JP2024036744A - 製紙用フェルト基布及びその螺旋基布層の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、螺旋状に巻かれて幅方向の端部が互いに縫合された小幅基布を備える製紙用フェルト基布と、製紙用フェルト基布における螺旋基布層の製造方法とに関する。
製紙用フェルトは、抄紙機のプレスパートで使用され、搾水される湿紙を運搬する。フェルトは、経糸及び緯糸を互いに織り込んだ基布と、基布に短繊維シートをニードリングして形成したバット繊維層とを備える。基布が複数の層を備える場合、その層は、製品の丈及び幅に対応する織物を織り上げて形成する方法以外に、図5に示すように、製品幅よりも小さい幅の小幅基布1を作成し(図5(A))、小幅基布1を螺旋状に巻きながら隣接させた幅方向の端部を縫合し(図5(B))、螺旋状に巻かれた小幅基布の幅方向の長さが製品幅に達したら(図5(C))、段差が生じている両端部を機械方向に平行に切断して製紙用フェルト基布の螺旋基布層2とする(図5(D))方法が知られている。例えば、特許文献1及び2には、このような螺旋基布層と、逆方向に螺旋状に巻いた螺旋基布層とを重ね合わせて多層構造の基布を作成することが記載されている。
一般に、製紙用フェルトはその目的や適用される抄紙機に応じて個別に製造されるため、基布の寸法も製造されるフェルトごとに異なる。よって、注文を受けてから基布を製造することになるが、小幅基布を利用して基布を製造する場合、所定の幅の小幅基布をあらかじめ製造しておき、その小幅基布を螺旋状に巻きつけて縫合することにより所望の寸法の基布を製造できるため、納期を短縮できるという利点がある。一方で、小幅基布には、幅方向の端部がほつれやすいという問題があった。特許文献2に記載の発明は、小幅基布の幅方向の両端部のそれぞれに、丈方向に延在する絡み織で織り込まれた絡み糸を設けることにより、この問題を解決した。しかしながら、小幅基布の幅方向の端部に形成される縫合部において、強度及び通気性の向上や、皺の発生の抑制が更に求められた。
本発明は、以上の背景に鑑み、小幅基布の幅方向の端部における縫合部において、強度及び通気性が向上し、皺の発生が抑制された螺旋基布層を備える製紙用フェルト基布と、螺旋基布層の製造方法とを提供することを課題とする。
上記課題を解決するために本発明のある態様は、螺旋状に巻かれて幅方向の端部が互いに縫合された小幅基布(13)を備える製紙用フェルト基布(10)であって、前記小幅基布が、丈方向に延在する経糸(14)と、前記経糸に織り込まれて前記幅方向に延在する緯糸(15)と、前記幅方向の両端部のそれぞれに前記丈方向に延在するように絡み織で織り込まれた絡み糸(16)を含む絡み織部(17)とを備え、前記小幅基布の前記幅方向の前記端部が、4点以上の千鳥縫いの縫合糸(18)によって互いに縫合され、前記縫合糸における前記幅方向の折り返し点である頂点(19)は、前記小幅基布の両端部のそれぞれにおいて前記絡み織部よりも前記幅方向の内方に位置し、前記丈方向に整合して互いに隣り合う2つの前記頂点間の距離(L)は、10mm以上20mm以下である。ここで、「4点以上の千鳥縫い」とは、斜め幅方向に互いに隣り合う2つの頂点間の直線区間における上糸と下糸との交点が頂点を含めて4つ以上(2つの頂点と2つ以上の中間交点が)設けられた千鳥縫いを意味する。
この態様によれば、丈方向に整合して互いに隣り合う2つの頂点間の距離が、10mm以上20mm以下であることによって、縫合部における強度と通気性の双方が良好になるとともに、地部と縮合部との強度の差が大きくならないため皺や膨れの発生が抑制される。
上記の態様において、前記距離(L)が、12mm以上19mm以下であると良い。
この態様によれば、縫合部における強度と通気性のバランスが更に良好になる。
上記の態様において、前記小幅基布(13)の両端部のそれぞれにおいて、前記絡み織部(17)は、第1絡み織部(17a)と、前記第1絡み織部よりも前記幅方向の内方に位置する第2絡み織部(17b)とを含み、前記第1絡み織部と前記第2絡み織部との間には、1本又は2本の前記経糸(14)があっても良い。
この態様によれば、第1絡み織部と第2絡み織部との間に1本又は2本の経糸が存在するため、縫合部の強度が向上する。また、第1絡み織部と第2絡み織部との間に3本以上の経糸が存在する場合に比べて、縫合糸の頂点を第2絡み織部よりも幅方向の内方に位置させることが容易である。
上記の態様において、前記頂点(19)は、前記小幅基布(13)の両端部のそれぞれにおいて前記第2絡み織部(17b)よりも前記幅方向の内方に位置し、前記千鳥縫いは、4点千鳥縫いであり、前記縫合糸(18)の前記幅方向の中間部における上糸と下糸との交点である中間交点(20)は、前記小幅基布の両端部のそれぞれにおいて前記第1絡み織部(17a)と前記第2絡み織部との間に位置しても良い。
この態様によれば、中間交点が第1絡み織部よりも幅方向の内方に位置するため、中間交点も縫合部の強度向上に寄与する。また、4点千鳥縫いであることによって、5点以上の千鳥縫いに比べて、ミシン針によって経糸及び緯糸を損傷させるおそれが低減される。
上記課題を解決するために本発明のある態様は、製紙用フェルト基布(10)の螺旋基布層(11,12)を製造する方法であって、丈方向に延在する経糸(14)と、前記経糸に織り込まれて幅方向に延在する緯糸(15)と、前記幅方向の両端部のそれぞれに前記丈方向に延在するように絡み織で織り込まれた絡み糸(16)を含む絡み織部(17)とを備える小幅基布(13)を製造する工程と、前記小幅基布を螺旋状に巻き、前記小幅基布の隣接させた前記幅方向の端部を互いに縫合する工程とを備え、前記縫合する工程において、前記小幅基布の端部は、4点以上の千鳥縫いの縫合糸(18)によって互いに縫合され、前記縫合糸における前記幅方向の折り返し点である頂点(19)は、前記小幅基布の両端部のそれぞれにおいて前記絡み織部よりも前記幅方向の内方に位置し、前記丈方向に整合して互いに隣り合う2つの前記頂点間の距離は、10mm以上20mm以下である。
この態様によれば、丈方向に整合して互いに隣り合う2つの頂点間の距離が、10mm以上20mm以下であることによって、縫合部における強度と通気性の双方が良好になるとともに、地部と縮合部との強度の差が大きくならないため皺や膨れの発生が抑制された螺旋基布層を製造することができる。
以上の態様によれば、小幅基布の幅方向の端部における縫合部において、強度及び通気性が向上し、皺の発生が抑制された螺旋基布層を備える製紙用フェルト基布と、螺旋基布層の製造方法とを提供することができる。
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の実施形態に係る製紙用フェルト基布10を示す。製紙用フェルト基布10は、第1螺旋基布層11と、第1螺旋基布層11の表面に重ねられた第2螺旋基布層12とを備える。第1螺旋基布層11及び第2螺旋基布層12は、それぞれ、互いに反対向きに螺旋状に巻かれた小幅基布13を備える。なお、製紙用フェルト基布10は、3層以上の層を備えても良く、少なくとも1つの層が小幅基布13を備えれば、他の層は製品幅で織られた織布を備えても良い。以下の説明において、機械方向とは、製紙機に取り付けられた製紙用フェルトの進行方向を言い、機械クロス方向とは、機械方向に直交する製紙用フェルト基布10の幅の方向を言う。また、丈方向及び幅方向は、それぞれ、小幅基布13の長辺方向及び短辺方向をいう。第1螺旋基布層11及び第2螺旋基布層12において、小幅基布13の丈方向は、機械方向に対して、小幅基布13を螺旋状に巻いて第1螺旋基布層11及び第2螺旋基布層12を形成する際の螺旋を形成するための傾きα及び-αだけ傾いている。
小幅基布13の幅に関しては、幅が狭いと製品幅に達するまでの周回数が増えるため製品製作に手間が掛かり、幅が広いと切断した際の屑が増えるため廃棄物及び費用が増加することから、60~100cmが好ましい。
図2は、第1螺旋基布層11における小幅基布13の端部の縫合部21を示す。図2に示すように、小幅基布13は、丈方向に延在する経糸14と、経糸14に織り込まれて幅方向に延在する緯糸15と、丈方向に延在し幅方向の端部に配置された絡み糸16とを備える。本実施形態では、経糸14と緯糸15とは、平織組織を構成しているが、2/2クズシ(経糸14が、2本の緯糸15の表面側を通った後、2本の緯糸15の裏面側を通ることを繰り返すように織り込まれ、織布の表面に斜め方向に延在する綾目が生じるように、各々の経糸14が、隣接する経糸14に対してずれて緯糸15に織り込まれる織り方)等の他の織り方で組織を構成してもよい。経糸14、緯糸15及び絡み糸16は、それぞれ、ポリアミド系樹脂やポリエステル系樹脂等のフィラメントを素材とする。ポリアミド樹脂は、脂肪族ポリアミド樹脂が好ましく、更には、ナイロンが好ましい。ナイロンとしては、ナイロン66、ナイロン6、ナイロン12、ナイロン11、ナイロン610、ナイロン612等が挙げられる。また、ポリエステル系樹脂は、ジカルボン酸とグリコールとからなるポリエステルであれば特にその種類に限定されず、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート等であってよい。
経糸14は、モノフィラメント単糸、モノフィラメント撚糸又はマルチフィラメント撚糸であることが好ましい。経糸14は、直径が0.20mm~0.45mmのモノフィラメント単糸、又は、直径が0.15mm~0.25mmのモノフィラメント単糸からなるモノフィラメント撚糸であることが更に好ましい。
緯糸15は、モノフィラメント単糸、モノフィラメント撚糸又はマルチフィラメント撚糸であることが好ましい。緯糸15は、直径が0.15mm~0.45mmのモノフィラメント単糸であることが更に好ましい。
絡み糸16は、モノフィラメント又はマルチフィラメントである。本実施形態では、2本の絡み糸16が絡み織部17を形成している。絡み織部17は、「紗」、すなわち、一方の絡み糸16が緯糸15の表面側を通り、他方の絡み糸16が緯糸15の裏面側を通るとともに、緯糸15を1本通過するごとに互いに隣接する2つの緯糸15の間で一方の絡み糸16の表面側を通るように構成される。なお、絡み織部17は、他方の絡み糸16が緯糸15を複数本通過するごとに一方の絡み糸16の表面側を通るように変更してもよく、また、図3(B)に示すように、一方の絡み糸16を経糸14に変更して絡み織部17を形成してもよい。絡み糸16は、断面形状が円形の場合は、直径が0.15mm~0.25mmであることが好ましく、断面形状が正方形や長方形のような矩形の場合は、長辺0.20~0.40mm×短辺0.10~0.25mm、長辺/短辺の比が1.6~4.0であることが好ましい。
絡み糸16は蛍光糸であってもよい。蛍光糸は、経糸14と同色で普段は発光しないが、紫外線等の特定の波長の光を照射することにより発光する糸であることが好ましく、この場合、確認したいときのみに発光させることができ、視認性が良い。また、視認性を高めるため、絡み糸16が色付き糸であっても良い。
図2に示すように、小幅基布13の幅方向の両端部のそれぞれにおいて、絡み織部17は、第1絡み織部17aと、第1絡み織部17aよりも幅方向の内方に設けられた第2絡み織部17bとを含む。第1絡み織部17aと第2絡み織部17bとの間には1本又は2本の経糸14が存在することが好ましい。なお、図3(A)では、絡み織部17を形成する2本の絡み糸16の一方がまっすぐで、他方が屈曲し、図2では、両方の絡み糸16が屈曲しているが、製織条件によって、絡み織部17はどちらの状態にもなり得る。
小幅基布13は螺旋状に巻かれ、互いに隣接するように配置された両端部が互いに縫合糸18によって縫合される。小幅基布13の端部同士の縫合糸18による縫合は、4点千鳥縫い(4点千鳥掛け)によって行われる。4点千鳥縫いは、表面に直交する方向から見てジグザグ形状をなし、幅方向の折り返し点である頂点19と、次の幅方向の折り返し点である頂点19との間に2つの中間交点20を有する。頂点19及び中間交点20は、ミシンの上糸と下糸との交点である。小幅基布13の両端部のそれぞれにおいて、頂点19は、第2絡み織部17bよりも幅方向の内方に位置し、中間交点20は、第1絡み織部17aと第2絡み織部17bとの間に位置する。丈方向に整合して互いに隣り合う2つの頂点間の距離L、すなわち、千鳥縫いにおける幅方向に1往復する間に丈方向に進む距離Lは、10mm以上20mm以下であり、好ましくは12mm以上19mm以下である。
互いに縫合される小幅基布13の端部は、厚さ方向に互いに重ならず、かつ互いの間の隙間が広すぎないように、幅方向に互いに突き合わせた状態又は緯糸15が入れ子になった状態(一方の端部の緯糸15の先端部が、他方の端部の互いに隣り合う緯糸15の先端部間に入り込んだ状態)で縫合される。互いに重ねると、製紙用フェルト基布10(図1参照)に部分的に厚みが増加し、製造される紙にマークが生じる原因となり、隙間が広すぎると縫合部21の通気度や通水度が地部22(小幅基布13における、絡み織部17及び縫合糸18よりも幅方向の内方の部分であって、主な構成要素が経糸14及び緯糸15である部分)よりも高くなり、製造される紙にマークが生じる原因や、紙切れが生じる原因となるためである。また、互いに縫合される小幅基布13の端部において、両端部の緯糸15が互いに幅方向に整合していると、ミシン糸の力で突き合せ部が山形になりやすいため、図示するように、両端部の緯糸15は、互いに丈方向にずれて配置されることが好ましい。
製紙用フェルト基布10の第1螺旋基布層11は、作業者が以下の作業を行うことにより製造される。
まず、小幅基布13を織る。経糸14及び緯糸15を互いに織り込むと同時に絡み糸16を織り込み、小幅基布13よりも幅広の組織を作成する。絡み糸16を織り込んだ組織の絡み糸16の近傍の幅方向外側を丈方向に沿って切断する。切断した組織の絡み糸16よりも幅方向の外方に存在する経糸14を取り除き、小幅基布13とする。小幅基布13は、製造すべき製紙用フェルト基布10の寸法に関わらず、共通のものを使用できるため、予め製造しておくことができる。
次に、小幅基布13を螺旋状に巻き、1回転して隣接した小幅基布13の端部同士を順次縫合する。縫合は、4点千鳥縫いによって行われる。この時、縫合糸18の頂点19は、第2絡み織部17bよりも幅方向の内方に位置し、中間交点20は、第1絡み織部17aと第2絡み織部17bとの間に位置し、かつ、丈方向に整合して互いに隣り合う頂点間の距離Lが10mm以上20mm以下となるように、縫合が行われる。機械クロス方向の幅が所望の長さになるまで、小幅基布13を螺旋状に巻いて端部を縫合する作業は続けられる。
螺旋状に巻かれて縫合された小幅基布13は、機械方向に無端となるが、機械クロス方向の両端部には、小幅基布13の幅の分だけ段差が生じている(図5(C)参照)。そこで、ヒートカッター等の公知の手段によって、螺旋状に巻かれて縫合された小幅基布13の機械クロス方向の両端部を機械方向に沿って切断することにより、第1螺旋基布層11が完成する。なお、螺旋状に巻かれ縫合された時に、小幅基布13の機械クロス方向の両端部に段差が生じないように、螺旋状に巻かれ縫合される前に、小幅基布13の丈方向の両端部の側部を斜めに切断しておいても良い。
第2螺旋基布層12を螺旋の向きを反対にする以外は第1螺旋基布層11と同様に製造し、第1螺旋基布層11の表面に第2螺旋基布層12を重ねることにより、製紙用フェルト基布10となる。製紙用フェルト基布10に短繊維シートをニードリングしてバット繊維層を形成し、製紙用フェルトが作成される。
上記実施形態の作用効果について説明する。
小幅基布13の両端部に絡み織部17を設け、縫合糸18の千鳥縫いの頂点19が小幅基布13における絡み織部17よりも幅方向の内方に位置するため、小幅基布13の縫合部21の機械クロス方向の強度が向上する。
丈方向に整合して互いに隣り合う2つの頂点19間の距離Lが長すぎると、丈方向の単位長さ当たりの縫合糸18による小幅基布13の頂点19及び中間交点20の数が少なくなるため、縫合部21の強度が低下する。また、互いに隣り合う小幅基布13の2つの端部同士が離れやすくなるため、短繊維シートをバット繊維層にするためのニードルマシンに製紙用フェルト基布10を掛け入れる際、製紙用フェルト基布10の重みや作業者による引っ張り等で縫合部21が開いた状態となり、そのままニードルされると縫合部21の目開きやマークの原因になる。また、ニードル中に開いた状態に気付いても修復が困難であるため、作業性が悪くなる。一方、距離Lが短すぎると、縫合糸18が密になり、縫合部21の通気度や通水度が低くなるため、製造される紙にマークが生じる要因となる。また、距離Lが短くなるほど、使用する縫合糸18は多くなり、ニードルで切れた縫合糸18が製紙用フェルトの表面に飛び出しやすくなるため、マークになるリスクが高くなる。また、縫合糸18が縫合部21を固定する力が強くなり地部22よりも硬くなるため、抄紙機等で使用中、製紙用フェルトが筋曲がりをすると縫合部21は地部22よりも動きにくくなるため、地部22と縫合部21の動きに差が生じ皺や膨れが発生しやすくなる。また、縫合糸18が縮む力が全体的に強くなり、小幅基布13の端部同士がくっつく力も強くなることで、端部が互いに乗り上げて製紙用フェルト基布10が重なりやすくなる、または皺が発生しやすくなる。距離Lが10mm以上20mm以下であることにより、以上のような問題を抑制できる。
小幅基布13が螺旋状に巻かれ縫合されることによって形成された第1螺旋基布層11及び第2螺旋基布層12は、幅が広く目付重量が重い。このため縫合部21において、小幅基布13の端部同士を固定する縫合糸18の力が弱いと、片方の端部が機械方向に動きやすくなる。この状態だと製造工程(特にニードル工程)で縫合部21に皺が生じてしまう。2点千鳥縫いを採用した場合、上糸と下糸の交点が頂点19にしかない。このため、小幅基布13の端部同士を固定する力が小さくなる。3点千鳥縫いを採用した場合、中間交点20が2つの端部の境目に位置する。境目の交点は動きやすいため、2点千鳥縫いと同様、固定する力が小さくなる。4点千鳥縫いを採用した場合、どの交点も小幅基布13の網目に位置するため、端部同士を固定するのに十分な力がある。また、交点が多いため2点及び3点千鳥縫いよりも縫合部21の強度が高くなる。従って、4点千鳥縫いは、2点及び3点千鳥縫いに比べて、縫合部21の強度が高く、皺が出来にくい。なお、5点以上の千鳥縫いでも、4点千鳥縫いと同等以上の数の交点が小幅基布13の網目に位置するため、十分な強度を有するが、交点の数が多いため、ミシン針によって経糸14、緯糸15及び絡み糸16が損傷するおそれが高まるので、4点千鳥縫いが最適である。
絡み織部17が、第1絡み織部17aと第2絡み織部17bとを含み、かつ第1絡み織部17aと第2絡み織部17bとの間に経糸14があるため、第2絡み織部17bの幅方向の外方への移動が抑制され、小幅基布13の端部の縫合の強度が向上する。なお、第1絡み織部17aと第2絡み織部17bとの間の経糸14の本数が3本以上になると、第1絡み織部17aと第2絡み織部17bとの間隔が広くなり、4点千鳥縫いの頂点19が第2絡み織部17bよりも幅方向の外方に位置し易くなるため、第1絡み織部17aと第2絡み織部17bとの間の経糸14の本数は、1本又は2本とすることが好ましい。
丈方向に整合して互いに隣り合う2つの頂点19間の距離Lの異なる7種の第1螺旋基布層11と、縫合糸18なしの1種の基布層との合計8種の第1螺旋基布層11において、縫合部21と地部22との通気度の差及び強度の差を確認した。
7種の第1螺旋基布層11の基布組織は、2/2クズシであった。経糸14として、2/2/Φ0.20mmの撚糸(直径0.20mmの単糸を2本撚り下撚糸とし、その下撚糸を、下撚糸とは逆方向に撚って上撚りした諸撚糸)を用い、その単位長さ当たりの本数は、10.4本/cm(26.5本/吋)であった。緯糸15として、直径0.25mmの単糸を用い、その単位長さ当たりの本数は、9.8本/cm(25.0本/吋)であった。縫合糸18なしの1種の基布層についても、同様とした。
距離Lは、(1)6mm、(2)9mm、(3)12mm、(4)15mm、(5)18mm、(6)21mm、(7)24mmに設定された(誤差は、それぞれ、±1mm)。縫合糸18のない試験体は、小幅基布13における互いに隣り合う端部の第1絡み織部17間の距離を1mmとした。この距離は、縫合糸18を用いた試験体における第1絡み織部17間の距離と略同じであった。
通気度については、図4に示すように、試験片は、縫合部21を含む領域Aと、領域Aから幅方向に7cmずれた地部22のみからなる領域Bに対して試験を行った。8種類の通気度の差について、それぞれ3つの試験体について試験を行った。通気度の変化率は、以下の式から求めた。
(数1)
変化率(%)=(縫合部通気度-地部通気度)/(地部通気度)×100
(数1)
変化率(%)=(縫合部通気度-地部通気度)/(地部通気度)×100
強度については、縫合部21が中央に位置するように、幅方向に30cm、丈方向に5cmの長さを有する短冊状の試験片を上述の8種の試験体から切り出し、幅方向に引張試験を行った。
これらの結果を表1に示す。
(通気度評価:◎地部と殆ど差がなく問題なし、○地部との差は小さく問題が生じる可能性は低い、△地部とやや差(5.0%以上の差)があり問題が生じる可能性があり、×地部との差が大きく問題が生じる可能性が高い)
(強度評価:◎強度は十分で問題なし、○強度はある程度あり問題が生じる可能性は低い、△強度がやや弱く問題が生じる可能性があり、×強度が弱く問題が生じる可能性が高い)
(強度評価:◎強度は十分で問題なし、○強度はある程度あり問題が生じる可能性は低い、△強度がやや弱く問題が生じる可能性があり、×強度が弱く問題が生じる可能性が高い)
丈方向に隣り合う2つの頂点19間の距離Lが、12mm以上19mm以下の範囲(試験番号3~5)で通気度及び強度の双方の評価が良好であった。上記範囲よりも1段階距離の短い試験番号2(距離L=8mm)では、通気度評価がやや劣るが強度評価は良好であった。また、上記範囲よりも1段階距離の長い試験番号6(距離L=22mm)では、通気度評価は良好であるが強度評価はやや劣った。試験番号2と上記範囲の下限である試験番号3の距離Lの平均値である10mmを下限とし、試験番号6と上記範囲の下限である試験番号5の距離Lの平均値(JIS Z 8401に規定の数値の丸め方により1の位に丸めた数値)である20mmを上限とする範囲でも、許容される通気度及び強度が得られると推定された。
頂点19の位置の違いによる強度の差を確認した。基布組織、経糸14、緯糸15が実施例1と同様であり、丈方向に隣り合う2つの頂点19間の距離Lが15mm(誤差±1mm)である第1螺旋基布層11の試験体から、縫合部21が中央に位置するように、幅方向に30cm、丈方向に5cmの長さを有する短冊状の試験片を切り出し、幅方向に引っ張る試験を行った。1つの試験片には、小幅基布13の端部の各々に3つ頂点19が含まれていた。この試験片では、小幅基布13の各々の端部において、頂点19は、第2絡み織部17bよりも幅方向の内方に位置し、中間交点20は、第1絡み織部17aと第2絡み織部17bとの間に位置した。
また、比較例として、縫合糸18の位置を幅方向にずらした基布層からも、上記と同様の試験片を採取した。比較例の基布層から採取した試験片では、小幅基布13の一方の端部では、第1螺旋基布層11の試験体と同様に、頂点19は、第2絡み織部17bよりも幅方向の内方に位置し、中間交点20は、第1絡み織部17aと第2絡み織部17bとの間に位置したが、小幅基布13の他方の端部では、頂点19は、第1絡み織部17aと第2絡み織部17bとの間に位置し、中間交点20は、第1絡み織部17aよりも幅方向の外方に位置した。
それぞれ、4つの試験片について、切断強度を測定した(試験機:TENSILON RTG-1310(株式会社 エー・アンド・デイ)、チャック間距離:20cm、引張速度:200mm/min)。
切断強度の平均値は、第1螺旋基布層11の試験体では1.13kN/mであり、比較例の試験体では0.56kN/mであった。前者の強度は、後者の強度の約2倍であり、本発明の実施形態の頂点19の位置が切断強度において有利であることが示された。
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。例えば、縫合糸18は、4点千鳥縫いに代えて、5点以上の千鳥縫いで縫われてもよい。
10 :製紙用フェルト基布
11 :第1螺旋基布層
12 :第2螺旋基布層
13 :小幅基布
14 :経糸
15 :緯糸
16 :絡み糸
17 :絡み織部
17a :第1絡み織部
17b :第2絡み織部
18 :縫合糸
19 :頂点
20 :中間交点
11 :第1螺旋基布層
12 :第2螺旋基布層
13 :小幅基布
14 :経糸
15 :緯糸
16 :絡み糸
17 :絡み織部
17a :第1絡み織部
17b :第2絡み織部
18 :縫合糸
19 :頂点
20 :中間交点
Claims (5)
- 螺旋状に巻かれて幅方向の端部が互いに縫合された小幅基布を備える製紙用フェルト基布であって、
前記小幅基布が、
丈方向に延在する経糸と、
前記経糸に織り込まれて前記幅方向に延在する緯糸と、
前記幅方向の両端部のそれぞれに前記丈方向に延在するように絡み織で織り込まれた絡み糸を含む絡み織部とを備え、
前記小幅基布の前記幅方向の前記端部が、4点以上の千鳥縫いの縫合糸によって互いに縫合され、
前記縫合糸における前記幅方向の折り返し点である頂点は、前記小幅基布の両端部のそれぞれにおいて前記絡み織部よりも前記幅方向の内方に位置し、
前記丈方向に整合して互いに隣り合う2つの前記頂点間の距離は、10mm以上20mm以下である、製紙用フェルト基布。 - 前記距離が、12mm以上19mm以下である、請求項1に記載の製紙用フェルト基布。
- 前記小幅基布の両端部のそれぞれにおいて、前記絡み織部は、第1絡み織部と、前記第1絡み織部よりも前記幅方向の内方に位置する第2絡み織部とを含み、前記第1絡み織部と前記第2絡み織部との間には、1本又は2本の前記経糸がある、請求項1又は2に記載の製紙用フェルト基布。
- 前記頂点は、前記小幅基布の両端部のそれぞれにおいて前記第2絡み織部よりも前記幅方向の内方に位置し、
前記千鳥縫いは、4点千鳥縫いであり、前記縫合糸の前記幅方向の中間部における上糸と下糸との交点である中間交点は、前記小幅基布の両端部のそれぞれにおいて前記第1絡み織部と前記第2絡み織部との間に位置する、請求項3に記載の製紙用フェルト基布。 - 製紙用フェルト基布の螺旋基布層を製造する方法であって、
丈方向に延在する経糸と、前記経糸に織り込まれて幅方向に延在する緯糸と、前記幅方向の両端部のそれぞれに前記丈方向に延在するように絡み織で織り込まれた絡み糸を含む絡み織部とを備える小幅基布を製造する工程と、
前記小幅基布を螺旋状に巻き、前記小幅基布の隣接させた前記幅方向の端部を互いに縫合する工程と、
前記縫合する工程において、前記小幅基布の端部は、4点以上の千鳥縫いの縫合糸によって互いに縫合され、前記縫合糸における前記幅方向の折り返し点である頂点は、前記小幅基布の両端部のそれぞれにおいて前記絡み織部よりも前記幅方向の内方に位置し、
前記丈方向に整合して互いに隣り合う2つの前記頂点間の距離は、10mm以上20mm以下である、方法。
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JP2022141172A JP2024036744A (ja) | 2022-09-06 | 2022-09-06 | 製紙用フェルト基布及びその螺旋基布層の製造方法 |
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- 2022-09-06 JP JP2022141172A patent/JP2024036744A/ja active Pending
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