JP2023535952A - 量子情報の保存及び変換 - Google Patents

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Abstract

量子情報の保存及び変換のための方法と装置が、超伝導量子ビットなどの第1の量子ビットとの量子相互作用を受けるように制御可能に結合されたシリコン中の発光中心を提供する。発光中心は、例えば、T中心又はT中心の集合体であり得る。同じ又は異なる量子情報が、不対電子又は正孔スピン、及び/又はT中心の3つの核スピンの1つ以上に保存され得る。保存された量子情報は、後に第1の量子ビットに戻されるか又は光学光子状態に転送され得る。

Description

本技術は、量子情報の保存及び操作に関するものである。いくつかの実施形態は、様々なエネルギーによって分離された量子状態を有する量子ビット間で量子情報を変換するための方法及び装置を提供する。例えば、本技術の用途は、マイクロ波波長に相当するエネルギー準位分離を有する量子ビットから光学光子へ量子情報を変換することである。また、本技術の別の用途は、量子情報を保存することである。本発明の別の用途は、複数の量子ビット間に量子もつれを生成することである。
関連出願への相互参照
本出願は、2020年7月28日に出願され、「量子情報の保存及び変換」と題された米国出願第63/057796号の優先権を主張するものであり、上記米国出願は、すべての目的のために参照により本出願に組み込まれるものとする。米国においては、本出願は、2020年7月28日に出願され、「量子情報の保存及び変換」と題された米国出願第63/057796号の35USC§119に基づく利益を主張する。
量子コンピューティングは、コンピュータ科学に革命を起こす可能性を秘めている。量子コンピューティングでは、量子系の状態を使用してデータを表現する。例えば、磁場に対する電子などの粒子のスピンの方向は、スピンが磁場に対して平行に配向されている(スピンダウン)か反平行に配向されている(スピンアップ)かに応じて1又は0の2進値を表すことができる。量子コンピューティングの利点の1つは、量子系が状態の重ね合わせであり得ることである。例えば、ある意味では量子系はスピンアップとスピンダウンを同時に行うことができる。量子コンピューティングのもう1つの利点は、異なる量子系の状態をもつれさせ得ることによる。
量子コンピュータを作る上での1つの困難は、量子系が特定の望ましい状態に設定された後、また量子系を操作して望ましい状態にしようとしている間に、量子系がその環境と相互作用することによってコヒーレンスを失う可能性があることである。これにより、量子系はもはや望ましい状態ではなくなる。いくつかの量子系は、非常に短い時間(例えば、ナノ秒程度の時間)でデコヒーレンスを受ける。特定の量子系に対するデコヒーレンスの影響は、量子系を非常に低い温度(例えば、mK)に保つことによって軽減することができる。
量子コンピューティングの進歩を促進する技術的進歩に対する必要性が依然として存在する。
定義
「量子系」は、2つ以上の状態を有し、2つ以上の状態の重ね合わせで存在できる系である。量子系は、例えば、電子、陽子、中性子、原子核、原子、原子群、擬似粒子(例えば、フォノン、励起子、磁子)、光子などの粒子を含むことができる。
「量子相互作用」には、2つ以上の量子ビットの量子状態間の相互作用を含む。量子相互作用の例には、状態転送相互作用及び量子もつれ操作などが含まれる。
「量子コヒーレンス」は、量子系、例えば量子ビットの異なる量子状態の位相間の関係が保たれる程度を意味する。
「量子デコヒーレンス」は、量子系とその環境との相互作用によって生じる、量子系の量子状態の変化である。
2つ以上の量子系に適用される場合の「もつれ(エンタングルメント)」は、もつれた量子系のいずれか1つの量子状態がもつれた量子系の他のものの状態とは無関係に記述できないことを意味する。
「発光中心」は、少なくとも0.1デバイの遷移双極子モーメントを有する遷移による光学光子の放出でより低いエネルギー状態に崩壊する可能性がある励起状態を有する量子系を意味する。好ましい実施形態では、発光中心は、励起状態にあるとき50マイクロ秒以下で遷移し、比較的高い確率(例えば1%以上)で光学光子を放出する。
「光学光子」は、遠赤外線と紫外線との間の波長を有する電磁放射の光子を意味する。15μmから10nmの範囲の波長を有する光子は光学光子の例である。2μmから380nmの範囲の波長を有する光子は光学光子の例である。
「量子ビット」は、データを表すことができる状態の重ね合わせで存在することができる量子系を意味する。量子ビットの一例は、磁場に対して平行(「スピンダウン」)又は反平行(「スピンアップ」)に配向することができる粒子の量子スピンである。スピンアップ状態は、例えば、論理値の「1」に関連付けることができ、スピンダウン状態は論理値の「0」に関連付けることができる。
「量子測定」は、量子系の測定可能な量について値を決定するプロセスを意味する。量子測定の一例は、量子粒子のスピンがスピンアップかスピンダウンかを特定するプロセスである。量子系が量子状態の重ね合わせであり、測定可能な量が量子状態ごとに異なる値を有する場合、量子測定の結果は、量子系が量子測定の直後に決定された値に相当する量子状態の1つになることである。
量子粒子又は他の量子系に適用される場合の「重ね合わせ」は、量子系が同時に2つ以上の別々の量子状態で存在することを意味する。例えば、磁場内で非ゼロのスピンを有する量子粒子は、同時に2つの異なるスピン状態にあり得る。
本技術は様々な態様を有する。これらは、限定されないが、
・量子コンピュータにおける量子ビットのコヒーレンス時間を延ばすためのシステム及び方法、
・量子コンピュータにおける量子ビットへデータを提供し、量子ビットからデータを読み取るためのシステム及び方法、
・光学光子を使用してサブ光エネルギーによって状態が分離された量子ビットと相互作用するためのシステム及び方法、
・量子コンピューティングのためのシステム及び方法、
・マイクロ波及び光学光子をもつれさせるためのシステム及び方法
を含む。
これらの態様は、個別に又は任意の組み合わせで用いることができる。
本発明の1つの態様は、量子情報を保存するための方法を提供する。方法は、第1の量子情報を符号化する第1の量子状態の第1の量子ビットを提供することを含む。第1の量子ビットは、マイクロ波周波数に相当するエネルギーΔESQによって分離された第1及び第2の量子化エネルギー準位を有する。いくつかの実施形態では、第1の量子ビットは超伝導量子ビットを含む。方法は、マイクロ波光子状態によって第1の量子ビットをシリコン中の第1の発光中心に結合させて、第1の量子ビットと第1の発光中心の量子状態が量子相互作用を受けるようにすることを含み、第1の発光中心の量子状態は第1の量子情報を符号化する。
いくつかの実施形態は、第1の量子ビットを第1の発光中心から切り離すことを含む。
いくつかの実施形態は、第1の量子ビットと第1の発光中心の2量子ビットのラビ周波数のn個の半周期に実質的に等しい時間、第1の量子ビットを第1の発光中心に結合させることを含み、nは奇数である。
いくつかの実施形態では、第1の発光中心はエネルギーΔELC1によって分離された第1及び第2の量子化エネルギー準位を有し、第1の量子ビットを第1の発光中心に結合させることは、エネルギーΔELC1とエネルギーΔESQの一方又は両方を調整してエネルギーΔELC1とエネルギーΔESQが実質的に等しくなるようにすることを含む。
いくつかの実施形態は、第1の発光中心に電場を印加することによってエネルギーΔELC1を調整することを含む。いくつかの実施形態は、第1の発光中心にRF駆動信号を印加することによってエネルギーΔELC1を調整することを含む。いくつかの実施形態は、第1の発光中心が位置するシリコンにひずみを加えることによってエネルギーΔELC1を調整することを含む。いくつかの実施形態では、第1の発光中心は磁場内にあり、方法は、発光中心における磁場の強さを変化させることによってエネルギーΔELC1を調整することを含む。
いくつかの実施形態では、第1の発光中心は、エネルギー差ΔELC2によって第1のエネルギー準位から分離された第3のエネルギー準位を有し、方法は、ΔELC2に相当する共振周波数を有する第1の共振器内の光子状態に第1の発光中心の量子状態を結合させて、第1の共振器内の光子状態が第1の量子状態を符号化するようにすることを含む。いくつかの実施形態では、第1の共振器内の光子状態は光学光子状態である。いくつかの実施形態では、第1の共振器内の光子状態は、約1μmから約5μmの範囲の光波長に相当する。
いくつかの実施形態は、光子状態の光子を第2の共振器に送達し、第2の共振器を第2の発光中心に結合させて、第2の発光中心の量子状態が第1の量子情報を符号化するようにすることを含む。
いくつかの実施形態では、第1の共振器内の光子状態は第2の共振器内の別の光子状態ともつれており、方法は、第2の共振器を第2の発光中心に結合させて、第2の発光中心の量子状態が第1の量子情報を符号化するようにすることを含む。
いくつかの実施形態は、別のマイクロ波光子状態によって第2の発光中心を第2の物質量子ビットに結合させることによって第1の量子情報を第2の物質量子ビットの量子状態に符号化することを含み、第2の物質量子ビットと第2の発光中心の量子状態は、第2の物質量子ビットの量子状態が第1の量子情報を符号化するように量子相互作用を行う。いくつかの実施形態は、第2の物質量子ビットを第2の発光中心から切り離すことを含む。いくつかの実施形態は、光子状態を3つ以上の発光中心ともつれさせることを含む。いくつかの実施形態は、別のマイクロ波光子状態によって第1の発光中心を第1の量子ビットに結合させて、第1の量子ビットと第1の発光中心の量子状態が量子状態転送相互作用を行うようにし、第1の量子ビットの量子状態が第1の量子情報を符号化するようにすることによって、第1の量子情報を第1の量子ビットに戻すことを含む。
いくつかの実施形態では、第1の発光中心はシリコン結晶中の結晶欠陥を含む。いくつかの実施形態では、第1の発光中心は発光中心の集合体を含み、集合体中の発光中心のそれぞれがシリコン結晶中の結晶欠陥を含む。
いくつかの実施形態では、結晶欠陥はT中心を含む。いくつかの実施形態では、結晶欠陥は不対基底状態スピンを有し、I中心又はM中心又はAl1中心又はGa1中心又は窒素炭素中心又はシリコン損傷中心を含む。
いくつかの実施形態では、結晶欠陥は電子スピンを有する電子と正孔スピンを有する正孔の少なくとも1つを含み、第1の発光中心の第1及び第2の量子化エネルギー準位はそれぞれ電子又は正孔のスピンダウン状態及びスピンアップ状態を含む。いくつかの実施形態では、結晶欠陥は少なくとも1つの核スピンを含み、方法はさらに、電子又は正孔の量子状態を核スピンの量子状態に符号化し、核スピンが第1の量子情報を符号化するようにすることを含む。
いくつかの実施形態では、結晶欠陥は少なくとも1つの不対電子又は正孔スピンと少なくとも1つの核スピンとを含み、方法はさらに、少なくとも1つの不対電子又は正孔スピンと少なくとも1つの核スピンとの結合量子状態に第1の量子情報を符号化することを含む。いくつかの実施形態では、不対電子又は正孔スピンと核スピンとの結合量子状態に第1の量子情報を符号化することは、交差遷移を引き起こすことを含む。いくつかの実施形態では、交差遷移は電子双極子スピン共鳴(EDSR)遷移を含む。いくつかの実施形態は、不対電子又は正孔スピンを初期化された量子状態を有するように設定し、不対電子又は正孔スピン及び/又は核スピンのスピン遷移を引き起こすことによって、第1の量子情報を回復することを含む。
いくつかの実施形態では、結晶欠陥は複数の核スピンを含み、方法は、
核スピンのうちの第1の核スピンに第1の量子情報を符号化することと、
第1の量子ビットに第2の量子情報を符号化させることと、
第2のマイクロ波光子状態によって第1の量子ビットを第1の発光中心に結合させて、第1の量子ビットと第1の発光中心の電子又は正孔の量子状態が量子相互作用を受け、第1の発光中心の電子又は正孔の量子状態が第2の量子情報を符号化するようにすることと、
第1の量子ビットを第1の発光中心から切り離すことと、
電子又は正孔の量子状態を核スピンのうちの第2の核スピンの量子状態に符号化し、核スピンのうちの第2の核スピンが第2の量子情報を符号化するようにすることと
を含む。
いくつかの実施形態は、第1の量子ビットを第1の発光中心に結合させる前に、結晶欠陥中心を光パルスで照射することによって束縛励起子を生成することを含む。いくつかの実施形態は、第1の量子情報を正孔のスピン状態に符号化することを含む。いくつかの実施形態では、発光中心はシリコン結晶中の不純物原子を含む。
いくつかの実施形態では、不純物原子は二重ドナー原子を含む。いくつかの実施形態では、二重ドナーはセレン原子、テルル原子又は硫黄原子である。
いくつかの実施形態では、シリコン結晶中のシリコン原子の少なくとも95%がシリコン28である。
いくつかの実施形態では、第1の量子ビットは第1の冷却装置内にあり、第2の物質量子ビットは第2の冷却装置内にあり、第1及び第2の共振器は第1及び第2の冷却装置の外側を通る光路によって接続される。いくつかの実施形態では、第1及び第2の冷却装置の外側にある光路の少なくとも一部がΔESQ/kBよりも高い温度にあり、kBはボルツマン定数である。いくつかの実施形態では、光路は光ファイバを含む。いくつかの実施形態では、ΔESQは1.3meV以下である。
いくつかの実施形態では、第1の量子ビットは超伝導量子ビットである。いくつかの実施形態では、第1の量子ビットは量子ドット又はイオントラップを含む。
本発明の別の態様は、超伝導量子ビットの量子状態を光学光子に転送するための方法を提供する。方法は、エネルギーΔE1によって分離された対応するエネルギー準位を有する2つの量子状態を有する超伝導量子ビットを、ΔE1に近いエネルギーによって分離された対応するエネルギー準位を有する第1及び第2の量子状態と、第1及び第2の状態に相当するエネルギー準位からそれぞれエネルギーΔE2及びΔE3によって分離された対応するエネルギー準位を有する第3及び第4の量子状態とを有するシリコン中の発光中心に結合させることと、後にエネルギーΔE2及び/又はΔE3に相当する周波数を有する光子モードを支持する光学構造に発光中心を結合させることとを含む。
いくつかの実施形態では、ΔE2≠ΔE3である。
いくつかの実施形態では、超伝導量子ビットを発光中心に結合させることは、エネルギーΔE1に相当するマイクロ波共振周波数を有する共振器によって行われる。
いくつかの実施形態は、超伝導量子ビットと発光中心との結合を、結合した超伝導量子ビットと発光中心の2量子ビットのラビ周波数の奇数個の周期に等しい時間維持することと、後に超伝導量子ビットと発光中心を切り離すこととを含む。
いくつかの実施形態では、光学構造は光共振器である。
いくつかの実施形態は、光学構造内の光子を検出することを含む。
本発明の別の態様は、超伝導量子ビットの量子状態を光学光子に転送するための方法を提供する。方法は、マイクロ波光子によって超伝導量子ビットの量子状態を発光中心の量子状態ともつれさせることと、後に発光中心の量子状態を光学光子状態ともつれさせることとを含む。
いくつかの実施形態は、発光中心の量子状態を光学光子ともつれさせる前に、発光中心の量子状態を操作することを含む。
本発明の別の態様は、第1の量子情報を保存するための方法を提供する。方法は、第1の量子状態を有する量子ビットをシリコン中のT中心の電子スピン又は正孔スピンと結合させて、第1の量子状態を電子スピン又は正孔スピンの量子状態に転送することと、電子スピン又は正孔スピンを量子ビットから切り離すこととを含む。
いくつかの実施形態は、後に電子スピン又は正孔スピンの量子状態とT中心の複数の核スピンのうちの第1の核スピンの量子状態との間の量子相互作用を引き起こし、第1の量子情報の一部又は全部が第1の核スピンに符号化されるようにすることを含む。
いくつかの実施形態は、第2の量子状態を有するように量子ビットを設定することと、量子ビットをT中心の電子スピン又は正孔スピンと結合させて、第2の量子状態を電子スピン又は正孔スピンに転送することとを含む。
いくつかの実施形態は、電子スピン又は正孔スピンを量子ビットから切り離すことと、後に電子スピン又は正孔スピンの量子状態をT中心の複数の核スピンのうちの第2の核スピンの量子状態に転送することとを含む。
本発明の別の態様は、量子情報を保存するための装置を提供する。この装置は、マイクロ波周波数に相当するエネルギーΔESQによって分離された第1及び第2の量子化エネルギー準位を有する第1の量子ビットと、エネルギーΔELC1によって分離された第1及び第2の量子化エネルギー準位を有するシリコン中の発光中心と、マイクロ波光子によって第1の量子ビットを発光中心に結合させるための手段とを含む
いくつかの実施形態では、第1の量子ビットは超伝導量子ビットである。
いくつかの実施形態では、第1の量子ビットは量子ドット又はイオントラップである。
いくつかの実施形態では、結合させるための手段はマイクロ波共振器を含む。
いくつかの実施形態では、結合させるための手段は、エネルギーΔELC1とエネルギーΔESQの一方又は両方を調整してΔELC1とΔESQが実質的に等しくなるようにするための手段を含む。
いくつかの実施形態は、第1の量子ビットと発光中心の2量子ビットのラビ周波数のn個の半周期に実質的に等しい時間、第1の量子ビットを発光中心に結合させるための手段を含み、nは奇数である。
いくつかの実施形態では、発光中心はT中心を含む。
いくつかの実施形態では、発光中心はT中心の集合体を含む。
いくつかの実施形態は、T中心の不対電子をT中心の核スピンに選択的に結合させるための手段を含む。
いくつかの実施形態では、発光中心はシリコン基板内にあり、第1の量子ビットはシリコン基板上に支持される。
本発明の別の態様は、超伝導量子ビットの量子状態を光学光子に転送するための装置を提供する。この装置は、エネルギーΔE1によって分離された対応するエネルギー準位を有する2つの量子状態を有する超伝導量子ビットと、ΔE1に近いエネルギーによって分離された対応するエネルギー準位を有する第1及び第2の量子状態と、第1及び第2の量子状態に相当するエネルギー準位からそれぞれエネルギーΔE2及びΔE3によって分離された対応するエネルギー準位を有する第3及び第4の量子状態とを有するシリコン中の発光中心と、超伝導量子ビットを発光中心に結合させるための手段と、エネルギーΔE2及び/又はΔE3に相当する周波数を有する光子モードを支持する光学構造に発光中心を結合させるための手段とを含む。
本発明の別の態様は、間隔を置いて配置された複数の量子ビット間に量子もつれを生成するための方法を提供する。量子ビットのそれぞれが、マイクロ波周波数に相当するエネルギーΔESQによって分離された第1及び第2の量子化エネルギー準位を有する。方法は、マイクロ波光子状態によって量子ビットのそれぞれをシリコン中の対応する発光中心に結合させることを含み、発光中心は少なくとも第1、第2及び第3の量子化エネルギー準位を有し、第1及び第2の量子化エネルギー準位はマイクロ波光子状態のエネルギーに相当するエネルギー差によって分離され、第1及び第3の量子化エネルギー準位は光学光子のエネルギーに相当するエネルギー差によって分離され、方法は、発光中心の第1及び第3のエネルギー準位間の量子遷移に相当するエネルギーを有する1つ以上の光学光子状態を支持する光学構造によって、発光中心のそれぞれを対応する発光中心の他のものに結合させることを含む。
本発明の別の態様は、量子コンピューティングのための方法を提供する。方法は、量子情報をシリコン結晶中の欠陥に量子ビット状態として保存することを含み、欠陥は、対応する電子スピン状態を有する少なくとも1つの不対電子と、それぞれが対応する核スピン状態を有する複数の核スピンとを集合的に含む複数の不純物原子を含み、方法は、量子ビット情報を表すようにスピン状態の1つを設定し、量子ビット情報の量子誤り訂正又は誤り検出のために複数の核スピンを使用することを含む。
いくつかの実施形態は、複数の核スピンを多数決局所誤り訂正のために使用することを含む。
いくつかの実施形態は、量子ビット情報を論理量子ビットに符号化するためのアンシラとして複数の核スピンを使用することを含む。
いくつかの実施形態では、欠陥はT中心、I中心又はM中心を含む。
いくつかの実施形態では、欠陥はT中心を含む。
いくつかの実施形態では、核スピンの異なる核スピン状態間の遷移のエネルギー準位は、核スピンの異なるものごとに異なる。
本発明の別の態様は、量子もつれ精製のための方法を提供する。方法は、シリコン結晶中の第1及び第2の欠陥を提供することを含み、第1及び第2の欠陥はそれぞれ、電子又は正孔スピンを含む演算量子ビットと、核スピンを含む少なくとも1つのメモリ量子ビットとを含み、方法は、第1及び第2の欠陥の演算量子ビットの量子状態をもつれさせることと、状態転送によって第1及び第2の欠陥のそれぞれの少なくとも1つのメモリ量子ビットにもつれを転送することとを含む。
いくつかの実施形態は、第1及び第2の欠陥の演算量子ビットの量子状態をもつれさせるステップと、状態転送によって第1及び第2の欠陥のそれぞれの少なくとも1つのメモリ量子ビットにもつれを転送するステップとを繰り返すことを含む。
いくつかの実施形態では、欠陥はT中心、I中心又はM中心を含む。いくつかの実施形態では、欠陥はT中心を含む。
本発明の別の態様は、シリコン結晶中の欠陥に量子情報を保存するための方法を提供する。方法は、欠陥の電子又は正孔スピンの量子状態を設定して第1の量子情報を符号化し、欠陥の第1の核スピンを第1の初期核スピン状態に初期化することと、電子又は正孔スピンと第1の核スピンとを含む第1のスピン遷移のエネルギーに一致する第1の波長を有する第1の光子で欠陥を照射することとを含む。
いくつかの実施形態は、欠陥の電子又は正孔スピンの量子状態を設定して第2の量子情報を符号化し、欠陥の第2の核スピンを第2の初期核スピン状態に初期化することと、電子又は正孔スピンと第2の核スピンとを含む第2のスピン遷移のエネルギーに一致する第2の波長を有する第2の光子で欠陥を照射することとを含む。
いくつかの実施形態では、第1の遷移は交差遷移である。
いくつかの実施形態では、第1の光子はコヒーレントπパルスの形で提供される。
いくつかの実施形態では、欠陥はT中心、I中心又はM中心を含む。
いくつかの実施形態では、欠陥はT中心を含む。
さらなる態様及び例示的な実施形態は、添付の図面に示されかつ/又は以下の説明に記載されている。
上記の特徴が異なるクレームに記載されている場合であっても、本発明は上記の特徴のすべての組み合わせに関連することが強調される。
添付の図面は、本発明の非限定的な例示的な実施形態を示す。
短寿命量子ビットと、短寿命量子ビットの寿命を延ばすための装置とを含むシステムを概略的に示す。
短寿命量子ビット及び長寿命量子ビットの量子状態のエネルギーと、光子と短寿命及び長寿命量子ビットとの相互作用とを概略的に示す。
結合された2つの量子系の確率密度の変化を示すグラフである。
短寿命量子ビットの量子状態を保存するための例示的な方法を示すフローチャートである。
短寿命量子ビット及び長寿命量子ビットを含む例示的なシステムの構成を示す概略図である。
量子情報を外部システムに結合させるように配置されたマイクロ波と光学光子の両方に結合する量子ビットを示す概略図である。
マイクロ波と光学光子の両方に結合することができる量子ビット内の量子状態の例示的なエネルギー準位図である。
電場又は磁場の相互作用によってマイクロ波光子に結合するように配置された長寿命量子ビットを示す概略図である。
正孔スピン状態が長寿命量子ビットとして機能することができる束縛励起子を含むことができる量子系のエネルギー準位を示す概略図である。
図7A及び図7Bはそれぞれ、量子ビットが光学光子に結合するように配置されたシステムを概略的に示す断面図及び平面図である。
複数の冷却装置内の量子ビットが光学光子によって結合できるシステムを示す概略図である。
シリコン中のT中心の構造を示す。
以下の説明を通して、発明のより完全な理解を提供するために具体的な詳細を説明する。しかしながら、発明はこれらの詳細なしで実施することができる。他の例では、発明を不必要に不明瞭にすることを避けるために、周知の要素を詳細に示したり説明したりしていない。したがって、明細書及び図面は、限定的な意味ではなく、例示的な意味で考慮するべきである。
本発明の一態様は、量子ビットの寿命を延ばすための装置を提供する。量子ビットは、例えば、超伝導量子ビットを含むことができる。超伝導量子ビットの欠点の1つは、その寿命が望ましくないほど短いことである(通常、100マイクロ秒以下程度のコヒーレンス時間を有する)。これは、超伝導量子ビットを使用して量子情報を処理する能力を妨げる。
図1は、短寿命量子ビット12を含むシステム10を概略的に示す。短寿命量子ビット12は、例えば、トランズモン又は他の電荷ベース又は磁束ベースの超伝導量子ビットなどの超伝導量子ビットを含むことができる。
システム10は、シリコン結晶内に設けられた量子ビットが超伝導量子ビットなどの短寿命量子ビットよりも桁違いに長い寿命を有することができるという事実を利用する。システム10は、シリコン製の本体14を含む。任意選択であるが好ましくは、本体14は、28の原子量を有するシリコンの精製同位体(「シリコン28」)を含む。本体14は、例えば、短寿命量子ビット12が形成される基板の一部であり得る。本体14は、少なくとも1つの長寿命量子ビット16を含む。
長寿命量子ビット16は、例えば、不対スピン(例えば、電子スピン、核スピン、励起子の正孔スピン)又はいくつかの励起子を含むことができる。励起子は、例えば、励起子のエネルギーに相当する周波数を有する光放射で発光中心を照射することによって生成され得る。
長寿命量子ビット16は、発光中心内の1つ以上の粒子又は準粒子によって提供され得る。いくつかの実施形態では、発光中心は、不対基底状態スピンを有する色中心などの本体14の結晶欠陥(例えば、T中心、I中心、又はM中心、Al1中心又はGa1中心、又は窒素炭素中心、又はスピン活性シリコン放射線損傷中心又は不対基底状態スピンを有するシリコン色中心)によって提供される。発光中心が結晶欠陥である場合、粒子又は準粒子は、例えば、発光中心の電子、正孔、原子核、又は励起子であり得る。結晶欠陥のいくつかのタイプは、長寿命量子ビットを提供するために個別に又はグループで使用できる複数の粒子又は準粒子を提供する。例えば、T中心は、少なくとも3つの核スピン、電子スピン、束縛励起子における正孔スピンの可能性、及び励起子数を有し、これらはすべて長寿命量子ビット16として使用できる。
場合によっては、結晶欠陥は1つ以上の不純物原子を含み得る。いくつかの実施形態では、発光中心は不純物原子によって提供され、その場合、長寿命量子ビット16は、不純物原子の電子スピンと核スピンの一方又は両方によって提供され得る。
いくつかの実施形態では、長寿命量子ビット16は、シリコン結晶中のセレン又は硫黄又はテルルなどの不純物の原子によって提供される不対スピンを含む。
システム10はまた、制御可能なカップリング18を含む。カップリング18による短寿命量子ビット12と長寿命量子ビット16との結合は、短寿命量子ビット14と長寿命量子ビット16が互いに相互作用することを選択的に可能にするために制御することができる。
カップリング18は、短寿命量子ビット12と長寿命量子ビット16との間の状態転送又はもつれを容易にするために短寿命量子ビット12と長寿命量子ビット16との十分に強い結合を可能にするように構成される。結合は、例えば、短寿命量子ビット12と長寿命量子ビット16の量子遷移に相当するエネルギーを有する光子を収容するように設計された共振器を含むことができる。
短寿命量子ビット12と長寿命量子ビット16との結合強度の1つの尺度は、本明細書の他の部分で説明される2量子ビットのラビ周波数である。2量子ビットのラビ周波数は、2量子ビット間の結合が強くなるにつれて増加する。短寿命量子ビット12と長寿命量子ビット16の間の効率的な量子相互作用を促進するために、ラビ周波数の周期は、短寿命量子ビット12と長寿命量子ビット16のコヒーレンス時間よりも大きい必要がある。例えば、「協同性」は次のように定義することができる。
Figure 2023535952000002
ここで、Cは協同性、fRはラビ周波数、RSLは短寿命量子ビットのデコヒーレンス率(すなわち、デコヒーレンス時間の逆数)、RLLは長寿命量子ビットのデコヒーレンス率である。いくつかの実施形態では、結合の強さは、カップリング18が短寿命量子ビット12を長寿命量子ビット16に結合している場合、協同性の値C≧1によって与えられる。
いくつかの実施形態では、C>1は、50kHz未満の2量子ビットのラビ周波数で実現する。例えば、短寿命量子ビット12が1マイクロ秒のコヒーレンス時間を有し(一部の超伝導量子ビットでは一般的である)、長寿命量子ビット16が1ミリ秒のコヒーレンス時間を有する(T中心の電子スピンでは一般的である)場合、C>1は、30kHz以上の2量子ビットのラビ周波数で実現することができる。別の例として、短寿命量子ビット12が1マイクロ秒のコヒーレンス時間を有し、長寿命量子ビットが1秒程度のコヒーレンス時間を有する(シリコンのT中心の核スピンでは一般的である)場合、C>1を実現するには、1kHz以上の2量子ビットのラビ周波数で十分である。
ラビ周波数は、短寿命量子ビット12と長寿命量子ビット16との結合の強度を高めることによって増大させることができる。これは、例えば、
・短寿命量子ビット12と長寿命量子ビット16の遷移エネルギーをより厳密に一致させることと、
・短寿命量子ビット12と長寿命量子ビット16を物理的により近づけることと、
・カップリング18(例えば共振器)の共振周波数を短寿命量子ビット12と長寿命量子ビット16の遷移エネルギーにより厳密に一致させることと、
・短寿命量子ビット12と長寿命量子ビット16がそれぞれ短寿命量子ビット12と長寿命量子ビット16を結合する電磁モードの波腹に結合できる幾何学的配置を提供することと
の1つ以上によって実現することができる。
短寿命量子ビット12は様々な方法で量子ビット値を表すことができ、例えば、量子情報が位相、電荷、又は磁束によって保存される超伝導量子ビットの構成はすべて知られている。
いくつかの実施形態では、カップリング18は、短寿命量子ビット12に関連する電磁場の最大値が共振器に結合するように配置された共振器を含む。例えば、短寿命量子ビット12が超伝導磁束量子ビットである場合、共振器は、超伝導磁束量子ビットの磁場の波腹に誘導結合され得る。別の例として、短寿命量子ビット12が超伝導電荷量子ビット又は超伝導位相量子ビットである場合、共振器は、短寿命量子ビット12の電場の波腹に容量結合され得る。
カップリング18の共振器は、共振器が支持するフォトニックモードの電磁場の最大値が長寿命量子ビット16の位置又はその近くに位置するように配置され得る。
いくつかの実施形態では、カップリング18は短寿命量子ビット12の電磁場と長寿命量子ビット16との直接的な相互作用によって提供される。このような実施形態では、カップリング18は長寿命量子ビット16に対する短寿命量子ビット12の相対的な物理的配置によって提供され、本明細書に記載されるように量子相互作用のためにそれらを結合させることができる。長寿命量子ビット16は、短寿命量子ビット12に関連する電磁場が最大値を有する点又はその近くに配置され得る。例えば、短寿命量子ビット12が磁束ループを含む超伝導磁束量子ビットを含む場合、長寿命量子ビット16(例えばT中心)は、磁束ループによって生成される磁場に直接結合できる磁束ループの内側に配置され得る。短寿命量子ビット12が電荷又は位相量子ビットである場合、長寿命量子ビット16は、短寿命量子ビット12によって生成される電場の電場最大値又はその近くに配置され得る。いくつかの実施形態では、長寿命量子ビット16は、長寿命量子ビット16が相互作用する短寿命量子ビット12の電磁場が、電磁場が最大強度を有する位置における電磁場の強度より3dB又は2dB以上低い強度を有する位置にある。
いくつかの実施形態では、短寿命量子ビット12と長寿命量子ビット16のそれぞれの量子状態間のエネルギー差は、無線周波数(RF)又はマイクロ波領域の光子周波数に相当する。例えば、いくつかの実施形態では、光子周波数は約1MHzから100GHzの範囲にある。いくつかの実施形態では、光子周波数は1GHzから100GHzの範囲にある。いくつかの実施形態では、光子周波数は3GHzから8GHzの範囲にある。
エネルギーと光子周波数の関係は、次の関係によって与えられる。
E=hυ
ここで、Eはエネルギー差、hはプランク定数、υは光子周波数である。光子周波数は光子波長と以下の関係がある。
υ=c/λ
ここで、cは光速、λは光子波長である。
システム10は、短寿命量子ビット12の量子状態間のエネルギー差ΔESと長寿命量子ビット16の量子状態間のエネルギー差ΔELを等しくするか又はほぼ等しくするように動作する機構を含むことができる。当業者は、ΔESとΔELの間にわずかな差があっても、短寿命量子ビット12と長寿命量子ビット16が量子相互作用(例えば、状態転送又は量子もつれ操作)を行うことができることを理解するであろう。便宜上、本開示では、2つのエネルギーが「等しい」と記載されている(例えば、ΔES=ΔELのように)場合、2つのエネルギーが正確に等しいか又は記載された目的(例えば、2つの量子系のもつれ)のためには等しいも同然であることを意味する。同様に、2つの周波数が等しいか又は一致すると言われる場合(例えば、共振器の共振周波数と光子の周波数)、2つの周波数が正確に等しいか又は所望の目的(例えば、共振器における光子モードの励起)のためには等しいも同然であることを意味する。
所望の量子相互作用を実現するためにどの程度厳密にΔESとΔELを互いに等しくする必要があるかは、短寿命量子ビット12と長寿命量子ビット16との結合の強さ、短寿命量子ビット12と長寿命量子ビット16の量子化遷移の線幅などの要因によって決まる。いくつかの実施形態では、短寿命量子ビット12の量子状態間のエネルギー差ΔESと長寿命量子ビット16の量子状態間のエネルギー差ΔELは、1%又は1/2%又は10000分の1の範囲内で等しくされる。
いくつかの実施形態では、ΔESとΔELは、一方又は両方がΔES=ΔELを実現するように制御されない限り、等しくない。このような機構は、例えば、短寿命量子ビット12及び/又は長寿命量子ビット16に磁場、電場、又はRF制御場を加えることによって、及び/又は長寿命量子ビット16が配置されている基板にひずみを加えることによって、ΔESとΔELの一方又は両方を調整することができる。
システム10はまた、任意選択で、短寿命量子ビット12と長寿命量子ビット16との結合を調整するための機構を含む。この機構は、例えば、ΔESとΔELに等しいエネルギーを有する光子の周波数に一致するか一致しないかのいずれかに調整可能な共振周波数を有する調整可能な共振器を含むことができる。
ΔES≠ΔELでありかつ/又は短寿命量子ビット12と長寿命量子ビット16との結合が他の何らかの方法で無効になっている場合、短寿命量子ビット12と長寿命量子ビット16の量子状態は本質的に互いに独立して変化することができる。
ΔES=ΔELでありかつ短寿命量子ビット12と長寿命量子ビット16との結合が十分である場合、短寿命量子ビット12と長寿命量子ビット16の量子状態はマイクロ波光子によってもつれさせることができる。これを図1Aに示す。
図1Aは、短寿命量子ビット12の状態12Hと12L、長寿命量子ビット16の状態16Hと16Lを概略的に示す。短寿命量子ビット12は光子19を放出し、状態12Hから12Lに遷移することができる。短寿命量子ビット12は光子19を吸収し、状態12Lから12Hに遷移することができる。長寿命量子ビット16は光子19を放出し、状態16Hから16Lに遷移することができる。長寿命量子ビット16は光子19を吸収し、状態16Lから16Hに遷移することができる。
量子ビット12及び16は量子系であるため、量子測定がない場合、量子ビット12、量子ビット16、光子19を含むより大きなシステムは、量子ビット12及び16のいずれか又は両方が光子19を放出した状態と、量子ビット12及び16のいずれか又は両方が光子19を吸収した状態を含み得る状態の重ね合わせで存在することができる。量子ビット12及び16の状態は互いにもつれており、それらの量子状態が結合される光子19の状態ともつれている。
短寿命量子ビット12と長寿命量子ビット16のコヒーレント結合は、例えば、短寿命量子ビット12と長寿命量子ビット16の量子状態をもつれさせるため、及び/又は短寿命量子ビット12の量子状態を長寿命量子ビット16に転送するため、及び/又は長寿命量子ビット16の量子状態を短寿命量子ビット12に転送するために、
・ΔES
・ΔEL
・量子ビット12及び16の結合
のうちの1つ以上を調整することによって、選択的に有効にすることができる。
いくつかの実施形態では、短寿命量子ビット12と長寿命量子ビット16との結合は、短寿命量子ビット12と長寿命量子ビット16が量子状態間で遷移するときに放出/吸収されるマイクロ波光子19の周波数に相当する共振周波数を有する共振器20によって促進される。共振器20は、例えば、光子19に相当する共振周波数を有するように設計された回路内に超伝導材料のパッチを含むことができる。共振器20は、例えば、コプレーナ導波路共振器又はLC共振器を含むことができる。
共振器20は、共振器20内の量子ビット12、16のそれぞれと光子19との十分なレベルの結合を提供するために、量子ビット12及び16のそれぞれの十分近くに配置され得る。超伝導量子ビット12と共振器20との容量結合又は誘導結合は、そのような量子ビット12と共振器20との間隔が例えば数μm以上であり得るように、比較的長い範囲を有することができる。別の例として、量子ビット12として使用される量子ドットと共振器20との結合は、典型的には、共振器20が量子ドットに対して約1μmよりも近くに又は100nmよりも近くに配置されるように、はるかに短い範囲を有する。共振器20と長寿命量子ビット16との結合は数μmの範囲を有することができ、その場合、共振器20は長寿命量子ビット16から数μmの範囲内に配置され得る。
量子ビットの量子状態間のエネルギーギャップを調整するための機構が提供され得る。機構の性質及び構成は、量子ビットが基礎とする量子系の性質に依存する。例えば、
・量子ビットが磁場内の電子スピン又は正孔スピン又は核スピンによって提供される場合、スピンアップ状態とスピンダウン状態とのエネルギー差は、電子又は原子核の位置における磁場の強さを変えることによって調整することができる。
・量子ビットが超伝導量子ビットである場合、状態間のエネルギー差は、超伝導量子ビットを実装する超伝導回路によって量子化磁束を調整することによって調整することができる。これは、例えば、超伝導回路のキャパシタンス又はインダクタンスを変更することによって行うことができる。
・量子ビットが結晶格子内の原子又は欠陥によって提供される場合、量子ビットのエネルギー準位は、結晶格子にひずみを加えることによって変更することができる。
・量子ビットが磁場内の電子スピン又は正孔スピン又は核スピンによって提供される場合、量子ビットのエネルギー準位は、量子ビットにRF駆動場を加えることによって調整することができる。RF駆動場の周波数は、例えば、RF駆動場の光子のエネルギーが量子ビットのエネルギー準位間のエネルギー差と少なくともほぼ等しいような範囲内(例えば、約1%又は1/2%又は10000分の1の範囲内)にあるように設定することができる。量子ビットのエネルギー準位は、RF駆動場の周波数及び/又はRF駆動場の振幅を調整することによって変化させることができる。
・量子ビットが磁場内の電子スピン又は正孔スピン又は核スピンによって提供される場合、量子ビットのエネルギー準位は、量子ビットの位置に電場を加えることによって調整することができる。いくつかの実施形態では、電場は磁場の向きに平行になるように配向される。
上記のように短寿命量子ビット12と長寿命量子ビット16をカプラ18で結合すると、光子19によって短寿命量子ビット12と長寿命量子ビット16の間でエネルギーを行き来させることができる。このようなエネルギー伝達の可能性は、特定の量子状態(例えば、12H又は12L)にある短寿命量子ビット12を見つける確率を示す確率密度関数の振動をもたらす。この振動は、短寿命量子ビット12と長寿命量子ビット16との結合によって決まる、いわゆる2量子ビットのラビ周波数で発生する。
ラビ周波数は、事前に決定することができる。2量子ビットのラビ周波数は、較正ステップ中に測定することができる。較正ステップは、例えば、長寿命量子ビット16と短寿命量子ビット12を既知の量子状態に初期化することと、ある時間「タウ」の間、結合をオンにすることと、結合をオフにすることと、後に量子ビット12及び16の両方を独立して測定することとを含み得る。タウの様々な値に対してこの測定シーケンスを繰り返すことによって、図2に示すようなプロットを得ることができ、プロットからラビ周波数を容易に決定することができる。較正ステップによって決定されたラビ周波数は、将来的な使用のためにデータストアに保存することができる。例えば、データストアは、本明細書に記載される機構のいずれかを使用して、長寿命量子ビット16と短寿命量子ビット12との結合を制御するために接続された制御回路にアクセス可能なメモリ位置を含むことができる。
図2は、短寿命量子ビット12が2つの非縮退2進量子状態のうちの高エネルギー準位にある確率密度(曲線22A)と、長寿命量子ビット16が2つの非縮退2進量子状態のうちの高エネルギー準位にある確率(曲線22B)とを示すグラフである。
図2では、時間0で、短寿命量子ビット12は高エネルギー量子状態にあり、長寿命量子ビット16は低エネルギー量子状態にある。これは、時間0で量子測定を行うか、量子ビット12、16の状態を操作することによって起こり得る。時間0で、システム10は、短寿命量子ビット12と長寿命量子ビット16の状態を結合するように構成される。
曲線22Aで表される確率密度は、周期Tで周期変化する。時間T/2では、長寿命量子ビット16は高エネルギー状態にある確率が高く、短寿命量子ビット12は低エネルギー量子状態にある確率が低い。要するに、短寿命量子ビット12の量子状態は長寿命量子ビット16に転送され、その逆も同様である。
図2に示した原理は、短寿命量子ビット12と長寿命量子ビット16の他の量子状態とそれらの重ね合わせにも適用される。
上記のように、短寿命量子ビット12(超伝導量子ビットであり得る)の状態を長寿命量子ビット16(例えば、スピン量子ビットであり得る)に転送し、量子ビット12のような短い寿命よりも長い期間、長寿命量子ビット16に保存し、後にさらなる処理のために短寿命量子ビット12に戻すことができる。
図3は、短寿命量子ビット12の量子状態の寿命を延ばすための方法30を示す。ブロック32Aにおいて、短寿命量子ビット12を所望の量子状態にする。量子状態は、高エネルギー状態と低エネルギー状態の重ね合わせであり得る。ブロック32Aは、例えば、短寿命量子ビットがその一部である量子コンピュータにおいて量子計算を実行することを含むことができる。
ブロック32Bにおいて、短寿命量子ビットを、例えば上記のようにカプラ18によって、長寿命量子ビット16に結合させる。ブロック32Bは、例えば、ΔES=ΔELを実現するために長寿命量子ビット16の高エネルギー量子状態と低エネルギー量子状態との間のエネルギー差ΔELを調整すること及び/又は短寿命量子ビット12の高エネルギー量子状態と低エネルギー量子状態との間のエネルギー差ΔESを調整することを含むことができる。
ブロック32Cにおいて、短寿命量子ビット12と長寿命量子ビット16との結合を、ラビ周期の奇数N(N=1、3、5、…)個の半周期T/2に等しい時間τ(例えば1半周期)維持し、後に中止する(例えば、ΔES≠ΔELとなるようにΔESとΔELの一方又は両方を調整することによって及び/又は共振器20の共振周波数を変更することによって結合を中止することができる)。時間τは、短寿命量子ビット12のデコヒーレンス時間よりも大幅に短い。
短寿命量子ビット12と長寿命量子ビット6との結合を維持する時間τは、結合を維持する時間を設定するために較正ステップで決定された短寿命量子ビット12と長寿命量子ビット16の特定の対の2量子ビットのラビ周波数に等しいか又は2量子ビットのラビ周波数から導き出した保存値を使用するタイマーによって制御することができる。
ブロック32Cの最後に、短寿命量子ビット12の所望の量子状態が長寿命量子ビット16に転送されている。
ブロック32Dにおいて、時間が経過する。時間は、短寿命量子ビット12のデコヒーレンス時間よりも長い長さを有し得る。時間は、長寿命量子ビット16のデコヒーレンス時間よりも短い長さを有する。いくつかの実施形態では、時間は10マイクロ秒を超える長さ、又は100マイクロ秒を超える長さ、又は1秒を超える長さ、又は1分を超える長さを有する。
ブロック32Eにおいて、短寿命量子ビット12を、例えば上記のようにカプラ18によって、再び長寿命量子ビット16に結合させる。ブロック32Eは、例えば、ブロック32Bについて本明細書に記載したのと同じ方法で動作し得る。
ブロック32Fにおいて、短寿命量子ビット12と長寿命量子ビット16との結合を、ラビ周期の奇数(N=1、3、5、…)個の半周期T/2の間維持し、後に中止する。ブロック32Fは、例えば、ブロック32Cについて先に記載したように行うことができる。
ブロック32Fの最後に、短寿命量子ビット12は所望の量子状態に戻された。
図4は、方法30又は他の同様の方法を行うために選択的に結合及び分離させることができる短寿命量子ビット12と長寿命量子ビット16を提供するシステム40の考えられる単純化された物理的構造を示す。システム40は、シリコン基板42を含む。基板42は、好ましくは、精製シリコン28(すなわち、シリコン28が92.23%を超えるシリコン)である。いくつかの実施形態では、基板42の材料は、少なくとも96%又は99%又は99.5%又は99.9%(原子数で)のシリコン28である。
長寿命量子ビット16は、基板42内の発光中心43によって提供される。例えば、発光中心は、T中心、I中心、又はM中心、又は窒素炭素中心、又はAl1又はGa1中心、又は不対基底状態スピンを有する放射線損傷中心などの欠陥、又はセレン又はテルル又は硫黄の原子などの不純物、又は他の二重ドナー不純物から選択される発光中心を含むことができる。
短寿命量子ビット12は、基板42に支持された超伝導構造体44によって提供され得る。構造体44は、基板42に堆積した、低温で超伝導である金属のパターン化された層を含むことができる。層は、例えば、ジョセフソン接合を含む超伝導ループを含むことができる。電気絶縁層45は、超伝導構造体44と発光中心43が配置された基板42の本体との間に存在することができる。
カプラ(カプラ18について先に記載した役割を果たす)は、超伝導構造体44の部分44Aによって提供することができ、部分44Aは、エネルギー差ΔESとΔELの両方を等しくすることができるエネルギーに相当する周波数で共振を提供するように設計される。部分44Aは、例えば、マイクロ波領域の共振周波数を有する回路内にある超伝導材料のタブを含むことができる。部分44Aは、物理的に発光中心43の上に重なることができる。
発光中心43は、部分44A内の光子の電場成分又は磁場成分に結合するように部分44Aに対して十分に接近した間隔で配置する必要がある。電場に結合するために、発光中心43は部分44Aとの無視できないキャパシタンスを有する必要がある。いくつかの実施形態では、輝度中心43は、部分44Aから約1μm以下程度の距離又は100nm以下程度の距離だけ離れている。好ましくは、部分44Aは、部分44Aにおける光子モードの電場又は磁場が発光中心43に良好に結合するように、基板42の結晶軸に対して整列される。いくつかの実施形態では、光子モードの磁場は、発光中心43に加えられる外部磁場に対して非平行(例えば直交)である。
図4はまた、発光中心43の位置で磁場の大きさを変える(したがって、長寿命量子ビット16を提供するために使用される電子スピンなどのスピンのスピンアップ状態とスピンダウン状態の間のエネルギーの差を変える)ように動作可能である調整可能な磁石46を示す。制御回路Aは、調整可能な磁石46を制御するために(例えば、長寿命量子ビット16と短寿命量子ビット16との結合をオン/オフするために)接続される。発光中心43の近くにある1つ以上の永久磁石46Bは、調整可能な磁石46からの磁場を増大させることができる。磁石46Bは、基板42の上又は中又は近くに堆積させることができる。
超伝導構造体44の平面を横切る磁石46及び46Bによって生成される磁場の成分を最小限に抑えることは一般に有益である。これは、薄膜超伝導体の臨界磁場(すなわち、それを超えると超伝導体が超伝導でなくなる磁場強度)は、一般に、磁力線が超伝導構造体44に平行な磁場よりも、横磁場(垂直磁場)の方がはるかに低いためである。
図4はまた、当業者に知られているように、共鳴効果(例えば、電子スピン共鳴-「ESR」)によって長寿命量子ビット16の量子状態を操作するためにRF信号源47Aによって駆動され得るコイル47を示す。RF信号源は、πパルス又はπ/2パルスなどの放射線のパルスを生成するように制御することができ、放射線のパルスは、供給されると、長寿命量子ビット16の量子状態を操作する。
図4はまた、長寿命量子ビット16の位置を照らすように配置された任意選択の光源48を示す。光源48は、長寿命量子ビット16の光学遷移、例えば励起子の生成に相当する波長を有する光を放出することができる。例えば、長寿命量子ビット16は、T中心などの結晶欠陥に励起子を含むことができる。光源48は、適切な波長の光のパルスを発することによって励起子を生成するように操作され得る。量子情報は、後に例えば励起子のスピン状態などで励起子に保存することができる。光源48は、例えばレーザーを含むことができる。レーザーは、長寿命量子ビット16の様々な光学遷移に相当する波長を有する光を放出するように調整可能であり得る。
基板42は、構造体44が超伝導となる極低温に達することができる冷却装置49内に含まれる。いくつかの実施形態では、構造体44の動作温度は非常に低いことができる(例えば、数mK又は数ケルビン)。
量子情報の保存に加えて又は量子情報の保存に代わるものとして、本明細書に記載されるシステムは、短寿命量子ビット12がその一部である量子情報処理システムとの間で量子情報を転送するための経路として、及び/又は短寿命量子ビット12の量子状態を表す光学光子を生成するための機構として使用することができる。
図5は、量子通信経路52が長寿命量子ビット16を外部システム54に接続する例示的な実施形態による装置50を概略的に示す。
量子情報経路52は、例えば、量子情報を光学光子の形で運ぶことができる。量子情報の保存量子情報経路52は、例えば、量子情報を運ぶ光子を運ぶことができる導波路53を含むことができる。いくつかの有利な実施形態では、光学光子は、約1.3から約1.7μm又は約1μmから約3μmの範囲の波長を有する。
量子情報経路52は、長寿命量子ビット16に近接して配置された光共振器55によって長寿命量子ビット16に結合され得る。長寿命量子ビット16の光共振器55内の光学光子への結合を容易にするために、長寿命量子ビット16は、光学光子のエネルギーに相当するエネルギー差によって分離され得るエネルギー準位を有する利用可能な量子状態を有する必要がある。この場合、長寿命量子ビット16は、長寿命量子ビット16が光学光子を放出又は吸収する許容可能な遷移を受けることができる。
場合によっては、長寿命量子ビット16の異なる許容遷移で放出又は吸収され得る光子は異なる偏光を有する。このような場合、放出された光子の偏光は、光子が放出される長寿命量子ビット16の量子状態を符号化することができる。場合によっては、長寿命量子ビット16は特定の偏光状態を有する光子ともつれ、その結果、量子ビット16のスピン状態によって表された量子情報は、もつれた光子の偏光状態によってアクセスすることができる。
図6は、長寿命量子ビット16のエネルギー準位の単純化された例示的な構造を示す。準位16H及び準位16Lは、例えば、(例えば、電子又は正孔の)不対スピンのスピンアップ状態及びスピンダウン状態に相当することができ、例えば、準位16H及び準位16Lは、長寿命量子ビット16の位置における核スピンと電子スピンの相互作用によって引き起こされる超微細分裂の結果であり得る。準位16Hと準位16Lとエネルギー差は、マイクロ波波長における光子のエネルギーに相当し得る。
長寿命量子ビット16はまた、(例えば、電子又は正孔の)不対スピンのスピンアップ状態とスピンダウン状態にそれぞれ対応し得る状態17H及び状態17Lを有する。状態17H及び状態17Lは、軌道遷移又は励起子遷移によってそれぞれ状態16H及び状態16Lに関連し得る。状態17Hと状態16Hのエネルギー差又は状態17Lと状態16Lのエネルギー差は、光波長における光子のエネルギーに相当し得る。
図6に示すように、状態16Hと状態17Hのエネルギー差ΔE1は、状態16Lと状態17Lのエネルギー差ΔE2とは異なる。いくつかの実施形態では、ΔE1とΔE2の差は、少なくとも約1MHzの周波数差に相当する。(すなわち、約6.6×10-28J)。これにより、不対スピンがスピンアップかスピンダウンかに応じて長寿命量子ビット16と高い確実性で相互作用するか又は高い確実性で相互作用しない光学光子を提供する機会が生じる。
例えば、ΔE1に等しいエネルギーに相当する波長を有する光学光子66が提供されると、長寿命量子ビット16は光子66の1つを吸収し、状態16Hから状態17Hに遷移することができる。長寿命量子ビット16は、後に状態17Hから状態16Hに遷移し、同じエネルギーΔE1を有する光子66を放出することができる。
しかしながら、長寿命量子ビット16は量子系であるため、必ずしも長寿命量子ビット16が明確な量子状態にあるとは限らない。代わりに、長寿命量子ビットは状態の重ね合わせにある場合がある。また、長寿命量子ビット16と光学光子66は、共に、長寿命量子ビット16が光子と相互作用しているか又はしていない状態の重ね合わせにある場合がある。一般に、長寿命量子ビット16と光学光子66とで構成される量子系の量子状態は、長寿命量子ビット16と光学光子66との多種多様な起こり得る相互作用を含む。その結果、長寿命量子ビット16と光学光子66の量子状態はもつれさせることができる。
図6に示すようなエネルギー構造を使用して、マイクロ波光子と光学光子のいずれかによって、長寿命量子ビット16を他の量子物体に結合させることができることがわかる。この特性を利用して、複数の情報源のうちの選択された1つから長寿命量子ビット16に量子情報を保存しかつ/又は長寿命量子ビット16から複数の送り先のうちの選択された1つ以上に量子情報を転送することができる。この特性を利用して、量子情報を長寿命量子ビット16によってマイクロ波光子から光学光子に変換しかつ/又は量子情報を長寿命量子ビット16によって光学光子からマイクロ波光子に変換することができる。
長寿命量子ビット16は、様々な機構によってマイクロ波光子及び/又は短寿命量子ビット12に結合させることができる。これらには、
・電場を介した結合と、
・磁場を介した結合と
が含まれる。
いくつかの実施形態は、これらの結合機構の1つ以上を最適化する物理的構造を有する。
いくつかの実施形態では、結合は、電子双極子スピン共鳴(「EDSR」)相互作用を促進する。
長寿命量子ビット16は、マイクロ波光子の電場成分に結合することができる。電気的結合を最適化するために、マイクロ波光子は共振器内に定在波モードとして存在することができ、定在波モードは最大電場強度の1つ以上の波腹を有する。長寿命量子ビット16は、最大電場強度の波腹に近接して(例えば、波腹から数μm以内に)配置され得る。
図6Aに示した例示的な実施形態による装置60では、マイクロ波光子は、シリコン層63上の金属共振器構造61に存在し得る。電気絶縁層62、例えば、二酸化ケイ素の層が、共振器構造61を層63から分離する。共振器構造61内のマイクロ波光子は、電場強度が波腹64で最大となる定在波モードを有する。長寿命量子ビット16-1は、波節64に近接してシリコン基板63の上又は中に配置される。
電場相互作用は、いくつかの実施形態では長寿命量子ビットが共振空洞内にない光子(例えば、長寿命量子ビット16に近接する光導波路内の光子)の電場に結合するのに十分長い範囲を有する。
長寿命量子ビット16はマイクロ波光子の磁場成分に結合することができる。電磁結合を最適化するために、マイクロ波光子は共振器内に定在波モードとして存在することができ、定在波モードは最大磁場強度の1つ以上の波腹及び/又は最大電場強度の1つ以上の波腹を有する。例えば、長寿命量子ビット16は、最大磁場強度の波腹に近接して(例えば、数μm以内に)配置され得る。例えば、図6Aは、定在波モードの磁場強度が最大になる波腹65に近接してシリコン基板63の上又は中に配置された長寿命量子ビット16-2を示す。
いくつかの実施形態では、共振器構造61は、コプレーナ導波路(「CPW」)共振器を含む。CPW共振器は、信号供給線に容量結合されたスタブにセグメント化された信号ピンを有するコプレーナ導波路を含むことができる。CPW共振器は、スタブの長さによって決まる周波数で定在波共振を支援することができる。電場の波腹はスタブの端にある。
いくつかの実施形態では、共振器構造61は高い品質係数(「Q係数」)を有する。Q係数は、共振器の帯域幅に対する共振器の中心周波数の比である。いくつかの実施形態では、共振器構造61は、少なくとも105又は少なくとも106のQ係数を有する。
Figure 2023535952000003
という表記は、1つ目の矢印で表される電子(又は正孔)がスピンダウンであり、2つ目の矢印で表される原子核がスピンアップである量子状態を示す。
スピン遷移は、束縛励起子が生成され得る系で起こり得る。量子数0は束縛励起子が存在しないことを示し、量子数1は1つの束縛励起子が存在することを示す。励起子状態、電子(又は正孔)スピン状態及び核スピン状態を含み得る系の量子状態を示す表記では、励起子量子数の後に電子(正孔)スピンが続き、その後に核スピンが続き得る。例えば、
Figure 2023535952000004
という表記は、束縛励起子が1つあり、正孔がスピンダウンであり、核スピンがスピンアップである量子状態を示す。この表記は、図6Bの右側の列で使用されている。
図6Bに示す系では、エネルギーΔEAを有する光子が吸収されると、束縛励起子を生成することができる。T中心では、ΔEAは約1326nmの光子波長に相当する。この波長を有する光をT中心に向けることによって束縛励起子を生成することができる。束縛励起子が存在する場合、図6Bの右側に示した上位エネルギー準位67A、67B、67C、67Dの系が利用可能である。束縛励起子が存在しない場合、下位エネルギー準位66A、66B、66C、66Dのみが利用可能である。T中心は、束縛励起子が存在する状態と束縛励起子が存在しない別の状態とを含む状態の重ね合わせにある可能性がある。
図6Bの右側にある任意のエネルギー準位間で遷移が可能である。これらの遷移は次のように分類できる。
・電子又は正孔スピンを反転させるが、核スピンを反転させない遷移(例えば、電子常磁性共鳴(EPR)遷移)。遷移69C1、69C2、69D1、69D2は、電子又は正孔スピンのみが反転する遷移の例である。
・核スピンを反転させるが、電子スピンを反転させない遷移(例えば、核磁気共鳴(NMR)遷移)。遷移69C3、69C4、69D3、69D4は、核スピンのみが反転する遷移の例である。
・電子又は正孔スピンと核スピンの両方が反転する交差遷移。(例えば、EDSR遷移)。遷移69C5、69C6、69D5、69D6は交差遷移の例である。
・束縛励起子を含む状態と束縛励起子を含まない状態との間の遷移も可能である。
・束縛励起子を含む状態と束縛励起子を含まない状態との間の遷移(例えば、状態66A、66B、66C、66Dのうちの1つから状態67A、67B、67C、67Dのうちの1つへの遷移)も可能である。
複数の核スピンを含むT中心などの量子系では、遷移のエネルギー準位は、一般に、核スピンの異なるものごとに異なる。本明細書に記載されるように核スピンを他の量子ビットに結合させることによって、上記遷移のうちの選択された1つによる他の量子ビットとの量子相互作用のために特定の利用可能な核スピンを選択し、他の量子ビットの量子状態間の遷移が選択された遷移のエネルギー差に一致するエネルギー差を伴うようにすることができる。
不対電子を有し、束縛励起子状態を支持するT中心などの量子系では、量子情報は不対電子又は束縛励起子の正孔に保存され得る。後述するように、正孔に関与する遷移のエネルギー差は電子に関与する遷移のエネルギー差とは異なる。本明細書に記載されるように電子又は正孔を含む系を他の量子ビットに結合させることによって、上記遷移のうちの選択された1つによる他の量子ビットとの量子相互作用のために電子又は正孔スピンを選択し、他の量子ビットの量子状態間の遷移が電子又は正孔のための選択された遷移のエネルギー差に一致するエネルギー差を伴うようにすることができる。
遷移69C1、69C2、69C3、69C4、69C5、69C6、69D1、69D2、69D3、69D4、69D5、及び69D6のいずれかを使用して、電子又は正孔スピンで、核スピンで、又はこれらの2つ以上の組み合わせで量子情報を符号化することができる。これらの遷移はそれぞれ、エネルギーΔEC1、ΔEC2、ΔEC3、ΔEC4、ΔEC5、ΔEC6、ΔED1、ΔED2、ΔED3、ΔED4、ΔED5、及びΔED6に相当する。T中心の場合、これらのエネルギーは、ΔEC5、ΔEC6、ΔED5、及びΔED6については約1MHzから100MHzの周波数を有する光子に相当し、ΔEC1、ΔEC2、ΔEC3、ΔEC4、ΔED1、ΔED2、ΔED3、及びΔED4については約1GHzから約100GHzの周波数を有する光子に相当する。
いくつかの実施形態では、T中心の核スピンと電子又は正孔スピンは既知の量子状態に初期化される。スピンは、例えば、スピンを所望のエネルギー準位に光学的にポンピングすることによって、及び/又はスピンを反転させるためのパルス(「πパルス」)を印加することによって、所望の状態に設定することができる。例えば、初期状態は
Figure 2023535952000005
であり得る。T中心は、後にエネルギーΔEC1を有する光子を含み得る導波路に結合される。結合は、光子の波長を制御すること、ΔEC1を制御すること、及び/又は本明細書の他の部分で説明されるように結合機構を制御することによって実現することができる。
光子は、状態
Figure 2023535952000006
への遷移を引き起こし得る。光子は、状態(例えば、存在する状態と存在しない状態)の重ね合わせであり得る。その結果、核スピンと電子又は正孔スピンの系は、光子の状態から量子情報を符号化する状態
Figure 2023535952000007
の特定の重ね合わせになり得る。光子が利用可能な交差遷移によって発光中心に結合する場合、核スピンと電子又は正孔スピンの両方が光子の吸収又は放出時に反転する。したがって、これらの遷移を使用して、状態
Figure 2023535952000008
の特定の重ね合わせを生成することができる。もつれ状態(エンタングル状態)の一部として、核スピンは、単独で考えると、状態
Figure 2023535952000009
のスピン混合である。
別の例では、駆動遷移を用いて、T中心の核スピンに又は核スピンと電子又は正孔スピンを含む他の結晶欠陥に量子状態を保存する。この例では、電子又は正孔スピンは、初めは特定の量子状態(例えば、スピンアップ、スピンダウン、又はスピンアップとスピンダウンの重ね合わせ)にある。電子又は正孔スピンの量子状態は、例えば、本明細書の他の部分で説明されるように、短寿命量子ビットと電子又は正孔スピンとの間で量子状態転送を引き起こすことによって設定することができる。
必要に応じて、利用可能な核スピンは、既知の状態、例えばスピンダウン又はスピンアップに初期化することができる。T中心は、後に核スピンを含むスピン遷移のエネルギーに一致する波長を有する外部源(例えばレーザー)からの光子で照射することができる。場合によっては、遷移は電子又は正孔も含む交差遷移である。複数の核スピンが存在するT中心又は他の結晶欠陥では、核スピンのどれが電子又は正孔スピンと量子相互作用を受けるかは、T中心を照射する光子のエネルギーによって選択され得る。光子は、コヒーレントπパルスの形で提供され得る。πパルスによって誘発される遷移を使用することは、電子又は正孔スピン状態を核スピンに保存する効率的な方法である。
EDSRでは、電子スピンと核スピンの両方が反転する遷移が発生する。状態
Figure 2023535952000010
で始まるEDSR遷移は、状態
Figure 2023535952000011
を生成する。EDSR遷移は、有利なことに電場と強く結合する。いくつかの実施形態は、EDSR遷移を用いて、電子スピンの量子状態を核スピン状態に転送し、かつ/又は核スピンの量子状態を電子又は正孔スピン状態に転送し、かつ/又は電子又は正孔スピンと核スピンの量子状態をもつれさせる。いくつかのこのような実施形態では、核スピンと電子又は正孔スピンはT中心にある。
本明細書は、電子スピンの量子状態を核スピンの量子状態と結合させることによって電子スピンを使用する様々な方法を説明する。一般に、正孔スピンを含む束縛励起子が存在する場合、正孔スピンは、束縛励起子の正孔スピンのエネルギー準位が一般に電子スピンのエネルギー準位とは異なることを除いて、本明細書に記載されるのと同じ方法で核スピンと結合させることができる。
電子スピンと正孔スピンのエネルギー準位の違いの主な理由は、正孔の環境に応じて、正孔のg因子は電子のg因子と少なくとも2倍は異なる場合があるためである(例えば、電子のg因子は2であるが、正孔のg因子は正孔の環境に応じて約1から4の範囲であり得る)。エネルギー準位は通常、g因子にほぼ比例して変化する。電子のスピンを反転させるためにΔEを変化させるための、本明細書で説明したのと同じ機構を、正孔のスピンを反転させるためにΔEを変化させるためにも用いることができる。
別の例として、エネルギーΔEC5を有する光子を使用して
Figure 2023535952000012
の遷移を使用することができる。結合は、光子の波長を制御すること、ΔEC5を制御すること、及び/又は本明細書の他の部分で説明されるように結合機構を制御することによって実現することができる。
図7A及び図7Bは、長寿命量子ビット16が光学光子66に結合するように配置されたシステム70を概略的に示す。システム70は、図4のシステム40と共通の要素を有する。これらの要素は、図4と同じ符号で図7に示されている。
システム70では、長寿命量子ビット16は、光共振器72内に又は光共振器72に非常に近接して配置された発光中心43によって提供される。光共振器72は、エネルギーΔE1又はΔE2を有する光子の周波数に相当する共振周波数を有するように設計される(図6参照)。有利なことに、長寿命量子ビット16は、光電場のモード最大で光共振器の内部に配置することができる。
光共振器72は、任意の好適な構造を有することができる。光共振器の様々な設計が知られている。システム70は、発光中心43を含む基板42との一体化に好適な任意の光共振器を組み込むことができる。図7Aでは、光共振器72はリング共振器を含む。共振器72は、例えば、すべての目的のために参照により本明細書に組み込まれる、TaitらのarXiv:2001.05100に記載されるように作製することができる。マイクロリング共振器は、例えば、薄い(例えば、約200~500nmの厚さの)シリコン層(理想的にはシリコン28)を含むシリコンオンインシュレータ(SOI)プラットフォーム上に製造することができる。シリコン28層は、ホストシリコンウエハ上のより厚い(例えば、約3μmの厚さの)酸化シリコン層上に形成することができる(シリコンウエハは、シリコンの天然同位体濃度を有することができる)。いくつかの実施形態では、共振器72の共振周波数の又は共振周波数に非常に近い光子は、ウィスパリングギャラリーモードを有する。
光共振器72は、光導波路74に光学的に結合され、光導波路74によって光学光子66を共振器72に導入し又は共振器72から他の場所に運ぶことができる。
長寿命量子ビット16は、光子66と長寿命量子ビット16との十分な結合を可能にするように選択された位置及び向きを有する。例えば、いくつかの実施形態では、長寿命量子ビット16は、マイクロリング共振器の中心に相当しかつマイクロリング共振器の平面に垂直に延びる軸上に位置する。いくつかの実施形態では、長寿命量子ビット16は、材料界面から500nm以下の深さを有する。いくつかの実施形態では、長寿命量子ビット16は、シリコンオンインシュレータデバイス層の約半分の深さをシリコンオンインシュレータデバイス層に有する。
光共振器72内の長寿命量子ビット16と光子66との結合は、光共振器72の光周波数がΔE1とΔE2の1つと厳密に一致するようにΔE1又はΔE2及び/又は光共振器72の共振周波数を制御することによって調整することができる。
ΔE1とΔE2は、例えば、長寿命量子ビット16の位置における電磁場の強度を変化させることによって調整することができる。図示の実施形態では、これは、電源75を制御して部分56と導電体75Aとの間の電位差を加えることによって実現する。
共振器72の共振周波数は、例えば、
・例えば、微小電気機械システム(MEMS)を操作することによって、共振器72の境界の光学特性を変化させることと、
・共振器72の境界に付着し、光子66との相互作用を変化させるガスを導入するなど、構造特性を変更することと、
・基板52又は共振器72自体に力を加えることによって共振器72をひずませることと、
・共振器72における非線形効果を利用するために、駆動強度及び/又は長寿命量子ビット16の共振器72への結合を変更することと、
・共振器72に電磁場を印加することと、
・共振器72の温度を変化させることと
によって調整することができる。
いくつかの実施形態では、光共振器72の共振周波数は、ΔE1又はΔE2を含む周波数の範囲にわたって掃引される。
システム70は、光学光子66に結合するために、光領域内の周波数に相当するエネルギー差を有する量子遷移を用いる。この遷移は、例えば、軌道遷移又は励起子を生成する遷移を含む。遷移は、量子情報が保存されている量子系(例えば、電子スピン、正孔スピン、核スピン、スピンの組み合わせ、励起子)の量子状態に影響を与える。遷移は、長寿命量子ビット16の量子状態を光共振器72内の光子状態にもつれさせることができる。
いくつかの実施形態では、長寿命量子ビットは、個別に又は集合的に量子情報を保存することができる複数の量子粒子を含む。例えば、長寿命量子ビット16は、電子又は正孔スピンと少なくとも1つの核スピンの両方を含むことができる。核スピンは、電子スピン又は正孔スピンよりも長いコヒーレンス時間を有する可能性がある。超伝導量子ビット12の量子状態を核スピンの量子状態として保存することが望ましい場合がある。
いくつかの実施形態では、量子状態転送を使用して、超伝導量子ビットの状態を核スピンの量子状態に転送する。これを行うための例示的な方法は、超伝導量子ビット12の量子状態を、例えば上記のように電子又は正孔スピンの量子状態に転送し、後に電子又は正孔の量子状態を核スピンの量子状態に転送することである。
上記の状態転送プロセスと同様の方法を使用して、長寿命スピン量子ビットと短寿命超伝導量子ビットとの間の状態転送又はもつれ合い(エンタングルメント)などの量子相互作用を引き起こすことができる。例えば、スピン量子ビットと超伝導量子ビットの両方を適切な固有状態に準備することができる。スピン量子ビットと超伝導量子ビットは、後に上記の方法でコヒーレントに相互作用させ、図2に示すものと同様の2量子ビットのラビ振動を生成することができる。この相互作用が奇数個の半ラビ周期後に停止すると、状態転送が達成される。代わりに、Nが整数である(N/2+1/4)個のラビ周期後に相互作用が停止すると、2つの量子ビット間にもつれ状態が生成される。
電子スピン又は正孔スピン量子ビットを使用して、超伝導量子ビット14の量子状態を光学光子にテレポートすることができる。例えば、長寿命量子ビットの電子スピンは、電子をスピンアップ状態に初期化し、電子がもつれ合った対の2つの光子の1つと相互作用できるようにすることで、入射光子ともつれることができる。この相互作用により、もつれが電子スピンに転送され、スピン光子もつれ状態が生成される。電子スピンは、後に上記のような方法で超伝導量子ビット12ともつれさせることができる。このもつれが確立された後、超伝導量子ビット12と電子スピン量子ビットをベル状態(もつれ)ベースで合同測定することができる。これらの測定結果を用いて、元のもつれ合った対から第2の光子に対して実行する操作を選択し、超伝導量子ビット14の状態を光子量子ビットに「フィードフォワード」することができる。例えば、測定結果は、ルックアップテーブルでフィードフォワード操作を検索し、後にフィードフォワード操作を実行するために電気回路を制御することができる、古典的な制御電子機器に供給され得る。フォトニック量子ビットは、後にその量子情報を離れた電子スピン量子ビットに転送することができ、電子スピン量子ビットは、同様に、量子状態を離れた超伝導量子ビットに転送することができる。
長寿命量子ビット16の状態と光学光子66とのもつれは、長寿命量子ビット16を外部システムに結合させるための機構を容易にする。光学光子は、室温での熱エネルギー(約26meV。kBTによって与えられ、kBはボルツマン定数、Tはケルビンの温度である)よりもかなり高いエネルギーを有する。例えば、波長1μmの近赤外線光学光子のエネルギーは約1.2eVである。この例では、光学光子は、室温の熱エネルギーよりも40倍以上大きなエネルギーを持っている。このため、光学光子66は、熱雑音の影響を過度に受けることなく、長寿命量子ビット16が配置されている冷却装置の外側で輸送することができる。好適な光ファイバ又は他の既知の光子輸送機構を使用すると、光子66を長距離にわたって運ぶことができる。
この機構を使用して、長寿命量子ビット16と、量子ビット16から離れた場所に位置する可能性がある他の2つ以上の量子ビットとの間にもつれを生成することができる。いくつかの実施形態では、長寿命量子ビット16がもつれさせられる他の量子ビットは、本明細書に記載される他の長寿命量子ビット16である。長寿命量子ビット16は同じであってもよい。例えば、もつれた長寿命量子ビット16はT中心であり得る。
上記の説明では、長寿命量子ビット16は、不純物原子又は結晶欠陥などの単一の発光中心によって提供されるものとして説明されてきた。これは可能であるが、必須ではない。あらゆる実施形態において、長寿命量子ビットは、複数の同一又はほぼ同一の発光中心によって提供され得る。これのいくつかの利点は、光子との結合が向上し、個々の発光中心を正確に配置する必要が少ないことである。長寿命量子ビット16の集合体は、より強く結合された単一の長寿命量子ビット16として効果的に動作することができる。
単一の長寿命量子ビットとして効果的に機能する長寿命量子ビットの集合体の使用例として、いくつかの実施形態では、複数の長寿命量子ビット16が光共振器72内に又は光共振器72に近接して配置される。複数の長寿命量子ビット16は、例えば、T中心を含むことができる。複数の長寿命量子ビット16は、例えば、リング共振器の共振周波数における光子の光電場のモード最大で光リング共振器のリングの内側に配置することができる。
いくつかの実施形態では、長寿命量子ビットは、1から約105、又は約1から2000、又は約40から1000の範囲の複数の発光中心によって提供される。N個の同一の長寿命量子ビットの集合への光子の結合は√Nに比例して増加する傾向がある。しかしながら、Nの数が大きいほど、長寿命量子ビットを同様に又はほぼ同様に動作させることが困難になる。長寿命量子ビットが同様に動作しない場合、集合のコヒーレンス時間が短縮される可能性がある。Nの値が大きい場合、間隔を空けて配置された長寿命量子ビットの数が多いほど、環境の範囲が広くなる可能性があり、少数の長寿命量子ビットとは場の強度が異なる場所で長寿命量子ビットが結合する光子の場にさらされる可能性がある。その結果、Nは、光子(マイクロ波又は光学光子)への結合の所望の強度を達成するのに十分な大きさに選択することができるが、集合体は、意図した用途に十分な長さのコヒーレンス時間を依然として有する。
長寿命量子ビットのために発光中心の集合体を使用することが望まれる場合、発光中心が互いに同じであること、発光中心が光子に結合される磁場又は電場の強度が長寿命量子ビット16に含まれるすべての発光中心について同様になるように発光中心を配置することが有益である。
欠陥中心、例えば、T中心は、それらが位置する結晶格子に対して複数の配向のいずれかを有することができる。例えば、T中心は、任意の12個の配向のいずれかを有することができる。いくつかの実施形態では、複数の異なる配向を有する欠陥中心が、長寿命量子ビットを提供する集合体に含まれる。いくつかの実施形態では、特定の選択された配向を有する欠陥中心が、長寿命量子ビットを提供する集合体への参加から除外される。これは、例えば、選択された配向を有する欠陥中心のエネルギー準位を選択的にシフトし、集合体に含まれる欠陥中心が結合できる光子にこれらの欠陥中心が結合できないようにすることによって行うことができる。エネルギー準位は、例えば、結晶格子を選択された方向にひずませることによって、欠陥中心の選択された配向のためにシフトすることができる。
図8は、複数のモジュール82(モジュール82-1、82-2から82-Nが示されている)で構成される量子コンピュータシステム80の例示的な構造を概略的に示す。各モジュール82は、量子コンピューティングサブシステム82Bを冷却する冷却装置82Aを含み、量子コンピューティングサブシステム82Bは、本明細書に記載の任意の実施形態に従って、それぞれが対応する長寿命量子ビット16に結合された1つ以上の短寿命量子ビット12を含む。モジュール82は、必要に応じて、高真空システム、電磁放射線シールド、振動絶縁などの他の環境制御システムを含むことができる。短寿命量子ビット12は、他の量子ビット、量子ビットの量子状態を操作するための装置、量子ビットを異なる方法で結合するための情報などを含む量子情報処理システム13の一部であり得る。図示の例では、長寿命量子ビット16は、マイクロ波共振器20によって短寿命量子ビット12に結合される。
光子キャリア84は、1つのモジュール82-1の長寿命量子ビット16と別のモジュール82-2の長寿命量子ビットの間に延在する。光子キャリア84は、例えば、光ファイバ、光導波路、自由空間などを通して光子56を導く鏡、レンズ、屈折素子などの光学素子で構成される光学システムを含むことができる。光子キャリア84は経路を提供し、経路を通って光子56は、1つの長寿命量子ビット16の近くから移動し、1つの長寿命量子ビット16を収容する冷却装置82Aを出て、第2の長寿命量子ビット16を収容する冷却装置82Aに移動し、第2の長寿命量子ビット16を収容する冷却装置に入り、第2の長寿命量子ビット16と相互作用する。この機構によって、第1及び第2の長寿命量子ビット16の量子状態をもつれさせることができる。光子キャリア84は、光子キャリア84内の光学光子状態によって長寿命量子ビット16を複数の遠隔量子ビットと同時にもつれさせることができるように、複数の遠隔量子ビットを集合的にホストする複数の送り先に光子状態を運ぶために任意選択で接続され得る。
いくつかの実施形態では、任意のモジュール82が、1つ以上の他のモジュール82内の対応する長寿命量子ビット16に結合された2つ以上の長寿命量子ビット16を含むことができる。このような実施形態では、1つの光子が2つ、3つ、又は4つ以上の長寿命量子ビット16をもつれさせることができ、長寿命量子ビット16の一部又は全部が異なるモジュール82内にあることができる。
システム80の全体的な構造は、量子コンピュータの量子ビット(例えば、短寿命量子ビット12)を複数の冷却装置82Aに分散させることができるので有利である。これは、量子コンピュータのコンポーネントを必要な低温に冷却すると同時に冷却装置を大型の量子コンピュータを収容するのに十分な大きさにすることは非常に困難であり、運用上の課題も生じるため、有益である。さらに、延長された長さを有する光子キャリア84を備えたシステム80を作成する可能性は、モジュール82を広く分散させるために使用することができる。システム80は、例えば、広く分散したモジュール82間で量子情報を安全に分配することに適用され得る。
上記の実施形態では、長寿命量子ビット16として使用するのにT中心が有利であり得ることが見出された。図9はT中心90の構造を示す。T中心は、シリコン結晶中のシリコン原子が2つの炭素原子91A及び91Bと、炭素原子91Bに結合した水素原子92とに置き換わった位置である。炭素原子91Aは1つの不対電子を有する。炭素原子91Aの不対電子のスピン状態は、長寿命量子ビット16として使用することができる。
T中心はまた、束縛励起子をホストすることができる。束縛励起子の数(例えば、0又は1)は、長寿命量子ビット16として使用することができる。また、束縛励起子にある正孔のスピン状態は、長寿命量子ビット16として又は核スピンの量子情報を符号化するために使用される中間状態として使用することができる。
束縛励起子は、必要な場合にのみ存在するように生成及び破壊することができる。励起子を使用して、外部源(光学光子又はマイクロ波光子など)から量子情報を受け取り、その量子情報を、量子情報に関して非常に長いコヒーレンス時間を有する核スピンなどのスピン多様体に転送することができる。束縛励起子の正孔の波動関数は、本明細書の他の部分で説明されるように、正孔のスピンと光子の結合を容易にする比較的大きな空間的広がりを有する。
T中心は、T中心を長寿命量子ビット16として使用するのに特に良好にする以下の特性を有する。
・T中心は長いスピンコヒーレンス時間を示す(電子スピンが>2.1ミリ秒、核スピンが>1秒)。
・T中心は光学線幅が狭い(<30MHz)。
・T中心は、Oバンドの光子(約1326nmを含む波長)に結合することができる。
・T中心は、複数(例えば4つ)のアクセス可能なスピン多様体を提供することができる。
・T中心は、弱いが制御可能に格子ひずみに結合する。
・T中心は、弱いが制御可能に電場に結合する。
・T中心は、量子情報を(例えば正孔スピンに)保存するために使用され得る励起子を支持することができる。
T中心は、シリコン本体に高エネルギー炭素と高エネルギー水素を照射することによって、シリコン本体内に形成することができる。この照射に続いて、T中心形成を活性化するために高温アニーリングが行われる。いくつかの実施形態では、T中心は、シリコン本体にハードマスクを取り付け、ハードマスクの開口部を通して所望の位置を照射することによって、シリコン本体中の所望の位置に形成される。
上述のように、T中心は、いくつかのアクセス可能なスピン多様体を有する。これらは、
・1つの不対電子スピン、
・1つの励起子正孔スピン(励起子が存在する場合)、
・1つの水素核スピン、及び
・2つの炭素核スピン
を含む。
これらのスピンのいずれかの量子状態などで量子情報を保存することが可能である。
量子情報は、核スピン多様体のいずれかに保存することができる。これは様々な方法で行うことができる。これらの方法を用いて、2つ以上の核スピン多様体のそれぞれに同じ又は異なる量子情報を保存することができる。いくつかの実施形態では、マイクロ波又は光学光子からの量子情報は、本明細書の他の部分で説明されるように、電子又は正孔スピン状態の量子状態で符号化される。量子情報は、後に核スピンの1つのスピン状態で符号化される。いくつかの実施形態では、マイクロ波又は光学光子からの量子情報は、電子又は正孔スピンと1つ以上の核スピンのスピン状態で同時に符号化される。
一般に、電子又は正孔スピンと複数の異なる核スピンとを含む量子系(T中心はそのような系の一例である)では、相互作用に関与する光子の周波数によって様々なスピン遷移を選択することができる。電子又は正孔スピンと核スピンの対に対して、1組のエネルギー準位が利用可能である。これらのエネルギー準位は、例えば次のように識別することができる。
Figure 2023535952000013
ここで、一重矢印は電子又は正孔スピン、二重矢印は核スピンを表す。これらのエネルギー準位は通常、異なる核スピンごとに異なり、このような遷移に対して個々の核スピンを選択することができる。これらのエネルギー準位間の遷移は、軌道遷移及び/又は束縛励起子の生成又は消滅と組み合わせることができる。また、このような組み合わせは通常、複数の核スピンのどれが関与しているかに応じて異なるエネルギーに対応する。
個々の核スピンは、例えば、スピンダウン電子状態を光学的に循環させながら、同時に電子フリップ遷移を刺激するために選択されたRFトーン(例えば、エネルギーEPR2に相当する周波数を有し、
Figure 2023535952000014
に接続するトーン)を印加することによって、所望のスピン状態(例えば、スピンアップ)を有するように選択的に初期化することができる。励起状態からの緩和
Figure 2023535952000015
は、核スピン又は電子スピンのいずれかを反転させる機構によって発生する可能性があり、電子は最終的に反転した確率を蓄積するが、電子がスピンアップ状態に反転するときに核スピンがスピンアップである場合、EPR1のRFトーンは電子をスピンダウン状態に戻すように駆動する。結果として生じる状態がスピンダウン電子を有する場合、電子は光場によって急速に再励起される。同様に、系が
Figure 2023535952000016
に緩和した場合、EPR2場は電子をスピンダウン状態に戻し、その時点で電子は急速に再励起される。
Figure 2023535952000017
の状態のみが急速に再励起されないため、系はその状態に初期化される。複数の核スピンがある場合、エネルギーEPR2は異なる核スピンごとに異なる。選択した核スピンに対してEPR2の値に相当するRFトーンを印加することによって、複数の核スピンのどれを初期化するかを選択することができる。
核スピンを所望の状態に初期化する別の方法は、核スピンを測定し、核スピンがまだ所望のスピン状態になっていない場合は、πパルスを印加して核スピンを所望のスピン状態にすることである。
本明細書に記載される技術の例示的な用途として、超伝導量子ビットを特定の状態にすることができる。これは、例えば、超伝導量子ビットが一部である量子コンピュータで量子計算を実行することによって行うことができる。次いで超伝導量子ビットの量子状態をT中心の電子スピンに保存し、次いでその量子状態をT中心のより長寿命の水素核スピンに転送することができる。T中心の炭素核スピンのそれぞれに、このプロセスを繰り返すことができる。このプロセスは超伝導量子ビットの最大3つの状態を保存し、必要に応じてスピンとして保存した状態で操作し、後に必要に応じて3つの状態のいずれかを超伝導量子ビットに取り出すことができる。さらに、3つの状態のいずれかを光学光子に転送し、任意の場所に輸送することができる。
いくつかの実施形態では、T中心又は他の結晶欠陥における複数の核スピンが量子誤り訂正のために用いられる。例えば、本明細書に記載される技術を用いて、複数の核スピンを多数決局所誤り訂正のために使用することができる。対象の量子ビット状態は、本明細書に記載される実施例のいずれかに従って1つの核スピンに保存することができる。2つ以上の他の核スピンは、後に誤り訂正又は誤り検出のために対象の状態を論理量子ビットに符号化するためのアンシラとして使用してことができる。誤り訂正は、例えば、参照により本明細書に組み込まれる、WaldherrらのQuantumerror correction in a solid-state hybrid spin register, Nature 506, 204-207(2014)に記載されるように動作することができる。
いくつかの実施形態では、T中心などの長寿命量子ビット16がもつれの精製に用いられる。このような実施形態では、電子又は正孔スピンを演算量子ビットとして使用することができ、核スピンをメモリ量子ビットとして使用することができる。例えば、互いに離れている可能性がある2つ以上の波節で量子状態間にもつれを生成することが望まれる場合を考える。各波節は、電子又は正孔スピンと少なくとも1つの核スピンとを含む長寿命量子ビット16を含むことができる。(例えば、本明細書に記載されるように光学光子を用いて)演算量子ビット間にもつれを確立することができる。結果として生じるもつれは、後に本明細書に記載されるように状態転送によってメモリ量子ビットに転送される。演算量子ビットは後に再びもつれさせられるが、今回そのもつれは、各波節での条件付き演算によって各メモリ量子ビットにマッピングされる。このシーケンスを繰り返し、適切な測定を行うことで、異なる波節にあるメモリ量子ビットを非常に高い純度でもつれさせることができる。そのもつれは、必要に応じて演算量子ビットに再びマッピングすることができる。本明細書に記載されるように長寿命量子ビット16を用いてして適用され得る量子精製の基本原理を説明する参考文献は、参照により本明細書に組み込まれるKalbらのScience 356, 928-932(2017)である。
上記の例のいくつかでは、短寿命量子ビットは超伝導量子ビットである。本技術は、短寿命量子ビットが量子ドット又はイオントラップなどの別の種類の量子ビットである場合にも用いることができる。短寿命量子ビットが量子ドットによって提供される場合、量子ドットは、本明細書に記載されるような他の構造(例えば、共振器、光学構造、長寿命量子ビット、長寿命量子ビットが配置されるシリコン基板など)に対して相対的に配置することができる。短寿命量子ビットが磁場によってトラップされたイオンを含む場合(すなわち、イオントラップ量子ビット)、磁場は、イオントラップ量子ビットが本明細書に記載されるように長寿命量子ビットに結合され得るように、共振器及び/又は長寿命量子ビットに近い位置で長寿命量子ビットを含むデバイスの表面に隣接するイオンをトラップするように構成することができる。
本明細書に記載される方法及びシステムは、あらゆる量子情報処理システムに適用することができる。例えば、短寿命量子ビット12は、現在知られているか又は将来開発される、あらゆる量子情報処理システムの一部であり得る。
本明細書に記載される技術を含むシステムはまた、
・量子ビットの状態を設定すること、
・量子ビットの状態を操作すること、
・量子ビットの異なるものの量子状態を互いにもつれさせること、及び/又は
・量子測定を実行すること
などの機能を実行することによって量子計算を実行するために1組の量子ビットを制御するように構成された非量子コンピュータシステムを含むことができる。
このような非量子コンピュータシステムは、量子コンピューティングに適したプログラミング言語でコマンドを実装するために上記の機能を実行するように構成することができる。非量子コンピュータシステムは、特別に設計されたハードウェア、構成可能なハードウェア、データプロセッサ上で実行することができるソフトウェア(任意選択で「ファームウェア」を含むことができる)の提供によって構成されたプログラマブルデータプロセッサ、専用コンピュータ、又は本明細書で詳細に説明される方法の1つ以上のステップ及び/又はこれらの2つ以上の組み合わせを実行するように特別にプログラムされ、構成され、又は構築されたデータプロセッサを用いて実装することができる。特別に設計されたハードウェアの例は、論理回路、特定用途向け集積回路(「ASIC」)、大規模集積回路(「LSI」)、超大規模集積回路(「VLSI」)などである。構成可能なハードウェアの例は、プログラマブルアレイロジック(「PAL」)、プログラマブルロジックアレイ(「PLA」)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(「FPGA」)などの1つ以上のプログラマブルロジックデバイスである。プログラマブルデータプロセッサの例は、マイクロプロセッサ、デジタルシグナルプロセッサ(「DSP」)、組み込みプロセッサ、グラフィックプロセッサ、数学コプロセッサ、汎用コンピュータ、サーバコンピュータ、クラウドコンピュータ、メインフレームコンピュータ、コンピュータワークステーションなどである。例えば、デバイスの制御回路内の1つ以上のデータプロセッサは、プロセッサにアクセス可能なプログラムメモリ内のソフトウェア命令を実行することによって本明細書に記載される方法を実施することができる。
非量子コンピュータシステムは、集中型又は分散型であり得る。処理を分散させる場合は、ソフトウェア及び/又はデータを含む情報を集中的に保持し又は分散させることができる。このような情報は、ローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)、インターネットなどの通信ネットワーク、有線又は無線のデータリンク、電磁信号、又は他のデータ通信チャネルによって、異なる機能ユニット間で交換することができる。
本開示を読んだ当業者は、上記の技術が多くの態様及び用途を有することを理解するであろう。これらには、限定されないが以下が含まれる。
A.マイクロ波周波数に相当する第1のエネルギー差を有する量子状態の第1の対と、光周波数に相当する第2のエネルギー差を有する量子状態の第2の対を有する量子系によって提供される第2の量子ビットを用いて、第1の量子ビットから1つ以上の第3の量子ビットに量子情報を変換するように動作する装置及び方法。方法は、マイクロ波周波数のマイクロ波光子状態によって媒介される第1及び第2の量子ビット間の量子相互作用を引き起こし、第1及び第2の量子ビットをもつれさせ、かつ/又は第1の量子ビットの量子状態の全部又は一部を第2の量子ビットに転送する。方法は、後に光周波数の光学光子状態によって媒介される第2の量子ビットと1つ以上の第3の量子ビットとの間の量子相互作用を引き起こし、第2及び第3の量子ビットをもつれさせ、かつ/又は第2の量子ビットの量子状態を第3の量子ビットに転送する。第1の量子ビットは、例えば、超伝導回路、量子ドット又はイオントラップによって提供され得る。いくつかの実施形態では、第2の量子ビットは、T中心などのシリコン中の欠陥中心によって提供される。量子状態の第1の対は、例えば、T中心の不対電子のアップ及びダウンスピン状態、T中心の核スピンのアップ及びダウンスピン状態、スピンフリップ遷移によって分離された多粒子スピン系のスピン状態(例えば、不対電子スピンと核スピンのスピン状態)を含み得る。量子状態の第2の対は、例えば、軌道遷移又は励起子を生成する遷移によって分離された状態を含むことができ、遷移は、第2の量子ビットが量子状態の第1の対の一方にあるときに遷移を行う場合と、第2の量子ビットが量子状態の第1の対の他方にあるときに遷移を行う場合とでは異なるエネルギーを有する。いくつかの実施形態では、第1、第2及び第3の量子ビットは量子コンピュータの一部である。
B.量子情報をシリコン中の欠陥中心に保存する装置及び方法。いくつかの実施形態では、欠陥中心はT中心である。いくつかの実施形態では、量子情報は、第1の量子ビットから受信され、欠陥中心に保存され、後に第1の量子ビットに戻される。いくつかの実施形態では、量子情報は、第1の量子ビットのコヒーレンス時間よりも長い時間、欠陥中心に保存される。いくつかの実施形態では、第1の量子ビットは、超伝導回路又は量子ドット又はイオントラップを含む。いくつかの実施形態では、量子情報は、欠陥中心から第3の量子ビットに転送される。いくつかの実施形態では、量子情報は、欠陥中心に保存されている間に操作される。
C.量子情報をシリコンのT中心に保存する装置及び方法。いくつかの実施形態では、量子情報は、T中心の不対電子のスピン状態で保存される。いくつかの実施形態では、量子情報は、T中心の核スピンのスピン状態で保存される。いくつかのこのような実施形態では、量子情報は、第1の量子ビットから核スピンに直接転送される。いくつかの実施形態では、量子情報は、第1の量子ビットからT中心の不対電子のスピン状態に転送され、後に不対電子のスピン状態から核スピン状態に転送される。いくつかの実施形態では、T中心を使用して、T中心の4つのスピン状態(3つの核スピンと1つの不対電子スピン)のうち2つ又は3つ又は4つに2組又は3組又は4組の量子情報を同時に保存する。いくつかの実施形態では、同じ量子情報がT中心のスピン状態のうちの2つ又は3つ又は4つに保存される。いくつかの実施形態では、同じ量子情報がT中心の3つ以上のスピン状態に保存され、スピン状態のうちの2つ以上が量子誤り訂正に使用される。
D.シリコン中の原子的に同一の結晶欠陥の集合体を使用して量子情報を保存する装置及び方法。いくつかの実施形態では、結晶欠陥はT中心である。
E.物理的に離れた複数の制御環境に分散した複数の量子ビットを有する量子コンピュータシステムにおける量子コンピューティングのための装置及び方法。制御環境は、例えば、超低温及び/又は高真空環境を含み得る。量子情報は、本明細書に記載される技術を用いて離れた制御環境のうちの異なるものの量子ビット間で転送することができる。
F.量子情報を1.3meV以下のエネルギーによって分離された量子状態に保存する物理的に離れた量子ビット間の量子相互作用をもつれさせかつ転送するための装置及び方法。方法は、マイクロ波光子によって第1の量子ビットを第2の量子ビットに結合し、後に第2の量子ビットを光学光子に結合させることによって、第1の量子ビットからの量子情報の一部又は全部を光学光子に変換することを含む。いくつかの実施形態では、第2の量子ビットはシリコン中の発光中心である。例えば、第2の量子ビットは、不純物原子、欠陥中心(例えば、T中心)、又は原子又は欠陥中心の集合体を含むことができる。
用語の解釈
文脈上明確に別の解釈を必要としない限り、明細書及び特許請求の範囲を通じて、以下の通りである。
・「含む」などは、排他的又は網羅的な意味ではなく、包括的な意味で解釈されるべきである。すなわち、「含むが、これ(ら)に限定されない」という意味である。
・「接続された」、「結合された」、又はその変形は、2つ以上の要素間の直接的又は間接的な接続又は結合を意味し、要素間の結合又は接続は、物理的、論理的、又はそれらの組み合わせであることができる。
・「本明細書に」、「上記」、「後述」、及び同様の意味の単語は、本明細書を記載するために使用される場合、本明細書全体を指すものとし、本明細書の特定の部分を指すものではない。
・「又は」は、2つ以上の項目のリストに関して、単語の次の解釈、リストの項目のいずれか、リストの項目のすべて、及びリストの項目のあらゆる組み合わせのすべてをカバーする。
・単数形「a」、「an」、及び「the」は、あらゆる適切な複数形の意味も含む。
本明細書及び添付の特許請求の範囲(存在する場合)で使用される、「縦」、「横」、「水平」、「上方」、「下方」、「前方」、「後方」、「内向き」、「外向き」、「左」、「右」、「前」、「後」、「上部」、「下部」、「より下」、「より上」、「下」などの方向を示す用語は、説明及び図示された装置の特定の方向によって決まる。本明細書に記載される主題は、様々な代替的な方向を想定することができる。したがって、これらの方向を示す用語は厳密に定義されておらず、狭義に解釈すべきではない。
上記でコンポーネント(例えば、ソフトウェアモジュール、プロセッサ、アセンブリ、デバイス、回路など)が言及されている場合、別段の指示がない限り、そのコンポーネントへの言及(「手段」への言及を含む)は、記載されたコンポーネントの機能を果たす(すなわち、機能的に等価である)任意のコンポーネントをそのコンポーネントの等価物として含むものと解釈すべきであり、これには、本発明の図示の例示的な実施形態において機能を果たす開示された構造と構造的に同等でないコンポーネントが含まれる。
一連のステップ及び/又は動作を含む方法が本明細書に記載されている場合、代替例はステップ及び/又は動作を異なる順序で行うことができる。いくつかのプロセス又はブロックは、代替的な実施形態を提供するために、削除し、移動し、追加し、細分化し、組み合わせ、又は修正しかつ/又は部分的な組み合わせに取り入れることができる。また、各ステップ又は動作は、様々な異なる方法で実施することができる。また、ステップ又は動作は連続して行うように示されている場合もあるが、これらのステップ又は動作は代わりに並行して行うことができ、又は異なる時間に行うことができる。
システム、方法及び装置の特定の例を、説明のために本明細書に記載してきた。これらは単なる例である。本明細書で提供される技術は、上記の例示的なシステム以外のシステムに適用することができる。多くの変更、修正、追加、省略、及び置換が、本発明の実施の範囲内で可能である。本発明は、当業者に明らかな、記載された実施形態の変形例であって、特徴、要素及び/又は動作を同等の特徴、要素及び/又は動作に置き換えること、異なる実施形態からの特徴、要素及び/又は動作を混合及び適合させること、本明細書に記載された実施形態からの特徴、要素及び/又は動作を他の技術の特徴、要素及び/又は動作と組み合わせること、及び/又は記載された実施形態からの特徴、要素及び/又は動作を組み合わせることを省略することによって得られる変形例を含む。
様々な特徴が「いくつかの実施形態」に存在するものとして本明細書に記載されている。このような特徴は必須ではなく、全ての実施形態に存在するとは限らない。本発明の実施形態は、このような特徴の0個、任意の1つ又は2つ以上の組み合わせを含むことができる。これは、このような特徴の特定の1つがこのような特徴の他のものと相容れない場合にのみ、このような相容れない特徴を組み合わせた実用的な実施形態を当業者が構築することは不可能であるという意味で制限される。結果として、「いくつかの実施形態」が特徴Aを有し、「いくつかの実施形態」が特徴Bを有するという説明は、(説明に別段の記載がない限り又は特徴A及びBが根本的に相容れない場合を除き)発明者が特徴A及びBを組み合わせた実施形態も考えていることを明示的に示すものとして解釈されるべきである。
したがって、以下の添付の請求項及び以降に導入される請求項は、合理的に推論され得るすべてのこのような修正、置換、追加、省略、及び部分的な組み合わせを含むと解釈されることを意図している。特許請求の範囲は、実施例に記載された好ましい実施形態によって制限されるべきではなく、全体として説明と一致する最も広い解釈が与えられるべきである。

Claims (82)

  1. 量子情報を保存するための方法であって、
    第1の量子情報を符号化する第1の量子状態の第1の量子ビットであって、マイクロ波周波数に相当するエネルギーΔESQによって分離された第1及び第2の量子化エネルギー準位を有する第1の量子ビットを提供することと、
    前記第1の量子ビットをマイクロ波光子状態によってシリコン中の第1の発光中心に結合し、前記第1の量子ビットと前記第1の発光中心の量子状態が量子相互作用を受け、前記第1の発光中心の量子状態が前記第1の量子情報を符号化するようにすることと
    を含む方法。
  2. 前記第1の量子ビットを前記第1の発光中心から切り離すことを含む、請求項1に記載の方法。
  3. 前記第1の量子ビットと前記第1の発光中心の2量子ビットのラビ周波数のn個の半周期に実質的に等しい時間、前記第1の量子ビットを前記第1の発光中心に結合させることを含み、nは奇数である、請求項2に記載の方法。
  4. 前記第1の発光中心はエネルギーΔELC1によって分離された第1及び第2の量子化エネルギー準位を有し、前記第1の量子ビットを前記第1の発光中心に結合させることは、前記エネルギーΔELC1と前記エネルギーΔESQの一方又は両方を調整してΔELC1とΔESQが実質的に等しくなるようにすることを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 前記第1の発光中心に電場を印加することによって前記エネルギーΔELC1を調整することを含む、請求項4に記載の方法。
  6. 前記第1の発光中心にRF駆動信号を印加することによって前記エネルギーΔELC1を調整することを含む、請求項4又は5に記載の方法。
  7. 前記第1の発光中心が位置する前記シリコンにひずみを加えることによって前記エネルギーΔELC1を調整することを含む、請求項4から6のいずれか一項に記載の方法。
  8. 前記第1の発光中心は磁場内にあり、前記方法は、前記発光中心における磁場の強さを変化させることによって前記エネルギーΔELC1を調整することを含む、請求項4から7のいずれか一項に記載の方法。
  9. 前記第1の発光中心は、エネルギー差ΔELC2によって前記第1のエネルギー準位から分離された第3のエネルギー準位を有し、前記方法は、ΔELC2に相当する共振周波数を有する第1の共振器内の光子状態に前記第1の発光中心の量子状態を結合させて、前記第1の共振器内の光子状態が前記第1の量子状態を符号化するようにすることを含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
  10. 前記第1の共振器内の光子状態は光学光子状態である、請求項9に記載の方法。
  11. 前記第1の共振器内の光子状態は、約1μmから約5μmの範囲の光波長に相当する、請求項10に記載の方法。
  12. 前記光子状態の光子を第2の共振器に送達し、前記第2の共振器を第2の発光中心に結合させて、前記第2の発光中心の量子状態が前記第1の量子情報を符号化するようにすることを含む、請求項10又は11に記載の方法。
  13. 前記第1の共振器内の光子状態は第2の共振器内の別の光子状態ともつれており、前記方法は、前記第2の共振器を第2の発光中心に結合させて前記第2の発光中心の量子状態が前記第1の量子情報を符号化するようにすることを含む、請求項10又は11に記載の方法。
  14. 別のマイクロ波光子状態によって第2の発光中心を第2の物質量子ビットに結合させることによって前記第1の量子情報を前記第2の物質量子ビットの量子状態に符号化することを含み、前記第2の物質量子ビットと前記第2の発光中心の量子状態は、前記第2の物質量子ビットの量子状態が前記第1の量子情報を符号化するように量子相互作用を行う、請求項12又は13に記載の方法。
  15. 前記第2の物質量子ビットを前記第2の発光中心から切り離すことを含む、請求項14に記載の方法。
  16. 前記光子状態を3つ以上の発光中心ともつれさせることを含む、請求項14又は15に記載の方法。
  17. 別のマイクロ波光子状態によって前記第1の発光中心を前記第1の量子ビットに結合させて、前記第1の量子ビットと前記第1の発光中心の量子状態が量子状態転送相互作用を行うようにし、前記第1の量子ビットの量子状態が前記第1の量子情報を符号化するようにすることによって、前記第1の量子情報を前記第1の量子ビットに戻すことを含む、請求項2から16のいずれか一項に記載の方法。
  18. 前記第1の発光中心はシリコン結晶中の結晶欠陥を含む、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
  19. 前記第1の発光中心は発光中心の集合体を含み、前記集合体中の発光中心のそれぞれがシリコン結晶中の結晶欠陥を含む、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
  20. 前記結晶欠陥はT中心を含む、請求項18又は19に記載の方法。
  21. 前記結晶欠陥は不対基底状態スピンを有し、I中心又はM中心又はAl1中心又はGa1中心又は窒素炭素中心又はシリコン損傷中心を含む、請求項18又は19に記載の方法。
  22. 前記結晶欠陥は、電子スピンを有する電子と正孔スピンを有する正孔の少なくとも一方を含み、前記第1の発光中心の第1及び第2の量子化エネルギー準位はそれぞれ、前記電子又は正孔のスピンダウン状態及びスピンアップ状態を含む、請求項18から21のいずれか一項に記載の方法。
  23. 前記結晶欠陥は少なくとも1つの核スピンを含み、前記方法はさらに、前記電子又は正孔の量子状態を前記核スピンの量子状態に符号化し、前記核スピンが前記第1の量子情報を符号化するようにすることを含む、請求項22に記載の方法。
  24. 前記結晶欠陥は少なくとも1つの不対電子又は正孔スピンと少なくとも1つの核スピンとを含み、前記方法はさらに、前記少なくとも1つの不対電子又は正孔スピンと前記少なくとも1つの核スピンとの結合量子状態に前記第1の量子情報を符号化することを含む、請求項18から21のいずれか一項に記載の方法。
  25. 前記不対電子又は正孔スピンと前記核スピンとの結合量子状態に前記第1の量子情報を符号化することは、交差遷移を引き起こすことを含む、請求項24に記載の方法。
  26. 前記交差遷移は電子双極子スピン共鳴(EDSR)遷移を含む、請求項25に記載の方法。
  27. 前記不対電子又は正孔スピンを初期化された量子状態を有するように設定し、前記不対電子又は正孔スピン及び/又は前記核スピンのスピン遷移を引き起こすことによって、前記第1の量子情報を回復することをさらに含む、請求項24から26のいずれか一項に記載の方法。
  28. 前記結晶欠陥は複数の核スピンを含み、前記方法は、
    前記核スピンのうちの第1の核スピンに前記第1の量子情報を符号化することと、
    前記第1の量子ビットに第2の量子情報を符号化させることと、
    第2のマイクロ波光子状態によって前記第1の量子ビットを前記第1の発光中心に結合させて、前記第1の量子ビットと第1の発光中心の電子又は正孔の量子状態が量子相互作用を受け、前記第1の発光中心の電子又は正孔の量子状態が前記第2の量子情報を符号化するようにすることと、
    前記第1の量子ビットを前記第1の発光中心から切り離すことと、
    前記電子又は正孔の量子状態を前記核スピンのうちの第2のスピンの量子状態に符号化し、前記核スピンのうちの第2のスピンが前記第2の量子情報を符号化するようにすることと
    を含む、請求項20から27のいずれか一項に記載の方法。
  29. 前記第1の量子ビットを前記第1の発光中心に結合させる前に、前記結晶欠陥中心を光パルスで照射することによって束縛励起子を生成することを含む、請求項18から28のいずれか一項に記載の方法。
  30. 前記第1の量子情報を前記正孔のスピン状態に符号化することを含む、請求項22から29のいずれか一項に記載の方法。
  31. 前記発光中心はシリコン結晶中の不純物原子を含む、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
  32. 前記不純物原子は二重ドナー原子を含む、請求項31に記載の方法。
  33. 前記二重ドナーはセレン原子、テルル原子又は硫黄原子である、請求項32に記載の方法。
  34. 前記シリコン結晶中のシリコン原子の少なくとも95%がシリコン28である、請求項18から33のいずれか一項に記載の方法。
  35. 前記第1の量子ビットは第1の冷却装置内にあり、前記第2の物質量子ビットは第2の冷却装置内にあり、前記第1及び第2の共振器は、前記第1及び第2の冷却装置の外側を通る光路によって接続される、請求項14から34のいずれか一項に記載の方法。
  36. 前記第1及び第2の冷却装置の外側にある前記光路の少なくとも一部がΔESQ/kBよりも高い温度にあり、kBはボルツマン定数である、請求項35に記載の方法。
  37. 前記光路は光ファイバを含む、請求項35又は36に記載の方法。
  38. ΔESQは1.3meV以下である、請求項1から37のいずれか一項に記載の方法。
  39. 前記第1の量子ビットは超伝導量子ビットである、請求項1から38のいずれか一項に記載の方法。
  40. 前記第1の量子ビットは量子ドット又はイオントラップを含む、請求項1から38のいずれか一項に記載の方法。
  41. 超伝導量子ビットの量子状態を光学光子に転送するための方法であって、
    エネルギーΔE1によって分離された対応するエネルギー準位を有する2つの量子状態を有する超伝導量子ビットを、ΔE1に近いエネルギーによって分離された対応するエネルギー準位を有する第1及び第2の量子状態と、前記第1及び第2の状態に相当するエネルギー準位からそれぞれエネルギーΔE2及びΔE3によって分離された対応するエネルギー準位を有する第3及び第4の量子状態とを有するシリコン中の発光中心に結合させることと、
    後に前記エネルギーΔE2及び/又はΔE3に相当する周波数を有する光子モードを支持する光学構造に前記発光中心を結合させることと
    を含む方法。
  42. ΔE2≠ΔE3である、請求項41に記載の方法。
  43. 前記超伝導量子ビットを前記発光中心に結合させることは、前記エネルギーΔE1に相当するマイクロ波共振周波数を有する共振器によって行われる、請求項41又は42に記載の方法。
  44. 前記超伝導量子ビットと前記発光中心との結合を、結合した前記超伝導量子ビットと前記発光中心の2量子ビットのラビ周波数の奇数個の周期に等しい時間維持することと、後に前記超伝導量子ビットと前記発光中心との結合を切り離すこととを含む、請求項41から43のいずれか一項に記載の方法。
  45. 前記光学構造は光共振器である、請求項41から44のいずれか一項に記載の方法。
  46. 前記光学構造内の光子を検出することを含む、請求項41から45のいずれか一項に記載の方法。
  47. 超伝導量子ビットの量子状態を光学光子に転送するための方法であって、
    マイクロ波光子によって前記超伝導量子ビットの量子状態を発光中心の量子状態ともつれさせることと、
    後に前記発光中心の量子状態を光学光子状態にもつれさせることと
    を含む方法。
  48. 前記発光中心の量子状態を前記光学光子にもつれさせる前に、前記発光中心の量子状態を操作することを含む、請求項47に記載の方法。
  49. 第1の量子情報を保存するための方法であって、
    第1の量子状態を有する量子ビットをシリコン中のT中心の電子スピン又はホールスピンと結合させて、前記第1の量子状態を前記電子スピン又はホールスピンの量子状態に転送することと、
    前記電子スピン又は正孔スピンを前記量子ビットから切り離すことと
    を含む方法。
  50. 後に前記電子スピン又は正孔スピンの量子状態と前記T中心の複数の核スピンのうちの第1の核スピンの量子状態との間に量子相互作用を引き起こし、前記第1の量子情報の一部又は全部が前記第1の核スピンに符号化されるようにすることを含む、請求項49に記載の方法。
  51. 第2の量子状態を有するように前記量子ビットを設定することと、
    前記量子ビットを前記T中心の電子スピン又はホールスピンと結合させて、前記第2の量子状態を前記電子スピン又はホールスピンに転送することと
    を含む、請求項49又は50に記載の方法。
  52. 前記電子スピン又はホールスピンを前記量子ビットから切り離すことと、
    後に前記電子スピン又は正孔スピンの量子状態を前記T中心の複数の核スピンのうちの第2の核スピンの量子状態に転送することと
    をさらに含む、請求項51に記載の方法。
  53. 量子情報を保存するための装置であって、
    マイクロ波周波数に相当するエネルギーΔESQによって分離された第1及び第2の量子化エネルギー準位を有する第1の量子ビットと、
    エネルギーΔELC1によって分離された第1及び第2の量子化エネルギー準位を有するシリコン中の発光中心と、
    マイクロ波光子によって前記第1の量子ビットを前記発光中心に結合させるための手段と
    を含む装置。
  54. 前記第1の量子ビットは超伝導量子ビットである、請求項53に記載の装置。
  55. 前記第1の量子ビットは量子ドット又はイオントラップである、請求項53に記載の装置。
  56. 前記結合させるための手段はマイクロ波共振器を含む、請求項53から55のいずれか一項に記載の装置。
  57. 前記結合させるための手段は、前記エネルギーΔELC1と前記エネルギーΔESQの一方又は両方を調整してΔELC1とΔESQが実質的に等しくなるようにするための手段を含む、請求項53から56のいずれか一項に記載の装置。
  58. 前記第1の量子ビットと前記発光中心の2量子ビットのラビ周波数のn個の半周期に実質的に等しい時間、前記第1の量子ビットを前記発光中心に結合させるための手段を含み、nは奇数である、請求項53から57のいずれか一項に記載の装置。
  59. 前記発光中心はT中心を含む、請求項53から58のいずれか一項に記載の装置。
  60. 前記発光中心はT中心の集合体を含む、請求項53から58のいずれか一項に記載の装置。
  61. 前記T中心の不対電子を前記T中心の核スピンに選択的に結合させるための手段を含む、請求項57又は58に記載の装置。
  62. 前記発光中心はシリコン基板内にあり、前記第1の量子ビットは前記シリコン基板上に支持される、請求項53から61のいずれか一項に記載の装置。
  63. 超伝導量子ビットの量子状態を光学光子に転送するための装置であって、
    エネルギーΔE1によって分離された対応するエネルギー準位を有する2つの量子状態を有する超伝導量子ビットと、
    ΔE1に近いエネルギーによって分離された対応するエネルギー準位を有する第1及び第2の量子状態と、前記第1及び第2の量子状態に相当するエネルギー準位からそれぞれエネルギーΔE2及びΔE3によって分離された対応するエネルギー準位を有する第3及び第4量子状態とを有するシリコン中の発光中心と、
    前記超伝導量子ビットを前記発光中心に結合させるための手段と、
    前記エネルギーΔE2及び/又はΔE3に相当する周波数を有する光子モードを支持する光学構造に前記発光中心を結合させるための手段と
    を含む装置。
  64. 間隔を置いて配置された複数の量子ビット間に量子もつれを生成するための方法であって、前記量子ビットのそれぞれがマイクロ波周波数に相当するエネルギーΔESQによって分離された第1及び第2の量子化エネルギー準位を有し、
    前記方法は、マイクロ波光子状態によって前記量子ビットのそれぞれをシリコン中の対応する発光中心に結合させることを含み、前記発光中心は、少なくとも第1の、第2及び第3の量子化エネルギー準位を有し、前記第1及び第2のエネルギー準位は前記マイクロ波光子状態のエネルギーに相当するエネルギー差によって分離され、前記第1及び第3エネルギー準位は光学光子のエネルギーに相当するエネルギー差によって分離され、
    前記方法は、前記発光中心の前記第1及び第3のエネルギー準位間の量子遷移に相当するエネルギーを有する1つ以上の光学光子状態を支持する光学構造によって、前記発光中心のそれぞれを前記発光中心の対応する他のものに結合させること含む、方法。
  65. 量子コンピューティングの方法であって、
    前記方法は、量子情報をシリコン結晶中の欠陥に量子ビット状態として保存することを含み、前記欠陥は、対応する電子スピン状態を有する少なくとも1つの不対電子と、それぞれが対応する核スピン状態を有する複数の核スピンとを集合的に含む複数の不純物原子を含み、
    前記方法は、前記量子ビット情報を表すように前記スピン状態の1つを設定し、前記量子ビット情報の量子誤り訂正又は誤り検出のために複数の前記核スピンを使用することを含む、方法。
  66. 前記複数の核スピンを多数決局所誤り訂正のために使用することを含む、請求項65に記載の方法。
  67. 前記量子ビット情報を論理量子ビットに符号化するためのアンシラとして前記複数の核スピンを使用することを含む、請求項65に記載の方法。
  68. 前記欠陥はT中心、I中心又はM中心を含む、請求項65から67のいずれか一項に記載の方法。
  69. 前記欠陥はT中心を含む、請求項65から67のいずれか一項に記載の方法。
  70. 前記核スピンの異なる核スピン状態間の遷移のエネルギー準位は、前記核スピンの異なるものごとに異なる、請求項65から69のいずれか一項に記載の方法。
  71. 量子もつれ精製のための方法であって、
    前記方法は、シリコン結晶中の第1及び第2の欠陥を提供することを含み、前記第1及び第2の欠陥はそれぞれ、電子又は正孔スピンを含む演算量子ビットと、核スピンを含む少なくとも1つのメモリ量子ビットとを含み、
    前記方法は、
    前記第1及び第2の欠陥の演算量子ビットの量子状態をもつれさせることと、
    状態転送によって前記第1及び第2の欠陥のそれぞれの少なくとも1つのメモリ量子ビットにもつれを転送することと
    を含む方法。
  72. 前記第1及び第2の欠陥の演算量子ビットの量子状態をもつれさせるステップと、
    状態転送によって前記第1及び第2の欠陥のそれぞれの少なくとも1つのメモリ量子ビットにもつれを転送するステップと
    を繰り返すことを含む、請求項71に記載の方法。
  73. 前記欠陥はT中心、I中心又はM中心を含む、請求項71又は72に記載の方法。
  74. 前記欠陥はT中心を含む、請求項71又は72に記載の方法。
  75. シリコン結晶中の欠陥に量子情報を保存するための方法であって、
    前記欠陥の電子又は正孔スピンの量子状態を設定して第1の量子情報を符号化し、前記欠陥の第1の核スピンを第1の初期核スピン状態に初期化することと、
    前記電子又は正孔スピンと前記第1の核スピンとを含む第1のスピン遷移のエネルギーに一致する第1の波長を有する第1の光子で前記欠陥を照射することと
    を含む方法。
  76. 前記欠陥の電子又は正孔スピンの量子状態を設定して第2の量子情報を符号化し、前記欠陥の第2の核スピンを第2の初期核スピン状態に初期化することと、
    前記電子又は正孔スピンと前記第2の核スピンとを含む第2のスピン遷移のエネルギーに一致する第2の波長を有する第2の光子で前記欠陥を照射することと
    をさらに含む、請求項75に記載の方法。
  77. 前記第1の遷移は交差遷移である、請求項75又は76に記載の方法。
  78. 前記第1の光子はコヒーレントπパルスの形で提供される、請求項75から77のいずれか一項に記載の方法。
  79. 前記欠陥はT中心、I中心又はM中心を含む、請求項75から78のいずれか一項に記載の方法。
  80. 前記欠陥はT中心を含む、請求項75から78のいずれか一項に記載の方法。
  81. 本明細書に記載の新規かつ発明的な特徴、特徴の組み合わせ、又は特徴の部分的な組み合わせを有する装置。
  82. 本明細書に記載の新規かつ発明的なステップ、動作、ステップ及び/又は動作の組み合わせ、又はステップ及び/又は動作の部分的な組み合わせを有する方法。
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