JP2024008160A - 合成パルプ、合成紙、及び合成パルプの製造方法 - Google Patents

合成パルプ、合成紙、及び合成パルプの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】平滑性が高く、かつ比表面積が大きい合成紙を形成可能な、乳酸系重合体を含む合成パルプを提供すること。【解決手段】上記課題を解決する合成パルプは、乳酸系重合体を主成分とし、前記合成パルプのカナディアン標準濾水度が750ml以下であり、前記合成パルプの平均繊維径が15μm以上55μm以下である。【選択図】なし

Description

本開示は、合成パルプ、合成紙、及び合成パルプの製造方法に関する。
樹脂から製造される合成パルプは世の中に広く流通し、例えば不織布や紙、包装容器、機械用部品、フィルター等、様々な用途に用いられている。このような合成パルプ由来の製品は、使用後、焼却されたり、土壌に埋められたりして処分されることが一般的である。近年、二酸化炭素排出量の低減等、環境への負荷を軽減する観点から、樹脂製品の土壌中での分解に関心が集まっている。例えば、特許文献1には、使用後の樹脂成形体に処理液を塗布し、土壌中で分解する方法が記載されている。
一方、ポリ乳酸等の乳酸系重合体は、植物由来のでんぷん等を出発原料として製造できるだけでなく、生分解性に優れ、かつ高温条件下でも安定であること等から、環境への負荷が低い材料として、注目されている。例えば特許文献2では、長さ10μm以上10mm以下のフィブリル状、もしくはフィブリル状物のポリ乳酸を含む紙や不織布が提案されている。
国際公開第2019/207751号 特開2004-183109号公報
ここで、上記特許文献1に記載の方法では、樹脂の種類や、成形体の構造によっては、分解に時間がかかったり、一部が分解せずに残ったりすることがある。また、使用後の成形体に、処理液を塗付する必要があり、作業が煩雑である。一方、特許文献2のように、ポリ乳酸を使用することで、成形体に生分解性を付与することが可能である。また、生分解させる際に、処理液の塗布等が必要ない、という利点もある。ただし、特許文献2に記載の紙では、従来の合成紙等と比較して、平滑性が低いこと等から、用途が限定され、さらなる改良が求められていた。
本開示は、上記課題を鑑みてなされたものである。本開示は、平滑性が高く、比表面積が大きい合成紙を製造可能な、乳酸系重合体を含む合成パルプおよびその製造方法、ならびに合成パルプを含む合成紙の提供を目的とする。
本開示は、以下の合成パルプを提供する。
[1]乳酸系重合体を主成分とする合成パルプであって、前記合成パルプのカナディアン標準濾水度が750ml以下であり、前記合成パルプの平均繊維径が15μm以上55μm以下である、合成パルプ。
[2]平均繊維長が0.06mm以上0.7mm以下である、[1]に記載の合成パルプ。
[3]前記カナディアン標準濾水度が200ml以上600ml以下である、[1]または[2]に記載の合成パルプ。
[4]前記乳酸系重合体の割合が90質量%以上である、[1]~[3]のいずれかに記載の合成パルプ。
本開示は、以下の合成紙を提供する。
[5]上記[1]~[4]のいずれかに記載の合成パルプを含む、合成紙。
[6]平均孔径が1.8μm以下である、[5]に記載の合成紙。
[7]紙通気度が3.0秒以上10秒以下である、[5]または[6]に記載の合成紙。
[8]前記合成紙の総質量に対する、前記合成パルプの質量の割合が、50質量%以上90質量%以下である、[5]~[7]のいずれかに記載の合成紙。
本開示は、以下の合成パルプの製造方法を提供する。
[9]乳酸系重合体を含む繊維を叩解する工程を含み、前記繊維は、平均繊維長が0.05mm~3mmであり、かつ平均繊維径が20μm~80μmである、合成パルプの製造方法
[10]前記繊維を叩解する工程の前に、乳酸系重合体を含む紡糸繊維を裁断して前記繊維とする工程をさらに含む、[9]に記載の合成パルプの製造方法。
[11]前記紡糸繊維を裁断する工程の前に、乳酸系重合体および/または乳酸系重合体を含む樹脂組成物を溶融紡糸する工程を含む、[10]に記載の合成パルプの製造方法。
[12]前記不織布を形成する工程において、スパンボンド法、またはメルトブロー法のいずれか一方を行う、[11]に記載の合成パルプの製造方法。
本開示の合成パルプによれば、乳酸系重合体を含み、平滑性が高く、比表面積が大きい合成紙を製造可能である。
図1は、実施例2で作製した合成紙を電子顕微鏡で観察したときの写真である。
以下に、本開示の実施形態について説明する。これらの説明及び実施例は実施形態を例示するものであり、実施形態の範囲を制限するものではない。
本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。本開示において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本開示において、「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、本用語に含まれる。本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、1つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において、各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。本開示において組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。本開示において、「質量%」と「重量%」とは同義であり、「質量部」と「重量部」とは同義である。本開示において含有成分量を示す「%」は、特に断らない限り質量基準である。本開示において、「層」との語には、当該層が存在する領域を観察したときに、当該領域の全体に形成されている場合に加え、当該領域の一部にのみ形成されている場合も含まれる。本開示における基(原子団)の表記において、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。
1.合成パルプについて
従来、合成紙の原料として、ポリオレフィンを含む合成パルプ等が一般的に使用されてきた。しかしながら、ポリオレフィンを含む合成紙は、使用後に高温で焼却することが一般的であり、土壌中で処理するためには、合成紙に化合物(例えば酸化分解剤)を添加したり、紫外線を照射したり、処理液を塗付したりする必要があった。
これに対し、本開示の合成パルプは、乳酸系重合体を主成分とする。そのため、当該合成パルプから得られる合成紙は、使用後に容易に生分解させること等が可能である。またこのとき、特別な処理が不要である。さらに、乳酸系重合体は、一般的なポリオレフィン、例えばポリエチレンやポリプロピレンより融点が高い。したがって、乳酸系重合体を含む合成紙は、耐熱性が要求される用途にも使用可能である。
また、本開示の合成パルプは、平均繊維径が15μm以上55μm以下であり、かつカナディアン標準濾水度が750ml以下である。カナディアン標準濾水度は、カナディアン・スタンダード・フリーネスとも称され(以下「CSF」あるいは単に「濾水度」とも称する)、パルプの各繊維の分岐状態や、パルプ中での繊維の絡み合い等によって変化する値である。例えば、各繊維の分岐が少なかったり、それぞれの絡み合いが少ないと、当該CSFが高くなる。一方で、分岐が多かったり、繊維どうしが絡み合ったり、交差していると、値が低くなりやすい。本開示の合成パルプでは、合成パルプが上記平均繊維径を有するため、繊維が適度に分岐していたり、繊維どうしが絡み合ったり交差したりしやすく、上記CSFが達成される。そして、当該CSFを有する乳酸系重合体を含む合成パルプを用いて合成紙を製造すると、理由は明らかではないが、その平滑性が高くなったり、比表面積が大きくなったりする。
以下、本開示の合成パルプについて、詳しく説明する。
本開示の合成パルプは、複数の繊維の集合体である。合成パルプの形状は特に制限されず、例えば繊維が集合した、成形前の状態であってもよく、抄紙等によって、シート状に成形された状態であってもよい。各繊維の形状は特に制限されないが、1本の繊維が多数に枝分かれた分岐構造を有することが好ましい。これにより、上述のCSFが達成されやすくなる。
ここで、上記合成パルプを構成する複数の繊維の平均繊維径は15μm以上55μm以下であればよいが、生分解性や、合成紙としたときの良好な平滑性、高比表面積の実現性等の観点で、20μm以上50μm以下が好ましく、25μm以上45μm以下がより好ましい。合成パルプの平均繊維径は、合成パルプを製造する際の、ディスク型リファイナーによる処理等によって、所望の範囲に調整できる。また、合成パルプの製造時に、繊維を裁断しても調整できる。なお、本明細書における、「平均繊維径」とは、複数の繊維の直径の平均値である。複数の繊維の直径は、合成パルプの濃度が0.02質量%となるように水に分散させて、フィンランド国、バルメットオートメーション社製自動繊維測定機(製品名:ValmetFS5)で合成パルプを構成する繊維を1本1本観察することで測定できる。またこのとき、3000本程度の繊維の直径の平均値を、平均繊維径としてもよい。
一方、上記合成パルプを構成する複数の繊維の平均繊維長は特に制限されないが、生分解性や、合成紙としたときの良好な平滑性、高比表面積の実現性等の観点で、0.06mm以上0.7mm以下が好ましく、0.1mm以上0.4mm以下がより好ましい。上記繊維長とは、1本の繊維の一端から他端までの距離であり、繊維が枝分かれしている場合には、当該距離が最長になるように一端および他端を設定したときの距離である。当該繊維長は、合成パルプを製造する際の、ディスク型リファイナーによる処理等によって調整できる。また、合成パルプの製造時に、繊維を裁断することによっても調整できる。
平均繊維長は以下の手順で求めることができる。合成パルプを構成する繊維の繊維長を0.05mmごとに分級する。その後、それぞれの級(長さ)に含まれる繊維の実測平均繊維長と、それぞれの級に含まれる繊維の本数を測定する。測定は、12000~13000本の繊維について行えばよい。その後、上記測定結果から、以下の式により、それぞれの級の数平均繊維長Ln(mm)を求める。
Ln=ΣL/N
L:1つの級に含まれる繊維の実測平均繊維長(mm)
N:1つの級に含まれる繊維の本数
その後、以下の式により、合成パルプを構成する繊維の平均繊維長(mm)を求める。
平均繊維長=Σ(Nn×Ln)/Σ(Nn×Ln
Nn:それぞれの級に含まれる繊維の本数
なお、上記実測平均繊維長は、合成パルプの濃度が0.02質量%になるように合成パルプを水に分散し、フィンランド国、バルメットオートメーション社製自動繊維測定機(製品名:ValmetFS5)で合成パルプを構成する繊維の一本一本の繊維の長さを測定する。そして、これらの値を上述の式に当てはめ、求めることができる。当該測定機では、キャピラリー中を流れる際の繊維にキセノンランプ光を照射してCCD(電荷結合素子)センサーで映像信号を採取し、画像解析する。
一方、上記合成パルプのカナディアン標準濾水度(CSF)は、750ml以下であればよいが、生分解性に優れる合成パルプを得る観点、および合成紙とした際に、平滑性を良好にしたり比表面積を大きくしたりするとの観点で、600ml以下が好ましく、500ml以下がより好ましい。また製造装置の汚れ防止の観点からは200ml以上であることが好ましく、250ml以上であることがより好ましい。つまり、200ml以上600ml以下が好ましく、250ml以上500ml以下がより好ましい。上記CSFは、JIS P8121-2に準じた方法で測定される。具体的には、絶乾重量24gの合成パルプを量り取り、2000mlの水を加えて濃度1.2%程度とする。そして、JIS P8220-1で規定される離解機にかけて30000回転(10分間)まで離解させる。完全に離解した繊維を、濃度が0.3質量%程度となるように水で希釈し、水温を20.0±0.5℃とする。離解したパルプスラリーを1000ml量り取り、カナダ標準濾水度試験器を用いて、側管から出た排水量を読み取る。
ここで、合成パルプは、乳酸系重合体を主成分とする。本明細書において、「主成分」とは、総質量に対して当該成分の割合が50質量%以上であることを意味する。つまり、本開示の合成パルプでは、その総質量に対して、乳酸系重合体の割合が50質量%である。合成パルプの総質量に対する乳酸系重合体の質量の割合は、90質量%以上が好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、98質量%以上であることがさらに好ましい。
乳酸系重合体とは、少なくとも乳酸由来の構造を含む重合体であり、乳酸の単独重合体、または乳酸と他の単量体との重合体であってもよい。ただし、乳酸系重合体は、全構成単位に対して、乳酸由来の構造単位を50質量%以上含んでもよい。ここで、乳酸には、L-乳酸およびD-乳酸が有り、乳酸系重合体は、L-乳酸およびD-乳酸のうち、いずれか一方のみを含んでいてもよく、両方を含んでいてもよい。
乳酸系重合体中のL-乳酸由来の構造単位(L体)の量、およびD-乳酸由来の構造単位(D体)の量の比は特に制限されないが、L体:D体=100:0~90:10であってもよく、L体:D体=0:100~10:90であってもよい。
乳酸の単独重合体の例には、L-乳酸由来の構造のみを含むポリ(L-乳酸)、D-乳酸由来の構造単位のみを含む(ポリ(D-乳酸)であってもよく、L-乳酸およびD-乳酸由来の構造を含むポリ(DL-乳酸)が含まれ、これらは市販品であってもよい。乳酸の単独重合体の例には、島津製作所社製のラクティシリーズ、三井化学社製のレイシアシリーズ、カーギル・ダウ社製のNatureWorksシリーズ等が含まれる。
一方、乳酸と共重合可能な他の単量体の例には、ヒドロキシカルボン酸や、ラクトン類、ジオール、ジカルボン酸等が含まれる。ヒドロキシカルボン酸の例には、グリコール酸、3-ヒドロキシ酪酸、4-ヒドロキシ酪酸、2-ヒドロキシn-酪酸、2-ヒドロキシ-3,3-ジメチル酪酸、2-ヒドロキシ-3-メチル酪酸、2-メチル乳酸、2-ヒドロキシカプロン酸等の2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸が含まれる。また、ラクトン類の例には、カプロラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトン等が含まれる。
ジオールの例には、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール,1,4-シクロヘキサンジメタノール等の脂肪族ジオールが含まれる。ジカルボン酸の例には、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、およびドデカン二酸等が含まれる。
乳酸系重合体は、縮重合法、開環重合法等、公知のいずれの方法によって重合した物であってもよい。例えば、L-乳酸やD-乳酸、もしくはこれらの混合物、さらに必要に応じて他の単量体を直接、脱水縮重合したものであってもよい。また、乳酸の環状二量体であるラクチド(L-ラクチドおよび/またはD-ラクチド)を、必要に応じて重合調整剤等を用いながら、適切な触媒を使用して開環重合したり、他の単量体と重合させたりしたものであってもよい。
なお、合成パルプに耐熱性をさらに付与する場合には、テレフタル酸等の非脂肪族ジカルボン酸や、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物等、非脂肪族ジオールを各種乳酸や他の単量体と共重合させてもよい。さらに、分子量調整のために、鎖延長剤として、ジイソシアネート化合物や、エポキシ化合物、酸無水物等を重合に使用してもよい。
ここで、上記乳酸系重合体が、共重合体である場合、ランダム共重合体であってもよく、ブロック共重合体であってもよい。ポリ乳酸セグメントをA、ポリ乳酸以外の重合体、例えばジオール/ジカルボン酸セグメントをBとすると、典型的にABAブロック共重合体とすることにより、合成パルプの透明性や強度等を高めやすい傾向にある。なお、ジオール/ジカルボン酸セグメントのガラス転移温度は、0℃以上であってもよい。
乳酸系重合体の重量平均分子量は特に制限されないが、通常50,000以上400,000以下であってもよく、100,000以上250,000以下であってもよい。
なお、合成パルプは、上記乳酸系重合体の他に、本開示の目的および効果を損なわない範囲において、乳酸系重合体以外の樹脂等を含んでいてもよい。また、合成パルプは、抗菌剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、各種安定剤、酸化防止剤、分散剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、染料、顔料、天然油、合成油、ワックス、および充填剤等、公知の化合物を含んでいてもよい。合成パルプは、これらの化合物を一種のみ含んでいてもよく、二種以上含んでいてもよい。
・用途
上記合成パルプは、単独で、あるいは天然パルプおよび/または他の合成パルプ、および必要に応じて有機繊維、無機繊維、無機粉体等と混合して、種々の合成紙またはシートの製に使用できる。合成紙については、後述する。
また、本開示に係る合成パルプは、例えば電池用セパレータ等の保液性物品、成形ボード、ティーバッグ紙、滅菌紙、乾燥剤袋等のヒートシール紙等に特に好適に使用できる。この他、本開示に係る合成パルプを乾燥粉砕して綿状としたものは、例えば、塗料のタレ防止剤、シーラー、シーラント、コーキング材、接着剤等の増粘用添加剤として使用できる。また、本開示に係る合成パルプを木材パルプ等の天然パルプと混抄して得られたシートは耐水性を有し、たとえばラベル紙、ティッシュペーパー、タオルペーパー、払拭材等として、また他の合成繊維と混抄して得られたシートは、たとえば合成紙、インモールドラベル紙等として使用できる。さらに、合成パルプは、他の粉砕パルプ等と混合した後にシート状またはマット状とすることにより、たとえば水、油、溶剤、尿などを吸収する吸水シートまたは吸水マットとして使用できる。さらに合成パルプは、解繊繊維等用の乾式バインダー、電線ケーブル被覆材、絶縁紙、ブックカバー、ファイバーセメント等のセメント製品、気体用フィルター、液体用フィルター、マスク、セラミックスペーパー、紙皿等の成形板紙、壁紙、クッションフロアーの裏打ち材、壁材の補強用繊維、タイルグラウト、濾過助剤等としても使用できる。
2.合成パルプの製造方法
上述の合成パルプの製造方法は特に制限されないが、例えば以下の製造方法で製造することができる。
当該合成パルプの製造方法は、例えば、乳酸系重合体、または乳酸系重合体を含む樹脂組成物を溶融紡糸法する工程(以下、「溶融紡糸工程」とも称する)、得られた紡糸繊維を裁断して繊維とする工程(以下、「裁断工程」とも称する)、および裁断工程で得られた繊維を叩解する工程(以下、「叩解工程」とも称する)とを行う方法である。
一般的に、ポリオレフィンを含む合成パルプは、フラッシュ法(例えば、EncyclopediaofChemicalTechnology3rded,Vol.19,P420-425等に記載の製法)で製造されている。しかしながら、本発明者らが鋭意検討したところ、乳酸系重合体は、エマルションを調製し難く、上記方法では合成パルプを製造できなかった。これに対し、先に乳酸系重合体、または乳酸系重合体を含む樹脂組成物を溶融紡糸し、これを裁断し、さらに叩解することで、乳酸系重合体を含む合成パルプが得られることが明らかとなった。
・溶融紡糸工程
紡糸工程では、上述の乳酸系重合体、または上記乳酸系重合体および他の成分を含む樹脂組成物を溶融紡糸する。溶融紡糸法の例には、スパンボンド法、およびメルトブロー法が含まれ、これらのいずれか一方を含む方法で溶融紡糸することが好ましい。例えば、スパンボンド法、およびメルトブロー法でそれぞれ溶融紡糸を行い、これらによって得られた紡糸繊維を混合してもよい。
溶融紡糸後の紡糸繊維は、通常、不織布として得られる。なお、紡糸繊維の平均繊維径は、20~80μmが好ましく、25~75μmがより好ましい。紡糸繊維の平均繊維径が当該範囲であると、後述の叩解工程後に得られる合成パルプの平均繊維径が、上述の範囲に収まりやすくなる。
・裁断工程
裁断工程では、上記溶融紡糸工程で得られ紡糸繊維を、所望の長さに裁断する工程である。裁断の方法は特に限定されず、溶融紡糸工程で得られた紡糸繊維(不織布)の形状等に合わせて適宜選択される。裁断工程の前に、上述の紡糸繊維を所望の長さもしくは大きさに裁断してもよい。
裁断工程に使用可能な装置の例には、アトマイザー、カッターミル、ビーズミル、ボールミル、ジェットミル等の公知の粉砕機や、シュレッダー等が含まれる。またギロチンカッター、カッターナイフ、ハサミに等によって裁断を行ってもよい。さらに、裁断と圧送とを同時に行えるカッターファン(二幸送風機製)等を用いてもよい。裁断工程では、紡糸繊維の長さだけでなく、その繊維径を調整してもよい。裁断工程は、繊維の平均繊維長が0.05mm以上3mm以下、好ましくは0.1mm以上2mm以下、平均繊維径が20μm以上80μm以下、好ましくは25μm以上70μm以下となるように裁断を行う。
・叩解工程
叩解工程では、上述の裁断工程によって得られた、平均繊維長が0.05mm以上3mm以下、平均繊維径が20μm以上80μm以下である繊維を、叩解する。具体的には、各種装置を用いて、平均繊維径が15μm以上55μm以下、平均繊維長が好ましくは0.06mm以上0.7mm以下になるように叩解する。叩解を行う装置の例には、ワーリング・ブレンダーまたはディスクリファイナー等が含まれる。例えば、ディスクリファイナーの刃の種類、回転数、またはスクリーンの径等を適切に選択することで、得られる合成パルプの平均繊維径やCSF等を所望の範囲に調整できる。また、上記繊維を水に濃度が0.5g/L以上5.0g/L以下となるように分散させて、叩解を行ってもよい。
叩解工程において、合成パルプの親水性を増大させるために、ノニオン性界面活性剤またはポリプロピレングリコールによる表面処理を行ってもよい。親水化方法は、例えば、特開昭63-235575号公報または特開昭63-66380号公報等に記載された方法を適用できる。
3.合成紙について
本開示の合成紙は、上記合成パルプを主成分として含んでいればよい。合成紙は、上記合成パルプを一種のみ含んでいてもよく、二種以上含んでいてもよい。当該合成紙は、上記合成パルプ以外に、他のバインダー繊維や、各種添加剤等をさらに含んでいてもよい。上記合成パルプの量は、10質量%以上90質量%以下が好ましく、15質量%以上85質量%以下がより好ましい。上記合成パルプの量が、10質量%以上であると、生分解性や平滑性に優れ、さらに比表面積が大きい合成紙とすることができる。一方、合成パルプの90質量%以下であると、バインダー繊維の量が十分になり、合成紙の引張強度を向上させることができる。なお、合成紙は、本発明の目的および効果を損なわない範囲で、上述の合成パルプ以外の合成パルプを一部に含んでいてもよい。
上記バインダー繊維の例には、公知の合成繊維が含まれる。具体例には、上述の合成パルプに相当しない、ポリエチレン系繊維や、低融点ポリエステル繊維、アクリル系繊維、ポリエチレン/ポリプロピレン複合繊維、ポリエチレン/ポリエチレンテレフタレート複合繊維、ポリエステル複合繊維等が含まれる。
バインダー繊維の平均繊維長は、バインダー繊維の添加の目的に応じて適宜選択されるが、0.1mm以上20mm以下が好ましく、1mm以上10mm以下がより好ましい。この範囲内の平均繊維長であれば、上記合成パルプと混合しやすく、かつ均一な合成紙が得られやすい。バインダー繊維の平均繊維長は、上述の合成パルプと同様に測定できる。バインダー繊維の平均繊維径は、上述の合成パルプと同様に測定できる。
合成紙中のバインダー繊維の量は、1質量%以上50質量%以下が好ましく、5質量%以上30質量%以下がより好ましい。
また、本発明の合成紙は、抄紙工程における泡立ちを防止や、合成紙の風合い(手触り)の改善を目的として、本開示の合成紙の目的および効果を損なわない範囲で水酸基を有する水溶性高分子をさらに含んでもよい。このような水溶性高分子としては、ポリビニルアルコールが好ましい。さらにポリビニルアルコールとしては、そのケン化度が90%以上のポリビニルアルコールが好ましく、ケン化度が98%以上のポリビニルアルコールがより好ましい。ポリビニルアルコールの具体例としては、日本合成化学社製のゴーセノールの完全ケン化型や準完全ケン化型、日本酢ビ・ポバール社製のJ-ポバールの完全ケン化型や中間ケン化型等が挙げられる。
また、本開示の合成紙は、一般的に合成紙に添加される添加剤をさらに含んでいてもよい。このような添加剤としては、乾燥紙力剤、湿潤紙力剤、歩留まり向上剤、凝結剤、凝集剤、分散剤、離型剤、消泡剤、殺菌剤などが挙げられる。
合成紙の平均孔径は、JIS Z8703に準拠して測定される値であり、平滑性が良好であり、さらに比表面積が大きい合成紙を得る観点から、1.8μm以下が好ましい。また、当該合成紙の最小孔径は、1.7μm以下が好ましく、最大孔径は1.5μm以下がより好ましい。合成紙の平均孔径や最小孔径、最大孔径が当該範囲であると、各種用途に使用しやすくなる。
本開示の合成紙の紙通気度(王研法透気度とも称される)は、紙風合いの観点、及び、紙平滑性と比表面積との両立の観点から、3.0秒以上10秒以下が好ましく、4.0秒以上9.0秒以下がより好ましい。当該紙通気度は、JISP8117に準拠して測定される値である。
本開示の合成紙の平滑度は、15以上50以下が好ましい。本開示の合成紙は、上述の合成パルプを含むことから、当該平滑度を達成できる。当該平滑度は、JISP8155に準拠して測定される値である。
また、本開示の合成紙のBET比表面積は、2.0以上であることが好ましく、2.5以上であることがより好ましい。また、上限値は特に制限されないが、例えば10.0以下であってもよい。当該BET比表面積は、JIS Z8830:2013に準拠し、窒素ガスの物理吸着を用いた細孔分布計(Belsorpmax、日本ベル株式会社製)により測定できる。本開示の合成紙は、上述の合成パルプを含むことから、当該比表面積を達成できる。合成紙が、上記比表面積を満たすと、合成紙を例えばフィルターとした際に濾過効率が高くなったり、当該合成紙に筆記をした際には、インクの乗りがよくなったりする。
ここで、本開示の合成紙の外観に紙風合いを出すためには、合成紙の目付(JIS P-8124に規定する方法で測定した値)は、30g/m~400g/mが好ましい。なお、合成紙は単層紙でも、抄き合わせ紙や、ヒートシールなどの接着による積層紙などの多層紙でもよい。多層紙の場合には、表層の目付は70g/m~400g/mが好ましい。また、エンボス深溝化の観点からは、目付は150g/m~400g/mが好ましい。
本開示の合成紙の引張強度(JIS P8113に規定する方法で測定した値)は2N/15mm以上であることが好ましい。さらに、紙風合いの観点より、合成紙の引張強度は2N/15mm~5N/15mmが好ましい。なお、引張強度は、合成パルプの量や、バインダー繊維の量、合成紙の製造条件等によって調整できる。
・合成紙の製造方法
本開示の合成紙の製造方法に特に限定はなく、公知の方法を使用することができる。例えば、エアレイド法と呼ばれる乾式方式や、抄紙法と呼ばれる湿式方式などが挙げられる。なお、合成紙に紙風合いを出すためには、湿式方式が好ましい。
例えば、実験室で行う抄紙方法としては、JIS P8222に準拠した、手すき紙を調製する方法が挙げられる。また、実験室での抄紙方法としては、動的抄紙方法を用いることもできる。
また特に、環境への配慮の観点から、抄紙工程内の水を意図的には排水しない完全クローズドシステムによる抄紙方法が好ましい。実験室では、複数回抄紙白水を再利用することにより、或いはクローズド状態の白水を理論上再現した疑似白水を用いることにより検証することができる。実験室での抄紙にあたっては、疑似白水を用いることが好ましい。
本開示の合成紙では、平滑度を所望の値とするために、さらに熱処理を行ってもよい。熱処理は、ドラム式ドライヤー、エアスルードライヤーなどを用いて行うことができる。また、熱処理可能なカレンダー加工機を用いて、熱処理をしながらカレンダー加工を実施してもよい。熱処理を実施する温度としては95℃以上165℃以下が好ましい。通常、熱処理は、乾燥温度よりも10℃以上55℃以下高い温度で実施する。
本開示の合成紙を製造するための実機設備に特に限定はない。例えば、長網抄紙機、円網抄紙機、円網短網コンビネーション抄紙機、傾斜ワイヤー式抄紙機などの抄紙機と、ヤンキードライヤー、エアスルードライヤー、ドラム式ドライヤーなどの乾燥機との組み合わせが挙げられるが、いずれの方法でも構わない。
・合成紙の用途
本開示の合成紙は、紙と同様の風合いを有し、且つ印刷適正や筆記性に優れることから、従来、合成紙が用いられていた用途に加え、紙が使用されていた用途にも使用することが考えられる。さらに、生分解性にも優れることから、従来使用されていなかった新たな用途も考えられる。
具体的な用途としては、例えば、印刷用紙、筆記用紙、ラベルの原紙、包装紙、成形用紙などが挙げられる。特に本開示の合成紙は、従来のポリオレフィン系合成紙と同様の接着性を維持しながらも、印刷適性や筆記性が改善されているため、ラベルの原紙として好適に用いられる。
(ラベル)
本開示のラベルは、本開示の合成紙をその原紙として含むものである。ラベルの種類に特に限定はなく、裏面に接着層を設けたステッカー、貼合する直前に接着剤などを裏面に塗布して使用するグルーラベル、樹脂容器の成形と同時に容器の外面に貼り付けるインモールドラベルなどが挙げられる。
ラベルは、原紙の上に絵柄部を有してもよい。絵柄部の形成方法に特に制限はなく、オフセット印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷などの公知の印刷方法を採用することができる。また、使用するインク、塗料なども特に制限はない。
本開示のラベルにおいては、原紙となる合成紙が印刷適性に優れるため、絵柄部の耐久性は高く、必ずしも保護層を必要としない。しかし、絵柄部の耐久性をさらに高めたり、表面の耐傷付き性や耐水性を向上させたり、表面光沢を調整する等の目的で、本開示のラベルの視認側に保護層を設ける事もできる。保護層としては、公知のハードコート層材料や、アクリル系のニスを例とする透明塗料等の公知の材料を用いることができる。
(容器)
本開示の容器は、上述した本開示のラベルを貼合した容器である。ラベルを貼合する容器の材質に特に限定はなく、ガラス、陶器、磁器、木、樹脂などの材質からなる容器が挙げられる。樹脂製の容器としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン製容器や、ポリエチレンテレフタレート製容器等が挙げられる。ラベルを容器に貼合する方法に特に限定はなく、ラベルと容器が接する面に接着層を設けたり、接着剤をラベルに塗布して容器に貼合したり、インモールドラベルとして、インモールドラベル法で容器の成形と同時に貼合することもできる。特に、本開示のインモールドラベルを貼合した容器は、安定接着性の面からポリエチエレン容器が好ましい。インモールドラベル法は公知の方法を採用することができる。具体的には、射出成形、ブロー成形、真空成形などを用いたインモールドラベル法を挙げることができる。
以下、本開示を実施例により更に詳細に説明する。しかしながら、本開示の範囲はこれによって何ら制限を受けない。
1.評価方法
(1)繊維耐熱性
合成パルプの繊維耐熱性は、ホットステージ測定により観察した。METTLER製FP82HTのホットステージを備えたニコン製LV100POL光学顕微鏡にて、繊維形状の温度(1℃/分の昇温)による変化を観察画像解析した。
(2)平滑性
合成紙の平滑性は、JIS P8155に規定する方法で測定した。
(3)平均孔径、最大孔径、および最小孔径
合成紙の平均孔径、最大孔径、および最小孔径は、バブルポイント法により測定した。具体的には、JIS Z8703:1983(試験場所の標準状態)に準拠し、温度20±2℃、湿度65±2%の恒温室内で、試験片にフッ素系不活性液体(3M社製、商品名:フロリナート)を含浸させた。そして、キャピラリー・フロー・ポロメーター(Porousmaterials Inc社製、製品名:CFP-1200AE)で測定した。
(4)比表面積
合成紙の比表面積は、JIS Z8830:2013に準拠し、窒素ガスの物理吸着を用いた細孔分布計(Belsorpmax、日本ベル株式会社製)により、試料のBET比表面積(BET法による比表面積)(m/g)を測定した。
(5)電子顕微鏡による観察
電子顕微鏡(日立製作所製S-3500N)を用いて、倍率1000倍で合成紙の写真を撮影した。
2.合成パルプおよび合成紙の製造
(1)実施例1
・スパンボンドによる溶融紡糸工程
融点170℃、メルトフローレート(MFR)が20g/分(ASTM D-1238(E)に準拠して測定、温度210℃、荷重2160g重)であるL-乳酸/D-乳酸の共重合比がL-乳酸/D-乳酸=98.6/1.4(モル比)であるポリ乳酸を準備した。当該ポリ乳酸100質量部と、層間がビス(ポリエチレングリコール)ドデシルメチルアンモニウム塩で置換された合成フッ素雲母(コープケミカル社製 ソマシフMEE)4質量部と、燐酸エステル系界面活性剤(楠本化成社製 商品名ディスパロン DA-375)3質量部、トリブチルシトレート1質量部とを混合し、スクリュー径30mmφの2軸押出機を用いて200℃で溶融混練して混錬物を得た。当該混錬物のMFRは54g/分(ASTM D-1238(E)に準拠して測定、温度210℃、荷重2160g重)であった。当該混錬物に、さらにタルクを0.5質量%添加して、樹脂組成物とした。
得られた樹脂組成物を円形の紡糸口金より、紡糸温度200℃、単孔吐出量1.67g/分で溶融紡糸し、急冷した。その後、エアサッカーにて5000m/分で引き取り、これを開繊して、コンベアの捕集面上に長繊維を集積してウエブを形成した。
当該ウエブをエンボスロール(圧着面積率14.9%、圧着点密度21.9個/cm)とフラットロールとからなる熱エンボス装置に通し、ロール温度130℃、線圧60kg/cmの条件にて熱圧着し、平均繊維径55μmの長繊維からなる目付100g/mのスパンボンド不織布を得た。
・裁断工程
上記方法で製造したスパンボンド不織布を、ハサミで3cm角程度に切ったのち、シュレッダー(アイリスオーヤマ社製、K10HCS)を用いて細断した。これにより、平均繊維径55μm、平均繊維長1.5mmの繊維を得た。
・叩解工程
パルパー内で、上記繊維と、当該繊維の質量に対して3質量%のポリビニルアルコール(PVA、ケン化度:99%、4質量%水溶液、粘度(20℃):4.6~6.0cps、日本合成化学工業社製、商品名:ゴーセノールNL-05)を分散剤として混合した。そして、当該分散液を、直径12インチのシングルディスク型リファイナー(熊谷理器工業社製)にて、処理量:2g/リットル濃度で3回、ミクロフィブリル化処理を行った。これにより、合成パルプ1を得た。
・合成紙の製造
上記合成パルプ1のスラリーを捕集してシート化した。そして、当該合成パルプ1 70質量部と、市販の合成パルプ(三井化学社製SWP、E620)30質量部とを混合し、250mmの角型抄紙機により、目付60g/mの合成紙を作製した。この合成紙を表面温度110℃の回転型乾燥機で2分間乾燥させた。その後、さらに、表面温度135℃で2分間熱処理を行なった。なお、合成紙の厚みは260μmであった。当該合成紙の評価結果を表1に示す。
(2)実施例2
・メルトブローによる溶融紡糸工程
メルトフローレート(MFR)が70~85g/10分(ASTM D-1238(E)に準拠して測定、温度210℃、荷重2160g重)であるポリ乳酸を準備した。当該ポリ乳酸を、メルトブローン装置によって、熱風量:2500m/時間、ダイからコレクターまでの距離を200mmとして紡糸し、平均繊維径が35μm、目付40g/mのメルトブロー不織布を得た。
・裁断工程、叩解工程、および合成紙の製造
上記メルトブロー不織布を用いて合成パルプ2を調製し、合成紙を得た以外は、実施例1と同様に裁断工程、叩解工程、および合成紙の製造を行った。合成紙を電子顕微鏡で観察したときの写真を図1に示す。なお、裁断工程後の繊維の平均繊維径は33μm、平均繊維長は1.4mmであった。
(3)比較例1
・合成パルプの製造
じゃま板を具備した80リットル容量の攪拌機付オートクレーブ中に、n-ヘキサン20リットル(23℃)、水20リットル(23℃)、プロピレン単独重合体(PP)(MFR60g/10分(ASTMD1238に準拠して、温度230℃、荷重2.16kgで測定)、密度:0.910g/cm)300g、酸化分解剤15g、およびポリビニルアルコール(PVA、ケン化度:99%、4質量%水溶液粘度(20℃):4.6~6.0cps、商品名ゴーセノールNL-05、日本合成化学工業社製)20gを投入した。回転数900rpmで攪拌しながら、混合液の液温が145℃になるまで昇温させた。その後、混合液の液温を145℃に保持して、さらに、30分間攪拌を続け、懸濁液を得た。
次いで、当該懸濁液を、オートクレーブに取り付けられた直径3mm、長さ20mmのノズルよりパイプを経て、窒素雰囲気下、かつ、-400mmHgの圧力下にあるドラム内に噴出(フラッシュ)させて繊維状物を得た。次いで、繊維状物を受容器内で10g/リットル濃度の水スラリーとした後捕集し、ジューサーミキサーでほぐし、パルプ状物(合成パルプ3)を得た。その後、実施例1と同様に合成紙の製造を行った。
(4)比較例2
プロピレン単独重合体の代わりにポリ乳酸を原料樹脂とした以外は比較例1と同様に合成パルプの製造を試みた。しかしながら、ポリ乳酸の溶解、エマルション形成ができず、合成パルプを得ることができなかった。
3.評価
Figure 2024008160000001
上記表1に示すように、平均繊維径が15μm以上55μm以下であり、カナディアン標準濾水度が750ml以下である合成パルプを用いて合成紙を製造すると、平滑性が高く、かつ比表面積が大きくなりやすかった(実施例1および2)。また、ポリ乳酸では、フラッシュ法では、合成パルプを調製することができず、不織布を切断したり叩解したりすることで、合成パルプを調製することができた(実施例1および2)。
本発明の乳酸系重合体を含む合成パルプによれば、平滑性が高く、かつ比表面積が大きな合成紙を製造可能である。したがって、当該合成パルプやその製造方法、さらに当該合成パルプ用いた合成紙は、各種製品に適用可能であり、さらに環境への負荷が小さい。

Claims (12)

  1. 乳酸系重合体を主成分とする合成パルプであって、
    前記合成パルプのカナディアン標準濾水度が750ml以下であり、
    前記合成パルプの平均繊維径が15μm以上55μm以下である、
    合成パルプ。
  2. 平均繊維長が0.06mm以上0.7mm以下である、
    請求項1に記載の合成パルプ。
  3. 前記カナディアン標準濾水度が200ml以上600ml以下である、
    請求項1に記載の合成パルプ。
  4. 前記乳酸系重合体の割合が90質量%以上である、
    請求項1に記載の合成パルプ。
  5. 請求項1~4のいずれか一項に記載の合成パルプを含む、
    合成紙。
  6. 平均孔径が1.8μm以下である、
    請求項5に記載の合成紙。
  7. 紙通気度が3.0秒以上10秒以下である、
    請求項5に記載の合成紙。
  8. 前記合成パルプの割合が、50質量%以上90質量%以下である、
    請求項5に記載の合成紙。
  9. 乳酸系重合体を含む繊維を叩解する工程を含み、
    前記繊維は、
    平均繊維長が0.05mm以上3mm以下であり、かつ平均繊維径が20μm以上80μm以下である、
    合成パルプの製造方法。
  10. 前記繊維を叩解する工程の前に、乳酸系重合体を含む紡糸繊維を裁断して前記繊維とする工程をさらに含む、
    請求項9に記載の合成パルプの製造方法。
  11. 前記紡糸繊維を裁断する工程の前に、乳酸系重合体および/または乳酸系重合体を含む樹脂組成物を溶融紡糸する工程を含む、
    請求項10に記載の合成パルプの製造方法。
  12. 前記紡糸繊維を形成する工程において、
    スパンボンド法、またはメルトブロー法のいずれか一方を行う、
    請求項11に記載の合成パルプの製造方法。
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