JP2024037522A - ガス発生剤組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】着火時間が短く、かつ、低圧環境下において燃焼の中断が生じにくいガス発生剤組成物を提供することを課題とする。【解決手段】硝酸グアニジン、塩基性硝酸銅、および過塩素酸カリウムを含むガス発生剤であって、ガス発生剤組成物において、前記硝酸グアニジン、前記塩基性硝酸銅、および前記過塩素酸カリウムの合計含有量を100重量部とした場合の前記過塩素酸カリウムの含有量が12重量部以上であり、さらに、非晶質酸化物を含む、ガス発生剤組成物。【選択図】なし

Description

本開示は、ガス発生剤組成物に関する。
車両に搭載されるエアバッグ装置等の車両安全装置では、ガス発生剤組成物を使用するインフレータが用いられており、製品の信頼性を確保するための様々な試みがなされている。ガス発生剤組成物の組成の開発は幅広く行われているが、有毒ガスの発生が少なく、燃焼速度に優れる観点から、燃料成分として硝酸グアニジン、酸化剤として塩基性硝酸銅を用いた硝酸グアニジンおよび塩基性硝酸銅型のガス発生剤組成物が注目されている。
例えば、特許文献1には、硝酸グアニジンおよび塩基性硝酸銅型のガス発生剤組成物として、特定の還元剤および酸化剤を含有させ、製造段階で特定のローラー圧縮処理を適用することにより、燃焼速度に優れるガス発生剤組成物を提供する技術が開示されている。
また、特許文献2には、硝酸グアニジンおよび塩基性硝酸銅型のガス発生剤組成物として、過塩素酸カリウムを含み、硝酸グアニジン、塩基性硝酸銅、および過塩素酸カリウムのそれぞれの含有量を特定の範囲とすることにより、燃焼特性および耐熱性能が向上したガス発生剤組成物を提供する技術が開示されている。
特表2009-511411号公報 特開2018-154539号公報
従来は、燃焼速度に注目して硝酸グアニジンおよび塩基性硝酸銅型のガス発生剤組成物が検討され、さらに、更なる燃焼速度の向上を期待して過塩素酸カリウムの添加が行われてきた。
本発明者らは、硝酸グアニジンおよび塩基性硝酸銅型のガス発生剤組成物に過塩素酸カリウムを添加した系での更なる検討を行い、過塩素酸カリウムの配合比率の増加に伴い、着火時間が短くなることを見出した。一方で、低圧環境下では過塩素酸カリウムの配合比率がある程度以上になると燃焼が不安定になり中断してしまう場合があることが分かった。低圧環境下で燃焼が中断してしまうようなガス発生剤組成物をインフレータ等に用いた場合、インフレータ作動の初期又は終期などのインフレータ内部の圧力が低い時に燃焼途中でガス発生剤組成物が消火してしまうリスクがある。そのような場合、エアバッグを膨張させるためのガス量が不足し、乗客を拘束するために必要な要求が満たされなくなってしまう恐れがある。
そこで、本開示は、着火時間が短く、かつ、低圧環境下において燃焼の中断が生じにくいガス発生剤組成物を提供することを課題とする。
本発明者らは、鋭意検討の結果、硝酸グアニジンおよび塩基性硝酸銅型のガス発生剤組成物に特定量以上で過塩素酸カリウムを配合し、かつ、非晶質酸化物を含有させることにより、上記課題を解決できることを見出し、本開示に到達した。
[1] 硝酸グアニジン、塩基性硝酸銅、および過塩素酸カリウムを含むガス発生剤組成物であって、
ガス発生剤組成物において、前記硝酸グアニジン、前記塩基性硝酸銅、および前記過塩素酸カリウムの合計含有量を100重量部とした場合の前記過塩素酸カリウムの含有量が12重量部以上であり、
さらに、非晶質酸化物を含む、
ガス発生剤組成物。
[2] 前記非晶質酸化物が、シリカゲル、ケイ酸塩ガラス、ホウケイ酸塩ガラス、ホウ酸塩ガラス、アルミノケイ酸塩ガラス、アルミノリン酸塩ガラス、およびアルミノホウケイ酸塩ガラスからなる群から選択される一種以上である、[1]に記載のガス発生剤組成物。
[3] 前記ガス発生剤組成物中の前記非晶質酸化物の合計含有量が、0.1重量%以上、10重量%以下である、[1]又は[2]に記載のガス発生剤組成物。
[4] 前記非晶質酸化物の平均アスペクト比が8以下である、[1]~[3]のいずれかに記載のガス発生剤組成物。
[5] 前記非晶質酸化物の平均粒径が1μm以上、100μm以下である、[1]~[4]のいずれかに記載のガス発生剤組成物。
[6] 前記シリカゲルが、平均比表面積が300m/g以上のシリカゲルである、[1]~[5]のいずれかに記載のガス発生剤組成物。
[7] バインダーを含まない、[1]~[6]のいずれかに記載のガス発生剤組成物。[8] 硝酸グアニジンの含有量が30質量%以上、70質量%以下である、[7]に記載のガス発生剤組成物。
[9] 下記の(A)~(D)の成分から算出される酸素バランスが、-0.05g/g以上、0.05g/g以下である、[1]~[8]のいずれかに記載のガス発生剤組成物。
(A)硝酸グアニジン、ニトログアニジン、メラミン、メラミンシアヌレート、5-アミノテトラゾール、5,5’-ビ-テトラゾール,ジアンモニウム塩、グアニル尿素ジニトラミド、ジシアノジカルボンアミド、シアヌル酸、酒石酸、酒石酸Na、コハク酸、3-ニトロ-1,2,4-トリアゾール-5-オン、2-ニトロイミノ-5-ニトロヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジン、および炭素質物質
(B)塩基性硝酸銅、硝酸ストロンチウム、塩基性炭酸銅、5-AT-BCN錯体、酸化銅、過塩素酸カリウム、塩素酸カリウム、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸アンモニウム、過塩素酸アンモニウム、過塩素酸ナトリウム、酸化銅(II)、酸化銅(I)、相安定化硝酸アンモニウム(AN/KN=90/10)、および相安定化硝酸アンモニウム
(AN/KN=85/15)
(C)カルボキシメチルセルロースナトリウム、グアガム、ポリアクリルアミド、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、エチルセルロース、ポリビニルピロリドン、デンプン、およびシリコーン
(D)ステアリン酸カルシウム、およびステアリン酸マグネシウム
[10] さらに、水酸化アルミニウムを含む、[1]~[9]のいずれかに記載のガス発生剤組成物。
[11] [1]~[10]のいずれかに記載のガス発生剤組成物をペレット形状、単孔円柱形状、又は多孔円柱形状に成形したガス発生剤成形体。
[12] [1]~[10]のいずれかに記載のガス発生剤組成物、又は[11]に記載のガス発生剤成形体を有するサイドエアバッグ用インフレータ。
本開示により、着火時間が短く、かつ、低圧環境下において燃焼の中断が生じにくいガス発生剤組成物を提供することができる。
以下に本開示の実施の形態を詳細に説明するが、各実施形態における各構成及びそれら
の組み合わせ等は、一例であって、本開示の主旨から逸脱しない範囲内で、適宜、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。本開示は、実施形態によって限定されることはなく、クレームの範囲によってのみ限定される。
本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載された数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味し、「A~B」は、A以上B以下であることを意味する。
また、本明細書において、「複数」とは、「2以上」を意味する。
<ガス発生剤組成物>
本開示の一実施形態であるガス発生剤組成物(単に「ガス発生剤組成物」とも称する。)は、硝硝酸グアニジン、塩基性硝酸銅、および過塩素酸カリウムを含むガス発生剤組成物であって、
ガス発生剤組成物において、前記硝酸グアニジン、前記塩基性硝酸銅、および前記過塩素酸カリウムの合計含有量を100重量部とした場合の前記過塩素酸カリウムの含有量が12重量部以上であり、
さらに、非晶質酸化物を含む、
ガス発生剤組成物である。
本発明者らは、従来の硝酸グアニジンおよび塩基性硝酸銅型のガス発生剤組成物に過塩素酸カリウムを添加した系において、過塩素酸カリウムの配合比率を増加させることで、着火するまでの時間が短くなることを見出した。一方で、低圧環境下では過塩素酸カリウムの配合比率がある程度以上になると燃焼が不安定になり中断してしまう問題が生じることが分かった。
そこで本発明者らが鋭意検討を行った結果、非晶質酸化物を含有させることにより、過塩素酸カリウムの配合比率が高い場合でも、低圧環境下における燃焼の中断が生じにくいガス発生剤組成物を得ることができることを見出した。本発明者らは、低圧の場合は燃焼した部分の残渣が分散しやすく未燃焼部分への熱の伝達が滞り燃焼が中断するが、非晶質酸化物を含むことで残渣が分散しにくく熱を伝達しやすいため、低圧環境下における燃焼の中断が生じにくくなったと推測している。
なお、本開示において、低圧環境とは、1MPa以下の環境を意味する。
[硝酸グアニジン]
ガス発生剤組成物は、燃焼成分として硝酸グアニジンを含む。硝酸グアニジンは、公知の方法により製造したものを用いてもよく、市販品を用いてもよい。
ガス発生剤組成物中の硝酸グアニジンの含有量は特段制限されないが、30重量%以上、70重量%以下であることが好ましく、40重量%以上、60重量%以下であることがより好ましく、特に、組成物の製造を湿式で行った場合(組成物がバインダーを含む場合)には、40重量%以上、50重量%以下であることがさらに好ましく、組成物の製造を乾式で行った場合(組成物がバインダーを含まない場合)には、50重量%以上、60重量%以下であることがさらに好ましい。
上記の含有量を上記の範囲の上限以下とすることにより、酸化剤成分が不足するために有害な一酸化炭素が多く発生することを防ぎ、また、耐荷重強度を向上させることができる。また、該含有量を上記の範囲の下限以上とすることにより、発生ガス量が減少し、酸素過剰で窒素酸化物が増加することを防ぐ。
特に、組成物の製造を乾式で行った場合(組成物がバインダーを含まない場合)には、組成物中の硝酸グアニジンの含有量が30質量%未満であると成形することが難しくなり、また、70質量%超であると成形できるが強度が不十分なものとなってしまう。
[塩基性硝酸銅]
ガス発生剤組成物は、第一の酸化剤として塩基性硝酸銅を含む。塩基性硝酸銅は、公知
の方法により製造したものを用いてもよく、市販品を用いてもよい。
ガス発生剤組成物中の塩基性硝酸銅の含有量は特段制限されないが、通常10重量%以上、60重量%以下であり、10重量%以上、50重量%以下であることが好ましく、10重量%以上、40重量%以下であることがより好ましく、15重量%以上、40重量%以下であることがさらに好ましい。
上記の含有量を上記の範囲の上限以下とすることにより、発生ガス量が減少し、酸素過剰で窒素酸化物が増加することを防ぎやすくなる。また、該含有量を上記の範囲の下限以上とすることにより、酸素バランスを保ちながら燃焼温度を下げることができる。
[過塩素酸カリウム]
ガス発生剤組成物は、第二の酸化剤として過塩素酸カリウムを含む。過塩素酸カリウムは、公知の方法により製造したものを用いてもよく、市販品を用いてもよい。
ガス発生剤組成物において、硝酸グアニジン、塩基性硝酸銅、および過塩素酸カリウムの合計含有量を100重量部とした場合の過塩素酸カリウムの含有量は、12重量部以上であれば特段制限されないが、12重量部以上、35重量部以下であることが好ましく、12.5重量部以上、30重量部以下であることがより好ましく、13重量部以上、25重量部以下であることがさらに好ましい。
上記の含有量を上記の範囲の上限以下とすることにより、燃焼温度が過剰に高くなることで、エアバッグを破損するなどの現象を防ぎやすくなる。また、該含有量を上記の範囲の下限以上とすることにより、ガス発生剤組成物の着火時間を改善することができる。
ガス発生剤組成物中の硝酸グアニジン、塩基性硝酸銅、および過塩素酸カリウムの合計含有量は特段制限されないが、通常85重量%以上、100重量%未満であり、90重量%以上、99.9重量%以下であることが好ましく、90重量%以上、99.5重量%以下であることがより好ましく、93重量%以上、99.5重量%以下であることがさらに好ましい。
上記の含有量を上記の範囲の上限以下とすることにより、非晶質酸化物の効果を発揮することができる。また、該含有量を上記の範囲の下限以上とすることにより、ガス発生剤組成物の着火時間を改善することができる。
ガス発生剤組成物において、硝酸グアニジンの含有量に対する過塩素酸カリウムの含有量の比率は、重量基準で、通常10重量%以上、70重量%以下であり、10重量%以上、60重量%以下であることが好ましく、10重量%以上、55重量%以下であることがより好ましく、15重量%以上、55重量%以下であることがさらに好ましく、18重量%以上、50重量%以下であることが特に好ましい。
上記の比率を上記の範囲の上限以下とすることにより、インフレータの部品でも捕集不可能な微粒子状の残渣量が過剰に増加することを防ぐ。また、該比率を上記の範囲の下限以上とすることにより、ガス発生剤組成物の着火時間を改善することができる。
ガス発生剤組成物中の後述する(A)および(B)の成分に基づき算出される酸素バランスは特段制限されないが、通常-0.05g/g以上、0.05g/g以下であり、-0.05g/g以上、0.04g/g以下であることが好ましく、-0.05g/g以上、0.04g/g以下であることがより好ましく、-0.04g/g以上、0.03g/g以下であることがさらに好ましく、-0.03g/g以上、0.03g/g以下であることが特に好ましい。酸素バランスとは、ガス発生剤組成物を完全に酸化するのに必要な酸素の過不足量のことであり、酸素が過剰である場合には正の値、酸素が不足する場合には負の値となるものである。
この酸素バランスは、後述する(A)~(D)の成分に基づき算出されるパラメータとして満たされることが好ましいが、ガス発生組成物(ガス発生組成物全体)の酸素バランスのパラメータとして満たされてもよい。
酸素バランスを上記の範囲の上限以下とすることにより、酸素過剰による窒素酸化物が増加することを防ぎやすくなる。また、該酸素バランスを上記の範囲の下限以上とすることにより、酸素不足による一酸化炭素が増加することを防ぎやすくなる。
上記の酸素バランスの範囲の条件は、下記の(A)~(D)の成分に基づき算出される酸素バランスとして満たされること好ましい。下記の列挙される成分は、組成物に必須で含まれる成分を表すものでなく、含まれた場合に酸素バランスの計算の対象となる成分を表すものである。なお、(A)の成分は、燃料に相当する成分であり、(B)の成分は、酸化剤に相当する成分であり、(C)の成分は、バインダーに相当する成分であり、(D)の成分は、滑剤に相当する成分である。なお、ガス発生組成物は、これらの成分以外で酸素バランスに影響する成分を含んでいてもよい。
(A)硝酸グアニジン、ニトログアニジン、メラミン、メラミンシアヌレート、5-アミノテトラゾール、5,5’-ビ-テトラゾール,ジアンモニウム塩、グアニル尿素ジニトラミド、ジシアノジカルボンアミド、シアヌル酸、酒石酸、酒石酸Na、コハク酸、3-ニトロ-1,2,4-トリアゾール-5-オン、2-ニトロイミノ-5-ニトロヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジン、および炭素質物質(例えば、活性炭)
(B)塩基性硝酸銅、硝酸ストロンチウム、塩基性炭酸銅、5-AT-BCN錯体、酸化銅、過塩素酸カリウム、塩素酸カリウム、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸アンモニウム、過塩素酸アンモニウム、過塩素酸ナトリウム、酸化銅(II)、酸化銅(I)、相安定化硝酸アンモニウム(AN/KN=90/10)、および相安定化硝酸アンモニウム(AN/KN=85/15)
(C)カルボキシメチルセルロースナトリウム、グアガム、ポリアクリルアミド、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、エチルセルロース、ポリビニルピロリドン、デンプン、およびシリコーン
(D)ステアリン酸カルシウム、およびステアリン酸マグネシウム
上記の(A)の成分における炭素質物質の具体例としては、例えば、活性炭、石炭、精製炭、カーボンブラック、炭素製品、固体原油、コールタールピッチ、炭素繊維、タール、炭素、コークス、又は黒鉛等が挙げられる。
以下、酸素バランスの算出方法について説明する。
例えば、硝酸グアニジンは、下記の反応により酸化される。
CH+O→2N+CO+3H
したがって、硝酸グアニジンに係る酸素バランスは以下の式(1)から-0.262g/gとなる。塩基性硝酸銅、および過塩素酸カリウムも同様に酸化反応から酸素バランスを計算すると、塩基性硝酸銅に係る酸素バランスは0.300g/gとなり、過塩素酸カリウムに係る酸素バランスは0.462g/gとなる。
Figure 2024037522000001
よって、例えば、ガス発生剤組成物が(A)~(D)の成分として硝酸グアニジン、塩基性硝酸銅、および過塩素酸カリウムのみを含む場合、硝酸グアニジンの含有量をa(重量%)、塩基性硝酸銅の含有量をb(重量%)、過塩素酸カリウムの含有量をc(重量%)とすると、(A)~(C)の成分から算出される酸素バランスは下記の式で表される。
ガス発生剤組成物の酸素バランス(g/g)={a×(-0.262)+b×0.30
0+c×0.462}/100
上記の酸素バランスの数値範囲は、(A)~(D)の成分に基づき算出されるパラメータとして満たされることが好ましいが、ガス発生組成物(ガス発生組成物全体)の酸素バランスのパラメータとして満たされてもよい。ガス発生組成物(ガス発生組成物全体)の酸素バランスとして考える場合、組成物中の酸素バランスに寄与する全ての成分の各酸素バランスから算出することができる。
上記の(A)~(D)の各成分の酸素バランスを以下の表1に示す。また、表1には、添加され得る物質である(E)の成分として、Al(OH)、および塩基性炭酸マグネシウムを記載しているが、これらは、酸素バランスに寄与しない物質である(つまり、酸素バランスが0g/gである)。
Figure 2024037522000002
[非晶質酸化物]
ガス発生剤組成物は、上記の成分に加え、さらに、非晶質酸化物を含む。ガス発生剤組成物に非晶質酸化物を含有させることにより、短い着火時間を確保しつつ、ガス発生剤組成物の十分な燃焼量を確保することができる。
非晶質酸化物の種類は特段制限されず、例えば、シリカゲル、ケイ酸塩ガラス、ホウケイ酸塩ガラス、ホウ酸塩ガラス、アルミノケイ酸塩ガラス、アルミノリン酸塩ガラス、およびアルミノホウケイ酸塩ガラスからなる群から選択される一種以上の物質が挙げられ、シリカゲル、アルミノリン酸塩ガラス、およびアルミノホウケイ酸塩ガラスからなる群から選択される一種以上の物質であることが好ましく、シリカゲル、およびアルミノホウケイ酸塩ガラスからなる群から選択される一種以上の物質であることがより好ましく、低圧
環境下での燃焼時間が短い観点から、シリカゲルであることがさらに好ましい。なお、ここに具体的に列挙した非晶質酸化物の酸素バランスは0g/gである。
上記の非晶質酸化物は、公知の方法により製造したものを用いてもよく、市販品を用いてもよい。
ガス発生剤組成物中の非晶質酸化物の合計含有量は、特段制限されないが、0.1重量%以上、10重量%以下であることが好ましく、0.5重量%以上、10重量%以下であることがより好ましく、0.5重量%以上、5重量%以下であることがさらに好ましく、0.5重量%以上、3重量%以下であることが特に好ましい。
上記の含有量を上記の範囲の上限以下とすることにより、ガス発生剤組成物が着火するまでの時間の増加を防ぐことができる。また、該含有量を上記の範囲の下限以上とすることにより、低圧環境下における燃焼の中断という現象を改善することができる。
非晶質酸化物の形状は特段制限されず、例えば、粒子形状等の形状であってもよく、繊維形状でない形状であってもよく、ガス発生剤組成物の密度の観点から、粒子形状であることが好ましい。本開示において、粒子形状とは、平均アスペクト比が8以下であることを意味する。
非晶質酸化物の平均アスペクト比は特段制限されないが、通常8以下であり、7.5以下であることが好ましく、7以下であることがより好ましく、また、下限は特段制限されず、1以上であればよい。
上記の平均アスペクト比を上記の範囲の上限以下とすることにより、ガス発生剤組成物の密度を向上することができ、インフレータの軽量化に貢献する。
非晶質酸化物の平均アスペクト比は、(1)ガス発生剤組成物から非晶質酸化物を採取できる場合には、複数の非晶質酸化物(少なくとも10個の非晶質酸化物の粒子)を採取し、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて各非晶質酸化物を観察し、各非晶質酸化物の短径に対する長径の比(長径/短径)を求め、それらの平均値として算出することができ、また、(2)ガス発生剤組成物から非晶質酸化物を採取できない場合には、SEMを用いてガス発生剤組成物の断面を観察し、該断面上で観察される各非晶質酸化物の短径に対する長径の比(長径/短径)を求め、それらの平均値として算出することができる。
非晶質酸化物が粒子である場合、その平均粒径は特段制限されないが、通常0.1μm以上、100μm以下であり、0.5μm以上、100μm以下であることが好ましく、1μm以上、100μm以下であることがより好ましく、2μm以上、90μm以下であることがさらに好ましく、2μm以上、80μm以下であることが特に好ましい。
上記の平均粒径を上記の範囲とすることにより、低圧環境下での燃焼中断の改善効果を発揮することができる。
非晶質酸化物の平均粒径は、(1)ガス発生剤組成物から非晶質酸化物を採取できる場合には、複数の非晶質酸化物(少なくとも10個の非晶質酸化物)を採取し、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて各非晶質酸化物を観察し、各非晶質酸化物の粒径を求め、それらの平均値として算出することができ、また、(2)ガス発生剤組成物から非晶質酸化物を採取できない場合には、SEMを用いてガス発生剤組成物の断面を観察し、該断面上で観察される各非晶質酸化物の粒径を求め、それらの平均値として算出することができる。
非晶質酸化物として多孔質体であるシリカゲルを用いた場合、その平均比表面積は特段制限されないが、250m/g以上であることが好ましく、300m/g以上であることがより好ましく、また、900m/g以下であることが好ましく、700m/g以下であることがより好ましく、500m/g以下であることがさらに好ましい。シリカゲルのような多孔質体以外の非晶質酸化物については、平均比表面積でなく平均粒径を好ましい範囲に設定することが好ましい。
上記の平均比表面積を上記の範囲の上限以下とすることにより、ガス発生剤組成物の吸
湿性があがることを防ぎやすくなる。また、該平均比表面積を上記の範囲の下限以上とすることにより、燃焼性の低下を防ぎやすくなる。
上記の平均比表面積は、ガス吸着法で測定することができる。
[その他の成分]
ガス発生剤組成物は、上記の硝酸グアニジン、塩基性硝酸銅、過塩素酸カリウム、および非晶質酸化物以外の成分(以下、「その他の成分」とも称する。)を含んでいてもよく、例えば、硝酸グアニジン以外の燃料成分;塩基性硝酸銅および過塩素酸カリウム以外の酸化剤;バインダー;滑剤;中和剤;その他公知の添加剤等が挙げられる。
硝酸グアニジン以外の燃料成分としては、例えば、5-アミノテトラゾール、ビテトラゾールアンモニウム塩を含むテトラゾール類化合物;グアニジン硝酸塩、ジシアンジアミドを含むグアニジン類化合物(ニトログアニジンは除く);メラミン、トリメチロールメラミン、アルキル化メチロールメラミン、アンメリン、アンメランド、メラミンの硝酸塩、メラミンの過塩素酸塩、トリヒドラジノトリアジン、およびメラミンのニトロ化化合物を含むトリアジン類化合物等から選ばれる1種以上を挙げることができる。また、上記の(A)の成分のうち、これらの燃料成分以外の成分も燃料成分として用いてもよい。
塩基性硝酸銅および過塩素酸カリウム以外の酸化剤としては、例えば、塩基性硝酸コバルト、塩基性硝酸亜鉛、塩基性硝酸マンガン、金属硝酸塩、硝酸アンモニウム、金属過塩素酸塩、過塩素酸アンモニウム、金属塩素酸塩、金属亜硝酸塩等から選ばれる1種以上を挙げることができる。また、上記の(B)の成分のうち、これらの酸化剤以外の成分も酸化剤として用いてもよい。
バインダーとしては、カルボキシメチルセルロース(CMC)、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩(CMCNa)、カルボキシメチルセルロースカリウム塩、カルボキシメチルセルロースアンモニウム塩、酢酸セルロース、セルロースアセテートブチレート(CAB)、エチルセルロース(EC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、微結晶性セルロース、ポリアクリルヒドラジド、アクリルアミド・アクリル酸金属塩共重合体、ポリアクリルアミド・ポリアクリル酸エステル化合物の共重合体、アクリルゴムおよびシリコーン等から選ばれる1種以上を挙げることができる。また、上記の(C)の成分のうち、これらのバインダー以外の成分もバインダーとして用いてもよい。
滑剤としては、ステアリン酸カルシウム、およびステアリン酸マグネシウム等から選ばれる1種以上を挙げることができる。
中和剤としては、アルカリ金属及びアルカリ土類金属から選ばれる1種以上のカチオンを含む化合物を挙げることができる。このような化合物としては、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の炭酸塩、ケイ酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、過酸化物又は酸化物、例えば、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、シュウ酸ナトリウム、過酸化ストロンチウム、過酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化ストロンチウム、又は酸化カルシウム等を挙げることができる。
その他公知の添加剤としては、酸化第二銅、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化コバルト、酸化マンガン、酸化モリブデン、酸化ニッケル、酸化ビスマス、シリカ、アルミナ等の金属酸化物;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化コバルト、水酸化鉄等の金属水酸化物;炭酸コバルト、炭酸カルシウム;酸性白土、カオリン、タルク、ベントナイト、ケイソウ土等の金属酸化物又は水酸化物の複合化合物;ケイ酸ナトリウム、マイカモリブデン酸塩、モリブデン酸コバルト、モリブデン酸アンモニウム等の金属酸塩;二硫化モリブデン、ステアリン酸カルシウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素、メタホウ酸、ホウ酸、無水ホ
ウ酸、ガラス等から選ばれる1種以上を挙げることができる。
ガス発生剤組成物は、その他の成分として、上記の成分以外に、Al(OH)(水酸化アルミニウム)を含んでいてもよく、この添加剤は、非晶質酸化物としてアミノリン酸塩ガラスを用いた場合において、ガス発生剤組成物の燃焼温度を低減させることができる観点から有利である。
Al(OH)を用いる場合、ガス発生剤組成物中のAl(OH)の含有量は特段制限されないが、ガス発生剤組成物の燃焼温度を低減させることができる観点から、0.5重量%以上、10重量%以下であることが好ましく、1重量%以上、10重量%以下であることがより好ましく、1重量%以上、8重量%以下であることがさらに好ましい。
ガス発生剤組成物中の各成分の含有量は、一般的な定性分析法および定量分析法で分析することができ、例えば、イオンクロマト法、FT-IR、ICP-AES、XRDなどの測定結果を組み合わせることで分析することができる。また、ガス発生剤組成物に用いられる原料の量から計算することもできる。
ガス発生剤組成物は所望の形状に成形して用いることができ、ペレット状、ディスク状、球状、棒状、円柱状、単孔円柱状、又は多孔円柱状等の成形体(ガス発生剤成形体)にすることができ、特に、ペレット形状、単孔円柱状、又は多孔円柱状であることが好ましい。これらの成形体は、ガス発生剤組成物に水又は有機溶媒を添加混合し、押出成形する方法、又は打錠機等を用いて圧縮成形する方法等により製造することができる。
本開示の実施形態に係るガス発生剤組成物は高い燃焼速度を有しているので、成形体を小さくする必要がなく、製造工程が煩雑にならない。
本開示の実施形態に係るガス発生剤組成物又はそれから得られる成形体(以下、ガス発生剤組成物等とも称する。)は、例えば、各種乗り物の運転席のエアバッグ用インフレータ、助手席のエアバッグ用インフレータ、サイドエアバッグ用インフレータ、インフレータブルカーテン用インフレータ、ニーボルスター用インフレータ、インフレータブルシートベルト用インフレータ、チューブラーシステム用インフレータ、又はプリテンショナー用インフレータに適用することができる。これらの中でも、早期展開が必要とされ、短い着火時間および十分な燃焼量が特に求められるサイドエアバッグ用インフレータに好ましく適用できる。
ガス発生剤組成物又はそれから得られる成形体を含むインフレータは、ガスの供給源が、ガス発生剤等だけのパイロタイプと、アルゴン等の圧縮ガスとガス発生剤等の両方であるハイブリッドタイプのいずれでもよい。
ガス発生剤組成物又はそれから得られる成形体は、雷管やスクイブのエネルギーをガス発生剤に伝えるためのエンハンサ剤(又はブースター)等と呼ばれる着火剤として用いることもできる。
<ガス発生剤組成物の製造方法>
上記のガス発生剤組成物の製造方法は特段制限されず、公知の方法により、又は公知の方法を組み合わせて製造することができる。例えば、所望の原料を準備し、それらを混合することで製造することができる。具体的には、各原料を粉末状で混合する乾式法により、又は水や有機溶剤等の存在下で各原料を混合する湿式法により製造することができる。
また、ガス発生剤組成物を成形体として用いる場合、上記の乾式法で得られた混合物を打錠機を用いて圧縮成形して成形体を得たり、また、上記の湿式法で得られた混合物を押出機で押出した後に裁断および乾燥して成形体を得たりすることができる。これらの成形体の製造方法における製造条件は特段制限されず、目的に応じて適宜設定することができ
る。例えば、押出成形法を適用した場合、ウェブが薄いものを成形することが圧縮成形法よりも容易であるので、燃焼速度の遅い組成でも成形品を得ることができる。さらに、押出成形法は成形が比較的短時間ですむため大量生産に向いている。そのほか、押出成形法を適用した場合には、無孔、単孔、多孔等の複雑な形状の成形品を製造できるため、種々の燃焼特性を付与することができる。
ガス発生剤組成物の製造において、上記の打錠機を用いた成形を行う場合、滑沢剤(滑剤)を用いることが好ましい。滑沢剤の種類は特段制限されず、例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ショ糖脂肪酸エステル、又はタルクなどが挙げられる。ガス発生剤組成物中の滑沢剤の含有量は、0.1質量%以上、1質量%以下としてもよく、0.15質量%以上、0.6質量%以下としてもよい。
本開示における各特性の測定では、特段言及されていない場合には、測定前に、測定する環境と同様の環境に測定サンプルを2時間以上保持する。また、測定温度、測定湿度、及び測定圧力については、特段言及されていない場合には、常温(26±2℃)、常湿(59±5%RH)、及び常圧(大気圧)とする。
以下、実施例を示して本開示について更に具体的に説明する。ただし、本開示は以下の実施例に限定して解釈されるものではない。
<実験1>
[ガス発生剤組成物の製造]
(比較例1)
表2に示す比率で各原料を準備し、これらの各原料と、これらの各原料の合計重量の0.16倍の重量の水とを混合した後、押出成形機を用いて、乾燥後収縮した際の直径が3.2mmとなるように3.4mmの金型を用いてせん断速度が200~1000/秒となる速さで押出を行った。この押出により得られた試料を2.6~2.9mmの長さに裁断して、円柱形状のペレットとし、水を除去するため、予乾燥として常温で48時間以上静置したあと、乾燥機110℃で72時間以上乾燥させ、ガス発生剤組成物(酸素バランス:-0.01g/g)を製造した。この酸素バランスは、上記の(A)~(D)の成分に基づき算出される酸素バランスであり、これは他の実施例および比較例でも同様である。
(比較例2)
表2に示す比率で各原料を準備し、これらの各原料と、これらの各原料の合計重量の0.16倍の重量の水とを混合した後、比較例1と同様の方法で、ガス発生剤組成物(酸素バランス:-0.01g/g)を製造した。
(比較例3)
表2に示す比率で各原料を準備し、これらを混合した後、造粒し、これらの合計重量に対して0.15重量%のステアリン酸カルシウムを滑沢剤(滑剤)として添加した後、打錠成形機を用いて、19~22kNの条件で圧縮成形を行い、底面の直径3.2mm、高さ2.6~2.9mmの円柱形状ペレットのガス発生剤組成物(酸素バランス:-0.01g/g)を製造した。
(比較例4)
表2に示す比率で各原料を準備し、これらの各原料と、これらの各原料の合計重量の0.16倍の重量の水とを混合した後、比較例1と同様の方法で、ガス発生剤組成物(酸素バランス:-0.01g/g)を製造した。
(比較例5)
表2に示す比率で各原料を準備し、これらの各原料と、これらの各原料の合計重量の0.16倍の重量の水とを混合した後、比較例1と同様の方法で、ガス発生剤組成物(酸素バランス:-0.01g/g)を製造した。
(比較例6)
表2に示す比率で各原料を準備し、これらの各原料と、これらの各原料の合計重量の0.16倍の重量の水とを混合した後、比較例1と同様の方法で、ガス発生剤組成物(酸素バランス:-0.01g/g)を製造した。
(実施例1)
表2に示す比率で各原料を準備し、これらを混合した後、比較例3と同様の方法で、ガス発生剤組成物(酸素バランス:-0.01g/g)を製造した。アルミノホウケイ酸塩ガラスは、平均粒径11μm、平均長さ75μm(平均アスペクト比6.82)のものを用いた。
(実施例2)
表2に示す比率で各原料を準備し、これらの各原料と、これらの各原料の合計重量の0.16倍の重量の水とを混合した後、比較例1と同様の方法で、ガス発生剤組成物(酸素バランス:-0.01g/g)を製造した。シリカゲルは、平均粒径3~5μm、平均アスペクト比1~1.2、平均比表面積300m/gのものを用いた。
(実施例3)
表2に示す比率で各原料を準備し、これらの各原料と、これらの各原料の合計重量の0.16倍の重量の水とを混合した後、比較例1と同様の方法で、ガス発生剤組成物(酸素バランス:-0.01g/g)を製造した。アルミノホウケイ酸塩ガラスは、平均粒径11μm、平均長さ75μm、平均アスペクト比6.82のものを用いた。
[大気圧下燃焼試験]
上記の各ガス発生剤組成物100gをSUS製のプレートに載せ、大気圧下の試験場にて、一部にニクロム線を接触させ、ニクロム線に所定の電流を流し、その溶断エネルギーにより着火させ、100gのガス発生剤組成物を燃焼させ、一部未燃のガス発生剤組成物が残ったか(燃焼が中断したか)、又は全てのガス発生剤組成物が完全に燃え尽きたかを確認した。この確認結果を表2に示す。表2において、Aは完全に燃焼したことを意味し、Bは燃焼が中断したことを示す。
表2における略称の意味を以下に示す。これは、他の表についても同様とする。
・GN:硝酸グアニジン
・BCN:塩基性硝酸銅
・KClO:過塩素酸カリウム
・Al(OH):水酸化アルミニウム
・CMCNa:カルボキシメチルセルロースナトリウム塩
なお、表2の配合比率は、ガス発生剤組成物中の各成分の含有量比率とみなすことができる。
[5ccボンブ10%着火時間]
上記の各ガス発生剤組成物0.7gを5ccボンブ試験冶具に所定量投入し、ZPPを含む点火薬で、低温環境下(-40℃)で着火させ、最大圧力の10%に到達した時間を着火時間として規定した。
Figure 2024037522000003
表2から、ガス発生剤組成物中の過塩素酸カリウムの配合比率の増加に伴い、着火時間が短くなることが分かった。一方で、非晶質酸化物を添加しなかった態様では、過塩素酸カリウムの配合量が11重量%以上となると燃焼が中断してしまった一方で、非晶質酸化
物を添加した態様では、短い着火時間を維持しつつ、過塩素酸カリウムの配合量が11重量%以上でも完全に燃焼したことが分かった。
(比較例7)
表3に示す比率で各原料を準備し、これらの各原料と、これらの各原料の合計重量の0.16倍の重量の水とを混合した後、比較例1と同様の方法で、ガス発生剤組成物(酸素バランス:-0.01g/g)を製造した。
(比較例8)
表3に示す比率で各原料を準備し、これらの各原料と、これらの各原料の合計重量の0.16倍の重量の水とを混合した後、比較例1と同様の方法で、ガス発生剤組成物(酸素バランス:-0.01g/g)を製造した。
(比較例9)
表3に示す比率で各原料を準備し、これらを混合した後、比較例3と同様の方法で、ガス発生剤組成物(酸素バランス:-0.01g/g)を製造した。
(実施例4)
表3に示す比率で各原料を準備し、これらを混合した後、比較例3と同様の方法で、ガス発生剤組成物(酸素バランス:-0.01g/g)を製造した。アルミノリン酸塩ガラスは、平均粒径30~65μm、平均アスペクト比1~2のものを用いた。
上記の各ガス発生剤組成物100gを用いて、上述した大気圧下燃焼試験および5ccボンブ10%着火時間の評価試験と同様の試験でこれらの特性を評価した。評価結果を表2に示す。
Figure 2024037522000004
表3から、ガス発生剤組成物中の過塩素酸カリウムの配合比率の増加に伴い、着火時間が短くなることが分かった。一方で、非晶質酸化物を添加しなかった態様では、過塩素酸カリウムの配合量が11重量%以上となると燃焼が中断してしまった一方で、非晶質酸化
物を添加した態様では、短い着火時間を維持しつつ、過塩素酸カリウムの配合量が11重量%以上でも完全に燃焼したことが分かった。
<実験2>
[ガス発生剤組成物の製造]
(参考例1)
表4に示す比率で各原料を準備し、これらを混合した後、比較例3と同様の方法で、ガス発生剤組成物を製造した。
(参考例2)
表4に示す比率で各原料を準備し、これらを混合した後、比較例3と同様の方法で、ガス発生剤組成物を製造した。
(参考例3)
表4に示す比率で各原料を準備し、これらを混合した後、比較例3と同様の方法で、ガス発生剤組成物を製造した。
(参考例4)
表4に示す比率で各原料を準備し、これらを混合した後、比較例3と同様の方法で、ガス発生剤組成物を製造した。
[耐荷重強度試験]
ガス発生剤ペレット1粒を平らな金属冶具で直径方向に圧縮されるように挟み込み、圧縮試験を用いて荷重をかけペレットに亀裂が入り破断する点を耐荷重強度として測定した。この評価結果を表4に示す。
Figure 2024037522000005
表4から、ガス発生剤組成物中のGNの量を特定の範囲とすることにより、耐荷重強度に優れるガス発生剤組成物を得ることができることが分かった。耐荷重強度は、GNおよびBCNを主成分とする本実施形態の系においては、GNの含有割合が重要であり、その他のBCN、KClO、および非晶質酸化物等の物質には影響されにくいため、KClO、および非晶質酸化物等の物質を含んでも同様の傾向を示すと考えられる。
本開示に係るガス発生剤組成物は、着火時間が短く、低圧環境下における燃焼の中断が生じにくい。これにより、インフレータ作動の初期又は終期などのインフレータ内部の圧力が低圧になった時でも、短い着火時間でガス発生剤組成物を完全燃焼させることができる。このガス発生剤組成物をエアバッグで利用した場合、エアバッグを膨張させるためのガス量を十分に確保することができ、乗客を拘束するために必要な要求が満たされやすくなる。

Claims (12)

  1. 硝酸グアニジン、塩基性硝酸銅、および過塩素酸カリウムを含むガス発生剤組成物であって、
    ガス発生剤組成物において、前記硝酸グアニジン、前記塩基性硝酸銅、および前記過塩素酸カリウムの合計含有量を100重量部とした場合の前記過塩素酸カリウムの含有量が12重量部以上であり、
    さらに、非晶質酸化物を含む、
    ガス発生剤組成物。
  2. 前記非晶質酸化物が、シリカゲル、ケイ酸塩ガラス、ホウケイ酸塩ガラス、ホウ酸塩ガラス、アルミノケイ酸塩ガラス、アルミノリン酸塩ガラス、およびアルミノホウケイ酸塩ガラスからなる群から選択される一種以上である、請求項1に記載のガス発生剤組成物。
  3. 前記ガス発生剤組成物中の前記非晶質酸化物の合計含有量が、0.1重量%以上、10重量%以下である、請求項1又は2に記載のガス発生剤組成物。
  4. 前記非晶質酸化物の平均アスペクト比が8以下である、請求項1又は2に記載のガス発生剤組成物。
  5. 前記非晶質酸化物の平均粒径が1μm以上、100μm以下である、請求項1又は2に記載のガス発生剤組成物。
  6. 前記シリカゲルが、平均比表面積が300m/g以上のシリカゲルである、請求項2に記載のガス発生剤組成物。
  7. バインダーを含まない、請求項1又は2に記載のガス発生剤組成物。
  8. 硝酸グアニジンの含有量が30質量%以上、70質量%以下である、請求項7に記載のガス発生剤組成物。
  9. 下記の(A)~(D)の成分に基づき算出される酸素バランスが、-0.05g/g以上、0.05g/g以下である、請求項1又は2に記載のガス発生剤組成物。
    (A)硝酸グアニジン、ニトログアニジン、メラミン、メラミンシアヌレート、5-アミノテトラゾール、5,5’-ビ-テトラゾール,ジアンモニウム塩、グアニル尿素ジニトラミド、ジシアノジカルボンアミド、シアヌル酸、酒石酸、酒石酸Na、コハク酸、3-ニトロ-1,2,4-トリアゾール-5-オン、2-ニトロイミノ-5-ニトロヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジン、炭素質物質
    (B)塩基性硝酸銅、硝酸ストロンチウム、塩基性炭酸銅、5-AT-BCN錯体、酸化銅、過塩素酸カリウム、塩素酸カリウム、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸アンモニウム、過塩素酸アンモニウム、過塩素酸ナトリウム、酸化銅(II)、酸化銅(I)、相安定化硝酸アンモニウム(AN/KN=90/10)、相安定化硝酸アンモニウム(AN/KN=85/15)
    (C)カルボキシメチルセルロースナトリウム、グアガム、ポリアクリルアミド、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、エチルセルロース、ポリビニルピロリドン、デンプン、およびシリコーン
    (D)ステアリン酸カルシウム、およびステアリン酸マグネシウム
  10. さらに、水酸化アルミニウムを含む、請求項1又は2に記載のガス発生剤組成物。
  11. 請求項1に記載のガス発生剤組成物をペレット形状、単孔円柱形状、又は多孔円柱形状に成形したガス発生剤成形体。
  12. 請求項1に記載のガス発生剤組成物、又は請求項11に記載のガス発生剤成形体を有するサイドエアバッグ用インフレータ。
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