JP2023521388A - 脂肪肝疾患に対する修飾キスペプチン受容体作用薬 - Google Patents

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バブワー,エム.モシュミ バッタチャリア
バブワー,アンディー ヴィデシュ
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Abstract

キスペプチン1受容体(KISS1R)は、54アミノ酸のペプチドホルモンであるキスペプチン(メタスチン)を結合するG蛋白質共役受容体である。TAK-448は、強力なキスペプチン1受容体(KISS1R、またはGPR54)作用薬である。脳におけるキスペプチンおよびKISS1Rは、思春期の発現と視床下部-下垂体-性腺軸の制御におけるそれらの関与のため、哺乳動物の生殖に重要な役割を担う。本明細書は、非アルコール性脂肪肝疾患の発症における末梢キスペプチン/Kiss1R経路を暗示する結果を考察し、肝臓において脂肪を減らす方法を提供する。【選択図】図30

Description

関連する出願の相互参照
本出願は、2020年4月8日付けで出願された米国仮出願番号第63/007,071号に基づく優先権を主張するものである。その優先出願の開示内容全体が参照として本出願に組み入れられる。
本発明は、医薬の分野、特に、対象の肝臓脂肪を減らす方法に関する。本方法は、対象にTAK-448またはその任意の塩;TAK-448の保存的変異体またはその任意の塩;キスペプチン10またはその任意の塩;あるいはキスペプチン10の保存的変異体またはその任意の塩を投与することを含む。
肝臓は、脂質代謝に関与する主要な臓器である。脂質異常症は、世界中でおおよそ10億人が罹患し公衆衛生上の問題としてますます懸念が高まりつつある、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)などの代謝障害に至る病態である。米国では、NAFLDは、全国的に蔓延する疾患であり、1200万人を超える成人および800万人の小児が罹患し、それに伴う年間の医療費は1千30億ドルにも上る。
NAFLDは、世界における肝臓疾患の主要原因である。NAFLDは、肝脂肪蓄積(脂肪症)を特徴とし、細胞毒性である脂質酸化副産物の生成をもたらし、これは、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)と定義される、肝細胞傷害を伴う慢性炎症状態へと進行する。この疾患が進行するにつれ、患者の一部は、線維症、肝硬変および肝不全または肝細胞癌(HCC)を発症する。NAFLD/NASHが、次の10年で、肝臓移植の最も多い適応であるC型肝炎に取って代わるであろう。このように、NAFLDは、脂肪症(脂肪肝)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、ならびに線維症および肝硬変(肝臓の過剰な非可逆性瘢痕化)を含む多様な病態を含む。
キスペプチン(KP)は、KISS1遺伝子のペプチド産物であり、G蛋白質共役受容体の1つであるキスペプチン1受容体(KISS1R)の内因性リガンドである。KP/KISS1Rシグナル伝達系は、中枢(脳において)および末梢の両方で発現され、それはそこで生殖および代謝に主要な役割を担う。実際に、肝臓のKiss1発現は、肥満の遺伝的モデル(db/dbおよびob/obマウス)において増加されることが明らかにされた。KISS1およびKISS1Rは肝臓で発現されるが、脂質生成制御における肝KISS1Rシグナル伝達の役割には未解明である。
NAFLD有病率は、肥満とII型糖尿病の増加の反映であり、約1億人のアメリカ人が罹患する。しかし、II型糖尿病の治療に利用される医薬品は、NAFLDを治療するために承認されていない。この疾患の初期段階では有益である体重の減量および肥満症治療手術は別として、NAFLD/NASHを治療するためのFDA承認薬は現在のところ存在しない。FDAの業界向けガイダンスは、「FDAは、NASHおよびNAFLDの進行を緩徐、停止、または逆転させる治療法を確立することが、満たされていない医学的必要性に対処するであろうと考える」と述べている。fda.gov(2018年12月)を参照のこと。肥満率が上昇し続けているので、米国におけるNAFLD関連肝疾患および死亡率は増加するであろう。NASH治療薬の世界市場および肝硬変薬市場は、2026年までにそれぞれ、米ドルで183億ドルおよび660億1千ドルに達すると予想される。
このように、NAFLD/NASHの新規治療法を開発する臨床的必要性が存在する。
本発明は、NAFLDまたはNASHにおいてTAK-448の利用を別の目的に使うことを含む。本研究では、NAFLDの高脂肪食餌誘導性前臨床マウスモデルを、Kiss1rの肝ノックアウトが脂肪症を促進することを実証するために用いた。さらに、肥満の野生型糖尿病マウスでのKP類似体(TAK-448)の点滴が、疾患の進行を防ぐ。機構的に、KPシグナル伝達は、AMP活性化蛋白質キナーゼ(AMPK)を活性化すること、ならびにペルオキシソーム増殖剤活性化受容体γ(PPARγ)シグナル伝達経路を抑制することに加えて、ミトコンドリアにおける脂肪のベータ酸化または分解を促進することによって、デノボ脂質生成(脂肪形成)を負に制御することが示された。本研究は、KISS1Rを対象とする薬理学的介入および遺伝的介入の両方が、NAFLD発症を予防でき、かつNAFLDがNASHおよび線維症へと進行するのを抑え得るという直接的な証拠を提供する。
具体的には、本発明は、治療有効量のTAK-448を対象に投与することを含む、それを必要とする対象における、NAFLD/NASHの治療または予防の方法に関する。好ましくは、対象は、NAFLD患者またはNASH患者である。投与はいかなる経路であってもよいが、好ましくは皮下投与である。
本発明の特定の実施態様は、TAK-448およびその任意の塩;TAK-448の保存的変異体およびその任意の塩;キスペプチン10およびその任意の塩;ならびにキスペプチン10の保存的変異体およびその任意の塩から選択される化合物の治療有効量を対象に投与することを含む、それを必要とする対象の肝臓において脂肪を減らす方法を含む。対象は、好ましくはアルコール依存症、肝炎、非アルコール性脂肪肝疾患(NALFD)、または非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)から選択される脂肪肝および/または病態に罹患しており;最も好ましくは、対象は、非アルコール性脂肪肝疾患(NALFD)または非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)に罹患している。
本発明のいくつかの実施態様は、AKR-001、アラムコール(aramchol)、ASC40、AZD7687、BI089-100、BMS-986036、カナグリフロジン(canagliflozin)、セニクリビロック(cenicriviroc)、シロフェキソール(cilofexor)、ダパグリフロジン(dapagliflozin)、EDP-305、エラフィブラノール(elafibranor)、エムリカサン(emricasan)、EYP001a、フェノフィブラート、フィルソコスタット(firsocostat)、GR-MD-02、IONIS-DGAT2r、イプラグリフロジン(ipragliflozin)、リコグリフロジン(licogliflozin)、ルセオグリフロジン(luseogliflozin)、LY3202328、MET409、メトホルミン、MGL-3196、MK-4074、MSDC-0602K、MT-3995、NGM282、ニドゥフェキソル(nidufexor)、PF-05221304、PF-06835919、PF-06865571、PF-06882961、PX-102、PXL770、PXS-5153A、セロンセルチブ(selonsertib)、シムツズマブ、セマグルチド(simaglutide)、TERN-101、TERN-201、トロピフェクサー(troifexor)、ビタミンD、ビタミンE、およびVK2809から選択される第2の化合物の治療的量を対象に投与することをさらに含む方法に関する。
投与する方法は、皮下投与、静脈内投与、または経口投与であり得る。
TAK-448は、NAFLDの前臨床マウスモデルにおいて肝臓の脂肪蓄積(脂肪症)を低下させ代謝プロファイルを改善する。図1Aは、高脂肪食餌(HFD)を与えた対照(媒体、リン酸緩衝性生理食塩水またはPBS)およびTAK-448処置マウスの肝臓(5匹/群)についての、ヘマトキシリンとエオシンで染色したマウス肝臓の組織学的写真、ここで脂肪症(肝臓における小さな白色領域)を示す、黒い矢じりが示される;および灰色の点で示される、オイルレッドOによる肝臓脂質染色である。TAK-448処置は、HFDの同腹仔対照に比較して、HFD誘導性肝脂肪症を軽減する。図1B~図1Gは、終点の肝臓トリグリセリド(TG)(図1B);終点の血中トリグリセリド(図1C);血中遊離脂肪酸(FFA)(図1D);終点の体重(図1E);ならびに、動物における末梢脂肪蓄積(図1F(精巣上体の白色脂肪組織またはeWAT)および図1G(鼠径部の白色脂肪組織またはiWAT))を低下させるTAK-448の有益な効果を示す。終点は、マウスの安楽死後と定義される。図1H~図1Jは、TAK-448処置が、空腹時血糖の上昇を抑えたこと(図1H)、耐糖能試験(GTT)を用いて決定される不耐糖を抑えたこと(糖尿病の改善)(図1I)、およびインスリン耐性試験(ITT)を用いるインスリン抵抗性を抑えたこと(図1J)を示す。 図2Aおよび図2Bは、媒体(VEH、PBS)またはTakeda-448(TAK、0.3nmol/h)で処置する前の野生型C57BL6/Jマウスの体重(図2A)および空腹時血糖(図2B)を示す。図2Cは、処置後4週間;RD/HFDで10週間;マウス5匹/群で、臨床実験動物モニターシステム(CLAMS)で測定されるように、TAKまたは対照で処置されたマウスで、食物摂取に差がないことを示す。平均値±平均値の標準誤差を示す;対応のないスチューデントt検定;*p<0.05、VEH対照との比較。 RD/HFD(10週間)での対照およびTAK処置マウス(処置後4週間)における、脂肪肝マーカーである、血清酵素アラニンアミノ基転移酵素(ALT)のレベル(図3A)、血清コレステロールのレベル(図3B)、および血清グリセロールのレベル(図3C)を示す。TAK-448の投与は、HFD対照と比較して、高脂肪給餌(HFD)マウスにおいて、ALT、コレステロールおよびグリセロールの各レベルを低下させる。 媒体(VEH、PBS)対照およびTAK-448処置マウス(処置後4週間、RD/HFDで10週間;マウス5匹/群)における熱発生(図4A)および呼吸商(RER(図4B)を示すCLAMS分析を示す。 図5Aは、Rpl13a mRNA発現に対し正規化された、高脂肪給餌肝臓試料におけるRT-qPCRによる表示される遺伝子の相対的mRNA発現を示す。TAK-448処置は、肝臓における脂肪産生(トリグリセリド合成および脂質生成)を制御する主要な遺伝子のレベルを低下させる。図5Bは、高脂肪給餌肝臓マウスにおける、表示される蛋白質の発現を示す代表的なウエスタンブロットである。TAK-448処置は、肝臓における脂肪産生の主要制御因子の蛋白質レベルを低下させる。 図5Bに示されるウエスタンブロットのデンシトメトリー分析を示す。 pAMPKおよび総AMPKを示すウエスタンブロットである。TAK-448処置は、重要なエネルギーセンサーであるAMPKを活性化し、それは次いで、脂肪形成を阻害する。 それぞれ図7および図5Bに示されるウエスタンブロットのデンシトメトリー分析を示す。 Rpl13a mRNAの発現に対し正規化された、VEH処置(対照)またはTAKで処置されたマウスからの高脂肪給餌肝臓試料におけるRT-qPCRによる炎症性マーカー(図9A)ならびに線維症と酸化ストレスのマーカー(図9B)の相対的mRNA発現を示す。TAK-448処置は、肝臓において、炎症および線維症を制御する主要遺伝子のレベルを低下させる。平均値±平均値の標準誤差を示す。対応のないスチューデントt検定;*p<0.05、VEH対照との比較。 肝臓のトリグリセリド合成およびデノボ脂質生成の主要制御因子の発現に対する、TAK-448処置の阻害効果に関するグラフである。 肝臓の炎症の主要制御因子の発現に対する、TAK-448処置の阻害効果に関するグラフである。 肝線維症の主要制御因子の発現に対する、TAK-448処置の効果に関するグラフである。 脂肪のミトコンドリアおよびペルオキシソームにおけるベータ酸化を制御する肝臓遺伝子の発現に対する、TAK-448処置の効果に関するグラフである。 図14Aは、HFDでの経時的な対照(CTRL)および肝KISS1Rノックアウト(LKO)マウスの体重(BW)を示すグラフである。図14Bは、対照およびLKOマウスについての、終点の体重を示す棒グラフである。図14Cは、HFDでのマウスの写真(CTRLおよびLKO)である。図14Dは、4日間にわたり平均した対照およびLKOマウスの毎日の食物摂取を示す棒グラフである。 高脂質の食餌(図3A)および通常の食餌(図15)でのCTRLおよびLKO(HDFおよびRD)マウスについて脂肪症を示すヘマトキシリン-エオシン染色されたマウス肝臓の顕微鏡写真である。図15Bにおいて四角で囲った領域を、下で拡大する。 CTRLおよびLKO(RDおよびHFD)マウスにおける肝臓トリグリセリドを示す棒グラフである。HFDでのLKOマウスは、やはりHFDでの対照と比較して、上昇された肝臓トリグリセリドを有する。 8週間通常食(RD)または高脂肪の食餌(HFD)でのC57BL6オスのマウスにおける、Rpl13a mRNAの発現に対し正規化された、RT-qPCRによるKiss1およびKiss1rの相対的mRNA発現を示す。高脂肪給餌は、肝臓においてKISS1およびKISS1Rの発現を誘導する。 図18Aは、KISS1Rのノックダウンを示す、CTRLおよびLKOマウスからのHFD肝臓における、RT-qPCRによる表示される遺伝子の相対的mRNA発現を示す。LKOマウス肝臓は、対照と比較して、KISS1R発現が枯渇される。平均値±平均値の標準誤差を示す;対応のないスチューデントt検定;*p<0.05、対照との比較。図18Bは、通常食(RD)でのCTRLおよびKOマウスの体重を示す。RDで維持されたマウスでは、体重に変化がない。図18Cおよび図18Dは、CTRLおよびLKOマウスの呼吸商(RER)(図18C)および歩行活動(図18D)を示すCLAMS分析を示す。*p<0.05;一元配置分散分析の後に、ダネットの事後検定を行った。 図19Aは、HFDでのLKOマウスでの低い代謝を反映する、CLAMSにより評価された熱発生を示す。図19Bは、肝臓疾患マーカーである肝臓酵素アラニンアミノ基転移酵素(ALT)の血清レベルが、HFDでのCTRと比較して、HFDでのLKOマウスで増加されることを示す。 CTRLおよびLKOマウスにおける、腓腹筋の重量(図20A)、前脛骨筋の重量(図20B)、精巣上体における白色脂肪組織(eWAT)の重量(図20C)、および鼠径部における白色脂肪組織(iWAT)の重量(図20D)を示す。平均値±平均値の標準誤差を示す;対応のないスチューデントt検定;*p<0.05、対照との比較。HFDでのLKOマウスは、HFDでの対照と比較して、より低い筋肉量およびより多い脂肪組織を有する。 図21Aは、Rpl13a mRNAの発現に対し正規化された、肝臓試料(HFD)における表示される遺伝子の相対的mRNA発現を示す。脂肪形成を制御する主要な遺伝子は、HFDでのLKOマウスからの肝臓で高められる。図21Bは、肝臓試料における表示される蛋白質の発現を示す代表的なウエスタンブロットを与える。脂肪形成を制御する蛋白質は、LKO(HFD)マウスからの肝臓で高められる。平均値±平均値の標準誤差を示す;対応のないスチューデントt検定;*p<0.05、対照群との比較。 図21Bでのウエスタンブロットからの示される蛋白質の発現のデンシトメトリー分析を示す:図22A(FASN);図22B(PPARγ);図22C(CD36);図22D(pAMPK/総AMPK)。 図23Aは、肝トリグリセリド(TG)合成経路を示す模式図である;太字の分子は、対照(CTRL)の肝臓と比較してHFDでのLKOにおいて上方制御される。図23Bは、Rpl13a mRNAの発現に対し正規化された、LKO肝臓試料におけるRT-qPCRによる表示される遺伝子の相対的mRNA発現を示す。トリグリセリド合成を制御する遺伝子は、LKO(HFD)肝臓において上昇される。 図21BでのウエスタンブロットからのGYK発現のデンシトメトリー分析を示す。 図25Aは、HFDでのCTRLマウスおよびLKOマウスにおける、質量分析(LC-MS)により測定された肝臓脂質類を比較するボルケーノプロットである。LKO(HFD)肝臓において高度に上昇される脂肪分子種を、グラフの上部右側4分の1の部分に示す。図25Bは、Rpl13a mRNAの発現に対し正規化された、RDでのCTRLマウスおよびLKOマウスの肝臓における、RT-qPCRによる表示される遺伝子の相対的mRNA発現を示す。平均値±平均値の標準誤差を示す;対応のないスチューデントt検定;*p<0.05、対照との比較。 図26Aおよび図26Bは、12時間絶食後のHFDでのCTRLマウスおよびLKOマウスにおける、空腹時血糖値(図26A)および耐糖能試験(GTT)時の血糖値(図26B)を示す。HFDでのLKOマウスは、やはりHFDでの対照と比較して、悪化した2型糖尿病を有した。図26Cは、GTTの曲線下面積(AUC)を示す。図26Dは、インスリン耐性試験(ITT)中の6時間絶食後のHFDでのCTRLおよびLKOマウスにおける血糖値を示す。図26Eは、ITTのAUCを示す。Rpl13a mRNAの発現に対し正規化された、グルコース代謝を制御する遺伝子(図26F)、炎症マーカー(図26G)および線維症マーカー(図26H)、およびミトコンドリアの酸化ストレスマーカー(図26I)を示すCTRLおよびLKO(HFD)の肝臓試料におけるRT-qPCRによる表示される遺伝子の相対的mRNA発現。HFDでのLKOマウスからの肝臓は、炎症および線維症を制御する遺伝子の上昇されたレベルを示す。平均値±平均値の標準誤差を示す;対応のないスチューデントt検定;*p<0.05、対照との比較。 KISS1Rの相対的mRNA発現を示すグラフである。 KISS1Rシグナル伝達による肝PPAR-γの制御を示すウエスタンブロットである。LKOマウスの肝臓は、PPAR-γの増加された発現を有するが、リン酸化PPAR-γの減少された発現を有する(図28A)。このリン酸化部位は、PPAR-γ活性を阻害する。対照的に、TAK-448処置は、PPAR-γの発現を低下させるが、リン酸化PPAR-γを増加させ、PPAR-γ活性が減少されることを示唆する(図28B)。 単離された初代肝細胞における内因性キスペプチンの免疫染色(矢印を参照のこと)の共焦点顕微鏡像である。 マウス初代肝細胞における、FFA(150μMオレイン酸および150μMパルミチン酸)負荷によるトリグリセリド蓄積に対する、TAK-448(3nM)またはキスペプチン10(100nM)の阻害効果を示すグラフである。 LKOマウス(KISS1R欠損)から単離された肝細胞における、FFA(150μMオレイン酸および150μMパルミチン酸)負荷によるトリグリセリド蓄積に対する、TAK-448またはキスペプチン10の効果の欠如を示すグラフである。*p<0.05;一元配置分散分析後にダネットの事後検定を行った。 デノボ脂質生成およびトリグリセリド合成を制御する遺伝子の発現に対する、TAK-448処置の阻害効果を示すグラフである。 図31Aは、基礎条件下で、8時間のキスペプチン(KP)またはTAK処置の際のC57BL6オスのマウスから単離した初代マウス肝細胞におけるRT-qPCRによる表示される遺伝子の相対的mRNA発現を示す。(n=5)*p<0.05;一元配置分散分析後に、ダネットの事後検定を行った。図31Bは、マウス初代肝細胞(n=4)における、AMPKのリン酸化(その活性化が起こる)に対する、キスペプチン処置の効果(それによってその下流の基質ACCを阻害する)を示す代表的なウエスタンブロットである。図31Cは、Rpl13a mRNAの発現に対し正規化された、RT-qPCRによるCTRLおよびLKOマウスの初代肝細胞におけるKiss1R発現を示す(n=4)。KISS1R発現は、LKOマウス肝臓からの単離した肝細胞で枯渇される。 図31Bのウエスタンブロットのデンシトメトリー分析を与える。 図33Aは、対照およびLKOマウスから単離した初代肝細胞における、表示蛋白質の発現を示す代表的なウエスタンブロットである。図33Bは、CTRLおよびLKOマウス(n=4)から単離した初代肝細胞における、RT-qPCRによる表示される遺伝子の相対的mRNA発現を示し、KISS1Rの欠失時の脂肪合成制御遺伝子の増加を示している。平均値±平均値の標準誤差を示す;対応のないスチューデントt検定;*p<0.05。 CD36(図34A)、FAS(図34B)、PPARγ(図34C)、およびMOGAT1(図34D)についての図33Aのウエスタンブロットのデンシトメトリー分析を与える。平均値±平均値の標準誤差を示す;対応のないスチューデントt検定;*p<0.05、対照との比較。 遊離脂肪酸(FFA:パルミチン酸塩、100μM)負荷マウス初代肝細胞におけるTAK-448処置が酸素消費速度を増加させ、促進された脂肪酸酸化をもたらす(図35A)ことを示す一連のグラフである。TAK-448処置はまた、基礎呼吸(図35B)およびATP生成(図35C)も増加させた。 FFA(パルミチン酸塩、100μM)負荷ヒト肝細胞におけるTAK-448処置が、処置の後経時的に酸素消費速度を増加させることを示すグラフである。TAK-448処置はまた、基礎呼吸(図36Bに示す)およびATP生成(図36C)も増加させた。 TAK-448処置が、細胞数の減少により観察されるように、ヒト星細胞LX2細胞の増殖を低下させることを示す棒グラフである(図37A)。TAK-448処置は、LX2細胞において線維症マーカー遺伝子の発現を減少させる(図37B)。 核(図38A)、内因性のKISS1R(図38B)、星細胞(図38C)、および重ね合わせ(図38D)について示される、NAFLD患者からのヒト肝臓生検の染色を示す一連の免疫蛍光像である。 患者肝生検における相対的mRNA発現を示すグラフである。KISS1およびKISS1Rの遺伝子発現および蛋白質発現は、健常対照肝臓と比較して、NAFLD/NASH患者の患者肝生検で上昇される。 一連のウエスタンブロットである。 図39Bでのブロットのデンシトメトリー分析を示す。 健常対象と比較して、NAFLD/NASH患者の成人肝臓におけるより高いKISS1R染色を示す一連の代表的な組織学像である。 ヒト対象における放射免疫測定による血漿キスペプチンレベルを示す棒グラフである;血漿キスペプチンレベルは、健常対象と比較して、NAFLD/NASH患者で有意に上昇され、キスペプチンの増加がNAFLDを解消するための補償的な保護機構である可能性を示唆する。 それにより肝臓でのKP/KISS1R活性化が脂肪肝の発生とそのNASHへの進行を防ぐ、シグナル伝達経路の作業モデルを示す模式図である。強力な類似体TAK-448によるKISS1R活性化の増強は、AMPK活性化を引き起こし、それは脂質生成を阻害し脂肪蓄積を軽減する。代わりに、TAK-448は、ベータ酸化を介して脂肪酸分解を促進して、例えばミトコンドリアにおいてエネルギーを産生させる。TAK-448はまた、肥満病態の肝臓において、トリグリセリド合成の主要プロモーターであるPPAR-γの発現と活性を阻害する。これは、脂肪のより少ない蓄積、肝臓細胞のより少ない傷害(炎症)をもたらし、したがってNASHへの進行を阻む。
1:定義
他で特段に定義されない限り、本明細書で用いる技術用語および科学的用語はいずれも、当業者によって通常理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載の方法および材料に類似または同等の様々な方法および材料を、本発明の実施および試験に利用可能であるが、好適な方法および材料を後述する。しかし、本明細書において用いられ、記載されるそれらの材料および方法はあくまでも例であり、本発明における利用に好適な唯一のものではないことは、当業者であれば理解するであろう。さらに、測定値には本来固有のばらつきがあるので、本明細書中の何らかの特定の温度、重量、容積、時間間隔、pH、塩分、モル濃度(molarityまたはmolality)、範囲、濃度およびその他の測定値、数量表現は、おおよそであり、そうでないと明示的に示されない限り正確なまたは臨界的な数字でないと意図される。
本明細書中の用語「約」は、示される値のプラス/マイナス20パーセントを意味し、例えば、「約0.125」は0.125±0.025を意味し、また「約1.0」は1.0±0.2を意味する。
本明細書中の用語「TAK-448」は、キスペプチン-54の完全に活性であるC末端10アミノ酸(キスペプチン10)の安定な類似体を指し;これらは、KISS1遺伝子にコードされる、キスペプチン-145のペプチド産物である。キスペプチン-54は、以前はメタスチンとして知られており、以前はGPR54として知られていた、G蛋白質共役キスペプチン1受容体(KISS1R)のリガンドである。
本明細書中の用語「治療する(処置する)」、および「治療(処置)」などの、その同語源語は、所望の薬理学的効果および/または生理的効果を得ることを指す。したがって、「治療(処置)」は、
(a)ある病態または疾病についての素因を有する可能性があるが、未だそれを有すると診断されていない対象において、その病態または疾病またはその症状が発生することを予防すること;
(b)病態または疾病またはその症状を阻止すること(その発生を止めることなど);
および
(c)病態または疾病またはその症状を軽減、低減または改善すること(例えば、病態または疾病またはその症状の反転または部分的反転を起こすこと)
を含む。
本明細書中の用語「防ぐ」、および「防止」などの、その同語源語は、対象において、ある病態または疾病が発生する可能性を低減すること、ある病態または疾病の重症度を低下させること、およびその病態または疾病を部分的に、または完全に止めることを指す。
本明細書中の用語「対象」は、哺乳動物、好ましくはヒト患者(ヒト小児患者を含む)を指す。
本明細書中の用語「それを必要とする」は、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)および非アルコール性脂肪性肝炎に罹患している、あるいは罹患している疑いのある対象を指す。
本明細書中の用語「治療的有効量」は、治療的効果、好ましくは所望の薬理学的結果および/または生理学的結果を生じる量、用量、または用量レジメンを指す。
用語「投与する」、および「投与」などの、その同語源語は、薬科学の分野において公知の方法および経路にしたがって、対象と化合物を接触させることを指す。
用語「脂肪肝」は、対象の肝臓が5%以上の脂肪を含む病態を指す。「脂肪肝」のカテゴリーに含まれる病態としては、脂肪肝疾患、肝炎、非アルコール性脂肪肝疾患、非アルコール性脂肪性肝炎、アルコール性脂肪性肝炎、肝線維症、肝硬変、黄疸および肝臓癌、または肝臓が5%以上の脂肪を含む任意の病態が挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書中の用語「NAFLD/NASH」は、非アルコール性脂肪肝疾患および/または非アルコール性脂肪性肝炎を指す。NAFLDは、脂肪症(脂肪肝)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、線維症および肝硬変(肝臓の過度の瘢痕化)を含む、様々な病態を包含する。
天然または合成のペプチドまたはペプチド類似体に関する用語「保存的変異体」は、そのペプチドに対し約90%以上の同一である配列(例えば、その配列において1アミノ酸置換、1アミノ酸付加、または1アミノ酸欠失を含む)を指す。この用語はまた、化合物の構造へのメチル基、エチル基、ハロ基、トリフルオロ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、メチルアミンなどの付加を含む、アミノ酸側鎖の化学修飾などの、ペプチドの化学的変種も含む。
2:概説
本発明は、血液中に存在する天然ペプチドである、キスペプチン10の長期持続型合成類似体TAK-448の投与による、NAFLDおよびNASHなどの代謝障害の治療法を提供する。G蛋白質共役受容体であるキスペプチン受容体(KISS1R)を介するキスペプチンシグナル、ならびにキスペプチンおよびKISS1Rの両方は、肝臓により発現される。キスペプチン-54ペプチドは、健常人に投与され、それは、食物摂取または食欲を変化させずに、インスリン分泌を亢進することが示されている。
3:本発明の実施態様
この報告では、肝臓の脂質生成の主要制御因子としてのKISS1Rの新機能の初めての証拠を提供する。KISS1Rは肝臓で発現されるが、肝臓におけるその生物学的機能は未解明のままである。本研究の目的は、NAFLDなどの脂肪肝の発生と進行におけるKISS1Rの役割を調べること、ならびにNAFLD/NASHおよび肝臓における脂肪蓄積を含む他の病態の予防および治療での使用のための組成物および方法を提供することであった。肝Kiss1rノックアウト(LKO)を用いて、本発明者らは、肝臓のKiss1r欠損が、NAFLDのマウスモデルにおいて肝脂肪症、炎症および線維症を悪化させることを明らかにした。HFDでのLKOマウスは、体重増加、肝臓トリグリセリド(TG)レベルの上昇、空腹時血糖とインスリン抵抗性の上昇、および炎症性マーカーおよび線維症マーカーの増加などの、代謝パラメーターの増悪を示した。
これらの表現型は、肝臓のKISS1/KISS1R欠失が、NAFLD表現型の発現および関連する代謝低下の負の制御に重要な役割を果たすことを示唆している。そこで、肝KISS1RがNAFLDにおいて保護的役割を果たすという仮説を試験するために、インスリン耐性野生型マウスを、KP10と同程度の強力な作用薬活性を有するプロテアーゼ耐性KP類似体であるTAK-448で処置した。我々は、インスリン耐性野生型マウスにおいて、TAK処置が、肝臓の脂質蓄積を抑制し、血清TG、コレステロールおよび遊離脂肪酸(FFA)を低下させ脂肪量を減少させることを見出した。さらに、TAK処置は、食物摂取を変化させることなく体重増加を防ぎ、耐糖能およびインスリン感受性を改善した。重要なことに、TAK投与は、炎症および線維症を制御する主要遺伝子を低下させた。まとめると、これらの知見は脂肪肝(脂肪症)およびNASHの発症に対するKISS1Rの重要な保護的役割を実証する。ヒトのデータは、健常対象と比較して、NAFLD/NASH患者からの肝臓生検におけるKISS1およびKISS1Rレベルの有意な増加かつ増加された血漿キスペプチンレベルを示した。これは、肝臓の脂肪蓄積を減少させる保護的な代償機構であるのかもしれない。しかし、KISS1Rの内因性活性化は、NAFLDの発症に対し保護するためには明らかに不充分である。これらの結果は、それらが食餌誘導性NAFLDマウスモデルにおいて見られる結果を反映するので、本発明者らの前臨床的知見の臨床的な妥当性を示す。重要なことに、TAK-448処置はまた、肝線維症に主要な役割を果たすヒト肝星細胞の増殖を低下させ、線維症の予防におけるTAK-448の保護的役割を示唆する。
本発明者らはまた、それによりKISS1Rが脂質生成を制御する、細胞経路を明らかにした(図40を参照のこと)。本発明者らの知見は、KISS1Rが、HFD肝臓においてインビボでAMPKを活性化し、かつ単離した初代肝細胞において、インビトロでAMPKを活性化し、脂肪症に対するKISS/KISS1Rの保護的効果の基礎となるデノボ脂質生成(DNL)およびTGの蓄積の阻害をもたらすことを明らかにする。DNL(脂肪への炭水化物の変換)は、NAFLDにおいて上方制御され、AMPKの活性化は、ACCをリン酸化しその活性を低下させることによりDNLを阻害し、脂肪酸利用を促進する。TAK-448処置は、ベータ酸化とよばれるプロセスを介して遊離脂肪酸分解を増加させた。AMPK活性化はまた、脂質生成のマスター転写制御因子であるSREBP-1を直接的にリン酸化することにより脂肪合成遺伝子発現の下方制御をもたらる。
AMPK活性化は、TG合成を低下させ、2種類の可能な機構による抗脂肪症効果をもたらすことが示されている。第1に、AMPK活性化は、肝臓で肝X受容体a(LXRa)の活性を阻害する;LXRaは、脂肪酸合成を促進し高トリグリセリド血症をもたらす、脂質センサーである。第2に、AMPK活性化は、PPARγの転写を阻害する。それによりKPがAMPKを活性化する機序は、現在のところ知られていない。AMPKの活性化は、AMP:ATP比の増加と細胞内Ca2+の上昇を介するトレオニン172(T172)のリン酸化を必要とする(38)。複数の報告は、Ca2+/カルモジュリン依存性蛋白質キナーゼβ(CaMKKβ)の活性化が、哺乳動物細胞におけるAMPK活性化に生理的役割を果たしていることを示している。KISS1R活性化は細胞内Ca2+を増加させる(41)ので、KISS1RがCaMKKβ経路を介してAMPKを活性化する可能性が高い。
PPARγの発現は、健常な肝臓では低いが、NAFLDでは有意に上昇し、デノボ脂質代謝を制御することにより肝脂肪症の発症に寄与する。さらに、PPARγは、脂肪酸エステル化の主要酵素Gyk1、脂肪取り込み輸送体Cd36、およびTG前駆体であるジアシルグリセロール(DAG)を形成するためにモノアシルグリセロールをエステル化するMogat1などの、TG合成に関与する遺伝子/経路を直接的に上方制御することにおいて重要な役割を果たす。PPARγ依存性MOGAT1の発現抑制は、肝脂肪症を防ぎ、他方、CD36依存性FFA取り込みおよびMOGAT媒介性脂肪酸エステル化は、脂肪症を促進する。PPARγおよびMOGATの過剰発現がまた、NAFLDを有するヒトにおいて観察されている。TAKがPPARγ、CD36、およびMOGAT1の発現を阻害するという知見は、肝インスリン感受性を負に制御するDAGとの関連が知られているので、臨床的に重要な意味合いを有する。結論として、本発明者らの研究は、肝KP/KISS1Rシグナル伝達系は、AMPK-PPARγシグナル伝達を含む機序を介して、肝細胞における肝デノボ脂質生成を阻害することを示唆し、KISS1Rシグナル伝達の活性化がNAFLD治療の有望な治療標的であることをさらに示唆する。
具体的には、本明細書に記載の前臨床試験は、確立されたNAFLDマウスモデルを利用し、そのモデルでは、雄マウスが、通常食(RD、4%キロカロリーの脂肪)に比べて高脂肪の、欧米型高脂肪の食餌(HFD、60%キロカロリーの脂肪)を給餌される。このモデルを用いて、本発明者らは、キスペプチン類似体(TAK-448)の皮下投与が、媒体(リン酸緩衝性生理食塩水、PBS)対照で処置されたマウスと比較して、マウスNAFLDモデルにおいて脂肪肝の発症を防ぐことを明らかにした(図1A~図1Jならびに図3Aおよび図3Cを参照のこと)。具体的には、糖尿病マウスに1か月間投与されたTAK-448(図2Aおよび図2B)は、脂肪症(肝臓におけるトリグリセリド蓄積)を防ぎ、かつ肝トリグリセリドおよび血清トリグリセリドの上昇を防ぎ(図1C);かつ血中コレステロール(図3B)、脂肪酸(図1D)、およびトリグリセリド構成要素であるグリセロール(図3C)を低下させた。TAK-448処置は、脂肪肝疾患の臨床バイオマーカーである肝酵素ALTのレベルを低下させた。図3Aを参照のこと。TAK-448処置はまた、末梢における脂肪蓄積およびインスリン抵抗性を防いだ。図1F~図1Jを参照のこと。対象と比較してTAK処置マウスでは(両方ともHFDを与えた)、食物摂取には変化がなかった(図2C)。
さらに、肝臓Kiss1Rの欠失を有する(LKO)HFD給餌マウスでは、体重(図14)、肝脂肪(図15)および肝臓トリグリセリド(図16)におけるより大きな増加が、食物摂取は無変化であるにもかかわらず(図14D)、HFD給餌同腹仔対照と比較して、観察された。このことは、NAFLDの発症予防における、キスペプチン/Kiss1R経路の保護的役割を示唆する。図14、図15および図16を参照のこと。Kiss1Rノックアウト動物はまた、対照と比較して(いずれもHFDを給餌)、不耐糖およびインスリン抵抗性であった。図26B~図26Eを参照のこと。肝KISS1Rノックアウトマウスからの肝臓は、対照と比較して(いずれもHFDを給餌)、炎症性サイトカイン(インターロイキン類(IL)-1α、Mip2、IP10;図26Gを参照のこと)およびNASH/線維症に関する生化学マーカー(例えばTGFβ、コラーゲン(図26Hを参照のこと))の有意な増加を示した。
キスペプチンはまた、脳に作用し、中心生殖系を制御する。キスペプチンの長期投与は、性ステロイドホルモン合成の抑制をもたらす。これは、前立腺癌を有する男性においてテストステロンレベルを下げるために用いられている(2つの第1相臨床試験)、持続作用性TAK-448により模倣される。さらに、異なる名称(MVT-602)でTAK-448は、女性の不妊を治療するためにMYOVANTにより試験されており、現在第1相および第2相臨床試験である。
TAK-448は、キスペプチン54の完全に活性なC末端10アミノ酸(キスペプチン10)のオリゴペプチド類似体である。それは、数分以内に急速に分解されるキスペプチン類とは対照的に、血液中で4時間の半減期を有する。TAK-448は、強力なキスペプチン1受容体(KISS1R、またはGPR54)作用薬である。KISS1Rは、キスペプチンを結合するG蛋白質共役受容体である。キスペプチンは、転移(metastasis)抑制遺伝子KISS1によりコードされ、様々な内分泌組織および生殖腺組織で発現される。キスペプチンおよびKISS1Rは、思春期の発現と視床下部-下垂体-性腺軸の制御におけるそれらの関与のため、哺乳動物の生殖に重要な役割を担っている。それは、前立腺癌、低テストステロン、前立腺腫瘍、および低ゴナドトロピン性性機能低下症の治療を試験する治験に用いられている。TAK-448の構造は、以下である:

Figure 2023521388000002
目的の配列に関しては、下の表1を参照のこと。
Figure 2023521388000003
本発明の実施態様にしたがって治療され得る対象としては、研究室動物、ペット動物、家畜、動物園の動物などの哺乳動物(ヒトを含む)が挙げられる。好ましい対象は、ヒトおよび齧歯類である。本発明に好適な対象は好ましくは、肝臓における脂肪蓄積または脂肪肝を含む任意の疾病または病態を含む疾病を含む、TAK-448の投与により改善され、治療されまたは予防され得る疾病を、有することが疑われる、有すると診断されている、または発症するリスクを有する、ヒトである。
TAK-448は、脂肪蓄積または脂肪肝を含む疾病または病態において、疾患の進行を予防、遅延、緩徐、逆行、または疾患の進行を止めるために投与されてよい。そのような病態としては、(1)NAFLD、(2)NASH、(3)脂肪肝疾患、(4)肝炎、(5)肝線維症、(6)肝硬変、(7)黄疸、(8)肝臓癌、または(9)対象の肝臓が5%以上の脂肪を含む任意の病態、が挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書中の用語「NAFLD/NASH」は、非アルコール性脂肪肝疾患および/または非アルコール性脂肪性肝炎を指す。NAFLDは、脂肪症(脂肪肝)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、線維症および肝硬変(肝臓の過度の瘢痕化)を含む、様々な病態を包含する。
本明細書に記載される本発明における使用のための化合物としては、TAK-448またはその保存的変異体、およびキスペプチン10またはその保存的変異体が挙げられるが、これらに限定されない。保存的変異体は、約90%以上の配列同一性、または上記のような化学的に修飾されたペプチドである。例えば、キスペプチン10の保存的変異体は、キスペプチン10の欠失、置換、および付加、ならびに例えば、下記の表2~表6に例示されるものなどの、化学的変種を含む。TAK-448の保存的変異体は、TAK-448の欠失、置換、および付加、ならびに例えば、下記の表2~表6に例示されるものなどの、化学的変種を含む。
Figure 2023521388000004
Figure 2023521388000005
Figure 2023521388000006
Figure 2023521388000007
Figure 2023521388000008
Figure 2023521388000009
Figure 2023521388000010
Figure 2023521388000011
Figure 2023521388000012
Figure 2023521388000013
Figure 2023521388000014
本発明の化合物はまた、塩基、および薬学的に許容可能な水和物、溶媒和、酸または塩を含み、不定形または任意の結晶形態で、あるいは油またはワックスとして存在し得る。任意の薬学的に許容可能な塩を、状況に応じて、利用できる。
一般に、これらの塩は薬学的および生物学的に許容可能な無機酸または有機酸および塩基または金属に由来する。そのような塩の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:
酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アンモニウム塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩(ベシル酸塩)、重炭酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、樟脳酸塩、カンファースルホン酸塩、炭酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、グリコール酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マグネシウム塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩(メシラート)、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、カリウム塩、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、ナトリウム塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トルエンスルホン酸塩(トシラート)およびウンデカン酸塩。
化合物はまた、治療剤の任意または全ての立体化学的形態(すなわち、各不斉中心についてR配位および/またはS配位)を含む。したがって、治療剤の単一光学異性体、ラセミ混合物、およびジアステレオマー類は、本発明の範囲に含まれる。また、治療剤の立体異性体および位置異性体も本発明の範囲に含まれる。いくつかの実施態様の治療剤はまた、1種類以上の同位体標識原子の存在に関してのみ異なる化合物を含むことが意図される。例えば、1種類以上の原子が、例えば、重水素、トリチウム、13C、14C(またはリン、カルシウム、ヨウ素、塩素、臭素、または同位体標識に好都合である他の任意の元素などの本技術分野で通常用いられるような任意の同位体標識)で置換されている治療剤は、本発明の範囲内である。
TAK-448などの化合物、および本発明の実施態様にしたがう他の化合物は、当該技術分野で公知の好適な任意の経路または方法により対象に投与されてよい。好適な投与経路としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:経口投与、静脈内投与、動脈内投与、くも膜下腔内投与、腹腔内投与、皮内投与、皮下投与、筋肉内投与または腹腔内注射、坐薬またはかん腸剤による直腸内投与または腟内投与、経粘膜投与、経皮投与、頬側投与、鼻投与、吸入投与、舌下投与、局所投与、または標的組織内または標的組織上への直接的局所投与、または治療有効量の薬剤または組成物を標的細胞または標的組織に送達する任意の経路または方法による投与。投与が経口である場合、好ましい用量形態は、遅延放出またはペプチドまたはペプチド類似体化合物が分解する前に化合物が吸収されることを可能にする他の製剤である。好ましくは、本発明の実施態様の方法は、皮下投与または静脈内投与を含む。投与は、輸液または点滴により行われてよく、かつ埋め込み、埋め込みポンプ、または外部ポンプ、または当該技術分野で公知の任意のデバイスにより投与されてよい。
好ましい方法の実施態様において、本明細書に記載の化合物は、薬学的に許容され得る担体および、本明細書に記載の本発明の化合物を1種類以上含む、および併用療法のために、同じまた別の種類の脂肪肝軽減薬などの、付加的薬剤と共に本明細書に記載の本発明の化合物の1種類以上を含む、1種類以上の薬剤を含む医薬品組成物として製剤化され投与される。
TAK-488などの本発明の化合物と同時にまたは逐次的に、併用療法において用いるための化合物の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:ACC阻害剤、AMPK、AKR-001、アラムコール(aramchol)、ASC40、AZD7687、BI-1467335、BI089-100、BMS-986036、カナグリフロジン(canagliflozin)、セニクリビロック(cenicriviroc)、シロフェキソール(cilofexor)、ダパグリフロジン(dapagliflozin)、DGATEDP-305、エラフィブラノール(elafibranor)、エロビキシバット(elobixibat)、エンパグリフロジン(empagliflozin)、エムリカサン(emricasan)、エキセナチド、EYP001a、FALCON1(PEG-FGF21(FASN阻害剤)、フェノフィブラート、フィルソコスタット(firsocostat)(FXR作用薬)、GR-MD-02、IONIS-DGAT2r、イプラグリフロジン(ipragliflozin)、リコグリフロジン(licogliflozin)、リラグルチド(liraglutide)、ルセオグリフロジン(luseogliflozin)、EY3202328、MET409、MGL-3196、MK-4074、MSDC-0602K、MT-3995、NGM282、ニドゥフェキソル(nidufexor)、OAT-1251、オベチコール酸、OCA、OWE833、PF-05221304、PF-06835919、PF-06865571、PF-06882961、ピオグリタゾン、PX-102、PXE770、PXS-5153A、セラデルパー(seladelpar)、セロンセルチブ(selonsertib)、セマグルチド(simaglutide)、シムツズマブ、TERN-101、TERN-201、トロピフェクサー(troifexor)、TTP273、ビタミンD、ビタミンE、VK2809、およびボリキシバット(volixibat)。さらに、TAK-448、キスペプチン、およびそれらの変異体などの化合物を投与することによる治療は、食事および運動の変更および減量を含む一次治療により実施できる。
薬学的に許容され得る担体は、毒性でなく、かつそれが共に製剤化される治療剤の薬理学的活性を消失させず有意に低下させない、任意の利便的な化合物または化合物群を指す。そのような薬学的に許容され得る担体または媒体は、当該技術分野で考察されるものなどの、当該技術分野で公知の薬学的に許容される標準的な任意の固体状担体、液状担体、またはガス状担体を含む。好適な担体は、医薬品組成物について意図される投与経路に応じて異なる。
本発明と共に利用することが意図される担体および媒体の非包括的リストは、以下である:充填剤、希釈剤、アジュバント、pH調整剤、緩衝液、防腐剤、結合剤および崩壊剤、溶媒、脂質類、リポソーム、乳剤、懸濁液、および容器(例えば、アンプル、ボトル、予め充填された注射筒など)。
液状担体は、溶液、懸濁液、乳剤、油、ゲルなどの形態であってよく、例えば、水溶液(例えば、生理食塩水、リン酸緩衝性生理食塩水、リンゲルなど)、水中油型または油中水型乳剤、リポソームなどを含む。ガス状担体としては、例えば空気、酸素、フッ化炭素、分散剤などが挙げられる。固体状担体としては、例えば、でんぷん(例えば、トウモロコシでんぷん、ジャガイモでんぷん、米デンプンなど)、セルロース(例えば、微小結晶セルロースなど)、糖類(例えば、乳糖、スクロース、グルコースなど)、クレー(clay)、ミネラル類(例えば、タルクなど)、ガム、香味料、防腐剤、着色剤、矯味剤、甘味料、脂質類、油類、溶媒、生理食塩水、乳化剤、懸濁化剤、湿潤剤、分散剤、結合剤、滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウムなど)、塩、pH調整剤(例えば、酸または塩基)、緩衝液などが挙げられる。
注射に好適な薬学的組成物は、滅菌水溶液(水溶性である)または分散液、懸濁液または乳剤、および注射可能な滅菌溶液または分散液の即時調製用の滅菌粉末または顆粒を含む。静脈内投与のために、好適な担体は、生理食塩水、静菌水、Cremophor EL(登録商標)(BASF(登録商標)、Parsippany、N.J.)または(例えば、リン酸)緩衝液性食塩水(PBS)を含む。いずれの場合にも、組成物は、滅菌されるべきであり、かつ容易に注射できる程度に流動的であるべきである。それは、製造条件下および保存条件下で安定である必要があり、かつ細菌および真菌などの微生物の混入する作用に対し保存されなくてはならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液状ポリエチレングリコールなど)、およびその好適な混合物を含む、溶媒または分散媒体であってよい。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用により、分散液の場合には選択される粒子サイズの維持により、および界面活性剤の使用により、維持できる。微生物の作用の阻止は、各種抗菌物質および抗真菌物質、例えば、パラベン類、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどにより達成できる。場合によっては、等張化剤(例えば、糖類、マンニトール、ソルビトールなどのポリアルコール類、または塩化ナトリウム)が、組成物に含まれる。注射可能組成物の持続吸収は、吸収を遅延する薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムまたはゼラチンを組成物に含有させることにより達成できる。
徐放性組成物および持続性放出組成物もまた、本発明の実施態様と共に、または本発明の実施態様において用いることが意図される。したがって、好適な担体は、活性成分の遅延放出、徐放または持続性放出を達成するために、公知の成分の任意のものを含み得る。
投与の経路は、利便性、治療する対象の健康および病態、ならびに治療する部位、および病態のステージにしたがって、当業者により決定される。したがって、医薬品組成物が取り得る形態としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:錠剤、カプセル、カプレット、トローチ剤、糖衣錠、丸薬、顆粒、経口用溶液、希釈用粉末、吸入用粉末、蒸気、ガス、注射用または点滴用の滅菌溶液またはその他の液体、経皮パッチ、頬パッチ、挿入剤または埋め込み剤、直腸坐剤、膣坐剤、クリーム、ローション、油類、軟膏、局所被覆剤(例えば、創傷被覆剤および包帯)、懸濁液、乳剤、脂質小胞など。
治療レジメンとしては、単回投与または、1週間、2週間、数週間、1か月、2か月、数か月、1年またはより長くを含み、対象の残りの生涯にわたる投与を含む、2日以上続く一連の投与が挙げられる。レジメンは、例えば、複数回投与/日、1回投与/日または1回投与/週、または1時間、数時間、丸1日またそれより長い期間継続する長時間点滴投与を含み得る。
好適な投与形態は、患者、治療する病状、および治療病態の重症度に応じて、治療医により決定されてよい。そのような投与形態は、所望の結果を生じる任意の量、投与の形態、または投与レジメンを含む。投与毎の投与量は、医師により決定される任意の量を含み、治療対象の体重、対象の状態と健康、投与経路、治療または予防する病態などに依存する。。
一般に、大部分の対象にとっては、約0.01nmol/時間~約10nmol/時間の範囲の用量が、好適であり、好ましくは約0.1nmol/時間~約5nmol/時間が、有用であり、約1時間~約72時間、または約24時間~約48時間にわたり、または複数日、複数週間、またはそれを超える期間にわたり与えられることが意図される。この用量は、毎週、毎日、または複数回/日、あるいは連続点滴、経皮製剤、またはデポー製剤として投与されてよい。
さらに、約0.01mg、約0.02mg、約0.025mg、約0.05mg、約0.1mg、約0.2mg、約0.5mg、約1mg、約2mg、約3mg、約4mg、約5mgの、またはそれより多い単回注射用量が、投与されてよい。あるいは、約0.002μmol/kg、約0.004μmol/kg、約0.008μmol/kg、約0.01μmol/kg、約0.025μmol/kg、約0.5μmol/kg、約0.75μmol/kg、約1μmol/kg、約2μmol/kg、約5μmol/kg、約8μmol/kg、約10μmol/kgの、またはそれより多い単回注射用量が、投与されてよい。
4:結果のまとめ
HFD(欧米型の高脂肪食餌、60%キロカロリーの脂肪)を給餌した肝キスペプチン受容体(KISS1R)ノックアウトマウスは、食物摂取には変化がないにもかかわらず、HFDでの同腹仔対照と比較した場合、体重、肝脂肪症におけるより大きな増加、上昇された肝臓トリグリセリド、並びに血中トリグリセリドおよびALT(脂肪肝の臨床マーカー)のより高いレベルを有した。これは、NAFLDおよび他の脂肪肝病態の病因におけるキスペプチン/Kiss1R経路の病理学的役割を示唆する。
肝Kiss1Rノックアウトマウスはまた、対照と比較して(いずれもHFDを給餌)、不耐糖であり、インスリン抵抗性であった。肝KISS1Rノックアウトマウスからの肝臓は、対照と比較して(いずれもHFDを給餌)、NASH/線維症の生化学マーカー(例えば、TGFβ、コラーゲン)、および炎症性サイトカイン(インターロイキン類(IL)-1α、Mip2、IP10)において有意な増加を示した。
TAK-448の皮下投与は、媒体(PBS)対照で処置されたマウスと比較して、NAFLD(脂肪肝または脂肪症)の発症およびそのNASHへの進行に対し高脂肪給餌マウスを保護した。
高脂肪給餌マウスへの1か月間のTAK-448の投与は、肝臓トリグリセリドの蓄積、および血液中のトリグリセリド類、遊離脂肪酸およびグリセロール(トリグリセリド構成要素)の上昇を抑えた。これらの変化は、NAFLDを発症したHFDでの媒体処置対照と比較して、食物摂取における変化なしに起こった。
TAK-448処置はまた、末梢における脂肪蓄積およびインスリン抵抗性を防ぎ、かつ炎症および線維症(NASHの特徴)を制御する主要遺伝子の発現を低下させることによりNASHの発症を防いだ。
5:実施例
本発明は、記載の特定プロセス、組成物、または方法論のみに限定されるものではなく、これらは変わり得る。本明細書に記載され用いられる専門用語は、特定形態または実施態様を説明する目的においてのみ使用され、本発明の範囲を限定する意図はなく、本発明は付属の特許請求の範囲によってのみ規定される。本明細書に記載する方法および材料と類似または同等の任意の方法および材料を、本発明の実施態様の実施または試験に用いることができるが、好ましい方法、デバイス、および材料をここで説明する。本明細書中で言及される公開物はいずれも、その全体が参照として本明細書に組み入れられる;本明細書中のいかなる箇所も、本発明が先行発明によるそのような開示に先行する権利を与えられないことの承認として解釈されるべきではない。
実施例1:方法と材料
A:動物
動物実験は、ラトガース大学にて施設内動物実験倫理委員会により規定された指針により承認された。Kiss1r Alb-Creノックアウトマウスを、オスのAlb-Cre+/-とメスのKiss1r rf/f1を掛け合わせることにより作成した。Alb-Creマウスを、Jackson Laboratories(登録商標)から購入した。Kiss1r f1/f1マウスを、公知の方法にしたがって作成した。F1の作成は、Kiss1 AlbCre+/-またはKiss1r f1/+、AlbCre-/-であった。Kiss1r f1/+、AlbCre+/-をKiss1r f1/f1に戻し交配して、Kiss1r f1/f1、AlbCre+/-(肝臓ノックアウト:LKO)およびKiss1r f1/f1(同腹仔対照)を作成した。マウスを、12時間の明暗サイクルで維持された無菌障壁施設にて飼育した。
4週齢オスのLKOおよび対照マウスに、高脂肪食餌(HFD:60%キロカロリーの脂肪、0.2796%コレステロール、炭水化物由来の20%カロリー(Research Diets(登録商標)カタログ番号D12492、New Brunswick、NJ)または通常の対照固形餌(RD)を給餌した。マウスを、群飼育し、餌および水を不断で与えた。所定の食餌を開始してから5か月後に、耐糖能試験を実施し、続いて1週間後にインスリン耐性試験を行った。全体重を、所定の食餌を開始してから20週間にわたり、毎週測定し、その後動物を安楽死させた。
B:KP類似体TAK-448の投与
オスのC57BL6/Jマウス(4週齢)を、6週間、HFDまたはRDで維持した後、空腹時血糖値を、測定した。TAK-448またはPBS(媒体対照)を含むAzlet(登録商標)小型浸透圧ポンプモデル2004(0.3nmol/時間)を、公知の方法にしたがいマウスの脇腹に皮下で挿入した。動物を、特段に明記されない限り4週間処置しRDまたはHFDで維持した(全体で10週間)。
C:代謝試験
血糖値測定を、血糖値測定器(Bayer Contour(登録商標))を用いて外側尾静脈の部位の小さな切り傷から行った。耐糖能試験では、マウスを12時間の絶食させ、その後D-グルコース(1g/kg)を腹腔内注射した。インスリン耐性試験では、マウスを6時間絶食させ、その後インスリン(0.5U/kg;Novo Nordisk(登録商標))を腹腔内注射した。
D:代謝ケージ評価法
マウスを、明暗制御と給餌を備えた8チャンバー臨床実験動物モニターシステム(CLAMS)で個別に飼育した。二酸化炭素排出、酸素吸収、呼吸商(RER)、歩行運動、および食餌量を、4日間にわたり測定した。
E:インスリン、グリセロール、トリグリセリド類、ALT、FFA、およびコレステロールの測定
血清インスリンレベルを、超高感度マウスインスリンELISAキット(Crystal Chem(登録商標))を用いて測定した。血清グリセロールレベルを、グリセロール測定キット(Sigma(登録商標))を用いて測定した。肝トリグリセリド類を、トリグリセリド定量キット(MBL(登録商標)、国際カタログ番号JM-K622-500)を用いて測定した。遊離脂肪酸を、遊離脂肪酸定量キット(Sigma(登録商標)、MAK044-1KT)を用いて測定した。ALTレベルを、製造元の指示にしたがいLiquid ALT(SGPT)試薬セットを用いて測定した;コレステロールレベルを、製造元の指示にしたがいコレステロールセットを用いて測定した。
F:免疫ブロットアッセイ
免疫アッセイを、公知の方法にしたがって実施した。マウスの肝臓組織または初代肝細胞を、プロテアーゼ阻害剤を含むRIPA溶解緩衝液中でホモジナイズし4℃で遠心分離した;溶解物中の蛋白質発現を、ウエスタンブロットにより分析した。蛋白質を、SDS-PAGEを用いて分離し、以下の抗体を用いて調べた:
Abeam(登録商標)(ウサギ抗KISS1R 1:1000;ウサギ抗MOGAT1、1:1000)、Cell Signaling Technology(登録商標)(ウサギ抗pAMPK、ウサギ抗AMPK、ウサギ抗pACC、ウサギ抗FASN、ウサギ抗PPAR-γ、ウサギ抗CD36、およびウサギ抗GYK;いずれも1:1000)、Proteintech(登録商標)(ウサギ抗KISS1、1:750)。マウス抗βアクチン(1:5000、Thermo Fisher Scientific(登録商標))または抗ビンキュリン (1:1000、Bio-Rad(登録商標))を、添加量対照として用いた。蛋白質を次いで、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)共役ウサギ2次抗体(1:2500、Cell Signaling Technology(登録商標))またはマウス2次抗体(1:2500、Cell Signaling Technology(登録商標))と1時間インキュベートした。ブロットを、ChemiDoc(登録商標)タッチイメージングシステム(Bio-Rad(登録商標))、SuperSignal and West Dura Extended Duration Substrate(Thermo Scientific(登録商標))を用いる化学発光により可視化した。蛋白質レベルを、Image Labソフトウエア(Bio-Rad(登録商標))を用いて定量した。
G:定量リアルタイムPCR(qPCR)
全RNAを、Trizol法を用いて細胞から抽出した。逆転写を、iScript RT Supermix(Bio-Rad(登録商標))を用い製造元の指示にしたがい行った。遺伝子発現を、下の表7に示すプライマーを用いて以前に記載されたように、SYBRグリーン・リアルタイムqPCR(RT-qPCR)を用いて決定した。以下のプライマーを、BioRad(登録商標)(検証済みPCRPrime(登録商標)プライマー)から購入した:
Srebp1、Aqp3、Aqp9、Gpat2、Agpat2、Dgat1、Dgat2、Mogat1、Slc2a2、Dgkg、Dgkh、Lgpat1、Sod1、Sod2、Gss、Ucp2、およびGpam。Il-13を、Qiagen(登録商標)(QT00099554)から購入した。Srebf1、Aqp3、Aqp9、Gpat2、Agpat2、Dgat1、Dgat2、Mogat1、Slc2a2、Lgpat1、Sod1、Sod2、Gss、Ucp2、およびGpamのプライマーは、既製品であり、BioRad(登録商標)から購入した。
Figure 2023521388000015
Figure 2023521388000016
H:組織学的分析
肝臓組織を、マウスを安楽死させた後に10%中性ホルマリンで直ぐに固定した。組織を、ラトガース大学で病理実験サービス部門により組織学用に処理した。肝臓を、5μm厚の切片に切り出し、ヘマトキシリンおよびエオシンで染色した。切片を、組織病理学的変化について光学顕微鏡法で調べた。
I:液体クロマトグラフィー-質量分析(LC-MS)による代謝分析。
LC-MSによる血清および肝臓の代謝分析を、公知の方法にしたがって実施した。細胞代謝産物のLC-MS分析を、親水性相互作用クロマトグラフィーを備えたQ Exactive Plus Hybrid Quadrupole Orbitrap質量分析器(Thermo Fisher Scientific(登録商標))で実施した。データを、各標識同位元素(質量精度窓:5ppm)につきMAVENソフトウエアを用いて取得した。標識同位体の天然存在率および不純物を、RでコードされたAccuCorパッケージを用いて補正した。
J:初代マウス肝細胞試験
マウス由来の初代肝細胞を、公知の方法にしたがって単離した。マウス(野生型、C57BL6)またはLKOおよび同腹仔対照を、ケタミン/キシラジン混合物(Henry Schein(登録商標))を用いて麻酔した。肝臓に肝門脈経由でカニューレを挿入し、まずEGTAを含むクレブスリンゲル溶液で37℃10分間の灌流を行った。第1の洗浄の後に、CaCl2およびLIBERASE(Roche(登録商標))を含む第2のクレブスリンゲル溶液を、肝臓が完全に灌流されるまで用いた。肝細胞を、ガーゼメッシュにより濾過し、10%FBS(Sigma(登録商標))、200nMデキサメタゾン(Sigma(登録商標))、5mMのペニシリン/ストレプトマイシン(Fisher(登録商標))、2mM L-グルタミン(Fisher(登録商標))を含むウイリアム培地E(Sigma(登録商標))に再懸濁した。細胞を、コラーゲンでコーティングした6穴プレート(Sigma(登録商標))に3x10の密度で播種した。肝細胞を、回復のために一晩静置し、次いで実験前に3時間、血清飢餓状態にした。遊離脂肪酸(FFA)負荷のために、150μMオレイン酸および150μMパルミチン酸を、2%BSA(0.3mM)と共役させた。細胞に、単離後FFAを負荷し、血清飢餓前に細胞を一晩回復させてから、KP-10またはTAKで処理した。
K:ヒト肝細胞HepaRG細胞
ヒト肝HepaRG細胞を、Thermo Fisher Scientific(登録商標)から購入した。細胞を、10%ウシ胎仔血清、ペニシリン-ストレプトマイシン(10,000U/mL)、2mM L-グルタミン、5マイクログラム/mLのインスリン(ヒューマリンR)、50およびマイクロモルのヒドロコルチゾンヘミコハク酸を含むウイリアム培地E中で、コンフルエントへと増殖させた。コンフルエント細胞を、2週間2%DMSOを含む増殖培地を補充することにより、分化させて、肝細胞様前駆細胞および肝前駆細胞の両方を含むコンフルエント分化培養物を取得し、その後細胞を、継代し実験に用いた。
L:トリグリセリド合成
遊離脂肪酸(150μMオレイン酸および150μMパルミチン酸)を、2%BSA(0.3mM)と共役させた。細胞に、単離後FFAを負荷し、細胞を血清飢餓前に一晩回復させてから、KP-10(R&D Systems(登録商標))またはTAK-448(MedChemExpress(登録商標))で処理した。TGを、トリグリセリド定量キット(MBL(登録商標)、国際カタログ番号JM-K622-500)を用いて測定した。
M:免疫蛍光
免疫蛍光試験のために、細胞を、ホルマリンで固定し、Triton(登録商標)Xで透過性処理し、記載されるように染色した。細胞を、KISS1抗体(EMD Millipore(登録商標)、1:250)とインキュベートし、次いでヤギ抗ウサギ-AF555(Invitrogen(登録商標);1:400)とインキュベートした。核を、Hoechst(登録商標)(Invitrogen(登録商標);1:10000)で染色した。画像を、Zeiss(登録商標)LSM700レーザー走査顕微鏡を用いて取得した。
N:患者の血液収集と血漿キスペプチン測定
試験は、ラトガース大学で施設内倫理委員会により承認され、治験参加者全員(男性)は書面による同意を提出した。グルコース代謝または脂質代謝に影響を与え得る慢性病態(活動性悪性腫瘍、HIV感染、B型肝炎、C型肝炎、アルコール依存症、慢性膵臓炎、活性ウイルス/細菌感染、重度の心不全または呼吸器不全を含む)を有する個体を除外した。健常対象および脂肪肝(NAFLD、N=16)またはNASH(N=8)を有する患者における、血漿KP免疫反応性を、決定した。NAFLD診断は、肝臓疾患の他の原因が存在しない場合のASTおよびALTレベルの上昇ならびに超音波エコーで肝脂肪症の存在に基づいた。NASH診断は、大滴性脂肪化脂肪症、小葉および門脈の炎症ならびに線維症を検出する組織学的分析に基づいた。簡単に説明すれば、血液(5mL)を、ロバートウッドジョンソン医科大学(New Brunswick、NJ)にて専門分科クリニックからの参加対象から、BDバキュテイナK2 EDTA採血管(VWR International)に採取した。血液を、1210xgで10分間遠心分離し、血漿を、保存のために直ぐに凍結した。血漿KP免疫反応性を、市販のキスペプチンELISAを用いて測定した。
O:免疫組織化学
マウスの肝臓を、ラトガース大学で病理実験サービス部門により組織学用に処理した。オイルレッドO染色を、中性脂肪を検出するために、凍結肝臓組織のクリオスタット切片で行った。健常ヒト肝臓のパラフィン切片を、OriGene Technologies(登録商標)社(MD、米国)から購入した。NASH/NAFLD患者からのパラフィン切片を、診断が病理医により確認された後にロバートウッドジョンソン医科大学病院病理検査室で寄託されていた肝臓組織から取得した。脱パラフィンおよび加熱により誘導される抗原回復後に、スライドを、ウサギポリクローナル抗GPR54(Abeam(登録商標)、abl37483;1:1000)とインキュベートし、次いで、ImmPRESS(登録商標)HRP抗ウサギIgG(ペルオキシダーゼ)ポリマー検出キット(Vector Laboratories(登録商標))を用いた。
P:酸素消費速度(OCR)
OCRを、単離初代マウス肝細胞およびヒト肝HepaRG細胞ならびにAgilent Seahorse Biosciences(登録商標)の細胞外フラックスアナライザー(XFe24)を用い製造元のプロトコルにしたがって測定した。簡単に説明すると、細胞を、500μLのウイリアム培地E(10%FBS、200nMデキサメタゾン、1%ペニシリン/ストレプトマイシン、および2mMグルタミン)中でXF24プレートに2x10細胞/ウェルの密度で播種し、37℃、5%COで、100μM BSA-PALまたはBSA+/-TAK-448(3nM)と一晩プレインキュベートした。細胞を、アッセイの前に、1時間、血清飢餓状態にした。基礎OCR測定を、0.5mMグルコースおよび0.5mM L-カルニチンを含むSeahorse(登録商標)XF培地中で行い、TAK-448(3nM)またはPBSで処理した。結果を、Waveソフトウエアを用いて分析した(Agilent(登録商標)Technologies)。
Q:統計分析
2群間の統計的有意性を、対応のない両側スチューデントt検定で評価した。複数群間の比較のために、一元配置分散分析の後に、ダネットの多重比較検定を用いた。P値<0.05を、統計的に有意であるとみなす。グラフを、GraphPad(登録商標)Prismバージョン8.3.1(San Diego、CA)を用いて作成した。
実施例2:初期試験;キスペプチン類似体(TAK-448)投与はNAFLDの高脂肪食餌誘導性前臨床マウスモデルにおいてNAFLD(脂肪肝およびそのNASHへの進行)を防ぎかつインスリン抵抗性の発現を予防する
C57BL/6Jマウスに高脂肪食餌(HFD)、あるいは対照に通常食(RD)を12週間与えた(4~5匹/群)。TAK-448(TAK)または媒体(Vehすなわち、PBS対照)を、皮下埋め込みALZET小型浸透圧ポンプを用いて4週間投与した。結果については、図1を参照のこと。脂肪症が、対照肝臓において、ヘマトキシリン-エオシン染色したマウス肝臓により(脂質蓄積、白い小型液滴、矢じり)、脂質のオイルレッドO染色により(灰色の点)示される(図1A)。これは、TAK-448処置群(図1A)において防止された。図1B~図1Gは、それぞれ、終点肝臓トリグリセリド(TG)、終点血中TG、血中遊離脂肪酸、血中グリセロール、体重、精巣上体白色脂肪組織への脂肪蓄積、および鼠径部白色脂肪組織への脂肪蓄積を示し、TAK-448投与により、それらはすべて減少する。TAK-448処置は、それぞれ、耐糖能試験(GTT)またはインスリン耐性試験(ITT)により測定されるように、空腹時血糖(肝臓による糖新生の測定)の上昇を防ぎ、かつ不耐糖およびインスリン抵抗性を防いだ。図1H~図1J(黒丸)とそれに対する対照(白抜きの丸)を参照のこと。*、p<0.05;スチューデントのt検定または一元配置分散分析およびダネットの事後検定。TAK-448は、(1)NAFLD患者(II型糖尿病を有する/有しない)および(2)NASH患者における疾患の進行を遅延させる、または防止するために投与され得る。
実施例3:TAK-448処置は、NAFLDのマウスモデルにおいて食物摂取を変化させない
NAFLDの発症に対する、KISS1Rシグナル伝達増強の効果を決定するために、野生型C57BL6Jマウス(4週齢)に6週間RDまたはHFDのいずれかを給餌した。HFDでの野生型マウスは、体重が増加し(図2A)、インスリン抵抗性を発現し、TAK-448投与前に空腹時血糖値の上昇をもたらした(糖尿病;図2B)。マウス(同じような体重の同腹仔)に次いで、媒体(PBS)またはKP類似体(TAK、0.3nmol/時間)を点滴し、さらに4週間RD/HFDで維持した。予想通り、HFD対照(VEH)マウスは、RD(VEH)対照マウス(図1E)に比較して、有意に高い体重を有した。しかし、HFDマウスの間で、TAK処置マウスは、VEH(媒体)対照よりも有意に低い体重かつ媒体群対照(図1E)に比較して低い空腹時血糖値を有した;これらの変化は、食物摂取の変化なしに起こった(図2C)。これらの表現型に合致して、HFD給餌TAK処置マウスは、HFD対照に比較して、耐糖性(図1I)かつインスリン感受性(図1J)であった。
実施例4:キスペプチン類似体(TAK-448)処置は、NAFLDの高脂肪食餌(HFD)誘導性前臨床マウスモデルにおいて、肝酵素(ALT)および血液循環トリグリセリドおよび遊離脂肪酸のレベルを低下させ、かつ白色脂肪組織量を減少させる。
肝臓のトリグリセリド蓄積およびグルコース恒常性に対するその顕著な効果に加えて、高脂肪給餌マウスにおけるTAK-448処置はまた、脂肪肝疾患の臨床マーカーであるALTの上昇(図3Aを参照のこと)を防ぎ、かつ血中のコレステロール(図3Bを参照のこと)およびグリセロール(図3Cを参照のこと)を低下させた。CLAMS分析は、処置マウスと未処置マウスの間で、エネルギー産生または呼吸商(RER)に差がないことをさらに明らかにした(図4Aおよび図4B)。
機構的には、HFD条件下でのTAK処置は、TG合成および脂肪合成の主要制御因子(PPARγ、CD36およびMOGAT1など)の肝発現を有意に低下させた(図5A;図5B;図6A;図6B;図6C)。さらに、TAK処置は、肝臓においてAMPKのリン酸化を誘導し(図7;図8A);それは、活性化時にPPARγの転写を阻害する。AMPK活性化はまた、グリセロール-3-リン酸アシルトランスフェラーゼ (GPAT)活性の急性阻害により、およびSREBP1の転写を負に制御することにより、脂質合成を阻害する。Gpam(GPATをコードする)の発現は、TAK処置肝臓で有意に減少され(図5A)、これは、GPAT活性の低下をもたらし得る。Srebf1の低下は有意ではなかったが、その下流標的Fasnにおいて有意な低下があった(図5B;図8B)。TAK処置は、脂質生成の重要な制御因子であるLfabp1およびGyk1の発現を低下させた(図5A)。
最後に、TAK処置肝臓は、炎症性遺伝子(Ip10、Mcp1;図9A)のより低いレベル、線維症マーカー(Cola2、Acta2;図9B)および酸化ストレスマーカー(Ucp2、Gss;図9B)の低下されたレベルを有した。全体的に、これらのデータは、インビボTAK処置が、AMPK活性化を介して脂質合成を下方制御することにより脂肪症を防ぎ、これがNAFLDの発症を軽減させることをが示唆する。
ACCのリン酸化は、その活性を低下させ、それによりデノボ脂質生成を阻害する(図31B;図32Bを参照のこと)。RD給餌の肝臓KISS1Rノックアウト(LKO)マウスから単離した肝細胞は、CD36、FAS、PPARγ、およびMOGAT1のレベル上昇を示した(図33A、図33B;図34A~図34Dを参照のこと)。まとめると、これらのデータに基づき、KISS1Rの活性化は、AMPKを活性化することにより肝脂肪量を負に制御し、これは次いで、PPARγ(トリグリセリド合成の主要制御因子)およびその下流のシグナル伝達経路を阻害することに加えて、デノボ脂質生成を阻害することが、示唆される(図40を参照のこと)。
図40は、それによりKISS1R活性化がNASHへの進行を阻害するシグナル伝達経路を示す最新の作業モデルである(破線矢印を参照のこと)。キスペプチン(KP)類似体(TAK-448)によるKISS1Rの活性化は、マスターエネルギーセンサー(AMPK)を活性化し、それをリン酸化する。活性化されたAMPKは次いで、その下流標的酵ACCをリン酸化することによって、脂質生成(脂肪形成)を阻害し、その阻害をもたらし、それにより脂質生成を阻害する。これはまた、ミトコンドリアで脂肪酸のベータ酸化を促進する主要酵素であるCPT1の活性化をもたらし、脂肪分解をもたらす。さらに、AMPKの活性化は、TG合成経路において多くの酵素を発現制御する転写因子PPAR-γの活性と発現を低下させることにより、トリグリセリド(TG)合成を阻害する。全体的に、これは、肝臓における脂肪蓄積減少をもたらし、したがってNAFLDおよびそのNASHおよび線維症への進行を阻害する。
実施例5:TAK-448投与は、肝臓のトリグリセリド合成およびデノボ脂質生成に関する主要制御因子の発現を阻害した
図10は、qPCR分析による表示される遺伝子(トリグリセリド合成および脂肪形成(脂質生成)の制御因子)の発現に関するデータを表している。*p<0.05、対照との比較;対応のないスチューデントt検定。これらのデータは、TAK-448処置が肝臓のトリグリセリド(TG)合成およびデノボ脂質生成の主要制御因子の発現を低下させることを示す。各遺伝子について、発現における有意な減少があり(どの遺伝子であるのか、それらが何に関与するのか)、そのためTAK-448処置は、患者の肝臓脂肪を減らすために用いられ得る。
実施例6:TAK-448投与は、肝臓の炎症の主要制御因子の発現を阻害した
炎症の制御における表示される主要遺伝子(マクロファージ炎症性蛋白質(Mip2)、ケモカイン、インターフェロンγ誘導性蛋白質10(Ip10)、インターロイキン1アルファ(Il1a)、炎症性サイトカイン腫瘍壊死因子(TNF)-α(Tnfa)、単球化学誘引蛋白質(Mcp1)、およびインターロイキン1α(Il1a)および1β(Il1b))の発現を、qPCR分析により調べ、結果を図11に示す。*p<0.05、対照との比較;対応のないスチューデントt検定。この結果は、TAK-448処置が肝臓の炎症のこれらの主要制御因子の発現を低下させることを示す。
実施例7:TAK-448投与は、肝線維症の主要制御因子の発現を阻害した
qPCR分析による線維症を制御する表示される遺伝子(コラーゲン(Col1a2)、平滑筋アクチン(Acta2)および形質転換増殖因子β(TGFb))の発現を、図12に示す。*p<0.05、対照との比較;対応のないスチューデントt検定。結果は、このキスペプチン類似体が肝線維症の主要制御因子の発現を低下させることを示す。
実施例8:TAK-448投与は、脂肪のミトコンドリアでのおよびペルオキシソームでのベータ酸化を制御する遺伝子の発現を増加させた
TAK-448処置は、ミトコンドリアの脂肪酸輸送の律速酵素であるCpt1aおよびCpt2の発現を増加させ、かつ脂肪酸のペルオキシソーム内β酸化の律速段階を制御するアシル補酵素A酸化酵素(AOX)の発現もまた増加させた。*p<0.05、対照との比較;対応のないスチューデントt検定。図13を参照のこと;これは、qPCR分析による表示される遺伝子の発現を示す。まとめると、TAK-448(キスペプチン類似体)処置は、脂肪のミトコンドリアでのおよびペルオキシソームでのベータ酸化を制御する肝臓遺伝子の発現を増加させ、これは、脂肪の分解の増加をもたらす。
実施例9:Kiss1rの肝ノックアウト(KO)は、NAFLDのマウスモデルにおいて、体重増加、肝脂肪症および脂質蓄積を促進する
肝Kiss1r KO(LKO)を、Kiss1r f1/f1マウスをAlb-Creマウス(Jackson Labs(登録商標))と交配することにより作成した。同腹仔対照(Kiss1r f1/f1)およびKiss1r KOマウス(3週齢、10匹/群)に、20週間にわたり通常食(RD)または高脂肪食(HFD)を給餌した。LKOマウスは、食物摂取に変化がなかったにもかかわらず(図14)、有意な体重増加を有した(図14A~図14C)。ヘマトキシリン-エオジン染色したマウス肝臓は、対照と比較して(すべてHFDを給餌)、LKO肝臓で脂肪症の著しい増加を示した(図15A)。対照的に、脂肪症は、RDを給餌した動物の肝臓では認められなかった(図15Bを参照のこと;健康な肝臓を示す)。四角で囲んだ領域の拡大像を、下に示す(図15B)。図16は、やはりHFDでの対照(CTRL)と比較して、LKO(HFD)マウスでの肝臓トリグリセリドの上昇を示す。*、p<0.05、スチューデントのt検定または一元配置分散分析およびダネットの事後検定。
実施例10:NAFLDの制御における肝KISS1Rの役割を決定するための、肝Kiss1Rノックアウトの作成
A:肝KISS1R欠損は、肥満のインスリン抵抗性マウスにおいて肝脂肪症を増悪させる
肝KISS1/KISS1RがNAFLDの発症に関与するか否かを調べるために、肝臓のKiss1/Kiss1rの発現を、NAFLDの食餌誘導性マウスモデルで評価した。4週齢の野生型C57BL/6マウスに8週間高脂肪食(HFD)を給餌した後、Kiss1およびKiss1rのmRNAレベルは、肝臓において有意に増加した。図17を参照のこと;それは、8週間にわたる通常食(RD)または高脂肪食(HFD)でのC57BL6オスのマウスにおける、Rpl13a mRNA発現に正規化されたRT-qPCRによるKiss1およびKiss1rの相対的mRNA発現を示す。このように、高脂肪食餌(HFD)は、キスペプチン(KISS1)の発現およびキスペプチン受容体(KISS1R)の遺伝子発現を誘導する。
次に、肝脂質代謝の制御におけるKISS1Rの役割を調べるために、Kiss1rの肝臓特異的ノックアウト(LKO)を作成した。LKOマウスの分析は、Kiss1ではなく、Kiss1rの発現が有意に低下されたことを示した。図18Aを参照のこと。LKOマウスおよびその同腹仔対照に次いで、対照通常食(RD)またはHFDを給餌した。RDを給餌したLKOおよび対照マウスは、体重における差異を示さなかった(図18B)。RER(呼吸交換率)および歩行活動における差は、群間で認められなかった(図18Cおよび図18Dを参照のこと)。
興味深いことに、高脂肪給餌のLKOマウスは、対照と比較して、より低い熱発生(低代謝を表す)を示した(図19A;CLAMSで評価された熱発生)。血清アラニントランスアミナーゼ(ALT)(脂肪肝疾患の臨床マーカー)のレベルは、RDと比較して両方のHFD群で上昇しており、HFD誘導性肝細胞傷害を示唆する(図19B)。
LKOマウスはまた、筋肉量の減少(図20A(腓腹筋)および図20B(前脛骨筋))を示し、HFDを給餌した対照と比較して精巣上体の白色脂肪組織には変化が認められなかったが、鼠径部における白色脂肪組織の増加を示した(図20Cおよび図20Dを参照のこと)。LKO HFDマウスにおける肝臓TGの増加は、肝KISS1Rが脂肪症に対し肝臓において保護的機能を果たすことを示唆する。
B:肝KISS1R欠損は、脂質生成および遊離脂肪酸(FFA)取り込みを制御する遺伝子を上方制御する
LKOマウスにおける肝脂質蓄積の機序を解明するために、脂肪酸取り込みの肝制御因子(脂肪酸トランスロカーゼ、分化クラスター(Cd36)、肝脂肪酸結合蛋白質、(Lfabp1))、および脂質生成の肝制御因子(ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体γ(PPARγ;Ppargによってコードされる)、ステロール制御性要素結合蛋白質1(SREBP1;Srebf1によってコードされる)およびその下流の標的脂肪酸合成(FAS;Fasnによってコードされる))のレベルを測定した。HFD条件下では、アセチルCoAカルボキシラーゼ1(ACC1;デノボ脂肪酸合成の最初の過程を触媒する)をコードするAcaca(増加したが有意ではなかった)を除き、脂肪形成を制御する主要な遺伝子(図21A;Rpl13a mRNAの発現に対し正規化された、肝臓試料(HFD)における表示される遺伝子の相対的mRNA発現)に有意な増加があった。PPAR-γおよびその下流遺伝子標的CD36の蛋白質レベル、ならびにFASのレベルもまた、対照と比較してHFD給餌LKO肝臓において有意に高かった(図21A;図22A、図22B、および図22C)。平均値±平均値の標準誤差を示す;対応のないスチューデントt検定;*p<0.05、対照群との比較。
さらに、LKO肝臓は、AMPKのリン酸化の抑制を示した(図21B;図22D);AMPKは、活性化されると、Srebf1およびその下流の遺伝子標的であるAcacaおよびFasnを負に制御することによりデノボ脂質生成を阻害する、蛋白質キナーゼである。
実施例11:肝Kiss1Rノックアウトは、トリグリセリド合成を制御する遺伝子の増加された発現および増加された肝臓脂肪値を示す
トリグリセリド(TG)合成は、グリセロール3-リン酸(G3P)を必要とし、それは、2種類の方法:(a)グリセロールのグリセロールキナーゼ(GYK)依存性リン酸化および(b)ジヒドロキシアセトンリン酸のグリセロール3-リン酸脱水素酵素(GPD1)依存性還元、により形成され得る。図23Aを参照のこと;肝トリグリセリド(TG)合成経路を模式的に示す;太字の分子は、HFD給餌LKOおよび対照(CTRL)の肝臓において上方制御される。HFD給餌LKOマウスからの肝臓の分析は、肝臓のGyk1のmRNAおよび蛋白質の発現レベルの有意な増加を明らかにした(図23B、図21B、および図24)。HFDでの肝Kiss1rノックアウト(LKO)マウスは、トリグリセリド合成を制御する遺伝子の上昇されたレベルを示した(図23Bを参照のこと)。
グリセロールは、主にAQP3およびAQP9などのアクアグリセロポリン類(AQP)を介して肝臓に入る(図23Aを参照のこと)。Aqp9のmRNAレベルは、LKO HFDマウス肝臓において有意に上方制御されるが、Aqp3のレベルは変化しない(図23B)。TG合成の律速段階を触媒するGPAT1(Gpamによってコードされる)、DAGをアセチル化してTGを生成するジアシルグリセロール(DAG)アシルトランスフェラーゼ 2(Dgat2)、およびモノアシルグリセロールをTGの直接的前駆体ジアシルグリセロールに変換する(図23Bを参照のこと)モノアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ1(Mogat1)を含む、TG合成を制御する多くの酵素もまた、LKO HFD肝臓で上方制御された(図23Aを参照のこと;HFDでのLKOマウスは、トリグリセリド合成を制御する遺伝子の上昇レベルを示すことを示している)。まとめると、これは、LKOマウスが、TG合成を制御する遺伝子の上昇したレベルを示したことを示す。
HFD条件下のLKOマウスにおいて観察される表現型の差に寄与する代謝的差異を明らかにする目的で、LKOおよび対照の肝臓の総合的な非標的代謝分析を実施した。これは、TG、DAG、およびホスファチジルコリンを含む各種の脂質類が、HFD給餌LKO肝臓で有意に上方制御されることを明らかにした(図25Aを参照のこと;質量分光法による、HFD給餌LKOマウスにおける、肝臓脂質代謝産物の増加を示すボルケーノプロットである)。同様の知見が、NAFLDおよびNASHに罹患している患者においても得られている。LKOマウスは、他の変化も示した。これらは、高レベルのセラミド類、ホスファチジルグリセロールおよびカルジオリピン含んだ。ミトコンドリアのリン脂質であるホスファチジルグリセロールは、肝脂肪症を含む複数の代謝性疾患に関与するが、セラミド合成阻害は、肝臓の脂肪症および線維症を軽減することが報告されている。カルジオリピンは、ミトコンドリアの最適機能に必須のリン脂質であり、その変化は複数の組織において、インスリン抵抗性およびNAFLDを含むミトコンドリア機能不全の原因となる。
データは、肝KISS1Rの欠損がおそらくはPPARγおよびその下流の遺伝子標的の上方制御を介してHFD給餌下の肝細胞に脂質蓄積の増加をもたらすことを明らかにしたので、これがRD給餌LKOマウスの肝臓においても起こるかどうかを求めた。興味深いことに、RDで維持されたLKOマウスは、脂肪症発症もTG蓄積も起こさなかった。しかし、Ppargは、Mogat1、Cd36、またはSrebf1の有意な変化なしに有意に上方制御された(図25Bを参照のこと)。このことは、それによりKISS1Rシグナル伝達が肝における脂質生成を制御する潜在的機構が、PPARγ制御を介することを示唆する。
実施例12:肝Kiss1r KOマウスは不耐糖でありインスリン抵抗性である
インスリン抵抗性はNAFLDの発症に重要な役割を担うので、代謝試験を、血糖値に対する肝KISS1R欠損の効果を調べるために実施した。結果は、HFD対照と比較して、HFD給餌LKOマウスは、糖新生の上昇を示唆する有意に高い空腹時血糖値を有したことを示した(図26Aを参照のこと)。それらはまた、不耐糖(図26Bおよび図26C)かつインスリン抵抗性であった(図26Dおよび図26E)。
さらに、LKO HFD肝臓において、G6pc(糖新生の最終過程でグルコース-6-リン酸をグルコースに変換する)、Pck1(オキサロ酢酸をホスホエノールピルビン酸塩に変換する)、およびSlc2a2によってコードされる肝グルコーストランスポーターGLUT2などの、糖新生を制御する主要な肝遺伝子の発現が増加した(図26F)。
NAFLDは、NASH(肝臓において炎症、線維症および酸化ストレスの増加に関連する病態)に進行し得る。本発明者らは、LKOマウスにおいて、20週間のHFD後に、サイトカインマクロファージ炎症性蛋白質2(Mip2)、インターロイキン1イソ型であるIL1αおよびIL1β(Il1aおよびIl1bによってコードされる)およびケモカインであるインターフェロンγ誘導性蛋白質10(Ip10)および単球誘引蛋白質(Mcp1)などのNAFLDに関連する炎症を制御する各種遺伝子の上方制御があったことを観察した。図26Gを参照のこと。
LKOマウスはまた、線維症の初期段階で上方制御される、NASHに関与する遺伝子の上昇を示した。これらの遺伝子は、コラーゲン(Col1a2)および形質転換増殖因子β(Tgfb1)を含んだ。平滑筋アクチン(Acta2)およびメタロプロテイナーゼ1(Timp1)組織阻害因子の増加も観察されたが、これは有意なレベルに達しなかった(図26Hを参照のこと)。さらに、酸化ストレスマーカー(Sod1、Sod2、Gss)の増加も認められた(図26Iを参照のこと)。まとめると、これらの知見は、肝KISS1Rシグナル伝達の欠損は肝臓に有害効果をもたらし、NAFLD表現型を促進することを示唆する。
実施例13:KISS1Rノックアウト(LKO)は肝臓において選択的である
肝臓で選択的な、KISS1Rノックダウンの特異性を示す、各種臓器におけるHFD給餌CTRLおよびLKOマウスでの、RT-qPCRによる遺伝子の発現(図27に示される)。*p<0.05、対照との比較;対応のないスチューデントt検定。
実施例14:肝KISS1Rシグナル伝達は、肝臓におけるPPAR-γの発現と活性を負に制御する
転写因子PPAR-γは、NAFLD患者および実験的マウスモデルの脂肪肝において誘導される脂質生成の主要制御因子である。図28は、HFDでのCTRLおよびLKO マウスの肝臓における上昇されたPPAR-γの発現にもかかわらず、阻害的部位(セリン112)でのPPAR-γの低下されたリン酸化を示す代表的なウエスタンブロットである。図28Aを参照のこと。対照的に、図28Bは、TAK-448の投与が、マウス肝臓でのPPAR-γ発現を低下させ、セリン112におけるそのリン酸化を誘導し、媒体(PBS)処置対照と比較してPPAR-γの標的遺伝子であるMOGAT1、CD36およびFASの発現低下を引き起こしたことを示す。図5Bを参照のこと。
実施例15:単離された初代マウス肝細胞:TAK-448処置は、デノボ脂質生成およびトリグリセリド合成の主要制御因子の発現を阻害することによりトリグリセリド蓄積を直接阻害する
データはKISS1Rシグナル伝達が脂肪症をインビボ阻害することを明らかにしたので、肝臓の脂質生成へのTAK-448の直接的効果を、初代マウス肝細胞を用いて調べた。図29Aは、初代肝細胞における内因性キスペプチン(KISS1蛋白質、矢印を参照のこと)免疫染色の代表的な共焦点顕微鏡像を示す。スケールバーは50μMである。肝細胞を、ウシ血清アルブミン(BSA)担体に共役させた遊離脂肪酸(FFA:150μMパルミチン酸塩および150μMオレイン酸塩)の混合物の存在下または非存在下で培養した。対照マウスから単離したFFAを負荷した肝細胞のKP-10(100nM)またはTAK-448(3nM)処置は、TG蓄積を減少させた(図29Bを参照のこと)。しかし、図29Cは、TAK-448およびKP-10が、肝KISS1Rノックアウト(LKO)マウスから単離した肝細胞ではトリグリセリド蓄積を抑制できなかったことを示す。TAK-448処置(8時間)はまた、オスのC57BL6マウスから単離され、ウシ血清アルブミン(BSA)担体に共役した遊離脂肪酸(FFA:150μMパルミチン酸塩および150μMオレイン酸塩)の混合物の存在下または非存在下で培養された初代マウス肝細胞において、デノボ脂質生成およびトリグリセリド(TG)合成を制御する遺伝子の発現を低下させた(図30)。8時間のキスペプチン(KP)処置またはTAK処置は、デノボ脂肪合成遺伝子の基礎発現を低下させ(図31A)、かつAMPKおよびその下流標的ACCのリン酸化を刺激した(図31B);このことは、TAK-448処置が単離初代肝細胞においてAMPKを活性化し、それにより脂肪合成を阻害したことを示している。図31Cは、KISS1Rの発現が、LKOマウスから単離した初代肝細胞において枯渇されることを示す。図32も参照のこと;これは、マウス初代肝細胞(n=4)におけるAMPKおよびその下流の基質ACCのリン酸化に対するキスペプチン処置の効果を示す図31Bの代表的なウエスタンブロットのデンシトメトリー分析である。
実施例16:単離初代マウス肝細胞:KISS1Rノックアウトマウスから単離した肝細胞における、デノボ脂質生成およびトリグリセリド合成の主要制御因子の発現増加
KISS1Rノックアウトマウスから単離した肝細胞は、CD36、FAS、PPARγ、およびMOGAT1などの、脂肪形成を制御する蛋白質のレベルの上昇を示した(図33A、図34A~図34Dを参照のこと;図33Aのブロットのデンシトメトリー分析を示すも)。KISS1Rノックアウトマウスから単離した肝細胞はまた、脂肪形成を制御する遺伝子のレベル上昇を示した(図33B)。
実施例17:単離初代マウス肝細胞:TAK-448処置は、ミトコンドリアにおける遊離脂肪酸のベータ酸化を増加させる
図35は、TAK-448(3nM)またはCPT1阻害剤であるエトモキシル(ETO)の存在下または非存在下において、100μMパルミチン酸塩(PA)またはBSA媒体対照で処置した肝細胞での酸素消費速度(OCR)を示す;CPT1は、ミトコンドリアのベータ酸化の主要制御因子である。2.5μMオリゴマイシン(Oligo)、3μMカルボニルシアニド-4(トリフルオロメトキシ)フェニルヒドラゾン(FCCP)(ミトコンドリアの酸化的リン酸化の脱共役剤)、ならびに2.5μMロテノンおよび2.5μMアンチマイシンA(R+A)(複合体I阻害剤および複合体III阻害剤)の逐次処置後のSeahorse分析器を用いた代表的なOCRトレースを、図35Aに示す。この図は、TAK-448がミトコンドリアの脂肪酸酸化を増加させる(FAO)ことを示している。図35Bは、TAK-448が基礎呼吸を増加させることを示し;図35Cは、TAK-448がATP産生を増加させることを示している。平均値±平均値の標準誤差を示す。対応のないスチューデントt検定、*p<0.05、対照との比較;一元配置分散分析後にダネットの事後検定を行った。結果は、TAK-448(キスペプチン類似体)処置が、単離初代マウス肝細胞において、ミトコンドリアにおける遊離脂肪酸のベータ酸化を直接的に増加させる、すなわち、それらの分解を促進することを示している。
実施例18:ヒト肝細胞:TAK-448処置は、ミトコンドリアにおける遊離脂肪酸のベータ酸化を増加させる
図36Aは、それぞれ、1μMオリゴマイシン(Oligo)、1μM FCCP、ならびに0.5μMロテノンおよび0.5μMアンチマイシンA(R+A)による逐次処置後の、ヒト肝HepaRG細胞での酸素消費速度(OCR)のSeahorse(登録商標)分析器によるトレースを示す。細胞を、TAK-448(3nM)の存在下または非存在において、100μMパルミチン酸塩(PA)またはBSAで処置した。TAK-448処置は、ヒト肝細胞における脂肪分解を増加させる。図36Bは、TAK-448が基礎呼吸を増加させることを示し;図36Cは、TAK-448がヒト肝細胞におけるATP産生を増加させることを示す。平均値±平均値の標準誤差を示す。対応のないスチューデントt検定、または一元配置分散分析後のダネットの事後検定;*p<0.05、対照に対する比較。すなわち、これらの結果は、TAK-448(キスペプチン類似体)処置が、ヒト肝細胞におけるミトコンドリアでの遊離脂肪酸β酸化を増加させることを示している。
実施例19:ヒト肝星細胞LX-2細胞:TAK-448処置は、増殖を阻害し、線維症のマーカーを低下させる
20万個のLX-2細胞を、各ウェルに播種し、TAK-448(3nM)または媒体(PBS)で48時間処置し、その後、血球計数器を用いて計数した。図37Aの結果を参照のこと。細胞を、TAK-448(3nM)で48時間処置した。次いで、線維症マーカー(平滑筋アクチン:ACTA、およびコラーゲン:COL1A1)の遺伝子発現変化を、RT-qPCRにより調べた。対応のないスチューデントt-検定、*p<0.05;N=3。図37Bの結果を参照のこと。これらの結果は、TAK-448がヒト肝星細胞LX-2細胞の増殖および線維症遺伝子発現を阻害することを示している。
実施例20:ヒトNASH生検切片:内因性キスペプチン受容体は肝星細胞に局在する
ヒトNASH生検切片において、内因性キスペプチン受容体(KISS1R)および星細胞マーカー(デスミン)の局在を調べた。核を、Hoechst(登録商標)を用いて染色した。左側に見られる免疫細胞の浸潤は、KISS1R染色に関して陰性である(図38Aを参照のこと;矢印)。KISS1Rがデスミン(肝星細胞の分子マーカー)と共局在を示す領域は、明るい白色に見える(重ね合わせ、図38D、矢印)。
実施例21:KISS1およびキスペプチン受容体(KISS1R)の発現、および血漿キスペプチンのレベルは、ヒトNAFLDにおいて増加される
図39Aは、患者肝生検におけるTBPに対し正規化された、RT-qPCRによるヒトKISS1およびKISS1Rの相対的mRNA発現を示す。KISS1およびKISS1R遺伝子発現は、NAFLD/NASH患者において上昇される。図39Bは、代表的なウエスタンブロットを示す。平均値±平均値の標準誤差を示す、対応のないスチューデントt検定、*p<0.05、対照に対する比較。図39Cおよび図39Dは、図39Bからのウエスタンブロットのデンシトメトリー分析である。図39Eは、ウサギポリクローナル抗ヒトKISS1Rを用いた、成人肝臓における内因性ヒトKISS1Rの発現の免疫染色像からの代表的な結果を示す;スケールバー:80μm。KISS1R蛋白質発現は、NAFLD/NASH患者からの患者肝生検において上昇される。図39Fは、ヒト対象における放射免疫測定により測定された血漿キスペプチン(KP)レベル(pmol/L;平均値±標準偏差)を示す。キスペプチン(KISS1)蛋白質発現は、NAFLD患者の肝臓で上昇される。下の表8は、図39A、Bでの男性対象の臨床的特徴を示す。統計分析を、クラスカル・ウォリスのノンパラメトリック検定を用いて行った。エラーバー:SD。血漿キスペプチンは、健常対象の血漿キスペプチンレベルと比較して、NAFLDおよびNASH患者で上昇される。
Figure 2023521388000017
実施例22:NAFLDにおけるTAK-448の保護効果の作用機序
これらの知見は、TAK-448により増強されたKISS1Rの活性化は、AMPKを活性化することにより肝の脂質含有量を負に制御し、それは次いで、PPARgおよび、トリグリセリド合成を制御するその下流のシグナル伝達経路を阻害することに加えて、脂質生成を阻害し脂肪酸酸化を増加させることを示唆する(図40を参照のこと)。これは、脂肪肝(脂肪症)の発生、ならびにそのNASHおよび線維症への進行を防ぐ。まとめると、本明細書に提示されるデータは、TAK-448が、AMPKを活性化することおよびミトコンドリアでの脂肪分解(すなわち、脂肪酸酸化)を増加させることにより、脂肪肝の発生ならびにそのNASHへの進行を防ぐ、強力なキスペプチン類似体であることを示している。
下に示す参考文献および本明細書中で言及する参考文献は、いずれもその全体が参照として本明細書に組み入れられる。

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72. Decourt et al., Scientific Rep. 6:26908, 2016

Claims (6)

  1. TAK-448およびその任意の塩;TAK-448の保存的変異体およびその任意の塩;キスペプチン10およびその任意の塩;ならびにキスペプチン10の保存的変異体およびその任意の塩から選択される化合物の治療的有効量を対象に投与することを含む、それを必要とする対象の肝臓において脂肪を減らす方法。
  2. 対象が、脂肪肝を患う、請求項1の方法。
  3. 対象が、アルコール依存症、肝炎、非アルコール性脂肪肝疾患(NALFD)、または非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)から選択される病態に罹患している、請求項2の方法。
  4. 対象が、非アルコール性脂肪肝疾患(NALFD)または非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)に罹患している、請求項1の方法。

  5. AKR-001、アラムコール(aramchol)、ASC40、AZD7687、BI089-100、BMS-986036、カナグリフロジン(canagliflozin)、セニクリビロック(cenicriviroc)、シロフェキソール(cilofexor)、ダパグリフロジン(dapagliflozin)、EDP-305、エラフィブラノール(elafibranor)、エムリカサン(emricasan)、EYP001a、フェノフィブラート、フィルソコスタット(firsocostat)、GR-MD-02、IONIS-DGAT2r、イプラグリフロジン(ipragliflozin)、リコグリフロジン(licogliflozin)、ルセオグリフロジン(luseogliflozin)、LY3202328、MET409、メトホルミン、MGL-3196、MK-4074、MSDC-0602K、MT-3995、NGM282、ニドゥフェキソル(nidufexor)、PF-05221304、PF-06835919、PF-06865571、PF-06882961、PX-102、PXL770、PXS-5153A、セロンセルチブ(selonsertib)、シムツズマブ、セマグルチド(simaglutide)、TERN-101、TERN-201、トロピフェクサー(troifexor)、ビタミンD、ビタミンE、およびVK2809から選択される第2の化合物の治療的量を投与することをさらに含む、請求項1の方法。
  6. 投与が、皮下、静脈内、または経口である、請求項1の方法。
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