JP2024044782A - 放電加工方法及び放電加工用電極並びに放電加工装置 - Google Patents

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Daisuke Yanagida
幸司 渡邊
Koji Watanabe
久 南
Hisashi Minami
貴之 中本
Takayuki Nakamoto
貴広 菅原
Takahiro Sugawara
壮平 内田
Sohei Uchida
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Abstract

【課題】アスペクト比の高い深溝の放電加工においても高い加工速度及び加工精度を得ることができる形彫り放電加工方法、及び当該形彫り放電加工方法に好適に用いることができる安価な放電加工用電極、並びその簡便かつ高効率加工が可能な放電加工装置を提供する。【解決手段】加工液を噴流させて加工屑を除去する形彫り放電加工方法であって、加工液噴流用経路及び加工液噴流穴をそれぞれ少なくとも1つ以上有する放電加工用電極を用い、加工液噴流穴から加工液を噴流させながら放電加工を施し、放電加工による除去体積の増加に応じて噴流の流量及び/又は流速を調整すること、を特徴とする形彫り放電加工方法。【選択図】図1

Description

新規性喪失の例外適用申請有り
本発明は、各種金属材の形彫り放電加工方法及び当該形彫り放電加工方法に用いる放電加工用電極並びに放電加工装置に関する。
放電加工は絶縁液中で電圧を印加し、電極と被加工材(工作物)を接近させた際に発生する放電現象を利用した加工方法であり、熱的な作用と衝撃圧力で材料を溶融・除去することで加工が達成される。放電加工は加工単位が小さいことから微細加工に適しており、熱エネルギーによる加工であることから、材料の硬さや強度に関係なく加工することができ、加工時の応力印加に伴う被加工材の変形を考慮する必要がない。一方で、切削加工等と比較すると加工速度が低く、付加価値の高い金型加工に利用されることが多い。
しかしながら、セラミックス(グリーンシート及びハニカム触媒等)の押出成形用超硬合金製金型や射出成形金型に対して、アスペクト比の高い深溝や深穴を放電加工する場合、加工深さの増加に伴って加工屑の排出が困難となり、加工能率が低下することが問題となっている。これに対して、放電加工中の電極をジャンプ移動させ、当該電極と被加工材との間隙に加工液を供給することで加工屑を排出させる方法が知られているが、加工深さが大き過ぎる場合は加工屑が排出されず、当該加工屑を介した二次放電による集中放電によって加工面にマイクロクラックが発生する等、加工速度及び加工精度が低下する。
これに対し、例えば、特許文献1(特開2002-307246号公報)においては、「電極とワークとの極間に電圧を印加して前記ワークを放電加工するとともに、前記電極と前記ワークとの極間に発生した加工屑を排出するために前記電極にジャンプ動作を行わせる形彫放電加工方法において、前記電極のジャンプ動作の間、前記電極と前記ワークとの極間に電圧を印加しながら前記電極にジャンプ動作を行わせることを特徴とした形彫放電加工方法。」が提案されている。
上記特許文献1の形彫放電加工方法においては、「ジャンプ動作中も極間に対する電圧の印加を休止させずに、ジャンプ動作中に放電により発生する加工液の気化ガスによる加工間隙からの加工屑排出作用により極間に適正な絶縁状態を維持して放電加工を効率よく行い、形彫放電加工に要する加工時間全体を短縮させることができる」とされている。
また、特許文献2(特開平8-118149号公報)においては、「工具電極と被加工物とをサーボ制御により相対移動させつつ前記被加工物を放電加工すると共に前記工具電極と前記被加工物の相対移動による前記工具電極のジャンプにより前記工具電極と前記被加工物との間隙に滞留する加工屑等の生成物を排出するようにした放電加工方法において、前記工具電極と前記被加工物とが相対的に離れる際には、前記工具電極を、前記被加工物の加工底面及び加工側面の相方に対して離れるように第1の中間位置まで相対移動させた後に前記被加工物の加工底面に対して実質的に垂直方向に離れるように最上昇位置まで相対移動させ、前記工具電極と前記被加工物とが相対的に接近する際には、前記工具電極を、被加工物の加工底面及び加工側面の相方に対して接近するように第2の中間位置まで相対移動させた後に前記被加工物の加工底面に対して実質的に垂直方向に接近させてもとの開離開始位置に復帰するように相対移動させることを特徴とする放電加工方法。」が提案されている。
上記特許文献2に記載の放電加工方法においては、「工具電極が開離する時には、工具電極を被加工物から離しながら上げるので、特に加工側面に滞留するタール状付着物を排除して低減でき、また、工具電極が接近する時には、工具電極を先に加工側面に接近させた後に垂直方向に降ろすようにしているので、工具電極が加工深部に位置した時、すなわち加工直前においては工具電極のしなりが取れた状態となっている。従って、両者の相乗作用により加工側面の深部の仕上がり状態を大幅に改善することが可能となる。」とされている。
更に、特許文献3(国際公開第2007/026930号)においては、「少なくとも1枚以上の表面に微細な溝が形成された金属板を含む、複数の金属板を積層した金属積層体を接合して得られた金属体を、加工して製造した工具電極で、内部に加工液の流路を形成し、表面に複数の微細な加工液の噴出口を設けたことを特徴とする放電加工用電極。」が提案されている。
上記特許文献3に記載の放電加工用電極においては、「内部に複数の微細な加工液の流路を形成した工具電極を作製すれば、その流路口より、加工液を少量ずつでも多数の箇所から噴出でき、加工屑の排出だけでなく、加工液の噴出口が微細なので、工作物に噴出口が転写することなく、高精度で加工が行われる。」とされている。
特開2002-307246号公報 特開平8-118149号公報 国際公開第2007/026930号
上記特許文献1に記載の形彫放電加工方法においては、ジャンプ動作中も極間に対する電圧の印加を休止させないことで形彫放電加工に要する加工時間全体を短縮させることができるが、加工深さの増加に伴う加工屑の残留を抑制することはできず、アスペクト比の高い深溝の放電加工において、十分な加工速度及び加工精度を得ることができない。
また、上記特許文献2に記載の放電加工方法においても、加工深さの増加に伴う加工屑の残留を抑制することはできず、アスペクト比の高い深溝の放電加工において、十分な加工速度及び加工精度を得ることができない。
上記特許文献3に記載の放電加工用電極は、加工液の噴出によって加工屑を排出でき、工作物への噴出口の転写も抑制することができるが、微細な溝が形成された金属板を積層し、拡散接合、ロウ付け、または耐熱接着剤によって接合されたものであり、複雑な電極形状及び流路形状を付与することが難しい。加えて、放電加工用電極は消耗品であるところ、得られる放電加工用電極は製造プロセスに起因して高価となり、広く産業適用することが困難である。更に、アスペクト比の高い深溝の放電加工において、加工速度及び加工精度が十分であるとは言い難い。
以上のような従来技術における問題点に鑑み、本発明の目的は、アスペクト比の高い深溝の放電加工においても高い加工速度及び加工精度を得ることができる形彫り放電加工方法、及び当該形彫り放電加工方法に好適に用いることができる安価な放電加工用電極、並びその簡便かつ高効率加工が可能な放電加工装置を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成すべく、放電加工方法及び放電加工用電極並びに放電加工装置について鋭意研究を重ねた結果、放電加工用電極に設けられた加工液噴流穴から加工液を噴流させながら放電加工を施し、当該放電加工による除去体積の増加に応じて噴流の流量及び/又は流速を調整すること等が極めて有効であることを見出し、本発明に到達した。
即ち、本発明は、
加工液を噴流させて加工屑を除去する形彫り放電加工方法であって、
加工液噴流用経路及び加工液噴流穴をそれぞれ少なくとも1つ以上有する放電加工用電極を用い、
前記加工液噴流穴から前記加工液を噴流させながら放電加工を施し、
前記放電加工による除去体積の増加に応じて前記噴流の流量及び/又は流速を調整すること、
を特徴とする形彫り放電加工方法、を提供する。
本発明の形彫り放電加工方法においては、放電加工用電極の加工液噴流穴から加工液を噴流させながら放電加工を施すことで、アスペクト比の高い深溝の放電加工を施す場合であっても加工屑を効率的に排出することができる。その結果、放電加工中に放電加工用電極のジャンプ動作を施すことなく、加工屑を排出することができる。
加えて、放電加工による除去体積の増加に応じて前記噴流の流量及び/又は流速を調整することで、加工屑の排出効果を最適化することができる。例えば、放電加工による除去体積の増加に応じて噴流の流量及び/又は流速を増加させることで、加工深さの増加等、放電加工による除去体積が増加した場合であっても、加工屑の排出効果を維持することができる。ここで、放電加工の開始時は加工液を噴流させず、放電加工が進行した後、加工屑によって放電加工が不安定になる前に噴流を開始することが好ましい。噴流を開始するタイミングは被接合材の材質や放電加工形状等によって適宜調整すればよいが、例えば、深穴加工を施す場合は加工深さが3~5mmになった段階で噴流を開始すればよい。また、噴流の流量及び/又は流速は増加だけではなく、停止やON-OFFのようなパルス的及び間欠的な噴流法、または一時的に減少させる制御法でもよい。
ここで、本発明の形彫り放電加工方法においては、加工液噴流穴の出口の面積を0.0019~0.07mmとすることが好ましい。なお、加工液噴流穴の出口の面積とは、加工液噴流穴1つの面積を意味している。当該面積を0.0019mm以上とすることで十分な量の加工液を円滑に噴出させることができると共に、金属粉末積層造形法により放電加工用電極を作製した際に発生する未焼結金属粒子を排出することもできる。また、加工液噴流穴の出口の面積を0.07mm以下とすることで、加工深さの増加に伴う加工速度の低下を抑制することができる。加工液噴流穴の出口の面積を0.07mm以下とすることで加工速度の低下が効果的に抑制される機構は必ずしも明らかになっていないが、加工液噴流穴の出口の面積と加工速度の関係について鋭意研究を重ねた結果、加工深さが増加した場合であっても高い加工速度を得るためには、加工液噴流穴の出口の面積を0.0019~0.07mmとする必要があることが明らかとなった。例えば、加工液噴流穴の面積が0.20mmの場合、加工深さが5mm以上になると加工速度が顕著に低下する。これに対し、加工液噴流穴の面積を0.07mm以下とすることで、加工深さが20mmに達しても一定の加工速度を維持することができる。ここで、加工液噴流穴の出口を円形とする場合、当該出口の直径が0.05mmの場合が0.0019mm、直径が0.3mmの場合が0.07mm、0.5mmの場合が0.20mmに対応する。
本発明の形彫り放電加工方法においては、銅又は銅合金の金属粉末積層造形体からなる前記放電加工用電極を用いること、が好ましい。金属粉末積層造形体を用いることで、放電加工用電極の任意の位置に、任意の形状及び大きさの加工液噴流用経路及び加工液噴流穴を設けることができる。より具体的には、例えば、放電加工用電極が細長い場合や複雑形状を有している場合、機械加工等で加工液噴流用経路及び加工液噴流穴を形成することはできないが、金属粉末積層造形法を用いることで任意の形状及び大きさの加工液噴流用経路及び加工液噴流穴を任意の場所に設けることができる。ここで、放電加工用電極は金属粉末積層造形体からなっていればよく、金属粉末積層造形法で得られた放電加工用電極に切削加工を施してもよい。例えば、加工液噴流用経路は金属粉末積層造形時に形成し、加工液噴流穴は切削加工、放電加工及びレーザ加工等で形成させてもよい。
また、本発明の形彫り放電加工方法においては、前記加工液に水を用いること、が好ましい。加工液に用いる水は、温度が0℃~100℃水道水や水溶性加工液でもよく、イオン交換樹脂や純水製造用の各種フィルターを通過させた比抵抗値が10.0MΩ・cm以上の純水、18.0MΩ・cm以上の超純水が好適である。加工液噴流用経路及び加工液噴流穴を備えていない従来一般的な放電加工用電極を用いて、加工液に水を用いる場合、工作物を水に浸漬させて加工する必要がある。当該状況においては電解作用が工作物全体に作用し、加工面精度が低下することが問題となる。これに対し、加工液噴流用経路及び加工液噴流穴を備えた放電加工用電極を用いる場合、加工点近傍のみに加工液である水を供給できるため、工作物全体を水に浸漬させる必要がなく、電解作用の範囲を限定することができる。加えて、通常の灯油系加工油を用いる場合と比較して、作業環境を改善することができると共に、深夜の無人運転も可能となり、生産効率を大幅に向上させることができる。
また、加工液に水を用いることで、灯油系加工油を用いた場合と比較して、加工面粗さを低減することができる。水中で放電加工を施すことで単発放電痕除去体積が小さくなり、加工速度は低下するが、良好な加工面が得られるものと考えられる。
また、本発明の形彫り放電加工方法においては、前記加工液を鉛直上向きに噴流させること、が好ましい。加工液噴流用経路及び加工液噴流穴を備えた放電加工用電極を用いることで、任意の位置から加工液を供給することができるため、天地逆にした放電加工が可能となる。より具体的には、加工液噴流用経路及び加工液噴流穴を備えない従来一般的な放電加工用電極を用いて鉛直上向きの放電加工を施した場合、加工領域に気泡が滞留し、放電加工用電極をジャンプ動作させても当該気泡を除去することができず、良好な放電状態を得ることができない。これに対して、加工液を鉛直上向きに噴流させることで加工領域から気泡が除去されることに加え、加工屑は自重によって落下することから速やかに排除される。また、加工液を常に加工点(極間)へ確実に供給することができ、放電加工が安定する。その結果、高い加工速度及び加工精度を得ることができる。
加工液を鉛直上向きに噴流させる場合、得られる作用効果は、加工屑の比重が大きくなる材料についてより顕著になる。当該観点から、被加工材は超硬合金とすることが好ましい。
更に、本発明の形彫り放電加工方法においては、前記放電加工用電極に前記加工液噴流用経路及び前記加工液噴流穴をそれぞれ少なくとも2つ以上設け、前記各加工液噴流穴から噴流させる前記加工液の流速及び/又は流量をそれぞれ個別に制御すること、が好ましい。加工液の供給ポートを分割することで、加工深さに応じて加工液の噴流タイミングを変化させることができる。その結果、加工深さに応じた最適な噴流制御が可能となる。加えて、噴流した加工液の極間内での滞留を抑制するために、供給ポートのON・OFF制御をすることができる。
また、本発明は、
本発明の形彫り放電加工方法に用いる放電加工用電極であって、
銅又は銅合金の金属粉末積層造形体からなり、
加工液噴流用経路及び加工液噴流穴をそれぞれ少なくとも1つ以上有し、
前記加工液噴流穴の出口の面積が0.0019~0.07mmであること、
を特徴とする放電加工用電極、も提供する。
本発明の放電加工用電極は銅又は銅合金の金属粉末積層造形体からなっており、放電加工用電極の任意の位置に、任意の形状及び大きさの加工液噴流用経路及び加工液噴流穴を設けることができる。加工液噴流穴に関して、出口の面積を0.0019~0.07mmとすること以外は本発明の効果を損なわない限りにおいて特に限定されず、加工液噴流穴の数、位置、形状等は放電加工用電極の形状及び大きさや被加工材の種類等に応じて適宜決定すればよい。放電加工用電極の表面における加工液噴流穴の形状は略円形であることが好ましいが、楕円形や多角形であってもよい。また、加工液噴流用経路の位置、形状及び大きさについても、本発明の効果を損なわない限りにおいて特に限定されず、放電加工用電極の形状及び大きさや被加工材の種類等に応じて適宜決定すればよい。更に、放電加工用電極の形状及び大きさについても、本発明の効果を損なわない限りにおいて特に限定されず、被加工材の形状や材質等に応じて適宜決定すればよい。
ここで、本発明の放電加工用電極は金属粉末積層造形法で製造されており、形状やサイズを自在に設定できることから、深溝加工用の放電加工用電極とすることが好ましい。より具体的には、突出し部のアスペクト比を3~200とすることが好ましく、10~100とすることがより好ましく、20~50とすることが最も好ましい。
また、本発明の放電加工用電極においては、レーザフラッシュ法(JIS H 7801準拠)で計測した20℃における熱伝導率が80~398W/m・Kであること、が好ましい。放電加工用電極の熱伝導率を高くすることで、加工速度を向上させることができることに加え、放電による電極の消耗量を抑制することができるが、一般的な銅の熱伝導率である398W/m・Kがその上限値となる。一方で、熱伝導率を80W/m・K以上とすることで、実用に耐え得る寿命の放電加工用電極とすることができる。
また、本発明の放電加工用電極においては、前記銅合金がCu-Cr合金であること、が好ましい。Cu-Cr合金は純銅と比較してレーザの吸収率が高く、金属粉末積層造形法を用いて緻密な造形物を得ることができる。加えて、金属粉末積層造形法で得られた造形物に80W/m・K以上の熱伝導率を発現させることができる。
また、本発明の放電加工用電極においては、前記加工液噴流用経路に相対密度が98%以下のポーラス領域を含むこと、が好ましい。金属粉末積層造形法では任意の領域に相対密度が98%以下のポーラス領域を形成させることができ、当該ポーラス領域を加工液噴流用経路として用いることができる。なお、加工液噴流用経路として用いるポーラス領域の相対密度の下限値は特に限定されない。
また、本発明の放電加工用電極においては、前記加工液噴流用経路内のポーラス領域は連続する空隙を含み、前記加工液噴流用経路の全体積に対する前記空隙の体積率が0.2~100%であること、が好ましい。金属粉末積層造形法では任意の領域に空隙を形成させることもでき、当該空隙を連続させることで加工液噴流用経路として用いることができる。空隙を形成する構造は、ラティス構造等の金属粉末積層造形体に特有の構造で形成することが可能である。また、放電加工用電極の機械的強度や加工液の流体特性(流量及び流速等)に応じて、空隙の構造を自由に設定することが可能である。
また、本発明の放電加工用電極においては、被加工材に対向させる電極角部又は電極加工面全体に金属被覆層を有し、前記金属被覆層にCr、Ag、W及びMoのうちの少なくとも1つを含有すること、が好ましい。融点が高いCr、Ag、W及びMoを含有する金属皮膜層を形成させることで、放電加工用電極を長寿命化させることができ、特に超硬合金材の放電加工に好適に用いることができる。また、金属粉末積層造形法を用いて、放電加工によって消耗した部分に銅及び銅合金又は融点又は熱伝導率が高いCr、Ag、W及びMoを含有する銅合金を被覆することによって、放電加工用電極を再生及び低消耗化することができる。
また、本発明の放電加工用電極においては、前記加工液噴流用経路及び前記加工液噴流穴をそれぞれ少なくとも2つ以上有していること、が好ましい。複数の加工液噴流用経路及び加工液噴流穴を設けることで、複数の供給ポートを用いて加工液を噴流させることができる。その結果、加工深さに応じて加工液の噴流タイミングを変化させることができ、加工深さに応じた最適な噴流制御が可能となる。加えて、噴流した加工液の極間内での滞留を抑制するために、供給ポートのON・OFF制御をすることができる。
更に、本発明の放電加工用電極においては、前記放電加工用電極に冷媒を供給する冷媒供給用経路を少なくとも1つ以上有していること、が好ましい。放電加工用電極が冷媒供給用経路を有していることで、放電加工中の放電加工用電極の温度上昇を効果的に抑制することができる。
更に、本発明は、
本発明の形彫り放電加工方法に用いる放電加工装置であって、
放電加工用電極の内部に形成された加工液噴流用経路に加工液を供給する加工液供給用ポンプを備えること、
を特徴とする放電加工装置、も提供する。
本発明の放電加工装置は放電加工用電極の内部に形成された加工液噴流用経路に加工液を供給する加工液供給用ポンプを備えており、本発明の放電加工方法に好適に用いることができる。放電加工中に数十μmの極間に加工液を供給するためのポンプは、背圧が高い状態でも、一定流量で加工液を供給する必要がある。また、放電状態を不安定にするため、脈動は少ない方が好ましい。これらの要求を具備するポンプとしてはプランジャポンプやギヤポンプを挙げることができ、本発明の放電加工装置に好適に用いることができる。
本発明の放電加工装置においては、前記加工液供給用ポンプを2つ以上備えること、が好ましい。2つ以上の加工液供給用ポンプを備えることで、複数の供給ポートを用いて加工液を噴流させることができる。その結果、加工深さに応じて加工液の噴流タイミングを変化させることができ、加工深さに応じた最適な噴流制御が可能となる。加えて、噴流した加工液の極間内での滞留を抑制するために、供給ポートのON・OFF制御をすることができる。
また、本発明の放電加工装置においては、加工屑を吸引する加工屑吸引用ポンプを備えること、が好ましい。加工屑吸引用ポンプで加工屑を吸引することで、より確実に高い加工速度及び加工精度を得ることができる。加えて、放電で発生する気泡も吸引することで絶縁回復速度が高くなる。その結果、放電発生頻度が高くなり、加工速度を向上させることができる。
更に、本発明の放電加工装置においては、冷媒を冷媒供給用経路に供給する冷媒供給用ポンプを備えること、が好ましい。放電加工装置が冷媒供給用ポンプを備えていることで、冷媒供給用経路を有する放電加工用電極に冷媒を供給し、放電加工中における当該放電加工用電極の温度上昇を抑制することができる。なお、冷媒は本発明の効果を損なわない限りにおいて特に限定されず、従来公知の種々の冷媒を用いることができる。
本発明によれば、アスペクト比の高い深溝の放電加工においても高い加工速度及び加工精度を得ることができる形彫り放電加工方法、及び当該形彫り放電加工方法に好適に用いることができる安価な放電加工用電極、並びにその簡便かつ高効率加工が可能な放電加工装置を提供することができる。
本発明の放電加工方法の一態様を示す模式図である。 従来一般的な放電加工方法の模式図である。 加工液に水を用いる場合の本発明の放電加工方法の好適な実施態様の模式図である。 加工屑が重い場合の本発明の放電加工方法の好適な実施態様の模式図である。 総型電極を用いる場合の本発明の放電加工方法の好適な実施態様の模式図である。 本発明の放電加工用電極6の一態様を示す模式図である。 放電加工用電極6の先端部の拡大図である。 実施例1で製造した放電加工用電極の形状及びサイズを示す概略図である。 実施例1で製造した放電加工用電極(加工液噴流穴直径:0.30mm)の外観写真である。 実施例1で製造した放電加工用電極(加工液噴流穴直径:0.30mm)の端部に形成された加工液噴流穴直径の外観写真である。 実施例1における加工深さと噴流流量の関係を示すグラフである。 実施例1において本発明の放電加工方法で得られた加工面のマクロ写真及びSEM像である。 実施例1において比較放電加工用電極で得られた加工面のマクロ写真及びSEM像である。 実施例1で得られた加工液噴流穴直径と加工速度の関係を示すグラフである。 実施例2で得られた加工ギャップを示すグラフである。 実施例2において超純水で得られた加工面及びその断面曲線である。 実施例2において灯油系加工油で得られた加工面及びその断面曲線である。
以下、図を参照しながら、本発明の放電加工方法及び放電加工用電極並びに放電加工装置の代表的な実施形態を詳細に説明する。但し、本発明は図示されるものに限られるものではなく、各図面は本発明を概念的に説明するためのものであるから、理解容易のために必要に応じて比や数を誇張又は簡略化して表している場合もある。更に、以下の説明では、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略することもある。
1.放電加工方法
図1は本発明の放電加工方法の一態様を示す模式図である。また、比較として、従来一般的な放電加工方法の模式図を図2に示す。図1及び図2においてはアスペクト比の高い深穴の放電加工を施す場合について示しており、工作物(被加工材)2を加工液4に浸漬し、放電加工用電極6は細長い先端部形状を有している。加工液4には放電加工油や水(純水)を用いることができる。
図1に示す本発明の放電加工方法で使用する放電加工用電極6は加工液噴流用経路8及び加工液噴流穴10を有している。加工液噴流用経路8に沿って供給された加工液を加工液噴流穴10から噴流させながら放電加工を施すことで、放電加工領域に滞留する加工屑12を効率的に排出することができる。
ここで、本発明の放電加工方法の最大の特徴は、放電加工による除去体積の増加に応じて噴流の流量及び/又は流速を調整することで、加工深さの増加等、放電加工による除去体積が増加した場合であっても、加工屑12の排出効果を維持することにある。ここで、放電加工による除去体積の増加に応じて、噴流の流量及び/又は流速は増加させることが好ましい。また、放電加工の開始時は加工液を噴流させず、放電加工が進行した後、加工屑12によって放電加工が不安定になる前に噴流を開始することが好ましい。放電加工の開始時は放電状態に悪影響を及ぼす加工屑12が殆ど生成していないだけでなく、噴流のタイミングが早過ぎる場合、逆に放電状態が不安定になる虞がある。噴流を開始するタイミングは工作物2の材質や放電加工形状等によって適宜調整すればよいが、例えば、深穴加工を施す場合は加工深さが3~5mmになった段階で噴流を開始すればよい。また、噴流は増加だけではなく、停止やON-OFFのようなパルス的な噴流法、または一時的に増減させてもよい。
ここで、加工液噴流穴10の出口の面積は0.0019~0.07mmとすることが好ましい。当該面積を0.0019mm以上とすることで十分な量の加工液を円滑に噴流させることができ、0.07mm以下とすることで加工深さの増加に伴う加工速度の低下を抑制することができる。加工液噴流穴10の穴1つあたりの、好ましい面積は0.0019~0.1256mmであり、より好ましい面積は0.0078~0.07mmであり、最も好ましい面積は0.017~0.049mmである。また、加工液噴流穴10の出口を円形状とした場合、当該直径を0.05mm以上とすることで十分な量の加工液を円滑に噴流させることができ、0.30mm以下とすることで加工深さの増加に伴う加工速度の低下を抑制することができる。加工液噴流穴10の好ましい直径は0.02~0.4mmであり、より好ましい直径は0.10~0.30mmであり、最も好ましい直径は0.15~0.25mmである。
加工液噴流穴10から噴流させる加工液の流量は加工部の深さ、工作物2の材質、加工屑12の形状、大きさ及び量等に応じて適宜調整すればよい。例えば、加工部が深く、工作物2の比重が大きく、大きな加工屑12が大量に発生する場合は、流量を増加させることが好ましいが、穴1つあたりの流量として、少なくとも1ml/min以上の流量とすることが好ましい。一方で、加工液の流量が大きくなり過ぎると短絡の発生及び当該短絡に起因する電極の後退が頻繁に繰り返されるため、加工速度の低下及び電極消耗の増加が生じる。当該観点から、加工液の流量の上限値は50ml/min以下とすることが好ましい。より好ましい加工液流量は1~20ml/minであり、最も好ましい加工液流量は2~8ml/minである。
放電電流、開放電圧及び放電持続時間等の放電加工条件は本発明の効果を損なわない限りにおいて特に限定されず、従来公知の放電加工条件を用いることができる。
一方で、図2に示す従来の放電加工方法においては、放電加工用電極6を上下にジャンプ動作させることで加工屑12の除去が試みられる場合があるが、加工深さが増加すると加工屑12の残留を抑制することはできず、アスペクト比の高い深溝の放電加工において、十分な加工速度及び加工精度を得ることができない。
本発明の放電加工方法において、加工液に水を用いる場合の好適な実施態様の模式図を図3に示す。加工液に水を用いる場合、工作物2を水に浸漬させることなく、加工液噴流穴10から噴流させる水の掛け流しによって放電加工を施すことができる。工作物2を水に浸漬させて放電加工を施す場合、電解作用が工作物2の全体に作用し、加工面精度が低下することが問題となる。これに対し、加工液噴流穴10から噴流させる水の掛け流しによって放電加工を施すことで、加工点近傍のみに加工液である水を供給できるため、電解作用の範囲を限定することができる。加えて、通常の灯油系加工油を用いる場合と比較して作業環境の改善及び深夜の無人運転による生産効率の向上を達成することができる。
また、加工液に水を用いることで、灯油系加工油を用いた場合と比較して、加工面粗さを低減することができる。水中で放電加工を施すことで単発放電痕除去体積が小さくなり、加工速度は低下するが、良好な加工面が得られるものと考えられる。
本発明の放電加工方法において、加工屑が重い場合に好適な実施態様の模式図を図4に示す。加工液噴流用経路8及び加工液噴流穴10を備えた放電加工用電極6を用いることで、任意の位置から加工液を供給することができるため、天地逆にした放電加工が可能となる。より具体的には、加工液噴流用経路8及び加工液噴流穴10を備えない従来一般的な放電加工用電極を用いて鉛直上向きの放電加工を施した場合、加工領域に気泡が滞留し、放電加工用電極をジャンプ動作させても当該気泡を除去することができず、良好な放電状態を得ることができない。これに対して、加工液を鉛直上向きに噴流させることで加工領域から気泡が除去されることに加え、加工屑12は自重によって落下することから速やかに排除される。その結果、高い加工速度及び加工精度を得ることができる。
加工液を鉛直上向きに噴流させる場合、得られる作用効果は、加工屑12の比重が大きくなる材料についてより顕著になる。当該観点から、工作物2は超硬合金とすることが好ましい。
本発明の放電加工方法において、総型電極を用いる場合に好適な実施態様の模式図を図5に示す。放電加工用電極6に少なくとも2つ以上の加工液噴流用経路8を設け、複数の供給ポート(図5のA~E)で加工液を噴流させることが好ましい。加工液の供給ポートを分割することで、加工深さに応じて加工液の噴流タイミングを変化させることができる。その結果、加工深さに応じた最適な噴流制御が可能となる。加えて、噴流した加工液の極間内での滞留を抑制するために、供給ポートのON・OFF制御をすることができる。
また、本発明の放電加工方法においては、電極を取り付ける際の周辺機器との干渉など考慮する必要なく、自由に加工液の供給ポート位置を決定することができる。ここで、加工液噴流用経路は直線である必要はなく、曲線や斜めスパイラル状に設けることができる。
図5においては、加工液噴流用経路8のうちの何れか1つに出口の面積が0.0019~0.07mmの加工液噴流穴10が設けられていればよいが、加工深さが最も大きくなる位置に対応する加工液噴流用経路8に出口の面積が0.0019~0.07mmの加工液噴流穴10を設けることが好ましく、全ての加工液噴流用経路8に出口の面積が0.0019~0.07mmの加工液噴流穴10を設けることが最も好ましい。
2.放電加工用電極
図6は本発明の放電加工用電極6の一態様を示す模式図である。放電加工用電極6は銅又は銅合金の金属粉末積層造形体からなり、加工液噴流用経路8及び加工液噴流穴10を有し、加工液噴流穴10の出口の面積が0.0019~0.07mmとなっている。
放電加工用電極6の先端部の拡大図を図7に示す。放電加工用電極6は銅又は銅合金の金属粉末積層造形体からなっており、放電加工用電極6の任意の位置に、任意の形状及び大きさの加工液噴流用経路8及び加工液噴流穴10を設けることができる。加工液噴流用経路8の先端に複数の加工液噴流穴10が設けられている。加工液噴流穴10に関して、出口の面積を0.0019~0.07mmとすること以外は本発明の効果を損なわない限りにおいて特に限定されず、加工液噴流穴10の数、位置、形状等は放電加工用電極6の形状及び大きさや工作物2の種類等に応じて適宜決定すればよい。放電加工用電極6の表面における加工液噴流穴10の形状は略円形であることが好ましいが、楕円形や多角形であってもよい。また、加工液噴流用経路8の位置、形状及び大きさについても、本発明の効果を損なわない限りにおいて特に限定されず、放電加工用電極6の形状及び大きさや工作物2の種類等に応じて適宜決定すればよい。なお、0.0019~0.07mmは、1つの加工液噴流穴10に関する値である。
また、放電加工用電極6の形状及び大きさについても、本発明の効果を損なわない限りにおいて特に限定されず、工作物2の形状や材質等に応じて適宜決定すればよいが、放電加工用電極6は金属粉末積層造形法で製造されており、形状やサイズを自在に設定できることから、深溝加工用の放電加工用電極とすることが好ましい。より具体的には、突出し部のアスペクト比を3~200とすることが好ましく、10~100とすることがより好ましく、20~50とすることが最も好ましい。
放電加工用電極6は、20℃における熱伝導率が80~398W/m・Kであることが好ましい。放電加工用電極6の熱伝導率を高くすることで、加工速度の向上及び放電による電極の消耗量の抑制を実現することができるが、一般的な銅の熱伝導率である398W/m・Kがその上限値となる。一方で、熱伝導率を80W/m・K以上とすることで、実用に耐え得る寿命の放電加工用電極6とすることができる。より好ましい熱伝導率の下限値は200W/m・Kであり、最も好ましい熱伝導率の下限値は300W/m・Kである。
金属粉末積層造形法で放電加工用電極6を製造する場合、得られる放電加工用電極6に反り等が発生することが懸念されるが、熱伝導率が高い銅系粉末を原料として金属粉末積層造形法を施すことによって、造形物内部への熱応力の蓄積によるひずみが低減され、放電加工用電極6に高い寸法精度を付与することができる。
放電加工用電極6においては、Cu-Cr合金であることが好ましい。Cu-Cr合金は純銅と比較してレーザの吸収率が高く、金属粉末積層造形法を用いて緻密な造形物を得ることができる。加えて、金属粉末積層造形法で得られた造形物に80W/m・K以上の熱伝導率を発現させることができる。更に、適当な条件による熱処理により、300W/m・K以上の熱伝導率を付与することができる。より具体的には、Cu-Cr合金を原料とする金属粉末積層造形体に400℃の熱処理を施すことで熱伝導率を150W/m・K以上とすることができ、450℃の熱処理を施すことで熱伝導率を200W/m・K以上とすることができ、500℃の熱処理を施すことで熱伝導率を250W/m・K以上とすることができ、600℃の熱処理を施すことで熱伝導率を300W/m・K以上とすることができる。
放電加工用電極6においては、加工液噴流用経路8に相対密度が98%以下のポーラス領域を含むことが好ましい。金属粉末積層造形法では任意の領域に相対密度が98%以下のポーラス領域を形成させることができ、当該ポーラス領域を加工液噴流用経路8として用いることができる。
放電加工用電極6においては、加工液噴流用経路8に連続する空隙を含み、加工液噴流用経路8の全体積に対する空隙の体積率が0.2~100%であることが好ましい。金属粉末積層造形法では任意の領域に空隙を形成させることもでき、当該空隙を連続させることで加工液噴流用経路8として用いることができる。
放電加工用電極6においては、工作物2に対向させる電極角部(図6の矢印で示す領域)又は電極表面に金属被覆層を有し、当該金属被覆層にCr、Ag、W及びMoのうちの少なくとも1つを含有することが好ましい。融点又は熱伝導率が高いCr、Ag、W及びMoを含有する金属皮膜層を形成させることで、放電加工用電極6を長寿命化させることができ、特に超硬合金材の放電加工に好適に用いることができる。また、表面のみに融点又は熱伝導率が高いCr、Ag、W及びMoを含有する金属皮膜層を形成させることで、安価な放電加工用電極を実現することができる。
放電加工用電極6においては、図5に示されているように、加工液噴流用経路8及び加工液噴流穴10を少なくとも2つ以上有していることが好ましい。複数の加工液噴流用経路8及び加工液噴流穴10を設けることで、複数の供給ポートを用いて加工液を噴流させることができる。その結果、加工深さに応じて加工液の噴流タイミングを変化させることができ、加工深さに応じた最適な噴流制御が可能となる。加えて、噴流した加工液の極間内での滞留を抑制するために、供給ポートのON・OFF制御をすることができる。
更に、放電加工用電極6においては、冷媒を供給する冷媒供給用経路を少なくとも1つ以上有していることが好ましい。放電加工用電極6が冷媒供給用経路を有していることで、放電加工中の放電加工用電極6の温度上昇を効果的に抑制することができる。
本発明の放電加工用電極を用いることで、各種ヒートシンク、アルミダイカスト製品及び複雑な樹脂製品等を成形するための金型のリブ加工や高アスペクト比形状の金型加工を、高能率かつ高精度に放電加工することができる。また、大型部品を成形する金型加工に用いる場合、放電加工用電極内部を中空にすることで放電加工用電極を軽量化することができ、放電加工機の主軸を小型化することができる。
3.放電加工装置
本発明の放電加工装置は、本発明の形彫り放電加工方法に用いる放電加工装置であって、放電加工用電極6の内部に形成された加工液噴流用経路8に加工液を供給する加工液供給用ポンプを備えることを特徴としている。放電加工用電極6の内部に形成された加工液噴流用経路8に加工液を供給する加工液供給用ポンプを備えることで、本発明の放電加工方法に好適に用いることができる。
本発明の放電加工装置においては、加工液供給用ポンプを2つ以上備えることが好ましい。2つ以上の加工液供給用ポンプを備えることで、複数の供給ポートを用いて加工液を噴流させることができる。その結果、加工深さや放電加工の状態(放電発生数や短絡回数など)に応じて本発明の放電加工装置が自律的に加工液の噴流タイミングを変化させることができ、加工深さや放電加工の状態(放電発生数や短絡回数など)に応じた最適な噴流制御が可能となる。加えて、噴流した加工液の極間内での滞留を抑制するために、供給ポートのON・OFF制御をすることができる。
また、本発明の放電加工装置においては、加工屑12を吸引する加工屑吸引用ポンプを備えることが好ましい。加工屑吸引用ポンプで加工屑12を吸引することで、より確実に高い加工速度及び加工精度を得ることができる。
更に、本発明の放電加工装置においては、冷媒を冷媒供給用経路に供給する冷媒供給用ポンプを備えることが好ましい。放電加工装置が冷媒供給用ポンプを備えていることで、冷媒供給用経路を有する放電加工用電極6に冷媒を供給し、放電加工中における放電加工用電極6の温度上昇を抑制することができる。なお、冷媒は本発明の効果を損なわない限りにおいて特に限定されず、従来公知の種々の冷媒を用いることができる。
本発明の放電加工装置においては、隅部や隅R部等の加工屑の排出が困難な箇所に対して、噴流穴の形状(楕円、三角形及び四角形等)や噴流穴の向きを最適化することで、効率的な加工屑の排出とそれによる高能率加工を行うことができる。
また、本発明の放電加工装置においては、加工液の流量及び流速、加工液の供給圧力を加工液噴流用経路毎に放電加工中にリアルタイムで計測することができる計測機能を有していることが好ましい。加えて、得られた計測値に応じて、加工液を供給する加工液供給用ポンプの供給条件及び加工屑を吸引する加工屑吸引用ポンプの吸引条件を自動で最適化するポンプ制御機能を有していることが好ましい。
上記以外の放電加工装置の構成及び仕様等については、本発明の効果を損なわない限りにおいて特に限定されず、従来公知の種々の構成及び仕様とすることができる。
以下、実施例において本発明の放電加工方法及び放電加工用電極並びに放電加工装置について更に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
《実施例1》
ガスアトマイズ法で作製されたCu-1.26mass%Cr合金粉末(平均粒径:24μm、福田金属箔粉工業製)を原料とし、金属粉末積層造形法を用いて図8に示す形状及びサイズの放電加工用電極を製造した。放電加工用電極の中心軸には加工液噴流用経路が形成され、その先端部分には2mm間隔で10個の加工液噴流穴が形成されている。10個の加工液噴流穴の直径は同一とし、出口の直径が0.15mm(面積:0.02mm)、0.30mm(面積:0.07mm)及び0.50mm(面積:0.20mm)の放電加工用電極を製造した。
金属粉末積層造形には出力400W級のYbファイバーレーザ(ビームスポット径:約0.1mm)を搭載したSLM(Selective Laser Melting)装置(EOS製EOSINT M280)を用い、一層(厚さ:0.03mm)毎にレーザの走査方向を67°回転させて造形した。
実際に得られた放電加工用電極(加工液噴流穴直径:0.30mm)の外観写真及び放電加工用電極の端部に形成された加工液噴流穴直径の外観写真を図9及び図10にそれぞれ示す。放電加工用電極にひずみ等は認められず、設計通りの加工液噴流穴が形成されていることが分かる。放電加工用電極の造形ままの熱伝導率を測定したところ、85.7W/m・Kであった。
実験には、600℃で1時間の熱処理条件で熱処理を施すことにより、熱伝導率を332W/m・Kに向上させた、加工液噴流穴の直径が0.30mmの放電加工用電極を用い、工作物をステンレス鋼板(SUS420J2)として放電加工を施した。放電加工装置はSodic AP1Lを用い、極性は放電加工用電極を+、工作物を-とした。また、放電電流:20A、開放電圧:120V、放電持続時間:300μsとし、加工液には放電加工油を用いた。
放電加工中に加工液噴流穴から加工液を噴流させ、加工領域から加工屑を排出した。加工深さと噴流流量の関係を図11に示す。放電加工開始から加工深さが4mmまでは加工液を噴流させず、加工深さが4mmに到達した時点で5ml/minの流量で加工液を噴流させた。その後、放電加工による加工深さの増加(除去体積の増加)に応じて噴流の流量を増加させた。なお、加工屑の排出を目的としたジャンプ動作は行っていない。
各加工深さに到達した加工時間を計測し、加工速度を評価した。得られた結果を表1に示す。表1には、比較として、市販の純銅棒から機械加工で作製した比較放電加工用電極を用いた場合の結果も示している(比較放電加工用電極の熱伝導率:397W/m・K)。比較放電加工用電極は図8に示す形状及び大きさを有しているが、加工液噴流用経路及び加工液噴流穴は形成されておらず、加工液を噴流させることはできない。比較放電加工用電極を用いた場合は、加工屑の排出を目的としてジャンプ動作を行った。
本発明の放電加工方法を用いた場合、電極のジャンプ動作を伴わず、深さ40mmまで安定した加工状態が継続され、比較放電加工用電極の場合と比較して、約2倍の加工速度が得られていることが分かる。
本発明の放電加工方法で得られた加工面及び比較放電加工用電極で得られた加工面の表面を図12及び図13にそれぞれ示す。比較放電加工用電極を用いた場合、溝の底部や側面には集中放電に起因する黒い染み状の痕跡が多数観察され、SEM像からはマイクロクラックが観察される。マイクロクラックが存在する金型を用いて射出成形した場合、クラックが金型内部に進展する。その結果、当該マイクロクラックが成形品に転写されることに加え、金型寿命が短くなることから、当該金型を実際に用いることは困難である。これに対し、本発明の放電加工法を用いた場合、マイクロクラック等のない良好な加工面が得られている。
加工液噴流穴の直径が0.15mm、0.30mm及び0.50mmの放電加工用電極を用い、加工液噴流穴の出口の面積が加工性能に及ぼす影響を調査した。加工液噴流穴の直径が異なること以外は、上記の加工穴が0.30mmの場合と同じ加工条件を用い、各加工時間における加工深さを計測し、加工速度を評価した。得られた結果を図14に示す。
加工液噴流穴の直径が0.50mmの場合、深さ20mmを加工するために約50分を要しているのに対し、当該直径が0.30mm以下の場合は加工時間が約20分であり、加工速度が2.5倍となっている。また、加工液噴流穴の直径が0.30mmの場合と0.15mmの場合を比較すると、加工速度にそれ程大きな差は認められない。これらの結果は、高アスペクト比形状を高能率加工するためには加工液噴流穴の直径が極めて重要であり、当該直径を0.30mm以下とすること(加工液噴流穴の出口の面積を0.07mm以下とすること)が効果的であることを明確に示している。
《実施例2》
加工液に超純水(18.0MΩ・cm)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、放電加工用電極の先端(加工液噴流穴)から加工液を噴流させつつ深溝加工を行った。放電加工用電極は加工液噴流穴の直径が0.30mmのものを用いた。
加工液に超純水を用いた場合についても、マクロ的には加工液に灯油系加工油を用いた場合と同様に、高アスペクト比形状の深溝加工部が得られた。加工後の加工ギャップ(放電加工用電極の表面から加工面までの距離)を測定し、加工液に灯油系加工油を用いた場合(実施例1)との差異を評価した。得られた結果を図15に示す。加工液に超純水を用いた場合の加工ギャップは加工液に灯油系加工油を用いた場合の半分程度の小さな値となっており、超純水を用いることで精密な加工が可能であることが分かる。
超純水で得られた加工面及びその断面曲線を図16に示す。また、灯油系加工油で得られた加工面及びその断面曲線を図17に示す。各加工面及び断面曲線を比較すると、加工液に超純水を用いた場合において表面粗さがより小さくなっており、良好な加工面が得られていることが分かる。
《実施例3》
金属粉末積層造形法で得られた放電加工用電極に熱処理を施し、放電加工の開放電圧を93Vとし、外径φ20 mm、内径φ5 mmの円筒形状の電極を取付け、中心部の穴(φ5 mm)から加工液を噴流させながら放電加工を行った。また、造形まま(熱処理なし)の放電加工用電極及び比較放電加工用電極についても同一の円筒形状及び放電加工条件で評価した。
熱処理条件は600℃で1時間とし、熱処理後の放電加工用電極の熱伝導率を測定したところ、332W/m・Kであった。また、造形まま(熱処理なし)の放電加工用電極の熱伝導率は85.7W/m・K、比較放電加工用電極の熱伝導率は397W/m・Kである。
熱処理を施した放電加工用電極、造形まま(熱処理なし)の放電加工用電極及び比較放電加工用電極を用いた場合について、放電持続時間と加工速度の関係を表2に示す。純銅電極である比較放電加工用電極では、放電持続時間の増加に伴い加工速度が上昇する傾向が認められる。これに対して、熱処理前の放電加工用電極を用いた場合は純銅電極と比較して加工速度が低くなっているが、金属粉末積層造形体からなる放電加工用電極に熱処理を施すことにより、純銅電極と同程度の加工速度が得られている。
熱処理を施した放電加工用電極、造形まま(熱処理なし)の放電加工用電極及び比較放電加工用電極を用いた場合について、放電持続時間と電極消耗率の関係を表3に示す。熱処理前の放電加工用電極の消耗率は純銅電極と比較して高くなっているが、金属粉末積層造形体からなる放電加工用電極に熱処理を施すことにより、純銅電極と同程度の消耗率となっている。
2・・・工作物、
4・・・加工液、
6・・・放電加工用電極、
8・・・加工液噴流用経路、
10・・・加工液噴流穴、
12・・・加工屑、
20・・・突出し部。

Claims (18)

  1. 加工液を噴流させて加工屑を除去する形彫り放電加工方法であって、
    加工液噴流用経路及び加工液噴流穴をそれぞれ少なくとも1つ以上有する放電加工用電極を用い、
    前記加工液噴流穴から前記加工液を噴流させながら放電加工を施し、
    前記放電加工による除去体積の増加に応じて前記噴流の流量及び/又は流速を調整すること、
    を特徴とする形彫り放電加工方法。
  2. 前記加工液噴流穴の出口の面積を0.0019~0.07mmとすること、
    を特徴とする請求項1に記載の形彫り放電加工方法。
  3. 銅又は銅合金の金属粉末積層造形体からなる前記放電加工用電極を用いること、
    を特徴とする請求項1又は2に記載の形彫り放電加工方法。
  4. 前記加工液に水を用いること、
    を特徴とする請求項1又は2に記載の形彫り放電加工方法。
  5. 前記加工液を鉛直上向きに噴流させること、
    を特徴とする請求項1又は2に記載の形彫り放電加工方法。
  6. 前記放電加工用電極に前記加工液噴流用経路及び前記加工液噴流穴をそれぞれ少なくとも2つ以上設け、
    前記各加工液噴流穴から噴流させる前記加工液の流速及び/又は流量をそれぞれ個別に制御すること、
    を特徴とする請求項1又は2に記載の形彫り放電加工方法。
  7. 請求項1又は2に記載の形彫り放電加工方法に用いる放電加工用電極であって、
    銅又は銅合金の金属粉末積層造形体からなり、
    加工液噴流用経路及び加工液噴流穴をそれぞれ少なくとも1つ以上有し、
    前記加工液噴流穴の出口の面積が0.0019~0.07mmであること、
    を特徴とする放電加工用電極。
  8. 20℃における熱伝導率が80~398W/m・Kであること、
    を特徴とする請求項7に記載の放電加工用電極。
  9. 前記銅合金がCu-Cr合金であること、
    を特徴とする請求項7に記載の放電加工用電極。
  10. 前記加工液噴流用経路に相対密度が98%以下のポーラス領域を含むこと、
    を特徴とする請求項7に記載の放電加工用電極。
  11. 前記加工液噴流用経路に連続する空隙を含み、
    前記加工液噴流用経路の全体積に対する前記空隙の体積率が0.2~100%であること、
    を特徴とする請求項7に記載の放電加工用電極。
  12. 被加工材に対向させる電極角部に金属被覆層を有し、
    前記金属被覆層にCr、Ag、W及びMoのうちの少なくとも1つを含有すること、
    を特徴とする請求項7に記載の放電加工用電極。
  13. 前記加工液噴流用経路及び前記加工液噴流穴をそれぞれ少なくとも2つ以上有していること、
    を特徴とする請求項7に記載の放電加工用電極。
  14. 前記放電加工用電極に冷媒を供給する冷媒供給用経路を少なくとも1つ以上有していること、
    を特徴とする請求項7に記載の放電加工用電極。
  15. 請求項1又は2に記載の形彫り放電加工方法に用いる放電加工装置であって、
    放電加工用電極の内部に形成された加工液噴流用経路に加工液を供給する加工液供給用ポンプを備えること、
    を特徴とする放電加工装置。
  16. 前記加工液供給用ポンプを2つ以上備えること、
    を特徴とする請求項15に記載の放電加工装置。
  17. 加工屑を吸引する加工屑吸引用ポンプを備えること、
    を特徴とする請求項15に記載の放電加工装置。
  18. 冷媒を冷媒供給用経路に供給する冷媒供給用ポンプを備えること、
    を特徴とする請求項15に記載の放電加工装置。
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