JP2024064233A - 評価システム、評価方法、及びプログラム - Google Patents
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Abstract
【課題】評価対象エリアの気象に関する気象データにより、構造物の損傷を評価可能な構造物の評価システム、評価方法、及びプログラムを提供する。【解決手段】本実施形態によれば、評価システムは、データ入力装置と、診断評価装置と、を備える。データ入力装置は、評価対象エリアの気象に関する気象データと、評価対象エリアに位置する構造物に関する構造物データと、を入力する。診断評価装置は、記憶部と、制御部と、を有する。記憶部は、気象データに基づく評価対象エリアの風況解析データと、少なくとも風速の情報を含む風況情報に応じた構造物の構造物データに基づく短期疲労損傷度データとを、格納する。制御部は、風況解析データが有する構造物の位置における風況情報を取得し、風況情報に対応する短期疲労損傷度データを用いて、構造物の疲労損傷の指標である累積疲労損傷度を生成する。【選択図】図1
Description
本発明の実施形態は、評価システム、評価方法、及びプログラムに関する。
風による構造物のリスク評価として、台風や竜巻などの異常気象による短期的な強風に対するリスク評価が一般に行われている。また、構造物が長期間にわたって風圧を受けることによる疲労損傷のリスクを評価することも重要となる。
ところが、常時風による構造物の疲労損傷のリスク評価において、構造物位置の風況や構造物の変形(ひずみ)の計測が必須となってしまう。特に送電線のように広範囲に渡る構造物に対しては合理的でなくなってしまう。また、特定の位置にのみ存在する構造物であっても、計測器の設置やデータの収録や分析の手間とコストがかかってしまう。
そこで、発明が解決しようとする課題は、評価対象エリアの気象に関する気象データにより、構造物の損傷を評価可能な構造物の評価システム、評価方法、及びプログラムを提供することである。
本実施形態によれば、評価システムは、データ入力装置と、診断評価装置と、を備える。データ入力装置は、評価対象エリアの気象に関する気象データと、評価対象エリアに位置する構造物に関する構造物データと、を入力する。診断評価装置は、記憶部と、制御部と、を有する。記憶部は、気象データに基づく評価対象エリアの風況解析データと、少なくとも風速の情報を含む風況情報に応じた構造物の構造物データに基づく短期疲労損傷度データとを、格納する。制御部は、風況解析データが有する構造物の位置における風況情報を取得し、風況情報に対応する短期疲労損傷度データを用いて、構造物の疲労損傷の指標である累積疲労損傷度を生成する。
本発明によれば、評価対象エリアの気象に関する気象データにより、構造物の損傷を評価できる。
以下、本発明の実施形態に係る評価システム、評価方法、及びプログラムについて、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態は、本発明の実施形態の一例であって、本発明はこれらの実施形態に限定して解釈されるものではない。また、本実施形態で参照する図面において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号又は類似の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。また、図面の寸法比率は説明の都合上実際の比率とは異なる場合や、構成の一部が図面から省略される場合がある。
(第1実施形態)
図1は、実施形態1に係る評価システムの構成を示すブロック図である。図1に示す評価システム1は、気象データを用いて構造部の疲労損傷を評価可能なシステムである。
図1は、実施形態1に係る評価システムの構成を示すブロック図である。図1に示す評価システム1は、気象データを用いて構造部の疲労損傷を評価可能なシステムである。
この評価システム1は、データ入力装置100と、診断評価装置200とを備える。データ入力装置100は、例えば評価対象エリアの気象に関する気象データと、評価対象エリアに位置する構造物に関する構造物データと、を入力する。診断評価装置200は、データ入力装置100と通信可能に接続され、例えば評価対象エリアの気象に関する気象データ、及び評価対象エリアに位置する構造物に関する構造物データと、を用いて、構造物の損傷を評価する。
ここで、まず、データ入力装置100の構成を説明する。データ入力装置100には、気象データ111、地図データ112、構造物データ113、設備管理データ114が外部から入力され、記憶される。データ入力装置100は、例えば各種RAM(Random Access Memory)を備えていてもよいし、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)等の記憶媒体を備えていてもよい。
気象データ111は、例えば気象庁等の外部機関が提供するデータである。これらのデータには、風速や風向等の風況情報が含まれる。より具体的には、気象庁が提供するメソモデル(MSM)のデータ、局地モデル(LFM)のデータ、ヨーロッパ中期予報センタが用いるERA-5データなどのデータを用いることが可能である。このように、気象データ111には、数値シミュレーションによるものや、気象庁が提供するアメダスなどの観測データ等を用いることが可能である。このようなデータでは、例えば地表面の風速、風向などの情報が含まれる。なお、気象データは、これらに限定されず、例えば所定の格子点毎の鉛直方向の風速、風向、温度、気圧などの情報が含まれるデータを用いることが可能である。本実施形態に係る風況とは、その場における風の性質を意味する。例えば本実施形態に係る風況は、風速、風向、及び乱流強度のうちの少なくとも風速を含むこととする。また、風速は、平均風速、風速頻度分布などの統計値を含むことが可能である。同様に、風向は、風向出現率などの統計値を含むことが可能である。
地図データ112は、例えば評価対象エリアの地図、及び標高などの地形に関するデータである。また、評価対象エリアを例えば、送電線周辺の範囲などに、限定することも可能である。また、地図データ112には、建造物の形状情報が含まれる場合がある。この建造物の形状情報は、例えば地形データ内で、建造物を3次元の立体として構成可能となる情報である。
構造物データ113は、評価対象の構造物に関するデータである。また、構造物データ113には、評価対象の構造物の位置情報や形状情報が含まれる。これらの構造物データには、例えば評価対象の構造物を有限要素法(FEM:Finite Element Method)などの構造解析を行うために必要な情報が含まれる。また、構造物データ113には、評価対象の構造物の位置情報や形状情報に加え、疲労評価に用いるS-N曲線、時刻歴応答解析用のモデル等の詳細情報が含まれる。
設備管理データ114は、対象構造物の交換やメンテナンスなどに関するデータである。これらのデータは、例えば評価対象における構造物の特定領域の交換時期などの評価情報に用いることが可能である。
次に、診断評価装置200の構成を説明する。診断評価装置200は、例えばCPU(Central Processing Unit)を含んで構成される。この診断評価装置200は、通信部210と、操作部220と、表示部230と、制御部240と、記憶部250と、を有する。また、診断評価装置200は、記憶部250に記憶されるプログラムを実行することにより、診断評価装置200の各構成部を構成し、以下の各処理を実行することが可能である。以下に、診断評価装置200の各部について説明する。
通信部210は、通信ネットワークを介してデータ入力装置100と通信するときに通信インターフェースとして機能する。操作部220は、ユーザの操作入力を受け付ける。操作部220は、例えばキーボードやマウス等の入力デバイスを有する。
表示部230は、制御部240の制御に基づいて種々の画像をモニタ、液晶ディスプレイ等の表示デバイスに表示させる。すなわち、この表示部230は、例えばモニタ、液晶ディスプレイ等の表示デバイスを有する。
制御部240は、データ取得部241と、風況解析部242と、風荷重算出部243と、構造解析部244と、短期疲労損傷度評価部245と、風況同定部246と、累積疲労損傷度評価部247とを有する。以下に、各部について説明する。
データ取得部241は、データ入力装置100から通信部210を介して種々のデータを取得する。例えば、データ取得部241は、気象庁が提供するメソモデル(MSM)のデータ、局地モデル(LFM)のデータ、ヨーロッパ中期予報センタが用いるERA-5データなどのデータと、評価対象となる地形情報を取得する。地形情報には、例えば建物などの情報が含まれる場合もある。
風況解析部242は、データ取得部241で取得されたデータを用いて風況、例えば風速、風向、乱流強度のうちの少なくとも風速、及び風向を計算する。すなわち、風況解析部242は、評価対象となる地区の風況を、シミュレーションにより演算する。この風況解析部242は、局地モデル(LFM)などよりもより細かな格子点に対応させたデータを演算可能である。また、風況解析部242は、建造物を3次元の立体として構成可能である。これにより、評価対象の構造物における風況に影響を与える建造物を考慮したシミュレーションが可能となる。なお、本実施形態では、時間変動する風速波形の標準偏差と平均値の比(標準偏差を平均値で除した値)を乱流強度と称する。
風荷重算出部243は、風況解析部242で評価した風速、風向、乱流強度から、構造物の時刻歴応答解析に用いる風荷重の時系列波形を算出する。例えば、風荷重算出部243は、風況解析部242で評価した風速、風向、乱流強度を用いて、風速の周波数成分を演算する。次に、風荷重算出部243は、算出した風速の周波数成分(スペクトル)を時間領域へ変換して風速の時系列波形を演算する。そして、風荷重算出部243は、風速の時系列波形の2乗に所定の係数を乗算して、風荷重の時系列波形を演算する。
構造解析部244は、風荷重算出部で算出した風荷重の時系列波形を用いて対象構造物応力波形(時刻歴応答)を計算する。より具体的には、構造解析部244は、時構造物応力波形を、例えば評価対象の構造物の構造物データ113を用いて、有限要素法(FEM:Finite Element Method)などの構造解析により解析し、生成する。このように、構造解析部244は、構造物データに基づき与えられた構造解析モデルと風荷重算出部243で計算された風荷重の時系列波形を用いて、構造物の時刻歴応答解析を行い、応力の時系列波形を計算する。
短期疲労損傷度評価部245は、構造解析部244により得られた応力の時系列波形応じて、応力振幅と繰り返し数(サイクルカウント)を求め、疲労評価の評価指標を算出する。例えば、短期疲労損傷度評価部245は、構造解析部244により得られた応力の時系列波形と、構造物データとして与えられた構造物材料のS-N曲線とを用いて、所定期間における疲労損傷度である短期疲労損傷度を計算する。本実施形態では、この短期疲労損傷度を構造物の運用期間にわたって累積し、疲労損傷に関するリスクを評価する。風況同定部246は風況解析部242で計算された風況解析結果から、構造物の位置における風況を同定する。
累積疲労損傷度評価部247は、風況同定部246で同定した風況(例えば対象構造物(評価対象物)位置における風速、風向、及び乱流強度)に対応する短期疲労損傷度を運用期間に累積し、累積疲労損傷度を計算する。累積疲労損傷度評価部247は、例えば風況(風速、風向、及び乱流強度など)を代表値として、後述の短期疲労損傷度データベース252から運用期間における短期疲労損傷度を取得し、累積疲労損傷度を計算する。
記憶部250は、風況解析データベース251と、短期疲労損傷度データベース252、累積疲労損傷度データベース253とを有する。記憶部250は、例えば各種RAM(Random Access Memory)を備えていてもよいし、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)等の記憶媒体を備えていてもよい。
以下、各データベースについて説明する。
風況解析データベース251は、例えば送電線周辺などの評価エリアの風況を予め解析した結果を示すデータベースである。風況解析データベース251には、風況解析部242で計算された風況解析データ等が含まれている。
風況解析データベース251は、例えば送電線周辺などの評価エリアの風況を予め解析した結果を示すデータベースである。風況解析データベース251には、風況解析部242で計算された風況解析データ等が含まれている。
短期疲労損傷度データベース252は、対象構造物の時刻歴応答を予め解析した結果を示すデータベースである。短期疲労損傷度データベース252には、短期疲労損傷度評価部245で計算された短期疲労損傷度データが含まれている。この短期疲労損傷度データベース252は、例えば、対象構造物の位置における風速、風向、及び乱流強度などを代表値として、代表値と関連づけて対象構造物の短期疲労損傷度を記憶している。また、代表値には、風況解析部242で計算された風況解析データも関連づけることが可能である。
累積疲労損傷度データベース253は、累積疲労損傷度評価部247で計算された累積疲労損傷度データが対象構造物(評価対象物)に関連づけられて記憶される。
ここで、図2、図3を参照して、上述した評価システム1における事前のデータベースの生成処理例を説明する。図2は、風況解析データベース251の生成処理例を示すフローチャートである。
図2に示すように、まず、操作者は、操作部220を介して、対象構造物(評価対象物)を含む地域の風況解析を行う際の風況解析モデルへの流入風条件の設定を行う(ステップS100)。より具体的には、流入風条件は、風速、風向などである。風況解析部242は、例えば風向を16方位、風速を10段階とした組合わせについて解析する。この風向、及び風速には、評価エリアにおける気象データの代表値を用いることが可能である。例えば、評価エリアの気象データには、一般に風速、及び風向が関連づけられている。なお、風速に関しては、10段階で得られたシミュレーション結果を代表値として、補間処理などにより10段階よりも、より細かな風速に対する演算結果を得ることが可能である。このように、実際に想定される風況条件をカバーできるように解析条件を設定しておく。
次に、風況解析部242は、流入風条件の設定に従い、風況解析を実施する(ステップS102)。まず、風況解析部242は、地図データ112を用いて解析モデルを生成する。解析モデルには、山間部や平地といった地形が考慮される。また必要に応じて、地図データ112に含まれる建物情報も用いた詳細なモデルとしてもよい。このように風況解析を行うことで、対象エリア内をより細分化した風況情報が得られる。これにより、例えば風向を16方位、風速を10段階とした場合それぞれの対象構造物の位置における、より詳細な風速、風向、乱流強度の値が得られる。なお、ここで評価した風速は、例えば所定の一定期間(例えば、1分、10分、30分間など)で平均した平均風速に相当する。
次に、得られた風況解析結果(位置ごとの風速、風向、乱流強度等)は、流入風条件(風向、及び風速等)と対応付けられ、風況解析データベース251に登録される(ステップS104)。これらの風況解析結果は、例えば緯度、及び経度で示される座標と関連付けられた空間的なデータである。
図3は短期疲労損傷度データベース252の生成処理例を示すフローチャートである。ここで、短期疲労損傷度データベース252は、風況解析データベース251の風況条件に基づいており、風況解析データベース251の風速、風向、乱流強度に対応した疲労評価指標をデータベース化する。また、風況解析データベース251に登録した風速は平均風速に相当するため、構造評価において静的な荷重の算定に用いることができるが、疲労評価においては風荷重の時系列波形の生成処理が必要となる。
まず、風荷重算出部243は、評価対象となる構造物の地点における風荷重の時系列波形を算出する(ステップS200)。なお、風荷重算出部243における風荷重の時系列波形の詳細な処理例は図4乃至図6を用いて後述する。
次に、構造解析部244は、評価対象となる構造物の構造解析モデルに、風荷重算出部243が生成した風荷重の時系列波形を入力し、構造物の応力の時刻歴応答解析を実行する(ステップS201)。構造解析部244は、例えば評価対象の構造物の構造物データ113を用いた有限要素法(FEM:Finite Element Method)などの構造解析により、評価対象となる構造物の応力の時刻歴応答を得ることが可能である。この構造解析においては、最初に構造物の全体挙動を評価するモデルで解析した結果を基に、局所的な応力評価用の詳細モデルでの解析を行うなど、段階的に実施してもよい。
次に、短期疲労損傷度評価部245は、構造解析部244が生成した応力時系列波形に応じて、応力振幅と繰り返し数(サイクルカウント)を求め、疲労評価の評価指標を算出する(ステップS202)。本実施形態に係る短期疲労損傷度評価部245は、サイクルカウントに例えば一般的なレインフロー法などを採用することが可能である。また、短期疲労損傷度評価部245は、疲労評価の指標として、例えば累積疲労損傷則に基づき、疲労損傷度を評価する。疲労損傷度は、例えばサイクルカウントの結果と、構造物データとして与えられる材料のS-N曲線から求めることが可能である。ここで評価された疲労損傷度は、ステップS200で生成した風荷重波形の時間幅(評価時間幅)に対応しており、短期疲労損傷度と称する。
また、短期疲労損傷度評価部245における疲労評価には、変動応力だけでなく、静的に作用する応力も影響するため、平均風速による静的な風荷重に対する静的な変形による応力も合わせて評価することが可能である。さらにまた、送電線のような柔構造物は変形量が大きく、幾何学的な非線形性が無視できないことが想定されるため、ここでの構造解析では必要に応じて非線形解析を採用することが可能である。
短期疲労損傷度評価部245は、この短期疲労損傷度を短期疲労損傷度データベース252に保存する(ステップS203)。短期疲労損傷度データベース252の値は、流入風条件(風向、及び風速等)、対象の構造物、及び、その評価部位の情報と対応付けられている。また、短期疲労損傷度データベース252の値は、流入風条件(風向、及び風速等)に関連づけられた風況解析データベース251とも対応付けられている。
ここで、図4乃至図6を用いて、風荷重算出部243における風速時系列波形、及び風荷重の時系列波形の生成処理例を説明する。図4は、荷重時系列波形の生成処理例を示すフローチャートである。ここでは、評価対象となる特定の構造物に対する処理例を説明するが、他の構造物に対しても同様に演算可能である。
図5は、評価対象となる構造物に作用する風速の周波数成分を示す図である。横軸が周波数であり、縦軸が風速のパワースペクトルである。図6は、評価対象となる構造物に作用する風速時系列波形例を示す図である。横軸が時刻であり、縦軸が風速である。
まず、風荷重算出部243は、短期疲労損傷度に用いる風速と、乱流強度の範囲を設定する(ステップS300)。そして、風荷重算出部243は、例えば評価対象となる構造物の地点における風速のパワースペクトルを、一般的なモデル、例えばカルマンスペクトルを用いて演算し、図5に示すように、風速の周波数成分を演算する(ステップS302)。
なお、本実施形態に係る風況解析データベース251には、風速のパワースペクトルの情報はないため、風速のパワースペクトルを別に与える必要がある。そこで、風荷重算出部243は、風況解析データベース251の風速、乱流強度に対して風速パワースペクトルを演算する。風速パワースペクトルは、風速、及び乱流強度がパラメータである。
このように、本実施形態に係る風荷重算出部243は、評価対象の構造物における風速、乱流強度を風況解析データベース251に保存されるデータから取得し、例えばカルマンスペクトルを用いて、評価対象となる構造物の地点における風速の周波数成分を演算する。また、対象エリアの風速パワースペクトルが既知の場合は、既知の風速パワースペクトルを用いて演算してもよい。
次に、風荷重算出部243は、図5で示す風速の周波数成分を生成し、これを時間領域に変換することにより、図6で示す風速の時系列波形を算出する(ステップS304)。このように、風荷重算出部243は、風速パワースペクトルを設定し、そのパワースペクトルに適合した時系列波形を算出する。
次に、風荷重算出部243は、例えば風の時系列波形を2乗演算し、所定の係数を乗算することにより風荷重の時系列波形に変換する(ステップS306)。なお、風荷重算出部243は、風速から風荷重の変換に対し、評価対象となる構造物の構造物データを用いることにより、対象構造物の形状を考慮して、抗力や揚力を算出することが可能である。また、構造物の形状に異方性がある場合には、一般に風向が変わると作用する風荷重も変わるため、風荷重の算出においては、風況解析データベース251の風向情報を用いることが可能である。
ここで、図7、及び図8を用いて、評価システム1の運用時における制御処理例を説明する。図7はシステム運用時の制御処理例を示すフローチャートである。図8は、外部機関から提供される気象データに対応する短期疲労損傷度の演算例を模式的に示す図である。横軸は、経過時間を示す。
先ず、データ入力装置は、評価対象の構造物における累積疲労を演算する期間の気象データを取得する(ステップS400)。図8に示す様に、累積疲労を演算する期間の気象データT100、T200、T300、、、は、例えば10分間隔で、更新される。
次に、風況同定部246は、気象データT100、T200、T300、、、に対して風況同定を実行する。風況同定部246は、ステップS400で得られた気象データT100、T200、T300、、、の情報を基に、風況解析データベース251から気象データT100、T200、T300、、、に対応する風況解析結果を抽出する。例えば、風況同定部246は、気象データT100、T200、T300、、、の風向や風速が、風況解析条件(風向、風速など)と近い風況解析結果T102、T202、T302、、、を抽出することが可能である。なお本ステップにおいて、単純に風況解析データベース251から値を抽出するだけでなく、係数を乗じるなどの補正、補間などを行ってもよい。
次に、累積疲労損傷度評価部247は、累積疲労損傷度評価を実行する。風況同定部246において同定された風況解析結果T102、T202、T302、、、を、風況解析データベース251から抽出する。累積疲労損傷度評価部247は、風況解析結果T102、T202、T302、、、が抽出されると、抽出された風況解析結果T102、T202、T302、、、の評価対象物の位置における風速、風向、及び乱流強度と対応付けられた評価対象物の短期疲労損傷度T104、T204、T304、、、を、短期疲労損傷度データベース252から抽出する。気象データT100、T200、T300、、、は時間経過とともに常に変換するため、それに対応して短期疲労損傷度T104、T204、T304、、、も変化する。
累積疲労損傷度評価部247は、この短期疲労損傷度T104、T204、T304、、、を累積することで累積疲労損傷度を評価する。累積疲労損傷度評価部247は、例えば式(1)に示すように、短期疲労損傷度T104、T204、T304、、、を加算し、累積疲労損傷度Dを演算する。
このように、気象庁などの外部機関が提供する気象データをインプットとし、また風況解析による風況同定手法を用いることで、風況計測を不要とすることが可能である。また、構造物をモデル化し、時刻歴応答解析を用いることで構造物の変形(ひずみ)の計測が不要となる。さらにまた、比較的空間解像度が粗い気象データだけでは対象エリア内の詳細な風速分布を取得できず、推定精度向上が難しいくなるが、本実施形態に係る評価システム1では風況解析を用いて、より局所での風速分布を評価することにより、推定精度の向上が可能となる。
また、リスク評価において、台風のような異常気象時の強風に対しては、構造物は疲労ではなく、変形量が許容値を超えることで損傷するケースが多いと考えられる。この場合重要になるのは、風により構造物に作用する荷重の最大値であり、これは最大瞬間風速に依存する。すなわち、強風イベントの期間における最大値を評価できればよいことになる。一方、疲労評価はより複雑であり、時々刻々変化する風に対して構造物の動的な応答を評価し、応力(またはひずみ)の振幅や発生回数を評価し、設置期間中にわたって積算する必要がある。この計算は負荷が大きいため、より簡易的な方法が必要となる。これに対し、本実施形態に係る評価システム1では、風況解析により得られた結果、及び構造解析により得られた疲労損傷度について、事前に解析を行いデータベース化しておくことにより、毎回の解析評価を不要として、計算負荷を低減させることができる。
以上説明したように、本実施形態に係る評価システム1によれば、風況解析部242が、風況解析結果(評価エリア内の風速、風向、乱流強度等)を流入風条件(風向、及び風速等)と対応付けて風況解析データベース251に予め記憶する。また、短期疲労損傷度評価部245が予め、評価対象物の風況(風向、乱流度等)と対応付け、評価対象の短期疲労損傷度を予め演算し、短期疲労損傷度データベース252に記憶することとした。
これにより、累積疲労損傷度評価部247は、流入風条件に基づき風況同定部246において同定された風況解析結果T102、T202、T302、、、を、風況解析データベース251から抽出し、風況解析結果(評価エリア内の風速、風向、乱流強度等)を抽出することが可能となる。そして、累積疲労損傷度評価部247は、抽出された風況解析結果T102、T202、T302、、、の評価対象物の位置における風速、風向、及び乱流強度に対応付けられた評価対象物の短期疲労損傷度T104、T204、T304、、、を、短期疲労損傷度データベース252から抽出し、累積疲労損傷度Dを演算可能となる。
このように、本実施形態に係る評価システム1は、評価対象エリアの気象に関する気象データ(流入風条件)により、累積疲労損傷度Dを演算し、累積疲労損傷度Dを用いて、評価対象となる構造物の損傷を評価可能となる。
このように、本実施形態に係る評価システム1は、評価対象エリアの気象に関する気象データ(流入風条件)により、累積疲労損傷度Dを演算し、累積疲労損傷度Dを用いて、評価対象となる構造物の損傷を評価可能となる。
(第1実施形態の変形例)
第1実施形態の変形例に係る評価システム1は、部品を交換した場合の累積疲労損傷度Dを変更可能である点で、第1実施形態に係る評価システム1と相違する。以下では、第1実施形態に係る評価システム1と相違する点を説明する。
第1実施形態の変形例に係る評価システム1は、部品を交換した場合の累積疲労損傷度Dを変更可能である点で、第1実施形態に係る評価システム1と相違する。以下では、第1実施形態に係る評価システム1と相違する点を説明する。
評価対象の構造物では、対象構造物が交換されたり、メンテナンスされたりする場合がある。第1実施形態の変形例に係る累積疲労損傷度評価部247は、設備管理データ114の設備管理情報を用いて、累積疲労損傷度の値を修正、更新することが可能である。例えば累積疲労損傷度評価部247は、評価対象の構造物の部品などが交換された場合に、当該部品の累積疲労損傷度を例えば0に修正することが可能である。また、累積疲労損傷度評価部247は、価対象の構造物において補修等がおこなわれた場合には、累積疲労損傷度を補修などに応じて、変更可能に構成される。
以上説明したように、本実施形態に係る評価システム1によれば、累積疲労損傷度評価部247は、設備管理データ114の設備管理情報を用いて、累積疲労損傷度の値を修正、更新することとした。これにより、価対象の構造物の状況に応じた累積疲労損傷度の演算が可能となる。
(第2実施形態)
本実施形態に係る評価システム1は、将来の累積疲労損傷度Dを演算可能である点で、第1実施形態に係る評価システム1と相違する。以下では、第1実施形態に係る評価システム1と相違する点を説明する。
本実施形態に係る評価システム1は、将来の累積疲労損傷度Dを演算可能である点で、第1実施形態に係る評価システム1と相違する。以下では、第1実施形態に係る評価システム1と相違する点を説明する。
図9は、第2実施形態に係る累積疲労損傷度評価部247の処理例を示す図である。横軸は時間を示し、縦軸は累積疲労損傷度を示す。
図9に示すように、累積疲労損傷度評価部247は、現在までの累積疲労損傷度L102を上述のように演算する。本実施形態に係る累積疲労損傷度評価部247は、現在までの累積疲労損傷度L102の情報を用いて、将来の累積疲労損傷度L104を予測する。この将来の累積疲労損傷度の推移L104の予測方法の例としては、例えば過去から現在に至るまでの累積疲労損傷度L102の推移から外挿する方法を用いることが可能である。より具体的には、推移を表す関数を仮定して外挿する方法が考えられる。この他、長期の気象予報データを用いた予測を組み合わせてもよいし、または機械学習などAIによる予測モデルを使用してもよい。
また、累積疲労損傷度評価部247は、将来の累積疲労損傷度L104が限界値L100に達する時点までの期間を余寿命として演算する。表示部230は、図9で示す図形を生成し、余寿命に関する情報と共に、モニタなどの表示媒体に表示することが可能である。これにより、操作者は、評価対象となる構造物の状況を視覚的にも把握可能となる。
また、予測期間の流入風条件(風向、及び風速等)を、操作者は操作部220を介して、任意の値に設定することが可能である。これにより、将来的な風況の状態に応じた将来の累積疲労損傷度L104を予測可能となる。
また、累積疲労損傷度評価部247は、累積疲労損傷度L102が設定値に達した場合、または予測した余寿命が設定値を下回った場合などにアラームを表示部230に表示させる。これにより、操作者は、評価対象となる構造物が警戒状態にあることを把握可能となる。このように、外部機関が提供する気象データと風況解析を組み合わせることで、現在に至るまでに対象構造物が実際に経験した風速(推定値、予測値であり計測値ではない)を用いた将来を含む疲労評価が可能となる。
以上説明したように、本実施形態に係る累積疲労損傷度評価部247は、将来の累積疲労損傷度を演算することとした。これにより、将来の累積疲労損傷度の推移L104から、評価対象となる構造物の余寿命の予測が可能となる。
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施することが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
1:評価システム、100:データ入力装置、200:診断評価装置、230:表示部、240:制御部、242:風況解析部、243:風荷重算出部、244:構造解析部、245:短期疲労損傷度評価部、246:風況同定部、247:累積疲労損傷度評価部、250:記憶部。
Claims (16)
- 評価対象エリアの気象に関する気象データと、前記評価対象エリアに位置する構造物に関する構造物データと、を入力するデータ入力装置と、
前記データ入力装置と通信可能に接続される診断評価装置と、を備え、
前記診断評価装置は、
前記気象データに基づく前記評価対象エリアの風況解析データと、少なくとも風速の情報を含む風況情報に応じた前記構造物の前記構造物データに基づく短期疲労損傷度データとを、格納する記憶部と、
前記風況解析データが有する前記構造物の位置における風況情報を取得し、前記風況情報に対応する前記短期疲労損傷度データを用いて、前記構造物の疲労損傷の指標である累積疲労損傷度を生成する制御部と、
を有する、評価システム。 - 前記制御部は、累積疲労損傷度を演算する期間の時系列な風向、及び風速に対応する前記評価対象エリアの風況解析データを前記記憶部から複数取得し、取得した複数の風況解析データがそれぞれ有する前記構造物の位置における風況情報に対応する複数の前記短期疲労損傷度データを用いて、前記累積疲労損傷度を生成する、請求項1に記載の評価システム。
- 前記診断評価装置は、前記累積疲労損傷度、及び前記累積疲労損傷度の時系列変化を図表化した図の少なくとも一方を表示デバイスに表示させる表示部を更に有する、請求項1に記載の評価システム。
- 前記制御部は、
前記評価対象エリアの気象に関する気象データを用いて、前記風況解析データを計算して前記記憶部へ格納する風況解析部と、
前記風況解析データと前記構造物データに基づいて風荷重波形を計算する風荷重算出部と、
前記構造物データと前記風荷重波形とに基づいて前記構造物の応力波形を計算する構造解析部と、
前記応力波形から短期疲労損傷度を計算して前記記憶部へ格納する短期疲労損傷度評価部と、
前記気象データを用いて前記評価対象エリアの風況を同定する風況同定部と、
前記短期疲労損傷度に基づいて前記累積疲労損傷度を計算する累積疲労損傷度評価部と、を有する、請求項1に記載の評価システム。 - 前記風荷重算出部は、前記風況解析データにより演算された前記構造物の位置における風況に対して、風速のパワースペクトルを計算し、前記パワースペクトルに適合した風速時系列波形を算出し、前記風速時系列波形を変換し前記構造物に作用する風荷重時系列波形を算出する、請求項4に記載の評価システム。
- 前記構造解析部は、前記構造物データに基づく構造解析モデルと前記風荷重算出部で計算された風荷重の時系列波形を用いて、前記構造物の時刻歴応答解析を行い、応力の時系列波形を計算する、請求項5に記載の評価システム。
- 前記短期疲労損傷度評価部は、前記構造解析部で計算された応力の時系列波形と、前記構造物データとして与えられた構造物材料のS-N曲線とを用いて、所定の第1期間における疲労損傷度である短期疲労損傷度を計算する、請求項6に記載の評価システム。
- 前記累積疲労損傷度評価部は、前記第1期間よりも長い第2期間において、前記短期疲労損傷度評価部で計算された複数の短期疲労損傷評価度を加算し、前記累積疲労損傷度を計算する、請求項7に記載の評価システム。
- 前記累積疲労損傷度評価部は、計算した前記累積疲労損傷度を前記記憶部に格納する、請求項7に記載の評価システム。
- 前記累積疲労損傷度評価部は、前記累積疲労損傷度の現在に至るまでの値の推移に基づき、将来における前記累積疲労損傷度の推移を予測し、前記構造物の余寿命を予測する、請求項7に記載の評価システム。
- 前記データ入力装置は、前記構造物に関するメンテナンスや交換等の設備管理情報が更に入力される、請求項7に記載の評価システム。
- 前記累積疲労損傷度評価部は、前記設備管理情報に応じて、前記累積疲労損傷度の評価結果を修正する、請求項11に記載の評価システム。
- 前記表示部は、前記累積疲労損傷度の値に基づき、アラームを表示する、請求項3に記載の評価システム。
- 前記風況情報は、風速、風向、及び乱流強度の情報のうちの少なくとも風速及び風向の情報を含む、請求項1に記載の評価システム。
- 評価対象エリアの気象に関する気象データと、前記評価対象エリアに位置する構造物に関する構造物データと、を取得し、
前記気象データに基づく前記評価対象エリアの風況解析データと、少なくとも風速の情報を含む風況情報に応じた前記構造物の前記構造物データに基づく短期疲労損傷度データと、を計算し、
前記風況解析データと前記短期疲労損傷度データを記憶部に格納し、
前記風況解析データが有する前記構造物の位置における風況情報を取得し、前記風況情報に対応する前記短期疲労損傷度データを用いて、前記構造物の疲労損傷の指標である累積疲労損傷度を生成する、評価方法。 - 評価対象エリアの気象に関する気象データと、前記評価対象エリアに位置する構造物に関する構造物データと、を取得し、
前記気象データに基づく前記評価対象エリアの風況解析データと、少なくとも風速の情報を含む風況情報に応じた前記構造物の前記構造物データに基づく短期疲労損傷度データと、を計算し、
前記風況解析データと前記短期疲労損傷度データを記憶部に格納し、
前記風況解析データが有する前記構造物の位置における風況情報を取得し、前記風況情報に対応する前記短期疲労損傷度データを用いて、前記構造物の疲労損傷の指標である累積疲労損傷度を生成する、評価方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
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---|---|---|---|
JP2022172674A JP2024064233A (ja) | 2022-10-27 | 2022-10-27 | 評価システム、評価方法、及びプログラム |
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JP2022172674A JP2024064233A (ja) | 2022-10-27 | 2022-10-27 | 評価システム、評価方法、及びプログラム |
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JP2022172674A Pending JP2024064233A (ja) | 2022-10-27 | 2022-10-27 | 評価システム、評価方法、及びプログラム |
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