JP4526325B2 - 電解液ジェット加工方法 - Google Patents

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Description

本発明は、微細な穴加工や溝加工を行なう電解液ジェット加工方法に関する。特に、任意の加工形状を加工する電解液ジェット加工方法に関する。
被加工物に向けて直線状の電解液ジェットを噴出するとともに、ノズルと被加工物との間に所定の電圧を印加して、電解液噴流の直下のみを選択的に加工する電解液ジェット加工方法が知られている。電解加工は、導電性の難切削材の加工が可能であるとともに、放電加工のように加工面に変質層やバリ、クラックなどが形成されたり、残留応力による変形が生じない。また、仕上面質と仕上面粗さが良好である。
電解液ジェット加工方法は、例えば、特許文献1に代表的に開示されるように、以前からよく知られている電解加工方法の1つであるが、精密かつ微細な穴や溝形状を電解加工することは困難であり、専ら局部的な加工面の仕上げ、研磨、切断、孔あけなどに利用されていたようである。最近では、例えば、特許文献2に電解液ジェットによる切断加工方法が開示されている。本発明者らも、非特許文献1,非特許文献2,非特許文献3に示されるように、電解液ジェット加工方法の加工特性に関する基礎的研究を行ない、順次発表している。
実開昭50−156523号公報 特開2001−62632号公報(第4頁−第6頁) 米田康治,国枝正典,「電解液ジェット加工における加工形状シミュレーション」,電気加工学会誌,1996年,第29巻,第63号,p.1−8 夏恒,国枝正典「マイクロ電解液ジェット加工の加工特性」,2004年度精密工学会春季大会学術講演論文集,p.919−920 森靖,国枝正典,「電解液ジェット加工によるチタン表面の着色」,電気加工学会全国大会講演論文集,1997年,p.21−22
微小な内径のノズルが提供されるようになり、また、移動体の位置決め制御がより精密に行えるようになったことから、電解液ジェットでより高精度な加工が行えるようになってきている。そのため、仕上面質と仕上面粗さに優れる電解液ジェットによって微小で精密な金型や部品を高精度に加工することが期待されている。しかしながら、電解液ジェットで微細な任意の加工形状を望ましい加工精度で加工すること、とりわけ数百μm〜数十μm以下のオーダの高精度で加工することは容易ではない。
本発明は、導電性の難切削材に微細な任意の加工形状の加工をより高精度に行なうことができ、仕上面質と仕上面粗さに優れる電解液ジェット加工方法を提供することを目的とする。
本発明の電解液ジェット加工方法は、電解液ジェットノズルを加工電源の陰極に接続し被加工物を上記加工電源の陽極に接続し上記ノズルから直線状の電解液ジェットを上記被加工物に噴射しながら上記ノズルを上記被加工物に対して相対移動させて被加工物に電解加工を行なう電解液ジェット加工方法において、重ね合わせの原理に基づいて所望の輪郭形状と加工深さが得られるように設定された加工条件に従う加工溝を所望の輪郭形状と最深の加工深さから逆算してある設定された加工条件に従う加工溝の溝幅と溝深さがその加工溝と隣接して重なるように形成される同一または異なる加工条件に従う別の加工溝の溝幅と溝深さとちょうど重なって足されるように重ね合わせて形成するように上記ノズルの相対移動軌跡を設定し、上記相対移動軌跡に沿って上記ノズルを走査して所望の加工形状を加工することを特徴とする。
上記電解液ジェット加工方法は、好ましくは、上記加工電源から供給する電流を操作することによって上記所望の加工深さを得るようにする。
また、本発明の別の電解液ジェット加工方法は、電解液ジェットノズルを加工電源の陰極に接続し被加工物を上記加工電源の陽極に接続し上記ノズルから直線状の電解液ジェットを上記被加工物に噴射しながら上記ノズルを上記被加工物に対して相対移動させて被加工物に電解加工を行なう電解液ジェット加工方法において、重ね合わせの原理に基づいて所望の輪郭形状と加工深さが得られるように設定された加工条件に従う加工溝を前記所望の輪郭形状と最深の加工深さから逆算してある設定された加工条件に従う加工溝の溝幅と溝深さがその加工溝と隣接して重なるように形成される同一または異なる加工条件に従う別の加工溝の溝幅と溝深さとちょうど重なって足されるように重ね合わせて形成するように前記ノズルの相対移動軌跡を設定し、前記相対移動軌跡に沿って前記ノズルを走査して所望の加工形状を加工するとともに、所望の加工形状におけるエッジまたはコーナを加工するとき、前記ノズルの穴断面形状を前記所望の加工形状のエッジまたはコーナに相当する形状とし、可能な限り前記ノズルを加工面に近接させるとともに供給する電解液の圧力を高圧としてかつ電流値を変化させずに加工時間を変更制御することによって加工深さを揃えて、上記穴断面形状を転写するようにして所望の加工形状を加工することを特徴とする。
上記電解液ジェット加工方法は、上記ノズルの移動速度を制御して加工時間を操作することによって所望の加工深さを得るようにする。
また、本発明の電解液ジェット加工方法は、好ましくは、電解液ジェットの電解液として不働態化皮膜を形成する硝酸ナトリウム水溶液を使用し上記被加工物の表面に不働態化皮膜を形成しながら上記所望の加工形状を加工することを特徴とする。また、好ましくは、砥粒が混入された電解液ジェットを使用する。
本発明の電解液ジェット加工方法は、設定された加工条件に従う溝幅と溝深さの加工溝を加工することができる。そして、重ね合わせの原理に基づいて加工溝が重なり合うように電解液ジェットノズルを走査して所望の輪郭形状と加工深さを得るように加工するので、設定された加工条件に従う加工溝の精度に依存して予定されたとおりの加工を行えるから、微細な任意の加工形状をより高精度に加工することができる。その結果、加工面質と加工面粗さが要求される微細な精密金型や部品加工をより高精度に行えることができる優れた効果を奏する。
加工電源から供給する電流値を変化させることによって所望の加工深さを得るようにすると、加工時間などの加工深さを調整できる他のパラメータを操作することに比べて制御性に優れているので、より容易に高精度の形状加工が行えることができる効果を奏する。
また、本発明の別の電解液ジェット加工方法は、ノズルの穴断面形状を輪郭形状のエッジまたはコーナに相当する形状にし、可能な限りノズルを加工面に近付けてギャップを狭くするとともに電解液ジェットの圧力を高圧とするので、ノズルの穴断面形状がより誤差が小さく正確に転写され所望の輪郭形状のエッジやコーナをシャープに形成することができる。その結果、加工面質と加工面粗さが要求される微細な精密金型や部品加工をより容易に行えることができる優れた効果を奏する。
上記電解液ジェット加工方法は、供給する電流を変化させずに、加工時間を操作することによって所望の加工深さを得るようにする場合、輪郭形状に比較的影響を与えにくいパラメータを操作して、常に予定された加工精度を得る最適な電流値に従い加工するので、予定された輪郭形状精度のとおりで所望の溝深さに加工溝を形成することができ、より正確に所望の任意の加工形状を加工することができる。
硝酸ナトリウム水溶液は、被加工物の表面に不働態化皮膜を形成しやすい。不働態化皮膜を形成する電解液は、低い電流密度の領域で電解を妨げる作用が生じて、直線状の電解液ジェットの軸中心から離れるほど急激に除去量が減少する。そのため、本発明の電解液ジェット加工方法において、電解液ジェットの電解液として不働態化皮膜を形成しやすい硝酸ナトリウム水溶液を使用することによって、単一の加工溝の断面形状における裾野の部位が狭まって、より正確な加工溝幅が得られる。その結果、さらに高精度の電解液ジェット加工が行える優れた効果を奏する。
電解液に砥粒を混入し、砥粒が混入された電解液ジェットを使用して加工する場合は、砥粒の研磨作用によって仕上面粗さが向上する。特に、不働態化皮膜を形成する電解液ジェットで加工をするときは、砥粒が電解液ジェットの直下のみ不働態化皮膜を除去して電解作用を促進させ、加工形状精度が向上する効果を奏する。
図1に本発明の電解液ジェット加工方法を実施する装置の概略構成を示す。図1の電解液ジェット加工装置は、電解液ジェットノズル1を加工電源である定電流電源装置2の陰極に接続し被加工物3を定電流電源装置2の陽極に接続する。耐圧タンク4に清浄な電解液を貯留し、耐圧タンク4内の電解液は、エアレギュレータ5で圧力調整されるエアコンプレッサ6からの圧縮空気によってジェットノズル1に供給され、所定の液圧の直線状の電解液ジェットが被加工物3の加工面にほぼ垂直に噴射される。
ジェットノズル1は、図示しないコラムに搭載されるX軸移動体とY移動体によって水平2軸方向に移動する。被加工物3は、Z軸移動体7で昇降する加工テーブル8上に取り付けられる。加工テーブル8の周囲にスプラッシュガード9が設置され、ジェットノズル1から噴出した電解液は、加工テーブル8の下側に設けられる液槽10に回収される。図示しない制御装置は、各移動体を同時に位置決め制御し、ジェットノズル1の走査速度を制御する。また、制御装置は、少なくとも定電流電源2から供給される直流電流を設定された電流値に制御し、エアレギュレータ5を調整して電解液ジェットの液圧を制御する。
制御装置に設定される所定の相対移動軌跡と加工条件に従って、ジェットノズル1から直線状の電解液ジェットを被加工物3に噴射しながらジェットノズル1を被加工物3に対して相対移動させて被加工物3に電解加工を行なう。このとき、ジェットノズル1の走査によって加工条件に従う溝幅および溝深さの加工溝が形成される。加工条件を一定にするとともに、ジェットノズル1を走査する相対移動速度を一定にすると、同一溝幅と同一加工深さの加工溝を得ることができる。なお、ジェットノズル1の種類や被加工物3の材質に対応する加工条件は、印加電圧のような電気条件と電解液濃度のようなパラメータを含む。
このとき、ジェットノズル1の加工電源として定電流電源装置2を使用してジェットノズル1と被加工物3とのギャップに合わせて電圧を制御し電流を一定に維持するように構成し、かつ直線状の電解液ジェットを供給していてジェットノズル1の直下以外に浮遊電流が流れないから、ギャップの変化に関わらず、加工形状精度に影響を与えない。一方、電解液中で工具電極と被加工物を浸漬して加工する電解加工方法では、工具電極の直下以外に浮遊電流が流れるために、ギャップの変動で加工深さや加工溝幅が変化する。したがって、実施の形態の電解液ジェット加工方法は、ギャップを一定に維持する必要がなく、より容易に高精度の形状加工を行える利点を有する。
原理的には、ジェットノズル1から噴射される電解液ジェットの電解液柱の幅を間隔とする相対移動軌跡でジェットノズル1を走査して加工を行なうと任意の加工形状を加工できる。ただし、電解液ジェット加工は、加工媒体として液体を使用するので、各加工溝の断面形状を完全に矩形にすることは困難であり、所望の加工深さを得ることが難しい。所望の加工形状が複雑な形状であるときは、相対移動軌跡を設定することそのものが容易ではない。そのため、電解液ジェットの電解液柱の幅の加工溝を単純に並べる発想だけでは、任意の輪郭形状と加工深さを有する所望の加工形状を満足のいく加工形状精度で容易に加工しきれないことが多い。
研究の結果、電解液ジェット加工で重ね合わせの原理が有効であることが見出された。そこで、実施の形態では、重ね合わせの原理に基づいて所望の輪郭形状と加工深さが得られるように設定された加工条件に従う加工溝を重ね合わせて相対移動軌跡を設定し、その相対移動軌跡に沿ってジェットノズル1を被加工物3に対して相対的に走査して所望の加工形状を加工するようにする。重ね合わせの原理によると、ある設定された加工条件に従う加工溝の溝幅と溝深さがその加工溝と隣接して重なるように形成される別の加工溝の溝幅と溝深さとがちょうど重なって足されるようにしてより大きな加工溝が形成される。
図2ないし図4は、実験例を示す。ジェットノズルの内径が0.4mm、被加工物の材質がリン青銅、電解液が20重量%の硝酸ナトリウム水溶液とし、図2に示される幅0.7mm、長さ7.0mm、最深深さ0.03mmの加工溝を表1に示す同一加工条件で複数重なり合うように加工した。具体的には、1本目の加工溝から0.2mmX軸方向にずれた位置に並行するように2本目の加工溝を加工し、順に、3本目の加工溝を2本目から0.1mm、4本目の加工溝を3本目から0.2mmずらすことによって、横1.2mm、縦7.0mm、最深深さ0.08mmの四角形状の穴を加工したものである。このとき、表1の加工条件に従い実際に加工した単一の加工溝の断面形状を測定し、シミュレートして予測した断面形状に基づいてジェットノズルの相対移動軌跡を設定した。図3に示されるような単一の加工溝の測定結果のデータから単純な重ね合わせの原理に基づいて4本の加工溝で最終的に得られる断面形状をシミュレートして予測した形状と実際の加工後の形状を比較したところ、図4に示されるように、加工形状の幅と最深の加工深さの誤差はほとんどないことが確認された。
したがって、所望の加工形状、具体的には、所望の輪郭形状と最深の加工深さから逆算して、重ね合わせの原理に基づいてジェットノズル1の相対移動軌跡を設定する。輪郭形状が角形状、線形上、あるいは円形状の加工穴であれば、同一の加工条件下で外郭側から加工溝を重ね合わせていけばよい。輪郭形状が自由曲線のような場合は、加工条件を変更して部分的に異なる加工溝を形成して重なり合わせ、最終的に所望の加工形状が得られるように、相対移動軌跡を設定する。
任意の加工形状を得るために、重ね合わせの原理に基づいて加工溝を重ね合わせて加工することから、所望の加工形状の加工形状精度は、各加工溝の加工形状精度にほぼ一致する。このことから、所望の加工形状の加工精度を左右するものとして、基本的に、使用するジェットノズルの形状と加工条件が考えられる。したがって、以下に、ジェットノズルと加工条件について、より具体的に説明する。
加工形状精度のみを考えた場合、正確にジェットノズルの穴形状が転写されるとすると、ジェットノズルの内径がエッジやコーナの輪郭形状の精度に反映されると言えるから、ジェットノズルの内径は、小さければ小さいほどよいことになる。電解液ジェット加工で期待されている加工は、加工形状のサイズが小さく優れた仕上面質と仕上面粗さが要求される領域であり、加工形状が数mm以下の微小な領域が含まれる。したがって、ジェットノズルの内径として1mm以下であることが要求される。現状入手可能なジェットノズルの内径から考えて、実施の形態で使用されるジェットノズルの内径は、0.015mm〜1mmが適当である。また、ジェットノズルは、穴径に対して得られる加工溝幅の精度を保証するために、直線状の電解液柱が形成し得る形状であることが好ましい。
加工条件とジェットノズルの穴断面形状の転写精度(以下、単に転写精度という)の関係について、実験の結果、次のことが判明した。
(1)ギャップは可能な限り狭くするとよい。
(2)電流値が小さい値ほど転写精度に優れる。
(3)電解液ジェットの液圧は、可能な限り高くするとよい。
図5は、図6に示す直線状で断面半円形のジェットノズルを用いて、図7から図10に示すように、ギャップ、電解液圧力、電流値を変化させて加工したピットの写真である。被加工物の材質はリン青銅、電解液は20重量%の硝酸ナトリウム水溶液である。図7に示されるように、同一加工条件下でギャップが小さくなるにつれジェットの広がりの影響が少なくなり、ノズルの形状により近い形状が得られる。図8に示されるように、同一加工条件下で耐圧タンクの圧力を高くしていくと、加工深さに殆ど影響がないが、転写精度は向上する。図9および図10に示されるように、電流値を変化させると加工深さが深くなる。一方、加工時間を長くするとピットの加工深さは深くなるが、転写精度に対する影響が電流値を変化させるときよりも小さいことがわかる。
ピットの転写精度は、任意の加工形状を加工するときの加工形状精度と少なからず関係している。したがって、エッジや微小なコーナの形状をより正確に出すために、可能な限りジェットノズルを加工面に近接させギャップを狭くするとともに供給する電解液ジェットの圧力を高圧とする。特に、ジェットノズルの形状を転写するごとく所望の形状のピットを加工したり、ジェットノズルの穴断面形状を所望の穴形状あるいはエッジまたは微小なコーナに相当する形状としてエッジや小さいコーナを加工する場合では、定電流電源装置から供給する電流値を変化させずに、ジェットノズルの相対移動速度を制御するなどして、加工時間を変更制御することによって加工深さを得るようにすることが好ましい。例えば、所望の輪郭形状のエッジ部分でジェットノズルの穴断面形状を転写するようにジェットノズルの方向をその軸中心に回転させて所望の加工形状を加工するとともに、加工時間を調整して加工深さを揃える。
ジェットノズルを一定の相対移動速度で移動させて所望の輪郭形状の加工溝を得る加工では、電流を操作して加工深さを揃えるようにすることが有効である。電流は、加工時間のような加工深さに影響する他のパラメータに比べて制御性に優れているので、より容易かつ精確に加工しやすい。そのため、より容易に高精度に所望の加工深さを得ることができる利点を有する。したがって、精密さより簡単さを重視するときは、電流値を制御して加工深さを調整し、簡単さより精密さを重視するときは、加工時間を制御して加工深さを調整するとよい。
このように、小さい内径のジェットノズルを使用して、より微細な加工溝を形成して重ね合わせていくとよいわけであるが、ジェットノズルの内径が小さければ、単位時間当たりの加工量が少なくなることは、当然のことである。したがって、最終的には、要求される加工形状精度と加工時間とのバランスで微細な加工溝の溝幅と溝深さを考えて相対移動軌跡を設定するとよい。例えば、微細な任意の加工形状ではあるが、大きめの部品であれば比較的大きな内径のジェットノズルでよく、小さな精密部品であれば、比較的小さな内径のジェットノズルを使用する。また、1mm以下の小さい部品を加工するとき、加工精度の許容範囲内であるならば、ジェットノズルの穴形状をそのまま転写するようにピットを形成すればよい。
実施の形態は、重ね合わせの原理に基づいて相対移動軌跡を設定するので、ジェットノズルを交換したり、加工条件を変更調整することによって、異なる加工溝を重ね合わせるようにして所望の加工形状を得るようにすることができる。例えば、ジェットノズルを交換したり加工条件を変更調整しながら複数の加工工程に分けて所望の加工形状を得るようにすることができる。また、エッジやコーナでジェットノズルを交換して直線部分と分けて加工するようにすることができる。あるいは、部分的に大きな内径のジェットノズルで適宜の電解加工をした後に、部分的に加工溝を重ね合わせる加工をするようにできる。加工深さが段階的に変わるような加工形状では、加工条件を変更制御して加工深さを変化させ、その変化に見合うように重ね合わせの相対移動軌跡を設定する。また、電流値を徐々に小さくして加工することによって、加工溝の端の形状を尾を引くように細める加工をすることができる。
ここで、実施の形態では、電解液ジェットの電解液として硝酸ナトリウム水溶液を使用し被加工物の表面に不働態化皮膜を形成しながら所望の加工形状を加工するようにしている。硝酸ナトリウム水溶液は、塩化ナトリウム水溶液などの電解液に比べて被加工物の表面に不働態化皮膜を形成しやすい。不働態化皮膜は、電流密度が低い場合は、電解を妨げる作用がある。したがって、一般に、電解液中に被加工物と電解電極を浸漬して低い電流密度で電解加工する場合は、不働態化皮膜によって加工が妨げられるので不利である。
しかしながら、電解液ジェットの電解液柱の電流密度の差から、不働態化皮膜によって電解液ジェットの電解液柱の軸中心から離れるほど急激に除去量が減少することに着目して、電解液ジェット加工で微細な形状加工を行なう場合に、硝酸ナトリウム水溶液のような不働態化皮膜を形成する電解液を使用して被加工物の表面に不働態化皮膜を形成しながら所望の加工形状を加工することによって高精度に加工溝を形成し、結果として、一層正確に形状加工を行なうことができる。特に、硝酸ナトリウム水溶液を使用する場合、鉄系の被加工物で加工形状精度が著しく向上する結果が得られている。
図11に、硝酸ナトリウム水溶液と塩化ナトリウム水溶液を用いたときの加工溝の断面形状の比較結果を示す。このときの実験条件は、表2のとおりである。図11から、硝酸ナトリウム水溶液を使用した場合は、加工溝の裾野の部位がより狭まって加工形状精度がより優れることがわかる。図12に、被加工物がSK5のときとリン青銅のときとの加工溝の断面形状の比較結果を示す。このときの加工条件は、被加工物の材質を除き表1と同じである。図12に示されるように、どちらも優れた加工形状精度が得られているが、特に、被加工物がSK5のときは、加工溝が一層シャープに形成されていることがわかる。このようなことから、より精密な加工が要求される場合は、電解液として硝酸ナトリウム水溶液を使用することが好ましい。
電解液ジェット加工方法で形状加工を行なう場合、必要に応じて電解液に砥粒を混入して砥粒が混入された電解液ジェットを使用することができる。砥粒が混入された電解液ジェットを使用すると、砥粒の研磨作用によって仕上面粗さが向上することが期待される。特に、不働態化皮膜が形成されるときは、砥粒が衝突することによって不働態皮膜を除去するため、電解液ジェットの直下のみ不働態化皮膜を除去して電解作用を促進させるので、加工形状精度が向上することが期待される。
以上に説明されるように、少なくとも内径が1mm以下の直線状の電解液ジェットを噴射するジェットノズルを使用して、輪郭形状の精度に対する影響が少なく加工深さの異なる加工条件に従い単一の加工溝の加工を行なうようにすると、加工溝の幅はジェットノズルの内径に依存し、加工溝の最深溝深さはエネルギに依存することになり、結果との間にほとんど誤差がないように加工をシミュレートすることができるようになる。したがって、所望の加工形状の加工深さを目標にして所望の輪郭形状が得られるように、重ね合わせの原理に基づいて同一または異なる加工条件に従う複数の加工溝を組み合わせるように相対移動軌跡を設定し、その相対移動軌跡に沿ってジェットノズルを走査することによって、目的の加工を容易に行なうことができる。
図13に任意の形状を加工した実施例の写真を示す。目標の加工形状は、幅0.8mmで最深の加工深さが30μmである。φ0.4mmで穴断面形状が円形のジェットノズルを使用し、被加工物の材質は真鍮、使用した電解液は20重量%の硝酸ナトリウム水溶液である。制御し得る加工条件として、電流値300mA、相対移動速度(走査速度)1.0mm/秒を設定し、加工条件は変更調整せず同一で複数の加工溝を重ね合わせて加工した。相対移動軌跡は、同一のジェットノズルと電解液を使用し、同一の加工条件で真鍮を加工したときに測定された単一の加工溝の加工形状からシミュレートして得ている。図14に、このときの加工形状の断面形状で加工結果を示す。このときの加工時間は、230秒であった。
本発明の電解液ジェット加工方法は、マイクロレンズ用金型やハードディスク用スピンドルの動圧軸受の微細溝などの金型や部品の加工の分野に利用可能性がある。本発明は、電解加工の応用範囲を広め、精密部品の加工における作業性の向上や性能の向上に役立つ。
本発明を実施するための電解液ジェット加工装置の概略の構成を示すブロック図である。 本発明の実施の形態における単一の加工溝の加工例を示す斜視図である。 図2の単一の加工溝の溝形状を示す断面図である。 図2の単一の加工溝を重ね合わせて加工するときに重ね合わせの原理に基づいてシミュレートした予測される溝形状と実際に加工した後の溝形状を比較して示す断面図である。 本発明の実施の形態を示すピットの写真である。 図5で示す加工形状の加工で使用したジェットノズルの穴形状を示す断面図である。 図5の実施の形態で得られたギャップとピットの形状との関係を示すグラフである。 図5の実施の形態で得られた電解液圧力とピットの形状との関係を示すグラフである。 図5の実施の形態で得られた電流とピットの形状との関係を示すグラフである。 図5の実施の形態で得られたある加工時間での電流、ピットの形状、および加工深さとの関係を示すグラフである。 塩化ナトリウム水溶液を使用したときと硝酸ナトリウム水溶液を使用したときとで単一の加工溝の断面形状を比較した結果を示すグラフである。 硝酸ナトリウム水溶液を使用し、被加工物が鋼である場合とりん青銅の場合とで単一の加工溝の断面形状を比較したグラフである。 本発明の実施例を示す写真である。 図11の実施例の加工形状の断面形状を示す断面図である。
符号の説明
1 ジェットノズル
2 定電流電源装置(加工電源)
3 被加工物
4 耐圧タンク
5 エアレギュレータ
6 エアコンプレッサ
7 Z軸移動体
8 加工テーブル
9 スプラッシュガード
10 液槽

Claims (6)

  1. 電解液ジェットノズルを加工電源の陰極に接続し被加工物を前記加工電源の陽極に接続し前記ノズルから直線状の電解液ジェットを前記被加工物に噴射しながら前記ノズルを前記被加工物に対して相対移動させて被加工物に電解加工を行なう電解液ジェット加工方法において、重ね合わせの原理に基づいて所望の輪郭形状と加工深さが得られるように設定された加工条件に従う加工溝を前記所望の輪郭形状と最深の加工深さから逆算してある設定された加工条件に従う加工溝の溝幅と溝深さがその加工溝と隣接して重なるように形成される同一または異なる加工条件に従う別の加工溝の溝幅と溝深さとちょうど重なって足されるように重ね合わせて形成するように前記ノズルの相対移動軌跡を設定し、前記相対移動軌跡に沿って前記ノズルを走査して所望の加工形状を加工することを特徴とする電解液ジェット加工方法。
  2. 前記加工電源から供給する電流を操作することによって前記所望の加工深さを得ることを特徴とする請求項1に記載の電解液ジェット加工方法。
  3. 電解液ジェットノズルを加工電源の陰極に接続し被加工物を前記加工電源の陽極に接続し前記ノズルから直線状の電解液ジェットを前記被加工物に噴射しながら前記ノズルを前記被加工物に対して相対移動させて被加工物に電解加工を行なう電解液ジェット加工方法において、重ね合わせの原理に基づいて所望の輪郭形状と加工深さが得られるように設定された加工条件に従う加工溝を前記所望の輪郭形状と最深の加工深さから逆算してある設定された加工条件に従う加工溝の溝幅と溝深さがその加工溝と隣接して重なるように形成される同一または異なる加工条件に従う別の加工溝の溝幅と溝深さとちょうど重なって足されるように重ね合わせて形成するように前記ノズルの相対移動軌跡を設定し、前記相対移動軌跡に沿って前記ノズルを走査して所望の加工形状を加工するとともに、所望の加工形状におけるエッジまたはコーナを加工するとき、前記ノズルの穴断面形状を前記所望の加工形状のエッジまたはコーナに相当する形状とし、可能な限り前記ノズルを加工面に近接させるとともに供給する電解液の圧力を高圧としてかつ電流値を変化させずに加工時間を変更制御することによって加工深さを揃えて、前記穴断面形状を転写するようにして所望の加工形状を加工することを特徴とする電解液ジェット加工方法。
  4. 前記ノズルの移動速度を制御して前記加工時間を操作することによって前記所望の加工深さを得るようにする請求項3に記載の電解液ジェット加工方法。
  5. 前記電解液ジェットの電解液として硝酸ナトリウム水溶液を使用し前記被加工物の表面に不働態化皮膜を形成しながら前記所望の加工形状を加工することを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3または請求項4に記載の電解液ジェット加工方法。
  6. 前記電解液ジェットに砥粒が混入されていることを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3、請求項4または請求項5に記載の電解液ジェット加工方法。
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