JP2024065468A - ウイルス除去膜並びにその製造方法及び使用方法 - Google Patents

ウイルス除去膜並びにその製造方法及び使用方法 Download PDF

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Abstract

【課題】ウイルス除去膜等の提供。【解決手段】疎水性高分子と親水性高分子を含み、平均粒子径が30nm、多分散指数が0.10のタンパク質凝集体を2.0barで0.1g/m2濾過した際のファウリング抵抗kfと膜抵抗kmの比kf/kmが0.04以上1.0以下であり、Proteostat染色により観察した前記凝集体の捕捉幅が4μm以上10μm以下であり、ブタパルボウイルスの対数除去率が4.0以上であり、偏肉比が1.2以下である、ウイルス除去膜。【選択図】なし

Description

本発明は、ウイルス除去膜並びにその製造方法及び使用方法に関する。
近年、副作用が少ないこと及び治療効果が高いことにより、医薬品として、血漿分画製剤及びバイオ医薬品を用いた治療が広まってきている。しかし、血漿分画製剤はヒト血液由来であること、バイオ医薬品は動物細胞由来であることから、ウイルス等の病原性物質が医薬品に混入するリスクが存在する。
医薬品へのウイルス混入を防ぐため、ウイルスの除去又は不活化が必ず行われている。ウイルスの除去又は不活化法として、加熱処理、光学的処理及び化学薬品処理等が挙げられる。タンパク質の変性、ウイルスの不活化効率及び化学薬品の混入等の問題から、ウイルスの熱的及び化学的な性質に拘わらず、すべてのウイルスに有効な膜濾過方法が注目されている。
除去又は不活化すべきウイルスとしては、直径25~30nmのポリオウイルスや、最も小さいウイルスとして直径18~24nmのパルボウイルスが挙げられ、比較的大きいウイルスでは直径80~100nmのHIVウイルスが挙げられる。近年、特にパルボウイルス等の小さいウイルスの除去に対するニーズが高まっている。
ウイルス除去膜に求められる第一の性能は、安全性である。安全性として、血漿分画製剤及びバイオ医薬品にウイルス等の病原性物質を混入させない安全性と、ウイルス除去膜からの溶出物等の異物を混入させない安全性が挙げられる。
ウイルス等の病原性物質を混入させない安全性として、ウイルス除去膜によりウイルスを十分に除去することが重要となる。非特許文献1には、マウス微小ウイルスやブタパルボウイルスの目標とすべきクリアランス(LRV)は、4とされている。
また、溶出物等の異物を混入させない安全性として、ウイルス除去膜から溶出物を出さないことが重要となる。
ウイルス除去膜に求められる第二の性能は、生産性である。生産性とは、5nmサイズのアルブミン及び10nmサイズのグロブリン等のタンパク質を効率的に回収することである。孔径が数nm程度の限外濾過膜及び血液透析膜、並びにさらに小孔径の逆浸透膜は、濾過時にタンパク質が孔を閉塞させるために、ウイルス除去膜として適していない。特にパルボウイルス等の小さいウイルス除去を目的とした場合、ウイルスのサイズとタンパク質のサイズが近いため、上記の安全性と生産性を両立させることは困難であった。
特許文献1では、再生セルロースからなる膜を用いたウイルス除去方法が開示されている。
特許文献2では、熱誘起相分離法により製膜されたポリフッ化ビニリデン(PVDF)からなる膜にグラフト重合法により表面が親水化されたウイルス除去膜が開示されている。
また、特許文献3では、PhiX174に対する少なくとも4.0の初期のウイルス対数除去率(LRV)を有し、表面がヒドロキシアルキルセルロースでコーティングされたウイルス除去膜が開示されている。
特許文献4では、ポリスルホン系高分子とポリビニルピロリドン(PVP)のブレンド状態から製膜されたウイルス除去膜が開示されている。
特許文献5では、ポリスルホン系高分子とビニルピロリドンと酢酸ビニルの共重合体のブレンド膜に多糖類又は多糖類誘導体がコーティングされたウイルス除去膜が開示されている。
特許第4024041号公報 国際公開第2004/035180号 特許第4504963号公報 国際公開第2011/111679号 特許第5403444号公報
PDA Journal of GMP and Validation in Japan, Vol.7, No.1, p.44(2005) Kayukawa.Tら、Particle-based analysis elucidates the real retention capacities of virus filters and enables optimal virus clearance study design with evaluation systems of diverse virological characteristics Biotechnol. Prog. 2022, 38, (2), e3237.
ウイルス除去膜はタンパク質の凝集体により目詰まりを起こし、濾過溶液の透過速度を意味するFluxが急激に低下する。Flux低下はタンパク質回収の効率を著しく下げ、また、タンパク質処理の予測を困難とするが、凝集体によるFlux低下抑制の検討は十分になされていない。タンパク質処理の予測とは、目標とするタンパク質処理量に達するまでの時間や時間当たりに処理できるタンパク質量の予測などである。
ウイルス除去膜の主な濾過対象となる目的タンパク質は血漿分画製剤及びバイオ医薬品に含まれる生理活性物質である免疫グロブリンであるが、免疫グロブリン分子サイズは約10nmである。血漿分画製剤及びバイオ医薬品には安定性の高いタンパク質が選ばれるため、工程で生じうるタンパク質凝集体はそれほど大きくはなく、主なサイズは30nm以下である。また、様々なサイズの凝集体が生じていたとしても、目的タンパク質から大きく異なるサイズの凝集体はサイズや電荷などの物性が大きく異なるのでウイルス除去工程以前の工程で除去されやすい。一方、例えば30nm以下の目的タンパク質に近いサイズの凝集体は物性が目的タンパク質と大きくは異ならないためウイルス除去工程以前の工程で除去されにくい。したがって、医薬品精製工程の終盤に用いられるウイルス除去工程には30nm以下の凝集体が混入する可能性が高い。30nm以下の凝集体による目詰まりに耐性のあるウイルス除去膜は効率的なタンパク質回収を実現でき、また、タンパク質処理の予測を容易にする。
また同一の製造方法で作製されたウイルス除去膜であっても、膜厚がばらつくことがある。このばらつきは最大膜厚/最小膜厚で算出される偏肉比としてあらわされる。偏肉比が1に近いほど膜厚のばらつきが少なく、偏肉比が大きいほど膜厚のばらつきは大きくなる。偏肉比が大きいと濾過において溶液が均一に流れずタンパク質回収効率にばらつきが生じる。タンパク質回収効率は、定圧濾過において目標タンパク質処理量に到達する時間に相当する。つまり、定圧濾過においてタンパク質回収効率がばらつくと、目標タンパク質処理量に到達する時間がばらつく。これにより製造工程の所要時間が変動し、製剤の安定的な供給が困難となる。また、タンパク質処理の予測を困難とする。偏肉比が大きいことで濾過において溶液が均一に流れない場合、膜厚が小さい箇所に溶液が集中することとなり、部分的にその箇所へのウイルスの負荷量が増えることになる。そのため、その箇所からウイルスが漏れる可能性が生じる。定量的には、偏肉比が1.5以上であるとき特に問題となる。
本発明が解決しようとする課題は、溶液中に含まれるウイルスの除去に十分な性能を発揮し、溶液中に含まれるタンパク質凝集体によるFlux低下を抑制し、タンパク質の透過性に優れ、タンパク質回収効率のばらつきを抑制し、また、タンパク質処理の予測を容易にするウイルス除去膜(多孔質膜)、ウイルス除去膜の製造方法およびウイルス除去膜を用いたウイルス除去方法を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の構成のウイルス除去膜とすることにより、上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成した。また空走部において製膜原液が触れる蒸気の絶対湿度のムラをなくすことで前記特定の構成のウイルス除去膜を製造できることを見出した。
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
[1]
疎水性高分子と親水性高分子を含み、
平均粒子径が30nm、多分散指数が0.10のタンパク質凝集体を2.0barで0.1g/m2濾過した際のファウリング抵抗kfと膜抵抗kmの比kf/kmが0.04以上1.0以下であり、
Proteostat染色により観察した前記凝集体の捕捉幅が4μm以上10μm以下であり、
ブタパルボウイルスの対数除去率が4.0以上であり、
偏肉比が1.2以下である、ウイルス除去膜。
[2]
前記疎水性高分子が、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリケトン、ポリフッ化ビニリデン、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、及びポリスルホン系高分子からなる群から選択される少なくとも1種である、[1]に記載のウイルス除去膜。
[3]
前記親水性高分子が、ビニル系ポリマー、多糖類、エチレングリコールと疎水性モノマーとのブロック共重合体、エチレングリコールとプロピレングリコール若しくはエチルベンジルグリコールとのランダム共重合体又はブロック共重合体、ポリエチレングリコールの片末端又は両末端が疎水基で置換されて非水溶化した高分子、親水化されたポリエチレンテレフタレート、親水化されたポリエーテルスルホン、及び前記疎水性高分子に親水基を導入した親水性高分子からなる群から選択される少なくとも1種である、[1]又は[2]に記載のウイルス除去膜。
[4]
前記膜の形状が中空糸である、[1]~[3]のいずれかに記載のウイルス除去膜。
[5]
前記膜の形状が平膜である、[1]~[3]のいずれかに記載のウイルス除去膜。
[6]
疎水性高分子と親水性高分子を含むウイルス除去膜の製造方法であって、以下の工程を含む方法:
疎水性高分子を含む製膜原液を空走部に吐出する工程であって、
前記空走部には製膜原液の吐出方向と逆方向の流れで蒸気が供給されており、
前記蒸気の絶対湿度が3~34g/m3であり、
前記蒸気の風量が0.5~3L/minであり、
前記空走部の空走距離が5~40cmである工程。
[7]
前記空走部での前記製膜原液の滞留時間が0.02~6.0秒である、[6]に記載の製造方法。
[8]
前記空走部に吐出された前記製膜原液が、凝固液に導入される、[6]又は[7]に記載の製造方法。
[9]
前記疎水性高分子が、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリケトン、ポリフッ化ビニリデン、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、及びポリスルホン系高分子からなる群から選択される少なくとも1種である、[6]~[8]のいずれかに記載の製造方法。
[10]
前記親水性高分子が、ビニル系ポリマー、多糖類、エチレングリコールと疎水性モノマーとのブロック共重合体、エチレングリコールとプロピレングリコール若しくはエチルベンジルグリコールとのランダム共重合体又はブロック共重合体、ポリエチレングリコールの片末端又は両末端が疎水基で置換されて非水溶化した高分子、親水化されたポリエチレンテレフタレート又はポリエーテルスルホン、及び前記疎水性高分子に親水基を導入した親水性高分子からなる群から選択される少なくとも1種である、[6]~[9]のいずれかにに記載の製造方法。
[11]
疎水性高分子と親水性高分子を含み、
平均粒子径が30nm、多分散指数が0.10のタンパク質凝集体を2.0barで0.1g/m2濾過した際のファウリング抵抗kfと膜抵抗kmの比kf/kmが0.04以上1.0以下であり、
Proteostat染色により観察した前記凝集体の捕捉幅が4μm以上10μm以下であり、
ブタパルボウイルスの対数除去率が4.0以上であり、
偏肉比が1.2以下であるウイルス除去膜を使って、ウイルス粒子を含有するタンパク質溶液から前記ウイルス粒子を除去する方法。
本発明によれば、溶液中に含まれるウイルス等の除去に十分な性能を発揮し、溶液中に含まれるタンパク質凝集体によるFlux低下を抑制し、タンパク質の透過性に優れ、タンパク質回収効率のばらつきを抑制し、また、タンパク質処理の予測を容易にするウイルス除去膜、ウイルス除去膜の製造方法およびウイルス除去膜を用いたウイルス除去方法が提供される。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」と言う。)について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
本実施形態のウイルス除去膜は、疎水性高分子と非水溶性の親水性高分子を含有する。
本実施形態のウイルス除去膜の形状は特に限定されず、例えば、中空糸膜の形状でもよいし、平膜の形状でもよい。ウイルス除去膜が中空糸膜の場合、複数本の中空糸膜を束ねて使用することが好ましい。ウイルス除去膜が平膜の場合、1枚の平膜を単独で使用してもよいし、複数枚の平膜を重ねて使用してもよい。ウイルス除去膜が複数枚の平膜を含む場合には、その全体として(すなわち、複数枚の平膜の組み合わせとして)、ウイルス除去膜の後述する各種物性を満たすことが好ましい。
本実施形態において、膜基材となる疎水性高分子としては、例えば、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリケトン、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、及びポリスルホン系高分子等が挙げられる。
高い製膜性、膜構造制御の観点から、ポリスルホン系高分子が好ましい。
疎水性高分子は、単独で使用しても、2種以上混合して使用してもよい。
ポリスルホン系高分子としては、例えば、下記式1で示される繰り返し単位を有するポリスルホン(PSf)、及び下記式2で示される繰り返し単位を有するポリエーテルスルホン(PES)が挙げられ、ポリエーテルスルホンが好ましい。
式1:
Figure 2024065468000001
式2:
Figure 2024065468000002
ポリスルホン系高分子としては、式1や式2の構造において、官能基やアルキル基等の置換基を含んでもよく、炭化水素骨格の水素原子はハロゲン等の他の原子や置換基で置換されてもよい。
ポリスルホン系高分子は、単独で使用しても、2種以上混合して使用してもよい。
本実施形態のウイルス除去膜は、非水溶性の親水性高分子を含有する。
タンパク質の吸着による膜の目詰まりによる濾過速度の急激な低下を防止する観点で、本実施形態のウイルス除去膜は、疎水性高分子を含有する基材膜の細孔表面に非水溶性の親水性高分子が存在することにより親水化される。
基材膜の親水化方法としては、疎水性高分子からなる基材膜製膜後の、コーティング、グラフト反応、及び架橋反応等が挙げられる。また、疎水性高分子と親水性高分子のブレンド製膜後に、コーティング、グラフト反応、架橋反応等により、基材膜を親水化させてもよい。
本実施形態においては、高分子フィルム上にPBS(日水製薬社から市販されているダルベッコPBS(-)粉末「ニッスイ」9.6gを水に溶解させ全量を1Lとしたもの)を接触させたときの接触角が90度以下になるものを、親水性高分子という。
本実施形態において、親水性高分子の接触角は60度以下が好ましく、接触角40度以下がより好ましい。接触角が60度以下の親水性高分子を含有する場合には、ウイルス除去膜が水に濡れ易く、接触角が40度以下の親水性高分子を含有する場合には、水に濡れ易くなる傾向が一層顕著である。
接触角とは、フィルム表面に水滴を落とした時に、水滴表面がなす角度を意味し、JIS R3257で定義される。
本実施形態において、非水溶性とは、有効膜面積3.3cm2になるように組み立てられたフィルターを、2.0barの定圧デッドエンド濾過により、25℃の純水を100mL濾過した場合に、溶出率が0.1%以下であることを意味する。
溶出率は、以下の方法により算出する。
25℃の純水を100mL濾過して得られた濾液を回収し、濃縮する。得られた濃縮液を用い、全有機炭素計TOC-L(島津製作所社製)にて、炭素量を測定して、膜からの溶出率を算出する。
本実施形態において、非水溶性の親水性高分子とは、上記接触角と溶出率を満たす物質である。非水溶性の親水性高分子には、物質自体が非水溶性である親水性高分子に加え、水溶性の親水性高分子であっても、製造工程で非水溶化された親水性高分子も含まれる。すなわち、水溶性の親水性高分子であっても、上記接触角を満たす物質であって、製造工程で非水溶化されることで、フィルターを組み立てた後の定圧デッドエンド濾過において、上記溶出率を満たすのであれば、本実施形態における非水溶性の親水性高分子に含まれる。
非水溶性の親水性高分子は、溶質であるタンパク質の吸着を防ぐ観点で、電気的に中性であることが好ましい。
本実施形態においては、電気的に中性とは、分子内に荷電を有さない、又は、分子内のカチオンとアニオンが等量であることをいう。
非水溶性の親水性高分子としては、例えば、ビニル系ポリマーが挙げられる。
ビニル系ポリマーとしては、例えば、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ジヒドロキシエチルメタクリレート、ジエチレングリコールメタクリレート、トリエチレングリコールメタクリレートのホモポリマー;ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ジヒドロキシエチルメタクリレート、ジエチレングリコールメタクリレート、トリエチレングリコールメタクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレート、ビニルピロリドン、アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、グルコキシオキシエチルメタクリレート、3-スルホプロピルメタクリルオキシエチルジメチルアンモニウムベタイン(MPC)、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、1-カルボキシジメチルメタクリロイルオキシエチルメタンアンモニウム等のホモポリマー;スチレン、エチレン、プロピレン、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、エチルヘキシルメタクリレート、オクタデシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、メトキシエチルメタクリレート等の疎水性モノマーと、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ジヒドロキシエチルメタクリレート、ジエチレングリコールメタクリレート、トリエチレングリコールメタクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレート、ビニルピロリドン、アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、グルコキシオキシエチルメタクリレート、3-スルホプロピルメタクリルオキシエチルジメチルアンモニウムベタイン、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、1-カルボキシジメチルメタクリロイルオキシエチルメタンアンモニウム等の親水性モノマーのランダム共重合体、グラフト型共重合体及びブロック型共重合体等が挙げられる。
また、ビニル系ポリマーとしては、例えば、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート等のカチオン性モノマーと、アクリル酸、メタクリル酸、ビニルスルホン酸、スルホプロピルメタクリレート、ホスホオキシエチルメタクリレート等のアニオン性モノマーと、上記疎水性モノマーとの共重合体等が挙げられ、アニオン性モノマーとカチオン性モノマーを電気的に中性となるように等量含有するポリマーであってもよい。
非水溶性の親水性高分子としては、多糖類であるセルロース等や、その誘導体であるセルローストリアセテート等も例示される。また、多糖類又はその誘導体として、ヒドロキシアルキルセルロース等(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC))が架橋処理されたものも含まれる。
非水溶性の親水性高分子としては、ポリエチレングリコール及びその誘導体であってもよく、エチレングリコールと上記疎水性モノマーとのブロック共重合体や、エチレングリコールと、プロピレングリコール、エチルベンジルグリコール等とのランダム共重合体、ブロック共重合体であってもよい。また、ポリエチレングリコール及び上記共重合体の片末端又は両末端が疎水基で置換され、非水溶化されていてもよい。
ポリエチレングリコールの片末端又は両末端が疎水基で置換された化合物としては、α,ω-ジベンジルポリエチレングリコール、α,ω-ジドデシルポリエチレングリコール等が挙げられ、また、ポリエチレングリコールと分子内の両末端にハロゲン基を有するジクロロジフェニルスルホン等の疎水性モノマーとの共重合体等であってもよい。
非水溶性の親水性高分子としては、縮合重合により得られる、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン等の主鎖中の水素原子が親水基に置換され、親水化されたポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン等も例示される。親水化されたポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン等としては、主鎖中の水素原子が、アニオン基、カチオン基で置換されていてもよく、アニオン基、カチオン基が等量のものでもよい。
ビスフェノールA型、ノボラック型エポキシ樹脂のエポキシ基が開環されたものや、エポキシ基にビニルポリマーやポリエチレングリコール等が導入されたものでもよい。
また、シランカップリングされたものでもよい。
非水溶性の親水性高分子は、単独で使用しても、2種以上混合して使用してもよい。
非水溶性の親水性高分子としては、製造のしやすさの観点から、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ジヒドロキシエチルメタクリレートのホモポリマー;3-スルホプロピルメタクリルオキシエチルジメチルアンモニウムベタイン(SB)、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、1-カルボキシジメチルメタクリロイルオキシエチルメタンアンモニウム等の親水性モノマーと、ブチルメタクリレート、エチルヘキシルメタクリレートの疎水性モノマーとのランダム共重合体が好ましく、非水溶性の親水性高分子をコートするときのコート液の溶媒の選択のしやすさ、コート液中での分散性及び操作性の観点から、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレートのホモポリマー;3-スルホプロピルメタクリルオキシエチルジメチルアンモニウムベタイン、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン等の親水性モノマーと、ブチルメタクリレート、エチルヘキシルメタクリレート等の疎水性モノマーとのランダム共重合体がより好ましい。
水溶性の親水性高分子を、膜の製造過程で非水溶化した非水溶性の親水性高分子としては、例えば、疎水性高分子の基材膜に、側鎖にアジド基を有するモノマーと2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン等の親水性モノマーを共重合させた水溶性の親水性高分子をコーティングした後、熱処理をすることにより、基材膜に水溶性の親水性高分子を共有結合させることで、水溶性の親水性高分子を非水溶化したものであってもよい。また、疎水性高分子の基材膜に対して、2-ヒドロキシアルキルアクリレート等の親水性モノマーをグラフト重合させてもよい。
本実施形態のウイルス除去膜として、あるいは、本実施形態における基材膜として、親水性高分子と疎水性高分子がブレンド製膜されたものであってもよい。
ブレンド製膜に用いられる親水性高分子は良溶媒に疎水性高分子と相溶するものであれば、特に限定されないが、親水性高分子としては、ポリビニルピロリドン又はビニルピロリドンを含有する共重合体が好ましい。
ポリビニルピロリドンとしては、具体的には、BASF社より市販されているLUVITEC(商品名)K60、K80、K85、K90等が挙げられ、LUVITEC(商品名)K80、K85、K90が好ましい。
ビニルピロリドンを含有する共重合体としては、疎水性高分子との相溶性や、タンパク質の膜表面への相互作用の抑制の観点で、ビニルピロリドンと酢酸ビニルの共重合体が好ましい。
ビニルピロリドンと酢酸ビニルの共重合比は、タンパク質の膜表面への吸着やポリスルホン系高分子との膜中での相互作用の観点から、6:4から9:1が好ましい。
ビニルピロリドンと酢酸ビニルの共重合体としては、具体的には、BASF社より市販されているLUVISKOL(商品名)VA64、VA73等が挙げられる。
親水性高分子は、単独で使用しても、2種以上を混合して使用してもよい。
本実施形態においては、濾過中の膜からの異物の溶出を抑制するという観点から、ブレンド製膜時に水溶性の親水性高分子を使用した場合は、ブレンド製膜後、熱水で洗浄することが好ましい。洗浄により、疎水高分子との絡み合いが不十分である親水性高分子が膜中から除去され、濾過中の溶出が抑制される。
熱水での洗浄として、高圧熱水処理、コート後の温水処理を行ってもよい。
ウイルス除去膜の内径及び膜厚は、ウイルス除去膜の垂直割断面を実体顕微鏡で撮影することにより求めた。垂直割断面はウイルス除去膜をカミソリ刃でカットすることで調製した。
膜厚は、局所的な値とならないようにするため、ウイルス除去膜が平膜の場合には、例えば、平膜10枚それぞれの「平膜1枚の膜厚」を平均した値とした。平膜1枚の膜厚は100μmの平膜を10μm毎に10か所の膜厚を測定し、それらを平均した値とした。
本実施形態においては、高い濾過圧で操作することができ、かつ、濾過中の経時的なFlux低下が抑制されたウイルス除去膜であることによって、タンパク質を高効率で回収し、タンパク質処理量の予測を容易にすることができる。
また、本実施形態のウイルス除去膜は、純水の透水量が高いことによって、タンパク質をより高効率で回収することができる。
本実施形態においては、耐圧性を有する疎水性高分子を基材として用いることにより、高い濾過圧での操作を可能としている。
また、本実施形態においては、1.5質量%の免疫グロブリンGを2.0barで膜の内表面側から外表面側へ定圧濾過したときの、免疫グロブリンG積算透過量が180分で4.0kg/m2以上となり、高効率なタンパク質の回収を行うことができる。本実施形態において、1.5質量%の免疫グロブリンを2.0barで定圧濾過したときの、180分間の積算免疫グロブリンG透過量は、後述の「(4)免疫グロブリン(IgG)の濾過試験」として実施例に記載の方法により測定される。
また、本実施形態においては、1.5質量%の免疫グロブリンGを2.0barで中空糸の内表面側から外表面側へ定圧濾過したときの、濾過開始から10分経過後までの免疫グロブリンG Flux F10に対する、濾過開始50分後から60分経過後までの免疫グロブリンG Flux F60の比(F60/F10)が0.75以上となり、Flux低下が小さいことで目標タンパク質処理量に用達するまでの時間の予測を容易にする。
純水の透水量もタンパク質溶液の濾過速度Fluxの目安となる。タンパク質溶液は純水に比べ溶液の粘度が高くなるため、純水の透水量よりも低くなるが、純水の透水量が高いほど、タンパク質溶液の濾過速度は高くなる。そこで、本実施形態においては、純水の透水量を高くすることによって、より高効率なタンパク質の回収を実現させられ得るウイルス除去膜とすることができる。
本実施形態のウイルス除去膜の純水の透水量は180~500L/m2/h/barが好ましい。
純水の透水量が、180L/m2/h/bar以上であることにより、高効率なタンパク質の回収は実現することができる。また、純水の透水量は500L/m2/h/bar以下であることにより、持続的なウイルス除去性能を発揮させることができる。
本実施形態において、純水の透水量は、後述の「(3)透水量測定」として実施例に記載の方法により測定される。
純水の透水量は、例えば、ウイルス除去膜の製造工程における、空走部に供給する蒸気の絶対湿度、蒸気を供給する風量、空走部の長さを変更することによって、調節することができる。具体的には、蒸気の絶対湿度を上げる、蒸気の供給風量を上げる、又は空走部を長くすると、透水量は多くなる傾向にある。
血漿分画製剤やバイオ医薬品の膜を用いた精製工程においては、一般的に、濾過は1時間以上行われ、3時間以上行われることもある。タンパク質を高効率に回収するためには、Fluxが長時間低下しないことが重要である。しかるに、一般的に、タンパク質を濾過すると、経時的にFluxが低下し、濾液回収量が低下する傾向がある。これは、濾過中、経時的な孔の目詰まり(閉塞)に起因するものと考えられる。経時的に閉塞された孔が増加するということは、膜中に含まれるウイルスを捕捉することができる孔の数が減少することになる。従って、経時的にFluxが低下することは、初期のウイルス除去能が高くても、孔の閉塞により、経時的にウイルス除去性能が低下するリスクが生じると考えられる。
ウイルス除去膜はタンパク質の凝集体により目詰まりを起こしFluxが急激に低下する。Flux低下はタンパク質回収の効率を著しく下げるが、凝集体によるFlux低下抑制の検討は十分になされていない。主な濾過対象生理活性物質である免疫グロブリンの分子サイズは約10nmである。製剤には安定性の高いタンパク質が選ばれるため、工程で生じうる凝集体はそれほど大きくはなく主なサイズは30nm以下である。また、様々なサイズの凝集体が生じていたとしても、目的タンパク質から大きく離れたサイズの凝集体はサイズや電荷などの物性が大きく異なるのでウイルス除去工程以前の工程で除去されやすい。一方、例えば30nm以下の目的タンパク質に近いサイズの凝集体は物性が目的タンパク質に近くウイルス除去工程以前の工程で除去されにくい。したがって医薬品精製工程の終盤に来るウイルス除去工程には30nm以下の凝集体が混入する可能性が高い。30nm以下の凝集体による目詰まりに耐性のあるウイルス除去膜は効率的なタンパク質回収を実現でき、また、タンパク質処理の予測を容易とする。
動的光散乱法で測定したZ平均粒子径が30nm、多分散指数が0.10のタンパク質凝集体を含む5μg/mlの溶液を、ウイルス除去膜において2.0barの圧力で0.1g/m2濾過した際のファウリング抵抗を「kf」とし、膜抵抗を「km」とする。本発明におけるkf/kmの値は特に限定されないが、好適には以下を例示できる。即ち、下限としては0.04以上であることが好ましく、0.06以上、0.08以上、0.10以上であることがより好ましい。上限としては、1.0以下であることが好ましく、0.95以下、0.9以下であることがより好ましい。範囲としては、0.04~1.0が好ましく、0.06~0.95、0.08~0.90であることがより好ましい。kf/kmが0.04以上1以下とすることで、経時的なFluxの低下を抑制することができ、高効率なタンパク質の回収を実現させ、かつ、持続したウイルス除去性能の発揮にもつながることにより、溶液中に含まれるウイルス等の除去に十分な性能を発揮するタンパク質処理用膜とすることができる。
ファウリング抵抗kfと膜抵抗kmは以下のように算出する。一般的にFluxと抵抗はAを定数として式(1)で表される。
Flux=A/(km+kf)・・・(1)
凝集体濾過の前に凝集体を含まないbufferを濾過したときのFluxをF0とすると、buffer濾過時は目詰まりしていないのでkf=0であり、
これを(1)に代入してkm=A/F0となり、
これを(1)に代入すると、
kf=A/Flux-A/F0
が導出され、
kf/km=(F0-Flux)/Flux
となり、kf/kmはbuffer濾過時のFluxと凝集体濾過各時点のFluxで表される。本実施形態において、凝集体濾過のおけるkf/kmは、後述の「(5)凝集体濾過試験」として実施例に記載の方法により測定される。
kf/kmは、例えば、ウイルス除去膜の製造工程における、空走部に供給する蒸気の絶対湿度、蒸気を供給する風量、空走部の長さを変更することによって、調節することができる。
ウイルス除去膜における凝集体目詰まり機構は次のように考えられている。凝集体を含んだ溶液は透過方向に対して垂直な捕捉面が何層も重なった凝集体捕捉層を透過する。この面の中の孔の大きさには分布が存在し、凝集体のサイズよりも小さな孔で凝集体が捕捉される。この機構から、捕捉面内の孔の大きさの分布が狭いとその面だけで凝集体を捕捉するので、目詰まりが早く起こる。一方、捕捉面内の孔の大きさの分布が広いと複数の面で凝集体を捕捉でき、各面の凝集体より大きな孔は凝集体を捕捉せず流路を保ち続けるので目詰まりは起こりにくい。捕捉面内の孔の大きさの分布は凝集体を捕捉する幅(ウイルス除去膜において凝集体が捕捉される領域)として間接的に観測することができる。凝集体捕捉幅が広いほど目詰まりが起こりにくく捕捉幅が狭いほど目詰まりが起こりやすい。しかし、ウイルス除去性が低い膜では凝集体も捕捉されないため、凝集体捕捉幅は狭くなる。ウイルス除去膜における凝集体の捕捉幅はProteostatにより凝集体を特異的に染色して測定できる。
本発明におけるウイルス除去膜の凝集体の捕捉幅は特に限定されないが、好適には以下を例示できる。すなわち、下限としては、目詰まりによりタンパク質回収効率の低下を防ぐ観点から、4μm以上が好ましく、5μm以上であることがさらに好ましい。上限としては、純水透水量の低下によるタンパク質回収効率の低下を防ぐ観点から10μm以下であることが好ましく、9μm以下であることがさらに好ましい。範囲としては、4~10μmであることが好ましく、5~9μmであることがさらに好ましい。凝集体の捕捉幅を4μm以上10μm以下とすることで、目詰まりなくタンパク質回収効率が低下しない。
凝集体の捕捉幅は、後述の「(7)凝集体捕捉幅の測定」として実施例に記載の方法により測定される。
凝集体の捕捉幅は、例えば、ウイルス除去膜の製造工程における、空走部に供給する蒸気の絶対湿度、蒸気を供給する風量、空走部の長さを変更することによって、調節することができる。具体的には、蒸気の絶対湿度を上げる、蒸気の供給風量を上げる、又は空走部を長くすると、凝集体の捕捉幅は広くなる傾向にある。
同一の製造方法で作製されたウイルス除去膜であっても、膜厚がばらつくことがある。このばらつきは最大膜厚/最小膜厚で算出される偏肉比としてあらわされる。本発明におけるウイルス除去膜の偏肉比は特に限定されないが、好適には以下を例示できる。すなわち、下限としては、1.0以上が好ましい。上限としては、1.2以下であることが好ましく、1.1以下であることがさらに好ましい。範囲としては、1.0~1.2であることが好ましく、1.0~1.1であることがさらに好ましい。偏肉比が1に近いほど膜厚のばらつきが少なく、偏肉比が大きいほど膜厚のばらつきは大きくなる。偏肉比が大きいと濾過において溶液が均一に流れずタンパク質回収効率にばらつきが生じる。タンパク質回収効率は、定圧濾過において目標タンパク質処理量に到達する時間に相当する。つまり、定圧濾過においてタンパク質回収効率がばらつくと、目標タンパク質処理量に到達する時間がばらつく。これにより製造工程の所要時間が変動し、製剤の安定的な供給が困難となる。また、タンパク質処理の予測が困難となる。本実施形態において、タンパク質回収効率のばらつきは、後述の「(6)タンパク質回収効率のばらつきの計算」として実施例に記載の方法により測定される。タンパク質回収効率のばらつきが0.10を超えないことが望ましい。タンパク質回収効率のばらつきが0.10を超えないためには、偏肉比を1.2以下とすることが望ましい。
また偏肉比が大きいことで濾過において溶液が均一に流れない場合、膜厚が小さい箇所に溶液が集中することとなり、部分的にその箇所へのウイルスの負荷量が増えることになる。そのため、その箇所からウイルスが漏れる可能性が生じる。そのため、偏肉比を小さく溶液が均一に流れるような膜が好ましい。
本実施形態において、偏肉比は、後述の「(2)偏肉比の計算」として実施例に記載の方法により測定される。
偏肉比は、例えば、ウイルス除去膜の製造工程における、空走部に供給する蒸気の絶対湿度、蒸気を供給する風量、空走部の長さを変更することによって、調節することができる。
パルボウイルスクリアランスは以下の実験により求められる。
(1)濾過溶液の調製
日本血液製剤機構より市販されている献血ヴェノグロブリン IH 5%静注(2.5g/50mL)を用いて、溶液の免疫グロブリンG濃度が15g/L、塩化ナトリウム濃度が0.1M、pHが4.5になるように溶液を調製する。この溶液に0.5容積%のブタパルボウイルス(PPV)溶液をspikeして得られる溶液を濾過溶液とする。
(2)膜の滅菌
有効膜面積が3.3cm2になるように組み立てられたフィルターを122℃で60分高圧蒸気滅菌処理をする。
(3)濾過
(1)で調整した濾過溶液をデッドエンドで、2.0barの一定圧力で120分間濾過を行う。
(4)ウイルスクリアランス
濾過溶液を濾過して得られた濾液のTiter(TCID50値)をウイルスアッセイにて測定する。PPVのウイルスクリアランスはLRV=Log(TCID50)/mL(濾過溶液))-Log(TCID50)/mL(濾液))により算出する。LRVは4.0以上であることが好ましい。
パルボウイルスクリアランスは、後述の「(8)ブタパルボウイルスクリアランス測定」として実施例に記載の方法により測定される。
パルボウイルスクリアランスは、例えば、ウイルス除去膜の製造工程における、空走部に供給する蒸気の絶対湿度、蒸気を供給する風量、空走部の長さを変更することによって、調節することができる。具体的には、蒸気の絶対湿度を下げる、蒸気の供給風量を下げる、又は空走部を短くすると、クリアランスは大きくなる傾向にある。
本実施形態において、ウイルス除去膜の形状は、特に限定されるものではないが、例えばウイルス除去膜を中空糸形状の多孔質膜である多孔質中空糸膜とする場合、以下のようにして製造することができる。疎水性高分子として、ポリスルホン系高分子を用いた場合を例にして以下説明する。
例えば、ポリスルホン系高分子、溶媒、非溶媒を混合溶解し、脱泡したものを製膜原液とし、芯液とともに二重管ノズル(紡口)の環状部、中心部から同時に吐出し、空走部を経て凝固浴中に導いて膜を形成する。得られた膜を、水洗後巻取り、内液抜き、熱処理、乾燥させる。その後、親水化処理させる。
製膜原液に使用される溶媒は、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド、ε-カプロラクタム等、ポリスルホン系高分子の良溶媒であれば、広く使用することができるが、NMP、DMF、DMAc等のアミド系溶媒が好ましく、NMPがより好ましい。
製膜原液には非溶媒を添加するのが好ましい。製膜原液に使用される非溶媒としては、グリセリン、水、ジオール化合物等が挙げられ、ジオール化合物が好ましい。
ジオール化合物とは、分子の両末端に水酸基を有する化合物であり、ジオール化合物としては、下記式化3で表され、繰り返し単位nが1以上のエチレングリコール構造を有する化合物が好ましい。
ジオール化合物としては、ジエチレングリコール(DEG)、トリエチレングリコール(TriEG)、テトラエチレングリコール(TetraEG)、ポリエチレングリコール(PEG)等が挙げられ、DEG、TriEG、TetraEGが好ましく、TriEGがより好ましい。
式3:
Figure 2024065468000003
詳細な機構は不明であるが、製膜原液中に非溶媒を添加することにより、製膜原液の粘度が上がり、凝固液中での溶媒、非溶媒の拡散速度を抑制させることにより、凝固を制御し、ウイルス除去膜として好ましい構造制御をしやすくなり、所望の構造形成に好適である。
製膜原液中の溶媒/非溶媒の比は、質量比で40/60~80/20が好ましい。
製膜原液中のポリスルホン系高分子の濃度は、膜強度や透過性能の観点で、15~35質量%が好ましく、20~30質量%がより好ましい。
製膜原液は、ポリスルホン系高分子、良溶媒、非溶媒を一定温度で、撹拌しながら溶解することで得られる。この時の温度は、常温より高い、30~80℃が好ましい。3級以下の窒素を含有する化合物(NMP、DMF、DMAc)は空気中で酸化され、加温するとさらに酸化が進行しやすくなるため、製膜原液の調製は不活性気体雰囲気下で行うことが好ましい。不活性気体としては、窒素、アルゴン等が挙げられ、生産コストの観点から、窒素が好ましい。
紡糸中の糸切れ防止や、製膜後のマクロボイドの形成抑制の観点で、製膜原液調製には、脱泡することが好ましい。
脱泡工程は、以下のようにして行うことができる。完全に溶解された製膜原液が入ったタンク内を2kPaまで減圧し、1時間以上静置する。この操作を7回以上繰り返す。脱泡効率をあげるため、脱泡中に溶液を撹拌してもよい。
製膜原液は、紡口から吐出される前までに、異物を除去することが好ましい。異物を除去することにより、紡糸中の糸切れ防止や、膜の構造制御を行うことができる。製膜原液タンクのパッキン等からの異物の混入を防ぐためにも、製膜原液が紡口から吐出される前に、フィルターを設置することが好ましい。孔径違いのフィルターを多段で設置してもよく、特に限定されるものではないが、例えば、製膜原液タンクに近い方から、順に孔径30μmのメッシュフィルター、孔径10μmのメッシュフィルターを設置することが好適である。
製膜時に使用される芯液の組成は、製膜原液、凝固液に使用される良溶媒と同じ成分を使用することが好ましい。
例えば、製膜原液の溶媒としてNMP、凝固液の良溶媒/非溶媒としてNMP/水を使用したならば、芯液はNMPと水から構成されることが好ましい。
芯液中の溶媒の量が多くなると、凝固の進行を遅らせ、膜構造形成をゆっくりと進行させる効果があり、水が多くなると、凝固の進行を早める効果がある。凝固の進行を適切に進行させ、膜構造を制御してウイルス除去膜の好ましい膜構造を得るためには、芯液中の良溶媒/水の比率を質量比で60/40~80/20にすることが好ましい。
紡口温度は、適当な孔径とするために、25~50℃が好ましい。
製膜原液は紡口から吐出された後、空走部を経て、凝固浴に導入される。空走部の滞留時間は0.02~6.0秒が好ましい。滞留時間を0.02秒以上とすることにより、凝固浴導入までの凝固を十分にし、適切な孔径とすることができる。滞留時間を6.0秒以下とすることにより、凝固が過度に進行するのを防止し、凝固浴での精密な膜構造制御を可能にすることができる。
空走部では製膜原液の吐出方向と逆方向の流れで蒸気供給を行う。これにより原液に対して常に調湿された蒸気を供給することができる。空走部では拡散により蒸気から製膜原液へ水分が供給される。空走部における適度な水分供給は吐出された原液の外表面側の空走部での相分離を促し、外表面側を均一な状態で適度に固化させることができる。その結果、安定した紡糸が可能となり、偏肉比を抑えることができる。また、水分供給量が多いほど相分離が進行し膜の孔径が大きくなり、少ないと相分離が進行せず膜の孔径が小さくなる傾向がある。
供給される蒸気の絶対湿度は3~34g/m3が好ましく、5~30g/m3がより好ましい。前記下限より絶対湿度が小さいと水分供給量が不十分となり、外表面側を適度に固化させることができず、偏肉比が大きくなる。また、凝集体捕捉幅が狭くなり、目詰まりを起こしやすくなる。一方で前記上限より絶対湿度が大きいと水分供給量が多くなることでウイルス捕捉層の孔径が大きくなり、ウイルス除去性が低下する。
蒸気供給の風量は0.5~3L/minが好ましく、風量が0.5L/minより小さいと水分供給量が不十分となり、外表面側を適度に固化させることができず、偏肉比が大きくなる。また、凝集体捕捉幅が狭くなり、目詰まりを起こしやすくなる。一方で風量が3L/minより大きいと糸揺れが生じ偏肉比が大きくなる。
空走部の長さは、5~40cmが好ましく、空走部が5cmより小さいと水分供給量が不十分となり、外表面側を適度に固化させることができず、偏肉比が大きくなる。また、凝集体捕捉幅が狭くなり、目詰まりを起こしやすくなる。一方で、空走部が40cmより大きいと空走部での水分供給量が多くなることでウイルス捕捉層の孔径が大きくなり、ウイルス除去性が低下する。
紡糸速度は、欠陥のない膜が得られる条件であれば特に制限されないが、凝固浴中での膜と凝固浴の液交換をゆるやかにし、膜構造制御を行うためには、できるだけ遅い方が好ましい。従って、生産性や溶媒交換の観点から、好ましくは4~15m/minである。
ドラフト比とは引取り速度と紡口からの製膜原液吐出線速度との比である。ドラフト比が高いとは、紡口から吐出されてからの延伸比が高いことを意味する。
一般的に、湿式相分離法で製膜されるとき、製膜原液が空走部を経て、凝固浴を出たときに、大方の膜構造が決定される。膜内部は、高分子鎖が絡み合うことにより形成される実部と高分子が存在しない空孔部となっている虚部から構成される。詳細な機構は不明であるが、凝固が完了する前に膜が過度に延伸されると、言い換えると、高分子鎖が絡み合う前に過度に延伸されると、高分子鎖の絡み合いが引き裂かれ、空孔部が連結されることにより、過度に大きな孔が形成されたり、空孔部が分割されることにより、過度に小さな孔が形成される。過度に大きな孔はウイルス漏れの原因となり、過度に小さな孔は目詰まりの原因となる。
構造制御の観点で、ドラフト比は極力小さくすることが好ましいが、ドラフト比は1.1~6が好ましく、1.1~4がより好ましい。
凝固浴の組成は、良溶媒は凝固を遅らせる効果があり、水は凝固を早める効果があるため、凝固を適切な速さで進め、適当な緻密層の厚みとし、好ましい孔径の膜を得るため、良溶媒/水の比は、質量比で50/50~5/95が好ましい。また、凝固浴温度は、孔径の制御の観点で、0~50℃が好ましい。
凝固浴から引き上げられた膜は、温水で洗浄される。
水洗工程では、良溶媒と非溶媒を確実に除去することが好ましい。膜が溶媒を含んだまま乾燥されると、乾燥中に膜内で溶媒が濃縮され、ポリスルホン系高分子が溶解又は膨潤することにより、膜構造を変化させる可能性がある。
除去すべき溶媒、非溶媒の拡散速度を高め、水洗効率を上げるため、温水の温度は50℃以上が好ましい。
十分に水洗を行うため、膜の水洗浴中の滞留時間は10~300秒が好ましい。
水洗浴から引き上げられた膜は、巻取り機でカセに巻き取られる。この時、膜を空気中で巻き取ると、膜は徐々に乾燥していき、わずかであるが、膜は収縮する場合がある。同一の膜構造として、均一な膜とするために、膜は水中で巻き取られることが好ましい。
カセに巻き取られた膜は、両端部を切断し、束にし、弛まないように支持体に把持させる。そして、把持された膜は、熱水処理工程において、熱水中に浸漬、洗浄される。
カセに巻き取られた状態の膜の中空部には、白濁した液が残存している。この液中には、ナノメートルからマイクロメートルサイズのポリスルホン系高分子の粒子が浮遊している。この白濁液を除去せず、膜を乾燥させると、この微粒子が膜の孔を塞ぎ、膜性能が低下することがあるため、中空部内液を除去することが好ましい。
熱水処理工程では、膜内側からも洗浄されるため、水洗工程で除去しきれなかった、良溶媒、非溶媒が効率的に除去される。
熱水処理工程における、熱水の温度は50~100℃が好ましく、洗浄時間は30~120分が好ましい。
熱水は洗浄中に数回、交換することが好ましい。
巻き取られた膜は高圧熱水処理をすることが好ましい。具体的には、膜を完全に水に浸漬させた状態で、高圧蒸気滅菌機に入れ、120℃以上で2~6時間処理するのが好ましい。詳細な機構は不明であるが、高圧熱水処理により、膜中に微残存する溶媒、非溶媒が完全に除去されるだけでなく、緻密層領域でのポリスルホン系高分子の絡み合い、存在状態が最適化される。
高圧熱水処理された膜を乾燥させることによりポリスルホン系高分子からなる基材膜が完成する。乾燥方法は風乾、減圧乾燥、熱風乾燥等、特に制限されないが、乾燥中に膜が収縮しないように、膜の両端が固定された状態で、乾燥されることが好ましい。
基材膜はコート工程を経て、本実施形態のウイルス除去膜となる。
例えば、コーティングにより親水化処理させる場合には、コート工程は、基材膜のコート液への浸漬工程、浸漬された基材膜の脱液工程、脱液された基材膜の乾燥工程からなる。
浸漬工程において、基材膜は親水性高分子溶液に浸漬される。コート液の溶媒は親水性高分子の良溶媒であり、ポリスルホン系高分子の貧溶媒であれば特に制限されないが、アルコールが好ましい。
コート液中の非水溶性の親水性高分子の濃度は、親水性高分子によって基材膜の孔表面を十分に被覆させ、濾過中のタンパク質の吸着による経時的なFlux低下を抑制する観点から1.0質量%以上が好ましく、適切な厚さで被覆させ、孔径が小さくなりすぎて、Fluxが低下することを防ぐ観点から、10.0質量%以下が好ましい。
コート液への基材膜の浸漬時間は8~24時間が好ましい。
所定時間、コート液に浸漬された基材膜は、脱液工程において、膜の中空部及び外周に付着している余分なコート液が遠心操作により、脱液される。残存する親水性高分子による乾燥後の膜同士の固着を防止する観点で、遠心操作時の遠心力を10G以上、遠心操作時間を30min以上とすることが好ましい。
脱液された膜を乾燥させることにより、本実施形態のウイルス除去膜を得ることができる。乾燥方法は特に限定されないが、最も効率的であるため、真空乾燥が好ましい。
フィルター加工のしやすさから、ウイルス除去膜の内径は200~400μmであることが好ましく、膜厚は30~80μmであることが好ましい。
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。実施例において示される試験方法は以下の通りである。
(1)内径、膜厚の測定及び内表面積の計算
ウイルス除去膜の内径及び膜厚は、ウイルス除去膜の垂直割断面を実体顕微鏡で撮影することにより求めた。垂直割断面は束にした中空糸をカミソリ刃でカットすることで調製した。また、平膜の割断面は氷包埋した平膜を垂直に割断して調製した。
内径は、20本の中空糸それぞれの「中空糸1本の内径」を平均した値とした。中空糸1本の内径は、1本の中空糸の垂直割断面の画像を中空糸の円周方向へ90分割し、90点の内径を求め、その平均値とした。
膜厚は、20本の中空糸それぞれの「中空糸1本の膜厚」を平均した値とした。中空糸1本の膜厚は、1本の中空糸の垂直割断面の画像を中空糸の円周方向へ90分割し、90点の膜厚を求め、その平均値とした。
また、内表面積は内径と膜の有効長より算出した。
(2)偏肉比の計算
多孔質中空糸膜の1本の偏肉比は、1本の中空糸で90点の膜厚を求めた中で、最大値(Dmax)と最小値(Dmin)を確認し、最大値を最小値で割ることで算出した。偏肉比は20本の中空糸それぞれの「中空糸1本の偏肉比」を平均した値とした。
偏肉比=Dmax/Dmin
(3)透水量測定
有効膜面積が3.3cm2になるように組み立てられたフィルターを1.0barの定圧デッドエンド濾過による25℃の純水の濾過量をn=10で測定し、濾過時間から透水量を算出した。
(4)免疫グロブリン(IgG)の濾過試験
有効膜面積が3.3cm2になるように組み立てられたフィルターを122℃で60分高圧蒸気滅菌処理をした。日本血液製剤機構より市販されている献血ヴェノグロブリン IH 5%静注(2.5g/50mL)を用いて、溶液の免疫グロブリンG濃度が15g/L、塩化ナトリウム濃度が0.1M、pHが4.5になるように溶液を注射用水で希釈し調製した。調製した溶液をデッドエンドで、196kPaの一定圧力で180分間濾過を行った。180分間の積算免疫グロブリンG透過量は、180分間の濾液回収量、フィルターの膜面積より算出した。
また、濾過開始から10分経過後までの免疫グロブリンG Flux F10に対する、濾過開始50分後から60分経過後までの免疫グロブリンG Flux F60の比(F60/F10)を測定した。
(5)凝集体濾過試験
献血ヴェノグロブリン IH 5%静注(2.5g/50mL)を60℃で3時間加熱することで、熱変性凝集体を作製した。0.22μm除菌フィルターで前処理し、AKTA avant25(Cytiva)を用いたサイズ排除クロマトグラフィーにより凝集体をサイズ分画した。Sephacryl 300 HR 16/60(Cytiva)カラムを用いた。移動相として10mM酢酸緩衝液pH4.5、300mM ArgHClを用いた。流速は1.0ml/minとした。溶出体積41.2ml~42.2mlの画分を採取した。DLS測定より、多分散指数は0.097であり、Z平均粒子径は29.9nmであった。得られた凝集体画分を10mM酢酸緩衝液pH4.5、300mM ArgHClにより5ug/mlに希釈した。
上記「(4)免疫グロブリン(IgG)の濾過試験」と同様の方法で作成したフィルターにより、10mM酢酸緩衝液pH4.5、300mM ArgHClを濾過圧力2.0barで15min濾過し、その際の平均Fluxを初期Flux(F0)とした。その後、5ug/mlの凝集体溶液を濾過圧力2.0barで3時間濾過し、上述の式[kf/km=(F0-Flux)/Flux]に基づき、kf/kmを測定した。
(6)タンパク質回収効率のばらつき
上記「(4)免疫グロブリン(IgG)の濾過試験」と同様の方法で作成したフィルター複数個を用いて、「(4)免疫グロブリン(IgG)の濾過試験」と同様の濾過を行い、濾過開始後90分時点における1.5%免疫グロブリンG処理量の標準偏差を、濾過開始後90分時点における1.5%免疫グロブリンG処理量の平均で除した値をタンパク質回収効率のばらつきとして算出した。
(7)凝集体捕捉幅の測定
上記「(5)凝集体濾過試験」において濾過した後フィルターを解体し、膜を取り出して、これを4%パラホルムアルデヒド・りん酸緩衝液に4℃で一晩浸漬することにより、捕捉された凝集体を固定化した。続いて水に浸漬した。水置換後の膜をOCTコンパウンドに凍結包埋し、Leica CM1950(Leica)を用いて濾過後の膜から8μmの切片を作製した。
切片を水で4回洗浄し、続いてPBS-Tで4回洗浄した。Dako Antibody Diluentで1000倍に希釈したProteostat(Enzo lifesience)を添加し、暗所で室温40min静置した。その後によりPBS-Tで4回洗浄し、プレパラート化した。プレパラート化した染色切片をLeica DMi8(Leica)を用いて観察した。励起波長は552nm、観察波長は578nm。また露光時間は10msとした。得られた画像から凝集体の捕捉幅を測定した。
(8)ブタパルボウイルスクリアランス測定
上記「(4)免疫グロブリン(IgG)の濾過試験」において調製した溶液に0.5容量%のPPV溶液をspikeした溶液を濾過溶液とした。PPVは非特許文献2に記載の方法で精製したものを使用した。調製した濾過溶液をデッドエンドで、2.0barの一定圧力で120分間濾過を行った。
濾液のTiter(TCID50値)をウイルスアッセイにて測定した。PPVのウイルスクリアランスはLRV=Log(TCID50)/mL(濾過溶液)-Log(TCID50)/mL(濾液)により算出した。
(製造例)
実施例にて使用した、ポリヒドロキシエチルメタクリレート(PHEMA)、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンとn-ブチルメタクリレートの共重合体(PMPC-PBMA)、2-(N-3-スルホプロピル-N,N-ジメチルアンモニウム)エチルメタクリレートとn-ブチルメタクリレートの共重合体は開始剤にα,α-アゾビスイソブチロニトリル(関東化学社製)を用いて、コンベンショナルなラジカル重合により合成した。
また、ポリエチレングリコール-b-ポリスチレン(PEG-PSt)は、Biomaterials,Vol.20,p.963(1999)に従い、合成した。
(実施例1)
PES(BASF社製ULTRASON(登録商標)E6020P)24質量部、NMP(キシダ化学社製)36質量部、TriEG(関東化学社製)40質量部を35℃で混合した後、2kPaでの減圧脱泡を7回繰り返した溶液を製膜原液とした。二重管ノズルの環状部から紡口温度は35℃に設定して、製膜原液を吐出し、中心部からNMP75質量部、水25質量部の混合液を芯液として吐出した。吐出された製膜原液と芯液は、吐出方向と逆方向の流れで相対湿度30%の蒸気供給が行われた空走部を経て、18℃、NMP25質量部、水75質量部からなる凝固液が入った凝固浴に導入された。
凝固浴から引き出された膜は、55℃に設定された水洗槽をネルソンロール走行させた後、水中でカセを用いて巻き取った。紡糸速度は5m/minとし、ドラフト比を2とした。
巻き取られた膜はカセの両端部で切断し、束にし、弛まないように支持体に把持させ、80℃の熱水に浸漬させ、60分間洗浄した。洗浄された膜を128℃、3時間の条件で、高圧熱水処理した後、真空乾燥させることにより中空糸状の基材膜を得た。
得られた中空糸状の基材膜を、重量平均分子量80kDaのポリヒドロキシエチルメタクリレート(ヒドロキシエチルメタクリレート(関東化学社製)を用いて製造した。)2.5質量部、メタノール97.5質量部のコート液に24時間浸漬させた後、12.5Gで30min遠心脱液した。遠心脱液後、18時間真空乾燥させて、中空糸状の多孔質膜を得た。
実施例及び比較例の紡糸条件を表1および表2に示す。また、得られた多孔質膜の(1)~(8)の測定結果を表3および表4に示す。



Claims (11)

  1. 疎水性高分子と親水性高分子を含み、
    平均粒子径が30nm、多分散指数が0.10のタンパク質凝集体を2.0barで0.1g/m2濾過した際のファウリング抵抗kfと膜抵抗kmの比kf/kmが0.04以上1.0以下であり、
    Proteostat染色により観察した前記凝集体の捕捉幅が4μm以上10μm以下であり、
    ブタパルボウイルスの対数除去率が4.0以上であり、
    偏肉比が1.2以下である、ウイルス除去膜。
  2. 前記疎水性高分子が、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリケトン、ポリフッ化ビニリデン、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、及びポリスルホン系高分子からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載のウイルス除去膜。
  3. 前記親水性高分子が、ビニル系ポリマー、多糖類、エチレングリコールと疎水性モノマーとのブロック共重合体、エチレングリコールとプロピレングリコール若しくはエチルベンジルグリコールとのランダム共重合体又はブロック共重合体、ポリエチレングリコールの片末端又は両末端が疎水基で置換されて非水溶化した高分子、親水化されたポリエチレンテレフタレート、親水化されたポリエーテルスルホン、及び前記疎水性高分子に親水基を導入した親水性高分子からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載のウイルス除去膜。
  4. 前記膜の形状が中空糸である、請求項1に記載のウイルス除去膜。
  5. 前記膜の形状が平膜である、請求項1に記載のウイルス除去膜。
  6. 疎水性高分子と親水性高分子を含むウイルス除去膜の製造方法であって、以下の工程を含む方法:
    疎水性高分子を含む製膜原液を空走部に吐出する工程であって、
    前記空走部には製膜原液の吐出方向と逆方向の流れで蒸気が供給されており、
    前記蒸気の絶対湿度が3~34g/m3であり、
    前記蒸気の風量が0.5~3L/minであり、
    前記空走部の空走距離が5~40cmである工程。
  7. 前記空走部での前記製膜原液の滞留時間が0.02~6.0秒である、請求項6に記載の製造方法。
  8. 前記空走部に吐出された前記製膜原液が、凝固液に導入される、請求項6に記載の製造方法。
  9. 前記疎水性高分子が、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリケトン、ポリフッ化ビニリデン、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、及びポリスルホン系高分子からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項6に記載の製造方法。
  10. 前記親水性高分子が、ビニル系ポリマー、多糖類、エチレングリコールと疎水性モノマーとのブロック共重合体、エチレングリコールとプロピレングリコール若しくはエチルベンジルグリコールとのランダム共重合体又はブロック共重合体、ポリエチレングリコールの片末端又は両末端が疎水基で置換されて非水溶化した高分子、親水化されたポリエチレンテレフタレート又はポリエーテルスルホン、及び前記疎水性高分子に親水基を導入した親水性高分子からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項6に記載の製造方法。
  11. 疎水性高分子と親水性高分子を含み、
    平均粒子径が30nm、多分散指数が0.10のタンパク質凝集体を2.0barで0.1g/m2濾過した際のファウリング抵抗kfと膜抵抗kmの比kf/kmが0.04以上1.0以下であり、
    Proteostat染色により観察した前記凝集体の捕捉幅が4μm以上10μm以下であり、
    ブタパルボウイルスの対数除去率が4.0以上であり、
    偏肉比が1.2以下であるウイルス除去膜を使って、ウイルス粒子を含有するタンパク質溶液から前記ウイルス粒子を除去する方法。
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