JP2023526315A - 未成熟終止コドンの阻害剤としてのキナゾリン化合物 - Google Patents
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Abstract
本発明は、ナンセンス突然変異によって引き起こされる疾患を予防及び/又は治療するための、式(I)の少なくとも1つの化合物又はその薬学的に許容される塩のうちの1つの使用に関する。また、本発明は、式(II)の化合物及びそれらの使用にも関する。【選択図】なし
Description
本発明は、ナンセンス突然変異によって引き起こされる疾患を予防及び/又は治療するための、少なくとも1つの式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩のうちの1つの使用に関する。また、本発明は、式(II)の化合物及びそれらの使用にも関する。
特にナンセンス突然変異などの遺伝的態様を伴う疾患の治療は、興味深い課題である。
標準的な遺伝暗号を使用するヒトなどの真核生物の場合、翻訳終結は、UAA、UGA及びUAGの3つの停止コドンのうちの1つがリボソームA部位に入り、終結因子(eRF1)によって認識されると発生する。翻訳終結は正確ではあるが、100%効果的ではなく、その効率は、eRF1による停止コドンの認識と、近同族(near-cognate)tRNA(つまり、自然サプレッサーtRNA)による停止コドンの解読との競合に依存する。後者の場合は、「リードスルー」とも呼ばれる翻訳終結の抑制につながり、この場合、停止コドンの代わりにアミノ酸が組み込まれる。
コード配列にナンセンス突然変異が出現すると、翻訳を中断し、ナンセンス変異依存mRNA分解(nonsense-mediated mRNA decay、NMD)経路を介して転写産物の分解を誘導することによって、対応するタンパク質の正しい産生を妨げる未成熟終止コドン(PTC)が作製される。したがって、PTCは多数の遺伝性疾患及び癌に関連している。ヒトの遺伝疾患を引き起こすナンセンス突然変異のメタ分析により、遺伝性疾患の11%がPTC突然変異に起因し、それらの80%がTGA及びTAGであることが明らかになった(Mort et al,A meta-analysis of nonsense mutations causing human genetic disease,Hum Mutat,2008,Aug;29(8):1037-47)。
過去10年間、潜在力のある治療標的としてインフレームPTCに大きな関心が寄せられてきた。
実際、アミノグリコシド(パロモマイシン、ゲンタマイシン、ジェネティシン(Geneticin)とも呼ばれるG418、又はアミカシンなど)及びそれらの誘導体(NB系)は、哺乳動物のリボソームに結合し、培養された哺乳動物細胞及び動物モデルにおける完全長タンパク質の合成を部分的に回復させることによって、PTCリードスルーを促進することが示されている。このアプローチの潜在力は、Barton-Davi及び同僚によってインビボで最初に実証され、彼らは、ゲンタマイシンの皮下注射後、mdxマウスの骨格筋におけるジストロフィンレベルが野生型動物の10~20%まで回復したことを報告した(Barton-Davis et al,1999,Aminoglycoside antibiotics restore dystrophin function to skeletal muscles of mdx mice.J Clin Invest,104,375-381)。この戦略は、嚢胞性線維症(CF)、筋ジストロフィー(Linde et al,2008,Introducing sense into nonsense in treatments of human genetic diseases. Trends Genet,24,552-563)及びムコ多糖症I型ハーラー(Hurler)(MPS I-H)(Gunn et al,Mol Genet Metab 2014 Mar;111(3):374-381,Long-term nonsense suppression therapy moderates MPS I-H disease progression)などの多数の遺伝性疾患において評価されている(Lee et al,Pharmaceutical therapies to recode nonsense mutations in inherited diseases,Pharmacol Ther 2012 Nov;136(2):227-66)。成功率は様々であるが、いくつかの臨床試験がすでに実施されている(Bordeira-Carrico et al,2012,Cancer syndromes and therapy by stop-codon readthrough.Trends Mol Med,18,667-678;Keeling et al,2014,Therapeutics based on stop codon readthrough.Annual review of genomics and human genetics,15,371-394)。いくつかのケースでは、特にゲンタマイシンの存在下で高レベルのリードスルーを示す突然変異について、有望な結果が得られている(Sermet-Gaudelus,I.,Renouil,M.,Fajac,A.,Bidou,L.,Parbaille,B.,Pierrot,S.,Davy,N.,Bismuth,E.,Reinert,P.,Lenoir,G.et al.(2007)In vitro prediction of stop-codon suppression by intravenous gentamicin in patients with cystic fibrosis:a pilot study.BMC medicine,5,5)。これらの治療の潜在力にもかかわらず、アミノグリコシドによる治療は、重度の副作用、特に耳毒性及び/又は腎毒性を伴う。
実際、アミノグリコシド(パロモマイシン、ゲンタマイシン、ジェネティシン(Geneticin)とも呼ばれるG418、又はアミカシンなど)及びそれらの誘導体(NB系)は、哺乳動物のリボソームに結合し、培養された哺乳動物細胞及び動物モデルにおける完全長タンパク質の合成を部分的に回復させることによって、PTCリードスルーを促進することが示されている。このアプローチの潜在力は、Barton-Davi及び同僚によってインビボで最初に実証され、彼らは、ゲンタマイシンの皮下注射後、mdxマウスの骨格筋におけるジストロフィンレベルが野生型動物の10~20%まで回復したことを報告した(Barton-Davis et al,1999,Aminoglycoside antibiotics restore dystrophin function to skeletal muscles of mdx mice.J Clin Invest,104,375-381)。この戦略は、嚢胞性線維症(CF)、筋ジストロフィー(Linde et al,2008,Introducing sense into nonsense in treatments of human genetic diseases. Trends Genet,24,552-563)及びムコ多糖症I型ハーラー(Hurler)(MPS I-H)(Gunn et al,Mol Genet Metab 2014 Mar;111(3):374-381,Long-term nonsense suppression therapy moderates MPS I-H disease progression)などの多数の遺伝性疾患において評価されている(Lee et al,Pharmaceutical therapies to recode nonsense mutations in inherited diseases,Pharmacol Ther 2012 Nov;136(2):227-66)。成功率は様々であるが、いくつかの臨床試験がすでに実施されている(Bordeira-Carrico et al,2012,Cancer syndromes and therapy by stop-codon readthrough.Trends Mol Med,18,667-678;Keeling et al,2014,Therapeutics based on stop codon readthrough.Annual review of genomics and human genetics,15,371-394)。いくつかのケースでは、特にゲンタマイシンの存在下で高レベルのリードスルーを示す突然変異について、有望な結果が得られている(Sermet-Gaudelus,I.,Renouil,M.,Fajac,A.,Bidou,L.,Parbaille,B.,Pierrot,S.,Davy,N.,Bismuth,E.,Reinert,P.,Lenoir,G.et al.(2007)In vitro prediction of stop-codon suppression by intravenous gentamicin in patients with cystic fibrosis:a pilot study.BMC medicine,5,5)。これらの治療の潜在力にもかかわらず、アミノグリコシドによる治療は、重度の副作用、特に耳毒性及び/又は腎毒性を伴う。
したがって、毒性が低減された新規のPTCリードスループロモーターの開発が必要である。
アタルレン、ネガマイシン、クリトシン、エスシンなど、アミノグリコシドとは構造的に異なる化合物が開発されている。
PTC124としても知られるアタルレンは、当初、非常に有望であると考えられていた。その臨床的利点はいまだ議論されているが、最近EMAから条件付き承認を取得した。ネガマイシンは、ゲンタマイシンとは異なるリードスルーコンテキスト依存性を示す、リボソームA部位と結合するジペプチドである。クリトシンは、PTCリードスルー活性を実証したヌクレオシド類似体であるが、その作用機序は不明のままである。セイヨウトチノキ(Aesculus hippocastanum)種子から単離されたトリテルペノイドサポニンの天然混合物であるエスシンは、CFTR遺伝子に見られるG542X及びW1282X突然変異のリードスルーを促進することが最近示された。
PTC124としても知られるアタルレンは、当初、非常に有望であると考えられていた。その臨床的利点はいまだ議論されているが、最近EMAから条件付き承認を取得した。ネガマイシンは、ゲンタマイシンとは異なるリードスルーコンテキスト依存性を示す、リボソームA部位と結合するジペプチドである。クリトシンは、PTCリードスルー活性を実証したヌクレオシド類似体であるが、その作用機序は不明のままである。セイヨウトチノキ(Aesculus hippocastanum)種子から単離されたトリテルペノイドサポニンの天然混合物であるエスシンは、CFTR遺伝子に見られるG542X及びW1282X突然変異のリードスルーを促進することが最近示された。
しかしながら、これらの化合物は全て、定義されたPTCに特異的であり、そのため潜在的な臨床的利益が限られた数の患者に制限されており、かつ/又はリボソームを標的としている。
したがって、新たなリードスルー薬の同定は、この治療戦略の医学的応用を広げるのに役立つため、依然として最も重要である。
したがって、新たなリードスルー薬の同定は、この治療戦略の医学的応用を広げるのに役立つため、依然として最も重要である。
結果として、異なるセットのPTCに対して、又は異なる作用スペクトルで効率的な、新たなPTCリードスループロモーターが必要である。
本発明は、これらの必要性を満たす。
実際、驚くべきことに、本発明者らは、既知のリードスループロモーターといかなる類似性も共有しないトランスレクチン68(TLN68)と呼ばれる化合物を同定し、この化合物をDMD遺伝子におけるデュシェンヌ型ミオパシーの原因となる40個の最も頻繁に発生するナンセンス突然変異を使用して試験した。実施例1に示すように、この化合物が広範囲のナンセンス配列上でPTCリードスルーを刺激することを確認した。
したがって、本発明は、遺伝性疾患又は癌などの、ナンセンス突然変異によって引き起こされる疾患を予防及び/又は治療するための、少なくとも1つの式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩のうちの1つの使用に関し、
式中、
R1は、C1-C6アルキルラジカルであり、
R2は、H、ハロゲン原子、又はC1-C6アルコキシラジカルであり、
R3は、H、C1-C6アルキルラジカル、又はC1-C6アルコキシラジカルである。
R1は、C1-C6アルキルラジカルであり、
R2は、H、ハロゲン原子、又はC1-C6アルコキシラジカルであり、
R3は、H、C1-C6アルキルラジカル、又はC1-C6アルコキシラジカルである。
本発明において、前記遺伝性疾患又は癌は、ナンセンス突然変異によって引き起こされる。
本発明の別の目的は、式(II)の化合物又はその薬学的に許容される塩のうちの1つに関し、
式中、
R1は、C1-C6アルキルラジカル、好ましくはメチル又はエチルであり、
R2は、ハロゲン原子、又はC1-C6アルコキシラジカル、好ましくはメトキシであり、
R3は、H又はC1-C6アルキルラジカル、好ましくはメチルであり、
但し、R2がC1-C6アルコキシラジカルである場合、R1はエチルであり、
R2がハロゲンであり、R3がHである場合、当該化合物は、ギ酸又はヨウ素との塩などの薬学的に許容される塩の形態である。
R1は、C1-C6アルキルラジカル、好ましくはメチル又はエチルであり、
R2は、ハロゲン原子、又はC1-C6アルコキシラジカル、好ましくはメトキシであり、
R3は、H又はC1-C6アルキルラジカル、好ましくはメチルであり、
但し、R2がC1-C6アルコキシラジカルである場合、R1はエチルであり、
R2がハロゲンであり、R3がHである場合、当該化合物は、ギ酸又はヨウ素との塩などの薬学的に許容される塩の形態である。
本発明の別の目的は、少なくとも1つの式(II)の化合物又はその薬学的に許容される塩のうちの1つを、療法において、又は薬物(又は医薬品)として使用することである。
本発明の別の目的は、薬学的に許容される担体中に、少なくとも1つの式(II)の化合物又はその薬学的に許容される塩のうちの1つを含む、組成物である。
本発明の別の目的は、薬学的に許容される担体中に、少なくとも1つの式(II)の化合物又はその薬学的に許容される塩のうちの1つを含む、組成物である。
本発明の別の目的は、
a)式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩のうちの1つと、
b)少なくとも1つの他の薬物と、を
対象におけるナンセンス突然変異によって引き起こされる疾患、特に癌若しくは遺伝性疾患を治療するための同時、個別又は逐次使用のための組み合わせ物として含む、物である。
本発明の別の目的は、
a)式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩のうちの1つと、
b)少なくとも1つの化学療法薬と、を
対象において、癌を治療するため、及び/又は癌転移を予防するため、及び/又は癌再発を予防するため、及び/又は化学療法薬b)に対する耐性を低減するための同時、個別又は逐次使用のための組み合わせ物として含む、物である。
a)式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩のうちの1つと、
b)少なくとも1つの他の薬物と、を
対象におけるナンセンス突然変異によって引き起こされる疾患、特に癌若しくは遺伝性疾患を治療するための同時、個別又は逐次使用のための組み合わせ物として含む、物である。
本発明の別の目的は、
a)式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩のうちの1つと、
b)少なくとも1つの化学療法薬と、を
対象において、癌を治療するため、及び/又は癌転移を予防するため、及び/又は癌再発を予防するため、及び/又は化学療法薬b)に対する耐性を低減するための同時、個別又は逐次使用のための組み合わせ物として含む、物である。
好ましくは、本発明は、
a)式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩のうちの1つと、
b)アタルレン、ゲンタマイシン、ネガマイシン、クリトシン、エスシン、及びNMD阻害剤から選択される少なくとも1つの薬物と、を
対象におけるナンセンス突然変異によって引き起こされる疾患、特に癌若しくは遺伝性疾患を治療するための同時、個別又は逐次使用のための組み合わせ物として含む、物である。
a)式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩のうちの1つと、
b)アタルレン、ゲンタマイシン、ネガマイシン、クリトシン、エスシン、及びNMD阻害剤から選択される少なくとも1つの薬物と、を
対象におけるナンセンス突然変異によって引き起こされる疾患、特に癌若しくは遺伝性疾患を治療するための同時、個別又は逐次使用のための組み合わせ物として含む、物である。
式(I)の化合物又はそれらの塩の治療的使用
第一に、本発明は、遺伝性疾患若しくは癌などのナンセンス突然変異によって引き起こされる疾患を予防及び/又は治療するための、少なくとも1つの式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩のうちの1つの使用に関し、
式中、
R1は、C1-C6アルキルラジカルであり、
R2は、H、ハロゲン原子、又はC1-C6アルコキシラジカルであり、
R3は、H、C1-C6アルキルラジカル、又はC1-C6アルコキシラジカルである。
好ましくは、疾患は、ナンセンス突然変異によって引き起こされる遺伝性疾患、及び腫瘍抑制遺伝子に存在するナンセンス突然変異によって引き起こされる癌から選択される。
第一に、本発明は、遺伝性疾患若しくは癌などのナンセンス突然変異によって引き起こされる疾患を予防及び/又は治療するための、少なくとも1つの式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩のうちの1つの使用に関し、
R1は、C1-C6アルキルラジカルであり、
R2は、H、ハロゲン原子、又はC1-C6アルコキシラジカルであり、
R3は、H、C1-C6アルキルラジカル、又はC1-C6アルコキシラジカルである。
好ましくは、疾患は、ナンセンス突然変異によって引き起こされる遺伝性疾患、及び腫瘍抑制遺伝子に存在するナンセンス突然変異によって引き起こされる癌から選択される。
「ナンセンス突然変異によって引き起こされる疾患」とは、疾患の原因となるナンセンス突然変異がコード配列に存在し、短縮(truncated)型の対応するタンパク質の産生及び/又はNMD経路による対応mRNAの分解をもたらすことを意味する。ナンセンス突然変異は、遺伝性疾患の場合のように遺伝的に受け継がれる場合もあれば、癌で発生する場合のように自然発生的である場合もある。
本発明において、前記遺伝性疾患又は癌は、目的のコード配列におけるナンセンス突然変異の存在によって引き起こされる。
遺伝性疾患の場合、ナンセンス突然変異は、遺伝子CFTR(嚢胞性線維症膜貫通コンダクタンス制御因子)、DMD(ジストロフィン)、コラーゲン遺伝子(COL6A1、COL6A2、COL6A3、COL6A4、COL6A5及び/又はCOL6A6)、SMN1(生存運動ニューロン1)、IDUA(アルファ-L-イズロニダーゼ)、USH1C(USH1タンパク質ネットワーク成分ハーモニン(harmonin)のうちのいずれか1つなどの遺伝子に存在する場合がある。例えば、SMN1遺伝子のナンセンス突然変異は、脊髄性筋萎縮症又は筋萎縮性側索硬化症を引き起こす場合があり、IDUAのナンセンス突然変異は、ハーラー症候群(MPS I-H)などのムコ多糖症I型(MPS I)を引き起こす場合があり、USH1Cのナンセンス突然変異は、アッシャー症候群を引き起こす場合がある。
癌の場合、ナンセンス突然変異は、例えばp53、BRCA1、BRCA2又はAPC遺伝子などの腫瘍抑制遺伝子に存在する場合がある。
式(I)の化合物は、PTCリードスループロモーター又はPTCリードスルー誘導因子とも呼ばれるPTCの阻害剤である。
「リードスルー」とは、コード配列の翻訳中に未成熟終止コドン(PTC)を通過し、対応する全長ポリペプチドの翻訳をもたらす事象を意味する。コード配列にナンセンス突然変異が出現すると、PTCが作製される。その結果、対応するタンパク質が短縮型で産生され、mRNAがNMD経路によって分解される場合がある。
リードスルーは、全長ポリペプチドの翻訳をもたらす。これは、PTCに近同族tRNAが入り、翻訳を中断する代わりに、翻訳中にアミノ酸を導入することによって達成される場合がある。
本発明において、前記遺伝性疾患又は癌は、目的のコード配列におけるナンセンス突然変異の存在によって引き起こされる。
遺伝性疾患の場合、ナンセンス突然変異は、遺伝子CFTR(嚢胞性線維症膜貫通コンダクタンス制御因子)、DMD(ジストロフィン)、コラーゲン遺伝子(COL6A1、COL6A2、COL6A3、COL6A4、COL6A5及び/又はCOL6A6)、SMN1(生存運動ニューロン1)、IDUA(アルファ-L-イズロニダーゼ)、USH1C(USH1タンパク質ネットワーク成分ハーモニン(harmonin)のうちのいずれか1つなどの遺伝子に存在する場合がある。例えば、SMN1遺伝子のナンセンス突然変異は、脊髄性筋萎縮症又は筋萎縮性側索硬化症を引き起こす場合があり、IDUAのナンセンス突然変異は、ハーラー症候群(MPS I-H)などのムコ多糖症I型(MPS I)を引き起こす場合があり、USH1Cのナンセンス突然変異は、アッシャー症候群を引き起こす場合がある。
癌の場合、ナンセンス突然変異は、例えばp53、BRCA1、BRCA2又はAPC遺伝子などの腫瘍抑制遺伝子に存在する場合がある。
式(I)の化合物は、PTCリードスループロモーター又はPTCリードスルー誘導因子とも呼ばれるPTCの阻害剤である。
「リードスルー」とは、コード配列の翻訳中に未成熟終止コドン(PTC)を通過し、対応する全長ポリペプチドの翻訳をもたらす事象を意味する。コード配列にナンセンス突然変異が出現すると、PTCが作製される。その結果、対応するタンパク質が短縮型で産生され、mRNAがNMD経路によって分解される場合がある。
リードスルーは、全長ポリペプチドの翻訳をもたらす。これは、PTCに近同族tRNAが入り、翻訳を中断する代わりに、翻訳中にアミノ酸を導入することによって達成される場合がある。
実施例に示されるように、式(I)の化合物は、PTCリードスルーを誘導することが可能である。
疾患を「予防すること」又は疾患の「予防」とは、前記疾患の発生を軽減することを意味する。
疾患の「治療」又は疾患を「治療すること」とは、前記疾患の治癒的処置を意味する。治癒的処置とは、疾患を完全に治療する(治癒する)又は部分的に治療する処置と定義される。
前記癌は、腫瘍又は癌細胞がナンセンス突然変異を含む、任意の種類の癌又は新生物(neoplasia)である場合がある。特に、前記癌は、腫瘍若しくは癌細胞が腫瘍抑制遺伝子にナンセンス突然変異を含む癌又は新形成である。
前記癌は、例えば、扁平上皮癌、肝細胞癌、胃癌、食道癌、骨癌、黒色腫、乳癌、甲状腺癌、前立腺癌、結腸直腸癌、卵巣癌、肺癌、膵臓癌、神経膠腫、子宮頸癌、子宮内膜癌、頭頸部癌、肝臓癌、腎臓癌、皮膚癌、精巣癌、尿路上皮癌、又は副腎皮質癌、及びリンパ腫などの非固形癌から選択される。前記癌は、転移性癌である可能性も、ない可能性もある。
前記癌は、例えば、扁平上皮癌、肝細胞癌、胃癌、食道癌、骨癌、黒色腫、乳癌、甲状腺癌、前立腺癌、結腸直腸癌、卵巣癌、肺癌、膵臓癌、神経膠腫、子宮頸癌、子宮内膜癌、頭頸部癌、肝臓癌、腎臓癌、皮膚癌、精巣癌、尿路上皮癌、又は副腎皮質癌、及びリンパ腫などの非固形癌から選択される。前記癌は、転移性癌である可能性も、ない可能性もある。
前記遺伝性疾患は、目的の遺伝子のコード配列におけるナンセンス突然変異の存在に起因する任意の疾患である場合がある。
この疾患は、嚢胞性線維症(嚢胞性線維症膜貫通コンダクタンス調節遺伝子におけるG542Xなどのナンセンス突然変異による)、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(ジストロフィンのナンセンス突然変異による)、ベータサラセミア(β-グロビンのナンセンス突然変異による)、A型、B型又はC型ニーマン・ピック病(酸性スフィンゴミエリナーゼのナンセンスL261X突然変異による)、ハーラー症候群、ドラベ症候群、脊髄性筋萎縮症、ミオアデニル酸デアミナーゼ欠損症、アンチトロンビンIII欠損症、アルファ-1アンチトリプシン欠損症、アポリポタンパク質欠損症(アポリポタンパク質AI、B、CII又はE)、アデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(APRT)欠損症、血友病A(第VIII因子のナンセンス突然変異による)、血友病B(第IX因子のナンセンス突然変異による)、フォン・ヴィレブランド病(フォン・ヴィレブランド因子のナンセンス突然変異による)、ファンコニ貧血群C、マルファン症候群、ゴーシェ病、ドナヒュー症候群、ロウ(Lowe)眼脳腎症候群、色素性乾皮症から選択される場合がある。
この疾患は、嚢胞性線維症(嚢胞性線維症膜貫通コンダクタンス調節遺伝子におけるG542Xなどのナンセンス突然変異による)、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(ジストロフィンのナンセンス突然変異による)、ベータサラセミア(β-グロビンのナンセンス突然変異による)、A型、B型又はC型ニーマン・ピック病(酸性スフィンゴミエリナーゼのナンセンスL261X突然変異による)、ハーラー症候群、ドラベ症候群、脊髄性筋萎縮症、ミオアデニル酸デアミナーゼ欠損症、アンチトロンビンIII欠損症、アルファ-1アンチトリプシン欠損症、アポリポタンパク質欠損症(アポリポタンパク質AI、B、CII又はE)、アデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(APRT)欠損症、血友病A(第VIII因子のナンセンス突然変異による)、血友病B(第IX因子のナンセンス突然変異による)、フォン・ヴィレブランド病(フォン・ヴィレブランド因子のナンセンス突然変異による)、ファンコニ貧血群C、マルファン症候群、ゴーシェ病、ドナヒュー症候群、ロウ(Lowe)眼脳腎症候群、色素性乾皮症から選択される場合がある。
本発明による式(I)の化合物は、好ましくは実質的に純粋な形態である。
「薬学的に許容される塩」とは、ハロゲン、あるいはギ酸、塩酸、メタンスルホン酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、酢酸、フマル酸、コハク酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸若しくは安息香酸などの無機酸又は有機酸との任意の酸付加塩を意味する。好ましくは、式(I)の化合物の塩は、塩酸、ギ酸又はヨウ素、好ましくは塩酸との塩である。好ましくは、式(I)の化合物の塩は、塩酸との塩(すなわち、塩酸塩)である。
式(I)の化合物はまた、特に2H、3H、11C、14C、18F、15O及び13Nから選択される少なくとも1つの同位体を含んでもよい。
「ハロゲン」とは、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素原子を意味する。好ましくは、ハロゲンは、フッ素又は塩素又は臭素である。
「C1-C6アルキル」とは、1~6個の炭素原子、特に1~3個の炭素原子を含む直鎖炭化水素基、又は3~6個の炭素原子を含む分岐若しくは環状炭化水素基を意味する。アルキル基の例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、n-ヘキシル、及びシクロヘキシル基が挙げられ、好ましくはメチル又はエチルである。
「C1-C6アルコキシ」は、アルキル部分が上記で定義したようなC1-C6アルキルである、-O-アルキル基である。好ましくは、C1-C6アルコキシ基は、メトキシである。
好ましくは、式(I)の化合物は、
R1は、C1-C6アルキルラジカル、好ましくはメチル又はエチルであり、
R2が、ハロゲン原子、又はC1-C6アルコキシラジカル(好ましくはメトキシ)であり、
R3が、H、C1-C6アルキルラジカル(好ましくはメチル)、又はC1-C6アルコキシラジカル(好ましくはメトキシ)であり、
R2及びR3が、それぞれ同時にHではない、
ようなものである。
R2が、ハロゲン原子、又はC1-C6アルコキシラジカル(好ましくはメトキシ)であり、
R3が、H、C1-C6アルキルラジカル(好ましくはメチル)、又はC1-C6アルコキシラジカル(好ましくはメトキシ)であり、
R2及びR3が、それぞれ同時にHではない、
ようなものである。
好ましくは、式(I)の化合物は、
R1が、メチル又はエチル、好ましくはメチルであり、
R2が、ハロゲン原子、好ましくはフッ素、塩素若しくは臭素原子、又はメトキシラジカルであり、
R3が、H又はメチルラジカルである、
ようなものである。
R2が、ハロゲン原子、好ましくはフッ素、塩素若しくは臭素原子、又はメトキシラジカルであり、
R3が、H又はメチルラジカルである、
ようなものである。
好ましくは、式(I)の化合物は、R1がメチルであり、R3がHであるようなものである。この実施形態によれば、好ましくは、R2は、H又はC1-C6アルコキシラジカル、好ましくはメトキシである。
好ましくは、そのような化合物は、以下の化合物及びそれらの薬学的に許容される塩から選択される:
であるTLN68、及び
であるEC-18。
好ましくは、式(I)の化合物は、R1がメチルであり、R3がHであり、R2がC1-C6アルコキシラジカル、好ましくはメトキシであるようなものである。そのような場合、好ましくは、式(I)の化合物は、EC-18である。
好ましくは、そのような化合物は、以下の化合物及びそれらの薬学的に許容される塩から選択される:
好ましくは、式(I)の化合物は、R1がメチルであり、R3がHであり、R2がC1-C6アルコキシラジカル、好ましくはメトキシであるようなものである。そのような場合、好ましくは、式(I)の化合物は、EC-18である。
好ましくは、他の実施形態によれば、式(I)の化合物は、R1がメチルであり、R2がHであり、R3がC1~C6アルキルラジカル、好ましくはメチル又はC1~C6アルコキシ基、好ましくはメトキシであるようなものである。
好ましくは、そのような化合物は、以下の化合物及びそれらの薬学的に許容される塩から選択される:
であるEC-35、及び
であるEC-30。
好ましくは、そのような化合物は、以下の化合物及びそれらの薬学的に許容される塩から選択される:
好ましくは、他の実施形態によれば、式(I)の化合物は、R1がメチルであり、R2がハロゲンであり、R3がH又はC1-C6アルキルラジカル、好ましくはメチルであるようなものである。好ましくは、R2は、フッ素、塩素又は臭素原子である。好ましくは、R3は、C1-C6アルキルラジカル、好ましくはメチルである。
好ましくは、そのような化合物は、以下の化合物及びそれらの薬学的に許容される塩から選択される:
であるEC-141、
であるEC-85、
であるEC-11、
であるEC-288、
であるEC-130、
であるEC-335、及び
好ましくは、他の実施形態によれば、式(I)の化合物は、R1がエチルであり、R2がC1-C6アルコキシラジカル、好ましくはメトキシであり、R3がHであるようなものである。
好ましくは、そのような化合物は、以下の化合物及びそれらの薬学的に許容される塩から選択される:
であるEC-265、及び
好ましくは、そのような化合物は、以下の化合物及びそれらの薬学的に許容される塩から選択される:
好ましくは、そのような化合物は、以下の化合物及びそれらの薬学的に許容される塩から選択される:
好ましくは、式(I)の化合物又はそれらの塩は、
-R1がメチルであり、R3がHであり、R2がC1-C6アルコキシラジカル、好ましくはメトキシであり、そのような場合、好ましくは、式(I)の化合物は、EC-18若しくはその塩のうちの1つであるか、又は
-R1がメチルであり、R2がハロゲン、好ましくはフッ素、塩素若しくは臭素原子であり、R3がH若しくはC1-C6アルキルラジカル、好ましくはメチルであり、そのような場合、好ましくは、式(I)の化合物は、EC-85、EC-288、EC-130、EC-335若しくはそれらの塩のうちの1つであるか、又は
-R1がエチルであり、R2がC1-C6アルコキシラジカル、好ましくはメトキシであり、R3はHであり、そのような場合、好ましくは、式(I)の化合物は、EC-265若しくはその塩の1つであるようなものである。
-R1がメチルであり、R3がHであり、R2がC1-C6アルコキシラジカル、好ましくはメトキシであり、そのような場合、好ましくは、式(I)の化合物は、EC-18若しくはその塩のうちの1つであるか、又は
-R1がメチルであり、R2がハロゲン、好ましくはフッ素、塩素若しくは臭素原子であり、R3がH若しくはC1-C6アルキルラジカル、好ましくはメチルであり、そのような場合、好ましくは、式(I)の化合物は、EC-85、EC-288、EC-130、EC-335若しくはそれらの塩のうちの1つであるか、又は
-R1がエチルであり、R2がC1-C6アルコキシラジカル、好ましくはメトキシであり、R3はHであり、そのような場合、好ましくは、式(I)の化合物は、EC-265若しくはその塩の1つであるようなものである。
式(II)の化合物又はそれらの塩
本発明は、式(II)の化合物又はその薬学的に許容される塩のうちの1つにも関し、
式中、
R1は、C1-C6アルキルラジカル、好ましくはメチル又はエチルであり、
R2は、ハロゲン原子、又はC1-C6アルコキシラジカル、好ましくはメトキシであり、
R3は、H又はC1-C6アルキルラジカル、好ましくはメチルであり、
但し、R2がC1-C6アルコキシラジカルである場合、R1はエチルであり、
R2がハロゲンであり、R3がHである場合、当該化合物は、ギ酸又はヨウ素との塩などの薬学的に許容される塩の形態である。
本発明は、式(II)の化合物又はその薬学的に許容される塩のうちの1つにも関し、
R1は、C1-C6アルキルラジカル、好ましくはメチル又はエチルであり、
R2は、ハロゲン原子、又はC1-C6アルコキシラジカル、好ましくはメトキシであり、
R3は、H又はC1-C6アルキルラジカル、好ましくはメチルであり、
但し、R2がC1-C6アルコキシラジカルである場合、R1はエチルであり、
R2がハロゲンであり、R3がHである場合、当該化合物は、ギ酸又はヨウ素との塩などの薬学的に許容される塩の形態である。
式(II)の化合物は、式(I)の化合物のサブグループである。
薬学的に許容される塩、同位体、ハロゲン、C1-C6アルキルラジカル及びC1-C6アルコキシラジカルに関する全ての定義は、ここでも式(II)に適用可能である。同様に、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩のうちの1つの全ての使用は、式(II)の化合物にも適用可能である。
好ましくは、式(II)の化合物は、R1がメチルであり、R2がハロゲンであり、R3がH又はC1-C6アルキルラジカル、好ましくはメチルであるようなものである。
好ましくは、そのような化合物は、以下の化合物及びそれらの薬学的に許容される塩から選択される:
であるEC-141、
であるEC-85、
であるEC-11、
であるEC-288、
であるEC-130、
であるEC-335、及び
好ましくは、そのような化合物は、以下の化合物及びそれらの薬学的に許容される塩から選択される:
好ましくは、そのような化合物は、以下の化合物及びそれらの薬学的に許容される塩から選択される:
であるEC-141、
であるEC-85、
であるEC-288、
であるEC-130、
であるEC-335、及び
好ましくは、他の実施形態によれば、式(II)の化合物は、R1がエチルであり、R2がC1-C6アルコキシラジカル、好ましくはメトキシであり、R3がHであるようなものである。
好ましくは、そのような化合物は、以下の化合物及びそれらの薬学的に許容される塩から選択される:
であるEC-265、及び
好ましくは、そのような化合物は、以下の化合物及びそれらの薬学的に許容される塩から選択される:
本発明の別の目的は、少なくとも1つの式(II)の化合物又はその薬学的に許容される塩のうちの1つを、療法において、又は薬物(又は医薬品)として使用することである。
本発明の別の目的は、薬学的に許容される培地中に、少なくとも1つの式(II)の化合物又はその薬学的に許容される塩のうちの1つを含む、組成物である。
本発明の化合物の調製
本発明による式(I)又は(II)の化合物は、一般方法A及び/又はBに記載されているように、並びに以下のスキームに示されているように調製してもよい:
本発明による式(I)又は(II)の化合物は、一般方法A及び/又はBに記載されているように、並びに以下のスキームに示されているように調製してもよい:
一般方法A。C7及び/又はC8位置で置換された化合物への合成経路(スキーム1):
2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン(1)。窒素注入口と磁気攪拌棒を備えた、オーブンで乾燥させたシュレンクチューブに、対応するアニリン(10mmol)、塩化インジウム(III)(0.5mmol、5mol%)、及びアセトン(12mL)を順次投入した。出発材料の完全な変換が観察されるまで混合物を56℃で撹拌し、次いで全ての揮発物を真空で除去し、残留物をシクロヘキサン中のEtOAcの勾配を使用する順相カラムクロマトグラフィーにより精製した。
トランスレクチン68誘導体(TLN68)(2)。乾燥アセトニトリル(1mL)中の対応する2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン1(1mmol)の溶液に、Et2O中の1M HCl(1当量)を添加した。1の塩酸塩が完全に沈殿したら、ガラスフリットフィルター上で真空吸引濾過により固体を収集し、ヘキサンで繰り返し洗浄した。この材料を更に精製することなく次のステップで使用した。
磁気攪拌棒及び還流凝縮器を備えた丸底フラスコに、1の対応する塩酸塩(1mmol)、ジシアンジアミド(1.01当量)、EtOH(1mL)、及び水(1.5mL)を投入した。混合物を18時間還流し、次いで室温に冷却し、pHを9~10に調整した。ガラスフリットフィルター上での真空吸引濾過により沈殿物を収集し、冷水で十分に洗浄した。0.1%v/vギ酸を補充した水中のアセトニトリルの勾配を使用する逆相カラムクロマトグラフィーによる精製により、キナゾリル-2-グアニジン2をギ酸塩として得た。
スキーム1 試薬及び条件:(a)InCl3(5mol%)、アセトン、56℃、24~72時間;(b)Et2O(1当量)中の1M HCl、MeCN、室温、5~10分;(c)ジシアンジアミド(1.01当量)、EtOH、H2O、還流、18時間。
2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン(1)。窒素注入口と磁気攪拌棒を備えた、オーブンで乾燥させたシュレンクチューブに、対応するアニリン(10mmol)、塩化インジウム(III)(0.5mmol、5mol%)、及びアセトン(12mL)を順次投入した。出発材料の完全な変換が観察されるまで混合物を56℃で撹拌し、次いで全ての揮発物を真空で除去し、残留物をシクロヘキサン中のEtOAcの勾配を使用する順相カラムクロマトグラフィーにより精製した。
トランスレクチン68誘導体(TLN68)(2)。乾燥アセトニトリル(1mL)中の対応する2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン1(1mmol)の溶液に、Et2O中の1M HCl(1当量)を添加した。1の塩酸塩が完全に沈殿したら、ガラスフリットフィルター上で真空吸引濾過により固体を収集し、ヘキサンで繰り返し洗浄した。この材料を更に精製することなく次のステップで使用した。
磁気攪拌棒及び還流凝縮器を備えた丸底フラスコに、1の対応する塩酸塩(1mmol)、ジシアンジアミド(1.01当量)、EtOH(1mL)、及び水(1.5mL)を投入した。混合物を18時間還流し、次いで室温に冷却し、pHを9~10に調整した。ガラスフリットフィルター上での真空吸引濾過により沈殿物を収集し、冷水で十分に洗浄した。0.1%v/vギ酸を補充した水中のアセトニトリルの勾配を使用する逆相カラムクロマトグラフィーによる精製により、キナゾリル-2-グアニジン2をギ酸塩として得た。
一般方法B。C4及び/又はC7~C8位置で置換された化合物への合成経路(スキーム2):
オルト-アミノフェノン(1)。窒素注入口及び磁気攪拌棒を備えた、オーブンで乾燥させた二口丸底フラスコに、乾燥THF(15mL)中の対応する2-アミノベンゾニトリル(5mmol)の溶液を投入した。対応するグリニャール試薬(3当量)を、注射器を介して0℃で滴下した。混合物を0℃で1時間撹拌し、次いで室温まで温め、この温度で18時間撹拌した。塩化アンモニウムの飽和水溶液(15mL)を添加し、二相混合物を10分間激しく撹拌した。層を分離し、水相をEtOAcで2回抽出した。組み合わせた有機物を硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空で濃縮し、残留物を、シクロヘキサン中のEtOAcの勾配を使用する順相カラムクロマトグラフィーにより精製した。
トランスレクチン68誘導体(2)。磁気攪拌棒と還流冷却器を備えた丸底フラスコに、対応するオルト-アミノフェノン1(1mmol)、ジシアンジアミド(1.05当量)、pTSA(5mol%)、及びDMF(3.5mL)を投入した。出発材料の完全な変換が観察されるまで混合物を120℃で撹拌し、次いで室温に冷却し、EtOAcで希釈し、水及びブラインで繰り返し洗浄した。全ての揮発物を真空で除去し、0.1%v/vギ酸を補充した水中のアセトニトリルの勾配を使用する逆相カラムクロマトグラフィーによって残留物を精製して、キナゾリル-2-グアニジン2をギ酸塩として得た。
スキーム2 試薬及び条件:(a)R1MgBr又はR1MgCl(3当量)、THF、0℃~室温、18時間;その後、NH4Cl飽和溶液、10分;(b)ジシアンジアミド(1.05当量)、pTSA(5mol%)、DMF、120℃、12~24時間。
オルト-アミノフェノン(1)。窒素注入口及び磁気攪拌棒を備えた、オーブンで乾燥させた二口丸底フラスコに、乾燥THF(15mL)中の対応する2-アミノベンゾニトリル(5mmol)の溶液を投入した。対応するグリニャール試薬(3当量)を、注射器を介して0℃で滴下した。混合物を0℃で1時間撹拌し、次いで室温まで温め、この温度で18時間撹拌した。塩化アンモニウムの飽和水溶液(15mL)を添加し、二相混合物を10分間激しく撹拌した。層を分離し、水相をEtOAcで2回抽出した。組み合わせた有機物を硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空で濃縮し、残留物を、シクロヘキサン中のEtOAcの勾配を使用する順相カラムクロマトグラフィーにより精製した。
トランスレクチン68誘導体(2)。磁気攪拌棒と還流冷却器を備えた丸底フラスコに、対応するオルト-アミノフェノン1(1mmol)、ジシアンジアミド(1.05当量)、pTSA(5mol%)、及びDMF(3.5mL)を投入した。出発材料の完全な変換が観察されるまで混合物を120℃で撹拌し、次いで室温に冷却し、EtOAcで希釈し、水及びブラインで繰り返し洗浄した。全ての揮発物を真空で除去し、0.1%v/vギ酸を補充した水中のアセトニトリルの勾配を使用する逆相カラムクロマトグラフィーによって残留物を精製して、キナゾリル-2-グアニジン2をギ酸塩として得た。
本発明の化合物との治療的組み合わせ
本発明の別の目的は、
a)式(I)若しくは(II)の化合物、又はその薬学的に許容される塩のうちの1つと、
b)少なくとも1つの他の薬物と、を
対象におけるナンセンス突然変異によって引き起こされる疾患、特に癌若しくは遺伝性疾患を治療するための同時、個別又は逐次使用のための組み合わせ物として含む、物である。好ましくは、疾患は、ナンセンス突然変異によって引き起こされる遺伝性疾患、及び腫瘍抑制遺伝子に存在するナンセンス突然変異によって引き起こされる癌から選択される。
本発明の別の目的は、
a)式(I)若しくは(II)の化合物、又はその薬学的に許容される塩のうちの1つと、
b)少なくとも1つの他の薬物と、を
対象におけるナンセンス突然変異によって引き起こされる疾患、特に癌若しくは遺伝性疾患を治療するための同時、個別又は逐次使用のための組み合わせ物として含む、物である。好ましくは、疾患は、ナンセンス突然変異によって引き起こされる遺伝性疾患、及び腫瘍抑制遺伝子に存在するナンセンス突然変異によって引き起こされる癌から選択される。
本発明の別の目的は、
a)式(I)若しくは(II)の化合物、又はその薬学的に許容される塩のうちの1つと、
b)少なくとも1つの化学療法薬と、を
対象において、癌を治療するため、及び/又は癌転移を予防するため、及び/又は癌再発を予防するため、及び/又は化学療法薬b)に対する耐性を低減するための同時、個別又は逐次使用のための組み合わせ物として含む、物である。
a)式(I)若しくは(II)の化合物、又はその薬学的に許容される塩のうちの1つと、
b)少なくとも1つの化学療法薬と、を
対象において、癌を治療するため、及び/又は癌転移を予防するため、及び/又は癌再発を予防するため、及び/又は化学療法薬b)に対する耐性を低減するための同時、個別又は逐次使用のための組み合わせ物として含む、物である。
好ましくは、本発明は、
a)式(I)若しくは(II)の化合物、又はその薬学的に許容される塩のうちの1つと、
b)アタルレン、ゲンタマイシン、ネガマイシン、クリトシン、エスシン、及びNMD阻害剤から選択される少なくとも1つの薬物と、を
対象におけるナンセンス突然変異によって引き起こされる疾患、特に癌若しくは遺伝性疾患を治療するための同時、個別又は逐次使用のための組み合わせ物として含む、物に関する。好ましくは、疾患は、ナンセンス突然変異によって引き起こされる遺伝性疾患、及び腫瘍抑制遺伝子に存在するナンセンス突然変異によって引き起こされる癌から選択される。
a)式(I)若しくは(II)の化合物、又はその薬学的に許容される塩のうちの1つと、
b)アタルレン、ゲンタマイシン、ネガマイシン、クリトシン、エスシン、及びNMD阻害剤から選択される少なくとも1つの薬物と、を
対象におけるナンセンス突然変異によって引き起こされる疾患、特に癌若しくは遺伝性疾患を治療するための同時、個別又は逐次使用のための組み合わせ物として含む、物に関する。好ましくは、疾患は、ナンセンス突然変異によって引き起こされる遺伝性疾患、及び腫瘍抑制遺伝子に存在するナンセンス突然変異によって引き起こされる癌から選択される。
「対象」という用語は、任意の対象を指し、典型的には、患者、特に遺伝性疾患、又は化学療法及び/若しくは放射線療法などの癌の治療を受けている対象、あるいは癌を発症するリスクがあるか、又はその疑いがある対象を示す。
対象は、好ましくは哺乳動物であり、更により好ましくはヒトである。例えば、対象は、癌に罹患しているヒトである場合がある。
対象は、好ましくは哺乳動物であり、更により好ましくはヒトである。例えば、対象は、癌に罹患しているヒトである場合がある。
対象は、完全な従来の治療プロトコルの一部、例えば全治療プロトコルの少なくとも1回のサイクル、例えば全治療プロトコルの2回のサイクルに曝されている場合がある。
典型的には、他の薬物は、遺伝性疾患又は癌を治療するために使用される薬物であってもよい。
本発明の特定の実施形態において、他の薬物は、好ましくはアタルレン、ゲンタマイシン、ネガマイシン、クリトシン及びエスシンから選択される、別のPTCリードスルー誘導因子である。本発明の別の特定の実施形態では、他の薬物は、NMD阻害剤から選択される。
実際、本発明の式(I)又は(II)の化合物は、リボソームを標的としない場合がある。したがって、それらの化合物は、リボソームを標的とするアタルレン、ゲンタマイシン、ネガマイシン、クリトシン又はエスシンなどの以前のリードスルー誘導因子と組み合わせて使用される可能性がある。
本発明の式(I)又は(II)の化合物は、NMD阻害剤と組み合わせて使用される可能性がある。NMD(ナンセンス変異依存mRNA分解)阻害剤は、阻害のないそのような細胞と比較して、細胞中のNMDの活性を低減する、及び/又は欠陥のあるmRNAの破壊を任意の測定可能な量だけ低減する化合物である。NMD阻害は、様々な方法、例えば、NMD経路のタンパク質成分の機能を阻止することによって、翻訳を阻害することによって、又は翻訳機械に未成熟終止コドンをバイパスさせることによって(リードスルー)達成できる。
NMD阻害剤は、ウォルトマンニン、カフェイン、パテアミンA、NMDI-1、及び5-アザシチジンから選択することができる。
典型的には、他の薬物は、遺伝性疾患又は癌を治療するために使用される薬物であってもよい。
本発明の特定の実施形態において、他の薬物は、好ましくはアタルレン、ゲンタマイシン、ネガマイシン、クリトシン及びエスシンから選択される、別のPTCリードスルー誘導因子である。本発明の別の特定の実施形態では、他の薬物は、NMD阻害剤から選択される。
実際、本発明の式(I)又は(II)の化合物は、リボソームを標的としない場合がある。したがって、それらの化合物は、リボソームを標的とするアタルレン、ゲンタマイシン、ネガマイシン、クリトシン又はエスシンなどの以前のリードスルー誘導因子と組み合わせて使用される可能性がある。
本発明の式(I)又は(II)の化合物は、NMD阻害剤と組み合わせて使用される可能性がある。NMD(ナンセンス変異依存mRNA分解)阻害剤は、阻害のないそのような細胞と比較して、細胞中のNMDの活性を低減する、及び/又は欠陥のあるmRNAの破壊を任意の測定可能な量だけ低減する化合物である。NMD阻害は、様々な方法、例えば、NMD経路のタンパク質成分の機能を阻止することによって、翻訳を阻害することによって、又は翻訳機械に未成熟終止コドンをバイパスさせることによって(リードスルー)達成できる。
NMD阻害剤は、ウォルトマンニン、カフェイン、パテアミンA、NMDI-1、及び5-アザシチジンから選択することができる。
本発明の特定の実施形態では、他の薬物は、化学療法薬である。
本発明の特定の実施形態では、化学療法薬は、アントラサイクリン、抗腫瘍抗生物質、アルキル化剤、代謝拮抗剤、アルカロイド、トポイソメラーゼ阻害剤、紡錘体毒などの抗有糸分裂剤、DNA-挿入剤、タキサン、プラチンをベースとする成分、特定のキナーゼ阻害剤、アンドロゲン受容体アンタゴニスト、ホルモン、サイトカイン、抗血管新生剤、抗体、特にモノクローナル抗体、免疫系の調節剤、腫瘍溶解性ウイルス及びTLR(Toll様受容体)-3リガンドから選択される。
化学療法薬は、予防又は治療する特定の癌に応じて選択してもよい。
本発明の特定の実施形態では、化学療法薬は、アントラサイクリン、抗腫瘍抗生物質、アルキル化剤、代謝拮抗剤、アルカロイド、トポイソメラーゼ阻害剤、紡錘体毒などの抗有糸分裂剤、DNA-挿入剤、タキサン、プラチンをベースとする成分、特定のキナーゼ阻害剤、アンドロゲン受容体アンタゴニスト、ホルモン、サイトカイン、抗血管新生剤、抗体、特にモノクローナル抗体、免疫系の調節剤、腫瘍溶解性ウイルス及びTLR(Toll様受容体)-3リガンドから選択される。
化学療法薬は、予防又は治療する特定の癌に応じて選択してもよい。
アントラサイクリンとしては、例えば、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、ピラルビシン、イダルビシン、ゾルビシン、アクラルビシン、ネモルビシン、サバルビシン又はバルルビシンが挙げられる。
抗腫瘍抗生物質としては、例えば、ブレオマイシン、ヒドロキシウレア、マイトマイシンC又はミトキサントロンが挙げられる。
アルキル化剤としては、例えば、ダカルバジン、ブスルファン、カルボプラチン、クロラムブシル、シスプラチン、シクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン、メクロレタミン、オキサリプラチン、ウラムスチン又はテモゾロミドが挙げられる。
代謝拮抗剤の例は、アザチオプリン、カペシタビン、シタラビン、フロクスウリジン、フルダラビン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、メトトレキサート、フルオロウラシル(5-FU)又はペメトレキセドである。アルカロイドとしては、例えば、ビンブラスチン、又はビンクリスチン(ビノレルビン)が挙げられる。トポイソメラーゼ阻害剤としては、例えば、イリノテカン、トポテカン又はエトポシドが挙げられる。紡錘体毒は、例えば、ビンブラスチン、ビンクリスチン及びビノレルビンから選択される。
タキサンは、例えば、ドセタキセル、ラロタキセル、カバジタキセル、パクリタキセル(PG-パクリタキセル及びDHA-パクリタキセル)、オルタタキセル、テセタキセル、及びタキソプレキシンから選択される。
プラチンをベースとする成分の例は、CDDP及びOXPである。
特定のキナーゼ阻害剤の例は、例えば、ベムラフェニブ及びダブラフェニブなどのBRAFキナーゼ阻害剤、又はトラメチニブなどのMEK阻害剤、又はボラセルチブなどのPlk1阻害剤である。
アンドロゲン受容体アンタゴニストは、例えば、ビカルタミド又はエンザルタミドである。
タモキシフェン及び抗アロマターゼ薬は通常、ホルモン療法との関連で使用される。
免疫療法との関連で使用可能なサイトカインの例は、IL-2(インターロイキン-2)及びIFN(インターフェロン)アルファ(IFNa)である。
抗血管新生剤は、例えば、イトラコナゾール、ベバシズマブ又はラニビズマブなどのVEGF阻害剤である。
抗CD20(パンB細胞抗原)及び抗Her2/Neu(ヒト上皮成長因子受容体-2/NEU)は、モノクローナル抗体の例である。また、モノクローナル抗体としては、抗PD1、抗PDL1、抗CTLA4、抗OX40L、抗PDL2、抗CD73、抗CD80、抗CD86、抗TIGIT、抗ガラクチン-3又は抗HVEM抗体などの抗免疫チェックポイント抗体が挙げられる。
抗PD1抗体としては、ペムブロリズマブ又はニボルマブが挙げられる。
免疫系調節剤は、例えば、IDO1、IDO2若しくはTDO2阻害剤、A2aアンタゴニスト、又はSTINGアゴニストである。
腫瘍溶解性ウイルスは、例えばタリモジーン・ラハーパレプベック(Talimogene laherparepvec)である。
抗腫瘍抗生物質としては、例えば、ブレオマイシン、ヒドロキシウレア、マイトマイシンC又はミトキサントロンが挙げられる。
アルキル化剤としては、例えば、ダカルバジン、ブスルファン、カルボプラチン、クロラムブシル、シスプラチン、シクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン、メクロレタミン、オキサリプラチン、ウラムスチン又はテモゾロミドが挙げられる。
代謝拮抗剤の例は、アザチオプリン、カペシタビン、シタラビン、フロクスウリジン、フルダラビン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、メトトレキサート、フルオロウラシル(5-FU)又はペメトレキセドである。アルカロイドとしては、例えば、ビンブラスチン、又はビンクリスチン(ビノレルビン)が挙げられる。トポイソメラーゼ阻害剤としては、例えば、イリノテカン、トポテカン又はエトポシドが挙げられる。紡錘体毒は、例えば、ビンブラスチン、ビンクリスチン及びビノレルビンから選択される。
タキサンは、例えば、ドセタキセル、ラロタキセル、カバジタキセル、パクリタキセル(PG-パクリタキセル及びDHA-パクリタキセル)、オルタタキセル、テセタキセル、及びタキソプレキシンから選択される。
プラチンをベースとする成分の例は、CDDP及びOXPである。
特定のキナーゼ阻害剤の例は、例えば、ベムラフェニブ及びダブラフェニブなどのBRAFキナーゼ阻害剤、又はトラメチニブなどのMEK阻害剤、又はボラセルチブなどのPlk1阻害剤である。
アンドロゲン受容体アンタゴニストは、例えば、ビカルタミド又はエンザルタミドである。
タモキシフェン及び抗アロマターゼ薬は通常、ホルモン療法との関連で使用される。
免疫療法との関連で使用可能なサイトカインの例は、IL-2(インターロイキン-2)及びIFN(インターフェロン)アルファ(IFNa)である。
抗血管新生剤は、例えば、イトラコナゾール、ベバシズマブ又はラニビズマブなどのVEGF阻害剤である。
抗CD20(パンB細胞抗原)及び抗Her2/Neu(ヒト上皮成長因子受容体-2/NEU)は、モノクローナル抗体の例である。また、モノクローナル抗体としては、抗PD1、抗PDL1、抗CTLA4、抗OX40L、抗PDL2、抗CD73、抗CD80、抗CD86、抗TIGIT、抗ガラクチン-3又は抗HVEM抗体などの抗免疫チェックポイント抗体が挙げられる。
抗PD1抗体としては、ペムブロリズマブ又はニボルマブが挙げられる。
免疫系調節剤は、例えば、IDO1、IDO2若しくはTDO2阻害剤、A2aアンタゴニスト、又はSTINGアゴニストである。
腫瘍溶解性ウイルスは、例えばタリモジーン・ラハーパレプベック(Talimogene laherparepvec)である。
好ましい実施形態では、化学療法薬は、シスプラチン、ドキソルビシン、ドセタキセル、シクロホスファミド、オキサリプラチン、イリノテカン、メトトレキセート、テモゾロミド、5-FU、ダカルバジン、及びベムラフェニブから選択される。
ナンセンス突然変異によって引き起こされる疾患を治療する方法も本明細書に記載されており、この方法は、任意選択的には他の薬物と共に、有効量の、上記で定義したような式(I)又は(II)の少なくとも1つの化合物を、疾患の治療を必要とする対象に投与することを含む。
本明細書で使用される場合、「治療有効量又は用量」とは、対象、好ましくはヒトにおいて癌を除去する、進行を遅らせる、あるいは前記疾患によって引き起こされるか前記疾患に関連する1つ以上の症状若しくは障害を軽減するか又は遅延させる本発明の化合物の量を指す。本発明の化合物及びその薬学的組成物の有効量、及びより一般的には投与計画は、当業者によって決定及び適合されてもよい。有効用量は、従来の技術を使用し、類似の状況下で得られた結果を観察することによって決定することができる。本発明の化合物の治療有効用量は、治療又は予防する疾患、その重篤性(gravity)、投与経路、関与する併用療法、患者の年齢、体重、全身病状、病歴などに応じて変化するであろう。
典型的には、患者に投与される化合物の量は、ヒト患者の体重1kg当たり約0.01~500mgの範囲であってもよい。特定の実施形態では、本発明による薬学的組成物は、0.01mg/kg~300mg/kg、好ましくは0.01mg/kg~3mg/kg、例えば25~300mg/kgの本発明の化合物を含む。
特定の態様では、本発明の化合物は、非経口経路、局所経路、経口経路、又は静脈内(IV)注射によって対象に投与することができる。本発明の化合物又はナノ粒子は、連続した数日間、例えば連続した2~10日間、好ましくは連続した3~6日の間、毎日(例えば、1日1、2、3、4、5、6、又は7回)対象に投与してもよい。前記治療は、1、2、3、4、5、6、若しくは7週間、又は2若しくは3週間ごとに、又は1、2若しくは3ヶ月ごとに繰り返してもよい。あるいは、任意選択的には2回の治療サイクルの間に、例えば1、2、3、4、又は5週間の休止期間を設けて、数回の治療サイクルを実行することができる。本発明の化合物又はナノ粒子は、例えば、週に1回、2週に1回、又は月に1回の単回用量として投与することができる。治療は、年に1回又は数回繰り返してもよい。
用量は、当業者が決定できる適切な間隔で投与される。選択される量は、投与経路、投与期間、投与時間、式(I)の選択された化合物若しくは前記化合物と組み合わせて使用される様々な製品の排出速度、患者の年齢、体重及び体調、及び患者の病歴、並びに医学で知られている任意の他の情報を含む複数の要因に依存する。
典型的には、患者に投与される化合物の量は、ヒト患者の体重1kg当たり約0.01~500mgの範囲であってもよい。特定の実施形態では、本発明による薬学的組成物は、0.01mg/kg~300mg/kg、好ましくは0.01mg/kg~3mg/kg、例えば25~300mg/kgの本発明の化合物を含む。
特定の態様では、本発明の化合物は、非経口経路、局所経路、経口経路、又は静脈内(IV)注射によって対象に投与することができる。本発明の化合物又はナノ粒子は、連続した数日間、例えば連続した2~10日間、好ましくは連続した3~6日の間、毎日(例えば、1日1、2、3、4、5、6、又は7回)対象に投与してもよい。前記治療は、1、2、3、4、5、6、若しくは7週間、又は2若しくは3週間ごとに、又は1、2若しくは3ヶ月ごとに繰り返してもよい。あるいは、任意選択的には2回の治療サイクルの間に、例えば1、2、3、4、又は5週間の休止期間を設けて、数回の治療サイクルを実行することができる。本発明の化合物又はナノ粒子は、例えば、週に1回、2週に1回、又は月に1回の単回用量として投与することができる。治療は、年に1回又は数回繰り返してもよい。
用量は、当業者が決定できる適切な間隔で投与される。選択される量は、投与経路、投与期間、投与時間、式(I)の選択された化合物若しくは前記化合物と組み合わせて使用される様々な製品の排出速度、患者の年齢、体重及び体調、及び患者の病歴、並びに医学で知られている任意の他の情報を含む複数の要因に依存する。
投与経路は、経口、局所又は非経口、典型的には直腸、舌下、鼻腔内、腹腔内(IP)、静脈内(IV)、動脈内(IA)、筋肉内(IM)、小脳内、髄腔内、腫瘍内及び/又は皮内であり得る。薬学的組成物は、上記経路のうちの1つ又はいくつかに適合する。薬学的組成物は、好ましくは、好適な無菌溶液の注射若しくは静脈内注入によって、又は消化管を介して液体若しくはは固体用量の形態で投与される。
本発明の製剤は、薬学的に許容される担体中に式(I)又は(II)の化合物を含む。担体は、製剤の他の成分と適合性であり、そのレシピエントに有害でないという意味で「許容可能」でなければならない。
薬学的組成物は、薬学的に適合性である溶媒中の溶液として、あるいは好適な薬学的溶媒若しくはビヒクル中のゲル、油、エマルジョン、懸濁液又は分散液として、又は当技術分野で知られている様式で固体ビヒクルを含有する丸剤、錠剤、カプセル、粉末、座薬などとして、おそらくは徐放及び/若しくは遅延放出を提供する剤形又は装置により製剤化することができる。このタイプの製剤には、セルロース、脂質、炭酸塩又はデンプンなどの薬剤が有利に使用される。
製剤(液体及び/若しくは注射剤及び/若しくは固体)で使用できる薬剤又はビヒクルは、賦形剤又は不活性ビヒクル、すなわち、薬学的に不活性かつ非毒性のビヒクルである。
例えば、薬学的使用に適合性であり、当業者に知られている生理食塩水、生理溶液、等張液及び/又は緩衝液を挙げることができる。組成物は、分散剤、可溶化剤、安定剤、防腐剤などから選択される1つ以上の薬剤又はビヒクルを含んでもよい。
特定の例は、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、シクロデキストリン、ポリソルベート80、マンニトール、ゼラチン、ラクトース、リポソーム、植物油又は動物、アカシアなどである。好ましくは、植物油が使用される。
経口投与に適した本発明の製剤は、それぞれ所定量の有効成分を含有するカプセル、小袋、錠剤又はトローチ剤などの別個の単位の形態;粉末又は顆粒の形態で;水性液体若しくは非水性液体中の溶液又は懸濁液の形態;あるいは水中油型エマルジョン又は油中水型エマルジョンの形態であってもよい。
非経口投与に適した製剤は、好ましくはレシピエントの血液と等張である活性成分の滅菌油性又は水性調製物を好都合に含む。そのような製剤は全て、他の薬学的に適合性がありかつ毒性のない補助剤、例えば、安定剤、酸化防止剤、結合剤、染料、乳化剤又は香料物質を含むこともできる。
薬学的組成物は、薬学的に適合性である溶媒中の溶液として、あるいは好適な薬学的溶媒若しくはビヒクル中のゲル、油、エマルジョン、懸濁液又は分散液として、又は当技術分野で知られている様式で固体ビヒクルを含有する丸剤、錠剤、カプセル、粉末、座薬などとして、おそらくは徐放及び/若しくは遅延放出を提供する剤形又は装置により製剤化することができる。このタイプの製剤には、セルロース、脂質、炭酸塩又はデンプンなどの薬剤が有利に使用される。
製剤(液体及び/若しくは注射剤及び/若しくは固体)で使用できる薬剤又はビヒクルは、賦形剤又は不活性ビヒクル、すなわち、薬学的に不活性かつ非毒性のビヒクルである。
例えば、薬学的使用に適合性であり、当業者に知られている生理食塩水、生理溶液、等張液及び/又は緩衝液を挙げることができる。組成物は、分散剤、可溶化剤、安定剤、防腐剤などから選択される1つ以上の薬剤又はビヒクルを含んでもよい。
特定の例は、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、シクロデキストリン、ポリソルベート80、マンニトール、ゼラチン、ラクトース、リポソーム、植物油又は動物、アカシアなどである。好ましくは、植物油が使用される。
経口投与に適した本発明の製剤は、それぞれ所定量の有効成分を含有するカプセル、小袋、錠剤又はトローチ剤などの別個の単位の形態;粉末又は顆粒の形態で;水性液体若しくは非水性液体中の溶液又は懸濁液の形態;あるいは水中油型エマルジョン又は油中水型エマルジョンの形態であってもよい。
非経口投与に適した製剤は、好ましくはレシピエントの血液と等張である活性成分の滅菌油性又は水性調製物を好都合に含む。そのような製剤は全て、他の薬学的に適合性がありかつ毒性のない補助剤、例えば、安定剤、酸化防止剤、結合剤、染料、乳化剤又は香料物質を含むこともできる。
本発明の更なる態様及び利点が以下の実験セクションにおいて開示されるが、これらは単なる例示と見なされるものとする。
なお、図中のTLN68は、「TLN468」と同じ分子である。
実施例1:本発明による式(I)又は(II)の化合物の調製
以下の例が、上記のプロトコルに従って調製される:
以下の例が、上記のプロトコルに従って調製される:
1-(7-メトキシ-4-メチルキナゾリン-2-イル)グアニジンEC-18(C11H13N5O、231.26g/mol):
1H NMR(400MHz、(CD3)2SO):8.45(s、1H)、8.08(d、J=9.1Hz、1H)、7.35(d、J=2.5Hz、1H)、7.15(dd、J=9.1、2.6Hz、1H)、3.93(s、3H)、2.79(s、3H)。
13C NMR(400MHz、(CD3)2SO):169.7、167.4、164.2、156.4、155.5、151.4、127.5、117.7、115.8、105.5、55.8、21.3。
IR(ニート):3240(ブロード)、2974、1686、1562、1340、1215、1018、699。
HRMSC11H14N5O(M+H+)に対する計算値:232.1193;実測値:232.1194。
13C NMR(400MHz、(CD3)2SO):169.7、167.4、164.2、156.4、155.5、151.4、127.5、117.7、115.8、105.5、55.8、21.3。
IR(ニート):3240(ブロード)、2974、1686、1562、1340、1215、1018、699。
HRMSC11H14N5O(M+H+)に対する計算値:232.1193;実測値:232.1194。
1-(4,8-ジメチルキナゾリン-2-イル)グアニジンEC-35(C11H13N5、215.26g/mol):
1H NMR(400MHz、(CD3)2SO):9.23(br s、3H)、8.45(s、1H)、8.03(d、J=8.2Hz、1H)、7.79(d、J=7.0Hz、1H)、7.49-7.42(m、1H)、2.86(s、3H)、2.55(s、3H)。
13C NMR(400MHz、(CD3)2SO):171.6、167.6、156.6、154.2、147.5、134.6、133.7、125.1、123.7、120.4、21.7、17.2。
IR(ニート):3210(ブロード)、2981、1697、1586、1353、1153、759。
HRMSC11H14N5(M+H+)に対する計算値:216.1244;実測値:216.1246。
13C NMR(400MHz、(CD3)2SO):171.6、167.6、156.6、154.2、147.5、134.6、133.7、125.1、123.7、120.4、21.7、17.2。
IR(ニート):3210(ブロード)、2981、1697、1586、1353、1153、759。
HRMSC11H14N5(M+H+)に対する計算値:216.1244;実測値:216.1246。
1-(7-ブロモ-4,8-ジメチルキナゾリン-2-イル)グアニジンEC-130(C11H12BrN5、294.16g/mol):
1H NMR(400MHz、(CD3)2SO):8.42(s、1H)、7.93(d、J=8.8Hz、1H)、7.67(d、J=8.9、1H)、2.83(s、3H)、2.63(s、3H)。
13C NMR(400MHz、(CD3)2SO):171.4、166.9、157.2、156.3、148.7、133.3、130.0、128.4、124.9、119.4、21.7、17.1。
IR(ニート):3305(ブロード)、2972、1694、1560、1323、1032、780。
HRMSC11H13BrN5(M+H+)に対する計算値:294.0349;実測値:294.0350。
13C NMR(400MHz、(CD3)2SO):171.4、166.9、157.2、156.3、148.7、133.3、130.0、128.4、124.9、119.4、21.7、17.1。
IR(ニート):3305(ブロード)、2972、1694、1560、1323、1032、780。
HRMSC11H13BrN5(M+H+)に対する計算値:294.0349;実測値:294.0350。
1-(7-フルオロ-4、8-ジメチルキナゾリン-2-イル)グアニジンEC-288(C11H12FN5、233.25g/mol):
1H NMR(400MHz、(CD3)2SO):8.41(s、1H)、8.11(d、J=9.1、6.1Hz、1H)、7.41(d、J=9.3、1H)、2.83(s、3H)、2.41(s、3H)。
13C NMR(400MHz、(CD3)2SO):171.5、167.2、164.4、161.9、156.0、155.1、149.5、126.0(3JCF=10.8Hz)、117.9(2JCF=16.1Hz)、115.0(2JCF=26.5Hz)、38.9(溶媒残留ピークとの重複)、8.58(3JCF=4.0Hz)。
19F(376MHz、(CD3)2SO):-106.5。
IR(ニート):3318(ブロード)、2922、1695、1587、1336、1059、788。
HRMSC11H13FN5(M+H+)に対する計算値:234.1150;実測値:234.1153。
13C NMR(400MHz、(CD3)2SO):171.5、167.2、164.4、161.9、156.0、155.1、149.5、126.0(3JCF=10.8Hz)、117.9(2JCF=16.1Hz)、115.0(2JCF=26.5Hz)、38.9(溶媒残留ピークとの重複)、8.58(3JCF=4.0Hz)。
19F(376MHz、(CD3)2SO):-106.5。
IR(ニート):3318(ブロード)、2922、1695、1587、1336、1059、788。
HRMSC11H13FN5(M+H+)に対する計算値:234.1150;実測値:234.1153。
1-(7-クロロ-4、8-ジメチルキナゾリン-2-イル)グアニジンEC-335(C11H12ClN5、249.70g/mol):
1H NMR(400MHz、(CD3)2SO):8.41(s、1H)、8.02(d、J=8.9Hz、1H)、7.52(d、J=8.9Hz、1H)、2.84(s、3H)、2.60(s、3H)。
13C NMR(400MHz、(CD3)2SO):170.9、166.6、157.4、149.0、138.3、131.0、125.4、124.8、124.7、118.7、21.7、14.0。
IR(ニート):3301(ブロード)、2970、1694、1571、1325、1022、782。
HRMSC11H13ClN5(M+H+)に対する計算値:250.0854;実測値:250.0858。
13C NMR(400MHz、(CD3)2SO):170.9、166.6、157.4、149.0、138.3、131.0、125.4、124.8、124.7、118.7、21.7、14.0。
IR(ニート):3301(ブロード)、2970、1694、1571、1325、1022、782。
HRMSC11H13ClN5(M+H+)に対する計算値:250.0854;実測値:250.0858。
実施例2:デュシェンヌ型及びベッカー型筋ジストロフィー(DMD)におけるPTC突然変異の翻訳抑制
材料及び方法
細胞株及びプラスミド
RPMI+GlutaMAX(Invitrogen)中で培養したH1299細胞を除いて、全ての細胞をDMEM+GlutaMAX(Invitrogen)中で培養した。培地には、10%ウシ胎児血清(FCS、Invitrogen)及び100U/mlペニシリン/ストレプトマイシンを補充した。37℃で5.5%CO2を含有する加湿雰囲気中で細胞を保持した。NIH3T3細胞は、胚性マウス線維芽細胞である。H1299は、ヒト肺癌腫から樹立されたp53ヌル細胞株である(ATCCによって提供)。HDQ-P1は、p53遺伝子のコドン213(CGA→TGA)でのナンセンス突然変異についてホモ接合性である。この細胞株は、ヒト原発性乳癌腫から樹立され、DSMZ-ドイツ微生物細胞培養コレクション(German collection of microorganisms and cell cultures)によって提供された。安定な哺乳動物細胞株を生成するために、本発明者らは、pMetLuc2(Clonetech)に由来する分泌型メトリディア(Metridia)ルシフェラーゼレポーター遺伝子を使用した。この遺伝子のコード配列を、独自のヌクレオチドコンテキストを持つTP53ナンセンス突然変異R213Xによって中断し、ヌクレオチド57での定方向突然変異誘発によって作製されたEco53KI部位でクローン化した。最終構築物をpML213と命名し、これを使用して、NIH3T3細胞をJetPei試薬(Invitrogen)で安定にトランスフェクトした。7つのネオマイシン耐性クローンを、1.6mMゲンタマイシンの存在下で24時間リードスルー誘導した後、活性なメトリディアを発現する能力について試験した。次に、50μLの培養培地を各ウェルから採取し、供給者が推奨する条件に従って(Ready-To-Glow Secreted Luciferase Reporter Assay(Clonetech))、基質:セレンテラジンの存在下でインキュベートした。反応によって生成された光子放出は、プレートルミノメーター(Tecan)で測定した。
HTSを実現するために、処理条件と対照との間で最高の増加係数を示すクローンを選択した。
材料及び方法
細胞株及びプラスミド
RPMI+GlutaMAX(Invitrogen)中で培養したH1299細胞を除いて、全ての細胞をDMEM+GlutaMAX(Invitrogen)中で培養した。培地には、10%ウシ胎児血清(FCS、Invitrogen)及び100U/mlペニシリン/ストレプトマイシンを補充した。37℃で5.5%CO2を含有する加湿雰囲気中で細胞を保持した。NIH3T3細胞は、胚性マウス線維芽細胞である。H1299は、ヒト肺癌腫から樹立されたp53ヌル細胞株である(ATCCによって提供)。HDQ-P1は、p53遺伝子のコドン213(CGA→TGA)でのナンセンス突然変異についてホモ接合性である。この細胞株は、ヒト原発性乳癌腫から樹立され、DSMZ-ドイツ微生物細胞培養コレクション(German collection of microorganisms and cell cultures)によって提供された。安定な哺乳動物細胞株を生成するために、本発明者らは、pMetLuc2(Clonetech)に由来する分泌型メトリディア(Metridia)ルシフェラーゼレポーター遺伝子を使用した。この遺伝子のコード配列を、独自のヌクレオチドコンテキストを持つTP53ナンセンス突然変異R213Xによって中断し、ヌクレオチド57での定方向突然変異誘発によって作製されたEco53KI部位でクローン化した。最終構築物をpML213と命名し、これを使用して、NIH3T3細胞をJetPei試薬(Invitrogen)で安定にトランスフェクトした。7つのネオマイシン耐性クローンを、1.6mMゲンタマイシンの存在下で24時間リードスルー誘導した後、活性なメトリディアを発現する能力について試験した。次に、50μLの培養培地を各ウェルから採取し、供給者が推奨する条件に従って(Ready-To-Glow Secreted Luciferase Reporter Assay(Clonetech))、基質:セレンテラジンの存在下でインキュベートした。反応によって生成された光子放出は、プレートルミノメーター(Tecan)で測定した。
HTSを実現するために、処理条件と対照との間で最高の増加係数を示すクローンを選択した。
HTSスクリーニング
2つのライブラリの各分子を、50μMで試験した。各プレートにおいて、80個を超えるウェルのうち8ウェルを陽性対照(ゲンタマイシン)用に、8ウェルを陰性対照(DMSO)用に確保した。Prestwick化学ライブラリは、FDA、EMA及び他の機関によって既に承認されている1,280個の小分子のユニークなコレクションである。2つ目のライブラリは、これまでに100万個を超える化合物を含むChemBridgeライブラリから、化学的及び薬理学的多様性の基準に基づいて選択された16,480個の化合物のサブグループである。本発明者らはまた、光子放出を人為的に増加させることができる薬物を排除するために、レポーター遺伝子を含まないNIH3T3親細胞系に対して全ての選択された薬物を試験することにより、偽陽性ヒットをチェックした。
2つのライブラリの各分子を、50μMで試験した。各プレートにおいて、80個を超えるウェルのうち8ウェルを陽性対照(ゲンタマイシン)用に、8ウェルを陰性対照(DMSO)用に確保した。Prestwick化学ライブラリは、FDA、EMA及び他の機関によって既に承認されている1,280個の小分子のユニークなコレクションである。2つ目のライブラリは、これまでに100万個を超える化合物を含むChemBridgeライブラリから、化学的及び薬理学的多様性の基準に基づいて選択された16,480個の化合物のサブグループである。本発明者らはまた、光子放出を人為的に増加させることができる薬物を排除するために、レポーター遺伝子を含まないNIH3T3親細胞系に対して全ての選択された薬物を試験することにより、偽陽性ヒットをチェックした。
新たなレポーター細胞株の統計的検証
スクリーニング戦略を検証するために、本発明者らはまず、陽性対照としてゲンタマイシン及び陰性対照としてDMSOを使用して、ライブラリからの5つの96ウェルプレートにスクリーニングプロトコルを適用した。統計的検証のために、本発明者らは、1999年にZhangらによって提示されたSSMDパラメータを使用した。厳密に標準化された平均差(SSMD)は、測定単位と陽性対照の強度の両方に対して堅牢である。比較された両方の群のデータ変動性が考慮され、確率解釈がある。本発明者らは、スクリーニングプロトコルを実証するSSMD≧2を取得する(図7)。
スクリーニング戦略を検証するために、本発明者らはまず、陽性対照としてゲンタマイシン及び陰性対照としてDMSOを使用して、ライブラリからの5つの96ウェルプレートにスクリーニングプロトコルを適用した。統計的検証のために、本発明者らは、1999年にZhangらによって提示されたSSMDパラメータを使用した。厳密に標準化された平均差(SSMD)は、測定単位と陽性対照の強度の両方に対して堅牢である。比較された両方の群のデータ変動性が考慮され、確率解釈がある。本発明者らは、スクリーニングプロトコルを実証するSSMD≧2を取得する(図7)。
リードスルーの定量
前述のように、TP53 R213Xナンセンス突然変異及び両側の9ヌクレオチドに対応する相補オリゴヌクレオチドをpAC99デュアルレポータープラスミドに結合する(筋ジストロフィーに関与する未成熟停止コドンは、ゲンタマイシン処理に応答して広範囲のリードスルー効率を示す;Bidou et al,Gene Therapy 1 Apr 2004,11(7):619-627)。このデュアルレポーターを使用して、前述のように、ルシフェラーゼ及びベータ-ガラクトシダーゼ(内部較正)活性の測定を通じて停止コドンリードスルーを定量する(Stahl et al,Versatile vectors to study recoding:conservation of rules between yeast and mammalian cells.Nucleic Acids Res 1995;23:1557-60)。ナンセンス突然変異のリードスルーレベルを、試験分子の存在下又は不在下で分析した。細胞を6ウェルプレートに播種した。翌日、JetPei試薬(Invitrogen)の存在下でレポータープラスミドを細胞にトランスフェクトする。翌日、リードスルー誘導因子の有無にかかわらず、細胞を新鮮な培地ですすぐ。細胞を24時間後に回収し、トリプシン-EDTA(Invitrogen)で溶解し、Glo溶解緩衝液(Promega)で溶解し、ベータ-ガラクトシダーゼ及びルシフェラーゼ活性を、前に記載されたようにアッセイした(Stahl et al,Versatile vectors to study recoding:conservation of rules between yeast and mammalian cells.Nucleic Acids Res 1995;23:1557-60)。リードスルー効率は、試験構築物を用いて得られたルシフェラーゼ活性とβ-ガラクトシダーゼ活性との比を、インフレーム対照構築物に対して正規化して計算することによって推定した。各アッセイについて、少なくとも5回の独立したトランスフェクション実験を実行した。
前述のように、TP53 R213Xナンセンス突然変異及び両側の9ヌクレオチドに対応する相補オリゴヌクレオチドをpAC99デュアルレポータープラスミドに結合する(筋ジストロフィーに関与する未成熟停止コドンは、ゲンタマイシン処理に応答して広範囲のリードスルー効率を示す;Bidou et al,Gene Therapy 1 Apr 2004,11(7):619-627)。このデュアルレポーターを使用して、前述のように、ルシフェラーゼ及びベータ-ガラクトシダーゼ(内部較正)活性の測定を通じて停止コドンリードスルーを定量する(Stahl et al,Versatile vectors to study recoding:conservation of rules between yeast and mammalian cells.Nucleic Acids Res 1995;23:1557-60)。ナンセンス突然変異のリードスルーレベルを、試験分子の存在下又は不在下で分析した。細胞を6ウェルプレートに播種した。翌日、JetPei試薬(Invitrogen)の存在下でレポータープラスミドを細胞にトランスフェクトする。翌日、リードスルー誘導因子の有無にかかわらず、細胞を新鮮な培地ですすぐ。細胞を24時間後に回収し、トリプシン-EDTA(Invitrogen)で溶解し、Glo溶解緩衝液(Promega)で溶解し、ベータ-ガラクトシダーゼ及びルシフェラーゼ活性を、前に記載されたようにアッセイした(Stahl et al,Versatile vectors to study recoding:conservation of rules between yeast and mammalian cells.Nucleic Acids Res 1995;23:1557-60)。リードスルー効率は、試験構築物を用いて得られたルシフェラーゼ活性とβ-ガラクトシダーゼ活性との比を、インフレーム対照構築物に対して正規化して計算することによって推定した。各アッセイについて、少なくとも5回の独立したトランスフェクション実験を実行した。
RNA抽出及びRT-qPCR
p53及びその転写標的遺伝子であるBaxのmRNAレベルの分析のために、本発明者らは、G418(400μM)又はTLN68(80μM)で48時間処理したか、又は処理していないHDQ-P1細胞から全RNAを抽出した(RNeasy Mini Kit、Qiagen)。RNAをDNAse I(RNase-free DNase)で処理し、Nanodrop分光計(ThermoScientific)で定量した。RNA分解が行われていないことは、アガロースゲル電気泳動によって確認した。ファーストストランドcDNAは、ランダムプライマー及びSuperScript II Reverse Transcriptase(Invitrogen)を使用して、製造元の推奨に従って、2μgの全RNAから合成した。次に、CFX96サーモサイクラー(Biorad)を使用して、等量の様々なcDNAに対して定量的PCRを実施し、挿入色素FastStart Universal SYBRGreen Master(ROX)試薬(Roche)を使用して、生成物の蓄積を監視した。本発明者らは、RPL32、Hprt1及びHMBSの3つの参照mRNAに対するmRNAレベルを定量した。各実験では、結果は、得られた値を1に設定した未処理細胞の結果と比較して表される。遺伝子発現の相対レベルは、増幅が指数関数的であり、転写産物の最初のコピー数と相関している可能性があるPCRの初期段階で計算した。定量PCRの特異性は、アガロースゲル電気泳動によってチェックされ、各遺伝子について目的の長さの単一の産物が産生されることを示した。融解曲線分析も実行した。各遺伝子について、単一の産物固有の融解温度が特定された。各mRNAを定量するために、(生物学的複製からの)3回の独立した実験を三度実行した。本発明者らは、増幅のために以下のオリゴヌクレオチド対を使用した:
p53順方向:5’CCGCAGT CAGATCCTAGCG 3’(配列番号1)及び逆方向:5’CCATTGCTTGGGACGGCAAGG 3’(配列番号2);
Bax順方向:5’GCTGTTG GGCTGGATCCAAG 3’(配列番号3)及び逆方向:5’TCAGCCCATCTTCTTCCAGA(配列番号4)。
p53及びその転写標的遺伝子であるBaxのmRNAレベルの分析のために、本発明者らは、G418(400μM)又はTLN68(80μM)で48時間処理したか、又は処理していないHDQ-P1細胞から全RNAを抽出した(RNeasy Mini Kit、Qiagen)。RNAをDNAse I(RNase-free DNase)で処理し、Nanodrop分光計(ThermoScientific)で定量した。RNA分解が行われていないことは、アガロースゲル電気泳動によって確認した。ファーストストランドcDNAは、ランダムプライマー及びSuperScript II Reverse Transcriptase(Invitrogen)を使用して、製造元の推奨に従って、2μgの全RNAから合成した。次に、CFX96サーモサイクラー(Biorad)を使用して、等量の様々なcDNAに対して定量的PCRを実施し、挿入色素FastStart Universal SYBRGreen Master(ROX)試薬(Roche)を使用して、生成物の蓄積を監視した。本発明者らは、RPL32、Hprt1及びHMBSの3つの参照mRNAに対するmRNAレベルを定量した。各実験では、結果は、得られた値を1に設定した未処理細胞の結果と比較して表される。遺伝子発現の相対レベルは、増幅が指数関数的であり、転写産物の最初のコピー数と相関している可能性があるPCRの初期段階で計算した。定量PCRの特異性は、アガロースゲル電気泳動によってチェックされ、各遺伝子について目的の長さの単一の産物が産生されることを示した。融解曲線分析も実行した。各遺伝子について、単一の産物固有の融解温度が特定された。各mRNAを定量するために、(生物学的複製からの)3回の独立した実験を三度実行した。本発明者らは、増幅のために以下のオリゴヌクレオチド対を使用した:
p53順方向:5’CCGCAGT CAGATCCTAGCG 3’(配列番号1)及び逆方向:5’CCATTGCTTGGGACGGCAAGG 3’(配列番号2);
Bax順方向:5’GCTGTTG GGCTGGATCCAAG 3’(配列番号3)及び逆方向:5’TCAGCCCATCTTCTTCCAGA(配列番号4)。
ウエスタンブロット分析
HDQ-P1細胞(R213X)をG418(10及び20mM)又は選択した分子(TLN68 50μM、TLN1399 50μM、TLN236 30μM、及びTLN309 40μM)で48時間処理した。トリプシン-EDTA(Invitrogen)で処理することにより細胞を回収し、350mM NaCl、50mM Tris-HCl pH7.5、1% NP-40、及びプロテアーゼ阻害剤カクテル(Roche)で溶解し、シリンジを通過させることによって破壊した。
TLN1399(本発明に含まれない)は、以下の構造を有する。
TLN236(本発明に含まれない)は、以下の構造を有する。
全タンパク質をブラッドフォード試薬(Biorad)で定量し、抽出物をレムリ緩衝液中90℃で5分間インキュベートすることにより変性させた。本発明者らは、HDQ-1細胞からの全タンパク質30μgを4/10% Bis-Trisゲル中でSDS-PAGEに供した。製造元(Biorad)の説明書に従って、タンパク質をニトロセルロース膜に転写した。PBS中の5%脱脂粉乳中で一晩インキュベートすることによって膜を飽和させ、一次モノクローナル抗体、DO-1(p53のアミノ酸残基11と25との間のN末端エピトープマッピング;Santa Cruz Biotechnologies、1/400)又はマウスアクチンに対するモノクローナル抗体(Millipore、1/2000)と共に1時間インキュベートした。0.1% Tween(登録商標)を補充したPBSで3回洗浄した後、膜を二次抗体[西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲート抗マウスIgG(1/2500)]と共に45分間インキュベートした。膜を5回洗浄し、化学発光をECL Prime Western Blotting Detection Reagents(Amersham、GE Healthcare)で検出した。信号を、ImageJ ソフトウェアを用いて定量した。
HDQ-P1細胞(R213X)をG418(10及び20mM)又は選択した分子(TLN68 50μM、TLN1399 50μM、TLN236 30μM、及びTLN309 40μM)で48時間処理した。トリプシン-EDTA(Invitrogen)で処理することにより細胞を回収し、350mM NaCl、50mM Tris-HCl pH7.5、1% NP-40、及びプロテアーゼ阻害剤カクテル(Roche)で溶解し、シリンジを通過させることによって破壊した。
TLN1399(本発明に含まれない)は、以下の構造を有する。
TP53タンパク質活性アッセイ
本発明者らは、p53ヌル細胞系であるH1299におけるp53タンパク質の転写活性を調査した。7つのp53結合部位の下流にホタルルシフェラーゼ遺伝子を含有するp53BS-lucレポータープラスミド、pCMVLacZ、及び停止突然変異R213Xによって中断されたp53 cDNAを含有するpCMVp53R213Xを、JetPei法によって細胞に同時トランスフェクトした。TLN68(20、50、80及び100mM)をトランスフェクションの直前に培地に添加し、合計20時間処理した。次に、タンパク質抽出物を調製し、酵素活性を測定した。pCMVLacZによるトランスフェクションを使用して、トランスフェクション効率、細胞生存率、及びタンパク質抽出を正規化した。各条件群について、少なくとも6回の独立したトランスフェクション実験を実行した。
本発明者らは、p53ヌル細胞系であるH1299におけるp53タンパク質の転写活性を調査した。7つのp53結合部位の下流にホタルルシフェラーゼ遺伝子を含有するp53BS-lucレポータープラスミド、pCMVLacZ、及び停止突然変異R213Xによって中断されたp53 cDNAを含有するpCMVp53R213Xを、JetPei法によって細胞に同時トランスフェクトした。TLN68(20、50、80及び100mM)をトランスフェクションの直前に培地に添加し、合計20時間処理した。次に、タンパク質抽出物を調製し、酵素活性を測定した。pCMVLacZによるトランスフェクションを使用して、トランスフェクション効率、細胞生存率、及びタンパク質抽出を正規化した。各条件群について、少なくとも6回の独立したトランスフェクション実験を実行した。
結果
ルシフェラーゼアッセイのための安定細胞株の開発及び検証
既知の薬物とは無関係の新たなリードスルー化合物を特定するために、本発明者らは、HTSアプローチを選択する。リードスルー活性に基づいて薬物を選択するために、本発明者らはまず、ナンセンス突然変異(R213X)によって中断された分泌型メトリディアルシフェラーゼレポーター遺伝子を組み込むことにより、安定した哺乳動物細胞株(NIH3T3由来)を生成した。この系は、生細胞アッセイの利点と酵素ベース系の感度を兼ね備えている。この遺伝子のコード配列は、独自のヌクレオチドコンテキストに埋め込まれたTP53ナンセンス突然変異R213Xによって中断される。この突然変異には、簡単に測定可能な基礎リードスルーレベルを提示するという利点がある。本発明者らは、ルシフェラーゼの発現が実際にR213X停止コドンのリードスルーによるものである場合、ゲンタマイシンの添加はルシフェラーゼの活性を有意に増加させるはずであると推論した。そこで本発明者らは、1.6mMのゲンタマイシンを含むレポーター遺伝子が安定して組み込まれた7つの独立したクローンを試験した。全てのクローンで有意な誘導が得られ、更に開発するために最も強力な誘導を示すもの(C14)を選択した(図6)。
ルシフェラーゼアッセイのための安定細胞株の開発及び検証
既知の薬物とは無関係の新たなリードスルー化合物を特定するために、本発明者らは、HTSアプローチを選択する。リードスルー活性に基づいて薬物を選択するために、本発明者らはまず、ナンセンス突然変異(R213X)によって中断された分泌型メトリディアルシフェラーゼレポーター遺伝子を組み込むことにより、安定した哺乳動物細胞株(NIH3T3由来)を生成した。この系は、生細胞アッセイの利点と酵素ベース系の感度を兼ね備えている。この遺伝子のコード配列は、独自のヌクレオチドコンテキストに埋め込まれたTP53ナンセンス突然変異R213Xによって中断される。この突然変異には、簡単に測定可能な基礎リードスルーレベルを提示するという利点がある。本発明者らは、ルシフェラーゼの発現が実際にR213X停止コドンのリードスルーによるものである場合、ゲンタマイシンの添加はルシフェラーゼの活性を有意に増加させるはずであると推論した。そこで本発明者らは、1.6mMのゲンタマイシンを含むレポーター遺伝子が安定して組み込まれた7つの独立したクローンを試験した。全てのクローンで有意な誘導が得られ、更に開発するために最も強力な誘導を示すもの(C14)を選択した(図6)。
2つの化学ライブラリのスクリーニング
本発明者らは、17,760個の分子(ChemBridgeライブラリから16,480個及びPrestwickライブラリから1,280個)を、停止コドンのリードスルーを効率的に刺激する能力についてスクリーニングした。この最初のスクリーニングから、1.4以上の増加係数又は2以上のSSMDを示す465個の分子を選択した(図1.A)。次に、これらの最初のヒットを、各分子の複製を使用して、同じ条件で2回目のスクリーニングにかけた。本発明者らは、ルシフェラーゼ活性を少なくとも2倍誘導する能力について、43個の分子を保持した。このようなスクリーニングが多数の偽陽性ヒットの特定につながる可能性があることはよく知られている。これを制限し、正真正銘のリードスルー誘導因子のみを選択するために、これら43個の分子のそれぞれをいくつかの独立したアッセイにかけて、停止コドンのリードスルーに明確な効果を持つものだけを保持した。
本発明者らは、17,760個の分子(ChemBridgeライブラリから16,480個及びPrestwickライブラリから1,280個)を、停止コドンのリードスルーを効率的に刺激する能力についてスクリーニングした。この最初のスクリーニングから、1.4以上の増加係数又は2以上のSSMDを示す465個の分子を選択した(図1.A)。次に、これらの最初のヒットを、各分子の複製を使用して、同じ条件で2回目のスクリーニングにかけた。本発明者らは、ルシフェラーゼ活性を少なくとも2倍誘導する能力について、43個の分子を保持した。このようなスクリーニングが多数の偽陽性ヒットの特定につながる可能性があることはよく知られている。これを制限し、正真正銘のリードスルー誘導因子のみを選択するために、これら43個の分子のそれぞれをいくつかの独立したアッセイにかけて、停止コドンのリードスルーに明確な効果を持つものだけを保持した。
停止コドンのリードスルーの定量
最初のスクリーニングは、感度が高く非常に便利であるが、いくつかの固有のバイアスを受ける。実際、Met-ルシフェラーゼ(mRNA転写、安定性、翻訳)の産生又はその分泌を増加させる任意の分子により、偽陽性ヒットが識別されてしまうだろう。これを回避するために、本発明者らは、停止コドンのリードスルー効率を定量するために、デュアルレポーター系においてリードスルーを刺激する各薬物の能力をチェックした(図1.B)。
まず、このレポーター系は、最初のスクリーニングで使用されたものとは異なる酵素活性(β-ガラクトシダーゼ及びホタルルシフェラーゼ)を持っている。次に、β-ガラクトシダーゼを内部対照として使用して、発現レベルを正規化する。したがって、この2番目のレポーター系を使用することにより、最初のスクリーニングで選択される可能性のある多くの偽陽性ヒットが排除される。試験した分子ごとに、3つの独立した測定値が得られている(図1.B)。PTCリードスルーで2倍以上の変化を誘導する分子は4つのみである(データは示さず)。この2番目のレポーター系は、偽陽性ヒットを排除するのに非常に効率的であったが、やはり酵素活性を使用するレポーター系である。本発明者らは、より生理学的な系を使用して、最後の6つの潜在的なヒットを試験した。
最初のスクリーニングは、感度が高く非常に便利であるが、いくつかの固有のバイアスを受ける。実際、Met-ルシフェラーゼ(mRNA転写、安定性、翻訳)の産生又はその分泌を増加させる任意の分子により、偽陽性ヒットが識別されてしまうだろう。これを回避するために、本発明者らは、停止コドンのリードスルー効率を定量するために、デュアルレポーター系においてリードスルーを刺激する各薬物の能力をチェックした(図1.B)。
まず、このレポーター系は、最初のスクリーニングで使用されたものとは異なる酵素活性(β-ガラクトシダーゼ及びホタルルシフェラーゼ)を持っている。次に、β-ガラクトシダーゼを内部対照として使用して、発現レベルを正規化する。したがって、この2番目のレポーター系を使用することにより、最初のスクリーニングで選択される可能性のある多くの偽陽性ヒットが排除される。試験した分子ごとに、3つの独立した測定値が得られている(図1.B)。PTCリードスルーで2倍以上の変化を誘導する分子は4つのみである(データは示さず)。この2番目のレポーター系は、偽陽性ヒットを排除するのに非常に効率的であったが、やはり酵素活性を使用するレポーター系である。本発明者らは、より生理学的な系を使用して、最後の6つの潜在的なヒットを試験した。
HDQP-1細胞におけるTP53タンパク質発現の回復
本発明者らは、内因性TP53遺伝子にナンセンス突然変異R213Xを保有するヒト細胞株HDQ-P1を使用した。全長p53の発現はウエスタンブロットによって行われる。この3番目の系の利点は、内因性のナンセンス突然変異の使用と、潜在的なヒット(つまり、全長タンパク質)によって誘導される最終産物の直接的な視覚化である。結果は、図2.Aに示され、TLN68及びTLN309の2つの分子が完全長p53の産生を刺激することを明確に示している。誘導レベルは、G418(より効率的な既知のリードスルー誘導因子のうちの1つ)の存在下で得られるレベルよりも更に高い。興味深いことに、本発明者らは、NMDの阻害によるTP53 mRNAの安定化に対応し得る短縮型の蓄積を同時に観察した。これを確認するために、本発明者らは、TP53-R213X mRNAに対してRT-qPCRを実行し、TLN68がこのmRNAを6倍安定化することを示したが、TLN309が示すmRNAの安定化はわずかである(図2.B)。
これら2つの最後の候補の構造レビュー(図2.C)により、TLN309が、オートファジー-リソソーム阻害活性を示し、リボソーム生合成ストレスを促進するクロロキンに類似した4-アミノキノリンであることが示される。本発明者らは、トランスレクチンと命名された2-グアニジノキナゾリンであるTLN68のみを用いて、この分析を更に追求することにした(図2.C)。
本発明者らは、内因性TP53遺伝子にナンセンス突然変異R213Xを保有するヒト細胞株HDQ-P1を使用した。全長p53の発現はウエスタンブロットによって行われる。この3番目の系の利点は、内因性のナンセンス突然変異の使用と、潜在的なヒット(つまり、全長タンパク質)によって誘導される最終産物の直接的な視覚化である。結果は、図2.Aに示され、TLN68及びTLN309の2つの分子が完全長p53の産生を刺激することを明確に示している。誘導レベルは、G418(より効率的な既知のリードスルー誘導因子のうちの1つ)の存在下で得られるレベルよりも更に高い。興味深いことに、本発明者らは、NMDの阻害によるTP53 mRNAの安定化に対応し得る短縮型の蓄積を同時に観察した。これを確認するために、本発明者らは、TP53-R213X mRNAに対してRT-qPCRを実行し、TLN68がこのmRNAを6倍安定化することを示したが、TLN309が示すmRNAの安定化はわずかである(図2.B)。
これら2つの最後の候補の構造レビュー(図2.C)により、TLN309が、オートファジー-リソソーム阻害活性を示し、リボソーム生合成ストレスを促進するクロロキンに類似した4-アミノキノリンであることが示される。本発明者らは、トランスレクチンと命名された2-グアニジノキナゾリンであるTLN68のみを用いて、この分析を更に追求することにした(図2.C)。
停止コドンのリードスルーにより機能的なTP53発現が回復した
TLN68は、ナンセンス突然変異によって中断された遺伝子からタンパク質の発現を回復させるための非常に有望なヒットである。しかしながら、完全長タンパク質の発現を回復することは、欠陥のある遺伝子を修正するための前提条件であるが、これはリードスルータンパク質の機能性を保証するには十分ではない。実際、本発明者らは、少なくとも3つのtRNA(Tyr、Gln、Lys)を使用してUAGコドンを読み飛ばすことができることを示している。明らかに、アミノ酸の同一性は、回復された全長タンパク質の活性を大きく改変する可能性がある。そこで本発明者らは、TLN68の存在下で発現した全長p53が機能するかどうかを2つの異なる系で試験した。まず、p53プロモーターの制御下にあるルシフェラーゼ遺伝子を担持するプラスミドを使用し(図3.A)、次に、p53の主要な標的のうちの1つであるBax mRNAの発現レベルをRT-qPCRによって定量した(図3.B)。TLN68による処理は、p53依存性ルシフェラーゼの3.5倍の増加を誘導する。これは、Bax mRNAレベルで観察される3倍の誘導と一致している。これにより、リードスルーp53が少なくとも部分的に活性であることが確認される。全体として、これらの独立したアッセイは、TLN68が有望なリードスルー誘導因子であることを示している。これら全てのアッセイの間、本発明者らは、同じ突然変異(R213X)を体系的に使用した。TLN68がこの未成熟停止コドン上で停止コドンのリードスルーを誘導することが確立されたので、様々な停止コドンに対するその作用範囲について調べてもよい。
反対に、TLN236の存在下ではタンパク質は現れず、この薬剤は停止コドンのリードスルーに対して効率的に作用しないことが示唆される。
TLN68は、ナンセンス突然変異によって中断された遺伝子からタンパク質の発現を回復させるための非常に有望なヒットである。しかしながら、完全長タンパク質の発現を回復することは、欠陥のある遺伝子を修正するための前提条件であるが、これはリードスルータンパク質の機能性を保証するには十分ではない。実際、本発明者らは、少なくとも3つのtRNA(Tyr、Gln、Lys)を使用してUAGコドンを読み飛ばすことができることを示している。明らかに、アミノ酸の同一性は、回復された全長タンパク質の活性を大きく改変する可能性がある。そこで本発明者らは、TLN68の存在下で発現した全長p53が機能するかどうかを2つの異なる系で試験した。まず、p53プロモーターの制御下にあるルシフェラーゼ遺伝子を担持するプラスミドを使用し(図3.A)、次に、p53の主要な標的のうちの1つであるBax mRNAの発現レベルをRT-qPCRによって定量した(図3.B)。TLN68による処理は、p53依存性ルシフェラーゼの3.5倍の増加を誘導する。これは、Bax mRNAレベルで観察される3倍の誘導と一致している。これにより、リードスルーp53が少なくとも部分的に活性であることが確認される。全体として、これらの独立したアッセイは、TLN68が有望なリードスルー誘導因子であることを示している。これら全てのアッセイの間、本発明者らは、同じ突然変異(R213X)を体系的に使用した。TLN68がこの未成熟停止コドン上で停止コドンのリードスルーを誘導することが確立されたので、様々な停止コドンに対するその作用範囲について調べてもよい。
反対に、TLN236の存在下ではタンパク質は現れず、この薬剤は停止コドンのリードスルーに対して効率的に作用しないことが示唆される。
TLN68の特異性
TLN68特異性の問題に答えるために、本発明者らは、デュシェンヌ型及びベッカー型筋ジストロフィーの原因となるDMD遺伝子に見られるより頻繁な40個の未成熟(premature)ナンセンス突然変異を選択した(表1、図4.A)。
TLN68特異性の問題に答えるために、本発明者らは、デュシェンヌ型及びベッカー型筋ジストロフィーの原因となるDMD遺伝子に見られるより頻繁な40個の未成熟(premature)ナンセンス突然変異を選択した(表1、図4.A)。
各ナンセンス突然変異(各側で+9ヌクレオチド)は、以前に使用したデュアルレポーターにクローニングされている。停止コドンのリードスルー効率は、6回の独立した実験で、薬物を使用せずに、又はゲンタマイシン若しくはTLN68の存在下で定量されている。図4.Bに示す結果は、TLN68が多種多様な配列(試験した40個のうち28個)で停止コドンのリードスルーを促進するだけでなく、この一連の配列でゲンタマイシンよりも優れていることを示している。本発明者らは、TLN68が広範な配列に対して活性であるが、その作用は大半の既知のリードスルー誘導因子と同様に配列依存性であると結論付けている。
TLN68は、リードスルーを誘導するゲンタマイシンとの相加効果を有する
次に、本発明者らは、TLN68と最も使用されるリードスルー分子のうちの1つであるゲンタマイシンとの併用処置の効果を試験する。R213X突然変異を保有するデュアルレポーターベクターをNIH3T3細胞にトランスフェクトし、これらの細胞を各薬剤で別々に又は一緒に24時間処理した。ゲンタマイシン及びTLN68はそれぞれ10%及び11%のリードスルーレベルを誘導し、2つの薬剤を組み合わせると、21%のリードスルーレベルが得られ、これらの分子間の相加効果が示唆される(図5)。
次に、本発明者らは、TLN68と最も使用されるリードスルー分子のうちの1つであるゲンタマイシンとの併用処置の効果を試験する。R213X突然変異を保有するデュアルレポーターベクターをNIH3T3細胞にトランスフェクトし、これらの細胞を各薬剤で別々に又は一緒に24時間処理した。ゲンタマイシン及びTLN68はそれぞれ10%及び11%のリードスルーレベルを誘導し、2つの薬剤を組み合わせると、21%のリードスルーレベルが得られ、これらの分子間の相加効果が示唆される(図5)。
翻訳に対するTLN68の影響は、リードスルー事象に特異的である
TLN68が全体的な翻訳忠実度を変更するかどうか、又はそれがリードスルー事象に特異的であるかどうかを決定するために、本発明者らは、フレームシフトを誘導するこの分子の能力を試験した。本発明者らは、レトロウイルスHIV-1のマイナス1フレームシフトシグナルの研究に既に使用されているフレームシフト標的を使用した(Stahl et al,1995)。この54ヌクレオチド配列をデュアルレポーターベクターに挿入し、NIH3T3細胞のトランスフェクトに使用した。トランスフェクトされた細胞を、80μMのTLN68で処理したか、又は処理しなかった。結果は、TLN68が翻訳フレームシフトに影響を及ぼさないことを実証し、この分子が翻訳忠実度に全体的な影響を与えず、むしろリードスルーに特異的に作用する可能性があることを示唆している(図8)。
TLN68が全体的な翻訳忠実度を変更するかどうか、又はそれがリードスルー事象に特異的であるかどうかを決定するために、本発明者らは、フレームシフトを誘導するこの分子の能力を試験した。本発明者らは、レトロウイルスHIV-1のマイナス1フレームシフトシグナルの研究に既に使用されているフレームシフト標的を使用した(Stahl et al,1995)。この54ヌクレオチド配列をデュアルレポーターベクターに挿入し、NIH3T3細胞のトランスフェクトに使用した。トランスフェクトされた細胞を、80μMのTLN68で処理したか、又は処理しなかった。結果は、TLN68が翻訳フレームシフトに影響を及ぼさないことを実証し、この分子が翻訳忠実度に全体的な影響を与えず、むしろリードスルーに特異的に作用する可能性があることを示唆している(図8)。
TLN68は哺乳類細胞株に対して中程度の毒性を有する
本発明者らは、代謝的に活性な細胞によってのみ切断されるテトラゾリウム塩を使用することにより、NIH3T3、HDQ-P1及びHeLa細胞株の生存率に対するTLN68の影響を試験した。細胞を24時間、様々なTLN68用量で処理するか、又は処理せずに、生存率を測定した。
図9は、TLN68濃度が増加するにつれて細胞生存率がゆっくりと低下して、使用される最大用量で最も耐性のある細胞株細胞であるNIH3T3の生細胞の80%及びHDQ-P1細胞の生細胞の70%に達することを示す。
本発明者らは、代謝的に活性な細胞によってのみ切断されるテトラゾリウム塩を使用することにより、NIH3T3、HDQ-P1及びHeLa細胞株の生存率に対するTLN68の影響を試験した。細胞を24時間、様々なTLN68用量で処理するか、又は処理せずに、生存率を測定した。
図9は、TLN68濃度が増加するにつれて細胞生存率がゆっくりと低下して、使用される最大用量で最も耐性のある細胞株細胞であるNIH3T3の生細胞の80%及びHDQ-P1細胞の生細胞の70%に達することを示す。
実施例3:本発明による異なる化合物のPTCリードスルーを誘導する能力の試験
プロトコル:
HeLa細胞におけるナンセンス突然変異W1268X又はR213X上でリードスルーを誘導する能力について、本発明の種々の化合物を試験した。
この目的のために、本発明者らは、pAC99デュアルレポータープラスミドを使用した。このデュアルレポーターを使用して、ルシフェラーゼ及びベータ-ガラクトシダーゼ(内部正規化)活性の測定を通じて停止コドンのリードスルーを定量する。ナンセンス突然変異のリードスルーレベルを、試験分子の存在下又は不在下で分析した。細胞を6ウェルプレートに播種する。翌日、JetPei試薬(Invitrogen)を使用してレポータープラスミドを細胞にトランスフェクトする。翌日、リードスルー誘導因子の有無にかかわらず、細胞を新鮮な培地ですすぐ。24時間後にトリプシン-EDTA(Invitrogen)により細胞を回収し、Glo溶解緩衝液(Promega)で溶解し、ベータ-ガラクトシダーゼ及びルシフェラーゼ活性を前述のようにアッセイした。リードスルー効率は、試験構築物を用いて得られたルシフェラーゼ活性とβ-ガラクトシダーゼ活性との比を、インフレーム対照構築物に対して正規化して計算することによって推定した。各アッセイについて、少なくとも5回の独立したトランスフェクション実験を実行した。
プロトコル:
HeLa細胞におけるナンセンス突然変異W1268X又はR213X上でリードスルーを誘導する能力について、本発明の種々の化合物を試験した。
この目的のために、本発明者らは、pAC99デュアルレポータープラスミドを使用した。このデュアルレポーターを使用して、ルシフェラーゼ及びベータ-ガラクトシダーゼ(内部正規化)活性の測定を通じて停止コドンのリードスルーを定量する。ナンセンス突然変異のリードスルーレベルを、試験分子の存在下又は不在下で分析した。細胞を6ウェルプレートに播種する。翌日、JetPei試薬(Invitrogen)を使用してレポータープラスミドを細胞にトランスフェクトする。翌日、リードスルー誘導因子の有無にかかわらず、細胞を新鮮な培地ですすぐ。24時間後にトリプシン-EDTA(Invitrogen)により細胞を回収し、Glo溶解緩衝液(Promega)で溶解し、ベータ-ガラクトシダーゼ及びルシフェラーゼ活性を前述のようにアッセイした。リードスルー効率は、試験構築物を用いて得られたルシフェラーゼ活性とβ-ガラクトシダーゼ活性との比を、インフレーム対照構築物に対して正規化して計算することによって推定した。各アッセイについて、少なくとも5回の独立したトランスフェクション実験を実行した。
結果:
結果は以下の通りである。
結果は以下の通りである。
結論として、本発明の化合物は、非常に効率的なPTCリードスループロモーターである。
実施例4:TLN68を用いたリボソームプロファイリング実験
目的
TLN68が未成熟終止コドン(PTC)に特異的に作用し、天然停止コドンには影響を及ぼさないことを実証することが重要である。この疑問に答えるために、本発明者らは、全てのリボソームフットプリントのゲノム全体のマッピングを可能にするリボソームプロファイリング(RiboSeq)実験を実行した。本発明者らは、3つの異なる条件:未処理細胞、0.5mg/mlのG418、80mMのTLN468を24時間試験した。統計上の理由から、各条件について3回実行している。
目的
TLN68が未成熟終止コドン(PTC)に特異的に作用し、天然停止コドンには影響を及ぼさないことを実証することが重要である。この疑問に答えるために、本発明者らは、全てのリボソームフットプリントのゲノム全体のマッピングを可能にするリボソームプロファイリング(RiboSeq)実験を実行した。本発明者らは、3つの異なる条件:未処理細胞、0.5mg/mlのG418、80mMのTLN468を24時間試験した。統計上の理由から、各条件について3回実行している。
リボソームプロファイリング実験
HeLa細胞を、10%ウシ胎児血清、1%グルタミン、非必須アミノ酸及び抗生物質-抗真菌剤(Gibco)を補充した10mlのMEMで、プレートあたり100万個の細胞にてJ0でプレーティングした。J+1で、80mMのTLN468を添加する。J+2で、細胞を収集する。培地を除去し、液体窒素浴に直接置き、-70℃にしてから、引っ掻いた。Polysome Extraction Buffer(10mM Tris CH3COONa(pH7.6);10mM(CH3COO)2 Mg;10mM NH4Cl;1% Triton;2mM DTT)を添加して細胞を収集した。
2×完全EDTAフリープロテアーゼ阻害剤Roche及び1U Rnase Inhibitor Murine(Biolabs)を添加して、ポリソームを抽出した。リボソーム保護断片(Ribosome Protected Fragment、RPF)を、15U Rnase I (Ambion)/OD260nmで、25℃で1時間消化することによって生成した。モノソームを、+4℃の24%スクロースクッションで分離し、DNaseIで処理する。RNAを、65℃、CHCL3で、フェノールで抽出し、0.3M CH3COONa(pH5.2)中のエタノールによって沈殿させ、次いで、7M尿素と1×Tris-アセテート-EDTA(TAE)を加えた17%アクリルアミド-ビスアクリルアミド(19:1)ゲル上に装填した。28~34ntのRPFを、ゲルから切り出し、グリコーゲン存在下、エタノール中で沈殿させる。RPFを、製造元の推奨に従って、Ribo-zero Humanキット(Illumina)を使用してリボソームRNAから取り出す。RPFライブラリを、TranscriptomeTruSeq修正キットを使用して作製し、NextSeq 500 High Single Read75塩基で配列決定する。
HeLa細胞を、10%ウシ胎児血清、1%グルタミン、非必須アミノ酸及び抗生物質-抗真菌剤(Gibco)を補充した10mlのMEMで、プレートあたり100万個の細胞にてJ0でプレーティングした。J+1で、80mMのTLN468を添加する。J+2で、細胞を収集する。培地を除去し、液体窒素浴に直接置き、-70℃にしてから、引っ掻いた。Polysome Extraction Buffer(10mM Tris CH3COONa(pH7.6);10mM(CH3COO)2 Mg;10mM NH4Cl;1% Triton;2mM DTT)を添加して細胞を収集した。
2×完全EDTAフリープロテアーゼ阻害剤Roche及び1U Rnase Inhibitor Murine(Biolabs)を添加して、ポリソームを抽出した。リボソーム保護断片(Ribosome Protected Fragment、RPF)を、15U Rnase I (Ambion)/OD260nmで、25℃で1時間消化することによって生成した。モノソームを、+4℃の24%スクロースクッションで分離し、DNaseIで処理する。RNAを、65℃、CHCL3で、フェノールで抽出し、0.3M CH3COONa(pH5.2)中のエタノールによって沈殿させ、次いで、7M尿素と1×Tris-アセテート-EDTA(TAE)を加えた17%アクリルアミド-ビスアクリルアミド(19:1)ゲル上に装填した。28~34ntのRPFを、ゲルから切り出し、グリコーゲン存在下、エタノール中で沈殿させる。RPFを、製造元の推奨に従って、Ribo-zero Humanキット(Illumina)を使用してリボソームRNAから取り出す。RPFライブラリを、TranscriptomeTruSeq修正キットを使用して作製し、NextSeq 500 High Single Read75塩基で配列決定する。
結果
データを、自家製スクリプトによって分析する。細胞を液体窒素で瞬間凍結し、ポリソームを抽出する。データが得られると、本発明者らは全ての混入rRNA断片を情報的に除去し、自家製ドッカーパッケージ(RiboDoc)を使用することにより、参照としてヒトゲノム(hg38)を用いてヒトトランスクリプトームのリードをマッピングした。本発明者らは、未処理、G418及びTLN68それぞれについて、合計122 497 388、160 481 925及び51 860 606の一か所のみにマッピングされた(uniquely mapped)リードを取得した。まず、リボソームのフットプリント長の分布をチェックした。結果は、未処理細胞(Hela)及びG418で処理した細胞のフットプリントの大部分が30ヌクレオチド(30nt)長であるのに対し、TLN68で処理した細胞のフットプリントは29ヌクレオチド(29nt)長であることを示している。この長さは、28~31ヌクレオチドで構成される必要があるリボソームフットプリントに期待される長さである。TLN68と他のサンプルとの間で観察された違いは、生物学的な意味を持たずに、おそらくはRPF調製中の変動を反映しているにすぎない。
データを、自家製スクリプトによって分析する。細胞を液体窒素で瞬間凍結し、ポリソームを抽出する。データが得られると、本発明者らは全ての混入rRNA断片を情報的に除去し、自家製ドッカーパッケージ(RiboDoc)を使用することにより、参照としてヒトゲノム(hg38)を用いてヒトトランスクリプトームのリードをマッピングした。本発明者らは、未処理、G418及びTLN68それぞれについて、合計122 497 388、160 481 925及び51 860 606の一か所のみにマッピングされた(uniquely mapped)リードを取得した。まず、リボソームのフットプリント長の分布をチェックした。結果は、未処理細胞(Hela)及びG418で処理した細胞のフットプリントの大部分が30ヌクレオチド(30nt)長であるのに対し、TLN68で処理した細胞のフットプリントは29ヌクレオチド(29nt)長であることを示している。この長さは、28~31ヌクレオチドで構成される必要があるリボソームフットプリントに期待される長さである。TLN68と他のサンプルとの間で観察された違いは、生物学的な意味を持たずに、おそらくはRPF調製中の変動を反映しているにすぎない。
本発明者らは、TLN68サンプル及びHeLa/G418サンプルについてそれぞれ29nt及び30nt長のリボソームフットプリントのみを選択して、全ての注釈付きCDSがプールされ、各ヌクレオチド位置でのリボソームフットプリント5’末端の数が決定されるメタ遺伝子分析を実行した。このステップでは、積極的に翻訳するリボソームに対して分析が実行されていることを確認できる。実際、周期性が3の信号を明確に観察することができる(データは示さず)。この周期性は、リボソームがmRNAに沿ってコドンごとに移動することを表している。開始及び停止ステップは伸長ステップより速度が遅く、開始及び停止コドンでのリボソームの蓄積を促進するため、本発明者らは古典的に開始及び停止コドンでピークを観察する。また、5’UTRの開始コドンの上流に弱いシグナルを観察することもできる。このシグナルは、uORFに対応している可能性がある。G418で処理したサンプルを除き、停止コドンのすぐ下流で、翻訳シグナルが消失する。このシグナルは、G418によって促進されるゲノム全体の停止コドンのリードスルーを表している。リードスルー効率が低く、リボソームがすぐに2番目の停止コドンに遭遇するため、シグナルはすぐに消失する(通常の停止コドンと次のインフレームコドンとの間の距離の中央値は、ヒトゲノムでは18コドンである)。興味深いことに、、未処理細胞及びTLN68で処理した細胞について、ゲノム全体でのリードスルーは観察されなかった。
これは、TLN68が未成熟停止コドンを特異的に標的とし、天然の終止コドンには影響を及ぼさないことを示している。
TLN68の代わりに、本発明の式(I)若しくは(II)の他の化合物又はそれらの塩のうちの1つ、好ましくは化合物EC-18又はEC-288を使用して、同じ実験を実行した。
Claims (15)
- 前記遺伝性疾患又は癌が、目的のコード配列におけるナンセンス突然変異の存在によって引き起こされる、請求項1に記載の使用のための化合物。
- R2及びR3が、それぞれ同時にHではない、請求項1又は2に記載の使用のための化合物。
- R1が、メチル又はエチル、好ましくはメチルであり、
R2が、H、ハロゲン原子又はメトキシラジカルであり、
R3が、H、メチルラジカル、又はメトキシラジカルである、
請求項1~3のいずれか一項に記載の使用のための化合物。 - R1が、メチル又はエチル、好ましくはメチルであり、
R2が、ハロゲン原子、好ましくはフッ素、塩素若しくは臭素原子、又はメトキシラジカルであり、
R3が、H又はメチルラジカルである、
請求項1~4のいずれか一項に記載の使用のための化合物。 - ナンセンス突然変異によって引き起こされる前記遺伝性疾患が、嚢胞性線維症(嚢胞性線維症膜貫通コンダクタンス調節遺伝子におけるG542Xなどのナンセンス突然変異による)、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(ジストロフィンのナンセンス突然変異による)、ベータサラセミア(β-グロビンのナンセンス突然変異による)、A型、B型又はC型ニーマン・ピック病(酸性スフィンゴミエリナーゼのナンセンスL261X突然変異による)、ハーラー症候群、ドラベ症候群、脊髄性筋萎縮症、ミオアデニル酸デアミナーゼ欠損症、アンチトロンビンIII欠損症、アルファ-1アンチトリプシン欠損症、アポリポタンパク質欠損症(アポリポタンパク質AI、B、CII又はE)、アデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(APRT)欠損症、血友病A(第VIII因子のナンセンス突然変異による)、血友病B(第IX因子のナンセンス突然変異による)、フォン・ヴィレブランド病(フォン・ヴィレブランド因子のナンセンス突然変異による)、ファンコニ貧血群C、マルファン症候群、ゴーシェ病、ドナヒュー症候群、ロウ(Lowe)眼脳腎症候群、及び色素性乾皮症から選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
- 療法での使用のための、請求項9又は10に記載の化合物。
- 薬学的に許容される担体中に、請求項9又は10に記載の少なくとも1つの化合物又はその薬学的に許容される塩のうちの1つを含む、組成物。
- a)請求項1~10のいずれか一項に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩のうちの1つと、
b)少なくとも1つの他の薬物と、を
ナンセンス突然変異によって引き起こされる疾患を治療するための同時、個別又は逐次使用のための組み合わせ物として含む、物であって、
前記疾患が、対象において、ナンセンス突然変異によって引き起こされる遺伝性疾患及び腫瘍抑制遺伝子に存在するナンセンス突然変異によって引き起こされる癌から選択される、物。 - a)請求項5又は請求項7~10のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩のうちの1つと、
b)少なくとも1つの化学療法薬と、を
対象において、癌を治療するため、及び/又は癌転移を予防するため、及び/又は癌再発を予防するため、及び/又は前記化学療法薬b)に対する耐性を低減するための同時、個別又は逐次使用のための組み合わせ物として含む、物。 - 前記薬物が、アタルレン、ゲンタマイシン、ネガマイシン、クリトシン、エスシン、及びNMD阻害剤から選択される、請求項13又は14に記載の物。
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