JP2023520667A - 細菌細胞におけるタンパク質合成のための完全直交系 - Google Patents

細菌細胞におけるタンパク質合成のための完全直交系 Download PDF

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Abstract

開示されるのは、改変ポリヌクレオチド、改変ポリヌクレオチドを含む改変リボソーム、改変(enginnered)ポリヌクレオチド及びリボソームを含む改変細胞及び系、並びに改変ポリヌクレオチド、改変リボソーム、改変細胞及び系を作製及び使用する方法である。改変ポリヌクレオチド、改変リボソーム、及び改変細胞は、配列規定ポリマーの調製及び非カノニカルアミノ酸をポリマーに組み込むことができる変異体リボソームの選択に利用することができる。【選択図】図1

Description

連邦政府による資金提供を受けた研究又は開発に関する陳述
本発明は、アメリカ国立科学財団(National Science Foundation)によって与えられたMCB-1716766及びMCB-1615851の下で政府の援助によって行われた。政府は本発明に一定の権利を有する。
関連する特許出願への相互参照
本出願は、35U.S.C.§119(e)の下で、2020年3月24日に出願された米国仮出願第62/993,860号に対する優先権の利益を主張し、その内容は参照によりその全体が本明細書に援用される。
本発明は、改変ポリヌクレオチド(engineered polynucleotides)、改変ポリヌクレオチドを含む改変リボソーム(engineered ribosomes)、改変ポリヌクレオチド及びリボソームを含む改変細胞(engineered cells)及び系、並びに改変ポリヌクレオチド、改変リボソーム、改変細胞及び系を作製及び使用する方法に関する。改変ポリヌクレオチド、改変リボソーム、及び改変細胞を利用して配列規定(sequence defined)ポリマーを調製することができる。
リボソームは、タンパク質の合成を担うリボ核タンパク質の機械装置である。すべての生物の界において、リボソームは、2つのサブユニットで構成されており、それぞれは独自のリボソームRNA(rRNA)スキャフォールドの上に構築されている。サブユニットの、独立しているが協働的な機能、例えば開始時に結合し、伸長の間に回転し、且つタンパク質放出後に解離する能力は、タンパク質合成の確立されたパラダイムである。さらに、リボソームの二部からなる性質は、専用のアセンブリ因子が未成熟リボソームサブユニットを引き離し、それらが翻訳開始しないようにするので、バイオジェネシスに必須であると推定されている[Karbstein 2013]。サブユニットの自由な交換は、ネイティブの翻訳を妨げることなく新しい機能に向けて進化可能な特殊な直交性遺伝子系の開発を制限する。
リボソームは非常に複雑な機械装置である。この大きな粒子は、RNAが主要な構造的且つ機能的な構成要素であり、別個であるが相補的な機能を調整する、必ず2つのサブユニットから構成され、小サブユニットはmRNAを解読し、一方で大サブユニットはペプチド結合の形成を触媒し、且つポリペプチドの出口トンネルを形成する。サブユニットの結合は、翻訳のサイクルを通じて厳密に制御される。まず、リボ核タンパク質が成熟する間に、いくつかのアセンブリ因子が2つのサブユニットの結合を妨げる。その後、翻訳の開始もまた、開始因子、mRNA及びfMet-tRNAfMetが順次小サブユニットに加わって、前開始複合体が形成された後に、大サブユニットが動員されるように厳密に制御される。伸長の間には、サブユニットが互いに約6度の角度で相対的に少しずつ一方向に移動する(ratchet)。翻訳が終了すると、新たに合成されたタンパク質はリボソームから放出され、リボソームのリサイクルと呼ばれる活発なプロセスでサブユニットが解離し、さらなる翻訳ラウンドに備えられる。したがって、なぜリボソームが進化の過程で2つのサブユニットとして維持されてきたかは、翻訳の特定の段階でサブユニットの結合と解離がプログラムされていることが必要であることからおそらく説明されるであろう。リーダー配列をもたない(leaderless)mRNAにおける開始は、予め結合したサブユニットをもつ70Sリボソームによって行われることが示唆されたが、タンパク質合成の全サイクルが分離不可能なサブユニットをもつリボソームによって達成されうることを示す実験的証拠は存在しない。
タンパク質の生合成を繰り返す間のリボソームサブユニットのランダムな交換は、完全に直交性のリボソームを作るための障害、基礎科学と生物工学双方に重要な意味をもつ課題である完全直交性リボソームの作製にとって障害となっている。これまで、レポーターmRNAに代替のシャイン・ダルガノ(Shine-Dalgarno)(SD)配列を置き、且つ16S rRNAのアンチSD領域に相補的な変化を導入することによって、小リボソームサブユニットの亜集団(subpopulation)を、常在mRNAの翻訳から特異的mRNAの翻訳へ方向転換することが可能であり[Hui 1987; Rackham 2005]、新しい解読特性をもつ変異体30Sサブユニットの選択を可能にした[Wang 2007]。しかし、大サブユニットは、ネイティブ小サブユニットと直交性の小サブユニットの間で自由に交換するので、完全直交性リボソームを作り出すことは不可能であり、それにより、ペプチジルトランスフェラーゼ中心(PTC)及び新生ペプチド出口トンネルを含む、50Sサブユニットの特殊な新しい特性のための設計が制限されてきた。
サブユニットが互いに連結されたテザー(tethered)リボソームの設計は、直交翻訳系を作製すること、合成生物学における非天然アミノ酸の取り込みに向けてリボソームを進化させること、及び優性致死変異を分子的に特徴付けることといった新しい道を開く可能性がある。以前、本発明者ら及び他の者(we and others)は、テザーリボソーム、並びにテザーリボソームの製法及び使用法を開示した(国際公開第2015/184283号パンフレット「Tethered Ribosomes and Methods of Making and Using Thereof」及びOrelle et al., ”Protein synthesis by ribosomes with tethered subunits,” Nature, 6 August 2015, Vol. 524, page 119を参照)。ここでは、テザーサブユニットをもつリボソームを組み込む系及び方法に対するさらなる改良を開示する。
本明細書で開示されるのは、改変ポリヌクレオチド、改変リボソーム、並びに改変細胞及び系である。改変ポリヌクレオチド、改変リボソーム、並びに改変細胞及び系は、配列規定ポリマーを調製するための方法に利用することができる。いくつかの実施形態では、改変リボソームは、小サブユニット、大サブユニット、及びポリヌクレオチド配列を含む連結部分を含み、連結部分は、小サブユニットを大サブユニットと繋ぎ止め、且つ改変リボソームは配列規定ポリマーの翻訳を補助することができる。
ある特定の実施形態では、改変リボソームの小サブユニットはrRNA及びタンパク質を含み、改変リボソームの大サブユニットはrRNA及びタンパク質を含み、且つ連結部分は小サブユニットのrRNAを大サブユニットのrRNAと繋ぎ止める。ある特定の実施形態では、大サブユニットは、23S rRNAの順列置換(permutated)バリアントを含む。ある特定の実施形態では、小サブユニットは、16S rRNAの順列置換バリアントを含む。したがって、ある特定の実施形態では、改変リボソームは、(a)16S rRNA、その順列置換バリアント、又はそれらの断片、及び(b)23S rRNA、その順列置換バリアント、又はそれらの断片の融合物を含む改変ポリヌクレオチドを含む。
本開示の改変リボソームの小サブユニットのrRNAは、アンチシャイン・ダルガノ(アンチSD)配列を含むことができる。いくつかの実施形態では、改変リボソームの小サブユニットのrRNAのアンチSD配列は、改変リボソームを含む改変宿主細胞のネイティブアンチSD配列に対応する、又はそれと同一である。そのような実施形態では、改変リボソームの小サブユニットのrRNAのアンチSD配列は、改変宿主細胞のネイティブmRNAのシャイン・ダルガノ(SD)配列と逆相補性を示す。本開示の改変リボソームのいくつかの実施形態では、本開示の改変リボソームの小サブユニットのrRNAは、大サブユニット(submit)のrRNAに、ポリヌクレオチド配列を含む連結部分を介して連結され、その場合、改変リボソームは、繋ぎ止められた大サブユニットと小サブユニットを有する、且つ改変宿主細胞のネイティブmRNAのSD配列と逆相補性を示す、改変リボソームを含む改変宿主細胞のネイティブアンチSD配列を含むと記載することができる。したがって、繋ぎ止められた大サブユニットと小サブユニットを有する改変リボソームは、改変宿主細胞のネイティブmRNAを用いて翻訳を補助することができる。
他の実施形態では、改変リボソームの小サブユニットのrRNAのアンチSD配列は、改変リボソームを含む改変宿主細胞のネイティブmRNAのアンチSD配列に対して(又は第1の改変リボソームのアンチSD配列に対して)塩基置換を含むように改変される。そのような実施形態では、改変宿主細胞は、改変リボソームの小サブユニットのrRNAの改変アンチSD配列に対して逆相補性を示し、改変アンチSD配列をもつrRNAを有する改変リボソームによる改変mRNAの翻訳を可能にする改変アンチSD配列を有する改変mRNAを含むように設計することができる。
本開示の改変リボソームは、改変宿主細胞で使用するために組み合わせることができる。いくつかの実施形態では、本開示のリボソームの組み合わせは、第1の改変リボソームと第2の改変リボソームを含むことができる。第1の改変リボソームは、i)リボソームRNA(rRNA)及びタンパク質を含む小サブユニット、ii)リボソームRNA(rRNA)及びタンパク質を含む大サブユニット、並びにiii)連結部分であって、ポリヌクレオチド配列を含み、且つ小サブユニットのrRNAを大サブユニットのrRNAと繋ぎ止める連結部分を含むことができる。いくつかの実施形態では、第1の改変リボソームの小サブユニットのrRNAは、改変宿主細胞のネイティブmRNAの翻訳を可能にし、且つ好ましくは、改変SD配列(すなわち、改変宿主細胞のネイティブリボソームのアンチSD配列に対して1つ又は複数のヌクレオチド置換を有する改変SD配列)を有するmRNAの翻訳を許容しない改変宿主細胞のネイティブmRNAのSD配列に対応するアンチSD配列を含む。第2の改変リボソームは、i)rRNA及びタンパク質を含む小サブユニット、並びにii)rRNA及びタンパク質を含む大サブユニットを含むことができ、そこでは第2の改変リボソームは、大サブユニットと小サブユニットの間の連結部分を欠く。いくつかの実施形態では、第2の改変リボソームの小サブユニットのrRNAは、改変宿主細胞のネイティブリボソームのアンチSD配列に対して(且つ/又は第1の改変リボソームのアンチSDに対して)1つ又は複数のヌクレオチド置換を有する改変アンチSD配列を含む。改変アンチSD配列は、優先的に、ネイティブ細胞mRNAのSD配列と異なる相補的な若しくは同族のSD配列及び/若しくは第1の改変リボソームのアンチSD配列と異なるアンチSD配列を有するmRNAテンプレートの翻訳を可能にし(すなわち、第2のリボソームによる改変SD配列を有するmRNAの翻訳を可能にする第2のリボソームの小サブユニットのrRNAのアンチSDの相補的である改変SD配列を有するmRNAの翻訳を可能にし、且つ好ましくは第2の改変リボソームによる改変宿主細胞のネイティブmRNAの翻訳を許容しない)、且つ/又はその場合(and/or where)、第2の改変リボソームは、大サブユニット及び/若しくは小サブユニットに、改変宿主細胞のネイティブリボソームに対して(若しくは第1の改変リボソームに対して)1つ又は複数の機能変換型変異を含み、その機能変換型変異がアンチSD配列に存在しない。
改変リボソームの大サブユニットと小サブユニットが連結部分によって繋ぎ止められたある特定の実施形態では、連結部分は大サブユニットのヘリックスを小サブユニットのヘリックスに共有結合させる。大サブユニットが23S rRNA(又は23S rRNAの順列置換バリアント)を含み、且つ小サブユニットが16S rRNA(又は16S rRNAの順列置換バリアント)を含むある特定の実施形態では、連結部分は、23S rRNA(又は23S rRNAの順列置換バリアント)のヘリックス10、ヘリックス38、ヘリックス42、ヘリックス54、ヘリックス58、ヘリックス63、ヘリックス78、又はヘリックス101を、16S rRNA(又は16S rRNAの順列置換バリアント)のヘリックスに共有結合させる。大サブユニットが23S rRNA(又は23S rRNAの順列置換バリアント)を含み、且つ小サブユニットが16S rRNA(又は16S rRNAの順列置換バリアント)を含むある特定の実施形態では、連結部分は、16S rRNA(又は16S rRNAの順列置換バリアント)のヘリックス11、ヘリックス26、ヘリックス33、又はヘリックス44を、23S rRNA(又は23S rRNAの順列置換バリアント)のヘリックスに共有結合させる。
ある特定の実施形態では、大サブユニットは、L1ポリヌクレオチドドメイン、L2ポリヌクレオチドドメイン、及びCポリヌクレオチドドメインを含み、そこにおいて、L1ドメインの後ろに、5’から3’に、Cドメイン及びL2ドメインが順に続く。ある特定の実施形態では、5’から3’に、L1ドメインが後ろに続くL2ドメインから本質的になるポリヌクレオチドは、23S rRNA(例えば大腸菌の23S rRNA)と実質的に同一である。ある特定の実施形態では、5’から3’に、L1ドメインが後ろに続くL2ドメインから本質的になるポリヌクレオチドは、23S rRNAと少なくとも95%同一である。ある特定の実施形態では、Cドメインは、1~200個の範囲のヌクレオチドの長さを有するポリヌクレオチドを含む。ある特定の実施形態では、CドメインはGAGAポリヌクレオチドを含む。
ある特定の実施形態では、小サブユニットは、S1ポリヌクレオチドドメイン及びS2ポリヌクレオチドドメインを含み、そこにおいて、5’から3’に、S1ドメインの後ろにS2ドメインが順に続く。ある特定の実施形態では、5’から3’に、S2ドメインが後ろに続くS1ドメインから本質的になるポリヌクレオチドは、16S rRNA(例えば、大腸菌の16S rRNA)と実質的に同一である。ある特定の実施形態では、5’から3’に、S2ドメインが後ろに続くS1ドメインから本質的になるポリヌクレオチドは、16S rRNAと少なくとも95%同一である。
ある特定の実施形態では、連結部分は、T1ポリヌクレオチドドメイン及びT2ポリヌクレオチドドメインを含む。ある特定の実施形態では、T1ドメインはS1ドメイン及びL1ドメインに連結し、且つそこにおいて、5’から3’に、S1ドメインの後にT1ドメイン及びL1ドメインが順に続く。ある特定の実施形態では、T1ドメインは、5~200個のヌクレオチドの範囲の長さを有するポリヌクレオチドを含む。ある特定の実施形態では、T1ドメインは、7~40個のヌクレオチドの範囲の長さを有するポリヌクレオチドを含む。ある特定の実施形態では、T1ドメインは、ポリアデニンポリヌクレオチドを含む。ある特定の実施形態では、T1ドメインは、7~12個のアデニンヌクレオチドの長さを有するポリアデニンポリヌクレオチドを含む。ある特定の実施形態では、T2ドメインはS2ドメイン及びL2ドメインに連結し、且つそこにおいて、5’から3’に、L2ドメインの後にT2ドメイン及びS2ドメインが順に続く。ある特定の実施形態では、T2ドメインは、5~200個のヌクレオチドの範囲の長さを有するポリヌクレオチドを含む。ある特定の実施形態では、T2ドメインは、7~20個のヌクレオチドの範囲の長さを有するポリヌクレオチドを含む。ある特定の実施形態では、T2ドメインは、ポリアデニンポリヌクレオチドを含む。ある特定の実施形態では、T2ドメインは、7~12個のアデニンヌクレオチドの長さを有するポリアデニンポリヌクレオチドを含む。
ある特定の実施形態では、改変リボソームは、5’から3’に、T1ドメイン、L1ドメイン、Cドメイン、L2ドメイン、T2ドメイン、及びS2ドメインが順に続くS1ドメインを含む。ある特定の実施形態では、改変リボソームは、5’から3’に、T1ドメイン、L1ドメイン、Cドメイン、L2ドメイン、T2ドメイン、及びS2ドメインが順に続くS1ドメインから本質的になる。
ある特定の実施形態では、本開示の改変リボソームは、野生型宿主細胞と比較して(例えば、野生型大腸菌と比較して)変異を含む。ある特定の実施形態では、変異は機能変換型変異である。ある特定の実施形態では、機能変換型変異は機能獲得型変異である。ある特定の実施形態では、機能獲得型変異は、改変リボソームの大サブユニットのペプチジルトランスフェラーゼ中心に存在する。ある特定の実施形態では、機能獲得型変異は、改変リボソームの大サブユニットのペプチジルトランスフェラーゼ中心のAサイトに存在する。ある特定の実施形態では、機能獲得型変異は、改変リボソームの大サブユニットの出口トンネルに存在する。ある特定の実施形態では、改変リボソームは、改変リボソームの大サブユニット及び/又は小サブユニットに存在する抗生物質耐性変異を含む。
さらに本明細書で開示されるのは、ポリヌクレオチドであって、改変リボソームのrRNAをコードするポリヌクレオチドである。ある特定の実施形態では、ポリヌクレオチドはベクターである。ある特定の実施形態では、ポリヌクレオチドは、改変リボソームによって発現する(to be expressed)遺伝子をさらに含む。ある特定の実施形態では、遺伝子はレポーター遺伝子である。ある特定の実施形態では、レポーター遺伝子は緑色蛍光タンパク質遺伝子である。ある特定の実施形態では、改変リボソームは改変アンチSD配列を含み、且つその遺伝子は、改変リボソームのアンチSD配列に対応する相補的な改変SD配列を含む。ある特定の実施形態では、遺伝子はコドンを含み、且つコドンは非天然アミノ酸をコードする。いくつかの実施形態では、改変アンチSD配列を含むリボソームは非テザー(untethered)リボソームである。
さらに本明細書で開示されるのは、改変リボソームを調製するための方法であって、改変リボソームのrRNAをコードするポリヌクレオチドを、例えば大腸菌などの改変宿主細胞で発現させる方法である。ある特定の実施形態では、本方法は、宿主細胞で改変リボソームを調製すること、選択マーカーを発現させること、及び改変宿主細胞において選択マーカーを発現させる改変リボソームを選択することをさらに含む。いくつかの実施形態では、選択された改変リボソームは、改変宿主細胞で発現された改変リボソームに対して(及び/又は改変宿主細胞のネイティブリボソームに対して)1つ又は複数の変異を含むことになる。ある特定の実施形態では、選択ステップは、ネガティブな選択ステップ、ポジティブ選択ステップ、及びネガティブとポジティブ両方の選択ステップを含む。
さらに本明細書で開示されるのは改変細胞である。改変細胞は、(i)改変リボソームのrRNAをコードするポリヌクレオチド、(ii)改変リボソーム、又は(i)と(ii)の両方を含む大腸菌細胞などの宿主細胞である。いくつかの実施形態では、改変宿主細胞は、繋ぎ止められた大サブユニットと小サブユニットを有する第1の改変リボソームを含み、その小サブユニットは、改変宿主細胞のネイティブmRNAのSD配列に対応するアンチSD配列を有するrRNAを含む。いくつかの実施形態では、改変宿主細胞は、繋ぎ止められていない大サブユニットと小サブユニットを有する第2の改変リボソームをさらに含み、その小サブユニットは、改変宿主細胞のネイティブmRNAのSD配列に対して改変されたアンチSD配列を有し、且つ第2のリボソームの小サブユニットのrRNAの改変アンチSD配列に対応する改変SD配列を有するmRNAの翻訳を可能にするrRNAを含む。
いくつかの実施形態では、改変細胞は第1のタンパク質翻訳機構及び第2のタンパク質翻訳機構を含む。第1のタンパク質翻訳機構は第1の改変リボソームを含むことができ、そこにおいて第1の改変リボソームは、第1と第2のサブユニットを繋ぎ止める連結部分を含む。第2の翻訳機構は第2の改変リボソームを含むことができ、そこにおいて第2の改変リボソームは大サブユニットと小サブユニットの間の連結部分を欠く。いくつかの実施形態では、第2の改変リボソームは、ネイティブmRNAのSD配列に相補的であるネイティブリボソームのアンチSD配列に対して(且つ/若しくは第1の改変リボソームのアンチSD配列に対して)改変アンチSD配列、及び/又は改変細胞のネイティブリボソームに対して(且つ/若しくは第1の改変リボソームに対して)アンチSD配列以外の機能変換型変異を含む。
さらに本明細書で開示されるのは、配列規定ポリマーを調製するための方法であって、(a)改変リボソーム又は1つ若しくは複数の改変リボソームを含む改変細胞を用意すること、及び(b)配列規定ポリマーをコードするmRNA又はDNAテンプレートを用意すること、及び1つ又は複数の改変リボソームを使用して配列規定ポリマーを調製することを含み、改変細胞が1つ又は複数の改変リボソームを含み、且つmRNA又はDNAテンプレートが配列規定ポリマーをコードする方法である。配列規定ポリマーは、インビトロ及び/又はインビボで調製することができる。
ある特定の実施形態では、配列規定ポリマーがインビトロで調製され、且つ本方法は、(c)リボソーム欠失細胞抽出物又は精製された翻訳系を用意すること及びリボソーム欠失細胞抽出物又は精製翻訳系を使用して配列規定ポリマーを調製することをさらに含む。ある特定の実施形態では、リボソーム欠失細胞抽出物は、指数増殖期の中~後期の細胞培養物又は採取時に少なくとも約2.0、2.5、若しくは3.0のOD600を有する培養物から調製されたS150抽出物を含む。
ある特定の実施形態では、配列規定ポリマーがインビボで調製される。配列規定ポリマーは、改変リボソームを含む第1の及び第2の翻訳系を含む改変細胞で調製することができ、そこにおいて、第1の翻訳系は、野生型アンチSD配列(すなわち、改変宿主細胞のネイティブmRNAのSD配列に相補的である改変宿主細胞のリボソームのネイティブアンチSD配列)を有するテザーリボソームを含み、且つそこにおいて、第2の翻訳系は、(a)改変アンチSD配列(例えば、改変宿主細胞のリボソームのネイティブアンチSD配列に対し、若しくは第1の翻訳系のテザーリボソームのアンチSDに対し、宿主細胞のネイティブmRNAのSD配列に相補的でない)、及び/又は(b)アンチSD配列以外での機能変換型変異であって、改変宿主細胞のネイティブリボソームに対して、若しくは第1の翻訳系のテザーリボソームに対して変異を有する非テザーリボソームを含む。ある特定の実施形態では、配列規定ポリマーをコードするmRNA又はDNAは改変SD配列を含み、且つ第2の翻訳系の非テザー、改変リボソームは、第2の翻訳系による翻訳を可能にする(且つ好ましくは第1の翻訳系による翻訳を可能にする)配列規定ポリマーをコードするmRNAの翻訳を可能にする配列規定ポリマーをコードするmRNA又はDNAの改変SD配列に相補的な改変アンチSD配列を含む。
ある特定の実施形態では、配列規定ポリマーはアミノ酸を含む。ある特定の実施形態では、アミノ酸は天然アミノ酸である。ある特定の実施形態では、アミノ酸は非天然又は非カノニカルアミノ酸であり、且つ第2の翻訳系の非テザー、改変リボソームは、ネイティブリボソームに対して(又は第1の翻訳系のテザー、改変リボソームに対して)1つ又は複数の変異を含み、非天然又は非カノニカルアミノ酸の配列規定ポリマーへの組み込みを可能にする。
図1は、OSYRISのセットアップ。a)rRNA遺伝子の構成並びに解離可能な70Sリボソーム(左)及びRibo-T(右)の構造。Ribo-Tの小サブユニットと大サブユニットは、円順列置換(circularly-permutated)23S rRNAを16S rRNAのヘリックス44のループに繋ぐ2本のRNAテザーによって共有結合している13、16。b)Ribo-Tに基づく最初のオリジナルの直交翻訳系13では、野生型の解離可能なリボソームが細胞プロテオームを翻訳し、一方では直交性Ribo-T(oRibo-T)が直交性レポーターmRNAの翻訳に関与する。c)OSYRIS細胞(実施例1)では、プロテオームはRibo-Tによって合成され、一方で解離可能なリボソームは特殊な直交翻訳系として機能する。繋ぎ止められているというRibo-Tの性質は、解離可能なリボソームの両サブユニット(改変ASDをもつ30Sサブユニット及び50Sサブユニット)を、直交性mRNAのみの翻訳に限定する。
図2は、OSYRIS細胞における解離可能な直交性リボソームの性能。a)解離可能な70Sリボソームのみを含有する野生型大腸菌(野生型)、及びテザーリボソームのみをもつRibo-T細胞(Ribo-T)と比較したOSYRIS細胞における大rRNA種(large rRNA species)のアガロースゲル電気泳動分析。b)OSYRIS細胞内含有リボソームのプライマー伸長解析。上:Ribo-T及び解離可能なリボソームは、Ribo-T rRNAに存在するA2058G変異により区別することができる。中:プライマー伸長解析の原理。ddCTPの存在下において、逆転写酵素は23S rRNAテンプレート(A2058をもつ)ではプライマーを4nt伸長するが、Ribo-T rRNAテンプレート(G2058をもつ)では3ヌクレオチドしか伸長しない。下:野生型、Ribo-T、又はOSYRIS細胞から抽出されたrRNAで精製されたプライマー伸長産物のゲル電気泳動分析。c)野生型30Sサブユニット(wt Rbs)又は16S rRNAの改変ASDをもつ直交性30Sサブユニット(oRbs)と、解離可能なリボソームをもつOSYRIS細胞における直交性GFPレポーターの発現。レポーター遺伝子の転写は、誘導剤であるホモセリンラクトン19の濃度を変化させることによって誘導される。レポーター遺伝子を欠く細胞の自己蛍光の値は、すべての値から差し引かれた。差し込み図は、標記細胞がスポットされ、且つ増殖した寒天プレートの紫外線写真である。d)o-gfpレポーターのOSYRIS細胞における発現(濃い灰色のバー)と、野生型リボソームを発現するo-pAM552又はpoRibo-Tで形質転換されたBL21細胞における発現(薄い灰色のバー)の比較(拡張データの図1を参照)。BL21細胞にo-リボソーム又はoRibo-Tを導入するのに使用した中程度のコピー数のプラスミドは、pBR322複製起点(322)をベースにし、OSYRISのo-リボソームを発現する低コピー数のプラスミドはpSC101複製起点(101)をベースにしている。エラーバーはn=3の反復の標準偏差(s.d.)を示す。***はスチューデントのt検定によるp<0.0005を示す。
図3は、OSYRIS細胞における解離可能なo-リボソームの小サブユニット及び大サブユニットの直交性。a)OSYRIS細胞における直交性GFPレポーターの発現のエリスロマイシンに対する感受性(左、濃い灰色のバー)は、その翻訳が主に解離可能なo-リボソームによって行われ、EryR Ribo-Tによっても、又はRibo-T/30Sハイブリッドによっても行われないことを示す(右のイラスト(cartoon))。それと一致して、EryR Ribo-Tによって進められた野生型gfp遺伝子の翻訳は抗生物質によって阻害されない(薄い灰色のバー)。エラーバーはn=3の反復の標準偏差を示す。b)上:23S rRNA遺伝子に致死変異A2602Uが入っているpoRbsプラスミドで形質転換されたOSYRIS細胞は、コロニーを形成することができ、o-リボソームの大サブユニットが細胞プロテオームの翻訳に関与しないことが明らかにされている。非直交翻訳系におけるA2602U変異の優性致死性は、OSYRIS細胞が、16S rRNA遺伝子に改変されていない(野生型)ASDをもつ同じプラスミド(pRbs)で形質転換されたときにコロニーを欠くことで示されている(図12b、cも参照)。下:OSYRIS細胞が、野生型大腸菌細胞では優性致死でありうる23S rRNA 変異をもつ大リボソームサブユニットを安定して維持することを示すプライマー伸長解析。変異体23S rRNA(上矢印)又は非変異Ribo-T rRNA(下矢印)の関連変異部位の近位にアニールしたプライマーを伸長することによって生じたcDNAバンドが示されている。2058位のrRNA残基周辺のプライマー伸長解析によって、Ribo-T(G2058をもつ)と、致死的な23S rRNA変異(但し2058位は野生型アデニン)をもつ解離可能なリボソームとの共存がさらに確認された(図12d)。右:解離可能な50Sサブユニットが、発現がRibo-Tに依存する細胞プロテオームの翻訳から大きく隔てられていることを裏付ける、これらの実験からの結論を図示するイラスト。
図4は、OSYRIS細胞におけるPTC変異体ライブラリーからの機能獲得型変異の選択。a)gfpの末端にTnaCをコードする配列を付加することは、高濃度のL-トリプトファンで翻訳が起こる際にTnaCが終結を阻害する作用28に起因して、レポーター発現を減少させると予想される。TnaCにおけるW12R変異の存在は、終結の問題を部分的に緩和する28ことが知られており、且つより高いレベルのレポーター発現につながるはずである。b)OSYRIS細胞におけるGFP-TnaC融合体の発現は、L-トリプトファン類似体である1-メチルトリプトファン(1m-Trp)の存在下で94%抑制され、一方ではGFP-TnaC(W12R)変異体の発現は48%しか減少しない。エラーバーはn=3の反復の標準偏差を示す。**はスチューデントのt検定によるp<0.005を示す。c)50Sリボソームサブユニットを横切りにしたもの(cross-cut)に示された、PTC変異体ライブラリーに変異が存在する23S rRNAヌクレオチド(矢印)の位置。Pサイト及びAサイトのtRNAが示されている。d)変異がPTCライブラリーを含む23S rRNA残基。左及び中央:PTCライブラリーでは、PTC活性部位の半径10Å(内殻)内のすべての23S rRNA残基及び、半径25Å(第2の殻(second shell))内の残基の大部分が変異していた。Pサイト及びAサイトのtRNAのアミノアシル化されたアクセプター末端がそれぞれピンクと緑で示されている。右:23S rRNAドメインV中央ループの二次構造において示された変異ヌクレオチドの位置。関連する23S rRNAヘアピンが示されている。e)OSYRIS細胞で直交性GFP-TnaCレポーターを発現するPTCライブラリー変異体の翻訳活性とて停滞バイパススコア(stalling bypass score)。高い翻訳の効率(野生型対照の>60%)を維持しつつ、TnaCペプチドの効率的な終結を示す変異体(バイパススコアの増加)に対応するドットは、四角く囲まれ、且つより濃い。点線は、直交性リボソームを欠くRibo-T 細胞における直交性GFP-TnaC(W12R)変異体の発現のバックグラウンドレベルを示す。黒い点(矢印)は、野生型23S rRNAを含有するo-リボソームによるレポーターの翻訳を示す。f)OSYRIS細胞で同定された特定の機能獲得型変異をもつ単離リボソームを無細胞翻訳系で試験する。インビトロ試験では、致死変異(U2500G、A2060C、A2450U)をもつリボソームの50SサブユニットをOSYRIS細胞から単離し、且つ野生型30Sサブユニットと結合させた。SQ171細胞から非致死的変異をもつリボソームを単離した。TnaCの不充分な放出に起因するtnaC遺伝子の終止コドンにおける翻訳アレスト(arrest)の程度を評価するために、トウプリンティングアッセイ(図16c)が用いられた。エラーバーは3つの独立した実験からの標準偏差を表す。野生型の値との差の統計的有意性は、スチューデントのt検定により決定して、*(p < 0.05)、**(p<0.005)、又は***(p<0.0005)で示される。g)TnaC停滞リボソームの構造30における、変異が機能獲得をもたらす(パネルEの濃い点)23S rRNA残基(青)の、TnaC-tRNA(緑)及びRF2(オレンジ)に対する配置。
図5は、OSYRIの重要なプラスミド。a)pRibo-Ttプラスミドのマップ。16S-23S rRNAハイブリッド及び5S rRNAをコードするpRibo-T遺伝子は、ラムダPLプロモーターの制御下で発現する。16S-23S rRNAハイブリッドでは、ヘリックス101のループで開いた円順列置換23S rRNAは、オリジナルのRibo-Tバージョンに対して配列がRibo-T v.2.0で再設計された2つのRNAテザーによって16S rRNAのヘリックス44のループに挿入されている3、4。23S rRNAセグメントは、Ribo-Tにエリスロマイシン耐性を与えるA2058G変異をもつ。染色体rRNAオペロンの欠失に起因して宿主細胞で見られない10tRNA遺伝子のクラスターはPtacプロモーターの制御下にある。そのプラスミドは、pBR322複製起点及びアンピシリン耐性遺伝子をもつ。b)pAM5524由来のpoRBSプラスミドは、16S rRNA遺伝子においてASD配列GUGGUUが改変された大腸菌rrnBオペロンをもつ3。このプラスミドはpSC101複製起点及びカナマイシン耐性遺伝子をもつ。対照プラスミドpRbs(図示せず)は、16S rRNA遺伝子に野生型ASDを含有することを除いてpoRbsと同一である。c)レポータープラスミドpoGFPは、スーパーフォルダー(superfolder)緑色蛍光タンパク質(sf-gfp)の遺伝子(poGFP)又は同一遺伝子とさらに赤色蛍光タンパク質の遺伝子(poRFP/oGFP)のいずれかをもつ。レポーターのコード配列の前に、パネルbに示されるpoRBSプラスミドにコードされた16S rRNAのASD配列に相補的である改変(直交性)SD配列、AACCAC3がある。poGFPの直交性gfp遺伝子の転写は、N-(β-ケトカプロイル)-L-ホモセリンラクトン(HSL)のLuxRリプレッサーへの結合によって調節される誘導性PLuxプロモーターによって制御される。2つのluxR遺伝子のコピーがプラスミドに存在する。TpoGFPプラスミドはpA15複製起点及びSpc耐性遺伝子を有する。d)レポータープラスミドpoRFP/oGFPは、それぞれPlpp5及びPT5プロモーターの制御下にある緑色(sfGFP)及び赤色(RFP)蛍光タンパク質の遺伝子をもつ。どちらの遺伝子の前にも直交性SD配列AACCACがある。このプラスミドはpA15複製起点及びSpc耐性遺伝子を有する。e)poLucプラスミドはpoGFPプラスミド(パネルc)に類似しているが、sf-gfp遺伝子が、ホタルルシフェラーゼをコードするluc遺伝子に置き換えられている。luc遺伝子の前に直交性SD配列AACCACがある。この図に示されているプラスミドの完全なアノテーション付き配列は、付録(Appendix)Iで見ることができる。
図6は、大腸菌細胞におけるOSYRISのアセンブリ。a、OSYRIS細胞のプラスミド組成。細胞プロテオームを翻訳するRibo-TはpRibo-Ttプラスミドから発現される。poGFP(又はpoRFP/oGFP)プラスミドの直交性レポーター遺伝子から転写されたmRNAは、rRNAがpoRbsプラスミドにコードされているo-リボソームによって翻訳される。b、OSYRIS細胞の構築のための一連のステップ。アセンブリステップIIIの後、細胞のゲノムを完全に配列決定した(パネルcを参照)。次の2つのステップでは、続いて細胞をレポータープラスミド(図示の例ではpoGFP)で形質転換し、且つその後にpoRbsで(又は図4に記載のPTC変異体ライブラリーのプラスミドによって)形質転換した。各ステップで生じた細胞の抗生物質耐性を示す。c、OSYRIS細胞のゲノム。出発のSQ171 FG株は、大腸菌(Escherichia coli)MG1655細胞に由来する26。5つの自然変異(矢印)がOSYRIS細胞のアセンブリ及び増殖の間に得られ、且つ変異の正確な位置及び影響を受けた遺伝子の機能を図20の表に載せた。円の外側の数字はゲノムのヌクレオチド番号を示す。d、OSYRISのアセンブリの異なるステップ(パネルbに示す)における細胞内含有プラスミドのゲル電気泳動分析。プラスミド調製物をKpnI、BamHI及びHindIIIの制限酵素の混合物で消化した。参照のために個々のプラスミドの制限酵素消化を示す。
図7 oRbsはOSYRIS細胞において安定して発現している。a、一晩培養したものを希釈した後、OSYRIS細胞に維持されたトータルRNAのアガロースゲル-電気泳動分析。poGFPプラスミドをもつOSYRIS細胞の2つの独立したコロニー(A及びB)を一晩培養し、且つ50μg/mlアンピシリン、25μg/mlカナマイシン及び15μg/mlスペクチノマイシンを補充したLB培地で2本のチューブにそれぞれ1:50に希釈した。表記の時間間隔後にトータルRNAを単離した。各培養の2つの技術的反復を独立して処理し、且つゲルの別々のレーンに流した。b、OSYRIS細胞におけるRibo-T(A2058G変異をもつ)に対するoRbs(野生型A2058を有する)の発現(representation)の経時的なプライマー伸長解析。プライマー伸長解析の原理はシークエンシングゲルの上に図示されている。OSYRIS細胞から調製したトータルRNA(パネルaを参照)をプライマー伸長のテンプレートとして使用した。野生型大腸菌細胞(「A2058」)及びRibo-Tのみを発現する細胞(「A2058G」)から調製したRNA試料を対照として使用した。「Pr」と印を付けられたレーンは[32P]で標識されたDNAプライマーが入っている。c、Ribo-T及びoRbs特異的バンドの相対強度の定量を用いて、2つのリボソーム種の相対的な発現(representation)を評価した。
図8は、OSYRIS細胞における直交性レポーターの効率的な翻訳。a、o-リボソーム(実線)又は野生型リボソーム(破線)を含有するOSYRIS細胞の増殖曲線(上)及びその中での直交性GFPレポーターの発現(右)。b、o-リボソーム(実線)又は野生型リボソーム(破線)を発現するOSYRIS細胞における増殖曲線(左)及び直交性GFP(中央)とRFPレポーター(右)の発現。各実験において最も高い蛍光の読み取り値相対蛍光単位)を100%とした。c、o-リボソーム(濃い灰色のバー)又は野生型リボソーム(薄い灰色のバー)のいずれかを含むOSYRIS細胞における直交性ルシフェラーゼレポーターの発現。最も高い蛍光の読み取り値(相対蛍光単位、RLU)を100%とした。エラーバーはn=3の反復の標準偏差を示し、***はp<0.0005を示し、n.s.はスチューデントのt検定による統計的有意性がないことを示す。
図9は、OSYRIS細胞及び大腸菌BL21における直交性gfpレポーターの発現。96ウェルプレート-で培養したOSYRIS細胞及びBL21細胞の(a)増殖曲線、(b)GFP蛍光、及び(c)細胞密度で正規化したGFP蛍光。両タイプの細胞とも、野生型リボソーム(破線)又はo-リボソーム(実線)のいずれかを発現する。なお、正規化した直交性GFP蛍光(又は1つの細胞当たりのoGFP蛍光)は、BL21細胞よりもOSYRIS細胞で高いことに留意されたい。データは独立した3つの生物学的反復の結果を表し、エラーバーは標準偏差を示す。(b)では、最も高い蛍光の読み取り値(相対蛍光単位)(BL21細胞の場合)を100%とした。(c)では、正規化した蛍光の読み取り値の最も高いもの(A600に対する相対蛍光単位)(OSYRIS細胞の場合)を100%とした。
図10は、oRbsは、直交性ルシフェラーゼレポーターの発現においてoRibo-Tより優れる。解離可能なoRbs又はoRibo-Tによって進められるBL21又はOSYRIS細胞におけるo-lucの発現。レポータープラスミドpoLucをもつBL21細胞を、それぞれoRbs又はoRibo-Tを発現させる中程度のコピー数(pBR322 ori)プラスミドo-pAM552又はpoRibo-Tで形質転換した。OSYRIS細胞は、低コピー数プラスミドpoRbsからのoRbsを発現する。対照細胞は野生型ASDを含むrRNAをもつこと以外同じのプラスミドで形質転換した。相対的なレポーターの発現は実験手順に記載のように記録した。エラーバーはn=3の反復の標準偏差を示す。***はp<0.0005を示し、且つn.s.はスチューデントのt検定による統計的有意性がないことを示す。
図11は、OSYRIS細胞のエリスロマイシン(Ery)に対する耐性は、直交性の解離可能なリボソームの機能的分離を示す。a、野生型(上2つの細胞及び下の細胞の左側)又は直交性(下の細胞の右側)リボソームを発現するOSYRIS細胞のリボソーム組成。テザーリボソームにはA2058G変異をもち、Eryに対する耐性を付与するが、解離可能なリボソームはEryに感受性である。b:表記の濃度のEryの存在下において96ウェルプレートで24時間増殖させた後に野生型又は直交性リボソームを発現するOSYRIS細胞培養物の光学密度。EryR Ribo-Tとともに野生型の解離可能なErySリボソームを発現させることにより、細胞はエリスロマイシンに対して感受性になり(Ribo-T=+wt Rbs、各X軸の点で3番目のバー)、遊離50Sサブユニットが翻訳に関与している場合(この場合ではその野生型30Sサブユニットとの相互作用に起因して)、タンパク質合成及び細胞増殖が阻害されることが示されている。それに対して、oRbsを発現する細胞はEryRのままであり、OSYRIS細胞内の直交性の解離可能なリボソームの50Sサブユニットは機能的に分離されており、細胞プロテオームの翻訳に関与しないことが示されている。図11bの場合、各X軸データ値の最初のバーはRibo-Tのみ、2番目のバーはRibo-T+野生型Rbs、3番目のバーはRibo-T+oRbsである。
図12は、直交性リボソームの50SサブユニットのrRNAに致死変異を発現するOSYRIS細胞の生存性は、2つの直交翻訳系の機能分離(functional isolation)を示す。a、PTC活性部位(PDB 1VY4)22における23S rRNAヌクレオチドG2553、A2602、A2451(オレンジ色)の位置。これらのヌクレオチドの変異は野生型大腸菌細胞において優性致死である27。AサイトtRNAは緑色であり、且つPサイトtRNAは青色である。b、OSYRIS細胞の形質転換は、致死変異をもつ変異体23S rRNAが直交性16S rRNA(poRbs)と共発現させたときは、生存コロニーを生じるが、野生型16S rRNA(pRbs)と共発現させたときは生じない。c、pRbs及びpoRbsプラスミドからのrRNAsオペロンの発現が抑制されているPOP2136株2の形質転換はコロニーを生じない。d、(上)A2058G変異をもつRibo-T、及び50Sサブユニットが致死変異をもつ解離可能な直交性リボソーム(右)を発現するOSYRIS細胞のリボソーム組成。(下) Ribo-T (A2058G変異をもつ) といっしょに、致死変異をもつ(A2058G変異をもたない) 50SサブユニットのOSYRIS細胞において安定した維持を示す、ヌクレオチド2058に近位のrRNA領域のプライマー伸長解析。レーン1~3:野生型23S rRNA(レーン1)、A2058G 変異をもつ23S rRNA(レーン2)又はRibo-Tのみを発現するOSYRIS細胞から抽出されたRNA(レーン3)の調製での対照プライマー伸長。レーン4、pRbsで形質転換され、且つ野生型の解離可能なリボソームを発現するOSYRIS細胞由来のrRNA。レーン5~8、23S rRNAに変異の無い(レーン4)又は23S rRNAに表記の致死変異をもつ直交性リボソームを発現する細胞に由来するrRNA。ゲルのレーンの下の数字は、23S rRNAを表すcDNAバンド(下の2本の矢印)の強度と、23S rRNA及びRibo-T特異的バンド(それぞれ下の2本の矢印と上の矢印)の強度の合計の比として推定した23S rRNAの含有率(%)を示す。3つの独立した生物学的反復の代表的なゲルを示す。
図13は、レポータータンパク質のインビトロ翻訳のTnaCによって媒介される阻害。GFP-TnaC又はGFP-TnaC(W12R)レポーターの翻訳を、PURExpress無細胞系において低濃度(50μM)又は高濃度(5mM)のL-トリプトファンの存在下で行った。TnaC変異W12Rは、L-トリプトファン濃度が高い場合に、終止コドンでのTnaCによって媒介されるタンパク質放出の阻害を弱めることが知られている28。データは3つの独立した実験の結果を表し、誤差バーは実験誤差を示す。DNAテンプレートの配列は付録Iで見ることができる。各実験において最も高い蛍光の読み取り値(相対蛍光単位)を100%とした。
図14は、OSYRIS細胞におけるPTCライブラリー変異体の翻訳活性。個々の変異体の翻訳活性を、変異体o-リボソームをもつOSYRIS細胞におけるo-GFP-TnaC(W12R)レポーター(部分的な停滞緩和を示す)(図4a~bを参照)の発現を、野生型23S rRNAをもつo-リボソームをもつOSYRIS細胞における同じレポーターの発現(100%)と比較することによって推定した。それぞれの野生型23S rRNA残基が示され、且つ評価した変異体の同一性を示す。高い翻訳活性は、レポーターの発現が60%以上であった場合として定義した。高いバイパススコアと高い翻訳活性を兼ね備えた機能獲得型変異体は、より濃いバーで示されている(図4e及び図13を参照)。データは2つの独立した生物学的複製の結果を表し、エラーバーは実験誤差を示す。数値データは図17で見ることができる。野生型23S rRNAをもつo-リボソームを含有するOSYRIS細胞の正規化蛍光読み取り(A600での相対蛍光単位)を100%とした。
図15は、個々のPTC変異体の終結停滞バイパススコア(termination stalling bypass score)。TnaC停滞バイパススコアは、GFP-TnaCを発現するOSYRIS細胞におけるGFP蛍光(細胞密度で正規化)の、GFP-TnaC(W12R)レポーターをもつ細胞における蛍光に対する比として算出した。野生型23S rRNAをもつo-リボソームをもつ細胞のバイパススコアは0.17である。閾値高バイパススコア(≧0.3、赤の破線)は、tnaC終止コドンでの翻訳アレストを減少させることが報告されているU2609C変異2930によってもたらされるスコアとした。それぞれの野生型23S rRNA残基を示し、且つ評価した変異体の同一性を示す。高いバイパススコアと高い翻訳活性を兼ね備えた機能獲得型変異体(図4e及び図14を参照)を青色で示した。データは2つの独立した生物学的反復の結果を表し、エラーバーは実験誤差を示す。各変異体の値を野生型リボソームと比較したスチューデントのt検定により、n.s.は統計的有意差なしを示し、*はp<0.05を示し、**はp<0.005を示し、**はp<0.0005を示す。数値データは図17で見ることができる。
図16は、無細胞翻訳系における機能獲得型変異体の試験。a、OSYRIS細胞からのリボソーム材料のサブユニット解離条件下でのショ糖勾配分画。解離した野生型リボソームから調製した30S及び50Sサブユニット(矢印)をマーカーとして使用した。灰色の網掛けは、無細胞翻訳実験で集め、且つ使用した50Sサブユニット画分を示す。b、rRNAのアガロースゲル電気泳動による50S材料(Aに記載のように単離)の純度の分析。野生型の16S及び23S並びに精製Ribo-T rRNAを移動マーカーとして使用した。c、インビトロトウプリンティング実験の原理(上)と結果(下)。tnaCテンプレートを、単離された変異体50Sサブユニット及び野生型30Sサブユニットからアセンブリしたリボソームで翻訳させた。各変異体について、3つの異なる条件下で翻訳反応を行った。(I)AサイトのtnaC Pro24コドンをもつリボソームを停滞させるプロリルtRNA合成酵素の阻害剤L-PSA21の存在下。対応するトウプリンティングバンド(白い(open)アローヘッドで示される)の強度は、変異体リボソームの翻訳活性を反映する。(H)rRNA変異が停滞を緩和しない場合、終止コドンでの(緑のアローヘッドで示される)翻訳アレストにつながる高濃度のL-トリプトファン(5mM)の存在下。(L)低濃度のL-トリプトファン(5μM)で終止コドンでの停滞が検出されなかった場合、又は限定的な停滞が検出された場合。終結停滞効率(図4f)を、H試料の終止コドントウプリントのバンドの、I試料のPro24コドンのバンドに対する強度の比として計算した。
図17は、実施例1に記載のPTCライブラリー変異体の翻訳活性及び終結停滞バイパススコアを示す表を提供する。
図18は、実施例1で使用された大腸菌株の遺伝子型を示す表を提供する。
図19は、実施例1で使用されたプライマーを示す表を提供する。
図20は、実施例1で使用されたOSYRIS細胞の遺伝子型を示す表を提供する。
図21は、実施例1のプライマー伸長解析に使用されたプライマー及びヌクレオチドの組み合わせを示す表を提供する。
図22は、A)大サブユニットrRNA及び小サブユニットrRNAの二次構造。B)大サブユニットrRNA及び小サブユニットrRNAをコードする遺伝子。
図23は、A)大サブユニット、小サブユニット、及び連結部分を有するテザーリボソーム。B)図23Aのテザーリボソームをコードする遺伝子。
図24は、リボソームrRNAのPer変異。
図25は、A)rRNAをコードする遺伝子を有するプラスミド。B)テザーリボソームのrRNAをコードする遺伝子を有するプラスミド。
タンパク質合成を成功裡に行うことができる、繋ぎ止められ、且つしたがって分離不能なサブユニットリボソーム(「Ribo-T」)が開示される。Ribo-Tは、小サブユニット、大サブユニット、及び小サブユニットを大サブユニットと繋ぎ止める連結部分を含むリボソームを遺伝子操作すること(engineering)によって調製することができる。改変リボソームは、小サブユニットrRNA配列、大サブユニットrRNA配列、並びに小サブユニットrRNA配列及び大サブユニットrRNA配列を共有結合して単一体(single entity)にすることができるRNAリンカーを含むハイブリッドrRNAを含むことができる。改変リボソームは、改変リボソームのrRNAをコードするポリヌクレオチドを発現させることによって調製することができる。改変リボソームはまた、変異のポジティブ又はネガティブな選択によって進化させることができる。際だったことに、Ribo-Tはインビトロで機能的であるだけでなく、野生型(「wt」)リボソームの非存在下でさえも、細胞増殖を補助することもできる。結果として、Ribo-Tには様々な用途がある。例えば、Ribo-Tは、天然由来のタンパク質又は非天然由来のアミノ酸ポリマーなどの配列規定ポリマーを調製すること、インビトロ又はインビボで完全直交リボソーム-mRNA系を作り出すこと、リボソームの理解されていない機能を調べること、及び新しい機能をもつリボソームを設計することに使用することができる。
テザーリボソーム
テザーリボソーム並びにテザーリボソームを作製及び使用する方法を開示する米国特許出願公開第2017/0073381号明細書が参照され、且つその内容は参照によりその全体が本明細書に援用される。改変リボソームは、小サブユニット、大サブユニット、及び連結部分を含み、連結部分は小サブユニットを大サブユニットと繋ぎ止める。改変リボソームは配列規定ポリマーの翻訳を補助することができる。
天然由来のリボソームとは対照的に、改変リボソームは、分離不能な大サブユニット及び小サブユニットを有する。図22は、分離可能である小サブユニット及び大サブユニットを有する野生型リボソームの一部を示す。図22Aは、機能的なリボソームの一部分を一緒になって形成する大サブユニットrRNA101及び小サブユニットrRNA102の二次構造を示す。図22Bは、大サブユニットrRNA202をコードするオペロン及び小サブユニットrRNA201をコードするオペロンを含むrRNA遺伝子200を示す。野生型rRNAでは、一次転写物から大サブユニット及び小サブユニットのrRNAが切り出され、且つプロセスされて個々のサブユニットを成熟させる。
改変テザーリボソームの一実施形態を図23に示す。図23Aは、改変リボソーム300のrRNAの一部分の二次構造を示す。改変リボソームは、大サブユニット301、小サブユニット302、及び小サブユニット302を大サブユニット301と繋ぎ止める連結部分303を含む。この例では、連結部分303は、小サブユニット302のrRNAを大サブユニット301のrRNAと繋ぎ止める。改変リボソームは、ネイティブ大サブユニットrRNAの末端を閉じるコネクター304を含むことができる。図23Bは、rRNA遺伝子400、及び改変リボソーム300にコードする(encoding to)オペロンの一例を示す。
大サブユニット
大サブユニット301は、アミノ酸を結合してポリペプチド鎖を形成することができるサブユニットを含む。大サブユニット301は、第1の大サブユニットドメイン(「L1ポリヌクレオチドドメイン」又は「L1ドメイン」)、第2の大サブユニットドメイン(「L2ポリヌクレオチドドメイン」又は「L2ドメイン」)、及びコネクタードメイン(「Cポリヌクレオチドドメイン」又は「Cドメイン」)304を含むことができ、5’から3’に、L1ドメインの後ろに、Cドメイン及びL2ドメインが順に続く。
図23Bは、改変リボソーム300をコードするrRNA遺伝子400の例を示し、且つ改変リボソームを理解するための代替表現を提供する。コードするポリヌクレオチド400は、改変リボソーム300の様々なドメインをコードする異なる配列(difference sequences)を含むことができる。図23Bに示されるように、大サブユニットrRNA301をコードするポリヌクレオチドは、L1ドメイン402をコードするポリヌクレオチド、Cドメイン406をコードするポリヌクレオチド、及びL2ドメイン403をコードするポリヌクレオチドを含む。
大サブユニットrRNA301は順列置換バリアントであることができる。ある特定の実施形態では、順列置換バリアントは、分離可能な大サブユニットrRNAの円順列置換バリアントである。分離可能な大サブユニットは任意の機能的な大サブユニットであることができる。ある特定の実施形態では、分離可能な大サブユニットは23S rRNAであることができる。ある特定の実施形態では、分離可能な大サブユニットは野生型大サブユニットrRNAである。具体的な実施形態では、分離可能な大サブユニットは野生型23S rRNAである。
大サブユニット301が大サブユニットrRNAの順列置換バリアントである場合、5’から3’に、L1ドメインが後ろに続くL2ドメインから本質的になるポリヌクレオチド、大サブユニットrRNAに実質的に同一であることができる。ある特定の実施形態では、5’から3’に、L1ドメインが後ろに続くL2ドメインから本質的になるポリヌクレオチドは、大サブユニットrRNAと少なくとも90%同一、少なくとも91%同一、少なくとも92%同一、少なくとも93%同一、少なくとも94%同一、少なくとも95%同一、少なくとも96%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一、又は少なくとも99%同一である。
大サブユニット301が分離可能な大サブユニットrRNAの順列置換バリアントである、ある特定の実施形態では、大サブユニット301は、分離可能な大サブユニットrRNAのネイティブ5’及び3’末端を繋ぐCドメイン304をさらに含むことができる。Cドメインは、1~200ヌクレオチドの範囲の長さを有するポリヌクレオチドを含むことができる。ある特定の実施形態では、Cドメイン304は、1~150ヌクレオチド、1~100ヌクレオチド、1~90ヌクレオチド、1~80ヌクレオチド、1~70ヌクレオチド、1~60ヌクレオチド、1~50ヌクレオチド、1~40ヌクレオチド、1~30ヌクレオチド、1~20ヌクレオチド、1~10ヌクレオチド、1~9ヌクレオチド、1~8ヌクレオチド、1~7ヌクレオチド、1~6ヌクレオチド、1~5ヌクレオチド、1~4ヌクレオチド、1~3ヌクレオチド、又は1~2ヌクレオチドの範囲の長さを有するポリヌクレオチドを含む。ある特定の実施形態では、CドメインはGAGAポリヌクレオチドを含む。
小サブユニット
小サブユニット302はmRNAに結合することができる。小サブユニット302は、第1の小サブユニットドメイン(「S1ポリヌクレオチドドメイン」又は「S1ドメイン」)及び第2の小サブユニットドメイン(「S2ポリヌクレオチドドメイン」又は「S2ドメイン」)を含み、5’から3’に、S1ドメインの後ろにS2ドメインが順に続く。再び図23Bを参照して、小サブユニットrRNA302をコードするポリヌクレオチドは、S1ドメイン401をコードするポリヌクレオチド及びS2ドメイン404をコードするポリヌクレオチドを含む。
小サブユニットrRNA302は、分離可能な小サブユニットrRNAの順列置換バリアントであることができる。ある特定の実施形態では、順列置換バリアントは、分離可能な小サブユニットrRNAの円順列置換バリアントである。分離可能な小サブユニットは小サブユニットであることができる。ある特定の実施形態では、分離可能な小サブユニットは16S rRNAであることができる。ある特定の実施形態では、分離可能な小サブユニットは野生型小サブユニットrRNAである。具体的な実施形態では、分離可能な小サブユニットは野生型23S rRNAである。
小サブユニット302が小サブユニットrRNAの順列置換バリアントである場合、5’から3’に、S2ドメインが後ろに続くS1ドメインから本質的になるポリヌクレオチドは、小サブユニットrRNAに実質的に同一であることができる。ある特定の実施形態では、5’から3’に、S2ドメインが後ろに続くS1ドメインから本質的になるポリヌクレオチドは、小サブユニットrRNAと少なくとも90%同一、少なくとも91%同一、少なくとも92%同一、少なくとも93%同一、少なくとも94%同一、少なくとも95%同一、少なくとも96%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一、又は少なくとも99%同一である。
小サブユニットはさらに改変アンチシャイン・ダルガノ配列(modified-anti-Shine-Dalgarno sequence)を含むことができる。改変アンチシャイン・ダルガノ配列は、内在性細胞mRNAとは異なる相補的なシャイン・ダルガノ配列を有するテンプレートの翻訳を可能にする。
連結部分
再び図23Bを参照して、連結部分303は、小サブユニット302を大サブユニット301と繋ぎ止める。ある特定の実施形態では、その連結部分は、大サブユニット301のヘリックスを小サブユニット302のヘリックスに共有結合させる。
連結部分はまた、第1のテザー(tether)ドメイン(「T1ポリヌクレオチドドメイン」又は「T1ドメイン」)及び第2のテザードメイン(「T2ポリヌクレオチドドメイン」又は「T2ドメイン」)を含むことができる。再び図23Bを参照して、連結部分303をコードするポリヌクレオチドは、T1ドメイン405をコードするポリヌクレオチド及びT2ドメイン407をコードするポリヌクレオチドを含む。
T1ドメインは、そのS1ドメイン及びL1ドメインを連結し、5’から3’に、S1ドメインの後ろに、T1ドメイン及びL1ドメインが順に続く。T1ドメインは、5~200ヌクレオチド、5~150ヌクレオチド、5~100ヌクレオチド、5~90ヌクレオチド、5~80ヌクレオチド、5~70ヌクレオチド、5~60ヌクレオチド、5~50ヌクレオチド、5~40ヌクレオチド、5~30ヌクレオチド、又は5~20ヌクレオチドの範囲の長さを有するポリヌクレオチド、例えば、5ヌクレオチド、6ヌクレオチド、7ヌクレオチド、8ヌクレオチド、9ヌクレオチド、10ヌクレオチド、11ヌクレオチド、12ヌクレオチド、13ヌクレオチド、14ヌクレオチド、15ヌクレオチド、16ヌクレオチド、17ヌクレオチド、18ヌクレオチド、19ヌクレオチド、又は20ヌクレオチドを有するポリヌクレオチドを含むことができる。ある特定の実施形態では、T1はポリアデニンを含む。ある特定の実施形態では、T1はポリウリジンを含む。ある特定の実施形態では、T1は非構造化(unstructured)ポリヌクレオチドを含む。ある特定の実施形態では、T1は、T2ドメインと塩基対を形成するヌクレオチドを含む。
T2ドメインは、そのL2ドメイン及びS2ドメインを連結し、5’から3’に、L2ドメインの後ろに、T2ドメイン及びS2ドメインが順に続く。T2ドメインは、5~200ヌクレオチド、5~150ヌクレオチド、5~100ヌクレオチド、5~90ヌクレオチド、5~80ヌクレオチド、5~70ヌクレオチド、5~60ヌクレオチド、5~50ヌクレオチド、5~40ヌクレオチド、5~30ヌクレオチド、又は5~20ヌクレオチドの範囲の長さを有するポリヌクレオチド、例えば、5ヌクレオチド、6ヌクレオチド、7ヌクレオチド、8ヌクレオチド、9ヌクレオチド、10ヌクレオチド、11ヌクレオチド、12ヌクレオチド、13ヌクレオチド、14ヌクレオチド、15ヌクレオチド、16ヌクレオチド、17ヌクレオチド、18ヌクレオチド、19ヌクレオチド、又は20ヌクレオチドを有するポリヌクレオチドを含むことができる。ある特定の実施形態では、T1はポリアデニンを含む。ある特定の実施形態では、T2はポリウリジンを含む。ある特定の実施形態では、T2は非構造化ポリヌクレオチドを含む。ある特定の実施形態では、T2は、T1ドメインと塩基対を形成するヌクレオチドを含む。
T1ドメイン及びT2ドメインを有する実施形態では、T1ドメイン及びT2ドメインは、同じ数のポリヌクレオチドを有することができる。他の実施形態では、T1ドメイン及びT2ドメインは、異なる数のポリヌクレオチドを有することができる。
ある特定の実施形態では、改変リボソームは、5’から3’に、T1ドメイン、L1ドメイン、Cドメイン、L2ドメイン、T2ドメイン、及びS2ドメインが順に後ろに続くS1ドメインを含むことができる。具体的な実施形態では、改変リボソームは、5’から3’に、T1ドメイン、L1ドメイン、Cドメイン、L2ドメイン、T2ドメイン、及びS2ドメインが順に後ろに続くS1ドメインから本質的になることができる。
変異
ある特定の実施形態では、改変リボソームは1つ又は複数の変異を含みうる。具体的な実施形態では、変異は機能変換型変異である。機能変換型変異は、機能獲得型変異であっても、又は機能喪失型変異であってもよい。機能獲得型変異は、新しい機能を付与するいずれの変異であってもよい。機能喪失型変異は、親がもっていた機能の喪失をもたらすいずれの変異であってもよい。
ある特定の実施形態では、機能変換型変異はリボソームのペプチジルトランスフェラーゼ中心にあることができる。具体的な実施形態では、機能変換型変異は、ペプチジルトランスフェラーゼ中心のAサイトにあることができる。他の実施形態では、機能変換型変異は、改変リボソームの出口トンネルにあることができる。
ある特定の実施形態では、機能変換型変異は抗生物質耐性変異であることができる。抗生物質耐性変異は、大サブユニット又は小サブユニットのいずれにあってもよい。ある特定の実施形態では、抗生物質耐性変異は、改変リボソームに、アミノグリコシド、テトラサイクリン、パクタマイシン、ストレプトマイシン、エデイン、又は小リボソームサブユニットを標的とする他の任意の抗生物質に対する耐性を付与することができる。ある特定の実施形態では、抗生物質耐性変異は、改変リボソームに、マクロライド、クロラムフェニコール、リンコサミド、オキサゾリジノン、プレウロムチリン、ストレプトグラミン、又は大リボソームサブユニットを標的とする他の任意の抗生物質に対する耐性を付与することができる。
テザーリボソームの設計
大サブユニットと小サブユニットを繋ぎ止めるキメラ構築物の成功には、i)機能的なリボソームアセンブリのために、リボソームのタンパク質やバイオジェネシス因子と適切に相互作用し、ii)リボヌクレアーゼの分解を避け、且つiii)サブユニットのシス会合を確実にするのに充分に短いが、翻訳開始、伸長、ペプチド放出に要するサブユニットの動きを最小限に抑えるのに充分に長いリンカーを有しなければならない。上記で概説した設計上の制約を考慮すると、大サブユニット及び小サブユニットのネイティブ末端は不適当である。例えば、ネイティブ原核生物リボソームでは、例えば、16S及び23S rRNAの5’及び3’末端は離れすぎていて(>170Å)、ヌクレアーゼ耐性RNAリンカーで繋ぐことができない。結果として、機能する改変リボソームを実現させるなら、代替の設計が必要とされる。
テザーリボソームを設計するための1つの方法は、大サブユニットを順列置換して新しい5’末端と3’末端を作り出すことである。ある特定の実施形態では、大サブユニットのネイティブ末端は互いに近位であるので、円順列置換(circular permutation)(CP)法が採用される。円順列置換は次のスキームで示すことができる。
Figure 2023520667000002
したがって、ポリヌクレオチドの円順列置換変異では、ポリヌクレオチドの配列は各順列置換において維持されるが、各ヌクレオチドは個々の順列置換の末端にある。順列置換変異は、ポリヌクレオチドの二次構造を維持しつつ、ポリヌクレオチドの末端を異なる位置に置き換えるために利用される。
CP法は、Polacekと同僚ら(coworkers)によってインビトロで最初に開発され[Erlacher 2005]、そしてその後のパイロット研究により、3つの23S rRNA円順列置換バリアントがインビボで機能的サブユニットにアセンブリできることが示された[Kitahara 2009]。そのアプローチを図24に示す。図24において、ネイティブ大サブユニットリボソーム510は、5’から3’に、第1の大サブユニットドメイン(L1ドメイン)が後ろに続く第2の大サブユニットドメイン(L2ドメイン)513を含む。大サブユニットリボソーム510(図22Aに示される大サブユニットrRNA101を簡略に表したもの)のネイティブ末端は、コネクタードメイン(Cドメイン)511を通してつながれ、且つ512で新しい末端が作製される。この方法で作製された円順列置換サブユニットは、第1の大サブユニットドメイン(L1ドメイン)、それに続いて5’から3’に、コネクタードメイン(Cドメイン)及び第2の大サブユニットドメイン(L2ドメイン)を順に含む。図24はまた、小サブユニット501並びにL1ドメイン502、それに続いて5’から3’に、Cドメイン506及びL2ドメイン503を順に含む新しい円順列置換大サブユニットをコードする遺伝子500の一部を図示する。
上で概説したアプローチを続けると、図23A、Bに示されるように、小サブユニットの新しい末端は、連結部分によって大サブユニットの新しい末端と結合できるように作製される必要がある。
上で概説したアプローチを使用して、新しい末端をもつ円順列置換変異体のコレクションを生成することができる。新しい末端は、ネイティブサブユニットのどの位置にでも作製することができる。いくつかの順列置換変異体の新しい末端の結果は生存可能でないこともあるが、本明細書に開示の方法は、円順列置換変異体のコレクションを生成及び試験することができる。
いくつかの実施形態では、小サブユニット又は大サブユニットの新しい末端の位置は、サブユニットの二次構造、他のサブユニットへの近さ、リボソームの生存能、又はそれらのいずれかの組み合わせに基づいて選択することができる。
大サブユニット及び小サブユニットのいずれか又は両方の二次構造を用いて、新しい末端の位置を決定することができる。ある特定の実施形態では、新しい末端は、ネイティブサブユニットのヘリックスに作製される。いくつかの具体的な実施形態では、新しい末端は、ネイティブサブユニットのヘアピンに作製される。
他のサブユニットへの近さを用いて、大サブユニット若しくは小サブユニットのいずれか又は両方に新しい末端の位置を選択することができる。ある特定の実施形態では、新しい末端は、ネイティブサブユニットのサブユニット溶媒(solvent)側に位置する。いくつかの他の実施形態では、新しい末端はサブユニット界面リム(interface rim)の近くに位置する。ある特定の具体的な実施形態では、新しい末端は、サブユニット溶媒側に、且つサブユニット界面リムの近くに位置する。
リボソームの生存能を利用して、大サブユニット若しくは小サブユニットのいずれか又は両方に新しい末端の位置を選択することができる。例えば、集団内で高度に保存されていない大サブユニット若しくは小サブユニットのいずれか又は両方にあるポリヌクレオチド配列又は二次構造を利用して、新しい末端の位置を選択することができる。
改変リボソームが23S構築物である、ある特定の実施形態では、連結部分は、23S rRNAの順列置換バリアントのヘリックス10、ヘリックス38、ヘリックス42、ヘリックス54、ヘリックス58、ヘリックス63、ヘリックス78、又はヘリックス101を共有結合させることができる。改変リボソームが16S rRNA構築物であるある特定の実施形態では、連結部分は、16S rRNAの順列置換バリアントのヘリックス11、ヘリックス26、ヘリックス33、又はヘリックス44を共有結合させることができる。改変リボソームが16S構築物である、ある特定の他の実施形態では、連結部分は、16S rRNAの順列置換バリアントのE-サイトの近くに共有結合することができる。改変リボソームが16S-23S構築物である具体的な実施形態では、連結部分は、順列置換バリアント16S rRNAのヘリックス44を順列置換バリアント23S rRNAのヘリックス101と共有結合させる、連結部分は、順列置換バリアント16S rRNAのヘリックス26を順列置換バリアント23S rRNAのヘリックス10と共有結合させる、連結部分は、順列置換バリアント16S rRNAのヘリックス33を順列置換バリアント23S rRNAのヘリックス38と共有結合させる、連結部分は、順列置換バリアント16S rRNAのヘリックス11を順列置換バリアント23S rRNAのヘリックス58と共有結合させる、連結部分は、順列置換バリアント16S rRNAのヘリックス44を順列置換バリアント23S rRNAのヘリックス58と共有結合させる、連結部分は、順列置換バリアント16S rRNAのヘリックス26を順列置換バリアント23S rRNAのヘリックス54と共有結合させる、連結部分は、順列置換バリアント16S rRNAのヘリックス11を順列置換バリアント23S rRNAのヘリックス63と共有結合させる、又は連結部分は、順列置換バリアント16S rRNAのヘリックス44を順列置換バリアント23S rRNAのヘリックス63と共有結合させる。
上で説明したように、連結部分は、分解を防ぎ、且つサブユニットのシス結合を確実にするために充分に短く、一方で翻訳開始、伸長、及びペプチド放出に要するサブユニットの動きを最小限に抑えるのに充分に長くなければならない。結果として、連結部分は、大サブユニットと短い(short)サブユニットの新しい末端の間で数十オングストロームにわたっていなければならない。
テザーリボソームをコードするポリヌクレオチド
さらに、テザーリボソームをコードするポリヌクレオチドも開示される。テザーリボソームをコードするポリヌクレオチドは、発現してテザーリボソームのrRNAを生成できる任意のポリヌクレオチドでありうる。図23Bは、テザーリボソームのrRNAを調製するためのポリヌクレオチドを示す。ポリヌクレオチド400は、5’から3’に、T1リンカー405のrRNAをコードする配列、L1ドメイン402のrRNAをコードする配列、Cドメイン406のrRNAをコードする配列、L2ドメイン403のrRNAをコードする配列、T2リンカー407のrRNAをコードする配列、及びS2ドメイン404のrRNAをコードする配列が順に続くS1ドメイン401のrRNAをコードする配列を含む。
テザーリボソームをコードするポリヌクレオチドは、リボソームの他のrRNAサブユニット又はリボソームタンパク質をコードする遺伝子をさらに含むことができる。例えば、順列置換16S rRNAに繋ぎ止められた順列置換23S rRNAを含む改変リボソームをコードするポリヌクレオチドは、5S rRNAをコードする遺伝子をさらに含むことができる。
ある特定の実施形態では、ポリヌクレオチドは、外来の遺伝子材料を宿主細胞に導入できるベクターである。ベクターは、プラスミド、ウイルスベクター、コスミド、又は人工染色体であることができる。
図25A、Bは、分離可能なサブユニットを有する原核生物リボソームをコードするプラスミド(図25A)及びテザーリボソームをコードするポリヌクレオチド(図25B)の例を示す。図25Aにおいて、プラスミド600は、プロモーター612、より小さい長方形で示されるプロセシングステムの発現(representation)を含む16Sサブユニットをコードする遺伝子601、tRNA遺伝子613、より小さい長方形で示されるプロセシングステムの発現(representation)を含む23Sサブユニットをコードする遺伝子602、5Sサブユニットをコードする遺伝子611、抗生物質耐性をコードする遺伝子614、及び複製起点遺伝子615を含む。いくつかの実施形態では、16Sサブユニット601は改変アンチシャイン・ダルガノ配列を含む。改変アンチシャイン・ダルガノ配列は、小サブユニットドメイン、すなわち、S1又はS2のいずれかに位置することができる。
任選選択で、分離可能なサブユニットを有する原核生物リボソームをコードするプラスミドは、1つ又は複数の追加の遺伝子を含む。追加の遺伝子(単数又は複数)は、非テザーリボソームの小サブユニットの改変アンチシャイン・ダルガノ配列に相補的である改変シャイン・ダルガノ配列を含むことができる。
分離可能なサブユニットを有するリボソームをコードするプラスミドとは対照的に、テザーリボソーム700をコードするプラスミドは、大サブユニット、小サブユニット、及び大サブユニットを小サブユニットと繋ぐ連結部分701~707をコードするキメラ遺伝子を有する。プラスミドはテザーリボソーム720の発現のための遺伝子を含む。任意選択で、プラスミドは1つ又は複数の追加の遺伝子740をさらに含むことができる。
テザーサブユニットをコードする遺伝子は、5’から3’に、T1リンカーのrRNAをコードする配列705、L1ドメインのrRNAをコードする配列702、CドメインのrRNAをコードする配列706、L2ドメインのrRNAをコードする配列703、T2リンカーのrRNAをコードする配列707、及びS2ドメインのrRNAをコードする配列704が順に続くS1ドメインのrRNAをコードする配列701を含む。小さな長方形で示されるキメラ遺伝子に隣接する小サブユニットのプロセシング配列は、小サブユニット末端の適切な成熟のために保持できるが、大サブユニット716のプロセシング配列は、ハイブリッドから大サブユニットが切断されるのを防ぐために、プラスミドの別の場所に動かす、又は完全に取り除くことができる。
ある特定の実施形態では、テザーサブユニットをコードするプラスミドは、5Sサブユニットをコードする遺伝子711、抗生物質耐性をコードする遺伝子714、及び複製起点遺伝子715をさらに含む。
任意選択で、テザーサブユニットをコードするプラスミドは、改変アンチシャイン・ダルガノ配列708(丸)を含むことができる。改変アンチSD配列は、S2ドメインをコードする配列内に位置するように図25Bでは示されているが、改変アンチシャイン・ダルガノ配列は、小サブユニットドメインのいずれか、すなわちS1又はS2に位置することがある。いくつかの実施形態では、テザーサブユニットを含むプラスミドは野生型アンチシャイン・ダルガノ配列を含む。
任意選択で、テザーサブユニットをコードするプラスミドは1つ又は複数の追加の遺伝子740を含む。追加の遺伝子は、テザーリボソームの改変アンチシャイン・ダルガノ配列に相補的である改変シャイン・ダルガノ配列を含むことができる。ある特定の実施形態では、その追加の遺伝子はレポーター遺伝子であることができる。具体的な実施形態では、レポーター遺伝子は緑色蛍光タンパク質である。いくつかの実施形態では、追加の遺伝子は野生型アンチシャイン・ダルガノ配列を含む。
ポリヌクレオチドの調製
さらに、ポリヌクレオチドを調製する方法も本明細書で開示される。その方法は、順列置換サブユニットrRNA構築物をコードするプラスミドを調製すること、生存可能な順列置換サブユニットrRNA構築物を特定すること、及び大サブユニット、小サブユニット、及び小サブユニットを大サブユニットと繋ぎ止める連結部分を含む改変リボソームをコードするポリヌクレオチドを調製することを含む。
順列置換サブユニットrRNA構築物をコードするプラスミドの調製は、サブユニットのネイティブ末端を繋ぎ、且つ新しい末端を調製する円順列置換法によって達成することができる(図24)。プラスミドの調製は、テンプレートの調製、プラスミドバックボーンの調製、及びアセンブリのステップから含むことができる。テンプレート調製ステップは、プラスミド消化及びライゲーションによって達成することができる。例として、CP23Sテンプレートは、pCP23S-EagIプラスミドからEagI消化及びライゲーションによって調製することができる。各CP23Sバリアントは、テンプレートとして環状化した(circularized)23S rRNA遺伝子及び目的プラスミドバックボーンと重複する配列を加えたユニークなプライマー対を使用したPCRによって生成される。プラスミドバックボーンの調製ステップは、ステムサイトをプロセスするサブユニットでバックボーンを直鎖にする制限酵素によるプラスミドの消化によって達成することができる。例として、プラスミドバックボーンは、23Sプロセッシングステムサイトでバックボーンを直鎖にするAflII制限酵素でpAM552-23S-AflIIを消化することによって調製される。アセンブリステップでは、テンプレートがプラスミドバックボーンに組み込まれ、順列置換サブユニットrRNAをコードするプラスミドが調製される。アセンブリステップは、ギブソン・アセンブリによって達成することができる。
順列置換サブユニットrRNAの生存可能構築物を特定するために、順列置換サブユニットrRNAをコードするプラスミドを宿主細胞株に導入し、且つスクリーニング機構を用いて形質転換体が同定される。宿主細胞は、プラスミド及び野生型rRNAオペロンをコードするプラスミドを含み、且つ抗生物質とともに寒天プレート上にスポットすることができる。選択機構は、抗生物質に耐性のある形質転換体を同定することを含む。例として、プラスミドを、野生型rRNAオペロンをもつpCSacBプラスミドを有するΔ7 rrn SQ171株に形質転換し、且つアンピシリン、エリスロマイシン及びスクロースに耐性のある形質転換体が選択される。野生型rRNAオペロンが順列置換サブユニットrRNAをコードするプラスミドに完全に置換されていることを確認するために、3プライマー診断(three-primer diagnostic)PCRチェックを全プラスミド抽出物に対して行うことができる。
大サブユニット、小サブユニット、及び小サブユニットを大サブユニットと繋ぎ止める連結部分を含む改変リボソームをコードするポリヌクレオチドを調製することは、順列置換サブユニットrRNA構築物と連結部分を他のサブユニットに一体化させる(grafting)を含む。ある特定の実施形態では、調製ステップはまた、大サブユニット、小サブユニット、及び小サブユニットを大サブユニットと繋ぎ止める連結部分を含む改変リボソームをコードするポリヌクレオチドを含むプラスミドを調製することを含むことができる。他の実施形態では、調製ステップはまた、大サブユニット、小サブユニット、及び小サブユニットを大サブユニットと繋ぎ止める連結部分を含む改変リボソームをコードするポリヌクレオチド並びに追加の遺伝子をコードするポリヌクレオチドを含むプラスミドを調製することを含むことができる。
テザーリボソームの調製
さらに開示されるのは、テザーリボソームを調製するための方法である。テザーリボソームは、改変リボソームをコードするポリヌクレオチドを発現させることによって調製することができる。ある特定の実施形態では、テザーリボソームの調製は、改変リボソームをコードするポリヌクレオチドを調製することをさらに含む。他の実施形態では、テザーリボソームの調製は、細胞を、改変リボソームをコードするポリヌクレオチドで形質転換することをさらに含む。いくつかの具体的な実施形態では、テザーリボソームの調製は、ポリヌクレオチドを用意すること及び細胞をポリヌクレオチドで形質転換することをさらに含む。
テザーリボソームの進化
さらに開示されるのは、テザーリボソームを進化させるための方法である。テザーリボソーム進化のための方法は、改変リボソームをコードするポリヌクレオチドを発現させること及び変異体を選択することを含む。選択ステップは、ネガティブ選択ステップ、ポジティブ選択ステップ、又はネガティブとポジティブ両方の選択ステップを含みうる。選択された変異体は、機能変換型変異を有するテザーリボソームを含みうる。機能変換型変異は、機能獲得型変異であってもよく、又は機能喪失型変異であってもよい。
テザーリボソームの有用性及び用途
テザーリボソームのいくつかの使用及び用途を以下に記載する。
人工細胞
人工細胞が開示される。人工細胞は、改変リボソームをコードするポリヌクレオチドを含むことができ、改変リボソームは、小サブユニット、大サブユニット、及び連結部分を含み、連結部分は、小サブユニットを大サブユニットと繋ぎ止める。改変リボソームをコードするポリヌクレオチドを含む人工細胞は、ポリヌクレオチドを発現して改変リボソームを調製することができうる。他の実施形態では、人工細胞は改変リボソームを含む。いくつかの具体的な実施形態では、人工細胞は、改変リボソームをコードするポリヌクレオチド及び改変リボソームを含む。
人工細胞は1つ又は複数の翻訳機構を含むことができる。第1の実施形態では、人工細胞は改変リボソームを含む1つの翻訳機構を有し、改変リボソームは、小サブユニット、大サブユニット、及び連結部分を含み、連結部分は、小サブユニットを大サブユニットと繋ぎ止める。
別の実施形態では、人工細胞は2つの翻訳機構を含むことができる。第1の翻訳機構はリボソームを含むことができ、そのリボソームは大サブユニットと小サブユニットの間の連結部分を欠く。第2の翻訳機構は改変リボソームを含み、改変リボソームは、小サブユニット、大サブユニット、及び連結部分を含み、連結部分は、小サブユニットを大サブユニットと繋ぎ止める。いくつかの実施形態では、第1の翻訳機構又は第2の翻訳機構は直交翻訳機構である。いくつかの実施形態では、第1の翻訳機構及び第2の翻訳機構は直交翻訳機構である。直交翻訳機構は、リボソームのアンチシャイン・ダルガノ配列を改変して、内在性細胞mRNAと異なる相補的なシャイン・ダルガノ配列を有するテンプレートの翻訳を可能にすることによって調製することができる。
別の実施形態では、タンパク質翻訳のための第1の機構及び第2の機構を含む細胞が開示される。第1の機構は、野生型アンチシャイン・ダルガノ配列をもつテザーリボソームを含み、mRNAは、天然遺伝コード(すなわち、細胞に内在するトリプレットコード)に従ってリボソームによって翻訳される。第2の機構は、異種遺伝子(heterologous gene)の発現を可能にするように機能する非テザーリボソームに由来する人工的な機構を含む。いくつかの実施形態では、第2の機構は、改変アンチシャイン・ダルガノ配列を有するリボソームを含む。
配列規定ポリマーの調製
さらに、配列規定ポリマーを調製するための方法も提供される。ある特定の実施形態では、配列規定ポリマーを調製する方法は、改変リボソームを用意すること、及び配列規定ポリマーをコードするmRNA又はDNAテンプレートを用意することを含む。いくつかの実施形態では、改変リボソームは、小サブユニット、大サブユニット、及び連結部分を含み、且つ連結部分は、小サブユニットを大サブユニットと繋ぎ止め、且つそこにおいて、改変リボソームは改変アンチシャイン・ダルガノ配列を含む。いくつかの実施形態では、改変リボソームは、小サブユニット、大サブユニットを含み、連結部分がなく、且つ改変シャイン・ダルガノ配列を含む。本方法の1つの態様では、ステップのいずれか1つは、配列規定ポリマーのmRNAをコードする少なくとも1つの外因性DNAテンプレートを加えることを含む。
本発明の方法の1つの態様では、配列規定ポリマーは天然バイオポリマーである。本発明の方法の別の態様では、配列規定ポリマーは非天然バイオポリマーである。ある特定の実施形態では、配列規定ポリマーはアミノ酸を含む。ある特定の実施形態では、アミノ酸は天然アミノ酸でありうる。本明細書で使用される場合、天然アミノ酸は、普遍遺伝コードのコドンによって直接コードされたタンパク質原性のアミノ酸である。ある特定の実施形態では、アミノ酸は、非天然アミノ酸であることができる。本明細書で使用される場合、非天然アミノ酸とは、非タンパク質原性のアミノ酸のことである。非天然アミノ酸の例としては、p-アセチル-L-フェニルアラニン、p-ヨード-L-フェニルアラニン、O-メチル-L-チロシン、p-プロパルギルオキシフェニルアラニン、p-プロパルギル-フェニルアラニン、L-3-(2-ナフチル)アラニン、3-メチル-フェニルアラニン、O-4-アリル-L-チロシン、4-プロピル-L-チロシン、トリ-O-アセチル-GlcNAcpβ-セリン、L-ドーパ、フッ素化フェニルアラニン、イソプロピル-L-フェニルアラニン、p-アジド-L-フェニルアラニン、p-アシル-L-フェニルアラニン、p-ベンゾイル-L-フェニルアラニン、L-ホスホセリン、ホスホノセリン(phosphonoserine)、ホスホノチロシン(phosphonotyrosine)、p-ブロモフェニルアラニン、p-アミノ-L-フェニルアラニン、イソプロピル-L-フェニルアラニン、チロシンアミノ酸の非天然類似体;グルタミンアミノ酸の非天然類似体;フェニルアラニンアミノ酸の非天然類似体;セリンアミノ酸の非天然類似体;スレオニンアミノ酸の非天然類似体;メチオニンアミノ酸の非天然類似体;ロイシンアミノ酸の非天然類似体;イソロイシンアミノ酸の非天然類似体;アルキル、アリール、アシル、アジド、シアノ、ハロ、ヒドラジン、ヒドラジド、ヒドロキシル、アルケニル、アルキニル(alkynl)、エーテル、チオール、スルホニル、セレノ、エステル、チオ酸、ボレート、ボロナート、ホスホ、ホスホノ、ホスフィン、複素環式、エノン、イミン、アルデヒド、ヒドロキシルアミン、ケト、若しくはアミノ置換アミノ酸、又はそれらの組み合わせ;光活性化可能架橋剤付きアミノ酸;スピン標識アミノ酸;蛍光アミノ酸;金属結合アミノ酸;金属含有アミノ酸;放射性アミノ酸;光ケージドアミノ酸及び/又は光異性化可能アミノ酸;ビオチン又はビオチン-アナログ含有アミノ酸;ケト含有アミノ酸;ポリエチレングリコール又はポリエーテルを含むアミノ酸;重原子置換アミノ酸;化学的に切断可能又は光切断可能アミノ酸;側鎖が伸長したアミノ酸;毒性基を含有するアミノ酸;糖置換アミノ酸;炭素連結型糖含有アミノ酸;酸化還元活性アミノ酸;α-ヒドロキシ含有酸;アミノチオアシッド;α,αジ置換アミノ酸;β-アミノ酸;γ-アミノ酸、プロリン又はヒスチジン以外の環状アミノ酸、並びにフェニルアラニン、チロシン又はトリプトファン以外の芳香族アミノ酸が挙げられるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態では、配列規定ポリマーはポリペプチド又はタンパク質である。
本発明の1つの態様では、テザーサブユニットの配置は、23Sと16S rRNAの間の連結部分を含む。この態様の1つの観点では、連結部分は、23S rRNAのヘリックス101を16S rRNAのヘリックス44に共有結合させる。この態様の別の観点では、連結部分は、5ヌクレオチド~200ヌクレオチドの範囲の長さを有するポリヌクレオチドを含む。連結されたリボソームは、内在性細胞mRNAとは異なる相補的なSD配列を有する翻訳テンプレートのインビトロ翻訳を可能にするように改変アンチシャイン・ダルガノ配列を有する改変16S rRNAをさらに含むことができる。このように、配列規定バイオポリマーを高効率で生成するmRNAのインビトロでの選択的翻訳が可能である。
本発明の1つの態様では、改変リボソームは繋ぎ止められておらず、且つ内在性細胞mRNAとは異なる相補的なSD配列を有する翻訳テンプレートのインビトロ又はインビボ翻訳を可能にするように改変アンチシャイン・ダルガノ(SD)16S配列を含む。このように、配列規定バイオポリマーを高効率で生成するmRNAの選択的翻訳が可能である。
本発明の1つの態様では、mRNA又はDNAテンプレートは改変シャイン・ダルガノ配列をコードする。ある特定の実施形態では、改変リボソームは、mRNA又はDNAテンプレートによってコードされるシャイン・ダルガノ配列に相補的なアンチシャイン・ダルガノ配列を含む。
いくつかの実施形態では、mRNA又はDNAテンプレートは、改変された細胞(例えば、2つの異なるタンパク質翻訳機構を含む細胞)、そのような細胞からの抽出物、又はそのような細胞からの精製された翻訳系に供給される。
配列規定ポリマーはインビトロで調製することができる。いくつかの実施形態では、配列規定ポリマーをインビトロで調製する方法は、リボソーム欠失細胞抽出物又は精製された翻訳系を用意することさらに含む。ある特定の実施形態では、リボソーム欠失細胞抽出物は、指数増殖期の中~後期の細胞培養物又は採取時に~3.0のO.D.600を有する培養物から調製されるS150抽出物を含む。本発明の1つの態様では、リボソーム欠失抽出物は、スペルミン、スペルミジン及びプトレシンなどの1つ又は複数のポリアミン、又はそれらの組み合わせで調製される。本発明の1つの態様では、リボソーム欠失抽出物は約50mM~約300mMの塩の濃度で調製される。
リボソーム欠失細胞抽出物の調製及びそれらを配列規定ポリマーのインビトロでの翻訳を補助するために使用する方法が、Michael Jewett et al.による2014年4月24日に出願された”IMPROVED METHODS FOR MAKING RIBOSOMES”と題する国際出願PCT/US14/35376号明細書に開示され、その内容は参照によりその全体が本明細書に援用される。
本方法の1つの態様では、mRNAは、リボソーム欠失細胞抽出物に存在する内在性細胞mRNAとは異なる改変シャイン・ダルガノ配列をコードする。この態様の1つの観点では、改変リボソームは、改変シャイン・ダルガノ配列に相補的な改変アンチシャイン・ダルガノ配列を有する改変16S rRNAを含み、mRNAのインビトロでの翻訳を可能にしてインビトロで配列規定バイオポリマーを調製する。
1つの態様では、本方法は、流加回分操作又は連続操作向けに構成される。本方法の別の態様では、操作中に少なくとも1つの基質が補充される。
本方法の1つの態様では、少なくとも1つのステップはDNA依存性RNAポリメラーゼを含む。本方法の1つの態様では、少なくとも1つの高分子クラウディング剤がステップの1つに含まれる。本方法の1つの態様では、少なくとも1つの還元剤(例えば、ジチオトレイトール、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩など)が、ステップの1つに含まれる。
配列規定ポリマーはインビボで調製することができる。配列規定ポリマーをインビボで調製する方法は、上記に開示の人工細胞で行うことができる。人工細胞は、改変リボソームを含む翻訳機構を有することができ、そこにおいて改変リボソームは、小サブユニット、大サブユニット、及び連結部分を含み、且つ連結部分は、小サブユニットを大サブユニットと繋ぎ止める。ある特定の実施形態では、人工細胞は1つの翻訳機構を有する。他の実施形態では、細胞は2つの翻訳機構を有する。いくつかの実施形態では、細胞は2つのタンパク質翻訳機構を有し、第1のタンパク質翻訳機構はリボソームを含み、そこにおいてリボソームは、大サブユニット及び小サブユニットの間の連結部分を欠き、且つ第2のタンパク質翻訳機構はリボソームを含み、そこにおいてリボソームは、大サブユニットと小サブユニットを連結する連結部分を含む。いくつかの実施形態では、第1の翻訳系のリボソームは改変アンチシャイン・ダルガノ配列を含み、且つ第2の翻訳系のリボソームは野生型(改変されていない(unmodified))アンチシャイン・ダルガノ配列を含む。
用語
別段の定義がない限り、本明細書で使用される技術用語及び科学用語はすべて、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書で定義及び使用されるすべての定義は、辞書の定義、参照により援用される文書における定義、及び/又は定義された用語の通常の意味より優先されることが理解されるべきである。
本明細書及び特許請求の範囲で使用される不定冠詞「a」及び「an」は、明らかに反対の指示がない限り、「少なくとも1つ」を意味すると理解されるべきである。
範囲は個々のメンバーを含む。したがって、例えば、1~3つのメンバーからなる群とは、1つ、2つ、3つのメンバーを有する群を意味する。
また、明らかに反対の指示がない限り、2つ以上(more than one)のステップ又は行為を含む本明細書でクレームされるいずれの方法においても、方法のステップ又は行為の順序は、方法のステップ又は行為が記載の順序に必ずしも限定されないことが理解されるべきである。
「may」という法助動詞は、複数の記載された実施形態又はその中に含まれる特徴のうち、1つ又は複数の選択肢(options)又は選択(choices)の好ましい使用又は選択を意味する。特定の実施形態又はその中に含まれる特徴に関する選択肢又は選択が開示されていない場合、「may」という法助動詞は、記載の実施形態若しくはその中に含まれる特徴の態様(aspect)をどのように作製若しくは使用するかに関する積極的行動(affirmative act)、又は記載の実施形態若しくはその中に含まれる特徴に関する特定の技能(specific skill)を使用する最終決定(definitive decision)を意味する。この後者の文脈では、「may」という法助動詞は、「can」という助動詞と同じ意味及び言葉の含み(connotation)を有する。
特許請求の範囲でも、上記明細書でも、「含む(comprising)」、「含む(including)」、「もっている(carrying)」、「有する(having)」、「含有する(containing)」、「含む(involving)」、「もつ(holding)」、「構成される(composed of)」及び同種のもののすべての移行句は、オープンエンド(open-ended)である、すなわち、含むが限定されないことを意味するものと理解される。米国特許庁の特許審査手続マニュアル(the United States Patent Office Manual of Patent Examining Procedures)第2111.03条に規定されているように、「からなる(consisting of)」及び「から本質的になる(consisting essentially of)」という経過句のみが、それぞれクローズド(closed)又はセミクローズド(semi-closed)の移行句であるものとする。
本明細書で使用される「核酸」及び「オリゴヌクレオチド」という用語は、ポリデオキシリボヌクレオチド(2-デオキシ-D-リボースを含有)、ポリリボヌクレオチド(D-リボースを含有)、及びプリン又はピリミジン塩基のNグリコシドである他の任意のタイプのポリヌクレオチドを意味する。「核酸」、「オリゴヌクレオチド」及び「ポリヌクレオチド」という用語の間には、意図された長さの区別はなく、これらの用語は互いに交換可能に使用されることになる。これらの用語は、分子の一次構造のみを指す。したがって、これらの用語は、二本鎖及び一本鎖のDNA並びに二本鎖及び一本鎖のRNAを包含する。本発明で使用する場合、オリゴヌクレオチドはまた、塩基、糖又はリン酸骨格が改変された類似体、及び非プリン又は非ピリミジンヌクレオチド類似体も含みうる。
ポリヌクレオチドの「断片」は、参照配列と配列が同一であるが、参照配列よりも長さが短いポリヌクレオチド配列の一部分である。断片は、参照配列の全長から少なくとも1つのヌクレオチドを除いたものまでを含みうる。例えば、断片は、参照ポリヌクレオチドの5~1000個の連続したヌクレオチドを含みうる。いくつかの実施形態では、断片は、参照ポリヌクレオチドの少なくとも5、10、15、20、25、30、40、50、60、70、80、90、100、150、250、又は500個の連続したヌクレオチドを含みうる。断片は、分子のある特定の領域から優先的に選択することができる。なお、「少なくとも1つの断片」という用語は、全長のポリヌクレオチドを包含する。参照ポリヌクレオチド配列の「バリアント」、「変異体」又は「誘導体」は、参照ポリヌクレオチド配列の断片を含むことがある。
ポリヌクレオチド配列に関しては、同一性パーセントは、例えば、特定の配列番号で定義されるように、定義されたポリヌクレオチド配列全体の長さにわたって測定されることもあれば、又はより短い長さわたって、例えばより大きな定義された配列から取られた断片にわたって、例えば少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも70、少なくとも100、若しくは少なくとも200個の連続したヌクレオチドの断片の長さにわたって測定されることもある。そのような長さはくまで例示に過ぎず、本明細書において表、図、又は配列表に示される配列によってサポートされる任意の断片の長さを使用して同一性のパーセント割合が測定でされうる長さを記述できることが理解される。
ポリヌクレオチド配列に関して、「バリアント」、「変異体」又は「誘導体」は、米国国立生物工学情報センターのウェブサイトで利用可能なblastnと「BLAST 2 Sequences」ツール(Tatiana A. Tatusova, Thomas L. Madden (1999), ”Blast 2 sequences - a new tool for comparing protein and nucleotide sequences”, FEMS Microbiol Lett. 174:247-250を参照)を使用して、1つの核酸配列のある特定の長さにわたって、特定の核酸配列と少なくとも50%の配列同一性を有する核酸配列として定義されうる。そのような核酸の対は、ある特定の定義された長さにわたって、例えば、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%以上の配列同一性を示すことができる。
「組換え核酸」は天然には存在しない配列である、又は2つ以上の通常は別々の配列セグメントを人工的に組み合わせることによって作られる配列を有する。この人工的な組み合わせは、多くの場合化学合成によって、又はより一般的には核酸の単離セグメントの人工的に操作によって、例えば当該技術分野で公知の遺伝子工学技術よって達成される。組換え体という用語は、一部の核酸の付加、置換又は欠失のみによって改変された核酸を含む。しばしば、組換え核酸は、プロモーター配列に作動可能に連結された核酸配列を含むことがある。そのような組換え核酸は、例えば、細胞を形質転換するために使用されるベクターの一部でありうる。
本明細書に開示の核酸は、「実質的に単離又は精製された」ものであることができる。「実質的に単離又は精製された」という用語は、その自然環境から取り出され、且つそれが天然に結合する他の構成成分が少なくとも60%ない、好ましくは少なくとも75%ない、より好ましくは少なくとも90%ない、さらにより好ましくは少なくとも95%ない核酸を意味する。
オリゴヌクレオチドは、Narang et al., 1979, Meth. Enzymol. 68:90-99のホスホトリエステル法、Brown et al., 1979, Meth. Enzymol. 68:109-151のホスホジエステル法、Beaucage et al., 1981, Tetrahedron Letters 22:1859-1862のジエチルホスホラミダイト法、及び米国特許第4,458,066号明細書の固体担体(solid support)法などの方法による直接化学合成を含む任意の好適な方法によって調製することができる。各文献は参照により本明細書に援用される。オリゴヌクレオチド及び修飾ヌクレオチドのコンジュゲートの合成方法の総説は、Goodchild, 1990, Bioconjugate Chemistry 1(3): 165-187に示され、この文献は参照により本明細書に援用される。
本明細書で使用される「プライマー」という用語は、好適な条件下でDNA合成の開始点として作用することができるオリゴヌクレオチドを意味する。そのような条件としては、4つの異なるヌクレオシド三リン酸及び伸長剤(例えばDNAポリメラーゼ又は逆転写酵素)の存在下において適切な緩衝液と好適な温度で、核酸鎖に相補的なプライマー伸長産物の合成を誘導するもので挙げられる。
好ましくは、プライマーは一本鎖DNAである。プライマーの適切な長さは、プライマーの使用目的によるが、典型的には、約6~約225個のヌクレオチドの範囲であり、15~35個のヌクレオチド、18~75個のヌクレオチド、25~150個のヌクレオチドなど中間の範囲を含む。短いプライマー分子は一般に、テンプレートと充分に安定したハイブリッド複合体を形成するために、より低い温度を必要とする。プライマーは、テンプレート核酸の配列を正確に反映する必要はないが、テンプレートとハイブリダイズするのに充分な相補性がなければならない。所与の標的配列の増幅に適したプライマーの設計は、当該技術分野で周知であり、且つ本明細書で引用された文献に記載されている。
プライマーは、プライマーの検出又は固定化を可能にする追加の特徴を組み込むことができるが、DNA合成の開始点として作用するというプライマーの基本的な性質は変わらない。例えば、プライマーは、標的核酸にハイブリダイズしないが、増幅産物のクローニング若しくは検出を容易にする、又はRNAの転写(例えばプロモーターを含めることによって)若しくはタンパク質の翻訳(例えば、内部リボソーム入口部位(IRES)などの5’-UTR若しくはポリ(A)n配列(nは約20から約200までの範囲である)などの3’-UTR要素を含めることによって)RNAの転写を可能にする追加の核酸配列を5’末端に含有することができる。プライマーの、テンプレートと充分に相補的でハイブリダイズする領域を、本明細書ではハイブリダイジング領域と呼ぶ。
「プロモーター」という用語は、RNAポリメラーゼ及び他のトランス作用性転写因子を導いて、シス作用性DNA配列を含むDNAテンプレートからRNA転写を開始するシス作用性DNA配列を意味する。
本明細書で使用される「標的」、「標的配列」、「標的領域」、及び「標的核酸」という用語は同義であり、増幅、配列決定、又は検出される核酸の領域又は配列を意味する。
本明細書で使用される場合、「ハイブリダイゼーション」という用語は、2本の一本鎖核酸が相補的な塩基対形成により二重鎖構造を形成することを意味する。ハイブリダイゼーションは、完全に相補的な核酸鎖の間でも、又はミスマッチの小さな領域が入った「実質的に相補的な」核酸鎖の間でも起こりうる。完全に相補的な核酸鎖のハイブリダイゼーションが強く好まれる条件は、「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」又は「配列特異的なハイブリダイゼーション条件」と呼ばれる。実質的に相補的な配列の安定した二重鎖は、より低いストリンジェントなハイブリダイゼーション条件でも達成することができ、許容されるミスマッチの程度は、ハイブリダイゼーション条件の好適な調整によって制御することができる。核酸技術の当業者は、当技術分野によって提供される指針に従って、例えば、オリゴヌクレオチドの長さ及び塩基対組成、イオン強度、並びにミスマッチ塩基対の発生率を含む数多くの変数を考慮して、経験的に二重鎖安定性を決めることができる(例えば、Sambrook et al., 1989, Molecular Cloning-A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, New York、Wetmur, 1991, Critical Review in Biochem. and Mol. Biol. 26(3/4):227-259、及びOwczarzy et al., 2008, Biochemistry, 47: 5336-5353を参照。これらの文献は参照により本明細書に援用される)。
「増幅反応」という用語は、酵素反応を含む、テンプレート核酸配列のコピー数の増加をもたらす、又はテンプレート核酸の転写をもたらす化学反応を意味する。増幅反応としては、逆転写、リアルタイムPCRを含むポリメラーゼ連鎖反応(PCR)(米国特許第4,683,195号明細書及び同第4,683,202号明細書、PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications (Innis et al., eds, 1990)を参照)、並びにリガーゼ連鎖反応(LCR)(Barany et al.、米国特許第5,494,810号明細書を参照)が挙げられる。好ましい(Exemplary)「増幅反応条件」又は「増幅条件」は、典型的には、2ステップ又は3ステップのいずれかのサイクルを含む。2ステップサイクルは、高温の変性ステップ、それに続くハイブリダイゼーション/伸長(又はライゲーション)ステップを有する。3ステップサイクルは、変性ステップ、それに続くハイブリダイゼーションステップ、それに続く伸長ステップを含む。
本明細書で使用される場合、「ポリメラーゼ」は、ヌクレオチドの重合を触媒する酵素を意味する。「DNAポリメラーゼ」はデオキシリボヌクレオチドの重合を触媒する。既知のDNAポリメラーゼは、としては、例えば、ピュロコックス・フリオスス(Pyrococcus furiosus)(Pfu)DNAポリメラーゼI、大腸菌DNAポリメラーゼI、T7 DNAポリメラーゼ、サーマス・アクアティカス(Thermus aquaticus)(Taq)DNAポリメラーゼが挙げられる。「RNAポリメラーゼ」はリボヌクレオチドの重合を触媒する。前述のDNAポリメラーゼの例は、DNA依存性DNAポリメラーゼとしても知られる。RNA依存性DNAポリメラーゼもDNAポリメラーゼの範囲に入る。レトロウイルスにコードされるウイルスポリメラーゼを含む逆転写酵素は、RNA依存性DNAポリメラーゼの一例である。RNAポリメラーゼ(「RNAP」)の既知の例としては、例えば、特T3 RNAポリメラーゼ、T7 RNAポリメラーゼ、SP6 RNAポリメラーゼ及び大腸菌RNAポリメラーゼが挙げられる。前述のRNAポリメラーゼの例は、DNA依存性RNAポリメラーゼとしても知られる。上記酵素のいずれかのポリメラーゼ活性は、当該技術分野で周知の手段により測定することができる。
本明細書で使用される場合、「配列規定ポリマー」という用語は、特定の一次配列を有するポリマーを意味する。配列規定ポリマーは、遺伝子が特定の一次配列を持つポリマーをコードしている場合には、遺伝的にコードされた(genetically-encoded)規定ポリマーと同等でありうる。
本明細書で使用される場合、プライマーは、充分にストリンジェントな条件下で増幅反応に使用されたとき、プライマーが主に標的核酸にハイブリダイズする場合に、標的配列に対して「特異的」である。典型的には、プライマー-標的配列二重鎖の安定性が、プライマー及び試料中の他の配列の間に形成される二重鎖の安定性よりも大きい場合、プライマーは標的配列に特異的である。当業者であれば、塩の条件、並びにプライマーの塩基組成及びミスマッチの位置などの様々な要因が、プライマーの特異性に影響を与えることなり、且つプライマーの特異性は、多くの場合、日常的に実験的に確認することが必要であることを認識するであろう。プライマーが標的配列とのみ安定した二重鎖を形成できるハイブリダイゼーション条件を選択することができる。したがって、好適にストリンジェントな増幅条件下で標的特異的プライマーを使用することにより、標的プライマー結合部位を含有するそれらの標的配列の選択的増幅が可能となる。
本明細書で使用される場合、「発現テンプレート」は、ポリペプチド又はタンパク質に翻訳できる少なくとも1つのRNAを転写するための基質となる核酸を意味する。発現テンプレートは、DNA又はRNAから構成される核酸を含む。発現テンプレート用の核酸に使用するためのDNAに好適な供給源としては、ゲノムDNA、プラスミドDNA、cDNA、cDNAに変換できるRNAが挙げられる。ゲノムDNA、cDNA及びRNAは、特に、組織試料、生検、スワブ、喀痰、血液試料、糞便試料、尿試料、掻爬検体(scraping)など、いずれの生物源に由来してもよい。ゲノムDNA、cDNA及びRNAは、宿主細胞でも、又はウイルス由来でもあることができ、且つ現存する生物及び絶滅した生物を含むあらゆる種に由来することができる。本明細書で使用される場合、「発現テンプレート」及び「転写テンプレート」は同じ意味を有し、互いに交換可能に使用される。
本明細書で使用される場合、「繋ぎ止められた」、「結合した(conjoined)」、「連結された」、「つながれた」、「結合された(coupled)」及び「共有結合した」は、修飾語句(modifiers)として同じ意味を有する。
本明細書で使用される場合、「テザーリボソーム」及び「Ribo-T」は互いに交換可能に使用されることになる。
本明細書で使用される場合、「改変リボソーム」という用語は、改変された(modified)リボソームを意味する。好ましい(Exemplary)改変としては、1つ又は複数のサブユニットを繋ぎ止めること、サブユニットを改変すること(altering or subunits)、及び1つ又は複数のrRNA配列を変化させることが挙げられるが、これらに限定されない。好ましい(Exemplary)、非限定的な改変としては、16S rRNA、23S rRNA、アンチシャイン・ダルガノ配列、ペプチジルトランスフェラーゼ中心、新生出口トンネル(nascent exit tunnel)、リボソームのコーディング中心、伸長因子との相互作用部位、tRNA結合部位、シャペロン結合部位、新生鎖修飾酵素結合部位、GTPアーゼ中心、抗生物質耐性配列の導入などの改変の1つ又は複数が挙げられる。
本明細書で使用される場合、「野生型」、「ネイティブの」又は「内在性」という用語は、所与の生物に典型的に見出される物質又は状態を意味する。
本明細書で使用される場合、「変異体」、「外因性の」、「直交性の」及び「非ノンネイティブの」という用語は、所与の生物に典型的に見出されない物質又は状態を意味する。
ここで使用される場合、「CP」は、円順列置換サブユニットを意味する。本明細書で使用される場合、CPの後に「23S」が続くとき、それは円順列置換23S rRNAを意味する。本明細書で使用される場合、CPの後に数字が続くとき、文脈によって、二次構造における新しい5’末端の位置を指すこともあり(例えばCP101は、新しい5’末端が23S rRNAのヘリックス101にあることを意味し)、又は新しい5’ヌクレオチドの位置を指すこともある(例えばCP2861は、新しい5’ヌクレオチドが23 rRNAのヌクレオチド2861であることを意味する)。
本明細書で使用される場合、「翻訳テンプレート」は、ポリペプチド又はタンパク質を合成するためにリボソームによって使用されうる、発現テンプレートからの転写のRNA産物を意味する。
本明細書で使用される場合、「リボソーム結合部位」又は「RBS」は、タンパク質翻訳の開始の間にリボソームを動員する役割を担う、mRNA転写物の開始コドンの上流にあるヌクレオチドの配列である。RBSはシャイン・ダルガノ配列を含みうる。シャイン・ダルガノ(SD)配列は、原核生物のメッセンジャーRNAのリボソーム結合部位であり、一般に開始コドンAUGの約8塩基上流に位置する。SD配列は、リボソームを開始コドンと整列させることによって、リボソームをメッセンジャーRNA(mRNA)にリクルートしてタンパク質合成を開始するのを助ける。6塩基のコンセンサス配列はAGGAGGであり、且つ大腸菌ではAGGAGGUである。
その他
本明細書に記載の方法はすべて、本明細書に特に示されない限り、又は文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の好適な順序で行うことができる。本明細書で提供されるすべての例又は好ましい(exemplary)文言(例えば「など(such as)」)の使用は、単に本発明をより良く説明することを意図しており、別段の主張がない限り、本発明の範囲に限定をもたらすものではない。本明細書のいかなる文言も、クレームされていない要素が発明の実施に不可欠であることを示すものとして解釈されるべきではない。
本発明の好ましい態様を、本発明を実施するための本発明の発明者らに公知の最良の態様を含めて、本明細書に記載する。それらの好ましい態様の変形は、前述の説明を読めば、当業者には明らかになるであろう。本発明の発明者らは、当業者がそのような変形を適宜採用することを予想しており、本発明の発明者らは、本明細書に具体的に記載した以外の方法で本発明が実施されることを意図している。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲に記載の主題の、適用法によって許されるすべての変更及び均等物を含む。さらに、本明細書で特に指示されない限り、又は文脈によって明らかに矛盾しない限り、上記要素のすべての考えられる変形でのそれら要素のいずれの組み合わせも本発明によって包含される。
例示的な実施形態
以下の実施形態は例示であり、且つクレームされた主題の範囲を限定するように解釈されるべきである。
実施形態1. 改変リボソームであって、小サブユニット、大サブユニット、及び連結部分を含み、a.連結部分が小サブユニットを大サブユニットと繋ぎ止め、且つb.そこにおいて配列規定ポリマーの翻訳を補助することができる改変リボソーム。
実施形態2. 小サブユニットがrRNA及びタンパク質を含み、大サブユニットがrRNA及びタンパク質を含み、且つ前記連結部分が小サブユニットのrRNAを大サブユニットのrRNAと繋ぎ止める実施形態1の改変リボソーム。
実施形態3. 大サブユニットが、23S rRNAの順列置換バリアント(例えば、23 rRNAの円順列置換バリアント)を含む実施形態1又は2の改変リボソーム。
実施形態4. 小サブユニットが、16S rRNAの順列置換バリアント(例えば、23 rRNAの円順列置換バリアント)を含む実施形態1~3の改変リボソーム。
実施形態5. 小サブユニットが、内在性細胞mRNAと異なる相補的なシャイン・ダルガノ配列を有するテンプレートの翻訳を可能にする改変アンチシャイン・ダルガノ配列を含む(例えば、そこにおいて小サブユニットの改変アンチシャイン・ダルガノ配列が内在性細胞mRNAと異なるシャイン・ダルガノ配列に相補的である)実施形態1~4のいずれかの改変リボソーム。
実施形態6. 連結部分が、大サブユニットのヘリックスを小サブユニットのヘリックスに共有結合させる実施形態1~5のいずれかの改変リボソーム。
実施形態7. 連結部分が、23S rRNAの順列置換バリアントヘリックス10、ヘリックス38、ヘリックス42、ヘリックス54、ヘリックス58、ヘリックス63、ヘリックス78、又はヘリックス101を共有結合させる実施形態3~6のいずれかの改変リボソーム。
実施形態8. 連結部分が、16S rRNAの順列置換バリアントのヘリックス11、ヘリックス26、ヘリックス33、又はヘリックス44を共有結合させる実施形態4~7のいずれかの改変リボソーム。
実施形態9. 大サブユニットが、L1ポリヌクレオチドドメイン(例えば、23S rRNAの断片)、L2ポリヌクレオチドドメイン(例えば、23S rRNAの断片)、及びCポリヌクレオチドドメインを含む、又はそれらから本質的になり、そこにおいて、L1ドメインの後ろに、5’から3’に、Cドメイン及びL2ドメインが順に続く実施形態1~8のいずれかの改変リボソーム。
実施形態10. 5’から3’に、L1ドメインが続くL2ドメインを含む、又はそれから本質的になるポリヌクレオチドが、23S rRNA又は23S rRNAの断片に実質的に同一である実施形態9の改変リボソーム。
実施形態11. 5’から3’に、L1ドメインが続くL2ドメインを含む、又はそれから本質的になるポリヌクレオチドが、23S rRNA若しくは23S rRNAの断片に少なくとも95%同一である(又は23S rRNA若しくは23S rRNAの断片に少なくとも96%、97%、98%、若しくは99%同一である)実施形態9又は10の改変リボソーム。
実施形態12. Cドメインが、1~200ヌクレオチドの範囲の長さを有するポリヌクレオチドを含む実施形態9~11のいずれかの改変リボソーム。
実施形態13. CドメインがGAGAポリヌクレオチドを含む実施形態9~12のいずれかの改変リボソーム。
実施形態14. 小サブユニットが、S1ポリヌクレオチドドメイン(例えば、16S rRNAの断片)及びS2ポリヌクレオチドドメイン(例えば、16S rRNAの断片)を含み、又はそれらから本質的になり、S1ドメインの後ろに、5’から3’に、S2ドメインが順に続く実施形態1~13のいずれかの改変リボソーム。
実施形態15. 5’から3’に、S2ドメインが続くS1ドメインを含む、又はそれから本質的になるポリヌクレオチドが、16S rRNA(又は16S rRNAの断片)に実質的に同一である実施形態14の改変リボソーム。
実施形態16. 5’から3’に、S2ドメインが続くS1ドメインを含む、又はそれから本質的になるポリヌクレオチドが、16S rRNAに少なくとも95%同一である(又は23S rRNA若しくは23S rRNAの断片に少なくとも96%、97%、98%、若しくは99%同一である)実施形態14又は15の改変リボソーム。
実施形態17. 連結部分が、T1ポリヌクレオチドドメイン及びT2ポリヌクレオチドドメインを含む実施形態1~16のいずれかの改変リボソーム。
実施形態18. T1ドメインがS1ドメイン及びL1ドメインを連結し、且つそこにおいて、S1ドメインの後ろに、5’から3’に、T1ドメイン及びL1ドメインが順に続く実施形態17の改変リボソーム。
実施形態19. T1ドメインが、5~200ヌクレオチドの範囲の長さを有するポリヌクレオチドを含む実施形態17又は18の改変リボソーム。
実施形態20. T1ドメイが、7~20ヌクレオチドの範囲の長さを有するポリヌクレオチドを含む実施形態19の改変リボソーム。
実施形態21. T1ドメインがポリアデニンポリヌクレオチドを含む実施形態17~20のいずれかの改変リボソーム。
実施形態22. T1ドメインが、7~12アデニンヌクレオチドの長さを有するポリアデニンポリヌクレオチドを含む実施形態17~20のいずれかの改変リボソーム。
実施形態23. T2ドメインがS2ドメイン及びL2ドメインを連結し、且つそこにおいて、L2ドメインの後ろに、5’から3’に、T2ドメイン及びS2ドメインが順に続く実施形態17~22のいずれかの改変リボソーム。
実施形態24. T2ドメインが、5~200ヌクレオチドの範囲の長さを有するポリヌクレオチドを含む実施形態17~24のいずれかの改変リボソーム。
実施形態25. T2ドメインは、7~20ヌクレオチドの範囲の長さを有するポリヌクレオチドを含む実施形態17、23、又は24の改変リボソーム。
実施形態26. T2ドメインがポリアデニンポリヌクレオチドを含む実施形態17~25のいずれかの改変リボソーム。
実施形態27. T2ドメインが、7~12アデニンヌクレオチドの長さを有するポリアデニンポリヌクレオチドを含む実施形態17~26のいずれかの改変リボソーム。
実施形態28. リボソームが、5’から3’に、T1ドメイン、L1ドメイン、Cドメイン、L2ドメイン、T2ドメイン、及びS2ドメインが順に続くS1ドメインを含む実施形態17~27のいずれかの改変リボソーム。
実施形態29. リボソームが、5’から3’に、T1ドメイン、L1ドメイン、Cドメイン、L2ドメイン、T2ドメイン、及びS2ドメインが順に続くS1ドメインから本質的になるポリヌクレオチドを含む実施形態17~28のいずれかの改変リボソーム。
実施形態30. 改変リボソームが変異を含む実施形態1~29のいずれかの改変リボソーム。
実施形態31. 変異が機能変換型変異である実施形態30の改変リボソーム。
実施形態32. 機能変換型変異がペプチジルトランスフェラーゼ中心にある実施形態31の改変リボソーム。
実施形態33. 機能変換型変異がペプチジルトランスフェラーゼ中心のAサイトである実施形態31の改変リボソーム。
実施形態34. 機能変換型変異が、改変リボソームの出口トンネル、トランスロコンとの相互作用部位、又は翻訳を容易にする補助タンパク質との相互作用部位の1つ又は複数にある実施形態31の改変リボソーム。
実施形態35. 改変リボソームが抗生物質耐性変異を有する実施形態1~35のいずれかの改変リボソーム。
実施形態36. ポリヌクレオチドであって、実施形態1~35のいずれかの改変リボソームのrRNAをコードするポリヌクレオチド。
実施形態37. ポリヌクレオチドがベクターである実施形態36のポリヌクレオチド。
実施形態38. ポリヌクレオチドが、改変リボソームによって発現する遺伝子をさらに含む実施形態36又は37のポリヌクレオチド。
実施形態39. 遺伝子がレポーター遺伝子である実施形態38のポリヌクレオチド。
実施形態40. レポーター遺伝子が緑色蛍光タンパク質遺伝子である実施形態39のポリヌクレオチド。
実施形態41. 改変リボソームが改変アンチシャイン・ダルガノ配列を含み、且つ遺伝子が改変リボソームに相補的なシャイン・ダルガノ配列を含む実施形態36~40のいずれかのポリヌクレオチド。
実施形態42. 遺伝子がコドンを含み、かつコドンが非天然アミノ酸をコードする実施形態36~41のいずれかのポリヌクレオチド。
実施形態43. 改変リボソームを調製する方法であって、実施形態36~42のいずれかのポリヌクレオチドを発現させることを含む方法。
実施形態44. 変異体を選択することをさらに含む実施形態43の方法。
実施形態45. 選択ステップがネガティブ選択ステップ、ポジティブ選択ステップ、又はネガティブとポジティブ両方の選択ステップを含む実施形態44の方法。
実施形態46. 改変細胞であって、(i)実施形態36~42のいずれかのポリヌクレオチド、(ii)実施形態1~35のいずれか改変リボソーム、又は(i)と(ii)の両方を含む改変細胞。
実施形態47. 改変細胞であって、第1のタンパク質翻訳機構及び第2のタンパク質翻訳機構を含み、a.そこにおいて、第1のタンパク質翻訳機構はリボソームを含み、そこにおいてリボソームが大サブユニットと小サブユニットの間の連結部分を欠、且つb.そこにおいて第2のタンパク質翻訳機構は実施形態1~35のいずれかの改変リボソームを含む改変細胞。
実施形態48. 配列規定ポリマーを調製する方法であって、(a)実施形態1~35のいずれかの改変リボソームを用意すること、及び(b)配列規定ポリマーをコードするmRNA又はDNAテンプレートを用意すること含む方法。
実施形態49. 配列規定ポリマーがインビトロで調製される実施形態48の方法。
実施形態50. リボソーム欠失細胞抽出物又は精製翻訳系を用意することをさらに含む実施形態49の方法。
実施形態51. リボソーム欠失細胞抽出物が、指数増殖期の中~後期の細胞培養物又は採取時にO.D.600~3.0を有する培養物を調製するS150抽出物を含む実施形態50の方法。
実施形態52. 配列規定ポリマーがインビボで調製される実施形態48の方法。
実施形態53. 配列規定ポリマーが実施形態46又は47のいずれかの細胞で調製される実施形態48又は52の方法。
実施形態54. mRNA又はDNAが改変シャイン・ダルガノ配列をコードし、且つ改変リボソームが、改変シャイン・ダルガノ配列に相補的なアンチシャイン・ダルガノ配列を含む実施形態48~53のいずれかの方法。
実施形態55. 配列規定ポリマーがアミノ酸を含む実施形態48~54のいずれかの方法。
実施形態56. アミノ酸が天然アミノ酸である実施形態55の方法。
実施形態57. アミノ酸が非天然アミノ酸である実施形態55の方法。
実施形態58. 第1のタンパク質翻訳機構のリボソームは改変アンチシャイン・ダルガノ配列を含み、且つ第2のタンパク質翻訳系のリボソームが、改変されていない(例えば、野生型)アンチシャイン・ダルガノ配列を含む実施形態47の改変細胞。
実施形態59. 改変アンチシャイン・ダルガノ配列を含む非テザーリボソームをさらに含む実施形態48~53のいずれか1つの方法。
実施形態60. mRNA又はDNAが改変シャイン・ダルガノ配列をコードし、且つ非テザー(untethered)リボソームが、改変シャイン・ダルガノ配列に相補的なアンチシャイン・ダルガノ配列を含む実施形態59の方法。
実施形態61. 配列規定ポリマーが天然又は非天然アミノ酸を含む実施形態60の方法。
実施形態62. 2つ以上のタンパク質翻訳機構を含む改変細胞であって、そこにおいて、(a)第1の機構が、mRNAが天然遺伝コードに従って、テザー、又はステープルリボソームによって翻訳される天然翻訳機構であり、(b)第2の機構が、宿主の代謝負荷を調節する、又は直交性コドンを含む直交性mRNAがこの直交性リボソームによって翻訳される解離可能なリボソームに由来する人工的な機構である改変細胞。
実施形態63. 2つ以上のタンパク質翻訳機構を含む改変細胞であって、そこにおいて、(a)第1の機構が、細胞の生存(life)を持続させるmRNAがテザー、又はステープルリボソームによって翻訳される天然翻訳機構であり、(b)第2の機構が、直交機能(orthogonal function)を実行する解離可能なリボソームに由来する人工的な機構である改変細胞。
実施形態64. 2つ以上のタンパク質翻訳機構を含む改変細胞であって、直交性の解離可能なリボソームが、タンパク質発現の状況において、直交性テザーリボソームより優れる改変細胞。
実施形態65. o-30Sだけでなく、遊離50Sサブユニットも操作されて、新しい機能を実現する改変細胞。
実施形態66. o-30Sだけでなく、遊離50Sサブユニットも操作されて、細胞プロテオームの発現を妨害することなく新しい機能を実現する改変細胞。
実施形態67. o-30Sだけでなく、遊離50Sサブユニットも操作されて機能獲得型のリボソーム変異を実現する改変細胞。
実施形態68. o-30Sだけでなく、遊離50Sサブユニットも操作されて機能獲得型のリボソーム変異を実現する改変細胞であって、そこにおいて、それらの変異が問題のあるポリマー配列の翻訳を特異的に克服する改版細胞。
実施形態69. 第1のタンパク質翻訳機構及び第2のタンパク質翻訳機構を含む改変細胞であって、第1のタンパク質翻訳機構が第1の改変リボソームを含み、第1の改変リボソームが、i)リボソームRNA(rRNA)及びタンパク質を含む小サブユニット、ii)リボソームRNA(rRNA)及びタンパク質を含む大サブユニット、並びにiii)連結部分を含み、連結部分がポリヌクレオチド配列含み、且つ小サブユニットのrRNAを大サブユニットのrRNAと繋ぎ止め、第2のタンパク質翻訳機構が第2の改変リボソームを含み、第2の改変リボソームが、i)rRNA及びタンパク質を含む小サブユニット、ii)rRNA及びタンパク質を含む大サブユニットを含み、且つiii)そこにおいて、第2の改変リボソームが大サブユニットと小サブユニットの間の連結部分を欠き、且つそこにおいて、第2の改変リボソームの小サブユニットが改変アンチシャイン・ダルガノ配列を含んで、内在性細胞mRNAと異なる相補的な且つ/若しくは同族のシャイン・ダルガノ配列を有するテンプレートの翻訳を可能にし、且つ/又は第2の改変リボソームが1つ又は複数の機能変換型変異を含み、機能変換型変異がアンチシャイン・ダルガノ配列にない改変細胞。
実施形態70. 第1及び第2のタンパク質翻訳機構が配列規定ポリマーの翻訳を補助することができる実施形態69の改変細胞。
実施形態71. 第1のタンパク質翻訳機構が、ネイティブの内在性RNAの翻訳を補助することができる実施形態69~70のいずれか1つの改変細胞。
実施形態72. 第2のタンパク質翻訳機構が、非ネイティブの外因性RNAの翻訳を補助することができる実施形態69~71のいずれか1つの改変細胞。
実施形態73. 第2の改変リボソームの小サブユニットが、3’-GGUGUU-5’、3’-UGGUGU-5’、3’-GGUGUC-5’、3’-GUUUAG-5’、3’-UGGAAU-5’、3’-GGAUCU-5’、3’-UGGAUC-5’、3’-UGGUAA-5’、及び3’-UGGAUC-5’からなる群より選択される改変アンチシャイン・ダルガノ配列を含む実施形態69~72のいずれか1つの改変細胞。
実施形態74. 第2の改変リボソームが、1つ又は複数の:a)ペプチジルトランスフェラーゼ中心(PTC)、b)新生ペプチド出口トンネル(NPET)、c)伸長因子との相互作用部位、d)tRNA結合部位、e)シャペロン結合部位、f)新生鎖修飾酵素結合部位、g)GTPアーゼ中心において、機能変換型変異を含む実施形態69~74のいずれか1つの改変細胞。
実施形態75. 第2の改変リボソームの大サブユニットが、1つ又は複数の次の23S rRNAの残基:G2061、C2452、U2585、G2251、G2252、A2057、A2058、C2611、A2062、A2503、U2609、G2454、及びG2455において機能変換型変異を含む実施形態69~74のいずれか1つの改変細胞。
実施形態76. 第1、第2、又は第1と第2両方の改変リボソームが、抗生物質耐性変異を含む実施形態69~75のいずれか1つの改変細胞。
実施形態77. 第1の改変リボソームの大サブユニットが、23S rRNAの順列置換バリアント若しくは変異体を含み、且つ/又は小サブユニットが、16S rRNAの順列置換バリアント若しくは変異体を含む実施形態69~76のいずれか1つの改変細胞。
実施形態78. 連結部分が、ヘリックス10、ヘリックス38、ヘリックス42、ヘリックス54、ヘリックス58、ヘリックス63、ヘリックス78、ヘリックス101からなる群より選択される大サブユニットのヘリックスを、ヘリックス11、ヘリックス26、ヘリックス33、及びヘリックス44からなる群より選択される小サブユニットのヘリックスに共有結合させる実施形態69~77のいずれか1つの改変細胞。
実施形態79. 配列規定アミノ酸ポリマーを調製する方法であって、(a)1つ又は複数の:(i)実施形態69~78のいずれか1つの細胞、(ii)実施形態69~78のいずれか1つの細胞に由来する細胞抽出物、(iii)実施形態69~78のいずれか1つの細胞に由来する精製翻訳系を用意すること、(b)配列規定ポリマーをコードするmRNAを細胞又は細胞抽出物に提供することを含む方法。
実施形態80. 配列規定アミノ酸ポリマーがインビボで調製される実施形態79の方法。
実施形態81. 配列規定アミノ酸ポリマーがインビトロで調製される実施形態79の方法。
実施形態82. 配列規定アミノ酸ポリマーが1つ又は複数の非天然アミノ酸を含む実施形態79~81のいずれか1つの方法。
以下の実施例は例示的なものであり、クレームされた主題を限定するように解釈すべきではない。
実施例1.細菌細胞におけるタンパク質合成のための完全直交系の開発及び試験
A.抄録
リボソームは、タンパク質原性アミノ酸から遺伝的にコードされたポリペプチドを合成する。リボソーム工学(Ribosome engineering)は、タンパク質合成装置の触媒能を拡大し、その起源、進化、及び機能を解明するための強力な方法となってきている。改変リボソームの性質が通常のタンパク質合成に対して有害である可能性があるので、遺伝子工学によって改変された(designer)リボソームは、細胞タンパク質を合成する翻訳機構から機能的に分離している必要がある。この問題に対する最初の解決策は、所望のタンパク質を翻訳する一方で、細胞プロテオームの翻訳からは外れうるテザーサブユニットをもつ改変リボソームであるRibo-Tによって提供されている。ここで本発明者らは、2つの直交翻訳系をもつ改変細胞の概念的に異なる設計を提供する。それにより、細胞タンパク質がRibo-Tによって翻訳され、一方でネイティブリボソームは、両サブユニットが特定の種類のmRNAの翻訳に関与する分離したタンパク質合成機械装置として作動する。本発明者らは、特殊化リボソームの両サブユニットが、Ribo-Tからの自律性を保ち、細胞プロテオームの翻訳から外れ、且つしたがって新しい機能に向けて組換え操作できうることを示す。本発明者らは、ペプチジルトランスフェラーゼ中心のすべてのrRNAヌクレオチドにおいて変異(variations)をもつ変異体の包括的なコレクションを作り、且つリボソームがアレストペプチドによる翻訳終結の遮断を克服できる機能獲得型変異を単離することによって、この系の有用性を示す。
B.序論
リボソームは、タンパク質合成の際に、独特で(distinct)、複雑で、且つ高度に協調した機能を発揮する。リボソームは小サブユニットと大サブユニットの2つから構成され、細菌ではそれぞれ30Sと50Sである(図1a)。30Sサブユニットは、mRNAの開始コドン近くのシャイン・ダルガルノ配列(SD)とその16S rRNAの3’末端のアンチシャイン・ダルガルノ配列(ASD)との間の相補性を用いて翻訳の開始を進める1。30Sサブユニットは、タンパク質合成の伸長段階ではコドン-アンチコドン相互作用を維持することによって解読機能を発揮し、一方で終結では放出因子による終止コドンの認識を促す。50Sサブユニットは、ペプチジルトランスフェラーゼ中心(PTC)の場所を提供し(hosts)、ここでアミノ酸のポリペプチドへの重合が行われ、終結段階ではペプチドの遊離が触媒される。伸びているアミノ酸鎖は、PTCから新生ペプチド出口トンネル(NPET)に進み、リボソームから外に出ていく2、3
リボソームは、天然の基質(mRNA、tRNA、タンパク質原性アミノ酸)を用いて作動し、遺伝的にコードされたタンパク質を合成できるように進化してきた。それでもなお、分子工学によってその合成能が拡張されて、代替的な遺伝コードの使用、より多様なアミノ酸の重合を可能にする、又はさらに非タンパク質性ポリマーのプログラム可能な合成を実行する可能性がある4。リボソーム工学はまた、タンパク質合成装置の起源、進化、機能の解明に利用できる可能性がある。しかし、このような試みはすべて、リボソームの本体ある性質を変える必要があり5、必然的に細胞タンパク質を合成するリボソームの能力を低下させる、又は消滅さえさせる6、7。この問題に対する興味深い解決策は、無細胞翻訳系によって提供されうるが8、効率と拡張性の問題から、現在、それらの適用には限界がある。
リボソーム工学が苦慮している状態(predicament)は、細胞内に、細胞プロテオームの生成に関与せず、且つ1つ又は数種の特定のmRNAのみの翻訳専用に特化した直交タンパク質合成装置を作り出すことによって克服することができる9。16S rRNAのASDを変異させ、且つ相補的なSD配列をmRNAに導入することによって、小サブユニットの一部を同族mRNA10、11のみの翻訳に導くことが可能となり、それはリボソームの解読能を拡張するために活用されてきた戦略である12。しかし、このセットアップの直交性は小サブユニットのみに限定される。その理由は、複数回の翻訳における大リボソームサブユニットと小リボソームサブユニットの結合の確率的な性質に起因して、野生型(wt)と直交性30Sサブユニットの両方が50Sサブユニットの同じプールを共有するからである。直交性50Sサブユニットを創ることができないことから、触媒能が変更又は拡張された翻訳装置を設計するための最も重要な部位であるPTC及びNPETを改造する取り組みは限られてきた。最初の完全直交翻訳系を組換え操作することが、テザーサブユニットをもつリボソームRibo-T13の出現により可能になった。Ribo-T及びそれ以降の類似した設計14-16では、円順列置換23S rRNAが16S rRNAに埋め込まれ、サブユニットが2つのRNAリンカーで繋ぎ止められたリボソームが得られる(図1a)。改変ASDをもつた直交性Ribo-T(oRibo-T)では、Ribo-Tの小サブユニットと大サブユニットが分離できないので、両サブユニットが専ら同族のmRNAを翻訳することに関与し、且つoRibo-Tはしたがって細胞タンパク質を翻訳する野生型リボソームとは独立して機能する(図1b)。oRibo-Tを活用して(With the help of)、野生型リボソームにとって問題のあるアミノ酸配列の重合を容易にする特定のPTC変異を選択することができた13、15。しかし、完全な直交性を達成する一方で、Ribo-Tの通常とは異なる(unusual)デザインはその機能を制限する。Ribo-Tは、解離可能なリボソームの半分の速度でしかタンパク質を翻訳しない13。また、野生型リボソームと比較して、開始コドンからの離れるのが遅い17。さらに、「野生型」リボソームのバイオジェネシスでさえ、かなり遅く、且つ効率が悪く17、且つリボソームの機能中心がさらなる変更を受けた場合、アセンブリに関する問題はさらに悪化する可能性がある7。本発明者らは、詳しく特徴付けをしていないものの、「ステープル(stapled)」リボソームでも同様の課題を予想する。まとめると、これらの要因はすべて、Ribo-T、又はいずれかのテザーリボソームを、さらなる工学的な取り組みに直接使用することを難しくしている。
C.細菌細胞におけるタンパク質合成に向けた「反転(flipped)」直交系の開発と試験
機能的に独立した2つの翻訳機構をもつ細胞を設計するオリジナルのoRibo-Tベースの方法の欠点を克服するために、今般本発明者らは、特殊なmRNAのみの翻訳に特化した、解離可能であり、さらには完全に分離したリボソームを利用するインビボでの系の概念的に新しい設計を作り出した。Ribo-Tと及び解離可能なリボソームの役割を「反転(flipping)」させることで、本発明者らは、プロテオームの翻訳がRibo-Tによって行われ、一方で解離可能な直交性30S(o-30S)サブユニット及び野生型50Sサブユニットから構成されるリボソームは完全直交翻訳機械装置として機能する細菌細胞を設計した(図1c)。本発明者らが、OSYRIS(分離サブユニットをもつリボソームに基づいた直交翻訳系(Orthogonal translation SYstem based on Ribosomes with Isolated Subunits))と名付けた、結果として得られたセットアップでは、Ribo-Tが繋ぎ止められているという性質により、解離可能なリボソームのo-30S又は50Sのいずれとも結合することができないので、完全な直交性が達成される。したがって、OSYRIS細胞では、物理的に連結していないo-30Sと50Sのリボソームサブユニットは、連結していないにもかかわらず、互いに相互作用し、且つ完全直交性リボソーム(o-リボソーム)として機能することを強いられる。結果として、o-30Sだけでなく、遊離50Sサブユニットもまた、細胞プロテオーム(図1c)の発現を妨害することなく新しい機能を実現するように設計することができる。
系の構成要素(図5)は、染色体rrn対立遺伝子18(図6)を欠く大腸菌株でアセンブリされた。得られたOSYRIS細胞では、最適化されたpRibo-Ttプラスミドから、改良された16S-23Sテザー(tethers)16をもつRibo-T rRNAが発現する。別のプラスミドpoRbsは解離可能なo-リボソームのrRNA遺伝子をもち、その16S rRNA遺伝子は改変ASDをもつ(図5)。これら2つのプラスミドで形質転換された細胞では、o-リボソームは全リボソーム集団の~15%を占める(図2a、b及び図7)。o-リボソームASDのレポーター遺伝子と同族のSDをもつ特化したレポーター遺伝子(gfp、rfp又はluc)が、第3のプラスミド(poGFP、poRFP/oGFP又はpoLuc)に導入される(本発明者らは、これらの直交性レポーターをo-レポーターと呼ぶことになる)(図5)。
OSYRIS細胞におけるo-レポーターの発現はo-リボソームに依存し、その非存在下において、o-mRNAによってコードされるレポータータンパク質(GFP、RFP又はルシフェラーゼ)は低レベルで産生され、一方では解離可能なo-リボソームの存在はo-レポーターの発現を大きく刺激する(図2c、d及び図8)。したがって、以前の研究11、16において細胞mRNAの翻訳から外れていることが確認されているo-30Sサブユニットは、OSYRISのo-mRNAの翻訳を効率的に進める。注目すべきことに、解離可能なo-リボソームは、同等のベクターで同じ宿主(大腸菌、BL21)に導入したとき、o-レポーター(reproter)の発現においてo-Ribo-Tより優れていた
さらに、o-リボソームが低コピー数プラスミドから発現するOSYRIS細胞におけるo-GFPレポーターの相対的な発現は、高コピー数プラスミドからo-Ribo-Tを発現する細胞(図2d、図8、濃い(dark)バー)と比較して高い。
OSYRIS細胞の解離可能なo-リボソームの小サブユニットのみ、又は小サブユニットと大サブユニットの両方が、Ribo-Tから機能的に分離されたままであるかどうかを調べるために、本発明者らは、抗生物質エリスロマイシン(Ery)に対する耐性を付与する、Ribo-Tに存在するA2058G変異13を利用した。もし、Ery感受性である遊離50Sサブユニットが、プロテオームを翻訳する際に何らかの形でRibo-Tの小サブユニットと協力しうるなら、Eryはタンパク質合成全体を阻害し、且つ細胞増殖を妨害するであろう。しかし、OSYRIS細胞は、試験した最高濃度の抗生物質(1mg/ml)でも増殖を続け、解離可能な50Sサブユニット及びRibo-Tの機能上の自律性を示している(図11、各グループの2番目のバーのセット)。対照的に、o-GFPレポーターの発現は培地中のEry濃度の増加とともに徐々に減少した(図3a)。この結果は、o-レポーターの翻訳が、o-30S/Ribo-Tハイブリッドとは対照的に、解離可能なo-30Sと50Sサブユニットから構成されるリボソームによって主に進められることを示している(図3a)。したがって、o-30Sサブユニットも50SサブユニットもRibo-Tと相互作用せず、且つ両サブユニットは、それらの間に物理的な連結がないにもかかわらず、互いに機能的に専用の状態のまま(remain functionally dedicated)である。
OSYRIS細胞の解離可能50Sサブユニットの直交性に関するより厳密な証明は、野生型大腸菌細胞において優性致死的であることが知られているその23S rRNAに変異を導入することによって得られた20、21。それらの変異のうちの2つ、A2451C及びA2602Uは、PTC活性部位の重要なヌクレオチドを変化させ、一方で変異G2553Cは、ペプチド結合形成のためのAサイトアミノアシル-tRNAの適切な配置に必要な必須のrRNA-tRNA相互作用を妨げる22、23(図12a)。もし、変異体の解離可能な50Sサブユニットが主にo-30Sサブユニットと相互作用するならば、o-リボソームは通常の翻訳から排除されるので、OSYRIS細胞の生存は損なわれないはずである。逆に、遊離50SサブユニットがRibo-Tと結合し、且つプロテオームの翻訳に関与するならば、優性致死的な23S rRNA変異はOSYRIS細胞の増殖を妨げる、又は著しく損なうことになる。o-30Sを欠く細胞で変異体50Sサブユニットを発現させる試み(野生型16S rRNAとともに変異体23S rRNAをコードするpRbsプラスミドでRibo-T細胞を形質転換することによる)では、形質転換体は得られず、23S rRNA変異の優性致死性が確認された(図3b及び図12b、c)。対照的に、OSYRIS細胞において直交性16S rRNAをもつプラスミドに変異体23S rRNA遺伝子を導入すると、多くの形質転換体が出現した(図3b及び図12b、c)。形質転換細胞の培養物から単離されたrRNAの分析はから、変異体23S rRNAを含有する遊離50Sサブユニットのかなり高い発現レベルが明らかなった(図3b、図12d)。これらの結果は全体として、解離可能な大リボソームサブユニットがRibo-Tから機能的に分離されたままであることを明らかに示す。これらの結果は、解離可能な大リボソームサブユニットがRibo-Tから機能的に分離されたままであることを明らかに示す。
まとめると、o-レポーターの発現及び優性致死変異に対する耐性の結果は、OSYRIS細胞では、解離可能なo-リボソームはo-mRNAを翻訳するが、プロテオームの翻訳には大きく寄与しないことを示す。したがって、OSYRIS細胞の解離可能なo-リボソームの両サブユニットは、生体分子工学(biomolecular engineering)に適している。
OSYRIS細胞の解離可能なリボソームの直交性を確立したので、本発明者らは、リボソームが通常では困難なタスク(problematic task)を実行できるようにすると思われる、大サブユニットのrRNAの変異を選択する系の可能性を試験するために原理証明実験を行った。具体的には、本発明者らは、終止困難なタンパク質を効率的に放出できるリボソームの設計を目指した。一般的に、完全に合成されたポリペプチドの放出は、クラス1の放出因子の補助を受けたPTCによって触媒される非常に微妙な(nuanced)反応である24、25。大部分のタンパク質は終止コドンで効率的に放出されるが、他のものの終結はより問題になりうる26、27。大腸菌での非効率的な終結の極端な例は、調節蛋白質TnaCをコードするmRNAの終止コドンでのプログラムされた翻訳アレストで示される28-30。高濃度のトリプトファンにおいて、完全に翻訳されたTnaCの放出が阻害され、且つ結果として生じるtnaC終止コドンでのリボソームの停滞は、tnaオペロンの下流遺伝子の発現の活性化をもたらす31。tnaC終止コドンでの終結アレスト(termination arrest)は、新生TnaCと、NPET及びPTCの、rRNAヌクレオチドとの好ましくない相互作用によって媒介される30、31。TnaCによって媒介される終結アレストは、非効率的なタンパク質放出のパラダイムを表し、且つ、例えば非カノニカルアミノ酸をもつ生物工学的に改変されたポリペプチドの発現を抑制しうる問題の1つを示している。
TnaCの非効率的な終結を緩和しうる変異を特定するために、本発明者らはTnaCをコードする配列をgfp遺伝子の末端に付加したレポーターを構築した(図4a)。予想通り、GFP-TnaCキメラのインビボ及びインビトロでの発現は高濃度のトリプトファンにおいて阻害された(図4b、図13)。終結アレストを緩和することが知られているW12R変異28を、TnaCをコードするセグメントに導入すると、トリプトファンの存在下でレポーター発現が有意に刺激された(図4b、図13)。
次いで、本発明者らは、以下の変更を含んだpoRbsプラスミドの120個の単一塩基23S rRNA変異体の包括的なライブラリー(図5、図17の表)を作成した。i)ペプチジル転移反応に関与する受容体アミノ酸の攻撃アミン(attacking amine)の半径10Å以内に位置するPTC活性部位の9つのrRNA残基のすべて、ii)第2の殻のヌクレオチドの41個(PTCから半径25Å以内のもの)、iii)P-サイトtRNA及びA-サイトtRNAの受容体末端の位置調整に関与する、23S rRNAのP-ループ及びA-ループの6残基(図4c、d)。注目すべきことに、OSYRIS細胞がもつライブラリーに含まれた個々の変異の大部分は、野生型大腸菌細胞において有害又は致死的である20、21ことが報告されており、且つしたがってOSYRIS細胞の解離可能なリボソームの直交性のみ基づいて容易に試験することができた。
本発明者らは、停滞バイアス(stalling bypass)(SB)スコアを推定することによって個々の変異体がGFP-TnaCポリペプチドを成功裏に終止させる能力を特徴付けた。SBスコアは、効率的に終止するGFP-TnaC(W12R)バリアント28と比較した、終止しにくいGFP-TnaCレポーターの相対的な発現を反映する。さらに、GFP-TnaC(W12R)コンストラクトの発現レベルを用いて、変異体リボソームの通常の翻訳活性に対するPTC変異の影響を評価した。際だったことに、PTC rRNA残基に変化をもつ数多くの変異体は、野生型50SサブユニットをもつOSYRIS細胞よりも有意に高いバイパススコアを示した(図4e並びに図14及び15)。これらのうち、19個の変異体は高い翻訳活性(>60%の野生型)と、野生型コントロールに対して有意に増加したSBスコア(>0.3対野生型コントロールの0.17)(図4e、図17の表)を兼ね備えた。特定された変異には、PTC活性サイト(G2061、C2452、U2585)、Pループ(G2251、G2252)及び2番目のPTC殻に位置する23S rRNA残基にあり、NPET入口における残基(A2057、A2058、C2611、A2062、A2503、U2609)並びにPTCのC2452上のA2453スタックを介した2つに残基(G2454及びG2455)が含まれた(図4g)。このリスト内の非致死的変異のうちの2つ(U2609CとA2058U)は以前に報告されている29、31。それらの変異は、新たに単離された変異体はTnaCを介した終結アレストに関与するPTC残基を実際に明らかにし、特定された変異がTnaC終止コドンでのリボソームの停滞を克服するのに役立つことを確認する内部対照として機能した。
OSYRIS細胞が提供するユニークな機会は、解離可能な30S又は50Sサブユニットはショ糖勾配遠心法によってRibo-Tから分離できる13ので、たとえ致死的な突然変異をもっても個々のリボソームサブユニットを分離できる可能性である(図16a、b)。本発明者らは、この系の特徴を利用して、バイパススコア>0.37を示した致死変異U2500G、A2060C、A2450Uをもつ大リボソームサブユニットを調製し、それらを野生型(非直交性)30Sサブユニットと再結合させ、そしてその変異がtnaC ORF(図16c)の終止コドンでのリボソーム停滞を緩和するかどうかを無細胞翻訳系で調べた。本発明者らはさらに、SBスコアが0.35~0.55の数個の非致死的変異体(A2503G、A2062G、C2611G、C2611U)も試験した。インビボでのデータと一致して、試験した変異体リボソームはすべて、無細胞翻訳(図4g及び図16)中の野生型リボソームと比較して、tnaC終止コドンでの停滞の減少を示し、TnaCペプチドの翻訳をより効率的に終了させる能力が明らかになった。特定された終結アレスト-放出変異の位置は、ペプチジル-tRNAの配置の変化、又は変異体リボソームのPTCにおけるPサイト基質及び/若しくは放出因子のあまり厳密でない(less strict)位置調整のいずれかがTnaC放出を促進することを示唆している。ほぼ間違いなく、TnaCによって媒介される終結アレストを軽減する変異は、以前のoRibo-Tベースの方法13、15を使用して単離できる可能性がある。しかし、OSYRISの解離可能なo-リボソーム(図2d)と比較して、oRibo-Tによってもたらされるレポーターの発現レベルの低下は、我々のスクリーンにおいて課された(imposed in our screen)最小効率閾値を上回る変異体数を制限すると思われるので、OSYRISで特定された変異のいくつかは見逃される可能性が高いであろう。
本発明者らの原理証明実験は、O-リボソームの解離可能なサブユニットに互いに相互作用することを強いながら細胞増殖を保つRibo-Tの能力に基づくOSYRIS設計が、完全直交細胞翻訳系を作り出す実行可能な概念的に新しい方法を提示することを示した。Ribo-Tは細胞内プロテオーム全体を翻訳するのに充分に活性である13、17ため、OSYRISの設計が可能であった。しかし、Ribo-Tによって進められる翻訳は遅く、Ribo-Tアセンブリは非効率的であり、これはOSYRIS細胞の遅い増殖速度(BL21株の倍化時間τ~45分と比較して、96ウェルプレートにおいてτ~300分)に寄与する要因の1つである可能性が高い(図9a)。したがって、Ribo-Tの機能とアセンブリの最適化により、OSYRIS細胞の増殖速度が向上し、且つ直交系の汎用性がさらに拡大する可能性がある。3つのプラスミドのセットアップ(図5)は、OSYRISを高度にモジュール化し、且つそれにより、様々な用途に容易に調整できるようにする。原理的には、Ribo-T rRNA遺伝子を染色体に導入し、且つ直交rRNA遺伝子及び同じプラスミド上のレポーター遺伝子を組み合わせることによって、OSYRISはさらにシンプルなものになりうる。プラスミドの数を減らすことは、さらにOSYRIS細胞の増殖を促進しうる。プラスミドのコピー数又はプロモーター強度のいずれかを調節することによってOSYRIS細胞のo-リボソームの割合を増加させることは、系の性能を向上させ、且つ特定のニーズに合わせてその系を調整する別の方法でありうる。したがって、本発明者らの実験では、o-リボソームは単一のレポーター遺伝子のみの発現に関与していた一方で、o-リボソームの割合が適切にバランスされていれば、改変されたSDを具える数個の遺伝子が同時に翻訳される可能性があり、例えば、マルチサブユニットタンパク質複合体の直交発現の可能性が開かれた。
OSYRISの明らかに考えられる用途は、リボソームが識別するポリペプチド(バックボンド(backbond)改変D-アミノ酸又はβ-アミノ酸32など)に非カノニカルアミノ酸を組み込むことができるリボソームの設計である。リボソームの合成能力を拡張するには、特殊なアミノアシル化系から遺伝子工学によって改変された遺伝コードまで多くの要素が必要とされるが、OSYRIS細胞で働く完全直交性の解離可能なリボソームは、この目標の達成を加速させうる。重要なことに、OSYRISにより、翻訳装置の起源を解明するためのリボソームレトロエンジニアリング(retro-engineering)の採用から、非タンパク質性のポリマーのプログラム可能な合成のための新しい触媒機能の進化まで、他の多くの試みが可能になる。
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D.材料と方法
1.OSYRIS細胞のアセンブリ
a.プラスミド構築
OSYRISセットアップの作成及び最適化に使用したプラスミドを図5に示す。重要なプラスミドのヌクレオチド配列と特徴はソースデータファイル(Source data file)に示されている。
プラスミドはすべて、ギブソン・アセンブリ1を用いて構築し、プラスミドバックボーンはインバースPCR又は制限ヌクレアーゼ消化で調製し、且つクローン化したインサートはそれぞれのテンプレートからPCR増幅する、又はインテグレーテッドディーエヌエーテクノロジーズ社(Integrated DNA Technologies)によって化学的に合成された。Q5 High-Fidelity DNAポリメラーゼ(ニュー・イングランド・バイオラボ)を使用してPCR反応を行い、且つPCR産物をDNA Clean and Concentratorキット(Zymo Research)を使用して精製した。rRNAをコードするプラスミドのギブソン・アセンブリ反応物を大腸菌POP2136細胞(菌種はすべて図18の表に掲載)にエレクトロポレーションし、且つ形質転換体は、適切な抗生物質を補充したLBプレート上で回収した。プレートを30℃でインキュベートし、ラムダPLプロモーターによって制御されるrRNA遺伝子の発現を防いだ2。その他のプラスミドをすべて、必要に応じて100μg/mlのアンピシリン(Amp)、50μg/mlのカナマイシン(Kan)又は50μg/mlのスペクチノマイシン(Spc)を補充したLB培地で培養した大腸菌JM109株に形質転換し、且つ増やした。プラスミドをHigh Pure Plasmid Isolation Kit(ロッシュ)を使用して単離し、PCR及びキャピラリーシークエンスで確認し、且つOSYRIS細胞の改変に使用した。以下のセクションに、主要なプラスミドの構築について概説する。
i)pRibo-Ttプラスミド
エリスロマイシン耐性変異A2058GをもつpRibo-T v2.0プラスミド3のバックボーンをSgsI制限酵素で直鎖にし、且つ精製した。その転写がPtacプロモーター及びT1ターミネーターによって制御される一群の欠損tRNA遺伝子(tRNAGlu、tRNAAla、tRNAIle、tRNATrp及びtRNAAspをコードする)を、gBlock(インテグレーテッドディーエヌエーテクノロジー(Integrated DNA Technology))として合成し、且つプライマーNA1及びNA2を用いてPCR増幅した(プライマーはすべて、図19の表に掲載)。PCR反応を、Q5 High-Fidelity DNAポリメラーゼ(ニュー・イングランド・バイオラボ)を用いて製造元のプロトコールに従って以下の条件で触媒した。98℃、30秒、それに続く30サイクル(98℃、10秒;64℃、30秒;72℃、20秒)、それに続く72℃、2分間の最終インキュベーション。精製したPCR産物(20ng)を、SgsIで直鎖にしたpRibo-T v.2.0バックボーン(80ng)と、ギブソン・アセンブリ反応(1.7%PEG-800、3.1mM DTT、0.31mM β-ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド、62.5μM各dNTP、3.1mM MgCl2、31.3mM Tris/HCl、pH7.5、0.004U/μl T5エキソヌクレアーゼ(Epicentre)、4U/μl Taq DNAリガーゼ(ニュー・イングランド・バイオラボ)、0.025U/μl Phusion High Fidelity DNAポリメラーゼ(ニュー・イングランド・バイオラボ)中で混ぜた。50℃で1時間インキュベートした後、3μlの反応混合物をエレクトロコンピテントPOP2136大腸菌細胞に形質転換させた。細胞をLB/Amp寒天培地プレートにプレーティングした。形質転換体の個々のコロニーをひろい、LB/Amp培地で培養し、且つプラスミドを単離した。tRNAクラスターの存在は、プライマーNA3及びNA4を用いたPCR増幅並びに配列決定で確認した。
ii)poRBSプラスミド
ラムダPLプロモーター及びT1/T2ターミネーターの転写制御下にある直交性及び野生型rRNAオペロンを、プライマーNA5及びNA6を使用してpO2及びpAM552プラスミド4からそれぞれPCR増幅した。プラスミドpKD135からプライマーNA7及びNA8を使用してKanR遺伝子を増幅した。pCSacBプラスミド6からプライマーNA9及びNA10を使用してpSC101の複製起点を増幅した。PCR反応をDpnIで処理して親プラスミドのバックグラウンドを減少させた。PCR産物を精製し、電気泳動で確認し、且つギブソン・アセンブリ反応に(各40ng)混ぜた。50℃で1時間インキュベートした後、3μlの反応混合物をエレクトロコンピテントPOP2136大腸菌細胞に形質転換させた。細胞をLB/Kan寒天プレートにプレーティングした。37℃で24時間インキュベートした後、個々のコロニーをひろい、LB/Kan培地で培養し、且つプラスミドを分離し、且つ制限消化及び配列決定で確かめた。
iii)poGFPプラスミド
5’UTR、3’UTR、及びT1/T2ターミネーターをもつo-GFP遺伝子を、plpp5-oGFPプラスミド4からプライマーNA11及びNA12を使用してPCR増幅した。LuxRリプレッサー及びPLuxプロモーター7を、プライマーNA13及びNA14を使用してpJDO75プラスミド8からPCR増幅した。SpcRマーカー(aadA)を、プライマーNA15及びNA16を使用してptRNA67プラスミド6からPCR増幅した。p15Aの複製起点を、プライマーNA17及びNA18を使用してptRNA67プラスミドからPCR増幅された。プラスミドテンプレートを含むPCR反応物をDpnIで処理した。精製したPCR産物(各40ng)をギブソン・アセンブリ反応に混ぜた。50℃で1時間インキュベートした後、3μlの反応混合物をエレクトロコンピテントJM109大腸菌細胞(プロメガ)に形質転換させた。細胞をLB/Spc寒天プレートにプレーティングした。37℃で24時間インキュベートした後、個々のコロニーをひろい、LB/Spc培地で培養し、且つプラスミドを分離した。luxR遺伝子挿入の存在を、プライマーNA19及びNA20を使用してPCRで確認した。得られたプラスミドの制限酵素による消化により、そのサイズが予想されたものより~1kb大きいことが示された。それに続く制限酵素による解析及び配列決定により、luxR遺伝子が複製を経ていたことが示された(図5c)。この複製はo-gfpレポーターの発現に影響を与えないと予想される。
iv)poRFP/oGFPプラスミド
SpcRマーカー(aadA)及びp15A複製起点は、ptRNA67プラスミド6からで増幅した。PCR反応物をDpnIで処理した。plpp5-oGFPプラスミド4からPlpp5プロモーター、5’UTR、3’UTR、及びT1/T2ターミネーターをもつo-GFP遺伝子をPCR増幅した。精製したPCR産物(~40ngずつ)をギブソン・アセンブリ反応に混ぜた。50℃で1時間インキュベートした後、3μlの反応混合物をエレクトロコンピテントJM109大腸菌細胞(プロメガ)に形質転換させた。細胞をLB/Spc寒天プレートにプレーティングした。37℃で24時間インキュベートした後、個々のコロニーをひろい、LB/Spc培地で培養し、且つプラスミドを単離した。得られたプラスミドplpp5-oGFP-pA15-Specの構造を、制限消化及び配列決定で確かめた。プラスミドpRYG9から、PT5プロモーター及びT0転写ターミネーターを含むrfp遺伝子をPCR増幅した。直交性SD配列をPCRによって導入し、且つ得られたo-rfpコンストラクトをplpp5-oGFP-pA15-SpcプラスミドのユニークSphIサイトに挿入した。
v)poLucプラスミド
poGFPをベースにして、直交性ルシフェラーゼ遺伝子をもつプラスミドpoLucを構築した(図5c)。ホタルルシフェラーゼをコードする1653bpの遺伝子lucを、pBESTlucプラスミド(プロメガ)からプライマーNA21及びNA22を使用してPCR増幅した。得られたPCR産物及びpoGFPプラスミドを制限酵素BglII及びSalIで切り、且つライゲーションした。ライゲーション混合物を大腸菌JM109コンピテント細胞に形質転換させ、luc遺伝子陽性クローンをコロニーPCRによって特定し、クローン化したluc遺伝子の完全性を配列決定で確かめた。
vi)poGFP-TnaCプラスミド
レポーターpoGFP-TnaCプラスミド(野生型又はW12R変異体)を構築するために、poGFPプラスミド中のgfp-コーディング配列をキメラ野生型又は変異体GFP-TnaCタンパク質をコードする配列で置き換えた。直交性リボソーム結合部位及びGFP-TnaC又はGFP-TnaC(W12R)コーディング配列を含有するDNAインサートを、プライマーNA23及びNA24を使用して、インビトロ翻訳(後述)に使用されるテンプレートを使用してPCRによって作製した。精製後、制限酵素BglII及びSalIで切ったpoGFPプラスミドに、挿入物をギブソン・アセンブリで導入した。形質転換後、個々のコロニー中の正しい挿入物の存在を、プライマーNA25及びNA26を使用したコロニーPCR並びに、プラスミドの対応するセグメントの配列決定によって確認した。
b.改変Ribo-T発現細胞
染色体rRNAアレル10を欠き、且つRibo-T4を発現時に増殖を促す変異をybeX及びrpsA遺伝子にもつSQ171 FG細胞(図18の表)を宿主として使用した(図6)。将来、5-フルオロウラシルネガティブ選択を使用するかも知れないので、遺伝子uppを組換え操作(recombineering)によって不活性化した。
レシピエント細胞は最初、次の2つのプラスミドをもっていた:rrnBオペロン、カウンター選択性sacBマーカー、及びKanR遺伝子を含有するpCSacBプラスミド、並びに染色体rRNAオペロンの欠失中に除去された欠損tRNA遺伝子をもつptRNA67プラスミド6。細胞をエレクトロコンピテントにし、且つ次に50μlの細胞懸濁液を、POP2136細胞から単離した、Ribo-T rRNA遺伝子をもち、且つtRNA遺伝子を欠くpRibo-Ttプラスミド50ngで形質転換した(図5)。形質転換細胞は、1mlのSOC培地(2%トリプトン、0.5%酵母エキス、10mM NaCl、10mM MgSO4、10mM MgCl2、20mMグルコース)で希釈し、且つ37℃で6時間振盪しながらインキュベートした。培養物の150μlアリコートを、50μg/mlアンピシリン、25 μg/mlスペクチノマイシン及び0.25%スクロースを補充した新鮮なSOC培地で2mlに希釈し、且つ37℃で12時間絶えず振盪しながら培養した。細胞をスピンダウンし(1分、5000g)、且つ50μg/mlアンピシリン、25μg/mlスペクチノマイシン、5%スクロース、及び1mg/mlエリスロマイシン(Ery)を含有するLB/寒天プレートに播いた。プレートを37℃で48時間インキュベートした。pCSacBプラスミドが存在しないことを、50μg/mlカナマイシンを含む又は含まない、50μg/mlアンピシリン、25μg/mlスペクチノマイシンを補充したLB/寒天プレート上にコロニーをレプリカプレーティングすることによって試験した形質転換体のカナマイシンに対する感受性によって確かめた。次いで、形質転換体を50μg/mlアンピシリンと25μg/mlスペクチノマイシンを補充したLB培地で培養し、プラスミドを単離し、制限酵素による解析で確かめた。さらに、野生型rRNAが存在しないことを、RNeasy Mini Kit(キアゲン)を使用したトータルRNAの単離及びアガロースゲル電気泳動によって確認した。
c.ptRNA67プラスミドの除去
次いで、得られた形質転換体のptRNA67プラスミドを除去した。そのために、細胞を、100μg/mlのAmpを補充したLB培地で~100世代にわたって継代した。細胞希釈液をプレーティングした後、個々のクローンにptRNA67プラスミドが存在しないことを、Spcに対する感受性及び全プラスミド調製物の制限消化において目で見える量のptRNA67プラスミドのバンドがないことによって確かめた。
d.Ribo-T発現細胞中のrecA遺伝子の不活性化
poRbsを改変細胞に導入しようとする当初の試みは、poRbsとpRibo-Ttプラスミドの間の組換えから生じる異常なプラスミドの出現を頻繁にもたらした。そこで、その問題を回避するために、pRibo-Ttプラスミドを有する細胞においてrecA遺伝子を不活性化した(なお、recA遺伝子を不活性化してからptRNA67プラスミドを除去することは、Spc非存在下で細胞を長期間継代した後のプラスミド消失を防いだ)。
P1ファージ形質導入によってOSYRIS細胞のrecA遺伝子を不活性化するために、まず、pKD3プラスミド5からクロラムフェニコール(Chl)耐性カセットを使用した従来の組換え手順によってドナー株BW25113 recA::catを調製した。プライマーNA27及びNA28を使用して、そのカセットをPCR増幅した。PCR断片を、Redリコンビナーゼ発現プラスミドpDK46をもつBW25113株に形質転換させた。recA::cat株を選択及び検証し、且つpKD46プラスミドを除去した後、得られた株をファージ形質導入用のドナーとして使用した。50μg/mlアンピシリン及び15μg/mlクロラムフェニコールを補充したLB/寒天プレートに形質導入体を播く前の回復培養が1時間ではなく6時間であったこと以外は標準的なプロトコール11に従ってP1ファージ形質導入を行った。改変株の遺伝子型を図20の表に示す。
e.poRbsプラスミドの導入
次いで、SQ171 FG ΔrecA/pRibo-Tt株を、エレクトロポレーション及びAmpR/KanR/ChlR細胞の選択によって、poRbs(又は必要に応じてpRbs)プラスミドで形質転換した。標準的な形質転換プロトコールとの唯一の違いは、抗生物質を欠くSOC培地での形質転換体の回収を6時間前に延長し、且つ50μg/mlアンピシリン、25μg/mlカナマイシン、15μg/mlクロラムフェニコールを補充したLB/寒天プレート上で形質転換体を選択したことであった。形質転換体を、全プラスミドの制限酵素による解析及びアガロースゲル電気泳動によるrRNAの分析で確かめた。
f.レポータープラスミドの導入
レポータープラスミド(poGFP、poRFP/oGFP、poLuc、poGFP-TnaC)を、本質的には前項で記載の通り、エレクトロポレーションでSQ171 FG ΔrecA/pRibo-Tt/poRbs細胞への導入及びAmpr/Kanr/Chlr/Spcr細胞の選択によって導入した。
g.OSYRIS細胞のゲノム配列の検証
OSYRIS細胞構築の間、最初の宿主細胞は何度も継代され、且つ複数のステップでシングルコロニー精製を経て、自然変異の蓄積につながる可能性がある。そこで、完全にアセンブリされたOSYRIS細胞の全ゲノムの配列を決定した。得られた配列の解析により、いくつかの遺伝子に変異があることが示された(図20の表)。これらの変異の一部(例えば、遺伝子ptsI又はackA)は、いくつかの条件下で細胞の増殖に悪い影響を及ぼす可能性があり、且つゲノム工学(genome engineering)によって将来、修正される可能性がある。
h.直交性gfp遺伝子のインビボ発現のモニタリング
poRbs又はpRbsのいずれかのプラスミド(それぞれ直交性又は非直交性のリボソームを発現させる)及びpoGFPレポータープラスミドを有するOSYRIS細胞を、50μg/mlアンピシリン、25μg/mlカナマイシン、25μg/mlスペクチノマイシン及び15μg/mlクロラムフェニコールを補充したLB培地で37℃にて絶えず振盪して振って一晩培養した。同じ抗生物質を補充し、且つさらにレポーター遺伝子転写の誘導物質であるN-(β-ケトカプロイル)-L-ホモセリンラクトン(HSL)(サンタクルーズバイオテクノロジー)を1ng/ml含有する新鮮なLB培地に、培養物を1:40(体積/体積)で希釈した。培養物(120μl)を96ウェル平底ポリスチレン組織培養プレート(Costar)のウェルに入れ、プレートリーダー(TECAN Infinite M200 Pro)に置き、且つ37℃で絶えず直線(3mm)的に振盪しながらインキュベートした。細胞培養密度(A600)とGFP蛍光(励起波長485nm、発光波長520nm、ゲイン調整機能適用時の最適ゲイン30%RFU)を24~48時間の間にわたってモニタリングした。レポーターを欠く細胞の自発蛍光を、すべての記録値から差し引いた。
エリスロマイシン感受性試験の場合、一晩培養したものを、HSLのみ(最終濃度:0~16ng/ml)又は1ng/mlのHSL及び様々な濃度のエリスロマイシン(最終濃度:0~1mg/ml)にいずれかを補充した新鮮なLB培地に1:40で希釈した。細胞増殖及びGFP発現のモニタリングは、前述のパラグラフに記載の通りである。
OSYRIS細胞がpoRFP/poGFPレポーターをもつ場合、励起波長550nm、及び発光波長675nm、ゲイン調整機能適用時の最適ゲイン30%RFUを用いてRFPの発現をモニタリングした。
2.直交性ルシフェラーゼ遺伝子のインビボ発現
poLucプラスミドをもつOSYRIS細胞を、50μg/mlアンピシリン、25μg/mlカナマイシン、25μg/mlスペクチノマイシン及び15μg/mlクロラムフェニコールを補充したLB培地で24時間培養し、且つその後に同じ抗生物質及び1ng/mlのHSLを含有する新鮮な培地に1:40で希釈した。6時間後、A600が0.2の各培養物をスピンダウン(5分、5000g、4℃)し、細胞ペレットを瞬間凍結させた。ルシフェラーゼ活性は、Luciferase Assay System(プロメガ)を使用して製造元のプロトコールに従って測定した。具体的には、細胞ペレットを20℃の水浴で解凍し、25μlの10%(体積/体積)の二塩基性リン酸バッファー(1M K2HPO4 pH7.8、20mM EDTA)を補充したLBに再懸濁した。20μlの細胞懸濁液を、60μlの新鮮に調製した溶解ミックス(lysis mix)(25mMリン酸トリス pH7.8、2mMジチオトレイトール、2mM 1,2-ジアミノシクロヘキサン-N,N,N’,N’-四酢酸、10%グリセロール、1%トリトンX-100、1.25mg/mlリゾチーム、2.5mg/mlウシ血清アルブミン)と混ぜ、且つ室温で10分間溶解した。次いで、細胞溶解物の10μlアリコートを96ウェルブ黒色/透明(black/clear)底アッセイプレート(コーニング)のウェルに入れ、50μlのLuciferase Assay Reagent(プロメガ)を加え、且つ直ちにTECANマイクロプレートリーダーで蛍光の読み取りを得た。
3.oRibo-T又はoRbsによって進められるレポーター発現の比較
大腸菌BL21株をpoGFP又はpoLucプラスミドのいずれかで形質転換した。形質転換体を50μg/mlのSpcを補充したLB/寒天プレートで選択し、個々のコロニーから増殖させ、且つその後にエレクトロコンピテントにした。次いで、レポーター含有細胞を、poRibo-T(oRibo-T rRNAを発現するpBR322 oriベース、AmpRプラスミド)3、又はo-pAM552プラスミド(oRbs rRNAを発現するpBR322 oriベース、AmpR プラスミド)3で形質転換した。
o-gfp又はo-luc レポーターの発現は上記のように測定した。
4.含有される変異体rRNAの分析
直交性リボソームの23S rRNAにおける改変された変異の有無をプライマー伸長法で分析した。そのために、RNeasy Mini Kit(キアゲン)を使用してOSYRIS細胞からトータルRNAを単離した。各変異の分析用のプライマー並びにdNTP及びddNTPの組み合わせを図21の表に示す。各アッセイでは、90℃で1分間インキュベートし、且つその後に15分間かけて42℃まで冷やすことによって適切な5’[32P]-標識プライマー(0.5pmol)を1×ハイブリダイゼーションバッファー(50mM K-HEPES、pH7.0、100mM KCl)中で1μgのトータルRNAにアニーリングさせた。アニーリングしたプライマーは、0.25mMの適切なddNTP及び0.2mMのそれぞれの残りのdNTP(図21の表)の存在下で、2ユニットのAMV逆転写酵素(ロッシュ)を用いて42℃で20分間伸長した(最終反応量8μl)。120μlのストップバッファー(stop buffer)(84mM NaOAc、0.8mM EDTA、pH8.0、70%EtOH)を加え、-80℃で15分間冷却し、且つ15000g(4℃)で1時間遠心分離して核酸をペレット化することによって反応を停止した。上清を除去し、ペレットを乾燥させ、ホルムアミドローディング色素に溶かした。cDNA生成物を12%変性ポリアクリルアミドゲル中で分解し、且つホスフォイメージングで可視化した。トウプリントバンドの強度をImageJソフトウェア12を使用して測定した。バックグラウンドを差し引いた。
5.無細胞翻訳系におけるGFP-TnaC(野生型)又はGFP-TnaC(W12R)タンパク質の発現
T7RNAポリメラーゼプロモーター、バクテリオファージT7遺伝子10由来のリボソーム結合部位及びGFP-TnaC又はGFP-TnaC(W12R)コード配列(付録Iを参照)を含有するDNAテンプレートをクロスオーバーPCRで作製した。最初に、T7プロモーター及びgfpコード配列を、pY71-T7-GFPプラスミド13から、T7プロモーターフォワードプライマーNA29(図19の表)及び野生型tnaCに相補的なNA30又はtnaC遺伝子のW12R変異体に相補的なNA31のいずれかを使用してPCR増幅した。独立して、プラスミドpGF2500-tnaC-wt又はpGF2500-tnaC-mut14から、野生型についてはフォワードプライマーNA32、又はW12R変異体についてはNA33、及び共通のリバースプライマーNA34を使用して、3’非翻訳領域をもつ野生型又は変異体tnaC遺伝子の3’セグメントをPCR増幅した。
次いで、野生型又は変異体gfp-tnaCコンストラクトのいずれかに対応する2つのPCR産物を、400pg/μl(最終濃度)で合わせ、且つT7及びTnaC(rev)プライマーを使用して再増幅した。
gfp-tnaCテンプレートのインビトロ翻訳を、精製成分から構成される、Δリボソーム、ΔtRNA、Δアミノ酸無細胞翻訳系PURExpress(ニュー・イングランド・バイオラボ)で、少し改変をくわえて、15に記載のように行った。反応に、19種のアミノ酸混合物(最終濃度:各アミノ酸0.3mM)及び最終濃度50μMのL-トリプトファン(低トリプトファン条件での反応)又は5mM Trp(高トリプトファン条件での反応)を補充した。PCRで作製したDNAテンプレートを5ng/μlの最終濃度まで加えた。プレートリーダー(TECAN Infinite M200 Pro)内の黒壁及び透明底をもつ384ウェルプレート(ファルコン)で、総量5μlで37℃にて3時間反応を行った。GFP蛍光(励起波長485nm、発光波長520nm、ゲイン調整機能適用時の最適ゲイン30%RFU)を経時的にモニタリングした。
6.PTC変異体ライブラリーの調製
pT7rrnBライブラリー16からpoRbsプラスミドの23S rRNA遺伝子に個々の変異を移すことによって、PTC変異体ライブラリーを作製した。
プラスミドバックボーンを調製するために、poRbsプラスミドをSgsI及びBst1107I制限酵素で消化し、1546ntの断片を23S rRNA遺伝子から切り出した。反応生成物をアガロースゲル電気泳動で分離し、且つZymoclean Gel DNA Recovery Kit(Zymo Research)及びDNA Clean & Concentrator Kit(Zymo Research)を順に使用して、7483bpのバックボーン断片をゲルから精製した。
PTC変異をもつ1606bpのインサートを生成するために、Q5 High-Fidelity DNAポリメラーゼ(ニュー・イングランド・バイオラボ)によって触媒され、且つプライマーNA35及びNA36を用いるPCR反応用のテンプレートとして、pT7rrnBプラスミドライブラリーの個々のプラスミドを使用した。PCR産物をDNA Clean & Concentrator Kit(Zymo Research)を使用してクリーンアップした。
プラスミドバックボーン(35ng)及びDNAインサート(60ng)を総量5μlのギブソン・アセンブリ反応物に混ぜ、且つ50℃で1時間インキュベートした。
個々のギブソン・アセンブリ反応物を用いて、化学的にコンピテントなPOP2136細胞を形質転換した。ハイスループット形質転換は、低蒸発透明蓋付き平底組織培養96ウェルプレート(ファルコン)を用いて行った。プレートの各ウェルに、20μlのコンピテント細胞を、2μlの個々のギブソン・アセンブリ反応物と混ぜた。プレートを、氷上で30分間、42℃で50秒間、再び氷上で15分間インキュベートした。各ウェルに100μlのSOC培地を加え、且つ振盪器上で細胞を30℃で2時間回復させた。プレートを、スイングバケットローターで6000g、6分間回転し、且つ(80μlの上清を除去することによって、培養液の量を40μlに減らした。次いで、残りの細胞懸濁液のそれぞれ6μlを、50μg/mlカナマイシンを補充したLB/寒天長方形OmniTray Single-Wellプレート(ヌンク)にマルチチャンネルピペッターを使用してスポットプレッティングした(spot-plated)。プレートを30℃で20時間インキュベートした。
個々のコロニーを50μg/mlカナマイシンを補充した新鮮なLB培地に接種し、30℃で12時間培養した。プラスミドを単離し、且つPCR増幅した23S rRNAセグメントに所望の変異が存在すること、及びオフターゲットの変異がないことをキャピラリーシーケンシングで確認した。
次いで、個々のPTC変異体ライブラリープラスミドを、上記ハイスループット形質転換アプローチを以下の改変とともに用いてSQ171 FG/pRibo-Tt/poGFP-TnaC細胞に形質転換することによってOSYRIS細胞に導入した。i)20ngの精製した個々のプラスミドを形質転換に使用した。ii)形質転換体を37℃のSOC培地で6時間回復させ、50μg/mlアンピシリン、25μg/mlカナマイシン、25μg/mlスペクチノマイシン、及び15μg/mlクロラムフェニコールを補充したLB/寒天プレートにパッチした(patched)。iii)プレートを37℃で48時間インキュベートした。iv)形質転換体の個々のコロニーから培養した培養物から96ウェルプレートにグリセロールストックを作製した。
7.PTCライブラリースクリーニング
PTCライブラリー変異体をもつOSYRIS細胞の個々のコロニーを、50μg/mlアンピシリン、25μg/mlカナマイシン、25μg/mlスペクチノマイシン、及び15μg/mlクロラムフェニコールを補充したLB培地が120μl入った96ウェルプレートのウェルに接種し、37℃で24時間、絶えず振盪しながら培養した。同じ抗生物質、0.35mg/ml 1-メチル-トリプトファン(シグマ)及び0.016ng/mlのHSLを補充した新鮮なLB培地120μlに、培養物を1:40(体積/体積)で希釈した。プレートをTECAN Infinite M200 Proプレートリーダーに置き、37℃で絶えず直線的に(linear)(3mm)振盪しながらインキュベートした。培養物の光学密度(A600)及びoGFP蛍光を上記のようにモニタリングした。
GFP-TnaC(W12R)変異体コンストラクトをもつOSYRIS細胞のGFP発現の効率を、野生型GFP-TnaCコンストラクトをもつOSYRIS細胞の発現効率を比較することによって、終結アレストバイパススコアを算出した。停滞バイパス(SB)スコア値は、48時間の時点で得られた読み取り値に基づいて次式を用いて算出した。
Figure 2023520667000003
ここで、RFUは相対蛍光単位である。
平均SBスコア値は、独立した2つの実験で得られたデータを用いて算出した。
8.OSYRIS細胞に由来する50Sリボソームサブユニットの単離
Ohashiら17によって報告されたプロトコールに従ってOSYRIS細胞からリボソームを単離した。具体的には、23S rRNAに変異U2500G、A2060C又はA2450Uをもつリボソームを発現するOSYRIS細胞を、50μg/mlアンピシリン、25μg/mlカナマイシン、25μg/mlスペクチノマイシン、及び15μg/mlクロラムフェニコールを補充したLB培地で37℃にて一晩培養した。培養物を、同じ抗生物質を補充した1Lの新鮮なLB培地に、最終A600=0.003に希釈し、且つ光学密度がA600=0.35に達するまで激しく振盪して約15時間培養した。細胞を5000g(4℃)での15分間遠心分離によって集め、且つ細胞ペレットを液体窒素中で瞬間凍結させ、且つ-80℃で保存した。凍結細胞ペレットを20mlの溶解バッファー(10mM HEPES-KOH、pH7.6、50mM KCl、10mM Mg(OAc)2、7mM β-メルカプトエタノール)に再懸濁し、EmulsiFlex-C3ホモジナイザー(AVESTIN Inc.)で15000psiにて5分間溶解し、且つその後に溶解物を、20000g(4℃)の30分間遠心分離で清澄化し、且つ新しい遠心チューブに移した。硫酸アンモニウムを1.5Mの最終濃度まで加え、且つチューブを20000g(4℃)で1時間遠心分離した。リボソーム(Ribo-T+解離可能なリボソーム)含有上清を0.22-μm φ30mmポリエーテルスルホン(PES)メンブレンフィルター(CELLTREAT Scientific Products)を通して濾過した。リボソーム材料を、AKTApurifier UPC 10(GEヘルスケア)上で20mM HEPES-KOH、pH7.6、10mM Mg(OAc)2、7mM β-メルカプトエタノール、1.5M (NH42SO4で平衡化した5ml HiTrap Butyl FFカラム(GEヘルスケアライフサイエンス)を用いた疎水クロマトグラフィーで精製した。材料を載せた後、カラムを、20mM HEPES-KOH、pH7.6、10mM Mg(OAc)2、7mM β-メルカプトエタノール、1.2M(NH42SO4で洗い、且つその後に20mM HEPES-KOH、pH7.6、10mM Mg(OAc)2、7mM β-メルカプトエタノール、0.75M(NH42SO4を含有するバッファーでリボソームを溶出させた。リボソームが入った溶出画分を一緒にまとめ、35ml容遠心チューブにバッファー20mM HEPES-KOH、pH7.6、10mM Mg(OAc)2、30mM NH4Cl、7mM β-メルカプトエタノール中に調製した16mlの30%ショ糖クッションに載せた。タイプ70 Tiローター(ベックマン)で36000rpm、4℃で18時間遠心分離することによって、リボソームをペレット化した。リボソームペレットを解離/保存バッファー(20mM HEPES-KOH pH7.6、30mM KCl、1.5mM Mg(OAc)2、7mM β-メルカプトエタノール)に再懸濁し、且つアリコートを瞬間冷凍し、且つ-80℃で保存した。
個々の50Sリボソームサブユニットを単離するために、SW41ローター(ベックマン)用の遠心チューブに、バッファー(20mM Tris-HCl、pH7.5、1.5mM Mg(OAc)2、100mM NH4Cl、2mM β-メルカプトエタノール)中に調製した10~40%ショ糖勾配にリボソーム調製物を載せた。その勾配を27000rpm、4℃で16時間遠心分離し、且つA254モニタリングしながらグラジエントフラクショネーター(BioComp)で分画した。大リボソームサブユニットに対応する画分をプールし、セルローストリアセテート膜の付いたVivaspin 2ml濃縮器(Sartorius Stedim Biotech GmbH)で濃縮し、且つリボソーム保存バッファー(20mM HEPES-KOH pH7.6、30mM KCl、6mM Mg(OAc)2、7mM β-メルカプトエタノール)に集めた。アリコートを瞬間凍結させ、且つ-80℃で保存した。
9.非致死的23S rRNA変異をもつリボソームの単離
23S rRNAに非致死的変異(A2503G、A2062G、C2611G、及びC2611U)を有するリボソームを、対応する変異をもつpAM552プラスミド4を有するSQ171細胞から単離した。変異体リボソームの純粋な集団を発現する対応する株を以前に記載18のように調製した。ショ糖クッション遠心分離後にリボソームペレットをリボソーム保存バッファー(20mM HEPES-KOH pH7.6、30mM KCl、6mM Mg(OAc)2、7mM β-メルカプトエタノール)に再懸濁した以外は、上記のようにリボソームを単離した。アリコートを瞬間凍結し、-80℃で保存した。
10.トウプリンティング分析
プライマー伸長阻害(トウプリンティング)分析19を以前に記載20のように行った。必要な場合、プロリル-tRNA合成酵素阻害剤である5’-O-[N-(L-プロリル)-スルファモイル]アデノシン(L-PSA)21を、50μMの最終濃度で反応に加えた。プライマー伸長産物をシークエンシングゲルで分離し、且つホスフォイメージングを行った後、ImageJソフトウェア12を使用してトウプリントバンドの強度を決定した。停止コドンのトウプリントバンドの強度(SB)(図16cの矢じり)を、L-PSA含有試料の先行コドンでのトウプリントバンド(図16cの開いた白い矢じり)の強度(PB)と比較することによって、tnaC停止コドンでのTnaCによって誘導される翻訳アレストの効率を、次式を用いて算出した。
Figure 2023520667000004
ここで、SBBG及びPBBGは対応するバンドのバックグラウンドである。
11.構造解析と図の作成
Aサイトアミノ酸の攻撃α‐アミノ基に対する23S rRNAヌクレオチドの距離を計算するために、攻撃前状態にあるPサイト及びAサイトtRNAをもつサーマス・サーモフィルス(Thermus thermophilus)リボソームの結晶構造(PDB 1VY4)22を、部分的に回転した空の(partially rotated vacant)大腸菌リボソーム高解像度構造(PDB 4YBB)23と全長23S rRNAに基づいてアラインメントした。距離測定と描画はPyMOL(Molecular Graphics System、バージョン2.0 Schrodinger、LLC.)で行った。図4gは、PサイトのTnaC-tRNAで停滞した大腸菌リボソームの低温電子顕微鏡構造(PDB 4UY8)24と、RF2と複合体形成したT.サーモフィルスリボソームの結晶構造(PDB 4V67)25をアラインメントして作成した。
12.統計解析
統計値は適宜図の凡例で見ることができる。値の平均は算術平均とした。独立した生物学的複製の数(n)に応じて、偏差の範囲は標準偏差(n≧3)又は実験誤差(n=2)のいずれかを表す。マイクロソフトエクセル365ソフトウェアを使用して、すべて統計値を計算し、すべてのグラフをプロットした。ウィンドウズ(登録商標)向けグラフパッドプリズムバージョン8.00(グラフパッドソフトウェア、米国カリフォルニア州ラホヤ)を使用して、スチューデントのt検定を行った。
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追加参考文献
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Chin, J.; Wang, K.; Neumann, H., Evolved orthogonal ribosomes. US 12/516,230: Filing date Nov 28, 2007.
E.実施例1の「反転(flipped)」直交翻訳系の用途及び利点
1.用途
例として、限定するものではないが、ここで開示されている組成物又は方法の用途としては以下が挙げられるが、それらに限定されない。リボソームの進化/工学(例えば、より効率的な非カノニカルアミノ酸の取り込みに向けて);非カノニカルアミノ酸の取り込みのための拡張された遺伝コード;抗生物質耐性機構の詳細なインビボ研究を可能にし、抗生物質の開発プロセスを可能にすること;バイオ医薬品の製造;細胞内の直交回路;合成生物学;ネイティブ(若しくは野生型)リボソームによって合成されるペプチド又はその翻訳後修飾された誘導体が得ることができない新しい機能性を組み込むことによって人工ペプチドを作製すること;医薬化学を変革しうる新規プロテアーゼ耐性ペプチドを作製すること;細胞内で改変リボソームの進化を可能にする。
2.利点
例として、限定するものではないが、本明細書に開示の組成物及び方法の利点としては以下が挙げられるが、それらに限定されない。
Ribo-Tの通常とは異なる(unusual)デザインは、その直交翻訳系(oRiboT)としての機能を制限する。具体的には、Ribo-Tは解離可能なリボソームの半分の速度でしかタンパク質を翻訳しない。野生型リボソームと比較して、開始コドンからのから離れるのが遅い。さらに、「野生型」Ribo-Tでさえもバイオジェネシスはかなり遅く、且つ非効率的であり、且つもしリボソームの機能中心がさらなる改変に供されると、アセンブリに関する問題がさらに悪化する可能性がある。
2つの機能的に独立した翻訳装置を用いて細胞を改変するオリジナルのoRibo-Tに基づいた方法の欠点を克服するために、今般、本発明者らは、解離可能であり、さらには完全に分離した、特殊なmRNAのみの翻訳に特化したリボソームを利用するインビボの系の概念的に新しいデザインを作り出した。Ribo‐T及び離可能なリボソームの役割を「反転」させることによって、プロテオームの翻訳がRibo‐Tによって行われ、解離可能な直交性30S(o‐30S)サブユニット及び野生型50Sサブユニットから構成されるリボソームが完全直交翻訳機械装置として機能する細菌細胞を作製した。OSYRIS(サブユニットが分離したリボソームをベースとする直交翻訳系(Orthogonal translation SYstem based on Ribosomes with Isolated Subunits))と命名した、結果として得られたこのセットアップでは、Ribo-Tが繋ぎ止められているという特性が、解離可能なリボソームのo-30S又は50Sとの結合を不可能にするので完全な直交性が達成される。したがって、OSYRIS細胞において、物理的に連結していないo‐30S及び50Sリボソームサブユニットは、それにもかかわらず互いに相互作用し、且つ完全直交性リボソーム(o‐リボソーム)として機能することを強いられる。結果として、o‐30Sだけでなく遊離50Sサブユニットも、細胞プロテオームの発現を妨害することなく新しい機能性を達成するように改変することができる。
OSYRIS細胞を並べて比較したとき、2つの直交性レポーター(o-gfp及び新らたに改変されたo-luc)の発現は、同じ宿主(大腸菌BL21)において、解離可能な直交性リボソーム(oRbs)又は直交性テザーリボソーム(oRibo-T)のいずれかによって進められる。注目すべきは、oRibo-Tが高コピー数ベクターから発現され、一方でoRbsが低コピー数プラスミドから転写されたにもかかわらず、oRbsはoRibo-Tより優れたことである。この結果から、直交性mRNAの翻訳においてoRibo-Tを上回るoRbsによって提供される利点が明らかに示され、且つOSYRIS設計がoRibo-Tに基づく設計よりも優れているという概念が強化される。
リボソーム工学はバイオテクノロジー、化学、及び材料科学の分野に大変興味深いが、これまでの方法では、触媒活性部位及びタンパク質排出トンネルを含むリボソームの大サブユニットを進化させることはできなかった。テザーリボソームの開発はこれらの制限を取り除き、リボソーム工学の可能性を広げる。リボソームは、タンパク質の機能を拡張するために非天然アミノ酸を組み込むように、又は非タンパク質ポリマーの生産のために新しい化学を成し遂げるように改変することができる。
本発明は、mRNAの解読、ポリペプチド合成の触媒作用、及びタンパク質排泄がすべて、新しい基質及び機能に対して最適化できる史上初の直交リボソーム-mRNA系を詳述する。先行技術との重要な違いは、小(解読)リボソームサブユニットだけでなく、大(触媒)リボソームサブユニットも、単一の、組み合わされ、且つ分割不可能な直交遺伝子合成機械装置として機能することである。
さらに、テザーリボソームは細胞を生存させ、自由に解離可能なリボソームが設計に用いられるという点でユニークである。
この発明は、この種では初めてのものであることを本発明者らは強調する。本発明者らは、ここで報告されたイノベーションが、より大規模なリボソームの構築及び工学的な取り組みに刺激を与えて、改変生物系の限界を押し広げるのに役だち、現在隣接可能性を超えている研究分野において新しい商業的な機会をもたらすと予想する。
前述の記載において、本発明の範囲及び精神から逸脱することなく、本明細書に開示の発明に対して様々な置換及び変更を行うことができることは、当業者には容易に明らかであろう。本明細書に例示的に記載された発明は、本明細書に具体的に開示されていない任意の要素又は複数の要素、制限又は複数の制限の存在下で、好適に実行することができる。採用されている用語及び表現は、説明の用語として使用され、限定の用語として使用されず、且つそのような用語及び表現の使用において、提示及び説明された特徴のいずれの均等物又はその一部も排除する意図はないが、発明の範囲内で様々な変更が可能であると認識される。したがって、本発明は、特定の実施形態及び任意選択の特徴によって例示されているが、本明細書に開示さの概念の変更及び/又は変形は、当業者に頼ることができ、且つそのような変更及び変形は、本発明の範囲内にあると考えられることを理解すべきである。
本明細書において、多数の特許及び非特許参考文献の引用がなされている。引用参考文献はその全体が参照により本明細書に援用される。本明細書における用語の定義と引用参考文献における用語の定義との間に矛盾がある場合、その用語は本明細書における定義に基づいて解釈されるべきである。

Claims (36)

  1. 第1のタンパク質翻訳機構及び第2のタンパク質翻訳機構を含む改変細胞であって、
    a)前記第1のタンパク質翻訳機構が、第1の改変リボソームを含み、第1の改変リボソームが、
    i)リボソームRNA(rRNA)及びタンパク質を含む小サブユニット、
    ii)リボソームRNA(rRNA)及びタンパク質を大サブユニット、並びに
    iii)連結部分
    を含み、
    そこにおいて、前記連結部分がポリヌクレオチド配列を含み、且つ前記小サブユニット前記rRNAを前記大サブユニットの前記rRNAと繋ぎ止め、
    b)前記第2のタンパク質翻訳機構が、第2の改変リボソームを含み、第2の改変リボソームが、
    i)rRNA及びタンパク質を含む小サブユニット、並びに
    ii)rRNA及びタンパク質を含む大サブユニット
    を含み、
    そこにおいて、前記第2の改変リボソームが、前記大サブユニット及び前記小サブユニットの間の連結部分を欠き、且つ
    そこにおいて、前記第2の改変リボソームの前記小サブユニットが、改変アンチシャイン・ダルガノ配列を含んで、前記細胞の内在性細胞mRNAと異なる相補的で且つ/又は同族のシャイン・ダルガノ配列を有するテンプレートの翻訳を可能にし、且つ/又は
    改変細胞。
  2. 前記第1及び前記第2のタンパク質翻訳機構が、配列規定ポリマーの翻訳を補助することができる、請求項1に記載の改変細胞。
  3. 前記第1のタンパク質翻訳機構が、ネイティブ内在性RNAの翻訳を補助することができる、請求項1に記載の改変細胞。
  4. 前記第2のタンパク質翻訳機構が、非ネイティブ外因性RNAの翻訳を補助することができる、請求項1に記載の改変細胞。
  5. 前記第2の改変リボソームが1つ又は複数の機能変換型変異を含み、そこにおいて、前記機能変換型変異が前記アンチシャイン・ダルガノ配列でない、請求項1に記載の改変細胞。
  6. 前記第2の改変リボソームの前記小サブユニットが、3’-GGUGUU-5’、3’-UGGUGU-5’、3’-GGUGUC-5’、3’-GUUUAG-5’、3’-UGGAAU-5’、3’-GGAUCU-5’、3’-UGGAUC-5’、3’-UGGUAA-5’、及び3’-UGGAUC-5’からなる群より選択される改変アンチシャイン・ダルガノ配列を含む、請求項1に記載の改変細胞。
  7. 前記第2の改変リボソームが、
    a)ペプチジルトランスフェラーゼ中心(PTC)、
    b)新生ペプチド出口トンネル(NPET)、
    c)伸長因子との相互作用部位、
    d)tRNA結合部位、
    e)シャペロン結合部位、
    f)新生鎖修飾酵素結合部位、
    g)GTPアーゼ中心
    のうちの1つ又は複数に機能変換型変異を含む
    請求項1に記載の改変細胞。
  8. 前記第2の改変リボソームの前記大サブユニットが、23S rRNAの次の残基:G2061、C2452、U2585、G2251、G2252、A2057、A2058、C2611、A2062、A2503、U2609、G2454、及びG2455のうちの1つ又は複数に機能変換型変異を含む、請求項1に記載の改変細胞。
  9. 前記第1、前記第2、又は前記第1と前記第2の両方の改変リボソームが、抗生物質耐性変異を含む、請求項1に記載の改変細胞。
  10. 前記第1の改変リボソームの前記大サブユニットが、23S rRNAの順列置換バリアント若しくは変異体を含む、且つ/又は前記小サブユニットが、16S rRNAの順列置換バリアント若しくは変異体を含む、請求項1に記載の改変細胞。
  11. 前記連結部分が、ヘリックス10、ヘリックス38、ヘリックス42、ヘリックス54、ヘリックス58、ヘリックス63、ヘリックス78、ヘリックス101からなる群より選択される前記大サブユニットのヘリックスを、ヘリックス11、ヘリックス26、ヘリックス33、及びヘリックス44からなる群より選択される前記小サブユニットのヘリックスに共有結合させる、請求項1に記載の改変細胞。
  12. 配列規定ポリマーを調製する方法であって、
    (a)1つ又は複数の
    (i)請求項1に記載の前記細胞、
    (ii)請求項1のいずれか1つに記載の前記細胞に由来する無細胞抽出物、
    (iii)請求項1に記載の前記細胞に由来する精製された翻訳系
    を用意すること、
    b)前記配列規定ポリマーをコードするmRNAを、前記細胞又は前記無細胞抽出物に提供すること、及び
    c)前記mRNAを前記細胞又は無細胞抽出物中で翻訳させて、前記配列規定ポリマーを得ること
    を含む、方法。
  13. 前記配列規定ポリマーがインビボで調製される、請求項12に記載の方法。
  14. 前記配列規定ポリマーがインビトロで調製される、請求項12に記載の方法。
  15. 前記無細胞抽出物が、指数増殖期の中~後期の細胞培養物又は採取時に少なくとも約2.0、2.5、若しくは3.0のOD600を有する培養物から調製されたS150抽出物を含む、請求項12に記載の方法。
  16. 前記配列規定ポリマーをコードする前記mRNAが、改変シャイン・ダルガノ配列を含み、且つ前記第2の翻訳系の前記改変リボソームが、前記mRNAの前記改変シャイン・ダルガノ配列に相補的なアンチシャイン・ダルガノ配列を含む、請求項12に記載の方法。
  17. 前記配列規定ポリマーがアミノ酸ポリマーを含む、請求項12に記載の方法。
  18. 前記アミノ酸ポリマーがカノニカルアミノ酸を含む、請求項17に記載の方法。
  19. アミノ酸ポリマーが1つ又は複数の非カノニカルアミノ酸を含む、請求項17に記載の方法。
  20. 前記配列規定ポリマーが非アミノ酸をベースとするポリマーを含む、請求項12に記載の方法。
  21. 前記mRNAが、前記mRNAをコードするDNAを用意し、且つ前記DNAを前記細胞又は前記無細胞抽出物中で転写させ前記mRNAを得ることによって用意される、請求項12に記載の方法。
  22. 前記改変細胞が改変されて、前記DNAを転写するT7 RNA転写酵素などの外因性RNA転写酵素を発現して前記mRNAをもたらす、請求項21に記載の方法。
  23. 請求項1に記載の前記改変細胞のa)前記第1のタンパク質翻訳機構の前記改変リボソームの前記rRNAをコードする、且つ/又はb)前記第2のタンパク質翻訳機構の前記改変リボソームの前記rRNAをコードする、1つ又は複数のポリヌクレオチド。
  24. 前記ポリヌクレオチドがベクターである、請求項23に記載にポリヌクレオチド。
  25. 前記ポリヌクレオチドが、前記改変リボソームによって発現する遺伝子をさらに含む、請求項23に記載にポリヌクレオチド。
  26. 前記遺伝子がレポーター遺伝子又は選択マーカーである、請求項25に記載にポリヌクレオチド。
  27. 前記レポーター遺伝子が緑色蛍光タンパク質遺伝子である、請求項26に記載にポリヌクレオチド。
  28. 前記選択マーカーが抗生物質に対して耐性である、請求項26に記載にポリヌクレオチド。
  29. 前記第2の翻訳系の前記改変リボソームの前記rRNAが改変アンチシャイン・ダルガノ配列を含み、且つ前記mRNAが、前記第2の翻訳系の前記改変リボソームに相補的なシャイン・ダルガノ配列を含む、請求項23に記載にポリヌクレオチド。
  30. 前記mRNAがコドンを含み、前記コドンが非天然アミノ酸をコードする、請求項23に記載にポリヌクレオチド。
  31. a)前記第1の翻訳系の前記改変リボソームの前記rRNAをコードする第1のポリヌクレオチドを含む、且つa)前記第2の翻訳系の前記改変リボソームの前記rRNAをコードする第2のポリヌクレオチドを含む第2のポリヌクレオチドを含む、請求項23に記載のポリヌクレオチド。
  32. 前記第1のポリヌクレオチド及び/又は第2のヌクレオチドが1つ又は複数のベクター上に存在する、請求項31に記載にポリヌクレオチド。
  33. 請求項23に記載の前記ポリヌクレオチドを宿主細胞で発現させることを含み、任意選択で、前記宿主細胞が請求項1に記載の改変細胞を含む、改変リボソームを調製する方法。
  34. 前記宿主細胞を選択に供すること及び変異体リボソームを含む宿主細胞を選択することをさらに含む、請求項33に記載の方法。
  35. 前記変異体が、
    a)ペプチジルトランスフェラーゼ中心(PTC)、
    b)新生ペプチド出口トンネル(NPET)、
    c)伸長因子との相互作用部位、
    d)tRNA結合部位、
    e)シャペロン結合部位、
    f)新生鎖修飾酵素結合部位、
    g)GTPアーゼ中心、
    h)トランスロコンとの相互作用部位、及び
    i)翻訳を促進する補助タンパク質との相互作用部位
    のうちの1つ又は複数に変異を含む、請求項34に記載の方法。
  36. 前記選択ステップが、ネガティブ選択ステップ、ポジティブ選択ステップ、又はネガティブとポジティブの両方の選択ステップを含む、請求項35に記載の方法。
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