JP2024054074A - 多環芳香族化合物 - Google Patents

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琢次 畠山
亮介 川角
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Abstract

【課題】有機デバイス用材料として有用な新規化合物。【解決手段】式(1)で表される多環芳香族化合物;TIFF2024054074000211.tif65170式(1A)はn個の式(1B)とD環を含む2価の基を介して結合している。nは1または2、A環~D環はアリール環、n個のXは、前記2価の基と*で結合しているN、その他のXは>N-RNX(RNXはアリール)、R1~R10は、独立して、水素、アリール、ヘテロアリールである。式(1B)中いずれか1つの水素が前記2価の基と**で結合する単結合に置き換えられ、式(1)における少なくとも1つの水素は重水素で置き換えられていてもよい。【選択図】図1

Description

本発明は、多環芳香族化合物に関する。本発明はまた、上記多環芳香族化合物を用いた有機電界発光素子、有機電界効果トランジスタおよび有機薄膜太陽電池などの有機デバイス、並びに、表示装置および照明装置に関する。
従来、電界発光する発光素子を用いた表示装置は、省電力化や薄型化が可能なことから、種々研究され、さらに、有機材料から成る有機電界発光素子は、軽量化や大型化が容易なことから活発に検討されてきた。特に、光の三原色の1つである青色や緑色などの発光特性を有する有機材料の開発、および正孔、電子などの電荷輸送能(半導体や超電導体となる可能性を有する)を備えた有機材料の開発については、高分子化合物、低分子化合物を問わずこれまで活発に研究されてきた。
有機EL素子は、陽極および陰極からなる一対の電極と、当該一対の電極間に配置され、有機化合物を含む一層または複数の層とからなる構造を有する。有機化合物を含む層には、発光層や、正孔、電子などの電荷を輸送または注入する電荷輸送/注入層などがあるが、これらの層に適当な種々の有機材料が開発されている。
その中で、特許文献1では、ホウ素を含有する多環芳香族化合物が、有機電界発光素子等の材料として有用であることが開示されている。この多環芳香族化合物を含有する有機電界発光素子は、良好な外部量子効率を有することが報告されている。さらに特許文献2ではこの多環芳香族化合物をドーパント材料として含有し、さらに特定のアントラセン化合物をホスト材料として含有する発光層を一対の電極間に配置して有機EL素子を構成することにより、優れた有機EL素子が得られることが報告されている。
国際公開第2015/102118号 国際公開第2016/152544号
上述のように、有機EL素子に用いられる材料としては種々の材料が開発されているが、有機EL素子用材料の選択肢を増やすために、従来とは異なる化合物からなる材料の開発が望まれている。
本発明は有機EL素子等の有機デバイス用材料として有用な新規化合物を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討し、特許文献1に記載の化合物と同様にホウ素を含む構造を有する化合物において、さらに長寿命の有機EL素子の製造を可能とする多環芳香族化合物が得られることを見出し、本発明を完成させた。すなわち本発明は、以下のような多環芳香族化合物、さらには以下のような多環芳香族化合物を含む有機デバイス用材料等を提供する。
<1> 式(1)で表される多環芳香族化合物;
Figure 2024054074000002
式(1)中、
式(1A)で表される部分構造はn個の式(1B)で表される部分構造とD環から形成される2価の基を介して結合しており、
nは1または2の整数であり、
A環、B環、C環、およびD環はそれぞれ独立して、置換もしくは無置換のアリール環または置換もしくは無置換のヘテロアリール環であり、
n個のXは、前記2価の基と*で結合しているNであり、
その他の(2-n)個のXは>N-RNX、>O、>C(-RCX2、>Si(-RIX2、>S、または>Seであり、RNXは水素、置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリール、置換もしくは無置換のアルキル、または置換もしくは無置換のシクロアルキルであり、RCXおよびRIXはそれぞれ独立して水素、置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリール、置換もしくは無置換のアルキル、または置換もしくは無置換のシクロアルキルであり、2つのRCXは互いに結合して環を形成していてもよく、2つのRIXは互いに結合して環を形成していてもよく、RNX、RCXおよびRIXは連結基または単結合によりA環、B環、およびC環からなる群より選択される少なくとも1つと結合していてもよく、
式(1A)およびD環におけるアリール環およびヘテロアリール環からなる群より選択される少なくとも1つは、少なくとも1つのシクロアルカンで縮合されていてもよく、当該シクロアルカンは少なくとも1つの置換基で置換されていてもよく、当該シクロアルカンにおける少なくとも1つの-CH2-は-O-で置き換えられていてもよく、
1~R10は、それぞれ独立して、水素、置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリール、置換もしくは無置換のアルキル、または置換もしくは無置換のシクロアルキルであり、
式(1B)で表される部分構造中いずれか1つの水素が前記2価の基と**で結合する単結合に置き換えられており、
式(1)における少なくとも1つの水素は重水素で置き換えられていてもよい。
<2> 式(1B)で表される部分構造中、R10中のいずれか1つの水素が前記2価の基と**で結合する単結合に置き換えられている<1>に記載の多環芳香族化合物。
<3> R10が単結合である<2>に記載の多環芳香族化合物。
<4> R10が置換または無置換のフェニレンである<2>に記載の多環芳香族化合物。
<5> R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8がそれぞれ独立して水素またはアルキルであり、かつR9がアリールもしくはヘテロアリールで置換されていてもよいアリールまたはアリールもしくはヘテロアリールで置換されていてもよいヘテロアリールであるか、または
2、R3、R6、R4、R5、R7およびR9がそれぞれ独立して水素またはアルキルであり、かつR1およびR8がそれぞれ独立してアリールもしくはヘテロアリールで置換されていてもよいアリールまたはアリールもしくはヘテロアリールで置換されていてもよいヘテロアリールである、<2>~<4>のいずれかに記載の多環芳香族化合物。
<6> nが1であり、その他の(2-n)個のXが>N-RNXであり、RNXが置換もしくは無置換のアリールである、<1>~<5>のいずれかに記載の多環芳香族化合物。
<7> 下記いずれかの式で表される<6>に記載の多環芳香族化合物;
Figure 2024054074000003
式中、Meはメチル、tBuはt-ブチル、Dは重水素である。
<8> nが2である<1>~<5>のいずれかに記載の多環芳香族化合物。
<9> 下記いずれかの式で表される<8>に記載の多環芳香族化合物;
Figure 2024054074000004
式中、tBuはt-ブチルである。
<10> <1>~<9>のいずれかに記載の多環芳香族化合物を含有する、有機デバイス用材料。
<11> 陽極および陰極からなる一対の電極と、該一対の電極間に配置され、<1>~<9>のいずれかに記載の多環芳香族化合物を含有する有機層とを有する、有機電界発光素子。
<12> 前記有機層が発光層である、<11>に記載の有機電界発光素子。
<13> <11>または<12>に記載の有機電界発光素子を備えた表示装置または照明装置。
本発明により、有機電界発光素子等の有機デバイス用材料として有用な新規多環芳香族化合物が提供される。本発明の多環芳香族化合物は有機電界発光素子等の有機デバイスの製造に用いることができる。
有機電界発光素子の一例を示す概略断面図である。
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は「~」前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。また、本明細書において構造式の説明における「水素」は「水素原子(H)」を意味する。同様に「炭素原子(C)」を「炭素」ということがある。
本明細書において、「隣接する基」というときは、構造式中で隣接する2つの原子(共有結合で直接結合する2つの原子)にそれぞれ結合している2つの基を意味する。
本明細書において「Me」はメチル、「Et」はエチル、「nBu」はn-ブチル(ノルマルブチル)、「tBu」はt-ブチル(ターシャリーブチル)、「iBu」はイソブチル、「secBu」はセカンダリーブチル、「nPr」はn-プロピル(ノルマルプロピル)、「iPr」はイソプロピル、「tAm」はt-アミル、「2EH」は2-エチルヘキシル、「tOct」はt-オクチル、「Ph」はフェニル、「Mes」はメシチル(2,4,6-トリメチルフェニル)、「Ad」は1-アダマンチル、「Tf」はトリフルオロメタンスルホニル、「TMS」はトリメチルシリル、「D」は重水素を表す。
本明細書において、有機電界発光素子を有機EL素子ということがある。
本明細書において化学構造や置換基を炭素数で表すことがあるが、化学構造に置換基が置換した場合や、置換基にさらに置換基が置換した場合などにおける炭素数は、化学構造や置換基それぞれの炭素数を意味し、化学構造と置換基の合計の炭素数や、置換基と置換基の合計の炭素数を意味するものではない。例えば、「炭素数Xの置換基Aで置換された炭素数Yの置換基B」とは、「炭素数Yの置換基B」に「炭素数Xの置換基A」が置換することを意味し、炭素数Yは置換基Aおよび置換基Bの合計の炭素数ではない。また例えば、「置換基Aで置換された炭素数Yの置換基B」とは、「炭素数Yの置換基B」に「(炭素数限定がない)置換基A」が置換することを意味し、炭素数Yは置換基Aおよび置換基Bの合計の炭素数ではない。
<環および置換基の説明>
まず、本明細書において使用する環および置換基の詳細について以下で説明する。
本明細書における「アリール環」としては、例えば、炭素数6~30のアリール環があげられ、炭素数6~16のアリール環が好ましく、炭素数6~12のアリール環がより好ましく、炭素数6~10のアリール環が特に好ましい。
具体的な「アリール環」としては、単環系であるベンゼン環、二環系であるビフェニル環、縮合二環系であるナフタレン環、インデン環、三環系であるテルフェニル環(m-テルフェニル、o-テルフェニル、p-テルフェニル)、縮合三環系である、アセナフチレン環、フルオレン環、フェナレン環、フェナントレン環、アントラセン環、縮合四環系であるトリフェニレン環、ピレン環、ナフタセン環、クリセン環、縮合五環系であるペリレン環、ペンタセン環などがあげられる。また、フルオレン環、ベンゾフルオレン環、インデン環には、それぞれフルオレン環、ベンゾフルオレン環、シクロペンタン環などがスピロ結合した構造も含まれる。なお、フルオレン環、ベンゾフルオレン環およびインデン環には、その構造中のメチレンの2つの水素のうちの2つがそれぞれ後述の第1の置換基としてのメチルなどのアルキルに置き換わって、ジメチルフルオレン環、ジメチルベンゾフルオレン環、ジメチルインデン環などとなっているものも含まれる。
本明細書における「ヘテロアリール環」としては、例えば、炭素数2~30のヘテロアリール環があげられ、炭素数2~25のヘテロアリール環が好ましく、炭素数2~20のヘテロアリール環がより好ましく、炭素数2~15のヘテロアリール環がさらに好ましく、炭素数2~10のヘテロアリール環が特に好ましい。また、「ヘテロアリール環」としては、例えば環構成原子として炭素以外に酸素、硫黄、窒素、ホウ素、セレン、リン、テルルから選ばれるヘテロ原子を1ないし5個含有する複素環などがあげられる。
具体的な「ヘテロアリール環」としては、例えば、ピロール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環(フラザン環など)、チアジアゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、ピラゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピラジン環、トリアジン環、インドール環、イソインドール環、1H-インダゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、1H-ベンゾトリアゾール環、キノリン環、イソキノリン環、シンノリン環、キナゾリン環、キノキサリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、プリン環、プテリジン環、カルバゾール環、アクリジン環、フェノキサチイン環、フェノキサジン環、フェノチアジン環、フェナジン環、フェナザシリン環、インドリジン環、フラン環、ベンゾフラン環、イソベンゾフラン環、ジベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ジベンゾチオフェン環、チアントレン環、インドロカルバゾール環、ベンゾインドロカルバゾール環、ジベンゾインドロカルバゾール環、ナフトベンゾフラン環、ジオキシン環、ジヒドロアクリジン環、キサンテン環、チオキサンテン環、ジベンゾジオキシン環、ジオキサボラナフトアントラセン環(5,9-ジオキサ-13b-ボラ-13bH-ナフト[3,2,1-de]アントラセン環など)、ベンゾセレノフェン環、ジベンゾセレノフェン環、アザカルバゾール環、アザジベンゾチオフェン環、アザジベンゾフラン環、アザジベンゾセレノフェン環、アザトリフェニレン環、イミダゾイミダゾール環、インドロインドール環、ベンゾフロカルバゾール環、ベンゾチエノカルバゾール環、インデノカルバゾール環およびセレノフェノカルバゾール環、スピロ[フルオレン-9,9’-キサンテン]環、スピロビ[シラフルオレン]環などがあげられる。また、ジヒドロアクリジン環、キサンテン環、チオキサンテン環は、その構造中のメチレンの2つの水素のうちの2つがそれぞれ後述の第1の置換基としてのメチルなどのアルキルに置き換わって、ジメチルジヒドロアクリジン環、ジメチルキサンテン環、ジメチルチオキサンテン環などとなっているものも好ましい。また二環系であるビピリジン環、フェニルピリジン環、ピリジルフェニル環、三環系であるテルピリジル環、ビスピリジルフェニル環、ピリジルビフェニル環も「ヘテロアリール環」としてあげられる。また、「ヘテロアリール環」にはピラン環も含まれるものとする。
本明細書において、置換基は、さらなる置換基で置換されていることがある。例えば、特定の置換基に関して、「置換もしくは無置換の」と説明がされることがある。これはその特定の置換基が少なくとも1つのさらなる置換基で置換されているか、または置換されていないことを意味する。同様の意味で「置換されていてもよい」ということもある。本明細書において、このときの上記特定の置換基を「第1の置換基」、上記のさらなる置換基を「第2の置換基」ということがある。
本明細書において、置換基群Zαは、置換基群Zの置換基および後述の式(A30)で表される置換基からなる。
本明細書において、置換基群Zは、
アリール、ヘテロアリール、アルキル、シクロアルキル、シアノ、およびハロゲンからなる群より選択される少なくとも1つの基で置換されていてもよいアリール、
アリール、ヘテロアリール、アルキル、シクロアルキル、シアノ、およびハロゲンからなる群より選択される少なくとも1つの基で置換されていてもよいヘテロアリール、
アリール、ヘテロアリール、アルキル、シクロアルキル、シアノ、およびハロゲンからなる群より選択される少なくとも1つの基で置換されていてもよいジアリールアミノ(2つのアリールは互いに連結基を介して結合していてもよい)、
アリール、ヘテロアリール、アルキル、シクロアルキル、シアノ、およびハロゲンからなる群より選択される少なくとも1つの基で置換されていてもよいジヘテロアリールアミノ(2つのヘテロアリールは互いに連結基を介して結合していてもよい)、
アリール、ヘテロアリール、アルキル、シクロアルキル、シアノ、およびハロゲンからなる群より選択される少なくとも1つの基で置換されていてもよいアリールヘテロアリールアミノ(アリールとヘテロアリールとは互いに連結基を介して結合していてもよい)、
アリール、ヘテロアリール、アルキル、シクロアルキル、シアノ、およびハロゲンからなる群より選択される少なくとも1つの基で置換されていてもよいジアリールボリル(2つのアリールは単結合または連結基を介して結合していてもよい)、
アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シアノ、およびハロゲンからなる群より選択される少なくとも1つの基で置換されていてもよいアルキル、
アリール、ヘテロアリール、アルキル、シクロアルキル、シアノ、およびハロゲンからなる群より選択される少なくとも1つの基で置換されていてもよいシクロアルキル、
アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シアノ、およびハロゲンからなる群より選択される少なくとも1つの基で置換されていてもよいアルコキシ、
アリール、ヘテロアリール、アルキル、シクロアルキル、シアノ、およびハロゲンからなる群より選択される少なくとも1つの基で置換されていてもよいアリールオキシ、
置換シリル、シアノ、ならびにハロゲンからなる。
置換基群Zの各基における第2置換基であるアリールは、さらにアリール、ヘテロアリール、アルキル、シクロアルキル、シアノ、またはハロゲンで置換されていてもよい、同様に、第2置換基であるヘテロアリールはアリール、ヘテロアリール、アルキル、シクロアルキル、シアノ、またはハロゲンで置換されていてもよい。
本明細書において、「置換基」という場合、置換基の種類は特に限定されないが、特に別途の説明がないときは、置換基群Zから選択されるいずれかの基であればよい。例えば、「置換もしくは無置換の」とされる基が置換されているとき、当該基は置換基群Zから選択される少なくとも1つの基で置換されていればよい。
本明細書において、「アリール」は、例えば炭素数6~30のアリールであり、好ましくは、炭素数6~20のアリール、炭素数6~16のアリール、炭素数6~12のアリール、または炭素数6~10のアリールなどである。
具体的な「アリール」は、上述した「アリール環」から1つの水素を除いた1価の基があげられる。例えば、単環系であるフェニル、二環系であるビフェニリル(2-ビフェニリル、3-ビフェニリル、もしくは4-ビフェニリル)、縮合二環系であるナフチル(1-ナフチルもしくは2-ナフチル)、三環系であるテルフェニリル(m-テルフェニル-2'-イル、m-テルフェニル-4'-イル、m-テルフェニル-5'-イル、o-テルフェニル-3'-イル、o-テルフェニル-4'-イル、p-テルフェニル-2'-イル、m-テルフェニル-2-イル、m-テルフェニル-3-イル、m-テルフェニル-4-イル、o-テルフェニル-2-イル、o-テルフェニル-3-イル、o-テルフェニル-4-イル、p-テルフェニル-2-イル、p-テルフェニル-3-イル、もしくはp-テルフェニル-4-イル)、縮合三環系である、アセナフチレン-(1-、3-、4-、もしくは5-)イル、フルオレン-(1-、2-、3-、4-、もしくは9-)イル、フェナレン-(1-もしくは2-)イル、フェナントレン-(1-、2-、3-、4-、もしくは9-)イル、もしくはアントラセン-(1-、2-、もしくは9-)イル、四環系であるクアテルフェニリル(5'-フェニル-m-テルフェニル-2-イル、5'-フェニル-m-テルフェニル-3-イル、5'-フェニル-m-テルフェニル-4-イル、もしくはm-クアテルフェニル)、縮合四環系である、トリフェニレン-(1-もしくは2-)イル、ピレン-(1-、2-、もしくは4-)イル、もしくはナフタセン-(1-、2-、もしくは5-)イル、または、縮合五環系である、ペリレン-(1-、2-、もしくは3-)イル、もしくはペンタセン-(1-、2-、5-、もしくは6-)イルなどである。その他、スピロフルオレンの1価の基などがあげられる。
なお、第2置換基としてのアリールには、当該アリールが、フェニルなどのアリール(具体例は上述した基)、メチルなどのアルキル(具体例は後述する基)、およびシクロヘキシルもしくはアダマンチルなどのシクロアルキル(具体例は後述する基)からなる群より選択される少なくとも1つの基で置換された構造も含まれる。
その一例としては、第2置換基としてのフルオレニルの9位が、フェニルなどのアリール、メチルなどのアルキル、またはシクロヘキシルもしくはアダマンチルなどのシクロアルキルで置換された基があげられる。
「アリーレン」は、例えば炭素数6~30のアリーレンであり、好ましくは、炭素数6~20のアリーレン、炭素数6~16のアリーレン、炭素数6~12のアリーレン、または炭素数6~10のアリーレンなどである。
具体的な「アリーレン」は、例えば、上述した「アリール」(1価の基)から1つの水素を除いた2価の基があげられる。
「ヘテロアリール」は、例えば炭素数2~30のヘテロアリールであり、好ましくは、炭素数2~25のヘテロアリール、炭素数2~20のヘテロアリール、炭素数2~15のヘテロアリール、または炭素数2~10のヘテロアリールなどである。「ヘテロアリール」は、環構成原子として炭素以外に酸素、硫黄、および窒素等から選ばれるヘテロ原子を、1個以上、好ましくは1~5個含有する。
具体的な「ヘテロアリール」としては、上述した「ヘテロアリール環」から1つの水素を除いた1価の基があげられる。例えば、ピロリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピラジニル、トリアジニル、インドリル、イソインドリル、1H-インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、1H-ベンゾトリアゾリル、キノリニル、イソキノリニル、シンノリニル、キナゾリニル、キノキサリニル、フェナントロリニル、フタラジニル、ナフチリジニル、プリニル、プテリジニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェノキサチイニル、フェノキサジニル、フェノチアジニル、フェナジニル、フェナザシリニル、インドリジニル、フラニル、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、ジベンゾフラニル、ナフトベンゾフラニル、チエニル、ベンゾチエニル、イソベンゾチエニル、ジベンゾチエニル、ナフトベンゾチエニル、ベンゾホスホールオキシド環の1価の基、ジベンゾホスホールオキシド環の1価の基、フラザニル、チアントレニル、インドロカルバゾリル、ベンゾインドロカルバゾリル、ジベンゾインドロカルバゾリル、イミダゾリニル、またはオキサゾリニルなどである。その他、スピロ[フルオレン-9,9’-キサンテン]の1価の基、スピロビ[シラフルオレン]の1価の基、ベンゾセレノフェンの1価の基があげられる。
なお、第2置換基としてのヘテロアリールには、当該ヘテロアリールが、フェニルなどのアリール(具体例は上述した基)、メチルなどのアルキル(具体例は後述する基)およびシクロヘキシルもしくはアダマンチルなどのシクロアルキル(具体例は後述する基)からなる群より選択される少なくとも1つの基で置換された構造も含まれる。
その一例としては、第2置換基としてのカルバゾリルの9位が、フェニルなどのアリール、メチルなどのアルキル、またはシクロヘキシルもしくはアダマンチルなどのシクロアルキルで置換された基があげられる。また、ピリジル、ピリミジニル、トリアジニル、カルバゾリルなどの含窒素ヘテロアリールがさらにフェニルまたはビフェニリルなどで置換された基も第2置換基としてのヘテロアリールに含まれる。
「ヘテロアリーレン」は、例えば炭素数2~30のヘテロアリーレンであり、好ましくは、炭素数2~25のヘテロアリーレン、炭素数2~20のヘテロアリーレン、炭素数2~15のヘテロアリーレン、または炭素数2~10のヘテロアリーレンなどである。また、「ヘテロアリーレン」は、例えば環構成原子として炭素以外に酸素、硫黄、および窒素から選ばれるヘテロ原子を1~5個含有する複素環などの二価の基である。
具体的な「ヘテロアリーレン」は、例えば、上述した「ヘテロアリール」(1価の基)から1つの水素を除いた2価の基があげられる。
「ジアリールアミノ」は、2つのアリールが置換したアミノであり、このアリールの詳細については上述した「アリール」の説明を引用できる。
「ジヘテロアリールアミノ」は、2つのヘテロアリールが置換したアミノ基であり、このヘテロアリールの詳細については上述した「ヘテロアリール」の説明を引用できる。
「アリールヘテロアリールアミノ」は、アリールおよびヘテロアリールが置換したアミノ基であり、このアリールおよびヘテロアリールの詳細については上述した「アリール」および「ヘテロアリール」の説明を引用できる。
第1の置換基としてのジアリールアミノにおける2つのアリールは互いに連結基を介して結合していてもよく、第1の置換基としてのジヘテロアリールアミノにおける2つのヘテロアリールは互いに連結基を介して結合していてもよく、第1の置換基としてのアリールヘテロアリールアミノのアリールとヘテロアリールは互いに連結基を介して結合していてもよい。ここで、「連結基を介して結合」という記載は、下記に示すように例えばジフェニルアミノの2つのフェニルが連結基で結合を形成することを表す。またこの説明はアリールやヘテロアリールで形成された、ジヘテロアリールアミノおよびアリールヘテロアリールアミノについても適用される。
Figure 2024054074000005
連結基としては具体的には、>O、>N-RX、>C(-RX2、-C(-RX)=C(-RX)-、>Si(-RX2、>S、>CO、>CS、>SO、>SO2、>SeO、>SeO2、>PO、>B(-RX)、および>Seがあげられる。RXはそれぞれ独立してアルキル、シクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり、これらはアルキル、シクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールで置換されていてもよい。また、>C(-RX2、-C(-RX)=C(-RX)-、>Si(-RX2、および>B(-RX)それぞれにおける2つのRXは、単結合または連結基XYを介して互いに結合して環を形成してもよい。XYとしては>O、>N-RY、>C(-RY2、>Si(-RY2、>S、>CO、>CS、>SO、>SO2、および>Seがあげられ、RYはそれぞれ独立してアルキル、シクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールであり、これらはアルキル、シクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールで置換されていてもよい。ただし、XYが>C(-RY2および>Si(-RY2の場合には、2つのRYは結合してさらに環を形成することはない。さらに連結基としては、アルケニレンもあげられる。該アルケニレンの任意の水素はそれぞれ独立してR2Xで置換されていてもよく、R2Xはそれぞれ独立してアルキル、シクロアルキル、置換シリル、アリールおよびヘテロアリールであり、これらはアルキル、シクロアルキル、置換シリル、アリールで置換されていてもよい。-C(-RX)=C(-RX)-における2つのRXは、互いに結合してそれらが結合するC=Cとともにアリール(ベンゼン環など)またはヘテロアリール環を形成していてもよい。すなわち、-C(-RX)=C(-RX)-は、アリーレン(1,2-フェニレンなど)またはヘテロアリーレンとなっていてもよい。
なお、本明細書で単に「ジアリールアミノ」、「ジヘテロアリールアミノ」、または「アリールヘテロアリールアミノ」と記載されている場合は、特に断りがない限りは、それぞれ「ジアリールアミノの2つのアリールは互いに連結基を介して結合していてもよい」、「前記ジヘテロアリールアミノの2つのヘテロアリールは互いに連結基を介して結合していてもよい」および「前記アリールヘテロアリールアミノのアリールとヘテロアリールは互いに連結基を介して結合していてもよい」という説明が加わっているものであるとする。
「ジアリールボリル」は、2つのアリールが置換したボリルであり、このアリールの詳細については上述した「アリール」の説明を引用できる。また、この2つのアリールは、単結合または連結基(例えば、-CH=CH-、-CR=CR-、-C≡C-、>N-R、>O、>S、>CO、>C=S、>S=O、>S(=O)2、>Se(=O)、>Se(=O)2、>P(=O)、>B(-R)、>C(-R)2、>Si(-R)2、または>Se)を介して結合していてもよい。ここで、前記-CR=CR-のR、>N-RのR、>C(-R)2のR、>B(-R)のR、および>Si(-R)のRは、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アルコキシ、またはアリールオキシであり、当該Rにおける少なくとも1つの水素は、さらにアリール、ヘテロアリール、アルキル、アルケニル、アルキニル、またはシクロアルキルで置換されていてもよい。また、隣接する2つのR同士が結合して環を形成し、シクロアルキレン、アリーレン、およびヘテロアリーレンを形成していてもよい。ここで列挙した置換基の詳細については、上述した「アリール」、「アリーレン」、「ヘテロアリール」、「ヘテロアリーレン」、および「ジアリールアミノ」の説明、ならびに、後述する「アルキル」、「アルケニル」、「アルキニル」、「シクロアルキル」、「シクロアルキレン」、「アルコキシ」、および「アリールオキシ」の説明を引用できる。また、本明細書で単に「ジアリールボリル」と記載されている場合は、特に断りがない限りは、「ジアリールボリルの2つのアリールは互いに単結合または連結基を介して結合していてもよい」という説明が加わっているものであるとする。
「アルキル」は、直鎖および分岐鎖のいずれでもよく、例えば炭素数1~24の直鎖アルキルまたは炭素数3~24の分岐鎖アルキルであり、好ましくは、炭素数1~18のアルキル(炭素数3~18の分岐鎖アルキル)、炭素数1~12のアルキル(炭素数3~12の分岐鎖アルキル)、炭素数1~6のアルキル(炭素数3~6の分岐鎖アルキル)、炭素数1~5のアルキル(炭素数3~5の分岐鎖アルキル)、炭素数1~4のアルキル(炭素数3~4の分岐鎖アルキル)などである。
具体的な「アルキル」は、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、1-エチル-1-メチルプロピル、1,1-ジエチルプロピル、1,1,2-トリメチルプロピル、1,1,2,2-テトラメチルプロピル、1-エチル-1,2,2-トリメチルプロピル、n-ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、2-エチルブチル、1,1-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、1,1-ジエチルブチル、1-エチル-1-メチルブチル、1-プロピル-1-メチルブチル、1,1,3-トリメチルブチル、1-エチル-1,3-ジメチルブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、t-ペンチル(t-アミル)、1-メチルペンチル、2-プロピルペンチル、1,1-ジメチルペンチル、1-エチル-1-メチルペンチル、1-プロピル-1-メチルペンチル、1-ブチル-1-メチルペンチル、1,1,4-トリメチルペンチル、n-ヘキシル、1-メチルヘキシル、2-エチルヘキシル、1,1-ジメチルヘキシル、1-エチル-1-メチルヘキシル、1,1,5-トリメチルヘキシル、3,5,5-トリメチルヘキシル、n-ヘプチル、1-メチルヘプチル、1-ヘキシルヘプチル、1,1-ジメチルヘプチル、2,2-ジメチルヘプチル、2,6-ジメチル-4-ヘプチル、n-オクチル、t-オクチル(1,1,3,3-テトラメチルブチル)、1,1-ジメチルオクチル、n-ノニル、n-デシル、1-メチルデシル、n-ウンデシル、n-ドデシル、n-トリデシル、n-テトラデシル、n-ペンタデシル、n-ヘキサデシル、n-ヘプタデシル、n-オクタデシル、またはn-エイコシルなどである。
「アルキレン」は、「アルキル」のいずれかの水素を除いて得られる2価の基であり、例えばメチレン、エチレン、プロピレンである。
「アルケニル」については、上述した「アルキル」の説明を参考にすることができ、「アルキル」の構造中のC-C単結合をC=C二重結合に置換した基であり、1つだけでなく2つ以上の単結合が二重結合に置換された基(アルカジエン-イルやアルカトリエン-イルとも呼ばれる)も含める。
「アルケニレン」は「アルケニル」のいずれかの水素を除いて得られる2価の基であり、例えばビニレンがあげられる。
「アルキニル」については、上述した「アルキル」の説明を参考にすることができ、「アルキル」の構造中のC-C単結合をC≡C三重結合に置換した基であり、1つだけでなく2つ以上の単結合が三重結合に置換された基(アルカジイン-イルやアルカトリイン-イルとも呼ばれる)も含める。
「シクロアルキル」は、例えば炭素数3~24のシクロアルキルであり、好ましくは、炭素数3~20のシクロアルキル、炭素数3~16のシクロアルキル、炭素数3~14のシクロアルキル、炭素数3~12のシクロアルキル、炭素数5~10のシクロアルキル、炭素数5~8のシクロアルキル、炭素数5~6のシクロアルキル、または炭素数5のシクロアルキルなどである。
具体的な「シクロアルキル」は、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、もしくはこれらの炭素数1~5や炭素数1~4のアルキル(特にメチル)置換体、ビシクロ[1.1.0]ブチル、ビシクロ[1.1.1]ペンチル、ビシクロ[2.1.0]ペンチル、ビシクロ[2.1.1]ヘキシル、ビシクロ[3.1.0]ヘキシル、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル(ノルボルニル)、ビシクロ[2.2.2]オクチル、アダマンチル、ジアマンチル、デカヒドロナフタレニル、またはデカヒドロアズレニルなどである。
「シクロアルキレン」は、例えば炭素数3~24のシクロアルキレンであり、好ましくは、炭素数3~20のシクロアルキレン、炭素数3~16のシクロアルキレン、炭素数3~14のシクロアルキレン、炭素数3~12のシクロアルキレン、炭素数5~10のシクロアルキレン、炭素数5~8のシクロアルキレン、炭素数5~6のシクロアルキレン、または炭素数5のシクロアルキレンなどである。
具体的な「シクロアルキレン」は、例えば、上述した「シクロアルキル」(1価の基)から1つの水素を除いて二価の基にした構造があげられる。
「シクロアルケニル」は、上述した「シクロアルキル」における少なくとも1組の2つの炭素の間の単結合が二重結合となった構造を有する基(例えば、-CH2-CH2-が-CH=CH-に置き換わった基)であって、アリールに該当しない基があげられる。具体的には、1-シクロヘキセニル、1-シクロペンテニル等があげられる。
「アルコキシ」は、「Alk-O-(Alkはアルキル)」で表される基であり、このアルキルの詳細については上述した「アルキル」の説明を引用できる。
「アリールオキシ」は、「Ar-O-(Arはアリール)」で表される基であり、このアリールの詳細については上述した「アリール」の説明を引用できる。
「置換シリル」は、例えば、アリール、アルキル、およびシクロアルキルの少なくとも1つで置換されたシリルであり、好ましくは、トリアリールシリル、トリアルキルシリル、トリシクロアルキルシリル、ジアルキルシクロアルキルシリル、またはアルキルジシクロアルキルシリルである。
「トリアリールシリル」は、3つのアリールで置換されたシリル基であり、このアリールの詳細については上述した「アリール」の説明を引用できる。
具体的な「トリアリールシリル」は、例えば、トリフェニルシリル、ジフェニルモノナフチルシリル、モノフェニルジナフチルシリル、またはトリナフチルシリルなどである。
「トリアルキルシリル」は、3つのアルキルで置換されたシリル基であり、このアルキルの詳細については上述した「アルキル」の説明を引用できる。
具体的な「トリアルキルシリル」は、例えば、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリn-プロピルシリル、トリイソプロピルシリル、トリn-ブチルシリル、トリイソブチルシリル、トリs-ブチルシリル、トリt-ブチルシリル、エチルジメチルシリル、n-プロピルジメチルシリル、イソプロピルジメチルシリル、n-ブチルジメチルシリル、イソブチルジメチルシリル、s-ブチルジメチルシリル、t-ブチルジメチルシリル、メチルジエチルシリル、n-プロピルジエチルシリル、イソプロピルジエチルシリル、n-ブチルジエチルシリル、s-ブチルジエチルシリル、t-ブチルジエチルシリル、メチルジn-プロピルシリル、エチルジn-プロピルシリル、n-ブチルジn-プロピルシリル、s-ブチルジn-プロピルシリル、t-ブチルジn-プロピルシリル、メチルジイソプロピルシリル、エチルジイソプロピルシリル、n-ブチルジイソプロピルシリル、s-ブチルジイソプロピルシリル、またはt-ブチルジイソプロピルシリルなどである。
「トリシクロアルキルシリル」は、3つのシクロアルキルで置換されたシリル基であり、このシクロアルキルの詳細については上述した「シクロアルキル」の説明を引用できる。
具体的な「トリシクロアルキルシリル」は、例えば、トリシクロペンチルシリルまたはトリシクロヘキシルシリルなどである。
「ジアルキルシクロアルキルシリル」は、2つのアルキルおよび1つのシクロアルキルで置換されたシリル基であり、このアルキルおよびシクロアルキルの詳細については上述した「アルキル」および「シクロアルキル」の説明を引用できる。
「アルキルジシクロアルキルシリル」は、1つのアルキルおよび2つのシクロアルキルで置換されたシリル基であり、このアルキルおよびシクロアルキルの詳細については上述した「アルキル」および「シクロアルキル」の説明を引用できる。
「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素であり、好ましくはフッ素、塩素、または臭素、より好ましくはフッ素または塩素であり、フッ素がさらに好ましい。
なお、シアノまたはハロゲンが置換するとき、アリールやヘテロアリールにおける全てまたは一部の水素がシアノまたはハロゲンで置き換えられた態様も好ましく取り得る。
式(A30)で表される置換基は以下の構造を有する。
Figure 2024054074000006
式(A30)中、
Akは水素、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のアルケニル、置換もしくは無置換のシクロアルキルまたは置換もしくは無置換のシクロアルケニルであり、当該アルキル、シクロアルキルおよびシクロアルケニルにおける少なくとも1つの-CH2-は-O-または-S-で置き換えられていてもよく、
Akは、置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリール、置換もしくは無置換のアルキルまたは置換もしくは無置換のシクロアルキルであり、RAkは連結基または単結合によりAkと結合していてもよく、*は結合位置である。
式(A30)中、Akが上記の置換基であることによりN上の非共有電子対と共役しないため、非共有電子対を結合先のπ電子と共役させることができ、同位置にアリール等がある場合と比べてより大きな波長変更が可能である。また、多重共鳴効果への影響についても同様であり、熱活性型遅延蛍光(TADF)性のより大きな改善が可能である。
Akはアルキルもしくはシクロアルキルで置換されていてもよいアリール、アルキルもしくはシクロアルキルで置換されていてもよいヘテロアリール、アルキルまたはシクロアルキルであることが好ましく、アルキルで置換されていてもよいアリール、アルキルで置換されていてもよいヘテロアリール、アルキルまたはシクロアルキルであることがより好ましく、アルキルで置換されていてもよいアリールであることがさらに好ましく、メチルで置換されていてもよいフェニルであることが特に好ましい。
式(A30)中、Akは炭素数1~6のアルキルまたは炭素数3~14のシクロアルキルであることが好ましく、炭素数1~4のアルキルまたは炭素数3~8のシクロアルキルであることが好ましく、炭素数1~4のアルキルであることがより好ましく、メチルであることがさらに好ましい。
AkとAkとは同じであっても異なっていてもよく、異なっていることが好ましい。
Akは連結基または単結合によりAkと結合していてもよい。このときの連結基としては>O、>Sまたは>Si(-R)2などがあげられる。>Si(-R)2のRは、水素、炭素数6~12のアリール、炭素数1~6のアルキルまたは炭素数3~14のシクロアルキルである。RAkが連結基または単結合によりAkと結合した構造の例としては以下があげられる。
Figure 2024054074000007
上記各式中、*は結合位置である。
<同一の原子に結合する2つの基が互いに結合する場合>
本明細書において同一の原子に結合する2つの基について互いに結合して環を形成していてもよいという場合、単結合または連結基(これらをまとめて結合基ともいう)により結合していればよく、連結基としては、-CH2-CH2-、-CHR-CHR-、-CR2-CR2-、-CH=CH-、-CR=CR-、-C≡C-、-N(-R)-、-O-、-S-、-C(-R)2-、-C(=O)-、-C(=S)-、-S(=O)-、-S(=O)2-、-Se(=O)-、-Se(=O)2-、-P(=O)-、-B(-R)-、-Si(-R)2-、または-Se-があげられ、例えば以下の構造があげられる。なお、前記-CHR-CHR-のR、-CR2-CR2-のR、-CR=CR-のR、-N(-R)-のR、-C(-R)2-のR、-B(-R)-のR、および-Si(-R)2-のRは、それぞれ独立して、水素、アルキルもしくはシクロアルキルで置換されていてもよいアリール、アルキルもしくはシクロアルキルで置換されていてもよいヘテロアリール、シクロアルキルで置換されていてもよいアルキル、アルキルもしくはシクロアルキルで置換されていてもよいアルケニル、アルキルもしくはシクロアルキルで置換されていてもよいアルキニル、またはアルキルもしくはシクロアルキルで置換されていてもよいシクロアルキルである。また、隣接する2つのR同士が結合して環を形成し、シクロアルキレン、アリーレン、またはヘテロアリーレンを形成していてもよい。
Figure 2024054074000008
結合基としては、単結合、連結基としての-CR=CR-、-N(-R)-、-O-、-S-、-C(-R)2-、-Si(-R)2-、および-Se-が好ましく、単結合、連結基としての-CR=CR-、-N(-R)-、-O-、-S-、および-C(-R)2-がより好ましく、単結合、連結基としての-CR=CR-、-N(-R)-、-O-、および-S-がさらに好ましく、単結合が最も好ましい。
結合基により2つのRが結合する位置は、結合可能な位置であれば特に限定されないが、最も隣接する位置で結合することが好ましく、例えば2つの基がフェニルである場合、フェニルにおける「C」や「Si」の結合位置(1位)を基準としてオルト(2位)の位置同士で結合することが好ましい(上記構造式を参照)。
1.多環芳香族化合物
<化合物の全体構造の説明>
本発明の多環芳香族化合物は、式(1)で表される構造を有する。
Figure 2024054074000009
式(1)は、式(1A)で表される部分構造、n個の式(1B)で表される部分構造、およびn個のD環から形成される2価の基から形成される。式(1B)で表される部分構造中いずれか1つの水素が前記2価の基と**において結合する単結合に置き換えられており、式(1B)とD環から形成される2価の基とからなる基が形成される。この基n個が式(1A)で表される部分構造のXであるNと結合している。各記号の詳細は後述する。
本発明者らは、式(1A)で表される部分構造で表されるような、芳香環をホウ素、窒素、酸素、硫黄などのヘテロ元素で連結した多環芳香族化合物が、大きなHOMO-LUMOギャップ(薄膜におけるバンドギャップEg)を有することをすでに見出している。これは、ヘテロ元素を含む6員環は芳香族性が低く、共役系の拡張に伴うHOMO-LUMOギャップの減少が抑制されたことが原因である。また、ヘテロ元素の種類および連結方法に応じてHOMO-LUMOギャップを任意に変更できることを見出した。これは、ヘテロ元素の空軌道またはローンペアの空間的広がりおよびエネルギーに応じてHOMO、LUMOのエネルギーを任意に動かせることが原因となっていると考えられる。
これらの多環芳香族化合物は、ヘテロ元素の電子的な摂動により励起状態のSOMO1およびSOMO2が各原子上に局在化することで、蛍光発光ピークの半値幅が狭く、有機EL素子のドーパントとして利用した場合に高い色純度の発光が得られる。同様の理由でΔES1T1が小さくなって熱活性型遅延蛍光を示し、有機EL素子のエミッティングドーパントとして利用した場合に高い効率を得ることができる。
さらには、置換基の導入により、HOMOとLUMOのエネルギーを任意に動かすことができるため、イオン化ポテンシャルや電子親和力を周辺材料に応じて最適化することが可能である。ただし、本発明はこれらの原理によって特に限定されるものではない。
本発明者らは、上記の従来公知の構造の化合物にさらにアントラセン構造が導入された化合物を初めて合成し、これを使用した有機EL素子において、優れた特性が得られることを見出した。
有機EL素子の発光機構として、複数の三重項励起子から一重項励起子が生成する現象(三重項-三重項フュージョン(TTF:Triplet-Triplet Fusion))を利用するとき、一般的に三重項励起子からの一重項励起子の生成はホスト材料分子上で起こる場合とドーパント材料分子上で起こる場合の2通りがある。このときドーパント材料の三重項エネルギー準位は、ホスト材料の三重項エネルギー準位より高いことが好ましい。この三重項エネルギー準位の関係を満たすと、ホスト材料上で発生した三重項励起子は、より高い三重項エネルギーを持つドーパント材料には移動しない。また、ドーパント材料分子上で発生した三重項励起子は速やかにホスト材料分子にエネルギー移動する。即ちホスト材料の三重項励起子がドーパント材料に移動することなく効率的にホスト材料上で三重項励起子同士が衝突することで一重項励起子が生成される。さらに、ドーパント材料の一重項エネルギー準位がホスト材料の一重項エネルギー準位より低い場合、TTF現象によって生成された一重項励起子は、ホスト材料からドーパント材料へ速やかにエネルギー移動しドーパント材料の蛍光性発光に寄与する。また、このときのホストからドーパントへのエネルギー移動はフェルスター型エネルギー移動である。一般的に、有機EL素子では、ホストの蛍光スペクトルとドーパントの吸収スペクトルの重なり積分が大きく、ホストとドーパントが近接し適切な配向をとっている場合に高効率なフェルスター型エネルギー移動が起こることが知られている。
本発明の多環芳香族化合物を例えばアントラセン化合物などのホスト材料とともに用いたとき、ホスト材料がもつエネルギーが式(1B)で表される部分構造中のアントラセン構造を介して発光に関与する主骨格(式(1A)で表される部分構造)に移動しやすくなり、上記のエネルギー移動の効率が高まると考えられる。この結果として高い外部量子効率が得られる。またエミッティングドーパント上のT1解消が早くなり、長寿命化すると考えられる。
<nの説明>
式(1)において、nは1または2の整数である。すなわち、本発明の多環芳香族化合物は、式(1A)で表される部分構造のXであるNと結合している置換基として、アントラセン構造を含む置換基を1つまたは2つ有する。
本発明の多環芳香族化合物は、分子内に少なくとも1つのアントラセン構造を有することで、上述のように、優れた素子特性が得られる。
また、本発明者らは、nが2である本発明の多環芳香族化合物を既存の燐光素子ホストやTADF素子用に頻用されるホスト材料と組合せて発光層形成材料として用い、より優れた素子特性を得ることができることを見出した。nが2である本発明の多環芳香族化合物は、分子内に2つアントラセン構造を有するため、分子内でTTF、エネルギー移動、発光の過程が完結し、アントラセン化合物などのホスト材料を利用せずにTTF現象を得ることが可能になるものと考えられる。
<式(1A)で表される部分構造>
式(1A)で表される部分構造はn個の式(1B)で表される部分構造とD環から形成される2価の基を介して結合し、式(1)で表される化合物において主に発光特性(発光波長など)に関わる。
Figure 2024054074000010
[環構造]
式(1A)において円内の「A」、「B」、「C」は各円で示される環構造を示す符号である。式(1A)で表される構造は、A環、B環、およびC環である少なくとも3つの芳香族環をホウ素、および酸素、硫黄、または窒素などのヘテロ元素で連結してさらに環構造が形成された構造を有する。形成されている環構造は少なくとも5つの環から構成される縮合環構造である。
A環、B環、およびC環は、それぞれ独立して、置換もしくは無置換のアリール環または置換もしくは無置換のヘテロアリール環である。
A環は、それぞれ、その構造中のアリール環またはヘテロアリール環の環上で連続する3つの元素(好ましくは炭素)に結合手を有する3価の基を形成している。この3つの結合手でA環はB、および2つのXに結合する。A環において上記の3つの結合手を有する元素を環構成元素とする環は5員環または6員環であることが好ましく、6員環であることがより好ましい。この環はさらに他の環と縮合していてもよい。6員環の例としては、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環などがあげられる。6員環がさらに他の環と縮合している例としては、ナフタレン環、キノリン環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、カルバゾール環などがあげられる。5員環の例としては、フラン環、チオフェン環、ピロール環、チアゾール環などがあげられる。5員環がさらに他の環と縮合している例としては、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、インドール環などがあげられる。なお、縮合環としてはインデン環もあげられる。A環中のアリール環またはヘテロアリール環としてはいずれもベンゼン環が好ましい。
B環、C環は、その構造中のアリール環またはヘテロアリール環の環上で互いに隣接する2つの元素(好ましくは炭素)に結合手を有する2価の基を形成している。B環、C環は上記の2つの結合手でXおよびBに結合している。Xが後述するようにさらに別の部位でB環に結合してB環が3価の基になっていてもよく、C環に結合してC環が3価の基になっていてもよい。B、C環中で上記の2つの結合手を有する元素を環構成元素とする環は5員環または6員環であることが好ましい。この環はさらに他の環と縮合していてもよい。6員環の例としては、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環などがあげられる。6員環がさらに他の環と縮合している例としては、ナフタレン環、キノリン環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、インドール環、ベンゾセレノフェン環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、カルバゾール環、ジベンゾセレノフェン環などがあげられる。5員環の例としては、フラン環、チオフェン環、ピロール環、チアゾール環、セレノフェン環などがあげられる。5員環がさらに他の環と縮合している例としては、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、インドール環、ベンゾセレノフェン環などがあげられる。なお、縮合環としてはインデン環もあげられる。B環、C環中のアリール環またはヘテロアリール環としては、ベンゼン環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、インデン環、またはベンゾセレノフェン環が好ましく、ベンゼン環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、またはインデン環がより好ましく、ベンゼン環またはベンゾチオフェン環がさらに好ましい。
式(1)のA環、B環、およびC環における置換もしくは無置換のアリール環または置換もしくは無置換のヘテロアリール環において、「置換もしくは無置換の(置換または無置換の)」というときの置換基としては、置換基群Zαより選択される少なくとも1つの置換基があげられる。置換基は置換もしくは無置換のジフェニルホスフィノであってもよい。
置換基としては、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリール、または置換もしくは無置換のジアリールアミノが好ましく、t-ブチル、ジフェニルアミノ、またはカルバゾリルがより好ましい。後述の好ましい置換基の例も参照することができる。
式(1A)で表される部分構造は、下記式(1A-a)で表される部分構造であることが好ましい。すなわち、式(1A-a)は式(1A)の好ましい一態様である。
Figure 2024054074000011
式(1A-a)中、Xは式(1A)中のXと同義である。Zはそれぞれ独立して、-C(-RZ)=または-N=であり、RZは、それぞれ独立して、水素または置換基であり、隣接する2つのRZは互いに結合してそれらが結合する炭素とともに置換もしくは無置換アリール環または置換もしくは無置換ヘテロアリール環を形成してもよく、Z=Zはそれぞれ独立して>N-RNZ、>O、>C(-RCZ2、>Si(-RIZ2、>S、または>Seであってもよい。
-N=であるZはa環、b環、およびc環それぞれにおいて、0~2個であることが好ましく、0~1個であることがより好ましい。-N=であるZはa環において、0~1個であることが好ましい。Zはいずれも-C(-RZ)=であることが好ましい。
Zである置換基および上記の形成された環への置換基としては、置換基群Zαより選択される少なくとも1つの置換基があげられ、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリール、または置換もしくは無置換のジアリールアミノが好ましく、t-ブチルがより好ましい。後述の好ましい置換基の例も参照することができる。
a環において、置換基であるRZの位置は、ホウ素(B)のパラ位が好ましい。その他のRZは水素であることが好ましい。b環、c環それぞれにおいて、置換基であるRZの位置は、ホウ素(B)のパラ位またはXのパラ位が好ましく、窒素(N)のパラ位がより好ましい。その他のRZは水素であることが好ましい。
Zを含む環の構造例を、以下に示す。なお、下記式中、Rは置換基であり、RZと同義であるが、水素を意味せず、かつR同士で結合するものを意味しない。R0は水素または置換基であり、RZと同義であるが、R0同士で結合するものを意味しない。また、nは0~4の整数であり、RNおよびRCは、水素、アルキルもしくはシクロアルキルで置換されていてもよいアリール、アルキルもしくはシクロアルキルで置換されていてもよいヘテロアリール、シクロアルキルで置換されていてもよいアルキル、またはアルキルで置換されていてもよいシクロアルキルであり、2つのRCは互いに結合して環を形成していてもよい。
Figure 2024054074000012
Figure 2024054074000013
Figure 2024054074000014
上記はb環の例を示すが、a環、c環についても同様に考えることができる。
Zを含む環の構造としては、ベンゼン環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、インドール環、ベンゾセレノフェン環が好ましく、ベンゼン環、ベンゾチオフェン環がより好ましい。
上記各部分構造において、Rは無置換のアルキルまたはアルキルで置換されていてもよいジアリールアミノであることが好ましい。nは0または1が好ましい。R0は水素であることが好ましい。RNは、アルキルもしくはシクロアルキルで置換されていてもよいアリールであることが好ましい。Rcはメチルであることが好ましい。
[Xの説明]
式(1A)において、n個のX、すなわち、いずれか一方または両方のXは、D環から形成される2価の基と*で結合しているNである。
その他の(2-n)個のX、すなわち、いずれか一方のみのXがD環から形成される2価の基と*で結合しているNであるときの他方のXは、>N-RNX、>O、>C(-RCX2、>Si(-RIX2、>S、または>Seである。RNXは水素、置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリール、置換もしくは無置換のアルキル、または置換もしくは無置換のシクロアルキルであり、RCXおよびRIXはそれぞれ独立して水素、置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリール、置換もしくは無置換のアルキル、または置換もしくは無置換のシクロアルキルであり、2つのRCXは互いに結合して環を形成していてもよく、2つのRIXは互いに結合して環を形成していてもよく、RNX、RCXおよびRIXは連結基または単結合によりA環およびB環の少なくとも1つと結合していてもよい。
NXは置換または無置換のアリールまたは置換または無置換のヘテロアリールが好ましく、置換または無置換のフェニルがより好ましく、無置換のフェニルがさらに好ましい。RCXは置換または無置換のアリールまたは置換または無置換のヘテロアリールが好ましく、置換または無置換のフェニルがより好ましい。RIXは置換または無置換のアリールまたは置換または無置換のヘテロアリールが好ましく、置換または無置換のフェニルがより好ましい。
有機EL素子の発光層におけるエミッティングドーパントとして用いられる式(1)で表される多環芳香族化合物においては、Xは、>N-RNX、>S、>O、または>Seであることが好ましく、>N-RNX、>O、または>Sであることがより好ましく、>N-RNXまたは>Sであることがさらに好ましく、>N-RNXであることが特に好ましい。
[Xと環との結合による環構造の変化の説明]
X中のRNX、RCXおよびRIXはそれぞれ自身を含むXが結合する1つまたは2つの環と単結合または連結基により結合していてもよい。具体的には、式(1)において、X中のRNX、RCXおよびRIXは、単結合または連結基により、A環およびB環の少なくとも一方またはA環およびC環の少なくとも一方と結合していてもよい。
NX、RCXおよびRIXがそれぞれ環と結合する場合の連結基としては、-CH2-CH2-、-CHR-CHR-、-CR2-CR2-、-CH=CH-、-CR=CR-、-C≡C-、-N(-R)-、-O-、-S-、-C(-R)2-、-C(=O)-、-C(=S)-、-S(=O)-、-S(=O)2-、-Se(=O)-、-Se(=O)2-、-P(=O)-、-B(-R)-、-Si(-R)2-、または-Se-などがあげられる。これらのうち、-CH=CH-、-CR=CR-、-N(-R)-、-O-、-S-、および-C(-R)2-が好ましく、-CH=CH-、-CR=CR-、-N(-R)-、-O-、および-S-がより好ましく、-CR=CR-、-N(-R)-、-O-、および-S-がさらに好ましい。前記「-CHR-CHR-」のR、「-CR2-CR2-」のR、「-CR=CR-」のR、「-N(-R)-」のR、「-C(-R)2-」のR、「-B(-R)-」のR、および「-Si(-R)2-」のRは、それぞれ独立して、水素、アルキルまたはシクロアルキルで置換されていてもよいアリール、アルキルまたはシクロアルキルで置換されていてもよいヘテロアリール、アルキルまたはシクロアルキルで置換されていてもよいアルキル、アルキルまたはシクロアルキルで置換されていてもよいアルケニル、アルキルまたはシクロアルキルで置換されていてもよいアルキニル、またはアルキルまたはシクロアルキルで置換されていてもよいシクロアルキルである。また、同一の元素に結合する2つのR同士が結合して環を形成していてもよい。さらに、隣接する2つのR同士が結合して、シクロアルキレン環、アリーレン環、およびヘテロアリーレン環を形成していてもよい。これらの環もまた、アルキルまたはシクロアルキルで置換されていてもよい。
>N-RNX中のRNXがA環、B環、またはC環中のアリール環としてのベンゼン環と結合して形成される縮合環としては、例えば、カルバゾール環(フェニルであるRNXが単結合で結合)、フェノキサジン環(フェニルであるRNXが-O-で結合)、フェノチアジン環(フェニルであるRNXが-S-で結合)、またはアクリドン環(フェニルであるRNXが-C(=O)-で結合)があげられる。
また、上記のような連結により、以下の部分構造(A10)が形成されていてもよい。
Figure 2024054074000015
式(A10)中、RA1~RA4はそれぞれ独立して、水素、置換されていてもよいアルキルまたは置換されていてもよいシクロアルキルであり、RA1~RA4の任意の2~4個は連結基または単結合により互いに結合していてもよく、2つの*の位置でXが結合する2つの環の一方の環に、**の位置で他方の環に結合している。すなわち、式(A10)中のNはXが>N-RNXであるというときの>N-RNXのNである。2つの*の位置で結合する環上の原子は互いに隣接する原子(炭素原子が好ましい)であればよい。式(A10)で表される部分構造は結合解離エネルギー(BDE)の弱いN-C結合を含むが、環を形成するもう1つの結合があることでN-C結合の切断時にも逆反応(再結合反応)が促進されるため、より安定な構造になる。したがって、このような構造を有する多環芳香族化合物を用いて製造される有機EL素子では素子寿命が長くなることが期待される。多環芳香族化合物に式(A10)で表される構造が含まれるとき、その数は1つまたは2つ(好ましくは1つ)であればよい。
式(A10)中、RA1~RA4の任意の2~4個は連結基により互いに連結していてもよい。
A1~RA4は、任意の2個(RA1およびRA4、RA1およびRA4ならびにRA2およびRA3、RA1およびRA2、RA3およびRA4、RA1およびRA2ならびにRA3およびRA4)が連結基または単結合により互いに結合していることが好ましく、RA1およびRA4が連結基または単結合により互いに結合していることがより好ましい。互いに結合して形成されている2価の基としては、アルキレンがあげられる。当該アルキレンにおける少なくとも1つの水素はアルキルもしくはシクロアルキルで置換されていてもよく、当該アルキレンにおける少なくとも1つ(好ましくは1つ)の-CH2-は-O-および-S-で置換されていてもよい。互いに結合して形成されている2価の基としては、炭素数2~5の直鎖アルキレンが好ましく、炭素数3または4の直鎖アルキレンがより好ましく、炭素数4の直鎖アルキレン(-(CH24-)がさらに好ましい。炭素数4の直鎖アルキレン(-(CH24-)は無置換であることが特に好ましい。
連結基による連結に関与していない残りのRA1~RA4は、それぞれ独立して、水素または置換されていてもよいアルキルであることが好ましく、置換されていてもよい炭素数1~6のアルキルであることがより好ましく、無置換の炭素数1~6のアルキルであることがさらに好ましく、いずれもメチルであることが最も好ましい。
すなわち、式(A10)で表される部分構造としては、以下式(A11)で表される構造が好ましい。
Figure 2024054074000016
式(A11)中、Meはメチルであり、2つの*の位置でXが結合する2つの環の一方の環に、**の位置で他方の環に結合している。
<式(1B)で表される部分構造>
式(1B)で表される部分構造はアントラセン骨格を含む。式(1)で表される多環芳香族化合物はこの部分構造を含むことにより、有機EL素子の発光層において、アントラセン化合物などのホスト材料とともにドーパントとして使用された際に高い外部量子効率を与え、有機EL素子を長寿命化させる。
Figure 2024054074000017
式(1B)で表される部分構造中、R1~R10のいずれか1つはD環から形成される2価の基との結合手である。それ以外のR1~R10は、それぞれ独立して、水素、置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリール、置換もしくは無置換のアルキル、または置換もしくは無置換のシクロアルキルである。R1~R10は、それぞれ独立して、水素、フェニル、ナフチル(1-ナフチル、2-ナフチル)、ビフェニリル(3-ビフェニリル、4-ビフェニリル等)、テルフェニル、ジベンゾフラニル、ベンゾナフトフラニル、フェニル置換ナフチル、ナフチル置換フェニルであることが特に好ましい。これらの基はハロゲンまたはシアノで置換されていてもよい。結合手であるもの以外のR1~R10は、いずれも水素であるか、1つまたは2つを除いていずれも水素であることが好ましい。
式(1B)で表される部分構造は、その構造中にいずれかの水素が単結合(結合手)となって、D環から形成される2価の基と結合している。結合手の位置はR1~R10のいずれか1つであり、水素であるR1~R10のいずれかが結合手となっているときは、D環から形成される2価の基はアントラセン環に直接結合する。また、例えばアリールであるR1~R10のいずれかが結合手となっているときは、D環から形成される2価の基はアントラセン環にアリーレンを介して結合することになる。ここでのアリーレンとしては1,4-フェニレン、1,4-ナフチレン等があげられる。
D環から形成される2価の基の位置は特に限定されないがR10であることが好ましい。
式(1B)で表される部分構造の好ましい例としては、式(1B-1)または式(1B-2)で表される部分構造があげられる。
Figure 2024054074000018
式(1B-1)において、**はD環から形成される2価の基との結合位置であることを示すために記載したものであり、R10は単結合、アリーレン、またはヘテロアリーレンであり、R2、R3、R6、R7、およびR9は、式(1B)中のR2、R3、R6、R7、およびR9と、それぞれ同義である。R10は単結合、1,4-フェニレン、または1,4-ナフチレンが好ましく、単結合または1,4-フェニレンがより好ましく、単結合がさらに好ましい。R2、R3、R6、R7は、それぞれ独立して、水素またはアルキルであることが好ましく、水素であることがより好ましい。R9はアリールもしくはヘテロアリールで置換されていてもよいアリールまたはアリールもしくはヘテロアリールで置換されていてもよいヘテロアリールであることが好ましく、フェニル、ナフチル(1-ナフチル、2-ナフチル)、ビフェニリル(3-ビフェニリル、4-ビフェニリル等)、テルフェニル、ジベンゾフラニル、ベンゾナフトフラニル、フェニル置換ナフチル、またはナフチル置換フェニルであることがより好ましい。
Figure 2024054074000019
式(1B-2)において、**はD環から形成される2価の基との結合位置であることを示すために記載したものであり、R10は単結合、アリーレン、またはヘテロアリーレンであり、R2、R3、R6、R7、およびR9は、式(1B)中のR2、R3、R6、R7、およびR9と、それぞれ同義である。R10は単結合、1,4-フェニレン、または1,4-ナフチレンが好ましく、単結合または1,4-フェニレンがより好ましく、単結合がさらに好ましい。R2、R3、R6、R7は、それぞれ独立して、水素またはアルキルであることが好ましく、水素であることがより好ましい。R1、R8は、それぞれ独立して、アリールもしくはヘテロアリールで置換されていてもよいアリールまたはアリールもしくはヘテロアリールで置換されていてもよいヘテロアリールであることが好ましく、フェニル、ナフチル(1-ナフチル、2-ナフチル)、ビフェニリル(3-ビフェニリル、4-ビフェニリル等)、テルフェニル、ジベンゾフラニル、ベンゾナフトフラニル、フェニル置換ナフチル、またはナフチル置換フェニルであることがより好ましい。
<D環から形成される2価の基>
式(1)において円内の「D」は円で示される環構造を示す符号である。D環は置換もしくは無置換のアリール環または置換もしくは無置換のヘテロアリール環である。
D環は、その構造中のアリール環またはヘテロアリール環の環上で互いに隣接する2つの元素(好ましくは炭素)に結合手を有する2価の基を形成している。D環は上記の2つの結合手がそれぞれXおよびBに結合している。D環中で上記の2つの結合手を有する元素を環構成元素とする環は5員環または6員環であることが好ましい。この環はさらに他の環と縮合していてもよい。6員環の例としては、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環などがあげられる。6員環がさらに他の環と縮合している例としては、ナフタレン環、キノリン環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、インドール環、ベンゾセレノフェン環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、カルバゾール環、ジベンゾセレノフェン環などがあげられる。5員環の例としては、フラン環、チオフェン環、ピロール環、チアゾール環、セレノフェン環、オキサゾール環などがあげられる。5員環がさらに他の環と縮合している例としては、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、インドール環、ベンゾセレノフェン環などがあげられる。D環中のアリール環またはヘテロアリール環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、ベンゾフラン環、ジベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、ジベンゾチオフェン環、またはベンゾセレノフェン環が好ましく、ベンゼン環またはナフタレン環がより好ましく、ベンゼン環がさらに好ましい。D環から形成される2価の基としては、1,2-ナフチレンおよび1,2-フェニレンが好ましい例としてあげられ、1,2-フェニレンがより好ましい。
D環における置換もしくは無置換のアリール環または置換もしくは無置換のヘテロアリール環において、「置換もしくは無置換の(置換または無置換の)」というときの置換基としては、置換もしくは無置換のアリールまたは置換もしくは無置換のヘテロアリールがあげられ、無置換のアリールが好ましく、フェニルがより好ましい。D環は無置換のアリール環または無置換のヘテロアリール環であることが好ましい。
<好ましい置換基>
式(1A)で表される部分構造およびD環における好ましい置換基を以下に説明する。
エミッティングドーパントとして用いられる多環芳香族化合物において(そのほかドーパントとして用いられる化合物において)、「アルキル」を含む置換基として、下記式(tR)で表されるターシャリ-アルキルは、特に好ましいものの1つである。このような嵩高い置換基により分子間距離が増加するため発光量子収率(PLQY)が向上するからである。また、式(tR)で表されるターシャリ-アルキルが第2の置換基として他の置換基に置換している置換基も好ましい。具体的には、(tR)で表されるターシャリ-アルキルで置換されたジアリールアミノ、(tR)で表されるターシャリ-アルキルで置換されたカルバゾリル(好ましくは、N-カルバゾリル)または(tR)で表されるターシャリ-アルキルで置換されたベンゾカルバゾリル(好ましくは、N-ベンゾカルバゾリル)があげられる。ジアリールアミノ、カルバゾリルおよびベンゾカルバゾリルへの式(tR)の基の置換形態としては、これらの基におけるアリール環またはベンゼン環の一部または全ての水素が式(tR)の基で置き換えられた例があげられる。
Figure 2024054074000020
式(tR)中、Ra、Rb、およびRcはそれぞれ独立して炭素数1~24のアルキルであり、前記アルキルにおける任意の-CH2-は-O-で置換されていてもよく、式(tR)で表される基は*を結合位置とする。
a、RbおよびRcの「炭素数1~24のアルキル」としては、直鎖および分岐鎖のいずれでもよく、例えば、炭素数1~24の直鎖アルキルまたは炭素数3~24の分岐鎖アルキル、炭素数1~18のアルキル(炭素数3~18の分岐鎖アルキル)、炭素数1~12のアルキル(炭素数3~12の分岐鎖アルキル)、炭素数1~6のアルキル(炭素数3~6の分岐鎖アルキル)、炭素数1~4のアルキル(炭素数3~4の分岐鎖アルキル)があげられる。
式(tR)におけるRa、Rb、およびRcの炭素数の合計は炭素数3~20が好ましく、炭素数3~10が特に好ましい。
a、Rb、およびRcの具体的なアルキルとしては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、t-ペンチル、n-ヘキシル、1-メチルペンチル、4-メチル-2-ペンチル、3,3-ジメチルブチル、2-エチルブチル、n-ヘプチル、1-メチルヘキシル、n-オクチル、t-オクチル、1-メチルヘプチル、2-エチルヘキシル、2-プロピルペンチル、n-ノニル、2,2-ジメチルヘプチル、2,6-ジメチル-4-ヘプチル、3,5,5-トリメチルヘキシル、n-デシル、n-ウンデシル、1-メチルデシル、n-ドデシル、n-トリデシル、1-ヘキシルヘプチル、n-テトラデシル、n-ペンタデシル、n-ヘキサデシル、n-ヘプタデシル、n-オクタデシル、n-エイコシルなどがあげられる。
式(tR)で表される基としては、例えばt-ブチル、t-アミル、1-エチル-1-メチルプロピル、1,1-ジエチルプロピル、1,1-ジメチルブチル、1-エチル-1-メチルブチル、1,1,3,3-テトラメチルブチル、1,1,4-トリメチルペンチル、1,1,2-トリメチルプロピル、1,1-ジメチルオクチル、1,1-ジメチルペンチル、1,1-ジメチルヘプチル、1,1,5-トリメチルヘキシル、1-エチル-1-メチルヘキシル、1-エチル-1,3-ジメチルブチル、1,1,2,2-テトラメチルプロピル、1-ブチル-1-メチルペンチル、1,1-ジエチルブチル、1-エチル-1-メチルペンチル、1,1,3-トリメチルブチル、1-プロピル-1-メチルペンチル、1,1,2-トリメチルプロピル、1-エチル-1,2,2-トリメチルプロピル、1-プロピル-1-メチルブチル、1,1-ジメチルヘキシルなどがあげられる。これらのうち、t-ブチルおよびt-アミルが好ましい。
置換基としては式(A30)で表される置換基も好ましい。
ドーパント(アシスティングドーパントまたはエミッティングドーパント)として用いられる化合物が有する置換基の構造の立体障害性、電子供与性および電子求引性によって、発光波長を調整することができる。好ましくは以下の構造式で表される基であり、より好ましくは、メチル、t-ブチル、t-アミル、t-オクチル、ネオペンチル、アダマンチル、フェニル、o-トリル、p-トリル、2,4-キシリル、2,5-キシリル、2,6-キシリル、2,4,6-メシチル、ジフェニルアミノ、ジ-p-トリルアミノ、ビス(p-(t-ブチル)フェニル)アミノ、カルバゾリル、3,6-ジメチルカルバゾリル、3,6-ジ-t-ブチルカルバゾリルおよびフェノキシであり、さらに好ましくは、メチル、t-ブチル、t-アミル、t-オクチル、ネオペンチル、アダマンチル、フェニル、o-トリル、2,6-キシリル、2,4,6-メシチル、ジフェニルアミノ、ジ-p-トリルアミノ、ビス(p-(t-ブチル)フェニル)アミノ、カルバゾリル、3,6-ジメチルカルバゾリル、3,6-ジ-t-ブチルカルバゾリル、およびトリベンゾアゼピニルである。合成の容易さの観点からは、立体障害が大きい方が選択的な合成のために好ましく、具体的には、t-ブチル、t-アミル、t-オクチル、アダマンチル、o-トリル、p-トリル、2,4-キシリル、2,5-キシリル、2,6-キシリル、2,4,6-メシチル、ジ-p-トリルアミノ、ビス(p-(t-ブチル)フェニル)アミノ、3,6-ジメチルカルバゾリルおよび3,6-ジ-t-ブチルカルバゾリルが好ましい。
下記構造式において、*は結合位置を表す。
Figure 2024054074000021
Figure 2024054074000022
Figure 2024054074000023
Figure 2024054074000024
Figure 2024054074000025
Figure 2024054074000026
Figure 2024054074000027
Figure 2024054074000028
Figure 2024054074000029
Figure 2024054074000030
Figure 2024054074000031
Figure 2024054074000032
Figure 2024054074000033
Figure 2024054074000034
式(1)で表される多環芳香族化合物は、上述の式(tR)で表されるターシャリ-アルキル(t-ブチルあるいはt-アミルなど)、ネオペンチルまたはアダマンチルを少なくとも1つ含む構造であることが好ましく、式(tR)で表されるターシャリ-アルキル(t-ブチルあるいはt-アミルなど)を含むことが好ましい。このような嵩高い置換基により分子間距離が増加するため発光量子収率(PLQY)が向上するからである。また、置換基としては、ジアリールアミノも好ましい。さらに、式(tR)の基で置換されたジアリールアミノ、式(tR)の基で置換されたカルバゾリル(好ましくは、N-カルバゾリル)または式(tR)の基で置換されたベンゾカルバゾリル(好ましくは、N-ベンゾカルバゾリル)も好ましい。ジアリールアミノ、カルバゾリルおよびベンゾカルバゾリルへの式(tR)の基の置換形態としては、これらの基におけるアリール環またはベンゼン環の一部または全ての水素が式(tR)の基で置換された例があげられる。
式(1)で表される構造中、アリール環またはヘテロアリール環の置換基は以下の式(A20)で表される置換基であってもよい。
Figure 2024054074000035
式(A20)で表される置換基は、2つの*でアリール環またはヘテロアリール環の環上で隣接する2つの原子にそれぞれ結合する。式(A20)中、Lは>N-R、>O、>Si(-R)2または>Sであり、前記>N-RのRは、置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリール、置換もしくは無置換のアルキルまたは置換もしくは無置換のシクロアルキルであり、前記>Si(-R)2のRは、水素、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいアルキルまたは置換されていてもよいシクロアルキルであり、また連結基によって互いに結合していてもよく、また、前記>N-Rおよび前記>Si(-R)2のRの少なくとも1つは連結基または単結合により前記アリール環またはヘテロアリール環と結合していてもよく、
rは1~4の整数であり、
Aはそれぞれ独立して水素、置換もしくは無置換のアルキルまたは置換もしくは無置換のシクロアルキルであり、任意のRAは他の任意のRAと連結基または単結合により互いに結合していてもよい。
上記の置換基の例としては以下のいずれかで表される置換基があげられる。
Figure 2024054074000036
各式中、*で、いずれかのアリール環またはヘテロアリール環の環上で連続(隣接)する2つまたは3つの原子にそれぞれ結合していればよい。
<シクロアルカン縮合>
式(1)中の、式(1A)で表される部分構造およびD環におけるアリール環およびヘテロアリール環からなる群より選択される少なくとも1つは、少なくとも1つのシクロアルカンで縮合されていてもよい。
シクロアルカンとしては、炭素数3~24のシクロアルカンであればよい。このときのシクロアルカンにおける少なくとも1つの水素は、炭素数6~30のアリール、炭素数2~30のヘテロアリール、炭素数1~24のアルキルまたは炭素数3~24のシクロアルキルで置換されていてもよく、当該シクロアルカンにおける少なくとも1つの-CH2-は-O-で置き換えられていてもよい。
シクロアルカンは、炭素数3~20のシクロアルカンであって、当該シクロアルカンにおける少なくとも1つの水素が、炭素数6~16のアリール、炭素数2~22のヘテロアリール、炭素数1~12のアルキルまたは炭素数3~16のシクロアルキルで置換されていてもよいシクロアルカンであることが好ましい。
「シクロアルカン」としては、炭素数3~24のシクロアルカン、炭素数3~20のシクロアルカン、炭素数3~16のシクロアルカン、炭素数3~14のシクロアルカン、炭素数5~10のシクロアルカン、炭素数5~8のシクロアルカン、炭素数5~6のシクロアルカン、炭素数5のシクロアルカンなどがあげられる。
具体的なシクロアルカンとしては、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカン、ノルボルナン(ビシクロ[2.2.1]ヘプタン)、ビシクロ[1.1.0]ブタン、ビシクロ[1.1.1]ペンタン、ビシクロ[2.1.0]ペンタン、ビシクロ[2.1.1]ヘキサン、ビシクロ[3.1.0]ヘキサン、ビシクロ[2.2.2]オクタン、アダマンタン、ジアマンタン、デカヒドロナフタレンおよびデカヒドロアズレン、ならびに、これらの炭素数1~5のアルキル(特にメチル)置換体、ハロゲン(特にフッ素)置換体および重水素置換体などがあげられる。
上記の例の中でも、例えば下記構造式に示すような、シクロアルカンのα位の炭素(アリール環またはヘテロアリール環に縮合するシクロアルカンにおいて、縮合部位の炭素に隣接する位置の炭素)に少なくとも1つの置換基を有する構造が好ましく、α位の炭素に2つの置換基を有する構造がより好ましく、2つのα位の炭素がいずれも2つの置換基を有する(合計4つの置換基を有する)構造がさらに好ましい。この置換基としては、炭素数1~5のアルキル(特にメチル)、ハロゲン(特にフッ素)および重水素などがあげられる。特に、アリール環またはヘテロアリール環において隣接する炭素原子に下記式(B)で表される部分構造が結合した構造となっていることが好ましい。
Figure 2024054074000037
式(B)中、*は結合位置を示す。
1つのアリール環またはヘテロアリール環に縮合するシクロアルカンの数は、1~3個が好ましく、1個または2個がより好ましく、1個がさらに好ましい。例えば1つのベンゼン環(フェニル)に1個または複数のシクロアルカンが縮合した例を以下に示す。*は結合位置を示し、その位置はベンゼン環を構成しかつシクロアルカンを構成していない炭素のいずれであってもよい。式(Cy-1-4)および式(Cy-2-4)のように縮合したシクロアルカン同士が縮合してもよい。縮合される環(基)がベンゼン環(フェニル)以外の他のアリール環またはヘテロアリール環の場合であっても、縮合するシクロアルカンがシクロペンタンまたはシクロヘキサン以外の他のシクロアルカンの場合であっても、同様である。
Figure 2024054074000038
シクロアルカンにおける少なくとも1つの-CH2-は-O-で置換されていてもよい。例えば1つのベンゼン環(フェニル)に縮合したシクロアルカンにおける1個または複数の-CH2-が-O-で置換された例を以下に示す。縮合される環(基)がベンゼン環(フェニル)以外の他のアリール環またはヘテロアリール環の場合であっても、縮合するシクロアルカンがシクロペンタンまたはシクロヘキサン以外の他のシクロアルカンの場合であっても、同様である。
Figure 2024054074000039
シクロアルカンは少なくとも1つの置換基で置換されていてもよく、この置換基としては、置換基群Zから選択されるいずれかの置換基をあげることができる。これらの置換基の中でも、アルキル(例えば炭素数1~6のアルキル)、シクロアルキル(例えば炭素数3~14のシクロアルキル)が好ましい。また、いずれかの水素がハロゲン(例えばフッ素)または重水素で置き換えられていることも好ましい。また、シクロアルキルが置換する場合はスピロ構造を形成する置換形態でもよく、例えば1つのベンゼン環(フェニル)に縮合したシクロアルカンにスピロ構造が形成された例を以下に示す。各構造式における*は、ベンゼン環である場合には化合物の骨格構造に含まれるベンゼン環であることを意味し、フェニルである場合には化合物の骨格構造に置換する結合手を意味する。
Figure 2024054074000040
シクロアルカン縮合の形態としては、まず、A環、B環、C環、およびD環それぞれにおけるアリール環およびヘテロアリール環がシクロアルカンで縮合された形態があげられる。
シクロアルカン縮合の他の形態としては、式(1A)で表される部分構造が、例えば、RNXがシクロアルカンで縮合されたアリールである>N-RNX、シクロアルカンで縮合されたジアリールアミノ(このアリール部分へ縮合)、シクロアルカンで縮合されたカルバゾリル(このベンゼン環部分へ縮合)またはシクロアルカンで縮合されたベンゾカルバゾリル(このベンゼン環部分へ縮合)を有する例があげられる。
なお、上記のようにシクロアルカン構造を導入することによっては、融点や昇華温度のさらなる低下が期待できる。このことは、高い純度が要求される有機EL素子などの有機デバイス用の材料の精製法としてほぼ不可欠な昇華精製において、比較的低温で精製することができるため材料の熱分解などが避けられることを意味する。またこれは、有機EL素子などの有機デバイスを作製するのに有力な手段である真空蒸着プロセスについても同様であり、比較的低温でプロセスを実施できるため、材料の熱分解を避けることができ、結果として高性能な有機デバイスを得ることができる。また、シクロアルカン構造の導入により有機溶媒への溶解性が向上するため、塗布プロセスを利用した素子作製にも適用することが可能となる。ただし、本発明は特にこれらの原理に限定されるわけではない。
<重水素による置き換え>
式(1)で表される多環芳香族化合物中の水素は、その全てまたは一部が重水素であってもよい。
例えば、式(1)で表される多環芳香族化合物においては、A環、B環、C環、およびD環におけるアリール環またはヘテロアリール環、それらの置換基における水素が重水素で置き換えられうるが、これらの中でもアリールやヘテロアリールにおける全てまたは一部の水素が重水素で置き換えられた態様があげられる。また、式(1B)で表される部分構造における全てまたは一部の水素が重水素で置き換えられた態様も好ましい。さらに、耐久性の観点から、式(1)で表される多環芳香族化合物中の水素は、その全てまたは一部が重水素化されていることも好ましい。
<多環芳香族化合物の具体例>
式(1)で表される多環芳香族化合物の例として、下記構造式のいずれかで表される化合物があげられる。ただし、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
Figure 2024054074000041
Figure 2024054074000042
Figure 2024054074000043
Figure 2024054074000044
Figure 2024054074000045
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Figure 2024054074000047
Figure 2024054074000048
Figure 2024054074000049
Figure 2024054074000050
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Figure 2024054074000052
Figure 2024054074000053
Figure 2024054074000054
Figure 2024054074000055
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Figure 2024054074000059
Figure 2024054074000060
Figure 2024054074000061
Figure 2024054074000062
Figure 2024054074000063
Figure 2024054074000064
Figure 2024054074000065
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Figure 2024054074000070
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Figure 2024054074000072
Figure 2024054074000073
Figure 2024054074000074
Figure 2024054074000075
Figure 2024054074000076
Figure 2024054074000077
Figure 2024054074000078
Figure 2024054074000079
Figure 2024054074000080
Figure 2024054074000081
<多環芳香族化合物の高分子への応用>
本発明に係る多環芳香族化合物は、これらに反応性置換基が置換した反応性化合物をモノマーとして高分子化させた高分子化合物(この高分子化合物を得るための前記モノマーは重合性置換基を有する)、もしくは当該高分子化合物をさらに架橋させた高分子架橋体(この高分子架橋体を得るための前記高分子化合物は架橋性置換基を有する)、または、主鎖型高分子と前記反応性化合物とを反応させたペンダント型高分子化合物(このペンダント型高分子化合物を得るための前記反応性化合物は反応性置換基を有する)、もしくは当該ペンダント型高分子化合物をさらに架橋させたペンダント型高分子架橋体(このペンダント型高分子架橋体を得るための前記ペンダント型高分子化合物は架橋性置換基を有する)としても、有機デバイス用材料、例えば、有機電界発光素子用材料、有機電界効果トランジスタ用材料、有機薄膜太陽電池用材料、または波長変換フィルタに用いることができる。
なお、本明細書において、「高分子化合物」とは、分子量分布を有し、かつポリスチレン換算の数平均分子量が1×103~1×108(1×10^3~1×10^8)である重合体を意味する。高分子化合物のポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)は、移動相にテトラヒドロフランを用い、サイズエクスクル一ジョンクロマ卜グラフィ一(SEC)により求めることができる。具体的には測定する高分子化合物を約0.05質量%の濃度でテトラヒドロフランに溶解させ、SECに10μL注入する。移動相の流量は、1.0mL/分、カラムとしてはPLgelMIXED_B(ポリマーラボラトリーズ製)を用いる。検出器にはUV_VIS検出器(東ソ一製、商品名:UV-8320GPC)を用いることができる。
本発明の高分子化合物は数平均分子量が2000~1×108であることが好ましく、5000~1×108であることがより好ましい。
上述した反応性置換基(前記重合性置換基、前記架橋性置換基、および、ペンダント型高分子を得るための反応性置換基を含み、以下、単に「反応性置換基」とも言う)としては、上記多環芳香族化合物を高分子量化できる置換基、そのようにして得られた高分子化合物をさらに架橋化できる置換基、また、主鎖型高分子にペンダント反応し得る置換基であれば特に限定されないが、以下の構造の置換基が好ましい。各構造式中の*は結合位置を示す。
Figure 2024054074000082
Lは、それぞれ独立して、単結合、-O-、-S-、>C=O、-O-C(=O)-、炭素数1~12のアルキレン、炭素数1~12のオキシアルキレンおよび炭素数1~12のポリオキシアルキレンである。上記置換基の中でも、式(XLS-1)、式(XLS-2)、式(XLS-3)、式(XLS-9)、式(XLS-10)または式(XLS-17)で表される基が好ましく、式(XLS-1)、式(XLS-3)または式(XLS-17)で表される基がより好ましい。
このような高分子化合物、高分子架橋体、ペンダント型高分子化合物、およびペンダント型高分子架橋体は、本発明に係る多環芳香族化合物の繰り返し単位以外にも、置換もしくは無置換のトリアリールアミン、置換もしくは無置換のフルオレン、置換もしくは無置換のアントラセン、置換もしくは無置換のテトラセン、置換もしくは無置換のトリアジン、置換もしくは無置換のカルバゾール、置換もしくは無置換のテトラフェニルシラン、置換もしくは無置換のスピロフルオレン、置換もしくは無置換のトリフェニルホスフィン、置換もしくは無置換のジベンゾチオフェン、および置換もしくは無置換のジベンゾフランからなる化合物の群から選ばれる少なくとも1種を繰り返し単位として含んでもよい。
これらの繰り返し単位における置換基としては、例えば、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、ジアリールボリル、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、トリアリールシリル、トリアルキルシリル、トリシクロアルキルシリル、ジアルキルシクロアルキルシリル、またはアルキルジシクロアルキルシリルなどがあげられる。
このような高分子化合物、高分子架橋体、ペンダント型高分子化合物およびペンダント型高分子架橋体(以下、単に「高分子化合物および高分子架橋体」とも言う)の用途の詳細については後述する。
<多環芳香族化合物の製造方法>
式(1)で表される多環芳香族化合物は、基本的には、まずA環(a環)とB環(b環)およびC環(c環)を含む縮合環とを結合基(Xを含む基等)で結合させることで中間体を製造し(第1反応)、その後に、A環(a環)、B環(b環)およびC環(c環)を含む縮合環をホウ素で結合させることで最終生成物を製造することができる(第2反応)。第1反応では、例えばエーテル化反応であれば、求核置換反応、ウルマン反応といった一般的反応が利用でき、アミノ化反応で有ればブッフバルト-ハートウィッグ反応、求核置換反応、ゴールドバーグアミノ化といった一般的反応が利用できる。また、第2反応では、タンデムヘテロフリーデルクラフツ反応(連続的な芳香族求電子置換反応、以下同様)が利用できる。
第2反応は、下記スキーム(1)に示すように、A環(a環)、B環(b環)およびC環(c環)を含む縮合環を結合するホウ素を導入する反応である。まず、Xと窒素原子の間のハロゲン原子をn-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウムまたはt-ブチルリチウム等でハロゲン-メタル交換する。次いで、三塩化ホウ素や三臭化ホウ素等を加え、リチウム-ホウ素の金属交換を行った後、N,N-ジイソプロピルエチルアミン等のブレンステッド塩基を加えることで、タンデムボラフリーデルクラフツ反応させ、目的物を得ることができる。第2反応においては反応を促進させるために三塩化アルミニウム等のルイス酸を加えてもよい。なお、下記スキーム(1)の中間体の式中ではClであるハロゲン原子は、F、Br、Iであってもよく、ハロゲン原子は基質の反応性を考慮して適宜選択することができる。
Figure 2024054074000083
使用する原料を適宜選択することで、所望の位置に置換基を有する多環芳香族化合物を合成することができる。
以上の反応で用いられる溶媒の具体例は、t-ブチルベンゼンやキシレンなどである。
また、上記スキーム(1)の合成法では、三塩化ホウ素や三臭化ホウ素等を加える前に、Xと窒素原子の間のハロゲン原子をブチルリチウム等でハロゲン-メタル交換することで、タンデムヘテロフリーデルクラフツ反応させた例を示したが、ハロゲンが水素になった前駆体で三塩化ホウ素や三臭化ホウ素等の添加により反応を進行させることもできる。
なお、上記スキーム(1)で使用するオルトメタル化試薬としては、メチルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、t-ブチルリチウム等のアルキルリチウム、リチウムジイソプロピルアミド、リチウムテトラメチルピペリジド、リチウムヘキサメチルジシラジド、カリウムヘキサメチルジシラジドなどの有機アルカリ金属化合物があげられる。
なお、上記スキーム(1)で使用するメタル-ホウ素の金属交換試薬としては、三フッ化ホウ素、三塩化ホウ素、三臭化ホウ素、三ヨウ化ホウ素などのホウ素のハロゲン化物、ホウ素のアルコキシ化物、ホウ素のアリールオキシ化物などがあげられる。
なお、上記スキーム(1)で使用するブレンステッド塩基としては、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジメチルトルイジン、2,6-ルチジン、テトラフェニルホウ酸ナトリウム、テトラフェニルホウ酸カリウム、トリフェニルボラン、テトラフェニルシラン、Ar4BNa、Ar4BK、Ar3B、Ar4Si(なお、Arはフェニルなどのアリール)などがあげられる。
上記スキーム(1)で使用するルイス酸としては、AlCl3、AlBr3、AlF3、BF3・OEt2、BCl3、BBr3、BI3、GaCl3、GaBr3、InCl3、InBr3、In(OTf)3、SnCl4、SnBr4、AgOTf、ScCl3、Sc(OTf)3、ZnCl2、ZnBr2、Zn(OTf)2、MgCl2、MgBr2、Mg(OTf)2、LiOTf、NaOTf、KOTf、Me3SiOTf、Cu(OTf)2、CuCl2、YCl3、Y(OTf)3、TiCl4、TiBr4、ZrCl4、ZrBr4、FeCl3、FeBr3、CoCl3、CoBr3などがあげられる。
上記スキーム(1)では、タンデムヘテロフリーデルクラフツ反応の促進のためにブレンステッド塩基またはルイス酸を使用してもよい。ただし、三フッ化ホウ素、三塩化ホウ素、三臭化ホウ素、三ヨウ化ホウ素などのホウ素のハロゲン化物を用いた場合は、芳香族求電子置換反応の進行とともに、フッ化水素、塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素といった酸が生成するため、酸を捕捉するブレンステッド塩基の使用が効果的である。一方、ホウ素のアミノ化ハロゲン化物、ホウ素のアルコキシ化物を用いた場合は、芳香族求電子置換反応の進行とともに、アミン、アルコールが生成するために、多くの場合、ブレンステッド塩基を使用する必要はないが、アミノやアルコキシの脱離能が低いために、その脱離を促進するルイス酸の使用が効果的である。
また、本発明の多環芳香族化合物には、少なくとも一部の水素原子が重水素で置換されているものやフッ素や塩素などのハロゲンで置換されているものも含まれるが、このような化合物などは所望の箇所が重水素化、フッ素化または塩素化された原料を用いることで、上記と同様に合成することができる。
2.有機デバイス
本発明の多環芳香族化合物は、有機デバイス用材料として用いることができる。有機デバイスとしては、例えば、有機電界発光素子、有機電界効果トランジスタまたは有機薄膜太陽電池などがあげられる。本発明の多環芳香族化合物は、有機電界発光素子における、いずれか1つ以上の有機層を形成する材料として用いられることが好ましい。
2-1.有機電界発光素子
2-1-1.有機電界発光素子の構造
図1は、有機EL素子の一例を示す概略断面図である。
図1に示された有機EL素子100は、基板101と、基板101上に設けられた陽極102と、陽極102の上に設けられた正孔注入層103と、正孔注入層103の上に設けられた正孔輸送層104と、正孔輸送層104の上に設けられた発光層105と、発光層105の上に設けられた電子輸送層106と、電子輸送層106の上に設けられた電子注入層107と、電子注入層107の上に設けられた陰極108とを有する。
なお、有機EL素子100は、作製順序を逆にして、例えば、基板101と、基板101上に設けられた陰極108と、陰極108の上に設けられた電子注入層107と、電子注入層107の上に設けられた電子輸送層106と、電子輸送層106の上に設けられた発光層105と、発光層105の上に設けられた正孔輸送層104と、正孔輸送層104の上に設けられた正孔注入層103と、正孔注入層103の上に設けられた陽極102とを有する構成としてもよい。
上記各層すべてがなくてはならないわけではなく、最小構成単位を陽極102と発光層105と陰極108とからなる構成として、正孔注入層103、正孔輸送層104、電子輸送層106、電子注入層107は任意に設けられる層である。また、上記各層は、それぞれ単一層からなってもよいし、複数層からなってもよい。
有機EL素子を構成する層の態様としては、上述する「基板/陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極」の構成態様の他に、「基板/陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極」、「基板/陽極/正孔注入層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極」、「基板/陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極」、「基板/陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極」、「基板/陽極/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極」、「基板/陽極/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極」、「基板/陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極」、「基板/陽極/正孔注入層/発光層/電子注入層/陰極」、「基板/陽極/正孔注入層/発光層/電子輸送層/陰極」、「基板/陽極/発光層/電子輸送層/陰極」、「基板/陽極/発光層/電子注入層/陰極」の構成態様であってもよい。
有機EL素子はさらに電子阻止層(電子ブロッキング層)および正孔阻止層(正孔ブロッキング層)から選択されるいずれかまたは双方を有していてもよい。電子阻止層は発光層より浅いLUMOおよび発光層または正孔輸送層と近いHOMOとを有し、発光層と正孔輸送層の間に配置される。電子が発光層内に留まり正孔輸送層へ漏れ出ないために、正孔輸送層の劣化による短寿命化と再結合効率低下による効率の低下を防ぐことができる。正孔阻止層は発光層より深いHOMOおよび発光層または正孔輸送層と近いLUMOとを有し、発光層と電子輸送層の間に配置される。正孔が発光層内に留まり電子輸送層へ漏れ出ないために、電子輸送層の劣化による短寿命化と再結合効率低下による効率の低下を防ぐことができる。正孔注入・輸送層が電子阻止層を兼ねていてもよい。電子注入・輸送層が正孔阻止層を兼ねていてもよい。
有機EL素子はさらに高T1層を有していてもよい。高T1層は、発光層に用いられるホスト化合物、アシスティングドーパント化合物またはエミッティングドーパント化合物より高いT1を有し、発光層と正孔輸送層の間および/または発光層と電子阻止層の間に配置される。T1エネルギーの値は素子の発光機構により異なるが、ホストに用いられる化合物より高いT1を有する。発光層の周囲に高T1層を有することで、三重項エネルギーを閉じ込め、通常蛍光分子では発光につながらない三重項エネルギーを一重項エネルギーへと変換し、高い効率を得ることができる。正孔注入・輸送層または電子阻止層が高T1層を兼ねていてもよい。電子注入・輸送層または正孔阻止層が高T1層を兼ねていてもよい。
本発明の多環芳香族化合物は、発光層形成用材料または電子輸送層形成用材料として用いることが好ましく、発光層形成用材料として用いることがより好ましい。本発明の多環芳香族化合物は特に青色発光材料として好ましく用いることができる。
2-1-2.有機電界発光素子における基板
基板101は、有機EL素子100の支持体であり、通常、石英、ガラス、金属、プラスチックなどが用いられる。基板101は、目的に応じて板状、フィルム状、またはシート状に形成され、例えば、ガラス板、金属板、金属箔、プラスチックフィルム、プラスチックシートなどが用いられる。なかでも、ガラス板、および、ポリエステル、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスルホンなどの透明な合成樹脂製の板が好ましい。ガラス基板であれば、ソーダライムガラスや無アルカリガラスなどが用いられ、また、厚みも機械的強度を保つのに十分な厚みがあればよい。また、基板101には、ガスバリア性を高めるために、少なくとも片面に緻密なシリコン酸化膜などのガスバリア膜を設けてもよく、特にガスバリア性が低い合成樹脂製の板、フィルムまたはシートを基板101として用いる場合にはガスバリア膜を設けるのが好ましい。
2-1-3.有機電界発光素子における陽極
陽極102は、発光層105へ正孔を注入する役割を果たす。なお、陽極102と発光層105との間に正孔注入層103および正孔輸送層104の少なくとも1つの層が設けられている場合には、これらを介して発光層105へ正孔を注入することになる。
陽極102を形成する材料としては、無機化合物および有機化合物があげられる。無機化合物としては、例えば、金属(アルミニウム、金、銀、ニッケル、パラジウム、クロムなど)、金属酸化物(インジウムの酸化物、スズの酸化物、インジウム-スズ酸化物(ITO)、インジウム-亜鉛酸化物(IZO)など)、ハロゲン化金属(ヨウ化銅など)、硫化銅、カーボンブラック、ITOガラスやネサガラスなどがあげられる。有機化合物としては、例えば、ポリ(3-メチルチオフェン)などのポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリンなどの導電性ポリマーなどがあげられる。その他、有機EL素子の陽極として用いられている物質の中から適宜選択して用いることができる。
2-1-4.有機電界発光素子における正孔注入層、正孔輸送層
正孔注入層103は、陽極102から移動してくる正孔を、効率よく発光層105内または正孔輸送層104内に注入する役割を果たす。正孔輸送層104は、陽極102から注入された正孔または陽極102から正孔注入層103を介して注入された正孔を、効率よく発光層105に輸送する役割を果たす。正孔注入層103および正孔輸送層104は、それぞれ、正孔注入・輸送材料の一種または二種以上を積層または混合により形成される。また、正孔注入・輸送材料に塩化鉄(III)のような無機塩を添加して層を形成してもよい。
正孔注入・輸送性物質としては電界を与えられた電極間において正極からの正孔を効率よく注入・輸送することが必要で、正孔注入効率が高く、注入された正孔を効率よく輸送することが望ましい。そのためにはイオン化ポテンシャルが小さく、しかも正孔移動度が大きく、さらに安定性に優れ、トラップとなる不純物が製造時および使用時に発生しにくい物質であることが好ましい。
正孔注入層103および正孔輸送層104を形成する材料としては、光導電材料において、正孔の電荷輸送材料として従来から慣用されている化合物、p型半導体、有機EL素子の正孔注入層および正孔輸送層に使用されている公知の化合物の中から任意の化合物を選択して用いることができる。それらの具体例は、カルバゾール誘導体(N-フェニルカルバゾール、ポリビニルカルバゾールなど)、ビス(N-アリールカルバゾール)またはビス(N-アルキルカルバゾール)などのビスカルバゾール誘導体、トリアリールアミン誘導体(芳香族第3級アミノを主鎖または側鎖に持つポリマー、1,1-ビス(4-ジ-p-トリルアミノフェニル)シクロヘキサン、N,N'-ジフェニル-N,N'-ジ(3-メチルフェニル)-4,4'-ジアミノビフェニル、N,N'-ジフェニル-N,N'-ジナフチル-4,4'-ジアミノビフェニル、N,N'-ジフェニル-N,N'-ジ(3-メチルフェニル)-4,4'-ジフェニル-1,1'-ジアミン、N,N'-ジナフチル-N,N'-ジフェニル-4,4'-ジフェニル-1,1'-ジアミン、N4,N4'-ジフェニル-N4,N4'-ビス(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-[1,1'-ビフェニル]-4,4'-ジアミン、N4,N4,N4',N4'-テトラ[1,1'-ビフェニル]-4-イル)-[1,1'-ビフェニル]-4,4'-ジアミン、4,4',4"-トリス(3-メチルフェニル(フェニル)アミノ)トリフェニルアミンなどのトリフェニルアミン誘導体、スターバーストアミン誘導体など)、スチルベン誘導体、フタロシアニン誘導体(無金属、銅フタロシアニンなど)、ピラゾリン誘導体、ヒドラゾン系化合物、ベンゾフラン誘導体やチオフェン誘導体、オキサジアゾール誘導体、キノキサリン誘導体(例えば、1,4,5,8,9,12-ヘキサアザトリフェニレン-2,3,6,7,10,11-ヘキサカルボニトリルなど)、ポルフィリン誘導体などの複素環化合物、ポリシランなどである。ポリマー系では前記単量体を側鎖に有するポリカーボネートやスチレン誘導体、ポリビニルカルバゾールおよびポリシランなどが好ましいが、発光素子の作製に必要な薄膜を形成し、陽極から正孔が注入できて、さらに正孔を輸送できる化合物であれば特に限定されない。
また、有機半導体の導電性は、そのドーピングにより、強い影響を受けることも知られている。このような有機半導体マトリックス物質は、電子供与性の良好な化合物、または、電子受容性の良好な化合物から構成されている。電子供与物質のドーピングのために、テトラシアノキノンジメタン(TCNQ)または2,3,5,6-テトラフルオロテトラシアノ-1,4-ベンゾキノンジメタン(F4TCNQ)などの強い電子受容体が知られている(例えば、文献「M.Pfeiffer,A.Beyer,T.Fritz,K.Leo,Appl.Phys.Lett.,73(22),3202-3204(1998)」および文献「J.Blochwitz,M.Pfeiffer,T.Fritz,K.Leo,Appl.Phys.Lett.,73(6),729-731(1998)」を参照)。これらは、電子供与型ベース物質(正孔輸送物質)における電子移動プロセスによって、いわゆる正孔を生成する。正孔の数および移動度によって、ベース物質の伝導性が、かなり大きく変化する。正孔輸送特性を有するマトリックス物質としては、例えばベンジジン誘導体(TPDなど)またはスターバーストアミン誘導体(TDATAなど)、または、特定の金属フタロシアニン(特に、亜鉛フタロシアニン(ZnPc)など)が知られている(特開2005-167175号公報)。
上述した正孔注入層用材料および正孔輸送層用材料は、これらに反応性置換基が置換した反応性化合物をモノマーとして高分子化させた高分子化合物、もしくはその高分子架橋体、または、主鎖型高分子と前記反応性化合物とを反応させたペンダント型高分子化合物、もしくはそのペンダント型高分子架橋体としても、正孔層用材料に用いることができる。この場合の反応性置換基としては、式(1)で表される多環芳香族化合物での説明を引用できる。
このような高分子化合物および高分子架橋体の用途の詳細については後述する。
2-1-5.有機電界発光素子における発光層
発光層105は、電界を与えられた電極間において、陽極102から注入された正孔と、陰極108から注入された電子とを再結合させることにより発光する層である。発光層105を形成する材料は、正孔と電子との再結合によって励起されて発光する化合物(発光性化合物)であればよく、安定な薄膜形状を形成することができ、かつ、固体状態で強い発光(蛍光)効率を示す化合物が好ましく、用いられる。
発光層は単一層でも複数層からなってもどちらでもよく、それぞれ発光層用材料により形成される。発光層が複数層からなっている場合、いずれか1つの層が本発明の多環芳香族化合物を含むことが好ましい。発光層は単一層であることが好ましい。
発光層は光層用材料(ホスト材料、ドーパント材料)により形成される。ホスト材料とドーパント材料は、それぞれ一種類であっても、複数の組み合わせであっても、いずれでもよい。例えば、ドーパント材料として、エミッティングドーパントおよびアシスティングドーパントを用いてもよい。また、発光層は、エミッティングドーパントと、正孔輸送性ホスト材料、電子輸送性ホスト材料、およびアシスティングドーパント材料からなる群より選択される少なくとも2つとを含むことも好ましい。ドーパント材料はホスト材料の全体に含まれていても、部分的に含まれていても、いずれであってもよい。ドーピング方法としては、ホスト材料との共蒸着法によって形成することができるが、ホスト材料と予め混合してから同時に蒸着してもよい。また、発光層は、有機溶媒に材料を溶解して調製した発光層形成用組成物を用いた湿式成膜法により形成することもできる。
ホスト材料の使用量はホスト材料の種類によって異なり、そのホスト材料の特性に合わせて決めればよい。ホスト材料の使用量の目安は、好ましくは発光層用材料全質量の50~99.999質量%であり、より好ましくは80~99.95質量%であり、さらに好ましくは90~99.9質量%である。ホスト材料が、正孔輸送性ホスト材料と電子輸送性ホスト材料との組み合わせである場合は、ホスト材料の使用量は正孔輸送性ホスト材料の使用量と電子輸送性ホスト材料の使用量とを合わせた質量である。正孔輸送性ホスト材料と電子輸送性ホスト材料との使用量の比は質量比で1:9~9:1であればよく、4:6~6;4であることが好ましく、略1:1であることがより好ましい。
エミッティングドーパントの使用量はエミッティングドーパントの種類によって異なり、その特性に合わせて決めればよい。エミッティングドーパントの使用量の目安は、好ましくは発光層用材料全質量の0.001~50質量%であり、より好ましくは0.05~20質量%であり、さらに好ましくは0.1~10質量%である。上記の範囲であれば、例えば、濃度消光現象を防止できるという点で好ましい。
エミッティングドーパントに加えてアシスティングドーパント(熱活性型遅延蛍光体またはりん光材料)を用いる有機電界発光素子においては、エミッティングドーパント材料の使用量は低濃度である方が濃度消光現象を防止できるという点で好ましい。アシスティングドーパントの使用量が高濃度である方がエネルギー移動の効率の点からは好ましい。アシスティングドーパントの使用量が高濃度である方が熱活性型遅延蛍光機構の効率の点からは好ましい。アシスティングドーパントとして熱活性型遅延蛍光体を用いた有機電界発光素子においては、アシスティングドーパントの熱活性型遅延蛍光機構の効率の点からは、アシスティングドーパントの使用量に比べてエミッティングドーパントの使用量が低濃度であることが好ましい。
アシスティングドーパント材料が使用される場合における、ホスト材料、アシスティングドーパント材料およびエミッティングドーパント材料の使用量の目安は、それぞれ、発光層用材料全質量に対し40~99質量%、59~1質量%および20~0.001質量%であり、好ましくは、それぞれ、60~95質量%、39~5質量%および10~0.01質量%であり、より好ましくは、70~90質量%、29~10質量%および5~0.05質量%である。
式(1)で表される多環芳香族化合物は、発光層を形成する材料として用いられることが好ましく、ドーパントとして用いられることがより好ましく、特にエミッティングドーパントとして用いられることが好ましい。
<ホスト材料>
ホスト材料としては、以前から発光体として知られていたアントラセンやピレンなどの縮合環誘導体、ビススチリルアントラセン誘導体やジスチリルベンゼン誘導体などのビススチリル誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、フルオレン誘導体、ベンゾフルオレン誘導体、N-フェニルカルバゾール誘導体、カルバゾニトリル誘導体、ジベンゾクリセン誘導体などがあげられる。また、耐久性の観点から、ホスト材料の水素原子は一部または全部が重水素化されていることも好ましい。さらに、一部または全部の水素原子が重水素化されたホスト化合物と、一部または全部の水素原子が重水素化されたドーパント化合物とを組み合わせて発光層を構成することも好ましい。ホスト材料にTADF活性な化合物を用いてもよい。
ホスト材料は、一種類であっても、複数の組み合わせであってもよい。複数の組み合わせである場合、正孔輸送性ホスト材料と電子輸送性ホスト材料との組み合わせであることが好ましい。式(1)においてnが2である本発明の化合物は、正孔輸送性ホスト材料と電子輸送性ホスト材料との組み合わせであるホスト材料を用いた発光層におけるドーパントとして好ましく用いることができる。
[アントラセン化合物]
ホストとしてのアントラセン化合物としては、例えば式(3-H)で表される化合物および式(3-H2)で表される化合物があげられる。
Figure 2024054074000084
式(3-H)中、
XおよびAr4は、それぞれ独立して、水素、置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリール、置換もしくは無置換のジアリールアミノ、置換されていてもよいジヘテロアリールアミノ、置換もしくは無置換のアリールヘテロアリールアミノ、置換もしくは無置換のアルキル、置換されていてもよいシクロアルキル、置換もしくは無置換のアルケニル、置換もしくは無置換のアルコキシ、置換もしくは無置換のアリールオキシ、置換もしくは無置換のアリールチオまたは置換シリルであり、全てのXおよびAr4は同時に水素になることはない。
式(3-H)で表される化合物における少なくとも1つの水素はハロゲン、シアノ、重水素または置換されていてもよいヘテロアリールで置換されていてもよい。
また、式(3-H)で表される構造を単位構造として多量体(好ましくは二量体)を形成してもよい。この場合、例えば式(3-H)で表される単位構造同士がXを介して結合する形態があげられ、このXとしては単結合、アリーレン(フェニレン、ビフェニレンおよびナフチレン等)およびヘテロアリーレン(ピリジン環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、カルバゾール環、ベンゾカルバゾール環およびフェニル置換カルバゾール環などが二価の結合価を有する基)等があげられる。
式(3-H)で表される化合物における各基の詳細は、上記の式(1)における説明を引用することができ、さらに以下の好ましい態様の欄で説明する。
上記アントラセン化合物の好ましい態様を以下に説明する。下記構造における符号の定義は上述する定義と同じである。
Figure 2024054074000085
式(3-H)では、Xはそれぞれ独立して式(3-X1)、式(3-X2)または式(3-X3)で表される基であり、式(3-X1)、式(3-X2)または式(3-X3)で表される基は*において式(3-H)のアントラセン環と結合する。好ましくは、2つのXが同時に式(3-X3)で表される基になることはない。より好ましくは2つのXが同時に式(3-X2)で表される基になることもない。
また、式(3-H)で表される構造を単位構造として多量体(好ましくは二量体)を形成してもよい。この場合、例えば式(3-H)で表される単位構造同士がXを介して結合する形態があげられ、このXとしては単結合、アリーレン(フェニレン、ビフェニレンおよびナフチレン等)およびヘテロアリーレン(ピリジン環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、カルバゾール環、ベンゾカルバゾール環およびフェニル置換カルバゾール環などが二価の結合価を有する基)等があげられる。
式(3-X1)および式(3-X2)におけるナフチレン部位は1つのベンゼン環で縮合されていてもよい。このようにして縮合した構造は以下のとおりである。
Figure 2024054074000086
Ar1およびAr2は、それぞれ独立して、水素、フェニル、ビフェニリル、テルフェニリル、クアテルフェニリル、ナフチル、フェナントリル、フルオレニル、ベンゾフルオレニル、クリセニル、トリフェニレニル、ピレニル、または、式(A)で表される基(カルバゾリル、ベンゾカルバゾリルおよびフェニル置換カルバゾリルも含む)である。なお、Ar1またはAr2が式(A)で表される基である場合は、式(A)で表される基はその*において式(3-X1)または式(3-X2)中のナフタレン環と結合する。
Ar3は、フェニル、ビフェニリル、テルフェニリル、クアテルフェニリル、ナフチル、フェナントリル、フルオレニル、ベンゾフルオレニル、クリセニル、トリフェニレニル、ピレニル、または、式(A)で表される基(カルバゾリル、ベンゾカルバゾリルおよびフェニル置換カルバゾリルも含む)である。なお、Ar3が式(A)で表される基である場合は、式(A)で表される基はその*において式(3-X3)中の直線で表される単結合と結合する。すなわち、式(3-H)のアントラセン環と式(A)で表される基が直接結合する。
また、Ar3は置換基を有していてもよく、Ar3における少なくとも1つの水素はさらに炭素数1~4のアルキル、炭素数5~10のシクロアルキル、フェニル、ビフェニリル、テルフェニリル、ナフチル、フェナントリル、フルオレニル、クリセニル、トリフェニレニル、ピレニル、または、式(A)で表される基(カルバゾリルおよびフェニル置換カルバゾリルも含む)で置換されていてもよい。なお、Ar3が有する置換基が式(A)で表される基である場合は、式(A)で表される基はその*において式(3-X3)中のAr3と結合する。
Ar4は、それぞれ独立して、水素、フェニル、ビフェニリル、ターフェニリル、ナフチル、または炭素数1~4のアルキル(メチル、エチル、t-ブチルなど)および/もしくは炭素数5~10のシクロアルキルで置換されているシリルである。
シリルに置換する炭素数1~4のアルキルは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピルイソプロピル、ブチル、sec-ブチル、t-ブチル、シクロブチルなどがあげられ、シリルにおける3つの水素が、それぞれ独立して、これらのアルキルで置換されている。
具体的な「炭素数1~4のアルキルで置換されているシリル」としては、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリプロピルシリル、トリイソプロピルシリル、トリブチルシリル、トリsec-ブチルシリル、トリt-ブチルシリル、エチルジメチルシリル、プロピルジメチルシリル、イソプロピルジメチルシリル、ブチルジメチルシリル、sec-ブチルジメチルシリル、t-ブチルジメチルシリル、メチルジエチルシリル、プロピルジエチルシリル、イソプロピルジエチルシリル、ブチルジエチルシリル、sec-ブチルジエチルシリル、t-ブチルジエチルシリル、メチルジプロピルシリル、エチルジプロピルシリル、ブチルジプロピルシリル、sec-ブチルジプロピルシリル、t-ブチルジプロピルシリル、メチルジイソプロピルシリル、エチルジイソプロピルシリル、ブチルジイソプロピルシリル、sec-ブチルジイソプロピルシリル、t-ブチルジイソプロピルシリルなどがあげられる。
シリルに置換する炭素数5~10のシクロアルキルは、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、ビシクロ[1.1.1]ペンチル、ビシクロ[2.1.0]ペンチル、ビシクロ[2.1.1]ヘキシル、ビシクロ[3.1.0]ヘキシル、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル(ノルボルニル)、ビシクロ[2.2.2]オクチル、アダマンチル、デカヒドロナフタレニル、デカヒドロアズレニルなどがあげられ、シリルにおける3つの水素が、それぞれ独立して、これらのシクロアルキルで置換されている。
具体的な「炭素数5~10のシクロアルキルで置換されているシリル」としては、トリシクロペンチルシリル、トリシクロヘキシルシリルなどがあげられる。
置換されているシリルとしては、2つのアルキルと1つのシクロアルキルが置換したジアルキルシクロアルキルシリルと、1つのアルキルと2つのシクロアルキルが置換したアルキルジシクロアルキルシリルもあり、置換するアルキルおよびシクロアルキルの具体例としては上述した基があげられる。
また、式(3-H)で表されるアントラセン化合物の化学構造中の水素は式(A)で表される基で置換されていてもよい。式(A)で表される基で置換される場合は、式(A)で表される基はその*において式(3-H)で表される化合物における少なくとも1つの水素と置換する。
式(A)で表される基は、式(3-H)で表されるアントラセン化合物が有しうる置換基の1つである。
Figure 2024054074000087
式(A)中、Yは-O-、-S-または>N-R29であり、R21~R28はそれぞれ独立して水素、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいシクロアルキル、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいアルコキシ、置換されていてもよいアリールオキシ、置換されていてもよいアリールチオ、トリアルキルシリル、トリシクロアルキルシリル、ジアルキルシクロアルキルシリル、アルキルジシクロアルキルシリル、置換されていてもよいアミノ、ハロゲン、ヒドロキシまたはシアノであり、R21~R28のうち隣接する基は互いに結合して炭化水素環、アリール環またはヘテロアリール環を形成していてもよく、R29は水素または置換されていてもよいアリールである。
式(A)中のYは-O-であることが好ましい。
21~R28のうち隣接する基は互いに結合して炭化水素環、アリール環またはヘテロアリール環を形成していてもよい。環を形成しない場合が下記式(A-1)で表される基であり、環を形成した場合としては例えば下記式(A-2)~式(A-14)で表される基があげられる。なお、式(A-1)~式(A-14)のいずれかで表される基における少なくとも1つの水素はアルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アリールオキシ、アリールチオ、トリアルキルシリル、トリシクロアルキルシリル、ジアルキルシクロアルキルシリル、アルキルジシクロアルキルシリル、ジアリール(2つのアリールは互いに連結基を介して結合していてもよい)置換アミノ、ジヘテロアリール置換アミノ、アリールヘテロアリール置換アミノ、ハロゲン、ヒドロキシまたはシアノで置換されていてもよい。
Figure 2024054074000088
隣接する基が互いに結合してできた環としては、炭化水素環であれば例えばシクロヘキサン環があげられ、アリール環やヘテロアリール環としては上述したR21~R28における「アリール」や「ヘテロアリール」で説明した環構造があげられ、これらの環は式(A-1)における1つまたは2つのベンゼン環と縮合するように形成される。
式(A)で表される基は、式(A)のいずれかの位置の1つの水素を除いて得られる基であり、*が該位置を示す。すなわち、式(A)で表される基はいずれの位置を結合位置としていてもよい。例えば、式(A)の構造中の2つのベンゼン環上のいずれかの炭素原子、式(A)の構造中のR21~R28のうち隣接する基が互いに結合して形成されたいずれかの環上の原子、または式(A)の構造中のYとしての「>N-R29」におけるR29中のいずれかの位置、または「>N-R29」におけるN(R29が結合手となる)と直接結合する基となることができる。式(A-1)~式(A-14)のいずれかで表される基においても同様である。
式(A)で表される基としては、例えば式(A-1)~式(A-14)のいずれかで表される基があげられ、式(A-1)~式(A-5)および式(A-12)~式(A-14)のいずれかで表される基が好ましく、式(A-1)~式(A-4)のいずれかで表される基がより好ましく、式(A-1)、式(A-3)および式(A-4)のいずれかで表される基がさらに好ましく、式(A-1)で表される基が特に好ましい。
式(A)で表される基としては、例えば以下の基があげられる。式中のYおよび*は上記と同じ定義である。
Figure 2024054074000089
Figure 2024054074000090
式(3-H)で表される化合物においては、式(A)で表される基は、式(3-X1)または式(3-X2)中のナフタレン環、式(3-X3)中の単結合および式(3-X3)中のAr3のいずれか1つと結合した形態が好ましい。
また、式(3-H)で表されるアントラセン化合物の化学構造中の水素は、その全てまたは一部が重水素であってもよい。
ホストとしてのアントラセン化合物は、例えば下記式(3-H2)で表される化合物であってもよい。
Figure 2024054074000091
式(3-H2)中、Arcは、置換されていてもよいアリールまたは置換されていてもよいヘテロアリールであり、Rcは、水素、アルキル、またはシクロアルキルであり、Ar11、Ar12、Ar13、Ar14、Ar15、Ar16、Ar17、およびAr18は、それぞれ独立して、水素、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいジアリールアミノ、置換されていてもよいジヘテロアリールアミノ、置換されていてもよいアリールヘテロアリールアミノ、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいシクロアルキル、置換されていてもよいアルケニル、置換されていてもよいアルコキシ、置換されていてもよいアリールオキシ、置換されていてもよいアリールチオ、または置換されていてもよいシリルであり、式(3-H2)で表される化合物における少なくとも1つの水素はハロゲン、シアノ、または重水素で置換されていてもよい。
式(3-H2)中の、「置換されていてもよいアリール」、「置換されていてもよいヘテロアリール」、「置換されていてもよいジアリールアミノ、「置換されていてもよいジヘテロアリールアミノ」、「置換されていてもよいアリールヘテロアリールアミノ」、「置換されていてもよいアルキル」、「置換されていてもよいシクロアルキル」、「置換されていてもよいアルケニル」、「置換されていてもよいアルコキシ」、「置換されていてもよいアリールオキシ」、「置換されていてもよいアリールチオ」、または「置換されていてもよいシリル」の定義は上記式(3-H)でされたものと同様であり、式(3-H)における説明を引用することができる。
「置換されていてもよいアリール」としては、下記式(3-H2-X1)~式(3-H2-X8)のいずれかで表される基であることも好ましい。
Figure 2024054074000092
式(3-H2-X1)~式(3-H2-X8)において、*は結合位置を示す。式(3-H2-X1)~式(3-H2-X3)において、Ar21、Ar22、およびAr23は、それぞれ独立して、水素、フェニル、ビフェニリル、テルフェニリル、クアテルフェニリル、ナフチル、フェナントリル、フルオレニル、ベンゾフルオレニル、クリセニル、トリフェニレニル、ピレニル、アントラセニル、または式(A)で表される基である。なお、式(3-H2)の説明において、式(A)で表される基は、式(3-H)で表されるアントラセン化合物において説明したものと同じである。
式(3-H2-X4)~式(3-H2-X8)において、Ar24、Ar25、Ar26、Ar27、Ar28、Ar29、およびAr30は、それぞれ独立して、水素、フェニル、ビフェニリル、テルフェニリル、ナフチル、フェナントリル、フルオレニル、クリセニル、トリフェニレニル、ピレニル、または式(A)で表される基である。また、式(3-H2-X1)~式(3-H2-X8)で表される基のそれぞれにおけるいずれか1つまたは2つ以上の水素は、炭素数1~6のアルキル(好ましくはメチルまたはt-ブチル)で置換されていてもよい。
さらに、「置換されていてもよいアリール」の好ましい例としては、フェニル、ビフェニリル、テルフェニリル、ナフチル、フェナントリル、フルオレニル、クリセニル、トリフェニレニル、ピレニル、および式(A)で表される基からなる群より選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよい、テルフェニリル(特に、m-テルフェニル-5’-イル)があげられる。
「置換されていてもよいヘテロアリール」としては、式(A)で表される基もあげられる。そのほか、「置換されていてもよいアリール」および「置換されていてもよいヘテロアリール」の具体例としては、ジベンゾフリル、ナフトベンゾフリル、フェニル置換ジベンゾフリル等があげられる。
式(3-H2)で表される化合物における少なくとも1つの水素はハロゲン、シアノ、または重水素で置換されていてもよい。この場合の「ハロゲン」としては、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素があげられる。特に、式(3-H2)で表される化合物における全ての水素が重水素で置換された化合物が好ましい。
式(3-H2)中、Rcは水素、アルキル、またはシクロアルキルであり、水素、メチル、またはt-ブチルであることが好ましく、水素であることがより好ましい。
式(3-H2)中、Ar11~Ar18の少なくとも2つが置換されていてもよいアリールまたは置換されていてもよいヘテロアリールであることが好ましい。すなわち、式(3-H2)で表されるアントラセン化合物は、アントラセン環に、置換されていてもよいアリールおよび置換されていてもよいヘテロアリールからなる群より選択される置換基が少なくとも3つ結合した構造を有することが好ましい。
式(3-H2)で表されるアントラセン化合物は、Ar11~Ar18の2つが置換されていてもよいアリールまたは置換されていてもよいヘテロアリールであり、他の6つが水素、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいシクロアルキル、置換されていてもよいアルケニル、または置換されていてもよいアルコキシであることがより好ましい。すなわち、式(3-H2)で表されるアントラセン化合物は、置換されていてもよいアリールおよび置換されていてもよいヘテロアリールからなる群より選択される置換基が、アントラセン環に3つ結合した構造を有することがより好ましい。
式(3-H2)で表されるアントラセン化合物は、Ar11~Ar18のいずれか2つが置換されていてもよいアリールまたは置換されていてもよいヘテロアリールであり、他の6つが水素、メチル、またはt-ブチルであることがより好ましい。
さらに、式(3-H2)中、Rcが水素であり、かつAr11~Ar18のいずれか6つが水素であることが好ましい。
式(3-H2)で表されるアントラセン化合物は下記式(3-H2-A)、(3-H2-B)、(3-H2-C)、(3-H2-D)、または(3-H2-E)で表されるアントラセン化合物であることが好ましい。
Figure 2024054074000093
式(3-H2-A)、(3-H2-B)、(3-H2-C)、(3-H2-D)または(3-H2-E)中、Arc’、Ar11’、Ar12’、Ar13’、Ar14’、Ar15’、Ar17’、およびAr18’はそれぞれ独立してフェニル、ビフェニリル、テルフェニリル、クアテルフェニリル、ナフチル、フェナントリル、フルオレニル、ベンゾフルオレニル、クリセニル、トリフェニレニル、ピレニル、または、式(A)で表される基であり、これらの基における少なくとも1つの水素は、フェニル、ビフェニリル、テルフェニリル、クアテルフェニリル、ナフチル、フェナントリル、フルオレニル、ベンゾフルオレニル、クリセニル、トリフェニレニル、ピレニル、または、式(A)で表される基で置換されていてもよい。ここで、フルオレニルおよびベンゾフルオレニルにおけるメチレンの水素がいずれもフェニルで置換されているときは、これらのフェニルは互いに単結合で結合していてもよい。Arc’、Ar11’、Ar12’、Ar13’、Ar14’、Ar15’、Ar17’、およびAr18’が結合していないアントラセン環の炭素原子には水素の代わりにメチルまたはt-ブチルが結合していてもよい。
Arc’、Ar11’、Ar12’、Ar13’、Ar14’、Ar15’、Ar17’、およびAr18’が、それぞれ置換もしくは無置換のフェニルまたは置換もしくは無置換のナフチルであるときは、上記の式(3-H2-X1)~式(3-H2-X8)のいずれかで表される基であることが好ましい。
Arc’、Ar11’、Ar12’、Ar13’、Ar14’、Ar15’、Ar17’、およびAr18’はそれぞれ独立してフェニル、ビフェニリル(特に、ビフェニル-2-イルまたはビフェニル-4-イル)、テルフェニリル(特に、m-テルフェニル-5’-イル)、ナフチル、フェナントリル、フルオレニル、または、上記の式(A-1)~式(A-4)のいずれかで表される基であることがより好ましく、このとき、これらの基における少なくとも1つの水素は、フェニル、ビフェニリル、ナフチル、フェナントリル、フルオレニル、または、上記の式(A-1)~式(A-4)のいずれかで表される基で置換されていてもよい。
また、式(3-H2-A)、(3-H2-B)、(3-H2-C)、(3-H2-D)、または(3-H2-E)で表される化合物における少なくとも1つの水素はハロゲン、シアノ、または重水素置換されていてもよい。また重水素化された形態は好ましく、アントラセン環がすべて重水素化された形態、あるいはすべての水素原子が重水素化された形態が好ましい。
特に好ましい式(3-H2)で表されるアントラセン化合物として、下記式(3-H2-Aa)で表されるアントラセン化合物をあげることができる。
Figure 2024054074000094
式(3-H2-Aa)中、Arc’、Ar14’、およびAr15’はそれぞれ独立して、フェニル、ビフェニリル、テルフェニリル、ナフチル、フェナントリル、フルオレニル、ベンゾフルオレニル、クリセニル、トリフェニレニル、ピレニル、または上記式(A-1)~式(A-11)のいずれかで表される基であり、これらの基における少なくとも1つの水素は、フェニル、ビフェニリル、テルフェニリル、ナフチル、フェナントリル、フルオレニル、ベンゾフルオレニル、クリセニル、トリフェニレニル、ピレニル、または式(A-1)~式(A-11)のいずれかで表される基で置換されていてもよい。ここで、フルオレニルおよびベンゾフルオレニルにおけるメチレンの水素がいずれもフェニルで置換されているときは、これらのフェニルは互いに単結合で結合していてもよい。また、Arc’、Ar14’、およびAr15’が結合していないアントラセン環上の炭素原子には水素の代わりにメチルまたはt-ブチルが置換していてもよい。式(3-H2-Aa)で表される化合物における少なくとも1つの水素はハロゲンまたはシアノで置換されていてもよく、かつ式(3-H2-Aa)で表される化合物における少なくとも1つの水素は重水素で置換されている。
式(3-H2-Aa)中、Arc’、Ar14’、およびAr15’はそれぞれ独立してフェニル、ビフェニリル、テルフェニリル、ナフチル、フェナントリル、フルオレニル、または上記式(A-1)~式(A-4)のいずれかで表される基であることが好ましく、これらの基における少なくとも1つの水素は、フェニル、ナフチル、フェナントリル、フルオレニル、または式(A-1)~式(A-4)のいずれかで表される基で置換されていてもよい。
式(3-H2-Aa)で表される化合物においては、少なくとも、アントラセン環の10位の炭素(Arc’が結合する炭素を9位とする)に結合する水素が重水素に置換されていることが好ましい。すなわち、式(3-H2-Aa)で表される化合物は、下記式(3-H2-Ab)で表される化合物であることが好ましい。なお、式(3-H2-Ab)中、Dは重水素であり、Arc’、Ar14’、およびAr15’は式(3-H2-Aa)中の定義と同一である。式(3-H2-Ab)におけるDは少なくともこの位置が重水素であることを示し、式(3-H2-Ab)におけるその他のいずれか1つ以上の水素が同時に重水素であってもよく、式(3-H2-Ab)における水素がいずれも重水素であることも好ましい。
Figure 2024054074000095
アントラセン化合物の具体的な例としては、例えば、式(3-131-Y)~式(3-182-Y)で表される化合物、式(3-183-N)、式(3-184-Y)~式(3-284-Y)、および式(3-500)~式(3-557)、および式(3-600)~式(3-605)、および式(3-606-Y)~式(3-626-Y)で表される化合物があげられる。これら式中の水素原子は部分的に、またはすべて重水素で置換されていてもよいが、特に好ましい重水素置換の形態に関しては個別に列挙している。式中のYは-O-、-S-、>N-R29(R29は上記と同じ定義)または>C(-R302(R30は連結していてもよいアリール、またはアルキル)のいずれでもよく、R29は例えばフェニル、R30は例えばメチルである。式番号は、例えばYがOの場合は、式(3-131-Y)は式(3-131-O)とし、Yが-S-または>N-R29の場合はそれぞれ式(3-131-S)または式(3-131-N)とする。
Figure 2024054074000096
Figure 2024054074000097
Figure 2024054074000098
Figure 2024054074000099
Figure 2024054074000100
Figure 2024054074000101
Figure 2024054074000102
Figure 2024054074000103
Figure 2024054074000104
Figure 2024054074000105
Figure 2024054074000106
Figure 2024054074000107
Figure 2024054074000108
Figure 2024054074000109
Figure 2024054074000110
Figure 2024054074000111
Figure 2024054074000112
Figure 2024054074000113
Figure 2024054074000114
Figure 2024054074000115
上記式中、Dは重水素である。
これらの化合物の中でも、式(3-131-Y)~式(3-134-Y)、式(3-138-Y)、式(3-140-Y)~式(3-143-Y)、式(3-150-Y)、式(3-153-Y)~式(3-156-Y)、式(3-166-Y)、式(3-168-Y)、式(3-173-Y)、式(3-177-Y)、式(3-180-Y)~式(3-183-N)、式(3-185-Y)、式(3-190-Y)、式(3-223-Y)、式(3-241-Y)、式(3-250-Y)、式(3-252-Y)~式(3-254-Y)、式(3-270-Y)~式(3-284-Y)、式(3-501)、式(3-507)、式(3-508)、式(3-509)、式(3-513)、式(3-514)、式(3-519)、式(3-521)、式(3-538)~式(3-547)もしくは式(3-600)~式(3-605)、および式(3-606-Y)~式(3-626-Y)で表される化合物が好ましい。また、Yは、-O-または>N-R29が好ましく、-O-であることがより好ましい。また重水素置換の形態も好ましい。
上記のアントラセン化合物は、アントラセン骨格の所望の位置に反応性基を有する化合物と、式(3-H)で表されるアントラセン化合物であればX、Ar4および式(A)の構造などの部分構造に反応性基を有する化合物を出発原料として、鈴木カップリング、根岸カップリング、その他の公知のカップリング反応を応用して製造することができる。これらの反応性化合物の反応性基としては、ハロゲンやボロン酸などがあげられる。具体的な製造方法としては、例えば国際公開第2014/141725号の段落[0089]~[0175]における合成法を参考にすることができる。
[フルオレン化合物]
式(4-H)で表される化合物は基本的にはホストとして機能する。
Figure 2024054074000116
式(4-H)中、
1からR10は、それぞれ独立して、水素、アリール、ヘテロアリール(当該ヘテロアリールは連結基を介して式(4-H)におけるフルオレン骨格と結合していてもよい)、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルコキシまたはアリールオキシであり、これらにおける少なくとも1つの水素はアリール、ヘテロアリール、アルキルまたはシクロアルキルで置換されていてもよく、また、R1とR2、R2とR3、R3とR4、R5とR6、R6とR7、R7とR8またはR9とR10がそれぞれ独立して結合して縮合環またはスピロ環を形成していてもよく、形成された環における少なくとも1つの水素はアリール、ヘテロアリール(当該ヘテロアリールは連結基を介して当該形成された環と結合していてもよい)、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルコキシまたはアリールオキシで置換されていてもよく、これらにおける少なくとも1つの水素はアリール、ヘテロアリール、アルキルまたはシクロアルキルで置換されていてもよく、式(4-H)で表される化合物における少なくとも1つの水素がハロゲン、シアノまたは重水素で置換されていてもよい。
式(4-H)の定義における各基の詳細は、上述した、式(1)の多環芳香族化合物における説明を引用することができる。
1からR10におけるアルケニルとしては、例えば、炭素数2~30のアルケニルがあげられ、炭素数2~20のアルケニルが好ましく、炭素数2~10のアルケニルがより好ましく、炭素数2~6のアルケニルがさらに好ましく、炭素数2~4のアルケニルが特に好ましい。好ましいアルケニルは、ビニル、1-プロペニル、2-プロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、3-ペンテニル、4-ペンテニル、1-ヘキセニル、2-ヘキセニル、3-ヘキセニル、4-ヘキセニル、または5-ヘキセニルである。
なお、ヘテロアリールの具体例として、下記式(4-Ar1)、式(4-Ar2)、式(4-Ar3)、式(4-Ar4)または式(4-Ar5)の化合物から任意の1つの水素原子を除いて表される1価の基もあげられる。
Figure 2024054074000117
式(4-Ar1)から式(4-Ar5)中、Y1は、それぞれ独立して、O、SまたはN-Rであり、Rはフェニル、ビフェニリル、ナフチル、アントラセニルまたは水素であり、式(4-Ar1)から式(4-Ar5)の構造における少なくとも1つの水素はフェニル、ビフェニリル、ナフチル、アントラセニル、フェナントリル、メチル、エチル、プロピル、または、ブチルで置換されていてもよい。
これらのヘテロアリールは、連結基を介して、式(4-H)におけるフルオレン骨格と結合していてもよい。すなわち、式(4-H)におけるフルオレン骨格と上記ヘテロアリールとが直接結合するだけでなく、それらの間に連結基を介して結合してもよい。この連結基としては、フェニレン、ビフェニレン、ナフチレン、アントラセニレン、メチレン、エチレン、-OCH2CH2-、-CH2CH2O-、または、-OCH2CH2O-などがあげられる。
また、式(4-H)中のR1とR2、R2とR3、R3とR4、R5とR6、R6とR7またはR7とR8がそれぞれ独立して結合して縮合環を、R9とR10が結合してスピロ環を形成していてもよい。R1からR8により形成された縮合環は、式(4-H)におけるベンゼン環に縮合する環であり、脂肪族環または芳香族環である。好ましくは芳香族環であり、式(4-H)におけるベンゼン環を含めた構造としてはナフタレン環やフェナントレン環などがあげられる。R9とR10により形成されたスピロ環は、式(4-H)における5員環にスピロ結合する環であり、脂肪族環または芳香族環である。好ましくは芳香族環であり、フルオレン環などがあげられる。
式(4-H)で表される化合物は、好ましくは、下記式(4-H-1)、式(4-H-2)または式(4-H-3)で表される化合物であり、それぞれ、式(4-H)においてR1とR2が結合して形成されたベンゼン環が縮合した化合物、式(4-H)においてR3とR4が結合して形成されたベンゼン環が縮合した化合物、式(4-H)においてR1からR8のいずれもが結合していない化合物である。
Figure 2024054074000118
式(4-H-1)、式(4-H-2)および式(4-H-3)におけるR1からR10の定義は式(4-H)において対応するR1からR10と同じであり、式(4-H-1)および式(4-H-2)におけるR11からR14の定義も式(4-H)におけるR1からR10と同じである。
式(4-H)で表される化合物は、さらに好ましくは、下記式(4-H-1A)、式(4-H-2A)または式(4-H-3A)で表される化合物であり、それぞれ、式(4-H-1)、式(4-H-2)または式(4-H-3)においてR9とR10が結合してスピロ-フルオレン環が形成された化合物である。
Figure 2024054074000119
式(4-H-1A)、式(4-H-2A)および式(4-H-3A)におけるR2からR7の定義は式(4-H-1)、式(4-H-2)および式(4-H-3)において対応するR2からR7と同じであり、式(4-H-1A)および式(4-H-2A)におけるR11からR14の定義も式(4-H-1)および式(4-H-2)におけるR11からR14と同じである。
また、式(4-H)で表される化合物における水素は、その全てまたは一部がハロゲン、シアノまたは重水素で置換されていてもよい。
ホストとしてのフルオレン化合物のさらに具体的な例としては、以下の構造式で表される化合物があげられる。
Figure 2024054074000120
[ジベンゾクリセン化合物]
ホストとしてのジベンゾクリセン化合物は、例えば下記式(5-H)で表される化合物である。
Figure 2024054074000121
式(5-H)中、R1からR16は、それぞれ独立して、水素、アリール、ヘテロアリール(当該ヘテロアリールは連結基を介して式(5-H)におけるジベンゾクリセン骨格と結合していてもよい)、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルコキシまたはアリールオキシであり、これらにおける少なくとも1つの水素はアリール、ヘテロアリール、アルキルまたはシクロアルキルで置換されていてもよく、また、R1からR16のうち隣接する基同士が結合して縮合環を形成していてもよく、形成された環における少なくとも1つの水素はアリール、ヘテロアリール(当該ヘテロアリールは連結基を介して当該形成された環と結合していてもよい)、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルコキシまたはアリールオキシで置換されていてもよく、これらにおける少なくとも1つの水素はアリール、ヘテロアリール、アルキルまたはシクロアルキルで置換されていてもよく、式(5-H)で表される化合物における少なくとも1つの水素がハロゲン、シアノまたは重水素で置換されていてもよい。
式(5-H)の定義における各基の詳細は、上述した、式(1)の多環芳香族化合物における説明を引用することができる。
式(5-H)の定義におけるアルケニルとしては、例えば、炭素数2~30のアルケニルがあげられ、炭素数2~20のアルケニルが好ましく、炭素数2~10のアルケニルがより好ましく、炭素数2~6のアルケニルがさらに好ましく、炭素数2~4のアルケニルが特に好ましい。好ましいアルケニルは、ビニル、1-プロペニル、2-プロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、3-ペンテニル、4-ペンテニル、1-ヘキセニル、2-ヘキセニル、3-ヘキセニル、4-ヘキセニル、または5-ヘキセニルである。
なお、ヘテロアリールの具体例として、下記式(5-Ar1)、式(5-Ar2)、式(5-Ar3)、式(5-Ar4)または式(5-Ar5)の化合物から任意の1つの水素原子を除いて表される1価の基もあげられる。
Figure 2024054074000122
式(5-Ar1)から式(5-Ar5)中、Y1は、それぞれ独立して、O、SまたはN-Rであり、Rはフェニル、ビフェニリル、ナフチル、アントラセニルまたは水素であり、式(5-Ar1)から式(5-Ar5)の構造における少なくとも1つの水素はフェニル、ビフェニリル、ナフチル、アントラセニル、フェナントリル、メチル、エチル、プロピル、または、ブチルで置換されていてもよい。
これらのヘテロアリールは、連結基を介して、式(5-H)におけるジベンゾクリセン骨格と結合していてもよい。すなわち、式(5-H)におけるジベンゾクリセン骨格と上記ヘテロアリールとが直接結合するだけでなく、それらの間に連結基を介して結合してもよい。この連結基としては、フェニレン、ビフェニレン、ナフチレン、アントラセニレン、メチレン、エチレン、-OCH2CH2-、-CH2CH2O-、または、-OCH2CH2O-などがあげられる。
式(5-H)で表される化合物は、好ましくは、R1、R4、R5、R8、R9、R12、R13およびR16は水素である。この場合、式(5-H)中のR2、R3、R6、R7、R10、R11、R14およびR15は、それぞれ独立して、水素、フェニル、ビフェニリル、ナフチル、アントラセニル、フェナントリル、式(5-Ar1)、式(5-Ar2)、式(5-Ar3)、式(5-Ar4)もしくは式(5-Ar5)の構造を有する1価の基(当該構造を有する1価の基は、フェニレン、ビフェニレン、ナフチレン、アントラセニレン、メチレン、エチレン、-OCH2CH2-、-CH2CH2O-、または、-OCH2CH2O-を介して、式(5-H)におけるジベンゾクリセン骨格と結合していてもよい)、メチル、エチル、プロピル、または、ブチルであることが好ましい。
式(5-H)で表される化合物は、より好ましくは、R1、R2、R4、R5、R7、R8、R9、R10、R12、R13、R15およびR16は水素である。この場合、式(5-H)中のR3、R6、R11およびR14の少なくとも1つ(好ましくは1つまたは2つ、より好ましくは1つ)は、単結合、フェニレン、ビフェニレン、ナフチレン、アントラセニレン、メチレン、エチレン、-OCH2CH2-、-CH2CH2O-、または、-OCH2CH2O-を介した、式(5-Ar1)、式(5-Ar2)、式(5-Ar3)、式(5-Ar4)または式(5-Ar5)の構造を有する1価の基であり、前記少なくとも1つ以外(すなわち、前記構造を有する1価の基が置換した位置以外)は水素、フェニル、ビフェニリル、ナフチル、アントラセニル、メチル、エチル、プロピル、または、ブチルであり、これらにおける少なくとも1つの水素は、フェニル、ビフェニリル、ナフチル、アントラセニル、メチル、エチル、プロピル、または、ブチルで置換されていてもよい。
また、式(5-H)中のR2、R3、R6、R7、R10、R11、R14およびR15として、式(5-Ar1)から式(5-Ar5)で表される構造を有する1価の基が選択された場合には、当該構造における少なくとも1つの水素は式(5-H)中のR1からR16のいずれかと結合して単結合を形成していてもよい。
ホストとしてのジベンゾクリセン化合物のさらに具体的な例としては、以下の構造式で表される化合物があげられる。
Figure 2024054074000123
Figure 2024054074000124
[式(H1)、(H2)および(H3)のいずれかで表される化合物]
ホスト材料としては、例えば、下記式(H1)、(H2)および(H3)のいずれかで表される化合物を用いることもできる。
Figure 2024054074000125
式(H1)、(H2)および(H3)中、L1は、単結合、または少なくともアリーレンもしくはヘテロアリーレンを含む二価の基である。具体的には、L1は単結合であるか、または炭素数6~24のアリーレン、炭素数2~24のヘテロアリーレン、炭素数6~24のヘテロアリーレンアリーレンもしくは炭素数6~24のアリーレンヘテロアリーレンアリーレン、またはこれらのいずれか2つを-O-、-S-、-CH2-、-Si(-Arx)2-(Arxはアリール)、またはシクロアルキレンで連結して形成される二価の基であればよい。L1中のアリーレンとしては、炭素数6~16のアリーレンが好ましく、炭素数6~12のアリーレンがより好ましく、炭素数6~10のアリーレンが特に好ましく、具体的には、ベンゼン環、ビフェニル環、テルフェニル環およびフルオレン環などの二価の基があげられる。L1中のヘテロアリーレンとしては、炭素数2~24のヘテロアリーレンが好ましく、炭素数2~20のヘテロアリーレンがより好ましく、炭素数2~15のヘテロアリーレンがさらに好ましく、炭素数2~10のヘテロアリーレンが特に好ましく、具体的には、ピロール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環(フラザン環等)、チアジアゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、ピラゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピラジン環、トリアジン環、インドール環、イソインドール環、1H-インダゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、1H-ベンゾトリアゾール環、キノリン環、イソキノリン環、シンノリン環、キナゾリン環、キノキサリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、プリン環、プテリジン環、カルバゾール環、アクリジン環、フェノキサチイン環、フェノキサジン環、フェノチアジン環、フェナジン環、インドリジン環、フラン環、ベンゾフラン環、イソベンゾフラン環、ジベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ジベンゾチオフェン環、およびチアントレン環などの二価の基があげられる。上記各式で表される化合物における少なくとも1つの水素は、置換基群Zから選択される少なくとも1つの基または重水素で置換されていてもよく、例えば炭素数1~6のアルキル、シアノ、ハロゲンまたは重水素で置換されていてもよい。
好ましい具体例としては、以下に列挙したいずれかの構造式で表される化合物があげられる。なお、以下に列挙した構造式においては、少なくとも1つの水素が、ハロゲン、シアノ、炭素数1~4のアルキル(例えばメチルやt-ブチル)、フェニルまたはナフチルなどで置換されていてもよい。
Figure 2024054074000126
Figure 2024054074000127
Figure 2024054074000128
Figure 2024054074000129
[正孔輸送性ホスト材料(HH)および電子輸送性ホスト材料(EH)]
正孔輸送性ホスト材料(HH)および電子輸送性ホスト材料(EH)は、HOMO(Highest Occupied Molecular Orbital)およびLUMO(Lowest Unoccupied Molecular Orbital)について、以下の関係を満たす。
正孔輸送性ホスト材料(HH)のHOMOは電子輸送性ホスト材料(EH)のHOMOより浅く、かつ電子輸送性ホスト材料(EH)のLUMOは正孔輸送性ホスト材料(HH)のLUMOより深い。
また、エミッティングドーパントのHOMOが正孔輸送性ホスト材料(HH)のHOMOより浅いか、または、エミッティングドーパントのLUMOが電子輸送性ホスト材料(EH)のLUMOより深いことが好ましい。
また、正孔輸送性ホスト材料(HH)および電子輸送性ホスト材料(EH)の最低励起三重項エネルギー準位(ET1)は、発光層内でのTADFの発生を阻害せず促進させる観点から、発光層内において最も高いET1を有するエミッティングドーパントまたはアシスティングドーパントのET1に比べて高いことが好ましく、具体的には、ホスト材料のET1は、上記のエミッティングドーパントまたはアシスティングドーパントのET1に比べて0.01eV以上高いことが好ましく、0.03eV以上高いことがより好ましく、0.1eV以上高いことがさらに好ましい。また、ホスト材料のET1は2.47eV以上が好ましく、2.49eV以上がより好ましく、2.56eV以上が更に好ましい。
なお、発光層に隣接する正孔輸送層に正孔輸送性ホスト材料を用い、かつこの発光層に隣接する電子輸送層に電子輸送性ホスト材料を用いることも好ましい。発光層から隣接層へのキャリア漏れ・エネルギー漏れが起こりにくくなり、高い効率の有機EL素子が得られるからである。発光層中のホスト材料(正孔輸送性ホスト材料)と正孔輸送層材料とは同じであっても異なっていてもよい。また、発光層中のホスト材料(電子輸送性ホスト材料)と電子輸送層の材料とは同じであっても異なっていてもよい。
好ましい正孔輸送性ホスト材料(HH)の例としては、式(HH-1)で表されるか、または式(HH-1)で表される部分構造を有し、アリール環およびヘテロアリール環からなる群より選択される少なくとも3つの環を含む構造を有する化合物をあげることができる。この化合物は、イミン構造(-N=C-;ヘテロアリール環の部分構造を含む)、ホウ素(>B-)、およびシアノ(CN)のいずれも含まないことが好ましい。
Figure 2024054074000130
式(HH-1)において、
Qは、>O、>S、または、>N-AHであり、
式(HH-1)における2つのフェニルそれぞれにおけるQの結合する炭素原子の隣の1つの炭素原子は、互いに、Lで結合していてもよく、
Lは、単結合、>O、>S、または>C(-AH2であり、
Hは、水素、アリール、またはヘテロアリールであり、>C(-AH2における2つのAHは互いに結合していてもよい。
正孔輸送性ホスト材料が式(HH-1)で表される構造を部分構造として含むとき、この部分構造を1つ含むものであってもよいが2つ以上含むことも好ましい。2つ以上含む場合、その2つ以上の部分構造は互いに同じであっても異なっていてもよい。2つ以上の部分構造は互いに単結合で結合していてもよく、部分構造に含まれる任意の環を共有するようにして結合していてもよく、部分構造に含まれる任意の環同士が縮合するようにして結合していてもよい。部分構造はさらに、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、またはアリールオキシから選択される置換基を有していてもよい。
上記の式(HH-1)で表されるか、または式(HH-1)で表される部分構造を有する化合物は、アリール環およびヘテロアリール環からなる群より選択される少なくとも3つの環を含む構造を有する。含まれる環の数は6以上であることが好ましく、8以上であることがより好ましい。また、20以下であることが好ましく、15以下であることがより好ましく、10以下であることがさらに好ましい。環の数は単環としての数を意味し、縮合環については、縮合環を構成する単環を数えた数とする。
正孔輸送性ホスト材料は、トリアリールアミン構造、カルバゾール環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、およびフェノキサジンもしくはフェノチアジンを含む縮合多環からなる群より選択される1つ以上の部分構造を含む化合物であることが好ましい。正孔輸送性ホスト材料はこのような部分構造を1つ含むものであってもよいが2つ以上含むことも好ましい。2つ以上含む場合、その2つ以上の部分構造は互いに同じであっても異なっていてもよい。
正孔輸送性ホスト材料の具体例としては、以下の化合物をあげることができる。
Figure 2024054074000131
Figure 2024054074000132
Figure 2024054074000133
Figure 2024054074000134
Figure 2024054074000135
Figure 2024054074000136
Figure 2024054074000137
Figure 2024054074000138
Figure 2024054074000139
Figure 2024054074000140
Figure 2024054074000141
Figure 2024054074000142
Figure 2024054074000143
上記のうち、HH-1-1、HH-1-2、HH-1-4~HH-1-12、HH-1-17、HH-1-18、HH-1-20~HH-1-24、HH-1-82、HH-1-84~HH-1-89、HH-1-91、HH-1-92、HH-1-106~HH-1-108、およびHH-1-109~HH-1-115が好ましい。
電子輸送性ホスト材料(EH)の例としては、式(EH-1A)~(EH-1D)で表されるか、または式(EH-1A)~(EH-1D)で表される部分構造を有し、アリール環およびヘテロアリール環からなる群より選択される少なくとも3つの環を含む構造を有する化合物をあげることができる。
Figure 2024054074000144
式(EH-1A)~(EH-1D)において、
Arは、N=Cを環を構成する部分構造として含むヘテロアリール環であり、
Zは、単結合、-O-、-S-、または-N(-AE)-であり、
Zの結合する炭素原子の隣の炭素原子とZの結合するAEとは、互いにLで結合していてもよく、
Lは、単結合、>O、>Sまたは>C(-AE2であり、
Eは、アリール、ヘテロアリール、またはトリアリールシリルであり、>C(-AE2における2つのAEは互いに結合していてもよく、
XはC,PまたはSであり、
XがCのとき、n=2、m=1であり、
XがPのとき、n=3、m=1であり、
XがSのとき、n=2、m=1~2である。
上記の式(EH-1A)~(EH-1D)で表されるか、または式(EH-1A)~(EH-1D)で表される部分構造を有する化合物はアリール環およびヘテロアリール環からなる群より選択される少なくとも3つの環を含む構造を有する。含まれる環の数は4以上であることが好ましく、6以上であることがより好ましく、8以上であることがさらに好ましい。また、20以下であることが好ましく、15以下であることがより好ましく、10以下であることがさらに好ましい。環の数は単環としての数を意味し、縮合環については、縮合環を構成する単環を数えた数とする。
電子輸送性ホスト材料が式(EH-1A)~(EH-1D)で表される構造を部分構造として含むとき、この部分構造を1つ含むものであってもよいが2つ以上含むことも好ましい。2つ以上含む場合、その2つ以上の部分構造は互いに同じであっても異なっていてもよい。2つ以上の部分構造は互いに単結合で結合していてもよく、部分構造に含まれる任意の環を共有するようにして結合していてもよく、部分構造に含まれる任意の環同士が縮合するようにして結合していてもよい。部分構造はさらに、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、またはアリールオキシから選択される置換基を有していてもよい。
電子輸送性ホスト材料の具体例としては、以下の化合物をあげることができる。
Figure 2024054074000145
Figure 2024054074000146
Figure 2024054074000147
Figure 2024054074000148
Figure 2024054074000149
Figure 2024054074000150
Figure 2024054074000151
Figure 2024054074000152
Figure 2024054074000153
電子輸送性ホスト材料(式(EH-1)で表される部分構造を有する化合物)の別の好ましい例として、下記式(EH-1b)で表される多環芳香族化合物、または下記式(EH-1b)で表される構造を複数有する多環芳香族化合物の多量体をあげることができる。
Figure 2024054074000154
式(EH-1b)において、
1、R2、R3、R4およびR5(以降、「R1等」ともいう)は、それぞれ独立して、水素または置換基である。この置換基は置換基群Zより選択される置換基であればよい。
式(EH-1b)において、X1およびX2は、それぞれ独立して、>N-R(アミン性窒素)、>O、>C(-R)2、>Sまたは>Seであり、X1およびX2が共に>C(-R)2になることはなく、
前記>N-Rおよび>C(-R)2におけるRは、それぞれ独立して、水素または置換基群Zより選択される置換基であり、さらに、アリール、ヘテロアリール、アルキルまたはシクロアルキル(以上、第2置換基)で置換されていてもよく、前記>N-Rおよび>C(-R)2のRはそれぞれ独立して連結基または単結合により前記a環、b環およびc環の少なくとも1つの環と結合していてもよい。
1、Y2、Y3、Y4、Y5およびY6(以降、「Y1等」ともいう)は、それぞれ独立して、=C(-R)-または=N-(ピリジン性窒素)であり、少なくとも1つは=N-(ピリジン性窒素)であり、
前記=C(-R)-におけるRは、それぞれ独立して、水素または置換基群Zより選択される置換基である。
前記R1、R2、R3、R4およびR5、ならびに、前記Y1~Y6としての=C(-R)-のRのうちの隣接する基同士が結合してa環、b環およびc環の少なくとも1つの環と共にアリール環またはヘテロアリール環を形成していてもよく、形成された環における少なくとも1つの水素は、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、ジアリールボリル(2つのアリールは単結合または連結基を介して結合していてもよい)、アルキル、シクロアルキル、アルコキシまたはアリールオキシ(以上、第1置換基)で置換されていてもよく、これらにおける少なくとも1つの水素はさらにアリール、ヘテロアリール、アルキルまたはシクロアルキル(以上、第2置換基)で置換されていてもよい。
式(EH-1b)で表される化合物および構造における少なくとも1つの水素は、シアノ、ハロゲンまたは重水素で置換されていてもよい。
式(EH-1b)において、R1、R2、R3、R4およびR5はいずれも水素であるか、または、R3およびR4がいずれも水素であり、かつR1、R2およびR5からなる群より選択されるいずれか1つ以上が水素以外の置換基であり、その他が水素であることが好ましい。置換基としては、アルキル、アルキルもしくはヘテロアリールで置換されていてもよいアリール、アルキルもしくはアリールで置換されていてもよいヘテロアリール、またはアルキルもしくはアリールで置換されていてもよいジアリールアミノが好ましい。このとき、アルキルとしては、炭素数1~6のアルキル(メチル、t-ブチルなど)が好ましく、アリールとしてはフェニルまたはビフェニルが好ましく、ヘテロアリールとしては、トリアジニル、カルバゾリル(2-カルバゾリル、3-カルバゾリル、9-カルバゾリルなど)、ピリミジニル、ピリジニル、ジベンゾフラニルまたはジベンゾチエニルが好ましい。具体例としては、フェニル、ビフェニル、ジフェニルトリアジニル、カルバゾリルトリアジニル、モノフェニルピリミジニル、ジフェニルピリミジニル、カルバゾリルトリアジニル、ピリジニル、ジベンゾフラニルおよびジベンゾチエニルがあげられる。
1等は、それぞれ独立して、=C(-R)-または=N-であり、少なくとも1つは=N-である。Y1~Y6のいずれが=N-であってもよい。好ましくは、Y1およびY6が=N-(a環がピリミジン環)、Y1またはY6が=N-(a環がピリジン環)、Y2およびY5が=N-(b環およびc環がピリジン環)、Y3およびY4が=N-(b環およびc環がピリジン環)、Y2~Y5が=N-(b環およびc環がピリミジン環)、Y1、Y3、Y4およびY6が=N-(a環がピリミジン環、b環およびc環がピリジン環)、Y1、Y2、Y5およびY6が=N-(a環がピリミジン環、b環およびc環がピリジン環)、Y1~Y6が=N-(a環、b環およびc環がピリミジン環)、Y2またはY5が=N-(b環またはc環がピリジン環)である。
また、以上の=N-の配置関係に加えて、X1およびX2が>Oであることが好ましく、下記式のいずれかで表される部分構造を含む多環芳香族化合物が好ましい。
Figure 2024054074000155
特に、式(EH-1b-N1)で表される部分構造を含む多環芳香族化合物は、Nがない構造と比べ、高いES1、高いET1、小さいΔES1T1を有する。
式(EH-1b)で表される多環芳香族化合物の具体例を以下に示す。
Figure 2024054074000156
Figure 2024054074000157
Figure 2024054074000158
Figure 2024054074000159
Figure 2024054074000160
Figure 2024054074000161
上記のうち、EH-1-1~EH-1-4、EH-1-10、EH-1-21~EH-1-25、EH-1-32、EH-1-33、EH-1-51~EH-1-59、EH-1-61、EH-1-66、EH-1-68、EH-1-71、EH-1-72、EH-1-90、EH-1-94~EH-1-99、EH-1-100、EH-1-101、EH-1-104,EH-1-115、EH-1-117、EH-1-120、EH-1-122、EH-1-123、EH-1-127~EH-1-130が好ましい。
正孔輸送性ホスト材料および電子輸送性ホスト材料の組み合わせは、正孔輸送性ホスト材料、電子輸送性ホスト材料およびドーパント材料のHOMO、LUMOおよび最低励起三重項エネルギー準位(ET1)によって選択される。
HOMOおよびLUMOに関しては、正孔輸送性ホスト材料のHOMO(HH)が電子輸送性ホスト材料のHOMO(EH)より浅く、電子輸送性ホスト材料のLUMO(EH)が正孔輸送性ホスト材料のLUMO(HH)より深い組み合わせを選び、より具体的には、HOMO(HH)がHOMO(EH)より0.10eV以上浅く、LUMO(HH)がHOMO(EH)より0.10eV以上深い組み合わせが好ましく、HOMO(HH)がHOMO(EH)より0.20eV以上浅く、LUMO(HH)がHOMO(EH)より0.20eV以上深い組み合わせがより好ましく、HOMO(HH)がHOMO(EH)より0.25eV以上浅く、LUMO(HH)がHOMO(EH)より0.25eV以上深い組み合わせがさらに好ましい。
正孔輸送性ホスト材料および電子輸送性ホスト材料はエキサイプレックス(exciplex)と呼ばれる会合体を形成する組み合わせであってもよい。エキサイプレックスは、比較的深いLUMO準位をもつ材料と、浅いHOMO準位をもつ材料間との間で形成しやすいことが一般に知られている。正孔輸送性ホスト材料および電子輸送性ホスト材料の相互作用、具体的にはエキサイプレックスを形成しているか否かは、正孔輸送性ホスト材料および電子輸送性ホスト材料のみからなる単層膜を発光層の形成条件と同様にして形成して発光スペクトル(蛍光、りん光スペクトル)を測定し、得られた発光スペクトルを、正孔輸送性ホスト材料および電子輸送性ホスト材料それぞれが単独で示す発光スペクトルとを比較することで判断できる。正孔輸送性ホスト材料および電子輸送性ホスト材料を含む混合膜のスペクトルが、正孔輸送性ホスト材料の膜のスペクトル、および電子輸送性ホスト材料の膜のスペクトルのいずれとも異なる発光波長を示すことにより判断することができる。具体的には、スペクトルのピーク波長が10nm以上異なっていることを指標にすればよい。
エキサイプレックスを形成しない正孔輸送性ホスト材料および電子輸送性ホスト材料の組み合わせの具体例としては以下の組み合わせをあげることができる。前記のHOMO、LUMOおよびET1の物性値を満たすために、正孔輸送性ホスト材料においては、カルバゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、トリアリールアミン、インドロカルバゾールおよびベンゾオキサジノフェノキサジンを部分構造として有する化合物が好ましく、カルバゾール、ジベンゾフランおよびジベンゾチオフェンを部分構造として有する化合物がより好ましく、カルバゾールを部分構造として有する化合物がさらに好ましい。同様に、電子輸送性ホスト材料においては、ピリジン、トリアジン、ホスフィンオキシド、ベンゾフロピリジンおよびジベンゾオキサシリンを部分構造として有する化合物が好ましく、トリアジン、ホスフィンオキシド、ベンゾフロピリジンおよびジベンゾオキサシリンを部分構造として有する化合物がより好ましく、トリアジンを有する化合物がさらに好ましい。
より具体的には、正孔輸送性ホスト材料は、HH-1-1、HH-1-2、HH-1-4~HH-1-12、HH-1-17、HH-1-18、HH-1-20~HH-1-24、HH-1-82、HH-1-84~HH-1-89、HH-1-91、HH-1-92およびHH-1-106~HH-1-108からなる群より選択されることが好ましく、電子輸送性ホスト材料は、EH-1-1~EH-1-4、EH-1-10、EH-1-21~EH-1-25、EH-1-32、EH-1-33、EH-1-51~EH-1-59、EH-1-61、EH-1-71、EH-1-72、EH-1-90、EH-1-100、EH-1-101、EH-1-104、EH-1-117、EH-1-120、EH-1-122、EH-1-123、およびEH-1-127~EH-1-130からなる群より選択されることが好ましい。組み合わせとして好ましい例としては、化合物HH-1-1および化合物EH-1-22、化合物HH-1-1および化合物EH-1-23、化合物HH-1-1および化合物EH-1-24、化合物HH-1-2および化合物EH-1-22、化合物HH-1-2および化合物EH-1-23、化合物HH-1-2および化合物EH-1-24、または化合物HH-1-1および化合物EH-1-128があげられる。
エキサイプレックスを形成する正孔輸送性ホスト材料および電子輸送性ホスト材料の組み合わせの具体例としては以下の組み合わせをあげることができる。前記、HOMO、LUMOおよびET1の物性値を満たすために、正孔輸送性ホスト材料においては、カルバゾール、トリアリールアミン、インドロカルバゾールおよびベンゾオキサジノフェノキサジンを部分構造として有する化合物が好ましく、トリアリールアミン、インドロカルバゾールおよびベンゾオキサジノフェノキサジンを部分構造として有する化合物がより好ましく、トリアリールアミンを部分構造として有する化合物がさらに好ましい。同様に、電子輸送性ホスト材料においては、ピリジン、トリアジン、ホスフィンオキシドおよびベンゾフロピリジンを部分構造として有する化合物が好ましく、トリアジン、ホスフィンオキシド、ベンゾフロピリジンおよびジベンゾオキサシリンを部分構造として有する化合物がより好ましく、ホスフィンオキシドおよびトリアジンを有する化合物がさらに好ましい。
より具体的には、正孔輸送性ホスト材料は、HH-1-1、HH-1-2、HH-1-11、HH-1-12、HH-1-17、HH-1-18、HH-1-23、HH-1-24、およびHH-1-115からなる群より選択されることが好ましく、電子輸送性ホスト材料は、EH-1-1~EH-1-4、EH-1-21~EH-1-25、EH-1-51~EH-1-57、EH-1-59、EH-1-66、EH-1-68、EH-1-90、EH-1-94、EH-1-99、EH-1-100、EH-1-101、EH-1-104、EH-1-117、EH-1-120、EH-1-122、EH-1-123、およびEH-1-127~EH-1-130からなる群より選択されることが好ましい。組み合わせとして好ましい例としては、化合物HH-1-1および化合物EH-1-21、化合物HH-1-2および化合物EH-1-21、化合物HH-1-12および化合物EH-1-94、化合物HH-1-12および化合物EH-1-117、化合物HH-1-1および化合物EH-1-130、化合物HH-1-33および化合物EH-1-117、化合物HH-1-48および化合物EH-1-117、化合物HH-1-49および化合物EH-1-117、または化合物HH-1-115および化合物EH-1-99があげられる。
その他、具体的な正孔輸送性ホスト材料と電子輸送性ホスト材料との組み合わせについては、Organic Electronics 66(2019)227-24、Advanced.Functional Materals 25(2015)361-366.、Advanced Materials 26(2014)4730-4734.、ACS Applied Materials and Interfaces 8(2016)32984-32991.、ACS Applied Materals and Interfaces 2016,8,9806-9810、ACS Applied Materials and Interfaces 2016,8,32984-32991、Journal of Materials Chemisty C,2018,6,8784-8792、Angewante Chemie International Edition.2018,57,12380-12384、Advanced Functional Materials,24,2014,3970,Advanced Materials,26,2014,5684、Synthetic Metals,201,2015,49、およびNature Photonics,16,212-218(2022)などの記載を参照することができる。
<その他のドーパント材料>
式(1)で表される多環芳香族化合物は他のドーパント材料と組み合わせて用いられていてもよい。ただし、他のドーパント材料は1つの発光層中において式(1)で表される多環芳香族化合物の総質量に対し、100質量%未満であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることがさらに好ましく、10質量%以下であることが特に好ましい。他のドーパント材料としては、既知の化合物を用いることができ、所望の発光色に応じて様々な材料の中から選択することができる。具体的には、例えば、フェナントレン、アントラセン、ピレン、テトラセン、ペンタセン、ペリレン、ナフトピレン、ジベンゾピレン、ルブレンおよびクリセンなどの縮合環誘導体、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、ピラゾリン誘導体、スチルベン誘導体、チオフェン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、ビススチリルアントラセン誘導体やジスチリルベンゼン誘導体などのビススチリル誘導体(特開平1-245087号公報)、ビススチリルアリーレン誘導体(特開平2-247278号公報)、ジアザインダセン誘導体、フラン誘導体、ベンゾフラン誘導体、フェニルイソベンゾフラン、ジメシチルイソベンゾフラン、ジ(2-メチルフェニル)イソベンゾフラン、ジ(2-トリフルオロメチルフェニル)イソベンゾフラン、フェニルイソベンゾフランなどのイソベンゾフラン誘導体、ジベンゾフラン誘導体、7-ジアルキルアミノクマリン誘導体、7-ピペリジノクマリン誘導体、7-ヒドロキシクマリン誘導体、7-メトキシクマリン誘導体、7-アセトキシクマリン誘導体、3-ベンゾチアゾリルクマリン誘導体、3-ベンゾイミダゾリルクマリン誘導体、3-ベンゾオキサゾリルクマリン誘導体などのクマリン誘導体、ジシアノメチレンピラン誘導体、ジシアノメチレンチオピラン誘導体、ポリメチン誘導体、シアニン誘導体、オキソベンゾアントラセン誘導体、キサンテン誘導体、ローダミン誘導体、フルオレセイン誘導体、ピリリウム誘導体、カルボスチリル誘導体、アクリジン誘導体、オキサジン誘導体、フェニレンオキサイド誘導体、キナクリドン誘導体、キナゾリン誘導体、ピロロピリジン誘導体、フロピリジン誘導体、1,2,5-チアジアゾロピレン誘導体、ピロメテン誘導体、ペリノン誘導体、ピロロピロール誘導体、スクアリリウム誘導体、ビオラントロン誘導体、フェナジン誘導体、アクリドン誘導体、デアザフラビン誘導体、フルオレン誘導体およびベンゾフルオレン誘導体などがあげられる。
他のドーパント材料としては、国際公開第2015/102118号、国際公開第2020/162600号、特開2021-077890号公報の段落0097~0269等に記載のホウ素を含む多環芳香族化合物を用いることも好ましい。
<高分子化合物および高分子架橋体>
上述した発光層用材料(ホスト材料およびドーパント材料)は、これらに反応性置換基が置換した反応性化合物をモノマーとして高分子化させた高分子化合物、もしくはその高分子架橋体、または、主鎖型高分子と前記反応性化合物とを反応させたペンダント型高分子化合物、もしくはそのペンダント型高分子架橋体としても、発光層用材料に用いることができる。この場合の反応性置換基としては、式(1)で表される多環芳香族化合物での説明を引用できる。
このような高分子化合物および高分子架橋体の用途の詳細については後述する。
2-1-6.有機電界発光素子における電子注入層、電子輸送層
電子注入層107は、陰極108から移動してくる電子を、効率よく発光層105内または電子輸送層106内に注入する役割を果たす。電子輸送層106は、陰極108から注入された電子または陰極108から電子注入層107を介して注入された電子を、効率よく発光層105に輸送する役割を果たす。電子輸送層106および電子注入層107は、それぞれ、電子輸送・注入材料の一種または二種以上を積層、混合するか、電子輸送・注入材料と高分子結着剤の混合物により形成される。
電子注入・輸送層とは、陰極から電子が注入され、さらに電子を輸送することをつかさどる層であり、電子注入効率が高く、注入された電子を効率よく輸送することが望ましい。そのためには電子親和力が大きく、しかも電子移動度が大きく、さらに安定性に優れ、トラップとなる不純物が製造時および使用時に発生しにくい物質であることが好ましい。しかしながら、正孔と電子の輸送バランスを考えた場合に、陽極からの正孔が再結合せずに陰極側へ流れるのを効率よく阻止できる役割を主に果たす場合には、電子輸送能力がそれ程高くなくても、発光効率を向上させる効果は電子輸送能力が高い材料と同等に有する。したがって、本実施形態における電子注入・輸送層は、正孔の移動を効率よく阻止できる層の機能も含まれてもよい。
電子輸送層106または電子注入層107を形成する材料(電子輸送材料)としては、光導電材料において電子伝達化合物として従来から慣用されている化合物、有機EL素子の電子注入層および電子輸送層に使用されている公知の化合物の中から任意に選択して用いることができる。
電子輸送層または電子注入層に用いられる材料としては、炭素、水素、酸素、硫黄、ケイ素およびリンの中から選ばれる一種以上の原子で構成される芳香族環または複素芳香族環からなる化合物、ピロール誘導体およびその縮合環誘導体および電子受容性窒素を有する金属錯体の中から選ばれる少なくとも一種を含有することが好ましい。具体的には、ナフタレン、アントラセンなどの縮合環系芳香族環誘導体、4,4'-ビス(ジフェニルエテニル)ビフェニルに代表されるスチリル系芳香族環誘導体、ペリノン誘導体、クマリン誘導体、ナフタルイミド誘導体、アントラキノンやジフェノキノンなどのキノン誘導体、ホスフィンオキサイド誘導体、アリールニトリル誘導体およびインドール誘導体などがあげられる。電子受容性窒素を有する金属錯体としては、例えば、ヒドロキシフェニルオキサゾール錯体などのヒドロキシアゾール錯体、アゾメチン錯体、トロポロン金属錯体、フラボノール金属錯体およびベンゾキノリン金属錯体などがあげられる。これらの材料は単独でも用いられるが、異なる材料と混合して使用しても構わない。
また、他の電子伝達化合物の具体例として、ピリジン誘導体、ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、フェナントロリン誘導体、ペリノン誘導体、クマリン誘導体、ナフタルイミド誘導体、アントラキノン誘導体、ジフェノキノン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、ペリレン誘導体、オキサジアゾール誘導体(1,3-ビス[(4-t-ブチルフェニル)1,3,4-オキサジアゾリル]フェニレンなど)、チオフェン誘導体、トリアゾール誘導体(N-ナフチル-2,5-ジフェニル-1,3,4-トリアゾールなど)、チアジアゾール誘導体、オキシン誘導体の金属錯体、キノリノール系金属錯体、キノキサリン誘導体、キノキサリン誘導体のポリマー、ベンザゾール類化合物、ガリウム錯体、ピラゾール誘導体、パーフルオロ化フェニレン誘導体、トリアジン誘導体、ピラジン誘導体、ベンゾキノリン誘導体(2,2'-ビス(ベンゾ[h]キノリン-2-イル)-9,9'-スピロビフルオレンなど)、イミダゾピリジン誘導体、ボラン誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体(トリス(N-フェニルベンゾイミダゾール-2-イル)ベンゼンなど)、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、キノリン誘導体、テルピリジンなどのオリゴピリジン誘導体、ビピリジン誘導体、テルピリジン誘導体(1,3-ビス(2,2’:6’,2”-テルピリジン-4'-イル)ベンゼンなど)、ナフチリジン誘導体(ビス(1-ナフチル)-4-(1,8-ナフチリジン-2-イル)フェニルホスフィンオキサイドなど)、アルダジン誘導体、カルバゾール誘導体、インドール誘導体、ホスフィンオキサイド誘導体、ビススチリル誘導体などがあげられる。
また、電子受容性窒素を有する金属錯体を用いることもでき、例えば、キノリノール系金属錯体やヒドロキシフェニルオキサゾール錯体などのヒドロキシアゾール錯体、アゾメチン錯体、トロポロン金属錯体、フラボノール金属錯体およびベンゾキノリン金属錯体などがあげられる。
上述した材料は単独でも用いられるが、異なる材料と混合して使用しても構わない。
上述した材料の中でも、ボラン誘導体、ピリジン誘導体、フルオランテン誘導体、BO系誘導体、アントラセン誘導体、ベンゾフルオレン誘導体、ホスフィンオキサイド誘導体、ピリミジン誘導体、アリールニトリル誘導体、トリアジン誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、フェナントロリン誘導体、およびキノリノール系金属錯体が好ましい。
電子輸送層または電子注入層には、さらに、電子輸送層または電子注入層を形成する材料を還元できる物質を含んでいてもよい。この還元性物質は、一定の還元性を有する物質であれば、様々な物質が用いられ、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、アルカリ金属の酸化物、アルカリ金属のハロゲン化物、アルカリ土類金属の酸化物、アルカリ土類金属のハロゲン化物、希土類金属の酸化物、希土類金属のハロゲン化物、アルカリ金属の有機錯体、アルカリ土類金属の有機錯体および希土類金属の有機錯体からなる群から選択される少なくとも1つを好適に使用することができる。
好ましい還元性物質としては、Na(仕事関数2.36eV)、K(同2.28eV)、Rb(同2.16eV)またはCs(同1.95eV)などのアルカリ金属や、Ca(同2.9eV)、Sr(同2.0~2.5eV)またはBa(同2.52eV)などのアルカリ土類金属があげられ、仕事関数が2.9eV以下の物質が特に好ましい。これらのうち、より好ましい還元性物質は、K、RbまたはCsのアルカリ金属であり、さらに好ましくはRbまたはCsであり、最も好ましいのはCsである。これらのアルカリ金属は、特に還元能力が高く、電子輸送層または電子注入層を形成する材料への比較的少量の添加により、有機EL素子における発光輝度の向上や長寿命化が図られる。また、仕事関数が2.9eV以下の還元性物質として、これら2種以上のアルカリ金属の組み合わせも好ましく、特に、Csを含んだ組み合わせ、例えば、CsとNa、CsとK、CsとRb、またはCsとNaとKとの組み合わせが好ましい。Csを含むことにより、還元能力を効率的に発揮することができ、電子輸送層または電子注入層を形成する材料への添加により、有機EL素子における発光輝度の向上や長寿命化が図られる。
上述した電子注入層用材料および電子輸送層用材料は、これらに反応性置換基が置換した反応性化合物をモノマーとして高分子化させた高分子化合物、もしくはその高分子架橋体、または、主鎖型高分子と前記反応性化合物とを反応させたペンダント型高分子化合物、もしくはそのペンダント型高分子架橋体としても、電子層用材料に用いることができる。この場合の反応性置換基としては、式(1)で表される多環芳香族化合物での説明を引用できる。
このような高分子化合物および高分子架橋体の用途の詳細については後述する。
2-1-7.有機電界発光素子における陰極
陰極108は、電子注入層107および電子輸送層106を介して、発光層105に電子を注入する役割を果たす。
陰極108を形成する材料としては、電子を有機層に効率よく注入できる物質であれば特に限定されないが、陽極102を形成する材料と同様の材料を用いることができる。なかでも、スズ、インジウム、カルシウム、アルミニウム、銀、銅、ニッケル、クロム、金、白金、鉄、亜鉛、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウムおよびマグネシウムなどの金属またはそれらの合金(マグネシウム-銀合金、マグネシウム-インジウム合金、フッ化リチウム/アルミニウムなどのアルミニウム-リチウム合金など)などが好ましい。電子注入効率をあげて素子特性を向上させるためには、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、カルシウム、マグネシウムまたはこれら低仕事関数金属を含む合金が有効である。しかしながら、これらの低仕事関数金属は一般に大気中で不安定であることが多い。この点を改善するために、例えば、有機層に微量のリチウム、セシウムやマグネシウムをドーピングして、安定性の高い電極を使用する方法が知られている。その他のドーパントとしては、フッ化リチウム、フッ化セシウム、酸化リチウムおよび酸化セシウムのような無機塩も使用することができる。ただし、これらに限定されない。
さらに、電極保護のために白金、金、銀、銅、鉄、スズ、アルミニウムおよびインジウムなどの金属、またはこれら金属を用いた合金、そしてシリカ、チタニアおよび窒化ケイ素などの無機物、ポリビニルアルコール、塩化ビニル、炭化水素系高分子化合物などを積層することが、好ましい例としてあげられる。これらの電極の作製法も、抵抗加熱、電子ビーム蒸着、スパッタリング、イオンプレーティングおよびコーティングなど、導通を取ることができれば特に制限されない。
2-1-8.各層で用いてもよい結着剤
以上の正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層および電子注入層に用いられる材料は単独で各層を形成することができるが、高分子結着剤としてポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ(N-ビニルカルバゾール)、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリブタジエン、炭化水素樹脂、ケトン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアミド、エチルセルロース、酢酸ビニル樹脂、ABS樹脂、ポリウレタン樹脂などの溶剤可溶性樹脂や、フェノール樹脂、キシレン樹脂、石油樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂などの硬化性樹脂などに分散させて用いることも可能である。
2-1-9.有機電界発光素子の作製方法
有機EL素子を構成する各層は、各層を構成すべき材料を蒸着法、抵抗加熱蒸着、電子ビーム蒸着、スパッタリング、分子積層法、印刷法、スピンコート法またはキャスト法、コーティング法などの方法で薄膜とすることにより、形成することができる。このようにして形成された各層の膜厚については特に限定はなく、材料の性質に応じて適宜設定することができるが、通常2nm~5000nmの範囲である。膜厚は通常、水晶発振式膜厚測定装置などで測定できる。蒸着法を用いて薄膜化する場合、その蒸着条件は、材料の種類、膜の目的とする結晶構造および会合構造などにより異なる。蒸着条件は一般的に、ボート加熱温度+50~+400℃、真空度10-6~10-3Pa、蒸着速度0.01~50nm/秒、基板温度-150~+300℃、膜厚2nm~5μmの範囲で適宜設定することが好ましい。
このようにして得られた有機EL素子に直流電圧を印加する場合には、陽極を+、陰極を-の極性として印加すればよく、電圧2~40V程度を印加すると、透明または半透明の電極側(陽極または陰極、および両方)より発光が観測できる。また、この有機EL素子は、パルス電流や交流電流を印加した場合にも発光する。なお、印加する交流の波形は任意でよい。
次に、有機EL素子を作製する方法の一例として、陽極/正孔注入層/正孔輸送層/ホスト材料とドーパント材料からなる発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極からなる有機EL素子の作製法について説明する。
<蒸着法>
適当な基板上に、陽極材料の薄膜を蒸着法などにより形成させて陽極を作製した後、この陽極上に正孔注入層および正孔輸送層の薄膜を形成させる。この上にホスト材料とドーパント材料を共蒸着し薄膜を形成させて発光層とし、この発光層の上に電子輸送層、電子注入層を形成させ、さらに陰極用物質からなる薄膜を蒸着法などにより形成させて陰極とすることにより、目的の有機EL素子が得られる。なお、上述の有機EL素子の作製においては、作製順序を逆にして、陰極、電子注入層、電子輸送層、発光層、正孔輸送層、正孔注入層、陽極の順に作製することも可能である。
<湿式成膜法>
湿式成膜法は、有機EL素子の各有機層を形成し得る低分子化合物を液状の有機層形成用組成物として準備し、これを用いることによって実施される。この低分子化合物を溶解する適当な有機溶媒がない場合には、当該低分子化合物に反応性置換基を置換させた反応性化合物として溶解性機能を有する他のモノマーや主鎖型高分子と共に高分子化させた高分子化合物などから有機層形成用組成物を準備してもよい。
湿式成膜法は、一般的には、基板に有機層形成用組成物を塗布する塗布工程および塗布された有機層形成用組成物から溶媒を取り除く乾燥工程を経ることで塗膜を形成する。上記高分子化合物が架橋性置換基を有する場合(これを架橋性高分子化合物ともいう)には、この乾燥工程によりさらに架橋して高分子架橋体が形成される。塗布工程の違いにより、スピンコーターを用いる方法をスピンコート法、スリットコーターを用いる方法をスリットコート法、版を用いる方法をグラビア、オフセット、リバースオフセット、フレキソ印刷法、インクジェットプリンタを用いる方法をインクジェット法、霧状に吹付ける方法をスプレー法と呼ぶ。乾燥工程には、風乾、加熱、減圧乾燥などの方法がある。乾燥工程は1回のみ行なってもよく、異なる方法や条件を用いて複数回行なってもよい。また、例えば、減圧下での焼成のように、異なる方法を併用してもよい。
湿式成膜法とは溶液を用いた成膜法であり、例えば、一部の印刷法(インクジェット法)、スピンコート法またはキャスト法、コーティング法などである。湿式成膜法は真空蒸着法と異なり高価な真空蒸着装置を用いる必要が無く、大気圧下で成膜することができる。加えて、湿式成膜法は大面積化や連続生産が可能であり、製造コストの低減につながる。
一方で、真空蒸着法と比較した場合には、湿式成膜法は積層化が難しい場合がある。湿式成膜法を用いて積層膜を作製する場合、上層の組成物による下層の溶解を防ぐ必要があり、溶解性を制御した組成物、下層の架橋および直交溶媒(Orthogonal solvent、互いに溶解し合わない溶媒)などが駆使される。しかしながら、それらの技術を用いても、全ての膜の塗布に湿式成膜法を用いるのは難しい場合がある。
そこで、一般的には、幾つかの層だけを湿式成膜法を用い、残りを真空蒸着法で有機EL素子を作製するという方法が採用される。
例えば、湿式成膜法を一部適用し有機EL素子を作製する手順を以下に示す。
(手順1)陽極の真空蒸着法による成膜
(手順2)正孔注入層用材料を含む正孔注入層形成用組成物の湿式成膜法による成膜
(手順3)正孔輸送層用材料を含む正孔輸送層形成用組成物の湿式成膜法による成膜
(手順4)ホスト材料とドーパント材料を含む発光層形成用組成物の湿式成膜法による成膜
(手順5)電子輸送層の真空蒸着法による成膜
(手順6)電子注入層の真空蒸着法による成膜
(手順7)陰極の真空蒸着法による成膜
この手順を経ることで、陽極/正孔注入層/正孔輸送層/ホスト材料とドーパント材料からなる発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極からなる有機EL素子が得られる。
もちろん、電子輸送層および電子注入層についても、それぞれ電子輸送層用材料および電子注入層用材料を含む層形成用組成物を用いて湿式成膜法により成膜してもよい。その際、下層の発光層の溶解を防ぐ手段、または上記手順とは逆に陰極側から成膜する手段を用いることが好ましい。
<その他の成膜法>
有機層形成用組成物の成膜化には、レーザー加熱描画法(LITI)を用いることができる。LITIとは基材に付着させた化合物をレーザーで加熱蒸着する方法で、基材へ塗布される材料に有機層形成用組成物を用いることができる。
<任意の工程>
成膜の各工程の前後に、適切な処理工程、洗浄工程および乾燥工程を適宜入れてもよい。処理工程としては、例えば、露光処理、プラズマ表面処理、超音波処理、オゾン処理、適切な溶媒を用いた洗浄処理および加熱処理等があげられる。さらには、バンクを作製する一連の工程もあげられる。
バンクの作製にはフォトリソグラフィ技術を用いることができる。フォトリソグラフィの利用可能なバンク材としては、ポジ型レジスト材料およびネガ型レジスト材料を用いることができる。また、インクジェット法、グラビアオフセット印刷、リバースオフセット印刷、スクリーン印刷などのパターン可能な印刷法も用いることができる。その際には永久レジスト材料を用いることもできる。
<湿式成膜法に使用される有機層形成用組成物>
有機層形成用組成物は、有機EL素子の各有機層を形成し得る低分子化合物、または当該低分子化合物を高分子化させた高分子化合物を有機溶媒に溶解させて得られる。例えば、発光層形成用組成物は、第1成分として少なくとも1種のドーパント材料である多環芳香族化合物(またはその高分子化合物)と、第2成分として少なくとも1種のホスト材料と、第3成分として少なくとも1種の有機溶媒とを含有する。第1成分は、該組成物から得られる発光層のドーパント成分として機能し、第2成分は発光層のホスト成分として機能する。第3成分は、組成物中の第1成分と第2成分を溶解する溶媒として機能し、塗布時には第3成分自身の制御された蒸発速度により平滑で均一な表面形状を与える。
<有機溶媒>
有機層形成用組成物は少なくとも一種の有機溶媒を含む。成膜時に有機溶媒の蒸発速度を制御することで、成膜性および塗膜の欠陥の有無、表面粗さ、平滑性を制御および改善することができる。また、インクジェット法を用いた成膜時は、インクジェットヘッドのピンホールでのメニスカス安定性を制御し、吐出性を制御・改善することができる。加えて、膜の乾燥速度および誘導体分子の配向を制御することで、該有機層形成用組成物より得られる有機層を有する有機EL素子の電気特性、発光特性、効率、および寿命を改善することができる。
(1)有機溶媒の物性
少なくとも1種の有機溶媒の沸点は、130℃~300℃であり、140℃~270℃がより好ましく、150℃~250℃がさらに好ましい。沸点が130℃より高い場合、インクジェットの吐出性の観点から好ましい。また、沸点が300℃より低い場合、塗膜の欠陥、表面粗さ、残留溶媒および平滑性の観点から好ましい。有機溶媒は、良好なインクジェットの吐出性、成膜性、平滑性および低い残留溶媒の観点から、2種以上の有機溶媒を含む構成がより好ましい。一方で、場合によっては、運搬性などを考慮し、有機層形成用組成物中から溶媒を除去することで固形状態とした組成物であってもよい。
さらに、有機溶媒が溶質の少なくとも1種に対する良溶媒(GS)と貧溶媒(PS)とを含み、良溶媒(GS)の沸点(BPGS)が貧溶媒(PS)の沸点(BPPS)よりも低い、構成が特に好ましい。
高沸点の貧溶媒を加えることで成膜時に低沸点の良溶媒が先に揮発し、組成物中の含有物の濃度と貧溶媒の濃度が増加し速やかな成膜が促される。これにより、欠陥が少なく、表面粗さが小さい、平滑性の高い塗膜が得られる。
溶解度の差(SGS-SPS)は、1%以上であることが好ましく、3%以上であることがより好ましく、5%以上であることがさらに好ましい。沸点の差(BPPS-BPGS)は、10℃以上であることが好ましく、30℃以上であることがより好ましく、50℃以上であることがさらに好ましい。
有機溶媒は、成膜後に、真空、減圧、加熱などの乾燥工程により塗膜より取り除かれる。加熱を行う場合、塗布成膜性改善の観点からは、溶質の少なくとも1種のガラス転移温度(Tg)+30℃以下で行うことが好ましい。また、残留溶媒の削減の観点からは、溶質の少なくとも1種のガラス転移点(Tg)-30℃以上で加熱することが好ましい。加熱温度が有機溶媒の沸点より低くても膜が薄いために、有機溶媒は十分に取り除かれる。また、異なる温度で複数回乾燥を行ってもよく、複数の乾燥方法を併用してもよい。
(2)有機溶媒の具体例
有機層形成用組成物に用いられる有機溶媒としては、アルキルベンゼン系溶媒、フェニルエーテル系溶媒、アルキルエーテル系溶媒、環状ケトン系溶媒、脂肪族ケトン系溶媒、単環性ケトン系溶媒、ジエステル骨格を有する溶媒および含フッ素系溶媒などがあげられ、具体例として、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、テトラデカノール、ヘキサン-2-オール、ヘプタン-2-オール、オクタン-2-オール、デカン-2-オール、ドデカン-2-オール、シクロヘキサノール、α-テルピネオール、β-テルピネオール、γ-テルピネオール、δ-テルピネオール、テルピネオール(混合物)、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、p-キシレン、m-キシレン、o-キシレン、2,6-ルチジン、2-フルオロ-m-キシレン、3-フルオロ-o-キシレン、2-クロロベンゾ三フッ化物、クメン、トルエン、2-クロロ-6-フルオロトルエン、2-フルオロアニソール、アニソール、2,3-ジメチルピラジン、ブロモベンゼン、4-フルオロアニソール、3-フルオロアニソール、3-トリフルオロメチルアニソール、メシチレン、1,2,4-トリメチルベンゼン、t-ブチルベンゼン、2-メチルアニソール、フェネトール、ベンゾジオキソール、4-メチルアニソール、s-ブチルベンゼン、3-メチルアニソール、4-フルオロ-3-メチルアニソール、シメン、1,2,3-トリメチルベンゼン、1,2-ジクロロベンゼン、2-フルオロベンゾニトリル、4-フルオロベラトロール、2,6-ジメチルアニソール、n-ブチルベンゼン、3-フルオロベンゾニトリル、デカリン(デカヒドロナフタレン)、ネオペンチルベンゼン、2,5-ジメチルアニソール、2,4-ジメチルアニソール、ベンゾニトリル、3,5-ジメチルアニソール、ジフェニルエーテル、1-フルオロ-3,5-ジメトキシベンゼン、安息香酸メチル、イソペンチルベンゼン、3,4-ジメチルアニソール、o-トルニトリル、n-アミルベンゼン、ベラトロール、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン、安息香酸エチル、n-ヘキシルベンゼン、安息香酸プロピル、シクロヘキシルベンゼン、1-メチルナフタレン、安息香酸ブチル、2-メチルビフェニル、3-フェノキシトルエン、2,2'-ビトリル、ドデシルベンゼン、ジペンチルベンゼン、テトラメチルベンゼン、トリメトキシベンゼン、トリメトキシトルエン、2,3-ジヒドロベンゾフラン、1-メチル-4-(プロポキシメチル)ベンゼン、1-メチル-4-(ブチルオキシメチル)ベンゼン、1-メチル-4-(ペンチルオキシメチル)ベンゼン、1-メチル-4-(ヘキシルオキシメチル)ベンゼン、1-メチル-4-(ヘプチルオキシメチル)ベンゼン、ベンジルブチルエーテル、ベンジルペンチルエーテル、ベンジルヘキシルエーテル、ベンジルヘプチルエーテル、ベンジルオクチルエーテルなどがあげられるが、それだけに限定されない。また、溶媒は単一で用いてもよく、混合してもよい。
<任意成分>
有機層形成用組成物は、その性質を損なわない範囲で、任意成分を含んでいてもよい。任意成分としては、バインダーおよび界面活性剤等があげられる。
(1)バインダー
有機層形成用組成物は、バインダーを含有していてもよい。バインダーは、成膜時には膜を形成するとともに、得られた膜を基板と接合する。また、該有機層形成用組成物中で他の成分を溶解および分散および結着させる役割を果たす。
有機層形成用組成物に用いられるバインダーとしては、例えば、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、アクリロニトリル-エチレン-スチレン共重合体(AES)樹脂、アイオノマー、塩素化ポリエーテル、ジアリルフタレート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、テフロン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)樹脂、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS)樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン、および、上記樹脂およびポリマーの共重合体、があげられるが、それだけに限定されない。
有機層形成用組成物に用いられるバインダーは、1種のみであってもよく複数種を混合して用いてもよい。
(2)界面活性剤
有機層形成用組成物は、例えば、有機層形成用組成物の膜面均一性、膜表面の親溶媒性および撥液性の制御のために界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤は、親水性基の構造からイオン性および非イオン性に分類され、さらに、疎水性基の構造からアルキル系およびシリコーン系およびフッ素系に分類される。また、分子の構造から、分子量が比較的小さく単純な構造を有する単分子系および分子量が大きく側鎖や枝分かれを有する高分子系に分類される。また、組成から、単一系、二種以上の界面活性剤および基材を混合した混合系に分類される。該有機層形成用組成物に用いることのできる界面活性剤としては、全ての種類の界面活性剤を用いることができる。
界面活性剤としては、例えば、ポリフローNo.45、ポリフローKL-245、ポリフローNo.75、ポリフローNo.90、ポリフローNo.95(商品名、共栄社化学工業(株)製)、ディスパーベイク(Disperbyk)161、ディスパーベイク162、ディスパーベイク163、ディスパーベイク164、ディスパーベイク166、ディスパーベイク170、ディスパーベイク180、ディスパーベイク181、ディスパーベイク182、BYK300、BYK306、BYK310、BYK320、BYK330、BYK342、BYK344、BYK346(商品名、ビックケミー・ジャパン(株)製)、KP-341、KP-358、KP-368、KF-96-50CS、KF-50-100CS(商品名、信越化学工業(株)製)、サーフロンSC-101、サーフロンKH-40(商品名、セイミケミカル(株)製)、フタージェント222F、フタージェント251、FTX-218(商品名、(株)ネオス製)、EFTOP EF-351、EFTOP EF-352、EFTOP EF-601、EFTOP EF-801、EFTOP EF-802(商品名、三菱マテリアル(株)製)、メガファックF-470、メガファックF-471、メガファックF-475、メガファックR-08、メガファックF-477、メガファックF-479、メガファックF-553、メガファックF-554(商品名、DIC(株)製)、フルオロアルキルベンゼンスルホン酸塩、フルオロアルキルカルボン酸塩、フルオロアルキルポリオキシエチレンエーテル、フルオロアルキルアンモニウムヨージド、フルオロアルキルベタイン、フルオロアルキルスルホン酸塩、ジグリセリンテトラキス(フルオロアルキルポリオキシエチレンエーテル)、フルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩、フルオロアルキルアミノスルホン酸塩、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンラウレート、ポリオキシエチレンオレエート、ポリオキシエチレンステアレート、ポリオキシエチレンラウリルアミン、ソルビタンラウレート、ソルビタンパルミテート、ソルビタンステアレート、ソルビタンオレエート、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンオレエート、ポリオキシエチレンナフチルエーテル、アルキルベンゼンスルホン酸塩およびアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩をあげることができる。
また、界面活性剤は1種で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
<有機層形成用組成物の組成および物性>
有機層形成用組成物における各成分の含有量は、有機層形成用組成物中の各成分の良好な溶解性、保存安定性および成膜性、ならびに、該有機層形成用組成物から得られる塗膜の良質な膜質、また、インクジェット法を用いた場合の良好な吐出性、該組成物を用いて作製された有機層を有する有機EL素子の、良好な電気特性、発光特性、効率、寿命の観点を考慮して決定される。例えば、発光層形成用組成物の場合には、第1成分が発光層形成用組成物の全質量に対して、0.0001質量%~2.0質量%、第2成分が発光層形成用組成物の全質量に対して、0.0999質量%~8.0質量%、第3成分が発光層形成用組成物の全質量に対して、90.0質量%~99.9質量%が好ましい。
より好ましくは、第1成分が発光層形成用組成物の全質量に対して、0.005質量%~1.0質量%、第2成分が発光層形成用組成物の全質量に対して、0.095質量%~4.0質量%、第3成分が発光層形成用組成物の全質量に対して、95.0質量%~99.9質量%である。さらに好ましくは、第1成分が発光層形成用組成物の全質量に対して、0.05質量%~0.5質量%、第2成分が発光層形成用組成物の全質量に対して、0.25質量%~2.5質量%、第3成分が発光層形成用組成物の全質量に対して、97.0質量%~99.7質量%である。
有機層形成用組成物は、上述した成分を、公知の方法で撹拌、混合、加熱、冷却、溶解、分散等を適宜選択して行うことによって製造できる。また、調製後に、ろ過、脱ガス(デガスとも言う)、イオン交換処理および不活性ガス置換・封入処理等を適宜選択して行ってもよい。
有機層形成用組成物の粘度としては、高粘度である方が、良好な成膜性とインクジェット法を用いた場合の良好な吐出性が得られる。一方、低粘度である方が薄い膜を作りやすい。このことから、該有機層形成用組成物の粘度は、25℃における粘度が0.3~3mPa・sであることが好ましく、1~3mPa・sであることがより好ましい。本発明において、粘度は円錐平板型回転粘度計(コーンプレートタイプ)を用いて測定した値である。
有機層形成用組成物の表面張力としては、低い方が良好な成膜性および欠陥のない塗膜が得られる。一方、高い方が良好なインクジェット吐出性を得られる。このことから、該有機層形成用組成物の表面張力は、25℃における表面張力が20~40mN/mであることが好ましく、20~30mN/mであることがより好ましい。本発明において、表面張力は懸滴法を用いて測定した値である。
<架橋性高分子化合物:一般式(XLP-1)で表される化合物>
次に、上述した高分子化合物が架橋性置換基を有する場合について説明する。このような架橋性高分子化合物は例えば下記式(XLP-1)で表される化合物である。
Figure 2024054074000162
式(XLP-1)において、
MUはそれぞれ独立して芳香族化合物から任意の2つの水素原子を除いて表される2価の基、ECはそれぞれ独立して芳香族化合物から任意の1つの水素原子を除いて表される1価の基または水素であり、MU中の2つの水素がECまたはMUと置換され、kは2~50000の整数である。ただし、式(XLP-1)で表される化合物は少なくとも1つの架橋性置換基(XLS)を有し、好ましくは架橋性置換基を有する1価または2価の芳香族化合物の含有量は、分子中0.1~80質量%である。
より具体的には、
MUは、それぞれ独立して、アリーレン、ヘテロアリーレン、ジアリーレンアリールアミノ、ジアリーレンアリールボリル、オキサボリン-ジイル、アザボリン-ジイルであり、
ECは、それぞれ独立して、水素、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノまたはアリールオキシであり、
MUおよびECにおける少なくとも1つの水素はさらに、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、アルキルおよびシクロアルキルで置換されていてもよく、
kは2~50000の整数である。
kは20~50000の整数であることが好ましく、100~50000の整数であることがより好ましい。
式(XLP-1)中のMUおよびECにおける少なくとも1つの水素は、炭素数1~24のアルキル、炭素数3~24のシクロアルキル、ハロゲンまたは重水素で置換されていてもよく、さらに、前記アルキルにおける任意の-CH2-は-O-または-Si(CH32-で置換されていてもよく、前記アルキルにおける式(XLP-1)中のECに直結している-CH2-を除く任意の-CH2-は炭素数6~24のアリーレンで置換されていてもよく、前記アルキルにおける任意の水素はフッ素で置換されていてもよい。
MUとしては、例えば、以下のいずれかの化合物から任意の2つの水素原子を除いて表される2価の基があげられる。
Figure 2024054074000163
より具体的には、以下のいずれかの構造で表される2価の基があげられる。これらにおいて、MUは*において他のMUまたはECと結合する。
Figure 2024054074000164
Figure 2024054074000165
Figure 2024054074000166
Figure 2024054074000167
Figure 2024054074000168
Figure 2024054074000169
Figure 2024054074000170
Figure 2024054074000171
Figure 2024054074000172
また、ECとしては、例えば以下のいずれかの構造で表される1価の基があげられる。これらにおいて、ECは*においてMUと結合する。
Figure 2024054074000173
Figure 2024054074000174
式(XLP-1)で表される化合物は、溶解性および塗布製膜性の観点から、分子中のMU総数(k)の10~100%のMUが炭素数1~24のアルキルを有することが好ましく、分子中のMU総数(k)の30~100%のMUが炭素数1~18のアルキル(炭素数3~18の分岐鎖アルキル)を有することがより好ましく、分子中のMU総数(k)の50~100%のMUが炭素数1~12のアルキル(炭素数3~12の分岐鎖アルキル)を有することがさらに好ましい。一方、面内配向性および電荷輸送の観点からは、分子中のMU総数(k)の10~100%のMUが炭素数7~24のアルキルを有することが好ましく、分子中のMU総数(k)の30~100%のMUが炭素数7~24のアルキル(炭素数7~24の分岐鎖アルキル)を有することがより好ましい。
架橋性置換基を有する1価または2価の芳香族化合物の含有量は、0.5~50質量%が好ましく、1~20質量%がより好ましい。
架橋性置換基(XLS)としては、上述した高分子化合物をさらに架橋化できる基であれば特に限定されないが、以下の構造の置換基が好ましい。各構造式中の*は結合位置を示す。
Figure 2024054074000175
Lは、それぞれ独立して、単結合、-O-、-S-、>C=O、-O-C(=O)-、炭素数1~12のアルキレン、炭素数1~12のオキシアルキレンおよび炭素数1~12のポリオキシアルキレンである。上記置換基の中でも、式(XLS-1)、式(XLS-2)、式(XLS-3)、式(XLS-9)、式(XLS-10)または式(XLS-17)で表される基が好ましく、式(XLS-1)、式(XLS-3)または式(XLS-17)で表される基がより好ましい。
架橋性置換基を有する2価の芳香族化合物としては、例えば下記部分構造を有する化合物があげられる。下記構造式中の*は結合位置を表す。
Figure 2024054074000176
Figure 2024054074000177
Figure 2024054074000178
Figure 2024054074000179
<高分子化合物および架橋性高分子化合物の製造方法>
高分子化合物および架橋性高分子化合物の製造方法について、上述した式(XLP-1)で表される化合物を例にして説明する。これらの化合物は、公知の製造方法を適宜組み合わせて合成することができる。
反応で用いられる溶媒としては、芳香族溶媒、飽和/不飽和炭化水素溶媒、アルコール溶媒、エーテル系溶媒などがあげられ、例えば、ジメトキシエタン、2-(2-メトキシエトキシ)エタン、2-(2-エトキシエトキシ)エタン等があげられる。
また、反応は2相系で行ってもよい。2相系で反応させる場合は、必要に応じて、第4級アンモニウム塩等の相間移動触媒を加えてもよい。
式(XLP-1)の化合物を製造する際、一段階で製造してもよいし、多段階を経て製造してもよい。また、原料を反応容器に全て入れてから反応を開始する一括重合法により行ってもよいし、原料を反応容器に滴下し加える滴下重合法により行ってもよいし、生成物が反応の進行に伴い沈殿する沈殿重合法により行ってもよく、これらを適宜組み合わせて合成することができる。例えば、式(XLP-1)で表される化合物を一段階で合成する際、モノマーユニット(MU)に重合性基が結合したモノマーおよびエンドキャップユニット(EC)に重合性基が結合したモノマーを反応容器に加えた状態で反応を行うことで目的物を得る。また、式(XLP-1)で表される化合物を多段階で合成する際、モノマーユニット(MU)に重合性基が結合したモノマーを目的の分子量まで重合した後、エンドキャップユニット(EC)に重合性基が結合したモノマーを加えて反応させることで目的物を得る。多段階で異なる種類のモノマーユニット(MU)に重合性基が結合したモノマーを加えて反応を行えば、モノマーユニットの構造について濃度勾配を有するポリマーを作ることができる。また、前駆体ポリマーを調製した後、あと反応により目的物ポリマーを得ることができる。
また、モノマーユニット(MU)の重合性基を選べばポリマーの一次構造を制御することができる。例えば、合成スキームの1~3に示すように、ランダムな一次構造を有するポリマー(合成スキームの1)、規則的な一次構造を有するポリマー(合成スキームの2および3)などを合成することが可能であり、目的物に応じて適宜組み合わせて用いることができる。さらには、重合性基を3つ以上有するモノマーユニットを用いれば、ハイパーブランチポリマーやデンドリマーを合成することができる。
Figure 2024054074000180
本態様で用いることのできるモノマーとしては、特開2010-189630号公報、国際公開第2012/086671号、国際公開第2013/191088号、国際公開第2002/045184号、国際公開第2011/049241号、国際公開第2013/146806号、国際公開第2005/049546号、国際公開第2015/145871号、特開2010-215886号公報、特開2008-106241号公報、国際公開第2016/031639号、特開2011-174062号公報に記載の方法に準じて合成することができる。
また、具体的なポリマー合成手順については、特開2012-036388号公報、国際公開第2015/008851号、特開2012-36381号公報、特開2012-144722号公報、国際公開第2015/194448号、国際公開第2013/146806号、国際公開第2015/145871号、国際公開第2016/031639号、国際公開第2016/125560号、国際公開第2011/049241号に記載の方法に準じて合成することができる。
2-1-10.有機電界発光素子の応用例
本発明は、有機EL素子を備えた表示装置または有機EL素子を備えた照明装置などにも応用することができる。
有機EL素子を備えた表示装置または照明装置は、本実施形態にかかる有機EL素子と公知の駆動装置とを接続するなど公知の方法によって製造することができ、直流駆動、パルス駆動、交流駆動など公知の駆動方法を適宜用いて駆動することができる。
表示装置としては、例えば、カラーフラットパネルディスプレイなどのパネルディスプレイ、フレキシブルカラー有機電界発光(EL)ディスプレイなどのフレキシブルディスプレイなどがあげられる(例えば、特開平10-335066号公報、特開2003-321546号公報、特開2004-281086号公報など参照)。また、ディスプレイの表示方式としては、例えば、マトリクスおよびセグメント方式などがあげられる。なお、マトリクス表示とセグメント表示は同じパネルの中に共存していてもよい。
マトリクスでは、表示のための画素が格子状やモザイク状など二次元的に配置されており、画素の集合で文字や画像を表示する。画素の形状やサイズは用途によって決まる。例えば、パソコン、モニター、テレビの画像および文字表示には、通常一辺が300μm以下の四角形の画素が用いられ、また、表示パネルのような大型ディスプレイの場合は、一辺がmmオーダーの画素を用いることになる。モノクロ表示の場合は、同じ色の画素を配列すればよいが、カラー表示の場合には、赤、緑、青の画素を並べて表示させる。この場合、典型的にはデルタタイプとストライプタイプがある。そして、このマトリクスの駆動方法としては、線順次駆動方法やアクティブマトリックスのどちらでもよい。線順次駆動の方が構造が簡単であるという利点があるが、動作特性を考慮した場合、アクティブマトリックスの方が優れる場合があるので、これも用途によって使い分けることが必要である。
セグメント方式(タイプ)では、予め決められた情報を表示するようにパターンを形成し、決められた領域を発光させることになる。例えば、デジタル時計や温度計における時刻や温度表示、オーディオ機器や電磁調理器などの動作状態表示および自動車のパネル表示などがあげられる。
照明装置としては、例えば、室内照明などの照明装置、液晶表示装置のバックライトなどがあげられる(例えば、特開2003-257621号公報、特開2003-277741号公報、特開2004-119211号公報など参照)。バックライトは、主に自発光しない表示装置の視認性を向上させる目的に使用され、液晶表示装置、時計、オーディオ装置、自動車パネル、表示板および標識などに使用される。特に、液晶表示装置、中でも薄型化が課題となっているパソコン用途のバックライトとしては、従来方式が蛍光灯や導光板からなっているため薄型化が困難であることを考えると、本実施形態に係る発光素子を用いたバックライトは薄型で軽量が特徴になる。
2-2.その他の有機デバイス
本発明に係る多環芳香族化合物は、上述した有機電界発光素子の他に、有機電界効果トランジスタまたは有機薄膜太陽電池などの作製に用いることができる。
有機電界効果トランジスタは、電圧入力によって発生させた電界により電流を制御するトランジスタのことであり、ソース電極とドレイン電極の他にゲート電極が設けられている。ゲート電極に電圧を印加すると電界が生じ、ソース電極とドレイン電極間を流れる電子(あるいはホール)の流れを任意にせき止めて電流を制御することができるトランジスタである。電界効果トランジスタは、単なるトランジスタ(バイポーラトランジスタ)に比べて小型化が容易であり、集積回路などを構成する素子としてよく用いられている。
有機電界効果トランジスタの構造は、通常、本発明に係る多環芳香族化合物を用いて形成される有機半導体活性層に接してソース電極およびドレイン電極が設けられており、さらに有機半導体活性層に接した絶縁層(誘電体層)を挟んでゲート電極が設けられていればよい。その素子構造としては、例えば以下の構造があげられる。
(1)基板/ゲート電極/絶縁体層/ソース電極・ドレイン電極/有機半導体活性層
(2)基板/ゲート電極/絶縁体層/有機半導体活性層/ソース電極・ドレイン電極
(3)基板/有機半導体活性層/ソース電極・ドレイン電極/絶縁体層/ゲート電極
(4)基板/ソース電極・ドレイン電極/有機半導体活性層/絶縁体層/ゲート電極
このように構成された有機電界効果トランジスタは、アクティブマトリックス駆動方式の液晶ディスプレイや有機エレクトロルミネッセンスディスプレイの画素駆動スイッチング素子などとして適用できる。
有機薄膜太陽電池は、ガラスなどの透明基板上にITOなどの陽極、ホール輸送層、光電変換層、電子輸送層、陰極が積層された構造を有する。光電変換層は陽極側にp型半導体層を有し、陰極側にn型半導体層を有している。本発明に係る多環芳香族化合物は、その物性に応じて、ホール輸送層、p型半導体層、n型半導体層、電子輸送層の材料として用いることが可能である。本発明に係る多環芳香族化合物は、有機薄膜太陽電池においてホール輸送材料や電子輸送材料として機能しうる。有機薄膜太陽電池は、上記の他にホールブロック層、電子ブロック層、電子注入層、ホール注入層、平滑化層などを適宜備えていてもよい。有機薄膜太陽電池には、有機薄膜太陽電池に用いられる既知の材料を適宜選択して組み合わせて用いることができる。
3.波長変換材料
本発明の多環芳香族化合物は、波長変換材料として使用することができる。 現在、色変換方式によるマルチカラー化技術を、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ、照明などへ応用することが盛んに検討されている。色変換とは、発光体からの発光をより長波長の光へと波長変換することであり、例えば、紫外光や青色光を緑色光や赤色発光へと変換することを表す。この色変換機能を有する波長変換材料をフィルム化し、例えば青色光源と組み合わせることにより、青色光源から、青、緑、赤色の3原色を取り出すこと、すなわち白色光を取り出すことが可能となる。このような青色光源と色変換機能を有する波長変換フィルムを組み合わせた白色光源を光源ユニットとし、液晶駆動部分と、カラーフィルターと組み合わせることで、フルカラーディスプレイの作製が可能になる。また、液晶駆動部分が無ければ、そのまま白色光源として用いることができ、例えばLED照明などの白色光源として応用できる。また、青色有機EL素子を光源として、青色光を緑色光および赤色光に変換する波長変換フィルムと組み合わせて用いることでメタルマスクを用いないフルカラー有機ELディスプレイの作製が可能になる。さらに、青色マイクロLEDを光源として、青色光を緑色光および赤色光に変換する波長変換フィルムと組み合わせて用いることで低コストのフルカラーマイクロLEDディスプレイの作製が可能になる。
本発明の多環芳香族化合物は、この波長変換材料として使用することができる。本発明の多環芳香族化合物を含む波長変換材料を用いて、紫外光やより短波長の青色光を生成する光源や発光素子からの光を、表示装置(有機EL素子を利用した表示装置や液晶表示装置)での利用に適した色純度の高い青色光や緑色光に変換することができる。変換される色の調整は、本発明の多環芳香族化合物の置換基、後述の波長変換用組成物で用いるバインダー樹脂等を適宜選択することにより行うことができる。波長変換材料は本発明の多環芳香族化合物を含む波長変換用組成物として調製することができる。また、この波長変換用組成物を用いて波長変換フィルムを形成してもよい。
波長変換用組成物は、本発明の多環芳香族化合物のほか、バインダー樹脂、その他の添加剤、および溶媒を含んでいてもよい。バインダー樹脂としては、例えば国際公開第2016/190283号の段落0173~0176に記載のものを用いることができる。その他の添加剤としては、国際公開第2016/190283号の段落0177~0181に記載の化合物を用いることができる。溶媒としては、上記の発光層形成用組成物に含まれる溶媒の記載を参照することができる。
波長変換フィルムは波長変換用組成物の硬化により形成される波長変換層を含む。波長変換用組成物からの波長変換層の作製方法としては公知のフィルム形成方法を参照することができる。波長変換フィルムは本発明の多環芳香族化合物を含む組成物から形成される波長変換層のみからなっていてもよく、他の波長変換層(例えば、青色光を緑色光や赤色光に変換する波長変換層、青色光や緑色光を赤色光に変換する波長変換層)を含んでいてもよい。さらに波長変換フィルムは基材層や、色変換層の酸素、水分、または熱による劣化を防ぐためのバリア層を含んでいてもよい。
以下,実施例により本発明をさらに具体的に説明していくが,本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例において、MALDI-TOF-MSは、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析法を意味する。
合成例(1):
化合物(1-1)の合成
Figure 2024054074000181
化合物(S-1)(0.90g)およびtert-ブチルベンゼン(7.0ml)の入ったフラスコに、窒素雰囲気下、-30℃で、1.6Mのtert-ブチルリチウムペンタン溶液(1.6ml)を加えた。滴下終了後、60℃まで昇温して2時間撹拌した後、tert-ブチルベンゼンより低沸点の成分を減圧留去した。-30℃まで冷却して三臭化ホウ素(0.63g)を加え、室温まで昇温して0.5時間撹拌した。その後、再び0℃まで冷却してN,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.43ml)を加え、発熱が収まるまで室温で撹拌した後、120℃まで昇温して3時間加熱撹拌した。反応液を室温まで冷却し、氷浴で冷やした酢酸ナトリウム水溶液、次いでへプタンを加えて分液した。次いで、シリカゲルショートパスカラム(溶離液:トルエン)で精製した後、溶媒を減圧留去し得られた固体をトルエンに溶かし、へプタンを加えて再沈殿させ、化合物(1-1)(0.35g)を得た。
MALDI-TOF-MS:[M]+=896.52
合成例(2):
化合物(1-2)の合成
Figure 2024054074000182
合成例(1)に準じた方法で合成した。
MALDI-TOF-MS(M+)=1092.56
合成例(3):
化合物(1-3)の合成
Figure 2024054074000183
合成例(1)に準じた方法で合成した。
MALDI-TOF-MS(M+)=972.56
合成例(4):
化合物(1-4)の合成
Figure 2024054074000184
合成例(1)に準じた方法で合成した。
MALDI-TOF-MS(M+)=1244.62
合成例(5):
化合物(1-5)の合成
Figure 2024054074000185
合成例(1)に準じた方法で合成した。
MALDI-TOF-MS(M+)=944.49
合成例(6):
化合物(1-6)の合成
Figure 2024054074000186
合成例(1)に準じた方法で合成した。
MALDI-TOF-MS(M+)=1183.60
合成例(7):
化合物(1-7)の合成
Figure 2024054074000187
合成例(1)に準じた方法で合成した。
MALDI-TOF-MS(M+)=1162.63
合成例(8):
化合物(1-8)の合成
Figure 2024054074000188
合成例(1)に準じた方法で合成した。
MALDI-TOF-MS(M+)=1127.59
合成例(9):
化合物(1-9)の合成
Figure 2024054074000189
合成例(1)に準じた方法で合成した。
MALDI-TOF-MS(M+)=1203.51
有機EL素子の作製と評価
次に、本発明の多環芳香族化合物を用いた有機EL素子の作製と評価について記載する。
蒸着型有機EL素子
<実施例1-1~実施例1-9、および比較例1-1~1-6>
実施例1-1~実施例1-9、および比較例1-1~1-6の有機EL素子における各層の材料構成を下記表1に示す。
Figure 2024054074000190
表1において、「HI」はN4,N4'-ジフェニル-N4,N4'-ビス(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-[1,1'-ビフェニル]-4,4'-ジアミンであり、「HAT-CN」は1,4,5,8,9,12-ヘキサアザトリフェニレンヘキサカルボニトリルであり、「HT-1」はN-[1,1'-ビフェニル]-4-イル-9,9-ジメチル-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-9H-フルオレン-2-アミンであり、「HT-2」はN,N-ビス(4-(ジベンゾ[b,d]フラン-4-イル)フェニル)-[1,1’:4’,1”-テルフェニル]-4-アミンであり、「ET-1」は、9,9’-[(5-(6-(1,1’-ビフェニル)-4-イル)-2-フェニルピリミジン-4-イル)-1,3-フェニレン]ビス(9H-カルバゾール)であり、「ET-2」は2-エチル-1-(4-(10-フェニルアントラセン-9-イル)フェニル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾールである。「Liq」および比較例の化合物と共に以下に化学構造を示す。なお、比較例の化合物は既知の文献に準じて合成した。
Figure 2024054074000191
Figure 2024054074000192
[実施例1-1]
スパッタリングにより180nmの厚さに成膜したITOを120nmまで研磨した、26mm×28mm×0.7mmのガラス基板((株)オプトサイエンス製)を透明支持基板とする。この透明支持基板を市販の蒸着装置(昭和真空(株)製)の基板ホルダーに固定し、HI、HAT-CN、HT-1、HT-2、Host-1、化合物(1-1)、ET-1およびET-2をそれぞれ入れたモリブデン製蒸着用ボート、Liq、LiFおよびアルミニウムをそれぞれ入れた窒化アルミニウム製蒸着用ボートを装着した。
透明支持基板のITO膜の上に順次、下記各層を形成する。真空槽を5×10-4Paまで減圧し、まず、HIを加熱して膜厚40nmになるように蒸着し、次に、HAT-CNを加熱して膜厚5nmになるように蒸着し、次に、HT-1を加熱して膜厚45nmになるように蒸着し、次に、HT-2を加熱して膜厚10nmになるように蒸着して、4層からなる正孔層を形成した。次に、Host-1と化合物(1-1)を同時に加熱して膜厚25nmになるように蒸着して発光層を形成した。Host-1と化合物(1-1)の質量比がおよそ97対3になるように蒸着速度を調節した。さらに、ET-1を加熱して膜厚5nmになるように蒸着し、次に、ET-2とLiqを同時に加熱して膜厚25nmになるように蒸着して、2層からなる電子層を形成した。ET-2とLiqの質量比がおよそ50対50になるように蒸着速度を調節した。各層の蒸着速度は0.01~1nm/秒であった。その後、LiFを加熱して膜厚1nmになるように0.01~0.1nm/秒の蒸着速度で蒸着し、次いで、アルミニウムを加熱して膜厚100nmになるように蒸着して陰極を形成し、有機EL素子を得た。
[実施例1-2~実施例1-9、比較例1-1~1-6]
化合物(1-1)の代わりに表1に記載の化合物を用いた以外は実施例1-1と同様にして、有機EL素子を得た。
有機EL素子の評価
評価項目としては、駆動電圧(V)、CIE色度(x,y)、外部量子効率(%)、発光波長(nm)および半値幅(nm)等がある。これらの評価項目は、例えば1000cd/m2発光時の値を用いることができる。
発光素子の量子効率には、内部量子効率と外部量子効率とがあるが、内部量子効率は、発光素子の発光層に電子(または正孔)として注入される外部エネルギーが純粋に光子に変換される割合を示している。一方、外部量子効率は、この光子が発光素子の外部にまで放出された量に基づいて算出され、発光層において発生した光子は、その一部が発光素子の内部で吸収されたりあるいは反射され続けたりして、発光素子の外部に放出されないため、外部量子効率は内部量子効率よりも低くなる。
分光放射輝度(発光スペクトル)と外部量子効率の測定方法は次の通りである。アドバンテスト社製電圧/電流発生器R6144を用いて、素子の輝度が1000cd/m2になる電圧を印加して素子を発光させる。TOPCON社製分光放射輝度計SR-3ARを用いて、発光面に対して垂直方向から可視光領域の分光放射輝度を測定する。発光面が完全拡散面であると仮定して、測定した各波長成分の分光放射輝度の値を波長エネルギーで割ってπを掛けた数値が各波長におけるフォトン数である。次いで、観測した全波長領域でフォトン数を積算し、素子から放出された全フォトン数とする。印加電流値を素電荷で割った数値を素子へ注入したキャリア数として、素子から放出された全フォトン数を素子へ注入したキャリア数で割った数値が外部量子効率である。また、発光スペクトルの半値幅は、極大発光波長を中心として、その強度が50%になる上下の波長間の幅として求められる。
実施例1-1~実施例1-9、比較例1-1~1-6の有機EL素子について、ITO電極を陽極、LiF/アルミニウム電極を陰極として直流電圧を印加したところ、いずれも451~464nmの波長域に極大発光波長を示す発光スペクトルを示した。さらに、1000cd/m2発光時の特性を測定し、また、初期輝度の97%以上の輝度を保持する時間(寿命)を測定した。
結果を表2に示す。
Figure 2024054074000193
実施例1-1~1-9は対応する比較例と比べて、高効率で長寿命だった。
<実施例2-1~2および比較例2-1>
[実施例2-1]
スパッタリングにより200nmの厚さに製膜したITOを120nmまで研磨した、26mm×28mm×0.7mmのガラス基板((株)オプトサイエンス製)を透明支持基板とした。この透明支持基板を市販の蒸着装置(昭和真空(株)製)の基板ホルダーに固定し、HAT-CN、HTL-1,TcTa、ETL-1、化合物(1-2)およびET7をそれぞれ入れたモリブデン製蒸着用ボート、LiFおよびアルミニウムをそれぞれ入れたタングステン製蒸着用ボートを装着した。
透明支持基板のITO膜の上に順次、下記各層を形成した。真空槽を5×10-4Paまで減圧し、まず、HAT-CNを加熱して膜厚5nmになるように蒸着して正孔注入層を形成した。次に、HTL-1を加熱して膜厚90nmになるように蒸着して正孔輸送層1を形成し、さらにTcTaを加熱して膜厚10nmになるように蒸着して正孔輸送層2を形成した。次に、TcTaとETL-1と化合物(1-2)を同時に加熱して膜厚20nmになるように蒸着して発光層を形成した。TcTaとETL-1と化合物(1-2)の質量比がおよそ49対49対2になるように蒸着速度を調節した。次に、ETL-1を加熱して膜厚20nmになるように蒸着して電子輸送層1を形成し、さらにET7を加熱して膜厚10nmになるように蒸着して電子輸送層2を形成した。各層の蒸着速度は0.01~1nm/秒であった。その後、LiFを加熱して膜厚1nmになるように0.01~0.1nm/秒の蒸着速度で蒸着し、次いで、アルミニウムを加熱して膜厚100nmになるように蒸着して陰極を形成し、有機EL素子を得た。このとき、アルミニウムの蒸着速度は1~10nm/秒になるように調節した。
[実施例2-2、比較例2-1]
実施例2-1のドーパントを表3に記載のものに変更する以外は実施例2-1と同様の手順で有機EL素子を得た。
なお、表3において、「ホスト1」は正孔輸送性ホスト材料に該当し、「ホスト2」は電子輸送性ホスト材料に該当する。
Figure 2024054074000194
上記各素子の製造に用いた化合物の化学構造を以下に示す。
Figure 2024054074000195
実施例2-1~2、比較例2-1の有機EL素子について、ITO電極を陽極、LiF/アルミニウム電極を陰極として直流電圧を印加し、輝度1000cd/m2における、極大発光波長(EL)、外部量子効率(EQE)およびLT95(初期輝度1000cd/m2における電流密度で連続駆動させたときの950cd/m2になるまでの時間)を測定した。
各素子の評価結果を表4に示す。
Figure 2024054074000196
実施例は比較例と比べて、高効率、長寿命だった。
塗布型有機EL素子
次に、有機層を塗布形成して得られる有機EL素子について説明する。
<高分子ホスト化合物:SPH-101の合成>
国際公開第2015/008851号に記載の方法に従い、SPH-101を合成した。M1の隣にはM2またはM3が結合した共重合体が得られ、仕込み比より各ユニットは50:26:24(モル比)であると推測される。下記構造式中、Bpinはピナコラートボリル、*は各ユニットの連結箇所である。
Figure 2024054074000197
<高分子正孔輸送化合物:XLP-101の合成>
特開2018-61028号公報に記載の方法に従い、XLP-101を合成した。M4の隣にはM5またはM6が結合した共重合体が得られ、仕込み比より各ユニットは40:10:50(モル比)であると推測される。下記構造式中、Bpinはピナコラートボリル、*は各ユニットの連結箇所である。
Figure 2024054074000198
<実施例C1~C9>
各層を形成する材料の塗布用溶液を調製して塗布型有機EL素子を作製する。
<実施例C1~C3の有機EL素子の作製>
有機EL素子における、各層の材料構成を表5に示す。
Figure 2024054074000199
表5における「ET1」の化学構造を以下に示す。
Figure 2024054074000200
<発光層形成用組成物(1)の調製>
下記成分を均一な溶液になるまで撹拌することで発光層形成用組成物(1)を調製する。調製した発光層形成用組成物をガラス基板にスピンコートし、減圧下で加熱乾燥することによって、膜欠陥がなく平滑性に優れた塗布膜が得られる。
SPH-101 1.96 質量%
化合物(X) 0.04 質量%
キシレン 69.00 質量%
デカリン 29.00 質量%
なお、化合物(X)は、式(1)で表される多環芳香族化合物、当該多環芳香族化合物をモノマー(すなわち当該モノマーは反応性置換基を有する)として高分子化させた高分子化合物、当該高分子化合物をさらに架橋させた高分子架橋体、主鎖型高分子に前記モノマーを置換させたペンダント型高分子化合物、または当該ペンダント型高分子化合物をさらに架橋させたペンダント型高分子架橋体である。高分子架橋体またはペンダント型高分子架橋体を得るための高分子化合物またはペンダント型高分子化合物は架橋性置換基を有する。
<PEDOT:PSS溶液>
市販のPEDOT:PSS溶液(Clevios(TM) P VP AI4083、PEDOT:PSSの水分散液、Heraeus Holdings社製)を用いる。
Figure 2024054074000201
<OTPD溶液の調製>
OTPD(LT-N159、Luminescence Technology Corp社製)およびIK-2(光カチオン重合開始剤、サンアプロ社製)をトルエンに溶解させ、OTPD濃度0.7質量%、IK-2濃度0.007質量%のOTPD溶液を調製する。
Figure 2024054074000202
<XLP-101溶液の調製>
キシレンにXLP-101を0.6質量%の濃度で溶解させ、0.7質量%XLP-101溶液を調製する。
<PCz溶液の調製>
PCz(ポリビニルカルバゾール)をジクロロベンゼンに溶解させ、0.7質量%PCz溶液を調製する。
Figure 2024054074000203
<実施例C1>
ITOが150nmの厚さに蒸着されたガラス基板上に、PEDOT:PSS溶液をスピンコートし、200℃のホットプレート上で1時間焼成することで、膜厚40nmのPEDOT:PSS膜を成膜する(正孔注入層)。次いで、OTPD溶液をスピンコートし、80℃のホットプレート上で10分間乾燥した後、露光機で露光強度100mJ/cm2で露光し、100℃のホットプレート上で1時間焼成することで、溶液に不溶な膜厚30nmのOTPD膜を成膜する(正孔輸送層)。次いで、発光層形成用組成物(1)をスピンコートし、120℃のホットプレート上で1時間焼成することで、膜厚20nmの発光層を成膜する。
作製した多層膜を市販の蒸着装置(昭和真空(株)製)の基板ホルダーに固定し、ET1を入れたモリブデン製蒸着用ボート、LiFを入れたモリブデン製蒸着用ボート、アルミニウムを入れたタングステン製蒸着用ボートを装着する。真空槽を5×10-4Paまで減圧した後、ET1を加熱して膜厚30nmになるように蒸着して電子輸送層を形成する。電子輸送層を形成する際の蒸着速度は1nm/秒とする。その後、LiFを加熱して膜厚1nmになるように0.01~0.1nm/秒の蒸着速度で蒸着する。次いで、アルミニウムを加熱して膜厚100nmになるように蒸着して陰極を形成する。このようにして有機EL素子を得る。
<実施例C2>
実施例C1と同様の方法で有機EL素子を得る。なお、正孔輸送層は、XLP-101溶液をスピンコートし、200℃のホットプレート上で1時間焼成することで、膜厚30nmの膜を成膜する。
<実施例C3>
実施例C1と同様の方法で有機EL素子を得る。なお、正孔輸送層は、PCz溶液をスピンコートし、120℃のホットプレート上で1時間焼成することで、膜厚30nmの膜を成膜する。
<実施例C4~C6の有機EL素子の作製>
有機EL素子における、各層の材料構成を表6に示す。
Figure 2024054074000204
<発光層形成用組成物(2)~(4)の調製>
下記成分を均一な溶液になるまで撹拌することで発光層形成用組成物(2)を調製する。
mCBP 1.98 質量%
化合物(X) 0.02 質量%
トルエン 98.00 質量%
下記成分を均一な溶液になるまで撹拌することで発光層形成用組成物(3)を調製する。
SPH-101 1.98 質量%
化合物(X) 0.02 質量%
キシレン 98.00 質量%
下記成分を均一な溶液になるまで撹拌することで発光層形成用組成物(4)を調製する。
DOBNA 1.98 質量%
化合物(X) 0.02 質量%
トルエン 98.00 質量%
表6において、「mCBP」は3,3'-ビス(N-カルバゾリル)-1,1'-ビフェニルであり、「DOBNA」は3,11-ジ-o-トリル-5,9-ジオキサ-13b-ボラナフト[3,2,1-de]アントラセンであり、「TSPO1」はジフェニル[4-(トリフェニルシリル)フェニル]ホスフィンオキシドである。以下に化学構造を示す。
Figure 2024054074000205
<実施例C4>
ITOが45nmの厚さに成膜されたガラス基板上に、ND-3202(日産化学工業製)溶液をスピンコートした後、大気雰囲気下において、50℃、3分間加熱し、更に230℃、15分間加熱することで、膜厚50nmのND-3202膜を成膜する(正孔注入層)。次いで、XLP-101溶液をスピンコートし、窒素ガス雰囲気下において、ホットプレート上で200℃、30分間加熱させることで、膜厚20nmのXLP-101膜を成膜する(正孔輸送層)。次いで、発光層形成用組成物(2)をスピンコートし、窒素ガス雰囲気下において、130℃、10分間加熱させることで、20nmの発光層を成膜する。
作製した多層膜を市販の蒸着装置(昭和真空(株)製)の基板ホルダーに固定し、TSPO1を入れたモリブデン製蒸着用ボート、LiFを入れたモリブデン製蒸着用ボート、アルミニウムを入れたタングステン製蒸着用ボートを装着する。真空槽を5×10-4Paまで減圧した後、TSPO1を加熱して膜厚30nmになるように蒸着して電子輸送層を形成する。電子輸送層を形成する際の蒸着速度は1nm/秒とする。その後、LiFを加熱して膜厚1nmになるように0.01~0.1nm/秒の蒸着速度で蒸着する。次いで、アルミニウムを加熱して膜厚100nmになるように蒸着して陰極を形成する。このようにして有機EL素子を得る。
<実施例C5およびC6>
発光層形成用組成物(3)または(4)を用いて、実施例C4と同様の方法で有機EL素子を得る。
<実施例C7~C9の有機EL素子の作製>
有機EL素子における、各層の材料構成を表7に示す。
Figure 2024054074000206
<発光層形成用組成物(5)~(7)の調製>
下記成分を均一な溶液になるまで撹拌することで発光層形成用組成物(5)を調製する。
mCBP 1.80 質量%
2PXZ-TAZ 0.18 質量%
化合物(X) 0.02 質量%
トルエン 98.00 質量%
下記成分を均一な溶液になるまで撹拌することで発光層形成用組成物(6)を調製する。
SPH-101 1.80 質量%
2PXZ-TAZ 0.18 質量%
化合物(X) 0.02 質量%
キシレン 98.00 質量%
下記成分を均一な溶液になるまで撹拌することで発光層形成用組成物(7)を調製する。
DOBNA 1.80 質量%
2PXZ-TAZ 0.18 質量%
化合物(X) 0.02 質量%
トルエン 98.00 質量%
表7において、「2PXZ-TAZ」は10,10'-((4-フェニル-4H-1,2,4-トリアゾール-3,5-ジイル)ビス(4,1-フェニレン))ビス(10H-フェノキサジン)である。以下に化学構造を示す。
Figure 2024054074000207
<実施例C7>
ITOが45nmの厚さに成膜されたガラス基板上に、ND-3202(日産化学工業製)溶液をスピンコートした後、大気雰囲気下において、50℃、3分間加熱し、更に230℃、15分間加熱することで、膜厚50nmのND-3202膜を成膜する(正孔注入層)。次いで、XLP-101溶液をスピンコートし、窒素ガス雰囲気下において、ホットプレート上で200℃、30分間加熱させることで、膜厚20nmのXLP-101膜を成膜する(正孔輸送層)。次いで、発光層形成用組成物(5)をスピンコートし、窒素ガス雰囲気下において、130℃、10分間加熱させることで、20nmの発光層を成膜する。
作製した多層膜を市販の蒸着装置(昭和真空(株)製)の基板ホルダーに固定し、TSPO1を入れたモリブデン製蒸着用ボート、LiFを入れたモリブデン製蒸着用ボート、アルミニウムを入れたタングステン製蒸着用ボートを装着する。真空槽を5×10-4Paまで減圧した後、TSPO1を加熱して膜厚30nmになるように蒸着して電子輸送層を形成する。電子輸送層を形成する際の蒸着速度は1nm/秒とする。その後、LiFを加熱して膜厚1nmになるように0.01~0.1nm/秒の蒸着速度で蒸着する。次いで、アルミニウムを加熱して膜厚100nmになるように蒸着して陰極を形成する。このようにして有機EL素子を得る。
<実施例C8およびC9>
発光層形成用組成物(6)または(7)を用いて、実施例C7と同様の方法で有機EL素子を得る。
以上、本発明に係る化合物の一部について、有機EL素子用材料としての評価を行い、優れた材料であること示したが、評価を行っていない他の化合物も同じ基本骨格を有し、全体としても類似の構造を有する化合物であり、当業者においては同様に優れた有機EL素子用材料であることを理解できる。
本発明の多環芳香族化合物は有機デバイス用材料、特に有機電界発光素子の発光層形成のための発光層用材料として有用である。本発明の多環芳香族化合物を発光層用ドーパントとして用いることで、長寿命および高効率発光の有機電界発光素子が得られる。
100 有機電界発光素子
101 基板
102 陽極
103 正孔注入層
104 正孔輸送層
105 発光層
106 電子輸送層
107 電子注入層
108 陰極

Claims (13)

  1. 式(1)で表される多環芳香族化合物;
    Figure 2024054074000208
    式(1)中、
    式(1A)で表される部分構造はn個の式(1B)で表される部分構造とD環から形成される2価の基を介して結合しており、
    nは1または2の整数であり、
    A環、B環、C環、およびD環はそれぞれ独立して、置換もしくは無置換のアリール環または置換もしくは無置換のヘテロアリール環であり、
    n個のXは、前記2価の基と*で結合しているNであり、
    その他の(2-n)個のXは>N-RNX、>O、>C(-RCX2、>Si(-RIX2、>S、または>Seであり、RNXは水素、置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリール、置換もしくは無置換のアルキル、または置換もしくは無置換のシクロアルキルであり、RCXおよびRIXはそれぞれ独立して水素、置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリール、置換もしくは無置換のアルキル、または置換もしくは無置換のシクロアルキルであり、2つのRCXは互いに結合して環を形成していてもよく、2つのRIXは互いに結合して環を形成していてもよく、RNX、RCXおよびRIXは連結基または単結合によりA環、B環、およびC環からなる群より選択される少なくとも1つと結合していてもよく、
    式(1A)およびD環におけるアリール環およびヘテロアリール環からなる群より選択される少なくとも1つは、少なくとも1つのシクロアルカンで縮合されていてもよく、当該シクロアルカンは少なくとも1つの置換基で置換されていてもよく、当該シクロアルカンにおける少なくとも1つの-CH2-は-O-で置き換えられていてもよく、
    1~R10は、それぞれ独立して、水素、置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリール、置換もしくは無置換のアルキル、または置換もしくは無置換のシクロアルキルであり、
    式(1B)で表される部分構造中いずれか1つの水素が前記2価の基と**で結合する単結合に置き換えられており、
    式(1)における少なくとも1つの水素は重水素で置き換えられていてもよい。
  2. 式(1B)で表される部分構造中、R10中のいずれか1つの水素が前記2価の基と**で結合する単結合に置き換えられている請求項1に記載の多環芳香族化合物。
  3. 10が単結合である請求項2に記載の多環芳香族化合物。
  4. 10が置換または無置換のフェニレンである請求項2に記載の多環芳香族化合物。
  5. 1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8がそれぞれ独立して水素またはアルキルであり、かつR9がアリールもしくはヘテロアリールで置換されていてもよいアリールまたはアリールもしくはヘテロアリールで置換されていてもよいヘテロアリールであるか、または
    2、R3、R6、R4、R5、R7およびR9がそれぞれ独立して水素またはアルキルであり、かつR1およびR8がそれぞれ独立してアリールもしくはヘテロアリールで置換されていてもよいアリールまたはアリールもしくはヘテロアリールで置換されていてもよいヘテロアリールである、請求項2に記載の多環芳香族化合物。
  6. nが1であり、その他の(2-n)個のXが>N-RNXであり、RNXが置換もしくは無置換のアリールである、請求項1に記載の多環芳香族化合物。
  7. 下記いずれかの式で表される請求項6に記載の多環芳香族化合物;
    Figure 2024054074000209
    式中、Meはメチル、tBuはt-ブチル、Dは重水素である。
  8. nが2である請求項1に記載の多環芳香族化合物。
  9. 下記いずれかの式で表される請求項8に記載の多環芳香族化合物;
    Figure 2024054074000210
    式中、tBuはt-ブチルである。
  10. 請求項1~9のいずれか1項に記載の多環芳香族化合物を含有する、有機デバイス用材料。
  11. 陽極および陰極からなる一対の電極と、該一対の電極間に配置され、請求項1~9のいずれか1項に記載の多環芳香族化合物を含有する有機層とを有する、有機電界発光素子。
  12. 前記有機層が発光層である、請求項11に記載の有機電界発光素子。
  13. 請求項11に記載の有機電界発光素子を備えた表示装置または照明装置。
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