JP2023545429A - 抗がんペプチドのためのナノ粒子およびその使用 - Google Patents

抗がんペプチドのためのナノ粒子およびその使用 Download PDF

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Abstract

モチーフGLLxLLxLLLxAAG(式中各xが、独立して、アルギニン(R)、ヒスチジン(H)、リジン(K)、アスパラギン酸(D)、またはグルタミン酸(E)から選択される)を含む配列を有する1つ以上のペプチドを含むナノ粒子を記載する。また、がんの処置に使用するための、本ナノ粒子と1種以上の薬学的に許容される賦形剤とを含む薬学的に許容される組成物が記載される。さらに、がんを有する患者に薬学的に許容される組成物を投与するステップを含むがんの処置方法、および薬学的に許容される組成物を含むがんを処置または予防するためのキットが記載される。【選択図】なし

Description

本発明は、がんの処置に使用され得る抗がんペプチド(ACP)のためのナノ粒子に関する。
腫瘍は、細胞レベルで異種性であり、ある範囲の異なるサブタイプのがん細胞からなる。これらサブタイプのうち、がん幹細胞(CSC)は、現在の抗がん剤を使用する従来の薬学的処置における主要な障害としてますます認識されている。乳がんは、世界中で二番目に一般的ながんであり、ほとんどの場合女性で発症する。いくつかの研究は、乳がん幹細胞が生存、自己再生、分化、および再発するために従来の抗がん剤に対して耐性を発達さえ得ることを示している。1-6CSCは、抗がん剤に対する耐性を容易に発展させ、固形腫瘍の化学療法による処置は、通常、患者での薬物耐性CSCの構成比の有意な増加をもたらす。これは、再発および転移の形成をもたらし得る。さらに、乳房腫瘍は同じ患者の中で異なり得、従来の抗がん剤が失敗し得る可能性がある。7-9ドキソルビシンなどの一般に使用される抗がん剤は、全般的に健常な組織に対し高い毒性を有し、肝臓、腎臓、および心臓などの臓器に急性損傷をもたらすため、高い用量での処置は困難である。10-12したがって、がん細胞に対する選択性が改善されており、固形腫瘍における全ての塊(bulk)のがんおよびCSCを殺滅するために十分な用量で健常な組織を傷つけない新規の抗がん剤を開発するための火急なニーズは満たされていない。
膜溶解ペプチドは、通常非がん性細胞に対して細胞傷害性であり、ストレス誘導性変異原性を介して薬物耐性を誘導する傾向がある化学療法剤に代わる、見込みのある抗がん処置を提示する1-6。抗菌適用のための膜溶解ペプチドの治療上の有用性に関する研究努力が継続されているが13-15、抗がん治療薬としてのそれらの成功のための送達方法は、改善される必要がある。ここで、本発明者らは、高い忍容性を有し、有効な腫瘍の増殖阻害または根絶をもたらすナノ粒子での強力であり選択的な抗がんペプチドの効率的なカプセル化を示す。ナノ粒子は、カーゴペプチドの抗がん活性を有意に改善し、同時にその毒性を低減することが示されている。これは、ドキソルビシンのためのFDAに認可された担体であるDoxil(登録商標)などの小分子ナノ粒子(副作用を低減するが、化学療法用カーゴ(ドキソルビシン)の総合的抗がん効力を改善しない)とは異なる。本発明者らの研究は、膜溶解ペプチドのための新規送達システムを示しており、がんとの闘いにおいて新たな道を開くものである。
本発明の第1の態様では、モチーフGLLxLLxLLLxAAG(式中各xが、独立して、アルギニン(R)、ヒスチジン(H)、リジン(K)、アスパラギン酸(D)、またはグルタミン酸(E)から選択される)を含む配列を有する1つ以上のペプチドを含むナノ粒子が提供される。
驚くべきことに、本発明者らは、請求される式に係るペプチドのファミリーが、がん細胞に対する選択性を改善させており、固形腫瘍における全ての塊のがんおよびCSCを殺滅するために十分な用量で健常な組織を傷つけないことを見出した。多くの従来の抗がん剤とは異なり、ここで開発された細孔を形成する膜活性ペプチドは、がん細胞を殺滅するために細胞膜を標的とし破壊する。これにより、薬物を細胞質へ輸送する煩雑さが除かれ、よってペプチドは、従来の化学療法剤と比較して腫瘍浸透が改善している。本発明で請求されるペプチドは、がん細胞の細胞膜を選択的に標的とし、その中に細孔を形成し、よって、それらの電気化学勾配を短絡化することにより細胞を殺滅することにより、作用する。理論により拘束されることを望むものではないが、本ペプチドは、がん細胞膜の脂質組成および化学的な微小環境を直接標的とすることが考えられる。結果として、本ペプチドは、腫瘍細胞が脂質組成を改変することは困難であるため、(細胞が界面活性剤に対する耐性を発達させることは困難であることと同様に)耐性を誘導する可能性が非常に低い。16-18
開示されるペプチドのいくつかは、サリノマイシンなどの現在認可されている抗がん剤に相当する、塊のがんおよびCSCへのナノモル活性を有する。さらに、現在最良のin vitroでの乳がんモデルのうちの1つである、細胞を球状の凝集塊に成長させることにより現実の固形腫瘍を模倣するマンモスフェアモデルでは、本明細書中開示されるペプチドのうちのいくつかは、正常であり健常な細胞に対する低減した毒性を保ちつつ、がん細胞に対し優れた活性を呈する。
本ペプチドは、非常に低いマイクロモル濃度、場合によりナノモル濃度で2次元に増殖したがん細胞、および3次元(スフェロイド)がん細胞培養物を選択的に排除するために、L型アミノ酸およびD型アミノ酸(後者は、プロテアーゼ分解に対するin vivoでの安定性に関して大きな利点がある)の両方で作用する。非がん性ヒト乳房細胞および腎臓細胞を害するためには、3倍~200倍超高い濃度が必要とされる。
本ペプチドは、高価ではなく、容易に合成され、修飾および高スループットスクリーニングが容易であり、がん細胞を特異的に標的とするための化学的および構造的なレパートリーを提供する。
本発明で請求されるペプチドは、de novoで設計されており、現存するペプチドデータベースと比較することにより確認されるように、天然の類縁体は知られていない。この種類の短い可動性ペプチドは、免疫原性が低く、よって、薬学的な適用に適している。
本明細書中記載される場合、用語「ペプチド」は、ペプチド結合により互いに結合したアミノ酸または修飾されたペプチド結合により互いに結合したアミノ酸、すなわちペプチドアイソスターを含む全てのペプチドを表す。ペプチドは、一般に、天然に存在するアミノ酸を含むが、翻訳後プロセスなどの天然のプロセスによるかまたは当該分野でよく知られている化学的な修飾技術により修飾されたアミノ酸配列を含み得る。このような修飾は、基本的なテキストに十分に記載されている。修飾は、ペプチド骨格、アミノ酸側鎖、およびアミノ末端またはカルボキシル末端を含むペプチドのいずれの場所でも起こり得る。同じ種類の修飾が、所定のペプチドのいくつかの部位で同じまたは異なる度合いで存在し得ることが理解されている。また、所定のペプチドは、多くの種類の修飾を含み得る。
好ましくは、本ペプチドは、単離されたペプチドである。用語「単離された」は、ペプチドが、その元の環境から取り出されていることを意味する。たとえば、生きた動物に存在するペプチドは単離されていないが、天然の系において共存する物質の一部または全てから分離された同ペプチドまたは当該ペプチドのフラグメントは単離されている。このようなペプチドは、ベクターの一部であり得、かつ/またはペプチドは組成物の一部であり得、当該ベクターまたは組成物がその天然の環境の一部ではない点で、さらに単離され得る。
1つ以上のペプチドが、ナノ粒子上または中に充填される。好ましくは、ナノ粒子は、複数のペプチドを含む。ナノ粒子を使用してペプチドを送達することは、驚くべきことに良好な結果をもたらすことが見出されている。ナノ粒子により提供される局在化した送達は、ペプチドにがん細胞の細胞膜に細孔をより有効に形成させ、これにより、より効率的ながん細胞の殺滅をもたらすと考えられる。
ナノ粒子という用語は、直径約1~約200nmの粒子を表す。好ましくは、ナノ粒子は、直径約5~約100nm、約10~約50nm、さらにより好ましくは約20nmである。
ペプチドをナノ粒子へ充填することは、吸着またはカプセル化のいずれかにより行われ得る。このような技術は、当業者によく知られている。
好ましくは、本ナノ粒子は、生分解性である。好ましくは、本ナノ粒子は、ポリマーのものである。開示されるナノ粒子の一部を形成し得る適切なポリマーは、限定するものではないが、生分解性α-ヒドロキシポリエステルおよび生体適合性ポリエーテルを含み得る。一部の態様では、例示的なポリエステルとして、たとえばPLA、PLGA、PEG、PEO、ペグ化ポリマー、およびラクチドおよびグリコリドのコポリマー(たとえばペグ化PLA、ペグ化PGA、ペグ化PLGA)、ならびにそれらの誘導体が挙げられる。他の態様では、適切なポリマーとして、たとえばポリ無水物、ポリ(オルトエステル)ペグ化ポリ(オルトエステル)、ポリ(カプロラクトン)、ペグ化ポリ(カプロラクトン)、ポリリジン、ペグ化ポリリジン、ポリ(エチレンインライン(ethylene inline))、ペグ化ポリ(エチレンイミン)、ポリ(L-ラクチド-コ-L-リジン)、ポリ(セリンエステル)、ポリ(4-ヒドロキシ-L-プロリンエステル)、ポリ[a-(4-アミノブチル)-L-グリコール酸]、ならびにそれらの組み合わせおよび誘導体が挙げられる。特に好ましい実施形態では、本ナノ粒子は、ポリエチレングリコールメチルエーテルポリラクチド-コ-グリコリド(PEG-PLGA)を含む。
他の態様では、ポリマーマトリックスは、1つ以上のアクリルポリマーを含み得る。例示的なアクリルポリマーとして、たとえばアクリル酸およびメタクリル酸コポリマー、メチルメタクリラートコポリマー、エトキシエチルメタクリラート、シアノエチルメタクリラート、アミノアルキルメタクリラートコポリマー、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、メタクリル酸アルキルアミドコポリマー、ポリ(メチルメタクリラート)、ポリ(メタクリル酸ポリアクリルアミド)コポリマー、アミノアルキルメタクリラートコポリマー、グリシジルメタクリラートコポリマー、ポリシアノアクリラート、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。マトリックスは、デキストラン、アシル化デキストラン、キトサン(たとえば様々なレベルにアセチル化されている)、ポリ(ビニル)アルコール(たとえば様々な度合いに加水分解)、および/またはアルギン酸塩、たとえばアルギン酸カルシウム錯体などの二価カチオンと錯体形成したアルギン酸塩を含み得る。
本明細書中開示されるナノ粒子は、1、2、3種、またはそれ以上の生体適合性および/または生分解性ポリマーを含み得る。たとえば、企図されるナノ粒子は、約10~約99重量パーセントの、生分解性ポリマーおよびポリエチレングリコールを含む1種以上のブロックコポリマー、ならびに約0~約50重量パーセントの生分解性ホモポリマーを含み得る。例示的なナノ粒子は、約40~約90重量パーセントのポリ(乳)酸-ポリ(エチレン)グリコールコポリマーまたは約40~約80重量パーセントのポリ(乳)酸-ポリ(エチレン)グリコールコポリマーを含み得る。このようなポリ(乳)酸-ブロック-ポリ(エチレン)グリコールコポリマーは、約5~100kDaの数平均分子量を有するポリ(乳酸)、および約2~約10kDa、たとえば約4~約6kDaの数平均分子量を有するポリ(エチレン)グリコールを含み得る。たとえば、開示される治療用ナノ粒子は、約70~約99重量パーセントのPLA-PEGおよび約1~約25重量パーセントの有効な作用物質(すなわち開示されるペプチド)、または約30~約50重量パーセントのPLA-PEG、約30~約50重量パーセントのPLAもしくはPLGA、および約5~約25重量パーセントの有効な作用物質を含み得る。このようなPLA((ポリ)乳酸)は、約5~約10kDaの数平均分子量を有し得る。このようなPLGA(ポリ乳酸-コ-グリコール酸)は、約8~約12kDaの数平均分子量を有し得る。開示されるPLA-PEGコポリマーは、PLAブロックおよびPEGブロックの間に、化学的なリンカー、オリゴマー、またはポリマー鎖を含み得、たとえばPLA-リンカー-PEGを含み得ることを理解されたい。
最も好ましくは、本発明のナノ粒子は、約99重量パーセントのポリ(エチレングリコール)メチルエーテル-ブロック-ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)(PEG-PLGA;PEG 平均M5,000、PLGA M7,000)および1重量パーセントの有効成分(すなわちACP)を含む。
あるいは、ゆっくりとした放出特性を有し得る開示されるナノ粒子は、約42~約45重量パーセントのPLA-PEG(たとえば約16kDaのPLAおよび約5kDaのPEGを伴う)(たとえば43.25%のPLA-PEG)、約42~45重量パーセントのPLA(たとえば約75kDa)(たとえば43.25%のPLA/75kDa)、および約1~15重量パーセントの有効な作用物質を含み得る。たとえば、開示されるナノ粒子は、任意選択で、約1~約50重量パーセントのポリ(乳)酸またはポリ(乳)酸-コ-ポリ(グリコール)酸(PEGを含まない、たとえばPLAのホモポリマー)を含み得、または任意選択で約1~約50重量パーセントまたは約10~約50重量パーセントまたは約30~約50重量パーセントのポリ(乳)酸またはポリ(乳)酸-コ-ポリ(グリコール)酸を含み得る。一実施形態では、開示されるナノ粒子は、約30:60~約60:30、たとえば約40:60、約60:40、または約50:50の重量比で、2種のポリマー、たとえばPLA-PEGおよびPLAを含み得る。
このような実質的にホモポリマー性ポリ(乳)またはポリ(乳)-コ-ポリ(グリコール)酸は、約2~約130kDa、たとえば約20~約30kDa、または約100~約130kDaの重量平均分子量を有し得る。このようなホモポリマー性PLAは、約5~約90kDa、または約5~約12kDa、約15~約30kDa、または約60~約90kDaの数平均分子量を有し得る。例示的なホモポリマー性PLAは、約8kDaの数平均分子量または約12kDaの重量平均分子量を有し得る。
特定の態様では、開示されるナノ粒子は、たとえば標的部分の有効量がペプチドの送達のためのナノ粒子に結合するように、ナノ粒子上にて特定の密度の標的部分で最適化され得る。たとえば、標的部分で機能化された生分解性および/または生体適合性ポリマーマトリックスの割合は、合計の80%未満であり得る。別の実施形態では、標的部分で機能化された生分解性および/または生体適合性ポリマーマトリックスの割合は、合計の約50%未満である。標的部分の密度の増大は、一部の実施形態では、標的の結合(細胞の結合/標的の取り込み)を増大し得る。
例示的な標的部分として、たとえば、タンパク質、ペプチド、抗体、抗体フラグメント、糖類、炭水化物、グリカン、サイトカイン、ケモカイン、ヌクレオチド、レクチン、脂質、受容体、ステロイド、神経伝達物質、およびそれらの組み合わせが挙げられる。マーカーの選択は、選択される標的に応じて変動し得るが、一般的に、本発明の実施形態に有用であり得るマーカーとして、限定するものではないが、細胞表面マーカー、がん抗原(CA)、糖タンパク質抗原、メラノーマ関連抗原(MAA)、タンパク質分解酵素、血管新生マーカー、前立腺特異的膜抗原(prostate membrane specific antigen:PMSA)、小細胞肺癌抗原(SCLCA)、ホルモン受容体、腫瘍サプレッサー遺伝子抗原、細胞周期制御因子抗原、増殖マーカー、およびヒト癌腫抗原が挙げられる。例示的な標的部分として、PEGにコンジュゲートし得る、
Figure 2023545429000001
-lys-(尿素)gluが挙げられ、たとえば開示されるナノ粒子は、PLA-PEG-標的部分、たとえばS,S-2-{3-[1-カルボキシ-5-アミノ-ペンチル]-ウレイド}-ペンタン二酸を含み得る。
1つ以上のペプチドは、最大50アミノ酸長を有し得る。一部の実施形態では、ペプチドは、最大40アミノ酸長を有する。さらなる実施形態では、ペプチドは、最大30アミノ酸長を有する。様々な実施形態では、ペプチドは、最大25アミノ酸長を有する。特定の実施形態では、ペプチドは、最大20アミノ酸長を有する。多くの実施形態では、ペプチドは、最大18アミノ酸長を有する。一部の実施形態では、ペプチドは、最大16アミノ酸長を有する。さらなる実施形態では、ペプチドは、最大15アミノ酸長を有する。特定の実施形態では、ペプチドは、14アミノ酸長を有する。
1つ以上のペプチドは、好ましくは、中性または陰イオン性である。中性または陰イオン性であるペプチドは非常に効果的に作用することが見出されており、これは、正に荷電した陽イオン性ペプチドが細胞膜の負に荷電したリン脂質二重層とより有効に相互作用すると考えられていることから抗がんペプチドは従来陽イオン性であるため、驚くべきものである。
一実施形態では、ペプチドは、配列番号1~36またはそれらの混合物のいずれか1つから選択される配列を含み得る。さらなる実施形態では、ペプチドは、配列番号1~36のいずれか1つの配列からなり得る。
一実施形態では、ナノ粒子は、モチーフGLLxLLELLLxAAGを含む配列を有するペプチドを含む。驚くべきことに、本発明者らは、この配列を有するペプチドががん細胞に対し良好な選択性を有することを見出した。
一実施形態では、配列は、配列番号29または配列番号33を含まない。
一実施形態では、本ナノ粒子は、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号14、配列番号25、または配列番号26、およびそれらの混合物から選択される配列を有するペプチドを含む。より好ましくは、薬学的に許容される組成物は、配列番号2、配列番号4、配列番号14、配列番号25、または配列番号26、およびそれらの混合物から選択される配列を含む。さらにより好ましくは、薬学的に許容される組成物は、配列番号25および/または配列番号26から選択される配列を含む。本発明者らは、これら配列ががん細胞に特に選択的であることを見出した。
一実施形態では、本ナノ粒子は、ペプチド配列がモチーフGLLxLLxLLLxAAGからなるペプチドを含む。
ペプチドは、D型またはL型のいずれかで存在し得る。一実施形態では、ナノ粒子は、L型のペプチドを含む。驚くべきことに、本明細書中提示されるペプチドは、L型の場合にがん細胞により選択的であることが、本発明者らにより見出された。
一実施形態では、本ナノ粒子は、αヘリックスのアセンブリを形成するペプチドを含む。好ましくは、ペプチドは、がん細胞膜に細孔を形成する。ペプチドは、がん細胞膜の脂質組成および化学的な微小環境を直接標的とし、その中に、それらの電気化学的な勾配を短絡化することによりがん細胞を殺滅する細孔を形成すると考えられる。
ペプチド配列またはモチーフのN末端およびC末端は、当業者に知られているいずれかの末端であり得、たとえば、NH、NH 、COOH、およびCOOを含み得る。
本発明の第2の態様は、がんの処置に使用するための、上述のナノ粒子と1種以上の薬学的に許容される賦形剤とを含む薬学的に許容される組成物に関する。
本発明の第3の態様は、がんの処置のための医薬の製造における、上述のナノ粒子と1種以上の薬学的に許容される賦形剤とを含む薬学的に許容される組成物に関する。
本医薬組成物は、上記に開示される複数のナノ粒子を含み得る。
本発明の薬学的に許容される組成物は、皮膚がん、肺がん、乳がん、前立腺がん、結腸直腸がん、膀胱がん、リンパ腫、腎臓がん、膵がん、または子宮内膜がんなどのいずれかの種類のがんを処置するために使用され得る。しかしながら、本発明の特定の実施形態では、がんは乳がんである。
本ナノ粒子を含む医薬組成物は、ヒトの医学および獣医学でヒトまたは動物で使用するためのものであり得、通常、1種以上の適切な賦形剤を含む。治療上の使用で許容される賦形剤は、薬学の分野でよく知られており、たとえばRemington’s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co. (A. R. Gennaro edit. 1985)に記載されている。薬学的な賦形剤の選択は、意図した投与経路および標準的な薬学的実務に関し選択され得る。本医薬組成物は、賦形剤としてまたは賦形剤に加えて、いずれかの適切な結合剤、滑沢剤、懸濁化剤、コーティング剤、または可溶化剤を含み得る。
保存剤、安定剤、および色素が、本医薬組成物に提供され得る。保存剤の例として、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、p-ヒドロキシ安息香酸のエステルが挙げられる。また、抗酸化剤および懸濁化剤も使用され得る。
また、本医薬組成物は、耐性を促進するアジュバントおよび/または耐性を促進する細胞を含み得る。耐性を促進するアジュバントとして、IL-10、組み換え型コレラトキシンBサブユニット(rCTB)、Toll様受容体2のリガンド、ならびに免疫応答を調節する生物製剤およびモノクローナル抗体、たとえば抗CD3および共刺激遮断薬が挙げられ、これらは本ペプチドと共投与され得る。耐性を促進する細胞として、ビタミンD3(1α,25-ジヒドロキシビタミンD3)またはその類縁体で処置した未成熟樹状細胞および樹状細胞が挙げられる。
がんが「処置される」場合、これは、がんの1つ以上の臨床症状が寛解されることを意味する。これは、がんが患者にもはや存在しないようにがんの症状が完全に治療されることを意味しないが、一部の方法では、これは、可能性としてあり得る。「処置」は、がんの症状の1つ以上が処置前よりも重篤ではないことをもたらす。たとえば、腫瘍は、大きさが小さくなり得るかまたは完全に根絶され得る。
本発明の一実施形態では、本組成物は、化学療法剤と併用した使用のためのものである。本発明者らは、本発明で請求されるペプチドの細孔を形成する特性により、これが、標準的な化学療法剤に標的がん細胞へ容易にアクセスさせることを見出した。化学療法剤は、シクロホスファミド、メトトレキサート、5-フルオロウラシル、ビノレルビン、ドキソルビシン、ドセタキセル、ブレオマイシン、ビンブラスチン、ダカルバジン、ムスチン、ビンクリスチン、プロカルバジン、プレドニゾロン、エトポシド、シスプラチン、エピルビシン、メトトレキサート、カペシタビン、ビノレルビン、フォリン酸、オキサリプラチン、およびそれらの混合物から選択され得る。好ましくは、化学療法剤は、ドキソルビシンである。本発明のペプチドを化学療法剤にコンジュゲートするための手段の一例は、図10に提供されている。
選択される送達システムに応じて変化する医薬組成物に関する異なる組成物/製剤の必要条件が存在し得る。例として、本発明の医薬組成物は、非経口的に送達されるように製剤化されてよく、ここで本組成物は、たとえば静脈内、皮内、筋肉内、皮下、または腹腔内の経路による送達のため注射可能な形態で製剤化される。非経口投与では、本組成物は、他の物質、たとえば血液と等張な溶液を作製するために十分な塩または単糖類を含み得る無菌水溶液の形態で最良に使用され得る。皮内投与経路は、たとえば、マイクロニードルベースの注射および注入システム(または皮内の空間を正確に標的とするための他の手段)、皮内空間への液体または散剤の針無またはニードルフリーの弾道注射(ballistic injection)、Mantoux型皮内注射、マイクロデバイスを介した強化型イオン泳動、および皮膚に本組成物を沈着させるためのパッチの使用を含む皮膚内への液体、固体、または他の投与形態の直接的な沈着を使用した、いずれかの皮膚にアクセスする手段を含む。また本組成物は、経鼻的、経口的、または皮膚上を含む経口または局所経路により投与されるように製剤化され得る。好ましくは、本組成物は、静脈内経路により送達されるように製剤化される。
投与される本医薬組成物の量または用量は、in vivoでがん細胞を効率的に標的とするために十分であるべきである。この用量は、対象における特定の製剤の効力および腫瘍の位置、ならびに処置される対象の体重により決定される。
また、本医薬組成物の用量は、特定の製剤の投与に付随し得るいずれかの有害な副作用の存在、性質、および度合いにより決定される。通常、医師は、年齢、体重、全般的な健康状態、食事、性別、投与される化合物/製剤、投与経路、および処置される病態の重症度などの様々な要因を考慮して、各個別の対象を処置するペプチドの用量を決定する。適切な用量は、当業者により決定され得る。非限定的な例として、本発明の抗がんペプチドの総用量は、約0.001~約1000mg/kg(処置される対象の体重)、約0.01~約100mg/kg体重、約0.1mg/kg~約10mg/kg、および約0.5mg~約5mg/kg体重であり得る。別の実施形態では、本ペプチドの総用量は、約1nM~約10,000nM、好ましくは約10nM~約5,000nM、より好ましくは約100nM~約500nMの濃度であり得る。
好ましい実施形態では、本発明のナノ粒子を含む組成物は、4回の投与の間、少なくとも1カ月あたり1回、好ましくは1~4週間ごとに1回投与される。
本発明の第4の態様は、本発明の薬学的に許容される組成物ががんを有する患者に投与されるがんの処置方法に関する。一実施形態では、がんは乳がんである。
本発明の第5の態様は、本発明の薬学的に許容される組成物を含むがんを処置するためのキットに関する。好ましい実施形態では、本キットは、乳がんを処置するためのものである。本キットは、化学療法剤をさらに含み得る。
当業者は、本発明の全ての態様が、たとえば薬学的に許容される組成物、ペプチド、その使用、または処置方法に関連するかどうかに関わらず、本発明の他の全ての態様に等しく適用可能であることを理解している。特に、薬学的に許容される組成物の態様は、たとえば、本発明の他の態様、たとえばペプチド自体よりも詳細に記載されている場合がある。しかしながら、当業者は、より詳細な情報が本発明の特定の態様で提供されている場合、この情報は、全般的に、本発明の他の態様に等しく適用可能であることを理解している。
本発明の詳細な説明
ここで本発明を、以下の図面を参照して単なる例としてより詳細に記載する。
図1は、コンビナトリアルなロイシンリッチペプチドライブラリの設計ならびに他の細孔を形成するペプチドおよびがんを標的とする膜活性ペプチドとの比較を示す。A)コンビナトリアルなペプチドライブラリ配列が、ヘリックスホイール上のそれらの投影と共に示されており、これは、推定される膜活性立体構造である。B)他の細孔を形成するペプチドおよびがんを標的とする膜活性ペプチドとライブラリペプチドの等電点および疎水性の比較。抗菌ペプチドデータベース(APD)の26アミノ酸を含むペプチド、メリチンおよびその類縁体(機能獲得型類縁体および機能喪失型類縁体)、pH依存性メリチン、ならびにがんを標的とする低pH挿入ペプチド(pHLIP)。 図2は、36のコンビナトリアルなペプチド(配列番号1~36)からなる、本発明で同定された配列のライブラリのin vitroでの細胞傷害性スクリーニングの結果を示し、これらは、がん性ヒト組織および健常なヒト組織の両方に由来する、異なるヒト細胞株に対するものである。また、選択されたD型ペプチド、ならびに臨床で使用される抗がん剤のサリノマイシンおよびドキソルビシンに関するin vitroでの細胞傷害性スクリーニングの結果が示されている。細胞傷害性は、異なるヒト細胞株で評価され、半数阻害濃度(IC50)を使用して定量化されている:A)HMLER対MCF-10A、B)HMLER-shEcad対MCF-10A、C)HMLER対HMLER-shEcad、D)HMLER対HEK293T、E)HMLER-shEcad対HEK293T、およびF)U2OS対HEK293T。 図3は、2つの選択されたD型抗がんペプチド(D型DEKおよびD型EEK)、ならびに36のロイシンリッチ抗がんペプチドと比較した、2つの臨床で使用される抗がん剤のドキソルビシンおよびサリノマイシンのin vitroでの細胞傷害性用量応答を示し、これらは、異なるヒト細胞株、たとえばHMLER(三角形)、HMLER-shEcad(ひし形)、MCF-10A(実線)、U2OS(正方形)、およびHEK293T(破線)に対するものである。 図4は、ドキソルビシン(塗りつぶされた正方形)、サリノマイシン(塗りつぶされた三角形)、およびロイシンリッチベースの抗がんペプチドL型EEE(正方形)、L型DEK(円)、L型EEK(灰色の円)、およびD型EEK(黒色の円)の腫瘍様塊(HMLER-shEcad細胞)のin vitroでの細胞傷害性および用量応答を示す。A)細胞のバイアビリティは、腫瘍細胞(HMLER-shEcad)のマンモスフェアに対する抗がん剤の効力を定量化するために測定される。B)選択された抗がん化合物での処置後のマンモスフェアの集団。破線は、いずれの処置も行わない予測陰性対照を提示する。C)各抗がん剤の測定したIC50(灰色のバー)およびIC90(黒色のバー)、ならびに特定の濃度でのマンモスフェアの光学顕微鏡画像。スケールバーは100μmである。 図5は、ドキソルビシン(塗りつぶされた正方形)、サリノマイシン(塗りつぶされた三角形)、およびロイシンリッチベースの抗がんペプチドL型EEE(正方形)、L型DEK(円)、L型EEK(灰色の円)、およびD型EEK(黒色の円)のマンモスフェア(MCA-10A細胞)のin vitroでの細胞傷害性および用量応答を示す。細胞のバイアビリティは、健常なヒト乳房内皮細胞(MCA-10A)のマンモスフェアに対する抗がん剤の効力を定量化するために測定する。B)選択された抗がん化合物での処置後のマンモスフェアの集団。破線は、いずれの処置も行わない陰性対照を提示する。C)各抗がん剤の測定したIC50(ベタ塗りのバー)およびIC90(バー)、ならびに特定の濃度でのマンモスフェアの光学顕微鏡画像。スケールバーは100μmである。 図6は、異なるヒト細胞株:HMLER(円)、HMLER-shEcad(灰色で塗りつぶされた円)、U2OS(正方形)、MCF-10A(黒色で塗りつぶされた円)、およびHEK293T(三角形)に対するドキソルビシン、サリノマイシン、L型EEK、およびD型EEKのin vitroでの細胞傷害性および用量応答を示す。影の付いた領域は、正常な細胞株(MCF-10AおよびHEK293T)に対し効果が少ない、がん細胞株に対する細胞選択性を有する理想的な化合物濃度を表す。 図7は、トリプトファン蛍光結合アッセイの結果を示す。これは、ペプチドの50%が単一の脂質種POPCリポソーム(円)または混合した脂質種POPC:POPG(比率3:1、正方形)リポソームのいずれかに結合する脂質濃度を示す。簡潔に述べると、50μMのペプチドを固定し、リン酸緩衝食塩水(1X、pH7.4)において0、12.5、25、50、100、250、500、1000、2500、および5000μMの濃度の用量設定したPOPCベシクル(黒色)または3POPC/1POPGベシクル(灰色)とインキュベートした。50%ペプチド結合をもたらす脂質濃度は、トリプトファン蛍光結合アッセイを使用して決定し、値は、ペプチドあたりの脂質として示されている。このデータは、本発明のペプチドが、中性ベシクル(POPC)および荷電したベシクル(POPC/POPG)の間を区別し得ることを示し、後者は、がん細胞のモデルとして作用する(Warburg効果)。 図8は、リポソームからのANTS/DPX色素の50%漏出をもたらすペプチド濃度を示す。簡潔に述べると、0.5mMのPOPCベシクル(灰色)またはPOPC:POPGベシクル(比率3:1、黒色)を、A)塩酸で調節したリン酸緩衝食塩水(1X、pH4.8)およびB)リン酸緩衝食塩水(1X、pH7.4)のそれぞれにおいて0、0.02、0.04、0.08、0.16、0.32、0.64、1.25、2.5、5、10、および20μMのペプチド濃度とインキュベートした。ペプチドにより誘導される色素の漏出の強度は、ペプチドあたりの脂質の数として記録される(多い数は、脂質膜を破壊する点でより強力であるペプチドを示す)。 図9は、ロイシンリッチACPの作用機構を示す。A)ヒト赤血球細胞に対するL型EEK(黒色の三角形)およびD型EEK(灰色の三角形)の溶血活性。B)ペプチドにより誘導される高親和性核酸染色(SYTOX green)の、用量設定したペプチド濃度によるヒーラ細胞株への進入率:L型EEK(黒色の三角形)、D型のEEK(灰色の三角形)、および陽性対照としてのメリチン(正方形)。C)L型EEK(黒色の円)およびD型のEEK(灰色の円)の存在下にて、ネクロスタチン(necrostatin)(ネクロトーシスの阻害剤)およびZVAD-FMK(アポトーシスの阻害剤)と共にコインキュベートしたHMLER-shEcad(ヒト乳腺内皮がん幹細胞)細胞のバイアビリティ。D)ドキソルビシン(円(cirle))、および5μMのcapase阻害剤z-VAD-FMKと組み合わせたドキソルビシン(正方形)、および20μMのネクロスタチン-1を伴うドキソルビシン(三角形)で処置したHMLER-shEcad細胞のバイアビリティ。 図10は、銅ベースの小分子抗がん剤と本発明のACPのコンジュゲートのための合成戦略を示す。 図11は、EEKナノ粒子(NP)の開発を示す。a.L-EEK NPおよびNPの調製の模式図。b.L-EEK NPの透過型電子顕微鏡画像。スケールバーは200nm(黒色)および挿入図では20nm(白色)である。c.L-EEK NP(n=3)およびL-EEKカーゴを伴わない対照NPの動的光散乱の性質決定。d.遊離L型EEK、L-EEK NP、および対照NPの相対溶血活性。e.乳がん細胞株(MCF-7、MDA-MB-231、MDA-MB-453、およびZR-75-1)に対するL-EEK、L-EEK NP、および対照NP処置でのCCK-8アッセイによる細胞のバイアビリティの評価。乳がん細胞に対するL-EEKおよびL-EEK NPのIC50値は、それぞれ緑色および赤色である。f.対照ナノ粒子およびEEKペプチドナノ粒子の処置スケジュールを用いたMDA-MB-231トリプルネガティブ乳がんのマウスモデルの概略図。G.L型EEK NP処置でのがん増殖の効率的な阻害。MDA-MB-231(4×10個の細胞)での皮下接種から11日後の蝕知できる腫瘍の確立の後、マウスを、10mg/kg用量のEEK-NPまたは同等の用量の対照NPで、14日間の処置期間にわたり処置した。腫瘍体積をモニタリングした。***p<0.005(n=4)。h.L-EEK NPでの処置および対照NPでの処置の開始から33日目のMDA-MB-231腫瘍の画像。i.120日の観察期間にわたる腫瘍播種後のマウス生存率のカプランマイヤー曲線。マウス生存率は、1000mm未満の腫瘍の大きさとして定義される(n=4、*p<0.05)。 図12は、L-EEK NPの物理化学的特性を示す。a.対照NPのTEM画像。スケールバー=200nmおよび挿入図で20nm。b.HPLC下のL-EEKのクロマトグラム。c.L-EEK NPにおけるL-EEKのカプセル化効率。d.37℃でのpH7.4およびpH5.0でのナノ粒子からのL-EEKの放出。e.乳がん細胞株における遊離したAlexa647で標識したL-EEKおよびナノ粒子でカプセル化したAlexa647で標識したL-EEKの細胞の取り込み。 図13は、L-EEK NP処置での抗がん効力を示す。a.およびc.対照ナノ粒子で処置したマウス(n=4)での個々のMDA-MB-231腫瘍の増殖曲線および体重曲線。b.およびd.L-EEKナノ粒子で処置したマウス(n=4)の個々のMDA-MB-231腫瘍の増殖曲線および体重曲線。 図14は、原子的に詳細なACP膜の細孔構造および膜穿孔機構を示す。分子動力学シミュレーションは、a.自発的なACP膜吸着、b.挿入、およびc.細孔形成(大きく不均一な完全に水に充填されたEEK細孔が示されている)の完全な原子的な詳細を明らかにする。d.、e.結合したペプチドは、膜を通して水(中央)およびイオン(下部)の両方を伝導する2~16ペプチド(上部)の一過性の細孔のアンサンブルを形成する。 図15は、がん細胞膜へのペプチドEEK-ナノキャリアの結合の分子シミュレーションである。ペプチドEEKなどのACPは、ナノキャリアの中で自由に移動し、直接的な分配を介して標的膜へ入る。ポリマーのナノキャリアの流体の性質は、このプロセスに重要である。直径20nmのナノキャリアの大きさは、ACPが標的膜の小さな約10nmの直径の領域上に局所的に送達され、膜穿孔を改善する局所的なACPの高濃度を提供することを確保する。
実施例1
材料および方法
ペプチドの合成および精製
ペプチドは、固相合成し、98%の純度に精製した。ペプチドの純度および同一性は、HPLCおよびESI質量分析により確認した。N末端は遊離アミン基であり、C末端は遊離カルボキシル基かまたはアミド化されている。
リポソームの生成
脂質の1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(POPC)、1-パルミトイル-2-オレオイル-snグリセロ-3-ホスホ-(1’-rac-グリセロール)(POPG)は、Avanti Polar Lipidsから購入し、クロロホルムに溶解した。LUV(巨大単層ベシクル:Large unilamellar vesicle)は、Avanti Polar Lipidsから購入した押し出し機およびフィルターを使用して100nmの細孔フィルターを通して押し出すことにより生成した。
細胞株および細胞培養条件
HMLER(ヒト乳腺内皮がん細胞)、HMLER-shEcad(ヒト乳腺内皮がん幹細胞)、およびMCF-10A(健常なヒト乳腺内皮)細胞を、栄養補助剤および増殖因子:ウシ下垂体抽出物(BPE)、ヒドロコルチゾン、ヒト上皮増殖因子(hEGF)、インスリン、およびゲンタマイシン/アンホテリシン-Bを含む乳腺上皮細胞増殖培地(MEGM)において維持した。HEK293T(ヒト胎児由来腎臓細胞)、およびU2OS(ホモサピエンス骨肉腫)細胞を、10%のウシ胎児血清の最終濃度でのダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)において維持した。これら細胞は、5%のCOを含む湿潤した大気において310KにてT75フラスコで増殖させた。
細胞傷害性アッセイ
比色MTT(3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド)アッセイを使用して、抗がんペプチドおよび従来の抗がん剤の毒性を決定した。5×10個の細胞を96ウェルマイクロプレートの各ウェルに播種した。これら細胞を一晩インキュベートした。上昇した濃度の化合物(0、0.1、0.2、0.4、0.8、1.6、3.1、6.3、12.5、25、50、および100μM)を添加し、総体積200μLで72時間インキュベートした。化合物のストック溶液は、DMSOにおいて5mMの溶液として調製し、培地を使用するかまたは純水で希釈した。各ウェルにおけるDMSOの最終濃度は、0.5%または0%であり、この量は、処置されていない対照に存在した。72時間後、PBSにおいて4mg/mLのMTT溶液20μLを各ウェルに添加し、プレートをさらに4時間インキュベートした。MEGM/MTT混合物を吸引し、100μLのDMSOを添加して、得られた紫色のホルマザン結晶を溶解した。各ウェルにおける溶液の吸光度は、550nmの波長で読み取った。吸光度の値は、DMSOを含有するかまたはDMSOを含有しない対照のウェルのいずれかに対し正規化し、試験化合物の濃度vs細胞のバイアビリティ(%)としてプロットした。IC50値は、得られた用量依存性曲線から内挿した。記録したIC50値は、それぞれが濃度の値あたり6つの反復からなる(合計n=12)、2つの独立した実験の平均値である。36のロイシンリッチベースのペプチドのIC50値は、2つの独立した実験の平均値である(合計n=2)。
腫瘍様塊の形成およびバイアビリティのアッセイ
HMLER-shEcad細胞(5×10)を、超低接着96ウェルプレート(Corning)にプレーティングし、B27(Invitrogen)、20ng/mLのEGF、および4μg/mLのヘパリン(Sigma)を補充したMEGMにおいて5日間インキュベートした。試験は、抗がんペプチド、ドキソルビシン、およびサリノマイシンの非存在下および存在下で行った。抗がんペプチド、ドキソルビシン、およびサリノマイシンで処置したマンモスフェアを計測し、反転ベースの試薬(inverted based reagent)TOX8(Sigma)を使用してイメージングした。16時間インキュベートした後、溶液の蛍光を、590nm(λex=560nm)で読み取った。生きたマンモスフェアは、酸化したTOX8の量を低減し、同時に蛍光性TOX8中間体の量を増大させ、これは試験化合物によりもたらされるマンモスフェアの細胞傷害性の度合いを表す。蛍光値は、DMSOを含む対照またはDMSOを含まない対照に対し正規化し、試験化合物の濃度vsマンモスフェアのバイアビリティ(%)としてプロットした。IC50値は、得られた用量依存性曲線から内挿した。記録したIC50値は、それぞれが濃度の値あたり2つの反復からなる(合計n=4)、2つの独立した実験の平均値である。
トリプトファン蛍光結合アッセイ
ペプチド(50μM)およびPOPC/POPG LUV(600μM)を、10mMのリン酸バッファー(pH7.0)において調製した。この溶液をインキュベートし、60分後に測定した。励起を、280nm(スリット9nm)で固定し、発光を、300~450nm(スリット9nm)から回収した。スペクトルは、BioTek製のSynergy H1 Hybrid Multi-Mode Reader(図3A)およびCytation(商標)5 Cell Imaging Multi-Mode Reader(図2)を使用して記録し、3つのスキャンを平均値化した。
リポソーム漏出アッセイ
5mMのANTS(8-アミノナフタレン-1,3,6-トリスルホン酸、二ナトリウム塩)および12.5mMのDPX(p-キシレン-ビス-ピリジニウムブロミド)を、脂質を含む直径0.1μmの押し出されたベシクルに捕捉した。Sephadex G-100(GE Healthcare Life Sciences Inc)を使用したゲルろ過クロマトグラフィーを使用して、中身を捕捉したLUVから外部の遊離ANTS/DPXを除去した。LUVを0.5mMに希釈し、ペプチドのアリコートを添加することにより漏出活性を測定するために使用した。漏出は、3時間のインキュベーション後に測定した。10%のトリトンを、ベシクルの最大漏出を測定するため陽性対照として使用した。蛍光発光スペクトルは、BioTek Synergy H1 Hybrid Multi-Mode Readerを使用して、ANTS/DPXに関する350nmおよび510nmの励起波長および発光波長を使用して記録した。
溶血アッセイ
ペプチドは、100μMの濃度で開始してPBSで段階希釈した。各ウェルにおけるペプチドの最終容量は、50μLであった。各ウェルに、2×10個の細胞/mLのRBCを含むPBS50μLを添加した。陽性溶解対照として、1%のトリトンを使用した。この混合物を37℃で1時間インキュベートした後、これらを1000×gで5分間遠心分離した。遠心分離後、10μLの上清を、90μLのDI HOの入った未処置の96ウェルプレートに移した。410nmで放出したヘモグロビンの吸光度を記録し、溶血率を、100%および0%の溶解対照に基づき計算した。
ヒーラ細胞に対する細胞傷害性を測定するためのSytox Greenアッセイ
ヒーラ細胞を、完全DMEM(10%のFBS)においてT-75フラスコでコンフルエンスとなるまで増殖させた。細胞傷害性実験の前日に、細胞をトリプシン処理し、フラスコから取り出し、1300rpmでペレット状にした。トリプシンおよび使用済みの培地を廃棄し、細胞を完全DMEMに再懸濁した。細胞の計数は、細胞計測器を使用して入手した。次に、細胞を、96ウェルの組織培養プレートにおいて10,000個の細胞/ウェルの密度で播種した。翌日、別の96ウェルプレートにおいて、ペプチドを完全DMEM(FBSは10%)および0.1%のsytox greenに、100μMの濃度(第1)67μM(第2)の濃度で開始して段階希釈し、続いて2:3の段階希釈を行った。各ウェルにおけるペプチドの最終容量は100μLであった。細胞傷害性アッセイを行うため、培地をウェルから除去し、ペプチド/DMEM/sytox green溶液と置き換えた。ペプチドなしおよび20μMのMelP5を、それぞれ陰性対照および陽性対照として使用した。プレートは、蛍光に関して504nmの励起波長および523nmの発光波長にて1時間の間5分ごとに読み取った。細胞傷害性は、細胞壁の不安定化により細胞へ侵入したsytox greenに基づき100%の溶解対照および0%の溶解対照に基づき計算した。
ペプチドナノ粒子の調製および性質決定
通常の調製では、メタノールにおいて5mg/mLのL-EEKペプチド0.1mLを、アセトニトリルにおいて25mg/mLのPEG-PLGA1mLと混合した。次にこの混合物を、25mMのトリスバッファー(pH8.0)15mLに添加し、溶液を、50mLのガラスのビーカーにおいて磁性撹拌バーを用いて400rpmで15分間撹拌した。次に、メタノールおよびアセトニトリルを、15分間の窒素ガス衝撃を介し、また、サンプル溶液を真空に1時間置いて、完全に溶液から蒸発させた。次に、ナノ粒子溶液を酢酸セルロースシリンジフィルター(細孔の大きさ0.45μm、Sartorius)を介してろ過した。ろ過したL-EEKナノ粒子を、30kDaの遠心分離フィルターチューブ(Amicon(登録商標)Ultra-15 Centrifugal Filter Devices)で洗浄し、最終容量1mLまで濃縮した。回収したナノ粒子は、実験のため新鮮な状態で調製した。
透過型電子顕微鏡(TEM)
L-EEKナノ粒子溶液(0.5mg/mL)の液滴(10μL)を、グロー放電したグリッド上に沈着させた。ネガティブ染色は、室温でのL-EEKナノ粒子の構造の検査のため、1wt%の酢酸ウラニルを用いて行った。ネガティブ染色したサンプルは、FEI 120kV Sphera microscope(FEI Tecnai F20)を使用して可視化した。
ナノ粒子中のL-EEKの定量化
ナノ粒子中のL-EEKペプチドを、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により定量化した。HPLC分析は、Agilent Technologies Series 1100 apparatus(Waldbronn, Germany)にて行った。分析カラムは、粒径5μm(25cm×4.6mm)でAscentis Express C18 reversed phase column(Supelco, Bellefonte, PA, USA)であった。カラムの温度は、定量化の間25℃に維持した。移動相は、相A(アセトニトリル中0.1%のTFA)および相B(蒸留水において0.1%のTFA)からなるものであった。サンプルは、25分間にわたり相Aの40%から80%までの直線勾配溶出で開始し、25~30分まで相Aの80%から100%、10分間一定に保った。次に、溶離液を5分以内に最初の組成に戻し、5分間一定に保った。検出の波長はL-EEKに関して220nmに設定し、流速は0.7mL/分であった。
ナノ粒子からのL-EEK放出速度の測定
ナノ粒子からのL-EEKの放出を、PBS(pH7.4)および0.15Mの酢酸バッファー溶液(pH5.0)において、20k MWCO Slide-A-Lyzer MINI dialysis device(Rockford, IL, USA)を用いて透析チューブを使用して試験した。リン酸バッファーおよび酢酸バッファー溶液は、0.3(v/v)%の酢酸および1.3(w/v)%の酢酸ナトリウムを含んでいた。サンプルは、ゆっくりと撹拌しながら37℃にて透析チューブ内に置いた。所定の時点(1、4、8、12、24、48、72、および96時間)で、ナノ粒子サンプルを回収し、HPLCを使用してL-EEKに関して分析した。
溶血(新鮮なマウス赤血球)
新鮮なマウスの赤血球を、BALB/cヌードマウスから採取し、上清が透明となるまでPBSで徹底的に洗浄した。L-EEKおよびL-EEK NPは、200μMの濃度で開始してPBSに段階希釈した。対照NPの段階希釈は、EEK NPと比較したポリマーの量に基づくものであった。各ウェルにおけるペプチドの最終的な容量は50μLであった。各ウェルに、PBSにおいて2×10個の細胞/mLのRBC50μLを添加した。陽性溶解対照として、1%のトリトンを使用した。この混合物を、37℃で1時間インキュベートした後、これらを1000×gで5分間遠心分離した。遠心分離した後、上清10μLを90μLの蒸留水の入った未処置の96ウェルプレートに移した。410nmで放出されたヘモグロビンの吸光度を記録し、溶血率を、100%および0%の溶解対照に基づき計算した。
細胞のバイアビリティおよび細胞傷害性アッセイ
比色分析Cell Counting Kit-8(CCK-8)アッセイを使用して、抗がんペプチドおよび従来の抗がん剤の細胞増殖および細胞傷害性における細胞のバイアビリティを決定した。簡潔に述べると、1×10個の細胞を、96ウェルのマイクロプレートの各ウェルに播種した。遊離ペプチド、または様々な濃度のペプチド(0、0.1、0.2、0.4、0.8、1.6、3.1、6.3、12.5、25、50、および100μM)を含むナノ粒子を細胞に添加し、5%のCOを含む湿潤した大気において37℃で72時間インキュベートした。次に、プレートの各ウェルにCCK-8溶液10μLを添加し、さらに4時間インキュベートした。各ウェルにおける溶液の吸光度を、460nmで測定した。IC50値は、得られた用量依存性曲線から内挿した。記録したIC50値は、それぞれが濃度の値あたり6つの反復からなる(合計n=3)、2つの独立した実験の平均値である。
共焦点顕微鏡による乳がん細胞株へのL-EEKナノ粒子の細胞の取り込みの試験
フルオロフォアとコンジュゲートしたL-EEKを、メタノールにおいてL-EEKをAlexa Fluor 647 NHSエステルと10:1のモル比で72時間インキュベートすることにより調製した。コンジュゲートの後、メタノール中5mg/mLの色素標識したL-EEKペプチド0.1mLを、アセトニトリル中25mg/mLのPEG-PLGA1mLと混合した。次に、この混合物を、25mMのトリスバッファー(pH8.0)15mLに添加し、溶液を、50mLのガラスのビーカーにおいて磁性撹拌バーを用いて400rpmにて15分間撹拌した。次に、メタノールおよびアセトニトリルを、15分間の窒素ガス衝撃を介し、また、サンプル溶液を1時間真空に置いて、溶液から完全に蒸発させた。次に、このナノ粒子溶液を、酢酸セルロースシリンジフィルター(細孔の大きさ0.45μm、Sartorius)を介してろ過した。ろ過したL-EEKナノ粒子を、100kDaの遠心分離フィルターチューブ(Amicon(登録商標)Ultra-15 Centrifugal Filter Devices)で洗浄し、最終容量1mLまで濃縮した。回収したナノ粒子は、実験のため新鮮な状態で調製した。細胞およびL-EEKナノ粒子の間の細胞の取り込みを観察するために、PBSに懸濁した蛍光L-EEKナノ粒子を、4つの乳がん細胞株(6×10個の細胞/ウェル)とインキュベートした。共焦点用ディッシュ(カバー付のガラス底のディッシュ、SPL 200350)において2時間インキュベートした後、細胞をPBSで3回(tree)洗浄して、結合していない遊離ペプチドおよびペプチドナノ粒子を除去した。得られた細胞を、10μg/mLのDAPIで染色し、4%のパラホルムアルデヒドで固定し、共焦点蛍光顕微鏡(Zeiss LSM 880 with Airyscan)を使用して試験した。
マウスにおけるトリプルネガティブMDA-MB-231腫瘍の増殖に対するL型EEKペプチドナノ粒子の評価
BALB/cヌードマウスを、MDA-MB-231腫瘍細胞(マウスあたり4×10個の細胞)を、右側腹部に皮下的に播種した。腫瘍の播種から11日後に、マウスを無作為に2つのグループに分けた。マウスは、対照ナノ粒子(L-EEKペプチドを含まない)および10mg/kgのL-EEKペプチドを含むペプチドナノ粒子で静脈内注射の投与により処置した。処置期間の間、腫瘍体積および体重を、1週間あたり3回測定した。生存エンドポイントは、腫瘍体積が1000mmに達したと同時に設定された。個々のグループの生存曲線は、ログランク(mantel-cox)検定により比較した。
分子動力学シミュレーションおよび分析
不偏の全ての原子のMDシミュレーションを、GROMACS 2018.3(www.gromacs.org)、Hippo BETA(http://www.biowerkzeug.com)およびVMD(http://www.ks.uiuc.edu/Research/vmd/)を使用して行い分析した。
伸長したペプチド構造を、Hippo BETAを使用して作製した。これらの最初の構造は、200のモンテカルロステップを介してrelaxationが行われ、水はGeneralized Born solventを使用して暗示的に処置した。relaxationの後、ペプチドを、CHARMM-GUI(http://www.charmm-gui.org/)を使用して、100mMのKイオンおよびClイオンを伴うモデル膜を含む原子に関して詳細なペプチド/脂質/水の系に置いた。タンパク質フォールディングのシミュレーションは、ペプチドに位置拘束を適用して10nsで平衡化された。細孔を形成するシミュレーションでは、単一のペプチドを、約600nsで二層の上にフォールディングさせた。安定した表面状態が得られた後、その後、系は、x方向およびy方向(z方向ではない)に4×4で増幅され、16ペプチドを有する系をもたらした。膜の両側からのペプチドで開始する場合、最初の構造は、上部の小葉(leaflet)に1つのペプチドおよび下部の小葉に1つのペプチドを有していた。その後、大きな系が、18ペプチドのシミュレーションボックスを得るために、3×3で多重化することにより構築された。MDシミュレーションは、TIP3P水モデルと併せてCHARMM36力場を使用してGROMACS 2018.3で行われた。静電相互作用は、PMEを使用してコンピュータ処理し、10Åのカットオフが、ファンデルワールス相互作用で使用された。積分時間ステップは2fsであり、neighbour listは、5ステップごとに更新された。全てのシミュレーションは、いずれの拘束またはバイアスポテンシャルも伴わずに、NPTアンサンブルで行った。水およびタンパク質は、それぞれ、速度リスケール温度カップリングを使用して時間定数τ=0.5psを用いて熱浴に別々にカップリングした。1barの大気圧が、圧縮率κ=κxy=4.6・10-5bar-1および時間定数τ=1psでの弱い準等方性圧(semi-isotropic pressure)のカップリングを使用して維持された。
オリゴマー集団の分析
シミュレーション中に最も数が多かった細孔アセンブリを明らかにするために、全てのオリゴマーの完全なリストを、各トラジェクトリーフレームで構築した。位数nのオリゴマーは、3.5Å未満の重原子(N、C、O)の最小距離として定義される、相互接触しているn個ペプチドのいずれかのセットとみなした。しばしば、この定義は、オリゴマーのコアを作製する膜貫通型の挿入されたペプチドに単にゆるく結合した多くの一過性の表面結合した(S状態の)ペプチドにより、オリゴマーの状態を過大評価する。これらS状態のペプチドは頻繁に位置を変更するか、または細孔の安定した位置に出入りする。真の長く保たれるTM細孔に関する分析に焦点を当てるため、75°のカットオフ基準を、ペプチドの傾斜角τに導入した。τ≧75°の全てのペプチドは、S状態にあるとみなし、オリゴマー分析から除外された。この戦略は、真の長く保たれる細孔構造に焦点を当てることによりオリゴマークラスタリングのアルゴリズムのノイズを大きく低減した。次に、オリゴマーnの占有率にそのペプチドの数nを乗算した集団プロットを構築した。これらは、シミュレーション時間の間オリゴマー状態にペプチド質量がどれほど濃縮したかを明らかにする。
置換クラスター分析
同じ位数nの全てのオリゴマーを、4Åの骨格のRMSDの類似性のカットオフの基準を伴うクラスタリングアルゴリズムを使用して立体構造的にクラスタリングした。各オリゴマーは、異なるペプチドから構成され得、または同じペプチドではあるが異なる順序で構成され得、クラスタリングは、1つのオリゴマーを、別のオリゴマーのペプチド配置の全てのn!の置換と比較する。置換は、Heapアルゴリズムを使用して作製された。立体構造的な類似性の最終的なRMSD値を、n!置換の比較から得た最小のRMSD値とみなした。クラスタリングの結果は一般に平坦であり、構造が著しく一時的であり、動的であることを表している。
膜貫通フラックス
膜細孔を介した水およびイオンのフラックスを、全二層パッチを介した一時的なフラックスの合計を決定することにより計算した。z=-7Åおよびz=+7Åで膜の法線と直交する2つの平面を考え、これら平面を横切る全ての遷移イベントを計数した。次に、フラックスを、膜パッチの面積および各トラジェクトリーフレームでの経過時間で遷移計数を除算することにより得た。その後、曲線は、1000フレームにわたり平均化することにより平滑化した。
実施例2
ペプチドの原理
以下の表1は、本開示の範囲内にある36のペプチドを含む。
Figure 2023545429000002
†N末端は遊離しており、C末端:W-NH2。等電点、推定界面結合自由エネルギー、および疎水性モーメントのコンピュータ上の予測値が示されている。
界面結合自由エネルギーは、どのくらいペプチドが膜に結合し得るかの尺度であり、疎水性モーメントは、どの程度疎水性残基が、ヘリックス状の膜に挿入された立体構造においてペプチドの表面の周辺に等しく分布しているかの尺度である。
ペプチド濃度を定量化するため、さらにトリプトファンを、C末端に導入した。荷電したカルボキシC末端(-CO )もまた、膜貫通をさらに促進するため、中性アミド基(-NH)に改変された。ペプチドは、荷電した残基が、ヘリックス構造の同じ極性表面に局在するように設計される。よって、電荷分布は、ペプチドの疎水性モーメント、pKa、がん細胞膜上の結合強度、および最終的にはがん細胞膜内のペプチドアセンブリの構造に影響し得る(図1A)。がんを標的とする生物医学的な適用を有する多くのpH依存性ペプチドは、約4.0のpKaを有する。これは、がん細胞のわずかにより酸性の微小環境から生じ得、これはWarburg効果によるものである。よって、がん細胞膜は、本発明の陰性アミノ酸をプロトン付加し得、pHにより誘発される膜活性をもたらし得ると考えられる(図1Bおよび表1)。19-22
全ての36のロイシンリッチペプチド配列は、L型として合成された。ΔGinterfacialは、水と膜界面との間のペプチドの区分けの結合自由エネルギーを表す。ΔGinterfacialおよび疎水性モーメントは、MPExソフトウェアを使用してWimley-White疎水性スケールを使用して推定した。結合自由エネルギーは、膜へのペプチドの結合後に放出されるエネルギーである。0ではペプチドは、水の中に50%、膜上に50%があり、負である場合これは優先的に挿入され、正の場合は水相を好む。疎水性モーメントは、どのように疎水性残基がヘリックスホイールの周辺に置かれているかの尺度であり、モーメントが大きい場合、これらは、全てが片側にあり、小さなモーメントの場合、これらは等しく周辺に置かれている。大きなモーメントは、表面結合にとって良好である(すなわち、疎水性の面は二重層に入り込み、親水性の表面は水を向く)。
実施例3
細胞傷害性および効力
本ペプチドを、いくつかの異なるヒト細胞株に対しスクリーニングし、それらの細胞傷害性を決定した。利用した細胞株は、MCF-10A(ヒト乳房上皮細胞)、HMLER(ヒト乳がんバルク細胞)、HMLER-shEcad(ヒト乳がん幹細胞)、HEK293T(ヒト胎児由来腎臓細胞)、およびU2OS(ヒト骨肉腫)を含む。本ペプチドは、低いマイクロモル濃度でがん細胞を排除し得る従来のがん用薬物と同等に有効であり、多くががん細胞株に対し高い選択性を有することが明らかとなった(図2および表1)。ドキソルビシンおよびサリノマイシンもまた両方とも、健常なMCF-10A細胞よりもがん性HMLERに対する選択性を有するが、これらは両方とも、HEK293T細胞に対しより有意に毒性である。さらに、両薬物は、現在固形腫瘍のはるかにより正確なin vitroモデルとみなされている、3次元マンモスフェアとして増殖したがん細胞を除去する際にあまり効率的ではない。2次元のHMLER-shEcadに対するドキソルビシンおよびサリノマイシンの半数阻害濃度(IC50)は、それぞれ2.5±0.3nMおよび370±0.5nMであるが、in vivoでの条件により関連しているより現実的な3次元細胞培養物モデルであるマンモスフェアでは、これらの値は、それぞれ43±6μMおよび22±5μMに下がり、ドキソルビシンでは、活性が1700倍減少し、サリノマイシンでは63倍減少する。以下の表2および図3を参照されたい。比較すると、選択された配列EEK(GLLELLELLLKAAGW)およびそのD型ペプチドは、HMLER、HMLER-shEcad、およびU2OS細胞の2次元培養物に対しナノ~低マイクロモル濃度の活性、ならびにマンモスフェアに対し7~13μMの活性で、2次元および3次元のマンモスフェアの腫瘍モデルの両方に対し有効である。図4~6を参照されたい。
全てのデータ点は、二連で行った。選択されたD型ペプチド、従来の抗がん剤、EEKペプチド、および25B2ペプチドは、6回反復された。†N末端は遊離しており、C末端:-WNH2。
Figure 2023545429000003
Figure 2023545429000004
実施例4
トリプトファン結合アッセイおよびリポソーム漏出アッセイ
本開示のペプチドは、ほとんどが中性または陰イオン性であり、配列に多くの正電荷を含まない(表1)。本発明者らは、がん細胞株に対し非常に選択的であり、MCF-10Aに及ぼす効果がほとんどなく(IC50≧100μM)、HEK293Tに対し比較的低い細胞傷害性を有する6つの配列を同定した:EEE、KEE、EHE、EEH、DEK、およびEEK(図2および表2)。これらの正味の電荷は、3.85-7.96のpKaで-2~0であり、これらの配列は、1つの正電荷(正に荷電したN末端)または2つの正電荷(1つの正に荷電したN末端および4もしくは11位に1つのリジン)のいずれかを含む。いくつかの研究は、がん細胞膜が、負に荷電した膜表面を有し得ることを示している。23、24Ishikawaらは、HMLERに類似している乳がん細胞株MCF-7が、膜表面上に負に荷電したシアル酸の量が少ないことを見出した。23これは、本発明のロイシンリッチペプチドの抗がん活性および細胞選択性が、静電相互作用によってのみでは説明できず、がん細胞の微小環境でのWarburg効果による電荷分布も関与し得ることを示唆している。この仮説を確認するために、本発明者らは、それぞれpH7.4(生理的状態)およびpH4.8(弱酸)にて2つの異なる脂質モデルベシクル(双性イオン性POPCおよび陰イオン性3POPC/1POPG混合物)を用いて、トリプトファン結合アッセイ(以下の表3および図7を参照)ならびにANTS/DPXリポソーム漏出アッセイ(以下の表4および図8を参照)を行った。
表3は、脂質濃度により誘導されるリポソーム上の50%ペプチド結合を示す。50μMのペプチドを固定し、リン酸緩衝食塩水(1X、pH7.4)において0、12.5、25、50、100、250、500、1000、2500、および5000μMの濃度に用量設定した脂質(POPCベシクルまたは3POPC/1POPGベシクル)とインキュベートした。50%ペプチド結合をもたらす脂質濃度を、トリプトファン蛍光結合アッセイを使用して決定し、これら値は、ペプチドあたりの脂質として示されている。†N末端は遊離しており、C末端:-W-NH
表4は、ペプチド濃度により誘導される50%のANTS/DPXリポソーム漏出を示す。0.5mMのPOPCおよび3POPC/1POPGのベシクルを固定し、リン酸緩衝食塩水(1X、pH7.4)および塩酸により調節したリン酸緩衝食塩水(1X、pH4.8)のそれぞれにおいて用量設定したペプチド濃度(0、0.02、0.04、0.08、0.16、0.32、0.64、1.25、2.5、5、10、および20μM)とインキュベートした。これら値は、ペプチドあたりの脂質として示されている。†N末端は遊離しており、C末端:-W-NH
Figure 2023545429000005
Figure 2023545429000006
これら結果は、細胞選択性ペプチドが、中性pHにて、双性イオン性ベシクルと陰イオン性ベシクルとの間に有意な結合選択性およびペプチドにより誘導されるリポソーム漏出を全く有さないが、6つの膜選択性ペプチドのうち4つ(EHE、EEH、DEK、およびEEK)が、pH4.8で比較的高い陰イオン性ベシクルからのリポソーム漏出活性を有することを示している。これは、これら4つのペプチドが、脂質の組成およびpH条件に依存する環境により誘発される膜活性ペプチドであることを示唆している;しかしながら、他の2つの膜選択性ペプチド(EEEおよびKEE)の機構は、依然として不透明である。
実施例5
ロイシンリッチペプチドの作用機構
図9は、L型のEEKが90μMの濃度未満で最小限の溶解をもたらし、治療濃度は約10μMをはるかに下回ることを示す。D型のEEKはより溶解性である。ヒーラ細胞内への高親和性核酸染色であるSYTOX greenの濃度依存性の進入の比較は、L型EEKおよびD型EEKが、強力な細孔形成ペプチドのメリチンと類似して挙動することを示している。まとめると、これら結果は、作用機構としてがん細胞細胞膜の選択的な細孔形成を示す。
図9Cは、L型またはD型EEKで処置したHMLER-shEcad細胞の細胞のバイアビリティが、ネクロトーシス阻害剤ネクロスタチンとの共インキュベーションによっても、アポトーシス阻害剤z-VAD-FMKとの共インキュベーションによっても改善できないことを示しており、ACPが細胞膜での細孔形成によりネクローシスをもたらすことを示唆している。対照的に、図9Dは、ドキソルビシンで処置したHMLER-shEcad細胞の細胞のバイアビリティが、z-VAD-FMKまたはネクロスタチンのいずれかとの共インキュベーションにより顕著に改善され得ることを示している。
まとめると、これら結果は、ACP抗がん活性の主要機構として、ネクローシスをもたらすがん細胞細胞膜での選択的な細孔形成を示唆している。
実施例6
ナノ粒子の生成
静脈内抗がんペプチド(ACP)送達を可能にし、溶解性ペプチドベースの治療薬の移行を妨げ得る溶解性、薬物動態、および安定性の問題に対処するために、上述の最適化されたナノ沈殿法(ペプチドナノ粒子の調製および性質決定)を使用して、直径20nmの、ACPを充填したポリエチレングリコールメチルエーテルポリラクチド-コ-グリコリド(PEG-PLGA)ナノ粒子(NP)を調製した。これら超小型のナノ粒子は、腫瘍に浸透する特性が高く、大きな担体よりも有用である。さらに、本発明者らは、小さな寸法の20nmの担体が、ペプチドが膜穿孔作用のため自身の分子の自由度を再度獲得する必要があるため、膜溶解ペプチド治療薬に適した、より加速した放出プロファイルを可能にすると推測している。L-EEKは、このペプチドファミリーのその高いがんに特異的な選択性に基づきNP調製に有効なACPとして選択された(L-EEK-NP)。
ナノ沈殿プロトコルの最適化(図1a)により、直径21.7±1.4nmおよび-16.0±0.6mVのゼータ電位を有する単様式NPが、容易に形成された(図1b、c)。EEKカーゴを伴わない対照NPは、同様の物理化学的特性を示し(図2a)、EEKの充填が、表面吸着よりはポリマーのコアの中のカプセル化を介して仲介されることが示唆される。EEK-NPのHPLC分析は、82.3±3.4%での高いEEKのカプセル化効率を示し(図2b、c)、これはポリマー1mgあたり16.4μgのペプチド充填収率に変換される。L-EEK-NPのペプチド放出の動力学は、著しくpH感受性であり、pH5.0では4時間以内にペプチドの95.3%を放棄し、7.4の生理的pHでは48時間後でペプチド含有量の約50%を保持している(図2d)。
小さな寸法の酸に不安定な生分解性ポリマーから構成される場合、ペプチドナノ粒子は、カプセル化されたペプチドの膜溶解活性に重要な、著しくpH感受性の放出プロファイルを呈する。
実施例7
ナノ粒子の抗がん効力
対照NP、L-EEKペプチド、およびL-EEK-NPの処置でのCCK-8アッセイにより評価される細胞のバイアビリティは、NP製剤化が、4つの異なる乳がん細胞株(MCF-7、MDA-MB-231、MDA-MB-453、およびZR-75-1)に対するEEKの抗がん効力を4倍増加させることを示した(図1e)。がん細胞に対するペプチドの細胞傷害性を高めつつ、NPは、赤血球とのペプチドの相互作用を低減することがさらに示された(図1d)。
実施例8
ナノ粒子は、マウスモデルにおいて転移性乳がんを処置できる。
L-EEK-NPの治療的妥当性を、予後が不十分であり処置選択肢が限定されることが知られている、高悪性度転移性MDA-MB-231トリプルネガティブ乳がんのマウスモデルにおいて評価した(図1f)。触知できる腫瘍が確立した後、マウスを、2週間の処置過程にわたり対照NPまたはL-EEK-NPのいずれかで処置した。処置期間の後に腫瘍を観察したとき、対照グループのマウスは、有意な腫瘍体積の成長を呈した(図1g、i;図3a)。対照的に、EEK-NP処置を受けたマウスは、腫瘍の成長が有意に阻害されることを示し(図1g、i;図3b)、このうち4匹の処置したマウスのうち2匹は、完全な腫瘍の根絶を示した。特に、対照NPおよびL-EEK-NP処置は、無視できるほどの体重減少を示しており(図1h;図3c、d)、抗がんペプチドのナノ製剤化の安全性が証明された。
実施例9
APCの細孔の構造および機能
膜を穿孔するペプチドは、通常、現在の技術では実験的決定を逃れる一過性の細孔を形成する。膜穿孔を支持する分子機構を明らかにするために、本発明者らは、偏りのない長い時間尺度での原子の詳細な分子動力学シミュレーションを使用してEEKのフォールディング-分配および細孔アセンブリを試験した。ACPは、膜界面上で容易に吸着し、フォールディングする(図14a)。その後、数十μsの時間尺度で、APCは脂質二重層を通して協調的に挿入および移動し、両方の膜界面に定着し(図14b)、細孔のアンサンブルを形成する(図14d)。構造分析は、膜において連続して形成および解散する6~10ペプチドから大部分が構成される、著しく不均一な細孔構造を明らかにする(図14e)。細孔は水およびイオンの両方を伝導し(図14d)、漏出は、極性側鎖および荷電した側鎖に沿った(lined with)大きな水性チャネルを形成する、10~12ペプチドからなるより大きく安定した細孔により支配される(図14c)。
Figure 2023545429000007
Figure 2023545429000008
参照文献
本明細書に記載される全ての特許および文献の参照文献は、それら全体が参照により本明細書に組み込まれている。
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Claims (25)

  1. モチーフGLLxLLxLLLxAAG(式中各xが、独立して、アルギニン(R)、ヒスチジン(H)、リジン(K)、アスパラギン酸(D)、またはグルタミン酸(E)から選択される)を含む配列を有する1つ以上のペプチドを含むナノ粒子。
  2. 前記モチーフがGLLxLLELLLxAAGである、請求項1に記載のナノ粒子。
  3. 前記配列が、配列番号1~36およびそれらの混合物のうちのいずれか1つから選択される配列を含む、請求項1に記載のナノ粒子。
  4. 前記配列が、配列番号29または配列番号33を含まない、先行する請求項のいずれかに記載のナノ粒子。
  5. 前記配列が、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号14、配列番号25、または配列番号26、およびそれらの混合物から選択される配列を含む、請求項1に記載のナノ粒子。
  6. 前記配列が、配列番号2、配列番号4、配列番号14、配列番号25、または配列番号26、およびそれらの混合物から選択される配列を含む、請求項2に記載のナノ粒子。
  7. 前記配列が、配列番号25および/または配列番号26から選択される配列を含む、請求項2に記載のナノ粒子。
  8. 前記1つ以上のペプチドが、最大20アミノ酸長を有する、先行する請求項のいずれかに記載のナノ粒子。
  9. 前記ペプチド配列が、モチーフGLLxLLxLLLxAAGからなる、先行する請求項のいずれかに記載のナノ粒子。
  10. 前記1つ以上のペプチドが、中性または陰イオン性である、先行する請求項のいずれかに記載のナノ粒子。
  11. 前記ペプチドが、L型にある、先行する請求項のいずれかに記載のナノ粒子。
  12. 前記ナノ粒子が、約1~約200nm、約5~約100nm、約10~約50nm、または約20nmの直径を有する、先行する請求項のいずれかに記載のナノ粒子。
  13. ポリエチレングリコールメチルエーテルポリラクチド-コ-グリコリド(PEG-PLGA)を含む、先行する請求項のいずれかに記載のナノ粒子。
  14. 前記ペプチドが、αヘリックスのアセンブリを形成する、先行する請求項のいずれかに記載のナノ粒子。
  15. 前記ペプチドが、がん細胞膜に細孔を形成する、先行する請求項のいずれかに記載のナノ粒子。
  16. がんの処置に使用するための、先行する請求項のいずれかに記載のナノ粒子と1種以上の薬学的に許容される賦形剤とを含む、薬学的に許容される組成物。
  17. がんの処置のための医薬の製造に使用するための、先行する請求項のいずれかに記載のナノ粒子と1種以上の薬学的に許容される賦形剤とを含む薬学的に許容される組成物。
  18. 前記がんが乳がんである、請求項16または17に記載の薬学的に許容される組成物。
  19. 前記組成物が、化学療法剤と組み合わせて使用するためのものである、請求項16~18のいずれかに記載の薬学的に許容される組成物。
  20. 前記組成物が、静脈内投与のためのものである、請求項16~19のいずれかに記載の薬学的に許容される組成物。
  21. 前記組成物が、1nM~約10,000nM、好ましくは約10nM~約5,000nM、より好ましくは約100nM~約500nMの範囲の用量での投与のためのものである、請求項16~20のいずれかに記載の薬学的に許容される組成物。
  22. 請求項16~21のいずれかに記載の薬学的に許容される組成物を、好ましくは乳がんであるがんを有する患者に投与する、がんの処置方法。
  23. 請求項16~21のいずれかに記載の薬学的に許容される組成物を含む、がんを処置または予防するためのキット。
  24. 前記がんが乳がんである、請求項23に記載のキット。
  25. 化学療法剤をさらに含む、請求項23または24に記載のキット。
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