JP2024032154A - 異常予測処理装置、異常予測処理方法及び異常予測処理プログラム - Google Patents
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Abstract
【課題】時系列データの一部を用いた学習処理により、異常が発生する時期を精度良く予測し得るようにする。【解決手段】学習予測装置1は、時系列データを用いる学習予測処理を実行する場合に、前段の学習処理において分類モデルパラメータを生成してから、後段の予測処理において各時系列データの異常度を算出し、当該異常度の近似式及び特徴式を算出した上で、異常発生予測時刻を算出して出力する。このため学習予測装置1は、測定対象から実際に得られた時系列データの一部を基に、適切な分類モデルパラメータを生成でき、これと他の時系列データとを基に得られた異常度の近似式や特徴式を利用でき、その結果として極めて精度の高い異常発生予測時刻を算出できる。【選択図】図9
Description
本発明は異常予測処理装置、異常予測処理方法及び異常予測処理プログラムに関し、例えば工作機械から得られる音響信号を基に、当該工作機械における消耗部品の交換時期を判断する場合に適用して好適なものである。
従来、工作機械から得られる音響信号のような連続的に発生する時系列データを基に、学習処理及び分類処理を行うことにより複数のクラスに分類する技術が知られている。具体的には、例えば時系列データの一部を教師データとして学習処理を行うことにより分類モデルを生成し、残りの時系列データを評価データとして、この分類モデルを用いて分類処理を行うことができる。
また、例えば学習完了条件を適切に設定することにより、時系列データのうち学習処理に利用する部分と分類処理に利用する部分とを適切に分け、当該学習処理及び当該分類処理をそれぞれ適切に行う学習処理装置及び分類処理装置も提案されている(例えば、特許文献1参照)。
しかし、上述した学習処理装置や分類処理装置では、既に取得した過去の時系列データについて、クラス分類の結果により正常又は異常を適切に判断することはできるものの、時系列データが未取得である将来について、異常が発生する時期を精度良く予測することは困難であった。
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、時系列データの一部を用いた学習処理により、異常が発生する時期を精度良く予測し得る異常予測処理装置、異常予測処理方法及び異常予測処理プログラムを提案しようとするものである。
かかる課題を解決するため本発明の異常予測処理装置においては、学習完了条件を設定する条件設定部と、測定対象から複数の時系列データを取得するデータ取得部と、学習完了条件を満たすか否かを判定する学習完了判定部と、学習完了条件を満たす場合、取得した時系列データを基に学習処理を行い、分類モデルを生成する学習処理部と、分類モデルに基づいた値と時系列データとの差異の大きさを表す異常度を算出する異常度算出部と、異常度を基に、当該異常度の近似式を算出する近似式算出部と、近似式を基に、測定対象に異常が発生すると予測される異常発生予測時刻を算出する異常発生予測時刻算出部とを設けるようにした。
また本発明の異常予測処理方法においては、学習完了条件を設定する条件設定ステップと、測定対象から複数の時系列データを取得するデータ取得ステップと、学習完了条件を満たすか否かを判定する学習完了判定ステップと、学習完了条件を満たす場合、取得した時系列データを基に学習処理を行い、分類モデルを生成する学習処理ステップと、分類モデルに基づいた値と時系列データとの差異の大きさを表す異常度を算出する異常度算出ステップと、異常度を基に、当該異常度の近似式を算出する近似式算出ステップと、近似式を基に、測定対象に異常が発生すると予測される異常発生予測時刻を算出する異常発生予測時刻算出ステップとを有するようにした。
さらに本発明の異常予測処理プログラムにおいては、情報処理装置に対し、学習完了条件を設定する条件設定ステップと、測定対象から複数の時系列データを取得するデータ取得ステップと、学習完了条件を満たすか否かを判定する学習完了判定ステップと、学習完了条件を満たす場合、取得した時系列データを基に学習処理を行い、分類モデルを生成する学習処理ステップと、分類モデルに基づいた値と時系列データとの差異の大きさを表す異常度を算出する異常度算出ステップと、異常度を基に、当該異常度の近似式を算出する近似式算出ステップと、近似式を基に、測定対象に異常が発生すると予測される異常発生予測時刻を算出する異常発生予測時刻算出ステップとを実行させるようにした。
本発明は、測定対象から得られた時系列データの一部を学習して分類モデルを生成するため、当該測定対象の個体差に応じた専用の分類モデルを生成できる。また本発明は、この分類モデルを用いて残りの時系列データから異常度を算出し、当該異常度の近似式を算出するため、未だ時系列データが得られていない将来において異常が発生すると予測される異常発生予測時刻を、極めて精度良く算出できる。
本発明によれば、時系列データの一部を用いた学習処理により、異常が発生する時期を精度良く予測し得る異常予測処理装置、異常予測処理方法及び異常予測処理プログラムを実現できる。
以下、発明を実施するための形態(以下実施の形態とする)について、図面を用いて説明する。
[1.第1の実施の形態]
[1-1.学習予測装置の基本構成]
図1に示すように、第1の実施の形態による学習予測装置1は、一般的なコンピュータ装置と類似した情報処理装置であり、制御部2、記憶部3、通信部4、表示部5及び操作部6がバス8を介して相互に接続された構成となっている。
[1-1.学習予測装置の基本構成]
図1に示すように、第1の実施の形態による学習予測装置1は、一般的なコンピュータ装置と類似した情報処理装置であり、制御部2、記憶部3、通信部4、表示部5及び操作部6がバス8を介して相互に接続された構成となっている。
制御部2は、図示しないCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等を有している。この制御部2は、RAMをワークエリアとして使用しながら、ROMや記憶部3等から読み出したプログラムをCPUによって実行することにより、様々な処理を行うことができる。記憶部3は、例えばSSD(Solid State Drive)やハードディスクドライブ等のような不揮発性の記憶媒体であり、種々のプログラムや種々の情報を記憶する。
通信部4は、例えばIEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)802.3u/ab/an/ae等の規格に準拠した有線LAN(Local Area Network)、又はIEEE802.11a/b/g/n/ac/ax等の規格に準拠した無線LANのインタフェースである。この通信部4は、図示しないサーバ装置等との間で種々の情報を送受信することができる。
通知部としての表示部5は、例えば液晶や有機EL(Electro Luminescence)等の表示デバイスを有しており、種々の情報を表す文字や図形等を適宜組み合わせた表示画面を表示する。操作部6は、例えばキーボードやマウス、或いはタッチパネル等であり、ユーザの操作指示を受け付ける。
この学習予測装置1は、例えば工作機械から得られる音響信号のような連続的に発生する時系列のデータを順次取得し、後述する学習処理及び予測処理を行うことにより、例えば当該工作機械における消耗部品の異常発生時期を予測する、といった用途での使用が想定されている。
[1-2.学習予測装置の機能構成]
ところで制御部2は、例えば記憶部3から各種プログラムを読み出して実行することにより、図2に示すような種々の機能ブロックを形成する。
ところで制御部2は、例えば記憶部3から各種プログラムを読み出して実行することにより、図2に示すような種々の機能ブロックを形成する。
データ取得部11は、時系列のデータを取得して区間特定部12へ供給する。このデータ取得部11は、例えば工作機械に取り付けられる切削工具を測定対象とし、当該切削工具の使用時に発生する音をマイクロホン等により集音し、得られた音響信号をディジタル化したものを時系列のデータとして取得する。以下、このとき取得されたデータを時系列データと呼ぶ。
区間特定部12は、時系列データのうち、後述する分類モデルパラメータの生成処理や分類処理において処理対象とする時間区間を対象区間として特定し、これを時系列データと共に前処理部13へ供給する。
例えば区間特定部12は、図3(A)及び(B)に示すように、時間の経過に応じて振幅が変化する時系列データD1に加えて、予め用意された所定の参照信号D2を使用する。参照信号D2は、その振幅が矩形状に変化する信号であり、区間Tにおいて他の区間よりも相対的に大きい振幅値Pとなっている。区間特定部12は、時系列データD1及び参照信号D2を基に、該参照信号D2において振幅が振幅値Pとなる区間Tに対応する時系列データD1の区間を対象区間とする。
前処理部13(図2)は、区間特定部12から供給される時系列データのうち対象区間に相当する部分に対し、前処理と呼ばれる演算処理を行い、周波数領域に変換された非負の観測ベクトル、又はこの観測ベクトルを複数並べた観測行列を生成する(詳しくは後述する)。そのうえで前処理部13は、この観測行列を、教師データとして教師データ処理部21へ供給し、又は評価データとして特徴抽出部25へ供給する。
ここで教師データとは、時系列データのうち後の学習処理において使用されるものであり、当該学習処理において、当該教師データを基に分類モデルパラメータが生成されることになる。また評価データとは、時系列データのうち後の予測処理において使用されるものであり、当該予測処理において、分類モデルパラメータを用いて異常度(詳しくは後述する)の算出に用いられることになる。
一方、条件設定部15は、学習予測装置1において学習処理を完了して予測処理に移行するための条件である学習完了条件を、学習完了判定部16に設定する。この条件設定部15は、学習完了判定部16に対し、例えば「100個の時系列データを取り込んだ」こと、すなわち「100個の時系列データに対して前処理を行い、教師データとして教師データ処理部21へ供給した」ことを、学習完了条件として設定することができる。また条件設定部15は、学習完了判定部16に対し、時系列データの数では無く、例えば前処理部13により生成された教師データの統計的な傾向や分布に関する条件、具体的には当該教師データの分散が所定の閾値を越えること等を、学習完了条件として設定することもできる。
学習完了判定部16は、学習処理を完了して予測処理に移行するか否かを判定すると共に、その判定結果を基に前処理部13を制御する。具体的に学習完了判定部16は、前処理部13により生成された観測行列を基に、学習完了条件が満たされたか否かを判定する。そのうえで学習完了判定部16は、学習完了条件が満たされていなければ学習処理を継続させ、当該学習完了条件が満たされていれば予測処理に移行するよう、前処理部13における処理内容や観測行列の供給先を制御する。
教師データ処理部21は、前処理部13から供給される観測行列である教師データ(以下これを教師観測行列と呼ぶ)に対し、非負値行列因子分解(Non-negative Matrix Factorization、以下NMFと呼ぶ)を行うことにより、教師基底行列及び教師係数行列を生成する。
以下では、NMFについて説明する。NMFは、1つの非負の行列Yを2つの非負の行列W及び行列Hの積(例えばWH)に分解するアルゴリズムである。一般に、2つの非負の行列W及び行列Hを解析的に求めることは困難であるため、初期値を与えてYとWHの誤差が局所最適解になるよう、反復的に近似解を求める手法が知られている。なお、局所最適解は初期値に依存して変化する。
図4は、本実施の形態に係るNMFの処理例を模式的に示している。この図4に示すように、NMFにより、例えば非負の観測行列Y(教師観測行列又は評価観測行列)が、非負の係数行列W及び非負の基底行列Hの積に分解される。
例えば観測行列Yは、m次元の観測ベクトルyが行ベクトルとなり、時系列データにおける対象区間の数nだけの行で構成された、n行m列の行列である。一方、基底行列Hは、例えば観測行列YにNMFを適用し、分解されたm次元の基底ベクトルhが行ベクトルとなり、基底ベクトルの数kだけの行で構成されたk行m列の行列である。
また係数行列Wは、例えばk次元の係数ベクトルwが行ベクトルとなり、観測ベクトルの数nだけの行で構成されたn行k列の行列である。ここで係数ベクトルwは、ある観測ベクトルにおいて、基底行列Hに含まれる各基底ベクトルの成分がどれだけ含まれるか、という加重値を示す行ベクトルである。
図4に示すように、上記の各行列の間には、次式の関係がある。
なお、以下では教師観測行列YLを分解して得られる基底行列及び係数行列を、それぞれ教師基底行列HL及び教師係数行列WLと呼ぶ。
教師データ処理部21は、この教師観測行列YLにNMFを適用して、教師基底行列HL及び教師係数行列WLを得る。具体的に教師データ処理部21は、まず教師観測行列YLのデータセットにNMFを適用する。次に教師データ処理部21は、当該データセットが分解されて得られたベクトルまたは行列Hにより、教師基底行列HLを生成する。
教師基底行列HLに基づいて、教師観測行列YLから生成される係数行列を教師係数行列WLとすると、数式(1)より、教師観測行列YL、教師係数行列WL、及び教師基底行列HLの関係は、以下の(2)式のように表される。
上記の(2)式により、教師係数行列WLを得るためには、教師基底行列HLの逆行列を用いる必要がある。しかし、教師基底行列HLは、一般に正則行列とは限らないため、逆行列を持たない場合がある。そこで、教師データ処理部21は、例えば教師基底行列の疑似逆行列(ムーア・ペンローズの疑似逆行列)に基づいて、教師係数行列WLを生成しても良い。教師基底行列HLの疑似逆行列HL
+は、k×mの行列であり、一般にk<mである。このため擬似逆行列HL
+は、次の(3)式により得られる。
上記数式(3)で得られた疑似逆行列HL
+を用いると、教師係数行列WLは次の(4)式のように表される。
教師データ処理部21は、このようにして生成した教師基底行列HLを、図2に示す教師データ記憶部22に記憶させる。また教師データ処理部21は、生成した教師係数行列WLをパラメータ生成部23へ供給する。
パラメータ生成部23は、教師係数行列WLに基づき、時系列データを分類するための分類モデルパラメータを生成する。パラメータ生成部23が生成する分類モデルパラメータは、後述する異常度算出部31における分類モデルに応じたパラメータとすることができる。例えば、異常度算出部31が閾値判別を行う場合、分類モデルパラメータは閾値であっても良い。また、異常度算出部31が線形判別を行う場合、分類モデルパラメータはクラスの境界を決定する線形判別関数の係数であっても良い。さらに、異常度算出部31が二次判別を行う場合、分類モデルパラメータはクラスの境界を決定する二次判別関数の係数であっても良い。
パラメータ生成部23は、このようにして生成した分類モデルパラメータを、パラメータ記憶部24に記憶させる。
特徴抽出部25は、教師データ記憶部22に記憶された教師基底行列HLに基づき、前処理部13から供給された評価データ(以下これを評価観測行列と呼ぶ)から評価係数行列を生成する。以下、特徴抽出部25による評価係数行列の具体的な生成例について説明する。
教師基底行列HLに基づいて、評価観測行列YTから生成される係数行列を評価係数行列WTとすると、上述した(1)式より、評価観測行列YT、評価係数行列WT及び教師基底行列HLの関係は、次の(5)式のように表される。
また、上述した(3)式と同様の方法で得られた疑似逆行列HL
+を用いると、評価係数行列WTは、次の(6)式のように表される。
特徴抽出部25は、このようにして生成した評価係数行列WTを、異常度算出部31に供給する。
異常度算出部31は、特徴抽出部25から供給される評価係数行列WTと、パラメータ記憶部24に記憶された分類モデルパラメータとを用いて時系列データの異常度を算出し、これを異常度記憶部32に供給する。この異常度は、分類パラメータに基づいた値と実際の時系列データの値との間における、差異の大きさを表す値である。具体的に異常度算出部31は、例えばOne Class SVM(Support Vector Machine)やIsolation Forestのような、異常を検知するための周知の手法を使用することにより、異常度を算出することができる。
異常度記憶部32は、異常度算出部31により算出された異常度を、当該異常度と対応する時系列データの時系列順に従って保存する。
近似式算出部33は、異常度記憶部32に記憶された1個又は複数個の異常度を基に、当該異常度を関数に近似した近似式を算出する。この近似式算出部33では、予め、近似式の候補となる指数関数や二次関数、或いは一次関数のような種々の関数等、或いは種々の分布等を表す数式(以下これらを候補近似式と呼ぶ)が用意されている。
まず近似式算出部33では、学習予測処理を開始する前に、学習予測装置1を使用するユーザにより、操作部6(図1)を介し、複数の候補近似式から何れか1個を選択する事前選択作業が行われる。以下、ここで選択された候補近似式を選択近似式と呼ぶ。
ユーザは、例えば測定対象である工作機械や音響信号の種類が同一である過去の学習予測処理において、測定対象が正常であった期間における異常度の推移が二次関数に類似していた場合に、今回の学習予測処理において、二次関数の候補近似式を選択近似式として選択する。またユーザは、例えばAIC(Akaike’s Information Criterion)や二乗誤差などの値を参照しながら、選択近似式を選択することもできる。
ところで工作機械では、動作を開始した直後等に動作が一時的に不安定となり、しばらく時間が経過した後に動作が安定する場合がある。工作機械の動作が不安定である場合、時系列データの値は、動作が安定した状態における時系列データの値と大きく異なる可能性がある。
そこで近似式算出部33では、ユーザに対し、特定の期間において時系列データの異常度が選択近似式から大きく外れた値を取ることが予め判明している場合に、これらの期間を除外期間として設定させ得るようになっている。除外期間が設定された場合、近似式算出部33は、この除外期間に相当する時系列データを除外し、他の期間に対応する時系列データを基に近似式を算出する。
次に、近似式算出部33は、学習予測処理を開始した後に、時系列データ等を基に異常度が得られると、1個又は複数個の異常度を用いて、選択近似式の関数における係数や切片等の値を最適化する更新学習処理を行う。以下、係数や切片等の値が最適化された関数を近似式と呼ぶ。
近似式特徴抽出部34は、近似式の特徴を抽出する。まず近似式特徴抽出部34では、ユーザにより近似式算出部33の選択近似式が選択された際に、当該選択近似式に対応する特徴の算出方法が設定される。例えば、選択近似式が高次関数であった場合、近似式を微分することが、特徴の算出方法として設定される。この場合、近似式を微分して得られた導関数の式(以下これを特徴式と呼ぶ)が、当該近似式の特徴を表すものとなる。
異常発生時刻算出部35は、特徴式及び異常判定条件を基に、特徴の値が異常となる時刻、すなわち異常が発生すると予測される時刻(以下これを異常発生予測時刻と呼ぶ)を算出する。異常発生時刻算出部35では、ユーザにより選択近似式が選択されると共に特徴の算出方法が設定された際に、得られた特徴の値が異常であるか否かを判定するための異常判定条件が設定される。例えば、特徴式が時間の経過と共に単調増加する性質であり、所定の異常閾値を超えた場合に測定対象において異常が発生することが判明している場合に、当該異常閾値を超えることが、異常判定条件として設定される。この場合、異常発生時刻算出部35は、特徴式において異常閾値を超える時刻を算出し、この時刻を異常発生予測時刻とする。
出力部36は、近似式及び異常発生予測時刻を出力する。具体的に出力部36は、例えば所定のメッセージと共に、近似式及び異常発生予測時刻を表示部5(図1)に表示させることにより、当該近似式及び当該異常発生予測時刻をユーザに通知する。
学習予測装置1では、以上のように基底行列に対する重みを示す係数ベクトルを特徴ベクトルとして用いて分類することにより、例えば特定周波数のパワーの大きさに基づいて分類する場合よりも、分類精度を向上させることが可能である。
また学習予測装置1では、評価データ自体を用いて予測処理を行った場合と比較して、評価データから生成される評価係数行列WTを用いて予測処理を行うことにより、分類処理における特徴ベクトルの次元を削減できるため、予測処理の処理量を抑制することが可能となる。
図5は、次元の削減を説明する模式図である。図5に示すように、NMF、または特徴抽出部25の処理により、パワースペクトルである評価データD10は、基底ベクトルD11及び係数w1の積と、基底ベクトルD12及び係数w2の積との和で表される。図5の例において、評価データD10を特徴ベクトルとして予測処理を行う場合には、評価データD10における周波数分解能に応じた次元での処理が必要となる。一方、図5の例において、係数ベクトルの次元は2である。上述したように、評価データD10の次元よりも係数ベクトルの次元数の方が小さいため、評価係数行列WTを用いて予測処理を行うことで、予測処理における特徴ベクトルの次元が削減され、予測処理の処理量を抑制することが可能となる。
次に、前処理部13の構成について説明する。前処理部13は、その内部に変換部41、データ分割部42、分離度評価部43及び前処理データ記憶部44といった複数の機能ブロックを有している。
変換部41は、時系列データのうち対象区間に含まれる部分を、時間表現から周波数表現に変換する。例えば変換部41は、取得データのうち対象区間に含まれる部分に対し、フーリエ変換処理、高速フーリエ変換処理やウェーブレット変換処理等の変換処理を行うことにより、非負の観測ベクトルを生成する。また変換部41は、この非負の観測ベクトルを複数並べることにより、非負の観測行列を生成する。
なお以下では、時系列データから、フーリエ変換により得られるパワースペクトル、スペクトログラムや、ウェーブレット変換によって得られるスカログラム等、時間、周波数、及び振幅の関係を表したデータを総称して時間・周波数・振幅データと呼ぶ。時間・周波数・振幅データは、例えば、周波数領域、及び時間領域における振幅の値を示すデータとして表現されても良い。
データ分割部42は、変換部41により変換された時間・周波数・振幅データ(すなわち非負の観測ベクトル又は非負の観測行列)を、周波数領域及び時間領域それぞれにおいて分割する。分離度評価部43は、分割されたデータごとに非負値行列因子分解(NMF)を適用して各領域を評価し、評価結果が良好であった領域のデータを選択する。すなわち分離度評価部43は、学習処理の実行中であれば、当該領域のデータを選択して教師データとし、また分離処理の実行中であれば、当該領域のデータを選択して評価データとする。前処理データ記憶部44は、前処理部13による各演算処理を経て生成された教師データを記憶する。
ここで、データ分割部42による時間・周波数・振幅データの分割と分離度評価部43による領域の選択(特定)について、図6を参照しながら説明する。図6は、横軸が時間を表し、縦軸が周波数を表しており、全体を表す領域A0が時間及び周波数に関してそれぞれ2分割されることにより、4つの領域A1、A2、A3及びA4に分割されている。分離度評価部43は、分割されたそれぞれのデータに対して、NMFを適用し、ある複数のランクで基底行列及び係数行列を取得する。なお、時間・周波数・振幅データは、NMFを適用するために、1次元の列ベクトルに変換されても良い。
以下では、事前に予備実験が行われ、いわゆる教師あり学習によりクラスC1とクラスC2の2つのクラスが設定されているものとする。まずデータ分割部42は、クラスC1に属する複数の時間・周波数・振幅データの領域A1、A2、A3、A4から、基底行列HC1,A1、HC1,A2、HC1,A3、HC1,A4並びに係数行列WC1,A1、WC1,A2、WC1,A3、WC1,A4をそれぞれ生成する。続いてデータ分割部42は、クラスC2に属する複数の時間・周波数・振幅データの領域A1、A2、A3、A4から、同様に基底行列HC2,A1、HC2,A2、HC2,A3、HC2,A4並びに係数行列WC2,A1、WC2,A2、WC2,A3、WC2,A4をそれぞれ生成する。なお、分解される基底の数を示すランクは、1から元のデータの次元数までの範囲である。
続いて、分離度評価部43は、それぞれの分割された時間領域、及び周波数領域で、各領域での分類能力を示す分離度を特定する。分離度を示す指標として、例えばクラスの分類(判別)正解率が用いられてもよい。
以下では、領域A0において、クラスC1またはクラスC2の分離度を示す指標として、クラスC1またはクラスC2の分類正解率が用いられる例を説明する。まず、分離度評価部43は、クラスC1、C2のそれぞれから得られた基底行列HC1,A1、HC2,A1を組み合わせた共通の基底行列HC1-C2,A1={HC1,A1,HC2,A1}を求める。元のクラスC1のデータYC1,A0、クラスC2のデータYC2,A0にHC1-C2,A1の擬似逆行列HC1-C2,A1
+をかけることにより、各クラスの係数行列WC1,A0、WC2,A0は、次の(7)式及び(8)式のように得られる。
分離度評価部43は、係数行列WC1,A0、WC2,A0を、それぞれクラスC1、クラスC2の特徴ベクトルとして、分類して、分類正解率を求める。このとき分離度評価部43は、分類の処理として、例えば、評価係数行列WTに含まれる係数ベクトルを特徴ベクトルとし、分類モデルとして閾値判別を用い、当該分類モデルに応じた分類モデルパラメータに基づいて分類することができる。
また、分離度を示す他の指標として、クラス内・クラス間分散比が用いられても良い。クラス内分散σw
2及びクラス間分散σB
2は、以下の(9)式及び(10)式のように表される。
ただし、上記の(9)式及び(10)式において、nは全データ数、niはクラスiのデータ数、xは特徴ベクトル、miはクラスiの特徴量ベクトルの平均、mは全特徴量ベクトルの平均である。上記クラス内分散σw
2及びクラス間分散σB
2を用いると、クラス内・クラス間分散比Jは以下の(11)式のように表される。
上記のクラス内・クラス間分散比Jが大きい程、分離度が大きく、良い特徴量であると考えられる。なお、分離度を示す指標は、上記に限定されず、例えばマハラノビス距離が用いられてもよい。
分離度評価部43は、上述のように、4つの領域A1、A2、A3、A4でそれぞれ分離度を求め、分離度の値が予め設定された閾値L以上の場合は、それらの領域を組み合わせた時間領域・周波数領域のデータで同様に分離度を求める。例えば、領域A1とA3で分離度が閾値L以上であった場合、分離度評価部43は、領域A1及びA3の時間領域・周波数領域のそれぞれで得られた特徴量で分離度を求める。上述のように、分離度の高い複数の領域から得られたデータを用いることで、より高い分離度の特徴量が得られる効果がある。
分離度評価部43は、学習処理において、分離度が最も高くなる時間領域・周波数領域のデータを特定して教師用データ(教師観測行列)とする。また、分離度評価部43は、教師データとして特定した時間領域・周波数領域のデータを、評価データ(評価観測行列)とする。以下、このとき特定された領域を特定領域と呼ぶ。
[1-3.学習予測処理]
次に、学習予測装置1(図1及び図2)において、時系列のデータを用いて学習処理を行った上で予測処理を行う学習予測処理について説明する。なお学習予測装置1は、運用前に実験が行われることにより、適切なクラスが設定され、適切な特定領域が特定され、また時間領域及び周波数領域それぞれにおける適切な分割数や分割位置(時間及び周波数)がそれぞれ選択されているものとする。
次に、学習予測装置1(図1及び図2)において、時系列のデータを用いて学習処理を行った上で予測処理を行う学習予測処理について説明する。なお学習予測装置1は、運用前に実験が行われることにより、適切なクラスが設定され、適切な特定領域が特定され、また時間領域及び周波数領域それぞれにおける適切な分割数や分割位置(時間及び周波数)がそれぞれ選択されているものとする。
学習予測装置1の制御部2は、学習予測処理の開始に先立ち、ユーザにより操作部6を介して所定の操作がなされると、学習完了条件を記憶部3に記憶させる。この学習完了条件は、ユーザが学習処理を完了させるための条件を予め設定しておくものであり、ここでは、例えば「100個の時系列データ取り込んだこと」が設定されたものとする。
また制御部2は、ユーザによる操作部6を介した操作に基づき、複数の候補近似式から選択近似式が選択されると共に、当該選択近似式に対応する特徴の算出方法及び異常判定条件がそれぞれ設定される。
その後、制御部2は、ユーザから学習予測処理の開始が指示されると、記憶部3から学習予測プログラムを読み出して実行することにより、図2に示した各機能ブロックを形成すると共に、図7に示す学習予測処理手順RT1を開始して最初のステップSP1に移る。
ステップSP1において制御部2は、条件設定部15により、記憶部3から学習完了条件である「100個の時系列データ取り込んだこと」を読み出して学習完了判定部16に設定し、次のステップSP2に移る。
ステップSP2において制御部2は、後述するようにサブルーチンとして学習処理を行い、次のステップSP3に移る。このとき制御部2は、この学習処理において、学習完了条件を満たすまでの間、時系列データを取得する処理を繰り返し行う。そのうえで制御部2は、この時系列データを基に教師基底行列HL及び教師係数行列WLを生成し、教師基底行列HLを教師データとして教師データ記憶部22(図2)に記憶させると共に、教師係数行列WLを基に分類モデルパラメータを生成し、これをパラメータ記憶部24に記憶させた状態となる。
ステップSP3において制御部2は、後述するようにサブルーチンとして予測処理を行い、次のステップSP4に移る。このとき制御部2は、1回の予測処理において、1件の時系列データを取得し、この時系列データを基に得られた異常度及びその近似式を基に異常発生予測時刻を算出して出力する。
ステップSP4において制御部2は、学習処理に用いられなかった全ての時系列データに対する予測処理を完了したか否かを判定する。ここで否定結果が得られると、このことは予測処理を行うべき時系列データが残っていることを表している。このとき制御部2は、再度ステップSP3に戻ることにより、残りの時系列データに対する予測処理を行う。一方、ステップSP4において肯定結果が得られると、制御部2は次のステップSP5に移り、学習予測処理手順RT1を終了する。
[1-4.学習処理]
次に、学習処理について説明する。学習予測装置1の制御部2は、学習予測処理手順RT1(図7)のステップSP2において、図8に示す学習処理手順RT2をサブルーチンとして実行し、最初のステップSP11に移る。
次に、学習処理について説明する。学習予測装置1の制御部2は、学習予測処理手順RT1(図7)のステップSP2において、図8に示す学習処理手順RT2をサブルーチンとして実行し、最初のステップSP11に移る。
ステップSP11において制御部2は、データ取得部11(図2)により1つの時系列データを取得し、次のステップSP12に移る。ステップSP12において制御部2は、区間特定部12(図2)により、当該時系列データの一部分を対象区間として特定し、次のステップSP13に移る。
ステップSP13において制御部2は、学習完了判定部16により、条件設定部15に設定された学習完了条件を満たすか否か、すなわち100個の時系列データを取り込んだか否かを判定する。ここで否定結果が得られると、制御部2は再びステップSP11に戻り、時系列データの取得及び対象区間の特定を繰り返す。
一方、ステップSP13において肯定結果が得られると、このことは既に充分な数の教師データを取り込んだため、これを基に教師データや分類モデルパラメータを生成すべきであることを表している。このとき制御部2は、次のステップSP14に移る。
ステップSP14において制御部2は、前処理部13の変換部41(図2)により、時系列データにフーリエ変換処理を施すことにより、非負の観測行列を生成し、次のステップSP15に移る。ステップSP15において制御部2は、前処理部13のデータ分割部42(図2)により、変換部41により変換されたデータを時間領域及び周波数領域でそれぞれ分割し、次のステップSP16に移る。
ステップSP16において制御部2は、前処理部13の分離度評価部43により、特定領域のデータを教師データとして教師データ処理部21へ供給して、次のステップSP17に移る。
ステップSP17において制御部2は、教師データ処理部21(図2)により、教師データにNMFを適用し、教師基底行列HLを生成して教師データ記憶部22に記憶させると共に、教師係数行列WLを生成してパラメータ生成部23に供給して、次のステップSP18に移る。
ステップSP18において制御部2は、パラメータ生成部23(図2)により、教師係数行列WLを基に、時系列データを分類するための分類モデルパラメータを生成し、これをパラメータ記憶部24に記憶させ、次のステップSP19に移る。ステップSP19において制御部2は、学習処理手順RT2を終了して、元の学習予測処理手順RT1(図7)のステップSP2に戻る。
[1-5.予測処理]
次に、予測処理について説明する。学習予測装置1の制御部2は、学習予測処理手順RT1(図7)のステップSP3において、図9に示す予測処理手順RT3をサブルーチンとして実行し、最初のステップSP31に移る。
次に、予測処理について説明する。学習予測装置1の制御部2は、学習予測処理手順RT1(図7)のステップSP3において、図9に示す予測処理手順RT3をサブルーチンとして実行し、最初のステップSP31に移る。
制御部2は、ステップSP31、SP32、SP33及びSP34において、時系列データに対し、学習処理手順RT2(図8)のステップSP21、SP22、SP24及びSP25とそれぞれ同様の処理を行う。すなわち制御部2は、時系列データを取得して対象区間を特定し、フーリエ変換処理を行った上で時間領域及び周波数領域で分割して、その次のステップSP35に移る。
ステップSP35において制御部2は、前処理部13の分離度評価部43により、特定領域のデータを評価データとして特徴抽出部25へ供給し、次のステップSP36に移る。ステップSP36において制御部2は、特徴抽出部25(図2)により、教師データ記憶部22に記憶されている教師基底行列HLを基に評価係数行列WTを生成し、次のステップSP37に移る。
ステップSP37において制御部2は、異常度算出部31(図2)により、評価係数行列WT及び分類モデルパラメータを基に異常度を算出し、次のステップSP38に移る。ステップSP38において制御部2は、算出した異常度を時系列順に従って異常度記憶部32(図2)に記憶させ、次のステップSP39に移る。
このとき算出される異常度は、実際に得られた時系列データに基づくものであるため、例えば図10に示す異常度曲線QRのように、その値が比較的短い周期で変動する場合が多い。ここで図10は、横軸が時間を表しており、縦軸が異常度を表している。また図10では、現在の時系列データと対応する現在時刻TN及び将来異常が発生する異常発生時刻TAをそれぞれ示すと共に、将来の異常度曲線QRの値を破線で示している。
ステップSP39において制御部2は、近似式算出部33(図2)により、異常度記憶部32に記憶されている異常度と、予めユーザに選択された選択近似式とを基に近似式を算出し、次のステップSP40に移る。このとき算出される近似式は、例えば図10に示した異常度近似曲線QAのように、異常度曲線QRにおける大まかな変化の傾向を表した曲線となり、また現在時刻TN以降の部分も含むことになる。
ステップSP40において制御部2は、近似式特徴抽出部34(図2)により、近似式を微分した特徴式を算出し、次のステップSP41に移る。このとき算出される特徴式は、例えば図10と対応する図11に示す異常度特徴曲線QSのような曲線となる。この図11は、横軸が時間を表しており、縦軸が異常度の微分値を表している。
ステップSP41において制御部2は、異常発生時刻算出部35(図2)により、特徴式が異常発生条件を満たす時刻、具体的には異常閾値THを超える時刻TPを算出して異常発生予測時刻とし、次のステップSP42に移る。例えば制御部2は、異常閾値THが値「-0.005」に設定されていた場合、特徴式がこの値「-0.005」になる時刻TPを算出し、これを異常発生予測時刻とする。
このように制御部2は、ステップSP37からステップSP41に至る一連の処理により、異常度を算出し、該異常度を基に近似式を算出し、該近似式から特徴式を算出し、該特徴式が異常発生条件を満たす異常発生予測時刻を算出する。
ステップSP42において制御部2は、出力部36(図2)により、近似式を表すグラフ(図10)及び異常発生予測時刻、並びに所定のメッセージ等を含む表示画面を生成し、これを表示部5(図1)に表示させることにより出力した後、次のステップSP43に移る。ステップSP43において制御部2は、予測処理手順RT3を終了して、元の学習予測処理手順RT1(図7)のステップSP3に戻る。
[1-6.動作及び効果]
以上の構成において、第1の実施の形態による学習予測装置1は、予めユーザにより、学習完了条件が設定されると共に、選択近似式が選択され、特徴の算出方法が設定され、異常判定条件が設定されてから、時系列データを用いた学習予測処理手順RT1(図7)を開始する。このとき学習予測装置1は、前段の学習処理手順RT2(図8)において分類モデルパラメータを生成してから、後段の予測処理手順RT3(図9)において各時系列データの異常度を算出し、当該異常度の近似式及び特徴式を算出した上で、異常発生予測時刻を算出して出力する。
以上の構成において、第1の実施の形態による学習予測装置1は、予めユーザにより、学習完了条件が設定されると共に、選択近似式が選択され、特徴の算出方法が設定され、異常判定条件が設定されてから、時系列データを用いた学習予測処理手順RT1(図7)を開始する。このとき学習予測装置1は、前段の学習処理手順RT2(図8)において分類モデルパラメータを生成してから、後段の予測処理手順RT3(図9)において各時系列データの異常度を算出し、当該異常度の近似式及び特徴式を算出した上で、異常発生予測時刻を算出して出力する。
このため学習予測装置1は、測定対象ごとに時系列データの値が大きく異なるような場合であっても、当該時系列データの一部を学習して分類モデルパラメータを生成した上で、異常度の近似式を異常閾値と比較することにより、各時系列データから精度の高い異常発生予測時刻を算出できる。
また学習予測装置1は、学習完了条件が適切に設定されることにより、必要十分な数の時系列データを取り込んだ適切な段階で、すなわち適切な数の教師データを生成し得るようになった段階で、前段の学習処理を切り上げ、後段の予測処理に適した分類モデルパラメータを生成することができる。
例えば、工作機械に取り付けられる切削工具の使用時に発生する音のように、当該切削工具の個体差により発生する音が異なる場合、この音を集音して得られた時系列データも、切削工具の個体差に応じた値をとる。このため、このような時系列データを所定の閾値等と単純に比較しただけでは、異常が発生する時刻を予測することは困難である。
この点において、本実施の形態による学習予測装置1は、学習処理において時系列データの一部を用いた学習処理を行うため、切削工具の個体差が反映された分類モデルパラメータを生成できる。また学習予測装置1は、この分類モデルパラメータ及びその後の時系列データを用いて異常度及びその近似式を算出するため、やはり切削工具の個体差に応じた近似式を得ることができる(図10)。さらに学習予測装置1は、この近似式の特徴を表す特徴式を算出し(図11)、この特徴式及び異常閾値を用いることで、結果的に当該切削工具の個体差に応じた、精度の高い異常発生予測時刻を得ることができる。
また学習予測装置1は、時系列データそのものではなく、該時系列データの異常度を近似した近似式を作成するため、該時系列データの異常度の傾向や特徴を容易に把握することができる。これに加えて学習予測装置1は、複数の候補近似式のうち測定対象に応じたものをユーザに予め選択させ、これを選択近似式とするようにした。これにより学習予測装置1は、ユーザの判断に基づき、時系列データの異常度の傾向に合った適切な候補近似式を選択近似式として使用できるため、精度の高い近似式を算出でき、その結果として異常発生予測時刻を精度良く算出することができる。
さらに学習予測装置1は、近似式そのものではなく、当該近似式における特徴を抽出した特徴式を用いるため、異常発生予測時刻を容易に、かつ精度良く算出することができる。これに加えて学習予測装置1は、候補近似式と対応する特徴式及び異常判定条件についても、ユーザに予め設定させるようにした。このため学習予測装置1は、近似式の特徴が適切に表れる特徴式を確実に算出でき、且つこの特徴式において異常が発生すると予測される時刻を容易に特定することができる。
そのうえ学習予測装置1は、ユーザの判断に基づき、除外期間を設定できるようにした。このため学習予測装置1は、例えば測定対象の動作開始直後のような特定の時期に、時系列データの異常度が選択近似式から大きく外れることが予め判明している場合、この除外期間を設定することにより、選択近似式に近い異常度を基に、適切な近似式を算出することができる。
また学習予測装置1は、時系列データを順次取得できれば、学習処理から自動的に予測処理に切り替えることができるので、例えば学習処理においてユーザが立ち会い、当該ユーザが教師データや分類モデルパラメータを確認しながら当該学習処理を完了すべきタイミングを見計らう、といった煩わしい作業を行う必要が無い。
さらに学習予測装置1では、前処理部13のデータ分割部42及び分離度評価部43(図2)により、データを周波数及び時間それぞれにおいて複数の領域に分割し(図6)、高い分離度が得られた特定領域のデータを教師データ又は評価データとするようにした。このため学習予測装置1は、分割を行わずに全ての領域を教師データ又は評価データとする場合と比較して、データに特徴が良好に表れた状態となり、精度の高い分離処理を行うことができる。また学習予測装置1では、領域の減少に伴い演算量を削減できるので、処理負荷を軽減させることもできる。
そのうえ学習予測装置1では、教師データ処理部21において、教師観測行列YLにNMFを適用することにより教師基底行列HL及び教師係数行列WLに分解し、このうち教師基底行列HLを教師データとして記憶し、教師係数行列WLを元に分類モデルパラメータを生成するようにした。これにより学習予測装置1では、例えば特定周波数のパワーの大きさに基づいて分類する場合よりも、分類精度を向上させることができる。
以上の構成によれば、第1の実施の形態による学習予測装置1は、時系列データを用いる学習予測処理を実行する場合に、前段の学習処理において分類モデルパラメータを生成してから、後段の予測処理において各時系列データの異常度を算出し、当該異常度の近似式及び特徴式を算出した上で、異常発生予測時刻を算出して出力する。このため学習予測装置1は、測定対象から実際に得られた時系列データの一部を基に、適切な分類モデルパラメータを生成でき、これと他の時系列データとを基に得られた異常度の近似式や特徴式を利用でき、その結果として極めて精度の高い異常発生予測時刻を算出できる。
[2.第2の実施の形態]
[2-1.学習予測処理装置の構成]
第2の実施の形態による学習予測装置201(図1)は、第1の実施の形態による学習予測装置1と比較して、制御部2及び記憶部3に代わる制御部202及び記憶部203を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。
[2-1.学習予測処理装置の構成]
第2の実施の形態による学習予測装置201(図1)は、第1の実施の形態による学習予測装置1と比較して、制御部2及び記憶部3に代わる制御部202及び記憶部203を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。
制御部202は、第1の実施の形態による制御部2と同様、図示しないCPU、ROM及びRAM等を有しており、種々のプログラムを実行して様々な処理を行う。また記憶部203は、第1の実施の形態による記憶部3と同様、不揮発性の記憶媒体であり、種々のプログラムや種々の情報を記憶するものの、その内容が第1の実施の形態と一部相違している。
制御部202は、記憶部203から各種プログラムを読み出して実行することにより、図2と対応する図12に示すような種々の機能ブロックを形成する。この第2の実施の形態では、第1の実施の形態と比較して、近似式算出部33、近似式特徴抽出部34及び異常発生時刻算出部35に代わる近似式算出部233、近似式特徴抽出部234及び異常発生時刻算出部235を有する点、及び近似式選択部251を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。
近似式算出部233は、第1の実施の形態と同様に、異常度記憶部32に記憶された1個又は複数個の異常度を基に、当該異常度を関数に近似した近似式を算出する。ただしこの近似式算出部233では、第1の実施の形態とは異なり、ユーザにより選択近似式が選択されず、複数の候補近似式に基づいた複数の近似式をそれぞれ算出するようになっている。
近似式選択部251は、複数の近似式をそれぞれ評価した上で、最適な近似式を1個選択する。具体的に近似式選択部251は、例えば直近の時系列データとの二乗誤差や、直近の複数の時系列データと各近似式との二乗誤差の分布等、種々の演算手法に基づいて各近似式と時系列データとの差異を算出し、この差異が最も小さい近似式を選択する。
近似式特徴抽出部234は、第1の実施の形態と同様に、近似式の特徴を抽出する。ただし近似式特徴抽出部234は、近似式算出部233において予め準備されている各候補近似式とそれぞれ対応する特徴の算出方法をそれぞれ記憶している。その上で近似式特徴抽出部234は、近似式選択部251において選択された近似式と対応する特徴の算出方法に従い、特徴式を算出するようになっている。
異常発生時刻算出部235は、第1の実施の形態と同様に、特徴式及び異常判定条件を基に、異常発生予測時刻を算出する。ただし異常発生時刻算出部235は、近似式特徴抽出部234において予め準備されている複数の特徴の算出方法とそれぞれ対応する複数の異常判定条件をそれぞれ記憶している。その上で異常発生時刻算出部235は、近似式特徴抽出部234において採用された特徴の算出方法と対応する異常判定条件に従い、異常発生予測時刻を算出するようになっている。
[2-2.学習予測処理]
学習予測装置201の制御部202は、学習予測処理を行う場合、第1の実施の形態と同様に学習予測処理手順RT1(図7)を実行する。このとき制御部202は、学習予測処理の開始に先立ち、ユーザによる操作部6を介した操作に基づき、学習完了条件を設定する。
学習予測装置201の制御部202は、学習予測処理を行う場合、第1の実施の形態と同様に学習予測処理手順RT1(図7)を実行する。このとき制御部202は、学習予測処理の開始に先立ち、ユーザによる操作部6を介した操作に基づき、学習完了条件を設定する。
制御部202は、学習予測処理手順RT1(図7)を開始すると、ステップSP3において、図9と対応する図13に示す予測処理手順RT23を実行し、最初のステップSP231に移る。
制御部202は、ステップSP231~SP238において、ステップSP31~SP38(図9)とそれぞれ同様の処理を行うことにより、評価係数行列WT及び分類モデルパラメータをそれぞれ生成し、異常度を算出して異常度記憶部32に記憶させると、次のステップSP239に移る。
ステップSP239において制御部202は、近似式算出部233(図12)により、複数の候補近似式に基づいた複数の近似式をそれぞれ算出し、次のステップSP240に移る。ステップSP240において制御部202は、近似式選択部251(図12)により、各近似式を評価した上で、最適な近似式を1個選択し、次のステップSP241に移る。
ステップSP241において制御部202は、近似式特徴抽出部234(図12)により、近似式と対応する特徴の算出方法に従った特徴式を算出し、次のステップSP242に移る。ステップSP242において制御部202は、異常発生時刻算出部235により、特徴式の算出方法と対応する異常判定条件に従って異常発生予測時刻を算出し、次のステップSP243に移る。
ステップSP243において制御部202は、ステップSP42(図9)と同様、出力部36(図12)により、近似式を表すグラフ(図10)及び異常発生予測時刻、並びに所定のメッセージ等を含む表示画面を生成し、これを表示部5(図1)に表示させることにより出力した後、次のステップSP244に移る。ステップSP244において制御部202は、予測処理手順RT23を終了して、元の学習予測処理手順RT1(図7)のステップSP3に戻る。
[2-3.効果等]
以上の構成において、第2の実施の形態による学習予測装置201は、予めユーザにより学習完了条件が設定されてから、時系列データを用いた学習予測処理手順RT1(図7)を開始する。このとき学習予測装置201は、前段の学習処理手順RT2(図8)において分類モデルパラメータを生成してから、後段の予測処理手順RT23(図13)において各時系列データの異常度を算出する。さらに学習予測装置201は、複数の候補近似式に基づいて異常度の近似式を複数算出し、各近似式を評価した上で最適な1個の近似式を選択した後、その特徴式を算出し、異常発生予測時刻を算出して出力する。
以上の構成において、第2の実施の形態による学習予測装置201は、予めユーザにより学習完了条件が設定されてから、時系列データを用いた学習予測処理手順RT1(図7)を開始する。このとき学習予測装置201は、前段の学習処理手順RT2(図8)において分類モデルパラメータを生成してから、後段の予測処理手順RT23(図13)において各時系列データの異常度を算出する。さらに学習予測装置201は、複数の候補近似式に基づいて異常度の近似式を複数算出し、各近似式を評価した上で最適な1個の近似式を選択した後、その特徴式を算出し、異常発生予測時刻を算出して出力する。
このため学習予測装置201は、第1の実施の形態と同様、測定対象ごとに時系列データが大きく変動するような場合であっても、当該時系列データの一部を学習して分類モデルパラメータを生成した上で、異常度の近似式を異常閾値と比較するため、各時系列データから精度の高い異常発生予測時刻を算出することができる。
特に学習予測装置201は、近似式算出部233において複数の候補近似式を基に複数の近似式を算出し、近似式選択部251においてそれぞれを評価した上で最適な近似式を選択するようにした。このため学習予測装置201では、第1の実施の形態と比較して、予めユーザに対し選択近似式を選択させることや特徴式の算出方法及び異常判定条件を設定させることを必要としないため、当該ユーザの手間を大幅に削減することができる。
これを他の観点から見ると、学習予測装置201では、複数の近似式から最適なものを自動的に選択できるため、例えば測定対象の個体差により適切な近似式が異なり、時系列データの最適な近似式を事前にユーザに決めさせるのが難しい場合であっても、結果的に最適な近似式を自動的に採用することができる。
その他の点においても、第2の実施の形態による学習予測装置201は、第1の実施の形態と同様の作用効果を奏し得る。
以上の構成によれば、第2の実施の形態による学習予測装置201は、学習予測処理の後段となる予測処理において、各時系列データの異常度を算出し、複数の候補近似式を基に異常度の近似式を複数算出し、各近似式の評価を行って最適なものを選択した上で、その特徴式を算出し、異常発生予測時刻を算出して出力する。このため学習予測装置201は、ユーザに煩わしい設定等を行わせること無く、測定対象から実際に得られた時系列データ等を基に、異常度の最適な近似式や特徴式を利用でき、その結果として極めて精度の高い異常発生予測時刻を算出できる。
[3.他の実施の形態]
なお上述した第1の実施の形態においては、予測処理手順RT3(図9)に従い、1個の時系列データが供給されるとステップSP31~ステップSPSP43までの処理を行う場合について述べた。しかし本発明はこれに限らず、例えば予測処理手順RT3をステップSP31~ステップSP38までの前半処理と、ステップSP39~ステップSP43までの後半処理とに分け、所定個(例えば10個)の時系列データについて前半処理を繰り返した後に後半処理を行うようにしても良い。第2の実施の形態についても同様である。
なお上述した第1の実施の形態においては、予測処理手順RT3(図9)に従い、1個の時系列データが供給されるとステップSP31~ステップSPSP43までの処理を行う場合について述べた。しかし本発明はこれに限らず、例えば予測処理手順RT3をステップSP31~ステップSP38までの前半処理と、ステップSP39~ステップSP43までの後半処理とに分け、所定個(例えば10個)の時系列データについて前半処理を繰り返した後に後半処理を行うようにしても良い。第2の実施の形態についても同様である。
また上述した第1の実施の形態においては、予測処理手順RT3(図9)に従い、選択近似式に基づいて近似式を算出した後、無条件で特徴式の算出及び異常判定条件に基づいた異常発生予測時刻の算出を行う場合について述べた。しかし本発明はこれに限らず、例えば選択近似式に基づいて近似式を算出した後、第2の実施の形態における近似式選択部251(図12)と同様の演算処理によって当該近似式と時系列データとの差異を算出し、当該差異が所定の閾値よりも大きい場合に、特徴式の算出及び異常発生予測時刻の算出を省略しても良い。第2の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、学習予測処理を開始する前に、ユーザにより、複数の候補近似式から測定対象に適したものを選択近似式として選択させる場合について述べた。しかし本発明はこれに限らず、例えば任意の近似式をユーザに入力させるようにしても良い。さらにこの場合、近似式に対する特徴の算出方法や異常判定条件をユーザに入力させても良い。第2の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態については、近似式から特徴式を算出し、当該特徴式についての異常判定条件を基に異常発生予測時刻を算出する場合について述べた。しかし本発明はこれに限らず、例えば近似式そのものにおいて異常が発生する時刻に特徴的な変化が生じる場合に、特徴式の算出を省略すると共に、近似式に対する異常判定条件を設定しておいても良い。この場合、当該近似式において当該異常判定条件が満たされる時刻を異常発生予測時刻とすることができる。第2の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、学習処理の完了後に予測処理を行う場合について述べた。しかし本発明はこれに限らず、例えば学習処理の完了後に予測処理を行わず、生成した教師基底行列HL(教師データ)や教師係数行列WL、或いは該教師係数行列WLを基に生成した分類モデルパラメータ等を記憶部3等に記憶させ、若しくは所定のサーバ等へ送信して保存させても良い。これらの教師データ等は、例えば所定の予測装置に記憶させ、当該教師データ等に基づいた予測処理を行わせても良い。第2の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、学習完了条件を、「100個の時系列データを取り込むこと」とする場合について述べた。しかし本発明はこれに限らず、例えば任意の個数の時系列データを取り込むこととしても良く、或いは所定の時間範囲(例えば1分間等)に渡る時系列データを取り込むこととしても良い。また学習完了条件については、例えば「教師データの分散が所定の閾値以下であること」や、教師データ(すなわち教師基底行列HL)の平均値や標準偏差が所定の閾値以上又は以下であること等、教師データに関する種々の統計的な値を利用した種々の条件(以下これを統計条件とも呼ぶ)としても良い。或いは、例えば教師データの分布における上位10[%]が所定の範囲内であり且つ下位10[%]が所定の範囲内であること等、教師データの分布を利用した種々の条件(以下これを分布条件とも呼ぶ)としても良い。また、教師基底行列HLに代えて、教師係数行列WLの統計的な値や分布等を利用した種々の条件としても良い。さらには、これらを適宜組み合わせても良い。第2の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、区間特定部12(図2)が参照信号D2(図3)において振幅が振幅値Pとなる区間Tに対応する時系列データD1の区間を対象区間とする場合について述べた。しかし本発明はこれに限らず、例えば区間特定部12が時系列データD1における振幅の大きさに基づいて、対象区間を特定しても良い。具体的には、時系列データD1において、振幅の大きさが所定の閾値を超える区間を対象区間として特定しても良く、又は振幅の大きさが所定の閾値を超える時刻の所定時間前から当該時刻の所定時間後までを、対象区間として特定しても良い。第2の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、前処理部13のデータ分割部42において、変換部41により変換された時間・周波数・振幅データを、周波数領域及び時間領域それぞれにおいて2分割する場合について述べた(図6)。しかし本発明はこれに限らず、周波数領域及び時間領域の少なくとも一方を、任意数の領域に分割しても良い。この場合、周波数領域及び時間領域における分割数は互いに相違させても良く、また同数としても良い。さらに、周波数領域及び時間領域における分割箇所は、それぞれ適宜設定することができる。第2の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、前処理部13のデータ分割部42において、時間・周波数・振幅データを、周波数領域及び時間領域それぞれにおいて2分割する処理を1回のみ行う場合について述べた(図6)。しかし本発明はこれに限らず、例えば図6に示したように、4つの領域A1、A2、A3、A4のそれぞれにおいて、さらに再帰的にデータを分割してもよい。具体的には、例えば領域A1を、さらに4つの領域A11、A12、A13、A14に分割しても良い。この場合、分離度評価部43は、分割されたデータや、分割されたデータを組み合わせたデータに対して、それぞれ分離度を求めれば良い。このような再帰的な分割は、時間領域・周波数領域が最小の単位になるまで分割されるか、あるいは分割されたデータの大きさが所定の値となるまで、繰り返しても良い。第2の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、前処理部13の分離度評価部43において、時間及び周波数に関して分割した各領域のデータでクラスの分類(判別)正解率を指標として分離度を算出し、当該分離度が所定の閾値L以上である領域を特定領域とする場合について述べた。しかし本発明はこれに限らず、他の種々の方法により分離度を評価しても良い。また、時間及び周波数に関して分割して全ての領域に限らず、一部の領域についてのみ分離度を評価しても良い。さらには、分離度評価部43においてNMFを用いること無く、他の種々の手法により基底行列及び係数行列を算出しても良い。第2及び第3の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、前処理部13において、データ分割部42により時間及び周波数に関して領域を分割し、さらに分離度評価部43により領域毎の分離度を評価して特定領域を選択する場合について述べた。しかし本発明はこれに限らず、例えば前処理部13からデータ分割部42及び分離度評価部43を省略しても良い。第2の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、教師データ処理部21(図2)において、教師観測行列YLに対応付けられた正解ラベルのクラスごとにNMFを適用する場合について述べた。しかし本発明はこれに限らず、教師観測行列YLに対して、一括してNMFを適用しても良い。第2の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、教師データ処理部21において、全てのデータセットに対して一括でNMFを適用する場合について述べた。しかし本発明はこれに限らず、例えば教師データを複数のクラスに分類し、当該クラスごとにNMFを適用しても良い。これにより、振幅の小さいデータや、出現回数の低いデータに対応した特徴を持つ基底も生成されやすくなり、分類精度をより向上させることができる。
さらに上述した第1の実施の形態においては、教師データ処理部21において、時系列データから変換された周波数領域の観測ベクトル又は観測行列を基に、NMFにより教師基底行列及び教師係数行列を生成する場合について述べた。しかし本発明はこれに限らず、周波数領域の観測ベクトル又は観測行列に対して他の種々の演算処理を行うことにより、教師基底行列及び教師係数行列を生成しても良い。第2の実施の形態についても同様である。
さらに上述した実施の形態においては、出力部36(図2)によって異常発生予測時刻等を基に所定の表示画面を構成して表示部5(図1)に表示させる場合について述べた。しかし本発明はこれに限らず、例えば図示しないスピーカから分類結果を音声により出力しても良く、或いは通信部4(図1)から所定の端末装置(図示せず)等へ分類結果を表すデータを送信する等、種々の手法により分類結果を出力しても良い。若しくは、異常発生予測時刻等を出力せずに記憶部3に記憶させ、他のプログラム等により当該異常発生予測時刻を読み出すようにしても良い。また近似式については、グラフに代えて、若しくはグラフと共に、数式を表示しても良く、或いは当該近似式に関する表示を省略しても良い。第2の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、学習予測装置1の制御部2(図1)において各種プログラムを実行することにより、図2に示したデータ取得部11等の各ブロックをソフトウェアによる機能ブロックとして構成する場合について述べた。しかし本発明はこれに限らず、データ取得部11等をハードウェアにより構成しても良く、或いはハードウェア及びソフトウェアの協働により実現しても良い。第2の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、学習予測装置1(図1)が記憶部3に予め記憶されている各種プログラムを読み出して実行する場合について述べた。しかし本発明はこれに限らず、例えばネットワークに接続された所定のサーバ装置(図示せず)から取得し、或いはUSB(Universal Serial Bus)メモリのような着脱可能な記憶媒体から読み出すことにより、学習予測装置1が各種プログラムを取得して実行しても良い。第2の実施の形態についても同様である。
さらに本発明は、上述した各実施の形態及び他の実施の形態に限定されるものではない。すなわち本発明は、上述した各実施の形態と上述した他の実施の形態の一部又は全部を任意に組み合わせた実施の形態や、一部を抽出した実施の形態にもその適用範囲が及ぶものである。
さらに上述した実施の形態においては、条件設定部としての条件設定部15と、データ取得部としてのデータ取得部11と、学習完了判定部としての学習完了判定部16と、学習処理部としての教師データ処理部21及びパラメータ生成部23と、異常度算出部としての異常度算出部31と、近似式算出部としての近似式算出部33と、異常発生予測時刻算出部としての異常発生時刻算出部35とによって異常予測処理装置としての学習予測装置1を構成する場合について述べた。しかし本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなる条件設定部と、データ取得部と、学習完了判定部と、学習処理部と、異常度算出部と、近似式算出部と、異常発生予測時刻算出部とによって異常予測処理装置を構成しても良い。
本発明は、例えば時系列のデータを取得して学習処理を行ってから、異常が発生する時刻を予測する場合に利用できる。
1、201……学習予測装置、2、202……制御部、3、203……記憶部、4……通信部、5……表示部、6……操作部、11……データ取得部、12……区間特定部、13……前処理部、15……条件設定部、16……学習完了判定部、21……教師データ処理部、22……教師データ記憶部、23……パラメータ生成部、24……パラメータ記憶部、25……特徴抽出部、31……異常度算出部、32……異常度記憶部、33、233……近似式算出部、34、234……近似式特徴抽出部、35、235……異常発生時刻算出部、36……出力部、41……変換部、42……データ分割部、43……分離度評価部、44……前処理データ記憶部、251……近似式選択部、TA……異常発生時刻、TH……異常閾値、H……基底行列、HL……教師基底行列、W……係数行列、WL……教師係数行列、WT……評価係数行列、Y……観測行列、YL……教師観測行列、YT……評価観測行列。
Claims (11)
- 学習完了条件を設定する条件設定部と、
測定対象から複数の時系列データを取得するデータ取得部と、
前記学習完了条件を満たすか否かを判定する学習完了判定部と、
前記学習完了条件を満たす場合、取得した前記時系列データを基に学習処理を行い、分類モデルを生成する学習処理部と、
前記分類モデルに基づいた値と前記時系列データとの差異の大きさを表す異常度を算出する異常度算出部と、
前記異常度を基に、当該異常度の近似式を算出する近似式算出部と、
前記近似式を基に、前記測定対象に異常が発生すると予測される異常発生予測時刻を算出する異常発生予測時刻算出部と
を具えることを特徴とする異常予測処理装置。 - 前記近似式の特徴を抽出する特徴抽出部
をさらに具え、
前記異常発生予測時刻算出部は、前記特徴を基に、前記異常発生予測時刻を算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の異常予測処理装置。 - 前記特徴抽出部は、前記特徴として前記近似式を微分した特徴式を生成し、当該特徴式を基に前記異常発生予測時刻を算出する
ことを特徴とする請求項2に記載の異常予測処理装置。 - 前記異常発生予測時刻算出部は、前記特徴式において所定の異常判定条件が満たされる時刻を、前記異常発生予測時刻とする
ことを特徴とする請求項3に記載の異常予測処理装置。 - 前記近似式算出部は、予め用意された複数の候補近似式に基づいて複数の前記近似式を算出し、複数の当該近似式のうち前記時系列データとの誤差が最も小さいものを、前記近似式として選択する
ことを特徴とする請求項1に記載の異常予測処理装置。 - 前記近似式算出部は、予め設定された除外期間の前記時系列データに基づく前記異常度を除いた前記異常度を基に、前記近似式を算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の異常予測処理装置。 - 前記時系列データを取得する度に、前記異常度算出部による前記異常度の算出処理、前記近似式算出部による前記近似式の算出処理、及び前記異常発生予測時刻算出部による前記異常発生予測時刻の算出処理による一連の処理を繰り返し実行させる制御部
をさらに具え、
前記制御部は、前記時系列データを取得し前記近似式算出部により算出された前記近似式に基づく値と当該時系列データとの誤差が所定の閾値を超える場合、当該時系列データに基づいた前記一連の処理を終了し、次の前記時系列データについて前記一連の処理を実行させる
ことを特徴とする請求項1に記載の異常予測処理装置。 - 前記異常発生予測時刻を通知する通知部
をさらに具えることを特徴とする請求項1に記載の異常予測処理装置。 - 前記通知部は、情報を表示する表示部であり、前記異常発生予測時刻と共に、前記近似式又は当該近似式のグラフを表示する
ことを特徴とする請求項8に記載の異常予測処理装置。 - 学習完了条件を設定する条件設定ステップと、
測定対象から複数の時系列データを取得するデータ取得ステップと、
前記学習完了条件を満たすか否かを判定する学習完了判定ステップと、
前記学習完了条件を満たす場合、取得した前記時系列データを基に学習処理を行い、分類モデルを生成する学習処理ステップと、
前記分類モデルに基づいた値と前記時系列データとの差異の大きさを表す異常度を算出する異常度算出ステップと、
前記異常度を基に、当該異常度の近似式を算出する近似式算出ステップと、
前記近似式を基に、前記測定対象に異常が発生すると予測される異常発生予測時刻を算出する異常発生予測時刻算出ステップと
を有することを特徴とする異常予測処理方法。 - 情報処理装置に対し、
学習完了条件を設定する条件設定ステップと、
測定対象から複数の時系列データを取得するデータ取得ステップと、
前記学習完了条件を満たすか否かを判定する学習完了判定ステップと、
前記学習完了条件を満たす場合、取得した前記時系列データを基に学習処理を行い、分類モデルを生成する学習処理ステップと、
前記分類モデルに基づいた値と前記時系列データとの差異の大きさを表す異常度を算出する異常度算出ステップと、
前記異常度を基に、当該異常度の近似式を算出する近似式算出ステップと、
前記近似式を基に、前記測定対象に異常が発生すると予測される異常発生予測時刻を算出する異常発生予測時刻算出ステップと
を実行させるための異常予測処理プログラム。
Priority Applications (1)
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---|---|---|---|
JP2022135654A JP2024032154A (ja) | 2022-08-29 | 2022-08-29 | 異常予測処理装置、異常予測処理方法及び異常予測処理プログラム |
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