JP2024003920A - 往復動機関のシリンダブロック、シリンダ用摺動部材 - Google Patents
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Abstract
【課題】必要な摺動特性(耐摩耗性、耐スカッフ性)を確保しつつ、軽量性及びリサイクル性に優れる往復動機関のシリンダブロック、シリンダ用摺動部材を提供する。【解決手段】シリンダブロック20は、ピストン40が往復動可能に収容される円筒状のシリンダボア200を有するシリンダブロック本体21と、シリンダボア200の内周面に形成される溝部210に挿入される円環状のシリンダリング22と、を備える。シリンダリング22には、合口部220が形成されている。【選択図】図3
Description
本発明は、往復動機関のシリンダブロック、及びシリンダ用摺動部材に関する。
従来、下記の特許文献1に記載のシリンダブロックがある。特許文献1に記載のシリンダブロックには円筒状のシリンダライナが鋳込まれている。シリンダライナの内側にはピストンが摺動可能に収容されている。
特許文献1に記載されるような構造を有するシリンダブロックでは、シリンダブロック本体はアルミニウム合金により形成される一方、シリンダライナは鋳鉄により形成されることが多い。このようにシリンダブロック本体とシリンダライナとでは材質が異なるため、シリンダブロックをリサイクルする際には、シリンダブロック本体からシリンダライナを分離することが望ましい。しかしながら、シリンダブロック本体にシリンダライナが鋳込まれている場合、それらを分離することが非常に困難である。したがって、従来のシリンダブロックに関してはリサイクル性の観点で改善の余地が残されている。
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、必要な摺動特性(耐摩耗性、耐スカッフ性)を確保しつつ、軽量性及びリサイクル性に優れる往復動機関のシリンダブロック及びシリンダ用摺動部材を提供することにある。
上記課題を解決する往復動機関のシリンダブロックは、ピストンが往復動可能に収容される円筒状のシリンダボアを有するシリンダブロック本体と、シリンダボアの内周面に形成される溝部に挿入される円環状のシリンダ用摺動部材と、を備える。シリンダ用摺動部材には、合口と呼ばれる切り欠く部(以下、合口部という)が形成されている。
この構成のようにシリンダ用摺動部材に合口部が形成されていれば、シリンダ用摺動部材を弾性変形させ易いため、シリンダブロック本体に挿入されるシリンダ用摺動部材を容易に取り付け、取り外しすることができる。よって、リサイクル性を向上させることができる。また、シリンダボアの内周面にシリンダ用摺動部材が配置されるため、必要な摺動特性を確保することができる。さらに、円環状のシリンダ用摺動部材を用いるのであれば、従来のようなシリンダライナを用いる場合と比較すると、軽量化を図ることが可能となる。
上記のシリンダブロックにおいて、ピストンが上死点に位置したとき、シリンダ用摺動部材の圧縮室側の端部はピストンのトップランドの上端から下端の間に位置し、シリンダ用摺動部材の圧縮室反対側の端部はシリンダボアの軸方向長さの半分に位置していることが好ましい。
上記のシリンダブロックにおいて、ピストンが上死点に位置したとき、シリンダ用摺動部材の圧縮室側の端部はピストンのトップランドの上端から下端の間に位置し、シリンダ用摺動部材の圧縮室反対側の端部はピストンの軸方向長さの下端に位置していることが好ましい。
上記のシリンダブロックにおいて、ピストンが上死点に位置したとき、シリンダ用摺動部材の圧縮室側の端部はピストンのトップランドの上端から下端の間に位置し、ピストンの外周にはピストンリング溝があり、ピストンリング溝にピストンリングが設けられ、シリンダ用摺動部材の圧縮室反対側の端部はピストンの圧縮室反対側のピストンリング溝の下面側を超えた領域に位置していることが好ましい。
上記のシリンダブロックにおいて、ピストンが上死点に位置したとき、シリンダ用摺動部材の圧縮室側の端部はピストンのトップランドの上端から下端の間に位置し、シリンダ用摺動部材の圧縮室反対側の端部はピストンのセカンドランドの上端から下端の間に位置していることが好ましい。
上記のシリンダブロックにおいて、シリンダボアの中心軸に平行な方向を軸方向とし、軸方向に平行な方向であって圧縮室からピストンを挟んで反対側に向かう方向を所定方向とするとき、少なくともシリンダ用摺動部材の所定方向の下端部には、シリンダボアの中心軸を中心とする周方向においてシリンダブロック本体と係合する係合部が設けられていることが好ましい。
この構成によれば、シリンダボアの内周面を加工する際に、シリンダボアの周方向においてシリンダ用摺動部材の係合部がシリンダブロック本体に係合することにより、シリンダボアの周方向にシリンダ用摺動部材が回ることを抑制できる。
上記のシリンダブロックにおいて、シリンダ用摺動部材の係合部は、凹凸構造であることが好ましい。
上記のシリンダブロックにおいて、シリンダ用摺動部材の係合部は、凹凸構造であることが好ましい。
この構成によれば、シリンダブロックと係合する係合部を容易に実現することが可能である。
上記のシリンダブロックにおいて、シリンダ用摺動部材には、軸方向の幅(以下、軸方向長さという)が最も狭い部分に合口部が設けられていることが好ましい。
上記のシリンダブロックにおいて、シリンダ用摺動部材には、軸方向の幅(以下、軸方向長さという)が最も狭い部分に合口部が設けられていることが好ましい。
この構成によれば、合口部の軸方向長さを短くすることができるため、例えば合口部を通じた圧縮室からのガスの漏れを抑制することが可能である。
上記のシリンダブロックにおいて、シリンダ用摺動部材には、軸方向に延びる長さを有するように合口部が設けられていることが好ましい。
上記のシリンダブロックにおいて、シリンダ用摺動部材には、軸方向に延びる長さを有するように合口部が設けられていることが好ましい。
上記のシリンダブロックにおいて、シリンダボアの中心軸に平行な方向を軸方向とするとき、シリンダ用摺動部材には、軸方向に対して所定の角度をなす方向に延びるように合口部が設けられていることが好ましい。
この構成によれば、ガスが合口部を通り難くなるため、合口部を通じたガスの漏れを抑制することができる。
この構成によれば、ガスが合口部を通り難くなるため、合口部を通じたガスの漏れを抑制することができる。
上記のシリンダブロックにおいて、シリンダ用摺動部材には、折れ線状に延びるように合口部が設けられていることが好ましい。
この構成によれば、ガスが合口部を通り難くなるため、合口部を通じたガスの漏れを抑制することができる。
この構成によれば、ガスが合口部を通り難くなるため、合口部を通じたガスの漏れを抑制することができる。
上記のシリンダブロックにおいて、シリンダ用摺動部材とは別部材からなり、合口部に嵌め込まれる合口ピースを更に備えることが好ましい。
この構成によれば、合口部を大きくすることができるため、シリンダブロック本体に対するシリンダ用摺動部材の脱着を容易に行うことが可能となる。
この構成によれば、合口部を大きくすることができるため、シリンダブロック本体に対するシリンダ用摺動部材の脱着を容易に行うことが可能となる。
上記のシリンダブロックにおいて、合口ピースは、シリンダボアの中心軸を中心とする周方向においてシリンダブロック本体と係合していることが好ましい。
この構成によれば、シリンダボアの内周面を加工する際に、シリンダボアの周方向において合口ピースがシリンダブロック本体に係合することにより、シリンダボアの周方向にシリンダ用摺動部材及び合口ピースが回ることを抑制できる。
この構成によれば、シリンダボアの内周面を加工する際に、シリンダボアの周方向において合口ピースがシリンダブロック本体に係合することにより、シリンダボアの周方向にシリンダ用摺動部材及び合口ピースが回ることを抑制できる。
本発明の往復動機関のシリンダブロック及びシリンダ用摺動部材は、必要な摺動特性(耐摩耗性、耐スカッフ性)を確保しつつ、シリンダブロック(全体)の軽量性及びリサイクル性に優れる。
<第1実施形態>
以下、シリンダブロックの第1実施形態について図面を参照しながら説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。はじめに、本実施形態のシリンダブロックが用いられる往復動機関の概略構造について説明する。
以下、シリンダブロックの第1実施形態について図面を参照しながら説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。はじめに、本実施形態のシリンダブロックが用いられる往復動機関の概略構造について説明する。
図1に示されるように、往復動機関10は、シリンダブロック20、及びピストン40を備えている。
シリンダブロック20には複数のシリンダボアが形成されている。シリンダブロック20には単一のシリンダボアのみが形成されていてもよい。図1には、複数のシリンダボアのうちの一つのシリンダボア200が示されている。シリンダボア200は、所定の軸線m10を中心に円筒状に形成されている。ピストン40はシリンダボア200の内周に摺動可能に収容されている。以下では、軸線m10を「中心軸m10」と称し、中心軸m10に平行な方向をシリンダボア軸方向Zと称し、軸線m10を中心とする周方向をシリンダボア周方向Cと称する。また、シリンダボア軸方向Zに平行な方向のうち、図中の矢印Z1で示される方向を圧縮室S10側と称する。さらに、図中の矢印Z2で示される方向を圧縮室S10の反対側と称する。
シリンダブロック20には複数のシリンダボアが形成されている。シリンダブロック20には単一のシリンダボアのみが形成されていてもよい。図1には、複数のシリンダボアのうちの一つのシリンダボア200が示されている。シリンダボア200は、所定の軸線m10を中心に円筒状に形成されている。ピストン40はシリンダボア200の内周に摺動可能に収容されている。以下では、軸線m10を「中心軸m10」と称し、中心軸m10に平行な方向をシリンダボア軸方向Zと称し、軸線m10を中心とする周方向をシリンダボア周方向Cと称する。また、シリンダボア軸方向Zに平行な方向のうち、図中の矢印Z1で示される方向を圧縮室S10側と称する。さらに、図中の矢印Z2で示される方向を圧縮室S10の反対側と称する。
次に、ピストン40及びシリンダブロック20の具体的な構成について説明する。
図2に示されるように、ピストンリング60は、ピストン40のトップランド42からスカート部44に向かって、換言すれば圧縮室S10の反対側Z2に向かって順に設けられるトップリング61、セカンドリング62により構成されている。ピストン40の外周にはピストンリング溝50がある。ピストンリング溝50は、トップリング61が設けられるピストンリング溝(トップリング溝)51と、セカンドリング62が設けられるピストンリング溝(セカンドリング溝)52とにより構成される。各ピストンリング61~62は円環状に形成されている。なお、図2は、ピストン40が上死点に位置している状態が示されている。また、図中の符号P21はピストン40のトップランド42の上端を示し、符号P22はピストン40のトップランド42の下端を示している。また、符号P23はピストン40のセカンドランド43の上端を示し、符号P24はピストン40のセカンドランド43の下端を示している。さらに、符号P25はピストン40の圧縮室反対側のピストンリング溝52の下面側を示し、符号P26はピストン40の軸方向長さの下端を示している。
図2に示されるように、ピストンリング60は、ピストン40のトップランド42からスカート部44に向かって、換言すれば圧縮室S10の反対側Z2に向かって順に設けられるトップリング61、セカンドリング62により構成されている。ピストン40の外周にはピストンリング溝50がある。ピストンリング溝50は、トップリング61が設けられるピストンリング溝(トップリング溝)51と、セカンドリング62が設けられるピストンリング溝(セカンドリング溝)52とにより構成される。各ピストンリング61~62は円環状に形成されている。なお、図2は、ピストン40が上死点に位置している状態が示されている。また、図中の符号P21はピストン40のトップランド42の上端を示し、符号P22はピストン40のトップランド42の下端を示している。また、符号P23はピストン40のセカンドランド43の上端を示し、符号P24はピストン40のセカンドランド43の下端を示している。さらに、符号P25はピストン40の圧縮室反対側のピストンリング溝52の下面側を示し、符号P26はピストン40の軸方向長さの下端を示している。
図1に示されるように、シリンダブロック20は、シリンダブロック本体21と、シリンダ用摺動部材(以下、シリンダリングという)22とを備えている。
シリンダブロック本体21は、図1に示されるシリンダボア200を含む複数もしくは単一のシリンダボアが設けられる部材である。シリンダブロック本体21は、アルミニウム合金、鋳鉄、マグネシウム合金、樹脂等により形成されている。
シリンダブロック本体21は、図1に示されるシリンダボア200を含む複数もしくは単一のシリンダボアが設けられる部材である。シリンダブロック本体21は、アルミニウム合金、鋳鉄、マグネシウム合金、樹脂等により形成されている。
図3は、図1のIII-III線に沿ったシリンダブロック20の断面構造を示したものである。図4は、図3のIV-IV線に沿った展開図を示したものである。図3及び図4に示されるように、シリンダボア200の内周面には、シリンダボア周方向Cに全周に亘って溝部210が形成されている。図2に示されるように、溝部210は、ピストン40が上死点に位置しているときのピストンリング60の外周に対応する位置に設けられている。
図2に示されるように、溝部210の下端面213は、溝部210の側面214からシリンダボア200の内周面に向かうほど、圧縮室S10の反対側Z2に傾くようにテーパ状に形成されている。
図3に示されるように、シリンダリング22は、中心軸m10を中心に円環状に形成されており、シリンダブロック本体21の溝部210に挿入されている。シリンダリング22は、例えば鋳鉄、スチール、焼結合金等により形成されている。シリンダリング22には、その一部を切り欠くようにして合口部220が形成されている。
図3に示されるように、シリンダリング22は、中心軸m10を中心に円環状に形成されており、シリンダブロック本体21の溝部210に挿入されている。シリンダリング22は、例えば鋳鉄、スチール、焼結合金等により形成されている。シリンダリング22には、その一部を切り欠くようにして合口部220が形成されている。
図2に示されるように、ピストン40が上死点に位置しているとき、シリンダリング22の圧縮室側の端部P11はピストントップランドの上端P21から下端P22の間に位置している。シリンダリング22の圧縮室反対側の端部P12はピストン40の圧縮室反対側のピストンリング溝52の下面P25を超えた領域に位置している。
図2に示されるように、軸方向Zに平行なシリンダリング22の断面形状は、シリンダブロック本体21の溝部210の形状に対応している。したがって、シリンダリング22の下端面222はテーパ状に形成されている。なお、シリンダリング22の下端面222はテーパ状でなくてもよい。
次に、本実施形態のシリンダブロック20の製造工程、特にシリンダブロック本体21にシリンダリング22を挿入する工程に関して説明する。
シリンダブロック20を製造する際には、シリンダブロック本体21にシリンダリング22を挿入する挿入工程が行われる。シリンダリング22は、挿入前は、合口部220から180度方向は短径、90度から270度の方向は長径を有する楕円状である。挿入後にシリンダリング22の内周面は略真円となる。
シリンダブロック20を製造する際には、シリンダブロック本体21にシリンダリング22を挿入する挿入工程が行われる。シリンダリング22は、挿入前は、合口部220から180度方向は短径、90度から270度の方向は長径を有する楕円状である。挿入後にシリンダリング22の内周面は略真円となる。
その後、シリンダリング22の内周面とシリンダボア200の内周面との段差を除去する段差除去加工が行われる場合がある。段差除去加工としては、例えばシリンダボア200の内周面及びシリンダリング22の内周面を、砥石を取り付けたホーニングヘッドにより研磨するホーニング加工が用いられる。段差除去加工では、図5に二点鎖線で示されるようにシリンダリング22の内径d12がシリンダボア200の内径d11になるまでシリンダリング22の内周面が除去される。また、段差除去加工においてシリンダボア200及びシリンダリング22のそれぞれの内周面が研磨されることにより、クロスハッチと称される加工目がシリンダボア200の内周面及びシリンダリング22の内周面に形成される。シリンダボア200の内周面及びシリンダリング22の内周面にクロスハッチが形成されることで、エンジンオイルを保持し易くなる。なお、製造工程の早い段階でシリンダブロック20にシリンダリング22を挿入し、シリンダブロック20及びシリンダリング22を同時にホーニング加工してもよい。なお、シリンダブロック20及びシリンダリング22は別々にホーニングしてもよい。
以上説明した本実施形態のシリンダブロック20によれば、以下の(1)~(3)に示される作用及び効果を得ることができる。
(1)シリンダブロック本体21は、ピストン40が往復動可能に収容される円筒状のシリンダボア200を有する。シリンダリング22は、シリンダボア200の内周面に全周に亘って形成される溝部210に挿入される円環状の部材である。シリンダリング22には合口部220が形成されている。この構成によれば、シリンダリング22を弾性変形させ易いため、シリンダブロック本体21の溝部210へシリンダリング22を容易に挿入及び取り外しすることができる。よって、リサイクル性を向上させることができる。また、上記の特許文献1に記載のシリンダブロックのように鋳鉄製のシリンダライナを用いる場合と比較すると、本実施形態のシリンダリング22の方が小型であるため、シリンダブロック20を軽量化することも可能である。さらに、シリンダリング22により必要な摺動特性(耐摩耗性、耐スカッフ性)を確保することも可能となる。
(1)シリンダブロック本体21は、ピストン40が往復動可能に収容される円筒状のシリンダボア200を有する。シリンダリング22は、シリンダボア200の内周面に全周に亘って形成される溝部210に挿入される円環状の部材である。シリンダリング22には合口部220が形成されている。この構成によれば、シリンダリング22を弾性変形させ易いため、シリンダブロック本体21の溝部210へシリンダリング22を容易に挿入及び取り外しすることができる。よって、リサイクル性を向上させることができる。また、上記の特許文献1に記載のシリンダブロックのように鋳鉄製のシリンダライナを用いる場合と比較すると、本実施形態のシリンダリング22の方が小型であるため、シリンダブロック20を軽量化することも可能である。さらに、シリンダリング22により必要な摺動特性(耐摩耗性、耐スカッフ性)を確保することも可能となる。
(2)シリンダリング22は、ピストン40が上死点に位置したときのピストンリング60の外周に対応する位置に、より詳細にはピストン40が上死点に位置したときのトップリング61、セカンドリング62の外周に対応する位置に設けられている。この構成によれば、シリンダブロック20において特に摺動特性が求められる部分にシリンダリング22を配置することができるため、シリンダブロック20の摺動特性を確保することができる。
(3)例えばシリンダボア軸方向Zに平行なシリンダリング22の断面形状が矩形状に形成されている場合、シリンダブロック本体21の溝部210にシリンダリング22を挿入し易くするためには、図2に示されるように溝部210の角部215に面取り加工を施すことが好ましい。但し、角部215の面取り加工を大きくし過ぎると、その部分にピストンリング60が引っ掛かる可能性があるため、好ましくない。この点、本実施形態のシリンダブロック20では、図2に示されるように、シリンダボア軸方向Zに平行なシリンダリング22の断面形状が、下端面222にテーパ面を有する台形状に形成されている。この構成によれば、角部215に面取り加工を施さなくとも、あるいは角部215に極小の面取り加工を施すだけで、シリンダブロック本体21の溝部210にシリンダリング22を挿入することが可能である。そのため、角部215に面取り加工を施すことにより発生する不具合、具体的にはピストンリング60の引っ掛かりの発生を低減することができる。
(第1変形例)
次に、第1実施形態のシリンダブロック20の第1変形例について説明する。
シリンダブロック本体21の溝部210の下端面213及びシリンダリング22の下端面222のそれぞれの形状は適宜変更可能である。例えば、シリンダブロック本体21の溝部210の下端面213及びシリンダリング22の下端面222は、図6(A),(B)に示されるように形成されていてもよい。
次に、第1実施形態のシリンダブロック20の第1変形例について説明する。
シリンダブロック本体21の溝部210の下端面213及びシリンダリング22の下端面222のそれぞれの形状は適宜変更可能である。例えば、シリンダブロック本体21の溝部210の下端面213及びシリンダリング22の下端面222は、図6(A),(B)に示されるように形成されていてもよい。
(第2変形例)
次に、第1実施形態のシリンダブロック20の第2変形例について説明する。
シリンダリング22に形成される合口部220の形状は適宜変更可能である。例えば図7(A)に示されるように、合口部220は、シリンダボア軸方向Zに対して所定の角度をなすように延びるように形成されていてもよい。あるいは、図7(B)に示されるように、合口部220は、シリンダボア軸方向Zに対して折れ線状に延びるように形成されていてもよい。
次に、第1実施形態のシリンダブロック20の第2変形例について説明する。
シリンダリング22に形成される合口部220の形状は適宜変更可能である。例えば図7(A)に示されるように、合口部220は、シリンダボア軸方向Zに対して所定の角度をなすように延びるように形成されていてもよい。あるいは、図7(B)に示されるように、合口部220は、シリンダボア軸方向Zに対して折れ線状に延びるように形成されていてもよい。
これらの構成によれば、図4に示されるように合口部220がシリンダボア軸方向Zに延びるように形成されている場合と比較すると、圧縮室S10内のガスが合口部220を通過し難くなる。したがって、圧縮室S10内のガスが合口部220を通じて圧縮室S10の反対側Z2に漏れ難くなる。
(第3変形例)
次に、第1実施形態のシリンダブロック20の第3変形例について説明する。
図8に示されるように、本変形例のシリンダリング22の下端面222には、凹部221a及び凸部221bをシリンダボア周方向Cに交互に有する凹凸構造221が形成されている。なお、凹部221a及び凸部221bは、段差除去加工時にシリンダリング22が回りしなければ全周でなくてもよい。シリンダボア軸方向Zにおける凹凸構造221の幅Hは、特に限定しないが1[mm]以上が好ましい。シリンダブロック本体21の溝部210の圧縮室S10の反対側Z2の下端面213には、シリンダリング22の凹凸構造221に対応した凹凸構造211が形成されている。シリンダリング22の凸部221bはシリンダブロック本体21の凹部211aに係合しており、シリンダリング22の凹部221aはシリンダブロック本体21の凸部211bに係合している。このような係合構造により、シリンダリング22はシリンダブロック本体21とシリンダボア周方向Cに係合している。シリンダリング22の合口部220は、凹部221aに対応する位置に設けられている。すなわち、合口部220は、シリンダリング22において軸方向Zの長さが最も狭い部分に設けられている。本実施形態では、シリンダリング22の凹凸構造221が係合部に相当する。
次に、第1実施形態のシリンダブロック20の第3変形例について説明する。
図8に示されるように、本変形例のシリンダリング22の下端面222には、凹部221a及び凸部221bをシリンダボア周方向Cに交互に有する凹凸構造221が形成されている。なお、凹部221a及び凸部221bは、段差除去加工時にシリンダリング22が回りしなければ全周でなくてもよい。シリンダボア軸方向Zにおける凹凸構造221の幅Hは、特に限定しないが1[mm]以上が好ましい。シリンダブロック本体21の溝部210の圧縮室S10の反対側Z2の下端面213には、シリンダリング22の凹凸構造221に対応した凹凸構造211が形成されている。シリンダリング22の凸部221bはシリンダブロック本体21の凹部211aに係合しており、シリンダリング22の凹部221aはシリンダブロック本体21の凸部211bに係合している。このような係合構造により、シリンダリング22はシリンダブロック本体21とシリンダボア周方向Cに係合している。シリンダリング22の合口部220は、凹部221aに対応する位置に設けられている。すなわち、合口部220は、シリンダリング22において軸方向Zの長さが最も狭い部分に設けられている。本実施形態では、シリンダリング22の凹凸構造221が係合部に相当する。
このように、本変形例のシリンダブロック20では、シリンダリング22の下端面222に、シリンダボア周方向Cにおいてシリンダブロック本体21と係合する凹凸構造221が設けられている。この構成によれば、シリンダボア200の内周面に対して段差除去加工を行う際にシリンダリング22の回り止めが可能である。
ところで、シリンダリング22をシリンダブロック本体21に設けた場合、シリンダボア200の内周面とシリンダリング22との間に段差が形成されていると、ピストン40の上昇時に、その段差にピストンリング60が引っ掛かる可能性がある。この点、本実施形態のようにシリンダリング22の下端面222に凹凸構造221が設けられていれば、ピストン40の上昇時にピストンリング60に引っ掛かる可能性がある部分がシリンダリング22の凸部221bだけである。よって、ピストン40の上昇時にピストン40に対してピストンリング60が引っ掛かることなくスムーズに通過できる。
一方、本変形例のシリンダブロック20では、合口部220がシリンダリング22の凹凸構造221の凹部221aに対応する位置に設けられている。この構成によれば、シリンダリング22の凹凸構造221の凸部221bに対応する位置に合口部220が設けられている場合と比較すると、合口部220の軸方向長さを短くすることができるため、例えば圧縮室S10内のガスが圧縮室S10の反対側Z2に漏れることを抑制できる。
(第4変形例)
次に、第1実施形態のシリンダブロック20の第4変形例について説明する。
(第4変形例)
次に、第1実施形態のシリンダブロック20の第4変形例について説明する。
図9に示されるように、本実施形態のシリンダリング22における合口部220が形成されている部分と別の部分の下端面222には、山形状の凸部223が形成されている。シリンダブロック本体21の溝部210の圧縮室S10の反対側Z2の下端面213には、シリンダリング22の凸部223に対応した凹部216が形成されている。シリンダブロック本体21の凹部216にシリンダリング22の凸部223が係合することにより、シリンダリング22はシリンダボア周方向Cにおいてシリンダブロック本体21と係合している。このような構造であっても、シリンダボア200及びシリンダリング22のそれぞれの内周面を段差除去加工する際にシリンダリング22の回り止めが可能である。また、シリンダボア周方向Cにおける凸部223の長さが短いため、ピストンリング60がスムーズに通過できる。
なお、シリンダリング22の凸部223及びシリンダブロック本体21の凹部216のそれぞれの形状は適宜変更可能である。例えば、シリンダリング22の凸部223及びシリンダブロック本体21の凹部216は、図10(A)に示されるような半円弧状、図10(B)に示されるような矩形状、図10(C)に示されるような多段状、あるいは図10(D)に示されるような三角状に形成されていてもよい。
(第5変形例)
次に、第1実施形態のシリンダブロック20の第5変形例について説明する。
本変形例のシリンダブロック20では、図11に示されるように、シリンダブロック本体21にシリンダリング22が挿入される挿入工程が行われた後の時点では、シリンダボア200の内周面に馴染み層212が設けられている。馴染み層212は軟質金属や樹脂コート等により形成されている。馴染み層212は、必ずしもシリンダボア200の内周面全体に設ける必要はなく、シリンダリング22の周辺部だけに設けてもよい。本変形例のシリンダブロック20では、段差除去加工を省略して、ピストン40をシリンダブロック20に組み付けた後の試運転でシリンダボア200の内周面及びシリンダリング22の内周面の面出しが行われる。
次に、第1実施形態のシリンダブロック20の第5変形例について説明する。
本変形例のシリンダブロック20では、図11に示されるように、シリンダブロック本体21にシリンダリング22が挿入される挿入工程が行われた後の時点では、シリンダボア200の内周面に馴染み層212が設けられている。馴染み層212は軟質金属や樹脂コート等により形成されている。馴染み層212は、必ずしもシリンダボア200の内周面全体に設ける必要はなく、シリンダリング22の周辺部だけに設けてもよい。本変形例のシリンダブロック20では、段差除去加工を省略して、ピストン40をシリンダブロック20に組み付けた後の試運転でシリンダボア200の内周面及びシリンダリング22の内周面の面出しが行われる。
このような構成であっても、第1実施形態のシリンダブロック20と同一又は類似の作用及び効果を得ることができる。
(第6変形例)
次に、第1実施形態のシリンダブロック20の第6変形例について説明する。
(第6変形例)
次に、第1実施形態のシリンダブロック20の第6変形例について説明する。
シリンダブロック20は、図12~図14に示されるような構造を有していてもよい。図12に示されるシリンダブロック20では、ピストン40が上死点に位置したとき、シリンダリング22の圧縮室側の端部P11がピストン40のトップランド42の上端P21から下端P22の間に位置している。シリンダリング22の圧縮室S10反対側Z2の端部P12はシリンダボア200の軸方向長さの半分に位置している。
図13に示されるシリンダブロック20では、ピストン40が上死点に位置したとき、シリンダリング22の圧縮室側の端部P11がピストン40のトップランド42の上端P21から下端P22の間に位置している。シリンダリング22の圧縮室S10反対側Z2の端部P12はピストン40の軸方向長さの下端P26に位置している。
図14に示されるシリンダブロック20では、ピストン40が上死点に位置したとき、シリンダリング22の圧縮室側の端部P11がピストン40のトップランド42の上端P21から下端P22の間に位置している。シリンダリング22の圧縮室S10反対側Z2の端部P12はピストン40のセカンドランド43の上端P23から下端P24の間に位置している。
このような構成であっても、第1実施形態のシリンダブロック20と同一又は類似の作用及び効果を得ることができる。
(第7変形例)
次に、第1実施形態のシリンダブロック20の第7変形例について説明する。
(第7変形例)
次に、第1実施形態のシリンダブロック20の第7変形例について説明する。
図15に示されるように、本実施形態のシリンダブロック本体21には、ピストン40が下死点に位置しているときのピストンリング60の外周に対応する位置にシリンダリング24が更に設けられている。
この構成によれば、下死点においてもシリンダブロック本体21の摩耗・スカッフが多い場合に有効である。
この構成によれば、下死点においてもシリンダブロック本体21の摩耗・スカッフが多い場合に有効である。
<第2実施形態>
次に、シリンダブロック20の第2実施形態について説明する。以下、第1実施形態のシリンダブロック20との相違点を中心に説明する。
図16に示されるように、本実施形態のシリンダブロック20では、シリンダリング22の合口部220に合口ピース25が嵌め込まれている。図16に示されるように、シリンダボア軸方向Zから見たときに合口ピース25は円弧状に形成されている。したがって、合口ピース25の内周面251及び外周面252は湾曲している。合口ピース25は、外周面252から内周面251に向かうほど、シリンダボア周方向Cの幅が短くなるように形成されている。これにより、シリンダボア中心軸m10及び合口ピース25の外周面252の右側角部256を通る線を基準線m31とすると、シリンダボア周方向Cにおける合口ピース25の右側面253は基準線m31に対して交差する方向に延びるようにテーパ状に形成されている。同様に、シリンダボア中心軸m10及び合口ピース25の外周面252の左側角部257を通る線を基準線m32とすると、シリンダボア周方向Cにおける合口ピース25の左側面254は基準線m32に対して交差する方向に延びるようにテーパ状に形成されている。このような構造によれば、シリンダリング22の自己張力が合口ピース25に作用するため、合口ピース25の脱落を抑制することができる。合口ピース25の径方向断面はテーパだけではなく、段付きでもよい。
次に、シリンダブロック20の第2実施形態について説明する。以下、第1実施形態のシリンダブロック20との相違点を中心に説明する。
図16に示されるように、本実施形態のシリンダブロック20では、シリンダリング22の合口部220に合口ピース25が嵌め込まれている。図16に示されるように、シリンダボア軸方向Zから見たときに合口ピース25は円弧状に形成されている。したがって、合口ピース25の内周面251及び外周面252は湾曲している。合口ピース25は、外周面252から内周面251に向かうほど、シリンダボア周方向Cの幅が短くなるように形成されている。これにより、シリンダボア中心軸m10及び合口ピース25の外周面252の右側角部256を通る線を基準線m31とすると、シリンダボア周方向Cにおける合口ピース25の右側面253は基準線m31に対して交差する方向に延びるようにテーパ状に形成されている。同様に、シリンダボア中心軸m10及び合口ピース25の外周面252の左側角部257を通る線を基準線m32とすると、シリンダボア周方向Cにおける合口ピース25の左側面254は基準線m32に対して交差する方向に延びるようにテーパ状に形成されている。このような構造によれば、シリンダリング22の自己張力が合口ピース25に作用するため、合口ピース25の脱落を抑制することができる。合口ピース25の径方向断面はテーパだけではなく、段付きでもよい。
図17は、図16のXV-XV線に沿った展開図を示したものである。図17に示されるように、合口ピース25の下端部255は、シリンダリング22の下端面222よりも圧縮室S10の反対側Z2に突出している。シリンダブロック本体21の溝部210の下端面213には、合口ピース25の下端部255が嵌め込まれる凹部213aが形成されている。シリンダブロック本体21の凹部213aと合口ピース25の下端部255とがシリンダボア周方向Cにおいて係合することにより、シリンダリング22の回り止めがなされている。
本実施形態のシリンダブロック20では、その製造時の挿入工程において、シリンダブロック本体21の溝部210に合口ピース25が挿入される。その後、シリンダリング22の合口部220を合口ピース25に挿入しつつ、シリンダブロック本体21の溝部210にシリンダリング22を挿入する。これにより、合口ピース25の脱落を回避しつつ、シリンダリング22及び合口ピース25をシリンダブロック本体21に挿入することが可能となる。その後、段差除去加工において、合口ピース25及びシリンダリング22のそれぞれの内径がシリンダボア200の内径d11に略一致するように合口ピース25及びシリンダリング22のそれぞれの内周面が研磨される。
以上説明した本実施形態のシリンダブロック20によれば、以下の(4)及び(5)に示される作用及び効果を更に得ることができる。
(4)シリンダブロック20は、シリンダリング22とは別部材からなりシリンダリング22の合口部220に嵌め込まれる合口ピース25を更に備える。この構成によれば、合口部220の隙間を大きくすることができるため、シリンダブロック本体21の溝部210にシリンダリング22を挿入することが容易となる。また、シリンダリング22の合口部220に合口ピース25を挿入すれば、圧縮室S10内のガスが漏れるような隙間が形成され難くなる。
(4)シリンダブロック20は、シリンダリング22とは別部材からなりシリンダリング22の合口部220に嵌め込まれる合口ピース25を更に備える。この構成によれば、合口部220の隙間を大きくすることができるため、シリンダブロック本体21の溝部210にシリンダリング22を挿入することが容易となる。また、シリンダリング22の合口部220に合口ピース25を挿入すれば、圧縮室S10内のガスが漏れるような隙間が形成され難くなる。
(5)合口ピース25は、シリンダボア周方向Cにおいてシリンダブロック本体21と係合している。この構成によれば、シリンダブロック本体21のシリンダボア200の内周面に対して段差除去加工を行う際にシリンダリング22の回り止めが可能である。
(第1変形例)
次に、第2実施形態のシリンダブロック20の第1変形例について説明する。
(第1変形例)
次に、第2実施形態のシリンダブロック20の第1変形例について説明する。
合口ピース25の形状は適宜変更可能である。例えば図18(A)に示されるように、合口ピース25は、シリンダボア軸方向Zにおけるシリンダリング22の合口部220の中央部よりも圧縮室S10の反対側Z2にのみ設けられていてもよい。また、図18(B),(C)に示されるように合口ピース25は台形状又は凸状に形成されていてもよい。さらに、合口ピース25は図19(A)~(E)に示されるような形状を有していても良い。合口ピース25の下端部255はストレートでなく、テーパ状、円弧状、三角状などでもよく、その形状は限定されない。
(第2変形例)
次に、第2実施形態のシリンダブロック20の第2変形例について説明する。
図20に示されるように、本変形例のシリンダブロック20では、シリンダリング22の内周面及び合口ピース25の内周面に沿うようにスナップリング26が取り付けられている。スナップリング26は、例えば円弧状の線ばねである。なお、スナップリング26は、ピストン40が上死点に位置しているときにピストン40のトップランド42やトップリング61と干渉しないように配置されている。この場合、必ずしも合口ピース25の脱落防止措置を施す必要はなく、図16に示される右側面253及び左側面254に相当する面が、基準線m31,m32と一致していてもよい。また、スナップリング26はシリンダリング22の上端でもよい。
次に、第2実施形態のシリンダブロック20の第2変形例について説明する。
図20に示されるように、本変形例のシリンダブロック20では、シリンダリング22の内周面及び合口ピース25の内周面に沿うようにスナップリング26が取り付けられている。スナップリング26は、例えば円弧状の線ばねである。なお、スナップリング26は、ピストン40が上死点に位置しているときにピストン40のトップランド42やトップリング61と干渉しないように配置されている。この場合、必ずしも合口ピース25の脱落防止措置を施す必要はなく、図16に示される右側面253及び左側面254に相当する面が、基準線m31,m32と一致していてもよい。また、スナップリング26はシリンダリング22の上端でもよい。
この構成によれば、より的確にシリンダリング22及び合口ピース25の脱落を抑制することができる。
なお、スナップリング26に代えて、ビス留め等が用いられていてもよい。
なお、スナップリング26に代えて、ビス留め等が用いられていてもよい。
<他の実施形態>
上記実施形態は、以下の形態にて実施することもできる。
・図5に示されるシリンダブロックボア200の内径d11とシリンダリング22の内径d12との間には、「d11=d12」という関係に限らず、「d11>d12」という関係が成立していてもよい。
上記実施形態は、以下の形態にて実施することもできる。
・図5に示されるシリンダブロックボア200の内径d11とシリンダリング22の内径d12との間には、「d11=d12」という関係に限らず、「d11>d12」という関係が成立していてもよい。
・シリンダリング22の外周面とシリンダブロックボア200の内周面の溝部210の側面214との間には接合層や接着剤等が設けられていても良い。接合層としては、例えば低融点金属を用いることができる。接着剤としては、200℃以上の耐熱性が有り、且つ伝熱性に優れるものを用いることができる。なお、接着剤は、シリンダブロックの使用環境に応じて、200℃未満の耐熱性を有するものであってもよい。
・シリンダリング22は、ピストン40が上死点に位置したときのトップリング61の外周に対応する位置にのみ、あるいはピストン40が上死点に位置したときのセカンドリング62の外周に対応する位置にのみ設けられていてもよい。また、少なくともピストン40が上死点に位置したときにピストンリング60一本分以上の範囲に設けられていてもよい。
・シリンダリング22の内周面にはホーニング加工が施されていてもよい。また、シリンダリング22の内周面には、めっきや窒化、溶射、化成処理、PVD(Physical Vapor Deposition)処理、DLC(Diamond-Like Carbon)処理等の任意の表面処理が行われていてもよい。また、シリンダリング22の外周面には、めっきや溶射等の任意の表面処理が個別に、又は組み合わされて行われていてもよい。
・シリンダリング22の内周面には、シリンダブロック本体21に挿入されているシリンダリング22を交換する際に用いられる治具の差し込み部が形成されていてもよい。
・シリンダリング22は、その圧縮室S10側Z1の部分の内径が、圧縮室S10の反対側Z2の部分の内径よりも小さくなるように形成されていてもよい。
・シリンダリング22は、その圧縮室S10側Z1の部分の内径が、圧縮室S10の反対側Z2の部分の内径よりも小さくなるように形成されていてもよい。
・シリンダボア200の内周面のうち、シリンダリング22以外の部分には、強化材フィラー等の補強材が含まれていてもよい。この構成は、例えば上記実施形態の構成をコンプレッサに適用し、且つそのシリンダブロック本体が樹脂により形成されている場合に有効である。
・凹凸構造221は、シリンダリング22の圧縮室S10側Z1に設けられていてもよい。
・シリンダリング22の周方向Cに対し径方向の肉厚を部分的に変更することで、段差除去加工時の回り止め機能をもたせてもよい。
・凹凸構造221は、シリンダリング22の圧縮室S10側Z1に設けられていてもよい。
・シリンダリング22の周方向Cに対し径方向の肉厚を部分的に変更することで、段差除去加工時の回り止め機能をもたせてもよい。
・図21に示されるように、シリンダリング22は、複数のリング部材22a~22dを重ね合わせることにより構成されていてもよい。これにより、シリンダブロック本体21に対するシリンダリング22の脱着が容易になる。なお、リング部材22a~22dの間には隙間が極力形成されていないことが望ましい。また、図22(A),(B)に示されるように、リング部材22a~22dの下端側(Z2)に凸部223を形成し、且つリング部材22b~22dの上端側(Z1)に凹部224を形成した上で、リング部材22a~22dの凸部をリング部材22b~22dの凹部224及びシリンダブロック本体21の凹部216にそれぞれ係合させてもよい。これにより、図17に示されるような合口ピース25を用いることなく、リング部材22a~22d同士の相対回りを防止することができる。また、図22(C)に示されるような合口ピース25を用いれば、合口ピース25の下端部255がシリンダブロック本体21の凹部213aに係合することで、同様にリング部材22a~22d同士の相対回りを防止することができる。なお、図22(C)に示される構造の場合、リング部材22a~22dに凹凸を設けなくても良い。リング部材22a~22dを複数重ねる構造の場合、取り付けし易いため、合口ピース25の側面253,254は斜めでなくてもよい。
・シリンダリング22の回り止めの構造としては、図8に示されるような構造に限らず、例えば図23に示されるように、シリンダリング22の外周側に配置される回り止め部材27によりシリンダリング22の回り止めを行ってもよい。この際、ピストン40の摺動方向が上下方向(鉛直方向)である場合、回り止め部材27はシリンダリング22に対して上下方向に設置されていることが望ましい。また、ピストン40の摺動方向が水平方向である場合、回り止め部材27はシリンダリング22に対して水平方向及び上下方向のいずれに設置されていてもよい。
・各実施形態のシリンダブロック20は、上記の往復動機関10に限らず、非常用発電エンジン等を含む汎用エンジンや、模型用のエンジンや、ドローン用のエンジンや、車両用のエンジンや、水平対向エンジンや、対向ピストンエンジン等にも適用可能である。また、各実施形態のシリンダブロック20はコンプレッサ等の任意の往復動機関にも適用可能である。往復動機関の往復動方式としては、上記実施形態に限らず、スコッチヨーク式やフリーピストン式等の任意の方式を採用することが可能である。
・また、2本以上のピストンリング(例えばコンプレッションリング2本、オイルリング1本)を備える往復動機関10に適用する場合、ピストン40が上死点に位置したとき、シリンダリング22はトップランド42の上端P21から下端P22の間を起点し、圧縮室S10から最も離れる反対側Z2のピストンリング(例えばオイルリング)溝の下面側を超えた領域を終点とした位置に設けられてもよい。
・本開示は上記の具体例に限定されるものではない。上記の具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素、及びその配置、条件、形状等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
20…シリンダブロック、21…シリンダブロック本体、22…シリンダリング(シリンダ用摺動部材)、25…合口ピース、40…ピストン、42…トップランド、43…セカンドランド、44…スカート部、60…ピストンリング、61…トップリング、62…セカンドリング、200…シリンダボア、221…凹凸構造(係合部)。
Claims (14)
- ピストンが往復動可能に収容される円筒状のシリンダボアを有するシリンダブロック本体と、
前記シリンダボアの内周面に形成される溝部に挿入される円環状のシリンダ用摺動部材と、を備え、
前記シリンダ用摺動部材には、合口部が形成されている
往復動機関のシリンダブロック。 - 前記ピストンが上死点に位置したとき、前記シリンダ用摺動部材の圧縮室側の端部は前記ピストンのトップランドの上端から下端の間に位置し、前記シリンダ用摺動部材の圧縮室反対側の端部はシリンダボアの軸方向長さの半分に位置している
請求項1に記載の往復動機関のシリンダブロック。 - 前記ピストンが上死点に位置したとき、前記シリンダ用摺動部材の圧縮室側の端部は前記ピストンのトップランドの上端から下端の間に位置し、前記シリンダ用摺動部材の圧縮室反対側の端部は前記ピストンの軸方向長さの下端に位置している
請求項1に記載の往復動機関のシリンダブロック。 - 前記ピストンが上死点に位置したとき、前記シリンダ用摺動部材の圧縮室側の端部は前記ピストンのトップランドの上端から下端の間に位置し、前記シリンダ用摺動部材の圧縮室反対側の端部は前記ピストンの圧縮室反対側のピストンリング溝の下面側を超えた領域に位置している
請求項1に記載の往復動機関のシリンダブロック。 - 前記ピストンが上死点に位置したとき、前記シリンダ用摺動部材の圧縮室側の端部は前記ピストンのトップランドの上端から下端の間に位置し、前記シリンダ用摺動部材の圧縮室反対側の端部は前記ピストンのセカンドランドの上端から下端の間に位置している
請求項1に記載の往復動機関のシリンダブロック。 - 前記シリンダボアの中心軸に平行な方向を軸方向とし、前記軸方向に平行な方向であって圧縮室から前記ピストンを挟んで反対側に向かう方向を所定方向とするとき、
少なくとも前記シリンダ用摺動部材の前記所定方向の端部には、前記シリンダボアの中心軸を中心とする周方向において前記シリンダブロック本体と係合する係合部が設けられている
請求項1に記載の往復動機関のシリンダブロック。 - 前記シリンダ用摺動部材の前記係合部は、凹凸構造である
請求項6に記載の往復動機関のシリンダブロック。 - 前記シリンダ用摺動部材には、前記軸方向の幅が最も狭い部分に前記合口部が設けられている
請求項7に記載の往復動機関のシリンダブロック。 - 前記シリンダボアの中心軸に平行な方向を軸方向とするとき、
前記シリンダ用摺動部材には、前記軸方向に延びる長さを有するように前記合口部が設けられている
請求項1に記載の往復動機関のシリンダブロック。 - 前記シリンダボアの中心軸に平行な方向を軸方向とするとき、
前記シリンダ用摺動部材には、前記軸方向に対して所定の角度をなす方向に延びるように前記合口部が設けられている
請求項1に記載の往復動機関のシリンダブロック。 - 前記シリンダ用摺動部材には、折れ線状に延びるように前記合口部が設けられている
請求項1に記載の往復動機関のシリンダブロック。 - 前記シリンダ用摺動部材とは別部材からなり、前記合口部に嵌め込まれる合口ピースを更に備える
請求項1に記載の往復動機関のシリンダブロック。 - 前記合口ピースは、前記シリンダボアの中心軸を中心とする周方向において前記シリンダブロック本体と係合している
請求項12に記載の往復動機関のシリンダブロック。 - シリンダボアの内周面に形成される溝部に挿入されるシリンダ用摺動部材であって、
合口部を備える
シリンダ用摺動部材。
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JP2022103282A JP2024003920A (ja) | 2022-06-28 | 2022-06-28 | 往復動機関のシリンダブロック、シリンダ用摺動部材 |
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