JP2024000018A - 雑音除去装置、雑音除去方法およびプログラム - Google Patents

雑音除去装置、雑音除去方法およびプログラム Download PDF

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Abstract

【課題】STEM-EDXに代表される材料分析におけるスペクトルイメージデータの雑音を除去する装置を提供する。【解決手段】雑音除去装置1は、雑音処理の対象となるスペクトルイメージデータの入力を受け付けるスペクトルイメージデータ入力部10と、入力されたスペクトルイメージデータと雑音除去後のスペクトルイメージデータの乖離度に基づくコストとエネルギーに対する雑音除去後のスペクトルイメージデータの平滑さに基づくコストとを含むコスト関数を記憶した記憶部16と、平滑さに基づくコストの寄与を重み付けるパラメータを調整するパラメータ調整部11と、調整されたパラメータと入力されたスペクトルイメージデータをコスト関数に適用して、コスト関数を最適化するスペクトルイメージデータを求める雑音除去部12と、雑音除去部12で求めたスペクトルイメージデータを可視化して表示するデータ可視化部13と、を備える。【選択図】図1

Description

本発明は、スペクトルイメージデータを用いた材料分析において有効な雑音除去装置に関する。
(1)スペクトルイメージを用いた材料分析
ある化学組成をもって自然界に存在する、または人工的に生成された化合物であって、その化合物が備える機能に応じ、バルク、薄膜、粉体など様々な形態に加工されたものを材料と呼ぶ。材料の組成や相といった化学状態を知るため、ミクロスコピックまたはメゾスコピックな測定が必要となる。
化学状態は、元素の種類と結合、その分布や界面での状態、組織など様々なスケールで特徴付けられ、材料の理解にとって、様々なスケールでの測定結果を多面的に調べることが重要である。例えば、電気的な特性を有する材料の開発において、生成物の電気的特性はバンドギャップなどに依存し、それはまた化学結合に依存する。多結晶であれば粒界の観察もまた機能に影響する。化学状態を推定し材料機能と比較することで機構への理解が深まり、さらなる開発の助けとなりうる。
測定においては、一般に材料に外場を与え、その応答を見る。化合物は電荷の集合体とみなせ、外場への応答は材料の電気的素性を表す。一般に、スペクトロスコピーでは、測定のため適切な加工を施された材料試料の外場に対する応答から材料の化学状態を推定する。電磁波の形態を持つ応答をスペクトルと呼ぶ。ここで外場としては可視光、赤外線、電子線など様々なものが用いられる。
(2)STEM-EDXによる材料分析
Scanning Transmission Electron Microscopy-Energy-Dispersive X-ray Spectroscopy(STEM-EDX)では、試料表面と相対的に電子線を掃引することで、試料表面各点におけるスペクトルを取得する。これによりスペクトル面分析が可能となる。そこで得られる情報形態はスペクトルイメージと呼ばれ、空間2次元とエネルギー1次元の計3次元のデータ構造を持つ(特許文献1)。
試料に対し入射した電子線は試料中原子にエネルギーを与え、励起された電子がX線放出を伴うエネルギー遷移を起こすことでスペクトルが観測される。放出されるX線エネルギーは各原子とそのエネルギー準位に固有であり、電子線が照射された点における発光スペクトルを調べることで、その点を代表する原子の種類や存在量を推定する情報を与える。バックグラウンドスペクトルや電子散乱による実質的な空間解像度など、得られたスペクトル情報の解釈には様々な注意が必要だが、おおまかに、STEM-EDXで得られるスペクトルイメージの各点のX線スペクトルに対応する(しばしば複数である)原子を特定し、またさらに必要に応じて標準試料などと比較することで定量分析が可能である。
特開2020-61374号公報
(3)STEM-EDXの雑音除去の必要性
試料上の掃引による面分析において、その計測時間や試料ダメージの問題により、得られるスペクトイメージのSignal-to-ratio(SN)比は著しく低いことがある。SN比の小さいスペクトルイメージは分析者に直感的な理解をもたらしにくく、さらには元素マッピング(各点の元素濃度を半定量的に与えるもの)や相マッピング(各点の化学組成を可視化するもの、またさらに既知の相として名前と分布を与えるもの)の性能が損なわれる原因となる。
なぜなら、測定対象である材料の真の化学状態は電子線に対する電気的な応答を介して得られたものであり、現象記述としての近似が仮に測定・状態推定上の実用に耐えるものであったとしても、エネルギー遷移に伴う量子論的な確率の影響や定量的な表現が難しい諸因子の影響を受けるものだからである。
ここでは受光部を含めた装置的な雑音は小さいと仮定するが、先述のスペクトルイメージング全般に言える問題による低X線カウントデータにおいては特に雑音の影響が顕著であり、ある波長帯にエネルギーピークが存在するかどうか、空間的な分布が塊として視認できるかといった化学状態の理解に不可欠な情報を取り出すプロセスが分析者の作業を律速したり、時間をかけても解決できない場合がある。
分析者に有益な情報形態としてスペクトルイメージの雑音を軽減して提供すること、またそのようにして与えられたデータから多変量解析など更なる分析手段より相マッピングを行うこと、が重要となる(Muto Shunsuke, Shiga Motoki.「Application of machine learning techniques to electron microscopic/spectroscopic image data analysis.」 MICROSCOPY. 2020. 69. 2)。後者について補足すると、多変量解析を観測データに適用する場合においても、雑音の影響により、例えば主成分分析(PCA)や非負値行列分解(NMF)およびそのポアソン統計を仮定した拡張手法、weighted PCA(wPCA)や、推定と観測の乖離度をKLダイバージェンスで測るKL-NMFなどで妥当な出力が得られない問題がある(wPCAについて、M.R. Keenan, P.G. Kotula,「Accounting for Poisson noise in the multivariate analysis of ToF-SIMS spectrum images」, Surf. Interface Anal., 36 (2004)を参照)。これは、一般的に材料の組成が複雑すぎず、ある少数の因子の組み合わせからなる場合が多いことを反映している。
本発明は上記背景に鑑み、STEM-EDXに代表される材料分析におけるスペクトルイメージデータの雑音を除去する装置を提供することを目的とする。
本発明の雑音除去装置は、雑音処理の対象となるスペクトルイメージデータの入力を受け付けるスペクトルイメージデータ入力部と、入力されたスペクトルイメージデータと雑音除去後のスペクトルイメージデータの乖離度に基づくコストとエネルギーに対する雑音除去後のスペクトルイメージデータの平滑さに基づくコストとを含むコスト関数を記憶した記憶部と、前記平滑さに基づくコストの寄与を重み付けるパラメータを調整するパラメータ調整部と、前記調整されたパラメータと入力されたスペクトルイメージデータをコスト関数に適用して、コスト関数を最適化するスペクトルイメージデータを求める雑音除去部と、前記雑音除去部で求めたスペクトルイメージデータを可視化して表示するデータ可視化部とを備える。ここで、乖離度は、いわゆる引き算の二乗和であるユークリッド距離がガウス雑音の統計を表すのに適切であるのと同様、ポアソン統計に従うデータの記述に適切な指標である。一例として、乖離度は、KLダイバージェンスで表される。
本発明の雑音除去装置において、前記コスト関数は、雑音除去後のスペクトルイメージデータが含むスペクトルの種類の数に基づくコストをさらに含み、前記パラメータ調整部は、スペクトルの種類の数に基づくコストの寄与を重み付けるパラメータを調整してもよい。
スペクトルイメージデータの平滑さに基づくコストは、スペクトルを1つ1つ独立に平滑化するため、データによっては(例えば、異なる成分のスペクトルどうしのピーク位置が近いデータ)では、ピーク位置のずれが問題となるが、スペクトルの種類の数に基づくコストを入れることにより、ピーク位置のずれを生じさせずに、適切に雑音除去を行える。
本発明の雑音除去装置において、前記コスト関数は、雑音除去後のスペクトルイメージデータが非負値のときに0となるコストを与える項をさらに含んでもよい。
本発明の雑音除去装置において、前記コスト関数は、次式で表される関数であってもよい。
Figure 2024000018000002
ここで、
第1項は雑音除去後のスペクトルイメージデータXの一つの要素でも負の値を取れば∞のコストを与える項
第2項は入力されたスペクトルイメージデータMとスペクトルイメージデータXの乖離が小さいほど小さいコストを与える項
第3項はスペクトルイメージデータXの種類が少数からなるほど小さいコストを与える項
第4項はスペクトルイメージデータXがエネルギーの変化に対して平滑なほど小さいコストを与える項。
本発明の雑音除去装置は、前記雑音除去部で求めたスペクトルイメージデータを外部の分析装置に対して出力する出力部を備え、前記データ可視化部は、外部の分析装置によって分析されたデータを取得し、分析されたデータを用いてデータを可視化してもよい。
本発明の雑音除去装置は、前記雑音除去部で求めたスペクトルイメージデータの成分数を指定する成分数指定部を備え、前記出力部は、前記成分数指定部で指定された成分数のデータを外部の分析装置に対して出力してもよい。
本発明の雑音除去方法は、雑音処理の対象となるスペクトルイメージデータの入力を受け付けるステップと、前記平滑さに基づくコストの寄与を重み付けるパラメータを調整するステップと、入力されたスペクトルイメージデータと雑音除去後のスペクトルイメージデータの乖離度に基づくコストとエネルギーに対する雑音除去後のスペクトルイメージデータの平滑さに基づくコストとを含むコスト関数に、前記調整されたパラメータと入力されたスペクトルイメージデータを適用して、コスト関数を最適化するスペクトルイメージデータを求めるステップと、雑音除去後のスペクトルイメージデータを可視化して表示するステップとを備える。
本発明のプログラムは、観察されたスペクトルイメージデータから雑音を除去するためのプログラムであって、コンピュータに、雑音処理の対象となるスペクトルイメージデータの入力を受け付けるステップと、前記平滑さに基づくコストの寄与を重み付けるパラメータを調整するステップと、入力されたスペクトルイメージデータと雑音除去後のスペクトルイメージデータの乖離度に基づくコストとエネルギーに対する雑音除去後のスペクトルイメージデータの平滑さに基づくコストとを含むコスト関数に、前記調整されたパラメータと入力されたスペクトルイメージデータを適用して、コスト関数を最適化するスペクトルイメージデータを求めるステップと、雑音除去後のスペクトルイメージデータを可視化して表示するステップとを実行させる。
実施の形態に係る雑音除去装置の構成を示す図である。 3次元のスペクトルイメージデータと各画素のスペクトルを横方向に並べて得られるデータ行列の例を示す図である。 実施の形態に係る雑音除去装置の動作を示す図である。 実施の形態に係る雑音除去装置の動作を示す図である。 雑音除去の対象となるTEM明視野像を示す図である。 図5に示すTEM明視野像の元データ(左)と、雑音除去を行ったデータ(中央、右)とを示す図である。 元データ(左)から雑音除去を行って雑音除去後のデータを生成し(中央)、さらに雑音除去後のデータを用いて多変量解析を行ったデータ(右)を示す図である。
以下、本発明の実施の形態に係る雑音除去装置について図面を参照しながら説明する。本実施の形態では、STEM-EDX分析を例として説明するが、本発明は、いかなるスペクトルイメージ分析に対しても適用することができる。なお、本実施の形態で対象とするデータのSNは低く、またポアソン過程によるものと考える。これは例えば材料表面に対する電子線照射におけるX線発光の記述に妥当だからである。
(第1の実施の形態)
図1は、実施の形態に係る雑音除去装置1の構成を示す図である。雑音除去装置1は、スペクトルイメージデータ入力部10と、パラメータ調整部11と、雑音除去部12と、データ可視化部13と、成分数指定部14と、後段の分析装置入力のための出力部15と、記憶部16とを有している。以下、雑音除去装置1の各構成について説明する。
(スペクトルイメージデータ入力部)
スペクトルイメージデータ入力部10は、雑音除去の対象となるスペクトルイメージデータの入力を受け付ける機能を有する。本実施の形態の雑音除去装置1では、STEM-EDXデータを扱う。STEM-EDXデータは、EDスペクトルのリストと見ることができ、これは空間座標xy(pixel)とエネルギーE(keV)の3次元のデータである。
スペクトルイメージデータ入力部10は、この3次元データをエネルギー(Nchannels)と空間位置のインデックス(Npixels)からなる2次元行列に変換し、データ行列Mを得る。
図2の上段は、入力される3次元のスペクトルイメージデータの例を示す図であり、各エネルギーで切った画像情報(x,yで画素が指定される)を有する。画素を固定してエネルギー方向に見ると、一つのスペクトル情報を有する。図2の下段は、各画素のスペクトルを横方向に並べて得られるデータ行列の例を示す図である。枠で囲った箇所は、ある画素のスペクトルを表している。スペクトルイメージデータ入力部10は、図2上段に例を示すスペクトルイメージデータを図2下段に例を示すデータ行列に変換する。
また、スペクトルイメージデータ入力部10は、観測エネルギー帯にわたる積分スペクトル強度に閾値を設定することにより、顕著なピークが含まれないと判断できるエネルギー以上を切り捨てる処理等を行ってもよい。これにより、雑音除去装置1の計算効率を向上させることができる。
(パラメータ調整部)
パラメータ調整部11は、行列に変換されたスペクトルイメージデータを雑音除去部12で処理するために、以下のパラメータを設定する。
・λ:EDスペクトルの平滑さに対する重み
・μ:組成または相がなるべく少ないとする仮定におかれる重み
これらのパラメータは入力データに応じて作業者が装置出力を観察しながら調整することも可能であり、また、分析対象に関連するカテゴリのトレーニングデータを用いて最適なパラメータをあらかじめ調整しておくことも可能である。更なる拡張として、AICなどの情報量基準を基に最適なパラメータを自動設定することも可能である。
スペクトルの平滑さとして、例えばスペクトルのエネルギーによる2階微分の2乗の総和などを用いることができる。
(雑音除去部)
雑音除去部12は、記憶部16から次式で表されるコスト関数を読み出し、データ行列Mとパラメータλ,μを用いてコスト関数を最小化するデータ行列Xを雑音除去後のデータとして求める。
Figure 2024000018000003
上記式において第1項はXの各要素が非負値を取ることを保証するものであり、一つの要素でも負の値を取れば∞のコストを与え、全要素が0以上であれば0のコストを与える。これにより、雑音除去後のデータ行列Xの各要素は、常に0以上の値を持つように計算される。
第2項は観測データMと推定された雑音除去後のデータ行列Xとの間のKL-divergenceである。EDXをはじめ材料測定におけるスペクトルイメージデータは少数のカウントからなり、ポアソン統計を仮定するのが自然である。このとき一般的にKL-divergenceが用いられるため、雑音除去部12の計算でもこれに従う。なお、ポアソン過程はガウス過程や他の過程に置き換えてもよい。また、KL-divergenceに代えて、電子線ビームの統計も考慮する必要がある際にはそれも含めた統計記述など、他の適切なメトリックを用いてもよい。ユークリッド距離を用いることも可能である。
第3項は雑音除去後のデータ行列Xの核ノルム(Xの特異値の総和)である。第3項は、材料の組成が複雑すぎず、ある少数の因子の組み合わせからなることが一般論としても妥当であろうという想定によるものである。第3項を小さくすることは近似的にXのランクを小さくすることに対応し、測定対象から得られるスペクトルの種類が少数からなること、すなわち材料を構成する組成または相が少数の種類からなること、を表す。ここでは、データ行列Xの核ノルムを用いているが、「推定信号のデータ行列が少数因子からなる」ことを反映した量であれば、核ノルム以外に行列ランクの様々な緩和による定式化を用いることが可能である。例えば、行列ランクの各推定点において劣微分可能な緩和ノルムを用いてもよい。μは、この指標の寄与を調整するパラメータであり、パラメータ調整部11で調整した値が用いられる。
第4項はエネルギーによるスペクトルの2階微分の2乗ノルムの和である。図2(b)に示すデータ行列Mと同様に、データ行列Xの各列にはスペクトルが格納されている。第4項は、データ行列Xにおいて、スペクトルの平滑さを評価する指標である。スペクトルが平滑であるほど、エネルギーによるスペクトルの2階微分の2乗ノルムの和は小さくなる。
エネルギーに対するスペクトルの平滑さとは、エネルギーが変化したときのスペクトル変化の平滑さである。STEM-EDXでは、材料に含まれる原子の種類に応じたスペクトルイメージデータが得られるので、ある画素におけるスペクトルはその画素に存在する原子のエネルギー準位に対応する。したがって、エネルギーは、原子に対応するスペクトルのところに立つことになる。しかし、発光スペクトルの励起緩和現象の寿命やX線受光部の波長解像度の影響から、発光スペクトルはエネルギー変化に対して平滑になる。すなわち、エネルギー変化に対して十分穏やかに変化する。本実施の形態の雑音除去部12は、この性質を利用し、エネルギーに対するスペクトルの平滑さをコスト関数に含めている。
λは、この指標の寄与を調整するパラメータであり、パラメータ調整部11で調整した値が用いられる。なお、スペクトルの平滑さを表す項としては1次、高次問わず他の計算可能な平滑さ指標を用いてもよい。
雑音除去部12は、以上4項の和で表されるコスト関数を最適化問題として解く。なお、コスト関数は、記憶部16に記憶されている。雑音除去部12は、例えばconsensus ADMM(Alternating direction method of multipliers)を用いて最適化を行う。この場合、計算の終了基準として、ADMMで用いられる主変数と双対変数の変化量の最大値が閾値を下回るか、最大イテレーション数を超えるかのいずれかが満たされたという基準を用いる。雑音除去部12は、計算の終了基準が満たされた場合に、その時点の解Xを最適解X*として出力する。なお、雑音除去部12は、consensus ADMM以外にも、コスト関数の局所的または大域的な最適解を求める別の計算方法を用いてもよい。
本実施の形態では、4項からなるコスト関数を用いる例を挙げて説明したが、コスト関数はスペクトルの平滑さに基づく指標を含んでいればよく、例えば、スペクトルの空間的な統計性(第3項)は省略することができる。また、本実施の形態の雑音除去装置1において説明した4項の他にスペクトルイメージの空間的な平滑さ、例えば各エネルギーにおける画像のTVノルムやその非凸な拡張を含めることもできる。
(データ可視化部)
データ可視化部13は、雑音除去部12からの出力X*を可視化する機能を有する。データ可視化部13は、雑音除去後のデータ行列X*に対して、スペクトルイメージデータ入力部10において行った3次元データ構造から行列データへの変換の逆の変換を施し、再びスペクトルイメージデータの形態に戻して可視化する。これにより、1つのエネルギーに対し1つの画像データが得られる。データが可視化されることで、作業者の利便性を向上させることができる。例えば、雑音除去を行った時点でのデータ解析プロセスの妥当さを検討し、パラメータを再調整することも可能である。
また、データ可視化部13は、後段の装置が行う多変量解析等により得られた結果を用いて元素マッピングや相マッピングを可視化することもできる。元素マッピングにおいては雑音除去されたデータから抽出されたピーク位置とデータベースを照合することもできる。この際、複数の成分数により計算された結果をリスト化し、作業者が適切な結果を選択することもできる。作業者は、データ可視化部13により可視化されたデータを見て、パラメータ調整部11にてパラメータの再調整を行うことや、次に説明する成分数指定部14にて成分数の指定を行うことができる。
(成分数指定部)
成分数指定部14は、雑音除去されたデータを後段の多変量解析などによる計算を実施する装置への入力とする際に成分数を指定する機能を有する。一例としてPCA(加重主成分分析)やNMF(非負値行列分解)において、成分数は復元される行列のランクのことである。成分数指定部14は、雑音除去後のデータのscree plot(データ行列の固有値または特異値の大きさ順プロット)などを基準に自動的に決定してもよいし、複数の成分数による出力結果をリスト化して作業者に対して表示し、作業者から成分数の指定を受け付けることで決定してもよい。
(出力部)
出力部15は、雑音除去後のデータ行列を後段の分析装置に対して出力する機能を有する。出力部15は、雑音除去後のデータ行列と共に、成分数指定部14で指定された成分数(ここでは行列のランク数)のデータを後段の分析装置に対して出力する。
後段の分析装置としては、例えばPCA装置20やNMF装置21等の分析装置が挙げられる。ここで挙げた2つの分析装置においては、ポアソン統計を仮定したwPCAやKL-NMFを用いることもできる。成分数指定部14で指定された値をそのランクとすることができる。ここで、wPCAはデータの共分散行列を観測データ行列自体から推定しPCAを施す前にデータに適切なスケール変換を施す手段であり、KL-NMFはデータ行列のNMFにおいて推定値と観測値の差異をKL-divergenceで測ることによりカウントデータを適切に扱おうとするものである。さらに対象記述に適した正則化項を付与したNMFなどを用いることもできる。
図3は、本実施の形態に係る雑音除去装置1の動作の例を示す図である。雑音除去装置1は雑音除去対象のイメージデータの入力を受け付け(S10)、受け付けたイメージデータを2次元行列データMに変換する。続いて、雑音除去装置1は、作業者からパラメータの調整を受け付ける(S11)。雑音除去装置1は、調整されたパラメータを用いて、上記したコスト関数を最適化するデータ行列X*を求める(S12)。データ行列X*は、入力されたデータであるデータ行列Mから雑音が除去されたデータ行列である。
雑音除去装置1は、データ行列X*をスペクトルイメージデータの形式に戻してデータを可視化し(S13)、可視化されたデータを表示する。作業者は、可視化されたデータを見て、パラメータの調整が必要か否かを判断し(S14)、パラメータ調整が必要な場合には(S14でYES)、雑音除去装置1は、パラメータ調整のステップS12に戻ってパラメータの調整を受け付ける。パラメータ調整が不要な場合には(S14でNO)、雑音除去されたデータ行列X*及び/又はデータ行列X*を可視化したスペクトルイメージデータを記憶部16に保存し(S15)、処理を終了する。
図4は、本実施の形態に係る雑音除去装置1の動作の別の例を示す図である。別の例では、雑音除去装置1は、後段の分析装置と連携して雑音除去を行う。雑音除去装置1は雑音除去対象のイメージデータの入力を受け付け(S20)、受け付けたイメージデータを2次元行列データMに変換する。続いて、雑音除去装置1は、作業者からパラメータの調整を受け付ける(S21)。雑音除去装置1は、調整されたパラメータを用いて、上記したコスト関数を最適化するデータ行列X*を求める(S22)。データ行列X*は、入力されたデータ行列Mから雑音が除去されたデータ行列である。
雑音除去装置1は、雑音除去後のデータを後段の多変量解析などによる計算を実施する後段の分析装置への入力とする際の成分数の入力を受け付け、成分数を指定する(S23)。雑音除去装置1は、雑音除去後のデータと成分数のデータを後段の分析装置に対して出力する(S24)。
後段の装置では、雑音除去装置1からデータを受信すると(S25)、受信したデータを用いて分析を行い(S26)、分析結果を雑音除去装置1に送信する(S27)。雑音除去装置1は、後段の装置から分析結果を受信すると(S28)、受信した分析結果を用いて、雑音処理後のデータを可視化し(S29)、可視化されたデータを表示する。作業者は、可視化されたデータを見て、パラメータの調整が必要か否か、また成分数の調整が必要か否かを判断し(S30)、パラメータ調整または成分数の再指定が必要な場合には(S30でYES)、雑音除去装置1は、パラメータ調整のステップS21に戻ってパラメータの調整を受け付ける、あるいは成分数指定のステップS23に戻って成分数の指定を受け付ける。パラメータ調整も成分数の指定も不要な場合には(S30でNO)、雑音除去されたデータ行列X*及び/又はデータ行列X*を可視化したスペクトルイメージデータを保存し(S31)、処理を終了する。
本実施の形態の雑音除去装置1は、スペクトルの平滑さを評価する指標を含むコスト関数の最適化を行う。これは、発光スペクトルがエネルギー変化に対し平滑である(すなわち、十分穏やかに変化する)という性質を利用したものである。雑音除去後のデータ行列がこのような性質を有するようにコスト関数を最適化することで、適切に雑音を除去することができる。
本実施の形態の雑音除去装置1は、スペクトルの種類の数を評価する指標を含むコスト関数の最適化を行う。これは、材料を構成する組成または相が少数の種類からなるという仮定に基づくものである。また、雑音除去後のスペクトルイメージデータに基づいてパラメータを調整した上で繰り返し雑音除去処理を行うことができるので、分析者の知見を生かして適切な雑音除去を行うことが可能である。
また、本実施の形態の雑音除去装置1で雑音が除去されたスペクトルイメージデータを用いることで、分析者の視覚的直感が働きやすくなること、また後段の分析による相マッピングなどの性能が向上すること、特に未知の化学因子の特定における相固有のスペクトルとデータベースとのマッチング精度の向上すること、などの効果が期待される。
以上、本実施の形態の雑音除去装置1の構成について説明したが、上記した雑音除去装置1のハードウェアの例は、CPU、RAM、ROM、ハードディスク、ディスプレイ、キーボード、マウス、通信インターフェース等を備えたコンピュータである。上記した各機能を実現するモジュールを有するプログラムをRAMまたはROMに格納しておき、CPUによって当該プログラムを実行することによって、上記した雑音除去装置1が実現される。このようなプログラムも本発明の範囲に含まれる。
本実施の形態の雑音除去装置1は、材料分析で得られるスペクトルイメージデータの雑音を除去することができる。雑音除去により、分析作業者にとって可視性に優れた情報形態に変換される効果が期待され、また後段の多変量解析など、さらなる分析手段を施す際、それら計算手段の性能向上につながる効果が期待される。この性能向上は単なる数値的、定性的な改善にとどまらず、どんなに時間をかけても分析困難であるほど大きな雑音の影響を受けた観測生データを、分析者にとって納得性のある十分な説明性を付与可能な分析結果を得られる程度に質の良い信号に変換できると期待される。
また、雑音除去後のデータは、後段の分析装置に入力されることにより、さらに雑音が除去され特定の因子だけで表現された情報形態へと変換され、解釈しやすいものになると期待される。
本実施の形態の雑音除去装置1を用いて雑音除去を行った実施例を示す。
図5は、雑音除去の対象となるTEM明視野像を示す図である。この画像には、材料として、SiとSiCが含まれている。
図6は、図5に示すTEM明視野像の元データ(左)と、雑音除去を行ったデータ(中央、右)とを示す図である。雑音除去は、スペクトル平滑化と低ランク性をコストとして(すなわち、上で説明した全4項を含むコスト関数を用いて)雑音除去を行った例(中央)と、スペクトル平滑化だけをコストとして(すなわち、上で説明したコスト関数から第3項を除いたコスト関数を用いて)雑音除去を行った例(右)を示している。本実施の形態の雑音除去装置により、SiとSiCに対応するエネルギーに高いピークを有し、元データに存在したX-ray Countが小さなピークが除去された。
図7は、元データ(左)から雑音除去を行って雑音除去後のデータを生成し(中央)、さらに雑音除去後のデータを用いて多変量解析を行ったデータ(右)を示す図である。図7に示すように、雑音除去後のデータを多変量解析することで、SiとCのピークが明瞭に表れた。
1 雑音除去装置
10 スペクトルイメージデータ入力部
11 パラメータ調整部
12 雑音除去部
13 データ可視化部
14 成分数指定部
15 出力部
16 記憶部
20 PCA装置
21 NMF装置

Claims (8)

  1. 雑音処理の対象となるスペクトルイメージデータの入力を受け付けるスペクトルイメージデータ入力部と、
    入力されたスペクトルイメージデータと雑音除去後のスペクトルイメージデータの乖離度に基づくコストとエネルギーに対する雑音除去後のスペクトルイメージデータの平滑さに基づくコストとを含むコスト関数を記憶した記憶部と、
    前記平滑さに基づくコストの寄与を重み付けるパラメータを調整するパラメータ調整部と、
    前記調整されたパラメータと入力されたスペクトルイメージデータをコスト関数に適用して、コスト関数を最適化するスペクトルイメージデータを求める雑音除去部と、
    前記雑音除去部で求めたスペクトルイメージデータを可視化して表示するデータ可視化部と、
    を備える雑音除去装置。
  2. 前記コスト関数は、雑音除去後のスペクトルイメージデータが含むスペクトルの種類の数に基づくコストをさらに含み、
    前記パラメータ調整部は、スペクトルの種類の数に基づくコストの寄与を重み付けるパラメータを調整する請求項1に記載の雑音除去装置。
  3. 前記コスト関数は、雑音除去後のスペクトルイメージデータが非負値のときに0となるコストを与える項をさらに含む請求項1に記載の雑音除去装置。
  4. 前記コスト関数は、次式で表される関数である請求項1に記載の雑音除去装置:
    Figure 2024000018000004
    ここで、
    第1項は雑音除去後のスペクトルイメージデータXの一つの要素でも負の値を取れば∞のコストを与える項
    第2項は入力されたスペクトルイメージデータMとスペクトルイメージデータXの乖離が小さいほど小さいコストを与える項
    第3項はスペクトルイメージデータXの種類が少数からなるほど小さいコストを与える項
    第4項はスペクトルイメージデータXがエネルギーの変化に対して平滑なほど小さいコストを与える項。
  5. 前記雑音除去部で求めたスペクトルイメージデータを外部の分析装置に対して出力する出力部を備え、
    前記データ可視化部は、外部の分析装置によって分析されたデータを取得し、分析されたデータを用いてデータを可視化する請求項1~4のいずれか1項に記載の雑音除去装置。
  6. 前記雑音除去部で求めたスペクトルイメージデータの成分数を指定する成分数指定部を備え、
    前記出力部は、前記成分数指定部で指定された成分数のデータを外部の分析装置に対して出力する請求項5に記載の雑音除去装置。
  7. 雑音処理の対象となるスペクトルイメージデータの入力を受け付けるステップと、
    前記平滑さに基づくコストの寄与を重み付けるパラメータを調整するステップと、
    入力されたスペクトルイメージデータと雑音除去後のスペクトルイメージデータの乖離度に基づくコストとエネルギーに対する雑音除去後のスペクトルイメージデータの平滑さに基づくコストとを含むコスト関数に、前記調整されたパラメータと入力されたスペクトルイメージデータを適用して、コスト関数を最適化するスペクトルイメージデータを求めるステップと、
    雑音除去後のスペクトルイメージデータを可視化して表示するステップと、
    を備える雑音除去方法。
  8. 観察されたスペクトルイメージデータから雑音を除去するためのプログラムであって、コンピュータに、
    雑音処理の対象となるスペクトルイメージデータの入力を受け付けるステップと、
    前記平滑さに基づくコストの寄与を重み付けるパラメータを調整するステップと、
    入力されたスペクトルイメージデータと雑音除去後のスペクトルイメージデータの乖離度に基づくコストとエネルギーに対する雑音除去後のスペクトルイメージデータの平滑さに基づくコストとを含むコスト関数に、前記調整されたパラメータと入力されたスペクトルイメージデータを適用して、コスト関数を最適化するスペクトルイメージデータを求めるステップと、
    雑音除去後のスペクトルイメージデータを可視化して表示するステップと、
    を実行させるプログラム。
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