JP2023546398A - 水溶性マグネシウムイオンを低含有量で含む炭酸カルシウム粒子状物質 - Google Patents

水溶性マグネシウムイオンを低含有量で含む炭酸カルシウム粒子状物質 Download PDF

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Abstract

本開示は、炭酸カルシウム粒子状物質の総量に対して、約170ppm未満の水溶性マグネシウムイオンを含む炭酸カルシウム粒子状物質であって、水溶性マグネシウムイオンの量が、本明細書に記載されている方法を使用して決定される、炭酸カルシウム粒子状物質に関する。本開示は、本発明による炭酸カルシウム粒子状物質を調製する方法、及び本開示による炭酸カルシウム粒子状物質又は本開示による方法によって得ることができる炭酸カルシウム粒子状物質を含む塗料組成物にさらに関する。

Description

本開示は、低含有量の水溶性マグネシウムイオンを有する炭酸カルシウム粒子状物質、低含有量の水溶性マグネシウムイオンを有する炭酸カルシウム粒子状物質の調製方法、及び本開示による炭酸カルシウム粒子状物質を含む塗料組成物を対象とする。
炭酸カルシウム粒子状物質、例えば、沈降炭酸カルシウム(PCC)又は重質炭酸カルシウム(GCC)は、プラスチック、紙及び塗料などの組成物中の、例えば充填剤などの幅広い用途に使用されている。炭酸カルシウム粒子状物質を製造する方法は、当分野において周知である。しかし、大きなスケールでの生成プロセスが使用されるため、炭酸カルシウム粒子状物質、例えば、マグネシウムイオン及びそれらの個々の塩に存在するすべての副生物を除去することは、通常、経済的に可能ではない、及び/又は生態環境学的に実現可能ではない。これは、いくつかの用途において、このような副生物の存在は、炭酸カルシウム粒子状物質の使用の妨害になることが多いにも関わらずのことである。
例えば、高いpH値、すなわち、水ガラスを使用した際に多くの場合に得られ、緩衝化される高いアルカリ性を有する塗料組成物において、炭酸カルシウム粒子状物質が使用されると、ゲル形成が多くの場合に発生し、粘度の顕著な向上をもたらすことが観察される。この場合、塗料組成物は、通常、もはや加工可能ではないか、又は許容可能かつ均一な塗装基材をもたらすほどの加工性が少なくともない。しかし、高いpH値を有する塗料組成物の提供は、塗料組成物、得られるコーティング及びコーティング後の表面における微生物成長(これは、生成及びその保管の間に既に起こる恐れがある)を低減する一方法となる。このような場合では、塗料組成物への有機系殺生物剤を添加することを、もはや必要としなくてもよい。
微生物成長は、例えば、かび、うどんこ病、藻及び/又は細菌の成長の存在を伴う、塗料組成物及び得られるコーティングのとりわけ審美的な劣化をもたらす恐れがある。さらに、このような微生物成長によって放出される酵素又は他の構成成分は、塗布前の塗料組成物の物理分解及び/又は得られるコーティングの物理分解をもたらす恐れがある。このような物理分解は、コーティングの多孔度の増大、又は基材へのコーティングの粘着喪失を含み、例えば、木材表面のコーティングを介する水分の浸透をもたらし、これは、下層の木材の微生物による腐食をもたらす恐れがある。言い換えると、このような場合、塗料組成物は、木材を保護するためなどの、コーティングとして、塗料組成物から必要な特徴をもはや示さない。
上で概説した通り、塗料組成物に、微生物成長に対する抵抗性を付与する代替肢の1つは、高いpH値を有する塗料組成物を供給する代わりに、塗料組成物中に有機系殺生物剤を使用することである。しかし、環境保護理由のために既にある規制のため、及び/又は顧客の要求のため、塗料組成物中に有機系殺生物剤を使用することは、可能でも、望ましいことでもあり得ない。例えば、2020年1月以来、製品及びサービスに対してドイツが承認したものであり、環境に優しい側面を有しており、かつ世界中で最初のエコラベルの1つと考えられており、顧客の購買決定に関連性が高い、ブルーエンジェルラベルが授与されたすべての内壁用塗料組成物は、イソチアゾリノン系保存剤(殺生物剤)(MIT/BIT/CMITなど)を宣伝文句にすることがもはや許されていない。
したがって、塗料組成物にこれまで使用されてきた有機系殺生物剤を使用することは、もはや実現可能な選択肢ではないと思われ、さらなる有機系殺生物剤の使用を禁止する今後の規制が予期されるので、高いpH値を有する塗料組成物を供給することは、塗料組成物及び得られるコーティングにおいて、微生物成長を回避する好ましい選択肢であるように思われる。
しかし、上で説明した通り、高いpH値を有する塗料組成物中に増量剤として炭酸カルシウムを使用した場合、ゲル形成が起こることが多く、著しい粘度上昇をもたらす。しかし、経済的理由及び環境保護理由のために、例えばTiO2の代わりに、炭酸カルシウムを使用することが望ましい。
したがって、高いpH値を有する塗料組成物にとりわけ使用することができる、炭酸カルシウム粒子状物質が必要とされている。
本開示は、添付の特許請求の範囲に規定されている。
第1の態様によれば、炭酸カルシウム粒子状物質の総量に対して、約170ppm未満の水溶性マグネシウムイオンを含む炭酸カルシウム粒子状物質であって、水溶性マグネシウムイオンの量が、本明細書に記載されている方法を使用して決定される、炭酸カルシウム粒子状物質が提供される。
第2の態様によれば、第1の態様による炭酸カルシウム粒子状物質を調製する方法であって、
- 炭酸カルシウム物質の総量に対して、約170ppm以上の水溶性マグネシウムイオンを含む炭酸カルシウム粒子状物質を用意するステップであって、水溶性マグネシウムイオンの量が、本明細書に記載されている方法を使用して決定される、前記ステップ、及び
- 炭酸カルシウム粒子を、最長で約24時間の間、約65℃~約200℃の間の温度まで加熱するステップ
を含む、前記方法が提供される。
第2の態様による方法は、
- 炭酸カルシウム物質の総量に対して、約170ppm以上の水溶性マグネシウムイオンを含む炭酸カルシウム粒子状物質を用意するステップであって、水溶性マグネシウムイオンの量が、本明細書に記載されている方法を使用して決定される、前記ステップ、及び
- 炭酸カルシウム粒子状物質を水で洗浄するステップ
を代替として含むことができる。
第2の態様による方法は、
- 炭酸カルシウム物質の総量に対して、約170ppm以上の水溶性マグネシウムイオンを含む炭酸カルシウム粒子状物質を用意するステップであって、水溶性マグネシウムイオンの量が、本明細書に記載されている方法を使用して決定される、前記ステップ、
- 炭酸カルシウム粒子状物質を水で洗浄するステップ、及び
- 洗浄するステップの後に、炭酸カルシウム粒子状物質を、最長で約24時間の間、約65℃~約200℃の間の温度まで加熱するステップ
を代替として含むことができる。
第2の態様では、提供される炭酸カルシウム粒子状物質は、炭酸カルシウム物質の総量に対して、約170ppm以上~約200ppm未満の水溶性マグネシウムイオンを含むことができ、水溶性マグネシウムイオンの量は、本明細書に記載されている方法を使用して決定されるか、又は提供される炭酸カルシウム粒子状物質は、炭酸カルシウム物質の総量に対して、約200ppm以上の水溶性マグネシウムイオンを含むことができ、水溶性マグネシウムイオンの量は、本明細書に記載されている方法を使用して決定される。
第3の態様によれば、第2の態様による方法によって得ることができる炭酸カルシウム粒子状物質が提供される。
第4の態様によれば、第1又は第3の態様による炭酸カルシウム粒子状物質を含む塗料組成物が提供される。
本開示のある種の実施形態は、以下の利点:
・ 炭酸カルシウム粒子状物質中の水溶性マグネシウムイオンの含有量が、望ましい程低い、
・ 本開示による炭酸カルシウム粒子状物質を含む塗料組成物の望ましい安定性、
・ 製造プロセスの大きなスケールの工業プロセスへのスケールアップが容易である、
・ 現在、使用されている他の物質を置き換えることができることを含めた、様々な用途にとって、炭酸カルシウム物質が経済面及び環境面で優しい
のうちの1つ又は複数を実現することができる。
本開示の明記されている態様のうちのいずれか特定の1つ又は複数に関して提示される、詳細、実施例及び実施形態は、本開示の態様のすべてに等しく適用される。すべての可能なそれらの変形形態において、本明細書に記載されている実施形態のあらゆる組合せ、実施例及び実施形態が、本明細書において特に示されない限り、又は他には、文脈によって明らかに矛盾しない限り、本開示によって包含される。
以下の記載は、本開示の例示的な実施形態に関し、特許請求の範囲を限定するものでないものとすることが理解される。
水溶性マグネシウムイオンを低含有量で有する炭酸カルシウム粒子状物質が生成され得ること、及び水溶性マグネシウムイオンを低含有量で有する炭酸カルシウム粒子状物質を含む塗料配合物が改善された安定性を有することができることを、驚くべきことに見出した。本明細書において使用する場合、「水溶性マグネシウムイオン」とは、水中の所与の塩の溶解度に依存する、水溶性マグネシウム塩から放出されるマグネシウムイオンのことである。このような水溶性マグネシウムイオンの量は、本明細書に記載されている方法によって測定することができる。
水溶性マグネシウムイオンの量は、マグネシウム塩などの1種又は複数のマグネシウム化合物に由来することができる。1種又は複数のマグネシウム塩は、MgCl2、MgBr2、MgI2、MgSO4、Mg(酢酸)2、Mg(ClO32、Mg(ClO42、Mg(BrO32、MgCr27、MgSiF6、Mg(HCO22、Mg(IO32、MgMoO4、MgS23及びそれらの水和物(MgCl2、MgCl2.6H2O、MgBr2、MgBr2.6H2O、MgI2、MgI2.8H2O、MgSO4、MgSO4.7H2O、Mg(酢酸)2、Mg(酢酸)2.4H2O、Mg(ClO32、Mg(ClO42、Mg(ClO42.6H2O、Mg(BrO32、Mg(BrO32.6H2O、MgCr27、.MgSiF6、MgSiF6.6H2O、Mg(HCO22、Mg(HCO22.2H2O、Mg(IO32、Mg(IO32.4H2O、MgMoO4、MgS23.6H2Oなど)から選択することができる。
水溶性マグネシウムイオンを決定する方法
本開示では、炭酸カルシウム粒子状物質の水溶性マグネシウムイオンの含有量は、20℃の温度で、20gの炭酸カルシウム粒子状物質と200mlの脱塩水とを混合することによって決定され、続いて、この混合物を400rpmで15分間、マルチスターラーで撹拌する。次に、このスラリーを45分間、沈殿させて、次に、ろ液を0.1umのミリポア真空フィルターに通してろ過する。ろ液に濁りがある場合、1つ又は複数の後工程において、ろ液に濁りがなくなるまで、前のろ過工程の細孔サイズの半分を有するセロルースフィルター上でろ液を採集する。次に、Thermo-Fisher製のiCAP6300を使用し、DIN EN ISO11885に準拠して、得られたろ液を、誘導結合プラズマ発光分析法(ICP-OES又はICP-AES)によって分析する。この結果は、炭酸カルシウム粒子状物質の総質量に対する、水溶性マグネシウムイオンの質量によってppm単位で与えられる。
炭酸カルシウム粒子状物質の総マグネシウム含有量(水溶性マグネシウムイオン、及び非水溶性マグネシウム化合物又は塩の形態のマグネシウムイオンを含む)は、蛍光X線(XRF)の使用により決定される。この結果は、炭酸カルシウム物質中のMgOの百分率で与えられ、したがって、Mgの含有量はそのまま計算される。
塗料組成物のpHは、Mettler Toledo FiveEasy(商標)pH/mV卓上測定器などの、標準pH測定器を使用して決定される。
塗料組成物の粘度は、25℃の温度において、コーン(CP4/40 SR1877SS)及びプレート(PLS61 S1555SS)形状を使用して、Kinexus Pro+を使用して、本開示において決定される。その測定は、3工程からなる:
(1)毎秒0.1の初期せん断で、30秒間、測定を行い、1秒毎に値を記録する。(2)毎秒30のせん断で、30秒間、測定を行い、再度、1秒毎に値を記録する。
最初の2つの工程(1)及び(2)は、塗料組成物を平衡にするための必須の工程の後、以下の工程(3)を行う。(3)毎秒0.1のせん断で、30分間、測定を行い、5秒毎に値を記録する。この実験部分では、上記の測定は、塗料組成物を調製直後(T0)、24時間後(T24)、48時間後(T48)、1週間後(T1週間)及び/又は2週間後(T2週間)に行うことができる。値はすべて、Pa・秒で報告される。
本塗料組成物のゲル強度は、本開示中では、ICIゲル強度粘度計を使用して決定される。値はすべて、グラム毎センチメートルで報告される。
塗料組成物の低いせん断粘度(0.3~30秒-1)(ブルックフィールド粘度)は、本開示中では、ブルックフィールドDV-II+Proを使用して決定される。ブルックフィールド粘度は、1rpm、10rpm及び100rpmで測定され、その値は、1分後に測定した。値はすべて、ポアズで報告される。本出願では、用語「粘度」とは、上で説明したKinexus Pro+装置を使用して決定された粘度を指す一方、用語「ブルックフィールド粘度」は、ブルックフィールドDV-II+Pro装置を使用する測定によって得られた値を指す。
X線光電子分光法は、本開示では、Scienta-Omicron Argus分析装置、及びx線源として225Wの出力で操作した単色Al Kα(1486.7eV)源を使用して決定する。試料は、粉末の充填差異を最小限にするため、インジウム製ホイル内に載せて圧縮した。XPS(1.5eVで、2μA)の間、電荷をクエンチするために、除電装置を使用する。広いエネルギー範囲(サーベイ)スキャンを、50eVのパスエネルギーを用いて記録し、狭い範囲の分析スキャンは、20eVのパスエネルギーを用いて記録した。強度はすべて、XPS機器の透過関数に対して補正し、エネルギースケールは、粉末表面に結合した偶発炭素に対する内部標準にした。
本開示では、炭酸カルシウム粒子状物質の炭酸カルシウムの総含有量は、Touch Control900を備えるMethrom Titrando905(手順:逆滴定)を使用して決定する。例えば、ビーカー中の2.200gの炭酸カルシウム粒子状物質及び140mlの水をpH1.5に到達するまで、6mol/Lの硝酸により希釈する。動的滴定は、等価点に到達するまで、1mol/lの水酸化ナトリウムを使用して行う。硝酸の消費量は、以下の式に従い計算する:
V1(HNO3)=V2(HNO3)-V(NaOH)
V1(HNO3):炭酸カルシウム粒子状物質中の炭酸カルシウムと反応させるために必要な量
V2(HNO3):pH1.5に到達するために必要な量(ml)(工程a)
V(NaOH):過剰のHNO3と反応させるため、及び等価点に到達するために必要な量(ml)(工程b)
炭酸カルシウム粒子状物質中の炭酸カルシウムの質量百分率は、以下の式に従って計算される:
Figure 2023546398000001
m(CCPM):炭酸カルシウム粒子状物質の最初の質量
V1(HNO3):pH1.5に到達するために必要な量(ml)(工程a)
V(NaOH):過剰のHNO3と反応させるため、及び等価点に到達するために必要な量(ml)(工程b)
c(HNO3):HNO3の濃度-6mol/l
c(NaOH):NaOHの濃度-1mol/l
炭酸カルシウム粒子状物質のd50粒子サイズは、本明細書において、「Micromeritics Sedigraph 5100ユニット」と称される、Micromeritics Instruments Corporation、Norcross、Georgia、米国(電話:+1 770 662 3620;web-site:www.micromeritics.com)によって供給されている、Sedigraph5100機器を使用し、水性媒体中で完全な分散状態にある炭酸カルシウム粒子状物質の沈殿による周知の方法で測定される。このような機械は、当分野において、「球相当径」(equivalent spherical diameter:esd)と称される、所与のesd値未満のサイズを有する粒子の測定値、及び質量毎の累積百分率のプロットを与える。メジアン粒子サイズd50とは、この方法で決定される、d50値未満の球相当径を有する粒子が50質量%存在する粒子のesdの値のことである。
炭酸カルシウム粒子状物質
本炭酸カルシウム粒子状物質は、第1の態様によれば、炭酸カルシウム物質の総量に対して、約170ppm未満の水溶性マグネシウムイオンを含み、水溶性マグネシウムイオンの量は、本明細書に記載されている方法を使用して決定される。
一部の実施形態では、本炭酸カルシウム粒子状物質は、炭酸カルシウム粒子状物質の総量に対して、約170ppm未満、例えば、炭酸カルシウム粒子状物質の総量に対して、約160ppm未満、又は約150ppm未満、又は約140ppm未満、又は約130ppm未満、又は約120ppm未満、又は約110ppm未満、又は約100ppm未満、又は約90ppm未満、又は約80ppm未満の水溶性マグネシウムイオンを含む。
一実施形態では、本炭酸カルシウム粒子状物質は、炭酸カルシウム粒子状物質の総量に対して、約120ppm未満の水溶性マグネシウムイオンを含む。さらに別の実施形態では、本炭酸カルシウム粒子状物質は、炭酸カルシウム粒子状物質の総量に対して、約80ppm未満の水溶性マグネシウムイオンを含む。
いくつかのマグネシウム塩の溶解度(g/100ml)は、以下の表に提示されている:
Figure 2023546398000002


炭酸カルシウム粒子状物質は、あらゆる供給源、例えば、重質炭酸カルシウム(GCC)、沈降炭酸カルシウム(PCC)又はそれらの組合せから得ることができる。
本開示において使用される炭酸カルシウム粒子状物質は、磨砕によって天然源から通常、得られる重質炭酸カルシウム(GCC)であってもよい。重質炭酸カルシウム(GCC)は、チョーク、大理石又は石灰岩などの無機源を粉砕して、次に摩砕することによって通常、得られ、この後に、所望の微細度を有する生成物を得るため、粒子サイズの分級工程が続き得る。漂白、浮選及び磁気分離などの他の技法もまた使用されて、所望の程度の微細度及び/又は色を有する生成物を得ることができる。固体粒子物質は、自発的に、すなわち、固体材料自体の粒子間の摩耗によって、又は代替的に、摩砕される炭酸カルシウムに由来する様々な物質の粒子を含む粒子摩砕媒体の存在下で、摩砕され得る。一般に、これらのプロセスは、分散剤の存在下で、又はその存在なしに行われてもよく、分散剤は、このプロセスのあらゆる段階で添加されてもよい。
沈降炭酸カルシウム(PCC)もまた、本開示における炭酸カルシウム粒子状物質の供給源として使用されてもよく、当分野において利用可能な公知方法のいずれかによって生成されてもよい。TAPPI Monograph Series No 30、「Paper Coating Pigments」、34~35頁は、本開示の実施に使用することができる、沈降炭酸カルシウムを調製する3つの主要な商業的プロセスを記載している。3つのプロセスのすべてにおいて、石灰岩などの炭酸カルシウムフィード材料は、最初に、焼成されて生石灰を生成し、次に、生石灰は、水中で消和されて、水酸化カルシウム又は石灰乳を生じる。第1のプロセスでは、石灰乳は、二酸化炭素ガスにより、直接炭酸化される。このプロセスは、副生物が形成しないこと、及び炭酸カルシウム生成物の物性及び純度を制御することが比較的、容易であるという利点を有する。第2のプロセスでは、石灰乳を、ソーダ灰と接触させて、二重分解によって、炭酸カルシウムの沈殿物及び水酸化ナトリウムの溶液が生成する。水酸化ナトリウムは、このプロセスが商業的に使用される場合、炭酸カルシウムから実質的に完全に分離され得る。第3の主な商業プロセスでは、石灰乳を、最初に塩化アンモニウムと接触させて、塩化カルシウム溶液及びアンモニアガスを得る。次に、塩化カルシウム溶液をソーダ灰と接触させて、二重分解によって、沈降炭酸カルシウム及び塩化ナトリウムの溶液を生成する。結晶は、使用される具体的な反応プロセスに応じて、様々な形状及びサイズで生成することができる。PCC結晶の3種の主な形態は、アラゴナイト、菱面体晶及び偏三角面晶であり、これらのすべてが、それらの混合物を含め、本開示において使用するのに好適である。
一実施形態では、本炭酸カルシウム粒子状物質は、重質炭酸カルシウム(GCC)を含み、例えば、炭酸カルシウム粒子状物質の総質量に対して、少なくとも約85質量%のGCC、又は少なくとも約95質量%のGCC、又は少なくとも約98質量%のGCCを含むか、又は本炭酸カルシウム粒子状物質は、GCCから実質的になり、例えば、本炭酸カルシウム粒子状物質は、GCCである。
別の実施形態では、本炭酸カルシウム粒子状物質は、沈降炭酸カルシウム(PCC)を含み、例えば、炭酸カルシウム粒子状物質の総質量に対して、少なくとも約85質量%のPCC、又は少なくとも約95質量%のPCC、又は少なくとも約98質量%のPCCを含むか、又は本炭酸カルシウム粒子状物質は、PCCから実質的になってもよく、例えば、本炭酸カルシウム粒子状物質は、PCCである。この実施形態が好ましい。
一部の実施形態では、本炭酸カルシウム粒子状物質は、比較的高い純度を有しており、例えば、本炭酸カルシウム粒子状物質は、炭酸カルシウム粒子状物質の総質量に対して、約95質量%超、例えば約98質量%超の量の炭酸カルシウムを含む。
実施形態では、本炭酸カルシウム粒子状物質は、Sedigraphによって決定すると、約10μm以下、例えば、約8μm以下、約6μm以下、約4μm以下、約3.0μm以下、約2.5μm以下、約2.0μm、又は約1.5μm未満のd50粒子サイズを有する。
本開示では、水溶性マグネシウムイオン、及び非水溶性マグネシウム化合物又は塩の形態にあるマグネシウムイオンを含む炭酸カルシウム粒子状物質中のマグネシウムイオンの全含有量は、本開示による炭酸カルシウム粒子状物質を含む塗料組成物の安定性を決定づけるものではないことを驚くべきことに見出した。むしろ、炭酸カルシウム粒子状物質中の水溶性マグネシウムイオンの含有量だけが、本開示による炭酸カルシウム粒子状物質を含む塗料組成物の安定性に関係することを見出した。
さらに、炭酸カルシウム粒子状物質中の水溶性マグネシウムイオンは、非水溶性マグネシウム化合物又は塩の形態のマグネシウムイオンに、一部又は全部が変換され得ることを見出した。したがって、炭酸カルシウム粒子状物質の水溶性マグネシウムイオンの含有量は、塗料の安定性が、炭酸カルシウム粒子状物質の総マグネシウム含有量を低減する必要なしに、負に影響を及ぼすことがないレベル未満に低減することができる。したがって、ある種の実施形態では、本炭酸カルシウム粒子状物質の総マグネシウム含有量と炭酸カルシウム粒子状物質の水溶性マグネシウムイオンの含有量との間の比は、本明細書に記載されている方法を使用して決定すると、約1.5以上、例えば、約2.0以上である。言い換えると、本炭酸カルシウム粒子状物質の総マグネシウム含有量は、上記の方法に準拠すると、水に溶解しないマグネシウム化合物を包含する。
一実施形態では、本炭酸カルシウム粒子状物質は、沈降炭酸カルシウム(PCC)を含み、例えば、炭酸カルシウム粒子状物質は、炭酸カルシウム粒子状物質の総質量に対して、少なくとも約85質量%のPCC、又は少なくとも約95質量%のPCC、又は少なくとも約98質量%のPCCを含むか、又は本炭酸カルシウム粒子状物質は、PCCから実質的になるか、又は本炭酸カルシウム粒子状物質は、PCCであり、本炭酸カルシウム粒子状物質は、炭酸カルシウム粒子状物質の総量に対して、約170ppm未満の水溶性マグネシウムイオンを含み、例えば、本炭酸カルシウム粒子状物質は、炭酸カルシウム粒子状物質の総量に対して、約150ppm未満、又は約120ppm未満、又は約110ppm未満、又は約100ppm未満、又は約90ppm未満、又は約80ppm未満の水溶性マグネシウムイオンを含む。
一実施形態では、本炭酸カルシウム粒子状物質は、沈降炭酸カルシウム(PCC)を含み、例えば、炭酸カルシウム粒子状物質の総質量に対して、少なくとも約85質量%のPCC、又は少なくとも約95質量%のPCC、又は少なくとも約98質量%のPCCを含むか、又は本炭酸カルシウム粒子状物質は、PCCから実質的になるか、又は本炭酸カルシウム粒子状物質は、PCCであり、本炭酸カルシウム粒子状物質は、MgCl2、MgBr2、MgI2、MgSO4、Mg(酢酸)2、Mg(ClO32、Mg(ClO42、Mg(BrO32、MgCr27、MgSiF6、Mg(HCO22、Mg(IO32、MgMoO4、MgS23及びそれらの水和物から選択されるマグネシウム塩に由来する水溶性マグネシウムイオンを、炭酸カルシウム粒子状物質の総量に対して、約170ppm未満で含み、例えば、本炭酸カルシウム粒子状物質は、本明細書に記載されている方法によって決定すると、炭酸カルシウム粒子状物質の総量に対して、約150ppm未満、又は約120ppm未満、又は約110ppm未満、又は約100ppm未満、又は約90ppm未満、又は約80ppm未満のマグネシウムイオンを含む。
方法
本開示は、第1の態様による炭酸カルシウム粒子状物質を調製する方法をさらに提供する。
一実施形態では、本方法は、
- 炭酸カルシウム物質の総量に対して、約170ppm以上の水溶性マグネシウムイオンを含む炭酸カルシウム粒子状物質を用意するステップであって、水溶性マグネシウムイオンの量が、本明細書に記載されている方法を使用して決定される、ステップ、及び
- 炭酸カルシウム粒子状物質を、最長で約24時間の間、約65℃~約200℃の間の温度まで加熱するステップ
を含む。
実施形態では、本明細書に記載されている方法によって測定すると、炭酸カルシウム粒子状物質の総量に対して、約170ppm以上の水溶性マグネシウムイオン含有量を有する炭酸カルシウム粒子状物質は、加熱前に洗浄される。
別の実施形態では、本方法は、
- 炭酸カルシウム物質の総量に対して、約170ppm以上の水溶性マグネシウムイオンを含む炭酸カルシウム粒子状物質を用意するステップであって、水溶性マグネシウムイオンの量が、本明細書に記載されている方法を使用して決定される、ステップ、
- 炭酸カルシウム粒子状物質を水で洗浄するステップ
を含む。
一実施形態では、本方法は、大きなスケールで、例えば、1時間あたりXYZkgの炭酸カルシウム粒子状物質の生産速度で実施することができる。この実施形態では、十分に費用効果の高い方法が利用可能であり、例えば、加熱方法に加えて、改変を必要とすることなく、既存のプラントの使用が可能となることが多い。
一実施形態では、本明細書に記載されている方法によって測定すると、炭酸カルシウム粒子状物質の総量に対して、約170ppm以上の水溶性マグネシウムイオン含有量を有する炭酸カルシウム粒子状物質は、洗浄後、最長で約24時間の間、約65℃~約200℃の間の温度まで加熱される。
さらに別の実施形態では、本方法は、
- 炭酸カルシウム物質の総量に対して、約170ppm以上の水溶性マグネシウムイオンを含む炭酸カルシウム粒子状物質を用意するステップであって、水溶性マグネシウムイオンの量が、本明細書に記載されている方法を使用して決定される、ステップ、
- 炭酸カルシウム粒子状物質を水で洗浄するステップ、及び
- 洗浄するステップの後に、炭酸カルシウム粒子状物質を、最長で約24時間の間、約65℃~約200℃の間の温度まで加熱するステップ
を含む。
以下の記載は、それとは反対に明示的に記載されていない限り、又は文脈が特に指示しない限り、本発明によるすべての方法に当てはまる。
提供される炭酸カルシウム粒子状物質は、炭酸カルシウム物質の総量に対して、約170ppm以上~約200ppm未満の水溶性マグネシウムイオンを含むことができ、水溶性マグネシウムイオンの量は、本明細書に記載されている方法を使用して決定されるか、又は提供される炭酸カルシウム粒子状物質は、炭酸カルシウム物質の総量に対して、約200ppm以上の水溶性マグネシウムイオンを含むことができ、水溶性マグネシウムイオンの量は、本明細書に記載されている方法を使用して決定される。
本明細書に記載されている炭酸カルシウム粒子状物質の特徴は、本開示による方法の特徴でもある。
一実施形態では、洗浄は、約40℃未満、例えば、約5℃~約40℃、又は約10℃~約35℃、又は約15~約30℃の間の温度で行われ得る。
一実施形態では、洗浄は、最長で1200秒間、例えば、約120秒~約1000秒、又は約180秒~約860秒、又は約240秒~約720秒、又は約360~約660秒、又は約440~約560秒の間、行われ得る。
一実施形態では、洗浄は、水、例えば、蒸留水、又は水道水などの水道水を使用して行うことができる。
洗浄が水を使用して行われる場合、一実施形態では、炭酸カルシウムと水の全量との間の質量比は、約1:500~約1:1、例えば約1:250~約1:4、又は約1:100~約1:9とすることができる。
一実施形態では、炭酸カルシウム粒子状物質の用意と、炭酸カルシウム粒子状物質の加熱との間に、1度のみの洗浄工程が行われる。別の実施形態では、本方法の間に1度のみの洗浄工程が行われる。
本開示による方法における炭酸カルシウム粒子状物質の加熱は、エアースエプトミルを使用して行うことができる。好適なエアースエプトミルは、例えば、Atritor Ltd.、英国から得ることができ、その製品は、Atritorと通常、表示される。実施形態では、本炭酸カルシウム粒子状物質は、エアースエプトミルを使用して加熱され、Atritorを出た物質の温度は、約65℃~約220℃の間、例えば、約80℃~約200℃の間、又は約90℃~約185℃の間、又は約100℃~約175℃の間、又は約110℃~約160℃の間、又は約120℃~約150℃の間、又は約130℃~約140℃の間とすることができる。エアースエプトミルを使用して加熱する場合、加熱工程の期間は、最長で約10秒間、例えば、約5.0秒間、又は最長で約1.0秒間、又は最長で約0.1秒間とすることができる。
実施形態では、本炭酸カルシウム粒子状物質は、慣用的な加熱によって加熱され、例えば、加熱は、オーブン、バンド乾燥機、噴霧乾燥機、CD乾燥機などを使用して行われ、温度は、約65℃~約220℃の間、例えば、約90℃~約210℃の間、又は約110℃~約200℃の間、又は約120℃~約190℃の間、又は約130℃~約180℃の間、又は約140℃~約170℃の間、又は約150℃~160℃の間とすることができる。本炭酸カルシウム粒子状物質が慣用的な加熱によって、例えば、オーブンを使用して加熱される場合、加熱期間は、約2.0時間~約24時間の間、例えば約6.0時間~約22時間の間、又は約12時間~約20時間の間、又は約14時間~約18時間の間とすることができる。本炭酸カルシウム粒子状物質がバンド乾燥機を使用することによって加熱される場合、加熱期間は、約0.2時間~約2.0時間の間、又は約0.5時間~約1.8時間の間、又は約0.7時間~約1.5時間の間、又は約0.9時間~約1.2時間の間とすることができる。本炭酸カルシウム粒子状物質が噴霧乾燥機又はCD乾燥機によって加熱される場合、加熱期間は、約0.5分間~約10分間の間、又は約1.0分間~約9.5分間の間、又は約1.5分間~約9.0分間の間、又は約2.0分間~約7.0分間の間、又は約3.0分間~約5.0分間の間とすることができる。本開示では、エアースエプトミルを使用する加熱は、「慣用的な加熱」とは見なされない。
実施形態では、本炭酸カルシウム粒子状物質が慣用的な加熱によって加熱され、例えば、加熱は、オーブン、バンド乾燥機、噴霧乾燥機、CD乾燥機などを使用して行われ、加熱時に、温度(℃)及び時間(時間)は、以下の関係を満たす:
温度×時間>850℃・時
実施形態では、本炭酸カルシウム粒子状物質は、加熱前に洗浄され、本炭酸カルシウム粒子状物質は、慣用的な加熱によって加熱され、例えば、加熱は、オーブン、バンド乾燥機、噴霧乾燥機、CD乾燥機などを使用して行われ、加熱時に、温度(℃)及び時間(時間)は、以下の関係を満たす:
温度×時間>850℃・時
実施形態では、本炭酸カルシウム粒子状物質は、加熱前に洗浄されず、本炭酸カルシウム粒子状物質は、慣用的な加熱によって加熱され、例えば、加熱は、オーブン、バンド乾燥機、噴霧乾燥機、CD乾燥機などを使用して行われ、加熱時に、温度(℃)及び時間(時間)は、以下の関係を満たす:
温度×時間>1250℃・時
実施形態では、加熱は、オーブンを使用して行われ、温度は、約65℃~約200℃の間、例えば、約90℃~約190℃の間、又は約110℃~約180℃の間、又は約120℃~約180℃の間、又は約130℃~約170℃の間、又は約140℃~約160℃の間とすることができる、及び/又は加熱の期間は、約2.0時間~約24時間の間、例えば約6.0時間~約22時間の間、又は約12時間~約20時間の間、又は約14時間~約18時間の間とすることができる。
実施形態では、乾燥は、オーブンを使用して行われる。
本開示による方法によって得ることができる炭酸カルシウム粒子状物質
上で既に概要を述べた通り、本開示は、本開示による方法によって得ることができる炭酸カルシウム粒子状物質をさらに対象とする。本開示による炭酸カルシウム粒子状物質の特徴及び実施形態は、本開示による方法によって得ることができる炭酸カルシウム粒子状物質の特徴及び実施形態でもある。
塗料組成物
本開示は、本開示による炭酸カルシウム粒子状物質、又は本開示による方法によって得ることができる炭酸カルシウム粒子状物質を含む塗料組成物をさらに対象とする。以下において、「本開示による炭酸カルシウム粒子状物質」及び「本開示による方法によって得ることができる炭酸カルシウム粒子状物質」は、簡潔とするため、用語「炭酸カルシウム粒子状物質」によって略される。
実施形態では、本塗料組成物は、該塗料組成物の総質量に対して、約1.0質量%~約60質量%、例えば、該塗料組成物の総質量に対して、約5.0質量%~約50質量%、又は約10質量%~約45質量%、又は約15質量%~約40質量%、又は約20質量%~約35質量%の炭酸カルシウム粒子状物質を含む。
実施形態では、本塗料組成物は、水ガラスをさらに含む。水ガラスは、存在する場合、塗料組成物の総質量に対して、最大で約5.0質量%の量で、例えば、塗料組成物の総質量に対して、約1.0質量%~約4.5質量%の量で、又は約2.0質量%~約4.0質量%の量で、又は約2.1質量%~約3.5質量%、例えば、約2.1質量%~約5.0質量%、又は約2.1質量%~約4.5質量%、又は約2.1質量%~約4.0質量%、又は約2.1質量%~約3.5質量%、又は約2.1質量%~約3.0質量%の量で存在することができる。
本開示では、水ガラスの量は、塗料組成物の総質量に対して、水ガラスの活性固形物として与えられる。したがって、例えば、25質量%の活性固形物を含有する水ガラス溶液が使用される場合、この溶液の8質量%が使用されて、2質量%の水ガラスの量を実現する。
実施形態では、本開示による塗料組成物は、T0からT24までの粘度の向上を特徴とし、各々は、本明細書に記載されている粘度測定の工程(3)において、1800秒後に、約100Pa.秒未満と決定される。
実施形態では、本開示による塗料組成物は、本明細書に記載されている粘度測定の工程(3)におけるT24時及び1800秒後に決定される、約120Pa.秒未満、例えば、約105Pa.秒未満、又は約90Pa.秒未満、又は約75Pa.秒未満の粘度を特徴とする。
実施形態では、本開示による塗料組成物は、本明細書に記載されている粘度測定の工程(3)におけるT0時及び1800秒後に決定される、約20Pa.秒未満、例えば約18Pa.s未満、又は約15Pa.秒未満、又は約12Pa.s未満、又は約10Pa.s未満、又は約8Pa.s未満の粘度を特徴とする。
本開示による塗料組成物は、本明細書に記載されている粘度測定の工程(3)において、T1週間時及び1800秒後に決定される粘度を特徴とすることができる。T24と比較される、T1週間時において決定される有意な粘度の低下は、塗料組成物の分解によるものとすることができる。本発明による多数の実施例は、このような分解パターンを示さない。
実施形態では、本塗料組成物は、時として、「結合剤」とも称される、ポリマーをさらに含む。このようなポリマーは、塗料のフィルム形成性構成成分であり、これは、粘着性を付与して、顔料と一緒に結合する。したがって、ポリマーは、顔料と一緒に結合して、塗料で塗装された基材への粘着をもたらすことができる、あらゆる好適な物質である。ポリマーは、例えば、ラテックスをベースとするポリマー、及びアクリルをベースとするコポリマー、及び/又はビニル、ポリウレタン、ポリエステル、メラミン樹脂、エポキシ、酢酸ビニル、ビニルエステル及びエチレンをベースとするコポリマー、及び/又はオイル、及び他の好適なモノマー種などの、天然樹脂及び/又は合成樹脂とすることができる。油性塗料に関すると、好適な結合剤は、亜麻仁油、キリ油又はアルキド樹脂を含む。
ポリマーは、固体形態で、又は溶液若しくは溶媒中の分散体の形態で使用され得る。一実施形態では、結合剤は溶媒中、例えば水中の分散体として使用される。例えば、水中のこのような分散体の固体含有量は、該分散体の総質量に対して、約25質量%~約75質量%、例えば、塗料組成物の総質量に対して、約35質量%~約65質量%、又は約45質量%~約55質量%とすることができる。
一実施形態では、塗料組成物中に存在するポリマー固形物の量は、塗料組成物の総質量に対して、約2.0質量%~約25質量%、例えば、塗料組成物の総質量に対して、約3.0質量%~約20質量%、又は約4.0質量%~約15質量%、又は約5.0質量%~約10質量%とすることができる。
実施形態では、本塗料組成物は、約8.5以上のpH値を有する。本塗料組成物のpH値は、約11.4未満とすることができる。実施形態では、本塗料組成物は、約8.5~約11.4、例えば、約9.5~約11.4、又は約10.5~約11.4、又は約11.0~約11.4のpH値を有する。
pHは、必要な場合、アルカリ金属水酸化物、アンモニア及びAMP(2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール)などの、塗料の作製の分野において慣用的な塩基を使用して調節されてもよい。
実施形態では、本塗料組成物は、アルカリ金属水酸化物、アンモニア及びAMP(2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール)からなる群から選択することができる、塩基をさらに含む。
実施形態では、アルカリ金属水酸化物は、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムからなる群から選択される。実施形態では、塩基は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア及びAMP(2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール)及びそれらの組合せからなる群から選択される。塩基の量及び濃度は、所望のpH値が得られるように選択される。
実施形態では、本塗料組成物は、1種若しくは複数の顔料及び/又は1種若しくは複数の充填剤をさらに含む。顔料は、白又は色合いに関わらず、塗料の原色をもたらすものである。この用語は、微粉砕された、天然若しくは合成の無機又は有機の不溶性分散粒子を含み、この粒子は、液状ビヒクル、すなわち溶媒中で分散され得る。
好適な顔料には、例えば、二酸化チタン、カーボンブラック、硫酸カルシウム、酸化鉄及び銅-錯体フタロブルーが含まれる。色をもたらす他の好適な顔料は、当業者に容易に明白であろう。
好適な充填剤には、例えば、石膏、含水カンダイトクレイ(カオリン、ハロイサイト又はボールクレイなど)、無水(焼結)カンダイトクレイ(メタカオリン又は完全焼結カオリンなど)、タルク、雲母、パーライト、長石、霞石閃長岩、ウォラストナイト、珪藻土、重晶石、ガラス及び天然若しくは合成シリカ又はシリケートが含まれる。
実施形態では、1種又は複数の顔料及び1種又は複数の充填剤は、存在する場合、炭酸カルシウムとは異なる。さらなる実施形態では、1種又は複数の顔料及び1種又は複数の充填剤は、存在する場合、炭酸カルシウムを含まない。
実施形態では、1種又は複数の顔料及び1種又は複数の充填剤は、存在する場合、塗料組成物の総質量に対して、約1.0質量%~約50質量%、例えば、塗料組成物の総質量に対して、約2.5質量%~約40質量%、又は約5.0質量%~約30質量%の量で存在する。
実施形態では、本塗料組成物の固体含有量は、塗料組成物の総質量に対して、約25質量%~約75質量%、例えば、約35質量%~約65質量%、又は約45質量%~約55質量%とすることができる。
原理的に、塗料組成物に好適なあらゆる溶媒が、本開示による塗料組成物に使用されてもよい。実施形態では、本塗料組成物は、水をベースとする組成物であり、塗料組成物の水分含量は、塗料組成物の総質量に対して、約25質量%~約75質量%、例えば、約35質量%~約65質量%、又は約45質量%~約55質量%とすることができる。
実施形態では、本塗料組成物は、有機系殺生物剤を実質的に含まない。一部の例では、本塗料組成物は、最大で約500g/molの分子量を有する有機系殺生物剤を実質的に含まず、例えば、本塗料組成物は、最大で約1000g/molの分子量を有する有機系殺生物剤を実質的に含まず、又は本塗料組成物は、最大で約2000g/molの分子量を有する有機系殺生物剤を実質的に含まず、又は本塗料組成物は、あらゆる分子量を有する有機系殺生物剤を実質的に含まない。この文脈において、「実質的に含まない」とは、ガスクロマトグラフィー質量分光法又は液体クロマトグラフィー質量分光法を使用して、塗料組成物の試料から検出される有機系殺生物剤の含有量が、塗料組成物の総質量に対して、約10ppm未満であり、例えば、含有量が、塗料組成物の総質量に対して、約5ppm未満であるか、又は塗料組成物の総質量に対して、約2.5ppm未満である。このような有機系殺生物剤の少量が、本塗料組成物中に存在してもよく、なぜならば、そうでない場合、本塗料組成物を調製するために使用される構成成分のいくつかは、安定化し得ないからである。一実施形態では、有機系殺生物剤は、個別の賦形剤として、本塗料組成物に添加されない。
本明細書において開示されている例示的な塗料はまた、例えば、界面活性剤、増粘剤、消泡剤、湿潤剤、分散剤、溶媒及び融合剤(coalescent)、並びに他の機能性添加物などの、慣用的な添加物から選択される、少なくとも1種の添加物を含んでもよい。このような添加物は、当分野において周知である。実施形態では、慣用的な添加物の総量は、塗料組成物の総質量に対して、約10質量%を超えず、例えば、慣用的な添加物の総量は、塗料組成物の総質量に対して、約0.10質量%~約7.5質量%、又は約0.25質量%~約5.0質量%、又は約0.50質量%~約2.5質量%の範囲内にある。これらの添加物の溶液が使用される場合、上記の量は、溶媒を含まないなどの、添加物に関するものである。
実施形態では、本塗料組成物は、該塗料組成物の総質量に対して、以下:
- 約1.0質量%~約60質量%、例えば、約5.0質量%~約50質量%、又は約10質量%~約45質量%、又は約15質量%~約40質量%、又は約20質量%~約35質量%の炭酸カルシウム粒子状物質、
- 最大で約5.0質量%の量、例えば、約1.0質量%~約4.5質量%の量、又は約2.0質量%~約4.0質量%の量、又は約2.1質量%~約3.5質量%、例えば、約2.1質量%~約5.0質量%、又は約2.1質量%~約4.5質量%、又は約2.1質量%~約4.0質量%、又は約2.1質量%~約3.5質量%、又は約2.1質量%~約3.0質量%の量の水ガラス、
- ポリマーであって、本塗料組成物中に存在するポリマー固形物の量が、約2.0質量%~約25質量%、例えば、約3.0質量%~約20質量%、又は約4.0質量%~約15質量%、又は約5.0質量%~約10質量%とすることができる、ポリマー、
- 約1.0質量%~約50質量%、例えば、約2.5質量%~約40質量%、又は約5.0質量%~約30質量%の量の、炭酸カルシウムとは異なる、任意に、1種又は複数の顔料及び1種又は複数の充填剤、
- 任意に、約10質量%を超えない量の、又は慣用的な添加物の総量が、約0.10質量%~約7.5質量%、例えば、約0.25質量%~約5.0質量%、又は約0.50質量%~約2.5質量%の範囲内にある、慣用的な添加物、
- 100質量%になるまでの水
を含み、
本塗料組成物が、約8.5~約11.4、例えば、約9.5~約11.4、又は約10~約11.4、又は約11.0~約11.4のpH値を有しており、
本炭酸カルシウム粒子状物質が、沈降炭酸カルシウム(PCC)を含み、例えば、炭酸カルシウム粒子状物質の総質量に対して、少なくとも約85質量%のPCC、又は少なくとも約95質量%のPCC、又は少なくとも98質量%、又は少なくとも約99質量%のPCCを含むか、又は本炭酸カルシウム粒子状物質が、PCCから実質的になり、例えば、本炭酸カルシウム粒子状物質が、PCCである。
誤解を回避するため、本出願は、以下の番号付けされた項に記載されている主題を対象とする。
1. 炭酸カルシウム粒子状物質の総量に対して、約170ppm未満の水溶性マグネシウムイオンを含む炭酸カルシウム粒子状物質であって、水溶性マグネシウムイオンの量が、本明細書に記載されている方法を使用して決定される、炭酸カルシウム粒子状物質。
2. 炭酸カルシウム粒子状物質の総量に対して、約160ppm未満の水溶性マグネシウムイオンを含み、水溶性マグネシウムイオンの量が、本明細書に記載されている方法を使用して決定される、前記1に記載の炭酸カルシウム粒子状物質。
3. 炭酸カルシウム粒子状物質の総量に対して、約120ppm未満の水溶性マグネシウムイオンを含み、水溶性マグネシウムイオンの量が、本明細書に記載されている方法を使用して決定される、前記2に記載の炭酸カルシウム粒子状物質。
4. 水溶性マグネシウムイオンが、1種又は複数のマグネシウム塩に由来する、前記3に記載の炭酸カルシウム粒子状物質。
5. 1種又は複数の水溶性マグネシウム塩が、炭酸カルシウム粒子状物質の総量に対して、MgCl2、MgBr2、MgI2、MgSO4、Mg(酢酸)2、Mg(ClO32、Mg(ClO42、Mg(BrO32、MgCr27、MgSiF6、Mg(HCO22、Mg(IO32、MgMoO4、MgS23及びそれらの水和物から選択される、前記4に記載の炭酸カルシウム粒子状物質。
6. 重質炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム又はそれらの組合せである、前記1~5のいずれかに記載の炭酸カルシウム粒子状物質。
7. 沈降炭酸カルシウムである、前記1~6のいずれかに記載の炭酸カルシウム粒子状物質。
8. 炭酸カルシウム粒子状物質の総質量に対して、約95質量%超の量の炭酸カルシウムを含む、前記1~7のいずれかに記載の炭酸カルシウム粒子状物質。
9. Sedigraphを使用して沈殿によって測定されるd50粒子サイズが約3.0μm以下である、前記1~8のいずれかに記載の炭酸カルシウム粒子状物質。
10. 前記1~9のいずれかに記載の炭酸カルシウム粒子状物質を調製する方法であって、
- 炭酸カルシウム物質の総量に対して、約170ppm以上、例えば約200ppm以上の水溶性マグネシウムイオンを含む炭酸カルシウム粒子状物質を用意するステップであって、水溶性マグネシウムイオンの量が、本明細書に記載されている方法を使用して決定される、前記ステップ、
- 炭酸カルシウム粒子状物質を、最長で約24時間の間、約65℃~約200℃の間の温度まで加熱するステップ
を含む、前記方法。
11. 炭酸カルシウム粒子状物質が、加熱前に洗浄される、前記10に記載の方法。
12. 前記1~9のいずれかに記載の炭酸カルシウム粒子状物質を調製する方法であって、
- 炭酸カルシウム物質の総量に対して、約170ppm以上、例えば約200ppm以上の水溶性マグネシウムイオンを含む炭酸カルシウム粒子状物質を用意するステップであって、水溶性マグネシウムイオンの量が、本明細書に記載されている方法を使用して決定される、前記ステップ、及び
- 炭酸カルシウム粒子状物質を水で洗浄するステップ
を含む、前記方法。
13. 炭酸カルシウム粒子状物質が、洗浄後、最長で約24時間の間、約65℃~約200℃の間の温度まで加熱される、前記12に記載の方法。
14. 前記1~9のいずれかに記載の炭酸カルシウム粒子状物質を調製する方法であって、
- 炭酸カルシウム物質の総量に対して、約170ppm以上、例えば約200ppm以上の水溶性マグネシウムイオンを含む炭酸カルシウム粒子状物質を用意するステップであって、水溶性マグネシウムイオンの量が、本明細書に記載されている方法を使用して決定される、前記ステップ、
- 炭酸カルシウム粒子状物質を水で洗浄するステップ、及び
- 洗浄するステップの後に、炭酸カルシウム粒子状物質を、最長で約24時間の間、約65℃~約200℃の間の温度まで加熱するステップ
を含む、前記方法。
15. 洗浄するステップが、水を使用し、25℃の温度で行われる、前記11~14のいずれかに記載の方法。
16. 前記10、11、13及び14のいずれか1つによる場合、加熱時の温度(℃)及び時間(時間)が、以下の関係:
温度×時間>850℃・時
を満たす、前記10、11及び13~15のいずれかに記載の方法。
17. 前記10~16のいずれかに記載の方法によって得ることができる炭酸カルシウム粒子状物質。
18. 前記1~9又は17のいずれかに記載の炭酸カルシウム粒子状物質を含む塗料組成物。
19. 水ガラスをさらに含む、前記18に記載の塗料組成物。
20. 水ガラスが、塗料組成物の総質量に対して、最大で約5.0質量%の量で存在する、前記19に記載の塗料組成物。
21. 約8.5以上のpH値を有する、前記18~20のいずれかに記載の塗料組成物。
22. ポリマーをさらに含む、前記18~21のいずれかに記載の塗料組成物。
23. 塩基をさらに含む、前記18~22のいずれかに記載の塗料組成物。
24. 塩基が、アルカリ金属水酸化物、アンモニア、AMP(2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール)及びそれらの組合せからなる群から選択される、前記23に記載の塗料組成物。
25. アルカリ金属水酸化物が、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムからなる群から選択される、前記24の塗料組成物。
26. 1種若しくは複数の顔料及び/又は1種若しくは複数の充填剤をさらに含む、前記18~25のいずれかに記載の塗料組成物。
27. 水をベースとする組成物である、前記18~26のいずれかに記載の塗料組成物。
28. 有機系殺生物剤を実質的に含まない、前記18~27のいずれかに記載の塗料組成物。
29. 有機系殺生物剤が、最大で約500g/molの分子量を有する、前記28に記載の塗料組成物。
物質:
- Tylose MH30000YP4、水溶性、非イオン性のメチルヒドロキシエチルセルロース増粘剤、SE Tylose GmbH&Co.KGから入手可能;
- Lopon 890、分散剤、ICL Advanced Additivesから入手可能;
- 28質量%の濃度を有するアンモニア;
- Agitan218、水性エマルション用の消泡剤、Munzing Chemieから入手可能;
- Mowilith LDM1828、酢酸ビニル、ビニルエステル及びエチレンをベースとする水性コポリマー分散体、Celanese Emulsion Polymersから入手可能(固形含有量は約50質量%);
- Trasol KE-K、28質量%の活性固形物を含有するケイ酸カリウム(水ガラス)、BASFから入手可能;
- 試験物質は、個々の実施例において指定されている炭酸カルシウム粒子状物質である;
- MgCl2.6H2O;
- Mg(OH)2
Tylose MH30000YP4増粘剤を、塗料のメイクダウン(makedown)の24時間前に、2%溶液にした。
表2に列挙されている添加順に従ったメイクダウン法:
- 「#1の添加順番」に並んで列挙されている構成成分のすべてを、40mlの容量を有する高速ミキサ用ポットに秤量する。
- 次に、このポットを、SpeedMixer(商標)モデルDAC150.1 FVZを使用して、3000rpmで1分間、混合する。パレットナイフを使用して、ポットの縁から粉末を擦り落とし、当分野において通常通り、あらゆる大きな凝集物を破壊する。
- 次に、この混合を2分間、3000rpmで継続し、パレットナイフを使用して、再度、擦り落とす。
- 3000rpmでの最後の3分間の混合により、ミルベースの分散を完了する。
- 順序#2に並んで列挙されている構成成分をポットに秤量し、次に、2000rpmで1分間、混合する。
- これ以降、順序#3に並んだ化合物をポットに秤量し、次に、2000rpmで1分間、混合する。
- 最後に、順序#4に並んだ構成成分をポットに秤量し、塗料に、2000rpmで2分間、最終ミックスを加える。
Figure 2023546398000003

Figure 2023546398000004

(実施例1)
この実施例では、Imerysから得ることができるGCC物質であるImeXtend90を、試験物質として使用する。さらに、塗料組成物中に存在する水溶性マグネシウム及び水不溶性マグネシウムの影響を試験するため、表2によるレットダウン(Let down)に使用されている水5.66gを、それぞれ、適量のMgCl2.6H2O及びMg(OH)2を含有する水溶液によって置き換えることにより、塗料組成物にMgCl2.6H2O又はMg(OH)2を含ませて、以下の表4(MgCl2.6H2Oの添加)及び5(Mg(OH)2の添加)に表示されているマグネシウムの目標量(ppm)に到達させる。表4及び5のそれぞれにおいて、本明細書に記載されている粘度測定の工程(2)(「30せん断で30秒」)の後、及び5、30、60、120、900及び1800秒後の工程(3)の間(「0.1せん断において」)の粘度値を示す。さらに、この測定は、塗料組成物を調製した直後(T0)、24時間後(T24)、48時間後(T48)、1週間後(T1週間)及び2週間後(T2週間)に行う(MgCl2.6H2Oの場合)。
Figure 2023546398000005

Figure 2023546398000006

上の表4に提示されている結果によって実証される通り、塗料への水溶性マグネシウム塩(MgCl2.6H2O)の添加は、水溶性マグネシウムイオンの含有量の増加によって、粘度の向上をもたらす。2日後の粘度の低下が、200ppm及び1000pmの水溶性マグネシウムイオンの目標量を有する塗料組成物に観測されており、T48対T1週間を参照されたい。理論によって拘泥されることを望むものではないが、それは、塗料が不安定になり、塗料組成物の構造が、破壊し始めていることが推定される。
しかし、表5によって実証される通り、Mg(OH)2の添加による1000ppmの目標量のマグネシウムを有する塗料組成物でさえも、ImeXtend90しか含有しない塗料(「未添加物」)に比べ、粘度の有意な上昇を示さない。これは、水酸化マグネシウムが、実際に、水に不溶(水中へのMg(OH)2の溶解度は、わずか9.628×10-4g/100mlである)であるということにより説明される。したがって、マグネシウムは、水酸化マグネシウムの形態にあるので、Mg(OH)2の添加は、水溶性マグネシウムイオンの総合的な量を有意に向上しない。
これらの結果により、マグネシウムイオンの全含有量は、それらが水溶性であるか又は否かに関わらず、塗料の安定性にとって重要ではなく、水溶性マグネシウムイオンの含有量のみが塗料の安定性に影響を及ぼすことが示される。
(実施例2)
この実施例では、Imerysによって得ることができる、事前処理されていてもよい、沈降炭酸カルシウムであるSocal P2が、表2に準拠した配合における試験物質として使用されている。実施例2では、マグネシウムイオンの添加を行わなかった。
特に、Socal P2は、以下の通り事前処理する:
試料2A:前処理がない、すなわち、Socal P2をそのまま使用し、水溶性マグネシウムイオンの含有量は、170ppmであった;
試料2B:スラリー下での生成に由来するSocal P2は、500秒間、約1.5:10の炭酸カルシウムスラリー:水の体積比で水道水を使用して室温で洗浄し、続いて、オーブン中、150℃で16時間、乾燥し、水溶性マグネシウムイオンの含有量は、9ppmであった。
試料2C:Socal P2は、事前洗浄なしに16時間、150℃のオーブン中で乾燥し、水溶性マグネシウムイオンの含有量は、72ppmであった。
試料2D:試料2Bの場合のように、Socal P2を洗浄するが、オーブン乾燥の代わりに、乾燥を130℃の出口温度でAtritorを使用して行い、ほぼ数秒以下の乾燥時間を適用し、水溶性マグネシウムイオンの含有量は、53ppmであった。
試料2E:Socal P2を、130℃の出口温度でAtritorを使用して乾燥し、事前洗浄しないで、ほぼ数秒以下の乾燥時間を適用し、水溶性マグネシウムイオンの含有量は、171ppmであった。
以下の表6では、本明細書に記載されている粘度測定の工程(2)(「30せん断で30秒」)の後、及び5、30、60、120、900及び1800秒後、工程(3)(「0.1せん断において」)の間の粘度値を示す。さらに、この測定は、塗料組成物を調製した直後(T0)、24時間後(T24)、48時間後(T48)及び1週間後(T1週間)に行う。
Figure 2023546398000007

試料2B及び2Dによって観察される通り、洗浄によって、Socal P2中の水溶性マグネシウムイオンの含有量が低下し、上の表6に示されている粘度の改善をもたらす。さらに、洗浄工程を施さないが、オーブン乾燥工程のみを施した試料2Cは、未処理SocalP2(試料2A)と比べて、水溶性マグネシウムイオンの量の有意な低下、及び粘度の改善結果も示す。理論によって拘泥されることを望むものではないが、水溶性マグネシウムイオンの一部は、過剰乾燥によって水不溶性形態に変換され、マグネシウムイオンのこのように生じた水不溶性形態は、塗料組成物の粘度にもはや影響を及ぼさないと推定される。
(実施例3)
この実施例では、実施例2において既に使用した、Socal P2を、表2に準拠した配合における試験物質として使用する。実施例3では、マグネシウムイオンの添加を行わなかった。
基準物質、すなわち無希釈Socal P2(試料3A)を除き、試料3B~3Eにおいて、Socal P2を、500秒間、炭酸カルシウムスラリー:水の体積比が1.5:10で水道水を使用して室温で洗浄し、続いて、オーブン中で乾燥し、これによって、乾燥時間及び温度は、以下の通りとした:
試料3B:80℃で16時間であり、水溶性マグネシウムイオンの含有量は、66ppmであった;
試料3C:105℃で16時間であり、水溶性マグネシウムイオンの含有量は、61ppmであった;
試料3D:150℃で16時間であり、水溶性マグネシウムイオンの含有量は、30ppmであった;
試料3E:150℃で6時間であり、水溶性マグネシウムイオンの含有量は、48ppmであった;
以下の表7では、本明細書に記載されている粘度測定の工程(2)(「30せん断で30秒」)の後、及び5、30、60、120、900及び1800秒後の工程(3)の間(「0.1せん断において」)の粘度値を示す。さらに、この測定は、塗料組成物を調製した直後(T0)、24時間後(T24)、48時間後(T48)及び1週間後(T1週間)に行う。
Figure 2023546398000008

表7に示された結果は、洗浄後でさえも、水溶性マグネシウムイオンの含有量は、乾燥によってさらに低減することができることを実証している。上の実施例2に関して既に議論されている通り、理論によって拘泥されることを望むものではないが、水溶性マグネシウムイオンの一部は、乾燥によって水不溶性形態に変換され、マグネシウムイオンのこのように生じた水不溶性形態は、塗料組成物の粘度にもはや影響を及ぼさないと推定される。
(実施例4)
この実施例では、実施例2及び3において既に使用した、Socal P2を、以下の塗料配合物における試験物質として使用する。
水/他の添加物: 38質量%
顔料: 17質量%
炭酸カルシウム: 20質量%
結合剤: 25質量%
実施例4では、マグネシウムイオンの添加を行わなかった。
基準物質、すなわち無希釈Socal P2(試料4A)は処理されていない。試料4Bでは、Socal P2を、500秒間、炭酸カルシウムスラリー:水の体積比が1.5:10で水道水を使用して室温で洗浄する。乾燥は行わない。
試料4A及び4Bのゲル強度並びにブルックフィールド粘度を、塗料組成物を調製した直後(T0)、24時間(T24)、48時間(T48)、72時間(T72)及び1週間(T1週間)後に決定する。結果が、以下の表に提示されている。
Figure 2023546398000009
(実施例5)
この実施例では、無希釈Socal P2を試料5Aとして使用し、500秒間、炭酸カルシウムスラリー:水の体積の比が1.5:10で、水道水を使用して室温で洗浄したSocal P2を試料5Bとして使用する。実施例5では、マグネシウムイオンの添加を行わなかった。
それらに含まれた様々なマグネシウム種を、XPS分光法を使用して同定する。表は、Mg2+イオン、及び様々な種と結合したCl-イオンの原子濃度を示している。これらはすべて、カルシウム含有量、すなわち、Ca2+イオンあたりの[Mg2+]を基準にして表されている。
Figure 2023546398000010


Mg種の帰属は、Mgの2sピークを使用する、Ardizzone et al., Appl. Surf. Sci. 119, 253 (1997)のデータに一部基づいている。
洗浄工程は、すべてのMgCl2及びMgCO3種を除去し、粉末の残留Mg(OH)2の濃度はほぼ半分になったように思われる。
(実施例6)
この実施例では、これまでの実施例において既に使用した、Socal P2を、実施例4において使用した同じ配合物中の試験物質として使用する。実施例4では、マグネシウムイオンの添加を行わなかった。
試料6B~6Eにおける、基準物質、すなわち無希釈Socal P2(試料6A、水溶性Mg含有量が170ppm)を除き、Socal P2を以下の通り処理し、水溶性マグネシウムの含有量を本明細書に記載されている通り、決定する:
Figure 2023546398000011

試料6A~6Eのゲル強度並びにブルックフィールド粘度を、塗料組成物を調製した直後(T0)、24時間(T24)、48時間(T48)及び1週間(T1週間)後に決定する。結果が、以下の表に提示されている。
Figure 2023546398000012

Claims (15)

  1. 炭酸カルシウム粒子状物質の総量に対して、約170ppm未満の水溶性マグネシウムイオンを含む炭酸カルシウム粒子状物質であって、水溶性マグネシウムイオンの量が、本明細書に記載されている方法を使用して決定される、炭酸カルシウム粒子状物質。
  2. 水溶性マグネシウムイオンが、1種又は複数のマグネシウム化合物又は塩に由来する、請求項1に記載の炭酸カルシウム粒子状物質。
  3. 1種又は複数の水溶性マグネシウム塩が、炭酸カルシウム粒子状物質の総量に対して、MgCl2、MgBr2、MgI2、MgSO4、Mg(酢酸)2、Mg(ClO32、Mg(ClO42、Mg(BrO32、MgCr27、MgSiF6、Mg(HCO22、Mg(IO32、MgMoO4、MgS23及びそれらの水和物から選択される、請求項2に記載の炭酸カルシウム粒子状物質。
  4. 重質炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム又はそれらの組合せである、請求項1~3のいずれか1項に記載の炭酸カルシウム粒子状物質。
  5. 炭酸カルシウム粒子状物質の総質量に対して、約95質量%超の量の炭酸カルシウムを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の炭酸カルシウム粒子状物質。
  6. Sedigraphを使用して沈殿によって測定されるd50粒子サイズが約10.0μm以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の炭酸カルシウム粒子状物質。
  7. 請求項1~6のいずれか1項に記載の炭酸カルシウム粒子状物質を調製する方法であって、
    - 炭酸カルシウム物質の総量に対して、約170ppm以上の水溶性マグネシウムイオンを含む炭酸カルシウム粒子状物質を用意するステップであって、水溶性マグネシウムイオンの量が、本明細書に記載されている方法を使用して決定される、前記ステップ、及び
    - 炭酸カルシウム粒子状物質を、最長で約24時間の間、約65℃~約200℃の間の温度まで加熱するステップ
    を含む、前記方法。
  8. 炭酸カルシウム粒子状物質が、加熱の前に洗浄される、請求項7に記載の方法。
  9. 請求項1~6のいずれか1項に記載の炭酸カルシウム粒子状物質を調製する方法であって、
    - 炭酸カルシウム物質の総量に対して、約170ppm以上の水溶性マグネシウムイオンを含む炭酸カルシウム粒子状物質を用意するステップであって、水溶性マグネシウムイオンの量が、本明細書に記載されている方法を使用して決定される、前記ステップ、及び
    - 炭酸カルシウム粒子状物質を水で洗浄するステップ
    を含む、前記方法。
  10. 炭酸カルシウム粒子状物質が、洗浄後、最長で約24時間の間、約65℃~約200℃の間の温度まで加熱される、請求項9に記載の方法。
  11. 洗浄するステップが、水を使用し、約25℃の温度で行われる、請求項8~10のいずれか1項に記載の方法。
  12. 請求項6~11のいずれか1項に記載の方法によって得ることができる、炭酸カルシウム粒子状物質。
  13. 請求項1~6又は請求項12のいずれか1項に記載の炭酸カルシウム粒子状物質を含む、塗料組成物。
  14. 水ガラスをさらに含み、水ガラスが、塗料組成物の総質量に対して、最大で約5.0質量%の量で存在してもよい、請求項13に記載の塗料組成物。
  15. (a)約8.5以上のpH値を有する、及び/又は
    (b)有機系殺生物剤を実質的に含まない、
    請求項13又は14に記載のいずれか1項に記載の塗料組成物。
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