JP2023543982A - 電場により支援される試料の調製 - Google Patents

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Abstract

本方法及び機器は、分析のために試料を調製するために、試料に電場を印加する。いくつかの実施形態においては、電場は、組織切片の乾燥、染色及びカバースリップのために印加され、分析及び保存のための改善された組織切片を提供する。【選択図】図1

Description

本発明は、一般的に、限定するものではないが、ヒト及び動物の組織、更には培養細胞、細胞学的標本、細胞塗抹標本、並びに一般的に言えば任意の細胞調製物(cell preparation)を含む、生体試料の乾燥、染色及びカバースリップを含む、分析のための組織切片等の試料(sample)の調製(preparation)に関する。
[関連出願の相互参照]
本願は、2020年9月30日付で出願された米国仮特許出願第63/085,319号の利益を主張し、その内容の全体が引用することにより本明細書の一部をなすものとする。
組織学、病理学及び他の分野において、細胞組織等の生体試料は、ヒト又は動物から収集され、次いで、様々な分析手順のための調製において又は該手順の一部として、様々な処理ステップに供される。生体試料の処理において典型的なステップのいくつかは、固定、包埋、切片化、乾燥、染色又は他の検定、装着、及びカバースリップを実施することを含む。
1つの実施の形態によれば、試料を調製する方法は、本明細書に開示される目的のうちの1つ以上を達成するのに有効な電場を試料に印加することを含む。
別の実施の形態によれば、組織調製装置は、本明細書に開示される方法のいずれかに従って及び/又は本明細書に開示される目的のうちの1つ以上を達成するよう電場を印加するように構成された(つまり、本明細書に開示される方法のいずれかに従って、又は本明細書に開示される目的のうちの1つ以上を達成するよう電場を印加するように構成された、あるいはそれらの両方の)、電場発生装置を含む。
本発明の他の装置、機器、システム、方法、特徴、及び利点は、添付図面及び以下の詳細な記載を検討することで、当業者には明らかであるか、又は明らかになるであろう。全てのそのような更なるシステム、方法、特徴、及び利点は、本明細書内に含まれ、本発明の範囲内にあり、添付の特許請求の範囲によって保護されることが意図される。
本発明は、添付図面を参照することによってよりよく理解することができる。図中の構成要素は、必ずしも縮尺どおりでなく、本発明の原理を例示するにあたり、代わって強調されている。図において、同様の参照符号は、異なる図にわたって対応する部分を示している。なお、ここで、「及び/又は」は、その句によってつながれる二以上の要素の一要素、それらの任意の組み合わせ、あるいはそれらの総体をカバーする意味で使われる。
一実施形態による組織試料調製装置(tissue sample preparation device)(又はパラフィン除去装置)の概略斜視図である。 図1に示された組織試料調製装置の、その動作を説明する概略立面図である。 別の実施形態による組織試料調製装置の概略図である。 別の実施形態による組織試料調製装置の概略図である。 組織切片(tissue section)とスライドとの間に閉じ込められた水が除去される、本方法の一実施形態を示す図である。 抗原回復(antigen recovery)のために電場を印加することにより免疫組織化学分析(immunohistochemistry analysis)のために調製された試料を示す図である。 抗原回復のためのイオン性塩を用いた、電場を印加することにより免疫組織化学分析のために調製された試料を示す図である。 抗原回復のためのイオン性塩を用いた、電場を印加することにより免疫組織化学分析のために調製された試料を示す図である。 電場を印加することによりin situ(インサイチュ)ハイブリダイゼーション分析(in situ hybridization analysis)のために調製された試料を示す図である。 電場を印加することによりin situハイブリダイゼーション分析のために調製された試料を示す図である。 ペプシン(パネルA及びC)又は電場(パネルB及びD)を用いて処置された乳腺癌の2つの患者試料についてのFISH HER2/CEN17の結果を示す図である。 本方法の一実施形態による、流動性被覆媒体を用いて安定化する染色組織を示す図である。 試料上に封入剤を広げるために電場が印加される、本方法の一実施形態を示す図である。 試料上に封入剤を広げるために電場が印加された、カバースリップされた試料スライドを示す図である。
組織学、病理学及び他の分野において、細胞組織等の生体試料は、ヒト又は動物から収集され、次いで、様々な分析手順のための調製において又は該手順の一部として、様々な処理ステップに供される。試料はしばしば潜在的に長期間保存され、その後、光学顕微鏡、電子顕微鏡、又は撮像若しくは走査システム等の分析計器によって検査される。一例として、生検又は外科的処置が実行されて、後続する研究のための組織を収集する。収集された組織は次いで、自然劣化プロセスを防止又は低減させるために、ホルマリン等の化学的固定剤(chemical fixative)を含む容器に入れられる。固定剤は、タンパク質を架橋し、組織を分解する酵素の機能を破壊する。容器は、更なる処理に回すことができる。しばしば、組織試料は、グロッシング(grossing)に回される。技術者(例えば病理学者又は他の適切にトレーニングされた人物)が、固定された組織を検査し、更なる検査のために組織の適切な部分(複数の場合もある)を選択する。この組織の部分(複数の場合もある)は、組織カセット(複数の場合もある)内に容易にフィットするサイズにまで切断される。典型的な組織カセットは、約7.8cmの容積と、ヒンジ式の蓋と、組織が組織カセット内にしっかりと収容されたまま液体に浸漬されることを可能とする貫通スロット又は穴とを有する。組織カセットは次いで、数時間の間、固定剤槽に浸漬されてもよい。
組織試料は次いで、手動のもの又は適切な処理機器を使用して自動化されたものとすることができる処理が施されうる。1つの目的は、組織を完全に脱水して、組織がパラフィン(又は他の包埋媒体)で浸潤させられうるようにし、後に切断するのに十分な硬さとすることを可能とすることである。組織は典型的には、例えば70%エタノール槽に15分間、続いて90%エタノール槽に15分間、続いて一連の100%エタノール槽に長時間といった、次第に増大するアルコール濃度のアルコール槽に浸漬される。いくつかの処理器は、溶媒の交換を加速させるために、マイクロ波又は音響法を含む。次に、脱水した組織がキシレン(又は他の清澄剤)槽に20分~1時間の間浸漬され、アルコールはパラフィンと混和しないので、アルコールを完全に除去する。次いで組織が溶融パラフィンを用いて浸潤させられ(通常は約60℃で)、次いで組織を室温にまで冷却する。
技術者は次いで、組織を含む閉じた組織カセットを収集し、それらを包埋ステーション(embedding station)に持ち込む。包埋ステーションは、溶融パラフィンを含むホットメルトガン(hot melt gun)及びチルプレートを含む。技術者は、組織カセットを開き、組織カセット内に組織を快適にフィットさせる型(mold)を選択する。技術者は、型のベースに少量のパラフィンを入れ、次いでパラフィンがチルプレート上で固まったときに、型の中に組織を配置する。組織は、型の底部に最も近い組織が最初にミクロトームにより切断されるように配向される。技術者は次いで、溶融パラフィンで型の残りを満たす。次に、技術者は、組織カセットの裏側をパラフィンに当てて置き、更なる量のパラフィンを追加してもよい。組織カセットは、バーコード又は他の情報を保持し、組織ブロックの保持器として機能しうる。技術者は次いで、パラフィンが硬化するまで型を置いておき、次いで型から組織ブロックを取り出す。その結果の組織は、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE:formalin fixed paraffin embedded)組織と呼ばれる。
技術者は次いで、ミクロトーム(microtome)を使用して組織ブロックを切断又はスライスして、組織切片と呼ばれる、硬くされた組織の1枚以上の薄いスライスを得ることができる。通常、これらの組織切片の厚さは4マイクロメートル(μm)~6マイクロメートル(μm)のオーダーであるが、1マイクロメートル~30マイクロメートルの範囲も珍しくはない。組織ブロックの上部における余分なパラフィンを切り取った後、技術者はいくつかの切片を切断するが、これらはリボン(ribbon)を形成する傾向がある。リボンは、パラフィン及び組織の両方を平らにするために、加熱された水槽に注意深く入れられる。技術者は次いで、リボンを個々の切片に分離し、各切片をガラス製の顕微鏡用スライド上に整列させる。この時点において、各スライドは、組織及びパラフィン(浸潤パラフィン及び包埋パラフィンの両方)のうちの1つ又は2つ若しくはいくつかの切片を、非常に薄い水の膜からの表面張力によりスライドの主面に保持された状態で有する。各スライドは、識別のためにバーコード又は他の方法でマークされてもよい。
ほとんどの染色プロトコルについて、切片がスライドに完全に接着することが重要であるため、組織切片がスライド上で注意深く乾燥させられる必要がある。しかしながら、切片を水から除去することは、切片とスライドガラスとの間に閉じ込められた可変の水の層を残すことができる。スライドが焼成される前に完全に乾燥していない場合、切片がガラスに接着しないこと又はしわを含むこととなりうる。これらの事象はいずれも、成功する染色プロセスを妨げる見込みが高い。閉じ込められた水を除去するために使用される典型的な方法は、スライドを垂直の向きで約20分~60分間空気乾燥させて、水が切片の底部に流れて蒸発することを可能とすることである。他の水の除去方法は、スライドの上に能動的に空気を流して水分の蒸発を支援すること、又はスライドをタッピングして閉じ込められた水分を追い出すことを含む。これらの方法は、水が除去されるのに必要とされる時間を短縮するのに役立つが、乾燥を確実にするためには依然として長い時間を必要とする。
乾燥の後、組織切片を有するスライドは、約60℃で焼成される。スライドは通常、約20分~60分間、加熱板上又は加熱チャンバ(例えばオーブン)内に垂直に置かれる。利用可能な加熱機器にはいくつかのバリエーションがあるが、いずれも基本的に何らかの形で加熱チャンバ又は加熱板の使用を伴う。乾燥及び焼成は、染色プロセスの間、及び10年以上が望ましいものとなりうる後続する保存の間の、スライドへの組織の接着を確実にするために行われる。スライドから分離した組織は失われ、その結果は、例えば組織試料を得るために手術を受けた患者の場合においては、深刻なものとなりうる。組織は帯電していないスライドには好適に接着しないものでありうるが、H&E染色された切片については日常的に実行されている。接着性を高めるために、一部の研究室は、正に帯電したスライドを用いて、試料のタンパク質及び核酸(デオキシリボ核酸すなわちDNA、及びリボ核酸すなわちRNA)上の負の電荷が正に帯電したスライドと相互作用するようにしている。他の研究室は、組織がスライドに接着することを確実にしようとして、平坦なスライドガラス上に試料を装着するために使用される水槽に接着剤を入れている。乾燥及び焼成の時間の長さは、実行されるべき後続する染色プロセスに依存して変えることができる。焼成プロトコルは、免疫組織化学(IHC:immunohistochemistry)のために染色されるスライドについては、標準的なヘマトキシリン・エオジン(H&E:hematoxylin and eosin)染色よりも長くなるが、これはIHCがより積極的な化学的手順であり、それゆえ組織切片がスライドから落ちる可能性を高くするためである。
組織がスライドに接着させられた後、組織は染色されてもよい。組織切片に対して実行されうる、多くの種類の染色がある。例えば、組織切片は、H&E染色のためにスライド上に装着されてもよい。ヘマトキシリンは核酸を青色に染色し、かくして細胞核のマーカとして有用である。エオジンはタンパク質をピンク色に染色し、かくして細胞膜、細胞質、及び細胞外基質のマーカとして有用である。病理医はしばしば、組織構造の形態を見るために、H&E染色されたスライドを使用する。いくつかの場合においては、病理医は、更なる分析なしで、H&E染色されたスライドの検査から診断を得ることができる。
組織切片を染色する前に、スライドに接着させられ、組織と混在しているパラフィンが、除去される。パラフィンの除去に関与する従来のステップのシーケンスは、試料にパラフィンを塗布するために上記で説明されたものとは、本質的に逆である。スライドがキシレン又は別の清浄剤(cleaning agent)に浸されて、パラフィンを溶解して除去する。イソプロピルアルコール等の他の溶剤もパラフィン除去に使用されうるが、一般的にキシレンほど好適には作用しない。スライドは次いで、キシレンを除去するための100%エタノールから始まり、続いて組織を再水和させるための70%のエタノール/30%の水の組成まで下がる、低下する濃度を有する一連のエタノール溶液に入れられる。次いで、スライドは脱イオン水の中に入れられる。
パラフィンを除去した後、スライドが染色される。例えば、スライドは、ヘマトキシリン溶液に入れられて、核を染色し、次いで洗浄することができる。続いて、スライドは、エオジン溶液に入れられ(試料中のタンパク質を染色するため)、次いで洗浄されてもよい。次に、染色された組織の上に封入液が置かれ、薄いカバースリップ(通常は非常に薄いガラス又はプラスチック)が組織の上に置かれ、端がスライドに付着させられる。カバースリップは、顕微鏡下でのより容易な観察を可能にする。
いくつかの診断又は分析は、他のタイプの染色の使用を必要とする。例えば、微生物感染(microbial infection)を診断するためには、特殊な染色が使用される。別の例として、免疫組織化学(IHC)は、様々なポリペプチド上の特定の抗原の存在を検査するために、抗体ベースの試薬を使用することを指す。IHCはしばしば、癌をより特異的に特徴付けるために使用される。IHC染色プロセスは一般的に、パラフィンが除去されることを必要とし、組織が再水和されるという点で、H&Eに類似する。
しかしながら、IHCのためには通常、組織中の抗原(特に抗体試薬により結合されるべき抗原)が、適切な緩衝液中で所望の温度にまで組織を加熱することによって「賦活化(retrieved)」される、余分なステップがある。抗原が賦活化されると、抗体が適用される。スライドが次いで洗われ、抗体が組織に固着したスライドにカラー染色を施すための標識付け(labeling)ステップが実行される。緩い定義では、熱誘導エピトープ賦活化(HIER:heat-induced epitope retrieval)は、標的抗原を含むポリペプチドの分子構造を変化させることによって、一般的には元の又は「固定前(pre-fixative)」の構造に戻すことによって、染色性を向上させるために、免疫組織化学染色に先立ってしばしば使用される手順である。HIERの手順は、スライド装着された標本材料(切片化された組織及び他の細胞調製物)の、加熱された緩衝液への曝露を含む。「タンパク質アンマスキング(protein unmasking)」、「デクローキング(decleaking)」、「抗原賦活化(antigen retrieval)」及び「エピトープ回復(epitope recpvery)」等の代替の用語もまた、これらの手順を説明するために使用されてきた。この賦活化プロセスは、アルデヒド系の固定剤は細胞形態を保存するのに優れているが、ポリペプチドの架橋も引き起こし、一部の抗原が相補的な抗体へ結合できなくなることに帰着させることができるため、使用される。熱は架橋された抗原を展開(unfold)させ(DNAの変性と同様の方法で)、緩衝液は展開されたタンパク質の構造を維持することを支援する。様々なHIER法の間の主な違いは、かかる溶液が加熱され、スライドに曝露又は塗布される手段による。HIERは一般に、IHC染色反応内で様々な抗原の反応性を改善する手段として、酵素分解と組み合わせて使用される。
家庭用電子レンジは、しばしばHIERのために使用されるが、温度を調節することにおける困難性、沸騰の可能性、及びこれらのユニットが時間とともに電力を失うこと等の、いくつかの欠点を有する。野菜スチーマは、水槽と同様に、しばしば95℃を超える溶液の加熱が不可能なものであり、格段に長いHIERプロトコルをもたらす。これに加えて、野菜スチーマは他の機器に比べ、あまり多くのスライドを保持しない。加圧調理器は、より短いプロトコルを可能とし、沸騰の可能性を排除する、より高い動作温度及び閉じたシステム設計という利点を有する。デジタル制御パネル及び圧力計を組み合わせたユニットは、より好適な温度調整を提供し、操作者が手続中に性能を監視することを可能とする。家庭用電化製品は、研究室環境内で一般的に使用されているが、科学者らは、より標準化され特別に設計された計器が望ましいことに同意している。
HIER用に特別に設計された、いくつかの市販の装置がある。例えば、Pick Cell Laboratories社は、加圧調理器のような装置である2100 Retriever(登録商標)を発売している(類似のユニットに見られる圧力計及び時間/温度表示は有さない)。BioGenex Laboratories社のEZ Retriever(登録商標)は、基本的に工業用電子レンジであり、4つのテフロン(登録商標)反応チャンバと、温度モニタプローブとを含む。これらの動作が基づいている装置(すなわち加圧調理器及び電子レンジ)と同様に、これらの新しい器具も多くの欠点を持っている。Lab Vision Corporation社のPT(Pre Treatment)Module(商標)は、主にLab Vision社のAutostainer(登録商標)のスライドラックと併用するために設計された半自動化された計器であり、HIER手順の完了時に、スライドがPT Module(商標)からAutostainer(登録商標)に直接に移送されることを可能とする。この装置の主な欠点は、操作者が2つの大きな着脱可能なステンレス鋼の「タンク」を充填したり、そこから試薬を排出したりすることを必要とし、不釣り合いに大量の賦活化溶液を消費することである。
市場には様々なIHC染色器があり、そのうちのいくつかはHIER能力を提供する。多数のスライドが同時に加熱緩衝液に浸される、以上に説明された装置とは異なり、IHC染色器内で実行されるHIERは通常、スライドを個別に処理することを含む。例えば、Ventana Medical Systems社のBenchmark(登録商標)染色器は基本的に、回転式の「カルーセル」内で水平に向けられた個々のスライドにHIER溶液を「噴霧」し、次いで各スライドを予め設定された温度にまで加熱し、このプロセスを他のスライドに対しても繰り返すためにカルーセルを回転させる。ほとんどのプロトコルにおいては、HIERが完了したとみなされるまでに、HIER溶液が9回も適用される。同様に、Vision-Biosystems社のBond-maX(商標)染色器は、水平に配置されたスライドの列にピペッタ機構(pipettor mechanism)を介してHIER試薬を分注し、次いで列全体が一緒に加熱される。
IHCスライド染色器へのHIER能力の追加は、検体の損失の見込みを高め、そうでなければ「安価な」この手順を実行するコストを上昇させる。前者の問題は、操作者は通常、高価なIHC手順全体が完了するまで検体の損失に気付かず、その後で操作者がIHC染色を繰り返すことを要求されることになってしまうため、特に重要である。
HIERの別の重要な側面は、様々な方法及び装置の費用対効果である。このことは、自動化されたプロトコルへのHIER又は脱パラフィン化及びHIERの追加が、IHCの全体的なコストを著しく増大させることができることを考慮すると、特に当てはまる。HIER装置の重要な特徴は、HIER手順の間に消費される試薬の量であり、装置間で著しい違いがある。例えば、自動化されたIHC染色器上でHIERを実行するコストは、改良された加圧調理器の中でHIERを実行するよりも6倍も大きくなりうることを、いくつかの研究が実証している。
最も単純な形態においては、ほとんどのHIER装置は、二次容器内の液体を加熱するための信頼性の高い機構によって囲まれた、二次試薬容器が入れられる一次チャンバからなる。かかる装置が保持することができるスライド(二次試薬容器)の数の限界は、一次チャンバの大きさである。安定した結果をもたらすことの重要性を考慮すると、望ましいHIER装置は、A)100℃以上の温度を維持することが可能な、精密に制御される熱源を内蔵し、B)適切な量の賦活化緩衝液及びスライドを保持し、C)HIER溶液の蒸発及び沸騰の可能性を最小化する。これらの要件は、過度の蒸発が、A)緩衝液の塩濃度を変動させ、B)沸騰が標本をスライドから放出させ、C)沸騰してこぼれることが、「生の」標本材料の大気への曝露に導き、不十分な賦活化、及びアーティファクトの乾燥による理想的でない形態をもたらすことができるため、重要である。温度と暴露時間との間の逆比例関係に応じて、100℃より高い温度で動作し、沸騰を防止する装置(例えば加圧調理器)は、可能な限り短い時間枠で良好な結果をもたらすので、非常に普及している。
別のタイプの染色は、標識付けされた相補的DNA又はRNAプローブを使用して、試料中の特定のDNA又はRNA配列を位置特定する、in situハイブリダイゼーション(ISH:in situ hybridization)である。in situハイブリダイゼーション検定は、蛍光、銀又は発色性の標識核酸プローブ(labeled nucleic acid probe)を使用して、凍結組織又はホルマリン固定されたパラフィン包埋組織標本(全組織、細胞ペレット又は細胞塗抹標本)中の遺伝子増幅の有無を定量的に決定するために使用されうる。この染色は、疾患の処置のための治療の選択に関連する、癌における遺伝子マーカを決定するために使用されうる。ISHに続いて、DNAにおけるアデニン-チミンに富む領域のための蛍光青色染色であるDAPI封入剤(DAPI mounting media)を使用して、スライドが被覆される。
標識核酸プローブを適用する前に、組織試料は通常、タンパク質分解消化(proteolytic digestion)される。凍結組織については、組織はクリオスタット(cryostat:定温保持装置)を使用して切断され、その後に組織の固定、次いでタンパク質分解消化、その後に標識プローブ(labeled probe)のハイブリダイゼーションが行われてもよい。FFPE組織については、(以上に説明されたように)切断されスライドガラスに接着された組織切片から、パラフィンが除去される。脱パラフィン化及び再水和の後、試料は水性緩衝液中で加熱前処置ステップを施され、ホルマリンにより誘導されたジスルフィド結合を切断することにより、後続するプロテアーゼ(protease)の消化を容易にする。次いで、ペプシン又はプロテイナーゼK等のプロテアーゼを使用してタンパク質分解消化が実行され、タンパク質を消化し、又はペプチド結合を切断して、ゲノム標的DNAに対する標識核酸プローブのアクセスを容易にする。タンパク質分解消化はまた、無傷のタンパク質により発生する自家蛍光を低減させる。酵素消化の手順は、組織固定時間に適合されてもよく、温度、及び例えば30秒~最大で50分までのような時間によって変化する。タンパク質分解消化は、細胞質の透過性を高め、核酸(RNA又はDNA)プローブの、組織の核酸へのアクセスを可能にする。適切に消化された細胞においては、自家蛍光は主に核に限定され、そのレベルは赤色プローブ信号及び緑色プローブ信号を妨害しない。
タンパク質分解消化を使用する現在のISH法は、いくつかの欠点を有する。タンパク質分解消化は、異なる研究室及び組織タイプ間の分析前固定方法の変動により、ISHにおいて最も変動しやすいステップである傾向がある。消化不足及び消化過多が非常に頻繁に起こり、ISH検定の繰り返しを必要としうる。タンパク質分解ISHがないと、結果は、高レベルの自家蛍光、不規則なDAPI核染色パターン、及び好ましくないプローブの信号分布を伴う、最適には及ばないものとなる。消化が非常に不足した試料はしばしば、細胞質及び細胞外基質における緑色の自家蛍光により特徴付けられる。タンパク質及びペプチド鎖の多い存在により、プローブのハイブリダイゼーションが妨げられ、より多い自家蛍光及び低いプローブハイブリダイゼーションのために、信号強度を低減させ、それにより信号対雑音比を低減させる。基準プローブ信号は、最適には及ばない試料の消化不足にもかかわらず、緑色の信号の存在をもたらしうる。消化過多は、不十分なDNA DAPI複合体の形成をもたらし、核の染色を不均一に見えるようにする。この染色パターンは、ドーナツ化又は損傷核膜と呼ばれる。強度の消化過多は、何も入っていない「ゴースト」核及び破壊された核の形態をもたらす。これらのアーティファクトは、再検査を必要とし、病理医によるスコアの解釈に影響を与え、その結果、患者の処置に影響を与えうる。
多重(multiplex)IHC染色とは、単一のスライド上で複数の抗原標的に対する抗体を用いる、試料の免疫組織化学的(IHC)染色を指す。多重染色は、スライドあたりの増大した価値、簡略化された手順、及び短縮されたターンアラウンドタイムを含む、複数のIHCの利点を有する。多重マルチポリマー(又は色原体)検出は、ステップ数を減らすことによりプロトコルを簡素化する。多重IHCのための用途は、(1)疾患の診断又は処置に関連すると考えられるタンパク質マーカのパネルの臨床評価と、(2)多くの癌に対する免疫療法又はケア処置の標準の選択に情報を与える、腫瘍微小環境の構成又は腫瘍細胞に浸潤する免疫細胞の検出の臨床評価とを含む。用途(2)のいくつかの例示的な事例においては、腫瘍細胞と形態が非常に類似してみえる免疫細胞又はマクロファージの識別が、非常に望ましい。腫瘍細胞の中でもB細胞とT細胞との区別は、免疫療法の選択のために重要である。免疫細胞及び腫瘍細胞は、免疫細胞のみによって又は腫瘍細胞のみによって発現されるタンパク質に特異的な抗体を含む、多重IHCを使用して区別されうる。
組織切片に対する多重IHCのための典型的なワークフローは、以下のステップのいくつか又は全てを含んでもよい。
1.スライドを脱パラフィン化する。
2.組織切片を、一連の段階的アルコール中で水に水和させる。
3.バックグラウンド染色を増大させうる内因性ペルオキシダーゼをブロックする。
4.組織切片を、塩を含む高pH緩衝液中で95°にまで加熱することによる、抗原賦活化。
5.非特異的なタンパク質がIHC抗体に結合するのを防ぐための、タンパク質をブロックする。
6.組織標本中の特異的抗原(もしあれば)に結合する一次抗体#1を適用する。
7.一次抗体#1の周りにHRP二次抗体を結合させる:ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)結合ポリマーが、一次抗体#1に結合する。
8.ポリマーまたは色原体:色原体(DAB、HRPマゼンタ又は他の色原体)を一次抗体#1の周りに沈殿させる。
9.組織に結合した利用可能な抗体を変性させる:硫酸等の変性試薬の添加が、依然として利用可能な賦活化された抗原に影響を与えることなく、一次抗体#1を変性させることとなる。
10.核の識別のためにヘマトキシリンを用いて対比染色する。このステップは、この時点では任意選択的であり、一次抗体#2のその抗原への結合、並びに二次抗体及び色原体への抱合の後に、実行されてもよい。
11.このステップにおいて、組織切片が一連の段階的アルコール中で脱水され、全スライド撮像器による走査による分析等の分析のためにカバースリップされてもよい。
12.カバースリップを除去し、キシレンを用いて洗浄し、一連の段階的アルコール中で水に再水和させる。
13.組織切片中のその特異的抗原(もしあれば)に結合する一次抗体#2を添加する。
14.一次抗体#2の周りにHRP二次抗体を結合させる:ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)結合ポリマーは、一次抗体#2に結合する。
15.ポリマー/色原体:色原体(DAB、HRPマゼンタ又は他の色原体)を一次抗体#2の周りに沈殿させる。
16.核の識別のためにヘマトキシリンを用いて対比染色する。
17.組織切片を脱水し、封入剤(mounting medium)を使用して組織切片上にカバースリップを装着する。
以上から、後続する研究のための収集された組織の処理は、多くのステップ及びかなりの時間を伴うことが明らかである。かくして、これらのステップのうちの1つ以上を排除する、及び/又は必要とされる(つまり、排除する又は必要とされるあるいはそれらの両方の)時間を削減する、かかる処理における何らかの改善が望ましいものとなりうる。
前述の問題の全部又は一部、及び/又は当業者によって観察されうる他の問題に対処するために、本開示は、以下に規定される実施態様において例として説明されるような、方法、プロセス、システム、機器、器具、及び/又は装置(つまり、方法、プロセス、システム、機器、器具、又は装置、あるいはそれらの全て)を提供する。本方法、プロセス、システム、機器、器具、及び/又は装置の様々な実施形態のいずれも、他の実施形態のうちの1つ以上と組み合わせられてもよいことが考えられる。
本明細書で使用される場合、「固体基板(solid substrate)」という用語は、生物学的又は化学的試料のための少なくとも1つの表面を有する任意の試料ホルダ、支持体又は基板を指す。固体基板は、限定するものではないが、スライド、プレート、フリット、ビーズ、多孔質媒体、フィルタ、及び容器を含む。かくして、固体基板は、少なくとも1つの試料を支持することができる担体(carrier)、試験管、チップ、アレイ、又はディスクでありうる。いくつかの実施形態においては、固体基板はスライドである。スライドは典型的には、第1の主スライド表面及び第2の主スライド表面を有し、これらは平坦状又は湾曲状とすることができる。スライド及び他の固体基板は、ソーダライムガラス、ホウケイ酸ガラス若しくは溶融石英等のガラス、又は透明プラスチック、又は他の透明若しくは半透明材料で作られてもよい。
本明細書で使用される場合、「試料(sample)」という用語は、組織試料、血液試料、又は細胞試料等の、分析が望まれる生物学的、化学的、又は工業的な試料を意味する。いくつかの実施形態においては、組織試料は、患者から得られた組織生検の試料であってもよい。対象となる生検は、皮膚(メラノーマ、癌腫等)の腫瘍生検及び非腫瘍生検の両方、軟組織、骨、乳房、結腸、肝臓、腎臓、副腎、胃腸、膵臓、胆嚢、唾液腺、子宮頸、卵巣、子宮、精巣、前立腺、肺、胸腺、甲状腺、副甲状腺、下垂体(腺腫等)、脳、脊髄、眼、神経、及び骨格筋等を含む。
本明細書で使用される場合、「包埋媒体(embedding medium)」という用語は、組織試料等の生体試料を包埋するのに適したパラフィン及び同様の材料を指す。
本明細書で使用される場合、「電極(electrode)」という用語は、電場が生じるような電流を伝える任意の固体構造を指す。電極は、アルミニウム又は他の金属等の、いずれの適切な材料を含んでもよい。電極は、細長いロッド状の幾何学的形状又は薄い平面状(プレート状)の幾何学的形状等の、いずれの望ましいサイズ又は形状を有してもよい。例えば、好適な電極は、金属(例えばアルミニウム)の箔でありうる。例示的な電極は、プレート電極及びピン電極等の平坦な電極と、一方若しくは両方が静止しているか又は一方若しくは両方が可動である電極の対と、並びに室温での又は上昇した温度若しくは低下した温度での動作のために構成された電極とを含む。
試料に電場を印加する機器の一実施形態の限定するものではない例が、ここで説明される。
図1は、例示的な組織調製装置(tissue preparation device)100の概略的な斜視図である。装置100は、電場印加装置とも呼ぶことができる。図1はまた、固体基板112(例えば顕微鏡スライド)の上面上に配置された、一般に試料の例示であり組織試料とも呼ぶことができる組織108を含む、支持組織構成104を示している。組織108は、固体基板112上に拘束されない様式で自由に載置されてもよい。例えば、組織試料108は、以上に説明されたように収集され処理されていてもよい。装置100は、組織108に電場を印加するように構成されており、このことは、染色のため及び/又は他の所望の(つまり、染色のため及び/又は他の所望のためあるいはそれらの両方のための)処理又は分析のための調製において行われてもよい。
電場は、所望の効果を生み出すために重要である。多くの他の手段及び実施形態が、必要な電場を生成するために想到される場合があり、当業者には知られている。かかる手段及び実施形態は、以下に説明される例示的な実施形態内の種々の寸法及び電圧、並びに当該電場を生成する他の物理的手段(例えば光学的生成、変化する磁場を介した誘導的な生成、エレクトレット(electret)ベースのもの等)を包含する。これらの手段のいずれも、必要な電場を発生させるために使用することができ、本明細書で説明される本発明の範囲内に留まる。これに加えて、本発明は、本明細書に記載される例示的な電場強度に限定されるものではないが、異なる材料及びプラットフォームの選択に対して、より大きな又はより小さな電場が当業者によって想到されうる。
電場印加装置100は、電場発生装置116を含み、加熱装置120を更に含んでもよい。電場発生装置116は、1つ以上の可動の又は静止した第1の電極(又は放電電極)124及び1つ以上の(典型的には静止した)第2の電極(又は対電極)128等の電極配置と、適切な電圧源(又は電源)132とを含む。電圧源132は、直流(DC)電圧源であってもよいし、又は交流(AC)電圧源であってもよい。いくつかの実施形態においては、電圧源132はAC電圧源であり、無線周波数(RF)電圧源又はマイクロ波周波数電圧源等の高周波電圧源であってもよい。少なくとも第1の電極124は、電圧源132と電気的に通信している。実施形態に依存して、第2の電極128は、電圧源132と電気的に通信していてもよいし、又は電気的な接地電位に結合されていてもよい。いくつかの実施形態においては、電圧源132は、キロボルト(kV)のオーダーのDC電圧電位を第1の電極124に印加することが可能な高電圧源である。例えば、いくつかの実施形態においては、電圧の電位(接地電位に対する)は、約4000V(4kV)~約30000V(30kV)の範囲内(絶対値)であってもよく、この範囲内の電圧の全てを含み、限定するものではないが例えば1.5MV/m~8MV/mの範囲内の電場を伴う。印加される電位は、正の電位であってもよいし又は負の電位であってもよく、すなわち、範囲は、約+4000V~約+30000V又は約-4000V~約-30000Vであってもよい。限定するものではない例として、電極の間隔は、-1.5MV/m~-8MV/m又は+1.5MV/m~+8MV/mの範囲内の電場を発生するように設定されてもよい。前述の範囲は、単なる一例である。いくつかの実施形態においては、電位は30000Vよりも大きく、30MV/mを超える電場をもたらしてもよい。コロナ放電が必須ではないいくつかの実施形態においては、電圧電位は1000V未満であり、3MV/m未満の電場をもたらしてもよい。より一般的には、電圧源132は、第1の電極124及び組織108が位置する環境において、コロナ放電又はプラズマを発生し維持するのに十分な又は有効な大きさ(又はAC電源の場合には、ピーク間振幅及び周波数)で、DC又はAC電圧を第1の電極124に印加することが可能である。
いくつかの実施形態においては、第1の電極124は、第1の電極124を囲む増大した(elevated)電場強度の領域を発生させるように構成された、(極めて)湾曲した形状部を含んでもよい。例えば、湾曲した形状部は、エッジ若しくは尖った先端部、又は小径のワイヤ等の、鋭い又は幾何学的に急激な形状部であってもよい。図示された実施形態においては、第1の電極124は、遠位電極先端部136において終端する細長いロッドとして構成される。遠位電極先端部136において終端する第1の電極124又は少なくともその先端部分は、遠位電極先端部136が鋭いもの又は尖ったものとなるように、テーパ状であってもよい。一般的に、より鋭い遠位電極先端部136は、より鈍い幾何学的形状と比較して、遠位電極先端部136においてより強い電場を発生させる。かくして、いくつかの実施形態においては、第1の電極124は、針又はピン(例えばコロナ放電針)として構成されてもよい。いくつかの実施形態においては、第1の電極124は、電気絶縁材料で構成される本体140(図1に断面を示す)によって同軸的に囲まれてもよい。電気絶縁材料は、十分に断熱性の材料であってもよく、又は、本体140は、電気絶縁材料を同軸的に囲む断熱材料を更に含んでもよい。絶縁体140は、ユーザにより手で保持されるように構成されてもよい。すなわち、第1の電極124は、ペンのようにユーザによって保持されるハンドピースとして構成されてもよい。代替としては、絶縁体140は、自動化された装置(例えば電動ステージ又はロボット)に装着されるように構成されてもよい。かくして、実施形態に依存して、第1の電極124は、手動の又は自動化された方法で、組織108に対して可動のものであってもよい。
第2の電極128は、典型的には、対向電極(counter-electrode)又は接地面(ground plane)として機能するように構成される。第2の電極128は、印加電圧によって発生する電場及びプラズマの位置及び空間的な向きを定義する際に、第1の電極124と協働するように位置決めされてもよい。いくつかの実施形態においては、図示されるように、第2の電極128は、第1の電極124とは反対側の組織108の側面に位置決めされる。換言すれば、組織108は、第1の電極124と第2の電極128との間に位置決めされる。他の実施形態においては、第2の電極128は、組織108の上方に位置決めされてもよいし、又は、何らかの基準面に対して組織108とほぼ同じ高さに並置されてもよい。図示された実施形態においては、第2の電極128は、支持された組織構成104のものよりも大きな平面面積の薄い平面状の(プレート状の)幾何学的形状を有し、支持された組織構成104は、第2の電極128の上に置かれる。例えば、第2の電極128は、金属(例えばアルミニウム)の箔であってもよい。いくつかの実施形態においては、第2の電極128は、第1の電極124の図示された例と同様の細長いロッド型の幾何学的形状を有していてもよい。いくつかの実施形態においては、1つよりも多い第1の電極124及び/又は1つよりも多い第2の電極128(つまり、1つよりも多い第1の電極124、又は1つよりも多い第2の電極128、あるいはそれらの両方)が備えられてもよい。
いくつかの実施形態においては、特にAC電源が利用される場合、本体の電気絶縁部分が第1の電極と第2の電極との間に介挿されるように、第2の電極が第1の電極を同軸状に囲むことができる。この場合においては、第2の電極は次いで、電気絶縁性及び/又は断熱性の(つまり、電気絶縁性の又は断熱性のあるいはそれらの両方を備える)材料によって同軸状に囲まれてもよい。
装置100は、電圧源132及び他の適切な要素を含む電子部品を含んでもよい。該電子部品は、例えば、第1の電極116への電圧電位の印加を制御するためのON/OFFスイッチ(特に図示せず)、第1の電極116に印加される電圧電位のレベルを調整するように構成され構成た要素(例えば制御つまみ(図示せず))等を含んでもよい。これら電子部品のいくつか又は全ては、装置100の制御コンソールに配置されてもよい。手持ち式の実施形態においては、ON/OFFスイッチ(又はON/OFFスイッチ及び電圧レベル調節要素の両方)は、ユーザにより容易にアクセスされるように絶縁体140に配置されていてもよい。代替としては、ON/OFFスイッチ及び電圧レベル調節要素等の制御部は、制御コンソール又は足で操作するモジュールに位置していてもよい。
加熱装置120は、一般的に、熱エネルギーを発生させ加熱装置120の上部加熱面144に伝達するのに有効な、いずれの構成を有してもよい。したがって、例えば、加熱装置120は、加熱面144と熱的に接触している1つ以上の抵抗加熱要素(特に図示せず)を含む本体148と、加熱要素に電流を供給する電圧源(電源)152とを含んでもよい。したがって、図示された実施形態においては、第2の電極128は、加熱装置120の加熱面144上に置かれ又は取り付けられ、組織108及び支持基板112が次いで、第2の電極128上に置かれる又は取り付けられる。本実施形態においては、加熱装置120を含む装置100は、開放構造を有する。代替としては、加熱装置120は、第1の電極124、第2の電極128及び加熱面144が中に位置決めされ、組織108及び支持基板112が中へと装填されるチャンバを含んでもよい。抵抗加熱要素に対する代替として、加熱装置120は、赤外線(IR)ランプ等の1つ以上の放射加熱源を備えてもよい。
図2は、組織調製装置100の、その動作を説明する概略立面図である。組織108及び支持基板112は、第2の電極128上に配置されること等によって、加熱装置120の加熱面144と熱的に接触するように位置決めされる。加熱装置120は次いで、熱エネルギー256を発生させ加熱面144に伝達し、続いて熱伝導を介して組織108に伝達するように作動させられる。十分な量の熱エネルギー256が組織108に蓄積されて、分析(以下に説明されるような)のために組織108を調製する際の1つ以上の目的を達成する。
いくつかの実施形態においては、電場発生装置116は次いで、第1の電極124の電極先端部136の周りの領域においてコロナ放電又はプラズマ260を発生させ維持するのに十分な大きさであるが、第1の電極124と第2の電極128等の別の物体との間の電気アークを引き起こすほど大きくはない強度の、電場を発生させるよう作動させられる。電場は、空気(又は他の気体媒体)中の自由電子を加速させて、空気(又は他の気体媒体)中の中性物質(中性原子及び分子)と衝突させる。衝突の一部は、衝突を受ける中性物質をイオン化するのに十分高いエネルギーで起こり、それによってより多くの電子を解放し、自由電子と中性物質との更なる衝突に導く。電場が存在し、かつそれが十分な強さである限り、イオン化の事象は電子なだれ(electron avalanche)と呼ばれる連鎖反応で継続する。また、電子と正イオンとの再結合事象により、プラズマ260中に光子(photon)が発生し、同様に中性物質のイオン化に寄与する。電場発生装置116によって発生したプラズマ260は、一般的に、荷電粒子(イオン及び電子)と中性物質との、更には準粒子と光子とのような他の高エネルギー種の混合物である。
いくつかの実施形態においては、第1の電極124は、第2の電極128に対して正の極性を有する。この場合においては、プラズマ260は、正のコロナ放電であってもよい。正イオンは、第1の電極124から反発され、第2の電極128に向かって引き寄せられる。一方、負イオンは、第1の電極124に向かって引き寄せられ、第2の電極128から反発される。同様に、電子は、第1の電極124の方に引き寄せられ、第2の電極128から反発される。他の実施形態においては、第1の電極124は、第2の電極128に対して負の極性を有していてもよく、その場合には、プラズマ260は、負のコロナ放電となりうる。
図2において、本明細書でプラズマ260と呼ばれる閉じた破線は、プラズマ260(又は少なくとも活性プラズマ)の外側の空間的な存在範囲を概略的に描いており、これはイオン化領域又はプラズマ形成領域とも呼ぶことができる。この領域(プラズマ260)の外側では、電場は、空気(又は他の気体媒体)中のプラズマを維持するのに十分に強くはない。換言すれば、プラズマは、この領域の外側では消滅する。プラズマ260が説明のために概略的に描かれていることは理解されよう。実際には、プラズマ260の実際のサイズ及び形状(例えば雲、プルーム等)は、図2に示された概略的な描写とはかなり異なりうる。
図2に描かれているように、通電された第1の電極124は、組織108の上方に位置決めされ、第1の電極124は、組織108が高エネルギープラズマ260に曝露されるように組織108に十分に近い。その結果、プラズマ260の高エネルギー種は、試料と相互作用する。第1の電極124は、本明細書に記載される目的のうちの1つ以上を達成するよう電場を印加するために、組織108及びその下にある基板112にわたって(その上を)、任意の所望の方向に移動させることができる。例えば、いくつかの実施形態においては、所与の方向における第1の電極124の移動は、閉じ込められた液体又は封入剤を所望の方向に押すか又は引くこととなる。1つの限定するものではない例として、図2は、水平矢印264によって示されるように、(図2に向かって)左方向に、組織108の上を(接触せずに)移動させられる第1の電極124を描いている。
組織を調製する方法の限定するものではない例が、以上に説明され図1及び図2に示された例を使用して、ここで説明される。パラフィン包埋された組織108が準備される。組織108を準備することは、最初に供給源から組織108を取得した後に、本明細書に記載されるような固定、脱水、アルコール除去、パラフィン浸潤/包埋、切片化等の様々な処理ステップを含んでもよい。いくつかの実施形態においては、組織108を準備することは、固体基板112上に組織108を位置決めする(置く又は取り付ける)ことと、(基板112上に支持された)組織108を(第2の)電極128上又はその近くに位置決めする(置く又は装着する)こととを含む。熱エネルギー256は、例えば、抗原賦活化を支援するために、所望に応じて組織108に加えられる。組織108に電場を印加するのに有効な電場が印加される。この例においては、電場は、電極間隔に依存する電場を発生させる電圧電位を第1の電極124に印加することによって、第1の電極124と第2の電極128との間に発生する。さらに、この例においては、印加される電場は、少なくとも第1の電極124の電極先端部136と組織108との間に広がる領域において、プラズマ260を発生させるのに有効である。第1の電極124は、所望に応じて組織108に対して1つ以上の方向に移動させられ、電場を繰り返し印加する。典型的には、組織108は静止したまま、第1の電極124が移動させられる。代替として又はこれに加えて、組織108が、第1の電極124に対して移動させられてもよい。
組織108等の試料に電場を印加する前、印加する間、及び/又は印加した後に、(つまり、電場を印加する前、印加する間、又は印加した後、あるいはそれらの全てについて)組織108に対して染色プロセス又は他の調製プロセスが実行されてもよい。例えば、組織108は、ヘマトキシリン・エオジン(H&E)等の標準的な染色試薬、若しくは免疫組織化学(IHC)染色試薬、又は他の特別な染色試薬を用いて、染色されてもよい。別の例としては、組織108は、電場の印加後、封入剤及び/又は蛍光染色(DAPI封入剤等)(つまり、封入剤、又は蛍光染色(DAPI封入剤等)、あるいはそれらの両方)を用いて処置されてもよい。他の所望のプロセスが、組織108に対して実行されてもよい。例えば、in situハイブリダイゼーション分析を実行するために、核酸プローブが組織108に適用されてもよい。別の例としては、核酸が組織108から分離され、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR:polymerase chain reaction)による増幅、ハイブリダイゼーション等の、更なる処理に供されてもよい。
1つの態様として、本技術は、電場を印加することによって基板表面上及び/又は他の液体上の(つまり、基板表面上の、又は他の液体上の、あるいはそれらの両方上の)試料を乾燥させるための方法及び機器を提供することが、ここで説明される。この技術は、焼成前に試料が乾燥していることを確実にするために必要な時間を短縮することができる。例として、通常、スライドを乾燥させるために60分間放置する研究室は、その時間を約5分にまで短縮することができる。
いくつかの実施形態においては、本技術は、固体基板上に試料を置く方法を提供する。本方法は、パラフィン包埋組織を含む試料を液体槽中に入れることと、試料が基板表面上に広がるようにパラフィン包埋組織を固体基板(スライド等)に接触させることと、基板表面と試料の間に閉じ込められた液体を、該閉じ込められた液体に電場を印加することによって、除去することとを含むことができる。例として、固体基板は、第1のスライド表面及び第2のスライド表面を有するスライドであってもよく、試料は、組織切片であってもよい。本方法はまた、閉じ込められた液体が除去されるときに、スライド表面が実質的に垂直になるように、スライドを移動させることを含んでもよい。この文脈においては、「垂直」とは、例えば、主スライド表面が重力に対して平行であるような、重力に対する位置を指す。いくつかの実施形態においては、スライド表面は実質的に垂直であり、それにより、組織が上端及び底端を有し、第1の電極が底端よりも下に位置するようにされる。電場を印加しながら第1の電極が上端から底端に移動させられ、閉じ込められた液体が底端に向かって移動するようにしてもよい。次いで、第1の電極が上端における位置に戻され、電場を印加しながらの第1の電極の底端への移動が、任意の所望の回数だけ繰り返されてもよい。
数ある利点の中でも、本乾燥方法は、閉じ込められた液体を引き出すために力及びエネルギーを能動的に使用する。組織とスライドとの間に閉じ込められた水が、非常に薄い層に達した場合、その水を除去するために多くのエネルギーを必要とする。以前の方法は、そのエネルギーを供給する能力を有さない。また、組織切片は様々な厚さで提供されるものであり、典型的には2ミクロンから10ミクロンの間である。より厚い切片については、組織の上面に空気を吹き付けることもうまく作用しないので、閉じ込められた水を除去することはより困難となる。いくつかの実施形態においては、本乾燥方法は、この問題を有さない。
いくつかの実施形態においては、本方法は、組織とスライドとの間に閉じ込められた水を除去するために電場を印加することを含む。いくつかの実施形態においては、閉じ込められた水に十分に近い距離において、大きな電位が金属ピンに印加される。電気アークを生成するために、基準接地(reference ground)がピンの近くに置かれる。例えば、接地面(ground plane)として金属ブロックが使用されてもよい。パラフィン包埋組織切片とスライドガラスとの間に水が閉じ込められた湿潤組織スライドが、ピンと接地面との間に垂直に置かれてもよい。ブロックはパラフィンの融点より低い温度に保たれる。ピンは、組織切片の底端近くに位置し、それにより、重力と電場とが実質的に同じ方向に水を引き寄せるようにする。ピンは、スライドから約4mm離して置かれてもよい。いくつかの実施形態においては、電源は-20kV又は別の適切な電圧にまで調整され、コロナ放電及び5MV/mを超えることができる電場を生成する。電源がオンにされると、切片とスライドとの間に閉じ込められた水が経路を見つけ、ピンに向かって移動する。接地へのいくつかのアーク経路が形成される。これらのアークは、水を蒸発させるのに十分なエネルギーを発生させる。水が蒸発すると、より多くの水が接地及びピンの方向に引きつけられる。この経路は組織とスライドとの間にありうるので、水は組織の下から能動的に引きつけられる。
閉じ込められた水を除去する本方法のいくつかの実施形態においては、電圧は少なくとも5kV、又は10kV、又は20kVであり、及び/又は、第2の電極は接地電極(grounded electrode)であり、及び/又は、第1の電極は組織から約1mm~約7mm、代替的に約3mm~約5mmだけ離れ、350kV/m~40MV/mの範囲内の電場をもたらすことができる。いくつかの実施形態においては、組織は、第1のスライド表面に接触し、第1の電極は、第2のスライド表面に面して位置決め又は配置される。いくつかの実施形態においては、組織は、第1のスライド表面に接触し、第2の電極は、第2のスライド表面に接触し、第2の電極は、パラフィンの融点よりも低い温度である。
別の態様として、本技術は、ポリヌクレオチド及びポリペプチドを含む試料に電場を印加することと、試料を1つ以上の標識核酸プローブと接触させることとを含む、in situハイブリダイゼーションのための試料を調製する方法を提供する。試料は、パラフィン包埋組織試料(全組織、細胞ペレット、又は細胞塗抹標本等)であってもよく、1つ以上の細胞を含んでもよい。対象となるポリヌクレオチドは、細胞の核内にあってもよい。本技術は、タンパク質分解(proteolytic digestion)消化なしで、試料内の標的ポリヌクレオチドへのISHプローブの結合を可能にする。いくつかの実施形態においては、本方法は、高レベルの自家蛍光、核アーティファクト、及び低レベルのプローブ信号を含む、タンパク質分解消化アーティファクトを回避する。それゆえ、電場を印加することは、プローブ信号の定量化及び検定結果の定量化を改善しうる。また、いくつかの実施形態においては、タンパク質分解消化ステップを排除することによって、in situハイブリダイゼーション検定を実行するのに必要とされる時間を短縮することができる。いくつかの実施形態においては、電場は、対象となるDNAを露出させるのに十分な強さで及び十分な時間の間印加され、プローブが核酸にアクセスして結合することができる前に、これらの細胞構造をタンパク質分解酵素(ペプシン又はプロテイナーゼK等)を用いて消化するステップを回避する。いくつかの実施形態においては、試料は、ポリヌクレオチドにハイブリダイゼーションされた蛍光標識プローブの分析の間に、無傷のタンパク質からの自家蛍光が実質的にない状態にされうる。いくつかの実施形態においては、本方法はまた、試料に電場を印加することと、脱パラフィン化溶媒を用いて試料を洗浄することとの組み合わせ等によって、標識プローブとの接触の前に、試料から実質的に全てのパラフィン又は他の包埋媒体を除去することを含んでもよい。
いくつかの実施形態においては、本方法は、試料中のDNAを露出させることを含む。いくつかの実施形態においては、このことはタンパク質分解消化なしで行われる。DNAの露出のために電場を印加することにより、タンパク質分解消化ステップが必要なくなり、本方法は高レベルの自家蛍光(autofluorescence)及び核アーティファクト(nuclear artifact)を減少させ、検定のための処理時間を短縮させる。核アーティファクトがないことはまた、プローブ信号のスコアリング又は定量化を容易にし、より正確な試験結果に帰着することとなる。いくつかの実施形態においては、本技術は、いくつかの検定について、プローブ信号を改善し、背景雑音(background)を低減する。いくつかの実施形態においては、DNAの露出は、コロナ放電を発生させるために必要とされる大きさよりも小さい電場に組織を曝露することによって達成することができる。例えば、限定するものではないが、タンパク質分解消化の代わりに、約500kV/mの電場をもたらすことができる、1分間の1mmの距離における500Vが、高品質のISH結果を発生させる。このステップは、標準的なプロセスによる脱パラフィン化の前に完了させられてもよい。いくつかの実施形態においては、DNAを露出させる方法は、500V未満、又は120V未満、及び/又は12V未満の電圧電位で電場を印加することを含む。印加される電圧電位は、正であってもよいし又は負であってもよく、1つ以上の電極にDC又はAC電圧を印加することによって提供されてもよい。本方法における使用のための例示的な電極は、プレート及びピン電極等の平坦な電極、一方若しくは両方が静止しているか又は一方若しくは両方が可動である電極の対、並びに室温の、冷却された又は加熱された電極を含む。
本技術によって生成される電場は、タンパク質分解消化と同様の効果を有することができる。発生した電場は、重度のペプシンの消化過多で見られるような核物質の損傷は、もたらさない。組織試料中の核酸の品質は、電気泳動及び真核生物18S rRNAについての定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(qRT-PCR:quantitative real-time polymerase chain reaction)により評価することができる。本方法は、核酸損傷を回避又は低減することが見出されており、それゆえ核酸損傷なしに検定のためにDNAを露出させることを支援する。いくつかの実施形態においては、これらの方法は、コロナ放電を生じさせることなく実行することができる。
別の態様としては、本技術は、試料が1つ以上のポリペプチドを含み、試料がホルムアルデヒド等のアルデヒドで固定された場合に、分析のために試料を調製する方法を提供する。いくつかの実施形態においては、本方法は、アルデヒドによる架橋又はメチレンブリッジ形成を逆転させること等、1つ以上の固定効果を逆転させるのに有効な電場を印加することを含む。本方法は、賦活化されるべき1つ以上の抗原をポリペプチドが含む組織切片等の組織試料に、特に適している。熱源、パラフィン、及び電極のアレイを含む簡単なセットアップを用いて、緩衝液のない状態での抗原の賦活化のための方法及び機器が提供される。それゆえ、電場を試料に印加することは、複雑で高価な抗原賦活化方法に対する改善であり、組織試料の損失を回避し、スライドへの組織の接着を改善するものである。本方法は、組織の酵素消化の必要性、さらには緩衝液の使用、及びタンパク質分解消化ステップによって達成することができる潜在的に高価な自動染色器の使用を、排除することができる。本技術を使用することにより、緩衝液の使用及びタンパク質分解消化ステップが不要となる。
いくつかの実施形態においては、本方法は、電場を試料上で選択された通過回数だけ移動させることを含む。いくつかの実施形態においては、電場は移動させられない。いくつかの実施形態においては、電場は、試料においてオゾンを発生させる。本方法はまた、試料における湿度を調節することを含むことができる。
いくつかの実施形態においては、本方法は、電場を印加しながら、1つ以上のイオン性塩、及び/又は、110°よりも高い又は200°よりも高い沸点を有する流動パラフィン、溶融パラフィン、又は他の疎水性媒体に、試料を接触させることを含む。イオン性塩の例は、塩化イミダゾリニウム(C10Cl)、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF)、トリフルオロ酢酸アンモニウム(CFCONH)、メチルイミダゾリウムクロリド(C HCl)、ブチルメチルイミダゾリウムニトラート(C15)、ヘキシルメチルイミダゾリウムクロリド(C1019ClN)、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムアセタート(C14)、及びこれらの混合物を含む。例えば、本方法は、50°未満の融点及び110℃より高い融点を有する疎水性媒体中の1つ以上のイオン性塩の混合物に、試料を接触させることを含んでもよい。電場は、固定効果を逆転させるのに十分な時間、例えば少なくとも約5分、又は少なくとも約30分の間、印加されてもよい。いくつかの実施形態においては、本方法はまた、固定効果を逆転させるのに十分な温度、例えば少なくとも約90℃又は少なくとも約110℃で、組織試料を加熱することを含む。本方法の使用により、組織試料に対して抗原賦活化緩衝液を適用することなく、試料中の抗原が賦活化されうる。
本技術の別の態様として、分析されるべき1つ以上のポリペプチドを含む試料についての、抗原賦活化のための機器が提供される。本機器は、複数の固体基板上の複数の試料に電場を印加するように構成された、電場発生装置を含んでもよい。電場発生装置は、湾曲した形状部を含む複数の電極を含んでもよい。本機器はまた、複数の固体基板を保持し、試料に熱を加えるように構成されたホルダと、固体基板上で反復的な又は所定のパターンで複数の電極を移動させるように構成されたアクチュエータとを含んでもよい。いくつかの実施形態においては、本機器はまた、固体基板における湿度を調節することが可能な、湿度コントローラを含む。本機器は、ホルダ及び電場発生装置が収容される筐体と、該筐体の内部における温度センサ、湿度センサ及びオゾンセンサのうちの1つ以上とを含んでもよく、該センサ(複数の場合もある)はコントローラと通信している。いくつかの実施形態においては、本機器は、流動パラフィン等の25mPa・s以上の粘度を有する媒体を分注することが可能なディスペンサを更に含む。該機器は、1つ以上のイオン性塩、疎水性媒体、又はそれらの混合物を含むリザーバを含んでもよい。
いくつかの実施形態においては、本方法及び機器は、スライド(又は他の固体基板)への組織(又は他の試料)の接着を改善し、それによってIHCプロセスの間の組織の損失を防止する。電場は、組織処理の最初のステップである組織のホルマリン固定の間に、タンパク質エピトープ及び核酸を架橋するメチレンブリッジと相互作用しうる、組織に対して局所的な領域においてオゾンを発生させることができる。電場によって生成されたオゾンは、空気中の湿気と相互作用してメチレンブリッジを逆転させ、それゆえ、次いで抗体に結合することができるエピトープを首尾良く賦活化することができると考えられる。
いくつかの実施形態においては、本技術は、混和性イオン性塩を含む媒体を適用することによって、水性緩衝液がない状態で抗原を賦活化することを可能にする。抗原賦活化は、熱源、パラフィン、及び負電極のアレイを含むセットアップを用いて達成されうる。いくつかの実施形態においては、電場の使用は、スライドへの組織の接着を改善するので、組織試料の損失なしに、複雑で費用のかかる抗原賦活化方法を改善することとなる。いくつかの実施形態においては、組織の酵素消化の必要性を排除することとなる。
塩は、酸と塩基との中和反応によって形成されうるイオン性化合物である。塩は、生成物が電気的に中性(正味の電荷を有さない)となるように、関連する数の陽イオン(正に帯電したイオン)と陰イオン(負イオン)とで構成されている。これらの構成イオンは、塩化物イオン(Cl)等の無機物であってもよいし、又は酢酸イオン(CHCO2-)等の有機物であってもよく、フッ化物イオン(F)等の単原子であってもよいし、又は硫酸イオン(SO 2-)等の単原子のものであってもよい。
多くのイオン性化合物は、水又は他の極性溶媒に大きな溶解度を示す。分子化合物とは異なり、塩は溶液中で陰イオン成分と陽イオン成分とに解離する。固体内でのこれらのイオン間の凝集力である格子エネルギーが、溶解度を決定する。溶解度は、各イオンが溶媒とどの程度相互作用するかに依存する。
塩は、特徴的に高い融点を有する。低い格子エネルギーを有するいくつかの塩は、室温で又は室温付近で液体である。これらは、通常は塩の混合物である溶融塩、及び通常は有機陽イオンを含むイオン性液体を含む。これらの液体は、溶媒として特異な性質を呈する。本明細書で採用される「イオン性塩(ionic salt)」は、極性溶媒には混和せず、疎水性の化学的部分によって非極性溶媒には混和する塩である。この文脈におけるイオン性塩は、流動パラフィン油及びパラフィン等の有機炭化水素に著しい溶解性を有する塩を指す。抗原賦活化のための本方法のいくつかの実施形態においては、電場を生成するために使用されるイオナイザ(ionizer)に加えて、電子の伝導性を高めるために、イオン性塩を含む流動又は溶融パラフィンが採用される。
別の態様としては、本技術は、多重IHC検定におけるような複数の染色試薬を用いて染色することによって試料を分析する方法を提供する。本方法は、第1の染色試薬を用いて試料を染色することと、パラフィン等の流動性被覆媒体で試料を被覆することと、試料の第1の染色パターンを検出することと、Clearify等の脱パラフィン化溶媒を用いて洗浄する、又は電場を印加する、又は加熱されたエアナイフ(air knife)を適用すること等によって、試料から流動性被覆媒体を除去することと、第2の染色試薬を用いて試料を染色して、第2の染色パターンを形成することと、試料をカバースリップ(coverslip)又は流動性被覆媒体で被覆することとを含んでもよい。いくつかの実施形態においては、試料は、1つ以上のポリペプチドを含む組織試料であり、第1の染色試薬及び第2の染色試薬の一方又は両方は、1つ以上のポリペプチドの抗原を特異的に見出す一次抗体を含む。
多重IHC検定については、安定化のための、及び第1の染色試薬を用いて染色した後にカバースリップを交換するための、流動性の被覆媒体の使用は、いくつかの潜在的な利点を提供する。これは、カバースリップするステップを省略することによって、多重IHC検定に必要とされる時間を短縮することができる。また、手荒い組織の操作に起因する画像の歪みの量を低減することができる。本方法においては、最初の染色手順の後、組織切片及びスライドに対するパラフィンの保護層又は他の流動性の被覆媒体が、手短に加熱されて、前の溶媒を追い出す。余分なパラフィンは、65℃で1分間、加熱されたエアナイフ又は電場のいずれかを使用して除去されうる。組織切片はこのとき、走査の準備ができたことになる。このことは、Clearify等の脱パラフィン化溶媒による手短な洗浄によって後続され、その後に第2の染色試薬の適用のための再水和が行われてもよい。
本方法は、1つ以上のポリペプチドを含む組織試料に特に適しており、第1の染色試薬及び第2の染色試薬の一方又は両方は、1つ以上のポリペプチドの抗原と特異的に(specifically)結合する一次抗体を含んでもよい。いくつかの実施形態においては、本方法はまた、第1の染色試薬を用いて染色する前に、標的賦活化を実行することを含む。標的賦活化(target retrieval)は、(本開示によって説明されるように)電場を印加することによって、又は他の技術によって(例えばタンパク質分解消化によって)、実行されてもよい。
いくつかの実施形態においては、第1の染色試薬は、第1の抗原と特異的に結合する第1の一次抗体と、一次抗体と結合する第1の二次抗体と、第1の標識(label)とを含む。第1の標識(及び本明細書に言及される他の標識)は、蛍光性、発光性、放射性若しくは発色性(例えば化学発光性)のものであってもよく、又は該標識は、発色性生成物又は可視生成物を生成する反応を触媒する酵素(例えばDAB又はBCIP/NBTを切断して茶色又は紫色を生じさせるアルカリホスファターゼ及びホースラディッシュペルオキシダーゼ)であってもよい。代替としては、標識は、ビオチン、又は別の部分(ストレプトアビジン又はアビジンタンパク質等)と特異的に結合する他の部分を含んでもよい。標識は、一般的に、二次抗体に付着されるか、又は他の方法で二次抗体に関連付けられる。いくつかの実施形態においては、第2の染色試薬は、第2の抗原を特異的に結合する第2の一次抗体を含む。第2の染色試薬は、第2の二次抗体と、第2の標識とを含んでもよい。
本方法のいくつかの実施形態は、第1の染色試薬を用いた染色の前にタンパク質ブロック剤に試料を接触させること等、IHC手順のための追加的なステップを含んでもよく、このときタンパク質ブロック剤は、非特異的タンパク質が第1の染色試薬に結合することをブロックする。いくつかの実施形態においては、第1の染色試薬及び第2の染色試薬は、一次抗体又は核酸プローブを含み、本方法は、ヘマトキシリンを用いて試料を染色することを更に含む。
いくつかの実施形態においては、本方法はまた、試料を第2の一次抗体と接触させることに先立って、第1の一次抗体を変性させることを含む。いくつかの実施形態においては、第1の一次抗体は、硫酸等の変性剤と接触させることによって変性させられる。いくつかの実施形態においては、変性は、第1の染色パターンの検出に先立って実行される。いくつかの実施形態においては、第1の一次抗体は、プロテアーゼと接触させることによって変性させられる。本方法において使用されるプロテアーゼは、セリンプロテアーゼ、メタロプロテアーゼ、又はシステインプロテアーゼを含む、いずれの適切なプロテアーゼであってもよい。本方法において使用されるプロテアーゼの量は、試料中にある組織切片及び他の抗原を構造的に無傷のままとしつつ、第1の抗体及び/又は第2の抗体(つまり、第1の抗体、又は第2の抗体、あるいはそれらの両方)をタンパク質分解の消化をするのに十分なものであるべきである。
いくつかの実施形態においては、第1の染色試薬又は第2の染色試薬のうちの少なくとも一方は、腫瘍細胞抗原を結合させ、第1の染色試薬又は第2の染色試薬のうちの少なくとも一方は、免疫細胞抗原を結合させる。免疫細胞抗原及び腫瘍細胞抗原は、異なる色の沈殿染色等の染色剤を用いて標識付けされうる。
例えば、第1の一次抗体及び第2の一次抗体は、癌バイオマーカ等のバイオマーカに特異的に結合する抗体であってもよい。例示的な癌バイオマーカは、限定するものではないが、癌胎児性抗原(腺癌の識別用)、サイトケラチン(cytokeratin)(癌腫の識別用のものであるが一部の肉腫においても発現しうる)、CD15及びCD30(ホジキン病(Hodgkin’s disease)用)、アルファフェトプロテイン(alpha fetoprotein)(卵黄嚢腫瘍及び肝細胞癌用)、CD117(消化管間質腫瘍用)、CD10(腎細胞癌及び急性リンパ性白血病用)、前立腺特異抗原(前立腺癌用)、エストロゲン(estrogen)及びプロゲステロン(progesterone)(腫瘍の識別用)、CD20(B細胞リンパ腫の識別用)、並びにCD3(T細胞リンパ腫の識別用)を含む。
いくつかの実施形態においては、標識は、クマリン、シアニン、ベンゾフラン、キノリン、キナゾリノン、インドール、ベンザゾール、ボラポリアザインダセン、キサンテン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される蛍光体等の、蛍光体である。多重分析の本方法においては、蛍光体は、互いに区別可能となるように、すなわち独立して検出可能となるように選ばれてもよく、このことは、標識が混合された場合であっても、標識が独立して検出及び測定されうることを意味する。換言すれば、標識が(例えば同じチューブ内に又は試料の同じ領域内に)併置されている場合であっても、標識の各々について存在する標識の量(例えば蛍光の量)が、別個に決定可能である。
蛍光性の標識の例は、フルオレセインイソチオシアネート(FITC:fluorescein isothiocyanate)、6-カルボキシフルオレセイン(一般にFAM及びFの略称により知られている)、6-カルボキシ-2’,4’,7’,4,7-ヘキサクロロフルオレセイン(HEX:hexachlorofluorescein)、6-カルボキシ-4’,5’-ジクロロ-2’,7’-ジメトキシフルオレセイン(JOE又はJ)、N,N,N’,N’-テトラメチル-6-カルボキシローダミン(TAMRA又はT)、6-カルボキシ-X-ローダミン(ROX又はR)、5-カルボキシローダミン-6G(R6G又はG)、6-カルボキシローダミン-6G(R6G又はG)及びローダミン110;例えばCy3、Cy5及びCy7色素のようなシアニン色素;例えばウンベリフェロンのようなクマリン;例えばHoechst 33258のようなベンズイミド色素;例えばテキサスレッドのようなフェナンスリジン色素;エチジウム色素;アクリジン色素;カルバゾール色素;フェノキサジン色素;ポルフィリン色素;ポリメチン色素;BODIPY色素、並びにキノリン色素を含む。
蛍光標識を用いた試料の染色は、蛍光顕微鏡及び各蛍光標識のための適切なフィルタを用いて、又は複数の蛍光体を観察するためにデュアル又はトリプルバンドパスフィルタのセットを使用することによって、見ることができる。
いくつかの実施形態においては、本方法は、例えば、従来のカバースリップ法よりも小さい組織の歪み及び時間の節約を伴った、組織切片中の免疫細胞及び腫瘍細胞の、より正確な空間的位置特定を可能にしうる。本方法は、全スライド撮像(whole slide imaging)又は他の分析に先立つ組織のカバースリップの必要性を排除する。この多重IHCのためのワークフローにおけるカバースリップのための現在のプロセスは過酷なものであり、組織の歪みをもたらす。組織の歪みは、アルゴリズムを教示するために全スライド画像間で細胞の位置を「マッピング」する、アルゴリズム開発プロセスを妨げる。この方法は、アルゴリズムの精度の改善をもたらすはずである。
いくつかの実施形態においては、多重IHC検出の本方法は、腫瘍関連タンパク質の発現について、より正確なスコアを導出するために、免疫細胞(マクロファージ、B細胞、T細胞、及びその他)を腫瘍細胞から区別するために使用される。例えば、PD-L1 22c3 pharmDxは、腫瘍細胞及びまた免疫細胞を染色するPD-L1に対する抗体を使用する。スコアリングの目的のため、腫瘍細胞上のPD-L1発現が重要であり、免疫細胞の染色は省略される必要がある。現在、スコアリング方法は、H&E染色切片及びPD-L1染色切片に依存しており、それらについて、病理医は2つの異なる組織切片に基づいて検討し、免疫細胞をスコアリングから除外するよう試みる必要がある。第2の染色試薬を用いた同じ組織切片における腫瘍細胞に結合した標識とは異なる、第1の染色試薬を用いて免疫細胞を標識する能力は、別個のH&E染色切片を使用するよりも簡単にこれらの細胞を区別することを可能とすることとなる。第1の染色試薬の後に、さらに第2の染色試薬の後に再び、切片を走査する能力は、腫瘍細胞の中の免疫細胞の、より正確な位置の決定を可能とする。組織切片が、第1の染色試薬の後にカバースリップされて走査される場合、カバースリップ及び封入剤の除去を必要とする後続のステップは、第2の染色試薬が適用された後の視覚化についての組織切片の歪みをもたらす。カバースリップするステップは、組織切片にとって非常に過酷なものである。これに加えて、カバースリップを除去することは、封入剤を浸漬して剥がすことを必要とし、このことはプロセスに約10分~1時間を追加する。
別の態様として、本技術は、分析のために試料を調製する方法を提供する。本方法は、スライド(又は他の固体基板)上の試料(組織切片等)を封入剤に接触させることと、封入剤を試料上に広げるのに十分な時間の間、封入剤に電場を印加することと、スライド上の試料をカバースリップ又は流動性被覆媒体で被覆することとを含む。本技術は、封入剤の塗布に先立って組織を湿潤させるために使用される溶媒を均一に広げることを可能とし、それによりアーティファクトの発生率を低減させる。電場の印加はまた、カバースリップに対して均一な圧力をかけることとなり、このことは、より正確なカバースリップの設置を可能とする。
いくつかの実施形態においては、封入剤は、カバースリップの領域にわたって液滴を離隔させること等によって、試料との接触に先立って複数の液滴でカバースリップに塗布される。いくつかの実施形態においては、封入剤がカバースリップに塗布され、次いでカバースリップが試料上に置かれ、次いで電場が印加される。本方法はまた、封入剤が硬化している間、静電気力がカバースリップを適所に保持するように、被覆された試料に電場を印加することを含んでもよい。電場は、カバースリップと試料との間のいずれの気泡をも除去するのに十分な時間の間、印加されてもよい。
本方法の利点は、カバースリップのために使用される封入剤の量を最小化すること、粘着する接着剤の残留を防止すること、及びClearify等の湿潤溶媒を均一に広げることによって気泡の存在を排除することを含む。このことは、組織にわたる封入剤の均一な硬化、及びカバースリップのより正確な設置を提供し、それによりずれを回避する。組織の外観及び形態を改善するプロセスは、病理医の評価に有益であり、組織切片は、長年にわたって評価可能であり続ける必要がある。本方法は、接着剤の残り及びずれたカバースリップが望ましくない、顕微鏡及びスキャナ等の器具を使用する後続のプロセスのための、スライドの取り扱いの容易さのためにも有益である。
いくつかの実施形態においては、本方法は、Clearify等の溶媒を移動させるように電場を印加し、それゆえ、封入剤及びカバースリップの適用に先立って、組織上に溶媒の薄層の均一な広がりをもたらす。電極によって発生した静電場はまた、カバースリップの表面に圧力を加えて、スライドへのカバースリップの接着を可能にし、設置後にカバースリップが動くことを防止することができる。
いくつかの実施形態においては、本方法は、組織切片又は他の試料上に溶媒を均一に広げて、該組織切片又は他の試料への均一な浸透を可能とする。次いで、小分量(30μL)の封入剤が、カバースリップに又はスライド及び組織切片に直接に塗布され、次いで、ガラスのカバースリップが、スライド及び封入剤の上に置かれることができる。次いで、封入剤が硬化しているときに該カバースリップを適所に保持するために、カバースリップの表面に静的な力を加えるために電極が使用されてもよい。
図13は、高電位にある電極がどのように負イオンを発生させることができるかの例示的な実施形態を示している。これらのイオンは、溶媒の表面上に集まることとなる。表面帯電した溶媒は次いで、ピンから生成される電場によってはじかれ、均一な広がりを可能とする。染色された組織を有するスライドガラスのカバースリップに、少量の封入剤が塗布されてもよい。次いで、ピンにより発生する静電気が、カバースリップの表面に力を加えて、正確な位置へのカバースリップの適用を支援することができる。
いくつかの実施形態においては、本技術は、カバースリップの適用に先立って、又はカバースリップの代わりに、H&E、IHC又はISH染色された組織切片の表面上に、パラフィン又は他の被覆媒体の薄いコーティングを均一に広げることを目的とするものである。この薄膜は、乾燥及び酸化から組織を保護するものである。このプロセスは、染色プロセスからの全ての溶媒が完全に除去されていることを確認することによって開始される。このことは、染色された組織の上に溶融パラフィンを塗布することにより行われるが、このことは、溶融パラフィンの直接的なパイプ供給、又はパラフィンが注入されたワックスシートを介するもの等、様々な方法で行われうる。染色されたスライドは次いで、全ての溶媒が蒸発するまで加熱され、いくつかの場合においては、溶媒は、エタノール、キシレン、又はHistoclear(商標)であってもよい。パラフィンは、染色プロセスにおいて使用される溶媒よりも高い沸点を有するため、パラフィンは蒸発しない。溶媒が蒸発しても、試料はパラフィンの層の下に残り、染色された組織が酸素に曝露されることを防ぐ。全ての溶媒が蒸発すると、電場が組織切片からパラフィンを除去するのと同様に、電場を印加することによってスライドが処理される。標準的なプロトコルは、65℃の加熱板にスライドを置き、-20kVの電位に帯電したピンを、スライド表面上に3回通過(pass)させることである。このプロセスは、パラフィンの薄層を、組織の上部に及び組織内で包埋された状態で残す。
被覆媒体の薄層を適用した後は、スライドは安定したものとなり、任意のカバースリップ技術を使用してカバースリップされうる。いくつかの実施形態においては、本方法は、封入剤以外の追加的な溶媒の適用を排除する。図12は、パラフィンを用いて安定化した後の、染色された組織の安定性の例を示す。
染色された組織切片の表面上にパラフィンの薄いコーティングを均一に広げるための電場の使用に対する代替は、加熱されたエアナイフを使用してパラフィンを広げることである。
別の態様としては、本技術は、分析のための試料を調製する方法であって、スライド上の染色された試料を、パラフィン等の流動性被覆媒体と接触させることと、実質的に全ての染色された試料上に、流動性被覆媒体を広げることと、流動性被覆媒体を固化して、試料上に被覆されたコーティングを形成することとを含む方法を提供する。本方法は、免疫組織化学染色試薬、標識核酸プローブ、又はヘマトキシリン及び/又はエオジンのうちの1つ以上を用いて染色された組織を含む染色された試料に、特に適している。本技術は、カバースリップに先立って又はカバースリップのない状態で、パラフィン又は他の流動性被覆媒体の薄いコーティングの、組織切片上における均一な広がりを可能として、それによって、時間経過に伴う組織の乾燥及びヘマトキシリンの酸化を低減させることとなる。この薄膜は、カバースリップの下で可視ではないが、組織への酸素の拡散を制限するのに十分な障壁を提供する。
いくつかの実施形態においては、本方法は、電場を印加して流動性被覆媒体を広げるステップと、染色された試料上に溶融パラフィン又は他の流動性被覆媒体を分注(dispense)するステップと、パラフィンが注入されたシート又は被覆媒体が注入されたシートを染色された試料上に置くステップであって、その流動性被覆媒体はそのパラフィンを含むものである置くステップと、及び/又は、溶融パラフィン又は被覆媒体を含む槽の中にその染色された試料を浸漬するステップとのうちの1つ以上を含むことができる。いくつかの実施形態においては、本方法はまた、流動性被覆媒体が酸素への試料の曝露を防止している間に、被覆された試料を加熱して試料から溶媒を除去することを含む。いくつかの実施形態においては、本方法はまた、被覆された試料にカバースリップを接着させることを含む。いくつかの実施形態においては、本方法はまた、スライドに接着させられたカバースリップなしに、被覆された試料を保存することを含む。いくつかの実施形態においては、試料は、染色又は信号の著しい損失なしに、少なくとも1ヶ月、又は少なくとも3ヶ月、又は少なくとも6ヶ月、又は少なくとも1年、又は少なくとも5年、又は少なくとも10年、12年、15年、20年、24年若しくは30年の間、保存される。
本方法のいくつかの実施形態の利点は、電場を印加することによってパラフィン又は他の流動性被覆媒体の薄膜を組織上に均一に置くことにより、組織の酸素曝露の量を低減させる又は排除することを含む。いくつかの実施形態においては、本方法は、組織の外観及び形態を改善し、組織切片を長年にわたって安定かつ評価可能なものにする。本方法のいくつかの実施形態は、薄いコーティングが目に見えないため、顕微鏡及びスキャナ等の器具を使用する後続のプロセスのためのスライドの取り扱いが容易となるため、有益である。
本技術は、カバースリップの適用に先立ち、又はカバースリップの代わりとして、H&E、IHC又はISH染色された組織切片の表面上に、パラフィン又は他の流動性被覆媒体の薄いコーティングを均一に広げることができる。この薄膜は、組織を乾燥及び酸化から保護するものである。いくつかの実施形態においては、本方法はまた、染色プロセスの間に添加された実質的に全ての溶媒を、試料から除去することを含む。
いくつかの実施形態においては、溶融パラフィン又は溶融被覆媒体が、染色された組織の上に置かれる。このことは、溶融パラフィンの直接的なパイプ供給、又はパラフィンが注入されたワックスシートを介するもの等、様々な方法で行われうる。スライド上の染色された試料は次いで、全ての溶媒が蒸発するまで加熱される。いくつかの場合においては、溶媒は、エタノール、キシレン、Histoclear(商標)であってもよい。パラフィンは、染色プロセスにおいて使用されるいずれの溶媒よりも高い沸点を有するので、パラフィンは蒸発しない。溶媒が蒸発しても、パラフィンの層の下にあるため、染色された組織が酸素に曝露されることを防ぐ。全ての溶媒が蒸発すると、電場を印加することによって試料が処理される。いくつかの実施形態においては、65℃の加熱板上にスライドが置かれ、-20kVの電位に帯電した電極が試料又はスライドの表面上を3回以上通過させられる。このプロセスは、パラフィンの薄層を、組織の上部に残し、及び組織内で包埋された状態で残す。
更に別の態様として、試料を染色し、流動性被覆媒体を塗布するための機器が提供される。染色器具は、加熱されたパラフィンタンクとすることができ、スライドが浸漬される最終タンクとすることができる。スライドは、組織から実質的に全ての溶媒を蒸発させるのに十分な時間の間、タンク中に浸漬される。次いで、スライドがタンクから取り出されるときに、電場を印加する電極がタンクの上に置かれ、組織及びスライドに依然として結合されているパラフィンを除去し、残りの量のパラフィンだけを残すことができる。この時点において、スライドはパラフィンで安定化されたものとなり、カバースリップされていてもよいし、又はカバースリップのないままとされてもよい。
以上から、分析のために組織を調製するための本方法及び機器が、多くの利点を提供しうることが明らかである。本開示の背景のセクションにおいて上述したように、パラフィン包埋組織が薄いスライスに薄片化された後、その結果の組織切片は従来、分析のためにそれらを調製するための多くのプロセスを施される。それに比べて、本組織調製装置100及び方法のいくつかの実施形態は、より迅速に、かつ改善させられた品質で、試料を調製するのに有効である。
さらに、いくつかの実施形態においては、本開示の電場ベースの方法は、予想外にも、単に標準的なヘマトキシリン・エオジン(H&E)染色に適合するだけではなく、免疫組織化学(IHC)のための抗原賦活化及び染色にも適合することが見出された。
本明細書に説明される組織の調製は便利にも、周囲条件下で実施されうる。周囲の空気が、プラズマ形成ガス混合物として利用されてもよい。すなわち、利用されるプラズマは、空気プラズマであってもよい。他の実施形態においては、プラズマ形成プロセスは、第1の電極の近傍におけるイオン化(プラズマ形成)領域に、1つ以上の特定のプラズマ形成ガスの流れを提供することによって、強化されてもよい。特定のプラズマ形成ガスの例は、限定するものではないが、二原子酸素(O)、二原子窒素(N)、アルゴン(Ar)等の希ガス等を含む。特定のプラズマ形成ガスは、印加された電場によってガスが励起されうるイオン化領域にガスを導くように構成されたノズルによって、提供されてもよい。代替としては、装置100及び組織108は、(周囲に対して)制御された環境を提供するエンクロージャ内に位置決めされてもよく、プラズマ形成ガスが、エンクロージャ内に流入されてもよい。イオン化領域における空気の組成を変更するための特定のプラズマ形成ガス(複数の場合もある)の使用、空気の代わりのかかるガス(複数の場合もある)の使用は、プラズマが発生し及び維持される条件(例えば電圧パラメータ)を調整するため、イオン化される必要のない組織108の他の成分よりもパラフィンが優先的にイオン化されることを確実にするため等に、望ましいものとなりうる。
これまで、イオン化の機構又は技術が、主にコロナ放電型プラズマの文脈で説明されてきた。しかしながら、そのより広い態様においてここで開示されている主題は、イオン化のいかなる特定の機構にも限定されるものではない。より一般的に、パラフィン除去のプロセスに適したいずれのタイプのイオン化も利用されうる。典型的には、大気圧イオン化(API:atmospheric-pressure ionization)技術は、排気された環境における動作を必要としないので、立案される。API技術の例は、限定するものではないが、大気圧プラズマベースのイオン化、大気圧化学イオン化(APCI:atmospheric-pressure chemical ionization)、大気圧光イオン化(APPI:atmospheric-pressure photoionization)(例えばレーザー、紫外線ランプ等を使用する)、誘導結合プラズマ(ICP:inductively coupled plasma)イオン化、マイクロ波誘導プラズマ(MIP:microwave induced plasma)イオン化、誘電体障壁放電(DBD:dielectric barrier discharge)プラズマイオン化等を含む。代替としては、装置100及び組織108が、適切に構成された真空チャンバ内に位置決めされる場合、真空状態でのイオン化が実施されてもよい。真空中で実行されるイオン化技術の例は、限定するものではないが、グロー放電(GD:glow discharge)イオン化、熱イオン放射のためのフィラメントを使用する電子イオン化(EI:electron ionization)、及び熱イオン放射のためのフィラメントを使用する化学イオン化(CI:chemical ionization)を含む。
図3は、別の実施形態による組織調製装置300の概略図である。以上に説明され図1及び図2に示された実施形態と同様に、装置300は、電場発生装置316と、支持された組織構成304(例えば顕微鏡スライド312上のパラフィン含浸組織308)がその上に支持された加熱装置320とを含む。本実施形態においては、電場発生装置316は、複数の可動の第1の電極324を含む。第1の電極324は、1次元又は2次元のアレイ状に配置されてもよい。第1の電極324は、一定の距離(すなわちピッチ)だけ互いから離隔されてもよい。第1の電極324は、第1の電極324の互いに対する位置及び間隔を決定する、適切に構成された電極支持体376に(取り外し可能に)装着されてもよい。いくつかの実施形態においては、電極支持体376は、第1の電極324と電圧源(電源)332との間に必要とされる電気配線380の量を最小にするために、導電性のものであってもよい。電場発生装置316は、組織308上の第1の電極324の手動の又は自動化された移動を容易化にするために、必要に応じて電極支持体376及び/又は第1の電極324(つまり、電極支持体376又は第1の電極324あるいはそれらの両方)に取り付けられるか、又は他の方法で機械的に参照される、電気絶縁性及び/又は断熱性(つまり、電気絶縁性又は断熱性あるいはそれらの両方の)構造(図示せず)を更に含んでもよい。例えば、電気絶縁性及び/又は断熱性構造は、ユーザが把持可能なハンドル又は電動ステージ若しくはロボットへの結合のために構成された固定具の形で備えられてもよい。また、図示された例においては、電圧源332は、電圧、又はAC電圧源の場合には電圧及び周波数の両方を調節するための、ユーザにより操作される制御つまみを含む、制御コンソールに備えられる。
複数の第1の電極324は、電場発生装置316によって発生するプラズマ360の活性領域の全体的なサイズ又は到達範囲を増大させるのに有用でありうる。この場合においては、プラズマ360は、広いカーテンとして形成されてもよい。装置300は、他の点においては、一般的に、以上に説明され図1及び図2に示された装置100と同様に構成され操作されてもよい。
対向電極又は接地電極として利用される1つ以上の第2の電極(特に図示せず)は、加熱装置320上に配置されるか若しくは加熱装置320と一体化されるか、又はそうでなければ組織308に近接して位置決めされてもよい。
図3に更に示されるように、装置300(又は本明細書に開示される組織調製装置の他の実施形態のうちのいずれか)は、組織308にパラフィンを塗布するために利用されるパラフィン塗布装置306を含んでもよい。パラフィン塗布装置306は、カバースリップに対する支援として又はカバースリップの代わりに、パラフィン又は他の流動性被覆媒体を塗布するために使用されうる。パラフィン塗布装置306は、(主)加熱装置320の加熱面に対して移動可能であってもよいし、又はその位置が調節可能であってもよい。いくつかの実施形態においては、パラフィン塗布装置306は、熱伝導性材料で構成されてもよく、動作時には、流動性媒体を提供することを補助するために加熱されてもよい。
図4は、別の実施形態による組織調製装置400の概略図である。本明細書に記載された他の実施形態と同様に、装置400は、電場発生装置316と、支持された組織構成404が近くに位置決めされる加熱装置420とを含む。例として、以上に説明された複数の第1の電極324を有する電場発生装置316も本実施形態において備えられているが、本明細書に説明された他の電場発生装置のいずれも組織調製装置400に含まれてもよい。本実施形態においては、パラフィン含浸組織408は、多孔質フリット412の形をとって固体基板上に支持されており、該フリットは、組織除去の間に加えられる熱に耐えることが可能なガラス又は他の材料で作られてもよい。フリット412は、液体容器484(例えばカラム、バイアル、試験管、ベッセル、フラスコ、マイクロタイタープレートのウェル等)内において、容器484の開放頂部又はその近傍等に、取り外し可能に装着されてもよい。容器484は、容器支持体492(例えば1つ以上の開口を有する支持板)の開口488に取り外し可能に取り付けられてもよい。容器支持体492は、それぞれの容器484、並びに対応する組織408及びフリット412を支持するための、開口488のアレイを含んでもよい。
本実施形態においては、加熱装置420の全体又は一部は、容器支持体492と一体化されてもよい。例えば、加熱装置420は、組織408と熱的に接触するように組織試料404に十分に近接して容器支持体492の上又は中に位置決めされた、複数の円周方向に離隔された(容器支持体492の長軸に対して)加熱要素を含んでもよい。本文脈において、「熱的に接触する」という用語は、一般的に、加熱要素がアクティブにされたときに、例えば1分以内又は数分以内のような短い時間内で、或る量の熱を組織408に伝達するのに有効な熱勾配を確立するように、加熱要素が組織408と十分近くに位置決めされることを意味すると解釈されうる。
対向電極又は接地電極として利用される1つ以上の第2の電極(特に図示せず)は、加熱装置420上に配置されるか若しくは加熱装置420と一体化されるか、又は他の方法で組織408に近接して位置決めされてもよい。
本実施形態においては、溶媒又はパラフィンは、フリット412の穴又は細孔を通って排出され、容器484中で収集されてもよい。いくつかの実施形態においては、容器484は、溶媒又はパラフィンが容器484から排出されることを可能にするために、その基部に開口496を含んでもよい。
いくつかの実施形態においては、試料は、液体容器(例えばカラム、バイアル、試験管、ベッセル、フラスコ、マイクロタイタープレートのウェル等)の表面上に直接に配置されてもよく、この場合には、液体容器は、試料のための固体支持体として機能する。
本明細書に記載されるいくつかの実施形態においては、試料(及び、提供される場合には、その下にある基板)は、水平又は垂直に配向されているように描かれ又は説明されている。しかしながら、試料(及び、提供される場合には、その下にある基板)は、(特定の配向が特に明記されていない限り)代わりに垂直若しくは水平に配向されてもよく、又は水平の及び垂直な基準面の間の任意の角度(水平の基準面に対して0度~90度の範囲内)で配向されてもよい。例として、試料を水平に対して或る角度で配向させることは、重力の補助による水の除去を強化しうる。
本開示によって包含される試料調製装置の様々な他の実施形態は、以上に説明された種々の実施形態からの特徴の組み合わせを含んでもよい。本開示によって包含される方法の様々な実施形態は、以上に説明された種々の実施形態からの特徴の組み合わせを含んでもよい。
[実施例]
[実施例1]
この実施例は、電場を使用した、試料(より詳細には組織切片)と固体基板(より詳細にはスライド)との間に閉じ込められた水の除去を例示するものである。第1の電極(より詳細にはピン)が-20kVで帯電させられ、それによってコロナ放電を発生させた。ピンが、組織切片に十分に近づけられて、それにより電場が印加され、閉じ込められた水を下方に移動させた。図5に示されるように、組織とスライドとの間から水が引かれると、ピンの下に水がたまりはじめた。水が引かれる傾向がある位置は、接地点へのアークがどこにあるかに依存する。
ピンに溜まった水が十分に大きくなると、重力が液滴を落下させ、乾燥時間を早めることとなる。必ずしも液滴が落下する必要はないが、このことは乾燥性能を改善する。水が排出される経路は、接地点へのアークがどこにあるかに依存する。例えば、図5においては、組織の上部及び下部の両方において、アーク点がスライドの左側にあり、このことが、右上に閉じ込められた水を効率よく排出することを妨げた。したがって、いくつかの実施形態においては、アークは、水の除去を向上させるように調節される。
初期試験は、この電場乾燥法への3分間の曝露を含むものであった。乾燥が完了した後、パラフィンを溶融させるためにブロック上の温度が上昇させられたが、切片を脱パラフィン化して組織を接着させるために電場が使用されてもよい。代替的に、標準的なプロセスを使用して、切片が脱パラフィン化されてもよい。この脱パラフィン化プロセスにより、乾燥効率の定性的な結果の観察が可能になった。5回の試験のうち、1回だけが、スライド上に残留水を残した。その組織は、接地へのアーク経路が存在しない領域において、残留水を有していた。
電場を印加するための別の構成は、組織の右側にピンを有し、左側に接地点へのアークを有する。ピンは組織の上部において始まり、スライドを下るように延びる。このことは、組織をその上部から始めて下方へと乾燥させ、より一貫した方法で組織の全領域が乾燥したものとなることを確実にする。他の接地及びピンの構成は、両方の電極をピンとするものを含み、この構成は或る程度は機能するが、接地板とピンとの組み合わせほどには好適には機能しない。
[実施例2]
この実施例においては、乳癌の組織切片におけるビメンチン(vimentin)を染色するためのIHCプロトコルの文脈において、抗原回復のための電場の使用が検討された。ビメンチンは、間葉細胞において発現するフィラメントタンパク質である。
組織切片は、DAKO Omnis自動染色プラットフォームを使用して染色された。このプラットフォームは、DAKO Target Retrieval Solution(Tris/EDTA高pH緩衝液)を使用して、個々の組織切片に対してHIERを実行することが可能である。この例においては、実験用組織切片について、DAKO OmnisプラットフォームのHIERステップが、IHCプロトコルから省略された。その代わりに、実験用組織切片について、負に帯電したピンが組織切片の表面上を常に移動する状態で、電場が110℃で30分間印加された。
この実験の結果が、図6に示されている。IHCが、DAKO Omnis自動染色プラットフォームを使用して、HIERを用いて(A)、又はHIERの代わりに110℃で30分間電場を印加して(C)、実行された。陽性対照(positive control)組織及び電場で処置される組織切片の間質細胞で、ビメンチンの発現(茶色のDAB染色)が見られる。陰性対照(negative control)(B)は、わずかなビメンチンの発現しか示さないか、又はビメンチンの発現を示さない。図6は、100倍の拡大図である。実験用組織切片においては、IHCプロトコルの結果として、ビメンチンの正の発現が可視である。このことは、電場を印加することによって、抗原回復緩衝液に試料を接触させることなく、抗原回復が首尾良く実行されうることを実証している。
[実施例3]
この実施例においては、抗原回復のためのイオン性塩を用いた電場の使用が検討された。熱誘導されたエピトープ賦活化(epitope retrieval)に対する、イオン性塩が添加された電場処置(電場)の効果を評価するために、ビメンチンIHCプロトコルが使用された。Tris/EDTA高pH緩衝液であるDAKO Target Retrieval Solutionを使用して個々の組織切片に対してHIERを実行するDAKO Omnis自動染色プラットフォームを使用して染色することにより、組織切片が比較された。実験用組織切片については、標準的なIHCプロトコルからHIERステップが省略された。その代わりに、負に帯電したピンが表面上を常に移動する状態で、電場が実験組織切片に95℃で5分間印加された。
電場処置及びイオン性塩パラフィン溶液又は標準緩衝液ベースのHIER法を使用した、ビメンチンに対する大腸癌の免疫染色。IHCが、DAKO Omnis自動染色プラットフォームを使用して、HIERを用いて97℃で30分間(A)、又はHIERの代わりに電場処置を95℃で5分間使用して(B)、実行された。パラフィン油に溶解した10mMのイオン性塩製剤が、95℃で5分間電場処置され(C~H)、95℃で5分間の単独の電場処置(B)と比較した。この実験において使用されたイオン性塩は、(C)塩化イミダゾリニウム(C10Cl)、(D)テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF)、(E)トリフルオロ酢酸アンモニウム(CFCONH)、(F)メチルイミダゾリウムクロリド(C HCl)、(G)ブチルメチルイミダゾリウムニトラート(C15)、及び(H)ヘキシルメチルイミダゾリウムクロリド(C1019ClN)である。陽性対照組織であるイオン性塩パラフィン溶液中でコーティングされた電場処置された組織切片の間質細胞において、ビメンチンの発現(茶色のDAB染色)が見られる。イオン性塩パラフィンでコーティングされた組織(C~H)について、電場処置された対照(B)と比較して、ビメンチンの発現レベルが上昇した。
図7は、100倍に拡大した染色した試料を示す。大腸癌の実験組織切片は、IHCによりビメンチンの正の発現を示す。電場処置を用いた流動パラフィン溶液へのイオン性塩の添加は、単独の電場処置と比較して、増大したビメンチンの染色強度をもたらした。
この実施例においては、抗原賦活化のためのパラメータ、すなわち熱、イオン性塩、及び電場処置が、更に試験された。(DAKO Omnisプラットフォームにより使用される標準的な抗原賦活化で行われるような)高熱(110℃)への2時間の曝露が、高熱で2時間の電場処置と比較された。電場処置は、単独の高熱と比較して、より高いレベルの抗原賦活化を示した。また、1:1のイオン性塩/流動パラフィン溶液の組織への添加と、単独の高熱又は30分間の電場処置を用いた場合との比較も行われた。図8は、イオン性塩の添加の有無にかかわらず、高熱処置された組織においては、非常にわずかな抗原賦活化しか見られなかったことを示す。抗原賦活化は、高熱及び30分の処置の間の電場を加えることにより調製された組織切片について、最も高くなった。このことは、イオン性塩及び電場処置には、抗原賦活化のための付加的な利益があることを示唆している。イオン性塩と流動パラフィンとの混合物の30分間の使用は、電場処置を2時間適用することよりも有効であり、イオン性塩が、単独の電場と比較して、抗原賦活化のために必要とされる時間を短縮したことを示している。
10倍の対物レンズを使用して撮像された図8に結果が示されている(元の倍率、100倍)。標準的な緩衝液ベースのHIERを使用したビメンチンに対する腎臓組織の免疫染色が、熱、時間、及び電場処置を用いた1:1のイオン性塩:流動パラフィン混合物の添加のバリエーションと比較された。IHCが、DAKO Omnis自動染色プラットフォームを使用して、HIERを用いて97℃で30分間(パネルA)、若しくはオーブンを使用して110℃で2時間(パネルB)、110℃で2時間の電場処置で(パネルC)、35分間のオーブンにおけるイオン性塩/流動パラフィン混合物で(パネルD)、又はイオン性塩/流動パラフィンを用いた110℃で30分間の電場処置で(パネルE)、実行された。イオン性塩1-エチル-3-ヘキシルメチルイミダゾリウムアセタート(C14)が、流動パラフィン油と1:1の割合で混合された。陽性対照及び処置された組織の糸球体において、ビメンチンの発現(茶色のDAB染色)が見られる。110℃で30分間のイオン性塩:流動パラフィン混合物の電場処置で、ビメンチンの発現のレベルが最も増大した。図8。
[実施例4]
この実施例においては、in situハイブリダイゼーションのための試料の調製における電場の印加の効果が評価された。この実施例は、電場を用いて処置された試料を、ペプシンを用いたタンパク質分解消化により処置された試料と比較するものである。3回のキシレンの5分間の洗浄を使用して又は電場を印加することにより脱パラフィン化された乳房組織の切片に対して、調製が行われた。組織切片は、標準的なFISHプロトコルHER2及びNEAT1 RNA FRIGG FISH検定に従ってハイブリダイゼーションされた。HER2増幅は乳癌で頻繁に見られ、ハーセプチン(Herceptin)を用いた治療のための有用なバイオマーカとなりうる。NEAT1は核内RNAであり、パラスペックル(paraspeckle)と呼ばれる不連続な病巣に局在する。標準的なFISHプロトコルは、5分間のペプシン消化を含むものであったが、実験試料(電場が印加されたもの)については、このペプシン消化ステップは省略された。
FISH検定の結果が図9に示され、これは60倍の対物レンズを使用して撮像されたものである(元の倍率、600倍)。HER2 FRIGG FISHが、ペプシン処置を用いて(パネルA及びB)又はペプシン処置を用いずに(パネルC及びD)、組織において実行された。NEAT 1 FRIGG FISHは、キシレンで脱パラフィン化された組織試料(パネルA、E、C及びG)又は電場処置された組織試料(パネルB、F、D及びH)に対して、ペプシン処置を用いて(パネルE及びF)、及びペプシン処置を用いずに(パネルG及びH)、組織において実行された。パネルB及びFにおいては、試料内の細胞核(DAPI標識;青色)が、望ましくない核アーティファクト又はゴースト細胞を示しており、これは電場及びペプシン処置の両方を使用したことによる消化過多によるものである。HER2(FITC;緑色)は、キシレンで脱パラフィン化され、ペプシン処置された対照試料(パネルA)、及びペプシンなしで電場処置された組織(パネルD)において同等に見えた。NEAT1(FITC;緑色)信号は、キシレンで脱パラフィン化されたペプシン処置された対照(パネルE)におけるよりも、ペプシン処置なしで電場処置された組織(パネルH)において、より明るくバックグラウンドも少ない(良好な信号対雑音比)ものであった。
ペプシン処置と電場処置との組み合わせで、望ましくない核アーティファクトが見られたが、これらのアーティファクトは実験組織(電場を用いたがペプシンなしで調製されたもの)にはなかった。ペプシン処置を含むキシレンを用いて脱パラフィン化された乳癌対照におけるHER2 FRIGG FISHは、ペプシン処置なしで電場処置された乳癌と同等であり、電場を用いたタンパク質分解の必要がないことを示している。電場を印加することにより調製された乳房組織におけるNEAT1 FRIGG FISHは、キシレンで脱パラフィン化されたペプシン処置された対照と比較して、背景雑音の少ないより明るい信号、すなわちより良好な信号対雑音比を示した。これらの結果は、FISHにおいては電場処置が細胞質へのプローブ浸透に十分であり、いくつかの検定についてはプローブ信号及び背景雑音を改善しうることを示している。背景雑音が排除されたより明るいプローブ信号は、信号の定量化の容易性を向上させる。本方法による核アーティファクトの排除が示され、電場使用による検定を実行するために必要とされる時間の短縮もあった。
[実施例5]
この実施例においては、電場による処置後の残留パラフィンを除去するために、Clearify(登録商標)の手短な洗浄を加えたDNA FISH検定が実行された。
図10は、HER2/CEN17に対するDNAプローブを使用した乳癌のin situハイブリダイゼーションを示す。HER2/CEN17 FISHが、ペプシン処置を用いて(パネルA)又はペプシン処置を用いずに(パネルB)、キシレンで脱パラフィン化された組織において実行された。HER2/CEN17 FISHは、ペプシン消化なしで電場処置されClearify(登録商標)で脱パラフィン化された組織において実行された(パネルC)。ペプシン消化ステップのない従来のワークフローは、パネルBに示されるように、対照(パネルA)と比較して、プローブ信号がなく形態も悪い、許容可能でないFISHの結果に帰着する。手短なClearify(登録商標)洗浄と組み合わせられた電場処置は、対照と同等のFISH結果に帰着し、ペプシンの消化過多による望ましくない核アーティファクト又はゴースト細胞がなくなった。HER2(CY3;赤色)プローブ信号は、キシレンで脱パラフィン化されペプシン処置された対照(A)と、ペプシンなしで電場で脱パラフィン化された組織(パネルC)とで、同等に見えた。CEN17(FITC;緑色)信号は、ペプシン消化なしで電場処置された組織と比較して、対照において同等であった。HER2/CEN17の比は、1.55(n=3の実験組織)に対して平均1.52(n=2の制御群)であり、同等の結果を示している。図10は、100倍の対物レンズを使用して撮像されたものである(元の倍率、1000倍)。
HER2/CEN17 FISHの結果は、対照試料と実験試料(電場を印加することにより処置されたもの)との間で、形態及びプローブ結合に関して同等であった。CEN17に対するHER2の比の病理学者のスコアリングは、同等の結果に帰着した(対照についてのHER2/CEN17比は1.52であったのに対し、電場を用いて処置された実験組織については1.55であった)。電場の印加と組み合わせられた手短なClearify(登録商標)洗浄は、プローブ結合を促進し、核アーティファクトの存在を排除した。この例は、in situハイブリダイゼーションのための試料を調製するために、Clearify(登録商標)又は同様の溶媒が、電場の印加と組み合わせて使用されうることを示している。
図11は、ペプシン(パネルA及びC)又は電場(パネルB及びD)を用いて処置された乳腺癌の2つの患者試料についての、FISH HER2/CEN17の結果を示す。DAPI染色により示される核形態は、(A)におけるペプシン処置された対照では良好であり、(C)におけるペプシン処置された対照については最適には及ばないものとなっている。HER2(赤色)及びCEN17(緑色)のプローブ信号は、ペプシン処置された対照(A)においては良好であるが、ペプシン処置された対照(C)においては、HER2プローブ信号が存在していない。電場処置された組織試料(B及びD)はいずれも、良好な核の形態を有し、より明るく豊富なHER2及びCEN17のプローブ信号を有する。このデータは、FISHについてはペプシンによる酵素消化よりも電場処置のほうが優れたものでありうることを示している。図11の画像は、100倍の対物レンズを使用して撮像された写真の挿入図である(元の倍率、1000倍)。
[実施例6]
この実施例においては、流動性被覆媒体としてのパラフィンの使用が評価された。乳房組織試料が染色され、次いで0日目に試料を完全に被覆するために流動性パラフィンが使用された。パラフィンを無傷で残しつつ、組織試料から全ての液体を除去するために、熱が加えられた。余分なパラフィンを除去するために、試料を伴うスライドが、接地された加熱板上に置かれ、-20kVに帯電したピンが、試料の上を5mmの距離で3回通過させられた。これらの通過が、余分なパラフィンを除去し、試料の組織上に残りの量だけを残した。3日目にスライドが65℃のオーブンに入れられ、A)5日目、B)11日目、及びC)14日目に、組織の画像が撮影された。この加熱は、加速度的な経年変化をシミュレートするものである。図11は、パラフィンを用いた安定化の後の染色された組織を示す。
およそ3ヶ月の経年変化をシミュレートする2週間の期間中、組織に対する染色は変化しなかった。通常の環境下では、組織を湿ったままに保つための溶媒がない状態でスライドが放置された場合、組織は、暗い核によって示される乾燥の可視の兆候を有し始めることとなる。この実施例は、流動性被覆媒体が首尾良く試料を安定させ、熱による損失又は不安定性からその染色を保護したことを示している。
[実施例7]
この実施例においては、H&E染色された組織切片が、電場の支援によりカバースリップされた。電場を使用して、溶媒(Clearify)が均一に広げられた。余分なClearifyを除去するために、試料を伴うスライドが、室温で接地されたプレート上に置かれ、-20kVに帯電したピンが、試料の上を5mmの距離で3回通過させられた。これらの通過が、余分なClearifyを除去し、試料の組織上に残りの量だけを残した。図13におけるように、30ulの封入剤がカバースリップに塗布された。カバースリップが、スライド及び組織切片の上に置かれた。次いで電場が印加されて、スライドに対するカバースリップの接着を補助した。この電場は、ピンがスライド及びカバースリップから5mmの距離にある状態で生成された。ピンは-20kVに帯電させられ、封入剤がUV光を使用して硬化させられる間、3分間往復させられた。
図14は、カバースリップされた試料スライドを示す。気泡又は組織乾燥のアーティファクトは存在せず、カバースリップが歪みを起こすことなく試料に接着させられたことを示している。
[例示的な実施形態]
ここで開示されている主題により提供される例示的な実施形態は、以下を含むが、これらに限定されない。
実施形態1.
組織試料を乾燥させる方法であって、
組織試料と固体基板との間に水を有する固体基板上の組織試料に電場を印加することであって、電場は、水の少なくとも一部を第1の電極に向かって移動させるのに十分な強さで及び十分な時間の間印加される、印加すること
を含む方法。
実施形態2.
実質的に全ての水が、第1の電極に向かって移動する、実施形態1の方法。
実施形態3.
包埋された組織を含む組織試料を液体槽中に入れることと、
組織が固体基板の表面上に広がるように、包埋された組織を固体基板に接触させることと、
組織試料に電場を印加することによって、基板表面と試料との間に閉じ込められた液体を除去することと
を更に含む、実施形態1又は2の方法。
実施形態4.
固体基板は、第1のスライド表面及び第2のスライド表面を有するスライドである、実施形態1~3のいずれかの方法。
実施形態5.
閉じ込められた液体が除去されるときに、スライド表面が実質的に垂直となるようにスライドを移動させることを更に含む、実施形態1~4のいずれかの方法。
実施形態6.
電場を印加することは、第1の電極と第2の電極との間に電圧を印加することを含む、実施形態1~5のいずれかの方法。
実施形態7.
電場を印加することは、第1の電極の周りの領域においてコロナ放電を生成し、閉じ込められた液体をコロナ放電に曝露させるように第1の電極を位置決めすることを更に含む、実施形態6の方法。
実施形態8.
スライド表面は、組織が上端及び底端を有するように実質的に垂直であり、第1の電極は、底端の下に位置する、実施形態6又は7の方法。
実施形態9.
電場を印加しつつ第1の電極を上端から底端に移動させ、それにより、閉じ込められた液体が底端に向かって移動するようにすることを更に含む、実施形態6~8のいずれかの方法。
実施形態10.
第1の電極を上端における位置に戻し、電場を印加しつつ底端への第1の電極の移動を繰り返すことを更に含む、実施形態9の方法。
実施形態11.
電圧は、少なくとも5kVである、実施形態6~10のいずれかの方法。
実施形態12.
電圧は、少なくとも10kVである、実施形態6~10のいずれかの方法。
実施形態13.
電圧は、少なくとも20kVである、実施形態6~10のいずれかの方法。
実施形態14.
第1の電極は、組織から約1mm~約7mmだけ離れている、実施形態6~13のいずれかの方法。
実施形態15.
第1の電極は、約3mm~約5mmである、実施形態6~13のいずれかの方法。
実施形態16.
組織は、第1のスライド表面に接触し、第1の電極は、第2のスライド表面に面して位置決めされる、実施形態6~15のいずれかの方法。
実施形態17.
組織は、第1のスライド表面に接触し、第2の電極は、第2のスライド表面に接触し、第2の電極は、パラフィンの融点より低い温度である、実施形態6~16のいずれかの方法。
実施形態18.
in situハイブリダイゼーションのための試料を調製する方法であって、本方法は、
標的ポリヌクレオチドを含む試料に電場を印加することと、
電場が印加されている間、標的ポリヌクレオチドに特異的に結合する1つ以上の検出可能な核酸プローブに、試料を接触させることと
を含む方法。
実施形態19.
試料は、パラフィン包埋組織標本である、実施形態18の方法。
実施形態20.
試料は、全組織である、実施形態18又は19の方法。
実施形態21.
試料は、全組織のスライスを含む、実施形態18~20のいずれかの方法。
実施形態22.
試料は、1つ以上の細胞ペレットである、実施形態18~20のいずれかの方法。
実施形態23.
試料は、1つ以上の細胞塗抹標本である、実施形態18~20のいずれかの方法。
実施形態24.
試料は、1つ以上の細胞を含み、標的ポリヌクレオチドは、細胞の核内にある、実施形態18~23のいずれかの方法。
実施形態25.
電場は、DNAを露出させるのに十分な強さで及び十分な時間の間印加される、実施形態18~24のいずれかの方法。
実施形態26.
電場は、500V以下の電位で印加される、実施形態25の方法。
実施形態27.
試料は、核酸プローブとの接触の前に、タンパク質分解酵素と接触しない、実施形態18~26のいずれかの方法。
実施形態28.
試料は、ポリヌクレオチドにハイブリダイゼーションされた標識プローブの分析の間に、無傷のタンパク質からの自家蛍光を実質的に含まない、実施形態18~27のいずれかの方法。
実施形態29.
標識プローブとの接触の前に、試料から実質的に全てのパラフィンを除去することを更に含む、実施形態18~28のいずれかの方法。
実施形態30.
パラフィンは、試料に電場を印加することと、脱パラフィン化溶媒を用いて試料を洗浄することとの組み合わせによって除去される、実施形態18~29のいずれかの方法。
実施形態31.
分析のための試料を調製する方法であって、試料は、1つ以上の固定されたポリペプチドを含み、本方法は、
1つ以上の固定効果の少なくとも一部を逆転させるのに有効な電場を印加すること
を含む方法。
実施形態32.
試料は、アルデヒドで固定されたものであり、1つ以上の固定効果は、アルデヒドによる架橋又はメチレンブリッジ形成を含む、実施形態31の方法。
実施形態33.
試料は、組織試料であり、ポリペプチドは、1つ以上の抗原を含む、実施形態31又は32の方法。
実施形態34.
組織試料は、組織切片である、実施形態31~33のいずれかの方法。
実施形態35.
電場は、試料においてオゾンを発生させる、実施形態31~34のいずれかに記載の方法。
実施形態36.
試料における湿度を調節することを更に含む、実施形態31~36のいずれかの方法。
実施形態37.
電場を印加しつつ、1つ以上のイオン性塩に試料を接触させることを更に含む、実施形態31~36のいずれかの方法。
実施形態38.
イオン性塩は、塩化イミダゾリニウム(C10Cl)、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF)、トリフルオロ酢酸アンモニウム(CFCONH)、メチルイミダゾリウムクロリド(C HCl)、ブチルメチルイミダゾリウムニトラート(C15)、ヘキシルメチルイミダゾリウムクロリド(C1019ClN)、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムアセタート(C14)及びこれらの混合物からなる群から選択される、実施形態37の方法。
実施形態39.
試料は、パラフィン及び疎水性包埋媒体からなる群から選択される媒体に包埋され、本方法は、電場を印加することにより媒体を溶融させることを更に含む、実施形態31~38のいずれかの方法。
実施形態40.
媒体は、110℃よりも高い沸点を有する、実施形態39の方法。
実施形態41.
媒体は、200℃よりも高い沸点を有する、実施形態39の方法。
実施形態42.
200℃よりも低い融点及び110℃よりも高い融点を有する疎水性媒体中の1つ以上のイオン性塩の混合物に、試料を接触させることを更に含む、実施形態31~41のいずれかの方法。
実施形態43.
電場は、固定効果の少なくとも一部を逆転させるのに十分な時間の間及び十分な強さで印加される、実施形態31~42のいずれかの方法。
実施形態44.
電場は、少なくとも約5分間印加される、実施形態43の方法。
実施形態45.
電場は、約30分間印加される、実施形態43の方法。
実施形態46.
固定効果を逆転させるのに十分な温度で組織試料を加熱することを更に含む、実施形態31~45のいずれかの方法。
実施形態47.
組織試料は、少なくとも約90℃の温度にまで加熱される、実施形態46の方法。
実施形態48.
組織試料は、少なくとも約110℃の温度にまで加熱される、実施形態46の方法。
実施形態49.
試料中の抗原は、組織試料に緩衝剤を適用することなく賦活化される、実施形態31~48のいずれかの方法。
実施形態50.
組織試料に電場を印加する機器であって、本機器は、
複数の固体基板上の複数の組織試料に電場を印加するように構成された、電場発生装置であって、湾曲した形状部を含む複数の電極を含む電場発生装置と、
複数の固体基板を保持し、組織試料に熱を加えるように構成されたホルダと、
固体基板上で反復的な又は所定のパターンで複数の電極を移動させるように構成されたアクチュエータと
を含む、機器。
実施形態51.
固体基板における湿度を調節することが可能な湿度コントローラを更に含む、実施形態50の機器。
実施形態52.
筐体の内部に温度センサ、湿度センサ及びオキソンセンサのうちの1つ以上を更に含む、実施形態50又は51の機器。
実施形態53.
センサ(複数の場合もある)は、コントローラと通信している、実施形態52の機器。
実施形態54.
流動パラフィンを分注することが可能なディスペンサを更に含む、実施形態50~53のいずれかの機器。
実施形態55.
1つ以上のイオン性塩、疎水性媒体、又はそれらの混合物を含むリザーバを更に含む、実施形態54の機器。
実施形態56.
複数の染色試薬を用いて染色することによって試料を分析する方法であって、本方法は、
第1の染色試薬を用いて試料を染色することと、
第1の染色試薬を用いて染色された試料を、流動性被覆媒体で被覆することと、
試料の第1の染色パターンを検出することと、
試料から流動性被覆媒体を除去することと、
第2の染色試薬を用いて試料を染色して、第2の染色パターンを形成することと、
試料をカバースリップ又は流動性被覆媒体で被覆することと
を含む方法。
実施形態57.
流動性被覆媒体は、パラフィンである、実施形態56の方法。
実施形態58.
流動性被覆媒体は、脱パラフィン化溶媒で洗浄することによって除去される、実施形態56又は57の方法。
実施形態59.
流動性被覆媒体は、電場を印加することによって除去される、実施形態56又は57の方法。
実施形態60.
流動性被覆媒体は、加熱されたエアナイフを適用することによって除去される、実施形態56又は57の方法。
実施形態61.
試料は、1つ以上のポリペプチドを含む組織試料であり、第1の染色試薬及び第2の染色試薬の一方又は両方は、1つ以上のポリペプチドの抗原に特異的に結合する一次抗体を含む、実施形態56~60のいずれかの方法。
実施形態62.
試料は、1つ以上のポリペプチドを含む組織試料であり、第1の染色試薬及び第2の染色試薬の一方又は両方は、一次抗体と特異的に結合する二次抗体を含む、実施形態56~61のいずれかの方法。
実施形態63.
第1の染色試薬を用いて染色する前に、標的賦活化を実行することを更に含み、標的賦活化は、電場を印加することによって実行される、実施形態56~62のいずれかの方法。
実施形態64.
第1の染色試薬は、第1の抗原と特異的に結合する第1の一次抗体と、一次抗体と結合する第1の二次抗体と、第1の標識とを含む、実施形態56~63のいずれかの方法。
実施形態65.
第2の染色試薬は、第2の抗原と特異的に結合する第2の一次抗体を含む、実施形態56~64のいずれかの方法。
実施形態66.
第2の染色試薬は、第2の二次抗体と、第2の標識とを更に含む、実施形態65の方法。
実施形態67.
第1の染色試薬又は第2の染色試薬のうちの少なくとも一方が腫瘍細胞抗原を結合させ、第1の染色試薬又は第2の染色試薬のうちの少なくとも一方が免疫細胞抗原を結合させる、実施形態56~66のいずれかの方法。
実施形態68.
染色剤を用いて免疫細胞抗原及び腫瘍細胞抗原を染色することを更に含む、実施形態67の方法。
実施形態69.
異なる色の沈殿した染色剤を用いて免疫細胞抗原及び腫瘍細胞抗原を染色することを更に含む、実施形態67の方法。
実施形態70.
第1の染色試薬を用いた染色の前に、タンパク質ブロック剤に試料を接触させることを更に含み、タンパク質ブロック剤は、非特異的タンパク質が第1の染色試薬に結合することをブロックする、実施形態56~69のいずれかの方法。
実施形態71.
第1の染色試薬及び第2の染色試薬は、一次抗体、核酸プローブ又はその両方を含み、本方法は、ヘマトキシリンを用いて試料を染色することを更に含む、実施形態56~70のいずれかの方法。
実施形態72.
試料を第2の一次抗体と接触させることに先立って、第1の一次抗体を変性させることを更に含む、実施形態71の方法。
実施形態73.
第1の一次抗体は、変性剤と接触させることによって変性させられる、実施形態72の方法。
実施形態74.
変性剤は、硫酸を含む、実施形態73の方法。
実施形態75.
変性は、第1の染色パターンの検出に先立って実行される、実施形態73の方法。
実施形態76.
分析のために試料を調製する方法であって、本方法は、
スライド上の試料を、封入剤と反応する溶媒に接触させることと、
溶媒を試料上に広げるのに十分な時間の間及び十分な強さで電場を印加することと、
溶媒を封入剤に接触させることと、
スライド上の試料をカバースリップ又は流動性被覆媒体で被覆することと
を含む方法。
実施形態77.
試料は、組織切片である、実施形態76の方法。
実施形態78.
試料との接触に先立って、複数の液滴でカバースリップに封入剤を塗布することを更に含む、実施形態76又は77の方法。
実施形態79.
液滴は、カバースリップの領域上で離隔される、実施形態78の方法。
実施形態80.
封入剤がカバースリップに塗布され、次いでカバースリップが試料上に置かれる、実施形態76~79のいずれかの方法。
実施形態81.
封入剤が硬化している間、静的な力がカバースリップを適所に保持するように、被覆された試料に電場を印加することを更に含む、実施形態76~80のいずれかの方法。
実施形態82.
電場は、カバースリップと試料との間のいずれの気泡をも除去するのに十分な時間の間及び十分な強さで印加される、実施形態76~81のいずれかの方法。
実施形態83.
分析のための試料を調製する方法であって、
スライド上の染色された試料を、流動性被覆媒体に接触させることと、
実質的に全ての染色された試料上に流動性被覆媒体を広げるのに十分な時間の間及び十分な強さで、染色された試料に電場を印加することと、
流動性被覆媒体を固化して、試料上に被覆されたコーティングを形成することと
を含む方法。
実施形態84.
流動性被覆媒体は、パラフィンである、実施形態83の方法。
実施形態85.
染色された試料は、免疫組織化学染色試薬、標識核酸プローブ、又はヘマトキシリン及び/又はエオジンのうちの1つ以上を用いて染色された組織を含む、実施形態83又は84の方法。
実施形態86.
染色された試料上に、流動性被覆媒体として溶融パラフィンを分注することを含む、実施形態83~85のいずれかの方法。
実施形態87.
パラフィンが注入されたシートを染色された試料上に置くことを含み、流動可能な被覆媒体は、パラフィンを含む、実施形態83~86のいずれかの方法。
実施形態88.
染色された試料を、溶融パラフィンを含む槽の中に浸漬することを含む、実施形態83~87のいずれかの方法。
実施形態89.
流動性被覆媒体が酸素への試料の曝露を防止している間に、被覆された試料を加熱して試料から溶媒を除去することを更に含む、実施形態83~88のいずれかの方法。
実施形態90.
被覆された試料にカバースリップを接着させることを更に含む、実施形態83~89のいずれかの方法。
実施形態91.
スライドに接着させられたカバースリップなしに、被覆された試料を保存することを更に含む、実施形態83~90のいずれかの方法。
実施形態92.
電場は、複数のピンを用いて印加される、前述の実施形態のうちのいずれかの方法。
実施形態93.
1つ以上のピンが、試料の表面上で移動させられる、前述の実施形態のうちのいずれかの方法。
実施形態94.
組織に液体を加えることなく、試料からパラフィンを除去することを更に含む、前述の実施形態のうちのいずれかの方法。
実施形態95.
パラフィンを溶融させるのに有効な熱エネルギーを試料に加えることを更に含む、前述の実施形態のうちのいずれかの方法。
実施形態96.
熱エネルギーを加えることは、組織試料を表面上に置いて表面を加熱することと、組織試料をチャンバの中に入れてチャンバを加熱することと、放射熱エネルギーを加えることと、赤外線を当てることと、パラフィンを約35℃~約70℃の範囲内の温度にまで加熱するように熱エネルギーを加えることと、前述のうちの2つ以上の組み合わせとからなる群から選択される1つ以上の方法によって実行される、実施形態95の方法。
実施形態97.
試料が曝露されるイオン化領域においてプラズマを生成するように電場を印加することを含む、前述の実施形態のうちのいずれかの方法。
実施形態98.
プラズマは、空気分子から生成される、実施形態97の方法。
実施形態99.
電場を印加することは、第1の電極と第2の電極との間に電圧を印加することを含む、前述の実施形態のうちのいずれかの方法。
実施形態100.
電場を印加することは、第1の電極の周りの領域においてコロナ放電を生成し、パラフィンをコロナ放電に曝露するように第1の電極を位置決めすることを更に含む、実施形態99の方法。
実施形態101.
第1の電極は、
第1の電極が、第1の電極を囲む増大させられた電場強度の領域を発生させるように構成された湾曲した形状部を含む構成と、
第1の電極が、第1の電極を囲む増大させられた電場強度の領域を発生させるように構成された湾曲した形状部を含み、ここで湾曲した形状部が、第1の電極の端部又は先端部を含む構成と
からなる群から選択される構成を有する、実施形態99の方法。
実施形態102.
第2の電極は、平面状の電極である、実施形態99の方法。
実施形態103.
第1の電極及び試料の少なくとも一方を他方に対して移動させることを含む、実施形態99の方法。
実施形態104.
第1の電極は、電極のアレイを含む、実施形態99の方法。
実施形態105.
組織は、第1の電極と第2の電極との間に位置決めされる、実施形態99の方法。
実施形態106.
電場を印加しつつ熱エネルギーを加えることを含む、実施形態95の方法。
実施形態107.
固体基板上に試料を置くことと、スライド上に試料を置くことと、プレート上に試料を置くことと、ビーズ上に試料を置くことと、多孔質媒体上に試料を置くことと、フィルタ上に試料を置くことと、液体容器の中に試料を入れることと、パラフィンよりも高い表面エネルギーを有する基板表面上に試料を置くこととからなる群から選択されるステップを含む、前述の実施形態のうちのいずれかの方法。
「通信(連通)する(communicate)」及び「通信(連通)している(in communication with)」(例えば、第1の構成要素が第2の構成要素と「通信(連通)する」又は「通信(連通)している」)等の用語は、2つ以上の構成要素又は要素間の構造的、機能的、機械的、電気的、信号、光学的、磁気的、電磁的、イオン又は流体的な関係性を示すために本明細書において使用されることが理解されよう。その場合に、1つの構成要素が第2の構成要素と通信(連通)すると言われることは、更なる構成要素が、第1の構成要素と第2の構成要素との間に存在する場合があり、及び/又は第1の構成要素及び第2の構成要素と動作可能に関連付けられるか、又は関与する場合がある(つまり、第1の構成要素と第2の構成要素との間に存在する場合があり、又は第1の構成要素及び第2の構成要素と動作可能に関連付けられるか又は関与する場合がある、あるいはそれらの両方の場合がある)という可能性を除外することを意図するものではない。
本発明の種々の態様又は詳細は、本発明の範囲から逸脱することなく変更することができることが理解されよう。さらに、上述の記載は、単に例示目的のものであり、限定する目的はない。本発明は、特許請求の範囲によって規定される。

Claims (13)

  1. 標的ポリヌクレオチドを含む試料に電場を印加することと、
    前記電場が印加されている間、前記標的ポリヌクレオチドに特異的に結合する1つ以上の検出可能な核酸プローブに、前記試料を接触させることと
    を含む、in situハイブリダイゼーションのための試料を調製する方法方法。
  2. 前記試料は、パラフィン包埋組織標本である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記試料は、全組織である、請求項1に記載の方法。
  4. 前記試料は、全組織のスライスを含む、請求項1に記載の方法。
  5. 前記試料は、1つ以上の細胞ペレットである、請求項1に記載の方法。
  6. 前記試料は、1つ以上の細胞塗抹標本である、請求項1に記載の方法。
  7. 前記試料は、1つ以上の細胞を含み、前記標的ポリヌクレオチドは、前記細胞の核内にある、請求項1に記載の方法。
  8. 前記電場は、DNAを露出させるのに十分な強さで及び十分な時間の間印加される、請求項1に記載の方法。
  9. 前記電場は、500V以下の電位で印加される、請求項8に記載の方法。
  10. 前記試料は、前記核酸プローブとの接触の前に、タンパク質分解酵素と接触しない、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
  11. 前記試料は、前記ポリヌクレオチドにハイブリダイゼーションされた前記標識プローブの分析の間に、無傷のタンパク質からの自家蛍光を実質的に含まない、請求項10に記載の方法。
  12. 前記標識プローブとの接触の前に、前記試料から実質的に全てのパラフィンを除去することを更に含む、請求項10に記載の方法。
  13. 前記パラフィンは、前記試料に電場を印加することと、脱パラフィン化溶媒を用いて前記試料を洗浄することとの組み合わせによって除去される、請求項12に記載の方法。
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