JP2024018385A - 移植用組成物及び移植用組成物の製造方法 - Google Patents

移植用組成物及び移植用組成物の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】少数の神経細胞で効率よく移植可能な神経細胞移植用組成物、及びその製造方法を提供する。【解決手段】1以上の神経細胞と多孔質体を備える移植用組成物であって、前記多孔質体は、1以上の開口を有する第1開口面部と、多孔質体を挟んで前記第1の開口面部と対向する、1以上の開口を有する第2の開口面部を備え、前記第1の開口面部の開口と前記第2の開口面部の開口とを連通する貫通孔を備え、前記神経細胞の細胞体が前記第1の開口面部に配置される、移植用組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、神経細胞を対象の体内に移植するための、移植用組成物及び移植用組成物の製造方法に関する。
脊髄損傷を治療するための再生医療に際して、少ない細胞数の移植で効率よく治療が可能な方法が求められる。特許文献1には、神経損傷部位に、神経栄養因子を分泌するように形質転換された線維芽細胞を注射する方法が開示されている。特許文献2には、神経細胞を含むマクロ多孔質ハイドロゲルを神経又は脊髄損傷の治療に使用することが開示されている。特許文献1及び2の方法では、神経細胞の突起がランダムに伸展してネットワークを形成してしまうため、脊髄損傷治療のように長く一方向に進展した神経経路を必要とする場合には、多数の細胞を必要とする。一方、特許文献3には、神経細胞の伸展、特に軸索の伸展を一方向に制御可能な、マイクロチャネルを備えた神経細胞培養用のデバイスが開示されている。この技術では、移植の前に、培養された神経細胞をデバイスから分離することを要する。また、依然としてデバイス上に比較的多量の細胞を適用することを要する。
本発明は、少数の神経細胞で効率よく移植可能な神経細胞移植用組成物、及びその製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、以下の発明を提供するに至った。
<移植用組成物>
1以上の神経細胞と多孔質体を備える移植用組成物であって、前記多孔質体は、1以上の開口を有する第1開口面部と、前記多孔質体を挟んで第1の開口面部と対向する、1以上の開口を有する第2の開口面部を備え、前記第1の開口面部の開口と前記第2の開口面部の開口とを連通する貫通孔を備え、前記神経細胞の細胞体が前記第1の開口面部に配置される、移植用組成物。
<移植用組成物の製造方法>
下記工程i)~iii)を含む、移植用組成物の製造方法:
i)1以上の開口を有する第1の開口面部と、多孔質体を挟んで前記第1の開口面部と対向する、1以上の開口を有する第2の開口面部とを備え、前記第1の開口面部の開口と前記第2の開口面部の開口とを連通する貫通孔を備える、多孔質体を準備する工程;
ii)前記多孔質体の第1の開口面部に神経細胞を配置する工程;
iii)前記神経細胞を培養して、神経突起を前記貫通孔の貫通方向に沿って伸展させる工程。
本発明によれば、少数の神経細胞で効率よく移植可能な神経細胞移植用組成物及びその製造方法を提供することができる。
本発明の移植用組成物の例における、多孔質体及び貫通孔の断面概略図である。多孔質体Aは柱体、多孔質体Bは多面体、多孔質体Cは略球体の多孔質体である。図中、多孔質体の太線部分は、各多孔質体の第1の開口面部の表面を示す。 本発明の移植用組成物の薄膜を用いる態様の例を、共焦点顕微鏡で観察した画像である。 本発明の移植用組成物の例を共焦点顕微鏡で観察した画像である。図3Aは、神経細胞を多孔質体の開口面部に分散させた顕微鏡写真、図3Bは、神経細胞を多孔質の開口面部に凝集させた顕微鏡写真である。 実施例2の移植用組成物の共焦点顕微鏡による観察画像である。図4Aは、多孔質体の第1の開口面部表面、図4Bは、多孔質体内部、図4Cは、多孔質体の第2の開口面部表面の写真である。 実施例3の移植用組成物の共焦点顕微鏡による観察画像である。図5Aは、多孔質体の第1の開口面部表面の共焦点顕微鏡写真である。図5Bは、多孔質体内部の共焦点顕微鏡写真である。図5Cは、多孔質体の第2の開口面部表面の共焦点顕微鏡写真である。 比較例1の溝構造体上の神経細胞スフェロイドの共焦点顕微鏡による観察画像である。 比較例2の溝構造体上の神経細胞スフェロイドの位相差顕微鏡による検察画像である。 本発明の移植用組成物による脊髄損傷の治療メカニズムの一例の概略図である。
1.移植用組成物
本発明の第1の実施形態は、対象に神経細胞を移植するための移植用組成物である。本実施形態の移植用組成物(以下、単に「本実施形態の組成物」とも称する)は、1以上の神経細胞と多孔質体を備える移植用組成物であって、前記多孔質体は、1以上の開口を有する第1開口面部と、前記多孔質体を挟んで第1の開口面部と対向する、1以上の開口を有する第2の開口面部を備え、前記第1の開口面部の開口と前記第2の開口面部の開口とを連通する貫通孔を備え、前記神経細胞の細胞体が前記第1の開口面部に配置される、ことを特徴とする。
本明細書において、「組成物」とは、複数の成分を含む物を指す。本実施形態の組成物は、少なくとも多孔質体と神経細胞とで構成される物を指す。
本明細書において、「対象」とは、本実施形態の組成物を用いた治療対象となる哺乳類動物を指し、例えば、ヒト、チンパンジーを含む霊長類、イヌ、ネコなどのペット動物、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ヤギなどの家畜動物、マウス、ラットなどの齧歯類、動物園で飼育される哺乳類動物が挙げられる。本明細書における対象は、好ましくは、ヒトである。治療対象となる哺乳類動物は、特に、脊髄損傷を有する哺乳類動物とすることができる。
1-1 多孔質体
本実施形態において、多孔質体は、移植用組成物を構成する成分であって、1つ以上の貫通孔を有する部材である。多孔質体は、その表面に1以上の開口を有する開口面部を2つ以上有する。多孔質体の形状は、特に限定されず、多面体、略球体、略楕円体のいずれであってもよいが、角柱状又は円柱状とすることが好ましい。開口面部のうち2つは、例えば、多孔質体が略角柱等の多面体である場合は、多孔質体を挟んで互いに対向する面に存在することを要する。あるいは、多孔質体が略球体・略楕円体等の表面が一面で構成される形状の場合は、2つの開口面部は、多孔質体を挟んで対向する位置に配置されることを要する。特に多孔質体中心を挟んで対向する位置に配置されることが好ましい。2つの開口面部のうち1つを「第1の開口面部」と称する場合、対向する開口面部を「第2の対向面部」と称する。
本明細書において、「開口面部」とは、多孔質体の表面部分のみを指すことを意味せず、表面に加えて、表面から、多孔質体の厚さの50%以下、30%以下、20%以下、10%以下、5%以下、4%以下、3%以下、2%以下又は1%以下の深さを有する部分を指す。ここでいう深さは、さらに、神経細胞の細胞体10個分以下、9個分以下、8個分以下、7個分以下、6個分以下、5個分以下、4個分以下、3個分以下、2個分以下又は1個分以下とすることができる。
多孔質体は、前記第1の開口面部の開口と前記第2の開口面部の開口とを連通するように形成される、1以上の貫通孔を有する。図1に、多孔質体及び貫通孔の一部の例について、その断面概略図を示す。多孔質体Aは柱体、Bは多面体、Cは略球体の多孔質体を例示する。図1に示す通り、貫通孔は、いずれの形状であっても、貫通孔の貫通方向の長さが、多孔質体の厚さの50%以上であることが好ましく、第1の開口面部表面から第2の開口面部表面まで貫通していることがより好ましい。多孔質体Aのa~cで示す貫通孔では、b及びcが適した貫通孔である。多孔質体Bのd~fで示す貫通孔では、e及びfが適した貫通孔である、多孔質体Cのg及びhで示す貫通孔では、gが適した貫通孔である。なお、図1の例においては、開口及び貫通孔は、開口面部に対してまばらに形成されているが、例えば、ハニカム構造のように、隙間なく無数に形成されていてもよい。多孔質体内の貫通孔の形態は特に限定されず、分岐・交差してもよいが、他の貫通孔と交差せず、それぞれ独立した孔とすることが好ましい。
第1の開口面部には、神経細胞の細胞体が配置される。第1の開口面部に細胞体が配置される場合、第2の開口面部には細胞体を配置しないことが好ましい。細胞体は、多孔質体の第1の開口面部の表面に配されていてもよく、貫通孔内の細胞体1~10個分以下の深さの位置に配置されてもよい。
第1の開口面部の開口孔径は、300μm以下、10μm以下、特に5μm以下、さらに2μmであることが好ましい。開口孔径が元々10μm以下の多孔質体を使用することもできるが、開口孔径が10μm超の多孔質体を使用して、多孔質体全体もしくは開口面部のみを圧縮して表面の開口孔径が10μm以下となるようにして使用することもできる。圧縮は、例えば、柔軟性を有する多孔質体の場合は、多孔質体の外側周縁に、第1の開口面部近傍を貫通孔に略垂直となるように糸やワイヤー等をかけて絞ることで実施できる。あるいは、第1の開口面部表面全体に、孔径10μm以下の貫通孔を有する薄膜を配置してもよい(後述)。前述した通り、第1の開口面部の開口孔径を10μm以下とすることで、神経細胞の細胞体が貫通孔内に深く入り込みにくく、細胞体が開口面部表面近傍に配置されやすい。
前記貫通孔には、後述のハイドロゲルが充填されていてもよい。貫通孔をハイドロゲルで満たすことで、細胞体が貫通孔に深く入り込むことなく、開口面部表面近傍に配置されやすくなる。
多孔質体の厚さは、特に限定されないが、1mm以上、特に2mm以上とすることが好ましい。本明細書において、多孔質体の「厚さ」とは、第1の開口面部と第2の開口面部との距離、すなわち、第1の開口面部表面上の任意の1点から第2の開口面部表面へ引かれた法線の長さを意味する。多孔質体の厚さは均一であってもよいし、多孔質体の部分によって異なっていてもよいが、好ましくは均一である。また多孔質体の厚さは、好ましくは貫通孔の長さと一致する。すなわち、多孔質体の厚さが大きいほど、形成される貫通孔は長くなり、これにより、多孔質体上で培養される神経細胞の神経突起(軸索)を長く伸展させることが可能となる。そのため、培養後の神経細胞において、長い軸索と短い樹状突起を容易に区別することができる。
多孔質体の素材は、細胞の活性や増殖を阻害しないものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。好ましくは、生分解性を有する素材、細胞が固着可能な素材、又は細胞接着性材料が吸着しやすい素材である。例えば、コラーゲン、ゼラチン、フィブリンなどのタンパク質、アガロース、アガーなどの多糖類、ポリ乳酸などの生分解性樹脂等を使用することができる。あるいは、目的に応じて生分解性のない素材も使用してもよい。例えば、in vitroでの生体内の構造モデルでの試験や薬剤応答試験においては、樹脂、シリコーンゴム、ガラス、セラミック、金属等を使用することができる。
1-2 薄膜
本実施形態の組成物は、前述した通り、多孔質体の第1の開口面部に、必須ではないが、貫通孔を有する薄膜を備えてもよい。前記薄膜の貫通孔は、その孔径が多孔質体の開口面部表面に存在する開口の孔径よりも小さいことが好ましく、例えば孔径10μm以下、特に5μm以下、さらに2μm以下とすることが好ましい。例えば、多孔質体本体の素材の影響等で所望の孔径の開口を形成するのが困難である場合、第1の開口面部に所望の孔径の開口をより容易に配置することが可能である。薄膜の厚さは、特に限定されないが、1~100μm、特に、1~20μmとすることが好ましい。
薄膜の素材は、細胞の活性や増殖を阻害しないものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。好ましくは、生分解性を有する素材、細胞が固着可能な素材、又は細胞接着性材料が吸着しやすい素材である。例えば、コラーゲン、ゼラチンなどのタンパク質、アガロース、アガーなどの多糖類、ポリ乳酸などの生分解性樹脂等を使用することができる。あるいは、目的に応じて生分解性のない素材も使用してもよい。例えば、in vitroでの生体内の構造モデルでの試験や、薬剤応答試験においては、樹脂、シリコーンゴム、ガラス、セラミック、金属等を使用することができる。薄膜の素材は、多孔質体と同じ素材であってもよく、異なる素材であってもよい。
図2は、コラーゲン多孔質体の開口面部表面に厚さ10μm、平均孔径8μmの貫通孔を有するポリエチレンテレフタレート製の薄膜を配置し、その上に播種・培養した神経細胞(iCellグルタミン酸作動性神経細胞、FUJIFILM Cellular Dynamics社製)を共焦点顕微鏡(FV10、オリンパス社製)で観察した顕微鏡写真である。
1-3 ハイドロゲル
本実施形態の組成物は、多孔質体の貫通孔内にハイドロゲルが充填されていてもよい。「ハイドロゲル」とは、三次元網目構造を有し、その網目構造の空間内部に多量の水を保持するゲルをいい、含水ゲルとも呼ばれるものを指す。ハイドロゲルの素材は、細胞の活性や増殖を阻害しないものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。特に、生分解性を有する素材、細胞が接着着可能な素材であるとすることが好ましい。例えば、架橋ポリエチレングルコール、マトリゲル(商標)基底膜マトリックス、ゼラチン、コラーゲン、フィブリンゲルのようなタンパク質ゲル、ヒアルロン酸や寒天などの多糖類ゲル、アクリル酸重合体などの高分子ゲル等を使用することができる。
1-4 神経細胞
本実施形態の組成物において配置及び培養される神経細胞の種類は、特に限定されず、目的に応じていずれの神経細胞を用いてもよい。例えば、多能性幹細胞由来神経細胞、神経幹細胞由来神経細胞、初代培養神経細胞などを使用することができる。神経細胞は、1種単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
神経細胞の細胞体は、多孔質体の開口面部に分散した状態で配置されてもよく、また、凝集した状態で配置されてもよい。図3は、コラーゲン製の多孔質体(平均孔径300μm、厚さ2mm)で培養した神経細胞(iCellグルタミン酸作動性神経細胞、FUJIFILM Cellular Dynamics社製)を共焦点顕微鏡(FV10、オリンパス社製)で観察した顕微鏡写真である。図3Aは、神経細胞を多孔質体の開口面部に分散させた顕微鏡写真、図3Bは、神経細胞を多孔質体の開口面部に凝集させた顕微鏡写真である。多孔質体の第1の開口面部において、開口1つあたりに配置する細胞数は10細胞以下、特に5細胞以下とすることが好ましい。細胞数は、培養の目的や播種密度に応じて適宜調整することができる。細胞数又は播種密度は、別々の開口に配置された細胞同士が、神経突起を介してネットワークを形成しないように設定することが好ましい。多孔質体の開口面部に配置した神経細胞を培養することで、神経突起が貫通孔内を伸展する。それにより、前記神経細胞の神経突起が、前記貫通孔内に貫通方向に沿って延在した状態とすることができる。
各開口に対して配置された神経細胞の神経突起の伸展状態は特に制限されないが、他の貫通孔内を伸展する神経突起と交差せずに、かつ/又は他の開口の神経細胞とネットワークを形成することなく伸展することが好ましい。神経突起を、他の貫通孔内の神経突起と交差せずに、かつ/又は他の開口の神経細胞とネットワークを形成することなく伸展させるためには、前述した通り、多孔質体内の貫通孔を、他の貫通孔と交差しない、それぞれ独立した状態とすることが有効である。
多孔質体中に現在する神経突起の長さは、1mm以上、特に2mm以上とすることが好ましい。より具体的には、多孔質体の厚さ分、すなわち、第1の開口面部表面から第2の開口面部表面まで神経突起が延在することが好ましい。
神経細胞の細胞体は、多孔質体の開口面部表面に配置されてもよいが、貫通孔内の1細胞分~10細胞分の深さの位置に配置されてもよい。
1-5 補助細胞
本実施形態の組成物は、多孔質体の貫通孔内壁に、又は貫通孔内に充填するハイドロゲル中に、補助細胞が配置されていてもよい。補助細胞は、神経細胞の培養・伸展を補助し得る細胞であればその種類は特に限定されず、分類学的に、例えば、真核細胞、原核細胞、多細胞生物細胞、単細胞生物細胞のいずれの細胞であってもよい。補助細胞は、培養する神経細胞の種類や、組成物の使用目的等に応じて適宜選択することができる。補助細胞は、1種単独であっても、2種以上を混合してもよい。
補助細胞として使用する真核細胞としては、動物細胞、昆虫細胞、植物細胞、真菌等が挙げられる。特に動物細胞が好ましく、例えばグリア細胞、シュワン細胞を使用することができる。真核細胞としては、接着性細胞を使用することもでき、また、分化した細胞、あるいは未分化の細胞を使用してもよい。分化した細胞としては、例えば、肝臓の実質細胞である肝細胞、星細胞、クッパー細胞、血管内皮細胞、類道内皮細胞、角膜内皮細胞等の内皮細胞、線維芽細胞、骨芽細胞、砕骨細胞、歯根膜由来細胞、表皮角化細胞等の表皮細胞、気管上皮細胞、消化管上皮細胞、子宮頸部上皮細胞、角膜上皮細胞等の上皮細胞、乳腺細胞、ペリサイト、平滑筋細胞、心筋細胞等の筋細胞。、腎細胞、膵ランゲルハンス島細胞、軟骨細胞、骨細胞等が挙げられる。未分化の細胞としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、胚性幹細胞、多分化能を有する間葉系幹細胞等の多能性幹細胞、単分化能を有する血管内皮前駆細胞等の単能性幹細胞、iPS細胞等が挙げられる。原核細胞としては、例えば、真正細菌、古細菌等が挙げられる。
1-6 神経栄養因子及び他の成分
本実施形態の組成物は、細胞培養時に神経栄養因子を含んでいてもよい。本明細書において「神経栄養因子」とは、神経細胞の生存、発生、成長、機能発現に必要とされる因子を意味し、例えばニューロトロフィン、毛様体神経栄養因子(CNTF)、ニューロン調節因子(NRF)、酸性及び塩基性線維芽細胞成長因子(FGF1及びFGF2)、神経成長因子(NGF/ニューロトロフィン-1(NT1))、脳由来神経栄養因子(BDNF/ニューロトロフィン-2(NT2))、ニューロトロフィン-3(NT3)、及びニューロトロフィン-4/5(NT4/5)からなる群より選択される物質などを指す。神経栄養因子とともに、又は神経栄養因子とは別に、他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、例えば、細胞外マトリクスや軸索誘導因子、モルフォゲンのようなタンパク質やペプチド又は多糖類が挙げられる。タンパク質としては、例えば、コラーゲン、フィブリン、アルブミン、フィブロネクチン、ラミニン、テネイシン、エンタクチン、エラスチン及びそれらに由来する化合物等、ネトリン、セマフォリン、スリット、エフリン、リーリン、ソニック・ヘッジホッグ、TGF-β、Wnt、VEGF等を使用することができる。ここでいうペプチドは、アミノ酸の2残基以上がペプチド結合を介して重合したものを指し、ジペプチド、トリペプチド、オリゴポリペプチド(アミノ酸が約10個程度のもの)、ポリペプチド(アミノ酸が数十個~数百個のもの)のいずれであってもよい。多孔質体に適用可能なペプチドとしては、コラーゲンペプチド等が挙げられる。多糖類としては、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、セルロース、キチン、キトサン、ヒアルロン酸、アルギン酸、デンプン、ペクチン等を使用することができる。
神経栄養因子及び成分の添加手法は、特に制限されず、例えば、培養液に添加する、ハイドロゲルに懸濁して多孔質体内に充填する、等の手法をとることができる。神経栄養因子及び他の成分は、目的に応じて適宜選択することができ、1種のみを使用してもよく、2種以上を使用してもよい。
1-7 組成物の使用
本実施形態の組成物は、対象の治療、特に脊髄損傷を有するヒトの治療に有効に使用できる。図8に、脊髄損傷の治療メカニズムの一例の概略図を示す。損傷により断絶した脊髄の神経経路に代えて、本実施形態の組成物を用いて再生経路(バイパス経路)を形成する。本実施形態の組成物の好適な態様では、組成物の厚さ方向に1つの神経細胞が伸展し、一方の表面側(第1の開口面部)に細胞体、反対側(第2の開口面部)の表面に神経突起が貫通している。そのため、組成物を神経伝達方向に同じ向きで積層することで、第2開口面部の神経突起末端が、積層する他の組成物の第1の開口面部の細胞体と接続し、新たなネットワークが構築される。ネットワークが所望の長さとなるまで組成物を積層させ、損傷部位以外の脊髄の神経経路を接続させることで、新たな神経伝達経路を構築することができる。
既知の方法、例えば、特許文献1に記載されるような細胞を注射する方法等では、移植した細胞が必ずしも所望の方向に突起を伸展してネットワークを構築するとは限らず、再生経路を構築するためには、多量の細胞を移植する必要がある。本実施形態の組成物は、移植する細胞の長さ、方向をコントロールしながら神経細胞の突起を伸展させることができる。さらに、生分解性の材料を用いる態様においては、多孔質体から細胞培養後に細胞を分離することなく、そのまま移植することができる。そのため、本実施形態の組成物は、対象に効率よく神経細胞を移植することを可能とする。
本実施形態の組成物は、多孔質体ごと対象に移植可能な態様に限定されず、例えば、組成物から培養後の神経細胞を分離して、これを対象に移植するための組成物の態様も含まれる。
2.移植用組成物の製造方法
本発明の第2の実施形態は、神経細胞の移植用組成物の製造方法(以下、単に「方法」とも称する)である。本実施形態の方法は、下記工程i)~iii)を含む、ことを特徴とする。
i)1以上の開口を有する第1の開口面部と、多孔質体を挟んで前記第1の開口面部と対向する、1以上の開口を有する第2の開口面部とを備え、前記第1の開口面部の開口と前記第2の開口面部の開口とを連通する貫通孔を備える、多孔質体を準備する工程;
ii)前記多孔質体の第1の開口面部に神経細胞の細胞体を配置する工程;
iii)前記神経細胞を培養して、神経突起を前記貫通孔の貫通方向に沿って伸展させる工程。
本実施形態の方法における用語の定義は、特に記載のない限り、第1の実施形態と同様である。
2-1 工程i)多孔質体準備工程
本実施形態の方法の工程i)は、多孔質体を準備する工程である。ここでいう多孔質体は、具体的には「1-1 多孔質体」の項に記載した多孔質体である。多孔質体の素材、構造、性能等は、「1-1 多孔質体」の項に記載した通りである。
多孔質体は、単独で使用してもよいが、第1の開口面部の表面に貫通孔を有する薄膜を設置してもよい。第1の開口面部の開口又は薄膜の貫通孔の孔径は、10μm以下、特に5μm以下、さらに2μm以下とすることが好ましい。薄膜の素材、構造、性能等は、「1-2 薄膜」の項に記載した通りである。
工程i)は、多孔質体の貫通孔へのハイドロゲルの充填を含んでもよい。ここでいうハイドロゲルは、具体的には、「1-3 ハイドロゲル」の項に記載のハイドロゲルである。貫通孔へのハイドロゲルの充填の手法は、特に限定されないが、例えば、ゾル状のゲル基剤を多孔質体の貫通孔内に浸透させた後、前記基剤をゲル化する手法を用いることができる。ハイドロゲルは、補助細胞を含んでいてもよい(後述)。また、ハイドロゲルは、神経栄養因子及び他の成分のうち1種類以上を含んでいてもよい。ここでいう神経栄養因子及び他の成分は、具体的には、「1-6 神経栄養因子及び他の成分」の項に記載の成分である。
工程i)は、多孔質体内に補助細胞を含ませることを備えてもよい。ここでいう補助細胞は、具体的には、「1-5 補助細胞」の項に記載の補助細胞である。補助細胞は、例えば補助細胞の懸濁液に多孔質体を浸漬して、貫通孔内壁に補助細胞を付着させることで、多孔質体内に含ませることができる。あるいは、ハイドロゲルを使用する場合は、補助細胞を含むハイドロゲルを貫通孔内に充填することで、多孔質体内に含ませることができる(前述)。
2-2 工程ii)神経細胞体配置工程
本実施形態の方法の工程ii)は、前記多孔質体の第1の開口面部に神経細胞を配置する工程である。ここでいう神経細胞は、具体的には「1-4 神経細胞」の項に記載の神経細胞である。神経細胞の細胞体は、多孔質体の開口面部に分散した状態で配置されてもよく、また、凝集した状態で配置されてもよい。多孔質体の第1の開口面部において、開口1つあたりに配置する細胞数は10細胞以下、特に5細胞以下とすることが好ましい。細胞数は、培養の目的や播種密度に応じて適宜調整することができる。
神経細胞を多孔質体に配置する手法は、特に限定されないが、例えば、以下の手法を用いることができる。非接着性のディッシュ(又はマイクロウェルプレート)に、神経細胞を神経細胞培養用培地で懸濁した懸濁液を、細胞が均一に分散するように、又は細胞が凝集するように分注する。懸濁液を入れた各ディッシュ(又は各ウェル)に、多孔質体を、第1の開口面部が下、第2の開口面部が上になるように、薄膜を使用する場合は、薄膜が下となるように入れ、37℃、5%体積CO環境下で24時間程度培養して、神経細胞を多孔質体に定着させる。
2-3 工程iii)神経細胞培養工程
本実施形態の方法の工程iii)は、多孔質体の第1の開口面部に配置した神経細胞を培養して、神経突起を前記貫通孔の貫通方向に沿って伸展させる工程である。神経細胞を培養するために、神経細胞を配置した多孔質体に、神経細胞培養用の培地を含ませることを要する。神経細胞培養用の培地は、特に限定されないが、例えば、ダルベッコ改変イーグル培地(Dulbecco’s Modified Eagles’s Medium:D-MEM)、ハムF12培地(Ham’s Nutrient Mixture F12)、D-MEM/F12培地、マッコイ5A培地(McCoy’s 5A medium)、イーグルMEM培地(Eagles’s Minimum Essential Medium:EMEM)、αMEM培地(alpha Modified Eagles’s Minimum Essential Medium:αMEM)、MEM培地(Minimum Essential Medium)、RPMI1640(Roswell Park Memorial Institute-1640)培地、イスコフ改変ダルベッコ培地(Iscove’s Modified Dulbecco’s Medium:IMDM)、MCDB131培地、ウィリアム培地E、IPL41培地、Fischer’s培地、M199培地、高性能改良199培地(Hight Performance Medium 199)、StemPro34(Thermo Fisher Scientific社製)、X-VIVO 10(Chembrex社製)、X-VIVO 15(Chembrex社製)、HPGM(Chembrex社製)、StemSpan H3000(STEMCELL Technologies社製)、StemSpanSFEM(STEMCELL Technologies社製)、StemlineII(Sigma-Aldrich社製)、QBSF-60(Quality Biological社製)、StemProhESCSFM(Thermo Fisher Scientific社製)、Essential8(登録商標)培地(Thermo Fisher Scientific社製)、mTeSR1又はmTeSR2培地(STEMCELL Technologies社製)、ReproFF又はReproFF2(Reprocell社製)、PSGro hESC/iPSC培地(System Biosciences社製)、NutriStem(登録商標)培地(Biological Industries社製)、CSTI-7培地(細胞科学研究所社製)、MesenPRO RS培地(Thermo Fisher Scientific社製)、MF-Medim(登録商標)間葉系幹細胞増殖培地(東洋紡株式会社製)、Sf-900II(Thermo Fisher Scientific社製)、Opti-Pro(Thermo Fisher Scientific社製)、Neurobasal Medium(Gibco社製)等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、使用する培地に合わせてN-2 Plus Media Supplement(R&D Systems社製)のような培養添加物を適宜使用してもよい。
神経細胞の培養は、例えば、神経細胞を定着させた多孔質体を、神経細胞培養用培地内に入れて、37℃、5%体積CO環境のインキュベーター内で培養することで実施できる。培地は、少なくとも多孔質体の第2の開口面部が浸漬する程度の量あればよい、培地には、神経栄養因子及び他の成分のうち、1種類以上が含まれていてもよい。ここでいう神経栄養因子及び他の成分は、具体的には、「1-6 神経栄養因子及び他の成分」の項に記載の成分である。
神経細胞の培養は、特に限定されないが、例えば、37℃、5%体積CO環境下で、14日間以上、特に30日間以上、さらには60日間以上、培養することが好ましい。
2-4 神経栄養因子の添加
本実施形態の方法において、多孔質体内に神経栄養因子を添加してもよい。神経栄養因子を添加する手法は、特に限定されないが、例えば、前述の通り、工程ii)の前に、多孔質体準備工程(工程i))において、多孔質体内に充填するハイドロゲル内に神経栄養因子を含ませる手法、又は、工程ii)の後、神経細胞培養工程(工程iii))において、神経細胞培養用培地に神経栄養因子を含ませる手法をとることができる。
本実施形態の方法で培養した神経細胞は、その神経突起が多孔質体の貫通孔内で貫通方向に伸展し、所望の方向に多孔質体の厚さの長さまで伸展する。例えば、多孔質体の厚さが2mm以上であれば、神経突起は、2mmまで伸展させることが可能である。
(1)実施例1
(1-1)多孔質体の準備
多孔質体(コラーゲンスポンジ ハニカム、平均孔径300μm、厚さ2mm、株式会社高研製より入手)を神経細胞培養用培地(iCell神経用培地、FUJIFILM Cellular Dynamics社製)に浸して、多孔質体内の気泡を除去した。
(1-2)神経細胞の準備
凍結保存されたグルタミン酸作動性神経細胞(iCellグルタミン酸作動性神経細胞、FUJIFILM Cellular Dynamics社製)の入ったバイアルを37℃湯浴で融解後、15mL遠沈管中の神経細胞培養用培地Neurobasal Medium(Gibco社製)10mLに懸濁した。15mL遠沈管の細胞懸濁液を遠心分離(H-19FM、KOKUSAN社製、200×g、3分間)して、アスピレータを用いて上清を除去した。神経細胞培養用培地を再度添加し、細胞濃度が1×10個/mLの細胞懸濁液を得た。
(1-3)多孔質体への神経細胞の配置
(1-2)で作製した神経細胞懸濁液を非接着性の96ウェルプレートに100cells/cmとなるように播種した。その後、(1-1)で用意した多孔質体を神経細胞が播種された96ウェルプレートに入れて、37℃、5体積%CO環境のインキュベーター内で1日間培養した後、多孔質体への神経細胞の接着を確認した。多孔質体を培地2mL充填した35mmディッシュに多孔質体を移して、37℃、5体積%CO環境のインキュベーター内で培養した。
(1-4)細胞の観察
2か月間培養した後、神経細胞の形態を、細胞の伸展度合いで評価した。35mmディッシュの中の培地にカルセインAM(Cellstain(登録商標)-Calcein-AM solution、富士フイルム和光純薬社製)を添加し、37℃、5体積%CO環境のインキュベーター内で1時間培養した。培養1時間後、細胞の形態を共焦点顕微鏡で観察した。
(2)実施例2
多孔質体にハイドロゲル(マトリゲル)を充填した以外は、実施例1に準ずる方法で移植用組成物を調製した。
(2-1)多孔質体の準備
多孔質体(コラーゲンスポンジ ハニカム、平均孔径300μm、厚さ2mm、株式会社高研)をマトリゲル(マトリゲル基底膜マトリックス グロースファクター リデュースト、Corning社製、以下、「マトリゲル」とも表記する)に浸して、多孔質体内の気泡を除去した。
(2-2)多孔質体への神経細胞の配置
(2-1)で用意した多孔質体を35mmディッシュに配置して30分静置することで多孔質体内のマトリゲルを十分にゲル化させた。その後、実施例1と同様に作製した神経細胞懸濁液を多孔質体開口面上に100cells/cmとなるように播種した。2時間静置した後に、培地を充填して、37℃、5体積%CO環境のインキュベーター内で培養した。
2か月間培養した後の神経細胞の形態を、実施例1と同様に観察した。実施例2の移植用組成物における神経細胞の蛍光顕微鏡写真を図4に示す。図4Aは、多孔質体の第1の開口面部表面、図4Bは、多孔質体内部、図4Cは、多孔質体の第2の開口面部表面の写真である。図4に示す通り、多孔質体開口面部の神経細胞の突起が、多孔質体内部のハイドロゲルを介して伸展して、厚み2mmの多孔質体の裏側まで、その末端が達していることが確認できた。
(3)実施例3
ハイドロゲル(マトリゲル)に補助細胞としてU-251MG細胞を含ませて、これを多孔質体の貫通孔内に充填した以外は、実施例2に準ずる方法で移植用組成物を調製した。
(3-1)U-251MG細胞の培養
インキュベーター内において、10質量%ウシ胎児血清(以下、「FBS」と表記する)及び1質量%抗生物質(Antibiotic-Antimycotic Mixed Stock Solution(100x)、ナカライテスク株式会社製)を含むRoswell Park Memorial Institute1640培地(Thermo Fisher Scientific社製、以下、「RPMI」と表記する)を用い、100mmディッシュにてHepG2細胞を、37℃、5体積%CO環境のインキュベーター内で72時間培養した。
(3-2)U-251MG細胞懸濁ハイドロゲル溶液の作製
ディッシュにPBS(-)を5mL加え、アスピレータでPBS(-)を吸引除去し、表面を洗浄した後、0.05%トリプシン-0.05%EDTA溶液(Life Technologies社製)をディッシュに2mL加え、インキュベーター内にて5分間加温して、ディッシュから細胞を剥離した。位相差顕微鏡(装置名:CKX41、オリンパス株式会社製)により細胞の剥離を確認後、FBS入りRPMIをディッシュに2mL加え、トリプシンを失活させた。ディッシュの細胞懸濁液を15mL遠沈管に移し、遠心分離(200×g、3分間)を行い、アスピレータを用いて上清を除去した。除去後、遠沈管にFBS入りRPMIを2mL添加し、穏やかにピペッティングを行い、細胞を分散させ細胞懸濁液を得た。細胞懸濁液を15mL遠沈管に移して遠心分離(200×g、3分間)を行い、ピペットを用いて上清を除去した。その後、マトリゲルに上清を除去した細胞懸濁液を添加して1×10cells/mLのU-251MG細胞懸濁ハイドロゲル溶液を得た。
(3-3)多孔質体への神経細胞の配置
(3-2)で作製したU-251MG細胞懸濁ハイドロゲル溶液に多孔質体を浸した後に、35mmディッシュに配置して30分静置することで多孔質体内のU-251MG細胞懸濁ハイドロゲル溶液を十分にゲル化させた。その後、実施例1と同様に作製した神経細胞懸濁液を多孔質体開口面上に100cells/cmとなるように播種した。2時間静置した後に、培地を充填して、37℃、5体積%CO環境のインキュベーター内で培養した。
(3-4)細胞の観察
上清除去後、PBS(-)を加えて洗浄した(以下「PBS洗浄」と称する)。上清を除去し、4%パラホルムアルデヒド(以下「4%PFA」と称する)を加えて20分静置して細胞を固定した。上清除去後にPBS洗浄を3回繰り返した。上清を除去し、0.1%Triton溶液を加えて10分間細胞膜透過処理を行った。PBS洗浄を3回繰り返した後、1%BSA溶液で1時間ブロッキングを行った。一次抗体として、ウサギ抗β3チューブリンモノクローナル抗体(β3-Tubulin(D71G9)XP Rabbit mAb#5568、Cell Signaling Technology社製、以下「TUBB3」と称する)及びマウス抗GFAPモノクローナル抗体(Monoclonal Mouse Anti-Human Glial Fibrillary Acdic Protein、Dako)を、それぞれ1%BSA溶液で希釈して、一次抗体希釈液を調製した。ブロッキング後、上清を除去し、上記の一次抗体希釈液を加えて4℃で一晩インキュベートした。翌日、PBS洗浄を3回行い、1%BSA溶液で希釈した二次抗体溶液(蛍光標識抗ウサギIgG抗体/蛍光標識抗マウスIgG抗体)を加えて1時間インキュベートした。これ以降はアルミホイル等で遮光しながら作業を行った。PBS洗浄を2回繰り返し、顕微鏡観察用にPBSを充填した35mmディッシュに配置した。実施例3の移植用組成物の共焦点顕微鏡写真を図5に示す。図5Aは、多孔質体の第1の開口面部表面の共焦点顕微鏡写真である。開口面部表面には、神経細胞(TUBB3で染色された細胞)が配置されているのに対し、U-251MG細胞(GFAPで染色された細胞)は配置されていないことが分かる。図5Bは、多孔質体内部の共焦点顕微鏡写真である。図5Cは、多孔質体の第2の開口面部表面の共焦点顕微鏡写真である。U-251MG細胞が、多孔質体内部のハイドロゲルに存在することが確認できた。図5より、多孔質体開口面部に配置した神経細胞が、U-251MG細胞を含むハイドロゲルを介した場合も、実施例2と同様に伸展可能であることが確認できた。
(4)比較例1
実施例の多孔質体に代えて、微細な溝構造を有するシリコーンゴムを用いて、神経細胞の培養を行った。実施例では、多孔質体に100cells/cmとなるように神経細胞を播種したが、シリコーンゴムでは細胞の接着効率が低かったため、神経細胞スフェロイドをシリコーンゴムの溝構造体上に配置した。
(4-1)溝構造体の作製
ポリジメチルシロキサン(PDMS)(SYLGARD(商標) 184 Silicone Elastomer Kit、Daw社製)を型(ラインアンドスペース10μmの溝パターン構造)に流し込み、1時間65℃で加温した後、型からPDMSを外して溝構造体を作製した。
(4-2)細胞スフェロイドの作製
凍結保存されたグルタミン酸作動性神経細胞(iCellグルタミン酸作動性神経細胞、FUJIFILM Cellular Dynamics社製)の入ったバイアルを37℃湯浴で融解後、15mL遠沈管中の神経細胞培養用培地を10mLに懸濁した。15mL遠沈管の細胞懸濁液を遠心分離(200×g、3分間)し、アスピレータを用いて上清を除去した後、神経細胞培養用培地を再度添加し、細胞濃度が1×10個/mLの細胞懸濁液を得た。U底96ウェルプレートに1×10cells/wellで播種し、37℃、5体積%CO環境のインキュベーター内で3日間培養して神経細胞スフェロイドを得た。
(4-3)溝構造体への神経細胞スフェロイドの配置
(4-1)で作製した溝構造体のPDMSを35mmディッシュに配置して、スフェロイドを溝構造の上に配置して1時間静置した。ディッシュに神経細胞培養用培地を溝構造体が浸るように入れて、37℃、5体積%CO環境のインキュベーター内で3日間培養した。
(4-4)細胞の観察
培養3日後の神経細胞の形態を、細胞が伸展しているかどうかで評価した。35mmディッシュの中の培地にカルセインAMを添加し、37℃、5体積%CO環境のインキュベーター内で1時間培養した。培養1時間後、細胞の形態を位相差顕微鏡で観察した。比較例1の組成物の共焦点顕微鏡写真を図6に示す。図6に示す通り、溝構造体上に配置された神経細胞スフェロイドから、神経突起が溝に沿って伸展していることが確認できた。
(5)比較例2
PDMSに代えてハイドロゲルの溝構造体を使用した以外は、比較例1に準ずる方法で神経細胞の培養を行った。
(5-1)溝構造体の作製
pH3.4クエン酸バッファーに対してTetra-PEG-マレイミジル(SUNBRIGHT PTE-100MA、油化産業式会社製)とTetra-PEG-SH(SUNBRIGHT PTE-100SH、油化産業式会社製)を質量比8%で混合したゲルをカバーガラス上に作製し、比較例1で使用した型に押し当てた。1日静置して十分ゲル化したことを確認した後、型から離型してPBS(-)(Life Technologies社製)に1日浸してpHを調整した。
(5-2)溝構造への神経細胞スフェロイドの配置、培養、及び細胞の観察
(5-1)で形成された溝構造体を35mmディッシュに、(4-2)と同様に調製された神経細胞スフェロイドを配置して1時間静置した。神経細胞培養用培地を充填して、37℃、5体積%CO環境のインキュベーター内で3日間培養した。図7に、比較例2の組成物上の神経細胞スフェロイドの位相差顕微鏡写真示す。図7に示す通り、溝構造体上に配置された神経細胞スフェロイドは溝構造体に接着して神経突起を伸展することができず、神経細胞の一部が剥離したことが確認できた。
(6)評価結果
実施例1~3、比較例1、2の組成物の構造体、構造体の素材、ハイドロゲル・補助細胞使用の有無を表1に示す。また、各組成物の評価結果を表1に示す。表1の評価指標は、以下の通りとした。
<少数細胞> 各実施例・比較例の神経細胞が他の神経細胞と接触せず、2mm以上伸展させていることを確認出来た場合は〇、それ以外の場合は×とした。
<伸展方向制御> 神経細胞の形態から、神経細胞の突起が貫通孔の方向もしくは溝に沿って伸展していることが確認出来た場合は〇、伸展していなかった、又は細胞が接着出来ていなかった場合は×とした。
<生分解性> 各実施例・比較例の材料が生分解性のある材料のみで作製されている場合は〇、それ以外は×とした。
Figure 2024018385000001
実施例1~3の結果より、多孔質体を使用することにより、少数細胞で神経細胞の伸展方向を制御できることが確認された。一方、比較例1の結果から、溝構造体では、少数細胞からの培養が困難であることが確認された。溝構造体での培養は接着培養することが求められるが、比較例2のポリエチレングリコールの溝構造体は、生分解性を有するものの、神経細胞の接着・伸展が困難なことが確認された。実施例2、3では、神経細胞は、多孔質体に接着するのではなく、多孔質体に充填されたハイドロゲルを介して伸展していることが確認された。細胞の接着が困難な多孔質体を用いた場合も、ハイドロゲルを充填することで、神経細胞の伸展が可能であることが示唆された。
本発明は、以下の態様を包含する。
[1]1以上の神経細胞と多孔質体を備える移植用組成物であって、前記多孔質体は、1以上の開口を有する第1開口面部と、多孔質体を挟んで前記第1の開口面部と対向する、1以上の開口を有する第2の開口面部を備え、前記第1の開口面部の開口と前記第2の開口面部の開口とを連通する貫通孔を備え、前記神経細胞の細胞体が前記第1の開口面部に配置される、移植用組成物。
[2]前記多孔質体の貫通孔がハイドロゲルで充填されている、[1]に記載の移植用組成物。
[3]前記開口面部の開口1つにつき、前記細胞体が10細胞以下の数で配置される、[1]又は[2]に記載の移植用組成物。
[4]前記神経細胞の神経突起が、前記貫通孔内に貫通方向に沿って延在する、[1]~[3]のいずれかに記載の移植用組成物。
[5]前記神経突起が前記多孔質体の他の開口に配置された神経細胞とネットワークを形成せずに、貫通孔内に延在する、[4]に記載の移植用組成物。
[6]前記貫通孔内に延在する神経突起の長さが1mm以上である、[4]又は[5]に記載の移植用組成物。
[7]前記多孔質体の内部に、さらに補助細胞が配置されている、[1]~[6]のいずれかに記載の移植用組成物。
[8]前記開口の孔径が10μm以下である、[1]~[7]のいずれかに記載の移植用組成物。
[9]前記第1の開口面部に貫通孔を有する薄膜を備え、前記薄膜の貫通孔の孔径が10μm以下である、[1]~[8]のいずれかに記載の移植用組成物。
[10]前記多孔質体が生分解性である、[1]~[9]のいずれかに記載の移植用組成物。
[11]下記工程i)~iii)を含む、移植用組成物の製造方法:
i)1以上の開口を有する第1の開口面部と、多孔質体を挟んで前記第1の開口面部と対向する、1以上の開口を有する第2の開口面部とを備え、前記第1の開口面部の開口と前記第2の開口面部の開口とを連通する貫通孔を備える、多孔質体を準備する工程;
ii)前記多孔質体の第1の開口面部に神経細胞を配置する工程;
iii)前記神経細胞を培養して、神経突起を前記貫通孔の貫通方向に沿って伸展させる工程。
[12]工程ii)の前又は後に、前記多孔質体内に前記神経細胞培養用の神経栄養因子を含有させることを含む、[11]に記載の方法。
特表2002-512627号公報 特表2018-535704号公報 特開2014-110804号公報

Claims (12)

  1. 1以上の神経細胞と多孔質体を備える移植用組成物であって、
    前記多孔質体は、1以上の開口を有する第1開口面部と、多孔質体を挟んで前記第1の開口面部と対向する、1以上の開口を有する第2の開口面部を備え、
    前記第1の開口面部の開口と前記第2の開口面部の開口とを連通する貫通孔を備え、
    前記神経細胞の細胞体が前記第1の開口面部に配置される、
    移植用組成物。
  2. 前記多孔質体の貫通孔がハイドロゲルで充填されている、請求項1に記載の移植用組成物。
  3. 前記開口面部の開口1つにつき、前記細胞体が10細胞以下の数で配置される、請求項1又は2に記載の移植用組成物。
  4. 前記神経細胞の神経突起が、前記貫通孔内に貫通方向に沿って延在する、請求項1又は2に記載の移植用組成物。
  5. 前記神経突起が前記多孔質体の他の開口に配置された神経細胞とネットワークを形成せずに、貫通孔内に延在する、請求項4に記載の移植用組成物。
  6. 前記貫通孔内に延在する神経突起の長さが1mm以上である、請求項4に記載の移植用組成物。
  7. 前記多孔質体の内部に、さらに補助細胞が配置されている、請求項1又は2に記載の移植用組成物。
  8. 前記開口の孔径が10μm以下である、請求項1又は2に記載の移植用組成物。
  9. 前記第1の開口面部に貫通孔を有する薄膜を備え、前記薄膜の貫通孔の孔径が10μm以下である、請求項1又は2に記載の移植用組成物。
  10. 前記多孔質体が、生分解性である、請求項1又は2に記載の移植用組成物。
  11. 下記工程i)~iii)を含む、移植用組成物の製造方法:
    i)1以上の開口を有する第1の開口面部と、多孔質体を挟んで前記第1の開口面部と対向する、1以上の開口を有する第2の開口面部とを備え、前記第1の開口面部の開口と前記第2の開口面部の開口とを連通する貫通孔を備える、多孔質体を準備する工程;
    ii)前記多孔質体の第1の開口面部に神経細胞を配置する工程;
    iii)前記神経細胞を培養して、神経突起を前記貫通孔の貫通方向に沿って伸展させる工程。
  12. 工程ii)の前又は後に、前記多孔質体内に前記神経細胞培養用の神経栄養因子を含有させることを含む、請求項11に記載の方法。
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