JP2023530672A - 胃腸バリアを改善するための3-ヒドロキシ酪酸を含む栄養組成物 - Google Patents

胃腸バリアを改善するための3-ヒドロキシ酪酸を含む栄養組成物 Download PDF

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Abstract

本発明は、胃腸バリアの改善に使用するための3-ヒドロキシ酪酸を含む栄養組成物に関する。特に、本発明は、個体、好ましくは乳児又は小児における胃腸バリアの改善に関する。【選択図】 なし

Description

本発明は、胃腸バリアの改善に使用するための3-ヒドロキシ酪酸を含む栄養組成物に関する。特に、本発明は、個体、好ましくは乳児又は小児における胃腸バリアの改善に関する。
胃腸バリアは、高分子及び病原生物に対する機能的バリアとして重要な役割を果たす一方で、ミネラル及びビタミンなどの栄養素の吸収は可能にする。腸管上皮バリアは、微生物叢、食事成分及び環境毒素を含む外部環境から体内を分離する最初のラインである。適切に機能する腸上皮細胞バリアは、全体的な生活の質の維持、並びに免疫及びホルモンバランスを含む多岐にわたる機能の調節に極めて重要であり、その結果、多種多様な健康及び臨床転帰に影響を及ぼす可能性がある。全身的な健康に対する腸上皮バリアの広範囲にわたる影響を考慮すると、腸バリア機能を改善、増強又は保護するなどして、個体の健康及び全般的な生活の質を最適化するなど、健康上の利益を提供することができる組成物が必要とされている。
このニーズは、乳児及び幼児において特に顕著である。出生後の成長の間、新生した腸は、機能的障壁の確立によって終了する成熟過程を経験する。この現象は腸閉鎖と呼ばれ、食事によって影響を受けるようである。したがって、乳児(JPGN,1995,21:383-6)及び動物モデル(Pediatr Res,1990,28:31-7)を用いた幾つかの研究では、バリアの成熟が、人工乳を与えられた新生児よりも母乳を与えられた新生児において速いことが示されている。これは、母乳を与えられた乳児よりも人工乳を与えられた乳児におけるアレルギー及び感染症の有病率が高いことを説明することができる。
母乳は全ての乳児に推奨される。しかしながら、場合によっては、医学的理由で母乳育児が不十分若しくは失敗することや、又は母親が母乳で育てないことを選択することもある。乳児用フォーミュラは、これらの状況のために開発された。また、母乳又は乳児用フォーミュラを特定の成分について強化するために強化剤が開発されている。かかる場合、完全栄養又は栄養サプリメントなどの栄養的介入によって、乳児及び幼児の胃腸バリアを改善する手段を提供することが更に好ましい。
乳児及び幼児のある特定の集団は、腸バリア機能を改善するなどの健康上の利益を提供することができる組成物を特に必要としている。かかる乳児及び幼児は、例えば、早産児、低出産体重児、及び/又は成長の遅い乳児若しくは幼児である。実際、腸バリアは透過性が高く、損傷を受けやすく、またその構造及び機能は、健康な正期産児よりもかかる乳児においては成熟していない。これは、次に感染症又はアレルギーなどの他の問題を導き得る。かかる乳児にとって、腸管バリア機能を改善することができる栄養組成物で薬学的管理を補完することが特に有利である。ペット動物などの新生動物及び幼若動物もまた、同じ理由で腸管バリアの改善を必要とし得る。
腸バリアはまた、胃腸疾患(例えば、炎症性大腸炎、慢性下痢症)に罹患している、及び/又は重症である、及び/又は非経口栄養を受けている者などの年長の小児及び成人においても損なわれ得る。同じことが、これらの症状に罹患しているペット動物などの動物にも当てはまる。
したがって、腸管バリアを改善するための改善された、特に、より効率的及び/又は信頼できる栄養組成物が有利であると考えられる。
胃腸バリアを改善する栄養成分の効果は、過去にも研究されていた。ここで、多くの研究の対象となっているポリアミンのケースを挙げる。例えば、A.F.Bekebrede,J.keijer,W.J.J.Gerrits and V.C.J.de Boer;The Molecular and Physiological Effects of Protein-Derived Polyamines in the Intestine;Nutrients,2020,12,pp 197ffでは、結腸に焦点を当てた生化学的、細胞的及び生理学的プロセスに対するポリアミン(すなわちスペルミン、スペルミジン、プトレシン及びカダベリン)の効果を総説している。ポリアミンは、腸成熟を誘導し、寿命を増加させるなど、バリア機能を支持することによって、腸生理を支持すると記載されている。
3-ヒドロキシ酪酸は、腸細胞の成熟に対して潜在的に有益な効果を有すると以前に報告されている(Q.Wang,Y.Zhou,P.Rychahou,T.W-M.Fan,A.N.Lane,H.L.Weiss and B.M.Evers,Ketogenesis contributes to intestinal cell differentiation,Cell Death and Differentiation(2017)24,458-468)。しかしながら、この文献は、腸管バリア機能、構造、保護及び修復に関しては言及していない。
ヒト母乳オリゴ糖(HMO)などのプロバイオティクス及びプレバイオティクスなどの他の成分は、腸管バリアに対して正の効果を有するものとして同定されている。
ヒト母乳オリゴ糖は、難消化性オリゴ糖であり、したがって、乳児又は幼児によって産生される酵素によって代謝され得ない。しかしながら、これらのオリゴ糖は、乳児又は幼児の胃腸管における微生物叢の細菌に遭遇し、それらの細菌によって代謝される。乳児の胃腸管におけるHMOの代謝は以前に研究されている。細菌は、細菌の属/種に応じて、2つの異なるクラスの機構によってHMOを代謝する。ビフィドバクテリウム・ロンガム亜種インファンティス(Bifidobacterium longum subsp infantis)は、HMOを、小さい断片に消化することなく、それらの天然形態で内在化し、次いで細胞内機構によってHMOを代謝する。このメカニズムによりB.インファンティスは、酢酸及び乳酸などの重要な代謝産物を乳幼児の胃腸管に放出する。かかる代謝産物は、微生物叢における他の細菌、例えばビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)の増殖に有益である。ビフィドバクテリウム・ビフィダムは、HMOを代謝する方法が非常に異なる。この細菌種は、実際に、細胞外機構を介してHMOを消化する酵素を放出し、したがって、乳児の胃腸管においてHMOを小断片に切断し、それにより、かかる小断片は、微生物叢における多様な細菌種全体にわたり消費可能となる。例えば、Sela et al.;Nursing our microbiota:molecular linkages between bifidoacteria and milk oligosaccharides;Trends Microbiol,2010,18(7):298-307は、HMOを代謝するために微生物叢の細菌によって使用される多様な機構を詳細に記載している。特に、図3A及び図3Bは、かかる機構を図示している。
改善された栄養組成物、特に、機能障害のある微生物叢を有する乳児及び幼児、例えば、人工栄養乳児及び更に早産児、帝王切開によって生まれた乳児、並びに抗菌治療を受けたか又は受けている乳児及び幼児などのための、より効率的及び/又は信頼性の高い栄養組成物を提供することが特に有利であろう。例えば、Chemikova et al.;The premature infant gut microbiome during the first 6 weeks of life differs based on gastrointestinal maturity at birth,Pediatric Research,2018,84:71-79は、早産児の微生物叢が正期産児と比較してどのように異なるかを示す(例えば、72頁の表1を参照されたい)。また、Korpela et al.;Early life colonization of the human gut:microbes matter everywhere;Current Opinion on Microbiology,2018,44:70-78は、乳児の微生物叢を評価する多くの研究のメタ分析を提供しており、出産から2歳の間の年齢の乳児、正期産の分娩により生まれた乳児(母乳で育てられた乳児及び人工乳で育てられた乳児)、帝王切開によって生まれた乳児、及び抗生物質投与を受けた乳児、の微生物叢に存在する5つの主要な属の量の範囲を抽出している。この刊行物は、帝王切開による乳児及び抗生物質投与を受けた乳児の微生物叢が、分娩により生まれた正期産児とは大幅に異なる微生物叢を有することを明らかにしている。
いくつかの刊行物はまた、母乳で育てられた乳児と、乳児用フォーミュラを与えられた乳児との間の微生物叢の比較により大幅な差を強調している。例えば、Lee et al.;Comparison of the gut microbiota profile in breast-fed and formula-fed Korean infants using pyrosequencing;Nutrition Research and Practice,2015,9(3):242-248を参照されたい。
母乳養育児の典型的な微生物叢は、HMOを代謝するのに特に効率的であることが知られている。全ての乳児及び幼児、特に、最適な方法でHMOを代謝することができない機能障害のある微生物叢を有する乳児及び幼児の健康に対する、栄養組成物の効果を更に改善することは有用であろう。乳児及び幼児、特に、機能障害のある微生物叢を有する乳児及び幼児において胃腸バリアを改善するための適切な方法を開発するニーズが明らかに存在する。
全ての個体、特に、全ての乳児及び幼児における胃腸バリアに対する栄養組成物の効果を更に最適化することは有用であろう。個体、特に、乳児及び幼児における胃腸バリアを改善するための適切な方法を開発するニーズが明らかに存在する。
また、古典的な薬学的介入を伴わない、若年又は脆弱な対象(健康が損なわれた対象、乳児及び幼児等)に特に好適である様式で、かかる健康上の利益を提供することに対するニーズも存在する。
副作用を誘導しない様式で、及び/又は送達が容易であり、親又は医療従事者によって十分に許容できる様式で、かかる健康上の利益をこれらの対象に提供することに対するニーズが存在する。
また、かかる利益を、かかる供給のコストを妥当なものに維持し、ほとんどを手頃な価格に維持できる様式で供給することに対するニーズも存在する。
したがって、少なくとも関連する副作用のリスクに鑑み、医薬品の使用などの古典的な薬学的介入以外の代替的な方法を開発することに対するニーズが存在することは明らかである。
[発明の概要]
本発明は、胃腸バリアの改善に使用するための3-ヒドロキシ酪酸を含む栄養組成物に関する。この効果は、腸上皮細胞モデルでのインビトロ試験の結果によって証明される。
3-ヒドロキシ酪酸は、HMO、すなわち2-フコシルラクトース(2’FL)の分解産物である。3-ヒドロキシ酪酸を、それが由来するHMOの代わりに有効成分として使用することが有利である。3-ヒドロキシ酪酸は、腸内細菌叢によるHMO、特に2-フコシルラクトース(2’FL)の代謝によって胃腸管で形成される。しかしながら、この生化学的プロセスによるHMOからの3-ヒドロキシ酪酸の形成速度は、多くのパラメータによって影響を受ける。3-ヒドロキシ酪酸を栄養組成物に直接添加することによって、対象の胃腸管に提供される3-ヒドロキシ酪酸の量をより正確に投与することが有利である。特に、胃腸管におけるHMOの代謝は、対象に存在する腸管内菌叢に非常に大きく依存し、したがって、HMO代謝産物が介するHMOの効果は、上記で説明したような菌叢の組成に非常に大きく依存する。したがって、腸管バリアを改善するのに有効な代謝産物の直接投与は、異常な又は異常でなくとも機能障害を有する腸管内菌叢を有する対象においても効果を得ることができるという点で有利である。
本発明者らは、組成物を摂取する個体が、腸管バリアに対するHMOの効果から利益を得ることができるようにHMOを代謝可能である微生物叢を有する必要がない、という点で有利である、改善された栄養組成物を見出した。言い換えれば、機能障害のある微生物叢を有する個体もまた、完全な利益を得ることができる。
かかる組成物は、機能障害のある微生物叢を有する対象、特に、乳児及び幼児、好ましくは、乳児であって、母乳を与えられている乳児の微生物叢と、好ましくは分娩により生まれた正期産児の微生物叢と似た乳児微生物叢を有しておらず、したがって最適でない様式でHMOを代謝するリスクがある乳児、に特に適している。かかる乳児及び幼児は、例えば、フォーミュラを与えられた乳児、帝王切開によって生まれた乳児、早産児、及び抗生物質投与を受けた乳児である。
したがって、本発明の目的は、バリア保護の改善、バリア構造の改善、バリア機能の改善、及び/又はバリア修復など、胃腸バリアを改善する栄養組成物に関する。胃腸バリアのかかる態様は、全て相互に関連している。適切な胃腸構造及び機能は、適切なバリア保護によって維持され、適切なバリア修復によって回復される。したがって、これらの態様のいずれかは、一緒に又は個々に考慮されて、疾患感受性の持続的低減に寄与する。
したがって、本発明の一態様は、対象、好ましくは乳児(すなわち、12ヶ月齢未満の小児)又は幼児(例えば1~8歳の小児)における胃腸バリアの改善に使用するための、3-ヒドロキシ酪酸を含む栄養組成物に関する。
本発明の好ましい実施形態では、胃腸バリアに対するかかる改善は、改善されたバリア保護、バリア構造及びバリア機能、好ましくはバリア保護である。
防止的上皮バリア保護を提供するHMO発酵生成物の有効性を示す。共培養物をHMOで処理し、次いでサイトカイン介在性炎症によって上皮バリア機能不全を誘導する。対照-ve(インタクトなバリア)を除く全ての群で、炎症を誘発させる。炎症誘発前に、対照-ve(100%保護)及び対照+ve(0%保護)と比較して経上皮電気抵抗(TEER)の展開(evolution)を分析して保護率を計算する。エラーバーは、LSD5%/2を表す。A)2日間の給餌。B)21日間の給餌。 防止的上皮バリア保護を提供するHMO発酵生成物の有効性を示す。共培養物をHMOで処理し、次いでサイトカイン介在性炎症によって上皮バリア機能不全を誘導する。対照-ve(インタクトなバリア)を除く全ての群で、炎症を誘発させる。炎症誘発前に、対照-ve(100%保護)及び対照+ve(0%保護)と比較して経上皮電気抵抗(TEER)の展開(evolution)を分析して保護率を計算する。エラーバーは、LSD5%/2を表す。A)2日間の給餌。B)21日間の給餌。 炎症誘導性上皮バリア機能不全に対する抵抗性を誘導するHMO発酵産物の有効性を示す。共培養物をHMOで処理し、次いでサイトカイン介在性炎症によって上皮バリア機能不全を誘導する対照-ve(インタクトなバリア)を除く全ての群で、炎症を誘発させる。ラグ時間は、炎症の誘導後に経上皮電気抵抗(TEER)が対照-ve(インタクトなバリア)未満に低減するのにかかる時間として計算する。エラーバーは、LSD5%/2を表す。A)2日間の給餌。B)21日間の給餌。 炎症誘導性上皮バリア機能不全に対する抵抗性を誘導するHMO発酵産物の有効性を示す。共培養物をHMOで処理し、次いでサイトカイン介在性炎症によって上皮バリア機能不全を誘導する対照-ve(インタクトなバリア)を除く全ての群で、炎症を誘発させる。ラグ時間は、炎症の誘導後に経上皮電気抵抗(TEER)が対照-ve(インタクトなバリア)未満に低減するのにかかる時間として計算する。エラーバーは、LSD5%/2を表す。A)2日間の給餌。B)21日間の給餌。 炎症誘導性上皮バリア機能不全に対する感受性を制限するHMO発酵産物の有効性を示す。共培養物をHMOで処理し、次いでサイトカイン介在性炎症によって上皮バリア機能不全を誘導する。対照-ve(インタクトなバリア)を除く全ての群で、炎症を誘発させる。グラフは、炎症誘発中の経上皮電気抵抗(TEER)のメジアンを表す。エラーバーは、LSD5%/2を表す。A)2日間の給餌。B)21日間の給餌。 炎症誘導性上皮バリア機能不全に対する感受性を制限するHMO発酵産物の有効性を示す。共培養物をHMOで処理し、次いでサイトカイン介在性炎症によって上皮バリア機能不全を誘導する。対照-ve(インタクトなバリア)を除く全ての群で、炎症を誘発させる。グラフは、炎症誘発中の経上皮電気抵抗(TEER)のメジアンを表す。エラーバーは、LSD5%/2を表す。A)2日間の給餌。B)21日間の給餌。 炎症誘導性上皮バリア機能不全の症状の重症度を低減するHMO発酵産物の有効性を示す。共培養物をHMOで処理し、次いでサイトカイン介在性炎症によって上皮バリア機能不全を誘導する。対照-ve(インタクトなバリア)を除く全ての群で、炎症を誘発させる。グラフは、炎症誘発の終了時の最終の経上皮電気抵抗(TEER)を表す。エラーバーは、LSD5%/2を表す。A)2日間の給餌。B)21日間の給餌。 炎症誘導性上皮バリア機能不全の症状の重症度を低減するHMO発酵産物の有効性を示す。共培養物をHMOで処理し、次いでサイトカイン介在性炎症によって上皮バリア機能不全を誘導する。対照-ve(インタクトなバリア)を除く全ての群で、炎症を誘発させる。グラフは、炎症誘発の終了時の最終の経上皮電気抵抗(TEER)を表す。エラーバーは、LSD5%/2を表す。A)2日間の給餌。B)21日間の給餌。 炎症誘導性上皮バリア機能不全の症状の重症度を低減するHMO発酵産物の有効性を示す。共培養物をHMOで処理し、次いでサイトカイン介在性炎症によって上皮バリア機能不全を誘導する。対照-ve(インタクトなバリア)を除く全ての群で、炎症を誘発させる。 炎症誘発後に、FITC標識デキストラン(FD4)の頂端膜側コンパートメントから基底膜側コンパートメントへの透過を、対照+ve(値を100に設定し、バリア機能不全を表す)と比較して分析することによって、上皮バリアの完全性を計算する。バーは平均値を表し、間隔は平均+/-LSD5%/2を表す。 A)2日間の給餌。B)21日間の給餌。 炎症誘導性上皮バリア機能不全の症状の重症度を低減するHMO発酵産物の有効性を示す。共培養物をHMOで処理し、次いでサイトカイン介在性炎症によって上皮バリア機能不全を誘導する。対照-ve(インタクトなバリア)を除く全ての群で、炎症を誘発させる。 炎症誘発後に、FITC標識デキストラン(FD4)の頂端膜側コンパートメントから基底膜側コンパートメントへの透過を、対照+ve(値を100に設定し、バリア機能不全を表す)と比較して分析することによって、上皮バリアの完全性を計算する。バーは平均値を表し、間隔は平均+/-LSD5%/2を表す。 A)2日間の給餌。B)21日間の給餌。 炎症誘導性上皮バリア機能不全を低減する3-ヒドロキシ酪酸の有効性を示す。共培養物を3-ヒドロキシ酪酸で処理し、次いでサイトカイン介在性炎症によって上皮バリア機能不全を誘導する。対照-ve(インタクトなバリア)を除く全ての群で、炎症を誘発させる。炎症誘発後に、FITC標識デキストラン(FD4)の頂端膜側コンパートメントから基底膜側コンパートメントへの透過を、対照+ve(値を100に設定し、バリア機能不全を表す)と比較して分析することによって、上皮バリアの完全性を計算する。バーは平均値を表し、間隔は平均+/-標準誤差(SE)を表す。P値は、不等分散を仮定した両側2標本のスチューデントt検定によって得た。
以下に本発明をより詳細に説明する。
定義
本発明を更に詳細に議論する前に、以下の用語及び一般技術常識を最初に定義する。
「3-ヒドロキシ酪酸」という用語は、CAS登録番号CAS 300-85-6を有する化合物を指す。
用語「乳児」は、月齢12カ月未満(<12カ月齢)の小児を指す。「小児」という表現は、幼児とも呼ばれる、1~8歳(≧1歳~<3歳)の小児を意味する。「小児」という表現は、3~8歳未満(≧3歳から<8歳)の小児を意味する。
「帝王切開によって生まれた乳児又は幼児」は、帝王切開によって出産された乳児又は幼児を意味する。この用語は、乳児又は幼児が経膣出産されなかったことを意味する。
「分娩により生まれた乳児又は幼児」は、経膣出産され、帝王切開によっては出産されなかった乳児又は幼児を意味する。
「早産」又は「未熟」は、満期分娩でない乳児又は幼児を意味する。一般的に、妊娠37週目より前に生まれた乳児又は幼児を指す。
「低出生時体重児」は、早産又は制限された胎児発育のいずれかのために、2500g(5.5ポンド)未満の体重を有する新生児を意味する。したがって、
出生時体重が1500~2500gである/であった、乳児又は幼児(通常、「低出生体重」又はLBWと呼ばれる)。
出生時体重が1000~1500gである/であった、乳児又は幼児(「極低出生体重」又はVLBWと呼ばれる)。
出生時体重が1000g未満である/であった、乳児又は幼児(「超低出生体重」又はELBWと呼ばれる)を包含する。
「在胎不当過小(SGA)児」は、同じ在胎齢の乳児の第10パーセンタイル未満の出生時体重を有する乳児を意味する。
表現「栄養組成物」は、対象に栄養を与える組成物を意味する。この栄養組成物は、通常、経口で摂取され、通常、脂質源又は脂肪源及びタンパク質源を含む。
特定の実施形態では、本発明の栄養組成物は、低アレルギー性栄養組成物である。「低アレルギー性栄養組成物」という表現は、アレルギー反応を引き起こす可能性が低い栄養組成物を意味する。
特定の実施形態では、本発明の組成物は、「合成栄養組成物」である。「合成栄養組成物」という表現は、化学的及び/又は生物学的手段によって得られる混合物を意味し、これは、哺乳動物の乳汁中に天然に存在する混合物と化学的に同一とすることができる(すなわち、合成組成物は母乳ではない)。
本明細書で使用するとき、表現「乳児用フォーミュラ」は、出生後1ケ月の間の乳児の特定の栄養補給用途を意図する食品であって、当該食品そのものによって、このカテゴリーに該当する乳児の栄養要件(乳児用フォーミュラ及びフォローオンフォーミュラに対する、Article 2(c)of the European Commission Directive 91/321/EEC 2006/141/EC of 22 December 2006)を満たす、食品を指す。これは、乳児を対象とし、Codex Alimentarius(Codex STAN72-1981)で定義されているような栄養組成物、及び乳児用特別食(特別な医療目的用の食品を含む)も指す。「乳児用フォーミュラ」という表現は、「乳児用スターターフォーミュラ」及び「フォローアップフォーミュラ」又は「フォローオンフォーミュラ」の両方を包含する。
「フォローアップフォーミュラ」又は「フォローオンフォーミュラ」は、6か月目以降に与えられる。かかるフォーミュラは、このカテゴリーに該当する乳児の、次第に多様となっていく食生活において主要な液体要素を構成する。
「乳児食」という表現は、乳児又は幼児による、生後1年間の特定の栄養用途を目的とする食品を意味する。
「乳児用穀物組成物」という表現は、乳児又は幼児による、生後1年間の特定の栄養用途を目的とする、食品を意味する。
「グローイングアップミルク(growing-up milk)」(又はGUM)という表現は、幼児又は小児を対象とする、一般にビタミン及びミネラルが添加された乳飲料を指す。
用語「強化剤」は、母乳又は乳児用フォーミュラと混合するのに好適な、液体又は固体栄養組成物を指す。
「離乳期」という表現は、乳児又は幼児の食事において母乳が他の食物によって置き換えられる期間を意味する。
「生存の日数/週数/月数/年数」及び「生後の日齢/週齢/月齢/年齢」という表現は、互換的に使用することができる。
「腸管バリアの改善」という表現には、以下のうちの1つ又はいくつかが包まれ得る:
バリア修復の改善、(限定するものではないが)例えば胃腸管バリアの完全性の回復、例えば破壊されたバリアの修復、胃腸粘膜に炎症が誘発されたときの透過性の低減、及び粘膜の修復。
バリア構造の改善、(限定するものではないが)例えば胃腸バリア、胃腸バリアの完全性、密着結合構造、及び腸上皮内層の完全性の、強化。
バリア機能の改善、例えば、胃腸バリア耐性の改善、胃腸バリア透過性の低減、例えば、腸内バリアを通って腸内から移動する病原体の低減、例えば、腸内バリアを通って腸内から移動する共生細菌の低減、腸内バリアを通って腸内から移動するアレルゲンの低減、腸内バリアを通って腸内から移動する毒性化合物の低減、及び疾患感受性の低減。
バリア保護の改善、(限定するものではないが)例えばバリアの機能不全の防止、バリアからの漏出の防止、密着結合構造の保護、腸上皮内層の完全性の保護。
「母乳」は、母乳又は母親の初乳として理解されるべきである。
オリゴ糖は、少数の(典型的に3~10個の)単糖(モノサッカライド)を含むポリマーである。
「HMO」又は「HMO(複数)」又は「HMOの」という用語は、ヒト母乳オリゴ糖を指す。これらの炭水化物は、酵素加水分解に非常に耐性があり、このことは、HMOがカロリー値とは直接関係のない重要な機能を示し得ることを示唆している。特に、免疫系の成熟など、乳幼児の早期発達に不可欠な役割を果たすことが示されている。ヒト母乳には多くの種類のHMOが見出される。各個々のオリゴ糖は、グルコース、ガラクトース、シアル酸(N-アセチルノイラミン酸)、フコース、及び/又はN-アセチルグルコサミンの組み合わせをベースに、それらの間に多種多様な結合を有するため、ヒト母乳中の異なるオリゴ糖は非常に多くなり、これまでに130を超えるそのような構造が特定されている。これらのオリゴ糖のほとんど全ては還元末端にラクトース残基を有し、非還元末端の末端位置にはシアル酸及び/又はフコース(存在する場合)が占める。HMOは、酸性(例えば、荷電シアル酸含有オリゴ糖)又は中性(例えば、フコシル化オリゴ糖)であり得る。
「フコシル化オリゴ糖」とは、フコース残基を有するオリゴ糖である。かかるオリゴ糖は中性の性質を有する。いくつかの例は、2-FL(2’-フコシルラクトース)、3-FL(3-フコシルラクトース)、ジフコシルラクトース、ラクト-N-フコペンタオース(例えば、ラクト-N-フコペンタオースI、ラクト-N-フコペンタオースII、ラクト-N-フコペンタオースIII、ラクト-N-フコペンタオースV)、ラクト-N-フコヘキサオース、ラクト-N-ジフコヘキサオースI、フコシルラクト-N-ヘキサオース、フコシルラクト-N-ネオヘキサオース、ジフコシルラクト-N-ヘキサオースI、ジフコシルラクト-N-ネオヘキサオースII及びそれらの任意の組み合わせである。理論に束縛されるものではないが、フコシル化オリゴ糖のフコシル-エピトープは、粘膜表面でデコイとして作用し得ると考えられる。競合効果によって、かかるエピトープは、感染の原因である病原体(ウイルス又は細菌起源の)又はそれらの分泌成分(例えば毒素)の作用を、特に天然リガンドへのそれらの結合を回避することによって、防止及び/又は制限し得、したがって、理論に束縛されるものではないが、感染/炎症のリスク、特にLRT/耳感染及び/又は炎症のリスクを低減すると考えられる。更に、フコシル化オリゴ糖は、特定の共生微生物の増殖及び代謝活性を増強し、炎症反応を低減し、病原体にとって好ましくない環境を作り出し、したがってコロニー形成耐性をもたらすと考えられる。
「2’-フコシルエピトープを含むフコシル化オリゴ糖」及び「2’-フコシル化オリゴ糖」という表現は、それらが2’-フコシルエピトープを含有するため特定の形態上の相同性を有し、それにより、特定の機能上の相同性が予想され得る、フコシル化オリゴ糖を包含する。理論に束縛されるものではないが、これらのフコシル化オリゴ糖の2’-フコシルエピトープは、LRT及び/又は耳感染症に関与する病原体(又はそれらの分泌成分)に特に特異的であると考えられる。
「N-アセチル化オリゴ糖」という表現は、「N-アセチル-ラクトサミン」及び「N-アセチル-ラクトサミンを含有するオリゴ糖」の両方を包含する。これらは、N-アセチル-ラクトサミン残基を有する中性オリゴ糖である。適切な例は、LNT(ラクト-N-テトラオース)、パラ-ラクト-N-ネオヘキサオース(パラ-LNnH)、LNnT(ラクト-N-ネオテトラオース)及びそれらの任意の組み合わせである。他の例は、ラクト-N-ヘキサオース、ラクト-N-ネオヘキサオース、パララクト-N-ヘキサオース、パラ-ラクト-N-ネオヘキサオース、ラクト-N-オクタオース、ラクト-N-ネオオクタオース、イソラクト-N-オクタオース、パララクト-N-オクタオース及びラクト-N-デカオースである。
「少なくとも1つのフコシル化オリゴ糖」及び「少なくとも1つのN-アセチル化オリゴ糖」という表現は、「少なくとも1つのタイプのフコシル化オリゴ糖」及び「少なくとも1つのタイプのN-アセチル化オリゴ糖」を意味する。
「HMOの前駆体」は、シアル酸及び/又はフコースなどの、HMOの製造に介入する重要な化合物である。
「シアル化オリゴ糖」は、荷電シアル酸含有オリゴ糖、すなわち、シアル酸残基を有するオリゴ糖である。それは酸性の性質を有する。いくつかの例は、3-SL(3’シアリルラクトース)及び6-SL(6’シアリルラクトース)である。
本発明の栄養組成物は、固体形態(例えば、粉末)又は液体形態であり得る。様々な成分(例えばオリゴ糖)の量は、それが固体形態、例えば粉末である場合、乾燥重量基準で組成物のg/100gで表すことができ、又はそれが液体形態を指す場合、組成物のg/Lでの濃度として表すことができる(後者はまた、乳、水のような液体中での再構成後に粉末から得ることができる液体組成物、例えば再構成された乳児用フォーミュラ又はフォローアップ/フォローアップフォーミュラ又はグローイングアップミルク又は乳児用シリアル製品又は乳幼児期栄養のために設計された任意の他の処方を包含する)。
用語「プレバイオティクス」は、ヒトの結腸における健康な細菌の増殖及び/又は活性を選択的に刺激することによって宿主に有益に影響する難消化性炭水化物を意味する(Gibson GR,Roberfroid MB.Dietary modulation of the human colonic microbiota:introducing the concept of prebiotics.J Nutr.1995;125:1401-12)。
用語「プロバイオティクス」は、宿主の健康又は生活の質に有益に働く微生物細胞の調製物又は微生物細胞の成分を意味する。(Salminen S,Ouwehand A.Benno Y.et al.「Probiotics:how should they be defined」Trends Food Sci.Technol.1999:10 107-10)。微生物細胞は、広義には細菌又は酵母である。
用語「cfu」は、コロニー形成単位として理解されるべきである。
全てのパーセント(%)は、特に明記しない限り、重量を基準とする。
加えて、本発明の文脈では、用語「含む(comprising)」又は「含む(comprises)」は、他の可能な要素を除外するものではない。本明細書に記載の多くの実施形態を含む本発明の組成物は、本明細書に記載の必須成分及び本発明の制限に加え、あるいは、必要性に応じて、本明細書に記載の任意の追加の若しくは任意選択的な成分、構成成分、又は制限を含む、これらからなる)、又は本質的にこれらからなることができる。
本明細書における先行技術文献のいかなる参照も、かかる先行技術が周知であること、又は当分野で共通の全般的な認識の一部を形成していることを認めるものとみなされるべきではない。
本発明について、以下に更に詳細に記載する。本願に記載される種々の態様、特徴、実施例及び実施形態は、互換性があること、及び/又は共に組み合わせることができることに留意されたい。
栄養組成物
実施例の節に開示されるように、3-ヒドロキシ酪酸は、胃腸バリアを改善するのに有効であることが見出されている。したがって、本発明の一態様は、対象における胃腸バリアの改善に使用するための3-ヒドロキシ酪酸を含む栄養組成物に関する。好ましい態様では、対象は、乳児(12ヶ月未満の小児)又は幼児(1歳~3歳未満)である。別の好ましい態様において、栄養組成物は、グローイングアップミルクであり、対象は小児(3歳~8歳未満)である。
一実施形態では、かかる胃腸バリアの改善は、バリア構造の改善、バリア機能の改善、バリア保護の改善及び/又はバリア修復の改善である。
別の実施形態では、かかる胃腸バリアの改善は、バリア機能の改善、バリア構造の改善、及び/又はバリア保護の改善である。
更なる実施形態では、かかる胃腸バリアの改善は、バリア保護の改善である。
更に別の実施形態では、かかる使用は、バリア機能不全の防止、バリア漏出の防止、密着結合構造の保護、及び腸上皮内層の完全性の保護を改善するためのものである。更なる実施形態では、かかるバリア漏出の防止は、病原体、アレルゲン及び/又は毒性化合物の、消化管から腸バリアを通って体内に透過することの防止である。
胃腸バリアが適切な保護を欠く場合、すなわち炎症チャレンジの際に、その最適な構造及び機能を失うため、胃腸バリアは、改善された胃腸バリア構造及び機能をもたらす。
したがって、一実施形態では、かかる使用は、胃腸バリアの強度、胃腸バリアの完全性、密着結合構造、及び腸上皮内層の完全性を改善するためのものである。
別の実施形態では、かかる使用は、胃腸バリア耐性を改善するため、及び胃腸バリア透過性を低減させるためである。好ましくは、かかる使用は、腸内バリアを通って腸内から移動する共生細菌の低減などの、腸内バリアを通って腸内から移動する病原体の低減、腸内バリアを通って腸内から移動するアレルゲンの低減、腸内バリアを通って腸内から移動する毒性化合物の低減、及び疾患感受性の低減のためのものである。
上記で概説した効果/利益は、好ましくは小腸で得られる。
更なる実施形態では、栄養組成物は、乳児への投与のために処方される。別の実施形態では、かかる乳児は、未熟児、在胎不当過小児、及び低出生体重児からなる群から選択され、好ましくは乳児は未熟児である。本発明による栄養組成物は、これらのタイプの乳児に特に有用であると考えられ、その理由は、バリアが健康な正期産児よりも成熟しておらず、透過性が高いため、記載された利益が「通常の」乳児よりもこれらの乳児にとってより重要であるからである。
いくつかの実施形態では、3-ヒドロキシ酪酸は、組成物の0.01mg/L~10g/L、例えば、組成物の0.1mg/L~1g/L、又は0.5mg/L~500mg/Lの量であり得る。特定の実施形態では、3-ヒドロキシ酪酸は、組成物の1mg/Lの量である。かかる濃度は、典型的には、栄養組成物が、タンパク質、脂肪及び炭水化物などの多様な栄養素を含む完全な栄養の形態である場合に使用される。別の特定の実施形態では、3-ヒドロキシ酪酸は、組成物の0.3mg/L~300g/L、例えば、組成物の3mg/L~30g/L又は15mg/L~15g/Lの量である。特定の実施形態では、3-ヒドロキシ酪酸は、組成物の33mg/Lの量である。かかる濃度は、典型的には、栄養組成物が栄養サプリメント又は強化剤の形態である場合に使用される。
いくつかの実施形態では、3-ヒドロキシ酪酸は、乾燥重量基準で組成物の0.007mg/100g~7g/100g、例えば、乾燥重量基準で組成物の0.07mg/100g~0.7g/100g又は0.3mg/100g~0.4g/100gの量であり得る。特定の実施形態では、3-ヒドロキシ酪酸は、乾燥重量基準で組成物100g当たり1mgの量である。かかる濃度は、典型的には、栄養組成物が、タンパク質、脂肪及び炭水化物などの多様な栄養素を含む完全な栄養の形態である場合に使用される。
別の特定の実施形態では、3-ヒドロキシ酪酸は、1回分当たり0.003mg~3g、例えば1回分当たり0.03mg~0.3g又は0.15mg~0.15gの量である。特定の実施形態では、3-ヒドロキシ酪酸は、1回分当たり0.3mgの量である。かかる濃度は、好ましくは、栄養組成物が栄養サプリメント又は強化剤の形態である場合に使用される。
特定の実施形態では、3-ヒドロキシ酪酸は、栄養組成物の通常の摂取により、1日あたり0.006mg~6g、例えば0.06mg~0.6g又は0.3mg~0.3gの総1日用量が、該組成物を摂取する対象、好ましくは乳児又は幼児、それぞれそれを摂取する小児に提供されるような量で、本発明の栄養組成物中に提供される。最小量の3-ヒドロキシ酪酸が、測定可能な方法で所望の効果を有するために必要であると考えられる。
本発明による栄養組成物は、通常、炭水化物源を含有する。ラクトース、スクロース、サッカロース、マルトデキストリン、デンプン、又はそれらの混合物などのあらゆる炭水化物が使用できるが、好ましい炭水化物源の1つはラクトースである。
本発明による栄養組成物はまた、オリゴ糖を含有し得る。好ましくは、組成物は、オリゴ糖(すなわち、上述のヒト母乳オリゴ糖以外)及び/又は少なくとも繊維及び/又は少なくともそれらの前駆体を含む。他のオリゴ糖及び/又は繊維及び/又はそれらの前駆体は、ガラクトオリゴ糖(GOS)、フルクトオリゴ糖(FOS)、イヌリン、キシロオリゴ糖(XOS)、ポリデキストロース、ヒト母乳オリゴ糖(定義の項で定義される)、ウシ乳オリゴ糖及びそれらの任意の組み合わせを含むリストから選択され得る。それらの成分は通常、組成物の0~10重量%の量であり得る。
本発明の組成物の調製に使用することができる好適な市販製品としては、FOSとイヌリンの組み合わせ、例えば、商標OraftiでBENEOにより販売されている製品、又は商標STA-LITE(登録商標)でTate&Lyleにより販売されているポリデキストロースが挙げられる。
本発明による栄養組成物はまた、任意選択で、オリゴ糖の少なくとも1つの前駆体を含んでもよい。オリゴ糖の1つ又はいくつかの前駆体が存在し得る。例えば、ヒト母乳オリゴ糖の前駆体は、シアル酸、フコース又はそれらの混合物である。いくつかの実施形態では、組成物はシアル酸を含む。
特定の例において、栄養組成物は、0~3g/Lのオリゴ糖の前駆体、又は0~2g/L若しくは0~1g/L若しくは0~0.7g/L若しくは0~0.5g/L若しくは0~0.3g/L若しくは0~0.2g/Lのオリゴ糖の前駆体を含む。本発明による組成物は、乾燥重量基準で組成物100g当たり0~2.1gのオリゴ糖の前駆体(複数可)、例えば、乾燥重量基準で組成物100g当たり0~1.5g又は0~0.8g又は0~0.15gのオリゴ糖の前駆体(複数可)を含有することができる。
本発明の栄養組成物は、プロバイオティクス菌株等の少なくとも1種のプロバイオティクス(又はプロバイオティクス株)を更に含むことができる。
最も一般的に使用されるプロバイオティク微生物は、主として、以下の属の細菌及び酵母である:ラクトバシラス属(Lactobacillus spp.)、レンサ球菌属(Streptococcus spp.)、エンテロコッカス属(Enterococcus spp.)、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium spp.)、及びサッカロマイセス属(Saccharomyces spp.)。
いくつかの特定の実施形態において、プロバイオティクスは、プロバイオティクス菌株である。いくつかの特定の実施形態では、これは特にビフィドバクテリウム属(Bifidobacteria)及び/又は乳酸菌(Lactobacilli)である。
好適なプロバイオティック細菌株としては、Valio Oy(フィンランド)からLGGの商標で入手可能なラクトバチルス・ラムノーサス(Lactobacillus rhamnosus)ATCC 53103、ラクトバチルス・ラムノーサスCGMCC 1.3724、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)CNCM I-2116、ラクトバチルス・ジョンソニイ(Lactobacillus johnsonii)CNCM I-1225、BLIS Technologies Limited(ニュージーランド)からKI2の表記で販売されているストレプトコッカス・サリバリウス(Streptococcus salivarius)DSM 13084、なかでもChristian Hansen company(デンマーク)からBb 12の商標で販売されているビフィドバクテリウム・ラクチス(Bifidobacterium lactis)CNCM 1-3446、森永乳業株式会社(日本)からBB536の商標で販売されているビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)ATCC BAA-999、DaniscoからBb-03の商標で販売されているビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve)、森永からM-16Vの商標で販売されているビフィドバクテリウム・ブレーベ、Procter&GambIe Co.からBifantisの商標で販売されているビフィドバクテリウム・インファンティス(Bifidobacterium infantis)、及びInstitut Rosell(Lallemand)からR0070の商標で販売されているビフィドバクテリウム・ブレーベが挙げられる。
本発明による栄養組成物は、乾燥重量基準で、組成物1g当たり10E3~10E12cfuのプロバイオティクス株、より好ましくは10E7~10E12cfu、例えば10E8~10E10cfuのプロバイオティクス株を含み得る。
一実施形態では、プロバイオティクスは生菌である。別の実施形態では、プロバイオティクスは複製しないか又は不活性化される。いくつかの他の実施形態では、生存可能なプロバイオティクス及び不活性化したプロバイオティクスの両方が存在していてもよい。プロバイオティック成分及び代謝産物を添加することもできる。
一実施形態では、本発明の栄養組成物は、完全な栄養組成物(対象の栄養要求の全て又は大部分を満たす)である。別の実施形態では、栄養組成物は、例えばヒト母乳を補うこと、又は乳児用フォーミュラ若しくはフォローオン/フォローアップフォーミュラを補うことを意図したサプリメント又は強化剤である。
いくつかの特定の実施形態では、本発明の組成物は、生後4ヶ月、6ヶ月又は12ヶ月を対象とし得る乳児用フォーミュラ、強化剤又はサプリメントである。好ましい実施形態では、本発明の栄養組成物は、乳児用フォーミュラである。実際に、本発明の栄養的介入は、生涯のうちの初期の段階(例えば、生後1ヶ月齢、4ヶ月齢、6ヶ月齢、12ヶ月齢)で行われた場合に最も有効であり得ると考えられる。
本発明による栄養組成物は、例えば、乳児用フォーミュラ、乳児用スターターフォーミュラ、フォローオンフォーミュラ若しくはフォローアップフォーミュラ、グローイングアップミルク、ベビーフード、乳児用シリアル組成物、又はヒト母乳強化剤などの強化剤、サプリメント、ヘルスケア製品、医療用食品、経管栄養組成物又は動物用食品とすることができる。
いくつかの特定の実施形態では、本発明の組成物は、最初の4ヶ月齢又は6ヶ月齢を対象とし得る乳児用フォーミュラ、強化剤又はサプリメントである。好ましい実施形態では、本発明の栄養組成物は、乳児用フォーミュラである。
いくつかの実施形態では、本発明の栄養組成物は、強化剤である。強化剤は、母乳強化剤(例えば、ヒト母乳強化剤)又は乳児用フォーミュラ強化剤若しくはフォローオン/フォローアップフォーミュラ強化剤などの、フォーミュラ強化剤とすることができる。
栄養組成物がサプリメントである場合、単位用量の形態で提供することができる。かかる場合、3-ヒドロキシ酪酸の量を、上記のような乳児又は幼児に投与されるべき期間又は1日用量に関して規定することが特に有用である。
本発明の栄養組成物は、固体(例えば、粉末)、液体、又はゼラチン状の形態とすることができる。
特定の実施形態では、栄養組成物は、粉末形態のサプリメントであって、サシェ、錠剤、カプセル、トローチの形態で、又は、母乳若しくは栄養組成物中に滴剤として分配される液体などの液体の形態で、又は乳児若しくは幼児の口に直接提供される。
別の実施形態では、サプリメントは、担体、保護親水コロイド(ガム、タンパク質、加工デンプンなど)、結合剤、皮膜形成剤、カプセル化剤/材料、壁/シェル材料、マトリックス化合物、コーティング、乳化剤、表面活性剤、可溶化剤(油、脂肪、ワックス、レシチンなど)、吸着剤、担体、充填剤、共化合物、分散剤、湿潤剤、加工助剤(溶媒)、流動剤、味覚マスキング剤、増量剤、ゼリー化剤、及びゲル形成剤を更に含有し得る。かかるサプリメントはまた、従来の医薬添加剤及び補助剤、添加物、及び希釈剤を含有してもよく、これには、水、任意の由来のゼラチン、植物ガム、リグニンスルホネート、タルク、糖、デンプン、アラビアガム、植物油、ポリアルキレングリコール、風味剤、防腐剤、安定剤、乳化剤、緩衝液、潤滑剤、着色剤、湿潤剤、充填剤などが挙げられるが、これらに限定されない。サプリメントが粉末形態である場合、それは担体を含み得る。しかしながら、サプリメントは、担体を含まないことが好ましい。サプリメントがシロップの形態である場合、HMOは、好ましくはクエン酸塩で酸性化された水に溶解又は懸濁される。
更に、サプリメントは、USRDAなどの政府機関の推奨に従って、ビタミン、ミネラル微量元素及び他の微量栄養素を含有し得る。
本発明の栄養組成物は、固体(例えば、粉末)、液体、又はゼラチン状の形態とすることができる。特定の実施形態では、栄養組成物は、3-ヒドロキシ酪酸を含むサプリメントであり、サプリメントは、粉末形態であり、サシェで提供されるか、又はシロップの、好ましくは総固体濃度5~75g/100mL(5~75%(w/v))のシロップの形態で提供される。サプリメントが粉末形態である場合、それは担体を含み得る。しかしながら、サプリメントは、担体を含まないことが好ましい。サプリメントがシロップの形態である場合、3-ヒドロキシ酪酸は、好ましくはクエン酸塩で酸性化された水に溶解又は懸濁される。
本発明の栄養組成物は、通常、タンパク質源を含有する。タンパク質は、1.6~3g/100kcalの量とすることができる。いくつかの実施形態では、特に組成物が未熟児を対象とするものである場合、タンパク質量は、2.4~4g/100kcal、又は3.6g超/100kcalとすることができる。いくつかの他の実施形態では、タンパク質量は、2.0g未満/100kcal、例えば1.8~2g/100kcal、又は1.8g未満/100kcalの量であってもよい。
必須アミノ酸含有量に関する最小要件が満たされ、満足な成長が保証されるならば、タンパク質の種類は本発明において重要度が高いものとは考えられない。したがって、大豆をベースとしたタンパク質源のみでなく、ホエイ、カゼイン、及びこれらの混合物をベースとしたタンパク質源を使用してもよい。ホエイタンパク質に関して言えば、タンパク質源は酸性ホエイ若しくは甘性ホエイ又はこれらの混合物をベースとしたものであってよく、任意の所望の割合でα-ラクトアルブミン及びβ-ラクトグロブリンを含有し得る。
いくつかの実施形態では、主たるタンパク質源はホエイである(すなわち、50%超、例えば60%超又は70%超のタンパク質が、ホエイタンパク質由来である)。
タンパク質は、インタクトなタンパク質若しくは加水分解されたタンパク質、又はインタクトなタンパク質と加水分解されたタンパク質との混合物であってもよい。用語「インタクト」とは、タンパク質の主要部分がインタクトであること、すなわち、分子構造が変化していないこと、例えば、タンパク質の少なくとも80%が変化していないこと、例えば、タンパク質の少なくとも85%が変化していないこと、好ましくは、タンパク質の少なくとも90%が変化していないこと、更により好ましくは、タンパク質の少なくとも95%が変化していないこと、例えば、タンパク質の少なくとも98%が変化していないことを意味する。特定の実施形態では、タンパク質は全く変化していない。
用語「加水分解された」とは、本発明の文脈において、タンパク質が加水分解されていること、又はその構成要素であるアミノ酸へと分解されていることを意味する。タンパク質は、完全に加水分解されたもの、又は部分的に加水分解されたもののいずれであってもよい。例えば、牛乳アレルギーを発症するリスクがあると考えられている乳児又は幼児に対しては、部分的に加水分解されたタンパク質(加水分解度は2~20%)を供給するのが望ましい場合がある。加水分解されたタンパク質が必要である場合、加水分解プロセスを、所望に応じて、当該技術分野において既知のように行うことができる。例えば、ホエイタンパク質の加水分解物は、1つ以上のステップでホエイ画分を酵素により加水分解することにより調製することができる。出発物質として使用されたホエイ画分が実質的にラクトースを含まないものである場合、加水分解プロセス中にタンパク質が受けるリジンブロック(lysine blackage)が大幅に少なくなることが判明している。これにより、リジンブロックの程度を約15重量%の全リジンから、約10重量%未満のリジンにまで低減することができ、例えば、約7重量%のリジンにより、タンパク質源の栄養価は大幅に改善される。
本発明の一実施形態では、タンパク質の少なくとも70%が加水分解され、好ましくはタンパク質の少なくとも80%が加水分解され、例えばタンパク質の少なくとも85%が加水分解され、更により好ましくはタンパク質の少なくとも90%が加水分解され、例えばタンパク質の少なくとも95%が加水分解され、特にタンパク質の少なくとも98%が加水分解される。特定の実施形態では、タンパク質の100%が加水分解される。
特定の一実施形態では、栄養組成物のタンパク質は加水分解され、完全に加水分解され、又は部分的に加水分解される。タンパク質の加水分解度(DH)は、8~40、又は20~60、又は20~80、又は10超、20超、40超、60超、80超、又は90超とすることができる。
あるいは、タンパク質成分は、例えば早産又は低出生体重児のために、混合物又は合成アミノ酸によって置き換えることができる。
特定の実施形態では、本発明による栄養組成物は、低アレルギー性組成物である。別の特定の実施形態では、本発明による組成物は、低アレルギー性栄養組成物である。
本発明による栄養組成物は、一般に脂質源を含有する。本発明の栄養組成物が乳児用フォーミュラである場合、これは特に適切である。この場合、脂質源は、任意の脂質又は脂肪、好ましくは乳児用フォーミュラでの使用に好適な供給源であり得る。いくつかの好適な脂肪源としては、パーム油、構造化トリグリセリド油、高オレイン酸ヒマワリ油及び高オレイン酸ベニバナ油、中鎖トリグリセリド油が挙げられる。また必須脂肪酸のリノール酸及びα-リノレン酸を添加してもよく、また、プレフォームアラキドン酸及びドコサヘキサエン酸を多く含有する魚油又は微生物油などの、少量の油を添加してもよい。脂肪源は、約5:1~約15:1、例えば約8:1~約10:1のn-6脂肪酸対n-3脂肪酸の比を有し得る。
本発明の栄養組成物はまた、毎日の食生活において及び栄養上相当の量で必須であると理解されている全てのビタミン及びミネラルを含有してもよい。特定のビタミン及びミネラルに関しては、最小必要量が確立されている。本発明の組成物中に任意選択的に存在させるミネラル、ビタミン、及びその他の栄養素の例としては、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンC、ビタミンD、葉酸、イノシトール、ナイアシン、ビオチン、パントテン酸、コリン、カルシウム、リン、ヨウ素、鉄、マグネシウム、銅、亜鉛、マンガン、塩素、カリウム、ナトリウム、セレン、クロム、モリブデン、タウリン及びL-カルニチンが挙げられる。ミネラルは、通常、塩形態で添加される。特定のミネラル及び他のビタミンの存在及び量は、対象とする集団に応じて異なる。
必要な場合、本発明の栄養組成物は、乳化剤及び安定剤、例えば、大豆、レシチン、モノ及びジグリセリドのクエン酸エステルなどを含有してもよい。
本発明の栄養組成物はまた、例えばラクトフェリン、ヌクレオチド、ヌクレオシドなどの、有益な効果を有することができる他の物質を含有し得る。
本発明の栄養組成物は、カロテノイド(複数含む)も含み得る。本発明のいくつかの特定の実施形態では、本発明の栄養組成物は、いかなるカロテノイドも含まない。
本発明による栄養組成物は、任意の好適な方法で調製することができる。次に、組成物を例として説明する。
例えば、乳児用フォーミュラなどの栄養組成物は、タンパク質源、炭水化物源、及び脂肪源を、適切な割合で一緒にブレンドすることによって調製し得る。使用する場合、乳化剤は、この時点で含めることができる。ビタミン及びミネラルは、この時点で添加されてもよいが、通常、熱分解を回避するために後で添加される。任意の親油性ビタミン及び乳化剤などをブレンド前に脂肪源に溶解することができる。次いで、水、好ましくは逆浸透処理した水を混合して、液体混合物を形成することができる。水の温度は、成分の分散を補助するために、適宜、約50℃~約80℃の範囲とする。市販の液化装置を用いて液体混合物を形成することができる。
特に最終製品が液体形態である場合、この段階で、フコシル化オリゴ糖(複数含む)及びN-アセチル化オリゴ糖(複数含む)を添加し得る。最終製品が粉末となる場合、所望であれば、同様にこの段階で任意のオリゴ糖を加えてもよい。
次いで、液体混合物を、例えば2段階で均質化する。
次いで、液体混合物は、例えば、約5秒~約5分間、約80℃~約150℃の範囲の温度に液体混合物を急速に加熱することによって、細菌負荷を低減する、熱処理に供され得る。この加熱は、蒸気注入によって、オートクレーブによって、又は熱交換器、例えば、プレート熱交換器によって、行い得る。
次いで、例えばフラッシュ冷却により、液体混合物を約60℃~約85℃に冷却し得る。次いで、液体混合物を、例えば2段階で、第1段階において約10MPa~約30MPaとし、第2段階において約2MPa~約10MPaとして、再度均質化することができる。次いで、均質化した混合物を更に冷却して、熱に弱い任意の成分、例えばビタミン及びミネラルを添加することができる。均質化した混合物のpH及び固形分含有量は、通常、この時点で調整する。
最終製品が粉末である場合、均質化した混合物を、噴霧乾燥機又は凍結乾燥機などの好適な乾燥装置に移し、粉末に変換する。粉末が有する水分含有量は約5重量%未満である必要がある。フコシル化オリゴ糖(複数可)及びN-アセチル化オリゴ糖(複数可)をまた、又は代替的に、プロバイオティクス株(複数可)(使用される場合)と共に、乾燥混合によって、又は結晶のシロップ形態でそれらをブレンドすることによってこの段階で添加してもよく、混合物を、噴霧乾燥又は凍結乾燥する。
液体組成物が好ましい場合、均質化された混合物を滅菌し、次いで適切な容器に無菌充填し得、又は最初に容器に充填し、次いでレトルト処理し得る。
別の実施形態では、本発明の組成物は、サプリメントであり得る。サプリメントは、例えば、タブレット、カプセル、トローチ、又は液体の形態であり得る。ダイエタリーサプリメントは、保護親水コロイド(ガム、タンパク質、加工デンプンなど)、結合剤、皮膜形成剤、カプセル化剤/材料、壁/シェル材料、マトリックス化合物、コーティング、乳化剤、表面活性剤、可溶化剤(油、脂肪、ワックス、レシチンなど)、吸着剤、担体、充填剤、共化合物、分散剤、湿潤剤、加工助剤(溶媒)、流動剤、味覚マスキング剤、増量剤、ゼリー化剤、及びゲル形成剤を更に含有してもよい。かかるサプリメントはまた、従来の医薬添加剤及び補助剤、添加物、及び希釈剤を含有してもよく、これには、水、任意の由来のゼラチン、植物ガム、リグニンスルホネート、タルク、糖、デンプン、アラビアガム、植物油、ポリアルキレングリコール、風味剤、防腐剤、安定剤、乳化剤、緩衝液、潤滑剤、着色剤、湿潤剤、充填剤などが挙げられるが、これらに限定されない。
更に、サプリメントには、経口又は非経口投与に好適な有機又は無機担体材料に加え、USRDAなどの政府機関の推奨に従い、ビタミン類、ミネラル類、微量元素及びその他の微量栄養素を含有させることもできる。
本発明による栄養組成物は、任意のタイプのヒト対象、好ましくは乳児又は幼児に使用するためのものである。乳児又は幼児は、正期産又は早産であり得る。特定の実施形態では、本発明の栄養組成物は、早産児、低出生時体重児、及び/又は在胎不当過小(SGA)児又は幼児に使用するためのものである。特定の実施形態では、本発明の栄養組成物は、早産児、低出生体重児及び/又は在胎不当過小(SGA)児に使用するためのものである。
本発明の栄養組成物はまた、帝王切開によって生まれたか、又は経膣的に分娩された乳児又は幼児において使用され得る。
いくつかの実施形態では、本発明による組成物は、離乳期前及び/又は離乳期中に使用するためのものとすることができる。
栄養組成物は、必要に応じた年齢及び期間で投与(又は付与若しくは給餌)することができる。
栄養組成物は、例えば、乳児の誕生直後に与えることができる。本発明の組成物はまた、乳児の生後1週間の間、又は生後2週間の間、又は生後3週間の間、又は生後1ヶ月の間、又は生後2ヶ月の間、又は生後3ヶ月の間、又は生後4ヶ月の間、又は生後6ヶ月の間、又は生後8ヶ月の間、又は生後10ヶ月の間、又は生後1年の間、又は生後2年以上の間に与えることができる。本発明のいくつかの特に有利な実施形態では、栄養組成物は、乳児の誕生の最初の4、6又は12ヶ月以内に乳児に与えられる(又は投与される)。いくつかの他の実施形態では、本発明の栄養組成物は、生後数日(例えば、1日、2日、3日、5日、10日、15日、20日等)、又は数週間(例えば、1週、2週、3週、4週、5週、6週、7週、8週、9週、10週等)、又は数ヶ月(例えば、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月等)与えられる。これは、乳児が早熟である場合に特に当てはまり得るが、必ずしもそうである必要はない。
一実施形態では、本発明の組成物は、母乳を補完する組成物として乳児又は幼児に与えられる。いくつかの実施形態では、乳児又は幼児は、少なくとも最初の2週間、最初の1ヶ月、2ヶ月、4ヶ月、又は6ヶ月の間、母乳を受ける。一実施形態では、本発明の栄養組成物は、かかる期間の母乳栄養の後に乳児又は幼児に与えられるか、又はかかる期間の母乳栄養と一緒に与えられる。別の実施形態では、組成物は、少なくとも1つの期間の間、例えば生後1月、2月又は4月の後、少なくとも1ヶ月、2ヶ月、4ヶ月又は6ヶ月の間、単独で、又は一次栄養組成物として、乳児又は幼児に与えられる。
一実施形態では、本発明の栄養組成物は、完全な栄養組成物(対象の栄養要求の全て又は大部分を満たす)である。別の実施形態では、栄養組成物は、例えばヒト母乳を補うこと、又は乳児用フォーミュラ若しくはフォローアップフォーミュラを補うことを意図したサプリメント又は強化剤である。
本出願に引用されている全ての特許文献及び非特許文献に関して、文献そのままを本出願に取り込む。
本発明を、以下の非限定的な実施例により更に詳細に記載する。
実施例1
本発明による栄養組成物(例えば、乳児用フォーミュラ)の組成の例を、以下の表1に示す。この組成物は、例示のみを目的として示す。
表1:実施例1の乳児用フォーミュラの組成
実施例2 HMO代謝産物と腸バリア機能に対するHMOの効果との相関。
試験の目的
2’FL、2’FL+LNnT、並びに6種類のHMO(2’FL、3’SL、6’SL、LNT、LNnT及びDiFL)の組み合わせの、微生物叢発酵産物(すなわち、代謝産物)の効果を、炎症誘発前後の上皮バリアに対するそれらの産物の保護能及び強化能に関して比較すること。炎症誘発は、各HMO又はHMO混合物の微生物叢発酵産物中に同定された個々の代謝産物をそれぞれの量で含む、Caco-2細胞及びHT29-MTX細胞を含む腸上皮細胞の細胞株共培養モデルにおけるものである。
方法
2’FL、2’FL+LNnT及び6種類のHMOの組合せ(2’FL、3’SL、6’SL、LNT、LNnT及びDiFL)の微生物叢発酵生成物は、ProDigest(Gent、Belgium)から入手したSimulator of the Human Intestinal Microbial Ecosystem(SHIME)と呼ばれるヒト胃腸管の連続モデルにおいて、3ヶ月齢の母乳育児乳児の糞便微生物叢を培養することによって得た。4つの別々のSHIME培養容器に同じ乳児の微生物叢を接種した。2週間の微生物叢安定化後、微生物叢のSHIME容器に、2’FL、2’FLとLNnTとの組み合わせ(2:1比)、又は6種類のHMO(2’FL、3’SL、6’SL、LNT、LNnT及びDiFL)の組み合わせのいずれかを、5g/Lの濃度で21日間毎日供給した。6種類のHMOブレンド下でのそれぞれのHMOの比は、2’FL:3’SL:6’SL:LNnT:LNT:DiFL=0.55:0.07:0.09:0.05:0.18:0.06とした。各微生物叢の容器上の発酵培養培地を、最初の供給の前、次いで最初の供給の2日後及び21日後に回収した。次いで、全ての発酵培養培地を遠心分離し、HMOの代謝産物を含む上清を回収した。
上皮バリア試験の際、ヒト細胞株のCaco-2及びHT29-MTXを、それぞれ、American Type Culture Collection(ATCC)及びEuropean Collection of Authenticated Cell Cultures(ECACC)から得た。Caco-2細胞及びHT29-MTX細胞を、37℃、加湿10%CO2下、GlutaMAX(Invitrogen)、1%最小必須培地、100μg/mLストレプトマイシン、100UI/mLペニシリン及び熱不活性化ウシ胎児血清(FBS:Caco-2では15%、HT29-MTXでは10%)を添加した、ダルベッコ最小必須培地(DMEM)中で、培養フラスコにおいて別々に維持した。
上皮バリア試験のための共培養を行う際、90%コンフルエントの単層に達するまで、各細胞株をそれぞれのフラスコ中で増殖させた。次いで、細胞株を1×トリプシンでトリプシン処理する。Caco-2及びHT29-MTXの共培養物を、6×10/cmで、1.12cmトランズウェル(登録商標)ポリカーボネート半透膜(0.4μm)上に播種し、GlutaMAX(商標)、1%最小必須培地、100μg/mLストレプトマイシン、100UI/mLペニシリン及び10%熱不活性化FBSを添加したDMEM中で21日間増殖させた。
実験当日、処理の少なくとも4時間前に、培地を新鮮な培地と交換した。まず、SHIME実験から回収した発酵培地で共培養物を前処理した。具体的には、2’FL、2’FL-LNnT又は6種類のHMOの組み合わせ(HMO6)(2’FL、3’SL、6’SL、LNT、LNnT及びDiFL)を供給した乳児微生物叢からの発酵培地を、20%v/vの濃度でトランズウェルの頂側区画(apical compartment)に添加した。未発酵培養SHIME培地(乳児微生物叢なし)を対照として使用した。36時間の前処理後、更に48時間、トランズウェルの基底膜側コンパートメント(basolateral compartment)にTNF-α(2.5ng/mL)及びIFN-γ(10ng/mL)を添加することによって、上皮バリア機能不全を誘導した。実験の間、Cellzscope(登録商標)の機器を使用して経上皮電気抵抗を連続的に測定した。実験の最後に、頂端膜側コンパートメントから基底膜側コンパートメントへのFITC標識デキストラン(4000Da)の2時間以内の透過を定量した。
SHIMEを用いて得られた2’FL、2’FL+LNnT及び6種類のHMOの組み合わせ(2’FL、3’SL、6’SL、LNT、LNnT及びDiFL)の微生物叢発酵産物のメタボローム解析を行った。メタボローム解析は、Metabolon(登録商標)プラットフォーム(Metabolon Inc、Morrisville、NC、USA)を用いて行った。簡潔には、LC/MS/MS及び極性LCプラットフォーム上で解析するために、サンプルを抽出して均等に分割した。ピーク面積の積分による代謝産物の同定及び代謝産物の定量のため、独自のソフトウェアを使用して、社内の基準ライブラリーに対してイオンをマッチさせた。全てのデータセットを電子形式でNestleに提供し、解析した。
各微生物叢発酵産物のそれぞれのバリアの読み出しにおける有効性のレベルと、かかる微生物叢発酵産物中の各代謝産物の濃度との相関関係を調べるために、メタボロームデータに対して統計分析を行った。統計分析は以下のとおりとした。
上皮バリア試験の際、処理間の差異を、一元配置分散分析、及びこれに続き、統計の有意水準をα=5%(LSD5%)に設定したフィッシャーの最小有意差法による多重比較を用い、評価した。
メタボローム相関解析のために、3段階分析を行った。
処理にかかわらず、最初に全てのサンプルを給餌前のサンプル(0日目)及び給餌後のサンプル(2日目及び21日目)、の2つの群に分けた。0日目と21日目の間で有意に変化する代謝産物を、一元配置分散分析、及びこれに続き、LSD5%でのフィッシャーの最小有意差法による多重比較を用い評価した。
次いで、有意な代謝産物を処理に基づいてクラスター化した。ラクトースと比較してHMO処理でより多くクラスター化した代謝産物を選択して、上皮バリア試験との相関関係の調査に使用した。
代謝産物量と上皮バリアデータとの間の相関は、ピアソン相関係数(Pearson correlation coefficient)を用いて行った。
結果
図1A及び図1Bは、HMO発酵産物は防止的な上皮バリア保護を提供する有効性を有するのに対し、ヒト母乳及び乳児用フォーミュラにおいて主要な炭水化物であるラクトースの発酵はこのような有効性を有しないことを示す。
図2A及び図2Bは、炎症誘発性の上皮バリア機能不全に対する抵抗性の誘導におけるHMO発酵産物の有効性を示す。
図3A及び図3Bは、炎症誘発性の上皮バリア機能不全に対する感受性の制限におけるHMO発酵産物の有効性を示す。
図4A及び図4Bは、炎症誘発性の上皮バリア機能不全の症状の重症度の低減におけるHMO発酵産物の有効性を示す。
図5A及び図5Bは、炎症誘発性の上皮バリア機能不全の症状の重症度の低減におけるHMO発酵産物の有効性を示す。
表3は、HMO発酵産物中の3-ヒドロキシ酪酸の存在量と、上皮バリア完全性の異なる読み出しとの間の相関を示す。該表は、3-ヒドロキシ酪酸が、バリア完全性についての全ての読み出し値と有意に正の相関を有することを示す。
結論
これらのデータは、3-ヒドロキシ酪酸が腸バリアの改善及び保護に有効であることを示す。
実施例3 3-ヒドロキシ酪酸の直接的効果
試験の目的
3-ヒドロキシ酪酸を、Caco-2細胞及びHT29-MTX細胞を含む腸上皮細胞の細胞株共培養モデルにおける炎症誘発後の上皮バリアの保護能及び強化能に関して試験した。
材料及び方法
ヒト細胞株のCaco-2及びHT29-MTXを、それぞれ、American Type Culture Collection(ATCC)及びEuropean Collection of Authenticated Cell Cultures(ECACC)から得た。Caco-2細胞及びHT29-MTX細胞を、37℃、加湿10%CO2下、GlutaMAX(Invitrogen)、1%最小必須培地、100μg/mLストレプトマイシン、100 UI/mLペニシリン及び熱不活性化ウシ胎児血清(FBS:Caco-2では15%、HT29-MTXでは10%)を添加した、ダルベッコ最小必須培地(DMEM)中で、培養フラスコにおいて別々に維持した。
上皮バリア試験のための共培養を行う際、90%コンフルエント単層に達するまで、各細胞株をそれぞれのフラスコ中で増殖させた。次いで、細胞株を1×トリプシンでトリプシン処理する。Caco-2及びHT29-MTXの共培養物を、6×10/cmで、1.12cmトランズウェルポリカーボネート半透膜(0.4μm)上に播種し、GlutaMAX、1%最小必須培地、100μg/mLストレプトマイシン、100UI/mLペニシリン及び10%熱不活性化FBSを添加したDMEM中で21日間増殖させた。
実験当日、処理の少なくとも4時間前に、培地を新鮮な培地と交換した。共培養物を最初に3-ヒドロキシ酪酸で前処理した。具体的には、3-ヒドロキシ酪酸(Sigma 166898;CAS 300-85-6)を1mMの最終濃度でDMSOにより希釈してストック溶液を作製した。実験当日、このストック溶液を新鮮な培地で更に100μMの濃度に希釈した。次いで、希釈した3-ヒドロキシ酪酸を、10μMの最終濃度(例えば、500μLの頂端膜側コンパートメント体積中50μl)でトランズウェルの頂端膜側コンパートメントに添加した。対照として、ストック3-ヒドロキシ酪酸と同量のDMSOを新鮮な培養培地で希釈し、希釈したDMSOを、20%v/vの濃度でトランズウェルの頂端膜側コンパートメントに添加した。未発酵培養SHIME培地(乳児微生物叢なし)を対照として使用した。36時間の前処理後、更に48時間、トランズウェルの基底膜側コンパートメント中にTNF-α(2.5ng/mL)及びIFN-γ(10ng/mL)を添加することによって、上皮バリア機能不全を誘導した。実験の最後に、頂端膜側コンパートメントから基底膜側コンパートメントへのFITC標識デキストラン(4000Da)の2時間以内の透過を定量した。FD4透過データを、不等分散を仮定した両側2標本のスチューデントt検定を使用することによって分析した。
結果
図6は、炎症誘導性上皮バリア透過性亢進に対抗してバリアを保護する3-ヒドロキシ酪酸の有効性を示す。
結論
提示されるデータは、相関試験の結果を確認し、腸管バリアの改善及び保護における3-ヒドロキシ酪酸の有効性の証拠を提供するものである。

Claims (18)

  1. 対象における胃腸バリアの改善に使用するための、3-ヒドロキシ酪酸を含む栄養組成物。
  2. 前記対象が、乳児(12ヶ月未満の小児)又は幼児(1歳~3歳未満)である、請求項1に記載の使用のための栄養組成物。
  3. 前記栄養組成物が、グローイングアップミルクであり、前記対象が、3歳~8歳未満の小児である、請求項1に記載の使用のための栄養組成物。
  4. 前記胃腸バリアの改善が、バリア構造の改善、バリア機能の改善、バリア保護の改善及び/又はバリア修復の改善である、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用のための栄養組成物。
  5. 前記胃腸バリアの改善が、バリア機能の改善、バリア構造の改善、及び/又はバリア保護の改善である、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用のための栄養組成物。
  6. 前記胃腸バリアの改善が、バリア保護の改善である、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用のための栄養組成物。
  7. 前記使用が、バリア機能不全の防止、バリア漏出の防止、密着結合構造の保護、及び腸管上皮内層の完全性の保護を改善するためのものである、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用のための栄養組成物。
  8. 前記バリア漏出の防止が、病原体、アレルゲン及び/又は毒性化合物が消化管から腸バリアを通って体内に移動することの防止である、請求項7に記載の使用のための栄養組成物。
  9. 前記対象が、機能障害のある微生物叢を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の使用のための栄養組成物。
  10. 前記機能障害のある微生物叢が、異常に低い割合のビフィドバクテリウム属細菌、好ましくは、異常に低い割合のビフィドバクテリウム・ロンガム及び/又はビフィドバクテリウム・ビフィダム、より好ましくは異常に低い割合のビフィドバクテリウム・ビフィダム及び/又はビフィドバクテリウム・ロンガム亜種インファンティスを有する、不均衡な微生物叢である、請求項9に記載の使用のための栄養組成物。
  11. 前記機能障害のある微生物叢が、80%未満、好ましくは70%未満、より好ましくは60%未満のアクチノバクテリア門(Actinobacteriaceae)更により好ましくはビフィドバクテリウム属細菌を有し、前記パーセンテージが、前記微生物叢における総細菌に基づく数により定義される、請求項9又は10に記載の使用のための栄養組成物。
  12. 前記機能障害のある微生物叢が、20%未満、好ましくは15%未満、より好ましくは10%未満のビフィドバクテリウム・ビフィダムを有し、前記パーセンテージが、前記微生物叢における総細菌に基づく数により定義される、請求項9~11のいずれか一項に記載の使用のための栄養組成物。
  13. 前記対象が、未熟児、在胎不当過小児及び低出生体重児からなる群から選択される乳児、好ましくは未熟児である、請求項1~12のいずれか一項に記載の栄養組成物。
  14. 3-ヒドロキシ酪酸が、乾燥重量基準で、前記組成物の0.01mg/L~10g/Lの量で、又は前記組成物の0.3mg/L~300g/Lの量で存在する、請求項1~13のいずれか一項に記載の栄養組成物。
  15. 3-ヒドロキシ酪酸が、1回分当たり0.003mg~3gの量で存在する、請求項1~14のいずれか一項に記載の栄養組成物。
  16. 3-ヒドロキシ酪酸が、前記栄養組成物の通常の摂取により、1日当たり0.006mg~6gの総1日用量が該組成物を摂取する前記対象に提供される量で、提供される、請求項1~15のいずれか一項に記載の栄養組成物。
  17. 前記栄養組成物が、乳児用フォーミュラ、乳児用スターターフォーミュラ、フォローオンフォーミュラ若しくはフォローアップフォーミュラ、グローイングアップミルク、ベビーフード、乳児用シリアル組成物、又はヒト母乳強化剤などの強化剤、サプリメント、ヘルスケア製品、医療用食品、経管栄養組成物、又は動物用食品である、請求項1及び4~16のいずれか一項に記載の使用のための栄養組成物。
  18. 前記栄養組成物が、乳児用フォーミュラ、乳児用スターターフォーミュラ、フォローオンフォーミュラ若しくはフォローアップフォーミュラ、グローイングアップミルク、ベビーフード、乳児用シリアル組成物、ヒト母乳強化剤などの強化剤、又はサプリメントである、請求項2に記載の栄養組成物。

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