JP2024066547A - 癌及び/又は癌転移を治療する方法 - Google Patents

癌及び/又は癌転移を治療する方法 Download PDF

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ロン リン チャン
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Abstract

【課題】癌及び/又は癌転移を治療する方法を提供する。【解決手段】本開示は、メソポーラスシリカナノ粒子に充填されたイリノテカンを対象に投与することを含む、対象の癌及び/又は癌転移を治療する方法に関する。本開示はまた、少なくとも1つの細孔を画定し、その少なくとも1つの細孔の側壁上に少なくとも1つの官能基を有するメソポーラスシリカナノ粒子(MSN)に充填された薬剤を含むコンジュゲートも提供する。【選択図】なし

Description

本開示は、癌治療に関する。特に、本開示は、メソポーラスシリカナノ粒子(MSN)を用いた癌治療を提供する。
癌は、組織における必要な条件を無視して無限に増殖する未分化細胞からなる細胞塊として知られており、腫瘍とも呼ばれる。この無限の増殖能を有する癌細胞は、周囲組織に浸潤し、より重度の場合、体の他の臓器に転移し、激しい痛みを引き起こし、最終的に死に至らしめる。
最近、いくつかの標的治療薬が特定の癌の治療に使用されているが、これまでは外科手術、放射線療法、及び細胞増殖を阻害する化学療法剤を用いた化学療法が主な方法である。しかしながら、化学療法剤は標的治療薬ではないため、既存の化学療法剤の最大の問題点は、抗癌剤による初期奏効にもかかわらず治療が最終的に失敗する主な要因である、細胞毒性及び薬剤耐性による副作用である。したがって、このような化学療法剤の限界を克服するためには、明確な抗癌作用メカニズムを有する標的治療薬を継続的に開発する必要がある。
したがって、本開示は、対象の癌及び/又は癌転移を治療する方法に関する。
したがって、本開示は、対象の癌、及び/又は癌の転移を有するか若しくはそのリスクがある対象を治療する方法を提供し、この方法は、コンジュゲートとしてのメソポーラスシリカナノ粒子(MSN)中に充填されたイリノテカン(IRI)及び任意選択による薬学的に許容される担体を対象に投与することを含む。
本開示のいくつかの実施形態では、癌は、転移性癌である。いくつかの実施形態では、癌は、固形癌である。癌の例としては、限定されるものではないが、扁平上皮癌、肺癌、腹膜癌、肝細胞癌、消化管癌を含む胃癌、膵臓癌、膠芽腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、尿路癌、肝癌、乳癌、結腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌又は子宮癌、唾液腺癌、腎臓癌、前立腺癌、外陰癌、甲状腺癌、肝癌、肛門癌、陰茎癌、黒色腫、多発性骨髄腫、B細胞リンパ腫、脳腫瘍、頭頸部癌、又はこれらに関連する転移癌が挙げられる。
いくつかの実施形態では、この方法は、血管新生を阻害するための方法である。
いくつかの実施形態では、この方法は、管形成を阻害するための方法である。
本開示はまた、それを必要とする対象の細胞の接着斑ターンオーバー及び/又は細胞遊走を阻害する方法も提供し、この方法は、MSN又はコンジュゲート及び任意選択による薬学的に許容される担体を対象に投与することを含む。
いくつかの実施形態では、細胞は、癌細胞である。癌細胞の例としては、限定されるものではないが、扁平上皮癌、肺癌、腹膜癌、肝細胞癌、消化管癌を含む胃癌、膵臓癌、膠芽腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、尿路癌、肝癌、乳癌、結腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌又は子宮癌、唾液腺癌、腎臓癌、前立腺癌、外陰癌、甲状腺癌、肝癌、肛門癌、陰茎癌、黒色腫、多発性骨髄腫、B細胞リンパ腫、脳腫瘍、頭頸部癌、又はこれらに関連する転移癌の細胞が挙げられる。
いくつかの実施形態では、MSNは、少なくとも1つの細孔を画定し、この少なくとも1つの側壁上に少なくとも1つの官能基を有し、この少なくとも1つの官能基のpK値は4.5以下である。
一実施形態では、少なくとも1つの細孔の側壁上の少なくとも1つの官能基は酸性基である。別の実施形態では、少なくとも1つの官能基は、スルホン酸基、硫酸エステル基、カルボン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、リン酸エステル基、又は亜リン酸エステル基を含む。さらなる実施形態では、少なくとも1つの官能基は、アルキルスルホン酸基である。
一実施形態では、シランの量と官能基を有するシランの量とのモル比は、60:1~5:1、50:1~5:1、40:1~5:1、30:1~5:1、20:1~5:1、10:1~5:1、9:1~7:1、50:1~10:1、40:1~20:1、35:1~25:1、又は30:1~27:1の範囲である。
一実施形態では、MSNは、有機分子、オリゴマー、若しくはポリマー、及び/又は正に荷電した分子、オリゴマー、若しくはポリマーによる外面修飾をさらに有する。
有機分子、オリゴマー、又はポリマーの例としては、限定されるものではないが、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリ(プロピレングリコール)(PPG)、又はPEG-PPGコポリマー、又はこれらの組み合わせが挙げられる。
正に荷電した分子、オリゴマー、又はポリマーの例としては、限定されるものではないが、(N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド)、N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、ポリエチレンイミン(PEI);アルコキシルシラン末端(ポリ)アルキレン(ポリ)アミン、若しくはアミノ基を有するオルガノアルコキシシラン、又はこれらの組み合わせが挙げられる。
いくつかの実施形態では、MSNの平均粒径は、透過型電子顕微鏡(TEM)による測定で100nm未満であり、別の態様では、MSNの平均流体力学的直径は、動的光散乱(DLS)によるPBS媒体中での測定で100nm未満である。
いくつかの実施形態では、MSNのゼータ電位は、-30mV~+30mVの範囲である。
本開示はまた、少なくとも1つの細孔を画定し、この少なくとも1つの細孔の側壁上に少なくとも1つの官能基を有するメソポーラスシリカナノ粒子に充填された薬剤を含むコンジュゲートを提供し、この少なくとも1つの官能基のpK値は4.5以下である。
本開示のいくつかの実施形態では、薬剤は、少なくとも1つの細孔に充填される。
本開示のいくつかの実施形態では、薬剤のpK値は、MSNの官能基のいずれか1つのpK値と同等以上であり、及び/又は薬剤は、MSNのいずれか1つの官能基のpK値と同等以上のpH値で特性の変化(例えば、活性型/不活性型変換、荷電状態など)を示す。
本開示のいくつかの実施形態では、薬剤は、正に荷電し、及び/又は、MSNの少なくとも1つの細孔の側壁上のいずれか1つの官能基のpK値と同等以上のpH値で活性型を示す。薬剤の例としては、限定されるものではないが、イリノテカン(IRI)、アマンタジン、アテノロール、アミオダロン、アキシチニブ、バルビタール、クリンダマイシン、クロザピン、クロラムブシル、カンプトテシン、クロロキン、クロルプロマジン、クロミフェン、セチリジン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジフェノキシレート、エピルビシン、エフェドリン、エピネフリン、エチオナミド、エトポシド、5-フルオロウラシル、イダルビシン、リドカイン、ミトキサントロン、メクロレタミン、パパベリン、プロプラノロール、プロメタジン、キナクリン、ラニチジン、セルトラリン、スニチニブ、トポテカン、トリミプラミン、トレミフェン、テルコナゾール、トリパラノール、ビンクリスチン、ビンブラスチン、又はベンラファキシンが挙げられる。
本開示はまた、本明細書に開示されるMSNを調製する方法に関し、この方法は:
(a)ミセルを形成するのに十分な濃度の界面活性剤を含むアルカリ溶液を提供する工程;
(b)シラン源及び細孔側壁として機能するシラン源をアルカリ溶液に導入する工程であって;細孔側壁として機能するシラン源が、官能基又は前記官能基の前駆体基を含み、前記官能基のpK値が4.5以下である、工程;並びに
(c)工程(b)のアルカリ溶液で水熱処理を行ってMSNを得る工程を含む。
いくつかの実施形態では、工程(b)のシラン源及び細孔側壁として機能するシラン源は、順次又は同時に導入される。
いくつかの実施形態では、この方法は、工程(b)のアルカリ溶液に第2のシラン源を導入することをさらに含む。
いくつかの実施形態では、この方法は、MSNの外面の表面修飾を行うことをさらに含む。本開示のいくつかの実施形態では、表面修飾は、工程(b)の後、又は工程(b)のアルカリ溶液に第2のシラン源を導入する工程の後に行われる。
いくつかの実施形態では、この方法は、工程(c)のアルカリ溶液から界面活性剤を除去することをさらに含む。
いくつかの実施形態では、この方法は、MSNを精製又は洗浄することをさらに含む。
一実施形態では、官能基は、アルキルスルホン酸基である。
一実施形態では、前記官能基の前駆体基は、アルキルチオール基である。
一実施形態では、工程(b)のシラン源の使用量と細孔側壁として機能するシラン源の使用量とのモル比は、60:1~5:1、50:1~5:1、40:1~5:1、30:1~5:1、20:1~5:1、10:1~5:1、9:1~7:1、50:1~10:1、40:1~20:1、35:1~25:1、又は30:1~27:1の範囲である。
本開示は、それを必要とする対象の疾患を治療する、及び/又は生存期間を延長する方法を提供し、この方法は、コンジュゲート及び任意選択による薬学的に許容される担体を対象に投与することを含む。
本開示はまた、それを必要とする対象の血管新生を阻害する方法を提供し、この方法は、コンジュゲート及び任意選択による薬学的に許容される担体を対象に投与することを含む。
図1は、30nmの(SO )-MSN(NTT2_186k)のTEM画像を示す。
図2は、イリノテカン、irinotecan@(SO )-MSN(IRI@NTT2_185)、及びイリノテカンとゲムシタビンの併用治療による抗膵臓癌効果及び毒性を示す。
図3は、イリノテカン及びirinotecan@(SO )-MSN(IRI@NTT2_186k)の抗結腸直腸癌効果を示す。
図4A及び図4Bは、転移性結腸直腸癌マウスモデルにおけるIRI@NTT2_186kの腫瘍増殖及び転移を阻害する効果を評価するための生物発光画像の結果(図4A)、並びに腫瘍における定量的生物発光強度及び全生存期間の結果(図4B)を示す。
図5は、MSNが管形成を阻害する効果を評価するための管形成アッセイの結果を示す。
図6は、血管新生に対するMSNの効果を評価するための漿尿膜(CAM)分析の結果を示す。
図7は、MSNの抗転移及び全生存期間の向上(MSNと抗腫瘍薬の併用治療)を示す。
図8A及び図8Bは、MSNの転移阻害に関連するタンパク質発現(図8A)及びタンパク質マーカー(図8B)を示す。
本明細書の開示の理解を容易にするために、本明細書で使用される用語をここで定義する。
「任意選択の」又は「任意選択により若しくは任意選択による」とは、その後に説明する事象又は状況が発生してもしなくてもよく、説明には、前記事象又は状況が発生する場合と発生しない場合が含まれることを意味する。例えば、「任意選択により薬剤を含む」という句は、薬剤が存在しても存在しなくてもよいことを意味する。
本明細書及び特許請求の範囲に関連して、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、特に別段の指示がない限り、複数の指示対象を含む。特に明記しない限り、本明細書で提供されるありとあらゆる例又は例示的な語(例えば、「など」)は、本発明の範囲を限定するのではなく、単に本発明のより良い説明のために使用される。
本明細書に列挙される任意の数値範囲は、そこに含まれるすべての部分範囲を含むことが意図されていることを理解されたい。例えば、「50~70℃」の範囲には、記載の最小値50℃と記載の最大値70℃との間のすべての部分範囲及び特定の値(例えば、58℃~67℃、及び53℃~62℃、60℃、又は68℃を含む)が含まれる。開示される数値範囲は連続しているため、開示される数値範囲には、最小値と最大値との間の各数値が含まれる。特に明記しない限り、本明細書に示す様々な数値範囲は概算である。
「治療」、「治療すること」、及び「治療する」という用語は、一般に、所望の薬理学的及び/又は生理学的効果を得ることを指す。その効果は、疾患、障害、又はこれらの症状を完全に又は部分的に予防するという点で予防的であり得、疾患、障害、及び/又はこれらに起因する症状の部分的又は完全な治癒の点で治療的であり得る。本明細書で使用される「治療」は、哺乳動物、好ましくはヒトの疾患のあらゆる治療を包含し、(1)対象の疾患、障害、若しくはこれらの症状の発症を抑制すること、又は(2)対象の疾患、障害、若しくはこれらの症状を緩和若しくは改善することを含む。
本開示では、本明細書で使用される「治療薬」又は「薬剤」という用語は、生物において治療効果を有する物質を指す。治療成分の例としては、限定されるものではないが、小分子薬物、ペプチド、酵素、タンパク質薬物、抗体、ワクチン、抗生物質、又はヌクレオチド薬物が挙げられる。
本明細書で使用される「対象」という用語は、本明細書に開示される化合物又は組成物の投与から利益を得ることができるあらゆる動物である。いくつかの実施形態では、対象は、哺乳動物、例えば、ヒト、霊長類、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、例えばラット又はマウスなどのげっ歯類である。典型的には、哺乳動物はヒトである。
本明細書に記載される「有効量」という用語は、所望の機能の所望の調節を提供するのに十分な量の成分を意味する。以下に指摘するように、必要とされる正確な量は、対象の疾患状態、身体的状態、年齢、性別、種、及び体重、組成物の具体的な同一性及び製剤化などによって対象ごとに異なるであろう。投与計画は、最適な治療効果を誘導するように調整することができる。例えば、いくつかの分割用量を毎日投与してもよいし、又は治療状況の緊急性によって示されるように用量を相対的に減少させてもよい。したがって、正確な「有効量」を明記することはできない。しかしながら、適切な有効量は、日常的な実験のみを用いて当業者が決定することができる。
本明細書で使用される「薬学的に許容される」という用語は、健全な医学的判断の範囲内である、合理的な利益/リスク比に見合った、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、又は他の問題又は合併症なしで、対象(ヒト又は非ヒト動物のいずれか)の組織と接触して使用するのに適した化合物、材料、組成物、及び/又は剤形を指す。それぞれの担体、賦形剤などはまた、製剤の他の成分と適合性があるという意味で「許容可能」でなければならない。適切な担体、賦形剤などは、標準的な薬学のテキストで確認することができる。
本開示では、特に指定しない限り、本明細書で使用される「ナノ-」という接頭辞は、約300nm以下のサイズを意味する。特に指定しない限り、本明細書で使用される「メソ-」という接頭辞は、約50nm以下のサイズを意味する。
本開示では、本明細書で使用される「シラン」という用語はSiHの誘導体を指す。通常、4つの水素のうち少なくとも1つは、以下に説明するように、アルキル、アルコキシル、アミノなどの置換基で置換される。本明細書で使用される「アルコキシシラン」という用語は、ケイ素原子に直接結合した少なくとも1つのアルコキシル置換基を有するシランを指す。本明細書で使用される「オルガノアルコキシシラン」という用語は、ケイ素原子に直接結合した少なくとも1つのアルコキシル置換基及び少なくとも1つのヒドロカルビル置換基を有するシランを指す。本明細書で使用される「ケイ酸源」という用語は、オルトケイ酸の塩形態又はエステル形態、例えば、オルトケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、オルトケイ酸テトラエチル(テトラエトキシシラン、TEOS)、テトラメチルオルトケイ酸塩、テトラプロピルオルトケイ酸塩とみなすことができる物質を指す。任意選択により、ヒドロカルビル置換基は、ヘテロ原子でさらに置換又は中断され得る。
本開示では、「アルキル」という用語は、飽和、直鎖、又は分枝鎖アルキルを指し、好ましくは1~30個の炭素原子、より好ましくは1~20個の炭素原子を含む。アルキルの例としては、限定されるものではないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、2-エチルブチル、n-ペンチル、イソペンチル、1-メチルペンチル、1,3-ジメチルブチル、n-ヘキシル、1-メチルヘキシル、n-ヘプチル、イソヘプチル、1,1,3,3-テトラメチルブチル、1-メチルヘプチル、3-メチルヘプチル、n-オクチル、2-エチルヘキシル、1,1,3-トリメチルヘキシル、1,1,3,3-テトラメチルペンチル、ノニル、デシル、ウンデシル、1-メチルウンデシル、ドデシル、1,1,3,3,5,5-ヘキサメチルヘキシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、又はオクタデシルなどが挙げられる。
本開示では、本明細書で使用される「アルコキシル」又は「アルコキシ」という用語は、式「-O-アルキル」を有する基を意味し、前記式中の「アルキル」の定義は、上述した「アルキル」の意味を有する。
本明細書で使用される「担体」又は「賦形剤」という用語は、それ自体が治療薬ではなく、担体及び/若しくは希釈剤及び/若しくはアジュバント、若しくは対象への治療薬の送達用のビヒクルとして使用されるか、或いはその取り扱い若しくは保存特性を改善するため、又は液体溶液、懸濁液、エマルジョン、顆粒、アンプル、注射液、インプラント、挿入物、注入剤、キット、軟膏、ローション、塗布薬、クリーム、ゲル、スプレー、ドロップ、エロゾール、若しくは局所投与用のこれらの組み合わせなどの個別の物品に用量単位の組成物を形成することを可能にする若しくは容易にするために製剤に添加されるあらゆる物質を指す。適切な担体又は賦形剤は、医薬製剤又は食品を製造する当業者には周知である。担体又は賦形剤には、限定ではなく例示として、緩衝剤、希釈剤、崩壊剤、結合剤、接着剤、湿潤剤、ポリマー、滑沢剤、流動促進剤、不快な味又は臭いを隠す又は中和するために添加される物質、香味料、染料、芳香剤、及び組成物の外観を改善するために添加される物質が含まれ得る。許容される担体又は賦形剤には、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、重炭酸緩衝液、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、酸化マグネシウム、リン酸及び硫酸のナトリウム塩及びカルシウム塩、炭酸マグネシウム、タルク、ゼラチン、アカシアガム、アルギン酸ナトリウム、ペクチン、デキストリン、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、スクロース、デンプン、ゼラチン、セルロース系材料(アルカン酸のセルロースエステル及びセルロースアルキルエステルなど)、低融点ワックスココアバター、アミノ酸、尿素、アルコール、アスコルビン酸、リン脂質、タンパク質(例えば、血清アルブミン)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、塩化ナトリウム又は他の塩、リポソーム、マンニトール、ソルビトール、グリセロール又は粉末、ポリマー(ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、及びポリエチレングリコールなど)、及び他の薬学的に許容される材料が含まれる。担体は、治療薬の薬理学的活性を破壊してはならず、治療量の薬剤を送達するのに十分な用量で投与された場合、無毒であるべきである。
例えば、MSN及び充填剤は、以下に適合したものを含む、固体又は液体形態での投与のために特別に製剤化することができる:(1)経口投与、例えば、飲薬(水性又は非水性溶液又は懸濁液)、トローチ、糖衣錠、カプセル、丸薬、錠剤(例えば、口腔吸収、舌下吸収、及び全身吸収を目的とするもの)、ボーラス薬、粉末、顆粒、舌に適用するためのペースト;(2)非経口投与、例えば、皮下注射、筋肉内注射、静脈内注射、若しくは硬膜外注射による、例えば、滅菌溶液若しくは懸濁液、又は徐放性製として;(3)局所適用、例えば、クリーム、ローション、ゲル、軟膏、又は皮膚に適用される放出制御パッチ又はスプレーとして;(4)膣内又は直腸内投与、例えば、ペッサリー、クリーム、坐剤、又はフォームとして;(5)舌下投与;(6)眼内投与;(7)経皮投与;(8)経粘膜投与;又は(9)経鼻投与。
癌及び/又は癌転移を治療する方法
本開示は、対象の癌、及び/又は癌の転移を有するか若しくはそのリスクがある対象を治療する方法を提供し、この方法は、コンジュゲートとしてのメソポーラスシリカナノ粒子(MSN)中に充填されたイリノテカン(IRI)及び任意選択による薬学的に許容される担体を対象に投与することを含む。
本開示は、それを必要とする対象の疾患を治療する、及び/又は生存期間を延長する方法を提供し、この方法は、コンジュゲート及び任意選択による薬学的に許容される担体を対象に投与することを含む。
本開示はまた、それを必要とする対象の血管新生を阻害する方法を提供し、この方法は、コンジュゲート及び任意選択による薬学的に許容される担体を対象に投与することを含む。
本開示のいくつかの実施形態では、疾患は癌であり;特に、疾患は転移性癌である。いくつかの実施態様では、疾患は固形癌である。疾患の例としては、限定されるものではないが、扁平上皮癌、肺癌、腹膜癌、肝細胞癌、消化管癌を含む胃癌、膵臓癌、膠芽腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、尿路癌、肝癌、乳癌、結腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌又は子宮癌、唾液腺癌、腎臓癌、前立腺癌、外陰癌、甲状腺癌、肝癌、肛門癌、陰茎癌、黒色腫、多発性骨髄腫、B細胞リンパ腫、脳腫瘍、頭頸部癌、又はこれらに関連する転移癌が挙げられる。
本開示の一実施形態では、MSN及びコンジュゲートは、結腸直腸癌、特に転移性結腸直腸癌の治療に有効である。結腸直腸癌(CRC)は、男性で3番目に多く診断される癌であり、女性で2番目に多い癌であり、また、世界中で癌による死亡の2番目に多い原因である。5年生存期間は、CRCの限局性ステージ(ステージI~III)の90%から遠隔転移患者(ステージIV)の10%の範囲である。転移は、CRC関連死の主な原因である。CRCの22%は、初期診断時に転移性であり、患者の約70%が最終的に転移性再発を発症する。結腸直腸癌は、転移する傾向があり、隣接するリンパ節、肝臓、肺、骨、脳、又は脊髄に拡散する。原発性結腸直腸腫瘍の増殖及び転移も抑制できる有効な治療法が切実に必要とされている。
癌細胞の脳への転移も問題であり、死亡率が高くなる可能性がある。腫瘍が脳に転移すると、外科手術及び放射線療法のいずれもあまり効果的ではなく、全身化学療法は、BBBのために有効性が制限される。BBBは、中枢神経系の重要な生理学的障壁であり、循環血液から脳へのイオン及び分子の移動を制御し、侵入する病原体及び毒物から脳を保護する。しかしながら、BBBは、脳疾患を治療するためのほとんどの薬物の脳への移動もブロックする。発明者らは、細孔の特定の内面が修飾され、粒子の表面が修飾されたMSNは、腫瘍の標的化、血液脳腫瘍関門(BBTB)通過、BBB通過、脳腫瘍、及び脳転移の治療に使用できる、治療薬、特にイリノテカンの優れた充填能力、緩衝液又は生理学的条件での良好な分散性、及び貯蔵又は生理学的条件での良好な安定性を示すことを見出した。さらに、MSNは、in vitroモデル及びin vivoモデルに基づいて、癌転移を予防、阻害、又は抑制するための抗細胞遊走活性を示し、癌転移の発生率を低下させる可能性がある。治療薬が充填されたMSNは、転移する傾向が強い癌の治療のための新しいアプローチを提供する。
メソポーラスシリカナノ粒子は、大きい細孔容積、化学的/熱的安定性、高い充填容量、調整可能な表面特性、及び優れた生体適合性などの固有の物理的/化学的特性により、薬物送達システムとして大きな可能性があると考えられる。MSNは、シリカ及びメソポーラス材料の両方の複合的な利点を提供する。シリカ化学の多様性が、金属ナノ粒子、蛍光分子、希土類元素を含む他の材料との容易な一体化を可能にする。メソポーラス材料は、大きな表面積、高い細孔容積、及び均一な細孔径分布を提供する。バルク材料及びナノサイズ材料の両方における前述の利点を組み合わせることで、様々な用途で使用できる特性を提供する。
イリノテカンは、結腸直腸癌用及び膵臓癌用に認可されている(異なる薬剤と組み合わせた一次治療)。イリノテカンは、このような癌の重要な化学療法剤であるが、骨髄及び胃腸(GI)毒性の発生率が高い。さらに、リポソームイリノテカン(Onivyde)は、膵臓癌用に認可されているが(異なる薬剤と組み合わせた二次治療)、リポソームは、抗転移効果を一切有していない。より長い循環期間(数日)は、Onivydeが腫瘍領域に蓄積するのを助けるが、同様に体内に残存する可能性があり、望ましくない副作用をもたらし得る。OnivydeのGI毒性は、結腸直腸癌での使用に懸念が残る。
本開示の一実施形態では、MSN中にイリノテカンを含むコンジュゲートは、結腸直腸癌に対する抗癌効果を有意に改善する。さらに、MSNは、in vitroモデル及びin vivoモデルに基づいて癌転移を阻止することが示されており、極めて般的である結腸直腸癌の転移の発生率を低下させ得る。Irinotecan@MSNを含むコンジュゲートは、特に転移する傾向が強い癌では、イリノテカン及びリポソームイリノテカンと比べてさらなる臨床的利益を提供する。
本開示の一実施形態では、MSN中にイリノテカンを含むコンジュゲートは、膵臓癌に対する抗癌効果を有意に改善する。Irinotecan@NTT_MSNの抗癌効果は、イリノテカン単独よりも優れており、従来のイリノテカン+ゲムシタビン併用療法と比較して体重減少が少ない。
本開示の一実施形態では、MSN中にイリノテカンを含むコンジュゲートは、原発腫瘍の増殖及び転移を阻害し、生存期間を延長することができるが、イリノテカン単独では、原発腫瘍の増殖及び転移に対して非効率的な腫瘍抑制しか示さない。
本開示のいくつかの実施形態では、MSN単独でも、血管の上皮細胞の管形成を阻害し、腫瘍周囲の血管新生を阻害する。
本開示はまた、それを必要とする対象の細胞の接着斑ターンオーバー及び/又は細胞遊走を阻害する方法を提供し、この方法は、MSN又はコンジュゲート及び任意選択による薬学的に許容される担体を対象に投与することを含む。本開示のいくつかの実施形態では、MSNは、内皮細胞の遊走能を阻害し、血管の不規則な成長をもたらす。いくつかの実施形態では、MSNは、ERK、パキシリン(PXN)、及びFAKタンパク質のリン酸化を阻害し、これらのタンパク質のリン酸化が、接着斑ターンオーバーと関連していることが示されている。いくつかの実施形態では、MSNは、アクチン及び微小管細胞骨格に影響を及ぼさない。
いくつかの実施形態では、細胞は、癌細胞である。癌細胞の例としては、限定されるものではないが、扁平上皮癌、肺癌、腹膜癌、肝細胞癌、消化管癌を含む胃癌、膵臓癌、膠芽腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、尿路癌、肝癌、乳癌、結腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌又は子宮癌、唾液腺癌、腎臓癌、前立腺癌、外陰癌、甲状腺癌、肝癌、肛門癌、陰茎癌、黒色腫、多発性骨髄腫、B細胞リンパ腫、脳腫瘍、頭頸部癌、又はこれらに関連する転移癌の細胞が挙げられる。
細孔表面上に官能基を有するメソポーラスシリカナノ粒子
MSNは、薬剤を送達するための担体として使用することができる。通常、シリカナノ粒子の表面は、-SiOH基からの水素の解離により、負電荷を有し得る。したがって、当業者は、静電相互作用によって利用可能な、正電荷を有する薬剤のMSNへの充填を検討するであろう。しかしながら、MSNの表面電荷は、ほとんどの状況でわずかに負に荷電していると考えられる。理論に拘束されることなく、シリカナノ粒子上のシラノール基は、約4.5~5.5又は8.5~9.9のpK値を有し得ると考えられ、これは、中性又は弱酸性環境に存在するMSNが、その表面に負電荷をわずかにしか有していないことを意味する。即ち、MSNに充填された薬剤が、例えば、MSN上のシラノール基と同等以下のpK値を示す場合、又は特性の変化(例えば、活性型/不活性型変換、荷電状態など)を示す場合、低い静電相互作用又は反発静電相互作用により前記薬剤を効率的に充填することは困難であり得る。したがって、表面特性を変更又は最適化することが、MSNに必要であろう。加えて、粒子の「外」面ではなく細孔内に薬剤を充填することが好ましいであろう。なぜなら、こうすることにより、粒子からの容易な薬物漏れ、粒子の凝集、又はin vivoでのMSNの挙動の影響などの潜在的な問題を回避することができるからである。
これらの目標を達成するために、MSNの表面、特に細孔の側壁に官能基が導入され、この官能基が4.5以下のpK値を有するため、MSNの(細孔)表面は、より低いpH値、例えば7、6、又は5.5よりも低い十分な負電荷を有し得る。ここで、本開示は、少なくとも1つの細孔を画定し、この少なくとも1つの細孔の側壁上に少なくとも1つの官能基を有するメソポーラスシリカナノ粒子を提供し、この少なくとも1つの官能基のpK値は4.5以下である。
一実施形態では、官能基は、スルホン酸基、硫酸エステル基、カルボン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、リン酸エステル基、又は亜リン酸エステル基などの酸性基であり得る。一実施形態では、前駆体基は、官能基に変換することができ、チオール、スルトン、塩化アシル、ニトリル、無水物、アミド及びカルボン酸エステル、オキシ塩化リン、三塩化リンであり得る。
一実施形態では、シランの量と官能基を有するシランの量とのモル比は、60:1~5:1、50:1~5:1、40:1~5:1、30:1~5:1、20:1~5:1、10:1~5:1、9:1~7:1、50:1~10:1、40:1~20:1、35:1~25:1、又は30:1~27:1の範囲である。
一実施形態では、MSNは、有機分子、オリゴマー、又はポリマー、及び/又は正に荷電した分子、オリゴマー、若しくはポリマーによる外面修飾をさらに有する。
有機分子、オリゴマー、若しくはポリマーの例としては、限定されるものではないが、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリ(プロピレングリコール)(PPG)、若しくはPEG-PPGコポリマー、又はこれらの組み合わせが挙げられる。
正に電荷した分子、オリゴマー、又はポリマーの例としては、限定されるものではないが、(N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド)、N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、ポリエチレンイミン(PEI);アルコキシルシラン末端(ポリ)アルキレン(ポリ)アミン、又はアミノ基を有するオルガノアルコキシシラン、又はこれらの組み合わせが挙げられる。
MSNの特徴
本開示では、MSNは、好ましくは、透過型電子顕微鏡(TEM)による測定で100nm未満の平均直径(粒径)有する。一実施形態では、本開示のメソポーラスシリカナノ粒子は、TEMによる測定で100nm以下、80nm以下、65nm以下、50nm以下、40nm以下、30nm以下、20nm以下の平均粒径を有する。一実施形態では、本開示のメソポーラスシリカナノ粒子は、20nm以下、10nm以下、5nm以下、3nm以下、又は2nm以下の細孔径を有する。一実施形態では、本開示のメソポーラスシリカナノ粒子は、動的光散乱によるリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中での測定で100nm以下、80nm以下、60nm以下、50nm以下、40nm以下、30nm以下の平均流体力学的直径を有する。
特定の実施形態では、MSNのゼータ電位(pH7.4の条件下)は、-30~+30mV、-28~+25mV、-23~+22mV、-20~+20mV、-15~+15mV、又は-10~+10mVの範囲、又は本明細書で言及するエンドポイント内の妥当な数値範囲、例えば-15~+20mV、-10~+25mV、-15~+10mVなどであり得る。一実施形態では、メソポーラスシリカナノ粒子は、1000m/g以下、750m/g以下、又は500m/g以下のBET表面積を有する。
細孔修飾MSNを調製する方法
一態様では、MSNは、以下の工程によって調製することができる:(a)ミセルを形成するのに十分な濃度の界面活性剤を含むアルカリ溶液を提供する工程;(b-1)シラン源をアルカリ溶液に導入し、所望の官能基又はその前駆体基を有する細孔側壁として機能するシラン源(以降、「細孔側壁として機能するシラン」と呼ぶ)をアルカリ溶液に次々と導入する工程、又は(b-2)シラン源及び細孔側壁として機能するシランを溶液に導入する工程;任意選択による、第2のシラン源を導入して、外面修飾剤を導入する工程;及び(c)アルカリ溶液で水熱処理を行う工程;任意選択による、生成物を回収する工程;任意選択による、生成物から残留界面活性剤を除去する工程;及び任意選択による、生成物を精製又は洗浄する工程。
一実施形態では、0.2~0.5gの界面活性剤を、密封ビーカー内の所望の温度(例えば、45~65℃)の100~250mLの水性アルカリ溶液(例えば、水酸化アンモニウム溶液(0.05~1.2M))に溶解する。10~30分間攪拌した後、300~2500μLの溶媒(例えば、エタノールなどのアルコール)中の200~550μLのシラン源及び10~100μLの内面として機能するシランを添加し、30~120分間撹拌する。その後、0.6~2mLの溶媒(例えば、エタノールなどのアルコール)中の追加の50~200μLのシラン源を導入し、1.5~3時間撹拌する。2~6mLの溶媒(例えば、エタノールなどのアルコール)中の表面修飾剤、例えば、650~1700μLのPEGシラン及び任意選択による正に荷電した基を有する30~1000μLのシランを導入し、0.5~1.5時間撹拌する。混合物を、少なくとも15時間攪拌しながら又は攪拌せずに、所望の温度(例えば、40~80℃)で熟成させる。最後に、溶液を密封し、60~100℃のオーブンに入れて12~48時間水熱処理する。合成されたままの生成物を、遠心分離又はクロスフローによって洗浄して回収する。合成されたままの生成物を、最終的に界面活性剤の除去及び精製のために処理し、遠心分離又はクロスフローによって洗浄して回収する。シラン源が所望の官能基の前駆体基を有する場合、任意選択によるさらなる精製を含む、酸化又は加水分解などのさらなる処理を行って、前駆体基を所望の官能基に変換する。次いで、最終生成物を、好ましくは水、又は85%以上のエタノール中に保存する。
工程(a)での使用に適した界面活性剤の例としては、限定されるものではないが、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、及び非イオン性界面活性剤が挙げられる。適切な界面活性剤は、pH値、イオン強度、温度、反応物、及び生成物などの反応条件に基づいて選択される。カチオン界面活性剤の例としては、限定されるものではないが、長鎖ヒドロカルビル基を有するpH依存性の第一級、第二級、又は第三級アミン(末端アミン基は、特定のpH値未満を示す場合は正電荷を有し、第一級及び第二級アミンは、pH<10で正に荷電するようになる)、例えば、オクテニジン二塩酸塩、及び恒久的に荷電した第四級アンモニウム塩、例えば、臭化セトリモニウム(CTAB)、塩化セチルピリジニウム(CPC)、塩化ベンザルコニウム(BAC)、塩化ベンゼトニウム(BZT)、塩化ジメチルジオクタデシルアンモニウム、及び臭化ジオクタデシルジメチルアンモニウム(DODAB)が挙げられる。アニオン界面活性剤の例としては、限定されるものではないが、硫酸塩、スルホン酸塩、及びリン酸塩又はエステル、例えば、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸ナトリウム(ドデシル硫酸ナトリウム、SLS、又はSDS)、及び関連するアルキルエーテル硫酸塩、ラウレス硫酸ナトリウム(ラウリルエーテル硫酸ナトリウム又はSLES)、及びミレス硫酸ナトリウム、ドキュセート(ジオクチルソジウムスルホサクシネート)、パーフルオロオクタンスルホネート(PFOS)、パーフルオロブタンスルホネート、アルキル-アリールエーテルリン酸塩、アルキルエーテルリン酸塩などが挙げられる。非イオン性界面活性剤の例としては、限定されるものではないが、ポリ(オキシエチレン)ノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレングリコールソルビタンアルキルエステル、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、グルコシドアルキルエーテル、ポリエチレングリコールオクチルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールアルキルフェニルエーテル、グリセロールアルキルエステル、ポリプロピレングリコールアルキルエーテル、ブロックコポリマー、ポロキサマー、コカミドMEA、コカミドDEA、ラウリルジメチルアミンオキシド、又はポリエトキシル化獣脂アミンが挙げられる。
一実施形態では、工程(b-1)、(b-2)で使用されるシラン源は、テトラエトキシシラン(TEOS)、テトラメトキシシラン(TMOS)、ケイ酸ナトリウム、又はこれらの混合物を含む。
一実施形態では、細孔側壁として機能するシランは、工程(b-1)又は(b-2)で使用することができる。前記細孔側壁として機能するシランの例としては、限定されるものではないが、(メルカプトアルキル)トリアルコキシシラン、例えば、(3-メルカプトプロピル)トリメトキシシラン(MPTMS)、(3-メルカプトプロピル)トリエトキシシラン、(11-メルカプトウンデシル)トリメトキシシラン(トリヒドロキシシリル)アルカンスルホン酸、例えば、3-(トリヒドロキシシリル)プロパン-1-スルホン酸(TPS)、3-(トリヒドロキシシリル)プロピルメチルホスホネート、(3-トリエトキシシリル)プロピルコハク酸無水物、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)カーボネート、カルボキシエチルシラントリオール、2-(4-クロロスルホニルフェニル)エチルトリメトキシシラン、トリエトキシシリルプロピルマレインアミド酸、N-(トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミントリアセテート、ジエチルホスファトエチルトリエトキシシランが挙げられる。
一実施形態では、表面修飾剤は、MSNの特性を調整するために使用することができる。一実施形態では、(有機)修飾剤としては、限定されるものではないが、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、n-オクチルトリエトキシシラン、クロロメチルトリメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシスチレンシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン(PTEOS)、フェニルトリメトキシシラン(PTMOS)、メチルトリメトキシシラン(MTMOS)、エチルトリアセトキシシラン(ETAS)、N-(トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン三酢酸(EDTAS)、(3-トリヒドロキシシリル)プロピルメチルホスホネート(THPMP)、メチルトリアセトキシシラン(MTAS)、双性イオンシラン、(N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド)、N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、ポリエチレンイミン(PEI);アルコキシルシラン末端(ポリ)アルキレン(ポリ)アミン、又はアミノ基を有するオルガノアルコキシシランなどが挙げられる。
一実施形態では、シラン源(合計、即ち、工程(b-1)/(b-2)で使用される)と細孔側壁として機能するシランのモル比は、60:1~5:1、50:1~5:1、40:1~5:1、30:1~5:1、20:1~5:1、10:1~5:1、9:1~7:1、50:1~10:1、40:1~20:1、35:1~25:1、又は30:1~27:1の範囲、又はエンドポイントで構成される任意の妥当な数値範囲であり得る。
細孔修飾MSNに充填された薬剤を含むコンジュゲート
本発明者らは、特定の細孔側壁の修飾により、MSNが、その官能基のいずれか1つと同等以上のpK値を示し、及び/又はMSNのいずれか1つの官能基のpK値と同等以上のpH値で特性の変化(例えば、活性型/不活性型変換、荷電状態など)を示す薬剤に対して所望の薬理学的効果及び優れた充填効率若しくは安定性を提供する潜在能力を有し得ると推測した。加えて、薬剤は、正に荷電し、及び/又はMSNの少なくとも1つの細孔の側壁上のいずれかの官能基のpK値と同等又はそれ以上のpH値で活性型を示す。
薬剤の1つの具体例は、イリノテカン(IRI)である。特に、IRIは、酸性環境、特にpH<5.5ではラクトン型(治療的に活性と見なされる)になり、わずかに酸性、中性、又は塩基性環境、特にpH>6ではカルボキシレート形態(不活性と見なされる)になるであろう。したがって、IRIは、活性型、即ち、酸性環境で充填する必要があるが、MSN上のシラノール基の解離レベルは、IRIに対して十分な引力を提供することができず、低い充填効率及び/又はIRIの長期安定性をもたらす。これらの薬剤の例としては、限定されるものではないが、アマンタジン、アテノロール、アミオダロン、アキシチニブ、バルビタール、クリンダマイシン、クロザピン、クロラムブシル、カンプトテシン、クロロキン、クロルプロマジン、クロミフェン、セチリジン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジフェノキシレート、エピルビシン、エフェドリン、エピネフリン、エチオナミド、エトポシド、5-フルオロウラシル、イダルビシン、リドカイン、ミトキサントロン、メクロレタミン、パパベリン、プロプラノロール、プロメタジン、キナクリン、ラニチジン、セルトラリン、スニチニブ、トポテカン、トリミプラミン、トレミフェン、テルコナゾール、トリパラノール、ビンクリスチン、ビンブラスチン、又はベンラファキシンが挙げられる。
一実施形態では、薬剤は、ナノ粒子に充填される。MSNへの薬剤の封入は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)と生物学的に類似又は同等である媒体などの媒体において分散度及び流体力学的サイズに有意に影響を及ぼさない。
疾患の治療のために、追加の生理活性成分を、MSN上及び/又はMSN内に充填することができ、例えば、MSNの空間内、MSNの表面などに分布させることができる。生理活性成分は、その大きさ及び関連する障害/疾患に基づいて適切に選択することができる。生理活性成分の例としては、限定されるものではないが、エベロリムス、トラベクテジン、アブラキサン、TLK286、AV-299、DN-101、パゾパニブ、GSK690693、RTA744、ON0910.Na、AZD6244(ARRY-142886)、AMN-107、TKI-258、GSK461364、AZD1152、エンザスタウリン、バンデタニブ、ARQ-197、MK-0457、MLN8054、PHA-739358、R-763、AT-9263、FLT-3阻害剤、VEGFR阻害剤、EGFR TK阻害剤、オーロラキナーゼ阻害剤、PIK-1モジュレーター、Bcl-2阻害剤、HDAC阻害剤、c-MET阻害剤、PARP阻害剤、Cdk阻害剤、EGFR TK阻害剤、IGFR-TK阻害剤、抗HGF抗体、PI3キナーゼ阻害剤、AKT阻害剤、JAK/STAT阻害剤、チェックポイント-1又は2阻害剤、接着斑キナーゼ阻害剤、Mapキナーゼキナーゼ(MEK)阻害剤、VEGFトラップ抗体、ペメトレキセド、エルロチニブ、ダサタニブ、ニロチニブ、デカタニブ、パニツムマブ、アムルビシン、オレゴボマブ、Lep-etu、ノラトレキセド、azd2171、バタブリン、オファツムマブ、ザノリムマブ、エドテカリン、テトランドリン、ルビテカン、テスミリフェン、オブリメルセン、チシリムマブ、イピリムマブ、ゴシポール、Bio111、131-I-TM-601、ALT-110、BIO140、CC8490、シレンギチド、ジマテカン、IL13-PE38QQR、INO1001、IPdR1 KRX-0402、ルカントン、LY317615、ノイラジアブ、ビテスパン、Rta744、Sdx 102、タランパネル、アトラセンタン、Xr311、ロミデプシン、ADS-100380、スニチニブ、5-フルオロウラシル、ボリノスタット、エトポシド、ゲムシタビン、ドキソルビシンリポソーム、5’-デオキシ-5-フルオロウリジン、ビンクリスチン、テモゾロミド、ZK-304709、セリシクリブ;PD0325901、AZD-6244、カペシタビン、L-グルタミン酸、N-[4-[2-(2-アミノ-4,7-ジヒドロ-4-オキソ-1-H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-イル)エチル]ベンゾイル]-二ナトリウム塩、七水和物、カンプトテシン、PEG標識イリノテカン、タモキシフェン、クエン酸トレミフェン、アナストラゾール、エキセメスタン、レトロゾール、DES(ジエチルスチルベストロール)、エストラジオール、エストロゲン、結合型エストロゲン、ベバシズマブ、IMC-1C11、CHIR-258、3-[5-(メチルスルホニルピペラジンメチル)-インドリル]-キノロン、バタラニブ、AG-013736、AVE-0005、酢酸ゴセレリン、酢酸ロイプロリド、パモ酸トリプトレリン、酢酸メドロキシプロゲステロン、カプロン酸ヒドロキシプロゲステロン、酢酸メゲストロール、ラロキシフェン、ビカルタミド、フルタミド、ニルタミド、酢酸メゲストロール、CP-724714;TAK-165、HKI-272、エルロチニブ、ラパタニブ、カネルチニブ、ABX-EGF抗体、アービタックス、EKB-569、PKI-166、GW-572016、イオナファルニブ、BMS-214662、チピファニブ;アミホスチン、NVP-LAQ824、スベロイルアナリドヒドロキサム酸、バルプロ酸、トリコスタチンA、FK-228、SU11248、ソラフェニブ、KRN951、アミノグルテチミド、アムサクリン、アナグレリド、L-アスパラギナーゼ、カルメットゲラン桿菌(BCG)ワクチン、ブレオマイシン、ブセレリン、ブスルファン、カルボプラチン、カルムスチン、クロラムブシル、シスプラチン、クラドリビン、クロドロネート、シプロテロン、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ジエチルスチルベストロール、エピルビシン、フルダラビンなど、フルドロコルチゾン、フルオキシメステロン、フルタミド、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、イダルビシン、イホスファミド、イマチニブ、ロイプロリド、レバミゾール、ロムスチン、メクロレタミン、メルファラン、6-メルカプトプリン、メスナ、メトトレキサート、マイトマイシン、ミトタン、ミトキサントロン、ニルタミド、オクトレオチド、オキサリプラチン、パミドロネート、ペントスタチン、プリカマイシン、ポルフィマー、プロカルバジン、ラルチトレキセド、リツキシマブ、ストレプトゾシン、テニポシド、試験ステロン、サリドマイド、チオグアニン、チオテパ、トレチノイン、ビンデシン、13-シス-レチノイン酸、フェニルアラニンマスタード、ウラシルマスタード、エストラムスチン、アルトレタミン、フロクスウリジン、5-デオキシウリジン、シトシンアラビノシド、6-メカプトプリン、デオキシコホルマイシン、カルシトリオール、バルビシン、ミトラマイシン、ビンブラスチン、ビノレルビン、トポテカン、ラゾキシン、マリマスタット、COL-3、ネオバスタット、BMS-275291、スクアラミン、エンドスタチン、SU5416、SU6668、EMD121974、インターロイキン-12、IM862、アンジオスタチン、ビタキシン、ドロロキシフェン、イドキシフェン、スピロノラクトン、フィナステリド、シミチジン、トラスツズマブ、デニロイキンジフチトクス、ゲフィチニブ、ボルテジミブ、パクリタキセル、クレモフォールフリーパクリタキセル、エピチロンB、BMS-247550、BMS-310705、ドロロキシフェン、4-ヒドロキシタモキシフェン、ピペンドキシフェン、ERA-923、アルゾキシフェン、フルベストラント、アコルビフェン、ラソフォキシフェン、イドキシフェン、TSE-424、HMR-3339、ZK186619、トポテカン、PTK787/ZK222584、VX-745、PD184352、ラパマイシン、40-O-(2-ヒドロキシエチル)ラパマイシン、テムシロリムス、AP-23573、RAD001、ABT-578、BC-210、LY294002、LY292223、LY292696、LY293684、LY293646、ワートマーミン(wortmarmin)、ZM336372、L-779,450、PEG-フィルグラスチム、ダルベポエチン、エリスロポエチン、顆粒球コロニー刺激因子、ゾレンドロネート、プレドニゾン、セツキシマブ、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、ヒストレリン、ペグ化インターフェロンα-2a、インターフェロンα-2a、ペグ化インターフェロンα-2b、インターフェロンα-2b、アザシチジン、PEG-L-アスパラギナーゼ、レナリドマイド、ゲムツズマブ、ヒドロコルチゾン、インターロイキン-11、デクスラゾキサン、アレムツズマブ、オールトランスレチノイン酸、ケトコナゾール、インターロイキン-2、メゲストロール、免疫グロブリン、ナイトロジェンマスタード、メチルプレドニゾロン、イブリツモマブチウキセタン、アンドロゲン、デシタビン、ヘキサメチルメラミン、ベキサロテン、トシツモマブ、三酸化ヒ素、コルチゾン、エディトロネート、ミトタン、シクロスポリン、リポソームダウノルビシン、エドウィナ-アスパラギナーゼ、ストロンチウム89、カソピタント、ネツピタント、NK-1受容体アンタゴニスト、パロノセトロン、アプレピタント、ジフェンヒドラミン、ヒドロキシジン、メトクロプラミド、ロラゼパム、アルプラゾラム、ハロペリドール、ドロペリドール、ドロナビノール、デキサメタゾン、メチルプレドニゾロン、プロクロルペラジン、グラニセトロン、オンダンセトロン、ドラセトロン、トロピセトロン、ペグフィルグラスチム、エリスロポエチン、エポエチンα及びダルベポエチンα、ドセタキセル、カバジタキセル、クルクミン、クルクミン類似体が挙げられる。
以下の実施例は、本発明が属する分野の当業者に本発明をより理解しやすくするために提供されるが、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
材料、方法、及び試験モデル
透過型電子顕微鏡(TEM)
透過型電子顕微鏡(TEM)を使用して、シリカナノ粒子の外観を直接調べて検証する。100kVの加速電圧で作動させたHitachi H-7100透過型電子顕微鏡でTEM画像を撮影した。エタノール中に分散させた試料を、炭素被覆銅グリッド上に滴下し、大気中で乾燥させてTEMで観察した。
動的光散乱(DLS)及びゼータ電位
異なる溶液環境におけるシリカナノ粒子のサイズを、Malvern Zetasizer Nano ZS(Malvern,UK)で動的光散乱(DLS)を用いて測定した。異なる溶液中で形成された(溶媒和)粒径を、室温においてHO及びPBS緩衝溶液(pH7.4)で分析した。0.1mg/mLの粒子濃度のPBS(0.01倍、pH7.4)中のシリカナノ粒子の表面電荷(ゼータ電位)をMalvern Zetasizer Nano ZSによって測定した。
元素分析
シリカナノ粒子中の炭素、窒素、酸素、硫黄、及び水素の質量百分率を、元素分析装置(elementar Vario EL cube type for NCSH,German)によって決定した。
実施例1
粒子の外面は修飾されているが細孔側壁は修飾されていないメソポーラスシリカナノ粒子の調製
MSNを、高度に希釈された低濃度界面活性剤条件下でアンモニア塩基触媒法を用いて調製した。アンモニア濃度、TEOS添加量、及び反応温度を調整することで粒径を制御した。典型的には、0.29gのCTABを、密封ビーカー内の60℃の150mLの水酸化アンモニウム溶液(0.128M~0.17M)に溶解した。15分間の攪拌後、密封蓋を取り外し、次いで4.105mLのエタノール中の390μLのテトラエトキシシラン(TEOS)及び5μLの3-アミノプロピルトリメトキシシラン(APTMS)を激しく攪拌しながら溶液に加えた。1時間の攪拌後、2mLのエタノール中の550μLのPEG及び85.7~300μLのTA(任意選択により添加)を反応に導入した。混合物を30分間撹拌した後、反応量が50mLに減少するまで、撹拌せずに60℃で一晩熟成させた。次いで、溶液を0.22μmフィルターでろ過し、70℃のオーブンに入れて24時間水熱処理した。合成されたままの試料を、クロスフローによって洗浄して回収した。MSNの細孔内の界面活性剤を除去するために、合成されたままの試料を、1回目の1時間の酸抽出用の848μLのHCl(36.5~38%)及び2回目の60℃で1時間の酸抽出用の50μLのHClを含む50mLのエタノールで回収した。生成物を、クロスフローによって洗浄して回収し、最終的にHO又は有機溶媒中に保存した。MSNの粒径(25nm及び50nm)を、TEOS及びNHOH(25nm MSN:MSN-PEG25、MSN-PEG/TA25;50nm MSN:MSN-PEG50、MSN-PEG/TA50)の濃度を調整することで制御した。
実施例2
細孔側壁にスルホン酸官能基を有するメソポーラスシリカナノ粒子((SO )-MSN)の調製
0.2~0.5gのCTABを、密封ビーカー内の45~65℃の100~250mLの水酸化アンモニウム水溶液(約0.05~1.2M)に溶解した。10~30分間攪拌した後、900~2500μLのエタノール中の200~550μLのテトラエトキシシラン(TEOS)及び10~100μLの(3-メルカプトプロピル)トリメトキシシラン(MPTMS)(TEOS/MPTMSのモル比=50:1、40:1、25:1、20:1、10:1、8.3:1、及び5:1、TEOS:MPTMS比を変更して、様々な用途又は充填される薬物に合わせて細孔表面の官能基の量を調節することができる)を加え、30~90分間撹拌した。その後、0.8~2mLのエタノール中の追加の50~130μLのテトラエトキシシラン(TEOS)を導入し、1.5~3時間撹拌した。次いで、2000~5400μLのエタノール中の650~1700μLの2-[メトキシ(ポリエチレンオキシ)プロピル]-トリメトキシシラン(PEG-シラン)及び100~260μLのN-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(TA-シラン)を導入し、0.5~1.5時間撹拌した。次いで、混合物を40~60℃で少なくとも15時間熟成させた。最後に、溶液を密封し、65~75℃のオーブンに入れて15~24時間水熱処理した。中間生成物を、遠心分離又はクロスフローによって洗浄して回収した。中間生成物を、界面活性剤の除去及び精製のために最終的に処理し、遠心分離又はクロスフローによって洗浄して回収した。メルカプト(チオール)基をスルホン酸基に変換するために、中間体に酸化剤を導入して酸化を行い、最終生成物をさらに精製した。生成物を、水、有機溶媒、又は緩衝液中に保存した。
(SO )-MSNの流体力学的直径を、PBS緩衝液中の動的光散乱(DSL)によって測定した。DLSの結果は、すべての(SO )-MSNが約30nm~50nmの範囲内に十分に分散していることを示しているが、多量のスルホン基が導入された粒子(TEOS:MPTMS=5:1)の分散度が影響を受け得る(水及びPBS緩衝液中で約60nmの流体力学的直径)。NTT2_185及びNTT2_186kの合成条件は、TEOS/MPTMS(8.3:1)及びPEG-シラン/TA-シラン(7:1)である。NTT2_185及びNTT2_186kの特性評価には、TEMによる測定で約20.6nm及び25.1nmの粒径:PBS中の測定で約33.5nm及び39.7nmのDLS粒径;約-25mV及び-25.3mVのゼータ電位が含まれる。NTT2_186kの特性評価は、NTT2_185に類似しているが、NTT2_186kの表面修飾及び製造プロセスが最適化された。
中性表面電荷(ゼータ電位)を有する(SO )-MSNの調製
0.2~0.5gのCTABを、密封ビーカー内の55~65℃の100~250mLの水酸化アンモニウム水溶液(約0.05~1.2M)に溶解した。10~30分間攪拌した後、250~700μLの水中の25~70μLの3-(トリヒドロキシシリル)プロパン-1-スルホン酸(TPS)、900~2500μLのエタノール中の200~550μLのテトラエトキシシラン(TEOS)、及び800~2000μLのエタノール中の追加の50~130μLのテトラエトキシシラン(TEOS)を別々に導入し、各導入後に55~65℃で5分~2.5時間撹拌した。次いで、2000~5400μLのエタノール中の650~1700μLの2-[メトキシ(ポリエチレンオキシ)プロピル]-トリメトキシシラン(PEG-シラン)及び30~90μLのN-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン(EDPTMS)を導入し、0.5~1.5時間撹拌した。次いで、混合物を45~65℃で少なくとも15時間熟成させた。最後に、溶液を密封し、60~90℃のオーブンに入れて18~30時間水熱処理して、最終生成物(SO )-MSN(NTT2_202)を得た。
NTT2_202の特性評価には、TEMによる測定で約28.2nmの粒径:PBSでの測定で約52.9nmのDLS粒径;約+1.41mVのゼータ電位が含まれる。
実施例3
イリノテカン(IRI)をMSNに充填した
16.785mLのHO中の300mgのMSNを、495μLのNaHCO(0.1M、pH9.96)又は酢酸緩衝液(0.1M、pH5.5)と混合した。室温で5分間振とうした後、IRI溶液を、溶液に導入して室温で30分間攪拌した。その後、混合物を、Vivaspin又はクロスフローによってNaHCO(2.5mM、pH8.5)又は酢酸緩衝液(2.5mM、pH5.5)で洗浄して精製した。最後に、生成物を、NaHCO又は酢酸緩衝液中に保存した。
イリノテカン(IRI)を(SO )-MSN(NTT2_185及びNTT2_186k)に充填した
6mLの酢酸緩衝液(2.5M、H.5)中の600gの粒子をIRI溶液と混合し、室温で30分間撹拌した。その後、混合物を、Vivaspin又はクロスフローによって酢酸緩衝液で洗浄して精製した。最後に、生成物を酢酸緩衝液中に保存した。
イリノテカン(IRI)を(SO )-MSN(NTT2_202)に充填した
アルカリ処理のために、1.5mLのHO中の150mgのNTT2_202を375μLのNaHCO(93mM、pH11.5)と混合した。次いで、IRI溶液を導入し、室温で10分間撹拌した。その後、混合物を最初にHOで洗浄し、次いでVivaspinによって酢酸緩衝液(2.5mM、pH5.5)で洗浄した。次いで、IRI@NTT2_202を、7.5mLの酢酸緩衝液に4℃で少なくとも15時間浸漬した。その後、混合物を酢酸緩衝液でさらに洗浄し、生成物を酢酸緩衝液中に保存した。
IRIをMSN又は(SO MSNに充填する駆動力は静電相互作用である。正に荷電したIRIは、細孔の内面に負に荷電したシラノール基又は官能基を有するMSNの細孔に吸着される。イリノテカン(約10.9のpka)は、pH10.9未満の環境で正に荷電し、IRIの立体構造がpHによって変化した。IRIは、酸性環境(pH<5.5)ではラクトン型(治療的に活性と見なされる)になり、わずかに酸性、中性、又は塩基性環境(pH>6)ではカルボキシレート型(不活性型と見なされる)になるであろう。IRIの特性によると、IRI充填プロセスの適切な条件は、IRIを正に荷電させ、活性型にすることができる5.5以下のpHであった。様々な充填戦略を、MSN、NTT2_186k、及びNTT2_202で試験した。酸性条件(pH≦5.5)でのIRIのMSNへの充填は、低い充填容量(3.93%)及び充填効率(33%)、並びにIRI@MSNの低い長期安定性を示した。その理由は、細孔の内面のシラノール基が酸性
条件で弱い負電荷を示し、IRIと細孔側壁のシラノール基との間の静電相互作用が不十分となるためである。アルカリ性条件でIRI充填プロセスを行うと、MSNの細孔内で負に荷電するのが促進され、充填容量を10%~15%改善することができた。しかしながら、IRI@MSN中のIRIのラクトン型の比率は約63%であり、保存時間の経過と共に減少した。対照的に、(SO )-MSNは、細孔側壁にスルホン酸官能基(約-7のpka)を有し、たとえ酸性条件でも強く負に荷電したことを示すことができた。NTT2_186kのIRI充填容量(11.43%)及び充填効率(>80%)は、細孔の内面にスルホン酸官能基を有さないMSNよりもはるかに高かった。さらに重要なことに、IRI分子のほとんどすべてがラクトン型(>99%)であった。粒子表面がEDPTMSで修飾された別の(SO )-MSN(NTT2_202)は、中性ゼータ電位を示した。IRIをNTT2_202に充填するために、充填プロセスをわずかに調整する。まず、正に荷電したアミン基とIRIとの間の静電反発力を減少させるために、NTT2_202粒子をアルカリ性NaHCO緩衝液で処理して、NTT2_202表面のアミン基を脱プロトン化した。細孔の側壁上の負に荷電したスルホン基と正に荷電したIRIとの間の静電相互作用を介して、IRI分子を細孔に充填することができた。充填プロセスの後、IRI@NTT2_202を酢酸緩衝液で洗浄し、長期保存のために酸性条件で保存した。IRI@NTT2_202中のIRIのラクトン型の比率は、約96%以上を達成することができた。NTT2_202の充填容量は、NTT2_186kよりも低いが、NTT2_202は、中性表面電荷(ゼータ電位)を有するIRI@MSN粒子を合成するアプローチを提供し、この粒子は、依然として良好な充填容量、充填効率、及びIRIのラクトン型比率を示し得る。結論として、スルホン酸官能基(pka≦4.5の官能基)がMSNの細孔内面で修飾されており、これが、IRIのMSNへの充填、特に酸性条件で行われる充填プロセスで重要であった。IRIを充填したMSNの特性評価を表1に示す。
実施例4
膵臓癌治療のためのMSNナノ製剤中のイリノテカン
in vivoでのIRI@(SO )-MSN抗膵臓腫瘍効果を評価するために、ヒト膵臓癌細胞である5×10個のPANC-1細胞をNOD-SCIDマウスの左脇腹に皮下移植し、PANC-1異種移植マウスモデルとして使用した。最初の注射を、腫瘍体積が100mmに達したときに開始した。担癌マウスに、イリノテカン(IRI)、IRIとゲムシタビンGEM(膵臓治療の承認薬)との併用処置、IRIが20mg/kgのIRI@NTT2_185を週に1回、合計4回投与した。腫瘍サイズ及び体重を、試験期間にわたって観察した。結果は、腫瘍増殖阻害に対するIRI@NTT2_185及び(IRI+GEM)併用療法の有効性がIRIよりも優れていることを示した。IRI@NTT2_185の抗癌効果は、IRI+GEMと同様であったが、IRI@NTT2_185は、(IRI+GEM)併用療法と比較して低い毒性(体重減少が少ない)を示した(図2)。IRI@(SO )-MSNの抗膵臓癌効果を、別の皮下同種移植腫瘍モデルでも評価した。2×10個のKPC細胞を、B6マウスの左脇腹に皮下移植した。最初の注射を、腫瘍体積が100mmに達したときに開始した。担癌マウスに、20mg/kgのIRI及びIRI@(SO )-MSNを週に2回、合計4回投与した。IRI@(SO )-MSNは、IRI群と比較して有意な腫瘍増殖阻害を示した。さらに、IRI@(SO )-MSNは、用量依存性の抗癌効果を示した。結論として、MSNナノ製剤中のイリノテカンは、より優れた腫瘍標的能力(MSNのEPR効果に基づく)を有し、薬物関連毒性の減少及び腫瘍阻害の改善をもたらした。IRIのMSNナノ製剤は、膵臓癌治療における満たされていない医療ニーズに対する潜在的な治療法を提案した。
実施例5
結腸直腸癌治療のためのMSNナノ製剤中のイリノテカン
in vivoでのIRI@(SO )-MSN(IRI@NTT2_186k)の抗結腸直腸腫瘍効果を評価するために、ヒト結腸直腸癌細胞である5×10個のHCT-116細胞を、NOD-SCIDマウスの左脇腹に皮下移植して、HCT-116異所性異種移植マウスモデルとして使用した。担癌マウスに、20mg/kg及び40mg/kgの用量レベルのIRI及びIRI@NTT2_186kを週に2回、合計6回投与した。腫瘍サイズ及び体重を、試験期間にわたって観察した。MSNナノ製剤中のイリノテカンは、イリノテカン単独よりも有効性の高い腫瘍阻害を示した。結果は、IRI@NTT2_186kが用量依存性の抗癌効果を示したことを示した。40mg/kgのIRI@NTT2_186k群では、腫瘍の増殖は、有意に抑制され、投与中に体重減少は観察されなかった。処置後、40mg/kgのIRI@MSNで処置したマウスの腫瘍はほとんど消失した。さらに、IRI@NTT2_186kは、IRI単独の2分の1の低用量で同様の有効性を達成することができる(図3)。
実施例6
MSNナノ製剤中のイリノテカンは、原発腫瘍の増殖及び転移を阻害し、マウスの生存期間を延長することができる
結腸直腸癌は高度に転移性であり、原発性結腸直腸腫瘍の増殖及び転移も抑制できる有効な治療法が切実に必要とされている。同所性転移性結腸直腸癌モデルは、治療法の有効性を試験するための優れたモデルである。2×10個のルシフェラーゼ発現HCT-116細胞を、外科手術で盲腸壁に直接注入して、同所性結腸直腸癌転移モデルを確立した。このモデルでは、隣接する腸組織、腹膜、及び遠隔転移(脾臓、腎臓、肝臓、及び横隔膜)で高度に転移性の腫瘍が自然に発生する。担癌マウスに、40mg/kgの用量レベルのIRI及びIRI@NTT2_186kを週に2回、合計8回投与した。腫瘍の増殖及び転移を、IVISシステムによって週に1回観察し、体重を、試験期間にわたって観察した。全生存期間を評価するために、動物を、自然死又は瀕死状態に近づく時点まで監視した。IVIS画像及び定量的生物発光強度の結果は、対照群での速い腫瘍増殖及び顕著な腹膜転移を示し、これらがマウスの死を促進した。IRI単独で処置したマウスは、対照群と比較して遅い腫瘍増殖速度を示したが、IRIは、腫瘍の増殖及び転移の非効率的な阻害を示した。したがって、処置を中止すると、腫瘍再発及び腫瘍転移が観察された。IRI@NTT2_186kは、原発腫瘍の増殖及び癌転移を有意に阻害し、癌細胞の生物発光シグナルは、処置後は検出できなかった。すべてのマウスが試験の最後まで生存し、IRI@NTT2_186k処置群の生存時間は、IRI処置群及び対照群よりもはるかに長かった(図4A及び図4B)。別の転移マウスモデルも有効性試験に使用した。HCT-116-Luc細胞の腫瘍塊(2~3mm×2~3mmの塊)を盲腸壁に固定して、同所性結腸直腸癌転移モデルとして使用した。同様の結果が観察され、IRI@NTT2_186k処置群は、原発腫瘍の増殖及び癌転移の有意な阻害、及び生存期間の延長を示した。結論として、MSNナノ製剤中のイリノテカンは、イリノテカンよりも優れた利点を提供し、原発腫瘍の増殖及び癌転移を阻害すると同時に生存期間を延長した。MSNナノ製剤中の抗新生物薬は、高度に転移性の癌の潜在的な治療法を提供した。
実施例7
管形成アッセイ
癌細胞の遊走及び腫瘍の血管新生は、癌転移の重要な要因であった。腫瘍の血管新生プロセス中に、内皮細胞が、既存の血管から発生し、腫瘍部位近傍に新しい血管を形成し、腫瘍の急速な増殖のための栄養素を供給した。管形成アッセイを使用して、細胞遊走及び血管新生に対するMSNの効果を調べた。管形成アッセイは、HUVEC細胞をマトリゲル上に播種することによって確立した。6時間後、管構造の形成が観察され、血管の接合部を、ImageJを使用して計算した。対照群及びSSN(固体シリカナノ粒子)群では、管構造の完全なネットワークが示された。しかしながら、4つのMSN群では、管構造の形成が阻害された。結果は、MSNが、HUVECの遊走を阻害し、管構造の形成を防止できることを示している(図5)。
実施例8
血管新生のための漿尿膜(CAM)分析
腫瘍の血管新生に対するMSNの効果を評価するために、ニワトリ胚漿尿膜(CAM)腫瘍モデルを使用した。受精卵をインキュベーターで10日間インキュベートし、次いで卵殻に小さな窓を開け、大動脈近傍のCAM膜に癌細胞を移植した。MSN又はドキソルビシン(DOX)を、腫瘍が形成された12日目に投与し、14日目及び16日目に腫瘍近傍の血管新生を観察した。
DOX処置群では、血管は、DOXが血管の増殖を阻害したことによる崩壊及び密度低下を示した。MSNは、DOXのようには血管密度を低下させなかったが、対照群の血管と比較して血管の不規則な増殖を引き起こして腫瘍領域の血管新生を阻止した。MSN群では、分岐微小血管の数は増加したが、血管の長さははるかに短くなった(図6)。MSNは、内皮細胞及び腫瘍細胞の遊走を阻害したため、血管内皮細胞の腫瘍誘発増殖は、外部に広がることができず、その位置にのみ蓄積した。結論として、MSN処置群では、血管の密度は低下しなかったが、内皮細胞の遊走能が影響を受け、血管の不規則な成長が起きた。
実施例9
MSNは、in vivo試験(Lipo-DoxとMSNの併用処置)において転移を阻害し、全生存期間を延長する
自然癌転移マウスモデルを使用して、生存期間に対するMSNの転移阻害の効果を評価した。1.5×10個のルシフェラーゼ発現4T1癌細胞をBALB/cマウスの左脇腹に皮下移植し、異所性同種移植マウスモデルとして使用した。担癌マウスに、MSN(IV注射又はIT注射)と組み合わせて、又は組み合わせずに、Lipo-Dox(IV注射、4mg/kg)を3日間隔で合計3回投与した。腫瘍の増殖及び全生存期間を腫瘍注入後にモニタリングした。癌転移を追跡するために、22日目、26日目、29日目、及び34日目にIVISシステムによって生物発光画像を撮影した。対照群のマウスで、原発腫瘍が急速に増殖し、癌細胞が体の他の部分に転移することが観察された。Lipo-Dox処置群では、原発腫瘍の増殖は阻害されたが、癌転移は依然として観察された。対照群及びLipo-Dox処置群の重度の転移はマウスの死を引き起こし、結果として、両群で同様の生存期間となった。対照的に、Lipo-DoxとMSNとの併用処置(MSNは静脈注射又は腫瘍内注射により注射した)は、転移を有意に阻害し、生存期間を延長する(図7)。結果は、MSNは、癌転移を顕著に阻害したが、体重及び原発腫瘍サイズに影響を及ぼさないことを示した。転移は、死を引き起こす主な要因であり、MSNナノ製剤中の抗新生物薬(化学療法剤、タンパク質、核酸薬)又は抗新生物薬とMSNとの併用処置は、原発腫瘍の増殖及び癌の転移を同時に阻害し、生存期間を延長することができた。MSNは、さらなる臨床的利益を提供し、特に転移する傾向が強い癌に対して転移の発生率を低下させることができた。
実施例10 転移阻害のメカニズム
MSNが細胞遊走、血管新生、及び癌転移を阻害するメカニズムを調べるために、MSNで処理した癌細胞(4T1)のタンパク質発現レベルをウェスタンブロットで評価した。ウェスタンブロットの結果によると、MSN-PEG/TA25で処理した細胞におけるp-ERK、p-パキシリン、及びp-FAKのタンパク質発現レベルは対照群よりも低く、MSNがERK、パキシリン、及びFAKのリン酸化を阻害することを示した(図8A)。これらのタンパク質(ERK、パキシリン、及びFAK)のリン酸化は、細胞遊走に関連する接着斑ターンオーバーと関連していることが示されている。結果は、MSNが接着斑ターンオーバーのバランスを乱し、結果として細胞遊走、血管新生、及び癌転移を阻害できることを示した。さらに、抗転移のin vivo試験においてMSNで処置した担癌マウスを屠殺し、腫瘍を採取して免疫組織化学染色のために切片にした。腫瘍(MSN処置マウス由来)におけるp-FAK及びp-EPRからの緑色シグナルは、対照群よりも有意に低下した(図8B)。細胞内でのタンパク質発現及び腫瘍内のタンパク質マーカーの免疫蛍光を分析した結果、MSNが転移を阻害するメカニズムが接着斑ターンオーバーのバランスの乱れに関連していることが示された。
ナノ粒子が細胞運動を制限する別のメカニズムが文献に提示されており、このメカニズムは、ナノ粒子を介した細胞内微小管重合の重度の阻害であった。細胞の細胞骨格に対するMSNの効果を評価するために、MSN処理細胞の細胞骨格(G-アクチン及びF-アクチン)及び細胞骨格形態の変化(F-アクチン及びα-チューブリン)に関連するタンパク質発現を、ウェスタンブロット及び免疫蛍光アッセイによって検出した。ウェスタンブロット及び免疫蛍光アッセイのデータは、MSN処置群と対照群との間に差を示さず;結果として、MSNは、アクチン及び微小管細胞骨格に影響を及ぼさなかった。MSNの転移阻害は、細胞内微小管細胞骨格の干渉ではなく、接着斑ターンオーバーのバランスの乱れに関連していた。
実施例に例示した成分、反応条件、及びパラメータは、単に例示を目的としており、材料又は調製方法を制限することを意図するものではない。
本発明の分野における当業者は、本出願の精神及び範囲から逸脱することなく、本発明の教示及び開示に変更及び修正を加えることができることを理解されよう。上記の内容に基づいて、本出願は、その変更又は修正が添付の特許請求の範囲又はその同等物で定義される範囲内であることを条件として、そのあらゆる変更及び修正を包含することを意図する。

Claims (20)

  1. 対象の癌、及び/又は前記癌の転移を有するか若しくはそのリスクがある対象を治療する方法であって、メソポーラスシリカナノ粒子(MSN)に充填されたイリノテカン(IRI)及び任意選択による薬学的に許容される担体を前記対象に投与することを含む、方法。
  2. 前記癌が、扁平上皮癌、肺癌、腹膜癌、肝細胞癌、消化管癌を含む胃癌、膵臓癌、膠芽腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、尿路癌、肝癌、乳癌、結腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌又は子宮癌、唾液腺癌、腎臓癌、前立腺癌、外陰癌、甲状腺癌、肝癌、肛門癌、陰茎癌、黒色腫、多発性骨髄腫、B細胞リンパ腫、脳腫瘍、又は頭頸部癌である、請求項1に記載の方法。
  3. 血管新生を阻害するため、管形成を阻害するため、又は前記癌の細胞の接着斑ターンオーバー及び/若しくは細胞遊走を阻害するためである、請求項1に記載の方法。
  4. 前記MSNが、少なくとも1つの細孔を画定し、前記少なくとも1つの細孔の側壁上に少なくとも1つの官能基を有し、前記少なくとも1つの官能基のpK値が4.5以下である、請求項1に記載の方法。
  5. PBS培地で測定した前記MSNの平均流体力学的直径が100nm未満である、請求項4に記載の方法。
  6. 前記少なくとも1つの官能基が、スルホン酸基、硫酸エステル基、カルボン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、リン酸エステル基、又は亜リン酸エステル基を含む、請求項4に記載の方法。
  7. シランの量と前記官能基を有するシランの量とのモル比が60:1~5:1の範囲である、請求項4に記載の方法。
  8. 前記MSNが、有機分子、オリゴマー、又はポリマー、及び/又は正に荷電した分子、オリゴマー、又はポリマーによる外面修飾をさらに有する、請求項4に記載の方法。
  9. 前記有機分子、オリゴマー、又はポリマーが、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリ(プロピレングリコール)(PPG)、又はPEG-PPGコポリマー、又はこれらの組み合わせから選択される、請求項8に記載の方法。
  10. 前記正に電荷した分子、オリゴマー、又はポリマーが、(N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド)、N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、ポリエチレンイミン(PEI);アルコキシルシラン末端(ポリ)アルキレン(ポリ)アミン、若しくはアミノ基を有するオルガノアルコキシシラン、又はこれらの組み合わせから選択される、請求項8に記載の方法。
  11. 少なくとも1つの細孔を画定し前記少なくとも1つの細孔の側壁に少なくとも1つの官能基を有するメソポーラスシリカナノ粒子(MSN)に充填された薬剤を含むコンジュゲートであって、前記少なくとも1つの官能基のpK値が4.5以下である、コンジュゲート。
  12. PBS培地で測定した前記MSNの平均流体力学的直径が100nm未満である、請求項11に記載のコンジュゲート。
  13. 前記少なくとも1つの官能基が、スルホン酸基、硫酸エステル基、カルボン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、リン酸エステル基、又は亜リン酸エステル基を含む、請求項11に記載のコンジュゲート。
  14. シランの量と前記官能基を有するシランの量とのモル比が60:1~5:1の範囲である、請求項11に記載のコンジュゲート。
  15. 有機分子、オリゴマー、若しくはポリマー、及び/又は正に荷電した分子、オリゴマー、若しくはポリマーによる外面修飾をさらに有する、請求項11に記載のコンジュゲート。
  16. 前記有機分子、オリゴマー、又はポリマーが、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリ(プロピレングリコール)(PPG)、又はPEG-PPGコポリマー、又はこれらの組み合わせから選択される、請求項15に記載のコンジュゲート。
  17. 前記正に荷電した分子、オリゴマー、又はポリマーが、(N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド)、N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、ポリエチレンイミン(PEI);アルコキシルシラン末端(ポリ)アルキレン(ポリ)アミン、若しくはアミノ基を有するオルガノアルコキシシラン、又はこれらの組み合わせから選択される、請求項15に記載のコンジュゲート。
  18. 前記薬剤が、前記少なくとも1つの細孔に充填されている、請求項11に記載のコンジュゲート。
  19. 前記薬剤のpK値が、前記MSNのシラノール基の値と同等以上であり、並びに/若しくは前記薬剤が、前記MSNのいずれか1つの官能基のpK値と同等以上のpH値で特性の変化を示すか、又は前記薬剤が、正に荷電し、及び/若しくは前記MSNの広い壁上のいずれか1つの官能基のpK値と同等以上のpH値で活性型を示す、請求項11に記載のコンジュゲート。
  20. 前記薬剤がイリノテカン(IRI)である、請求項11に記載のコンジュゲート。
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