JP2024055182A - ペプチダーゼ検出用基質、該基質を用いたペプチダーゼ検出方法および該基質を含むペプチダーゼ検出用試薬 - Google Patents

ペプチダーゼ検出用基質、該基質を用いたペプチダーゼ検出方法および該基質を含むペプチダーゼ検出用試薬 Download PDF

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Wataru Ogasawara
彰宏 中村
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Abstract

【課題】WODLを用いたマイクロ流体システムにおいてペプチダーゼを検出するための新規基質の提供。【解決手段】以下の式(I):JPEG2024055182000014.jpg90137(式中、R1はカルボキシ基、ヒドロキシ基、ホルミル基またはアミノ基を表し、R2はそれぞれ独立に同一または異なるn個の連続するアミノ酸残基を表し、nは1から4の整数を表す。)で表される化合物。【選択図】図16

Description

特許法第30条第2項適用申請有り 1.令和3年12月28日 https://doi.org/10.1021/acs.analchem.1c04108を通じて発表 2.令和4年2月14日 プレスリリースにて発表 3.令和4年2月14日 https://www.kobe-u.ac.jp/research_at_kobe/NEWS/news/2022_02_14_01.htmlを通じて発表 4.令和4年2月14日 https://research-er.jp/articles/view/107660を通じて発表 5.令和4年3月25日 https://nagaokaut.repo.nii.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=971&item_no=1&page_id=27&block_id=47を通じて発表 6.令和4年4月15日 新潟日報 令和4年4月15日付朝刊 第16面にて発表 7.令和4年4月15日 https://www.niigata-nippo.co.jp/articles/-/49500を通じて発表 8.令和4年5月31日 https://www2.aeplan.co.jp/pssj2022/viewing/wp-content/uploads/2022/05/Web_Upload_compressed.pdfを通じて発表 9.令和4年6月7日 第22回日本蛋白質科学会年会 WEB(https://zoom.us/j/92137678651?pwd=UDJaZDZ0RDlqZU9NUlBRZzc1QnhOdz09)及びつくば国際会議場にて発表 10.令和4年8月23日 月刊「細胞」2022年9月号(54巻10号)第40(574)頁~43(577)頁にて発表
本発明は、ペプチダーゼを検出するための新規基質に関する。さらに本発明は、該新規基質を用いたペプチダーゼまたはペプチダーゼ産生対象検出方法、ならびに、該新規基質を含むペプチダーゼまたはペプチダーゼ産生対象検出用試薬に関する。
液滴を用いたマイクロ流体システムは、ハイスループットでバイオアッセイを行うための強力なツールである。ハイスループットとともに、微生物培養のコンパートメント化や小型化もこの技術に特有の特徴であり、酵素活性に基づく微生物のスクリーニングを容易にする。100万種の微生物を酵素活性に基づいてスクリーニングした結果、標的活性を有する微生物は10種以下であることが報告されている。このように、ハイスループットなスクリーニングは、生存微生物の取得率の低さに対して大きな利点がある。また、様々な微生物の混合懸濁液から単一細胞を分離するためには、微生物の確率的な区画化が有効である。また、小型化により培地や基質の必要量が減り、コストダウンにもつながる。このように、液滴を用いたマイクロ流体システムは、近年、微生物のスクリーニングへの応用が研究されている。
液滴を用いたマイクロ流体システムでは、通常、ナノリットルサイズまたはピコリットルサイズの油中水滴(WODL)内で微生物の培養と酵素アッセイを行う。これまで、アミラーゼ、グルコシダーゼ、エステラーゼ、リパーゼ、セルラーゼ、ラッカーゼなどの酵素活性をもとに、さまざまな微生物のスクリーニングが行われてきた。しかし、液滴を用いたマイクロ流体システムでスクリーニングできる微生物は、一部の酵素活性を有する細菌に限られる。これは、他の酵素アッセイ法にはない、WODLを用いたマイクロ流体システムの最も大きな特徴が、ナノリットルまたはピコリットル容量の水溶液を取り囲む油相が存在するためである。油相は、WODL中の酵素活性を検出する際に不利になることがあり、特に、蛍光活性化液滴選別法(FADS)を用いてWODL中の酵素活性を検出するために一般的に使用されている、蛍光性基質と併用する場合に不利になる。疎水性の蛍光性基質は水溶液から油相に漏れ、WODL全体に拡散するため、酵素活性の評価は困難である。そのため、WODL中で酵素活性を検出するための蛍光性基質には親水性が必要である。WODLからの化合物の漏出を防ぐために、蛍光性基質に親水性官能基(リン酸基、カルボキシル基、スルホ基)を付加する方法や、界面活性剤の種類や濃度を変更する方法などが検討されている。
クマリンの誘導体は、酵素活性、特にプロテアーゼ活性を検出するための蛍光性基質として一般的に使用されている。無置換のクマリンはほとんど蛍光を示さないが、7位に電子供与基(例えば、水酸基、アミノ基など)を導入すると、強い発光を示すようになる。置換基を導入されたクマリン誘導体は、さらに置換基にアミノ酸、脂質、糖類など様々な基質を結合させることができる。基質と結合したクマリン誘導体は蛍光を示さなくなるが、基質に対応した酵素を反応させ、クマリン誘導体を遊離させることによって再び蛍光を示すため、酵素活性の検出に使用することができる。クマリン誘導体のうち、7位にアミノ基を導入した7-アミノ-4-メチルクマリン(AMC)は青色蛍光を発するため、蛍光性基質のプローブとして広く利用されてきた。しかし、Woronoffらの先行研究では、WODL内のAMCが液滴から油相に漏出し、別の液滴に輸送され、結果として液滴間で均一化してしまうため、WODLを用いたマイクロ流体システムに使用できないことが判明した(非特許文献1)。Woronoffらは、AMCのメチル基にさらにスルホ基を付加し、液滴からのクマリン誘導体の漏出を防止およびEscherichia coliのアシラーゼ活性検出に成功したことが報告している(非特許文献1)。従って、WODLを用いたマイクロ流体システムにおいてクマリン誘導体を使用する場合、液滴から漏出しないようなクマリン誘導体を選択することが前提となる。
Woronoff, G. et al., Anal. Chem. 2011, vol.83, 2852-2857
本発明は、ペプチダーゼをWODLを用いたマイクロ流体システムにおいて検出するための新規基質を提供することを目的とする。さらに本発明は、WODLを用いたマイクロ流体システムにおける該新規基質を用いたペプチダーゼまたはペプチダーゼ産生対象検出方法、ならびに、WODLを用いたマイクロ流体システムにおいて使用される、該新規基質を含むペプチダーゼまたはペプチダーゼ産生対象検出用試薬を提供することを目的とする。
本発明者らは、7-アミノクマリン-4-メタンスルホン酸(ACMS)のアミノ基にジペプチドを結合させた基質を用いてジペプチジルペプチダーゼ(DPP)の検出を試みた。その結果、当該基質に対してDPPが反応しないことが判明した。発明者らは、ジペプチドが結合していてもDPPが反応可能なクマリン誘導体であって、かつ反応後は蛍光性を有し、WODL中に長時間保持されるクマリン誘導体を探索し、両性質を満たす化合物として7-アミノクマリン-4-酢酸(ACA)を新たに見出した。ACAはWODL中に7日以上保持され、かつジペプチジルACAはDPPの基質となることを確認した。また、ジペプチジルACAに対するDPPの基質特異性定数は、ジペプチジルAMCと比較して最大4.7倍まで高くなった。さらに、WODLを用いたマイクロ流体システムを用いたソーティングにより、ジペプチジルACAを用いたDPP活性に基づく微生物のスクリーニングに成功した。
すなわち、本発明は、
[1]以下の式(I):
(式中、R1はカルボキシ基、ヒドロキシ基、ホルミル基またはアミノ基を表し、R2はそれぞれ独立に同一または異なるn個の連続するアミノ酸残基を表し、nは1から4の整数を表す。)
で表される化合物;
[2]R1がカルボキシ基である、[1]に記載の化合物;
[3]nが2である、[1]または[2]に記載の化合物;
[4]R2がMet-LeuまたはLeu-Aspである、[3]に記載の化合物;
[5][1]~[4]のいずれか1つに記載の化合物と被検試料を接触させることを含む、ペプチダーゼまたは該ペプチダーゼ産生対象検出方法;
[6]接触が油中液滴内における接触である、[5]に記載の方法;
[7]ペプチダーゼがジペプチジルペプチダーゼである、[5]または[6]に記載の方法;
[8]ジペプチジルペプチダーゼがDPP7またはDPP11である、[7]に記載の方法;
[9][1]~[4]のいずれか1つに記載の化合物を含む、ペプチダーゼまたは該ペプチダーゼ産生対象検出用試薬;
[10]油中液滴内におけるペプチダーゼまたは該ペプチダーゼ産生対象検出用である、[9]に記載の試薬;
[11]ペプチダーゼがジペプチジルペプチダーゼである、[9]または[10]に記載の試薬;
[12]ジペプチジルペプチダーゼがDPP7またはDPP11である、[11]に記載の試薬;
を提供する。
本発明の化合物は、WODLを用いたマイクロ流体システムにおいて、ペプチダーゼまたはペプチダーゼ産生対象をハイスループットに検出することができる。
各クマリン誘導体の励起スペクトルおよび発光スペクトルを示す図である。AMC:7-アミノ-4-メチルクマリン; ACA:7-アミノクマリン-4-酢酸; AMCA-H:7-アミノ-4-メチル-3-クマリニル酢酸; ACMS:7-アミノクマリン-4-メタンスルホン酸 ACAの蛍光強度と濃度に関する検量線を示す図である。 (a)、(b):x個の実体(細菌細胞)が封入される確率P(X=x)を式P(X=x)=ex/x!)により算出したグラフである。ここで、eはNapier定数、λは各液滴中の細菌細胞数で、Pseudoxanthomonas mexicana WO24(以後、単にP.mexicanaと記載する)(a)では0.150、E.coli(b)では(b)0.255に設定されている。(c):一つの液滴にx1細胞(P.mexicana;Pm)とx2細胞(E.coli;Ec)が共封入される確率P(X1=x1,X2=x2)を式P(X1=x1,X2=x2)=[e-λ1(λ1 x1/x1!)]×[e-λ2(λ2 x2/x2!)]により算出したグラフである。ここで、λはP.mexicanaでは0.125、E.coliでは0.213に設定されている。Emptyは、細菌が封入されていない空の液滴を意味する。Pmは、1細胞以上のP.mexicanaのみが封入された液滴である。Ecは、1細胞以上のE.coliのみが封入された液滴である。Pm+Ecは、1細胞以上のP.mexicanaと1細胞以上のE.coliが封入された液滴である。 各クマリン誘導体の構造式を示す図である。 AMCのWODLからの漏出試験の結果を示す図である。 AMCA-HのWODLからの漏出試験の結果を示す図である。 ACAのWODLからの漏出試験の結果を示す図である。 ACMSのWODLからの漏出試験の結果を示す図である。 各クマリン誘導体のMilogPとWODL中での保持力の関係を示す図である。 ジペプチジルACAの合成経路を示す図である。化合物1:Fmoc-ACA; 化合物2:Met-Leu-ACA; 化合物3:Leu-Asp-ACA; (a) Fmoc-Cl, NaHCO3水溶液18時間; (b) 2-chlorotrityl chloride樹脂, DIEA, dichloromethane, 17時間; (c) i. 20% peperidine/DMF, 20分; ii. Fmoc-Leu-OH (化合物2の経路)またはFmoc-Asp(tBu)-OH (化合物3の経路), HATU, 2,4,6-collidine/DMF, 24時間; iii. 20% peperidine/DMF, 20分; iv. Fmoc-Met-OH (化合物2の経路)またはFmoc-Leu-OH (化合物3の経路), DIC, HOBt/DMF, 2時間; v. 20% peperidine/DMF, 20分; (d) i. TFA/TIS/H2O/DODT (92.5:2.5:2.5:2.5)またはTFA/TIS/H2O (95:2.5:2.5), 2時間; ii. Prep. RP-HPLC精製 ジペプチジルACMSの合成経路を示す図である。化合物4:Boc-Met-Leu-OH; 化合物5:Met-Leu-ACMS; (a) Boc-Met-OH, Et3N, EDC, HOBt/DMF, 一晩; (b) 1M NaOH水溶液, MeOH, 2時間; (c) i. isobutyl chloroformate, 4-methylmorpholine/DMF, 30分; ii. ACMS, 4-methylmorpholine/DMF, 一晩; (d) i. 4M HCl/EtOAc, anisole, 1時間; ii. Prep. RP-HPLC精製 各DPP酵素と各基質と間のミカエリス-メンテンプロットを示す図である。(a)PmDAP BIIと各Met-Leu-クマリン誘導体; (b)SmDPP7と各Met-Leu-クマリン誘導体; (c)SmDPP11と各Leu-Asp-クマリン誘導体; (d)PgDPP11と各Leu-Asp-クマリン誘導体 ジペプチジルACAの基質を用いたWODL中における精製DPP活性の検出の結果を示す図である。(a, c)PmDAP BIIに加水分解されたMet-Leu-ACA; (b, d)PgDPP11に加水分解されたLeu-Asp-ACA カジトン培地中におけるMet-Leu-ACAまたはLeu-Asp-ACAを用いたDPP活性の検出の結果を示す図である。 ジペプチジルACAの基質を用いたモデル細菌のハイスループット単離を示す図である。(a, c, e) Met-Leu-ACA; (b, d, f) Leu-Asp-ACA (a)DPP産生細菌のハイスループットスクリーニングのためのジペプチジルACA基質の応用のスキーム概要を示す図である。(b, c)Met-Leu-ACAまたはLeu-Asp-ACA を用いてソートされる、ハイスループットWODLのためのFADSのプロットを示す図である。(d)MiSeq Systemで行った16S rDNA配列データに基づいて算出された、各サンプルの上位10個のOTUの存在量比を占めす図である。FADS(M-L-ACA activity):Met-Leu-ACA加水分解活性に基づくソート後のサンプル;FADS(L-D-ACA activity):Leu-Asp-ACA加水分解活性に基づくソート後のサンプル;括弧内の名称は、各OTUが属するファミリー。
本発明は、以下の式(I):
(式中、R1はカルボキシ基、ヒドロキシ基、ホルミル基またはアミノ基を表し、R2はそれぞれ独立に同一または異なるn個の連続するアミノ酸残基を表し、nは1から4の整数を表す。)で表される化合物(本発明の化合物)を提供する。
本発明の化合物において、式(I)中、R1は、好ましくはカルボキシ基を表す。R1がカルボキシ基であることによって、本発明の化合物のR2と7位のアミノ基間のアミド結合が分解され、遊離したクマリン誘導体は親水性化合物であるため、WODL中に留まることができる。
本発明の化合物において、式(I)中、nは、1から4の整数であれば特に制限されない。nが1である場合、式(I)中、R2は、任意のアミノ酸残基であってよく、例えば、Lys、Phe、Met、Ala、Argなどが挙げられる。nが2である場合、式(I)中、R2は、任意のジペプチドであってよく、例えば、Gly-Pro、Phe-Met、Lys-Ala、Met-Leu、Leu-Aspなどが挙げられる。nが3である場合、式(I)中、R2は、任意のトリペプチドであってよく、例えば、Val-Pro-Arg、Pro-Phe-Argなどが挙げられる。nが4である場合、式(I)中、R2は、任意のテトラペプチドであってよく、例えば、Ala-Ala-Pro-Phe、Leu-Leu-Val-Tyrなどが挙げられる。式(I)中、nは、好ましくは2を表す。なお、本明細書においては、特に断らない限り、アミノ酸またはペプチドの左端がアミノ末端であり、右端がカルボキシ末端を表す。
従って、本発明の化合物のうち、好ましい化合物としては、以下の式(I):
(式中、R1はカルボキシ基を表し、R2はそれぞれ独立に同一または異なる2個の連続するアミノ酸残基を表す。)で表される化合物が挙げられる。
また、本発明の化合物のうち、具体的な化合物としては、例えば、以下の式(II):
または、以下の式(III):
が挙げられる。
本発明の化合物の製造は、様々な合成方法により行なうことができ、特に限定されるものではない。たとえば、上記の式(II)および式(III)で表される本発明の化合物の場合、以下の通りの反応を経由することで合成することができる。
まず、出発原料である2-(7-amino-2-oxo-2H-chromen-4-yl)-acetic acidを、炭酸水素ナトリウムの溶液に溶解させ、アセトンを加え、9-fluorenylmethyl chloroformateを加える。混合物を攪拌し、溶媒を除去した後、残渣を1M塩酸中に添加する。析出物を濾過し、水およびヘキサンで洗浄して粗生成物を得る。さらに、粗生成物をエーテルで沈殿させ、ろ過し、さらに1M塩酸とヘキサンで洗浄することによって、2-(7-((((9H-Fluoren-9-yl)methoxy)carbonyl)amino)-2-oxo-2H-chromen-4-yl)acetic acid(Fmoc-ACA,化合物1)が得られる。
さらに、2-クロロトリチルクロライド樹脂、上記で得られた化合物1、N,N-diisopropylethylamineをジクロロメタン中で混合し、攪拌することによって化合物1のカルボキシ基を介して樹脂に結合させる。
次に、化合物1が結合された樹脂をN,N′-dimethylformamide (DMF)中のピペリジンで処理する。次いで、Fmoc-Leu-OHまたはFmoc-Asp(tBu)-OH、1-[bis(dimethylamino)methylene]-1H-1,2,3-triazolo[4,5-b]pyridinium 3-oxide hexafluorophosphate (HATU)およびDMF中の2,4,6-collidineの混合物を上記の処理された樹脂に加えて、攪拌する。さらに、樹脂に結合された化合物1のアミノ基に連結されたFmoc-LeuまたはFmoc-AspからFmoc基をDMF中ピペリジンで脱保護する。次いで、上記脱保護処理された樹脂に1-ヒドロキシベンゾトリアゾール (HOBt)、Fmoc-Met-OHまたはFmoc-Leu-OH、DMF中のN,N′-diisopropylcarbodiimide (DIC)の混合物を添加して攪拌する。さらに、樹脂に結合された化合物1のLeuまたはAspにさらに連結されたFmoc-LeuまたはFmoc-AspからFmoc基をDMF中ピペリジンで脱保護する。
さらに、Met-Leuが連結された化合物1が結合された樹脂については、トリフルオロ酢酸 (TFA)/トリイソプロピルシラン (TIS)/H2O/3,6-dioxa-1,8-octane-dithiol (DODT) (92.5:2.5:2.5:2.5)、Leu-Aspが連結された化合物1が結合された樹脂については、TFA/TIS/H2O (95:2.5:2.5)と共に攪拌し、エーテルで沈殿させ、化合物2および化合物3を得る。
上記のようにして得られる本発明の化合物は、ペプチダーゼが反応可能な基質であって、反応後には蛍光性を有し、かつWODL中に長時間保持されるクマリン誘導体が本発明の化合物から遊離される。通常、WODLを用いたマイクロ流体システムでは、酵素によって分解された基質から遊離した蛍光性化合物は、WODL中に維持されていなければならない。分解された後に蛍光性化合物を遊離することができる基質として既に使用されていたAMCは、WODL中から速やかに漏出するため、WODLを用いたマイクロ流体システムでは全く使用に適さなかったが、本発明の化合物は、AMCと同じクマリン誘導体でありながら、ペプチダーゼに対して上記の性質を有しつつ、かつAMCよりも高い基質特異性定数を示す。
従って、本発明はまた、本発明の化合物と被検試料を接触させることを含む、ペプチダーゼまたはペプチダーゼ産生対象検出方法(本発明の検出方法)を提供する。
本発明の検出方法によって検出されるペプチダーゼは、ペプチダーゼを産生するどのような対象由来であってもよく、例えば、微生物または細胞由来のペプチダーゼなどが挙げられる。また、本発明の検出方法によって検出されるペプチダーゼ産生対象も、ペプチダーゼを産生するどのような対象であってもよく、例えば、微生物または細胞などが挙げられる。
微生物としては、真核微生物(以下、単なる「真菌」と記載する)、真正細菌(以下、単なる「細菌」と記載する)、古細菌が挙げられる。細菌は、グリセロール3-リン酸の脂肪酸エステルより構成される細胞膜を持つ原核生物であれば特に制限はなく、グラム陰性細菌であってもよいし、グラム陽性細菌であってもよい。グラム陰性細菌としては、以下に制限されるものではないが、例えば、ナイセリア属(Neisseria)、ブランハメラ属(Branhamella)、ヘモフィルス属(Haemophilus)、ボルデテラ属(Bordetella)、エシェリキア属(Escherichia)、シトロバクター属(Citrobacter)、サルモネラ属(Salmonella)、シゲリア属(Shigella)、クレブシエラ属(Klebsiella)、エンテロバクター属(Enterobacter)、セラチア属(Serratia)、ハフニア属(Hafnia)、プロテウス属(Proteus)、モルガネラ属(Morganella)、プロビデンシア属(Providencia)、エルシニア属(Yersinia)、キャンピロバクター属(Campylobacter)、ビブリオ属(Vibrio)、エロモナス属(Aeromonas)、シュードモナス属(Pseudomonas)、キサントモナス属(Xanthomonas)、アシネトバクター属(Acinetobacter)、フラボバクテリウム属(Flavobacterium)、ブルセラ属(Brucella)、レジオネラ属(Legionella)、ベイロネラ属(Veillonella)、バクテロイデス属(Bacteroides)、フゾバクテリウム属(Fusobacterium)などに属する細菌が挙げられる。グラム陽性細菌としては、以下に制限されるものではないが、例えば、スタフィロコッカス属(Staphylococcus)、ストレプトコッカス属(Streptococcus)、エンテロコッカス属(Enterococcus)、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)、バシラス属(Bacillus)、リステリア属(Listeria)、ペプトコッカス属(Peptococcus)、ペプトストレプトコッカス属(Peptostreptococcus)、クロストリジウム属(Clostridium)、ユーバクテリウム属(Eubacterium)、プロピオニバクテリウム属(Propionibacterium)、およびラクトバシラス属(Lactobacillus)などに属する細菌が挙げられる。真菌は細胞壁と細胞膜に囲まれた細胞質と核膜に囲まれた核を持ち、分化した細胞小器官を有する真核微生物であれば制限はなく、酵母であってもよいし、糸状菌であってもよい。真菌としては、以下に制限されるものではないが、接合菌門(Zygomycota)、子嚢菌門(Ascomycota)、担子菌門(Basidiomycota)などに属する真菌が挙げられる。
細胞としては、真核生物の細胞であれば特に制限はなく、動物細胞、植物細胞を含む概念として定義するが、その中でも動物細胞が好ましい。動物細胞としては、以下に制限されるものではないが、例えば、肝細胞、脾細胞、神経細胞、グリア細胞、膵β細胞、骨髄細胞、メサンギウム細胞、ランゲルハンス細胞、表皮細胞、上皮細胞、杯細胞、内皮細胞、平滑筋細胞、線維芽細胞、線維細胞、筋細胞、脂肪細胞、免疫細胞(例、マクロファージ、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞、肥満細胞、好中球、好塩基球、好酸球、単球)、巨核球、滑膜細胞、軟骨細胞、骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、乳腺細胞、肝細胞もしくは間質細胞、またはこれら細胞の前駆細胞、幹細胞もしくはガン細胞などが挙げられる。また、遺伝的に組み換えられた上記細胞もまた好ましく用いられる。
ペプチダーゼは、ペプチド結合を加水分解する酵素類のことであり、あるポリペプチドやタンパク質の末端の特定のアミノ酸のペプチド結合を分解することによって当該末端アミノ酸または短いペプチドをタンパク質から遊離させる、エキソペプチダーゼであってもよいし、あるポリペプチド内部やタンパク質内部の特定のアミノ酸のペプチド結合を分解することによってタンパク質を切断する、エンドペプチダーゼであってもよい。
本発明の検出方法によって検出されるエキソペプチダーゼとしては、ジペプチドを2つのアミノ酸に分解するジペプチダーゼ、ポリペプチドやタンパク質のアミノ末端から1アミノ酸を遊離させるアミノペプチダーゼ、ポリペプチドやタンパク質のアミノ末端からジペプチドを遊離させるジペプチジルペプチダーゼ、ポリペプチドやタンパク質のアミノ末端からトリペプチドを遊離させるトリペプチジルペプチダーゼ、ポリペプチドやタンパク質のアミノ末端からN-アセチルアミノ酸またはN-ホルミルアミノ酸を遊離させるアシルアミノアシルペプチダーゼが挙げられる。
ジペプチジルペプチダーゼとしては、具体的には、それらに制限されるものではないが、ジペプチジルペプチダーゼ-1 (DPP1)、ジペプチジルペプチダーゼ-2 (DPP2)、ジペプチジルペプチダーゼ-3 (DPP3)、ジペプチジルペプチダーゼ-4 (DPP4)、ジペプチジルペプチダーゼ-5 (DPP5)、ジペプチジルペプチダーゼ-6 (DPP6)、PmDAP BIIやSmDPP7を含むジペプチジルペプチダーゼ-7 (DPP7)、ジペプチジルペプチダーゼ-8 (DPP8)、ジペプチジルペプチダーゼ-9 (DPP9)、ジペプチジルペプチダーゼ-10 (DPP10)、PgDPP11やSmDPP11を含むジペプチジルペプチダーゼ-11 (DPP11)などが挙げられる。トリペプチジルペプチダーゼとしては、具体的には、それらに制限されるものではないが、トリペプチジルペプチダーゼ-1 (TPP1)、トリペプチジルペプチダーゼ-2 (TPP2)、プロリルトリペプチジルアミノペプチダーゼなどが挙げられる。
エンドペプチダーゼとしては、それらに制限されるものではないが、セリンプロテアーゼであるトリプシン、エラスターゼ、V8エンドペプチダーゼ、システインプロテアーゼであるパパイン、アスパラギン酸プロテアーゼであるペプシン、メタロプロテアーゼであるテルモリシンなどが挙げられる。
本発明の検出方法で使用される被検試料は、基質として本発明の化合物と反応するペプチダーゼまたは該ペプチダーゼを産生する対象を含む可能性のある試料であれば、特に制限されない。被検試料は、液体試料であっても固体試料であってもよいが、本発明の化合物を接触させる観点から、液体試料が好ましい。液体試料としては、例えば、生体試料が挙げられる。生体試料は、組織、細胞などでよいが、例えば、血液、血漿、血清、尿、唾液などの生体から容易に採取できるものが挙げられる。血清や血漿を用いる場合、常法に従って採血し、液性成分を分離することによりそれらを調製することができる。また別の液体試料としては、河川、湖沼または海洋由来の水、産業排水(工業廃水、農業廃水など)、生活廃水、上下水道の水あるいは井戸水などが挙げられる。固体試料としては、上記の液体試料の乾燥固形物などが挙げられる。
被検試料が、ペプチダーゼを産生する対象を含む上記の液体試料または固形試料である場合、当該液体試料または固形試料の一部または全部を該対象を培養するための培養用培地に溶解させてもよい。本発明の化合物との接触前に、ペプチダーゼを産生する対象を含む培養用培地を培養することによって該対象を増幅させることが可能となるため、本発明の化合物による検出が容易になる。
培養用培地は、ペプチダーゼを産生する対象が微生物の場合、微生物の培養に通常用いられる培地を基礎培地として調製することができる。基礎培地としては、例えば、LB培地、カジトン培地、M9培地、YPD培地等が挙げられる。
培養用培地は、ペプチダーゼを産生する対象が細胞の場合、細胞の培養に通常用いられる培地を基礎培地として調製することができる。基礎培地としては、例えばBasal Medium Eagle(BME)、BGJb培地、CMRL 1066培地、Glasgow Minimum Essential Medium(Glasgow MEM)、Improved MEM Zinc Option、Iscove’s Modified Dulbecco’s Medium(IMDM)、Medium 199、Eagle Minimum Essential Medium(Eagle MEM)、Alpha Modified Eagle Minimum Essential Medium(αMEM)、Dulbecco’s Modified Eagle Medium(DMEM)、F-12培地、DMEM/F12、IMDM/F12、ハム培地、RPMI 1640、Fischer’s培地、又はこれらの混合培地等が挙げられる。
本発明の検出方法は、本発明の化合物と被検試料を接触させることを含む。本発明の化合物と被検試料の接触の態様は、被検試料の態様によって異なってよい。被検試料が液体試料である場合、例えば、被検試料と本発明の化合物を混合することによって両者を接触させることができる。また、被検試料が固体試料である場合、固体試料に本発明の化合物を直接接触させてもよいし、固体試料を液体に溶解させてから本発明の化合物と混合することによって両者を接触させることもできる。
本発明の化合物と被検試料の接触時間、接触温度は当業者が適宜選択可能であるが、例えば、室温で1分~数分間の接触でよい。
本発明の検出方法における、本発明の化合物と被検試料の接触は、油中液滴内における接触であることが好ましい。油中液滴とは、連続相である油相中に存在する分散相としての微粒子状の水相をいう。油中液滴を構成する水相は、油相と混和しない親水性の液体であればよい。このような水相に用いることのできる溶液としては、以下に限定されないが、例えば、液体試料自体であってもよいし、培養用培地であってもよい。油中液滴を構成する油相は、水相と混和しない疎水性の液体であればよい。このような油相は公知であり、以下に限定されないが、例えば、FC40、Novec7500、ミネラルオイルなど、またはこれらの組み合わせを挙げることができる。
油中液滴を構成する水相と油相を安定化させるために、水相および/または油相に界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤としては、それらに限定されるものではないが、例えば、水相用の界面活性剤としてはSpan80、Tween20などが挙げられる。また、油相用の界面活性剤としてはPico-surf1、Krytoxなどが挙げられる。また、これらの界面活性剤は、互いに組み合わせて使用されてもよい。水相または油相に添加される界面活性剤の濃度は、用いる界面活性剤の種類や所望する微粒子状の水相の大きさ等の条件により適宜調整することができる。
上記の水相および油相からなる油中液滴の作製方法は公知であり、例えば、QX100(Bio-RAD)などの市販の装置を用いて作製することができる。
以上のとおり、本発明の化合物と被検試料を接触させ、該被検試料中に本発明の化合物を分解できるペプチダーゼまたは該ペプチダーゼを産生する対象が含まれていた場合、本発明の化合物が分解され、蛍光性を有するクマリン誘導体が遊離する。従って、本発明の化合物と被検試料の接触後、蛍光強度を測定することによって、被検試料中のペプチダーゼまたは該ペプチダーゼを産生する対象を検出することができる。従って、本発明の検出方法は、さらに、本発明の化合物から遊離したクマリン誘導の蛍光強度を測定することを含んでよい。蛍光強度は市販の蛍光測定装置で測定することができる。
本発明の検出方法では、上記のとおり測定された蛍光強度に基づいて、被検試料中のペプチダーゼまたは該ペプチダーゼを産生する対象の有無が判断される。当該判断は、例えば、本発明の化合物と本発明の化合物とは反応しない物質(陰性対象)とを接触させた後に測定された蛍光強度(基準蛍光強度)をカットオフ値として設定し、被検試料で測定された蛍光強度が当該カットオフ値を上回る場合、被検試料中に本発明の化合物によって検出されるペプチダーゼまたは該ペプチダーゼを産生する対象が含まれていると判断することができる。従って、本発明の検出方法は、さらに、測定された蛍光強度から被検試料中のペプチダーゼまたは該ペプチダーゼを産生する対象の有無を判断することを含んでよい。
以上から、本発明の検出方法は、一態様において、以下の工程を含む方法であってよい。
(a)本発明の化合物と被検試料を接触させる工程。
(b)本発明の化合物から遊離したクマリン誘導の蛍光強度を測定する工程。
(c)測定された蛍光強度から被検試料中のペプチダーゼまたは該ペプチダーゼを産生する対象の有無を判断する工程。
本発明はまた、本発明の化合物を含む、ペプチダーゼまたはペプチダーゼ産生対象検出用試薬(本発明の試薬)を提供する。本発明の試薬は、本発明の化合物以外にも、油中液滴を形成させるための疎水性の液体および親水性の液体、界面活性剤、培養培地などが含まれていても良い。
以下において、実施例により本発明をより具体的にするが、この発明はこれらに限定されるものではない。
材料および方法
材料、細菌株、培地、酵素
5′末端をAlexa 488、3′末端をBlack Hole Quencher1(BHQ1)で標識したRNAプローブである細菌選別用蛍光核酸プローブ(FNAP-sort)(再表2019/073902参照)は、Eurofins Genomics(日本)により合成された。7-アミノ-4-メチル-3-クマリニル酢酸(AMCA-H)、7-アミノ-4-トリフルオロメチルクマリン(AFC)およびスルフォローダミンBは富士フイルム和光純薬株式会社(日本)より購入した。AMCおよびACAは、それぞれ株式会社ペプチド研究所(日本)およびFluorochem Ltd.(英国)から購入した。7-アミノクマリン-4-メタンスルホン酸(ACMS)は、発明者らが公知の手順で合成した。L-メチオニル-L-ロイシル-7-アミノクマリン-4-酢酸(Met-Leu-ACA;図10における化合物2(以下、単に化合物2))、L-メチオニル-L-ロイシル-7-アミノクマリン-4-メタンスルホン酸(Met-Leu-ACMS;図11における化合物5(以下、単に化合物5))、L-ロイシル-L-アザラシ-7-アミノクマリン-4-酢酸(Leu-Asp-ACA;図10における化合物3(以下、単に化合物3))は本実施例において合成した。L-メチオニル-L-ロイシル-7-アミノ-4-メチルクマリン(Met-Leu-AMC)およびL-ロイシル-L-アスパルチル-7-アミノ-4-メチルクマリン(Leu-Asp-AMC)はペプチド研究所(日本)から購入した。また、本実施例では2種類の細菌を使用した。K12株由来のEscherichia coli DH5α(タカラバイオ株式会社、日本)に赤色蛍光タンパク質(RFP)遺伝子を含むプラスミド(p005-RFP-strong, Addgene, MA, USA)をトランスフェクトし、DPP非生産菌として使用した。DPP産生菌としては、発明者によって単離されたP.mexicanaを用いた。豆腐工場廃液を新潟県長岡市の今井豆腐店から採取した。カジトン培地は、1% (w/v) Bacto Casitone、0.2% (w/v) Bacto Yeast extractおよび4 mM MgSO4を含む。LB寒天培地は1% (w/v) Bacto Tryptone、0.5% (w/v) Bacto Yeast extract、1% (w/v) NaCl、1.5% (w/v) agarを含む。P.mexicana由来のジペプチジルアミノペプチダーゼBII(PmDAP BII)、Stenotrophomonas maltophilia由来のDPP7(SmDPP7)、S. maltophilia由来のDPP11(SmDPP11)およびPorphyromonas gingivalis由来のDPP11(PgDPP11)を文献(N. Sci. Rep. 2014, 4, 4977.; N. Sci. Rep. 2019, 9, 13587.; Nat. Methods 2012, 9, 671-675.)に記載の方法で過剰発現させ、精製した。
WODLの作製とソーティング
直径約120 μmのWODLを、On-Chip droplet generator(On-Chip Biotechnologies, Japan)を用いて、約40万滴/分の速度で作製した。油相は、界面活性剤として2%(w/w)008-FluoroSurfactant(RAN Biotechnologies, MA, USA)を含む3M Novec Engineered Fluid(HFE-7500)を使用した。FADSはOn-Chip Sort (On-Chip Biotechnologies, Japan)を用いて、最大約300滴/秒で実施した。0.1% (w/w)の008-FluoroSurfactantを含むHFE-7500をシース液として使用した。
WODL中の保持時間の決定
各蛍光物質を10mMのジメチルスルホキシドに溶解後、5 mM EDTAを含む50 mMリン酸ナトリウムバッファーで100μMに希釈して使用した。各クマリン誘導体の励起スペクトルおよび発光スペクトルを図1に示す。蛍光物質を含むWODL(ポジティブWODL)と蛍光物質を含まないWODL(ネガティブWODL)を用意し、両WODLを等量ずつ混合した。ネガティブWODLはスルフォローダミンBを含む。青色および赤色の蛍光強度を共焦点顕微鏡で測定し、下記のImageJで解析した。MiLogP値は、Molinspiration(http://www.molinspiration.com//cgi-bin/properties)により算出した。
画像解析
顕微鏡写真は、NIS-Elementsソフトウェア(Nikon, Japan)で操作するレーザー走査型共焦点顕微鏡システムA1(Nikon, Japan)を用いて、100倍の倍率で取得した。WODLを0.1%(w/w)008-FluoroSurfactantを含むHFE-7500で予め充填したμ-Slide VIフラット顕微鏡チャンバー(Ibidi, Germany)に導入した。蛍光強度解析は、ImageJを用いて行った。ACAの蛍光強度の検量線を図2に示す。
ジペプチジル基質に対する動力学パラメータの決定
Kinetic parametersは、Excel Solver (Microsoft, WA, USA)を用いて、様々な基質濃度で実験データを非線形最小二乗フィッティングによりMichaelis-Menten式に当てはめることにより動力学パラメータを決定した:Met-Leu-AMC(2.5 nMのPmDAPBIIおよび2.5 nMのSmDPP7に対して0.781、1.56、3.13、6.25、12.5、25、50および100 μM); Met-Leu-ACA(化合物2)(2nMのPmDAPBIIに対して0.195、0.391、0.781、1.56、3.13、6.25、12.5および25μM、ならびに4nM SmDPP7に対して0.391、0.781、1.56、3.13、6.25、12.5、25 μMおよび50 μM); Met-Leu-ACMS(化合物5)(500 nMのPmDAPBIIおよび100 nMのSmDPP7に対して0.781、1.56、3.13、6.25、12.5、25、50および100 μM); Leu-Asp-AMC(0.5 nM PgDPP11および0.2 nM SmDPP11に対して0.781、1.56、3.13、6.25、12.5、25、50および100μM);およびLeu-Asp-ACA(化合物3) (0.5 nM PgDPP11および0.1 nM SmDPP11に対して0.781、1.56、3.13、6.25、12.5、25、50および100 μM)。50 mM リン酸ナトリウム緩衝液 pH7.0、5 mM EDTA、0.005% Tween 20からなる反応緩衝液中、25℃で20分間酵素反応を行った。標準偏差は3つの独立した実験から算出した。放出されたAMC、ACA、ACMSの蛍光強度は、マイクロプレートリーダーInfinite 200 PRO(Tecan, Switzerland)を用いて、それぞれ励起波長355、350、365nm、発光波長460、450、470nmで測定した。
WODL中の酵素反応
反応バッファーとして5 mM EDTAを含む50mMリン酸ナトリウムバッファーを用い、100 μM Met-Leu-ACA(化合物2)加水分解には50 nM PmDAP BIIを、100μM Leu-Asp-ACA(化合物3)加水分解には5 nM PgDPP11を使用した。これらの反応液はOn-Chip droplet generatorを用いてWODLとしてカプセル化した。酵素反応は室温で行った。
WODL培養
細菌培養液と豆腐工場廃液を6000×gで遠心分離し、ペレットを0.9% NaCl溶液で洗浄した後、カジトン培地に懸濁した。E. coliとP.mexicanaのWODLへの封入率は、OD600とコロニー形成単位の関係から、ポアソン分布を算出した(図3a、b、c)。豆腐工場廃液中の細菌細胞数は把握できていないため、カジトン培地中の細菌懸濁液をそのままWODL作製に使用した。細菌細胞と100μM ACA基質を含むWODLを30℃で1日間静置培養した。
塩基配列の解析
16S rDNAライブラリーの調製、塩基配列決定、データ解析は、文献Sci. Rep. 2018, 8, 11427に基づいて実施した。メタゲノム解析は、Quantitative Insights Into Microbial Ecologyソフトウェア(バージョン1.9.1)を用いて行った。操作的分類単位(OTU)は、UCLUSTと97%の同一で選択した。分類学的分類は、Greengenesデータベース(バージョン13_8)に基づき、Basic Local Alignment Search Tool(BLAST)を用いて割り当てた。Sanger法シークエンシングで決定した16S rDNA配列に対応する細菌種を検索するためにNCBIデータベース(http://blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgi)のBLASTを使用した。Sanger法シーケンシングは、Eurofins Genomics (Tokyo, Japan)で実施した。実施例におけるメタゲノムシークエンスデータは日本DNAデータバンク(DDBJ)データベース(アクセッション番号DRA012262)より入手可能である。
グラフィックソフトウェア
FADSのヒストグラムとプロットは、FlowJoソフトウェア、バージョン10.7.1(Becton, Dickinson & Company, NJ, USA)によって作成した。化学構造式は、ChemDraw Std, version 14.0.0.117 (PerkinElmer, MA, USA) および MarvinSketch, version 21.13.0 (ChemAxon, Hungary) によって描いた。
結果
蛍光物質のWODLからの漏出試験
AMCなどの疎水性蛍光物質は、WODL間で蛍光体の交換が行われるため、WODLから漏出する。ここでは、AMC、ACA、AMCA-H、ACMSの4種類のクマリン由来蛍光物質を評価し、WODLへの保持性を評価した(図4)。100μMのクマリン由来蛍光物質を添加したWODL(ポジティブWODL)と蛍光物質の代わりに10μMのスルフォローダミンBを添加したWODL(ネガティブWODL)を作製した。ポジティブWODLとネガティブWODLを混合した後、30℃で7日間インキュベートし、蛍光強度を測定した。ACMSは市販されていないため、本実施例で合成した。AMCは混合直後に油中に漏れ出し、すべてのWODLで青色の蛍光が均一であった(図5)。AMCA-Hは混合直後には漏出さなかったが、168時間後にネガティブ(非AMCA-H)WODLで青色蛍光が増加した(図6)。青色蛍光のポジティブ(AMCA-Hを含む)およびネガティブWODLのシグナル/バックグラウンド(S/B)比は、時間の経過とともに減少した(表1)。一方、ACAは168時間後でもWODL中に保持され(図7)、S/B 比は混合直後と同程度の値であった。ACMSは、親水性の増加により168時間後でもWODLに残留し(図8)、S/B比が最も高かった。
疎水性と蛍光体交換の関係を調べるために、各化合物のlogP値をMolinspirationで算出した (MilogP)(表1)。なお、AFCを評価しようとしたが、100μMのAFCは50mMのリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)に不溶であった。MilogP値から、疎水性とWODLからの漏出の相関が示され、これまでの報告(Anal. Chem. 2016, 88, 8587?8595.)と一致した。ACA(MiLogP, 0.42)とAMCA-H(MiLogP, 0.80)を比較すると、蛍光プローブのWODL中保持特性はMilogP値0.42から0.80を境に変化しているように見えた(図9)。WODL中の酵素活性を検出する場合、蛍光プローブが0.42以下のMiLogP値に設定する必要がある。しかし、蛍光物質の交換は拡散ではなく、界面活性剤による輸送で起こるため、MilogP値だけでは蛍光物質がWODLに厳密に保持されているかどうかを判断することはできない。また、AFC(MiLogP, 1.89)は水に不溶であるが、MiLogP値が1.89以上の化合物がすべて不溶であるとは限らない。実際、フルオレセイン(MiLogP, 2.56)やレゾルフィン(MiLogP, 2.14)は水で希釈した有機溶媒に溶解し、WODLに封入することが可能である。このように、化合物のWODLにおける保持性は疎水性だけでなく、化合物の極性や分子量も考慮する必要がある。
蛍光性基質の合成とバルクにおける精製DPP活性の検出の評価
ACMSとACAはWODL中に保持されていることから、WODL中のDPP活性を検出するための蛍光プローブの候補として検討した。このため、まず、バクテリアのDPP7によって分解されるであろうMet-Leu-ACMS(化合物5)とMet-Leu-ACA(化合物2)を合成した。ACAを含む蛍光性基質は、固相ペプチド合成法を用いて合成した(図10)。Harrisらによって報告されたように、Fmoc-Clを用いてACAにFmoc基を導入した。Fmoc-ACAを2-chlorotrityl chloride樹脂にロードした後、Fmoc基を20%ピペリジンで除去した。1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム 3-オキシドヘキサフルオロフォスフェートとコリジンにより、最初のFmocアミノ酸をカップリングし、Fmocを脱保護後、1-ヒドロキシベンゾトリアゾールとN,N′-disopropylcarbodiimide により2個目のアミノ酸を組み込むことができた。脱保護後、延長されたペプチドをトリフルオロ酢酸カクテルで切断した。逆相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)精製を行い、ジペプチジルACA基質(化合物2)を得た。樹脂に担持されたACAのアミノ基と第一アミノ酸とのカップリングが困難であったため、その合成収率は低かったと推定される。一方、ACMSを含む基質を図11に示すように合成した。ロイシンのメチルエステルとBoc-メチオニンをカップリングさせ、その後のけん化でジペプチド中間体を得た。ACMSによるカップリングには、混合無水物法を選択した。最終的にBoc基の脱保護と逆相 HPLC 精製により、ACMS基質(化合物5)が得られた。
合成したMet-Leu-ACMS(化合物5)とMet-Leu-ACA(化合物2)が、バルク(ノンコンパートメント)で精製DPP活性を検出できるかどうかを検証するために評価し、AMC基質と比較検討した。Met-Leu-AMCに基質特異性を示す典型的なバクテリアのDPP7である、PmDAP BII(現在、細菌のDPP7として知られる)およびSmDPP7を実証用に使用した。酵素反応は、5 mM EDTAと0.005% Tween 20を含む50 mMリン酸ナトリウム緩衝液pH7.0で、25℃、20分間行った。標準偏差は3つの独立した実験から得た。Kmは基質飽和状態での最大反応速度 (Vmax)の半分の速度のときの基質濃度であり、酵素と基質の親和性の指標となる。kcatは単位時間あたりに1分子の酵素が行う酵素反応の回数を示す。その結果、ジペプチジルACMS基質(化合物5)はDPP活性を全く検出できないことがわかった(図12)。一方、Met-Leu-ACA(化合物2)はDPP活性を検出することが可能であった。この基質に対するDPP7sの特異性定数(kcat/Km)は、Met-Leu-AMCのそれと比べて、Km値が低いことから約4倍に増加した(表2)。そこで、図10の通り、Leu-Asp-ACA(化合物3)を合成し、DPP11の活性を検出できるかどうかを検討した。検証にはLeu-Asp-AMCに対して基質特異性を持つSmDPP11とPgDPP11を用いた。Leu-Asp-ACA(化合物3)を用いたDPP活性の検出には成功した(表2)。SmDPP11では、DPP7sと同様にLeu-Asp-AMC基質と比較してkcat/Kmの値が増加したが、PgDPP11ではそのようなことはなかった。注目すべきは、今回測定した4つのファミリーS46 DPPのうち3つで特異性定数が増加した。また、最大蛍光波長が長波長側に変化したことによるストークスシフトのわずかな増加は、ACAがAMCよりもS/N比の良い蛍光基であることが示唆する(図1)。したがって、ACAはAMC に代わるDPPの標準的な蛍光物質であることが示された。
スルホ基を付加して基質の親水性を向上させることは、WODLで酵素測定を行う上で有効な方法である。このことは、Woronoffらがフェニルアセチル-ACMSの合成し、E. coli由来のアシラーゼ活性をWODLで検出に成功した報告(Anal. Chem. 2011, 83, 2852-2857.)からも裏付けられている。しかし、本実施例により、蛍光物質の官能基が酵素反応速度に影響を与えることが明らかになった(表2)。特に、蛍光プローブにスルホ基を付加した場合は、DPP酵素活性の検出に悪影響を及ぼすことが示唆された。一方、ACAはカルボキシル基が結合することで親水性が向上し、かつDPP活性の検出には悪影響を与えないことがわかった。このことから、スルホ基による修飾は、WODLで使用する基質の親水性を向上させることはできるが、酵素によっては適切ではないことが示唆された。
WODLにおける精製DPP活性の検出
上記の通り、ジペプチジル蛍光基質Met-Leu-ACA(化合物2)とLeu-Asp-ACA(化合物3)はバルク(ノンコンパートメント)のジペプチジルペプチダーゼ活性を検出することが可能であることがわかった。ここでは、WODL(コンパートメント)において精製酵素活性の検出が可能であるかどうかを検証した。分解酵素として50 nMのPmDAP BIIと5 nMのPgDPP11を用いて、それぞれMet-Leu-ACA(化合物2)とLeu-Asp-ACA(化合物3)を分解した。両基質とも青色蛍光強度の時間依存的増加が顕微鏡観察により確認された(図13a、b)。Met-Leu-ACA(化合物2)およびLeu-Asp-ACA(化合物3)に対するPmDAP BIIとPgDPP11の比活性はそれぞれ0.327および1.41 IU/mgであった。バルク法で測定した比活性よりも低いのは、顕微鏡ステージ上で温度制御ができなかったため、バルク法よりも低い温度(25℃)での比活性であった。さらに、反応後0分と60分のWODLをFADSで分析したところ、反応後60分のWODLに青色の蛍光強度の増加が検出された(図13c、d)。このことから、ACA基質を用いれば、DPP活性に基づくFADSを用いた迅速なスクリーニングが可能であることが示唆された。
WODLで検出可能な基質の開発により、ハイスループットなスクリーニングが可能となり、使用物質の削減につながるとともに、活性に基づくスクリーニングにおいて高感度な活性検出が容易になった。即ち、0.5 nMのPgDPP11(Leu-Asp-ACA(化合物3)に対して2.94 IU/mgの活性を示す(in bulk assay))は、100 μMのLeu-Asp-ACA(化合物3)を用いることにより、WODLで検出可能であった。1 nLの液滴に封入された5 nMの酵素の分子数は約5×10-18 mol(Leu-Asp-ACA(化合物3)に対して1.17×10-15 IU)であった。このことから、ACA基質とWODLを用いれば、微量のDPPが高感度で検出されることがわかる。さらに、100 μMの基質溶液は1 nL程度の液滴で微量であるため、ACA基質とWODLの組み合わせは、大量のサンプル(例えば、100万サンプル)を必要とする微生物スクリーニングにおいて、使用される物質の量を削減する強力なツールとなる。
WODL中の細菌細胞のDPP活性の検出とFADSによるスクリーニング
ここでは、WODLを用いたDPP活性に基づく細菌の迅速なスクリーニングが可能であることを検証した。まず、カゼイン由来の多くのペプチドやアミノ酸を含むカジトン培地で、ACA基質がDPP活性を検出できるかどうか検証した。Met-Leu-ACA(化合物2)については、1 nM PmDAP BIIと20 μM Met-Leu-ACA(化合物2)をカジトン培地中で混合した。Leu-Asp-ACA(化合物3)については、1 nMのPgDPP11と20 μMのLeu-Asp-ACA(化合物3)をカジトン培地中で混合した。コントロールは20μMのACAをカジトン培地に加えた。これらの反応溶液を、2%(w/w)008-FluoroSurfactant(RAN Biotechnologies、MA、USA)を含むフッ素オイルを用いた3M Novec Engineered fluid(HFE-7500)を用いてWODLとしてカプセル化した。酵素反応は、WODL中、30℃で24時間行った。その結果、カジトン培地では、ACA基質がDPP活性を検出できた(図14)。モデル細菌として、DPP産生菌であるP.mexicanaとDPP非産生菌であるE.coli DH5αを使用した。また、E. coli とP.mexicanaを区別するために、RFP遺伝子を含むプラスミドでE. coli を形質転換した。それぞれの細菌の懸濁液(両細菌の混合物ではない)は、ACA基質およびカジトン培地とともに、それぞれWODLに区画した。青色蛍光はDPP活性を示し、赤色蛍光はE. coliの細胞を示す。P.mexicanaでは、Met-Leu-ACA(化合物2)またはLeu-Asp-ACA(化合物3)の基質を用いた場合、細菌の増殖に伴いDPP活性を示す青色蛍光の増加が認められた(図15a、b)。青色蛍光が増加したWODLは、FADSによって分離することができた。なお、E. coliについては、その増殖に伴うRFP由来の赤色蛍光は検出されたが、青色蛍光はいずれのACA基質でも増加しなかった。DPP活性に基づいてP.mexicanaおよびE.coliが封入されたWODLを分離することを試みた。FADSは、ACA基質の分解によって青色蛍光値が上昇した11.2%(Met-Leu-ACA(化合物2)使用)のWODLと7.1%(Leu-Asp-ACA(化合物3)使用)のWODLをそれぞれ選別した(図15c、d)。顕微鏡による解析の結果、各基質のFADSを用いたDPP活性に応じて、P.mexicanaを内包したWODLのみが分離されていることが確認された。これらの結果は、ジペプチジルACA基質を用いたFADSにより、DPP産生細菌を迅速にスクリーニングできることを示すものである。
細菌スクリーニングのためのWODLの利点の1つは、区画化である。そこで、WODLを形成する前にE. coliとP.mexicanaを混合し、溶液中で混合した2種類の菌から、DPP活性に基づいてP.mexicanaを内包したWODLのみを単離した。さらに、菌が増殖したWODLを区別するために、FNAP-sortをWODLに含有させた。FNAP-sortは、細菌が産生するRNaseによって分解されると緑色の蛍光を発する蛍光性核酸基質である。図15e、fは、30℃で1日間培養した後のFADSの結果である。WODLを緑色と青色の蛍光強度によってA1~A3の3つの領域に分けた。青色蛍光はDPP活性を示し、緑色蛍光は細菌の生育を示し、赤色蛍光はE. coliの細胞を示す。(A1)緑と青の蛍光強度が低いこの領域は、細菌が存在せず、DPP活性もない空のWODLを示す。(A2)緑の蛍光が強く青の蛍光が弱いこの領域は、DPP非生産性の細菌が増殖したE. coli封入WODLを示す。(A3)緑と青の蛍光が強いこの領域は、細菌が増殖してDPPを生産したため、P.mexicana封入WODLを示す。A3に分布するWODLを選別した結果、P.mexicanaを内包したWODLのみを単離することができた。P.mexicanaを封入したWODLからは、E. coliに由来するRFP蛍光が検出された。これは、ポアソン分布にしたがってWODLがカプセル化されるとき、ある確率でP.mexicanaとE. coliが同時にカプセル化されるからである。これに関連して、各WODLの存在比は、ポアソン分布のほぼ同数に従う(図3c)。その結果、ジペプチジルACA基質とWODLを用いることで、細菌の混合物からDPP活性に基づくDPP産生菌のハイスループットな分離が可能である。
環境からのDPP産生菌の分離
環境中のACA基質を用いた環境細菌のハイスループットなスクリーニングを実証するため、タンパク質基質を豊富に含むと予想される豆腐工場廃液からDPP活性を指標とした細菌スクリーニングを行った(図16a)。WODLに細菌細胞懸濁液を各ACA基質とFNAP-sortと共に封入した。30℃で24時間培養したところ、一部のWODLはDPP活性による青色蛍光と細菌の増殖による緑色の蛍光を示し、A3領域のWODLはFADSにより最大約 300 droplets/s の速度で選別された(図16b、c)。選別されたWODLは界面活性剤を含まないフッ素オイルで分散され、細菌を含む水相のみがLB寒天培地に撒かれた。それぞれのACA基質活性に基づいてスクリーニング、単離したコロニーの内、22コロニーずつ無作為に分離した。16S rRNA遺伝子アンプリコンシークエンスにより、種を同定した。各ACA基質を用いたスクリーニングで、合計30種が同定された。特に、Stenotrophomonas rhizophila、Sphingomonas yabuuchiae、Pseudoduganella danionis、Flavobacterium chilense、Chryseobacterium camelliae、Aeromonas hydrophilaはMet-Leu-ACA(化合物2)およびLeu-Asp-ACA(化合物3)の両方の加水分解活性に基づいて単離された。BLASTを用いた相同性検索により、各生物種がDPP遺伝子を保有しているか否かを判定した。細菌由来のDPPのうち、Met-Leu-ACAおよびLeu-Asp-ACAを加水分解する可能性のあるDPP3、DPP5、DPP7、DPP11が選択された。合計17株がDPP遺伝子を有し、そのほとんどがS46ペプチダーゼDPP7とDPP11を保有していた。この結果は、ジペプチジルACA基質を用いて、DPPを保有する細菌を環境中から高いスループットで分離できることを示している。
16S rDNAの比較解析
豆腐工場廃液サンプル、WODL培養サンプル、選別後サンプルの菌量を16S rRNAアンプリコンメタゲノム法で解析し、ACA基質を用いたDPP活性スクリーニングにより、DPP産生細菌が濃縮されているかどうかを確認した。各サンプルの上位10個のOTUの存在比を図16dに示す。豆腐工場廃液サンプルでは、Prevotellaceae、Microcolaceae、Veillonellaceaeが比較的多く存在した。しかし、WODL培養後は存在量が少なくなっていた。一方、豆腐工場廃液サンプルでは存在量の少ない細菌が、WODL培養により増加するものもあった。例えば、Moraxellaceae(denovo2810)、Enterobacteriaceae(denovo1993)およびAeromonadaceae (denovo1771)は、豆腐工場廃液サンプルにおける存在比が1%以下であったのに対し、WODL培養によりそれぞれ93.6倍、39.7倍、17.3倍増加した。
豆腐工場廃液サンプルとMet-Leu-ACA(化合物2)加水分解によるFADSとの比較では、Xanthomonadaceae(denovo2489)の濃度比が選別後のサンプルで最も高く、76.6倍であった。また、FADS(Met-Leu-ACA(化合物2))サンプル中のMoraxellaceae(denovo2810)、Weeksellaceae(denovo1186)、Oxalobacteraceae(denovo1645)の存在比は豆腐工場廃液サンプルと比較してそれぞれ52.8倍、46.4倍および43.8倍と増加した。ProteobacteriaやBacteroidetesに属するXanthomonadaceae, Moraxellaceae, Oxalobacteraceae, Weeksellaceaeに分類される種の中には、細菌性のDPP7やDPP11を保有するものがあることが判明した。Leu-Asp-ACA(化合物3)加水分解によるFADSとの比較においては、FADS (Leu-Asp-ACA(化合物2))サンプルでは、Aeromonadaceae (denovo1771)の存在比が最も高く、55.1倍となった。豆腐工場廃液サンプルと比較して、Weeksellaceae(denovo1186)、Oxalobacteraceae(denovo1645)、Pseudomonadaceae(denovo3742)の存在比はそれぞれ48.7倍、31.1倍、23.3倍上昇した。FADS (Met-Leu-ACA(化合物3))サンプルと同様に、Aeromonadaceae、Oxalobacteraceae、Weeksellaceae、Pseudomonadaceaeに分類される種の中には、ProteobacteriaまたはBacteroidetes門に属し、S46ペプチダーゼを保有するものがあることが確認された。これらの結果は、ジペプチジルACA基質を用いたDPP活性に基づく細菌スクリーニングにより、細菌性DPP7またはDPP11を保有する可能性のある細菌を濃縮することに成功したことを支持するものである。
本発明の化合物は、WODLを用いたマイクロ流体システムにおいて、ペプチダーゼまたはペプチダーゼ産生該新規基質を用いたペプチダーゼまたはペプチダーゼ産生対象検出方法をハイスループットに検出することができる。

Claims (12)

  1. 以下の式(I):
    (式中、R1はカルボキシ基、ヒドロキシ基、ホルミル基またはアミノ基を表し、R2はそれぞれ独立に同一または異なるn個の連続するアミノ酸残基を表し、nは1から4の整数を表す。)
    で表される化合物。
  2. R1がカルボキシ基である、請求項1に記載の化合物。
  3. nが2である、請求項2に記載の化合物。
  4. R2がMet-LeuまたはLeu-Aspである、請求項3に記載の化合物。
  5. 請求項1~4のいずれか1項に記載の化合物と被検試料を接触させることを含む、ペプチダーゼまたは該ペプチダーゼ産生対象検出方法。
  6. 接触が油中液滴内における接触である、請求項5に記載の方法。
  7. ペプチダーゼがジペプチジルペプチダーゼである、請求項6に記載の方法。
  8. ジペプチジルペプチダーゼがDPP7またはDPP11である、請求項7に記載の方法。
  9. 請求項1~4のいずれか1項に記載の化合物を含む、ペプチダーゼまたは該ペプチダーゼ産生対象検出用試薬。
  10. 油中液滴内におけるペプチダーゼまたは該ペプチダーゼ産生対象検出用である、請求項9に記載の試薬。
  11. ペプチダーゼがジペプチジルペプチダーゼである、請求項10に記載の試薬。
  12. ジペプチジルペプチダーゼがDPP7またはDPP11である、請求項11に記載の試薬。
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