JP2024022117A - 制御方法、制御装置及び制御プログラム - Google Patents
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Abstract
【課題】簡易的な方法でユーザの歩行動作の改善を図る。【解決手段】本発明の一側面に係る制御装置は、ユーザの歩行に対するセンサ値を取得し、推定モデルを使用して、センサ値から歩行の位相の推定値を算出し、設定されたアシストパターンに従って、算出された位相の推定値からアシスト量を決定する。このとき、制御装置は、足圧中心の軌跡を前足の内側の方に誘導する方法、及び歩行ラウンドの経過に応じてアシスト量をランダムに変更する方法の少なくとも一方により、ユーザに与えるアシスト量を決定する。そして、制御装置は、決定されたアシスト量を出力する。【選択図】図1
Description
本発明は、制御方法、制御装置及び制御プログラムに関する。
例えば、脳卒中による片麻痺等の歩行に障害を有する患者に対して、歩行アシスト装置を用いて、歩行動作が健常に向かうようにリハビリテーションを行う場合がある。特許文献1~3には、このようなリハビリテーションに利用可能な歩行アシスト装置が提案されている。
従来、歩行周期に対して基本的なパターンでアシストすることによるリハビリテーションが行われていた。しかしながら、患者(ユーザ)によって障害が異なるため、そのような方法では、様々な患者の歩行動作の改善を図るのは困難であった。そのため、基本的には、理学療法士が各患者に合わせて基本パターンから手作業でかつ頻繁にアシスト量の調整をし、各患者の歩行動作の改善を図っていた。したがって、高度な知識がなければ、患者の歩行動作の改善を図るのは困難であった。
本発明は、一側面では、このような事情を鑑みてなされたものであり、その目的は、簡易的な方法でユーザの歩行動作の改善を図る技術を提供することである。
本発明は、上述した課題を解決するために、以下の構成を採用する。なお、以下の発明の構成は適宜組み合わせ可能である。
本発明の一側面に係る制御方法は、コンピュータが、アシストパターンを設定する設定ステップと、ユーザの歩行に対するセンサのセンサ値を取得する取得ステップと、推定モデルを使用して、取得された前記センサ値から前記歩行の位相の推定値を算出する推定ステップと、設定された前記アシストパターンに従って、算出された前記位相の推定値からアシスト量を決定する決定ステップと、決定された前記アシスト量を出力する出力ステップと、を実行する情報処理方法である。前記センサは、足底センサを含む。前記歩行の位相の推定値を算出することは、前記足底センサにより得られるセンサ値から足底荷重の圧中心(足圧中心)を算出することを含む。前記アシスト量を決定することは、算出された前記足圧中心に基づいて、前記足圧中心の軌跡を前足の内側の方に誘導するようにアシスト量を決定することを含む。
本件発明者らは、後述する実験例により、以下の結果を得た。すなわち、健常な歩行能力を有する脚では、足圧中心の軌跡がかかとから前足の内側に至るように描かれ、足圧中心が前足の内側の領域に適度に留まっていることで、歩行時の蹴り出し力が大きくなった。一方で、麻痺等の障害を有する脚では、足圧中心の軌跡が前足の内側の方へは至らず、前足の外側等の別の領域に至るように描かれた。これらの結果から、本件発明者らは、足
圧中心の軌跡が前足の内側に至るような歩行動作ができるようになれば、健常な脚と同等の歩行能力を獲得可能(つまり、歩行能力の改善を期待することができる)との知見を得た。当該構成によれば、この知見に基づいて、足圧中心の軌跡を前足の内側の方に誘導するという簡易的な方法のアシストをユーザに提供することで、ユーザの歩行動作の改善を期待することができる。
圧中心の軌跡が前足の内側に至るような歩行動作ができるようになれば、健常な脚と同等の歩行能力を獲得可能(つまり、歩行能力の改善を期待することができる)との知見を得た。当該構成によれば、この知見に基づいて、足圧中心の軌跡を前足の内側の方に誘導するという簡易的な方法のアシストをユーザに提供することで、ユーザの歩行動作の改善を期待することができる。
上記一側面に係る制御方法において、前記足圧中心の軌跡を前足の内側の方に誘導することは、前記足圧中心の軌跡が前記前足の内側から外れているほど前記アシスト量を小さくすることを含んでよい。当該構成では、足圧中心の軌跡が前足の内側から外れるほどアシスト量が小さくなり、内側の方に向くほどアシスト量が大きくなる。そのため、ユーザに対して、より大きなアシスト量を得ようとさせることで、足圧中心の軌跡が前足の内側に至るような歩行動作を習得させることができる。したがって、当該構成によれば、足圧中心を前足の内側の方に誘導することができ、これによって、簡易的な方法でユーザの歩行動作の改善を図ることができる。
上記各側面に係る制御方法において、前記足圧中心の軌跡を前足の内側の方に誘導することは、前記足圧中心の軌跡が前記前足の内側から外れている場合に、前記足圧中心の軌跡が前記前足の内側の方に近付く方向にアシストを加えることを含んでよい。当該構成によれば、前足の内側の方へ導くアシストにより、足圧中心の軌跡が前足の内側に至るような歩行動作をユーザに習得させることができる。これにより、簡易的な方法でユーザの歩行動作の改善を図ることができる。
上記各側面に係る制御方法において、前記足圧中心の軌跡を前足の内側の方に誘導することは、定義情報に基づいて、前記足圧中心の軌跡からアシストを決定すること、及び決定されたアシストを加えることを含んでよい。前記定義情報は、前記足圧中心の軌跡と前記足圧中心を前足の内側の方に誘導するアシストとの対応関係を定義するように構成されてよい。当該構成によれば、予め得られた定義情報により、足圧中心の軌跡が前足の内側に至るような歩行動作をユーザに習得させることができる。これにより、簡易的な方法でユーザの歩行動作の改善を図ることができる。
上記各側面に係る制御方法において、前記アシストパターンは、1つ以上の筋モジュールにより構成されてよく、前記筋モジュールは、筋シナジーを再現するように、複数の周期関数を組み合わせることにより構成されてよい。当該構成によれば、筋モジュールが上記のように構成されていることで、容易な演算により筋シナジーに即したアシストパターンを実現することができる。加えて、1つ以上の筋モジュールの選択により、筋シナジーに即したアシストパターンを容易に作成することができる。
上記各側面に係る制御方法において、前記足圧中心の軌跡を前足の内側の方に誘導することは、前記足圧中心の軌跡において、前記足圧中心がかかとに存在している時間の割合が24%~44%であること、及び前記足圧中心が中足部に存在している時間の割合が18%~41%であることの少なくともいずれかを達成するように誘導することを含んでよい。本件発明者らは、後述する実験例により、蹴り出し力が良好な歩行における足圧中心の軌跡では、足圧中心がかかとに存在している時間の割合が24%~44%であり、足圧中心が中足部に存在している時間の割合が18%~41%であるとの知見を得た。当該構成によれば、この知見に基づく誘導により、ユーザの歩行動作の改善を期待することができる。
上記各側面に係る制御方法において、前記足圧中心の軌跡を前足の内側の方に誘導することは、前記足圧中心の軌跡において、前記足圧中心がかかとに存在している時間の割合、前記足圧中心が中足部に存在している時間の割合、前記足圧中心が前足の内側の領域に
存在している時間の割合、前記足圧中心が前足の外側の領域に存在している時間の割合、又はこれらの組み合わせに基づいて、前記歩行の評価値を算出すること、及び算出される評価値を最適化するように誘導すること、を含んでよい。
存在している時間の割合、前記足圧中心が前足の外側の領域に存在している時間の割合、又はこれらの組み合わせに基づいて、前記歩行の評価値を算出すること、及び算出される評価値を最適化するように誘導すること、を含んでよい。
本件発明者らは、後述する実験例により、蹴り出し力が良好な歩行における足圧中心の軌跡では、足圧中心が、かかと、中足部、前足内側の領域及び前足外側の領域それぞれに存在している時間の割合が一定の範囲に収まるという知見を得た。また、本件発明者らは、良好でない歩行における足圧中心の軌跡では、各時間の割合が、良好な歩行とは異なる(かかと及び前足内側の時間が短くなり、中足部及び前方外側の時間が長くなる)という知見を得た。当該構成によれば、これらの知見に基づいて歩行を評価し、得られた評価値を最適化するように誘導することで、ユーザの歩行動作の改善を期待することができる。
上記各側面に係る制御方法において、前記アシストパターンは、歩行の位相に対するアシスト量を定義してよい。前記アシストパターンにおいて定義された前記アシスト量に対して、上限値及び下限値が予め設定されてよい。前記取得ステップ、前記推定ステップ、前記決定ステップ、及び前記出力ステップを含む制御サイクルは繰り返し実行されてよい。前記制御サイクルの実行を繰り返す間、前記ユーザが歩行ラウンドを完了する度に、前記コンピュータは、前記決定ステップにおいて、算出された前記位相の推定値から決定する前記アシスト量を前記上限値及び前記下限値の間でランダムに変動させてよい。
本件発明者らは、後述する実験例により、以下の結果を得た。すなわち、アシストパターンにおけるアシスト量を一定でアシストし続けた場合、歩行ラウンドが経過する度にアシスト量を徐々に減らした場合及び歩行ラウンドの経過に応じてアシスト量をランダムに変更した場合との間で、被験者の歩行能力の改善具合を比較した。その比較の結果、アシスト量をランダムに変更した場合に、被験者の歩行能力が最も改善された。当該構成によれば、この知見に基づいて、歩行ラウンドが完了する度に、アシスト量をランダムに変動させるという簡易的な方法のアシストをユーザに提供することで、ユーザの歩行動作の改善を期待することができる。
このアシスト量をランダム化するアシスト方法は、上記一側面のとおり、上記前足内側に誘導するアシスト方法と共に利用されてよい。その他の一例では、アシスト量をランダム化するアシスト方法は、上記前足内側に誘導するアシスト方法と別個に使用されてよい。
例えば、本発明の一側面に係る制御方法は、コンピュータが、アシストパターンを設定する設定ステップと、ユーザの歩行に対するセンサのセンサ値を取得する取得ステップと、推定モデルを使用して、取得された前記センサ値から前記歩行の位相の推定値を算出する推定ステップと、設定された前記アシストパターンに従って、算出された前記位相の推定値からアシスト量を決定する決定ステップと、決定された前記アシスト量を出力する出力ステップと、を実行する情報処理方法である。前記アシストパターンは、歩行の位相に対するアシスト量を定義してよい。前記アシストパターンにおいて定義された前記アシスト量に対して、上限値及び下限値が予め設定されてよい。前記取得ステップ、前記推定ステップ、前記決定ステップ、及び前記出力ステップを含む制御サイクルは繰り返し実行されてよい。前記制御サイクルの実行を繰り返す間、前記ユーザが歩行ラウンド(回数/時間をばらつかせて変える)を完了する度に、前記コンピュータは、前記決定ステップにおいて、算出された前記位相の推定値から決定する前記アシスト量を前記上限値及び前記下限値の間でランダムに変動させてよい。当該構成によれば、上記知見に基づいて、歩行ラウンドが完了する度に、アシスト量をランダムに変動させるという簡易的な方法のアシストをユーザに提供することで、ユーザの歩行動作の改善を期待することができる。
上記一側面に係る制御方法において、前記アシスト量をランダムに変動させる際の最大変動量が予め設定されてよい。前記アシスト量をランダムに変動させることは、前回の歩行ラウンドにおけるアシスト量からの変動量が前記最大変動量以下となるように今回の歩行ラウンドにおけるアシスト量を決定することを含んでよい。アシスト量が急激に変化すると、ユーザは、その変化に対応できず、歩行動作を乱してしまう可能性がある。当該構成によれば、最大変動量を規定することで、そのような可能性を低減し、ユーザの歩行動作の改善を適切に図ることができる。
上記各側面に係る制御方法において、前記ユーザの認知可能な最小変動量が予め設定されてよい。前記アシスト量をランダムに変動させることは、前回の歩行ラウンドにおけるアシスト量からの変動量が前記最小変動量以上となるように今回の歩行ラウンドにおけるアシスト量を決定することを含んでよい。アシスト量の変動量が小さすぎる場合、その変動をユーザが認識することができず、ランダムなアシスト量による訓練が達成できない可能性がある。当該構成によれば、最小変動量を規定することで、そのような可能性を低減し(すなわち、ランダムなアシスト量による訓練を適切に実施し)、その結果、ユーザの歩行動作の改善を適切に図ることができる。
上記各側面に係る制御方法において、前記アシストパターンは、1つ以上の筋モジュールにより構成されてよい。前記筋モジュールは、筋シナジーを再現するように、複数の周期関数を組み合わせることにより構成されてよい。当該構成によれば、筋モジュールが上記のように構成されていることで、容易な演算により筋シナジーに即したアシストパターンを実現することができる。加えて、1つ以上の筋モジュールの選択により、筋シナジーに即したアシストパターンを容易に作成することができる。
上記各側面に係る制御方法において、前記アシストパターンは、複数の筋モジュールにより構成されてよい。前記筋モジュールは、筋シナジーを再現するように、複数の周期関数を組み合わせることにより構成されてよい。前記アシスト量をランダムに変動させることは、前記複数の筋モジュールのうちの一部について前記アシスト量をランダムに変動させることにより構成されてよい。当該構成によれば、複数の筋モジュールのうちの一部(対象の筋モジュール)についてアシスト量のランダム化を適用することで、その対象の筋モジュールに関する歩行動作の改善を期待することができる。
上記各形態に係る制御方法の別の態様として、本発明の一側面は、以上の各構成の全部又はその一部を実現する情報処理装置であってもよいし、プログラムであってもよいし、このようなプログラムを記憶した、コンピュータその他装置、機械等が読み取り可能な記憶媒体であってもよい。ここで、コンピュータ等が読み取り可能な記憶媒体とは、プログラム等の情報を、電気的、磁気的、光学的、機械的、又は、化学的作用によって蓄積する媒体である。
例えば、本発明の一側面に係る制御装置は、アシストパターンを設定するように構成される設定部と、ユーザの歩行に対するセンサのセンサ値を取得するように構成される取得部と、推定モデルを使用して、取得された前記センサ値から前記歩行の位相の推定値を算出するように構成される推定部と、設定された前記アシストパターンに従って、算出された前記位相の推定値からアシスト量を決定するように構成されるアシスト決定部と、決定された前記アシスト量を出力するように構成される出力部と、を備える。前記センサは、足底センサを含み、前記歩行の位相の推定値を算出することは、前記足底センサにより得られるセンサ値から足圧中心を算出することを含み、前記アシスト量を決定することは、算出された前記足圧中心に基づいて、前記足圧中心の軌跡を前足の内側の方に誘導するようにアシスト量を決定することを含む。
また、例えば、本発明の一側面に係る制御プログラムは、コンピュータに、アシストパターンを設定する設定ステップと、ユーザの歩行に対するセンサのセンサ値を取得する取得ステップと、推定モデルを使用して、取得された前記センサ値から前記歩行の位相の推定値を算出する推定ステップと、設定された前記アシストパターンに従って、算出された前記位相の推定値からアシスト量を決定する決定ステップと、決定された前記アシスト量を出力する出力ステップと、を実行させるためのプログラムである。前記センサは、足底センサを含み、前記歩行の位相の推定値を算出することは、前記足底センサにより得られるセンサ値から足圧中心を算出することを含み、前記アシスト量を決定することは、算出された前記足圧中心に基づいて、前記足圧中心の軌跡を前足の内側の方に誘導するようにアシスト量を決定することを含む。
また、例えば、本発明の一側面に係る制御装置は、アシストパターンを設定するように構成される設定部と、ユーザの歩行に対するセンサのセンサ値を取得するように構成される取得部と、推定モデルを使用して、取得された前記センサ値から前記歩行の位相の推定値を算出するように構成される推定部と、設定された前記アシストパターンに従って、算出された前記位相の推定値からアシスト量を決定するように構成される決定部と、決定された前記アシスト量を出力するように構成される出力部と、を備える。前記アシストパターンは、歩行の位相に対するアシスト量を定義する。前記アシストパターンにおいて定義された前記アシスト量に対して、上限値及び下限値が予め設定される。前記取得部、前記推定部、前記決定部、及び前記出力部の処理を含む制御サイクルは繰り返し実行される。前記制御サイクルの実行を繰り返す間、前記ユーザが歩行ラウンドを完了する度に、前記決定部は、算出された前記位相の推定値から決定する前記アシスト量を前記上限値及び前記下限値の間でランダムに変動させるように更に構成される。
また、例えば、本発明の一側面に係る制御プログラムは、コンピュータに、アシストパターンを設定する設定ステップと、ユーザの歩行に対するセンサのセンサ値を取得する取得ステップと、推定モデルを使用して、取得された前記センサ値から前記歩行の位相の推定値を算出する推定ステップと、設定された前記アシストパターンに従って、算出された前記位相の推定値からアシスト量を決定する決定ステップと、決定された前記アシスト量を出力する出力ステップと、を実行させるためのプログラムである。前記アシストパターンは、歩行の位相に対するアシスト量を定義する。前記アシストパターンにおいて定義された前記アシスト量に対して、上限値及び下限値が予め設定される。前記取得ステップ、前記推定ステップ、前記決定ステップ、及び前記出力ステップを含む制御サイクルは繰り返し実行される。前記制御サイクルの実行を繰り返す間、前記ユーザが歩行ラウンドを完了する度に、前記コンピュータに、前記決定ステップにおいて、算出された前記位相の推定値から決定する前記アシスト量を前記上限値及び前記下限値の間でランダムに変動させる。
本発明によれば、簡易的な方法でユーザの歩行動作の改善を図ることができる。
以下、本発明の一側面に係る実施の形態(以下、「本実施形態」とも表記する)を、図面に基づいて説明する。ただし、以下で説明する本実施形態は、あらゆる点において本発明の例示に過ぎない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良及び変形を行うことができることは言うまでもない。つまり、本発明の実施にあたって、実施形態に応じた具体的構成が適宜採用されてもよい。なお、本実施形態において登場するデータを自然言語により説明しているが、より具体的には、コンピュータが認識可能な疑似言語、コマンド、パラメータ、マシン語等で指定される。
§1 適用例
図1は、本発明を適用した場面の一例を模式的に示す。本実施形態に係る制御装置1は、歩行アシスト装置70により、歩行の位相に応じたアシストをユーザZに提供するように構成された1台以上のコンピュータである。
図1は、本発明を適用した場面の一例を模式的に示す。本実施形態に係る制御装置1は、歩行アシスト装置70により、歩行の位相に応じたアシストをユーザZに提供するように構成された1台以上のコンピュータである。
具体的には、本実施形態に係る制御装置1は、アシストパターン5を設定する。アシストパターン5は、歩行の位相に対するアシスト量を定義する。制御装置1は、ユーザZの歩行に対するセンサ6のセンサ値31を取得する(取得ステップ)。制御装置1は、推定モデル4を使用して、取得されたセンサ値31から歩行の位相の推定値33を算出する(推定ステップ)。制御装置1は、設定されたアシストパターン5に従って、算出された位相の推定値33からアシスト量35を決定する(決定ステップ)。そして、制御装置1は、歩行アシスト装置70を制御するために、決定されたアシスト量35を出力する(出力ステップ)。
上記のとおり、本件発明者らは、後述する実験例(第1実験例)により、足圧中心の軌跡が前足の内側に至るような歩行動作ができるようになれば、歩行能力の改善を期待することができるとの知見を得た。また、本件発明者らは、後述する実験例(第2実験例)により、一定量のアシストを継続的に与える方法及びアシスト量を単調に減らす方法と比べて、歩行ラウンドの経過に応じてアシスト量をランダムに変更することで、歩行能力の改
善を期待することができるとの知見を得た。そこで、本実施形態に係る制御装置1は、これらの知見に基づいて、簡易的な方法でユーザZの歩行能力の改善を図るアシスト方法として、(1)足圧中心の軌跡を前足の内側の方に誘導する方法、及び(2)歩行ラウンドの経過に応じてアシスト量をランダムに変更する方法の少なくとも一方を採用するように構成される。
善を期待することができるとの知見を得た。そこで、本実施形態に係る制御装置1は、これらの知見に基づいて、簡易的な方法でユーザZの歩行能力の改善を図るアシスト方法として、(1)足圧中心の軌跡を前足の内側の方に誘導する方法、及び(2)歩行ラウンドの経過に応じてアシスト量をランダムに変更する方法の少なくとも一方を採用するように構成される。
(1)前足内側への誘導
図2は、足圧中心の軌跡と歩行能力との関係を計測した結果を示す。具体的には、図2は、左から順に、健常者の足圧中心の軌跡(Healthy Control)、脳卒中片麻痺患者の非
麻痺側の脚における足圧中心の軌跡(Non-paretic)、及び脳卒中片麻痺患者の麻痺側の
脚における足圧中心の軌跡(Paretic)を示す。なお、図2の脳卒中片麻痺患者の被験者
の左側の脚が非麻痺側であり、右側の脚が麻痺側であった。
図2は、足圧中心の軌跡と歩行能力との関係を計測した結果を示す。具体的には、図2は、左から順に、健常者の足圧中心の軌跡(Healthy Control)、脳卒中片麻痺患者の非
麻痺側の脚における足圧中心の軌跡(Non-paretic)、及び脳卒中片麻痺患者の麻痺側の
脚における足圧中心の軌跡(Paretic)を示す。なお、図2の脳卒中片麻痺患者の被験者
の左側の脚が非麻痺側であり、右側の脚が麻痺側であった。
図2に示されるとおり、健常者及び脳卒中片麻痺患者の非麻痺側の脚では、足圧中心の軌跡は、立脚期間において、かかとから中足部を経由して前足の内側に辿り着くように描かれた。これに対して、脳卒中片麻痺患者の麻痺側の脚では、足圧中心の軌跡は、前足の内側の方には辿り着かず、前足の外側の方に辿り着くように描かれた。すなわち、良好な歩行動作では、足圧中心は前足内側の方に推移するのに対して、麻痺等の良好でない歩行動作では、足圧中心は、前足内側の方には推移せず、前足外側等の他の領域に推移することが分かった。これらの結果から、足圧中心の軌跡が前足の内側の方に至るような歩行動作を獲得することができれば、歩行能力の改善を期待することができるとの知見を得た(詳細な実験内容及び結果は後述する)。
前足内側へ誘導するアシスト方法は、この知見に基づく。前足内側へ誘導するアシスト方法を採用する場合、センサ6は、足底センサ60を含む。歩行の位相の推定値33を算出することは、足底センサ60により得られるセンサ値から足圧中心(Center of Pressure)を算出することを含む。足圧中心を継続的に取得することで、足圧中心の軌跡を描くことができる。そして、アシスト量35を決定することは、算出された足圧中心に基づいて、足圧中心の軌跡を前足の内側の方に誘導するようにアシスト量35を決定することを含む。
(足底の各領域)
なお、一例では、足底は、かかと、中足部、前足部、及びつま先の4つの領域に分けられてよい。前足の内側の領域とは、例えば、母趾球及びその周囲の領域であってよい。前足の外側の領域とは、例えば、小指球及びその周囲の領域であってよい。中足部は、かかと及び前足の間の領域(足底弓蓋及びその周囲の領域)であってよい。
なお、一例では、足底は、かかと、中足部、前足部、及びつま先の4つの領域に分けられてよい。前足の内側の領域とは、例えば、母趾球及びその周囲の領域であってよい。前足の外側の領域とは、例えば、小指球及びその周囲の領域であってよい。中足部は、かかと及び前足の間の領域(足底弓蓋及びその周囲の領域)であってよい。
(誘導方法)
前足の内側への誘導は、アシストパターン5に含まれるアシストの少なくとも一部の量を調整することで達成されてよい。また、前足の内側への誘導は、アシストパターン5に含まれるアシスト以外に追加のアシスト(誘導アシスト)を更に与えることで達成されてもよい。誘導アシストは、歩行し易くする力で構成されてもよいし、或いは歩行し難くする負荷で構成されてもよい。
前足の内側への誘導は、アシストパターン5に含まれるアシストの少なくとも一部の量を調整することで達成されてよい。また、前足の内側への誘導は、アシストパターン5に含まれるアシスト以外に追加のアシスト(誘導アシスト)を更に与えることで達成されてもよい。誘導アシストは、歩行し易くする力で構成されてもよいし、或いは歩行し難くする負荷で構成されてもよい。
足圧中心の軌跡を前足の内側の方に誘導可能であれば、その方法は、特に限定されなくてよく、実施の形態に応じて適宜決定されてよい。一例では、足圧中心の軌跡を前足の内側へ誘導することは、足圧中心の軌跡が前足内側の領域に含まれている(例えば、理想的な軌跡に近い)ほど歩行し易く、足圧中心の軌跡が前足内側から外れるほど歩行し難くするアシストで実現されてよい。そのようなアシストの形態は、実施の形態に応じて適宜決定されてよい。
一例では、足圧中心の軌跡を前足の内側の方に誘導することは、足圧中心の軌跡が前足の内側から外れているほどアシスト量35を小さくすることを含んでよい。このアシスト形態では、足圧中心の軌跡が前足の内側から外れるほどアシスト量35が小さくなり、内側の方に向く(例えば、足圧中心の軌跡が前足の内側の所定範囲に入る)ほどアシスト量35が大きくなる。そのため、ユーザZに対して、歩行し易くするためにより大きなアシスト量35を得ようとさせることで、足圧中心の軌跡が前足の内側に至るような歩行動作を習得させることができる。したがって、このアシスト形態によれば、足圧中心の軌跡を前足の内側の方に適切に誘導することができる。
他の一例では、足圧中心の軌跡を前足の内側の方に誘導することは、足圧中心の軌跡が前足の内側から外れている場合に、足圧中心の軌跡が前足の内側の方に近付く方向にアシストを加えることを含んでよい。このアシスト形態によれば、前足の内側の方へ導くアシストを加えることで、足圧中心の軌跡が前足の内側に至るような歩行動作をユーザZに行わせることができる。その結果、そのような歩行動作を習得させることができる。したがって、このアシスト形態によっても、足圧中心の軌跡を前足の内側の方に適切に誘導することができる。
他の一例では、足圧中心の軌跡を前足の内側の方に誘導することは、定義情報に基づいて、足圧中心の軌跡からアシストを決定すること、及び決定されたアシストを加えることを含んでよい。定義情報は、足圧中心の軌跡と足圧中心を前足の内側の方に誘導するアシストとの対応関係を定義するように構成されてよい。このアシスト形態では、足圧中心の軌跡に対する適切なアシスト(すなわち、足圧中心の軌跡を前足の内側の方に誘導可能なアシスト)を示す情報が定義情報として予め蓄積される。この定義情報に従って、ユーザZの足圧中心の軌跡からアシストを決定することにより、足圧中心の軌跡が前足の内側に至るような歩行動作を習得させ得るアシストをユーザZに提供することができる。したがって、このアシスト形態によっても、足圧中心の軌跡を前足の内側の方に適切に誘導することができる。
他の一例では、足圧中心の軌跡を前足の内側の方に誘導することは、足圧中心の軌跡が前足の内側から外れているほど、歩行し難いように大きな負荷をかけるアシストを与えることを含んでよい。このアシスト形態において、足圧中心の軌跡を前足の内側の方に誘導することは、足圧中心の軌跡が前足の内側の領域に含まれているほど、小さな負荷をかけるアシストを与える、負荷をかけない、又は歩行し易いようにアシストを与えることを含んでよい。このアシスト形態では、足圧中心の軌跡が前足内側から外れるほど、歩行し難いように大きな負荷をかけることで、相対的に、足圧中心の軌跡が前足内側に入るほど、ユーザZは、歩行し易くなる。そのため、ユーザZに対して、歩行し易い歩行動作を行わせることで、足圧中心の軌跡が前足の内側に至るような歩行動作を習得させることができる。したがって、このアシスト形態によっても、足圧中心の軌跡を前足の内側の方に適切に誘導することができる。
上記各アシスト形態は、足圧中心の軌跡を前足の内側の方に誘導する方法の一例である。上記各アシスト形態は、単独で採用されてよい。また、上記各アシスト形態は、組み合わせて採用されてもよい。
(時間の割合)
本件発明者らは、後述する実験例(第1実験例)により、以下の知見を更に得た。すなわち、蹴り出し力が良好な健常の歩行における足圧中心の軌跡では、足圧中心が、かかと、中足部、前足内側の領域及び前足外側の領域それぞれに存在している時間の割合が一定の範囲に収まっていた。具体的には、足圧中心がかかとに存在している時間の割合が33
.8±9.7%であり、足圧中心が中足部に存在している時間の割合が29.6±11.8%であり、足圧中心が前足内側の領域に存在している時間の割合が27.4±11.4%であり、足圧中心が前足外側の領域に存在している時間の割合が9.0±11.0%であった。これに対して、良好でない歩行における足圧中心の軌跡では、各時間の割合が、良好な歩行とは相違した(かかと及び前足内側の時間が短くなり、中足部及び前方外側の時間が長くなった)。前足の内側の方に誘導するアシストは、この知見に基づくアシストを含んでもよい。
本件発明者らは、後述する実験例(第1実験例)により、以下の知見を更に得た。すなわち、蹴り出し力が良好な健常の歩行における足圧中心の軌跡では、足圧中心が、かかと、中足部、前足内側の領域及び前足外側の領域それぞれに存在している時間の割合が一定の範囲に収まっていた。具体的には、足圧中心がかかとに存在している時間の割合が33
.8±9.7%であり、足圧中心が中足部に存在している時間の割合が29.6±11.8%であり、足圧中心が前足内側の領域に存在している時間の割合が27.4±11.4%であり、足圧中心が前足外側の領域に存在している時間の割合が9.0±11.0%であった。これに対して、良好でない歩行における足圧中心の軌跡では、各時間の割合が、良好な歩行とは相違した(かかと及び前足内側の時間が短くなり、中足部及び前方外側の時間が長くなった)。前足の内側の方に誘導するアシストは、この知見に基づくアシストを含んでもよい。
例えば、足圧中心の軌跡を前足の内側の方に誘導することは、足圧中心の軌跡において、足圧中心がかかとに存在している時間の割合が33.8±9.7%であること、及び足圧中心が中足部に存在している時間の割合が29.6±11.8%であることの少なくともいずれかを達成するように誘導することを含んでよい。指定の時間割合を達成可能であれば、誘導の方法は、特に限定されなくてよく、実施の形態に応じて適宜決定されてよい。一例では、誘導の方法には、上記アシスト形態のうちの少なくともいずれかが採用されてよい。当該構成によれば、上記知見に基づくアシストにより、蹴り出し力が良好な歩行動作をユーザZに習得させることができる。その結果、ユーザの歩行動作の改善を期待することができる。
また、例えば、足圧中心の軌跡を前足の内側の方に誘導することは、足圧中心の軌跡において、足圧中心がかかとに存在している時間の割合、足圧中心が中足部に存在している時間の割合、足圧中心が前足の内側の領域に存在している時間の割合、足圧中心が前足の外側の領域に存在している時間の割合、又はこれらの組み合わせに基づいて、歩行の評価値を算出すること、及び算出される評価値を最適化するように誘導すること、を含んでよい。誘導の方法は、特に限定されなくてよく、実施の形態に応じて適宜決定されてよい。一例では、誘導の方法には、上記アシスト形態のうちの少なくともいずれかが採用されてよい。また、評価値の最適化の手法には、線形計画法、ニュートン法、モンテカルロ法等の公知の方法又はそれに準ずる方法が採用されてよい。評価値を最適化するように誘導することは、例えば、モデル予測制御等の公知の方法又はそれに準ずる方法により達成されてよい。当該構成によっても、上記知見に基づくアシストにより、蹴り出し力が良好な歩行動作をユーザZに習得させることができる。その結果、ユーザの歩行動作の改善を期待することができる。
なお、足底荷重の有無により、立脚(脚を床について体を支えている)期間を特定することができる。立脚期間の各サンプリングタイムにおいて、足底センサ60から得られるセンサ値により足圧中心の位置を特定することで、足圧中心が各領域に存在している時間(期間)を算出することができる。足圧中心が各領域に存在している時間の割合は、その算出結果から導出されてよい。
(2)アシスト量のランダム化
アシストパターン5は、歩行の位相に対するアシスト量を定義する。アシスト量をランダム化するアシスト方法を採用する場合、このアシストパターン5において定義されたアシスト量に対して、上限値及び下限値が予め設定される。制御装置1は、取得ステップ、推定ステップ、決定ステップ、及び出力ステップを含む制御サイクルを繰り返し実行するように構成される。制御サイクルの実行を繰り返す間、ユーザZが歩行ラウンドを完了する度に、制御装置1は、決定ステップにおいて、算出された位相の推定値33から決定するアシスト量35を上限値及び下限値の間でランダムに変動させる。
アシストパターン5は、歩行の位相に対するアシスト量を定義する。アシスト量をランダム化するアシスト方法を採用する場合、このアシストパターン5において定義されたアシスト量に対して、上限値及び下限値が予め設定される。制御装置1は、取得ステップ、推定ステップ、決定ステップ、及び出力ステップを含む制御サイクルを繰り返し実行するように構成される。制御サイクルの実行を繰り返す間、ユーザZが歩行ラウンドを完了する度に、制御装置1は、決定ステップにおいて、算出された位相の推定値33から決定するアシスト量35を上限値及び下限値の間でランダムに変動させる。
(ランダム)
図3は、本実施形態におけるアシスト量のランダム化の一例を示す。図3に例示されるとおり、ランダムに変動させることは、上限値から下限値に向けて又は下限値から上限値
に向けて一定に変動することではなく、アシスト量35の増加及び減少が混ざり、かつ増加量及び減少量が少なくとも部分的に異なるように変動することである。ランダムは、疑似的であってよい。ランダムな変動は、コンピュータ処理により生成されてもよいし、或いは手作業により生成されてよい。
図3は、本実施形態におけるアシスト量のランダム化の一例を示す。図3に例示されるとおり、ランダムに変動させることは、上限値から下限値に向けて又は下限値から上限値
に向けて一定に変動することではなく、アシスト量35の増加及び減少が混ざり、かつ増加量及び減少量が少なくとも部分的に異なるように変動することである。ランダムは、疑似的であってよい。ランダムな変動は、コンピュータ処理により生成されてもよいし、或いは手作業により生成されてよい。
一定のアシスト量でアシストする方法及びアシスト量を徐々に減らす方法と比較して、アシスト量をランダムに変動させる方法による歩行能力の改善効果が最も高かった理由の一つは、アシスト量の変更を被験者に予測させなかったことと推測される。すなわち、アシスト量の変更を被験者に予測させなかったことにより、アシストに慣れさせずに、自律的に歩行させ、これにより、歩行能力の改善が図られたと推測される。そのため、ランダムによる変動は、ユーザZに変動を予測させ難いように構成されるのが好ましい。
(歩行ラウンド)
歩行ラウンドは、同一のアシスト量によるアシストをユーザZに与える期間に相当する。歩行ラウンドの期間は、1周期以上の歩行を含むように規定される。歩行ラウンドの期間を規定する基準は、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。一例では、歩行ラウンドは、歩数及び時間の少なくともいずれかにより規定されてよい。1歩行ラウンドあたりの歩数及び時間はそれぞれ、固定値で与えられてよい。或いは、アシスト量が変動するタイミングをユーザZに予測させ難いようにするため、1歩行ラウンドあたりの歩数及び時間はそれぞれ、変動値で与えられてもよい。例えば、歩数及び時間の少なくともいずれかに対して数値範囲が設定されていてよい。制御装置1は、各歩行ラウンドの歩数及び時間の少なくともいずれかをその数値範囲からランダムに決定してよい。
歩行ラウンドは、同一のアシスト量によるアシストをユーザZに与える期間に相当する。歩行ラウンドの期間は、1周期以上の歩行を含むように規定される。歩行ラウンドの期間を規定する基準は、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。一例では、歩行ラウンドは、歩数及び時間の少なくともいずれかにより規定されてよい。1歩行ラウンドあたりの歩数及び時間はそれぞれ、固定値で与えられてよい。或いは、アシスト量が変動するタイミングをユーザZに予測させ難いようにするため、1歩行ラウンドあたりの歩数及び時間はそれぞれ、変動値で与えられてもよい。例えば、歩数及び時間の少なくともいずれかに対して数値範囲が設定されていてよい。制御装置1は、各歩行ラウンドの歩数及び時間の少なくともいずれかをその数値範囲からランダムに決定してよい。
また、歩行ラウンドは、同一のアシスト量によるアシストにユーザZが慣れてきたタイミングでアシスト量を変更するように規定されてよい。一例では、アシストに慣れたユーザZの歩行動作は一定的になり得る。ユーザZが一定的な歩行動作を繰り返した場合、同じような位相の推定が繰り返されるため、算出される位相の推定値33のばらつきが小さくなる。そこで、制御装置1は、位相の推定値33のばらつきを指標に用いて、同一のアシスト量によるアシストにユーザZが慣れてきたか否かを評価してよい。
推定値33のばらつきを算出する方法の一例として、制御装置1は、ユーザZが1周期以上の歩行を行った後に、各サンプリングタイムにおける位相の真値を算出してよい。一例では、位相の真値は、ヒールストライクから次のヒールストライクまでの時間に対して位相を均等に分割することにより算出されてよい。ヒールストライクは、センサ6により適宜検出されてよい。他の一例では、推定モデル4により得られる推定値33が0から2πまで推移した時間(1周期分の歩行)に対して位相を均等に分割することで算出されてよい。
続いて、制御装置1は、各サンプリングタイムにおいて、位相の推定値33及び真値を対応付けてよい。制御装置1は、真値を基準に推定値33のばらつきを算出してよい。或いは、制御装置1は、真値及び推定値33の間の誤差を算出し、真値を基準に誤差のばらつきを推定値33のばらつきとして算出してよい。そして、制御装置1は、算出されたばらつきの大きさと閾値とを比較してよい。閾値は、例えば、オペレータの指定、プログラム内の設定値等の任意の方法で与えられてよい。
ばらつきの大きさが閾値未満である場合、制御装置1は、同一のアシスト量によるアシストにユーザZが慣れたと認定し、その歩行ラウンドを終了し、次の歩行ラウンドに移行(すなわち、アシスト量を変更)してよい。一方、ばらつきの大きさが閾値を超えている場合、制御装置1は、同一のアシスト量によるアシストにユーザZはまだ慣れていないと認定し、その歩行ラウンドを継続してよい。なお、ばらつきの大きさと閾値とが等しい場
合には、処理の分岐先は上記いずれであってもよい。また、ばらつきは、例えば、分散、標準偏差等の公知の統計量により表現されてよい。
合には、処理の分岐先は上記いずれであってもよい。また、ばらつきは、例えば、分散、標準偏差等の公知の統計量により表現されてよい。
(上限値/下限値)
アシストパターン5では、位相毎にアシスト量が規定される。これに応じて、上限値及び下限値も、位相毎に規定されてよい。一例では、アシストパターン5では、アシスト量の基準値が位相毎に規定されてよい。上限値及び下限値は、各位相における基準値に対する比率により決定されてよい。
アシストパターン5では、位相毎にアシスト量が規定される。これに応じて、上限値及び下限値も、位相毎に規定されてよい。一例では、アシストパターン5では、アシスト量の基準値が位相毎に規定されてよい。上限値及び下限値は、各位相における基準値に対する比率により決定されてよい。
上限値及び下限値は、適宜決定されてよい。一例では、上限値には、アシスト量の基準値が設定されてよい。他の一例では、上限値には、アシスト量の基準値以外の値が設定されてよい。例えば、歩行動作の学習のために、より大きな力でアシストを加える場合、アシスト量の基準値を超える値が上限値として設定されてよい。下限値は、例えば、ユーザZが適正に歩行するために要する最小のアシスト量に応じて決定されてよい。制御装置1は、上記評価値に基づいて、適正に歩行しているか否かを判定してもよい。この場合、制御装置1は、下限値を決定する初期設定の処理(前処理)において、上記と同様の方法により、センサ6によりユーザZの歩行を計測し、足圧中心の位置を算出することで、足圧中心の軌跡を観測してよい。制御装置1は、足圧中心の軌跡において、足圧中心が各部位に存在している割合により評価値を算出し、算出される評価値と予め設定された閾値とを比較してよい。閾値は、算出される評価値に対して適正な歩行の境界を示すように、任意の方法で与えられてよい。そして、制御装置1は、閾値との比較により、適正な歩行と評価される最小のアシスト量を特定し、特定されたアシスト量を下限値に設定してよい。
[特徴]
以上のとおり、本実施形態では、足圧中心の軌跡を前足の内側の方に誘導する及び歩行ラウンドが完了する度に、アシスト量35をランダムに変動させるという簡易的な方法の少なくともいずれかのアシストをユーザZに提供する。これにより、ユーザZの歩行動作の改善を図ることができる。
以上のとおり、本実施形態では、足圧中心の軌跡を前足の内側の方に誘導する及び歩行ラウンドが完了する度に、アシスト量35をランダムに変動させるという簡易的な方法の少なくともいずれかのアシストをユーザZに提供する。これにより、ユーザZの歩行動作の改善を図ることができる。
(推定モデル)
推定モデル4は、センサ6のセンサ値から歩行の位相の推定値を算出する演算処理を実行するように構成される。推定モデル4は、そのような演算処理を実行可能な演算モデルであれば、その構成は、特に限定されなくてよく、実施の形態に応じて適宜決定されてよい。推定モデル4は、例えば、データテーブル、関数式、ルール等により、センサ値の入力を受け付け、入力されたセンサ値から位相の推定値を算出するように構成されてよい。一例では、推定モデル4は、特許文献1等で例示される近似モデルであってよい。他の一例では、推定モデル4には、参考文献(野田智之、寺前達也、高井飛鳥、長谷公隆、森本淳、「普段使いの装具をロボット化:空気圧人工筋で駆動するモジュール関節付き短下肢装具の開発」MB Medical Rehabilitation No.205:22
-27、2017、<3.歩行との位相同期制御およびアシスト実験>)で提案される手法が採用されてもよい。他の一例では、推定モデル4には、参考文献(Luka Peternel, Tomoyuki Noda, Tadej Petric, Ales Ude, Jun Morimoto, Jan Babic, ”Adaptive Control of Exoskeleton Robots for Periodic Assistive Behaviours Based on EMG Feedback Minimisation” [online]、[令和4年3月28日検索]、インターネット<URL: https://journals.plos.org/plosone/article/authors?id=10.1371/journal.pone.0148942>
)で提案される手法が採用されてもよい。他の一例では、推定モデル4は、機械学習により生成された訓練済みの機械学習モデルにより構成されてもよい。機械学習モデルは、例えば、ニューラルネットワーク、サポートベクタマシン、回帰モデル等で構成されてよい。なお、推定モデル4の出力(推定値33)には誤差が生じる可能性がある。そこで、制御装置1は、任意の方法により、推定モデル4の出力(推定値33)を補正してよい。
推定モデル4は、センサ6のセンサ値から歩行の位相の推定値を算出する演算処理を実行するように構成される。推定モデル4は、そのような演算処理を実行可能な演算モデルであれば、その構成は、特に限定されなくてよく、実施の形態に応じて適宜決定されてよい。推定モデル4は、例えば、データテーブル、関数式、ルール等により、センサ値の入力を受け付け、入力されたセンサ値から位相の推定値を算出するように構成されてよい。一例では、推定モデル4は、特許文献1等で例示される近似モデルであってよい。他の一例では、推定モデル4には、参考文献(野田智之、寺前達也、高井飛鳥、長谷公隆、森本淳、「普段使いの装具をロボット化:空気圧人工筋で駆動するモジュール関節付き短下肢装具の開発」MB Medical Rehabilitation No.205:22
-27、2017、<3.歩行との位相同期制御およびアシスト実験>)で提案される手法が採用されてもよい。他の一例では、推定モデル4には、参考文献(Luka Peternel, Tomoyuki Noda, Tadej Petric, Ales Ude, Jun Morimoto, Jan Babic, ”Adaptive Control of Exoskeleton Robots for Periodic Assistive Behaviours Based on EMG Feedback Minimisation” [online]、[令和4年3月28日検索]、インターネット<URL: https://journals.plos.org/plosone/article/authors?id=10.1371/journal.pone.0148942>
)で提案される手法が採用されてもよい。他の一例では、推定モデル4は、機械学習により生成された訓練済みの機械学習モデルにより構成されてもよい。機械学習モデルは、例えば、ニューラルネットワーク、サポートベクタマシン、回帰モデル等で構成されてよい。なお、推定モデル4の出力(推定値33)には誤差が生じる可能性がある。そこで、制御装置1は、任意の方法により、推定モデル4の出力(推定値33)を補正してよい。
(センサ)
センサ6は、人物(ユーザZ)の歩行動作を捕捉可能であれば、その種類は、特に限定されなくてよく、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。センサ6は、例えば、足底センサ60、撮像装置、モーションキャプチャ、筋電センサ、加速度センサ、ジャイロセンサ、圧力分布センサ、これらの組み合わせ等であってよい。センサ6は、一種類のセンサにより構成されてもよいし、或いは複数種類のセンサにより構成されてよい。足底は、地面に接する足の面である。足底センサ60は、例えば、荷重センサ、フォースセンシングレジスタ、ロードセル、静電容量式の力センサ等により構成されてよい。
センサ6は、人物(ユーザZ)の歩行動作を捕捉可能であれば、その種類は、特に限定されなくてよく、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。センサ6は、例えば、足底センサ60、撮像装置、モーションキャプチャ、筋電センサ、加速度センサ、ジャイロセンサ、圧力分布センサ、これらの組み合わせ等であってよい。センサ6は、一種類のセンサにより構成されてもよいし、或いは複数種類のセンサにより構成されてよい。足底は、地面に接する足の面である。足底センサ60は、例えば、荷重センサ、フォースセンシングレジスタ、ロードセル、静電容量式の力センサ等により構成されてよい。
上記前足の内側の方に誘導するアシスト方法を採用する場合、センサ6は、足底センサ60を含む。この場合、一例では、推定モデル4は、足底センサ60のセンサ値からユーザZの歩行の位相を推定するように構成されてよい。すなわち、足底センサ60のセンサ値から歩行の位相の推定値33が算出されてよい。これに応じて、センサ6は、足底センサ60のみで構成されてよい。ただし、センサ6の構成は、このような例に限定されなくてよい。足底センサ60のセンサ値から位相の推定値33を算出する形態を採用する場合でも、センサ6は、足底センサ60以外の他のセンサを含んでもよい。他の一例では、推定モデル4は、足底センサ60以外の他のセンサのセンサ値からユーザZの歩行の位相を推定するように構成されてよい。すなわち、他のセンサのセンサ値から歩行の位相の推定値33が算出されてよい。これに応じて、センサ6は、足底センサ60以外の他のセンサを含んでよい。
一方、アシスト量をランダム化するアシスト方法のみを採用する場合(すなわち、前足の内側の方に誘導するアシスト方法を採用しない場合)、センサ6は、足底センサ60を含んでいてもよいし、或いは足底センサ60を含んでいなくてもよい。この場合、センサ6には、歩行の位相を推定可能なセンサ値を取得する任意のセンサが用いられてよい。これに応じて、推定モデル4は、任意のセンサ(センサ6)のセンサ値から歩行の位相の推定値33を算出するように適宜構成されてよい。
(出力処理)
決定されたアシスト量35の出力は、決定されたアシスト量35によるアシストを提供するように歩行アシスト装置70の動作を制御することを目的として行われてよい。一例では、制御装置1に歩行アシスト装置70が直接的に接続されている場合、決定されたアシスト量35を出力することは、決定されたアシスト量35で歩行アシスト装置70を駆動することにより構成されてよい。他の一例では、歩行アシスト装置70が制御装置(以下、「下位コントローラ」とも記載する)を備える場合、制御装置1は、上位コントローラとして動作してよい。すなわち、決定されたアシスト量35を出力することは、決定されたアシスト量35を示す情報を含む駆動指令を下位コントローラに送信し、下位コントローラに対して、決定されたアシスト量35で歩行アシスト装置70を駆動させることにより構成されてよい。
決定されたアシスト量35の出力は、決定されたアシスト量35によるアシストを提供するように歩行アシスト装置70の動作を制御することを目的として行われてよい。一例では、制御装置1に歩行アシスト装置70が直接的に接続されている場合、決定されたアシスト量35を出力することは、決定されたアシスト量35で歩行アシスト装置70を駆動することにより構成されてよい。他の一例では、歩行アシスト装置70が制御装置(以下、「下位コントローラ」とも記載する)を備える場合、制御装置1は、上位コントローラとして動作してよい。すなわち、決定されたアシスト量35を出力することは、決定されたアシスト量35を示す情報を含む駆動指令を下位コントローラに送信し、下位コントローラに対して、決定されたアシスト量35で歩行アシスト装置70を駆動させることにより構成されてよい。
(歩行アシスト装置)
歩行アシスト装置70は、歩行動作を行うユーザZに対して介入(例えば、力、電気刺激等)によるアシストを提供するように構成される。歩行に対するアシストを提供可能であれば、歩行アシスト装置70の構成は、特に限定されなくてよく、実施の形態に応じて適宜決定されてよい。歩行アシスト装置70には、公知の歩行アシスト装置が用いられてよい。一例では、歩行アシスト装置70には、参考文献(国際公開第2020/246587号公報)で提案されている体重免荷装置が用いられてよい。その他の一例では、歩行アシスト装置70には、参考文献(国際公開第2017/138651号公報)の図12~図14で例示される足関節にアシスト力を付与するように構成されたアシスト装置が用
いられてよい。その他、歩行アシスト装置70には、例えば、特開2010-264019号公報等で例示される膝関節及び足関節にアシスト力を与えるよう構成されたアシスト装置が用いられてよい。
歩行アシスト装置70は、歩行動作を行うユーザZに対して介入(例えば、力、電気刺激等)によるアシストを提供するように構成される。歩行に対するアシストを提供可能であれば、歩行アシスト装置70の構成は、特に限定されなくてよく、実施の形態に応じて適宜決定されてよい。歩行アシスト装置70には、公知の歩行アシスト装置が用いられてよい。一例では、歩行アシスト装置70には、参考文献(国際公開第2020/246587号公報)で提案されている体重免荷装置が用いられてよい。その他の一例では、歩行アシスト装置70には、参考文献(国際公開第2017/138651号公報)の図12~図14で例示される足関節にアシスト力を付与するように構成されたアシスト装置が用
いられてよい。その他、歩行アシスト装置70には、例えば、特開2010-264019号公報等で例示される膝関節及び足関節にアシスト力を与えるよう構成されたアシスト装置が用いられてよい。
§2 構成例
[ハードウェア構成]
図4は、本実施形態に係る制御装置1のハードウェア構成の一例を模式的に示す。図4の一例では、本実施形態に係る制御装置1は、制御部11、記憶部12、外部インタフェース13、入力装置14、出力装置15、及びドライブ16が電気的に接続されたコンピュータである。
[ハードウェア構成]
図4は、本実施形態に係る制御装置1のハードウェア構成の一例を模式的に示す。図4の一例では、本実施形態に係る制御装置1は、制御部11、記憶部12、外部インタフェース13、入力装置14、出力装置15、及びドライブ16が電気的に接続されたコンピュータである。
制御部11は、ハードウェアプロセッサであるCPU(Central Processing Unit)、
RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等を含み、プログラム及び各種データに基づいて情報処理を実行するように構成される。制御部11(CPU)は、プロセッサ・リソースの一例である。
RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等を含み、プログラム及び各種データに基づいて情報処理を実行するように構成される。制御部11(CPU)は、プロセッサ・リソースの一例である。
記憶部12は、例えば、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ等で構成される。記憶部12は、メモリ・リソースの一例である。本実施形態では、記憶部12は、制御プログラム81、モデルデータ121等の各種情報を記憶する。
制御プログラム81は、歩行アシスト装置70の制御に関する情報処理を制御装置2に実行させるためのプログラムである。制御プログラム81は、当該情報処理の一連の命令を含む。モデルデータ121は、推定モデル4に関する情報を示すように構成される。
外部インタフェース13は、外部装置と接続するためのインタフェースである。外部インタフェース13は、例えば、USB(Universal Serial Bus)ポート、専用ポート等であってよい。外部インタフェース13の種類及び数は、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。本実施形態では、制御装置1は、外部インタフェース13を介して、歩行アシスト装置70に接続されてよい。
入力装置14は、オペレータ(例えば、理学療法士等)から情報の入力を受け付けるための装置である。入力装置14は、例えば、マウス、キーボード等であってよい。出力装置15は、オペレータに対して情報を出力するための装置である。出力装置15は、例えば、ディスプレイ、スピーカ等であってよい。オペレータは、入力装置14及び出力装置15を利用することで、制御装置1を操作することができる。入力装置14及び出力装置15は、例えば、タッチパネルディスプレイ等により一体的に構成されてもよい。
ドライブ16は、記憶媒体91に記憶されたプログラム等の各種情報を読み込むための装置である。ドライブ16は、例えば、CDドライブ、DVDドライブ等であってよい。記憶媒体91は、コンピュータその他装置、機械等が、記憶されたプログラム等の各種情報を読み取り可能なように、当該プログラム等の情報を、電気的、磁気的、光学的、機械的又は化学的作用によって蓄積する媒体である。上記制御プログラム81及びモデルデータ121の少なくともいずれかは、記憶媒体91に記憶されていてよい。制御装置1は、制御プログラム81及びモデルデータ121の少なくともいずれかを記憶媒体91から取得してよい。なお、図4では、記憶媒体91の一例として、CD、DVD等のディスク型の記憶媒体を例示している。しかしながら、記憶媒体91の種類は、ディスク型に限られなくてもよく、ディスク型以外であってもよい。ディスク型以外の記憶媒体として、例えば、フラッシュメモリ等の半導体メモリを挙げることができる。ドライブ16の種類は、記憶媒体91の種類に応じて任意に選択されてよい。
なお、制御装置1の具体的なハードウェア構成に関して、実施形態に応じて、適宜、構成要素の省略、置換及び追加が可能である。例えば、制御部11は、複数のハードウェアプロセッサを含んでもよい。ハードウェアプロセッサの種類は、特に限定されなくてよく、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。記憶部12は、制御部11に含まれるRAM及びROMにより構成されてもよい。制御装置1は、通信インタフェースを更に備えてよい。通信インタフェースは、例えば、有線LAN(Local Area Network)モジュール、無線LANモジュール等であってよい。この場合、制御装置1は、通信インタフェースを介して、他のコンピュータとの間でデータ通信を実行してよい。制御装置1は、通信インタフェースを介して、歩行アシスト装置70に接続されてよい。外部インタフェース13、入力装置14、出力装置15及びドライブ16の少なくともいずれかは省略されてもよい。制御装置1は、複数台のコンピュータで構成されてもよい。この場合、各コンピュータのハードウェア構成は、一致していてもよいし、一致していなくてもよい。また、制御装置1は、提供されるサービス専用に設計された情報処理装置の他、汎用のサーバ装置、汎用のPC(Personal Computer)、タブレットPC、携帯端末等であってもよい。
[ソフトウェア構成]
図5は、本実施形態に係る制御装置1のソフトウェア構成の一例を模式的に示す。制御装置1の制御部11は、記憶部12に記憶された制御プログラム81をRAMに展開する。そして、制御部11は、RAMに展開された制御プログラム81に含まれる命令をCPUにより実行する。これにより、本実施形態に係る制御装置1は、設定部111、取得部112、推定部113、アシスト決定部114及び出力部115をソフトウェアモジュールとして備えるコンピュータとして動作する。すなわち、本実施形態では、制御装置1の各ソフトウェアモジュールは、制御部11(CPU)により実現される。
図5は、本実施形態に係る制御装置1のソフトウェア構成の一例を模式的に示す。制御装置1の制御部11は、記憶部12に記憶された制御プログラム81をRAMに展開する。そして、制御部11は、RAMに展開された制御プログラム81に含まれる命令をCPUにより実行する。これにより、本実施形態に係る制御装置1は、設定部111、取得部112、推定部113、アシスト決定部114及び出力部115をソフトウェアモジュールとして備えるコンピュータとして動作する。すなわち、本実施形態では、制御装置1の各ソフトウェアモジュールは、制御部11(CPU)により実現される。
設定部111は、アシストパターン5を設定するように構成される。取得部112は、ユーザZの歩行に対するセンサ6のセンサ値31を取得するように構成される。推定部113は、推定モデル4を使用して、取得されたセンサ値31から歩行の位相の推定値33を算出するように構成される。アシスト決定部114は、設定されたアシストパターン5に従って、算出された位相の推定値33からアシスト量35を決定するように構成される。出力部115は、決定されたアシスト量35を出力するように構成される。
本実施形態では、前足内側へ誘導するアシスト方法及びアシスト量をランダム化するアシスト方法のうちの少なくともいずれか一方が採用されてよい。前足内側へ誘導するアシスト方法を採用する場合、センサ6は、足底センサ60を含む。推定部113は、足底センサ60により得られるセンサ値から足圧中心を更に算出するように構成される。アシスト決定部114は、算出された足圧中心に基づいて、足圧中心の軌跡を前足の内側の方に誘導するようにアシスト量35を決定するように構成される。
アシスト量をランダム化するアシスト方法を採用する場合、アシストパターン5において位相毎に定義されたアシスト量に対して、上限値及び下限値が予め設定される。制御装置1は、取得部112、推定部113、アシスト決定部114及び出力部115の処理を含む制御サイクルを繰り返し実行するように構成される。制御サイクルの実行を繰り返す間、ユーザZが歩行ラウンドを完了する度に、アシスト決定部114は、算出された位相の推定値33から決定するアシスト量35を上限値及び下限値の間でランダムに変動させるように構成される。
なお、本実施形態では、制御装置1の各ソフトウェアモジュールがいずれも汎用のCPUによって実現される例について説明している。しかしながら、上記ソフトウェアモジュールの一部又は全部が、1又は複数の専用のプロセッサにより実現されてもよい。上記各モジュールは、ハードウェアモジュールとして実現されてもよい。また、制御装置1のソ
フトウェア構成に関して、実施形態に応じて、適宜、ソフトウェアモジュールの省略、置換及び追加が行われてもよい。
フトウェア構成に関して、実施形態に応じて、適宜、ソフトウェアモジュールの省略、置換及び追加が行われてもよい。
§3 動作例
図6は、本実施形態に係る制御装置1の処理手順の一例を示すフローチャートである。以下で説明する処理手順は、制御方法(情報処理方法)の一例である。ただし、以下で説明する処理手順は一例に過ぎず、各ステップは可能な限り変更されてよい。また、以下の処理手順について、実施の形態に応じて、適宜、ステップの省略、置換、及び追加が行われてよい。
図6は、本実施形態に係る制御装置1の処理手順の一例を示すフローチャートである。以下で説明する処理手順は、制御方法(情報処理方法)の一例である。ただし、以下で説明する処理手順は一例に過ぎず、各ステップは可能な限り変更されてよい。また、以下の処理手順について、実施の形態に応じて、適宜、ステップの省略、置換、及び追加が行われてよい。
(ステップS101)
ステップS101では、制御部11は、設定部111として動作し、アシストパターン5を設定する。ステップS101は、設定ステップの一例である。
ステップS101では、制御部11は、設定部111として動作し、アシストパターン5を設定する。ステップS101は、設定ステップの一例である。
アシストパターン5は、歩行の位相に対するアシスト量を定義する。すなわち、アシストパターン5は、歩行の位相毎に、ユーザZに与えるアシスト量を規定する。アシストパターン5は、予め与えられてよい。この場合、アシストパターン5の設定情報が、例えば、所定の記憶領域(記憶部12等)、プログラム内の設定値等として保持されてよい。設定情報は、システム固有に与えられてもよいし、オペレータの事前入力により与えられてもよい。制御部11は、この設定情報に基づいて、アシストパターン5を設定してよい。或いは、アシストパターン5は、オペレータからの入力により与えられてよい。一例では、アシストパターン5は、オペレータ(理学療法士)の手入力により生成されてよい。ただし、アシストパターン5を手入力で生成することは、熟練の経験に依存し、困難である。そこで、他の一例では、アシストパターン5は、1つ以上の筋モジュールにより構成されてよい。
図7は、本実施形態に係るアシストパターン5を構成する筋モジュールの一例を模式的に示す。筋モジュールは、例えば、膝屈曲、膝伸展、足底屈、足背屈、抗重力筋等の筋シナジーを再現するように、複数の周期関数を組み合わせることにより構成されてよい。筋シナジーは、複数の筋の組み合わせによる協調的な活動のことである。筋シナジーは、非線形であってよい。筋シナジーを再現する際、例えば、矩形波、のこぎり波等の計算コストの低い周期関数が優先的に使用されてよい。
図7では、足底屈の筋モジュールの一例が示されている。図7の一例では、足底屈の筋モジュールが、大きさの異なる2つののこぎり波(第1周期関数、第2周期関数)の組み合わせにより構成されている。このように、周期関数の種類及び大きさを適宜選択することで、比較的に容易に非線形な筋シナジーを再現することができる。この筋モジュールの構成によれば、容易な演算により筋シナジーに即したアシストパターン5を実現することができる。また、従来の方法として、アシストパターンにおいて、歩行の位相に対する位置(例えば、モータの目標位置)を規定する方法が存在する。この方法では、複数のアシストパターンを組み合わせると、各アシストパターンの意図が損なわれてしまう。そのため、複数のアシストパターンを組み合わせることは容易ではない。これに対して、筋モジュールは、歩行の位相に対する力(例えば、トルク、圧力)を規定しているため、複数の筋モジュールを組み合わせても、各筋モジュールの意図は損なわれない。そのため、複数の筋モジュールを容易に組み合わせることができる。加えて、1つ以上の筋モジュールの選択及び選択された筋モジュールの強度の指定により、熟練の経験に依らずに、筋シナジーに即したアシストパターン5を容易に作成することができる。すなわち、アシストパターン5を手入力で生成する場合と比べて、調整する対象のパラメータ(筋モジュールの選択、強度の指定等)が少なく済むため、アシストパターン5を生成する手間を低減することができる。なお、アシストパターン5には、筋の活動を抑制する筋モジュールが含まれ
ていてもよい。このような筋モジュールは、筋の活動を抑制する筋シナジーを再現する(例えば、引き算する)ことで適宜構成されてよい。アシストパターン5を設定すると、制御部11は、次のステップS102に処理を進める。
ていてもよい。このような筋モジュールは、筋の活動を抑制する筋シナジーを再現する(例えば、引き算する)ことで適宜構成されてよい。アシストパターン5を設定すると、制御部11は、次のステップS102に処理を進める。
なお、この筋モジュールにより構成されるアシストパターン5は、前足内側へ誘導するアシスト方法及びアシスト量をランダム化するアシスト方法を両方とも採用しない本実施形態以外の任意の形態でも単独で採用されてよい。すなわち、筋モジュールの構成は、アシストパターンを設定するあらゆる場面で採用されてよい。一例では、コンピュータは、アシストパターンを設定し、所定の方法でユーザの歩行の位相の推定値を算出し、設定されたアシストパターンに従って、算出された推定値からアシスト量を決定し、及び決定されたアシスト量を出力してよい。歩行の位相を推定する所定の方法は、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。所定の方法には、公知の方法が採用されてよい。この場合に、アシストパターンは、1つ以上の筋モジュールにより構成されてよく、筋モジュールは、筋シナジーを再現するように、複数の周期関数を組み合わせることにより構成されてよい。
(ステップS102)
図6に戻り、ステップS102では、制御部11は、取得部112として動作し、ユーザZの歩行に対するセンサ6のセンサ値31を取得する。ステップS102は、取得ステップの一例である。
図6に戻り、ステップS102では、制御部11は、取得部112として動作し、ユーザZの歩行に対するセンサ6のセンサ値31を取得する。ステップS102は、取得ステップの一例である。
一例では、制御部11は、センサ6から直接的にセンサ値31を取得してよい。他の一例では、制御部11は、例えば、他のコンピュータ等を介してセンサ6から間接的にセンサ値31を取得してよい。センサ値31を取得すると、制御部11は、次のステップS103に処理を進める。
(ステップS103)
ステップS103では、制御部11は、推定部113として動作し、推定モデル4を使用して、取得されたセンサ値31から歩行の位相の推定値33を算出する。ステップS103は、推定ステップの一例である。
ステップS103では、制御部11は、推定部113として動作し、推定モデル4を使用して、取得されたセンサ値31から歩行の位相の推定値33を算出する。ステップS103は、推定ステップの一例である。
一例では、制御部11は、取得されたセンサ値31を推定モデル4に入力し、推定モデル4の演算処理を実行してよい。この演算処理の実行結果として、制御部11は、センサ値31に対する位相の推定値33を取得することができる。例えば、推定モデル4が関数式で構成される場合、制御部11は、センサ値31を関数式に代入し、関数式の演算を実行することで、位相の推定値33を取得してよい。関数式は、ニューラルネットワーク等の機械学習モデルで構成されてもよい。また、例えば、推定モデル4がデータテーブルで構成される場合、制御部11は、センサ値31に対応する位相の推定値33をデータテーブルから抽出してよい。また、例えば、推定モデル4がルールにより構成される場合、制御部11は、センサ値31にルールを適用することで、位相の推定値33を算出してよい。位相の推定値33を取得すると、制御部11は、次のステップS104に処理を進める。なお、制御部11は、ステップS103の処理を実行する前の任意のタイミングで、モデルデータ121を参照することにより、制御装置1において推定モデル4を使用可能な状態に初期設定してよい。
(ステップS104)
ステップS104では、制御部11は、アシスト決定部114として動作し、設定されたアシストパターン5に従って、算出された位相の推定値33からアシスト量35を決定する。ステップS104は、決定ステップの一例である。
ステップS104では、制御部11は、アシスト決定部114として動作し、設定されたアシストパターン5に従って、算出された位相の推定値33からアシスト量35を決定する。ステップS104は、決定ステップの一例である。
一例では、制御部11は、アシストパターン5を参照し、得られた位相の推定値33に
対応するアシスト量35を特定する(アシスト量35を示す情報をアシストパターン5から取得する)。加えて、上記前足内側へ誘導するアシスト方法及びアシスト量をランダム化するアシスト方法の少なくともいずれかにより、制御部11は、ユーザZに与える最終的なアシスト及びアシスト量35を決定する。詳細は後述する。アシスト量35を決定すると、制御部11は、次のステップS105に処理を進める。
対応するアシスト量35を特定する(アシスト量35を示す情報をアシストパターン5から取得する)。加えて、上記前足内側へ誘導するアシスト方法及びアシスト量をランダム化するアシスト方法の少なくともいずれかにより、制御部11は、ユーザZに与える最終的なアシスト及びアシスト量35を決定する。詳細は後述する。アシスト量35を決定すると、制御部11は、次のステップS105に処理を進める。
(ステップS105)
ステップS105では、制御部11は、出力部115として動作し、歩行アシスト装置70を制御するために、決定されたアシスト量35を出力する。一例では、制御部11は、決定されたアシスト量35に基づいて、歩行アシスト装置70を駆動(直接的に制御)してよい。他の一例では、制御部11は、決定されたアシスト量35を示す情報を歩行アシスト装置70のコントローラに送信し、コントローラに対して、決定されたアシスト量35による歩行アシスト装置70の駆動を実行させてよい。アシスト量35を出力すると、制御部11は、次のステップS106に処理を進める。
ステップS105では、制御部11は、出力部115として動作し、歩行アシスト装置70を制御するために、決定されたアシスト量35を出力する。一例では、制御部11は、決定されたアシスト量35に基づいて、歩行アシスト装置70を駆動(直接的に制御)してよい。他の一例では、制御部11は、決定されたアシスト量35を示す情報を歩行アシスト装置70のコントローラに送信し、コントローラに対して、決定されたアシスト量35による歩行アシスト装置70の駆動を実行させてよい。アシスト量35を出力すると、制御部11は、次のステップS106に処理を進める。
(ステップS106)
ステップS106では、制御部11は、ステップS102~ステップS105を含む制御サイクルを繰り返し実行するか否かを判定する。
ステップS106では、制御部11は、ステップS102~ステップS105を含む制御サイクルを繰り返し実行するか否かを判定する。
判定の基準は、実施の形態に応じて適宜設定されてよい。一例では、繰り返す回数、時間、歩行回数等の指標に基づいて、制御部11は、制御サイクルを繰り返し実行するか否かを判定してよい。この場合、指標に対する閾値が任意の方法で与えられてよい。計算される指標が閾値に満たないとき、制御部11は、制御サイクルの実行を繰り返すと判定してよい。一方、計算される指標が閾値に到達したとき、制御部11は、制御サイクルの実行を繰り返さない(制御サイクルの実行を終了する)と判定してよい。
他の一例では、制御部11は、オペレータからの終了指示が与えられるまで、制御サイクルの実行を繰り返すと判定してよい。終了指示は、入力装置14を介して与えられてよい。そして、オペレータからの終了指示が与えられた後、制御部11は、制御サイクルの実行を繰り返さない(制御サイクルの実行を終了する)と判定してよい。
制御サイクルの実行を繰り返すと判定した場合、制御部11は、ステップS102に戻り、ステップS102~ステップS105の処理を再度実行する。これにより、制御部11は、歩行アシスト装置70によるユーザZの歩行アシストを継続的に制御する。この歩行アシストを継続的に制御している間、本実施形態では、制御部11は、各制御サイクルのステップS104において、前足内側へ誘導するアシスト方法及びアシスト量をランダム化するアシスト方法の少なくともいずれかにより、アシスト量35を決定する。
(1)前足内側への誘導
前足内側へ誘導するアシスト方法を採用する場合、各制御サイクルにおいて、制御部11は、推定部113として動作し、足底センサ60により得られるセンサ値から足圧中心を算出する。足圧中心を算出する方法は、実施の形態に応じて適宜決定されてよい。足圧中心を算出する方法には、公知の方法が採用されてよい。一例として、足底センサ60は、かかと、母指球、及び小指球の少なくとも3箇所に配置されたフォースセンシングレジスタで構成されてよい。この場合、制御部11は、各箇所に配置されたフォースセンシングレジスタの値(荷重)の割合から足圧中心の位置を算出してよい。
前足内側へ誘導するアシスト方法を採用する場合、各制御サイクルにおいて、制御部11は、推定部113として動作し、足底センサ60により得られるセンサ値から足圧中心を算出する。足圧中心を算出する方法は、実施の形態に応じて適宜決定されてよい。足圧中心を算出する方法には、公知の方法が採用されてよい。一例として、足底センサ60は、かかと、母指球、及び小指球の少なくとも3箇所に配置されたフォースセンシングレジスタで構成されてよい。この場合、制御部11は、各箇所に配置されたフォースセンシングレジスタの値(荷重)の割合から足圧中心の位置を算出してよい。
足圧中心を算出する処理は、足底センサ60のセンサ値を取得した後、ステップS104で最終的なアシスト量35を決定する前の任意のタイミングで実行されてよい。足圧中心は、対象の足底に荷重が作用している間、すなわち、立脚期間において算出される。こ
の立脚期間において、制御部11は、制御サイクルを繰り返し実行し、各サンプリングタイムで足圧中心を取得することで、足圧中心の軌跡を得ることができる。
の立脚期間において、制御部11は、制御サイクルを繰り返し実行し、各サンプリングタイムで足圧中心を取得することで、足圧中心の軌跡を得ることができる。
ステップS104では、制御部11は、算出された足圧中心に基づいて、足圧中心の軌跡を前足の内側の方に誘導するようにアシスト量35を決定する。前足内側へ誘導する方法は、実施の形態に応じて適宜決定されてよい。一例では、制御部11は、足圧中心の軌跡が前足内側の領域に含まれているほど歩行し易く、足圧中心の軌跡が前足内側から外れるほど歩行し難くするようにアシスト及びアシスト量35を決定してよい。本実施形態では、制御部11は、以下の3つの方法で、足圧中心の軌跡を前足の内側の方に誘導してよい。
(I)第1の誘導方法
図8Aは、本実施形態に係る第1の誘導方法の一例を模式的に示す。第1の誘導方法では、制御部11は、ユーザZの足圧中心の軌跡が前足の内側から外れているほどアシスト量35を小さくしてよい。すなわち、制御部11は、足圧中心の軌跡が前足の外側の方を向いているほど、アシスト量35を小さくしてよい。この第1の誘導方法を採用する場合、制御部11は、ユーザZの足圧中心の軌跡が前足の内側の所定範囲(例えば、理想範囲)に入っているほど、アシスト量35を大きくしてもよい。
図8Aは、本実施形態に係る第1の誘導方法の一例を模式的に示す。第1の誘導方法では、制御部11は、ユーザZの足圧中心の軌跡が前足の内側から外れているほどアシスト量35を小さくしてよい。すなわち、制御部11は、足圧中心の軌跡が前足の外側の方を向いているほど、アシスト量35を小さくしてよい。この第1の誘導方法を採用する場合、制御部11は、ユーザZの足圧中心の軌跡が前足の内側の所定範囲(例えば、理想範囲)に入っているほど、アシスト量35を大きくしてもよい。
足圧中心の軌跡が前足の内側から外れている程度を評価する方法は、実施の形態に応じて適宜決定されてよい。一例では、前足の内側の領域が設定され、制御部11は、足圧中心の軌跡の一部がその領域に含まれているか否かを判定してよい。制御部11は、この判定の結果に応じて、ユーザZの足圧中心の軌跡が前足の内側から外れている程度を評価してよい。他の一例では、前足の内側の領域に至る理想的な軌跡が予め定義されてよい。この理想的な軌跡を示す情報は、例えば、所定の記憶領域(記憶部12等)、プログラム内の設定値等として保持されてよい。制御部11は、この情報を参照して、ユーザZの足圧中心の軌跡と理想的な軌跡との間のずれを算出してよい。制御部11は、この算出されたずれに基づいて、ユーザZの足圧中心の軌跡が前足の内側から外れている程度を評価してよい。
外れている程度とアシスト量35を小さくする程度との間の関係は、実施の形態に応じて適宜設定されてよい。外れている程度は、連続的に評価されてもよいし、或いは段階的に評価されてよい。アシスト量35を小さくする程度も、段階的に設定されてもよいし、或いは段階的に設定されてもよい。いずれの形態を採用した場合でも、第1の誘導方法では、ユーザZの足圧中心の軌跡が理想的であるときに最大のアシスト量がユーザZに与えられる。一方、ユーザZの足圧中心の軌跡が前足の内側から最も離れたときに最小のアシスト量がユーザZに与えられる。典型的には、最大のアシスト量は、アシストパターン5で規定されるアシスト量(規定値)であってよい。一方、最小のアシスト量は、0であってよい。ただし、最大のアシスト量及び最小のアシスト量は、このような例に限定されなくてよい。最大のアシスト量及び最小のアシスト量はそれぞれ、実施の形態に応じて適宜与えられてよい。
図8Aの軌跡Aは、前足の内側の方を向く軌跡の一例であり、軌跡Bは、前足の内側から外れている軌跡の一例である。図8Aに示されるとおり、第1の誘導方法によれば、足圧中心の軌跡が前足の内側から外れるほどアシスト量35が小さくなり(軌跡B)、内側の方に向くほどアシスト量35が大きくなる(軌跡A)。そのため、ユーザZに対して、歩行し易くするためにより大きなアシスト量35を得ようとさせることで、足圧中心の軌跡を前足の内側の方に適切に誘導することができる。
(II)第2の誘導方法
図8Bは、本実施形態に係る第2の誘導方法の一例を模式的に示す。第2の誘導方法では、制御部11は、足圧中心の軌跡が前足の内側から外れているか否かを判定する。この判定の結果に基づいて、足圧中心の軌跡が前足の内側から外れている場合に、足圧中心の軌跡が前足の内側の方に近付く方向にアシストを加えるようにアシスト量35を決定する。図8Bの軌跡Cは、前足の内側から外れている軌跡の一例である。
図8Bは、本実施形態に係る第2の誘導方法の一例を模式的に示す。第2の誘導方法では、制御部11は、足圧中心の軌跡が前足の内側から外れているか否かを判定する。この判定の結果に基づいて、足圧中心の軌跡が前足の内側から外れている場合に、足圧中心の軌跡が前足の内側の方に近付く方向にアシストを加えるようにアシスト量35を決定する。図8Bの軌跡Cは、前足の内側から外れている軌跡の一例である。
一例では、足圧中心の軌跡が前足の内側の方に近付く方向にアシストを加えることは、アシストパターン5に含まれるアシストのアシスト量を変更することで実現されてよい。他の一例では、足圧中心の軌跡が前足の内側の方に近付く方向にアシストを加えることは、アシストパターン5に含まれるアシスト以外の誘導アシストを追加することで実現されてもよい。誘導アシストの向きは、ユーザZの足圧中心の軌跡が前足の内側から外れた場合に、この軌跡を前足の内側の方に向けるように適宜決定されてよい(図8Bはその一例を示す)。前足の内側に近付く方向に加えるアシストのアシスト量は、特に限定されなくてよく、実施の形態に応じて適宜決定されてよい。この追加のアシストのアシスト量は、例えば、オペレータの指定、プログラム内の設定値等の任意の方法で与えられてよい。
第2の誘導方法によれば、前足の内側の方へ導くアシストを加えることで、足圧中心の軌跡が前足の内側に至るような歩行動作をユーザZに行わせることができ、これにより、そのような歩行動作をユーザZに習得させることができる。したがって、足圧中心の軌跡を前足の内側の方に適切に誘導することができる。
(III)第3の誘導方法
図8Cは、本実施形態に係る第3の誘導方法の一例を模式的に示す。第3の誘導方法では、制御部11は、定義情報125を利用して、足圧中心の軌跡を前足の内側の方に誘導するためのアシストを決定する。
図8Cは、本実施形態に係る第3の誘導方法の一例を模式的に示す。第3の誘導方法では、制御部11は、定義情報125を利用して、足圧中心の軌跡を前足の内側の方に誘導するためのアシストを決定する。
定義情報125は、足圧中心の軌跡と足圧中心の軌跡を前足内側の方に誘導可能なアシストとの対応関係を示すように構成される。定義情報125は、制御装置1(RAM、記憶部12、記憶媒体91、外部記憶装置等)に保持されていてもよいし、或いは外部コンピュータ(ネットワークサーバ等)に保持されていてもよい。
制御部11は、各サンプリングタイムで足圧中心を取得することで、足圧中心の軌跡を得る。図8Cの軌跡Dは、得られる軌跡の一例である。制御部11は、定義情報125を適宜参照し、ユーザZの足圧中心の軌跡に関連付けられたアシストを示す情報を抽出する。これにより、制御部11は、定義情報125に基づいて、ユーザZの足圧中心の軌跡からアシストを決定する。そして、制御部11は、決定されたアシストを加えるようにアシスト量35を決定する。
一例では、定義情報125により得られるアシストを加えることは、アシストパターン5に含まれるアシストのアシスト量を変更することで実現されてよい。他の一例では、定義情報125により得られるアシストを加えることは、アシストパターン5に含まれるアシスト以外の誘導アシストを追加することで実現されてもよい。第2の誘導方法と同様に、加えるアシストのアシスト量は、任意の方法で与えられてよい。
第3の誘導方法によれば、足圧中心の軌跡に対する適切なアシストを示す情報が定義情報125として予め蓄積される。この定義情報125を利用することで、足圧中心の軌跡が前足の内側に至るような歩行動作を習得させ得るアシストをユーザZに提供することができる。したがって、足圧中心の軌跡を前足の内側の方に適切に誘導することができる。
(IV)その他
制御部11は、上記3つの方法のうちの少なくともいずれかにより、足圧中心の軌跡を前足の内側の方に誘導するようにアシスト量35を決定してよい。ただし、誘導方法は、これらの例に限定されなくてよい。他の一例では、制御部11は、足圧中心の軌跡が前足の内側から外れているほど、歩行し難いように大きな負荷をかけるアシストを与えるようにアシスト量35を決定してよい。この誘導方法でも、足圧中心の軌跡を前足の内側の方に適切に誘導することができる。
制御部11は、上記3つの方法のうちの少なくともいずれかにより、足圧中心の軌跡を前足の内側の方に誘導するようにアシスト量35を決定してよい。ただし、誘導方法は、これらの例に限定されなくてよい。他の一例では、制御部11は、足圧中心の軌跡が前足の内側から外れているほど、歩行し難いように大きな負荷をかけるアシストを与えるようにアシスト量35を決定してよい。この誘導方法でも、足圧中心の軌跡を前足の内側の方に適切に誘導することができる。
(かかと及び中足部の時間の割合を所定範囲に誘導する)
本実施形態では、制御部11は、足圧中心を前足の内側の方に誘導する際に、足圧中心の軌跡において、足圧中心がかかとに存在している時間の割合が24%~44%であること、及び足圧中心が中足部に存在している時間の割合が18%~41%であることの少なくともいずれかを達成するようにアシスト量35を決定してよい。
本実施形態では、制御部11は、足圧中心を前足の内側の方に誘導する際に、足圧中心の軌跡において、足圧中心がかかとに存在している時間の割合が24%~44%であること、及び足圧中心が中足部に存在している時間の割合が18%~41%であることの少なくともいずれかを達成するようにアシスト量35を決定してよい。
一例では、制御部11は、足底センサ60のセンサ値における足底荷重の有無(例えば、閾値以上の荷重が計測されるか否か等)により、立脚期間の時間を特定してよい。制御部11は、立脚期間の各サンプリングタイムで足底センサ60から得られるセンサ値により足圧中心の位置を特定してよい。この特定の結果に基づいて、制御部11は、足圧中心がかかとに存在している時間の割合及び足圧中心が中足部に存在している時間の割合の少なくともいずれかを算出してよい。一例では、かかと及び中足部の範囲は予め設定されていてよく、制御部11は、各範囲に足圧中心が位置する時間を立脚期間の時間で割ることで、足圧中心が各部位に存在する時間の割合を算出することができる。
制御部11は、算出された時間の割合が上記数値範囲に含まれるか否かを判定してよい。そして、かかと及び中足部の少なくとも一方の算出された時間の割合が上記数値範囲に含まれない場合に、かかと及び中足部の少なくとも一方の時間の割合が上記数値範囲に近付くようにアシスト量35を決定してよい。
一例では、かかと及び中足部の少なくとも一方の時間の割合が上記数値範囲に近付くように誘導する方法には、上記第1~第3の誘導方法の少なくともいずれかが採用されてよい。他の一例では、制御部11は、ソフトウェア制御によりアシストを変更して、かかと及び中足部の少なくとも一方の時間の割合が上記数値範囲に近付くアシストを見つけ出してよい。
上記知見のとおり、かかとの時間の割合が24%~44%であること及び中足部の時間の割合が18%~41%であることの少なくともいずれかを達成するように誘導することで、蹴り出し力が良好な歩行動作をユーザZに習得させることができる。その結果、ユーザの歩行動作の改善を期待することができる。なお、好ましくは、制御部11は、足圧中心がかかとに存在している時間の割合が24%~44%であること、及び足圧中心が中足部に存在している時間の割合が18%~41%であることの両方を達成するようにアシスト量35を決定してよい。前足の内側の領域に誘導するような歩行アシストを繰り返した場合、ユーザZは、その歩行アシストに慣れ、足圧中心が前足の内側に至る歩行ではあるが、かかと及び中足部に適正に足圧中心が存在しない歩行を行うようになる可能性がある。これに対して、かかと及び中足部それぞれに足圧中心が位置する割合を監視することで、歩行アシストに慣れてきたユーザZに対しても適正な歩行動作を習得させるための訓練を実施することができる。
(時間割合の評価値による最適化)
また、本実施形態では、制御部11は、足圧中心を前足の内側の方に誘導する際に、足圧中心の軌跡において、足圧中心がかかとに存在している時間の割合、足圧中心が中足部に存在している時間の割合、足圧中心が前足の内側の領域に存在している時間の割合、足
圧中心が前足の外側の領域に存在している時間の割合、又はこれらの組み合わせに基づいて、歩行の評価値を算出してよい。一例では、各部位の範囲は予め設定されていてよく、制御部11は、上記と同様に、各範囲に足圧中心が位置する時間を立脚期間の時間で割ることで、足圧中心が各部位に存在する時間の割合を算出してよい。上記のとおり、蹴り出し力が良好な健常の歩行では、足圧中心がかかとに存在している時間の割合が24%~44%であり、足圧中心が中足部に存在している時間の割合が18%~41%であり、足圧中心が前足内側の領域に存在している時間の割合が16%~39%であり、足圧中心が前足外側の領域に存在している時間の割合が0%~20%であるという知見が得られている。歩行の評価値は、これらの範囲に入っているほど評価が高く、これらの範囲から外れているほど評価が低くなるように算出されるのであれば、その算出方法は、特に限定されなくてよく、実施の形態に応じて適宜決定されてよい。一例では、制御部11は、以下の式1により歩行の評価値を算出してよい。
また、本実施形態では、制御部11は、足圧中心を前足の内側の方に誘導する際に、足圧中心の軌跡において、足圧中心がかかとに存在している時間の割合、足圧中心が中足部に存在している時間の割合、足圧中心が前足の内側の領域に存在している時間の割合、足
圧中心が前足の外側の領域に存在している時間の割合、又はこれらの組み合わせに基づいて、歩行の評価値を算出してよい。一例では、各部位の範囲は予め設定されていてよく、制御部11は、上記と同様に、各範囲に足圧中心が位置する時間を立脚期間の時間で割ることで、足圧中心が各部位に存在する時間の割合を算出してよい。上記のとおり、蹴り出し力が良好な健常の歩行では、足圧中心がかかとに存在している時間の割合が24%~44%であり、足圧中心が中足部に存在している時間の割合が18%~41%であり、足圧中心が前足内側の領域に存在している時間の割合が16%~39%であり、足圧中心が前足外側の領域に存在している時間の割合が0%~20%であるという知見が得られている。歩行の評価値は、これらの範囲に入っているほど評価が高く、これらの範囲から外れているほど評価が低くなるように算出されるのであれば、その算出方法は、特に限定されなくてよく、実施の形態に応じて適宜決定されてよい。一例では、制御部11は、以下の式1により歩行の評価値を算出してよい。
Jは評価値を示す。wkは、各割合に対する重みを示す。重みは、任意の方法で与えられてよい。Tkは、各割合を示す。Td_kは、各割合に対する理想値を示す。各割合に対する理想値は、例えば、オペレータの指定、プログラム内の設定値等の任意の方法で与えられてよい。各割合に対する理想値は、上記数値範囲から適宜決定されてよい。評価値Jは、各割合が理想値であるときに0となり、最も評価が高いことを示す。各割合が上記数値範囲に入る場合に、評価値Jが0となるように、各割合に対する理想値は、上記数値範囲に対応して、数値幅を有するように構成されてもよい。
そして、制御部11は、算出される評価値を最適化するようにアシスト量35を決定してよい。上記式1の例では、評価値を最適化することは、評価値Jを0に近付けることである。一例では、評価値を最適化する誘導方法には、上記第1~第3の誘導方法の少なくともいずれかが採用されてよい。他の一例では、制御部11は、ソフトウェア制御によりアシストを変更して、算出される評価値が0に近付くアシストを見つけ出してよい。
上記知見のとおり、上記割合のうちの少なくともいずれかにより算出される評価値を最適化するように誘導することで、蹴り出し力が良好な歩行動作をユーザZに習得させることができる。その結果、ユーザの歩行動作の改善を期待することができる。なお、好ましくは、制御部11は、上記4つの時間の割合のうち少なくとも、足圧中心がかかとに存在している時間の割合、足圧中心が中足部に存在している時間の割合、及び足圧中心が前足の内側の領域に存在している時間の割合に基づいて、歩行の評価値を算出してよい。上記のとおり、前足の内側の領域に誘導するような歩行アシストを繰り返した場合、ユーザZは、その歩行アシストに慣れ、足圧中心が前足の内側に至る歩行ではあるが、かかと及び中足部に適正に足圧中心が存在しない歩行を行うようになる可能性がある。これに対して、当該構成によれば、かかと、中足部及び前足内側の領域それぞれに足圧中心が位置する割合を監視することで、歩行アシストに慣れてきたユーザZに対しても適正な歩行動作を習得させるための訓練を実施することができる。
なお、各時間の割合に関して、必ずしも、上記範囲を採用しなくてもよい。他の一例として、各時間の割合の推奨値を設定し、推奨値からのずれに応じて、歩行の評価値を算出してよい。例えば、制御部11は、ずれが大きくなるほど低い評価を示すように評価値を算定し、ずれが少ないほど高い評価を示すように評価値を算定してよい。具体例として、足圧中心がかかとに存在している時間の割合、足圧中心が中足部に存在している時間の割
合及び足圧中心が前足内側の領域に存在している時間の割合の各推奨値は30%に設定されてよく、足圧中心が前足外側の領域に存在している時間の割合の推奨値は10%に設定されてよい。各推奨値は、これらの例に限られなくてよく、合計が100%又はその近傍になるようにした上で、上記各数値範囲に入るように決定されてよい。なお、評価値は、値が高いほど評価が高いことを示してもよいし、反対に、値が小さいほど評価が高いことを示してもよい。
合及び足圧中心が前足内側の領域に存在している時間の割合の各推奨値は30%に設定されてよく、足圧中心が前足外側の領域に存在している時間の割合の推奨値は10%に設定されてよい。各推奨値は、これらの例に限られなくてよく、合計が100%又はその近傍になるようにした上で、上記各数値範囲に入るように決定されてよい。なお、評価値は、値が高いほど評価が高いことを示してもよいし、反対に、値が小さいほど評価が高いことを示してもよい。
(2)アシスト量のランダム化
アシスト量をランダム化するアシスト方法を採用する場合、アシストパターン5において位相毎に定義されたアシスト量に対して、上限値及び下限値が予め設定される。上限値及び下限値は、適宜決定されてよい。一例では、上限値及び下限値は、オペレータの入力により与えられてよい。他の一例では、上限値及び下限値は、設定値として与えられてもよい。上限値及び下限値のいずれか一方を基準に他方が決定されてもよい。例えば、上限値が100%に設定されてよく、上限値が100%であることを基準として、下限値が25%に設定されてよい。
アシスト量をランダム化するアシスト方法を採用する場合、アシストパターン5において位相毎に定義されたアシスト量に対して、上限値及び下限値が予め設定される。上限値及び下限値は、適宜決定されてよい。一例では、上限値及び下限値は、オペレータの入力により与えられてよい。他の一例では、上限値及び下限値は、設定値として与えられてもよい。上限値及び下限値のいずれか一方を基準に他方が決定されてもよい。例えば、上限値が100%に設定されてよく、上限値が100%であることを基準として、下限値が25%に設定されてよい。
制御部11は、最初の制御サイクルの際に、上限値及び下限値の間で最初のアシスト量を決定し、歩行ラウンドを開始する。一例では、アシスト量の初期値は、上限値であってよい。そして、以降の各制御サイクルにおいて、制御部11は、歩行ラウンドを完了するか否かを判定する。
一例では、歩行ラウンドの期間は、歩数により規定されてよい。この場合、制御部11は、制御サイクルを繰り返し実行している間、ユーザZの歩数を計測してよい。歩数の計測方法は、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。例えば、制御部11は、センサ6のセンサ値31によりヒールストライクを検出することにより、ユーザZの歩数を計測してよい。また、例えば、制御部11は、位相の推定値33の推移により、ユーザZの歩数を計測してよい。そして、制御部11は、計測されたユーザZの歩数に基づいて、歩行ラウンドを完了する否かを判定してよい。
他の一例では、歩行ラウンドの期間は、時間により規定されてよい。この場合、制御部11は、制御サイクルを繰り返し実行している間、経過時間を計測してよい。経過時間の計測にはタイマ(ハードウェア又はソフトウェア)が用いられてよい。制御部11は、計測される経過時間に応じて、歩行ラウンドを完了するか否かを判定してよい。
他の一例では、歩行ラウンドの期間は、位相の推定値33のばらつきにより規定されてよい。この場合、制御部11は、位相の推定値33のばらつきを算出してよい。制御部11は、算出される推定値33のばらつきに応じて、歩行ラウンドを完了するか否かを判定してよい。具体的には、位相の推定値33のばらつきの大きさが閾値未満である場合に、制御部11は、歩行ラウンドを完了すると判定してよい。一方、位相の推定値33のばらつきの大きさが閾値を超えている場合、制御部11は、その歩行ラウンドを完了しないと判定してよい。位相の推定値33のばらつきの大きさが閾値と等しい場合、処理の分岐先は上記いずれであってよい。
歩行ラウンドを完了しないと判定した場合、制御部11は、アシスト量35を変更せず、適用しているアシスト量35でのアシストを継続する。一方、歩行ラウンドを完了すると判定した場合、制御部11は、ステップS104で決定するアシスト量35を上限値から下限値の間でランダムに変更し、変更後のアシスト量35で次の歩行ラウンドを開始する。これを繰り返すことで、制御部11は、制御サイクルの実行を繰り返す間、ユーザZが歩行ラウンドを完了する度に、ステップS104において、位相の推定値33から決定するアシスト量35を上限値から下限値の間でランダムに変動させる。
(最大変動量)
アシスト量35を急激に変更すると、ユーザZが、その変更に対応できずに、歩行動作を乱してしまう可能性がある。そこで、アシスト量をランダム化するアシスト方法を採用する場合に、アシスト量35をランダムに変動させる際の最大変動量が予め設定されてよい。アシスト量35をランダムに変動させることは、前回の歩行ラウンドにおけるアシスト量35からの変動量が最大変動量以下となるように今回の歩行ラウンドにおけるアシスト量35を決定することを含んでよい。すなわち、歩行ラウンドを完了すると判定した場合に、制御部11は、ステップS104において、アシスト量35の変動量が最大変動量以下となるようにアシスト量35を上限値から下限値の間でランダムに変更してよい。そして、制御部11は、変更後のアシスト量35で次の歩行ラウンドを開始してよい。最大変動量を規定することで、アシスト量の急激な変化によりユーザZが歩行動作を乱してしまう可能性を低減し、ユーザZの歩行動作の改善を適切に図ることができる。
アシスト量35を急激に変更すると、ユーザZが、その変更に対応できずに、歩行動作を乱してしまう可能性がある。そこで、アシスト量をランダム化するアシスト方法を採用する場合に、アシスト量35をランダムに変動させる際の最大変動量が予め設定されてよい。アシスト量35をランダムに変動させることは、前回の歩行ラウンドにおけるアシスト量35からの変動量が最大変動量以下となるように今回の歩行ラウンドにおけるアシスト量35を決定することを含んでよい。すなわち、歩行ラウンドを完了すると判定した場合に、制御部11は、ステップS104において、アシスト量35の変動量が最大変動量以下となるようにアシスト量35を上限値から下限値の間でランダムに変更してよい。そして、制御部11は、変更後のアシスト量35で次の歩行ラウンドを開始してよい。最大変動量を規定することで、アシスト量の急激な変化によりユーザZが歩行動作を乱してしまう可能性を低減し、ユーザZの歩行動作の改善を適切に図ることができる。
なお、最大変動量は、適宜設定されてよい。一例では、制御部11は、最初の制御サイクルを実行する前の初期設定において、ユーザZに与えるアシスト量を変動させて、歩行アシスト装置70によるユーザZの歩行に対するアシストを繰り返し、アシスト量の変動量に対する歩行の位相の推定値のばらつきを評価してよい。推定値のばらつきは、上記の方法で算出されてよい。推定値のばらつきが大きいということは、それだけユーザZの歩行動作が変化したことを示す。そのため、一例では、制御部11は、推定値のばらつきが閾値を超えているか否かを判定してよい。閾値は任意の方法で与えられてよい。推定値のばらつきが閾値を超えている場合に、制御部11は、そのアシスト量の変動量を最大変動量に設定してよい。
他の一例では、制御部11は、初期設定において、最大のアシスト量(例えば、100%のアシスト量)から順にアシスト量を減らしながら歩行ラウンドを実行してよい。そして、制御部11は、上記と同様に、位相の推定値のばらつきを算出し、算出される位相の推定値のばらつきが大きくなる(例えば、閾値判定)直前のアシスト量と最大のアシスト量との差分を最大変動量として設定してよい。
(最小変動量)
歩行ラウンド間のアシスト量35の変動量が小さすぎる場合、その変動をユーザZが認識することができず、ランダムなアシスト量35による訓練が達成できない可能性がある。そこで、アシスト量をランダム化するアシスト方法を採用する場合に、ユーザZの認知可能な最小変動量が予め設定されてよい。アシスト量35をランダムに変動させることは、前回の歩行ラウンドにおけるアシスト量35からの変動量が最小変動量以上となるように今回の歩行ラウンドにおけるアシスト量35を決定することを含んでよい。すなわち、歩行ラウンドを完了すると判定した場合に、制御部11は、ステップS104において、アシスト量35の変動量が最小変動量以上となるようにアシスト量35を上限値から下限値の間でランダムに変更してよい。そして、制御部11は、変更後のアシスト量35で次の歩行ラウンドを開始してよい。最小変動量を規定することで、ランダムなアシスト量35による訓練を適正に実施し、ユーザZの歩行動作の改善を適切に図ることができる。
歩行ラウンド間のアシスト量35の変動量が小さすぎる場合、その変動をユーザZが認識することができず、ランダムなアシスト量35による訓練が達成できない可能性がある。そこで、アシスト量をランダム化するアシスト方法を採用する場合に、ユーザZの認知可能な最小変動量が予め設定されてよい。アシスト量35をランダムに変動させることは、前回の歩行ラウンドにおけるアシスト量35からの変動量が最小変動量以上となるように今回の歩行ラウンドにおけるアシスト量35を決定することを含んでよい。すなわち、歩行ラウンドを完了すると判定した場合に、制御部11は、ステップS104において、アシスト量35の変動量が最小変動量以上となるようにアシスト量35を上限値から下限値の間でランダムに変更してよい。そして、制御部11は、変更後のアシスト量35で次の歩行ラウンドを開始してよい。最小変動量を規定することで、ランダムなアシスト量35による訓練を適正に実施し、ユーザZの歩行動作の改善を適切に図ることができる。
なお、最小変動量は、適宜設定されてよい。一例では、制御部11は、初期設定において、最大のアシスト量(例えば、100%のアシスト量)から順にアシスト量を減らしながら歩行ラウンドを実行してよい。これに応じて、制御部11又はオペレータは、ユーザZに変動を認知したか否かを回答させてよい。制御部11又はオペレータは、ユーザZが変動を認知しないと回答した変動量を最小変動量として設定してよい。
他の一例では、ユーザZの体性感覚が失われている場合、ユーザZは、アシスト量の変
動を体性感覚で認知できないため、ユーザZの回答が正しくない可能性が高くなる。これに対応するため、制御部11は、初期設定において、歩行ラウンドを実行してよい。制御部11は、歩行ラウンド毎にアシスト量を変動させると共に、ユーザZの歩行の位相の推定値を算出してよい。アシスト量の変動を認知している場合、その変動の影響によりユーザZの歩行動作が変わるため、少なくとも一時的に位相の推定値に変化が生じる。そこで、制御部11は、算出される位相の推定値の変化に基づいて、アシスト量の変動を認知しているか否かを判定してよい。一例では、制御部11は、歩行ラウンド間における位相の推定値の変化量が閾値未満であるか否かを判定してよい。閾値は任意の方法で与えられてよい。位相の推定値の変化量が閾値未満である場合に、制御部11は、その際のアシスト量の変動量を最小変動量として設定してよい。これにより、ユーザZの体性感覚が失われている場合でも、最小変動量を適正に設定することができる。
動を体性感覚で認知できないため、ユーザZの回答が正しくない可能性が高くなる。これに対応するため、制御部11は、初期設定において、歩行ラウンドを実行してよい。制御部11は、歩行ラウンド毎にアシスト量を変動させると共に、ユーザZの歩行の位相の推定値を算出してよい。アシスト量の変動を認知している場合、その変動の影響によりユーザZの歩行動作が変わるため、少なくとも一時的に位相の推定値に変化が生じる。そこで、制御部11は、算出される位相の推定値の変化に基づいて、アシスト量の変動を認知しているか否かを判定してよい。一例では、制御部11は、歩行ラウンド間における位相の推定値の変化量が閾値未満であるか否かを判定してよい。閾値は任意の方法で与えられてよい。位相の推定値の変化量が閾値未満である場合に、制御部11は、その際のアシスト量の変動量を最小変動量として設定してよい。これにより、ユーザZの体性感覚が失われている場合でも、最小変動量を適正に設定することができる。
(筋モジュールとの関係)
アシストパターン5は、複数の筋モジュールにより構成されてよい。上記のとおり、各筋モジュールは、筋シナジーを再現するように、複数の周期関数を組み合わせることにより構成されてよい。この場合に、アシスト量35をランダムに変動させることは、複数の筋モジュールのうちの一部についてアシスト量をランダムに変動させることにより構成されてよい。すなわち、制御部11は、一部の筋モジュールに対してアシスト量のランダム化を適用し、残りの筋モジュールに対してはアシスト量のランダム化を適用しなくてよい。制御部11は、ある歩行ラウンドが完了し、次の歩行ラウンドに移行しても、残りの筋モジュールについて、各位相におけるアシスト量を変動させず、一定的にユーザZに与えるようにアシスト量35を決定してよい。このアシスト方法によれば、複数の筋モジュールのうちの一部(対象の筋モジュール)についてアシスト量のランダム化を適用することで、その対象の筋モジュールに関する歩行動作の改善を期待することができる。
アシストパターン5は、複数の筋モジュールにより構成されてよい。上記のとおり、各筋モジュールは、筋シナジーを再現するように、複数の周期関数を組み合わせることにより構成されてよい。この場合に、アシスト量35をランダムに変動させることは、複数の筋モジュールのうちの一部についてアシスト量をランダムに変動させることにより構成されてよい。すなわち、制御部11は、一部の筋モジュールに対してアシスト量のランダム化を適用し、残りの筋モジュールに対してはアシスト量のランダム化を適用しなくてよい。制御部11は、ある歩行ラウンドが完了し、次の歩行ラウンドに移行しても、残りの筋モジュールについて、各位相におけるアシスト量を変動させず、一定的にユーザZに与えるようにアシスト量35を決定してよい。このアシスト方法によれば、複数の筋モジュールのうちの一部(対象の筋モジュール)についてアシスト量のランダム化を適用することで、その対象の筋モジュールに関する歩行動作の改善を期待することができる。
ただし、アシスト量のランダム化と筋モジュールとの関係は、このような例に限定されなくてよい。他の一例では、アシスト量35をランダムに変動させることは、複数の筋モジュールの全てについてアシスト量をランダムに変動させることにより構成されてよい。なお、複数の筋モジュールにアシスト量のランダム化が適用される場合に、各筋モジュールに対する変動量は同一であってよい。或いは、少なくとも一部の筋モジュールに対する変動量は、他の筋モジュールに対する変動量と異なっていてもよい。各筋モジュールに対する変動量は、実施の形態に応じて適宜決定されてよい。
他方、制御サイクルの実行を繰り返さないと判定した場合、制御部11は、本動作例に係る制御装置1の処理手順を終了する。
なお、本動作例に係る処理手順を終了した後、制御部11は、任意のタイミングで、ステップS101又はステップS102から処理を再度実行してよい。一例では、制御部11は、入力装置14を介したオペレータからの要求に応じて、ステップS102から処理を再度実行してよい。アシストパターン5の変更の要求をオペレータから受け付けた場合、制御部11は、ステップS101から処理を再度実行してよい。
[特徴]
以上のとおり、本実施形態では、上記知見に基づいて、ステップS104において、足圧中心の軌跡を前足の内側の方に誘導すること及び歩行ラウンドが完了する度に、アシスト量をランダムに変動させることの少なくともいずれかを採用して、アシスト量35を決定する。そして、制御装置1は、ステップS105の処理により、決定されたアシスト量35を出力し、歩行アシスト装置70による歩行アシストをユーザZに提供する。これにより、簡易な方法でユーザZの歩行動作の改善を図ることができる。
以上のとおり、本実施形態では、上記知見に基づいて、ステップS104において、足圧中心の軌跡を前足の内側の方に誘導すること及び歩行ラウンドが完了する度に、アシスト量をランダムに変動させることの少なくともいずれかを採用して、アシスト量35を決定する。そして、制御装置1は、ステップS105の処理により、決定されたアシスト量35を出力し、歩行アシスト装置70による歩行アシストをユーザZに提供する。これにより、簡易な方法でユーザZの歩行動作の改善を図ることができる。
§4 変形例
以上、本発明の実施の形態を詳細に説明してきたが、前述までの説明はあらゆる点において本発明の例示に過ぎない。上記実施形態において、種々の改良又は変更が適宜行われてよい。
以上、本発明の実施の形態を詳細に説明してきたが、前述までの説明はあらゆる点において本発明の例示に過ぎない。上記実施形態において、種々の改良又は変更が適宜行われてよい。
一例として、歩行時には、足圧中心は、かかとから中足部を経由しつま先の方へ順番に推移することが望ましい。一方で、フットスラップ等の異常な歩行時には、足圧中心は、かかとからつま先に一気に推移する等の適切ではない順序で推移することが知られている。そこで、上記実施形態において、制御部11は、上記評価値を算出する際に、足圧中心の推移する足底箇所の順序及び速度を更に評価してもよい。評価方法には任意の数学的手法が用いられてよい。評価方法の一例として、足圧中心の推移する順序及び速度の適正値が、閾値等で適宜設定されてよい。制御部11は、足圧中心が各部に存在している時間の割合を算出すると共に、足圧中心の推移する足底箇所の順序及び速度が適正値に適合しているか否かを更に判定してよい。そして、制御部11は、判定結果に更に応じて、評価値を算出してよい。例えば、制御部11は、算出される順序及び速度が適正値から外れるほど低い評価を示す値に算定し、算出される順序及び速度が適正値に適合するほど高い評価を示す値に算定するように評価値を算出してよい。なお、評価値は、値が高いほど評価が高いことを示してもよいし、反対に、値が小さいほど評価が高いことを示してもよい。
§5 実験例
上記実施形態の有効性を検証するため、以下の実験を行った。ただし、本発明は、以下の実験例に限定されるものではない。
上記実施形態の有効性を検証するため、以下の実験を行った。ただし、本発明は、以下の実験例に限定されるものではない。
(1)第1実験例
第1実験例では、被験者にトレッドミル上で1分間、自由に歩行させ、足底に作用する床反力及び足圧中心を同期的に測定した。被験者は、健常者10名(男性5名:女性5名)及び脳卒中片麻痺患者10名(男性5名:女性5名)であった。床反力の測定器には、左右にそれぞれ床反力の測定器内蔵のスプリッドベルトトレッドミル(テック技販社製、HTP-1980)を使用した。足底荷重の測定には、インソール型の測定器(ノベル社製、Pedar-X)を使用した。サンプリング周波数は100Hzに設定した。
第1実験例では、被験者にトレッドミル上で1分間、自由に歩行させ、足底に作用する床反力及び足圧中心を同期的に測定した。被験者は、健常者10名(男性5名:女性5名)及び脳卒中片麻痺患者10名(男性5名:女性5名)であった。床反力の測定器には、左右にそれぞれ床反力の測定器内蔵のスプリッドベルトトレッドミル(テック技販社製、HTP-1980)を使用した。足底荷重の測定には、インソール型の測定器(ノベル社製、Pedar-X)を使用した。サンプリング周波数は100Hzに設定した。
一人の被験者に対して完全な10歩分の歩行が測定された。すなわち、健常者及び患者それぞれ、100歩分のデータが得られた。データ分析では、床反力の垂直成分が20Nを超える時点をヒールストライク、20N以下の部分をトーオフと定義し、立脚期間の時間軸を正規化した。
床反力の解析では、床反力の推進方向成分のピーク値を採用し、このピーク値を被験者の体重で割った値(N/Kg)を算出した。一方、足圧中心の分析では、足底を0から99までの均等な領域に分割し、かかと、中足部、前足内側、前足外側及びつま先の5つの部位それぞれに各領域を振り分けた。そして、足圧中心が5つの部位それぞれに存在している時間の割合(期間)を計算した。
次に、健常者(Healthy subjects)、片麻痺患者の非麻痺側(Non-paralysis)、及び
片麻痺患者の麻痺側(paralysis)の3つのグループに分け、かかと、中足部、前足内側
及び前足外側それぞれに足圧中心が各部位に存在している時間の割合を分散分析及びボンフェローニ法により比較した。有意水準は、(P<0.05)に設定した。また、片麻痺患者の麻痺側に関して、足圧中心がかかと及び中足部それぞれに存在している時間の割合と床反力の推進方向成分のピーク値との関係を多項式曲線で近似することで、各時間の割合と床反力の推進方向成分のピーク値との関係を分析した。更に、片麻痺患者の麻痺側に関して、足圧中心が前足内側及び前足外側それぞれに存在している時間の割合と床反力の推進方
向成分のピーク値との関係を線形回帰により分析することで、当該関係を示す線形回帰モデルを得た。全ての統計計算は、IBM SPSS Statistics(バージョン20.0.0)を使用して行
った。
片麻痺患者の麻痺側(paralysis)の3つのグループに分け、かかと、中足部、前足内側
及び前足外側それぞれに足圧中心が各部位に存在している時間の割合を分散分析及びボンフェローニ法により比較した。有意水準は、(P<0.05)に設定した。また、片麻痺患者の麻痺側に関して、足圧中心がかかと及び中足部それぞれに存在している時間の割合と床反力の推進方向成分のピーク値との関係を多項式曲線で近似することで、各時間の割合と床反力の推進方向成分のピーク値との関係を分析した。更に、片麻痺患者の麻痺側に関して、足圧中心が前足内側及び前足外側それぞれに存在している時間の割合と床反力の推進方
向成分のピーク値との関係を線形回帰により分析することで、当該関係を示す線形回帰モデルを得た。全ての統計計算は、IBM SPSS Statistics(バージョン20.0.0)を使用して行
った。
図9Aは、上記3つのグループそれぞれの足圧中心が各部位に存在している時間の割合(COP duration)を算出した結果を示す。図9Aのヒストグラムは、平均値を示し、バーは、標準偏差を示す。図9Bは、片麻痺患者の麻痺側の足圧中心がかかとに存在している時間の割合と床反力の推進方向成分のピーク値との関係を分析した結果を示す。図9Cは、片麻痺患者の麻痺側の足圧中心が中足部に存在している時間の割合と床反力の推進方向成分のピーク値との関係を分析した結果を示す。図9Dは、片麻痺患者の麻痺側の足圧中心が前足内側に存在している時間の割合と床反力の推進方向成分のピーク値との関係を分析した結果を示す。図9Eは、片麻痺患者の麻痺側の足圧中心が前足外側に存在している時間の割合と床反力の推進方向成分のピーク値との関係を分析した結果を示す。
図9Aに示されるとおり、健常者及び片麻痺患者の非麻痺側では、足圧中心が前足内側の領域に適度に留まっていた(例えば、健常者は、16%~39%であった)。これに対して、片麻痺患者の麻痺側では、足圧中心が前足内側の領域に存在している時間の割合が統計的に有意に小さくなった。また、図9Dに示されるとおり、片麻痺患者の麻痺側でも、足圧中心が前足内側の領域に存在している時間の割合が多くなれば、床反力の推進方向成分のピーク値(すなわち、歩行の際の蹴り出し力)が大きくなることが分かった。これらの結果から、足圧中心が前足内側の領域に存在する時間の割合が短くなっている片麻痺患者の麻痺側の脚に対して、足圧中心の軌跡を前足内側の方に誘導するアシストを与えることで、健常者及び非麻痺側と同様の歩行動作が可能となり、歩行能力の改善を期待することができることが分かった。
また、図9Aに示されるとおり、蹴り出し力が良好な健常者の歩行における足圧中心の軌跡では、足圧中心がかかとに存在している時間の割合が24%~44%(33.8±9.7%)であり、足圧中心が中足部に存在している時間の割合が18%~41%(29.6±11.8%)であり、足圧中心が前足内側の領域に存在している時間の割合が16%~39%(27.4±11.4%)であり、足圧中心が前足外側の領域に存在している時間の割合が0%~20%(9.0±11.0%)であった。図9B~図9Eに示されるとおり、片麻痺患者の麻痺側の各部位の時間の割合が、上記数値範囲であれば、床反力の推進方向成分のピーク値が大きくなることが分かった。これらの結果から、足圧中心がかかと、中足部、前足内側の領域及び前足外側の領域に存在する時間の割合が上記数値範囲に収まるように誘導することで、歩行能力の改善を期待することができることが分かった。なお、各時間割合をA±Bの形式で表現した。Aは、各被験者(健常者)から得られたデータの平均値であり、Bは、標準偏差である。
(2)第2実験例
第2実験例では、脳卒中片麻痺患者に対して歩行アシスト装置(国際公開第2017/138651号公報で提案されている足関節のアシスト装置を膝関節にもアシスト可能に変更したもの)を装着し、歩行アシスト装置によるアシストを与えながら、トレッドミル上で歩行訓練を行った。アシストパターンは、理学療法士の手作業により、位相空間上で調整され、片麻痺患者に対して最適化された。最適化されたアシストパターンにおけるアシスト量を上限値に設定した。一方、最適化されたアシストパターンにおける各位相のアシスト量を小さくして、片麻痺患者の歩行が崩れない程度にアシスト量を調整し、得られたアシスト量(上限値の25%)を下限値に設定した。次に、片麻痺患者が認知可能な最小変動量を調べた。その結果から、最小変動量を25%に設定した。1回の歩行ラウンドは1分間とし、歩行訓練は、12回の歩行ラウンドにより構成した。第2実験例では、歩行ラウンドが完了する度に、25%、50%、75%、及び100%の4状態でアシスト
量をランダムに変動させた。一方、第1比較例では、アシスト量をランダムに変更させず、一定量とした。また、第2比較例では、3回の歩行ラウンド毎に25%のアシスト量を減らした。第1比較例及び第2比較例において、その他の条件は第2実験例と同じに設定した。第1比較例、第2比較例及び第2実験例の順で別の日に歩行訓練(合計三日間)を行った。各訓練日では、3セットの歩行訓練(1分間×12回×3セット)を実施した。1セット目の歩行訓練を実施する前、及び3セット目の歩行訓練を実施した後に、片麻痺患者に対して、左右にそれぞれ床反力の測定器内蔵のスプリッドベルトトレッドミル(テック技販社製、HTP-1980)上を裸足で歩行させ、床反力の推進方向成分のピーク値を測定することで、歩行訓練による歩行能力の改善程度を調べた。
第2実験例では、脳卒中片麻痺患者に対して歩行アシスト装置(国際公開第2017/138651号公報で提案されている足関節のアシスト装置を膝関節にもアシスト可能に変更したもの)を装着し、歩行アシスト装置によるアシストを与えながら、トレッドミル上で歩行訓練を行った。アシストパターンは、理学療法士の手作業により、位相空間上で調整され、片麻痺患者に対して最適化された。最適化されたアシストパターンにおけるアシスト量を上限値に設定した。一方、最適化されたアシストパターンにおける各位相のアシスト量を小さくして、片麻痺患者の歩行が崩れない程度にアシスト量を調整し、得られたアシスト量(上限値の25%)を下限値に設定した。次に、片麻痺患者が認知可能な最小変動量を調べた。その結果から、最小変動量を25%に設定した。1回の歩行ラウンドは1分間とし、歩行訓練は、12回の歩行ラウンドにより構成した。第2実験例では、歩行ラウンドが完了する度に、25%、50%、75%、及び100%の4状態でアシスト
量をランダムに変動させた。一方、第1比較例では、アシスト量をランダムに変更させず、一定量とした。また、第2比較例では、3回の歩行ラウンド毎に25%のアシスト量を減らした。第1比較例及び第2比較例において、その他の条件は第2実験例と同じに設定した。第1比較例、第2比較例及び第2実験例の順で別の日に歩行訓練(合計三日間)を行った。各訓練日では、3セットの歩行訓練(1分間×12回×3セット)を実施した。1セット目の歩行訓練を実施する前、及び3セット目の歩行訓練を実施した後に、片麻痺患者に対して、左右にそれぞれ床反力の測定器内蔵のスプリッドベルトトレッドミル(テック技販社製、HTP-1980)上を裸足で歩行させ、床反力の推進方向成分のピーク値を測定することで、歩行訓練による歩行能力の改善程度を調べた。
図10は、第2実験例、第1比較例及び第2比較例において片麻痺患者に対して与えたアシスト量を示す。図11は、第2実験例、第1比較例及び第2比較例における歩行訓練前後の片麻痺患者の歩行における床反力の推進力成分の代表値(Propulsive mean Amplitude:床反力の推進力成分(積分値)を立脚時間で割ったもの)を測定した結果を示す。
図11に示されるとおり、歩行訓練による推進力成分の代表値の増加量は、第1比較例で0.2、第2比較例で0.7、第2実験例で1.1であった。推進力成分の代表値は、歩行時の蹴り出し力に対応する。アシスト量をランダムに変動させる第2実験例によれば、第1比較例及び第2比較例よりも、推進力成分の代表値、すなわち、歩行時の蹴り出し力をより改善することができた。この結果から、アシスト量をランダムに変動させることで、歩行能力の改善を期待することができることが分かった。
図11に示されるとおり、歩行訓練による推進力成分の代表値の増加量は、第1比較例で0.2、第2比較例で0.7、第2実験例で1.1であった。推進力成分の代表値は、歩行時の蹴り出し力に対応する。アシスト量をランダムに変動させる第2実験例によれば、第1比較例及び第2比較例よりも、推進力成分の代表値、すなわち、歩行時の蹴り出し力をより改善することができた。この結果から、アシスト量をランダムに変動させることで、歩行能力の改善を期待することができることが分かった。
1…制御装置、
11…制御部、12…記憶部、
13…外部インタフェース、
14…入力装置、15…出力装置、16…ドライブ、
81…制御プログラム、91…記憶媒体、
111…設定部、112…取得部、113…推定部、
114…アシスト決定部、115…出力部、
121…モデルデータ、
31…センサ値、33…推定値、
35…アシスト量、
4…推定モデル、5…アシストパターン、
6…センサ、60…足底センサ、
70…歩行アシスト装置
11…制御部、12…記憶部、
13…外部インタフェース、
14…入力装置、15…出力装置、16…ドライブ、
81…制御プログラム、91…記憶媒体、
111…設定部、112…取得部、113…推定部、
114…アシスト決定部、115…出力部、
121…モデルデータ、
31…センサ値、33…推定値、
35…アシスト量、
4…推定モデル、5…アシストパターン、
6…センサ、60…足底センサ、
70…歩行アシスト装置
Claims (17)
- コンピュータが、
アシストパターンを設定する設定ステップと、
ユーザの歩行に対するセンサのセンサ値を取得する取得ステップと、
推定モデルを使用して、取得された前記センサ値から前記歩行の位相の推定値を算出する推定ステップと、
設定された前記アシストパターンに従って、算出された前記位相の推定値からアシスト量を決定する決定ステップと、
決定された前記アシスト量を出力する出力ステップと、
を実行する制御方法であって、
前記センサは、足底センサを含み、
前記歩行の位相の推定値を算出することは、前記足底センサにより得られるセンサ値から足圧中心を算出することを含み、
前記アシスト量を決定することは、算出された前記足圧中心に基づいて、前記足圧中心の軌跡を前足の内側の方に誘導するようにアシスト量を決定することを含む、
制御方法。 - 前記足圧中心の軌跡を前足の内側の方に誘導することは、前記足圧中心の軌跡が前記前足の内側から外れているほど前記アシスト量を小さくすることを含む、
請求項1に記載の制御方法。 - 前記足圧中心の軌跡を前足の内側の方に誘導することは、前記足圧中心の軌跡が前記前足の内側から外れている場合に、前記足圧中心の軌跡が前記前足の内側の方に近付く方向にアシストを加えることを含む、
請求項1に記載の制御方法。 - 前記足圧中心の軌跡を前足の内側の方に誘導することは、定義情報に基づいて、前記足圧中心の軌跡からアシストを決定すること、及び決定されたアシストを加えることを含み、
前記定義情報は、前記足圧中心の軌跡と前記足圧中心を前足の内側の方に誘導するアシストとの対応関係を定義するように構成される、
請求項1に記載の制御方法。 - 前記アシストパターンは、1つ以上の筋モジュールにより構成され、
前記筋モジュールは、筋シナジーを再現するように、複数の周期関数を組み合わせることにより構成される、
請求項1に記載の制御方法。 - 前記足圧中心の軌跡を前足の内側の方に誘導することは、前記足圧中心の軌跡において、前記足圧中心がかかとに存在している時間の割合が24%~44%であること、及び前記足圧中心が中足部に存在している時間の割合が18%~41%であることの少なくともいずれかを達成するように誘導することを含む、
請求項1から5のいずれか1項に記載の制御方法。 - 前記足圧中心の軌跡を前足の内側の方に誘導することは、
前記足圧中心の軌跡において、前記足圧中心がかかとに存在している時間の割合、前記足圧中心が中足部に存在している時間の割合、前記足圧中心が前足の内側の領域に存在している時間の割合、前記足圧中心が前足の外側の領域に存在している時間の割合、又はこれらの組み合わせに基づいて、前記歩行の評価値を算出すること、及び
算出される評価値を最適化するように誘導すること、
を含む、
請求項1から5のいずれか1項に記載の制御方法。 - 前記アシストパターンは、歩行の位相に対するアシスト量を定義し、
前記アシストパターンにおいて定義された前記アシスト量に対して、上限値及び下限値が予め設定され、
前記取得ステップ、前記推定ステップ、前記決定ステップ、及び前記出力ステップを含む制御サイクルは繰り返し実行され、
前記制御サイクルの実行を繰り返す間、前記ユーザが歩行ラウンドを完了する度に、前記コンピュータは、前記決定ステップにおいて、算出された前記位相の推定値から決定する前記アシスト量を前記上限値及び前記下限値の間でランダムに変動させる、
請求項1から5のいずれか1項に記載の制御方法。 - アシストパターンを設定するように構成される設定部と、
ユーザの歩行に対するセンサのセンサ値を取得するように構成される取得部と、
推定モデルを使用して、取得された前記センサ値から前記歩行の位相の推定値を算出するように構成される推定部と、
設定された前記アシストパターンに従って、算出された前記位相の推定値からアシスト量を決定するように構成されるアシスト決定部と、
決定された前記アシスト量を出力するように構成される出力部と、
を備える制御装置であって、
前記センサは、足底センサを含み、
前記歩行の位相の推定値を算出することは、前記足底センサにより得られるセンサ値から足圧中心を算出することを含み、
前記アシスト量を決定することは、算出された前記足圧中心に基づいて、前記足圧中心の軌跡を前足の内側の方に誘導するようにアシスト量を決定することを含む、
制御装置。 - コンピュータに、
アシストパターンを設定する設定ステップと、
ユーザの歩行に対するセンサのセンサ値を取得する取得ステップと、
推定モデルを使用して、取得された前記センサ値から前記歩行の位相の推定値を算出する推定ステップと、
設定された前記アシストパターンに従って、算出された前記位相の推定値からアシスト量を決定する決定ステップと、
決定された前記アシスト量を出力する出力ステップと、
を実行させるための制御プログラムであって、
前記センサは、足底センサを含み、
前記歩行の位相の推定値を算出することは、前記足底センサにより得られるセンサ値から足圧中心を算出することを含み、
前記アシスト量を決定することは、算出された前記足圧中心に基づいて、前記足圧中心の軌跡を前足の内側の方に誘導するようにアシスト量を決定することを含む、
制御プログラム。 - コンピュータが、
アシストパターンを設定する設定ステップと、
ユーザの歩行に対するセンサのセンサ値を取得する取得ステップと、
推定モデルを使用して、取得された前記センサ値から前記歩行の位相の推定値を算出する推定ステップと、
設定された前記アシストパターンに従って、算出された前記位相の推定値からアシスト量を決定する決定ステップと、
決定された前記アシスト量を出力する出力ステップと、
を実行する制御方法であって、
前記アシストパターンは、歩行の位相に対するアシスト量を定義し、
前記アシストパターンにおいて定義された前記アシスト量に対して、上限値及び下限値が予め設定され、
前記取得ステップ、前記推定ステップ、前記決定ステップ、及び前記出力ステップを含む制御サイクルは繰り返し実行され、
前記制御サイクルの実行を繰り返す間、前記ユーザが歩行ラウンドを完了する度に、前記コンピュータは、前記決定ステップにおいて、算出された前記位相の推定値から決定する前記アシスト量を前記上限値及び前記下限値の間でランダムに変動させる、
制御方法。 - 前記アシスト量をランダムに変動させる際の最大変動量が予め設定され、
前記アシスト量をランダムに変動させることは、前回の歩行ラウンドにおけるアシスト量からの変動量が前記最大変動量以下となるように今回の歩行ラウンドにおけるアシスト量を決定することを含む、
請求項11に記載の制御方法。 - 前記ユーザの認知可能な最小変動量が予め設定され、
前記アシスト量をランダムに変動させることは、前回の歩行ラウンドにおけるアシスト量からの変動量が前記最小変動量以上となるように今回の歩行ラウンドにおけるアシスト量を決定することを含む、
請求項11に記載の制御方法。 - 前記アシストパターンは、1つ以上の筋モジュールにより構成され、
前記筋モジュールは、筋シナジーを再現するように、複数の周期関数を組み合わせることにより構成される、
請求項11から13のいずれか1項に記載の制御方法。 - 前記アシストパターンは、複数の筋モジュールにより構成され、
前記筋モジュールは、筋シナジーを再現するように、複数の周期関数を組み合わせることにより構成され、
前記アシスト量をランダムに変動させることは、前記複数の筋モジュールのうちの一部について前記アシスト量をランダムに変動させることにより構成される、
請求項11から13のいずれか1項に記載の制御方法。 - アシストパターンを設定するように構成される設定部と、
ユーザの歩行に対するセンサのセンサ値を取得するように構成される取得部と、
推定モデルを使用して、取得された前記センサ値から前記歩行の位相の推定値を算出するように構成される推定部と、
設定された前記アシストパターンに従って、算出された前記位相の推定値からアシスト量を決定するように構成される決定部と、
決定された前記アシスト量を出力するように構成される出力部と、
を備える制御装置であって、
前記アシストパターンは、歩行の位相に対するアシスト量を定義し、
前記アシストパターンにおいて定義された前記アシスト量に対して、上限値及び下限値が予め設定され、
前記取得部、前記推定部、前記決定部、及び前記出力部の処理を含む制御サイクルは繰
り返し実行され、
前記制御サイクルの実行を繰り返す間、前記ユーザが歩行ラウンドを完了する度に、前記決定部は、算出された前記位相の推定値から決定する前記アシスト量を前記上限値及び前記下限値の間でランダムに変動させるように更に構成される、
制御装置。 - コンピュータに、
アシストパターンを設定する設定ステップと、
ユーザの歩行に対するセンサのセンサ値を取得する取得ステップと、
推定モデルを使用して、取得された前記センサ値から前記歩行の位相の推定値を算出する推定ステップと、
設定された前記アシストパターンに従って、算出された前記位相の推定値からアシスト量を決定する決定ステップと、
決定された前記アシスト量を出力する出力ステップと、
を実行させるための制御プログラムであって、
前記アシストパターンは、歩行の位相に対するアシスト量を定義し、
前記アシストパターンにおいて定義された前記アシスト量に対して、上限値及び下限値が予め設定され、
前記取得ステップ、前記推定ステップ、前記決定ステップ、及び前記出力ステップを含む制御サイクルは繰り返し実行され、
前記制御サイクルの実行を繰り返す間、前記ユーザが歩行ラウンドを完了する度に、前記コンピュータに、前記決定ステップにおいて、算出された前記位相の推定値から決定する前記アシスト量を前記上限値及び前記下限値の間でランダムに変動させる、
制御プログラム。
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