JP2024042483A - ジピラニリデン化合物 - Google Patents

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Abstract

【課題】熱安定性が高く貴金属を含まない有機ドーパント、該有機ドーパントを含む有機薄膜、及び該有機薄膜を備えた電荷移動度が高く、電気抵抗の低い有機エレクトロニクスデバイスを提供すること。【解決手段】式(1)で表される化合物(Qは式(2)~(7)のいずれかの連結基)。TIFF2024042483000033.tif3851TIFF2024042483000034.tif28105【選択図】なし

Description

本発明は新規なジピラニリデン化合物、該化合物を含む有機薄膜、及び該有機薄膜を有する有機エレクトロニクスデバイスに関する。
有機エレクトロニクスデバイスは、多分野へ応用展開される可能性をはらんでいる。これらのデバイスは、無機のそれに比べて、低重量、低消費電力、柔軟性などの面で優れているが(非特許文献1)、有機半導体の低電荷移動度は大きな弱点の一つであり(非特許文献2)、電荷キャリアを少量ドーピングする手法が、移動度や電気抵抗の改善のため広く用いられている(非特許文献3)。しかしながら、金属をドーパントとして用いることは、有機半導体膜自体の結晶構造を歪ませ、さらに高温ではドーパントの拡散が生じることが問題となっている(非特許文献4)
また、有機エレクトロニクスデバイスを蒸着プロセスで作製する場合や、デバイス作製プロセス中に加熱を施す場合には、ドーパントには熱安定性が求められる。しかしながら、蒸着可能なドーパントはロジウムやモリブデンのような貴金属の錯体がほとんどである(非特許文献5)。これらの金属錯体ドーパントは蒸着プロセスによる熱分解で結合開裂が生じることで開殻分子となりドーパントとして機能するが、ドーピング性能はプロセス依存性が高く安定的な使用が難しいため、熱的安定性が高い閉殻分子ドーパントの開発が求められており、更には、コストや資源分布の偏在性の観点から、貴金属を含有しないドーパントが求められている。
即ち、有機エレクトロニクス材料に高い導電性を与え、電気抵抗を改善すると共に、熱安定性が高く、かつ金属を含まない閉殻有機分子ドーパントの開発が、有機エレクトロニクスデバイスのブレークスルーのために強く求められている。
(a) H.E.Katz, A.J.Lovinger, J.Johnson, C.Kloc, T.Siegrist, W.Li, Y.-Y.Lin, A.Dodabalapur, Nature, 2000, 404, 478; (b) I.D.W.Samuel, G.A.Turnbull, Chem.Rev., 2007, 107, 1272; (c) J.E.Anthony, Angew. Chem. Int.Ed.,2008, 47, 452. (a) V.Coropceanu, J.Cornil, D.A.da Silva Filho, Y. Olivier, R.Silbey, J.-L. Bredas,Chem. Rev., 2007, 107, 926; (b) V.Podzorov, E.Menard,A.Borissov, V. Kiryukhin, J.A.Rogers, M.E.Gershenson, Phys. Rev.Lett.,2004, 93, 086602. (a) Z.Wang, D.P.McMeekin, N.Sakai, S.van Reenen, K.Wojciechowski, J.B.Patel, M.B.Johnston, H.J.Snaith, Adv.Mater., 2017, 29, 1604186; (b) K.H.Yim, G.L.Whiting, C.E.Murphy, J.J.M.Halls, J.H.Burroughes, R.H.Friend, J.S.Kim, Adv. Mater., 2008, 20, 3319; (c) Q.Bao, X.Liu, S.Braun, Y.Li, J.Tang, C.Duan, M.Fahlman, ACSAppl. Mater.Interfaces, 2017, 9, 35476; (d) C.Kuang, G.Tang, T.Jiu, H. Yang, H. Liu, B.Li, W.Luo, X.Li, W.Zhang, F.Lu, J.Fang, Y.Li, NanoLett., 2015, 15, 2756; (e) Z.-K Wang, L.-S.Liao, Adv. OpticalMater., 2018, 6, 1800276. (a) G.-H.Kim, L.Shao, K.Zhang, K.P.Pipe, Nature Mater., 2013, 12, 719; (b) B.Lussem, M. Riede, K.Leo, Phys.Status Solidi A, 2013, 210, 9. Organic Electronics 11(5) 860-863
本発明は、上記従来の課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、熱安定性が高く貴金属を含まない有機ドーパント、該有機ドーパントを含む有機薄膜、及び該有機薄膜を備えた電荷移動度が高く、電気抵抗の低い有機エレクトロニクスデバイスを提供することにある。
本発明者らは鋭意検討の結果、特定構造の新規のジピラニリデン化合物を用いることにより上記の課題が解決されることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明は、
(1)下記式(1)
Figure 2024042483000001
(式(1)中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、水酸基、アルキル基、アルコキシ基、芳香族基、アリールオキシ基、又は置換若しくは無置換アミノ基を表し、該アルキル基、アルコキシ基、芳香族基、アリールオキシ基の有する水素原子、及び置換アミノ基の置換基の有する水素原子は置換基で置換されていてもよい。Qは下記式(2)乃至(7)
Figure 2024042483000002
から選択されるいずれかの連結基を表す。nは0又は1を表す。但し、nが0の場合、Rは水酸基、アルコキシ基、又は置換若しくは無置換のアミノ基を表し、nが0、Rがメトキシ基、かつRが水素原子の化合物は除く。)
で表される化合物、
(2)R及びRがそれぞれ独立に水素原子、アルコキシ基、又は置換アミノ基である前項(1)に記載の化合物、
(3)R及びRの少なくとも一方が水素原子又は置換アミノ基である前項(2)に記載の化合物、
(4)Qが式(2)及び(3)から選択されるいずれかの連結基である前項(1)に記載の化合物、
(5)最高被占有分子軌道(HOMO)準位が-4.5eV以上である前項(1)に記載の化合物、
(6)熱重量分析における重量減少開始温度が250℃以上である前項(1)に記載の化合物、
(7)前項(1)乃至(6)のいずれか一項に記載の化合物を含む有機薄膜、及び
(8)前項(7)に記載の有機薄膜を備えた有機エレクトロニクスデバイス、
に関する。
本発明の化合物を用いることにより、熱安定性が高く、貴金属を含まない有機ドーパント、該有機ドーパントを含む有機薄膜及び有機エレクトロニクスデバイス(高移動度、低抵抗なデバイス)を提供することができる。
図1は、実施例1で得られた具体例のNo.1で表される化合物のTG分析のチャートである。 図2は、比較例5のトランジスタ素子のトランスミッションライン法(TML法)のプロット図である。
本発明のジピラニリデン化合物(以下、単に「本発明の化合物」とも記載する)は上記式(1)で表される。
式(1)中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、水酸基、アルキル基、アルコキシ基、芳香族基、アリールオキシ基、又は置換若しくは無置換アミノ基を表す。
式(1)のR及びRが表すアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状又は環状のいずれでもよく、またその炭素数も特に限定されない。
式(1)のR及びRが表すアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、アリル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、n-デシル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-セチル基、n-ヘプタデシル基、2-エチルへキシル基、3-エチルヘプチル基、4-エチルオクチル基、2-ブチルオクチル基、3-ブチルノニル基、4-ブチルデシル基、2-ヘキシルデシル基、3-オクチルウンデシル基、4-オクチルドデシル基、2-オクチルドデシル基、2-デシルテトラデシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基及びシクロヘキシル基等が挙げられ、炭素数1乃至24のアルキル基が好ましく、炭素数1乃至20のアルキル基がより好ましく、炭素数1乃至12のアルキル基が更に好ましく、炭素数1乃至6のアルキル基が特に好ましく、炭素数1乃至4のアルキル基が最も好ましい。
尚、式(1)のR及びRが表すアルキル基中の水素原子は置換基で置換されていてもよい。アルキル基中の水素原子と置換する置換基は、アルキル基全体の電子供与性を損なわない限り特に限定されず、当該特性を有する置換アルキル基も式(1)のR及びRが表すアルキル基の範疇に含まれる。
式(1)のR及びRが表すアルコキシ基は、直鎖状、分岐鎖状又は環状のいずれでもよく、またその炭素数も特に限定されない。
式(1)のR及びRが表すアルコキシ基の具体例としては,メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、iso-プロポキシ基、n-ブトキシ基、iso-ブトキシ基、t-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、iso-ペンチルオキシ基、t-ペンチルオキシ基、sec-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、iso-ヘキシルオキシ基、n-ヘプチルオキシ基、sec-ヘプチルオキシ基、n-オクチルオキシ基、n-ノニルオキシ基、sec-ノニルオキシ基、n-デシルオキシ基、n-ウンデシルオキシ基、n-ドデシルオキシ基、n-トリデシルオキシ基、n-テトラデシルオキシ基、n-ペンタデシルオキシ基、n-ヘキサデシルオキシ基、n-ヘプタデシルオキシ基、n-オクタデシルオキシ基、n-ノナデシルオキシ基、n-エイコシルオキシ基、ドコシルオキシ基、n-ペンタコシルオキシ基、n-オクタコシルオキシ基、n-トリコンチルオキシ基、5-(n-ペンチル)デシルオキシ基、ヘネイコシルオキシ基、トリコシルオキシ基、テトラコシルオキシ基、ヘキサコシルオキシ基、ヘプタコシルオキシ基、ノナコシルオキシ基、n-トリアコンチルオキシ基、スクアリルオキシ基、ドトリアコンチルオキシ基及びヘキサトリアコンチルオキシ基等の炭素数1乃至36のアルコキシ基が挙げられ、炭素数1乃至24のアルコキシ基が好ましく、炭素数1乃至20のアルコキシ基がより好ましく、炭素数1乃至12のアルコキシ基が更に好ましく、炭素数1乃至6のアルコキシ基が特に好ましく、炭素数1乃至4のアルコキシ基が最も好ましい。
尚、式(1)のR及びRが表すアルコキシ基中の水素原子は置換基で置換されていてもよい。アルコキシ基中の水素原子と置換する置換基は、アルコキシ基全体の電子供与性を損なわない限り特に限定されず、当該特性を有する置換アルコキシ基も式(1)のR及びRが表すアルコキシ基の範疇に含まれる。
式(1)のR及びRが表す芳香族基とは、芳香族化合物の芳香環から水素原子を一つ除いた残基であり、芳香族基となる化合物は、芳香性を有する化合物でありさえすれば特に限定されない。
式(1)のR及びRが表す芳香族基の具体例としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナンスリル基、ピレニル基及びベンゾピレニル基等の芳香族炭化水素基、ピリジル基、ピラジル基、ピリミジル基、キノリル基、イソキノリル基、ピロリル基、インドレニル基、イミダゾリル基、カルバゾリル基、チエニル基、フリル基、ピラニル基及びピリドニル基等の複素環基、ベンゾキノリル基、アントラキノリル基、ベンゾチエニル基及びベンゾフリル基等の縮合系複素環基等が挙げられる。
尚、式(1)のR及びRが表す芳香族基中の水素原子は置換基で置換されていてもよい。芳香族基中の水素原子と置換する置換基は、芳香族基全体の電子供与性を損なわない限り特に限定されず、当該特性を有する置換芳香族基も式(1)のR及びRが表す芳香族基の範疇に含まれる。
式(1)のR及びRが表すアリールオキシ基とは、アリール基と酸素原子が結合した置換基であり、アリールオキシ基の有するアリール基の具体例としては、式(1)のR及びRが表す芳香族基の項に記載した芳香族炭化水素基と同じものが挙げられる。
式(1)のR及びRが表すアリールオキシ基としては、フェノキシ基又はナフトキシ基が好ましく、フェノキシ基がより好ましい。
尚、式(1)のR及びRが表すアリールオキシ基中の水素原子は置換基で置換されていてもよい。アリールオキシ基中の水素原子と置換する置換基は、アリールオキシ基全体の電子供与性を損なわない限り特に限定されず、当該特性を有する置換アリールオキシ基も式(1)のR及びRが表すアリールオキシ基の範疇に含まれる。
式(1)のR及びRが表すアミノ基は、置換アミノ基と非置換アミノ基(NH基)のいずれでもよく、また、該置換アミノ基は、モノ置換アミノ基(NHR基)とジ置換アミノ基(NRR’基)の何れでもよい。尚、ジ置換アミノ基の有する二つの置換基は同じ(前記NRR’基中のR=R’)でも異なって(前記NRR’基中のR≠R’)もよい。
置換アミノ基の有する置換基の具体例としては、アルキル基やアリール基等が挙げられ、該アルキル基やアリール基は更に置換基を有していてもよい。
尚、ジアリールアミノ基の有する二つのアリール基同士が結合して環を形成したアミノ基(例えば、ジフェニルアミノ基の有するフェニル基同士が結合して環を形成したカルバゾリル基等)も式(1)のR及びRが表す置換アミノ基の範疇に含まれる。
置換アミノ基の有するアルキル基の具体例としては、式(1)のR及びRが表すアルキル基の項に記載したアルキル基と同じものが挙げられる。
置換アミノ基の有するアリール基の具体例としては、式(1)のR及びRが表す芳香族基の項に記載した芳香族炭化水素基と同じものが挙げられる。
尚、式(1)のR及びRが表す置換アミノ基が有するアルキル基及び/又はアリール基中の水素原子は置換基で置換されていてもよい。前記のアルキル基及び/又は前記のアリール基中の水素原子と置換する置換基は、置換アミノ基の電子供与性を損なわない限り特に限定されず、置換アルキル基及び/又は置換アリール基を有し、かつ電子供与性を有する置換アミノ基も、式(1)のR及びRが表す置換アミノ基の範疇に含まれる。
式(1)のR及びRが表す置換若しくは無置換アミノ基としては、ジ炭素数1乃至4アルキルアミノ基、ジフェニルアミノ基又はカルバゾリル基が好ましく、該ジフェニルアミノ基中のフェニル基は、無置換であるか、又は炭素数1乃至4のジアルキルアミノ基を置換基として有することが好ましい。
式(1)のR及びRとしては、それぞれ独立に水素原子、アルコキシ基、又は置換アミノ基が好ましく、それぞれ独立に水素原子、炭素数1乃至4のアルコキシ基、ジ炭素数1乃至4アルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、又はカルバゾリル基がより好ましい。また、R及びRの一方が水素原子又は置換アミノ基であって、他方が水素原子、アルコキシ基、又は置換アミノ基が更に好ましく、R及びRの一方が水素原子であって、他方が水素原子、炭素数1乃至4のアルコキシ基、ジ炭素数1乃至4アルキルアミノ基、ジフェニルアミノ基、又はカルバゾリル基が特に好ましい。
但し、n(後述する)が0の場合、Rは水酸基、アルコキシ基、アリールオキシ基、又は置換若しくは無置換のアミノ基を表す。
式(1)中、nは0又は1であり、nが1の場合のQは式(2)乃至(7)から選択されるいずれかの連結基を表す。
nが0の場合、式(1)で表される化合物は、式(1)中に明記された二つのピラン環が炭素-炭素二重結合で直接結合した構造となり、nが1で例えばQが式(2)で表される場合、式(1)で表される化合物は、式(1)中に明記された二つのピラン環が1,4-シクロヘキサジエン環を介して炭素-炭素二重結合で結合した構造となる。
式(1)のQは、式(2)乃至(5)から選択されるいずれかの連結基が好ましく、式(2)及び(3)から選択されるいずれかの連結基がより好ましい。
尚、nが0で、Rがメトキシ基で、かつRが水素原子の化合物は、本発明の式(1)で表される化合物の範疇には含まれない。
次に、式(1)で表される化合物の合成方法について説明する。
式(1)で表される化合物は、例えばChem.Matter.2009,21,4350-4352、Dye and Pigments 141 (2017) 487-492、J.Heterocycl.Chem.1981,18,1235、Polymer.1994,35, 4940-4948等に記載の方法を応用して合成することができる。具体的には、ベンズアルデヒド誘導体やジフェニルペンタンジオン誘導体から合成したジフェニルピリリウム誘導体に対してアルキルホスフィンを作用させてテトラフェニルジピリリニウム誘導体を合成した後、有機塩基や電気化学的手法で還元することにより式(1)で表される化合物を合成することができる。電気化学的手法による還元とは、例えばテトラフェニルジピリリニウム誘導体の溶液に対して、ポテンショスタットを用いて電圧を印加することで電気的に還元する方法等を示す。
以下に、式(1)で表される化合物の一般的な合成フロー1乃至3を記載する。合成フロー中のR、R及びQは式(1)におけるR、R及びQと同じ意味を表し、Aは下記式(2’)乃至(7’)から選択されるいずれかの連結基を表す。
Figure 2024042483000003
Figure 2024042483000004
Figure 2024042483000005
Figure 2024042483000006
上記の方法で得られた式(1)で表される化合物は、精製により不純物を除去して化合物純度を高めた後に有機薄膜(後述する)の作製等に供することが好ましい。精製方法は特に限定されず、再結晶、カラムクロマトグラフィー、活性炭などの吸着剤による吸着精製、及び真空昇華精製等の公知の方法が採用できる。また必要に応じてこれらの方法を組み合わせることもできる。
以下に、本発明の式(1)で表される化合物の具体例を記載するが、本発明の式(1)で表される化合物はこれらの具体例に限定されるものではない。尚、具体例中の「Me」はメチル基を表す。
Figure 2024042483000007
Figure 2024042483000008
Figure 2024042483000009
Figure 2024042483000010
Figure 2024042483000011
Figure 2024042483000012
Figure 2024042483000013
本発明の化合物の最高被占有軌道(HOMO)準位は、有機半導体等にドーパントとして用いる場合のドーピング性能(高い導電性の付与と電気抵抗の改善)の観点から、真空準位に対して-4.5eV以上が好ましく、-4.4eV以上がより好ましく、-4.3eV以上が更に好ましく、-4.2eV以上が特に好ましく、-4.1eV以上が最も好ましい。
尚、本明細書における最高被占有軌道(HOMO)準位は、サイクリックボルタンメトリーや光電子分光法などの公知の方法で測定した値を意味する。
本発明の化合物は、有機半導体等にドーパントとして用いた場合のデバイス作製時の加熱プロセス等の観点から、熱的安定性が高いことが好ましい。
化合物の熱的安定性はTG分析(熱重量分析)、DTA分析(示差熱分析)、DSC分析(示差走査熱量分析)、又はこれらを組み合わせたTG-DTA分析(熱重量示差熱分析)、TG-DSC分析(熱重量示差走査熱量分析)などの公知の分析法で測定することができ、TG分析の場合は重量減少開始温度が高ければ高いほど、DTA分析やDSC分析では吸熱若しくは発熱の開始温度が高ければ高いほど熱的安定性が高いと言える。
本発明の化合物の熱的安定性の一つの指標としては、熱重量分析(TG分析)の重量減少開始温度が250℃以上であることが好ましく、300℃以上であることがより好ましく、350℃以上であることが更に好ましく、370℃以上であることが特に好ましく、400℃以上であることが最も好ましい。
本発明の有機薄膜は、本発明の化合物以外の有機材料に本発明の化合物をドープした混合物からなる薄膜でもよいし、本発明の化合物のみからなる薄膜でもよい。
有機薄膜に用いられる本発明の化合物以外の有機材料は特に限定されないが、例えば、トリアリールアミン化合物、ベンジジン化合物、ピラゾリン化合物、スチリルアミン化合物、ヒドラゾン化合物、トリフェニルメタン化合物、カルバゾール化合物、ポリシラン化合物、チオフェン化合物、フタロシアニン化合物、シアニン化合物、メロシアニン化合物、オキソノール化合物、ポリアミン化合物、インドール化合物、ピロール化合物、ピラゾール化合物、ポリアリーレン化合物、カルバゾール誘導体、ベンゼン誘導体、ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、クリセン誘導体、フェナントレン誘導体、ペンタセン誘導体、フェニルブタジエン誘導体、スチリル誘導体、キノリン誘導体、テトラセン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、フルオランテン誘導体、キナクリドン誘導体、クマリン誘導体、ポルフィリン誘導体、テトラフルバレン誘導体や、キノジメタン誘導体、フラーレンやその誘導体、金属錯体(Ir錯体、Pt錯体、Eu錯体など)等が挙げられ、これらから成る部分構造を繰り返し単位としたポリマー材料であってもよい。
フラーレンとしては、C60フラーレン、C70フラーレン、C84フラーレン等が挙げられる。フラーレン誘導体としては、例えば、フラーレンの炭素原子の一部に、炭素数1乃至20、好ましくは炭素数1乃至10のアルキル基;エポキシ基;1乃至2個程度のジオキソラン構造(ジオキソラン基);インドリン基、ベンゾフラン基等の縮環有機基;等の置換基が結合した化合物であり、具体的には、各種のフラーレンエポキシド、1,3-ジオキソラン-フラーレン誘導体、フェニルC61酪酸メチルエステル(PCBM)、フェニルC61酪酸ブチルエステル(PCBB)、フェニルC61酪酸オクチルエステル(PCBO)、インデン付加型フラーレン誘導体、シリルメチル付加型フラーレン誘導体、インドリノ-フラーレン誘導体、ベンゾフラノ-フラーレン誘導体等が挙げられる。
ポリマー材料としては特に限定されないが、例としてはラダー状ポリマー(BBL、ポリ(ベンゾビスイミダゾベンゾフェナントロリン)等)、ホウ素を含んだ共役ポリマー(例えば、ポリ[(2,5-ジデシロキシ-1,4-フェニレン)(2,4,6-トリイソプロピルフェニルボラン)],ジフェニル末端等)、シアノ基を含むフェニレンビニレン系ポリマー(例えば、ポリ(2,5-ジ(ヘキシルオキシ)シアノテレフタリリデン)、ポリ(5-(2-エチルヘキシルオキシ)-2-メトキシ-シアノテレフタリリデン)等)等が挙げられる。
有機薄膜の形成方法としては、蒸着法等のドライプロセスや種々の溶液プロセス等が挙げられる。溶液プロセスとしては、例えば、スピンコート法、ドロップキャスト法、ディップコート法、スプレー法、フレキソ印刷、樹脂凸版印刷などの凸版印刷法、オフセット印刷法、ドライオフセット印刷法、パッド印刷法などの平板印刷法、グラビア印刷法などの凹版印刷法、スクリーン印刷法、謄写版印刷法、リングラフ印刷法などの孔版印刷法、インクジェット印刷法、マイクロコンタクトプリント法等、さらにはこれらの手法を複数組み合わせた方法が挙げられる。溶液プロセスで成膜する場合、上記の方法で本発明の化合物を含む有機溶媒溶液を基材に塗布、印刷したのち、有機溶媒を蒸発させて薄膜を形成することが好ましい。
本発明のジピラニリデン化合物をドープする方法や、本発明のジピラニリデン化合物でドープされた有機薄膜を用いて、電極と有機半導体層との接触抵抗を低減する方法は特に限定されないが、ドライプロセスや溶液プロセスで成膜した有機半導体薄膜に対して、ドーパントをドライプロセスや溶液プロセスで塗布する逐次的な手法や、ドライプロセスや溶液プロセスで有機半導体層を形成する際にドーパントを共存させて製膜する同時的な手法など、公知のドーピング手法を用いればよく、それらを組み合わせてもよい。
公知のドーピング手法としては、例えば、Appl.Phys.Lett.91,p053508(2007)には、電極と有機半導体層の間にドーパントを導入することにより接触抵抗を低減する方法が記載されている。
特開2007-266298公報には、有機半導体層と無機材料からなる電極の間にドーピングされた有機材料の層(中間層)を導入する方法が記載されており、ドーピングされた中間層は、電極との界面において電子濃度または正孔濃度を大きく向上させるため、電極とオーミック接触することができるとしている。また、中間層の主成分と有機半導体層の主成分を同一にした場合、中間層と有機半導体層の接合力も向上することが記載されている。
特開2006-032914号公報には、有機半導体及び/または有機導電体の前駆体の層を形成し、半導体層及び/または導電層を形成する方法が記載されており、前駆体自体にドーパントとなるようなものを所望により混合することで、前駆体が半導体材料に変換すると同時にドーパントが作用し、導電性を発現できるとしている。
同時的手法でドーピングする場合の本発明のジピラニリデン化合物の使用量は特に限定されないが、ドーピングされる有機半導体等の有機材料に対して、通常は0.01乃至50%、好ましくは0.01乃至10%、より好ましくは0.05乃至5%、更に好ましくは0.1乃至3%の範囲で混合する。前記の割合は蒸着法のようなドライプロセスの場合は蒸着速度で制御される体積割合を示し、溶液プロセスの場合はモル割合を示す。
逐次的手法でドーピングする場合の本発明のジピラニリデン化合物からなる有機薄膜の膜厚は特に限定されないが、好ましくは0.01乃至50nm、より好ましくは0.01乃至10nm、更に好ましくは0.01乃至5nm、特に好ましくは0.01乃至3nmである。尚、本発明の化合物からなる有機薄膜の膜厚が検出限界以下(換言すれば、膜厚が0.01nm以下の場合)であっても、ドーパントとして機能して(本発明の化合物を用いない場合に比べて何らかのドーピング効果が得られて)いれば、本発明の化合物のドーパントとしての使用の範疇に含まれる。
本発明の有機エレクトロニクスデバイスの代表例としては、有機エレクトロルミネッセントデバイス、有機電界効果トランジスタ(OFET)、熱電変換素子、ペロブスカイト太陽電池等の有機ソーラーセル(OSC)、有機光センサー、有機発光ダイオード、有機集積回路(OIC)、有機薄膜トランジスタ(OTFT)、有機光受容器等が挙げられるが、本発明の有機エレクトロニクスデバイスはこれらに限定されるものではない。
有機エレクトロルミネッセントデバイスの具体例としては、有機発光トランジスタ(OLET)、有機電場消光デバイス(OFQD)、有機発光電気化学セル(OLEC、LEC、LEEC)、有機レーザーダイオード(O-レーザー)、および有機発光ダイオード(OLED)などが挙げられる。
有機電界効果トランジスタは、有機半導体材料からなる半導体膜に接して設けた2つの電極(ソース電極及びドレイン電極)の間に流れる電流を、ゲート電極と呼ばれるもう一つの電極に印加する電圧で制御するものであり、本発明の化合物を含む有機薄膜は、従来公知の何れの有機電界効果トランジスタにも用いることができる。
有機電界効果トランジスタの詳しい説明は省略するが、前記した有機半導体材料からなる半導体膜に本発明の化合物を用いてドーピングを施すことや、前記した3種類の電極に用いられるポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリパラフェニレンビニレン及びポリジアセチレン等の導電性高分子化合物やその界面に本発明の化合物を用いてドーピングを施すことによって、電界効果トランジスタの移動度等の諸特性を向上させることができる。ドーピングを施す際は、本発明の化合物に、塩酸、硫酸等の無機酸;スルホン酸等の酸性官能基を有する有機酸;PF、AsF、FeCl等のルイス酸;ヨウ素等のハロゲン原子;リチウム、ナトリウム、カリウム等の金属原子;ホウ素、リン、砒素、カーボンブラックや金属粒子などを分散した導電性の複合材料等の従来公知のドーパントを併用してもよく、ドーピングの方法も前記した同時的手法と逐次的手法のいずれであっても構わない。
尚、本発明の化合物は有機半導体としての特性を兼ね備えるため、本発明の化合物のみからなる有機薄膜を有機電界効果トランジスタの半導体膜としてもよい。
熱電変換素子は、基材上に、第1の電極、熱電変換層および第2の電極を有するものであり、本発明の化合物を含む有機薄膜は、従来公知の何れの熱電変換素子にも用いることができる。
熱電変換素子の詳しい説明は省略するが、本発明の化合物を含む有機薄膜は、前記した熱電変換層に用いられ、本発明の化合物を含む有機薄膜からなる熱電変換層は、ドライプロセスと溶液プロセスのいずれで設けてもよい。尚、熱電変換素子中の熱電変換層は1層でも複数でもよく、複数の熱電変換層を有する場合、本発明の化合物を含む有機薄膜からなる熱電変換層のみを複数層有する素子であってもよいし、本発明の化合物を含む有機薄膜からなる熱電変換層と本発明の化合物を含まない熱電変換層を有する素子であってもよい。
ペロブスカイト太陽電池は、ペロブスカイト層の上下に正孔輸送層及び電子輸送層が積層され、その積層体を二つの電極で挟んだ構造となっており、該電子輸送層となる電子輸送性化合物に本発明の化合物を用いてドーピングを施すことや、本発明の化合物からなる有機薄膜自体を正孔輸送層に用いることによって、ペロブスカイト太陽電池の諸特性を向上させることができる。
具体的には、例えば正孔輸送性化合物であるSpiro-OMeTAD(特開2017-50246号公報等)に金属を含むドーパントを用いるとドーパントが素子の耐久性を低下させることが知られており、Spiro-OMeTAD自体の代わりに本発明の化合物を用いることにより素子の耐久性を向上させることができる。尚、ドーピングの方法は同時的手法と逐次的手法のいずれであってもよく、本発明の化合物を正孔輸送性化合物自体として用いる場合には、有機薄膜を成膜した後に酸化性雰囲気に晒すことで自己ドーピングさせてもよい。酸化性雰囲気としては特に限定されないが、空気などの酸素を含んだものが挙げられる。
有機光センサーは光電変換機能をもった有機活性層を含む有機薄膜を二つの電極で挟んだ構造となっており、素子を構成するいずれかの有機薄膜に本発明の化合物を用いてドーピングを施すことで導電性を高めることや、有機薄膜と電極界面に本発明の化合物を成膜して抵抗を低減することや、本発明の化合物からなる有機薄膜自体を、素子を構成するいずれかの有機薄膜として用いることによって、有機光センサーの諸特性を向上させることができる。
有機発光ダイオード(OLED)は電圧を印加することで発光する機能をもった有機活性層を含む有機薄膜を二つの電極で挟んだ構造となっており、素子を構成するいずれかの有機薄膜に本発明の化合物を用いてドーピングを施すことで導電性を高めることや、有機薄膜と電極界面に本発明の化合物を成膜して抵抗を低減することや、本発明の化合物からなる有機薄膜自体を、素子を構成するいずれかの有機薄膜として用いるによって、有機発光ダイオードの諸特性を向上させることができる。
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。実施例中、特に指定しない限り「部」は「質量部」を、また「%」は「質量%」をそれぞれ表す。「M」はモル濃度を表す。また、反応温度は特に断りのない限り、反応系内の内温を記載した。
実施例中のDSCの測定は島津社製DSC-60 Plusを使用し、窒素雰囲気下、昇温速度10℃/分の条件で測定した。核磁気共鳴スペクトルの測定はBruker社製Avance III 500を使用し、実施例中に記載の溶媒を用いて測定した。、元素分析はジェイ・サイエンス・ラボ社製JM10を使用して測定した。MSスペクトルの測定は、具体例のNo.1で表される化合物及びNo.9で表される化合物については日本電子社製 JMS-T100GCVを使用し、具体例のNo.2で表される化合物についてはBruker社製 QTOF compactを使用し、その他の化合物についてはBruker社製 solariX-TOH1 9.4Tを使用した。
実施例中のサイクリックボルタンメトリー(CV)測定は、支持電解質としてテトラブチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェートを0.02Mの濃度で溶解させたベンゾニトリルを溶媒として使用して、0.2mMの濃度で行った。その際、ポテンショスタットはBAS社製ALS電気化学アナライザー612Dを使用し、作用電極とカウンター電極としては白金電極、参照電極としては銀/塩化銀電極を使用し、掃引速度は200ミリボルト毎秒とした。電気化学ポテンシャルは、内部フェロセン-フェロセニウム酸化還元対(Fc/Fc+)を参照にして酸化電位を測定することによって、
HOMO準位=-(CV測定による酸化電位)-4.8(eV)
の計算式で求めた。
また、実施例中のTG分析は島津社製TGA-50を使用し、窒素雰囲気下、昇温速度10℃/分の条件で測定し、図1に示すように、ベースラインと重量減少カーブの接線の交点を重量減少開始点とした。
実施例1(具体例のNo.1で表される化合物の合成)
(工程1)下記式(a)で表される中間体化合物の合成
4’-ジメチルアミノアセトフェノン 2.17部にトリエチルオルトホルメイト 6.5mLを加え、50℃に加熱した。得られた反応液に過塩素酸の70vol%水溶液 1.7mLと無水酢酸 2mLの混合溶液を加え、50℃で2時間攪拌した。その後生成した固体をろ過し、水とジエチルエーテルで洗浄することで、下記式(a)で表される中間体化合物(2,6-ジ(4-ジメチルアミノフェニル)ピリリウムパークロレート) 1.46部を得た。
上記で得られた中間体化合物のDSC(融点)、核磁気共鳴スペクトル、及び元素分析の測定結果は以下の通りであった。
m.p. (DSC) 280.3 ℃ (melt with decomposition)
1H NMR (Acetone-d6, 500 MHz): δ (ppm) 8.38 (t, 1H, J = 8.4 Hz) 8.23-8.20 (m, 4H), 8.01 (d, 2H, J = 8.4 Hz), 7.02-6.99 (m, 4H), 3.24 (s, 12H).
13C NMR (Acetone-d6, 100 MHz): δ (ppm) 170.0, 155.9, 150.9, 131.1, 115.9, 113.4, 113.2, 40.4.
Anal. Calcd for C21H23Cl4N2O5: C, 60.22; H, 5.53; N, 6.69. Found: C, 59.85; H, 5.68; N, 6.81.
Figure 2024042483000014
(工程2)具体例のNo.1で表される化合物の合成
アセトニトリル 525部に、工程1で得られた式(a)で表される中間体化合物 6.3部及びn-トリブチルホスフィン 3.4部を加え、室温で2時間攪拌した。得られた反応液にN,N-ジイソプロピルエチルアミン 10.9部を加え、還流温度で2時間攪拌した。その後生成した固体をろ過し昇華精製することで、具体例のNo.1で表される化合物 0.23部を得た。
得られた化合物のCV測定とTG分析を行ったところ、HOMO準位は-4.06eVであり、重量減少開始温度は408℃であった(図1参照)。
また、得られた化合物のHR-MSスペクトル及び元素分析の測定結果は以下の通りであった。
HRMS (FD) m/z: Calcd for C42H44N4O2 [M]+ : 636.34643. Found: 636.34626.
Anal. Calcd for C42H44N4O2: C, 79.21; H, 6.96; N, 8.80. Found: C, 79.3; H, 7.02; N, 8.82.
Figure 2024042483000015
実施例2(具体例のNo.2で表される化合物の合成)
(工程3)下記式(b)で表される中間体化合物の合成
4’-ジフェニルアミノアセトフェノン 1.5部にトリエチルオルトホルメイト 0.44mLを加え、50℃に加熱した。得られた反応液に過塩素酸の70vol%水溶液 0.45mLと無水酢酸 0.55mLの混合溶液を加え、50℃で24時間攪拌した。その後生成した固体をろ過し、水とジエチルエーテルで洗浄することで、下記式(b)で表される中間体化合物(2,6-ジ(4-ジフェニルアミノフェニル)ピリリウムパークロレート) 0.54部を得た。
Figure 2024042483000016
(工程4)具体例のNo.2で表される化合物の合成
アセトニトリル 15部に、工程3で得られた式(b)で表される中間体化合物 0.4部及びn-トリブチルホスフィン 0.18部を加え、室温で2時間攪拌した。得られた反応液にN,N-ジイソプロピルエチルアミン 0.57部を加え、還流温度で2時間攪拌した。その後生成した固体をろ過することで、具体例のNo.2で表される化合物 0.24部を得た。
得られた化合物のMSスペクトルの測定結果は以下の通りであった。
MS m/z: Calcd for C82H60N4O2 [M+H]+ : 1133.47945. Found: 1133.4930
Figure 2024042483000017
実施例3(具体例のNo.5で表される化合物の合成)
(工程5)下記式(c)で表される中間体化合物の合成
2’,4’-ジメトキシアセトフェノン 40.6部にトリエチルオルトホルメイト 112mLを加え、50℃に加熱した。得られた反応液に過塩素酸の70vol%水溶液 27mLと無水酢酸 32.7mLの混合溶液を加え、50℃で2.5時間攪拌した。その後生成した固体をろ過し、水とジエチルエーテルで洗浄することで、下記式(c)で表される中間体化合物(2,6-ジ(2,4-ジメトキシフェニル)ピリリウムパークロレート) 35.5部を得た。
上記で得られた中間体化合物の目視による融点、核磁気共鳴スペクトル、及び元素分析の測定結果は以下の通りであった。
m.p. 210-211 ℃.
1H NMR (DMSO-d6, 500 MHz): δ (ppm) 8.72 (t, 1H, J = 8.4Hz), 8.44 (d, 2H, J = 8.4Hz), 8.17-8.15 (d, 2H, J = 9.0Hz), 6.93 (dd, 2H, J = 9.0Hz, 2.3Hz), 6.88 (d, 2H, J = 2.3Hz), 4.07 (s, 6H), 3.97 (s, 6H).
13C NMR (DMSO-d6, 125 MHz): δ (ppm) 168.2, 166.5, 161.7, 154.0, 132.4, 119.4, 110.2, 108.6, 99.1, 56.7, 56.3.
Anal. Calcd for (C21H21ClO9)2C3H8O (including isopropanol as a solvent of crystallization): C, 55.96; H, 5.22. Found: C, 55.98; H, 5.14.
Figure 2024042483000018
(工程6)具体例のNo.5で表される化合物の合成
アセトニトリル 76部に、工程5で得られた式(c)で表される中間体化合物 1.5部及びn-トリブチルホスフィン 0.76部を加え、室温で2時間攪拌した。得られた反応液にN,N-ジイソプロピルエチルアミン 2.5部を加え、還流温度で2時間攪拌した。その後生成した固体をろ過することで、具体例のNo.5で表される化合物 0.3部を得た。
得られた化合物のCV測定とTG分析を行ったところ、HOMO準位は-4.18eVであり、重量減少開始温度は376℃であった。
また、得られた化合物のHR-MSスペクトル及び元素分析の測定結果は以下の通りであった。
HRMS (FD) m/z: Calcd for C42H40O19 [M]+ : 704.26215. Found: 704.26225.
Anal. Calcd for C42H40O19: C, 71.58; H, 5.72; N. Found: C, 71.55; H, 5.73.
Figure 2024042483000019
実施例4(具体例のNo.9で表される化合物の合成)
(工程7)下記式(d)で表される中間体化合物の合成
テレフタルアルデヒド 2.03部にアセトフェノン 10.5mLとエタノール 50mLを加え、65℃に加熱した。得られた反応液に水酸化カリウム 0.201部を溶かした水 2.1mLを加え、還流温度で5時間攪拌した。その後加熱された状態で生成した固体をろ過しエタノールで洗浄することで、目的とする中間体化愚物の粗体を8.4部得た。得られた粗体にトルエン 250mLを加え、110℃に熱した状態で熱時ろ過し、室温まで冷却することで再結晶し、析出した固体をろ過しトルエンで洗浄することで、下記式(d)で表される中間体化合物(3,3’-(1,5-フェニレン)ビス(1,5-ジフェニル-1,5-ペンタジオン) 6.6部を得た。
上記で得られた中間体化合物の核磁気共鳴スペクトルの測定結果は以下の通りであった。
1H NMR (DMSO-d6, 500 MHz): δ (ppm) 7.90-7.89 (m, 8H) 7.60-7.57 (m, 4H), 7.49-7.46 (m, 4H), 7.19 (s, 4H), 3.84 (quin, 2H, J = 7.0 Hz) , 3.39 (d, 8H, J = 7.0 Hz).
Figure 2024042483000020
(工程8)下記式(e)で表される中間体化合物の合成
トリフェニルメタノール 3.12部に無水酢酸 35mLを加え、65℃に加熱した後、室温に冷却し、テトラフルオロほう酸の50wt%水溶液 2.63部を加え、1時間攪拌した。得られた反応液に工程7で得られた中間体化合物 3.13部を加え、16時間攪拌した。その後生成した固体をろ過し無水酢酸で洗浄することで、下記式(e)で表される中間体化合物(4,4’-(1,4-フェニレン)ビス(2,6-ジフェニルピリリウム テトラフルオロボレート)) 3.39部を得た。
Figure 2024042483000021
(工程9)具体例のNo.9で表される化合物の合成
アセトニトリル 20部に、工程8で得られた式(e)で表される中間体化合物 1.0部及びn-トリブチルホスフィン 1.4部を加え、還流温度で4時間攪拌した。その後生成した固体をろ過し昇華精製することで、具体例のNo.9で表される化合物 0.056部を得た。
得られた化合物のCV測定とTG分析を行ったところ、HOMO準位は-4.22eVであり、重量減少開始温度は354℃であった。
また、得られた化合物のHR-MSスペクトル及び元素分析の測定結果は以下の通りであった。
HRMS (FD) m/z: Calcd for C40H28O2 [M]+ : 540.20893. Found: 540.20901.
Anal. Calcd for C40H28O2: C, 88.86; H, 5.22; N, 5.92. Found: C, 88.59; H, 5.23.
Figure 2024042483000022
実施例5(具体例のNo.10で表される化合物の合成)
(工程10)下記式(f)で表される中間体化合物の合成
テレフタルアルデヒド 4.13部に4’-ジメチルアミノアセトフェノン 15.1部とエタノール 155mLを加え、65℃に加熱した。得られた反応液に水酸化カリウム 0.432部を溶かした水 4.3mLを加え、還流温度で5時間攪拌した。その後加熱された状態で生成した固体をろ過しエタノールで洗浄することで、下記式(f)で表される中間体化合物(3,3’-(1,4-フェニレン)ビス[1-ジ(4-ジメチルアミノフェニル-2-プロペン-1-オン]) 12.6部を得た。
上記で得られた中間体化合物の核磁気共鳴スペクトルの測定結果は以下の通りであった。
1H NMR (CDCl3, 500 MHz): δ (ppm) 8.02 (d, 4H, J = 9.2 Hz) 7.79 (d, 2H, J = 15.6 Hz), 7.68 (s, 4H),7.63 (d, 2H, J = 15.9 Hz), 6.72 (d, 4H, J = 8.9 Hz), 3.10 (s, 12H).
Figure 2024042483000023
(工程11)下記式(g)で表される中間体化合物の合成
工程10で得られた中間体化合物 0.429部に4’-ジメチルアミノアセトフェノン 0.655部と無水酢酸 10mLを加え、50℃に加熱した。得られた反応液に過塩素酸の70vol%水溶液 0.12mLと無水酢酸 0.14mLの混合溶液を加え、50℃で36時間攪拌した。その後生成した固体をろ過し水とジエチルエーテルで洗浄することで、下記式(g)で表される中間体化合物(4,4’-(1,4-フェニレン)ビス[(2,6-ジ(4-ジメチルアミノフェニル)ジフェニルピリリウム テトラフルオロボレート)]) 0.255部を得た。
上記で得られた中間体化合物の核磁気共鳴スペクトルの測定結果は以下の通りであった。
1H NMR (DMSO-d6, 500 MHz): δ (ppm) 8.52 (s, 4H) 8.37 (s, 4H), 8.23 (d, 8H, J = 8.9 Hz), 6.91 (d, 8H, J = 9.2 Hz), 3.18 (s, 24H).
Figure 2024042483000024
(工程12)具体例のNo.10で表される化合物の合成
工程11で得られた式(g)で表される中間体化合物に、CV測定と同じ条件で電圧印加して電気化学的に還元することで、具体例のNo.10で表される化合物を得た。
Figure 2024042483000025
実施例6(具体例のNo.15で表される化合物の合成)
(工程13)下記式(h)で表される中間体化合物の合成
4,4’-ビフェニルジカルボキシアルデヒド 0.70部にアセトフェノン 2.4mLとエタノール 18mLを加え、65℃に加熱した。得られた反応液に水酸化カリウム 0.045部を溶かした水 0.47mLを加え、還流温度で5時間攪拌した。その後加熱された状態で生成した固体をろ過しエタノールで洗浄することで、下記式(h)で表される中間体化合物(3,3’-([1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジイル)ビス(1,5-ジフェニルペンタン-1,5-ジオン)) 0.81部を得た。
上記で得られた中間体化合物の核磁気共鳴スペクトルの測定結果は以下の通りであった。
1H NMR (DMSO-d6, 500 MHz): δ (ppm) 7.96-7.94 (m, 8H) 7.63-7.60 (m, 4H), 7.52-7.49 (m, 8H), 7.46 (d, 4H, J = 8.2 Hz), 7.37 (d, 4H, J = 8.2 Hz), 3.93 (quin, 2H, J = 7.3 Hz) , 3.49 (d, 8H, J = 7.3 Hz).
Figure 2024042483000026
(工程14)下記式(i)で表される中間体化合物の合成
トリフェニルメタノール 0.56部に無水酢酸 6.4mLを加え、65℃に加熱した後、室温に冷却し、テトラフルオロほう酸の50wt%水溶液 0.52部と工程13で得られた式(h)で表される中間体化合物 0.68部を加え、12時間攪拌した。その後生成した固体をろ過し無水酢酸で洗浄することで、下記式(i)で表される中間体化合物(4,4’-([1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジイル)ビス(2,6-ジフェニルピリリウム テトラフルオロボレート)) 0.28部を得た。
上記で得られた中間体化合物の核磁気共鳴スペクトルの測定結果は以下の通りであった。
1H NMR (DMSO-d6, 500 MHz): δ (ppm) 9.27 (s, 4H) 8,82 (d, 4H, J = 8.6 Hz), 8.65-8.63 (m, 8H), 8.37 (d, 4H, J = 8.2 Hz), 7.92-7.90 (m, 4H), 7.85-7.82 (m, 8H).
Figure 2024042483000027
(工程15)具体例のNo.15で表される化合物の合成
工程14で得られた式(i)で表される中間体化合物に、CV測定と同じ条件で電圧印加して電気化学的に還元することで、具体例のNo.15で表される化合物を得た。
Figure 2024042483000028
実施例7(実施例1で得られた具体例のNo.1で表される化合物をドーパントとして用いた熱電変換素子の作製と評価その1)
ガラス基板を、蒸留水で3分間超音波処理し、その後10分間アセトンで超音波処理し、その後煮沸イソプロパノールで洗浄し、30分間UVオゾン処理することで洗浄した。そのガラス基板上に、チャネル幅1.5mm、チャネル長0.1mm、厚さ100nmの導電性測定用の金電極と、チャネル幅3.75mm、チャネル長0.5mm、厚さ100nmのゼーベック定数測定用の金電極を真空蒸着法で成膜し、電極付きガラス基板を作製した。メタンスルホン酸1リットルにn型半導体ポリマーとして一般に入手可能なBBL(ポリ(ベンゾビスイミダゾベンゾフェナントロリン))を7.5部加えて70℃で2時間攪拌して得られたBBL溶液を、電極付きガラス基板にスピンコート(2000回転/秒、30秒間)で製膜した。作成した薄膜をイオン交換水で洗浄して残留しているメタンスルホン酸を除き、大気中で100℃に設定したホットプレート上で11時間乾燥させ、その後窒素雰囲気中で200℃に設定したホットプレート上で1時間乾燥させ、室温まで冷却することでドーピング前のBBL薄膜を得た。そのBBL薄膜上に、実施例1で得られた具体例のNo.1で表される化合物のクロロホルム溶液(1.0部/リットル)を滴下し、5秒待ってからスピンコート(1000回転/秒)で基板上のクロロホルム溶液をスピンオフさせることによって、実施例1で得られた具体例のNo.1で表される化合物をドーパントとして用いた熱電変換素子を作製した。
作製した熱電変換素子について窒素雰囲気下で半導体パラメーターアナライザー(Keithley 4200-SCS)を用いて二端子導電率測定を行った。導電率(σ)は
σ=(I/V)×L/(W×d)
の計算式から算出し、5つ以上の熱電変換素子の平均値を導電率とした。前記計算式中のIは電流値(A)、Vは電圧値(V)、Lはチャネル長(m)、Wはチャネル幅(m)、dは膜厚(m)であり、膜厚はAMBIOS TECHNOLOGY XP-100を使用して測定した薄膜の任意の4ヶ所の膜厚の平均値を用いた。算出された導電率は0.36S/cmであった。
作製した熱電変換素子について、窒素雰囲気下で2つのペルチェ素子を用いて電極間に温度差を設定し、電極間の電圧を熱電圧ナノボルトメーター(Keithley 2182A)を用いて測定することでゼーベック係数を算出した。ゼーベック係数(S)は
S=ΔV/ΔT
の計算式から計算される。前記計算式中のΔVは電極間に発生した熱電圧(V)、ΔTは電極間の温度差(℃)である。算出されたゼーベック係数は-149μV/Kであった。
上記で得られた導電率とゼーベック係数から算出されるパワーファクター(PF=S×σ、熱電変換素子の性能を示す指標)は0.79μW/(m・K)であった。
実施例8(実施例1で得られた具体例のNo.1で表される化合物をドーパントとして用いた熱電変換素子の作製と評価その2)
実施例7と同じ手法で作製したドーピング前のBBL薄膜を、実施例1で得られた具体例のNo.1で表される化合物のクロロホルム溶液(1.0部/リットル)に60℃で1時間浸漬することで、実施例1で得られた具体例のNo.1で表される化合物をドーパントとして用いた熱電変換素子を作製した。
実施例7と同様の測定を行ったところ伝導率は0.46S/cm、ゼーベック係数は-112μV/K、パワーファクターは0.56μW/(m・K)であった。
実施例9(実施例1で得られた具体例のNo.1で表される化合物をドーパントとして用いた熱電変換素子の作製と評価その3)
実施例7と同じ手法で作製したドーピング前のBBL薄膜へ、抵抗加熱真空蒸着法によって実施例1で得られた具体例のNo.1で表される化合物の厚さ10nmの薄膜を形成した後、クロロホルム蒸気に1分間曝露することで、実施例1で得られた具体例のNo.1で表される化合物をドーパントとして用いた熱電変換素子を作製した。真空蒸着の際の基板温度は室温、蒸着速度は0.1乃至0.2Å/秒とした。
実施例7と同様の測定を行ったところ伝導率は0.13S/cm、ゼーベック係数は-202μV/K、パワーファクターは0.53μW/(m・K)であった。
実施例10(実施例3で得られた具体例のNo.5で表される化合物をドーパントとして用いた熱電変換素子の作製と評価その1)
実施例1で得られた具体例のNo.1で表される化合物のクロロホルム溶液(1.0部/リットル)を、実施例3で得られた具体例のNo.5で表される化合物のクロロホルム溶液(1.5部/リットル)に変更した以外は実施例7と同じ方法で熱電変換素子を作製し、評価を行った。その結果、伝導率は0.042S/cm、ゼーベック係数は-230μV/K、パワーファクターは0.25μW/(m・K)であった。
実施例11(実施例3で得られた具体例のNo.5で表される化合物をドーパントとして用いた熱電変換素子の作製と評価その2)
実施例1で得られた具体例のNo.1で表される化合物のクロロホルム溶液(1.0部/リットル)を、実施例3で得られた具体例のNo.5で表される化合物のクロロホルム溶液(1.5部/リットル)に変更した以外は実施例8と同じ方法で熱電変換素子を作製し、評価を行った。その結果、伝導率は0.078S/cm、ゼーベック係数は-189μV/K、パワーファクターは0.28μW/(m・K)であった。
実施例12(実施例4で得られた具体例のNo.9で表される化合物をドーパントとして用いた熱電変換素子の作製と評価)
実施例1で得られた具体例のNo.1で表される化合物を、実施例4で得られた具体例のNo.9で表される化合物に変更した以外は実施例7と同じ方法で熱電変換素子を作製し、評価を行った。その結果、伝導率は0.00153S/cm、ゼーベック係数は-377μV/K、パワーファクターは0.022μW/(m・K)であった。
実施例13(実施例1で得られた具体例のNo.1で表される化合物をドーパントとして用いたトランジスタ素子の作製と評価)
オクタデシルトリクロロシランにより表面処理を施したSi熱酸化膜付きのnドープシリコンウェハー上に、基板温度を室温、蒸着速度を0.3乃至0.5Å毎秒の条件とした抵抗加熱真空蒸着によってフラーレン(C60)の厚さ60nmの薄膜を形成した。次に、前記で得られたフラーレン薄膜上に、シャドウマスクを用いて基板温度を室温、蒸着速度を0.1Å毎秒の条件として実施例1で得られた具体例のNo.1で表される化合物の厚さ3nmの薄膜を形成し、その後同じシャドウマスクを用いて基板温度を室温、蒸着速度を0.2Å毎秒の条件としてAuの厚さ60nmの薄膜を形成することで、チャネル長50乃至400μm、チャネル幅は1500μmのソース電極及びドレイン電極をそれぞれ作製し、実施例1で得られた具体例のNo.1で表される化合物でドープされたフラーレンのトップコンタクト型電界効果トランジスタ素子を作製した。なお、電界効果トランジスタ素子においては、熱酸化膜付きのnドープシリコンウェハーにおける熱酸化膜が絶縁層の機能を有し、nドープシリコンウェハーが基板及びゲート電極の機能を兼ね備えている。
電界効果トランジスタ素子の性能は、ゲートに電位をかけた状態でソース電極とドレイン電極の間に電位をかけた時に流れる電流量に依存する。この電流値の測定結果を、有機半導体層に生じるキャリア種の電気特性を表現する下記式(a)に用いることにより、移動度を算出することができる。
Id=ZμCi(Vg-Vt)/2L・・・(a)
式(a)中、Idは飽和したソース・ドレイン電流値、Zはチャネル幅、Ciは絶縁体の電気容量、Vgはゲート電位、Vtはしきい電位、Lはチャネル長であり、μは決定する移動度(cm/Vs)である。Ciは用いたSiO絶縁膜の誘電率、Z、Lは有機トランジスタデバイスのデバイス構造よりに決まり、Id、Vgは電界効果トランジスタデバイスの電流値の測定時に決まり、VtはId、Vgから求めることができる。式(a)に各値を代入することで、それぞれのゲート電位での移動度を算出することができる。
また、例えばAppl. Phys. Lett.2013,102,153303.に記載されているように、複数のチャネル長で特性評価を行うことでトランスミッションライン法(TML法)によりシート抵抗(Rsheet)と接触抵抗(R・W)を求めることができる。
total・W=(Rch+R)・W=Rsheet・L+R・W
作製した電界効果トランジスタ素子の特性を評価したところ、飽和領域の移動度は1.3cm/(V・s)、線形領域の移動度は1.4cm/(V・s)、シート抵抗は4.3MΩ、接触抵抗は4.7kΩ・cmであった。
実施例14(実施例1で得られた具体例のNo.1で表される化合物を自己ドープ型のホール輸送層として用いたペロブスカイト太陽電池の作製と評価)
FTOガラス基板を、関東化学社製10%CiCaClean溶液で5分間超音波処理し、超純水で5分間超音波処理し、アセトンで5分間超音波処理し、その後イソプロパノールで5分間超音波処理することで洗浄した後、450℃に設定したホットプレート上で加熱した。チタンジイソプロポキシドビス(アセチルアセトナート) 0.3mLとエタノール 20mLの混合液を5分間超音波処理してからPTFEフィルターを通して調整した噴霧液を、加熱したFTOガラス基板へ噴霧した後、450℃で10分間加熱することで焼結してcTiOx層を形成した。その後、100℃以下になるまで30分間冷却して得られた基板を30分間UVオゾン処理することで洗浄した。チタニアペースト(Greatcell Solar Material社製 30 NR-D)0.6部とエタノール4.2部を混合して12時間攪拌した後に1時間超音波処理して得られた溶液を用い、cTiOx層を堆積させたFTOガラス基板にスピンコート(75μL、1200回転/秒で加速させ、6000回転/秒で30秒間回転させたのち、2000回転/秒で減速させた)した。得られた基板を120℃に設定したホットプレート上で5分間加熱した。その後、300℃で20分間、350℃で8分間、400℃で8分間、及び430℃で18分間順次加熱し、80℃以下に冷却することでmTiOx層を形成した。得られた基板を30分間UVオゾン処理することで洗浄した。
ペロブスカイト溶液(CsI 13.0mgのヨウ化セシウム、150.5mgのホルムアミジンヨウ化水素酸塩、14.0mgのメチルアミン臭化水素酸塩、45.9mgの二臭化鉛、426.4mgのよう化鉛(II)、800uμLのジメチルホルムアミド、及び200μLのジメチルスルホキシドの混合溶液を5分間超音波処理し、窒素雰囲気下、ポリエーテルスルホンフィルターでフィルタリングした溶液)を、cTiOx層とmTiOx層を堆積させたFTOガラス基板に窒素雰囲気下でスピンコート(75μL、1000回転/秒で回転させ、回転開始から10秒後に4000回転/秒で回転させ、4000回転開始から5秒後にイソプロパノールを400μL滴下し、その後25秒間回転させた)した。得られた基板を110℃に設定したホットプレート上で窒素雰囲気下15分間加熱し、室温まで冷却した。具体例のNo.1で表される化合物のクロロホルム溶液(50μL、1mg/mL、ポリテトラフルオロエチレンでフィルタリング)を窒素雰囲気下でスピンコート(1000回転/秒、30秒間)し、ホール輸送層を成膜した。その後、ホール輸送層上に金電極を抵抗加熱真空蒸着法で成膜(基板温度室温、蒸着速度1.0Å/秒)し、ペロブスカイト太陽電池を作製した。
窒素雰囲気下でKeysight社製のB2901Aと分光計器社製のソーラーシミュレーター(OTENTO-SUN III)を用い、分光計器社製の光量調整用基準Siフォトダイオード(BS-520BK)を用いて光量を調整し、FTO電極をアノード電極、金電極をカソード電極として1sun(AM1.5G)の条件下で、前記で得られたペロブスカイト太陽電池のJ-V測定を行った結果、短絡電流は21.8mA/cm、開放電圧は0.34V、曲線因子は0.41、光電変換効率は3.1%であった。
実施例15(実施例1で得られた具体例のNo.1で表される化合物をホール輸送層として用いたペロブスカイト太陽電池の作製と評価)
実施例16と同じ手法で作製したホール輸送層形成前のペロブスカイト薄膜へ、抵抗加熱真空蒸着法によって実施例1で得られた具体例のNo.1で表される化合物の厚さ30nmの薄膜を形成することで、実施例1で得られた具体例のNo.1で表される化合物をホール輸送層として用いたペロブスカイト太陽電池を作製した。真空蒸着の際の基板温度は室温、蒸着速度は1.0乃至2.0Å/秒とした。
作製した素子を乾燥空気中で12時間静置し、実施例14と同じ方法で測定を行ったところ、短絡電流は21.7mA/cm、開放電圧は0.88V、曲線因子は0.44、光電変換効率は8.4%であった。
実施例16(実施例3で得られた具体例のNo.5で表される化合物をホール輸送層として用いたペロブスカイト太陽電池の作製と評価)
実施例1で得られた具体例のNo.1で表される化合物のクロロホルム溶液(1.0部/リットル)を、実施例3で得られた具体例のNo.5で表される化合物のクロロホルム溶液(1.5部/リットル)に変更した以外は実施例14と同じ方法でペロブスカイト太陽電池を作製し、評価を行った。
実施例14と同じ方法で測定を行ったところ短絡電流は21.8mA/cm、開放電圧は0.86V、曲線因子は0.56、光電変換効率は10.5%であった。
実施例17(実施例4で得られた具体例のNo.9で表される化合物をホール輸送層として用いたペロブスカイト太陽電池の作製と評価)
実施例1で得られた具体例のNo.1で表される化合物を、実施例4で得られた具体例のNo.9で表される化合物へ変更した以外は実施例14と同じ方法でペロブスカイト太陽電池を作製し、評価を行った。
実施例14と同じ方法で測定を行ったところ短絡電流は21.2mA/cm、開放電圧は0.43V、曲線因子は0.41、光電変換効率は3.7%であった。
比較例1(ドーパントを使用しない熱電変換素子の作製と評価)
実施例7と同じ手法で作製したドーピング前のBBL薄膜を、本発明のジピラニリデン化合物でドーピングすることなく実施例7と同じ方法で測定を行ったところ、伝導率は1.2μS/cm、であった。電気伝導度が低く熱起電力が測定できなかったため、ゼーベック係数とパワーファクターの算出はできなかった。
比較例2(式(x)で表される化合物のHOMO準位)
公知の方法で合成した下記式(x)で表される化合物のCV測定を行ったところ、HOMO準位は-4.49eVであった。
Figure 2024042483000029
比較例3(ドーパントとして式(x)で表される化合物を用いた熱電変換素子の作製と評価)
実施例1で得られた具体例のNo.1で表される化合物のクロロホルム溶液(1.0部/リットル)を、上記式(x)で表される化合物のクロロホルム溶液(1.5部/リットル)へ変更した以外は実施例7と同じ方法で熱電変換素子を作製し、評価を行った。その結果、伝導率は0.41μS/cmであった。電気伝導度が低く熱起電力が測定できなかったため、ゼーベック係数とパワーファクターの算出はできなかった。
比較例4(ドーパントを使用しないトランジスタ素子の作製と評価)
実施例1で得られた具体例のNo.1で表される化合物の厚さ3nmの薄膜を形成する工程を省く以外は実施例13と同じ手法でトランジスタ素子を作製し評価したところ、飽和領域の移動度は1.0cm/(V・s)、線形領域の移動度は0.25cm/(V・s)、シート抵抗は4.5MΩ、接触抵抗は145kΩ・cmであった。
比較例5(ドーパントとして式(x)で表される化合物を用いたトランジスタ素子の作製と評価)
実施例1で得られた具体例のNo.1で表される化合物の代わりに上記式(x)で表される化合物を用いた以外は実施例13と同じ手法でトランジスタ素子を作製し評価したところ、飽和領域の移動度は0.66cm/(V・s)、線形領域の移動度は0.41cm/(V・s)、シート抵抗は5.2MΩ、接触抵抗は112kΩ・cmであった。図2にトランスミッションライン法(TML法)のプロット図を示した。
比較例6(式(y)で表される化合物の熱分解温度)
n型ドーパントとして一般に入手可能な下記式(y)で表される化合物(N-DNBI)のTG分析を行ったところ、重量減少開始温度は224℃であった。
Figure 2024042483000030
比較例6(本発明の化合物をホール輸送層として用いないペロブスカイト太陽電池の作製と評価)
実施例1で得られた具体例のNo.1で表される化合物からなるホール輸送層を形成しなかったこと以外は実施例14と同じ方法でペロブスカイト太陽電池を作製し、評価を行った。その結果、短絡電流は16.3mA/cm、開放電圧は0.42V、曲線因子は0.11、光電変換効率は0.77%であった。
本発明の化合物を用いることにより、熱安定性が高く、貴金属を含まない有機ドーパント、該有機ドーパントを含む有機薄膜及び有機エレクトロニクスデバイス(高移動度、低抵抗なデバイス)を提供することができる。









Claims (8)

  1. 下記式(1)
    Figure 2024042483000031
    (式(1)中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、水酸基、アルキル基、アルコキシ基、芳香族基、アリールオキシ基、又は置換若しくは無置換アミノ基を表し、該アルキル基、アルコキシ基、芳香族基、アリールオキシ基の有する水素原子、及び置換アミノ基の置換基の有する水素原子は置換基で置換されていてもよい。Qは下記式(2)乃至(7)
    Figure 2024042483000032
    から選択されるいずれかの連結基を表す。nは0又は1を表す。但し、nが0の場合、Rは水酸基、アルコキシ基、又は置換若しくは無置換のアミノ基を表し、nが0、Rがメトキシ基、かつRが水素原子の化合物は除く。)
    で表される化合物。
  2. 及びRがそれぞれ独立に水素原子、アルコキシ基、又は置換アミノ基である請求項1に記載の化合物。
  3. 及びRの少なくとも一方が水素原子又は置換アミノ基である請求項2に記載の化合物。
  4. Qが式(2)及び(3)から選択されるいずれかの連結基である請求項1に記載の化合物。
  5. 最高被占有分子軌道(HOMO)準位が-4.5eV以上である請求項1に記載の化合物。
  6. 熱重量分析における重量減少開始温度が250℃以上である請求項1に記載の化合物。
  7. 請求項1乃至6のいずれか一項に記載の化合物を含む有機薄膜。
  8. 請求項7に記載の有機薄膜を備えた有機エレクトロニクスデバイス。
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