JP2023531468A - ハロアリルアミン系二重アミンオキシダーゼ阻害剤 - Google Patents

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Abstract

本発明は、セミカルバジド感受性アミンオキシダーゼ(SSAO/VAP-1)及びモノアミンオキシダーゼB(MAO-B)を阻害することができる新規化合物に関するものである。これらの化合物は、ヒト対象のみならず、ペットや家畜の末梢性及び中枢性の障害を含む、筋ジストロフィーなどの種々の神経筋疾患、神経炎症性疾患の治療に有用である。さらに、本発明は、これらの化合物を含有する医薬組成物、及びその種々の使用に関するものである。

Description

本発明は、セミカルバジド感受性アミンオキシダーゼ(SSAO/VAP-1)及びモノアミンオキシダーゼB(MAO-B)を阻害することができる新規化合物に関するものである。これらの化合物は、ヒト対象のみならず、ペットや家畜における末梢性及び中枢性の障害を含む、筋ジストロフィーなどの種々の神経筋疾患、神経炎症性疾患の治療に有用である。さらに、本発明は、これらの化合物を含有する医薬組成物、及びその種々の用途に関するものである。
ヒトを含むほとんどの生物において、哺乳類の2つのアミンオキシダーゼ群は、内因的に生成された、又は外因性ソースから吸収された様々なモノ-、ジ-、及びポリアミンを代謝する。最初の群は、モノアミンオキシダーゼ(MAO-AとMAO-B)を含み、これらは、ほとんどの細胞型のミトコンドリアに存在し、共有結合したフラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)を補酵素として使用する。ポリアミンオキシダーゼは、他のFAD依存性のアミンオキシダーゼで、スペルミンやスペルミジンを酸化的に脱アミノ化する。第2群は、銅に依存し、FAD以外の他の補因子、例えば酸化チロシン残基(TPQ又はLTQと略される)を用いるものである。この群の中の1種は、セミカルバジド感受性アミンオキシダーゼ(SSAO)で、一次アミンオキシダーゼ、血漿アミンオキシダーゼ、ベンジルアミンオキシダーゼとしても知られ、血管接着タンパク質-1(VAP-1、以下、SSAO/VAP-1と記述。)と同じものである。タンパク質(リシルオキシダーゼ(LOX)及びリシルオキシダーゼ様(LOXL)1-4)のジアミンオキシダーゼ(DAO)及びリシルオキシダーゼ群もこの第2群に属す。薬理学的には、MAO-Aはクロルギリンによって、MAO-BはL-デプレニルによって、SSAO/VAP-1はセミカルバジドによって選択的に阻害される。
モノアミンオキシダーゼ(MAO)活性は、セロトニン、ドーパミン、アドレナリン、ノルアドレナリン、アリールアルキルアミン及び多くのアミン生体異物のような内因性アミンの酸化的脱アミノ化に関与している。MAO-AとMAO-Bは、アミンの代謝において共通の酵素的役割を担っているが、70%の配列類似性しかなく、異なる遺伝子によってエンコードされており(Bach A.W.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 1988,85,4934-4938)、体内分布も異なる。MAO-Aはチラミン、セロトニン、アドレナリン、ノルアドレナリンなどの基質に対して高い親和性を示し、MAO-Bはドーパミン、フェニルエチルアミン及び微量のアリールアルキルアミンに対して優先的に作用する。MAO-Bは、脳、心臓、脂肪組織、膵臓、肺、腎臓、筋肉、肝臓など複数の臓器で発現している。
MAO-BとMAO-Aの両方を阻害する非選択的MAO阻害剤は、食事性チラミンを摂取した場合に高血圧性発症を誘発する可能性があり、したがって一定の食事制限が課せられる(ガードナーD・M.ら、J. Clin.Psychiatry、1996、57、99-104)。さらに、非選択的阻害剤は、他の薬物とのモノアミン相互作用の可能性を高める。したがって、医薬への応用のためには、MAO-Aに対して高い選択性を有するMAO-B阻害剤が必要とされている。
SSAO/VAP-1は、非常に短い細胞質尾部、単一の膜貫通ドメイン、及びアミンオキシダーゼ活性のための活性部位を含む、大きく高度にグリコシル化された細胞外ドメインを含むエクトエンザイムである(Salmi M.&Jalkanen S.Science 1992、257、1407-1414)。SSAO/VAP-1は、一部の
動物の血漿中に循環する可溶性形態としても存在する。この形態は、膜結合型SSAO/VAP-1の切断産物であることが示されている(Stolen C.M.ら、Circ.Res.2004、95、50-59)。SSAO/VAP-1は、脂肪組織、肺、肝臓、大動脈、筋肉組織で高発現する。SSAO/VAP-1は、2つの生理的機能を有しているように思われ、第一はアミンオキシダーゼ活性であり、第二は細胞接着活性である。この2つの活性は、炎症プロセスに関連する。SSAO/VAP-1のアミンオキシダーゼ活性の阻害剤は、白血球のローリング、接着及び血管外への移動を妨害し、SSAO/VAP-1抗体と同様に、抗炎症特性を示すことが見出されている(Foot J.S.ら、J.Pharm.Exp.Ther、2013、347、365-374)。
MAO-B及びSSAO/VAP-1の両方による、一次モノアミンの酸化的脱アミノ化により、アンモニア(NH)、アルデヒド及び過酸化水素(H)、それらの無差別反応性及び酸化ストレスを通じて、重大な炎症を引き起こしうる毒性を有する薬剤が産生される。SSAO/VAP-1アミンオキシダーゼの触媒サイクルにおいては、共有結合した補酵素TPQがまず還元され、次に銅の存在下で酸素によって再酸化され、副産物としてアンモニアと過酸化水素が生成される。同様に、MAO-Bは、一電子トランスファー過程を経て、アミンをアルデヒドやケトンに酸化し、同時にフラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)を還元型FADH2へと還元する。その後、この補酵素は酸素によって再酸化され、過酸化水素を生成する。過剰濃度の過酸化水素は有害であり、様々な炎症及び神経変性過程の病態を引き起こす場合がある(Gotz M.E.ら、Pharm
acol Ther.1994、63、37-122)。
神経筋疾患とは、疾患の基礎となる病態生理により、直接的には筋組織の分解を通じて、又は間接的には筋肉を制御する神経及び神経筋接合部に影響が及ぶことで、筋肉機能が影響を受ける様々な障害、の説明に使用される用語である。筋肉への直接的な影響により、筋肉の衰えや運動能力が低下するが、間接的な中枢神経系(CNS)を介した神経筋への影響により、時折起こる痙縮から麻痺まで多岐にわたる症状が引き起こされる。筋肉の消耗を伴う疾患は、さらに筋ジストロフィーに分類され、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)、ベッカー型筋ジストロフィー、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー、筋緊張型筋ジストロフィーなどが挙げられる。間接的な神経筋疾患は、中枢性障害に分類され、パーキンソン病、多発性硬化症、ハンチントン病、クロイツフェルト・ヤコブ病などが挙げられる。
神経炎症性疾患という用語は、免疫応答が神経系の変調をきたし、慢性的な炎症につながる様々な障害を説明するのに使用される用語である。この炎症は、アルツハイマー病、パーキンソン病、プリオン病、運動ニューロン疾患、ハンチントン病、脊髄小脳失調症、脊髄性筋萎縮症などの神経変性疾患につながる可能性がある。さらに、神経炎症は、てんかん、脳卒中、脳外傷などの神経疾患の根本的な原因ともなっている。
DMDは、筋ジストロフィーの最も一般的な形態である。これは致命的な神経筋障害で、遺伝的にはX染色体連鎖性疾患として遺伝し、ジストロフィン遺伝子の変異によって引き起こされる。主に男子に発症し、その発症率は男子出生の3,500人に1人と言われている。筋変性が起こることが特徴的であり、若年期から運動能力や日常生活に支障をきたす。DMDの死亡原因としては、心筋線維症や呼吸不全が最も多くなっている。DMDには治療法がなく、現在の治療法は症状の緩和と合併症の管理が中心で、副腎皮質ステロイド、手術、人工呼吸器、理学療法などが用いられている。最近注目されているスプライシングモジュレーターや遺伝子治療の進歩により、一部の患者ではジストロフィンの機能が一部回復する場合があるが、このような治療の長期的な効果はまだ不明であり、依然、代替又は追加の治療オプションが求められている。
パーキンソン病は、CNS疾患の中で最も一般的な疾患である。これは、筋肉と運動の制御に不可欠な化学物質である、ドーパミンを産生する脳の領域にある神経細胞の損傷から生じるものである。手、腕、足、顎、顔の震え、手足や体幹の硬直やこわばり、体の動きの緩慢さ、不安定な姿勢や歩行困難などを引き起こす、進行性の変性神経症状である。一般的には60歳以降に発症し、全世界で1,000万人以上が罹患していると言われている。現在のところ、治療法としては、進行を遅らせたり、症状に対処することのみが可能である。薬として最初に選択するものとして、脳のドーパミン量を増やすレボドパ(血液脳関門を通過できるドーパミンの前駆体)、レボドパとドーパミンの代謝を抑えるカルビドパやMAO-B阻害剤などが使用される。また、ジスキネジアを軽減するために抗コリン薬や薬用大麻が処方される。
MAO-B活性により、筋肉及び全身における酸化ストレスが増え、ミトコンドリア機能の低下及び活性酸素種の増加をもたらす。mdxマウス(DMD患者の特徴的な特性を示すように飼育され、ヒト疾患の関連モデルとして確立された動物)及びDMD患者の両方から得られた筋原性細胞培養物は、酸化ストレスに対してより感受性がある。この感受性は、生体外でMAO-Bの阻害剤(サフィナミド)で処置することにより消失した。MAO-Bの薬理学的阻害は、生体内でも有効であることが示されており、3ヶ月齢のmdxマウスに投与すると、サフィナミドにより筋線維損傷及び酸化ストレスは低減し、筋機能が改善された(Vitiello L.ら、Front.Physiol.2018、9、Article 1087)。
酵素阻害剤によりSSAO/VAP-1を遮断することは、好中球の引き起こす炎症に罹った動物モデルにおいて著効なことが示されている(Schilter H.C.ら、Respir.Res.2015、16、42)。無秩序な好中球の活性化及び活動により、過酸化水素と反応して次亜塩素酸を形成する、過剰なミエロペルオキシダーゼ(MPO)が放出され、局所組織の損傷及びさらなる炎症を引き起こす。MAO-BとSSAO/VAP-1は、いくつかの臓器(心臓、肺、筋肉)に局在していることから、両酵素の阻害剤は、好中球が関与し、酸化ストレスが起こる疾患の治療に有効であると考えられる。
好中球は、筋ジストロフィーの治療に対する新しい治療アプローチとして最注目されている。mdxマウスを使った研究によれば、それらが筋病変を促進することが示唆されている;筋ジストロフィーの疾患モデルマウスで、宿主好中球が、抗体を媒介して枯渇することで、骨格筋が破壊されるのが顕著に遅延し又低減した(Hodgetts S.ら、Neuromuscular Disorders 2006、16、591-602)。さらに、筋ジストロフィーの疾患モデルマウスでは、好中球エラスターゼ活性が上昇し、この上昇によって筋芽細胞の生存が危うくなることが示されている(Arecco,N.ら、Sci.Rep.2016、6、Article 24708)。SSAO/VAP-1は、DMD患者の筋肉ドナー組織でアップレギュレートされ、生体内でのSSAO/VAP-1活性の薬理学的阻害により、mdxマウスの炎症は低減し(国際公開第2015/189534号パンフレット、国際公開第2017/017414号パンフレット)、これより、さらに、SSAO媒介活性によって、少なくとも部分的にリクルートされる好中球が、筋ジストロフィーの進行に関与するという理論が支持される。
DMDを患う患者に対する現在の標準的な治療方法は、プレドニゾロン及びデフラザコートのようなグルココルチコイドを使用することである。しかし、これらのステロイドを長期にわたって使用すると、免疫抑制、肥満、インスリン抵抗性及び行動上の問題、といった副作用を引き起こすので重い負担となる。
高脂肪食を摂取した肥満犬では、MAO及びSSAO/VAP-1の両方の活性が上昇
する(Wenecq,E.ら、J.Physiol.Biochem.2006、62、113-124)。SSAO/VAP-1の基質には脂肪分解作用があることが示されており、SSAO/VAP-1を阻害することで、脂肪分解が促進される(Romauch,M.,Open Biology、2020、10、Article 190035)。インスリン受容体を脳特異的にノックアウトしたマウス(NIRKOマウス)は、線条体と側坐核で、ミトコンドリア酸化活性の低下、活性酸素の増加、脂質とタンパク質の酸化レベルの上昇を伴う脳ミトコンドリア機能不全を示す。NIRKOマウスでは又、モノアミンオキシダーゼA及びB(MAO A及びB)のレベルも上昇し、これらの領域におけるドーパミンの代謝反転が増す。培養神経細胞及びグリア細胞における研究によれば、MAO A及びBにおけるこれらの変化が、直接的にインスリンシグナル伝達の喪失につながり、したがって行動障害となって現れることが示される(Kleinridders,Aら、PNAS、2015、112、3463-3468)。
パーキンソン病、アルツハイマー病、注意欠陥多動性障害、統合失調症などのドーパミンレベルの低下に関連する疾患では、MAO-Bの阻害により、ドーパミン作動性ニューロンがより活性化し、それによって症状が緩和される。MAO活性の上昇による酸化ストレスと、それに伴うMAO-BによるHの生成量が増えることは、老齢化、アルツハイマー病、パーキンソン病に関連する変性プロセスに関与している。酸化ストレスは、ハンチントン病の進行における重要な要因としても認識されており、この病気の患者では、基底核と大脳皮質でMAO-Bの発現が増加していることが示されている(Richards G.ら、Brain Res.2011、1370、204-214)。したがって、神経筋疾患や神経変性疾患に用いられるMAO-B阻害剤は、脳内のモノアミンレベルを上昇させると同時に、活性酸素の生成を抑制することにより、作用する場合がある。
SSAO/VAP-1酵素活性に関連する炎症はまた、パーキンソン病、アルツハイマー病及び多発性硬化症などの神経炎症性疾患の重要な特徴であると考えられており、脳閉塞/再灌流事象後に生じる病態生理の特徴である(Aktas,O.ら、Arch Neurol.2007、64、185-189)。SSAO/VAP-1の過剰な活性は、これらのプロセスに独立して関与している(Xu,H-L.他、J.Pharm.Exp.Ther.2006、317、19-26)。SSAO/VAP-1活性の薬理学的阻害により、LPS誘発神経炎症モデルにおいて、脳への好中球の浸潤が抑制され、ミクログリアの活性化を抑えることが示されている(Becchiら、Br.J.Pharmacol.2017、174、2302-2317)。また、内皮SSAO/VAP-1は、脳血管アミロイドベータ(Aβ)沈着に作用することにより、アルツハイマー病に関連する脳アミロイド血管症に関与し(Sole M.ら、Neurobiology of
Ageing 2015、36、762)、疾患進行に関連する、根柢にある血液-脳関門機能不全につながると考えられている(Sole M.ら、Biochim.Biophys.Acta.Mol.Basis.Dis.2019、1865、2189-2202)。さらに、一次アミン(メチルアミンからホルムアルデヒドなど)のSSAO/VAP-1酸化は、アルツハイマー病のモデルにおける酸化ストレスに関連している(Somfai G.M.ら、Neurochem Int.2006、48、746-52)
MAO-Bの酵素活性は、血管機能障害に関与していることが分かっている。MAO-B-/-マウスは、横大動脈狭窄(TAC)によって誘導される圧力過負荷を受けた場合、WTマウスと比較して、ミトコンドリア機能不全(酸化ストレスの減少)、線維化及びアポトーシスの減少、左心室機能の保全が認められる(Sturza A.ら、Hypertension 2013、62、140-6及びKaluderic N.ら、Antioxid.Redox Signal.2014、10、267-280)。SSA
O/VAP-1は、肺、肝臓、腎臓を含む複数の臓器における炎症化及び線維化に大きく関わるとともに、心血管及び代謝性疾患においても強く関与する(Salmi M.&Jalkenen S.Antioxid.&Redox Signal.2017、30、314-332)。
MAO-B及びSSAO/VAP-1は、いくつかの研究分野において重複するところが多い。それらは、線維症、炎症、及び心血管疾患に関わる、局所的及び全身的な酸化ストレスを誘発することができる共通の酸化的経路を共有している。筋ジストロフィーでは、両者とも筋組織に大量に存在し、これらの疾患の中で最もよく研究されているDMDの進行において、炎症及び酸化ストレス経路の両方に関与しているようである。また、これらのターゲットを阻害することで、全身の炎症、線維化、心血管系の悪化に対して有効な効果が期待できることも明らかである。CNSでは、SSAO/VAP-1は、白血球の微小血管への浸潤/移動に影響を及ぼし、MAO-Bは神経変性に影響を及ぼすという補完的な役割を担っている。これらの作用はいずれも、中枢神経系に関連する神経筋障害、特にパーキンソン病、アルツハイマー病、多発性硬化症などの神経炎症を伴う疾患に大きな影響を及ぼすと考えられ、さらに、両酵素活性の治療に介入できるという期待が寄せられている。
前述の疾患における、MAO-B及びSSAO/VAP-1の作用の複雑さを考慮すると、これら両方の酵素に対する強力かつ選択的な阻害剤(二重阻害剤)は、これらの神経筋疾患、神経炎症性疾患及び神経変性疾患における、治療における明確かつ大きな利点をもたらしうる。
いくつかの既知のMAO阻害剤は、SSAO/VAP-1も阻害する(例えば、以下に例示するハロアリルアミンMAO阻害剤モフェジリン(Milczek E.M.ら、J.Med.Chem.2008、51、8019-8026)。フルオロアリルアミン阻害剤は、MAO阻害剤として米国特許第4454158号明細書にも記載されている。
Figure 2023531468000001
LJP1586のようなモフェジリンと構造的に関連する他の例は、国際公開第2007/120528号パンフレットに記載されている。
Figure 2023531468000002
さらに、一連の2-置換-3-ハロアリルアミンSSAO/VAP-1阻害剤が、PXS-4728及びPXS-4681を含む国際公開2013/163675号パンフレットにおいて開示されている。
Figure 2023531468000003
これらの特許出願の両方において、報告された酵素阻害は、MAO-Bを含む他の全てのアミンオキシダーゼよりもSSAO/VAP-1に対して選択的であった。
最近の特許出願には、SSAO/VAP-1阻害剤として、アリールオキシ及びヘテロアリールオキシ2-置換-3-フルオロアリルアミンが記載されている(国際公開第2018/233633号パンフレット、国際公開第2018/151985号パンフレット、国際公開第2019/129213号パンフレット、国際公開第2019/241751号パンフレット及び国際公開第2020/063854号パンフレット)。MAO-A又はMAO-Bの阻害データは開示されていない。
関連するSSAO/VAP-1阻害剤の特許出願には、さらに、MAO-B及びMAO-Aの両方に関するデータに限定されて報告されている(国際公開第2018/196677号パンフレット、国際公開第2019/101086号パンフレット、国際公開第2019/024924号パンフレット、国際公開第2020/006177号パンフレット、国際公開第2020/063696号パンフレット、国際公開第2020/069335号パンフレット、国際公開第2021/083209号パンフレット)。そこに示された例示的な化合
物のいずれにおいても、標準的な生化学的アッセイにおいて、MAO-Bの組換えヒト型に対して<100nMのIC50は報告されておらず、したがって、それらはMAO-Bの強力な阻害剤とは見なされないであろう。
ベンゾオキサゾールベースの2-置換-3-フルオロアリルアミンSSAO/VAP-1阻害剤が、以下に示す例のような、MAO-Bを阻害する効力(IC50<0.1μM)及びより低いMAO-Aを阻害する効力(IC50が10~30μM間)を示す(国際公開第2020/069330号パンフレット)ことも開示されている。
Figure 2023531468000004
5員複素環の窒素に直接結合した2-置換-3-フルオロアリルアミンSSAO/VAP-1阻害剤についても記載されている(国際公開第2019/180644号パンフレット)。MAO-Bに対する活性及びMAO-Aに対する選択性は、例示化合物の数種で報告されている。
本明細書に提示される発明に関連し、以下の化合物が、選択的SSAO/VAP-1阻害剤として報告されており、それらがMAO-Bの強力な阻害剤ではないことを示すデータが報告されている(中国特許出願公開第2019/109251166号明細書)。
Figure 2023531468000005
本発明は、SSAO/VAP-1及びMAO-Bの両方の強力な阻害剤であり、特にMAO-Aに対して高い選択性を有する、2-置換-3-フルオロアリルアミン化合物を提供するものである。驚くべきことに、先に記載した2-フェノキシメチレン-3-フルオロアリルアミン構造を変性することにより、MAO-A酵素の阻害に対して高い選択性を有し、結果として所望する安全性プロフィールを有する、ヒト型SSAO/VAP-1及びMAO-B酵素の両方の強力な阻害剤である新規化合物の開発へとつながった。さらに、本発明の化合物は、優れた薬物動態学的特性及び生体外で所望する安全性プロフィールを有する。
本発明は、SSAO/VAP-1及びMAO-Bのアミンオキシダーゼ活性を阻害する化合物の合成及び使用、神経筋障害(に限定されない)に罹患した患者を治療する、そのような阻害剤の有用性について記載するものである。
本発明の第1の態様は、式1の化合物:
Figure 2023531468000006

又はその薬剤的に許容可能な塩、多形体若しくは溶媒和物であって、
は、水素、フッ素、臭素及びメチルからなる群から選択され;及び
は、水素又はフッ素である、
化合物又はその薬剤的に許容可能な塩、多形体若しくは溶媒和物、を提供するものである。
本発明の第2の態様は、本発明の第1の態様に記載の化合物、又はその薬剤的に許容可能な塩若しくは溶媒和物、及び少なくとも1種の薬剤的に許容可能な賦形剤、担体若しくは希釈剤を含む医薬組成物を提供するものである。
本発明の第3の態様は、その必要性のある対象にSSAO/VAP-1及びMAO-Bのアミンオキシダーゼ活性を阻害する方法であって、有効量の本発明の第1の態様に記載の化合物、若しくはその薬剤的に許容可能な塩若しくは溶媒和物、又は本発明の第2の態様に記載の医薬組成物を、前記対象に投与することを含む方法を提供するものである。
本発明の第4の態様は、前記SSAO/VAP-1タンパク質及びMAO-Bタンパク質の前記活性を阻害することで疾患又は障害を治療又は予防する方法であって、治療上有
効な量の本発明の第1の態様に記載の化合物、若しくはその薬剤的に許容可能な塩若しくは溶媒和物、又は本発明の第2の態様に記載の医薬組成物を、その必要性のある対象に投与することを含む、方法を提供するものである。
本発明の第5の態様は、前記SSAO/VAP-1タンパク質及び前記MAO-Bタンパク質の活性を阻害することで疾患又は障害を治療又は予防する医薬の製造のための、本発明の第1の態様に記載の化合物、又はその薬剤的に許容可能な塩若しくは溶媒和物の使用を提供するものである。
本発明の第6の態様は、前記SSAO/VAP-1タンパク質及び前記MAO-Bタンパク質の前記活性を阻害することにより、疾患又は障害を治療又は予防するために用いる、本発明の第1の態様に記載の化合物、又はその薬剤的に許容可能な塩若しくは溶媒和物を提供するものである。
本発明の方法及び使用の一つの実施形態では、前記疾患又は障害は、MAO-Aに対する、SSAO/VAP-1及びMAO-Bの前記選択的阻害によって改善される。
本発明の方法及び使用の一つの実施形態では、前記疾患は神経筋疾患である。
本発明の別の実施形態では、前記疾患は、神経炎症性疾患又は神経変性疾患である。
本明細書中で意図されることは、本方法が、さらに、神経筋疾患、神経炎症性疾患及び神経変性疾患の前記治療に使用される追加の治療剤を共投与することを包含する併用療法であることである。
定義
以下は、本発明の説明を理解するのに役立つと思われるいくつかの定義である。これらは一般的な定義であることが意図されており、決して本発明の範囲を、これらの用語のみに限定するべきものではなく、以下の説明をより良く理解するために提示される。
文脈上で他に指示されるか、又は特に反対のことが述べられていない限り、単数の整数、工程、又は要素として記載される、本明細書中の、本発明の整数、工程、又は要素は、明らかに、記載される整数、工程、又は要素の単数と複数の形態の両方を包含する。
本明細書を通じて、文脈上他に指示されない限り、単語「含む」、又は「含む」若しくは「含んでいる」といった用語の変形は、記載される、工程又は要素又は整数、又は、工程又は要素又は整数の群を含むことを意味するが、他の工程又は要素又は整数、又は、要素又は整数の群を除外しないものと理解されるであろう。したがって、本明細書の文脈では、用語「含む」は、「主に含むが、必ずしもそれのみではない」ことを意味する。
当業者は、本明細書に記載の発明が、具体的に記載されたもの以外の変形及び改良の影響を受けてもよいことを理解するであろう。本発明は、全てのそのような変形及び改良を包含すると理解される。また、本発明は、個別に又は包括的に、本明細書で言及又は示される全ての工程、特徴、組成物及び化合物、並びに前記工程又は特徴のいずれか及び全ての組合せ又はいずれか2種以上を含むものである。
本発明は、その範囲内に異なる原子の同位体を含む。特定の同位体として具体的に指定されていないいずれかの原子は、その原子のいずれかの安定同位体を表すことを意味する。したがって、本開示では、水素の重水素及び三重水素の同位体が含まれると理解するべきある。
本出願で引用される全ての文献は、その全体が相互参照により具体的に本明細書に援用される。そのような文書を参照することにより、その文書が、一般知識の一部を形成すること、又は先行技術であることを認めるものとして解釈されるべきではない。
本明細書の文脈において、「投与している」という用語、及び「投与する」及び「投与」を含むその用語の変形は、本発明の化合物又は組成物を、いずれかの適切な手段によって、生物に又は表面に、接触、塗布、送達又は提供すること、を含む。本明細書の文脈において、用語「治療」とは、疾病状態又は兆候を改善する、疾病の確立を防止する、又はそうでなければ、疾病又は他の望ましくない兆候の進行を、あらゆる方法によってでも防止、妨害、遅延、又は逆転させる、いずれかの及び全ての使用を意味する。
本明細書の文脈において、用語「有効量」とは、所望の効果をもたらすのに充分であるが無毒である、本発明の化合物又は組成物の量であることを、その意味内に包含する。したがって、用語「治療上有効な量」とは、所望の治療効果をもたらすのに充分であるが無毒である、本発明の化合物又は組成物の量であることを、その意味内に包含する。その求められる正確な量は、治療される種、対象の性別、年齢及び一般状態、治療される状態の重症度、投与される特定の薬剤、投与様式などの要因によって、対象によって異なるであろう。したがって、正確な「有効量」を特定することはできない。しかし、どのような場合でも、当業者であれば、適切な「有効量」を、日常行われる実験のみから決定することができる。
図1は、PXS-5131対化合物1の、ウイスターラットにおける薬物動態学的時間経過を示す。 図2は、PXS-5131を、0.6mg/kgで経口投与した後の、スプラーグドーリーラットの脂肪組織における、SSAO/VAP-1阻害の生体内における薬物動態読み出し情報を示す。 図3は、PXS-5131を、0.6mg/kgで経口投与した後の、スプラーグドーリーラットの脳組織における、MAO-B阻害の生体内における薬物動態読み出し情報を示す。 図4は、BALB/cマウスの、カラギーナン・エアパウチモデルにおけるPXS-5131の抗炎症効果を示す。 図5は、PXS-5131が、ドーパミン作動性神経変性の頭巾斑ウイスターラットモデルにおいて、神経細胞の損失を低減することを示す図である。 図6は、3ヶ月齢のmdxマウスに、6mg/kg/日のPXS-5131を4週間経口投与することにより、無投与の同年齢マウスと比較して、腓腹筋(GC)筋肉において、偏心収縮による力の損失を免れるのが助長されることを示す図である。 図7は、3ヶ月齢のmdxマウスに、PXS-5131を6mg/kg/日で4週間経口投与すると、無投与の同年齢マウスと比較して、前脛骨筋における、(A)好中球流入、(B)マクロファージ流入、(C)活性酸素、(D)線維化(ピクロシリウスレッド染色により定量化)が著しく低減することを示す図である。 図8は、化合物1を様々な投与量で経口投与した後の、C57BL/6Jマウスの心臓、筋肉及び脂肪組織における、MAO-B及びSSAO/VAP-1阻害を示す。 図9は、様々な投与量の化合物1を経口投与した後の、C57BL/6Jマウスの心臓及び筋肉組織からのMAO-Aの活性を示す。 図10は、化合物1を経口投与した後の、mdxマウスの筋肉及び脂肪組織における、それぞれのMAO-B及びSSAO/VAP-1阻害を示す。 図11は、化合物1を経口投与した後の、mdxマウス筋肉組織からのMAO-Aの活性を示す。 図12は、3ヶ月齢のmdxマウスに、化合物1(4.8mg/kg/日)を30日間経口投与すると、横隔膜筋における、(A)好中球流入、(B)マクロファージ流入、(C)活性酸素、及び(D)線維化(ピクロシリウスレッド染色により定量化)が、無処理の同年齢マウスと比較して、著しく低減することを示す図である。 図13は、10ヶ月齢のmdxマウスに、化合物1(4.8mg/kg/日)を90日間投与すると、無処置の同年齢マウスと比較して、心臓線維化(心筋のピクロシリウスレッド染色によって定量化)を著しく低減することを示す図である。
本発明は、SSAO/VAP-1及びMAO-Bの両方を阻害しうる、置換ハロアリルアミン誘導体に関するものである。特に、本発明は、置換及び非置換の4-((2-(アミノメチル)-3-フルオロアリル)オキシ)ベンゾニトリル誘導体に関するものである。
特に、本発明は、式1の化合物:
Figure 2023531468000007

又はその薬剤的に許容可能な塩、多形体若しくは溶媒和物であって、
は、水素、フッ素、臭素及びメチルからなる群から選択され;及び
は、水素又はフッ素である、
化合物又はその薬剤的に許容可能な塩、多形体若しくは溶媒和物、に関する。
本発明の化合物の一つの実施形態において、Rは水素である。本発明の化合物の別の実施形態では、Rはフッ素である。本発明の化合物のさらなる実施形態において、Rは臭素である。本発明の化合物の別の実施形態では、Rはメチルである。
本発明の化合物の一つ実施形態では、Rは水素である。本発明の化合物の別の実施形態では、Rはフッ素である。
本発明の化合物の一つの実施形態において、Rは水素であり、Rは水素である。本発明の化合物の別の実施形態では、Rはフッ素であり、Rは水素である。本発明の化合物のさらなる実施形態において、Rは臭素であり、Rは水素である。本発明の化合物の別の実施形態では、Rは水素であり、Rはフッ素である。本発明の化合物のさらなる実施形態では、Rはメチルであり、Rは水素である。
一つの実施形態では、本発明の化合物は、その遊離塩基として使用される。本発明の化合物の別の実施形態では、その化合物は、薬剤的に許容可能な塩として使用される。本発明の化合物の一つの実施形態では、その化合物は塩酸塩である。
一つの実施形態では、本発明の化合物は、SSAO/VAP-1及びMAO-Bの強力な阻害剤である。本発明によれば、SSAO/VAP-1の強力な阻害剤のIC50は、50nM未満、又は40nM未満、又は30nM未満、又は20nM未満である。一つの実施形態では、SSAO/VAP-1の強力な阻害剤のIC50は、10nM未満である
。本発明によれば、MAO-Bの強力な阻害剤のIC50は、250nM未満、又は200nM未満、又は150nM未満、又は100nM未満である。一つの実施形態では、MAO-Bの強力な阻害剤のIC50は、50nM未満である。
一つの実施形態では、本発明の化合物は、MAO-Aに対して特に高い選択性を有する、SSAO/VAP-1及びMAO-Bの両方の強力な阻害剤である。本発明の化合物は、3000nMより大きい、又は10000nMより大きい、又は20000nMより大きいIC50で、MAO-Aを阻害する。一つの実施形態では、本発明の化合物は、30000nMより大きいIC50でMAO-Aを阻害する。
本発明の化合物は、MAO-Aに対して、SSAO/VAP-1及びMAO-Bの選択的阻害剤である。MAO-Bを阻害する所定の化合物の相対的選択性は、(MAO-AのIC50値/MAO-BのIC50値)の相対比が少なくとも12であることとで定義される。(MAO-AのIC50値/SSAO/VAP-1のIC50値)の相対比は、少なくとも60である。別の実施形態では、所定の化合物について、(MAO-AのIC50値/MAO-BのIC50値)の相対比は、少なくとも120であるか、又は少なくとも600である。別の実施形態では、所定の化合物について、(MAO-AのIC50値/SSAO/VAP-1のIC50値)の相対比は、少なくとも300であるか、少なくとも600であるか、又は少なくとも3000である。
本開示の文脈において、いずれか一つ又は複数の態様(複数可)又は実施形態(複数可)は、他のいずれかの態様(複数可)又は実施形態(複数可)と組み合わされてもよい。
本発明による例示的な化合物には、表1に記載される化合物が含まれる。
Figure 2023531468000008
式1の化合物の調製
本明細書に記載される式1の化合物は、当技術分野で既知の方法を用いた、標準的な合成化学技術を使って合成される。記載された方法は、例示の目的でのみ提供され、本明細書中に提供される請求項の範囲を限定するものではない。
標準的な合成化学技術は、Advanced Organic Chemistry、8th Edition by March、John Wiley and Sons
Inc.に記載されているが、これらに限定されるわけではない。アルコール、アミン及びカルボン酸のような官能基を一時的に保護するための保護基の使用に関する標準的な手順は、例えばProtecting Groups in Organic Synthesis、5th Edition、John Wiley and Sons Inc.に記載されている。
本明細書に記載の化学変換用に使用する代替反応の反応条件として、溶媒、反応温度、反応時間、及び化学試薬を変更して採用してもよい。特に断らない限り、化学合成及び生物学的に応用するのに使用する出発材料は、市販品を入手できる。
一般スキーム1及び2において、Pは窒素官能基を保護するのに用いられる基である。Pの例としては、tert-ブチルオキシカルボニル(Boc)、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(FMOC)及びベンジルオキシカルボニル(CBZ)基などのカー
ボネートがある。いくつかの実施形態では、式II(スキーム1)のヒドロキシベンゾニトリルを、適切な塩基の存在下、適切な極性溶媒を用いて、0℃~40℃の温度で数時間、式IIIの臭化アリルで処理する(方法A)。いくつかの実施形態において、塩基は、炭酸カリウム(KCO)又は代替として炭酸セシウム(CsCO)である。別の実施形態では、塩基は、水素化ナトリウム(NaH)である。いくつかの実施形態では、溶媒は、ジメチルホルムアミド(DMF)、又は代替としてアセトンである。別の実施形態では、溶媒はアセトニトリルである。標準的な抽出及び精製方法に従えば、式IVで記述される生成物を、良好な収率及び純度で得ることができる。
Figure 2023531468000009
いくつかの実施形態では、式Vのフルオロベンゾニトリル(スキーム2)を、適切な塩基の存在下で適切な溶媒を用いて、式VIのアリルアルコールで0℃~40℃の間の温度で数分間処理する(方法C)。一つの実施形態では、塩基はNaHである。別の実施形態では、溶媒は、テトラヒドロフラン(THF)又は代替として、DMFである。標準的な抽出および精製方法に従えば、式IVで表される生成物を、良好な収率及び純度で得ることができる。
Figure 2023531468000010
式IVで記載される化合物を、式Iで記載される化合物に脱保護する手順としては、充分に確立された化学的手順が数多く存在する(方法B;スキーム1及び2)。例えば、PがBoc保護基である場合、式IVにより記載される化合物を、ジエチルエーテル又はジオキサンのような溶媒中、乾燥塩化水素のような酸性試薬で処理して、式Iにより記載される化合物の塩酸塩として調製することが可能である。別の実施形態では、酸性試薬は、トリフルオロ酢酸(TFA)である。一つの実施形態では、式Iの化合物を、遊離塩基として使用してもよい。一般に、遊離塩基化合物は、取り扱いを容易にするため、及び化学的安定性を向上させる目的で、酸付加塩に変換される。酸付加塩の例としては、塩酸塩、臭化水素酸塩、2,2,2-トリフルオロ酢酸塩及びメタンスルホン酸塩が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
治療的使用
本発明では、膜結合型SSAO/VAP-1及び可溶性SSAO/VAP-1を阻害する、式Iで記述される化合物の使用方法が提供される。さらに、本発明では、MAO-Bを阻害する、式Iによって記載される化合物の使用方法が提供される。それらの化合物の相対的な阻害効力は、様々な方法、例えば、組換えヒトタンパク質又は組換え非ヒト酵素を用いた生体外アッセイにおいて、正常なげっ歯類酵素を発現する細胞アッセイにおいて、ヒトタンパク質をトランスフェクトした細胞アッセイにおいて、げっ歯類及び他の哺乳類種における生体内テスト等において、SSAO/VAP-1及びMAO-Bのアミンオキシダーゼ活性を阻害するのに必要な量から決定することができる。
本発明では、また、神経筋疾患に罹患している患者において、SSAO/VAP-1及びMAO-Bを阻害する、式Iで表される化合物を使用する方法、並びに神経筋疾患に関連するその兆候を治療する方法が開示される。
したがって、一つの態様において、本発明は、その必要性のある対象においてSSAO/VAP-1及びMAO-Bのアミンオキシダーゼ活性を阻害する方法であって、有効量の式1の化合物、又はその薬剤的に許容可能な塩若しくは溶媒和物、又はその医薬組成物を、前記対象に投与することを含む、方法に関する。
別の態様では、本発明は、前記SSAO/VAP-1タンパク質及び前記MAO-Bタンパク質の前記活性を阻害することで疾患又は障害を治療又は予防する方法であって、治療上有効な量の式1の化合物、又はその薬剤的に許容可能な塩若しくは溶媒和物、又はその医薬組成物を、その必要性のある対象に投与することを含む、方法に関する。一つの実施形態では、本発明は、前記SSAO/VAP-1タンパク質及び前記MAO-Bタンパク質の活性を阻害することによって、疾患又は障害を治療する方法に関する。別の実施形態では、本発明は、前記SSAO/VAP-1タンパク質及び前記MAO-Bタンパク質の活性を阻害することによって、疾患又は障害を予防する方法に関する。
さらに別の態様において、本発明は、SSAO/VAP-1及びMAO-Bによって調節される疾患又は障害を治療する方法に関し、前記方法は、その必要性のある対象に、治療上有効な量の式Iの化合物、又はその薬剤的に許容可能な塩若しくは溶媒和物、又はその医薬組成物を投与することを含む。
さらなる態様において、本発明は、神経筋障害、神経変性疾患及び神経炎症性疾患からなる群から選択される疾患又は障害を治療又は予防する方法に関し、前記方法は、その必要性のある対象に、治療上有効な量の式Iの化合物、又はその薬剤的に許容可能な塩若しくは溶媒和物、又はその医薬組成物を投与することを含む。一つの実施形態では、本発明は、神経筋障害、神経変性疾患、及び神経炎症性疾患からなる群から選択される疾患又は障害の治療に関する。別の実施形態では、本発明は、神経筋障害、神経変性疾患、及び神
経炎症性疾患からなる群から選択される疾患又は障害を予防することに関する。
本発明の別の実施形態は、前記疾患又は障害が、MAO-Aに対する、SSAO/VAP-1及びMAO-Bの選択的阻害によって改善される、治療方法である。MAO-Aに対して、SSAO/VAP-1及びMAO-Bを選択的に阻害することにより、本発明の化合物は、好ましい安全プロフィールをもたらす。
本発明のさらなる態様では、前記SSAO/VAP-1タンパク質及び前記MAO-Bタンパク質の前記活性を阻害することによって、疾患若しくは障害を治療又は予防する、医薬の製造のための、式Iの化合物、又はその薬剤的に許容可能な塩若しくは溶媒和物の使用が提供される。
本発明の別の態様では、神経筋障害、神経変性疾患及び神経炎症性疾患からなる群から選択される疾患若しくは障害を治療又は予防する、医薬の製造のための、式Iの化合物、又はその薬剤的に許容可能な塩若しくは溶媒和物の使用が提供される。
上記の方法及び使用は、疾患が神経筋障害である場合に適用可能である。本明細書で採用する「神経筋障害又は疾患」とは、随意筋の病理であって直接的なもの、又は神経若しくは神経筋接合部の病理であって間接的なもののいずれか場合で、それらの筋肉の機能を損なう障害を対象とする。デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)、ベッカー型筋ジストロフィー、エメリー・ドライフス型筋ジストロフィー、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー、四肢帯状筋ジストロフィー、筋緊張性ジストロフィー、眼咽頭筋ジストロフィー、先天的筋ジストロフィーなどの筋ジストロフィーを含む幅広い疾患を対象とし、及び間接的な中枢性障害、例えば;パーキンソン病、多発性硬化症、ハンチントン病及びクロイツフェルト・ヤコブ病なども対象とする。本発明の方法及び使用の一つの実施形態では、筋ジストロフィーは、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)、ベッカー型筋ジストロフィー、顔面肩甲上腕筋ジストロフィー及び筋緊張性ジストロフィーからなる群から選択される。本発明の方法及び使用の一つの実施形態では、筋ジストロフィーはデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)である。
「神経筋疾患」という用語は、筋萎縮性側索硬化症や脊髄性筋萎縮症などの運動ニューロン疾患、イオンチャンネル疾患、ミオパチー、フリードライヒ失調症などのミトコンドリア疾患、重症筋無力症などの神経筋接合部疾患、シャルコー・マリー・トゥース病などの末梢神経疾患も指しうる。
SSAO/VAP-1及びMAO-Bを阻害する上での二重の利点は、酸化ストレスに関連する炎症性疾患を治療できる可能性がある点にある。
本明細書中、「炎症又は炎症性障害」には、関節炎(若年性関節リウマチを含む)、クローン病、潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患(例えば。過敏性腸疾患)、乾癬、喘息、肺炎、COPD、気管支拡張症、皮膚炎、眼疾患、接触性皮膚炎、肝炎、慢性肝疾患、自己免疫性肝炎、原発性胆汁性肝硬変、硬化性胆管炎、自己免疫性胆管炎、アルコール性肝炎、粥(かゆ)状動脈硬化症、慢性心不全、鬱血性心不全、虚血性疾患、脳卒中及びその合併症、敗血症、急性肺損傷及び嚢胞性線維症などで経験する細菌感染に起因する炎症、心筋梗塞及びその合併症、脳卒中後の炎症性細胞破壊、滑膜炎及び全身性炎症性敗血症、を含む多岐にわたる適応症が包含される。
「酸化ストレス」という用語が関連する疾患は、活性酸素の増加が疾患の進行又は疾患の症状に直接関連する疾患を対象とし、癌、筋ジストロフィー、アルツハイマー病、パーキンソン病、糖尿病、高血圧、アテローム性動脈硬化症及び脳卒中などの心血管疾患、炎
症性疾患、慢性疲労症候群、脆弱x症候群、うつ病、注意欠陥多動性障害、自閉症、アスペルガー症候群、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症、ぜんそく及び男性不妊症など、を含む多くの異なる疾患が含まれる。
本発明の方法及び使用の一つの実施形態では、疾患は、神経疾患、代謝性疾患及び線維症から選択される炎症性疾患である。
上記の方法及び使用は、疾患が神経疾患又は障害である場合にも適用可能である。本明細書で採用するように、「神経疾患又は障害」は、神経炎症性疾患及び神経変性疾患の両方を対象とし、脳卒中、アルツハイマー病、家族性アルツハイマー病、パーキンソン病、老人性認知症、血管性認知症、ハンチントン病、筋萎縮側索硬化症、多発性硬化症、ダウン症候群及びアポリポ蛋白E4アレルのホモ接合体などの様々な適応症を包含する。本発明の方法及び使用の一つの実施形態では、神経変性疾患又は神経炎症性疾患は、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、脊髄性筋萎縮症、重症筋無力症及びシャルコー・マリー・トゥース病からなる群から選択される。
神経障害の他の例としては、精神疾患があり、例えば、うつ病、不安、パニック発作、社会恐怖症、統合失調症、食欲不振、及び抑うつ気分障害が挙げられる。
神経障害のさらなる例には、アルコール、ニコチン及び他の中毒性薬物によって誘発される離脱症候群が含まれる。
上述した方法及び使用は、疾患が代謝性障害又は疾患である場合にも適用可能である。本明細書中で使用する「代謝障害又は疾患」は、肥満、1型及び2型糖尿病、高血圧、アテローム性動脈硬化症、高血圧、慢性腎臓病、脂質異常、心臓病、代謝症候群、インスリン抵抗性、糖尿病性腎症、糸球体硬化症、糖尿病性網膜症、脈絡膜血管新生及びそれらが原因で生じる心血管合併症などの疾患を含む多種類の適応症を包含する。
本発明のさらに別の態様によれば、1型及び2型糖尿病、並びに糖尿病関連疾患を患う患者を、二重のSSAO/VAP-1及びMAO-B阻害剤で治療する方法が提供される。本明細書において、治療を想定している糖尿病関連疾患には、糖尿病性腎症、糖尿病性黄斑浮腫、糸球体硬化症、糖尿病性網膜症、脈絡膜新血管形成、及びそれらが原因となり生じる心血管合併症が含まれる。
上述した方法及び使用は、疾患が線維症である場合にも適用可能である。ここで採用される「線維症」とは、嚢胞性線維症、特発性肺線維症、腎線維症、慢性閉塞性肺疾患、胸膜線維症及び放射線誘発性肺線維症、非糖尿病性腎線維症、膵線維症、強皮症、結合組織疾患、瘢痕化、皮膚線維症、臓器移植に伴う線維症、狭窄症、アルコール性肝疾患を含む肝線維症、脂肪性肝疾患、非アルコール性脂肪性肝炎、急性及び慢性肝炎、胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、肝細胞癌及び毒性肝障害、を含む肝線維症、並びに、過剰な線維化が疾患病理に寄与する他の疾患などである。一実施形態では、線維化は心筋線維化である。
医薬及び/又は治療用製剤
本発明の別の実施形態では、式Iで示される化合物と、その少なくとも1種の薬剤的に許容可能な賦形剤、担体又は希釈剤とを含む組成物が提供される。式Iの化合物(複数可)は、また、薬剤的に許容可能な塩を含む適切な塩として存在することができる。
「薬剤的に許容可能な担体」という用語は、特定の投与様式に適していることが当業者
により知られている、いずれかの担体を指す。さらに、本化合物を、組成物中で薬剤的活性成分のみとして配合してもよいし、他の活性成分と配合してもよい。
「薬剤的に許容可能な塩」という用語は、医薬用途での使用に適切な、いずれかの塩の調製物を意味する。薬剤的に許容可能な塩とは、健全たる医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応などを伴わずに、ヒト及び下等動物の組織と接触させて使用するのに適しており、妥当なベネフィット/リスク評価に見合った塩のことを意味する。
薬剤的に許容可能な塩は、当技術分野でよく知られているような、酸付加塩及び塩基塩を含む。酸及び塩基の半塩もまた形成され得る。薬剤的に許容可能な塩としては、鉱酸のアミン塩(例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩など);及び有機酸のアミン塩(例えば、ギ酸塩、酢酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、酪酸塩、バレイン酸塩、フマル酸塩など)が挙げられる。
塩基性部位を有する式Iの化合物の場合、適切な薬剤的に許容可能な塩は、酸付加塩であってもよい。例えば、そのような化合物の好適な薬剤的に許容可能な塩は、塩酸、硫酸、メタンスルホン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、安息香酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、炭酸、酒石酸、又はクエン酸などの薬剤的に許容可能な酸を、本発明の化合物に混合することにより調製することができる。
S.M.Bergeらは、J.Pharmaceutical Sciences.1977、66:1-19において、薬剤的に許容可能な塩について詳細に記載している。塩は、本発明の化合物を最終的に単離及び精製する間に、その場で調製することができる、又は別途、遊離塩基官能基を適切な有機酸と反応させることによって調製することができる。代表的な酸付加塩としては、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、カンファー酸塩、カンファースルホン酸塩、クエン酸塩、ジグルコン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプトン酸塩、ヘキサン酸塩、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシ-エタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバリン酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩等がある。好適な塩基塩は、非毒性塩を形成する塩基から形成される。
式1の化合物の薬剤的に許容可能な塩は、例えば、以下を含む、当業者によって知られている方法によって調製することができる。
i.式1の化合物を所望の酸又は塩基と反応させることによって;
ii.式1の化合物の適切な前駆体から、酸若しくは塩基に不安定な保護基を除去することによって、又は適切な環状前駆体、例えば、ラクトン若しくはラクタムを、所望の酸若しくは塩基を用いて開環させることによって;又は
iii.式1の化合物の1種の塩を、適切な酸若しくは塩基との反応により、又は適切なイオン交換カラムを用いて、別の塩に変換することによって。
上記の反応(i)~(iii)は、通常、溶液中で行われる。得られた塩を析出させ、濾過により回収してもよいし、溶媒を蒸発させることにより回収してもよい。得られた塩におけるイオン化の程度は、完全にイオン化したものから、ほとんどイオン化していないものまで様々であってよい。
したがって、例えば、本発明に係る化合物の好適な薬剤的に許容可能な塩は、塩酸、硫酸、メタンスルホン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、安息香酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、炭酸、酒石酸又はクエン酸などの薬剤的に許容可能な酸を、本発明の化合物と混合することにより調製することができる。従って、本発明の化合物の好適な薬剤的に許容可能な塩には、酸付加塩が含まれる。
本発明の化合物は、非溶媒和物及び溶媒和物の両方の形態で存在しうる。用語「溶媒和」は、本明細書において、本発明の化合物と、化学量論量の1種又は複数種の薬剤的に許容可能な溶媒分子、例えばエタノール、を含む分子複合体を表すのに使用される。用語「水和物」は、溶媒が水である場合に採用される。
本明細書中、本組成物は、本明細書中にて提供される1種又は複数種の化合物を含む。一つの実施形態において、本化合物を、経口投与用として、又は非経口投与用の滅菌済み溶液若しくは懸濁液として、溶液、懸濁液、錠剤、クリーム、ゲル、分散性錠剤、丸薬、カプセル、粉末、徐放製剤又はエリキシルなどの好適な医薬製剤に製剤化し、並びに経皮パッチ製剤及び乾燥粉末吸入剤に製剤化する。一つの実施形態では、上記の化合物を、当技術分野で周知の技術及び手順を使って、医薬組成物に配合する(例えば、Ansel Introduction to Pharmaceutical Dosage Forms、Fourth Edition 1985、126を参照されたい。)。
本組成物において、1種又は複数種の化合物又はその薬剤的に許容可能な誘導体の有効濃度は、適切な薬剤担体と混合される。本化合物を、上記したような製剤化の前に、対応する塩、エステル、エノールエーテル又はエステル、アセタール、ケタール、オルトエステル、ヘミアセタール、ヘミケタール、酸、塩基、溶媒和物、水和物又はプロドラッグとして誘導化してもよい。本組成物中の化合物の濃度は、投与時に、治療すべき疾患又は障害の1つ又は複数の症状を治療、予防、又は改善する量を送達するのに有効な濃度である。
一つの実施形態において、本組成物は、単回投与用に製剤化される。本組成物の製剤化は、化合物の重量の一部を、担体に溶解、懸濁、分散又は他の方法で混合し、治療される症状が緩和され、予防され、又は1つ又は複数の症状が改善されるような有効濃度になるようにして行う。
活性化合物を、治療患者に対して望ましからぬ副作用がなく、治療上許容できる範囲の効果を発揮するのに充分な量で、薬剤的に許容可能な担体に含有させる。治療上の有効濃度は、その化合物を、本明細書及び国際公開第04/018997号パンフレットに記載の、生体外及び生体内系で試験することにより経験的に決定し、そこからヒトに対する投与量を外挿により求めることができる。
医薬組成物中の活性化合物の濃度は、活性化合物の吸収度、分布、不活性化率及び排泄率、化合物の物理化学的特性、投与スケジュール、及び投与量、並びに当業者に既知の他の要因によって決まる。
一つの実施形態では、治療上有効な投薬量により、約0.1ng/mL~約50~100μg/mLの活性成分の血清濃度をもたらさなければならない。別の実施形態では、本医薬組成物により、1日あたりの体重1kgあたり約0.001mg~約2000mgの化合物の投与量がもたらされることが望ましい。医薬投与量単位を、投与量単位形態あたりの活性成分又は必須成分を組合せた量が、約0.01mg、0.1mg又は1mg~約500mg、1000mg又は2000mg、及び一つの実施形態では、約10mg~約
500mg、となるように調製する。
投与は、分、時間、日、週、月又は年の間隔で行ってもよく、又はこれらの期間のいずれか1つにわたって連続的に行われてもよい。好適な投与量としては、1回の投与につき体重1kgあたり約0.1ng~体重1kgあたり1gの範囲内である。好適には、投与量は、1回当たり体重1kg当たり1μg~1gの範囲内にあり、例えば、1回の投与あたりの体重1kgあたり1mg~1gの範囲内にある。好適には、投与量は、1回の投与あたりの体重1kg当たり1μg~500mgの範囲内にあり、例えば、1回の投与あたりの体重1kgあたり1μg~200mg、又は1回の投与あたり体重1kgあたり1μg~100mgの範囲内にある。他の好適な投与量としては、体重1kgあたり1mg~250mgの範囲内であってよく、例えば、1回の投与あたりの体重1kgあたり1mg~10、20、50若しくは100mg、又は1回の投与あたりの体重1kgあたり10μg~100mgの投与量を含む。
適切な投与量及び投与レジメンは、主治医によって決定され、治療される特定の症状、症状の重症度、及び対象の一般的健康状態、年齢及び体重によって決まる。
本化合物の溶解性が充分でない場合、これを可溶化する方法が採用できる。このような方法としては、ジメチルスルホキシド(DMSO)などの共溶媒の使用、TWEEN(登録商標)などの界面活性剤の使用、水性重炭酸ナトリウムへの溶解、目的化合物をナノ粒子として製剤化するなどの、当業者にとって既知の方法が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、本化合物のプロドラッグなどの誘導体も、有効な医薬組成物の製剤化に使用することができる。
本化合物を混合又は添加すると、得られる混合物が、溶液、懸濁液、乳濁液等となることがある。得られる混合物の形態は、意図する投与様式及び選択する担体、又はビヒクル中の本化合物の溶解度、を含む多くの要因によって決まる。その有効濃度は、治療される疾患、障害又は症状の兆候を改善するのに充分な濃度であって、経験的に決定することができる。
医薬組成物を、錠剤、カプセル、丸薬、粉末、顆粒、無菌非経口溶液又は懸濁液、及び経口溶液又は懸濁液、並びに適量の本化合物又はその薬剤的に許容可能な誘導体を含む油-水エマルションなどの形態で、単位剤形として、ヒト及び動物へ投与する。一つの実施形態において、その薬剤的かつ治療上活性な化合物及びその誘導体を、単位剤形又は複数剤形として製剤化し、投与する。有効成分を、一度に投与してもよいし、少量ずつ多数回に分割して時間をあけて投与してもよい。本明細書で使用する単位剤形とは、ヒト及び動物の対象に投与するのに適した、物理的に分かれた状態の単位であり、当技術分野で既知の個別に包装されたものをいう。各単位投与には、所望の治療上の効果をもたらすのに充分な所定量の治療活性化合物を、必要となる、関連の医薬担体、ビヒクル又は希釈剤が一緒に含まれる。単位剤形の例としては、アンプルやシリンジ、個別に包装された錠剤やカプセルなどがある。単位剤形を、それを分けて投与しても良いし又は分けたものの複数分を投与してもよい。多回投与剤形とは、単一の容器に包装され、分離された単位剤形として投与される、複数の同一の単位剤形である。多回投与剤形の例としては、錠剤若しくはカプセルのバイアル又はボトル、又はパイント若しくはガロンサイズのボトルなどがある。したがって、多回投与剤形とは、複数の単位剤形が一緒になって一つに包装された剤形である。
このような剤形を調製する実際の方法は、当業者にとっては既知であるか、又は明らかであろう;例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Company、Easton,Pa.,
15th Edition、1975を参照されたい。
0.005%~100%(重量%)の範囲内にある活性成分を含み、残りが非毒性担体からなる剤形又は組成物を調製することができる。これらの組成物の調製方法は、当業者には既知である。意図する組成物としては、0.001%~100%(重量%)の活性成分を含んでもよく、一つの実施形態では、0.1~95%(重量%)、別の実施形態では75~85%(重量%)である。
投与様式
便利な投与様式としては、注射(皮下、静脈内など)、経口投与、吸入、経皮適用、局所クリーム又はゲル又は粉末、膣又は直腸投与が挙げられる。投与経路に応じて、製剤及び/又は化合物を材料で被覆し、本化合物の治療活性を不活性化する可能性のある酵素、酸及び他の自然条件の作用から本化合物を保護してもよい。本化合物を、また、非経口で又は腹腔内に投与してもよい。
経口投与用組成物
経口用医薬剤形とは、固形剤、ゲル剤、液剤のいずれかである。固形剤形とは、錠剤、カプセル、顆粒、及びバルク粉末である。経口錠剤の種類としては、腸溶性コーティング、糖衣コーティング、又はフィルムコーティングされていてもよい、圧縮型の、かみ砕けるトローチ剤及びタブレット錠剤が挙げられる。カプセルは、硬質又は軟質のゼラチンカプセルであってもよく、一方、顆粒及び粉末は、当業者に既知の他の成分と組み合わせて、非発泡性又は発泡性の形態として提供されてもよい。
経口投与用固体組成物
特定の実施形態では、本製剤は固形剤形であり、一つの実施形態では、カプセル又は錠剤である。錠剤、ピル、カプセル、トローチなどは、以下の成分、又は類似の性質の化合物の1種又は複数を含むことができる:たとえば、結合剤;潤滑剤;希釈剤;滑剤;崩壊剤;着色剤;甘味剤;香味剤;湿潤剤;催吐コーティング;及びフィルムコーティングである。結合剤の例としては、微結晶セルロース、トラガカントゴム、グルコース溶液、アカシア粘液、ゼラチン溶液、糖蜜、ポリビニルピロリジン、ポビドン、クロスポビドン、スクロース及び澱粉ペーストが挙げられる。潤滑剤としては、例えば、タルク、デンプン、ステアリン酸マグネシウム又はカルシウム、リポソーム、ステアリン酸などが挙げられる。希釈剤としては、例えば、乳糖、スクロース、デンプン、カオリン、食塩、マンニトール、リン酸二カルシウムなどが挙げられる。滑剤としては、例えば、コロイド状二酸化ケイ素などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。崩壊剤としては、例えば、クロスカルメロースナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、アルギン酸、コーンスターチ、ポテトスターチ、ベントナイト、メチルセルロース、寒天、カルボキシメチルセルロースが挙げられる。着色剤としては、例えば、認可済みの水溶性FD及びC染料、それらの混合物;並びにアルミナ水和物に懸濁させた水不溶性FD及びC染料のいずれかが挙げられる。甘味料としては、スクロース、ラクトース、マンニトール、及びサッカリンなどの人工甘味料、及び任意数のスプレードライ香料が挙げられる。香料としては、果実などの植物から抽出した天然香料や、ペパーミント、サリチル酸メチルなど、快感をもたらす化合物の合成ブレンド品が挙げられるが、これらに限定されるものではない。湿潤剤としては、プロピレングリコールモノステアリン酸塩、ソルビタンモノオレイン酸塩、ジエチレングリコールモノラウリン酸塩、ポリオキシエチレンラウラルエーテルなどが挙げられる。催吐コーティング剤としては、脂肪酸、油脂、ワックス、シェラック、アンモニア化シェラック、セルロースアセテートフタレレートなどが挙げられる。フィルムコーティング剤としては、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリエチレングリコール4000、セルロースアセテートフタレートなどがある。
本化合物又はその薬剤的に許容可能な誘導体を、胃の酸性環境から保護するような形で、組成物にして提供できる。例えば、本化合物又はその薬剤的に許容可能な誘導体を、胃の中ではその完全を維持し、腸の中では、活性化合物を放出するような、腸溶性コーティング内に包含し、組成物にして製剤化しうる。また、その組成物を制酸剤又は他のそのような成分と組み合わせて製剤化することができる。
投与単位形態がカプセルの場合、上記種類の材料に加えて、脂肪油のような液体担体を含むことができる。さらに、投与単位形態には、投与単位の物理形態を変えた他の様々な材料、例えば、糖及び他の腸溶性薬剤のコーティングが含まれうる。本化合物を、また、エリキシル、懸濁液、シロップ、ウエハース、スプリンクル、チューインガムなどの成分として投与することができる。シロップには、活性化合物に加えて、甘味剤としてのスクロース、及び特定の保存料、染料及び着色料並びに香料が含まれていてもよい。
活性物質はまた、所望の作用を損なわないような他の活性物質と、又は制酸剤、H2ブロッカー、利尿剤などの所望の作用を補う物質と混合することができる。活性材料は、本明細書に記載の化合物又はその薬剤的に許容可能な誘導体である。より高濃度、約98重量%までの活性成分を含んでもよい。
全ての実施形態において、錠剤及びカプセル剤に対して、その活性成分の溶解性を調整又は維持するために、当業者に既知のコーティングを施してもよい。したがって、錠剤及びカプセル剤を、例えば、フェニルサリチル酸塩、ワックス及びセルロースアセテートフタル酸塩などの従来の腸管消化性コーティングでコーティングしてもよい。
経口投与用の液体組成物
液体経口投与剤形には、水溶液、乳剤、懸濁液、非発泡性顆粒から再構成された溶液及び/又は懸濁液、並びに発泡性顆粒から再構成された発泡性製剤が含まれる。水溶液には、例えば、エリキシル剤及びシロップ剤が含まれる。エマルションは、水中油型又は油中水型のいずれかである。
液状の薬剤的に投与可能な組成物の調製は、例えば、上記で定義した活性化合物及び任意選択の薬剤的アジュバントを、例えば、水、生理食塩水、水性ブドウ糖、グリセロール、グリコール、エタノールなどの担体に溶解、分散、又はその他の方法で混合して、それによって溶液又は懸濁液を形成することにより行うことができる。所望により、投与される医薬組成物には、微量の、湿潤剤、乳化剤、可溶化剤、pH緩衝剤などの無毒の補助物質、例えば、酢酸、クエン酸ナトリウム、シクロデキストリン誘導体、ソルビタンモノラウリン酸塩、トリエタノールアミン酢酸ナトリウム、トリエタノールアミンオレイン酸塩なども含まれうる。
エリキシルは、透明で、甘味のある、水性又はヒドロアルコール性の製剤である。エリキシルに使用される薬剤的に許容可能な担体としては、溶媒が挙げられる。シロップは、糖、例えばスクロースの濃縮水溶液であり、保存剤を含んでもよい。エマルションは、ある液体が小さな球の形で、他の液体中に分散している二相系である。エマルションに使用される薬剤的に許容可能な担体は、非水性液体、乳化剤及び防腐剤である。懸濁液には、薬剤的に許容可能な懸濁化剤及び防腐剤が使用される。液体経口剤形に再構成される非発泡性顆粒に用いられる薬剤的に許容可能な物質としては、希釈剤、甘味料、湿潤剤などが挙げられる。液体経口剤形に再構成される発泡性顆粒に使用される薬剤的に許容可能な物質としては、有機酸及び炭酸ガス源が挙げられる。着色料及び香料は、上記のすべての剤形に使用される。
溶媒としては、グリセリン、ソルビトール、エチルアルコール、水飴などが挙げられる。防腐剤の例としては、グリセリン、メチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸、安息香酸ナトリウム、エタノールなどが挙げられる。エマルションに利用される非水性液体の例として、鉱油及び綿実油が挙げられる。乳化剤の例としては、ゼラチン、アカシア、トラガカント、ベントナイト、及びポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート等の界面活性剤等が挙げられる。懸濁剤としては、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ペクチン、トラガカント、ビーガム、アカシアなどが挙げられる。甘味剤としては、ショ糖、水飴、グリセリン、サッカリンなどの人工甘味料などが挙げられる。湿潤剤としては、モノステアリン酸プロピレングリコール、モノオレイン酸ソルビタン、モノラウリン酸ジエチレングリコール、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等が挙げられる。有機酸としては、クエン酸、酒石酸などが挙げられる。炭酸ガス源としては、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウムなどが挙げられる。着色剤としては、認定済み水溶性FD及びC染料のいずれか、及びそれらの混合物が挙げられる。香味剤としては、果物などの植物から抽出された天然香味、及び心地よい味覚をもたらす化合物の合成ブレンドが挙げられる。
固形剤形の場合、例えば炭酸プロピレン、植物油又はトリグリセリド中の溶液又は懸濁液を、一つの実施形態ではゼラチンカプセルに封入する。液体剤形の場合、例えばポリエチレングリコール中の溶液を、投与に際して、容易に計量できるように、充分な量の薬剤的に許容可能な液体担体、例えば水で希釈してもよい。
あるいは、液体又は半固体の経口製剤の調製は、活性化合物又は塩を植物油、グリコール、トリグリセリド、プロピレングリコールエステル(例えば、炭酸プロピレン)及び他のこの種の担体に溶解又は分散させ、これらの溶液又は懸濁液を、硬質又は軟質ゼラチンカプセル殻を使ってカプセル化することにより行うことができる。他の有用な製剤としては、米国特許第RE28,819号明細書及び同第4,358,603号明細書に記載されるものが挙げられる。簡潔に記載すると、そのような製剤としては、本明細書で提供される化合物、ジアルキル化モノ又はポリアルキレングリコール(例えば、1,2-ジメトキシメタン、ジグライム、トリグライム、テトラグライム、ポリエチレングリコール-350-ジメチルエーテル、ポリエチレングリコール-550-ジメチルエーテル、ポリエチレングリコール-750-ジメチルエーテル(ここで350、550及び750とは、ポリエチレングリコールの近似平均分子量を意味する。)が挙げられるが、それらに限定されない)、及び1種又は複数の抗酸化剤、例えばブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、没食子プロピル、ビタミンE、ヒドロキノン、ヒドロキシクマリン、エタノールアミン、レシチン、セファリン、アスコルビン酸、リンゴ酸、ソルビトール、リン酸、チオジプロピオン酸とそのエステル及びジチオカルバメートなど、を含むが、それらに限定されない製剤が挙げられる。
注射剤、溶液及びエマルジョン
本明細書の、注射することを特徴とする一実施形態において、非経口投与には、皮下、筋肉内又は静脈内のいずれかが含まれることが意図される。注射剤は、従来の形態で、たとえば、液体溶液又は懸濁液として、注射前の液体中で溶液又は懸濁液になるのに適した固体形態として、又はエマルジョンとして、調製することができる。注射剤、溶液及びエマルションはまた、1種又は複数の賦形剤を含む。好適な賦形剤は、例えば、水、生理食塩水、ブドウ糖、グリセロール又はエタノールである。さらに、所望により、投与される医薬組成物には、湿潤剤又は乳化剤、pH緩衝剤、安定剤、溶解性向上剤などの非毒性補助物質、及び他のそのような試薬、例えば、酢酸ナトリウム、ソルビタンモノラウリン酸塩、トリエタノールアミンオレイン酸塩及びシクロデキストリンなどが少量含まれていてもよい。
本明細書では、一定レベルの投与量を維持するような、徐放性又は持続性系の移植も意
図される。簡潔に記載すると、本明細書において提供される化合物としては、該化合物を固体の内部マトリックス、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、可塑化又は非可塑化ポリ塩化ビニル、可塑化ナイロン、可塑化ポリエチレンテレフタレート、天然ゴム、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリエチレン、エチレン-ビニル酢酸コポリマー、シリコーンゴム、ポリジメチルシロキサン、シリコーンカーボネートコポリマー、アクリル酸及びメタクリル酸のエステルのヒドロゲルなどの親水性ポリマー、コラーゲン、架橋ポリビニルアルコール及び架橋された部分加水分解ポリ酢酸、に分散し、それらの外側が例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/プロピレンコポリマー、エチレン/エチルアクリレートコポリマー、エチレン/酢酸ビニルコポリマー、シリコーンゴム、ポリジメチルシロキサン、ネオプレンゴム、塩素化ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、酢酸ビニルと塩化ビニルとのコポリマー、塩化ビニリデン、エチレン、プロピレン、アイオノマーポリエチレンテレフタレート、ブチルゴムエピクロルヒドリンゴム、エチレン/ビニルアルコールコポリマー、エチレン/酢酸ビニル/ビニルアルコールターポリマー、エチレン/ビニルオキシエタノールコポリマー(体液に不溶性のもの)で覆った化合物が挙げられる。本化合物は、放出速度が制御される段階において、外側の高分子膜を通過して拡散する。このような非経口組成物に含まれる活性化合物の割合は、その特定の性質、及び化合物の活性と対象の必要性によって大きく決まる。
本組成物の非経口投与には、静脈内投与、皮下投与及び筋肉内投与が含まれる。非経口投与用の製剤には、注射の準備ができた滅菌溶液、凍結乾燥粉末などの、皮下注射剤を含む使用直前に溶媒と組み合わせる準備ができた滅菌乾燥可溶性製品、注射の準備ができた滅菌懸濁液、使用直前にビヒクルと組み合わせる準備ができた滅菌乾燥不溶性製品及び滅菌エマルションが含まれる。溶液は水性又は非水性のいずれであってもよい。
静脈内投与する場合、適当な担体としては、生理食塩水又はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)、並びに増粘剤及び可溶化剤、例えばグルコース、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール及びこれらの混合物を含む溶液が挙げられる。
非経口製剤用の、薬剤的に許容可能な担体としては、水性ビヒクル、非水性ビヒクル、抗菌剤、等張剤、緩衝剤、抗酸化剤、局所麻酔剤、懸濁・分散剤、乳化剤、封鎖・キレート剤、その他薬剤的に許容される物質が挙げられる。
水性ビヒクルの例としては、塩化ナトリウム注射、リンゲル注射、等張ブドウ糖注射、滅菌水注射、ブドウ糖注射、乳酸リンゲル注射などが挙げられる。非水系非経口ビヒクルとしては、植物由来の固定油、オリーブ油、綿実油、コーン油、ごま油、落花生油などが挙げられる。多回投与容器に充填する非経口製剤には、静菌又は殺菌濃度の抗菌剤を添加しなければならないが、これにはフェノール又はクレゾール、水銀、ベンジルアルコール、クロロブタノール、p-ヒドロキシ安息香酸メチル及びプロピルエステル、チメロサール、塩化ベンザルコニウム及び塩化ベンゼトニウムが含まれる。等張化剤としては、塩化ナトリウム、ブドウ糖などが挙げられる。緩衝剤としては、リン酸塩、クエン酸塩などが挙げられる。酸化防止剤としては、重硫酸ナトリウムなどがある。局所麻酔剤としては、塩酸プロカインなどがある。懸濁剤及び分散剤としては、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。乳化剤としては、ポリソルベート80(TWEEN(登録商標)80)などが挙げられる。金属イオン封鎖剤又はキレート剤としては、EDTAが挙げられる。また、医薬用担体としては、水混和性ビヒクルとしてエチルアルコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール;pH調整剤として水酸化ナトリウム、塩酸、クエン酸、乳酸などが挙げられる。
薬剤的活性化合物の濃度の調整は、注射によって所望の薬理学的効果をもたらす有効量
が得られるように行われる。正確な投与量は、当該技術分野で知られているように、患者又は動物の年齢、体重及び状態によって異なる。
単位投与の非経口製剤は、アンプル、バイアル、又は針付き注射器に包装される。非経口投与用のすべての製剤は、当該技術分野において既知であり、さらに、使用できうるものとして、無菌でなければならない。
活性化合物を含む無菌水溶液の静脈内又は動脈内注入は、有効な投与様式の一例である。別の実施形態は、所望の薬理学的効果をもたらすために必要に応じて注入される、活性物質を含む滅菌水性又は油性溶液又は懸濁液である。
注射剤は、局所的及び全身投与用に設計される。一つの実施形態では、治療上有効な投与量分を、治療された組織(複数可)に対して少なくとも約0.1%w/w~約90%w/w以上まで、特定の実施形態では、1%w/w超の活性化合物の濃度を含むように製剤化する。
本化合物を、微粉化又は他の適切な形態で懸濁させるか、又は誘導体化して、より可溶性の活性生成物を生成するか、又はプロドラッグを生成してもよい。得られる混合物の形態は、意図する投与様式及び選択する担体、又はビヒクル中の化合物の溶解度、を含む多くの要因によって決まる。有効濃度は、症状の改善に充分でなければならないが、それは経験的に決定することができる。
局所投与
局所投与用混合物は、局所投与及び全身的投与について記載したのと同じようにして調製される。得られる混合物は、溶液、懸濁液、乳剤などであってもよく、クリーム、ゲル、軟膏、乳剤、溶液、エリキシル、ローション、懸濁液、チンキ、ペースト、フォーム、エアゾール、イリゲーション、スプレー、座薬、包帯、皮膚パッチ、又は局所投与に適した他のいずれかの製剤として処方することができる。
本化合物又はその薬剤的に許容可能な誘導体を、吸入などによる、局所的に適用するエアロゾルとして製剤化することができる。呼吸器へ投与するこれらの製剤は、ネブライザー用のエアロゾル又は溶液の形態、又は吹送用の微粉末として、単独又はラクトースのような不活性担体と組み合わせて使用することができる。そのような場合、製剤の粒子の直径は、一つの実施形態では、50ミクロン未満、一つの実施形態では、10ミクロン未満となろう。
本化合物の製剤化を、例えば、ゲル、クリーム及びローションの形態で、局所的又は局所適用、例えば、皮膚及び粘膜への局所適用するために、及び眼球への適用又は胸腔内又は脊髄内へ適用するために行うことができる。局所投与を行う意図は、経皮送達のため、又、眼若しくは粘膜への投与のため、又は吸入療法のためである。前記活性化合物を、単独又は他の薬剤的に許容可能な賦形剤と組み合わせで鼻腔用溶液を調製し、投与することもできる。
これらの溶液、特に眼科用に意図されたものを、適切な塩を含む0.01%~10%(体積%)の等張溶液(pH約5~7)として製剤化することができる。
他の投与経路用の組成物
本明細書においては、他の投与経路、例えばイオントフォレーシス及び電気泳動装置を含む経皮パッチ、膣及び直腸投与も考えられる。
イオントフォレーシス及び電気泳動装置を含む経皮パッチは、当業者には周知のものである。例えば、直腸投与用の医薬剤形は、直腸坐薬、カプセル、及び全身に効果の及ぶ錠剤である。直腸座薬は、本明細書では、体温で溶融又は軟化して1種又は複数の薬理学的又は治療上の活性成分を放出する、直腸挿入用の固形体を意味するものとして用いられる。直腸坐薬に利用される薬剤的に許容可能な物質は、基剤又はビヒクル及びその融点を上昇させる薬剤である。基剤の例としては、ココアバター(テオブロマ油)、グリセリン-ゼラチン、カーボワックス(ポリオキシエチレングリコール)及び脂肪酸のモノ-、ジ-及びトリグリセリドの適切な混合物などが挙げられる。また、各種基剤を組み合わせて使用してもよい。坐薬の融点上昇剤としては、鯨蝋、ワックスなどがある。直腸座薬は、圧縮法又は成形法のいずれかにより調製することができる。直腸座薬の重量は、一つの実施形態では、約2~3gmである。
直腸投与用の錠剤及びカプセルは、経口投与用の製剤と同じ薬剤的に許容可能な物質を用い、同じ方法で製造される。
標的化製剤
本明細書で提供される化合物又はその薬剤的に許容可能な誘導体を、治療される対象の身体の特定の、組織、受容体又は他の領域に標的化されるように製剤化することもできる。多くのそのような標的化方法は、当業者にとっては周知である。本明細書中では、すべてのそのような標的化方法を、本組成物の防衛目的に使用することが意図される。
他の薬剤との共投与
本発明の別の態様によれば、本明細書に記載される式1の化合物を、当業者が対象となる症状について、現時点で標準治療であるとみなす薬物と組み合わせて、それを必要とする対象に投与しうることが意図される。そのように組み合わせることにより、対象には、例えば、投与量を減らして同様の効果を得る、より短時間で所望する緩和効果を得る、などの一つ又は複数の利点がもたらされる。
本発明に係る化合物を、他の薬物と共に治療レジメンの一部として投与することができる。例えば、特定の疾患又は症状を治療することを目的とする場合、活性化合物を組合せて投与するのが望ましいことがある。従って、少なくとも1種の本発明に係る式(I)の化合物を含む2種以上の医薬組成物を組み合わせて、本組成物の共投与に適したキットの形態にすることは、本発明の範囲内である。
本発明の方法の一つの実施形態では、式Iの化合物は、第2の治療剤とともに投与されてもよい。一つの実施形態では、第2の治療剤は、抗炎症剤、抗高血圧剤、抗線維化剤、抗血管新生剤、及び免疫抑制剤からなる群から選択される。
本発明の方法の一つの実施形態では、式Iの化合物は、プレドニゾロン及びデフラザコートのようなステロイド性抗炎症剤、並びにアスピリン、パラセタモール、イブプロフェン、ナプロキセン、インドメタシン、セレコキシブ及びジクロフェナクのような非ステロイド性抗炎症剤からなる群より選択される第2の治療薬と共に投与され得る。
本発明の方法の別の実施形態では、式Iの化合物を、ベラパミル、ニソルジピン及びアムロジピンなどのカルシウムチャネル遮断薬;イルベサルタン、ロサルタン、テルミサルタン及びバルサルタンなどのアンジオテンシンII受容体拮抗薬;並びにベナゼプリル、カプトプリル、エナラプリル及びフォシノプリルなどのアンジオテンシン変換酵素の阻害薬、からなる群から選択される第2の治療薬と共に投与してもよい。
本発明の方法の別の実施形態では、式Iの化合物を、ピルフェニドン及びニンテダニブ
からなる群から選択される第2の治療剤とともに投与してもよい。
本発明の方法の別の実施形態では、式Iの化合物を、アキシチニブ、ベバシズマブ、エベロリムス、レナリドミド、レゴラフェニブ、ソラフェニブ、スニチニブ、サリドマイド、バンデタニブ及びzivaflibercept(アフリベルセプト)から成る群から選択される第2の治療剤とともに投与することができる。
本発明の方法の別の実施形態では、式Iの化合物を、プレドニゾン、デキサメタゾン、及びヒドロコルチゾンなどのグルココルチコイド;シクロホスファミド、アザチオプリン、ダクチノマイシン及びメトトレキサートなどの静注剤;バシリキシマブ、ダクリズマブ、ムロモナブなどの免疫反応に直接作用する抗体;シクロスポリン、ラパマイシン、タクロリムス、エベロリムスなどの免疫フィリンに作用する薬剤;フィンゴリモド、インターフェロン療法、インフリキシマブ、エタネルセプト、アダリムマブなどのその他の免疫抑制剤、からなる群より選択される第2の治療剤と共に投与してもよい。
本発明の方法の一つの実施形態では、式Iの化合物を、第2の治療剤とともに投与してもよい。一つの実施形態では、第2の治療剤は、筋ジストロフィーの治療に有用であると考えられる薬剤から選択され、その薬剤としては、プレドニゾン、デフラザコート、アタルレン、ミオスタチン、エテプリルセン、ゴロディルセン、カシメルセン、イデベノン、パンレブルマブ、エダサロネクセント、ジビノスタット、リメポリド及びイフェトロバンが挙げられる。
2種以上の活性成分が共投与される場合、活性成分は同時に、順次又は別々に投与することができる。一つの実施形態では、式Iの化合物は、第2の治療薬と同時に共投与される。別の実施形態では、式Iの化合物及び第2の治療薬は、逐次的に投与される。さらなる実施形態では、式Iの化合物及び第2の治療薬は、別々に投与される。
次に、本発明を、以下の非限定的な実施例を参照して、例示のみによって、より詳細に説明する。実施例は、本発明を説明するのに役立つことを意図しており、本明細書全体を通じて、開示内容の一般性を制限するものとして解釈されるべきではない。
本明細書中で使用される略語の意味は以下のごとく。
rt=室温
min=分
h=時間
NaHMDS=ヘキサメチルジシラジドナトリウム
THF=テトラヒドロフラン
DMF=ジメチルホルムアミド
NaOtBu=ナトリウムt-ブトキシド
TFA=トリフルオロ酢酸
DIBAL=ジイソブチルアルミニウムハイドライド
MTBE=メチル・ターシャリーブチルエーテル
DIPEA=ジイソプロピルエチルアミン
LC-MS=液体クロマトグラフィー-質量分析計
rpm=1分間あたりの回転数
NMR=核磁気共鳴
DMSO=ジメチルスルホキシド
Boc=tert-ブチルオキシカルボニル
HPLC=高速液体クロマトグラフィー(高圧液体クロマトグラフィーとも)
rac.=ラセミ体
TLC=薄層クロマトグラフィー
実験:一般的な方法
市販の溶媒及び試薬はすべて入手した状態で使用した。必要に応じて、反応はアルゴン雰囲気下で実施した。反応は、分析的薄層クロマトグラフィー(TLC)、又は逆相条件を使用して、島津LC-MS 2020装置若しくはAgilent LC-MS 1200装置のいずれかを使って、分析用液体クロマトグラフィー-質量分析(LC-MS)によってモニターした。中間体及び最終化合物の精製は、必要に応じてカラムクロマトグラフィー又は分取HPLCを使用して行った。順相カラムクロマトグラフィーは、フラッシュクロマトグラフィーシステム(CombiFlash Rf200、Teledyne Isco systems、USA)を用いて、シリカゲル又は充填シリカゲルカートリッジを用い、中圧で使用した。逆相カラムクロマトグラフィーについては、フラッシュクロマトグラフィーシステム(Reveleris(登録商標)X2)を使用して、充填C18カートリッジを低圧下で使用した。溶離液はUVライト(λ=254/280nm)でモニターした。H-NMR及び19F-NMRスペクトルは、Bruker 300 MHz NMRスペクトロメーター又はBruker Avance III plus 400 MHz NMRスペクトロメーターを使用して記録した。化学シフト(δ)は、テトラメチルシラン(TMS;内部標準)に対するパートパーミリオン(ppm)として表した。多重度には以下の略号を用いた:s=シングレット;br s=ブロードシングレット;d=ダブレット;t=トリプレット;q=カルテット;p=ペンテット;m=マルチプレット;及びbr m=ブロードマルチプレット。低分解能マススペクトル(MS)は、島津製作所LC-MS 2020又はAgilent LC-MS 1200の装置を用いて、電気噴霧-大気圧イオン化(ES-API)マススペクトルとして得た。すべての動物実験は、関連機関のガイドラインを遵守し、地域の倫理委員会の承認を受けて実施した。
実施例1
tert-ブチル(E)-(2-(ブロモメチル)-3-フルオロアリル)カルバメート(Int-6)の調製
Figure 2023531468000011


手順A:tert-ブチル 3-(2,5-ジメチル-1H-ピロール-1-イル)プロパノエート(Int-1)の調製
Figure 2023531468000012

窒素下でアセトニトリル(754L)を投入した容器に、β-アラニンtert-ブチルエステル塩酸塩(75kg)、2,5-ヘキサンジオン(97.5L)及び炭酸カリウム(75kg)を順次添加した。得られた混合物を2時間かけて75℃に加熱し、さらに4時間撹拌した。反応混合物を55℃に冷却し、真空中で濃縮して~290Lとした後、
55℃で水(1200L)を残渣に添加した。混合物を55℃で1時間撹拌し、次に2時間かけて10℃まで冷却した。撹拌を10℃で10時間継続した。得られた「ケーキ」をさらに水(150L×3)で洗浄し、各洗浄サイクルの後に遠心分離して液相を除去した。濾液の最終除去後、湿潤「ケーキ」を40℃で、24時間真空下で乾燥させ、Int-1(79.4kg、85%)を得た。H-NMR(300MHz,CDCl)δppm:5.78(s,2H)、4.02-4.07(m,2H)、2.50-2.56(m,2H)、2.25(s,6H)、1.47(s,9H)。
手順B.1-(tert-ブチル)3-エチル 2-(ジフルオロメチル)-2-((2,5-ジメチル-1H-ピロール-1-イル)メチル)マロン酸(Int-2)の調製
Figure 2023531468000013


この工程は、Int-1の2バッチ(39.5kg×2)に対して実施した。それらのバッチは後で一緒にした。
窒素下でTHF(277L)を投入した容器(A)に、NaHMDS(2.0M;245kg)を20分かけて添加した。得られた混合物を-58℃に冷却した。窒素下、-50℃でTHF(198L)を投入した容器(B)に、Int-1(39.5kg)を添加した。得られた混合物を-50℃で25分間攪拌した。次に、容器(B)の内容物を、-58℃で30分かけて容器(A)に移した。容器(A)にクロロギ酸エチル(17.4L)を1時間かけて加えたが、その間に発熱が観察された。得られた混合物を-58℃で1時間撹拌し、これにNaOtBu(15.3kg)を15分かけて添加した。次にクロロジフルオロメタン(17.8kg)を-20℃でゆっくりと加えた。混合物を-30℃で2時間撹拌した。次に、容器にさらなるクロロジフルオロメタン(7.00kg)を-20℃でゆっくりと加えた。攪拌を-20℃でさらに2時間続けた。反応容器に水(356L)、次いでクエン酸(79kg)を装入した。得られた混合物を30分間撹拌し、有機層を分離した。NaCl溶液(10%、342.4kg)を加え、混合物を1時間撹拌し、有機層を分離し、真空下で濃縮した。残渣をn-ヘプタン(584.8kg)に溶解し、シリカゲルを加えた。30分間撹拌した後、セライト(登録商標)でろ過し、n-ヘプタン(434kg)で洗浄した。合わせた濾液を真空中で濃縮し、こうして得られた残渣をEtOH:HO(1:1)から再結晶して、表題化合物のInt 2を淡黄色固体として得た(91.0kg、74.5%)。H-NMR(300MHz,CDCl)δppm:6.29(t,J=54.6Hz,1H),.72(s,2H),4.56-4.69(m,2H),4.12-4.23(m,1H),3.98-4.08(m,1H),2.20(s,6H),1.36(s,9H),1.23(t,J=7.2Hz,3H)。
手順C:エチル(E)-2-((2,5-ジメチル-1H-ピロール-1-イル)メチル)-3-フルオロアクリレート(Int-3)の調製
Figure 2023531468000014

窒素下、10℃でTFA(279L)を投入した反応容器(A)に、Int-2(91kg)を加えた。得られた混合物を35℃に加熱し、13時間撹拌させた後、5℃に冷却した。反応容器(B)にトリエチルアミン(620L)、次いでn-ヘプタン(532L)を添加した。得られた溶液を5℃に冷却した。次に、反応器(A)の内容物を、2時間かけて反応器(B)に移し、反応器(B)中の得られた混合物を40℃に加熱し、撹拌を10時間継続した。反応混合物を10℃に冷却した後、水(910L)で洗浄した。有機相を分離し、水(455L)中のクエン酸(91kg)の溶液で洗浄し、続いて水(410L)中のNaCl(73kg)の溶液で洗浄した。有機相にシリカゲル(91kg)を加え、得られたスラリーを30分間攪拌した。次に、このスラリーを濾過し、濾過「ケーキ」をn-ヘプタンで洗浄した。濾液を真空中で濃縮し、得られた残渣をトルエン(520L)中に取り込んだ。さらに650~750Lまで濃縮した後、得られた粗Int-3の溶液を後続の工程で使用した。H-NMR(300MHz,CDCl)δppm:7.60(d,J=80.1Hz,1H),5.77(s,2H),4.67-4.68(m,2H),4.20(q,J=7.2Hz,2H),2.26(s,6H),1.27(t,J=7.2Hz,3H)。
手順D.(E)-2-((2,5-ジメチル-1H-ピロール-1-イル)メチル)-3-フルオロプロプ-2-エン-1-オール(Int-4)の調製
Figure 2023531468000015

前の工程で調製したトルエン中のInt-3の溶液(520L)に、窒素下、-55℃で、水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAL)(トルエン中1.5M;199.2kg)を4時間かけて滴下し、得られた混合物を-45℃で1時間攪拌した。この後IP
C分析を行ったところ、不完全転化が確認された。さらなる量のDIBAL(トルエン中1.5M;15kg)を、-55℃で40分かけて滴下して加えた。その後、混合物を-45℃でさらに30分間攪拌し、その後10℃に温めた。反応をクエンチするために、水(320L)中のクエン酸(64kg)の冷(0℃)溶液を2時間かけてゆっくりと添加し、有機相を分離し、水(160L)中のNaCl(32kg)の2溶液で洗浄した。シリカゲル(32kg)を有機相に加え、得られたスラリーを30分間攪拌した。スラリーをシリカゲルのパッド(160kg)で濾過し、濾過「ケーキ」をトルエン(296L)で洗浄した。次に濾液を~50Lにまで濃縮した。残渣にn-ヘプタン(319L)を加え、得られた混合物を0℃に冷却し、10時間撹拌した。その後、固体をろ過し、乾燥させて、Int-4(11.4kg、2工程で24%)をオフホワイトの固体として得た。H-NMR(400MHz,CDCl)δppm:6.70(d,J=83.4Hz,1H),5.80(s,2H),4.63(t,J=1.2Hz,2H),3.76(t,J=4.0Hz,2H),2.23(s,6H)。
手順E:tert-ブチル(E)-(3-フルオロ-2-(ヒドロキシメチル)アリル)カルバメート(Int-5)の調製
Figure 2023531468000016

Int-4(2.0kg)、塩酸ヒドロキシルアミン(3.80kg)及び水(8.00L)を入れた反応容器に、水酸化カリウム(1.20kg)の水(10.0L)中の溶液を添加した。得られた混合物を還流まで加熱し、18時間撹拌した。rtまで冷却後、反応混合物をろ過し、ろ過「ケーキ」を水(6.0L)で洗浄した。次に、濾液に炭酸ナトリウム(3.46kg)を加え、得られた混合物を30分間攪拌した。アセトン(9.1L)を20℃で滴下して加え、混合物を2時間撹拌した。最後に、MTBE(10L)中のジ-tert-ブチルジカーボネート(2.37kg)の溶液を加え、15℃でさらに18時間攪拌を継続した。次に、有機層を分離し、水性NaOH(1.0M;16L×4)で洗浄した。有機層にシリカゲル(2.0kg)を加え、得られたスラリーを30分間攪拌した。その後、混合物を濾過し、フィルター「ケーキ」をMTBE(10L)で洗浄した。濾液を真空下で濃縮し、Int-5(2.0kg、89%)を得た。H-NMR(400MHz,CDCl)δppm:6.78(d,J=81.2Hz,1H),4.86(br.s,1H),4.00-3.96(m,4H),1.45(s,9H)。
手順F:tert-ブチル(E)-(2-(ブロモメチル)-3-フルオロアリル)カルバメート(Int-6)の調製
Figure 2023531468000017

Int-5(4.0kg)、DIPEA(10.2L)及びTHF(40.0L)を5℃で充填した容器に、THF(20.0L)中のメタンスルホン酸無水物の溶液(5.78kg)を添加した。得られた混合物を30分間攪拌した。これに臭化リチウム(8.47kg)を加え、5℃で2時間攪拌を続けた。その後、水(20.0L)を反応混合物に滴下して加えた。有機層を分離し、8.0Lにまで濃縮した。これに酢酸エチル(24L)及び水(20L)を加えた。有機層を再び分離し、12Lにまで濃縮した。ヘプタン(40L)及びシリカゲル(2.0kg)を加え、得られたスラリーを30分間攪拌した。次に、スラリーを濾過し、濾過「ケーキ」をn-ヘプタン(20L)で洗浄した。濾液を真空下で乾燥するまで濃縮した。さらにn-ヘプタンを加え、5℃で1時間撹拌を続けた。得られた固体を濾過により集め、30℃で真空下にて乾燥させ、Int-6(3.20kg、61%)を得た。H-NMR(400MHz,CDCl)δppm:6.78(d,J=81.2Hz,1H), 4.68(br.s,1H), 4.00(d,J=4.4Hz,2H), 3.96(d,J=3.2Hz,2H), 1.45(s,9H)。
実施例2
(E)-4-((2-(アミノメチル)-3-フルオロアリル)オキシ)ベンゾニトリル塩酸塩の調製(化合物1)
Figure 2023531468000018
手順G-1:tert-ブチル(E)-(2-((4-シアノフェノキシ)メチル)-3-フルオロアリル)カルバメートの調製
Figure 2023531468000019

アセトニトリル(25.0mL)中の4-ヒドロキシベンゾニトリル(1.20g)のrtでの撹拌溶液に、炭酸カリウム(2.78g)及びInt-6(2.70g)を順次添加した。得られた懸濁液を一晩rtで攪拌した。反応混合物をセライト(登録商標)のプラグでろ過して無機物を除去し、ろ液を真空中で濃縮して白色固体を得た。この固体をジエチルエーテル/ペンタンから結晶化させて、tert-ブチル(E)-(2-((4-シアナトフェノキシ)メチル)-3-フルオロアリル)カーバメート(2.81g、91%)を白色の固体として得た。
手順G-2:tert-ブチル(E)-(2-((4-シアノフェノキシ)メチル)-3-フルオロアリル)カルバメートの代替調製
DMSO(10.15L)中の4-ヒドロキシベンゾニトリル(2.7kg)のrtでの撹拌溶液に、炭酸カリウム(4.05kg)及びInt-6(5.1kg)を順次添加した。得られた懸濁液を4時間攪拌した。水(50.75L)を加え、1時間攪拌した。生成物を濾過し、水(10L)で洗浄した。粗生成物をDMSO(15L)に溶解させた。水(60L)をゆっくりと加え、混合物を1時間攪拌した。生成物を濾過し、水(10L)で洗浄し、55℃で乾燥し、tert-ブチル(E)-(2-((4-シアノフェノキシ)メチル)-3-フルオロアリル)カルバメート(5.1kg、89%)を白色の固体として得た。
H-NMR(300MHz,CDCl)δppm:7.65-7.58(m,2H),7.02-6.95(m,2H),6.78(dp,J=81.6,1.1Hz,1H),4.52(dd,J=3.7,1.2Hz,2H),4.05-3.98(m,2H),1.42(s,9H);MS:207.0「M-Boc+H」
手順H-1:(E)-4-((2-(アミノメチル)-3-フルオロアリル)オキシ)ベンゾニトリル塩酸塩(化合物1)の調製
Figure 2023531468000020

CHCl(40.0mL)中のtert-ブチル(E)-(2-((4-シアノフ
ェノキシ)メチル)-3-フルオロアリル)カルバメート(2.75g)の室温における撹拌溶液に、TFA(40.0mL)を添加した。得られた溶液をrtで2時間撹拌した。この後LC-MS分析を行ったところ、出発物質は完全に消費されていた。反応混合物を真空中で濃縮し、酢酸エチル(20mL×2)との共沸により、残留TFAを除去して、オフホワイトの固体を得た。この固体を酢酸エチル(10.0mL)に溶かし、塩酸(ジエチルエーテル中2.0M;40.0mL)を加えたところ、すぐに白色の固体が析出した。15分間撹拌した後、固体を濾過して集め、高真空下で乾燥させ、粗生成物(2.11g)を得た。粗物質(1.75g)を高温のイソプロパノール/メタノール(17.5mL/3.50mL)から結晶化し、化合物1(1.26g、72%)を白色の固体として得た。
手順H-2:(E)-4-((2-(アミノメチル)-3-フルオロアリル)オキシ)ベンゾニトリル塩酸塩(化合物1)の代替調製
酢酸エチル(25.5L)中のtert-ブチル(E)-(2-((4-シアノフェノキシ)メチル)-3-フルオロアリル)カルバメート(5.1kg)のrtでの撹拌溶液に、酢酸エチル(25.5L)中の6MのHClを添加した。得られた溶液を、rtで2時間撹拌した。この後LC-MS分析を行ったところ、出発物質が完全に消費されていることがわかった。沈殿した生成物を濾過し、酢酸エチル(10L)で洗浄した。粗生成物を酢酸エチル(40L)に懸濁し、混合物を4時間撹拌した。生成物を濾過し、酢酸エチル(10L)で洗浄し、60℃で乾燥させた。固体を水(16L)に溶解し、混合物を55℃に加熱した。混合物を0~5℃に冷却し、固体を濾過した。生成物を真空下45℃で乾燥させ、約7%の水分を含む白色固体として化合物1(3.3kg、76%)を得た。
H-NMR(500MHz,DMSO-d)δppm:8.36(s,3H),7.86-7.72(m,2H),7.32(d,J=81.9Hz,1H),7.19-7.09(m,2H),4.74(d,J=3.3Hz,2H),3.57(d,J=2.0Hz,2H)。MS:207.0「M+H」+。
実施例3
(E)-4-((2-(アミノメチル)-3-フルオロアリル)オキシ)-2-フルオロベンゾニトリル塩酸塩(化合物2)の調製)
Figure 2023531468000021
手順I:tert-ブチル(E)-(2-((4-シアノ-3-フルオロフェノキシ)メチル)-3-フルオロアリル)カルバメートの調製
Figure 2023531468000022

DMF(2.0mL)中の2-フルオロ-4-ヒドロキシベンゾニトリル(411mg)及びInt-6(804mg)の撹拌溶液に、炭酸セシウム(1.17g)を加えた。得られた混合物を4時間撹拌し、その後、LC-MS分析により出発物質の完全な消費を
確認した。次に、水(20mL)を加え、得られた懸濁液を超音波処理して10分間攪拌した。固体を濾過により集め、水で洗浄し、そして60℃で1時間乾燥させて、tert-ブチル(E)-(2-((4-シアノ-3-フルオロフェノキシ)メチル)-3-フルオロアリル)カルバメート(888mg、91%)を白い粉末として生じた。H-NMR(300MHz,CDCl)δppm:7.55(dd,J=8.6,7.5Hz,1H),6.83-6.72(m,2H),6.78(dp,J=81.0,1.1Hz,1H),4.51(dd,J=3.7,1.2Hz,2H),4.01(ddd,J=6.3,2.5,1.0Hz,2H),1.43(s,9H);MS:325.0「M+H」
手順J:(E)-4-((2-(アミノメチル)-3-フルオロアリル)オキシ)-2-フルオロベンゾニトリル塩酸塩(化合物2)の調製
Figure 2023531468000023

CHCl(3.0mL)中のtert-ブチル(E)-(2-((4-シアノ-3-フルオロフェノキシ)メチル)-3-フルオロアリル)カルバメート(50.0mg)の撹拌溶液に、TFA(0.50mL)を添加した。得られた混合物を2時間撹拌し、その後、LC-MS分析により出発物質の完全な消費を示した。反応混合物を乾燥するまで濃縮し、残留するTFAを高真空下で除去した。残渣を酢酸エチル(3.0mL)に溶解した後、HCl(ジエチルエーテル中2.0M;77μL)を添加した。この混合物をrtで30分間撹拌したところ、その間に固体が析出した。反応混合物をバイアルに移し、遠心分離機で固体を遠心分離した(4000rpm、4.0分)。上清をデカントし、固体を酢酸エチルの添加で洗浄した。短時間の超音波処理の後、バイアルを遠心分離機に戻し、固体を遠心分離した。上清を除去し、次に高真空下で固体「ケーキ」を乾燥させると、化合物2(36mg、90%)が白色粉末として得られた。H-NMR(300MHz,DMSO-d)δppm:8.35(s,3H),7.88(dd,J=8.8,7.9Hz,1H),7.36(d,J=81.0Hz,1H),7.32-7.17(m,1H),7.05(dd,J=8.8,2.4Hz,1H),4.78(dd,J=3.5,1.1Hz,2H),3.60(s,2H);MS:225.0「M+H」
実施例4
(E)-4-((2-(アミノメチル)-3-フルオロアリル)オキシ)-2-ブロモベンゾニトリル塩酸塩(化合物3)の調製
Figure 2023531468000024
手順K:tert-ブチル(E)-(2-((3-ブロモ-4-シアノフェノキシ)メチル)-3-フルオロアリル)カルバメートの調製
Figure 2023531468000025

Int-5(573mg)のDMF(5.0mL)中の攪拌溶液に、0℃でNaH(パラフィン油中60%;120mg)を加え、rtで30分間攪拌した。次に、DMF(5.0mL)中の2-ブロモ-4-フルオロベンゾニトリル(500mg)の溶液を、0℃で滴下して加えた。rtで撹拌を2時間続けた。反応混合物を0℃に冷却し、飽和水性NHCl溶液でクエンチした。生成物を酢酸エチル(20mL×3)で抽出し、合わせた有機層をNaSO4上で乾燥し、そして真空中で濃縮して、tert-ブチル(E)-(2-((3-ブロモ-4-シアノフェノキシ)メチル)-3-フルオロアリル)カルバメート(750mg、82%)を得た。MS:385.0「M+H」
手順L:(E)-4-((2-(アミノメチル)-3-フルオロアリル)オキシ)-2-ブロモベンゾニトリル塩酸塩(化合物3)の調製
Figure 2023531468000026

1,4-ジオキサン(2.0mL)中のtert-ブチル(E)-(2-((3-ブロモ-4-シアノフェノキシ)メチル)-3-フルオロアリル)カルバメート(100mg)の0℃での撹拌溶液に、HCl(1,4-ジオキサン中4.0M;2.0mL)を添加した。得られた混合物を、rtで3時間撹拌した。反応混合物を真空中で濃縮し、残渣を酢酸エチルで微細化した。得られた固体を単離し、乾燥させて、化合物3(58.6mg、79%)を白色固体として得た。H-NMR(Methanol-d,400MHz)δppm:7.76(d,J=8.0Hz,1H),7.47(d,J=2.4Hz,1H),7.38-7.16(m,2H),4.72(d,J=2.8Hz,2H),3.84(d,J=2.0Hz,2H);MS:285.0「M+H」
実施例5
(E)-4-((2-(アミノメチル)-3-フルオロアリル)オキシ)-3-フルオロベンゾニトリル塩酸塩の調製(化合物4)
Figure 2023531468000027
手順M:tert-ブチル(E)-(2-((4-シアノ-2-フルオロフェノキシ)メチル)-3-フルオロアリル)カルバメートの調製
Figure 2023531468000028

3-フルオロ-4-ヒドロキシベンゾニトリル(112mg)のアセトニトリル(4.0mL)中の撹拌溶液に、rtで炭酸カリウム(206mg)及びInt-6(200mg)を順次添加した。反応混合物をセライト(登録商標)のプラグでろ過して無機物を除去し、ろ液を真空中で濃縮して、tert-ブチル(E)-(2-((4-シアノ-2-フルオロフェノキシ)メチル)-3-フルオロアリル)カルバメート(230mg、95%)を白色の固体として得た。この物質は、精製することなく次の工程で使用した。H-NMR(300MHz,CDCl)δppm:7.47-7.37(m,2H),7.06(t,J=8.3Hz,1H),6.80(dp,J=81.4,1.1Hz,1H),4.63-4.57(m,2H),4.03(ddd,J=6.3,2.5,1.0Hz,2H),1.42(s,9H);MS:225.0「M-Boc+H」
手順N:E)-4-((2-(アミノメチル)-3-フルオロアリル)オキシ)-3-フルオロベンゾニトリル塩酸塩(化合物4)の調製
Figure 2023531468000029

CHCl(10.0mL)中のtert-ブチル(E)-(2-((4-シアノ-2-フルオロフェノキシ)メチル)-3-フルオロアリル)カルバメート(230mg)の室温での撹拌溶液に、TFA(10.0mL)を添加した。得られた溶液をrtで2時間撹拌した。この後、LC-MS分析を行ったところ、出発物質の完全な消費が確認された。反応混合物を真空中で濃縮し、酢酸エチル(20mL×2)との共沸により残留TFAを除去して、オフホワイトの固体を得た。この固体を酢酸エチル(10.0mL)に溶かし、HCl(ジエチルエーテル中、2.0M;5.00mL)を加えたところ、すぐに白色の固体が析出した。15分間撹拌した後、反応容器の内容物をバイアル瓶に移した。この固体を遠心分離機で回転させた(4000rpm、2分、20℃)。上澄み液を注意深くデカントし、固体の「ケーキ」をさらに酢酸エチルで洗浄した。固体をもう一度遠心分離し、上清をデカントした。固体「ケーキ」を高真空下で乾燥させ、化合物4(181mg、98%)を得た。H-NMR(Methanol-d,300MHz)δppm:7.65-7.56(m,2H),7.36(t,J=8.6Hz,1H),7.30(dt,J=81.2,0.9Hz,1H),4.80(dd,J=3.5,1.1Hz,2H),3.90-3.82(m,2H);MS:225.0「M+H」
実施例6
(E)-4-((2-(アミノメチル)-3-フルオロアリル)オキシ)-2-メチルベンゾニトリル塩酸塩(化合物5)の調製)
Figure 2023531468000030
手順O:tert-ブチル(E)-(2-((4-シアノ-3-メチルフェノキシ)メチル)-3-フルオロアリル)カルバメートの調製
Figure 2023531468000031

4-ヒドロキシ-2-メチルベンゾニトリル(109mg)、Int-6(200mg)及び炭酸カリウム(206mg)のアセトニトリル(4.0mL)中の混合物を、rtで一晩攪拌した。当時間後のLCMS分析によれば、完全転化が確認された。反応混合物を、CHCl(20mL)で希釈し、濾過し、次いで真空中で濃縮して、tert-ブチル(E)-(2-((4-シアノ-3-メチルフェノキシ)メチル)-3-フルオロアリル)カルバメート(240mg、100%)をオフホワイト色の固体として得た。この材料は、さらに精製することなく次の工程に進めた。H-NMR(300MHz,CDCl)δppm:7.50(d,J=8.5Hz,1H),6.84-6.73(m,2H),6.75(dt,J=81.4,1.1Hz,1H),4.50-4.43(m,2H),4.01-3.93(m,2H),1.99(s,3H),1.39(s,9H);MS:321.0「M+H」
手順P:(E)-4-((2-(アミノメチル)-3-フルオロアリル)オキシ)-2-メチルベンゾニトリル塩酸塩の調製(化合物5)
Figure 2023531468000032

CHCl(10mL)中のtert-ブチル(E)-(2-((4-シアノ-3-メチルフェノキシ)メチル)-3-フルオロアリル)カルバメート(240mg)の室温での撹拌溶液に、TFA(10.0mL)を添加した。得られた溶液をrtで2時間撹拌した。この後、LC-MS分析を行ったところ、出発物質の完全な消費が確認された。反応混合物を真空中で濃縮し、残留するTFAをCHCl(20mL×2)との共沸により除去して、淡黄色オイルを得た。この固体を酢酸エチル(10.0mL)に溶かし、HCl(ジエチルエーテル中2.0M;1.00mL)を加えたところ、すぐに白色固体が析出した。15分間撹拌した後、固体を濾過し、高真空下で乾燥させ、化合物5(175mg、91%)を白色の固体として得た。H-NMR(Methanol-d,300MHz)δppm:7.63(d,J=8.6Hz,1H),7.27(dt,J=81.0,0.9Hz,1H),7.08-7.04(m,1H),6.99(ddd,J=8.6,2.6,0.6Hz,1H),4.70(dd,J=3.6,1.1Hz,2H),3.84(d,J=2.1Hz,2H),2.53(d,J=0.7Hz,3H
);MS:221.0「M+H」
比較例7
(-)(E)-2-(2,3-ジヒドロベンゾフラン-2-イル)-3-フルオロプロプ-2-エン-1-アミン塩酸塩(PXS-5131)の調製)
Figure 2023531468000033
手順Q:2,3-ジヒドロベンゾフラン-2-カルボニルクロリドの調製
Figure 2023531468000034

CHCl(780mL)中の2,3-ジヒドロベンゾフラン-2-カルボン酸(78.0g)及びDMF(1.0mL)の0℃での撹拌溶液に、塩化オキサリル(125mL)を滴下しながら加えた。反応の進行はTLCでモニターした。出発物質が完全に消費された後、反応混合物を真空中で濃縮し、2,3-ジヒドロベンゾフラン-2-カルボニルクロリド(92.0g)を粗製の赤いオイルとして得た。この材料は特性評価せず、次の手順で直ちに使用した。
手順R:2-ジアゾ-1-(2,3-ジヒドロベンゾフラン-2-イル)エタノンの調製
Figure 2023531468000035

下でTHF/CHCN(1:1;780mL)中の(トリメチルシリル)ジアゾメタン(ジエチルエーテル中2M;546mL)の冷(0℃)での撹拌溶液に、THF/CHCN(1:1;780mL)中の粗2,3-ジヒドロベンゾフラン-2-カルボニルクロリドの溶液を滴下しながら添加した。得られた混合物を0℃で1時間撹拌した後、反応混合物を真空中で蒸発させて、2-ジアゾ-1-(2,3-ジヒドロベンゾフラン-2-イル)エタノン(92.6g)を粗製の褐色油として得た。この物質は、精製することなく、後続の工程で直ちに使用した。H-NMR(400MHz,CDCl)δppm:3.24(dd,J=16.4,5.6Hz,1H),3.39(dd,J=16.4,10.4Hz,1H),4.95(dd,J=10.8,5.6Hz,1H),5.67(s,1H),6.70(d,J=8.0Hz,1H),6.75(dd,J=6.9,6.8Hz,1H),6.98-7.04(m,2H)。
手順S:2-ブロモ-1-(2,3-ジヒドロベンゾフラン-2-イル)エタノンの調製
Figure 2023531468000036

CHCl(926mL)中の粗2-ジアゾ-1-(2,3-ジヒドロベンゾフラン-2-イル)エタノン(92.6g)の0℃での撹拌溶液に、HBr/AcOH(48%、216mL)を滴下しながら加えた。得られた混合物をこの温度で15分間撹拌させた。反応混合物を水(800mL)で希釈し、水層をCHCl(300mL)で抽出した。合わせた有機物を飽和水性NaHCO(600mL×3)、次いでブライン(800mL)で洗浄した。NaSO上で乾燥後、溶媒を真空中で除去して、2-ブロモ-1-(2,3-ジヒドロベンゾフラン-2-イル)エタノン(98.0g)を粗褐色油として得た。この物質は、精製することなく、直ちに後続の工程に進めた。H-NMR(400MHz,CDCl)δppm:3.41(dd,J=16.0,6.4Hz,1H),3.59(dd,J=16.0,10.8H,1Hz),4.18(d,J=14.4Hz,1H),4.35(d,J=14.0Hz,1H),5.30(dd,J=12.4,6.4Hz,1H),6.88(d,J=8.0Hz,1H),6.92(dd,J=7.4,7.4Hz,1H),7.15-7.20(m,2H)。
手順T:2-アジド-1-(2,3-ジヒドロベンゾフラン-2-イル)エタノンの調製
Figure 2023531468000037

アセトン(926mL)中の粗2-ブロモ-1-(2,3-ジヒドロベンゾフラン-2-イル)エタノン(98.0g)の0℃での撹拌溶液に、NaN(132g)を追加した。得られた混合物をこの温度で3時間撹拌した。反応混合物を、水(1L)と酢酸エチル(800mL)の間で分配し、水層をさらに酢酸エチル(800mL×2)で抽出した。合わせた有機物をブライン(1L)で洗浄し、NaSO上で乾燥し、次いで真空中で濃縮して、2-アジド-1-(2,3-ジヒドロベンゾフラン-2-イル)エタノン(92g)を粗褐色油として得た。この材料は、精製することなく、後続の工程にて使用した。H-NMR(400MHz,CDCl)δppm:3.44(dd,J=16.4,6.0Hz,1H),3.54(dd,J=16.0,11.2Hz,1H),4.19(d,J=19.2Hz,1H),4.38(d,J=19.2Hz,1H),5.17(dd,J=11.2,6.0Hz,1H),6.88(d,J=8.0Hz,1H),6.93(dd,J=8.0,7.9Hz,1H),7.15-7.26(m,2H)。
手順U:tert-ブチル2-(2,3-ジヒドロベンゾフラン-2-イル)-2-オキソエチルカルバメートの調製
Figure 2023531468000038

酢酸エチル(910mL)中の粗アジド-1-(2,3-ジヒドロベンゾフラン-2-イル)エタノン(91.0g)の溶液に、ジ-tert-ブチルジカーボネート(135g)及びPd/C(10%;9.10g、50%ウエット)を投入した。得られた懸濁液をH雰囲気下、rtで一晩攪拌した。触媒を濾過により除去し、濾液を真空下で蒸発させた。粗物質をシリカゲル上で精製し、石油エーテル/酢酸エチル(20:1)で溶出して、tert-ブチル2-(2,3-ジヒドロベンゾフラン-2-イル)-2-オキソエチルカルバメート(39.0g、33%)を黄色固体として得た。H-NMR(400MHz,CDCl)δppm:1.43(s,9H),3.36(dd,J=16.0,6.4Hz,1H),3.53(dd,J=16.0,10.8Hz,1H),4.22(dd,J=21.2,4.8Hz,1H),4.41(dd,J=20.4,4.8Hz,1H),5.16(dd,J=11.2,6.4Hz,1H),6.87(d,J=8.0Hz,1H),6.90(dd,J=7.6,7.2Hz,1H),7.14-7.18(m,2H)。
手順V:(E)-tert-ブチル2-(2,3-ジヒドロベンゾフラン-2-イル)-3-フルオロアリルカルバメート及び(Z)-tert-ブチル2-(2,3-ジヒドロベンゾフラン-2-イル)-3-フルオロアリルカルバメートの調製
Figure 2023531468000039


フルオロメチル(トリフェニルホスホニウム)テトラフルオロボレート(75.6g)のTHF(910mL)中の、N下、―25℃での撹拌溶液に、-25℃でゆっくりとNaHMDS(THF中1.0M;246mL)を添加した。混合物を-25℃で30分間撹拌した後、-78℃に冷却した。次に、反応混合物に、THF(364mL)中のtert-ブチル2(2,3ジヒドロベンゾフラン-2-イル)-2-オキソエチルカルバメート(45.6g)の溶液を添加した。完全に添加した後、-78℃で1時間攪拌を続けた。反応混合物を水(1.2L)と酢酸エチル(1.2L)の間で分配し、水層をさらに酢酸エチル(800mL×2)で抽出した。合わせた有機物をブライン(1.5L)で洗浄し、NaSO上で乾燥させ、真空下で濃縮した。粗物質の最初の精製をシリカゲル上で行い、石油エーテル/酢酸エチル(30:1→10:1)で溶出して、rac.(E)-tert-ブチル2-(2,3-ジヒドロベンゾフラン-2-イル)-3-フルオロアリルカルバメートと、rac.(Z)-tert-ブチル2-(2,3-ジヒドロベンゾフラン-2-イル)-3-フルオロアリルカルバメート(1:1、9.70g)の混合物を得た。次に、この混合物を分取HPLC精製に付し、(E)-tert-ブチル2-(2,3-ジヒドロベンゾフラン-2-イル)-3-フルオロアリルカルバメート(4.10g、9%)及び(Z)-tert-ブチル2-(2,3-ジヒドロベンゾフラン-2-イル)-3-フルオロアリルカルバメート(3.60g、8%)を得た。(E)-tert-ブチル2-(2,3-ジヒドロベンゾフラン-2-イル)-3-フルオロアリルカルバメート:H-NMR(300MHz,CDCl)δppm:1.42(s,9H),3.18(dd,J=15.7,8.5Hz,1H),3.39(dd,J=15.7,9.4Hz,1H),3.93(dd,J=14.3,3.1Hz,1H),4.05(dd,J=14.9,5.3Hz,1H),4.75(br.s,1H),5.23(dd,J=9.4,9.4Hz,1H),6.79(d,J=82.7Hz,1H),6.80(d,J=8.0Hz,1H)6.88(ddd,J=7.5,7.5,1.0Hz,1H),7.14(dd,J=8.0,7.9Hz,1H),7.18(d,J=7.5Hz,1H)。
手順W:ラセミ体(E)-tert-ブチル2-(2,3-ジヒドロベンゾフラン-2-イル)-3-フルオロアリルカルバメートの2種のエナンチオマーの分離
Figure 2023531468000040

ラセミ体(E)-tert-ブチル 2-(2,3-ジヒドロベンゾフラン-2-イル)-3-フルオロアリルカルバメート(5.00g)を、CHIRALCEL OZ-Hカラムを用いて、キラルクロマトグラフィーにより分離し、n-ヘキサン/イソ-プロピルアルコール/ジエチルアミン(95:5:0.1;v/v/v)を1mL/分で流して、(E)-tert-ブチル 2(2,3-ジヒドロベンゾフラン-2-イル)-3-フルオロアリルカルバメート(ピーク1(6.10分)、2.30g;ピーク2(9.40分)、2.32g)の各エナンチオマーを得た。
手順X:(-)-(E)-2-(2,3-ジヒドロベンゾフラン-2-イル)-3-フルオロプロプ-2-エン-1-アミン塩酸塩(PXS-5131)の調製
Figure 2023531468000041

精製した(E)-tert-ブチル 2-(2,3-ジヒドロベンゾフラン-2-イル)-3-フルオロアリルカルバメート(30mg)のメタノール(1.0mL)中の、ピーク2で表されるエナンチオマーのrtでの撹拌溶液に、HCl(ジエチルエーテル中2.0M;1.0mL)を加えた。得られた混合物を、rtで2時間撹拌した。すべての揮発分を真空中で除去し、得られた残渣を酢酸エチル(0.5mL)中に溶解した。ジエチルエーテル(2.0mL)を加えた後、白色沈殿を生じた。内容物をバイアルに移し、遠心分離機で遠心分離(4000rpm、4分)し、固体の「ケーキ」を得た。上清をデカントした後、さらにジエチルエーテルを加え、(短時間超音波処理した後)バイアルを遠心分離機に戻した。この遠心分離と洗浄の工程を合計3回繰り返した。こうして得られた固体を高真空下で乾燥させ、PXS-5131(13mg、62%)を得た。[α]=-26.02°、c=11.2mg/mL(メタノール中);H-NMR(300MHz,Methanol―d)δppm:3.19(dd,J=15.9,9.1Hz,1H),3.41(dd,J15.9,9.2Hz,1H),3.72(dd,J=14.0,2.6Hz,1H),3.84(ddd,J=13.6,2.1,0.5Hz,1H),5.36(dd,J=9.1,9.1Hz,1H),6.83(d,J=8.0Hz,1H),6.90(ddd,J=7.5,7.5,0.9Hz,1H),7.15(dd,J=7.6,7.6Hz,1H),7.22(d,J=80.9Hz,1H),7.24(d,J=7.4Hz,1H);MS:194.0「M+H」。[注:手順Wでピーク1を脱保護すると、[α]は同じ程度の大きさだが、符号が反対の化合物が得られた。]。
比較例8
表2に掲示した以下の化合物は、比較の目的のみのために包含される。これらの化合物は、化合物6及び化合物14を除いて、本明細書に記載の方法と類似の方法を用いて合成することができる。
これらの化合物は、Foot J.S.ら、J.Pharm.Exp.Ther.2013、347、365-374に記載されている手順に従い、市販の4-ヒドロキシベンゾニトリルから調製することができる。
Figure 2023531468000042
実施例9
式Iの化合物のヒト組換えSSAO/VAP-1を阻害する能力を決定する方法
ヒト組換えSSAO/VAP-1アミンオキシダーゼ活性を、モノアミンオキシダーゼ
、銅含有アミンオキシダーゼ及び関連酵素について記載されている方法(HoltA.とPalcic M.、Nat.Protoc.2006、1、2498-2505)により決定した。端的に述べると、ヒトSSAO/VAP-1の残基34~763に対応し、マウスIgカッパ(κ)シグナル配列、N末端フラッグエピトープタグ及びタバコエッチウイルス(TEV)切断部位を組み込んだクローン化cDNAテンプレートを、Geneart AG製の、哺乳動物発現ベクター(pLO-CMV)に組み込んだ。ヒトSSAO/VAP-1残基を含むこのベクターを、CHO-K1糖鎖変異細胞株、Lec 8にトランスフェクションした。ヒトSSAO/VAP-1を安定に発現するクローンを単離し、大規模に培養した。活性型ヒトSSAO/VAP-1を、イムノアフィニティークロマトグラフィーで精製・回収した。これをSSAO/VAP-1活性のソースとして使用した。96又は384ウェルフォーマットを用いたハイスループット比色アッセイを開発した。簡単に説明すると、標準的な96ウェルプレートアッセイにおいて、0.1Mリン酸ナトリウムバッファ(pH7.4)中の精製ヒトSSAO/VAP-1(0.25μg/mL)を、各ウェルに50μL加えた。テスト化合物をDMSOに溶解し、ヒトSSAO/VAP-1と37℃で、30分間インキュベートした後、通常のマイクロモル又はナノモルの範囲で、4-11のデータポイントを持つ濃度応答曲線(CRC)を得るべくテストした。30分のインキュベーション後、0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)中で調製した、600μMベンジルアミン(Sigma Aldrich製)、120μM Amplex Red(Sigma Aldrich製)及び1.5U/mLの
西洋わさびペルオキシダーゼ(Sigma Aldrich製)を含む反応混合物の50μLを対応するウェルに追加した。蛍光単位(RFU)は、37℃励起565nm、発光590nmで、30分間、2.5分毎に読み取った(Optima;BMG LABTECH製)。各ウェルの動態の傾きを、MARSデータ解析ソフトウェア(BMG LABTECH製)を用いて計算し、この値を用いてIC50値(Dotmatics製)を推算した。式Iの化合物のSSAO/VAP-1を阻害する能力を、表3に示す。
実施例10
式Iの化合物のヒト組換えMAO Bを阻害する能力を測定する方法
本発明の化合物が、生体外でMAO-B活性を阻害する能力を試験した。MAO-B酵素活性の源として、組換えヒトMAO-B(0.06mg/mL;Sigma Aldrich製)を使用した。基質ベンジルアミンを100μMで使用し、インキュベーション時間2時間後にアッセイを実行した以外は、ヒトSSAO/VAP-1(実施例9)と同様の方法でアッセイを実施した。式Iの化合物のMAO-Bを阻害する能力は、表3に示すとおりである。
実施例11
式Iの化合物のヒト組換えMAO Aを阻害する能力を決定する方法
本発明の化合物の選択性を、組換えヒトMAO-A(0.003mg/mL;Sigma Aldrich製)を用いて、生体外でMAO-A活性を阻害する能力を決定することにより試験した。基質であるチラミンを、ベンジルアミンの代わりに100μMで使用し、インキュベーション時間2時間後にアッセイを実施した以外は、ヒトSSAO/VAP-1の場合(実施例9)と同様の方法で行った。式Iの化合物のMAO-Aを阻害する能力を、表3に示す。
Figure 2023531468000043
Figure 2023531468000044

表3に示すように、本発明の化合物は、記載されたアッセイ条件下、生体外において、ヒト組換えSSAO/VAP-1及びMAO-Bの両方に対して強力な阻害剤である。重要なことは、本発明の化合物は、重要なオフターゲットである組換えヒトMAO-Aに対して活性がないことである。驚くべきことに、このプロフフィールは、フェニル環上の置換基の性質及び位置によって大きく決まる。
実施例12
化合物1及びPXS-5131の薬物動態学的パラメータ
薬物動態学(PK)試験は、Sundia MediTech Co. Ltd.(上海)にて実施した。体重約280gのウイスターラットに、化合物1又はPXS-5131のいずれかを、3mg/kgで強制経口投与した。15分~8時間の間の各時間に、血液サンプルを尾静脈採血により採取した。血漿は、島津製作所製LC30AD HPLCとQTRAP 5500質量分析計を用いた高速液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析計を使って分析した。こうして得られた、時間経過と基本的なPKパラメータの概略を図1に示す。
実施例13
式Iの化合物が、ラット脂肪組織SSAO/VAP-1及びラット脳組織MAO-Bを阻害する能力を決定する方法
スプラーグドーリーラットに、実験対象化合物を経口投与し、種々の時点で犠牲にし、生殖腺脂肪及び脳組織を採取した。
脂肪組織を、氷冷したHES緩衝液(20mM HEPES、1mM EDTA、スクロース 250mM、プロテアーゼ及びホスファターゼ阻害剤、pH7.4)中でホモジナイズした。ホモジネートを2000rpmで5分間、4℃で遠心分離し、得られた上清部分(脂質上層を除いたもの)をアッセイに使用した。SSAO/VAP-1活性は、高シグナルの方は、非特異的MAO阻害剤(例えば、パージリン)を用い、低シグナルの方は、非特異的MAO阻害剤とSSAO/VAP-1阻害剤(例えば、セミカルバジド)の混合物を用いて決定した。
脳組織を、氷冷したトリス緩衝液(10mM トリス・HCl、0.5mM EDTA、スクロース 250mM、pH7.4)中でホモジナイズした。その後、ホモジネートを4,000rpm、4℃で3分間遠心分離した。得られた上清を移し、再び4,000rpm、4℃で3分間遠心分離した。この工程を最後にもう一度繰り返し、今度は10,000rpmで8分間遠心分離した。上清を捨て、ミトコンドリア抽出物を含む得られたペレットを、0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液に再懸濁した(1:3の比率)。MAO-B活性は、高シグナルの方は特異的MAO-A阻害剤(例えばクロルギリン)及びSSAO/VAP-1阻害剤(例えばセミカルバジド)を使用して、低シグナルの方は、脂肪組織アッセイと同様に設定した。
処理した試料の活性は、SSAO/VAP-1活性については、実施例9に記載の、MAO-Bについては実施例10に記載の蛍光測定法を用いて分析した。
実施例14
二重阻害剤PXS-5131についての説明
PXS-5131は、MAO-B及びSSAO/VAP-1の両方の、プロトタイプ二
重阻害剤である。この化合物の薬物動態プロフィールは化合物1よりも劣る。スプラーグドーリーラットへ、化合物PXS-5131を単回投与により経口投与することで、図2及び3によって示されるように、生体内におけるSSAO/VAP-1及びMAO-Bは長期間にわたってそれらの活性阻害の影響を受ける。図2に描かれているように、PXS-5131の単回投与により、SSAO/VAP-1酵素活性は24時間以上にわたって阻害される。図3に示すように、PXS-5131の単回投与により、MAO-B酵素活性は24時間以上阻害される。これらの複合効果を評価するために、PXS-5131を以下の生体内モデルにおいて使用した。
実施例15
カラギーナン-エアパウチモデルにおける二重阻害剤PXS-5131の有効性
0日目に、BALB/cマウスのうなじ部分を剃毛し、麻酔をかけ、6mLシリンジに固定した23G×1.5インチ針を用いて、6mL滅菌空気(0.2μm、Sartorius製、カタログ番号16532)を、皮下に注入した。注入部位は柔軟性のあるコロジオン(Macron製、Cat.4580-02)で封止した。3日目にさらに3mLの滅菌空気を頸部に注入した。
3%λ-カラギーナンの調製は、1.8gのλ-カラギーナン(FLUKA製、Cat.22049、ロット1408463)を、60mLの熱脱イオン水に溶解することにより行った。溶解後、室温まで冷却し、脱イオン水で60mLまで容量アップした。
6日目に、PBS(ビヒクル)中のPXS-5131又はPBSのみをマウスに強制経口により投与した。投与1時間後に、1mLシリンジに取り付けた23G×2インチ針を用いて、1mLの3%λ-カラギーナンをマウスに直接、エアパウチウに注入した。擬動物には、λ-カラギーナン溶液の代わりに、1mLの脱イオン水を投与した。
カラギーナン/脱イオン水注入の4時間後、マウスを麻酔し、3mLの10U/mLヘパリン化生理食塩水をエアーパウチに注入した。エアーパウチを優しくマッサージし、5mL注射器に取り付けた18G×1インチ針で内容物を直ちに取り出し、滲出液の量を記録した。総白血球計数の測定のために、一定分量の滲出液を採取し;微分白血球計数の測定のために、二つ目の滲出液を一定分量採取した。
PXS-5131の抗炎症作用を、図4に示す。カラギーナン注入により炎症が増加したが、PXS-5131の単回塗布により、エアーパウチにおける滲出液量及び好中球数の両方が減少したことからわかるように、カラギーナン処理マウス(黒棒)と比較して炎症が減少することがわかった(p<0.05、**p<0.01、***p<0.001)。
化合物1もこのモデルでプロファイリングされている。
実施例16
黒質内リポポリサッカライド(LPS)誘発神経炎症性モデルにおける二重阻害剤PXS-5131の有効性
体重300~400gの頭巾斑ウイスター雄ラットを、Adelaide Laboratory Animal Services社から入手した。0日目に、LPS注入の1時間前と5時間後の両方に、2mg/kgのPXS-5131、又は滅菌生理食塩水(ビヒクル)を腹腔内注射(i.p.)で投与した。
LPS片側投与後のドーパミン作動性ニューロン数
片側注入:黒質におけるLPS(O55:B5、Sigma製)の1.5mg/mL溶液2μLを片側に注射したラットを、イソフルオランで麻酔し、定位フレームに配置させた。すべてのラットについて、座標(-5.3mm後方;±2.0mm側方;ブレグマから-8.0mm腹側)上に適切に配置されている、標的構造物上の頭蓋骨に穴をあけた。すべてのラットに、もう一方の半球を無傷状態のままで、LPSの片側注射を行った。その動物に対して、PXS-5131(2mg/kg)又はビヒクルのいずれかを2週間毎日i.p.投与した。
免疫組織化学的手順:病変の2週間後、ラットをPBSで経心的に灌流し、次いでPFA4%で灌流した。脳をPFA 4%で後固定し、黒質を含む30μmの冠状切片を採取し、3×0.01Mリン酸緩衝生理食塩水で、pH7.4.(PBS)下、10分間洗浄した。ドーパミン作動性ニューロンを、抗チロシンヒドロキシラーゼ(TH)抗体1:10000で染色し、ニッケル強化3,3’-ジアミノベンジジン(DAB)を用いて可視化し、目視によりニューロン数を数えた。セクションにまたがる値を各動物について平均化した。その結果を図5に示す。
図5に示すように、脳の黒質へのLPSの片側注入は、無傷のコントロール半球と比較すると、ドーパミン作動性ニューロンが劇的に損失する。PXS-5131を2mg/kgで2週間毎日i.p.投与すると、無傷のコントロール半球と比較して、大幅にニューロンの損失を免れた、t-テストp<0.05。
実施例17
デュシェンヌ型筋ジストロフィーモデルマウスにおける二重阻害剤PXS-5131の有効性
mdxマウス(C57BL/10ScSn-Dmdmdx/J)は、米国メイン州のJackson Laboratoriesから入手した。3ヶ月齢の動物に、PXS-5131(6mg/kg)を毎日投与し、30日間チャウに混ぜて投与した。未処置の同年齢の動物をコントロールとした。薬物を、20%のスクラロースに食品香料を加えた、10%のゼラチンと合わせて調製した、小さな口当たりの良いゼラチンペレットを用いて投与した(Zhang L.Protoc.Exch.2011、236)。動物を、一晩絶食させた後、他の食物がない状態で、活性の無いゼラチンを各個体に3日間暴露するというのをルーチンにして、ゼラチンを認識して食べるように予め調整された。嗜好性は、ペレットを微量のアーモンド油を含むコーン油に浸し、粉砕した食品ペレットをパン粉につけることで、さらに改善させた。
生体内の腓腹筋の筋肉機能については、Blaauw B.ら、Hum.Mol.Genet.2008、17、3686-3696の記載内容に従って評価した。マウスを麻酔し、坐骨神経の両側に電極を設置し、総腓骨神経を切断した。筋トルクの発生を、レバーシステム(Aurora Scientific製 305B)を用いて測定した。各群間で体重に大きな差が認められなかったため、全群に対して、レバーアーム 2.1mmを使用した。偏心性収縮は,腓腹筋を、完全なテタニック融合を誘発するのに十分な周波数(100Hz)で刺激しながら,足を40mm/sの速度で後方に移動させることにより行った。収縮は、疲労を誘発しないように20秒に1回で繰り返した(図6参照)。
図6は、3ヶ月齢のマウスに、6mg/kg/日のPXS-5131を4週間経口投与した後、このPXS-5131の経口投与により、無処置の同年齢のマウスと比較して、腓腹筋(GC)筋肉において、偏心収縮による力の損失を免れるのが助長されることを実証するものである。*p<0.05。
上記の力測定後、動物を頸椎脱臼により犠牲にし、骨格筋と心臓(心房を除く)を採取し、液体窒素で予冷したイソペンタンで瞬間凍結し、-80℃で保存した。四肢の筋肉(前脛骨筋)から12μmの切片を、クライオトームを使って作製し、少なくとも3つの異なるレベルの切片を含む複数の連続スライドを作製した。同じ手順で心臓の横断面切片を作製した。
好中球及びマクロファージの浸潤量は、上記のように調製した骨格筋の連続切片を固定し、抗Ly6G抗体及び抗F4/80抗体(それぞれ好中球及びマクロファージ用、AbCam製、ab25377及びab6640)を使って、免疫蛍光染色により測定した。浸潤量は、Image-Jソフトウェアを用いて、切片の総面積に対する蛍光体陽性画素の割合として評価した(図7A及びB)。
骨格筋組織切片に存在する活性酸素種(ROS)の量は、Menazzaら、Hum.Mol.Genet.2010、19、4207-4215.に記載されるように、新鮮な状態で切断した組織切片の蛍光プローブとして、ジヒドロエチジウム(DHE、Sigma製)を使用して評価した。ROSの存在下で、DHEは酸化されてエチジウムを形成し、その後、核DNAに結合して赤色蛍光を発することができる。この赤色蛍光の量は、Metafluor ソフトウェア(Leica製)を用いて、各セクションにつき少なくとも20のランダム視野において測定し、視野ごとにデータを平均化した(図7C)。
骨格筋の線維組織の割合は、ピクロシリウスレッド染色により測定した。切片をキシレン10分、100%エタノール2分、90%エタノール2分、70%エタノール2分、蒸留水2分で処理し、酢酸洗浄(200mLの水に30mLの氷酢酸)中で2回高速浸漬する前に、ピクリン酸の飽和水溶液中の0.02%ピクロシリウス・レッド(Sigma製、365548)により1分間染色した。切片をアルコール濃度の高い順に脱水し(上述と逆)、Eukitt(Sigma製、cat.no 03989)を用いてマウントする前に、キシレン中で10分間処理した。次いで、筋肉サンプルあたり少なくとも3つの切片の全体画像を、明視野顕微鏡を使って取得し、次いで、全表面についての線維化(赤色)領域の割合を測定するために、Image-Jソフトウェアで分析した(図7D)。
図7(A~D)に示すように、PXS-5131を6mg/kg/日経口投与すると、3ヶ月齢のmdxマウスに4週間投与した後で、前脛骨筋の(A)好中球流入、(B)マクロファージ流入、(C)活性酸素、(D)線維化(ピクロシリウスレッド染色により定量化)は、非処置同年齢マウスと比較して、著しく減少することが示された。無処理マウスと比較して、****p<0.0001。
実施例18
C57BL/6Jマウス及びmdxマウス(C57BL/10ScSn-Dmdmdx/J)の両方について、式Iの化合物が、脂肪組織SSAO/VAP-1、筋肉及び心臓組織MAO-B、並びに筋肉及び心臓組織MAO-Aを阻害する能力を決定するための方法。
マウスに試験対象化合物を経口投与し、種々の時点で犠牲にし、腹部脂肪、筋肉及び心臓の組織を採取した。
脂肪組織中のSSAO/VAP-1活性は、実施例13に記載したように測定した。
骨格筋を液体窒素中で粉砕し、氷冷したHEPES緩衝培地(20mM HEPES、0.8%w/v遊離脂肪酸ウシ血清アルブミン(BSA)、75mMスクロース、10m
M EDTA、215mM D-マンニトール、pH7.4)中に懸濁させた。ホモジナイズした後、2,500rpm、4℃で10分間遠心分離した。上清を移し、10,000rpmで8分間遠心分離した。上清を捨て、得られたミトコンドリア抽出物を含むペレットを、0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液(1:3比)に再懸濁した。
心筋をPBS溶液で3回、氷上で洗浄した。次いで、骨格筋について記載したように、ホモジネート及び抽出物を調製した。
MAO-B活性は、高シグナル用に、特定のMAO-A阻害剤(例えばクロルギリン)及びSSAO/VAP-1阻害剤(例えばセミカルバジド)を使用し、低シグナル用に、脂肪組織アッセイ(実施例13)と同様のものを使用した。
MAO-A活性は、高シグナル用に、選択的MAO-B阻害剤モフェジリン(30nMで)を用い、低シグナル用に、特異的MAO-A阻害剤(クロルギリン)とモフェジリン(30nMで)の混合物を用いた。
処理試料の活性については、SSAO/VAP-1活性は、実施例9に記載の、MAO-B活性は、実施例10に記載の、MAO-A活性は、実施例11に記載の蛍光測定法を、それぞれ用いて分析した(図8及び図9)。
図8に描かれているように、化合物1の単回投与により、C57BL/6Jマウスへの投与後4時間での、SSAO/VAP-1及びMAO-B活性の両方において、投与量依存の減少を示している。24時間後の時点でも、酵素活性の阻害は明らかである。ビヒクル処理マウスと比較して、p<0.05、**p<0.01及び***p<0.001。
図9に描かれているように、化合物1の単回投与により、C57BL/6Jマウスへの投与後4時間及び24時間では、心臓及び筋肉のMAO-A活性に対しては抑制効果を示さない。
化合物1をmdxマウス(C57BL/10ScSn-Dmdmdx/J)に4.8mg/kg/日の投与量で3日間にわたって投与した場合でも、同様の阻害のプロフィールが観察された。
図10に描かれているように、化合物1の単回投与により、C57BL/10ScSn-Dmdmdx/Jマウスにおける脂肪組織SSAO/VAP-1及び筋肉MAO-B活性は完全に抑制される。ビヒクル処理マウスと比較して、*p<0.05、及び***p<0.001である。
図11に描かれているように、化合物1の単回投与により、C57BL/10ScSn-Dmdmdx/Jマウスにおいて、投与後に筋肉MAO-Aに対する抑制効果は表れない。
実施例19
デュシェンヌ型筋ジストロフィーモデルマウスにおける二重阻害剤である化合物1の有効性
3ヶ月齢のmdxマウス(C57BL/10ScSn-Dmdmdx/J)に、化合物1を毎日(1~6mg/kgの範囲で)、飲料水中に投与して30日間経過させた。未処理の同年齢の動物をコントロールとして使用した。10ヶ月齢のマウスの第2のコホート
には、毎日、化合物1(1~6mg/kgの範囲)を飲料水中に投与し、90日間経過させた。未処理の同年齢の動物をコントロールとして使用した。
各処置期間の終了後、動物を頸椎脱臼により犠牲にし、骨格筋及び心臓(心房を除く)を採取し、液体窒素で予め冷却したイソペンタン中で瞬間冷凍し、-80℃にて保存した。横隔膜の筋肉から12μmの切片をクライオトームで作製し、少なくとも3つの異なるレベルの切片を含む複数の連続スライドを準備した。同じ手順で心臓の横断面切片を作製した。
好中球及びマクロファージの浸潤量、存在する活性酸素種(ROS)、及び線維性組織の割合を、実施例17の場合と同様に決定した。
図12(A-D)に示すように、化合物1を4.8mg/kg/日経口投与すると、3ヶ月齢のmdxマウスに30日間投与した後、横隔膜筋の(A)好中球流入、(B)マクロファージ流入、(C)活性酸素、及び(D)線維化(ピクロシリウスレッド染色により定量化)が、無処置同年齢マウスと比較して、有意に減少した。無処置マウスと比較して、****p<0.0001。
図13に示すように、化合物1を4.8mg/kg/日経口投与すると、10ヶ月齢のmdxマウスにおいて90日間投与した後、無処置の同年齢マウスと比較して、心臓線維化(心筋のピクロシリウスレッド染色により定量化)が有意に減少する。無処置マウスと比較して、****p<0.0001。
実施例20
標準化された市販の方法(Eurofins Panlabs Inc,(https://www.eurofinsdiscoveryservices.com/services/in-vitro-assays/)又はEvotec SE(https://www.evotec.com/en/execute/integrated-pre-clinical-development/adme)など
の受託研究機関を通じて入手可能)を用いた、化合物1の代謝安定性プロフィールのアセスメント
生体内での代謝の可能性は、以下のアッセイを使用して生体外で評価した。
肝ミクロソームの安定性(ヒト、ラット、イヌ;NADPHの存在下)。
肝細胞安定性(ヒト、ラット、イヌ)
血漿安定性(ヒト、ラット、イヌ)
全血安定性(ヒト、ラット)
模擬胃液の安定性(10μM 試験品、pH1.2)
ヒト肝細胞における代謝物の同定
化合物1は、すべてのアッセイにおいて好ましい代謝安定性を有することが判明した。
実施例21
標準化された市販の方法(Eurofins Panlabs Inc(https://www.eurofinsdiscoveryservices.com/services/in-vitro-assays/)又はEvotec SE(https://www.evotec.com/en/execute/integrated-pre-clinical-development/adme)などの
委託研究機関を通じて入手可能)を用いた、化合物1のオフターゲットプロフィールの評価
生体内におけるオフターゲットプロミシティ(浮気性)の可能性は、以下のアッセイを使用して生体外で評価された。
シトクロムP450活性の阻害(30μM 単濃度;1A2、2B6、2C8、2C9、2C19、2D6、3A4)
Eurofins Discovery Safety Screen(登録商標)パネル(44種類の酵素、受容体、イオンチャネル、トランスポーター)(10μM濃度での阻害率))
Eurofins Transporter Protein Screen パネル(13種類の一般的なトランスポーター(濃度10μMでの阻害率))
Aptuit心臓イオンチャネルパネル(7つの標的(自動パッチクランプアッセイ;濃度0~300μM))。
化合物1は、すべてのアッセイにおいて、良好なオフターゲットプロフィールを有することが判明した。
実施例22
小型化細菌復帰変異原性スクリーニングアッセイにおける化合物1の細胞毒性プロフィールの評価。
サルモネラ・チフス菌TA98、TA100及び大腸菌WP2 uvrA pKM101を用い、代謝活性化系の存在下及び非存在下で、化合物1の突然変異誘発能を、小型化復帰変異原性アッセイを使って試験することにより確認した。試験品を公称濃度50mg/mLでジメチルスルホキシド(DMSO)中で製剤化し、この原液を使って連続的に希釈を行った。最終投与濃度は,1000、500、250、125、62.5、31.3、15.6及び7.81μg/ウェルであった(試験品)。代謝活性化は、10%v/vのAroclor-1254誘導ラット肝臓S9(Regensys System製の試薬、Moltox、Boone、NC)を含むS9混合物を使用することにより提供された。
化合物1は、このアッセイにおいて、変異原性の可能性を示す反応を誘導しなかった。
実施例23
細胞系の蛍光アッセイにおける、化合物1のホスホリピドーシス誘導の可能性のアセスメント
化合物1を、Fujimuraら(Experimental and Toxicologic Pathology.2007、58、375-382)の概説する方法に従って、生体内で、100μMまでの濃度で、ホスホリピドーシスを誘発する可能性について試験した。
化合物1は、このアッセイにおいて、細胞の表現型にも細胞の生存率にも影響を及ぼさなかった。
実施例24
室温でのグレープシロップ製剤中の化合物1の安定性
メチルパラヒドロキシベンゾエート(126.2mg)、プロピルパラヒドロキシベンゾエート(20.0mg)、第一リン酸ナトリウム(1%、1.0g)及びサッカロース(16.56g)を、100mL精製水に溶かし、10分間渦流化させ、その後30分間超音波処理を行い、0.45μmフィルターでろ過した。0.5M NaOHを用いてpH5に調整した。得られた溶液 50mLにグレープ香料(LorAnnOils製、0180-0800;1%、0.5mL)を加え、さらに化合物1 50mgを加えて、最終濃度を1mg/mLとした。25mLずつ2つに分けて、1つ目は凍結し、2つ目は密閉したFalconeチューブで室温(rt)に放置した。
表4に示すように、室温で91日後、化合物1において、識別可能な分解は観察されなかった。
Figure 2023531468000045

Claims (18)

  1. 式1の化合物:
    Figure 2023531468000046

    又はその薬剤的に許容可能な塩、多形体若しくは溶媒和物であって、
    は、水素、フッ素、臭素及びメチルからなる群から選択され;及び
    は、水素又はフッ素である、
    化合物又はその薬剤的に許容可能な塩、多形体若しくは溶媒和物。
  2. 以下に示す化合物からなる群から選択される請求項1に記載の化合物、
    Figure 2023531468000047

    又はその薬剤的に許容可能な塩若しくは溶媒和物。
  3. 請求項1又は2に記載の化合物、又はその薬剤的に許容可能な塩若しくは溶媒和物、及び少なくとも1種の薬剤的に許容可能な賦形剤、担体又は希釈剤を含有する医薬組成物。
  4. その必要性のある対象においてセミカルバジド感受性アミンオキシダーゼ/血管接着タンパク質-1(SSAO/VAP-1)及びモノアミンオキシダーゼB(MAO-B)のアミンオキシダーゼ活性を阻害する方法であって、有効量の請求項1若しくは2に記載の化合物、若しくはその薬剤的に許容可能な塩若しくは溶媒和物、又は請求項3に記載の医薬組成物を、前記対象に投与することを含む、方法。
  5. 前記SSAO/VAP-1タンパク質及び前記MAO-Bタンパク質の前記活性を阻害することで疾患又は障害を治療又は予防する方法であって、その必要性のある対象に、治療上有効な量の請求項1若しくは2に記載の化合物、若しくはその薬剤的に許容可能な塩若しくは溶媒和物、又は請求項3に記載の医薬組成物を投与することを含む、方法。
  6. 前記疾患又は障害が、MAO-Aに対する、SSAO/VAP-1及びMAO-Bの前記選択的阻害によって改善される、請求項5に記載の方法。
  7. 前記疾患が神経筋障害である、請求項5又は6に記載の方法。
  8. 前記神経筋障害が筋ジストロフィーである、請求項7に記載の方法。
  9. 前記筋ジストロフィーが、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)、ベッカー型筋ジストロフィー、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー及び筋緊張性ジストロフィーからなる群から選択される、請求項8に記載の方法。
  10. 前記疾患が、神経変性疾患又は神経炎症性疾患である、請求項5又は6に記載の方法。
  11. 前記神経変性疾患又は神経炎症性疾患が、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、脊髄性筋萎縮症、重症筋無力症及びシャルコー・マリー・トゥース病からなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
  12. 前記SSAO/VAP-1タンパク質及び前記MAO-Bタンパク質の前記活性を阻害することで疾患又は障害を治療又は予防する医薬を製造するための、請求項1又は2に記載の化合物、又はその薬剤的に許容可能な塩若しくは溶媒和物の使用。
  13. MAO-Aに対する、SSAO/VAP-1及びMAO-Bの前記選択的阻害により、前記疾患又は障害が改善される、請求項12に記載の使用。
  14. 前記疾患が神経筋障害である、請求項12又は13に記載の使用。
  15. 前記神経筋障害が筋ジストロフィーである、請求項14に記載の使用。
  16. 前記筋ジストロフィーが、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)、ベッカー型筋ジストロフィー、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー及び筋緊張性ジストロフィーからなる群から選択される、請求項15に記載の使用。
  17. 前記疾患が、神経変性疾患又は神経炎症性疾患である、請求項12又は13に記載の使用。
  18. 前記神経変性疾患又は神経炎症性疾患が、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、脊髄性筋萎縮症、重症筋無力症及びシャルコー・マリー・トゥース病からなる群から選択される、請求項17に記載の使用。
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