JP2024051584A - インクジェット捺染方法 - Google Patents

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【課題】印刷媒体が低浸透性の布帛であっても、画質に優れ、擦れ等の外的応力に対する耐久性に優れる印捺物を得ることができる、インクジェット捺染方法に関する。【解決手段】顔料、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂、ブロックイソシアネート化合物、水溶性有機溶媒、及び水を含有するインク組成物を、該インク組成物が着弾する部分の温度が40℃以上である布帛にインクジェットで印刷する印刷工程を含み、該ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂が、ブロックイソシアネート構造を分子内に有さず、イソシアネート基と反応し得る官能基を有する、インクジェット捺染方法。【選択図】なし

Description

本発明は、インクジェット捺染方法に関する。
捺染とは、布帛に直接色や模様をつける着色方法であり、スクリーン捺染法、ローラー捺染法が広く用いられているが、近年、インクジェット印刷を利用したインクジェット捺染方法が検討されている。
インクジェット印刷による捺染方法は、インク液滴を吐出させ、布帛に付着させて印刷を行う方法を用いることで、熟練を要さずに、高精細、高品位な画像を布帛に形成できるという利点がある。また、従来法とは異なり版作成を要さないため、少量多品種生産の対応が容易で、更に画像形成に必要な量のインクしか使用しないため、環境への影響が軽微という特徴も有する。
捺染用インクとしては、染料インクと顔料インクがある。顔料インクは、耐光性が高く、また印捺後に洗浄等の後処理が不要という点で、染料インクに比べ有利である。
しかし、顔料インクは染料分子と布帛との間に化学結合力で結着できる染料インクと異なり、顔料粒子と布帛との間の結着力に乏しいため、印刷部位が外力を受けたとき、それに抗する能力が低いというデメリットがある。また、顔料インクは布帛上で固定化されるまでにインクが流動してしまうため、画像滲みや混色の問題があった。
そこで、顔料インクによるインクジェット印刷における印刷物の耐久性等を改善するための方法として、種々の提案がなされている。
例えば、特許文献1には、良好な洗濯堅牢度と風合いを両立させることを課題として、顔料、水分散性樹脂、架橋剤、及び水を含み、前記水分散性樹脂が特定の引張特性を有し、前記水分散性樹脂の顔料又は架橋剤に対する割合がそれぞれ特定の範囲である、捺染用インクジェットインク組成物が開示されている。
また、特許文献2には、種々の布帛に対して発色性に優れる顔料捺染インクジェットインク記録方法を提供することを課題として、顔料と、樹脂粒子と、有機溶剤、水とを含有し、前記有機溶剤が、アミド化合物を含む顔料捺染インクジェットインク組成物を用いた顔料捺染インクジェット記録方法が開示されている。
特開2019-31611公報 特開2019-167486公報
特許文献1の実施例では、インクの溶媒成分が浸透可能である綿100%の布帛にインクジェット印刷する捺染方法が記載されているが、綿以外の布帛に対しては、擦れ等の外的応力に対する耐久性が十分とはいえなかった。
特許文献2の実施例では、インクの溶媒成分が浸透し難い低浸透性のポリエステル布帛にインクジェット印刷して印捺物を作製しているが、インクの溶媒成分がより浸透し難い低浸透性の布帛での擦れ等の外的応力に対する耐久性は十分とはいえなかった。
本発明は、印刷媒体が低浸透性の布帛であっても、画質に優れ、擦れ等の外的応力に対する耐久性に優れる印捺物を得ることができる、インクジェット捺染方法に関する。
本発明者らは、顔料、特定の構造を有するポリカーボネート系ポリウレタン樹脂、ブロックイソシアネート化合物、水溶性有機溶媒及び水を含有するインク組成物を用い、該インク組成物が着弾する部分の温度が40℃以上である布帛にインクジェットで印刷することで、上記課題を解決しうることを見出した。
本発明は、以下の〔1〕に関する。
〔1〕顔料、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂、ブロックイソシアネート化合物、水溶性有機溶媒、及び水を含有するインク組成物を、該インク組成物が着弾する部分の温度が40℃以上である布帛にインクジェットで印刷する印刷工程を含み、該ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂が、ブロックイソシアネート構造を分子内に有さず、イソシアネート基と反応し得る官能基を有する、インクジェット捺染方法。
本発明によれば、印刷媒体が低浸透性の布帛であっても、画質に優れ、擦れ等の外的応力に対する耐久性に優れる印捺物を得ることができる、インクジェット捺染方法を提供できる。
[インクジェット捺染方法]
本発明のインクジェット捺染方法は、顔料、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂、ブロックイソシアネート化合物、水溶性有機溶媒、及び水を含有するインク組成物を、該インク組成物が着弾する部分の温度が40℃以上である布帛にインクジェットで印刷する印刷工程を含み、該ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂が、ブロックイソシアネート構造を分子内に有さず、イソシアネート基と反応し得る官能基を有する。
なお、本発明で用いるインク組成物を、単に「インク組成物」又は「インク」と称することがある。
本明細書において、「着弾」とは、インク組成物がインクジェット印刷によって印刷媒体に付着することをいう。
本明細書において、「印捺物」とは、印刷媒体である布帛の表面にインク組成物が付与されて(印刷されて)、画像が形成されたものをいう。
本発明のインクジェット捺染方法によれば、印刷媒体が、ポリエステル、ナイロン、ポリウレタン等の低浸透性の布帛であっても、画質に優れ、擦れ等の外的応力に対する耐久性に優れる印捺物を得ることができる。その理由は定かではないが、以下のように考えられる。
本発明のインクジェット捺染方法ではインク組成物中にブロックイソシアネート化合物が含有されており、更に、インクが布帛に着弾する部分が40℃以上となっている。そのため、ブロックイソシアネート化合物による、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂の架橋反応の進行が速やかに開始され、着弾後のインク組成物が速やかに増粘して、インクドット同士が混ざり滲むことを抑制できるため、得られる印捺物の画質が向上すると考えられる。
また、本発明のインクジェット捺染方法では、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂はブロックイソシアネート構造を分子内に有さず、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂とブロックイソシアネート化合物とは、別個の成分として共存している状態である。そのため、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂は、自らの分子鎖とは別の分子鎖と、ブロックイソシアネート化合物由来の成分を介した分子間架橋を形成し、より大きな樹脂構造を形成することができる。このため、塗膜の耐久性向上効果が高まり、擦れ等の外的応力に対する耐久性優れる印捺物を得ることができると考えられる。
また、本発明におけるインク組成物が含有するポリカーボネート系ポリウレタン樹脂は、その構造内に、ウレタン基に匹敵する高い極性を有するカーボネート基を有している。そのため、特にポリウレタンを含有する布帛を印刷媒体とした場合、樹脂と布帛との密着性が向上し、ポリエーテル系ポリウレタン樹脂やポリエステル系ポリウレタン樹脂を用いた場合と比べ、高い摩擦堅牢性を発現することができ、耐久性に優れる印捺物を得ることができると考えられる。
また、更に、本発明のインクジェット捺染方法によれば、ポリウレタンを含有する布帛の中でも、ポリウレタンを含む表面樹脂層を有する人工皮革や合成皮革を印刷媒体とした場合、画質により優れ、擦れ等の外的応力に対する耐久性により優れる印捺物が得られる。この理由は、以下のように推察される。
一般に、ポリウレタンを含む表面樹脂層を有する人工皮革や合成皮革では、インクの溶媒成分が該印刷媒体内部にほとんど浸透しないため、通常の布帛では容易に発生しうる着色材成分やこれを結着させる成分の繊維への絡み付きが期待されない。そのため、従来の捺染方法では、得られる印捺物が外力に屈しやすくなってしまう。
一方、本発明は、インクジェット印刷後の布帛上において、インク組成物中に含まれるポリカーボネート系ポリウレタン樹脂が、ブロックイソシアネート化合物によって架橋構造が形成されるため、塗膜の耐久性を高めることができ、印捺物の擦れ等の外的応力に対する耐久性を向上できると考えられる。
≪インク組成物≫
本発明のインクジェット捺染方法において、インク組成物は、顔料、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂、ブロックイソシアネート化合物、水溶性有機溶媒及び水を含有する。
<顔料>
本発明において、顔料は、無機顔料及び有機顔料のいずれであってもよい。
無機顔料としては、例えば、カーボンブラック、金属酸化物等が挙げられる。黒色インクにおいては、カーボンブラックが好ましい。カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等が挙げられる。白色インクにおいては、二酸化チタン、酸化亜鉛、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム等の金属酸化物等が挙げられ、これらの中では二酸化チタンが好ましい。
有機顔料としては、例えば、アゾ顔料、ジアゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、チオインジゴ顔料、アントラキノン顔料、キノフタロン顔料等が挙げられる。
色相は特に限定されず、有彩色インクにおいては、イエロー、マゼンタ、シアン、レッド、ブルー、オレンジ、グリーン等の有彩色顔料をいずれも用いることができる。
前記顔料は、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
本発明において、顔料は、分散剤として顔料分散能を有する樹脂若しくは界面活性剤で分散されてなる形態、又は分散剤を用いずに分散されてなる自己分散顔料の形態が挙げられる。これらの中では、顔料は、印捺物の画質及び外的応力に対する耐久性を向上させる観点から、顔料を含有する樹脂粒子(以下、「顔料含有樹脂粒子」ともいう)の形態であることが好ましい。本発明において、顔料を含有する樹脂粒子とは、前記顔料と顔料分散能を有する樹脂(以下、「顔料分散樹脂」ともいう)とからなり、顔料分散樹脂が顔料を包含した形態の粒子、顔料分散樹脂と顔料からなる粒子であって、該粒子の表面に顔料の一部が露出している形態の粒子、顔料分散樹脂が顔料の一部に吸着している形態の粒子のいずれか又はこれらの混合物を意味する。
(顔料分散樹脂)
顔料分散樹脂は、水を主成分とする水系媒体に顔料を分散させる顔料分散能を有する樹脂である。顔料分散樹脂としては、ビニル系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、ポリウレタン系ポリマー等が挙げられる。これらの中では、印捺物の画質及び外的応力に対する耐久性を向上させる観点から、ビニル化合物、ビニリデン化合物、ビニレン化合物等のビニル単量体の付加重合により得られるビニル系樹脂が好ましい。
顔料分散樹脂は、印捺物の画質及び外的応力に対する耐久性を向上させる観点から、イオン性基を有することが好ましい。顔料分散樹脂がビニル系樹脂である場合、イオン性基は、(a-1)イオン性基を有するイオン性ビニルモノマー(以下、「イオン性モノマー」又は「(a-1)成分」ともいう)により顔料分散樹脂の骨格に導入されてなるものが好ましい。
また、顔料分散樹脂は疎水性基を有することが好ましい。顔料分散樹脂がビニル系樹脂である場合、疎水性基は、上記と同様の観点から、(a-2)疎水性基を有する疎水性ビニルモノマー(以下、「疎水性モノマー」又は「(a-2)成分」ともいう)により顔料分散樹脂の骨格に導入されてなるものが好ましい。
すなわち、本発明において、顔料分散樹脂は、(a-1)イオン性モノマー由来の構成単位と、(a-2)疎水性モノマー由来の構成単位とを含むビニル系樹脂が好ましい。
顔料分散樹脂は、上記と同様の観点から、更にノニオン性基を有することができる。顔料分散樹脂がビニル系樹脂である場合、ノニオン性基は、(a-3)ノニオン性基を有するノニオン性ビニルモノマー(以下、「ノニオン性モノマー」又は「(a-3)成分」ともいう)により顔料分散樹脂の骨格に導入することができる。
〔(a-1)成分〕
(a-1)成分としては、アニオン性、カチオン性の両方が挙げられるが、アニオン性であることが好ましく、アニオン性を発現するイオン性基としては、酸基が好ましく、酸基としてはカルボン酸基が好ましい。
(a-1)成分の具体例としては、特開2018-80255号公報の段落〔0017〕に記載のものが挙げられる。それらの中では、アクリル酸及びメタクリル酸から選ばれる1種以上が好ましい。
本発明において、顔料含有樹脂粒子を構成する顔料分散樹脂の(a-1)成分によって導入されたイオン性基は、その一部又は全部が塩基性化合物又は酸性化合物によって中和されていることが好ましい。顔料分散樹脂が中和されている状態であれば、顔料分散樹脂はイオン性を帯び、顔料を水系媒体中で分散させることができる。
〔(a-2)成分〕
(a-2)成分の疎水性とは、モノマーを25℃のイオン交換水100gへ飽和するまで溶解させたときに、その溶解量が10g未満であるものをいい、その溶解量は、好ましくは5g以下、より好ましくは1g以下である。
(a-2)成分の疎水性基としては、アルキル基、芳香族基、及びシリコーン基からなる群から選ばれる1種以上が好ましく挙げられる。
(a-2)成分としては、アルキル(メタ)アクリレート、芳香族基含有モノマー、芳香族基含有マクロモノマー、及びシリコーン系マクロモノマーからなる群から選ばれる1種以上が好ましく、芳香族基含有モノマー及び芳香族基含有マクロモノマーからなる群から選ばれる1種以上がより好ましく、芳香族基含有モノマーが更に好ましい。
(a-2)成分の具体例としては、特開2018-80255号公報の段落〔0018〕に記載のものが挙げられる。これらの中では、スチレン、α-メチルスチレン等のスチレン系モノマー、ベンジル(メタ)アクリレート、及びスチレンマクロマーからなる群から選ばれる1種以上が好ましく、スチレン系モノマーがより好ましく、スチレン及びα-メチルスチレンからなる群から選ばれる1種以上が更に好ましい。
〔(a-3)成分〕
(a-3)成分のノニオン性基としては、ヒドロキシ基、ポリオキシアルキレン基が挙げられる。
(a-3)成分としては、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、アルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、及びフェノキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる1種以上が好ましい。
(a-3)成分の具体例としては、特開2018-80255号公報の段落〔0022〕に記載のものが挙げられる。それらの中では、ポリエチレングリコール(n=2~30)(メタ)アクリレート、フェノキシ(エチレングリコール/プロピレングリコール共重合)(メタ)アクリレートから選ばれる1種以上が好ましい。
上記(a-1)~(a-3)成分は、それぞれ、各成分に含まれるモノマー成分を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
なお、顔料分散樹脂がイソシアネート基と反応し得る官能基を有する場合には、インク組成物中の顔料分散樹脂も架橋され、塗膜の耐久性をより向上させることができ、外的応力に対する耐久性により優れる印捺物を得ることができる。該官能基としては、ヒドロキシ基、カルボキシ基及びアミノ基からなる群から選ばれる1種以上が好ましく、ヒドロキシ基及びカルボキシ基からなる群から選ばれる1種以上がより好ましい。該官能基は、(a-1)成分及び(a-3)成分からなる群から選ばれる1種以上に含まれ、これらの成分により顔料分散樹脂の骨格に導入することができる。
(顔料分散樹脂における各構成単位の含有量)
顔料分散樹脂における(a-1)~(a-3)成分由来の構成単位の含有量は、顔料含有樹脂粒子の分散安定性を向上させる観点から、次のとおりである。
(a-1)成分の含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは25質量%以上であり、そして、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは35質量%以下である。
(a-2)成分の含有量は、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは50質量%以上であり、そして、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは75質量%以下である。
(a-3)成分を含有する場合、その含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、そして、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下である。
(a-2)成分に対する(a-1)成分の質量比[(a-1)/(a-2)]は、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.2以上であり、そして、好ましくは1.2以下、より好ましくは1.0以下、更に好ましくは0.8以下である。
本発明において顔料分散樹脂中における(a-1)~(a-3)成分由来の構成単位の含有量は、測定により求めることができ、顔料分散樹脂の製造時における(a-1)~(a-3)成分を含む原料モノマーの仕込み比率で代用することもできる。
(顔料分散樹脂の製造)
顔料分散樹脂がビニル系樹脂である場合、(a-1)~(a-3)成分を公知の方法で重合させて製造することができる。具体的には特開2018-80255号公報の段落〔0027〕~〔0028〕に記載の製造方法の手順が好ましい。
顔料分散樹脂の重量平均分子量は、顔料含有樹脂粒子の分散安定性を向上させる観点から、好ましくは6,000以上、より好ましくは8,000以上,更に好ましくは10,000以上であり、そして、好ましくは300,000以下、より好ましくは100,000以下、更に好ましくは50,000以下、より更に好ましくは30,000以下である。
顔料分散樹脂の重量平均分子量は、実施例に記載の方法により測定される。
顔料分散樹脂の酸価は、顔料含有樹脂粒子の分散安定性を向上させる観点から、好ましくは100mgKOH/g以上、より好ましくは150mgKOH/g以上、更に好ましくは200mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは350mgKOH/g以下、より好ましくは300mgKOH/g以下、更に好ましくは270mgKOH/g以下である。
顔料分散樹脂の酸価は、構成するモノマーの質量比から算出することができる。
顔料分散樹脂は、商業的に入手しうるものを用いてもよい。顔料分散樹脂の市販品としては、「ジョンクリル67」、「ジョンクリル611」、「ジョンクリル678」、「ジョンクリル680」、「ジョンクリル690」、「ジョンクリル819」(以上、BASFジャパン株式会社製)等のスチレン/アクリル系樹脂等が挙げられる。
本発明において、顔料を含有する樹脂粒子(顔料含有樹脂粒子)を構成する顔料分散樹脂は、少なくとも一部に架橋構造を有するものが好ましい。本発明において、架橋構造を有する顔料分散樹脂は、上記(a-1)成分、(a-2)成分、必要に応じて(a-3)成分由来の構成単位に加えて、(a-1)成分と反応可能な官能基を2以上有する化合物、すなわち架橋剤由来の成分を更に有するものであることが好ましい。
本発明において顔料含有樹脂粒子を構成する顔料分散樹脂における架橋剤由来の成分の量は、該樹脂を製造する際の仕込み量から算出することができる。
本発明において、顔料含有樹脂粒子を構成する顔料分散樹脂が架橋構造を有するものである場合、顔料含有樹脂粒子を調製する際に、上記の顔料、顔料分散樹脂及び架橋剤によって調製されることが好ましい。
架橋剤の具体例としては特開2018-80255号公報の段落〔0041〕に記載のものが挙げられる。それらの中では、水不溶性の化合物が好ましく、炭素数3以上8以下の炭化水素基を有する多価アルコールのポリグリシジルエーテル化合物がより好ましく、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル及びトリメチロールプロパンポリグリシジルエーテルからなる群から選ばれる1種以上が更に好ましく、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテルがより更に好ましい。
本発明において、顔料分散樹脂のイオン性基のモル当量数に対する架橋剤の架橋性官能基のモル当量数の比、すなわち架橋率は、好ましくは10モル%以上、より好ましくは20モル%以上、更に好ましくは30モル%以上であり、そして、好ましくは80モル%以下、より好ましくは70モル%以下、更に好ましくは60モル%以下である。
顔料含有樹脂粒子を構成する顔料分散樹脂が架橋構造を有する場合、該顔料分散樹脂の酸価は、顔料含有樹脂粒子の分散安定性を向上させる観点から、好ましくは50mgKOH/g以上であり、より好ましくは55mgKOH/g以上、更に好ましくは60mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは175mgKOH/g以下、より好ましくは150mgKOH/g以下、更に好ましくは135mgKOH/g以下である。
顔料含有樹脂粒子を構成する顔料分散樹脂が架橋構造を有する場合、該顔料分散樹脂の酸価は、用いた顔料分散樹脂及び架橋剤の質量比から計算で算出することができる。
本発明において、顔料含有樹脂粒子を構成する顔料に対する顔料分散樹脂の質量比〔顔料分散樹脂の含有量/顔料の含有量〕は、顔料含有樹脂粒子の分散安定性を向上させる観点から、好ましくは0.25以上、より好ましくは0.30以上、更に好ましくは0.35以上であり、そして、好ましくは0.70以下、より好ましくは0.60以下、更に好ましくは0.50以下である。
〔顔料を含有する樹脂粒子の製造〕
顔料含有樹脂粒子は、任意の公知の方法で製造することができる。具体的には特開2018-80255の段落〔0030〕~〔0039〕に記載の製造方法の手順が好ましい。
<ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂>
本発明において、インク組成物は、画質及び外的応力に対する耐久性に優れる印捺物を得る観点から、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂を含有する。また、外的応力に対する耐久性により優れる印捺物を得る観点から、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂は、前述の顔料含有樹脂を構成する顔料分散樹脂として含まれてもよく、顔料を含有しない樹脂粒子の形態として含まれてもよいが、顔料を含有しない樹脂粒子の形態であることが好ましい。
本発明において、「顔料を含有しない樹脂粒子」とは、該樹脂が自らだけをインク中で分散状態を維持できる機能は有するが、顔料をインク中に分散状態で維持する機能を担っていないことを意味する。
本発明において、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂は、ブロックイソシアネート構造を分子内に有さない。すなわち、本発明において、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂は自己架橋性ではない。また、本発明において、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂は、イソシアネート基等の架橋性基を分子内に含まないことが好ましい。
また、本発明において、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂は、イソシアネート基と反応し得る官能基を有する。該官能基としては、ヒドロキシ基、カルボキシ基及びアミノ基からなる群から選ばれる1種以上が好ましく、ヒドロキシ基及びカルボキシ基からなる群から選ばれる1種以上であることがより好ましい。
また、本発明において、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂は、イソシアネート基と反応し得る官能基を、分子内に有することが好ましい。
本発明において、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂は、ポリウレタン樹脂においてポリカーボネート構造を有する構成成分を含有するものを意味する。
本発明において、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂は、ポリカーボネートポリオールとポリイソシアネートとを重付加反応させて得ることができる。また、本発明において、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂は、市販品を用いてもよい。
ポリカーボネートポリオールは、カーボネート化合物とジオールとを反応させることにより得ることができる。
カーボネート化合物としては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチレンカーボネート等が挙げられる。
ジオールとしては、低級アルコールで置換されていてもよい脂肪族ジオール;シクロヘキサンジオール、水添キシリレングリコール等の脂環式ジオール;キシリレングリコール等の芳香族環を有する脂肪族ジオールが挙げられる。
ポリイソシアネートとしては、テトラメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の鎖状の脂肪族ジイソシアネート;イソホロンジイソシアナート、水添キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン4,4’-ジイソシアナート等の環状構造を有する脂肪族ジイソシアネート;キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香環を有する脂肪族ジイソシアネート;トリレンジイソアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;これらジイソシアネートの変性物(カルボジイミド、ウレトジオン、ウレトイミン含有変性物等)等が挙げられる。
これらの中でも、好ましくは脂肪族ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネートから選ばれる1種以上であり、より好ましくは脂肪族ジイソシアネートであり、脂肪族ジイソシアネートのなかでも、好ましくは1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートである。
ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂は、インク組成物中における分散安定性を向上させる観点から、アニオン性基を有するアニオン性ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂であることが好ましい。アニオン性基としては、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基等が挙げられるが、カルボキシ基が好ましい。
カルボキシ基を有するポリカーボネート系ポリウレタン樹脂は、ポリカーボネートとポリイソシアネートとジアルカノールカルボン酸とを重付加反応させることにより得ることができる。該ジアルカノールカルボン酸としては、ジメチロールブタン酸、ジメチロールプロピオン酸及びこれらの塩等が挙げられる。
ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂がアニオン性基を有する場合には、該アニオン性基の少なくとも一部は中和剤で中和されていることが好ましい。これにより、中和後に発現する電荷反発力が大きくなり、インク中における分散安定性を向上させることができる。該中和剤としては、有機塩基及び無機塩基のいずれも用いることができる。有機塩基としては、ブチルアミン、トリエチルアミン等のアルキルアミン;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン;モルホリン等が挙げられる。無機塩基としては、アンモニア、水酸化ナトリウム等が挙げられる。
前記重付加反応の反応溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、酢酸エチル、トルエン、キシレン等が挙げられる。前記重付加反応では、必要に応じて鎖伸長剤や反応停止剤を併用してもよい。鎖伸長剤を用いることにより、更に分子量を増加させることができる。鎖伸長剤としては、ポリオールやポリアミンが挙げられ、反応停止剤としては、モノアルコールやモノアミンが挙げられる。
ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂はエマルションとして用いることが好ましく、該エマルションは必要に応じて界面活性剤のような分散剤を含有していてもよい。
ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂の重量平均分子量は、インク組成物中における分散安定性を向上させる観点、及び印捺物の外的応力に対する耐久性を向上させる観点から、好ましくは100,000以上、より好ましくは200,000以上、更に好ましくは300,000以上であり、そして、好ましくは2,500,000以下、より好ましくは1,000,000以下、更に好ましくは600,000以下である。
ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂の酸価は、インク組成物中における分散安定性を向上させる観点、及び印捺物の外的応力に対する耐久性を向上させる観点から、好ましくは5mgKOH/g以上、より好ましくは10mgKOH/g以上、更に好ましくは15mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは60mgKOH/g以下、より好ましくは50mgKOH/g以下、更に好ましくは40mgKOH/g以下である。
ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂の市販品例としては、第一工業製薬株式会社製のスーパーフレックス460、420、470、460S、三井化学株式会社製のタケラックW-635、W-6010、W-6110、株式会社ADEKA社製のHUX-386、HUX-561S、楠本化成株式会社製のNeoRez R-986、住化コベストロウレタン株式会社製のインプラニールDLC-F、DL2077、DLV1、DLU、等が挙げられる。
〔他の樹脂〕
本発明において、インク組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂以外の樹脂(以下「他の樹脂」ともいう)を含有していてもよい。本発明において、顔料が顔料を含有する樹脂粒子の形態である場合、該顔料を含有する樹脂粒子を構成する樹脂は、他の樹脂には含まれない。
他の樹脂としては、ポリエステル系ポリウレタン樹脂、ポリエーテル系ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、スチレン-アクリル樹脂等が挙げられる。
本発明におけるインク組成物において、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂の含有量及び前記他の樹脂の含有量の合計に対する、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂の含有量の質量比率〔ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂の含有量/ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂の含有量及び他の樹脂の含有量の合計〕は、本発明の効果を損なわない観点から、好ましくは75質量%以上であり、より好ましくは85質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、より更に好ましくは95質量%以上、より更に好ましくは100質量%である。
<ブロックイソシアネート化合物>
本発明において、インク組成物は、外的応力に対する耐久性に優れる印捺物を得る観点から、ブロックイソシアネート化合物を含有する。
ブロックイソシアネート化合物は、ポリイソシアネート化合物中のイソシアネート基をブロック剤でブロックされてなる化合物である。ブロックイソシアネート化合物は、反応性の高いイソシアネート基にブロック剤による保護基が結合することで、室温では反応することなく安定化されている。一方で、インクジェット印刷後の加熱によって該保護基が解離され、イソシアネート基が反応性を獲得することで、インク組成物中のイソシアネート基と反応し得る官能基を有する樹脂成分が架橋され、塗膜の耐久性を向上させることができる。その結果、外的応力に対する耐久性に優れる印捺物を得ることができる。
ポリイソシアネート化合物は1分子中に2つ以上のイソシアネート基を有する化合物であり、該ポリイソシアネート化合物としては、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、芳香環を有する脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート等、及びこれらの変性体が挙げられる。ポリイソシアネート化合物の変性体としては、イソシアヌレート体等の多量体;ビューレット体;トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールの多価アルコールとのアダクト体が挙げられる。
脂肪族ポリイソシアネートとしては、2つのイソシアネート基間に直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基を有するジイソシアネートが好ましい。該脂肪族炭化水素基の炭素数は、好ましくは2以上、より好ましくは3以上であり、そして、好ましくは12以下、より好ましくは10以下、更に好ましくは9以下、より更に好ましくは8以下である。具体的には、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ヘプタメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,2,4-又は2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
脂環式ポリイソシアネートとしては、水添キシリレンジイソシアネート(H6XDI)、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’-ジシクロへキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、2,5-又は2,6-ノルボルナンジイソシアネート等が挙げられる。
芳香環を有する脂肪族ポリイソシアネートとしては、m-又はp-キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)等が挙げられる。
芳香族ポリイソシアネートとしては、1,3-又は1,4-フェニレンジイソシアネート、2,4-又は2,6-トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4’-又は2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、m-又はp-イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネート、4,4’-ジイソシアナトビフェニル、4,4’-ジイソシアナト-3,3’-ジメチルビフェニル、1,5-ナフチレンジイソシアネート、2,6-ジメチルベンゼン-1,4-ジイソシアナート等が挙げられる。
これらの中では、ポリイソシアネート化合物は、好ましくは脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート及びこれらの変性体からなる群から選ばれる1種以上であり、より好ましくは脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート及びこれらの多量体からなる群から選ばれる1種以上であり、更に好ましくは脂肪族ポリイソシアネート又は脂環式ポリイソシアネートの多量体である。
ブロックイソシアネート化合物のブロック剤としては、3,5-ジメチルピラゾール、メチルエチルケトキシム、ε-カプロラクタム等の化合物が使用されるが、室温での安定性、塗膜乾燥温度での反応性、及び解離したブロック剤の安全性の観点から、3,5-ジメチルピラゾールが好ましい。
ブロックイソシアネート化合物の解離温度は、印捺物の外的応力に対する耐久性を向上させる観点から、好ましくは90℃以上、より好ましくは100℃以上であり、そして、布帛の変形等のダメージを抑制する観点から、好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下、更に好ましくは160℃以下、より更に好ましくは140℃以下、より更に好ましくは130℃以下である。
ブロックイソシアネート化合物のイソシアネート基当量は、印捺物の外的応力に対する耐久性を向上させる観点から、好ましくは300以上、より好ましくは500以上、更に好ましくは700以上であり、そして、好ましくは4,000以下、より好ましくは3,000以下、更に好ましくは2,000以下、より更に好ましくは1,500以下、より更に好ましくは1,200以下である。なお、イソシアネート基当量とは、イソシアネート基1モル当たりのブロックイソシアネート化合物の質量を意味する。
3,5-ジメチルピラゾールをブロック剤としたブロックイソシアネート化合物の市販品としては、株式会社GSIクレオス社製のTrixene Aqua BI200、BI220等;住化コベストロウレタン社製のバイヒジュールBL2867、バイヒジュールBL xp 2706等が挙げられる。
<水溶性有機溶媒>
本発明において、インク組成物は、水溶性有機溶媒を含有する。
本発明において、「水溶性有機溶媒」とは、水と任意の割合で混合できる有機溶媒を意味する。
水溶性有機溶媒は、得られる印捺物を構成する樹脂との適度な親和性を発揮して樹脂の膜化を促進させて印捺物の画質及び外的応力に対する耐久性を向上させる観点から用いられる。
水溶性有機溶媒は、上記の観点から、アルキレングリコール及びポリアルキレングリコールからなる群から選ばれる1種以上を含有することが好ましい。
アルキレングリコールとしては、好ましくは炭素数2以上6以下の脂肪族ジオールであり、より好ましくはプロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、及び1,3-ブタンジオールからなる群から選ばれる1種以上であり、更に好ましくはプロピレングリコールである。
本発明において、「ポリアルキレングリコール」とは、アルキレングリコールが縮合した構造を有する化合物を意味する。
ポリアルキレングリコールの好適な例としては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール等が挙げられ、ジプロピレングリコールがより好ましい。
水溶性有機溶媒は、上記の観点から、アルキレングリコールアルキルエーテルを含有してもよい。アルキレングリコールアルキルエーテルとしては、アルキル基の炭素数が1以上6以下、好ましくは3以上6以下のアルキレングリコールモノアルキルエーテルが挙げられる。アルキレングリコールモノアルキルエーテルの好適な例としては、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルが挙げられる。
本発明において、水溶性有機溶媒は、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
<水>
本発明において、インク組成物は、水を含有する。本発明において、インク組成物は、質量基準で水が最大割合を占める、いわゆる水系インクであることが好ましい。
<界面活性剤>
本発明において、インク組成物は、印刷媒体とインクドットをよくなじませ、印捺物の画質を向上させる観点から、界面活性剤を含有することが好ましい。界面活性剤としては、非イオン界面活性剤が好ましく、シリコーン系界面活性剤及びアセチレングリコール系界面活性剤からなる群から選ばれる1種以上がより好ましい。
シリコーン系界面活性剤としては、印刷媒体とインクドットをよくなじませ、印捺物の画質を向上させる観点から、HLB値が、好ましくは5以上、より好ましくは6以上であり、そして、好ましくは12以下、より好ましくは11以下、更に好ましくは10以下のものである。
アセチレングリコール系界面活性剤としては、印刷媒体とインクドットをよくなじませ、印捺物の画質を向上させる観点から、HLB値が、好ましくは2以上、より好ましくは3以上であり、そして、好ましくは18以下、より好ましくは16以下、更に好ましくは14以下であるものと、インク液滴を良好に吐出させる観点から、HLB値が、好ましくは3以上、より好ましくは4以上、そして、好ましくは7以下、より好ましくは6以下であるものを併用して用いることが好ましい。
そして、上記のHLB値が互いに異なるアセチレングリコール系界面活性剤から選ばれる少なくとも1種以上ずつ計2種以上と、上記のシリコーン系界面活性剤の少なくとも1種とを組み合わせて用いることがより好ましい。
なお、HLB値は、GriffinによるHydrophile-Lipophile Balanceであり、界面活性剤の水及び油への親和性の程度を表す値である。HLB値の定義については、W.C.Griffin:J.Soc.Comestic Chemists,1,311(1949)や、高橋越民、難波義郎、小池基生、小林正雄 共著、「界面活性剤ハンドブック」、第3版、工学図書株式会社出版、昭和47年11月25日、p179~182などに記載されている。また、界面活性剤のカタログにも掲載されている。
シリコーン系界面活性剤の市販品としては、日信化学工業株式会社製の「シルフェイス」シリーズ、信越化学工業株式会社の「KF」シリーズ、ビッグケミー社製の「BYK」シリーズ等が挙げられる。
アセチレングリコール系界面活性剤の市販品としては、日信化学工業株式会社製の「サーフィノール」シリーズ、「オルフィン」シリーズ、川研ファインケミカル株式会社製の「アセチレノール」シリーズ等が挙げられる。
〔インク組成物の製造〕
本発明において、インク組成物は、顔料、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂、ブロックイソシアネート化合物、水溶性有機溶媒、水、及び、必要に応じて界面活性剤等を混合することにより、効率的に製造することができる。それらの混合方法に特に制限はない。
顔料は、顔料分散樹脂若しくは界面活性剤で分散されてなる形態、又は分散剤を用いずに分散されてなる自己分散顔料の形態で混合することが好ましく、顔料を含有する樹脂粒子の形態で混合することがより好ましい。
〔インク組成物における各成分の含有量〕
本発明において、インク組成物の各成分の含有量及び含有量の質量比は、印捺物の画質及び外的応力に対する耐久性を向上させる観点から、以下の通りである。
(顔料の含有量)
本発明において、インク組成物中の顔料の含有量は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、更に好ましくは3質量%以上であり、そして、好ましくは12質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは8質量%以下である。
(顔料を含有する粒子の含有量)
本発明において、顔料が顔料含有樹脂粒子の形態である場合、インク組成物中の顔料含有樹脂粒子の含有量は、好ましくは2質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは4質量%以上であり、そして、好ましくは10質量%以下、より好ましくは9質量%以下、更に好ましくは8質量%以下である。
(ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂の含有量)
本発明において、インク組成物中のポリカーボネート系ポリウレタン樹脂の含有量は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、更に好ましくは4質量%以上であり、そして、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは8質量%以下である。
本発明において、インク組成物における顔料が、顔料含有樹脂粒子の形態である場合、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂に対する顔料含有樹脂粒子の質量比〔顔料含有樹脂粒子の含有量/ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂の含有量〕は、好ましくは0.5以上、より好ましくは0.7以上、更に好ましくは0.8以上であり、そして、好ましくは3以下、より好ましくは2.5以下、更に好ましくは2以下、より更に好ましくは1.5以下、より更に好ましくは1以下である。
本発明において、インク組成物中の顔料に対する樹脂の総量の質量比〔インク組成物中の樹脂の総含有量/顔料の含有量〕は、好ましくは1以上、より好ましくは1.2以上、更に好ましくは1.5以上であり、そして、好ましくは10以下、より好ましくは6以下、更に好ましくは4以下、より更に好ましくは3以下である。
(ブロックイソシアネート化合物の含有量)
本発明において、インク組成物中のブロックイソシアネート化合物の含有量は、好ましくは0.2質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは0.7質量%、より更に好ましくは0.9質量%以上であり、そして、好ましくは5質量%以下、より好ましくは4質量%以下、更に好ましくは3質量%以下、より更に好ましくは2質量%以下である。
(ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂に対するブロックイソシアネート化合物の質量比)
本発明において、インク組成物中の、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂に対するブロックイソシアネート化合物の質量比〔ブロックイソシアネート化合物の含有量/ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂粒子の含有量〕は、好ましくは0.03以上、より好ましくは0.05以上、更に好ましくは0.07以上、より更に好ましくは0.13以上であり、そして、好ましくは0.60以下、より好ましくは0.40以下、更に好ましくは0.30以下、より更に好ましくは0.20以下である。
(水溶性有機溶媒の含有量)
本発明において、インク組成物中の水溶性有機溶媒の含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上であり、そして、好ましくは45質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。
水溶性有機溶媒がアルキレングリコールを含む場合、水溶性有機溶媒全体に対するポリアルキレングリコールの割合は、好ましくは40質量%以上、より好ましくは45質量%以上、更に好ましくは50質量%以上であり、そして、好ましくは70質量%以下、より好ましくは65質量%以下、更に好ましくは60質量%以下である。
水溶性有機溶媒がポリアルキレングリコールを含む場合、水溶性有機溶媒全体に対するポリアルキレングリコールの割合は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは40質量%以上であり、そして、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下である。
(界面活性剤の含有量)
本発明において、インク組成物が界面活性剤を含む場合、その含有量は、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは0.7質量%以上、更に好ましくは0.9質量%以上であり、そして、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1.7質量%以下、更に好ましくは1.5質量%以下である。
本発明において、インク組成物がシリコーン系界面活性剤を含む場合、その含有量は、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.02質量%以上であり、そして、好ましくは0.2質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下、更に好ましくは0.05質量%以下である。
本発明において、インク組成物がアセチレングリコール系界面活性剤を含む場合、その含有量は、好ましくは0.3質量%以上、より好ましくは0.4質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上であり、そして、好ましくは1.5質量%以下、より好ましくは1.3質量%以下、更に好ましくは1.2質量%以下である。
(水の含有量)
本発明において、インク組成物中の水の含有量は、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは55質量%以上であり、そして、好ましくは80質量%以下、より好ましくは75質量%以下、更に好ましくは70質量%以下である。
≪印刷工程≫
本発明のインクジェット捺染方法において、インクジェット印刷について何ら制限はなく、任意のインクジェット印刷を用いることができ、その中でもドロップオンデマンド方式のインクジェット印刷であることが好ましい。
ドロップオンデマンド方式の印刷装置としては、インクジェットヘッドに配設された圧電素子を用いたピエゾ式、インクジェットヘッドに配設されたヒーター等による熱エネルギーを用いたサーマル式等が挙げられる。これらの中では、ピエゾ式のインクジェット方式による印刷装置によるインクジェット印刷がより好ましい。
インクジェット印刷の解像度は、画質を高める観点から、600dpi(Dots Per Inch)以上であることが好ましく、720dpi以上であることがより好ましい。
(布帛)
本発明のインクジェット捺染方法で用いられる布帛としては、特に限定されない。例えば、綿、麻、絹といった天然繊維からなるのもの、レーヨン、アセテート等の半合成繊維からなるのもの、ナイロン、ポリエステル、ポリウレタン等の合成繊維からなるものが挙げられる。また、これらのうちの2種以上の繊維を含む混合布帛等が挙げられる。
これらの中では、印捺物の画質及び外的応力に対する耐久性の観点から、ナイロン、ポリエステル、ポリウレタン及び綿からなる群から選ばれる1種以上を含有する布帛が好ましく、ナイロン、ポリエステル及びポリウレタンからなる群から選ばれる1種以上を含有する布帛がより好ましい。上記で挙げた繊維の2種類以上からなる混紡布帛においては、ナイロン、ポリエステル及びポリウレタンからなる群から選ばれる1種以上が用いられていれば、本発明のインクジェット捺染方法により、画質及び外的応力に対する耐久性により優れる印捺物が得られる。
また、湿潤環境下における外的応力に対する耐久性の観点からは、布帛は、ポリウレタンを含有する布帛を用いることが好ましい。ポリウレタンを含有する布帛としては、ポリウレタンを含む表面樹脂層を有する人工皮革又は合成皮革も好ましい。
本発明においては、インクジェット印刷によってインク組成物が布帛に着弾する部分の温度は、画質に優れる印捺物を得る観点から、40℃以上であり、好ましくは45℃以上、より好ましくは50℃以上、更に好ましくは55℃以上であり、そして、好ましくは120℃以下、より好ましくは100℃以下、更に好ましくは95℃以下、より更に好ましくは70℃以下である。
インク組成物が布帛に着弾する部分の温度が40℃以上であることによって、着弾後のインク組成物中に含まれる水や水溶性有機溶媒の蒸発が促進され、インク組成物が速やかに増粘されて滲みを抑制でき、画質に優れる印捺物が得られると考えられる。
本発明のインクジェット捺染方法において、インク組成物が布帛に着弾する部分の温度の測定方法に制限はなく、公知の任意の方法を用いることができる。具体的には、インクジェットヘッドの直下に位置する布帛を支持するプラテン部に温度センサを配置して計測される温度をインクが着弾する部分の温度としてもよいし、インクが着弾する部位からの距離が30cmの範囲内の布帛のいずれかの点で赤外線を用いた放射型温度計を用いて計測される温度をインクが着弾する部分の温度としてもよい。また、放射型温度計を用いてインクジェットヘッドが着弾する面とは異なる面の温度を計測して、インクが着弾する部位の温度とすることもできる。
本発明のインクジェット捺染方法において、インク組成物が布帛に着弾する部分の温度を40℃以上にする方法としては、インクジェットヘッドからインクが供される前に布帛を加熱する方法、インクジェットヘッドの直下で布帛を加熱する方法が挙げられる。これらの中では、確実に布帛の温度を40℃以上にして、印捺物の画質を向上させる観点から、インクジェットヘッドからインクが供される前に布帛を加熱する方法が好ましい。加熱する設備としては、赤外線ランプ、シートヒーター及び加熱した空気を吹き付ける装置等が挙げられる。これらは単独で用いても、複数を併用してもよい。これらの中では、確実に布帛の温度を40℃以上にして、印捺物の画質を向上させる観点から、シートヒーターが好ましい。
≪加熱工程≫
本発明のインクジェット捺染方法において、前記印刷工程後、布帛のインクジェット印刷された部分の温度を100℃以上にする加熱工程を含むことが好ましい。
前記印刷工程後、布帛のインクジェット印刷された部分の表面温度を100℃以上にする加熱工程を含むことで、布帛の表面に付与されたインクドット中のポリカーボネート系ポリウレタン樹脂、及び、顔料が顔料含有樹脂粒子の形態である場合であって、顔料含有樹脂粒子を構成する顔料分散樹脂がイソシアネート基を反応し得る官能基を有する場合には該顔料分散樹脂と、ブロックイソシアネート化合物との架橋反応を促進し、架橋された樹脂の被膜が顔料粒子を布帛に強固に結着させ、外的応力に対する耐久性を向上させることができる。
本発明において、インクジェット印刷後に、布帛のインクジェット印刷された部分が調整される温度は、印捺物の画質及び外的応力に対する耐久性を向上させる観点から、好ましくは100℃以上、より好ましくは110℃以上、更に好ましくは120℃以上であり、前記と同様の観点から、好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下、更に好ましくは170℃以下、より更に好ましくは150℃以下である。
本発明において、布帛がポリエステル及びナイロンからなる群から選ばれる1種以上を含有する場合、インクジェット印刷後の、布帛のインクジェット印刷された部分の温度は、前記と同様の観点、特に、印捺物の画質を向上させる観点から、好ましくは100℃以上、より好ましくは110℃以上、更に好ましくは120℃以上であり、そして、好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下、更に好ましくは150℃以下である。
また、本発明において、布帛がポリウレタンを含有する場合、好ましくはポリウレタンを含有する布帛としてポリウレタンを含む表面樹脂層を有する人工皮革及びポリウレタンを含む表面樹脂層を有する合成皮革からなる群から選ばれる1種以上を用いる場合、インクジェット印刷後の、布帛のインクジェット印刷された部分の温度は、前記と同様の観点、特に、印捺物の画質を向上させる観点から、好ましくは100℃以上、より好ましくは110℃以上、更に好ましくは120℃以上であり、そして、200℃以下、より好ましくは180℃以下、更に好ましくは170℃以下である。
加熱工程において、印刷工程後の布帛の温度を100℃以上にする設備としては、赤外線ランプ、シートヒーター、加熱した空気を吹き付ける装置、加熱した空気雰囲気下に保持する装置等が好ましい。これらは単独で用いても、複数を併用してもよい。
加熱工程における布帛の温度の測定方法に制限はなく、公知の任意の方法を用いることができる。具体的には、インクが着弾する部位からの距離が30cmより遠い部位の布帛のいずれかの点において赤外線を用いた放射型温度計により計測する方法、該布帛を支持するプラテン部に設置した温度センサを用いて計測する方法であってもよい。また、インクジェット印刷された部分からの距離が30cmより遠い部位であって、インクジェット印刷された面とは異なる面の温度を放射型温度計を用いて計測してもよい。
加熱工程における布帛の温度を100℃以上とする時間は、印捺物の外的応力に対する耐久性を向上させる観点から、好ましくは1秒間以上、より好ましくは10秒間以上、更に好ましくは30秒間以上、更に好ましくは1分間以上であり、そして、生産性の観点から、好ましくは40分間以下、より好ましくは30分間以下、更に好ましくは20分間以下である。
加熱工程における布帛の温度を100℃以上とする時間を1秒間以上とすることにより、インクドット中のポリカーボネート系ポリウレタン樹脂、及び、顔料が顔料含有樹脂粒子の形態である場合であって、顔料含有樹脂粒子を構成する顔料分散樹脂がイソシアネート基を反応し得る官能基を有する場合には該顔料分散樹脂と、ブロックイソシアネート化合物とを架橋反応させて、架橋された樹脂の被膜が、顔料粒子を布帛に強固に結着させ、得られる印捺物の外的応力に対する耐久性を向上させることができる。
≪前処理工程≫
本発明において、前記印刷工程前に、顔料やポリカーボネート系ポリウレタン樹脂を、布帛に化学反応で結合させる化合物を含む処理液を付与する前処理工程を含んでもよい。顔料やポリカーボネート系ポリウレタン樹脂を布帛に化学反応で結合させる化合物としては、カチオン性化合物や多価金属塩が挙げられる。カチオン性化合物としては、アルキルアミンの4級塩や、アミノ基を有するポリマーなどが挙げられる。多価金属塩としては、アルカリ土類金属の硝酸塩やハロゲン化物塩等が挙げられる。
本発明においては、印捺物の外的応力に対する耐久性の観点、及び生産性の観点から、前記前処理工程は含まないことが好ましい。
以下の製造例、調製例、実施例及び比較例において、「部」及び「%」は特記しない限り「質量部」及び「質量%」である。なお、各物性等の測定方法は以下のとおりである。
(1)顔料分散樹脂の重量平均分子量の測定
N,N-ジメチルホルムアミドに、リン酸及びリチウムブロマイドをそれぞれ60mmol/Lと50mmol/Lの濃度となるように溶解した液を溶離液として、ゲル浸透クロマトグラフィー法〔東ソー株式会社製GPC装置(HLC-8120GPC)、東ソー株式会社製カラム(TSK-GEL、α-M×2本)、流速:1mL/min〕により、標準物質として分子量既知の単分散ポリスチレンを用いて測定した。
(2)水分散体の固形分濃度の測定
30mlのポリプロピレン製容器(φ=40mm、高さ=30mm)にデシケーター中で恒量化した硫酸ナトリウム10.0gを量り取り、そこへサンプル約1.0gを添加して、混合させた後、正確に秤量し、105℃、ゲージ圧-0.08MPaの環境下にて2時間維持して、揮発分を除去し、更に室温(25℃)のデシケーター内で更に15分間放置したのちに、質量を測定した。揮発分除去後のサンプルの質量を固形分として、添加したサンプルの質量で除して固形分濃度とした。
(3)顔料を含有する樹脂粒子の平均粒径の測定
レーザー粒子解析システム「ELS-8000」(大塚電子株式会社製)を用い、測定する粒子の濃度が5×10-3質量%(固形分濃度換算)になるよう水で希釈した液を用いた。測定条件は、温度25℃、入射光と検出器との角度90°、積算回数100回であり、分散溶媒の屈折率として水の屈折率(1.333)を入力し、得られたキュムラント解析により求めた平均粒径を、顔料を含有する樹脂粒子の平均粒径とした。
〔顔料分散樹脂の製造〕
製造例a1(樹脂a1の製造)
アクリル酸62部、スチレン129部、α-メチルスチレン9部を混合し、モノマー混合液を調製した。反応容器内に、メチルエチルケトン20部及び2-メルカプトエタノール(重合連鎖移動剤)0.3部、前記モノマー混合液の10%を入れて混合し、窒素ガス置換を十分に行った。別途、滴下ロートに、前記モノマー混合液の残り(すなわち、調製したモノマー混合液の90%)、前記重合連鎖移動剤0.27部、メチルエチルケトン60部、及びアゾ系ラジカル重合開始剤(富士フイルム和光純薬株式会社製、商品名:V-65、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル))2.2部の混合液を入れ、窒素雰囲気下、反応容器内の前記モノマー混合液を撹拌しながら65℃まで昇温し、滴下ロート中の混合液を3時間かけて滴下した。滴下終了から65℃で2時間経過後、前記重合開始剤0.3部をメチルエチルケトン5部に溶解した溶液を加え、更に65℃で2時間、70℃で2時間熟成させ、樹脂a1(重量平均分子量:12,500)の溶液を得た。
樹脂a1の酸価は、原料モノマーの仕込み比から241mgKOH/gと計算される。
<顔料を含有する樹脂粒子の水分散体の調製>
調製例I-1(顔料を含有する樹脂粒子の水分散体I-1の調製)
(1)製造例a1で得られた樹脂a1の溶液から減圧乾燥により溶媒を完全に除去して得られた樹脂a1 32部を、イオン交換水202部と混合した。これに、更に、5N水酸化ナトリウム水溶液(水酸化ナトリウム固形分16.9%)12.8部(中和度40モル%)を加え、温浴を用いて90℃まで加熱した後、1時間撹拌して樹脂a1を水中に分散させ、室温(25℃)まで冷却し、樹脂a1の分散液(固形分濃度:12.8%)を得た。
(2)上記(1)で得られた樹脂a1の分散液246.8部に、シアン顔料(C.I.ピグメント・ブルー15:3、銅フタロシアニン、DIC株式会社製、商品名:TGR-SD)100部を加え、ディスパー(淺田鉄工株式会社製、商品名:ウルトラディスパー)を用いて、20℃でディスパー翼を6,000rpmで回転させる条件で3時間撹拌した。次いで、イオン交換水124部を加え、マイクロフルイダイザー(MICROFLUIDICS社製、商品名)で150MPaの圧力で15パス分散処理した。得られた分散液を500mLアングルローターに投入し、高速冷却遠心機(日立工機株式会社製、商品名:himac CR22G、設定温度20℃)を用いて3,660rpmで20分間遠心分離した後、液相部分を回収した。回収した液相部分を5μmのメンブランフィルター(ザルトリウス社製、商品名:ミニザルト)で濾過して、顔料を含有する樹脂粒子の水分散体I’-1を得た。このとき、顔料を含有する樹脂粒子の水分散体I’-1の固形分濃度は25%であった。
(3)上記(2)で得られた顔料を含有する樹脂粒子の水分散体I’-1のうちの100部をねじ口付きガラス瓶に取り、イオン交換水32部、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル(ナガセケムテックス株式会社製、商品名:デナコールEX-321LT、エポキシ価:139)1.78部を加えて密栓し、スターラーで撹拌しながら70℃で5時間加熱した。このとき、樹脂中に含まれるカルボキシ基の総数の50%と反応できるエポキシ量の架橋剤量にて架橋処理を行った(架橋率50モル%)。5時間経過後、室温(25℃)まで降温し、前記5μmのフィルターを取り付けた容量25mLの針なしシリンジ(テルモ株式会社製)で濾過して、架橋された顔料を含有する樹脂粒子の水分散体I-1を得た(固形分濃度:20%)。架橋された顔料を含有する樹脂粒子を構成する架橋樹脂の酸価は120.5mgKOH/gと計算される。水分散体I-1に含まれる架橋された顔料を含有する樹脂粒子の平均粒径は105nmであった。また、水分散体I-1に含まれる架橋された顔料を含有する樹脂粒子を構成する顔料に対する顔料分散樹脂の質量比は、0.41であった。
(水系インクII-1~II-9の調製)
調製例1~9
ガラス製容器に、表1のインクの配合の欄に示すように、顔料を含有する樹脂粒子の水分散体I-1、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂のエマルション、他の樹脂(顔料を含有しない樹脂)分散体、ブロックイソシアネート化合物分散体、水溶性有機溶媒、界面活性剤及びイオン交換水を添加した後、1時間撹拌した。なお、イオン交換水は、全体が100質量部になるように添加した。その後、5μmのディスポーザルメンブレンフィルター(ザルトリウス社製、商品名「ミニザルト」)を用いて濾過を行い、水系インクII-1~II-9を得た。
表1に記載のポリカーボネート系ポリウレタン樹脂のエマルション、他の樹脂(顔料を含有しない樹脂)分散体、水溶性有機溶媒、ブロックイソシアネート化合物分散体及び界面活性剤の詳細は以下のとおりである。
(ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂のエマルション)
・スーパーフレックス460(第一工業製薬株式会社製、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂分散体、イオン性:アニオン性、固形分38%)
・タケラック WS-5100(三井化学株式会社製、自己架橋型ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂分散体、固形分30%)
(他の樹脂(顔料を含有しない樹脂)分散体)
・スーパーフレックスE-4800(第一工業製薬株式会社製、ポリエーテル系ポリウレタン樹脂分散体、イオン性:非イオン/弱アニオン性、固形分40%)
・スーパーフレックス300(第一工業製薬株式会社製、ポリエステルエーテル系ポリウレタン樹脂分散体、イオン性;弱アニオン性、固形分30%)
・スーパーフレックス740(第一工業製薬株式会社製、ポリエステル系ポリウレタン樹脂分散体、イオン性:アニオン性、固形分40%)
(ブロックイソシアネート化合物分散体)
・Trixene Aqua BI220(株式会社GSIクレオス社製、HDI三量体、3,5-ジメチルピラゾール型ブロックイソシアネート化合物水系分散体、解離温度:120℃、イソシアネート基当量:1,000、固形分40%)
(水溶性有機溶媒)
・プロピレングリコール
・ジプロピレングリコール
(界面活性化剤)
〔シリコーン系界面活性剤〕
・シルフェイスSAG005(日信化学工業株式会社製、ポリエーテル変性シリコーン、有効分100%)
〔アセチレン系界面活性剤〕
・サーフィノール465(日信化学工業株式会社製、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオールのエチレンオキシド(EO)付加物、EO平均付加モル数:10、有効分100%)
・サーフィノール420(日信化学工業株式会社製、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオールのEO付加物、EO平均付加モル数:1.3、有効分100%)
<印捺物の作製>
実施例1~8、10~13、比較例1~6
得られた水系インクII-1~II-8を用いて、表1に示す条件及び以下に示す手順で印捺物を作製し、評価した。結果を表1に示す。
(印刷工程)
温度25±1℃、相対湿度30±5%の環境で、インクジェットヘッド(京セラ株式会社製、商品名:KJ4B-HD06MHG-STDV、ピエゾ式)を装備した印刷評価装置(株式会社トライテック製)に得られた水系インクを充填した。ヘッド電圧26V、周波数15kHz、ヘッド温度32℃、吐出液滴量5pL、解像度600×600dpi、吐出前フラッシング回数200発、負圧-4.0kPaを設定した。このときインク1種に対してインクジェットヘッド2本を用いてワンパス印刷を行い、合計の解像度は横方向1200dpi×送り方向600dpiとなる条件とした。搬送台の上にA4サイズのフィルムヒーター(株式会社河合電器製作所製)を固定して、ヒーター上に、印刷媒体として表1に示す布帛を、印刷媒体の長手方向と搬送方向が同じになる向きに両面テープで固定した。インクが着弾する部分の温度を赤外線放射温度計MT-4(レイテック社製)の測定値にて表1記載の温度となるようにヒーターの強度を調節した状態で前記印刷評価装置に印刷命令を転送し、画質(滲み)評価用にフォントサイズ8ptの日本語ひらがな50音(MS明朝)とアルファベット24音(Times New Roman)、数字1~30(Times New Roman)を有する印刷パターンと、摩擦堅牢性評価用に搬送方向に2cmのDuty30%の印刷パターンをインクジェット印刷し、インクジェット印刷物を得た。
(加熱工程)
得られたインクジェット印刷物は、実施例6、7及び10以外は120℃、実施例6は140℃,実施例7及び10は160℃に調整した定温乾燥機に投入し、布帛のインクジェット印刷された面を上記赤外線放射温度計にて温度を測定し、布帛のインクジェット印刷された面がそれぞれの温度に20分間保持されていることを確認してから室温23±1℃に戻し、印捺物を得た。得られた印捺物を各評価に供した。
実施例9
下記により調製した多価金属塩を含有する処理液を、布帛に対する多価金属塩の付与量が5.0g/mとなるような塗布量で、均一にスプレー塗布し、その後100℃の定温乾燥機にて5分間加熱乾燥させてから室温23±1℃に戻した後に、水系インクII-1を用いて、実施例1と同様にして印捺物を得た。得られた印捺物を各評価に供した。
(多価金属塩を含有する処理液の調製)
ガラス製容器に、硝酸カルシウム・四水和物(富士フイルム和光純薬株式会社製、固形分100%)8%、シリコーン系界面活性剤(ビッグケミージャパン株式会社製、商品名:BYK-348、有効分100%)0.1%、スチレン/アクリル系エマルジョン(ジャパンコーティングレジン株式会社製、商品名:モビニール966A、固形分45%)5.6%、イオン交換水86.3%の割合で投入し、マグネチックスターラーで10分間撹拌して多価金属塩を含有する処理液を得た。
表1に示す印刷媒体は以下の通りである。いずれの布帛もA5サイズに裁断して用いた。
・PES(ポリエステル):ポリエステルトロピカル 東レ(120g/m、株式会社色染社製)
・ナイロン:ナイロン6タフタ(70g/m、株式会社色染社製)
・PU(ポリウレタン):表層がポリウレタンを含む人工皮革(イデアテックスジャパン株式会社製、商品名:サプラーレPBZ13001)
・綿:綿ブロード40シルケット加工付(122g/m、株式会社色染社製)
<評価>
(1)画質(滲み)の評価
実施例及び比較例で得られた画質(滲み)評価用の印捺物の印刷パターンを目視にて確認し、画質を評価した。
評価基準がAまたはBであれば実用上問題はない。
(評価基準)
A:文字、数字のいずれにも滲み及びつぶれが見られず、完全に識別することが可能である。
B:文字、数字の一部に若干の滲みが見られ、Aより尖鋭性は劣るが、文字、数字を識別できないほどではない。
C:文字、数字の一部または全部がインク滲みによりつぶれており、識別することができず、実用上使用できない。
(2)乾燥摩擦堅牢度の評価
実施例及び比較例で得られた摩擦堅牢性評価用の印捺物を、II型摩擦試験機を用いてJIS L0849:2013に準拠し乾燥摩擦試験を行い、変退色グレースケールを用いて評価した。乾燥摩擦堅牢度は3級以上で合格であり、3-4級以上が優れており、4級以上が更に優れている。
(3)湿潤摩擦堅牢度の評価
実施例及び比較例で得られた摩擦堅牢性評価用印捺物を、II型摩擦試験機を用いてJIS L0849:2013に準拠し湿潤摩擦試験を行い、変退色グレースケールを用いて評価した。湿潤摩擦堅牢度は3級以上で合格であり、3-4級以上が優れており、4級以上が更に優れている。
表1から、実施例1~13で得られた印捺物は、比較例1~6で得られた印捺物と比べて、画質及び擦れ等の外的応力に対する耐久性に優れることが分かる。
また、比較例3は、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂として、その構造内にブロックイソシアネート構造を有する、自己架橋型ポリウレタン樹脂を用いている。そのため、比較例3では、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂は、主に分子内架橋により、当該ポリウレタン樹脂自らの近傍の部位とのみ架橋反応をすることから、架橋による塗膜の耐久性向上効果が小さく、印捺物の外的応力に対する耐久性が劣る結果となった。

Claims (5)

  1. 顔料、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂、ブロックイソシアネート化合物、水溶性有機溶媒、及び水を含有するインク組成物を、該インク組成物が着弾する部分の温度が40℃以上である布帛にインクジェットで印刷する印刷工程を含み、
    該ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂が、ブロックイソシアネート構造を分子内に有さず、イソシアネート基と反応し得る官能基を有する、インクジェット捺染方法。
  2. 前記印刷工程後に、布帛のインクジェット印刷された部分の温度を100℃以上にする加熱工程を有する、請求項1に記載のインクジェット捺染方法。
  3. 前記水溶性有機溶媒が、アルキレングリコール及びポリアルキレングリコールからなる群から選ばれる1種以上を含有する、請求項1又は2に記載のインクジェット捺染方法。
  4. 前記布帛が、ナイロン、ポリエステル、ポリウレタン及び綿からなる群から選ばれる1種以上を含有する布帛である、請求項1~3のいずれか1項に記載のインクジェット捺染方法。
  5. 前記顔料が、顔料を含有する樹脂粒子の形態である、請求項1~4のいずれか1項に記載のインクジェット捺染方法。
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