JP2024035088A - 光学素子の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】液晶化合物を含む液晶組成物を用いた光学素子を、個々のサイズより大きなサイズで塗工し、機能性を付与した領域を複数形成して、機能性を付与した領域のみを所望のサイズに切り出して作製する際に、光学素子の中心位置を容易に把握できる、光学素子の製造方法を提供。【解決手段】光学的な中心を有する機能性領域を含む光学機能層を有する光学素子を製造する光学素子の製造方法であって、少なくとも1つの機能性領域と、非機能性領域とを面内に含む液晶層を有する素子原板を作製するステップと、素子原板の液晶層の面内の位置ごとの光学特性を測定するステップと、光学特性の面内分布の測定結果から、機能性領域と、非機能性領域との境界を画定するステップと、画定した機能性領域と非機能性領域との境界を基準にして切断線を定めるステップと、切断線に沿って、素子原板を切断するステップと、を有する。【選択図】なし

Description

本発明は、光学素子(枚葉状の液晶光学フィルム)の製造方法に関する。
光の方向を制御する光学素子は多くの光学デバイスあるいはシステムで利用されている。
例えば、液晶表示装置のバックライト、実際に見ている光景に、仮想の映像および各種の情報等を重ねて表示する、AR(Augmented Reality(拡張現実))グラス、VR(Virtual reality(仮想現実))グラス、MR(Mixed reality(複合現実))グラスなどのヘッドマウントディスプレイ(HMD(Head Mounted Display))、ヘッドアップディスプレイ(HUD(Head Up Display))、プロジェクター、ビームステアリング、物体の検出および物体との距離の測定等を行うためのセンサーなど、様々な光学デバイスで光の方向を制御する光学素子が用いられている。
このような光の方向を制御する光学素子として、液晶化合物を含む液晶組成物を用いて形成された光学異方性層を有する液晶回折素子が提案されている。
特許文献1には、光学素子であって、その表面に沿った少なくとも1つの方向において変化する局所的な光軸方向を有する複屈折材料層を含んでおり、局所的な光軸方向は、複数の偏光の間で光源からの光の偏光を変化させ、光源からの光を焦点面においてスポットに合焦させ、近傍の走査が空間的に重複するように、焦点面に近接して配置された偏光感知記録媒体の表面に沿って少なくとも2次元においてスポットを走査することによって形成された光軸方向プロファイルに対応しており、偏光を変化させることとスポットを走査することとが独立に実行されるものである光学素子が記載されている。
また、特許文献1には、局所的な(液晶化合物の)光軸方向が、複屈折光学素子の表面に沿った、第1の次元及び第2の次元において変化する、レンズとして作用する光学素子が記載されている。
特許文献2には、ブラッグ条件に従って、内部を通過する光の伝播の方向を変更するように構成されている、複数の積層複屈折副層を備え、積層複屈折副層は、それぞれ、それぞれの格子周期を画定するように積層複屈折副層の隣接するものの間のそれぞれの境界面に沿って変化する局所光軸を備える、光学素子が記載されている。特許文献2に記載される光学素子は透過光を回折する光学素子である。基板(導光板)に入射する光を光学素子で回折することによって、光を基板内で全反射する角度で入射させて、基板内を光の入射方向と略垂直な方向に導光することが記載されている。
特表2015-532468号公報 特表2017-522601号公報
これらの光学素子は、特にニアアイディスプレイとして用いられる場合、その大きさは数ミリメートル四方から、大きくても5センチメートル四方または直径5センチメートル程度のサイズである。従来の知られた液晶材料の各種光学材料に関する製造上の知見から、本発明者らは、上述した液晶化合物を含む液晶組成物を用いた光学素子も、個々のサイズより大きなサイズで塗工し、機能性を付与した領域を複数形成して、機能性を付与した領域のみを所望のサイズに切り出して作製することを検討した。
ここで、特許文献1に記載されるような、局所的な(液晶化合物の)光軸方向を、複屈折光学素子の表面に沿った、第1の次元及び第2の次元において変化する構成を有し、レンズとして作用する光学素子の場合、レンズの光軸に対応する中心を有している。
中心を有する光学素子を用いる際には、機能上その中心を機器の基準線または基準点と厳密に位置合わせする必要がある。そのため、光学素子の中心位置を正確に把握しておく必要がある。しかし、液晶化合物を含む液晶組成物を用いた光学フィルムの中心は検出が難しく、機能性を付与した領域のみを所望のサイズに切り出して光学素子を作製する場合には、切り出した光学素子の中心位置を正確に把握することが難しい、という問題があった。
本発明の目的は、このような従来技術の問題点を解決することにあり、液晶化合物を含む液晶組成物を用いた光学素子を、個々のサイズより大きなサイズで塗工し、機能性を付与した領域を複数形成して、機能性を付与した領域のみを所望のサイズに切り出して作製する際に、光学素子の中心位置を容易に把握できる、光学素子の製造方法を提供することにある。
この課題を解決するために、本発明は、以下のプロセスを有する。
[1] 光学的な中心を有する機能性領域を含む光学機能層を有する光学素子を製造する光学素子の製造方法であって、
少なくとも1つの機能性領域と、非機能性領域とを面内に含む液晶層を有する素子原板を作製するステップと、
素子原板の液晶層の面内の位置ごとの光学特性を測定するステップと、
光学特性の面内分布の測定結果から、機能性領域と、非機能性領域との境界を画定するステップと、
画定した機能性領域と非機能性領域との境界を基準にして切断線を定めるステップと、
切断線に沿って、素子原板を切断するステップと、を有する、光学素子の製造方法。
[2] 光学機能層がレンズとして機能する、[1]に記載の光学素子の製造方法。
[3] 光学機能層が光渦位相差板である、[1]に記載の光学素子の製造方法。
[4] 光学特性の面内分布を測定するステップにおいて、測定する光学特性が、ヘイズ値、遅相軸方向、レターデーション、平行光透過率、クロスニコル透過率、および、偏光反射率のいずれかである、[1]に記載の光学素子の製造方法。
[5] 素子原板を切断するステップにおける切断方法は、レーザー加工である、[1]に記載の光学素子の製造方法。
[6] 素子原板を作製するステップは、
配向規制力の方向が、面内の少なくとも一方向に沿って連続的に回転しながら変化する配向パターンを有する領域Aと、配向規制力を有しないか、配向規制力の方向が変化しない領域Bと、を含む配向基板を準備するステップと、
配向基板上に、液晶化合物を含む液晶組成物からなる組成物膜を形成し、配向基板の配向規制力によって、組成物膜中の液晶化合物を配向させるステップと、
組成物膜の液晶化合物を固定して液晶層を形成するステップと、をこの順に含み、
液晶層の、配向基板の領域Aに対応する位置に機能性領域が形成され、領域Bに対応する位置に非機能性領域が形成される、[1]に記載の光学素子の製造方法。
[7] 配向基板は、基板と配向膜とを有し、
配向基板を準備するステップは、基板上に配向膜となる塗膜を形成するステップと、
塗膜の、面内の少なくとも一部の領域を干渉露光するステップと、を含む、[6]に記載の光学素子の製造方法。
[8] 干渉露光するステップにおいて、塗膜が干渉露光される領域をアパーチャで画定する、[7]に記載の光学素子の製造方法。
[9] 素子原板を準備するステップが、
基材を準備するステップと、
基材上に液晶化合物を含む液晶組成物からなる組成物膜を形成するステップと、
組成物膜の、面内の一部の領域に光パターン照射を行い、液晶化合物を、分子軸の方向が面内の少なくとも一方向に沿って連続的に回転しながら変化する液晶配向パターンに配向するステップと、
組成物膜の液晶化合物を固定して液晶層を形成するステップと、を含み、
液晶層の、光パターン照射を行った領域に機能性領域が形成される、[1]に記載の光学素子の製造方法。
[10] 光パターン照射は、偏光方向が面内の少なくとも一方向に沿って連続的に回転しながら変化する偏光パターンの照射、または、光の照射量が面内の少なくとも一方向に沿って連続的に変化する強度パターンの照射である、[9]に記載の光学素子の製造方法。
本発明によれば、液晶化合物を含む液晶組成物を用いた光学素子を、個々のサイズより大きなサイズで塗工し、機能性を付与した領域を複数形成して、機能性を付与した領域のみを所望のサイズに切り出して作製する際に、光学素子の中心位置を容易に把握できる、光学素子の製造方法を提供することができる。
本発明の光学素子の製造方法の一例を説明するための図である。 本発明の光学素子の製造方法の一例を説明するための図である。 配向膜を露光する露光装置の一例を概念的に表す図である。 本発明の光学素子の製造方法の一例を説明するための図である。 本発明の光学素子の製造方法の一例を説明するための図である。 素子原板の一例を概念的に表す図である。 図6の部分拡大図である。 液晶層の光学特性の測定方法の一例を説明するための図である。 液晶層の光学特性の測定結果を説明するための図である。 本発明の光学素子の製造方法の一例を説明するための図である。 本発明の光学素子の製造方法の他の一例を説明するための図である。 本発明の光学素子の製造方法の他の一例を説明するための図である。 本発明の光学素子の製造方法で作製される光学素子の一例を概念的に表す図である。 図13の断面図である。 図13に示す光学素子の作用を説明するための図である。 本発明の光学素子の製造方法で作製される光学素子の他の一例を概念的に表す図である。 本発明の光学素子の製造方法で作製される光学素子の他の一例を概念的に表す図である。 図17に示す光学素子が有する光学機能層中の位相を説明するための図である。 本発明の光学素子の製造方法で作製される光学素子の他の一例を概念的に表す図である。
以下、本発明の光学素子の製造方法について、添付の図面に示される好適実施形態を基に詳細に説明する。
本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレートおよびメタクリレートのいずれか一方または双方」の意味で使用される。
本明細書において、可視光は、電磁波のうち、ヒトの目で見える波長の光であり、380~780nmの波長域の光を示す。非可視光は、380nm未満の波長域および780nmを超える波長域の光である。
本明細書において、Re(λ)は、波長λにおける面内のレタデーションを表す。特に記載がないときは、波長λは、550nmとする。
本明細書において、Re(λ)は、AxoScan(Axometrics社製)において、波長λで測定した値である。AxoScanにて平均屈折率((nx+ny+nz)/3)と膜厚(d(μm))を入力することにより、
遅相軸方向(°)
Re(λ)=R0(λ)
が算出される。
なお、R0(λ)は、AxoScanで算出される数値として表示されるものであるが、Re(λ)を意味している。
<光学素子の製造方法>
本発明の光学素子の製造方法は、
光学的な中心を有する機能性領域を含む光学機能層を有する光学素子を製造する光学素子の製造方法であって、
少なくとも1つの機能性領域と、非機能性領域とを面内に含む液晶層を有する素子原板を作製するステップと、
素子原板の液晶層の面内の位置ごとの光学特性を測定するステップと、
光学特性の面内分布の測定結果から、機能性領域と、非機能性領域との境界を画定するステップと、
画定した機能性領域と非機能性領域との境界を基準にして切断線を定めるステップと、
切断線に沿って、素子原板を切断するステップと、を有する、光学素子の製造方法である。
液晶材料を用いた機能性フィルム(例えば液晶光学素子)の製造を円滑に行うため、目的の液晶光学素子を複数まとめて同一シートまたはフィルム上に製膜することがある。こうすることで、生産性の向上、および、品質の均一化を図ることができる等の利点がある。このように、複数の液晶光学素子を同一シートまたはフィルム上に設けたものを、多面付けシートまたは多面付けフィルムと呼ぶ(以下、多面付けシートと呼称する)。多面付けシートは、本発明における素子原板である。また、液晶光学素子は、本発明における光学素子である。
こうして得られた多面付けシートから液晶光学素子をデバイスに実装する際には、取扱性をよくするために、1個ごとの液晶光学素子となるよう、枚葉状に切断することが必要である。この工程を裁断、チップカット等と呼ぶことがある。ここで、中心を有する液晶光学素子を用いる際には、機能上その中心を機器の基準線または基準点と厳密に位置合わせする必要がある。そのため、液晶光学素子の中心位置を正確に把握しておく必要がある。しかしながら、液晶光学素子の中心は検出が難しく、機能性を付与した領域のみを所望のサイズに切り出して液晶光学素子を作製する場合には、切り出した液晶光学素子の中心位置を正確に把握することが難しい、という問題があった。本発明者らは、多面付けシートの製造およびその裁断に工夫を重ねることにより、フィルムの中心とカットされた端部との相対位置を精度よく制御することで、中心位置を正確に把握することができる、光学素子の製造方法を見出した。
[素子原板を作製するステップ]
素子原板を作製するステップS1は、少なくとも1つの機能性領域と、非機能性領域とを面内に含む液晶層を有する素子原板を作製するステップである。機能性領域は、光学的な機能を有する領域であって、その光学的な機能の中心を有する。光学的な機能とは、レンズ、光渦位相差板等としての機能である。機能性領域が有する機能がレンズの場合には、光学的な中心とは、レンズの光軸が通る位置である。また、機能性領域が有する機能が光渦位相差板の場合には、光学的な中心とは、出射される光渦ビームの渦中心線と、光渦位相差板との交点となる点である。
一例として、素子原板を作製するステップS1は、
配向規制力の方向が、面内の少なくとも一方向に沿って連続的に回転しながら変化する配向パターンを有する領域Aと、配向規制力を有しないか、配向規制力の方向が変化しない領域Bと、を含む配向基板を準備するステップS1-1と、
配向基板上に、液晶化合物を含む液晶組成物からなる組成物膜を形成し、配向基板の配向規制力によって、組成物膜中の液晶化合物を配向させるステップS1-2と、
組成物膜の液晶化合物を固定して液晶層を形成するステップS1-3と、をこの順に含む。
一例として、配向基板を準備するステップS1-1は、
基板上に配向膜となる塗膜を形成するステップS1-1-1と、
塗膜の、面内の少なくとも一部の領域を干渉露光するステップS1-1-2と、を含む。
図1~図4を用いて、素子原板を準備するステップS1の一例について説明する。
素子原板を準備するステップS1は、まず、配向基板を準備するステップS1-1として、図1に示すように、基板30上に配向膜となる塗膜132を形成するステップS1-1-1を実施し、次に、塗膜132の、面内の少なくとも一部の領域を干渉露光するステップS1-1-2を実施する。図1に示す例においては、露光装置50を用いて、露光装置50の露光位置と、基板30(塗膜132)との面内方向の相対位置を変えて複数回(図示例では6回)、干渉露光を実施している。干渉露光した領域には、配向規制力の方向が、面内の少なくとも一方向に沿って連続的に回転しながら変化する配向パターンが形成されて領域A134となる。それ以外の領域は、配向規制力を有しないか、配向規制力の方向が変化しない領域B136となる。
これにより、配向規制力の方向が、面内の少なくとも一方向に沿って連続的に回転しながら変化する配向パターンを有する領域A134と、配向規制力を有しないか、配向規制力の方向が変化しない領域B136と、を含む配向膜133と基板30との積層体である配向基板が作製される。
こうして形成される配向膜は、多面付けシートを構成可能に設けられていることが好ましい。すなわち、離散的に設けられた、配向パターンを有する領域A134を複数有し、それらが配向規制力を有しないか、配向規制力の方向が変化しない領域B136で互いに接続されている形態である。このように設けると、後述する液晶層を設けるステップで、液晶組成物の塗膜を各機能性領域間で略同一に設けることができ、品質の安定化を実現することができる。
図2に、配向基板を準備するステップS1-1で作製された配向基板の一部を概念的に示す拡大断面図を示す。図2に示すように、配向基板は、基板30の上に配向膜133が積層されており、配向膜133の領域A134は、矢印で概念的に示すように、その配向規制力が面内で所定のパターンで変化している。
干渉露光は後述する露光装置50を用いて行うことができる。ステップS1-1-2では、露光装置50による塗膜への干渉露光と、露光装置50における露光位置と基板30との相対位置の変更とを交互に行って塗膜の面内の複数の領域に干渉露光を実施する。露光装置50における露光位置と基板30との相対位置の変更手段としては、X-Yステージ等の公知の装置が適宜利用可能である。
(基板)
基板30は、後述する光学特性の測定において、液晶層の光学特性の測定に影響を及ぼさないものであることが好ましい。例えば、基板30は、透過率が50%以上であるのが好ましく、70%以上であるのがより好ましく、85%以上であるのがさらに好ましい。
基板30の厚さには、制限はなく、配向膜、および光学機能層を保持できる厚さを、適宜、設定すればよい。
基板30の厚さは、1~1000μmが好ましく、3~250μmがより好ましく、5~150μmがさらに好ましい。
基板30は単層であっても、多層であってもよい。
単層である場合の基板30としては、ガラス、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、アクリル、および、ポリオレフィン等からなる支持体が例示される。多層である場合の基板30の例としては、前述の単層の支持体のいずれかなどを基板として含み、この基板の表面に他の層を設けたもの等が例示される。
(配向膜)
本発明に用いる配向膜としては、複雑なパターンを形成可能なこと、配向膜に対して接触や剥離などの物理的な力が加わらず精密な形状を再現可能なことから、光配向膜を用いることが好ましい。光配向膜とは、後述するような材料に、パターン状の偏光照射を行うことによって、光の特性に応じた配向特性を生じさせることができる。
〔光配向膜〕
光配向膜としては、公知の種々の材料を利用することができる。本発明に利用可能な配向膜に用いられる光配向材料としては、例えば、特開2006-285197号公報、特開2007-76839号公報、特開2007-138138号公報、特開2007-94071号公報、特開2007-121721号公報、特開2007-140465号公報、特開2007-156439号公報、特開2007-133184号公報、特開2009-109831号公報、特許第3883848号公報および特許第4151746号公報に記載のアゾ化合物、特開2002-229039号公報に記載の芳香族エステル化合物、特開2002-265541号公報および特開2002-317013号公報に記載の光配向性単位を有するマレイミドおよび/またはアルケニル置換ナジイミド化合物、特許第4205195号および特許第4205198号に記載の光架橋性シラン誘導体、特表2003-520878号公報、特表2004-529220号公報および特許第4162850号に記載の光架橋性ポリイミド、光架橋性ポリアミドおよび光架橋性ポリエステル、ならびに、特開平9-118717号公報、特表平10-506420号公報、特表2003-505561号公報、国際公開第2010/150748号、特開2013-177561号公報および特開2014-12823号公報に記載の光二量化可能な化合物、特にシンナメート化合物、カルコン化合物およびクマリン化合物等が、好ましい例として例示される。
中でも、アゾ化合物、光架橋性ポリイミド、光架橋性ポリアミド、光架橋性ポリエステル、シンナメート化合物、および、カルコン化合物は、好適に利用される。
配向膜133の厚さには、制限はなく、配向膜32の形成材料に応じて、必要な配向機能を得られる厚さを、適宜、設定すればよい。
配向膜133の厚さは、0.01~5μmが好ましく、0.05~2μmがより好ましい。
配向膜となる塗布液の塗布は、インクジェットおよびスクロール印刷等の印刷法、ならびに、スピンコート、バーコートおよびスプレー塗布等のシート状物に液体を一様に塗布できる公知の方法が全て利用可能である。
〔配向膜の露光方法〕
配向膜の露光方法としては、同一光源(例えばレーザ光源)からの光束を分離して2つの光束とし、これら2つの光束を干渉させて干渉縞を発生させ、光配向膜に干渉縞を露光する干渉露光を行うことが好ましい。
また、干渉露光により、配向膜に形成される配向パターンは、配向規制力の方向が、面内の少なくとも一方向に沿って連続的に回転しながら変化する配向パターンであることが好ましい。さらに、配向膜に形成される配向パターンは、配向規制力の方向が連続的に回転しながら変化する一方向を、中心から外側に向かう多数の方向に有することが好ましい。すなわち、配向膜に形成される配向パターンは、配向規制力の方向が連続的に回転しながら変化する一方向を、中心から外側に向かう放射に有することが好ましい(図7参照)。
このような配向パターンを干渉露光する露光装置の一例を図3に示す。
図3に示す露光装置50は、光源52と、偏光ビームスプリッタ54と、ミラー56aおよび56bと、集光素子58と、ビームコンバイナ素子60と、偏光変換素子62とを有する。さらに、図示例の露光装置50は、ビームコンバイナ素子60と偏光変換素子62との間に、遮光部材64を有する。
露光装置50は、光源52が出射した干渉性を持つ光Mを、偏光ビームスプリッタ54によって互いに直交する直線偏光に分割し、一方の直線偏光を集光素子58で集光した後、2つの直線偏光をビームコンバイナ素子60で重ね合わせて、偏光変換素子62によって、円偏光に変換する。この露光装置50は、旋回方向が逆方向である2つの円偏光を干渉させて塗膜132に入射することで、干渉縞を生成して塗膜132を露光して、塗膜132に干渉パターン(配向パターン)を形成するものである。
このような露光装置50において、遮光部材64は、光が透過する開口64aを有することにより、光の照射領域を規制する公知の遮光部材であり、いわゆるアパーチャを有する遮光部材である。露光装置50は、アパーチャを有する遮光部材64を有することにより、塗膜132において、配向パターンが形成される領域を画定する。
露光装置50において、光源52は、出射する光が干渉性を持つものであれば、公知の光源を用いることができる。特に干渉性に優れた光源として、各種のレーザー光源が好適に用いられる。
光源52が出射した干渉性を持つ光Mは、偏光ビームスプリッタ54に入射する。
偏光ビームスプリッタ54は、光源52が出射した干渉性を持つ光Mを、互いに直交する直線偏光である第1光M1と第2光M2とに分割する。図示例の偏光ビームスプリッタ54は、一例として、干渉性を持つ光Mを、S偏光の第1光M1と、P偏光の第2光M2とに分割する。
なお、S偏光とは、反射面と直交する方向の直線偏光である。他方、P偏光とは、反射面と平行な方向の直線偏光である。また、本発明において、直交する偏光とは、特性が逆の偏光すなわちポアンカレ球で互いに裏側に位置する偏光である。具体的には、直線偏光であれば互いに直交する直線偏光であり、円偏光であれば右円偏光と左円偏光である。
偏光ビームスプリッタ54は、干渉性を持つ光Mを互いに直交する直線偏光に分割できるものであれば、キューブ型およびプレート型等、公知の各種の偏光ビームスプリッタが利用可能である。
第1光M1(S偏光)は、ミラー56aによって反射され、集光素子58によって集光されて、ビームコンバイナ素子60に入射する。図示例において、集光素子58は、一例として、凸レンズである。従って、集光素子58を透過した光は、焦点に集光され、焦点以降では広がりを有する。他方、第2光M2(P偏光)は、ミラー56bによって反射されてビームコンバイナ素子60に入射する。
ビームコンバイナ素子60は、入射光の少なくとも一部を透過する第1面60aと、入射光の少なくとも一部を反射する第2面60bとを有する。ビームコンバイナ素子60の第1面60aに入射して透過した光と、第2面60bに入射して反射された光とは、重ね合わされて、ビームコンバイナ素子60から出射される。
図示例の露光装置50においては、集光素子58を透過して集光された第1光M1がビームコンバイナ素子60の第1面60aに入射して透過し、第2光M2が第2面60bに入射して反射される。第1面60aに入射して透過した第1光M1と、第2面60bに入射して反射された第2光M2とは、図3に示すように、重ね合わされる。上述のように、第1光M1と第2光M2とは、元々、同一であった干渉性を持つ光Mを分割したものである。従って、重ね合わされた第1光M1と第2光M2とは、互いに干渉する。
ビームコンバイナ素子60には、制限はなく、入射光を透過する第1面60aと、入射光を反射する第2面60bとを有し、第1面60aに入射して透過した光と、第2面60bによって反射された光とを、重ね合わせることができるものであれば、公知のものが利用可能である。すなわち、ビームコンバイナ素子60としては、一例として、ハーフミラー、キューブ型およびプレート型などの公知のビームスプリッタ、ならびに、ビームコンバイナ素子等の公知の各種のビームコンバイナ素子が利用可能である。
ビームコンバイナ素子60で重ね合わされた第1光M1および第2光M2は、遮光部材64によって一部を遮光され、次いで、偏光変換素子62によって、円偏光に変換される。上述のように、第1光M1と第2光M2とは、互いに直交する直線偏光であり、一例としてS偏光とP偏光である。従って、偏光変換素子62によって変換された第1光M1および第2光M2は、第1光M1が右円偏光に、第2光M2が左円偏光に変換される。あるいは、偏光変換素子62によって変換された第1光M1および第2光M2は、第1光M1が左円偏光に、第2光M2が右円偏光に変換される。
偏光変換素子62としては、入射光すなわち第1光M1および第2光M2の波長において、約1/4波長となる面方向のリタデーション(リタデーションRe、位相差)を有する、いわゆる1/4波長板(1/4位相差板、λ/4板)が、好適に例示される。
1/4波長板は、公知のものが各種利用可能である。一例として、延伸されたポリカーボネートフィルム、延伸されたノルボルネン系ポリマーフィルム、炭酸ストロンチウムのような複屈折を有する無機粒子を含有して配向させた透明フィルム、支持体上に無機誘電体を斜め蒸着した薄膜、重合性液晶化合物を一軸配向させて配向固定したフィルム、および、液晶化合物を一軸配向させて配向固定したフィルムなどが例示される。また、偏光変換素子62は、複数の光学素子を組み合わせたものであってもよい。この際には、複数の光学素子を組み合わせた形態で、リタデーションが約1/4波長となればよい。
上述のように、露光装置50は、旋回方向が逆方向である2つの円偏光を干渉させて塗膜132に入射することで、干渉縞を生成して塗膜132を露光して、塗膜132の一部の領域に干渉パターンを形成するものである。
具体的には、露光装置50が塗膜132に形成する干渉パターンは、配向規制力の方向が微細な領域ごとに異なるものとなり、配向規制力の方向を短い直線で表すと、短い直線が、一方向に向かって連続的に回転しながら変化するパターンを、内側から外側に向かう同心円状に有する、同心円状の干渉パターン(配向パターン)となる。言い換えれば、露光装置50が塗膜132に形成する干渉パターンは、短い直線が連続的に回転しながら変化する一方向を放射状に有する干渉パターンとなる。
露光装置50では、右円偏光と左円偏光との干渉により、塗膜132に照射される光の偏光状態は、干渉縞状に周期的に変化するものとなる。ここで、図3に示すように、第1光M1は、集光素子58(凸レンズ)によって集光され、焦点以降では広がりを有する。言い換えれば、第1光M1は、集光素子58の焦点以降では発散(拡散)する。すなわち、干渉する第1光M1と第2光M2とは、同心円の内側から外側に向かうにしたがい、左円偏光と右円偏光の交差角が変化する。その結果、塗膜132において、干渉パターンが周期的に変化し、かつ、内側から外側に向かって変化の周期が短くなる同心円状の干渉パターンが得られる。
なお、集光素子58は凸レンズに制限はされず、フレネルレンズ、および、非球面レンズ等の公知の各種の集光素子が利用可能である。また、集光素子58は、収差の抑制等を目的として、複数の光学素子を組み合わせて構成してもよい。例えば、光を集光する凸レンズと、光を発散する凹レンズとを組み合わせて、全体として、光を凸レンズのように集光する集光素子58を構成してもよい。
この露光装置50において、配向規制力の方向が、一方向に沿って連続的に180°回転する配向パターンの1周期は、集光素子(レンズ)58の屈折力、集光素子58の焦点距離、および、集光素子58と塗膜132との距離等を変化させることで、制御できる。
また、集光素子58の屈折力(集光素子58のFナンバー)を調節することによって、光学軸が連続的に回転する一方向において、配向パターンの1周期の長さを変更できる。
具体的には、平行光と干渉させる、集光素子58で広げる光の広がり角によって、光学軸が連続的に回転する一方向において、配向パターンの1周期の長さを変えることができる。より具体的には、集光素子58の屈折力を弱くすると、平行光に近づくため、配向パターンの1周期の長さは、内側から外側に向かって緩やかに短くなる。逆に、集光素子58の屈折力を強めると、液晶配向パターンの1周期の長さは、内側から外側に向かって急に短くなる。
また、前述のとおり、露光装置50は、好ましい態様として遮光部材64を有しており、塗膜132が干渉露光される領域を画定している。一例として、遮光部材64は、矩形状の開口64aを有しており、塗膜132上に矩形状の領域A134を形成する。したがって、ステップS1-1-2において、塗膜132の面内の複数の領域に干渉露光を実施すると、図1に示すように、面内に配列された複数の矩形状の領域A134と、露光されておらず配向規制力を有しない(あるいは、配向規制力の方向が変化しない)領域B136と、を有する配向膜133が形成される。なお、遮光部材64の開口64a(アパーチャ)の形状は、矩形状に限定はされず、多角形状、円形状、楕円形状等の種々の形状とすることができる。
配向基板(配向膜133)の、配向パターンを有する領域A134は、領域A134に対応する位置(領域A134の上に)に形成された組成物膜中の液晶化合物を所定の配向パターンで配向させることで、液晶層のこの領域に、光学的な機能を発現する機能性領域を形成させる。また、配向規制力を有しないか、配向規制力の方向が変化しない領域B136に対応する位置に形成された組成物膜中の液晶化合物は配向しないため、液晶層のこの領域には、光学的な機能を有さない非機能性領域が形成される。
このような配向膜(領域A)を形成する方法としては、上記の方法に限定はされず、偏光照射の方法としては種々の方法が利用できる。例として、特開2014-16632号公報、米国公開US2020/0025987号公報に記載の方法などが例示される。
次に、素子原板を作製するステップS1は、配向基板上に、液晶化合物を含む液晶組成物からなる組成物膜を形成し、配向基板の配向規制力によって、組成物膜中の液晶化合物を配向させるステップS1-2と、組成物膜の液晶化合物を固定して液晶層を形成するステップS1-3と、を実施する。
ステップS1-2として、図4の左側の図に示すように、ステップS1-1で作製した配向基板の配向膜133上に、液晶化合物を含む液晶組成物を塗布して組成物膜140を形成する。
(液晶組成物)
光学機能層の形成に用いる液晶組成物としては、公知のものが利用できる。耐熱性、耐久性、取扱性に優れることから、重合性液晶材料を用いた重合性の液晶組成物であることが好ましい。また、光学機能層の形成に用いる液晶組成物は、さらに界面活性剤、重合開始剤等を含んでいてもよい。
また、液晶化合物としては棒状液晶化合物および円盤状液晶化合物が利用可能である。
液晶化合物を含む液晶組成物(液晶組成物に含まれる材料)としては、国際公開第2022/050321号、国際公開第2022/050319号、特開2007-108732号公報、特開2010-244038号公報、特開平01-272551号公報、特開平06-016616号公報、特開平07-110469号公報、特開平11-080081号公報等に記載のものが利用可能である。
液晶組成物の塗布は、インクジェットおよびスクロール印刷等の印刷法、ならびに、スピンコート、バーコートおよびスプレー塗布等のシート状物に液体を一様に塗布できる公知の方法が全て利用可能である。多面付けシートにおいては、これら一様に塗布できる方法で、複数枚の液晶光学素子の前駆体となる光学機能層を設けることができ、作成効率がよく、品質の安定性が高いという利点がある。
配向膜133上に液晶組成物を塗布すると、組成物膜140中の液晶化合物40が配向膜133の配向パターンに従って、所定の液晶配向状態に配向される。すなわち、図5に示すように、配向膜133の、配向パターンを有する領域A134に対応する位置(領域A134の上)に存在する組成物膜140中の液晶化合物40は、塗布直後は、図5中左側の図のようにランダムに配向されているが、図5に細矢印で概念的に示す配向膜133の配向規制力に従って、図5中右側の図のように所定の配向パターンで配向される。前述のとおり、領域A134は、配向規制力の方向が、面内の少なくとも一方向に沿って連続的に回転しながら変化する配向パターンを有している。そのため、領域A134の上に形成された組成物膜140中の液晶化合物40は、その光学軸の方向が、面内の少なくとも一方向に沿って連続的に回転しながら変化する配向パターンに配向される。一方、配向規制力を有さない領域B136の上に存在する組成物膜140中の液晶化合物40は、配向されずランダムのまま(図5の左側の図の状態のまま)である。
領域A134に対応する位置で、液晶化合物40を所定の配向パターンで配向させることで、液晶層(組成物膜140)のこの領域に、光学的な機能を発現する機能性領域を形成させる。また、配向規制力を有しないか、配向規制力の方向が変化しない領域B136に対応する位置に形成された組成物膜140中の液晶化合物40は配向しないため、液晶層のこの領域には、光学的な機能を有さない非機能性領域が形成される。
次に、ステップS1-3として、ステップS1-2で領域A134に対応する位置の液晶化合物40を所定の配向パターンの液晶相の状態に配向した後、液晶化合物を硬化して、光学機能層となる領域を含む液晶層を作製するのが好ましい。以上により、配向基板(基板30および配向膜133)上に液晶層141を有する素子原板が作製される。この際、液晶層141は、配向膜に付与された配向規制力に応じて、機能性領域、配向領域、低配向領域を形成することができる。
図6は、ステップS1-3で作製された素子原板の一例を概念的に示す上面図である。
図6に示すように、素子原板100の液晶層141は、液晶化合物40の光学軸の方向が、面内の少なくとも一方向に沿って連続的に回転しながら変化する配向パターンに配向されている機能性領域142と、液晶化合物40が配向されていない非機能性領域144とを有する。図6に示す例では、複数の機能性領域142は、面内に2次元的に配列されている。
機能性領域142とは、液晶光学素子の主な機能を発現する領域であり、機能の好ましい例としては、回折素子および液晶回折作用を用いた液晶レンズである。機能性領域142に対応する位置おいては、配向膜133の領域Aは、少なくとも一方向に連続的に回転しながら変化する液晶配向パターンを発現させるものであることが好ましい。この「少なくとも一方向」の方向に向かって、機能性領域142は方向性を有することができ、この方向性と、機能性領域142の形状とから、機能性領域142の中心を定めることができる。また、液晶レンズのように焦点を有する機能性領域142の場合、焦点から機能性領域に向かって下した垂線の足を中心と定めても良い。すなわち、液晶レンズの光学的な機能の中心41は、機能性領域142の主面に垂直な方向から見た際の液晶レンズの光軸の位置である。
図7に、1つの機能性領域142を含む領域を拡大して示す。
図7は、機能性領域142が液晶レンズの機能を有するように形成された、配向パターンの例である。この液晶レンズが有する配向パターンは、液晶レンズの光学的な機能の中心41を含む。機能性領域142において、A1、A2、A3の方向に向かって、液晶化合物40の光学軸の方向が連続的に回転しながら変化する液晶配向パターンを有している。この液晶配向パターンから得られる液晶レンズの焦点から、機能性領域142に向かって下した垂線の足が、液晶レンズの光学的な機能の中心41である。
好ましい実施の一態様としては、上述のとおり、配向膜の形成時に偏光照射を行う際、機能性領域142の形状に合わせたアパーチャを通して偏光照射を行うことにより、偏光が照射される領域A134と照射されない領域B136との違いによって、所定の形状の機能性領域142と非機能性領域144とを形成することができる。
[液晶層の光学特性の面内分布を測定するステップ、および、機能性領域と非機能性領域との境界を画定するステップ]
素子原板を作製するステップS1の後に、素子原板の液晶層の面内の位置ごとの光学特性、すなわち、光学特性の面内分布を測定するステップS2を実施し、光学特性の面内分布の測定結果から機能性領域と、非機能性領域との境界を画定するステップS3を実施する。
ステップS2およびステップS3では、液晶層141(素子原板100)の光学特性の面内分布を測定することにより、液晶層141の機能性領域142と非機能性領域144とにそれぞれ相当する領域を区別する。
ここでいう「区別する」とは、情報端末等により、液晶層141の機能性領域142と非機能性領域144とにそれぞれ相当する領域の座標情報を取得し、これらを演算処理することによって、液晶層の面内における各領域の相対位置情報を出力することを意図するものである。
測定する液晶層141(素子原板100)の光学特性としては、平行光に対する透過率、曇価(ヘイズ値)、偏光透過率、反射率、遅相軸の方向、レターデーション、クロスニコル透過率、偏光反射率、散乱などが例示されるが、光学的に測定可能な物性値であれば、本発明の趣旨を損なわない範囲で公知の物性を適宜選択することができる。
例として、図8を用いて、撮像素子で液晶層の面内の位置ごとの透過率を測定して領域を区別する場合を説明する。
素子原板100の一方の面側から、白色光源72を用いて無偏光の均一な光の照射を行い、素子原板100を透過した光を、撮像素子70で撮影する。取得された画像データを、輝度値に変換することにより、輝度値を座標上でマッピングすることができる。これにより、例えば、図9に示すような位置と輝度値との関係を表すグラフが得られる。(ただし図示のため簡略化した表現としている)。図9に概念的に示すように、機能性領域142と非機能性領域144とでは、光の透過率が異なり、機能性領域142では透過率が高くなり、非機能性領域144では透過率が低くなる。透過率が高い位置と透過率が低い位置との境界から十分離れた位置での、透過率が高い領域(機能性領域142)の透過率平均値をTa、透過率が低い領域(非機能性領域144)の透過率の平均値をTiとすると、Ta±ΔT1の輝度の領域を「演算上の機能性領域」21、Ti±ΔT2の輝度の領域を「演算上の非機能性領域」31と処理することで、液晶層141の機能性領域142と、非機能性領域144とを区別することができる。
以上のとおり、液晶層141の光学特性の面内分布の測定結果から、機能性領域142と非機能性領域144との境界を画定することができる。
例えば、光学特性としてヘイズ値を測定した場合には、機能性領域142のヘイズ値は、非機能性領域144のヘイズ値よりも低くなるため、その結果から、機能性領域142と非機能性領域144との境界を画定することができる。
また、光学特性として、偏光透過率を測定した場合には、非機能性領域は偏光に対する作用が小さく透過率が高く計測され、機能性領域は偏光に対して進行方向を変化させる作用があり透過率としては低くなるため、その結果から、機能性領域142と非機能性領域144との境界を画定することができる。
また、光学特性として、反射率を測定した場合には、例えば、透過型の光学素子である場合は、非機能性領域は後方散乱が多く機能性領域に対して反射率が高くなるため、その結果から、機能性領域142と非機能性領域144との境界を画定することができる。また、反射型の光学素子である場合は、非機能性領域は散乱のみの作用であるため機能性領域に対して反射率が相対的に低くなり、同様に境界を画定することができる。
また、光学特性として、遅相軸の方向を測定した場合には、非機能性領域は等方性に近く実質的に遅相軸が観察されないが、機能性領域は少なくともいずれかの方向には遅相軸方向を観測することができるため、その結果から、機能性領域142と非機能性領域144との境界を画定することができる。
また、光学特性として、レターデーションを測定した場合には、非機能性領域は等方性に近く実質的にレターデーションが観察されないが、機能性領域は遅相軸方向に0でないレターデーション値を観測することができるため、その結果から、機能性領域142と非機能性領域144との境界を画定することができる。
また、光学特性として、クロスニコル透過率を測定した場合には、非機能性領域はクロスニコル透過率が低く、機能性領域は透過光の位相変化のためにクロスニコル透過率が相対的に高くなるため、その結果から、機能性領域142と非機能性領域144との境界を画定することができる。
また、光学特性として、偏光反射率を測定した場合には、例えば、透過型の光学素子である場合は、非機能性領域は偏光方向に関わらず後方散乱が多く、機能性領域に対して反射率が常に高くなるため、その結果から、機能性領域142と非機能性領域144との境界を画定することができる。また、反射型の光学素子である場合は、非機能性領域は偏光方向に関わらず一定の反射率を示す一方、機能性領域は特定の偏光に対して強い反射率を示すため、この特定の偏光を照射することで明確に境界を画定することができる。
この時、「演算上の配向領域」と、「演算上の低配向領域」との間にいずれにも該当しない領域(接続領域)が存在する場合は、これら2領域のいずれかに組み入れても良いし、これら2領域とは別の領域として残しておいても良い。
液晶層141(素子原板100)について得られたマッピングデータは、後述する切断ステップにおいて、切断装置に伝達されて、切断位置を特定する際に利用される。
[切断する位置を決定するステップ、および、切断するステップ]
機能性領域と非機能性領域との境界を画定するステップS3の後に、画定した機能性領域と非機能性領域との境界を基準にして切断する位置を決定するステップ(切断線を定めるステップともいう)S4と、切断線に沿って素子原板を切断するステップS5を実施する。
ステップS4においては、機能性領域142と非機能性領域144との境界を基準に切断する位置(切断線)を定める。具体的には、ステップS3で区別された領域のマッピングデータを基に、液晶層における境界線の位置を特定し、2領域が直接隣接して存在する場合には、その境界線上を切断線とすることができる。あるいは、境界線から一定の距離で離間した位置を切断線としてもよい。その際、機能性領域142内に切断線を定めてもよいし、非機能性領域144内に切断線を定めてもよい。
また、機能性領域と非機能性領域との間に接続領域が存在する場合は、機能性領域と接続領域の境界線を基準としてもよいし、非機能性領域と接続領域の境界線を基準としてもよい。また、接続領域が存在する場合には、接続領域内に切断線を定めてもよい。
次に、ステップS5において、ステップS4で定めた切断線の位置で素子原板100を切断する。切断は、公知の切断法を制限なく利用することができ、レーザーカット(レーザー裁断)、ブレード、トリマー等によるカットなどが適用される。
切断の際は、領域を区別するステップで区別された領域のマッピングデータを基に、切断装置が素子原板100の切断位置を特定し、切断を行う。切断位置の特定は、レーザー等の対物センサーを用いても良いし、撮像等の2次元画像取得デバイスを用いても良い。
一例として、図10に示す例では、素子原板100の液晶層141は、面内に複数形成された機能性領域142と、非機能性領域144と、機能性領域142と非機能性領域144との間に存在する接続領域146と、を有している。
このような素子原板100に対して、機能性領域142と接続領域146との境界線を基準として、切断線X1,X2,Y1~Y4を定める。切断線X1およびX2はY方向に異なる位置でX方向に延在する切断線である。また、切断線Y1~Y4は、X方向に異なる位置でY方向に延在する切断線である。図示例において、切断線X1,X2,Y1~Y4は、機能性領域142内を切断する。
例えば、図10中、切断線X1,X2,Y1,Y2それぞれに沿って切断することで、光学機能層を有する1つの(液晶)光学素子を得ることができ、各機能性領域142を含む部位をそれぞれ切断して切り出すことで、1つの素子原板100から、複数の液晶光学素子を得ることができる。
ここで、前述のとおり、中心を有する光学素子を用いる際には、機能上その中心を機器の基準線または基準点と厳密に位置合わせする必要がある。そのため、光学素子の中心位置を正確に把握しておく必要がある。しかしながら、液晶化合物を含む液晶組成物を用いた光学フィルムの中心は検出が難しく、機能性を付与した領域のみを所望のサイズに切り出して光学素子を作製する場合には、切り出した光学素子の中心位置を正確に把握することが難しい、という問題があった。
これに対して、本発明の光学素子の製造方法によれば、以上のステップを経ることで、機能性領域の中心と機能性領域のエッジ部(境界)との相対位置が配向膜の形成の際に精度よく固定されるため、境界を画定するステップS3において、機能性領域の境界線を画定して、切断線を定めるステップにおいて、機能性領域のエッジ部(境界線)を基準にして切断線を定めて、切断するステップにおいてこの切断線で切断を行う事で、切断した端面と、機能性領域の中心位置とは常に一定の相対的位置関係が保たれることになる。これにより、切り出した光学素子の中心位置を正確に把握することが可能となる。
なお、上述した説明においては、非機能性領域144に対応する配向膜133の領域B136は、干渉露光されない領域としたが、これに限定はされず、非機能性領域が、機能性領域に対して、偏光透過率、全光透過率、および、散乱などの上述した光学特性の差を生じるよう、配向規制力が低くされた領域であればよい。配向規制力を低くすることは、照射する偏光の偏光度を低下させるか偏光を解消する他、照射光量を相対的に小さくするか、照射しないことでも実現できる。
また、上述した、塗膜132の、面内の少なくとも一部の領域を干渉露光するステップS1-1-2において、塗膜132が干渉露光される領域をアパーチャで画定する構成の場合には、一方の偏光が集光素子58によって集光されるため、塗膜132が、一方の円偏光で露光される領域の大きさと、他方の円偏光で露光される領域の大きさとが一致しない場合がある。すなわち、照射された異なる円偏光が重複する領域と、一方の円偏光のみが照射される領域とが存在する場合がある。異なる円偏光が重複して照射される領域は、干渉露光される領域となる。これに対して、一方の円偏光のみが照射される領域は、干渉露光されずに、単に偏光により露光される。このような一方の円偏光のみが照射された領域の上に形成された液晶層中においては、液晶化合物は、機能性領域とも非機能性領域とも異なる配向状態で配向される。このような領域を上述した接続領域146とみなすことができる。
ここで、上述した例では、素子原板100は、基板30と配向膜133とを有する構成とし、素子原板を準備するステップS1が、配向基板を準備するステップS1-1と、配向基板上に組成物膜を形成して組成物膜中の液晶化合物を配向させるステップS1-2と、液晶化合物を硬化して液晶層を形成するステップS1-3と、を有する構成としたが、これに限定はされない。
素子原板を準備するステップS1Bは、
基材を準備するステップS1B-1と、
基材上に液晶化合物を含む液晶組成物からなる組成物膜を形成するステップS1B-2と、
組成物膜の、面内の一部の領域に光パターン照射を行い、液晶化合物を、分子軸の方向が面内の少なくとも一方向に沿って連続的に回転しながら変化する液晶配向パターンに配向するステップS1B-3と、
組成物膜の液晶化合物を固定して液晶層を形成するステップS1B-4と、を含む。
図11を用いて、素子原板を準備するステップS1Bの一例について説明する。
素子原板を準備するステップS1Bは、まず、基材を準備するステップS1B-1として、図11の左から1つ目の図に示すように、基材210を準備する。
基材210としては上述した基板30と同様のものが適宜利用可能である。
次に、基材上に液晶化合物を含む液晶組成物からなる組成物膜を形成するステップS1B-2として、図11の左から2つの図に示すように、基材210上に直接、液晶組成物を塗布して組成物膜220を形成する。
組成物膜220の形成方法(液晶組成物の塗布方法)は、上述した塗布方法が適宜利用可能である。
また、液晶組成物としては、上述した液晶組成物が適宜利用可能である。好ましくは、液晶組成物に含まれる液晶化合物が、偏光に反応する基を有するものであることが好ましい。偏光に反応する基を有する液晶化合物を用いることにより、下記ステップS1B-3において光パターン照射を行うことで、組成物膜220中の液晶化合物を所望の配向パターンに配向することができる。偏光に反応する基を有する液晶化合物としては、特開2021-043295号公報等に記載されている液晶化合物を用いることができる。
次に、ステップS1B-3として、図11の左から3つの図に示すように、基材210上の組成物膜220面内の一部の領域に光パターン照射を行う。
光パターン照射について、図12を用いて説明する。
図12の左側の図は、光パターン照射を行う前の組成物膜220と基材210との積層体を概念的に示す図である。図に示すとおり、組成物膜220中の液晶化合物40は、光学軸(長軸)の方向がランダムである。
このような組成物膜220に、図12の真ん中の図に示すように、光パターン照射を行う。光パターン照射とは、面内の微小な領域ごとに、例えば、偏光方向が所定のパターンで異なっている光を照射することである。具体的には、光パターン照射とは、例えば、偏光方向が面内の少なくとも一方向に沿って連続的に回転しながら変化する偏光パターンの照射である。あるいは、光パターン照射とは、光の照射量が面内の少なくとも一方向に沿って連続的に変化する強度パターンの照射である。光パターン照射については、特開2021-043295号公報等に記載されている。
偏光に反応する基を有する液晶化合物40を含む組成物膜220に偏光を照射することにより、組成物膜220中の液晶化合物40の配向方向を制御することができる。したがって、偏光方向が面内の少なくとも一方向に沿って連続的に回転しながら変化する偏光パターンの照射、あるいは、光の照射量が面内の少なくとも一方向に沿って連続的に変化する強度パターンの照射を行うことで、組成物膜220中の液晶化合物40を、分子軸の方向が面内の少なくとも一方向に沿って連続的に回転しながら変化する液晶配向パターンに配向することができる(図12の右側の図)。このような光パターン照射については、特開2021-043295号公報等に記載されている。
ステップS1B-3においては、組成物膜220に対して、上記光パターン照射を面内の少なくとも一部の領域に対して実施する。図11に示す例では、光照射装置250を用いて、光照射装置250の照射位置と、組成物膜220との面内方向の相対位置を変えて複数回(図示例では6回)、光パターン照射を実施している。光パターン照射した領域では、液晶化合物が、その光学軸の方向が面内の少なくとも一方向に沿って連続的に回転しながら変化する液晶配向パターンに配向された機能性領域222となる。それ以外の領域は、液晶化合物が配向されていない非機能性領域224となる。
その後、組成物膜の液晶化合物を固定して液晶層を形成するステップS1B-4を実施して、液晶化合物の光学軸の方向が面内の少なくとも一方向に沿って連続的に回転しながら変化する液晶配向パターンが形成された機能性領域222と、液晶化合物が配向されていない非機能性領域224とを有する液晶層221が形成されて、素子原板200が作製される。
[光学素子]
次に、本発明の光学素子の製造方法で作製される(液晶)光学素子について説明する。前述のとおり、光学素子が有する光学機能層(機能性領域)は、光学的な機能を有する領域であって、その光学的な機能とは、レンズ(液晶レンズ)、光渦位相差板等としての機能が挙げられる。
(液晶レンズ)
図13に、本発明の光学素子の製造方法で作製される光学素子(液晶レンズ)の一例を概念的に表す上面図を示す。図14に、図13に示す光学素子の断面図を示す。図14は、図13に示す液晶配向パターンの一方向(矢印A1~A3)に沿って厚さ方向に切断した断面図である。
図13に示すように、液晶レンズとして作用する光学素子10の光学機能層36は、液晶化合物40の光学軸の方向が面内の少なくとも一方向に沿って連続的に回転しながら変化する液晶配向パターンを有し、図中、矢印A1~A3で示すように、この一方向を中心から外側に向かう放射状に有するものである。なお、図示例においては、液晶化合物40として棒状液晶化合物を図示しており、光学軸の方向は棒状液晶化合物の長手方向に一致する。
また、図14に示すように、切り出された光学素子10は、基板30と、配向膜32と、光学機能層36とを有している。光学機能層36は、厚さ方向には、液晶化合物40が積み重ねられた構造を有している。また、図14に示すように、光学機能層36において、面内の同じ位置に存在する液晶化合物40は、厚さ方向には、光学軸の向きが同じ向きで積み重ねられている。
液晶化合物40の光学軸の方向が面内の一方向に沿って連続的に回転しながら変化する液晶配向パターンを有する光学機能層36に円偏光が入射すると、光学機能層36を透過する光は、この一方向に沿った方向に向かって屈曲されて出射される。そのため、放射状の液晶配向パターンを有する光学機能層36の場合には、図15に矢印で示すように、入射した光を集光することができる。あるいは、光学機能層36は、入射した光を発散することができる。すなわち、放射状の液晶配向パターンを有する光学機能層36は、凸レンズまたは凹レンズとして作用する。
このような液晶レンズとしての作用を有する光学素子については、国際公開第2019/189586号、国際公開第2019/189818号、国際公開第2023/101002号等により詳細に記載されている。
また、本発明の光学素子の製造方法で作製される(液晶)光学素子が有する光学機能層は、コレステリック液晶層であって、液晶化合物の光学軸の方向が面内の少なくとも一方向に沿って連続的に回転しながら変化する液晶配向パターンを有するものであってもよい。
図16に、本発明の光学素子の製造方法で作製される光学素子の他の一例を概念的に表す断面図を示す。なお、この光学素子を図中上側から見た際の光学機能層の構成は図13に示す構成と同様である。その際、光学機能層の構成を明確に示すために、表面の液晶化合物40のみを示している。
図16に示す光学素子は、基板30と、配向膜32と、光学機能層37とを有している。光学機能層37は、厚さ方向において、液晶化合物40が螺旋状に旋回して積み重ねられた螺旋構造を有し、液晶化合物40が螺旋状に1回転(360°回転)して積み重ねられた構成を螺旋1ピッチ(螺旋ピッチP)として、螺旋状に旋回する液晶化合物40が、複数ピッチ、積層された構造を有する。
コレステリック液晶層は、螺旋ピッチの長さ、および、液晶化合物による螺旋の旋回方向(センス)に応じて、特定の波長域の右円偏光または左円偏光を反射して、それ以外の光を透過する。
光学機能層37は、コレステリック液晶層であって、液晶化合物由来の光学軸の向きが面内の少なくとも一方向に沿って連続的に回転しながら変化している液晶配向パターンを有する。
このような液晶配向パターンを有するコレステリック液晶層(光学機能層37)は、入射した光を、液晶化合物の光学軸の向きが連続的に回転しながら変化する一方向に傾けて反射する。すなわち、光学機能層37は、入射した光を正反射とは異なる方向に反射する。
一例として、光学機能層37が、赤色光の右円偏光を選択的に反射するコレステリック液晶層であるとすると、光学機能層37に光が入射すると、光学機能層37は、赤色光の右円偏光のみを反射し、それ以外の光を透過する。光学機能層37では、液晶化合物40の光学軸が一方向に沿って回転しながら変化している。そのため、光学機能層37に垂直に入射した赤色光の右円偏光は、液晶配向パターンの一方向に応じた方向(方位)に傾けて(回折されて)反射される。
放射状の液晶配向パターンを有する光学機能層37の場合には、入射した光は、面内の位置ごとに、一方向に応じた方向に傾けて反射される。そのため、光学機能層37は、反射光を集光、あるいは、発散することができる。すなわち、放射状の液晶配向パターンを有するコレステリック液晶層である光学機能層37は、反射型の凸レンズまたは反射型の凹レンズとして作用する。
このような反射型の液晶レンズとしての作用を有する光学素子については、国際公開第2019/131950号等により詳細に記載されている。
(光渦位相差板)
図17に、本発明の光学素子の製造方法で作製される光学素子の他の一例を概念的に表す上面図を示す。図17に示す光学素子(光学機能層)は、光渦位相差板としての作用を有する。図17には、次数m=+1~+3の渦配向パターンを有する光渦位相差板をそれぞれ示している。
図17は、光渦位相差板34aの微小な領域ごとの液晶化合物40の光学軸(遅相軸)の向きを0~2πで規格化した位相で表し、0を黒、2πを白とするグレースケールで可視化した図である。
位相について図18を用いて説明する。
図18は、微小な領域ごとの液晶化合物40の光学軸の向きと規格化した位相との関係を表す図である。図18の一番左の液晶化合物40の光学軸のように、液晶化合物40の光学軸が図中左右方向を向いている(極座標表示における光学軸の角度が0°)状態を位相0と定義し、ここから、図の一番右に示す液晶化合物40のように、光学軸が反時計回りに180°回転した状態を位相2πと定義して、反時計回りに回転した角度に応じて位相を規格化する。例えば、液晶化合物40の光学軸が反時計回りに45°回転した状態(左から2番目の液晶化合物40)は位相π/2であり、90°回転した状態(左から3番目の液晶化合物40)は位相πであり、135°回転した状態(右から2番目の液晶化合物40)は位相3π/2である。なお、液晶化合物40の光学軸の向きの変化は、実際には連続的な変化であり、図18において液晶化合物40同士の間には、その間の角度に配向された液晶化合物40が存在する。また、図からわかるように、位相0と位相2πの液晶化合物40の光学軸の状態は同じである。
一例として、図17に示したm=+1~+3の渦配向パターンを有する光渦位相差板34aの位相について説明する。
図17において、渦配向パターンの位相をグレースケールで表し、また、液晶化合物40の光学軸の向きを重畳して示している。液晶化合物が棒状液晶化合物の場合には、棒状液晶化合物の長軸が液晶化合物に由来する光学軸である。また、液晶化合物が円盤液晶化合物の場合には、円盤状液晶化合物の円盤面に垂直な軸が光学軸である。
図17に示すように、m=+1の渦配向パターンの場合、周方向に反時計回りに見た際に、微小な領域における液晶化合物40の光学軸の向きは、反時計回りに回転しており、位相が0の位置から、周方向に1周する間に、液晶化合物40の光学軸は半回転(180°)、すなわち、位相が0から2πまで漸次、変化している。
本発明において、このように、周方向に反時計回りに見た際に、微小な領域における液晶化合物40の光学軸の向きが回転して、位相が漸次、変化しているパターンを渦配向パターンという。
また、図17に示すように、m=+2の渦配向パターンの場合、周方向に反時計回りに見た際に、微小な領域における液晶化合物40の光学軸の向きは、反時計回りに回転しており、位相が0の位置から、周方向に1周する間に、液晶化合物40の光学軸は1回転(360°)、すなわち、位相が0から2πまでの位相変化を2回繰り返している。
また、図17に示すように、m=+3の渦配向パターンの場合、周方向に反時計回りに見た際に、微小な領域における液晶化合物40の光学軸の向きは、反時計回りに回転しており、位相が0の位置から、周方向に1周する間に、液晶化合物40の光学軸は1回転半(540°)、すなわち、位相が0から2πまでの位相変化を3回繰り返している。
すなわち、光渦位相差板34aが有する渦配向パターンにおける次数mは、0から2πまでの位相変化の繰り返し回数に対応している。
光渦位相差板34aの位相差は入射光の波長λに対してλ/2であることが好ましい。上述したm次の渦配向パターンの遅相軸分布と、λ/2の位相差をもつ光渦位相差板34aに直線偏光を入射させることでm次の次数を持つ光渦を発生させることができる。
なお、図17では、次数m=+1~+3の渦配向パターンを有する光渦位相差板34aを例示したがこれに限定はされず、光渦位相差板34aは、次数m=+4以上の渦配向パターンを有するものであってもよい。
あるいは、光渦位相差板34aは、次数mがマイナスの渦配向パターンを有するものであってもよい。次数mがマイナスの渦配向パターンは、周方向に反時計回りに見た際に、微小な領域における液晶化合物40の光学軸の向きが、時計回りに回転していることを意味する。例えば、m=-1の渦配向パターンの場合、周方向に反時計回りに見た際に、微小な領域における液晶化合物40の光学軸の向きは、時計回りに回転しており、位相が0の位置から、周方向に1周する間に、液晶化合物40の光学軸は半回転(180°)、すなわち、位相が0から2πまでの位相変化を1回繰り返す。
図17に示す例では、渦配向パターンは、周方向に位相が変化し、半径方向には位相は一定としたが、これに限定はされない。光渦位相差板34aが有する渦配向パターンは、半径方向に位相が非連続な節を有するものであってもよい。
図19に光渦位相差板34aが有する渦配向パターンの他の例を示す。図19は節が1(n=1)で次数が1~3(m=+1~+3)の場合の渦配向パターンをそれぞれ示している。
節n=1で次数m=+1の場合について説明する。
図19の上の図に示すとおり、n=1、m=+1の渦配向パターンは、半径方向に位相が非連続な節を有する。言い換えると、n=1、m=+1の渦配向パターンは、円形の領域とこの領域の外側の円環状の領域を有しており、位相が0となる位置が互いに異なっている。具体的には、円形の領域においては、周方向に反時計回りに見た際に、位相が0の位置から周方向に1周する間に、位相が0から2πまで漸次、変化している。すなわち、円形の領域における位相変化は、節がない(n=0)場合の次数1(m=+1)の場合と同様である。一方、円環状の領域においては、周方向に反時計回りに見た際に、位相が0の位置から周方向に1周する間に、位相が0から2πまで漸次、変化しているが、位相が0の位置が円形の領域における位相0の位置から周方向に180°ズレている。すなわち、円環状の領域における位相変化は、節がない(n=0)場合の次数1(m=+1)の場合と同様である。
このようなn=1、m=+1の渦配向パターンは、半径方向に位相、すなわち、遅相軸の方向が非連続に変化している。
次に、節n=1で次数m=+2の場合について説明する。
図19の真ん中の図に示すとおり、n=1、m=+2の渦配向パターンは、半径方向に位相が非連続な節を有する。言い換えると、n=1、m=+2の渦配向パターンは、円形の領域とこの領域の外側の円環状の領域を有しており、位相が0となる位置が互いに異なっている。具体的には、円形の領域においては、周方向に反時計回りに見た際に、位相が0の位置から周方向に1周する間に、0から2πまでの位相変化を2回繰り返している。すなわち、円形の領域における位相変化は、節がない(n=0)場合の次数2(m=+2)の場合と同様である。一方、円環状の領域においては、周方向に反時計回りに見た際に、位相が0の位置から周方向に1周する間に、0から2πまでの位相変化を2回繰り返している。すなわち、円環状の領域における位相変化も、節がない(n=0)場合の次数2(m=+2)の場合と同様である。また、円形の領域と円環状の領域とでは、周方向における位相が0の位置が90°ズレている。
このようなn=1、m=+2の渦配向パターンは、半径方向に位相、すなわち、遅相軸の方向が非連続に変化している。
次に、節n=1で次数m=+3の場合について説明する。
図19の下の図に示すとおり、n=1、m=+3の渦配向パターンは、半径方向に位相が非連続な節を有する。言い換えると、n=1、m=+3の渦配向パターンは、円形の領域とこの領域の外側の円環状の領域を有しており、位相が0となる位置が互いに異なっている。具体的には、円形の領域においては、周方向に反時計回りに見た際に、位相が0の位置から周方向に1周する間に、0から2πまでの位相変化を3回繰り返している。すなわち、円形の領域における位相変化は、節がない(n=0)場合の次数3(m=+3)の場合と同様である。一方、円環状の領域においては、周方向に反時計回りに見た際に、位相が0の位置から周方向に1周する間に、0から2πまでの位相変化を3回繰り返している。すなわち、円環状の領域における位相変化も、節がない(n=0)場合の次数3(m=+3)の場合と同様である。また、円形の領域と円環状の領域とでは、周方向における位相が0の位置が60°ズレている。
このようなn=1、m=+3の渦配向パターンは、半径方向に位相、すなわち、遅相軸の方向が非連続に変化している。
このように節を有する渦配向パターンは、次数が同じであっても節の無い渦配向パターンとは異なる状態の光渦を発生させることができる。
光渦位相差板34aが有する渦配向パターンにおける節nは、半径方向において位相が非連続に変化している回数に対応している。
なお、節nの数は1つに限定はされず、2以上であってもよい。
また、図19に示す例では、中心部と円環部とにおける位相変化の向きが同じとしたがこれに限定はされず、中心部および各円環部における位相変化の向きが異なっていてもよい。言い換えると、周方向に反時計回りに見た際に、位相が0の位置から周方向に1周する間に、0から2πの位相変化を1回あるいは複数回繰り返す中心部および/または円環部と、周方向に時計回りに見た際に、位相が0の位置から円環部の周方向に1周する間に、0から2πの位相変化を1回あるいは複数回繰り返す中心部および/または円環部を有する構成であってもよい。
また、図19に示す例では、中心部と円環部とにおける位相変化の回数(次数m)は同じとしたがこれに限定はされず、中心部および各円環部における位相変化の回数(次数m)は互いに異なっていてもよい。例えば、複数の円環部を有し(節nが3以上)、中心部から離間するにしたがって位相変化の回数(次数m)が増加する構成としてもよい。
(光渦位相差板となる機能性領域の形成方法)
光渦位相差板となる機能性領域を形成するためには、配向膜の領域Aが、組成物膜の機能性領域となる領域内の液晶化合物を上述した渦配向パターンに配向させるものとすればよい。液晶化合物を渦配向パターンに配向させる配向膜(領域A)の形成方法としては、配向膜となる塗膜の、面内の少なくとも一部の領域を露光するステップS1-1-2において、偏光の方向(配向規制力を生じさせる方向)、および、光量が異なる照射パターンを複数回(例えば、3回)実施することで形成することができる。各照射パターンにおける偏光の方向および光量は面内の位置に応じて異なっていてもよい。
照射の回数、各照射パターンにおける偏光の方向および光量等は、形成する渦配向パターンに応じて適宜設定すればよい。
具体例としては、例えば、特開2008-233903号公報、国際公開第2023/058668号に記載の方法で作製できる。
[ヘッドマウントディスプレイ]
本発明の光学素子の製造方法を実施して、多面取りシートから切り出されることにより製造された液晶光学素子は、AR(Augmented Reality(拡張現実))グラス、VR(Virtual Reality(仮想現実))グラス、MR(Mixed reality(複合現実))グラス等のヘッドマウントディスプレイの画像表示装置を構成する光学部材として、好適に用いることができる。本発明の光学素子の製造方法を用いることにより、液晶光学素子の個体差が少なく、期待した光学機能を発現するヘッドマウントディスプレイを構成することができる。
10 光学素子
20、20a 中心部
21 演算上の配向領域
21a 第1円環部
22a 第2円環部
30 基板
31 演算上の低配向領域
32 配向膜
34a 光渦位相差板
36 光学機能層
40 液晶化合物
41 中心
50 露光装置
52 光源
54 偏光ビームスプリッター
56a、56b ミラー
58 集光素子
60 ビームコンバイナ
60a 第1面
60b 第2面
62 偏光変換素子
64 遮光部材
64a 開口
70 撮像素子
72 白色光源
100、200 素子原板
132 塗膜
133 配向膜
134 領域A
136 領域B
140、220 組成物膜
141、221 液晶層
142、222 機能性領域
144、224 非機能性領域
146 接続領域
210 基材
250 光照射装置

Claims (10)

  1. 光学的な中心を有する機能性領域を含む光学機能層を有する光学素子を製造する光学素子の製造方法であって、
    少なくとも1つの前記機能性領域と、非機能性領域とを面内に含む液晶層を有する素子原板を作製するステップと、
    前記素子原板の前記液晶層の面内の位置ごとの光学特性を測定するステップと、
    前記光学特性の面内分布の測定結果から、前記機能性領域と、前記非機能性領域との境界を画定するステップと、
    画定した前記機能性領域と前記非機能性領域との前記境界を基準にして切断線を定めるステップと、
    前記切断線に沿って、前記素子原板を切断するステップと、を有する、光学素子の製造方法。
  2. 前記光学機能層がレンズとして機能する、請求項1に記載の光学素子の製造方法。
  3. 前記光学機能層が光渦位相差板である、請求項1に記載の光学素子の製造方法。
  4. 前記光学特性の面内分布を測定するステップにおいて、測定する前記光学特性が、ヘイズ値、遅相軸方向、レターデーション、平行光透過率、クロスニコル透過率、および、偏光反射率のいずれかである、請求項1に記載の光学素子の製造方法。
  5. 前記素子原板を切断するステップにおける切断方法は、レーザー加工である、請求項1に記載の光学素子の製造方法。
  6. 前記素子原板を作製するステップは、
    配向規制力の方向が、面内の少なくとも一方向に沿って連続的に回転しながら変化する配向パターンを有する領域Aと、配向規制力を有しないか、配向規制力の方向が変化しない領域Bと、を含む配向基板を準備するステップと、
    前記配向基板上に、液晶化合物を含む液晶組成物からなる組成物膜を形成し、前記配向基板の配向規制力によって、前記組成物膜中の前記液晶化合物を配向させるステップと、
    前記組成物膜の前記液晶化合物を固定して前記液晶層を形成するステップと、をこの順に含み、
    前記液晶層の、前記配向基板の前記領域Aに対応する位置に前記機能性領域が形成され、前記領域Bに対応する位置に前記非機能性領域が形成される、請求項1に記載の光学素子の製造方法。
  7. 前記配向基板は、基板と配向膜とを有し、
    前記配向基板を準備するステップは、前記基板上に配向膜となる塗膜を形成するステップと、
    前記塗膜の、面内の少なくとも一部の領域を干渉露光するステップと、を含む、請求項6に記載の光学素子の製造方法。
  8. 前記干渉露光するステップにおいて、前記塗膜が干渉露光される領域をアパーチャで画定する、請求項7に記載の光学素子の製造方法。
  9. 前記素子原板を準備するステップが、
    基材を準備するステップと、
    前記基材上に液晶化合物を含む液晶組成物からなる組成物膜を形成するステップと、
    前記組成物膜の、面内の一部の領域に光パターン照射を行い、前記液晶化合物を、分子軸の方向が面内の少なくとも一方向に沿って連続的に回転しながら変化する液晶配向パターンに配向するステップと、
    前記組成物膜の前記液晶化合物を固定して前記液晶層を形成するステップと、を含み、
    前記液晶層の、前記光パターン照射を行った領域に前記機能性領域が形成される、請求項1に記載の光学素子の製造方法。
  10. 前記光パターン照射は、偏光方向が面内の少なくとも一方向に沿って連続的に回転しながら変化する偏光パターンの照射、または、光の照射量が面内の少なくとも一方向に沿って連続的に変化する強度パターンの照射である、請求項9に記載の光学素子の製造方法。
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