JP2024064859A - インクジェット用インク及びインクジェット記録装置 - Google Patents

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Abstract

Figure 2024064859000001
【課題】記録ヘッドからのインクの吐出ヨレの発生を抑制でき、耐擦過性に優れた画像を形成でき、再溶解性に優れ、キナクリドン顔料の分散性に優れる、インクジェット用インクを提供する。
【解決手段】インクジェット用インクは、キナクリドン顔料と、顔料分散樹脂と、水性媒体とを含有する。顔料分散樹脂は、キナクリドン顔料に吸着された吸着樹脂と、キナクリドン顔料に吸着されていない未吸着樹脂とを含む。顔料分散樹脂に占める未吸着樹脂の割合は、20質量%以上50質量%以下である。インクジェット用インクを1,050,000Gで3時間遠心処理して得られる上澄み液におけるリン濃度は、1.0ppm以上6.0ppm以下である。上澄み液における硫黄濃度は、1.0ppm以上6.0ppm以下である。
【選択図】図1

Description

本発明は、インクジェット用インク及びインクジェット記録装置に関する。
インクジェット記録装置が備える記録ヘッドから、インクジェット用インクが吐出される。インクジェット用インクには、記録ヘッドからの吐出安定性が要求される。このような要求に対して、特許文献1には、例えば、水系顔料分散体を含むインクジェット用記録液が記載されている。この水系顔料分散体は、水性の液体と、水性の液体に分散したキナクリドン顔料と、キナクリドン顔料の表面に吸着した水溶性キナクリドン誘導体と、未吸着の水溶性キナクリドン誘導体とを含む。
特開2000-273383号公報
しかしながら、特許文献1に記載のインクジェット用記録液は、インクジェット記録装置が備える記録ヘッドからのインクの吐出ヨレの発生を抑制する点で、不十分である。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、記録ヘッドからのインクの吐出ヨレの発生を抑制でき、耐擦過性に優れた画像を形成でき、再溶解性に優れ、キナクリドン顔料の分散性に優れるインクジェット用インクと、このインクジェット用インクを用いたインクジェット記録装置とを提供することである。
本発明に係るインクジェット用インクは、キナクリドン顔料と、顔料分散樹脂と、水性媒体とを含有する。前記顔料分散樹脂は、前記キナクリドン顔料に吸着された吸着樹脂と、前記キナクリドン顔料に吸着されていない未吸着樹脂とを含む。前記顔料分散樹脂に占める前記未吸着樹脂の割合は、20質量%以上50質量%以下である。前記インクジェット用インクを1,050,000Gで3時間遠心処理して得られる上澄み液におけるリン濃度は、1.0ppm以上6.0ppm以下である。前記上澄み液における硫黄濃度は、1.0ppm以上6.0ppm以下である。
本発明に係るインクジェット記録装置は、記録媒体を搬送する搬送部と、インクを前記記録媒体に吐出する記録ヘッドとを備える。前記インクは、上記インクジェット用インクである。
本発明に係るインクジェット用インク及びインクジェット記録装置は、記録ヘッドからのインクの吐出ヨレの発生を抑制でき、耐擦過性に優れた画像を形成でき、再溶解性に優れ、キナクリドン顔料の分散性に優れる
本発明の第2実施形態のインクジェット記録装置の一例を示す図である。 図1で示す記録ヘッドの下面を示す図である。 クリーニング液の供給動作を説明する図である。 パージ動作とワイプ動作とを説明する図である。
以下、本発明の実施形態について説明する。まず、本明細書で用いられる用語について説明する。体積中位径(D50)は、何ら規定していなければ、動的光散乱式粒径分布測定装置(マルバーン社製「ゼータサイザーナノZS」)を用いて測定された値である。酸価は、何ら規定していなければ、「JIS(日本産業規格)K0070:1992」に従い測定した値である。質量平均分子量(Mw)は、何ら規定していなければ、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定した値である。インクの粘度は、何ら規定していなければ、「JIS(日本産業規格)Z 8803:2011 液体の粘度測定方法」に記載の方法に準拠して、25℃の環境下で測定された値である。本明細書では、アクリル及びメタクリルを包括的に「(メタ)アクリル」と総称する場合がある。式の説明における「各々独立に」は、同一の基を表してもよく異なる基を表してもよいことを意味する。本明細書に記載の各成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
[第1実施形態:インクジェット用インク]
以下、本発明の第1実施形態のインクジェット用インク(以下、単にインクと記載することがある)を説明する。
第1実施形態のインクは、キナクリドン顔料と、顔料分散樹脂と、水性媒体とを含有する。顔料分散樹脂は、キナクリドン顔料に吸着された吸着樹脂と、キナクリドン顔料に吸着されていない未吸着樹脂とを含む。顔料分散樹脂に占める未吸着樹脂の割合は、20質量%以上50質量%以下である。インクを1,050,000Gで3時間遠心処理して得られる上澄み液におけるリン濃度は、1.0ppm以上6.0ppm以下である。インクを1,050,000Gで3時間遠心処理して得られる上澄み液における硫黄濃度は、1.0ppm以上6.0ppm以下である。
以下、「顔料分散樹脂に占める未吸着樹脂の割合」を、「未吸着樹脂比率」と記載することがある。また、「インクを1,050,000Gで3時間遠心処理して得られる上澄み液における硫黄濃度」を、「所定硫黄濃度」と記載することがある。また、「インクを1,050,000Gで3時間遠心処理して得られる上澄み液におけるリン濃度」を、「所定リン濃度」と記載することがある。
第1実施形態のインクは、上記構成を備えることにより、記録ヘッドからのインクの吐出ヨレの発生を抑制でき、耐擦過性に優れた画像を形成でき、再溶解性に優れ、キナクリドン顔料の分散性に優れる。その理由は以下のように推察される。
まず、理解を助けるために、キナクリドン顔料の合成方法の概要について説明する。キナクリドン顔料は、例えば、式(20)で表される化合物である。キナクリドン顔料は、例えば、反応式(r-1)で表される反応を実施することにより合成される。
Figure 2024064859000002
式(10)、及び(20)中、R1、及びR2は、各々独立に、一価の基を表す。以下「反応式(r-1)で表される反応」を、「反応(r-1)」と記載することがある。また、「式(10)、及び(20)で表される化合物」を、各々、「化合物(10)、及び(20)」と記載することがある。R1及びR2がメチル基を表す場合、化合物(20)は、C.I.ピグメントレッド122となる。R1及びR2が水素原子を表す場合、化合物(20)は、C.I.ピグメントバイオレット19となる。
反応(r-1)において、触媒を用いて、化合物(10)を反応させることで、化合物(20)が得られる。反応(r-1)で使用される触媒は、例えば、リン含有触媒を含む。以上、キナクリドン顔料の合成方法の概要について説明した。
上記反応(r-1)で使用されたリン含有触媒が、不純物として、キナクリドン顔料に残存していることがある。このようなキナクリドン顔料をインクが含有することで、インクもリン含有触媒を含有することとなる。
また、キナクリドン顔料は水性媒体に分散し難いため、キナクリドン顔料に、分散剤として、硫黄化合物(例えば、硫黄原子を有するキナクリドン顔料の誘導体)が添加されていることがある。以下「硫黄原子を有するキナクリドン顔料の誘導体」を、「硫黄含有顔料誘導体」と記載することがある。硫黄化合物が添加されたキナクリドン顔料をインクが含有することで、インクも硫黄化合物を含有することとなる。
また、キナクリドン顔料は水性媒体に分散し難いため、インクに顔料分散樹脂が添加されることがある。顔料分散樹脂は、キナクリドン顔料に吸着された吸着樹脂と、キナクリドン顔料に吸着されていない未吸着樹脂とを含む。吸着樹脂によって、水性媒体にキナクリドン顔料が分散する。未吸着樹脂は、例えば、水性媒体に遊離している。
上記リン含有触媒、上記硫黄化合物、及び上記未吸着樹脂の極性は、比較的高い。このため、キナクリドン顔料を含有したインクを用いて画像を形成する場合、記録ヘッドの吐出面及びノズル孔の内壁に、リン含有触媒、硫黄化合物、及び未吸着樹脂が、静電気的に付着することがある。付着したリン含有触媒、硫黄化合物、及び未吸着樹脂は、記録ヘッドからのインクの吐出ヨレの一因となる。
そこで、第1実施形態のインクにおいて、所定リン濃度を6.0ppm以下とする。所定リン濃度が6.0ppm以下であれば、不純物であるリン含有触媒が比較的少ないため、記録ヘッドからのインクの吐出ヨレの発生を抑制できる。また、第1実施形態のインクにおいて、所定硫黄濃度を6.0ppm以下とする。所定硫黄濃度が6.0ppm以下であるインクは、インク中の硫黄化合物が比較的少ないため、記録ヘッドからのインクの吐出ヨレの発生を抑制できる。また、第1実施形態のインクにおいて、未吸着樹脂比率を50質量%以下とする。未吸着樹脂比率が50質量%以下であるインクは、未吸着樹脂が比較的少ないため、記録ヘッドからのインクの吐出ヨレの発生を抑制できる。
一方、リン含有触媒は、不純物ではあるものの、インクに微量に含有されるとインクの再溶解性が向上するという利点を有する。そこで、第1実施形態のインクにおいて、所定リン濃度を1.0ppm以上とする。所定リン濃度が1.0ppm以上であれば、インクの再溶解性が向上する。なお、本明細書において、インクの再溶解性とは、記録ヘッドの吐出面に付着し乾燥した乾燥インクが、クリーニング液及びパージインクの一方又は両方に容易に溶解する特性を意味する。
更に、第1実施形態のインクにおいて、所定硫黄濃度を1.0ppm以上とする。所定硫黄濃度が1.0ppm以上であるインクは、例えば分散剤である硫黄化合物がインクに十分に含有されているため、顔料粒子の粒子径が小さくなり、顔料粒子が沈降し難くなる。その結果、キナクリドン顔料を含む顔料粒子が好適に分散する。
更に、記録ヘッドからインクが記録媒体に吐出された場合に、未吸着樹脂によって、インクに含有されるキナクリドン顔料と記録媒体との結着力が増す傾向にある。そこで、第1実施形態のインクにおいて、未吸着樹脂比率を20質量%以上とする。未吸着樹脂比率が20質量%以上であるインクは、キナクリドン顔料と記録媒体との結着力が増し、耐擦過性に優れた画像を形成できる。
以上、第1実施形態のインクが、記録ヘッドからのインクの吐出ヨレの発生を抑制でき、耐擦過性に優れた画像を形成でき、再溶解性に優れ、キナクリドン顔料の分散性に優れる理由について、説明した。以下、第1実施形態のインクについて、更に詳細に説明する。
<所定リン濃度>
まず、第1実施形態のインクの所定リン濃度について、説明する。既に述べたように、所定リン濃度は、1.0ppm以上6.0ppm以下である。再溶解性を更に向上させるために、所定リン濃度は、2.0ppm以上であることが好ましく、3.0ppm以上であることがより好ましく、5.0ppm以上であることが更に好ましい。記録ヘッドからのインクの吐出ヨレの発生を更に抑制するために、所定リン濃度は、5.0ppm以下であることが好ましく、3.0ppm以下であることがより好ましく、2.0ppm以下であることが更に好ましい。
所定リン濃度は、例えば、キナクリドン顔料を合成するためのリン含有触媒に由来するリン原子の濃度である。即ち、所定リン濃度は、例えば、上澄み液に含有されるリン含有触媒が有するリン原子の濃度である。
キナクリドン顔料を合成するためのリン含有触媒は、例えば、ポリリン酸及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種である。従って、所定リン濃度は、より具体的には、ポリリン酸及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種が有するリン原子の濃度である。以下、「ポリリン酸及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種」を、「ポリリン酸等」と記載することがある。
ポリリン酸等のうち、ポリリン酸の誘導体としては、例えば、ポリリン酸エステルが挙げられ、より具体的には、ポリリン酸アルキルエステルが挙げられる。ポリリン酸アルキルエステルとしては、ポリリン酸メチルエステルが好ましい。上記反応(r-1)で使用される触媒は、リン含有触媒に加えて、スズのような金属触媒を更に含んでいてもよい。
キナクリドン顔料に残存したリン含有触媒の少なくとも一部が、例えば限外ろ過により除去されることで、所定リン濃度が低下する。例えば、所定リン濃度は、顔料分散液を限外ろ過する際の顔料分散液の循環時間を変更することで、調整できる。顔料分散液の循環時間が長い程、所定リン濃度は低下する傾向にある。所定リン濃度は、例えば、実施例に記載の方法で測定される。以上、第1実施形態のインクの所定リン濃度について、説明した。
次に、第1実施形態のインクに含有される成分について、説明する。第1実施形態のインクは、例えば、キナクリドン顔料と、顔料分散樹脂と、水性媒体とを少なくとも含有する。インクは、必要に応じて、硫黄化合物(例えば、硫黄含有顔料誘導体)を更に含有していることが好ましい。硫黄化合物は、キナクリドン顔料と共に、顔料組成物を構成する。第1実施形態のインクは、必要に応じて、界面活性剤、及びその他の成分を更に含有していてもよい。以下、顔料組成物と、顔料分散樹脂と、水性媒体と、界面活性剤と、その他の成分について、説明する。
<顔料組成物>
顔料組成物は、キナクリドン顔料と、硫黄化合物とを含む。以下、キナクリドン顔料と、硫黄化合物について説明する。
(キナクリドン顔料)
キナクリドン顔料としては、例えば、C.I.ピグメントバイオレット(19、及び42)、C.I.ピグメントレッド(122、202、206、207、及び209)、及びC.I.ピグメントオレンジ(48、及び49)が挙げられる。
キナクリドン顔料として使用可能な市販品としては、例えば、大日精化工業株式会社製「TRM-11」、BASF社製「Cinquasia(登録商標)Magenta D4550」、BASF社製「Cinquasia(登録商標)Pink D4450」、クラリアント社製「Inkjet Magenta E-S」、クラリアント社製「HOSTAPERM PINK E 02」、クラリアント社製「HOSTAPERM RED E3B」、及びクラリアント社製「HOSTAPERM RED E5B 02」が挙げられる。
インクにおけるキナクリドン顔料の含有割合としては、1質量%以上12質量%以下が好ましく、4質量%以上8質量%以下がより好ましい。キナクリドン顔料の含有割合を1質量%以上とすることで、インクを用いて所望の画像濃度の画像を形成できる。キナクリドン顔料の含有割合を12質量%以下とすることで、インクの流動性を好適化できる。インクは、顔料として、キナクリドン顔料のみを含有してもよい。また、インクの色相を調整するために、インクは、顔料として、キナクリドン顔料に加えて、これ以外の顔料を更に含有してもよい。顔料におけるキナクリドン顔料の含有割合としては、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、100質量%が特に好ましい。
(硫黄化合物)
硫黄化合物がキナクリドン顔料に吸着することで、水性媒体にキナクリドン顔料が分散する。所定硫黄濃度は、例えば、硫黄化合物(例えば、硫黄含有顔料誘導体、より具体的には、後述する式(1)で表される硫黄化合物)が有する硫黄原子の濃度である。
既に述べたように、所定硫黄濃度は、1.0ppm以上6.0ppm以下である。水性媒体にキナクリドン顔料を更に好適に分散性させるために、所定硫黄濃度は、1.5pm以上であることが好ましく、2.0ppm以上であることがより好ましく、3.0ppm以上であることが更に好ましく、5.0ppm以上であることが一層好ましい。記録ヘッドからのインクの吐出ヨレの発生を更に抑制するために、所定硫黄濃度は、5.0ppm以下であることが好ましく、3.0ppm以下であることがより好ましく、2.0ppm以下であることが更に好ましく、1.5ppm以下であることが一層好ましい。
例えば、キナクリドン顔料及び硫黄化合物の合計質量に対する硫黄化合物の含有率を変更することにより、所定硫黄濃度を調整できる。キナクリドン顔料及び硫黄化合物の合計質量に対する硫黄化合物の含有率を低い程、所定硫黄濃度は低下する傾向にある。キナクリドン顔料及び硫黄化合物の合計質量に対する硫黄化合物の含有率は、後述するキナクリドン顔料及び硫黄含有顔料誘導体(1)の合計質量に対する硫黄含有顔料誘導体(1)の含有率と同様の範囲内であることが好ましい。所定硫黄濃度は、例えば、実施例に記載の方法で測定される。
硫黄化合物は、例えば、硫黄含有顔料誘導体である。硫黄含有顔料誘導体は、例えば、硫黄含有基を有する。硫黄含有基としては、例えば、スルホ基、スルフィノ基、スルフェノ基、チオカルボキシ基、ジチオカルボキシ基、及びスルフィド基が挙げられる。硫黄含有顔料誘導体は、例えば、上記で例示したキナクリドン顔料の水素原子が硫黄含有基で置換された化合物である。
硫黄含有顔料誘導体は、金属塩であることが好ましい。硫黄含有顔料誘導体が金属塩であると、水性媒体に対する硫黄含有顔料誘導体の親和性が高くなる。その結果、硫黄含有顔料誘導体を吸着したキナクリドン顔料が、水性媒体に好適に分散する。金属塩である硫黄含有顔料誘導体としては、式(1)で表される硫黄化合物(以下、硫黄含有顔料誘導体(1)と記載することがある)が好ましい。即ち、インクは、硫黄含有顔料誘導体(1)を含有することが好ましい。
Figure 2024064859000003
式(1)中、nは、1以上3以下の整数を表し、mは、1以上3以下の整数を表し、Xは、金属イオンを表す。
式(1)中、nは、2又は3を表すことが好ましい。mは、1を表すことが好ましい。式(1)中のXは、1価以上3価以下の金属イオンを表すことが好ましく、2価又は3価の金属イオンを表すことがより好ましく、Al3+又はMg2+を表すことが更に好ましい。
硫黄含有顔料誘導体(1)としては、例えば、式(1-1)及び(1-2)で表される硫黄化合物(以下、それぞれを、硫黄含有顔料誘導体(1-1)及び(1-2)と記載することがある)が挙げられる。なお、式(1-1)及び(1-2)中のmは1を表すが、これを省略して示している。
Figure 2024064859000004
キナクリドン顔料及び硫黄含有顔料誘導体(1)の合計質量に対する硫黄含有顔料誘導体(1)の含有率は、5質量%以上12質量%以下であることが好ましい。以下、「キナクリドン顔料及び硫黄含有顔料誘導体の合計質量に対する硫黄含有顔料誘導体の含有率」を、「誘導体含有率」と記載することがある。誘導体含有率が5質量%以上12質量%以下であると、所定硫黄濃度を所望の範囲の値に容易に調整できる。誘導体含有率が低くなる程、所定硫黄濃度が低くなる傾向にある。
インクにおける硫黄含有顔料誘導体の含有割合としては、0.03質量%以上0.60質量%以下が好ましく、0.12質量%以上0.40質量%以下がより好ましい。
<顔料分散樹脂>
顔料分散樹脂は、吸着樹脂と、未吸着樹脂とを含む。吸着樹脂は、キナクリドン顔料に吸着されている。キナクリドン顔料は、例えば、吸着樹脂と共に顔料粒子を構成する。顔料粒子は、例えば、キナクリドン顔料を含むコアと、コアを被覆する被覆層とを有する。被覆層は、吸着樹脂により構成される。顔料分散樹脂は親水性を有するため、キナクリドン顔料の表面に吸着した吸着樹脂によって、水性媒体にキナクリドン顔料が分散する。一方、未吸着樹脂は、キナクリドン顔料に吸着されていない。未吸着樹脂は、水性媒体中に遊離している。
既に述べたように、未吸着樹脂比率は、20質量%以上50質量%以下である。記録ヘッドからのインクの吐出ヨレの発生を更に抑制するために、未吸着樹脂比率は、45質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることが更に好ましい。耐擦過性に更に優れた画像を形成するために、未吸着樹脂比率は、30質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、45質量%以上であることが更に好ましい。
未吸着樹脂比率は、遠心分離機を用いて、インクを遠心分離することにより測定できる。未吸着樹脂比率は、計算式「未吸着樹脂比率=100×未吸着樹脂の質量/顔料分散樹脂の合計質量=100×未吸着樹脂の質量/(未吸着樹脂の質量+吸着樹脂の質量)」から算出できる。例えば、後述する顔料分散液の調製工程において湿式分散機の吐出量が多くなる程、未吸着樹脂比率が高くなる傾向にある。
インクを1,050,000Gで3時間遠心処理して得られる上澄み液の紫外線可視光線吸収スペクトルにおいて、所定ピークの吸光度が0.15以上0.40以下であることが好ましい。本明細書において、所定ピークを、波長300nm以上340nm以下の範囲における最大ピークと定義する。以下、「インクを1,050,000Gで3時間遠心処理して得られる上澄み液の紫外線可視光線吸収スペクトルにおける、所定ピークの吸光度」を、「所定吸光度」と記載することがある。
所定ピークは、例えば、未吸着樹脂に由来するピークである。所定吸光度が0.15以上0.40以下であれば、未吸着樹脂比率を所望の範囲内の値に容易に調整できる。その結果、記録ヘッドからのインクの吐出ヨレの発生を抑制し、インクを用いて耐擦過性に優れた画像を形成できる。耐擦過性に更に優れた画像を形成するために、所定吸光度は、0.20以上であることが好ましく、0.30以上であることがより好ましい。記録ヘッドからのインクの吐出ヨレの発生を更に抑制するために、所定吸光度は、0.30以下であることが好ましく、0.20以下であることがより好ましい。
例えば未吸着樹脂比率を変更することにより、所定吸光度を調整できる。未吸着樹脂比率が高くなる程、所定吸光度が高くなる傾向にある。所定ピークは、例えば波長320nmに現れる。所定吸光度は、例えば、実施例に記載の方法により測定できる。
記録ヘッドからのインクの吐出ヨレの発生を更に抑制し、且つ、キナクリドン顔料の分散性を高めるために、キナクリドン顔料の質量に対する顔料分散樹脂の質量の比率(以下、「樹脂/顔料比率」と記載することがある)は、0.50以下であることが好ましく、0.35以上0.50以下であることがより好ましい。樹脂/顔料比率は、計算式「樹脂/顔料比率=顔料分散樹脂の質量/顔料の質量」から算出できる。顔料分散樹脂の質量は、吸着樹脂及び未吸着樹脂の合計質量である。
記録ヘッドからのインクの吐出ヨレの発生を更に抑制するために、顔料分散樹脂の酸価は、60mgKOH/g以上300mgKOH/g以下であることが好ましく、80mgKOH/g以上120mgKOH/g以下であることが好ましく、90mgKOH/g以上110mgKOH/g以下であることがより好ましい。また、顔料分散樹脂の酸価が60mgKOH/g以上であれば、水性媒体に顔料粒子が好適に分散し、発色及び着色力に優れた画像を形成できる。一方、顔料分散樹脂の酸価が300mgKOH/g以下であれば、インクを安定的に保存できる。
インクの粘度を好適化するために、顔料分散樹脂の質量平均分子量は、10000以上50000以下であることが好ましく、15000以上30000以下であることがより好ましい。
顔料分散樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル樹脂、スチレン-(メタ)アクリル樹脂、スチレン-マレイン酸樹脂、及びウレタン樹脂が挙げられる。キナクリドン顔料を安定的に分散させる観点から、顔料分散樹脂としては、スチレン-(メタ)アクリル樹脂が好ましい。
スチレン(メタ)アクリル樹脂は、繰り返し単位として、スチレン又はその誘導体に由来する繰り返し単位と、(メタ)アクリル酸に由来する繰り返し単位とを少なくとも有する。スチレン-(メタ)アクリル樹脂は、繰り返し単位として、(メタ)アクリル酸エステルに由来する繰り返し単位を更に有することが好ましい。
スチレン又はその誘導体に由来する繰り返し単位を形成可能な第1モノマーとしては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、及びビニルトルエンが挙げられる。第1モノマーとしては、スチレンが好ましい。樹脂の有する全繰り返し単位に対する、スチレン又はその誘導体に由来する繰り返し単位の含有割合は、25.0質量%以上60.0質量%以下であることが好ましい。
(メタ)アクリル酸に由来する繰り返し単位を形成可能な第2モノマーとしては、例えば、アクリル酸、及びメタクリル酸が挙げられる。第2モノマーとしては、メタクリル酸が好ましい。顔料分散樹脂の有する全繰り返し単位のうち、(メタ)アクリル酸に由来する繰り返し単位の含有割合は、4.5質量%以上10.0質量%以下であることが好ましい。
(メタ)アクリル酸エステルに由来する繰り返し単位を形成可能な第3モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アルキル基の炭素原子数が1以上8以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、アルキル基の炭素原子数が1以上4以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルがより好ましく、(メタ)アクリル酸メチル及び(メタ)アクリル酸ブチルが更に好ましく、メタクリル酸メチル及びアクリル酸ブチルが特に好ましい。顔料分散樹脂の有する全繰り返し単位のうち、(メタ)アクリル酸エステルに由来する繰り返し単位の含有割合は、35.0質量%以上70.0質量%以下であることが好ましく、50.0質量%以上70.0質量%以下であることがより好ましい。顔料分散樹脂が2種以上の(メタ)アクリル酸エステルに由来する繰り返し単位を有する場合、(メタ)アクリル酸エステルに由来する繰り返し単位の含有割合は、2種以上の(メタ)アクリル酸エステルに由来する繰り返し単位の合計含有割合である。
顔料分散樹脂としては、少なくとも1種の(メタ)アクリル酸に由来する繰り返し単位と、少なくとも1種の(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する繰り返し単位と、スチレンに由来する繰り返し単位とを有する樹脂が好ましい。顔料分散樹脂としては、(メタ)アクリル酸に由来する繰り返し単位と、(メタ)アクリル酸メチルに由来する繰り返し単位と、(メタ)アクリル酸ブチルに由来する繰り返し単位と、スチレンに由来する繰り返し単位とを有する樹脂がより好ましい。顔料分散樹脂としては、メタクリル酸に由来する繰り返し単位と、メタクリル酸メチルに由来する繰り返し単位と、アクリル酸ブチルに由来する繰り返し単位と、スチレンに由来する繰り返し単位とを有する樹脂が更に好ましい。顔料分散樹脂は、繰り返し単位として、これらの繰り返し単位のみを有していてもよく、これらの繰り返し単位以外の繰り返し単位を更に有していてもよい。
インクにおける顔料分散樹脂の含有割合としては、0.5質量%以上8.0質量%以下が好ましく、1.5質量%以上4.0質量%以下がより好ましい。顔料分散樹脂の含有割合を0.5質量%以上とすることで、キナクリドン顔料の凝集を好適に抑制できる。顔料分散樹脂の含有割合を8.0質量%以下とすることで、記録ヘッドのノズル詰まりが発生することを好適に抑制できる。
<水性媒体>
インクが含有する水性媒体は、水を含む媒体である。水性媒体は、溶媒として機能してもよく、分散媒として機能してもよい。水性媒体の具体例としては、水及び水溶性有機溶媒を含む水性媒体が挙げられる。
水溶性有機溶媒としては、例えば、グリコール化合物、トリオール化合物、グリコールエーテル化合物、ラクタム化合物、含窒素化合物、アセテート化合物、γ-ブチロラクトン、チオジグリコール、及びジメチルスルホキシドが挙げられる。
グリコール化合物としては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-へキサンジオール、1,2-オクタンジオール、1,8-オクタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、3-メチル-1,2-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、2-エチル-1,2-ヘキサンジオール、及びチオジグリコールが挙げられる。グリコール化合物としては、3-メチル-1,5-ペンタンジオールが好ましい。
トリオール化合物としては、例えば、グリセリン、1,2,3-ブタントリオール、及び1,2,6-ヘキサントリオールが挙げられる。トリオール化合物としては、グリセリンが好ましい。
グリコールエーテル化合物としては、例えば、アルキレングリコールアルキルエーテルが挙げられ、より具体的には、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルが挙げられる。グリコールエーテル化合物としては、トリエチレングリコールモノブチルエーテルが好ましい。
ラクタム化合物としては、例えば、2-ピロリドン、及びN-メチル-2-ピロリドンが挙げられる。ラクタム化合物としては、2-ピロリドンが好ましい。
含窒素化合物としては、例えば、1,3-ジメチルイミダゾリジノン、ホルムアミド、及びジメチルホルムアミドが挙げられる。
アセテート化合物としては、例えば、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートが挙げられる。
水性媒体としては、水、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、及びグリセリンの混合溶媒が好ましい。
インクにおける水性媒体の含有割合としては、30質量%以上95質量%以下が好ましく、70質量%以上95質量%以下がより好ましい。インクにおけるグリコールエーテル化合物の含有割合は、1質量%以上10質量%以下が好ましく、3質量%以上5質量%以下がより好ましい。水性媒体におけるグリコールエーテル化合物の含有割合は、1質量%以上10質量%以下が好ましく、3質量%以上5質量%以下がより好ましい。水溶性有機溶媒におけるグリコールエーテル化合物の含有割合は、1質量%以上5質量%以下が好ましく、1質量%以上3質量%以下がより好ましい。
<界面活性剤>
界面活性剤は、インクに含まれる各成分の相溶性及び分散安定性を好適化させる。また、界面活性剤は、記録媒体に対するインクの浸透性を好適化させる。界面活性剤としては、ノニオン界面活性剤が好ましい。
ノニオン界面活性剤としては、例えば、アセチレンジオール及びアセチレンジオールのエチレンオキサイド付加物が挙げられる。アセチレンジオールとしては、例えば、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール、3,6-ジメチル-4-オクチン-3,6-ジオール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、及び2,4-ジメチル-5-ヘキシン-3-オールが挙げられる。ノニオン界面活性剤としては、アセチレンジオールのエチレンオキサイド付加物、及びアセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物が好ましい。ノニオン界面活性剤のHLB値は、4以上14以下であることが好ましく、4以上8以下又は10以上14以下であることがより好ましい。インクが界面活性剤を含有する場合、インクにおける界面活性剤の含有割合としては、0.01質量%以上1.0質量%以下が好ましい。
<その他の成分>
インクは、必要に応じて、公知の添加剤(より具体的には、溶解安定剤、乾燥防止剤、酸化防止剤、粘度調整剤、pH調整剤、中和剤、及び防カビ剤等)を含有してもよい。なお、インクには、公知の添加剤が含有されていなくてもよい。
<キナクリドン顔料の合成方法>
キナクリドン顔料の合成方法の概要について既に述べたが、以下、キナクリドン顔料の合成方法の一例について更に詳細に説明する。
上記式(10)及び(20)中のR1及びR2が表す一価の基としては、例えば、水素原子、アルキル基、及びハロゲン原子が挙げられる。R1及びR2が表すハロゲン原子としては、塩素原子が好ましい。R1及びR2が表すアルキル基としては、炭素原子数1以上6以下のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
反応(r-1)において、触媒存在下で、化合物(10)を反応させることで、化合物(20)が得られる。触媒反応(r-1)は、脱水閉環反応である。例えば、反応(r-1)において、触媒(例えば、リン含有触媒、より具体的には、ポリリン酸等)の存在下で、化合物(10)を、第1所定温度で、所定時間、圧熱する。第1所定温度は、例えば、85℃以上200℃以下である。所定時間は、例えば、1時間以上3時間以下である。反応(r-1)において、化合物(10)と触媒とに加えて、アセトンのような有機溶媒を更に使用してもよい。また、化合物(10)の代わりに、化合物(10)をけん化したアルカリ塩を、反応(r-1)に使用してもよい。
反応(r-1)の後、必要に応じて、化合物(20)にアルカリ処理を行うことで、β型のキナクリドン顔料を得ることができる。アルカリ処理は、例えば、オートクレープを用い、化合物(20)のウェットケーキとアルカリとを、第2所定温度で加熱することで実施できる。第2所定温度は、例えば、120℃以上200℃以下である。アルカリ処理に、有機溶媒を更に使用してもよい。アルカリ処理に使用可能な有機溶媒としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、及びグリコールが挙げられる。
反応(r-1)によりキナクリドン顔料を合成する方法は、閉環剤としてスルホン酸基を有する酸を使用した合成方法と比較して、生成したキナクリドン顔料に残存したスルホン酸基又はスルホン酸クロライド基を、硫酸を用いて脱離させる必要がない。従って、反応(r-1)によりキナクリドン顔料を合成する方法は、簡便に実施可能である。
キナクリドン顔料は、必要に応じて、粉砕されてもよい。上記反応(r-1)を実施した後、キナクリドン顔料に、例えば、下記の溶剤処理工程及び後処理工程が実施されてもよい。
<顔料組成物の調製方法>
以下、顔料組成物の調製方法の一例について説明する。顔料組成物の調製方法は、例えば、溶剤処理工程(以下、工程Aと記載することがある)、及び後処理工程(以下、工程Bと記載することがある)を含む。硫黄含有顔料誘導体は、工程Bで添加される。必要に応じて、硫黄含有顔料誘導体は、工程Bに加えて、工程Aで添加されてもよい。
(顔料組成物の調製工程における工程A)
工程Aでは、溶剤を用いて、キナクリドン顔料が処理される。キナクリドン顔料の処理方法としては、例えば、ニーダー(例えば、ソルトミリングニーダー)を用いて、キナクリドン顔料と溶剤とを混練する方法が挙げられる。工程Aにおいて、キナクリドン顔料の結晶成長、及びキナクリドン顔料の微粒子化が促される。キナクリドン顔料の微粒子化が促されることで、キナクリドン顔料の着色性及び彩度が好適化される。キナクリドン顔料を処理する温度及び時間は、特に限定されず、所望のキナクリドン顔料の粒子径及び粒度分布となるように適宜設定されればよい。工程Aにおいて、硫黄含有顔料誘導体が、必要に応じて添加されてもよい。また、工程Aにおいて、摩砕助剤として無機塩基(より具体的には、水酸化ナトリウム、及び水酸化カリウム等)が、必要に応じて添加されてもよい。工程Aで得られたキナクリドン顔料の混練物は、必要に応じて水又は溶剤で洗浄され、例えばウェットケーキ状となる。
(顔料組成物の調製工程における工程B)
工程Bでは、工程Aで得られたキナクリドン顔料の混練物が後処理される。後処理方法としては、例えば、キナクリドン顔料の混練物から溶剤を除去して顔料組成物を分離する方法が挙げられる。顔料組成物を分離する方法としては、例えば、濾過、乾燥、及びロータリーエバポレーターを用いた溶剤の留去が挙げられる。溶剤が留去される場合、溶剤留去の温度は、例えば、溶剤の沸点以上の温度である。分離された顔料組成物は、必要に応じて、粉砕されてもよい。
工程Bにおいて、硫黄含有顔料誘導体が添加される。工程Bにおいて、キナクリドン顔料の凝集が抑制され、キナクリドン顔料の分散性及び保存安定性の両立が可能となる。硫黄含有顔料誘導体は、混練物から顔料組成物を分離する処理を開始した時に添加されてもよく、分離処理中に添加されてもよい。工程Bにおいて添加される硫黄含有顔料誘導体の質量(工程Bに加えて工程Aでも硫黄含有顔料誘導体が添加される場合には、工程A及び工程Bで添加される硫黄含有顔料誘導体の合計質量)は、キナクリドン顔料100質量部に対して、0.5質量部以上15質量部以下であることが好ましく、1質量部以上10質量部以下であることがより好ましく、3質量部以上6質量部以下であることが更に好ましく、3質量部以上5質量部以下であることが一層好ましい。硫黄含有顔料誘導体の質量がキナクリドン顔料100質量部に対して0.5質量部以上15質量部以下であると、キナクリドン顔料の色相が好適化される。硫黄含有顔料誘導体の質量がキナクリドン顔料100質量部に対して3質量部以上6質量部以下であると、所定硫黄濃度を所望の範囲内の値に容易に調整できる。
工程Bに加えて工程Aでも硫黄含有顔料誘導体が添加される場合には、工程Bで添加される硫黄含有顔料誘導体の種類は、工程Aで添加される硫黄含有顔料誘導体の種類と同一であってもよく、異なっていてもよい。また、工程Bに加えて工程Aでも硫黄含有顔料誘導体が添加される場合には、キナクリドン顔料の着色性を好適化する観点から、工程Bで添加される硫黄含有顔料誘導体の質量は、工程Aで添加される硫黄含有顔料誘導体の質量と同等又はそれよりも多いことが好ましい。
<インクの製造方法>
以下、第1実施形態のインクの製造方法の一例について説明する。第1実施形態のインクの製造方法は、例えば、顔料分散液の調製工程、限外ろ過工程、及び混合工程を含む。
(顔料分散液の調製工程)
顔料分散液の調製工程では、キナクリドン顔料を含む顔料組成物と、樹脂と、水性媒体とを混合して、顔料分散液を得る。顔料粒子を十分に分散させるために、顔料分散液は、界面活性剤を更に含有してもよい。顔料分散液において、キナクリドン顔料及び樹脂により構成される顔料粒子のD50としては、70nm以上140nm未満が好ましく、110nm以上130nm以下がより好ましい。
顔料分散液におけるキナクリドン顔料の含有割合としては、5質量%以上25質量%以下が好ましく、10質量%以上20質量%以下がより好ましい。顔料分散液における樹脂の含有割合としては、2質量%以上10質量%以下が好ましく、4質量%以上8質量%以下がより好ましい。顔料分散液が界面活性剤を含有する場合、顔料分散液における界面活性剤の含有割合としては、0.1質量%以上2質量%以下が好ましく、0.3質量%以上1質量%以下がより好ましい。
顔料分散液は、メディア型湿式分散機を用いて、上記顔料分散液に含有される成分を湿式分散することで調製できる。メディア型湿式分散機としては、例えば、ビーズミル(より具体的には、浅田鉄工株式会社製「ナノグレンミル」、日本コークス工業株式会社製「MSCミル」、及びウィリー・エ・バッコーフェン社製「ダイノ(登録商標)ミル」等)が挙げられる。
メディア型湿式分散機による湿式分散では、メディアとして、例えば、小粒径ビーズ(例えば、直径が0.5mm以上1.0mm以下のビーズ)を用いる。ビーズの直径を変更することで、例えば、顔料の分散度合い、及び未吸着樹脂比率を変更できる。ビーズの直径が小さい程、顔料粒子のD50が小さくなる傾向がある。ビーズの直径が小さい程、キナクリドン顔料を含むコアが樹脂により被覆され易くなり、未吸着樹脂比率が低下する傾向がある。ビーズの材質としては、特に限定されないが、硬質の材料(例えば、ガラス及びジルコニア)が好ましい。メディア型湿式分散機の吐出量は、例えば、200g/分以上600g/分以下である。メディア型湿式分散機の吐出量が多くなる程、未吸着樹脂比率が高くなる傾向がある。
(限外ろ過工程)
限外ろ過工程では、顔料分散液を、限外ろ過する。限外ろ過により、リン含有触媒の少なくとも一部が除去されて、顔料分散液のリン濃度が低減する。このような顔料分散液をインクが含有することで、インクの所定リン濃度が、所望の範囲内の値に容易に調整される。リン含有触媒の少なくとも一部を除去するために、限外ろ過に使用する限外ろ過膜の分画分子量は、リン含有触媒の少なくとも一部がろ過され、これ以外の顔料分散液の成分がろ過されない分画分子量を選択することが好ましい。また、限外ろ過に使用する限外ろ過膜の分画分子量は、リン含有触媒の分子量以上で、且つ樹脂の分子量以下であることが好ましい。所定リン濃度を所望の範囲内の値に調整するために、限外ろ過の循環時間は0.4時間以上であることが好ましい。製造コストを低減させるため、限外ろ過の循環時間は2.0時間以下であることが好ましい。限外ろ過により、リン含有触媒を含有する液が、ろ液として排出され、リン含有触媒以外の顔料分散液の成分を含有する液が、回収液として再び循環する。排出されたろ液の量と同量の水を、回収液に添加することで、顔料分散液の固形分濃度を一定に維持できる。
(混合工程)
混合工程では、限外ろ過後の顔料分散液と、必要に応じて配合される成分(例えば、更に添加される水性媒体、及び界面活性剤)とが、攪拌機を用いて混合される。インクの各成分を混合した後、フィルター(例えば孔径5μm以下のフィルター)により異物及び粗大粒子を除去してもよい。
インクの全原料における顔料分散液の割合は、例えば、25質量%以上60質量%以下である。なお、第1実施形態のインクは、例えば、後述するインクジェット記録装置に好適に用いることができる。
[第2実施形態:インクジェット記録装置]
次に、本発明の第2実施形態のインクジェット記録装置について説明する。第2実施形態のインクジェット記録装置は、記録媒体を搬送する搬送部と、記録ヘッドとを備える。記録ヘッドは、上記第1実施形態のインクを記録媒体に吐出する。従って、第2実施形態のインクジェット記録装置は、第1実施形態で述べたのと同様の理由により、記録ヘッドからのインクの吐出ヨレの発生を抑制でき、耐擦過性に優れた画像を形成でき、再溶解性に優れ、キナクリドン顔料の分散性に優れる。
以下、図面を参照して第2実施形態のインクジェット記録装置の一例であるインクジェット記録装置1について説明する。なお、参照する図面は、理解しやすくするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示しており、図示された各構成要素の大きさ、個数等は、実際とは異なる場合がある。また、図1~図4に示すX軸、Y軸、及びZ軸は、互いに直交している。
図1に示すインクジェット記録装置1は、給紙部3と、第1記録ヘッド4Cと、第2記録ヘッド4Mと、第3記録ヘッド4Yと、第4記録ヘッド4Kと、液体収容部5と、第1搬送部6と、第2搬送部7と、排出部8と、メンテナンス部9とを備える。以下、第1記録ヘッド4C~第4記録ヘッド4Kを区別する必要がない場合には、単に「記録ヘッド4」と記載することがある。
給紙部3は、複数の給紙カセット31と、複数のピックアップローラー32と、複数の搬送ローラー33と、レジストローラー対34とを備える。給紙カセット31には、記録媒体Sが積み重ねられて収容されている。ピックアップローラー32は、給紙カセット31に収容されている記録媒体Sを1枚ずつ取り出す。搬送ローラー33は、ピックアップローラー32によって取り出された記録媒体Sを搬送する。レジストローラー対34は、搬送ローラー33によって搬送された記録媒体Sを、一時待機させた後に、所定のタイミングで第1搬送部6に供給する。
記録ヘッド4は、第1搬送部6の上方に配設される。第1記録ヘッド4C~第4記録ヘッド4Kは、記録媒体Sの搬送方向Dに、この順番で並設されている。第1記録ヘッド4C~第4記録ヘッド4Kの各々は、同じ高さに配設されている。第1記録ヘッド4C~第4記録ヘッド4Kには、それぞれ異なる4色(例えば、シアン、マゼンタ、イエロー、及びブラック)のインクが充填されている。第2記録ヘッド4Mに充填されるインクが、マゼンタ色である第1実施形態のインクである。記録ヘッド4は、各々、インクを、記録媒体Sに吐出する。記録ヘッド4のうち、第2記録ヘッド4Mは、マゼンタ色である第1実施形態のインクを記録媒体Sに吐出する。その結果、第1搬送ベルト63が搬送する記録媒体S上に画像(例えば、カラー画像)が形成される。
液体収容部5は、第1インクタンク51Cと、第2インクタンク51Mと、第3インクタンク51Yと、第4インクタンク51Kと、クリーニング液タンク52とを備える。以下、第1インクタンク51C~第4インクタンク51Kを区別する必要がない場合には、単に「インクタンク51」と記載することがある。第1インクタンク51C~第4インクタンク51Kには、それぞれ異なる4色(例えば、シアン、マゼンタ、イエロー、及びブラック)のインクが収容されている。第2インクタンク51Mに収容されるインクが、マゼンタ色である第1実施形態のインクである。第1インクタンク51C~第4インクタンク51Kは、各々、第1記録ヘッド4C~第4記録ヘッド4Kにインクを供給する。クリーニング液タンク52は、液含侵体91にクリーニング液を供給する。
第1搬送部6は、給紙部3よりも、記録媒体Sの搬送方向Dの下流側に配設される。第1搬送部6は、第1従動ローラー61と、第1駆動ローラー62と、第1搬送ベルト63とを備える。第1駆動ローラー62は、第1従動ローラー61よりも、記録媒体Sの搬送方向Dの下流側に配設される。第1搬送ベルト63は、第1従動ローラー61及び第1駆動ローラー62に掛け渡された無端ベルトである。第1駆動ローラー62は、図1において反時計回り方向に回転駆動される。これにより、第1駆動ローラー62は、第1搬送ベルト63を従動駆動させる。これにより、第1搬送ベルト63は、搬送方向Dに、給紙部3から給紙された記録媒体Sを第2搬送部7へ搬送する。このようにして、第1搬送部6は、記録媒体Sを搬送する。第1従動ローラー61は、第1搬送ベルト63を介して、第1駆動ローラー62に従動して回転する。
第2搬送部7は、第1搬送部6よりも、記録媒体Sの搬送方向Dの下流側に配設される。第2搬送部7は、第2従動ローラー71と、第2駆動ローラー72と、第2搬送ベルト73とを備える。第2駆動ローラー72は、第2従動ローラー71よりも、記録媒体Sの搬送方向Dの下流側に配設される。第2搬送ベルト73は、第2従動ローラー71及び第2駆動ローラー72に掛け渡された無端ベルトである。第2駆動ローラー72は、図1において反時計回り方向に回転駆動される。これにより、第2駆動ローラー72は、第2搬送ベルト73を従動駆動させる。これにより、第2搬送ベルト73は、搬送方向Dに、第1搬送部6から搬送された記録媒体Sを排出部8へ搬送する。このようにして、第2搬送部7は、記録媒体Sを搬送する。第2従動ローラー71は、第2搬送ベルト73を介して、第2駆動ローラー72に従動して回転する。
排出部8は、第2搬送部7よりも、記録媒体Sの搬送方向Dの下流側に配設される。排出部8は、排出トレイ81と、排出駆動ローラー82と、排出従動ローラー83とを備える。排出駆動ローラー82と、排出従動ローラー83とは、互いに対向する位置で圧接されている。排出駆動ローラー82は、図1において反時計回り方向に回転駆動される。排出従動ローラー83は、排出駆動ローラー82の回転に従動して回転する。これにより、排出駆動ローラー82と、排出従動ローラー83とは、第2搬送部7から搬送された記録媒体Sを排出トレイ81へ排出する。排出トレイ81には、排出された記録媒体Sが載置される。
メンテナンス部9は、液含侵体91と、クリーニング部材92とを備える。液含侵体91は、クリーニング液を含浸する。液含侵体91は、記録ヘッド4が有する吐出面42(図2参照)に接触して、吐出面42にクリーニング液を供給する。液含侵体91は、例えば、スポンジ、不織布、又は吸水性シートである。クリーニング部材92は、記録ヘッド4が有する吐出面42を払拭する。これにより、吐出面42に付着したインクがクリーニングされる。クリーニング部材92は、例えば、ゴム製ワイパーである。
次に、図2を参照して、記録ヘッド4を更に説明する。図2は、図1で示す記録ヘッド4の下面を示す図である。
図2に示すように、記録ヘッド4は、第1ノズル列N1と、第2ノズル列N2と、吐出面42とを備える。理解を容易にするために、図2において、第1ノズル列N1及び第2ノズル列N2を、各々、破線で囲んでいる。第1ノズル列N1及び第2ノズル列N2の各々は、複数のノズル41を含む。ノズル41は、インクを記録媒体Sに吐出する。ノズル41は、吐出面42に開口している。第1ノズル列N1及び第2ノズル列N2は、記録媒体Sの搬送方向Dに並設されている。第1ノズル列N1及び第2ノズル列N2の各々において、複数のノズル41は、記録媒体Sの搬送方向Dと直交する方向に間隔をあけて設けられる。記録ヘッド4は、例えば、ラインヘッドである。
第1ノズル列N1及び第2ノズル列N2の各々の幅41w(即ち、記録ヘッド4によって記録可能な領域の幅)は、記録媒体Sの幅と同等又はそれよりも広い。そのため、記録ヘッド4は、固定された状態で、第1搬送ベルト63上を搬送される記録媒体Sに画像を記録することができる。即ち、インクジェット記録装置1には、シャトル運動を行わない方式であるシングルパス方式が採用されている。第2実施形態のインクジェット記録装置1は、このような記録ヘッド4を備えるため、シリアルヘッドを備えるインクジェット記録装置と比較し、高速で印刷できる。
次に、図3及び図4を参照して、メンテナンス部9によるクリーニング動作を説明する。クリーニング動作は、クリーニング液の供給動作、パージ動作、及びワイプ動作を含む。図3は、クリーニング液の供給動作を説明する図である。図4は、パージ動作とワイプ動作とを説明する図である。なお、記録ヘッド4の側面視においてノズル41は確認できないが、理解を容易にするために、図3及び図4において、ノズル41の位置を破線で示している。
図3に示すように、記録ヘッド4は、インク流入口43と、インク流出口44とを備える。インクは、インクタンク51からインク流入口43を通って記録ヘッド4へ流入し、インク流出口44を通って記録ヘッド4から流出する。
図1に示すように、メンテナンス部9が備える液含侵体91は、第2搬送部7の下方に配設される。メンテナンス部9が備えるクリーニング部材92は、液含侵体91の下方に配設される。液含侵体91とクリーニング部材92とは、各々、第2搬送部7に対向する位置と、記録ヘッド4の吐出面42に対向する位置との間を移動可能である。更に、液含侵体91は、図3に示すように、上昇方向D1及び下降方向D2の各々の方向に移動可能である。クリーニング部材92は、図4に示すように、上昇方向D1、下降方向D2、及びワイピング方向D3の各々の方向に移動可能である。「上昇方向D1」は、Z軸方向において吐出面42へ近づく方向である。また、「下降方向D2」は、Z軸方向において吐出面42から遠ざかる方向である。また、「ワイピング方向D3」は、吐出面42に沿う方向である。液含侵体91とクリーニング部材92とは、各々、公知の駆動機構(不図示)により、移動される。
ここで、吐出面42に付着したインクが、乾燥して固着することがある。このような固着インクをクリーニングするために、クリーニング動作が実施される。
まず、クリーニング動作のうち、クリーニング液の供給動作を説明する。クリーニング液が液含侵体91に含浸される。次に、図3に示すように、液含侵体91が、吐出面42に対向する位置まで移動した後、上昇方向D1に移動する。そして、液含侵体91が、吐出面42に押し当てられる。このようにして、液含侵体91に含浸されたクリーニング液が、吐出面42に付着する。液含侵体91が吐出面42に押し当てられた状態が、所定時間、維持されることが好ましい。所定時間は、1秒以上5分以下であることが好ましい。所定時間が経過すると、液含侵体91が下降方向D2に移動する。そして、液含侵体91が吐出面42に押し当てられた状態が解除される。
次に、パージ動作を説明する。図4に示すように、記録ヘッド4からインクがパージされる。図4において、パージされたインク(パージインク)に「Nf」を付して示す。具体的には、記録ヘッド4の加圧により、インクが、ノズル41から強制的に排出される。これにより、ノズル41の詰まり等が解消すると共に、パージインクNfが記録ヘッド4の吐出面42に付着する。
次に、ワイプ動作を説明する。クリーニング部材92が、吐出面42に対向する位置(図4に示す位置)まで移動した後、上昇方向D1に移動する。そして、クリーニング部材92が、吐出面42に押し当てられる。クリーニング部材92が吐出面42に押し当てられた状態が維持されながら、クリーニング部材92が吐出面42に沿う方向(図4に示すワイピング方向D3)に移動する。これにより、クリーニング部材92が、吐出面42を払拭する。その結果、吐出面42に付着したインク(例えば、固着インク及びパージインクNf)とクリーニング液とが除去される。これにより、記録ヘッド4の吐出面42がクリーニングされる。次いで、クリーニング部材92が下降方向D2に移動する。そして、クリーニング部材92が吐出面42に押し当てられた状態が解除される。
以上、第2実施形態のインクジェット記録装置の一例であるインクジェット記録装置1について説明した。但し、第2実施形態のインクジェット記録装置は、インクジェット記録装置1に限定されない。第2実施形態のインクジェット記録装置は、マルチパス方式が採用されていてもよい。また、第1記録ヘッド4C~第4記録ヘッド4Kにおいて、ノズル41の個数、ノズル41の間隔、及びノズル41の位置関係は、装置の仕様に応じて適宜設定することができる。また、クリーニング液の供給動作は、インクジェット法によるクリーニング液の吐出、ローラーを用いたクリーニング液の塗布、又はクリーニング液の噴霧であってもよい。また、クリーニング液の供給動作、パージ動作、及びワイプ動作は、各々、繰り返されてもよい。また、クリーニング液の供給動作及びパージ動作を実施する順序は、限定されない。また、クリーニング部材92は、吐出面42に沿う方向に往復移動してもよい。例えば、クリーニング部材92が吐出面42に押し当てられた状態が維持されながら、クリーニング部材92が吐出面42に沿う第1方向(図4に示すワイピング方向D3)に移動した後、吐出面42に沿う第1方向とは反対の第2方向(図4に示すワイピング方向D3と反対の方向)に移動してもよい。
以下、本発明の実施例を説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されない。なお、以下の実施例において、イオン交換水を、単に、水と記載する。
[顔料分散樹脂(R1)の準備]
まず、インクの調製に用いる顔料分散樹脂(R1)を準備した。顔料分散樹脂(R1)は、メタクリル酸に由来する繰り返し単位(MAA単位)と、メタクリル酸メチルに由来する繰り返し単位(MMA単位)と、アクリル酸ブチルに由来する繰り返し単位(BA単位)と、スチレンに由来する繰り返し単位(ST単位)とを有していた。顔料分散樹脂(R1)は、質量平均分子量(Mw)が20000であり、酸価が100mgKOH/gであった。顔料分散樹脂(R1)が有する全繰り返し単位の質量に対する、MAA単位、MMA単位、BA単位、及びST単位の含有割合は、各々、8.1質量%、36.9質量%、30.0質量%、及び25.0質量%であった。
(酸価の測定)
顔料分散樹脂(R1)の上記酸価は、「JIS(日本産業規格)K0070:1992」に従い測定した。
(質量平均分子量の測定)
顔料分散樹脂(R1)の上記質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(東ソー株式会社製「HLC-8020GPC」)を用いて下記測定条件により測定した。検量線は、東ソー株式会社製のTSKgel標準ポリスチレンであるF-40、F-20、F-4、F-1、A-5000、A-2500、及びA-1000と、n-プロピルベンゼンとを用いて作成した。
質量平均分子量の測定条件は、以下の通りであった。
・カラム:東ソー株式会社製「TSKgel SuperMultiporeHZ-H」(4.6mmI.D.×15cmのセミミクロカラム)
・カラム本数:3本
・溶離液:テトラヒドロフラン
・流速:0.35mL/分
・サンプル注入量:10μL
・測定温度:40℃
・検出器:RI(屈折率)検出器
[インクの調製]
実施例に係るインク(A-1)~(A-9)及び比較例に係るインク(B-1)~(B-6)を、以下の方法により調製した。これらのインクの調製条件と、所定硫黄濃度、未吸着樹脂比率、及び所定リン濃度の測定結果とを、表1及び表2に示す。
Figure 2024064859000005
Figure 2024064859000006
表1及び表2、並びに後述する表5及び表6における用語は、以下の通りである。「実」は、実施例を示す。「比」は、比較例を示す。「顔料」は、キナクリドン顔料を示す。「顔料」欄の「含有率」は、キナクリドン顔料及び硫黄含有顔料誘導体の合計質量に対するキナクリドン顔料の含有率を示す。「PR122」は、C.I.ピグメントレッド122を示す。「PV19」は、C.I.ピグメントバイオレット19を示す。「誘導体」は、硫黄含有顔料誘導体を示す。「誘導体」欄の「含有率」は、誘導体含有率、即ち、キナクリドン顔料及び硫黄含有顔料誘導体の合計質量に対する硫黄含有顔料誘導体の含有率を示す。「硫黄濃度」は、所定硫黄濃度を示す。「分散処理」欄の「吐出量」は、後述の顔料分散液の調製で実施される分散処理におけるビーズミルの吐出量を示す。「限外ろ過」欄の「循環時間」は、後述の限外ろ過処理における循環時間を示す。「リン濃度」は、所定リン濃度を示す。
<インク(A-1)の調製>
(顔料組成物(P1)の調製)
固形分量95質量部のキナクリドン顔料(C.I.ピグメントレッド122)のウェットケーキと、5質量部のメタノールとを混合し、混合液Aを得た。混合液Aの全量と、5質量部の硫黄含有顔料誘導体(1-1)とを混合し、混合液Bを得た。80℃で混合液Bからメタノールを減圧留去し、残渣を得た。水を用いて残渣を濾過し、80℃で乾燥させ、乾燥物を得た。カウンタジェットミル(登録商標)(ホソカワミクロン株式会社製)を用いて乾燥物を粉砕することで、顔料組成物(P1)を得た。顔料組成物(P1)において、誘導体含有率は、5質量%であった。
(顔料分散液の調製)
表3に示す配合d-aとなるように、顔料分散液を調製した。
Figure 2024064859000007
まず、6.0質量部の顔料分散樹脂(R1)と、水酸化ナトリウム水溶液とを混合した。水酸化ナトリウム水溶液には、所定量の水酸化ナトリウムが含まれていた。表3に示す水酸化ナトリウムの添加量である「所定量」は、顔料分散樹脂(R1)の等量中和に必要な量の1.05倍量を示す。これにより、顔料分散樹脂(R1)を、等量(厳密には、105%等量)の水酸化ナトリウムで中和し、顔料分散樹脂(R1)を含有する水溶液Cを得た。
得られた水溶液Cの全量と、15.0質量部の顔料組成物(P1)と、0.5質量部のノニオン界面活性剤と、残量の水とを、ベッセルに投入した。ノニオン界面活性剤として、日信化学工業株式会社製「オルフィン(登録商標)E1010」(アセチレンジオールのエチレンオキサイド付加物、有効成分濃度:100質量%、HLB値:13.5±0.5)を用いた。メディア型湿式分散機(ウィリー・エ・バッコーフェン(WAB)社製「DYNO(登録商標)-MILL」)を用いて、ベッセルの内容物を混合し、混合液Dを得た。
なお、表3に示す水の添加量である「残量」とは、混合液Dが100.0質量部となる量を意味する。表3に示す水の残量は、上記ベッセルに投入した水と、水溶液Cに含まれていた水(詳しくは、樹脂の中和に用いた水酸化ナトリウム水溶液に含まれていた水、並びに樹脂及び水酸化ナトリウムの中和反応で生じた水)との合計量である。
メディアとしてのジルコニアビーズ(粒子径0.5mm)と、ビーズミル(浅田鉄工株式会社製「ナノグレンミル」)とを用いて、混合液Dを分散処理した。ビーズミルによる分散処理を、温度10℃且つ周速8m/秒の条件で行った。分散処理において、ビーズミルの吐出量を、300g/分に設定した。これにより、限外ろ過前の顔料分散液Eを得た。
(限外ろ過処理)
顔料分散液Eを、振動式限外ろ過法によりろ過した。詳しくは、限外ろ過膜を用い、限外ろ過膜にかかる内圧が50kPaである条件で、480gの顔料分散液Eを、390g/分の流速で、2.0時間循環させた。即ち、循環時間は、2.0時間であった。限外ろ過膜として、旭化成株式会社製「UFベンシル型モジュールAHP-0013D」(中空糸膜の材質:ポリアクリロニトリル、膜内径:0.8mm、有効膜面積:170cm2)を用いた。限外ろ過により、リン含有触媒の少なくとも一部を含有する液が、ろ液として排出され、これ以外の顔料分散液の成分を含有する液が、回収液として再び循環した。排出されたろ液の量と同量の水を、回収液に添加することで、顔料分散液の固形分濃度を一定に維持した。このようにして、限外ろ過後の顔料分散液Fを得た。
(インクの調製)
表4に示す配合i-aとなるように、インク(A-1)を調製した。
Figure 2024064859000008
攪拌機(新東科学株式会社製「スリーワンモーター(登録商標)BL-600」)を装備したフラスコに、水を投入した。攪拌機を用いて攪拌速度400rpmでフラスコ内容物を攪拌しながら、上記限外ろ過処理で得られた顔料分散液Fと、ノニオン界面活性剤と、トリエチレングリコールモノブチルエーテルと、3-メチル-1,5-ペンタンジオールと、グリセリンとを投入し、混合液Gを得た。ノニオン界面活性剤として、日信化学工業株式会社製「サーフィノール(登録商標)420」(アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物、有効成分濃度:100質量%、HLB値:4)を用いた。各原料の投入量は、表4に示す通りとした。表4に示す水の添加量である「残量」とは、混合液Gが100.0質量部となる量である。孔径5μmのフィルターを用いて混合液Gをろ過し、混合液Gから異物及び粗大粒子を除去した。これにより、インク(A-1)を得た。
<インク(A-2)~(A-9)及び(B-1)~(B-6)の調製>
以下の点を変更した以外は、インク(A-1)の調製と同様の方法により、インク(A-2)~(A-9)及び(B-1)~(B-6)を調製した。顔料組成物(P1)の調製において、キナクリドン顔料の種類及び含有率と、硫黄含有顔料誘導体の種類及び含有率を、表1及び表2に示す通りに変更した。なお、これらを変更することで、表1及び表2に示す通りに、所定硫黄濃度が変更された。顔料分散液の調製で実施される分散処理において、ビーズミルの吐出量を、表1及び表2に示す通りに変更した。なお、ビーズミルの吐出量を変更することで、表1及び表2に示す通りに、未吸着樹脂比率が変更された。限外ろ過処理の循環時間を、表1及び表2に示す通りに変更した。なお、限外ろ過処理の循環時間を変更することで、表1及び表2に示す通りに、所定リン濃度が変更された。
[測定]
以下の方法により、インク(より具体的には、インク(A-1)~(A-9)及び(B-1)~(B-6)の各々)を遠心分離した。そして、得られた各上澄み液について、所定リン濃度、所定硫黄濃度、未吸着樹脂比率、及び上澄み液の所定吸光度を測定した。所定リン濃度、所定硫黄濃度、及び未吸着樹脂比率を、上記表1及び表2に示し、理解を助けるために、下記表5及び表6にも再び示す。上澄み液の所定吸光度を、下記表5及び表6に示す。
<遠心処理>
23℃の環境下、容器に密閉した2gのインクに対して、超遠心機(エッペンドルフ・ハイマック・テクノロジーズ株式会社製「himac(登録商標)CS150FNX」、ローター:S140AT)を用いて、回転数140,000rpm(遠心力1,050,000Gに相当)で3時間遠心処理した。これによりインクに含まれる顔料粒子を沈殿させた。
<所定リン濃度>
遠心処理後のインクに含まれる上澄み液1mLを、シリンジで回収した。回収した上澄み液を水で50倍に希釈し、これを測定試料とした。ICP(高周波誘導結合プラズマ)質量分析装置(サーモフィッシャーサイエンティフィク社製「iCAP PRO ICP-OES Duo」)を用いて、測定試料を測定した。測定試料の測定値(上澄み液の50倍希釈液のリン濃度)を50倍することで、上澄み液におけるリン濃度(単位:ppm)に換算した。上澄み液におけるリン濃度を、所定リン濃度(単位:ppm)とした。なお、リン濃度を求める際には、リン濃度が既知である試料を用いて作成した検量線を使用した。
<所定硫黄濃度>
遠心処理後のインクに含まれる上澄み液1mLを、シリンジで回収した。回収した上澄み液を水で50倍に希釈し、これを測定試料とした。ICP(高周波誘導結合プラズマ)質量分析装置(サーモフィッシャーサイエンティフィク社製「iCAP PRO ICP-OES Duo」)を用いて、測定試料を測定した。測定試料の測定値(上澄み液の50倍希釈液の硫黄濃度)を50倍することで、上澄み液における硫黄濃度(単位:ppm)に換算した。上澄み液における硫黄濃度を、所定硫黄濃度(単位:ppm)とした。なお、硫黄濃度を求める際には、硫黄濃度が既知である試料を用いて作成した検量線を使用した。
<未吸着樹脂比率>
遠心処理後のインクに含まれる上澄み液を、全量回収した。次に、回収された上澄み液の全量を、60℃で24時間、上澄み液を減圧乾燥し、残渣を得た。残渣の質量(WA)を測定した。残渣の質量(WA)を、未吸着樹脂の質量と見做した。
表3から読み取れる顔料分散液における顔料分散樹脂(R1)の含有率B(=6.0質量%)、及び表4から読み取れるインクにおける顔料分散液の含有率C(=40.0質量%)から、下記式に沿って、2gのインクに含有される顔料分散樹脂の質量(WD)を算出した。
WD=2×(C/100)×(B/100)
そして、2gのインクから得られた残渣の質量(WA)と、2gのインクに含有される顔料分散樹脂の質量(WD)とから、下記式に沿って未吸着樹脂比率を算出した。
未吸着樹脂比率[質量%]=100×WA/WD
<所定吸光度>
遠心処理後のインクに含まれる上澄み液の全量を、シリンジで回収した。回収した上澄み液を水で25倍に希釈し、これを測定試料とした。分光光度計(株式会社日立ハイテクサイエンス製「U-3000」)を用いて、セルに入れた測定試料を以下の条件で測定し、測定試料の紫外線可視光線吸収スペクトルを得た。紫外線可視光線吸収スペクトルから、測定試料の所定ピークの吸光度を求めた。なお、所定ピークは、波長320nmに確認された。測定試料(即ち、上澄み液の25倍希釈液)の所定ピークの吸光度を25倍することで、上澄み液の所定吸光度に換算した。
(吸光度の測定条件)
・測定波長範囲:200nm以上800nm以下の範囲
・スキャンスピード:300nm/分
・サンプリング間隔:1nm
・スリット幅:1nm
・セル:石英ガラス製のセル
・光路長:10mm
・ビーム方式:ダブルビーム
・ベースライン測定:有
・リファレンス:水
[評価]
以下の方法により、インク(A-1)~(A-9)及び(B-1)~(B-6)の各々について、吐出性、耐擦過性、再溶解性、及び分散安定性を評価した。以下の評価方法の説明において、インク(A-1)~(A-9)及び(B-1)~(B-6)の各々を、単に「インク」と記載することがある。評価結果を、下記表5及び表6に示す。
<評価機等>
評価機として、インクジェット記録装置(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製の試作機)を用いた。評価機は、記録ヘッドとして、ノズル(開口部の半径:10μm)を有するピエゾ方式のラインヘッドを備えていた。用紙として、富士フイルムビジネスイノベーション株式会社製「C2」(A4サイズの普通紙)を用いた。
<吐出性>
記録ヘッドからのインクの吐出性の評価は、温度25℃且つ湿度60%RHの環境下で行った。評価機のマゼンタインク用記録ヘッドに、インクをセットした。記録ヘッドの温度を、40℃に設定した。1画素当たりのインクの吐出量を、3.5pLに設定した。
評価機を用いて、記録ヘッドの全ノズルからインクを吐出する画像処理設定の画像(20.5mm×29.0mm)を、用紙に1時間連続して印刷した。連続印刷の最初に印刷された画像(初期画像)と、連続印刷の最後に印刷された画像(耐刷画像)とを、肉眼で観察した。そして、初期画像及び耐刷画像における白筋の有無を確認した。白筋は、記録ヘッドからのインクの吐出ヨレに起因する画像不良である。記録ヘッドからのインクの吐出性を、下記基準に沿って判定した。吐出性が良好と判定されたインクを、記録ヘッドからのインクの吐出ヨレの発生を抑制できたと判断した。
(吐出性の基準)
良好(A):耐刷画像において、白筋が、初期画像よりも多く発生していない。
不良(B):耐刷画像において、白筋が、初期画像よりも多く発生している。
<耐擦過性>
耐擦過性の評価は、温度25℃かつ湿度60%RHの環境下で行った。1画素当たりのインクの吐出量を、11pLに設定した。評価機を用いて、ソリッド画像(4cm×5cm)を、1枚の用紙(以下、用紙Aと記載することがある)に印刷した。次に、以下で説明する擦り試験を行った。擦り試験では、用紙Aに印刷されたソリッド画像上に、未使用の用紙(以下、用紙Bと記載することがある)を重ねて置いた。次に、用紙B上に、1kgの錘を載置した。そして、錘の自重のみが加わるように用紙B及び錘を一体として動かすことで、用紙Bを、用紙Aのソリッド画像に対して5往復摩擦させた。擦り試験後に、反射濃度計(X-Rite社製「RD-19」)を用いて、用紙Aにおいてソリッド画像が形成されていない領域の画像濃度を、224箇所測定した。測定された画像濃度のうち、最も高い値を、評価値とした。評価値が低い程、擦りによる色移りが少なく、耐擦過性に優れた画像であることを示す。インクを用いて形成された画像の耐擦過性は、下記基準に沿って判定した。
(耐擦過性の基準)
A(良好):評価値が、0.020未満である。
B(不良):評価値が、0.020以上である。
<再溶解性>
評価機が備えるワイパーの先端に0.3mLのインクを載せて、温度25℃かつ湿度60%RHの環境下で10分間放置した。次に、インクが載ったワイパーを用いて、記録ヘッドの吐出面を往路方向(図4中のワイピング方向D3と反対の方向)に払拭し、吐出面にインクを引き伸ばした。引き伸ばしたインクを45℃で4日間乾燥させ、吐出面に乾燥インクを形成した。
乾燥インクの形成後、評価機を用いてクリーニング動作を行った。詳しくは、3gのクリーニング液を含浸させた不織布を、記録ヘッドの吐出面に30秒間密着させた(クリーニング液の供給動作に相当)。クリーニング液として、京セラドキュメントソリューションズ株式会社製のインクジェットカラープロダクションプリンター「TASKalfa Pro 15000c」用のヘッド清掃用クリーニング液を使用した。不織布として、旭化成株式会社製「ベンコット(登録商標)M-3II」の裁断品を使用した。次いで、記録ヘッドの吐出面から、不織布を離間させた。次いで、記録ヘッドから0.3mLのインクを強制的に排出(パージ)させた(パージ動作に相当)。次いで、ワイパーを用いて、記録ヘッドの吐出面を復路方向(図4中のワイピング方向D3)に払拭した(ワイプ動作に相当)。これにより、記録ヘッドの吐出面に付着した乾燥インクを、クリーニング液及びパージインクと共に除去した。本試験で行ったクリーニング動作の詳細は、図3及び図4を参照して説明したクリーニング動作と概ね同一である。次に、記録ヘッドの吐出面を肉眼で観察し、クリーニングできずに残存した乾燥インクの有無を確認した。なお、乾燥インクがクリーニング液及びパージインクに溶解し易い程、記録ヘッドの吐出面に付着した乾燥インクが容易に除去される傾向にある。インクの再溶解性は、下記基準に沿って判定した。
(再溶解性の基準)
良好(A):記録ヘッドの吐出面に乾燥インクが確認されない。
不良(B):記録ヘッドの吐出面に乾燥インクが確認される。
<分散安定性>
インクを水で100倍に希釈し、これを測定試料とした。動的光散乱式粒径分布測定装置(マルバーン社製「ゼータサイザーナノZS」)を用いて、測定試料中の顔料粒子の体積中位径を測定した。測定試料中の顔料粒子の体積中位径を、インクに含まれる顔料粒子の体積中位径(D50)と見做した。
(分散安定性の基準)
良好(A):顔料粒子の体積中位径が、140nm未満である。
不良(B):顔料粒子の体積中位径が、140nm以上である。
Figure 2024064859000009
Figure 2024064859000010
表6に示すように、インク(B-1)について、未吸着樹脂比率が、50質量%超であった。インク(B-3)について、所定リン濃度が、6.0ppm超であった。インク(B-6)について、所定硫黄濃度が、6.0ppm超であった。表6に示すように、インク(B-1)、(B-3)、及び(B-6)の吐出性の評価は、不良であった。
表6に示すように、インク(B-2)について、未吸着樹脂比率が、20質量%未満あった。インク(B-2)の耐擦過性の評価は、不良であった。
表6に示すように、インク(B-4)について、所定リン濃度が、1.0ppm未満であった。インク(B-4)の再溶解性の評価は、不良であった。
表6に示すように、インク(B-5)について、所定硫黄濃度が、1.0ppm未満であった。インク(B-5)の分散安定性の評価は、不良であった。
表5に示すように、インク(A-1)~(A-9)は、各々、以下の構成を有していた。未吸着樹脂比率が、20質量%以上50質量%以下であった。所定リン濃度が、1.0ppm以上6.0ppm以下であった。所定硫黄濃度が、1.0ppm以上6.0ppm以下であった。表5に示すように、インク(A-1)~(A-9)の吐出性、耐擦過性、再溶解性、及び分散安定性の評価は、何れも良好であった。
以上のことから、インク(A-1)~(A-9)を包含する本発明のインクは、記録ヘッドからのインクの吐出ヨレの発生を抑制でき、耐擦過性に優れた画像を形成でき、再溶解性に優れ、キナクリドン顔料の分散性に優れると判断される。また、このようなインクを用いる本発明のインクジェット記録装置は、記録ヘッドからのインクの吐出ヨレの発生を抑制でき、耐擦過性に優れた画像を形成でき、再溶解性に優れ、キナクリドン顔料の分散性に優れると判断される。
本発明のインク及びインクジェット記録装置は、画像を形成するために用いることができる。
1 :インクジェット記録装置
4 :記録ヘッド
6 :第1搬送部
Nf :パージインク
S :記録媒体

Claims (10)

  1. キナクリドン顔料と、顔料分散樹脂と、水性媒体とを含有する、インクジェット用インクであって、
    前記顔料分散樹脂は、前記キナクリドン顔料に吸着された吸着樹脂と、前記キナクリドン顔料に吸着されていない未吸着樹脂とを含み、
    前記顔料分散樹脂に占める前記未吸着樹脂の割合は、20質量%以上50質量%以下であり、
    前記インクジェット用インクを1,050,000Gで3時間遠心処理して得られる上澄み液におけるリン濃度は、1.0ppm以上6.0ppm以下であり、
    前記上澄み液における硫黄濃度は、1.0ppm以上6.0ppm以下である、インクジェット用インク。
  2. 式(1)で表される硫黄化合物を更に含有し、
    前記硫黄濃度は、前記式(1)で表される硫黄化合物が有する硫黄原子の濃度である、請求項1に記載のインクジェット用インク。
    Figure 2024064859000011
    (式(1)中、nは、1以上3以下の整数を表し、mは、1以上3以下の整数を表し、Xは、金属イオンを表す。)
  3. 前記式(1)中のXは、Al3+又はMg2+を表す、請求項2に記載のインクジェット用インク。
  4. 前記キナクリドン顔料及び前記式(1)で表される硫黄化合物の合計質量に対する前記式(1)で表される硫黄化合物の含有率は、5質量%以上12質量%以下である、請求項2又は3に記載のインクジェット用インク。
  5. 前記リン濃度は、前記キナクリドン顔料を合成するためのリン含有触媒に由来するリン原子の濃度である、請求項1~3の何れか一項に記載のインクジェット用インク。
  6. 前記リン濃度は、ポリリン酸及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種が有するリン原子の濃度である、請求項1~3の何れか一項に記載のインクジェット用インク。
  7. 前記顔料分散樹脂は、少なくとも1種の(メタ)アクリル酸に由来する繰り返し単位と、少なくとも1種の(メタ)アクリル酸アルキルに由来する繰り返し単位と、スチレンに由来する繰り返し単位とを有する、請求項1~3の何れか一項に記載のインクジェット用インク。
  8. 前記上澄み液の紫外線可視光線吸収スペクトルにおいて、所定ピークの吸光度が0.15以上0.40以下であり、前記所定ピークは、波長300nm以上340nm以下の範囲における最大ピークである、請求項1~3の何れか一項に記載のインクジェット用インク。
  9. 記録媒体を搬送する搬送部と、
    インクを前記記録媒体に吐出する記録ヘッドとを備え、
    前記インクは、請求項1~3の何れか一項に記載のインクジェット用インクである、インクジェット記録装置。
  10. 前記記録ヘッドは、ラインヘッドである、請求項9に記載のインクジェット記録装置。
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