JP2023520703A - コロナウイルス感染症の防止および治療における使用のためのシアル酸組成物 - Google Patents

コロナウイルス感染症の防止および治療における使用のためのシアル酸組成物 Download PDF

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Abstract

本発明は、コロナウイルス感染症を防止または治療するためのシアル酸を含んでいる組成物の使用に関する。特に、本発明は、コロナウイルス感染症がSARS-CoV-2(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2型)を原因とする感染症である場合に関する。

Description

〔関連出願の相互参照〕
本出願は、米国仮出願第63/003,477号(出願日:2020年4月1日)の利益を主張する。この仮出願の内容は全て、参照により本明細書に組込まれる。
〔技術分野〕
本発明は、コロナウイルス感染症を防止または治療するためのシアル酸を含んでいる組成物の使用に関する。特に、本発明は、コロナウイルス感染症がSARS-CoV-2(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2型)を原因とする感染症である場合に関する。
コロナウイルスはウイルスの科の一つで、風邪、重症急性呼吸器症候群(SARS)、中東呼吸器症候群(MERS)などの原因となる。2019年、中国から始まった疾患のアウトブレイクの原因として、新型のコロナウイルスが同定された。このウイルスは、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2型(SARS-CoV-2)として知られている。このウイルスにより引き起こされる疾患は、コロナウイルス疾患2019(COVID-19)と呼ばれている。COVID-19の症例は世界中で報告され、2020年3月には、WHOが世界的パンデミックを宣言した。
COVID-19の徴候および症状は、2~14日後に表れることがあり、発熱、咳嗽、呼吸困難または息切れなどが含まれる。他の症状としては、発赤、疼痛、鼻汁、咽頭痛などがある。COVID-19の症状の重篤度は、極めて軽症のものから重症のものまで幅広い。症状を示さない患者もいる。高齢の患者や慢性的な病的状態(心疾患、肺疾患、糖尿病など)にある患者は、重症疾患のリスクが高いことがある。
本技術分野では、SARS-CoV-2への感染を防止または治療するための安全な組成物が求められている。
本発明は、コロナウイルス感染症を防止または治療するためのシアル酸を含んでいる組成物の使用に関する。特に、本発明は、コロナウイルス感染症がSARS-CoV-2(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2型)を原因とする感染症である場合に関する。
したがって、いくつかの好適な実施形態において、本発明が提供するのは、ヒト被験体または動物被験体においてSARS-CoV-2(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2型)への感染を治療または防止する方法である。この方法は、ある状態にある被験体に有効濃度のシアル酸を含んでいる組成物を投与して、SARS-CoV-2への感染を防止または治療する工程を含む。
いくつかの好適な実施形態において、本発明が提供するのは、ヒト被験体または動物被験体においてSARS-CoV-2(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2型)への感染を予防する方法である。この方法は、ある状態にある被験体に有効濃度のシアル酸を含んでいる組成物を投与して、SARS-CoV-2への感染を防止する工程を含む。
いくつかの好適な実施形態において、本発明が提供するのは、ヒト被験体または動物被験体におけるSARS-CoV-2(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2型)への感染の治療または防止に使用するためのシアル酸である。
いくつかの好適な実施形態において、本発明が提供するのは、ヒト被験体または動物被験体におけるSARS-CoV-2(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2型)感染症の予防に使用するためのシアル酸である。
いくつかの好適な実施形態において、シアル酸は、N-アセチルノイラミン酸(NANA)およびN-グリコリルノイラミン酸(NGNA)からなる群より選択される。いくつかの好適な実施形態において、シアル酸は、NANAである。
いくつかの好適な実施形態においては、シアル酸を鼻腔内投与する。いくつかの好適な実施形態において、有効濃度のシアル酸は、約0.1~約100mg/mLの水溶液である。いくつかの好適な実施形態において、有効濃度のシアル酸は、約0.5~約50mg/mLの水溶液である。いくつかの好適な実施形態において、シアル酸の1日分の用量は、約0.1~100mgのシアル酸/鼻孔/日である。いくつかの好適な実施形態において、シアル酸の1日分の用量は、約0.1~10mgのシアル酸/鼻孔/日である。いくつかの好適な実施形態において、シアル酸を含んでいる組成物(好ましくは水溶液)のpHは、2.0~4.0である。いくつかの好適な実施形態において、シアル酸を含んでいる組成物(好ましくは水溶液)のpHは、2.5~3.7である。いくつかの好適な実施形態において、シアル酸を含んでいる組成物(好ましくは水溶液)のpHは、2.8~3.2である。いくつかの好適な実施形態においては、1日分の用量のシアル酸を、1日あたり2~8回の投与で送達する。いくつかの好適な実施形態において、組成物は、チクソ剤をさらに含んでいる。
いくつかの好適な実施形態においては、シアル酸を経口投与する。いくつかの好適な実施形態において、シアル酸の1日分の用量は、20~200gである。いくつかの好適な実施形態において、シアル酸の1日分の用量は、50~150gである。いくつかの好適な実施形態においては、1日分の用量を、1~20回の投与により投与する。いくつかの好適な実施形態においては、シアル酸を水溶液として投与する。いくつかの好適な実施形態において、水溶液は、香料、安定化剤および保存料からなる群より選択されるさらなる薬剤を含んでいる。このさらなる薬剤は、天然ではシアル酸と共に存在しない。
いくつかの好適な実施形態において、被験体は、SARS-CoV-2への感染の危険性がある。
いくつかの好適な実施形態において、被験体は、COVID-19に罹患している。
本明細書には、さらなる実施形態が記載されている。
〔定義〕
本明細書において、用語「SARS-CoV-2(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2型)」には、SARS-CoV-2と特定されるコロナウイルスの任意の株が含まれる。任意の株には、SARS-CoV-2の参照ゲノム配列の変異体も含まれる。
本明細書において、SARS-CoV-2への感染に関連して用いるとき、用語「防止」とは、SARS-CoV-2に曝露された被験体における感染の減少を表す。
「患者」「被験体」または「個体」は、互換可能に用いられ、ヒトまたは非ヒト動物のいずれかを表す。これらの用語には、哺乳動物が含まれる。哺乳動物の例としては、ヒト、霊長類、家畜(ウシ、ブタなど)、コンパニオンアニマル(イヌ、ネコなど)、齧歯類(マウス、ラットなど)が挙げられる。
物質、化合物または薬剤の被験体への「投与」は、当業者に知られている種々の方法のうち一つによって実施できる。例えば、シアル酸の投与経路は、静脈内、動脈内、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、舌下、経口(摂取による)、鼻腔内(吸入による)、脊髄内、大脳内、および経皮(皮膚にある管などを通じた吸収による)であってもよい。交換可能または生分解性のポリマーデバイスや、他のデバイス(パッチ、ポンプなど)、あるいは、化合物または薬剤の放出を延長、遅延または制御する製剤により、化合物または薬剤を適宜導入してもよい。投与は、例えば、1回のみ行ってもよいし、複数回行ってもよいし、1つ以上の連続した期間にわたって行ってもよい。いくつかの態様において、投与には、直接投与(自己投与など)および非直接投与(薬物の処方など)が含まれる。例えば、本明細書において、医師は、薬物を自己投与するように患者に指導してもよいし、他者に薬物を投与して貰うように患者に指導してもよい。あるいは、患者に薬物の処方箋を書く者が、当該患者に薬物を投与してもよい。
薬物または薬剤(シアル酸など)の「治療上有効な量」または「治療上有効な用量」とは、被験体に投与したときに意図した治療効果を奏する薬物または薬剤の量である。1回分の用量を投与することにより完全な治療効果を奏する必要性はなく、複数回分の用量を続けて投与することにより治療効果を奏してもよい。したがって、治療上有効な量を1回以上の投与により投与してもよい。被験体が必要とする正確な有効量は、被験体の大きさ、健康状態、年齢、性質、治療すべき状態(COVID-19など)の症状の程度などに応じて変化する。熟達した技術者であれば、通常の実験により、所与の条件における有効量を容易に決定できる。
薬物または薬剤(シアル酸など)の「予防上有効な量」または「予防上有効な用量」とは、被験体に投与したときに意図した予防効果を奏する薬物または薬剤の量である。1回分の用量を投与することにより完全な予防効果を奏する必要性はなく、複数回分の用量を続けて投与することにより予防効果を奏してもよい。したがって、予防上有効な量を1回以上の投与により投与してもよい。被験体が必要とする正確な有効量は、被験体の大きさ、健康状態、年齢、性質、予防すべき状態(SARS-CoV-2への感染など)の症状の程度などに応じて変化する。熟達した技術者であれば、通常の実験により、所与の条件における有効量を容易に決定できる。
状態または患者を「治療」するとは、有益または望ましい結果(臨床的な結果など)を得るために手段を講じることを表す。有益または望ましい臨床的な結果の例としては、COVID-19に関連する1つ以上の症状の緩和、回復または進行の遅延が挙げられる(ただし、これらには限定されない)。特定の実施形態において、治療は、予防であってもよい(SARS-CoV-2への感染の予防など)。
本明細書において、用語「日用サプリメント」とは、ヒトまたは動物の食事を補う少量の化合物であって、1または複数の投与単位に格納されているものを表す。一般的に、日用サプリメントは余りカロリーがなく、他の微量栄養素を含んでいる(ビタミン、ミネラルなど)。
本明細書において、用語「栄養サプリメント」とは、日用サプリメントとカロリー源との組合せを含んでいる組成物を表す。いくつかの実施形態において、栄養サプリメントは、食事代替物またはサプリメントである(栄養バー、エネルギーバー、栄養飲料、栄養濃縮物など)。
図1は、ある複製に由来するデータである。このデータは、Neu5AcまたはNeu5Gcの種々の濃度における、細胞のCoV-OC43への感染を示している。 図2は、他の複製に由来するデータである。このデータは、Neu5AcまたはNeu5Gcの種々の濃度における、細胞のCoV-OC43への感染を示している。 図3は、Neu5Acによる感染の防止を、コントロールである糖(ガラクトース)と比較した実験のデータである。
本発明は、コロナウイルス感染症を防止または治療するためのシアル酸を含んでいる組成物の使用に関する。特に、本発明は、コロナウイルス感染症がSARS-CoV-2(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2型)を原因とする感染症である場合に関する。
シアル酸とは、ノイラミン酸のN置換誘導体またはO置換誘導体の総称である。ノイラミン酸は、9個の炭素原子を有している単糖である。シアル酸は唾液中において初めて報告されたため、ギリシア語の唾液(sialon)にちなんで命名された。その後、細胞表面および多数の可溶性タンパク質において、糖分子、タンパク質および脂質と様々に複合化したシアル酸が、天然において発見されている。分子的研究・細胞学的研究・遺伝学的研究が示すところによると、シアル酸は、細胞-細胞マトリクス相互作用、細胞表面における分子間相互作用、および細胞近傍の細胞外環境にある他の分子との相互作用に寄与している
シアル酸は、炭素9個のケト-アルドノヌロソン酸のファミリーで、細胞膜にあるグリカンの末端に存在している。シアル酸は脊椎動物細胞の表面に多く見られ、とりわけ粘膜表面に豊富である。哺乳動物細胞において最も一般的に見られるのは、N-アセチルノイラミン酸(Neu5Ac)である。
Neu5Acは、酵素であるCMAH(シチジン一リン酸-N-アセチルノイラミン酸ヒドロキシラーゼ)により、Neu5Gcに変換されうる。この酵素は、ヒトでは発見されていない。これは、酵素をコードしている遺伝子に1つの欠失があるためである。有史以前のヒトはこの遺伝子の機能性を失い、そのためNeuAcをNeu5Gcに変換する能力を失ったのだと考えられている。動物および何種類かの他の生物とは異なり、ヒトはNeu5Acしか合成できない。
もっとも一般的な2種類のシアル酸とは、N-アセチルノイラミン酸(Neu5Ac)およびN-グリコリルノイラミン酸(Neu5Gc)である。Neu5Acの第5位の炭素原子(四角印)が、酵素的に修飾されて1個のN-アセチル基になり、さらにヒドロキシル化されると、Neu5Gcになる(丸印)。いくつかの炭素原子にあるヒドロキシル基(C4、C7、C8およびC9)が、さらに修飾されていてもよい(O-アセチル基、O-硫酸基、O-ラクチル基、O-メチル基、O-リン酸基など)。シアル酸は、様々なグルコシド結合によって、糖タンパク質および糖脂質の糖鎖と結合する。最も一般的な結合は、グリカン中の、ガラクトース部分に対するα2,3結合、ガラクトース部分またはN-アセチルガラクトサミン部分に対するα2,6結合、および他のシアル酸部分に対するα2,8結合である。気道上皮でシアル酸が切断されると、ウイルスの受容体として作用できるようになる。グリカンマイクロアレイおよび他の洗練された方法を用いた最新の研究により、細胞表面のシアル酸含有受容体とウイルスタンパク質との相互作用の複雑性が示されている。これにより、気道上皮の細胞表面にウイルスが吸着する方法を研究する機会が得られた(4)
Schalcter (2017)(5)によると、Neu5Acは、摂取後すぐに吸収される。また、Neu5Acは、すぐに尿から排出される。シアル酸濃度が最も高いのは、唾液、尿およびヒトの脳である。
Neu5Acの構造において特徴なのは、4つの突出した官能基である(カルボキシル基、ヒドロキシル基、N-アセチル基、グリセロール基)。数多くの種類の官能基が、シアル酸との間に、多数の水素結合、塩橋および非極性相互作用を同時に生じさせることができる。通常、シアル酸はグリカンの末端に位置しているので、シアル酸の結合部位は相互作用に参加しやすい。多種多様なウイルスが、細胞に吸着する際に、シアル化オリゴ糖のシアル酸を利用している。このウイルスには、重大なヒト病原体も含まれている(A型ヒトインフルエンザウイルス、B型ヒトインフルエンザウイルス、C型ヒトインフルエンザウイルス、コクサッキーウイルスA24バリアント、エンテロウイルス70、ヒトJC。ポリオーマウイルス、ヒトBKポリオーマウイルス、ロタウイルスなど)。Neu et al., Viruses and Sialic Acids: Rules of Engagement. Curr Opin Struct Biol., (2011) 21(5), 610-618)
ほとんどの場合、ウイルスの吸着タンパク質とそのグリカンの受容体との相互作用には、まず、シアル酸自体が関与する。シアル酸は、ウイルスタンパク質の溶媒に曝露されている領域のうち、比較的小部分と接触しながら結合する。この事実と整合することには、この相互作用の親和性は非常に小さい。次に、シアル酸よりも離れた位置にある官能基との間で少数の補助的な相互作用を確立することにより、多くのウイルスは、シアル化オリゴ糖に対する高い特異性を示すようになる。結合した後、ウイルスは様々な機構により細胞に侵入し(エンドサイトーシス、ピノサイト-シス、融合など)、ウイルス複製のためのシステムを利用する。最新の文献では、粘膜の9-O-アセチル化シアル酸に結合しているヒトコロナウイルスの部位の構造が提案されている(Tortorici et al., Structural basis for human coronavirus attachment to sialic acid receptors. Nat Struct Mol Biol. 2019 Jun;26(6):481-489)。
増殖および感染ができるウイルスにとっては、上皮表面に付着しているだけではなく、酵素的に細胞に侵入して細胞の複製機構を利用しなくてはならない。その後、新たなウイルス粒子が細胞から出てこられるようになる。細胞膜の開口部は、ノイラミニダーゼによって作り出せる。ノイラミニダーゼとは、糖複合体からシアル酸を切断する酵素である。このウイルス酵素によって、新たにウイルス粒子が拡散するようになる。研究が示すところによると、ウイルスは、ケイ酸含有可溶性タンパク質を中和することもできる。ケイ酸含有可溶性タンパク質は、ウイルスの表面への結合を他の機構により阻害するタンパク質である(6,7)
数十年にわたる研究にもかかわらず、ウイルス感染に起因する人間の疾患の重荷と比べると、効果的な抗ウイルス化合物は比較的少ない。特定のウイルスの変異は非常に速く、そのため抗ウイルス物質に抵抗を示す変異体が驚異的な速度および頻度で現れうることを考慮すると、一般的な抗ウイルス薬がこれまでにも増して重要となっている。
したがって、本明細書では、SARS-CoV-2への感染の治療または防止に使用するためのシアル酸を含んでいる組成物を提供する。ここでは、シアル酸を投与することにより、鼻粘膜におけるシアル酸の存在量が通常よりも増加することが意図されている。いくつかの好適な実施形態においては、有効量のシアル酸を含んでいるスプレー、ゲルまたは他の溶液によって、シアル酸を鼻粘膜に直接に送達する。いくつかの好適な実施形態において、シアル酸は、NANAである。本発明は、何らかの特定の作用機序には限定されない。ただし、投与されたシアル酸分子が気道上皮を被覆することにより、ウイルスを引き付ける受容体として作用すると考えられている。つまり、遊離したシアル酸分子(鼻粘膜と結合していないシアル酸分子)が、可溶性ウイルス粒子と競合的に結合して、鼻上皮へのウイルスの吸着を防止している。遊離したシアル酸は過剰量存在しているので、細胞と連結している受容体への結合および細胞内への侵入を低減できる。それゆえ、ウイルス感染のリスクが低下し、感染が防止される。
種々のシアル酸の利用が意図されている。いくつかの実施形態において、シアル酸またはシアル酸前駆体の純度は、90%超、95%超、99%超および99.5%超からなる群より選択される。いくつかの好適な実施形態において、シアル酸またはシアル酸前駆体は、N-アセチルノイラミン酸(NANA)、N-グリコリルノイラミン酸(NGNA)、N-アセチル-D-マンノサミン、およびこれらの組合せからなる群より選択される。他の好適な実施形態において、組成物は、次のうち1種類以上のシアル酸を含んでいる:ノイラミン酸、5-N-アセチル-4-O-アセチル-ノイラミン酸、5-N-アセチル-7-O-アセチル-ノイラミン酸、5-N-アセチル-8-O-アセチル-ノイラミン酸、5-N-アセチル-9-O-アセチル-ノイラミン酸、5-N-アセチル-4,9-ジ-O-アセチル-ノイラミン酸、5-N-アセチル-7,9-ジ-O-アセチル-ノイラミン酸、5-N-アセチル-8,9-ジ-O-アセチル-ノイラミン酸、5-N-アセチル-7,8,9-トリ-O-アセチル-ノイラミン酸、5-N-アセチル-9-O-L-ラクチル-アセチル-ノイラミン酸、5-N-アセチル-4-O-アセチル-9-O-ラクチル-アセチル-ノイラミン酸、5-N-アセチル-8-O-メチル-ノイラミン酸、5-N-アセチル-9-O-アセチル-8-O-メチル-ノイラミン酸、5-N-アセチル-8-O-スルホ-ノイラミン酸、5-N-アセチル-9-O-ホスホロ-ノイラミン酸、5-N-アセチル-2-デオキシ-2,3-ジデヒドロ-ノイラミン酸、5-N-アセチル-9-O-アセチル-2-デオキシ-2,3-ジデヒドロ-ノイラミン酸、5-N-アセチル-2-デオキシ-2,3-ジデヒドロ-9-O-ラクチル-ノイラミン酸、5-N-アセチル-2,7-アンヒドロ-ノイラミン酸、4-O-アセチル-5-N-グリコリル-ノイラミン酸、7-O-アセチル-5-N-グリコリル-ノイラミン酸、8-O-アセチル-5-N-グリコリル-ノイラミン酸、9-O-アセチル-5-N-グリコリル-ノイラミン酸、7,9-ジ-O-アセチル-5-N-グリコリル-ノイラミン酸、8,9-ジ-O-アセチル-5-N-グリコリル-ノイラミン酸、7,8,9-トリ-O-アセチル-5-N-グリコリル-ノイラミン酸、5-N-グリコリル-9-O-ラクチル-ノイラミン酸、5-N-グリコリル-8-O-メチル-ノイラミン酸、9-O-アセチル-5-N-グリコリル-8-O-メチル-ノイラミン酸、7,9-ジ-O-アセチル-5-N-グリコリル-8-O-メチル-ノイラミン酸、5-N-グリコリル-8-O-スルホ-ノイラミン酸、N-(O-アセチル)グリコリルノイラミン酸、N-(O-メチル)グリコリルノイラミン酸、2-デオキシ-2,3-ジデヒドロ-5-N-グリコリル-ノイラミン酸、9-O-アセチル-2-デオキシ-2,3-ジデヒドロ-5-N-グリコリル-ノイラミン酸、2-デオキシ-2,3-ジデヒドロ-5-N-グリコリル-9-O-ラクチル-ノイラミン酸、2-デオキシ-2,3-ジデヒドロ-5-N-グリコリル-8-O-メチル-ノイラミン酸、2,7-アンヒドロ-5-N-グリコリル-ノイラミン酸、2,7-アンヒドロ-5-N-グリコリル-8-O-メチル-ノイラミン酸、2-ケト-3-デオキシノノン酸および9-O-アセチル-2-ケト-3-デオキシノノン酸。
いくつかの特に好適な実施形態において、シアル酸は、NANAである。
下記に、例示的な製剤を詳細に説明する。ただし、いくつかの実施形態において、シアル酸は、ローション、スプレー、ゲル、軟膏、粉末、水溶液または非水溶液として製剤化されている。これらの投与経路は、局所投与、鼻腔内投与、膣内投与、肛門内投与または舌下投与である。これらの剤型は、経口投与用のカプセル、粉末または錠剤であるか、または非経口投与用の溶液である。
本発明のシアル酸組成物は、任意の適切な形態により送達できる。いくつかの実施形態において、シアル酸の純度は、好ましくは、約90%超、約95%超、約99%超または約99.9%超である。いくつかの実施形態において、シアル酸は、HPLCで精製されている。例えば、商業流通しているNANAを購入してもよい(例えば、Sigma Chemical Company, St. Louis, MOから購入できる)。
いくつかの実施形態において、本発明は、SARS-CoV-2への感染を治療、緩和、回復または防止する方法を提供する。あるいは、症状を軽減したり、SARS-CoV-2への感染に関連するアウトブレイクを軽減したりする方法を提供する。これらの方法は、有効濃度のシアル酸(NANAなど)を投与する工程を含む。いくつかの好適な実施形態において、有効濃度のシアル酸(NANAなど)は、約0.1~約10mg/mLの水溶液である。この水溶液は、例えば、SARS-CoV-2への感染またはSARS-CoV-2に関連する症状を治療、緩和、回復、軽減または防止するための水溶液である。いくつかの好適な実施形態において、有効濃度のシアル酸(NANAなど)は、約0.5~約100mg/mLの水溶液である。いくつかの好適な実施形態において、有効濃度のシアル酸(NANAなど)は、約0.5~約50mg/mLの水溶液である。いくつかの好適な実施形態において、有効濃度のシアル酸(NANAなど)は、約0.5~約5mg/mLの水溶液である。いくつかの好適な実施形態において、シアル酸(NANAなど)の1日分の用量は、約0.1~5.0mgのシアル酸(NANAなど)/鼻孔/日である。いくつかの好適な実施形態において、シアル酸(NANAなど)の1日分の用量は、約0.1~1.0mgのシアル酸(NANAなど)/鼻孔/日である。いくつかの好適な実施形態において、有効濃度のシアル酸(NANAなど)は、約0.5~約100mg/mLの水溶液である。いくつかの好適な実施形態において、シアル酸(NANAなど)の1日分の用量は、約0.1~100mgのシアル酸(NANAなど)/鼻孔/日である。いくつかの好適な実施形態において、シアル酸(NANAなど)の1日分の用量は、約0.1~50mgのシアル酸(NANAなど)/鼻孔/日である。
いくつかの好適な実施形態において、シアル酸(NANAなど)を含んでいる組成物(好ましくは水溶液)のpHは、2.0~4.0である。いくつかの好適な実施形態において、シアル酸(NANAなど)を含んでいる組成物(好ましくは水溶液)のpHは、2.5~3.7である。いくつかの好適な実施形態において、シアル酸(NANAなど)を含んでいる組成物(好ましくは水溶液)のpHは、2.8~3.2である。
いくつかの実施形態において、シアル酸(NANAなど)の組成物は、水溶液として提供される。水溶液にはゲルも含まれ、これはスプレーまたはミストに好適である。いくつかの実施形態において、シアル酸(NANAなど)の水性溶液は、ポンプ-スプレー容器に組込まれている(予圧式ポンプなど)。あるいは、水性溶液は、他の装置に組込まれている(ネブライザーまたはコールドミストシステムなど)。これにより、鼻、口または肺に微細なミスとまたはスプレーを送達する。いくつかの好適な実施形態において、本発明は、動物またはヒトの鼻への鼻スプレーに適用するように構成されており、上述の組成物のうちいずれかを格納しているスプレーボトルを提供する。
いくつかの好適な実施形態において、シアル酸(NANAなど)の1日分の用量は、約0.1~5.0mgのシアル酸(NANAなど)鼻孔/日である。いくつかの好適な実施形態において、NANAの1日分の用量は、約0.1~1.0mgのシアル酸(NANAなど)/鼻孔/日である。いくつかの好適な実施形態において、スプレーボトルは、0.03~1.0mgのシアル酸(NANAなど)/スプレーのスプレー用量を送達するように調節されている。いくつかの好適な実施形態において、スプレーボトルは、0.05~0.3mgのシアル酸(NANAなど)/スプレーのスプレー用量を送達するように調節されている。いくつかの好適な実施形態においては、シアル酸(NANAなど)の1日分の用量を、1日あたり2~8回の投与によりスプレーボトルから送達する。すなわち、各鼻孔につき2~8回噴射する。
いくつかの好適な実施形態において、シアル酸(NANAなど)の1日分の用量は、約0.1~100mgのシアル酸(NANAなど)鼻孔/日である。いくつかの好適な実施形態において、NANAの1日分の用量は、約1.0~100mgのシアル酸(NANAなど)/鼻孔/日である。いくつかの好適な実施形態において、スプレーボトルは、1.0~100mgのシアル酸(NANAなど)/スプレーのスプレー用量を送達するように調節されている。いくつかの好適な実施形態において、スプレーボトルは、1.0~50mgのシアル酸(NANAなど)/スプレーのスプレー用量を送達するように調節されている。いくつかの好適な実施形態においては、シアル酸(NANAなど)の1日分の用量を、1日あたり2~8回の投与によりスプレーボトルから送達する。すなわち、各鼻孔につき2~8回噴射する。
いくつかの実施形態において、組成物は、チクソ剤をさらに含んでいる。チクソ剤の例としては、フコイダン、アルギン酸塩またはキトサンが挙げられる(ただし、これらには限定されない)。いくつかの実施形態において、チクソ剤は、マンヌロン酸である。いくつかの実施形態において、組成物に含まれているマンヌロン酸は、0.01~2.0%(w/w)である。例えば、0.01~1.0%(w/w)または0.1~0.5%(w/w)である。
いくつかの実施形態において、本発明のシアル酸(NANAなど)の組成物は、薬学的に許容できる賦形剤を含んでいる。この賦形剤は、組成物に含まれている医薬の固体粒子にチクソ性の懸濁液を形成させるために効果的である。このような賦形剤の例としては、米国特許第7,122,206号に開示されている賦形剤が挙げられる。好ましくは、賦形剤の含有量は、組成物中において医薬の粒子が懸濁状態を維持できる量である。この懸濁状態は、使用していないとき、組成物を鼻腔に噴射するとき、鼻腔粘膜の表面・鼻腔内皮の表面・身体の他の箇所に組成物が付着したときにおいて、維持されている。いくつかの実施形態において、組成物の粘度は、安定時には比較的高い(例えば、約400~約1000cp)。組成物に剪断力がかかったときに(噴射を誘起する力がかかったときなど)、組成物の粘度は減少する(例えば、約50~約200cp)。そのため、組成物はスプレー容器内を容易に流通して、スプレー容器から出るときに微細な噴流となり、鼻粘膜表面に浸潤・付着する。組成物が浸潤・付着する鼻粘膜表面は、少なくとも次のうちいずれかの表面である:鼻の前方領域(鼻腔前部)、副鼻腔前部、上顎洞、鼻腔の甲介の上に位置する鼻甲介。したがって、NANA組成物には、自由に流動可能な液体、噴射された形態、微細なミストが含まれている。これらは、それ自体として流動し、所望の粘膜に付着できる。付着して比較的応力がかからない状態では、組成物の粘度が上昇し、医薬の粒子が懸濁しているゲル状の形態になる。そのため、鼻腔に本来存在する粘液線毛の働きにより鼻道から排出されなくなる。
組成物中において医薬の固体粒子を実質的に均一に分散した状態に維持でき、組成物に所望のチクソ性を与えられる、薬学的に許容できる任意の物質を使用できる。このような物質は、懸濁剤と称される。懸濁剤の例としては、カルボキシメチルセルロース、VEEGUM、トラガカント、ベントナイト、メチルセルロース、ポリエチレングリコールが挙げられる。好適な懸濁剤は、微結晶セルロースおよびカルボキシメチルセルロースの混合物である。好ましくは、混合物において、微結晶セルロースが大部分を占めている。最も好ましくは、混合物において、微結晶セルロースの含有量は約85~約95重量%であり、カルボキシメチルセルロースの含有量は約5~約15重量%である。
組成物に含まれている懸濁剤の量は、具体的な医薬および使用量、使用する具体的な懸濁剤、組成物に含まれている他の成分の性質および量、所望とする具体的な粘度の値に応じて変化する。一般論として、最も広汎に使用されている組成物は、約1~約5重量%の懸濁剤を含んでいる。
好ましくは、本発明のシアル酸(NANAなど)の組成物は、組成物に所望の特性を付与する他の成分を含んでいる。いくつかの実施形態においては、分散剤または湿潤剤を使用する。粒子を効果的に湿潤させ薬学的に許容可能である任意の分散剤を使用できる。使用できる分散剤の例としては、脂肪族アルコール、エステルおよびエーテルが挙げられる。具体例を挙げると、Pluronic、Tergitol、Span、Tweenの名称で販売されている薬剤が挙げられる。好ましくは、親水性の非イオン性界面活性剤を使用する。ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートを使用すると、優れた結果が得られる。この成分は、ポリソルベート80の名称で販売されている。
いくつかの実施形態において、組成物は、酸化防止剤を含んでいる。組成物に使用できる薬学的に許容できる酸化防止剤の例としては、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、8-ヒドロキシキノリン、N-アセチルシステインが挙げられる。望ましくは、組成物は、約0.001~約0.01重量%の酸化防止剤を含んでいる。
安定性の観点から、シアル酸(NANAなど)の組成物は、微生物による汚染および増殖から保護されていなければならない。組成物に使用できる薬学的に許容できる抗微生物剤の例としては、四級アンモニウム化合物(塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、セチリミド、セチルピリジニウムクロリドなど)、水銀系薬剤(硝酸フェニル水銀、酢酸フェニル水銀、チメロサールなど)、アルコール系薬剤(クロロブタノール、フェニルエチルアルコール、ベンジルアルコールなど)、抗細菌エステル(パラヒドロキシ安息香酸エステルなど)、他の抗微生物剤(クロルヘキシジン、クロロクレゾール、ポリミキシンなど)が挙げられる。望ましくは、組成物は、約0.001~約1重量%の抗微生物剤を含んでいる。
上述した通り、本発明の一態様には、無臭であり、かつ、酸化防止剤および抗微生物剤として機能する安定化剤の混合物を含んでいる組成物が含まれる。この混合物は、抗微生物特性を有している四級アンモニウム化合物と、一般的にキレート剤とされる物質とを含んでいる。このような材料の組合せと医薬(トリアムシノロンアセトニドなど)とを組成物において使用することにより、酸化分解および細菌の増殖などに対して高い安定を有している組成物が得られる。好適な形態において、混合物は、塩化ベンザルコニウムおよびエチレンジアミン四酢酸二ナトリウムを含んでいる。
一般的に、無臭の組成物は、約0.004~約0.02重量%の四級アンモニウム化合物と、約0.01~約0.5重量%のキレート剤とを含んでいる。このような化合物の混合物を使用することによって、組成物に酸化防止剤とされる物質を含ませる必要がなくなる。
好ましくは、本発明の組成物は、等張化剤を含んでいる。等張化剤の機能は、組成物による鼻粘膜の刺激を防止することである。好適な等張化剤は、無水デキストロースである。使用できる薬学的に許容できる等張化剤の例としては、塩化ナトリウム、デキストロース、塩化カルシウムが挙げられる。望ましくは、組成物は、最大で約5重量%の等張化剤を含んでいる。
本発明のシアル酸(NANAなど)の組成物は、任意の適切な方法により調製できる。好適な形態においては、医薬の固体粒子および分散剤の水性懸濁液を調製し、懸濁剤を含んでいる水性懸濁液をさらに組合せる。好ましくは、分散剤の水溶液に医薬を加え、よく混合することにより、前者の水性懸濁液を調製する。水を酸性化(pH約4.7~約5.3)させた後に懸濁剤を加えて、後者の水性懸濁液を調製する。特に好適な形態においては、四級化合物(抗微生物剤)の水溶液を医薬の水性懸濁液に加え、他の成分(等張化剤、酸化防止剤、キレート剤など)をチクソ性の懸濁液に加える。これらの組成物のバッチは、組合せる前によく混合する。組成物のバッチを組合せる好適な手段は、一方のバッチ(好ましくは医薬のバッチ)を、他方のバッチの底部に導入することである。例えば、一方のバッチをポンプにより上方に汲み上げ、他方のバッチに導入する。組合わされたバッチを含んでいる組成物を、よく混合する。好適な調製方法を採用すれば、医薬の固体粒子が実質的に均一に分散している組成物を、効率的かつ効果的に製剤化できる。その一方で、好適な調製方法によれば、水性の医薬組成物の調製に伴う一般的な問題を回避できる(過剰な発泡、粒子の分散の不均一など)。
各鼻道に適用するシアル酸(NANAなど)の量は、治療される状態および個体の性質によって異なる。いくつかの好適な実施形態において、有効濃度のシアル酸(NANAなど)は、約0.1~約100mg/mLの水溶液である。いくつかの好適な実施形態において、有効濃度のシアル酸(NANAなど)は、約1.0~約100mg/mLの水溶液である。いくつかの好適な実施形態において、有効濃度のシアル酸(NANAなど)は、約1.0~約50mg/mLの水溶液である。いくつかの好適な実施形態において、有効濃度のシアル酸(NANAなど)は、約0.1~約10mg/mLの水溶液である。いくつかの好適な実施形態において、有効濃度のシアル酸(NANAなど)は、約0.5~約5mg/mLの水溶液である。いくつかの好適な実施形態において、シアル酸(NANAなど)の1日分の用量は、約0.001~0.1mgのシアル酸(NANAなど)/鼻孔/日である。いくつかの好適な実施形態において、シアル酸(NANAなど)の1日分の用量は、約0.01~0.05mgのシアル酸(NANAなど)/鼻孔/日である。いくつかの好適な実施形態においては、シアル酸(NANAなど)の1日分の用量を、1日あたり2~8回の投与により送達する。
したがって、本発明が提供するのは、体腔(鼻など)に送達されるためのシアル酸(NANAなど)の溶液または粉末が格納されているスプレーボトルを備えている物品である。好ましくは、スプレーボトルは、NANA組成物をボトルから噴射するためのポンプシステムを備えている。このようなポンプシステムの例としては、圧縮ポンプ、噴射ポンプ、予圧ポンプが挙げられる。いくつかの好適な実施形態において、スプレーボトルは、0.1~10mgのシアル酸(NANAなど)/スプレーのスプレー用量を送達するように調節されている。いくつかの好適な実施形態において、スプレーボトルは、0.001~0.02mgのシアル酸(NANAなど)/スプレーのスプレー用量を送達するように調節されている。いくつかの好適な実施形態において、スプレーボトルは、0.004~0.01mgのシアル酸(NANAなど)/スプレーのスプレー用量を送達するように調節されている。
いくつかの実施形態において、本発明が提供するのは、個体の体腔(口、鼻など)を覆うことができる装置である物品である。いくつかの実施形態において、装置は、マスクである(サージカルマスクなど)。好適な実施形態において、マスクは、固体の支持材またはマトリクスを有しており(ポリマーマトリクス、織布マトリクスなど)、その中にシアル酸(NANAなど)の組成物が組込まれている。いくつかの実施形態においては、水溶液、ゲルまたは粉末であるシアル酸(NANAなど)の組成物を、マトリクスにスプレーコーティングする。いくつかの実施形態においては、マスクを介して呼吸したときに、ウイルスはマスクに接触して不活性化される。いくつかの実施形態において、マトリクスはシアル酸(NANAなど)の組成物でコーティングされており、シアル酸(NANAなど)の存在量は、マトリクス1cmあたり、約0.01μg~約100mgであり、好ましくは約1μg~約1mgである。
いくつかの実施形態においては、シアル酸(NANAなど)を経口送達用に製剤化する。好ましくは、本発明のサプリメントの成分は、経口での消費において許容できる賦形剤および/または担体に含まれている。担体の具体的な形態(すなわちサプリメント自体の具体的な形態)は、重要事項ではない。担体は、液体、ゲル、ゲルキャップ、カプセル、粉末、固体、錠剤(コート錠または非コート錠)、茶などであってもよい。好ましくは、サプリメントは、錠剤またはカプセルである。最も好ましくは、サプリメントの形態は、硬ゼラチンカプセルである。好適な賦形剤および/または担体の例としては、マルトデキストリン、炭酸カルシウム、リン酸二カルシウム、リン酸三カルシウム、微結晶セルロース、デキストロース、米粉、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、クロスカルメロースナトリウム、グリコール酸デンプンナトリウム、クロスポビドン、スクロース、植物ガム、ラクトース、メチルセルロース、ポビドン、カルボキシメチルセルロース、コーンスターチが挙げられる(これらの混合物も含む)。好適な担体の例としては、炭酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、マルトデキストリン、およびこれらの混合物が挙げられる。従来技術を利用すれば、種々の成分と賦形剤および/または担体とを混合して、所望の形態を形成させられる。本発明の錠剤またはカプセルには、pHが約6.0~7.0において溶解する、腸溶性コーティングが施されていてもよい。胃では溶解せず小腸で溶解する好適な腸溶性コーティングとしては、酢酸フタル酸セルロースが挙げられる。製剤および投与に関するさらなる詳細な技術は、Remington's Pharmaceutical Sciences(Maack Publishing Co., Easton, PA)の最新の版に記載されている場合がある。
いくつかの実施形態において、上述した経口送達用の媒体は、1日分の用量が0.1g~10.0gのシアル酸(NANAなど)となるように製剤化されており、好ましくは0.5~2.0のNANAとなるように製剤化されており、より一層好ましくは約1.0gのシアル酸(NANAなど)となるように製剤化されている。いくつかの実施形態において、NANAの有効量とは、所定のウイルスの成長または増殖を防止するのに必要な量であるか、またはウイルスを不活性化するのに必要な量である。いくつかの実施形態において、シアル酸(NANAなど)の有効量とは、所定の部位(循環血流、鼻道または副鼻腔のような体腔など)におけるNANAの濃度が約1nmol~10μmolとなるのに充分な量である。
いくつかの好適な実施形態においては、シアル酸を経口投与する。いくつかの好適な実施形態において、シアル酸の1日分の用量は、20~200gである。いくつかの好適な実施形態において、シアル酸の1日分の用量は、50~150gである。いくつかの好適な実施形態においては、1日分の用量を、1~20回の投与により投与する。いくつかの好適な実施形態においては、シアル酸を水溶液として投与する。いくつかの好適な実施形態において、水溶液は、香料、安定化剤および保存料からなる群より選択されるさらなる薬剤を含んでいる。さらなる薬剤は、天然ではシアル酸と共に存在しない。
いくつかの実施形態において、シアル酸(NANAなど)は、雰囲気療法(ミストによる療法など)に使用できる流体中において提供される。いくつかの実施形態において、本発明が提供するのは、リザーバ、ポンプおよびノズルを備えている装置である。リザーバは、シアル酸(NANAなど)を含んでいる流体を格納している。ポンプによってノズルから流体を噴射でき、シアル酸(NANAなど)を含んでいるミストが提供される。いくつかの実施形態において、装置は、加湿器である。他の実施形態において、装置は、自動ミストディスペンサである。いくつかの実施形態において、シアル酸(NANAなど)は、適切なエアロゾルスプレーのディスペンサー装置に格納されているエアロゾルスプレーとして提供される。したがって、いくつかの実施形態において、本発明が提供するのは、シアル酸(NANAなど)およびエアロゾル噴射剤を含んでいる装置または組成物である。噴射剤の例としては、揮発性炭化水素の混合物が挙げられる(ただし、これらには限定されない)。通常、揮発性炭化水素は、プロパン、n-ブタンおよびイソブテン、ジメチルエーテル(DME)、メチルエチルエーテル、亜酸化窒素、二酸化炭素、ヒドロフルオロアルカン(HFA)である。HFAは、HFA134a(1,1,1,2,-テトラフルオロエタン)、HFA227(1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン)のいずれか一方または組合せである。通常、シアル酸(NANAなど)の流体は、噴射剤と混和性である。好ましくは、シアル酸(NANAなど)の流体は、エアロゾル、ミスト、フォーミングゲル、クリームまたはローションに製剤化されている。
現代のエアロゾルスプレー製品には、3つの主要な部材がある。それは、缶、弁、およびアクチュエータもしくはボタンである。缶は、最も一般的には塗装されたブリキ(スズ層のある鉄鋼)であり、2ピースまたは3ピースの金属を巻締めして作製されている。アルミニウム缶も一般的であり、通常は高価な製品に使用されている。弁は、缶の暴発を防止する。便の設計は、噴射率の決定に重要である。ユーザがアクチュエータを押下すると、弁が解放される。アクチュエータに備わっているノズルの形状および大きさにより、エアロゾルスプレーの拡散を制御する。
いくつかの実施形態において、本発明の装置は、ピストンバリアシステムを備えている。ピストンバリアシステムを用いる容器は、多くの場合、粘度の高い製品に使用されている(起泡後ゲル、濃厚クリーム、ローションなど)。ピストンバリアシステムを採用することの主たる利点は、製品と噴射剤とを確実に分離し、製品の使用期間を通じて製剤の純度および完全性を維持できる点である。また、ピストンバリアシステムを採用すれば、製品の滞留を最小限に保ちながら、吐出速度が制御され均一になり、さらに経済的である。
いくつかの実施形態において、本発明の装置は、bag-in-canシステム(または、BOV(bag on valve)システム)を備えている。このシステムでは、密封された多層ポーチにより、製品と加圧剤とが分離されている。これにより、製剤の完全性が維持され、製品のみが吐出される。この実施形態において、NANA流体は、バッグの中において提供される。bag-in-canシステムには様々な利点があるが、とりわけ、製品の保存寿命を延長できる。他の利点としては、全方向(360°)に吐出できることや、静穏性が高いこと、吐出物が冷たくないことが挙げられる。
これらの装置は、抗ウイルス用のスプレー、泡、ゲルまたは他の流体が必要とされる箇所で利用できる。例えば、これらの装置は、所望の環境または空間における、治療用の抗ウイルスミストの噴射に利用できる。所望の環境または空間の例としては、建物内の部屋(オフィス、キッチン、キュービクル、トイレなど)、乗物(列車、航空機、バス、タクシー、バン、自動車など)、動物収容施設(納屋、食肉処理場、家禽小屋など)が挙げられる。装置を使用して、何らかの表面(調理台、床、シャワーなど)に対してシアル酸(NANAなど)を含んでいる流体を噴射してもよい。いくつかの実施形態においては、装置を使用して、シアル酸(NANAなど)を含んでいるミストを、建物、納屋または乗物の換気システムに注入する。
さらなる実施形態において、本発明が提供するのは、溶液中(生理食塩水中など)のシアル酸(NANAなど)を含んでおり、眼球に適用できる、シアル酸(NANAなど)の組成物である。したがって、いくつかの実施形態において、本発明が提供するのは、シアル酸(NANAなど)の溶液の液滴を眼球に滴下するためのノズルを有する容器を備えている、物品である。ここで意図されているのは、眼球および周囲の組織に対する効果のみならず、眼球および涙道にシアル酸(NANAなど)を投与することにより、副鼻腔および関連する体腔に直接に送達することである。それゆえ、シアル酸(NANAなど)および/または追加の抗菌剤もしくは抗ウイルスの剤を点眼液として投与することは、眼球感染もしくは副鼻腔感染の治療において、シアル酸(NANAなど)または他の化合物を投与するための効果的な方法である。また、このような投与は、眼球、涙道、副鼻腔および、効果的に吸着し局所または全身を治療できる粘液性の内表面を介した全身性の治療において、シアル酸(NANAなど)または他の化合物を投与するための効果的な方法でもある。
他の実施形態において、シアル酸(NANAなど)は、消費者が食品または飲料に加えるのに好適な粉末または液体として提供される。例えば、いくつかの実施形態においては、粉末形態である日用サプリメントを個体に投与してもよい。この粉末は、飲料に混ぜたり、半固形の食品(プディング、トッピング、ソース、ピューレ、調理済穀物、サラダドレッシングなど)に混ぜ込んだりする。あるいは、他の方法により食品に添加する。
いくつかの実施形態において、シアル酸(NANAなど)は、家畜(家禽、ウシ、ブタ、ヒツジなど)に供給する水中において提供される。あるいは、シアル酸(NANAなど)は、養殖場で使用する水中において提供される。他の実施形態において、シアル酸(NANAなど)は、人間が使用する水道水またはウォーターボトルの水において提供される。
シアル酸(NANAなど)の組成物は、1つ以上の不活性成分を含んでいてもよい。とりわけ、日用サプリメントによって食事に追加されるカロリーを抑えるならば、不活性成分を含んでいることが望ましい。例えば、本発明の日用サプリメントは、さらなる成分を含んでいてもよい。さらなる成分の例としては、ハーブ、ビタミン、ミネラル、調味料、着色料、甘味料、香料、不活性成分が挙げられる。例えば、本発明の組成物は、次のうち1つ以上を含んでいてもよい:アスコルビン酸塩(アスコルビン酸、無機アスコルビン酸塩、ローズヒップ、アセロラなど)、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)、フォーチもしくは何首烏(アジアの伝統医療で一般的な薬草)、キャッツクロー(古代の薬草成分)、緑茶(ポリフェノール)、イノシトール、ケルプ、ダルス、生物性フラビノイド、マルトデキストリン、イラクサ、ナイアシン、ナイアシンアミド、ローズマリー、セレン、シリカ(二酸化ケイ素、シリカゲル、トクサなど)、スピルリナ、亜鉛。このような追加の成分は、天然のままであってもよいし、濃縮物であってもよい。
いくつかの実施形態において、組成物は、ビタミンおよびミネラルを含んでいる。ビタミンおよびミネラルの例としては、リン酸カルシウムもしくは酢酸カルシウム(三塩基性)、リン酸カリウム(二塩基性)、硫酸マグネシウムもしくは酸化マグネシウム、塩(塩化ナトリウム)、塩化カリウムもしくは酢酸カリウム、アスコルビン酸、オルトリン酸鉄、ナイアシンアミド、硫酸亜鉛もしくは酸化亜鉛、パントテン酸カルシウム、グルコン酸銅、リボフラビン、β-カロテン、塩酸ピリドキシン、一硝酸チアミン、葉酸、ビオチン、塩化クロムもしくはピコリン酸クロム、ヨウ化カリウム、セレン酸ナトリウム、モリブデン酸ナトリウム、フィロキノン、ビタミンD、シアノコバラミン、亜セレン酸ナトリウム、硫酸銅、ビタミンA、ビタミンC、イノシトール、ヨウ化カリウムが挙げられる(ただし、これらには限定されない)。ビタミンおよびミネラルの適切な用量は、例えば、米国のRDAガイドラインを参照。
本発明は、栄養補助物質を含んでいる日用サプリメントを提供する。好ましくは、シアル酸(NANAなど)は、それ自体として含まれているか、さらなる栄養補助物質の1つ以上と組合せて含まれている。栄養補助物質とは、天然の生理活性がある化合物であって、健康増進、病気予防または薬用の特性を有している化合物である。栄養補助物質の例としては、Allium cepa、Allium sativum、Aloe vera、Angelica species、天然抗酸化物質、Aspergillus oryzae酵素療法、オオムギ若葉、ブロメライン、カルニチン、カロテノイドおよびフラボノイド、カテキン、Centella asiatica(ツボクサ)、コエンザイムQ10、漢方薬、Coleus forskohlii、Commiphora mukul、共役リノール酸(CLA)、Crataegus oxyacantha(セイヨウサンザシ)、Curcuma longa(ウコン)、Echinacea species(ムラサキバレンギク)、Eleutherococcus senticosus(エゾウコギ)、Ephedra species、食用魚油消費および魚油サプリメント、ゲニステイン、Ginkgo biloba、Glycyrrhiza(リコリス)、Hypericum perforatum(セントジョーンズワート)、Hydrastis(ゴールデンシール)および他のベルベリン含有植物、Lactobacillus、Lobelia(インディアンタバコ)、Melaleuca alternifolia、メナキノン、Mentha piperita、Panax ginseng、膵臓酵素、Piper mythisticum、プロシアニドールオリゴマー、Pygeum africanum、クエルセチン、Sarsaparilla species、Serenoa repens(ノコギリヤシ、Sabal serrulata)、Silybum marianum(オオアザミ)、ローズマリー/レモンバーム、亜セレン酸塩、Tabebuia avellanedae(ラパチョ)、Taraxacum officinale、Tanacetum parthenium(ナツシロギク)、タキソール、ウワウルシ(ベアベリー)、Vaccinium myrtillus(ブルーベリー)、Valerian officinalis、Viscum album(ヤドリギ)、ビタミンA、β-カロテンおよび他のカロテノイド、Zingiber officinale(ショウガ)が挙げられる(ただし、これらには限定されない)。
何種類かの栄養補助物質は、ウイルス性障害の治療に用いられている。その例としては、ゲニステイン(ダイズ//レッドクローバーに含有されているもの)、ローズマリー/レモンバーム、亜セレン酸塩、オオムギ若葉、ラウリン酸、Phyllanthus amarus/niruriが挙げられる(例えば、Nicolson, G. (1998) J. Medicine 1:123-128を参照。参照によりその全体が本明細書に組込まれる)。さらなる抗ウイルス性栄養補助物質の例としては、カテキン、フラボノイド、Echinacea、カスカラが挙げられる(ただし、これらには限定されない)。
〔実施例1〕
鼻スプレーを製剤化する。この鼻スプレーには、無菌の0.9%生理食塩水中に1mg/mLのN-アセチルノイラミン酸(NANA)が含まれている(pH3.0)。20mLのポンプスプレーボトルにおいて製剤を提供してもよい。このボトルは、平均して140回のスプレーを送達するように調節されている。ボトルのポンプを使用するごとに1回のスプレーが送達される。
〔実施例2〕
鼻スプレーを製剤化する。この鼻スプレーには、無菌の0.9%生理食塩水中に1mg/mLのN-グリコリルノイラミン酸(NGNA)が含まれている(pH3.0)。20mLのポンプスプレーボトルにおいて製剤を提供してもよい。このボトルは、平均して140回のスプレーを送達するように調節されている。ボトルのポンプを使用するごとに1回のスプレーが送達される。
〔実施例3〕
コロナウイルスへの感染予防におけるシアル酸(Neu5AcまたはNeu5Gc)の効果を、in vitroのモデルシステムで評価した。試験用のウイルスとしてCoV-OC43を用いて、種々の稀釈率のシアル酸による細胞へのウイルス感染防止能を試験した。結果を図1~3に示す。図1および図2は、2つの複製に由来するデータである。このデータは、Neu5AcまたはNeu5Gcの種々の濃度における、細胞のCoV-OC43への感染を示している(Neu5Acは右側の棒、Neu5Gcは左側の棒)。同図から分かるように、用量依存的に感染が防止された。図3は、Neu5Acによる感染の防止を、コントロールである糖(ガラクトース)と比較した実験のデータである(Neu5Acは左側の棒、ガラクトースは右側の棒)。同図から分かるように、Neu5Acはコントロールよりも感染を防止した。
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5. Schalcter M: N - Acetylneuraminic Acid (Neu5Ac). www.glyconutritionforlife.org/Science_of_Glyconutrients/N-Acetylneuraminic Acid_ (Neu5Ac) php
6. Ajit Varki, sialic acids in human health and disease . Trends Mol Med. 2008 August; 14 (8): 351- 360. doi: 10.1016 / j.molmed.2008.06.002.
7. Thilo Stehle, Zaigham M. Khan: Rules and Exceptions: sialic Acid Variants and Their Role in Determining Viral Tropism. Journal of Virology p. 7696-7699 July 2014 Volume 88 Number 14
8. Muriel Bardor, Dzung H. Nguyen, Sandra Diaz, and Ajit Varki: Mechanism of Uptake and Incorporation of the Non - human sialic acid N - Glycolylneuraminic Acid into Human Cells . J Biol Chem Vol. 280, No. 6, Issue of February 11, pp. 4228-4237, 2005
9. Newburg, DS: Do the binding properties of oligosaccharides in milk protect human infants from gastrointestinal bacteria? J. Nutr. 127: 980S-984S, 1997.
10. Heine, W ; Wutzke, KD ; Radke M . Sialic acid in breast milk and infant formula food . Monatsschr Kinderheilkd. 1993 December; 141 (12): 946 to -50.
11. Boehm, G and Stahl, B. Oligosaccharides in milk. J. Nutr 2007, vol 137, p 847S - 849S
12. Martin - Sosa, S, Martin, M - J and Hueso, P: The Sialylated Fraction of Milk oligosaccharides Ice Partially Responsible for Binding two enterotoxigenic and Uropathogenic Escherichia coli Human Strains. J. Nutr. 132: 3067-3072, 2002
13. Samraj AN , Pearce OM , Laeubli H , Crittenden AN , Bergfeld AK , Banda K , Gregg CJ , Bingman AE , Secrest P , Diaz SL , Varki NM , Varki A .: A red meat - derived glycan promoter inflammation and cancer progression . Proc Natl Acad Sci US A. 2015 Jan. 13; 112 (2): 542 to -7. doi:10.1073 / pnas.1417508112. Epub 2014 December 29.
14. GRAS Notice (GRN) No. 602 http://www.fda.gov/Food/IngredientsPackagingLabeling/GRAS/NoticeInventory/default.htm ORIGINAL SUBMISSION
15. Choi, SH, Baldin, N., Wagner, VO (2I), Roy, S., Rose, J., Thosrud, BA, Pnothirath, P. & Roerigh, CH 2014. Safety evaluation of the human - identical milk monosaccharide sialic acid (N - acetyl - D-- neuraminic acid) in Sprague - Dawley rats. Regul. Toxicol. Pharmacol., 70, 482 to -491.
上記の明細書において言及されている全ての出版物および特許は、参照により本明細書に組込まれる。上述した本発明の方法およびシステムの種々の変更および変形例は、当業者にとって明らかであり、本発明の範囲および趣旨に含まれる。特定の好適な実施形態との関連で本発明を説明してきたが、理解すべきことには、クレームされている発明は特定の実施形態に限定されてはならない。とりわけ、上述した本発明を実施するための実施態様に対して、関連技術分野の当業者にとって自明な種々の変更を施した発明も、後述する特許請求の範囲に含まれる。

Claims (24)

  1. ヒト被験体または動物被験体においてSARS-CoV-2(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2型)への感染を治療または防止する方法であって、
    ある状態にある上記被験体に有効濃度のシアル酸を含んでいる組成物を投与して、SARS-CoV-2への感染を防止または治療する工程を含む、
    方法。
  2. ヒト被験体または動物被験体においてSARS-CoV-2(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2型)への感染を予防する方法であって、
    ある状態にあるにある上記被験体に有効濃度のシアル酸を含んでいる組成物を投与して、SARS-CoV-2への感染を防止する工程を含む、
    方法。
  3. ヒト被験体または動物被験体におけるSARS-CoV-2(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2型)への感染の治療または防止に使用するための、シアル酸。
  4. ヒト被験体または動物被験体におけるSARS-CoV-2(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2型)感染症の予防に使用するための、シアル酸。
  5. 上記シアル酸は、N-アセチルノイラミン酸(NANA)およびN-グリコリルノイラミン酸(NGNA)からなる群より選択される、
    請求項1~4のいずれか1項に記載の方法または使用。
  6. 上記シアル酸は、NANAである、
    請求項5に記載の方法または使用。
  7. 上記シアル酸を鼻腔内投与する、
    請求項1~6のいずれか1項に記載の方法または使用。
  8. 上記有効濃度のシアル酸は、約0.1~約100mg/mLの水溶液である、
    請求項7に記載の方法または使用。
  9. 上記有効濃度のシアリックは、約0.5~約50mg/mLの水溶液である、
    請求項7に記載の方法または使用。
  10. 上記シアル酸の1日分の用量は、約0.1~100mgのシアル酸/鼻孔/日である、
    請求項8または9に記載の方法または使用。
  11. 上記シアル酸の1日分の用量は、約0.1~10mgのシアル酸/鼻孔/日である、
    請求項8または9に記載の方法または使用。
  12. 上記シアル酸を含んでいる組成物(好ましくは水溶液)のpHは、2.0~4.0である、
    請求項8~11のいずれか1項に記載の方法または使用。
  13. 上記シアル酸を含んでいる組成物(好ましくは水溶液)のpHは、2.5~3.7である、
    請求項8~11のいずれか1項に記載の方法または使用。
  14. 上記シアル酸を含んでいる組成物(好ましくは水溶液)のpHは、2.8~3.2である、
    請求項8~11のいずれか1項に記載の方法または使用。
  15. 上記シアル酸の1日分の用量を、1日あたり2~8回の投与により送達する、
    請求項8~14のいずれか1項に記載の方法または使用。
  16. 上記組成物は、チクソ剤をさらに含んでいる、
    請求項8~15のいずれか1項に記載の方法または使用。
  17. 上記シアル酸を経口投与する、
    請求項1~7のいずれか1項に記載の方法または使用。
  18. 上記シアル酸の1日分の用量は、20~200gである、
    請求項17に記載の使用の方法。
  19. 上記シアル酸の1日分の用量は、50~150gである、
    請求項17に記載の使用の方法。
  20. 上記1日分の用量を、1~20回の投与により投与する、
    請求項17~19のいずれか1項に記載の方法または使用。
  21. 上記シアル酸を水溶液として投与する、
    請求項17~20のいずれか1項に記載の方法または使用。
  22. 上記水溶液は、香料、安定化剤および保存料からなる群より選択されるさらなる薬剤を含んでおり、
    上記さらなる薬剤は、天然ではシアル酸と共に存在しない、
    請求項21に記載の方法または使用。
  23. 上記被験体は、SARS-CoV-2への感染の危険性がある、
    請求項1~22のいずれか1項に記載の方法または使用。
  24. 上記被験体は、COVID-19に罹患している、
    請求項1~22のいずれか1項に記載の方法または使用。
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