JP2024072015A - 電動機 - Google Patents
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Abstract
【課題】高調波重畳方式によって回転子の位置を推定する速度域が広くなることを抑制すること。【解決手段】電動機は、制御部を備える。制御部は、位置推定部を備える。位置推定部は、モータが備える回転子の位置を推定する。制御部は、出力電圧が予め定められた閾値以上の場合、誘起電圧方式によって位置推定部に回転子の位置を推定させる。制御部は、出力電圧が閾値未満の場合、高調波重畳方式によって位置推定部に回転子の位置を推定させる。【選択図】図3
Description
本開示は、電動機に関する。
インバータをセンサレス制御することによってモータを駆動する場合、モータの回転子の位置を推定する必要がある。センサレス制御は、回転子の位置をソフトウェアで推定することによってハードウェアの位置センサを用いずにモータを駆動する制御方式である。回転子の位置を推定する方式としては、例えば、誘起電圧方式、及び高調波重畳方式が挙げられる。誘起電圧方式は、モータの駆動によって発生する誘起電圧を用いることで回転子の位置を推定する方式である。高調波重畳方式は、モータへの電圧指令値又は電流指令値に高調波成分を重畳させることで回転子の位置を推定する方式である。
モータの速度が低いほど誘起電圧は低い。このため、誘起電圧方式を用いる場合、モータの速度が低い場合に、回転子の位置の推定精度が低下する。特許文献1に開示の制御部は、モータの速度が閾値よりも低い場合、高調波重畳方式によって回転子の位置を推定する。これにより、モータの速度が閾値よりも低い場合に、位置推定精度が低下することを抑制している。
特許文献1では、モータの速度によって、高調波重畳方式によって回転子の位置を推定するか否かを切り替えている。誘起電圧は、モータの温度やモータが備える磁石の公差によっても変化する。このため、モータの速度によって、高調波重畳方式によって回転子の位置を推定するか否かを切り替える場合、これらの要因によるばらつきを加味して、閾値を大きめの値に設定する必要がある。すると、高調波重畳方式によって回転子の位置を推定する速度域が広くなる。高調波重畳方式によって回転子の位置を推定する場合、高調波を重畳することによって静音性が悪化するおそれがある。また、高調波電流の発生によってモータの効率が悪化するおそれがある。このため、高調波重畳方式によって回転子の位置を推定する速度域は、狭くすることが好ましい。
上記課題を解決する電動機は、回転子及び3相のコイルが巻回された固定子を有するモータと、ドライバーと、前記ドライバーによって駆動されるスイッチング素子と、を有し、前記スイッチング素子によって前記モータを駆動するインバータと、前記インバータの出力電圧を検出する出力電圧検出部と、前記スイッチング素子の制御に用いられる複数の指令値を算出し、前記スイッチング素子を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記回転子の位置を推定する位置推定部を備え、前記位置推定部は、前記3相のコイルに発生する誘起電圧に基づき、前記回転子の位置を推定する誘起電圧方式と、前記指令値に高調波を重畳させ、前記回転子の位置を推定する高調波重畳方式と、を有する電動機であって、前記制御部は、前記出力電圧が予め定められた閾値以上の場合、前記誘起電圧方式によって前記位置推定部に前記回転子の位置を推定させ、前記出力電圧が前記閾値未満の場合、前記高調波重畳方式によって前記位置推定部に前記回転子の位置を推定させるように切り替えることを要旨とする。
制御部は、インバータの出力電圧が閾値未満の場合、高調波重畳方式によって位置推定部に回転子の位置を推定させる。インバータの出力電圧とモータに発生する誘起電圧には相関がある。インバータの出力電圧に閾値を設定することによって、モータの温度などを要因とする誘起電圧のばらつきを加味した閾値を設定する必要がない。従って、高調波重畳方式によって回転子の位置を推定する速度域が広くなることを抑制できる。
上記電動機について、前記制御部は、前記回転子の位置の他に、前記回転子の回転速度を推定する位置推定部と、相電流を前記回転子の位置に基づいてd軸電流及びq軸電流に変換する電流座標変換部と、前記回転速度と、外部から入力される回転速度指令値との差分に基づいて、d軸電流指令値及びq軸電流指令値を算出する速度制御部と、前記d軸電流と前記d軸電流指令値との差分に基づいてd軸電圧指令値を算出し、前記q軸電流と前記q軸電流指令値との差分に基づいてq軸電圧指令値を算出する電流制御部と、前記d軸電圧指令値及び前記q軸電圧指令値に基づいて、3相分の3相電圧指令値を算出するPWM制御部と、を備え、前記制御部は、前記高調波重畳方式において、前記d軸電圧指令値のみ、前記d軸電圧指令値及び前記q軸電圧指令値の両方、前記d軸電流指令値及び前記q軸電流指令値の両方、並びに、前記3相電圧指令値のみのうちのいずれかの指令値で定義される所定の指令値に、高調波を重畳させ、前記位置推定部に前記回転子の位置を推定させてもよい。
上記電動機について、前記閾値は、第1閾値と、前記第1閾値よりも低い第2閾値と、を有し、前記制御部は、前記第1閾値を、前記高調波重畳方式から前記誘起電圧方式への切り替えに用い、前記第2閾値を、前記誘起電圧方式から前記高調波重畳方式への切り替えに用いてもよい。
本発明によれば、高調波重畳方式によって回転子の位置を推定する速度域が広くなることを抑制できる。
電動機の一実施形態について説明する。
図1に示すように、車両用空調装置100は、電動圧縮機101と、冷媒回路103と、を備える。電動圧縮機101は、圧縮部102と、電動機M1と、を備える。電動圧縮機101は、冷媒を圧縮する。冷媒回路103は、例えば、熱交換器及び膨張弁等を有している。車両用空調装置100は、電動圧縮機101によって冷媒が圧縮され、かつ冷媒回路103によって冷媒の熱交換及び膨張が行われることによって、車内の冷暖房を行う。電動圧縮機101は、圧縮した冷媒とともにオイルを吐出する。
図1に示すように、車両用空調装置100は、電動圧縮機101と、冷媒回路103と、を備える。電動圧縮機101は、圧縮部102と、電動機M1と、を備える。電動圧縮機101は、冷媒を圧縮する。冷媒回路103は、例えば、熱交換器及び膨張弁等を有している。車両用空調装置100は、電動圧縮機101によって冷媒が圧縮され、かつ冷媒回路103によって冷媒の熱交換及び膨張が行われることによって、車内の冷暖房を行う。電動圧縮機101は、圧縮した冷媒とともにオイルを吐出する。
圧縮部102は、冷媒を圧縮する。圧縮部102によって圧縮された冷媒は、冷媒回路103に吐出される。圧縮部102は、スクロールタイプ、ピストンタイプ、ベーンタイプ等、任意である。
<電動機>
電動機M1は、モータ11を備える。モータ11は、回転子12及び3相のコイルU,V,Wが巻回された固定子13を有する。モータ11は、3つのコイルU,V,Wを備える3相モータである。モータ11によって圧縮部102は駆動する。
電動機M1は、モータ11を備える。モータ11は、回転子12及び3相のコイルU,V,Wが巻回された固定子13を有する。モータ11は、3つのコイルU,V,Wを備える3相モータである。モータ11によって圧縮部102は駆動する。
電動機M1は、モータ駆動装置10を備える。モータ駆動装置10は、バッテリBAと、平滑コンデンサCと、インバータ21と、相電流検出部22と、入力電圧検出部23と、制御部30と、を備える。
インバータ21は、6つのスイッチング素子Q1~Q6と、ダイオードD1~D6と、ドライバー51と、を備える。スイッチング素子Q1~Q6としては、例えば、IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)が用いられる。スイッチング素子Q1~Q6とダイオードD1~D6とが一体の場合、MOSFET(金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)が用いられる。スイッチング素子Q1とスイッチング素子Q2とは互いに直列接続されている。スイッチング素子Q3とスイッチング素子Q4とは互いに直列接続されている。スイッチング素子Q5とスイッチング素子Q6とは互いに直列接続されている。スイッチング素子Q1~Q6にはそれぞれダイオードD1~D6が並列接続されている。各スイッチング素子Q1~Q6には、平滑コンデンサCを介してバッテリBAが接続されている。
スイッチング素子Q1とスイッチング素子Q2との接続線は、途中で分岐してコイルUに接続されている。スイッチング素子Q3とスイッチング素子Q4との接続線は、途中で分岐してコイルVに接続されている。スイッチング素子Q5とスイッチング素子Q6との接続線は、途中で分岐してコイルWに接続されている。
ドライバー51は、スイッチング素子Q1~Q6を駆動する。これにより、モータ11が駆動する。
バッテリBAは、充放電可能な蓄電装置である。バッテリBAの定格電圧は、例えば、800[V]である。
バッテリBAは、充放電可能な蓄電装置である。バッテリBAの定格電圧は、例えば、800[V]である。
相電流検出部22は、モータ11に流れる相電流を検出する。相電流検出部22は、少なくとも2相分の相電流を検出する。本実施形態において、相電流検出部22は、u相電流Iu、v相電流Iv、及びw相電流Iwを検出する。3相のうち2相分の相電流を検出して、残りの1相分の相電流は2相分の相電流から算出するようにしてもよい。u相電流Iu、v相電流Iv、及びw相電流Iwは、モータ11の各相に流れる実電流である。
入力電圧検出部23は、バッテリBAからインバータ21に入力される入力電圧Viを検出する。
<制御部>
制御部30は、プロセッサと、記憶部と、を備える。プロセッサとしては、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、又はDSP(Digital Signal Processor)が用いられる。記憶部は、RAM(Random Access Memory)、及びROM(Read Only Memory)を含む。記憶部は、処理をプロセッサに実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。記憶部、即ち、コンピュータ可読媒体は、汎用または専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。制御部30は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェア回路によって構成されていてもよい。処理回路である制御部30は、コンピュータプログラムに従って動作する1つ以上のプロセッサ、ASICやFPGA等の1つ以上のハードウェア回路、或いは、それらの組み合わせを含み得る。
<制御部>
制御部30は、プロセッサと、記憶部と、を備える。プロセッサとしては、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、又はDSP(Digital Signal Processor)が用いられる。記憶部は、RAM(Random Access Memory)、及びROM(Read Only Memory)を含む。記憶部は、処理をプロセッサに実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。記憶部、即ち、コンピュータ可読媒体は、汎用または専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。制御部30は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェア回路によって構成されていてもよい。処理回路である制御部30は、コンピュータプログラムに従って動作する1つ以上のプロセッサ、ASICやFPGA等の1つ以上のハードウェア回路、或いは、それらの組み合わせを含み得る。
制御部30は、複数の指令値を算出する。制御部30は、複数の指令値によってスイッチング素子Q1~Q6を制御する。制御部30は、センサレス制御によってインバータ21を制御する。センサレス制御は、モータ11の回転子12の位置Hmを検出するハードウェアの位置センサを用いずにインバータ21を制御する方式である。インバータ21が制御されることでモータ11が駆動する。制御部30は、誘起電圧方式による位置推定と高調波重畳方式による位置推定とを切り替えながらインバータ21を制御する。誘起電圧方式は、3相のコイルU,V,Wに発生する誘起電圧に基づき、回転子12の位置Hmを推定する方式である。高調波重畳方式は、指令値に高調波を重畳させ、回転子12の位置Hmを推定する方式である。
<誘起電圧方式による位置推定>
誘起電圧方式による位置推定を行う場合の制御部30の機能について説明する。制御部30は、電流座標変換部31と、位置推定部32と、減算部33,35,36と、速度制御部34と、電流制御部37と、PWM制御部38と、を備える。
誘起電圧方式による位置推定を行う場合の制御部30の機能について説明する。制御部30は、電流座標変換部31と、位置推定部32と、減算部33,35,36と、速度制御部34と、電流制御部37と、PWM制御部38と、を備える。
電流座標変換部31は、相電流Iu,Iv,Iwを、位置推定部32が推定した回転子12の位置Hmに基づいてd軸電流Id及びq軸電流Iqに変換する。例えば、電流座標変換部31は、3相(U,V,W)の固定座標系の相電流Iu,Iv,Iwを2相(α,β)の固定座標系の電流Iα,Iβに変換する。電流座標変換部31は、位置Hmを用いて電流Iα,Iβを2相(d,q)の回転座標系のd軸電流Id及びq軸電流Iqに変換する。d軸及びq軸は、dq座標系の座標軸である。dq座標系は、モータ11の回転子12とともに回転する座標系である。電流座標変換部31は、相電流Iu,Iv,Iwを電流Iα,Iβに変換することなく、直接d軸電流Id及びq軸電流Iqに変換してもよい。
位置推定部32は、電流座標変換部31から出力されたd軸電流Id及びq軸電流Iq及び電流制御部37から出力されたd軸電圧指令値Vd及びq軸電圧指令値Vqに基づいてモータ11の回転子12の位置Hmを推定する。例えば、位置推定部32は、d軸電流Id及びq軸電流Iqと、電流制御部37から取得するd軸電圧指令値Vd及びq軸電圧指令値Vqと、モータ11によって定まる定数と、に基づいてコイルU,V,Wに発生する誘起電圧を算出する。そして、位置推定部32は、誘起電圧に基づき位置Hmを推定する。また、位置推定部32は、誘起電圧に基づいて回転子12の回転速度Fmを推定する。
減算部33は、回転速度指令値FmRefと、位置推定部32によって推定された回転速度Fmとの差分ΔFmを算出する。回転速度指令値FmRefは、外部から入力される。回転速度指令値FmRefは、例えば、車両の上位制御装置から制御部30に入力される。
速度制御部34は、差分ΔFmに基づいてd軸電流指令値IdRef及びq軸電流指令値IqRefを算出する。速度制御部34は、例えば、フィードバック制御を用いることによって差分ΔFmが0に収束するように、d軸電流指令値IdRef及びq軸電流指令値IqRefを算出する。フィードバック制御としては、例えば、比例積分制御を用いることができる。
減算部35は、d軸電流指令値IdRefとd軸電流Idとの差分ΔIdを算出する。減算部36は、q軸電流指令値IqRefとq軸電流Iqとの差分ΔIqを算出する。
電流制御部37は、差分ΔIdに基づいてd軸電圧指令値Vdを算出する。電流制御部37は、差分ΔIqに基づいてq軸電圧指令値Vqを算出する。電流制御部37は、例えば、フィードバック制御を用いることによって差分ΔId及び差分ΔIqが0に収束するように、d軸電圧指令値Vd及びq軸電圧指令値Vqを算出する。フィードバック制御としては、例えば、比例積分制御を用いることができる。
電流制御部37は、差分ΔIdに基づいてd軸電圧指令値Vdを算出する。電流制御部37は、差分ΔIqに基づいてq軸電圧指令値Vqを算出する。電流制御部37は、例えば、フィードバック制御を用いることによって差分ΔId及び差分ΔIqが0に収束するように、d軸電圧指令値Vd及びq軸電圧指令値Vqを算出する。フィードバック制御としては、例えば、比例積分制御を用いることができる。
PWM制御部38は、d軸電圧指令値Vd及びq軸電圧指令値Vqを、位置推定部32が推定した回転子12の位置Hm及び入力電圧Viに基づいてu相電圧指令値Vu、v相電圧指令値Vv、及びw相電圧指令値Vwに変換する。例えば、PWM制御部38は、d軸電圧指令値Vd及びq軸電圧指令値Vqをdq座標系からαβ座標系への座標の電圧指令値Vα,Vβに変換する。PWM制御部38は、2相の電圧指令値Vα,Vβを3相分の3相電圧指令値Vu,Vv,Vwに変換する。PWM制御部38は、d軸電圧指令値Vd及びq軸電圧指令値Vqを電圧指令値Vα,Vβに変換することなく、直接電圧指令値Vu,Vv,Vwに変換してもよい。
インバータ21は、電圧指令値Vu,Vv,Vwに基づいて制御される。詳細にいえば、PWM制御部38は、電圧指令値Vu,Vv,Vwとキャリア周波数とに基づいて、PWM信号を生成し、PWM信号によってスイッチング素子Q1~Q6を制御する。
<高調波重畳方式による位置推定>
高調波重畳方式による位置推定を行う場合の制御部30の機能について説明する。
図2に示すように、制御部30は、電流座標変換部31と、位置推定部32と、減算部33,35,36と、速度制御部34と、電流制御部37と、PWM制御部38と、高調波重畳部41と、加算部42と、バンドストップフィルタ43と、を備える。電流座標変換部31、減算部33,35,36、速度制御部34、電流制御部37、及びPWM制御部38は、誘起電圧方式の場合と同様の機能を有する。このため、説明を省略する。
高調波重畳方式による位置推定を行う場合の制御部30の機能について説明する。
図2に示すように、制御部30は、電流座標変換部31と、位置推定部32と、減算部33,35,36と、速度制御部34と、電流制御部37と、PWM制御部38と、高調波重畳部41と、加算部42と、バンドストップフィルタ43と、を備える。電流座標変換部31、減算部33,35,36、速度制御部34、電流制御部37、及びPWM制御部38は、誘起電圧方式の場合と同様の機能を有する。このため、説明を省略する。
高調波重畳部41は、高調波Vhを生成する。高調波Vhは、Va*cos2πftで定義される。Vaは、高調波Vhの振幅である。fは、高調波Vhの周波数である。周波数fとしては、例えば、モータ11の回転に依存しない周波数である。
加算部42は、高調波重畳部41が生成した高調波Vhをd軸電圧指令値Vdに加算する。これにより、d軸電圧指令値Vdに高調波Vhが重畳される。
本実施形態において、制御部30は、高調波重畳方式において、d軸電圧指令値Vdのみに高調波Vhを重畳させている。制御部30は、d軸電圧指令値Vd及びq軸電圧指令値Vqの両方、d軸電流指令値IdRef及びq軸電流指令値IqRefの両方、並びに、3相電圧指令値Vu,Vv,Vwのみのうちのいずれかの指令値で定義される所定の指令値に、高調波Vhを重畳させ、位置推定部32に回転子12の位置を推定させてもよい。
本実施形態において、制御部30は、高調波重畳方式において、d軸電圧指令値Vdのみに高調波Vhを重畳させている。制御部30は、d軸電圧指令値Vd及びq軸電圧指令値Vqの両方、d軸電流指令値IdRef及びq軸電流指令値IqRefの両方、並びに、3相電圧指令値Vu,Vv,Vwのみのうちのいずれかの指令値で定義される所定の指令値に、高調波Vhを重畳させ、位置推定部32に回転子12の位置を推定させてもよい。
バンドストップフィルタ43は、d軸電流Id及びq軸電流Iqから特定の帯域の周波数成分を除去する。高調波重畳部41によりd軸電圧指令値Vdに高調波Vhを重畳すると、高調波Vhによる周波数成分がd軸電流Id及びq軸電流Iqに含まれることになる。バンドストップフィルタ43は、この周波数成分を除去する。
位置推定部32は、電流座標変換部31によって算出されたq軸電流Iqから回転子12の位置Hm、及び回転子12の回転速度Fmを推定する。高調波Vhをd軸電圧指令値Vdに重畳すると、q軸電流Iqには高調波Vhに基づく電流高調波が含まれる。位置推定部32は、q軸電流Iqに含まれる電流高調波とモータ11の数式モデルから回転子12の位置Hm、及び回転子12の回転速度Fmを推定する。例えば、位置推定部32は、電流高調波から軸誤差Δθcを算出する。軸誤差Δθcは、実際の回転子12の位置Hmと、制御部30が認識している回転子12の位置Hmとの誤差である。位置推定部32は、軸誤差Δθcが0になるように、回転子12の位置Hm、及び回転子12の回転速度Fmを推定する。
<制御部が行う制御及び本実施形態の作用>
制御部30は、誘起電圧方式による位置推定を行うか、高調波重畳方式による位置推定を行うかを以下の制御によって切り替える。以下の制御は、モータ11の駆動中に所定の制御周期で繰り返し実行される。
制御部30は、誘起電圧方式による位置推定を行うか、高調波重畳方式による位置推定を行うかを以下の制御によって切り替える。以下の制御は、モータ11の駆動中に所定の制御周期で繰り返し実行される。
図3に示すように、ステップS1において、制御部30は、インバータ21の出力電圧Voが閾値未満か否かを判定する。閾値は、予め定められた値である。インバータ21の出力電圧Voは、モータ11に入力される電圧である。本実施形態において、インバータ21の出力電圧Voは、d軸電圧指令値Vdとq軸電圧指令値Vqとの合成値である。インバータ21の出力電圧Voは、以下の(1)式から算出できる。インバータ21の出力電圧Voを検出する制御部30が出力電圧検出部である。
誘起電圧方式により回転子12の位置を推定する場合、出力電圧Voが低いほど、位置推定精度が低下する。閾値としては、位置推定精度の低下が許容範囲を超える際の出力電圧Voに基づいて設定されている。即ち、誘起電圧方式での位置推定精度の低下が許容範囲を超える場合には、高調波重畳方式による位置推定が行われるように閾値は設定されている。
ステップS1の判定結果が肯定の場合、制御部30は、ステップS2の処理を行う。ステップS1の判定結果が否定の場合、制御部30は、ステップS3の処理を行う。
ステップS2において、制御部30は、高調波重畳方式によって回転子12の位置Hmの推定を行う。また、制御部30は、高調波重畳方式によって回転子12の回転速度Fmの推定を行う。制御部30は、出力電圧Voが閾値未満の場合、高調波重畳方式によって位置推定部32に回転子12の位置Hmを推定させるといえる。
ステップS2において、制御部30は、高調波重畳方式によって回転子12の位置Hmの推定を行う。また、制御部30は、高調波重畳方式によって回転子12の回転速度Fmの推定を行う。制御部30は、出力電圧Voが閾値未満の場合、高調波重畳方式によって位置推定部32に回転子12の位置Hmを推定させるといえる。
ステップS3において、制御部30は、誘起電圧方式によって回転子12の位置Hmの推定を行う。また、制御部30は、誘起電圧方式によって回転子12の回転速度Fmの推定を行う。制御部30は、出力電圧Voが閾値以上の場合、誘起電圧方式によって位置推定部32に回転子12の位置Hmを推定させるといえる。
図4に示すように、閾値には、ヒステリシスが設定されている。閾値は、第1切替値と、第2切替値と、を有する。第2切替値は、第1切替値よりも低い値である。第1切替値は、第1閾値である。第2切替値は、第2閾値である。制御部30が高調波重畳方式によって回転子12の位置Hmの推定を行っている場合の閾値は、第1切替値である。制御部30が誘起電圧方式によって回転子12の位置Hmの推定を行っている場合の閾値は、第2切替値である。制御部30は、第1切替値を、高調波重畳方式から誘起電圧方式への切り替えに用いる。制御部30は、第2切替値を、誘起電圧方式から高調波重畳方式への切り替えに用いる。
[本実施形態の効果]
(1)制御部30は、インバータ21の出力電圧Voが閾値未満の場合、高調波重畳方式によって位置推定部32に回転子12の位置Hmを推定させる。インバータ21の出力電圧Voとモータ11に発生する誘起電圧には相関がある。インバータ21の出力電圧Voに閾値を設定することによって、モータ11の温度などを要因とする誘起電圧のばらつきを加味した閾値を設定する必要がない。従って、高調波重畳方式によって回転子12の位置Hmを推定する速度域が広くなることを抑制できる。
(1)制御部30は、インバータ21の出力電圧Voが閾値未満の場合、高調波重畳方式によって位置推定部32に回転子12の位置Hmを推定させる。インバータ21の出力電圧Voとモータ11に発生する誘起電圧には相関がある。インバータ21の出力電圧Voに閾値を設定することによって、モータ11の温度などを要因とする誘起電圧のばらつきを加味した閾値を設定する必要がない。従って、高調波重畳方式によって回転子12の位置Hmを推定する速度域が広くなることを抑制できる。
(2)制御部30は、インバータ21の出力電圧Voが閾値以上の場合、誘起電圧方式によって位置推定部32に回転子12の位置Hmを推定させる。高調波重畳方式は、高調波Vhを重畳することによって静音性が悪化するおそれがある。また、電流高調波の発生によってモータ11の効率が悪化するおそれがある。出力電圧Voが閾値以上の場合に誘起電圧方式によって回転子12の位置Hmを推定することによって、モータ11の静音性が悪化することを抑制できる。また、モータ11の効率が悪化することを抑制できる。
(3)閾値には、ヒステリシスが設定されている。閾値を予め定められた1つの値とする場合、出力電圧Voが閾値を跨いで変動していると、高調波重畳方式と誘起電圧方式とが頻繁に切り替わるおそれがある。高調波重畳方式と誘起電圧方式とが頻繁に切り替わる場合、切り替えの際に制御の安定性が損なわれるおそれがある。閾値にヒステリシスを設定することによって、高調波重畳方式と誘起電圧方式とが頻繁に切り替わることを抑制できる。
(4)電動機M1は、電動圧縮機101に用いられている。電動圧縮機101の容量によっては、低負荷時にモータ11の駆動と停止とが切り替わりながら電動圧縮機101が駆動するおそれがある。この場合、冷媒とともに吐出されたオイルが循環せずに、電動圧縮機101内のオイルが不足するおそれがある。低負荷時にモータ11の駆動と停止とが切り替わることを抑制するためには、電動圧縮機101の最低回転数を低くする必要がある。電動圧縮機101の最低回転数を低くすると、高調波重畳方式によって回転子12の位置Hmを推定する必要がある速度域が広くなる。実施形態の電動機M1では、出力電圧Voに設定された閾値が過剰に高くなることが抑制されている。この電動機M1を電動圧縮機101に用いることによって、電動圧縮機101の最低回転数を低くした場合であっても、高調波重畳方式によって回転子12の位置Hmを推定する必要がある速度域が過剰に広くなることを抑制できる。
[変更例]
実施形態は、以下のように変更して実施することができる。実施形態及び以下の変形例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
実施形態は、以下のように変更して実施することができる。実施形態及び以下の変形例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
○閾値にヒステリシスを設定しなくてもよい。
○閾値が設定される出力電圧Voとしては、誘起電圧項のあるq軸電圧指令値Vqであってもよい。
○閾値が設定される出力電圧Voとしては、誘起電圧項のあるq軸電圧指令値Vqであってもよい。
○閾値が設定される出力電圧Voは、インバータ21から出力される実電圧であってもよい。
○電動機M1は、どのような装置に搭載されるものであってもよい。電動機M1は、例えば、燃料電池車に搭載されるエアーポンプの駆動源や水素ポンプの駆動源として用いられてもよい。
○電動機M1は、どのような装置に搭載されるものであってもよい。電動機M1は、例えば、燃料電池車に搭載されるエアーポンプの駆動源や水素ポンプの駆動源として用いられてもよい。
M1…電動機、Q1~Q6…スイッチング素子、U,V,W…コイル、11…モータ、12…回転子、13…固定子、21…インバータ、30…制御部、31…電流座標変換部、32…位置推定部、34…速度制御部、37…電流制御部、38…PWM制御部、51…ドライバー。
Claims (3)
- 回転子及び3相のコイルが巻回された固定子を有するモータと、
ドライバーと、前記ドライバーによって駆動されるスイッチング素子と、を有し、前記スイッチング素子によって前記モータを駆動するインバータと、
前記インバータの出力電圧を検出する出力電圧検出部と、
前記スイッチング素子の制御に用いられる複数の指令値を算出し、前記スイッチング素子を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記回転子の位置を推定する位置推定部を備え、
前記位置推定部は、
前記3相のコイルに発生する誘起電圧に基づき、前記回転子の位置を推定する誘起電圧方式と、
前記指令値に高調波を重畳させ、前記回転子の位置を推定する高調波重畳方式と、を有する電動機であって、
前記制御部は、
前記出力電圧が予め定められた閾値以上の場合、前記誘起電圧方式によって前記位置推定部に前記回転子の位置を推定させ、
前記出力電圧が前記閾値未満の場合、前記高調波重畳方式によって前記位置推定部に前記回転子の位置を推定させるように切り替えることを特徴とする電動機。 - 前記制御部は、
前記回転子の位置の他に、前記回転子の回転速度を推定する前記位置推定部と、
相電流を前記回転子の位置に基づいてd軸電流及びq軸電流に変換する電流座標変換部と、
前記回転速度と、外部から入力される回転速度指令値との差分に基づいて、d軸電流指令値及びq軸電流指令値を算出する速度制御部と、
前記d軸電流と前記d軸電流指令値との差分に基づいてd軸電圧指令値を算出し、前記q軸電流と前記q軸電流指令値との差分に基づいてq軸電圧指令値を算出する電流制御部と、
前記d軸電圧指令値及び前記q軸電圧指令値に基づいて、3相分の3相電圧指令値を算出するPWM制御部と、を備え、
前記制御部は、前記高調波重畳方式において、前記d軸電圧指令値のみ、前記d軸電圧指令値及び前記q軸電圧指令値の両方、前記d軸電流指令値及び前記q軸電流指令値の両方、並びに、前記3相電圧指令値のみのうちのいずれかの指令値で定義される所定の指令値に、高調波を重畳させ、前記位置推定部に前記回転子の位置を推定させる請求項1に記載の電動機。 - 前記閾値は、第1閾値と、前記第1閾値よりも低い第2閾値と、を有し、
前記制御部は、前記第1閾値を、前記高調波重畳方式から前記誘起電圧方式への切り替えに用い、前記第2閾値を、前記誘起電圧方式から前記高調波重畳方式への切り替えに用いる、請求項1又は請求項2に記載の電動機。
Priority Applications (4)
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Applications Claiming Priority (1)
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Family Applications (1)
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JP2022182583A Pending JP2024072015A (ja) | 2022-11-15 | 2022-11-15 | 電動機 |
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JP2011172324A (ja) | 2010-02-16 | 2011-09-01 | Toshiba Corp | インバータ制御装置 |
-
2022
- 2022-11-15 JP JP2022182583A patent/JP2024072015A/ja active Pending
-
2023
- 2023-11-08 US US18/504,262 patent/US20240171102A1/en active Pending
- 2023-11-09 CN CN202311495305.XA patent/CN118054714A/zh active Pending
- 2023-11-13 DE DE102023131543.9A patent/DE102023131543A1/de active Pending
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US20240171102A1 (en) | 2024-05-23 |
DE102023131543A1 (de) | 2024-05-16 |
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