JP2024041675A - 制御装置および制御方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】異常時におけるインバータ回路のスイッチ制御を適切に行うことができる制御装置および制御方法を提供すること。【解決手段】本願に係る制御装置は、コントローラを備える。コントローラは、直流電源の電力により三相モータを駆動するためのインバータ回路を駆動制御する駆動回路に対してインバータ回路を制御するための制御信号を送信する。コントローラは、インバータ回路の異常時におけるインバータ回路のスイッチ制御に関し、三相モータの誘起電圧および直流電源の電源電圧の関係に応じて異なるスイッチ制御を行う。【選択図】図1A

Description

本発明は、制御装置および制御方法に関する。
従来、三相モータの制御装置において、過電流や過電圧等の異常を検出した場合、インバータ回路におけるスイッチ素子を遮断することで、インバータ回路や電源を保護するフェールセーフに関する技術がある(たとえば、特許文献1参照)。
特開2022-21689号公報
従来技術は、異常時におけるインバータ回路のスイッチ制御として、スイッチ素子を遮断するフェールセーフ制御を一律で行っているが、異常が発生した際のモータの状態によっては別のフェールセーフし制御の方が良い場合がある。
本願は、上記に鑑みてなされたものであって、異常時におけるインバータ回路のスイッチ制御を適切に行うことができる制御装置および制御方法を提供することを目的とする。
本願に係る制御装置は、コントローラを備える。前記コントローラは、直流電源の電力により三相モータを駆動するためのインバータ回路を駆動制御する駆動回路に対して前記インバータ回路を制御するための制御信号を送信する。前記コントローラは、前記インバータ回路の異常時における前記インバータ回路のスイッチ制御に関し、前記三相モータの誘起電圧および前記直流電源の電源電圧の関係に応じて異なる前記スイッチ制御を行う。
実施形態の一態様によれば、異常時におけるインバータ回路のスイッチ制御を適切に行うことができるという効果を奏する。
図1Aは、制御システムの構成例を示す図である。 図1Bは、バッファ制御の制御例を示す図である。 図2は、制御装置のソフトウェア構成を示すブロック図である。 図3は、制御装置が実行するスイッチ制御に関する処理その1の処理手順を示すフローチャートである。 図4は、制御装置が実行するスイッチ制御に関する処理その2の処理手順を示すフローチャートである。
以下に、本願に係る制御装置および制御方法を実施するための形態(以下、「実施形態」と記載する)について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態により本願に係る制御装置および制御方法が限定されるものではない。また、以下の各実施形態において同一の部位には同一の符号を付し、重複する説明は省略される。
まず、図1Aを用いて、実施形態に係る制御装置を含む制御システムについて説明する。図1Aは、制御システムの構成例を示す図である。図1Aに示すように、制御システムSは、制御装置1と、インバータ回路50と、三相モータ100と、ハード異常検出回路200a,200bとを備える。
インバータ回路50は、直流電源51と、スイッチ素子52UH,52VH,52WH,52UL,52VL,52WLとを含む。スイッチ素子52UH,52VH,52WH,52UL,52VL,52WLは、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)やMOS-FET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor) 等のパワーデバイスによって構成される。
スイッチ素子52UHは、ハイサイド側(上段側)のスイッチ素子であり、3相の交流電力におけるU相に対応したスイッチ素子である。スイッチ素子52VHは、ハイサイド側のスイッチ素子であり、3相の交流電力におけるV相に対応したスイッチ素子である。スイッチ素子52WHは、ハイサイド側のスイッチ素子であり、3相の交流電力におけるW相に対応したスイッチ素子である。スイッチ素子52ULは、ローサイド側(下段側)のスイッチ素子であり、3相の交流電力におけるU相に対応したスイッチ素子である。スイッチ素子52VLは、ローサイド側のスイッチ素子であり、3相の交流電力におけるV相に対応したスイッチ素子である。スイッチ素子52WLは、ローサイド側のスイッチ素子であり、3相の交流電力におけるW相に対応したスイッチ素子である。なお、以下では、スイッチ素子52UH,52VH,52WH,52UL,52VL,52WLを特に区別しない場合、スイッチ素子52と総称する。
インバータ回路50は、直流電源51の直流電力をスイッチ素子52UH,52VH,52WH,52UL,52VL,52WLのスイッチ制御により3相の交流電力に変換して三相モータ100へ供給することで、三相モータ100を駆動する。
制御装置1は、第1コントローラ2と、第2コントローラ3と、駆動回路4と、第1バッファ5と、第2バッファ6とを備える。
第1コントローラ2は、例えば、ソフトウェア処理部であるMCU(Micro Controller Unit)で構成される。第1コントローラ2は、インバータ回路50を制御するための制御信号を、第1バッファ5を介して駆動回路4へ送信する。
具体的には、第1コントローラ2は、各スイッチ素子52UH,52VH,52WH,52UL,52VL,52WLを制御するPWM(Pulse Width Modulation)信号である制御信号をそれぞれの信号線を介して駆動回路4へ送信する。具体的には、PWM信号は、第1コントローラ2と第1バッファ5との間の信号線、第1バッファ5と駆動回路4との間の信号線、駆動回路4と各スイッチ素子52UH,52VH,52WH,52UL,52VL,52WLとの間の信号線、第1コントローラ2と第2コントローラ3との間の信号線、第2コントローラ3と第2バッファ6との間の信号線、第2バッファ6と駆動回路4との間の信号線を流れる。
第2コントローラ3は、例えば、ハードウェア処理部であるCPLD(Complex Programmable Logic Device)で構成される。第2コントローラ3は、第1コントローラ2の制御信号が出力される信号線に接続され、各制御信号を監視する。
第2コントローラ3は、第1コントローラ2から出力される制御信号のロック状態(制御信号が更新されず同じ値が継続する状態)等といった異常の有無を検出する。第2コントローラ3は、第1コントローラ2から出力される制御信号の異常を検出した場合、第1コントローラ2に代わって第2コントローラ3から駆動回路4へ制御信号を送信する。
具体的には、第1コントローラ2および第2コントローラ3は、異常の有無に応じて第1バッファ5および第2バッファ6を制御することで、第1コントローラ2および第2コントローラ3のいずれかから駆動回路4へ制御信号を送信する。
具体的には、第1バッファ5は、第1コントローラ2から出力される制御信号が正常である場合には、第1コントローラ2から出力される制御信号を通過させて駆動回路4へ送信する。一方、第1バッファ5は、第1コントローラ2から出力される制御信号が異常である場合には、第1コントローラ2から出力される制御信号をバッファすることで、駆動回路4への制御信号の送信を停止する。
また、第2バッファ6は、第1コントローラ2から出力される制御信号が正常である場合には、第1コントローラ2から出力される制御信号をバッファすることで、駆動回路4への制御信号の送信を停止する。一方、第2バッファ6は、第1コントローラ2から出力される制御信号が異常である場合には、第2コントローラ3から出力される制御信号を通過させて駆動回路4へ送信する。
ここで、図1Bを用いて、バッファ制御について詳細に説明する。図1Bは、バッファ制御の制御例を示す図である。
より具体的には、図1Bに示すように、第1コントローラ2から出力される制御信号が正常である場合、第1コントローラ2は、第1XORゲート51および第2コントローラ3それぞれにLowのイネーブル信号(EN_μC1)を出力する。また、第1コントローラ2は、第2XORゲート61および第2コントローラ3それぞれにHighのイネーブル信号(EN_μC2)を出力する。第2コントローラ3は、第1コントローラ2からのLowのイネーブル信号(EN_μC1)を受けた場合、第1XORゲート51および第1コントローラ2それぞれにLowのイネーブル信号(EN_CPLD1)を出力する。また、第2コントローラ3は、第1コントローラ2からHighのイネーブル信号(EN_μC2)を受けた場合、第2XORゲート61および第1コントローラ2それぞれにLowのイネーブル信号(EN_CPLD2)を出力する。これにより、第1XORゲート51から第1バッファ5に向けてLowの信号が出力されることで第1バッファ5がアクティブ状態(信号通過状態)となる。また、第2XORゲート61から第2バッファ6に向けてHighの信号が出力されることで第2バッファ6がノンアクティブ状態(信号遮断状態)となる。この結果、第1コントローラ2から出力される制御信号が第1バッファ5を通過して駆動回路4へ送信されるとともに、第2バッファ6では制御信号が遮断される。
また、第1コントローラ2から出力される制御信号が異常である場合、第2コントローラ3は、第1XORゲート51および第1コントローラ2それぞれにHighのイネーブル信号(EN_CPLD1)を出力する。また、第2コントローラ3は、第2XORゲート61および第1コントローラ2それぞれにLowのイネーブル信号(EN_CPLD2)を出力する。第1コントローラ2は、第2コントローラ3からのHighのイネーブル信号(EN_CPLD1)を受けた場合、第1XORゲート51および第2コントローラ3それぞれにLowのイネーブル信号(EN_μC1)を出力する。第1コントローラ2は、第2コントローラ3からのLowのイネーブル信号(EN_CPLD2)を受けた場合、第2XORゲート61および第2コントローラ3それぞれにLowのイネーブル信号(EN_μC2)を出力する。これにより、第1XORゲート51から第1バッファ5に向けてHighの信号が出力されることで第1バッファ5がノンアクティブ状態となる。また、第2XORゲート61から第2バッファ6に向けてLowの信号が出力されることで第2バッファ6がアクティブ状態となる。この結果、第1コントローラ2から出力される制御信号が第2バッファ6を通過して駆動回路4へ送信されるとともに、第1バッファ5では制御信号が遮断される。
なお、上記した説明は、第2コントローラ3がバッファ切替制御の起点となる場合(第2コントローラ3が外部からFail_AやFail_Bの異常信号を受けたり、第2コントローラ3自身が第1コントローラ2からの制御信号を監視視して異常検出した場合)の処理内容である。これに対して、第1コントローラ2がバッファ切替制御の起点となる場合(第1コントローラ2の異常検出機能が異常検出した場合)には、第1コントローラ2が出力するイネーブル信号(EN_μC1、EN_μC2)を切り替え、そのイネーブル信号を受けた第2コントローラ3も出力するイネーブル信号を切り替える。
駆動回路4は、ゲート駆動回路であり、第1コントローラ2または第2コントローラ3から入力された制御信号に基づいて、スイッチ素子52UH,52VH,52WH,52UL,52VL,52WLのゲートに電圧を印加することで、それぞれのスイッチ素子52UH,52VH,52WH,52UL,52VL,52WLのオンまたはオフを制御する。
次に、図1を用いて、インバータ回路50の異常におけるフェールセーフ制御について説明する。ここで、インバータ回路50の異常とは、例えば、駆動回路4によってスイッチ素子52のゲートに印加される電圧の異常(高電圧による過電圧または低電圧による欠圧)や、直流電源51からスイッチ素子52に過剰に電流が流れる異常、インバータ回路50が高温となる温度異常、スイッチ素子52の短絡等を含む。なお、上記の異常のうち、スイッチ素子52のゲートに印加される電圧の異常、直流電源51からスイッチ素子52に過剰に電流が流れる異常およびインバータ回路50が高温となる温度異常については、駆動回路4により検出され、Fail_A信号として第1コントローラ2および第2コントローラ3それぞれへ出力される。また、スイッチ素子52の短絡については、ハード異常検出回路200a,200bによって検出され、Fail_B信号として第1コントローラ2および第2コントローラ3それぞれへ出力される。
第2コントローラ3は、インバータ回路50の異常が検出された場合、インバータ回路50のスイッチ素子52を制御することで、フェールセーフ制御を行う。
具体的には、第2コントローラ3は、インバータ回路50の異常時におけるインバータ回路50のスイッチ制御に関し、三相モータ100の誘起電圧および直流電源51の電源電圧の関係に応じて異なるスイッチ制御を行う。
より具体的には、第1コントローラ2は、まず、インバータ回路50の異常が検出された場合(Fail_A信号またはFail_B信号が入力された場合)、三相モータ100の回転数を検出し、回転数に基づいて三相モータ100の誘起電圧を推定する。
そして、第1コントローラ2は、推定した誘起電圧と、直流電源51の電源電圧とを比較し、比較結果を第2コントローラ3へ通知する。具体的には、第1コントローラ2は、比較結果として、誘起電圧が電源電圧以上であるか、電源電圧未満であるかを示す判定結果フラグを通知する。
そして、第2コントローラ3は、誘起電圧が電源電圧未満であることを示す判定フラグが通知された場合、インバータ回路50におけるすべてのスイッチ素子52をオフする制御を行う。このすべてのスイッチ素子52をオフする制御は、SPO(Safety Pulse Off)制御とも呼ばれる。
一方、第2コントローラ3は、誘起電圧が電源電圧以上であることを示す判定フラグが通知された場合、アクティブショートサーキット(ASC)制御を行う。具体的には、第2コントローラ3は、ハイサイドASC制御またはローサイドASC制御を行う。
ハイサイドASC制御は、ハイサイド側のスイッチ素子52UH,52VH,52WHをオンし、ローサイド側のスイッチ素子52UL,52VL,52WLをオフする制御である。ローサイドASC制御は、ハイサイド側のスイッチ素子52UH,52VH,52WHをオフし、ローサイド側のスイッチ素子52UL,52VL,52WLをオンする制御である。
このように、第2コントローラ3は、インバータ回路50の異常が検出された際に誘起電圧が電源電圧以上である場合には、三相モータ100から直流電源51へ流れる回生電流が発生するため、ASC制御により回生電流を遮断する。これにより、回生電流によるインバータ回路50の故障を防ぐことができる。すなわち、異常時におけるインバータ回路50のスイッチ制御を適切に行うことができる。
また、第2コントローラ3は、インバータ回路50の異常が検出された際に誘起電圧が電源電圧未満である場合には、回生電流が発生しないため、SPO制御によりすべてのスイッチ素子52をオフする。これにより、インバータ回路50や三相モータ100の故障を防ぐことができる。
また、第2コントローラ3は、ASC制御を行っている期間において、誘起電圧が電源電圧よりも低くなった場合には、ASC制御からSPO制御に切り替える。第2コントローラ3は、ASC制御を行っている期間において、誘起電圧が電源電圧よりも低くなり回生電流が発生しなくなった場合には、インバータ回路50におけるすべてのスイッチ素子52をオフする。これにより、インバータ回路50や三相モータ100の故障を防ぐことができる。
なお、ハイサイドASC制御またはローサイドASC制御のいずれを行うかについて、第2コントローラ3は、例えば、ハイサイドASC制御およびローサイドASC制御の実施履歴に基づいて、いずれのASC制御を行うかを決定する。
具体的には、第2コントローラ3は、ハイサイドASC制御の実施回数と、ローサイドASC制御の実施回数とが均等になるように、ASC制御を行う。例えば、第2コントローラ3は、ハイサイドASC制御およびローサイドASC制御を交互に実施する。あるいは、第2コントローラ3は、まず、所定回数のハイサイドASC制御を実施した後に、所定回数のローサイドASC制御を実施してもよい。
このように、第2コントローラ3は、ハイサイドASC制御の実施回数と、ローサイドASC制御の実施回数とが均等になるように、ASC制御を行うことで、ハイサイド側のスイッチ素子52と、ローサイド側のスイッチ素子52との何れか側のスイッチ素子52の劣化が偏ることを防ぐことができる。
なお、上述では、第2コントローラ3は、誘起電圧および電源電圧の関係に基づきSPO制御を行うかASC制御を行うかを決定したが、例えば、インバータ回路50における異常が過電流である場合には、スイッチ素子52に短絡が生じるおそれがあるため、スイッチ素子52の短絡の有無に応じてSPO制御を行うかASC制御を行うかを決定してもよい。
言い換えれば、第2コントローラ3は、インバータ回路50の過電流を検出した場合におけるインバータ回路50のスイッチ制御に関し、インバータ回路50におけるスイッチ素子52に短絡が生じているか否かに応じて異なるスイッチ制御を行う。上記したように、スイッチ素子52の短絡の有無は、Fail_B信号により検出される。
具体的には、第2コントローラ3は、スイッチ素子52に短絡が生じていない場合、SPO制御を行い、スイッチ素子52に短絡が生じた場合、ASC制御を行う。なお、第2コントローラ3は、SPO制御を行う場合に、誘起電圧が電源電圧以上である場合には、ASC制御をまず行い、誘起電圧が電源電圧未満となったタイミングでSPO制御に切り替える。
このように、第2コントローラ3は、スイッチ素子52の短絡の有無に応じてSPO制御を行うかASC制御を行うかを決定することで、三相モータ100やインバータ回路50を保護しつつフェールセーフ制御を行うことができる。すなわち、異常時におけるインバータ回路50のスイッチ制御を適切に行うことができる。
また、第2コントローラ3は、ASC制御を行う場合、短絡が生じたスイッチ素子52がある側(ハイサイド側またはローサイド側)のすべてのスイッチ素子52をオンし、短絡が生じたスイッチ素子52が無い側のすべてのスイッチ素子52をオフする。
例えば、第2コントローラ3は、ハイサイド側のスイッチ素子52UH,52VH,52WHに短絡が生じた場合、ハイサイド側のスイッチ素子52UH,52VH,52WHをすべてオンするハイサイドASC制御を行う。
また、第2コントローラ3は、ローサイド側のスイッチ素子52UL,52VL,52WLに短絡が生じた場合、ローサイド側のスイッチ素子52UL,52VL,52WLをすべてオンするローサイドASC制御を行う。
このように、短絡箇所に応じてハイサイドASC制御およびローサイドASC制御のいずれを行うかを決定することで、ASC制御を適切に行うことができる。
なお、スイッチ素子52の短絡(オン状態固定となる異常)の場合の他に、断線等のオフ状態固定となる異常の場合も本発明は適用可能である。オフ状態固定となる異常の場合には、オフ状態固定となった側の全スイッチをオフ、他方側の全スイッチをオンするASC制御を行う。また、オン状態固定となる異常についても、同じ異常状態となるのであれば、スイッチの短絡に限定されない。オン状態固定/オフ状態固定のスイッチ制御状態が固定となる異常としては、スイッチ自体の異常の他に、スイッチを接続する配線の断線/短絡等の異常がある。
なお、第2コントローラ3は、ASC制御が実行される期間に、インバータ回路50での電流変動が大きいことによりスイッチ素子52が破損することを防ぐため、インバータ回路50を流れる電流値を特定の値に設定する。
具体的には、電流値は、d軸電流値については、Id=-φa/Ldを設定し、q軸電流値については、Iq=0を設定する。なおφaは、鎖交磁束であり、Ldは、d軸インダクタンスである。なお、φaは、磁石の温度により補正してもよい。
なお、モータの制御であるモータ電圧方程式は、モータ電圧のd軸、q軸成分をVd,Vq、d軸、q軸のインダクタンスをLd,Lq、モータ電流のd軸、q軸成分をId,Iq、電機子抵抗をR、回転子の電気角速度をω、d/dt微分演算子をq、永久磁石による電機子鎖交磁束をΦaとした場合、下記式によって表すことができる。
Vd = R×Id +pLd×Id-ωLqIqと、Vq = R×Iq +pLq×Iq+ωLdId+ωΦaとによって表すことができる。
磁石の鎖交磁束φaを磁石の温度によって補正した場合、三相モータ100の回転数から推定する誘起電圧の値の精度を高めることができる。この結果、誘起電圧および電源電圧の関係によりASC制御およびSPO制御の切り替えを行う場合の切替精度を高めることができる。
次に、図2を用いて、制御装置1のソフトウェア構成について説明する。図2は、制御装置1のソフトウェア構成を示すブロック図である。
図2に示すように、制御装置1は、3層監視アーキテクチャによって構成される。具体的には、制御装置1は、LEVEL1機能層L1(以下、第1層L1と記載)と、LEVEL2機能監視層L2(以下、第2層L2と記載)と、LEVEL3MCU監視層L3(以下、第3層L3と記載)とにより構成される。
第1層L1は、第1コントローラ2が有する第1コアによって動作し、トルク制御部21と、PWM信号出力部22とを備える。第2層L2は、第1コントローラ2が有する第2コアによって動作し、推定トルク演算部23と、異常管理部24とを備える。第3層L3は、第1コントローラ2が有する第3コア(もしくは、第1コアまたは第2コアの一部)、PMIC(Power management integrated circuit)および第2コントローラ3の一部によって動作し、MCU異常管理部25と、MCUチェック部26と、監視部27とを備える。
トルク制御部21は、運転者のアクセル開度に応じた入力信号に基づいて、三相モータ100に要求する要求トルクを決定し、PWM信号出力部へ通知する。PWM信号出力部22は、要求トルクに基づいて、制御信号となるPWM信号を生成し、第1バッファ5へ送信(出力)する。
推定トルク演算部23は、トルク制御部21とは別の回路にてトルク演算を行い、三相モータ100における予期しないトルク発生の異常を検出する。具体的には、推定トルク演算部23は、三相電流とレゾルバー回転角度に基づいて算出した第1トルク値と、直流電源51における直流電圧および直流電流と、CAN通信等により取得した車速とに基づいて算出した第2トルク値との乖離の有無によりトルク発生の異常の有無を検出する。言い換えれば、インバータ回路50の出力側のトルク値である第1トルク値と、インバータ回路50の入力側のトルク値である第2トルク値との乖離により異常の有無を検出する。
異常管理部24は、第1トルク値と第2トルク値との乖離により異常があると検出した場合、PWM信号出力部22にPWMコントロール信号を出力するとともに、イネーブル信号(EN_μC1,2)を第2コントローラ3へ出力する。LEVEL2機能監視層L2はPWM信号をコントロールすることが可能である。
なお、第1トルク値(T1)、第2トルク値(T2)は、極対数をPn,直流電圧をVdc、直流電流をIdc、インバータシステム効率をη、回転子の電気角速度をω、d軸、q軸のインダクタンスをLd,Lq、モータ電流のd軸、q軸成分をId,Iq、電機子鎖交磁束をΦaとした場合、下記式によって表すことができる。
T1=Pn×「Φa×Iq+(Ld-Lq)×Id×Iq」、T2=Vdc×Idc×η/ωとして表すことができる。
MCU異常管理部25は、第1コントローラ2であるMCU全体の異常(例えば、第1層L1の異常等)を検出し、正常である場合には、デフォルトのイネーブル信号(EN_μC1=Low、EN_μC2=High)を出力し、異常である場合には、異常時のイネーブル信号(EN_μC1=Low、EN_μC2=Low)を第2コントローラ3へ出力する。MCUチェック部26は、第1層L1のプログラムチェックを行う。具体的には、MCUチェック部26は、トルク制御部21やPWM信号出力部22のプログラムの異常の有無を検出する。
監視部27は、第2層L2および第3層L3の異常の有無を検出し、必要に応じて第1コントローラ2をリセットするリセット動作を行う。具体的には、監視部27は、QuestionアンドAnswer方式により推定トルク演算部23およびMCUチェック部26の異常の有無を検出する。監視部27は、推定トルク演算部23およびMCUチェック部26のいずれかからのAnswerにより異常を検出した場合には、第1コントローラ2をリセットする。
なお、第2コントローラ3は、第1コントローラ2がリセットしている期間には、PWM信号を生成し、第2バッファ6を介して駆動回路4へ送信する。これにより、第1コントローラ2のリセットを行う場合であっても、インバータ回路50を継続して駆動することができる。
次に、図3および図4を用いて、実施形態に係る制御装置1が実行する処理の処理手順について説明する。図3は、制御装置1が実行するスイッチ制御に関する処理その1の処理手順を示すフローチャートである。図4は、制御装置1が実行するスイッチ制御に関する処理その2の処理手順を示すフローチャートである。処理その1は、三相モータ100の誘起電圧と直流電源51の電源電圧との関係に応じてスイッチ制御を行う処理である。また、処理その2は、インバータ回路50におけるスイッチ素子52の短絡の有無に応じてスイッチ制御を行う処理である。なお、以下に示す処理その1および処理その2は、第1コントローラ2および第2コントローラ3によって制御装置1が稼働中に繰り返し実行される。
まず、図3を用いて、処理その1について説明する。図3に示すように、制御装置1は、インバータ回路50の異常を検出したか否かを判定する(ステップS101)。
制御装置1は、インバータ回路50の異常を検出した場合(ステップS101:Yes)、三相モータ100の回転数に基づいて、三相モータ100の誘起電圧を推定する(ステップS102)。
つづいて、制御装置1は、推定した誘起電圧が電源電圧以上であるか否かを判定する(ステップS103)。
制御装置1は、推定した誘起電圧が電源電圧以上である場合(ステップS103:Yes)、ASC制御を行い(ステップS104)、一方、誘起電圧が電源電圧未満である場合(ステップS103:No)、インバータ回路50のスイッチ素子52をすべてオフするSPO制御を行い(ステップS105)、処理を終了する。
また、制御装置1は、インバータ回路50の異常が検出されない場合(ステップS101:No)、通常制御、すなわち、インバータ回路50により三相の交流電力を三相モータ100へ供給する制御を行い(ステップS106)、処理を終了する。
まず、図4を用いて、処理その2について説明する。図4に示すように、制御装置1は、インバータ回路50の過電流を検出したか否かを判定する(ステップS201)。
制御装置1は、インバータ回路50の過電流を検出した場合(ステップS201)、ハイサイド側のスイッチ素子52に短絡が生じているか否かを判定する(ステップS202)。
制御装置1は、ハイサイド側のスイッチ素子52に短絡が生じている場合(ステップS202:Yes)、ハイサイドASC制御を行い(ステップS203)、処理を終了する。
一方、制御装置1は、ハイサイド側のスイッチ素子52に短絡が生じていない場合(ステップS202:No)、ローサイド側のスイッチ素子52に短絡が生じているか否かを判定する(ステップS204)。
制御装置1は、ローサイド側のスイッチ素子52に短絡が生じている場合(ステップS204:Yes)、ローサイドASC制御を行い(ステップS205)、処理を終了する。
一方、制御装置1は、ローサイド側のスイッチ素子52に短絡が生じていない場合(ステップS204:No)、すなわち、スイッチ素子52に短絡が生じていない場合、インバータ回路50のスイッチ素子52をすべてオフするSPO制御を行い(ステップS206)、処理を終了する。
上述してきたように、本発明は特徴点1として次の特徴を備える。実施形態に係る制御装置1は、コントローラ(第1コントローラ2および第2コントローラ3)を備える。コントローラは、直流電源51の電力により三相モータ100を駆動するためのインバータ回路50を駆動制御する駆動回路4に対してインバータ回路50を制御するための制御信号を送信する。コントローラは、インバータ回路50の異常時におけるインバータ回路50のスイッチ制御に関し、三相モータ100の誘起電圧および直流電源51の電源電圧の関係に応じて異なるスイッチ制御を行う。このような構成により、異常時におけるインバータ回路50のスイッチ制御を適切に行うことができる。
また、上述してきたように、本発明は特徴点2として次の特徴を備える。実施形態に係る制御装置1は、コントローラ(第1コントローラ2および第2コントローラ3)を備える。コントローラは、直流電源51の電力により三相モータ100を駆動するためのインバータ回路50を駆動制御する駆動回路4に対してインバータ回路50を制御するための制御信号を送信する。コントローラは、インバータ回路50の過電流を検出した場合におけるインバータ回路50のスイッチ制御に関し、インバータ回路50におけるスイッチ(スイッチ素子52)に短絡が生じているか否かに応じて異なるスイッチ制御を行う。このような構成により、異常時におけるインバータ回路50のスイッチ制御を適切に行うことができる。
なお、本発明は上記した特徴点1、2を必ず備える必要はない。例えば、以下のような内容を本発明の特徴としてもよい。
実施形態に係る制御装置1は、モータに対する制御信号を出力するする制御部としてMCU等のソフトウェア処理部で構成される第1コントローラ2に加えて、CPLD等のハードウェア処理部で構成される第2コントローラ3を備える。そして、第1コントローラ2の異常等によって第1コントローラ2から正常な制御信号が出力できない異常状態になった場合に、第2コントローラ3は、その異常状態を迅速に検出して第1コントローラに代わってモータの制御を行う。また、その際の切り替えは、第1バッファ5と第2バッファ6の動作を切り替えることによって実現する。
このような本発明によれば、モータ制御システムの異常を検出し、異常時でも所定のフェールセーフ制御といったモータ制御を行うことを迅速に行うことが可能となる。
実施形態に係る制御装置1は、MCUのソフトウェアをLEVEL1、LEVEL2、LEVEL3の三層監視アーキテクチャによって構成する。LEVEL1機能層(コア1)は主にモータトルク制御を実施する。LEVEL2機能監視層(コア2)はLEVE1機能層を監視し、冗長回路により推定トルク演算を行う。LEVEL3MCU監視層はMCUのハード異常及びLEVEL2のプログラムフォローチェックを実施する。なお、LEVEL3はPMICとCPLDの一部を含むようにしてもよい。また、LEVEL1機能層とLEVEL2機能監視層はそれぞれMCUのコア1とコア2独立で動作する。
このような本発明によれば、機能安全のレベルを格段に向上させることができる。例えば、車両における安全水準としてISOで定められているASIL(Automotive Safety Integrity Level)において最も安全レベルが高いDグレードが実現可能になる。
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
1 制御装置
2 第1コントローラ
3 第2コントローラ
4 駆動回路
5 第1バッファ
51 第1XORゲート
6 第2バッファ
61 第2XORゲート
21 トルク制御部
22 PWM信号出力部
23 推定トルク演算部
24 異常管理部
25 MCU異常管理部
26 MCUチェック部
27 監視部
50 インバータ回路
52 スイッチ素子
100 三相モータ
521 スイッチ素子
S 制御システム

Claims (10)

  1. 直流電源の電力により三相モータを駆動するためのインバータ回路を駆動制御する駆動回路に対して前記インバータ回路を制御するための制御信号を送信するコントローラを備え、
    前記コントローラは、
    前記インバータ回路の異常時における前記インバータ回路のスイッチ制御に関し、前記三相モータの誘起電圧および前記直流電源の電源電圧の関係に応じて異なる前記スイッチ制御を行う
    制御装置。
  2. 前記コントローラは、
    前記誘起電圧が前記電源電圧よりも低い場合、前記インバータ回路におけるすべてのスイッチをオフする全スイッチオフ制御を行い、前記誘起電圧が前記電源電圧よりも高い場合、ハイサイド側とロ―サイド側の一方側のスイッチをオンし、他方側をオフするアクティブショートサーキット制御を行う
    請求項1に記載の制御装置。
  3. 前記コントローラは、
    前記アクティブショートサーキット制御を行っている場合に、前記誘起電圧が前記電源電圧よりも低くなった場合には、前記アクティブショートサーキット制御から前記全スイッチオフ制御に切り替える
    請求項2に記載の制御装置。
  4. 前記アクティブショートサーキット制御は、
    前記インバータ回路におけるハイサイド側のスイッチをオンするハイサイドアクティブショートサーキット制御、および、前記インバータ回路におけるローサイド側のスイッチをオンするローサイドアクティブショートサーキット制御、のいずれかであり、
    前記コントローラは、
    前記ハイサイドアクティブショートサーキット制御および前記ローサイドアクティブショートサーキット制御の実施履歴に基づいて、いずれの前記アクティブショートサーキット制御を行うかを決定する
    請求項2に記載の制御装置。
  5. 直流電源の電力により三相モータを駆動するためのインバータ回路を駆動制御する駆動回路に対して前記インバータ回路を制御するための制御信号を送信するコントローラを備え、
    前記コントローラは、
    前記インバータ回路の過電流を検出した場合における前記インバータ回路のスイッチ制御に関し、前記インバータ回路におけるスイッチの制御状態が固定となる異常が生じているか否かに応じて異なる前記スイッチ制御を行う
    制御装置。
  6. 前記コントローラは、
    前記異常が生じていない場合、前記インバータ回路におけるすべてのスイッチをオフする全スイッチオフ制御を行い、前記異常が生じた場合、ハイサイド側とロ―サイド側の一方側のスイッチをオンし、他方側をオフするアクティブショートサーキット制御を行う
    請求項5に記載の制御装置。
  7. 前記コントローラは、
    前記インバータ回路におけるいずれかのスイッチの制御状態がオン固定となるオン固定異常が生じた場合、前記ハイサイド側および前記ローサイド側のうち、前記オン固定異常となっている前記スイッチがある側のすべてのスイッチをオンし、他方側のすべてのスイッチをオフするアクティブショートサーキット制御を行う
    請求項6に記載の制御装置。
  8. 前記コントローラは、
    前記インバータ回路におけるいずれかのスイッチの制御状態がオフ固定となるオフ固定異常が生じた場合、前記ハイサイド側および前記ローサイド側のうち、前記オフ固定異常となっている前記スイッチがある側のすべてのスイッチをオフし、他方側のすべてのスイッチをオンするアクティブショートサーキット制御を行う
    請求項6に記載の制御装置。
  9. コンピュータが実行する制御方法であって、
    直流電源の電力により三相モータを駆動するためのインバータ回路を駆動制御する駆動回路に対して前記インバータ回路を制御するための制御信号を送信し、
    前記インバータ回路の異常時における前記インバータ回路のスイッチ制御に関し、前記三相モータの誘起電圧および前記直流電源の電源電圧の関係に応じて異なる前記スイッチ制御を行うこと
    を含む制御方法。
  10. コンピュータが実行する制御方法であって、
    直流電源の電力により三相モータを駆動するためのインバータ回路を駆動制御する駆動回路に対して前記インバータ回路を制御するための制御信号を送信し、
    前記インバータ回路の過電流を検出した場合における前記インバータ回路のスイッチ制御に関し、前記インバータ回路におけるスイッチの制御状態が固定となる異常が生じているか否かに応じて異なる前記スイッチ制御を行うこと
    を含む制御方法。
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