JP2023547038A - ニコチンアミド及びビタミンb6を含有する組成物、並びにサルコペニア及び虚弱を治療するためにかかる組成物を使用する方法 - Google Patents

ニコチンアミド及びビタミンb6を含有する組成物、並びにサルコペニア及び虚弱を治療するためにかかる組成物を使用する方法 Download PDF

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Abstract

ニコチンアミド及びピリドキシンを含有する組成物。組成物は、経口栄養組成物、例えば栄養補助食品、経口栄養補助食品、食品製品、特別医療目的用食品(FSMP)であり得る。組成物は、サルコペニア、身体的虚弱の予防及び/又は治療、骨格筋量、除脂肪筋肉量、骨格筋力、及び/若しくは骨格筋機能の低下の予防及び/又は治療、並びに/又は骨格筋量、除脂肪筋肉量、骨格筋力、及び/若しくは骨格筋機能の改善のために、それを必要とする個体に、経口投与又は静脈内投与することができる。【選択図】 なし

Description

本開示は、広義には、ニコチンアミド及びピリドキシンを含有する組成物に関し、更に、かかる組成物を調製及び使用する方法にも関する。組成物は、経口栄養組成物、例えば栄養補助食品、経口栄養補助食品、食品製品、特別医療目的用食品(FSMP)であり得る。組成物は、サルコペニアの予防及び/又は治療、骨格筋量、除脂肪筋肉量、骨格筋力、及び/若しくは骨格筋機能の低下の予防並びに/又は治療、並びに/又は骨格筋量、除脂肪筋肉量、骨格筋力、及び/若しくは骨格筋機能の改善のために、それを必要とする個体に、経口投与又は静脈内投与することができる。
サルコペニア、すなわち加齢に伴う骨格筋組織の減弱は、高齢者の機能低下及び自立性の低下の最も重要な原因のうちの1つである。サルコペニアは、加齢に伴う骨格筋量及び骨格筋力の不随意的な低下として定義されている。骨格筋量及び骨格筋力の低下は早ければ30代で始まり、直線的に低下して、70代までにその量の最大50%が失われることをエビデンスが示唆している。筋肉量が体重の約40%を占めることを考えると、この重要で代謝の活発な組織の病的変化は、高齢者に深刻な影響を及ぼし得る。サルコペニアに伴う筋力低下及び機能低下は、ひいては機能の低下、身体障害、フレイル、及び自律性の低下の可能性などの多くの有害な健康転帰の原因になる可能性があることから、サルコペニアの影響は高齢者において多くの場合深刻である。サルコペニアは、急性及び慢性の病態、インスリン抵抗性の上昇、疲労、転倒、及び死亡にも関連する。慢性の病態では、サルコペニアは、多くの他の疾患のなかでもとりわけ、リウマチ疾患、特に女性の関節リウマチ(RA)に関連している。
サルコペニアは、神経筋伝達障害、興奮収縮連関の変化、幹細胞枯渇に関連した再生能の低下、筋線維におけるミトコンドリア代謝及びエネルギー代謝の不全並びに骨格筋への脂肪の大理石様の入り込み及び線維化などの病態生理学的変化に関連する多因性症候群である。したがって、この症候群の病因は複雑であり、また十分に解明されていないが、身体活動の低下、タンパク同化ホルモン(例えば、アンドロゲン、IGF-1)におけるホルモン減少、並びに栄養不良及び/又は栄養失調が重要な役割を果たしている。
加齢に伴う骨格筋の生理学的及び形態学的変化は、骨格筋線維(主に2型又は速筋線維)のサイズ及び数の全体的な低下、及び骨格筋への線維組織及び脂肪組織の顕著な浸潤を特徴とする。
加齢に伴う生体の変容は明らかにサルコペニアを進行させるが、傷病による運動不足、肥満及び骨格筋への脂肪浸潤などの他の要因もまた、筋質の低下と、除脂肪体重の低下の加速とを招くことが次第に明らかになっている。
身体活動の減少はサルコペニアの可能性を高めると考えられており、したがって運動量の増加は病状に抗うのに有益であろう。実際に、レジスタンス運動は、骨格筋におけるタンパク質合成の増加と関係がある。しかしながら、治療としての運動は、多くの場合、患者のコンプライアンスがよくない。
筋消耗を抑制するためのゴールドスタンダードは、理学療法である。現在、筋消耗症を治療するための承認された薬物は存在していない。タンパク質同化薬物(SARM、グレリンアゴニスト、ミオスタチン阻害剤)は、フェーズII又はフェーズIIIの臨床試験中である。現在の栄養学的な解決策は、筋同化作用を増強することを目的として高タンパク質含量であることに大きく依存しているが、有効性が限定されており、所有権(proprietary)がなく、分化が不十分である。
筋幹細胞は、前臨床モデル及びヒトの両方において、健康時及び疾患時の筋肉可塑性に関して広く研究されている。筋幹細胞の機能及び再生は、健康な状態及び疾患状態の両方において筋肉治癒を増強するために有望な標的である。しかしながら、現在、筋幹細胞を標的とする製品は市販されておらず、治療アプローチのための研究は、薬物を使用することに焦点を当てており、大部分は依然として前臨床段階にある。それにもかかわらず、栄養状態が筋幹細胞に影響を及ぼす可能性があることは明らかであると思われ、筋幹細胞を標的とする栄養介入への関心が最近高まっている。これまでのところ、ほとんどの研究は、有望な有益な効果について既知の限られた数の栄養素のみを試験しており、新規な栄養化合物を同定することを目的とする大規模スクリーニングが必要とされている。
本発明者らは、骨格筋量、除脂肪筋肉量、骨格筋力、及び/又は骨格筋機能の低下の予防及び/又は治療を必要とする個体におけるそれらの処置のため、例えば、老齢者におけるサルコペニアの治療のための解決策への要求が増大していること、並びに、骨格筋量、骨格除脂肪筋肉量、骨格筋力、及び/又は骨格筋機能の改善を必要とする個体におけるそれらの改善への要求が増大していることを確認した。
[発明の概要]
本明細書において後に開示される実験例に記載されるように、本発明者らは、驚くべきことに、ニコチンアミドを、筋幹細胞の増殖及び分化決定の両方のエンハンサーとして同定し、ビタミンB6を、それらの分化決定のエンハンサーとして同定した。本発明者らはまた、驚くべきことに、単独で試験した場合のニコチンアミド及びビタミンB6(例えば、ピリドキシン)の効果が、細胞をこれらの2つの化合物の組み合わせで処理した場合に増強されることを見出した。図3に示され、記載されるこの相乗効果は、ニコチンアミドが主に増殖ステップ(Pax7細胞)を向上させ、一方、ビタミンB6が分化決定ステップ(MyoD細胞)を特異的に対象とすることにより、ニコチンアミド及びビタミンB6が筋幹細胞に対して異なって作用するという事実によって説明され得る。この効果は、他のビタミンB類(例えば、B9)と比較してB6に特異的であることが示されている。組み合わせを含む組成物は、幹細胞機能を維持するのに有利であった。特に、ニコチンアミドとビタミンB6(例えば、ピリドキシン)との組み合わせは、特にその特定の濃度及び/又は特定の比で、ニコチンアミドとピリドキシンとの間の統計上有意な相乗的協働と、筋幹細胞機能を促進することによる筋再生の増加とを予想外にも示し、したがって、骨格筋量、骨格除脂肪筋肉量、骨格筋強度及び/又は骨格筋機能の低下の予防及び/又は治療及び/又は改善を必要とする個体における、特に高齢者におけるサルコペニアを治療するための、これらの栄養素の効果を示唆するものであった。本開示の一態様では、組成物は、ニコチンアミドとビタミンB6(例えば、ピリドキシン)との組み合わせを含み、好ましくは、本明細書に開示される生理学的利益のうちの少なくとも1つに関して治療上有効な量の組み合わせを含む。
一実施形態では、組成物は、1.0~600mgのビタミンB6/日、例えば1.0~200.0mgのビタミンB6/日、例えば1.0~25.0mgのビタミンB6/日、例えば1.0~15.0mgのビタミンB6/日、例えば1.0~10mgのビタミンB6/日、例えば1.0~7.0mgのビタミンB6/日の1日用量の量でビタミンB6を含む。
一実施形態では、組成物は、約1mg/日~約3000mg/日、例えば約10mg/日~約2000mg/日、例えば約500mg/日~約1000mg/日の量のニコチンアミドを含む。
一実施形態において、組成物は、1日あたり10.0~20.0mgのビタミンB6の量でビタミンB6を含み、及び/又はニコチンアミドは、1日あたり約500mg~約1000mgのニコチンアミドの量で投与される。
しかし、いずれの場合であっても、投与される化合物の量は、活性成分の溶解度、使用される配合物、対象の状態(例えば体重)、及び/又は投与経路のような因子に応じて変わる。例えば、上記開示のビタミンB6又はニコチンアミドの1日用量は非限定的なものであり、いくつかの実施形態では、異なっていてもよく、特に、本明細書に開示される組成物は、急性期特別医療目的用食品(FSMP)として利用することができる。
一実施形態では、組成物は、固体粉末、粉末スティック、カプセル、又は溶液の形態である。組成物は、栄養補助食品、医療用食品、栄養組成物、例えば経口栄養組成物であり得る。
本開示の別の態様において、組成物を調製する方法が提供される。当該方法は、ビタミンB6(例えば、ピリドキシン)とニコチンアミドとを組み合わせることを含むことができ、好ましくは、得られる組み合わせ量は、本明細書に開示される生理学的利益のうちの少なくとも1つに関して治療上有効なあるものである。
本開示の別の態様では、栄養補助食品は、本明細書に開示される組成物のいずれかの治療有効量を含む。一実施形態では、栄養補助食品は、経口栄養補助食品(ONS)である。栄養補助食品は、固体粉末、粉末スティック、カプセル、又は溶液の形態であり得る。一実施形態では、栄養補助食品は、1.0~600mgのビタミンB6、例えば1.0~200mgのビタミンB6、例えば1.0~25.0mgのビタミンB6の1日用量でビタミンB6を含む。栄養補助食品は、約1mg/日~約3000mg/日、好ましくは約10mg/日~約2000mg/日、より好ましくは500mg/日~約1000mg/日の総1日用量でニコチンアミドを含む。
本開示の別の態様では、食品製品は、本明細書に開示される組成物のいずれかを含む。一実施形態では、食品製品は、特別医療目的用食品(FSMP)である。食品は、1.0~600mgのビタミンB6、例えば1.0~200mgのビタミンB6、例えば1.0~25.0mgのビタミンB6の1日用量でビタミンB6を含むことができる。栄養補助食品は、約1mg/日~約3000mg/日、好ましくは約10mg/日~約2000mg/日、より好ましくは500mg/日~約1000mg/日の総1日用量でニコチンアミドを含む。
一実施形態では、食品製品は、1種以上の追加の原材料、例えば、脂質、タンパク質、炭水化物、ビタミン、ミネラル、又はこれらの任意の組み合わせを更に含む。
本開示の別の態様では、キットは、本明細書に開示される組成物のいずれかを、治療有効量で含む。一実施形態では、キットは、組成物の経口投与用に構成される。例えば、キットは、第1のカプセルがビタミンB6を含み、第2のカプセルがニコチンアミドを含む、少なくとも2つのカプセルを含むことができる。一実施形態では、キットは、1.0~600mgのビタミンB6、例えば1.0~200mgのビタミンB6、例えば1.0~25.0mgのビタミンB6の1日用量で第1のカプセル中にビタミンB6を含む。栄養補助食品は、約1mg/日~約3000mg/日、好ましくは約10mg/日~約2000mg/日、より好ましくは500mg/日~約1000mg/日の総1日用量でニコチンアミドを含む。
本開示の別の態様では、骨格筋量、骨格除脂肪筋肉量、骨格筋握力、及び/若しくは骨格筋機能の低下を予防並びに/又は治療する、並びに/又は骨格筋量、骨格除脂肪筋肉量、骨格筋握力、及び/若しくは骨格筋機能を改善する方法が提供される。本方法は、ビタミンB6とニコチンアミドとの組み合わせの治療有効量を、それを必要とする個体に投与することを含む。一実施形態では、投与は、経口投与による。別の実施形態では、投与は、静脈内投与による。
本発明はまた、対象におけるサルコペニアを治療又は予防するため、及び/又は栄養不足を回復及び/又は解消するための方法に関する。一実施形態では、対象はサルコペニアを有するものとして識別されている、又はサルコペニア発症リスクが高い。
一実施形態では、対象は、ヒト対象である。
一実施形態では、ヒト対象は高齢者である。一実施形態では、ヒト対象は老齢である。
一実施形態では、対象は、コンパニオンアニマル、好ましくはイヌである。
筋幹細胞の増殖及び分化決定である。 筋幹細胞の増殖及び分化決定である。 筋幹細胞の増殖及び分化決定である。 筋幹細胞の増殖及び分化決定である。 筋幹細胞の増殖及び分化決定である。 成体及び老齢の動物における、筋幹細胞機能に対するニコチンアミド(NAM)及びピリドキシン(B6)の組合せのインビボ効果である。 成体及び老齢の動物における、筋幹細胞機能に対するニコチンアミド(NAM)及びピリドキシン(B6)の組合せのインビボ効果である。 成体及び老齢の動物における、筋幹細胞機能に対するニコチンアミド(NAM)及びピリドキシン(B6)の組合せのインビボ効果である。
ヒト骨格筋筋芽細胞は、Lonza(https://bioscience.lonza.com)から購入した。これらの細胞は、正常ドナーの上腕又は脚筋組織から単離し、2回目の継代後に使用した。いくつかのドナーを試験して、最終的なドナーを選択する前に、細胞生存率及び純度を確保し、20歳の白人女性(以下、ドナー1と称する)、36歳の白人女性(以下、ドナー2と称する)、及び18歳の白人男性(以下、ドナー3と称する)とした。ヒト初代筋芽細胞を、1ウェル当たり1’000個の細胞密度で、384ウェルプレートの骨格筋細胞用培地(SKM-M、AMSbio)に播種した。処理のために、最初の播種から16時間後に、筋芽細胞培養物に化合物を直接添加した。
次いで、全ての培養物を96時間増殖させた。抗Pax7抗体及び抗MyoD抗体を使用して、Pax7及びMyoDの発現について細胞を染色し、Hoechst 33342で対比染色して細胞核を可視化した。Pax7+細胞は、MyoD発現は考慮せず、Pax7を発現する細胞として定義される。MyoD+細胞は、Pax7は発現していないがMyoDは発現している細胞として定義される。ImageXpress(Molecular Devices)プラットフォームを使用して画像取得を行った。定量には、MetaXpressソフトウェアのMulti-Wavelength Cell Scoringに基づくカスタムモジュール分析を使用した。*、**、***、****は対照からの差を示しており、それぞれ、p<0.05、p<0.01、p<0.001、p<0.0001の一元配置分散分析である。データは平均±SEMとして表した。
図1:ニコチンアミドのインビトロ用量応答。ドナー1及びドナー2に由来するヒト初代筋芽細胞から得られたデータをプールした。各条件について、細胞の総数を決定して化合物の毒性を評価し、Pax7+又はMyoD+の細胞集団の割合を評価するため、Pax7+細胞又はMyoD+細胞の数を総細胞数に対して正規化し、対照条件(DMSO1%)と比較した倍数変化として表した。図1のAはPax7+細胞の割合を表す。図1のBはMyoD+細胞の割合を表す。
図2:ピリドキシン(B6)のインビトロ用量応答。ドナー1及びドナー2に由来するヒト初代筋芽細胞から得られたデータをプールした。各条件について、細胞の総数を決定して化合物の毒性を評価し、Pax7+又はMyoD+の細胞集団の割合を評価するため、Pax7+細胞又はMyoD+細胞の数を総細胞数に対して正規化し、対照条件(DMSO1%)と比較した倍数変化として表した。図2のAはPax7+細胞の割合を表す。図2のBはMyoD+細胞の割合を表す。
図3:ニコチンアミド(NAM)及びピリドキシン(B6)の相乗効果。MyoD+細胞に対するニコチンアミド及びピリドキシンの単独又は組み合わせの効果を、ドナー3由来のヒト初代筋芽細胞で評価した。各条件について、MyoD+細胞の数を対照条件(DMSO1%)におけるMyoD+細胞の数に対して正規化した。図3のAは、対照条件に対して正規化されたMyoD+細胞の数を表す。図3のBは、対照条件(DMSO 1%)と比較したMyoD+細胞数の増加を表す。ΔB6又はΔNAMは、それぞれ、B6又はNAM処理による対照条件からの変化を指す。ΔB6+ΔNAMは、別々に測定されたB6及びNAMの効果の理論的合計を指す。Δ(B6+NAM)は、B6及びNAMによる併用処理の実験上の効果を指す。線形回帰モデル(相互作用項、p=0.05)を適用することによって、ニコチンアミドとピリドキシンとの間の統計的に有意な相乗効果が観察された。
図4:ニコチンアミド(NAM)とビタミンB9との組み合わせ。MyoD+細胞に対するニコチンアミド及びビタミンB9の単独又は組み合わせの効果を、ドナー3由来のヒト初代筋芽細胞で評価した。各条件について、MyoD+細胞の数を対照条件(DMSO 1%)におけるMyoD+細胞の数に対して正規化した。図4のAは、対照条件に対して正規化されたMyoD+細胞の数を表す。図4のBは、対照条件(DMSO 1%)と比較したMyoD+細胞数の増加を表す。ΔB9又はΔNAMは、それぞれ、B9処理又はNAM処理による対照条件からの変化を指す。ΔB9+ΔNAMは、別々に測定されたB9及びNAMの効果の理論上の合計を指す。Δ(B9+NAM)は、B9及びNAMによる併用処理の実験上の効果を指す。
図5は、ピリドキシンとニコチンアミドとの間の異なる比(ビタミンB6/NAM比)についてのPax7+細胞の数を表す。
図6~8:成体及び老齢の動物における、筋幹細胞機能に対するニコチンアミド(NAM)及びピリドキシン(B6)の組合せのインビボ効果である。
成体の骨格筋において損傷又は疾患に反応して生じる筋再生の生理的プロセスを再現するため、本発明者らは、マウスの後肢筋にカルディオトキシンを筋肉注射した。筋肉損傷の誘発の1週間前に、マウスに本発明の化合物(ニコチンアミド及びピリドキシンを、それぞれ200mg/kg体重及び4mg/kg体重)か、対照としての水を強制経口投与した。実験の終了まで、マウスには1日1回強制投与した。筋再生の効率を評価するため、前もって損傷させた筋肉を損傷から5日後(図6及び図7)及び12日後(図8)に採取し、凍結切片を作製した。次に、いくつかの筋分化マーカーを測定した。特異的な抗体を使用して、凍結切片をPax7、ミオゲニン、ラミニン(筋線維を描写するため)、及び胚性ミオシン重鎖(損傷/再生領域を画定)の発現について染色し、Hoechst 33342で対比染色して細胞核を可視化した。
図6は、成体集団として定義された3ヶ月齢マウスにおける筋幹細胞の増殖の初期段階及びその後の筋分化の段階を表し、それぞれPax7+細胞(図6のA)及びミオゲニン+細胞(図6のB)の数を計数することによって評価した。データは、損傷させた筋肉の領域(arear)当たりの細胞数として表し、対照条件と比較した倍数変化として表す。*、**、***、****は対照からの差を示しており、それぞれ、p<0.05、p<0.01、p<0.001、p<0.0001の一元配置分散分析である。データは平均±SEMとして表した。
図7は、筋幹細胞の増殖の初期段階及び筋分化のその後の段階を表し、Pax7+細胞(図7のA)及びミオゲニン+細胞(図7のB)の数を計数することによって評価し、それぞれ、老齢集団として定義される24ヶ月齢のマウスにおいて、並びに対照としての「成体」マウスを用いて実施した。データは、損傷させた筋肉の領域(arear)当たりの細胞数として表し、対照条件と比較した倍数変化として表す。*、**、***、****は対照からの差を示しており、それぞれ、p<0.05、p<0.01、p<0.001、p<0.0001の一元配置分散分析である。データは平均±SEMとして表した。
図8は、老齢集団として定義された24カ月齢マウス、並びに対照としての「成体」マウスにおける後期の筋線維成熟を表す。これらの新生筋線維を認識及び描写できる胚性ミオシン重鎖及びラミニンの発現に基づき、それぞれの新たに形成された筋線維のサイズを測定し、定量することによって評価した。結果を、平均筋線維断面積(μm2)として示す。*、**、***、****は対照からの差を示しており、それぞれ、p<0.05、p<0.01、p<0.001、p<0.0001の一元配置分散分析である。データは平均±SEMとして表した。
[発明を実施するための形態]
定義
以下、いくつかの定義を示す。しかしながら定義が以下の「実施形態」の項にある場合もあり、上記の見出し「定義」は、「実施形態」の項におけるそのような開示が定義ではないことを意味するものではない。
本明細書に記載する全ての百分率は、別途記載のない限り、組成物の総重量によるものである。本明細書においてpHについて言及されるとき、値は、標準的な装置を使用して25℃で測定したpHに相当する。
本明細書で使用するとき、「約」、「およそ」、及び「実質的に」は、数値のある範囲内、例えば、参照数字の-10%から+10%の範囲内、好ましくは参照数字の-5%から+5%の範囲内、より好ましくは、参照数字の-1%から+1%の範囲内、最も好ましくは参照数字の-0.1%から+0.1%の範囲内の数を指すものと理解される。
本明細書における全ての数値範囲は、その範囲内の全ての整数又は分数を含むと理解されるべきである。更に、これらの数値範囲は、この範囲内の任意の数又は数の部分集合を対象とする請求項をサポートすると解釈されたい。例えば、1~10という開示は、1~8、3~7、1~9、3.6~4.6、3.5~9.9などの範囲をサポートするものと解釈されたい。
本開示及び添付の特許請求の範囲において使用されるとき、単数形「a」、「an」及び「the」には、別段の指示がない限り、複数の参照物も含まれる。したがって、例えば、「1つの構成成分(a component)」又は「その構成成分(the component)」についての言及は、2つ以上の構成成分を含む。
用語「含む/備える(comprise)」、「含む/備える(comprises)」、及び「含んでいる/備えている(comprising)」は、排他的なものではなく、他を包含し得るものとして解釈されるべきである。同様にして、用語「含む、「含む」(include、including、containing)、及び「有する」(having)は全て、このような解釈が文脈から明確に妨げられない限りは他を包含し得るものであると解釈されるべきである。更に、これに関して、上記の用語は、記載された特徴の存在を明記するが、追加の特徴又は更なる特徴の存在を排除するものではない。
それにもかかわらず、本明細書で開示される組成物及び方法は、本明細書に具体的に開示されていない任意の要素を欠く場合がある。したがって、「含む(comprising)」という用語を使用する実施形態の開示は、(i)識別された構成成分又はステップを有し、追加の構成成分又はステップも有する実施形態の開示、(ii)識別された構成成分又はステップ「を本質的に含む(consisting essentially of)」実施形態の開示、並びに(iii)識別された構成成分又はステップ「を含む(consisting of)」実施形態の開示である。本明細書で開示される任意の実施形態は、本明細書で開示される任意の他の実施形態と組み合わせることができる。
「X及び/又はY」という文脈で使用される用語「及び/又は」は、「X」若しくは「Y」又は「X及びY」と解釈されるべきである。同様に、「X又はYのうちの少なくとも1つ」は、「X」若しくは「Y」又は「X及びYの両方」と解釈されるべきである。
本明細書において使用する場合、用語「例」及び「例えば~など(such as)」は、その後に用語の列挙が続くときは特に、単に例示的かつ説明的なものにすぎず、排他的又は包括的なものとみなされるべきではない。
「対象」又は「個体」は、哺乳動物、好ましくはヒトである。本明細書で使用するとき、「有効量」とは、欠乏を予防する、個体の疾患若しくは医学的状態を治療する、又はより一般的には、症状を軽減させる、疾患の進行を管理する、又は個体に対して栄養学的、生理学的若しくは医学的利益をもたらす、量である。
用語「処置/治療」及び「処置/治療する」には、予防的又は抑止的治療(対象とする病的状態又は障害を予防する及び/又は発症を遅らせる治療)と、治癒的、治療的、又は疾患改質的治療との両方が含まれ、例えば、診断された病的状態又は障害の治癒、遅延、症状の軽減、及び/又は進行の停止のための治療的手段、並びに、疾患に罹患する危険性がある患者、又は疾患に罹患した疑いのある患者、及び体調不良の患者、又は疾患若しくは医学的状態に罹患していると診断された患者の治療が含まれる。用語「処置/治療」及び「処置/治療する」は、対象が全快するまで治療することを必ずしも意味するものではない。「処置/治療」及び「処置/治療する」という用語はまた、疾患に罹患してはいないが不健康な状態を招きやすい可能性のある個体の健康を維持及び/又は促進することも指す。用語「処置/治療」及び「処置/治療する」はまた、1つ以上の主たる予防又は治療手段の相乗作用、又はそうでない場合強化を含むことも目的としている。非限定的な例として、処置/治療は、患者、介護者、医師、看護師、又は別の医療専門家によって行うことができる。
本明細書で使用するとき、「単位剤形」という用語は、ヒト対象及び動物対象のための投与量単位として好適な物理的に個別の単位を指し、各単位は、治療に効果的な希釈剤、担体、又はビヒクルとともに、所望の効果をもたらすのに十分な量の、所定量の本明細書に開示される組成物を含有する。単位剤形の仕様は、使用される具体的な化合物、達成しようとする効果、及びホスト体内の各化合物に関連する薬力学によって決まる。
「キット」は、1つ以上の容器中で又は1つ以上の容器を伴って、キットの構成要素が、物理的に関連付けられ、そして、製造、配送、販売、又は使用のための1つのユニットとみなされることを意味している。入れ物としては、袋、箱、カートン、ボトル、任意の種類若しくは設計若しくは材料のパッケージ、上包装、シュリンク包装、添付された構成要素(例えば、ステープルで留められたもの、又は接着されたものなど)、又はこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
特定の構成成分を参照して使用される「実質的にない」という用語は、存在する構成成分のいずれかが、約2.0重量%未満、例えば約1.0重量%未満、好ましくは約0.5重量%未満、又はより好ましくは約0.1重量%未満を構成することを意味する。
用語「特別医療目的用食品(FSMP)」とは、食物摂取制限、消化吸収障害、代謝障害又は特定の疾患に罹患している人々の栄養又は食事に関する特別なニーズを満たすために、特別に加工及び調製されたフォーミュラ食を指す。かかる食品は、医師又は臨床栄養士の指導下で、単独で又は他の食品と共に使用される。FSMPは、特別用途用の食品であって医薬品ではないが、通常、健常な人々によっては摂取されない。FSMPは、広範な医学研究による科学事実に基づいて、臨床医及び栄養士によって特別に開発されたものである。
用語「経口栄養補助食品(ONS)」とは、主要栄養素及び微量栄養素を提供する無菌の液体、半固体又は粉末を指す。ONSは、緊急保険環境及び社会保健環境内で、経口食のみではその栄養要件を満たすことができない個体に対して広く使用されている。
本明細書で使用されるとき、「ビタミンB6」は、ピリドキシン(PN)、ピリドキサール5’-リン酸(PLP)、ピリドキシン5’-リン酸(P5P)、ピリドキサール(PL)、ピリドキサミン(PM)、ピリドキサミン5’-リン酸(PMP)、4-ピリドキシン酸、及びピリチノールのうちの1つ以上を含み得る。好ましい実施形態では、任意のビタミンB6の少なくとも一部はPNである。ビタミンB6の少なくとも一部はPLPであることができる。吸収されたピリドキサミンは、ピリドキサールキナーゼによってPMPに変換され、PMPは、PNPからPLPへの変換も触媒するピリドキサミンリン酸トランスアミナーゼ又はピリドキシン5’-リン酸オキシダーゼによってPLPに更に変換される。[2]ピリドキシン5’-リン酸オキシダーゼは、リボフラビン(ビタミンB2)から生成される補因子のフラビンモノヌクレオチド(FMN)に依存する。
用語「高齢」は、ヒトに関連して、少なくとも60歳、好ましくは63歳超、より好ましくは65歳超、最も好ましくは70歳超の年齢を意味する。非ヒト動物の文脈において、「高齢者」とは、その寿命の60%、いくつかの実施形態では、その寿命の少なくとも70%、少なくとも80%、又は少なくとも90%に達した可能性が高い非ヒト対象を意味する。寿命の決定は、保険数理の表、計算又は推定を基準にしてもよく、かつ、過去、現在及び未来の影響、又は寿命にプラス若しくはマイナスに作用することが知られている因子を、考慮してもよい。寿命を判定するときには、種、性別、体格、遺伝因子、環境因子及びストレス因子、現在及び過去の健康状態、過去及び現在の栄養状態、並びにストレス因子が考慮され得る。
ヒトの文脈での「中高年者(older adult)」という用語は、45歳以上、好ましくは50歳より上、より好ましくは55歳より上の出生後年齢を意味し、高齢の個体を含む。
「運動性」(Mobility)は、ある場所から別の場所まで独力で安全に移動する能力である。
本明細書で使用するとき、サルコペニアは、筋肉量低下、筋力低下、及び身体パフォーマンス低下のうちの1つ以上を特徴とする。より好ましくは、サルコペニアは、筋肉量低下、筋力低下、及び身体パフォーマンス低下のうちの2つ以上によって評価される。最も好ましくは、サルコペニアは、筋肉量低下、筋力低下、及び身体パフォーマンス低下によって評価される。これらは全て、当業者に周知の方法によって測定できる。
筋肉量は、CT(コンピュータ断層撮影)、DXA(二重エネルギーX線吸収測定)、MRI(磁気共鳴画像法)又はD3クレアチン希釈法によって測定できる。
筋力は、握力(例えば、ハンドヘルドダイナモメトリーを使用)又は膝伸展筋力(例えば、四頭筋トルク測定を使用)によって測定できる。
身体パフォーマンスは、歩行速度、SPPB、400m歩行試験、TUG(time up and go)テスト、又は階段昇段テストによって測定できる。
サルコペニアは、例えば、Chenら(2014)「Sarcopenia in Asia:consensus report of the Asian Working Group for Sarcopenia」(Journal of the American Medical Directors Association 15,95-101)に記載されているように、AWGSOP(Asian Working Group for Sarcopenia in Older People)の定義に基づいて対象で診断することができる。低筋肉量は、概ね、身長の二乗に対して正規化した体肢除脂肪量(ALM指数)の低下を基準とすることができ、具体的には男性の場合は7.00kg/m2未満、女性の場合は5.40kg/m2未満のALM指数を基準とすることができる。身体パフォーマンスの低下は、概ね、歩行速度、具体的には0.8m/秒未満の歩行速度を基準とすることができる。筋力低下は、概ね、握力低下を基準とすることができ、具体的には男性で26kg未満、女性で18kg未満の握力を基準とすることができる。
サルコペニアは、例えば、Cruz-Jentoftら、2010「Sarcopenia:European consensus on definition and diagnosis:Report of the European Working Group on Sarcopenia in Older People」(Age Ageing 39,412-423)に記載されているように、EWGSOP(European Working Group for Sarcopenia in Older People)の定義に基づいて対象で診断することができる。低筋肉量は、概ね、身長の二乗に対し正規化した体肢除脂肪量(ALM指数)の低下を基準とすることができ、具体的には男性の場合は7.23kg/m2未満、女性の場合は5.67kg/m2未満のALM指数を基準とすることができる。身体パフォーマンスの低下は、概ね、歩行速度、具体的には0.8m/秒未満の歩行速度を基準とすることができる。筋力低下は、概ね、握力低下を基準とすることができ、具体的には男性で30kg未満、女性で20kg未満の握力を基準とすることができる。
サルコペニアは、例えばStudenskiら(2014)、「The FNIH sarcopenia project:rationale,study description,conference recommendations,and final estimates」(J Gerontol A Biol Sci Med Sci.69(5):547-558)に記載されているように、アメリカ国立衛生研究所(Foundation for the National Institutes of Health、FNIH)の定義に基づいて、対象において診断することができる。低筋肉量は、一般に、ボディマスインデックス(BMI:kg/m2))に対して正規化された低四肢除脂肪量(ALM)に基づくものであり得、特に、BMIに対するALMの正規化では、男性で0.789未満、女性で0.512未満である。身体パフォーマンスの低下は、概ね、歩行速度、具体的には0.8m/秒未満の歩行速度を基準とすることができる。筋力低下は、概ね、握力低下を基準とすることができ、具体的には男性で26kg未満、女性で16kg未満の握力を基準とすることができる。筋力低下はまた、概ね、握力対体格指数の低下を基準とすることができ、具体的には男性で1.00未満、女性で0.56未満の握力対体格指数を基準とすることができる。
筋肉量を測定する別のアプローチにはD3クレアチン希釈法がある。この方法は、ロバストな標準法であり、将来的にはDXAの代替法となり得る方法として、より広く受け入れられている。D 3-クレアチン希釈法は、例えば、Clark et al. (2014)“Total body skeletal muscle mass: estimation by creatine (methyl-d3)dilution in humans”J Appl Physiol (1985). 2014 Jun 15;116(12):1605-13及びStimpson et al. (2013)“Longitudinal changes in total body creatine pool size and skeletal muscle mass using the D3-creatine dilution method”J Cachexia Sarcopenia Muscle. Jun 25により過去に報告されている。
実施形態
本開示の一態様は、ニコチンアミド及びビタミンB6を含む組成物である。ニコチンアミド及びビタミンB6を含む組成物は、加齢、及び傷病による不活動などの様々な理由による骨格筋量、骨格除脂肪筋肉量、骨格筋力、及び/若しくは骨格筋機能の低下の予防及び/又は治療、並びに/又は骨格筋量、骨格除脂肪筋肉量、骨格筋力、及び/若しくは骨格筋機能の改善、例えば老齢者のサルコペニア及び/若しくは身体のフレイルの治療に、有利である。
組成物
ニコチンアミド
ナイアシンアミド又はニコチン酸アミドとしても知られるニコチンアミドは、ビタミンB3の水溶性活性型である。
ニコチンアミドは、約0.001mg/日~約3000mg/日、例えば1mg/日~約3000mg/日、好ましくは約10mg/日~約2000mg/日、より好ましくは500mg/日~約1000mg/日の量で投与することができる。当然のことながら、1日用量は、1日の様々な時間で小分けして投与することができる。しかし、いずれの場合であっても、投与される化合物の量は、活性成分の溶解度、使用される配合物、対象の状態(例えば体重)、及び/又は投与経路のような因子に応じて変わる。例えば、上記開示のニコチンアミドの1日用量は非限定的なものであり、いくつかの実施形態では、異なっていてもよく、特に、本明細書に開示される組成物は、急性期特別医療目的用食品(FSMP)として利用することができ、最大約3.0g/日のニコチンアミドを含有する。
ピリドキシン
ピリドキシンは、多くの食品中に天然に存在する重要な水溶性ビタミンであるビタミンB6の4-メタノール形態である。
一実施形態では、「ビタミンB6」は、ピリドキシン(PN)、ピリドキサール5’-リン酸(PLP)、ピリドキシン5’-リン酸(P5P)、ピリドキサール(PL)、ピリドキサミン(PM)、ピリドキサミン5’-リン酸(PMP)、4-ピリドキシン酸、及びピリチノールのうちの1つ以上を含み得る。好ましい実施形態では、任意のビタミンB6の少なくとも一部はPNである。ビタミンB6の少なくとも一部はPLPであることができる。吸収されたピリドキサミンは、ピリドキサールキナーゼによってPMPに変換され、PMPは、PNPからPLPへの変換も触媒するピリドキサミンリン酸トランスアミナーゼ又はピリドキシン5’-リン酸オキシダーゼによってPLPに更に変換される。[2]ピリドキシン5’-リン酸オキシダーゼは、リボフラビン(ビタミンB2)から生成される補因子のフラビンモノヌクレオチド(FMN)に依存する。
一実施形態では、ビタミンB6は、約1.0~600mgのビタミンB6、例えば約1.0~200mgのビタミンB6、例えば約1.0~25.0mgのビタミンB6、例えば約10~20mgのビタミンB6/日の1日用量のビタミンB6の量で投与することができる。一実施形態では、ピリドキシン:ニコチンアミドが、約1:100~約1:9、好ましくは約1:80~約1:20、好ましくは約1:75~約1:25、より好ましくは約1:60~約1:30の比で存在するときに、組合せは、特に筋細胞の増殖及び分化決定の両方において特に有効である。一実施形態では、ピリドキシン:ニコチンアミドは、約1:45~約1:30の比で存在する。
いくつかの実施形態において、ニコチンアミド及びビタミンB6の組合せを含む組成物は、栄養組成物の形態である。
いくつかの実施形態では、ニコチンアミド及びビタミンB6の組合せを含む組成物は、食品製品、栄養補助食品、ニュートラシューティカル、特別医療目的用食品(FSMP)、栄養補給剤、乳製品ベースの飲料、小容量液体栄養補給剤、又は食事代替飲料の形態である。
いくつかの実施形態において、ニコチンアミド及びビタミンB6の組み合わせを含む組成物は、食品添加物又は医薬品の形態である。
食品添加物又は医薬品は、例えば、錠剤、カプセル、トローチ、又は液体の形態であってもよい。食品添加物又は医薬品は、長期間にわたって有効成分を持続的(constant)に供給可能な、徐放性製剤として提供されることが好ましい。
組成物は、粉乳ベースの製品;インスタント飲料;レディ・トゥ・ドリンク処方;栄養粉末;栄養液体;乳ベースの製品、特にヨーグルト又はアイスクリーム;穀類製品;飲料;水;コーヒー;カプチーノ;麦芽飲料;チョコレート風味飲料;調理製品;スープ;錠剤;及び/又はシロップからなる群から選択されてもよい。
組成物は、保護親水コロイド(ガム、タンパク質、加工デンプンなど)、結合剤、フィルム形成剤、封入剤/封入材、壁/シェル材料、マトリックス化合物、コーティング、乳化剤、表面活性剤、可溶化剤(油、脂肪、ワックス、レシチンなど)、吸着剤、担体、充填剤、共化合物、分散剤、湿潤剤、加工助剤(溶媒)、流動化剤、矯味剤、増量剤、ゼリー化剤、ゲル形成剤、抗酸化物質、及び抗菌剤を更に含有してもよい。
更に、組成物には、経口又は経腸投与に好適な有機又は無機担体材料に加え、USRDAなどの政府機関の推奨に従い、ビタミン類、ミネラル類、微量元素及びその他の微量栄養素を含有させることもできる。
本発明の組成物は、タンパク質源、炭水化物源及び/又は脂質源を含有してもよい。
任意の好適な食品由来のタンパク質、例えば、動物性タンパク質(乳タンパク質、肉タンパク質、及び卵タンパク質など);植物性タンパク質(大豆タンパク質、小麦タンパク質、米タンパク質、及びエンドウ豆タンパク質など);遊離アミノ酸の混合物;又はこれらの組み合わせが挙げられる。カゼイン及びホエイタンパク質等の乳タンパク質、並びに大豆タンパク質が特に好ましい。
組成物が脂肪源を含む場合、脂肪源は、好ましくは、フォーミュラのエネルギーのうち5%~40%;例えば、エネルギーのうち、20%~30%をもたらす。DHAを添加してもよい。好適な脂肪プロファイルを、キャノーラ油、コーン油、及び高オレイン酸ヒマワリ油のブレンドを使用して得ることができる。
炭水化物源は、より好ましくは、組成物のエネルギーの40%~80%をもたらす。任意の好適な炭水化物、例えば、スクロース、ラクトース、グルコース、フルクトース、固形コーンシロップ、マルトデキストリン、及びこれらの混合物を使用できる。
本開示の別の態様は、本明細書に開示される組成物のいずれかの治療有効量を含むキットである。一実施形態では、キットは、組成物の経口投与用に構成される。例えば、キットは、第1のカプセルがビタミンB6を含み、第2のカプセルがニコチンアミドを含む、2つのカプセルの形態であることができる。
本開示の別の態様は、組成物を調製する方法である。当該方法は、治療有効量のニコチンアミド及びビタミンB6の組み合わせを組み合わせることを含むことができ、好ましくは、本明細書に開示される生理学的利益のうちの少なくとも1つに関して治療効果のある組み合わせ量を含むことができる。
治療方法
本明細書において「治療」についてなされる全ての言及は、治癒的、緩和的、及び予防的治療を含むものであると理解される。哺乳動物、特にヒトの治療が、好ましい。ヒト及び動物の治療の両方が、本発明の範囲内である。
一実施形態では、本発明は、骨格筋量、骨格除脂肪筋肉量、骨格筋握力、及び/若しくは骨格筋機能の低下を予防並びに/又は治療する、並びに/又は骨格筋量、骨格除脂肪筋肉量、骨格筋握力、及び/若しくは骨格筋機能を改善する方法を提供する。本方法は、本明細書に開示される組成物のいずれかの治療有効量を、それを必要とする個体に投与することを含む。当該投与の非限定的な例としては、経口投与及び静脈内投与が挙げられる。一実施形態では、当該投与は、経口投与である。一実施形態では、当該方法は、ビタミンB6とニコチンアミドとの組み合わせの治療有効量を、それを必要とする個体に投与することを含む。
別の実施形態では、当該方法は、有効量のビタミンB6とニコチンアミドとの組み合わせの治療有効量を、それを必要とする個体に投与することを含む。
本発明で使用される組成物は、単独で投与され得るが、特にヒトの治療法において、それらは一般的には医薬担体、添加物又は希釈剤との混合物で投与されるであろう。
本発明のさらなる実施形態において、本発明の化合物又は組成物は、高カロリー、高タンパク質、高糖質、ビタミンB12及び/又はビタミンDサプリメント、抗酸化剤、ω脂肪酸、酪酸産生物質及び/又はポリフェノールについての食事介入と組み合わせて、骨格筋肉量、骨格除脂肪筋肉量、骨格握力及び/又は骨格筋機能の低下を予防並びに/又は治療する、並びに/又は骨格筋肉量、骨格除脂肪筋肉量、骨格握力及び/若しくは骨格筋機能を改善する方法において使用され得る。
本発明の文脈において、表現「ブチレート産生体」は、対象に投与された場合に、例えば前記対象の腸において、ブチレートを送達及び/又はその産生を刺激することができる物質又は成分を示す。ブチレート産生体の非限定的な例としては、酪酸ナトリウム、酪酸カリウム及び/又は酪酸を含有するトリグリセリド、例えば同じ出願人の特許出願である国際公開第2019/228851号パンフレットに記載されているものなどが挙げられる。
いくつかの実施形態において、ニコチンアミド及びビタミンB6の組合せを含む組成物は、同時に、別々に又は連続して、好ましくは同時に使用するための組合せ調製物の状態である。
本明細書で使用するとき、用語「組み合わせ」、又は用語「組み合わせて」、「~と組み合わせて使用される」若しくは「組み合わせた調製物」は、2種以上の作用剤/剤を同時に、順次に、又は別々に組み合わせ投与することを指す。
本明細書で使用される用語「同時」は、作用剤/剤が同時に投与される、すなわち、同じ時に投与されることを意味する。
本明細書で使用される用語「順次」とは、作用剤/剤がもう一方の後に投与されることを意味する。
本明細書で使用される用語「別々に」は、作用剤/剤が、互いに独立して投与されるが、但し、作用剤/剤を組み合わせた効果、好ましくは相乗的な効果を示すことを可能にする時間間隔内で投与されることを意味する。したがって、「別々に」投与するとは、1つの作用剤/剤を、例えば、もう一方の後の1分以内、5分以内、又は10分以内に投与することを容認し得る。
当業者は、過度の実験を行わずとも、本発明の作用剤の1つを対象に投与するのに適切な用量を容易に決定することができる。典型的には、医師は、個々の患者に最も好適である実際の投与量を、使用される具体的な作用剤の活性、代謝安定性及びその作用剤の作用の長さ、年齢、体重、全般的な健康、性別、規定食、投与方法及び投与時間、排泄速度、薬物の組み合わせ、特定の状態の重症度、並びに治療を受けている個体を含む様々な因子をもとに決定する。当然のことではあるが、より高い又はより低い投与量範囲が優れている個別の場合があり得、そのような場合も本発明の範囲内にある。
一実施形態では、本方法は、1日当たり1.0~600mgのビタミンB6、好ましくは1日当たり1.0~200mgのビタミンB6、好ましくは1日当たり1.0~25.0mgのビタミンB6の1日用量のビタミンB6と、約1mg/日~約3000mg/日、好ましくは約10mg/日~約2000mg/日、より好ましくは500mg/日~約1000mg/日の量のニコチンアミドとの組み合わせの治療有効量を、それを必要とする個体に投与することを含む。
一実施形態では、組み合わせは、少なくとも1カ月、好ましくは少なくとも2カ月、より好ましくは少なくとも3カ月、4カ月、5カ月又は6カ月、最も好ましくは少なくとも1年の期間にわたって個体に投与する。この期間中に、組み合わせは、少なくとも1週間に1日、好ましくは1週間に少なくとも2日、より好ましくは1週間に少なくとも3日、4日、5日又は6日、最も好ましくは、1週間に7日、個体に投与できる。組み合わせは、1日1回単回用量で投与することも、1日に複数の分割用量で投与することもできる。
上記の投与例は、間断のない連日投与を必要とするものではない。それよりむしろ、投与期間中の2~4日間の中断など、投与には何回かの短期間の中断があってもよい。本組成物の理想的な投与継続期間は当業者により決定され得る。
対象
いくつかの実施形態では、対象は、ヒト又はヒト以外の動物である。
ヒト以外の動物の例としては、脊椎動物、例えば、ヒト以外の霊長類(特に高等霊長類)、イヌ、げっ歯類(例えば、マウス、ラット、又はモルモット)、ブタ及びネコなどの哺乳類が挙げられる。ヒト以外の動物は、コンパニオンアニマルであってもよい。
好ましくは、対象は、ヒトである。
一実施形態では、個体は、老齢の対象;高齢の対象;筋疲労又は筋力低下がある対象;運動障害がある対象;フレイルである対象;プレフレイルである対象;サルコペニアである対象;プレフレイル、フレイル、サルコペニア、又は運動障害から回復中の対象;身体のリハビリテーションを受けている対象(例えば、筋肉、骨、靱帯、又は神経系のうちの1つ以上への傷害からの);スポーツマン;及びペットからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
好ましくは、本明細書に開示される方法によって改善することができる筋機能には、筋力、歩行速度、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される特性が含まれる。筋機能は、典型的には、付属肢の骨格筋質量の、単位当たり又は筋肉体積当たりの強度として定義される。
本明細書に開示される方法によって治療することができるカルシウムの枯渇又は欠乏に関連する筋障害の非限定的な例としては、筋ジストロフィー、先天性コアミオパチー、及びミトコンドリアミオパチーが挙げられる。特定の非限定的な例としては、バース症候群;慢性進行性外眼筋麻痺(cPEO);カーンズ・セイヤー症候群(KSS);リー症候群;ミトコンドリアDNA枯渇症候群(MDDS);ミトコンドリア脳筋症と乳酸アシドーシスと脳卒中様発作(MELAS);ミトコンドリア神経胃腸脳筋症(MINGIE);赤色ぼろ線維によるミオクローヌスてんかん(MERRF):ニューロパシーとアタキシアと網膜色素変性症(NARP);及びピアソン症候群が挙げられる。
個体には、障害若しくは状態(例えば、サルコペニア、フレイル、筋疲労若しくは筋力低下、又は筋機能、筋パフォーマンス、若しくは筋力のうちの1つ以上の障害)のリスクがあることがあり、その場合、組成物の有効量は、予防に有効な用量であり、又は個体には、障害若しくは状態があることがあり、その場合、組成物の有効量は、治療に有効な用量である。いくつかの実施形態において、本方法は、投与前に、状態を有するものとして又は状態のリスクがあるものとして個体を識別することを含む。
別の実施形態では、本開示は、中高年者における運動障害を治療又は予防する方法を提供する。本方法は、有効量の、カルシウムと、オレウロペイン又はその代謝産物のうちの少なくとも1つとの組み合わせを、中高年者に経口投与することを含む。中高年者は、高齢の個体であってもよい。いくつかの実施形態では、サルコペニア、骨粗鬆症、変形性関節炎、栄養不良から回復中の、栄養不良のリスクがある、リハビリテーションを受けている、翌年内にリハビリテーションを受ける予定である、及びこれらの組み合わせの中高年者には、フレイル、プレフレイル、サルコペニアからなる群から選択される状態がある。
状態が個体においてまだ現れていない場合、フレイル又はサルコペニアを発症するリスクを少なくとも部分的に低減するのに十分な量で、及び/又は、プレフレイル、フレイル、サルコペニア、若しくは運動障害の重症度を少なくとも部分的に低減するのに十分な量で、組成物を、中高年者に投与することができる。かかる量は「予防に有効な用量」と定義される。この場合もまた、正確な量は、体重、健康状態及び筋機能(例えば筋力、歩行速度など)がどの程度低下しているかなど、個体に関連するいくつもの要因によって異なる。
以下の非限定的な例は、ニコチンアミドとビタミンB6とを含む組成物の、骨格筋量、筋力、及び/又は筋肉機能の低下を予防すること及び/又は治療することに関する予想外の有効性を裏付ける。
実施例1 筋幹細胞の筋形成性の増殖及び分化決定
材料及び方法
異なるドナー(ドナー1、ドナー2及びドナー3)由来のヒト初代筋芽細胞を、ウェル当たり1,000個の細胞密度で、384ウェルプレートの骨格筋増殖培地(SKM-M,AMSbio)に播種した。処理のために、最初の播種から16時間後に、筋芽細胞培養物に化合物を直接添加した。
次いで、全ての培養物を96時間増殖させた。抗Pax7抗体及び抗MyoD抗体を使用して、Pax7及びMyoDの発現について細胞を染色し、Hoechst 33342で対比染色して細胞核を可視化した。Pax7+細胞は、MyoD発現は考慮せず、Pax7を発現する細胞として定義される。MyoD+細胞は、Pax7は発現していないがMyoDは発現している細胞として定義される。ImageXpress(Molecular Devices)プラットフォームを使用して画像取得を行った。定量には、MetaXpressソフトウェアのMulti-Wavelength Cell Scoringに基づくカスタムモジュール分析を使用した。
加えて、1:2~1:80の範囲でピリドキシンとニコチンアミドとの間のいくつかの比(ビタミンB6/NAM比)を試験した。図8に、同じモデル下でのこれらの特定の比のPax7+細胞の数を表す。
*、**、***、****は対照からの差を示しており、それぞれ、p<0.05、p<0.01、p<0.001、p<0.0001の一元配置分散分析である。データは平均±SEMとして表した。
結果
結果を図1~5に示す。
ドナー1及びドナー2由来のヒト初代筋芽細胞から得られたデータをプールした(図1参照)。各条件について、細胞の総数を決定して化合物の毒性を評価し、Pax7+又はMyoD+細胞集団の割合を評価するため、Pax7+又はMyoD+細胞数を総細胞数に対して正規化し、対照条件(DMSO1%)と比較した倍数変化として表した。図1のAはPax7+細胞の割合を表し、図1のBはMyoD+細胞の割合を表す。これらのデータは、ニコチンアミドが、細胞の増殖(Pax7+)及び細胞の分化(MyoD+)の両方の割合を用量依存的に増加させることによって筋幹細胞機能を促進することを実証する。
同様に、ピリドキシンについては、ドナー1及びドナー2由来のヒト初代筋芽細胞から得られたデータをプールした。各条件について、細胞の総数を決定して化合物の毒性を評価し、Pax7+又はMyoD+細胞集団の割合を評価するため、Pax7+又はMyoD+細胞数を総細胞数に対して正規化し、対照条件(DMSO1%)と比較した倍数変化として表した。図2のAはPax7+細胞の割合を表し、図2のBはMyoD+細胞の割合を表す。これらのデータは、ピリドキシンが、分化中の(MyoD+)細胞の割合を用量依存的に増加させることによって筋幹細胞機能を促進することを実証する。
図3は、MyoD+細胞(ドナー3由来)に対するニコチンアミド及びピリドキシンの単独又は組み合わせの効果を表す。各条件について、MyoD+細胞の数を対照条件(DMSO 1%)におけるMyoD+細胞の数に対して正規化した。図3のAは、対照条件に対して正規化したMyoD+細胞の数を表す。図3のBは、対照条件(DMSO 1%)と比較したMyoD+細胞数の増加を表す。これらのデータは、ニコチンアミド及びピリドキシンの組合せの効果が、ニコチンアミド及びピリドキシンの個々の効果の合計よりも大きく、相乗効果を有することを示す。実際、線形回帰モデル(相互作用項、p=0.05)を適用することによって、本発明者らは、ニコチンアミドとピリドキシンとの間の統計的に有意な相乗効果を観察することができた。
比較実験として、ニコチンアミド(NAM)とビタミンB9との組み合わせを上記と同様に測定した(図4参照)。ピリドキシン(ビタミンB6)とは異なり、ビタミンB群の別のメンバーであるビタミンB9は、ニコチンアミドと組み合わせて添加された場合、いかなる中毒性も相乗効果も有さない。加えて、図5は、ピリドキシンとニコチンアミドとの間の比(ビタミンB6/NAM比)が、筋幹細胞機能の促進に対して関連する影響を与えることを実証する。
実施例2 成体及び老齢の動物における筋幹細胞機能に対するニコチンアミド(NAM)及びピリドキシン(B6)の組合せのインビボ効果
材料及び方法
成体の骨格筋において損傷又は疾患に反応して生じる筋再生の生理的プロセスを再現するため、本発明者らは、マウスの後肢筋にカルディオトキシンを筋肉注射した。筋肉損傷の誘発の1週間前に、マウスに本発明の化合物(ニコチンアミド及びピリドキシンを、それぞれ200mg/kg体重及び4mg/kg体重)か、対照としての水を強制経口投与した。実験の終了まで、マウスには1日1回強制投与した。筋再生の効率を評価するため、前もって損傷させた筋肉を損傷から5日後(図6及び図7)及び12日後(図8)に採取し、凍結切片を作製した。次に、いくつかの筋分化マーカーを測定した。特異的な抗体を使用して、凍結切片をPax7、ミオゲニン、ラミニン(筋線維を描写するため)、及び胚性ミオシン重鎖(損傷/再生領域を画定)の発現について染色し、Hoechst 33342で対比染色して細胞核を可視化した。筋幹細胞の初期増殖期及びその後の筋分化期は、それぞれPax7+細胞数(図6のA及び図7のA)及びミオゲニン+細胞数(図6のB及び図7のB)を計数することによって評価した。データは、損傷させた筋肉領域(arear)当たりの細胞数として表し、対照条件と比較した倍数変化として表す。後期の筋線維成熟(図8)を、新生筋線維を認識及び描写することを可能にする胚性ミオシン重鎖及びラミニンの発現に基づいて測定された、新たに形成された各筋線維のサイズを定量することによって評価した。結果を、平均筋線維断面積(μm2)として示す。図6に示す実験は、成体集団として定義される3ヶ月齢のマウスを用いて行った。図7及び図8に示される実験は、老齢集団として定義される24ヶ月齢のマウス、並びに対照としての「成体」マウスを用いて行った。
結果
これらのデータは、ニコチンアミドとピリドキシンとの組合せが、筋肉修復/再生のインビボ前臨床モデルにおいて増殖(Pax7+)細胞及び分化(MyoD+)細胞の両方の数を増加させることによって筋幹細胞機能を促進することを実証する(図6)。加齢動物においても同様の実験を行い(図7)、加齢に関しても、ニコチンアミドとピリドキシンとの組合せが、増殖(Pax7+)細胞及び分化(MyoD+)細胞の両方の数を増加させ、これらの生物学的リードアウトを成体動物のレベルで復元させることによって、筋幹細胞機能を促進することを実証する。加えて、図8は、ニコチンアミド及びピリドキシンの組み合わせが、新たに形成される筋線維のサイズを増加させることによって筋肉修復プロセスを促進することができることを実証する。
本明細書に開示される現在好ましい実施形態に対する様々な変更及び修正が、当業者には明らかである。そのような変更及び修正は、本主題の趣旨及び範囲から逸脱することなく、かつ意図される利点を損なわずに、なされ得る。したがって、このような変更及び修正は、添付の特許請求の範囲によって包含されることが意図されている。

Claims (14)

  1. ビタミンB6及びニコチンアミドの組み合わせを治療有効量で含み、
    サルコペニア及び/又は身体的虚弱を予防及び/又は治療するための、骨格筋量、骨格筋除脂肪量、骨格筋力、及び/又は骨格筋機能を改善するための組成物。
  2. 前記ビタミンB6が、1日当たり1.0~600mgのビタミンB6、好ましくは1日当たり1.0~200mgのビタミンB6、好ましくは1日当たり1.0~25.0mgのビタミンB6の量で投与される、請求項1に記載の使用のための組成物。
  3. 前記ニコチンアミドが、約1mg/日~約3000mg/日、好ましくは約10mg/日~約2000mg/日、より好ましくは500mg/日~約1000mg/日の量で投与される、請求項1又は2に記載の使用のための組成物。
  4. 前記ビタミンB6が、1日あたり10~20.0mgのビタミンB6の量で投与され、及び/又は前記ニコチンアミドが、1日あたり約500mg~約1000mgのニコチンアミドの量で投与される、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
  5. 前記ビタミンB6:前記ニコチンアミドが、約1:100~約1:9、好ましくは約1:80~約1:20、好ましくは約1:75~約1:25、好ましくは約1:60~約1:30の比で存在する、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
  6. 前記ビタミンB6:前記ニコチンアミドが、約1:45~約1:30の比で存在する、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
  7. 前記組成物が、経口栄養組成物、栄養補給剤、経口栄養補助食品、医療用食品、栄養補助食品、食品製品、特別医療目的用食品(FSMP)である、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
  8. 前記組成物が、固体粉末、粉末スティック、カプセル、又は溶液の形態である、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
  9. サルコペニアを有するか又はそのリスクがある対象における栄養不足を回復及び/又は解消するための、請求項1~8のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
  10. 前記個体が、老齢の対象;高齢の対象;筋疲労又は筋力低下がある対象;運動障害がある対象;フレイルである対象;プレフレイルである対象;サルコペニアである対象;プレフレイル、フレイル、サルコペニア、又は運動障害から回復中の対象からなる群から選択される、請求項1~9のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
  11. 前記ニコチンアミド及び前記ビタミンB6が、同じ組成物において一緒に投与される、請求項1~10のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
  12. 前記ニコチンアミドが、前記ビタミンB6とは異なる組成物で別々に投与される、請求項1~11のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
  13. 前記ビタミンB6及び前記ニコチンアミドが、タンパク質、炭水化物、脂肪及びそれらの混合物からなる群から選択される成分をさらに含む食品において一緒に投与される、請求項1~12のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
  14. サルコペニア及び/又は身体的虚弱、骨格筋量、除脂肪量、筋力及び/又は骨格筋機能を、予防及び/又は治療及び/又は改善するためのキットであって、治療有効量のニコチンアミドと、ビタミンB6とを含む、キット。

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