JP2024003271A - 放射線粒子遮蔽性複合材料 - Google Patents

放射線粒子遮蔽性複合材料 Download PDF

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Hiroshi Fukazawa
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Abstract

【課題】放射線粒子遮蔽性に優れる複合材料を提供すること。【解決手段】有機高分子母材と無機繊維よりなる複合材料において、無機繊維を50~90質量%のガラス形成成分と10~50質量%の中性子遮蔽成分とからなるものとし、かつ、ガラス形成成分の総質量に占めるSiO2とAl2O3の合計質量の割合は0.60以上、かつ、中性子遮蔽成分をガドリニウム、サマリウム、又はカドミウムの、単体若しくは酸化物とすることにより、線源50meVにて、中性子遮蔽率が1/2となる厚さが2mm以下の中性子遮蔽性を備える複合材料とすることができた。本複合材料は陽子遮蔽性にも優れる。【選択図】図3

Description

本発明は、複合材料に関する。さらに詳しくは、放射線粒子遮蔽性複合材料に関する。本発明の放射線粒子遮蔽性複合材料は、中性子及び陽子の遮蔽性に優れた複合材料である。
近年の技術進歩に伴い、放射線遮蔽性材料の必要性が以前にも増して高まっている。
電子技術分野では、半導体の高集積化の結果、宇宙線由来の中性子が原因となる通信装置の「ソフトエラー」が増加しつつある。ソフトエラーとは、上記中性子の半導体素子への突入によりビットデーターが反転し、その結果生じる電子機器の誤作動である。宇宙線量は太陽フレアなどにより予期せぬ時期に大幅に変動するため、今後、GPS技術を用いる車両自動運転が本格化すれば、ひとたびソフトエラーが発生すると多大な人的・物的被害が生じることが懸念される。このため、中性子を効果的に遮蔽できる材料が求められている。
他方、宇宙開発の進展が近年目覚ましく、火星有人飛行も視野に入ってきている。このため、ロケットや宇宙ステーション内での長期滞在による宇宙線被爆を極力抑えるための放射線遮蔽材料が望まれている。
この他、原子炉施設や放射線医療施設にて中性子遮蔽材料の必要性が高まっている。例えば、近年注目されている粒子線捕捉療法を行う施設では、医療従事者を放射線粒子被爆から保護するための材料が求められる。
以上を背景に、中性子遮蔽性元素を材料中に取り込んだ中性子遮蔽材料の創出が試みられてきた。
例えば、特開平10-226533号公報(特許文献1)には、B2O3,La2O3及びGd2O3を必須成分とする放射線遮蔽ガラスが開示されている。特許文献1のガラスは、いずれも、鋳型に原料を鋳込み、徐冷した後、板状のガラス材とするものである。
特開平6-180388号公報(特許文献2)には、フェノール樹脂に熱中性子遮蔽性物質として無機ホウ素化合物、酸化ガドリニウム等を配合した耐熱性中性子遮蔽材が提案されている。特開2020-30088号公報(特許文献3)には、硬化性樹脂に特定粒径範囲の炭化ホウ素、ホウ酸、ガドリニウムまたはそれらの混合物を配合した樹脂組成物が提案されている。特許文献2,3に記載の発明は、いずれも樹脂材料に中性子遮蔽性の「粉末」原料を添加するものである。
特開平10-226533号公報 特開平6-180388号公報 特開2020-30088号公報
特許文献1のガラス材は放射線遮蔽窓、観測窓への使用を目的としており、透光性が優れるものの、ガラス材自体は衝撃に弱い。そのため、中性子遮蔽機能を備え、かつ衝撃強度も要求される構造体としての使用には制約があった。上記特許文献2,3の発明は、樹脂に添加される中性子遮蔽性物質が粉末であるため、その添加量が増すに伴い樹脂の強度が低下するため、やはり、強度の要求される構造体への適用には制約が有った。
以上のように、中性子遮蔽性能と強度を併せ持つ構造材の開発が望まれていた。
ところで、中性子遮蔽性物質を繊維化する試みは、本発明者の知る限り知られていない。中性子遮蔽性物質を繊維化できれば、樹脂と複合させ、繊維強化複合材料とすることができる。
そこで、SiO2及びAl2O3を主成分とするガラス形成成分と、中性子遮蔽性元素の単体又はその酸化物(以下、「中性子遮蔽成分」と略記する)とを含有する無機物の溶融紡糸化(繊維化)を試みたところ、鋳込み成形ガラスの場合と比較して、溶融紡糸が可能な中性子遮蔽成分の含量の範囲は大いに制約を受けることが判明した。
しかしながら、無機物中のi)ガラス形成成分を特定の組成とし、ii) ガラス形成成分と中性子遮蔽成分の割合を特定の範囲に収めることにより、中性子遮蔽性元素を多量に含有する新たな無機繊維が得られることを見出し、本発明の複合材料の開発に成功したものである。
なお、本発明の複合材料は、中性子遮蔽性に加え、陽子遮蔽性にも優れる。
本発明の複合材料は、有機高分子の母材と特定の無機繊維より構成される。
<無機繊維>
無機繊維は、10~50質量%の中性子遮蔽成分と50~90質量%のガラス形成成分とからなる。
ガラス形成成分は、本発明に用いる無機繊維の基体成分であり、無機繊維の非晶性(ガラス質)構造の形成に与る。他方、中性子遮蔽成分は無機繊維に中性子遮蔽性能を付与する。後記するように、中性子遮蔽成分は陽子遮蔽機能も付与する。
無機繊維は、上記のガラス形成成分と上記の中性子遮蔽成分を原料として配合し、その原料配合物を溶融加工して得られる。なお、本発明において、原料配合物の成分比と、その溶融固化物(及びその無機繊維)の成分比に実質的な差は見られない。よって、原料配合物の成分比をもって無機繊維の成分比とすることができる。
<中性子遮蔽成分>
無機繊維を構成する中性子遮蔽成分は、ガドリニウム、サマリウム、カドミウムの、単体、酸化物、若しくは単体と酸化物の混合物である。前記単体及び酸化物は上記三元素の二つ以上の併用であってもよい。上記の三元素のうち、中性子遮蔽性能の観点から、ガドリニウムが最も好ましく、次いでサマリウムが好ましい。なお、ガドリニウム、サマリウム、カドミウムは、中性子遮蔽性に優れる同位体や同位体濃縮物を用いることができる。そのような同位体として、ガドリニウム157(157Gd)、サマリウム149(149Sm)、カドミウム113(113Cd)がある。
中性子遮蔽性能を備えるため、本発明に用いる無機繊維は、中性子遮蔽成分を10質量%以上含むことが必要であり、30質量%以上含むことが好ましく、35質量%以上含むことがより好ましく、40質量%以上含むことがなお一層好ましく、45質量%以上含むことが最も好ましい。
しかし、無機繊維を調製するに際して、原料配合物中の中性子遮蔽成分が50質量%を超えると溶融物の粘度が低くなりすぎ、繊維化が困難となる。同時に、その溶融固化物は、非晶相中に結晶相が混在するようになり、その強度が低下してしまう。したがって、無機繊維中の中性子遮蔽成分の含量は50質量%以下である。
<ガラス形成成分>
無機繊維を構成するガラス形成成分は、ガラス形成性に富むSiO2及びAl2O3を主成分とする。より具体的には、ガラス形成成分に占めるSiO2とAl2O3の合計は質量比にて0.60以上であり、好ましくは0.65以上であり、より好ましくは0.70以上であり、さらに好ましくは0.75以上である。先に述べたように、原料配合物中の中性子遮蔽成分が高含量になるに伴い、繊維化が困難となる。したがって、原料配合物中の中性子遮蔽成分が多い組成では、ガラス形成成分に占めるSiO2とAl2O3の合計が高くなるよう原料を配合することが肝要である。例えば、中性子遮蔽成分を40質量%以上とする場合には、ガラス形成成分に占めるSiO2とAl2O3の合計を質量比にて0.70以上とすることが好ましく、0.75以上とすることがさらに好ましい。
また、溶融物の繊維加工性の点から、ガラス形成成分に占めるSiO2及びAl2O3の合計に対するSiO2の質量比は0.60~0.90の範囲が好ましく、0.65~0.90の範囲がより好ましくは、0.70~0.90の範囲が最も好ましい。
同様の理由で、ガラス形成成分中には、質量比にて0.20を好ましい上限としてCaOを含むことができる。
同様に、ガラス形成成分中には、質量比にて0.20を好ましい上限としてB2O3を含むことができる。但し、ホウ素は中性子との核反応により新たな粒子を発生する、つまり二次放射する。そのため、B2O3は質量比にて0.15以下とするのがより好ましく、0.10以下とするのが最も好ましい。なお、ホウ素はガドリニウム、サマリウム、カドミウムを除く元素の中では相対的に高い中性子遮蔽性能を備えるものの、その中性子遮蔽性能はガドリニウム、サマリウム、カドミウムに比較して格段に低く、他方で、その酸化物はガラス形成性に富む。よって原料配合物にホウ素が含まれる場合、本発明ではホウ素を「中性子遮蔽成分」として算入せず、「ガラス形成成分」に算入する。
なお、本発明に用いる無機繊維は、原料中に含まれる不可避的な不純物の混入を排除するものではない。そのような不純物として、Fe2O3, MgO, K2O ,Na2O, Li2O, TiO2, CrO2などを例示できる。但し、後記するように、中性子遮蔽成分を高含量とする場合にはFe2O3の含量に留意せねばならない。
上記ガラス形成成分は、SiO2及びAl2O3をともに含むものであれば特に制約はない。したがって、SiO2及びAl2O3の各々単独を混合してガラス形成成分とすることもできるが、工業的に実施するには、SiO2及びAl2O3の両成分に富む岩石やフライアッシュ等が安価であるので好適に使用できる。
上記に言う岩石としては、玄武岩に代表される火山岩を例示できる。玄武岩等の火山岩の使用には採掘と粉砕工程が必要である。
これに対し、フライアッシュは、石炭発電の廃棄物であり、かつ粉末状の形態で入手できるがゆえに、粉砕工程が不要かつ安価であるため、ガラス形成成分として好適である。同様の廃棄物として、クリンカアッシュも好適に使用できる。このほか、石炭ガス化複合発電(IGCC, Integrated coal Gasification Combined Cycle)にて産生される廃棄物は、特に、石炭ガス化スラグ(CGS:Coal Gasification Slag)と称されているが、従前のフライアッシュとほぼ同等の化学組成であるため、ガラス形成成分となり得る。石炭ガス化スラグは、顆粒状であるため、従前のフライアッシュよりもさらにハンドリング性に優れる利点がある。本発明では、石炭ガス化スラグを含め、フライアッシュの用語を用いる。
なお、フライアッシュ、クリンカアッシュの組成は、原料の石炭、発生地(発電所、国)によりその組成にばらつきがある。
石炭灰ハンドブック(日本フライアッシュ協会編)よれば、フライアッシュの組成(質量%)は、その含有量の多い順に、SiO2:40.1~74.4, Al2O3:15.7~35.2, Fe2O3:1.4~17.5, CaO:0.3~10.1, MgO:0.2~7.4とある。これによれば、Fe2O3の変動幅が最も大きい。
本発明者による一連の試験の結果、以下の事実が判明した。
すなわち、原料として同一組成の中性子遮蔽成分を配合する場合において、ガラス形成成分中の不純物としてのFe2O3含量が増すに伴い、溶融固化物を繊維とするのが困難となる。つまり、ガラス形成成分のガラス形成性が低下する。その結果、原料配合物中の「中性子遮蔽成分」の含量を減らさねばならなくなる。換言すれば、ガラス形成成分中のFe2O3含量を抑えることにより、原料配合物(及びその溶融固化物である無機繊維)中の「中性子遮蔽成分」をより高めることができるので、中性子遮蔽性能に一層優れる無機繊維の製造が可能となる。
より具体的には、ガラス形成成分に占めるFe2O3の比率(質量比)は0.30以下が好ましい。
原料配合物中の「中性子遮蔽成分」の割合が20質量%以上である場合には、ガラス形成成分に占めるFe2O3の比率(質量比)は0.25以下が好ましい。
原料配合物中の「中性子遮蔽成分」の割合が35質量%超の場合には、ガラス形成成分に占めるFe2O3の比率(質量比)は0.15未満が好ましい。
したがい、ガラス形成成分として、フライアッシュ又はクリンカアッシュを使用する場合には、Fe2O3の含有量が上記要件を満たすよう留意する必要がある。
なお、本発明に用いる無機繊維は、非晶性である。非晶性であることから、結晶相と非晶相の界面の剥離に起因する強度低下がなくなる。
非晶性であるか否かの判定は、X線回折スペクトラムに非晶性ハローのみ現れ、結晶相のピークが認められないことにより行う。
本発明に用いる無機繊維は、母材の有機高分子の性状(硬化性、熱可塑性)に応じ、あらかじめ、ロービング、繊維クロス、チョップドストランドマット、チョップドストランド、ミルドファイバーなどの公知の形態に2次加工したものを好適に使用できる。
<母材>
本発明の複合材料の母材は有機高分子にて構成される。
上記有機高分子としては、硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などの他、エラストマーを挙げることができる。
硬化性樹脂を母材とすれば、すでに述べた無機繊維(その加工品を含む)と複合化することにより、FRP、積層板、プリプレグなどの複合材料とすることができる。複合材料として、特に耐熱性が求められる場合に硬化性樹脂が選択できる。
上記の硬化性樹脂として、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、フェノール樹脂を挙げることができるが、これらに限定されない。
他方、熱可塑性樹脂を母材とすれば、すでに述べた無機繊維と複合化することにより、FRTP、積層板、プリプレグなどの複合材料とすることができる。複合材料として、特に生産性が求められる場合、射出成形が可能な熱可塑性樹脂を選択できる。
上記の熱可塑性樹脂として、プロピレン樹脂、エチレン樹脂、スチレン樹脂、ABS樹脂、ポリフェニレンエーテル、ポリカーボネート、ポリアミド樹脂などを挙げられるがこれらに限定されない。これらのうち、プロピレン樹脂、エチレン樹脂は水素元素を多く含むため中性子減速性能に優れるため好適に使用できる。
エラストマーを母材とすれば、軟質性の複合材料の設計が可能となる。
上記のエラストマーとしては、天然ゴム(NR),イソプレンゴム(IR),ブタジエンゴム(BR),スチレンブタジエンゴム(SBR),エチレンプロピレンゴム(EPDM),ニトリルゴム(NBR),アクリルゴム(ACM),ウレタンゴム(PUR),シリコーンゴム,エチレン酢酸ビニルゴム(EVA),エピクロルヒドリンゴム(ECO)などを例示できる。
この他、ポリスチレン系熱可塑性ゴム, ポリオレフィン系熱可塑性ゴム, ポリウレタン系熱可塑性ゴム, ポリエステル系熱可塑性ゴム, ポリアミド系熱可塑性ゴム, ポリ塩化ビニール系熱可塑性ゴムなどの熱可塑性ゴムも好適に使用できる。これらの熱可塑性ゴムを母材とすれば、軟質性の複合材料を射出成形により生産性良く量産できる。
ポリスチレン系熱可塑性ゴムとしてスチレン-ブタジエン-スチレン ブロック共重合体(SBS), スチレン-イソプレン-スチレン ブロック共重合体(SIS),スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン ブロック共重合体(SEBS),スチレン-エチレン-プロピレン-スチレン ブロック共重合体(SEPS)を例示できる。
以上のエラストマーのうち、エチレンプロピレンゴム(EPDM),ポリオレフィン系熱可塑性ゴム, スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン ブロック共重合体(SEBS), スチレン-エチレン-プロピレン-スチレン ブロック共重合体(SEPS)は、水素元素含量が高いため中性子減速効果を備え、かつ耐候性にも優れるため、好適に使用できる。
無機繊維と母材の比率は、質量比にて、成形方法に応じ、各々1:99~80:20の範囲から選択される。
本発明の複合材料は、上に述べた無機繊維と母材を公知の成形方法により複合させることにより形成される。そのような成形方法としては、フィラメントワインディング、引き抜き成形、ハンドレーアップ、プレス成形、BMC、SMC、積層成形、注型成形、射出成形などを例示できるがこれらに制約されない。
本発明は、有機高分子と中性子遮蔽性に富むGd, Sm, Cdを高含量で含む無機繊維とを組み合わせることにより、既存の中性子遮蔽材よりも優れた中性子遮蔽性複合材料としたものである。
特に、線量50~300meVの範囲において、鉄、鉛、水、モルタルよりも高い遮蔽性を備える。
繊維化試験の概要を示す図である。 中性子遮蔽性試験の概要図である。 本発明の複合材料の中性子遮蔽率の実測値を既存の繊維樹脂複合材料と対比する図である 本発明の複合材料の中性子遮蔽率の実測値をPHITS計算値と比較する図である、 本発明の複合材料の一態様のPHITS計算による中性子遮蔽性能を示す図である。 本発明の複合材料の中性子遮蔽率のPHITS計算値を既存の繊維樹脂複合材料と対比する図である。 本発明の複合材料の陽子遮蔽率の実測値とPHITS計算値を示す図である。 本発明の他の態様になる複合材料の中性子遮蔽性を鉄、鉛、エポキシ樹脂と対比する図である。 実施例1にて用いた無機繊維クロスを示す写真である。
以下、実施例にて本発明にて使用の無機繊維の調製と本発明の複合材料について、より詳しく説明する。
<無機繊維の調製>
以下、本発明の複合材料に適する無機繊維を試験例(以下、繊維化試験)にて説明する。
明する。
なお、以下の繊維化試験例においては、下記原料を使用した。
<ガラス形成成分用原料>
・フライアッシュ:FA1,FA2,FA4,FA5(国内外より入手。成分(質量%)を表1に記載。)
・銅スラグ(Copper Slag):CS(国内より入手。成分(質量%)を表1に記載。)
・火山岩:BA(日本国内より入手。成分(質量%)を表1に記載。)
・シリカ:SiO2(粉末)
・アルミナ:Al2O3(粉末)
・酸化カルシウム:CaO(粉末)
・酸化鉄(III):Fe2O3(粉末)
・酸化ホウ素:B2O3(粉末)
以下、SiO2, Al2O3, CaO, Fe2O3の各々について、[S], [A], [C], [F]の略号を用いることがある。
<中性子遮蔽成分用原料>
・ガドリニウム(単体):Gd(粉末)
・酸化ガドリニウム:Gd2O3(粉末)
・サマリウム(単体):Sm(粉末)
・酸化サマリウム:Sm2O3(粉末)
・カドミウム(単体):Cd(粉末)
なお、FA1,FA2,FA4,FA5及びCS,BAの成分分析は蛍光X線分析法に拠った。
<原料配合物の調整>
ガラス形成成分用原料と中性子遮蔽成分用試薬を所定の割合にて秤量し、乳鉢にて混合し、粉末状の原料配合物を調製する。
<繊維化試験と溶融紡糸性の評価手順>
原料配合物について、以下の手順にてその溶融紡糸性(以下、紡糸性)を評価する。試験の概略を図1に示す。図1において、電気炉(11)は、高さ(H)60cm、外径(D)50cmであり、その中央に径(d)10cmの開口部(14)を備えている。他方、内径(φ)2.1cm、長さ10cmのタンマン管(12)に配合物30gが仕込まれる。なお、タンマン管(12)の底部中央には径2mmの穴が開いている。溶融試験中、タンマン管(12)は吊り棒(13)にて電気炉の開口部(14)内の所定位置に保持される。
電気炉は所定の昇温プログラムにより昇温され、炉内温度の最高到達温度が1450℃に設定してある。このとき、タンマン管内部(溶融物)の温度は炉内温度よりほぼ50℃低い温度で追随することをあらかじめ確認してある。加熱により、原料配合物が溶融すると、自重によりタンマン管の底部より流動落下し、外気に触れて固化する。
本発明では、紡糸性の評価の指標として、炉内温度が1450℃に達するまでに原料配合物が溶融し、かつその溶融物が流動落下し糸を形成すること、つまり原料配合物の溶融温度が1400℃以下であり、かつその溶融物が糸を形成するのに適正な溶融粘性を有することを許容レベルとする。試料としての原料配合物の溶融挙動は、下記のAよりCに示すグループに大別される。
<紡糸性評価ランク>
A:糸になる。
B:試料が溶融しないか、又は溶融物の粘度が高く自重のみでは落下するに至らず、糸にならない。
C:試料は溶融するが、溶融物の粘度が低すぎ、液滴となって滴下し、糸が形成されない。
[繊維化試験1]
ガラス形成成分として、FA1を30質量部、FA4を10質量部、CSを20質量部、BAを30質量部、及び中性子遮蔽成分としてガドリニウム(単体)を10質量部秤量し、原料配合物を調製した。
本原料配合物に含まれる成分は、ガドリニウム:10質量%、SiO2:44質量%、Al2O3:11質量%、CaO:8質量%、Fe2O3:22質量%、その他:5質量%である。各原料の配合比より算出されるガラス形成成分中のSiO2、Al2O3、CaO、Fe2O3、その他成分の質量、並びに、ガラス形成成分に占めるSiO2とAl2O3の合計の質量比、ガラス形成成分に占めるCaOの質量比、ガラス形成成分中のSiO2とAl2O3の合計質量に対するSiO2の質量比、ガラス形成成分に占めるFe2O3の質量比、無機繊維の総質量に占めるSiO2とAl2O3の合計の質量比とともに表2に示す。
この原料配合物について繊維化試験を行った結果、径が約10μmの糸が得られた。得られた糸は手で引っ張ってみても容易には切れない強度を備えていた。なお、以後の記載において、「糸」に代えて、「繊維」の用語を用いる場合が有るが、同義である。
繊維のX線回折(XRD)スペクトラムには結晶ピークが認められず、非晶性である。以上の結果を表2に示す。なお、以後の表中のアモルファス性の評価にて、「良」の表示は非晶性であること、及び「不良」の表示は結晶ピークが認められることを示す。
[繊維化試験2]
繊維化試験1において、中性子遮蔽成分としてサマリウム(単体)を用いたほかは同様にして、原料配合物を調製し、繊維化試験を行った。結果を表2に示す。原料配合物から良好な繊維が有られた。繊維は非晶性であった。
[繊維化試験3]
繊維化試験1において、中性子遮蔽成分としてカドミウム(単体)を用いたほかは同様にして、原料配合物を調製し、繊維化試験を行った。結果を表2に示す。原料配合物から良好な繊維が有られた。繊維は非晶性であった。
[繊維化試験4~13]
ガラス形成成分の原料を表1に示すFA1~FA5, CS,BAより適宜選択し、中性子遮蔽成分としてGd単体又はGd2O3を用い、一連の原料配合物を調製し、繊維化試験を行った。結果を表3に示す。
これらの試験において、ガラス形成成分中に占めるFe2O3の含量が高い場合には繊維化できなかった(繊維化試験9,11)。また、原料配合物に占める中性子遮蔽成分Gd2O3が50質量%を超えると繊維化できなかった(繊維化試験13)。
[繊維化試験14~17]
ガラス形成成分としてFA5を、中性子遮蔽成分としてSm2O3を用い、その配合比を変えて一連の繊維化試験を行った。結果を表4に示す。原料配合物に占める中性子遮蔽成分Sm2O3が50質量%を超えると繊維化できなかった(繊維化試験17)。
<無機繊維クロスの調製>
ガラス形成成分として、SiO2:48質量%、Al2O3:14質量%、CaO:10質量%、Fe2O3:8質量%、B2O3:5質量%、その他:4質量%、中性子遮蔽成分としてGd2O3:10質量%の比率の原料配合物にて、連続生産設備を用いて、無機繊維のロービングを製造した。ロービングは径が25μmの繊維600本よりなる。ロービングの厚みは約0.6mm,幅約1.3mmである。
次いで、本ロービングから平織にて無機繊維クロス(以下、クロスと略記することがある。)を製作した(図9)。なお、以下において、本試験例にて得られたGd2O3を10質量%含有の無機繊維クロスを「Gd10繊維クロス」と表記することとする。同様にして、中性子遮蔽成分としてGd2O3を45質量%含有の無機繊維クロスを「Gd45繊維クロス」と表示し、Sm2O3やCd2O3の含有量に応じて、無機繊維クロスを「Sm45繊維クロス」、「Cd45繊維クロス」のように表示する。
<樹脂含浸積層板の作成>
上記のGd10繊維クロスの一枚を所定のトレーにしき、エポキシ樹脂を含浸させた後、ローラーで樹脂を絞り、硬化させることにより単層クロス/エポキシ樹脂の積層試験片を得た。
なお、エポキシ樹脂は、汎用エポキシ樹脂である。
同様にして2~10枚のGd10繊維クロスを重ね、エポキシ樹脂を含浸させた後、ローラーで樹脂を絞り、硬化させることにより2~10層クロス/エポキシ樹脂の積層試験片を得た。
積層試験片の樹脂対クロスの質量比はいずれも略25:75であった。
かくして得られたGd10繊維とエポキシ樹脂の積層試験片を以後「Gd10/エポキシ積層板」と表記する。また、当該積層板の繊維のかさね枚数(繊維の層の数)を末尾に付す場合がある。例えば、「Gd10/エポキシ積層板(4)」は、Gd10繊維クロスの4層をエポキシ樹脂にて含浸・硬化した積層板を表す。
なお、得られた積層板の厚さは下記のとおりであった。
Gd10/エポキシ積層板(1):厚さ0.6 mm
Gd10/エポキシ積層板(3):厚さ2.9 mm
Gd10/エポキシ積層板(10):厚さ5.6 mm
なお、上記厚さは±0.05 mmの測定誤差を含む。
比較用のため、市販のガラス繊維クロス、アラミド繊維クロス、及び炭素繊維(いずれも、厚さ0.6 mm)をもとに、繊維単層の、ガラス繊維/エポキシ積層板(以下、GF/エポキシ積層板(1)), アラミド繊維積層板(以下、AF/エポキシ積層板(1))、炭素繊維積層板(以下、CF/エポキシ積層板(1))を調製した。GF/エポキシ積層板(1), AF/エポキシ積層板(1), CF/エポキシ積層板(1)のいずれも厚さ約0.6 mmであり、繊維対樹脂の質量比は略25:75であった。
<中性子線照射試験>
[実施例1,比較例1~3]
上記にて得られたGd10/エポキシ積層板(1), Gd10/エポキシ積層板(3), Gd10/エポキシ積層板(10)を試料として、以下の試験方法に依り、中性子遮蔽試験を実施した。
図2に試験の概要を示す。
図2において、サイクロトロン(CT, 住友重機械工業製: HM-20V)で加速されたプロトンは、粒子出口(図示していない)より、Beターゲット(TG)に向けて照射される。Beターゲット(TG)の後方には試料(S)が置かれる。粒子出口、Beターゲット(TG)、及び試料の位置は同軸上にある。積層板の板状試料は板面(面積:約1cm2)が上記軸に対し垂直になるよう配置される。プロトンの照射により、Beターゲット(TG)からは3 meVから17 MeVのエネルギー範囲の中性子が発生する。なお、板状試料の背面にはイメージングプレート(IP, Cytiva製:ND2040)が接着されている。試験片の厚さ方向に通過した中性子、即ち、試験片で遮蔽されなかった中性子を試料背面のイメージングプレート(IP)で検出する。スキャナ(SC, Cytiva製:Amersham Typhoon RGB)でイメージングプレートの輝度を読み取り、中性子遮蔽率が既知の標準試料で輝度を校正することにより、試料の遮蔽率を求める(輝度は中性子が試料中の元素と核反応する事象(event)数に比例する)。
以上の構成になる装置を用いて、Gd10/エポキシ積層板(1), Gd10/エポキシ積層板(3), Gd10/エポキシ積層板(8)の中性子遮蔽率を測定した(実施例1)。試験片の厚さと中性子遮蔽率の関係を図3に示す。
同様にして、GF/エポキシ積層板(1)、AF/エポキシ積層板(1)、CF/エポキシ積層板(1)の中性子遮蔽率を求めた(比較例1~3)。結果を図3に示す。
図3より、既存の繊維と複合させた複合材料、具体的には、GF/エポキシ積層板(1)(比較例1), AF/エポキシ積層板(1)(比較例2), CF/エポキシ積層板(1)(比較例3)に対する本発明の複合材料(Gd10/エポキシ積層板(1)(実施例1)の優位性が一目瞭然である。すなわち、Gd10/エポキシ積層板(1)の場合、試料の厚さが1mm以下であっても他の複合材料とは異なり約6割の中性子が遮断され、Gd10/エポキシ積層板(3)(厚さ3mm程度)の試料においては、ほぼ完全に中性子線が遮蔽された。一方、既存繊維ベース複合材料(GF/エポキシ積層板(1), AF/エポキシ積層板(1), CF/エポキシ積層板(1))では、中性子遮蔽率は0.2以下であり、中性子遮蔽材料として不十分であった。
<モンテカルロ法による計算機実験>
材料の放射線遮蔽性能の評価の一つとして、実際の照射試験に代え、モンテカルロ粒子輸送計算コードを用いる計算機実験が広く行われている。PHITS(Particle and Heavy Ion Transport code System)として知られるモンテカルロ粒子輸送計算コードもそのような計算機実験の一つである。PHITSについては、日本原子力研究開発機構のウエブサイト(https://phits.jaea.go.jp/indexj.html)より入手可能であり、利用方法が公開されている。
そこで、本発明の複合材料の有用性をさらに詳しく説明するため、PHITSによる計算機実験の結果を以下に示す。
ここで、PHITS計算により得られる、試料を通過してくる中性子の数(Nout)を、試料の中性子照射面に入ってくる中性子の個数(Nin)で除した数(Nout/Nin)をもって、中性子遮蔽率を求めた。こうして求めた中性子遮蔽率は上記の中性子線照射試験にて測定した中性子遮蔽率と整合するものである。
なお、PHITS計算において、以下の条件とした。
・照射中性子エネルギー:50 meV
・エポキシ樹脂(示性式):-(C18H20O3)n-
・ガラス繊維(Eガラス)(組成):SiO2 56%, Al2O3 16%, CaO 20%, B2O3 8 %
・アラミド繊維(示性式):-(C14H10N2O2)n-
[計算例1]
以上のモデルにて、Gd10/エポキシ積層板についてその積層枚数を1より10まで増し、PHITS計算を行った(計算例1)。結果、PHITS計算値(計算例1)は実測値(実施例1)と良い一致を示した(図4)。したがって、PHITS計算に基づき、本発明の複合材料と既存複合材料の中性子遮蔽性の対比することは十分に可能である。
[計算例2~4]
同様にして、Gd45/エポキシ積層板、Sm45/エポキシ積層板、及びCd45/エポキシ積層板についてもPHITS計算を実施した(計算例2~4)。結果を図5に示す。Gd45/エポキシ積層板(計算例2)は厚さ1mm以下であっても遮蔽率は限りなく1.0に近い卓越した中性子遮蔽性を示す。Sm45/エポキシ積層板(計算例3)は厚さ1mm前後でも遮蔽率は0.6以上の優れた中性子遮蔽性を示す。Cd45/エポキシ積層板(計算例4)も4mm厚以上で遮蔽率0.8以上の中性子遮蔽性を示す。
中性子遮蔽率の半減厚さ(Half-value thickness)は、その値が小さいほどコンパクトな遮蔽構造体の設計が可能となるため、遮蔽材料の性能を評価するための重要な指標となる。図5より、Gd45/エポキシ積層板及びSm45/エポキシ積層板の半減厚さは1mm以下、Cd45/エポキシ積層板の半減厚さは2mm以下であることが明らかである。
[計算例1、比較計算例1~3]
実施例1と比較例1~3との対比(図3)から、Gd10繊維クロスを用いる積層板の、既存の繊維クロス(ガラス繊維クロス、アラミド繊維クロス、カーボン繊維クロス)を用いる積層板に対する優位性を実測値にて示したが、これらの複合材の厚さを変えた場合の性能差をPHITS計算により比較することにした。図6に、Gd10/エポキシ積層板の計算例(計算例1)、GF/エポキシ積層板の計算例(比較計算例1)、AF/エポキシ積層板の計算例(比較計算例2)、CF/エポキシ積層板の計算例(比較計算例3)を示す。これより、Gd10/エポキシ積層板の優位性が再立証された。
本発明の複合材料は、中性子遮蔽性のみならず、陽子(プロトン)遮蔽性にも優れる。
以下、Gd10/エポキシ積層板について実施の陽子遮蔽性試験の概要を説明する。
<陽子遮蔽性試験>
[実施例2,計算例5,参考例1,参考計算例1]<陽子遮蔽性試験の概要>
タンデム加速器(National Electrostatics Corp.製:9SDH-2)で6 MeVに加速したプロトンをGd10/エポキシ積層板(1)の板状試料(厚さ:0.6mm)に照射した。プロトンの総照射量は7.5 x 1011 cm-2とした。試料背面にGAFフィルムを接着し、試料を透過したプロトンの検出を試みた。GAFフィルムの写真で示すようにプロトンは全く通過しなかった。GAFフィルムの感度は標準試料で校正した。得られた遮蔽率を図7に示す。試料の厚さを5.6 mmまで高める測定を約1mmの厚さ間隔で繰り返し、いずれの場合もプロトンは全く通過しないことを確認した(実施例2)。なお、Gd10/エポキシ積層板(1)の板状試料(厚さ:0.6mm)についてのPHITS計算結果は実施例と良い一致を示した(計算例5)。
以上より、本発明の複合材料は、中性子遮蔽性のみならず、陽子遮蔽性にも優れることが明らかである。
なお、参考例として、ガラス繊維クロス単品について陽子遮蔽性試験の実測を行うとともに(参考例1)、PHITS計算 を行った(参考計算例1)。以上の結果を図7に示す。これより、Gd10/エポキシ積層板が、中性子遮蔽性とともに陽子遮蔽性にも優れることが明らかである。他方、既存のガラス繊維は中性子遮蔽についてと同様にプロトン遮蔽についても遮蔽性の劣るものであることが示された。
[変形例]
次に、本発明の複合材料の構成の変形例として、エポキシ樹脂の表面に上記「Gd45繊維クロス」(0.6mm厚さ)を裏張りして接着させた構成になる複合材料にて、エポキシ樹脂層の厚さを変えていった場合の中性子遮蔽性についてPHITS計算を行った。なお、中性子エネルギーは300meVとした。
具体的な計算モデルとしては、エポキシ樹脂からなる第一の層の背面にGd45繊維クロスからなる第二の層を積層した複合材料(Gd45繊維張り合わせエポキシ複合材料)を想定し、第一の層を照射面とし、その厚みを変え、計算を実施した。なお、第二の層をGd45/エポキシ積層板(つまり、Gd45繊維クロスのエポキシ含浸させたもの)としても、ほぼ同様の計算結果となった。
他方、鉄、鉛、エポキシ樹脂の各々の単品よりなる板材についてもPHITS計算を行った。
結果を図8に示す。その結果、Gd45繊維張り合わせエポキシ複合材料は、厚さ3mmから100mmの広い範囲で、鉄、鉛、エポキシ樹脂よりも高い遮蔽性を有することが示された。
この計算結果は、中性子遮蔽用の複合材料として、中性子が照射される側に樹脂よりなる第一の層(樹脂は他材料と比較して水素を多く含む材料である)を設け、樹脂層中の水素元素により中性子を減速させ、その減速中性子を複合材料の最深部(最深層)に「中性子遮蔽性成分高含有の無機繊維(無機繊維層)」よりなる第二の層で捕捉する構成になる複合材の有効性を示すものである。
本発明の複合材料は、中性子及び陽子の遮蔽性に優れる。よって、放射線粒子遮蔽性が要求される、原子力、宇宙航空、医療の各分野の設備・機器・部材を構成する複合材料として好適である。
原子力分野の設備・機器・部材としては、
・原子力発電用の設備・機器・部材、
・デブリ(溶融核燃料)の取り出しと保管に関わる作業において臨界反応を防止する設備・機器・部材、
・ウラン鉱石の採掘・処理用の設備・機器・部材、
・核燃料の二次加工処理(同燃料の転換・濃縮・再転換・成形加工・MOX製造を含む)用の設備・機器・部材、
・使用済み核燃料の貯蔵・処理・再処理用の設備・機器・部材、
・中性子線被曝廃棄物の貯蔵・処理・処分用の設備・機器・部材、
・ウラン鉱石、核燃料二次加工品、使用済み核燃料、又は中性子線被曝廃棄物の輸送機器・部材、
・その他の核関連の設備・機器・部材、が挙げられる。
上記の原子力発電用の設備・機器・部材のより具体的な例としては、原子炉建屋(研究炉及び試験炉を含む)、原子炉格納容器、原子炉施設内配管、廃炉処理用ロボットが挙げられる。
宇宙航空分野の設備・機器・部材としては、
・宇宙基地建屋、宇宙ステーション、人工衛星、惑星探査衛星、などが挙げられる。
医療分野の設備・機器・部材としては、
・粒子線利用の医療装置、を挙げることができる。
以上の使用例は本発明の複合材料の有用性を示す目的で例示するものであり、本発明の範囲を制約するものではない。
11 電気炉
12 タンマン管
13 吊り棒
14 開口部
15 繊維
D 電気炉外径
H 電気炉高さ
d 電気炉開口部径
CT サイクロトロン
TG Beターゲット
S 試料
IP イメージングプレート

Claims (9)

  1. 中性子遮蔽性の複合材料であって、
    前記複合材料は、有機高分子の母材と無機繊維とよりなり、
    前記無機繊維は、50~90質量%のガラス形成成分と10~50質量%の中性子遮蔽成分とからなり、
    前記ガラス形成成分の総質量に占めるSiO2とAl2O3の合計質量の割合は0.60以上であり、
    前記中性子遮蔽成分は、ガドリニウム、サマリウム、又はカドミウムの、単体、酸化物、若しくは単体と酸化物の混合物よりなり、
    前記複合材料の、線源50meVの中性子線を照射したときの半減厚さは2mm以下である、複合材料。
  2. 前記中性子遮蔽成分は酸化ガドリニウムであり、線源50meVの中性子線を照射したときの半減厚さは1mm以下である、請求項1に記載の複合材料。
  3. 前記無機繊維中の中性子遮蔽成分の含量は40質量%以上である、請求項1に記載の複合材料。
  4. 前記無機繊維のガラス形成成分の原料は、フライアッシュ、クリンカアッシュ、玄武岩、又はそれらの混合物である、請求項1に記載の複合材料。
  5. 母材の前記有機高分子が硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、又はエラストマーである請求項1から4のいずれか一項に記載の複合材料。
  6. 母材の前記有機高分子が硬化性樹脂であり、当該硬化性樹脂は、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、又はビスマレイミド樹脂である、請求項5に記載の複合材料。
  7. 母材の前記有機高分子が熱可塑性樹脂であり、当該熱可塑性樹脂は、ポリプロピレン樹脂又はポリエチレン樹脂である請求項5に記載の複合材料。
  8. 母材の前記有機高分子がエラストマーであり、当該エラストマーは、エチレンプロピレンゴム(EPDM),ポリオレフィン系熱可塑性ゴム, スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン ブロック共重合体(SEBS), スチレン-エチレン-プロピレン-スチレン ブロック共重合体(SEPS)のいずれかである、請求項7に記載の複合材料。
  9. 有機高分子の母材と無機繊維よりなる中性子遮蔽性の複合材料であって、前記複合材料は、
    前記有機高分子からなる第一の層と、
    前記無機繊維(但し、前記有機高分子で含浸された態様を含む)からなる第二の層とからなり、
    前記無機繊維は、10~50質量%の中性子遮蔽成分と50~90質量%のガラス形成成分とからなり、
    前記中性子遮蔽成分は、ガドリニウム、サマリウム、又はカドミウムの、単体、酸化物、若しくは単体と酸化物の混合物よりなり、
    前記ガラス形成成分の合計に占める、
    SiO2とAl2O3の合計は質量比にて0.60以上であり、
    CaOは質量比にて0.20以下であり、
    B2O3は質量比にて0.20以下である、
    複合材料。


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