JP2023522699A - コロナウイルスワクチンでコーティングされた微小突起を有する経皮活性剤送達デバイス - Google Patents

コロナウイルスワクチンでコーティングされた微小突起を有する経皮活性剤送達デバイス Download PDF

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Abstract

ワクチンの経皮又は皮内送達のための、より詳細には、COVID-19を予防するためのものを含む、ワクチン接種哺乳動物の血清中でコロナウイルス又は他のウイルス特異的抗体を産生するワクチンの送達のためのシステム及び方法が、本明細書に開示される。

Description

関連出願の相互参照
本出願は、2020年4月22日に出願された米国仮特許出願第63/013,809号の利益を主張するものであり、その全体が、法律によって許容される最大限まで参照により本明細書に組み込まれる。
本発明は、ワクチンの経皮又は皮内送達の分野に関し、より詳細には、ワクチン接種哺乳動物の血清中でコロナウイルス又は他のウイルス特異的抗体を産生するワクチンの送達に関する。
インフルエンザワクチンは、容易に広がるウイルス性呼吸器疾患であるインフルエンザにかかることから人々を保護する年一回のワクチンである。インフルエンザワクチンは、典型的には、注射又は鼻腔内スプレーによって投与される。最近のコロナウイルスのパンデミックを受けて、研究者らはCOVID-19を予防するためのワクチンを積極的に研究している。いくつかの報告は、COVID-19によって提示された深刻な公衆衛生上の課題、及び現在利用可能な治療オプションを記載している。例えば、Kalorama Information、「COVID-19 Update:Molecular Diagnostics,Immunoassays,Vaccines,Telehealth and Other Areas」(2020年4月7日)を参照されたい。
このような治療の中でも、溶解性マイクロニードルアレイは、組換えコロナウイルスのワクチンを送達するために使用されてきた。例えば、E.Kimら、Microneedle array delivered recombinant coronavirus vaccines:Immunogenicity and rapid translational development、EBioMedicine(2020)、https://doi.org/10.1016/j.ebiom.2020.102743を参照されたい。しかしながら、そのような溶解性マイクロニードルは、機械的強度及び破損が低いこと、並びに成形プロセスの制限のために先端の鋭さを失う傾向があることを含む、いくつかの欠点を有する。さらに、そのような溶解性マイクロニードルは、より大きな厚さ(例えば、500マイクロメートル以上)に制限され、患者の皮膚表面に適合することをより困難にする。さらに、そのような実験室規模の製造は大規模な製造にはつながらず、これはとりわけ、プロセス及び製品の品質保証及び管理に関してはるかに困難である。
したがって、当技術分野では、アレイ上の残留ワクチン製剤の問題、又はアレイ上の製剤コーティングの不均一性若しくはパッチへの製剤の付着の困難性などの製造上の不一致の問題を引き起こすことなく、パッチを正確かつ均一にコーティングすることができる経皮送達によるワクチン投与の効果的な方法が必要とされている。有効な生物活性剤/薬物送達のために経皮マイクロニードルパッチを使用する多くの試みがなされてきた。しかしながら、マイクロニードルシステムからの生物活性剤の迅速な放出を達成し、有効なマイクロニードルの形状及びサイズを最適化及び開発しながら、十分な用量の生物活性剤も含有することは、困難であることが判明している。したがって、粘度、生物活性剤充填、表面張力、マイクロニードルの形状及びサイズ、並びに一般的な製造上の欠陥の問題に対処する必要がある。
さらに、患者及び医療提供者をウイルス曝露の危険にさらす診療所又は他の混雑した場所に行かなくても容易に自己投与することができるワクチン製品が必要とされている。他の必要性には、皮下及び筋肉内注射に典型的に使用される鋭利な針及び関連するバイオハザードのリスクを回避すること、短い装着時間、及びコールドチェーン保存の必要性を回避するための室温で安定な製品が含まれる。
Kalorama Information、「COVID-19 Update:Molecular Diagnostics,Immunoassays,Vaccines,Telehealth and Other Areas」(2020年4月7日) E.Kimら、Microneedle array delivered recombinant coronavirus vaccines:Immunogenicity and rapid translational development、EBioMedicine(2020)、https://doi.org/10.1016/j.ebiom.2020.102743
本開示は、上記の必要性を満たし、コロナウイルス及びインフルエンザに対するワクチン接種を含む様々な健康状態の治療に有用な組成物、デバイス、治療方法、キット及び医薬製品の製造方法に関する。
より具体的には、本開示は、生物活性剤(活性医薬成分)としてのコロナウイルスワクチン及び/又はインフルエンザワクチンの、それを必要とする対象への投与に関する。本開示は、迅速な投与のために、すなわちマイクロニードル投与による皮内投与によって、使用が容易で携帯可能である治療有効量のコロナウイルスワクチン及び/又はインフルエンザワクチンを経皮的若しくは皮内的に、又は他の方法で皮膚を通して投与することに関する。一実施形態では、コロナウイルスワクチン及び/又はインフルエンザワクチンの経皮送達は、一般に、ワクチンでコーティングされているか、ワクチンのリザーバと流体接触しているか、又はその他の方法でワクチンを含む複数の微小突起(又は「針」又は「マイクロニードル」又は「アレイ」)を含む微小突起部材を有するパッチアセンブリを含む。パッチアセンブリは、接着性成分をさらに含み、好ましい実施形態では、微小突起部材及び接着性成分は、リテーナリングに取り付けられる。微小突起は、ワクチンを血流に送達するために皮膚に適用されるか、又はより詳細には、治療有効量を血流に提供するのに十分な深さで角質層を貫通又は穿孔するように適合される。一実施形態では、ワクチンでコーティングされたマイクロニードルの皮膚への挿入は、約10ミリ秒未満で十分な衝撃エネルギー密度を付与する手持ち式アプリケータによって制御される。
好ましくは、微小突起部材は、治療効果、例えばELISA及びウイルス中和アッセイによって測定されるワクチン接種哺乳動物の血清中のコロナウイルス特異的IgG抗体及び他の関連抗体の産生を提供するのに十分な用量のワクチンを含む生体適合性コーティング製剤を含む。
コーティングは、皮膚を横切るワクチンの投与を容易にするための1つ以上の賦形剤又は担体をさらに含んでもよい。例えば、生体適合性コーティング製剤は、ワクチンと、最初に液体形態で微小突起に適用され、次いで乾燥されて固体生体適合性コーティングを形成する水溶性担体とを含む。本明細書に開示されるワクチンパッチは、自己投与が容易であり、短い装着時間(例えば、5~30分)を有し、筋肉内(IM)又は皮下(SC)注射ワクチン対応物と比較して用量を節約し、使い捨てであり、パッチを使用する患者の少なくとも50%がワクチン接種/血清転換される。さらに、パッチは保存剤を含まず、有害事象を最小限に抑える。
本発明のデバイス、組成物、方法などのさらなる実施形態は、以下の説明、図面、実施例、及び特許請求の範囲から明らかになるであろう。前述及び以下の説明から理解されるように、本明細書に記載の各及びすべての特徴、並びにそのような特徴の2つ以上の各及びすべての組合せは、そのような組合せに含まれる特徴が互いに矛盾しない限り、本開示の範囲内に含まれる。さらに、任意の特徴又は特徴の組合せは、任意の実施形態又は態様から特に除外される場合がある。さらなる態様及び実施形態は、特に添付の実施例及び図面と併せて考慮される場合、以下の説明及び特許請求の範囲に記載される。
実施形態の前述の特徴は、添付の図面を参照して行われる以下の詳細な説明を参照することによって、より容易に理解されるであろう。
出願人Zosanoの経皮微小突起送達システムを示す図である。(a)アプリケータ。(b)薬物コーティングされたパッチ。(c)微小突起アレイ。(d)微小突起先端の詳細。 3つのワクチン製剤、すなわち50mg/mLのHA及びスクロース(◆)、40mg/mLのHA及びスクロース(■)、35mg/mLのHA及びスクロース(▲)の溶液粘度を示す折れ線グラフである。 インフルエンザワクチンでコーティングされたアレイのコーティング形態を示す一連の顕微鏡写真である。(a)コーティングされたアレイの一部の上面図。(b)1つの微小突起の側面図。(c)1つの微小突起の上面図。(d)1つの微小突起の正面図。 ヒツジ抗HA抗体を用いたインプロセスワクチン材料のSDS-PAGE/ウエスタンブロット分析を示す図である。(a)非還元条件。(b)還元条件。 5℃及び25℃で12ヶ月間保存した第I相臨床試験のために製造したシステムの安定性の棒グラフである。
様々な態様及び実施形態を本明細書で説明する。しかしながら、これらの態様及び実施形態は、多くの異なる形態で具現化されてもよく、限定するものとして解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が、本明細書に記載の組成物、デバイス、治療方法、キット及び医薬製品の製造方法をどのように作製及び使用するかを当業者に知らせるために徹底的かつ完全であるように提供される。本明細書で使用される用語は、本明細書に記載の組成物、デバイス、治療方法、キット及び製造方法を説明するためのものであり、本発明の範囲は、本出願に付随する特許請求の範囲並びに本出願に由来する継続出願及び分割出願に付随する特許請求の範囲によってのみ限定されるので、明示的に述べられない限り、限定することを意図するものではない。本明細書で引用されるすべての書籍、出版物、特許、及び特許出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
前述及び以下の説明から理解されるように、本明細書に記載の各及びすべての特徴、並びにそのような特徴の2つ以上の各及びすべての組合せは、そのような組合せに含まれる特徴が互いに矛盾しない限り、本開示の範囲内に含まれる。例えば、その使用が任意の他の実施形態と一致する任意の実施形態が企図され、したがってこの説明に含まれる。他の態様及び実施形態は、添付の実施例及び図面と併せて考慮される場合にも、以下の説明及び特許請求の範囲に記載される。
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈が明らかにそうでないことを指示しない限り、複数の言及を含む。例えば、「方法」への言及は、本明細書に記載の及び/又は本開示を読めば当業者には明らかになるであろう種類の1つ以上の方法及び/又は工程を含む。
A.定義
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての用語及び語句は、反対のことが明確に示されていない限り、又は用語若しくは語句が使用される文脈から明らかでない限り、用語及び語句が当技術分野で獲得した意味を含む。本明細書に記載の特定の方法及び材料を含む、本明細書に記載の方法及び材料と類似又は同等の任意の方法及び材料を、本発明の実施又は試験に使用することができる。
特に明記しない限り、個々の数値の使用は、値の前に「約」又は「およそ」という語が先行しているかのような近似として記載される。同様に、本出願で指定された様々な範囲の数値は、特に明示的に示されない限り、記載された範囲内の最小値及び最大値の両方の前に「約」又は「およそ」という語が先行しているかのような近似として記載される。このようにして、記載された範囲の上下の変動を使用して、範囲内の値と実質的に同じ結果を達成することができる。本明細書で使用される場合、数値に言及するときの「約」及び「およそ」という用語は、開示された主題が最も密接に関連している当業者、又は問題の範囲若しくは要素に関連する当業者にとっての平易で通常の意味を有するものとする。厳密な数値境界からの広がりの量は、当業者に知られている要因に依存する。例えば、考慮される可能性がある要因のいくつかは、要素の重要性及び/又は所与の量の変動が特許請求される主題の性能に及ぼす影響、並びに当業者に知られている他の考慮事項を含む。本明細書で使用される場合、異なる数値に対して異なる量の有効数字を使用することは、「約」又は「およそ」という語の使用が特定の数値又は範囲を広げる又は狭めるのにどのように役立つかを限定することを意味するものではない。一般的なこととして、「約」又は「およそ」は数値を広げる。範囲の開示は、最小値と最大値との間のすべての値と、「約」又は「およそ」という用語の使用によって与えられる範囲の広がりとを含む連続的な範囲として意図されている。したがって、本明細書における値の範囲の列挙は、その範囲内に入る各別個の値を個別に参照する簡略な方法として役立つことを意図しており、各別個の値は、あたかもそれが本明細書に個別に列挙されているかのように本明細書に組み込まれる。
本明細書で使用される「生体適合性コーティング」という用語は、十分な接着特性を有し、生物学的活性剤(a/k/a活性医薬成分、又は治療剤、又は抗原、又は薬物)との有害な相互作用がない(又は最小の)「コーティング製剤」から形成されたコーティングを意味し、含む。
「コロナウイルス」という用語は、ヒトに影響を及ぼし、一般的な感冒症状及びより重度又はさらには致死的な状態、例えば重度の肺炎及びARDSなどの気道感染症を引き起こす人畜共通ウイルスのファミリーを指す。コロナウイルスの例としては、アルファコロナウイルス、ベータコロナウイルス、hCoV-229E、hCoV-NL63、hCoV-OC43、HCoV-HKU1、SARS-CoV、MERS-CoV及びSARS-CoV-2が挙げられる。いくつかの実施形態では、コロナウイルスは、SARS-CoV-2のゲノム配列を有するベータコロナウイルスである。他の実施形態では、コロナウイルスのゲノム配列は、SARS-CoV-2と少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%又は少なくとも99%の配列同一性を有する。別の態様では、コロナウイルスのゲノム配列は、コウモリSARS様CoV(コウモリ-SL-CoVZC45、MG772933.1)と少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%又は少なくとも99%の配列同一性を有する。本明細書に記載の治療は、すべてのそのようなコロナウイルス感染症及びその症状に対するワクチン接種において有用である。
本明細書で使用される「コロナウイルスワクチン」という用語は、コロナウイルスに対する任意のワクチンを意味する。例えば、ELISA及びウイルス中和アッセイによって測定される、ワクチン接種哺乳動物の血清中でコロナウイルス特異的IgG抗体又は他の関連抗体を産生する任意のワクチン(コロナウイルススパイク(S)タンパク質、SARS-CoV-S1サブユニット、MERS-S1サブユニットを含むワクチン、及び本明細書の他の箇所に列挙されている開発中のワクチンが含まれるが、これらに限定されない)。
「COVID-19」という用語は、2019年12月に中国の武漢で最初に認識された、新たに出現したコロナウイルスSARS-CoV-2によって引き起こされる気道感染症を指す。COVID-19の臨床症候群は、発熱、疲労、咳(痰の生成を伴う又は伴わない)、食欲不振、倦怠感、筋肉痛、咽喉痛、呼吸困難、鼻閉、頭痛、又はまれに下痢、悪心及び嘔吐などの軽度の又は合併症を伴わない疾患から、入院及び酸素支援又は集中治療室への入院を必要とし、機械的換気を必要とする場合がある重度の疾患にまで及ぶ。重度の例では、COVID-19は、肺傷害、ARDS、敗血症及び敗血症性ショック、急性腎傷害及び心傷害を含む多臓器不全によって複雑化し得る。重度COVID-19患者における最も一般的な診断は、重症肺炎である。
「賦形剤」という用語は、生物活性剤の希釈剤、ビヒクル、保存剤、結合剤、安定化剤などとして一般に使用される不活性物質を指し、タンパク質(例えば、血清アルブミンなど)、アミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、アルギニン、グリシン、ヒスチジン、ロイシンなど)、脂肪酸及びリン脂質(例えば、アルキルスルホネート、カプリレートなど)、界面活性剤(例えば、SDS、ポリソルベート、非イオン性界面活性剤など)、糖類(例えば、スクロース、マルトース、トレハロースなど)並びにポリオール(例えば、マンニトール、ソルビトールなど)を含むが、これらに限定されない。さらなる医薬賦形剤については、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第21版、LWW Publisher(2005)も参照されたい。
本明細書で使用される「皮内」又は「経皮」という語は、外科用ナイフでの切断又は皮下注射針での皮膚の穿孔など、皮膚を実質的に切断又は貫通することなく、活性剤(例えば、治療剤、例えば、抗原、薬物、医薬、ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質)を皮膚を通して局所組織又は全身循環系に送達することを指す総称である。皮内剤送達には、受動拡散による送達、並びに電気(例えば、イオン導入)及び超音波(例えば、フォノフォレーシス)などの外部エネルギー源に基づく送達が含まれる。
本明細書で使用される「皮内流動」又は「経皮流動」という用語は、活性剤又は薬物の皮内又は経皮送達の速度を意味する。
本明細書で使用される「微小突起部材」又は「マイクロニードルアレイ」などの用語は、一般に、角質層を貫通又は穿孔するための、好ましくはアレイに配置された複数の微小突起を含む微小突起群を意味する。微小突起部材は、金属又は他の剛性材料の薄いシートから複数の微小突起をエッチング又は打ち抜きし、構成を形成するためにシートの平面から微小突起を折り畳む又は曲げることによって形成することができる。あるいは、微小突起部材は、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などのプラスチック又はポリマーを含む他の材料で製造できる可能性がある。微小突起部材は、射出成形若しくは微小成形、微小電気機械システム(MEMS)などの他の既知の技術で、又は米国特許第6,083,196号明細書、同第6,091,975号明細書、同第6,050,988号明細書、同第6,855,131号明細書、同第8,753,318号明細書、同第9,387,315号明細書、同第9,192,749号明細書、同第7,963,935号明細書、同第7,556,821号明細書、同第9,295,714号明細書、同第8,361,022号明細書、同第8,633,159号明細書、同第7,419,481号明細書、同第7,131,960号明細書、同第7,798,987号明細書、同第7,097,631号明細書、同第9,421,351号明細書、同第6,953,589号明細書、同第6,322,808号明細書、同第6,083,196号明細書、同第6,855,372号明細書、同第7,435,299号明細書、同第7,087,035号明細書、同第7,184,826号明細書、同第7,537,795号明細書、同第8,663,155号明細書、並びに米国特許出願公開第20080039775号明細書、同第20150038897号明細書、同第20160074644号明細書及び同第20020016562号明細書に開示されているように、ストリップの各々の縁部に沿って微小突起を有する1つ以上のストリップを形成することによって、形成することができる。当業者には理解されるように、微小突起アレイが使用される場合、送達される治療剤の用量は、微小突起アレイのサイズ、密度などを変更することによって変更又は操作することもできる。
本明細書で互換的に使用される「微小突起」及び「マイクロニードル」という用語は、生きている動物、特に哺乳動物、より詳細にはヒトの皮膚の下層の表皮層、又は表皮層及び真皮層へと、角質層の中に及び/又は角質層を通して貫通、穿孔又は切断するように適合された穿孔要素を指す。本発明の一実施形態では、穿孔要素は、1000ミクロン未満の突起長さを有する。さらなる実施形態では、穿孔要素は、500ミクロン未満、より好ましくは400ミクロン未満の突起長さを有する。微小突起は、およそ25~500ミクロンの範囲の幅及びおよそ10~100ミクロンの範囲の厚さをさらに有する。微小突起は、針、ブレード、ピン、パンチ、及びそれらの組合せなどの異なる形状に形成されてもよい。
「患者」及び「対象」という用語は、本明細書で互換的に使用され、脊椎動物、好ましくは哺乳動物を指す。哺乳動物には、ヒトが含まれるが、これに限定されない。
本明細書で使用される生物活性剤「放出速度」は、単位時間当たりに剤形又は医薬組成物から放出される剤の量、例えば、1時間当たりに放出される剤のマイクログラム(mcg/hr)又は1時間当たりに放出される剤のミリグラム(mg/hr)を指す。剤形の剤放出速度は、典型的には、インビトロ溶解速度、すなわち、適切な条件下及び好適な流体中で測定された単位時間当たりの剤形又は医薬組成物から放出された剤の量として測定される。
本明細書で使用される「安定な」という用語は、薬剤製剤を指し、薬剤製剤が、分解、破壊又は不活化を含む過度の化学的又は物理的変化を受けないことを意味する。本明細書で使用される「安定な」とは、コーティングを指し、機械的に安定であること、すなわちコーティングが堆積される表面からの過度の変位又は損失を受けないことも意味する。
本明細書で使用される「治療的に有効な」又は「治療有効量」という用語は、所望の有益な結果を刺激又は開始するのに必要な生物学的活性剤の量を指す。本発明のコーティングに使用される生物学的活性剤の量は、所望の結果を達成するのに必要な量の生物学的活性剤を送達するのに必要な量であろう。実際には、これは、送達される特定の生物学的活性剤、送達部位、並びに生物学的活性剤の皮膚組織への送達のための溶解及び放出動態に応じて大きく変化するであろう。
B.皮内送達システム
本発明によるコロナウイルスワクチン及び/又はインフルエンザワクチンを皮内送達するための装置及び方法は、角質層を通して下層の表皮層、又は表皮層及び真皮層へと穿孔するように適合された複数のマイクロニードル(又はそのアレイ)を有するマイクロニードル部材(又はシステム)を有する皮内送達システムを含む。
一実施形態では、皮内送達システムは、接着性バッキングの中心に位置する微小突起部材からなる使い捨てパッチとアプリケータとを含む経皮又は皮内活性剤送達技術である。微小突起部材は、乾燥活性剤製品製剤でコーティングされたチタン(又はポリエーテルエーテルケトン(PEEK)のようなプラスチック若しくはポリマー材料を含む他の剛性材料)マイクロニードルを含む。パッチは、パッチアセンブリを形成するためにリテーナリングに取り付けられる。パッチアセンブリは、皮内送達システムを形成するために手持ち式アプリケータ内に取り外し可能に取り付けられる。アプリケータは、パッチが定められた適用速度及びエネルギーで皮内投与部位に適用されることを保証する。アプリケータは、単回使用のために設計されてもよく、再使用可能であってもよい。そのような技術の例は、出願人所有の米国特許出願公開第20190070103号明細書に記載されている。
より詳細には、パッチは、関連する生物活性剤(例えば、コロナウイルスワクチン及び/又はインフルエンザワクチン)の親水性製剤でコーティングされ、接着性バッキングに取り付けられた、およそ200~350ミクロン長のチタンマイクロニードルの約3~6cmのアレイを含み得る。パッチのマイクロニードルアレイ上にコーティングすることができる活性剤の最大量は、製剤の活性剤又は部分、製剤中の賦形剤の重量、及びマイクロニードルアレイのコーティング可能な表面積に依存する。例えば、約1cm、2cm、3cm、4cm、5cm及び6cmのマイクロニードルアレイを有するパッチを使用してもよい。パッチは、各適用においてマイクロニードルを実質的に均一な深さまで皮膚内に押し込む手持ち式アプリケータで適用され、毛細血管床に近く、活性剤コーティングの溶解及び吸収を可能にするが、皮膚内の神経終末は短い。典型的なパッチ装着時間は約5~45分以下であり、皮膚刺激の可能性を低下させる。約0.20~0.60ジュールの公称アプリケータエネルギーは、一般に、衝撃に対する感覚とアレイ貫通との間の良好なバランスを達成することができる。衝撃の瞬間の実際の運動エネルギーは、アプリケータのばねの不完全な伸長、パッチをそのリテーナリングから分離することによるエネルギー損失、及びその他の損失のために、これらの公称値よりも小さくなる可能性があり、これらは公称値のおよそ合計25%を占める可能性がある。
1.アレイ設計
いくつかの変数は、特定の活性剤に利用されるアレイの種類において役割を果たす。例えば、異なる形状(例えば、矢じり、フック、円錐形、又はワシントン記念塔に類似した形状)は、より高い活性剤充填能力を可能にする場合があるが、微小突起の長さは、貫通のためのより大きな駆動力を提供するために増加させてもよい。角質層は約10~40ミクロンの厚さを有し、微小突起は、角質層を貫通して活性剤の送達を行うのに適切なサイズ、厚さ及び形状を有しなければならない。微小突起は角質層を貫通し、基材は皮膚の表面と接触する。
いくつかの実施形態では、角質層を貫通しない基材又はアレイの基部(「ストリート」)へのコーティングの適用を回避しながら、角質層を貫通する微小突起上により厚いコーティングを達成することが有利である。より大きな表面積は、アレイの基部又はストリートに延びることなく、より厚いコーティングを可能にする。特定の場合には、コーティングは微小突起にのみ適用される。さらに、コーティングを有するよりかさ高い突起に必要なより高い貫通力は、1cm当たりの突起のより長い長さ及びより低い密度によって補償される場合がある。
本開示で使用されてもよい例示的な皮内送達システムには、米国特許第6,083,196号明細書、同第6,091,975号明細書、同第6,050,988号明細書、同第6,855,131号明細書、同第8,753,318号明細書、同第9,387,315号明細書、同第9,192,749号明細書、同第7,963,935号明細書、同第7,556,821号明細書、同第9,295,714号明細書、同第8,361,022号明細書、同第8,633,159号明細書、同第7,419,481号明細書、同第7,131,960号明細書、同第7,798,987号明細書、同第7,097,631号明細書、同第9,421,351号明細書、同第6,953,589号明細書、同第6,322,808号明細書、同第6,083,196号明細書、同第6,855,372号明細書、同第7,435,299号明細書、同第7,087,035号明細書、同第7,184,826号明細書、同第7,537,795号明細書、同第8,663,155号明細書、並びに米国特許出願公開第20080039775号明細書、同第20150038897号明細書、同第20160074644号明細書及び同第20020016562号明細書に記載されている活性剤送達技術が含まれる。開示されるシステム及び装置は、皮膚の最外層(すなわち、角質層)を穿孔し、したがって剤皮内流動を増強するために、様々な形状及びサイズの穿孔要素を使用する。穿孔要素は、一般に、パッド又はシートなどの薄い平坦な基材部材から垂直に延在する。穿孔要素は、典型的には小さく、いくつかはわずか約25~400ミクロンの微小突起長さ及び約5~50ミクロンの微小突起厚さを有する。これらの小さな穿孔/切断要素は、経皮/皮内剤送達を増強するために、角質層に対応して小さなマイクロスリット/マイクロカットを形成する。送達される活性剤は、好ましくは、固体の乾燥コーティングを形成するためにウイルスワクチンベースの製剤で微小突起をコーティングすることによって、又は任意選択で、マイクロスリットが形成された後に角質層と連通するリザーバの使用によって、又は適用後に溶解する固体ウイルスワクチンベースの製剤から微小突起を形成することによって、微小突起の1つ以上に関連する。微小突起は、中実又は中空であり得、開口、溝、表面凹凸又は類似の変形など、コーティングの体積を受容及び/又は増強するように適合されたデバイス特徴をさらに含むことができ、特徴は、より多くの量のコーティングを堆積させることができる増加した表面積を提供する。マイクロニードルは、ステンレス鋼、チタン、ニッケルチタン合金、又はポリマー材料などの同様の生体適合性材料から構成されてもよい。
したがって、本開示は、以下の特徴を有するパッチ及びマイクロニードルアレイを包含する。
パッチサイズ:約1~20cm、又は約2~15cm、又は約4~11cm、又は約3cm、又は約5cm、又は約10cm
基材サイズ:約0.5~10cm、又は約2~8cm、又は約3~6cm、又は約3cm、又は約3.13cm、又は約6cm
アレイサイズ:約0.5~10cm、又は約2~8cm、又は約2.5~6cm、又は約2.7cm、又は約5.5cm、又は約2.74cm、又は約5.48cm
密度(微小突起/cm):少なくとも約10個の微小突起/cm、又は約200~2000個の微小突起/cm、又は約500~1000個の微小突起/cm、又は約650~800個の微小突起/cm、又はおよそ725個の微小突起/cmの範囲。
微小突起/アレイの数:約100~4000、又は約1000~3000、又は約1500~2500、又は約1900~2100、又は約2000、又は約1987、又は約200~8000、又は約3000~5000、又は約3500~4500、又は約4900~4100、又は約4000、又は約3974。
微小突起長さ:約25~600ミクロン(マイクロメートル)、又は約100~500ミクロン、又は約300~450ミクロン、又は約320~410ミクロン、又は約340ミクロン、又は約390ミクロン、又は約387ミクロン。他の実施形態では、長さは、1000ミクロン未満、又は700ミクロン未満、又は500ミクロン未満である。したがって、マイクロニードルは、皮膚を約25~1000ミクロンまで貫通する。
先端長さ:約100~250ミクロン、又は約130~約200ミクロン、又は約150~180ミクロン、又は約160~170ミクロン、又は約165ミクロン。
微小突起幅:約10~500ミクロン、又は約50~300ミクロン、又は約75~200ミクロン、又は約90~160ミクロン、又は約250~400ミクロン、又は約300ミクロン、又は約100ミクロン、又は約110ミクロン、又は約120ミクロン、又は約130ミクロン、又は約140ミクロン、又は約150ミクロン
微小突起厚さ:約1ミクロン~約500ミクロン、又は約5ミクロン~300ミクロン、又は約10ミクロン~100ミクロン、又は約10ミクロン~50ミクロン、又は約20ミクロン~30ミクロン、又は約25ミクロン。
先端角:約10~70度、又は約20~60度又は約30~50度、又は約35~45度、又は約40度。
アレイ当たりの総活性剤:約1mcg~500mcg、又は約10mcg~400mcg、又は約25mcg~300mcg、又は少なくとも50mcg、又は少なくとも75mcg、又は少なくとも100mcg。
アレイ当たりの不活性成分の量:約0.1~10mg、又は約0.2~4mg、又は約0.3mg~2mg、又は約0.6mg、又は約0.63mg、又は約1.3mg、又は約1.26mg。あるいは、不活性成分の量は、活性剤よりも1~3倍少ないか、又は約0.033mg~約3.33mgである。
コーティング厚さ:約50マイクロメートル~約500マイクロメートル、又は約100マイクロメートル~約350マイクロメートル、又は約50マイクロメートル~約200マイクロメートル。
微小突起当たりの活性剤:微小突起当たりの抗原の量は、約13ng~約250ng、又は約0.01μg~約100μg、又は約0.1~10μg、又は約0.5~2μg、又は約1μg、又は約0.96μgの範囲であり得る。
本発明の一実施形態では、マイクロニードル部材は、少なくともおよそ10個の微小突起/cm、より好ましくは少なくともおよそ200~750個の微小突起/cmの範囲のマイクロニードル密度を有する。
本発明の一実施形態では、微小突起は、1000ミクロン未満の突起長さを有する。さらなる実施形態では、微小突起は、700ミクロン未満の突起長さを有する。他の実施形態では、微小突起は、500ミクロン未満の突起長さを有する。好ましくは、微小突起長さは、300~400ミクロンの間の長さである。微小突起は、約100~約150ミクロンの範囲の幅及び約10~約40ミクロンの範囲の厚さをさらに有する。
一実施形態では、微小突起部材は、ステンレス鋼、チタン、ニッケルチタン合金、又はポリマー材料などの同様の生体適合性材料から構成される。
本発明の一実施形態では、微小突起部材は、少なくともマイクロニードル上に配置された生体適合性コーティングを含む。ワクチン抗原の量は、アレイ当たり約25~約500mcgであってもよい。
別の実施形態は、約3.1cmの面積及び約25マイクロメートルの厚さを有するチタン基材に接着された約5cmのパッチ面積を有する。基材は、約725個の微小突起/cmの密度で約1987個の微小突起を含む約2.74cmの面積を有する微小突起アレイからなる。各微小突起上に含まれる乾燥製剤は、最大約270μmから漸減し、微小突起当たり約0.002μg~約0.25μgのコロナウイルスワクチン抗原及びパッチ当たり約5μg~約500μgの抗原を含む厚さを有するアメリカンフットボールの近似形状を有してもよい。
別の実施形態は、約6cm及び約25μmの厚さのチタン基材に接着された約5cmのパッチ面積を有する。基材は、約725個の微小突起/cmの密度で約4000個の微小突起を含む約5.5cmの面積を有するアレイからなる。各微小突起上に含まれる乾燥製剤は、最大約270から漸減し、約0.00125μg~約0.125μgのコロナウイルスワクチン抗原からなる厚さを有するアメリカンフットボールの近似形状である。微小突起は、約387±13μmの長さ、約120±13μmの幅、及び約25.4±2.5μmの厚さを有する。微小突起は長方形であり、貫通を容易にするために三角形の先端を有する。先端は、40±5度の角度を有し、約165±25ミクロンの長さである。そのような技術のさらなる例は、出願人所有の米国特許出願公開第20190070103号明細書に記載されている。
所望の貫通をもたらすかさ、長さ及び密度の正確な組合せは様々であり、活性剤、その用量、治療される疾患又は状態、及び投与頻度に依存する場合がある。したがって、特定のアレイの活性剤送達効率(すなわち、血流に送達される活性剤の量)は、約40%~100%、又は約40%、又は約50%、又は約60%、又は約70%、又は約80%、又は約90%、又は約100%の間で変動するであろう。
2.インパクトアプリケータ
出願人が所有する米国特許出願公開第20190070103号明細書の図4(A)~図4(B)、図5(A)~図5(E)に示されているように、本開示の皮内活性剤送達システムは、本体と、本体内で移動可能なピストンとを有するインパクトアプリケータをさらに含んでもよく、ピストンの表面は皮膚に対してパッチに衝突し、微小突起が角質層を穿孔する。アプリケータは、10ミリ秒以下で少なくとも0.05ジュール/cm、又は10ミリ秒以下で約0.26ジュール/cm、又は10ミリ秒以下で約0.52ジュール/cmの衝撃エネルギー密度でマイクロニードルアレイを角質層に適用するように適合される。
米国特許出願公開第20190070103号明細書の図2(A)及び図2(B)に示されているように、皮内送達システムは、活性剤でコーティングされたマイクロニードルのアレイからなる、一方の表面に接着性バッキングを有し、他方の側に光沢のある金属表面を有するパッチを含む。パッチは、光沢のある金属表面を手動で、又は好ましくはアプリケータによって皮膚に押し付けることによって皮膚に適用されてもよい。好ましくは、アプリケータは、10ミリ秒以下で0.26ジュール/cmの衝撃エネルギー密度でパッチを皮膚に適用する。米国特許出願公開第20190070103号明細書の図2A、図2B、図3A及び図3Bに示されるように、パッチは、パッチアセンブリを形成するリテーナリング構造に接続され、それによって支持されてもよい。リテーナリングは、インパクトアダプタに嵌合し、パッチをアプリケータに取り外し可能に取り付けるように適合される。リテーナリング構造は、接着性パッチ及びマイクロニードルアレイを受容するように設計された内側リング及び外側リングを含んでもよい。米国特許出願公開第20190070103号明細書の図5(A)~図5(E)は、ユーザが、パッチ及びマイクロニードルアレイが既にロードされているリテーナリングへのインパクトアプリケータの接続を容易にする、特許請求される発明の一実施形態を示している。図示のように、リテーナリングとインパクトアプリケータとが接続されると、ユーザは、アプリケータキャップをねじることによってインパクトアプリケータをロック解除することができる。米国特許出願公開第20190070103号明細書の図5(C)は、次いで、ユーザがアプリケータを皮膚上で下方に押し付けてパッチを分配し、それを皮膚に適用してもよいことを示している。パッチは、患者の皮膚に取り外し可能に取り付けられ、リテーナリングは、アプリケータに取り付けられたままである。米国特許出願公開第20190070103号明細書の図4(A)及び図4(B)に示されるように、リテーナリングは、インパクトアプリケータが、さらなるパッチアセンブリを用いて、潜在的に他の活性成分及び疾患状態のために後続の投与事象中に再使用することができるように、インパクトアプリケータに可逆的に取り付けられる。
別の実施形態では、パッチ及びアプリケータは、製剤の安定性及び無菌性を保証する包装と共に、単一の一体化されたユニットとして供給される。ユーザは、システムを包装から取り出し、本明細書に記載のようにパッチを適用する。次いで、使用済みアプリケータは、通常のごみに廃棄される。この実施形態は、より複雑でなく、より小さく、より軽く、より使いやすいシステムを提供する。
本開示はまた、本開示がこれに関して決して限定されないので、多種多様な能動的経皮システム(本明細書に記載の受動的手動皮内送達デバイスとは対照的な)と共に使用することができる。
いくつかの能動的経皮システムは、電気輸送を利用する。例示的な電気輸送活性剤送達システムは、米国特許第5,147,296号明細書、同第5,080,646号明細書、同第5,169,382号明細書及び同第5,169,383号明細書に記載されている。広く使用されている電気輸送プロセスの1つであるイオン導入は、荷電イオンの電気的に誘導された輸送を含む。電気浸透は、非荷電分子又は中性荷電分子の経皮輸送(例えば、グルコースの経皮サンプリング)に関与する別の種類の電気輸送プロセスであり、電界の影響下で膜を通る剤を含む溶媒の移動を含む。エレクトロポレーションは、さらに別の種類の電気輸送であり、電気パルス、高電圧パルスを膜に印加することによって形成された細孔を通る剤の通過を含む。多くの場合、記載されたプロセスのうちの2つ以上が、異なる範囲で同時に発生する可能性がある。したがって、「電気輸送」という用語は、本明細書では、剤が実際に輸送されている特定の機構にかかわらず、少なくとも1つの荷電した若しくは荷電していない剤、又はそれらの混合物の電気的に誘導又は増強された輸送を含むように、その最も広い合理的な解釈が与えられる。
さらに、限定されないが、化学的浸透増強、レーザーアブレーション、熱、超音波、又は圧電デバイスを含む任意の他の輸送増強方法を、本明細書の開示と併せて使用することができる。
3.活性剤及び生体適合性コーティングとしてのワクチン
固体コーティングを形成するために上記の微小突起部材に適用されるコーティング製剤は、生体適合性担体内に溶解され得るか又は担体内に懸濁され得る少なくとも1つの生物学的活性剤を有する液体、好ましくは水性製剤からなる。次いで、製剤を微小突起上にコーティングし、乾燥させ、滅菌し、包装する。生物学的活性剤は、インフルエンザワクチン又はコロナウイルスワクチン、例えば、SARS-Cov-2サブユニットワクチンであってもよい。
本開示は、少なくとも78の確認済みのCOVID-19ワクチン候補を包含し、そのうち5つは既に臨床試験に入っている。前出のKalorama誌。本発明において有用なコロナウイルスワクチンのこのような例としては、限定されないが、以下が挙げられる。
1.Moderna MRNA-127。
2.Inovio Pharmaceuticals INO-4800。
3.Shenzhen Geno-Immune Medical Institute LV-SMENP-DCワクチン。
4.CanSino Biologics Ad5-nCoV。
5.Glaxoと、Clover Biopharmaceuticals(COVID-19 S-Trimer)及びCoalition for Epidemic Preparedness(CEPI)(分子クランプ)との共同研究。
6.SanofiとTranslate Bioとの共同研究。
7.Emergent BioSolutionsとVaxartとの契約。
8.Seqiris MF59。
9.Immune Response BioPharma(IRBP)IR101C。
10.Johnson&Johnson。
11.田辺三菱製薬/Medicago。
12.Serum InstituteとCodagenixとの提携。
13.武田抗SARS-CoV-2ポリクローナル高免疫グロブリン。
14.Sengenics。
15.Akers Biosciences。
16.ピッツバーグ大学。
17.Inovio及びOlogy Biosciences。
18.Dynavax、Clover提携。
19.アイオワ大学、ジョージア大学。
20.Applied DNA及びTakis Biotech。
21.Sanofi及びGSK。
COVID-19に対するワクチン及び本開示の一部のより詳細な概要を以下に要約する。
COVID-19に対する開発中のワクチンを選択(ソース:前出のKalomara)
Figure 2023522699000002
Figure 2023522699000003
Figure 2023522699000004
Figure 2023522699000005
本開示はまた、65歳以上の成人に使用するための、Novavax,Inc.のNanoFlu(商標)(専売のMatrix-M(商標)アジュバントを有する同社の組換え四価季節性インフルエンザワクチン候補)などの新しいインフルエンザワクチンに関する。前出のKalomara。
そのような上記のワクチン/抗原は、本明細書に記載の水性コーティング製剤と適合性であり、本明細書に記載の方法に従って治療有効量で微小突起アレイにロードしてもよい。
水性コーティング製剤中の生物学的活性成分及び賦形剤の濃度は、許容されるコーティング厚さで所望の量の活性成分を達成し、マイクロニードルアレイの基部上へのコーティング製剤の吸上げを回避し、コーティングの均一性を維持し、安定性を確保するように慎重に制御される。一実施形態では、活性剤は、コーティング製剤中に約1%w/w~約60%w/w、又は約15%w/w~60%w/w、又は約35%w/w~45%w/wの濃度で存在する。
他のコーティング製剤パラメータには、以下が含まれる。
・ワクチン抗原は、抗原に対する二糖の質量比が約0.5、1又は2:1の二糖、例えばスクロース又はトレハロースで安定化されてもよい。使用されてもよい他の二糖は、タンパク質を安定化するのに十分な量のラクトース及びマルトースである。
・コーティング厚さは、約50マイクロメートル~約100マイクロメートルの範囲である。
・抗原又は抗原の組合せを含有する水性製剤の粘度は、約50~約300cPの範囲であり得る。
・他の賦形剤としては、酒石酸、クエン酸及びヒスチジンが挙げられる。
・pH範囲は、4.4~7.4である。
製剤は、約0.1%w/w~約20%w/wの濃度で酸をさらに含んでもよい。そのような酸は、酒石酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、アスコルビン酸、乳酸、塩酸から個別に又は組み合わせて選択されてもよい。別の実施形態では、コーティング製剤において、活性剤対酸の比は、約1:1、約2:1、約3:1、約4:1又は約5:1である。本開示はさらに、約33%w/wのコロナウイルスワクチン基剤及び約11%w/wの酒石酸を含むコーティング製剤を包含する。いくつかの実施形態では、酸は、酒石酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸又はマレイン酸のうちの1つであり、約0.33%~10%w/w、又は約8.33%~約16.67%w/w、又は約13.33%w/w、又は約15%w/w、又は約6.67%w/wの量で存在する。いくつかの実施形態では、コーティング製剤は、45%w/wの活性剤、15%w/wの酸及び40%w/wの水を含む。
ワクチン/抗原は、約1%w/w~約50%w/wの間に含まれる濃度でコーティング製剤中に存在してもよく、弱酸(酒石酸、クエン酸、リンゴ酸又はマレイン酸)は、約6.67%w/w~約16.67%w/wの間でコーティング製剤中に存在する。
特定の実施形態では、本開示のコーティング製剤は、保存剤を含まない。
界面活性剤がコーティング製剤に含まれてもよい。コーティング製剤に含めるのに好適な界面活性剤としては、ポリソルベート20及びポリソルベート80が挙げられるが、これらに限定されない。界面活性剤は、浸透促進剤として活性剤送達を改善するために一般的に使用される。しかしながら、出願人は、界面活性剤がコーティング製剤においてうねりをもたらし、これは不均一な膜を示し、非常に不利であることを見出した。出願人は、界面活性剤及び他の浸透促進剤の必要性が、特許請求される発明の使用によって、具体的には、特許請求されるコロナウイルスワクチン又はインフルエンザワクチンの経皮送達パッチによって回避され得ることを見出した。さらに、出願人は、驚くべきことに、界面活性剤の欠如にもかかわらず、マイクロニードルコーティングが吸上げを回避し、マイクロニードルアレイの製造プロセス中にコーティングが微小突起に十分に接着することを見出した。
酸化防止剤がコーティング製剤に含まれてもよい。コーティング製剤に含めるのに好適な酸化防止剤としては、メチオニン、アスコルビン酸及びEDTAが挙げられるが、これらに限定されない。
コーティング製剤は、マイクロニードル上で乾燥させる前に製剤を100%にするのに十分な量(適量)の液体、好ましくは水をさらに含む。液体コーティング製剤のpHは、約pH8未満であってもよい。他の場合では、pHは、約pH3~7.4、又は約pH3.5~4.5である。好ましくは、コーティング製剤のpHは、約pH8未満である。より好ましくは、コーティング製剤のpHは、3~7.4の間に含まれる。さらにより好ましくは、コーティング製剤のpHは、3.5~5.5の間に含まれる。
本開示による液体コーティング製剤は、一般に、マイクロニードルを適切な含有量及び形態で一貫してコーティングする能力を示し、5%未満、好ましくは3%未満の水を含有する安定な固体(乾燥)製剤をもたらす。液体製剤は、液体膜に浸漬する微小突起先端の深さの正確な制御を可能にする操作されたコータを使用して、マイクロニードルアレイ及びその微小突起先端に適用される。好適なコーティング技術の例は、米国特許第6,855,372号明細書に記載されており、参照によりその全体が本明細書に含まれる。したがって、液体の粘度は、上述したように、微小突起部材のコーティングプロセスにおいて役割を果たす。Ameri,M.;Fan,S C.;Maa,Y F(2010);「Parathyroid hormone PTH(1-34)formulation that enables uniform coating on a novel transdermal microprojection delivery system」Pharmaceutical Research、27、pp.303-313を参照。Ameri M、Wang X、Maa Y F(2010);「Effect of irradiation on parathyroid hormone PTH(1-34)coated on a novel transdermal microprojection delivery system to produce a sterile product adhesive compatibility」Journal of Pharmaceutical Sciences、99、2123-34も参照されたい。
コロナウイルスワクチンを含むコーティング製剤は、およそ500センチポアズ(cP)未満及び3cP超、又はおよそ400cP未満及び10cP超、又はおよそ300cP未満及び50cP超、又は250cP未満及びおよそ100cP超の粘度を有する。いくつかの実施形態では、コーティング前の液体製剤の粘度は、少なくとも20cPである。他の実施形態では、粘度は、約25cP、又は約30cP、又は約35cP、又は約40cP、又は約45cP、又は約50cP、又は約55cP、又は約60cP、又は約65cP、又は約70cP、又は約75cP、又は約80cP、又は約85cP、又は約90cP、又は約95cP、又は約100cP、又は約150cP、又は約200cP、又は約300cP、又は約400cP、又は約500cPである。他の実施形態では、粘度は、約25cP超、又は約30cP超、又は約35cP超、又は約40cP超、又は約45cP超、又は約50cP超、又は約55cP超、又は約60cP超、又は約65cP超、又は約70cP超、又は約75cP超、又は約80cP超、又は約85cP超、又は約90cP超、又は約95cP超、又は約100cP超、又は約150cP超、又は約200cP超、又は約300cP超、又は約400cP超、又は約500cP未満である。好ましい実施形態では、コーティング製剤の粘度は、約80cP超及び約350cP未満である。別の好ましい実施形態では、粘度は、約100cP超及び約350cP未満である。別の好ましい実施形態では、粘度は、約100cP超及び約250cP未満である。
微小突起に適用されると、コーティング製剤は、微小突起表面から測定して、約10~約400ミクロン、又は約30~約300ミクロン、又は約100ミクロン~約175ミクロン、又は約115~約150ミクロン、又は約135ミクロンの平均厚さを有してもよい。コーティング製剤は、微小突起を覆う均一な厚さを有することが好ましいが、製剤は、製造プロセスの結果としてわずかに変化する場合がある。微小突起は、角質層を貫通するため、一般に均一にコーティングされる。いくつかの実施形態では、微小突起は、先端から基部までの距離全体にわたってコーティングされていない。代わりに、コーティングは、先端から基部まで測定して、微小突起の長さの少なくとも約10%~約80%、又は20%~約70%、又は約30%~約60%、又は約40%~約50%の微小突起の長さの部分を覆う。
液体コーティング製剤は、アレイ当たり約1mcg~約500mcgの量の活性剤の用量を送達するように、微小突起のアレイに適用される。コロナウイルスワクチンの場合、用量は、アレイ当たり(パッチ又は他の形態を介して)角質層に送達される約5mcg~約500mcg、又は約25mcg~約500mcgである。微小突起の形状及びサイズは、活性剤充填能力及び活性剤送達の有効性に大きく影響する。
一態様では、水性ワクチン製剤は、(a)ダイアフィルトレーション/濃縮、(b)凍結乾燥、及び(c)再構成によって予備製剤化される。
再構成後、水性ワクチン製剤は、米国特許出願公開第2002/0128599号明細書に記載されているように、一般に微小突起上のコーティング製剤を乾燥させることによって、微小突起上で固体コーティングへと乾燥される。コーティング製剤は、通常、水性製剤である。乾燥プロセス中、水を含むすべての揮発性物質は、ほとんど除去される。しかしながら、最終的な固体コーティングは、依然として約1%w/wの水、又は約2%w/wの水、又は約3%w/wの水、又は約4%w/wの水、又は約5%w/wの水を含有する場合がある。製剤中に存在する酸素及び/又は水の含有量は、乾燥不活性雰囲気及び/又は部分真空の使用によって減少する。微小突起アレイ上の固体コーティングにおいて、活性剤抗原は、単位用量(パッチ)当たり約500mcg未満、又は約400mcg未満、又は約300mcg未満、又は約200mcg未満、又は約100mcg未満の量で存在してもよい。賦形剤の添加により、固体コーティングの総質量は、単位用量当たり約5mg未満、又は単位用量当たり約2mg未満であってもよい。
微小突起部材は、通常、使い捨てポリマーリテーナリングに取り付けられた接着性バッキング上に存在する。このアセンブリは、パウチ又はポリマーハウジング内に個別に包装される。アセンブリに加えて、このパッケージは、少なくとも3mLの体積に相当するデッドボリュームを含む。この大きな体積(コーティングの体積と比較して)は、水の部分的なシンクとして作用する。例えば、20℃では、蒸気圧の結果として3mLの雰囲気中に存在する水の量は飽和時に約0.05mgであると思われ、これは典型的には乾燥後に固体コーティング中に存在する残留水の量である。したがって、乾燥不活性雰囲気及び/又は部分真空中での保存は、コーティングの含水量をさらに減少させ、安定性の改善をもたらすであろう。
本開示によれば、コーティングは、様々な既知の方法によって微小突起に適用することができる。例えば、コーティングは、皮膚を穿孔する微小突起部材又は微小突起の部分(例えば、先端)にのみ適用されてもよい。次いで、コーティングを乾燥させて固体コーティングを形成する。1つのそのようなコーティング方法は、浸漬コーティングを含む。浸漬コーティングは、微小突起をコーティング溶液に部分的又は全体的に浸漬することによって微小突起をコーティングする方法として説明することができる。部分浸漬技術を使用することにより、コーティングを微小突起の先端のみに限定することが可能である。
さらなるコーティング方法は、コーティングを微小突起の先端に同様に限定するローラコーティング機構を使用するローラコーティングを含む。ローラコーティング方法は、米国特許出願公開第2002/0132054号明細書に記載されている。その明細書で詳細に説明されているように、開示されたローラコーティング方法は、皮膚穿孔中に微小突起から容易に除去されない滑らかなコーティングを提供する。
本発明の範囲内で使用することができるさらなるコーティング方法は、スプレーコーティングを含む。スプレーコーティングは、コーティング組成物のエアロゾル懸濁液の形成を包含し得る。一実施形態では、約10~200ピコリットルの液滴サイズを有するエアロゾル懸濁液を微小突起上に噴霧し、次いで乾燥させる。
パターンコーティングを使用して、微小突起をコーティングすることもできる。パターンコーティングは、堆積された液体を微小突起表面上に位置決めするための分配システムを使用して適用することができる。堆積された液体の量は、好ましくは0.1~20ナノリットル/微小突起の範囲内である。好適な精密計量液体ディスペンサの例は、米国特許第5,916,524号明細書、同第5,743,960号明細書、同第5,741,554号明細書及び同第5,738,728号明細書に開示されている。
微小突起コーティング製剤又は溶液は、既知のソレノイド・バルブ・ディスペンサ、任意選択の流体動力手段、及び一般に電界の使用によって制御される位置決め手段を使用するインクジェット技術を使用して適用することもできる。印刷業界からの他の液体分配技術又は当技術分野で公知の同様の液体分配技術を、本発明のパターンコーティングを適用するために使用することができる。
本開示の一実施形態では、コロナウイルスワクチン又はインフルエンザワクチンを含む乾燥コーティング製剤の厚さは、微小突起表面から測定して約10~100ミクロン、又は約20~80ミクロン、又は約30~60ミクロン、又は約40~50ミクロンの範囲である。所望のコーティング厚さは、必要な用量、したがって用量を送達するのに必要なコーティング厚さ、シートの単位面積当たりの微小突起の密度、コーティング組成物の粘度、溶解度及び濃度、並びに選択されるコーティング方法を含むいくつかの要因に依存する。微小突起に適用されるコーティングの厚さは、コロナウイルスワクチンの安定性を最適化するように適合させることもできる。既知の製剤アジュバントもまた、それらがコーティング製剤の必要な溶解度及び粘度特性並びに乾燥コーティングの物理的完全性に悪影響を及ぼさない限り、コーティング製剤に添加することができる。
コーティングは、マイクロニードルアレイの基部又はストリートから突出するマイクロニードルに適用される。コーティングは、マイクロニードルの先端に適用され、マイクロニードル及びマイクロニードルアレイの表面を覆うことを意図していない。これは、経皮パッチ当たりの活性剤の量を減少させ、これは、経皮送達システム上の残留活性剤の危険性に関するFDA Guidanceに照らして有利であり、これは、システム内の残留活性剤の量を最小限に抑えるべきであることを示唆している。FDA Guidance for Industry,Residual Drug in Transdermal and Related Drug Delivery Systems(2011年8月)を参照のこと。出願人の戦略は、コーティングに過剰な活性剤を使用することなく、単位面積当たりの活性剤の皮膚への放出を最大化することであった。
コーティングを適用した後、コーティング製剤を様々な手段によって微小突起上に乾燥させる。コーティングされた微小突起部材は、周囲の室内条件で乾燥させてもよい。しかしながら、様々な温度及び湿度レベルを使用して、コーティング製剤を微小突起上に乾燥させることができる。さらに、コーティングされた部材は、加熱、真空下若しくは乾燥剤での保存、凍結乾燥(lyophilize)、凍結乾燥(freeze dry)されることができ、又はコーティングから残留水を除去するために使用される同様の技術であり得る。
50rpmで回転するローラドラムを利用して、活性剤製剤リザーバ(容積2mL)中で周囲温度でコーティングを行い、厚さ約50~100μmの制御された厚さの膜を製造した。コーティングプロセスに関するさらなる情報は、米国特許第6,855,372号明細書に見出すことができる。微小突起アレイを活性剤膜に浸漬し、活性剤膜を浸漬(通過)する回数によってコーティングの量を制御する。
乾燥プロセス中、制御された一貫した厚さを有する微小突起の均一なコーティングの形成に関連する問題がある場合がある。「液だれ」又は「涙滴」形成と呼ばれる経皮パッチコーティングの1つの一般的な問題が、コーティングが乾燥しており、コーティングが「涙滴」形状の微小突起の端部に蓄積する場合に発生する。この涙滴形状は、マイクロニードルの鋭い端部を鈍らせ得、浸透の有効性及び均一性に影響を与える可能性がある。微小突起上の製剤の不均一な層は、不均一な、時には不十分な活性剤送達をもたらす。さらに、乾燥プロセスにおける問題は、製剤コーティングにおける品質管理の問題を引き起こす。
液体コーティング製剤は、液体担体、好ましくは水、より好ましくは脱イオン水中に、約10~約1000mcg HA/mL、又は約25~約500mcg HA/mLの量、又は0.001%w/w~約30%w/w、又は約0.01%w/w~約25%w/w、又は約0.1%w/w~約10%w/wの量のコロナウイルスワクチン/抗原又はインフルエンザワクチン/抗原と、約5%w/w~約25%w/w、好ましくは約10%w/w~約20%w/w、より好ましくは約15%w/wの量の酒石酸とを含む。これらの液体コーティング製剤では、約150cP~約350cP、好ましくは約200cP~約300cP、より好ましくは約250センチポアズの粘度、及び約50mNm-1~約72mNm-1、好ましくは約55mNm-1~約65mNm-1、より好ましくは約62.5mNm-1の表面張力を維持することが、液だれに耐性である。液体コーティング製剤中への微小突起の各浸漬を同時に可能にして十分な体積の液体コーティング製剤をとり、それによって最小数の浸漬で所望の活性剤用量を達成しながら、涙滴形成を回避することができる。コーティング溶液の粘度及び表面張力が十分に高ければ、コーティングされた液体が浸漬後及び乾燥前に急速に滴下して戻ったり、涙滴形状を形成したりすることはない。
4.包装及び滅菌
乾燥コーティングされた製剤の改善された物理的安定性は、治療剤自体の貯蔵寿命又は有効期間の増加の利益を提供するだけでなく、本発明の組成物並びに製剤化及び送達方法に従って安定化されると、治療剤は、より広範囲の可能な製剤において、より多様な治療剤送達手段と共に有用になるという点で有効性を高める。
本開示は、酸素及び/又は水による劣化が、乾燥不活性雰囲気中での活性剤製剤の製造及び/又は包装によって最小化及び/又は制御される活性剤製剤を含む。製剤は、乾燥剤の存在下で乾燥不活性雰囲気中に、任意選択で箔層を含むチャンバ又はパッケージ中に含まれてもよい。
乾燥剤は、当業者に既知の任意のものであり得る。いくつかの一般的な乾燥剤としては、モレキュラーシーブ、酸化カルシウム、粘土乾燥剤、硫酸カルシウム及びシリカゲルが挙げられるが、これらに限定されない。乾燥剤は、箔層を含むパッケージ中に不活性雰囲気の存在下で生物学的活性剤含有製剤と共に配置することができるものであってもよい。
別の態様では、活性剤製剤は、製剤が微小突起アレイ送達デバイス上にコーティングされた後、箔層を含むチャンバ内に包装される。この実施形態では、乾燥剤がチャンバ内に収容され、好ましくは箔層を含むチャンバ蓋に取り付けられ、送達デバイスを含む箔チャンバが箔蓋によって密封される前に、チャンバは乾燥窒素若しくはアルゴン又は貴ガスなどの他の不活性ガスでパージされる。乾燥不活性雰囲気を生成するために、任意の好適な不活性ガスが本明細書で使用され得る。
一実施形態では、皮内送達に好適なコロナウイルスワクチンの組成物並びに製剤化及び送達方法は、パッチアセンブリを利用する。このパッチアセンブリは、乾燥不活性雰囲気中及び乾燥剤の存在下で製造及び/又は包装される。一実施形態では、パッチアセンブリは、乾燥不活性雰囲気中で製造され、かつ/又は箔層を含み、乾燥不活性雰囲気及び乾燥剤を有するチャンバ内に包装される。一実施形態では、パッチアセンブリは、部分真空中で製造及び/又は包装される。一実施形態では、パッチアセンブリは、乾燥不活性雰囲気及び部分真空中で製造及び/又は包装される。一実施形態では、パッチアセンブリは、部分真空下の乾燥不活性雰囲気中で製造され、かつ/又は箔層を含み、乾燥不活性雰囲気、部分真空及び乾燥剤を有するチャンバ内に包装される。
一般に、本発明の記載された実施形態では、不活性雰囲気は、本質的にゼロの含水量を有するべきである。例えば、含水量が本質的にゼロの窒素ガス(乾燥窒素ガス)は、液体窒素の電気的に制御された沸騰によって調製してもよい。パージシステムを使用して、水分又は酸素含有量を低減することもできる。部分真空の範囲は、約0.01~約0.3気圧である。
一実施形態では、マイクロニードル送達デバイスを使用した皮内送達に好適なコロナウイルスワクチンの組成物並びに製剤化及び送達方法は、乾燥不活性雰囲気、好ましくは窒素又はアルゴン中で、乾燥剤又は酸素吸収剤の存在下で製造及び/又は包装される。
一実施形態では、マイクロニードル送達デバイスを使用した皮内送達に好適なワクチンの組成物並びに製剤化及び送達方法は、乾燥不活性雰囲気、好ましくは窒素、及び乾燥剤又は酸素吸収剤を有する箔ライニングチャンバ内で製造及び/又は包装される。
一実施形態では、マイクロニードル送達デバイスを使用した皮内送達に好適なワクチンの組成物並びに製剤化及び送達方法は、部分真空中で製造及び/又は包装される。
一実施形態では、マイクロニードル送達デバイスを使用した皮内送達に好適なワクチンの組成物並びに製剤化及び送達方法は、乾燥不活性雰囲気、好ましくは窒素、部分真空、及び乾燥剤又は酸素吸収剤を有する箔ライニングチャンバ内で製造及び/又は包装される。
この実施形態の一態様では、ワクチンは、生体適合性担体をさらに含む。別の実施形態では、ワクチンを送達するように適合された皮内送達システムであって、(a)患者の角質層を穿孔するように適合された複数の微小突起を含む微小突起部材、(b)コロナウイルスワクチンからなるヒドロゲル製剤であって、ヒドロゲル製剤は微小突起部材と連通している、ヒドロゲル製剤、及び(c)不活性ガスでパージされ、微小突起部材の周りに密封された環境条件を制御するように適合された包装であって、密封された包装は、微小突起部材を滅菌するために放射線に曝露されている、包装を含む、システムがある。
別の実施形態では、ワクチンを送達するように適合された皮内送達システムであって、(a)患者の角質層を穿孔するように適合された複数の微小突起を含む微小突起部材、(b)微小突起部材に近接して配置された固体膜であって、固体膜は、ワクチン、ポリマー材料、可塑剤、界面活性剤及び揮発性溶媒を含む液体製剤を流延することによって作製される、固体膜、並びに(c)不活性ガスでパージされ、微小突起部材の周りに密封された環境条件を制御するように適合された包装であって、密封された包装は、微小突起部材を滅菌するために放射線に曝露されている、包装を含む、システムがある。
本開示はまた、ワクチンを送達するように適合されたパッチアセンブリを最終的に滅菌する方法であって、(a)微小突起部材上に配置されたコロナウイルスワクチンを含む生体適合性コーティングを有する患者の角質層を穿孔するように適合された複数の微小突起を有する微小突起部材を提供する工程、並びに(b)微小突起部材を、ガンマ線及び電子ビームからなる群から選択される放射線に曝露する工程であって、放射線は所望の無菌性保証レベルに達するのに十分である、工程を含む、方法である。そのような無菌性保証レベルは、10-6又は10-5であってもよい。本方法は、不活性ガスでパージされた包装内の乾燥剤で微小突起部材を密封すること、並びに包装された微小突起部材をガンマ線及び電子ビーム放射線からなる群から選択される放射線に曝露することであって、放射線は所望の無菌性保証レベルに達するのに十分である、曝露することをさらに含んでもよい。
この実施形態の一態様では、本方法は、パッチアセンブリを形成するために、接着性バッキングに取り付けられた微小突起部材からなるパッチを予備乾燥リテーナリング上に取り付け、続いて、包装内に微小突起部材を密封する工程をさらに含む。この実施形態の一態様では、システムは、パッチアセンブリで包装内に密封された乾燥剤をさらに含み、かつ/又は包装は窒素でパージされ、かつ/又は包装は箔層からなるパウチを含む。好ましくは、箔層はアルミニウムを含む。
微小突起部材を放射線に曝露する工程は、およそ-78.5~25℃で行われてもよく、又は部材は、周囲温度で放射線に曝露されてもよい。放射線は、およそ5~50kGy、又はおよそ10~30kGy、又はおよそ15~25kGy、又はおよそ21kGy、又はおよそ7kGyの範囲であってもよい。この実施形態の一態様では、放射線は、少なくともおよそ3.0kGy/hrの速度で微小突起部材に送達される。
一実施形態では、ワクチンでコーティングされたマイクロニードルは、およそ7~30kGyの範囲の線量の放射線に曝露される。より好ましくは、10-5~10-6の無菌性保証レベルに対して15~30kGyの範囲である。
本開示は、本開示のマイクロニードル部材上にコーティングされた場合、上記のように放射線に曝露された後、室温で少なくとも6ヶ月間、又は少なくとも9ヶ月間、又は少なくとも12ヶ月間、又は少なくとも18ヶ月間、又は少なくとも24ヶ月間安定であるワクチン製剤に関する。
特定の実施形態では、マイクロニードル上の乾燥ワクチン製剤は、少なくとも6ヶ月間、初期純度のおよそ100%、又は初期純度のおよそ99%、又は初期純度のおよそ98%、又は初期純度のおよそ97%、又は初期純度のおよそ96%、又は初期純度のおよそ95%、又は初期純度のおよそ90%を保持する。他の態様では、そのような純度は、包装後少なくとも9ヶ月間、又は少なくとも12ヶ月間、又は少なくとも18ヶ月間、又は少なくとも24ヶ月間保持される。
一実施形態では、ワクチンを送達するように適合された皮内送達デバイス用のパッチアセンブリを製造する方法は、マイクロニードル部材上に配置された生体適合性コーティングを有する患者の角質層を貫通又は穿孔するように適合された複数のマイクロニードルを有するマイクロニードル部材を提供する工程であって、コーティングは、その上に配置されたワクチン、二糖、及び酒石酸、クエン酸、リンゴ酸又はマレイン酸を有するコーティング製剤から形成される、工程と、窒素でパージされ、マイクロニードルを取り囲む環境条件を制御するように適合された包装内の乾燥剤でマイクロニードル部材を密封し、マイクロニードル部材をガンマ線、電子ビーム及びX線からなる群から選択される放射線に曝露する工程であって、放射線は所望の無菌性保証レベルに達するのに十分である、工程とを含む。
本発明の別の実施形態によれば、安定な生物学的活性剤製剤を送達する方法は、(i)複数の微小突起を有する微小突起部材を提供する工程、(ii)生物学的活性剤の安定化された製剤を提供する工程、(iii)安定化された生物学的活性剤の製剤を含む生体適合性コーティング製剤を形成する工程、(iv)生体適合性コーティング製剤で微小突起部材をコーティングして生体適合性コーティングを形成する工程、(v)乾燥によって生体適合性コーティングを安定化する工程、及び(vi)コーティングされた微小突起部材を対象の皮膚に適用する工程を含む。
さらに、剤の最適な安定性及び有効期間は、固体で実質的に乾燥した生体適合性コーティングによって達成される。しかしながら、コーティング溶解及び剤放出の動態は、いくつかの要因に応じてかなり変化し得る。保存安定性であることに加えて、生体適合性コーティングは、治療剤の所望の放出を可能にすべきであることが理解されよう。
コロナウイルスワクチンを送達するように適合された経皮デバイスを最終的に滅菌する方法であって、微小突起部材上に配置された生体適合性コーティングを有する患者の角質層を貫通又は穿孔するように適合された複数の微小突起を有する微小突起部材を提供する工程であって、コーティングは、その上に配置されたワクチンを有するコーティング製剤から形成される、工程、並びに微小突起部材を、ガンマ線及び電子ビームからなる群から選択される放射線に曝露する工程であって、放射線は所望の無菌性保証レベルに達するのに十分である、工程を含む、方法が本明細書に包含される。本方法のさらなる態様は、微小突起部材を取り囲む環境条件を制御するように適合された包装内に微小突起部材を密封するさらなる工程を含む。一態様では、包装は箔パウチを含む。本方法のさらなる態様は、包装内に乾燥剤を密封するさらなる工程を含む。さらに、本方法は、包装内に微小突起部材を密封する前に、予備乾燥リテーナリング上に微小突起部材を取り付ける工程を含む。本方法のさらなる態様は、包装を密封する前に不活性ガスで包装をパージする工程を含む。一実施形態では、不活性ガスは窒素を含む。
B.治療方法
本発明の活性剤とデバイスとの組合せは、COVID-19、他のコロナウイルス及びインフルエンザに対するワクチン接種を含む様々な疾患及び状態を治療するために使用することができる。患者は、本明細書の他の箇所に記載されているアプリケータデバイスを使用することによって、約5mcg~約500mcgのワクチン/抗原を含むワクチンでコーティングされたマイクロアレイパッチを自己投与してもよい。パッチは、上腕、手首の近く、大腿、胸又は背中など、一般に平坦で過剰な毛髪がない皮膚の選択された領域に適用される。パッチ装着時間は、約1分~約30分、又は約5分~約20分、又は約10分で変化してもよい。その後、患者は、パッチを取り外してごみに捨てる。
患者は、診療所、薬局から、郵便を通じて、又は雇用者からパッチを受け取ってもよい。パッチは、冷蔵を必要とせず、単回使用用であり、鋭利なバイオコンテナなどを必要としない使い捨てである。
一実施形態では、本開示のワクチンパッチが患者の集団に投与されると、統計的に有意な数のそのような患者が首尾よくワクチン接種される。他の実施形態では、そのような患者の少なくとも10%が血清保護され、又はそのような患者の少なくとも20%、若しくは少なくとも30%、若しくは少なくとも40%、若しくは少なくとも50%、若しくは少なくとも60%、若しくは少なくとも70%、若しくは少なくとも80%、若しくは少なくとも90%が血清保護される。
他の態様では、本明細書に記載のワクチンでコーティングされたパッチは、IM又はSC注射ワクチン対応物と比較して用量を節約する。例えば、本明細書のパッチは、それらのIM又はSC注射対応物よりも少なくとも5%、又は少なくとも10%、又は少なくとも20%、又は少なくとも30%少ないワクチン/抗原を必要とする。
実施例1-経皮微小突起パッチ上の安定な三価インフルエンザワクチンのコーティングを可能にする製剤化アプローチ
以下に記載されるように、三価インフルエンザワクチン経皮パッチは、三価インフルエンザワクチン筋肉内(IM)注射製剤を超える3つの重要な利点、(1)保存剤を含まない、(2)室温保存、及び(3)用量節約を伴って首尾よく開発された。より重要なことに、このパッチシステムは、前臨床試験及び臨床試験において安定かつ有効であることが証明された。
各株の表面抗原として15mcgの赤血球凝集素(HA)を有するインフルエンザウイルスの2つのA型株及び1つのB型株を特徴とする三価インフルエンザワクチンは、不活化注射形態(Fluzone(登録商標)、Sanofi Pasteur;Fluvirin(登録商標)、Novartis Vaccine;Fluvarix(登録商標)及びFluLaval(商標)GlaxoSmithKline;Afluria(登録商標)、CSL)及び弱毒生鼻腔スプレー(FluMist(登録商標)、Medimmune)の2つの製剤で現在米国で市販されている。三価注射形態は、インフルエンザウイルスの3つの個々の一価株から調製された滅菌懸濁液として入手可能であり、従来の針及びシリンジによって投与され、これは、望ましくない痛みを引き起こし、鋭利物に関連する一過性の安全上の問題に起因して費用を増加させる可能性がある。さらに、液体注射製品は、製造プロセス全体を通して高価なコールドチェーン保存を必要とする冷蔵条件下で保存しなければならない。無菌性を目的として、注射製剤は、複数回投与バイアル中に保存剤として水銀系チメロサールを含有してもよい。FluMist(登録商標)鼻腔スプレーは、針/シリンジ注射の代替物を提供するが、依然として2~8℃でのコールドチェーン保存を必要とする液体製剤を特徴とする。全体として、保存剤を含まない剤形でのコールドチェーンフリー保存及び追加の安全性においてさらなる費用便益を提供することができる無針インフルエンザワクチン免疫化代替物を求める強いニーズがある。
皮膚は、豊富な抗原提示細胞(APC)、生存表皮中のランゲルハンス細胞(LC)、及び真皮中の樹状細胞を含む。APCは、皮膚における抗原のピックアップ、流入領域リンパ節への移動、並びにCD8+及びCD4+Tヘルパー細胞へのプロセシングされた抗原の提示において重要な役割を果たす。したがって、本開示によって今や理解され得るように、皮膚経路を介したワクチン接種、すなわち経皮免疫化は、用量節約を可能にし、患者の安全性及び費用節約にさらなる利益を追加する。皮膚免疫系の有効性は、標準的な筋肉内用量の1/5~1/10を使用する生弱毒化天然痘ワクチン及び狂犬病ワクチンの皮内ワクチン接種によって皮膚を標的としたワクチン接種戦略の成功及び安全性を担う。
上記のすべての必要性により、三価インフルエンザワクチンのための新規な経皮微小突起パッチ送達システムが開発された。この経皮微小突起送達システムは、痛み又は不便を伴わずに表面皮膚バリアを貫通することができる。小さな薬物コーティングされたパッチは、面積が5cmであり、パッチリテーナリング内に着座している。パッチは、手持ち式の再使用可能なアプリケータで適用される(図1a)。パッチは、接着性バッキングの中心に取り付けられたチタン微小突起アレイ(図1bでは2cm当たり約1,300個の微小突起)を含む。ワクチン製剤は、各微小突起の先端にコーティングされる。パッチ及びリテーナリングは、皮膚に押し付けられる。薬物コーティングされた微小突起は、表層皮膚バリア層を通して表皮/真皮層(50~150マイクロメートルの深さ)まで貫通し、そこでワクチン製剤は急速に溶解して皮膚に放出される。
高いワクチン濃度及び他の物理的特性(後述)を必要とする新規コーティングプロセスを使用して、ワクチンバルク、すなわち現在の液体注射製品を再製剤化し、微小突起アレイ上に配置した。インフルエンザウイルスの一価株は、複雑なワクチン製造プロセスの結果として複雑な製剤を有する低濃度液体である。インフルエンザウイルスの各株は、発育鶏卵の尿膜腔液中で増殖される。尿膜腔液から、インフルエンザウイルス粒子を濃縮し、精製し、洗剤(Triton X-100)によって破壊し、次いでホルムアルデヒド及び/又はデオキシコール酸ナトリウムの添加によって不活化して、3つの株のそれぞれについて「スプリットウイルス」又は「スプリットビリオン」を生成する。不活化株を懸濁し、三価溶液に合わせ、これは、製造及び出荷プロセス全体を通して冷蔵条件下で保存しなければならない。チメロサール又は2-フェノキシエタノール(2-PE)は、通常、複数回投与バイアルに保存剤として添加される。したがって、ワクチンバルクは、不溶性粒子(水不溶性脂質、脂質-タンパク質複合体、及び凝集タンパク質)、Triton X-100、低分子量化合物及び緩衝液を含有してもよい。
この実施例1は、ワクチン濃度を200~500倍増加させ、パッチ送達システムを製造するための重要なコーティングパラメータを定義することができる予備製剤化及び製剤化プロセスを記載する。保存剤を含まない三価インフルエンザワクチンでコーティングされたパッチを長期安定性について評価し、前臨床試験及び第I相ヒト臨床試験で試験して、筋肉内投与経路に勝るコールドチェーンフリー室温保存及び用量節約免疫原性性能の実現可能性を実証した。
材料及び方法
材料
一価スプリットビリオンインフルエンザウイルス株抽出物を卵インキュベーションから誘導した。各一価株溶液を、方法の項で以下に記載されるように使用前にさらに処理した。スクロース(ロット番号27412A、高純度低エンドトキシングレード)及びトレハロース(ロット番号26554A、高純度低エンドトキシングレード)を、Ferro-Pfanstiehl(オハイオ州クリーブランド)から購入し、受領した状態のまま使用した。界面活性剤をいくつかの供給業者から購入し、受領した状態のまま使用した-Tween80、ロット番号58217、(ICN Biomedicals Inc.、オハイオ州オーロラ);Zwittergent3-14、ロット番号B36399(Calbiochem、カリフォルニア州サンディエゴ);Triton X100、ロット番号QC2755S4D1(89521)、(Union Carbide Corporation、テキサス州ヒューストン);Pluronic F68、ロット番号16H1147、(Sigma、ミズーリ州セントルイス)。
パッチ送達システムは、合計1,300個の微小突起を有する微小突起の2cmチタンアレイ(Kemac、カリフォルニア州アズサ)からなり、微小突起の長さは225マイクロメートルであり、微小突起ヘッドの長さ及び幅はそれぞれ100マイクロメートル及び115マイクロメートルであり、先端角は60度である(図1dを参照)。送達システムはまた、ポリカーボネートリング(Jatco、カリフォルニア州ユニオンシティ)、5cm接着性パッチ(Medical Tape1523、3M、ミネソタ州セント・ポール)、及びアルミニウム箔パウチ(Mangar、ペンシルバニア州ニューブリテン)からなる。
方法
レオメトリー
濃縮されたコーティング製剤の粘度は、円錐平板粘度計(Brookfield Eng.Lab.、CAP2000)を使用して決定した。各測定は、70μLの液体試料を必要とした。粘度は、各液体試料についていくつかの剪断速度及びいくつかの温度で決定した。
接触角測定
コーティング製剤とチタン基材との間の接触角は、接触角計(Tantec Inc.、イリノイ州シャンバーグ)を使用して、金属チタンシート上に5μLの液滴を配置することによる半角測定法に基づいて決定した。
走査型電子顕微鏡法(SEM)
SEMを使用して、微小突起上のコーティングの形態及び配置を決定した。コーティングされたチタンアレイを、炭素両面テープでアルミニウムスタッドに接着し、SEM(日立、S-2460N)の真空チャンバ内に配置した。
一元放射免疫拡散(SRID)
出発物質、コーティング溶液及びコーティングされたアレイ中のインフルエンザHA含有量の定量化のために、一元放射免疫拡散アッセイを適合させた。この受動拡散法では、洗剤で処理した後、試料溶液及び参照ワクチンがウェルから放射状に拡散し、ゲルマトリックス中に均一に分散している特異的抗体と反応する。抗原-抗体相互作用は、抗原(HA)ウェルの周りの沈降の明確な輪によって表される。輪の直径は、平衡に達するまで増加し続ける。平衡条件下では、沈降輪の直径はHAの濃度に比例する。完全拡散後、各試料溶液及び参照ワクチンについて沈降円を測定する。試料中の赤血球凝集素含有量は、Influenza Reference Centerによって提供された国際基準に対して決定され、μg/mLで較正される。
酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)
ヘアレスモルモット(HGP)の血清から抗インフルエンザ特異的抗体の存在を検出するための間接ELISA法を開発した。以前に、オバルブミンでコーティングされたアレイで免疫したHGPにおける抗オバルブミン抗体価を決定するための間接ELISAを開発した。インフルエンザワクチンでコーティングされたアレイについて、インフルエンザワクチンで免疫したHGPからの血清のエンドポイント力価を特異的に決定するための同様のアッセイを開発した。エンドポイント力価は、非免疫化対照HGP血清(n=10)の平均ODを3標準偏差上回るODを有する免疫化HGP血清試料の、非線形回帰によって決定される逆希釈として定義される。
ビシンコニン酸アッセイ(BCA)
原材料、コーティング溶液及びコーティングされたアレイのタンパク質含有量を、Pierce(イリノイ州ロックフォード)から購入したキットを使用してBCAアッセイによって測定した。一連の段階希釈標準液をワクチン原材料から直接調製した。未知の試料を、アッセイの標準的な作業範囲内にある濃度まで水で希釈した。標準及び試料を96ウェルプレートにロードし、プレートリーダ(Molecular Devices、SpectraMax250)に入れ、30秒間振盪し、37℃で30分間インキュベートした。吸光度を562nmで測定し、標準の平均値を以下の形式の4パラメータ式に当てはめた。
Figure 2023522699000006
ローリーアッセイ
いくつかの試料の総タンパク質含有量を、タンパク質標準としてウシ血清アルブミン(BSA)を使用する改変ローリーアッセイによって測定した。ローリー法は、タンパク質と銅イオンとの反応の結果として形成される青色錯体の形成、及びその後のタンパク質-銅錯体によるフォリン-チオカルトー試薬の還元に基づく。青色の強度は、試料中に存在するタンパク質の量に比例し、750nmで分光光度的に測定される。
SDS-PAGE/ウエスタンブロット
インフルエンザワクチンHAタンパク質試料を、InvitrogenプレキャストNuPAGEゲル上でSDS-PAGEによって分離した。XCell IIブロットモジュール「Novex Western Transfer Apparatus」(Invitrogen)を使用するための説明書に従って、分離したタンパク質をPVDF膜にブロットした。ブロットしたPVDF膜を、希釈した抗HA一次抗体又は抗HA抗血清でプローブした。非特異的結合部位を、5%ミルク+0.1%Tween20を含むPBSによってブロッキングした。ウエスタンブロットを、HRPコンジュゲート化二次抗体及びAmersham PharmaciaからのECL検出試薬を使用することによって可視化した。
Triton-X100に対するアッセイ
界面活性剤Triton-X100の濃度を、比色アッセイ及びHPLC法の2つの方法によって液体試料中で測定した。比色アッセイは、青色沈殿物を形成するコバルトチオシアン酸アンモニウムとの錯体の形成を含んでいた。次いで、沈殿物を二塩化エチレン中に抽出し、吸光度を分光光度的に測定した。HPLC法は、C4カラム及び直線アセトニトリル勾配を用いる逆相法であった。
タンジェンシャルフロー濾過(TFF)
2つの種類のTFFシステム、すなわち、Pellicon XL、再生セルロース膜(Millipore、50cm、30kD MWCO)を備えた実験室規模のTFFシステム(Millipore、Labscale)及び0.1ft2の30kD MWCOポリエーテルスルホンPES膜を備えたより大規模なTFFシステム(Pall、Centremate(商標))を、スプリットビリオンインフルエンザ抽出物のダイアフィルトレーション及び濃縮に使用した。タンジェンシャルフロー濾過を第1の工程として使用して、一価株のHA含有量を濃縮する方法として塩及び他の低分子量種を除去した。ダイアフィルトレーションによる低分子量材料の除去のために注射用滅菌水を使用した。一価バルク中に存在するTriton X-100などの界面活性剤を効果的に除去するために、さらなるTFF洗浄工程を使用した。この洗浄工程は、1/4~10ダイアボリュームの注射用滅菌水を使用して濃縮する前のダイアフィルトレーションからなっていた。ダイアフィルトレーション及び洗浄の後、各ワクチン溶液の体積を元の体積の1/20~1/50に減少させ、HA濃度を5~10mg HA/mLに増加させた。これは、ワクチンをTFF濃縮によって効果的に濃縮することができる濃度限界であった。溶液中の不溶性粒子からの膜のファウリングによって引き起こされた可能性が最も高い背圧の増加のために、TFFによる一価株のさらなる濃縮は不可能であった(考察の項を参照)。TFFシステムからのHA濃縮物の回収率は高く、典型的には、濃縮前後のBCAタンパク質アッセイ及びSRID効力によって測定して95%超であった。TFF濃縮の後、一価株を収集し、製剤化し、次いで、HA濃度をさらに増加させる手段として凍結乾燥した。
凍結乾燥
前臨床試験のために、TFF濃縮後、一価株を20mLガラスバイアルに充填し、液体窒素で急速凍結し、マニホールド式凍結乾燥機(Virtis、25EL Freezemobile)に置いた。チャンバ圧力が定常状態(約50mTorr)に達するまで、溶液を2~5日間凍結乾燥させた。第I相材料の臨床製造のために、5mLの製剤化されたTFF濃縮物を20mLガラスバイアルに充填し、Stoppering Tray Dryer(Labconco、FreezeZone)で凍結乾燥した。再構成された凍結乾燥粉末のBCAタンパク質アッセイ及びSRIDによって決定されたように、凍結乾燥後の回収率も高かった(90%超)。
HA純度決定
一価バルクワクチンのHA純度を、総タンパク質及び溶液中に存在する全固体に対して決定した。一価バルクの総タンパク質を、ウシ血清アルブミンを参照標準として使用したローリーアッセイを用いて測定した。次いで、試料の既知のHA含有量を測定した総タンパク質で割ることによって、総タンパク質に対するHA純度%を計算した。全固体に対するHA純度%は、一価バルクの一部を蒸発乾固させて、溶液中に存在する固体の総重量を決定し、この値を試料の既知のHA含有量に分割することによって決定した。
TFFによる精製後の固体中のHA純度%を推定するために、一価バルクの10mLアリコートを濾過装置(Centricon、Millipore)でおよそ10倍濃縮した。次いで、濃縮物を洗浄し、2つの10mL容量の精製水で再濃縮して、原材料中に存在する残留プロセス塩及び他の低分子量材料を除去した。次いで、濃縮物を蒸発乾固し、残りの固体の乾燥重量を試料中に存在するHAの量に分割した。
凍結乾燥粉末の一部を秤量し、精製水で再構成した後にSRIDによって分析することによって、凍結乾燥プロセス後にHA純度%を再評価した。
微小突起アレイ及びコーティング
チタン微小突起アレイを、光/化学エッチングによって製造し、制御された製造プロセスを使用して形成した。例えば、欧州特許第0914178(B1)号明細書を参照されたい。
50rpmで回転するローラドラムを利用して、薬物製剤リザーバ(容積2mL)中で周囲温度でコーティングを行い、厚さ約100マイクロメートルの制御された厚さの薄膜を製造した。微小突起アレイを薄膜に浸漬し、薬物膜を浸漬(通過)する回数によってコーティングの量を制御する。各浸漬間の時間はおよそ5秒であり、これは周囲条件下でコーティングされた液体製剤を乾燥させるのに十分である。
結果と考察
コーティングの製剤パラメータ
この新規な経皮微小突起パッチシステムは、微小突起アレイ上にコーティングされた固体製剤を特徴とした。したがって、コーティングプロセスを可能にする液体製剤の開発は、安定した性能向上固体製剤の前駆体であった。
液体製剤は、主に3つの重要なコーティング製剤パラメータ、すなわちワクチン濃度、粘度及び表面活性を満たすように調製された。より具体的には、液体製剤への微小突起の各浸漬が乾燥のために十分な体積の液体をとることができることを確実にするために有利である(必ずしも必要ではないが)、高いワクチン濃度及び十分に高い粘度を有する液体製剤であり、これは、最小数の浸漬で所望のワクチン用量を達成することができる。コーティング溶液の粘度は、コーティングされた液体が浸漬後であるが乾燥前に急速に滴下して戻ることがないように十分に高くなければならない。また、重要なのは、薬物コーティングリザーバ中の液体製剤のニュートン挙動、すなわち剪断速度に対する一定の粘度であり、これは、コーティングプロセスがローラドラムとの一定レベルの剪断を含むためである。表面活性は、接触角測定によって定量化することができる、液体製剤とチタン表面との間の親水性界面を確立するための態様である。好ましい接触角は、30度~60度(水とチタン表面との接触角70度~80度を基準とする)である。ワクチン製剤がチタン表面に対して十分に親水性でない場合、界面活性剤がしばしば必要とされる。
さらに、ワクチン(抗原)純度を高めること、すなわち製剤中の非免疫原性寄与化合物の量を減少させることは、製剤が限られた表面積を有する微小突起ヘッドでコーティングされるので、重要な考慮事項である。微小突起ヘッドに堆積された過剰な製剤は、微小突起を鈍らせて皮膚貫通を妨げる場合がある。上記の設計変数は、以下に記載されるような予備製剤化/製剤化アプローチを対象とした。
一価バルク
各バルク溶液は、受領した状態のままでは濁っており、おそらく水不溶性脂質、脂質-タンパク質複合体及び凝集タンパク質による不溶性粒子の存在を示唆している。バルク溶液中の赤血球凝集素抗原(HA)濃度は約0.1~0.2mg/mLと低く、HA純度は様々であり、典型的には全固体(低分子量溶質、タンパク質及び不溶性粒子)の20±5%及び総タンパク質含有量(HA及び非HAタンパク質)の40±10%の範囲であった。微小突起アレイ上のHA抗原をコーティングするために、バルク溶液を再製剤化してHA濃度及び純度を高める必要がある。非HAタンパク質及び粒子は免疫学的応答に寄与する可能性があるので、緩衝液、塩及び界面活性剤、例えばTriton-X100(ワクチン製造中にウイルス粒子を分割するために使用される)を含む低分子量材料を除去することによってのみHA純度を改善することができる。低分子量種の除去は、ダイアフィルトレーションによって達成した。
タンジェンシャルフロー濾過(TFF)プロセス
30kDの膜を含むTFFシステムでは、一価バルクを最初に濃縮して、その体積を元の体積の1/20~1/50に減少させ、10ダイアボリュームの10mMリン酸緩衝液で洗浄した。しかしながら、このプロセスは、HA純度%の15%未満のわずかな増加、及びTriton-X100(625ダルトンのMW)の濃度の有意な増加をもたらした。より高分子量のTriton-X100ミセルの形成は、このプロセスがTriton-X100を効果的に除去できなかった理由である。
Triton-X100は、0.13~0.56mg/mLの臨界ミセル濃度(CMC)で分子量8万ダルトンのミセルを形成することが知られている。一価バルクは、典型的には0.1~0.3mg/mLのTriton-X100を含有し、これはHA濃度よりも高く、既にそのCMCに近いか又はそれに達している。したがって、初期濃縮工程は、Triton-X100をそのCMCをはるかに超えて15mg/mLの高濃度に到達させ、30kDの膜を通過するには大きすぎるTriton-X100ミセルを形成した。
したがって、濃縮前に追加の洗浄工程を加えるようにプロセスを変更した。このプロセスは、ダイアフィルトレーション中に比較的低濃度のTriton-X100を維持し、一価バルクからの界面活性剤の効果的な還元を可能にした。Triton-X100の約95%は、2ダイアボリュームの蒸留水の後に除去できることが分かった。残念なことに、この低レベルの界面活性剤は、HAの回収率を5~10%悪化させた。HA回収率を低下させる機構は明らかではないが、おそらくタンパク質の溶解度の低下及び/又はダイアフィルトレーション膜の疎水性の増加に起因する可能性がある。Triton-X100に対するHAの最適な重量比は2:1~5:1の範囲にあると決定され、これはHAの回収率を著しく損なうことなく過剰なTriton-X100の大部分を排除した。最初の洗浄後、洗浄した溶液を次いで、その元の体積の1/20~1/50まで濃縮し、HA濃度を5~10mg HA/mLまで増加させた。得られたTFF濃縮物の固体組成物は、(10~15mg HA/mL濃度)で45±5%のHAを含有した。15±5%のTriton-X100(3~5mg/mL)、並びに残留非HAタンパク質及び不溶性粒子は、白濁溶液の残りの重量分率40±10%を構成する。
この溶液は、コーティングのための40~50mg/mLの目標HA濃度に達しなかった。残念なことに、TFFシステム中のさらなる濃度は粘度限界に達し、この時点で前後圧が非常に高くなり、膜の完全性を危険にさらす可能性がある。したがって、TFF濃縮物の凍結乾燥及びその後の所望のHA濃度への再構成によって、さらなる濃縮が達成された。
凍結乾燥プロセス
凍結乾燥の前に、スクロース又はトレハロースを凍結乾燥保護剤としてTFF濃縮物に添加した(1:1の凍結乾燥保護剤:HA重量比)。これらの二つの二糖安定剤の効果を、製剤を10サイクルの凍結/解凍(液体窒素によって凍結し、室温で直ちに解凍)に供することによって評価した。ELISAによって決定されるように、10サイクルの凍結/解凍の前後のHA効力は変化せず(データは示さず)、トレハロース又はスクロースによる抗原安定性の保存が示唆された。タンパク質に長期安定性を提供するために固体バイオ医薬製剤では通常、より高い重量比の凍結乾燥保護剤が必要とされるが、コーティングされた形態を微小突起の先端でサイズがコンパクトに保つために製剤の全固体含有量を制限することがより重要であり、これは微小突起先端の貫通効率にとって重要である。その後、凍結乾燥のために、スクロースをTFF凍結濃縮物に1:1のスクロース:HA重量比で添加した。得られた凍結乾燥ワクチンの固体組成物は、30+5%のHA、30+5%のスクロース、10+5%のTriton-X100、並びに30+15%の残りの画分を構成する非HA関連タンパク質及び固体粒子を含有していた。
コーティング製剤
液体コーティング溶液を調製するために、凍結乾燥した一価製剤のそれぞれを、元の凍結乾燥前の体積の1/4~1/5の注射用滅菌水で再構成して、HA濃度を40~50mg HA/mLにさらに増加させた。これにより、再構成ワクチンの微細懸濁液が得られた。次いで、再構成された一価溶液のアリコートをそれらのSRID効力値に基づいて1:1:1のHA比で組み合わせて三価コーティング溶液を生成し、各株は約14~15mg HA/mLの濃度で存在した。ここでも、三価液体コーティング製剤は、3つの重要なコーティング製剤パラメータ、すなわちワクチン濃度、粘度及び表面活性を満たすように調製された。
ワクチン濃度
コーティング溶液のワクチン濃度は、各パッチを製造するのに必要な製造時間を最小限にするために努力して目標用量を達成するのに必要なコーティング通過の回数、すなわち回転ドラム上の膜への浸漬の回数を最小限にするために、可能な限り高くなるように配合された。しかしながら、コーティング溶液の粘度及び安定性は、コーティングに使用されるワクチン濃度を制限した。この実施例では、60mgHA/mL以上のHA濃度を有するコーティング溶液は、粘度が高すぎてドラム上に連続薄膜を形成できないことが分かり、コータ内の連続剪断下で経時的に凝固した。このため、HAの濃度は40~50mg総HA/mLの間で維持した。以下の表は、予備製剤化/製剤化プロセスの異なる段階における全固体に対するHA濃度及び純度をまとめたものである。
表1.予備製剤化プロセスにおけるHA濃度及び純度の要約。
Figure 2023522699000007
粘度
抗原、非HAタンパク質/粒子及びTriton-X100の全体的な濃度によって制御されるコーティング溶液の粘度は、コーティングプロセス中の微小突起先端上の薄膜の流れに影響を及ぼす。微小突起先端の各浸漬は、いくらかのコーティング溶液をとることができる。溶液粘度が低すぎると、微小突起先端の溶液が乾燥する前にコーティング溶液膜に滴下して戻る場合がある。溶液の粘度が高すぎると、液体の流れが遅すぎて、必要に応じて微小突起を均一にコーティングすることができない。許容可能なコーティング形態を達成するために、液体製剤の粘度範囲は0.20~1.50ポアズであることが実験的に決定された。3つのHA/スクロース(重量比1:1)濃度、50、40及び35mg/mLのインフルエンザワクチン製剤の様々な剪断速度での粘度を図2に示す。予想通り、コーティング溶液の粘度は、製剤中のHAの濃度に直接関係することが分かった。50mg/mLのHA濃度では、コーティング溶液は、剪断速度の全範囲の間にコーティングのための所望の粘度を示し、その十分に高い濃度のために最小数のコーティング通過も必要とした。
表面活性
コーティング溶液はまた、微小突起先端を効果的に濡らすために適切な表面活性を示すべきである。濡れ性は、液体の表面張力及び基材の表面エネルギーに応じて、コーティング溶液が微小突起の表面上に付着、接着及び拡散する能力を測定し、接触角測定によって決定することができる。濡れ性が悪いと、流体の取込みが妨げられるか、又は不均一な局所的なコーティングが生じる。表面活性剤を含有する液体製剤は、溶液と基材との間の接触角を減少させることによって、表面張力に影響を及ぼし、表面濡れ性を改善することができる。チタン基材上の純水の接触角(80°)と比較して、コーティング製剤(HA及びスクロースの等しい重量比)は、HA濃度にかかわらず、26°~36°の範囲の接触角で良好な濡れ性を示した。HA抗原及び/又はTriton-X100は、製剤中の表面活性剤である可能性がある。さらに、Tween80、Pluronic F68及びZwittergent3-14などのいくつかの界面活性剤をコーティング製剤に添加した場合(1%まで)、チタン表面上の接触角は同じままであった(データは示さず)。この知見は、コーティング製剤が本質的に表面活性であり、コーティングプロセスに有利であろうことを再び示唆している。
チタン金属は、表面に酸化薄膜(主にTiO2)を形成することが知られており、その表面活性は、薄膜の厚さ、微細構造及び組成に応じて動的である。周囲空気からの有機化合物の表面吸収も、表面活性、親水性又は疎水性に有意に影響を及ぼす。製剤の濡れ性に対するチタン金属の表面エネルギーの効果を評価するために、チタン金属を250℃で1時間加熱することによって前処理した。高温加熱は、汚染物質を燃焼除去し、表面をより高い程度の親水性にシフトさせることができる。実際、予熱されたチタンは、未処理チタン表面上の80°と比較して、純水の接触角の50°の有意な減少を示し、予熱されたチタン表面の親水性(又は表面エネルギー)の実質的な増加が示唆された。興味深いことに、予熱されたチタン表面上のコーティング製剤の接触角は変化しないままであり(26°~36°)、コーティング製剤がチタン基材の表面活性を上回ったことが示唆された。全体として、コーティング溶液は堅牢な湿潤特性を示し、これはコーティング基材による影響を最小限に抑え、優れたコーティング特性を示した。
コーティング製剤の物理的安定性
しかし、コーティングに適した物理的特性にもかかわらず、50mg/mLのHA/スクロースコーティング製剤は乳白色の懸濁液である。目に見える粒子がない、この微細懸濁液は、主にナノ粒子を含有する場合がある。この懸濁液は、1ヶ月間冷蔵した後、相分離(粒子の沈降)が観察されなかったため、物理的に安定であると考えられた。さらに、溶液を7,000rpmで2分間遠心分離した後、明らかな粒子沈降はみられなかった。典型的には乳化剤(又は界面活性剤)によって安定化される安定なエマルジョン、水中油又は油中水のように、ナノ粒子の懸濁液は、Triton-X100によって安定化される可能性がある。
コーティングプロセス
コーティング装置は、コーティング溶液リザーバと、コーティング溶液と接触しているステンレス鋼ドラムとを備えていた。ドラムを回転させて、コーティング製剤の連続薄膜(厚さ約100μm)を生成し、その中にチタンアレイ上の微小突起先端を浸漬した。浸漬深さを正確に制御して、微小突起の先端のみをコーティング製剤でコーティングした。微小突起の先端にコーティングされた比較的少量の製剤、製剤の高い固体含有量、及びアレイの非常に高い表面積のために、微小突起表面上の液体コーティングは、周囲条件下でコーティング後5秒未満で風乾されると予想される。コーティングされたワクチンの量は、アレイが薄膜に浸漬された回数によって制御され、BCA及び/又はSRIDによってモニタリングされた。
図3は、微小突起先端部上の代表的なコーティング形態を示す。コーティングは、すべての微小突起に均一に分布しており(図3a)、微小突起の先端に位置している(単一の微小突起の側面図、上面図及び正面図に関する図3b~図3d)。
コーティング溶液はコーティングプロセス中に高い剪断力に曝されるので、製剤は、コーティングに使用される薄膜の物理的安定性及び溶液中の抗原の化学的安定性の観点から十分に安定でなければならない。コーティング製剤の物理的安定性は、レオメータでシミュレートした長期剪断下で溶液粘度をモニタリングすることによって決定した。一定の剪断力に曝されたコーティング製剤の物理的不安定性は、ゲル形成及び薄膜の破壊によって証明されるように、いくつかのバイオ医薬製剤について観察され、溶液粘度の増加をもたらした。化学的安定性を、インビトロ効力アッセイ、SRIDによって行われる1時間のコーティングにわたって定期的にモニタリングした。粘度及びSRID効力の両方は、一定の剪断への1時間の曝露中に変化しないままであった。
一価ワクチンバルクのための予備製剤化及びコーティングプロセスが開発されているので、三価ワクチン製剤を調製し、以下に記載する。
三価インフルエンザワクチンの製造
三価経皮送達システムの第I相臨床製造には、125~500mcg HA/mLの範囲の濃度の三種類の一価株A/ニューカレドニア(H1NI)、A/パナマ(H3N2)及びB/山東を使用した。バルクウイルス抽出物の各一価株およそ2リットルをダイアフィルトレーションし、次いで、TFF装置で10mg HA/mLに濃縮した。次いで、濃縮された一価溶液を、1:1重量比のHA:スクロースで個別に製剤化し、凍結乾燥して粉末形態にした。次いで、3つの凍結乾燥粉末を再構成し、合わせて、42mg HA/mL(各一価株に対して14mg HA/mL)の濃度の1:1:1三価コーティング溶液を生成した。このコーティング溶液は、30mcg HA三価(すなわち、一価株当たり約10μg)の目標用量をアレイ当たり最小数の浸漬でコーティングするために許容可能な粘度及び濡れ性を示した。コーティング後、許容可能なシステムを窒素パージされたヒートシール箔パウチに包装し、2~8℃で保存した。代表的なシステムを臨床バッチから選択し、SRIDアッセイによってロットリリースについて試験した。試験したすべてのシステムは、>8mcg HA/パッチのロットリリース規格を満たした。バッチ全体を通して無作為に選択した20のシステムの平均は、相対標準偏差が6%以内で、11.0mcg A/ニューカレドニア、13.3mcg A/パナマ及び12.2mcg B/山東であった。
安定性の考察
予備製剤化プロセス全体(ダイアフィルトレーション/濃縮、凍結乾燥及び再構成)を通して抗原の安定性を維持することが最も重要である。すべての加工応力以外に、Triton-X100濃度が0.1~0.3mg/mLから3~5mg/mLに10倍を超えて増加したため、コーティング製剤中に存在する高濃度Triton-X100のHAの抗原性への影響が懸念される(TFFプロセスの項を参照)。
この影響を評価するために、界面活性剤なしで、3つの高濃度界面活性剤、SDS(10%)、Triton-X100(10%)又はZwittergent3-14(5及び10%)を用いて再構成された凍結乾燥ワクチンを含む一連の予備製剤化工程の後に、A/パナマワクチンに対してSDS-PAGE/ウエスタンブロット分析を実施した(図4)。クマシーブルー染色ゲル(左側のSDS-PAGEゲル)の非還元条件下では、出発ワクチンに存在するすべてのバンドも再構成試料に存在したことが明らかであり、評価した製剤のいずれについても検出可能な分解は示唆されない。ゲルをウエスタンブロット分析のために膜に移したところ(図4、右側のゲル)、やはり、異なる製剤と出発一価ワクチンとの間に違いは認められなかった。HAタンパク質と抗HA抗体との間の結合を反映する一連のバンドが、主に高分子量で生じた。一致したバンド及びバンド強度(出発ワクチンに対する)に基づくと、凍結乾燥され、高濃度の強力な界面活性剤に曝露された製剤中のHAは、抗原性を維持した。還元条件下で、すべての製剤は、SDS-PAGEゲル上の出発ワクチンのバンドと同様のバンドを示す。ウエスタンブロットゲル上のバンドパターンもまた、すべての製剤間でよく一致した。
最終製品の長期安定性を、第I相臨床製造中に製造されたシステムを使用して評価した。窒素パージされたヒートシール箔パウチを、湿度制御されたチャンバ内で5及び25℃で最大12ヶ月間安定させた。SRIDによって決定された各株のHA効力を安定性指標分析として使用し、3つの一価株のそれぞれについてT=0ロットリリースデータと比較した。図5に初期三価効力の百分率として報告されているデータ(図5)は、HAが5℃及び25℃の両方で12ヶ月間にわたって良好な安定性(初期85%超)を維持したことを示唆しており、この製品の潜在的な室温安定性を示している。
コーティングされたインフルエンザワクチンシステムの免疫原性性能
前臨床免疫原性データは、ヒトと同様の皮膚構造を有するヘアレスモルモットから得た。この有効性動物モデルにおける正の免疫応答は、パッチ製剤を用いた第1相ヒト試験に入るという本発明者らの決定を促した。経皮経路による投与(2つのパッチデザインについて1株当たり7~8mcg HA)は、ヘマグルチン阻害)(HAI)セロコンバージョン率に関して筋肉内(IM)経路による投与(1株当たり15μg HA)よりも優れていた(表2)。これは、50%未満の抗原でさえ、パッチによって誘導された免疫応答(一次免疫後28日目)がIM注射によるものと同等又はそれよりも優れていたことを示唆している。
表2:前臨床免疫原性結果の要約
Figure 2023522699000008
ワクチン送達のためのマイクロニードルデバイスの性能及び安全性のヒト臨床検証
マイクロニードルパッチによって投与された三価インフルエンザ抗原の有効性と、標準的な筋肉内経路を介した三価ワクチンの送達とを比較するために、第1相臨床試験(単一施設、非盲検、無作為化)を実施した。この試験では、健常な男性及び女性(18~40歳、約30名の対象/群)を、各抗原株(A/ニューカレドニア(H3N2)、A/パナマ(H3N2)、B/山東)、12μg/各)でコーティングしたマイクロニードルパッチ又は市販のIM送達ワクチン(各株15μg)のいずれかで処置した。投与後、パッチを5又は15分間装着した。
免疫原性分析セットで得られた結果を、3つすべての群について株別に表3に示す。
表3:ガイダンス免疫原性分析セットのEMEA Criteria Noteに従った免疫原性結果(HI-1/dil)
Figure 2023522699000009
EMEAガイダンス:Committee for proprietary medicinal products(CPMP)、note for guidance on harmonization of requirements for influenza vaccines、1997年3月;ワクチン接種前力価<10(1/dil)対ワクチン接種後力価≧40(1/dil)を有する対象の割合;ワクチン接種前力価<10対ワクチン接種後力価≧4倍力価を有する対象の割合;\「ガイダンス」において:0日目と21日目の間の幾何平均増加;**ワクチン接種後力価≧40(1/dil)を達成した対象の割合;
Figure 2023522699000010
95%信頼区間での統計値。
3つのEMEA基準は、ワクチン接種21日後のすべての株について、3つの処置群すべてについて満たされた。両方のマイクロニードルパッチ群の免疫原性結果は、IM群の免疫原性結果と全体的に類似していた。パッチ装着時間は、抗体応答の程度に大きく影響しないようである。総IgE(非特異的)データは、24.7~41.6kU/Lの範囲で3つの群間で類似していた。IgA及びIgG(A/H1N1)株に対する)については、0日目(ワクチン接種前)の値は群間で類似していた。ワクチン接種の21日後、IgA及びIgGの両方が0日目よりも5~11倍高く、群間に差はなかった。マイクロニードルパッチ群は、IM対照に対して同様の免疫応答を示した。
結論
三価インフルエンザワクチン経皮パッチは、前臨床及び第I相ヒト臨床試験において首尾よく開発され、有効であることが証明された。TFFシステムによるダイアフィルトレーション/初期濃度、凍結乾燥、及びコーティング用の高HA濃度(約40~50mg HA/mL)溶液を調製するための再構成からなる独自の予備製剤化プロセスを確立した。この予備製剤化プロセスは非常に効率的であり、抗原の損失はほとんどなかった(プロセス収率85%超)。予備製剤化プロセスに従って調製された後続のコーティング溶液は、チタン微小突起の先端へのコーティングのための許容可能な物理的及び化学的安定性を有するように最適化された。パッチ製剤は、現在利用可能な製剤を超える3つの重要な利点、すなわち保存剤を含まない、室温保存及び用量節約を示した。上記の経皮パッチの成功に基づいて、当業者は、そのような技術が、(類似又は異なる賦形剤を使用して)コーティング溶液中に製剤化され、治療有効量で微小突起アレイに適用され得る任意のワクチンに拡張され得ることを理解するであろう。
実施例2-経皮微小突起パッチに合成ペプチド抗原を使用するコロナウイルスワクチン
抗原が合成ペプチドであることを除いて、コロナウイルスワクチンパッチは、一般に実施例1に従って調製される。この非限定的な例では、そのような合成ペプチドは5つのペプチド抗原である。5つのペプチドを1:1:1:1:1の比で混合する。次いで、混合物をペプチド当たり約50~約100mcgの用量で微小突起パッチ上にコーティングする。混合物は、約pH3~約9.5で製剤化される。5つのペプチドは以下の通りである。
HP201-215 DLFGIWSKVYDPLYC
NS3974 YNGSICVIGTPLSRFMGF
Core57 AKRRRRHRRDQGGWRRSP
Core78 VDPYVRQGLQILLPSAAY
Core113 GTLGWTADLLHHVPLVGP
パッチをSDS-PAGE/ウエスタンブロットによって評価し、前臨床免疫原性データは、一般に実施例1に記載の手順に従ってヘアレスモルモットから得られる。
ヒト臨床試験も、一般に実施例1のプロトコルに従って実施される。
出願人は、実施例2のワクチンパッチが患者の集団に投与されると、統計的に有意な数のそのような患者が首尾よくワクチン接種されることになると予想している。他の実施形態では、そのような患者の少なくとも10%が血清保護され、又はそのような患者の少なくとも20%、若しくは少なくとも30%、若しくは少なくとも40%、若しくは少なくとも50%、若しくは少なくとも60%、若しくは少なくとも70%、若しくは少なくとも80%、若しくは少なくとも90%が血清保護されるであろう。
他の態様では、実施例2のワクチンでコーティングされたパッチは、IM又はSC注射ワクチン対応物と比較して用量を節約するであろう。例えば、本明細書のパッチは、それらのIM又はSC注射対応物よりも少なくとも5%、又は少なくとも10%、又は少なくとも20%、又は少なくとも30%少ないワクチン/抗原を必要とするであろう。
本発明をその特定の実施形態に関連して説明してきたが、前述の説明及び実施例は、本発明の範囲を限定するものではなく例示することを意図していることを理解されたい。本発明の範囲内の他の態様、利点及び変形は、本発明が関係する当業者には明らかであろう。

Claims (29)

  1. ヒト患者の角質層を貫通又は穿孔するように適合された複数の微小突起を含む皮内送達システムであって、前記微小突起は、先端から基部まで測定された各微小突起の長さの約10%~80%を覆う固体製剤コーティングをその上に有し、前記コーティングは、治療有効量のワクチンを含み、前記ワクチンの少なくとも95%が、前記システムを前記ヒト患者の前記角質層に適用した後約20分以内に前記システムから放出される、皮内送達システム。
  2. 前記ワクチンの少なくとも95%が約10分以内に放出される、請求項1に記載のシステム。
  3. 前記ワクチンの少なくとも95%が約5分以内に放出される、請求項1に記載のシステム。
  4. 前記ワクチンがコロナウイルスワクチンである、請求項1に記載のシステム。
  5. 前記治療有効量が約5mcg~約500mcgである、請求項1に記載のシステム。
  6. 前記治療有効量が約25mcg~約300mcgである、請求項1に記載のシステム。
  7. 二糖をさらに含む、請求項1に記載のシステム。
  8. 前記二糖がスクロースである、請求項7に記載のシステム。
  9. 前記二糖がトレハロースである、請求項7に記載のシステム。
  10. 室温で少なくとも6ヶ月間安定である、請求項1に記載のシステム。
  11. 室温で少なくとも12ヶ月間安定である、請求項1に記載のシステム。
  12. コロナウイルス又はインフルエンザ疾患に対してヒト患者にワクチン接種する方法であって、
    a.皮内送達システムであって、
    i.約3cm~約6cmのアレイに配置された複数の微小突起を有する使い捨てパッチアセンブリであって、前記アレイは、約200~約2000個の微小突起/cmの密度を有し、前記微小突起は、ヒト患者の角質層を貫通又は穿孔するように適合されている、使い捨てパッチアセンブリ、
    ii.その上に固体製剤コーティングが配置されており、前記コーティングは治療有効量のワクチンを含む、前記微小突起、
    iii.約10μm~約500μmの幅及び約30~約70度の先端角を有する、前記微小突起
    を含む皮内送達システムを提供する工程、及び
    b.前記微小突起を前記患者の皮膚の選択された領域に適用する工程を含み、
    前記ワクチンの少なくとも95%が、前記角質層への適用後約20分以内に前記システムから放出される、方法。
  13. 前記疾患がCOVID-19である、請求項12に記載の方法。
  14. 前記ワクチンの少なくとも95%が約10分以内に放出される、請求項12に記載の方法。
  15. 前記ワクチンの少なくとも95%が約5分以内に放出される、請求項12に記載の方法。
  16. 前記ワクチンがコロナウイルスワクチンである、請求項12に記載の方法。
  17. 前記治療有効量が約5mcg~約500mcgである、請求項12に記載の方法。
  18. 前記治療有効量が約25mcg~約300mcgである、請求項12に記載の方法。
  19. 二糖をさらに含む、請求項12に記載の方法。
  20. 前記二糖がスクロースである、請求項19に記載の方法。
  21. 前記二糖がトレハロースである、請求項19に記載の方法。
  22. 前記システムが室温で少なくとも6ヶ月間安定である、請求項12に記載の方法。
  23. 前記システムが室温で少なくとも12ヶ月間安定である、請求項12に記載の方法。
  24. 前記システムが自己投与される、請求項12に記載の方法。
  25. 前記システムが患者の集団に投与されると、統計的に有意な数の患者が首尾よくワクチン接種される、請求項12に記載の方法。
  26. 前記患者の少なくとも25%が血清保護されている、請求項25に記載の方法。
  27. 前記患者の少なくとも50%が血清保護されている、請求項25に記載の方法。
  28. 前記患者の少なくとも75%が血清保護されている、請求項25に記載の方法。
  29. 装着時間が約5~30分である、請求項12に記載の方法。

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