JP2024007953A - 液体吐出装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】2段構造の円筒形ノズルを有する液体吐出ヘッドを用いた場合において、吐出される液体の飛翔方向を調整可能とすること。【解決手段】液体吐出装置は、第1圧電素子と、第1圧電素子の駆動により振動する振動板と、振動板の振動により液体に圧力を付与する第1圧力室を区画する圧力室基板と、第1圧力室と連通する第1ノズルが形成されたノズル基板と、第1圧電素子の動作を制御する制御部と、を有し、ノズル基板は、圧力室基板とは反対に位置する吐出面を有し、第1ノズルは、第1の直径を有し、吐出面に開口した第1下流ノズル部分と、第1の直径よりも長い第2の直径を有し、第1下流ノズル部分よりも上流に位置する第1上流ノズル部分と、を含み、制御部は、ノズル基板の厚さ方向にみたときの第1の直径の中心位置と第2の直径の中心位置との距離に応じて、第1圧電素子を駆動する第1駆動信号を調整する。【選択図】図8
Description
本発明は、液体吐出装置に関する。
従来から、インク等の液体を吐出するノズルを有するノズル基板を有し、ノズルから媒体に液体を吐出することで、媒体に画像を形成する液体吐出ヘッドを有する液体吐出装置が知られている。液体が吐出する吐出方向が、ノズル基板の吐出面に垂直な方向からずれた場合、液体が媒体に着弾する位置が理想の着弾位置からずれる。液体が媒体に着弾する位置が理想の着弾位置からずれると、媒体に形成される画像の質が低下する。
特許文献1には、吐出方向を吐出面に垂直な方向とするために、ノズルの長さをh、ノズルの平均内径をφ、ノズルに連通する圧力室の中心軸とノズルの中心軸との軸心間の距離をδ、圧力室とノズルとが対向して接続される面に生じる段差の大きさをdとするとき、この段差の大きさdが、(d-δ)/(d+δ)>0.3φ/hを満足するように製造された液体吐出装置が開示されている。
しかしながら、製造上の誤差や製造装置による制約等によって、ノズルの形状を上述した従来技術の範囲内に収めることができない場合もあり得る。そこで、本発明においては、2段構造の円筒形ノズルを有する液体吐出ヘッドを用いた場合において、吐出される液体の飛翔方向を調整可能な液体吐出ヘッドの駆動方法および液体吐出装置を提供することを課題とした。
以上の課題を解決するために、本発明の好適な態様に係る液体吐出装置は、第1圧電素子と、前記第1圧電素子の駆動により振動する振動板と、前記振動板の振動により液体に圧力を付与する第1圧力室を区画する圧力室基板と、前記第1圧力室と連通する第1ノズルが形成されたノズル基板と、前記第1圧電素子の動作を制御する制御部と、を有し、前記ノズル基板は、前記圧力室基板とは反対に位置する吐出面を有し、前記第1ノズルは、第1の直径を有し、前記吐出面に開口した第1下流ノズル部分と、前記第1の直径よりも長い第2の直径を有し、前記第1下流ノズル部分よりも上流に位置する第1上流ノズル部分と、を含み、前記制御部は、前記ノズル基板の厚さ方向にみたときの前記第1の直径の中心位置と前記第2の直径の中心位置との距離に応じて、前記第1圧電素子を駆動する第1駆動信号を調整する、ことを特徴とする。
また、本発明の好適な態様に係る液体吐出装置は、第1圧電素子と、前記第1圧電素子とは異なる第2圧電素子と、圧力室基板に区画され、前記第1圧電素子の振動により液体に圧力を付与する第1圧力室と、前記圧力室基板に区画され、前記第2圧電素子の振動により液体に圧力を付与する第2圧力室と、ノズル基板に形成され、前記第1圧力室と連通する第1ノズルと、前記ノズル基板に形成され、前記第2圧力室と連通する第2ノズルと、前記第1圧電素子を駆動する第1駆動信号及び前記第2圧電素子を駆動する第2駆動信号を供給する駆動信号生成部と、を備え、前記ノズル基板は、前記圧力室基板とは反対に位置する吐出面を有し、前記第1ノズルは、第1の直径を有し、前記吐出面に開口した第1下流ノズル部分と、前記第1の直径よりも長い第2の直径を有し、前記第1下流ノズル部分よりも上流に位置する第1上流ノズル部分と、を含み、前記第2ノズルは、第3の直径を有し、前記吐出面に開口した第2下流ノズル部分と、前記第3の直径よりも長い第4の直径を有し、前記第2下流ノズル部分よりも上流に位置する第2上流ノズル部分と、を含み、前記ノズル基板の厚さ方向にみたときの前記第1の直径の中心位置と前記第2の直径の中心位置との距離を、第1距離とし、前記厚さ方向にみたときの前記第3の直径の中心位置と前記第4の直径の中心位置との距離を、第2距離とし、前記第1距離と前記第2距離とが異なるとき、前記駆動信号生成部は、前記第1駆動信号と前記第2駆動信号とを異ならせる、ことを特徴とする。
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。ただし、各図において、各部の寸法及び縮尺は、実際のものと適宜に異ならせてある。また、以下に述べる実施形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
以下の説明は、便宜上、互いに交差するX軸、Y軸及びZ軸を適宜に用いて行う。また、X軸に沿う一方向がX1方向であり、X1方向と反対の方向がX2方向である。同様に、Y軸に沿って互いに反対の方向がY1方向及びY2方向である。また、Z軸に沿って互いに反対の方向がZ1方向及びZ2方向である。
ここで、典型的には、Z軸が鉛直な軸であり、Z2方向が鉛直方向での下方向に相当する。言い換えれば、Z2方向は、重力方向である。ただし、Z軸は、鉛直な軸でなくともよく、鉛直な軸に対して傾斜してもよい。また、X軸、Y軸及びZ軸は、典型的には互いに直交するが、これに限定されず、例えば、80度以上100度以下の範囲内の角度で交差すればよい。
1.第1実施形態
1-1.液体吐出装置100の概要
図1は、液体吐出装置100の構成例を示す概略図である。液体吐出装置100は、液体の一例であるインクを液滴として媒体PPに吐出するインクジェット方式の印刷装置である。本実施形態の液体吐出装置100は、液体の一例であるインクを媒体PPに吐出するインクジェット方式の印刷装置である。媒体PPは、典型的には印刷用紙であるが、樹脂フィルム又は布帛等の任意の印刷対象が媒体PPとして利用され得る。
1-1.液体吐出装置100の概要
図1は、液体吐出装置100の構成例を示す概略図である。液体吐出装置100は、液体の一例であるインクを液滴として媒体PPに吐出するインクジェット方式の印刷装置である。本実施形態の液体吐出装置100は、液体の一例であるインクを媒体PPに吐出するインクジェット方式の印刷装置である。媒体PPは、典型的には印刷用紙であるが、樹脂フィルム又は布帛等の任意の印刷対象が媒体PPとして利用され得る。
図1に示すように、液体吐出装置100は、駆動信号生成回路2と、液体容器14と、制御モジュール6と、移動機構5と、複数の液体吐出ヘッド10を有する液体吐出モジュールHUとを有する。本実施形態では、液体吐出モジュールHUは、4つの液体吐出ヘッド10を有する。なお、制御モジュール6は、「制御部」の一例である。駆動信号生成回路2は、「駆動信号生成部」の一例である。
液体容器14は、インクを貯留する容器である。液体容器14の具体的な態様としては、例えば、液体吐出装置100に着脱可能なカートリッジ、可撓性のフィルムで形成された袋状のインクパック、及び、インクを補充可能なインクタンクが挙げられる。なお、液体容器14に貯留されるインクの種類は任意である。
制御モジュール6は、例えば、CPU又はFPGA等の1又は複数の処理回路と、半導体メモリー等の1又は複数の記憶回路とを含む。CPUは、Central Processing Unitの略語である。FPGAは、Field Programmable Gate Arrayの略語である。当該記憶回路には、各種プログラム及び各種データが記憶される。当該処理回路は、当該プログラムを実行するとともに当該データを適宜使用することにより各種制御を実現する。
移動機構5は、媒体PPと液体吐出モジュールHUとの相対的な位置を変化させる。移動機構5は、搬送機構8と、ヘッド移動機構7とを有する。
搬送機構8は、制御モジュール6による制御のもとで、媒体PPをY2方向に搬送する。図1に示す例では、搬送機構8は、X軸に沿って長尺な搬送ローラーと、当該搬送ローラーを回転させるモーターと、を含む。なお、搬送機構8は、搬送ローラーを用いる構成に限定されず、例えば、媒体PPを外周面に静電力等により吸着させた状態で搬送するドラム又は無端ベルトを用いる構成でもよい。
ヘッド移動機構7は、制御モジュール6による制御のもとで、液体吐出モジュールHUを、X1方向及びX2方向に往復動させる。本実施形態では、X1方向及びX2方向が主走査方向であり、Y2方向が副走査方向であることとする。このように、第1実施形態における液体吐出装置100は、X軸に沿って往復動させるシリアル方式の液体吐出装置である。図1に示すように、ヘッド移動機構7は、液体吐出モジュールHUを収容する収納ケース71と、収納ケース71が固定された無端ベルト72とを具備する。なお、液体容器14を液体吐出モジュールHUとともに収納ケース71に収納してもよい。
液体吐出モジュールHUは、制御モジュール6による制御のもとで、液体容器14からインクを複数のノズルNの夫々からZ2方向に媒体PPに吐出する。
制御モジュール6は、液体吐出ヘッド10の吐出動作を制御する。具体的には、制御モジュール6は、液体吐出ヘッド10を制御するための印刷信号SIと、駆動信号生成回路2を制御するための波形指定信号dComと、搬送機構8を制御するための信号と、ヘッド移動機構7を制御するための信号とを生成する。
波形指定信号dComとは、駆動信号Comの波形を規定するデジタルの信号である。また、駆動信号Comとは、図2で後述する圧電素子PZを駆動するためのアナログの信号である。駆動信号生成回路2は、DA変換回路を含み、波形指定信号dComが規定する波形を有する駆動信号Comを生成する。以下の説明では、駆動信号Comが、駆動信号Com-Aと、駆動信号Com-Bという2系統の信号を有する場合を例として説明する。
印刷信号SIとは、圧電素子PZの動作の種類を指定するためのデジタルの信号である。具体的には、印刷信号SIは、圧電素子PZに対して駆動信号Comを供給するか否かを指定することで、圧電素子PZの動作の種類を指定する。ここで、圧電素子PZの動作の種類の指定とは、例えば、圧電素子PZを駆動するか否かを指定したり、圧電素子PZを駆動した場合に当該圧電素子PZからインクが吐出されるか否かを指定したり、また、圧電素子PZを駆動した場合に当該圧電素子PZから吐出されるインク量を指定したりすることである。
制御モジュール6は、まず、パーソナルコンピューター及びデジタルカメラ等のホストコンピューターから供給される印刷データImgを、自身の記憶回路に記憶させる。次に、制御モジュール6は、記憶回路に記憶されている印刷データImg等の各種データに基づいて、印刷信号SI、波形指定信号dCom、搬送機構8を制御するための信号、及び、ヘッド移動機構7を制御するための信号等の各種制御信号を生成する。そして、制御モジュール6は、各種制御信号と、自身の記憶回路に記憶されている各種データに基づいて、液体吐出モジュールHUに対する媒体PPの相対位置を変化させるように搬送機構8及びヘッド移動機構7を制御しつつ、圧電素子PZが駆動されるように液体吐出モジュールHUを制御する。これにより、制御モジュール6は、圧電素子PZからのインクの吐出の有無、インクの吐出量、及び、インクの吐出タイミング等を調整し、印刷データImgに対応する画像を媒体PPに形成する印刷処理の実行を制御する。
1-2.液体吐出ヘッド10の概要
以下、図2及び図3を参照しつつ、液体吐出ヘッド10の概要を説明する。図2は、液体吐出ヘッド10の分解斜視図である。図3は、液体吐出ヘッド10の断面図である。図3に示す図は、液体吐出ヘッド10を図2に示すa-a断面で破断し、Y2方向に断面をみた状態を示す。a-a断面は、XZ平面に平行であり、且つ、後述する導入口424を通過する。
以下、図2及び図3を参照しつつ、液体吐出ヘッド10の概要を説明する。図2は、液体吐出ヘッド10の分解斜視図である。図3は、液体吐出ヘッド10の断面図である。図3に示す図は、液体吐出ヘッド10を図2に示すa-a断面で破断し、Y2方向に断面をみた状態を示す。a-a断面は、XZ平面に平行であり、且つ、後述する導入口424を通過する。
図2及び図3に例示される通り、液体吐出ヘッド10は、Y軸に沿って長い略矩形状の連通板32を具備する。連通板32におけるZ1方向の面上には、圧力室基板34と振動板36とM個の圧電素子PZと筐体部42と封止体44とが設置される。言い換えれば、連通板32は、圧力室基板34のZ2方向の面に積層される。Mは、2以上の整数である。但し、Mは1であってもよい。連通板32におけるZ2方向の面上には、ノズル基板46とコンプライアンス基板48とが設置される。液体吐出ヘッド10の各要素は、概略的には連通板32と同様にY軸に沿って長い板状部材であり、接着剤を利用して相互に接合される。
図2に例示される通り、ノズル基板46は、Y軸に平行なノズル列Lnに沿って配列するM個のノズルNが形成された板状部材である。M個のノズルNが配列する配列方向は、Y軸に沿う方向である。ノズル基板46は、例えば、シリコン基板である。図3に例示される通り、ノズル基板46は、Z2方向に向く面FN1と、Z1方向に向く面FN2とを有する。面FN2は、面FN1よりも圧力室基板34に近い。なお、面FN1は、「吐出面」の一例である。ノズル基板46の厚さ方向は、Z軸に沿う方向である。本実施形態において、ノズル列Lnは、Y軸に平行であり、M個のノズルNのうち、最もY1方向に位置するノズルNの後述する下流ノズル部分NDの重心から最もY2方向に位置するノズルNの下流ノズル部分NDの重心までの線分である。なお、M個のノズルNがノズル列Lnに沿って配列するとは、M個のノズルNのうちの少なくとも一部がノズル列Lnと交わる方向において、多少ずれて配列されることも含む概念であり、ノズル列Lnに沿ってみたときに、M個のノズルNの夫々の一部又は全部が重なることを意味する。
各ノズルNは、インクが通過する貫通孔である。ノズルNの詳細な形状に関しては、図6及び図7に基づいて後述する。
連通板32は、インクが流通する流路が設けられた板状部材である。図2及び図3に例示される通り、連通板32には、開口部322と第2連通路324と第1連通路326とが形成される。開口部322は、Z軸に沿ってみたとき、Y軸に沿ってM個のノズルNに共通して設けられた貫通孔である。以下、Z軸に沿ってみることを、「平面視」と記載することがある。第2連通路324及び第1連通路326は、ノズルN毎に個別に形成された貫通孔である。また、図3に例示される通り、連通板32のうちZ2方向の表面には、M個の第2連通路324にわたる共通流路328が形成される。共通流路328は、開口部322とM個の第2連通路324とを連通させる流路である。
なお、連通板32と圧力室基板34とは、シリコンの単結晶基板をエッチング等の半導体製造技術により加工することで形成される。ただし、液体吐出ヘッド10の各要素の製法は任意である。
筐体部42は、例えば樹脂材料の射出成形で製造された構造体であり、連通板32におけるZ1方向の表面に固定される。図3に例示される通り、筐体部42には収容部422と導入口424とが形成される。収容部422は、連通板32の開口部322に対応した外形の凹部である。導入口424は、収容部422に連通する貫通孔である。図3から理解される通り、連通板32の開口部322と筐体部42の収容部422とを相互に連通させた空間が液体貯留室RSとして機能する。液体容器14から供給されて導入口424を通過したインクが液体貯留室RSに貯留される。
コンプライアンス基板48は、液体貯留室RS内のインクの振動を緩衝する機能を有する。コンプライアンス基板48は、例えば弾性変形が可能な可撓性のシート部材を含む。具体的には、連通板32の開口部322と共通流路328と複数の第2連通路324とを封止して液体貯留室RSの底面を構成するように、連通板32におけるZ2方向の表面にコンプライアンス基板48が設置される。
図2及び図3に例示される通り、圧力室基板34は、M個のノズルNに夫々対応するM個の圧力室CVが形成された板状部材である。M個の圧力室CVは、Y軸に沿って相互に間隔をあけて配列する。各圧力室CVは、X軸に沿って延在する開口である。圧力室CVのX1方向の端部は、平面視で1個の第2連通路324に重なり、圧力室CVのX2方向の端部は、平面視で連通板32の1個の第1連通路326に重なる。
圧力室基板34のうち連通板32に対向する表面とは反対方向の表面には振動板36が設置される。振動板36は、弾性的に変形可能な板状部材である。図3に例示される通り、振動板36は、弾性膜361と絶縁膜362との積層で構成される。絶縁膜362は、弾性膜361からみて圧力室基板34とは反対方向に位置する。弾性膜361は、例えば酸化シリコンで形成される。絶縁膜362は、例えば酸化ジルコニウムで形成される。
図3から理解される通り、連通板32と振動板36とは、各圧力室CVの内側で相互に間隔をあけて対向する。圧力室CVは、連通板32と振動板36との間に位置し、当該圧力室CV内に収容されたインクに圧力を付与するための空間である。振動板36は、圧力室CVの壁面の一部を構成する。液体貯留室RSに貯留されたインクは、共通流路328から各第2連通路324に分岐してM個の圧力室CVに並列に供給され、及び収容される。すなわち、液体貯留室RSは、複数の圧力室CVにインクを供給するための共通液室として機能する。
図2及び図3に例示される通り、振動板36における圧力室基板34とは反対方向の表面には、M個のノズルNに夫々対応するM個の圧電素子PZが設置される。各圧電素子PZは、駆動信号Comの供給により変形するアクチュエーターであり、X軸に沿う長い形状に形成される。M個の圧電素子PZは、M個の圧力室CVに対応するようにY軸に沿って配列する。圧電素子PZの変形に連動して振動板36が振動すると、圧力室CV内の圧力が変動する。圧電素子PZは、振動板36を振動させる駆動素子である。
以下では、M個の圧電素子PZの各々を区別するために、順番に、1番目、2番目、…、M番目と称することがある。また、m番目の圧電素子PZを、圧電素子PZ[m]と称する場合がある。変数mは、1以上M以下を満たす整数である。また、液体吐出装置100の構成要素や信号等が、圧電素子PZに対応するものである場合には、当該構成要素や信号等を表すための符号に、m番目に対応していることを示す添え字[m]を付して表現することがある。例えば、m番目のノズルNを、ノズルN[m]と表現することがある。図2に示すように、M個のノズルNのうち、最もY2方向に位置するノズルNをノズルN[1]とし、最もY1方向に位置するノズルNをノズルN[M]として表現する。
圧電素子PZの変形に連動して振動板36が振動すると、圧力室CV内の圧力が変動し、圧力室CVに充填されたインクが第1連通路326とノズルNとを通過して吐出される。
図2及び図3の封止体44は、M個の圧電素子PZを外気から保護するとともに圧力室基板34及び振動板36の機械的な強度を補強する構造体である。封止体44は、振動板36の表面に例えば接着剤で固定される。封止体44のうち振動板36との対向面に形成された凹部の内側に複数の圧電素子PZが収容される。
図3に例示される通り、振動板36の表面には配線基板50が接合される。配線基板50は、制御モジュール6と液体吐出ヘッド10とを電気的に接続するための複数の配線が形成された実装部品である。例えばFPC又はFFC等の可撓性の配線基板50が好適に採用される。FPCは、Flexible Printed Circuitの略である。FFCは、Flexible Flat Cableの略である。配線基板50には、駆動回路51が実装される。駆動回路51は、印刷信号SIによる制御のもとで、圧電素子PZに対して、駆動信号Comを供給するか否かを切り替える電気回路である。
図4は、駆動信号Comの一例である。駆動信号Comは、圧電素子PZを駆動させるための吐出波形PXを有する。吐出波形PXは、保持要素DC1と、膨張要素DC2と、保持要素DC3と、収縮要素DC4と、保持要素DC5と、膨張要素DC6と、保持要素DC7とを有する。
保持要素DC1は、基準電位V0を保持する。膨張要素DC2は、保持要素DC1の直後に、圧力室CVの容積が膨張するように電位を基準電位V0から保持電位Vc1に変化させる。保持電位Vc1は、基準電位V0よりも低い。保持要素DC3は、膨張要素DC2の直後に、期間Pwh1の間、保持電位Vc1を保持する。収縮要素DC4は、保持要素DC3の直後に、圧力室CVの容積を収縮するように電位を保持電位Vc1から保持電位Vc2に変化させる。保持電位Vc2は、基準電位V0よりも高い。保持要素DC5は、収縮要素DC4の直後に、期間Pwh2の間、保持電位Vc2を保持する。膨張要素DC6は、保持要素DC5の直後に、圧力室CVの容積が膨張するように電位を保持電位Vc2から基準電位V0に変化させる。保持要素DC7は、膨張要素DC6の直後に、基準電位V0を保持する。圧力室CVの容積を収縮することは、圧力室CV内のインクの圧力を上昇させることを意味する。圧力室CVの容積を膨張することは、圧力室CV内のインクの圧力を下降させることを意味する。
駆動信号Com-AとCom-Bとは、互いに異なる信号である。例えば、駆動信号Com-AとCom-Bとは、期間Pwh1の長さと、保持電位Vc1と、保持電位Vc2とのうち少なくとも1つが異なる。駆動信号Com-Aと駆動信号Com-Bとのうち、制御モジュール6が指示した信号を供給するための液体吐出ヘッド10の構成について、図5を用いて説明する。
図5は、液体吐出ヘッド10の構成の一例を示すブロック図である。液体吐出ヘッド10は、駆動信号生成回路2から駆動信号Com-Aが供給される内部配線LHaと、駆動信号生成回路2から駆動信号Com-Bが供給される内部配線LHbと、定電位信号Vbsが供給される内部配線LHdと、を備える。圧電素子PZは、共通電極Quと、個別電極Qdと、共通電極Qu及び個別電極Qdの間に設けられた圧電体Qmと、を有する。内部配線LHdは、共通電極Quに電気的に接続される。
図5に示すように、駆動回路51は、M個のスイッチSWa[1]~SWa[M]と、M個のスイッチSWb[1]~SWb[M]と、各スイッチの接続状態を指定する接続状態指定回路52と、を備える。なお、各スイッチとしては、例えば、トランスミッションゲートを採用することができる。
接続状態指定回路52は、制御モジュール6から供給される印刷信号SI、吐出波形PXの期間を指定するラッチ信号LAT、の少なくとも一部の信号に基づいて、スイッチSWa[1]~SWa[M]のオンオフを指定する接続状態指定信号SLa[1]~SLa[M]と、スイッチSWb[1]~SWb[M]のオンオフを指定する接続状態指定信号SLb[1]~SLb[M]と、を生成する。
1からMまでの任意の整数mについて、スイッチSWa[m]は、接続状態指定信号SLa[m]に応じて、内部配線LHaと、圧電素子PZ[m]の個別電極Qd[m]と、の導通及び非導通を切り替える。例えば、スイッチSWa[m]は、接続状態指定信号SLa[m]がハイレベルの場合にオンし、ローレベルの場合にオフする。
1からMまでの任意の整数mについて、スイッチSWb[m]は、接続状態指定信号SLb[m]に応じて、内部配線LHbと、圧電素子PZ[m]の個別電極Qd[m]との、導通及び非導通を切り替える。例えば、スイッチSWb[m]は、接続状態指定信号SLb[m]がハイレベルの場合にオンし、ローレベルの場合にオフする。
接続状態指定回路52は、制御モジュール6から供給される印刷信号SI、吐出波形PXの期間を指定するラッチ信号LAT、の少なくとも一部の信号に基づいて、スイッチSWa[1]~SWa[M]のオンオフを指定する接続状態指定信号SLa[1]~SLa[M]と、スイッチSWb[1]~SWb[M]のオンオフを指定する接続状態指定信号SLb[1]~SLb[M]と、を生成する。
1からMまでの任意の整数mについて、スイッチSWa[m]は、接続状態指定信号SLa[m]に応じて、内部配線LHaと、圧電素子PZ[m]の個別電極Qd[m]と、の導通及び非導通を切り替える。例えば、スイッチSWa[m]は、接続状態指定信号SLa[m]がハイレベルの場合にオンし、ローレベルの場合にオフする。
1からMまでの任意の整数mについて、スイッチSWb[m]は、接続状態指定信号SLb[m]に応じて、内部配線LHbと、圧電素子PZ[m]の個別電極Qd[m]との、導通及び非導通を切り替える。例えば、スイッチSWb[m]は、接続状態指定信号SLb[m]がハイレベルの場合にオンし、ローレベルの場合にオフする。
1-3.ノズルNの形状について
図6は、図3のノズルN付近を拡大した図である。図7は、ノズルN付近の平面図である。図6及び図7に示すように、ノズルNは、下流ノズル部分NDと、下流ノズル部分NDよりも上流に位置する上流ノズル部分NUとを有する。上流ノズル部分NUは、面FN2に開口した供給開口U1と、供給開口U1に対向する底面U2と、を含む。より具体的には、上流ノズル部分NUは、供給開口U1及び底面U2を底面とし、壁面WUを側面とする略円柱状の空間である。底面U2は、Z軸を法線ベクトルとする面である。言い換えれば、底面U2は、XY平面に平行な面である。但し、底面U2は、XY平面に交差する面であってもよい。つまり、上流ノズル部分NUがZ軸に対して多少傾いて形成されてもよい。第1実施形態において、供給開口U1及び底面U2の形状は、略同一である。従って、図6及び図7に示すように、平面視において、供給開口U1の重心GU1の位置と底面U2の重心GU2の位置とが略同一である。重心とは、対象の形状において断面1次モーメントの総和がゼロになる地点である。例えば、対象の形状が円形である場合、重心は、円の中心であり、対象の形状が平行四辺形である場合、重心は、平行四辺形が有する2つの対角線の交点である。略同一とは、完全に同一である場合の他に、製造上の誤差を考慮すれば同一であると看做せる場合を含む。
図6は、図3のノズルN付近を拡大した図である。図7は、ノズルN付近の平面図である。図6及び図7に示すように、ノズルNは、下流ノズル部分NDと、下流ノズル部分NDよりも上流に位置する上流ノズル部分NUとを有する。上流ノズル部分NUは、面FN2に開口した供給開口U1と、供給開口U1に対向する底面U2と、を含む。より具体的には、上流ノズル部分NUは、供給開口U1及び底面U2を底面とし、壁面WUを側面とする略円柱状の空間である。底面U2は、Z軸を法線ベクトルとする面である。言い換えれば、底面U2は、XY平面に平行な面である。但し、底面U2は、XY平面に交差する面であってもよい。つまり、上流ノズル部分NUがZ軸に対して多少傾いて形成されてもよい。第1実施形態において、供給開口U1及び底面U2の形状は、略同一である。従って、図6及び図7に示すように、平面視において、供給開口U1の重心GU1の位置と底面U2の重心GU2の位置とが略同一である。重心とは、対象の形状において断面1次モーメントの総和がゼロになる地点である。例えば、対象の形状が円形である場合、重心は、円の中心であり、対象の形状が平行四辺形である場合、重心は、平行四辺形が有する2つの対角線の交点である。略同一とは、完全に同一である場合の他に、製造上の誤差を考慮すれば同一であると看做せる場合を含む。
下流ノズル部分NDは、面FN1に開口した吐出開口D2と、底面U2に開口した接続部D1とを含む。より具体的には、下流ノズル部分NDは、吐出開口D2と接続部D1とを底面とし、壁面WDを側面とする、Z軸に対して傾いた略円柱状の空間である。なお、本発明において、下流ノズル部分NDがZ軸に対して傾斜することは必須ではない。図7では、供給開口U1、底面U2、接続部D1、及び、吐出開口D2の形状は、円形であるが、円形に限らず任意の形状でよく、例えば、楕円形状又は矩形形状等でもよい。以下の説明では、供給開口U1、底面U2、接続部D1、及び、吐出開口D2の形状が円形であるとして説明する。接続部D1の直径RD及び吐出開口D2の直径は、例えば、10[μm]から30[μm]までの間である。供給開口U1の直径及び底面U2の直径RUは、例えば、15[μm]から、液体吐出装置100の解像度に応じた上限値と、第1連通路326の幅とのうち小さい値までである。液体吐出装置100の解像度に応じた上限値は、例えば、液体吐出装置100の解像度が600dpiである場合、25.4[mm]/600で求められ、約0.0423[mm]であり、言い換えれば約42.3[μm]である。[μm]は、マイクロメートルを意味する。[mm]は、ミリメートルを意味する。dpiは、dots per inchの略語である。このように、底面U2の直径RUは、接続部D1の直径RDよりも長い。
また、図6では、面FN1から底面U2までの距離G2と、底面U2から面FN2までの距離G1とは等しいように表示してあるが、これに限らない。例えば、距離G2が距離G1よりも長くてもよいし、距離G2が距離G1よりも短くてもよい。
1-4.ノズルNの吐出方向について
本発明におけるノズル基板46の製造工程は、複数のノズル基板46となるシリコンウェハーに下流ノズル部分ND及び上流ノズル部分NUを形成するノズル形成工程と、シリコンウェハーからノズル基板46を切り出す工程と、を有する。ノズル形成工程においては、例えばドライエッチングを行うことが好ましい。しかしながら、ドライエッチングの際にシリコンウェハー上に形成するマスクパターンの形状のばらつきや、ドライエッチングで用いるプラズマの密度分布のばらつき等に起因して、上流ノズル部分NU及び下流ノズル部分NDが、Z軸に対して傾斜する場合がある。図6の例では、下流ノズル部分NDが、Z軸に対してθ度傾斜する。また、後述する「同軸度」のずれが生じる場合がある。
本発明におけるノズル基板46の製造工程は、複数のノズル基板46となるシリコンウェハーに下流ノズル部分ND及び上流ノズル部分NUを形成するノズル形成工程と、シリコンウェハーからノズル基板46を切り出す工程と、を有する。ノズル形成工程においては、例えばドライエッチングを行うことが好ましい。しかしながら、ドライエッチングの際にシリコンウェハー上に形成するマスクパターンの形状のばらつきや、ドライエッチングで用いるプラズマの密度分布のばらつき等に起因して、上流ノズル部分NU及び下流ノズル部分NDが、Z軸に対して傾斜する場合がある。図6の例では、下流ノズル部分NDが、Z軸に対してθ度傾斜する。また、後述する「同軸度」のずれが生じる場合がある。
下流ノズル部分NDに沿ってインクが吐出するため、インクの吐出方向は、Z軸からずれる。インクの吐出方向がZ軸からずれることを、以下、「飛翔曲がり」と記載することがある。飛翔曲がりが発生すると、インクが媒体PPに着弾する位置が理想の着弾位置からずれる。インクが媒体PPに着弾する位置が理想の着弾位置からずれると、媒体PPに形成される画像の質が低下する。
上述のように、インクの吐出方向は、下流ノズル部分NDの傾斜に影響される。但し、インクの吐出方向は、底面U2の重心GU2と接続部D1の重心GD1とが平面視において互いに離れることによっても影響されることが、発明者らの実験によって得られた。以下の記載では、重心GD1の位置に対する重心GU2の位置のずれを、「同軸度」と記載することがある。重心GD1と重心GU2とが互いに近いことを、同軸度が高いと記載することがある。また、重心GU2から重心GD1に向かう方向を、同軸度のずれの方向と記載することがある。同軸度がずれている場合、インクの吐出方向は、重心GD1から重心GU2に向かうように傾斜する。言い換えれば、同軸度のずれの方向とは反対の方向にずれるように、インクが吐出する。同軸度のずれによってインクの吐出方向が傾斜する理由として、下流ノズル部分NDの接続部D1の重心GD1が、底面U2の重心GU2からずれているため、ノズルNに形成されるインクのメニスカスの揺れが吐出タイミング時に重心GU2からずれることと、メニスカスがZ1方向に引き込まれ、上流ノズル部分NUに到達した場合に、メニスカスが片方向に寄ることと、下流ノズル部分ND内でZ軸に直交する方向において圧力勾配が発生することとが考えられる。
同軸度のずれの大きさは、図7に示すように、接続部D1の重心GD1と、底面U2の重心GU2との距離LDUである。
供給開口U1、底面U2、接続部D1、及び、吐出開口D2の形状が円形であるため、平面視において、底面U2の直径RUの中心位置は、底面U2の重心GU2の位置と一致する。同様に、接続部D1の直径RDの中心位置は、接続部D1の重心GD1の位置と一致する。従って、距離LDUは、平面視において、直径RDの中心位置と直径RUの中心位置との距離ともいえる。
更に、ノズルNが、下流ノズル部分NDがZ軸に対して傾斜する、及び、同軸度のずれのうち一方又は両方の特徴を有する場合、圧電素子PZに供給する駆動信号Comのうち、保持要素DC3の期間Pwh1の長さを変更すると、インクの吐出方向が変化することが発明者らの実験で得られた。期間Pwh1の長さに応じた吐出方向の変化の特性について、図8を用いて説明する。
図8は、期間Pwh1の長さに応じたインクの吐出方向の変化の特性を説明するための図である。図8に示すグラフg1、後述する図9に示すグラフg2、及び、後述する図11に示すグラフg3は、下流ノズル部分NDの直径が20[μm]であり、上流ノズル部分NUの直径が45[μm]であり、同軸度のずれの大きさが8[μm]であり、同軸度のずれの方向がX1方向である場合における、吐出方向の変化の特性を示している。グラフg1の横軸が、期間Pwh1の長さを示す。グラフg1の縦軸が、吐出方向の角度θを示す。角度θが負の値である場合、吐出方向がX2方向にずれることを意味し、角度θが正の値である場合、吐出方向がX1方向にずれることを意味する。
図8に示す吐出方向特性PwChは、期間Pwh1の長さに応じたインクの吐出方向の特性を示す。吐出方向特性PwChが示すように、期間Pwh1の長さが約1[μs]から約5[μs]までは、吐出方向の角度θは、約+2.5度である。[μs]は、マイクロ秒を意味する。図8に示した[deg]は、度数法で表した角度を意味する。期間Pwh1の長さが約8[μs]から約14[μs]までは、吐出方向の角度θが約-13度から+6度まで、略線形に増加する。期間Pwh1の長さが約14[μs]から略16[μs]までは、吐出方向の角度θが+6度から約+2度まで単調に減少する。なお、期間Pwh1が約5[μs]から約8[μs]までは、インクの吐出速度が極端に遅くなることを意味する。なお、期間Pwh1を変更しても、ノズルNから吐出されるインク量は同等とみなせる。
1-5.駆動信号Comの調整による吐出方向のずれの補正
第1実施形態では、制御モジュール6は、上述した吐出方向特性PwChを用いて、駆動信号Comを調整することにより、吐出方向のずれを補正する。例えば、液体吐出装置100の製造者は、液体吐出装置100に液体吐出ヘッド10を組み込んだ場合に、制御モジュール6に、吐出方向のずれを調整した駆動信号Comを決定させる。制御モジュール6は、決定した駆動信号Comを生成する波形指定信号dComを、記憶回路に記憶する。液体吐出装置100が出荷され、液体吐出装置100のユーザーによって印刷処理の実行が指示された場合、制御モジュール6は、記憶回路に記憶された波形指定信号dComを、駆動信号生成回路2に出力する。
第1実施形態では、制御モジュール6は、上述した吐出方向特性PwChを用いて、駆動信号Comを調整することにより、吐出方向のずれを補正する。例えば、液体吐出装置100の製造者は、液体吐出装置100に液体吐出ヘッド10を組み込んだ場合に、制御モジュール6に、吐出方向のずれを調整した駆動信号Comを決定させる。制御モジュール6は、決定した駆動信号Comを生成する波形指定信号dComを、記憶回路に記憶する。液体吐出装置100が出荷され、液体吐出装置100のユーザーによって印刷処理の実行が指示された場合、制御モジュール6は、記憶回路に記憶された波形指定信号dComを、駆動信号生成回路2に出力する。
1からMまでの任意のm番目のノズルN[m]を用いると、制御モジュール6は、距離LDU[m]に基づいて、圧電素子PZ[m]に供給する駆動信号Comを調整する。第1実施形態では、駆動信号Comに含まれる保持要素DC3の期間Pwh1の長さが、吐出速度Vmを最大値とする期間の長さより短くなるように補正することで、下流ノズル部分NDの傾き、及び、同軸度のずれの一方又は両方による飛翔曲がりを抑制する。期間Pwh1の長さに応じた吐出速度Vmの変動の特性について、図9を用いて説明する。
図9は、期間Pwh1の長さに応じた吐出速度Vmの変動の特性を説明するための図である。グラフg2の横軸が、期間Pwh1の長さを示す。グラフg1の縦軸が、インクの吐出速度を示す。
図9に示す吐出速度特性VmChは、期間Pwh1の長さに応じたインクの吐出速度の特性を示す。吐出速度特性VmChが示すように、吐出速度Vmは、期間Pwh1の長さが約2.3[μs]であるときに最大値となる。以下、吐出速度Vmを最大値とする期間Pwh1の長さを、Tmaxと記載する。
期間Pwh1の長さをtとすると、制御モジュール6は、tが下記(1-1)式を満たすように駆動信号Comを決定する。
Tmax-t=f(θ)+g(LCD) (1-1)
Tmax-t=f(θ)+g(LCD) (1-1)
θは、下流ノズル部分NDがZ軸に対して傾斜する角度である。関数f(θ)は、θに対して線形で比例する関数である。関数g(LCD)は、同軸度のずれの大きさである距離LCDに対して線形で比例する関数である。例えば、関数f(θ)は、下記(1-2)式で示され、関数g(LCD)は、下記(1-3)式で示される。
f(θ)=α1×θ (1-2)
g(LCD)=β1×LCD (1-3)
f(θ)=α1×θ (1-2)
g(LCD)=β1×LCD (1-3)
但し、α1及びβ1は、定数である。α1及びβ1は、液体吐出ヘッド10の製造者の実験等によって得られる。(1-2)式及び(1-3)式から理解されるように、f(0)=0であり、g(0)=0である。
期間Pwh1の長さtが、吐出速度Vmを最大値とする期間の長さTmaxより短く設定するため、下記(1-4)式に示す関係が成り立つ。
0<t<Tmax (1-4)
0<t<Tmax (1-4)
Tmaxは、圧力室CVの固有振動周期Tcの0.5倍であるという関係がある。また、(1-1)式から(1-5)式が導かれる。
t=Tmax-{f(θ)+g(LCD)} (1-5)
t=Tmax-{f(θ)+g(LCD)} (1-5)
(1-4)式と、Tmaxが圧力室CVの固有振動周期Tcの0.5倍であることと、(1-5)式とから、下記(1-6)式に示す関係が成り立つ。
0<Tc/2-{f(θ)+g(LCD)}<Tc/2 (1-6)
0<Tc/2-{f(θ)+g(LCD)}<Tc/2 (1-6)
(1-6)式を変形すると、(1-7)式が得られる。
0<f(θ)+g(LCD)<Tc/2 (1-7)
0<f(θ)+g(LCD)<Tc/2 (1-7)
制御モジュール6は、M個のノズルNの夫々の同軸度のずれの大きさである距離LCDを示す情報と、M個のノズルNの夫々の下流ノズル部分NDの傾斜の角度θを示す情報と、関数f(θ)を実行可能なプログラムと、関数g(LCD)を実行可能なプログラムと、Tmaxの値を記憶回路に記憶する。
駆動信号Comを調整する場合、制御モジュール6は、1からMまでの各整数mに対して、距離LCD[m]を関数g(LCD)に入力して得られた値と、角度θ[m]を関数f(θ)に入力して得られた値と、Tmaxの値とを(1-5)式に代入することにより、期間Pwh1の長さであるtを算出する。制御モジュール6は、1からMまでの夫々について、期間Pwh1の長さを、算出したtとする駆動信号Comを生成することを指示する波形指定信号dComを、記憶回路に記憶させる。本実施形態では、説明を簡略化するため、1からMまでの夫々について、算出したtの値が2つの値のうちいずれか一方の値に一致したと想定する。従って、制御モジュール6は、この2つの値のうちのいずれか一方の値を期間Pwh1の長さとする駆動信号Com-Aと、他方の値を期間Pwh1の長さとする駆動信号Com-Bとを生成することを指定する波形指定信号dComを、記憶回路に記憶させる。更に、制御モジュール6は、1からMまでの夫々について、m番目の圧電素子PZに、駆動信号Com-Aと駆動信号Com-Bとのうち、いずれの駆動信号Comを供給するかを示す情報を、記憶回路に記憶させる。
印刷処理を実行する場合、制御モジュール6は、記憶回路に記憶させた波形指定信号dComを、駆動信号生成回路2に出力する。更に、制御モジュール6は、1からMまでの夫々の整数について、m番目の圧電素子PZに、駆動信号Com-Aと駆動信号Com-Bとのうち、いずれを供給するかを示す個別指定信号Sd[m]を含む印刷信号SIを、液体吐出ヘッド10に出力する。個別指定信号Sd[m]については、図10で後述する。
1-6.印刷処理時の動作
本実施形態において、液体吐出装置100が印刷処理を実行する期間は、複数の単位期間Tuを含む。ある単位期間Tuにおける液体吐出装置100の動作について、図10を用いて説明する。
本実施形態において、液体吐出装置100が印刷処理を実行する期間は、複数の単位期間Tuを含む。ある単位期間Tuにおける液体吐出装置100の動作について、図10を用いて説明する。
図10は、単位期間Tuにおける液体吐出装置100の動作を説明するためのタイミングチャートである。図10の例示では、液体吐出ヘッド10に供給される駆動信号Com-A及び駆動信号Com-Bと、ラッチ信号LATと、クロック信号CLと、について例示する。
図10に示すように、制御モジュール6は、パルスPlsLを有するラッチ信号LATを出力する。これにより、制御モジュール6は、パルスPlsLの立ち上がりから次のパルスPlsLの立ち上がりまでの期間として、単位期間Tuを規定する。
印刷信号SIは、ラッチ信号LATによって指定される期間ごとの圧電素子PZ[1]~PZ[M]の駆動の態様を指定する、個別指定信号Sd[1]~Sd[M]を含む。そして、制御モジュール6は、各単位期間Tuの開始に先立って、個別指定信号Sd[1]~Sd[M]を含む印刷信号SIを、クロック信号CLに同期させて接続状態指定回路52に供給する。この場合、接続状態指定回路52は、当該単位期間Tuにおいて、1からMまでの全てのmについて、個別指定信号Sd[m]に基づいて接続状態指定信号SLa[m]と接続状態指定信号SLb[m]とを生成する。
1からMまでの全てのmについて、個別指定信号Sd[m]は、各単位期間Tuにおいて、圧電素子PZ[m]に対して、駆動信号Com-Aによる駆動、駆動信号Com-Bによる駆動、及び、非駆動の3つの駆動態様のうち、いずれか1つの駆動態様を指定する信号である。
図10に示すように、駆動信号生成回路2は、吐出波形PX-Aを有する駆動信号Com-Aと、吐出波形PX-Bを有する駆動信号Com-Bとを出力する。吐出波形PX-Aと吐出波形PX-Bとは、保持要素DC1の期間の長さと、保持要素DC3の期間Pwh1の長さと、とが互いに異なり、他の部分で同一である。具体的には、膨張要素DC2の期間の長さと、収縮要素DC4の期間の長さと、保持要素DC5の期間の長さと、膨張要素DC6の期間の長さと、保持要素DC7の期間の長さと、保持要素DC3の保持電位Vc1と、保持要素DC5の保持電位Vc2とは、吐出波形PX-Aと吐出波形PX-Bとで略同一である。
吐出波形PX-Aは、保持要素DC1-Aと、膨張要素DC2-Aと、保持要素DC3-Aと、収縮要素DC4-Aと、保持要素DC5-Aと、膨張要素DC6-Aと、保持要素DC7-Aとを有する。吐出波形PX-Bは、保持要素DC1-Bと、膨張要素DC2-Bと、保持要素DC3-Bと、収縮要素DC4-Bと、保持要素DC5-Bと、膨張要素DC6-Bと、保持要素DC7-Bとを有する。図10から理解されるように、保持要素DC1-Aの期間の長さは、保持要素DC1-Bの期間の長さより長い。保持要素DC3-Aの期間Pwh1の長さは、保持要素DC3-Bの期間Pwh1の長さより短い。
例えば、圧電素子PZ[m1]に駆動信号Com-Aを供給し、圧電素子PZ[m2]に駆動信号Com-Bを供給する場合について説明する。m1及びm2は、1以上且つM以下であり、互いに異なる整数である。本実施形態において、距離LDU[m1]と距離LDU[m2]とが異なる前提とする。印刷信号SIは、圧電素子PZ[m1]に駆動信号Com-Aを供給することを指定する個別指定信号Sd[m1]と、圧電素子PZ[m2]に駆動信号Com-Bを供給することを指定する個別指定信号Sd[m2]とを含む。駆動信号Com-Aを供給することを指定する個別指定信号Sd[m1]を受け付けた場合、接続状態指定回路52は、接続状態指定信号SLa[m1]を、ハイレベルに設定し、接続状態指定信号SLb[m1]を、ローレベルに設定する。これにより、圧電素子PZ[m1]には、駆動信号Com-Aが供給される。駆動信号Com-Bを供給することを指定する個別指定信号Sd[m2]を受け付けた場合、接続状態指定回路52は、接続状態指定信号SLa[m2]を、ローレベルに設定し、接続状態指定信号SLb[m2]を、ローレベルに設定する。これにより、圧電素子PZ[m2]には、駆動信号Com-Bが供給される。
なお、ノズルN[m1]が「第1ノズル」に相当し、ノズルN[m2]が「第2ノズル」に相当する。ノズルN[m1]が「第1ノズル」に相当する場合、圧力室CV[m1]が「第1圧力室」に相当し、圧電素子PZ[m1]が「第1圧電素子」に相当し、下流ノズル部分ND[m1]が、「第1下流ノズル部分」に相当し、上流ノズル部分NU[m1]が、「第1上流ノズル部分」に相当し、下流ノズル部分ND[m1]の接続部D1[m1]の直径RD[m1]が、「第1の直径」に相当し、上流ノズル部分NU[m1]の底面U2[m1]の直径RU[m1]が、「第2の直径」に相当し、距離LDU[m1]が「第1距離」に相当する。ノズルN[m1]が「第1ノズル」に相当する場合、圧電素子PZ[m1]に供給される駆動信号Com-Aが「第1駆動信号」に相当する。駆動信号Com-Aが「第1駆動信号」に相当する場合、吐出波形PX-Aが、「第1波形」に相当し、膨張要素DC2-Aが、「第1膨張要素」に相当し、保持要素DC3-Aが、「第1保持要素」に相当し、収縮要素DC4-Aが、「第1収縮要素」に相当する。
ノズルN[m2]が「第2ノズル」に相当する場合、圧力室CV[m2]が「第2圧力室」に相当し、圧電素子PZ[m2]が「第2圧電素子」に相当し、下流ノズル部分ND[m2]が、「第2下流ノズル部分」に相当し、上流ノズル部分NU[m2]が、「第2上流ノズル部分」に相当し、下流ノズル部分ND[m2]の接続部D1[m2]の直径RD[m2]が、「第3の直径」に相当し、上流ノズル部分NU[m2]の底面U2[m2]の直径RU[m2]が、「第4の直径」に相当し、距離LDU[m2]が「第2距離」に相当する。ノズルN[m2]が「第2ノズル」に相当する場合、圧電素子PZ[m2]に供給される駆動信号Com-Bが「第2駆動信号」に相当する。駆動信号Com-Bが「第2駆動信号」に相当する場合、吐出波形PX-Bが、「第3波形」に相当し、膨張要素DC2-Bが、「第4膨張要素」に相当し、保持要素DC3-Bが、「第4保持要素」に相当し、収縮要素DC4-Bが、「第3収縮要素」に相当する。
1-7.第1実施形態のまとめ
以下、M個のノズルNのうちm1番目のノズルN[m1]とm2番目のノズルN[m2]とを用いて、第1実施形態のまとめを記載する。m1及びm2は、1以上且つM以下であり、互いに異なる整数である。
以下、M個のノズルNのうちm1番目のノズルN[m1]とm2番目のノズルN[m2]とを用いて、第1実施形態のまとめを記載する。m1及びm2は、1以上且つM以下であり、互いに異なる整数である。
下流ノズル部分NDがZ軸に対して傾斜する角度θが0度である場合、第1実施形態に係る液体吐出装置100は、圧電素子PZ[m1]と、圧電素子PZ[m1]の駆動により振動する振動板36と、振動板36の振動により液体に圧力を付与する圧力室CV[m1]を区画する圧力室基板34と、圧力室CV[m1]と連通するノズルN[m1]が形成されたノズル基板46と、圧電素子PZ[m1]の動作を制御する制御モジュール6と、を有し、ノズル基板46は、圧力室基板34とは反対に位置する面FN1を有し、ノズルN[m1]は、直径RD[m1]を有し、面FN1に開口した下流ノズル部分ND[m1]と、直径RD[m1]よりも長い直径RU[m1]を有し、下流ノズル部分ND[m1]よりも上流に位置する上流ノズル部分NU[m1]とを、を含み、制御モジュール6は、Z軸に沿ってみたときの下流ノズル部分ND[m1]の直径RD[m1]の中心位置、即ち、重心GD1[m1]の位置と上流ノズル部分NU[m1]の直径RU[m1]の中心位置、即ち、重心GU2[m1]の位置との距離LDU[m1]に応じて、圧電素子PZ[m1]を駆動する駆動信号Com-Aを調整する。
第1実施形態に係る液体吐出装置100は、ノズルN[m1]に同軸度のずれがある場合であっても、距離LDU[m1]に応じて駆動信号Com-Aを調整することにより、ノズルN[m1]から吐出されるインクの吐出方向を調整できる。
第1実施形態に係る液体吐出装置100は、ノズルN[m1]に同軸度のずれがある場合であっても、距離LDU[m1]に応じて駆動信号Com-Aを調整することにより、ノズルN[m1]から吐出されるインクの吐出方向を調整できる。
また、駆動信号Com-Aは、圧力室CV[m1]の容積が膨張するように電位を変化させる膨張要素DC2-Aと、圧力室CV[m1]の容積を収縮するように電位を変化させる収縮要素DC4-Aと、膨張要素DC2-Aと収縮要素DC4-Aとの間で電位を一定に保持する保持要素DC3-Aと、を含む吐出波形PX-Aを含み、制御モジュール6は、距離LDU[m1]に応じて、保持要素DC3-Aの期間Pwh1の長さを調整する。
第1実施形態に係る液体吐出装置100は、ノズルN[m1]の同軸度のずれの大きさに応じて期間Pwh1の長さを調整することにより、ノズルN[m1]から吐出されるインクの方向を調整できる。
第1実施形態に係る液体吐出装置100は、ノズルN[m1]の同軸度のずれの大きさに応じて期間Pwh1の長さを調整することにより、ノズルN[m1]から吐出されるインクの方向を調整できる。
また、第1実施形態に係る液体吐出装置100は、圧電素子PZ[m1]と、圧電素子PZ[m1]と異なる圧電素子PZ[m2]と、圧力室基板34に区画され、圧電素子PZ[m1]の振動によりインクに圧力を付与する圧力室CV[m1]と、圧力室基板34に区画され、圧電素子PZ[m2]の振動によりインクに圧力を付与する圧力室CV[m2]と、ノズル基板46に形成され、圧力室CV[m1]と連通するノズルN[m1]と、ノズル基板46に形成され、圧力室CV[m2]と連通するノズルN[m2]と、圧電素子PZ[m1]を駆動する駆動信号Com-A及び圧電素子PZ[m2]を駆動する駆動信号Com-Bを供給する駆動信号生成回路2と、を備え、ノズル基板46は、圧力室基板34とは反対に位置する面FN1を有し、ノズルN[m1]は、面FN1に開口した下流ノズル部分ND[m1]と、ノズル基板46の厚さ方向であるZ軸に沿ってみたときの断面積が下流ノズル部分ND[m1]の断面積よりも大きく、下流ノズル部分ND[m1]よりも上流に位置する上流ノズル部分NU[m1]とを、を含み、ノズルN[m2]は、直径RD[m2]を有し、面FN1に開口した下流ノズル部分ND[m2]と、直径RD[m2]よりも長い直径RU[m2]を有し、下流ノズル部分ND[m2]よりも上流に位置する上流ノズル部分NU[m2]とを、を含み、Z軸に沿ってみたときの下流ノズル部分ND[m1]の重心GD1[m1]の位置と上流ノズル部分NU[m1]の重心GU2[m1]の位置との距離LDU[m1]と、Z軸に沿ってみたときの下流ノズル部分ND[m2]の直径RD[m2]の中心位置、即ち、重心GD1[m2]の位置と上流ノズル部分NU[m2]の直径RU[m2]の中心位置、即ち、重心GU2[m2]の位置との距離LDU[m2]が異なるとき、駆動信号生成回路2は、駆動信号Com-Aと駆動信号Com-Bとを異ならせる、ことを特徴とするともいえる。
ノズルN[m1]とノズルN[m2]との同軸度のずれが異なる場合であっても、同軸度のずれに応じて駆動信号Com-A及び駆動信号Com-Bを調整することにより、ノズルN[m1]及びノズルN[m2]から吐出されるインクの吐出方向を調整できる。
ノズルN[m1]とノズルN[m2]との同軸度のずれが異なる場合であっても、同軸度のずれに応じて駆動信号Com-A及び駆動信号Com-Bを調整することにより、ノズルN[m1]及びノズルN[m2]から吐出されるインクの吐出方向を調整できる。
また、駆動信号Com-Bは、圧力室CV[m2]の容積が膨張するように電位を変化させる膨張要素DC2-Bと、圧力室CV[m2]の容積を収縮するように電位を変化させる収縮要素DC4-Bと、膨張要素DC2-Bと収縮要素DC4-Bとの間で電位を一定に保持する保持要素DC3-Bと、を含む吐出波形PX-Bを含み、制御モジュール6は、距離LDU[m2]に応じて、保持要素DC3-Bの期間Pwh1の長さを調整する。
第1実施形態に係る液体吐出装置100は、ノズルN[m2]の同軸度のずれの大きさに応じて期間Pwh1の長さを調整することにより、ノズルN[m2]から吐出されるインクの方向を調整できる。また、期間Pwh1の長さを調整しても、ノズルNから吐出されるインク量は同等とみなせる。従って、ノズルN[m1]とノズルN[m2]との同軸度のずれが異なる場合であっても、ノズルN[m1]から吐出されるインク量と、ノズルN[m2]から吐出されるインク量とは同等とみなせる。
第1実施形態に係る液体吐出装置100は、ノズルN[m2]の同軸度のずれの大きさに応じて期間Pwh1の長さを調整することにより、ノズルN[m2]から吐出されるインクの方向を調整できる。また、期間Pwh1の長さを調整しても、ノズルNから吐出されるインク量は同等とみなせる。従って、ノズルN[m1]とノズルN[m2]との同軸度のずれが異なる場合であっても、ノズルN[m1]から吐出されるインク量と、ノズルN[m2]から吐出されるインク量とは同等とみなせる。
2.第2実施形態
インクが吐出する方向を調整することは、期間Pwh1の長さを変更することに限らない。保持電位Vc1を変更すると、インクの吐出方向が変化することが発明者らの実験で得られた。保持電位Vc1を変更するとインクの吐出速度が変化するため、インクの吐出速度を維持するために、保持電位Vc1を変更するとともに、保持電位Vc2を変更することが好ましい。第2実施形態では、距離LDUに応じて保持電位Vc1及び保持電位Vc2を調整することにより、インクが吐出する方向を調整する。以下、第2実施形態について説明する。
インクが吐出する方向を調整することは、期間Pwh1の長さを変更することに限らない。保持電位Vc1を変更すると、インクの吐出方向が変化することが発明者らの実験で得られた。保持電位Vc1を変更するとインクの吐出速度が変化するため、インクの吐出速度を維持するために、保持電位Vc1を変更するとともに、保持電位Vc2を変更することが好ましい。第2実施形態では、距離LDUに応じて保持電位Vc1及び保持電位Vc2を調整することにより、インクが吐出する方向を調整する。以下、第2実施形態について説明する。
図11は、保持電位Vc1及び保持電位Vc2に応じた吐出方向の変化の特性を説明するための図である。図11に示すグラフg3の横軸が、期間Pwh1の長さを示す。グラフg3の縦軸が、吐出方向の角度θを示す。角度θが負の値である場合、吐出方向がX2方向にずれることを意味し、角度θが正の値である場合、吐出方向がX1方向にずれることを意味する。図11に示す保持電位Vc1及び保持電位Vc2は、圧電素子PZに供給可能な最低電位を0%とし、圧電素子PZに供給可能な最高電位を100%として説明する。
図11に示す吐出方向特性VcCh1、吐出方向特性VcCh2、及び、吐出方向特性VcCh3の夫々におけるインクの吐出速度は、略同一の吐出速度である。図11に示す吐出方向特性VcCh1は、保持電位Vc1が10%であり、保持電位Vc2が60%である場合のインクの吐出方向の特性を示す。図11に示す吐出方向特性VcCh2は、保持電位Vc1が14%であり、保持電位Vc2が79%である場合のインクの吐出方向の特性を示す。図11に示す吐出方向特性VcCh3は、保持電位Vc1が18%であり、保持電位Vc2が100%である場合のインクの吐出方向の特性を示す。
吐出方向特性VcCh1、吐出方向特性VcCh2、及び、吐出方向特性VcCh3の夫々から理解されるように、保持電位Vc1が高くなることに応じて吐出方向がずれる大きさが小さくなる傾向にある。保持電位Vc1が高くなることに応じて吐出方向がずれる大きさが小さくなる理由としては、保持電位Vc1が高くなることは、保持電位Vc1が基準電位V0に近付くことを意味する。保持電位Vc1が基準電位V0に近付くと、メニスカスをZ1方向に引き込む力が小さくなって、メニスカスが上流ノズル部分NUに到達しにくくなり、同軸度のずれの影響が小さくなるためであると考えられる。
保持電位Vc1の変更前の値をVc1aとし、保持電位Vc1の変更後の値をVc1bとし、保持電位Vc2の変更後の値をVc2aとし、保持電位Vc2の変更後の値をVc2bとすると、制御モジュール6は、Vc1a及びVc1bが下記(2-1)式を満たし、Vc2a及びVc2bが下記(2-2)式を満たすように駆動信号Comを決定する。
Vc1b-Vc1a=h(θ)+i(LCD) (2-1)
Vc2b-Vc2a=j(θ)+k(LCD) (2-2)
Vc1b-Vc1a=h(θ)+i(LCD) (2-1)
Vc2b-Vc2a=j(θ)+k(LCD) (2-2)
関数h(θ)及び関数j(θ)は、角度θに対して線形で比例する関数である。関数i(LCD)及び関数k(LCD)は、距離LCDに対して線形で比例する関数である。例えば、関数h(θ)は、下記(2-3)式で示され、関数j(θ)は、下記(2-4)式で示され、関数i(LCD)は、下記(2-5)式で示され、関数k(LCD)は、下記(2-6)式で示される。
h(θ)=α2×θ (2-3)
j(θ)=α3×θ (2-4)
i(LCD)=β2×LCD (2-5)
k(LCD)=β3×LCD (2-6)
h(θ)=α2×θ (2-3)
j(θ)=α3×θ (2-4)
i(LCD)=β2×LCD (2-5)
k(LCD)=β3×LCD (2-6)
但し、α2、α3、β2、及び、β3は、定数である。α2、α3、β2、及び、β3は、液体吐出ヘッド10の製造者の実験等によって得られる。
制御モジュール6は、M個のノズルNの夫々の同軸度のずれの大きさである距離LCDを示す情報と、M個のノズルNの夫々の下流ノズル部分NDの傾斜の角度θを示す情報と、関数h(θ)を実行可能なプログラムと、関数j(θ)を実行可能なプログラムと、関数i(LCD)を実行可能なプログラムと、関数k(LCD)を実行可能なプログラムと、を記憶回路に記憶させる。
駆動信号Comを調整する場合、制御モジュール6は、1からMまでの各整数mに対して、距離LCD[m]を関数i(LCD)に入力して得られた値と、角度θ[m]を関数h(θ)に入力して得られた値と、Vc1aとを、(2-1)式に代入することにより、保持電位Vc1の変更後の値であるVc1bを算出する。更に、制御モジュール6は、1からMまでの各整数mに対して、距離LCD[m]を関数k(LCD)に入力して得られた値と、角度θ[m]を関数j(θ)に入力して得られた値と、Vc2aとを、(2-2)式に代入することにより、保持電位Vc2の変更後の値であるVc2bを算出する。制御モジュール6は、1からMまでの夫々について、保持電位Vc1を、算出したVc1bとし、保持電位Vc2を、算出したVc2bとする駆動信号Comを生成することを指示する波形指定信号dComを、記憶回路に記憶させる。本実施形態では、説明を簡略化するため、1からMまでの夫々について、算出したVc1bとVc2bとが組(a1,b1)と組(a2,b2)とうちいずれか一方の組に一致したと想定する。従って、制御モジュール6は、この2つの組のうち一方の組(a1,b1)のa1を保持電位Vc1とし、b1を保持電位Vc2とする駆動信号Com-Aと、他方の組(a2,b2)のa2を保持電位Vc1とし、b2を保持電位Vc2とする駆動信号Com-Bとを生成することを指定する波形指定信号dComを、記憶回路に記憶させる。更に、制御モジュール6は、1からMまでの夫々について、m番目の圧電素子PZに、駆動信号Com-Aと駆動信号Com-Bとのうち、いずれの駆動信号Comを供給するかを示す情報を、記憶回路に記憶させる。
印刷処理を実行する場合、制御モジュール6は、記憶回路に記憶させた波形指定信号dComを、駆動信号生成回路2に出力する。更に、制御モジュール6は、1からMまでの夫々の整数について、m番目の圧電素子PZに、駆動信号Com-Aと駆動信号Com-Bとのうち、いずれの駆動信号Comを供給するかを示す個別指定信号Sd[m]を含む印刷信号SIを、液体吐出ヘッド10に出力する。
なお、駆動信号Com-Aが「第1駆動信号」に相当する場合、保持要素DC3-Aの保持電位Vc1が、「第1保持電位」に相当し、保持要素DC5-Aの保持電位Vc2が、「第2保持電位」に相当し、保持要素DC5-Aが「第3保持要素」に相当し、膨張要素DC6が「第3膨張要素」に相当する。駆動信号Com-Bが「第2駆動信号」に相当する場合、保持要素DC3-Bの保持電位Vc1が、「第4保持電位」に相当する。
以上、第2実施形態に係る駆動信号Com-Aは、圧力室CV[m1]の容積が膨張するように電位を変化させる膨張要素DC2-Aと、圧力室CV[m1]の容積を収縮するように電位を変化させる収縮要素DC4-Aと、膨張要素DC2-Aと収縮要素DC4-Aとの間で、電位を保持電位Vc1に保持する保持要素DC3-Aと、を含む吐出波形PX-Aを含み、距離LDU[m1]に応じて、保持電位Vc1を調整する。
第2実施形態に係る液体吐出装置100は、ノズルN[m1]の同軸度のずれの大きさに応じて保持電位Vc1を調整することにより、ノズルN[m1]から吐出されるインクの方向を調整できる。
第2実施形態に係る液体吐出装置100は、ノズルN[m1]の同軸度のずれの大きさに応じて保持電位Vc1を調整することにより、ノズルN[m1]から吐出されるインクの方向を調整できる。
吐出波形PX-Aは、更に、収縮要素DC4-Aよりも後の要素であって、圧力室CV[m1]の容積が膨張するように電位を変化させる膨張要素DC6-Aと、収縮要素DC4-Aと膨張要素DC6-Aとの間で、電位を保持電位Vc2に保持する保持要素DC5-Aと、を含み、制御モジュール6は、距離LDU[m1]に応じて、保持電位Vc1及び保持電位Vc2を調整する。
第2実施形態に係る液体吐出装置100は、ノズルN[m1]の同軸度のずれの大きさに応じて保持電位Vc1及び保持電位Vc2を調整することにより、ノズルN[m1]から吐出されるインクの吐出速度を維持しつつ、ノズルN[m1]から吐出されるインクの方向を調整できる。
第2実施形態に係る液体吐出装置100は、ノズルN[m1]の同軸度のずれの大きさに応じて保持電位Vc1及び保持電位Vc2を調整することにより、ノズルN[m1]から吐出されるインクの吐出速度を維持しつつ、ノズルN[m1]から吐出されるインクの方向を調整できる。
また、駆動信号Com-Bは、圧力室CV[m2]の容積が膨張するように電位を変化させる膨張要素DC2-Bと、圧力室CV[m2]の容積を収縮するように電位を変化させる収縮要素DC4-Bと、膨張要素DC2-Bと収縮要素DC4-Bとの間で電位を保持電位Vc1に保持する保持要素DC3-Bと、を含む吐出波形PX-Bを含み、駆動信号生成回路2は、距離LDU[m2]に応じて、保持電位Vc1を調整する。
第2実施形態に係る液体吐出装置100は、ノズルN[m2]の同軸度のずれの大きさに応じて保持電位Vc1を調整することにより、ノズルN[m2]から吐出されるインクの方向を調整できる。
第2実施形態に係る液体吐出装置100は、ノズルN[m2]の同軸度のずれの大きさに応じて保持電位Vc1を調整することにより、ノズルN[m2]から吐出されるインクの方向を調整できる。
3.第3実施形態
第1実施形態では、関数f(θ)及び関数g(LCD)を用いたが、関数を用いず、下流ノズル部分NDがZ軸に対して傾斜する角度と、同軸度のずれの大きさと、期間Pwh1の長さとの関係を記憶するテーブルを用いてもよい。以下、第3実施形態について説明する。但し、第3実施形態では、説明の簡略化のため、下流ノズル部分NDがZ軸に対して傾斜していない態様について説明する。
第1実施形態では、関数f(θ)及び関数g(LCD)を用いたが、関数を用いず、下流ノズル部分NDがZ軸に対して傾斜する角度と、同軸度のずれの大きさと、期間Pwh1の長さとの関係を記憶するテーブルを用いてもよい。以下、第3実施形態について説明する。但し、第3実施形態では、説明の簡略化のため、下流ノズル部分NDがZ軸に対して傾斜していない態様について説明する。
図12は、同軸度のずれの大きさと期間Pwh1の長さとの関係を示す保持期間特性テーブルT1の内容の一例を示す図である。保持期間特性テーブルT1は、同軸度のずれの大きさが0[μm]より長くx1[μm]未満である場合、期間Pwh1の長さを期間t2とすることにより、吐出方向のずれを抑制でき、同軸度のずれの大きさがx1[μm]以上である場合、期間Pwh1の長さを期間t3とすることにより、吐出方向のずれを抑制できることが示されている。言い換えれば、保持期間特性テーブルT1は、M個のノズルNを、同軸度のずれの大きさに応じて、2つのグループにランク分けするともいえる。
制御モジュール6は、M個のノズルNの夫々の同軸度のずれの大きさである距離LCDを示す情報と、保持期間特性テーブルT1とを、記憶回路に記憶させる。駆動信号Comを調整する場合、期間Pwh1の長さを期間t2とする駆動信号Com-Aと、期間Pwh1の長さを期間t3とする駆動信号Com-Bとを生成することを指定する波形指定信号dComを、記憶回路に記憶させる。更に、制御モジュール6は、1からMまでの夫々について、m番目の圧電素子PZに、駆動信号Com-Aと駆動信号Com-Bとのうち、いずれの駆動信号Comを供給するかを示す情報を、記憶回路に記憶させる。印刷処理を実行する場合、制御モジュール6は、記憶回路に記憶させた波形指定信号dComを、駆動信号生成回路2に出力する。更に、制御モジュール6は、1からMまでの夫々の整数について、m番目の圧電素子PZに、駆動信号Com-Aと駆動信号Com-Bとのうち、いずれの駆動信号Comを供給するかを示す個別指定信号Sd[m]を含む印刷信号SIを、液体吐出ヘッド10に出力する。
なお、第3実施形態では、期間Pwh1の長さを調整する態様であったが、保持電位Vc1と保持電位Vc2とを調整してもよい。
4.変形例
以上に例示した各形態は多様に変形され得る。具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様は、相互に矛盾しない範囲で適宜に併合され得る。
以上に例示した各形態は多様に変形され得る。具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様は、相互に矛盾しない範囲で適宜に併合され得る。
4-1.第1変形例
上述の各態様では、1からMまでの任意の圧電素子PZ[m]において、複数の単位期間Tuの夫々で供給する駆動信号Comは同一であったが、異なってもよい。
上述の各態様では、1からMまでの任意の圧電素子PZ[m]において、複数の単位期間Tuの夫々で供給する駆動信号Comは同一であったが、異なってもよい。
図13は、第1変形例に係る駆動信号Com-AEの一例を示す図である。駆動信号Com-AEは、複数の単位期間Tuのうち単位期間Tu1では吐出波形PX-A1を有し、単位期間Tu1の次の単位期間Tuである単位期間Tu2では吐出波形PX-A2を有する点で、駆動信号Com-Aと相違する。
吐出波形PX-A1は、保持要素DC1-A1と、膨張要素DC2-A1と、保持要素DC3-A1と、収縮要素DC4-A1と、保持要素DC5-A1と、膨張要素DC6-A1と、保持要素DC7-A1とを有する。吐出波形PX-A2は、保持要素DC1-A2と、膨張要素DC2-A2と、保持要素DC3-A2と、収縮要素DC4-A2と、保持要素DC5-A2と、膨張要素DC6-A2と、保持要素DC7-A2とを有する。制御モジュール6は、保持要素DC3-A1の期間Pwh1の長さと保持要素DC3-A2の期間Pwh1の長さとを異ならせるように駆動信号Com-AEを調整する。具体的には、図13から理解されるように、保持要素DC1-A1の期間の長さは、保持要素DC1-A2の期間の長さより長い。保持要素DC3-A1の期間Pwh1の長さは、保持要素DC3-A2の期間Pwh1の長さより短い。
図14は、単位期間Tu1と単位期間Tu2との吐出態様を説明するための図である。図14では、単位期間Tu1及び単位期間Tu2の夫々のノズルN[m1]の位置と、単位期間Tu1内にノズルN[m1]から吐出される液滴DR1と、単位期間Tu2においてノズルN[m1]から吐出される液滴DR2と、を示してある。図14に示すノズルN[m1]は、下流ノズル部分NDの傾斜を有していなく、同軸度のずれのみがある。図14では、ノズルN[m1]の同軸度のずれる方向を、X軸に沿う方向としている。更に、図面の煩雑化を防ぐため、単位期間Tu1のノズルN[m1]の位置と単位期間Tu2のノズルN[m1]の位置とを適宜離して表示してある。
図14の例では、Z軸に対して液滴DR1が吐出する方向がなす角度θ1は、Z軸に対して液滴DR2が吐出する方向がなす角度θ2より大きい。このように、第1変形例では、保持要素DC3-A1の期間Pwh1の長さと保持要素DC3-A2の期間Pwh1の長さとが異なるため、単位期間Tu1と単位期間Tu2とで、液滴DRが吐出する方向が異なる。そして、図14の例では、液滴DR1とは液滴DR2とは空中で合体しない。
なお、第1変形例では、駆動信号Com-AEが、「第1駆動信号」に相当し、吐出波形PX-A1が、「第1波形」に相当し、吐出波形PX-A2が、「第2波形」に相当し、膨張要素DC2-A2が、「第2膨張要素」に相当し、保持要素DC3-A2が、「第2保持要素」に相当し、収縮要素DC4-A2が、「第2収縮要素」に相当する。
以上、第1変形例に係る駆動信号Com-AEは、吐出波形PX-A1に加えて、圧力室CV[m1]の容積が膨張するように電位を変化させる膨張要素DC2-A2と、圧力室CV[m1]の容積を収縮するように電位を変化させる収縮要素DC4-A2と、膨張要素DC2-A2と収縮要素DC4-A2との間で電位を一定に保持する保持要素DC3-A2と、を含む吐出波形PX-A2を含み、吐出波形PX-A2は、吐出波形PX-A1の次に圧電素子PZ[m1]に供給され、制御モジュール6は、保持要素DC3-A1の期間Pwh1の長さと保持要素DC3-A2の期間Pwh1の長さとを異ならせるように駆動信号Com-AEを調整する。そして、Z軸に沿う方向に対する吐出波形PX-A1によって液滴DR1が吐出する方向と、Z軸に沿う方向に対する吐出波形PX-A2によって液滴DR2が吐出する方向とは、互いに異なり、液滴DR1と液滴DR2とは、空中で合体しない。
液滴DRが吐出方向を異ならせ、液滴DR1と液滴DR2とが空中で合体しないことにより、媒体PPには、液滴DR1によるドットと、液滴DR2によるドットとが形成される。従って、第1変形例に係る液体吐出装置100は、液滴DR1と液滴DR2とが空中で合体する態様と比較して、媒体PPに形成されるドットの数が増えるため、塗りつぶし可能な領域を小さくできる、いわゆるベタの品質を向上できる。また、ドットの大きさが小さくなることにより、インクの体積に対するインクの表面積の割合が大きくなる。インクの体積に対するインクの表面積の割合が大きくなることにより、インクの乾燥速度を向上できる。
液滴DRが吐出方向を異ならせ、液滴DR1と液滴DR2とが空中で合体しないことにより、媒体PPには、液滴DR1によるドットと、液滴DR2によるドットとが形成される。従って、第1変形例に係る液体吐出装置100は、液滴DR1と液滴DR2とが空中で合体する態様と比較して、媒体PPに形成されるドットの数が増えるため、塗りつぶし可能な領域を小さくできる、いわゆるベタの品質を向上できる。また、ドットの大きさが小さくなることにより、インクの体積に対するインクの表面積の割合が大きくなる。インクの体積に対するインクの表面積の割合が大きくなることにより、インクの乾燥速度を向上できる。
但し、第1変形例において、液滴DR1と液滴DR2とが、空中で合体してもよい。液滴DR1と液滴DR2とが合体することにより、液滴の尾引によるミストの発生を抑制できる。
4-2.第2変形例
第1変形例では、吐出波形PX-A1に含まれる保持要素DC3-A1の期間Pwh1の長さと、吐出波形PX-A2に含まれる保持要素DC3-A2の期間Pwh1の長さとを異ならせるように駆動信号Com-AEを調整したが、これに限らない。
第1変形例では、吐出波形PX-A1に含まれる保持要素DC3-A1の期間Pwh1の長さと、吐出波形PX-A2に含まれる保持要素DC3-A2の期間Pwh1の長さとを異ならせるように駆動信号Com-AEを調整したが、これに限らない。
図15は、第2変形例に係る駆動信号Com-AFの一例を示す図である。駆動信号Com-AFは、複数の単位期間Tuのうち単位期間Tu1では吐出波形PX-A3を有し、単位期間Tu1の次の単位期間Tuである単位期間Tu2では吐出波形PX-A4を有する点で、駆動信号Com-Aと相違する。
吐出波形PX-A3は、保持要素DC1-A3と、膨張要素DC2-A3と、保持要素DC3-A3と、収縮要素DC4-A3と、保持要素DC5-A3と、膨張要素DC6-A3と、保持要素DC7-A3とを有する。吐出波形PX-A4は、保持要素DC1-A4と、膨張要素DC2-A4と、保持要素DC3-A4と、収縮要素DC4-A4と、保持要素DC5-A4と、膨張要素DC6-A4と、保持要素DC7-A4とを有する。制御モジュール6は、保持要素DC3-A3の保持電位Vc1-A3と保持要素DC3-A4の保持電位Vc1-A4とを異ならせるように駆動信号Com-AFを調整する。更に、制御モジュール6は、保持要素DC5-A3の保持電位Vc2-A3と保持要素DC5-A4の保持電位Vc2-A4とを異ならせるように駆動信号Com-AFを調整することが好ましい。具体的には、図15から理解されるように、保持電位Vc1-A3は保持電位Vc1-A4よりも低く、保持電位Vc2-A3は保持電位Vc2-A4よりも低い。
なお、第2変形例では、駆動信号Com-AFが、「第1駆動信号」に相当し、吐出波形PX-A3が、「第1波形」に相当し、吐出波形PX-A4が、「第2波形」に相当し、膨張要素DC2-A4が、「第2膨張要素」に相当し、保持要素DC3-A4が、「第2保持要素」に相当し、収縮要素DC4-A2が、「第2収縮要素」に相当し、保持電位Vc1-A3が、「第1保持電位」に相当し、保持電位Vc1-A4が、「第3保持電位」に相当する。
第2変形例における単位期間Tu1と単位期間Tu2との吐出態様は、第1変形例における単位期間Tu1と単位期間Tu2との吐出態様と略同一であるため、説明を省略する。従って、第2変形例でも、Z軸に沿う方向に対する吐出波形PX-A3によって液滴DR1が吐出する方向と、Z軸に沿う方向に対する吐出波形PX-A4によって液滴DR2が吐出する方向とは、互いに異なり、液滴DR1と液滴DR2とは、空中で合体しない。
以上、第2変形例に係る駆動信号Com-AFは、吐出波形PX-A3に加えて、圧力室CV[m1]の容積が膨張するように電位を変化させる膨張要素DC2-A4と、圧力室CV[m1]の容積を収縮するように電位を変化させる収縮要素DC4-A4と、膨張要素DC2-A4と収縮要素DC4-A4との間で電位を保持電位Vc1-A4に保持する保持要素DC3-A4と、を含む吐出波形PX-A4を含み、吐出波形PX-A4は、吐出波形PX-A3の次に圧電素子PZ[m1]に供給され、制御モジュール6は、保持電位Vc1-A3と保持電位Vc1-A4とを異ならせるように駆動信号Com-AFを調整する。そして、Z軸に沿う方向に対する吐出波形PX-A3によって液滴DR1が吐出する方向と、Z軸に沿う方向に対する吐出波形PX-A4によって液滴DR2が吐出する方向とは、互いに異なり、液滴DR1と液滴DR2とは、空中で合体しない。
第2変形例に係る液体吐出装置100は、第1変形例に係る液体吐出装置100と同様に、液滴DR1と液滴DR2とが空中で合体する態様と比較して、媒体PPに形成されるドットの数が増えるため、塗りつぶし可能な領域を小さくできる、いわゆるベタの品質を向上できる。
第2変形例に係る液体吐出装置100は、第1変形例に係る液体吐出装置100と同様に、液滴DR1と液滴DR2とが空中で合体する態様と比較して、媒体PPに形成されるドットの数が増えるため、塗りつぶし可能な領域を小さくできる、いわゆるベタの品質を向上できる。
また、第2変形例においても、第1変形例と同様に、液滴DR1と液滴DR2とが、空中で合体してもよい。
4-3.第3変形例
上述の各態様における吐出波形PXは、保持要素DC1と、膨張要素DC2と、保持要素DC3と、収縮要素DC4と、保持要素DC5と、膨張要素DC6と、保持要素DC7とを有するが、これに限らない。例えば、吐出波形PXは、収縮要素DC4の替わりに、保持電位Vc1から基準電位V0に変化させる要素を有し、保持要素DC5及び膨張要素DC6を有さなくてもよい。
上述の各態様における吐出波形PXは、保持要素DC1と、膨張要素DC2と、保持要素DC3と、収縮要素DC4と、保持要素DC5と、膨張要素DC6と、保持要素DC7とを有するが、これに限らない。例えば、吐出波形PXは、収縮要素DC4の替わりに、保持電位Vc1から基準電位V0に変化させる要素を有し、保持要素DC5及び膨張要素DC6を有さなくてもよい。
4-4.第4変形例
上述した各態様では、液体吐出モジュールHUを、X軸方向に往復同させるシリアル方式の液体吐出装置100を例示したが、本発明はこのような態様に限定されるものではない。液体吐出装置は、複数のノズルNが、媒体PPの全幅に亘り分布する、ライン方式の液体吐出装置であってもよい。
上述した各態様では、液体吐出モジュールHUを、X軸方向に往復同させるシリアル方式の液体吐出装置100を例示したが、本発明はこのような態様に限定されるものではない。液体吐出装置は、複数のノズルNが、媒体PPの全幅に亘り分布する、ライン方式の液体吐出装置であってもよい。
4-5.その他の変形例
上述の液体吐出装置は、印刷に専用される機器のほか、ファクシミリ装置及びコピー機等の各種の機器に採用され得る。もっとも、本発明の液体吐出装置の用途は印刷に限定されない。例えば、色材の溶液を吐出する液体吐出装置は、液晶表示装置のカラーフィルターを形成する製造装置として利用される。また、導電材料の溶液を吐出する液体吐出装置は、配線基板の配線及び電極を形成する製造装置として利用される。
上述の液体吐出装置は、印刷に専用される機器のほか、ファクシミリ装置及びコピー機等の各種の機器に採用され得る。もっとも、本発明の液体吐出装置の用途は印刷に限定されない。例えば、色材の溶液を吐出する液体吐出装置は、液晶表示装置のカラーフィルターを形成する製造装置として利用される。また、導電材料の溶液を吐出する液体吐出装置は、配線基板の配線及び電極を形成する製造装置として利用される。
2…駆動信号生成回路、5…移動機構、6…制御モジュール、7…ヘッド移動機構、8…搬送機構、10…液体吐出ヘッド、14…液体容器、32…連通板、34…圧力室基板、36…振動板、42…筐体部、44…封止体、46…ノズル基板、48…コンプライアンス基板、50…配線基板、51…駆動回路、52…接続状態指定回路、71…収納ケース、72…無端ベルト、100…液体吐出装置、322…開口部、324…第2連通路、326…第1連通路、328…共通流路、361…弾性膜、362…絶縁膜、422…収容部、424…導入口、CL…クロック信号、CV…圧力室、Com,Com-A,Com-AE,Com-AF,Com-B…駆動信号、D1…接続部、D2…吐出開口、DC1,DC3,DC5,DC7…保持要素、DC2…膨張要素、DC4…収縮要素、DC6…膨張要素、DR,DR1,DR2…液滴、FN1,FN2…面、G1,G2…距離、GD1,GU1,GU2…重心、HU…液体吐出モジュール、Img…印刷データ、LAT…ラッチ信号、LDU…距離、LHa,LHb,LHd…内部配線、Ln…ノズル列、N…ノズル、ND…下流ノズル部分、NU…上流ノズル部分、PP…媒体、PX,PX-A,PX-A1,PX-A2,PX-A3,PX-A4,PX-B…吐出波形、PZ…圧電素子、PlsL…パルス、PwCh…吐出方向特性、Pwh1,Pwh2…期間、Qd…個別電極、Qm…圧電体、Qu…共通電極、RD,RU…直径、RS…液体貯留室、SI…印刷信号、SLa,SLb…接続状態指定信号、SWa,SWb…スイッチ、Sd…個別指定信号、T1…保持期間特性テーブル、Tc…固有振動周期、Tu,Tu1,Tu2…単位期間、U1…供給開口、U2…底面、V0…基準電位、Vbs…定電位信号、Vc1,Vc1-A3,Vc1-A4,Vc2,Vc2-A3,Vc2-A4…保持電位、VcCh1,VcCh2,VcCh3…吐出方向特性、Vm…吐出速度、VmCh…吐出速度特性、WD,WU…壁面、dCom…波形指定信号、g1,g2,g3…グラフ、t2,t3…期間、θ,θ1,θ2…角度。
Claims (11)
- 第1圧電素子と、
前記第1圧電素子の駆動により振動する振動板と、
前記振動板の振動により液体に圧力を付与する第1圧力室を区画する圧力室基板と、
前記第1圧力室と連通する第1ノズルが形成されたノズル基板と、
前記第1圧電素子の動作を制御する制御部と、
を有し、
前記ノズル基板は、前記圧力室基板とは反対に位置する吐出面を有し、
前記第1ノズルは、
第1の直径を有し、前記吐出面に開口した第1下流ノズル部分と、
前記第1の直径よりも長い第2の直径を有し、前記第1下流ノズル部分よりも上流に位置する第1上流ノズル部分と、を含み、
前記制御部は、前記ノズル基板の厚さ方向にみたときの前記第1の直径の中心位置と前記第2の直径の中心位置との距離に応じて、前記第1圧電素子を駆動する第1駆動信号を調整する、
ことを特徴とする液体吐出装置。 - 前記第1駆動信号は、
前記第1圧力室の容積が膨張するように電位を変化させる第1膨張要素と、
前記第1圧力室の容積を収縮するように電位を変化させる第1収縮要素と、
前記第1膨張要素と前記第1収縮要素との間で電位を一定に保持する第1保持要素と、を含む第1波形を含み、
前記制御部は、前記距離に応じて、前記第1保持要素の期間の長さを調整する、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。 - 前記第1駆動信号は、更に、
前記第1圧力室の容積が膨張するように電位を変化させる第2膨張要素と、
前記第1圧力室の容積を収縮するように電位を変化させる第2収縮要素と、
前記第2膨張要素と前記第2収縮要素との間で電位を一定に保持する第2保持要素と、を含む第2波形を含み、
前記第2波形は、前記第1波形の次に前記第1圧電素子に供給され、
前記制御部は、前記第1保持要素の期間の長さと前記第2保持要素の期間の長さとを異ならせるように前記第1駆動信号を調整する、
ことを特徴とする請求項2に記載の液体吐出装置。 - 前記厚さ方向に対する前記第1波形によって液体が吐出する方向と、前記厚さ方向に対する前記第2波形によって液体が吐出する方向とは、互いに異なり、
前記第1波形によって吐出する液体と前記第2波形によって吐出する液体とは、空中で合体しない、
ことを特徴とする請求項3に記載の液体吐出装置。 - 前記第1駆動信号は、
前記第1圧力室の容積が膨張するように電位を変化させる第1膨張要素と、
前記第1圧力室の容積を収縮するように電位を変化させる第1収縮要素と、
前記第1膨張要素と前記第1収縮要素との間で、電位を第1保持電位に保持する第1保持要素と、を含む第1波形を含み、
前記距離に応じて、前記第1保持電位を調整する、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。 - 前記第1波形は、更に、
前記第1収縮要素よりも後の要素であって、前記第1圧力室の容積が膨張するように電位を変化させる第3膨張要素と、
前記第1収縮要素と前記第3膨張要素との間で、電位を第2保持電位に保持する第3保持要素と、を含み、
前記制御部は、前記距離に応じて、前記第1保持電位及び前記第2保持電位を調整する、
ことを特徴とする請求項5に記載の液体吐出装置。 - 前記第1駆動信号は、更に、
前記第1圧力室の容積が膨張するように電位を変化させる第2膨張要素と、
前記第1圧力室の容積を収縮するように電位を変化させる第2収縮要素と、
前記第2膨張要素と前記第2収縮要素との間で電位を第3保持電位に保持する第2保持要素と、を含む第2波形を含み、
前記第2波形は、前記第1波形の次に前記第1圧電素子に供給され、
前記制御部は、前記第1保持電位と前記第3保持電位とを異ならせるように前記第1駆動信号を調整する、
ことを特徴とする請求項5に記載の液体吐出装置。 - 前記厚さ方向に対する前記第1波形によって液体が吐出する方向と、前記厚さ方向に対する前記第2波形によって液体が吐出する方向とは、互いに異なり、
前記第1波形によって吐出する液体と前記第2波形によって吐出する液体とは、空中で合体しない、
ことを特徴とする請求項7に記載の液体吐出装置。 - 第1圧電素子と、
前記第1圧電素子とは異なる第2圧電素子と、
圧力室基板に区画され、前記第1圧電素子の振動により液体に圧力を付与する第1圧力室と、
前記圧力室基板に区画され、前記第2圧電素子の振動により液体に圧力を付与する第2圧力室と、
ノズル基板に形成され、前記第1圧力室と連通する第1ノズルと、
前記ノズル基板に形成され、前記第2圧力室と連通する第2ノズルと、
前記第1圧電素子を駆動する第1駆動信号及び前記第2圧電素子を駆動する第2駆動信号を供給する駆動信号生成部と、
を備え、
前記ノズル基板は、前記圧力室基板とは反対に位置する吐出面を有し、
前記第1ノズルは、
第1の直径を有し、前記吐出面に開口した第1下流ノズル部分と、
前記第1の直径よりも長い第2の直径を有し、前記第1下流ノズル部分よりも上流に位置する第1上流ノズル部分と、を含み、
前記第2ノズルは、
第3の直径を有し、前記吐出面に開口した第2下流ノズル部分と、
前記第3の直径よりも長い第4の直径を有し、前記第2下流ノズル部分よりも上流に位置する第2上流ノズル部分と、を含み、
前記ノズル基板の厚さ方向にみたときの前記第1の直径の中心位置と前記第2の直径の中心位置との距離を、第1距離とし、
前記厚さ方向にみたときの前記第3の直径の中心位置と前記第4の直径の中心位置との距離を、第2距離とし、
前記第1距離と前記第2距離とが異なるとき、
前記駆動信号生成部は、前記第1駆動信号と前記第2駆動信号とを異ならせる、
ことを特徴とする液体吐出装置。 - 前記第1駆動信号は、
前記第1圧力室の容積が膨張するように電位を変化させる第1膨張要素と、
前記第1圧力室の容積を収縮するように電位を変化させる第1収縮要素と、
前記第1膨張要素と前記第1収縮要素との間で電位を一定に保持する第1保持要素と、を含む第1波形を含み、
前記第2駆動信号は、
前記第2圧力室の容積が膨張するように電位を変化させる第4膨張要素と、
前記第2圧力室の容積を収縮するように電位を変化させる第3収縮要素と、
前記第4膨張要素と前記第3収縮要素との間で電位を一定に保持する第4保持要素と、を含む第3波形を含み、
前記駆動信号生成部は、前記第1距離に応じて、前記第1保持要素の期間の長さを調整し、
前記駆動信号生成部は、前記第2距離に応じて、前記第4保持要素の期間の長さを調整する、
ことを特徴とする請求項9に記載の液体吐出装置。 - 前記第1駆動信号は、
前記第1圧力室の容積が膨張するように電位を変化させる第1膨張要素と、
前記第1圧力室の容積を収縮するように電位を変化させる第1収縮要素と、
前記第1膨張要素と前記第1収縮要素との間で電位を第1保持電位に保持する第1保持要素と、を含む第1波形を含み、
前記第2駆動信号は、
前記第2圧力室の容積が膨張するように電位を変化させる第4膨張要素と、
前記第2圧力室の容積を収縮するように電位を変化させる第3収縮要素と、
前記第4膨張要素と前記第3収縮要素との間で電位を第4保持電位に保持する第4保持要素と、を含む第3波形を含み、
前記駆動信号生成部は、前記第1距離に応じて、前記第1保持電位を調整し、
前記駆動信号生成部は、前記第2距離に応じて、前記第4保持電位を調整する、
ことを特徴とする請求項9に記載の液体吐出装置。
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JP2022109407A JP2024007953A (ja) | 2022-07-07 | 2022-07-07 | 液体吐出装置 |
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