JP2024052068A - がんの治療に用いるための組成物 - Google Patents

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剛志 寳田
将太 ▲たき▼平
大祐 山田
敏文 尾▲崎▼
英二 中田
政清 阪口
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Abstract

【課題】本発明は、新たな作用メカニズムに基づく、がんの治療に用いるための組成物を提供することを課題とする。【解決手段】TOP2AとPRRX1の相互作用を阻害する物質を含む組成物であって、がんの治療に用いるための組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、がんの治療に用いるための組成物に関する。
PRRX1(Paired related homeobox 1)は、ホメオドメインを有する転写因子の一つであり、発生過程において側板中胚葉由来の肢芽や、沿軸中胚葉由来の頭部中胚葉で特異的に発現することが知られているタンパク質である。また、TOP2A(Topoisomerase 2A)はDNAの転写の際に必須のタンパク質である。
抗がん剤として、エトポシドをはじめとするTOP2A阻害剤が知られているが、これはTOP2Aに直接作用することから、重篤な副作用、抗がん剤耐性、二次がんの発生といった問題も報告されている(非特許文献1,2)。また、肉腫等といった、抗がん剤に対する感受性が低い悪性腫瘍については、有効な薬物療法が見出されていないという現状もある。
そのため、新たな作用メカニズムに基づく創薬が求められていた。
Mol Cell (2019) 75, 252-266. Cancer Drug Resist (2020) 3, 161-170
本発明は、新たな作用メカニズムに基づく、がんの治療に用いるための組成物を提供することを課題とする。
上記課題を解決すべく、発明者らは鋭意研究を重ねた結果、PRRX1とTOP2Aの相互作用が、がん治療の標的となりうることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成されたものであり、以下に示す広い態様の発明を含むものである。
[項1]
TOP2AとPRRX1の相互作用を阻害する物質を含む組成物であって、がんの治療に用いるための、組成物。
[項2]
前記がんが、肉腫又は神経膠腫である、項1に記載の組成物。
[項3]
前記TOP2AとPRRX1の相互作用を阻害する物質が、
エトポシド及びその類縁体、レボフロキサシン及びその類縁体、シプロフロキサシン及びその類縁体からなる群から選択される少なくとも1種である、項1又は2に記載の組成物。
[項4]
項1~3のいずれか1項に記載の組成物からなる抗がん剤。
本発明によれば、現存の抗がん剤とは異なる作用メカニズムを有する、がんの治療に用いるための組成物を提供することができる。
ヒトPRRX1Aタンパク質とヒトTOP2Aタンパク質。 実施例1におけるSDS-PAGEの銀染色結果。 実施例2におけるウェスタンブロットの結果。 実施例3におけるヒト悪性末梢神経鞘腫患者の組織検体におけるPRRX1及びTOP2Aの免疫染色結果。 実施例3におけるヒト悪性末梢神経鞘腫におけるPRRX1とTOP2Aの発現量の相関性。 実施例3におけるPRRX1の発現量と予後との関係性。 実施例3におけるTOP2Aの発現量と予後との関係性。 実施例4における免疫二重染色結果。 実施例5における、HS-PSS 3xFLAG-PRRX1A株のTOP2Aノックダウンについてのウェスタンブロット結果。 実施例5における、HS-PSS 3xFLAG-PRRX1A株のTOP2Aノックダウンと遊走能の検討結果。 実施例6における、部分欠損タンパク質の構造。 実施例6において作製されたベクターのベクターマップ。 実施例6における、免疫沈降の結果。 実施例7における、各種薬剤を用いた際の免疫沈降の結果。
本発明において、「治療」とは、所望の薬理学的効果及び/又は生理学的効果を得ることを意味する。この効果は、疾病及び/又は疾病に起因する悪影響(病態、症状等)を、部分的又は完全に治癒することを含む。また、上記効果には、疾病及び/又は疾病に起因する悪影響(病態、症状等)の進行を阻止又は遅延する効果、病態や症状を緩和する(疾病、症状等の後退、又は進行の逆転を引き起こす)効果、再発を阻止する効果等が含まれる。
また、上記効果には、疾病及び/又は疾病に起因する悪影響(病態、症状等)の素因を持ち得るが、まだ持っていると診断されていない個体において、疾病及び/又は疾病に起因する悪影響(病態、症状等)が起こることを部分的又は完全に防止する効果が含まれる。従って、「治療」なる用語には、「緩解」、「再発防止」、「予防」等の意味も含まれる。
本明細書において、「相互作用」は、直接的な相互作用のみならず、他の分子(タンパク質、核酸、糖、脂質、低分子化合物等)を介して複合体を形成するような、間接的な相互作用も含まれる。
<がんの治療に用いるための組成物>
本発明は、TOP2AとPRRX1の相互作用を阻害する物質を含む組成物であって、がんの治療に用いるための組成物を提供する。
TOP2A(Topoisomerase 2A)はDNAの転写の際に必須のタンパク質である。ヒト(Homo sapiens)のTOP2A遺伝子のcDNAの塩基配列及びTOP2Aタンパク質のアミノ酸配列は、米国生物工学情報センター(NCBI; National Center for Biotechnology Information)が提供するGenBankに、下記のアクセッション番号で登録されている。なお、複数のリビジョン(revision)が登録されている場合、最新のリビジョンを指すと理解される。
- ヒトTOP2A遺伝子: XM_005257632(XM_005257632.2)、XM_011525165(XM_011525165.3)
- ヒトTOP2Aタンパク質: XP_005257689(XP_005257689.1)、XP_011523467(XP_011523467.1)
本明細書において、「TOP2A」は、ヒトTOP2Aに限定されず、TOP2Aの他の種(例えば、ラット、マウス、モルモット、ブタ、サル、ウシ、ヒツジ、ヤギ等)のホモログも含まれる。そのようなホモログのアミノ酸配列は、例えば、ヒトTOP2Aのアミノ酸配列に対して、アミノ酸配列中に1又は数個(1~数十個程度、好ましくは1~30個程度、より好ましくは1~15個程度、さらに好ましくは1~10個程度、特に好ましくは1~5個程度)の置換、付加、挿入、又は欠失を有するアミノ酸配列、又は、ヒトTOP2Aのアミノ酸配列に対してアミノ酸配列に対して、例えば85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、最も好ましくは99%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる。
PRRX1(Paired related homeobox 1)タンパク質は、ホメオドメインを有する転写因子の一つである。ヒト(Homo sapiens)のPRRX1遺伝子のcDNAの塩基配列及びPRRX1タンパク質のアミノ酸配列は、米国生物工学情報センター(NCBI; National Center for Biotechnology Information)が提供するGenBankに、下記のアクセッション番号で登録されている。なお、複数のリビジョン(revision)が登録されている場合、最新のリビジョンを指すと理解される。
- ヒトPRRX1遺伝子: NM_006902 (NM_006902.5)、NM_022716 (NM_022716.4)
- ヒトPRRX1タンパク質: NP_008833 (NP_008833.1)、NP_073207 (NP_073207.1)
本明細書において、「PRRX1」は、ヒトPRRX1に限定されず、PRRX1の他の種(例えば、ラット、マウス、モルモット、ブタ、サル、ウシ、ヒツジ、ヤギ等)のホモログも含まれる。そのようなホモログのアミノ酸配列は、例えば、ヒトPRRX1のアミノ酸配列に対して、アミノ酸配列中に1又は数個(1~数十個程度、好ましくは1~30個程度、より好ましくは1~15個程度、さらに好ましくは1~10個程度、特に好ましくは1~5個程度)の置換、付加、挿入、又は欠失を有するアミノ酸配列、又は、ヒトPRRX1のアミノ酸配列に対してアミノ酸配列に対して、例えば85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、最も好ましくは99%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる。
本明細書において、「TOP2AとPRRX1の相互作用を阻害する物質」とは、TOP2AとPRRX1の相互作用を阻害する任意の物質を意味する。好ましくは、後述するスクリーニング方法を実施することによって被験物質の中から「TOP2AとPRRX1の相互作用を阻害する物質」と判定されるものである。
「TOP2AとPRRX1の相互作用を阻害する物質」はTOP2AとPRRX1の相互作用を阻害するのであれば特に制限されず、合成化合物でも良く、天然物抽出物中に存在する化合物であっても良い。例えば、合成化合物、天然化合物、植物抽出物、動物抽出物、発酵生産物、市販の試薬、化合物ライブラリーから選抜された化合物等が挙げられる。分子種も特に制限されず、例えば、低分子化合物、ペプチド、タンパク質、糖、核酸を例示できる。
「TOP2AとPRRX1の相互作用を阻害する物質」として、例えば以下の物質が挙げられる。
(i)TOP2Aの立体構造中の、PRRX1との相互作用部位に対して特異的に結合する物質
(ii)PRRX1の立体構造中の、TOP2Aとの相互作用部位に対して特異的に結合する物質
(iii)TOP2Aの立体構造中の、PRRX1との相互作用部位の近傍に結合することにより、TOP2AとPRRX1の相互作用を阻害する物質
(iv)PRRX1の立体構造中の、TOP2Aとの相互作用部位の近傍に結合することにより、TOP2AとPRRX1の相互作用を阻害する物質
(v)TOP2Aと結合して、TOP2Aの立体構造を変化させることにより、TOP2AとPRRX1の相互作用を阻害する物質
(vi)PRRX1と結合して、PRRX1の立体構造を変化させることにより、TOP2AとPRRX1の相互作用を阻害する物質
なお、副作用の観点から、「TOP2AとPRRX1の相互作用を阻害する物質」は、TOP2A阻害作用を有する物質や、PRRX1阻害作用を有する物質でないことが好ましく、TOP2AとPRRX1の相互作用を特異的に阻害する物質であることがより好ましい。TOP2A阻害作用を有する物質としては、TOP2Aの作用(DNA2重らせん構造の切断及び再結合を触媒する作用等)を阻害する物質、TOP2Aの発現を阻害する物質等が挙げられる。PRRX1阻害作用を有する物質としては、PRRX1の作用(転写因子としての作用、クレアチニンキナーゼの発現調節作用等)を阻害する物質、PRRX1の発現を阻害する物質等が挙げられる。
TOP2Aにおける、PRRX1との相互作用部位の一例として、TOPRIMドメイン- DNA結合ドメイン(ヒトTOP2Aタンパク質における431-1000アミノ酸残基)が挙げられる。
PRRX1における、TOP2Aとの相互作用部位の一例として、ホメオドメイン(ヒトPRRX1Aタンパク質における94-153アミノ酸残基)が挙げられる。
典型的な実施形態において、「TOP2AとPRRX1の相互作用を阻害する物質」としては、
TOP2AのTOPRIMドメイン- DNA結合ドメインに対して特異的に結合する物質、
PRRX1のホメオドメインに対して特異的に結合する物質、
TOP2AのTOPRIMドメイン- DNA結合ドメインの近傍に結合することにより、TOP2AとPRRX1の相互作用を阻害する物質、
PRRX1のホメオドメインの近傍に結合することにより、TOP2AとPRRX1の相互作用を阻害する物質、
が挙げられる。
「TOP2AとPRRX1の相互作用を阻害する物質」としては、例えば、TOP2AのTOPRIMドメイン- DNA結合ドメインに結合する物質として、エトポシド;レボフロキサシン、シプロフロキサシン、ナジフロキサシン、ノルフロキサシン、オフロキサシン、エノキサシン、ロメフロキサシン、フレロキサシン、パズフロキサシン、トスフロキサシン、スパルフロキサシン、プルリフロキサシン、ガチフロキサシン、ガレノキサシン、モキシフロキサシン、シタフロキサシン、ラスクフロキサシン等のニューキノロン系抗菌薬;メルバロン;マイクロシンB17;m-AMSA、o-AMSA;ミトキサントロン;アメタントロン等が挙げられる。また、エトポシドの類縁体、レボフロキサシンの類縁体、シプロフロキサシンの類縁体といった、上記列挙した化合物の類縁体も挙げられる。また、PRRX1のホメオドメインに結合する物質として、TAATTAの配列を含む核酸分子等が挙げられる。これらは1種単独でも良く、2種以上を組み合わせても良い。
TOP2AとPRRX1との相互作用は、がんの転移及び増殖に関与していると推定されることから、TOP2AとPRRX1の相互作用を阻害する物質を含む組成物は、がんの治療に好適に用いることができ、抗がん剤として有用である。また、TOP2AとPRRX1の相互作用を阻害する物質は、抗がん剤の候補物質として有用であり、さらなるスクリーニング等を経て、抗がん剤となる可能性を有する。
本明細書において、「がん」とは、上皮性細胞からなる悪性腫瘍(癌腫)、非上皮性細胞からなる悪性腫瘍(肉腫)、造血器腫瘍等を意味する。
本発明の組成物の対象疾患であるがんとしては、特に限定されず、脳腫瘍、神経膠腫、皮膚がん、頸頭部がん、食道がん、肺がん、胃がん、十二指腸がん、乳がん、前立腺がん、子宮頸がん、子宮体がん、すい臓がん、肝臓がん、大腸がん、結腸がん、膀胱がん、卵巣がん、肉腫、悪性リンパ腫、白血病、多発性骨髄腫等が挙げられる。この中でも、肉腫、神経膠腫等が好ましい。治療対象となる患者としては、TOP2A及びPRRX1の発現量が高い状態にある患者が好ましい。肉腫としては、例えば、骨肉腫、脊索腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫等の骨の肉腫や、悪性末梢神経鞘腫瘍、横紋筋肉腫、滑膜肉腫、血管肉腫、骨外性ユーイング肉腫、GIST(消化管間質腫瘍)、脂肪肉腫、線維肉腫、粘性線維肉腫、粘液線維肉腫、平滑筋肉腫、胞巣状軟部肉腫、未分化多形肉腫、明細胞肉腫、隆起性皮膚線維肉腫、類上皮肉腫等の軟部肉腫が挙げられる。また、神経膠腫としては、例えば、びまん性星細胞種(diffuse astrocytoma)、乏突起膠腫(oligodendroglioma)、退形成性星細胞種(anaplastic astrocytoma)、退形成性乏突起膠腫(anaplastic oligodendroglioma)、膠芽腫(glioblastoma)等が挙げられる。
本発明に係る組成物における、TOP2AとPRRX1の相互作用を阻害する物質の含有量は、組成物100質量部に対して、通常は0.001~100質量程度とすればよい。すなわち、TOP2AとPRRX1の相互作用を阻害する物質そのものを、本発明の組成物としてもよい。
本発明に係る組成物には、薬学分野の組成物を製造する際に使用される薬学的に許容可能な公知の担体又は添加物を配合してもよい。この様な担体或いは添加物の具体例として、任意の担体、希釈剤、賦形剤、懸濁剤、潤滑剤、アジュバント、媒体、送達システム、乳化剤、錠剤分解物質、吸収剤、保存剤、界面活性剤、着色剤、香料、又は甘味料等が挙げられる。
本発明に係る組成物は上記の担体又は配合物を適宜組み合わせてあらゆる剤形とすることができる。具体的には、具体的な剤形としては、脳室内注射剤、静脈注射剤、輸液剤、埋め込み注射剤、持続性注射剤等の注射剤;素錠、糖衣錠、フィルムコート錠、腸溶錠、口腔内崩壊錠、チュアブル錠、発泡錠、分散錠、溶解錠等の錠剤;硬カプセル錠、軟カプセル錠等のカプセル剤;発泡顆粒剤、徐放性顆粒剤、腸溶性顆粒剤等を含む顆粒剤;散剤;エリキシル剤、懸濁剤、乳剤、リモナーデ剤等の経口液剤;シロップ用剤等のシロップ剤;経口ゼリー剤等が挙げられる。
本発明に係る組成物の使用対象動物は、生体であればヒトに限らずあらゆる動物個体を対象とできる。例えば、マウス、ラット、ウサギ、ハムスター、モルモット、サル、チンパンジー等の実験動物;イヌ、ネコ等の愛玩動物;その他保護を必要とするあらゆる動物種等が挙げられる。
本発明に係る組成物の投与方法は、特に限定されず、上記の投与対象、剤形等を適宜勘案して公知の投与方法を採用すればよい。具体的には、経口、筋肉内、静脈内、動脈内、くも膜下腔内、脳室内等へ投与する方法が挙げられる。
本発明に係る組成物の投与量は、投与対象動物がヒトであれば、通常は1~10mg/kg程度とすればよく、投与対象動物がマウスであれば、通常は1~10mg/kg程度とすればよい。その他の投与対象動物であれば、上記のヒト及びマウスにおける投与量を基に適宜設定することができる。
本発明に係る組成物の投与は、上記の量を一日に一度に投与してもよく、数回に分けて投与してもよい。また、上記疾患に対する治療効果を有する範囲において、投与間隔は、毎日、隔日、毎週、隔週、2~3週毎、毎月、隔月又は2~3ヶ月毎でもよい。
<スクリーニング方法>
TOP2AとPRRX1の相互作用を阻害する物質を検出するスクリーニング方法について説明する。
典型的な実施形態において、上記スクリーニング方法は、以下の工程(1)及び(2)を含む。
(1)被験物質の存在下及び非存在下でTOP2AとPRRX1との相互作用を測定する工程、
(2)前記被験物質の存在下での前記相互作用が、前記被験物質の非存在下での前記相互作用と比較して低い場合に、前記被験物質をTOP2AとPRRX1との相互作用を阻害する物質である可能性が高い、と判定する工程。
本発明のスクリーニング方法に供される被験物質は特に限定されず、核酸、ペプチド、タンパク質、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、細胞培養上清、植物抽出液、哺乳動物の組織抽出液、血漿等であっても良い。被験物質は、新規な物質であっても良いし、公知の物質であっても良い。これらの被験物質は塩を形成していても良い。被験物質の塩としては、生理学的に許容される酸や塩基との塩が好ましい。
TOP2A及びPRRX1の由来する生物種は、例えば、ヒト、ラット、マウス、モルモット、ブタ、サル、ウシ、ヒツジ、ヤギ等が挙げられるが、これに限定されない。
TOP2Aは、全長のタンパク質からなるものであっても良く、一部のペプチド又はタンパク質から構成されていても良い。TOP2Aが一部のペプチド又はタンパク質から構成されている場合には、両者の相互作用する部位を含む。TOP2Aにおける、PRRX1との相互作用する部位の一例として、TOPRIMドメイン- DNA結合ドメイン(ヒトTOP2Aタンパク質における431-1000アミノ酸残基)が挙げられる。
また、PRRX1は、全長のタンパク質からなるものであっても良く、一部のペプチド又はタンパク質から構成されていても良い。PRRX1が一部のペプチド又はタンパク質から構成されている場合には、両者の相互作用する部位を含む。PRRX1における、TOP2Aとの相互作用する部位の一例として、ホメオドメイン(ヒトPRRX1タンパク質における94-153アミノ酸残基)が挙げられる。
また、TOP2A及びPRRX1は、細胞由来であっても良く、インビトロ翻訳から得られたものであっても良い。細胞由来のタンパク質は、内在性のタンパク質であっても良く、細胞内で過剰発現させたものであっても良い。更に、TOP2A及びPRRX1は、例えばNovus社、Abcam社等により、市販されているものであっても良い。
内在性タンパク質を用いる場合、TOP2Aは、例えばショウジョウバエ、酵母、大腸菌等から取得することができる。また、PRRX1は、例えばショウジョウバエ、酵母、大腸菌等から取得することができる。これらの細胞は正常細胞であっても良く、癌細胞、前駆細胞、幹細胞であっても良い。
細胞内でタンパク質を過剰発現させる場合には、公知の方法を特に制限なく用いることができる。例えば、細胞内にタンパク質を過剰発現するベクターを導入し、細胞内でタンパク質を合成させる方法により行うことができる。用いられる細胞は特に限定されなく、例えばヒト、マウス及びラット等の哺乳類由来の細胞や大腸菌が挙げられる。かかる過剰発現ベクターの例として、プラスミドベクター、ウイルスベクター等が挙げられる。細胞内に過剰発現ベクターを導入する方法としては、例えばリン酸カルシウム法、リポフェクション法、DEAEデキストラン法、エレクトポレーション法、マイクロインジェクション法、ウイルス感染法等の公知の遺伝子導入方法が挙げられる。細胞内で過剰発現されるタンパク質は、好ましくはGST、His、FLAG、HA、Myc等のタグを有する融合タンパク質である。このようなタグを有することにより、当該タンパク質をより単離し易くなる。タグは、融合タンパク質のN末端に付けても、C末端に付けても良いが、TOP2AとPRRX1との相互作用に影響を与えない部位に付けることが好ましい。過剰発現用の細胞、ベクター、プロモーター、及びタグの種類、ベクターの導入方法等は、当業者が適宜に選択できる。
また、細胞からのタンパク質の抽出する場合には、公知の方法を特に制限なく用いることができる。例えば、細胞溶解物から抽出することができる。かかる方法は例えばNP40、Triton等の界面活性剤を含有する緩衝液で細胞を溶解させる方法が挙げられる。タンパク質は、更に得られた細胞溶解物から単離されても良い。タンパク質の単離方法は、例えば抗原抗体反応を利用する単離方法、固定化金属イオンアフィニティクロマトグラフィー方法、セファロース等の担体を用いる方法が挙げられる。
インビトロ翻訳については、例えばTNT T7 Quick Coupled Transcription/Translation System (Promega社)、PUREfrex(ジーンフロンティア社)等の公知の方法を用いて行うことができる。
TOP2AとPRRX1との相互作用の測定方法は、相互作用を直接的又は間接的に検出することができれば、特に限定されない。例えば、酵素反応を利用する方法、蛍光強度を測定する方法、レポーター遺伝子の転写又は活性化を測定する方法、放射性物質を利用する方法等の相互作用を直接数値として測定する方法、及び相互作用の測定結果をいったん画像として取り込み、画像のドット等を測定する方法等が挙げられる。また、片方のタンパク質に対する標識された抗体を用いて相互作用を測定することもできる。
上記測定方法において、TOP2AとPRRX1との相互作用を測定しやすくするため、少なくとも片方のタンパク質が標識されていることが好ましい。タンパク質の標識は特に限定されず、例えば、HRP及びHA等を用いた酵素標識、Cy3、Cy5、FAM等を用いた蛍光標識、ジアミノベンチジン(DAB)、3,3’,5,5’-テトラメチルベンチジン(TMB)及び3-アミノ-9-エチルカルバゾル(AEC)等の発色物質を用いた標識、放射性標識等が挙げられる。好ましくは、これらの標識は、TOP2AとPRRX1の相互作用に影響を与えず、かつ、タンパク質が高次元構造を取る場合、タンパク質の表面に露出する部位で付加される。
また、TOP2AとPRRXとの相互作用は、共免疫沈降法を用いて測定することもできる。共免疫沈降法を用いる場合、典型的には、まず培養した細胞を溶解させ、細胞溶解物に担体又は特異性のない抗体を添加して遠心分離することにより、非特異的な結合を除去する。次に、担体及び、TOP2A又はPRRXのいずれか片方に対する抗体(TOP2Aの抗体やPRRXの抗体の代わりに、TOP2AやPRRXに標識タグ(FLAGタグ、HAタグ、Hisタグ等)を結合させ、当該タグに対する抗体を用いても良い)を添加して結合させ、遠心分離によって複合体を沈降させる。担体としては、マグネットビーズ、セファロースビーズ、アガロースビーズ、Protein Gビーズ及びProtein Aビーズ等が挙げられる。沈降させた複合体をSDS-PAGEにより大きさに基づいて分離した後、PVDF等のメンブレンに転写し、他方のタンパク質に対する抗体を一次抗体として添加する。次に、一次抗体を認識する標識された二次抗体を添加し、結合する二次抗体の量を測定する。標識方法は特に限定されず、上記のタンパク質の標識と同様の標識が利用可能である。
更に、TOP2AとPRRXとの相互作用は、プルダウンアッセイ法を用いて測定することもできる。プルダウンアッセイ法を用いる場合、まず、Glutathione Sepharose担体と、GST融合TOP2A又はGST融合PRRXとを結合させ、複合体を形成させる。かかる複合体に他方のタンパク質を含有する液体を添加して結合させ、余分の液体を十分に洗浄した後、複合体をSDS-PAGEを用いて分離して、PVDF等のメンブレンに転写する。添加されたタンパク質が担体-タンパク質複合体に結合するかを、標識された抗体を用いて検出し、両者の相互作用を判定する。標識方法は特に限定されず、上記のタンパク質の標識と同様の標識が利用可能である。
他のタンパク質間相互作用の測定方法は、当業者が適宜に選択でき、例えば、ファーウェスタン法、プロテイン・フラグメント・コンプリメンテーション・アッセイ(PCA)法、蛍光共鳴エネルギー移動法(Fluorescence resonance energy transfer、FRET)、アルファスクリーン(AlphaScreen)法、時間分解-蛍光共鳴エネルギー移動法(Time-resolved fluorescence resonance energy transfer、TR-FRET)、シンチレーション接近アッセイ(Scintillation proximityassay、SPA)法等の近接効果(proximityeffect)を利用する測定法が挙げられる。同様に細胞内でタンパク質間相互作用を測定する方法として、生物発光共鳴エネルギー移動(Bioluminescence resonance energytransfer、BRET) 、蛍光相互相関分光法(Fluorescence correlation spectroscopy、FCCS) 、蛍光タンパク質再構成法(Bimolecular fluorescent complementation、BiFC法)、Duolink in situ Proximity ligation assay (PLA)(Olink Bioscience社) 等が挙げられる。また、レポーター遺伝子を利用したツーハイブリッド法及びBiacoreシステム等の表面プラスモン共鳴方法(Surface Plasmon Resonance、SPR)等の方法も、タンパク質間相互作用の測定方法として使用することができる。
上記測定方法により測定した相互作用に基づいて、被検物質がTOP2AとPRRXとの相互作用を阻害する物質か否かを判定する。被験物質の非存在下で相互作用を測定した場合と比較して、被験物質の存在下での相互作用の低下が検出されれば、当該被験物質は、TOP2AとPRRX1との相互作用を阻害する物質である可能性が高い、と判定することができる。被検化合物の非存在下におけるTOP2AとPRRXとの相互作用は、被検化合物の存在下におけるTOP2AとPRRXとの相互作用と同時期に測定しても良く、別々に測定しても良い。相互作用の低減の割合は、評価方法により異なるため、特に限定されないが、被験物質存在下における相互作用が、被験物質非存在下の50%以下であることが好ましく、20%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましい。
<有効性の判定方法>
本発明の組成物は、TOP2AとPRRX1の相互作用を阻害する物質を含むことから、本発明の組成物の有効性は、TOP2A及びPRRX1の発現量の影響を受けうる。本発明の組成物の有効性の判定方法を以下に説明する。
典型的な実施形態において、本発明の組成物の有効性の判定方法は、被験者由来の生体試料におけるTOP2A及びPRRX1の発現量を測定する工程を含み、TOP2A及びPRRX1の発現量に基づいて、TOP2AとPRRX1との相互作用を阻害する物質に対する感受性の高さを判定し、感受性の高さに基づいて、本発明の抗がん剤の有効性が判定される。
被験者由来の生体試料としては特に制限されないが、がん組織や血液等が挙げられ、がん組織が好ましい。
被験者であるがん患者の生体試料におけるTOP2A及びPRRX1の発現量が、正常者の生体試料と比較して過剰であることが判明すれば、当該被験者のがんがTOP2A及びPRRX1の過剰発現に起因している可能性が高い。そのような場合、本発明の組成物を当該被験者に適用することで、TOP2AとPRRX1の相互作用を阻害され、有利な効果が得られると考えられる。よって、適用患者を判定することは有用である。
本実施形態において、被験者由来の生体試料におけるTOP2A及びPRRX1の発現量を測定する工程は、以下の通りである。
本発明の典型的な実施形態において、まずがん細胞を培養する工程を行う。がん細胞としては、被験者であるがん患者(例えば、肉腫、神経膠腫等の患者)のがん組織から採取したがん細胞が挙げられ、本発明の属する技術分野において知られているもの等を用いることができる。がん細胞は、初代培養細胞であっても、好適な培地で継代培養した細胞であってもよい。継代培養した細胞を用いる場合、継代培養に用いる培地としては、がん細胞の培養に使用され得る培地を適宜使用することができ、例えば、RPMI-1640培地、D’MEM培地、E’MEM培地、DMEM/F12等が挙げられる。上記培地には、FBS、ペニシリン、ストレプトマイシン等を添加しても良い。また、上記培地には、任意選択で、pH調整剤、炭酸水素ナトリウム等を添加してもよい。培養温度としては、36~38℃の範囲が好ましい。培地のpHは7.3~7.6であることが好ましい。培養時間としては、12~72時間の範囲で設定でき、24~36時間が好ましい。
本実施形態において、次に、培養したがん細胞のTOP2A及びPRRX1の発現量を測定する。TOP2A及びPRRX1の発現量は、タンパク質、RNA、DNAのいずれかを定量することにより行うことができる。TOP2A及びPRRX1の発現量の測定は、ELISA法、リアルタイムPCR法、RT-PCR(Reverse Transcription-Polymerase Chain Reaction)法、in situ hybridization法、immunohistochemistry法等、公知の方法を用いればよい。
被験者の生体試料におけるTOP2A及びPRRX1の発現量の測定値を、それぞれ予め設定されたカットオフ値と比較し、TOP2AとPRRX1との相互作用を阻害する物質に対する感受性の高さを判定する。例えば、TOP2A及びPRRX1のいずれもが、それぞれについて予め設定されたカットオフ値以上であれば、TOP2AとPRRX1との相互作用を阻害する物質に対する感受性が高い可能性があると判定することができる。また、TOP2AとPRRX1の少なくとも一方が予め設定されたカットオフ値未満であれば、TOP2AとPRRX1との相互作用を阻害する物質に対する感受性が低い可能性があると判定することができる。あらかじめ設定されたカットオフ値としては、例えば、正常者における発現量から設定されたものが挙げられる。
TOP2AとPRRX1との相互作用を阻害する物質に対する感受性が高い可能性があると判定される場合には、本発明の組成物が有効に作用する可能性が高い、又は本発明の組成物を被験対象のがん患者に投与可能、と判定することができる。一方、TOP2AとPRRX1との相互作用を阻害する物質に対する感受性が低い可能性があると判定される場合には、本発明の組成物が有効に作用する可能性が低い、又は本発明の組成物を被験対象のがん患者に投与不可、と判定することができる。
以下、本発明を実施例によりさらに説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
<実施例1>
まず、pENTR-3xFLAG-PRRX1A (GeneArt service(ThermoFisher社)をPB-TAC-ERP2 (#80478 addgene社)にGateway LR Clonase Enzyme MIX (ThermoFisher社)を使用し挿入することで、ドキシサイクリン誘導的に、3xFLAG-PRRX1A(N末端にFLAGタグが付与されたPRRX1A)の発現が誘導されるベクターを作成した。作成したベクターをヒト悪性末梢神経鞘腫細胞株(HS-PSS: RCB2362 RIKEN BRC)に導入し、HS-PSS 3xFLAG-PRRX1A株を樹立した。播種後1日間インキュベートしたHS-PSS細胞 1×106cells/wellに、上記ベクター5μgをpBase transposase vector5μgとともに、遺伝子導入装置(NEPA21 type II electroporator (Nepagene社))を用いてHS-PSS細胞に導入した。その後、遺伝子導入から24時間後にHS-PSS細胞の培地にPuromycin 10 μg/ml添加して遺伝子導入された細胞の選択を行い、HS-PSS 3xFLAG-PRRX1A細胞株を得た。
HS-PSS 3xFLAG-PRRX1A細胞を10cm dishで培養し、細胞がコンフルエントになった後、ドキシサイクリン1000 ng/mlで当該細胞を1日間処理した。
その後、FLAG抗体付きマグネットビーズ40μl slurry(Anti-DDDDK-tag mAb-Magnetic Beads MBL社製)を上記細胞のライセートと混和させたのち、マグネットを用いてFLAG抗体付きマグネットビーズ結合体を沈降させた。その後、SDS-PAGEによる電気泳動を行い、銀染色でPRRX1Aタンパクと結合している可能性のあるタンパク群を可視化した(図2)。
その後、マススペクトロメトリー(質量分析法)で解析することで、PRRX1Aと相互作用する分子候補の一つとしてTOP2Aが同定された。
<実施例2>
HS-PSS 3xFLAG-PRRX1A株に対し、ドキシサイクリン誘導的に、3xFLAG-PRRX1Aの発現が誘導されるベクターをヒト悪性末梢神経鞘腫細胞株(HS-PSS)に導入し、実施例1と同様の方法にて3xFLAG-PRRX1Aと3xHA-TOP2Aを同時にドキシサイクリン誘導的に過剰発現させられる細胞株(HS-PSS 3xFLAG-PRRX1A HA-TOP2A株)を作成した。3xHA-TOP2Aの発現ベクターに関しては、pDONR-3xHA-TOP2A(GeneArt service(ThermoFisher社)をPB-TAG-ERN (#80475 addgene社)にGateway LR Clonase Enzyme MIX (ThermoFisher社)を使用して作成した。
HS-PSS 3xFLAG-PRRX1A細胞を10cm dishで培養し、細胞がコンフルエントになった後、ドキシサイクリン100 ng/mlで当該細胞を1日間処理した。
その後、FLAG抗体付きマグネットビーズ40μl slurry(Anti-DDDDK-tag mAb-Magnetic Beads MBL社製)を上記細胞のライセートと混和させたのち、マグネットを用いてFLAG抗体付きマグネットビーズ結合体を沈降させた。その後、SDS-PAGEによる電気泳動を行い、FLAG抗体あるいはHA抗体を用いてウエスタンブロットを行った結果、PRRX1とTOP2Aの相互作用が確認された(図3)。
<実施例3>
TOP2A及びPRRX1ががんの悪性化に関係しているかを調べるため、悪性末梢神経鞘腫患者の組織検体に対し、抗PRRX1抗体及び抗TOP2A抗体で免疫染色を行った(図4)。その結果、PRRX1の発現が高い患者ではTOP2Aの発現も高く、PRRX1の発現が低い患者ではTOP2Aの発現も低く、PRRX1の発現とTOP2Aの発現で正の相関が認められた(図5)。また、免疫染色の発現の強さ、及び陽性細胞の割合から、高発現群と低発現群に群分けし、PRRX1、TOP2Aのそれぞれについて発現性と生命予後について調査した(図6、7)。RRX1高発現群、TOP2A高発現群のいずれにおいても生命予後が悪い結果となった。
<実施例4>
患者の正常骨組織、骨肉腫組織、悪性末梢神経鞘腫組織のそれぞれに対し、抗PRRX1抗体及び抗TOP2A抗体で免疫二重染色を行った(図8)。その結果、正常な骨組織と比較して、骨肉腫組織及び悪性末梢神経鞘腫組織ではPRRX1とTOP2Aの発現量が高く、PRRX1陽性細胞はほぼ全てTOP2A陽性となっていた。
<実施例5>
PRRX1とTOP2Aの相互作用を確認するため、PRRX1を過剰発現させた状態で、TOP2Aを抑制させる実験を行った。まずshTOP2AをRefseq cDNA sequence (GenBank accession number NM001067)を用いて設計 し、pLKO.1 puro lentiviral vector plasmid(#8453 addgene社)に制限酵素AgeI, EcoRIで切断後にLigation high ver2(Takara社)を使用しアニーリングさせた。次に作成したpLKO.1 puro shTOP2AをLentiX293T(クローンテック社)にPEIMAX(Polysciences社)を使用してtansfectionさせた。12時間後にDMEM培地を交換し、48時間培養後にレンチウイルスを含む上清培地を回収し、0.45 μM PVDF filter (Hawach社)で濾過しウイルス溶液とした(2種類作成shTOP2A #1, #2)。このウイルスをHS-PSS 3xFLAG-PRRX1A株に感染させ、TOP2Aのノックダウンをウエスタンブロットにて確認した(図9)。shTOP2A#2において効果的にTOP2Aのノックダウンが行われていたことから、HS-PSS 3xFLAG-PRRX1A株及びHS-PSS株にレンチウイルスshTOP2A#2を感染させ、TOP2Aのノックダウンの有無による遊走能を確認した(図10)。
なお、遊走能はWound healing assay (Scratch assay)を用い、以下の方法により測定した。細胞(2×105 cells/well)を24ウェルプレートでコンフルエントになるまで培養した。細胞単層を滅菌した200μLピペットチップを用いてスクラッチし、PBSを用いて洗浄及び細胞残屑の除去を行った。24時間後、移動する細胞を位相差顕微鏡で撮影した。Image J ソフトウェアを使用して、相対的な傷の大きさを定量化した。細胞移動阻害率(%)は、新しい傷の幅/元の傷の幅×100%として算出した。実験は3回繰り返した。
この結果から、3xFLAG-PRRX1Aの過剰発現による遊走能の向上は、TOP2Aのノックダウンによって消失したことが確認された。
<実施例6>
PRRX1Aの相互作用部位を同定するために、図11に記載の部分欠損タンパク質を用いた検討を行った。ベクターの作製に使用したプライマーは以下の通りである。これらをPCRにて増幅した後、インサートとpCMViR-TSC (N-tag)ベクター(Mol Biotechnol (2014) 56:621-630)をBamH1とXhoIで制限酵素処理した後、ベクターにインサートをライゲーションさせ発現ベクターを作成した(図12)。
・Full-length:
Forward;CGCGGATCCGCGACCTCCAGCTACGGGCACGTT (配列番号1)
Reverse;CCGCTCGAGCGGTTAGAATCCGTTATGAAGCCC (配列番号2)
・del C (1-62):
Forward;CGCGGATCCGCGACCTCCAGCTACGGGCACGTT (配列番号3)
Reverse;CCGCTCGAGCGGTTACCGGCCAGCCTCGCCCACGTT (配列番号4)
・del C (1-88):
Forward;CGCGGATCCGCGACCTCCAGCTACGGGCACGTT (配列番号5)
Reverse;CCGCTCGAGCGGTTATTCTTCTGAGTTCAGCTGGTC (配列番号6)
・del N (89-217):
Forward;CGCGGATCCGCGAAAAAGAAGAGAAAGCAGCGA (配列番号7)
Reverse;CCGCTCGAGCGGTTATTTGAGGAGGGAAGCGTTTTT (配列番号8)
・del N (167-217):
Forward;CGCGGATCCGCGTCCTACTCAGGAGACGTGACT (配列番号9)
Reverse;CCGCTCGAGCGGTTAGAATCCGTTATGAAGCCC (配列番号10)
HEK293T細胞3×106cells/mLをDMEM/10%FBS培地で12時間培養した。その後、上記各発現ベクターをHEK293T細胞に添加してトランスフェクションした。その後、DDDDK tagged Protein PURIFICATION KIT(MBL製)を用いて各タンパク質の精製を行った。精製タンパク質を用いて、細胞フリーの条件下において免疫沈降を行った(図13)。その結果、PRRX1AはHOMEOBOX(DNA結合ドメイン)を介してTOP2Aと相互作用することが確認された。
<実施例7>
HS-PSS 3xFLAG-PRRX1A HA-TOP2A細胞1×107cells/mLをDMEM培地で培養しているところに、エトポシド(0μM、1μM、10μM)、デクスラゾキサン(0μM、1μM、10μM)、ドキソルビシン(0μM、1μM、10μM)、レボフロキシン(0μM、1μM、10μM)、シプロフロキサシン(0μM、1μM、10μM)の各条件で薬剤を添加し、その後、免疫沈降を行った(図14)。その結果、エトポシド、レボフラキシン、シプロフロキサシンにおいて、PRRX1とTOP2Aの相互作用を阻害する可能性が示唆された。

Claims (4)

  1. TOP2AとPRRX1の相互作用を阻害する物質を含む組成物であって、がんの治療に用いるための組成物。
  2. 前記がんが、肉腫又は神経膠腫である、請求項1に記載の組成物。
  3. 前記TOP2AとPRRX1の相互作用を阻害する物質が、
    エトポシド及びその類縁体、レボフロキサシン及びその類縁体、シプロフロキサシン及びその類縁体からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の組成物。
  4. 請求項1に記載の組成物からなる抗がん剤。
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