JP2023535299A - 物理学ベースのシミュレーションを介したポリペプチドにおけるペプチド切断の予測 - Google Patents

物理学ベースのシミュレーションを介したポリペプチドにおけるペプチド切断の予測 Download PDF

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Abstract

本開示は、ポリペプチドの分解に関し、特に、所定のポリペプチド分子のペプチド結合が切断反応に感受性がある確率を予測する技術に関する。具体的には、本開示の態様は、ポリペプチドの表現を生成すること、表現を使用して分子動力学シミュレーションを実施して、ポリペプチド立体構造セットを得ること、各ポリペプチド立体構造について、アミノ酸の空間特性を決定すること、空間特性に基づいて各ポリペプチド立体構造の求核攻撃距離を推定すること、各ポリペプチド立体構造の求核攻撃距離に基づいて、切断反応に感受性がある反応性立体構造を確認すること、反応性立体構造におけるアミノ酸の空間特性の自由エネルギーを決定すること、および自由エネルギーに基づいて、アミノ酸の側鎖が反応性立体構造に捕捉される確率を予測することを対象とする。【選択図】図1

Description

優先権の主張
本出願は、2020年7月13日出願の米国特許仮出願第63/051,166号の利益および優先権を主張し、該仮出願は、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に援用される。
本開示は、ポリペプチドの分解に関し、特に、所定のポリペプチド分子のペプチド結合が切断反応に感受性がある確率を予測する技術に関する。
ポリペプチド治療薬は成功しており、現在新たな薬物承認のかなりの割合を表している。部分的には、この成功は、重要な疾患標的に対するポリペプチド、例えばモノクローナル抗体(mAb)で達成することができる高い親和性および特異性に起因することができる。加えて、mAbは、断片結晶化可能領域(Fc領域)(抗体の尾部領域)とFc領域再利用受容体(FcRn)との相互作用を介して長い血清半減期を有し、よって少ない頻度の投薬を可能にすることができる。一部の疾患設定、例えば長い半減期が望ましくない急性治療において、またはFcRn再利用が活性ではない組織環境、例えば目において、抗原結合断片(Fab)がインタクトなmAbより好ましいこともある。
治療剤としてのこれらの利点にもかかわらず、mAbおよび抗体断片は、化学的および物理的に不安定になりやすく、このことはポリペプチドの分解につながり、最終的にこれらの有用性を限定しうる。物理的不安定性は、可溶型凝集、沈殿およびゲル形成として現れることがある。化学的不安定性は、いくつか挙げると、脱アミド化(例えば、アスパラギン(Asn)脱アミド化)、異性化(例えば、アスパラギン酸(Asp)異性化)、ならびに酸化(例えば、トリプトファン(Trp)およびメチオニン(Met)残留物の酸化)として現れることがある。生物製剤の文脈において、分解はポリペプチド治療薬の利用可能性を低減する、および/または標的の生物学的効果を誘発する確率を低減することがある。例えば、Asp異性化は、ポリペプチド治療薬の力価の損失をもたらし、Asp異性化によるイソアスパラギン酸の形成は、アルツハイマー病と関連している。治療剤開発の過程で、所定のポリペプチドの分解の確率を早期に検出することができると有利である。
様々な実施形態において、コンピュータ実装方法であって、側鎖および骨格を有するアミノ酸を含むポリペプチドのポリペプチド立体構造について、ポリペプチド立体構造にあるときのアミノ酸の骨格の二面角および側鎖の二面角を決定することと;骨格の二面角および側鎖の二面角に基づいて、ポリペプチド立体構造にあるときのアミノ酸の2つの原子、官能基またはこれらの組み合わせの間の求核攻撃距離を決定することであって、2つの原子または官能基の一方がアミノ酸の側鎖にあり、2つの原子または官能基のもう一方がアミノ酸の骨格にある、求核攻撃距離を決定することと;ポリペプチド立体構造にあるときのアミノ酸の求核攻撃距離に基づいて、ポリペプチド立体構造が、切断反応に感受性がある反応性立体構造であることを決定することと;ポリペプチド立体構造が反応性立体構造であることの決定に応じて、反応性立体構造にあるときのアミノ酸の骨格の二面角および側鎖の二面角の自由エネルギーを決定することと;アミノ酸の骨格の二面角および側鎖の二面角の自由エネルギーに基づいて、アミノ酸の側鎖が反応性立体構造に捕捉される確率を予測することと、を含む、コンピュータ実装方法が提供される。
一部の実施形態において、コンピュータ実装方法は、ポリペプチドの表現を生成することと;表現を使用して分子動力学シミュレーションを実施することであって、分子動力学シミュレーションの実施の結果が、ポリペプチド立体構造を含むポリペプチドのポリペプチド立体構造セットを含む、分子動力学シミュレーションを実施することと、をさらに含む。
一部の実施形態において、コンピュータ実装方法は、アミノ酸の側鎖が反応性立体構造に捕捉される結果としてポリペプチドが化学分解する確率を予測することをさらに含む。
一部の実施形態において、コンピュータ実装方法は、アミノ酸の側鎖が少なくとも1つの反応性立体構造に捕捉される確率および/またはポリペプチドが化学分解する確率を出力することをさらに含む。
一部の実施形態において、コンピュータ実装方法は、アミノ酸の側鎖が少なくとも1つの反応性立体構造に捕捉される確率および/またはポリペプチドが化学分解する確率に基づいて、治療剤の少なくとも一部として使用される潜在的なポリペプチドのリストからポリペプチドを取り除くことをさらに含む。
一部の実施形態において、コンピュータ実装方法は、アミノ酸の側鎖が少なくとも1つの反応性立体構造に捕捉される確率および/またはポリペプチドが化学分解する確率に基づいて、治療剤の少なくとも一部として使用される潜在的なポリペプチドのリストにおいて、ポリペプチドを別のポリペプチドより低くランク付けすることであって、別のポリペプチドのアミノ酸の側鎖が少なくとも1つの反応性立体構造に捕捉される確率および/または別のポリペプチドが化学分解する確率は、ポリペプチドのアミノ酸の側鎖が少なくとも1つの反応性立体構造に捕捉される確率および/またはポリペプチドが化学分解する確率より小さい、ポリペプチドを別のポリペプチドより低くランク付けすることをさらに含む。
一部の実施形態において、ポリペプチドが化学分解する確率の予測は、満たされた場合に周囲の溶媒の溶媒分子と結合するための閾値を超える空間接近容易性をポリペプチドのアミド基が有することを示す、接近容易性制約を確認することと;接近容易性制約がポリペプチドの1つまたは複数の空間特性の評価に基づいて満たされていることを、反応性立体構造について決定することと、を含む。
一部の実施形態において、ポリペプチド立体構造が反応性立体構造であることの決定は、満たされた場合に側鎖内の原子が骨格内の別の原子と既定距離閾値内にあることを示す、距離基準を決定することと;距離基準が、反応性立体構造のアミノ酸の求核攻撃距離と既定距離閾値との比較に基づいて、反応性立体構造について満たされていることを決定することと、を含む。
一部の実施形態において、自由エネルギーは、反応性立体構造のアミノ酸の骨格の二面角および側鎖の二面角の自由エネルギープロファイルの分析に基づいて決定され、骨格の二面角および側鎖の二面角の空間における自由エネルギープロファイルは、ビン集団(bin population)から算出される。
一部の実施形態において、アミノ酸の側鎖が反応性立体構造中に捕捉される確率の予測は、満たされた場合にアミノ酸の骨格の二面角および側鎖の二面角の自由エネルギーが既定エネルギー閾値内にあることを示すエネルギー基準を決定することと;エネルギー基準が、反応性立体構造のアミノ酸の骨格の二面角および側鎖の二面角の自由エネルギーと既定エネルギー閾値との比較に基づいて反応性立体構造について満たされていることを決定することと、を含む。
一部の実施形態において、1つまたは複数のデータプロセッサを含み;1つまたは複数のデータプロセッサで実行される場合、本明細書に開示されている1つまたは複数の方法の一部またはすべてを、1つまたは複数のデータプロセッサに実施させる命令を含有する非一時的なコンピュータ読み取り可能記憶媒体を含む、システムが提供される。
一部の実施形態において、非一時的な機械読み取り可能記憶媒体に有形的に統合され、かつ1つまたは複数のデータプロセッサに本明細書に開示されている1つまたは複数の方法の一部またはすべてを実施させるように構成された命令を含む、コンピュータプログラム製品が提供される。
本開示の一部の実施形態は、1つまたは複数のデータプロセッサを含むシステムを含む。一部の実施形態において、システムは、1つまたは複数のデータプロセッサで実行される場合、本明細書に開示されている1つまたは複数の方法の一部もしくはすべて、および/または1つまたは複数の過程の一部もしくはすべてを1つまたは複数のデータプロセッサに実施させる命令を含む非一時的なコンピュータ読み取り可能記憶媒体を含む。本開示の一部の実施形態は、本明細書に開示されている1つまたは複数の方法の一部もしくはすべて、および/または1つまたは複数の過程の一部もしくはすべてを、1つまたは複数のデータプロセッサに実施させるように構成された命令を含む非一時的な機械読み取り可能記憶媒体に、有形的に統合されたコンピュータプログラム製品を含む。
用いられている用語および表現は、説明のための用語として使用され、限定するためではなく、そのような用語および表現の使用は、示されているおよび記載されている特徴またはその一部分の任意の同等物を除外することを意図せず、様々な修正が特許請求される本発明の範囲内で可能であることが認識される。よって、特許請求される本発明は実施形態および任意選択の特徴によって特定的に開示されているが、本明細書に開示されている概念の修正および変更は、当業者により求められてもよく、そのような修正および変更は、添付の特許請求の範囲により定義されている本発明の範囲内であることが考慮されることを理解されたい。
本開示は、添付図面と共に記載される。
様々な実施形態による例示的な切断反応の表現を示す。 2つの理想的な反応性立体構造(AおよびB)を示す。様々な実施形態による骨格カルボニルのアスパラギン(Asn)側鎖窒素への求核攻撃の距離を最小限にする二面角を示す。 2つの理想的な反応性立体構造(AおよびB)を示す。様々な実施形態による骨格カルボニルのアスパラギン(Asn)側鎖窒素への求核攻撃の距離を最小限にする二面角を示す。 様々な実施形態により1.5us分子動力軌道から算出された、骨格二面角Ψに沿った自由エネルギープロファイル、ならびに側鎖二面角ΧおよびΧに沿った二次元自由エネルギーランドスケープを示す。 様々な実施形態による、分子動力学シミュレーションおよび分子の空間的性質の評価に基づいて、切断反応の確率を生成する過程を示す。 様々な実施形態による分子動力学シミュレーションのためのシステムおよび方法の使用に適切なコンピューティングデバイスの一例を示す。 様々な実施形態による、CDR-L3配列(図6A)、N末端加水分解産物(図6B)およびC末端加水分解産物(図6C)を担持する天然のペプチドの抽出イオンクロマトグラムを示す。 様々な実施形態による、98.0分で溶出するN末端加水分解産物のMS1スペクトル(図7A)、98.8分で溶出するN末端加水分解産物のMS1スペクトル(図7B)、AsnのN末端加水分解産物の理論的MS1スペクトル(図7C)およびAspのN末端加水分解産物の理論的MS1スペクトル(図7D)を示す。 様々な実施形態によるFab2におけるAsn-Proペプチド結合加水分解を示す。 様々な実施形態による試験抗体におけるAsn-Proペプチド加水分解の速度を示す。
添付図面では、類似した成分および/または特徴は同じ参照表示を有することができる。さらに、同じタイプの様々な成分は、後に続く破線による参照表示により、および類似した成分を区別する第2の表示より区別されうる。第1の参照表示のみが本明細書に使用される場合、記載は、第2の参照表示にかかわりなく、同じ第1の参照表示を有する類似した成分のいずれか1つに当てはまる。
I.概要
本開示は、所定のポリペプチド分子のペプチド結合(例えば、アスパラギン(Asn)と嵩高残基、例えばプロリン(Pro)との間のペプチド結合)が、切断反応への感受性がある確率を予測する技術を記載する。所定のポリペプチドは、任意の数の多数の立体構造を有することができ、それらのうちの一部は反応性立体構造であり、一部は非反応性立体構造である。ポリペプチドの分解をもたらす切断反応は、多数の原子の間の反応(例えば、骨格カルボニルの側鎖窒素への求核攻撃、または側鎖のγ炭素における骨格の窒素への求核攻撃)を含むことができる。原子が切断反応において反応するような反応性立体構造をポリペプチドが取るか否かは、原子の物理的近接性(例えば、求核攻撃の距離(dN))、ポリペプチドの二面角の自由エネルギープロファイル、立体嵩高による立体障害、ならびに環境条件、例えば、pHおよび溶媒の接近容易性を含む多数の要因によって左右される。
I.A.原子間距離反応制約
分子の2つの原子間の反応(例えば、2つの原子のうちの1つへの求核攻撃)が起こりうるか否かは、2つの原子の近接性によって左右されうる。一部の場合において、ペプチド立体構造の空間特性は、絶対的もしくは相対的な原子位置、および/または2つの原子間の距離を含むことができる。一部の場合において、空間特性は、分子中の2つの原子が互いにどれほど近くにあるか(よって、反応が起こりうるか否か)について影響を及ぼすこと、または決定することができる他の幾何学関連情報、例えば、多数の原子間の角度、または反応に関わる一部もしくはすべての原子に関係する二面角(例えば、感受性部位、例えば、感受性加水分解部位に隣接するアミノ酸の多数の二面角)を含むことができる。例えば、空間特性は、(i)骨格の4つの原子(N-Cα-C-Nn+1原子から構成される)により規定される単一の骨格二面角Ψ、ならびに(ii)側鎖の4つの原子(C-Cα-Cβ-Cγ原子から構成される)により規定されるΧおよび側鎖の4つの原子(Cα-Cβ-Cγ-O原子から構成される)により規定されるΧの2つの側鎖二面角を含むことができ、これらを使用して、側鎖窒素原子と骨格のγ炭素との間の距離を推定することができる。
二面角は、空間の1つの軸に沿った1つの二面角(例えば、Ψ)、空間の別の軸に沿った別の二面角(例えば、Χ)、および空間の別の軸に沿った別の二面角(例えば、Χ)に対応する空間を規定することによって推定されうる。空間内の多数の領域は、空間特性に基づいて規定することができ、各領域は、数値確率、分類確率(例えば、非常に低い、低い、中程度、高い)または二項確率(binary probability)が含まれうる予測反応確率に関連する。例えば、第1の領域は、求核攻撃に関与しうる2つの原子間の距離が最小限または閾値未満(例えば、2オングストロームまたは3オングストローム)になるようにポリペプチドを構成する、二面角(例えば、Ψ、ΧおよびΧ)の特定の範囲に対応することができる。一方、第2(例えば、残り)の領域は、2つの原子が閾値を超えて分離され、よって求核攻撃に関与しそうにもないようにポリペプチドを構成する、二面角の特定の範囲に対応することができる。
I.B.立体障害および自由エネルギー制約
切断反応の確率は、分子動力学モデルシミュレーションによる側鎖立体構造の決定を介して探求することができる。ポリペプチドの三次元構造が側鎖を非反応性立体構造中に制限する場合、側鎖が反応性立体構造に接近するためにはエネルギー的に好ましくない。したがって、立体障害の存在は、反応性立体構造への接近に非常に高い自由エネルギーバリアをもたらしうる。側鎖二面角を伴う自由エネルギー分析は、反応性立体構造に向かう二面角の周りの回転が立体障害により限定され、よって分解が無効になるか否かを明らかにすることができる。インシリコ手法は、実験データが入手可能ではない場合、リスク評価にとって特に有用でありうる。しかし、反応性立体構造を確認し、それに接近する能力は、切断反応が起こると考えられるか否かを決定するのに重要であるとしても、切断反応が起こるか否かの絶対的な決定因ではない。換言すると、側鎖は、反応性立体構造に接近することができうるが、切断反応がエネルギー的に好ましくないことがあるので反応しない。
よって、1つまたは複数の領域(反応確率に対応する)は、エネルギーバリア性質(例えば、反応性立体構造への接近に非常に高い自由エネルギーバリアをもたらしうるのに十分な立体障害の存在)を示して、分解反応を上述の構成的立体構造と組み合わせて予測するように、立体効果および/またはエネルギープロファイル範囲を介して規定されうる。領域は、別々に規定されて、立体障害および/または自由エネルギー制約を表しうることが理解される。よって、ポリペプチドが反応性立体構造に移行して切断反応を受けると考えられる確率を予測する、分子動力学シミュレーションを行うことができる。この予測は、ポリペプチドを特定の切断反応に感受性があるようにする空間特徴を確認すること、ならびに規定された立体障害および/または自由エネルギーによる分子動力学シミュレーションを使用して、ポリペプチドが、これらの空間特徴を有する立体構造に移行する確率を予測することを含むことができる。
I.C.溶媒接近容易性反応制約
原子間距離基準が満たされた(例えば、骨格および側鎖の二面角の評価に基づいて)、ならびに自由エネルギー基準が満たされた(例えば、骨格および側鎖の二面角の自由エネルギープロファイルの評価に基づいて)場合であっても、化学分解は、溶媒なしでは起こらない。よって、追加の化学分解制約には、水分子(または、他の溶媒)が加水分解のために接近容易になることが必要となりうる。制約は、シミュレーションの全体にわたって水分子の量を追跡することによって実行することができる。よって、シミュレーションは、ポリペプチドの個別の原子の位置を追跡することに加えて、多数の溶媒分子(および例えば、潜在的に、多数の溶媒分子のそれぞれの各原子)のそれぞれの位置を追跡することができる。それぞれのタイムステップにおいて、溶媒分子が、ポリペプチドの特定の部位(例えば、ポリペプチド分子の骨格アミド部位)からの所定の距離内にあるか否かを決定することができる。一部の立体構造は、溶媒分子が特定のポリペプチド部位に接近することを、ポリペプチド内の(例えば)折り畳みの結果として阻害しうる。
I.D.環境制約
治療剤、例えば、mAbおよび抗体断片は、化学的および物理的に不安定になりやすく、このことはこれらの有用性を限定しうる。このことは、相補性決定領域(CDR)の残基が不安定である場合に大きな懸念となることがあり、それは、これらの部位の化学変化が力価に影響を与えると思われるからである。タンパク質治療薬を使用する有効な疾患治療の開発は、治療剤が、有用であるために製剤および生理的条件の両方において十分な安定性を示すことが必要である。インシリコ試験に前進があったが、候補分子が更なる開発に適切であるかをランク付けするためには、より多くの場合に熱ストレス負荷がin vitroで適用される。mAbは、一般に塩基性等電点を有し、脱アミド化率がpHと共に増加するので、抗体は、溶解度を増加し、分解を遅くするため、安定性のために通常僅かに酸性(pH5~6)条件下で製剤化および試験される。
この手法は、典型的な製剤条件下で良好な貯蔵寿命を有する候補を選択するために有用でありうるが、生理的イオン強度およびpH(約7.4)条件下で十分ではない安定性を有する分子は見逃されることもある。よって、追加の化学分解制約には、ある特定のpHまたはpH範囲が存在することが必要となりうる。制約は、シミュレーションの全体にわたって反応のpHを追跡することによって実行することができる。よって、シミュレーションは、ポリペプチドの個別の原子の位置を追跡することに加えて、pH条件を追跡することができる。それぞれのタイムステップにおいて、pHが所定の範囲内であるか否かを決定することができる。一部の立体構造(反応性、またはそうではないもの)は、(例えば)反応が起こっている環境のそのときのpHの結果として、いくらか優勢でありうる。他のタイプの環境因子では立体構造に影響する他の変数を推論することが企図されることが理解される。例えば、代替として、または加えて、温度制約を他の因子と、例えば、pHおよび空間特性と組み合わせて使用して、ポリペプチドが反応性立体構造に移行して切断反応をうけると思われる確率を予測することができる。
I.F.シミュレーションおよび制約の使用
ポリペプチドの予測分解を検出することによって、類似した治療効果を有するが、そのような分解ハンディキャップを有さない別のポリペプチドより、そのペプチドが除外されうる、またはポリペプチドは、分解の望ましくない効果を軽減する手法に連結されうる。所定の分子が分解するか否かを予測する1つの手法は、シミュレーションを実行することである。しかし、化学分解には、亜原子相互作用、共有結合形成、および共有結合破損が関わりうる。これらのタイプの事象を、従来の分子動力学を使用してシミュレートすることは可能ではない。一部の技術は、アミノ酸モチーフが分子に存在することに基づいて反応確率を予測している。反応確率はモチーフによって劇的に異なりうるが、モチーフの影響は、分子内の位置(例えば、モチーフが重鎖または軽鎖にあるか否か、および鎖内のその位置)によって左右されうる極めて安定していると考慮されるモチーフであっても、実験データは、全体的な相対安定性にもかかわらず反応がモチーフで起こる一部の事例を確認している。
これらの制限および問題に対処するため、本明細書に記載されている技術は、分子動力学シミュレーションおよび分子構造技術を実行して、反応確率を生成する。分子動力学シミュレーションにおける1つまたは複数の反復は、ポリペプチドの立体構造がどのように経時的に変化するかをシミュレートすることができる。反応確率は、空間特性に基づいて1つまたは複数の立体構造について生成されうる(例えば、これは様々な反応制約が満たされているか否かを決定することできる)。例えば、分子動力学シミュレーションにより生成された各立体構造に関し、立体構造におけるポリペプチドの空間特性を使用して、原子間距離反応制約およびエネルギープロファイル制約が満たされているか否かを決定することができ、このことは、立体構造を有するポリペプチドが切断反応に関与する準備が整っていることを示すことができる。溶媒および環境包括的モデル化を使用して、溶媒分子に接近し反応する、反応に好ましいように構成されたポリペプチド分子の割合を推定することができる。各制約が満たされているシミュレーション生成ポリペプチド立体構造の割合に基づいて、所定のポリペプチドが化学分解して、目的の特定の生成物になるか否か、なる程度、および/またはなる速度を示す出力を生成することができる。よって、本明細書に開示されているシミュレーションベース技術は、(例えば、ポリペプチドにおけるアミノ基の特性に対応した、立体構造から独立したデータではなく)ポリペプチドの様々な立体構造の三次元構造の分子動力学および分析に基づいて、予測反応感受性を生成することができる。
本開示の1つの例示的な実施形態は、コンピュータ実装方法であって、側鎖および骨格を有するアミノ酸を含むポリペプチドのポリペプチド立体構造について、ポリペプチド立体構造にあるときのアミノ酸の骨格の二面角および側鎖の二面角を決定することと;骨格の二面角および側鎖の二面角に基づいて、ポリペプチド立体構造にあるときのアミノ酸の2つの原子、官能基またはこれらの組み合わせの間の求核攻撃距離を決定することであって、2つの原子または官能基の一方がアミノ酸の側鎖にあり、2つの原子または官能基のもう一方がアミノ酸の骨格にある、求核攻撃距離を決定することと;ポリペプチド立体構造にあるときのアミノ酸の求核攻撃距離に基づいて、ポリペプチド立体構造が、切断反応に感受性がある反応性立体構造であることを決定することと;ポリペプチド立体構造が反応性立体構造であることの決定に応じて、反応性立体構造にあるときのアミノ酸の骨格の二面角および側鎖の二面角の自由エネルギーを決定することと;アミノ酸の骨格の二面角および側鎖の二面角の自由エネルギーに基づいて、アミノ酸の側鎖が反応性立体構造に捕捉される確率を予測することと、を含む、コンピュータ実装方法を対象とする。一部の場合において、方法は、アミノ酸の側鎖が反応性立体構造に捕捉される結果としてポリペプチドが化学分解する確率を予測することをさらに含む。
本開示の別の例示的な実施形態は、コンピュータ実装方法であって、側鎖および骨格を有するアミノ酸を含むポリペプチドの表現を生成することと;表現を使用して分子動力学シミュレーションを実施することであって、分子動力学シミュレーションの実施の結果が、ポリペプチドのポリペプチド立体構造セットを含む、分子動力学シミュレーションを実施することと;ポリペプチド立体構造セットの各ポリペプチド立体構造について、ポリペプチド立体構造にあるときのアミノ酸の空間特性を決定することであって、空間特性が骨格の二面角および側鎖の二面角を含む、アミノ酸の空間特性を決定することと;骨格の二面角および側鎖の二面角の組み合わせに基づいて、各ポリペプチド立体構造のアミノ酸の2つの原子、官能基またはこれらの組み合わせの間の求核攻撃距離を推定することであって、2つの原子または官能基の一方がアミノ酸の側鎖にあり、2つの原子または官能基のもう一方がアミノ酸の骨格にある、求核攻撃距離を推定することと;各ポリペプチド立体構造のアミノ酸の求核攻撃距離に基づいて、切断反応に感受性がある少なくとも1つの反応性立体構造を確認することと;少なくとも1つの反応性立体構造のアミノ酸の骨格の二面角および側鎖の二面角の自由エネルギーを決定することと;アミノ酸の骨格の二面角および側鎖の二面角の自由エネルギーに基づいて、アミノ酸の側鎖が少なくとも1つの反応性立体構造に捕捉される確率を予測することと、を含む、コンピュータ実装方法を対象とする。一部の場合において、方法は、アミノ酸の側鎖が少なくとも1つの反応性立体構造に捕捉される結果としてポリペプチドが化学分解する確率を予測することをさらに含む。
II.定義
用語「ポリペプチド」は、本明細書に使用される場合、任意の長さのアミノ酸のポリマーを指すために使用され、タンパク質、DNAおよび/またはRNAを含むことができる。ポリマーには、任意のタンパク質様相を含むタンパク質、例えば、置換アミノ酸(非天然アミノ酸)、代替糖化(alternate glycation)、タンパク質、DNA複合体、および/またはウイルス表面コートタンパク質を挙げることができる。ポリマーは、直鎖であっても分岐鎖であってもよく、修飾アミノ酸を含んでもよく、非アミノ酸によって中断されていてもよい。この用語はまた、天然に修飾されている、または介入により、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、または任意の他の操作もしくは修飾、例えば、標識成分とのコンジュゲーションにより修飾されているアミノ酸ポリマーを包含する。また、この定義内に含まれるものは、例えば、アミノ酸の1つまたは複数の類似体(例えば、非天然アミノ酸などを含む)を含有する、ならびに当該技術に公知の他の修飾を含有するポリペプチドである。
用語「化学分解」は、本明細書に使用される場合、分子(例えば、ポリペプチド分子)が2つ以上の断片に分解される過程を指すために使用される。ポリマーの文脈において、化学分解は、対応するモノマーへのポリマーの完全脱重合、または(例えば、1つもしくは複数のオリゴマー、および潜在的に1つもしくは複数の他の化学物質への)部分脱重合を含むことができる。化学分解は、特定のタイプの化学的過程、例えば、トリプトファン酸化、メチオニン酸化、ASN-PROクリッピング、アスパラギン脱アミド化、またはアスパラギン酸異性化を含むことができる。
用語「求核置換または攻撃」は、本明細書に使用される場合、電子豊富な求核種が、脱離基を置き換えるため、原子または原子の基(例えば、官能基)の正電荷または部分的正電荷へ選択的に結合または攻撃する基本的なクラスの反応である。正電荷または部分的正電荷原子は、求電子剤と称される。
用語「求核攻撃距離」は、本明細書に使用される場合、電子豊富求核種と、正電荷または部分的正電荷を有する原子または原子の基(例えば、官能基)との間の距離(例えば、オングストローム)の平均値(または、平均もしくは中央値もしくは類似した距離)である。
用語「多数の立体構造」は、本明細書に使用される場合、所定のポリペプチドが任意の数の原子の空間配置を有することができ、それらのうちの一部が反応性立体構造であり、一部が非反応性立体構造であることを意味する。
用語「反応性立体構造」は、本明細書に使用される場合、アミノ酸またはポリペプチドが求核置換または攻撃を受けやすい、またはそれらに感受性がある、アミノ酸またはポリペプチドの立体構造である。
用語「非反応性立体構造」は、本明細書に使用される場合、アミノ酸またはポリペプチドが、例えば立体障害のために求核置換または攻撃を受けにくい、またはそれらに感受性がない、アミノ酸またはポリペプチドの立体構造である。
本明細書に使用される場合、動作が何かに「基づく」場合、これは動作が、何かに少なくともいくらか、または少なくとも部分的に基づいていることを意味する。
用語「実質的に」、「およそ」および「約」は、本明細書に使用される場合、当業者に理解されるように、特定されているものの大部分であるが、必ずしも全面的(特定されるものを全面的に含むこと)ではないことが定義される。任意の開示されている実施形態において、用語「実質的に」、「およそ」または「約」は、特定されるものの「範囲内[パーセンテージ内]」で置き換えられてもよく、パーセンテージには、0.1、1、5、および10パーセントが挙げられる。
III.例示的な反応発生依存性
生理的条件下において、アスパラギン(Asn)残基は脱アミド化に感受性があり、これによってアミド側鎖が加水分解されて、遊離カルボン酸を形成する。この反応の律速段階は、5員スクシンイミド環中間体の形成である。しかし、嵩高残基、例えば、プロリン(Pro)が後ろに続くAsnを含有するペプチドは、2つの残基の間にあるペプチド骨格の加水分解切断に感受性があることが示されている。少なくとも1つのmAbの軽鎖CDR-L3の相補性決定領域3に確認されたAsn-Pro部位の質量スペクトルデータは、この部位に関連する3つのペプチド:Asn-Pro部位を含有する天然トリプシンペプチド、AsnおよびイソAsnを含有するN末端加水分解産物ペプチド、およびC末端加水分解産物ペプチドの確認をもたらした。AspおよびイソAspではなくAsnおよびイソAsnを含有するN末端加水分解産物ペプチドの確認は、スクシンイミド中間体の形成が、ペプチド結合カルボニルの側鎖アミド窒素への攻撃の結果であることを示唆している。次いで、このCOOH末端スクシンイミド中間体を開いて、AsnまたはイソAsnを含有する観察されたN末端加水分解産物を形成することができる。
図1は、この例示的な切断反応の表現を示し、これは化学分解産物を産生することができる。より詳細には、図1は、骨格を有する側鎖を含むAsn残基の表現を描く。骨格の側鎖窒素原子およびγ炭素が十分に近く近接し、骨格および側鎖の二面角の自由エネルギープロファイルが反応性立体構造への移行に好ましい場合、ポリペプチド分子は、ペプチド結合カルボニルの側鎖アミド窒素への求核攻撃に感受性がある。準安定COOH末端スクシンイミド(環状イミド)中間体は、求核攻撃の結果として産生されうる。次いで、このスクシンイミド中間体を開くことができ、溶媒がスクシンイミド中間体に接近可能である場合、スクシンイミドは加水分解して、アスパラギン連結とイソアスパラギン連結の混合物になる。アスパラギン残基に関して、ポリペプチドは、その標的特性を維持することができる。しかし、イソアスパラギン残基に関して、タンパク質の立体構造およびその静電性質は、元のポリペプチドに対して変化しうる。ポリペプチドが化学分解して望ましくない産物になる可能性を、シミュレーションが高い信頼性で予測できる場合、ポリペプチドおよび/または製剤は、望ましくない化学分解を最小限にする、および標的機能性を有する活性ポリペプチドを維持するように選択されうる。
IV.原子間距離およびエネルギープロファイル制約の実行
本明細書に記載されているように、Asn-Pro加水分解の分解経路は、骨格カルボニルのAsn側鎖窒素への求核攻撃を介して進行する。この過程の必要要件は、Asn側鎖が反応性立体構造に適合するために、Asn側鎖窒素と側鎖カルボニルとの間の求核攻撃距離(dN)を低減することである。距離dは、骨格二面角Ψ(N-Cα-C-Nn+1原子から構成される)および側鎖二面角1Χ(C-Cα-Cβ-Cγ原子から構成される。これは、N-Cα-Cβ-Cγから構成される側鎖二面角と典型的に称される従来のカイ1と異なることに留意すること)およびΧ(Cα-Cβ-Cγ-O原子から構成される)の組み合わせにより主に特徴づけられる。図2Aおよび2Bに示されているように(図2Aは、タンパク質構造内のASN-PROペプチドを示し、図2Bは、タンパク質構造内のASN-PROペプチドを示し、プロリン環が可視化されている)、Asn残基では、距離dは二面角の2つの特定の組み合わせにおいて最小化することができ、第1は、骨格二面角がΨ>120で拡大される場合、ならびに側鎖二面角がΧ約-60°およびΧ約-90°である場合(図2Aおよび2Bの立体構造A)であり、第2は、骨格二面角がΨ<-60の小さい角度である場合、ならびにΧ約60°およびΧ約90°である場合(図2Aおよび2Bの立体構造B)である。より詳細には、所定の原子が別の原子へ攻撃または反応するか否かは、互いの近接性(求核攻撃距離(dN))によって左右される。一部の場合において、原子の位置および互いの角度はシミュレーションを介して追跡することができ、よって距離dも追跡することができる。他の場合では、二面角はシミュレーションを介して追跡することができ、このことを使用して、原子が反応するために十分に近いか否かを推論または推定することができる。図2Aおよび2Bは、3つの二面角Ψ、ΧおよびΧが、側鎖窒素原子と、骨格のγ炭素と間の距離dにどのように影響するかを示している。
一部の場合において、分子動力学シミュレーションは、1つまたは複数の側鎖を有するポリペプチドの表現を使用して実施することができる。分子動力学シミュレーションの実施の結果は、ポリペプチド立体構造のセットを含むことができ、ポリペプチド立体構造のセットにおける各ポリペプチド立体構造は、ポリペプチド中の各原子について、原子の位置を確認する。ポリペプチド立体構造のセットにおける各ポリペプチド立体構造について、ポリペプチド立体構造にあるときのポリペプチドのアミノ酸(例えば、Asn)の1つまたは複数の空間特性を決定する。1つまたは複数の空間特性は、多数の原子間距離、多数の角度、および/または多数の二面角を含むことができる。ある特定の場合において、空間特性は、アミノ酸の骨格の二面角および側鎖の2つの二面角を含む。求核攻撃距離dNは、空間特性(例えば、骨格の二面角および側鎖の2つの二面角の組み合わせ)に基づいて、各ポリペプチド立体構造のアミノ酸の2つの原子、官能基、またはこれらの組み合わせから算出または推定されうる。各ポリペプチド立体構造のアミノ酸の求核攻撃距離が算出または推定されると、求核置換または攻撃を受けやすい、または受ける感受性がある少なくとも1つの反応性立体構造がポリペプチドのために確認されうる。
少なくとも1つの反応性立体構造を確認するのに二面角および求核攻撃距離dNを使用するため、空間特性(例えば、二面角Ψ、ΧおよびΧ)の値の組み合わせにおける閾値求核攻撃距離に対応する距離基準が決定されうる。例えば、既定距離閾値(例えば、最小求核攻撃距離)は、距離基準が満たされているか否かを決定するため、1.0Å~4.0Å(例えば、2.5Å)に規定されうる。距離基準は、空間特性(例えば、二面角Ψ、Χ1およびΧ2)が、既定距離閾値以下である求核攻撃距離dNをもたらす場合に満たされうる。距離基準が満たされた場合、既定距離閾値を満たす立体構造は、反応性立体構造と確認される。距離基準は、空間特性(例えば、二面角Ψ、ΧおよびΧ)が、既定距離閾値を超える求核攻撃距離dNをもたらす場合には満たされない。距離基準が満たされなかった場合、立体構造は非反応性立体構造と確認される。少なくとも1つの反応性立体構造を確認する距離基準を満たすことは、代替技術、例えば、空間特性(例えば、二面角Ψ、ΧおよびΧ)の値と、ポリペプチド骨格鎖内の原子または官能基が側鎖の原子または官能基の事前規定距離内であることを示す独立した範囲または閾値との比較を使用して決定できることが理解される。
一部の場合において、二面角に沿った側鎖の自由エネルギーは、加水分解の速度に対する側鎖立体構造の役割についての機構的洞察を得るために算出することができる。自由エネルギーの値は、分子動力学モデルを介して生成することができる。図3A~3Fは、分子動力学モデルシミュレーションよって得られる、骨格二面角(Ψ)ならびに側鎖二面角(ΧおよびΧ)の自由エネルギープロファイル(ビン集団から算出)を示す。低い自由エネルギー値を有する立体構造(濃い暗色により表されている)は、分子が立体構造中にあると強く思われるので、高い自由エネルギー値(薄い暗色で表されている)を有する立体構造より安定している。低い自由エネルギーは多い集団(立体構造が反応性立体構造である場合はシミュレーション中のフレームの数)に対応し、よって、反応性立体構造の二面角の所定の組み合わせに側鎖を見出す高い可能性がある。円形は、側鎖の窒素および骨格のγ炭素を最小求核攻撃距離(例えば、2または3オングストローム)内に幾何学的に位置決めする特定の二面角範囲を確認する。円で囲んだ範囲が低い自由エネルギー値に関連する立体構造を含まない場合、出力は、ポリペプチド分子の立体構造が、前記鎖窒素原子を反応のために骨格のγ炭素に十分に近づけなかった結果、ポリペプチドが化学分解するとは思われないことを示す。
図3A~3Fの各自由エネルギープロファイルは、特定のポリペプチド構造を使用するシミュレーションに対応する。注目すべきことに、図3A~3Dの自由エネルギープロファイルは、対応するポリペプチド(Fab1、Fab2、Mab3、およびMab4)が、側鎖の窒素と骨格のγ炭素との間の距離が最小求核攻撃距離である立体構造を有すると思われることを示している。一方、図3Eおよび3Fの自由エネルギープロファイルに対応するポリペプチド(Mab5およびFab6)は、原子がこの近接性にある立体構造中にあるとは思われない。より詳細には、Ψに沿った自由エネルギープロファイルは、Fab2が主に小さな骨格二面角(Ψ<-60)を採用するが、他の構造Fab1、Fab6、Mab3、Mab4、およびMab5が、拡大立体構造(Ψ>120)を採用することを示す。したがって、反応性立体構造は、Fab2の立体構造Bに対応し、構造Fab1、Mab3、Mab4、Mab5および、Fab6の立体配置Aに対応する。立体構造Aの自由エネルギーは、Fab1、Mab3、およびMab4では非常に低く(それぞれ、0.94、0.96、および1.06kcal/mol)、このことは、これらの構造で観察された高い実験加水分解速度(それぞれ、13、15、および15%/週)と一致する。対照的に、立体構造Aの自由エネルギーは、Mab5では相対的に高く(1.56kcal/mol)、Fab6で最高(2.66kcal/mol)であり、このことは、これらの分子で観察された低い実験速度(それぞれ、5および0%/週)と十分に一致している。しかし、反応性立体構造および実験速度の自由エネルギーの一致は、Fab2では十分でなく、反応性立体構造の自由エネルギーは非常に小さい(0.75kcal/mol)が、実験速度はそれほど高くない(9%/週)。側鎖が反応性立体構造を採用したとしても、化学反応は、この場合にエネルギー的に好ましくないことが推測される。よって、一部の場合において、分子動力学モデルシミュレーション内の制約として反応エネルギーを含むことが有益でありうる。
一部の場合において、ポリペプチドのアミノ酸の側鎖が反応性立体構造に捕捉される確率は、アミノ酸の骨格および/または側鎖の1つまたは複数の二面角の自由エネルギープロファイルに基づいて予測される。ポリペプチドの三次元構造が側鎖を非反応性立体構造中に制限する場合、側鎖が反応性立体構造に接近するためにはエネルギー的に好ましくない。したがって、立体障害の存在は、反応性立体構造への接近に非常に高い自由エネルギーバリアをもたらしうる。あるいは、ポリペプチドの三次元構造が、反応性立体構造の二面角の所定の組み合わせにおいて側鎖を制限する場合、側鎖は、この反応性立体構造に捕捉されうる。したがって、二面角を伴う自由エネルギー分析、および求核攻撃距離分析は、反応性立体構造に向かう二面角の周りの回転が立体障害により限定され、よって分解が無効になるか否かを明らかにすることができる。
二面角および求核攻撃距離を伴う自由エネルギー分析を使用するためには、空間特性(例えば、二面角Ψ、ΧおよびΧ)の値の組み合わせにおいて、既定距離閾値(例えば、最小求核攻撃距離)に関連する反応性立体構造に対応する、自由エネルギー基準を決定することができる。例えば、第1の既定エネルギー閾値(最小自由エネルギー値)は、1.0kcal/mol~2.0kcal/mol(例えば、1.5kcal/mol)に規定されてもよく、これは、Ψ>120°に拡大された骨格二面角、ならびにΧが約-60°およびΧが約-90°である側鎖二面角を有する第1の立体構造に対応する。別個に、第2の既定エネルギー閾値(最小自由エネルギー値)は、1.0kcal/mol~2.5kcal/mol(例えば、2.0kcal/mol)に規定されてもよく、これは、Ψ<-60°の小さな骨格二面角、ならびにΧが約60°およびΧが約90°である側鎖二面角を有する第2の立体構造に対応する。あるいは、包括的既定エネルギー閾値(最小自由エネルギー値)は、1.0kcal/mol~2.5kcal/mol(例えば、2.0kcal/mol)に規定されてもよく、これは、求核攻撃距離を最小限にする、アミノ酸の骨格の二面角および側鎖の2つの二面角を有するすべての立体構造に対応する。一部の場合において、包括的既定閾値(最小自由エネルギー値)は、1.0kcal/mol~2.5kcal/mol(例えば、2.0kcal/mol)に規定されてもよく、これは、120°~-60°の骨格二面角Ψ、ならびに-60°~+60°のΧおよび-90°~+90°のΧの側鎖二面角を有するすべて立体構造に対応する。自由エネルギー基準は、空間特性(例えば、二面角Ψ、ΧおよびΧ)が最小自由エネルギー値(例えば、包括的既定エネルギー閾値)以下の自由エネルギーを有する場合に満たされる。自由エネルギー基準は、空間特性(例えば、二面角Ψ、ΧおよびΧ)が最小自由エネルギー値(例えば、包括的既定エネルギー閾値)を超える自由エネルギーを有する場合には満たされない。少なくとも1つの反応性立体構造を確認する自由エネルギー基準を満たすことは、代替技術を使用して、例えば、空間特性(例えば、二面角Ψ、ΧおよびΧ)の値と、アミノ酸の骨格および/または側鎖の自由エネルギーが予め定義された自由エネルギー値内であることを示す独立した範囲または閾値との比較を使用して決定できることが理解される。
ポリペプチドのアミノ酸の側鎖が反応性立体構造に捕捉される確率は、アミノ酸の骨格および/または側鎖の1つまたは複数の二面角の自由エネルギープロファイルに基づいて、数値確率、分類確率(例えば、非常に低い、低い、中程度、高い)または二項確率として規定されうる。例えば、距離基準により確認される反応性立体構造が、自由エネルギー基準により決定された低い自由エネルギー値に関連する場合、出力は、ポリペプチドのアミノ酸の側鎖が反応性立体構造に捕捉されている(側鎖が反応性立体構造に接近することができる)と思われることを示すことができる。あるいは、距離基準により確認される反応性立体構造が、自由エネルギー基準により決定された高い自由エネルギー値に関連する場合、出力は、エネルギーバリアが高すぎること、およびポリペプチドが非反応性立体構造を維持すると強く思われることを示すことができる。
ポリペプチドのアミノ酸の側鎖が反応性立体構造に捕捉される確率が決定されると、ポリペプチド分子の反応性立体構造が側鎖窒素原子を反応のために骨格のγ炭素に十分に近づけた結果としてポリペプチドが化学分解する確率を予測することが可能になりうる。ポリペプチドが化学分解する(例えば、求核攻撃および加水分解反応を受ける)確率は、ポリペプチドのアミノ酸の側鎖が反応性立体構造に捕捉される確率に基づいて、数値確率、分類確率(例えば、非常に低い、低い、中程度、高い)または二項確率として規定されうる。例えば、ポリペプチドのアミノ酸の側鎖が反応性立体構造に捕捉されていると思われる場合、出力は、ポリペプチド分子の反応性立体構造が側鎖窒素原子を反応のために骨格のγ炭素に十分に近づけた結果としてポリペプチドが化学分解すると思われることを示すことができる。あるいは、エネルギーバリアが高すぎる、およびポリペプチドが非反応性立体構造を維持すると強く思われる場合、出力は、ポリペプチドが化学分解するとは思われないこと、または分解が無効になることを示すことができる。しかし、ポリペプチドが反応性立体構造になったとしても、ポリペプチドは、反応性立体構造の確率に加えて他の因子(例えば、溶媒が接近可能であること)が存在しない限り分解することはない。したがって、一部の場合では、立体構造の挙動およびポリペプチドが化学分解する確率を予測する因子として、追加の制約が含まれうる。
V.環境および接近容易性制約の実行
ポリペプチドの立体構造の挙動および/または化学分解に対する環境因子、例えば、pH、温度、および溶媒の接近容易性の役割を、分子動力学シミュレーションにより調査することができる。環境因子、例えば、pHおよび温度は、シミュレーション内で一定と規定されうる。一部の場合において、pHは、構成分子のすべての関連するpKa値を算出すること、および所定のpHで優位なプロトン化状態を割り当てることによって規定されうる。プロトン化状態がシミュレーションの際に固定される従来の分子動力学プロトコールがここで使用されたが、シミュレーションにおいて様々なプロトン化状態を許容する代替方法、例えば、一定pH分子動力学を使用することができる。あるいは、量子力学/分子力学(QM/MM)方法を使用して、pH値の調整のためにH3O+およびOH-イオンを付加することができる。求核攻撃が起こるとしても、環境が正しい条件を有さない限り、および溶媒分子が接近可能ではない限り、ポリペプチドは分解しない。分子動力学シミュレーションは、溶媒(例えば、陽溶媒または陰溶媒)中のポリペプチドをシミュレートするようにさらに構成されうる。溶媒ブロック計量は、アミド基が非溶媒基に結合するフレームの数から、アミド基が溶媒分子(例えば、水分子)に結合するフレームの数を引いて規定することができる。よって、陰性計量は、陽性計量と比較して大きな溶媒接近容易性に対応する。陽性計量は、ポリペプチドの幾何学が、アミド基に達する溶媒分子をブロックすることを示すことができる。
VI.ポリペプチドの反応タイプを予測する過程
図4は、分子動力学シミュレーションおよび分子の空間的性質の評価に基づいて、切断反応の確率を生成する過程400を例示する。過程400は、側鎖および骨格を有するアミノ酸を含むポリペプチドの表現が生成されるブロック405から始まる。表現は、ポリペプチド(および、潜在的に溶媒)の原子、質量、電荷、および原子間接続の確認を含むことができる。表現は、ポリペプチド(および、潜在的に溶媒)の各原子の出発配位をさらに含むことができる。表現は、シミュレーションの全体にわたって計算的に適用される制約、例えば、角度または二面角、ファンデルワール(Van der Wahl)条件、自由エネルギー、pHへの制限をさらに含むことができる。
ブロック410では、表現を使用して、1つまたは複数の分子動力学シミュレーションを実施して、ポリペプチド立体構造のセットを生成する。ポリペプチド立体構造セットの各ポリペプチド立体構造は、シミュレーションにおけるタイムステップに対応することができる。ポリペプチド立体構造セットの各ポリペプチド立体構造は、ポリペプチドの各原子の原子位置を含むことができる。ポリペプチド立体構造のセットは、粒子位置からの力を算出し、運動方程式を数値的に解くことよって決定することができる。各タイムステップにおいて、各原子の位置を決定することに加えて、各原子の運動量をさらに推定することができる。
ブロック415では、ポリペプチド立体構造のセットにおける各ポリペプチド立体構造において、ポリペプチド立体構造にあるときのアミノ酸の1つまたは複数の空間特性を決定する。1つまたは複数の空間特性は、角度および/または二面角(例えば、感受性部位に隣接するアミノ酸の骨格および/または側鎖二面角のΨ、ΧおよびΧ)を含むことができる。一部の場合において、空間特性は、骨格の二面角(Ψ)および側鎖の二面角(ΧまたはΧ)を含む。他の場合において、空間特性は、骨格の二面角(Ψ)、側鎖の第1の二面角(Χ)および側鎖の第2の二面角(Χ)を含む。
ブロック420では、各ポリペプチド立体構造のアミノ酸の2つの原子、官能基、またはこれらの組み合わせの間の求核攻撃距離を、ポリペプチド立体構造にあるときのアミノ酸の1つまたは複数の空間特性に基づいて推定する。例えば、2つの原子、官能基、またはこれらの組み合わせの間の求核攻撃距離は、各ポリペプチド立体構造における二面角の各原子または官能基の位置、原子または官能基の間にある各原子の運動量、およびこれらの組み合わせを使用して推定することができる。一部の場合において、各ポリペプチド立体構造におけるアミノ酸の2つの原子、官能基、またはこれらの組み合わせの間の求核攻撃距離は、角度、二面角、または二面角(例えば、骨格の二面角と側鎖の二面角)の組み合わせに基づいて推定される。一部の場合において、2つの原子または官能基の一方は、アミノ酸の側鎖にあり、2つの原子または官能基のもう一方は、アミノ酸の骨格にある。
ブロック425では、切断反応に感受性がある少なくとも1つの反応性立体構造を、各ポリペプチド立体構造におけるアミノ酸の求核攻撃距離に基づいて確認する。一部の場合では、少なくとも1つの反応性立体構造を確認することに使用できる距離基準を決定する。距離基準は、反応性立体構造を確認する空間特性(例えば、二面角Ψ、Χ1およびΧ2)の値の組み合わせにおける最小求核攻撃距離に対応しうる。例えば、既定距離閾値(最小求核攻撃距離)は、距離基準が満たされているか否かを決定するため、0.0Å~3.0Å(例えば、約1.5Å)に規定されうる。距離基準が少なくとも1つの反応性立体構造について満たされているか否かの決定は、少なくとも1つの反応性立体構造のアミノ酸の求核攻撃距離を、既定距離閾値と比較することを含むことができる。距離基準は、求核攻撃距離が既定距離閾値以下である場合に満たされる。距離基準が満たされた場合、距離基準を満たす立体構造は、反応性立体構造と確認される。距離基準は、求核攻撃距離が既定距離閾値を超える場合には満たされない。距離基準が満たされなかった場合、距離基準を満たさない立体構造は、非反応性立体構造と確認される。
ブロック430では、少なくとも1つの反応性立体構造における、角度、二面角、または二面角(アミノ酸の骨格の二面角および側鎖の二面角)の組み合わせの自由エネルギーを決定する。自由エネルギーは、角度、二面角、または二面角の組み合わせの自由エネルギープロファイルの分析に基づいて決定することができる。一部の場合において、角度、二面角、または二面角の組み合わせの空間における自由エネルギープロファイルおよびランドスケープは、下記を使用してビン集団から算出される。
Figure 2023535299000002
式中、κはボルツマン定数であり、Tは温度であり、Nはビンiの集団であり、Nmaxは最も集合したビンの集団である。集団のないビンには、集団0.5に等しい人工バリアを与えることができる。各タイムステップにおいて、各原子の位置を決定することに加えて、自由エネルギーをさらに推定することができる。ある特定の場合において、QM/MM方法を使用して、自由エネルギーのモデルを形成することができる。
ブロック435では、アミノ酸の側鎖が少なくとも1つの反応性立体構造に捕捉される確率を、アミノ酸の角度、二面角、または二面角(例えば、アミノ酸の骨格の二面角および側鎖の二面角)の組み合わせの自由エネルギーに基づいて予測することができる。一部の場合では、アミノ酸の側鎖が少なくとも1つの反応性立体構造に捕捉される確率の予測に使用することができる自由エネルギー基準が決定される。例えば、既定エネルギー閾値(最小自由エネルギー値)は、0.0kcal/mol~1.0kcal/molに規定されてもよく、これはすべての反応性立体構造に対応する。エネルギー基準が少なくとも1つの反応性立体構造について満たされているか否かの決定は、少なくとも1つの反応性立体構造の角度、二面角、または二面角(アミノ酸の骨格の二面角および側鎖の二面角)の組み合わせの自由エネルギーを、既定エネルギー閾値と比較することを含むことができる。自由エネルギー基準は、空間特性(例えば、二面角Ψ、ΧおよびΧ)が、既定エネルギー閾値以下の自由エネルギーを有する場合に満たされる。自由エネルギー基準が満たされた場合、アミノ酸の側鎖は、反応性立体構造に捕捉されていると思われる(側鎖は反応性立体構造に接近することができる)と予測することができる。自由エネルギー基準は、空間特性(例えば、二面角Ψ、ΧおよびΧ)が、既定エネルギー閾値を超える自由エネルギーを有する場合には満たされない。自由エネルギー基準が満たされなかった場合、アミノ酸の側鎖は、高すぎるエネルギーバリアに直面し、ポリペプチドは、非反応性立体構造を維持していると思われることが予測されうる。
任意選択のブロック440では、満たされた場合に周囲の溶媒の溶媒分子と結合するための閾値を超える空間接近容易性をポリペプチドのアミド基が有することを示す、環境および接近容易性制約を決定することができる。環境および接近容易性制約は、少なくとも1つの反応性立体構造、1つもしくは複数の環境因子(例えば、pHもしくは温度)、溶媒分子の利用可能性、またはこれらの組み合わせにおいて、ポリペプチドの1つまたは複数の空間特性の評価に基づいて満たされる。
ブロック445では、ポリペプチドが化学分解する確率を、アミノ酸の側鎖が少なくとも1つの反応性立体構造に捕捉される結果として予測することができる。例えば、ポリペプチドのアミノ酸の側鎖が反応性立体構造に捕捉されていると思われる場合、ポリペプチドは、反応性立体構造の結果として化学分解を受けると思われることを予測することができる。あるいは、エネルギーバリアが高すぎる、およびポリペプチドが非反応性立体構造を維持すると強く思われる場合、ポリペプチドは化学分解を受けるとは思われないことを予測することができる。ある特定の場合において、ポリペプチドが化学分解する確率は、反応性立体構造ならびに環境および接近容易性の制約の結果として予測することができる。
ブロック450では、アミノ酸の側鎖が少なくとも1つの反応性立体構造に捕捉される確率および/またはポリペプチドが化学分解する確率を出力する。例えば、アミノ酸の側鎖が少なくとも1つの反応性立体構造に捕捉される確率および/またはポリペプチドが化学分解する確率は、別のデバイスに表示または転送されうる。一部の場合において、アミノ酸の側鎖が少なくとも1つの反応性立体構造に捕捉される確率および/またはポリペプチドが化学分解する確率を使用して、特定の方法(例えば、特定の条件に対する治療を開発するため)に使用されるポリペプチドを選択する、および/またはポリペプチドの特定の製剤(例えば、水がポリペプチドに接近するのを制限するため)を選択する。
一部の場合では、アミノ酸の側鎖が少なくとも1つの反応性立体構造に捕捉される確率および/またはポリペプチドが化学分解する確率を使用して、アミノ酸の側鎖が少なくとも1つの反応性立体構造に捕捉される確率および/またはポリペプチドが化学分解する確率に基づいて治療剤の少なくとも一部として使用される潜在的なポリペプチドのリストからポリペプチドを取り除く。
一部の場合では、アミノ酸の側鎖が少なくとも1つの反応性立体構造に捕捉される確率および/またはポリペプチドが化学分解する確率を使用して、アミノ酸の側鎖が少なくとも1つの反応性立体構造に捕捉される確率および/またはポリペプチドが化学分解する確率に基づいて、治療剤の少なくとも一部として使用される潜在的なポリペプチドのリストにおいて、ポリペプチドを別のポリペプチドより低くランク付けし、ここで、別のポリペプチドのアミノ酸の側鎖が少なくとも1つの反応性立体構造に捕捉される確率および/または別のポリペプチドが化学分解する確率は、ポリペプチドのアミノ酸の側鎖が少なくとも1つの反応性立体構造に捕捉される確率および/またはポリペプチドが化学分解する確率より小さい。
VII.計算環境の例
図5は、本開示による分子動力学シミュレーションのためのシステムおよび方法の使用に適切なコンピューティングデバイス500の一例を例示する。コンピューティングデバイス500の例は、メモリ510と通信するプロセッサ505、および1つまたは複数の通信バス515を使用するコンピューティングデバイス500の他の部品を含む。プロセッサ505は、メモリ510に記憶されているプロセッサ実行可能命令を実行して、異なる例に従って、例えば図4の本明細書に記載されている方法例400の一部またはすべてに従って分子動力学シミュレーションの1つまたは複数の方法を実施させるように構成される。この例では、メモリ510は、図1、2、3A~3Fおよび4に関して上記に考察されたように、ポリペプチドデータ分析520および予測分析525を目的の1つまたは複数のポリペプチドに提供する、プロセッサ実行可能命令を記憶する。
ポリペプチドデータ分析520および予測分析525は、ポリペプチド表現530を生成し、およびこれらを1つまたは複数の分子動力学シミュレーションに入力として使用して、反応確率を生成するように構成されうる。分子動力学シミュレーションは、固定されるシステムの変数(例えば、粒子の数(N)、量(V)、エネルギー(E)、温度(T)および圧力(P)の2つ以上の組み合わせ)を確認する分子シミュレーションアンサンブル535を使用して実施することができる。例えば、アンサンブルは、ミクロカノニカルアンサンブル(NVE)、カノニカルアンサンブル(NVT)または等温等圧アンサンブル(NPT)を含むことができる。分子動力学シミュレーションは、運動量方程式およびサーモスタットまたはバロスタットを統合して、シミュレーションの全体にわたって温度または圧力を制御する積分回路を使用することができる。分子動力学シミュレーションにおける1つまたは複数の反復は、ポリペプチドの立体構造がどのように経時的に変化するかをシミュレートすることができる。シミュレーションは、特定のタイムステップの数によって、または標的が平衡に達するまで実施してもよい。
反応確率は、空間特性に基づいて多数の立体構造のそれぞれのために生成されうる(例えば、これは様々な反応制約が満たされているか否かを決定することできる)。例えば、分子シミュレーションアンサンブル535により生成された各立体構造に関し、立体構造におけるポリペプチドの空間特性を使用して、原子間距離反応制約540および自由エネルギー制約545が満たされているか否かを決定することができ、このことは、立体構造を有するポリペプチドが切断反応に感受性があることを示すことができる。環境および接近容易性制約550を使用して、溶媒分子に接近し反応する、反応に好ましいように構成されたポリペプチド分子を推定することができる。各制約を満たすシミュレーション生成ポリペプチド立体構造の画分に基づいて、ポリペプチドの側鎖が少なくとも1つの反応性立体構造に捕捉されうるか否か、ならびに/または所定のポリペプチドが化学分解する程度および/もしくは速度を示す出力を生成することができる。(シミュレーションは、同じ立体構造または同じ空間性質を有する多数の出力を生成することができ、このことは特有であると考慮されうることが理解される。)
この例におけるコンピューティングデバイス500は、ユーザー入力を受け入れるために1つまたは複数のユーザー入力デバイス555、例えば、キーボード、マウス、タッチスクリーン、マイクロホンなども含む。コンピューティングデバイス500は、ディスプレイ560も含んで、ユーザーに視覚出力を提供し、例えば、ユーザーインターフェースである。コンピューティングデバイス500は、通信インターフェース565も含む。一部の例において、通信インターフェース540は、1つまたは複数のネットワークを使用して通信することができ、ローカルエリアネットワーク(「LAN」);広域ネットワーク(「WAN」)、例えばインターネット;メトロポリタンエリアネットワーク(「MAN」);二地点接続またはピアツーピア接続などが挙げられる。他のデバイスとの通信は、任意の適切なネットワークプロトコールを使用して達成することができる。例えば、1つの適切なネットワークプロトコールには、インターネットプロトコール(「IP」)、伝送制御プロトコール(「TCP」)、ユーザデータグラムプロトコール(「UDP」)またはこれらの組み合わせ、例えば、TCP/IPまたはUDP/IPを挙げることができる。
VIII.実施例
様々な実施形態において実行されるシステムおよび方法は、以下の実施例を参照することによって、より良好に理解することができる。
VIII.A.実施例1.抗体における-Asn-Proペプチド結合の加水分解:CDR-L3の立体構造は反応を促進する
眼疾患の治療の候補として2つの抗体Fab断片をスクリーニングする際に、抗原結合の損失と同時の断片化が、中性pHおよび37℃でのインキュベーションで観察された。ペプチドマッピングは、軽鎖の相補性決定領域3(CDR-L3)の範囲内のAsn-Pro部位で断片化が起こったことを示した。ペプチドで以前に観察されたように、質量分析による分析は、切断が、ペプチドカルボニルのAsn側鎖への攻撃によってもたらされた加水分解反応であることを示している。5つの試験抗体におけるCDR-L3 Asn-Pro加水分解の速さの比較は、一般に、切断の速さが、短い非構造化ペプチドで速いことを示し、速さがセグメントの立体構造優先度によって決定されることを示唆している。これらの結果と対照的に、重鎖の相補性決定領域2(CDR-H2)に見出され、かつ生殖系列遺伝子に由来するAsn-Proは、この切断反応に感受性がなかった。分子動力学シミュレーションは、感受性部位のAsn残基が、ペプチドカルボニルの側鎖への攻撃と一致する二面角に集合することを示し、一方、制約部位のAsnが集合しないことを示す。これらの知見から、本明細書に考察されている様々な実施形態が導き出され、この不安定性を回避する抗体操作の技術および切断反応のリスク評価のためのインシリコツールが挙げられる。
VIII.B.材料および方法
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)は、ダイオードアレイ検出器(DAD)を備えたAgilent 1200シリーズHPLCシステム(Santa Clara、CA)を使用して実施した。G6.31は、TSK-GEL G2000SWxl(7.8×300mm)カラム(Tosoh Bioscience、South San Francisco、CA)を使用して分離した。Fab2試料を移動相(0.2Mのリン酸カリウム、0.25Mの塩化カリウム、pH6.2)でおよそ0.5mg/mLに希釈した。70μLの試料をカラムに注入し、25℃のイソクラティックモードにより0.5mL/分の流速で30分間にわたって溶出し、280nmでのUV吸収を検出に使用した。SECピークを、モノマー、高分子量種(HMWS)、および断片に分けた。百分位ピーク面積は、各時点の各群のピーク面積を合計ピーク面積で割ることによって算出した。
イオン交換クロマトグラフィー(IEC)は、Dionex Propac WCX-10カラム(4×250)(Tosoh Bioscience、South San Francisco、CA)によりAgilent 1200シリーズHPLCシステムを使用して実施した。移動相A(20mMのMES、pH5.7)およびB(移動相Aに200mMの塩化ナトリウム)を分離に使用した。92%の溶媒Aから34%の溶媒Aへの85分間の直線勾配、続いて34%の溶媒Aから0%の溶媒Aへの95分間の勾配を用いて、約100分の合計実行時間でFab2電荷変異体を分離した。75μLの試料をカラムに注入し、25℃のイソクラティックモードにより0.8mL/分の流速で溶出し、280nmでのUV吸収を検出に使用した。IECピークを、主ピーク、酸性ピーク、および塩基性ピークに分けた。百分位ピーク面積は、各ピーク面積を合計ピーク面積で割ることによって算出した。
Fab2の抗原結合能は、記載されたプロトコール(Tesarら、2017年、mAbs)に類似したプロトコールを使用し、Biacore T200機器(GE Healthcare、Pittsburgh、PA)による表面プラズモン共鳴(SPR)を使用して測定した。簡潔には、抗原を、アミンカップリングキット(GE Healthcare、Pittsburgh、PA)を使用して、2000~3000反応単位(RU)の範囲でカルボキシルメチル化デキストランセンサーチップ(CM5)に直接固定化した。抗原への抗体Fab断片の結合は、注入の前後のRUの変化を180秒間モニタリングすることによって決定した。センサーチップを10mMのグリシンHClバッファーによりpH2.1および30μL/分の流速で30秒間かけて再生した。すべての結合アッセイを、HEPESバッファー(0.01MのHEPES、0.15MのNaCl、0.005%(v/v)の界面活性剤P20、pH7.4)において常温で実施した。抗原結合濃度は、4パラメータフィットを使用して標準較正曲線(0.158~5μg/mL)から算出した。各時点での抗原結合能をt0の抗原結合能に正規化した。
IV.C.分子動力学シミュレーションの詳細
モデル化ビルダーソフトウエア(例えば、MODELLERの修正版)を使用して、配列からFab構造を構築した。Fab構造をエネルギー的に最小限にして。立体衝突を取り除いた。次いで弛緩型構造を分析して、pH=7.4でイオン化残基のプロトン化状態を決定した。次いでFab構造を、八面体溶媒ボックスのTIP3P水により、周期的境界条件のボックスの縁から少なくとも10Åの距離で溶媒和にした、溶質構造をFF14SB力場によりパラメータで表示した。システム電荷をNa+およびCl-対イオンで中和した。水素質量再分配を溶質原子に実施して、4fsのタイムステップのシミュレーションを可能にした。
例示的なシミュレーションプロトコールは以下の工程を含んだ。最初に構造は、溶質を初期構造に制約するため10(kcal/mol/Å)の力定数による調和制約ポテンシャル(harmonic restraining potential)を使用して、2000工程のコンジュゲート勾配エネルギー最小化で弛緩させた。次いで、圧力を1atmで維持し、サーモスタット温度を200psかけて300Kに増加し、一方、強度10(kcal/mol/Å)の調和位置制約をタンパク質構造に適用した。次いでシステムを500psで1(kcal/mol/Å)の制約力定数と平衡にした。すべての制約を産生段階で取り除いた。シミュレーションタイムステップは4fsであった。9Åのカットオフ半径を範囲制限相互作用に使用し、長距離相互作用には粒子メッシュ静電気を使用した。産生シミュレーションは、NPT条件を使用して行った。ランジュヴァン動力学を使用して、γ=1ps-1の衝突数で300Kの温度に維持した。分子動力学シミュレーションの産生段階を500nsで実施した。動力学にはSHAKEアルゴリズムをして、水素原子が関わるすべての結合を制約した。下記に提示される分析のために、分子動力学軌道のスナップショットを10ps毎に保存した。
デフォルト値をすべての他のシミュレーションパラメータに使用した。SPFP精密モデルを伴うAmber2015分子動力学シミュレーションソフトウエアパッケージのGPU実行を、例示的な分子動力学シミュレーションに使用した。上記に記載された分子動力学シミュレーションプロトコールを繰り返して、1分子当たり500nsの分子動力学シミュレーションを独立して3回行った。次いで、3つのシミュレーションによる軌道を組み合わせて(合計で1.5μs)、分析に使用した。AmberToolsのCPPTRAJソフトウエアを使用して、軌道を分析した。二面角の空間における自由エネルギープロファイルおよびランドスケープを、下記を使用してビン集団から算出した。
Figure 2023535299000003
式中、κはボルツマン定数であり、Tは温度であり、Nはビンiの集団であり、Nmaxは最も集合したビンの集団である。集団のないビンには、集団0.5に等しい人工バリアを与えた。
VIII.D.結果
精製されたFab1に、PBS中において37℃で4週間ストレスをかけた。次いで対照およびストレス試料をトリプシン消化、続いて逆相クロマトグラフィー分離および質量分析に付して、潜在的な分解産物を確認した。加水分解を受けやすい不安定なAsn-Pro部位を、Fab1のCDR-L3で確認した(例えば、図6A~6Cを参照されたい)。抽出イオンクロマトグラム(XIC)が、Asn-Pro部位(図6A)、N末端加水分解産物ペプチド(図6B)およびC末端加水分解産物ペプチド(図6C)を含有する天然トリプシンペプチドにおいて示される。C末端のAspおよびイソAspではなく、C末端のAsnおよびイソAsnに対応する2つのN末端加水分解産物が観察された(図6B)。N末端加水分解産物ペプチドのC末端におけるAsnの観察を図7Aおよび7Bで見ることができ、これは、98.0分および98.8分でそれぞれ溶出された2つのN末端加水分解産物に対応する質量スペクトルを示す。ペプチドのC末端におけるAsnまたはAspに対応するN末端加水分解産物の理論質量スペクトルが、図7Cおよび7Dにそれぞれ示される。N末端加水分解産物のタンデム型質量スペクトルは、ペプチドのC末端におけるAsnを確証する。
Fab2の長期安定性をPBS(pH7.4)中において37℃で評価した。図8Aは36週間の期間にわたる、Fab安定性の変化を要約する。SECを使用した凝集の測定は、Fabがストレス期間の全体にわたってモノマーのままであることを示す。しかし、IECおよびCE-SDSをそれぞれ使用した側鎖化学分解および主鎖断片化の測定は、Fabがゆっくりとした一定の分解を受けることを示唆している。IECおよびCE-SDSで測定された36週間後の主ピーク画分の減少は、それぞれ32.7%および36%である。したがって、SPRを使用して測定された抗原結合能は、同じ期間で27%減少する。イオン交換クロマトグラムは、IEC主ピークにおける減少が、おそらく脱アミド化反応による酸性電荷変異体の増加に起因することを示す。変性条件下で実施されるゲル電気泳動は、CE-SDS主ピークの減少が主鎖断片化に起因することを明確に示している(図8B)。ストレス試料の質量分析は、断片化がAsn-Pro加水分解に起因することを確証した。しかし、SECデータは、非変性条件下において、Fabが、Asn-Pro加水分解に起因する断片化にもかかわらずインタクトなままであることを示す。インキュベーション混合物への広域スペクトルプロテアーゼ阻害剤カクテル(cOmplete(商標)、Roche)の添加は、微量のタンパク質分解酵素夾雑物の存在ではなく、自己融解事象によりもたらされる加水分解と一致したFab2軽鎖断片化の速度に影響しなかった。Fab2の中性pH製剤にスパイクし、37℃でインキュベートされたAsn-Pro配列を含有する非構造化17merペプチドの切断は、検出されなかった。これは、プロテアーゼ触媒断片化とも一致しない。
抗体のコレクションの配列比較は、CDR-L3にAsn-Proモチーフを有するいくつかの潜在的な治療薬候補を確認した。これらの抗体のすべてにおいて、Asn-Proは6-7位に固定されているが、CDR-L3の残りの位置は様々である。これらのうちの4つでは、1つの抗体Fab断片および3つの完全長抗体を、PBSで製剤化されたタンパク質溶液の熱ストレス(37℃)によるAsn-Pro加水分解速度の分析に選択した。すべてのものが、加水分解へのAsn-Proペプチド結合の感受性を示し、図9に示されている切断動態を有した。Mab3およびMab4は、最高の加水分解の速度(表1)を示し、Fab1に観察されたものを超えており、一方、加水分解の速度はFab2で遅く、Mab5は最も遅い速度を有した。Mab3は出発材料に十分な量の加水分解Asn-Proを含有し、それは、おそらく抗体が以前に中性pHバッファーに保存されていたからである。このデータセットは加水分解速度への隣接配列効果を叙述するには小さすぎるが、CDR-L3における配列差異は、加水分解に3倍の範囲をもたらすことが注目に値する。加えて、選択的非ヒトフレームワークにグラフトされたFab2のCDR配列を有するFab4は、Fa2(8%/週)と比較して4倍低い速度(2%/週)のAsn-Pro加水分解を示す。これらの結果と対照的に、CDR-H2にAsn-Proを有する抗体パネルの分析は、この位置が加水分解に感受性のないことを示した。例えば、加水分解は、PBSで製剤化されたタンパク質の熱ストレス(40℃)では、Fab3のCDR-H2のAsn-Proにおいて検出されなかった(表1)。
Figure 2023535299000004
Asn-Pro加水分解速度に対する抗体構造の効果を検査するため、熱ストレスを、Fab1およびMab3のCDR-L3配列を提示する非構造化直鎖ペプチドに実施した。37℃でインキュベートした非構造化ペプチドにおける加水分解の速度は遅いことが以前示されているので、促進温度条件(90および70℃)を実施し、温度依存性を、37℃で速度を算出するように外挿した。37℃で算出された2000日を超える半減期を有する、非常に遅い速度のペプチド加水分解が観察された(表2)。予想されたように、加水分解の速度は、pH5バッファーで実施されたインキュベーションでは約3倍遅かった。
Figure 2023535299000005
Asn-Pro加水分解速度に対するタンパク質構造の効果をさらに調査するため、Fab構造の分子動力学シミュレーションを実施した。本明細書に考察されているように、Asn-Pro加水分解の分解経路は、骨格カルボニルのAsn側鎖窒素への求核攻撃を介して進行する。この過程の必要要件は、ASN側鎖が立体構造に適合するために、Asn側鎖窒素と側鎖カルボニルとの間の求核攻撃距離(dN)を最小限にすることである(図2Aおよび2B)。距離dは二面角の2つの特定の組み合わせにおいて最小化され、第1は、骨格二面角がΨ>120で拡大される場合、ならびに側鎖二面角がΧ約-60°およびΧ約-90°である場合(すなわち図2Aおよび2Bの立体構造A)であり、第2は、骨格二面角がΨ<-60の小さい角度である場合、ならびにΧ約60°およびΧ約90°である場合(すなわち図2Aおよび2Bの立体構造B)である。二面角に沿った側鎖の自由エネルギーは、加水分解の速度に対する側鎖立体構造の役割についての機構的洞察を得るために算出した。
図3A~3Fは、1.5マイクロ秒MDシミュレーションよって得られる、骨格二面角(Ψ)ならびに側鎖二面角(ΧおよびΧ)の自由エネルギープロファイル(ビン集団から算出、分子動力学シミュレーションの詳細のセクションを参照されたい)を示す。低い自由エネルギーは、二面角の所定の組み合わせに側鎖を見出す高い確率に対応する。Ψに沿った自由エネルギープロファイルは、Fab2が主に小さな骨格二面角(Ψ<-60)を採用するが、他の構造が拡大立体構造(Ψ>120)を採用することを示す。したがって、反応性立体構造は、図3A~3Fに円形で示されているように、Fab2において立体構造B、および他の分子において立体構造Aに対応する。立体構造Aの自由エネルギーは、Fab1、Mab3、およびMab4では非常に低く(それぞれ、0.94、0.96、および1.06kcal/mol)、このことは、これらの構造の高い実験加水分解速度(それぞれ、13、15、および15%/週)と一致する。対照的に、立体構造Aの自由エネルギーは、Mab5では相対的に高く(1.56kcal/mol)、Fab6で最高(2.66kcal/mol)であり、このことは、これらの分子の低い実験速度(それぞれ、5および0%/週)と十分に一致している。しかし、反応性立体構造および実験速度の自由エネルギーの一致は、Fab2では十分でなく、反応性立体構造の自由エネルギーは非常に小さい(0.75kcal/mol)が、実験速度はそれほど高くない(9%/週)。側鎖が反応性立体構造を採用したとしても、化学反応は、この場合にエネルギー的に好ましくないことが推測される。
VIII.E.考察
生理的条件下において、Asn残基は脱アミド化に感受性があり、これによってアミド側鎖が加水分解されて、遊離カルボン酸を形成する。この反応の律速段階は、5員スクシンイミド環中間体の形成である。しかし、嵩高残基、例えば、プロリンが後ろに続くAsnを含有するペプチドは、2つの残基の間にあるペプチド骨格の加水分解切断に感受性があることが示されている。ここでは、ペプチド骨格の加水分解切断に感受性があるAsn-Proモチーフの証拠が提供される。CDR-L3に確認されたAsn-Pro部位の質量スペクトルデータは、この部位に関連する3つのペプチド:Asn-Pro部位を含有する天然トリプシンペプチド、AsnおよびイソAsnを含有するN末端加水分解産物ペプチド、およびC末端加水分解差産物ペプチドの確認をもたらした。AspおよびイソAspではなくAsnおよびイソAsnを含有するN末端加水分解産物ペプチドの確認は、スクシンイミド中間体の形成が、ペプチド結合カルボニルのb側鎖アミド窒素への攻撃の結果であることを示唆している。次いで、このCOOH末端スクシンイミド中間体を開いて、AsnまたはイソAsnを含有する観察されたN末端加水分解産物を形成することができる。
マウス抗体またはマウス抗体のヒト化に基づいた抗体では、軽鎖94-95位(カバット番号付け)のAsn-ProをIGKV4マウス生殖系列遺伝子のセレクションから生じることができ、それは、このファミリーの一部のメンバーが非組み換え遺伝子でコードされたAsn-Proを有するからである。対照的に、ヒト軽鎖遺伝子に生殖系列でコードされた94Asn-Pro95がなく、それは、ヒト抗体ではこのモチーフが組換えのV-J連結過程によって、または体細胞過剰突然変異を介して来るからである。同様に、重鎖52~52a位(CDR-2)のAsn-Proは、IGHVIファミリーのヒトとマウスの両方の生殖系列遺伝に見出される。その結果として、抗体のコレクションでは、CDR-H2の52Asn-Pro52aがCDR-L3の94Asn-Pro95より頻繁に見出される。CDR-H2のモチーフは、Asn-Proが抗原結合に直接的な役割を果たすと強く思われる、溶媒接近性の多いCDR-L3位置と比較して、溶媒接近性が少なく、CDR立体構造の維持に多く関わる傾向がある。このことは、CDR-L3のAsn-Proを、標的結合に対して影響を与えると強く思われる切断を伴う加水分解により多くの感受性を持たせることになる。
近年、Jainら(PNAS、2017年)は、「開発可能性」の計量設定を目的とする臨床病期抗体の生物物理学的性質についての報告を発表した。彼らの137個の抗体コレクションでは、8個の抗体がCDR-L3に94Asn-Pro95を有する。これらは、ムロモナブ、mAb5、オトレルツズマブ(otlertuzumab)、リツキシマブ、テプリズマブ、トベツマブ(tovetumab)、ベルツズマブ、およびビジリズマブである。10残基CDRにP95a挿入を有するトベツマブを除いて、すべて9残基CDR-L3配列を有する。テプリズマブは、ムロモナブのヒト化型であると見受けられ、一方、ベルツズマブは、リツキシマブのヒト化型と一致した特徴を有する。注目すべきことに、テプリズマブおよびベルツズマブはまた、CDR-H2にAsn-Proを有する。続く発表(Luら、2018年)は、Jainらにより記載された抗体のうち131個を脱アミド化および異性化傾向について試験し、CDR-L3に94Asn-Pro95を有する8個の抗体をpH8.5ストレス試験に含めた。これらの抗体のこの部位における切断についての証拠は報告されなかった。本明細書に記載されているインシリコ技術を使用すると、抗体のトベツマブおよびビジリズマブの軽鎖は切断感受性結合を有し、一方、他は切断に対して感受性が少ないことを予測することが可能であった(表3)。
表1および図9のMab5について示されているデータに加えて、中性pHで37℃の安定性データを、ムロモナブ、テプリズマブ、トベツマブ、およびビジリズマブを除くすべてにおいて生成した。PBS、pH7.4で製剤化した抗体を37℃で4週間までインキュベートし、断片化の証拠を、質量分析およびキャピラリー電気泳動ドデシル硫酸ナトリウム(CE-SDS)により、インタクト試料および低減試料の両方から得た。速度は決定されなかったが、CDR-L3におけるAsn-Proの加水分解は、ベルツズマブで検出されたが、リツキシマブまたはオトレルツズマブでは検出されなかった(表3)。リツキシマブおよびオトレルツズマブの結合の安定性は予想されたが、ベルツズマブの不安定性は予想されなかった。これらの結果は、抗体フレームワークが加水分解の速度に影響を及ぼすことができ、それはベルツズマブおよびリツキシマブがCDR-L3に同じアミノ酸配列を有するからであるとういう結論を支持している。
Figure 2023535299000006
したがって、pH7.4での拡大熱ストレスによるAsn-Proペプチド結合の加水分解は、Fab2に抗原結合の損失をもたらすことを実証している。多くの治療抗体および抗体断片が、Asn-Pro切断の動態がゆっくりである僅かに酸性の条件化で製剤化されるので、この反応は、抗体製剤の貯蔵寿命を決定する研究において正当に評価されないことがあった。低pH液体または凍結乾燥製剤を、感受性のある抗体のAsn-Pro切断を安定化させるために使用できるが、このことは、中性pHの生理的条件下での潜在的な分解を排除しない。一部の場合において、不安定なAsn残基のアミノ酸置換により、抗体を再操作することが望ましいこともある。事実、臨床候補を、分解速度に影響を及ぼすことができるAsn-94置換を介して、Fab1およびFab2から生成した。よって、Asn残基が抗原結合に密接に関わり、それにより残基が不変である場合、配列の文脈における変化は、標的結合親和性の保持を伴って、分子を安定化することができる。このことは、非ヒトフレームワークへグラフトされたCDRを有するFab4分子によって実証され、親抗体Fab2より不安定結合の加水分解速度が4倍遅かった。あるいは、この配列モチーフを欠いている候補、またはこの切断反応のインシリコリスク評価に付されるAsn-Proを有する分子を、開発のために選択することができる。
IX.追加の考慮
本開示の一部の実施形態は、1つまたは複数のデータプロセッサを含むシステムを含む。一部の実施形態において、システムは、1つまたは複数のデータプロセッサで実行される場合、本明細書に開示されている1つまたは複数の方法の一部もしくはすべて、および/または1つまたは複数の過程の一部もしくはすべてを1つまたは複数のデータプロセッサに実施させる命令を含む非一時的なコンピュータ読み取り可能記憶媒体を含む。本開示の一部の実施形態は、本明細書に開示されている1つまたは複数の方法の一部もしくはすべて、および/または1つまたは複数の過程の一部もしくはすべてを、1つまたは複数のデータプロセッサに実施させるように構成された命令を含む非一時的な機械読み取り可能記憶媒体に、有形的に統合されたコンピュータプログラム製品を含む。
用いられている用語および表現は、説明のための用語として使用され、限定するためではなく、そのような用語および表現の使用は、示されているおよび記載されている特徴またはその一部分の任意の同等物を除外することを意図しないが、様々な修正が特許請求される本発明の範囲内で可能であることが認識される。よって、特許請求される本発明は実施形態および任意選択の特徴によって特定的に開示されているが、本明細書に開示されている概念の修正および変更は、当業者により求められてもよく、そのような修正および変更は、添付の特許請求の範囲により定義されている本発明の範囲内であると考慮されることが理解されるべきである。
続く記載は、好ましい例示的な実施形態のみを提供し、本開示の範囲、適応可能性または構成を限定することを意図しない。むしろ、好ましい例示的な実施形態の続く記載は、様々な実施形態を実行することを可能にする記載を当業者に提供する。様々な変更を、添付の特許請求の範囲に記載された精神および範囲を逸脱することなく、要素の機能および配置に行ってもよいことが理解される。
特定の詳細が、実施形態の十分な理解を提供するために続く記載に提示される。しかし実施形態は、これらの特定の詳細がなくても実践できることが理解される。例えば、回路、システム、ネットワーク、過程、および他の部品は、不必要な詳細で実施形態を不明瞭にしないために、ブロック線図に部品として示されることがある。他の場合では、周知の回路、過程、アルゴリズム、構造、および技術は、実施形態を不明瞭することを避けるために、不必要な詳細を伴うことなく示されることがある。

Claims (30)

  1. 側鎖および骨格を有するアミノ酸を含むポリペプチドのポリペプチド立体構造について、ポリペプチド立体構造にあるときのアミノ酸の骨格の二面角および側鎖の二面角を決定することと;
    骨格の二面角および側鎖の二面角に基づいて、ポリペプチド立体構造にあるときのアミノ酸の2つの原子、官能基またはこれらの組み合わせの間の求核攻撃距離を決定することであって、2つの原子または官能基の一方がアミノ酸の側鎖にあり、2つの原子または官能基のもう一方がアミノ酸の骨格にある、求核攻撃距離を決定することと;
    ポリペプチド立体構造にあるときのアミノ酸の求核攻撃距離に基づいて、ポリペプチド立体構造が、切断反応に感受性がある反応性立体構造であることを決定することと;
    ポリペプチド立体構造が反応性立体構造であることの決定に応じて、反応性立体構造にあるときのアミノ酸の骨格の二面角および側鎖の二面角の自由エネルギーを決定することと;
    アミノ酸の骨格の二面角および側鎖の二面角の自由エネルギーに基づいて、アミノ酸の側鎖が反応性立体構造に捕捉される確率を予測することと、
    を含む、コンピュータ実装方法。
  2. ポリペプチドの表現を生成することと;
    表現を使用して分子動力学シミュレーションを実施することであって、分子動力学シミュレーションの実施の結果が、ポリペプチド立体構造を含むポリペプチドのポリペプチド立体構造セットを含む、分子動力学シミュレーションを実施することと、
    をさらに含む、請求項1に記載のコンピュータ実装方法。
  3. アミノ酸の側鎖が反応性立体構造に捕捉される結果としてポリペプチドが化学分解する確率を予測することをさらに含む、請求項1に記載のコンピュータ実装方法。
  4. アミノ酸の側鎖が少なくとも1つの反応性立体構造に捕捉される確率および/またはポリペプチドが化学分解する確率を出力することをさらに含む、請求項3に記載のコンピュータ実装方法。
  5. アミノ酸の側鎖が少なくとも1つの反応性立体構造に捕捉される確率および/またはポリペプチドが化学分解する確率に基づいて、治療剤の少なくとも一部として使用される潜在的なポリペプチドのリストからポリペプチドを取り除くことをさらに含む、請求項4に記載のコンピュータ実装方法。
  6. アミノ酸の側鎖が少なくとも1つの反応性立体構造に捕捉される確率および/またはポリペプチドが化学分解する確率に基づいて、治療剤の少なくとも一部として使用される潜在的なポリペプチドのリストにおいて、ポリペプチドを別のポリペプチドより低くランク付けすることであって、別のポリペプチドのアミノ酸の側鎖が少なくとも1つの反応性立体構造に捕捉される確率および/または別のポリペプチドが化学分解する確率は、ポリペプチドのアミノ酸の側鎖が少なくとも1つの反応性立体構造に捕捉される確率および/またはポリペプチドが化学分解する確率より小さい、ポリペプチドを別のポリペプチドより低くランク付けすることをさらに含む、請求項4に記載のコンピュータ実装方法。
  7. ポリペプチドが化学分解する確率の予測が、
    満たされた場合に周囲の溶媒の溶媒分子と結合するための閾値を超える空間接近容易性をポリペプチドのアミド基が有することを示す、接近容易性制約を確認することと;
    接近容易性制約がポリペプチドの1つまたは複数の空間特性の評価に基づいて反応性立体構造について満たされていることを決定することと、
    を含む、請求項3に記載のコンピュータ実装方法。
  8. ポリペプチド立体構造が反応性立体構造であることの決定が、
    満たされた場合に側鎖内の原子が骨格内の別の原子の既定距離閾値内にあることを示す、距離基準を決定することと;
    距離基準が、反応性立体構造のアミノ酸の求核攻撃距離と既定距離閾値との比較に基づいて反応性立体構造について満たされていることを決定することと、
    を含む、請求項1に記載のコンピュータ実装方法。
  9. 自由エネルギーが、反応性立体構造のアミノ酸の骨格の二面角および側鎖の二面角の自由エネルギープロファイルの分析に基づいて決定され、骨格の二面角および側鎖の二面角の空間における自由エネルギープロファイルは、ビン集団から算出される、請求項1に記載のコンピュータ実装方法。
  10. アミノ酸の側鎖が反応性立体構造中に捕捉される確率の予測が、
    満たされた場合にアミノ酸の骨格の二面角および側鎖の二面角の自由エネルギーが既定エネルギー閾値内にあることを示すエネルギー基準を決定することと;
    エネルギー基準が、反応性立体構造のアミノ酸の骨格の二面角および側鎖の二面角の自由エネルギーと既定エネルギー閾値との比較に基づいて反応性立体構造について満たされていることを決定することと、
    を含む、請求項1に記載のコンピュータ実装方法。
  11. 1つまたは複数のデータプロセッサと;
    1つまたは複数のデータプロセッサで実行される場合、
    側鎖および骨格を有するアミノ酸を含むポリペプチドのポリペプチド立体構造について、ポリペプチド立体構造にあるときのアミノ酸の骨格の二面角および側鎖の二面角を決定することと;
    骨格の二面角および側鎖の二面角に基づいて、ポリペプチド立体構造にあるときのアミノ酸の2つの原子、官能基またはこれらの組み合わせの間の求核攻撃距離を決定することであって、2つの原子または官能基の一方がアミノ酸の側鎖にあり、2つの原子または官能基のもう一方がアミノ酸の骨格にある、求核攻撃距離を決定することと;
    ポリペプチド立体構造にあるときのアミノ酸の求核攻撃距離に基づいて、ポリペプチド立体構造が、切断反応に感受性がある反応性立体構造であることを決定することと;
    ポリペプチド立体構造が反応性立体構造であることの決定に応じて、反応性立体構造にあるときのアミノ酸の骨格の二面角および側鎖の二面角の自由エネルギーを決定することと;
    アミノ酸の骨格の二面角および側鎖の二面角の自由エネルギーに基づいて、アミノ酸の側鎖が反応性立体構造に捕捉される確率を予測することと、
    を含む動作を1つまたは複数のデータプロセッサに実施させる命令を含有する非一時的なコンピュータ読み取り可能記憶媒体と、
    を含む、システム。
  12. 動作が、
    ポリペプチドの表現を生成することと;
    表現を使用して分子動力学シミュレーションを実施することであって、分子動力学シミュレーションの実施の結果が、ポリペプチド立体構造を含むポリペプチドのポリペプチド立体構造セットを含む、分子動力学シミュレーションを実施することと、
    をさらに含む、請求項11に記載のシステム。
  13. 動作が、アミノ酸の側鎖が反応性立体構造に捕捉される結果としてポリペプチドが化学分解する確率を予測することをさらに含む、請求項11に記載のシステム。
  14. 動作が、アミノ酸の側鎖が少なくとも1つの反応性立体構造に捕捉される確率および/またはポリペプチドが化学分解する確率を出力することをさらに含む、請求項13に記載のシステム。
  15. 動作が、アミノ酸の側鎖が少なくとも1つの反応性立体構造に捕捉される確率および/またはポリペプチドが化学分解する確率に基づいて、治療剤の少なくとも一部として使用される潜在的なポリペプチドのリストからポリペプチドを取り除くことをさらに含む、請求項14に記載のシステム。
  16. 動作が、アミノ酸の側鎖が少なくとも1つの反応性立体構造に捕捉される確率および/またはポリペプチドが化学分解する確率に基づいて、治療剤の少なくとも一部として使用される潜在的なポリペプチドのリストにおいて、ポリペプチドを別のポリペプチドより低くランク付けすることであって、別のポリペプチドのアミノ酸の側鎖が少なくとも1つの反応性立体構造に捕捉される確率および/または別のポリペプチドが化学分解する確率は、ポリペプチドのアミノ酸の側鎖が少なくとも1つの反応性立体構造に捕捉される確率および/またはポリペプチドが化学分解する確率より小さい、ポリペプチドを別のポリペプチドより低くランク付けすることをさらに含む、請求項14に記載のシステム。
  17. ポリペプチドが化学分解する確率の予測が、
    満たされた場合に周囲の溶媒の溶媒分子と結合するための閾値を超える空間接近容易性をポリペプチドのアミド基が有することを示す、接近容易性制約を確認することと;
    接近容易性制約がポリペプチドの1つまたは複数の空間特性の評価に基づいて反応性立体構造について満たされていることを決定することと、
    を含む、請求項13に記載のシステム。
  18. ポリペプチド立体構造が反応性立体構造であることの決定が、
    満たされた場合に側鎖内の原子が骨格内の別の原子の既定距離閾値内にあることを示す、距離基準を決定することと;
    距離基準が、反応性立体構造のアミノ酸の求核攻撃距離と既定距離閾値との比較に基づいて反応性立体構造について満たされていることを決定することと、
    を含む、請求項11に記載のシステム。
  19. 自由エネルギーが、反応性立体構造のアミノ酸の骨格の二面角および側鎖の二面角の自由エネルギープロファイルの分析に基づいて決定され、骨格の二面角および側鎖の二面角の空間における自由エネルギープロファイルは、ビン集団から算出される、請求項11に記載のシステム。
  20. アミノ酸の側鎖が反応性立体構造中に捕捉される確率の予測が、
    満たされた場合にアミノ酸の骨格の二面角および側鎖の二面角の自由エネルギーが既定エネルギー閾値内にあることを示すエネルギー基準を決定することと;
    エネルギー基準が、反応性立体構造のアミノ酸の骨格の二面角および側鎖の二面角の自由エネルギーと既定エネルギー閾値との比較に基づいて反応性立体構造について満たされていることを決定することと、
    を含む、請求項11に記載のシステム。
  21. 側鎖および骨格を有するアミノ酸を含むポリペプチドのポリペプチド立体構造について、ポリペプチド立体構造にあるときのアミノ酸の骨格の二面角および側鎖の二面角を決定することと;
    骨格の二面角および側鎖の二面角に基づいて、ポリペプチド立体構造にあるときのアミノ酸の2つの原子、官能基またはこれらの組み合わせの間の求核攻撃距離を決定することであって、2つの原子または官能基の一方がアミノ酸の側鎖にあり、2つの原子または官能基のもう一方がアミノ酸の骨格にある、求核攻撃距離を決定することと;
    ポリペプチド立体構造にあるときのアミノ酸の求核攻撃距離に基づいて、ポリペプチド立体構造が、切断反応に感受性がある反応性立体構造であることを決定することと;
    ポリペプチド立体構造が反応性立体構造であることの決定に応じて、反応性立体構造にあるときのアミノ酸の骨格の二面角および側鎖の二面角の自由エネルギーを決定することと;
    アミノ酸の骨格の二面角および側鎖の二面角の自由エネルギーに基づいて、アミノ酸の側鎖が反応性立体構造に捕捉される確率を予測することと、
    を含む動作を1つまたは複数のデータプロセッサに実施させるように構成された命令を含む非一時的な機械読み取り可能記憶媒体で具体的に実現される、コンピュータプログラム製品。
  22. 動作が、
    ポリペプチドの表現を生成することと;
    表現を使用して分子動力学シミュレーションを実施することであって、分子動力学シミュレーションの実施の結果が、ポリペプチド立体構造を含むポリペプチドのポリペプチド立体構造セットを含む、分子動力学シミュレーションを実施することと、
    をさらに含む、請求項21に記載のコンピュータプログラム製品。
  23. 動作が、アミノ酸の側鎖が反応性立体構造に捕捉される結果としてポリペプチドが化学分解する確率を予測することをさらに含む、請求項21に記載のコンピュータプログラム製品。
  24. 動作が、アミノ酸の側鎖が少なくとも1つの反応性立体構造に捕捉される確率および/またはポリペプチドが化学分解する確率を出力することをさらに含む、請求項23に記載のコンピュータプログラム製品。
  25. 動作が、アミノ酸の側鎖が少なくとも1つの反応性立体構造に捕捉される確率および/またはポリペプチドが化学分解する確率に基づいて、治療剤の少なくとも一部として使用される潜在的なポリペプチドのリストからポリペプチドを取り除くことをさらに含む、請求項24に記載のコンピュータプログラム製品。
  26. 動作が、アミノ酸の側鎖が少なくとも1つの反応性立体構造に捕捉される確率および/またはポリペプチドが化学分解する確率に基づいて、治療剤の少なくとも一部として使用される潜在的なポリペプチドのリストにおいて、ポリペプチドを別のポリペプチドより低くランク付けすることであって、別のポリペプチドのアミノ酸の側鎖が少なくとも1つの反応性立体構造に捕捉される確率および/または別のポリペプチドが化学分解する確率は、ポリペプチドのアミノ酸の側鎖が少なくとも1つの反応性立体構造に捕捉される確率および/またはポリペプチドが化学分解する確率より小さい、ポリペプチドを別のポリペプチドより低くランク付けすることをさらに含む、請求項24に記載のコンピュータプログラム製品。
  27. ポリペプチドが化学分解する確率の予測が、
    満たされた場合に周囲の溶媒の溶媒分子と結合するための閾値を超える空間接近容易性をポリペプチドのアミド基が有することを示す、接近容易性制約を確認することと;
    接近容易性制約がポリペプチドの1つまたは複数の空間特性の評価に基づいて反応性立体構造について満たされていることを決定することと、
    を含む、請求項23に記載のコンピュータプログラム製品。
  28. ポリペプチド立体構造が反応性立体構造であることの決定が、
    満たされた場合に側鎖内の原子が骨格内の別の原子の既定距離閾値内にあることを示す、距離基準を決定することと;
    距離基準が、反応性立体構造のアミノ酸の求核攻撃距離と既定距離閾値との比較に基づいて、反応性立体構造について満たされていることを決定することと、
    を含む、請求項21に記載のコンピュータプログラム製品。
  29. 自由エネルギーが、反応性立体構造のアミノ酸の骨格の二面角および側鎖の二面角の自由エネルギープロファイルの分析に基づいて決定され、骨格の二面角および側鎖の二面角の空間における自由エネルギープロファイルは、ビン集団から算出される、請求項21に記載のコンピュータプログラム製品。
  30. アミノ酸の側鎖が反応性立体構造中に捕捉される確率の予測が、
    満たされた場合にアミノ酸の骨格の二面角および側鎖の二面角の自由エネルギーが既定エネルギー閾値内にあることを示すエネルギー基準を決定することと;
    エネルギー基準が、反応性立体構造のアミノ酸の骨格の二面角および側鎖の二面角の自由エネルギーと既定エネルギー閾値との比較に基づいて反応性立体構造について満たされていることを決定することと、
    を含む、請求項21に記載のコンピュータプログラム製品。
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