JP2023548375A - Erbb3変異陽性がんを有する対象を治療するための手段及び方法 - Google Patents

Erbb3変異陽性がんを有する対象を治療するための手段及び方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、ERBB3変異陽性がんを有する対象の治療のための治療用(ヒト)抗体の分野に関する。より具体的には、発がんを駆動するERBB3変異を含むがんの治療に関する。抗体は、ERBB2の細胞外部分に結合することができる抗原結合部位と、ERBB3の細胞外部分に結合することができる抗原結合部位と、を含む二重特異性抗体である。

Description

本発明は、抗体の分野に関する。特に、異常細胞を含む疾患の治療のための治療用(ヒト)抗体の分野に関する。より具体的には、ERBB2及びERBB3に結合する抗体並びにがんの治療におけるそれらの使用に関する。
ERBB3は、上皮成長因子受容体(EGFR)、ERBB2及びERBB4も含むErbファミリーの膜貫通受容体チロシンキナーゼである。ファミリーの他のタンパク質と同様に、ERBB3は、細胞外ドメイン、膜貫通及び細胞内チロシンキナーゼドメインを含有する。そのリガンドニューレグリン(NRG)と相互作用すると、ERBB3は、自己リン酸化を受ける細胞内チロシンキナーゼドメインを活性化する他のErbファミリーメンバーとともにヘテロ二量体化し、次いで、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)及びPI3K経路を含む下流シグナル伝達経路を活性化する。ErbB経路の上方制御は、発がん性の増殖性シグナル伝達をもたらし、がん細胞において頻繁に生じる。
ERBB3遺伝子変異は、広範囲の腫瘍において見出される様々なレベルの有病率を有する発がん性駆動因子であると理解されている。これらの変異のいくつかは、ERBB3のリガンド結合細胞外ドメインにおいて存在するが、変異は、細胞内チロシンキナーゼドメインにおいても観察される。興味深いことに、ERBB3は、本来備わっているチロシンキナーゼ活性を欠いていると仮定されている。それにもかかわらず、機械的には、ERBB3におけるこれらの変異は、ERBB2とのリガンド非依存性ヘテロ二量体化又はERBB2キナーゼドメインの誘導のいずれかによって、ERBB2受容体シグナル伝達及び発がんの構成的活性化をもたらすと考えられている。ERBB3変異の他の未知の機能的作用機序は、まだ除外されていない。
ERBB3変異の治療上の重要性は、いくつかのErbBファミリー受容体を阻害する可能性のあるチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)を使用して検討されている。これらには、アファチニブ、ネラチニブ、ラパチニブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ又はオシメルチニブが含まれるが、これらに限定されない。Choudhury,Noura J et al.(Journal of clinical oncology,vol.34,18(2016):2165-71)による一研究では、細胞外ERBB3変異を有する患者のアファチニブでの治療は、臨床的応答をもたらした。しかしながら、この研究の全ての患者は、アファチニブ治療後に耐性を発現した。別のバスケット研究では、ERBB3変異を有する患者において、ネラチニブ(汎ErbBファミリー阻害剤)での治療後に臨床応答は観察されなかった(Hyman,David M et al.Nature,vol.554,7691(2018):189-194)。上記の研究は、ERBB3変異を有する患者において、TKI阻害剤への応答が混合され、決定的ではないことを示している。
いくつかの研究では、概して限られた有効性を示すERBB3変異保持患者におけるモノクローナル抗体の治療可能性も探求されている。しかしながら、大規模なレトロスペクティブ研究(Verlingue,Loic et al.European journal of cancer,vol.92(2018):1-10)ERBB3細胞外ドメインに変異を有する患者は、トラスツズマブ及び/又はラパチニブ又はアファチニブによるモノクローナル抗体治療を受け、ERBB3のチロシンキナーゼドメインに変異を有する特定の患者では治療に対する顕著な応答が観察されたが、細胞外ドメインに変異を有する患者は治療に応答しなかった。
ERBB3変異患者におけるアファチニブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、ラパチニブ、オシメルチニブ、及びネラチニブなどの汎TKI阻害剤を使用したチロシンキナーゼ阻害はまた、限定的な有効性を示している。更に、TKI阻害剤での患者における治療は、再発又は転移につながる毒性及び治療に対する耐性をもたらすことも周知である。したがって、ErbBシグナル伝達軸を阻害する可能性を有するERBB3駆動因子変異に基づくより堅牢な標的化された治療が必要である。しかし、現在、世界のどこにも認可されている特定のErbB変異指向療法はなく、ErbB変異を有するがんを有する患者の多くは、非特異的がん療法で管理されている。
したがって、当分野ではERBB3変異を有するがんの治療の必要性が存在する。
本開示では、本発明者らは、抗ERBB2抗ERBB3標的化分子の使用が、ERBB2及びERBB3陽性であり、ERBB3変異を有するがん細胞を成功裏に治療すること、好ましくは、標的化分子が、ERBB2のドメイン1及びERBB3のドメイン3を標的化し、それによって、ERBB3変異により促進され、かつ/又はリガンド非依存の様式で生じ得るヘテロ二量体化を立体的に防止することを特定している。
本開示は、ERBB2及びERBB3陽性細胞を有する対象の治療のための方法を提供し、本方法は、ERBB2の細胞外部分、好ましくはドメイン1に結合することができる第1の抗原結合部位と、ERBB3の細胞外部分、好ましくはドメイン3に結合することができる第2の抗原結合部位と、を含む二重特異性抗体を投与することを含み、本方法は、ERBB3変異を含む細胞に特徴付けられる。典型的には、変異は、PI3K経路を促進するようにERBB2及びERBB3のリガンド非依存性ヘテロ二量体化を促進し、及び/又はそれと相関するものである、ERBB3タンパク質の細胞外ドメインを含むか、又は細胞内にある変異である。好ましくは、ERBB3変異陽性細胞は、他の発がん性駆動因子変異及び/又は増幅を欠いている。
好ましくは、ERBB3における変異は、配列番号1による非変異配列と比較して、1つ以上の変異を含む。したがって、ERBB3の変異は、当該非変異配列に対する変異である。
対象は、好ましくは、ヒト対象である。
本開示のERBB3変異は、好ましくは、ERBB3駆動因子変異であり、それは、ERBBシグナル伝達軸並びに下流のマイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)及びPI3K経路シグナル伝達の活性化を促進するような、ERBB2及びERBB3のリガンド非依存性ヘテロ二量体化並びに/若しくはERBB2キナーゼドメインの活性化を促進し、かつ/又はこれらと相関する変異を含む。
ERBB3変異は、好ましくは、ERBB3の細胞外ドメイン、好ましくはDI-DIVドメインで生じ、ドメインIは残基56~166を含み、ドメインIIは残基182~332を含み、ドメインIIIは残基353~472を含み、ドメインIVは残基499~629を含む(図5)。より好ましくは、変異は、治療用化合物の親和性及び活性が低下し得るような治療用分子の結合に重要な残基ではない。
より好ましくは、変異は、M60、M91、R103、A232、P262、G284、及びD297位を含む、ERBB3受容体-リガンド複合体の活性形成及び/又はERBB3のホモ/ヘテロ二量体化に関与する位置で生じる。
本発明の別の態様では、ERBB3変異は、アミノ酸残基710~964を含むERBB3の細胞内ドメインにおける、好ましくは、Q809、S846、Q865、又はE928位での変異を含む。
いくつかの態様では、ERBB3変異は、アミノ酸残基M60、M91、R103、V104、R135、F219、H228、A232、P262、G284、D297、K329、E332、T355、R475、Q809、S846、Q865又はE928を含む、発がん性駆動因子である変異を含む。より好ましくは、ERBB3変異は、V104、A232、G284、D297、K329、T355、S846又はE928を含むホットスポット変異である(図5)。
具体的には、ERBB3変異は、以下のうちのいずれか1つを含む:
M60N(Nは任意の天然に生じるアミノ酸、好ましくはKである)、
M91N(Nは任意の天然に生じるアミノ酸、好ましくはIである)、
R103N(Nは任意の天然に生じるアミノ酸、好ましくはGである)、
V104N(Nは任意の天然に生じるアミノ酸、好ましくはL又はMである)、
R135N(Nは任意の天然に生じるアミノ酸、好ましくはCである)、
F219N(Nは任意の天然に生じるアミノ酸、好ましくはLである)、
H228N(Nは任意の天然に生じるアミノ酸、好ましくはQである)、
A232N(Nは任意の天然に生じるアミノ酸、好ましくはVである)、
P262N(Nは任意の天然に生じるアミノ酸、好ましくはH又はL又はSである)、
G284N(Nは任意の天然に生じるアミノ酸、好ましくはRである)、
D297N(Nは任意の天然に生じるアミノ酸、好ましくはY又はA又はH又はN又はVである)、
K329N(Nは任意の天然に生じるアミノ酸、好ましくはE又はI又はTである)、
E332N(Nは任意の天然に生じるアミノ酸、好ましくはKである)、
T355N(Nは任意の天然に生じるアミノ酸、好ましくはA又はI又はPである)、
R475N(Nは任意の天然に生じるアミノ酸、好ましくはWである)、
Q809N(Nは任意の天然に生じるアミノ酸、好ましくはRである)、
S846N(Nは任意の天然に生じるアミノ酸、好ましくはIである)、
Q865N(Nは任意の天然に生じるアミノ酸、好ましくはHである)、
E928N(Nは任意の天然に生じるアミノ酸、好ましくはGである)。
好ましくは、ERRB3における変異は、ERBB3の細胞外ドメインにおける変異、より好ましくは、ドメインI、ドメインII、ドメインIII、又はドメインIVにおける変異から選択される。
好ましくは、ERRB3における変異は、ドメインI(DI)における変異、より好ましくは、M60、M91、R103、V104、R135位における変異から選択される。
好ましくは、ERRB3における変異は、ドメインII(DII)における変異、より好ましくは、F219、H228、A232、P262、G284、D297、K329及びE332位における変異から選択される。
好ましくは、ERRB3における変異は、ドメインIII(DIII)における変異、より好ましくは、T355位における変異から選択される。
好ましくは、ERRB3における変異は、ドメインIV(DIV)における変異、より好ましくは、R475位における変異から選択される。
好ましくは、ERRB3における変異は、ERBB3の細胞内ドメインにおける変異、より好ましくは、チロシンキナーゼドメインにおける変異から選択される。
好ましくは、ERBB3変異は、アミノ酸残基710~964を含むERBB3のチロシンキナーゼドメインにおける、好ましくは、Q809、S846、Q865、又はE928位での変異を含む。
好ましくは、細胞内ドメインにおける変異は、Q809、S846、Q865、及びE928から選択される変異から選択される。
本開示の一態様において、R426位でのERBB3変異は、除外される。
好ましくは、ERBB3変異を有するがんは、KRAS、NRAS、PIK3CA、及び/若しくはBRAFを含むがこれらに限定されない別の発がん性駆動因子を欠いているか、又は細胞は、BRAF、EGFR、KRAS、cKIT-BRCA1-2、MET、ROS、RET、ALK、AKT1、ERBB4、NFE2L2、PTPN11、FBXW7、NRAS、RHOA、CTNNB1、HRAS、SF3B1、DICER1、KIT、PIK3CA、PIK3R1、SMAD4、PPP2R1A、VHL、ERBB2、MTOR、及びPTENを含む群から選択される1つ以上の遺伝子における発がん性変異の非存在を示す。
好ましくは、ERBB3変異を有するがんは、以下のがん増幅c-MET増幅、c-MYC増幅、EGFR増幅、ERBB2増幅、及び/又はMDM2増幅を欠く。
好ましくは、ERBB3変異を有するがんは、PTEN損失を有しない。
ERBB2の細胞外部分に結合する第1の抗原結合部位と、ERBB3の細胞外部分に結合する第2の抗原結合部位と、を含む二重特異性抗体は、好ましくは、ERBB2のドメインIに結合する第1の抗原結合部位と、ERBB3のドメインIIIに結合する第2の抗原結合部位と、を有する。いくつかの実施形態では、ERBB2に対する第1の抗原結合部位の親和性は、ERBB3に対する第2の抗原結合部位の親和性よりも低い。
二重特異性抗体は、好ましくは、
i)MF2926、MF2930、MF1849、MF2973、MF3004、MF3958、MF2971、MF3025、MF2916、MF3991、MF3031、MF2889、MF2913、MF1847、MF3001、MF3003及びMF1898からなる群から選択されるERBB2特異的重鎖可変領域の少なくともCDR1、CDR2、及びCDR3配列を含むか、又は当該抗体が、MF2926、MF2930、MF1849、MF2973、MF3004、MF3958、MF2971、MF3025、MF2916、MF3991、MF3031、MF2889、MF2913、MF1847、MF3001、MF3003若しくはMF1898のCDR1、CDR2及びCDR3配列から多くとも3つのアミノ酸、好ましくは多くとも2つのアミノ酸、好ましくは多くとも1つのアミノ酸が異なるCDR配列を含み、かつ/又は
ii)MF3178、MF3176、MF3163、MF3099、MF3307、MF6055、MF6056、MF6057、MF6058、MF6059、MF6060、MF6061、MF6062、MF6063、MF6064、MF6065、MF6066、MF6067、MF6068、MF6069、MF6070、MF6071、MF6072、MF6073及びMF6074からなる群から選択されるERBB3特異的重鎖可変領域の少なくともCDR1、CDR2及びCDR3配列を含むか、又は当該抗体が、MF3178、MF3176、MF3163、MF3099、MF3307、MF6055、MF6056、MF6057、MF6058、MF6059、MF6060、MF6061、MF6062、MF6063、MF6064、MF6065、MF6066、MF6067、MF6068、MF6069、MF6070、MF6071、MF6072、MF6073若しくはMF6074のCDR1、CDR2及びCDR3配列から多くとも3つアミノ酸、好ましくは多くとも2つのアミノ酸、好ましくは多くとも1つのアミノ酸が異なるCDR配列を含む。
一態様では、二重特異性抗体は、
i)MF2926、MF2930、MF1849、MF2973、MF3004、MF3958、MF2971、MF3025、MF2916、MF3991、MF3031、MF2889、MF2913、MF1847、MF3001、MF3003及びMF1898の重鎖可変領域配列からなる群から選択されるERBB2特異的重鎖可変領域配列を含むか、又は当該抗体が、MF2926、MF2930、MF1849、MF2973、MF3004、MF3958、MF2971、MF3025、MF2916、MF3991、MF3031、MF2889、MF2913、MF1847、MF3001、MF3003若しくはMF1898の重鎖可変領域配列から多くとも15個のアミノ酸が異なる重鎖可変領域配列を含み、かつ/又は
ii)MF3178、MF3176、MF3163、MF3099、MF3307、MF6055、MF6056、MF6057、MF6058、MF6059、MF6060、MF6061、MF6062、MF6063、MF6064、MF6065、MF6066、MF6067、MF6068、MF6069、MF6070、MF6071、MF6072、MF6073及びMF6074の重鎖可変領域配列からなる群から選択されるERBB3特異的重鎖可変領域配列を含むか、又は当該抗体が、MF3178、MF3176、MF3163、MF3099、MF3307、MF6055、MF6056、MF6057、MF6058、MF6059、MF6060、MF6061、MF6062、MF6063、MF6064、MF6065、MF6066、MF6067、MF6068、MF6069、MF6070、MF6071、MF6072、MF6073若しくはMF6074の重鎖可変領域配列から多くとも15個のアミノ酸が異なる重鎖可変領域配列を含む。
本発明における使用に好ましい二重特異性抗体は、重鎖可変領域MF3958(抗ERBB2)及びMF3178(抗ERBB3)を含むMF3958×MF3178である。MF3958×MF3178は、単剤として良好に忍容性があること実証されており、100人を超える患者の治療において免疫原性のリスクが低く、併用療法のための優れた薬剤であり、他の抗ERBB2及び/又は抗ERBB3標的化薬剤に対して優位性を提供する。いかなる理論にも拘束されないが、ERBB3変異を有するERBB2及びERBB3陽性細胞を有するがんを有する患者の治療におけるMF3958×MF3178の有効性は、MF3958×MF3178がERBB2のドメイン1にドッキングし、ドメイン3でERBB3がERBB2と二量体化することを遮断し、それによってPI3K経路の活性化を破壊することを可能にする、MF3958×MF3178のエピトープ特異性及び親和性の不均衡に基づいていると考えられる。
当該二重特異性抗体の当該第1の抗原結合部位を含む可変ドメイン及び当該第2の抗原結合部位を含む当該可変ドメインは、好ましくは、KABAT番号付けによるか、又はIMGT番号付けシステムによる、配列(RASQSISSYLN)を有するCDR1、配列(AASSLQS)を有するCDR2及び配列(QQSYSTPPT)を有するCDR3を含み、CDRは、それぞれ、QSISSY、AAS及びQQSYSTPPTである。
当該二重特異性抗体の当該第1の抗原結合部位を含む可変ドメイン及び当該第2の抗原結合部位を含む可変ドメインは、好ましくは、図6a又は図6bの軽鎖可変領域を含む。
本発明は、更に、第一選択療法として、ERBB2の細胞外部分に結合する第1の抗原結合部位と、ERBB3の細胞外部分に結合する第2の抗原結合部位と、を含む二重特異性抗体での、ERBB2及びERBB3陽性細胞、好ましくは、がん細胞、ERBB3変異を含む細胞を有する対象の治療のための方法を提供する。本発明は、ERBB3変異を有するがんを有する対象の治療の方法を提供し、本方法は、ERBB2の細胞外部分に結合することができる抗原結合部位と、ERBB3の細胞外部分に結合することができる抗原結合部位と、を含む二重特異性抗体を投与することを含み、当該治療は、第一選択療法として提供される。本方法は、ERBB2の細胞外部分に結合する第1の抗原結合部位と、第2の抗原結合部位と、を含む二重特異性抗体での治療を含み、がんを有する患者のERBB3変異が、好ましくは、化学療法、チェックポイント阻害剤療法(抗PD1及び抗PD-L1承認療法、並びに臨床開発における適用可能な療法を含む)、抗ERBB2若しくは抗ERBB3若しくは抗VEGFR2(血管内皮成長因子受容体2)、又はERBB2若しくはVEGFR2-TIE2のチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)での前の治療、あるいはそれらの組み合わせを含む、前の治療を受けた後に進行した。
本発明による化学療法は、好ましくは、ゲムシタビン、カペシタビン、カルボプラチン、ドセタキセル若しくはパクリタキセルなどのタキサン、5-フルオロウラシル(放射線療法の有無にかかわらず)、ビノレルビン、カルムスチン、ドキソルビシン、エピルビシン、ミトキサントロン、ビンブラスチン、シスプラチン(又はペメトレキセド)、オキサリプラチン、カルボプラチン、イホスファミド、マイトマイシンC、ビンデシン、エトポシド、フォルフォックス(Folfox)(すなわち、5-フルオロウラシル、ロイコボリン、及びオキサリプラチンの組み合わせ)若しくはフォルフィリ(Folfiri)(すなわち、ロイコボリン、5-フルオロウラシル及びイリノテカンの組み合わせ)、フォルフィリノックス(Folfirinox)(ロイコボリン、5-フルオロウラシル、イリノテカン及びオキサリプラチンの組み合わせ)、又はそれらの任意の組み合わせを含む。
本発明によるチェックポイント阻害剤療法は、抗PD1、抗PD-L1、及び抗CTLA4治療部分を含み、好ましくは、イピリムマブ、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ若しくはセミプリマブ、又はそれらの任意の組み合わせを含む。
ERBB2標的化された治療は、好ましくは、ERBB2の細胞外部分に結合する抗原結合部位を含む単一特異性二価抗体を用いてであり、好ましくは、トラスツズマブ、ペルツズマブ、又はトラスツズマブ-エムタンシンである。ERBB2 TKIは、好ましくは、ラパチニブ、カネルチニブ、ネラチニブ、ツカチニブ(イルビニチニブ(irbinitinib))、CP-724714、タルロキシチニブ(tarloxitinib)、ムブリチニブ、アファチニブ、バルリチニブ(varlitinib)、及びダコミチニブのうちの1つ以上、好ましくは、アファチニブである。一態様では、ERBB2 TKIは、アファチニブである。ERBB2 TKIは、ERBB1シグナル伝達にも影響を及ぼし得るが、ERBB2に対して顕著な活性を有するという点で、ERBB1 TKIとは異なる。
ERBB3標的化された治療は、好ましくは、ERBB3の細胞外部分に結合する抗原結合部位を含む単一特異性二価抗体を用いてであり、好ましくは、パトリツマブ、セリバンツマブ、ルムレツズマブ(lumretuzumab)、エルゲムツマブ(elgemtumab)、GSK2849330、KTN3379、又はAV-203を含む。
VEGFR2標的化された治療は、好ましくは、VEGFR2の細胞外部分に結合する抗原結合部位を含む単一特異性二価抗体を用いてであり、好ましくは、ラムシルマブを含む。VEGFR2-TIE2 TKIは、好ましくは、レゴラフェニブである。
標的特異的治療は、同じ標的に対する他の治療と組み合わせられ得る。代替的に、1つの標的を標的とする治療は、言及された標的のうちの別の標的に対しても活性であり得る。
がんは、好ましくは、再発がん若しくは転移がん又はその2つの組み合わせである。再発とは、典型的には、局所再発を指し、がんが元のがんと同じ場所にあるか、それに非常に近い場所にあることを意味する。腫瘍は、典型的には、腫瘍が元のがんの近くのリンパ節又は組織に移動した場合、又は元のがんから離れたより遠い臓器又は組織に広がった場合に転移した腫瘍であると言われる。
ERBB3変異を有するがんには、結腸直腸がん、胃、非小細胞肺がん(NSCLC)腺がん(アデノ)、NSCLC(扁平上皮)、腎がん、黒色腫、卵巣、肺大細胞、食道、小細胞肺がん、肝細胞(HCC)、乳がん、ホルモン陽性乳がん、膠芽細胞腫、及び頭頸部がんが含まれる。
ERBB3変異を有するがんは、好ましくは、胃腺がん又は食道胃がんなどの胃がん、膵臓がん、膵管腺がん、肉腫、膀胱がん、結腸直腸がん、胆嚢がん、頭頸部がん、前立腺がん、子宮/子宮内膜がん、乳がん、卵巣がん、肝臓がん、非小細胞肺がんなどの肺がん、好ましくは浸潤性粘液性腺がんを含む非小細胞肺がんである。
ERBB2、ERBB3陽性細胞を含む固形腫瘍におけるERBB3変異の有病率を示す。 ERBB3の不活性及び活性化形態並びにERBB2とのヘテロ二量体化を示し、開示された本発明の方法の治療分子が、ERBB2のドメインI及びERBB3の不活性形態のドメインIIIに結合し、それによって、リガンドの存在下又はリガンド非依存的な様式で、ヘテロ二量体化を促進する細胞外及び/又は細胞内ドメインにおけるERBB3変異の存在下を含む、ヘテロ二量体化を防止する作用機序を示す。 がん型によるERBB3改変の有病率を提供する。図は、https://www.cbioportal.org/を使用してMSK-IMPACTデータセットから生成された リガンド結合及びヘテロ二量体化に関与すると理解されている様々なERBB3変異の位置のモデリングを示す。ERBB3ドメインI~IIIを、活性EGFR二量体構造(PDB ID:1IVO)に別々に重ね合わせた。変異M91位及びR426位は、EGFR上のリガンド結合残基と整列し、したがって、ERBB3リガンド結合に関与する可能性が高い。残基P262は、EGFRの二量体化ループに整列し、したがって、その活性形態のERBB3のホモ又はヘテロ二量体化に関与し得る。D297は、二量体化ループと相互作用するようであり、二量体化プロセスにも関与し得る。残基R103、V104、A232及びM60は、活性形態のDI-DII相互作用に関与しているようである。G284は、DI-DIII界面に近接しており、Rへの変異時にDIと相互作用し得る。 10,000人を超える患者の臨床配列決定に関するERBB3変異を示す。(Zehir,Ahmet et al.Nature medicine,vol.23,6(2017):703-713)。図は、https://www.cbioportal.org/を使用してMSK-IMPACTデータセットから生成された。 a)共通軽鎖アミノ、b)共通軽鎖可変領域DNA配列及びその翻訳(IGKV1-39/jk1)、c)共通軽鎖定常領域DNA配列及び翻訳、d)IGKV1-39/jk5、共通の軽鎖可変領域の翻訳、e)V領域IGKV1-39A、f)共通軽鎖のCDR1、CDR2、及びCDR3のアミノ酸配列を列挙する。 二重特異性分子の生成のためIgG重鎖配列を列挙する。a)CH1領域。b)ヒンジ領域。c)CH2領域。d)バリエーションL351K及びT366K(KK)を含有するCH3ドメイン。e)バリエーションL351D及びL368E(DE)を含有するCH3ドメイン。 可変領域の重鎖の核酸及びアミノ酸配列を列挙する。
チロシンキナーゼ膜貫通受容体のErbBファミリーは、ヒト上皮成長因子(EGF)受容体ファミリー(HER)とも称される。ファミリーには4つのメンバー:ERBB(赤芽球腫)-1、ERBB2、ERBB3及びERBB4がある。受容体(Yarden and Pines 2012でレビューされた)は、上皮細胞上で広く発現されている。ニューレグリン(NRG)(ヘレグリン(HRG)としても知られる)又は上皮成長因子(EGF)などのHER受容体又はそのリガンドの上方制御は、ヒトがんにおける頻繁な事象である(Wilson,Timothy R et al.Nature,vol.487,7408(2012):505-9)。特に、ERBB1及びERBB2の過剰発現は、上皮性腫瘍において生じ、腫瘍浸潤、転移、化学療法に対する耐性、及び予後不良に関連する(Zhang,Hongtao et al.The Journal of clinical investigation,vol.117,8(2007):2051-8)。正常な乳房では、ERBB3は管腔上皮の成長及び分化に重要であることが示されている。例えば、ERBB3の喪失/阻害は、管腔上皮上での基底の選択的膨張をもたらす(Balko,Justin M et al.Proceedings of the National Academy of Sciences,vol.109,1(2012):221-6)。RTKの細胞外ドメインへのリガンドの結合は、同じ(ホモ二量体化)及び異なる(ヘテロ二量体化)受容体サブタイプの両方の受容体二量体化を誘導する。二量体化は、細胞内チロシンキナーゼドメインを活性化することができ、それは、自己リン酸化を受け、次いで、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)及び生存促進経路Aktによって媒介されるものを含む、いくつかの下流増殖促進シグナル伝達経路を活性化することができる(Yarden,Yosef,and Gur Pines.Nature reviews.Cancer,vol.12,8 553-63によってレビューされた)。ERBB2についての特定の内因性リガンドが特定されておらず、したがって、それはヘテロ二量体化を介して正常にシグナル伝達すると想定される(Sergina,Natalia V et al.Nature,vol.445,7126(2007):437-41)。ERBB3は、そのリガンドの係合によって活性化され得る。これらのリガンドには、ニューレグリン(NRG)(ヘレグリン(HRG)としても知られる)が含まれるが、これに限定されない。
ERBB1は様々な同義語で知られており、その最も一般的なものはEGFRである。EGFRは、4つのサブドメインからなる細胞外ドメイン(ECD)を有し、そのうちの2つは、リガンド結合に関与し、そのうちの2つは、ホモ二量体化及びヘテロ二量体化に関与する。EGFRは、様々なリガンドからの細胞外シグナルを統合し、多様な細胞内応答をもたらす。EGFRは、いくつかのヒト上皮悪性腫瘍、特に乳房、膀胱、非小細胞肺がん肺、結腸、卵巣、頭頸部、及び脳のがんに関与している。遺伝子における活性化変異、並びに受容体及びそのリガンドの過剰発現が見出され、自己分泌活性化ループを生じる。この受容体チロシンキナーゼ(RTK)は、がん療法の標的として広く使用されている。RTKを標的とする小分子阻害剤及び細胞外リガンド結合ドメインに指向されるモノクローナル抗体(mAb)の両方が開発され、これまでにいくつかの臨床的成功が示されている。ヒトEGFRタンパク質及びそれをコードする遺伝子のデータベース受入番号は、(GenBank NM_005228.3)である。受入番号は、主に、EGFRタンパク質の標的としての特定化の更なる方法を提供するために与えられ、抗体によって結合されたEGFRタンパク質の実際の配列は、例えば、いくつかのがんなどで生じる変異などのコード遺伝子における変異のために、変化し得る。
本明細書で使用される「ERBB2」という用語は、ヒトにおいてERBB2遺伝子によってコードされるタンパク質を指す。遺伝子又はタンパク質の代替名としては、CD340、HER2、HER-2/neu、MLN19、NEU、NGL、TKR1が挙げられる。ERBB2遺伝子は、(ヒト上皮成長因子受容体2から)HER2と呼ばれることが多い。本明細書においてERBB2に言及される場合、言及はヒトERBB2を指す。ERBB2に結合する抗原結合部位を含む抗体は、ヒトERBB2に結合する。ERBB2抗原結合部位は、ヒトと他の哺乳動物オーソログとの間の配列及び三次構造の類似性に起因して、かかるオーソログにも結合し得るが、必ずしもそうではない。ヒトERBB2タンパク質及びそれをコードする遺伝子のデータベース受入番号は、(NP_001005862.1、NP_004439.2 NC_000017.10 NT_010783.15 NC_018928.2)である。受入番号は、主に、標的としてERBB2の更なる特定化の方法を提供するために与えられ、ERBB2タンパク質結合された抗体の実際の配列は、例えば、いくつかのがんなどに生じる変異などのコード遺伝子の変異のため、変化し得る。ERBB2抗原結合部位は、ERBB2及びその様々なバリアント、例えば、いくつかのERBB2陽性腫瘍細胞によって発現されるバリアントに結合する。ERBB2に結合する抗原結合部位は、好ましくは、ERBB2のドメインIに結合する。
本明細書で使用される「ERBB3」という用語は、ヒトにおいてERBB3遺伝子によってコードされるタンパク質を指す。遺伝子又はタンパク質の代替名は、HER3、LCCS2、MDA-BF-1、c-ERBB3、c-ERBB3、ERBB3-S、p180-ERBB3、p45-sERBB3、及びp85-sERBB3である。本明細書においてERBB3に言及される場合、言及はヒトERBB3を指す。ERBB3に結合する抗原結合部位を含む抗体は、ヒトERBB3に結合する。ERBB3抗原結合部位は、ヒトと他の哺乳動物オーソログとの間の配列及び三次構造の類似性に起因して、かかるオーソログにも結合し得るが、必ずしもそうではない。本開示のヒトERBB3タンパク質及びそれをコードする遺伝子のデータベース受入番号は、染色体12上のERBB3遺伝子のゲノム位置(56473892~56497289)を含むNP_001973.2及びNC_000012.11である。受入番号は、主に、標的としてERBB3の更なる特定化の方法を提供するために与えられ、抗体によって結合されたERBB3タンパク質の実際の配列は、例えば、いくつかのがんなどに生じる変異などのコード遺伝子の変異のため、変化し得る。ERBB3抗原結合部位は、ERBB3及びその様々なバリアント、例えば、いくつかのERBB3陽性腫瘍細胞によって発現されるバリアントに結合する。ERBB3に結合する抗原結合部位は、好ましくは、ERBB3のドメインIIIに結合する。好ましくは、非変異又は天然に生じるヒトERBB3のタンパク質配列は、NP_001973.2の配列であり、それは、以下のものである:
MRANDALQVLGLLFSLARGSEVGNSQAVCPGTLNGLSVTGDAENQYQTLYKLYERCEVVMGNLEIVLTGHNADLSFLQWIREVTGYVLVAMNEFSTLPLPNLRVVRGTQVYDGKFAIFVMLNYNTNSSHALRQLRLTQLTEILSGGVYIEKNDKLCHMDTIDWRDIVRDRDAEIVVKDNGRSCPPCHEVCKGRCWGPGSEDCQTLTKTICAPQCNGHCFGPNPNQCCHDECAGGCSGPQDTDCFACRHFNDSGACVPRCPQPLVYNKLTFQLEPNPHTKYQYGGVCVASCPHNFVVDQTSCVRACPPDKMEVDKNGLKMCEPCGGLCPKACEGTGSGSRFQTVDSSNIDGFVNCTKILGNLDFLITGLNGDPWHKIPALDPEKLNVFRTVREITGYLNIQSWPPHMHNFSVFSNLTTIGGRSLYNRGFSLLIMKNLNVTSLGFRSLKEISAGRIYISANRQLCYHHSLNWTKVLRGPTEERLDIKHNRPRRDCVAEGKVCDPLCSSGGCWGPGPGQCLSCRNYSRGGVCVTHCNFLNGEPREFAHEAECFSCHPECQPMEGTATCNGSGSDTCAQCAHFRDGPHCVSSCPHGVLGAKGPIYKYPDVQNECRPCHENCTQGCKGPELQDCLGQTLVLIGKTHLTMALTVIAGLVVIFMMLGGTFLYWRGRRIQNKRAMRRYLERGESIEPLDPSEKANKVLARIFKETELRKLKVLGSGVFGTVHKGVWIPEGESIKIPVCIKVIEDKSGRQSFQAVTDHMLAIGSLDHAHIVRLLGLCPGSSLQLVTQYLPLGSLLDHVRQHRGALGPQLLLNWGVQIAKGMYYLEEHGMVHRNLAARNVLLKSPSQVQVADFGVADLLPPDDKQLLYSEAKTPIKWMALESIHFGKYTHQSDVWSYGVTVWELMTFGAEPYAGLRLAEVPDLLEKGERLAQPQICTIDVYMVMVKCWMIDENIRPTFKELANEFTRMARDPPRYLVIKRESGPGIAPGPEPHGLTNKKLEEVELEPELDLDLDLEAEEDNLATTTLGSALSLPVGTLNRPRGSQSLLSPSSGYMPMNQGNLGESCQESAVSGSSERCPRPVSLHPMPRGCLASESSEGHVTGSEAELQEKVSMCRSRSRSRSPRPRGDSAYHSQRHSLLTPVTPLSPPGLEEEDVNGYVMPDTHLKGTPSSREGTLSSVGLSSVLGTEEEDEDEEYEYMNRRRRHSPPHPPRPSSLEELGYEYMDVGSDLSASLGSTQSCPLHPVPIMPTAGTTPDEDYEYMNRQRDGGGPGGDYAAMGACPASEQGYEEMRAFQGPGHQAPHVHYARLKTLRSLEATDSAFDNPDYWHSRLFPKANAQRT(配列番号1)。
好ましくは、本開示は、ERBB3変異を有するがんの治療を必要とする対象におけるその治療の方法における使用のための、ERBB2の細胞外部分に結合することができる抗原結合部位と、ERBB3の細胞外部分に結合することができる抗原結合部位と、を含む抗体を含み、ERBB3変異は、好ましくは、配列番号1による非変異配列と比較して1つ以上の変異を含む。
ERBB1、ERBB2若しくはERBB3又はそれらの名前の代替名について言及される場合、その言及は、ヒトERBB1、ERBB2又はERBB3に対してである。本明細書で言及される抗体は、がんに見出されるように、ERBB1、ERBB2、又はERBB3、及び多くの変異型ERBB1、ERBB2、又はERBB3タンパク質に結合する。
がん細胞は、ERBB3遺伝子に変異を有し、ERBB3タンパク質の特定の位置でアミノ酸置換をもたらすことが知られている。本明細書に開示される方法によって治療されるこれらの変異は、ErbBシグナル伝達軸並びに下流のマイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)及びPI3K経路シグナル伝達の活性化を促進するような、ERBB2及びERBB3のリガンド非依存性ヘテロ二量体化並びに/若しくはERBB3相互作用を介したERBB2キナーゼドメインの活性化を促進し、かつ/又はこれらと相関する。以前に、ERBB2のドメイン1及びERBB3のドメイン3に結合する二重特異性抗体のクラスは、ERBB2のドメイン1に結合することによって発がんを阻止し、ERBB3のドメイン3の結合を介してERBB3のリガンドを遮断することができることが報告されている(Geuijen et al.Cancer Cell 33,922-936(2018))。この機序は、ERBB2及びERBB3のリガンド依存性ヘテロ二量体化を破壊し、PI3K、mTOR経路の活性化を破壊する。ERBB3における変異は、ERBB2とのヘテロ二量体化を促進し、リガンド非依存的な様式でPI3K、mTOR経路を活性化し得ることが報告されている。いかなる理論にも拘束されないが、本開示は、ERBB2のドメイン1及びERBB3のドメイン3に結合する二重特異性抗体のクラスの使用によって、ERBB3とのリガンド相互作用を遮断することを介せず、しかし、ERBB2及びERBB3のヘテロ二量体化を立体的に阻害し、ERBB2のチロシンキナーゼ受容体の活性化並びにPI3K及びmTOR経路の活性化を防止することによって、ERBB3変異がんの治療の方法を提供すると考えられる。したがって、リガンド非依存性ERBB3発がんを阻害するための好ましくはMF3958×MF3178を含む、ERBB2のドメイン1及びERBB3のドメイン3に結合する二重特異性抗体のクラスの作用機序は、これらの二重特異性抗体のリガンド相関ERBB2、ERBB3ヘテロ二量体化及び発がんを阻害する能力の作用機序とは異なることが理解される。
好ましくは、リガンド非依存性ヘテロ二量体化に関与する変異には、V104、A232、P262、G284、Q809、S846、及びE928位のアミノ酸を含む。好ましくは、変異は、V104L又はM、A232V、P262H、L又はS、G284R、Q809R、S846I、又はE928Gである。
ERBB3変異は、好ましくは、ERBB3の細胞外ドメイン、好ましくはDI-DIVドメインで生じ、ドメインIは残基56~166を含み、ドメインIIは残基182~332を含み、ドメインIIIは残基353~472を含み、ドメインIVは残基499~629を含む(図5)。
より好ましくは、変異は、M60、M91、R103、A232、P262、G284、及びD297位を含む、ERBB3受容体-リガンド複合体の活性形成及び/又はERBB3のホモ/ヘテロ二量体化に関与する位置で生じる。
理論に拘束されないが、本開示の二重特異性抗体の、ERRB2のドメイン1及びERRB3のドメイン3への結合を介したヘテロ二量体化の防止は、細胞内ドメインに存在するERRB3発がん性駆動因子変異を、ERRB2のチロシンキナーゼドメインの活性化への寄与から遮断し、かかるERRB3変異を有する対象を治療に適応させると考えられる。
本発明の別の態様では、ERBB3変異は、アミノ酸残基710~964を含むERBB3の細胞内チロシンキナーゼドメインにおける、好ましくは、Q809、S846、Q865、又はE928位での変異を含む。S846及びQ809位などの細胞内キナーゼドメインで生じるいくつかの変異は、ERBB2/ERBB3ヘテロ二量体の安定化を引き起こすことが報告されている。本開示は、ERRB2のドメイン1及びERRB3のドメイン3に結合する二重特異性抗体での治療の方法を提供し、それによって、ERRB3細胞内ドメインに存在する発がん性駆動因子変異が、ERRB2のチロシンキナーゼドメインの活性化に寄与するのを遮断され、かかるERRB3変異を有する対象を治療に適応させる。好ましい実施形態では、ERBB3変異は、Q809又はS846位での変異である。
いくつかの態様では、ERBB3変異は、アミノ酸残基M60、M91、R103、V104、R135、F219、H228、A232、P262、G284、D297、K329、E332、T355、R475、Q809、S846、Q865又はE928を含む、発がん性駆動因子である変異を含む。より好ましくは、ERBB3変異は、V104、A232、G284、D297、K329、T355、S846、又はE928を含むホットスポット変異である。
具体的には、ERBB3変異、又は当該変異を含むがんは、以下のうちのいずれか1つを含む:
M60N(Nは任意の天然に生じるアミノ酸、好ましくはKである)、
M91N(Nは任意の天然に生じるアミノ酸、好ましくはIである)、
R103N(Nは任意の天然に生じるアミノ酸、好ましくはGである)、
V104N(Nは任意の天然に生じるアミノ酸、好ましくはL又はMである)、
R135N(Nは任意の天然に生じるアミノ酸、好ましくはCである)、
F219N(Nは任意の天然に生じるアミノ酸、好ましくはLである)、
H228N(Nは任意の天然に生じるアミノ酸、好ましくはQである)、
A232N(Nは任意の天然に生じるアミノ酸、好ましくはVである)、
P262N(Nは任意の天然に生じるアミノ酸、好ましくはH又はL又はSである)、
G284N(Nは任意の天然に生じるアミノ酸、好ましくはRである)、
D297N(Nは任意の天然に生じるアミノ酸、好ましくはY又はA又はH又はN又はVである)、
K329N(Nは任意の天然に生じるアミノ酸、好ましくはE又はI又はTである)、
E332N(Nは任意の天然に生じるアミノ酸、好ましくはKである)、
T355N(Nは任意の天然に生じるアミノ酸、好ましくはA又はI又はPである)、
R475N(Nは任意の天然に生じるアミノ酸、好ましくはWである)、
Q809N(Nは任意の天然に生じるアミノ酸、好ましくはRである)、
S846N(Nは任意の天然に生じるアミノ酸、好ましくはIである)、
Q865N(Nは任意の天然に生じるアミノ酸、好ましくはHである)、
E928N(Nは任意の天然に生じるアミノ酸、好ましくはGである)。
これらの状況では、Nは、対応する位置の天然に生じる非変異アミノ酸残基とは異なる、示された位置のERRB3タンパク質のアミノ酸である。本開示の一態様において、R426位でのERBB3変異は、除外される。
好ましくは、ERBB3変異を有するがん細胞は、KRAS、NRAS、PIK3CA、BRAFを含むがこれらに限定されない別の発がん性駆動因子を欠いているか、又は細胞は、BRAF、EGFR、KRAS、cKIT-BRCA1-2、MET、ROS、RET、ALK、AKT1、ERBB4、NFE2L2、PTPN11、FBXW7、NRAS、RHOA、CTNNB1、HRAS、SF3B1、DICER1、KIT、PIK3CA、PIK3R1、SMAD4、PPP2R1A、VHL、ERBB2、MTOR、及びPTENを含む群から選択される1つ以上の遺伝子における発がん性変異の非存在を示す。
好ましくは、ERBB3変異を有するがん細胞は、以下のがん増幅c-MET増幅、c-MYC増幅、EGFR増幅、ERBB2増幅、及びMDM2増幅を欠く。
好ましくは、ERBB3変異を保有するがん細胞は、PTEN損失を有しない。PTEN(HGNC識別子9588)は、発がん性PI3K/AKT/mTORシグナル伝達ネットワークの活性化に直接反対する、PI3キナーゼの脂質産物であるPIP3を代謝するホスファターゼである。PTEN腫瘍抑制因子の機能の喪失は、がん型において観察される一般的な事象である。「PTEN喪失」とは、PTEN腫瘍抑制因子の機能の喪失を意味する。
上記のERBB3変異のいずれかは、変異がErbBシグナル伝達軸並びに下流のマイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)及びPI3K経路シグナル伝達の活性化を促進するような、ERBB2及びERBB3のリガンド非依存性ヘテロ二量体化並びに/若しくはERBB3相互作用を介したERBB2キナーゼドメインの活性化を促進し、かつ/又はこれらと相関する。
本発明は、ERBB2及びERBB3陽性がんを有するリスクがある対象の治療における使用のための、ERBB2の細胞外部分に結合する第1の抗原結合部位と、ERBB3の細胞外部分に結合する第2の抗原結合部位と、を含む二重特異性抗体を更に提供し、そのがんの細胞は、ERBB3変異を含み、対象は、以前のERBB1、ERBB2又はERBB3標的化された腫瘍治療を受けた治療前のがん対象である。
更にERBB2及びERBB3陽性がんを有するリスクがある対象を治療する方法を提供し、そのがんの細胞は、ERBB3変異を含み、対象は、化学療法又はERBB2若しくはERBB3標的化された腫瘍治療の以前の治療を受けた治療前のがん対象であり、本方法は、それを必要とする対象に、ERBB2の細胞外部分に結合する第1の抗原結合部位と、ERBB3の細胞外部分に結合する第2の抗原結合部位と、を含む二重特異性抗体を投与することを含む。
本発明による化学療法は、好ましくは、ゲムシタビン、カペシタビン、カルボプラチン、ドセタキセル若しくはパクリタキセルなどのタキサン、5-フルオロウラシル(放射線療法の有無にかかわらず)、ビノレルビン、ミトキサントロン、ビンブラスチン、シスプラチン(又はペメトレキセド)、オキサリプラチン、カルボプラチン、イホスファミド、マイトマイシンC、ビンデシン、エトポシド、フォルフォックス(Folfox)(すなわち、5-フルオロウラシル、ロイコボリン、及びオキサリプラチンの組み合わせ)若しくはフォルフィリ(Folfiri)(すなわち、ロイコボリン、5-フルオロウラシル及びイリノテカンの組み合わせ)、フォルフィリノックス(Folfirinox)(ロイコボリン、5-フルオロウラシル、イリノテカン及びオキサリプラチンの組み合わせ)、又はそれらの任意の組み合わせを含む。
対象は、好ましくは、化学療法又はERBB2阻害に対して標的化された療法を受けている。ERBB2標的腫瘍治療とも称されるERBB2シグナル伝達の阻害は、好ましくは、ERBB2の細胞外部分に結合する抗原結合部位を含む単一特異性二価抗体の投与、又はERBB2チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)若しくはそれらの組み合わせの投与を含み、単一特異性二価抗体は、好ましくは、トラスツズマブ、ペルツズマブ、又はトラスツズマブ-エムタンシンであり、ERBB2 TKIは、好ましくは、ラパチニブ、カネルチニブ、ネラチニブ、ツカチニブ(イルビニチニブ(irbinitinib))、CP-724714、タルロキシチニブ(tarloxitinib)、ムブリチニブ、アファチニブ、バルリチニブ(varlitinib)、及びダコミチニブのうちの1つ以上、好ましくは、ラパチニブ、カネルチニブ、ネラチニブ、ツカチニブ(イルビニチニブ)、ムブリチニブ、アファチニブ、バルリチニブ、又はダコミチニブ、より好ましくはアファチニブである。
本開示によれば、対象は、代替的に、ERBB3標的化された腫瘍治療で治療され、好ましくは、ERBB3の細胞外部分に結合する抗原結合部位を含む単一特異性二価抗体の投与、又はERBB3チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)若しくはそれらの組み合わせの投与を含み、単一特異性二価抗体は、好ましくは、パトリツマブ、セリバンツマブ、ルムレツズマブ(lumretuzumab)、エルゲムツマブ(elgemtumab)、GSK2849330、KTN3379、又はAV-203である。
本開示に記載の治療の方法又は治療における使用のための二重特異性抗体は、好ましくは、細胞がERBB3変異を含むかどうか、又は腫瘍がERBB3変異を有する細胞を含むかどうかを更に決定することを含む。これは、例えば、生検の細胞に対して行われ得る。様々な方法が利用可能であり、多くの方法が当該技術分野で既知である。1つの方法は、ERBB3変異の領域にまたがるプライマーを用いたPCR増幅によるものである。これは、生じることが知られているERBB3変異に対して実装され得る。新しい変異は、次世代DNA又はRNA配列決定を含む、当業者に公知の技術を介して容易に検出され得る。
推定されるERBB3変異を特定するために利用可能な技術には、RT-PCR、リアルタイムPCR、トランスクリプトーム解析、アンカー多重PCR、nCounter、FISHを含む対立遺伝子特異的RNAベースの方法論、ハイブリッドキャプチャベースの次世代配列決定(NGS)、アンプリコンベースのNGSを含むDNAベースの方法論が含まれる。
ERBB3変異を有するがんには、結腸直腸がん、胃、非小細胞肺がん(NSCLC)腺がん(アデノ)、NSCLC(扁平上皮)、腎がん、黒色腫、卵巣、肺大細胞、食道、小細胞肺がん、肝細胞(HCC)、乳がん、ホルモン陽性乳がん、膠芽細胞腫、及び頭頸部がんが含まれる。
ERBB3変異を有するがんは、好ましくは、胃腺がん又は食道胃がんなどの胃がん、膵臓がん、膵管腺がん、肉腫、膀胱がん、結腸直腸がん、胆嚢がん、頭頸部がん、前立腺がん、子宮/子宮内膜がん、乳がん、卵巣がん、肝臓がん、非小細胞肺がんなどの肺がん、好ましくは非小細胞肺がん、より好ましくは浸潤性粘液性腺がんである。より好ましくは、がん又は腫瘍は、ERBB3タンパク質における変異A232Vを含む。より好ましくは、がん又は腫瘍は、ERBB3タンパク質における変異A232Vを含む膀胱がんである。
がん又は腫瘍は、好ましくは、ERBB3タンパク質における変異V104Mを含む。より好ましくは、がん又は腫瘍は、ERBB3タンパク質における変異V104Mを含む明細胞がんなどの卵巣がんである。
がんの細胞上のErbB受容体のレベルを決定するための様々な方法が利用可能である。例えば、免疫組織化学又は蛍光インサイツハイブリダイゼーションである。両方ともDako Denmark A/Sによって市販されたHercepTest(商標)及び/若しくはHER2 FISH(pharm Dx(商標))、並びに/又はMonogram Biosciencesによって市販されたHERmark(登録商標)アッセイの使用は、ERBB2又はERBB3細胞表面受容体密度を決定するための好適なアッセイの例である。ERBB2受容体細胞密度を決定するための他の方法は、当業者に周知である。ERBB2を決定するためのインビボ方法も既知である、例えば、Chernomoridik et al.Mol Imaging.2010 Aug;9(4):192-200及びArdeshirpour et al.Technol Cancer Res Treat.2014 Oct;13(5):427-434を参照されたい。好ましくは、本明細書に開示される方法は、当該細胞又は腫瘍のERBB2細胞表面受容体密度を決定することを更に含む。かかる方法は、当業者に既知である(例えば、van der Woning and van Zoelen Biochem Biophys Res Commun.2009 Jan 9;378(2):285-9を参照されたい)。好ましくは、本明細書に開示される方法は、当該細胞又は腫瘍のERBB1細胞表面受容体密度を決定することを更に含む。かかる方法は、当業者に既知である(例えば、EGFR pharmDxTMKit(Dako))amd McDonagh et al.Mol Cancer Ther 2012;11:582を参照されたい)。同様の方法を使用して、ERBB4細胞表面受容体密度を決定し得る。
いくつかの実施形態では、ERBB1、ERBB2、ERBB3、及びERBB4細胞表面受容体密度は、生検腫瘍細胞に対してFACS分析によって決定される。
対象に投与される二重特異性抗体の量は、典型的には、治療窓内にあり、治療効果を得るために十分な量が使用されるが、量は、許容できない程度の副作用をもたらす閾値を超えないことを意味する。選択された投薬量レベルは、投与経路、投与時間、用いられる特定の化合物の排泄速度、治療期間、組み合わせて使用される他の薬物、化合物、及び/又は材料、治療される対象の年齢、性別、体重、状態、一般的な健康状態及び過去の病歴を含む様々な要因、並びに医学分野で周知の同様の要因に依存する。投薬量は、毎週、隔週又は3週ごとで200~1000mgの範囲にある。好ましくは、ERBB2×ERBB3を標的とする本開示の治療薬の投薬は、750mgの毎週、隔週、又は3週ごとの投与レジメン、好ましくは750mgの隔週、又は3週ごとの用量に従う。この投薬は、好ましくは、ERBB3変異を有する固形腫瘍を有するがんを有する対象においてであり、次いで、投薬レジメンは、400mgの毎週の一定量用量投与を含み、好ましくは、800mgの単回投与後に開始される。この代替投薬レジメンに続いて、本発明の二重特異性抗体は、好ましくは、400mgの毎週用量で3週間、続いて1週間投与なしで投与される。次いで、400mgの3週ごとの一定の投薬量、続く1週間投与内からなる4週間の期間の1つ以上のサイクルが続く。これは、好ましくは、治療効果が観察されるまで続く。本開示の投与レジメンは、4時間にわたる750mgの注入の初回投与後に開始される750mgの一定用量での隔週サイクル、続く4週間のサイクルでの750mgの隔週の2時間注入を含む。これは、好ましくは、治療効果が観察されるまで続く。
投薬は、好ましくは、完全用量に到達するために、好ましくは>360mgの抗体を投薬する場合、本発明の二重特異性抗体の2回の注入の静脈内注射を含む。代替的に、例えば、≦360mgの抗体を投薬する場合、より低い投薬量に対して、完全用量の単回注入を与えてもよい。注入関連反応を軽減するための投薬レジメンに前投薬が含まれる場合がある。
好ましくは、治療は、腫瘍の大きさ若しくは病変の点での安定化、又は腫瘍の低減を含む更なる腫瘍増殖の予防を含む。好ましくは、治療又は投与は、毎週のレジメンで本発明による二重特異性抗体を用いて行われ、少なくとも1、2、4、8、又は少なくとも12ヶ月間進行する。好ましくは、800mgの初回投与後に開始される毎週の400mgの均一用量での一週間サイクルを含む投薬レジメンに従う。3週目から、本発明の二重特異性抗体は、3週間、400mgの毎週用量、続いて1週間、本発明の二重特異性抗体の投与なしで投与される。代替的には、4時間にわたる750mgの注入の初回投与後に開始される750mgの一定用量での隔週サイクル、続く4週間のサイクルでの750mgの隔週の2時間注入を含む投与レジメンに従う。更なる代替法は、対象当たり750mgの一定用量の3週ごと投与を含む。
好ましくは、診断には、標的配列決定法を使用した分子プロファイリング、融合、挿入/欠失(インデル)、単一ヌクレオチドバリアント、及び/又はコピー数バリエーションを含む、最後の1つのバイオマーカーの分析が含まれる。好ましくは、ERBB3変異を有する腫瘍ゲノムは、KRAS、NRAS、PIK3CA、BRAFを含むがこれらに限定されない別の発がん性駆動因子を欠いているか、又は腫瘍細胞は、BRAF、EGFR、KRAS、cKIT-BRCA1-2、MET、ROS、RET、ALK、AKT1、ERBB4、NFE2L2、PTPN11、FBXW7、NRAS、RHOA、CTNNB1、HRAS、SF3B1、DICER1、KIT、PIK3CA、PIK3R1、SMAD4、PPP2R1A、VHL、ERBB2、MTOR、及びPTENからなる群から選択される1つ以上の遺伝子における発がん性変異の非存在を示す。
好ましくは、ERBB3変異を有する腫瘍ゲノムは、以下のがん増幅c-MET増幅、c-MYC増幅、EGFR増幅、ERBB2増幅、MDM2増幅を欠く。
好ましくは、ERBB3変異を有する腫瘍ゲノムは、PTEN損失を有しない。
好ましくは、疾患進行は、CTスキャンを使用することによる抗腫瘍活性の測定、並びに客観的全体応答効率(ORR)、応答期間(DOR)、無進行生存(PFS)及び生存を決定するRECIST v1.1による評価を含む。好ましくは、ERBB2の細胞外部分に結合する第1の抗原結合部位及びERBB3の細胞外部分に結合する第2の抗原結合部位を有する二重特異性抗体、特にMF3958×MF3178は、腫瘍のサイズ若しくは病変を安定化させるか、又は治療は更なる腫瘍増殖を防止する。好ましくは、治療は薬物関連毒性なしであるか、又は薬物関連であるか、若しくは薬物関連と疑われるグレード3~5の有害事象の発生が限定された良好な安全性プロファイルを有する。
二重特異性抗体は、薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤、並びに追加の任意の活性剤を含む医薬組成物として製剤化され得る。抗体及び抗体を含む組成物は、非経口、経腸、及び局所投与を含む任意の経路によって投与され得る。非経口投与は、通常、注射によるものであり、例えば、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、心室内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、嚢下、くも膜下、脊髄内、脳内脊髄内(intracerebro spinal)、腫瘍内、及び胸骨内の注射及び注入を含む。
本開示は、本明細書に記載の方法及び治療における使用のための二重特異性抗体を提供する。好適な二重特異性抗体は、ERBB2に結合する第1の抗原結合部位と、ERBB3に結合する第2の抗原結合部位と、を含む。二重特異性抗体は、ERBB2及びERBB3陽性細胞上のERBB3のリガンド誘導受容体機能を低減させる、又は低減させ得、及び/又はERBB2及びERBB3ヘテロ二量体化を破壊する。好ましい抗体及びそれらの調製は、WO2015/130173に開示され、それは参照により本明細書に組み込まれる。WO2015/130173の実施例は、リガンド結合及びエピトープマッピングなどの抗体のいくつかの特性を更に説明する。
本明細書で使用される場合、「対象」及び「患者」という用語は、互換的に使用され、ヒト、マウス、ラット、ハムスター、テンジクネズミ、ウサギ、ネコ、イヌ、サル、ウシ、ウマ、ブタなどの哺乳動物(例えば、がんを有するヒト患者などの患者)を指す。
本明細書で使用される「治療する」、「治療すること」、及び「治療」という用語は、疾患又はその症状の治癒又は改善目的のために、対象に行われるか、又は対象に活性薬剤又は活性薬剤の組み合わせを投与する任意の種類の介入又はプロセスを指す。これには、疾患に関連する症状、合併症、状態、又は生化学的兆候を逆転させる、緩和する、改善する、抑制する、又は遅延させること、並びに疾患に関連する症状、合併症、状態、又は生化学的兆候の発症、進行、発生、重症化、又は再発を予防することが含まれる。
本明細書で使用される場合、「有効な治療」又は「肯定的な治療応答」とは、有益な効果、例えば、疾患又は障害、例えば、がんの少なくとも1つの症状の改善をもたらす治療を指す。有益な効果は、その方法に従って治療を開始する前に行われた測定又は観察を上回る改善を含む、ベースラインを上回る改善の形態をとることができる。例えば、有益な効果は、疾患の臨床症状若しくは診断症状、又はがんのマーカーの軽減又は排除によって証明される、任意の臨床病期において対象におけるがんの進行を遅延させる、安定させる、停止する、又は逆転させる形態をとることができる。有効な治療は、例えば、腫瘍サイズを減少させ得る、循環腫瘍細胞の存在を減少させ得る、腫瘍の転移を軽減若しくは予防し得る、腫瘍成長を遅延させ得る若しくは停止させ得る、及び/又は腫瘍再発(recurrence)若しくは再発(relapse)を予防し得る若しくは遅延させ得る。
「治療量」又は「有効量」という用語は、所望の生物学的、治療的、及び/又は予防的結果を提供する薬剤又は薬剤の組み合わせの量を指す。その結果は、疾患の兆候、症状、若しくは原因のうちの1つ以上の軽減(reduction)、改善、寛解、軽減(lessening)、遅延、及び/若しくは緩和、又は生物系の任意の他の所望の変化とすることができる。いくつかの実施形態では、治療量は、腫瘍発生を遅延させるのに十分な量である。いくつかの実施形態では、治療量は、腫瘍再発を予防する又は遅延させるのに十分な量である。
治療量の薬物又は組成物は、(i)がん細胞の数を減少させ得る、(ii)腫瘍サイズを減少させ得る、(iii)がん細胞の末梢器官への浸潤を抑制し得る、遅延させ得る、ある程度遅延させ得る、かつ停止し得る、(iv)腫瘍転移を抑制し得る、(v)腫瘍成長を阻害し得る、(vi)腫瘍の発生及び/若しくは再発を予防し得る若しくは遅延させ得る、かつ/又は(vii)がんに関連する症状のうちの1つ以上をある程度軽減し得る。
治療量は、治療される個体の病状、年齢、性別、及び体重、並びに個体において所望の応答を誘発する薬剤又は薬剤の組み合わせの能力などの要因に応じて変化し得る。
治療量は、1回以上の投与で投与することができる。
治療量には、薬剤又は薬剤の組み合わせの任意の毒作用又は有害作用と、治療的に有益な効果とのバランスを保つ量も含まれる。」
本明細書で使用される場合、「抗原結合部位」という用語は、抗原に結合することができる二重特異性抗体に由来し、好ましくはそれに存在する部位を指す。抗原結合部位は、典型的には、抗体の可変ドメインによって形成され、抗体の可変ドメインに存在する。可変ドメインは、当該抗原結合部位を含有する。抗原結合部位は、通常の生理学的条件下で抗原に結合し得る。これは、多くの場合、抗原結合部位が抗原に「結合する」とも称される。
一実施形態では、抗体可変ドメインは、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含む。抗原結合部位は、組み合わされたVH/VL可変ドメイン又はVH領域のみ又はVL領域のみに存在し得る。抗原結合部位が可変ドメインの2つの領域のうちの1つのみに存在する場合、対応する可変領域は、結合可変領域の折り畳み及び/又は安定性に寄与し得るが、抗原自体の結合に顕著に寄与しない。
本明細書で使用される場合、抗原結合とは、抗体のその抗原への典型的な結合能力を指す。ERBB2に結合する抗原結合部位を含む抗体は、ERBB2に結合し、そうでなければ同一の条件下では、同じ種の相同受容体ERBB1及びERBB4に対して少なくとも100倍低く結合する。ERBB3に結合する抗原結合部位を含む抗体は、ERBB3に結合し、そうでなければ同一の条件下では、同じ種の相同受容体ERBB1及びERBB4に結合しない。
ErbBファミリーが細胞表面受容体のファミリーであることを考慮すると、結合は、典型的には、受容体を発現する細胞に対して評価される。抗原への抗体の結合は、様々な方法で評価され得る。1つの方法は、抗体を抗原(好ましくは、抗原を発現する細胞)とともにインキュベートし、非結合抗体を(好ましくは、洗浄ステップによって)除去し、結合した抗体に結合した標識された抗体によって結合した抗体を検出することである。
抗体による抗原結合は、典型的には、抗体のランダムで非特異的な付着とは対照的に、抗体の相補性領域並びに抗原及び可変ドメインの両方の特異的な三次元構造を介して媒介され、これらの2つの構造が精度(錠前及び鍵に類似する相互作用)で一緒に結合することを可能にする。抗体は、典型的には、抗原のエピトープを認識し、かかるエピトープは同じように他の化合物にも存在する可能性があるので、ERBB2及び/又はERBB3に結合する本発明による抗体は、かかる他の化合物が同じエピトープを含有する場合、同じように他のタンパク質も認識する可能性がある。したがって、「結合する」という用語は、同じエピトープを含有する別の1つ以上のタンパク質への抗体の結合を排除しない。かかる他のタンパク質は、好ましくは、ヒトタンパク質ではない。本明細書に定義されるERBB2抗原結合部位及びERBB3抗原結合部位は、典型的には、出生後、好ましくは成人のヒトにおいて、細胞の膜上の他のタンパク質に結合しない。
本明細書で使用される「結合を妨げる」という用語は、抗体がERBB3上のエピトープに指向され、抗体がERBB3への結合についてリガンドと競合することを意味する。抗体は、リガンド結合を弱め得るか、ERBB3にすでに結合している場合、リガンドを置き換え得るか、又は例えば、立体障害を介して、リガンドがERBB3に結合し得ることを少なくとも部分的に防止し得る。
本明細書で使用される「抗体」という用語は、好ましくは、抗原上のエピトープに結合する1つ以上の可変ドメインを含有する、タンパク質の免疫グロブリンクラスに属するタンパク質分子を意味し、かかるドメインは、抗体の可変領域を有する配列相同性に由来するか、又はその配列相同性を共有する。治療的使用のための抗体は、可能な限り治療される対象の天然抗体に近いことが好ましい(例えば、ヒト対象のためのヒト抗体)。抗体結合は、特異性及び親和性に関して表され得る。特異性は、どの抗原又はそのエピトープが結合ドメインによって特異的に結合されるかを決定する。親和性は、特定の抗原又はエピトープへの結合の強度の尺度である。本発明の二重特異性抗体のような抗体は、天然抗体の定常ドメイン(Fc部分)を含む。本発明の抗体は、典型的には、好ましくは、ヒトIgGサブクラスの二重特異性全長抗体である。好ましくは、本明細書に開示される抗体は、ヒトIgG1サブクラスのものである。かかる抗体は、ヒトへのインビボ投与時に好ましい半減期を有し、クローン細胞での共発現時にホモ二量体よりも優先的にヘテロ二量体を形成する修飾された重鎖を提供し得るCH3工学的技術有する、優れたADCC特性を有する。
本明細書に開示される抗体は、好ましくは、「全長」抗体である。本発明による「全長」という用語は、本質的に完全な抗体を含むと定義されるが、必ずしも無傷な抗体の全ての機能を有するわけではない。誤解を避けるために、全長抗体は、2つの重鎖及び2つの軽鎖を含有する。各鎖は、定常(C)領域及び可変(V)領域を含有し、これらは、CH1、CH2、CH3、VH、及びCL、VLと指定されたドメインに分類され得る(それぞれのドメインに好適なアミノ酸配列は、図6及び図7に示されている。抗体は、Fab部分に含まれる可変ドメインを介して抗原に結合し、結合後、定常ドメインを介して、主にFc部分を介して免疫系の分子及び細胞と相互作用することができる。「可変ドメイン」、「VH/VL対」、「VH/VL」という用語は、本明細書で互換的に使用される。本発明による全長抗体は、所望の特徴を提供する変異が存在し得る抗体を包含する。かかる変異は、領域のうちのいずれの実質的な部分の欠失を有してはならない。しかしながら、結果として得られた抗体の結合特性を本質的に変化させることなく、1つ以上のアミノ酸残基が欠失した抗体は、「全長抗体」という用語内に包含される。例えば、IgG抗体は、定常領域において1~20アミノ酸残基の挿入、欠失、又はそれらの組み合わせを有し得る。例えば、抗体自体が低いADCC活性を有する場合、抗体のADCC活性は、抗体の定常領域をわずかに修飾することにより、改善され得る(Junttila,T.T.,K.Parsons,et al.(2010).”Superior In vivo Efficacy of Afucosylated Trastuzumab in the Treatment of HER2-Amplified Breast Cancer.”Cancer Research 70(11):4481-4489)。
免疫原性の理由によりその好ましい半減期、及び完全に自己の(ヒト)分子の近いままでいる必要性のため、全長IgG抗体が好ましい。本明細書に開示される抗体は、好ましくは、二重特異性IgG抗体、好ましくは、二重特異性全長IgG1抗体である。IgG1は、ヒトにおけるその長い循環半減期に基づいて好まれている。ヒトにおける任意の免疫原性を予防するために、二重特異性IgG抗体がヒトIgG1であることが好ましい。
「二重特異性」(bs)という用語は、抗体の一部(上記で定義される)が抗原上の1つのエピトープに結合するが、第2の部分が異なるエピトープに結合することを意味する。異なるエピトープは、典型的には、異なる抗原上に存在する。二重特異性抗体の重鎖可変領域は、典型的には、互いに異なるが、軽鎖可変領域は、好ましくは同じである。異なる重鎖可変領域が同じ又は共通の軽鎖に会合している二重特異性抗体は、共通軽鎖を有する二重特異性抗体とも称される。本明細書に記載される二重特異性抗体は、典型的には、ERBB2に結合する1つの可変ドメインと、ERBB3に結合する別の可変ドメインと、を含む。
好ましい二重特異性抗体は、単一細胞内の2つの異なる重鎖及び共通軽鎖の共発現によって得られ得る。野生型CH3ドメインを使用する場合、2つの異なる重鎖と共通軽鎖の共発現は、3つの異なる種、AA、AB、及びBBをもたらすだろう。所望の二重特異性生成物(AB)のパーセンテージを増加させるために、CH3工学が用いられ得るか、又は言い換えれば、それは本明細書で定義される適合性ヘテロ二量体化ドメインを有する重鎖を使用し得る。好適な適合性CH3ヘテロ二量体化ドメインは、図7d及び7eに示される。
本明細書で使用される「適合性ヘテロ二量体化ドメイン」という用語は、操作されたドメインA’が優先的に操作されたドメインB’とヘテロ二量体を形成し、その逆もまた同様であるが、A’-A’及びB’-B’の間のホモ二量体化が減少するように操作されたタンパク質ドメインを指す。
「共通軽鎖」という用語は、同一であり得るか、又はいくつかのアミノ酸配列の差を有し得るが、全長抗体の結合特異性は影響を受けない軽鎖を指す。例えば、保存的アミノ酸変化、重鎖と対になった場合に結合特異性に寄与しないか、又は部分的にしか寄与しない領域におけるアミノ酸の変化などを導入すること及び試験することによって、同一ではないが依然として機能的に等価である軽鎖を調製するか、又は見つけることは、例えば、可能である。「再配列された」という用語の付加を伴うか否かにかかわらず、「共通軽鎖」、「共通VL」、「単一軽鎖」、「単一VL」という用語は全て、本明細書で互換的に使用される。
共通軽鎖(可変領域)は、好ましくは生殖系列配列を有する。好ましい生殖系列配列は、ヒトレパートリーで頻繁に使用され、良好な熱力学的安定性、収率、及び溶解性を有する軽鎖可変領域である。好ましい実施形態では、軽鎖は、図6に示すように、IgVκ1-39*01遺伝子セグメントのアミノ酸配列を含む軽鎖領域、より好ましくは、0~10個、好ましくは0~5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、付加又はそれらの組み合わせを有する共通軽鎖IGKV1-39/jk1を含む。IgVκ1-39は、免疫グロブリン可変カッパ1-39遺伝子の略である。この遺伝子は、免疫グロブリンカッパ可変1-39、IGKV139、又はIGKV1-39としても知られている。この遺伝子の外部Idは、HGNC:5740、Entrez Gene:28930、Ensembl:ENSG00000242371。IGKV1-39の可変領域を図6に示す。V領域は、5つのJ領域のうちの1つと組み合わせることができる。図6は、J領域と組み合わせたIgVκ1-39の2つの好ましい配列を記載する。合わせられた配列は、IGKV1-39/jk1及びIGKV1-39/jk5と示され、代替名は、IgVκ1-39*01/IGJκ1*01又はIgVκ1-39*01/IGJκ5*01(imgt.orgのIMGTデータベースワールドワイドウェブによる命名)である。
軽鎖可変領域を含むIgVκ1-39*01が生殖系列配列であることが好ましい。軽鎖可変領域を含むIGJκ1*01又は/IGJκ5*01が生殖系列配列であることが更に好ましい。好ましい実施形態では、IGKV1-39/jk1又はIGKV1-39/jk5軽鎖可変領域は生殖系列配列である。
好ましい実施形態では、軽鎖可変領域は、生殖系列IgVκ1-39*01を含む。好ましい実施形態では、軽鎖可変領域は、カッパ軽鎖IgVκ1-39*01/IGJκ1*01又はIgVκ1-39*01/IGJκ5*01を含む。好ましい実施形態では、IgVκ1-39*01/IGJκ1*01。軽鎖可変領域は、生殖系列カッパ軽鎖IgVκ1-39*01/IGJκ1*01又は生殖系列カッパ軽鎖IgVκ1-39*01/IGJκ5*01、好ましくは生殖系列IgVκ1-39*01/IGJκ1*01を含む。
当業者であれば、「共通」が、アミノ酸配列が同一ではない軽鎖の機能的等価物も指すことを認識するであろう。機能的結合領域の形成に実質的に影響を及ぼさない変異(欠失、置換、付加)が存在する当該軽鎖の多くのバリアントが存在する。軽鎖はまた、1~5個のアミノ酸の挿入、欠失、置換又はそれらの組み合わせを有する、本明細書において上記で特定された軽鎖であり得る。
好ましくは、第1の抗原結合部位及び当該第2の抗原結合部位の両方は、配列(RASQSISSYLN)を有するCDR1、配列(AASSLQS)を有するCDR2及び配列(QQSYSTPPT)を有するCDR3を含む軽鎖可変領域を含む。
本明細書に開示される抗体は、ERBB2及びERBB3陽性細胞上のERBB3のリガンド誘導受容体機能を低減させ得る。過剰なERBB2の存在下で、ERBB2/ERBB3ヘテロ二量体は、ヘテロ二量体内のERBB3鎖についての検出可能なリガンドの非存在下で、発現細胞に成長シグナルを提供し得る。このERBB3受容体機能は、本明細書では、ERBB3のリガンド非依存性受容体機能と称される。ERBB2/ERBB3ヘテロ二量体はまた、ERBB3リガンドの存在下で発現細胞に成長シグナルを提供する。このERBB3受容体機能は、本明細書では、ERBB3のリガンド誘導受容体機能と称される。
本明細書で使用される「ERBB3リガンド」という用語は、ERBB3に結合して活性化するポリペプチドを指す。ERBB3リガンドの例には、ニューレグリン1(NRG)及びニューレグリン2、ベータセルリン、ヘパリン結合表皮成長因子、及びエピレグリンが挙げられるが、これらに限定されない。この用語には、天然に生じるポリペプチドの生物学的に活性な断片及び/又はバリアントが含まれる。
好ましくは、ERBB3のリガンド誘導受容体機能は、ERBB2及びERBB3陽性細胞のERBB3リガンド誘導増殖である。好ましい実施形態では、当該細胞は、MCF-7細胞(ATCC(登録商標)HTB-22(商標))、SKBR3(ATCC(登録商標)HTB-30(商標))細胞、NCI-87(ATCC(登録商標)CRL-5822(商標))細胞、BxPC-3-luc2細胞(Perkin Elmer125058)、BT-474細胞(ATCC(登録商標)HTB-20(商標))、又はJIMT1細胞(DSMZ番号:ACC589)である。
ERBB2タンパク質は、いくつかのドメインを含有する(Landgraf,R Breast Cancer Res.2007;9(1):202-の参照図1を参照されたい)。細胞外ドメインは、ドメインI~IVと称される。本明細書に記載の抗体の抗原結合部位のそれぞれのドメインへの結合の場所がマッピングされている。ERBB2(第1の抗原結合部位)のドメインI又はドメインIVに結合する抗原結合部位(第1の抗原結合部位)を有する二重特異性抗体は、様々な軽鎖と組み合わせた場合、ERBB2に対する顕著な結合特異性及び親和性を維持する重鎖可変領域を含む。ERBB2(第1の抗原結合部位)のドメインI又はドメインIVに結合する抗原結合部位(第1の抗原結合部位)及びERBB3に対する抗原結合部位(第2の抗原結合部位)を有する二重特異性抗体は、ERBB2の別の細胞外ドメインに結合する抗原結合部位(第1の抗原結合部位)を含む二重特異性抗体と比較して、ERBB3のリガンド誘導受容体機能を低減させるのにより有効である。ERBB2に結合する抗原結合部位(第1の抗原結合部位)を含む二重特異性抗体であって、当該抗原結合部位は、ERBB2のドメインI又はドメインIVに結合することが好ましい、二重特異性抗体。好ましくは、当該抗原結合部位は、ERBB2のドメインIVに結合する。好ましい抗体は、ERBB2のドメインIに結合する第1の抗原結合部位と、ERBB3のドメインIIIに結合する第2の抗原結合部位と、を含む。
好ましい一実施形態では、当該抗体は、T144、T164、R166、P172、G179、S180、及びR181からなる群から選択されるERBB2のドメインIの少なくとも1つのアミノ酸、並びにT144、T164、R166、P172、G179、S180、又はR181からなる約5アミノ酸位以内に位置する表面曝露アミノ酸残基に結合する抗原結合部位を含む。
好ましい一実施形態では、当該抗体は、好ましくは、R426を含む群から選択されるERBB3のドメインIIIの少なくとも1つのアミノ酸、及び天然ERBB3タンパク質中のR426から11.2Å以内に位置する表面曝露アミノ酸残基に結合する抗原結合部位を含む。
ERBB2に結合し、更にADCCを含む抗原結合部位(第1の抗原結合部位)を有する二重特異性抗体は、特にインビボで、顕著なADCC活性を有しなかった他のERBB2結合抗体よりもより有効である。したがって、ADCCを示す二重特異性抗体が好ましい。より高い選択性で活性化受容体に結合するFc領域を(アミノ酸置換を導入することによって)操作することによって、抗がんMabによって所望される細胞傷害活性を媒介するより高い能力を有する抗体を作製することができる。
抗体のADCCを増強するための1つの技術は、アフコシル化である。(例えば、Junttila,T.T.,K.Parsons,et al.(2010).”Superior In vivo Efficacy of Afucosylated Trastuzumab in the Treatment of HER2-Amplified Breast Cancer.”Cancer Research 70(11):4481-4489を参照されたい)。したがって、アフコシル化された、本明細書で開示される二重特異性抗体が更に提供される。代替的に、又は追加的に、ADCCの増強を達成するために、例えば、糖鎖工学及び変異誘発を含む、複数の他の戦略を使用することができ、これらの全ては、低親和性活性化FcγRIIIaへのFc結合を改善すること、及び/又は低親和性阻害性FcγRIIbへの結合を低減することを目指すものである。
ADCCを誘発する際に抗体又はエフェクター細胞の有効性を決定するためのいくつかのインビトロ方法が存在する。それらの中には、クロム-51[Cr51]リリースアッセイ、ユウロピウム[Eu]リリースアッセイ、及び硫黄-35[S35]リリースアッセイが含まれる。通常、ある特定の表面が曝露された抗原を発現する標識標的細胞株は、その抗原に特異的な抗体とともにインキュベートされる。洗浄後、典型的には、Fc受容体CD16を発現するエフェクター細胞を、抗体標識標的細胞と共インキュベートする。続いて、典型的には、標的細胞溶解を、例えば、シンチレーションカウンター又は分光光度法による細胞内標識のリリースによって測定する。
好ましい二重特異性抗体では、ERBB3陽性細胞に対する当該第2の抗原結合部位の親和性は、ERBB2陽性細胞に対する当該第1の抗原結合部位の親和性と等しいか、又は好ましくはそれよりも高い。ERBB3陽性細胞に対する当該第2の抗原結合部位の親和性(KD)は、好ましくは、2.0nM以下、より好ましくは1.5nM以下、より好ましくは1.39nM以下、より好ましくは0.99nM以下である。好ましい一実施形態では、SK BR3細胞上のERBB3に対する当該第2の抗原結合部位の親和性は、2.0nM以下、より好ましくは1.5nM以下、より好ましくは1.39nM以下、好ましくは0.99nM以下である。一実施形態では、当該親和性は、1.39~0.59nMの範囲内にある。好ましい一実施形態では、BT474細胞上のERBB3に対する当該第2の抗原結合部位の親和性は、2.0nM以下、より好ましくは1.5nM以下、より好ましくは1.0nM以下、より好ましくは0.5nM以下、より好ましくは0.31nM以下、より好ましくは0.23nM以下である。一実施形態では、当該親和性は、0.31~0.15nMの範囲内にある。上記の親和性は、WO2015/130173の実施例に記載されるように、好ましくは、定常状態の細胞親和性測定を使用して測定され、細胞は、細胞結合放射能が測定された後、放射性標識抗体を使用して4℃でインキュベートされる。
ERBB2陽性細胞に対する当該第1の抗原結合部位の親和性(KD)は、好ましくは5.0nM以下、より好ましくは4.5nM以下、より好ましくは3.9nM以下である。好ましい一実施形態では、SK BR3細胞上のERBB2に対する当該第1の抗原結合部位の親和性は、5.0nM以下、好ましくは4.5nM以下、より好ましくは4.0nM以下、より好ましくは3.5nM以下、より好ましくは3.0nM以下、より好ましくは2.3nM以下である。一実施形態では、当該親和性は、3.0~1.6nMの範囲内にある。好ましい一実施形態では、BT474細胞上のERBB2に対する当該第1の抗原結合部位の親和性は、5.0nM以下、好ましくは4.5nM以下、より好ましくは3.9nM以下である。一実施形態では、当該親和性は、4.5~3.3nMの範囲内にある。上記の親和性は、WO2015/130173の実施例に記載されるように、好ましくは、定常状態の細胞親和性測定を使用して測定され、細胞は、細胞結合放射能が測定された後、放射性標識抗体を使用して4℃でインキュベートされる。
好ましくは、開示された方法において使用される二重特異性抗体は、心筋細胞の生存に顕著に影響を及ぼさない。心毒性は、ERBB2標的化療法における既知の危険因子であり、トラスツズマブをアントラサイクリンと併せて使用する場合、合併症の頻度が増加し、それによって心臓ストレスを誘導する。
本明細書に開示される二重特異性抗体は、好ましくは、ヒトにおいて使用される。したがって、好ましい抗体は、ヒト抗体又はヒト化抗体である。ポリペプチドに対するヒトの忍容は、多くの異なる態様によって管理される。T細胞媒介する、B細胞媒介する、又は他の免疫は、ポリペプチドに対するヒトの忍容に包含される変数のうちの1つである。二重特異性抗体の定常領域は、好ましくは、ヒト定常領域である。定常領域は、天然に生じるヒト抗体の定常領域と1つ以上、好ましくは10個以下、好ましくは5つ以下のアミノ酸差を含有し得る。定常部分が、天然に生じるヒト抗体に完全に由来することが好ましい。本明細書で産生される様々な抗体は、ヒト抗体可変ドメインライブラリに由来する。このように、これらの可変ドメインは、ヒトである。独自のCDR領域は、ヒトに由来し得るか、合成され得るか、又は別の生物に由来し得る。可変領域は、天然に生じるヒト抗体の可変領域のアミノ酸配列と同一であるが、CDR領域については、ヒト可変領域とみなされる。抗体中のERBB2結合VH、ERBB3結合VH、又は軽鎖の可変領域は、CDR領域のアミノ酸配列の可能な差をカウントしない、天然に生じるヒト抗体の可変領域と1つ以上、好ましくは、10個以下、好ましくは、5つ以下のアミノ酸の差を含有し得る。かかる変異はまた、体細胞超変異の文脈においても自然に生じる。
抗体は、少なくとも重鎖可変領域に関して、様々な動物種に由来し得る。そのような例えば、マウス重鎖可変領域をヒト化することが一般的な慣行である。これが達成され得る様々な方法があり、その中には、マウス重鎖可変領域の3D構造に一致する3D構造を有するヒト重鎖可変領域へのCDR移植;好ましくは、マウス重鎖可変領域から既知の又は疑わしいT細胞又はB細胞エピトープを除去することによって行われる、マウス重鎖可変領域の脱免疫がある。この除去は、典型的には、エピトープの配列は、それがもはやT細胞又はB細胞エピトープではないように修飾されるように、エピトープ中のアミノ酸のうちの1つ以上を別の(典型的には保存的な)アミノ酸に置換することによって行われる。
かかる脱免疫化マウス重鎖可変領域は、元のマウス重鎖可変領域よりもヒトにおいて免疫原性が低い。好ましくは、可変領域又はドメインは、例えば、ベニヤリングされるなど、更にヒト化される。ベニヤリング技術を使用することにより、免疫系によって容易に遭遇される外部残基を選択的にヒト残基に置き換えて、弱免疫原性又は実質的に非免疫原性のベニヤリング表面のいずれかを含むハイブリッド分子を提供する。本発明で使用される動物は、好ましくは、哺乳動物、より好ましくは、霊長類、最も好ましくは、ヒトである。
本明細書に開示される二重特異性抗体は、好ましくは、ヒト抗体の定常領域を含む。重鎖定常ドメインの違いによって、抗体は5つのクラス又はアイソタイプ:IgG、IgA、IgM、IgD、及びIgEに群分けされる。これらのクラス又はアイソタイプは、対応するギリシャ文字で命名された当該重鎖のうちの少なくとも1つを含む。好ましくは、定常領域は、IgG定常領域、より好ましくは、IgG1定常領域、好ましくは、変異型IgG1定常領域を含む。例えば、アロタイプG1m1、17、及びG1m3など、IgG1の定常領域のいくつかのバリエーションが天然に生じ、及び/又は結果として得られる抗体の免疫学的特性を変化させることなく許容される。典型的には、約1~10個のアミノ酸挿入、欠失、置換、又はそれらの組み合わせが、定常領域内で許容される。
本明細書で開示される好ましい二重特異性抗体は、
-MF2926、MF2930、MF1849、MF2973、MF3004、MF3958、MF2971、MF3025、MF2916、MF3991、MF3031、MF2889、MF2913、MF1847、MF3001、MF3003及びMF1898からなる群から選択されるERBB2特異的重鎖可変領域の少なくともCDR3配列、好ましくは少なくともCDR1、CDR2及びCDR3配列、又は少なくとも重鎖可変領域配列、あるいは、列挙された重鎖可変領域から多くとも15個のアミノ酸、好ましくは多くとも1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個のアミノ酸、より好ましくは多くとも1、2、3、4又は5個のアミノ酸が異なる重鎖可変領域配列、並びに/あるいは
-MF3178、MF3176、MF3163、MF3099、MF3307、MF6055、MF6056、MF6057、MF6058、MF6059、MF6060、MF6061、MF6062、MF6063、MF6064、MF6065、MF6066、MF6067、MF6068、MF6069、MF6070、MF6071、MF6072、MF6073及びMF6074からなる群から選択されるERBB3特異的重鎖可変領域の少なくともCDR3配列、好ましくは少なくともCDR1、CDR2及びCDR3配列、又は少なくとも重鎖可変領域配列、あるいは、列挙された重鎖可変領域から多くとも15個のアミノ酸、好ましくは多くとも1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個のアミノ酸、より好ましくは多くとも1、2、3、4又は5個のアミノ酸が異なる重鎖可変領域配列を含む。
CDR配列は、例えば、最適化の目的で、好ましくは抗体の結合効率又は安定性を改善するために変更される。最適化は、例えば、結果として得られる抗体の安定性及び/又は結合親和性が好ましくは験され、かつ改善されたERBB2又はERBB3特異的CDR配列が好ましくは選択された後に、変異誘発手順によって実施される。当業者は、少なくとも1つの改変されたCDR配列を含む抗体バリアントを良好に生成することができる。例えば、保存的アミノ酸置換が適用される。保存的アミノ酸置換の例としては、1つの疎水性残基、例えば、イソロイシン、バリン、ロイシン、又はメチオニンを別の疎水性残基への置換、及び1つの極性残基の別の極性残基への置換、例えば、アルギニンのリジンへの置換、グルタミン酸のアスパラギン酸への置換、又はグルタミンのアスパラギンへの置換が挙げられる。
好ましい抗体は、ERBB2に結合する可変ドメインを含み、当該可変ドメインのVH鎖は、VH鎖MF2926、MF2930、MF1849、MF2973、MF3004、MF3958(ヒト化されたMF2971である)、MF2971、MF3025、MF2916、MF3991(ヒト化されたMF3004である)、MF3031、MF2889、MF2913、MF1847、MF3001、MF3003若しくはMF1898のアミノ酸配列を含むか、又は上記のVH鎖配列に関して、多くとも15個、好ましくは多くとも1、2、3、4、5、6、7、8、9若しくは10個、より好ましくは多くとも1、2、3、4若しくは5個のアミノ酸挿入、欠失、置換若しくはそれらの組み合わせを有する、VH鎖MF2926、MF2930、MF1849、MF2973、MF3004、MF3958(ヒト化されたMF2971である)、MF2971、MF3025、MF2916、MF3991(ヒト化されたMF3004である)、MF3031、MF2889、MF2913、MF1847、MF3001、MF3003若しくはMF1898を含む。ERBB2に結合する可変ドメインのVH鎖は、好ましくは、以下のアミノ酸配列を含む:
-MF1849、又は
-MF2971又はそのヒト化バージョン(当該ヒト化バージョンが、好ましくはMF3958のアミノ酸配列を含む)、又は
-MF3004又はそのヒト化バージョン(当該ヒト化バージョンが、好ましくはMF3991のアミノ酸配列を含む)。一実施形態では、ERBB2に結合する可変ドメインのVH鎖は、VH鎖MF1849のアミノ酸配列;又はMF2971若しくはそのヒト化バージョン(当該ヒト化バージョンは、好ましくは、MF3958のアミノ酸配列を含む);又はMF3004若しくはそのヒト化バージョン(当該ヒト化バージョンは、好ましくは、MF3991のアミノ酸配列を含む)含み、列挙されたVH配列は、それぞれの配列に関して、多くとも15個、好ましくは多くとも1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個、より好ましくは多くとも1、2、3、4又は5個のアミノ酸挿入、欠失、置換又はそれらの組み合わせを有する。好ましい実施形態では、ERBB2に結合する可変ドメインのVH鎖は、MF3958のアミノ酸配列を含むか、又はVH鎖配列に関して、多くとも15個、好ましくは多くとも1、2、3、4、5、6、7、8、9若しくは10個、より好ましくは多くとも1、2、3、4若しくは5個のアミノ酸挿入、欠失、置換若しくはそれらの組み合わせを有するMF3958のアミノ酸配列を含む。
ERBB3に結合する可変ドメインのVH鎖は、好ましくは、VH鎖MF3178、MF3176、MF3163、MF3099、MF3307、MF6055、MF6056、MF6057、MF6058、MF6059、MF6060、MF6061、MF6062、MF6063、MF6064、MF6065、MF6066、MF6067、MF6068、MF6069、MF6070、MF6071、MF6072、MF6073若しくはMF6074のアミノ酸配列を含むか、又はVH鎖配列に関して、多くとも15個、好ましくは多くとも1、2、3、4、5、6、7、8、9若しくは10個、より好ましくは多くとも1、2、3、4若しくは5個のアミノ酸挿入、欠失、置換若しくはそれらの組み合わせを有するVH鎖MF3178、MF3176、MF3163、MF3099、MF3307、MF6055、MF6056、MF6057、MF6058、MF6059、MF6060、MF6061、MF6062、MF6063、MF6064、MF6065、MF6066、MF6067、MF6068、MF6069、MF6070、MF6071、MF6072、MF6073若しくはMF6074のアミノ酸配列を有する。ERBB3に結合する可変ドメインのVH鎖は、好ましくは、MF3178、MF3176、MF3163、MF6058、MF6061、若しくはMF6065のアミノ酸配列を含むか、又は、それぞれのVH鎖配列に関して、多くとも15個、好ましくは多くとも1、2、3、4、5、6、7、8、9若しくは10個、より好ましくは多くとも1、2、3、4若しくは5個のアミノ酸挿入、欠失、置換若しくはそれらの組み合わせを有するMF3178、MF3176、MF3163、MF6058、MF6061、若しくはMF6065のアミノ酸配列を含む。好ましい実施形態では、ERBB3に結合する可変ドメインのVH鎖は、MF3178のアミノ酸配列を含むか、又はVH鎖配列に関して、多くとも15個、好ましくは多くとも1、2、3、4、5、6、7、8、9若しくは10個、より好ましくは多くとも1、2、3、4若しくは5個のアミノ酸挿入、欠失、置換若しくはそれらの組み合わせを有するMF3178のアミノ酸配列を含む。好ましくは、上記のアミノ酸挿入、欠失及び置換は、CDR3領域に存在しない。上記のアミノ酸挿入、欠失及び置換はまた、好ましくは、CDR1及びCDR2領域に存在しない。上記のアミノ酸挿入、欠失及び置換はまた、好ましくは、FR4領域に存在しない。
好ましくは、抗体は、MF1849、MF2971、MF3958、MF3004、又はMF3991の少なくともCDR1、CDR2、及びCDR3配列、最も好ましくは、MF3958の少なくともCDR1、CDR2、及びCDR3配列を含む。当該抗体は、好ましくは、MF3178、MF3176、MF3163、MF6058、MF6061、又はMF6065の少なくともCDR1、CDR2、及びCDR3配列、最も好ましくは、MF3178の少なくともCDR1、CDR2、及びCDR3配列を含む。
好ましくは、ERBB2特異的重鎖可変領域は、当該VHに関して、多くとも15個、好ましくは多くとも1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個、より好ましくは多くとも1、2、3、4又は5個のアミノ酸挿入、欠失、置換又はそれらの組み合わせを有するVH鎖MF3958のアミノ酸配列を含む(好ましくは、当該挿入、欠失、置換は、CDR1、CDR2、又はCDR3に存在しない)。これらは、好ましくは、FR4領域に存在しない。アミノ酸置換は、好ましくは、保存的アミノ酸置換である。
好ましくは、ERBB3特異的重鎖可変領域は、当該VHに関して、多くとも15個、好ましくは多くとも1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個、より好ましくは多くとも1、2、3、4又は5個のアミノ酸挿入、欠失、置換又はそれらの組み合わせを有するVH鎖MF3178のアミノ酸配列を含む。1つ以上のアミノ酸挿入、欠失、置換、又はそれらの組み合わせは、好ましくは、VH鎖のCDR1、CDR2、及びCDR3領域に存在しない。これらは、好ましくは、FR4領域に存在しない。アミノ酸置換は、好ましくは、保存的アミノ酸置換である。
好ましくは、ERBB2特異的重鎖可変領域は、当該VHに関して、多くとも15個、好ましくは多くとも1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個、より好ましくは多くとも1、2、3、4又は5個のアミノ酸挿入、欠失、置換又はそれらの組み合わせを有するVH鎖MF3991のアミノ酸配列を含む(好ましくは、当該挿入、欠失、置換は、CDR1、CDR2、又はCDR3に存在しない)。これらは、好ましくは、FR4領域に存在しない。アミノ酸置換は、好ましくは、保存的アミノ酸置換である。
好ましくは、ERBB3特異的重鎖可変領域は、当該VHに関して、多くとも15個、好ましくは多くとも1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個、より好ましくは多くとも1、2、3、4又は5個のアミノ酸挿入、欠失、置換又はそれらの組み合わせを有するVH鎖MF3178のアミノ酸配列を含む。1つ以上のアミノ酸挿入、欠失、置換、又はそれらの組み合わせは、好ましくは、VH鎖のCDR1、CDR2、及びCDR3領域に存在しない。これらは、好ましくは、FR4領域に存在しない。アミノ酸置換は、好ましくは、保存的アミノ酸置換である。
好ましくは、抗体の第1の抗原結合部位は、MF3958の少なくともCDR1、CDR2、及びCDR3配列、又はMF3958のCDR1、CDR2、及びCDR3配列から多くとも3つ、好ましくは多くとも2つ、好ましくは多くとも1つのアミノ酸が異なるCDR1、CDR2、及びCDR3配列を含み、当該第2の抗原結合部位は、MF3178の少なくともCDR1、CDR2、及びCDR3配列、又はMF3178のCDR1、CDR2、及びCDR3配列から多くとも3つ、好ましくは多くとも2つ、好ましくは多くとも1つのアミノ酸が異なるCDR1、CDR2、及びCDR3配列を含む。
好ましくは、二重特異性抗体は、i)MF3958のCDR1、CDR2、及びCDR3配列を含むERBB2特異的重鎖可変領域並びに軽鎖可変領域を含む第1の抗原結合部位と、ii)MF3178のCDR1、CDR2、及びCDR3配列を含むERBB3特異的重鎖可変領域並びに軽鎖可変領域を含む第2の抗原結合部位と、を含む。
好ましくは、ERBB2特異的重鎖可変領域は、MF3958配列を有し、ERBB3特異的重鎖可変領域は、MF3178配列を有する。この組み合わせは、PB4188抗体とも称される。好ましくは、PB4188抗体は、脱フコシル化されている。
好ましくは、二重特異性抗体は、図8aに示す「ERBB2結合のための重鎖」及び図8bに示す「ERBB3結合のための重鎖」を含む。
好ましくは、二重特異性抗体の抗原結合部位は、本明細書で定義される共通軽鎖、好ましくは生殖系列共通軽鎖、好ましくは再配列された生殖系列ヒトカッパ軽鎖IgVκ1-39*01/IGJκ1*01、又はそれらの断片若しくは機能的誘導体(imgt.orgのIMGTデータベースワールドワイドウェブによる命名)を含む。再配列された生殖系列ヒトカッパ軽鎖IgVκ1-39*01/IGJκ1*01、IGKV1-39/IGKJ1、huVκ1-39軽鎖又は短いhuVκ1-39という用語が使用される。軽鎖は、1、2、3、4又は5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、又はそれらの組み合わせを有し得る。言及された1、2、3、4又は5個のアミノ酸置換は、好ましくは、保存的アミノ酸置換であり、挿入、欠失、置換、又はそれらの組み合わせは、好ましくは、VL鎖のCDR3領域に存在せず、好ましくは、VL鎖のCDR1、CDR2又はCDR3領域又はFR4領域に存在しない。好ましくは、第1の抗原結合部位及び第2の抗原結合部位は、同じ軽鎖可変領域、又はむしろ共通軽鎖を含む。好ましくは、軽鎖可変領域は、配列(RASQSISSYLN)を有するCDR1、配列(AASSLQS)を有するCDR2及び配列(QQSYSTPPT)を有するCDR3を含む。好ましくは、軽鎖可変領域は、図6に示される共通軽鎖配列を含む。
二重特異性抗体を産生するための様々な方法が利用可能であり、WO2015/130173で論じられている。1つの方法は、細胞における2つの異なる重鎖及び2つの異なる軽鎖の発現を含み、細胞によって産生される抗体を収集する。このようにして産生された抗体は、典型的には、重鎖及び軽鎖の異なる組み合わせを有する抗体の集合を含有し、そのうちのいくつかは、所望の二重特異性抗体である。二重特異性抗体は、その後、収集物から精製され得る。
細胞によって産生される他の抗体に対する二重特異性の比率は、様々な方法で増加され得る。好ましくは、比率は、細胞内で2つの異なる軽鎖ではなく、2つの本質的に同一の軽鎖を発現することによって増加される。この概念は、当技術分野では、「共通軽鎖」法とも称される。本質的に同一の軽鎖が、異なる抗原結合部位及び併存する異なる結合特性を有する可変ドメインの形成を可能にする2つの異なる重鎖とともに作用する場合、細胞によって産生される他の抗体に対する二重特異性抗体の比率は、2つの異なる軽鎖の発現に対して顕著に改善される。細胞によって産生される二重特異性抗体の比率は、2つの異なる重鎖の互いの対合を、2つの同一の重鎖の対合に対して刺激することによって更に改善され得る。当該技術分野では、かかる重鎖のヘテロ二量体化が達成され得る様々な方法が記載されている。好ましい方法は、PCT出願番号第PCT/NL2013/050294号(WO2013/157954A1)に記載されており、それは参照により本明細書に組み込まれる。単一細胞から二重特異性抗体を産生するための方法及び手段が開示されており、それにより、単一特異性抗体の形成よりも二重特異性抗体の形成を有利にする手段が提供される。
明確さ及び簡潔な説明の目的のために、特徴は、同じ又は別個の実施形態の一部として本明細書に記載されるが、本発明の範囲は、記載される特徴の全て又はいくつかの組み合わせを有する実施形態を含み得ることが理解されるであろう。

1.ERBB3変異を有するがんの治療を必要とする対象におけるその治療の方法における使用のための、ERBB2の細胞外部分に結合することができる抗原結合部位と、ERBB3の細胞外部分に結合することができる抗原結合部位と、を含む、二重特異性抗体。
2.ERBB3変異を有するがんを有する対象の治療の方法であって、ERBB2の細胞外部分に結合することができる抗原結合部位と、ERBB3の細胞外部分に結合することができる抗原結合部位と、を含む二重特異性抗体を投与することを含む、方法。
3.二重特異性抗体が、ERBB2のドメインIに結合する第1の抗原結合部位と、ERBB3のドメインIIIに結合する第2の抗原結合部位と、を含む、先行項のいずれか一項に記載の方法。
4.二重特異性抗体が、
i)MF2926、MF2930、MF1849、MF2973、MF3004、MF3958、MF2971、MF3025、MF2916、MF3991、MF3031、MF2889、MF2913、MF1847、MF3001、MF3003及びMF1898からなる群から選択されるERBB2特異的重鎖可変領域の少なくともCDR1、CDR2、及びCDR3配列を含むか、又は当該抗体が、MF2926、MF2930、MF1849、MF2973、MF3004、MF3958、MF2971、MF3025、MF2916、MF3991、MF3031、MF2889、MF2913、MF1847、MF3001、MF3003若しくはMF1898のCDR1、CDR2及びCDR3配列から多くとも3つのアミノ酸、好ましくは多くとも2つのアミノ酸、好ましくは多くとも1つのアミノ酸が異なるCDR配列を含み、かつ/又は
ii)MF3178、MF3176、MF3163、MF3099、MF3307、MF6055、MF6056、MF6057、MF6058、MF6059、MF6060、MF6061、MF6062、MF6063、MF6064、MF6065、MF6066、MF6067、MF6068、MF6069、MF6070、MF6071、MF6072、MF6073及びMF6074からなる群から選択されるERBB3特異的重鎖可変領域の少なくともCDR1、CDR2及びCDR3配列を含むか、又は当該抗体が、MF3178、MF3176、MF3163、MF3099、MF3307、MF6055、MF6056、MF6057、MF6058、MF6059、MF6060、MF6061、MF6062、MF6063、MF6064、MF6065、MF6066、MF6067、MF6068、MF6069、MF6070、MF6071、MF6072、MF6073若しくはMF6074のCDR1、CDR2及びCDR3配列から多くとも3つアミノ酸、好ましくは多くとも2つのアミノ酸、好ましくは多くとも1つのアミノ酸が異なるCDR配列を含む、先行項のいずれか一項に記載の方法。
5.二重特異性抗体が、
i)MF2926、MF2930、MF1849、MF2973、MF3004、MF3958、MF2971、MF3025、MF2916、MF3991、MF3031、MF2889、MF2913、MF1847、MF3001、MF3003及びMF1898の重鎖可変領域配列からなる群から選択されるERBB2特異的重鎖可変領域配列を含むか、又は当該抗体が、MF2926、MF2930、MF1849、MF2973、MF3004、MF3958、MF2971、MF3025、MF2916、MF3991、MF3031、MF2889、MF2913、MF1847、MF3001、MF3003若しくはMF1898の重鎖可変領域配列から多くとも15個のアミノ酸が異なる重鎖可変領域配列を含み、かつ/又は
ii)MF3178、MF3176、MF3163、MF3099、MF3307、MF6055、MF6056、MF6057、MF6058、MF6059、MF6060、MF6061、MF6062、MF6063、MF6064、MF6065、MF6066、MF6067、MF6068、MF6069、MF6070、MF6071、MF6072、MF6073及びMF6074の重鎖可変領域配列からなる群から選択されるERBB3特異的重鎖可変領域配列を含むか、又は当該抗体が、MF3178、MF3176、MF3163、MF3099、MF3307、MF6055、MF6056、MF6057、MF6058、MF6059、MF6060、MF6061、MF6062、MF6063、MF6064、MF6065、MF6066、MF6067、MF6068、MF6069、MF6070、MF6071、MF6072、MF6073若しくはMF6074の重鎖可変領域配列から多くとも15個のアミノ酸が異なる重鎖可変領域配列を含む、先行項のいずれか一項に記載の方法。
6.二重特異性抗体が、重鎖可変領域MF3958及びMF3178を含む、先行項のいずれか一項に記載の方法。
7.二重特異性抗体が、当該第1の抗原結合部位を含む可変ドメインを含み、当該二重特異性抗体の当該第2の抗原結合部位を含む可変ドメインが、好ましくは、KABAT番号付けによるか、又はIMGT番号付けシステムによる、配列(RASQSISSYLN)を有するCDR1、配列(AASSLQS)を有するCDR2及び配列(QQSYSTPPT)を有するCDR3を含み、当該軽鎖可変領域のCDRが、それぞれ、QSISSY、AAS及びQQSYSTPPTである、先行項のいずれか一項に記載の方法。
8.ERBB3変異を有するがんが、結腸直腸がん、胃がん、非小細胞肺がん(NSCLC)腺がん(アデノ)、NSCLC扁平上皮がん、腎がん、黒色腫、卵巣がん、肺大細胞がん、食道がん、小細胞肺がん、肝細胞がん(HCC)、乳がん、ホルモン陽性乳がん、膠芽細胞腫、及び頭頸部がん、胃腺がん又は食道胃がん、膵臓がん、膵管腺がん、肉腫、膀胱がん、胆嚢がん、頭頸部がん、前立腺がん、子宮/子宮内膜がん、浸潤性粘液腺がんを含む非小細胞肺がんなどの肺がんである、先行項のいずれか一項に記載の方法。
9.ERBB3変異が、ERBB3のドメインI、II、III又はIVにおける変異を含む、先行項のいずれか一項に記載の方法。
10.ERBB3変異が、細胞内ドメインにおける、好ましくはチロシンキナーゼドメインにおける、好ましくは、710~964の範囲のアミノ酸残基に関与する、好ましくは、Q809、S846、Q865、又はE928位での、変異を含む、先行項のいずれか一項に記載の方法。
11.ERBB3変異が、ERBB2及びERBB3のリガンド非依存性ヘテロ二量体化を引き起こす変異を含む、先行項のいずれか一項に記載の方法。
12.変異が、PI3K経路を促進する、項11に記載の方法。
13.ERBB3変異が、ERBB3の細胞外ドメインにおける変異を含む、先行項のいずれか一項に記載の方法。
14.ERBB3変異が、ERBB3の細胞内ドメインにおける変異を含む、先行項のいずれか一項に記載の方法。
15.ERBB3における変異が、配列番号1に記載の非変異配列に対する変異である、先行項のいずれか一項に記載の方法。
16.ERBB3変異が、以下の変異
M60N(Nは任意の天然に生じるアミノ酸、好ましくはKである)、
M91N(Nは任意の天然に生じるアミノ酸、好ましくはIである)、
R103N(Nは任意の天然に生じるアミノ酸、好ましくはGである)、
V104N(Nは任意の天然に生じるアミノ酸、好ましくはL又はMである)、
R135N(Nは任意の天然に生じるアミノ酸、好ましくはCである)、
F219N(Nは任意の天然に生じるアミノ酸、好ましくはLである)、
H228N(Nは任意の天然に生じるアミノ酸、好ましくはQである)、
A232N(Nは任意の天然に生じるアミノ酸、好ましくはVである)、
P262N(Nは任意の天然に生じるアミノ酸、好ましくはH又はL又はSである)、
G284N(Nは任意の天然に生じるアミノ酸、好ましくはRである)、
D297N(Nは任意の天然に生じるアミノ酸、好ましくはY又はA又はH又はN又はVである)、
K329N(Nは任意の天然に生じるアミノ酸、好ましくはE又はI又はTである)、
E332N(Nは任意の天然に生じるアミノ酸、好ましくはKである)、
T355N(Nは任意の天然に生じるアミノ酸、好ましくはA又はI又はPである)、
R475N(Nは任意の天然に生じるアミノ酸、好ましくはWである)、
Q809N(Nは任意の天然に生じるアミノ酸、好ましくはRである)、
S846N(Nは任意の天然に生じるアミノ酸、好ましくはIである)、
Q865N(Nは任意の天然に生じるアミノ酸、好ましくはHである)、
E928N(Nは任意の天然に生じるアミノ酸、好ましくはGである)のうちの1つ以上を含む、先行項のいずれか一項に記載の方法。
17.ERBB3が、R426で変異を有しない、先行項のいずれか一項に記載の方法。
18.がんが、BRAF、EGFR、KRAS、cKIT-BRCA1-2、MET、ROS、RET、ALK、AKT1、ERBB4、NFE2L2、PTPN11、FBXW7、NRAS、RHOA、CTNNB1、HRAS、SF3B1、DICER1、KIT、PIK3CA、PIK3R1、SMAD4、PPP2R1A、VHL、ERBB2、MTOR、及びPTENを含む群から選択される1つ以上の遺伝子における検出可能な変異を欠く、先行項のいずれか一項に記載の方法。
19.がんが、c-MET、c-MYC、EGFR、ERBB2、及びMDM2増幅を含む群から選択される1つ以上の遺伝子における検出可能な増幅を欠く、先行項のいずれか一項に記載の方法。
20.がんが、検出可能なPTEN損失を有しない、先行項のいずれか一項に記載の方法。
21.二重特異性抗体の投与が、当該対象におけるERBB3変異を有するがんの治療のための第一選択療法を含む、先行項のいずれか一項に記載の方法。
22.がんが、対象が前の治療を受けた後に進行した、項1~20のいずれか一項に記載の方法。
23.前の治療が、化学療法、チェックポイント阻害剤療法(抗PD1及び抗PD-L1承認療法並びに臨床開発における適用可能な療法を含む)、抗ERBB2若しくは抗ERBB3若しくは抗VEGFR2(血管内皮成長因子受容体2)、又はERBB2若しくはVEGFR2-TIE2のチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)での前の治療、あるいはTKI又は上記のうちのいずれかの組み合わせを含む、項22に記載の方法。
24.化学療法が、ゲムシタビン、カペシタビン、カルボプラチン、ドセタキセル若しくはパクリタキセルなどのタキサン、5-フルオロウラシル(放射線療法の有無にかかわらず)、ビノレルビン、カルムスチン、ドキソルビシン、エピルビシン、ミトキサントロン、ビンブラスチン、シスプラチン(又はペメトレキセド)、オキサリプラチン、カルボプラチン、イホスファミド、マイトマイシンC、ビンデシン、エトポシド、フォルフォックス(Folfox)(すなわち、5-フルオロウラシル、ロイコボリン、及びオキサリプラチンの組み合わせ)若しくはフォルフィリ(Folfiri)(すなわち、ロイコボリン、5-フルオロウラシル及びイリノテカンの組み合わせ)、フォルフィリノックス(Folfirinox)(ロイコボリン、5-フルオロウラシル、イリノテカン及びオキサリプラチンの組み合わせ)、又はそれらの任意の組み合わせを含む、項23に記載の方法。
25.本発明によるチェックポイント阻害剤療法が、抗PD1、抗PD-L1、及び抗CTLA4治療部分を含み、好ましくは、イピリムマブ、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ若しくはセミプリマブ、又はそれらの任意の組み合わせを含む、項23に記載の方法。
26.TKIが、ラパチニブ、カネルチニブ、ネラチニブ、ツカチニブ(イルビニチニブ(irbinitinib))、CP-724714、タルロキシチニブ(tarloxitinib)、ムブリチニブ、アファチニブ、バルリチニブ(varlitinib)、及びダコミチニブ、アファチニブ、又はそれらの任意の組み合わせである、項23に記載の方法。
27.VEGFR2標的化された治療が、ラムシルマブ又はレゴラフェニブである、項23に記載の方法。
28.がんが、ERBB3タンパク質における変異A232Vを含む、先行項のいずれか一項に記載の方法。
29.がんが、ERBB3タンパク質における変異A232Vを含む膀胱がんである、先行項のいずれか一項に記載の方法。
30.がんが、ERBB3タンパク質における変異V104Mを含む、先行項のいずれか一項に記載の方法。
31.がんが、ERBB3タンパク質における変異V104Mを含む、明細胞がんなどの卵巣がんである、先行項のいずれか一項に記載の方法。
本明細書で使用される場合、Xが独立して数字0~9である「MFXXXX」は、可変ドメインを含むFabを指し、VHは、図8に示される4桁によって特定されるアミノ酸配列を有する。別段の指示がない限り、軽鎖可変領域は、典型的には、図6bの配列を有する。実施例における軽鎖定常領域は、図6cに示される配列を有する。「MFXXXX VH」は、4桁で識別されるVHのアミノ酸配列を指す。MFは、更に、軽鎖の定常領域と、通常、軽鎖の定常領域と相互作用する重鎖の定常領域と、を含む。重鎖のVH/可変領域は異なり、典型的には、CH3領域も異なり、重鎖の一方はそのCH3ドメインのKK変異を有し、他方はそのCH3ドメインの相補的DE変異を有する(参考PCT/NL2013/050294(WO2013/157954として公開)、並びに図7d及び図7eを参照されたい)。実施例における二重特異性抗体は、図7に示されるKK/DE CH3ヘテロ二量体化ドメイン、CH2ドメイン、及びCH1ドメインを有するFc尾部、図6aに示される共通軽鎖、及びMF番号によって指定されるVHを有する。
実施例1:
ERBB2発現BAF3細胞の生存を誘導するERBB3変異の能力、及びERBB2-BAF3細胞の変異体ERBB3誘導生存を戻す、MF3958×MF3178を含むERBB2×ERBB3二重特異性抗体の能力は、Jaiswal et al.Vol.23,Issue 5,Cancer Cell(2013)に記載されるように本質的に評価され、実施される。
ERBB2:BAF3-ERBB2(WT)/ERBB3(WT)で実施されたヘレグリン(HRG)滴定で、ERBB3 BAF3及び19点変異細胞株を作製する。
MF3958×MF3178を含むERBB2×ERBB3二重特異性抗体滴定を、最大生存刺激をもたらすHRG濃度(有効濃度、EC100)の存在下で、BAF3-ERBB2(WT)/ERBB3(WT)に対して実施する。
モデル系は、ERBB2×ERBB3二重特異性抗体(MF3958×MF3178(前の実験で決定したEC100)を含む)で、WT及び変異細胞株で処理される。
プロジェクトは以下からなる:
1.ERBB2-wt及びERBB3-wtの両方を発現するBAF3細胞ヘレグリン滴定のヘレグリン滴定曲線は、合計9濃度で、0.3ng/mlから開始する。
2.MF3958×MF3178を含むERBB2×ERBB3二重特異性抗体の滴定により、ステップ1で決定された、EC100でのヘレグリンの存在下で、ERBB2-wt及びERBB3-wtの両方を発現するBAF3細胞について、曲線を描く。
MF3958×MF3178については、BAF3-ERBB2(WT)/ERBB3(WT)に対して、合計9濃度で、0.03ng/mlからの開始濃度を使用する。
3.ERBB3変異体構築物が生成され、ERBB2発現BAF3中でERBB3変異体構築物を発現する。全ての細胞株におけるERBB2及びERBB3の両方の発現レベルは、FACSによって検証される。
以下のERBB3変異細胞株を作製する:
A232V
D297Y
E332K
E928G
F219L
G284R
H228Q
K329E
M60K
M91I
Q809R
Q865H
R103G
R135C
R475W
S846I
T355I
V104L
V104M
4.モデル系を、MF3958×MF3178(EC100)を含むERBB2×ERBB3二重特異性抗体で処理する。生成された全てのモデル系を、ステップ2で決定されたMF3958×MF3178(EC100)及びPBS(ビヒクル対照)で処理する。二重特異性抗体での処理は、示されるように、Her3変異体での形質転換細胞株における細胞増殖の阻害を示す。
実施例2:
ERBB3変異を有する固形腫瘍患者における、ERBB2及びERBB3を標的とする全長IgG1二重特異性抗体である二重特異性抗体MF3958×MF3178を用いた臨床研究
研究期間:
研究の用量漸増部(第1部)では、28人の患者が募集された。研究の第2部は、用量拡大段階である。第2部の合計期間は約25~32ヶ月であるが、実際の期間は、いくつかの変数、例えば、全体的な対象の募集率の影響を受ける。
患者数:
第1部には28人の患者が登録された。第2部について、少なくとも20人の評価可能な患者、及び最大約40人の患者が、以下のうちのいずれか1つを含むERBB3変異を含む、文書化されたERBB3変異を有する群に登録され得る:
M60N(Nは任意の天然に生じるアミノ酸、好ましくはKである)、
M91N(Nは任意の天然に生じるアミノ酸、好ましくはIである)、
R103N(Nは任意の天然に生じるアミノ酸、好ましくはGである)、
V104N(Nは任意の天然に生じるアミノ酸、好ましくはL又はMである)、
R135N(Nは任意の天然に生じるアミノ酸、好ましくはCである)、
F219N(Nは任意の天然に生じるアミノ酸、好ましくはLである)、
H228N(Nは任意の天然に生じるアミノ酸、好ましくはQである)、
A232N(Nは任意の天然に生じるアミノ酸、好ましくはVである)、
P262N(Nは任意の天然に生じるアミノ酸、好ましくはH又はL又はSである)
G284N(Nは任意の天然に生じるアミノ酸、好ましくはRである)、
D297N(Nは任意の天然に生じるアミノ酸、好ましくはY又はA又はH又はN又はVである)、
K329N(Nは任意の天然に生じるアミノ酸、好ましくはE又はI又はTである)、
E332N(Nは任意の天然に生じるアミノ酸、好ましくはKである)、
T355N(Nは任意の天然に生じるアミノ酸、好ましくはA又はI又はPである)、
R475N(Nは任意の天然に生じるアミノ酸、好ましくはWである)、
Q809N(Nは任意の天然に生じるアミノ酸、好ましくはRである)、
S846N(Nは任意の天然に生じるアミノ酸、好ましくはIである)、
Q865N(Nは任意の天然に生じるアミノ酸、好ましくはHである)、
E928N(Nは任意の天然に生じるアミノ酸、好ましくはGである)。
好ましくは、患者のがんは、以下のERBB3変異、細胞外ドメインにおいて、G284R、R013G、V104M、R135C、A232、D297、T355、又は細胞内ドメインにおいて、E928G、S846I、Q865H、又はQ809Rを有する。
好ましくは、ERBB3変異を有する患者のがん細胞は、KRAS、NRAS、PIK3CA、BRAFの以下の発がん性駆動因子を欠いているか、又は細胞は、BRAF、EGFR、KRAS、cKIT-BRCA1-2、MET、ROS、RET、ALK、AKT1、ERBB4、NFE2L2、PTPN11、FBXW7、NRAS、RHOA、CTNNB1、HRAS、SF3B1、DICER1、KIT、PIK3CA、PIK3R1、SMAD4、PPP2R1A、VHL、ERBB2、MTOR、PTENを含む群から選択される1つ以上の遺伝子における発がん性変異の非存在を示す。
好ましくは、ERBB3変異を有するがん細胞は、以下のがん増幅c-MET増幅、c-MYC増幅、EGFR増幅、ERBB2増幅、MDM2増幅を欠く。
好ましくは、ERBB3変異を保有するがん細胞は、PTEN損失を有しない。
疾患の進行以外の理由により研究処置の少なくとも2サイクルを完了しない患者は、有効性について評価可能ではなく、それぞれの群で置き換えられる。
この実施例では、研究の第2部を記載する。
研究の目的:
研究設計
これは、MF3958×MF3178の安全性、忍容性、PK、PD、免疫原性及び抗腫瘍活性を評価するための第I/II相、非盲検、多施設、多国籍、用量漸増、単一群割り当て研究である。
研究は、2つの部で設計されている:
第1部
研究の第1部には、以下の9つの用量レベルの調査が含まれる:1人の患者のコホートで40mg、80mg、160mg、及び3人の患者のコホートで240mg、360mg、480mg、600mg、750mg、及び900mg。MF3958×MF3178は、最初に、3週間の処置サイクルの1日目に約60分間にわたって投与された。第1部の間、注入期間を2時間に延長し、注入関連反応(IRR)を軽減するために、それを最大4時間まで増加させる任意選択を用いた。
用量制限毒性(DLT)は、いずれの用量レベルにおいても経験されなかった。十分なPK情報を得るために、600mg及び750mgのコホートの各々に3人の患者を追加した。
900mgの用量レベルでMTDに達しなかったため、MF3958×MF3178-CL01のデータレビュー委員会(DRC)は、累積安全性、利用可能なPKデータ及びPKシミュレーションに基づいて、750mgの用量レベルを研究のRP2Dとして割り当てることを決定した。
第2部
第2部には、選択された患者集団の拡大群における、選択された用量レベルのMF3958×MF3178の安全性及び忍容性の更なる特徴付け、並びにCR、PR、又は耐久性SD(期間において少なくとも12週間のSD)を有する患者の割合として定義されるCBRの評価が含まれる。
最初の2サイクルでは毎週400mgの一定用量、初回投与では800mgの負荷用量からなる4週間サイクルを有する毎週の用量レジメンを、新たに募集された患者において評価した。サイクル3から、MF3958×MF3178は、毎週400mgの用量で3週間、続く1週間のオフで投与される。IRRを軽減するために、必須の前投薬が投与される。しかしながら、コルチコステロイドは、サイクル1の1日目の負荷用量の前にのみ必須であり、IRRを管理するために治験責任医師の裁量により、後続の注入にのみ使用されるべきである。
代替的に、800mgの初回投与後に開始される毎週の400mgの均一用量での一週間サイクルを含む投薬レジメンに従う。3週目から、本発明の二重特異性抗体は、3週間、400mgの毎週用量、続いて1週間、本発明の二重特異性抗体の投与なしで投与される。
代替的には、4時間にわたる750mgの注入の初回投与後に開始される750mgの一定用量での隔週サイクル、続く4週間のサイクルでの750mgの隔週の2時間注入を含む投与レジメンに従う。更なる代替法は、対象当たり750mgの一定用量の3週ごと投与を含む。
毎週のスケジュールの安全性は、処置された最初の5人の患者が少なくとも2つの処置サイクルを完了した後のランイン期間中にレビューされる。DRCは、グレード3~4の毒性の発生率、IRRの発生率及び重症度、並びにコンプライアンスに焦点を当てて、全ての安全性データをレビューする。DRCレビューが毒性が許容できないと結論づけた場合、治験依頼者はコホートごとに十分な数の患者が登録されるまで、3週間サイクル投与レジメンで患者の登録を継続する。
第2部では患者内用量漸増は認められていない。
本研究の第2部で評価される目的の患者集団は以下のとおりである:
・ERBB3変異が記録されている任意の固形腫瘍。
毎週の推奨用量で処置されたコホートごとに最低10人の患者を含む、少なくとも20人、及び最大約40人の患者が各群(C~F)に登録され得る。以前は閉鎖されていたコホートが再開される場合がある。
処置の期間
研究の第1部及び第2部の両方の患者は、疾患の進行、死亡、許容できない毒性、又はその他の理由による中止まで処置を継続する場合がある。
データレビュー委員会(DRC):
第1部における全ての用量漸増の決定は、全ての利用可能な安全性データ及びPKデータをレビューするために招集されたDRCによって行われた。DRCの参加者には、治験責任医師(又はその代表者)、治験依頼者の医療ディレクター、研究メディカルモニター、研究医薬品安全性監視医師、研究プロジェクトマネージャー、研究統計学者、必要に応じて招待された専門家(臨床薬理学専門家など)が含まれた。
第2部では、DRCは、その後の全ての患者の毎週の用量レジメンを拡大する前に、毎週の用量の安全性ランイン期間の完了後のデータをレビューする。
研究評価:
本研究は、最大4週間(28日間)のスクリーニング期間までの分子事前スクリーニング評価、続く任意の理由で処置を中止又は終了するまでの連続した処置サイクルからなる。第2部の最初の推奨用量で処置された患者の処置サイクル期間は3週間(21日)であり、第2部の隔週推奨用量で処置された患者の処置サイクル期間は4週間(28日)である。全ての患者は、処置を中止してから1週間以内に処置終了訪問に参加し、処置終了又は研究中止から30日後に最終研究訪問に参加する必要がある。
最終研究訪問の完了時に進行していない、又は同意を撤回していない患者は、次の抗がん治療の開始まで、最大2年間(約2年間)3ヶ月ごとに追跡調査を行い、疾患の進行及び/又は生存状態を確認する。
治験中に安全性データ及び利用可能なPK、PD及び抗腫瘍活性データの継続的な評価が、代替的投薬頻度を評価すべきであるか、又は他の患者集団を第2部で評価すべきであることを示唆する場合、これらの修正は、これらの評価を開始する前にプロトコル修正で明確にされる。
分子事前スクリーニング及びスクリーニング:
分子事前スクリーニングは、該当するERBB3変異、発がん性変異駆動因子の欠如、増幅若しくはPTEN損失について分子スクリーニングを実施する資格を有する現地の研究所で、又はかかる能力を有する集中検査を介して実施される。
患者は、KRAS、NRAS、PIK3CA、BRAFを含むがこれらに限定されない別の発がん性駆動因子を欠く該当するERBB3変異を有し、あるいは、細胞は、以下の発がん性増幅、c-MET増幅、c-MYC増幅、EGFR増幅、ERBB2増幅、MDM2増幅を欠く、BRAF、EGFR、KRAS、cKIT-BRCA1-2、MET、ROS、RET、ALK、AKT1、ERBB4、NFE2L2、PTPN11、FBXW7、NRAS、RHOA、CTNNB1、HRAS、SF3B1、DICER1、KIT、PIK3CA、PIK3R1、SMAD4、PPP2R1A、VHL、ERBB2、MTOR、PTENを含む群から選択される1つ以上の遺伝子の発がん性変異の非存在を示し、PTEN損失を有さないものは、MF3958×MF3178を含む二重特異性抗体による処置のために選択される。
安全性評価
同時性疾患はベースラインで捕捉され、AE及び併用療法は研究参加全体を通して監視される。安全性評価には、Eastern Cooperative Oncology Group(ECOG)の性能状態、身体検査(身長及び体重を含む)、バイタルサイン及び心電図(ECG)のレビューが含まれる。左心室駆出分画(LVEF)の心機能検査はまた、スクリーニング、サイクル4(又はサイクル5、1日目)の終了、研究訪問の終了、臨床的に示される場合は、研究中の任意の時点でも実施される。検査室評価には、臨床化学、血液学、凝固試験、尿及び妊娠試験が含まれる。サイトカインパネル解析は2017年8月1日まで実施されたことに注意されたい。
全てのMF3958×MF3178投与日に、患者は、診療所から退院する前に、観察及びバイタルサインを繰り返すために、注入終了時から少なくとも60分間(PK試料が必要な場合はより長い)診療所に留まる必要がある。更なる追加の安全性評価は、臨床的に指示されるように実行される必要があり、必要に応じて、診療所での滞在期間は、治験責任医師の判断に基づいて延長される必要がある。
免疫原性評価
抗MF3958×MF3178抗体の血清力価を、サイクル1、2、3、4の各々について1日目の投薬前、その後4サイクルごとに(サイクル8、12、16など)、MF3958×MF3178投与の-3日前の窓を有する処置終了訪問及び最終研究訪問で測定する。
薬物動態評価
第1部及び第2部の初期推奨用量スケジュール:サイクル1では、1日目の投薬前、注入終了時(EOI)、及びEOIの1、2、4、8、24時間後、次いで4日目(又は3日目)、8日目及び15日目に、PK分析のために血液試料を採取する。サイクル2~4では、投薬前及びEOI血液試料のみが採取される。
第2部の毎週の推奨用量スケジュール:サイクル1では、血液試料を、1日目の投薬前、EOI、EOIの2、4、24時後、次いで、8日目及び15日目の投薬前、22日目の投薬前及びEOIに、PK分析のために採取する。サイクル2及び3では、15日目に投薬前及びEOIの血液試料を採取する。サイクル4では、1日目に投薬前の血液試料を採取し、15日目に投薬前及びEOIに採取する。その後2サイクルごと(サイクル6、8、10など)に、15日目に投薬前の血液試料を採取する。
腫瘍評価
腫瘍評価は、現地の治験責任医師によりRECISTバージョン1.1によって評価される。画像化は、スクリーニング時に、及び3週間サイクルのレジメンを受けた患者の治療の2サイクルごとの終了時に、及び隔週投薬レジメンを受けた患者の8週間ごとに取得される。
バイオマーカー及び薬力学評価
記録保管された又は既存の腫瘍組織の可用性、更なる腫瘍試料の同意、及び特定のバイオマーカー試験の同意に応じて、記録保管された及び/又は新鮮な腫瘍試料材料及び/又は血液(液体生検)に対して、一連のバイオマーカー及び薬力学的試験が実施される。
十分な試料が利用可能である場合、以下の候補バイオマーカーを評価する:
・HER2、HER3、HER2:HER3二量体化、リン酸化されたHER2(pHER2)及びHER3(pHER3)、並びにヘレグリン、
・循環血漿腫瘍DNA(ctDNA)及び腫瘍試料DNA(利用可能性に応じて)を使用して、HER2及びHER3シグナル伝達に関連するものを含むがん遺伝子における変異を調べる。
・MAPK及びAKTシグナル伝達経路におけるリン酸化された分子
・Fcγ受容体多型、
・HER2についての循環腫瘍細胞、
・ERBB3変異
生殖細胞系DNA評価は含まれていない(Fcγ受容体多型を除く)。
ベースラインでは、患者は、必須の腫瘍試料組織、好ましくは、新鮮な組織又は記録保存の組織由来のブロックを提供することが要求される。治験依頼者は、新鮮な組織の好みを示す。記録保存は許容され、1年以内でなければならないNSCLC以外のスクリーニングから2年以内に採取する必要がある。更に、患者には、サイクル4の終了時及び処置終了時に腫瘍試料/生検を提供することが要求される。
これらの時点では、液体生検試験の目的で血液試料も採取される。
適格基準:
本研究では、ERBB3変異陽性がん、発がん性変異の欠如、増幅、及びPTEN喪失を有する患者を登録した。
第2部の一般的な選択基準
1.18歳以上、
2.RECIST v1.1による少なくとも1つの測定可能な病変又はH群の限られた数の患者について評価可能な病変、
3.ECOG0又は1の性能状態、
4.少なくとも12週間の推定寿命、
5.脱毛症、グレード2の感覚神経毒性、又は治験責任医師の意見で治験薬に関連する有害事象の評価に影響を及ぼさないと思われるその他の毒性を除き、グレード1以下(NCI CTCAE v4.03で定義)に解消された以前の抗がん療法の結果として発生した毒性、
6.MF3958×MF3178の最初の用量前の次の間隔内の抗がん剤又は治験薬での処置:
a.研究登録前の>14日又は>5半減期のいずれか短い方。
b.放射線療法のための>14日。注:1週間未満のウォッシュアウト期間は、治験依頼者APPでの非CNS疾患への緩和放射線の場合にのみ許可される
7.患者は、以前の手術又は他の処置又は合併症から、グレード2以下、又は治験責任医師の意見では治験薬に関連する有害事象の評価に影響を及ぼさないというベースライン状態に回復している、
8.スクリーニング時の検査室値:
a.コロニー刺激因子サポートなしの絶対好中球数が≧1.5×10/L、
b.血小板≧100×10/L、
c.ヘモグロビン≧8g/dL又は≧2.2mmol/L(輸血に依存しない)、
d.アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)≦3×正常上限(ULN)及び総ビリルビン≦1.5×ULN;転移性肝臓関与の場合、ALT/AST≦5×ULN及び総ビリルビン≦2×ULNが許容され;ギルバート症候群の前件の場合、総ビリルビン≦3.0×ULN又は直接ビリルビン≦1.5×ULNの場合が許容される、
e.CockroftGault式に基づいて>30mL/分の推定糸球体濾過速度(GFR)、
9.ベースラインで必須腫瘍生検試料(FFPE)、好ましくはブロックを提供することができる。安全/可能であれば、新鮮なFFPE生検試料が好ましい、記録保存組織は許容される(好ましくは2年以下)、注:アファチニブ又は他のHER標的化剤を受けた患者については、獲得した耐性のメカニズムを評価するために、最後の処置ラインの後に採取された生検が強く好ましい。
10.スクリーニング中及びサイクル1、1日目の7日以内に妊娠可能性のある女性(≦50歳の女性又は研究登録前≦12ヶ月の無月経の病歴として定義)の尿又は血液ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)試験によって定義される陰性の妊娠試験結果、
11.妊娠可能性のある性的に活発な男性及び女性の患者は、研究の全期間中及びMF3958×MF3178の最終投与後6ヶ月間、効果的な避妊法(例えば、殺精子剤、経口避妊薬又は非経口避妊薬及び/又は子宮内避妊具によるバリア法)を使用することに同意する必要がある。女性患者の不妊症は、患者の医療記録で確認されなければならず、以下のいずれかとして定義されなければならないことに留意されたい:両側卵巣摘出術を伴う外科的子宮摘出術、両側管結紮術、最後の月経が1年超前の自然閉経;最後の月経が1年超前の放射線誘発性卵巣摘出術;最後の月経から1年間隔の化学療法誘発性閉経、
12.同意は、患者がいつでも損なうことなく撤回できることを理解した、研究固有のスクリーニング手順の前に書面によるインフォームドコンセントを与える能力、
13.必須及び任意選択のプロトコル要件を理解することができ、研究プロトコル手順を順守する意思及び能力があり、主要なインフォームドコンセント文書に署名している。任意の生検試料採取(組織及び/又は血液)及び長期試料保管については、追加の同意が必要である。
除外基準
1.妊娠中又は授乳中、
2.最初の投薬の予定日までのスクリーニング中に、活性な制御されていない感染症又は38.5℃を超える原因不明の熱の存在。治験責任医師の裁量により、腫瘍熱又は臨床的に重要ではない軽度の感染症を有する患者を登録する場合がある(すなわち、軽度の上気道感染症)、
3.MF3958×MF3178の構成要素のうちのいずれかに対する既知の過敏症、又は治療用抗体を含む、ヒト又はヒト化モノクローナル抗体に対する重度の過敏症反応の病歴、
4.既知のHIV、活性B型肝炎又はC型肝炎、以前にC型肝炎の治療を受けたことがあり、検出できないウイルス量を有する患者は的確である、
5.既知の症候性又は不安定な脳転移。無症候性脳転移を有する患者は、転移が少なくとも1ヶ月間放射線学的及び臨床的に安定している場合、参加に適格である。この適応症のためにステロイドを服用している場合、患者は少なくとも1ヶ月間安定した用量を服用している必要がある。
6.軟髄膜転移を有する患者、
7.腫瘍が治癒又は緩和の意図をもって治療され、治験責任医師の意見では、治験依頼者の同意を得て、以前又は同時の悪性腫瘍が、治験薬の安全性及び有効性の評価に影響を及ぼさない限り、皮膚の非基底細胞がん又は子宮頸部のインサイチュがんを除く、以前又は同時の悪性腫瘍、
8.NYHAクラスIII若しくはIVのうっ血性心不全又はLVEF<50%の存在、あるいは投薬を必要とする重大な心疾患、不安定狭心症、うっ血性心不全、心筋梗塞、又は心室性不整脈の病歴。
9.治験責任医師によって、インフォームドコンセントへの署名、研究への協力若しくは参加、又は結果の解釈を妨げる可能性があると判断されたその他の医学的又は心理的状態の存在。
統計解析:
第1部及び第2部
第2部では、各群についての抗腫瘍及び臨床的有益性の変数を説明的に要約する。必要に応じて、変数はベースラインからの絶対的及び相対的変化の観点で表される。カテゴリデータは、パーセンテージ及び頻度表として表される。
必要に応じて、第1部中にMTD又はMRDと特定されたものを受けた患者及び第2部で同じ用量を受けた患者からのデータを組み合わせて要約し得、並びに独立して要約し得る。
重篤及び非重篤なAEの頻度及び性質は、絶対的及び相対的な頻度で評価され、MedDRA医学辞書に従ってコード化される。
第1部
データ評価は本質的に記述的である。患者の人口統計学、疾患の特徴、並びに薬物動態及び薬力学的変数を各用量レベルで要約する。DLTの頻度及び性質も、各用量レベルで要約される。
実施例3:
ERBB2、ERBB3陽性発現、及び適用可能なERBB3変異を含む固形腫瘍を有する患者を、MF3958×MF3178で処置した。この研究では、MF3958×MF3178が腫瘍の大きさ又は病変を安定させることが示されている。この処置は、更なる腫瘍増殖を防止する。
腫瘍分子プロファイリング:
腫瘍組織の分析は、該当するERBB3変異を示す。加えて、腫瘍ゲノムは、KRAS、NRAS、PIK3CA、BRAFの変異の非存在を示すか、又は細胞は、BRAF、EGFR、KRAS、cKIT-BRCA1-2、MET、ROS、RET、ALK、AKT1、ERBB4、NFE2L2、PTPN11、FBXW7、NRAS、RHOA、CTNNB1、HRAS、SF3B1、DICER1、KIT、PIK3CA、PIK3R1、SMAD4、PPP2R1A、VHL、ERBB2、MTOR、PTENを含む群から選択される1つ以上の遺伝子における変異の非存在を示す。
ERBB3変異を有する腫瘍組織は、以下のがん増幅c-MET増幅、c-MYC増幅、EGFR増幅、ERBB2増幅、MDM2増幅を欠く。
ERBB3変異を有する腫瘍組織は、PTEN損失を有しない。
二重特異性抗体MF3958×MF3178での処置:
処置は、毎週のレジメンで二重特異性抗体MF3958×MF3178を与えられた。最初の用量は、前投薬で投与された。合計8サイクルを、8ヶ月の研究期間中に投与した。
4週間のサイクルを有する毎週の用量レジメンは、最初の2サイクルでは毎週400mgの一定用量、初回投与では800mgの負荷用量からなる。サイクル3から、MF3958×MF3178は、毎週400mgの用量で3週間、続く1週間のオフで投与される。IRRを軽減するために、必須の前投薬が投与される。しかしながら、コルチコステロイドは、サイクル1の1日目の負荷用量の前にのみ必須であり、IRRを管理するために治験責任医師の裁量により、後続の注入にのみ使用されるべきである。
有効性:
疾患を、可能であればPET/CTスキャン又はCTスキャンを使用して、測定可能な疾患で評価した。客観的全応答率(ORR)、応答期間(DOR)、無進行生存(PFS)及び生存を決定するRECIST v1.1によって評価された抗腫瘍活性及び臨床的利益。4つの腫瘍評価で安定した疾患が報告された(RECIST v1.1)。
実施例3の投与レジメンに代わって、薬物は、以下のように隔週投薬スケジュールで提供され得る:
最初の注入では4時間にわたり、その後、4週間サイクルで隔週ごとに各注入で2時間にわたる750mgのMF3958×MF3178からなる隔週スケジュール。また、前投薬は、IRR(注入関連反応)を管理するために含まれ、全ての注入のための解熱剤及び抗ヒスタミン剤からなる。コルチコステロイドは、1日目のサイクル1用量の前に含まれ、その後、治験責任医師の裁量に従って、IRRを管理するために投与される。
実施例3の投与計画に代わって、薬物は、以下のように3週ごとの投与スケジュールで提供され得る:
最初の注入では4時間にわたり、その後、4週間サイクルで隔週ごとに各注入で2時間にわたる750mgのMF3958×MF3178からなる3週ごとスケジュール。また、前投薬は、IRR(注入関連反応)を管理するために含まれ、全ての注入のための解熱剤及び抗ヒスタミン剤からなる。コルチコステロイドは、1日目のサイクル1用量の前に含まれ、その後、治験責任医師の裁量に従って、IRRを管理するために投与される。
実施例4
ERRB3タンパク質に変異A232Vを有する膀胱がんと診断された71歳の男性患者を、実施例2及び3の臨床試験に登録した。処置は、最初の注入では4時間にわたり、その後、4週間サイクルで隔週ごとに各注入で2時間にわたる750mgのMF3958×MF3178からなる隔週スケジュールを含んだ。また、前投薬は、IRR(注入関連反応)を管理するために含まれ、全ての注入のための解熱剤及び抗ヒスタミン剤からなる。コルチコステロイドは、1日目のサイクル1用量の前に含まれ、その後、治験責任医師の裁量に従って、IRRを管理するために投与される。
実施例5
ERBB3において変異V104Mを有する卵巣明細胞がんと診断された女性患者を、実施例2及び3の臨床試験に登録した。処置は、最初の注入では4時間にわたり、その後、4週間サイクルで隔週ごとに各注入で2時間にわたる750mgの結合群MF3958×MF3178を含む二重特異性抗体からなる隔週スケジュールを含んだ。また、前投薬は、IRR(注入関連反応)を管理するために含まれ、全ての注入のための解熱剤及び抗ヒスタミン剤からなる。コルチコステロイドは、1日目のサイクル1用量の前に含まれ、その後、治験責任医師の裁量に従って、IRRを管理するために投与される。
当該二重特異性抗体の投与を開始する前に、患者は集中治療室に入院した。一次応答の評価に続いて、臨床試験研究の一環として、臨床的に関連する活動の二次的特性を評価した。
臨床活動:
患者は、広範な腹膜転移を伴う卵巣がんに起因する悪性腫瘍関連腹水を呈した。当該二重特異性抗体による処置を開始する前に、患者は、翌日にすでに腹水の新たな形成が観察され、大量の腹腔穿刺を週に2回必要とした。当該二重特異性抗体による治療開始後、患者は、治療用傍穿刺の必要性を週に1回に低減し、より良好な全身性能状態(3から2)によって明らかに併発症候が改善した。
指示された時間間隔で以下の量の穿刺を記録した。
二重特異性抗体の最初の投与の3日後に、6リットルの流体を除去した。更に4日後に7リットルの液体を除去し、更に6日後に再び6リットルを除去した。
臨床的及び傍臨床的観察は、本発明の二重特異性抗体の投与の治療効果を明らかにしている。

Claims (31)

  1. ERBB3変異を有するがんの治療を必要とする対象におけるその治療の方法における使用のための、ERBB2の細胞外部分に結合することができる抗原結合部位と、ERBB3の細胞外部分に結合することができる抗原結合部位と、を含む、二重特異性抗体。
  2. ERBB3変異を有するがんを有する対象の治療の方法であって、ERBB2の細胞外部分に結合することができる抗原結合部位と、ERBB3の細胞外部分に結合することができる抗原結合部位と、を含む二重特異性抗体を投与することを含む、方法。
  3. 前記二重特異性抗体が、ERBB2のドメインIに結合する第1の抗原結合部位と、ERBB3のドメインIIIに結合する第2の抗原結合部位と、を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
  4. 前記二重特異性抗体が、
    i)MF2926、MF2930、MF1849、MF2973、MF3004、MF3958、MF2971、MF3025、MF2916、MF3991、MF3031、MF2889、MF2913、MF1847、MF3001、MF3003及びMF1898からなる群から選択されるERBB2特異的重鎖可変領域の少なくともCDR1、CDR2、及びCDR3配列を含むか、又は前記抗体が、MF2926、MF2930、MF1849、MF2973、MF3004、MF3958、MF2971、MF3025、MF2916、MF3991、MF3031、MF2889、MF2913、MF1847、MF3001、MF3003若しくはMF1898のCDR1、CDR2及びCDR3配列から多くとも3つのアミノ酸、好ましくは多くとも2つのアミノ酸、好ましくは多くとも1つのアミノ酸が異なるCDR配列を含み、かつ/又は
    ii)MF3178、MF3176、MF3163、MF3099、MF3307、MF6055、MF6056、MF6057、MF6058、MF6059、MF6060、MF6061、MF6062、MF6063、MF6064、MF6065、MF6066、MF6067、MF6068、MF6069、MF6070、MF6071、MF6072、MF6073及びMF6074からなる群から選択されるERBB3特異的重鎖可変領域の少なくともCDR1、CDR2及びCDR3配列を含むか、又は前記抗体が、MF3178、MF3176、MF3163、MF3099、MF3307、MF6055、MF6056、MF6057、MF6058、MF6059、MF6060、MF6061、MF6062、MF6063、MF6064、MF6065、MF6066、MF6067、MF6068、MF6069、MF6070、MF6071、MF6072、MF6073若しくはMF6074のCDR1、CDR2及びCDR3配列から多くとも3つアミノ酸、好ましくは多くとも2つのアミノ酸、好ましくは多くとも1つのアミノ酸が異なるCDR配列を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
  5. 前記二重特異性抗体が、
    i)MF2926、MF2930、MF1849、MF2973、MF3004、MF3958、MF2971、MF3025、MF2916、MF3991、MF3031、MF2889、MF2913、MF1847、MF3001、MF3003及びMF1898の重鎖可変領域配列からなる群から選択されるERBB2特異的重鎖可変領域配列を含むか、又は前記抗体が、MF2926、MF2930、MF1849、MF2973、MF3004、MF3958、MF2971、MF3025、MF2916、MF3991、MF3031、MF2889、MF2913、MF1847、MF3001、MF3003若しくはMF1898の重鎖可変領域配列から多くとも15個のアミノ酸が異なる重鎖可変領域配列を含み、かつ/又は
    ii)MF3178、MF3176、MF3163、MF3099、MF3307、MF6055、MF6056、MF6057、MF6058、MF6059、MF6060、MF6061、MF6062、MF6063、MF6064、MF6065、MF6066、MF6067、MF6068、MF6069、MF6070、MF6071、MF6072、MF6073及びMF6074の重鎖可変領域配列からなる群から選択されるERBB3特異的重鎖可変領域配列を含むか、又は前記抗体が、MF3178、MF3176、MF3163、MF3099、MF3307、MF6055、MF6056、MF6057、MF6058、MF6059、MF6060、MF6061、MF6062、MF6063、MF6064、MF6065、MF6066、MF6067、MF6068、MF6069、MF6070、MF6071、MF6072、MF6073若しくはMF6074の重鎖可変領域配列から多くとも15個のアミノ酸が異なる重鎖可変領域配列を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
  6. 前記二重特異性抗体が、重鎖可変領域MF3958及びMF3178を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
  7. 前記二重特異性抗体が、前記第1の抗原結合部位を含む可変ドメインを含み、前記二重特異性抗体の前記第2の抗原結合部位を含む前記可変ドメインが、好ましくは、KABAT番号付けによるか、又はIMGT番号付けシステムによる、配列(RASQSISSYLN)を有するCDR1、配列(AASSLQS)を有するCDR2及び配列(QQSYSTPPT)を有するCDR3を含み、前記軽鎖可変領域の前記CDRが、それぞれ、QSISSY、AAS及びQQSYSTPPTである、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
  8. 前記ERBB3変異を有するがんが、結腸直腸がん、胃がん、非小細胞肺がん(NSCLC)腺がん(アデノ)、NSCLC扁平上皮がん、腎がん、黒色腫、卵巣がん、肺大細胞がん、食道がん、小細胞肺がん、肝細胞がん(HCC)、乳がん、ホルモン陽性乳がん、膠芽細胞腫、及び頭頸部がん、胃腺がん又は食道胃がん、膵臓がん、膵管腺がん、肉腫、膀胱がん、胆嚢がん、頭頸部がん、前立腺がん、子宮/子宮内膜がん、浸潤性粘液腺がんを含む非小細胞肺がんなどの肺がんである、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
  9. 前記ERBB3変異が、ERBB3のドメインI、II、III又はIVにおける変異を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
  10. 前記ERBB3変異が、前記細胞内ドメインにおける、好ましくはチロシンキナーゼドメインにおける、好ましくは、710~964の範囲のアミノ酸残基に関与する、好ましくは、Q809、S846、Q865、又はE928位での、変異を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
  11. 前記ERBB3変異が、ERBB2及びERBB3のリガンド非依存性ヘテロ二量体化を引き起こす変異を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
  12. 前記ERBB3変異が、PI3K経路を促進する、請求項11に記載の方法。
  13. 前記ERBB3変異が、ERBB3の細胞外ドメインにおける変異を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
  14. 前記ERBB3変異が、ERBB3の細胞内ドメインにおける変異を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
  15. ERBB3における変異が、配列番号1に記載の非変異配列に対する変異である、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
  16. 前記ERBB3変異が、以下の変異
    M60N(Nは任意の天然に生じるアミノ酸、好ましくはKである)、
    M91N(Nは任意の天然に生じるアミノ酸、好ましくはIである)、
    R103N(Nは任意の天然に生じるアミノ酸、好ましくはGである)、
    V104N(Nは任意の天然に生じるアミノ酸、好ましくはL又はMである)、
    R135N(Nは任意の天然に生じるアミノ酸、好ましくはCである)、
    F219N(Nは任意の天然に生じるアミノ酸、好ましくはLである)、
    H228N(Nは任意の天然に生じるアミノ酸、好ましくはQである)、
    A232N(Nは任意の天然に生じるアミノ酸、好ましくはVである)、
    P262N(Nは任意の天然に生じるアミノ酸、好ましくはH又はL又はSである)、
    G284N(Nは任意の天然に生じるアミノ酸、好ましくはRである)、
    D297N(Nは任意の天然に生じるアミノ酸、好ましくはY又はA又はH又はN又はVである)、
    K329N(Nは任意の天然に生じるアミノ酸、好ましくはE又はI又はTである)、
    E332N(Nは任意の天然に生じるアミノ酸、好ましくはKである)、
    T355N(Nは任意の天然に生じるアミノ酸、好ましくはA又はI又はPである)、
    R475N(Nは任意の天然に生じるアミノ酸、好ましくはWである)、
    Q809N(Nは任意の天然に生じるアミノ酸、好ましくはRである)、
    S846N(Nは任意の天然に生じるアミノ酸、好ましくはIである)、
    Q865N(Nは任意の天然に生じるアミノ酸、好ましくはHである)、
    E928N(Nは任意の天然に生じるアミノ酸、好ましくはGである)のうちの1つ以上を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
  17. 前記ERBB3が、R426で変異を有しない、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
  18. 前記がんが、BRAF、EGFR、KRAS、cKIT-BRCA1-2、MET、ROS、RET、ALK、AKT1、ERBB4、NFE2L2、PTPN11、FBXW7、NRAS、RHOA、CTNNB1、HRAS、SF3B1、DICER1、KIT、PIK3CA、PIK3R1、SMAD4、PPP2R1A、VHL、ERBB2、MTOR、及びPTENを含む群から選択される1つ以上の遺伝子における検出可能な変異を欠く、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
  19. 前記がんが、c-MET、c-MYC、EGFR、ERBB2、及びMDM2増幅を含む群から選択される1つ以上の遺伝子における検出可能な増幅を欠く、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
  20. 前記がんが、検出可能なPTEN損失を有しない、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
  21. 前記二重特異性抗体の前記投与が、前記対象におけるERBB3変異を有するがんの治療のための第一選択療法を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
  22. 前記がんが、前記対象が前の治療を受けた後に進行した、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
  23. 前記前の治療が、化学療法、チェックポイント阻害剤療法(抗PD1及び抗PD-L1承認療法並びに臨床開発における適用可能な療法を含む)、抗ERBB2若しくは抗ERBB3若しくは抗VEGFR2(血管内皮成長因子受容体2)、又はERBB2若しくはVEGFR2-TIE2のチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)での前の治療、あるいはTKI又は上記のうちのいずれかの組み合わせを含む、請求項22に記載の方法。
  24. 前記化学療法が、ゲムシタビン、カペシタビン、カルボプラチン、ドセタキセル若しくはパクリタキセルなどのタキサン、5-フルオロウラシル(放射線療法の有無にかかわらず)、ビノレルビン、カルムスチン、ドキソルビシン、エピルビシン、ミトキサントロン、ビンブラスチン、シスプラチン(又はペメトレキセド)、オキサリプラチン、カルボプラチン、イホスファミド、マイトマイシンC、ビンデシン、エトポシド、フォルフォックス(Folfox)(すなわち、5-フルオロウラシル、ロイコボリン、及びオキサリプラチンの組み合わせ)若しくはフォルフィリ(Folfiri)(すなわち、ロイコボリン、5-フルオロウラシル及びイリノテカンの組み合わせ)、フォルフィリノックス(Folfirinox)(ロイコボリン、5-フルオロウラシル、イリノテカン及びオキサリプラチンの組み合わせ)、又はそれらの任意の組み合わせを含む、請求項23に記載の方法。
  25. 本発明による前記チェックポイント阻害剤療法が、抗PD1、抗PD-L1、及び抗CTLA4治療部分を含み、好ましくは、イピリムマブ、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ若しくはセミプリマブ、又はそれらの任意の組み合わせを含む、請求項23に記載の方法。
  26. 前記TKIが、ラパチニブ、カネルチニブ、ネラチニブ、ツカチニブ(イルビニチニブ(irbinitinib))、CP-724714、タルロキシチニブ(tarloxitinib)、ムブリチニブ、アファチニブ、バルリチニブ(varlitinib)、及びダコミチニブ、アファチニブ、又はそれらの任意の組み合わせである、請求項23に記載の方法。
  27. VEGFR2標的化された治療が、ラムシルマブ又はレゴラフェニブである、請求項23に記載の方法。
  28. 前記がんが、ERBB3タンパク質における変異A232Vを含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
  29. 前記がんが、前記ERBB3タンパク質における変異A232Vを含む膀胱がんである、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
  30. 前記がんが、前記ERBB3タンパク質における変異V104Mを含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
  31. 前記がんが、前記ERBB3タンパク質における変異V104Mを含む、明細胞がんなどの卵巣がんである、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
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