させる場合と同様に状況に応じて変化させてよく、徐々にではなくステップ状に減少させてもよい。
図13~図15を参照して、本実施の形態の効果を説明する。図13~図15は、空転発生時のトルク変化をシミュレーションした結果である。図13と図14では、FBゲイン72を切り替えずFBゲイン72の値を高く保つ構成と、スリップ防止制御動作中にFBゲイン72を減少させる構成と、上述した本実施の形態の構成であって4次元オブザーバを用いる構成と、の3つを比較する。図13および図14では、この3つを上から順に、「(a)パラメータ切り替え無し」、「(b)公知技術」、「(c)本実施の形態」として記載している。なお、「(b)公知技術」ではSFCの規範回転速度71としてモータ回転速度61の推定値を用い、「(c)本実施の形態」ではSFCの規範回転速度71として4次元オブザーバによるタイヤ回転速度63の推定値を用いている。図15では、この3つから「(b)公知技術」を除いた2つを比較している。まずは図13および図14を参照して説明する。
図13および図14は、同一の時間帯における時間変化を示している。図13はトルク指令値2とトルク最終値7との乖離に着目した図である。図13では各図におけるトルク指令値2およびトルク最終値7をa~cの枝番号を付して区別している。図13(a)では、図の0.2秒以降のようにトルク指令値2aとトルク最終値7aの間に乖離がある。そのため、加速方向に乖離しておりスリップ防止制御との干渉の恐れがある。図13(b)では、トルク指令値2bとトルク最終値7bの間のトルク乖離は、図13(a)よりも小さい。図13(c)は、図13(b)と同様にトルク指令値2cの変化後、トルク指令値2cに対してトルク最終値7cの乖離は少なくなっている。
一方、図14はモータ回転速度61に着目し、制振制御の性能を比較した図である。図14(a)では、FBゲイン72が高いために制振効果は高く、振動は低減傾向である。一方、図14(b)の公知技術のようにスリップ防止制御動作中にFBゲイン72を減少させる場合は、制振制御の効果が小さいためにタイヤ空転検知後の振動が持続することが示されている。図14(c)では、タイヤ空転検知からFBゲイン72の増加にかけては振動が発生しているが、その後、FBゲイン72の増加後に振動が収束していることが示されている。このように、本実施の形態ではトルク変化後に、トルク指令値2に対してトルク最終値7の乖離が少なく、かつパラメータ変更後に振動が収束する利点を有する。
図15は、図13および図14とは異なる状況であり、外乱要因でモータ回転速度61が急激に変化する場合のトルクオフセット発生有無に着目したシミュレーション結果である。図15(a)に示すモータ回転速度61のように、0.3秒時点でドライバがブレーキ操作し急減速した場合を示す。図15(b)はFBゲイン72を切り替えることなく大きく値に固定する場合におけるトルク指令値2bおよびトルク最終値7bを示しており、トルク指令値2に対してトルク最終値7の乖離が生じていることが示されている。この乖離は、加速方向(正方向)に生じており、ブレーキ動作との干渉が起きている。
その一方で、図15(c)では、タイヤ粘着状態において空転情報8も正しく「粘着」を判定または取得している場合には、FBゲイン72が小さいままとなっているため、トルク指令値2に対してトルク最終値7の乖離が小さいことが示されている。このように、本実施の形態の構成は従来技術に比べて、外乱発生時のトルクオフセット、すなわち上位制御器との干渉を低減できる。
なお、図15では減速中に負の外乱が発生した場合を例にとって説明したが、実際のユースケースとしては、加速中か減速中か、外乱が正方向か負方向かで計4通りのパターンがある。いずれも本実施の形態における構成により、トルク指令値2に対してトルク最終値7の乖離が小さいという効果が得られる。
例えば加速中に下り勾配などの正の外乱が発生した場合には、モータ回転速度61が急激に上昇し、従来技術ではトルクを下げる方向に働く。安全性に影響するわけではないが、ドライバにとっての違和感につながる可能性がある。一方、加速中に負の外乱、すなわち上り勾配、風などによる走行抵抗、ブレーキなどが発生した場合には、従来技術ではトルクが増加するため、ドライバの意図しない加速が発生する可能性がある。本実施の形態における構成では、このようなトルク乖離が小さいことから優位である。さらに、減速中に下り勾配などの正の外乱が発生した場合に、従来技術ではトルクを下げる(負の方向に大きくする)方向に影響するため、滑りやすい路面でタイヤロックの原因になるなどの不都合が生じる可能性ある。本実施の形態における構成では、このようなトルク乖離が小さいことから優位である。
以上説明した第1の実施の形態では、モータ回転速度61の情報のみを用いてねじり共振の制振制御を実施可能であり、かつ上位制御器との干渉、すなわちトルクオフセットを防止しつつ、タイヤスリップ時の制振効果を確保する駆動制御装置1の提供が可能である。
上述した第1の実施の形態によれば、次の作用効果が得られる。
(1)モータ22やエンジンなどの駆動部を有する車両21に搭載可能な駆動制御装置1は、トルク指令値2を取得または生成するトルク指令取得部3と、駆動部における共振を制御対象の回転速度であるモータ回転速度61に基づき低減するように、トルク指令値2を補正するトルク補正部6と、タイヤの空転有無に関する情報を取得する空転情報取得部5とを備える。トルク補正部6は、空転情報取得部5によりタイヤ空転発生の情報を取得した後に、トルク指令値2の大きさが減少すると、補正トルク76が大きくなるようにモータ回転速度61から補正トルク76を決定するパラメータであるFBゲイン72を変更する。そのため、図13(c)および図14(c)に示すように、トルクオフセットを防止しつつ、タイヤスリップ時の制振効果を確保できる。
(2)トルク補正部6は、図5および図6に示すように、トルク指令値2に基づき算出する規範回転速度71と、モータ回転速度61との差に基づきトルク指令値2を補正する。
(3)トルク補正部6は、図6に示すように規範回転速度71の計算方法と制御対象の挙動との誤差、およびタイヤに発生する路面からの外乱の少なくとも一つに起因する、規範回転速度71とモータ回転速度61の定常誤差を低減するように、規範回転速度71を修正する。
(4)トルク補正部6は、図6に示すようにトルク指令値2とモータ回転速度61の少なくとも一つに基づき算出する規範回転速度71の計算方法を、タイヤの空転有無に基づき変更する。
(5)規範回転速度71は、トルク指令値2とモータ回転速度61により予測されたタイヤ回転速度63である。
(6)トルク補正部6は、空転情報取得部5によりタイヤ空転が判定された後であって、トルク指令値2が所定の第1閾値(初期値2Sから符号81の大きさを引いた値)以下となる、トルク指令値2の変化率が所定の第2閾値(初期値2Sと符号82の大きさの比)以上となる、または符号83で示す所定時間経過後、のいずれかの条件を満たすとFBゲイン72の大きさを変更する。
(7)第1閾値および第2閾値は、タイヤ空転が判定された際のタイヤと路面間に発生している力であるタイヤ力の推定値、すなわち図10の符号82Sの大きさに起因して設定される。
(8)トルク補正部6は、モータ回転速度61から補正トルク76を決定するための比例ゲインであるFBゲイン72の大きさをパラメータとして変更する。
(9)トルク補正部6は、比例ゲインの大きさを所定の変化率で徐々に大きくする。
(10)トルク補正部6は、補正トルク76が大きくなるようにFBゲイン72を変更した後で、空転情報取得部5によりタイヤ粘着を判定し、タイヤ空転が判定された後からの回転速度の変化量が所定以内に低減、所定時間が経過、補正トルク76の時間平均値が所定値を超過、の少なくとも一つの条件が満たされた場合に、FBゲイン72を元の値に戻す。
(11)共振は、駆動部とタイヤ間の伝達部材であるドライブシャフト24のねじれ共振を含む。
(12)共振は、駆動部を車体に固定するマウント部材であるモータマウント53の弾性による共振を含む。
―第2の実施の形態―
図16~図19を参照して、駆動制御装置の第2の実施の形態を説明する。以下の説明では、第1の実施の形態と同じ構成要素には同じ符号を付して相違点を主に説明する。特に説明しない点については、第1の実施の形態と同じである。
上述した第1の実施の形態では、トルク補正部6がモータ回転速度61の情報のみを用いてタイヤ空転を判定し、規範回転速度71を修正する構成であった。これにより、駆動制御装置1が最も高速かつ高分解能に取得可能なモータ回転速度61を使用し、高い制振効果を発揮することとともに、その他の情報を取り込む必要がないためにコスト面や耐故障等の観点で優位である。一方、前述したトルクオフセットの課題をより確実に解決するために、上位制御器から車両情報65を追加で取得し、車両情報65を踏まえて本発明におけるFBゲイン72の変更を実施してもよい。
図16は、第2の実施の形態における駆動制御装置1Aのブロック図である。駆動制御装置1Aは、トルク指令取得部3、回転速度算出部4、空転情報取得部5、トルク補正部6、および車両情報取得部9を備える。トルク指令取得部3および回転速度算出部4の動作は、第1の実施の形態と同様であるため説明を省略する。空転情報取得部5およびトルク補正部6の動作は概ね第1の実施の形態と同様であり、以下では相違点を説明する。
車両情報取得部9は、上位制御器である走行制御装置25より車両情報65を取得する。車両情報65はたとえば、後述するブレーキペダル32のストローク量もしくは各輪のブレーキ制御機構33の動作量(液圧等)であるブレーキ動作量62、車両21にモータ22が複数台搭載されている場合は他のモータのトルク最終値7、走行制御装置25内における空転判定結果である。車両情報65はは、コンバインセンサ34による車両21の並進方向加速度や回転速度、タイヤ回転速度63などの車両21の走行状態を表す情報でもよい。これらの情報は、CAN通信により取得することが一般的である。
図17を参照して、車両情報65としてブレーキ動作量62を取得する場合のトルク補正部6の挙動の一例を説明する。図17は上からモータ回転速度61、車両情報65(ブレーキ動作量62)、規範回転速度71、トルク最終値7の時間推移の一例を示している。図17に示す4つの図は縦方向の時刻が一致している。図17では、一点鎖線で示す時刻t51においてドライバがブレーキ操作し急減速した。
まずモータ回転速度61に着目すると、時刻t51からブレーキが作動したことでモータ回転速度61が急激に減少している。このとき、車両情報65として取得したブレーキ動作量62は、時刻t51の以前は0であり、時刻t51から急激に増加して一定値に収束している。これはドライバがブレーキペダル32を目いっぱい踏んでいることを想定している。このとき、規範回転速度71の図が示す通り、数式5や数式7に示すオブザーバによる規範回転速度71の算出方法では、実際のモータ回転速度61との差に偏差(応答遅れ)が生じる。そこで取得したブレーキ動作量62を数式5や数式7の入力に重畳することにより、規範回転速度71の推定値である推定規範回転速度71eとなり、モータ回転速度61と同等となる。これにより、トルク最終値7は符号7eで示す値になり、トルク最終値7のトルク指令値2との乖離をさらに小さくできる。
図18を参照して、車両情報65としてタイヤ回転速度63を取得する場合のトルク補正部6における制振制御の構成の一例を説明する。図18は、タイヤ回転速度63に、モータ22とタイヤ20の回転速度比であるギヤ比考慮ゲイン75を乗算して規範回転速度71とするSFC(速度差フィードバック)のブロック線図である。これは第1の実施の形態の図13~図15において、4次元オブザーバによるタイヤ回転速度63を用いた速度差フィードバックに代わり、車両情報65として取得したタイヤ回転速度63をそのまま規範回転速度71とする速度差フィードバック手法である。4次元オブザーバによるタイヤ回転速度63には、オブザーバの極の大きさやモデル化誤差によって、推定誤差や遅れが生じうるが、タイヤ回転速度63を車両情報65として取得することで、この推定誤差や遅れが低減され、より性能の高い制振制御が実現できる。
さらに車両情報65として、上位制御器から空転情報8eを取得してもよい。この場合には、空転情報取得部5は、上位制御器である走行制御装置25におけるタイヤ空転有無の判定結果、またはトラクション制御の動作状況を取得する。トルク補正部6は、それらの結果をもとに空転情報8を決定する。図3を参照して説明した共振周波数の変化による空転判定方法などは、モータ回転速度61の特徴的な挙動から空転を推定しており、推定誤差や遅れが生じる場合がある。それに対し、上位制御器では通常、タイヤ回転速度63や外界情報等を用いてより正確なタイヤ空転判定を行っている。したがって、上位制御器におけるタイヤ空転判定の判定結果を空転情報8として用いることで、FBゲイン72の変更がより確実となる利点を有する。
図19を参照して、車両情報65として、上位制御器からの空転情報8eを取得した場合のトルク補正部6の挙動の一例を示す。図19は上からモータ回転速度61、車両情報65(上位からの空転情報8e)、FBゲイン72、トルク指令値2、およびトルク最終値7の時間推移の一例を示している。図19に示す4つの図は縦方向の時刻が一致している。図19ではモータ回転速度61の図にのみ4つの一点鎖線が示されており、他の図では2番目と4番目の一点鎖線のみが示されている。それぞれの一点鎖線で示されるタイミングを、順番に時刻t61~時刻t64と呼ぶ。
図19に示す時間推移例は、加速中の時刻t61に駆動輪が低μ路に突入して空転が発生し、少し遅れて時刻t62に上位制御器による空転検知とトラクション制御(トルクダウン)がなされている。その後、時刻t63にタイヤ空転が十分に収束して再粘着し、そこから少し遅れて時刻t64の時点で上位制御器が粘着と判定してトルクアップして加速を再開した場合を示している。なお、本来であれば時刻t61から暫くの間、モータ回転速度61には共振による振動が生じるが、本図では振動を省略している。
まずモータ回転速度61に着目すると、図示左端の時刻t0において加速中のため回転速度が上昇しているが、時刻t61において空転が発生して回転速度が急激に上昇を始め、時刻t62以降は上位制御器による空転検知とトルクダウンが行われたために回転速度の上昇速度は減少し、その後回転速度自体が減少に向かっている。時刻t63の時点で回転速度は十分低下して横ばいとなり、時刻t64以降は再度増加をしている。
このとき、上位からの空転情報8eは、時刻t62で空転を検知して値が0から1に変化し、空転判定が終了した時刻t64において値が1から0に変化している。この情報を空転情報8として使うと、FBゲイン72は、時刻t62からしばらく時間が経過し、トルク指令値2が十分減少した時点で徐々に増加して一定値、その後空転判定が終了となった時刻t64の後に徐々に減少して元の値に戻っている。その結果、トルク最終値7は、FBゲイン72が増加している間に制振制御のためのトルク補正が行われて振動的な波形となる。このように、車両情報65として、上位制御器からの空転情報8eを取得した場合は、空転情報8eをそのまま空転情報8として使用することで、FBゲイン72の増加および減少をより確実に行うことができる。
以上説明した第2の実施の形態では、車両情報65を取り込むことで、規範回転速度71の修正をより確実に行うことや、FBゲイン72の増加および減少のタイミングをより適切に把握することを可能とする。これにより上位制御器との干渉、すなわちトルクオフセットをより確実に防止しつつ、タイヤスリップ時の制振効果を確保する駆動制御装置1Aを提供できる。
上述した第2の実施の形態によれば、次の作用効果が得られる。
(13)トルク補正部6は、図18に示すように、タイヤ回転速度63に基づき算出する規範回転速度71と、モータ回転速度61との差に基づきトルク指令値2を補正する。
(14)駆動制御装置1Aは、制御対象と連結するタイヤの回転速度、タイヤに動作している機械ブレーキ量、他の駆動輪を駆動する駆動制御装置1Aの駆動トルク、上位制御器におけるタイヤ空転判定情報の少なくとも一つを車両情報65として取得する車両情報取得部9を備える。トルク補正部6は車両情報65に基づき規範回転速度71を修正する。
(15)駆動制御装置1Aは、制御対象と連結するタイヤの回転速度であるタイヤ回転速度63を取得するタイヤ回転速度取得部としても機能する車両情報取得部9を備える。トルク補正部6は、図18に示すように、タイヤ回転速度63と規範回転速度71との差に基づきトルク指令値2を補正する。
以上で説明した第1の実施の形態および第2の実施の形態において、車両21は電気駆動モータを動力源としたが、動力がドライブシャフト24のような細いシャフトを介してタイヤに伝達されれば動力源に制限はない。たとえば車両21は、エンジン車、ハイブリッド自動車建設機械(鉱山ダンプなど)、一人乗り小型自動車のような小型モビリティなどでもよい。また、デファレンシャルギヤ23を介して動力を左右輪に分配することは必須の構成ではなく、左右独立に電気モータを搭載し、それぞれがシャフトを通じて左右輪に動力を伝達する構成でもよい。
なお、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施の形態の構成の一部を他の実施の形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施の形態の構成に他の実施の形態の構成を加えることも可能である。また、各実施の形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、および置換が可能である。
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記憶装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。さらに、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
上述した各実施の形態および変形例において、機能ブロックの構成は一例に過ぎない。別々の機能ブロックとして示したいくつかの機能構成を一体に構成してもよいし、1つの機能ブロック図で表した構成を2以上の機能に分割してもよい。また各機能ブロックが有する機能の一部を他の機能ブロックが備える構成としてもよい。
上述した各実施の形態および変形例において、プログラムは不図示のROMに格納されるとしたが、プログラムは書き換え可能な不揮発性の記憶装置に格納されていてもよい。また、駆動制御装置1が不図示の入出力インタフェースを備え、必要なときに入出力インタフェースと駆動制御装置1が利用可能な媒体を介して、他の装置からプログラムが読み込まれてもよい。ここで媒体とは、例えば入出力インタフェースに着脱可能な記憶媒体、または通信媒体、すなわち有線、無線、光などのネットワーク、または当該ネットワークを伝搬する搬送波やディジタル信号、を指す。また、プログラムにより実現される機能の一部または全部がハードウエア回路やFPGAにより実現されてもよい。
1、1A :駆動制御装置
2 :トルク指令値
3 :トルク指令取得部
4 :回転速度算出部
5 :空転情報取得部
6 :トルク補正部
7 :トルク最終値
8 :空転情報
9 :車両情報取得部
21 :車両
61 :モータ回転速度
63 :タイヤ回転速度
63e :推定タイヤ回転速度
65 :車両情報
71 :規範回転速度
72 :フィードバックゲイン

Claims (15)

  1. 駆動部を有する車両に搭載可能な駆動制御装置であって、
    トルク指令値を取得または生成するトルク指令取得部と、
    前記駆動部における共振を制御対象の回転速度に基づき低減するように、補正トルクを用いて前記トルク指令値を補正するトルク補正部と、
    タイヤの空転有無に関する情報を取得する空転情報取得部とを備え、
    前記トルク補正部は、前記空転情報取得部によりタイヤ空転発生の情報を取得した後、前記トルク指令値の大きさが減少すると、前記補正トルクが大きくなるように、前記回転速度から前記補正トルクを決定するパラメータを変更する、駆動制御装置。
  2. 請求項1に記載の駆動制御装置において、
    前記トルク補正部は、前記トルク指令値と前記回転速度の少なくとも一つに基づき算出する規範回転速度と、前記回転速度との差に基づき前記トルク指令値を補正する、駆動制御装置。
  3. 請求項2に記載の駆動制御装置において、
    前記トルク補正部は、前記規範回転速度の計算方法と前記制御対象の挙動との誤差と、前記タイヤに発生する路面からの外乱の少なくとも一つに起因する、前記規範回転速度と前記回転速度の定常誤差を低減するように、前記規範回転速度を修正する、駆動制御装置。
  4. 請求項3に記載の駆動制御装置において、
    前記トルク補正部は、前記計算方法を前記タイヤの空転有無に基づき変更する、駆動制御装置。
  5. 請求項2に記載の駆動制御装置において、
    前記規範回転速度は、前記トルク指令値と前記回転速度により予測されたタイヤ回転速度である、駆動制御装置。
  6. 請求項1に記載の駆動制御装置において、
    前記トルク補正部は、前記空転情報取得部により前記タイヤが空転していると判定された後であって、前記トルク指令値が所定の第一閾値以下になる、前記トルク指令値の変化率が所定の第二閾値以上となる、または所定時間経過する、のいずれかの条件を満たすと前記パラメータを変更する、駆動制御装置。
  7. 請求項6に記載の駆動制御装置において、
    前記第一閾値および前記第二閾値は、前記タイヤが空転していると判定された際の前記タイヤと路面間に発生している力であるタイヤ力の推定値に起因して設定されている、駆動制御装置。
  8. 請求項1に記載の駆動制御装置において、
    前記トルク補正部は、前記回転速度から前記補正トルクを決定するための比例ゲインの大きさを前記パラメータとして変更する、駆動制御装置。
  9. 請求項8に記載の駆動制御装置において、
    前記トルク補正部は、前記比例ゲインの大きさを所定の変化率で徐々に大きくする、駆動制御装置。
  10. 請求項1に記載の駆動制御装置において、
    前記トルク補正部は、前記補正トルクが大きくなるように前記パラメータを変更した後、前記空転情報取得部によりタイヤ粘着を判定、前記タイヤが空転していると判定された後からの前記回転速度の変化量が所定以内に低減、所定時間が経過、前記補正トルクの時間平均値が所定値を超過、の少なくとも一つの条件が満たされた場合に、前記パラメータを元の値に戻す、駆動制御装置。
  11. 請求項3に記載の駆動制御装置において、
    前記回転速度、前記タイヤに動作している機械ブレーキ量、他の駆動輪を駆動する駆動制御装置の駆動トルク、上位制御器におけるタイヤ空転判定情報の少なくとも一つを車両情報として取得する車両情報取得部をさらに備え、前記トルク補正部は前記車両情報に基づき前記規範回転速度を修正する、駆動制御装置。
  12. 請求項1に記載の駆動制御装置において、
    前記制御対象と連結する前記タイヤの回転速度であるタイヤ回転速度を取得するタイヤ回転速度取得部を備え、
    前記トルク補正部は、前記タイヤ回転速度と、前記回転速度との差に基づき前記トルク指令値を補正する、駆動制御装置。
  13. 請求項1に記載の駆動制御装置において、
    前記共振は、前記駆動部と前記タイヤとの間に配される伝達部材のねじれ共振を含む、駆動制御装置。
  14. 請求項1に記載の駆動制御装置であって、
    前記共振は、前記駆動部を前記車両に固定するマウント部材の弾性による共振を含む、駆動制御装置。
  15. 駆動部を有する車両に搭載可能な駆動制御装置が実行する駆動制御方法であって、
    トルク指令値を取得または生成するトルク指令取得ステップと、
    前記駆動部における共振を制御対象の回転速度に基づき低減するように、補正トルクを用いて前記トルク指令値を補正するトルク補正ステップと、
    タイヤの空転有無に関する情報を取得する空転情報取得ステップとを含み、
    前記トルク補正ステップでは、前記空転情報取得ステップによりタイヤ空転発生の情報が取得された後に、前記トルク指令値の大きさが減少すると、前記補正トルクが大きくなるように、前記回転速度から前記補正トルクを決定するパラメータを変更する、駆動制御方法。
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