JP2024017890A - 水処理方法及び可搬式水処理装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】貯水槽内に貯留されている要処理水を失うことなく、当該要処理水からPFASを取り除き、清浄化すること。【解決手段】処理対象の貯水槽内に貯留された要処理水の量及び、前記要処理水のPFAS含有濃度である、処理前PFAS濃度を測定するステップと、前記量及び前記処理前PFAS濃度に基づいて、処理時間を決定するステップと、少なくとも、浮遊物質(SS:Suspended Solids)を除去するろ過装置と、PFASを除去する除去装置と、ポンプと、を備えた可搬式水処理装置を前記貯水槽にアクセス可能に設置するステップと、前記貯水槽から取水した前記要処理水を前記可搬式水処理装置に通過させ、前記貯水槽に還流するPFAS除去運転を、前記処理時間以上行うステップと、を有する水処理方法。【選択図】図4
Description
本発明は、水処理方法及び可搬式水処理装置に関する。
特許文献1には、PFAS(ペルフルオロアルキル物質およびポリフルオロアルキル化合物)廃液処理のための可搬式システム及び方法(Mobile System and Method for PFAS Effluent Treatment)が開示されている。同文献記載のシステムは、トレーラーのような可搬式プラットフォーム上に設置され、ポンプによりホースで汲み上げたPFAS廃液を沈殿物フィルタ(Sediment Filter)、粒状活性炭(GAC;Granular Activated Carbon)、及びイオン交換樹脂(IX;Ion Exchange Regins)を通過させて清浄化し、処理済み水貯留タンク(Treated Water Holding Tank)に貯留するというものである。
PFASは難分解性であり長期にわたり残留するため環境問題を引き起こす原因物質であると指摘されると同時に、規制の強化が近年なされつつある。そのため、PFASを含有する水からPFASを取り除き、清浄化する水処理の必要性が生じる。
PFASはこれまで種々の用途に用いられてきたが、それらの用途の一つに、火災の際の消火剤としての用途が挙げられる。そのため、まとまった量の消火用水を必要としている施設、例えば、空港、軍事施設、その他の建築物の中には、敷地内の地下などに貯水槽を備え、消火用水を貯留しているものがあり、そして貯留されている消火用水にはPFASが含有されている場合がある。しかしながら、このような限られた容量の貯水槽内のPFAS含有水から実用的にPFASを除去するに適した設備はほとんど知られていない。
すなわち、貯水槽内の要処理水の量は限られており、また、貯水槽自体が特定の用途向けの施設に付属して設けられているものであるから、当該貯水槽に隣接して水処理施設を新たに建設するのは全く現実的でない。かといって、貯水槽内の要処理水をくみ上げ、別の処理施設へと運搬して処理するのは、運搬に要するコストが無視できず、さらに、別の処理施設にて水処理を行っている最中には、貯水槽内に貯留されている水が一時的とはいえ失われるため、かかる水が消火用水である場合には、その消火設備としての機能を失ってしまう。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、貯水槽内に貯留されている要処理水を失うことなく、当該要処理水からPFASを取り除き、清浄化することである。
上記課題を解決すべく本出願において開示される発明は種々の側面を有しており、それら側面の代表的なものの概要は以下のとおりである。
(1)処理対象の貯水槽内に貯留された要処理水の量及び、前記要処理水のPFAS含有濃度である、処理前PFAS濃度を測定するステップと、前記量及び前記処理前PFAS濃度に基づいて、処理時間を決定するステップと、少なくとも、浮遊物質(SS:Suspended Solids)を除去するろ過装置と、PFASを除去する除去装置と、ポンプと、を備えた可搬式水処理装置を前記貯水槽にアクセス可能に設置するステップと、前記貯水槽から取水した前記要処理水を前記可搬式水処理装置に通過させ、前記貯水槽に還流するPFAS除去運転を、前記処理時間以上行うステップと、を有する水処理方法。
(2)(1)において、前記除去装置の容量は可変であり、前記量及び前記処理前PFAS濃度から求められる、前記要処理水に含まれるPFASの量である、処理前PFAS含有量に基づいて、前記除去装置の容量が決定される、水処理方法。
(3)(2)において、前記除去装置の容量は、前記処理前PFAS含有量が、当該容量による最大PFAS除去量の50%以上100%以下となるように定められる、水処理方法。
(4)(3)において、前記除去装置は、互いに並列に接続され、前記要処理水の流入の有無を切り替え可能な複数の処理カラムを有し、前記除去装置の容量は、前記要処理水が流入する前記処理カラムの個数を決定することにより可変される、水処理方法。
(5)(1)において、前記PFAS除去運転を、前記処理時間以上行うステップの後、前記貯水槽内に貯留された処理後水のPFAS含有濃度である、処理後PFAS濃度を測定するステップと、前記量及び前記処理後PFAS濃度に基づいて、追加の処理時間を決定するステップと、前記PFAS除去運転を、前記追加の処理時間以上行うステップと、を有する水処理方法。
(6)(2)において、前記PFAS除去運転を、前記処理時間以上行うステップの後、前記貯水槽内に貯留された処理後水のPFAS含有濃度である、処理後PFAS濃度を測定するステップと、前記量及び前記処理後PFAS濃度に基づいて、追加の処理時間を決定するステップと、前記PFAS除去運転を、前記追加の処理時間以上行うステップと、を有し、前記PFAS除去運転を、前記追加の処理時間以上行うステップにおける前記除去装置の容量は、前記量及び前記処理後PFAS濃度から求められる、前記処理後水に含まれるPFASの量である、処理後PFAS含有量に基づいて決定される、水処理方法。
(7)(1)において、前記可搬式水処理装置は、逆洗水沈降槽をさらに備え、前記要処理水によって前記ろ過装置を逆洗し、逆洗水を前記逆洗水沈降槽に貯留するステップと、前記浮遊物質を沈降分離した前記逆洗水を前記貯水槽に戻入するステップと、を有する請求項1に記載の水処理方法。
(8)貯水槽内に貯留された要処理水に含まれるPFASを除去する可搬式水処理装置であって、浮遊物質(SS:Suspended Solids)を除去するろ過装置と、PFASを除去する除去装置と、ポンプと、を備え、前記除去装置の容量は可変である、可搬式水処理装置。
(9)(8)において、前記除去装置は、互いに並列に接続され、前記要処理水の流入の有無を切り替え可能な複数の処理カラムを有する、可搬式水処理装置。
図1は、本発明の好適な実施形態に係る可搬式水処理装置100の移送状態を示す側面図である。可搬式水処理装置100は、後述する架台に各種機器が固定され、図1に示されているような搬送車両200に積載して一般道路を走行することにより、容易に水処理の目的地まで移送することができる。図1では、搬送車両200は、クレーン付きトラックとして示されているが、搬送車両200の種別は特に限定するものではなく、通常のトラックやトレーラーであってもよい。
図2は、可搬式水処理装置100の第三角法による上面及び側面の外観図である。可搬式水処理装置100は、その上に固定された種々の機器を一体に取り扱い、移送するための架台1と、架台1上に固定されたポンプ2、ろ過装置3、除去装置4、制御盤5及び逆洗水沈降槽6を含む。なお、図2に示した架台1の形状および、各種機器の配置及び数量は一例であり、これらは種々の要求、例えば、搬送車両200の積載重量および積載可能サイズ、可搬式水処理装置100に要求される水処理性能、可搬式水処理装置100を積載した搬送車両200が通行しようとする道路の通行制限等に応じて変更されてよく、また、可搬式水処理装置100はそのような要求に従って設計され、さらに、使用される搬送車両200が選定されてよい。
架台1は、本実施形態では、金属パイプで構成した外枠に床板を設けたものであるが、各種機器を固定し一体に取り扱うことができる構成であれば、架台1はどのようなものであってもよい。また、図2に示した例では、架台1は単体の部材として構成されているが、これを複数に分割し、可搬式水処理装置100が複数の架台1により構成されるようにしてもよい。例えば、単体の架台1ではそのサイズ及び重量が過大となる場合に、搬送車両200への積み込み積み下ろしを容易にするため架台1を分割してもよい。また、架台1は、使用する搬送車両200による移送が可能なサイズに設計される。
ポンプ2は、図示しないホースを通じて貯水槽内の要処理水をくみ上げ、可搬式水処理装置100の各機器へと送り、又図示しないホースを通じて処理後水を還流させるものである。ポンプ2の動力は特に限定されないが、本実施形態では電動機である。また、図示したものは、ポンプ2の本体を陸上に固定する陸上ポンプであるが、ポンプ2自体をホースの先端に設け、貯水槽内の要処理水内に浸漬する水中ポンプであってもよい。
ろ過装置3は、要処理水中の浮遊物質(SS:Suspended Solids)を除去するろ過機である。ろ過装置3の形式は特に限定はされず、ろ材として、砂を用いるもの、珪藻土を用いるもの、スポンジやメンブレン等のフィルタを用いるもののいずれであっても差し支えない。また、ろ過装置3が逆洗式ろ過機であれば、ろ材を繰り返し使用できるため経済的であるが、必ずしも逆洗式でなくともよい。本実施形態では、ろ過装置3は、ろ材として砂を用いる逆洗式ろ過機であり、2台が並列に設置されているが、ろ過装置のろ過能力や台数は必要に応じて任意に決定してよい。
除去装置4は、要処理水中のPFASを除去する処理機である。具体的には、除去装置4は、イオン交換樹脂を充填した複数の処理カラム7を並列に接続したものである。なお、処理カラム7にて要処理水中のPFASを除去する際に使用される除去材は必ずしもイオン交換樹脂でなくともよく、他の利用可能な材料があればそれを使用してもよい。
制御盤5は、可搬式水処理装置100全体の動作を制御する制御装置であり、可搬式水処理装置100において利用されている機器が電動である場合には、図示しない配線を通じて電力を供給するものであってよい。また、制御盤5は、可搬式水処理装置100の各部の動作状態を検出する計器類、例えば流量計や圧力計などからの出力を表示し、さらに適宜の記録媒体に記録し、又は有線・無線通信ネットワークを通じて外部のコンピュータに出力してよい。制御盤5及び可搬式水処理装置100において利用されている機器に対する電力の供給は、可搬式水処理装置100を使用しようとする施設に設置されている電源から行うか、又はそのような電源が利用できない場合には、電源車を用意すればよい。あるいは、可搬式水処理装置100の架台1上に、発電機をさらに固定するようにしてもよい。バッテリーの使用は、これを妨げるものではないが、可搬式水処理装置100による水処理に十分なエネルギーを蓄積できるバッテリーはその重量およびサイズが過大になりやすく、注意が必要である。
逆洗水沈降槽6は、ろ過装置3のろ過能力を回復させるため逆洗操作を行った際に生じる逆洗水を貯留する水槽である。逆洗水沈降槽6の構成及び使用方法についてはより詳しく後述する。
図2では、図示を簡略化するため、可搬式水処理装置100の架台1と各機器の外形のみを示しており、各機器を接続する配管や電気配線、ホースやその他の水処理に付随して使用される備品類は省略している。しかしながら、可搬式水処理装置100は架台1上に積載された機器・備品群により水処理が遂行できるよう、それら必要な設備一式を一括して搬送車両200に積載できるように統合されている。可搬式水処理装置100による水処理は、可搬式水処理装置100が搬送車両200の荷台上に積載されたまま行われてもよいし、搬送車両200から地面又は床に降ろされた状態で行われてもよい。
図3は、実施形態の例に係る可搬式水処理装置100の配管図である。貯水槽300は、可搬式水処理装置100の処理対象であり、その内部に要処理水が貯留されている。なお、ここで、用語「要処理水」は、可搬式水処理装置100により取水され、PFASの除去処理が行われる対象となる水を差し、用語「処理後水」は、PFASの除去処理後、可搬式水処理装置100から排出される水を差すものとして用いる。この後詳細に説明するが、可搬式水処理装置100は還流式の水処理装置であり、可搬式水処理装置100から排出された「処理後水」が、再び「要処理水」として可搬式水処理装置100により取水されることがあり得る。したがって、「要処理水」及び「処理後水」は、可搬式水処理装置100による処理の前後における区別であり、その含有されるPFASの濃度にかかわりなく用いられる。
貯水槽300内の要処理水は、ホース8を介してポンプ2により汲み上げられ、可搬式水処理装置100に取水される。通常の水処理、すなわち、PFASの除去においては、配管経路9を通過し、本実施形態では、2分岐されてフローレギュレータ10により流量を制御され、三方弁11により、2台のろ過装置3へとそれぞれ導かれ、要処理水中の浮遊物質が除かれる。
ろ過装置3を通過した要処理水は、同じく三方弁11により配管経路12へと誘導され、除去装置4へと導かれる。なお、三方弁11は、今説明している通常の水処理における要処理水の経路と、ろ過装置3の逆洗時の要処理水の経路とを切り替えるものである。ろ過装置3の逆洗時の可搬式水処理装置100の動作については後述する。
配管経路12を通過した要処理水は、複数、ここでは6台の処理カラム7に並列に分岐される。すなわち、除去装置4の複数の処理カラム7は、配管経路12に対し、互いに並列に接続される。さらに、各処理カラム7の流入出口には、切換弁13が設けられており、個別に配管経路12からの要処理水の流入の有無を切り替え可能となっている。このため、可搬式水処理装置100は、水処理時に使用する処理カラム7の台数を任意に変更することができるようになっている。
処理カラム7を通過することにより、要処理水からはPFASが除去され、処理後水となる。処理後水は配管経路14へと流入し、貯水槽300へと還流される。このとき、使用していない処理カラム7に、処理後水が逆流することが無いよう、切換弁13は処理カラム7と配管経路14との間にも設けられている。
また、処理カラム7への流入口には、フローレギュレータ15が設けられ、処理カラム7へと流入する要処理水の流量が制御されるようになっている。また、可搬式水処理装置100の配管の各所には随時、圧力計16及びドレン弁17が設けられ、運転中の配管のつまりや漏れによる圧力上昇や降下を監視できるとともに、配管中の残留水の除去など適宜のメンテナンスが行えるようになっている。圧力計16及びドレン弁17については、図示の煩雑を避けるため、代表としてそれぞれ1つのみに符号を付した。
以上の通り、可搬式水処理装置100の要処理水からPFASを除去する動作(以降、この動作を「PFAS除去運転」という。)においては、貯水槽300に貯留された要処理水は、ホース8を介してポンプ2により汲み上げられ、配管経路9を通過してろ過装置3により浮遊物質を除去された後、配管経路12を通過して除去装置4の処理カラム7によりPFASを除去され、処理後水として再び貯水槽300に還流される。ここで、処理カラム7は、流入した要処理水から、含有されるPFASの全量を除去するものではない。したがって、PFASの含有量が減じられた処理後水は、貯水槽300内に貯留された要処理水と混じりあい、再び要処理水として可搬式水処理装置100によるPFASの除去が行われることになる。このPFAS除去運転が所定時間継続して行われることにより、貯水槽300内の貯留水のPFAS濃度は漸減していき、最終的に基準以下の濃度に減じられる。
このように、可搬式水処理装置100は、処理後水を貯水槽300に還流しながらPFAS除去運転を行うため、その運転にあたって、貯水槽300内の水量が大きく減じられることがなく、その水量を十分に保つことができる。そのため、PFAS除去運転中に貯水槽300内の貯留水を使用する必要が生じた場合、例えば、火災に対する消火活動が必要となった場合であっても当該活動を妨げることがない。
また、可搬式水処理装置100は、ろ過装置3の一定時間又は一定流量の使用毎に、逆洗を行うことにより、ろ材を清浄化し、そのろ過性能を保つことができる(以降、この動作を「逆洗運転」という。)。逆洗運転時には、三方弁11が切り替えられ、貯水槽300からポンプ2によって汲み上げられた要処理水は、配管経路9を通過した後、ろ過装置3のろ過水の排出側へと流入させられる。そして、ろ過装置3内のろ材に捕らえられた浮遊物質を洗い出した要処理水(以降、「逆洗水」と言う。)は、ろ過装置3の流入側から流出し、配管経路18へと導かれる。この時、三方弁11により配管経路12はろ過装置3から切り離されるため、要処理水や逆洗水が配管経路12へと流入することはない。
配管経路18を通過した逆洗水は、逆洗水沈降槽6へと流入する。逆洗水沈降槽6は、逆洗水に含まれる浮遊物質を沈降分離し、分離後の逆洗水を貯水槽300へと戻入する。逆洗水沈降槽6の構造は特に限定するものではないが、図3に簡明に示したものでは、メッシュスクリーン19により懸濁状態にある浮遊物質の移動を阻止しつつ、セパレータ20を溢流する、浮遊物質が除去された上澄液をポンプ21により汲み上げ、配管経路22を通じて貯水槽300へと戻入するものとなっている。逆洗水沈降槽6内に沈降した浮遊物質は、傾斜面23を滑り落ち、ドレン24より排出されるようになっている。
以上説明したPFAS除去運転と、逆洗運転とは、制御盤5により適宜切り替えて実行される。すなわち、PFAS除去運転を必要な時間継続して行う際に、所定の時間の経過または所定の流量の処理を検出した時点で適切な時間、逆洗運転を行い、再び、PFAS除去運転を継続するように制御される。
以上説明したように、可搬式水処理装置100による水処理は循環式の処理であるから、PFAS除去運転時にも貯水槽300に十分な水量を確保し、また、逆洗運転を適宜行うことで、ろ過装置3のろ過性能を維持することができる。しかしながら一方、PFAS除去運転により、貯水槽300内の要処理水からPFASが十分に、すなわち、基準値以下の濃度となるまで除去された、と言うのは必ずしも簡単ではない。
なぜなら、PFASは化学的に極めて安定な物質であることが知られており、水中に含有されるPFASの濃度を知るためには、専用の設備を有する分析機関等による分析を要するのであって、水処理の過程におけるPFAS濃度をリアルタイムに検出できるセンサや方法は知られていないからである。このため、可搬式水処理装置100による水処理にあたっては、例えば、貯水槽300内の貯留水中のPFAS濃度をモニタしておいて、それが基準値以下となるまでPFAS除去運転をする、というオペレーションをすることはできず、あらかじめ、PFAS除去運転をどのような条件で、どれだけの時間行えばPFASが十分に除去されるのかを見積もっておかなければならない。
図4は、可搬式水処理装置100を用いた水処理方法を説明するフロー図である。なお、同図に示したフローは、代表的な手順を説明するものであり、一部前後して差し支えないものについては、これを入れ替え、又は同時に実行するようにしてもよい。
水処理にあたっては、まずPFAS除去運転に先立って、処理対象の貯水槽300内に貯留された要処理水の量及び、かかる要処理水のPFAS含有濃度である、処理前PFAS濃度を測定する(ST1)。要処理水の量は、貯水槽300中の要処理水の水位から容易に求めることができ、また、処理前PFAS濃度は、要処理水の一部をサンプリングし、分析機関にて成分分析を行うことにより測定することができる。通常、この測定には、半日~数日程度を要する。
要処理水の量と、処理前PFAS濃度が既知であれば、除去対象となる要処理水に含まれるPFASの量である、処理前PFAS含有量は、両者の積として容易に求められる。すなわち、要処理水の量をV[m3]、処理前PFAS濃度をc0[μg/m3]とすれば、処理前PFAS含有量m0[μg]は、
したがって、可搬式水処理装置100の除去装置4は、少なくとも、処理前PFAS含有量以上のPFAS除去容量(PFASを要処理水から除去できる量)を有している必要がある。ところが、常に、除去装置4の複数の処理カラム7全てを使用するのは、必ずしも得策ではない。なぜなら、PFASの除去に用いられた処理カラム7の充填物は、そのPFAS除去容量を十分に使い切っていなくとも、交差汚染を避ける観点、及び、廃棄物処理に関する法規の観点から、他施設における水処理に使いまわすことができず、水処理の終了に伴って廃棄される、又は適切な再生処理を施す必要があるからである。
すでに説明したように、除去装置4の複数の処理カラム7は、互いに並列に接続されているため、除去装置4のPFAS除去容量が処理前PFAS含有量を大きく上回る場合には、水処理によっては、各処理カラム7のPFAS除去容量のわずかな一部しか使用されず、その充填物の大部分がPFASの除去に使用されない。しかし、そのような場合であっても充填物は廃棄するか、コストをかけて再生処理を施さなければならないため、水処理のコスト増要因となる。
例えば、図5の(a)に示すように、処理前PFAS含有量m0が除去装置4全体のPFAS除去容量M[μg]の30%であった場合に、水処理の終了時点では、6本の処理カラム7は、それぞれのPFAS除去容量の30%が使用されたこととなる(図では、使用されたPFAS除去容量をハッチングで示す)。この場合であっても、6本の処理カラム7は全て、その充填物の廃棄又は再生処理が必要となるため、除去装置4全体の70%の充填物は無駄になる。
これに対し、図5の(b)に示すように、同じく処理前PFAS含有量m0が除去装置4全体のPFAS除去容量Mの30%であった場合に、互いに並列接続された処理カラム7の内、図中左の2台のみを要処理水が流入するものとして使用し、残りの図中右の4台は切替弁13(図3)を操作して配管経路12から切り離し、使用しないものとして、除去装置4のPFAS除去容量をM/3とすると、水処理の終了時点では、図中左側2本の処理カラム7のみがそれぞれ、容量の90%が使用された状態となる。この場合には、6本の処理カラム7中、その充填物の廃棄又は再生処理を要するのは、使用に係る2本のみであり、未使用の充填物は、除去装置4全体の約3.3%となり、無駄を削減できる。
このように、除去装置4の容量を可変とし、処理前PFAS含有量に基づいて、その容量を適切に決定することにより、イオン交換樹脂など高価な充填物を無駄を少なくして使用することができ、水処理のコストを低減することができる。除去装置4の容量を決定するにあたっては、図5(b)の例では、処理前PFAS含有量mが、可変された除去装置4の容量であるM/3の90%とされたが、一般に、処理前PFAS含有量mが、可変された除去装置4の容量による最大PFAS除去量の50%以上100%以下となるように、除去装置4の容量を定めるとよい。
本実施形態に係る可搬式水処理装置100では、除去装置4は、互いに並列に接続され、要処理水の流入の有無を切り替え可能な複数の処理カラム7を有しているから、除去装置4の容量は、要処理水が流入する処理カラム7の個数を決定することにより可変されることになる。このようにして、除去装置4の容量を決定する(ST2;図4)。
さらに、要処理水の量V及び処理前PFAS濃度c0に基づいて、PFAS除去時間を行う時間である、処理時間T0を決定する(ST3)。可搬式水処理装置100が単位時間当たりに処理できる体積流量Q[m3/h]は、除去装置4の容量に応じて定まり、除去装置4によるPFASの除去率pは既知であるから、貯水槽300内の貯留水のPFAS濃度c[μg/m3]は、次式
ここで、pが定数とみなせる場合には、
とPFAS濃度cは指数関数に従うから、容易にT0を決定することができる。しかしながら、一般に、除去率pは、PFAS除去運転時の温度などの環境パラメータや、処理カラム7のPFAS吸着量に依存して変化するため、式(2)は必ずしも解析的に解けるわけではない。そのような場合には、コンピュータを用いた数値シミュレーションを行い、T0を決定すればよい。
除去装置4の容量と、処理時間T0が決定されれば、可搬式水処理装置100を搬送車両200に積載し、処理対象である貯水槽300にアクセス可能に設置する(ST4)。すなわち、可搬式水処理装置100からホースを貯水槽300に差し入れ、また、可搬式水処理装置100に電源などの動力を接続する。可搬式水処理装置100は、搬送車両200から降ろされ設置されても、搬送車両200に積載されたままであってもよい。
続いて、可搬式水処理装置100により、処理時間T0の間、PFAS除去運転を行う(ST5)。なお、PFAS除去運転の間に、所定時間、又は、所定量の要処理水の処理毎に、逆洗運転を行ってもよい。
図6は、可搬式水処理装置100における逆洗運転を説明するフロー図である。逆洗運転においては、三方弁11(図3参照)を切り替え、ポンプ2により汲み上げられる要処理水をろ過装置3の流出側に逆方向から注入することにより、ろ材を逆洗する。ろ材を洗浄した逆洗水は、逆洗水沈降槽6に貯留される(ST11)。
逆洗水沈降槽6に貯留された逆洗水は静置され、液中に懸濁した浮遊物質は沈降し分離される(ST12)。浮遊物質が沈降し清浄化された逆洗水は、その上澄液のみが分離され、ポンプ21により、貯水槽300に戻入される(ST13)。なお、逆洗運転を行っている間は、除去装置4によるPFASの除去は行われないので、この間の時間は、PFAS除去運転の処理時間には算入しない。
定期的に逆洗運転がなされることにより、ろ過装置3はそのろ過能力が維持され、浮遊物質の除去装置4への流入が阻止され、処理カラム7が目詰まりするなどのトラブルを防止できる。なお、逆洗水沈降槽6において沈降分離された浮遊物質は、必要に応じて、または、可搬式水処理装置100による水処理の終了後、逆洗水沈降槽6に残留した逆洗水と共にドレン24から排出され、適切に処分される(ST14)。
図4に戻り、PFAS除去運転(ST5)が終了したならば、当初の見通し通りであれば、貯水槽300内に貯留される処理後水のPFAS濃度は基準濃度以下となっているはずである。しかしながら、PFAS除去運転にあたって、貯水槽300内の処理後水のPFAS濃度はモニタできているわけではなく、種々の要因によってPFAS除去が不十分となっていないか、確認することが望ましい。種々の要因としては、処理前PFAS濃度c0の測定誤差、要処理水の量Vの見積もり誤差、体積流量Qの誤差、除去率pの誤差などが挙げられる。
そこで、再度、貯水槽300内の貯留水(処理後水)のPFAS含有濃度である、処理後PFAS濃度を測定する(ST6)。この測定も、処理前PFAS濃度と同様に、貯留水の一部をサンプリングし、分析機関にて成分分析を行うことにより行ってよい。
その結果、処理後PFAS濃度が基準濃度より下回っていれば、十分にPFASが除去されたのであるから、追加処理は不要であると判断する。しかしながら、処理後PFAS濃度が基準濃度を依然として上回っているのであれば、追加処理、すなわち、さらなるPFASの除去が必要であると判断されることになる(ST7)。
追加処理が必要と判断された場合には、追加処理において使用する除去装置4の容量を、処理後PFAS濃度と、要処理水の量から求められる、処理後水に含まれるPFASの量である、処理後PFAS含有量に基づいて決定する(ST8)。これは、すでに説明したST2と同様であってよく、処理後PFAS濃度をc1[μg/m3]とすれば、処理後PFAS含有量m1[μg]は、
この時、先のPFAS除去運転の結果の除去装置4の各処理カラム7の状態に応じて、除去装置4の容量を決定する。一例として、追加処理前の除去装置4の各処理カラム7の状態が、図5の(b)に示す状態であったとして、例えば、m1が、除去装置4全体のPFAS除去容量Mの3.3%以下であるならば、引き続き、互いに並列接続された処理カラム7の内、図中左の2台のみを要処理水が流入するものとして使用することができる。具体例として、m1が、PFAS除去容量Mの3%であると算出された場合には、追加処理にかかるPFAS除去運転による除去装置4の各処理カラム7の使用状態は、図7の(a)に示したようにできる。同図では、追加処理に係るPFAS除去運転によって使用された容量は黒塗りで示している。図7の(a)のケースでは、追加処理によっても、除去装置4の6台の処理カラム7のうち、使用されるのは左側の2本のみであり、残りの右側4台は未使用のままである。充填物の廃棄又は再生処理が必要となるのは、使用に係る左側2台の処理カラム7のみであり、それぞれPFAS除去容量の99%が使用されているから、未使用のまま廃棄又は再生処理がなされる充填物は、除去装置4全体の僅かに約0.3%である。
あるいは、m1が、除去装置4全体のPFAS除去容量Mの3.3%より上であるならば、使用済みの処理カラム7の未使用容量によっては除去することができないので、未使用の処理カラム7を使用することとして、除去装置4のPFAS除去容量をM/6とすることができる。一例として、m1が、PFAS除去容量Mの5%であると算出された場合の追加処理にかかるPFAS除去運転による除去装置4の各処理カラム7の使用状態は、図7の(b)に示したようにできる。(b)の例では、左から3台目の処理カラム7が追加処理に使用され、その容量の30%が使用されることになる。この場合、充填物の廃棄又は再生処理が必要となるのは、使用に係る左側3台の処理カラム7となり、未使用のまま廃棄又は再生処理がなされる充填物は、除去装置4の15%である。
図4に戻り、追加処理に係る除去装置4の容量が決定されたならば、追加の処理時間、すなわち、追加処理に係るPFAS除去運転の処理時間を決定する(ST9)。この場合においても、すでに示した式(2)及び式(3)を同様に用いて追加の処理時間T1を決定すればよい。
その後は、追加処理に係る除去装置4の容量及び追加の処理時間T1を用いて、再度PFAS除去運転を行い(ST5)、以降同様に、追加処理が不要と判断されるまでこの手順を繰り返せばよい(ST7)。最初のPFAS除去運転、又は、追加のPFAS除去運転の結果、貯水槽300内の処理後水の処理後PFAS濃度が基準濃度を下回り、十分にPFASが除去されており、これ以上の追加処理が不要であると判断された場合には、可搬式水処理装置100を撤去し(ST10)、水処理を終える。搬送車両200により搬出された可搬式水処理装置100は、適宜のメンテナンス施設にて、使用された処理カラム7の交換と、使用済み充填物の廃棄又は再生処理、また、残留水の排出とその適正な処分、必要な洗浄等が行われ、次回の水処理に再び使用される。
以上説明した水処理方法により、イオン交換樹脂等の充填物を効率的に利用しつつ、かつ、貯水槽内に貯留されている要処理水を失うことなく、当該要処理水からPFASを取り除き、清浄化することができる。また、同水処理方法に用いられる可搬式水処理装置100は、対象となる貯水槽300の近傍に容易に搬送し設置し、また容易に撤去し搬出できるから、柔軟かつ迅速に水処理を行うことができるとともに、簡易なメンテナンスを行うことにより、数々の貯水槽300の水処理に繰り返し使用できるため、水処理のコストを大きく低減できるものである。
1 架台、2 ポンプ、3 ろ過装置、4 除去装置、5 制御盤、6 逆洗水沈降槽、7 処理カラム、8 ホース、9 配管経路、10 フローレギュレータ、11 三方弁、12 配管経路、13 切替弁、14 配管経路、15 フローレギュレータ、16 圧力計、17 ドレン弁、18 配管経路、19 メッシュスクリーン、20 セパレータ、22 配管経路、23 傾斜面、24 ドレン、100 可搬式水処理装置、200 搬送車両、300 貯水槽。
Claims (9)
- 処理対象の貯水槽内に貯留された要処理水の量及び、前記要処理水のPFAS(ペルフルオロアルキル物質およびポリフルオロアルキル化合物)含有濃度である、処理前PFAS濃度を測定するステップと、
前記量及び前記処理前PFAS濃度に基づいて、処理時間を決定するステップと、
少なくとも、浮遊物質(SS:Suspended Solids)を除去するろ過装置と、PFASを除去する除去装置と、ポンプと、を備えた可搬式水処理装置を前記貯水槽にアクセス可能に設置するステップと、
前記貯水槽から取水した前記要処理水を前記可搬式水処理装置に通過させ、前記貯水槽に還流するPFAS除去運転を、前記処理時間以上行うステップと、
を有する水処理方法。 - 前記除去装置の容量は可変であり、
前記量及び前記処理前PFAS濃度から求められる、前記要処理水に含まれるPFASの量である、処理前PFAS含有量に基づいて、前記除去装置の容量が決定される、
請求項1に記載の水処理方法。 - 前記除去装置の容量は、前記処理前PFAS含有量が、当該容量による最大PFAS除去量の50%以上100%以下となるように定められる、
請求項2に記載の水処理方法。 - 前記除去装置は、互いに並列に接続され、前記要処理水の流入の有無を切り替え可能な複数の処理カラムを有し、
前記除去装置の容量は、前記要処理水が流入する前記処理カラムの個数を決定することにより可変される、
請求項3に記載の水処理方法。 - 前記PFAS除去運転を、前記処理時間以上行うステップの後、
前記貯水槽内に貯留された処理後水のPFAS含有濃度である、処理後PFAS濃度を測定するステップと、
前記量及び前記処理後PFAS濃度に基づいて、追加の処理時間を決定するステップと、
前記PFAS除去運転を、前記追加の処理時間以上行うステップと、
を有する請求項1に記載の水処理方法。 - 前記PFAS除去運転を、前記処理時間以上行うステップの後、
前記貯水槽内に貯留された処理後水のPFAS含有濃度である、処理後PFAS濃度を測定するステップと、
前記量及び前記処理後PFAS濃度に基づいて、追加の処理時間を決定するステップと、
前記PFAS除去運転を、前記追加の処理時間以上行うステップと、
を有し、
前記PFAS除去運転を、前記追加の処理時間以上行うステップにおける前記除去装置の容量は、前記量及び前記処理後PFAS濃度から求められる、前記処理後水に含まれるPFASの量である、処理後PFAS含有量に基づいて決定される、
請求項2に記載の水処理方法。 - 前記可搬式水処理装置は、逆洗水沈降槽をさらに備え、
前記要処理水によって前記ろ過装置を逆洗し、逆洗水を前記逆洗水沈降槽に貯留するステップと、
前記浮遊物質を沈降分離した前記逆洗水を前記貯水槽に戻入するステップと、
を有する請求項1に記載の水処理方法。 - 貯水槽内に貯留された要処理水に含まれるPFASを除去する可搬式水処理装置であって、
浮遊物質(SS:Suspended Solids)を除去するろ過装置と、PFASを除去する除去装置と、ポンプと、を備え、
前記除去装置の容量は可変である、
可搬式水処理装置。 - 前記除去装置は、互いに並列に接続され、前記要処理水の流入の有無を切り替え可能な複数の処理カラムを有する、
請求項8に記載の可搬式水処理装置。
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JP2022120835A JP2024017890A (ja) | 2022-07-28 | 2022-07-28 | 水処理方法及び可搬式水処理装置 |
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