この出願は、インバータ回路の分野に関し、特に、モータ制御ユニット(motor control unit、MCU)、制御方法、及びパワーアセンブリに関連している。
電気自動車では、バッテリがインバータ回路を介してモータに電流を送る。インバータ回路は通常、三相フルブリッジインバータ回路である。三相フルブリッジインバータ回路は、三相フルブリッジ2レベルインバータ回路と三相フルブリッジ3レベルインバータ回路を含む。2レベルとは、出力相電圧に2レベルの状態があることを意味し、3レベルとは、出力相電圧に3レベルの状態があることを意味する。
三相フルブリッジ2レベルインバータ回路によって出力される電圧及び電流には比較的高い高調波が存在し、その結果、モータの損失が増加する。また、三相フルブリッジ2レベルインバータ回路が電気自動車に適用される場合、低トルク領域で、パワーが小さく、スイッチング損失が大きな割合を占め、インバータ回路のシステム効率が低く、航続走行可能距離が減少する。三相フルブリッジ2レベルインバータ回路と比較して、三相フルブリッジ3レベルインバータ回路のスイッチングトランジスタの数が2倍であり、全てのスイッチングトランジスタが同じ電流容量を持つ。全てのスイッチングトランジスタが連続して動作すると、全てのスイッチングトランジスタが損傷されやすい。従って、コストが増加する。
この出願の実施形態は、インバータ回路のコストを低減させるとともに、インバータ回路のシステム効率を向上させるための、MCU、制御方法、及びパワーアセンブリを提供する。
上述の目的を達成するため、この出願の実施形態では以下の技術的ソリューションが使用される。
第1の態様によれば、モータ制御ユニットが提供され、当該モータ制御ユニットは、三相フルブリッジ3レベルインバータ回路と制御装置とを含む。三相フルブリッジ3レベルインバータ回路は、垂直ブリッジ回路及び水平ブリッジ回路を含む。垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの電流容量は、モータの最大電流以上である。水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの電流容量は、垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの電流容量よりも小さい。制御装置は、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタを、モータのトルク、垂直ブリッジ回路の出力端子によって出力される電流、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの温度、及び水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの端子電圧に基づいて制御するように構成される。
この出願のこの実施形態で提供されるモータ制御ユニットによれば、T型三相フルブリッジ3レベルインバータ回路を基礎として、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタが、モータのトルク、出力端子によって出力される電流、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの温度、及び水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの端子電圧に基づいて制御される。インバータ回路のシステム効率を向上させるために、低トルク領域では、当該MCUが3レベル動作モードで動作するように、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタが有効化される。三相フルブリッジインバータ回路内の全てのスイッチングトランジスタが連続動作する場合を避けるために、高トルク領域では水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタが無効化される。また、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの電流容量が、垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの電流容量よりも小さく、換言すれば、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの仕様を下げることができ、インバータ回路のコストが低減される。
取り得る一実装において、制御装置は具体的に、モータのトルクが第1トルク閾値より高い、又は出力端子によって出力される電流が第1過電流閾値より大きい、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの温度が第1温度閾値より高い、又は水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの端子電圧が第1電圧閾値より高い場合に、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタを無効化し、モータのトルクが第1トルク閾値より高くない、又は出力端子によって出力される電流が第1過電流閾値より大きくない、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの温度が第1温度閾値より高くない、及び水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの端子電圧が第1電圧閾値より高くない場合に、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタを有効化する、ように構成される。この実装では、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタに関する過電流、過熱、又は過電圧を回避するように、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタを保護することができる。
取り得る一実装において、制御装置は更に、垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタを、モータのトルク、出力端子によって出力される電流、モータの回転数、垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの温度、及び垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの端子電圧に基づいて制御する、ように構成される。
取り得る一実装において、制御装置は具体的に、モータのトルクが第2トルク閾値より高い、又は出力端子によって出力される電流が第2過電流閾値より大きいときに、モータの回転数が回転数閾値以下である、垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの温度が第2温度閾値より高い、又は垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの端子電圧が第2電圧閾値より高い場合に、垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタを無効化し、モータの回転数が回転数閾値より高い、垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの温度が第2温度閾値より高くない、及び垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの端子電圧が第2電圧閾値より高くない場合に、垂直ブリッジ回路内の上側ハーフブリッジスイッチングトランジスタ又は下側ハーフブリッジスイッチングトランジスタを導通させ、モータのトルクが第2トルク閾値以下である、又は出力端子によって出力される電流が第2過電流閾値以下であるときに、垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタを有効化する、ように構成される、この実装では、垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタに関する過電流、過熱、又は過電圧を回避するように、垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタを保護することができる。
取り得る一実装において、制御装置は更に、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタを有効化又は無効化した後に、出力端子によって出力される電圧が変化しないままであるように、パルス幅変調制御信号のデューティサイクルを調整する、ように構成される。三相フルブリッジ2レベルインバータ回路と三相フルブリッジ3レベルインバータ回路とでは、異なる電圧を出力する。従って、電圧脈動がモータに影響を及ぼすことを防ぐために、垂直ブリッジ回路の出力端子によって出力される電圧が変化しないままであるように、PWM制御信号のデューティサイクルが調整される。
第2の態様によれば、モータ制御ユニットの制御方法が提供され、当該制御方法は、第1の態様又は第1の態様の実装のうちのいずれか1つにおけるモータ制御ユニットに適用される。当該制御方法は、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタを、モータのトルク、三相フルブリッジ3レベルインバータ回路の垂直ブリッジ回路の出力端子によって出力される電流、三相フルブリッジ3レベルインバータ回路の水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの温度、及び水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの端子電圧に基づいて制御すること、を含む。
取り得る一実装において、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタを、モータのトルク、三相フルブリッジ3レベルインバータ回路の垂直ブリッジ回路の出力端子によって出力される電流、三相フルブリッジ3レベルインバータ回路の水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの温度、及び水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの端子電圧に基づいて制御することは、モータのトルクが第1トルク閾値より高い、又は出力端子によって出力される電流が第1過電流閾値より大きい、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの温度が第1温度閾値より高い、又は水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの端子電圧が第1電圧閾値より高い場合に、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタを無効化し、モータのトルクが第1トルク閾値より高くない、又は出力端子によって出力される電流が第1過電流閾値より大きくない、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの温度が第1温度閾値より高くない、及び水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの端子電圧が第1電圧閾値より高くない場合に、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタを有効化する、ことを含む。
取り得る一実装において、当該方法は更に、垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタを、モータのトルク、出力端子によって出力される電流、モータの回転数、垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの温度、及び垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの端子電圧に基づいて制御すること、を含む。
取り得る一実装において、垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタを、モータのトルク、出力端子によって出力される電流、モータの回転数、垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの温度、及び垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの端子電圧に基づいて制御することは、モータのトルクが第2トルク閾値より高い、又は出力端子によって出力される電流が第2過電流閾値より大きいときに、モータの回転数が回転数閾値以下である、垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの温度が第2温度閾値より高い、又は垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの端子電圧が第2電圧閾値より高い場合に、垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタを無効化し、モータの回転数が回転数閾値より高い、垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの温度が第2温度閾値より高くない、及び垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの端子電圧が第2電圧閾値より高くない場合に、垂直ブリッジ回路内の上側ハーフブリッジスイッチングトランジスタ又は下側ハーフブリッジスイッチングトランジスタを導通させ、モータのトルクが第2トルク閾値以下である、又は出力端子によって出力される電流が第2過電流閾値以下であるときに、垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタを有効化する、ことを含む。
取り得る一実装において、当該方法は更に、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタが有効化又は無効化された後に、出力端子によって出力される電圧が変化しないままであるように、パルス幅変調制御信号のデューティサイクルを調整すること、を含む。
第3の態様によれば、パワーアセンブリが提供され、当該パワーアセンブリは、第1の態様又は第1の態様の実装のうちのいずれか1つにおけるモータ制御ユニットと、直流電源と、モータとを含む。モータ制御ユニットが、直流電源によって出力される直流を交流に変換し、モータに電力を供給し、モータの回転数を制御するように構成される。
第4の態様によれば、コンピュータ読み取り可能記憶媒体が提供される。当該コンピュータ読み取り可能記憶媒体はコンピュータプログラムを格納している。該コンピュータプログラムがコンピュータ上で実行されるとき、第2の態様及び第2の態様の実装のうちのいずれか1つにおける方法が実行される。
第5の態様によれば、命令を含んだコンピュータプログラムプロダクトが提供される。該命令がコンピュータ又はプロセッサ上で実行されるとき、第2の態様及びその実装のうちのいずれか1つにおける方法が実行される。
第2の態様から第5の態様の技術的効果については、第1の態様のコンテンツを参照されたい。詳細をここで繰り返すことはしない。
この出願の一実施形態に従ったパワーアセンブリ及びMCUの構成の概略図である。
この出願の一実施形態に従った他のパワーアセンブリ及び他のMCUの構成の概略図である。
この出願の一実施形態に従った更なる他のパワーアセンブリ及び更なる他のMCUの構成の概略図である。
この出願の一実施形態に従った三相フルブリッジ2レベルインバータ回路における各電圧ベクトルの空間位置の概略図である。
この出願の一実施形態に従った7セグメントPWM波形の概略図である。
この出願の一実施形態に従った、三相フルブリッジ2レベルインバータ回路とモータとが組み合わされた後に存するシステム効率の概略図である。
この出願の一実施形態に従った更に他のパワーアセンブリ及び更に他のMCUの構成の概略図である。
この出願の一実施形態に従った制御方法の概略フローチャートである。
この出願の一実施形態に従った他の制御方法の概略フローチャートである。
この出願の一実施形態に従った更なる他の制御方法の概略フローチャートである。
この出願の一実施形態に従った2レベル動作モードにおけるスイッチングトランジスタの導通状態の概略図である。
この出願の一実施形態に従った三相フルブリッジ3レベルインバータ回路における各電圧ベクトルの空間位置の概略図である。
この出願の一実施形態に従った3レベル動作モードにおけるスイッチングトランジスタの導通状態の概略図である。
この出願の一実施形態に従った、2レベル動作モードから3レベル動作モードへの切り換えが行われるときに存するスイッチングトランジスタの導通状態の概略図である。
この出願における一部概念を最初に説明する。
ボルト-秒バランス原理:ボルト-秒バランス原理はインダクタに対して最初に提案された。ボルト-秒の値はボルト-秒積である。スイッチング回路が安定に動作しているとき、スイッチング周期におけるインダクタの電流変化の積分は0であり、すなわち、インダクタを通過する電流増加と電流減少とが等しい。パルス幅変調(pulse width modulation、PWM)に適用される場合、ボルト-秒バランス原理は、次式:VON*TON=VOFF*TOFFに反映され、ここで、VONは、インダクタがオンにされるときに存するインダクタの両端の電圧を表し、VOFFは、インダクタがオフにされるときに存するインダクタの両端の電圧を表し、TONは、インダクタがオンにされる時間を表し、TOFFは、インダクタがオフにされる時間を表す。
モータのトルクを測定する方法には、以下に限られないが、平衡力法、伝達法、又はエネルギー変換法を含む。
平衡力法:定常動作状態における機械的伝達コンポーネントについて、モータスピンドル上にトルクTが存在し、モータ本体上にトルクT’が存在する。トルクTとトルクT’は、大きさにおいて等しく、向きにおいて逆である。モータ本体上のトルクT’を測定することによって、モータスピンドル上のトルクTを得ることができる。力のアーム上に作用する力をFとし、力のアームの長さをLとすると、T’=LFである。モータ本体によって測定点に及ぼされる力Fと、モータ本体と測定点の間の力のアームLとを測定することによって、T’を得ることができ、そして、トルクTが得られる。
伝達法:モータがトルクを弾性素子に伝達するとき、弾性素子の物理パラメータがある程度変化し、その変化とトルクとの間の対応関係を用いることにより、モータによって出力されるトルクを測定することができる。異なる物理パラメータに基づき、伝達法は更に、磁気弾性法、ひずみ法、振動ワイヤ法、又は光電法などを含む。現在、トルク測定の分野には伝達法が最も広く適用されている。
エネルギー変換法:エネルギー保存の法則に基づき、例えば熱エネルギー又は電気エネルギーなどの他のパラメータを測定することによって、モータのトルクが間接的に測定される。
交流電流を測定する方法は、以下に限られないが、電磁測定法、電気測定法、及び整流測定法を含む。
電磁測定法:測定対象の磁束の変化を検出することによって交流電流が測定される。
電気測定法:例えば、固定コイルを用いて一定の電流が接続され、可動コイルを用いて被測定電流が接続され得る。これら2つのコイルが互いに排他的にトルクを発生し、トルクと電流との間の対応関係に基づいて交流電流が測定される。
整流測定法:被測定交流電流が、整流を通じて直流に変換され、直流と交流との間の電流変換関係に基づいて交流電流が得られる。しかし、この方法は正弦波の交流電流の測定に限られる。
この出願の実施形態において、MCUの出力端子によって出力される交流電流は、モータのトルクと正の相関がある。MCUの出力端子によって出力される電流が大きいほど、モータのトルクが高いことを示し、MCUの出力端子によって出力される電流が小さいほど、モータのトルクが低いことを示す。
スイッチングトランジスタの温度及び端子電圧を測定する方法は次の通りである。スイッチングトランジスタの温度は、スイッチングトランジスタに温度センサを組み込むことによって測定され得る。スイッチングトランジスタの端子電圧は、直列に接続されたスイッチングトランジスタの両端に結合されたバス電圧を測定することによって決定され得る。
この出願におけるPWMは、空間ベクトルパルス幅変調(space vector pulse width modulation、SVPWM)、差動パルス幅変調(differential pulse width modulation、DPWM)、正弦波パルス幅変調(sinusoidal pulse width modulation、SPWM)、又はこれらに類するものを含み得る。
この出願における直流電源は、例えば太陽電池、リチウムバッテリ、鉛酸蓄電池、大型キャパシタ、燃料電池、固体バッテリなどの電源装置とし得る。
この出願におけるモータは、例えば永久磁石同期モータ又は誘導モータなどの交流モータとし得る。
この出願におけるスイッチングトランジスタは、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(insulated gate bipolar transistor、IGBT)、金属酸化膜半導体(metal oxide semiconductor、MOS)トランジスタ、又はこれらに類するものとし得る。
図1、図2、及び図3に示すように、この出願の一実施形態はパワーアセンブリを提供する。当該パワーアセンブリは、電気自動車、電気船舶、又は他の分野に適用され得る。
当該パワーアセンブリは、MCU11、直流電源12、及びモータ13を含む。直流電源12の2つの出力端子がMCU11の2つの入力端子に接続され、MCU11の三相出力端子がモータ13の三相入力端子に接続される。
例えば、MCU11は、図1に示す三相フルブリッジ2レベルインバータ回路、図2に示す中性点クランプI型三相フルブリッジ3レベルインバータ回路、又は図3に示すT型三相フルブリッジ3レベルインバータ回路を含み得る。
インバータ回路のコアデバイスはスイッチングトランジスタである。MCU11は、モータ13の回転数を制御するために、PWMを通じて、スイッチングトランジスタを導通・遮断すべく制御し、直流電源12によって出力される直流を交流に変換し、モータ13に電力を供給し、PWM制御信号のデューティサイクルを調整して出力交流の電圧及び電流を制御する。
図1に示す三相フルブリッジ2レベルインバータ回路は、キャパシタC1及び3つブリッジアームを含む。キャパシタC1の両端が、それぞれ、バスの正極及び負極に結合され、キャパシタC1の両端は更に、それぞれ、3つのブリッジアームの各々の両端に結合される。各ブリッジアームが、つまりは第1スイッチングトランジスタと第2スイッチングトランジスタである直列に接続された2つのスイッチングトランジスタを含み、さらに、これらスイッチングトランジスタにそれぞれ逆並列接続された2つのダイオードD0を含む。例えば、第1ブリッジアームの第1スイッチングトランジスタS1_Aと第2スイッチングトランジスタS2_Aが直列に接続され、第2ブリッジアームの第1スイッチングトランジスタS1_Bと第2スイッチングトランジスタS2_Bが直列に接続され、第3ブリッジアームの第1スイッチングトランジスタS1_Cと第2スイッチングトランジスタS2_Cが直列に接続される。
各ブリッジアームの第1スイッチングトランジスタと第2スイッチングトランジスタとの接続点が、そのブリッジアームに対応する出力端子である。例えば、第1ブリッジアームの出力端子はAであり、第2ブリッジアームの出力端子はBであり、第3ブリッジアームの出力端子はCである。すなわち、第1ブリッジアームはA相電圧を出力し、第2ブリッジアームはB相電圧を出力し、第3ブリッジアームはC相電圧を出力する。これら3つの出力端子がモータ13に結合されるように構成される。
同時に、各ブリッジアームにおいて、一方のスイッチングトランジスタが導通されるとともに、他方のスイッチングトランジスタが遮断されることが常に当てはまる。ブリッジアームの上側のスイッチングトランジスタが導通され、下側のスイッチングトランジスタが遮断される場合を状態1として定義し、上側のスイッチングトランジスタが遮断され、下側のスイッチングトランジスタが導通される場合を状態0として定義すると、3つのブリッジアームのスイッチングトランジスタは8つの異なる電圧ベクトルを形成する。8つの異なる電圧ベクトルは、6つの有効電圧ベクトル(V1(001)、V2(010)、V3(011)、V4(100)、V5(101)、及びV6(110))と、2つのゼロベクトル(V0(000)及びV7(111))とを含む。
図4は、三相フルブリッジ2レベルインバータ回路における各電圧ベクトルの空間位置を示している。例えば、基準電圧ベクトルVrefがセクタIII内に位置するとき、基準電圧ベクトルVrefは、2つの隣接する有効電圧ベクトルV4(100)及びV6(110)と、ゼロベクトルV0(000)/V7(111)とを含む。別のセクタ内に位置する基準電圧ベクトルも同様にして計算される。
基準電圧ベクトルに隣接する2つの有効電圧ベクトル及び0ベクトルの各々の作用時間を、ボルト-秒バランス原理に基づいて計算することができ、図5に示す7セグメントPWM波形を得ることができる。基準電圧ベクトルは、特定の瞬間に特定のセクタに作用する電圧ベクトルである。平均等価の原理に基づき、基準電圧ベクトルは、基準電圧ベクトルに隣接する2つの非ゼロ基底ベクトル及び0ベクトルと等価であるとし得る。
図5において、t0は0ベクトルの作用時間を表し、t1は基準電圧ベクトルに隣接する一方の有効電圧ベクトルの作用時間を表し、t2は基準電圧ベクトルに隣接する他方の有効電圧ベクトルの作用時間を表し、A/B/Cは、図1のA/B/Cに対応するものである三相出力を表している。分かり得ることには、各相の出力電圧には、つまりはハイレベルとローレベルとの2つのレベルのみが存在する。
図6は、三相フルブリッジ2レベルインバータ回路とモータとが組み合わされた後に存するシステム効率の概略図である。図中の勾配値がシステム効率を表している。分かり得ることには、低トルク領域では比較的低いシステム効率が存する。例えば、トルクが25Nm未満であるとき、システム効率は90%未満であり、トルクが5Nmであるとき、システム効率は80%未満である。
表1は、新欧州ドライビングサイクル(new European driving cycle、NEDC)によって公表された電気自動車の定常作動点データを示している。“モータのトルク(Nm)”の列のデータから分かり得ることには、電気自動車の定常作動点は低トルク領域に集中している。従って、電気自動車のMCUに三相フルブリッジ2レベルインバータ回路が使用される場合、非常に低いシステム効率が存する。
要するに、三相フルブリッジ2レベルインバータ回路によって出力される電圧には2つのレベルしかなく、比較的高い高調波が出力電圧及び出力電流に存在する。その結果、モータのトルクリプルが大きくなり、ノイズが強くなり、損失が増加する。また、電気自動車のMCUにこのトポロジーが使用されると、低トルク領域で、パワーが小さく、スイッチング損失が大きな割合を占め、システム効率が低く、航続走行可能距離が減少する。
図1に示す三相フルブリッジ2レベルインバータ回路と比較して、図2又は図3に示す三相フルブリッジ3レベルインバータ回路によって出力される電圧は3つのレベルを含み、出力電圧の波形が理想的な正弦波波形にいっそう似たものとなり、出力電圧及び出力電流の両方で高調波が低くなる。従って、インバータ回路のシステム効率を向上させることができる。また、同じ電圧レベルで、三相フルブリッジ3レベルインバータ回路内のスイッチングトランジスタが低い耐電圧を持ち、電磁干渉を低減させることができる。故に、高電圧及びハイパワーのシナリオには三相フルブリッジ3レベルインバータ回路が比較的広く適用されている。
図2の三相フルブリッジ3レベルインバータ回路は、直列に接続された2つの分圧器キャパシタ(第1キャパシタC1及び第2キャパシタC2)、中性点n、及び3つのブリッジアームを含む。
第1キャパシタC1の両端は、それぞれ、バスの正極及び中性点nに結合され、第2キャパシタC2の両端は、それぞれ、バスの負極及び中性点nに結合される。各分圧器キャパシタの端子電圧は直流電源の電圧Vdcの半分、すなわち、Vdc/2である。
各ブリッジアームが、直列に接続された4つのスイッチングトランジスタを含む。例えば、第1ブリッジアーム内の第1スイッチングトランジスタS1_A、第2スイッチングトランジスタS2_A、第3スイッチングトランジスタS3_A、及び第4スイッチングトランジスタS4_Aが直列に接続され、第2ブリッジアーム内の第1スイッチングトランジスタS1_B、第2スイッチングトランジスタS2_B、第3スイッチングトランジスタS3_B、及び第4スイッチングトランジスタS4_Bが直列に接続され、第3ブリッジアーム内の第1スイッチングトランジスタS1_C、第2スイッチングトランジスタS2_C、第3スイッチングトランジスタS3_C、及び第4スイッチングトランジスタS4_Cが直列に接続される。
各ブリッジアーム内の第2スイッチングトランジスタと第3スイッチングトランジスタとの接続点が、そのブリッジアームに対応する出力端子である。例えば、第1ブリッジアームの出力端子はAであり、第2ブリッジアームの出力端子はBであり、第3ブリッジアームの出力端子はCである。すなわち、第1ブリッジアームはA相電圧を出力し、第2ブリッジアームはB相電圧を出力し、第3ブリッジアームはC相電圧を出力する。これら3つの出力端子がモータ13に結合されるように構成される。
各ブリッジアーム内で、第1スイッチングトランジスタと第3スイッチングトランジスタとが相補的に導通されるとともに、第2スイッチングトランジスタと第4スイッチングトランジスタとが相補的に導通される。例えば、第1スイッチングトランジスタが導通されるときには、第3スイッチングトランジスタが遮断され、第3スイッチングトランジスタが導通されるときには、第1スイッチングトランジスタが遮断され、そして、第2スイッチングトランジスタが導通されるときには、第4スイッチングトランジスタが遮断され、第4スイッチングトランジスタが導通されるときには、第2スイッチングトランジスタが遮断される。
各ブリッジアームは更に、スイッチングトランジスタにそれぞれ逆並列接続された4つのダイオードD0を含む。ダイオードD0は還流ダイオードとも呼ばれ、負荷電流の還流経路として機能して、スイッチングトランジスタが損傷されることを防止する。
各ブリッジアームは更にダイオードD1及びダイオードD2を含む。3つのブリッジアームの各々内で、ダイオードD1は、中性点nを、第1スイッチングトランジスタと第2スイッチングトランジスタとの接続点に結合する。3つのブリッジアームの各々内で、ダイオードD2は、中性点nを、第3スイッチングトランジスタと第4スイッチングトランジスタとの接続点に結合する。ダイオードD1及びダイオードD2はクランプダイオードと呼ばれる。
I型三相フルブリッジ3レベルインバータ回路の動作モードを、第1ブリッジアームを例として用いて説明する。中性点nの電圧が基準ゼロ電位であり、且つ第1垂直ブリッジアームの出力端子Aからモータに電流が流れる方向が正方向であると仮定する。
(1)第1スイッチングトランジスタS1_A及び第2スイッチングトランジスタS2_Aが導通され、且つ第3スイッチングトランジスタS3_A及び第4スイッチングトランジスタS4_Aが遮断されるとき、電流の向きが正であるか負であるかにかかわらず、出力端子Aによって出力される電圧は直流電源の電圧Vdcの半分、すなわち、Vdc/2となる。
(2)第2スイッチングトランジスタS2_A及び第3スイッチングトランジスタS3_Aが導通され、且つ第1スイッチングトランジスタS1_A及び第4スイッチングトランジスタS4_Aが遮断されるとき、ブリッジアーム内の2つのクランプダイオードD1及びD2が出力端子Aを中性点nにクランプし、電流の向きが正であるか負であるかにかかわらず、出力端子Aによって出力される電圧は0となる。
(3)第3スイッチングトランジスタS3_A及び第4スイッチングトランジスタS4_Aが導通され、且つ第1スイッチングトランジスタS1_A及び第2スイッチングトランジスタS2_Aが遮断されるとき、電流の向きが正であるか負であるかにかかわらず、出力端子Aによって出力される電圧は-Vdc/2となる。
図3のT型三相フルブリッジ3レベルインバータ回路は、第1キャパシタC1と、第2キャパシタC2と、3つの垂直ブリッジアームを含む垂直ブリッジ回路と、3つの水平ブリッジアームを含む水平ブリッジ回路と、中性点nとを含む。
第1キャパシタC1の両端が、それぞれ、バスの正極及び中性点nに結合され、第2キャパシタC2の両端が、それぞれ、バスの負極及び中性点nに結合される。垂直ブリッジアームの両端が、それぞれ、バスの正極及び負極に結合される。
各垂直ブリッジアームが、直列に接続された2つのスイッチングトランジスタを含む。例えば、第1垂直ブリッジアーム内の第1スイッチングトランジスタS1_Aと第4スイッチングトランジスタS4_Aが直列に接続され、第2垂直ブリッジアーム内の第1スイッチングトランジスタS1_Bと第4スイッチングトランジスタS4_Bが直列に接続され、第3垂直ブリッジアーム内の第1スイッチングトランジスタS1_Cと第4スイッチングトランジスタS4_Cが直列に接続される。
各水平ブリッジアームが、逆直列接続された2つのスイッチングトランジスタを含む。例えば、第1水平ブリッジアーム内の第2スイッチングトランジスタS2_Aと第3スイッチングトランジスタS3_Aが直列に接続され、第2水平ブリッジアーム内の第2スイッチングトランジスタS2_Bと第3スイッチングトランジスタS3_Bが直列に接続され、第3水平ブリッジアーム内の第2スイッチングトランジスタS2_Cと第3スイッチングトランジスタS3_Cが直列に接続される。
各垂直ブリッジアーム内の2つのスイッチングトランジスタ(第1スイッチングトランジスタS1及び第4スイッチングトランジスタS4)の接続点が、そのブリッジアームに対応する出力端子である。例えば、第1垂直ブリッジアームの出力端子はAであり、第2垂直ブリッジアームの出力端子はBであり、第3垂直ブリッジアームの出力端子はCである。すなわち、第1ブリッジアームはA相電圧を出力し、第2ブリッジアームはB相電圧を出力し、第3ブリッジアームはC相電圧を出力する。これら3つの出力端子がモータ13に結合されるように構成される。
水平ブリッジアームの両端が、それぞれ、垂直ブリッジアームの出力端子及び中性点nに結合される。例えば、第1水平ブリッジアームの両端が、それぞれ、第1垂直ブリッジアームの出力端子A及び中性点nに結合され、第2水平ブリッジアームの両端が、それぞれ、第2垂直ブリッジアームの出力端子B及び中性点nに結合され、第3水平ブリッジアームの両端が、それぞれ、第3垂直ブリッジアームの出力端子C及び中性点nに結合される。
各垂直ブリッジアーム又は各水平ブリッジアームは更に、スイッチングトランジスタにそれぞれ逆並列接続された2つのダイオードD0を含む。
なお、T型三相フルブリッジ3レベルインバータ回路の水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタと、垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタとが、異なる種類のデバイスであってもよい。例えば、水平ブリッジ回路にMOSトランジスタが使用されるとともに、垂直ブリッジ回路にIGBTが使用されたり、水平ブリッジ回路にIGBTが使用されるとともに、垂直ブリッジ回路にMOSトランジスタが使用されたりする。
図2のI型三相フルブリッジ3レベルインバータ回路と比較して、図3のT型三相フルブリッジ3レベルインバータ回路では、クランプダイオードを用いて出力端子を中性点nにクランプするようにはなっておらず、代わりに、水平ブリッジアーム内の逆直列接続された2つのスイッチングトランジスタ(例えば、第1水平ブリッジアーム内の第2スイッチングトランジスタS2_A及び第3スイッチングトランジスタS3_A)を用いて垂直ブリッジアームの出力端子(例えば、第1垂直ブリッジアームの出力端子A)を中性点nに接続することで、垂直ブリッジアームの出力端子を中性点nにクランプしている。
T型三相フルブリッジ3レベルインバータ回路の動作モードを、第1垂直ブリッジアーム及び第1水平ブリッジアームを例として用いて説明する。中性点nの電圧が基準ゼロ電位であり、且つ第1垂直ブリッジアームの出力端子Aからモータに電流が流れる方向が正方向であると仮定する。
(1)第1スイッチングトランジスタS1_A及び第2スイッチングトランジスタS2_Aが導通され、且つ第3スイッチングトランジスタS3_A及び第4スイッチングトランジスタS4_Aが遮断されるとき、電流の向きが正であるか負であるかにかかわらず、出力端子Aによって出力される電圧は直流電源の電圧Vdcの半分、すなわち、Vdc/2となる。
(2)第2スイッチングトランジスタS2_A及び第3スイッチングトランジスタS3_Aが導通され、且つ第1スイッチングトランジスタS1_A及び第4スイッチングトランジスタS4_Aが遮断されるとき、第2スイッチングトランジスタS2_A及び第3スイッチングトランジスタS3_Aが出力端子Aを中性点nにクランプし、電流の向きが正であるか負であるかにかかわらず、出力端子Aによって出力される電圧は0となる。
(3)第3スイッチングトランジスタS3_A及び第4スイッチングトランジスタS4_Aが導通され、且つ第1スイッチングトランジスタS1_A及び第2スイッチングトランジスタS2_Aが遮断されるとき、電流の向きが正であるか負であるかにかかわらず、出力端子Aによって出力される電圧は-Vdc/2となる。
要するに、I型三相フルブリッジ3レベルインバータ回路であるのか、T型三相フルブリッジ3レベルインバータ回路であるのかにかかわらず、各出力端子によって出力される電圧に3つのレベルが存在する。従って、三相フルブリッジ2レベルインバータ回路と比較して、三相フルブリッジ3レベルインバータ回路によって出力される電圧及び電流では高調波が低い。しかしながら、三相フルブリッジ2レベルインバータ回路と比較して、三相フルブリッジ3レベルインバータ回路のスイッチングトランジスタの数が2倍であり、全てのスイッチングトランジスタが同じ電流容量を持つ。全てのスイッチングトランジスタが連続して動作すると、全てのスイッチングトランジスタが損傷されやすい。従って、コストが増加する。
この出願の実施形態はMCU及び制御方法を提供する。T型三相フルブリッジ3レベルインバータ回路を基礎として、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタが、モータのトルク、出力端子によって出力される電流、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの温度、及び水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの端子電圧に基づいて制御される。低トルク領域で、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタが有効化される。この場合、なおもT型三相フルブリッジ3レベルインバータ回路(簡潔に3レベル動作モードと呼ぶことがある)が存在し、システム効率が向上され、航続走行可能距離が増加される。それ以外では、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタが無効化される。この場合には、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタが損傷されることを防ぐために、三相フルブリッジ2レベルインバータ回路(簡潔に2レベル動作モードと呼ぶことがある)への劣化が存する。また、インバータ回路のコストを低減させるために、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの電流容量が、垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの電流容量よりも小さい。さらに、異なる動作モード間での切り換えが行われる前、後、及び時に全てのスイッチングトランジスタを保護できることを確保するように、スイッチングトランジスタが保護される。
図7に示すように、この出願の一実施形態はMCU11を提供する。MCU11は、モータの回転数を制御するために、モータのトルク、又はMCU11の出力端子によって出力される電流を取得し、該トルクと該電流とのうち一方をモータのQ軸電流Iq及びD軸電流Idへと変換(例えば、テーブルをルックアップすることによって該トルクと該電流とのうち一方を変換)し、対応するQ軸電圧Uq及び対応するD軸電圧Udを取得し、更なる計算を行ってPWM制御信号の比較値を取得し、デューティサイクルを計算し、該デューティサイクルに基づいて、スイッチングトランジスタを導通及び遮断すべく制御し、直流電源12によって出力される直流を交流に変換し、モータ13に電力を供給し、出力交流の電圧及び電流を制御する。
MCU11は、三相フルブリッジ3レベルインバータ回路111、制御装置112、水平ブリッジ駆動回路113、及び垂直ブリッジ駆動回路114を含む。
三相フルブリッジ3レベルインバータ回路111は、図3に示したT型三相フルブリッジ3レベルインバータ回路であり、すなわち、水平ブリッジ回路及び垂直ブリッジ回路を含む。三相フルブリッジ3レベルインバータ回路111の構成の説明については、上述の説明を参照されたい。詳細をここで繰り返すことはしない。
制御装置112は、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタを導通又は遮断すべく駆動するために、水平ブリッジ駆動回路113を用いることにより、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタにPWM制御信号を送り得る。制御装置112は、垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタを導通又は遮断すべく駆動するために、垂直ブリッジ駆動回路114を用いることにより、垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタにPWM制御信号を送り得る。PWM制御信号は周期的なハイ-ローレベル信号である。
垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの電流容量は、モータ13の最大電流以上であり、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの電流容量は、垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの電流容量よりも小さい。例えば、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの電流容量は、垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの電流容量の1/6であってもよい。あるいは、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの電流容量と垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの電流容量との間の比率は、実際の適用シナリオを参照して決定され得る。具体的なやり方はこの出願において限定されることではない。
水平ブリッジ回路(又は垂直ブリッジ回路)内のスイッチングトランジスタをどのように制御するのかを以下にて説明する。
取り得る一実装において、水平ブリッジ回路(又は垂直ブリッジ回路)内のスイッチングトランジスタは、水平ブリッジ回路(又は垂直ブリッジ回路)内のスイッチングトランジスタにイネーブル信号を送ることによって有効化されることができ、また、水平ブリッジ回路(又は垂直ブリッジ回路)内のスイッチングトランジスタは、水平ブリッジ回路(又は垂直ブリッジ回路)内のスイッチングトランジスタにディセーブル信号を送ることによって無効化されることができる。
例えば、スイッチングトランジスタがNチャネルMOSトランジスタである場合、制御装置112は、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタを無効化するために、水平ブリッジ駆動回路113を用いて、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタのゲートにローレベル(ディセーブル信号)を出力して該スイッチングトランジスタを遮断し、また、制御装置112は、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタを有効化するために、水平ブリッジ駆動回路113を用いて、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタのゲートにPWM制御信号(イネーブル信号)を出力する。
制御装置112は、垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタを無効化するために、垂直ブリッジ駆動回路114を用いて、垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタのゲートにローレベル(ディセーブル信号)を出力して該スイッチングトランジスタを遮断し、また、制御装置112は、垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタを有効化するために、垂直ブリッジ駆動回路114を用いて、垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタのゲートにPWM制御信号(イネーブル信号)を出力する。
他の取り得る一実装において、水平ブリッジ回路(又は垂直ブリッジ回路)内のスイッチングトランジスタは、物理的なスイッチを用いて有効化又は無効化されてもよい。
オプションで、水平ブリッジ回路と中性点との間に水平ブリッジ保護スイッチK1が更に存在してもよく、あるいは、水平ブリッジ回路と垂直ブリッジ回路との間に水平ブリッジ保護スイッチK2が更に存在してもよい。制御装置112が水平ブリッジ保護スイッチK1又は水平ブリッジ保護スイッチK2を閉じるように制御するとき、水平ブリッジ回路は三相フルブリッジ3レベルインバータ回路111に接続される。これは、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタを有効化にすることに相当する。制御装置112が水平ブリッジ保護スイッチK1又は水平ブリッジ保護スイッチK2を開くように制御するとき、水平ブリッジ回路は三相フルブリッジ3レベルインバータ回路111から切り離される。これは、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタを無効化することに相当する。
オプションで、垂直ブリッジ回路とバスの正極及び負極の各々との間に垂直ブリッジ保護スイッチK3が更に存在してもよい。制御装置112が垂直ブリッジ保護スイッチK3を閉じるように制御するとき、垂直ブリッジ回路は三相フルブリッジ3レベルインバータ回路111に接続される。これは、垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタを有効化することに相当する。制御装置112が垂直ブリッジ保護スイッチK3を開くように制御するとき、垂直ブリッジ回路は三相フルブリッジ3レベルインバータ回路111から切り離される。これは、垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタを無効化することに相当する。
制御装置112は、図8に示す制御方法を実行し得る:
S801. 水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタを、モータのトルク、垂直ブリッジ回路の出力端子によって出力される電流、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの温度、及び水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの端子電圧に基づいて制御する。
モータのトルクと、垂直ブリッジ回路の出力端子によって出力される電流とは、線形に相関し合い、あるいは互いに等価であり得る。従って、トルクと電流のいずれを測定してもよい。
モータのトルクは、上述の平衡力法、伝達法、若しくはエネルギー変換法、又はこれらに類するものを用いて測定され得る。MCUの出力端子(すなわち、垂直ブリッジ回路の出力端子)とモータとの間の経路上に変流器を設置することができ、該変流器の電流を測定することによって、垂直ブリッジ回路の出力端子によって出力される電流が間接的に測定される。上述のように、インバータ回路によって出力される交流は標準的な正弦波交流ではなく、それ故に整流測定法には適さず、上述の電磁測定法又は電気測定法が使用され得る。
スイッチングトランジスタの温度及び端子電圧を測定する方法については、上述の説明を参照されたい。詳細をここで繰り返すことはしない。
具体的には、図10に示すように、このステップは以下を含み得る:
S8011. モータのトルクが第1トルク閾値より高い、又は垂直ブリッジ回路の出力端子によって出力される電流が第1過電流閾値より大きい、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの温度が第1温度閾値より高い、又は水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの端子電圧が第1電圧閾値より高い場合に、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタを無効化する。
モータのトルクが第1トルク閾値より高いという条件と、垂直ブリッジ回路の出力端子によって出力される電流が第1過電流閾値より大きいという条件は、互いに等価である。
この出願のこの実施形態において、水平ブリッジ回路であるか垂直ブリッジ回路であるかにかかわらず、スイッチングトランジスタの温度が特定の温度閾値より高いケースは、スイッチングトランジスタに過熱が存するケースとして参照されてもよく、また、スイッチングトランジスタの端子電圧が特定の電圧閾値より高いケースは、スイッチングトランジスタに過電圧が存するケースとして参照されてもよい。どちらのケースでも、スイッチングトランジスタが不全であるとみなされ得る。
S8012. モータのトルクが第1トルク閾値より高くない、又は出力端子によって出力される電流が第1過電流閾値より大きくない、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの温度が第1温度閾値より高くない、及び水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの端子電圧が第1電圧閾値より高くない場合に、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタを有効化する。
換言すれば、モータのトルクが第1トルク閾値以下である、又は垂直ブリッジ回路の出力端子によって出力される電流が第1過電流閾値以下である、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの温度が第1温度閾値以下である、及び水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの端子電圧が第1電圧閾値以下である場合には、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタが有効化される。
第1過電流閾値は、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの電流容量以下とし得る。例えば、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの電流容量は、垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの電流容量の1/6である。この場合、第1過電流閾値は、垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの電流容量の1/6以下とし得る。
モータのトルクは、垂直ブリッジ回路の出力端子によって出力される電流と正の相関がある。従って、モータのピークトルクに対する第1トルク閾値の比は、垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの電流容量に対する第1過電流閾値の比以下とし得る。例えば、トルク閾値は、モータのピークトルクの1/6以下とし得る。
垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタ及び水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタが有効化されるとき、それは、MCUが3レベル動作モードに入ることに相当する。垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタが有効化され、且つ水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタが無効化されるとき、それは、MCUが2レベル動作モードに入ることに相当する。垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタをどのように有効化するかについては、垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタは常に有効化されてもよく、あるいは、図9及び図10に示す制御方法を用いて、垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタを有効化する時が決定される。これはこの出願において限定されることではない。特段の断りがない限り、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタはデフォルトでは有効化されているとみなされ、それ故に、MCUが3レベル動作モードと2レベル動作モードとの間で切り換えられるときに、垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタはデフォルトで有効化されているとみなされる。
モータのトルクが第1トルク閾値より低いとき(低トルク領域)、システム効率を向上させるために、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタが有効化され、MCUは3レベル動作モードにある。また、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの電流値は対応する電流容量よりも小さく、それ故に、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタが損傷されることはない。モータのトルクが第1トルク閾値以上であるとき(高トルク領域)、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの電流値が対応する電流容量を超えることがある。この場合、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタが損傷されるケースを回避するために、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタが無効化され、MCUは2レベル動作モードにある。
2レベル動作モードと3レベル動作モードとの間でMCUが頻繁に切り換えられることを防ぐために、第1過電流閾値又は第1トルク閾値に閾値ヒステリシスを導入してもよい。すなわち、ステップS8012で、第1過電流閾値が、第1過電流閾値と過電流閾値ヒステリシスとの間の差で置き換えられ、第1トルク閾値が、第1トルク閾値とトルク閾値ヒステリシスとの間の差で置き換えられる。
例えば、MCUが3レベル動作モードで動作しているときに、垂直ブリッジ回路の出力端子によって出力される電流が第1過電流閾値より大きい、又はモータのトルクが第1トルク閾値より高い場合、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタが無効化され、換言すれば、2レベル動作モードへの切り換えが行われる。MCUが2レベル動作モードで動作しているときに、垂直ブリッジ回路の出力端子によって出力される電流が第1過電流閾値と過電流閾値ヒステリシスとの間の差より小さい、又はモータのトルクが第1トルク閾値とトルク閾値ヒステリシスとの間の差以下である場合、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタが有効化され、換言すれば、3レベル動作モードへの切り換えが行われる。
なお、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタを有効化又は無効化した後に、制御装置は更に、垂直ブリッジ回路の出力端子によって出力される電圧が変化しないままであるように、PWM制御信号のデューティサイクルを調整し得る。三相フルブリッジ2レベルインバータ回路と三相フルブリッジ3レベルインバータ回路とでは、異なる電圧を出力する。従って、電圧脈動がモータに影響を及ぼすことを防ぐために、垂直ブリッジ回路の出力端子によって出力される電圧が変化しないままであるように、PWM制御信号のデューティサイクルが調整される。
また、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタを有効化又は無効化した後に、制御装置は更に、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタが過電流によって損傷されるケースを回避するために、垂直ブリッジ回路の出力端子によって出力される電流が第1過電流閾値より小さくなるようにPWM制御信号のデューティサイクルを調整し得る。
図11に示すように、2レベル動作モードでは、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタ(第2スイッチングトランジスタS2_A/S2_B/S2_C、及び第3スイッチングトランジスタS3_A/S3_B/S3_C)が無効化され、垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタ(第1スイッチングトランジスタS1_A/S1_B/S1_C、及び第4スイッチングトランジスタS4_A/S4_B/S4_C)が周期的に導通及び遮断される。
3レベル動作モードでは、各相の出力電圧がVdc/2のときのP状態が存在し、出力電圧が0であるときのO状態が存在し、且つ出力電圧が-Vdc/2であるときのN状態が存在すると、T型三相フルブリッジ3レベルインバータ回路では合計27個のスイッチング状態が存在する。
図12は、三相フルブリッジ3レベルインバータ回路における各電圧ベクトルの空間位置を示している。例えば、図中に示すセクタ内に基準電圧ベクトルVrefが位置するとき、基準電圧ベクトルVrefは、有効電圧ベクトルPP0(00N)、P00(0NN)、PNN、P0N、及びPPNと、ゼロベクトル(PPP/000/NNN)とを含む。別のセクタ内に位置する基準電圧ベクトルも同様の方法で計算される。
図13に示すように、3レベル動作モードでは、水平ブリッジ回路及び垂直ブリッジ回路の各々内の各ブリッジアームにおいて、一方のスイッチングトランジスタは導通又は遮断されたまま維持され、他方のスイッチングトランジスタが周期的に導通及び遮断される。
図12に示すセクタ内に基準電圧ベクトルが位置していて、3レベル動作モードから2レベル動作モードへの切り換えが行われるとき、図12に示した、基準電圧ベクトルVrefが有効電圧ベクトルPP0(00N)、P00(0NN)、PNN、P0N、及びPPNとゼロベクトル(PPP/000/NNN)とを含むケースから、図4に示した、基準電圧ベクトルVrefが有効電圧ベクトルV4(100)、V6(110)とゼロベクトルV0(000)/V7(111)とを含むケースへの切り換えが行われる。切り換えが行われるかにかかわらずに垂直ブリッジ回路の出力端子によって出力される電圧が変化しないままであるように、有効電圧ベクトルV4(100)及びV6(110)の各々の作用時間が調整される(PWM制御信号のデューティサイクルが調整される)。スイッチングトランジスタの動作状態を図14に示す。2レベル動作モードから3レベル動作モードへの切り換えを行うときには、切り換えのやり方が逆になる。
この出願の実施形態で提供されるモータ制御ユニット及び制御方法によれば、T型三相フルブリッジ3レベルインバータ回路を基礎として、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタが、モータのトルク、出力端子によって出力される電流、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの温度、及び水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの端子電圧に基づいて有効化又は無効化される。インバータ回路のシステム効率を向上させるために、低トルク領域では、MCUが3レベル動作モードで動作するように、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタが有効化される。三相フルブリッジインバータ回路内の全てのスイッチングトランジスタが連続動作する場合を避けるために、高トルク領域では水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタが無効化される。また、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの電流容量が、垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの電流容量よりも小さく、換言すれば、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの仕様を下げることができ、インバータ回路のコストが低減される。
図9に示すように、当該制御方法は更に以下を含み得る:
S901. 垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタを、モータのトルク、出力端子によって出力される電流、モータの回転数、垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの温度、及び垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの端子電圧に基づいて制御する。
具体的には、図10に示すように、このステップは以下を含む:
S9011. モータのトルクが第2トルク閾値より高い、又は出力端子によって出力される電流が第2過電流閾値より大きいときに、モータの回転数が回転数閾値以下である、垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの温度が第2温度閾値より高い、又は垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの端子電圧が第2電圧閾値より高い場合に、垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタを無効化して、垂直ブリッジ回路を保護する。
垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの電流容量は、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの電流容量よりも大きく、それ故に、第2過電流閾値は第1過電流閾値より大きいが、垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの電流容量以下である。また、モータのトルクは、垂直ブリッジ回路の出力端子によって出力される電流と正の相関があり、それ故に、第2トルク閾値は第1トルク閾値より大きいが、モータのピークトルク以下である。
S9012. モータの回転数が回転数閾値より高い、垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの温度が第2温度閾値より高くない、及び垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの端子電圧が第2電圧閾値より高くない場合に、垂直ブリッジ回路内の上側ハーフブリッジスイッチングトランジスタ又は下側ハーフブリッジスイッチングトランジスタを導通させて、モータの巻線を短絡させる。
換言すれば、モータのトルクが第2トルク閾値より高い、又は出力端子によって出力される電流が第2過電流閾値より大きいときに、モータの回転数が回転数閾値より高い、垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの温度が第2温度閾値以下である、及び垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの端子電圧が第2電圧閾値以下である場合には、垂直ブリッジ回路内の上側ハーフブリッジスイッチングトランジスタ又は下側ハーフブリッジスイッチングトランジスタが導通されて、モータの巻線を短絡させる。
S9013. モータのトルクが第2トルク閾値以下である、又は出力端子によって出力される電流が第2過電流閾値以下であるときに、垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタを有効化する。
垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの電流容量は、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの電流容量よりも大きく、換言すれば、垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの仕様は、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの仕様よりも高い。従って、垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタは、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタよりも電圧及び高温に耐性があり、第2電圧閾値は第1電圧閾値より高く、第2温度閾値は第1温度閾値より高い。
垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタ及び水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタが無効化されるとき、それは、MCUがシャットダウンモードに入ることに相当する。
この出願の一実施形態は更に、コンピュータ読み取り可能記憶媒体を提供する。当該コンピュータ読み取り可能記憶媒体はコンピュータプログラムを格納している。該コンピュータプログラムがコンピュータ又はプロセッサ上で実行されるとき、図8から図10の制御方法が実行される。
この出願の一実施形態は更に、命令を含んだコンピュータプログラムプロダクトを提供する。該命令がコンピュータ又はプロセッサ上で実行されるとき、図8から図10の制御方法が実行される。
この出願の一実施形態はチップシステムを提供する。当該チップシステムは、図8から図10の制御方法を実行するように構成されたプロセッサを含む。
取り得る一設計において、当該チップシステムは更にメモリを含む。該メモリは、必要なプログラム命令及びデータを格納するように構成される。当該チップシステムは、チップと集積回路とを含んでもよいし、チップと別のディスクリートデバイスとを含んでもよい。これは、この出願のこの実施形態において特に制限されることではない。
この出願で提供されるコンピュータ読み取り可能記憶媒体、コンピュータプログラムプロダクト、又はチップシステムは、上述の方法を実行するように構成される。従って、当該コンピュータ読み取り可能記憶媒体、コンピュータプログラムプロダクト、又はチップシステムによって達成されることができる有益な効果については、上で提供された実装における有益な効果を参照されたい。詳細をここで説明することはしない。
この出願の実施形態におけるプロセッサはチップとし得る。例えば、プロセッサは、フィールドプログラマブルゲートアレイ(field-programmable gate array、FPGA)、特定用途向け集積回路(application specific integrated circuit、ASIC)、システム・オン・チップ(system on chip、SoC)、又は中央プロセッサユニット(central processor unit、CPU)、ネットワークプロセッサ(network processor、NP)、デジタル信号プロセッサ(digital signal processor、DSP)、マイクロコントローラユニット(micro controller unit、MCU)、又はプログラマブルロジックデバイス(programmable logic device、PLD)、又は他の集積チップとし得る。
この出願の実施形態におけるメモリは、揮発性メモリ又は不揮発性メモリとすることができ、あるいは、揮発性メモリ及び不揮発性メモリを含んでもよい。不揮発性メモリは、読み出し専用メモリ(read-only memory、ROM)、プログラム可能読み出し専用メモリ(programmable ROM、PROM)、消去可能プログラム可能読み出し専用メモリ(erasable PROM、EPROM)、電気的消去可能プログラム可能読み出し専用メモリ(Electrically EPROM、EEPROM)、又はフラッシュメモリとし得る。揮発性メモリは、ランダムアクセスメモリ(random access memory、RAM)とすることができ、外部キャッシュとして使用される。限定ではなく例として、例えば、スタティックランダムアクセスメモリ(static RAM、SRAM)、ダイナミックランダムアクセスメモリ(dynamic RAM、DRAM)、同期ダイナミックランダムアクセスメモリ(synchronous DRAM、SDRAM)、ダブルデータレート同期ダイナミックランダムアクセスメモリ(double data rate SDRAM、DDR SDRAM)、エンハンスト同期ダイナミックランダムアクセスメモリ(enhanced SDRAM、ESDRAM)、シンクリンクダイナミックランダムアクセスメモリ(synchlink DRAM、SLDRAM)、及びダイレクトランバスランダムアクセスメモリ(direct rambus RAM、DR RAM)といった、数多くの形態のRAMが使用され得る。なお、この明細書に記載されたシステム及び方法におけるメモリは、以下に限られないが、これらのメモリ、及び他の適切なタイプの任意のメモリを含む。
理解されるべきことには、上述のプロセスのシーケンス番号は、この出願の実施形態における実行シーケンスを意味するものではない。プロセスの実行シーケンスは、プロセスの機能及び内部ロジックに従って決定されるべきであり、この出願の実施形態の実装プロセスに対する如何なる限定も構成すべきでない。
当業者が認識し得ることには、この明細書に開示された実施形態にて説明された例と組み合わせて、ユニット及びアルゴリズムステップが、エレクトロニクスハードウェア又はコンピュータソフトウェアとエレクトロニクスハードウェアとの組み合わせによって実装され得る。機能がハードウェアによって実行されるのか、それともソフトウェアによって実行されるのかは、これらの技術的ソリューションの具体的な用途及び設計制約条件に依存する。当業者は、記載された機能を、具体的な用途ごとに異なる方法を用いて実装し得るが、その実装はこの出願の範囲を超えるものであるとみなされるべきでない。
当業者によって明確に理解されるべきことには、簡便で簡潔な説明のため、前述のシステム、装置、及びユニットの詳細な動作プロセスについては、前述の方法実施形態における対応するプロセスを参照されたい。詳細をここで再び説明することはしない。
この出願で提供される幾つかの実施形態において、理解されるべきことには、開示されたシステム、装置、及び方法は、他の方式で実装されてもよい。例えば、前述の装置実施形態は単なる例である。例えば、ユニットへの分割は、単なる論理機能分割であり、実際の実装においては別の分割であってもよい。例えば、複数のユニット又はコンポーネントが他のシステムへと結合又は統合されてもよいし、あるいは、一部の機構が無視されたり実行されなかったりしてもよい。また、図示又は説明された相互の結合、直接的な結合、又は通信接続は、何らかのインタフェースを介して実装されてもよい。装置又はユニット間の間接的な結合又は通信接続は、電子的な形態、機械的な形態、又は他の形態で実装されてもよい。
別々の部分として記載されたユニットは、物理的に分離されてもよいし、されなくてもよく、また、ユニットとして図示された部分は、物理的なユニットであってよいし、なくてもよく、1つの位置に置かれてもよく、あるいは、複数のネットワークユニット上に分散されてもよい。ユニットの一部又は全てが、実施形態のソリューションの目的を達成するための実際の要求に基づいて選択され得る。
また、この出願の実施形態における複数の機能ユニットが1つの処理ユニットへと統合されてもよく、それらのユニットの各々が物理的に単独で存在してもよく、あるいは、2つ以上のユニットが1つのユニットへと統合されてもよい。
上述の実施形態の全て又は一部は、ソフトウェア、ハードウェア、ファームウェア、又はこれらの任意の組み合わせを用いることによって実装され得る。実施形態を実装するのにソフトウェアプログラムが使用されるとき、実施形態の全て又は一部がコンピュータプログラムプロダクトの形態で実装されてもよい。コンピュータプログラムプロダクトは、1つ以上のコンピュータ命令を含む。コンピュータプログラム命令がコンピュータ上にロードされて実行されるとき、この出願の実施形態に従ったプロシージャ又はファンクションが完全に又は部分的に生成される。コンピュータは、汎用コンピュータ、専用コンピュータ、コンピュータネットワーク、又は他のプログラム可能な装置とし得る。コンピュータ命令は、コンピュータ読み取り可能記憶媒体に格納されることができ、あるいは、あるコンピュータ読み取り可能記憶媒体から別のコンピュータ読み取り可能記憶媒体へと伝送されてもよい。例えば、コンピュータ命令は、あるウェブサイト、コンピュータ、サーバ、又はデータセンターから、別のウェブサイト、コンピュータ、サーバ、又はデータセンターに、有線方式(例えば、同軸ケーブル、光ファイバ、又はデジタル加入者回線(Digital Subscriber Line、DSL))又は無線方式(例えば、赤外線、無線、又はマイクロ波)で伝送され得る。コンピュータ読み取り可能記憶媒体は、コンピュータによってアクセス可能な任意の使用可能な媒体、又は1つ以上の使用可能な媒体を統合する例えばサーバ若しくはデータセンターなどのデータストレージ装置とし得る。使用可能な媒体は、磁気媒体(例えば、フロッピーディスク、ハードディスク、又は磁気テープ)、光媒体(例えば、DVD)、半導体媒体(例えば、ソリッドステートディスク(solid state disk、SSD))、又はこれらに類するものとし得る。
以上の説明は、単にこの出願の特定の実装であり、この出願の保護範囲を限定する意図ではない。この出願にて開示された技術範囲内で当業者が容易に考え付く如何なる変更又は置換もこの出願の保護範囲に入るものである。従って、この出願の保護範囲は請求項の保護範囲に従うものである。
この出願は、インバータ回路の分野に関し、特に、モータ制御ユニット(motor control unit、MCU)、制御方法、及びパワーアセンブリに関連している。
電気自動車では、バッテリがインバータ回路を介してモータに電流を送る。インバータ回路は通常、三相フルブリッジインバータ回路である。三相フルブリッジインバータ回路は、三相フルブリッジ2レベルインバータ回路と三相フルブリッジ3レベルインバータ回路を含む。2レベルとは、出力相電圧に2レベルの状態があることを意味し、3レベルとは、出力相電圧に3レベルの状態があることを意味する。
三相フルブリッジ2レベルインバータ回路によって出力される電圧及び電流には比較的高い高調波が存在し、その結果、モータの損失が増加する。また、三相フルブリッジ2レベルインバータ回路が電気自動車に適用される場合、低トルク領域で、パワーが小さく、スイッチング損失が大きな割合を占め、インバータ回路のシステム効率が低く、航続走行可能距離が減少する。三相フルブリッジ2レベルインバータ回路と比較して、三相フルブリッジ3レベルインバータ回路のスイッチングトランジスタの数が2倍であり、全てのスイッチングトランジスタが同じ電流容量を持つ。全てのスイッチングトランジスタが連続して動作すると、全てのスイッチングトランジスタが損傷されやすい。従って、コストが増加する。
この出願の実施形態は、インバータ回路のコストを低減させるとともに、インバータ回路のシステム効率を向上させるための、MCU、制御方法、及びパワーアセンブリを提供する。
上述の目的を達成するため、この出願の実施形態では以下の技術的ソリューションが使用される。
第1の態様によれば、モータ制御ユニットが提供され、当該モータ制御ユニットは、三相フルブリッジ3レベルインバータ回路と制御装置とを含む。三相フルブリッジ3レベルインバータ回路は、垂直ブリッジ回路及び水平ブリッジ回路を含む。垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの電流容量は、モータの最大電流以上である。水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの電流容量は、垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの電流容量よりも小さい。制御装置は、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタを、モータのトルク、垂直ブリッジ回路の出力端子によって出力される電流、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの温度、及び水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの端子電圧に基づいて制御するように構成される。
この出願のこの実施形態で提供されるモータ制御ユニットによれば、T型三相フルブリッジ3レベルインバータ回路を基礎として、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタが、モータのトルク、出力端子によって出力される電流、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの温度、及び水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの端子電圧に基づいて制御される。インバータ回路のシステム効率を向上させるために、低トルク領域では、当該MCUが3レベル動作モードで動作するように、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタが有効化される。三相フルブリッジインバータ回路内の全てのスイッチングトランジスタが連続動作する場合を避けるために、高トルク領域では水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタが無効化される。また、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの電流容量が、垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの電流容量よりも小さく、換言すれば、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの仕様を下げることができ、インバータ回路のコストが低減される。
取り得る一実装において、制御装置は具体的に、モータのトルクが第1トルク閾値より高い、又は出力端子によって出力される電流が第1過電流閾値より大きい、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの温度が第1温度閾値より高い、又は水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの端子電圧が第1電圧閾値より高い場合に、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタを無効化し、モータのトルクが第1トルク閾値より高くない、又は出力端子によって出力される電流が第1過電流閾値より大きくない、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの温度が第1温度閾値より高くない、及び水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの端子電圧が第1電圧閾値より高くない場合に、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタを有効化する、ように構成される。この実装では、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタに関する過電流、過熱、又は過電圧を回避するように、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタを保護することができる。
取り得る一実装において、制御装置は、垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタを、モータのトルク、出力端子によって出力される電流、モータの回転数、垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの温度、及び垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの端子電圧に基づいて制御する、ように構成される。
取り得る一実装において、制御装置は具体的に、モータのトルクが第2トルク閾値より高い、又は出力端子によって出力される電流が第2過電流閾値より大きいときに、モータの回転数が回転数閾値以下である、垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの温度が第2温度閾値より高い、又は垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの端子電圧が第2電圧閾値より高い場合に、垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタを無効化し、モータの回転数が回転数閾値より高い、垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの温度が第2温度閾値より高くない、及び垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの端子電圧が第2電圧閾値より高くない場合に、垂直ブリッジ回路内の上側ハーフブリッジスイッチングトランジスタ又は下側ハーフブリッジスイッチングトランジスタを導通させ、モータのトルクが第2トルク閾値以下である、又は出力端子によって出力される電流が第2過電流閾値以下であるときに、垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタを有効化する、ように構成される、この実装では、垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタに関する過電流、過熱、又は過電圧を回避するように、垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタを保護することができる。
取り得る一実装において、制御装置は、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタを有効化又は無効化した後に、出力端子によって出力される電圧が変化しないままであるように、パルス幅変調制御信号のデューティサイクルを調整する、ように構成される。三相フルブリッジ2レベルインバータ回路と三相フルブリッジ3レベルインバータ回路とでは、異なる電圧を出力する。従って、電圧脈動がモータに影響を及ぼすことを防ぐために、垂直ブリッジ回路の出力端子によって出力される電圧が変化しないままであるように、PWM制御信号のデューティサイクルが調整される。
第2の態様によれば、モータ制御ユニットの制御方法が提供され、当該制御方法は、第1の態様又は第1の態様の実装のうちのいずれか1つにおけるモータ制御ユニットに適用される。当該制御方法は、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタを、モータのトルク、三相フルブリッジ3レベルインバータ回路の垂直ブリッジ回路の出力端子によって出力される電流、三相フルブリッジ3レベルインバータ回路の水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの温度、及び水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの端子電圧に基づいて制御すること、を含む。
取り得る一実装において、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタを、モータのトルク、三相フルブリッジ3レベルインバータ回路の垂直ブリッジ回路の出力端子によって出力される電流、三相フルブリッジ3レベルインバータ回路の水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの温度、及び水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの端子電圧に基づいて制御することは、モータのトルクが第1トルク閾値より高い、又は出力端子によって出力される電流が第1過電流閾値より大きい、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの温度が第1温度閾値より高い、又は水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの端子電圧が第1電圧閾値より高い場合に、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタを無効化し、モータのトルクが第1トルク閾値より高くない、又は出力端子によって出力される電流が第1過電流閾値より大きくない、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの温度が第1温度閾値より高くない、及び水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの端子電圧が第1電圧閾値より高くない場合に、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタを有効化する、ことを含む。
取り得る一実装において、当該方法は、垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタを、モータのトルク、出力端子によって出力される電流、モータの回転数、垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの温度、及び垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの端子電圧に基づいて制御すること、を含む。
取り得る一実装において、垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタを、モータのトルク、出力端子によって出力される電流、モータの回転数、垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの温度、及び垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの端子電圧に基づいて制御することは、モータのトルクが第2トルク閾値より高い、又は出力端子によって出力される電流が第2過電流閾値より大きいときに、モータの回転数が回転数閾値以下である、垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの温度が第2温度閾値より高い、又は垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの端子電圧が第2電圧閾値より高い場合に、垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタを無効化し、モータの回転数が回転数閾値より高い、垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの温度が第2温度閾値より高くない、及び垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの端子電圧が第2電圧閾値より高くない場合に、垂直ブリッジ回路内の上側ハーフブリッジスイッチングトランジスタ又は下側ハーフブリッジスイッチングトランジスタを導通させ、モータのトルクが第2トルク閾値以下である、又は出力端子によって出力される電流が第2過電流閾値以下であるときに、垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタを有効化する、ことを含む。
取り得る一実装において、当該方法は、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタが有効化又は無効化された後に、出力端子によって出力される電圧が変化しないままであるように、パルス幅変調制御信号のデューティサイクルを調整すること、を含む。
第3の態様によれば、パワーアセンブリが提供され、当該パワーアセンブリは、第1の態様又は第1の態様の実装のうちのいずれか1つにおけるモータ制御ユニットと、直流電源と、モータとを含む。モータ制御ユニットが、直流電源によって出力される直流を交流に変換し、モータに電力を供給し、モータの回転数を制御するように構成される。
第4の態様によれば、コンピュータ読み取り可能記憶媒体が提供される。当該コンピュータ読み取り可能記憶媒体はコンピュータプログラムを格納している。該コンピュータプログラムがコンピュータ上で実行されるとき、第2の態様及び第2の態様の実装のうちのいずれか1つにおける方法が実行される。
第5の態様によれば、命令を含んだコンピュータプログラムプロダクトが提供される。該命令がコンピュータ又はプロセッサ上で実行されるとき、第2の態様及びその実装のうちのいずれか1つにおける方法が実行される。
第2の態様から第5の態様の技術的効果については、第1の態様のコンテンツを参照されたい。詳細をここで繰り返すことはしない。
この出願の一実施形態に従ったパワーアセンブリ及びMCUの構成の概略図である。
この出願の一実施形態に従った他のパワーアセンブリ及び他のMCUの構成の概略図である。
この出願の一実施形態に従った更なる他のパワーアセンブリ及び更なる他のMCUの構成の概略図である。
この出願の一実施形態に従った三相フルブリッジ2レベルインバータ回路における各電圧ベクトルの空間位置の概略図である。
この出願の一実施形態に従った7セグメントPWM波形の概略図である。
この出願の一実施形態に従った、三相フルブリッジ2レベルインバータ回路とモータとが組み合わされた後に存するシステム効率の概略図である。
この出願の一実施形態に従った更に他のパワーアセンブリ及び更に他のMCUの構成の概略図である。
この出願の一実施形態に従った制御方法の概略フローチャートである。
この出願の一実施形態に従った他の制御方法の概略フローチャートである。
この出願の一実施形態に従った更なる他の制御方法の概略フローチャートである。
この出願の一実施形態に従った2レベル動作モードにおけるスイッチングトランジスタの導通状態の概略図である。
この出願の一実施形態に従った三相フルブリッジ3レベルインバータ回路における各電圧ベクトルの空間位置の概略図である。
この出願の一実施形態に従った3レベル動作モードにおけるスイッチングトランジスタの導通状態の概略図である。
この出願の一実施形態に従った、2レベル動作モードから3レベル動作モードへの切り換えが行われるときに存するスイッチングトランジスタの導通状態の概略図である。
この出願における一部概念を最初に説明する。
ボルト-秒バランス原理:ボルト-秒バランス原理はインダクタに対して最初に提案された。ボルト-秒の値はボルト-秒積である。スイッチング回路が安定に動作しているとき、スイッチング周期におけるインダクタの電流変化の積分は0であり、すなわち、インダクタを通過する電流増加と電流減少とが等しい。パルス幅変調(pulse width modulation、PWM)に適用される場合、ボルト-秒バランス原理は、次式:VON*TON=VOFF*TOFFに反映され、ここで、VONは、インダクタがオンにされるときに存するインダクタの両端の電圧を表し、VOFFは、インダクタがオフにされるときに存するインダクタの両端の電圧を表し、TONは、インダクタがオンにされる時間を表し、TOFFは、インダクタがオフにされる時間を表す。
モータのトルクを測定する方法には、以下に限られないが、平衡力法、伝達法、又はエネルギー変換法を含む。
平衡力法:定常動作状態における機械的伝達コンポーネントについて、モータスピンドル上にトルクTが存在し、モータ本体上にトルクT’が存在する。トルクTとトルクT’は、大きさにおいて等しく、向きにおいて逆である。モータ本体上のトルクT’を測定することによって、モータスピンドル上のトルクTを得ることができる。力のアーム上に作用する力をFとし、力のアームの長さをLとすると、T’=LFである。モータ本体によって測定点に及ぼされる力Fと、モータ本体と測定点の間の力のアームLとを測定することによって、T’を得ることができ、そして、トルクTが得られる。
伝達法:モータがトルクを弾性素子に伝達するとき、弾性素子の物理パラメータがある程度変化し、その変化とトルクとの間の対応関係を用いることにより、モータによって出力されるトルクを測定することができる。異なる物理パラメータに基づき、伝達法は、磁気弾性法、ひずみ法、振動ワイヤ法、又は光電法などを含む。現在、トルク測定の分野には伝達法が最も広く適用されている。
エネルギー変換法:エネルギー保存の法則に基づき、例えば熱エネルギー又は電気エネルギーなどの他のパラメータを測定することによって、モータのトルクが間接的に測定される。
交流電流を測定する方法は、以下に限られないが、電磁測定法、電気測定法、及び整流測定法を含む。
電磁測定法:測定対象の磁束の変化を検出することによって交流電流が測定される。
電気測定法:例えば、固定コイルを用いて一定の電流が接続され、可動コイルを用いて被測定電流が接続され得る。これら2つのコイルが互いに排他的にトルクを発生し、トルクと電流との間の対応関係に基づいて交流電流が測定される。
整流測定法:被測定交流電流が、整流を通じて直流に変換され、直流と交流との間の電流変換関係に基づいて交流電流が得られる。しかし、この方法は正弦波の交流電流の測定に限られる。
この出願の実施形態において、MCUの出力端子によって出力される交流電流は、モータのトルクと正の相関がある。MCUの出力端子によって出力される電流が大きいほど、モータのトルクが高いことを示し、MCUの出力端子によって出力される電流が小さいほど、モータのトルクが低いことを示す。
スイッチングトランジスタの温度及び端子電圧を測定する方法は次の通りである。スイッチングトランジスタの温度は、スイッチングトランジスタに温度センサを組み込むことによって測定され得る。スイッチングトランジスタの端子電圧は、直列に接続されたスイッチングトランジスタの両端に結合されたバス電圧を測定することによって決定され得る。
この出願におけるPWMは、空間ベクトルパルス幅変調(space vector pulse width modulation、SVPWM)、差動パルス幅変調(differential pulse width modulation、DPWM)、正弦波パルス幅変調(sinusoidal pulse width modulation、SPWM)、又はこれらに類するものを含み得る。
この出願における直流電源は、例えば太陽電池、リチウムバッテリ、鉛酸蓄電池、大型キャパシタ、燃料電池、固体バッテリなどの電源装置とし得る。
この出願におけるモータは、例えば永久磁石同期モータ又は誘導モータなどの交流モータとし得る。
この出願におけるスイッチングトランジスタは、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(insulated gate bipolar transistor、IGBT)、金属酸化膜半導体(metal oxide semiconductor、MOS)トランジスタ、又はこれらに類するものとし得る。
図1、図2、及び図3に示すように、この出願の一実施形態はパワーアセンブリを提供する。当該パワーアセンブリは、電気自動車、電気船舶、又は他の分野に適用され得る。
当該パワーアセンブリは、MCU11、直流電源12、及びモータ13を含む。直流電源12の2つの出力端子がMCU11の2つの入力端子に接続され、MCU11の三相出力端子がモータ13の三相入力端子に接続される。
例えば、MCU11は、図1に示す三相フルブリッジ2レベルインバータ回路、図2に示す中性点クランプI型三相フルブリッジ3レベルインバータ回路、又は図3に示すT型三相フルブリッジ3レベルインバータ回路を含み得る。
インバータ回路のコアデバイスはスイッチングトランジスタである。MCU11は、モータ13の回転数を制御するために、PWMを通じて、スイッチングトランジスタを導通・遮断すべく制御し、直流電源12によって出力される直流を交流に変換し、モータ13に電力を供給し、PWM制御信号のデューティサイクルを調整して出力交流の電圧及び電流を制御する。
図1に示す三相フルブリッジ2レベルインバータ回路は、キャパシタC1及び3つブリッジアームを含む。キャパシタC1の両端が、それぞれ、バスの正極及び負極に結合され、キャパシタC1の両端は、それぞれ、3つのブリッジアームの各々の両端に結合される。各ブリッジアームが、つまりは第1スイッチングトランジスタと第2スイッチングトランジスタである直列に接続された2つのスイッチングトランジスタを含み、これらスイッチングトランジスタにそれぞれ逆並列接続された2つのダイオードD0を含む。例えば、第1ブリッジアームの第1スイッチングトランジスタS1_Aと第2スイッチングトランジスタS2_Aが直列に接続され、第2ブリッジアームの第1スイッチングトランジスタS1_Bと第2スイッチングトランジスタS2_Bが直列に接続され、第3ブリッジアームの第1スイッチングトランジスタS1_Cと第2スイッチングトランジスタS2_Cが直列に接続される。
各ブリッジアームの第1スイッチングトランジスタと第2スイッチングトランジスタとの接続点が、そのブリッジアームに対応する出力端子である。例えば、第1ブリッジアームの出力端子はAであり、第2ブリッジアームの出力端子はBであり、第3ブリッジアームの出力端子はCである。すなわち、第1ブリッジアームはA相電圧を出力し、第2ブリッジアームはB相電圧を出力し、第3ブリッジアームはC相電圧を出力する。これら3つの出力端子がモータ13に結合されるように構成される。
同時に、各ブリッジアームにおいて、一方のスイッチングトランジスタが導通されるとともに、他方のスイッチングトランジスタが遮断されることが常に当てはまる。ブリッジアームの上側のスイッチングトランジスタが導通され、下側のスイッチングトランジスタが遮断される場合を状態1として定義し、上側のスイッチングトランジスタが遮断され、下側のスイッチングトランジスタが導通される場合を状態0として定義すると、3つのブリッジアームのスイッチングトランジスタは8つの異なる電圧ベクトルを形成する。8つの異なる電圧ベクトルは、6つの有効電圧ベクトル(V1(001)、V2(010)、V3(011)、V4(100)、V5(101)、及びV6(110))と、2つのゼロベクトル(V0(000)及びV7(111))とを含む。
図4は、三相フルブリッジ2レベルインバータ回路における各電圧ベクトルの空間位置を示している。例えば、基準電圧ベクトルVrefがセクタIII内に位置するとき、基準電圧ベクトルVrefは、2つの隣接する有効電圧ベクトルV4(100)及びV6(110)と、ゼロベクトルV0(000)/V7(111)とを含む。別のセクタ内に位置する基準電圧ベクトルも同様にして計算される。
基準電圧ベクトルに隣接する2つの有効電圧ベクトル及び0ベクトルの各々の作用時間を、ボルト-秒バランス原理に基づいて計算することができ、図5に示す7セグメントPWM波形を得ることができる。基準電圧ベクトルは、特定の瞬間に特定のセクタに作用する電圧ベクトルである。平均等価の原理に基づき、基準電圧ベクトルは、基準電圧ベクトルに隣接する2つの非ゼロ基底ベクトル及び0ベクトルと等価であるとし得る。
図5において、t0は0ベクトルの作用時間を表し、t1は基準電圧ベクトルに隣接する一方の有効電圧ベクトルの作用時間を表し、t2は基準電圧ベクトルに隣接する他方の有効電圧ベクトルの作用時間を表し、A/B/Cは、図1のA/B/Cに対応するものである三相出力を表している。分かり得ることには、各相の出力電圧には、つまりはハイレベルとローレベルとの2つのレベルのみが存在する。
図6は、三相フルブリッジ2レベルインバータ回路とモータとが組み合わされた後に存するシステム効率の概略図である。図中の勾配値がシステム効率を表している。分かり得ることには、低トルク領域では比較的低いシステム効率が存する。例えば、トルクが25Nm未満であるとき、システム効率は90%未満であり、トルクが5Nmであるとき、システム効率は80%未満である。
表1は、新欧州ドライビングサイクル(new European driving cycle、NEDC)によって公表された電気自動車の定常作動点データを示している。“モータのトルク(Nm)”の列のデータから分かり得ることには、電気自動車の定常作動点は低トルク領域に集中している。従って、電気自動車のMCUに三相フルブリッジ2レベルインバータ回路が使用される場合、非常に低いシステム効率が存する。
要するに、三相フルブリッジ2レベルインバータ回路によって出力される電圧には2つのレベルしかなく、比較的高い高調波が出力電圧及び出力電流に存在する。その結果、モータのトルクリプルが大きくなり、ノイズが強くなり、損失が増加する。また、電気自動車のMCUにこのトポロジーが使用されると、低トルク領域で、パワーが小さく、スイッチング損失が大きな割合を占め、システム効率が低く、航続走行可能距離が減少する。
図1に示す三相フルブリッジ2レベルインバータ回路と比較して、図2又は図3に示す三相フルブリッジ3レベルインバータ回路によって出力される電圧は3つのレベルを含み、出力電圧の波形が理想的な正弦波波形にいっそう似たものとなり、出力電圧及び出力電流の両方で高調波が低くなる。従って、インバータ回路のシステム効率を向上させることができる。また、同じ電圧レベルで、三相フルブリッジ3レベルインバータ回路内のスイッチングトランジスタが低い耐電圧を持ち、電磁干渉を低減させることができる。故に、高電圧及びハイパワーのシナリオには三相フルブリッジ3レベルインバータ回路が比較的広く適用されている。
図2の三相フルブリッジ3レベルインバータ回路は、直列に接続された2つの分圧器キャパシタ(第1キャパシタC1及び第2キャパシタC2)、中性点n、及び3つのブリッジアームを含む。
第1キャパシタC1の両端は、それぞれ、バスの正極及び中性点nに結合され、第2キャパシタC2の両端は、それぞれ、バスの負極及び中性点nに結合される。各分圧器キャパシタの端子電圧は直流電源の電圧Vdcの半分、すなわち、Vdc/2である。
各ブリッジアームが、直列に接続された4つのスイッチングトランジスタを含む。例えば、第1ブリッジアーム内の第1スイッチングトランジスタS1_A、第2スイッチングトランジスタS2_A、第3スイッチングトランジスタS3_A、及び第4スイッチングトランジスタS4_Aが直列に接続され、第2ブリッジアーム内の第1スイッチングトランジスタS1_B、第2スイッチングトランジスタS2_B、第3スイッチングトランジスタS3_B、及び第4スイッチングトランジスタS4_Bが直列に接続され、第3ブリッジアーム内の第1スイッチングトランジスタS1_C、第2スイッチングトランジスタS2_C、第3スイッチングトランジスタS3_C、及び第4スイッチングトランジスタS4_Cが直列に接続される。
各ブリッジアーム内の第2スイッチングトランジスタと第3スイッチングトランジスタとの接続点が、そのブリッジアームに対応する出力端子である。例えば、第1ブリッジアームの出力端子はAであり、第2ブリッジアームの出力端子はBであり、第3ブリッジアームの出力端子はCである。すなわち、第1ブリッジアームはA相電圧を出力し、第2ブリッジアームはB相電圧を出力し、第3ブリッジアームはC相電圧を出力する。これら3つの出力端子がモータ13に結合されるように構成される。
各ブリッジアーム内で、第1スイッチングトランジスタと第3スイッチングトランジスタとが相補的に導通されるとともに、第2スイッチングトランジスタと第4スイッチングトランジスタとが相補的に導通される。例えば、第1スイッチングトランジスタが導通されるときには、第3スイッチングトランジスタが遮断され、第3スイッチングトランジスタが導通されるときには、第1スイッチングトランジスタが遮断され、そして、第2スイッチングトランジスタが導通されるときには、第4スイッチングトランジスタが遮断され、第4スイッチングトランジスタが導通されるときには、第2スイッチングトランジスタが遮断される。
各ブリッジアームは、スイッチングトランジスタにそれぞれ逆並列接続された4つのダイオードD0を含む。ダイオードD0は還流ダイオードとも呼ばれ、負荷電流の還流経路として機能して、スイッチングトランジスタが損傷されることを防止する。
各ブリッジアームはダイオードD1及びダイオードD2を含む。3つのブリッジアームの各々内で、ダイオードD1は、中性点nを、第1スイッチングトランジスタと第2スイッチングトランジスタとの接続点に結合する。3つのブリッジアームの各々内で、ダイオードD2は、中性点nを、第3スイッチングトランジスタと第4スイッチングトランジスタとの接続点に結合する。ダイオードD1及びダイオードD2はクランプダイオードと呼ばれる。
I型三相フルブリッジ3レベルインバータ回路の動作モードを、第1ブリッジアームを例として用いて説明する。中性点nの電圧が基準ゼロ電位であり、且つ第1垂直ブリッジアームの出力端子Aからモータに電流が流れる方向が正方向であると仮定する。
(1)第1スイッチングトランジスタS1_A及び第2スイッチングトランジスタS2_Aが導通され、且つ第3スイッチングトランジスタS3_A及び第4スイッチングトランジスタS4_Aが遮断されるとき、電流の向きが正であるか負であるかにかかわらず、出力端子Aによって出力される電圧は直流電源の電圧Vdcの半分、すなわち、Vdc/2となる。
(2)第2スイッチングトランジスタS2_A及び第3スイッチングトランジスタS3_Aが導通され、且つ第1スイッチングトランジスタS1_A及び第4スイッチングトランジスタS4_Aが遮断されるとき、ブリッジアーム内の2つのクランプダイオードD1及びD2が出力端子Aを中性点nにクランプし、電流の向きが正であるか負であるかにかかわらず、出力端子Aによって出力される電圧は0となる。
(3)第3スイッチングトランジスタS3_A及び第4スイッチングトランジスタS4_Aが導通され、且つ第1スイッチングトランジスタS1_A及び第2スイッチングトランジスタS2_Aが遮断されるとき、電流の向きが正であるか負であるかにかかわらず、出力端子Aによって出力される電圧は-Vdc/2となる。
図3のT型三相フルブリッジ3レベルインバータ回路は、第1キャパシタC1と、第2キャパシタC2と、3つの垂直ブリッジアームを含む垂直ブリッジ回路と、3つの水平ブリッジアームを含む水平ブリッジ回路と、中性点nとを含む。
第1キャパシタC1の両端が、それぞれ、バスの正極及び中性点nに結合され、第2キャパシタC2の両端が、それぞれ、バスの負極及び中性点nに結合される。垂直ブリッジアームの両端が、それぞれ、バスの正極及び負極に結合される。
各垂直ブリッジアームが、直列に接続された2つのスイッチングトランジスタを含む。例えば、第1垂直ブリッジアーム内の第1スイッチングトランジスタS1_Aと第4スイッチングトランジスタS4_Aが直列に接続され、第2垂直ブリッジアーム内の第1スイッチングトランジスタS1_Bと第4スイッチングトランジスタS4_Bが直列に接続され、第3垂直ブリッジアーム内の第1スイッチングトランジスタS1_Cと第4スイッチングトランジスタS4_Cが直列に接続される。
各水平ブリッジアームが、逆直列接続された2つのスイッチングトランジスタを含む。例えば、第1水平ブリッジアーム内の第2スイッチングトランジスタS2_Aと第3スイッチングトランジスタS3_Aが直列に接続され、第2水平ブリッジアーム内の第2スイッチングトランジスタS2_Bと第3スイッチングトランジスタS3_Bが直列に接続され、第3水平ブリッジアーム内の第2スイッチングトランジスタS2_Cと第3スイッチングトランジスタS3_Cが直列に接続される。
各垂直ブリッジアーム内の2つのスイッチングトランジスタ(第1スイッチングトランジスタS1及び第4スイッチングトランジスタS4)の接続点が、そのブリッジアームに対応する出力端子である。例えば、第1垂直ブリッジアームの出力端子はAであり、第2垂直ブリッジアームの出力端子はBであり、第3垂直ブリッジアームの出力端子はCである。すなわち、第1ブリッジアームはA相電圧を出力し、第2ブリッジアームはB相電圧を出力し、第3ブリッジアームはC相電圧を出力する。これら3つの出力端子がモータ13に結合されるように構成される。
水平ブリッジアームの両端が、それぞれ、垂直ブリッジアームの出力端子及び中性点nに結合される。例えば、第1水平ブリッジアームの両端が、それぞれ、第1垂直ブリッジアームの出力端子A及び中性点nに結合され、第2水平ブリッジアームの両端が、それぞれ、第2垂直ブリッジアームの出力端子B及び中性点nに結合され、第3水平ブリッジアームの両端が、それぞれ、第3垂直ブリッジアームの出力端子C及び中性点nに結合される。
各垂直ブリッジアーム又は各水平ブリッジアームは、スイッチングトランジスタにそれぞれ逆並列接続された2つのダイオードD0を含む。
なお、T型三相フルブリッジ3レベルインバータ回路の水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタと、垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタとが、異なる種類のデバイスであってもよい。例えば、水平ブリッジ回路にMOSトランジスタが使用されるとともに、垂直ブリッジ回路にIGBTが使用されたり、水平ブリッジ回路にIGBTが使用されるとともに、垂直ブリッジ回路にMOSトランジスタが使用されたりする。
図2のI型三相フルブリッジ3レベルインバータ回路と比較して、図3のT型三相フルブリッジ3レベルインバータ回路では、クランプダイオードを用いて出力端子を中性点nにクランプするようにはなっておらず、代わりに、水平ブリッジアーム内の逆直列接続された2つのスイッチングトランジスタ(例えば、第1水平ブリッジアーム内の第2スイッチングトランジスタS2_A及び第3スイッチングトランジスタS3_A)を用いて垂直ブリッジアームの出力端子(例えば、第1垂直ブリッジアームの出力端子A)を中性点nに接続することで、垂直ブリッジアームの出力端子を中性点nにクランプしている。
T型三相フルブリッジ3レベルインバータ回路の動作モードを、第1垂直ブリッジアーム及び第1水平ブリッジアームを例として用いて説明する。中性点nの電圧が基準ゼロ電位であり、且つ第1垂直ブリッジアームの出力端子Aからモータに電流が流れる方向が正方向であると仮定する。
(1)第1スイッチングトランジスタS1_A及び第2スイッチングトランジスタS2_Aが導通され、且つ第3スイッチングトランジスタS3_A及び第4スイッチングトランジスタS4_Aが遮断されるとき、電流の向きが正であるか負であるかにかかわらず、出力端子Aによって出力される電圧は直流電源の電圧Vdcの半分、すなわち、Vdc/2となる。
(2)第2スイッチングトランジスタS2_A及び第3スイッチングトランジスタS3_Aが導通され、且つ第1スイッチングトランジスタS1_A及び第4スイッチングトランジスタS4_Aが遮断されるとき、第2スイッチングトランジスタS2_A及び第3スイッチングトランジスタS3_Aが出力端子Aを中性点nにクランプし、電流の向きが正であるか負であるかにかかわらず、出力端子Aによって出力される電圧は0となる。
(3)第3スイッチングトランジスタS3_A及び第4スイッチングトランジスタS4_Aが導通され、且つ第1スイッチングトランジスタS1_A及び第2スイッチングトランジスタS2_Aが遮断されるとき、電流の向きが正であるか負であるかにかかわらず、出力端子Aによって出力される電圧は-Vdc/2となる。
要するに、I型三相フルブリッジ3レベルインバータ回路であるのか、T型三相フルブリッジ3レベルインバータ回路であるのかにかかわらず、各出力端子によって出力される電圧に3つのレベルが存在する。従って、三相フルブリッジ2レベルインバータ回路と比較して、三相フルブリッジ3レベルインバータ回路によって出力される電圧及び電流では高調波が低い。しかしながら、三相フルブリッジ2レベルインバータ回路と比較して、三相フルブリッジ3レベルインバータ回路のスイッチングトランジスタの数が2倍であり、全てのスイッチングトランジスタが同じ電流容量を持つ。全てのスイッチングトランジスタが連続して動作すると、全てのスイッチングトランジスタが損傷されやすい。従って、コストが増加する。
この出願の実施形態はMCU及び制御方法を提供する。T型三相フルブリッジ3レベルインバータ回路を基礎として、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタが、モータのトルク、出力端子によって出力される電流、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの温度、及び水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの端子電圧に基づいて制御される。低トルク領域で、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタが有効化される。この場合、なおもT型三相フルブリッジ3レベルインバータ回路(簡潔に3レベル動作モードと呼ぶことがある)が存在し、システム効率が向上され、航続走行可能距離が増加される。それ以外では、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタが無効化される。この場合には、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタが損傷されることを防ぐために、三相フルブリッジ2レベルインバータ回路(簡潔に2レベル動作モードと呼ぶことがある)への劣化が存する。また、インバータ回路のコストを低減させるために、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの電流容量が、垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの電流容量よりも小さい。さらに、異なる動作モード間での切り換えが行われる前、後、及び時に全てのスイッチングトランジスタを保護できることを確保するように、スイッチングトランジスタが保護される。
図7に示すように、この出願の一実施形態はMCU11を提供する。MCU11は、モータの回転数を制御するために、モータのトルク、又はMCU11の出力端子によって出力される電流を取得し、該トルクと該電流とのうち一方をモータのQ軸電流Iq及びD軸電流Idへと変換(例えば、テーブルをルックアップすることによって該トルクと該電流とのうち一方を変換)し、対応するQ軸電圧Uq及び対応するD軸電圧Udを取得し、計算を行ってPWM制御信号の比較値を取得し、デューティサイクルを計算し、該デューティサイクルに基づいて、スイッチングトランジスタを導通及び遮断すべく制御し、直流電源12によって出力される直流を交流に変換し、モータ13に電力を供給し、出力交流の電圧及び電流を制御する。
MCU11は、三相フルブリッジ3レベルインバータ回路111、制御装置112、水平ブリッジ駆動回路113、及び垂直ブリッジ駆動回路114を含む。
三相フルブリッジ3レベルインバータ回路111は、図3に示したT型三相フルブリッジ3レベルインバータ回路であり、すなわち、水平ブリッジ回路及び垂直ブリッジ回路を含む。三相フルブリッジ3レベルインバータ回路111の構成の説明については、上述の説明を参照されたい。詳細をここで繰り返すことはしない。
制御装置112は、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタを導通又は遮断すべく駆動するために、水平ブリッジ駆動回路113を用いることにより、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタにPWM制御信号を送り得る。制御装置112は、垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタを導通又は遮断すべく駆動するために、垂直ブリッジ駆動回路114を用いることにより、垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタにPWM制御信号を送り得る。PWM制御信号は周期的なハイ-ローレベル信号である。
垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの電流容量は、モータ13の最大電流以上であり、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの電流容量は、垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの電流容量よりも小さい。例えば、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの電流容量は、垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの電流容量の1/6であってもよい。あるいは、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの電流容量と垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの電流容量との間の比率は、実際の適用シナリオを参照して決定され得る。具体的なやり方はこの出願において限定されることではない。
水平ブリッジ回路(又は垂直ブリッジ回路)内のスイッチングトランジスタをどのように制御するのかを以下にて説明する。
取り得る一実装において、水平ブリッジ回路(又は垂直ブリッジ回路)内のスイッチングトランジスタは、水平ブリッジ回路(又は垂直ブリッジ回路)内のスイッチングトランジスタにイネーブル信号を送ることによって有効化されることができ、また、水平ブリッジ回路(又は垂直ブリッジ回路)内のスイッチングトランジスタは、水平ブリッジ回路(又は垂直ブリッジ回路)内のスイッチングトランジスタにディセーブル信号を送ることによって無効化されることができる。
例えば、スイッチングトランジスタがNチャネルMOSトランジスタである場合、制御装置112は、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタを無効化するために、水平ブリッジ駆動回路113を用いて、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタのゲートにローレベル(ディセーブル信号)を出力して該スイッチングトランジスタを遮断し、また、制御装置112は、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタを有効化するために、水平ブリッジ駆動回路113を用いて、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタのゲートにPWM制御信号(イネーブル信号)を出力する。
制御装置112は、垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタを無効化するために、垂直ブリッジ駆動回路114を用いて、垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタのゲートにローレベル(ディセーブル信号)を出力して該スイッチングトランジスタを遮断し、また、制御装置112は、垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタを有効化するために、垂直ブリッジ駆動回路114を用いて、垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタのゲートにPWM制御信号(イネーブル信号)を出力する。
他の取り得る一実装において、水平ブリッジ回路(又は垂直ブリッジ回路)内のスイッチングトランジスタは、物理的なスイッチを用いて有効化又は無効化されてもよい。
オプションで、水平ブリッジ回路と中性点との間に水平ブリッジ保護スイッチK1が存在してもよく、あるいは、水平ブリッジ回路と垂直ブリッジ回路との間に水平ブリッジ保護スイッチK2が存在してもよい。制御装置112が水平ブリッジ保護スイッチK1又は水平ブリッジ保護スイッチK2を閉じるように制御するとき、水平ブリッジ回路は三相フルブリッジ3レベルインバータ回路111に接続される。これは、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタを有効化にすることに相当する。制御装置112が水平ブリッジ保護スイッチK1又は水平ブリッジ保護スイッチK2を開くように制御するとき、水平ブリッジ回路は三相フルブリッジ3レベルインバータ回路111から切り離される。これは、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタを無効化することに相当する。
オプションで、垂直ブリッジ回路とバスの正極及び負極の各々との間に垂直ブリッジ保護スイッチK3が存在してもよい。制御装置112が垂直ブリッジ保護スイッチK3を閉じるように制御するとき、垂直ブリッジ回路は三相フルブリッジ3レベルインバータ回路111に接続される。これは、垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタを有効化することに相当する。制御装置112が垂直ブリッジ保護スイッチK3を開くように制御するとき、垂直ブリッジ回路は三相フルブリッジ3レベルインバータ回路111から切り離される。これは、垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタを無効化することに相当する。
制御装置112は、図8に示す制御方法を実行し得る:
S801. 水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタを、モータのトルク、垂直ブリッジ回路の出力端子によって出力される電流、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの温度、及び水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの端子電圧に基づいて制御する。
モータのトルクと、垂直ブリッジ回路の出力端子によって出力される電流とは、線形に相関し合い、あるいは互いに等価であり得る。従って、トルクと電流のいずれを測定してもよい。
モータのトルクは、上述の平衡力法、伝達法、若しくはエネルギー変換法、又はこれらに類するものを用いて測定され得る。MCUの出力端子(すなわち、垂直ブリッジ回路の出力端子)とモータとの間の経路上に変流器を設置することができ、該変流器の電流を測定することによって、垂直ブリッジ回路の出力端子によって出力される電流が間接的に測定される。上述のように、インバータ回路によって出力される交流は標準的な正弦波交流ではなく、それ故に整流測定法には適さず、上述の電磁測定法又は電気測定法が使用され得る。
スイッチングトランジスタの温度及び端子電圧を測定する方法については、上述の説明を参照されたい。詳細をここで繰り返すことはしない。
具体的には、図10に示すように、このステップは以下を含み得る:
S8011. モータのトルクが第1トルク閾値より高い、又は垂直ブリッジ回路の出力端子によって出力される電流が第1過電流閾値より大きい、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの温度が第1温度閾値より高い、又は水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの端子電圧が第1電圧閾値より高い場合に、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタを無効化する。
モータのトルクが第1トルク閾値より高いという条件と、垂直ブリッジ回路の出力端子によって出力される電流が第1過電流閾値より大きいという条件は、互いに等価である。
この出願のこの実施形態において、水平ブリッジ回路であるか垂直ブリッジ回路であるかにかかわらず、スイッチングトランジスタの温度が特定の温度閾値より高いケースは、スイッチングトランジスタに過熱が存するケースとして参照されてもよく、また、スイッチングトランジスタの端子電圧が特定の電圧閾値より高いケースは、スイッチングトランジスタに過電圧が存するケースとして参照されてもよい。どちらのケースでも、スイッチングトランジスタが不全であるとみなされ得る。
S8012. モータのトルクが第1トルク閾値より高くない、又は出力端子によって出力される電流が第1過電流閾値より大きくない、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの温度が第1温度閾値より高くない、及び水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの端子電圧が第1電圧閾値より高くない場合に、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタを有効化する。
換言すれば、モータのトルクが第1トルク閾値以下である、又は垂直ブリッジ回路の出力端子によって出力される電流が第1過電流閾値以下である、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの温度が第1温度閾値以下である、及び水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの端子電圧が第1電圧閾値以下である場合には、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタが有効化される。
第1過電流閾値は、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの電流容量以下とし得る。例えば、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの電流容量は、垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの電流容量の1/6である。この場合、第1過電流閾値は、垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの電流容量の1/6以下とし得る。
モータのトルクは、垂直ブリッジ回路の出力端子によって出力される電流と正の相関がある。従って、モータのピークトルクに対する第1トルク閾値の比は、垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの電流容量に対する第1過電流閾値の比以下とし得る。例えば、トルク閾値は、モータのピークトルクの1/6以下とし得る。
垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタ及び水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタが有効化されるとき、それは、MCUが3レベル動作モードに入ることに相当する。垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタが有効化され、且つ水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタが無効化されるとき、それは、MCUが2レベル動作モードに入ることに相当する。垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタをどのように有効化するかについては、垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタは常に有効化されてもよく、あるいは、図9及び図10に示す制御方法を用いて、垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタを有効化する時が決定される。これはこの出願において限定されることではない。特段の断りがない限り、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタはデフォルトでは有効化されているとみなされ、それ故に、MCUが3レベル動作モードと2レベル動作モードとの間で切り換えられるときに、垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタはデフォルトで有効化されているとみなされる。
モータのトルクが第1トルク閾値より低いとき(低トルク領域)、システム効率を向上させるために、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタが有効化され、MCUは3レベル動作モードにある。また、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの電流値は対応する電流容量よりも小さく、それ故に、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタが損傷されることはない。モータのトルクが第1トルク閾値以上であるとき(高トルク領域)、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの電流値が対応する電流容量を超えることがある。この場合、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタが損傷されるケースを回避するために、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタが無効化され、MCUは2レベル動作モードにある。
2レベル動作モードと3レベル動作モードとの間でMCUが頻繁に切り換えられることを防ぐために、第1過電流閾値又は第1トルク閾値に閾値ヒステリシスを導入してもよい。すなわち、ステップS8012で、第1過電流閾値が、第1過電流閾値と過電流閾値ヒステリシスとの間の差で置き換えられ、第1トルク閾値が、第1トルク閾値とトルク閾値ヒステリシスとの間の差で置き換えられる。
例えば、MCUが3レベル動作モードで動作しているときに、垂直ブリッジ回路の出力端子によって出力される電流が第1過電流閾値より大きい、又はモータのトルクが第1トルク閾値より高い場合、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタが無効化され、換言すれば、2レベル動作モードへの切り換えが行われる。MCUが2レベル動作モードで動作しているときに、垂直ブリッジ回路の出力端子によって出力される電流が第1過電流閾値と過電流閾値ヒステリシスとの間の差より小さい、又はモータのトルクが第1トルク閾値とトルク閾値ヒステリシスとの間の差以下である場合、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタが有効化され、換言すれば、3レベル動作モードへの切り換えが行われる。
なお、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタを有効化又は無効化した後に、制御装置は、垂直ブリッジ回路の出力端子によって出力される電圧が変化しないままであるように、PWM制御信号のデューティサイクルを調整し得る。三相フルブリッジ2レベルインバータ回路と三相フルブリッジ3レベルインバータ回路とでは、異なる電圧を出力する。従って、電圧脈動がモータに影響を及ぼすことを防ぐために、垂直ブリッジ回路の出力端子によって出力される電圧が変化しないままであるように、PWM制御信号のデューティサイクルが調整される。
また、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタを有効化又は無効化した後に、制御装置は、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタが過電流によって損傷されるケースを回避するために、垂直ブリッジ回路の出力端子によって出力される電流が第1過電流閾値より小さくなるようにPWM制御信号のデューティサイクルを調整し得る。
図11に示すように、2レベル動作モードでは、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタ(第2スイッチングトランジスタS2_A/S2_B/S2_C、及び第3スイッチングトランジスタS3_A/S3_B/S3_C)が無効化され、垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタ(第1スイッチングトランジスタS1_A/S1_B/S1_C、及び第4スイッチングトランジスタS4_A/S4_B/S4_C)が周期的に導通及び遮断される。
3レベル動作モードでは、各相の出力電圧がVdc/2のときのP状態が存在し、出力電圧が0であるときのO状態が存在し、且つ出力電圧が-Vdc/2であるときのN状態が存在すると、T型三相フルブリッジ3レベルインバータ回路では合計27個のスイッチング状態が存在する。
図12は、三相フルブリッジ3レベルインバータ回路における各電圧ベクトルの空間位置を示している。例えば、図中に示すセクタ内に基準電圧ベクトルVrefが位置するとき、基準電圧ベクトルVrefは、有効電圧ベクトルPP0(00N)、P00(0NN)、PNN、P0N、及びPPNと、ゼロベクトル(PPP/000/NNN)とを含む。別のセクタ内に位置する基準電圧ベクトルも同様の方法で計算される。
図13に示すように、3レベル動作モードでは、水平ブリッジ回路及び垂直ブリッジ回路の各々内の各ブリッジアームにおいて、一方のスイッチングトランジスタは導通又は遮断されたまま維持され、他方のスイッチングトランジスタが周期的に導通及び遮断される。
図12に示すセクタ内に基準電圧ベクトルが位置していて、3レベル動作モードから2レベル動作モードへの切り換えが行われるとき、図12に示した、基準電圧ベクトルVrefが有効電圧ベクトルPP0(00N)、P00(0NN)、PNN、P0N、及びPPNとゼロベクトル(PPP/000/NNN)とを含むケースから、図4に示した、基準電圧ベクトルVrefが有効電圧ベクトルV4(100)、V6(110)とゼロベクトルV0(000)/V7(111)とを含むケースへの切り換えが行われる。切り換えが行われるかにかかわらずに垂直ブリッジ回路の出力端子によって出力される電圧が変化しないままであるように、有効電圧ベクトルV4(100)及びV6(110)の各々の作用時間が調整される(PWM制御信号のデューティサイクルが調整される)。スイッチングトランジスタの動作状態を図14に示す。2レベル動作モードから3レベル動作モードへの切り換えを行うときには、切り換えのやり方が逆になる。
この出願の実施形態で提供されるモータ制御ユニット及び制御方法によれば、T型三相フルブリッジ3レベルインバータ回路を基礎として、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタが、モータのトルク、出力端子によって出力される電流、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの温度、及び水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの端子電圧に基づいて有効化又は無効化される。インバータ回路のシステム効率を向上させるために、低トルク領域では、MCUが3レベル動作モードで動作するように、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタが有効化される。三相フルブリッジインバータ回路内の全てのスイッチングトランジスタが連続動作する場合を避けるために、高トルク領域では水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタが無効化される。また、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの電流容量が、垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの電流容量よりも小さく、換言すれば、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの仕様を下げることができ、インバータ回路のコストが低減される。
図9に示すように、当該制御方法は以下を含み得る:
S901. 垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタを、モータのトルク、出力端子によって出力される電流、モータの回転数、垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの温度、及び垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの端子電圧に基づいて制御する。
具体的には、図10に示すように、このステップは以下を含む:
S9011. モータのトルクが第2トルク閾値より高い、又は出力端子によって出力される電流が第2過電流閾値より大きいときに、モータの回転数が回転数閾値以下である、垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの温度が第2温度閾値より高い、又は垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの端子電圧が第2電圧閾値より高い場合に、垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタを無効化して、垂直ブリッジ回路を保護する。
垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの電流容量は、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの電流容量よりも大きく、それ故に、第2過電流閾値は第1過電流閾値より大きいが、垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの電流容量以下である。また、モータのトルクは、垂直ブリッジ回路の出力端子によって出力される電流と正の相関があり、それ故に、第2トルク閾値は第1トルク閾値より大きいが、モータのピークトルク以下である。
S9012. モータの回転数が回転数閾値より高い、垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの温度が第2温度閾値より高くない、及び垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの端子電圧が第2電圧閾値より高くない場合に、垂直ブリッジ回路内の上側ハーフブリッジスイッチングトランジスタ又は下側ハーフブリッジスイッチングトランジスタを導通させて、モータの巻線を短絡させる。
換言すれば、モータのトルクが第2トルク閾値より高い、又は出力端子によって出力される電流が第2過電流閾値より大きいときに、モータの回転数が回転数閾値より高い、垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの温度が第2温度閾値以下である、及び垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの端子電圧が第2電圧閾値以下である場合には、垂直ブリッジ回路内の上側ハーフブリッジスイッチングトランジスタ又は下側ハーフブリッジスイッチングトランジスタが導通されて、モータの巻線を短絡させる。
S9013. モータのトルクが第2トルク閾値以下である、又は出力端子によって出力される電流が第2過電流閾値以下であるときに、垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタを有効化する。
垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの電流容量は、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの電流容量よりも大きく、換言すれば、垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの仕様は、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタの仕様よりも高い。従って、垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタは、水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタよりも電圧及び高温に耐性があり、第2電圧閾値は第1電圧閾値より高く、第2温度閾値は第1温度閾値より高い。
垂直ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタ及び水平ブリッジ回路内のスイッチングトランジスタが無効化されるとき、それは、MCUがシャットダウンモードに入ることに相当する。
この出願の一実施形態は、コンピュータ読み取り可能記憶媒体を提供する。当該コンピュータ読み取り可能記憶媒体はコンピュータプログラムを格納している。該コンピュータプログラムがコンピュータ又はプロセッサ上で実行されるとき、図8から図10の制御方法が実行される。
この出願の一実施形態は、命令を含んだコンピュータプログラムプロダクトを提供する。該命令がコンピュータ又はプロセッサ上で実行されるとき、図8から図10の制御方法が実行される。
この出願の一実施形態はチップシステムを提供する。当該チップシステムは、図8から図10の制御方法を実行するように構成されたプロセッサを含む。
取り得る一設計において、当該チップシステムはメモリを含む。該メモリは、必要なプログラム命令及びデータを格納するように構成される。当該チップシステムは、チップと集積回路とを含んでもよいし、チップと別のディスクリートデバイスとを含んでもよい。これは、この出願のこの実施形態において特に制限されることではない。
この出願で提供されるコンピュータ読み取り可能記憶媒体、コンピュータプログラムプロダクト、又はチップシステムは、上述の方法を実行するように構成される。従って、当該コンピュータ読み取り可能記憶媒体、コンピュータプログラムプロダクト、又はチップシステムによって達成されることができる有益な効果については、上で提供された実装における有益な効果を参照されたい。詳細をここで説明することはしない。
この出願の実施形態におけるプロセッサはチップとし得る。例えば、プロセッサは、フィールドプログラマブルゲートアレイ(field-programmable gate array、FPGA)、特定用途向け集積回路(application specific integrated circuit、ASIC)、システム・オン・チップ(system on chip、SoC)、又は中央プロセッサユニット(central processor unit、CPU)、ネットワークプロセッサ(network processor、NP)、デジタル信号プロセッサ(digital signal processor、DSP)、マイクロコントローラユニット(micro controller unit、MCU)、又はプログラマブルロジックデバイス(programmable logic device、PLD)、又は他の集積チップとし得る。
この出願の実施形態におけるメモリは、揮発性メモリ又は不揮発性メモリとすることができ、あるいは、揮発性メモリ及び不揮発性メモリを含んでもよい。不揮発性メモリは、読み出し専用メモリ(read-only memory、ROM)、プログラム可能読み出し専用メモリ(programmable ROM、PROM)、消去可能プログラム可能読み出し専用メモリ(erasable PROM、EPROM)、電気的消去可能プログラム可能読み出し専用メモリ(Electrically EPROM、EEPROM)、又はフラッシュメモリとし得る。揮発性メモリは、ランダムアクセスメモリ(random access memory、RAM)とすることができ、外部キャッシュとして使用される。限定ではなく例として、例えば、スタティックランダムアクセスメモリ(static RAM、SRAM)、ダイナミックランダムアクセスメモリ(dynamic RAM、DRAM)、同期ダイナミックランダムアクセスメモリ(synchronous DRAM、SDRAM)、ダブルデータレート同期ダイナミックランダムアクセスメモリ(double data rate SDRAM、DDR SDRAM)、エンハンスト同期ダイナミックランダムアクセスメモリ(enhanced SDRAM、ESDRAM)、シンクリンクダイナミックランダムアクセスメモリ(synchlink DRAM、SLDRAM)、及びダイレクトランバスランダムアクセスメモリ(direct rambus RAM、DR RAM)といった、数多くの形態のRAMが使用され得る。なお、この明細書に記載されたシステム及び方法におけるメモリは、以下に限られないが、これらのメモリ、及び他の適切なタイプの任意のメモリを含む。
理解されるべきことには、上述のプロセスのシーケンス番号は、この出願の実施形態における実行シーケンスを意味するものではない。プロセスの実行シーケンスは、プロセスの機能及び内部ロジックに従って決定されるべきであり、この出願の実施形態の実装プロセスに対する如何なる限定も構成すべきでない。
当業者が認識し得ることには、この明細書に開示された実施形態にて説明された例と組み合わせて、ユニット及びアルゴリズムステップが、エレクトロニクスハードウェア又はコンピュータソフトウェアとエレクトロニクスハードウェアとの組み合わせによって実装され得る。機能がハードウェアによって実行されるのか、それともソフトウェアによって実行されるのかは、これらの技術的ソリューションの具体的な用途及び設計制約条件に依存する。当業者は、記載された機能を、具体的な用途ごとに異なる方法を用いて実装し得るが、その実装はこの出願の範囲を超えるものであるとみなされるべきでない。
当業者によって明確に理解されるべきことには、簡便で簡潔な説明のため、前述のシステム、装置、及びユニットの詳細な動作プロセスについては、前述の方法実施形態における対応するプロセスを参照されたい。詳細をここで再び説明することはしない。
この出願で提供される幾つかの実施形態において、理解されるべきことには、開示されたシステム、装置、及び方法は、他の方式で実装されてもよい。例えば、前述の装置実施形態は単なる例である。例えば、ユニットへの分割は、単なる論理機能分割であり、実際の実装においては別の分割であってもよい。例えば、複数のユニット又はコンポーネントが他のシステムへと結合又は統合されてもよいし、あるいは、一部の機構が無視されたり実行されなかったりしてもよい。また、図示又は説明された相互の結合、直接的な結合、又は通信接続は、何らかのインタフェースを介して実装されてもよい。装置又はユニット間の間接的な結合又は通信接続は、電子的な形態、機械的な形態、又は他の形態で実装されてもよい。
別々の部分として記載されたユニットは、物理的に分離されてもよいし、されなくてもよく、また、ユニットとして図示された部分は、物理的なユニットであってよいし、なくてもよく、1つの位置に置かれてもよく、あるいは、複数のネットワークユニット上に分散されてもよい。ユニットの一部又は全てが、実施形態のソリューションの目的を達成するための実際の要求に基づいて選択され得る。
また、この出願の実施形態における複数の機能ユニットが1つの処理ユニットへと統合されてもよく、それらのユニットの各々が物理的に単独で存在してもよく、あるいは、2つ以上のユニットが1つのユニットへと統合されてもよい。
上述の実施形態の全て又は一部は、ソフトウェア、ハードウェア、ファームウェア、又はこれらの任意の組み合わせを用いることによって実装され得る。実施形態を実装するのにソフトウェアプログラムが使用されるとき、実施形態の全て又は一部がコンピュータプログラムプロダクトの形態で実装されてもよい。コンピュータプログラムプロダクトは、1つ以上のコンピュータ命令を含む。コンピュータプログラム命令がコンピュータ上にロードされて実行されるとき、この出願の実施形態に従ったプロシージャ又はファンクションが完全に又は部分的に生成される。コンピュータは、汎用コンピュータ、専用コンピュータ、コンピュータネットワーク、又は他のプログラム可能な装置とし得る。コンピュータ命令は、コンピュータ読み取り可能記憶媒体に格納されることができ、あるいは、あるコンピュータ読み取り可能記憶媒体から別のコンピュータ読み取り可能記憶媒体へと伝送されてもよい。例えば、コンピュータ命令は、あるウェブサイト、コンピュータ、サーバ、又はデータセンターから、別のウェブサイト、コンピュータ、サーバ、又はデータセンターに、有線方式(例えば、同軸ケーブル、光ファイバ、又はデジタル加入者回線(Digital Subscriber Line、DSL))又は無線方式(例えば、赤外線、無線、又はマイクロ波)で伝送され得る。コンピュータ読み取り可能記憶媒体は、コンピュータによってアクセス可能な任意の使用可能な媒体、又は1つ以上の使用可能な媒体を統合する例えばサーバ若しくはデータセンターなどのデータストレージ装置とし得る。使用可能な媒体は、磁気媒体(例えば、フロッピーディスク、ハードディスク、又は磁気テープ)、光媒体(例えば、DVD)、半導体媒体(例えば、ソリッドステートディスク(solid state disk、SSD))、又はこれらに類するものとし得る。
以上の説明は、単にこの出願の特定の実装であり、この出願の保護範囲を限定する意図ではない。この出願にて開示された技術範囲内で当業者が容易に考え付く如何なる変更又は置換もこの出願の保護範囲に入るものである。従って、この出願の保護範囲は請求項の保護範囲に従うものである。