JP2024049421A - 植物の配偶子と体細胞の融合細胞及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】植物の配偶子と植物の体細胞とを人工的に融合させてなる融合細胞の製造方法、融合細胞及び植物体を提供する。【解決手段】植物の精細胞と、植物の卵細胞又は2個以上の卵細胞同士を融合させた融合細胞とを、それぞれ別々に又は互いに融合させた状態で、植物の体細胞と融合させる工程を含む、融合細胞の製造方法。【選択図】図1

Description

本発明は、融合細胞の製造方法、融合細胞、及び植物体に関する。
植物の倍数体を作出する方法として、種子あるいは芽生えなどをコルヒチンで処理する手法が用いられている。また近年、配偶子融合法(複数の配偶子の電気的細胞融合)による倍数体植物の作出が可能となっている(特許文献1,2及び非特許文献1-3)。
特許文献1は、倍数体の植物細胞の製造方法であって、(a)精細胞と卵細胞とを融合させて受精細胞を作製する工程と、(b)卵細胞及び2個以上の卵細胞同士を融合させた融合細胞からなる群より選択される1以上の細胞を、前記受精細胞に融合させる工程と、を含む製造方法について開示している。
特許文献2は、植物の卵細胞又はそれに由来する細胞と、植物の精細胞又はそれに由来する細胞とを融合させて、融合細胞を得る工程を含む、融合細胞の製造方法について開示している。
非特許文献1は、in vitro fertilization システムにおける電気融合によるイネの精細胞と卵細胞の接合体の作製と、その胚への分割について開示している。
非特許文献2は、イネの精細胞と卵細胞の電気融合による不均衡な親ゲノムを有する倍数性接合体の作製について開示している。
非特許文献3は、in vitro fertilization システムにより製造されたコムギとイネの雑種接合体について開示している。
異種間での交雑植物の作出にあたっては、交配法が用いられているが、種間の生殖的隔離機構によって交雑種子が形成されないことが多い。また、配偶子融合法を介した交雑植物の作出においては、異種の配偶子を任意の組み合わせで融合させることが可能となっているが、配偶子単離法が確立されている植物種同士の組み合わせに限定される。
特開2016-63785 特開2022-76736
Uchiumi T., et al. (2007) Planta 226:581-589 Toda E. et al. (2018) J. Exp. Bot. 69:2609-2619 Maryenti T. et al. (2021) New Phytol. 232:2369-2383
本発明が解決すべき課題は、植物の配偶子と植物の体細胞とを人工的に融合させてなる融合細胞の製造方法、融合細胞及び植物体を提供することにある。
本発明は、以下に記載の態様を包含する。
項1.植物の精細胞と、植物の卵細胞又は2個以上の卵細胞同士を融合させた融合細胞とを、それぞれ別々に又は互いに融合させた状態で、植物の体細胞と融合させる工程を含む、融合細胞の製造方法。
項2.前記融合させる工程は、下記の(i)~(iv)のいずれかの状態で融合させることを含む、項1に記載の方法。
(i)植物の1個の精細胞と植物の1個の卵細胞とを融合させた受精細胞を、植物の体細胞と融合させる
(ii)植物の1個の卵細胞と植物の1個の体細胞とを融合させた融合細胞を、植物の精細胞と融合させる
(iii)植物の卵細胞同士を融合させた融合細胞と植物の1個の体細胞とを融合させ、得られた融合細胞を、植物の精細胞と融合させる
(iv)植物の卵細胞同士を融合させた融合細胞と、植物の1個の卵細胞と植物の1個の体細胞とを融合させた融合細胞とを融合させ、得られた融合細胞を、植物の精細胞と融合させる
項3.前記植物の精細胞と、前記植物の卵細胞又は2個以上の卵細胞同士を融合させた融合細胞が由来する卵細胞とが、前記体細胞とは異なる植物種に由来する項1に記載の方法。
項4.前記植物の精細胞と、前記植物の卵細胞又は2個以上の卵細胞同士を融合させた融合細胞が由来する卵細胞と、前記体細胞とが、イネ科の植物に由来する項1に記載の方法。
項5.前記融合させる工程を、電気融合により行う項1に記載の方法。
項6.項1~5のいずれか一項に記載の製造方法により製造した融合細胞を分化させる工程を含む、分化した植物を製造する方法。
項7.前記分化した植物が、根、茎、及び葉を有する植物体を含む項6に記載の方法。
項8.植物の精細胞と、植物の卵細胞と、植物の体細胞との融合細胞。
項9.項8に記載の融合細胞を分化させてなる植物体。
本発明によれば、より幅広い植物種における融合細胞、および倍数性植物の作出が可能となる。
(A)-(D)本発明の実施形態の融合細胞を示す模式図。 (A)-(D)本発明の実施形態の融合細胞の製造方法を示す模式図。 イネ体細胞とイネ受精細胞の融合細胞の発生過程を示す顕微鏡写真。 (A)イネ体細胞とコムギ受精細胞の融合細胞の発生過程を示す模式図。(B)イネ体細胞とコムギ受精細胞の融合細胞の発生過程を示す顕微鏡写真。
本明細書において「倍数体」とは、1細胞内に2組以上のゲノムを有する個体をいう。ゲノムとは、それぞれの生物の生活機能の調和を保つ上に欠くことのできない染色体の1組をいう。1つのゲノムをAで表すと、二倍性の生物の体細胞と生殖細胞のゲノム構成はそれぞれAAとAになる。ゲノムをn組有する場合には、n倍体と表記する(nは整数)。
倍数体には、同質倍数体と異質倍数体があり、同質倍数体は細胞中のすべてのゲノムが同一の種から由来している場合をいい、異質倍数体は細胞中のゲノムが2以上の種から由来している場合を言う。
本明細書において「半数体」とは、通常のゲノムセットの半数のゲノムを有する個体を指す。二倍性の生物の場合、半数体は一倍性となり、1細胞内に1組のゲノムを有する個体となる。1つのゲノムをAと表すと、半数体の体細胞のゲノム構成はAになる。
本明細書において「精細胞」とは、雄ずいの葯の中において、花粉母細胞の減数分裂により形成される雄性配偶子を意味する。精細胞の単離方法は限定されないが、例えば、適切な浸透圧の溶液に葯から採取した花粉を浸すと、数分後には、花粉から精細胞を含む花粉内容物が溶液中に放出されるので、顕微鏡下においてガラスキャピラリーを用いて精細胞を単離することができる。
本明細書において「卵細胞」とは、雌ずいの中において、胚嚢母細胞の減数分裂により形成される雌性配偶子を意味する。卵細胞の単離方法は限定されないが、例えば、適切な浸透圧の溶液中において子房を切断し、その切断面から出てきた卵細胞を顕微鏡下においてガラスキャピラリーを用いて単離することができる。
本明細書において「受精細胞」とは、精細胞と卵細胞とが融合した細胞を意味する。
本明細書において「体細胞」とは、生殖細胞以外の細胞を指す。「生殖細胞」は胞子および配偶子を指し、「配偶子」は精細胞及び卵細胞を指す。
本明細書において「細胞融合」「細胞を融合させる」とは、同種あるいは異種の2個以上の細胞の細胞膜を融合させることをいう。細胞を融合する方法は特に限定されないが、電気融合により行うのが好ましい。
本明細書において「融合細胞」とは、同種あるいは異種の2個以上の細胞の細胞膜を融合させることによって形成された細胞を意味する。
第1の態様において、本発明は、植物の精細胞と、植物の卵細胞又は2個以上の卵細胞を融合させた融合細胞とを、それぞれ別々に又は互いに融合させた状態で、倍数体あるいは半数体由来の植物の体細胞と融合させる工程を含む、融合細胞の製造方法を提供する。この方法により製造された融合細胞は、植物細胞を融合させてなる倍数体(三倍体以上)の細胞であるため、「植物由来の倍数体の細胞」と互換的に称してもよい。
図1(A)-(D)に融合細胞を示す。図1(A)は植物の1個の精細胞と植物の1個の卵細胞とを融合させた、2倍体の融合細胞(受精細胞)である。図1(B)-(D)は本発明の実施形態の融合細胞の例である。図1(B)は植物の1個の精細胞と、植物の1個の卵細胞と、植物の1個の体細胞とを融合させた融合細胞である。体細胞に半数体(1倍体)由来の体細胞を用いると、融合細胞は3倍体となり、体細胞に2倍体由来の体細胞を用いると、融合細胞は4倍体となる。図1(C)は植物の1個の精細胞と、植物の2個の卵細胞と、植物の1個の体細胞とを融合させた融合細胞である。図1(D)は植物の1個の精細胞と、植物の3個の卵細胞と、植物の1個の体細胞とを融合させた融合細胞である。
好ましくは、融合させる工程は、下記の(i)~(iv)のいずれかの状態で融合させることを含む。
(i)植物の1個の精細胞と植物の1個の卵細胞とを融合させた受精細胞を、植物の体細胞と融合させる
(ii)植物の1個の卵細胞と植物の1個の体細胞とを融合させた融合細胞を、植物の精細胞と融合させる
(iii)植物の卵細胞同士を融合させた融合細胞と植物の1個の体細胞とを融合させ、得られた融合細胞を、植物の精細胞と融合させる
(iv)植物の卵細胞同士を融合させた融合細胞と、植物の1個の卵細胞と植物の1個の体細胞とを融合させた融合細胞とを融合させ、得られた融合細胞を、植物の精細胞と融合させる
図2(A)は、上記(i)の状態で融合させることを含む融合細胞の製造方法の例である。図2(A)において、植物の1個の精細胞と植物の1個の卵細胞とを融合させた受精細胞を、植物の体細胞と融合させ、融合細胞を得る。
図2(B)は、上記(ii)の状態で融合させることを含む融合細胞の製造方法の例である。図2(B)において、植物の1個の卵細胞と植物の1個の体細胞とを融合させた融合細胞を、植物の精細胞と融合させ、融合細胞を得る。
図2(C)は、上記(iii)の状態で融合させることを含む融合細胞の製造方法の例である。図2(C)において、まず、植物の卵細胞同士を融合させた融合細胞と植物の1個の体細胞とを融合させる。次に、得られた融合細胞を、植物の精細胞と融合させることで、最終的な融合細胞を得る。
図2(D)は、上記(iv)の状態で融合させることを含む融合細胞の製造方法の例である。図2(D)において、まず、植物の卵細胞同士を融合させた融合細胞と、植物の1個の卵細胞と植物の1個の体細胞とを融合させた融合細胞をそれぞれ別々に作出する。次に、それら2種類の融合細胞同士を融合させる。得られた融合細胞を、植物の精細胞と融合させることで、最終的な融合細胞を得る。
図2(C)及び2(D)において、植物の卵細胞同士を融合させた融合細胞は、2個の卵細胞同士を融合させた融合細胞であってもよいし、3個以上の卵細胞同士を融合させた融合細胞であってもよい。
細胞を融合する方法は特に限定されないが、電気融合により行うのが好ましい。電気融合により細胞融合を行う場合、電圧、電極間距離等の条件は、細胞の大きさ等に応じて決めればよい。
精細胞と卵細胞とを融合させる際の直流電圧は、下限を10kV以上にすることが好ましく、11kV以上にすることがより好ましく、12kV以上にすることがさらに好ましい。また、上限を17kV以下にすることが好ましく、16kV以下にすることがより好ましく、15kV以下にすることがさらに好ましい。上限と下限は、当業者がそれぞれ適宜選択することができる。
卵細胞同士を融合させる際の直流電圧は、下限を、精細胞と卵細胞とを融合させる際の直流電圧の0.5倍以上にすることが好ましく、0.6倍以上にすることがより好ましく、0.7倍以上にすることがさらに好ましい。また、上限を0.95倍以下にすることが好ましく、0.9倍以下にすることがより好ましく、0.8倍以下にすることがさらに好ましい。上限と下限は、当業者がそれぞれ適宜選択することができる。また、卵細胞同士を融合させる際の直流電圧は、下限を6kV以上にすることが好ましく、7kV以上にすることがより好ましく、8kV以上にすることがさらに好ましい。また、上限を、12kV以下にすることが好ましく、11kV以下にすることがより好ましく、10kV以下にすることがさらに好ましい。上限と下限は、当業者がそれぞれ適宜選択することができる。
植物の体細胞と、卵細胞、2個以上の卵細胞同士を融合させた融合細胞又は受精細胞とを融合させる際の直流電圧は、下限を6kV以上にすることが好ましく、7kV以上にすることがより好ましく、8kV以上にすることがさらに好ましい。また、上限を12kV以下にすることが好ましく、11kV以下にすることがより好ましく、10kV以下にすることがさらに好ましい。上限と下限は、当業者がそれぞれ適宜選択することができる。
植物の体細胞と、卵細胞又は2個以上の卵細胞同士を融合させた融合細胞とを融合させて得られた融合細胞を、精細胞と融合させる際の直流電圧は、下限を10kV以上にすることが好ましく、11kV以上にすることがより好ましく、12kV以上にすることがさらに好ましい。また、上限を17kV以下にすることが好ましく、16kV以下にすることがより好ましく、15kV以下にすることがさらに好ましい。上限と下限は、当業者がそれぞれ適宜選択することができる。
精細胞と、卵細胞とを電気融合して1つの融合細胞を作製する際、電極間距離は、下限を、融合させる細胞の直径の和の2倍以上にすることが好ましく、2.5倍以上にすることがより好ましく、3倍以上にすることがさらに好ましい。また、上限を6倍以下にすることが好ましく、5倍以下にすることがより好ましく、4倍以下にすることがさらに好ましい。上限と下限は、当業者がそれぞれ適宜選択することができる。細胞の直径を測定する方法としては、顕微鏡に装着した測微接眼レンズを用いて直径を測定する方法や、顕微鏡で撮影した画像をコンピュータに取り込み、画像解析ソフトウェアで測定する方法がある。また、精細胞と、卵細胞又は2個以上の卵細胞同士を融合させた融合細胞とを電気融合する際の電極間距離は、下限を80μm以上とすることが好ましく、90μm以上とすることがより好ましく、100μm以上とすることがさらに好ましい。また、上限を240μm以下とすることが好ましく、220μm以下とすることがより好ましく、200μm以下とすることがさらに好ましい。上限と下限は、当業者がそれぞれ適宜選択することができる。
卵細胞同士を電気融合して1つの融合細胞を作製する際、電極間距離は、下限を、精細胞と卵細胞とを融合させる際に使用する電極間距離の2倍以上にすることが好ましく、2.5倍以上にすることがより好ましく、3倍以上にすることがさらに好ましい。また、上限を7倍以下にすることが好ましく、6倍以下にすることがより好ましく、5倍以下にすることがさらに好ましい。上限と下限は、当業者がそれぞれ適宜選択することができる。また、卵細胞同士を電気融合する際の電極間距離は、下限を200μm以上とすることが好ましく、250μm以上とすることがより好ましく、300μm以上とすることがさらに好ましい。また、上限を700μm以下とすることが好ましく、600μm以下とすることがより好ましく、500μm以下とすることがさらに好ましい。上限と下限は、当業者がそれぞれ適宜選択することができる。
植物の体細胞と、卵細胞、2個以上の卵細胞同士を融合させた融合細胞又は受精細胞とを融合させる際、電極間距離は、下限を200μm以上とすることが好ましく、250μm以上とすることがより好ましく、300μm以上とすることがさらに好ましい。また、上限を700μm以下とすることが好ましく、600μm以下とすることがより好ましく、500μm以下とすることがさらに好ましい。上限と下限は、当業者がそれぞれ適宜選択することができる。
植物の体細胞と、卵細胞又は2個以上の卵細胞同士を融合させた融合細胞とを融合させて得られた融合細胞を、精細胞と融合させる際、電極間距離は、下限を80μm以上とすることが好ましく、90μm以上とすることがより好ましく、100μm以上とすることがさらに好ましい。また、上限を240μm以下とすることが好ましく、220μm以下とすることがより好ましく、200μm以下とすることがさらに好ましい。上限と下限は、当業者がそれぞれ適宜選択することができる。
精細胞と卵細胞を電気融合する際の溶液の浸透圧は、下限を380mosmol/kg H2O以上とすることが好ましく、390mosmol/kg H2O以上とすることがより好ましく、400mosmol/kg H2O以上とすることがさらに好ましい。また、上限を470mosmol/kg H2O以下とすることが好ましく、460mosmol/kg H2O以下とすることがより好ましく、450mosmol/kg H2O以下とすることがさらに好ましい。上限と下限は、当業者がそれぞれ適宜選択することができる。繰り返し電気融合を行う場合は、電気融合を終えた際に融合細胞を350~400mosmol/kg H2Oの低浸透圧の溶液に一度移し、電気融合を行う際に再度浸透圧を高めることが好ましい。
卵細胞同士を電気融合する際の溶液の浸透圧は、下限を370mosmol/kg H2O以上とすることが好ましく、380mosmol/kg H2O以上とすることがより好ましく、390mosmol/kg H2O以上とすることがさらに好ましい。また、上限を500mosmol/kg H2O以下とすることが好ましく、480mosmol/kg H2O以下とすることがより好ましく、465mosmol/kg H2O以下とすることがさらに好ましい。また、450mosmol/kg H2Oとすることが最も好ましい。上限と下限は、当業者がそれぞれ適宜選択することができる。繰り返し電気融合を行う場合は、電気融合を終えた際に融合細胞を350~400mosmol/kg H2Oの低浸透圧の溶液に一度移し、電気融合を行う際に再度浸透圧を高めることが好ましい。
植物の体細胞と、卵細胞、2個以上の卵細胞同士を融合させた融合細胞又は受精細胞とを電気融合する際の溶液の浸透圧は、下限を370mosmol/kg H2O以上とすることが好ましく、380mosmol/kg H2O以上とすることがより好ましく、390mosmol/kg H2O以上とすることがさらに好ましい。また、上限を500mosmol/kg H2O以下とすることが好ましく、480mosmol/kg H2O以下とすることがより好ましく、465mosmol/kg H2O以下とすることがさらに好ましい。また、450mosmol/kg H2Oとすることが最も好ましい。上限と下限は、当業者がそれぞれ適宜選択することができる。繰り返し電気融合を行う場合は、電気融合を終えた際に融合細胞を350~400mosmol/kg H2Oの低浸透圧の溶液に一度移し、電気融合を行う際に再度浸透圧を高めることが好ましい。
植物の体細胞と、卵細胞又は2個以上の卵細胞同士を融合させた融合細胞とを融合させて得られた融合細胞を、精細胞と電気融合する際の溶液の浸透圧は、下限を370mosmol/kg H2O以上とすることが好ましく、380mosmol/kg H2O以上とすることがより好ましく、390mosmol/kg H2O以上とすることがさらに好ましい。また、上限を500mosmol/kg H2O以下とすることが好ましく、470mosmol/kg H2O以下とすることがより好ましく、450mosmol/kg H2O以下とすることがさらに好ましい。上限と下限は、当業者がそれぞれ適宜選択することができる。
卵細胞及び/又は精細胞の属する植物種の科としては、例えば、アオイ科、アオギリ科、アカザ科、アカネ科、アサ科、アブラナ科、アマ科、イネ科、ウリ科、ウルシ科、カキノキ科、カバノキ科、キク科、クサスギカズラ科、クワ科、クルミ科、ゴマ科、コショウ科、サトイモ科、シソ科、ショウガ科、セリ科、タデ科、ツツジ科、ツバキ科、ナス科、パイナップル科、バショウ科、ハス科、パパイア科、バラ科、ヒルガオ科、ブナ科、マタタビ科、マメ科、ミカン科、モクセイ科、ヤマノイモ科、ユリ科等が挙げられる。
また、卵細胞及び/又は精細胞の属する植物種の属としては、例えば、以下に示すような属が挙げられる。
イネ科の属としては、例えば、マダケ属、オオムギ属、コムギ属、イネ属、コヌカグサ属、シバ属、サトウキビ属、キビ属、ヒエ属、モロコシ属、トウモロコシ属等が挙げられる。
アブラナ科の属としては、例えば、アブラナ属、シロイヌナズナ属、ワサビ属、セイヨウワサビ属、ナズナ属、キバナスズシロ属、ダイコン属、グンバイナズナ属等が挙げられる。
アカザ科の属としては、例えば、ホウレンソウ属、フダンソウ属等が挙げられる。
マメ科の属としては、例えば、インゲン属、エンドウ属、ソラマメ属、ナタマメ属、ダイズ属、クズ属、ササゲ属、デイゴ属、フジマメ属、キマメ属、ラッカセイ属、ヒヨコマメ属、シタン属、ハギ属、ゲンゲ属、カンゾウ属、エニシダ属、クアスタマメ属、ミヤコグサ属、ルピナス属、フジ属等が挙げられる。
ナス科の属としては、例えば、ナス属、トウガラシ属、タバコ属、チョウセンアサガオ属、ホオズキ属、ペチュニア属等が挙げられる。
卵細胞が属する植物種の分類群は、イネ科又はマメ科であることが好ましい。
イネ科に属する植物種の卵細胞は、他の植物種の卵細胞と比較して大きく、卵細胞の取り扱い、融合細胞の製造等が容易であるため、より容易に融合細胞を製造することができ、得られた融合細胞を育成してより容易に植物体を製造することができる。
マメ科に属する植物種は、窒素固定細菌と共生して窒素固定が可能であるため、得られた融合細胞から、園芸及び農業分野において有用な植物体を製造できる。
卵細胞は、イネ科イチゴツナギ亜科、イネ科エールハルタ亜科又はイネ科キビ亜科に属する植物種の卵細胞であることが好ましい。この場合、得られた融合細胞、及び、融合植物を育成して得られる植物体は、食料として栽培可能であり、農業において有用である。
イネ科イチゴツナギ亜科のうち、オオムギ属、コムギ属又はライムギ属が好ましい。イネ科エールハルタ亜科のうち、イネ属が好ましい。イネ科キビ亜科のうち、サトウキビ属、モロコシ属、トウモロコシ属、キビ属又はヒエ属が好ましい。より具体的には、卵細胞が属する植物種としては、アジアイネ(O.sativaL.)、オリザ・ルフィポゴン(O.rufipogonsensulato)、アフリカイネ(O.glaberrimaSteud.)、野生イネ(O.rufipogon,O.barthii,O.longistaminata,O.meridionalis等)、パンコムギ(Triticumaestivum)、デュラムコムギ(Triticumdurum)、トウモロコシ(Zeamays)等が挙げられる。
卵細胞、精細胞及び体細胞は、遺伝子組み換え植物から得られたものであってもよい。ここで、遺伝子組み換え植物とは、例えば、ゲノムDNAが改変された植物であってもよいし、ベクターを保持する植物であってもよい。
卵細胞、精細胞及び体細胞は、核酸、タンパク質、ペプチド等が導入されたものであってもよい。
精細胞が属する植物種としては、上記の卵細胞が属する植物種と同一の種を例示することができる。
精細胞が属する植物種の分類群と、卵細胞(2個以上の卵細胞同士を融合させた融合細胞が由来する卵細胞を含む)が属する植物種の分類群とは、同一の科であることが好ましく、同一の属であることがより好ましく、同一の種であることが更に好ましい。特に、配偶子とは異なる種由来の体細胞を用いた場合、体細胞の融合自体が融合細胞の発生率に影響を与える可能性がある点で、精細胞と、卵細胞(2個以上の卵細胞同士を融合させた融合細胞が由来する卵細胞を含む)とが同一の種由来であることが好ましい。
精細胞が属する植物種の分類群と、卵細胞(2個以上の卵細胞同士を融合させた融合細胞が由来する卵細胞を含む)が属する植物種の分類群は、同一の亜科以下の分類群に属することにより、発生が良好となり、得られた融合細胞を育成してより容易に植物体を製造することができる。
体細胞が属する植物種としては、上記の卵細胞が属する植物種と同一の種を例示することができる。
体細胞が属する植物種の分類群は、イネ科の属が好ましく、コムギ属、イネ属、又はトウモロコシ属がより好ましく、イネ属がより好ましい。
体細胞は、植物の精細胞及び植物の卵細胞(2個以上の卵細胞同士を融合させた融合細胞が由来する卵細胞を含む)と、同じ植物種に由来してもよいし、異なる植物種に由来してもよい。
好ましい一つの実施形態では、植物の精細胞と、植物の卵細胞(2個以上の卵細胞同士を融合させた融合細胞が由来する卵細胞を含む)と、前記体細胞とが、いずれもイネ科の植物に由来する。
好ましい別の実施形態では、植物の精細胞と、植物の卵細胞(2個以上の卵細胞同士を融合させた融合細胞が由来する卵細胞を含む)と、前記体細胞とが、いずれもイネ科の植物に由来し、植物の精細胞と植物の卵細胞は、コムギ属であり、体細胞はイネ属である。
好ましいまた別の実施形態では、植物の精細胞と、植物の卵細胞(2個以上の卵細胞同士を融合させた融合細胞が由来する卵細胞を含む)と、前記体細胞とが、いずれもイネ科の植物に由来し、植物の精細胞と植物の卵細胞は、コムギ属の同じ種であり、体細胞はイネ属である。
植物の精細胞と、植物の卵細胞又は2個以上の卵細胞同士を融合させた融合細胞とを、それぞれ別々に又は互いに融合させた状態で、植物の体細胞と融合させる工程において、植物の精細胞及び植物の卵細胞(2個以上の卵細胞同士を融合させた融合細胞が由来する卵細胞を含む)の少なくとも一方又は両方と、体細胞とが異なる種に由来する場合、本発明の方法により得られる植物細胞は交雑植物となりうる。
精細胞と卵細胞とが融合すると細胞壁が形成される。細胞壁が形成されると細胞融合が阻害されるため、受精細胞への体細胞の融合(図2(A)および図4(A)参照)は、受精細胞の作製後に速やかに行い、細胞壁の形成開始前に完了することが好ましい。具体的には、精細胞と卵細胞を融合させてから、好ましくは、20分以内、より好ましくは10分以内、さらに好ましくは5分以内に、受精細胞を体細胞と融合させることが好ましい。
従来、2倍性の生物種において、4倍体以上の配偶子と体細胞の融合細胞は存在しなかったが、本発明の態様の融合細胞の製造方法によれば、複数の配偶子と体細胞を電気的に融合することで、倍数性の融合細胞を作出することができる。
細胞の融合の回数や融合する細胞の組み合わせによって、得られた個体の倍数性を任意に高めることができる。
体細胞のゲノム、細胞質及び細胞小器官を有する融合細胞を分化させ、新形質を有する植物体を作出することが可能である。配偶子と比べて、細胞の単離が比較的容易な体細胞を用いることで、同種の植物の作出はもちろん、これまでの交配法や配偶子融合法では困難であった種の組み合わせの交雑植物又は異質倍数体を作出することができる。
第2の態様において、本発明は、上記の融合細胞の製造方法により製造した融合細胞を分化させる工程を含む、植物の倍数体を製造する方法を提供する。融合細胞を分化させる工程は、融合細胞を培養して、球状様胚又はカルスを形成させることを含む。所望により、このカルスをさらに、根、茎及び葉を有する植物体に分化させてもよい。
融合細胞を分化させる工程は特に限定されないが、例えば、次のように行うことができる。
まず、倍数体の植物細胞を、7%マンニトール液滴(450mosmol/kg H2O)の中に入れて細胞内の浸透圧を高める。その後、植物細胞を2,4-ジクロロフェノキシ酢酸、ナフタレン酢酸などのオーキシンを添加した、液体のMS培地(T. Murashige et al., Physiol. Plant., 15, 473 (1962))、B5培地(O. L. Gamborg et al, Experimental Cell Research, 50, 151-158 (1968))、N6培地(Chuetal., Sci. Sinica, 18, 659-668 (1975))等に投入して一晩静置した後、穏やかに振とう培養する。振とう速度は、30~50rpmが好ましく、35~45rpmがより好ましい。培養の温度は、24~28℃が好ましく、25~27℃がより好ましい。培養は暗下で行うことが好ましい。培地へのオーキシンの添加濃度は、0.1~0.3mg/Lが好ましく、0.15~0.25mg/Lがより好ましい。培地にはフィーダー細胞を加えるのが好ましい。この培養期間は、4~7日が好ましく、5~6日がより好ましい。
培養開始から4~7日後、直径50~200μm程度の球状様胚が形成される。その球状様胚を、フィーダー細胞を加えていない上記の培地に移し、さらに10~14日程度培養する。その後、オーキシンを添加しない任意の培地、例えばMS培地に入れて培養し植物体を形成させる。この際、培養は光を照射して行うことが好ましく、光は、例えば、50~180μmol/m2・secが好ましく、70~150μmol/m2・secがより好ましい。植物体形成用の培地には支持体が含まれることが好ましく、支持体としては、例えば寒天やゲランガム、ゲルライト等を使用することができる。
第三の態様において、本発明は、植物の精細胞と、植物の卵細胞と、植物の体細胞との融合細胞を提供する。
かかる融合細胞は、上記の融合細胞の製造方法により容易に製造することができる。
本明細書中に引用されているすべての特許出願および文献の開示は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれるものとする。
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
[材料及び方法]
(イネ卵細胞、イネ精細胞及びイネ体細胞の単離)
イネの種はOryza sativa L. cv Nipponbareとし、イネ卵細胞及びイネ精細胞の単離は、文献(Toda E et al. (2016) Electro-fusion of Gametes and Subsequent Culture of Zygotes in Rice. Bio-protocol. Vol 6, Iss 24, December 20, 2016.)に従って行った。イネ体細胞は、文献(Toda et al.(2022)Isolation of gametes and zygotes from Setaria viridis. Journal of Plant Research. Vol 135, Iss 7, May 9, 2022.)に記載の方法に従って単離した。
シリコン処理したカバーガラス上に0.3 mLのミネラルオイルを滴下し、そのミネラルオイル中で、マイクロガラスキャピラリーを用いて数個の1~2μLのマンニトール水溶液(370mosmol/kg H2O)の液滴を作製した。
マンニトール水溶液(370mosmol/kg H2O)中で、開花前の花から子房を取り出し、マンニトール水溶液(370mosmol/kg H2O)中で、剃刀を用いて子房を切断した。続いて、ガラスニードルを用いて、イネ卵細胞を子房から放出させた。得られたイネ卵細胞を、マイクロガラスキャピラリーを用いて、上述のカバーグラス上の液滴中へ移動させた。
開花前の花から花粉を取り出し、花粉をマンニトール水溶液(370mosmol/kg H2O)中で破裂させて、精細胞を得た。マイクロガラスキャピラリーを用いて、上述のカバーグラス上の液滴中へ移動させた。
剃刀を用いて細断したイネ幼苗を酵素溶液中へ移動させ、減圧したのち、26℃で約2時間静置し、体細胞を単離した。得られたイネ体細胞を、マイクロガラスキャピラリーを用いて、上述のカバーグラス上の液滴中へ移動させた。
(コムギ卵細胞及びコムギ精細胞の単離)
コムギの種は、Triticum aestivum L.cv.Fieldersであり、コムギ卵細胞及びコムギ精細胞は、文献(Maryenti et al.(2019)Establishment of an in vitro fertilization system in wheat (Triticum aestivum L.). Plant and Cell Physiology. Vol 60, Iss 4, January 3, 2019.)に記載の方法に従って単離した。コムギ卵細胞及びコムギ精細胞の単離手順については、上記のイネ卵細胞及びイネ精細胞のそれと同様である。
(細胞の電気融合)
卵細胞及び体細胞を、上述のカバーグラス上の液滴に入れて、AC電流場(1MHz,3~5Vrms)において、電極に卵細胞を接着させた後、その卵細胞に体細胞を接着させた。0.5~1μLのマンニトール水溶液(520mosmol/kg H2O)を液滴に加えた後、直流パルス(50μs、10~12kV/cm)をかけて細胞融合し、得られた融合細胞を回収した。
卵細胞及び精細胞を、上述のカバーグラス上の液滴に入れて、AC電流場(1MHz,3~5Vrms)において、電極に卵細胞を接着させた後、その卵細胞に精細胞を接着させた。0.5~1μLのマンニトール水溶液(520mosmol/kg H2O)を液滴に加えた後、直流パルス(50μs、12~15kV/cm)をかけて細胞融合し、得られた融合細胞を回収した。
受精細胞及び体細胞を、上述のカバーグラス上の液滴に入れて、AC電流場(1MHz,3~5Vrms)において、電極に受精細胞を接着させた後、その受精細胞に体細胞を接着させた。0.5~1μLのマンニトール水溶液(520mosmol/kg H2O)を液滴に加えた後、直流パルス(50μs、10~12kV/cm)をかけて細胞融合し、得られた融合細胞を回収した。
卵細胞と体細胞から成る融合細胞及び精細胞を、上述のカバーグラス上の液滴に入れて、AC電流場(1MHz,3~5Vrms)において、電極に融合細胞を接着させた後、その融合細胞に精細胞を接着させた。0.5~1μLのマンニトール水溶液(520mosmol/kg H2O)を液滴に加えた後、直流パルス(50μs、12~15kV/cm)をかけて細胞融合し、得られた融合細胞を回収した。
(イネ融合細胞の培養)
電気融合により得られた融合細胞を、マンニトール水溶液(450mosmol/kg H2O)で洗浄した。続いて、Millicell-CMインサートに、0.2mLの受精卵培養用改変N6Z培地、融合細胞を入れ、融合細胞が入ったミリセルを、40~60μLのイネ培養細胞(フィーダー細胞)を含む培地中で、26℃、一晩、暗所で培養した。続いて、30rpmで振盪させながら、更に7日間培養した。フィーダー細胞を除去した後、培養した融合細胞が入ったミリセルを、2mLの受精卵培養用培地に入れて、20日間、培養を続けた。
ここで、受精卵培養用改変N6Z培地の組成は、2g/L CHU(N6) basal salt mixture(シグマアルドリッチ社製)、0.025mg/L Na2 MoO4・2H2O、0.025mg/L CoCl2・6H2O、0.025mg/L CuSO4・5H2O、0.01mg/L レチノール、0.01mg/L カルシフェロール、0.01mg/Lビオチン、1mg/L チアミン・H2 O、1mg/L ニコチン酸、1mg/L ピリドキシン・HCl、1mg/L 塩化コリン、1mg/L Ca-パントテン酸、0.2mg/L リボフラビン、0.2mg/L 2,4-D、0.02mg/L コバラミン、0.02mg/L p-アミノ安息香酸、0.4mg/L 葉酸、2mg/Lアスコルビン酸、40mg/L リンゴ酸、40mg/L クエン酸、40mg/L フマル酸、20mg/L Na-ピルビン酸、1,000mg/L グルタミン、及び250mg/L カゼイン加水分解物、100mg/L ミオイノシトールである。更に、浸透圧をグルコースで450mosmol/kg H2Oに調整し、pH5.7であり、フィルター滅菌を行ったものである。
得られたカルスを、再分化および発根培地(Toda E et al. (2016) Electro-fusion of Gametes and Subsequent Culture of Zygotes in Rice. Bio-protocol. Vol 6, Iss 24, December 20, 2016.)で13時間/11時間の明/暗サイクルで、28℃でそれぞれ11~20日培養し、植物体を得た。
(コムギ受精細胞とイネ体細胞の融合細胞の培養)
電気融合により得られた融合細胞を、マンニトール水溶液(450mosmol/kg H2O)で洗浄した。続いて、Millicell-CMインサートに、0.2mLの受精卵培養用改変N6Z 培地、融合細胞を入れ、融合細胞が入ったミリセルを、40~60μLのコムギ培養細胞(フィーダー細胞)を含む培地中で、26℃、一晩、暗所で培養した。続いて、30rpmで振盪させながら、更に7日間培養した。フィーダー細胞を除去した後、培養した融合細胞が入ったミリセルを、2mLの受精卵培養用培地に入れて、20日間、培養を続けた。
ここで、受精卵培養用改変N6Z培地の組成は、2g/L CHU(N6) basal salt mixture(シグマアルドリッチ社製)、0.025mg/L Na2 MoO4・2H2O、0.025mg/L CoCl2・6H2O、0.025mg/L CuSO4・5H2O、0.01mg/L レチノール、0.01mg/L カルシフェロール、0.01mg/Lビオチン、1mg/L チアミン・H2O、1mg/L ニコチン酸、1mg/L ピリドキシン・HCl、1mg/L 塩化コリン、1mg/L Ca-パントテン酸、0.2mg/L リボフラビン、0.2mg/L 2,4-D、0.02mg/L コバラミン、0.02mg/L p-アミノ安息香酸、0.4mg/L 葉酸、2mg/Lアスコルビン酸、40mg/L リンゴ酸、40mg/L クエン酸、40mg/L フマル酸、20mg/L Na-ピルビン酸、1,000mg/L グルタミン、及び250mg/L カゼイン加水分解物、100mg/L ミオイノシトールである。更に、浸透圧をグルコースで450mosmol/kg H2Oに調整し、pH5.7であり、フィルター滅菌を行ったものである。
続いて、ミリセル中の細胞コロニーを、カルス誘導培地(改変したN6Z培地の固体培地。上記の受精卵培養用改変N6Z培地中のグルコースをマルトース(2.7%)に変更し、0.4%ゲルライトで固化した培地)に移し、30℃で12~30日間持続的に光で照らして培養し、カルスを形成させた。
得られたカルスを、再分化および発根培地(Ishida et al.(2015) Wheat (Triticum aestivum L.) transformation using immature embryos. Methods Mol. Biol. 1223:189-98.)で13時間/11時間の明/暗サイクルで、28℃でそれぞれ11~20日培養し、植物体を得た。
[実施例1]
イネの1個の卵細胞とイネの1個の体細胞とを融合させた融合細胞を、イネの精細胞と融合させる工程によって作出された融合細胞(図2(B)の融合細胞の製造方法の実施形態参照)。卵細胞および精細胞は、2倍体イネの花からそれぞれ単離した細胞を用いた。体細胞は、半数体イネの幼苗から単離した細胞を用いた。精細胞は、ユビキチンプロモーター下でヒストンH2B-GFPを発現する形質転換イネ(Oryza sativa L. cv Nipponbare由来)から単離した細胞を用いた。これにより、融合細胞の発生過程における核の動態を観察することができる。
単離したイネ卵細胞とイネ体細胞とを、電気融合させて、第一の融合細胞を作出した。続いて、得られた第一の融合細胞と、イネ精細胞とを電気融合させて、第二の融合細胞を作出した。得られた第二の融合細胞は、培養後約1~2日で初期胚となり、その後、細胞分裂を進行させ、カルスを形成した(図3)。10個の第二の融合細胞のうち、6個がカルスを形成し、そのうち4個は植物体へと再分化した。
[実施例2]
コムギの1個の精細胞とコムギの1個の卵細胞とを融合させた受精細胞を、イネの体細胞と融合させる工程によって作出した融合細胞(図2(A)の融合細胞の製造方法の実施形態参照))。卵細胞および精細胞は、コムギの花からそれぞれ単離した細胞を用いた。体細胞は、2倍体イネの幼苗から単離した細胞を用いた。
単離したコムギ卵細胞とコムギ精細胞とを、電気融合させて、受精細胞を作出した。続いて、得られた受精細胞と、イネ体細胞とを電気融合させて、融合細胞を作出した。得られた融合細胞は、培養後約1日で初期胚となり、その後、細胞分裂を進行させ、増殖細胞塊を形成した(図4(A)及び図4(B))。12個の融合細胞のうち、9個が増殖細胞塊を形成し、そのうち5個がカルスを形成し、さらにそのうち1個が植物体へと再分化した。

Claims (9)

  1. 植物の精細胞と、植物の卵細胞又は2個以上の卵細胞同士を融合させた融合細胞とを、それぞれ別々に又は互いに融合させた状態で、植物の体細胞と融合させる工程を含む、融合細胞の製造方法。
  2. 前記融合させる工程は、下記の(i)~(iv)のいずれかの状態で融合させることを含む、請求項1に記載の方法。
    (i)植物の1個の精細胞と植物の1個の卵細胞とを融合させた受精細胞を、植物の体細胞と融合させる
    (ii)植物の1個の卵細胞と植物の1個の体細胞とを融合させた融合細胞を、植物の精細胞と融合させる
    (iii)植物の卵細胞同士を融合させた融合細胞と植物の1個の体細胞とを融合させ、得られた融合細胞を、植物の精細胞と融合させる
    (iv)植物の卵細胞同士を融合させた融合細胞と、植物の1個の卵細胞と植物の1個の体細胞とを融合させた融合細胞とを融合させ、得られた融合細胞を、植物の精細胞と融合させる
  3. 前記植物の精細胞と、前記植物の卵細胞又は2個以上の卵細胞同士を融合させた融合細胞が由来する卵細胞とが、前記体細胞とは異なる植物種に由来する請求項1に記載の方法。
  4. 前記植物の精細胞と、前記植物の卵細胞又は2個以上の卵細胞同士を融合させた融合細胞が由来する卵細胞と、前記体細胞とが、イネ科の植物に由来する請求項1に記載の方法。
  5. 前記融合させる工程を、電気融合により行う請求項1に記載の方法。
  6. 請求項1~5のいずれか一項に記載の製造方法により製造した融合細胞を分化させる工程を含む、分化した植物を製造する方法。
  7. 前記分化した植物が、根、茎、及び葉を有する植物体を含む請求項6に記載の方法。
  8. 植物の精細胞と、植物の卵細胞と、植物の体細胞との融合細胞。
  9. 請求項8に記載の融合細胞を分化させてなる植物体。
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