JP2024022080A - ポリペプチド、抗e型肝炎ウイルス抗体の検出方法、抗e型肝炎ウイルス抗体及びe型肝炎ウイルスの同時検出方法、及びキット - Google Patents

ポリペプチド、抗e型肝炎ウイルス抗体の検出方法、抗e型肝炎ウイルス抗体及びe型肝炎ウイルスの同時検出方法、及びキット Download PDF

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Abstract

【課題】抗E型肝炎ウイルス抗体の検出、特に、抗E型肝炎ウイルス抗体及びE型肝炎ウイルスの同時検出を十分に高感度で行うことが可能なポリペプチドを提供すること。【解決手段】下記(a)及び(b)からなる群から選択されてよい、少なくとも1種のポリペプチド。(a)それぞれ配列が異なる、ある特定の4種のアミノ酸配列のうちのいずれかに記載のアミノ酸配列の第41番目のアスパラギン酸が他の任意のアミノ酸に置換された置換アミノ酸であるアミノ酸配列を含むポリペプチド(b)前記ある特定の4種の配列番号のうちのいずれかに記載のアミノ酸配列において1若しくは複数個が置換、欠失、挿入及び/又は付加されたアミノ酸配列であり、かつ、その配列番号に記載のアミノ酸配列の第41番目のアスパラギン酸に対応するアミノ酸が、アスパラギン酸以外の任意のアミノ酸に置換された置換アミノ酸であるアミノ酸配列を含むポリペプチド【選択図】なし

Description

本発明は、ポリペプチド、抗E型肝炎ウイルス抗体の検出方法、抗E型肝炎ウイルス抗体及びE型肝炎ウイルスの同時検出方法、及びキットに関し、より詳しくは、新規ポリペプチド、それを抗原ポリペプチドとして用いた抗E型肝炎ウイルス抗体の検出方法、並びに、抗E型肝炎ウイルス抗体及びE型肝炎ウイルスの同時検出方法、さらには、これらの検出方法に用いるキットに関する。
E型肝炎は、E型肝炎ウイルス(HEV:Hepatitis E Virus)によって惹き起こされる急性又は劇症の肝炎であり、その死亡率はA型肝炎の約10倍ともいわれ、妊婦での死亡率は20%に達するという報告もある。E型肝炎は、主に、インドやアジア、アフリカ、中南米等で散発的に流行することが知られているが、これ以外の地域においても、近年では食の多様化に伴って、HEVに汚染された食物(例えば、ブタ、イノシシ、シカ等の食肉)の非加熱での経口摂取による発症が強く疑われる事例も報告されている。また、輸血後感染や肝炎の再活性化の例も散見されるようになっていることから、被験者においてHEV感染の有無を検出する検査の需要は年々高まっている。
従来、被験者におけるHEV感染の検出には、PCRの手法によって、被験者の血清中のHEV遺伝子を検出する方法がとられていた。しかしながら、血清中のHEV遺伝子は、HEV感染後、約2週間~1ヶ月の限られた期間でのみ検出可能であるため、かかる期間外での検出は困難であった。
そのため、現在、臨床応用されている方法の主流は、HEVを基に合成したHEV抗原ポリペプチドで被験者における抗E型肝炎ウイルス抗体(抗HEV抗体)を検出することによって、間接的にHEV感染を検出する方法である。抗HEV抗体の産生は、例えば、IgAクラス又はIgMクラスでは、HEV感染後、約2~5ヶ月迄持続する。
このような抗HEV抗体の検出方法やそれに用いる試薬としては、例えば、組み換えHEV抗原ポリペプチドを固相化したプレートと標識抗ヒトIgA抗体とを用いた2ステップELISAでIgAクラス抗HEV抗体を検出するためのキットが株式会社特殊免疫研究所により製造販売されており、非特許文献1には、遺伝子4型のHEV遺伝子のORF2(DDBJ/GenBank/EMBL Accession No.:AB082545)にコードされるアミノ酸の111~660番目を組み換えHEV抗原ポリペプチドとして抗HEV抗体を検出することが記載されている。
また、前記抗HEV抗体の検出方法に用いる試薬としては、標識組み換えHEV抗原ポリペプチドと抗ヒトIgM抗体の固相化プレートとを用いた2ステップELISAでIgMクラス抗HEV抗体を検出するためのキット「HEV-IgM ELISA」もWantai Biological Pharmacy Enterprise Co., Ltd.により製造販売されており、特表2004-525613号公報(特許文献1)には、遺伝子1型のHEV遺伝子のORF2(DDBJ Accession No.:D11092)にコードされるアミノ酸配列に相当する配列の394~606番目のポリペプチド断片を含むHEV感染診断用キットが記載されている。
さらに、現在、臨床応用されている他の方法としては、抗HEV抗体によってHEVを検出する方法も挙げられ(Zhang J. et al.,J.Med.Virol.,Vol.71,No.4,2003年,p.518-526(非特許文献2))、例えば、標識抗HEVモノクローナル抗体と抗HEVポリクローナル抗体の固相化プレートとを用いた2ステップELISAでHEVを検出するためのキット「HEV-Ag ELISA」がWantai Biological Pharmacy Enterprise Co., Ltd.により製造販売されている。
HEV感染を検出するにあたり、感染後直ぐには、先ずウイルス粒子の産生が先行して、抗HEV抗体はまだ産生されずほとんど検出されない。そのため、この段階では、HEVを検出することが求められる。他方、感染後暫くして、IgM抗体等の抗HEV抗体が産生され始めると、HEVは当該抗体と抗原抗体複合体を形成等するため、HEVが検出されにくくなる。そのため、この段階では、抗HEV抗体を検出することが求められる。したがって、HEV感染を、漏れなく、かつ、早期から検出するためには、HEVの検出と共に、抗HEV抗体の検出も行うことが必要である。
しかしながら、従来の検出方法では、上記のように抗HEV抗体とHEVとを別々の検出系でそれぞれ検出する必要があった。例えば、従来のHEV検出キット「HEV-Ag ELISA」では、抗HEV抗体検出キットに使用されている組み換えHEV抗原ポリペプチドを用いて前記抗HEVモノクローナル抗体を取得しているため、例えば、両キットに含まれる抗HEVモノクローナル抗体と組み換えHEV抗原ポリペプチドとを同一の反応系で同時に用いると、これらが互いに結合してしまい、試料中の抗HEV抗体及びHEVを正しく検出することができない。
抗体と抗原とを同時に検出する方法としては、抗体検出系で検出対象の抗体を認識する検出用及び/又は捕捉用の抗原ポリペプチドの領域と、抗原検出系で検出用及び/又は捕捉用の抗体に認識される検出対象の抗原ポリペプチドの領域とを、異なる領域とする方法が一般に知られている。しかしながら、HEVでは、産生される大部分の抗HEV抗体が結合可能な領域が、そのカプシドタンパク質(capsid protein)の表面にある領域に限られるため、検出用及び/又は捕捉用の抗原ポリペプチドの領域と検出対象の抗原ポリペプチドの領域とで異なる領域を設定することは、感度及び特異度等の性能の観点から困難である。
特表2004-525613号公報
Mizuo H. et al.,J.Clin.Microbopl.,Vol.40,No.9,2002年,p.3209-3218 Zhang J. et al.,J.Med.Virol.,Vol.71,No.4,2003年,p.518-526
本発明は上記従来技術が有する課題に鑑みてなされたものであり、抗E型肝炎ウイルス抗体(抗HEV抗体)の検出、特に、抗E型肝炎ウイルス抗体及びE型肝炎ウイルス(HEV)の同時検出を十分に高感度で行うことが可能なポリペプチド、それを用いた抗E型肝炎ウイルス抗体の検出方法、抗E型肝炎ウイルス抗体及びE型肝炎ウイルスの同時検出方法、並びに、これらの検出方法に用いるキットを提供することを目的とする。
本発明者らは、抗HEV抗体の検出方法、すなわち、HEVで抗HEV抗体を検出することによってHEV感染を検出する方法(抗HEV抗体検出方法)において、前記HEVについて検討するうち、HEVの変異株の中から、特異的な変異株を見出した。この変異株は、HEVのORF2がコードするカプシドタンパク質(capsid protein)の突起を形成するPドメインのうちのウイルス粒子表面に露出するE2sドメインをHEV抗原ポリペプチドとして、試料中の抗HEV抗体を検出する方法において、当該変異株のE2sドメインを抗原ポリペプチドとしても、試料に対して野生型(Wild Type)の株のE2sドメインを抗原ポリペプチドとした場合と同等の検出感度を有するものであった。そこで、本発明者らが上記変異株のE2sドメインについてさらに詳細に検証したところ、上記変異株は、HEV遺伝子のORF2のヌクレオチド配列において、これがコードするアミノ酸配列の第496番目のアスパラギン酸(D)に対応するヌクレオチド配列(5’-gau)が、グリシン(G)に対応するヌクレオチド配列(5’-ggu)に点変異したものであった。
そのため、本発明者らは、この位置のアスパラギン酸(D496)に点変異を導入したアミノ酸配列を含むポリペプチドを抗原ポリペプチドとして用い、これを基に取得した抗体と組み合わせることにより、抗HEV抗体及びHEVの同時検出が可能になると考えた。かかる知見に基づいて、本発明者らは、前記位置(D496)に点変異を含むE2sドメインの一部、より具体的には、遺伝子3型のHEV遺伝子のORF2がコードするアミノ酸配列のうち、配列番号7に記載のアミノ酸配列の21~186番目の全長166残基のアミノ酸配列からなるポリペプチド(G3E2s)において、同アミノ酸配列内のD496に対応するアスパラギン酸(配列番号3に記載のアミノ酸配列の第41番目のアスパラギン酸)が他のアミノ酸に置換されたアミノ酸配列を含む新規のポリペプチドを作製した。また、野生型(Wild Type)のE2sドメインの一部、より具体的には、遺伝子1型のHEV遺伝子のORF2がコードするアミノ酸配列のうち、配列番号5に記載のアミノ酸配列の21~186番目の全長166残基のアミノ酸配列からなるポリペプチド(G1E2s)を抗原として調製したモノクローナル抗体の中から、野生型のG1E2sやG3E2sには結合するが、前記点変異を導入した新規のポリペプチドには結合しない抗体を得た。さらに、これらと、抗HEV抗体検出のための抗体(例えば、抗IgM抗体)とを組み合わせることにより、抗HEV抗体の検出とHEVの検出とを、互いに阻害することなく、かつ、従来の個別の検出方法と同等の十分に高い感度で、同一の反応系で同時に行えることを見出した。
さらに、上記配列番号7に記載のアミノ酸配列の21~186番目のアミノ酸配列は遺伝子3型のHEV遺伝子のORF2がコードするアミノ酸配列の一部であるが、かかる配列は1型~4型の遺伝子型において同一性が高く、同配列内のD496に対応するアミノ酸も全遺伝子型において共通してアスパラギン酸である。したがって本発明者らは、上記点変異を導入したポリペプチドを用い、これを基に取得した抗体と組み合わせることによって、全遺伝子型において抗HEV抗体及びHEVの同時検出が可能になることを見出し、本発明を完成するに至った。かかる知見により得られた本発明の態様は次のとおりである。
[1]
下記(1a)~(1c)、(2a)~(2c)、(3a)~(3c)、及び(4a)~(4c)からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とするポリペプチド。
(1a)配列番号1に記載のアミノ酸配列の第41番目のアスパラギン酸が他の任意のアミノ酸に置換された置換アミノ酸であるアミノ酸配列を含むポリペプチド
(1b)配列番号1に記載のアミノ酸配列において1若しくは複数個が置換、欠失、挿入及び/又は付加されたアミノ酸配列であり、かつ、配列番号1に記載のアミノ酸配列の第41番目のアスパラギン酸に対応するアミノ酸が、アスパラギン酸以外の任意のアミノ酸に置換された置換アミノ酸であるアミノ酸配列を含むポリペプチド
(1c)配列番号1に記載のアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列であり、かつ、配列番号1に記載のアミノ酸配列の第41番目のアスパラギン酸に対応するアミノ酸が、アスパラギン酸以外の任意のアミノ酸に置換された置換アミノ酸であるアミノ酸配列を含むポリペプチド
(2a)配列番号2に記載のアミノ酸配列の第41番目のアスパラギン酸が他の任意のアミノ酸に置換された置換アミノ酸であるアミノ酸配列を含むポリペプチド
(2b)配列番号2に記載のアミノ酸配列において1若しくは複数個が置換、欠失、挿入及び/又は付加されたアミノ酸配列であり、かつ、配列番号2に記載のアミノ酸配列の第41番目のアスパラギン酸に対応するアミノ酸が、アスパラギン酸以外の任意のアミノ酸に置換された置換アミノ酸であるアミノ酸配列を含むポリペプチド
(2c)配列番号2に記載のアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列であり、かつ、配列番号2に記載のアミノ酸配列の第41番目のアスパラギン酸に対応するアミノ酸が、アスパラギン酸以外の任意のアミノ酸に置換された置換アミノ酸であるアミノ酸配列を含むポリペプチド
(3a)配列番号3に記載のアミノ酸配列の第41番目のアスパラギン酸が他の任意のアミノ酸に置換された置換アミノ酸であるアミノ酸配列を含むポリペプチド
(3b)配列番号3に記載のアミノ酸配列において1若しくは複数個が置換、欠失、挿入及び/又は付加されたアミノ酸配列であり、かつ、配列番号3に記載のアミノ酸配列の第41番目のアスパラギン酸に対応するアミノ酸が、アスパラギン酸以外の任意のアミノ酸に置換された置換アミノ酸であるアミノ酸配列を含むポリペプチド
(3c)配列番号3に記載のアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列であり、かつ、配列番号3に記載のアミノ酸配列の第41番目のアスパラギン酸に対応するアミノ酸が、アスパラギン酸以外の任意のアミノ酸に置換された置換アミノ酸であるアミノ酸配列を含むポリペプチド
(4a)配列番号4に記載のアミノ酸配列の第41番目のアスパラギン酸が他の任意のアミノ酸に置換された置換アミノ酸であるアミノ酸配列を含むポリペプチド
(4b)配列番号4に記載のアミノ酸配列において1若しくは複数個が置換、欠失、挿入及び/又は付加されたアミノ酸配列であり、かつ、配列番号4に記載のアミノ酸配列の第41番目のアスパラギン酸に対応するアミノ酸が、アスパラギン酸以外の任意のアミノ酸に置換された置換アミノ酸であるアミノ酸配列を含むポリペプチド
(4c)配列番号4に記載のアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列であり、かつ、配列番号4に記載のアミノ酸配列の第41番目のアスパラギン酸に対応するアミノ酸が、アスパラギン酸以外の任意のアミノ酸に置換された置換アミノ酸であるアミノ酸配列を含むポリペプチド。
[2]
(1a)~(1c)、(2a)~(2c)、(3a)~(3c)、及び(4a)~(4c)のポリペプチドにおいて、前記置換アミノ酸が、それぞれ独立に、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、又はスレオニンである、[1]に記載のポリペプチド。
[3]
試料中の抗E型肝炎ウイルス抗体を検出する方法に用いるための抗原ポリペプチドである、[1]又は[2]に記載のポリペプチド。
[4]
試料中の抗E型肝炎ウイルス抗体を検出する方法に用いるためのキットであり、
抗E型肝炎ウイルス抗体に対する抗原ポリペプチドを含み、
前記抗原ポリペプチドが[1]~[3]のうちのいずれか一項に記載のポリペプチドである、キット。
[5]
試料中の抗E型肝炎ウイルス抗体及びE型肝炎ウイルスを同時に検出する方法に用いるためのキットであり、
抗E型肝炎ウイルス抗体に対する第1の抗体と、抗E型肝炎ウイルス抗体に対する抗原ポリペプチドと、E型肝炎ウイルスに対する第2の抗体と、E型肝炎ウイルスに対する第3の抗体と、を含み、
前記抗原ポリペプチドが[1]~[3]のうちのいずれか一項に記載のポリペプチドであり、
第2の抗体及び第3の抗体が前記抗原ポリペプチドに結合しない抗体である、キット。
[6]
前記抗E型肝炎ウイルス抗体のアイソタイプがIgMである、[4]又は[5]に記載のキット。
[7]
試料中の抗E型肝炎ウイルス抗体を検出する方法であり、
試料中の抗E型肝炎ウイルス抗体に、抗原ポリペプチドを結合させて抗E型肝炎ウイルス抗体を検出する検出工程を含み、
前記抗原ポリペプチドが[1]~[3]のうちのいずれか一項に記載のポリペプチドである、抗E型肝炎ウイルス抗体の検出方法。
[8]
前記検出工程が、前記試料と、第1の捕捉体と、第1の検出体と、を接触させる工程であり、
第1の捕捉体が、抗E型肝炎ウイルス抗体に対する第1の抗体及び前記抗原ポリペプチドのうちの一方と、非水溶性担体と、を備えるものであり、
第1の検出体が、第1の抗体及び前記抗原ポリペプチドのうちの他方を備えるものである、[7]に記載の抗E型肝炎ウイルス抗体の検出方法。
[9]
試料中の抗E型肝炎ウイルス抗体及びE型肝炎ウイルスを同時に検出する方法であり、
試料中の抗E型肝炎ウイルス抗体に、抗E型肝炎ウイルス抗体に対する第1の抗体及び抗原ポリペプチドを結合させて抗E型肝炎ウイルス抗体を検出する第1の検出と、前記試料中のE型肝炎ウイルスに、E型肝炎ウイルスに対する第2の抗体及びE型肝炎ウイルスに対する第3の抗体を結合させてE型肝炎ウイルスを検出する第2の検出と、を同時に行う検出工程を含み、
前記抗原ポリペプチドが[1]~[3]のうちのいずれか一項に記載のポリペプチドであり、
第2の抗体及び第3の抗体が前記抗原ポリペプチドに結合しない抗体である、抗E型肝炎ウイルス抗体及びE型肝炎ウイルスの同時検出方法。
[10]
前記検出工程が、前記試料と、第1の捕捉体と、第1の検出体と、第2の捕捉体と、第2の検出体と、を接触させる工程であり、
第1の捕捉体が、第1の抗体及び前記抗原ポリペプチドのうちの一方と、非水溶性担体と、を備えるものであり、
第1の検出体が、第1の抗体及び前記抗原ポリペプチドのうちの他方を備えるものであり、
第2の捕捉体が、第2の抗体及び第3の抗体のうちの一方と、非水溶性担体と、を備えるものであり、
第2の検出体が、第2の抗体及び第3の抗体のうちの他方を備えるものである、[9]に記載の抗E型肝炎ウイルス抗体及びE型肝炎ウイルスの同時検出方法。
本発明によれば、抗E型肝炎ウイルス抗体の検出、特に、抗E型肝炎ウイルス抗体及びE型肝炎ウイルスの同時検出を十分に高感度で行うことが可能なポリペプチド、それを用いた抗E型肝炎ウイルス抗体の検出方法、抗E型肝炎ウイルス抗体及びE型肝炎ウイルスの同時検出方法、並びに、これらの検出方法に用いるキットを提供することが可能となる。
配列番号5~8に記載の、1型~4型の遺伝子型(Gen1~Gen4)のアミノ酸配列を示す図である。
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
<ポリペプチド>
本発明のポリペプチドは、下記(a)~(c):
(a)配列番号1~4のうちのいずれかに記載のアミノ酸配列の第41番目のアスパラギン酸が他の任意のアミノ酸に置換された置換アミノ酸であるアミノ酸配列を含むポリペプチド
(b)配列番号1~4のうちのいずれかに記載のアミノ酸配列において1若しくは複数個が置換、欠失、挿入及び/又は付加されたアミノ酸配列であり、かつ、その配列番号に記載のアミノ酸配列の第41番目のアスパラギン酸に対応するアミノ酸が、アスパラギン酸以外の任意のアミノ酸に置換された置換アミノ酸であるアミノ酸配列を含むポリペプチド
(c)配列番号1~4のうちのいずれかに記載のアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列であり、かつ、その配列番号に記載のアミノ酸配列の第41番目のアスパラギン酸に対応するアミノ酸が、アスパラギン酸以外の任意のアミノ酸に置換された置換アミノ酸であるアミノ酸配列を含むポリペプチド
からなる群から選択される少なくとも1種のポリペプチドである。なお、本発明において、アミノ酸配列において「番目」と数を示すときには、N末端側からのアミノ酸残基の数を示すものとする。
本発明のポリペプチドは、下記の本発明の抗E型肝炎ウイルス抗体を検出する方法や、抗E型肝炎ウイルス抗体及びE型肝炎ウイルスの同時検出方法に用いるための抗原ポリペプチドとして好適に用いることができる。
本発明のポリペプチドは、典型的には、(a)配列番号1~4のうちのいずれかに記載のアミノ酸配列の第41番目のアスパラギン酸が他の任意のアミノ酸に置換された置換アミノ酸であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、すなわち、
(1a)配列番号1に記載のアミノ酸配列の第41番目のアスパラギン酸が他の任意のアミノ酸に置換された置換アミノ酸であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、
(2a)配列番号2に記載のアミノ酸配列の第41番目のアスパラギン酸が他の任意のアミノ酸に置換された置換アミノ酸であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、
(3a)配列番号3に記載のアミノ酸配列の第41番目のアスパラギン酸が他の任意のアミノ酸に置換された置換アミノ酸であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、及び
(4a)配列番号4に記載のアミノ酸配列の第41番目のアスパラギン酸が他の任意のアミノ酸に置換された置換アミノ酸であるアミノ酸配列を含むポリペプチド
からなる群から選択される少なくとも1種のポリペプチド(以下、場合により「ポリペプチド(a)」という)である。
配列番号1~4のうちのいずれかに記載のアミノ酸配列の第41番目のアスパラギン酸を置換する置換アミノ酸としては、特に制限されないが、分子側鎖が比較的小さいためにポリペプチドの免疫原性や抗原性に及ぼす影響がより小さくなる傾向にある観点から、配列番号1~4においてそれぞれ独立に、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、又はスレオニンであることが好ましく、グリシン、アラニン、又はバリンであることがより好ましい。
ポリペプチド(a)のアミノ酸配列の長さとしては、配列番号1~4のうちのいずれかに記載のアミノ酸配列の長さである147残基あればよいが、通常、147~267残基であり、147~229残基であることが好ましく、147~209残基であることがより好ましく、147~166残基であることがさらに好ましい。このときのポリペプチド(a)としては、配列番号5~8のうちのいずれかに記載のアミノ酸配列のうちの、それぞれ配列番号1~4に記載のアミノ酸配列を含む配列であることが好ましい。
このようなポリペプチド(a)としては、例えば、
(1a’)配列番号5に記載のアミノ酸配列のうちの配列番号1に記載のアミノ酸配列を含む147~229残基(より好ましくは147~166残基)を含み、かつ、配列番号5に記載のアミノ酸配列の第65番目のアスパラギン酸に対応するアミノ酸が、アスパラギン酸以外の任意のアミノ酸に置換された置換アミノ酸であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、
(2a’)配列番号6に記載のアミノ酸配列のうちの配列番号2に記載のアミノ酸配列を含む147~229残基(より好ましくは147~166残基)を含み、かつ、配列番号6に記載のアミノ酸配列の第65番目のアスパラギン酸に対応するアミノ酸が、アスパラギン酸以外の任意のアミノ酸に置換された置換アミノ酸であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、
(3a’)配列番号7に記載のアミノ酸配列のうちの配列番号3に記載のアミノ酸配列を含む147~229残基(より好ましくは147~166残基)を含み、かつ、配列番号7に記載のアミノ酸配列の第65番目のアスパラギン酸に対応するアミノ酸が、アスパラギン酸以外の任意のアミノ酸に置換された置換アミノ酸であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、及び
(4a’)配列番号8に記載のアミノ酸配列のうちの配列番号4に記載のアミノ酸配列を含む147~229残基(より好ましくは147~166残基)を含み、かつ、配列番号8に記載のアミノ酸配列の第65番目のアスパラギン酸に対応するアミノ酸が、アスパラギン酸以外の任意のアミノ酸に置換された置換アミノ酸であるアミノ酸配列を含むポリペプチド
からなる群から選択される少なくとも1種のポリペプチドが挙げられる。
ここで、アミノ酸配列において、特定のアミノ酸に「対応する」アミノ酸とは、アミノ酸配列解析ソフトウェア(例えば、GENETYX-MAC、SequencherやClustalW等)を用いて(例えば、パラメータ:デフォルト値(すなわち初期設定値))アミノ酸配列を整列させた際に、前記特定のアミノ酸(対照のアミノ酸(アミノ酸残基)、例えば、配列番号5~8のうちのいずれかに記載のアミノ酸配列の第65番目のアスパラギン酸や、配列番号1~4のうちのいずれかに記載のアミノ酸配列の第41番目のアスパラギン酸)と同位置になるアミノ酸を示す。
配列番号5に記載のアミノ酸配列は、遺伝子1型のHEVのORF2(DDBJ Accession No.:D11092)がコードするアミノ酸配列の第432~660番目であり、配列番号1に記載のアミノ酸配列は、同遺伝子1型のHEVのORF2がコードするアミノ酸配列の第456~602番目であり、配列番号1に記載のアミノ酸配列の第41番目のアスパラギン酸は、同遺伝子1型のHEVのORF2がコードするアミノ酸配列の第496番目のアスパラギン酸、及び配列番号5に記載のアミノ酸配列の第65番目のアスパラギン酸である。
配列番号6に記載のアミノ酸配列は、遺伝子2型のHEVのORF2(DDBJ Accession No.:M74506)がコードするアミノ酸配列の第432~660番目であり、配列番号2に記載のアミノ酸配列は、同遺伝子2型のHEVのORF2がコードするアミノ酸配列の第456~602番目であり、配列番号2に記載のアミノ酸配列の第41番目のアスパラギン酸は、同遺伝子2型のHEVのORF2がコードするアミノ酸配列の第496番目のアスパラギン酸、及び配列番号6に記載のアミノ酸配列の第65番目のアスパラギン酸である。
配列番号7に記載のアミノ酸配列は、遺伝子3型のHEVのORF2(GenBank Accession No.:AB481229)がコードするアミノ酸配列の第432~660番目であり、配列番号3に記載のアミノ酸配列は、同遺伝子3型のHEVのORF2がコードするアミノ酸配列の第456~602番目であり、配列番号3に記載のアミノ酸配列の第41番目のアスパラギン酸は、同遺伝子3型のHEVのORF2がコードするアミノ酸配列の第496番目のアスパラギン酸、及び配列番号7に記載のアミノ酸配列の第65番目のアスパラギン酸である。
配列番号8に記載のアミノ酸配列は、遺伝子4型のHEVのORF2(GenBank Accession No.:AB481227)がコードするアミノ酸配列の第432~660番目であり、配列番号4に記載のアミノ酸配列は、同遺伝子4型のHEVのORF2がコードするアミノ酸配列の第456~602番目であり、配列番号4に記載のアミノ酸配列の第41番目のアスパラギン酸は、同遺伝子4型のHEVのORF2がコードするアミノ酸配列の第496番目のアスパラギン酸、及び配列番号8に記載のアミノ酸配列の第65番目のアスパラギン酸である。
配列番号1~4に記載のアミノ酸配列は、典型的には、HEV遺伝子のORF2がコードするカプシドタンパク質の突起を形成するPドメインのうち、前記ORF2がコードするアミノ酸配列の459~606番目のアミノ酸からなるE2sドメインと重複する領域である。
図1に、Gen1~Gen4として、配列番号5~8に記載のアミノ酸配列をそれぞれ示す。また、図1中、配列番号1~4に記載のアミノ酸配列に対応する領域を点線で囲んで示す。さらに、配列番号5~8に記載のアミノ酸配列の第21~186番目のアミノ酸配列間の同一性(Identity)を下記の表1に示す。図1及び表1に示すように、1型~4型の遺伝子型間におけるアミノ酸同一性は高く、配列番号1~4に記載のアミノ酸配列の第41番目(HEVのORF2がコードするアミノ酸配列の第496番目)のアミノ酸はアスパラギン酸(D41(本明細書中、場合により「D496」ともいう))で共通である。
また、現在の技術水準においては、当業者であれば、例えば、前記ポリペプチド(a)のアミノ酸配列情報又はそれをコードするヌクレオチド配列情報が得られた場合、公知の部位特異的変異誘発(site-directed mutagenesis)法等を用いてその配列を改変し、ポリペプチド(a)の改変体を調製することもできる。
したがって、本発明のポリペプチドの態様には、(b)配列番号1~4のうちのいずれかに記載のアミノ酸配列において1若しくは複数個が置換、欠失、挿入及び/又は付加されたアミノ酸配列であり、かつ、その配列番号に記載のアミノ酸配列の第41番目のアスパラギン酸に対応するアミノ酸が、アスパラギン酸以外の任意のアミノ酸に置換された置換アミノ酸であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、すなわち、
(1b)配列番号1に記載のアミノ酸配列において1若しくは複数個が置換、欠失、挿入及び/又は付加されたアミノ酸配列であり、かつ、配列番号1に記載のアミノ酸配列の第41番目のアスパラギン酸に対応するアミノ酸が、アスパラギン酸以外の任意のアミノ酸に置換された置換アミノ酸であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、
(2b)配列番号2に記載のアミノ酸配列において1若しくは複数個が置換、欠失、挿入及び/又は付加されたアミノ酸配列であり、かつ、配列番号2に記載のアミノ酸配列の第41番目のアスパラギン酸に対応するアミノ酸が、アスパラギン酸以外の任意のアミノ酸に置換された置換アミノ酸であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、
(3b)配列番号3に記載のアミノ酸配列において1若しくは複数個が置換、欠失、挿入及び/又は付加されたアミノ酸配列であり、かつ、配列番号3に記載のアミノ酸配列の第41番目のアスパラギン酸に対応するアミノ酸が、アスパラギン酸以外の任意のアミノ酸に置換された置換アミノ酸であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、及び
(4b)配列番号4に記載のアミノ酸配列において1若しくは複数個が置換、欠失、挿入及び/又は付加されたアミノ酸配列であり、かつ、配列番号4に記載のアミノ酸配列の第41番目のアスパラギン酸に対応するアミノ酸が、アスパラギン酸以外の任意のアミノ酸に置換された置換アミノ酸であるアミノ酸配列を含むポリペプチド
からなる群から選択される少なくとも1種のポリペプチド(以下、場合により「ポリペプチド(b)」という)も含まれる。
ここで、アミノ酸配列において、「置換、欠失、挿入、及び/又は付加されたアミノ酸配列」とは、当該アミノ酸配列中のアミノ酸(アミノ酸残基)が、置換、欠失、挿入、若しくは付加されたアミノ酸配列、又は、これらのうちの2種以上の組み合わせがなされたアミノ酸配列であることを示す。また、「複数個」とは、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、又は2個の整数であることを示す。1若しくは複数個とは、好ましくはアミノ酸(アミノ酸残基)が1個以上10個以下、より好ましくは1個以上5個以下、さらに好ましくは1個以上3個以下、特に好ましくは2個以下である。
また、本発明のポリペプチドの態様には、(c)配列番号1~4のうちのいずれかに記載のアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列であり、かつ、その配列番号に記載のアミノ酸配列の第41番目のアスパラギン酸に対応するアミノ酸が、アスパラギン酸以外の任意のアミノ酸に置換された置換アミノ酸であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、すなわち、
(1c)配列番号1に記載のアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列であり、かつ、配列番号1に記載のアミノ酸配列の第41番目のアスパラギン酸に対応するアミノ酸が、アスパラギン酸以外の任意のアミノ酸に置換された置換アミノ酸であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、
(2c)配列番号2に記載のアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列であり、かつ、配列番号2に記載のアミノ酸配列の第41番目のアスパラギン酸に対応するアミノ酸が、アスパラギン酸以外の任意のアミノ酸に置換された置換アミノ酸であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、
(3c)配列番号3に記載のアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列であり、かつ、配列番号3に記載のアミノ酸配列の第41番目のアスパラギン酸に対応するアミノ酸が、アスパラギン酸以外の任意のアミノ酸に置換された置換アミノ酸であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、及び
(4c)配列番号4に記載のアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列であり、かつ、配列番号4に記載のアミノ酸配列の第41番目のアスパラギン酸に対応するアミノ酸が、アスパラギン酸以外の任意のアミノ酸に置換された置換アミノ酸であるアミノ酸配列を含むポリペプチド
からなる群から選択される少なくとも1種のポリペプチド(以下、場合により「ポリペプチド(c)」という)も含まれる。
なお、アミノ酸配列の相同性という場合には、被対象のアミノ酸配列と対象のアミノ酸配列とをアミノ酸配列解析ソフトウェア等を用いて整列させた際に、被対象のアミノ酸配列上の被対象アミノ酸と同列になる対象アミノ酸が、前記被対象アミノ酸と同じアミノ酸であっても、前記被対象アミノ酸と同じ性質を持つアミノ酸であってもよい。アミノ酸配列の同一性という場合には、被対象のアミノ酸配列上の被対象アミノ酸と同列になる対象アミノ酸は、前記被対象アミノ酸と同じアミノ酸である。同じ性質を持つアミノ酸のグループは、本発明の属する技術分野でよく知られており、例えば、酸性アミノ酸(アスパラギン酸及びグルタミン酸);塩基性アミノ酸(リシン・アルギニン・ヒスチジン);中性アミノ酸においては、炭化水素鎖を持つアミノ酸(グリシン・アラニン・バリン・ロイシン・イソロイシン・プロリン)、ヒドロキシ基を持つアミノ酸(セリン・トレオニン)、硫黄を含むアミノ酸(システイン・メチオニン)、アミド基を持つアミノ酸(アスパラギン・グルタミン)、イミノ基を持つアミノ酸(プロリン)、芳香族基を持つアミノ酸(フェニルアラニン・チロシン・トリプトファン)で分類することができる。
このようなアミノ酸配列の相同性及び同一性は、例えば、BLASTPのプログラム(Altschulら,J.Mol.Biol.,215,1990年、p.403-410)を用いて決定することができる。また、前記ポリペプチド(a)のアミノ酸配列との相同性は、80%以上であればよいが、好ましくは、85%以上、90%以上、95%以上(例えば、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上)である。より好ましくは、同一性で、80%以上であればよいが、好ましくは、85%以上、90%以上、95%以上(例えば、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上)である。
前記ポリペプチド(b)及び前記ポリペプチド(c)としては、下記の本発明の抗E型肝炎ウイルス抗体を検出する方法や、抗E型肝炎ウイルス抗体及びE型肝炎ウイルスの同時検出方法に用いるための抗原ポリペプチドとして用いるためには、抗E型肝炎ウイルス抗体(抗HEV抗体)に結合可能であることが必要である。本発明において、ポリペプチドと抗HEV抗体との結合性は、例えば、下記の実施例に記載のように、次の方法で評価することができる。例えば、先ず、野生型(Wild Type)のHEVのE2sドメインの一部(WTE2s:例えば、配列番号7に記載のアミノ酸配列の21~186番目の全長166残基のアミノ酸配列からなるポリペプチド)と、対象のポリペプチドとに、それぞれ標識物質(例えば、POD)を結合させて(又は二次標識体(例えば、POD標識ストレプトアビジン)に結合可能な修飾(例えば、ビオチン結合)をして)、各抗原ポリペプチド(検出体)を準備する。また、抗ヒトIgM抗体を固相化したプレート(例えば、96ウェルプレート、抗ヒトIgM抗体の終濃度:0.5μg/ウェル)を作製し、これにE型肝炎患者血漿からなる検体を添加して抗HEV抗体を捕捉させる。次いで、前記プレートに各抗原ポリペプチドを添加して複合体(抗ヒトIgM抗体-抗HEV抗体-抗原ポリペプチド)を形成させ、必要により前記二次標識体を結合させ、前記標識物質に応じたシグナル(例えば、POD基質の添加による波長450nmにおける吸光度)を検出する。このときに対象のポリペプチドを抗原ポリペプチドとして検出されたシグナル量が、WTE2sを抗原ポリペプチドとしたときに比べて高ければ、又は、WTE2sを抗原ポリペプチドとしたときのシグナル量の60%以上、70%以上、又は75%以上であれば、当該ポリペプチドは抗HEV抗体に結合すると評価することができる。また、例えば、対象のポリペプチドを抗原ポリペプチドとして検出されたシグナル量が、WTE2sを抗原ポリペプチドとして、E型肝炎患者血漿を含まないヒト血漿からなる検体群(例えば、n=100)を用いて検出されるシグナル量により求めたカットオフ値を基準として、前記カットオフ値を超える場合にも、当該ポリペプチドは、抗HEV抗体に結合すると評価することができる。
本発明においては、前記ポリペプチドの中でも、下記の本発明の検出方法に用いる際に、抗HEV抗体が存在する試料をより多く検出することができる(例えば、陽性検体をより多く検出することができる)観点、及び検出感度がより高くなる(例えば、抗HEV抗体量が少なくとも検出することができる)観点から、前記(3a)~(3c)からなる群から選択される少なくとも1種のポリペプチド(以下、場合により「ポリペプチド(3)」という)が好ましい。HEVには、後述するように1型~4型の遺伝子型が存在することがわかっているが、従来のHEV感染検出用キットでは、遺伝子1型や遺伝子4型に由来する抗原ポリペプチドを用いている。これに対して、これまでに日本で検出されているHEVは遺伝子1型、遺伝子3型、及び遺伝子4型であり、北海道では4型も散発的に検出されるものの、このうち、主流は遺伝子3型である。そのため、従来のキットでは、かなりの検体において偽陰性を生じたと考えられる。これに対して、遺伝子3型のHEVに由来する前記ポリペプチド(3)を抗原ポリペプチドとすることにより、このような検出漏れの頻度を減少させることが可能となるものと本発明者らは推察する。
また、本発明のポリペプチドとしては、2種以上を組み合わせてもよく、2量体以上の多量体を形成していてもよい。
[ポリペプチドの製造方法]
本発明のポリペプチドは、従来公知の方法又はそれに準じた方法を適宜用いて得ることができる。例えば、前記ポリペプチドのアミノ酸配列をコードするヌクレオチド及び前記ヌクレオチドを含むベクターからなる群から選択される少なくとも1種が導入された宿主細胞を培養し、前記宿主細胞に発現したポリペプチドを採取する工程を含む製造方法により、得ることができる。
より具体的には、例えば、先ず、HEVから慣行法によって配列番号1~4のうちのいずれかに記載のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするRNAを得て、cDNAを合成する。前記cDNAとしては、例えば、HEVのORF2がコードするアミノ酸配列のアミノ酸配列を基に人工的に化学合成した合成DNAであってもよい。次いで、例えば、かかるcDNAを鋳型として、配列番号1~4のうちのいずれかに記載のアミノ酸配列の第41番目のアスパラギン酸に対応するアミノ酸に、前記置換アミノ酸による変異が導入されるように設計したプライマーを用いて部位特異的変異導入をすることにより、本発明のポリペプチドをコードするDNA断片又はこれを含むベクターを調製する。前記DNA断片としては、例えば、本発明のポリペプチドのアミノ酸配列を基に人工的に化学合成した合成DNAであってもよい。こうして調製したDNA断片又はこれを含む発現ベクターを宿主細胞に導入した形質転換体を培養することにより、本発明のポリペプチドを発現させ、培養物から組み換えポリペプチドとして得ることができる。
HEVから配列番号1~4のうちのいずれかに記載のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするヌクレオチドを得る方法としては、例えば、HEVから抽出したRNAを基に合成したcDNAを、プラスミドベクター、ファージベクター、コスミドベクター、BACベクター、PACベクター等のベクターと連結してcDNAライブラリーを作製し、配列番号1~4のうちのいずれかに記載のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列に基づいて作成したプライマーを用いて、目的のヌクレオチド配列を含むDNA断片を増幅し、必要に応じてこれを適当なベクターと連結する方法を挙げることができる。
前記発現ベクターは、宿主細胞内で複製可能で、かつ、そのヌクレオチド配列がコードするポリペプチドを宿主細胞内で発現可能な状態で含むベクターである。かかる発現ベクターは、自己複製ベクター、すなわち、染色体外の独立体として存在し、その複製が染色体の複製に依存しない、例えば、プラスミド(例えば、pBR322等)を基本に構築することができる。また、前記発現ベクターは、宿主細胞に導入された場合、その宿主細胞のゲノム中に組み込まれ、それが組み込まれた染色体と一緒に複製されるファージDNA(例えば、λファージ等)を基本に構築してもよい。
前記発現ベクターの構築の手順及び方法は、公知の方法又はそれに準じた方法を適宜採用することができる。例えば、前記目的のヌクレオチド配列を含むDNA断片を発現ベクターに挿入するには、前記DNA断片を適当な制限酵素で切断し、適当なプラスミドの制限酵素部位又はマルチクローニングサイトに挿入して当該プラスミドに連結する方法等が採用される。前記発現ベクターは、これを実際に宿主細胞に導入して前記ポリペプチドを発現させるために、当該ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の他に、その発現を制御するヌクレオチド配列(例えば、プロモーター、ターミネーター等をコードする配列)、前記発現を制御するヌクレオチド配列以外の発現を誘導するヌクレオチド配列(例えば、ラクトースオペロン等)、及び細胞を選択するための遺伝子マーカー配列(例えば、薬剤耐性遺伝子をコードする配列)等を含んでいることが好ましい。
前記宿主細胞としては、特に制限されないが、微生物であることが好ましく、例えば、糸状菌、酵母、大腸菌、放線菌、乳酸菌などが挙げられる。前記宿主細胞としては、必要に応じて、特定の機能が欠損するように既に形質転換されたものや変異体であってもよい。これら宿主細胞に前記DNA断片又は発現ベクターを導入する方法としては、公知の方法又はそれに準じた方法を適宜採用することができ、例えば、ヒートショック法、エレクトロポレーション法、スフェロプラスト法、酢酸リチウム法が挙げられる。
前記ポリペプチドは、前記宿主細胞に前記DNA断片又は発現ベクターが導入された形質転換体を適当な培地で培養することにより、その培養物(例えば、培養微生物細胞)から採取することができる。前記形質転換体の培養条件としては、例えば、宿主細胞の培養条件を適用することができ、当業者であれば、宿主細胞の種類、用いる培地等に合わせて、温度、空気の添加の有無、酸素の濃度、二酸化炭素の濃度、培地のpH、培養温度、培養時間、湿度等を適宜調整し、設定することができる。
前記培養物から前記ポリペプチドを採取する方法としては、適宜公知の方法又はそれに準じた方法を採用することができる。例えば、前記ポリペプチドを宿主細胞(例えば、大腸菌)内で発現させ、形質転換体の培養終了後、培養細胞を破砕し、遠心分離や濾過等によって得られる不溶性画分を粗精製物として得る方法を用いることができる。さらに、この不溶性画分を、必要に応じて洗浄し、例えば、尿素、塩酸グアニジン等の変性剤によって可溶化させた後、塩析法、透析法、有機溶媒沈殿法、膜分離法、クロマト分離法を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることによって精製してもよい。或いは、精製用タグ(例えば、HISタグ、trpEタグ等)を付加した前記ポリペプチドを宿主細胞(例えば大腸菌)内で発現させ、その粗抽出液をタグ付きタンパク質の精製用カラム(例えば、Niカラム、アフィニティーカラム等)に通した後にタグ付きのタンパク質を溶出させることで精製してもよい。これらの精製方法は、1種を用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明のポリペプチドは、例えば、HISタグを付加して発現させることにより、Niカラムを用いて容易に精製することが可能である。また、trpEタグを付加して発現させることにより、発現効率を向上させたり、抗trpE抗体のアフィニティーカラムを用いて精製することが可能である。本発明のポリペプチドの精製方法の一態様として、より具体的には、先ず、HISタグを付加して発現させて得られた前記粗精製物を、必要に応じて適宜洗浄した後、可溶化させる。前記可溶化に用いる溶液としては、例えば、4~8M尿素含有溶液が好ましい。次いで、PBS(pH7.3)等で透析し、透析後の遠心上清をNiカラムに捕捉させた後、必要に応じて洗浄し、イミダゾール等で溶出することにより、溶出物として前記抗原ポリペプチドの精製物を得ることができる。前記溶出物には、必要に応じて前記透析を再度行なってもよい。
<E型肝炎ウイルス感染の検出方法>
本発明は、試料のE型肝炎ウイルス感染の有無を検出する方法として、抗E型肝炎ウイルス抗体の検出方法(本明細書中、場合により「本発明の抗HEV抗体検出方法」という)、E型肝炎ウイルスの検出方法(本明細書中、場合により「本発明のHEV検出方法」という)、並びに、抗E型肝炎ウイルス抗体及びE型肝炎ウイルスの同時検出方法(本明細書中、場合により「本発明の同時検出方法」という)を提供する。本明細書中、場合により、これらの方法を「本発明の検出方法」と総称する。
本発明において、「検出」には、試料中の抗HEV抗体及び/又はHEVの存在の有無及び量をシグナルの有無及び量として取り出す検出に加えて、検出した抗HEV抗体及び/又はHEVを前記シグナル量に応じて定量又は半定量することを含む。
本発明の抗HEV抗体の検出方法は、試料中の抗E型肝炎ウイルス抗体を検出する方法であり、試料中の抗E型肝炎ウイルス抗体に、抗原ポリペプチドを結合させて抗E型肝炎ウイルス抗体を検出する検出工程(第1の検出)を含み、前記抗原ポリペプチドが上記本発明のポリペプチドである方法である。
本発明のHEV検出方法は、試料中のE型肝炎ウイルスを検出する方法であり、試料中のE型肝炎ウイルスに、E型肝炎ウイルスに対する抗体を結合させてE型肝炎ウイルスを検出する検出工程(第2の検出)を含む方法である。
本発明の抗E型肝炎ウイルス抗体及びE型肝炎ウイルスの同時検出方法は、本発明の抗HEV抗体の検出方法とHEV検出方法とを同時に行う方法であって、
試料中の抗E型肝炎ウイルス抗体及びE型肝炎ウイルスを同時に検出する方法であり、
試料中の抗E型肝炎ウイルス抗体に、抗E型肝炎ウイルス抗体に対する第1の抗体及び抗原ポリペプチドを結合させて抗E型肝炎ウイルス抗体を検出する第1の検出と、
前記試料中のE型肝炎ウイルスに、E型肝炎ウイルスに対する第2の抗体及びE型肝炎ウイルスに対する第3の抗体を結合させてE型肝炎ウイルスを検出する第2の検出と、を同時に行う検出工程を含み、
前記抗原ポリペプチドが上記本発明のポリペプチドであり、
第2の抗体及び第3の抗体が前記抗原ポリペプチドに結合しない抗体である方法である。
[E型肝炎ウイルス]
本発明の抗HEV抗体検出方法においては、試料中のE型肝炎ウイルスに対する抗体、すなわち抗E型肝炎ウイルス抗体を検出することにより、E型肝炎ウイルスの存在を間接的に検出する。より具体的には、当該試料、好ましくは同試料が由来する被験者のE型肝炎ウイルスへの感染の有無を検出する。また、本発明のHEV検出方法においては、試料中のE型肝炎ウイルスを検出することにより、E型肝炎ウイルスの存在を直接的に検出する。これにより、当該試料が由来する被験者のE型肝炎ウイルスへの感染の有無を検出する。
「E型肝炎ウイルス(Hepatitis E Virus;本明細書中、場合により「HEV」という)」は、エンベロープに覆われていない小型球状粒子(直径:27~34nm)であり、現在、4つの遺伝子型(遺伝子1型~遺伝子4型)が知られている。そのゲノムは約7200塩基の1本鎖RNAであり、3つのORF(open reading frame:ORF1、ORF2、ORF3)を有する。ORF1はヘリカーゼやRNAポリメラーゼ等の非構造タンパクを、ORF2はカプシドタンパク質を、ORF3は113又は114アミノ酸残基からなるリン酸化タンパク質を、それぞれコードしている。このうち、ORF2は、典型的には、660残基のアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードし、当該ポリペプチドの129~606番目のアミノ酸がカプシドタンパク質を構成し、そのN末端側から、ウイルス殻を形成するSドメイン(典型的には、129~319番目のアミノ酸);2、3、又は5量体を形成するMドメイン(M:典型的には、320~455番目のアミノ酸);突起を形成するPドメイン(P:典型的には、456~606番目のアミノ酸)を備える。また、前記Pドメインのうち、典型的には、前記ORF2がコードするアミノ酸配列の459~606番目のアミノ酸配列からなるE2sドメインは2量体を形成し、ウイルスの宿主認識に重要な役割を果たすことが報告されている(Li,S.et al.,PLos Pathog.5,e1000537,2009年)。
本発明のHEV検出方法及び同時検出方法の検出対象となるHEVとしては、下記のHEVに対する抗体(第2の抗体及び第3の抗体)が結合できる限り、完全なウイルス粒子でなくともよく、少なくとも前記E2sドメインの一部又は全部を含む構成タンパク質であってよい。
[抗E型肝炎ウイルス抗体]
本発明において、「抗E型肝炎ウイルス抗体(本明細書中、場合により「抗HEV抗体」という)」は、本発明の抗HEV抗体検出方法及び同時検出方法においてその検出対象を示し、より具体的には、試料が由来する被験者の体内において産生された抗体である。本発明に係る抗HEV抗体は、前記HEVに特異的に結合可能な抗体であり、通常、HEVの前記E2sドメインの一部又は全部を認識してHEVに結合する。かかる抗HEV抗体としては、下記の抗原ポリペプチドが認識できる限り、完全な抗体でなくてもよく、抗体断片であってもよい。
本発明に係る抗HEV抗体のアイソタイプとしては、特に限定されず、IgG、IgM、IgA、IgE、IgDのうちのいずれであってもよく、これらのうちの2種以上の組み合わせであってもよい。また、前記アイソタイプとしては、それぞれ、いずれのサブクラスであってもよい。例えば、ヒトにHEVが感染した場合においては、先にIgMが、次いでIgAが血清中に出現して数ヶ月(最大5ヶ月程度)持続するため、これらを対象とすることで感染初期段階での検出が可能である。また、IgGはこれらよりもやや遅れて出現し、より長期間持続するため、過去のHEV感染の検出も可能である。これらの中でも、下記のサンドイッチ法(例えばサンドイッチELISA)を用いた際により早期に検出できる観点からはIgMが好ましく、例えば、感染時期の特定等のより詳細な解析が可能となる観点からは、IgMとIgGとの組み合わせが好ましいが、これらに限定されるものではない。
[被検者]
本発明において、「被検者」とは、本発明の検出方法の試料が由来する者を示し、また、下記の本発明のE型肝炎ウイルスの検査方法を行う対象を示す。前記被験者としては、ヒト又はヒト以外の哺乳類(ブタ、イノシシ、ウシ、シカ等)が挙げられ、好ましくはヒトである。本発明に係る被検者としては特に制限されず、HEVに感染しておらずE型肝炎を発症していない健常者であっても、HEVに感染しているがE型肝炎を発症していない者であってもよい。また、発症時期の特定等を目的とした、既にHEVに感染していることが既知の患者や過去にE型肝炎を発症した患者であってもよい。
[試料]
本発明において、「試料」とは、本発明の検出方法の対象であり、前記試料としては、前記抗HEV抗体及び又はHEVが存在し得る試料である限り特に制限はない。一般的には、前記被検者等、対象から採取された血清、血漿、及び全血等の血液検体;尿、糞便、痰、唾液、汗、髄液、消化液、精液、リンパ液、腹水等の血液以外の体液検体;口腔粘膜、咽頭粘膜、腸管粘膜等の粘膜検体;並びに各種生検検体等が挙げられる。これらの中でも、本発明に係る試料としては血液検体が好ましく、血清又は血漿がより好ましい。
これらの試料は、必要に応じて希釈液で希釈又は懸濁したものであってもよい。前記希釈液としては、例えば、リン酸緩衝液、Tris緩衝液、グッド緩衝液、ホウ酸緩衝液、酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液、グリシン緩衝液、コハク酸緩衝液、フタル酸緩衝液等の緩衝液が挙げられる。また、本発明に係る試料としては、必要に応じて適宜前処理が施されたものであってもよい。前記前処理としては、粉砕、凍結、加熱、濃縮、分画、脱塩等の処理;pH調整剤、安定化剤、保存剤、防腐剤、界面活性剤等の添加処理;精製処理等が挙げられ、これらのうちの1種であっても2種以上の組み合わせであってもよい。
[抗原ポリペプチド]
本発明の検出方法においては、上記本発明のポリペプチドを抗原ポリペプチドとして、試料中の抗HEV抗体を検出する。本発明のポリペプチドは、これを抗原ポリペプチドとして用いても、試料中の抗HEV抗体に対して、上記D496が前記置換アミノ酸で置換されていない野生型のHEV由来のポリペプチドと同等の反応性を示すため、抗HEV抗体を十分な感度で検出することができる。さらに、本発明のポリペプチドには結合せず、かつ、試料中のHEVには結合可能な抗体(第2の抗体、第3の抗体)を容易に準備することが可能となるため、本発明の同時検出方法を十分な感度で実施することができる。このような抗原ポリペプチドの態様としては、その好ましい態様も含めて、上記本発明のポリペプチドにおいて述べたとおりである。
[E型肝炎ウイルスに対する抗体]
また、本発明のHEV検出方法及び同時検出方法において、「E型肝炎ウイルスに対する抗体」とは、検出対象であるHEVに対する抗体を示し、HEVに結合可能であれば特に制限されない。例えば、前記E2sドメインの一部又は全部を含む構成タンパクを基に従来公知の方法で作製した抗体が挙げられ、本発明のHEV検出方法を単独で行う場合においては、前記試料から調製された前記抗HEV抗体であってもよい。
前記「抗体」は、ポリクローナル抗体であっても、モノクローナル抗体であってもよいが、モノクローナル抗体であることが好ましい。さらに、前記「抗体」には、完全な抗体の他、抗体断片(例えば、Fab、Fab’、F(ab’)、Fv、ジスルフィド結合Fv、一本鎖Fv(scFv)、sc(Fv)、ダイアボディー(Diabody))及びこれらの重合体も含まれる。また、前記「抗体」には、免疫グロブリンの全てのクラス(アイソタイプ)及びサブクラスが含まれ、2種以上を適宜組み合わせてもよいが、IgGであることが好ましい。さらに、かかる抗体の由来としては、特に制限されず、ヒト由来の抗体、非ヒト動物由来の抗体(例えば、ウサギ抗体、マウス抗体、ラット抗体、ヤギ抗体、ヒツジ抗体、ラクダ抗体)、キメラ抗体、ヒト化抗体であってよい。
前記HEVに対する抗体は、従来公知の方法で適宜調製することができ、ポリクローナル抗体であれば、例えば、抗原(HEV、前記E2sドメインの一部又は全部又はそれを発現する細胞等)で免疫動物を免疫し、その抗血清から、従来の手段(塩析、遠心分離、透析、カラムクロマトグラフィー等)によって、適宜精製して取得することができる。また、モノクローナル抗体であれば、例えば、ハイブリドーマ法や組み換えDNA法によって作製することができる。ハイブリドーマ法としては、例えば、コーラー及びミルスタインの方法(Kohler&Milstein,Nature,256:495(1975))が挙げられ、組み換えDNA法としては、例えば上記抗体をコードするDNAをハイブリドーマやB細胞等からクローニングし、適当なベクターに組み込んで、これを宿主細胞(哺乳類細胞株、大腸菌、酵母細胞、昆虫細胞、植物細胞等)に導入し、前記抗ポリペプチド抗体を組み換え抗体として産生させる手法が挙げられる(例えば、P.J.Delves,Antibody Production:Essential Techniques,1997 WILEY;P.Shepherd and C.Dean Monoclonal Antibodies,2000 OXFORD UNIVERSITY PRESS;Vandamme A.M.et al.,Eur.J.Biochem.192:767-775(1990))。また、前記HEVに対する抗体としては、市販のものを適宜用いてもよい。
本発明の同時検出方法において、前記HEVに対する抗体は、下記の抗HEV抗体に対する抗体(第1の抗体)はもとより、本発明に係る抗原ポリペプチドに結合しない抗体であることが必要であり、本発明に係る抗原ポリペプチドに結合しない点で本発明に係る抗HEV抗体と異なる。本発明において、前記抗原ポリペプチドに結合しない抗体は、例えば、下記の実施例に記載のように、次の方法で評価することができる。例えば、先ず、野生型(Wild Type)のHEVのE2sドメインの一部(WTE2s:例えば、配列番号5又は配列番号7に記載のアミノ酸配列の21~186番目の全長166残基のアミノ酸配列からなるポリペプチド)と、前記抗原ポリペプチド(変異E2s:例えば、配列番号7に記載のアミノ酸配列の21~186番目の全長166残基のアミノ酸配列からなるポリペプチドにおいて、同アミノ酸配列内のD496に対応するアスパラギン酸が前記置換アミノ酸(例えばG)であるアミノ酸配列を含むポリペプチド)とをそれぞれ抗原ポリペプチドとして、それぞれ固相化したプレート(例えば、96ウェルプレート、ポリペプチドの終濃度:0.05μg/ウェル)を作製する。次いで、前記プレートに、対象の抗体(例えば、0.02μg/ウェル)を添加した後、対象の抗体のアイソタイプに応じた抗体(例えば、対象の抗体のアイソタイプがマウスIgGであれば抗マウスIgG抗体)に標識物質を結合させた検出体(例えば、POD標識抗IgG抗体)を添加して複合体(抗原ポリペプチド-抗体-検出体)を形成させ、前記標識物質に応じたシグナル(例えば、POD基質の添加による波長450nmにおける吸光度)を検出する。このときに検出されたシグナル量が、WTE2sを抗原ポリペプチドとしたときに比べて、変異E2sを抗原ポリペプチドとしたときの方が低ければ、より好ましくは、WTE2sを抗原ポリペプチドとしたときの2/5以下、1/5以下、1/25以下、又は1/100以下であれば、当該抗体は、前記抗原ポリペプチドに結合しない抗体と評価することができる。また、例えば、前記変異E2sを抗原ポリペプチドとしたときに検出されたシグナル量が、HEV以外の他のウイルス由来の抗原であってWTE2sのアミノ酸配列との相同性が低い(例えば40%未満)のアミノ酸配列からなるポリペプチドを抗原ポリペプチドとして検出されるシグナル量により求めたカットオフ値を基準として、前記カットオフ値未満である場合にも、当該抗体は、前記抗原ポリペプチドに結合しない抗体と評価することができる。
このような抗原ポリペプチドに結合しない抗体は、上記のHEVに対する抗体の中から、例えば、上記の評価方法で前記抗原ポリペプチドに結合しない抗体として評価される抗体を選択することで得ることができる。
本発明のHEV検出方法及び同時検出方法において、HEVに対する抗体として、第2の抗体及び第3の抗体としては、互いに同じであってもよいが、各抗体とHEVとの結合において互いに競合しない抗体(より好ましくは、エピトープが重複しない抗体)の組み合わせであることが好ましい。このような組み合わせは、当業者であれば上記のHEVに対する抗体の中から適宜選択することができる。
[抗HEV抗体に対する抗体]
また、本発明の抗HEV抗体検出方法及び同時検出方法において、「抗E型肝炎ウイルス抗体に対する抗体」とは、検出対象である抗HEV抗体に対する抗体(第1の抗体)を示し、抗HEV抗体に結合可能であれば特に制限されない。
前記「抗体」は、ポリクローナル抗体であっても、モノクローナル抗体であってもよいが、モノクローナル抗体であることが好ましい。さらに、前記「抗体」には、完全な抗体の他、前記抗体断片及びこれらの重合体も含まれる。また、前記「抗体」には、免疫グロブリンの全てのクラス(アイソタイプ)及びサブクラスが含まれ、2種以上を適宜組み合わせてもよい。抗HEV抗体に対する抗体(第1の抗体)としては、例えば、検出対象である抗HEV抗体のアイソタイプに応じて、抗IgG抗体、抗IgM抗体、抗IgA抗体、抗IgE抗体、抗IgD抗体から選択することができる。本発明の同時検出方法においては、抗HEV抗体のアイソタイプがIgM抗体であって、抗HEV抗体に対する抗体(第1の抗体)が抗IgM抗体であることが好ましい。さらに、かかる抗体の由来としては、特に制限されず、ヒト由来の抗体、非ヒト動物由来の抗体(例えば、ウサギ抗体、マウス抗体、ラット抗体、ヤギ抗体、ヒツジ抗体、ラクダ抗体)、キメラ抗体、ヒト化抗体であってよい。このような抗HEV抗体に対する抗体(第1の抗体)は、従来公知の方法で適宜調製することができ、また、市販のものを適宜用いてもよい。
[検出工程]
本発明の抗HEV抗体の検出方法では、前記試料中の抗HEV抗体に前記抗原ポリペプチドを結合させて抗HEV抗体を検出し(第1の検出)、本発明のHEV検出方法では、前記試料中のHEVに前記HEVに対する抗体を結合させてHEVを検出し(第2の検出)、本発明の同時検出方法では、第1の検出と第2の検出とを同時に行う。
本発明の検出方法において、第1の検出及び第2の検出の各方法としては、抗HEV抗体及びHEVをそれぞれ検出することができる方法である限り特に制限されず、従来公知の方法やそれに準じた方法、又はそれらの組み合わせを適宜採用することができる。例えば、サンドイッチ法、競合法、及び免疫比濁法等の免疫学的手法や、これらの原理に準じた検出方法が挙げられ、特に制限されない。かかる検出方法では、例えば、一般的に、ELISA、デジタルELISA、CLEIA(化学発光酵素免疫測定法)、CLIA(化学発光免疫測定法)、ECLIA(電気化学免疫測定法)、RIA(放射免疫測定法)等の、マイクロプレートや粒子等を担体とする方法;イムノクロマト;表面プラズモン共鳴分析法;蛍光共鳴エネルギー移動による検出方法等を採用することができる。
本発明の検出方法においては、特に第1の検出と第2の検出とを同時にかつ容易に行うことが可能である観点からは、サンドイッチ法が好ましい。以下、本発明に係る検出工程について、サンドイッチ法を例に挙げてより具体的な態様を説明する。
前記サンドイッチ法を用いる場合、本発明に係る第1の検出の態様としては、
前記検出工程(第1の検出)が、前記試料と、第1の捕捉体と、第1の検出体と、を接触させる工程であり、
第1の捕捉体が、前記抗HEV抗体に対する第1の抗体及び前記抗原ポリペプチドのうちの一方と、非水溶性担体と、を備えるものであり、
第1の検出体が、第1の抗体及び前記抗原ポリペプチドのうちの他方を備えるものである態様が挙げられる。非特異反応をより低限させる観点からは、第1の捕捉体が、前記抗HEV抗体に対する第1の抗体と非水溶性担体とを備えるものであり、第1の検出体が、前記抗原ポリペプチドを備えるものであることがより好ましい。
また、前記サンドイッチ法を用いる場合、本発明に係る第2の検出の態様としては、
前記検出工程(第2の検出)が、前記試料と、第2の捕捉体と、第2の検出体と、を接触させる工程であり、
第2の捕捉体が、前記HEVに対する第2の抗体及び第3の抗体のうちの一方と、非水溶性担体と、を備えるものであり、
第2の検出体が、前記HEVに対する第2の抗体及び第3の抗体のうちの他方を備えるものである態様が挙げられる。
前記サンドイッチ法を用いる場合、本発明の同時検出方法の態様としては、第2の抗体及び第3の抗体が前記抗原ポリペプチドに結合しない抗体であること以外、第1の検出と第2の検出とはそれぞれ独立して任意の組み合わせであってよい。
前記サンドイッチ法において、前記抗HEV抗体に対する第1の抗体及び前記抗原ポリペプチド(第1の検出)、或いは、前記HEVに対する第2の抗体及び第3の抗体(第2の検出)は、それぞれ、前記捕捉体及び前記検出体のうちのいずれに備えられていてもよいが、一方が捕捉体に含まれ、もう一方が検出体に含まれる。これにより試料中の抗HEV抗体(第1の検出)及びHEV(第2の検出)を前記捕捉体で捕捉し、かつ、前記検出体により標識することができるため、前記検出体を介した標識物質に由来するシグナルを検出することで、当該抗HEV抗体(第1の検出)及びHEV(第2の検出)をそれぞれ高精度かつ容易に検出することができる。
検出したシグナルは、必要に応じてその量を半定量又は定量することによって、それぞれ、抗HEV抗体量(第1の検出)及びHEV量(第2の検出)とすることができる。また、本発明の同時検出方法の場合には、第1の検出と第2の検出とで同じ標識物質を用いることにより、検出したシグナルは、抗HEV抗体及びHEVの合計量とすることができる。
前記「シグナル」には、前記標識物質に応じて、呈色(発色)、消光、反射光、発光、蛍光、放射性同位体による放射線等が含まれ、肉眼で確認できるものの他、シグナルの種類に応じた検出方法・装置によって確認できるものも含まれる。本発明において、抗HEV抗体量、HEV量、又はこれらの合計量としては、標準試料を用いた検量線等によりその量を検量してもよいが、より簡便かつ迅速な観点からは、前記シグナル量をそのまま本発明の抗HEV抗体量、HEV量、又はこれらの合計量として扱ってもよい。
このようなサンドイッチ法としては、2ステップ法であるフォワードサンドイッチ法(捕捉体と試料中の抗HEV抗体又はHEVとの反応、捕捉体に結合した抗HEV抗体又はHEVと検出体との反応を逐次的に行う方法)、リバースサンドイッチ法(予め検出体と試料中の抗HEV抗体又はHEVとを反応させ、生成した複合体を捕捉体と反応させる方法)、及び1ステップ法(試料中の抗HEV抗体又はHEV、捕捉体、検出体の反応を同時に1ステップで行う方法)を挙げることができるが、これらのいずれも採用可能である。
例えば、第1の検出のフォワードサンドイッチ法の態様では、先ず、前記試料と第1の捕捉体とを接触させ、第1の捕捉体の第1の抗体(又は抗原ポリペプチド)と抗HEV抗体との結合を介して抗HEV抗体を当該捕捉体に捕捉させる(1次反応:捕捉ステップ)。次いで、第1の捕捉体に捕捉された抗HEV抗体に第1の検出体を接触させて、当該検出体の抗原ポリペプチド(又は第1の抗体)と抗HEV抗体との結合を介して標識する(2次反応:標識ステップ)。この反応により、第1の捕捉体-抗HEV抗体-第1の検出体を含む複合体が形成される。
また、例えば、第2の検出のフォワードサンドイッチ法の態様では、先ず、前記試料と第2の捕捉体とを接触させ、第2の捕捉体の第2の抗体(又は第3の抗体)とHEVとの結合を介してHEVを当該捕捉体に捕捉させる(1次反応:捕捉ステップ)。次いで、第2の捕捉体に捕捉されたHEVに第2の検出体を接触させて、当該検出体の第3の抗体(又は第2の抗体)とHEVとの結合を介して標識する(2次反応:標識ステップ)。この反応により、第2の捕捉体-HEV-第2の検出体を含む複合体が形成される。
本発明においては、前記抗原ポリペプチドとして本発明のポリペプチドを用い、かつ、第2の抗体及び第3の抗体として前記抗原ポリペプチドに結合しない抗体を用いることにより、第1の検出と第2の検出における前記複合体の形成が互いに阻害されない。そのため、本発明の同時検出方法では、第1の検出と第2の検出とを同一の反応系内で並行して同時に行うことが可能である。
前記フォワードサンドイッチ法の態様では、結合しなかった試料及び検出体を必要に応じて洗浄して除去(洗浄ステップ)した後、前記標識物質に応じた所定の方法で、当該標識物質に由来するシグナルを検出する(検出ステップ)。
〔非水溶性担体〕
前記非水溶性担体は、主に前記抗体(第1の抗体、第2の抗体、又は第3の抗体)又は前記抗原ポリペプチドを担持し、固相化する担体として機能するものであり、非水溶性の物質である。本発明において、「非水溶性の物質」とは、常温常圧下において水に不溶(水に対する溶解度が0.001g/mL以下、好ましくは0.0001g/mL以下、以下同様)である物質を示す。
このような非水溶性担体の材質としては、一般的に免疫学的測定及びそれに準じた測定に用いられているものを用いることができ、特に制限はされず、例えば、高分子ポリマー(ポリスチレン、(メタ)アクリル酸エステル、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド、ナイロン等)、ゼラチン、ガラス、ラテックス、シリカ、金属(金、白金等)、及び金属化合物(酸化鉄、酸化コバルト、ニッケルフェライト等)からなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。また、前記非水溶性担体の材質としては、これらの複合材や、これら物質と他の物質との複合材であってもよく、例えば、前記高分子ポリマー、ゼラチン、及びラテックスからなる群から少なくとも1種の有機高分子と、酸化鉄(スピネルフェライト等)、酸化コバルト、及びニッケルフェライトからなる群から少なくとも1種の金属化合物と、からなる有機無機複合材(例えば、磁性粒子等)であってもよい。さらに、前記非水溶性担体としては、カルボキシ基、エポキシ基、トシル基、アミノ基、ヒドロキシ基、イソチオシアネート基、イソシアネート基、アジド基、アルデヒド基、カーボネート基、アリル基、アミノオキシ基、マレイミド基、チオール基等の活性基で表面修飾されたものであってもよい。
また、本発明において、前記非水溶性担体の形状としても特に制限はされず、例えば、プレート、繊維、膜、粒子等のいずれであってもよい。このような非水溶性担体としては、従来公知のものを適宜用いることができ、市販のものを適宜用いることもできる。
〔標識物質〕
前記標識物質としては、公知の免疫学的測定方法やそれに準じた方法において標識物質として用いられているものを特に制限なく用いることができる。このような標識物質としては、例えば、酵素;アクリジニウム誘導体等の発光物質;ユーロピウム等の蛍光物質;アロフィコシアニン(APC)及びフィコエリスリン(R-PE)等の蛍光タンパク質;125I等の放射性物質;フルオレセインイソチオシアネート(FITC)及びローダミンイソチオシアネート(RITC)等の蛍光色素;ラテックス粒子、金粒子等の粒子;ジニトロフェニル(DNP);ジゴキシゲニン(DIG)が挙げられ、これらのうちの1種であっても2種以上の組み合わせであってもよい。
例えば、前記標識物質として酵素を用いた場合には、発色基質、蛍光基質、化学発光基質等を基質として添加することにより、当該基質に応じて種々のシグナルの検出を行うことができる。前記酵素としては、例えば、ペルオキシダーゼ(POD:西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)等)、アルカリホスファターゼ(ALP)、β-ガラクトシダーゼ(β-gal)、グルコースオキシダーゼ、ルシフェラーゼを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
前記標識物質は、前記各検出体において前記抗体(第1の抗体、第2の抗体、又は第3の抗体)又は前記抗原ポリペプチドに結合させ、直接的に抗HEV抗体又はHEVを検出してもよい。例えば、第1の検出体が前記抗原ポリペプチドを備える場合、かかる第1の検出体としては、前記抗原ポリペプチドと、前記標識物質とを備えていてもよい。
また、本発明の検出方法では、前記検出体において前記抗体又は前記抗原ポリペプチドに前記標識物質を結合させず、前記抗体又は前記抗原ポリペプチドに二次標識体を結合させて、間接的に抗HEV抗体又はHEVを検出してもよい。ここで、「二次標識体」とは、抗HEV抗体に直接結合する第1の抗体若しくは前記抗原ポリペプチド、又は、HEVに直接結合する第2の抗体若しくは第3の抗体(検出体)に結合可能であって、前記標識物質を備える標識体である。このような二次標識体としては、例えば、前記標識物質を結合させた前記検出体に結合可能な抗体(二次抗体等)や、前記標識物質を結合させたプロテインGやプロテインA等が挙げられる。また、例えば、前記抗体又は前記抗原ポリペプチドにビオチン(又はアビジン)を結合させ、これに対応して、前記二次標識体を前記標識物質を結合させたアビジン(又はビオチン)としてもよい。
〔捕捉体〕
第1の捕捉体及び第2の捕捉体は、それぞれ、前記非水溶性担体と、前記抗体(第1の抗体、第2の抗体、又は第3の抗体)又は前記抗原ポリペプチドと、を備える複合体であって、前記非水溶性担体と前記抗体又は前記抗原ポリペプチドとが直接的又は間接的に結合してなる。
第1の捕捉体及び第2の捕捉体においては、それぞれ独立に、前記抗体又は前記抗原ポリペプチドの含有量は特に制限されず、これらと抗HEV抗体又はHEVとの結合のしやすさ等に応じて適宜調整することができるが、例えば、前記非水溶性担体がプレートである場合、その表面積1cmあたりの質量(2種以上の組み合わせである場合にはそれらの合計)が、0.01~1.5μgであることが好ましい。
第1の捕捉体及び第2の捕捉体は、それぞれ独立に、前記非水溶性担体に前記抗体又は前記抗原ポリペプチドを結合させることによって製造することができる。かかる製造方法としては、適宜従来公知の方法又はそれに準じた方法を採用することができ、前記非水溶性担体に前記抗体又は前記抗原ポリペプチド(以下、場合により「被担持体」という)を直接結合させてもよく、間接的に結合させてもよい。
直接結合させる場合には、例えば、前記非水溶性担体及び/又は前記被担持体として、カルボキシ基、エポキシ基、トシル基、アミノ基、ヒドロキシ基、イソチオシアネート基、イソシアネート基、アジド基、アルデヒド基、カーボネート基、アリル基、アミノオキシ基、マレイミド基、チオール基、ピリジルジスルフィド基等の活性基を有するものを用い、又は必要に応じて前記活性基を付与して、これらを結合させることにより、前記被担持体を前記非水溶性担体に直接固定することができる。また、前記非水溶性担体がプレートである場合には、プレート上に前記被担持体を塗布し、必要に応じてカゼインナトリウム、牛血清アルブミン(BSA)等でブロッキングした後、これを乾燥させることにより、前記被担持体を前記非水溶性担体に直接固定することができる。
間接的に結合させる場合には、例えば、ポリヒスチジン、ポリエチレングリコール、システイン及び/又はリジンを含むオリゴペプチド、前記被担持体に結合するリンカー等を介して結合させることにより、前記被担持体を前記非水溶性担体に間接的に固定することができる。前記リンカーとしては、特に制限されず、例えば、被担持体に結合可能な二次抗体、プロテインG、プロテインA、光分解可能な光切断型リンカー、前記活性基を有するリンカー分子(例えば、ヒドラジン塩、ヒドラジド)等が挙げられる。また、前記被担持体に何らかの修飾を行い、その修飾部分を捕捉する物質を前記非水溶性担体に固定化して、前記非水溶性担体上に前記被担持体を固定してもよい。例えば、前記修飾部分の代表例としてはビオチンが、その修飾部分を捕捉する物質の代表例としてはストレプトアビジンが、それぞれ挙げられるが、これらに限定されるものではない。
これらの反応に供する非水溶性担体及び前記被担持体の比率は、上記の捕捉体における比率の好ましい範囲を達成するように適宜選択することができる。また、必要に応じて、前記被担持体や非水溶性担体への非特異的な吸着を防ぐことを目的として、適当なブロッキング剤(例えば、牛血清アルブミンやゼラチン等)で前記非水溶性担体のブロッキングを行なってもよい。さらに、このような捕捉体としては、前記被担持体が前記抗体である場合には、市販のものを適宜用いてもよい。
また、本発明の同時検出方法においては、第1の捕捉体と第2の捕捉体とは同じであってもよい。すなわち、第1の検出と第2の検出とに共通する捕捉体として、第1の抗体及び前記抗原ポリペプチドのうちのいずれか一方(A)と、第2の抗体及び第3の抗体のうちのいずれか一方(B)とを備える捕捉体を用いることができる。この場合、AとBとの比率は特に制限されず、これらと抗HEV抗体又はHEVとの結合のしやすさ等に応じて適宜調整することができるが、例えば、前記非水溶性担体がプレートである場合、AとBとの質量比で、1:10~1:0.1の範囲が挙げられる。
〔検出体〕
第1の検出体及び第2の検出体は、それぞれ、前記抗体(第1の抗体、第2の抗体、又は第3の抗体)又は前記抗原ポリペプチドを備えるものである。前記各検出体としては、それぞれ、前記標識物質と、前記抗体又は前記抗原ポリペプチドと、を備える複合体であってもよく、この場合、前記標識物質と前記抗体又は前記抗原ポリペプチドとが直接的又は間接的に結合してなる。前記検出体としては、前記抗体又は前記抗原ポリペプチドのみからなるものであってもよく、この場合、前記抗体又は前記抗原ポリペプチド、又は必要に応じて修飾(例えば、ビオチン、アビジンによる修飾)した前記抗体又は前記抗原ポリペプチドに、結合可能な前記二次標識体を結合させ、間接的に抗HEV抗体又はHEVを検出してもよい。前記標識物質をさらに備える場合、前記標識物質、前記抗体又は前記抗原ポリペプチドの含有量としては特に制限されず、前記標識物質の種類等に応じて適宜調整することができる。
第1の検出体及び第2の検出体が前記標識物質をさらに備える場合、これら検出体は、それぞれ独立に、前記標識物質と前記抗体又は前記抗原ポリペプチドとを結合させることによって製造することができる。かかる製造方法としては、適宜従来公知の方法又はそれに準じた方法を採用することができ、前記標識物質と前記抗体又は前記抗原ポリペプチドとは直接結合させてよく、間接的に結合させてもよい。これらの結合方法としては、それぞれ、前記捕捉体において記載した結合方法と同様の方法が挙げられる。
(捕捉ステップ)
前記捕捉ステップにおいて、前記抗HEV抗体と第1の捕捉体(第1の検出)、又は、前記HEVと第2の捕捉体(第2の検出)を接触させる方法としては、それぞれ特に制限されず、適宜従来公知の方法又はそれに準じた方法を採用することができ、例えば、前記非水溶性担体がプレートである場合にはこれ(被担持体固相化プレート)に前記試料を注入する方法や、前記非水溶性担体が粒子である場合には前記試料中に前記捕捉体(被担持体固相化粒子)を添加する方法が挙げられる。
前記捕捉ステップにおける前記試料と前記捕捉体との反応において、前記試料の量としては、特に制限されず、試料の種類、濃度等に応じて適宜調整することができる。また、前記捕捉ステップの条件としても特に制限されず、適宜調整することができ、例えば、室温~45℃、好ましくは25~37℃、pH6.0~9.0程度、好ましくはpH7.0~8.0で、30~90分程度、好ましくは60分程度行うことができるが、これらの条件に限定されるものではない。
(標識ステップ)
前記標識ステップにおいて、前記抗HEV抗体と第1の検出体(第1の検出)、又は、前記HEVと第2の検出体(第2の検出)の反応では、前記抗HEV抗体又はHEVと各検出体とを含む反応液中の、当該検出体の含有量(終濃度)(検出体が2種以上の組み合わせである場合にはそれらの合計)としては、特に制限されず、試料の種類、濃度等に応じて適宜調整されるものであるため特に制限されないが、過剰に用いると高いバックグラウンドシグナルを生じる可能性がある観点から、例えば、0.01~10μg/mLであることが好ましく、0.1~5μg/mLであることがより好ましく、0.2~1μg/mLであることがさらに好ましい。
また、前記標識ステップの他の条件としても特に制限されず、適宜調整することができ、例えば、室温~37℃、好ましくは25~37℃、pH5.0~7.0、好ましくは5.5~6.5で、30~90分程度、好ましくは60分程度行うことができるが、これらの条件に限定されるものではない。
(洗浄ステップ)
前記サンドイッチ法には、前記捕捉ステップ及び/又は前記標識ステップの後に、前記捕捉体に直接的又は間接的に結合した抗HEV抗体、HEV、及び検出体と、それ以外の前記捕捉体に結合していない(すなわち、捕捉されていない)夾雑物とを分離し、前記夾雑物を除去する洗浄ステップをさらに含むことが好ましい。前記夾雑物を除去する方法としては、特に制限されず、適宜従来公知の方法又はそれに準じた方法を採用することができ、例えば、前記捕捉体が前記被担持体固相化プレートである場合にはプレート上から液相(上清)を除去する方法や、前記被担持体固相化粒子である場合には前記粒子を遠心や集磁によって回収して液相(上清)を除去する方法が挙げられる。また、前記洗浄ステップにおいては、必要に応じて、洗浄液の注入及び除去を繰り返してもよい。前記洗浄液としては、例えば、中性(好ましくは、pH6.0~9.0)の公知の緩衝液(ナトリウムリン酸バッファー、MES、Tris、CFB、MOPS、PIPES、HEPES、トリシンバッファー、ビシンバッファー、グリシンバッファー等)が挙げられ、また、BSA等の安定化タンパク質や界面活性剤等が添加されたものであってもよい。
本発明に係る検出工程として前記サンドイッチ法を用いる場合、前記試料としては、上記のように希釈液で希釈して用いてもよいが、前記捕捉体が前記被担持体固相化粒子等である場合には、その粒子懸濁媒(粒子液)に懸濁して用いてもよく、さらに、前記試料と前記捕捉体及び/又は前記検出体との反応系には、他の反応用バッファーを適宜添加してもよい。これらの粒子懸濁媒、反応用バッファーとしては、特に制限されないが、例えば、それぞれ独立に、公知の緩衝液(ナトリウムリン酸バッファー、MES、Tris、CFB、MOPS、PIPES、HEPES、トリシンバッファー、ビシンバッファー、グリシンバッファー等)が挙げられ、また、それぞれ独立に、BSA等の安定化タンパク質や血清等が添加されたものであってもよい。
(検出ステップ)
前記検出ステップにおいては、前記検出体を介した標識物質に応じてシグナルを検出する。例えば、前記検出体が前記標識物質を備える場合には当該標識物質に応じて、前記二次標識体を前記検出体に結合させて検出する場合には当該二次標識体を添加し、必要に応じて洗浄により結合しなかった二次標識体を除去した後、その標識物質に応じて、シグナルを検出する。例えば、前記標識物質が酵素である場合には、当該酵素に対応する発色基質や発光基質を添加して反応させることによって生じるシグナル(例えば、発色や発光)を検出する。
これにより、試料中の抗HEV抗体及び/又はHEVの有無をシグナルの有無により検出し、第1の検出では、抗HEV抗体が存在する場合に試料中の抗HEV抗体量をシグナル量として得ることができ、第2の検出では、HEVが存在する場合に試料中のHEV量をシグナル量として得ることができ、さらに、必要に応じて標準試料におけるシグナル量との比較をすることによって、試料中の抗HEV抗体量及びHEV量をそれぞれ検量することができる。
本発明の同時検出方法においては、第1の検出と第2の検出とで異なる標識物質を用いて試料中の抗HEV抗体又はHEVの有無をそれぞれ検出してもよいが、第1の検出と第2の検出とで同じ標識物質を用いることにより、試料中の抗HEV抗体又はHEVの有無をシグナルの有無により検出し、さらに、抗HEV抗体及び/又はHEVが存在する場合に試料中の抗HEV抗体及びHEVの合計量をシグナル量として得てもよい。これにより、HEV感染の時期に拘わらず、抗HEV抗体又はHEVのいずれかは検出することができるため、HEV感染の有無を簡便に一度で検出することが可能となる。
<E型肝炎ウイルスの検査方法>
本発明のE型肝炎ウイルス感染の検出方法によれば、上記の検出工程によって検出された抗HEV抗体及び/又はHEVの有無を指標とすることにより、前記試料におけるE型肝炎ウイルスへの感染の有無、好ましくは、同試料が由来する被検者におけるE型肝炎ウイルスへの感染の有無を検出することができる。また、上記の検出工程によって検出された抗HEV抗体及び/又はHEVを指標とすることにより、前記試料、好ましくは同試料が由来する被検者におけるE型肝炎ウイルスへの感染の程度(感染時期やE型肝炎の程度)についての情報を得ることもできる。したがって、本発明は、前記本発明のE型肝炎ウイルス感染の検出方法で被検者由来の試料中の抗HEV抗体及び/又はHEVを検出する工程を含む、E型肝炎ウイルスの検査方法(以下、場合により単に「検査方法」という)も提供する。
本発明の検査方法の態様としては具体的に、例えば、次の態様:
被検者由来の試料中の抗HEV抗体を前記抗原ポリペプチドで検出する検出工程と、検出された抗HEV抗体を指標として、被験者がHEVに感染しているか否かを判定する判定工程と、を含む方法;
被検者由来の試料中の抗HEV抗体を前記抗原ポリペプチドで検出する検出工程と、検出された抗HEV抗体を指標として、E型肝炎である又はE型肝炎を発症する可能性が高いと予測される被検者を選別する選別工程と、を含む方法(スクリ-ニング方法);
被検者由来の試料中の抗HEV抗体を前記抗原ポリペプチドで検出する検出工程と、検出された抗HEV抗体を指標として、被検者におけるE型肝炎の罹患の有無を鑑別する鑑別工程と、を含む方法;
被検者由来の試料中の抗HEV抗体を第1の抗体及び抗原ポリペプチドで検出する第1の検出と、前記試料中のE型肝炎ウイルスを第2の抗体及び第3の抗体で検出する第2の検出と、を同時に行う検出工程と、検出された抗HEV抗体及び/又はHEVを指標として、被験者がHEVに感染しているか否かを判定する判定工程と、を含む方法;
被検者由来の試料中の抗HEV抗体を第1の抗体及び抗原ポリペプチドで検出する第1の検出と、前記試料中のE型肝炎ウイルスを第2の抗体及び第3の抗体で検出する第2の検出と、を同時に行う検出工程と、検出された抗HEV抗体及び/又はHEVを指標として、E型肝炎である又はE型肝炎を発症する可能性が高いと予測される被検者を選別する選別工程と、を含む方法(スクリ-ニング方法);
被検者由来の試料中の抗HEV抗体を第1の抗体及び抗原ポリペプチドで検出する第1の検出と、前記試料中のE型肝炎ウイルスを第2の抗体及び第3の抗体で検出する第2の検出と、を同時に行う検出工程と、検出された抗HEV抗体及び/又はHEVを指標として、被検者におけるE型肝炎の罹患の有無を鑑別する鑑別工程と、を含む方法;
が挙げられる。
前記各検査方法において、前記判定工程、選別工程、及び鑑別工程では、前記検出工程で抗HEV抗体及び/又はHEVが少しでも前記試料に検出されれば、その試料が由来する被検者を、それぞれ、E型肝炎ウイルスに感染している、E型肝炎である若しくはE型肝炎を発症する可能性が高い、及びE型肝炎に罹患している(すなわち、陽性である)としてもよいが、検出された抗HEV抗体量及び/又はHEV量に応じて判定、選別、又は鑑別することが好ましい。例えば、前記検出工程で検出された抗HEV抗体量及びHEV量を、それぞれ、又は合計量で、予め定められたカットオフ値と比較して、前記抗HEV抗体量及び/又はHEV量が前記カットオフ値よりも高い被検者を、E型肝炎ウイルスに感染している、E型肝炎である若しくはE型肝炎を発症する可能性が高い、又はE型肝炎に罹患しているとしてもよい。
前記「カットオフ値」とは、前記抗HEV抗体量及び/又はHEV量によって判定するための基準となる予め定められた値であり、陽性群と陰性群とを判定するための境界値のことを示す。このようなカットオフ値は、本発明の検査方法の目的、抗HEV抗体及び/又はHEVの検出方法、被検者や試料の性質、希釈条件等によって適宜設定されるものであるため、特に限定されるものではない。例えば、カットオフ値を比較的低値に設定することで、検出感度を高く、すなわち、陽性の疑いのある被験者をある程度広く拾集でき、他方、前記カットオフ値を比較的高値に設定することで、前記各検査方法をより高精度で行うことが可能となる。
このような本発明の検査方法によれば、他の肝炎と区別して、E型肝炎に特異的な治療方針の決定等のための情報を提供することが可能となる。また、E型肝炎に罹患(再活性化を含む)する可能性が高い被検者を特定することにより、早期治療介入等が可能となる。さらに、本発明の検査方法の態様としては、被検者由来の試料中の抗HEV抗体及び/又はHEVを検出する検出工程と、検出された抗HEV抗体及び/又はHEVを指標として、被検者のHEV感染時期を予測する予測工程と、を含む方法も挙げられ、例えば、第1の抗体として抗IgG抗体、抗IgM抗体、抗IgA抗体を適宜選択することにより、抗HEV抗体のアイソタイプから、被検者のHEV感染時期を予測することも可能となる。また、第1の検出と第2の検出とにおいて異なる標識物質を用いることにより、試料中の抗HEV抗体及びHEVの有無をそれぞれ異なるシグナル(例えば、異なる発色)により検出し、例えば、HEV検出のシグナルが多く検出された場合には、被検者のHEV感染時期が初期であると予測することも可能となる。
なお、本発明の検査方法は、医師等によるE型肝炎の診断を補助する方法、又は医師等によるE型肝炎の診断のための情報を提供する方法でもある。
<E型肝炎ウイルス感染検出用抗原ポリペプチド及びキット>
本発明は、E型肝炎ウイルス感染検出用キットとして、試料中の抗HEV抗体を検出する方法に用いるためのキットであり、抗HEV抗体に対する抗原ポリペプチドを含み、前記抗原ポリペプチドが本発明のポリペプチドであるキット(抗HEV抗体検出用キット)、並びに、試料中の抗HEV抗体及びHEVを同時に検出する方法に用いるためのキットであり、抗HEV抗体に対する第1の抗体と、抗原ポリペプチドと、HEVに対する第2の抗体と、HEVに対する第3の抗体と、を含み、前記抗原ポリペプチドが本発明のポリペプチドであり、第2の抗体及び第3の抗体が前記抗原ポリペプチドに結合しない抗体であるキット(同時検出用キット)を提供する。抗HEV抗体検出用キットとしては、第1の抗体をさらに含んでいることが好ましい。
本発明のE型肝炎ウイルス感染検出用キットに含まれる抗原ポリペプチド及び抗体(第1の抗体、第2の抗体、又は第3の抗体)としては、それぞれ、前記抗原ポリペプチド(2種以上のポリペプチドの組み合わせを含む)のみからなるもの及び前記抗体のみからなるものであっても、これを含む組成物であってもよい。前記組成物としては、他の成分をさらに含有していてもよく、当該他の成分としては、特に制限されないが、例えば、滅菌水、生理食塩水、界面活性剤、保存剤等が挙げられ、これらのうちの1種であっても2種以上の組み合わせであってもよい。
本発明のE型肝炎ウイルス感染検出用キットとしては、前記非水溶性担体と第1の抗体とを備える上述の第1の捕捉体を含むことが好ましい。この場合、前記抗原ポリペプチドとしては、前記標識物質で標識された上述の第1の検出体であるか、前記二次標識体が結合可能な抗原ポリペプチドを備える上述の第1の検出体であることが好ましい。また、本発明のE型肝炎ウイルス感染検出用キットとしては、前記標識物質と第1の抗体とを備える上述の第1の検出体、又は、前記二次標識体が結合可能な第1の抗体を備える上述の第1の検出体を含んでいてもよく、この場合、前記抗原ポリペプチドとしては、前記非水溶性担体に担持された上述の第1の捕捉体であることが好ましい。さらに、本発明の同時検出用キットとしては、前記非水溶性担体と第2の抗体及び第3の抗体のいずれか一方とを備える上述の第2の捕捉体を含むことが好ましい。この場合、第2の抗体及び第3の抗体のうちの他方としては、前記標識物質で標識された上述の第2の検出体、又は、前記二次標識体が結合可能な第2の抗体又は第3の抗体を備える上述の第2の検出体であってもよい。第1の捕捉体、第2の捕捉体、第1の検出体、及び第2の検出体としては、それぞれ、それらの好ましい態様も含めて、上述のとおりである。また、この場合、各捕捉体及び検出体としては、それぞれ独立に、固体(粉末やゼラチン)状であっても緩衝液に溶解又は分散された液体状(前記捕捉体の場合には例えば粒子分散液)であってもよい。液体状である場合、各溶液における各捕捉体及び検出体の濃度は、特に限定されないが、それぞれ独立に、例えば、0.01~10μg/mLであることが好ましく、0.1~5.0μg/mLであることがより好ましく、0.2~1.0μg/mLであることがさらに好ましい。
本発明のE型肝炎ウイルス感染検出用キットとしては、他に、ELISA、CLEIA、イムノクロマト等の通常の免疫学的測定方法及びそれに準じた方法で備えるべき構成をさらに備えていてもよい。例えば、上記のサンドイッチ法を本発明の検出方法の原理とする場合には、前記被担持体を固相化するための磁性ビーズやプレート;前記標識物質;前記二次標識体;前記標準試料(各濃度);対照試薬;前記粒子懸濁媒;前記反応用バッファー;及び前記洗浄液からなる群から選択される少なくとも1種をさらに含んでいてもよい。また、前記標識物質が酵素である場合には、当該標識物質の検出・定量に必要な基質や反応停止液等をさらに含んでいてもよい。
さらに、本発明のE型肝炎ウイルス感染検出用キットは、必要に応じて、前記希釈液や、試料の前処理を行うための前処理液;希釈用カートリッジ;前処理の反応停止液又は中和液等を備えていてもよい。また、前記サンドイッチ法としてイムノクロマトを採用する場合には、前記捕捉体及び/又は前記検出体を担持したゾーンを含むデバイスをさらに含んでいてもよい。前記デバイスとしては、展開液パッドや吸収パッド等、イムノクロマトに適したその他の構成要素を備えることができる。さらに、本発明のキットには、当該キットの使用説明書をさらに含んでいてもよい。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(調製例1) 遺伝子3型のHEVのE2s(G3E2s)遺伝子のクローニング
(1-1)RT-PCRによる遺伝子3型のHEV遺伝子のクローニング
遺伝子3型のHEV(HEVG3、GenBank Accession No.:AB481229)について、RT-PCRによってHEV遺伝子(Wild Type)のクローニングを行なった。すなわち、先ず、HEVG3サンプル100μL(HEVG3:10個程度)からHigh Pure Viral RNA Kit(ロシュ社製)を用いてRNA(HEV-RNA)を抽出して精製した。精製したHEV-RNA 11μL、リバース・プライマーG3AS1(2μM、配列番号:9)1μL、及びdNTP(各10mM)1μLを0.5mLチューブに分注した後、65℃で5分間加熱し、氷上で急冷した。次いで、各チューブに、RNaseインヒビター(宝酒造社製)1μL、100mM DTT 1μL、5×SSIV緩衝液(インビトロジェン社製)4μL、及び逆転写酵素SSIV(インビトロジェン社製)1μLを加え、反応液20μLを調製した。前記反応液を50℃で10分間反応させた後、80℃で10分間加熱し、酵素を失活させ、cDNAを含むcDNA合成反応液を得た。
PCRには、検出DNAの増幅感度及び特異性を上げることを目的として、nested-PCR法を用いた。すなわち、先ず、2種類のプライマーで1回目のPCRを行い(1st step PCR)、次いで、そのPCR産物のDNA配列の内側に存在する2種類のプライマーを用いて、2回目のPCRを行なった(2nd step PCR)。1st step PCRには、プライマーG3S1(配列番号:10)及び前記リバース・プライマーG3AS1を用い、2nd step PCRには、プライマーG3S2(配列番号:11)及びプライマーG3AS2(配列番号:12)を用いた。
1st step PCRの反応液は、前記cDNA合成反応液5μL、1st step PCR用のプライマー2種(各50pmole)各2μL、KAPATaq Extra HS RM+dye(KAPA Biosystems社製)10μL、及び滅菌水3μLで全量20μLとした。1st step PCR反応は、95℃で3分間加熱し、変性:95℃で30秒間、アニーリング:55℃で30秒間、伸長:72℃で2分間の条件で30サイクル行なった。
2nd step PCRの反応液は、1st PCR反応終了液2μL、2nd step PCR用のプライマー2種(各50pmole)各2μL、KAPATaq Extra HS RM+dye 9μL、及び滅菌水7μLで全量20μLとし、1st step PCR反応と同じ条件で行なった。
2nd step PCR反応終了液10μLをアガロースゲル電気泳動し、約5kbpの長さで特異的に増幅されたDNA断片を、QIAquick Gel Extraction Kit(キアゲン社製)を用いてアガロースゲルから回収し、pGEM-T Easy(プロメガ社製)にクローニングして、遺伝子3型のHEV遺伝子のORF2のヌクレオチド配列を含むベクター「pGEM-HEVG3」を得た。
(1-2)遺伝子3型のE2s(G3E2s)遺伝子の発現ベクターへのクローニング
上記(1-1)で得られたpGEM-HEVG3を鋳型として、プライマーG3E2s-452-S(配列番号:13)及びプライマーG3E2s-617-AS(配列番号:14)を用いてPCRを行い、G3E2sをコードするDNA断片(約510bp)を増幅した。プライマーは、増幅したDNA断片の5’末端側に制限酵素EcoRIの認識配列が、3’末端側に制限酵素BamHIの認識配列が、それぞれ付加されるように設計した。この2種類の制限酵素を利用して、増幅したDNA断片を、pAT-trp-trpE発現ベクター(大腸菌trpEタンパク質発現ベクター、特許3217600号に記載のベクター)のEcoRI-BamHI部位にクローニングし、遺伝子3型のHEV遺伝子のORF2のうち、配列番号7に記載のアミノ酸配列の21~186番目の全長166残基のアミノ酸配列(G3DT、Wild Type)をコードする配列に対応するDNA配列(配列番号:15)を含む発現ベクター「pAT-trp-trpE-G3DT」を得た。
(調製例2) G3E2sへの変異導入ポリペプチドの発現ベクターの調製
(2-1)G3E2sへの点変異(D496G)の導入
遺伝子3型のHEVのE2S(G3E2s)の野生型アミノ酸配列(G3DT、Wild Type)において、配列番号3に記載のアミノ酸配列の第41番目のアミノ酸(遺伝子3型のHEV遺伝子のORF2がコードするアミノ酸配列の第496番目、以下、場合により「D496」ともいう)は通常アスパラギン酸(D)であるが、これをグリシン(G)に置換する点変異を導入した。すなわち、先ず、上記調製例1で得られたpAT-trp-trpE-G3DT(50ng/mL)1μL、プライマーG3D496G-S(配列番号:16)(10pmol/μL)1.5μL、プライマーG3D496-AS(配列番号:17)(10pmol/μL)1.5μL、2mM dNTPs 5μL、滅菌蒸留水35μL、及びKOD-Plus-(KOD-Plus-Mutagenesis Kit、東洋紡株式会社製)1μLからなる反応液45μLを、94℃で2分間加熱し、98℃:10秒間、68℃:4分間、98℃:10秒、及び68℃:4分の条件を30サイクル繰り返してPCR反応を行い、4℃で保存した。
次いで、PCR反応後の反応液45μLにDpnI 2μLを加えて攪拌し、37℃で1時間反応させて鋳型プラスミド(pAT-trp-trpE-G3DT)を消化させた。次いで、DpnI処理液2μL、滅菌蒸留水7μL、Ligation high(KOD-Plus-Mutagenesis Kit)5μL、T4 Polynucleotide Kinase 1μLからなる反応液15μLを16℃で1時間反応させて、PCR増幅産物を自己連結させた。次いで、反応後の反応液の一部を大腸菌(XL1-Blue)に形質転換し、50μg/mLのアンピシリンを含むLB寒天培地で37℃において一晩培養した。得られた4個のコロニーを50μg/mLのアンピシリンを含むLB培地(液体)で37℃において培養し、アルカリ法(miniprep)にてプラスミドを調製した。
調製したプラスミドについてシークエンシングを行い、得られたプラスミドにクローニングされた配列及び変異箇所を確認したところ、得られたプラスミドは、遺伝子3型のHEV遺伝子のORF2のうち、配列番号7に記載のアミノ酸配列の21~186番目の全長166残基のアミノ酸配列において、配列番号7に記載のアミノ酸配列の第65番目、つまり配列番号3に記載のアミノ酸配列の第41番目のアスパラギン酸(D)がグリシン(G)に置換されたアミノ酸配列(G3D496G、配列番号:18)をコードするヌクレオチド配列を含むプラスミドであることが確認され、これを発現ベクター「pAT-trp-trpE-G3D496G」とした。
(2-2)G3E2sへの他の点変異(T497S)の導入
遺伝子3型のHEVのE2s(G3E2s)の野生型アミノ酸配列(G3DT、Wild Type)において、配列番号3に記載のアミノ酸配列の第42番目のアミノ酸(遺伝子3型のHEV遺伝子のORF2がコードするアミノ酸配列の第497番目、以下、場合により「T497」ともいう)は通常スレオニン(T)であるが、これを、遺伝子1型のHEVのE2sの野生型アミノ酸配列において対応するアミノ酸であるセリン(S)に置換する点変異を導入した。すなわち、プライマーとして、プライマーG3T497S-S(配列番号:19)及びプライマーG3T497S-AS(配列番号:20)を用いたこと以外は上記(2-1)と同様の方法で、遺伝子3型のHEV遺伝子のORF2のうち、配列番号7に記載のアミノ酸配列の21~186番目の全長166残基のアミノ酸配列において、配列番号7に記載のアミノ酸配列の第66番目、つまり配列番号3に記載のアミノ酸配列の第42番目のスレオニン(T)がセリン(S)に置換されたアミノ酸配列(G3T497S、配列番号:21)をコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクター「pAT-trp-trpE-G3T497S」を得た。
(2-3)G3D496Gへの追加点変異(T497S)の導入
プライマーとして、プライマーG3T497S-S(配列番号:19)及びプライマーG3D496G/T497S-AS(配列番号:22)を用いたこと以外は上記(2-1)と同様の方法で、遺伝子3型のHEV遺伝子のORF2のうち、配列番号7に記載のアミノ酸配列の21~186番目の全長166残基のアミノ酸配列において、配列番号7に記載のアミノ酸配列の第65番目、つまり配列番号3に記載のアミノ酸配列の第41番目のアスパラギン酸(D)がグリシン(G)に、配列番号7に記載のアミノ酸配列の第66番目、つまり配列番号3に記載のアミノ酸配列の第42番目のスレオニン(T)がセリン(S)に、それぞれ置換されたアミノ酸配列(G3D496G/T497S、配列番号:23)をコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクター「pAT-trp-trpE-G3D496G/T497S」を得た。
(2-4)G3E2sへの点変異(D496A)の導入
遺伝子3型のHEVのE2S(G3E2s)の野生型アミノ酸配列(G3DT、Wild Type)において、配列番号3に記載のアミノ酸配列の第41番目のアスパラギン酸(D)をアラニン(A)に置換する点変異を導入した。すなわち、プライマーとして、プライマーG3D496A-S(配列番号:24)及びプライマーG3D496-AS(配列番号:17)を用いたこと以外は上記(2-1)と同様の方法で、遺伝子3型のHEV遺伝子のORF2のうち、配列番号7に記載のアミノ酸配列の21~186番目の全長166残基のアミノ酸配列において、配列番号7に記載のアミノ酸配列の第65番目、つまり配列番号3に記載のアミノ酸配列の第41番目のアスパラギン酸(D)がアラニン(A)に置換されたアミノ酸配列(G3D496A、配列番号:25)をコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクター「pAT-trp-trpE-G3D496A」を得た。
(2-5)G3E2sへの点変異(D496V)の導入
遺伝子3型のHEVのE2S(G3E2s)の野生型アミノ酸配列(G3DT、Wild Type)において、配列番号3に記載のアミノ酸配列の第41番目のアスパラギン酸(D)をバリン(V)に置換する点変異を導入した。すなわち、プライマーとして、プライマーG3D496V-S(配列番号:26)及びプライマーG3D496-AS(配列番号:17)を用いたこと以外は上記(2-1)と同様の方法で、遺伝子3型のHEV遺伝子のORF2のうち、配列番号7に記載のアミノ酸配列の21~186番目の全長166残基のアミノ酸配列において、配列番号7に記載のアミノ酸配列の第65番目、つまり配列番号3に記載のアミノ酸配列の第41番目のアスパラギン酸(D)がバリン(V)に置換されたアミノ酸配列(G3D496V、配列番号:27)をコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクター「pAT-trp-trpE-G3D496V」を得た。
(調製例3) 遺伝子1型のHEVのE2s(G1E2s)遺伝子のクローニング
(3-1)遺伝子1型のHEV遺伝子の発現ベクターへのクローニング
遺伝子1型のHEV(HEVG1)については、そのORF2のヌクレオチド配列及びそれにコードされるアミノ酸配列をDNA Data Bank of Japan(DDBJ)より取得した(DDBJ Accession No.:D11092)。取得したアミノ酸配列(ORF2がコードするアミノ酸配列)の394~617番目の全長224残基のアミノ酸(G1E2s、Wild Type)をコードする配列に対応するDNA配列(配列番号:28)を、ユーロフィン・ジェノミクス社に依頼して合成し、かかるヌクレオチド配列を含む発現ベクター「pEX-A-HEVG1」を得た。
(3-2)遺伝子1型のE2s(G1E2s)遺伝子の発現ベクターへのクローニング
上記(3-1)で得られたpEX-A-HEVG1を鋳型として、プライマーG1E2s-his452-S(配列番号:29)及びプライマーG1E2s-617-AS(配列番号:30)を用いてPCRを行い、G1E2sをコードするDNA断片(約530bp)を増幅した。プライマーは、増幅したDNA断片の5’末端側に、その5’末端側から順に、制限酵素EcoRIの認識配列、HISタグが、3’末端側に、その5’末端側から順に、終始コドン、制限酵素BamHIの認識配列が、それぞれ付加されるように設計した。この2種類の制限酵素を利用して、増幅したDNA断片を、pAT-trp-trpE発現ベクターのEcoRI-BamHI部位にクローニングし、遺伝子1型のHEV遺伝子のORF2のうち、配列番号5に記載のアミノ酸配列の21~186番目の全長166残基のアミノ酸配列(G1E2s、Wild Type)をコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクター「pAT-trp-trpE-his-G1E2s」を得た。
(調製例4) ポリペプチド(E2s)の発現及び精製
上記調製例1~3で作製した7種類の各発現ベクターを用いて、7種類のポリペプチドとtrpEとの融合ペプチド:trpE-G3DT、trpE-G3D496G、trpE-G3T497S、trpE-G3D496G/T497S、trpE-G3D496A、trpE-G3D496V、及びtrpE-his-G1E2sの発現及び精製をそれぞれ行なった。すなわち、先ず、調製例1~3で作製した7種類の各発現ベクターを有する大腸菌XL1-Blueを50μg/mLのアンピシリンを含むLB培地40mLに接種し、37℃で一晩培養した。この培養液40mLを50μg/mLのアンピシリンを含む4LのM9-CA培地(0.6% NaHPO、0.5% KHPO、0.5% NaCl、0.1% NHCl、0.1mM CaCl、2mM MgSO、0.5% カザミノ酸、0.2% グルコース)に植え継ぎ、37℃で培養した。OD600=0.3のときに終濃度40mg/Lになるようにインドールアクリル酸を加え、さらに16時間培養した。この培養液を遠心分離し、約12gの菌体を集めた。
次いで、得られた菌体に溶菌バッファー(50mM Tris-HCl(pH8.0)、30mM NaCl、5mM EDTA)60mLを加えて懸濁し、リゾチーム(生化学工業社製)12mgを加えて37℃で1時間反応させた。反応後、超音波破砕150秒によって大腸菌膜を破砕し、15000rpm、30分間、4℃の条件で遠心分離を行なって上清を除去し、各目的のヌクレオチド配列によってコードされたポリペプチドとtrpEとの融合ペプチドを含む不溶性画分を得た。
次いで、前記不溶性画分に界面活性剤を含む洗浄バッファー(25mM Tris-HCl(pH8.0)、5mM EDTA、0.1% NP-40)を55mL加えて懸濁し、15000rpm、30分間、4℃の条件で遠心分離を行なって上清を除去し、洗浄された不溶性画分を得た。さらに、前記不溶性画分に洗浄バッファー(25mM Tris-HCl(pH8.0)、5mM EDTA)を55mL加えて再懸濁し、15000rpm、30分間、4℃の条件で遠心分離を行なって上清を除去し、再洗浄された不溶性画分を得た。次いで、前記再洗浄された不溶性画分に可溶化バッファー(4M尿素、25mM Tris-HCl(pH8.0)、5mM EDTA)を55mL加えて、前記融合ペプチドを可溶化させた可溶化物を得た。
次いで、前記可溶化物を透析バック(MWCO:10kD、スペクトラム社製)に入れ、PBS(0.15M NaClを含む10mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.3))に対して3L容ビーカー中で攪拌しながら4℃で終夜透析を行なったところ、透析バッグ中に白色の沈殿が認められた。透析後の試料を、15000rpm、30分間、4℃の条件で遠心分離を行なって沈殿を除去し、上清を0.22μmの濾過膜で濾過し、粗精製物を得た。
HISタグの付いているtrpE-his-G1E2sの粗精製物については、さらに、Niカラム(His GraviTrap、GEヘルスケア社製)にアプライして捕捉させた後、500mMイミダゾールで溶出し、得られた溶出物をPBSに対して透析し、精製物とした。
(調製例5) E2sを認識するモノクローナル抗体の作製
(5-1)G1E2sを認識するモノクローナル抗体の作製
trpE-his-G1E2sを抗原ポリペプチドとして認識するモノクローナル抗体を作製するため、マウスへの免疫を以下のようにして行なった。すなわち、調製例4で精製したtrpE-his-G1E2s 25~100μgを抗原として、アジュバントであるTiterMax Gold(Titer Max社製)と共にBALB/cマウスに腹腔内投与した。2週間後、同様の追加免疫を行い、さらに約2週間後、前記抗原をPBSに溶解した溶液を最終免疫として尾静脈内に投与した。
最終免疫後3日目にマウスから脾臓を無菌的に摘出し、ハサミ及び金属メッシュを用いて脾臓を個々の細胞にほぐし、RPMI-1640培地で3回洗浄した。対数増殖期のマウス骨髄腫細胞株SP2/0-Ag14をRPMI-1640培地で3回洗浄後、この細胞と前記脾臓細胞とを1:5の細胞数比となるように混合した。200×gで5分間遠心した後、上清を除去し、沈殿の細胞隗を緩やかに混合しながら、50%ポリエチレングリコール(PEG)4000(Merk社製)を含むRPMI-1640培地1mLをゆっくりと加え、さらにRPMI-1640培地10mLを加えて細胞融合させた。
得られた融合細胞を、200×gで5分間遠心してPEGを除いた後、10%ウシ胎児血清及びヒポキサンチン・アミノプテリン・チミジン(HAT)を含むRPMI-1640培地に懸濁し、96ウェル細胞培養プレートに播種した。約10日間培養してハイブリドーマのみを増殖させた後、前記抗原に対して特異的に反応するモノクローナル抗体を産生するクローンをELISA法により検索し、前記抗原に反応するハイブリドーマを得た。限界希釈法により単一クローン化を行い、目的のハイブリドーマ7株(A106、A107、A111、A124、A127、A130及びA137)を樹立した。
樹立した各ハイブリドーマ株を、無血清培地(Hybridoma-SFM、GIBCO社製)を用い、37℃にて5%炭酸ガス中において2~3週間培養した。培養後の培養液を、プロテインAセファロースカラムを用いたアフィニティークロマトグラフィーにかけ、前記培養液中に産生された各モノクローナル抗体(A106、A107、A111、A124、A127、A130及びA137)を精製した。
(5-2)モノクローナル抗体のE2s及び変異E2sに対する結合性評価1
上記(5-1)で得られた各モノクローナル抗体について、調製例4で得られたポリペプチド:trpE-his-G1E2s(G1DS抗原)、trpE-G3DT(G3DT抗原)、trpE-G3D496G(G3GT変異抗原)、trpE-G3T497S(G3DS変異抗原)、及びtrpE-G3D496G/T497S(G3GS変異抗原)をそれぞれ抗原ポリペプチドとしたときのこれらに対する結合性を評価した。
先ず、調製例4で得られた各ポリペプチドの粗精製物又は精製物を抗原ポリペプチドとして、終濃度が0.5μg/mLとなるようにPBS(0.15M NaClを含む10mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.3))で希釈し、96ウェルマイクロプレート(ヌンク社製)の1ウェルにつき100μLずつ分注した。次いで、これを4℃で一晩静置した後、PBS 0.35mLを用いてそれぞれのウェルを2回洗浄した。その後、ブロッキング液(0.5%カゼイン-Naを含むPBS)0.35mLをそれぞれのウェルに添加し、さらに室温で3時間静置した。ブロッキング液を除去した後、マイクロプレートを真空乾燥させてELISAプレートを準備し、使用まで4℃で保管した。
次いで、前記ELISAプレートの各ウェルに、反応液バッファー1(0.2M NaCl、1%BSA、0.07%カゼイン-Naを含む100mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.3))に上記(5-1)で得られた各モノクローナル抗体0.2μg/mLを含有させた抗体反応液を100μLずつ添加し、室温で60分間保温した後、PBS-T(0.05% Tween20を含有するPBS)で5回洗浄した。次いで、各ウェルに、前記反応液バッファー1にPOD(ペルオキシダーゼ)標識抗マウスIgG抗体(ジャクソン・イムノリサーチ社製)を含有させた標識体液100μLずつを添加して室温で60分間保温した後、PBS-Tで5回洗浄した。次いで、各ウェルに、ELISA POD基質TMBキット(ナカライテスク社製)の混合溶液を100μLずつ添加し、室温、暗所で30分間反応させた。反応後、各ウェルに2N硫酸溶液を100μLずつ添加し、波長630nmにおける吸光度(OD630)及び波長450nmにおける吸光度(OD450)を測定し、OD450-OD630を測定結果として、各モノクローナル抗体のE2s及び変異E2sに対する結合性の評価指標とした。
下記の表2に、調製例4で得られたポリペプチドをそれぞれ抗原ポリペプチドとしたときの測定結果及び評価結果を示す。表2において、「-」は結合性無し(OD450-OD630:1.000未満)、「+」は十分な結合性がある(OD450-OD630:1.000以上2.000未満)、「++」は強い結合性有り(OD450-OD630:2.000以上)、を示す。
表2に示したように、モノクローナル抗体A106、A107、及びA137は、G1DS抗原、G3DT抗原、及びG3DS変異抗原、すなわち、配列番号1、3に記載のアミノ酸配列の第41番目のアミノ酸がアスパラギン酸(D)である抗原ペプチドであれば、遺伝子型に拘わらず結合性を示した。そのため、配列番号1~4に記載のアミノ酸配列の第41番目のアスパラギン酸がこれらモノクローナル抗体のエピトープであると同定された。また、モノクローナル抗体A111及びA124は、遺伝子1型よりも遺伝子3型に対して比較的強い結合性を示した。これらの結果より、下記の抗HEV抗体及びHEVの同時検出系に用いるモノクローナル抗体としては、G3GT変異抗原及びG3GS変異抗原に対する結合性が無く、野生型のG1DS抗原及びG3DT抗原に対する結合性を有するA106、A107、及びA137が好適な抗体であると認められた。
(5-3)モノクローナル抗体のE2s及び変異E2sに対する結合性評価2
上記(5-1)で得られた各モノクローナル抗体について、調製例4で得られたポリペプチド:trpE-G3D496A(G3AT変異抗原)及びtrpE-G3D496V(G3VT変異抗原)についても、これらをそれぞれ抗原ポリペプチドとしたときのこれらに対する結合性を評価した。また、参照として、trpE-G3DT(G3DT抗原)及びtrpE-G3D496G(G3GT変異抗原)をそれぞれ抗原ポリペプチドとしたときの各モノクローナル抗体の結合性も合わせて評価した。
先ず、調製例4で得られた各ポリペプチドの粗精製物を抗原ポリペプチドとして、上記(5-2)と同様にしてELISAプレートを準備し、使用まで4℃で保管した。次いで、反応停止用の2N硫酸溶液を50μLとしたこと以外は上記(5-2)と同様にして、波長630nmにおける吸光度(OD630)及び波長450nmにおける吸光度(OD450)を測定し、OD450-OD630を測定結果として、各モノクローナル抗体のE2s及び変異E2sに対する結合性の評価指標とした。
下記の表3に、各ポリペプチドをそれぞれ抗原ポリペプチドとしたときの測定結果及び評価結果を示す。表3において、「-」は結合性無し(OD450-OD630:0.500未満)、「+」は十分な結合性有り(OD450-OD630:0.500以上2.000未満)、「++」は強い結合性有り(OD450-OD630:2.000以上)、を示す。なお、表2と表3との間で値が異なるのは、実施日時の違いにより抗原固相化条件等の諸反応条件が異なったためである。表2及び表3内のそれぞれにおいては、測定条件は同一で比較している。
表3に示したように、G3AT変異抗原及びG3VT変異抗原を抗原ポリペプチドとした場合にも、各モノクローナル抗体は、G3GT変異抗原を抗原ポリペプチドとした場合と同様のパターンの結合性を示した。特に、モノクローナル抗体A106、A107、及びA137は、G3DT抗原には結合性を示したが、G3GT変異抗原、G3AT変異抗原、及びG3VT変異抗原、すなわち、配列番号3に記載のアミノ酸配列の第41番目のアスパラギン酸(D)がそれ以外のアミノ酸に置換された抗原ペプチドには結合性を示さなかった。したがって、これらの結果からも、配列番号1~4に記載のアミノ酸配列の第41番目のアスパラギン酸がこれらモノクローナル抗体のエピトープであると同定され、下記の抗HEV抗体及びHEVの同時検出系に用いるモノクローナル抗体としては、A106、A107、及びA137が特に好適な抗体であると認められた。
(5-4)取得モノクローナル抗体のアイソタイプ
上記(5-1)で樹立した各ハイブリドーマ株を、無血清培地(Hybridoma-SFM、GIBCO社製)を用い、37℃にて5%炭酸ガス中において2~3週間培養した。培養後の培養液を、プロテインAセファロースカラムを用いたアフィニティークロマトグラフィーにかけ、前記培養液中に産生された各モノクローナル抗体(A106、A107、A111、A124、A127、A130及びA137)を精製した。次いで、精製した各モノクローナル抗体について、抗マウスIg各アイソタイプ抗体を用いたアイソタイプタイピングキット(Zymed社製)により、サブクラスを同定した。結果を下記の表4に示す。表4に示すように、アイソタイプは全てIgGであり、サブクラスIgG2aであるA127以外は、全てサブクラスIgG1であることが確認された。
(調製例6) ビオチン化抗原及びビオチン化モノクローナル抗体の作製
G1DS抗原、G3DT抗原、及びG3GT変異抗原、並びに、各モノクローナル抗体をビオチン化するために、ビオチン試薬(Sulfo-NHS-LC-Biotin、サーモ社製)を用いて、それぞれの抗原・抗体をビオチンで修飾した。すなわち、先ず、使用直前にビオチン試薬1mgを超純水180μLに溶かし、10mMビオチン溶液を調製した。次いで、1mLのPBSに溶解している、調製例4で得られたポリペプチド:trpE-his-G1E2s(G1DS抗原)、trpE-G3DT(G3DT抗原)、trpE-G3D496G(G3GT変異抗原)、並びに、調製例5の(5-1)で得られた各モノクローナル抗体をそれぞれ1mgと、前記10mMビオチン溶液66.7μLと、を混合し、室温で30分間保温した。次いで、PD-10を用いて、未反応のビオチン試薬をPBSで脱塩し、ビオチン修飾された各E2s抗原(ビオチン化抗原)及び各モノクローナル抗体(ビオチン化モノクローナル抗体)を精製した。
(試験例1) 変異抗原の抗HEV抗体に対する結合性評価
変異抗原が抗HEV抗体に対する結合性を維持していることを確認した。すなわち、市販又は従来公知の方法で生成された抗ヒトIgM抗体を、終濃度が5μg/mLとなるようにPBS(0.15M NaClを含む10mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.3))で希釈し、96ウェルマイクロプレート(ヌンク社製)の1ウェルにつき100μLずつ分注した。次いで、これを4℃で一晩静置した後、PBS 0.35mLを用いてそれぞれのウェルを2回洗浄した。その後、ブロッキング液(0.5%カゼイン-Naを含むPBS)0.35mLをそれぞれのウェルに添加し、さらに室温で3時間静置した。ブロッキング液を除去した後、マイクロプレートを真空乾燥させて抗IgM抗体固相化プレートを準備し、使用まで4℃で保管した。
これを用いて、Aalto Bio Regents社から購入したE型肝炎患者血漿を含むヒト血漿からなる検体群(34検体)について、検体中の抗HEV抗体(IgM抗体)価を測定した。すなわち、前記抗IgM抗体固相化プレートに、反応液(0.2M NaCl、1% BSA、0.07%カゼイン-Naを含む100mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.3))90μLと、前記反応液で50倍希釈した各検体10μLとを添加し、37℃で45分間反応させた。反応後、洗浄液(0.05% Tween20を含有するPBS)0.35mLを用いて、それぞれのウェルを5回洗浄した。その後、調製例6で調製したビオチン化抗原:G3DT抗原(0.2μg/mL)及びG3GT変異抗原(実施例)(0.3μg/mL)を100μLずつそれぞれ、前記抗IgM抗体固相化プレートの各ウェルに添加し、37℃で45分間反応させた。次いで、前記洗浄液で洗浄後、各ウェルにPOD標識したストレプトアビジン(500unit/mL)(SA-POD、ロシュ社製)を3000倍希釈して調製した標識体液100μLをそれぞれのウェルに添加し、37℃で30分間反応させた。次いで、前記洗浄液で洗浄後、ELISA POD基質TMBキット(ナカライテスク社製)の混合溶液を100μLずつ各ウェルに添加し、37℃、暗所で15分間反応させた。反応後、各ウェルに2N硫酸溶液を50μLずつ添加し、波長630nmにおける吸光度(OD630)及び波長450nmにおける吸光度(OD450)を測定し、OD450-OD630を測定結果(検体中の抗HEV抗体(IgM抗体)価)とし、各検体の陰性及び陽性の判定をした。
下記の表5に、G3DT抗原及びG3GT変異抗原をそれぞれ抗原ポリペプチドとしたときの各検体における測定結果及び判定結果を示す。カットオフ値は、別途、G3DT抗原を抗原ポリペプチドとしたときのTRINA社から購入したE型肝炎患者血漿を含まないヒト血漿からなる検体群(陰性検体:n=100)の平均値+10SDを適用し、0.100であった。表5において、「-」は陰性(OD450-OD630:カットオフ値未満)、「+」は陽性(OD450-OD630:カットオフ値以上)を示す。
表5に示したように、変異抗原、すなわち、配列番号3に記載のアミノ酸配列の第41番目のアスパラギン酸(D)がグリシン(G)に置換された抗原ペプチドであるG3GT変異抗原は、各検体に対して、変異を導入していないG3DT抗原と同じ結合性を示し、抗HEV抗体に対する結合性が維持されているか、それ以上であることが確認された。
(試験例2) HEV検出系のための各モノクローナル抗体の組合せ検討
(1)G1E2s抗原に対する結合性の検討
上記調製例5の(5-1)で得られたモノクローナル抗体のうち、調製例5でG1DS抗原又はG3DT抗原には結合性を示したが、G3GT変異抗原、G3GS変異抗原、G3AT変異抗原、及びG3VT変異抗原には結合性を示さなかった抗体4種(A106、A107、A127、及びA137)を、終濃度が5μg/mLになるようにPBS(0.15M NaClを含む10mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.3))で希釈し、96ウェルマイクロプレート(ヌンク社製)の1ウェルにつき100μLずつ分注した。次いで、これを4℃で一晩静置した後、PBS 0.35mLを用いてそれぞれのウェルを2回洗浄した。その後、ブロッキング液(0.5%カゼイン-Naを含むPBS)0.35mLをそれぞれのウェルに添加し、さらに室温で3時間静置した。ブロッキング液を除去した後、マイクロプレートを真空乾燥させて各モノクローナル抗体固相化プレートを準備し、使用まで4℃で保管した。
前記モノクローナル抗体固相化プレートに、反応液(0.2M NaCl、1% BSA、及び0.007%カゼイン-Naを含む100mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.3))90μLと、調製例4で得られたtrpE-his-G1E2s:G1E2s抗原(0.1μg/mL)10μLとを添加し、室温で1時間反応させた。反応後、洗浄液(0.05% Tween20を含有するPBS)0.35mLを用いて、それぞれのウェルを5回洗浄した。その後、調製例6で調製した各ビオチン化モノクローナル抗体(1mg/mL)の5000倍希釈物を100μずつそれぞれ、前記モノクローナル抗体固相化プレートの各ウェルに添加し、室温で1時間反応させた。次いで、前記洗浄液で5回洗浄後、各ウェルにPOD標識したストレプトアビジン(500unit/mL)(SA-POD、ロシュ社製)を5000倍希釈して調製した標識体液100μLをそれぞれのウェルに添加し、室温で30分間反応させた。次いで、前記洗浄液で5回洗浄後、ELISA POD基質TMBキット(ナカライテスク社製)の混合溶液を100μLずつ各ウェルに添加し、室温、暗所で30分間反応させた。反応後、各ウェルに2N硫酸溶液を100μLずつ添加し、波長630nmにおける吸光度(OD630)及び波長450nmにおける吸光度(OD450)を測定し、OD450-OD630を測定結果として、G1E2s抗原への結合性評価の指標とした。
下記の表6に、各モノクローナル抗体の組み合わせにおける測定結果及び評価結果を示す。表6において、「-」は結合性無し(OD450-OD630:1.000未満)、「+」は十分な結合性有り(OD450-OD630:1.000以上2.000未満)、「++」は強い結合性有り(OD450-OD630:2.000以上)、を示す。
表6に示したように、上記4種のモノクローナル抗体においてはいずれも、各モノクローナル抗体を捕捉体の補足用抗体としたときにG1E2s抗原への結合性を示した。
(2)変異抗原(G3GT変異抗原)に対する結合性の検討
G1E2s抗原に代えて、調製例4で得られたtrpE-G3D496G:G3GT変異抗原(0.1μg/mL)を用いたこと以外は上記(1)と同様にして、測定結果(OD450-OD630)を変異抗原(G3GT変異抗原)への結合性評価の指標とした。
下記の表7に、各モノクローナル抗体の組み合わせにおける測定結果及び評価結果を示す。表7において、「-」は結合性無し(OD450-OD630:1.000未満)、「+」は十分な結合性有り(OD450-OD630:1.000以上2.000未満)、「++」は強い結合性有り(OD450-OD630:2.000以上)、を示す。
表7に示したように、上記4種のモノクローナル抗体の組み合わせにおいてはいずれも、変異抗原(G3GT変異抗原)に対する結合性は認められなかった。各組み合わせの中でも、検出用抗体がモノクローナル抗体A107である場合には、補足用抗体がモノクローナル抗体A137のときに最も低値を示した。
(3)HEV抗原陽性検体への結合性の検討
G1E2s抗原に代えて、TRIANA社から購入したHEV抗原陽性検体(20倍希釈)を用いたこと以外は上記(1)と同様にして、測定結果(OD450-OD630)をHEV抗原陽性検体への反応性検討の指標とした。
下記の表8に、各モノクローナル抗体の組み合わせにおけるHEV抗原陽性検体への反応性の結果を示す。表8において、「-」は反応性無し(OD450-OD630:0.300未満)、「+」は十分な反応性有り(OD450-OD630:0.300以上1.000未満)、「++」は強い反応性有り(OD450-OD630:1.000以上)、を示す。
表8に示したように、モノクローナル抗体A107を検出用抗体とした場合に、モノクローナル抗体A127との組み合わせ、又は、モノクローナル抗体A137との組み合わせにおいて、HEV抗原陽性検体への反応性が確認された。調製例5及び上記(1)~(3)の結果より、下記の抗HEV抗体及びHEVの同時検出系に用いるモノクローナル抗体として、検出用抗体としてはモノクローナル抗体A107が最も好適であるとし、これと組み合わせる捕捉用抗体としては、モノクローナル抗体A137が好適であるとした。
(試験例3) HEV陽性・陰性検体での結合性の確認
(1)抗HEV抗体及びHEVの同時検出系(実施例)
(1-1)抗HEV抗体測定(抗体検出系)
市販又は従来公知の方法で生成された抗ヒトIgM抗体と、上記調製例5の(5-1)で精製したモノクローナル抗体A137との質量比が1:4となるように混合し、抗体の合計濃度で終濃度が5μg/mLとなるようにPBS(0.15M NaClを含む10mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.3))で希釈し、96ウェルマイクロプレート(ヌンク社製)の1ウェルにつき100μLずつ分注した。次いで、これを4℃で一晩静置した後、PBS 0.35mLを用いてそれぞれのウェルを2回洗浄した。その後、ブロッキング液(0.5%カゼイン-Naを含むPBS)0.35mLをそれぞれのウェルに添加し、さらに室温で3時間静置した。ブロッキング液を除去した後、マイクロプレートを真空乾燥させて抗IgM抗体及びモノクローナル抗体A137固相化プレートを準備し、使用まで4℃で保管した。
これを用いて、TRINA社から購入したE型肝炎患者血漿を含むヒト血漿からなる検体群(13検体)について、検体中の抗HEV抗体(IgM抗体)価を測定した。すなわち、前記抗IgM抗体及びモノクローナル抗体A137固相化プレートに、反応液(0.2M NaCl、1% BSA、0.07%カゼイン-Naを含む100mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.3))90μLと、各検体10μLとを添加し、室温で1時間反応させた。反応後、洗浄液(0.05% Tween20を含有するPBS)0.35mLを用いて、それぞれのウェルを5回洗浄した。その後、調製例6で調製したビオチン化変異抗原:G3GT変異抗原(0.05μg/mL)を100μLずつそれぞれ、前記プレートの各ウェルに添加し、室温で1時間反応させた。次いで、前記洗浄液で5回洗浄後、各ウェルにPOD標識したストレプトアビジン(500unit/mL)(SA-POD、サーモ社製)を5000倍希釈して調製した標識体液100μLをそれぞれのウェルに添加し、室温で30分間反応させた。次いで、前記洗浄液で5回洗浄後、ELISA POD基質TMBキット(ナカライテスク社製)の混合溶液を100μLずつ各ウェルに添加し、室温、暗所で30分間反応させた。反応後、各ウェルに2N硫酸溶液を100μLずつ添加し、波長630nmにおける吸光度(OD650)及び波長450nmにおける吸光度(OD450)を測定し、測定結果(OD450-OD630)を検体中の抗HEV抗体(IgM抗体)価として、各検体の陰性及び陽性を判定した。
(1-2)HEV測定(抗原検出系)
上記(1-1)と同様にして抗IgM抗体及びモノクローナル抗体A137固相化プレートを準備し、使用まで4℃で保管した。これを用いて、(1-1)と同じ検体群(14検体)について、検体中のHEV抗原価を測定した。すなわち、前記抗IgM抗体及びモノクローナル抗体A137固相化プレートに、反応液(0.2M NaCl、1% BSA、0.07%カゼイン-Naを含む100mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.3))90μLと、各検体10μLとを添加し、室温で1時間反応させた。反応後、洗浄液(0.05% Tween20を含有するPBS)0.35mLを用いて、それぞれのウェルを5回洗浄した。その後、調製例6で調製したビオチン化モノクローナル抗体A107(0.15μg/mL)を100μLずつそれぞれ、前記プレートの各ウェルに添加し、室温で1時間反応させた。次いで、前記洗浄液で5回洗浄後、各ウェルにPOD標識したストレプトアビジン(500unit/mL)(SA-POD、サーモ社製)を5000倍希釈して調製した標識体液100μLをそれぞれのウェルに添加し、室温で30分間反応させた。次いで、前記洗浄液で5回洗浄後、ELISA POD基質TMBキット(ナカライテスク社製)の混合溶液を100μLずつ各ウェルに添加し、室温、暗所で30分間反応させた。反応後、各ウェルに2N硫酸溶液を100μLずつ添加し、波長630nmにおける吸光度(OD650)及び波長450nmにおける吸光度(OD450)を測定し、測定結果(OD450-OD630)を検体中のHEV抗原価として、各検体の陰性及び陽性を判定した。
(1-3)同時検出系
上記(1-1)と同様にして抗IgM抗体及びモノクローナル抗体A137固相化プレートを準備し、使用まで4℃で保管した。これを用いて、(1-1)と同じ検体群(14検体)について、検体中の抗HEV抗体(IgM抗体)価及びHEV抗原価の合計値を測定した。すなわち、前記抗IgM抗体及びモノクローナル抗体A137固相化プレートに、反応液(0.2M NaCl、1% BSA、0.07%カゼイン-Naを含む100mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.3))90μLと、各検体10μLとを添加し、室温で1時間反応させた。反応後、洗浄液(0.05% Tween20を含有するPBS)0.35mLを用いて、それぞれのウェルを5回洗浄した。その後、調製例6で調製したビオチン化変異抗原:G3GT変異抗原(0.05μg/mL)とビオチン化モノクローナル抗体A107(0.15μg/mL)との混合液100μLをそれぞれ、前記プレートの各ウェルに添加し、室温で1時間反応させた。次いで、前記洗浄液で5回洗浄後、各ウェルにPOD標識したストレプトアビジン(500unit/mL)(SA-POD、サーモ社製)を5000倍希釈して調製した標識体液100μLをそれぞれのウェルに添加し、室温で30分間反応させた。次いで、前記洗浄液で5回洗浄後、ELISA POD基質TMBキット(ナカライテスク社製)の混合溶液を100μLずつ各ウェルに添加し、室温、暗所で30分間反応させた。反応後、各ウェルに2N硫酸溶液を100μLずつ添加し、波長630nmにおける吸光度(OD650)及び波長450nmにおける吸光度(OD450)を測定し、測定結果(OD450-OD630)を検体中の抗HEV抗体(IgM抗体)価及びHEV抗原価の合計値)として、各検体の陰性及び陽性を判定した。
(2)抗体検出系(比較例)
Wantai Biological Pharmacy Enterprise社製のキット「HEV-IgM ELISA」を用いて、上記(1-1)と同じ検体群(13検体)について、検体中の抗HEV抗体(IgM抗体)価を測定した。具体的には、キットの抗IgM抗体固相化プレートの各ウェルに、検体希釈液100μL、及び検体10μLを添加し、37℃で30分間反応させた。次いで、洗浄液で5回洗浄後、各ウェルにPOD標識した抗原ポリペプチド(遺伝子1型のHEV遺伝子のORF2(DDBJ Accession No.:D11092)にコードされるアミノ酸の394~606番目からなるリコンビナントHEV抗原ポリペプチド)を添加し、37℃で30分間反応させた。次いで、洗浄液で5回洗浄後、各ウェルにクロモゲンA 50μLとクロモゲンB 50μLとを添加し、37℃、暗所で15分間反応させた。反応後、各ウェルに反応停止液を50μLずつ添加し、波長630nmにおける吸光度(OD630)を対照として波長450nmにおける吸光度(OD450)を測定し、測定結果(OD450-OD630)を検体中の抗HEV抗体(IgM抗体)価として、各検体の陰性及び陽性を判定した。
(3)抗原検出系(比較例)
Wantai Biological Pharmacy Enterprise社製のキット「HEV-Ag ELISA」を用いて、上記(1-1)と同じ検体群(13検体)について、検体中のHEV抗原価を測定した。具体的には、キットの抗HEVポリクローナル抗体固相化プレートの各ウェルに、検体希釈液20μL、及び検体50μLを添加し、37℃で60分間反応させた。反応後、各ウェルにPOD標識した抗HEVモノクローナル抗体100μLを追加添加し、37℃で30分間反応させた。次いで、洗浄液で5回洗浄後、各ウェルにクロモゲンA 50μLとクロモゲンB 50μLとを添加し、37℃、暗所で15分間反応させた。反応後、各ウェルに反応停止液を50μLずつ添加し、波長630nmにおける吸光度(OD650)及び波長450nmにおける吸光度(OD450)を測定し、測定結果(OD450-OD630)を検体中のHEV抗原価として、各検体の陰性及び陽性を判定した。
下記の表9に、上記(1)~(3)の各検出系における測定結果及び判定結果をそれぞれ示す。(2)の抗体検出系のカットオフ値は、次式:陰性コントロールの平均値(0.043)+カットオフ係数(0.26)により算出し、0.303であった。(3)の抗原検出系のカットオフ値は、次式:陰性コントロールの平均値(0.167)+カットオフ係数(0.16)により算出し、0.327であった。(1)の抗体検出系、抗原検出系、及び同時検出系のカットオフ値は、別途、TRINA社から購入したE型肝炎患者血漿を含まないヒト血漿からなる検体群(陰性検体:n=100)の平均値+10SDを適用し、それぞれ、0.200、0.100、及び0.200であった。表9において、「-」は陰性(カットオフ値未満)、「+」は陽性(カットオフ値以上、かつ、カットオフ値×5未満)、「++」は強い陽性(カットオフ値×5以上)を示す。
表9に示したように、本発明のポリペプチド(G3GT変異抗原)を抗原ポリペプチドとした抗HEV抗体検出系(1-1)においては、従来の抗HEV抗体検出系(2)のキット(Wantai Biological Pharmacy Enterprise社のHEV-IgM ELISAキット)を用いた結果と同等の反応性を示した。また、HEV検出系(1-2)においても、従来のHEV検出系(3)のキット(Wantai Biological Pharmacy Enterprise社のHEV-Ag ELISAキット)を用いた結果と同等の反応性を示した。さらに、本発明のポリペプチド(G3GT変異抗原)を抗原ポリペプチドとした、抗HEV抗体及びHEVの同時検出系(1-3)においては、(1-1)の抗体検出系及び(1-2)の抗原検出系を総合した結果に一致して、かつ、互いに阻害することなく、抗HEV抗体及びHEVの両方を同時に高感度で検出できることが確認された。なお、検体番号2、7、11は、HEV抗原及び抗HEV抗体陰性検体であった。以上の結果より、本発明のポリペプチド(変異抗原)を抗原ポリペプチドとして用いた同時検出方法によれば、従来のように2種の検出系(抗体検出系及び抗原検出系)をそれぞれ別に行わなくとも、簡便かつ高感度に、抗HEV抗体及びHEVを同時に検出することが可能となることが確認された。
本発明によれば、抗E型肝炎ウイルス抗体の検出、特に、抗E型肝炎ウイルス抗体及びE型肝炎ウイルスの同時検出を十分に高感度で行うことが可能なポリペプチド、それを用いた抗E型肝炎ウイルス抗体の検出方法、抗E型肝炎ウイルス抗体及びE型肝炎ウイルスの同時検出方法、並びに、これらの検出方法に用いるキットを提供することが可能となる。

Claims (10)

  1. 下記(1a)~(1c)、(2a)~(2c)、(3a)~(3c)、及び(4a)~(4c)からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とするポリペプチド。
    (1a)配列番号1に記載のアミノ酸配列の第41番目のアスパラギン酸が他の任意のアミノ酸に置換された置換アミノ酸であるアミノ酸配列を含むポリペプチド
    (1b)配列番号1に記載のアミノ酸配列において1若しくは複数個が置換、欠失、挿入及び/又は付加されたアミノ酸配列であり、かつ、配列番号1に記載のアミノ酸配列の第41番目のアスパラギン酸に対応するアミノ酸が、アスパラギン酸以外の任意のアミノ酸に置換された置換アミノ酸であるアミノ酸配列を含むポリペプチド
    (1c)配列番号1に記載のアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列であり、かつ、配列番号1に記載のアミノ酸配列の第41番目のアスパラギン酸に対応するアミノ酸が、アスパラギン酸以外の任意のアミノ酸に置換された置換アミノ酸であるアミノ酸配列を含むポリペプチド
    (2a)配列番号2に記載のアミノ酸配列の第41番目のアスパラギン酸が他の任意のアミノ酸に置換された置換アミノ酸であるアミノ酸配列を含むポリペプチド
    (2b)配列番号2に記載のアミノ酸配列において1若しくは複数個が置換、欠失、挿入及び/又は付加されたアミノ酸配列であり、かつ、配列番号2に記載のアミノ酸配列の第41番目のアスパラギン酸に対応するアミノ酸が、アスパラギン酸以外の任意のアミノ酸に置換された置換アミノ酸であるアミノ酸配列を含むポリペプチド
    (2c)配列番号2に記載のアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列であり、かつ、配列番号2に記載のアミノ酸配列の第41番目のアスパラギン酸に対応するアミノ酸が、アスパラギン酸以外の任意のアミノ酸に置換された置換アミノ酸であるアミノ酸配列を含むポリペプチド
    (3a)配列番号3に記載のアミノ酸配列の第41番目のアスパラギン酸が他の任意のアミノ酸に置換された置換アミノ酸であるアミノ酸配列を含むポリペプチド
    (3b)配列番号3に記載のアミノ酸配列において1若しくは複数個が置換、欠失、挿入及び/又は付加されたアミノ酸配列であり、かつ、配列番号3に記載のアミノ酸配列の第41番目のアスパラギン酸に対応するアミノ酸が、アスパラギン酸以外の任意のアミノ酸に置換された置換アミノ酸であるアミノ酸配列を含むポリペプチド
    (3c)配列番号3に記載のアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列であり、かつ、配列番号3に記載のアミノ酸配列の第41番目のアスパラギン酸に対応するアミノ酸が、アスパラギン酸以外の任意のアミノ酸に置換された置換アミノ酸であるアミノ酸配列を含むポリペプチド
    (4a)配列番号4に記載のアミノ酸配列の第41番目のアスパラギン酸が他の任意のアミノ酸に置換された置換アミノ酸であるアミノ酸配列を含むポリペプチド
    (4b)配列番号4に記載のアミノ酸配列において1若しくは複数個が置換、欠失、挿入及び/又は付加されたアミノ酸配列であり、かつ、配列番号4に記載のアミノ酸配列の第41番目のアスパラギン酸に対応するアミノ酸が、アスパラギン酸以外の任意のアミノ酸に置換された置換アミノ酸であるアミノ酸配列を含むポリペプチド
    (4c)配列番号4に記載のアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列であり、かつ、配列番号4に記載のアミノ酸配列の第41番目のアスパラギン酸に対応するアミノ酸が、アスパラギン酸以外の任意のアミノ酸に置換された置換アミノ酸であるアミノ酸配列を含むポリペプチド。
  2. (1a)~(1c)、(2a)~(2c)、(3a)~(3c)、及び(4a)~(4c)のポリペプチドにおいて、前記置換アミノ酸が、それぞれ独立に、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、又はスレオニンであることを特徴とする、請求項1に記載のポリペプチド。
  3. 試料中の抗E型肝炎ウイルス抗体を検出する方法に用いるための抗原ポリペプチドであることを特徴とする、請求項1又は2に記載のポリペプチド。
  4. 試料中の抗E型肝炎ウイルス抗体を検出する方法に用いるためのキットであり、
    抗E型肝炎ウイルス抗体に対する抗原ポリペプチドを含み、
    前記抗原ポリペプチドが請求項1に記載のポリペプチドである、
    ことを特徴とするキット。
  5. 試料中の抗E型肝炎ウイルス抗体及びE型肝炎ウイルスを同時に検出する方法に用いるためのキットであり、
    抗E型肝炎ウイルス抗体に対する第1の抗体と、抗E型肝炎ウイルス抗体に対する抗原ポリペプチドと、E型肝炎ウイルスに対する第2の抗体と、E型肝炎ウイルスに対する第3の抗体と、を含み、
    前記抗原ポリペプチドが請求項1に記載のポリペプチドであり、
    第2の抗体及び第3の抗体が前記抗原ポリペプチドに結合しない抗体である、
    ことを特徴とするキット。
  6. 前記抗E型肝炎ウイルス抗体のアイソタイプがIgMであることを特徴とする、請求項4又は5に記載のキット。
  7. 試料中の抗E型肝炎ウイルス抗体を検出する方法であり、
    試料中の抗E型肝炎ウイルス抗体に、抗原ポリペプチドを結合させて抗E型肝炎ウイルス抗体を検出する検出工程を含み、
    前記抗原ポリペプチドが請求項1又は2に記載のポリペプチドである、
    ことを特徴とする、抗E型肝炎ウイルス抗体の検出方法。
  8. 前記検出工程が、前記試料と、第1の捕捉体と、第1の検出体と、を接触させる工程であり、
    第1の捕捉体が、抗E型肝炎ウイルス抗体に対する第1の抗体及び前記抗原ポリペプチドのうちの一方と、非水溶性担体と、を備えるものであり、
    第1の検出体が、第1の抗体及び前記抗原ポリペプチドのうちの他方を備えるものである、
    ことを特徴とする、請求項7に記載の抗E型肝炎ウイルス抗体の検出方法。
  9. 試料中の抗E型肝炎ウイルス抗体及びE型肝炎ウイルスを同時に検出する方法であり、
    試料中の抗E型肝炎ウイルス抗体に、抗E型肝炎ウイルス抗体に対する第1の抗体及び抗原ポリペプチドを結合させて抗E型肝炎ウイルス抗体を検出する第1の検出と、前記試料中のE型肝炎ウイルスに、E型肝炎ウイルスに対する第2の抗体及びE型肝炎ウイルスに対する第3の抗体を結合させてE型肝炎ウイルスを検出する第2の検出と、を同時に行う検出工程を含み、
    前記抗原ポリペプチドが請求項1又は2に記載のポリペプチドであり、
    第2の抗体及び第3の抗体が前記抗原ポリペプチドに結合しない抗体である、
    ことを特徴とする、抗E型肝炎ウイルス抗体及びE型肝炎ウイルスの同時検出方法。
  10. 前記検出工程が、前記試料と、第1の捕捉体と、第1の検出体と、第2の捕捉体と、第2の検出体と、を接触させる工程であり、
    第1の捕捉体が、第1の抗体及び前記抗原ポリペプチドのうちの一方と、非水溶性担体と、を備えるものであり、
    第1の検出体が、第1の抗体及び前記抗原ポリペプチドのうちの他方を備えるものであり、
    第2の捕捉体が、第2の抗体及び第3の抗体のうちの一方と、非水溶性担体と、を備えるものであり、
    第2の検出体が、第2の抗体及び第3の抗体のうちの他方を備えるものである、
    ことを特徴とする、請求項9に記載の抗E型肝炎ウイルス抗体及びE型肝炎ウイルスの同時検出方法。
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