本発明は、その幾つかの実施形態において、軟部組織の修復及び/又は増強に関し、より詳細には、分解性足場とそれを含む軟部組織インプラントを形成するのに使用可能なコラーゲン系配合物、及び軟部組織充填剤として、及び/又は分解性足場と組み合わせて使用可能なコラーゲン系配合物に関するが、これに限定されない。
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、必ずしもその用途が以下の説明及び/又は図面及び/又は実施例で例示される構造の詳細や構成要素の配置及び/又は方法に限定されるものではないことを理解すべきである。本発明は他の実施形態が可能であり、様々な手段で実施又は実行することが可能である。
本発明者らは、硬化して合成ポリマー、好ましくは生体適合性合成ポリマー、となる硬化性合成材料と共に硬化性rhコラーゲンを利用する積層造形プロセス(例えば、3Dバイオプリンティング)によって分解性(例えば、生分解性)複合足場を形成する方法を設計し、実施することに成功した。以下で更に詳述するように、この足場は、多孔質壁、内部空洞及び1個以上の注入ポートと、必要に応じて、足場の最外面を足場の内部空洞と接続する血管網経路とを有するように設計されている。複合構造は、軟部組織インプラントの一部を構成しており、新たに形成された軟部組織が分解性インプラントに取って代わるように、移植部位での軟部組織の成長を可能にする及び/又は促進する機械的、物理的、及び/又は生物学的特性を有するように設計されている。
本発明者らは更に、1種以上のECM成分(例えば、必要に応じて1種以上の更なるECM成分と組み合わせるrhコラーゲン)と、必要に応じて細胞及び/又は脂肪組織等の生体物質とを含む注入可能マトリックスを設計し、用いることに成功した。これは、軟部組織充填剤として使用すること、又は分解性インプラントの一部として本実施形態の複合足場に注入(充填)することができる。
図1A~図6は、本発明の幾つかの実施形態に係るインプラント及び/又はマトリックスの機械的及び/又は物理的特性を制御及び決定するのに使用可能な背景技術の方法と所望のパラメータを示しており、これを用いて(例えば、本明細書において各実施形態のいずれかに記載の複合構造及び/又はマトリックスを構成する成分の化学的性質と相対量を制御することによって)所望の特性を有するインプラント及び/又はマトリックスを考案することができる。
図7は、本発明の例示的実施形態に係る、分解性足場を含む例示的3Dバイオプリント乳房インプラントの製造及び使用の概略図を示す。分解性乳房インプラント足場は、バイオプリンティングによって調製し(左上図)、rhコラーゲン等のECM成分を含み、必要に応じて間質血管画分(SVF)、均質化脂肪抽出物及び/又は細胞成分を混合したマトリックスを分解性足場に注入する(右上図)。ECM成分は、幾つかの実施形態では、ヒアルロン酸(HA)、フィブロネクチン、ヘパリン又はラミニン、又はそれらのいずれかの組み合わせを含むことができる。次に、マトリックスを充填した足場を体内に移植し、血管新生する(左下図)。その後、インプラント足場が徐々に分解すると共に新しい組織による置換(新しい組織の再生と血管新生を含む)が徐々に進む(右下図)。この最終工程では、足場が消え、完全に機能的な血管組織が残る。
図8A~図8D、図10、図14A~図14B及び図15は、本発明の例示的実施形態に係る3Dバイオプリント分解性足場の例示的デザインの画像を示す。
図9は、本発明の幾つかの実施形態に係る注入可能マトリックスに配合することができる生体物質(脂肪抽出物)の生成の一例を示す。
図11~図13Eに示すように、本発明者らは、本明細書に記載の分解性インプラントを移植した際に新血管形成と組織内部成長が移植部位で生じることをインビボ研究で実証した。
図16に示すように、本発明者らは、本明細書に記載の注入可能マトリックスが組織成長を促進することを更に実証した。
従って、本発明の実施形態は、3Dバイオプリント分解性複合足場、硬化性配合物とそれを調製するための積層造形プロセス、その配合物を含む軟部組織インプラント、及びそれ自体で使用するか、又は組織成長を促進するために足場と組み合わせて使用することができる注入可能マトリックスに関する。本発明の実施形態は更に、軟部組織の再建、増強、置換及び/又は再生を必要とする対象において、それを行うための複合足場及び/又は注入可能マトリックスの使用に関する。
本発明の幾つかの実施形態によれば、インプラント、複合足場及び注入可能マトリックスでは組換えヒトコラーゲン(rhコラーゲン)を使用する。
本発明の実施形態は更に、3次元(3D)生体適合性・分解性軟部組織(例えば、乳房)インプラント、細胞外マトリックス(ECM)成分と細胞又は脂肪組織を含むマトリックス、及びそれらの方法と使用に関する。
本実施形態の幾つかに係る生体適合性・分解性軟部組織(例えば、乳房)インプラントは複合足場を含み、これは組換えヒトコラーゲン(rhコラーゲン)と生体適合性合成ポリマーを含む成分を配合するようにバイオプリントすることができる。複合足場成分は、少なくとも1種のECM成分(例えば、rhコラーゲン、ヒアルロン酸(HA)、フィブロネクチン、ヘパリン、エラスチン又はラミニン、又はそれらのいずれかの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない)を更に含むことができる。インプラント足場は、多孔質格子と、内部空洞と、細胞又は組織注入用カニューレの挿入を可能にするサイズの少なくとも1個の注入ポートとを含む。インプラント足場は、血管細胞及び組織のインプラントへの侵入を可能にする少なくとも1個のプリント血管網経路を更に含むことができる。
本明細書に開示の軟部組織(例えば、乳房)インプラントは、それを必要とする対象に移植する方法(例えば、軟部組織(例:乳房組織)の再建又は増強を目的として方法が挙げられるが、これに限定されない)において使用することができ、インプラントは経時的に分解し、新しい組織に置き換わる。分解性軟部組織(例えば、乳房)インプラントを調製する方法も更に開示する。
少なくとも1種のECM成分と、細胞又は脂肪組織、又はその両方とを含むマトリックスを本明細書に開示する。幾つかの実施形態では、移植前に軟部組織(例えば、乳房)インプラントにマトリックスを注入し、他の実施形態では、対象への移植後にマトリックスをインプラントに注入する。幾つかの他の実施形態では、複合足場の使用とは関係なく、対象の軟部組織を再建又は増強するためにマトリックスを使用する。
組換えヒトコラーゲン(rhコラーゲン):
コラーゲンは、体内の様々な結合組織の細胞外マトリックス(ECM)の重要な構造タンパク質である。コラーゲンは哺乳動物で最も豊富なタンパク質であり、互いに結合して細長い線維の三重らせんを形成するポリアミノ酸鎖から成る。骨、腱及び軟骨はコラーゲンを含み、角膜、血管、腸及び歯等の異なる構造も同様である。I型コラーゲンは人体に最も豊富に存在するコラーゲンである。
当業者であれば、「コラーゲン鎖」という用語が、I型線維となり得るコラーゲン線維のα1又は2鎖等のコラーゲンサブユニットを包含し得ることを理解するであろう。当業者であれば、「コラーゲン」という用語が、I型コラーゲンの場合、α1鎖又は2個のα1鎖と1個のα2鎖を含む、構築コラーゲン三量体を包含し得ることを理解するであろう。コラーゲン線維は、末端プロペプチドC及びNを欠いているコラーゲンである。
コラーゲンの顕著な特徴の1つは、三重らせんの3個の鎖の各々におけるアミノ酸の規則的な配置である。アミノ酸配列はGly-Pro-X又はGly-X-ヒドロキシプロリンの反復を含むことが多く、Xは様々な他のアミノ酸残基のいずれであってもよい。通常、プロリン又はヒドロキシプロリン残基は全配列の約6分の1を占め、グリシン残基は全配列の3分の1を占める。プロリル-4-ヒドロキシラーゼ(P4H)によるプロリン及びリジン残基のヒドロキシル化は、ポリペプチド鎖が小胞体(ER)膜を横切って同時翻訳的に移動するため、Gly-X-Y反復領域内で生じる。P4Hはαとβの2種のサブユニットで構成される酵素である。両方共、活性酵素を形成するのに必要である。コラーゲンの最終的な三重らせん構造の安定性は、コラーゲン鎖のP4Hを介したヒドロキシル化に大きく依存している。リシルヒドロキシラーゼ(LH、EC1.14.11.4)、ガラクトシルトランスフェラーゼ(EC2.4.1.50)及びグルコシルトランスフェラーゼ(EC2.4.1.66)は、コラーゲンの翻訳後修飾に関与する酵素である。これらは、特定の位置のリシル残基をヒドロキシリシル、ガラクトシルヒドロキシリシル及びグルコシルガラクトシルヒドロキシリシル残基に順次修飾する。単一のヒト酵素であるリシルヒドロキシラーゼ3(LH3)は、ヒドロキシリシン結合炭水化物形成における3つの連続する工程全てを触媒することができる。
本明細書に記載の実施形態の幾つかでは、本発明で使用するコラーゲンは、動物由来コラーゲン、組換えヒトコラーゲン(rhコラーゲン)又は植物由来組換えヒトコラーゲンから成る群から選択されるコラーゲンを含む。幾つかの実施形態では、コラーゲンは架橋可能な植物由来ヒトコラーゲンを含む。幾つかの実施形態では、コラーゲンは天然コラーゲンを含む。幾つかの実施形態では、コラーゲンは修飾コラーゲンを含む。幾つかの実施形態では、コラーゲンは官能基を付加して修飾する。幾つかの実施形態では、コラーゲンは連結コラーゲンを含む。幾つかの実施形態では、コラーゲンは架橋コラーゲンを含む。
幾つかの実施形態では、コラーゲンは単離された天然起源のコラーゲンを含む。幾つかの実施形態では、天然起源のコラーゲンは、腱、靭帯、皮膚、角膜、軟骨、血管、腸、椎間板、筋肉、骨又は歯から成る群から選択されるコラーゲン含有組織から得ることができる。
本明細書に記載の実施形態の幾つかでは、rhコラーゲンは植物由来組換えヒトコラーゲンを含む。本明細書に記載の実施形態の幾つかでは、植物由来ヒトコラーゲンは遺伝子組換え植物から得られる。当業者であれば、「遺伝子組換え植物」という用語が、少なくとも1種の外因性ポリヌクレオチド配列で安定的又は過渡的に形質転換されたいずれかの下等植物(例えば、コケ)又は高等(維管束)植物又は組織又はその(例えば、細胞懸濁液の)単離細胞を包含し得ることを理解するであろう。幾つかの実施形態では、遺伝子組換え植物は、タバコ、トウモロコシ、アルファルファ、イネ、ジャガイモ、ダイズ、トマト、コムギ、オオムギ、キャノーラ、ニンジン及びワタから成る群から選択される。本明細書に記載の実施形態の幾つかでは、遺伝子組換え植物は、国際公開第2006/035442号、国際公開第2009/053985号、国際公開第2011/064773号、国際公開第2013/093921号、国際公開第2014/147622号及び国際公開第2018/225076号に記載のようなタバコ植物を含む。
幾つかの実施形態では、遺伝子組換え植物によっていずれかのタイプのコラーゲン鎖を発現させることができる。幾つかの実施形態では、コラーゲン鎖は、線維形成コラーゲン(I型、II型、III型、V型、及びXI型)、ネットワーク形成コラーゲン(IV型、VIII型、及びX型)、線維表面に関連するコラーゲン(IX型、XII型、及びXIV型)、膜貫通タンパク質として生じるコラーゲン(XIII型及びXVII型)又は11nmの周期的なビーズ状フィラメントを形成するコラーゲン(VI型)を含む。幾つかの実施形態では、発現コラーゲン鎖はI型コラーゲンのα1及び/又はα2鎖である。
幾つかの実施形態では、発現コラーゲンα1鎖は、いずれかの哺乳動物に由来するポリヌクレオチド配列のいずれかによってコードされ得る。幾つかの実施形態では、コラーゲンα鎖1及び2をコードする核酸配列はヒト由来であり、それぞれ配列番号1及び2である。幾つかの実施形態では、遺伝子組換え植物は、配列番号1のヒトコラーゲンα-1鎖をコードする配列を含む。幾つかの実施形態では、遺伝子組換え植物は、配列番号2のヒトコラーゲンα-2鎖をコードする配列を含む。
幾つかの実施形態では、遺伝子組換え植物は、配列番号3の改変ヒトコラーゲンα-1鎖を含むアミノ酸配列を産生する。幾つかの実施形態では、遺伝子組換え植物は、配列番号4の改変ヒトコラーゲンα-2鎖をコードするアミノ酸配列を産生する。
幾つかの実施形態では、遺伝子組換え植物は、P4H-αとP4H-βをコードする1個以上の配列を含む。幾つかの実施形態では、遺伝子組換え植物によって発現される外因性P4Hは哺乳動物P4Hを含む。幾つかの実施形態では、外因性P4HはヒトP4Hを含む。幾つかの実施形態では、遺伝子組換え植物は、配列番号5及び6のヒトP4Hをコードする1個以上の配列を含む。
幾つかの実施形態では、遺伝子組換え植物は、哺乳動物LH3をコードする配列を含む。幾つかの実施形態では、遺伝子組換え植物は、配列番号7のLH3をコードする配列を含む。
幾つかの実施形態では、植物で発現されるαコラーゲン鎖は、その末端プロペプチド(即ち、プロペプチドC及びプロペプチドN)を含んでも含まなくてもよい。幾つかの実施形態では、遺伝子組換え植物は、プロテアーゼN、プロテアーゼC、又は両方をコードする配列を含む。
幾つかの他の実施形態では、植物由来ヒトコラーゲンは、部分的に消化されたプロペプチドを含むプロコラーゲン分子とすることができる。更に幾つかの実施形態では、植物由来ヒトコラーゲンはアテロコラーゲンを含む。当業者であれば、「アテロコラーゲン」という用語が、N末端及びC末端プロペプチドの両方を欠くコラーゲン分子を包含し得ることを理解するであろう。幾つかの実施形態では、植物由来ヒトコラーゲンは、配列番号1及び配列番号2のコラーゲンα鎖をコードする配列に由来するアミノ酸(AA)配列を有するアテロコラーゲンである。アテロコラーゲンは、配列番号1と配列番号2の産物であるプロコラーゲンの酵素消化(例えば、フィシンによる消化)によって得られる。
幾つかの実施形態では、α鎖及び/又は修飾酵素(例えば、P4H及びLH3)をコードするポリヌクレオチド配列は、植物で発現された際にそれらの細胞局在化を変更する方法で修飾することができる。
当業者であれば、例えば、アグロバクテリウム媒介遺伝子導入又はエレクトロポレーション等の直接DNA導入を含む、核酸構築物を遺伝子組換え植物に導入する様々な方法について精通しているであろう。また、当業者であれば、様々な植物育種技術について熟知しており、従って、そのような技術の更なる説明は本明細書では行わない。幾つかの実施形態では、植物組織/細胞を成熟時に回収し、良く知られている抽出方法を用いてコラーゲン線維を単離する。
本明細書に記載の実施形態の幾つかでは、組換えヒトコラーゲンは組換えヒトI型コラーゲンである。
幾つかの実施形態では、I型コラーゲンは、3Dバイオプリンティングにおける構築材料の主成分と考えられる。幾つかの実施形態では、軟部組織(例えば、乳房)インプラント複合足場はI型コラーゲンを含む。幾つかの実施形態では、軟部組織(例えば、乳房)インプラント複合足場は組換えI型コラーゲンを含む。幾つかの実施形態では、軟部組織(例えば、乳房)インプラント複合足場は、組換えヒトI型コラーゲンを含む。幾つかの実施形態では、軟部組織(例えば、乳房)インプラント複合足場は、植物で産生された組換えヒトI型コラーゲンを含む。
幾つかの実施形態では、本明細書に記載のマトリックスはI型コラーゲンを含む。幾つかの実施形態では、本明細書に記載のマトリックスは組換えI型コラーゲンを含む。幾つかの実施形態では、本明細書に記載のマトリックスは組換えヒトI型コラーゲンを含む。幾つかの実施形態では、本明細書に記載のマトリックスは、植物で産生された組換えヒトI型コラーゲンを含む。
本明細書に記載の実施形態の幾つかでは、組換えヒトコラーゲンは植物由来組換えヒトコラーゲンであり、幾つかの実施形態では、植物はタバコである。
本明細書に記載の実施形態の幾つかでは、植物由来ヒトコラーゲンは、I型組換えヒトコラーゲン(rhコラーゲン)を精製するためのシステムを用いて調製するが、これは、ヘテロ三量体I型コラーゲンをコードする5種のヒト遺伝子をタバコ植物(COLLPLANT(商標)、イスラエル国)に導入することを含む。コラーゲンの独特な特性を利用した費用対効果の高い工業プロセスによってタンパク質を精製して均質にする。国際公開第2006/035442号、国際公開第2009/053985号、及びこれらに由来する特許と特許出願も参照されたい(これらの全ての内容全体を本明細書の一部を構成するものとしてここに援用する)。
本明細書に記載の実施形態の幾つかでは、本明細書において各実施形態のいずれかに記載のヒト組換えコラーゲン(rhコラーゲン)は単量体rhコラーゲンである。
「単量体(monomeric)」とは、本明細書に記載のrhコラーゲンが水溶液に可溶であり、線維状凝集体を形成しないことを意味する。
本明細書に記載の実施形態の幾つかでは、本明細書において各実施形態のいずれかに記載のヒト組換えコラーゲン(rhコラーゲン)は線維状rhコラーゲンであり、これは、本明細書では「架橋rhコラーゲン」又は「架橋線維状rhコラーゲン」とも称する。
「線維状」とは、本明細書に記載のrhコラーゲンが線維状凝集物を含む水溶液中で線維状凝集物の形態をとることを意味する。通常、線維状rhコラーゲンは、単量体rhコラーゲンを原線維形成緩衝液(通常は塩基性pHを特徴とする)に曝露して形成するが、必ずしもそうでなくてもよい。線維状rhコラーゲンを形成するための例示的な手順を以下の実施例のセクションに記載する。
本明細書に記載の実施形態の幾つかでは、rhコラーゲンは粒子状rhコラーゲンであり、例えば、rhコラーゲン由来ナノ粒子の形態をとり、これは、以下の実施例のセクションに記載のように、例えば、ナノ粒子の調製中に分解生成物として形成されるrhコラーゲンナノ粒子及び/又はrhゼラチンナノ粒子を含むことができる。
本明細書に記載の実施形態の幾つかでは、rhコラーゲンは本明細書に記載の硬化性rhコラーゲンである。本明細書に記載の実施形態の幾つかでは、rhコラーゲンは硬化性rhコラーゲンで形成されており、本明細書において各実施形態のいずれかに記載のように、硬化性rhコラーゲンを単独で、又は他の硬化性材料と組み合わせて硬化条件に供して形成する。
通常、本明細書に記載の硬化性rhコラーゲンは、本実施形態に係る複合足場を形成するために使用され、線維状及び/又は粒子状rhコラーゲンは、本実施形態に係る軟部組織充填剤を形成するために使用されるが、必ずしもそうでなくてもよい。
幾つかの実施形態では、I型コラーゲンを使用しながら、複合足場を含む3D分解性軟部組織(例えば、乳房)インプラントを調製する。幾つかの実施形態では、組換えI型コラーゲンを使用しながら、足場を含む3D分解性軟部組織(例えば、乳房)インプラントを調製する。幾つかの実施形態では、組換えヒトI型コラーゲンを使用しながら、足場を含む3D分解性軟部組織(例えば、乳房)インプラントを調製する。幾つかの実施形態では、植物で産生された組換えヒトI型コラーゲンを使用しながら、足場を含む3D分解性軟部組織(例えば、乳房)インプラントを調製する。幾つかの実施形態では、植物で産生された組換えヒト架橋I型コラーゲンを使用しながら、足場を含む3D分解性軟部組織(例えば、乳房)インプラントを調製する。幾つかの実施形態では、植物で産生された組換えヒト改変I型コラーゲン(例えば、本明細書に記載の、植物で産生された硬化性組換えヒトI型コラーゲン)を使用しながら、足場を含む3D分解性軟部組織(例えば、乳房)インプラントを調製する。
バイオプリント複合足場:
本発明の幾つかの実施形態の一様相によれば、本明細書において各実施形態のいずれかに記載のように、組換えヒトコラーゲン(rhコラーゲン)と生体適合性合成ポリマーを含む複合足場が提供される。
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、複合足場は、本明細書に記載のように、それを含むインプラントの形状に本質的に対応する構成パターンで積層造形(例えば、3Dバイオプリンティング)によって形成されるバイオプリント複合足場である。
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、複合足場は3Dバイオプリント複合足場である。
当業者であれば、本明細書で使用される「足場」という用語は、細胞の増殖や組織の形成を増強又は促進するのに使用される3次元(3D)構造を包含し得ることを理解するであろう。
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、複合足場(例えば、3Dバイオプリント複合足場)は多孔質格子と、足場内の内部空洞と、内部空洞を足場の最外面に接続する少なくとも1個の注入ポートとを特徴とする。本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、足場は、多孔質壁を形成する多孔質格子と、多孔質壁内で少なくとも部分的に囲まれた内部空洞と、内部空洞を足場の最外面と接続する少なくとも1個の注入ポートとを含む。
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、注入ポートの少なくとも1個又は各々は、当該ポートを通して注入装置を挿入可能なサイズの開口部を有する。
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、本明細書に開示の足場は、細胞が付着し得るフレームワークとしてインビボで使用される、相互接続された細孔の高度に多孔質の人工3次元ネットワークで構成されている。(以下で更に詳述するように)足場がマトリックスを含む例では、マトリックスに含まれる細胞と追加の細胞の両方が、足場上と足場内で増殖して、必要に応じて組織を再生することができる。幾つかの実施形態では、本明細書に記載の足場は、生細胞を含むように形成可能な生きた足場と見なすことができる。1種以上の生細胞を足場に付着させることができる。生細胞は、細胞が成長してコロニーを形成する期間に亘って増殖させることができ、その後、コロニーが融合して細胞のネットワークを形成し、続いて足場内に生体組織を形成する。幾つかの実施形態では、足場は三次元で細胞増殖を促進する。
幾つかの実施形態では、複合足場は細胞の接着及び増殖に適した表面を提供する。複合足場は、機械的安定性及び支持を更に提供することができる。複合足場は特定の形状又は形態として、増殖中の細胞の集団によって呈される3次元形状又は形態に影響を及ぼすか又はその範囲を定めるようにすることができる。そのような形状又は形態としては、ドーム、立方体、円錐、球、ロール、長方形、3次元無定形形状等が挙げられるが、これらに限定されない。
当業者であれば、「細孔」という用語が複合足場の空隙又は空間を包含し得ることを理解するであろう。幾つかの実施形態では、細孔は均一で相互接続された多孔質ネットワークを含む。幾つかの実施形態では、細孔は不均一で相互接続された多孔質ネットワークを含む。幾つかの実施形態では、相互接続された多孔質ネットワークによって細胞が成長及び増殖するための空間がもたらされ、そこに栄養分が到達し、廃棄物は拡散によって除去することができる。幾つかの実施形態では、少なくとも1個のプリント血管網経路によって血管組織及び細胞用の空間がもたらされ、血管組織及び細胞は多孔質ネットワーク内の細胞に栄養分を提供することができる。幾つかの実施形態では、細孔開口部は、足場の多孔質ネットワークへの細胞侵入を可能にするサイズである。
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、複合足場は、固体空間が複数の細孔を形成して取り囲む多孔質格子を含む。幾つかの実施形態では、固体空間は、足場又はそれを含むインプラントに対して支持、形状及び構造をもたらすように設計される。
幾つかの実施形態では、足場が多孔質ネットワークを含むように、固体空間は多孔質ネットワークを含むことができる。幾つかの実施形態では、足場が多孔質格子を含むように、固体空間が格子を含むことができる。幾つかの実施形態では、足場が編組格子を含むように、固体空間は編組格子を含むことができる。幾つかの実施形態では、足場が織り格子を含むように、固体空間は織り格子を含むことができる。幾つかの実施形態では、固体空間は一連の支柱を含むことができる。幾つかの実施形態では、固体空間は一連のフィラメントを含むことができる。幾つかの実施形態では、固体空間は一連の壁を含むことができる。幾つかの実施形態では、固体空間は、フィラメント、支柱、壁、織り格子又は編組格子の組み合わせを含むことができる。幾つかの実施形態では、フィラメント、支柱、壁、織り格子又は編組格子は、管状、正方形、長方形、三角形又は自由形状を含むことができる。幾つかの実施形態では、このようなフィラメント、支柱、壁、織り格子又は編組格子は湾曲させることができる。幾つかの実施形態では、このようなフィラメント、支柱、壁、織り格子又は編組格子は直線とすることができる。幾つかの実施形態では、このようなフィラメント、支柱、壁、織り格子又は編組格子は足場内で規則的に分布させることができる。幾つかの実施形態では、このようなフィラメント、支柱、壁、織り格子又は編組格子は足場内で不規則に分布させることができる。幾つかの実施形態では、このようなフィラメント、支柱、壁、織り格子又は編組格子は足場内において、ある領域では規則的に分布させ、他の領域では不規則に分布させることができる。幾つかの実施形態では、複合足場のフィラメント、支柱、壁、織り格子又は編組格子は、1個の多孔質壁又は複数の多孔質壁を形成し、内部空洞には存在しない。
幾つかの実施形態では、複合足場のフィラメント、支柱、格子又は壁の厚さは約1μm~約5μm、約1μm~約10μm、約5μm~約10μm、約5μm~約25μm、約5μm~約50μm、約10μm~約50μm、約10μm~約75μm、約10μm~約100μm、約25μm~約100μm、又は約50μm~約100μmである。幾つかの実施形態では、複合足場のフィラメント、支柱、格子又は壁の厚さは約1μm~約1000μm、約1μm~約500μm、約100μm~約1000μm、約50μm~約500μm、約500μm~約1000μm、約50μm~約250μm、約100μm~約500μm、約100μm~約750μm、約250μm~約750μm、約250μm~約1000μm、又は約50μm~約750μm(その間の中間値や部分範囲を含む)である。
幾つかの実施形態では、複合足場のフィラメント、支柱、格子又は壁の厚さは少なくとも1μm、少なくとも2μm、少なくとも3μm、少なくとも4μm、少なくとも5μm、少なくとも6μm、少なくとも7μm、少なくとも8μm、少なくとも9μm、少なくとも10μm、少なくとも20μm、少なくとも30μm、少なくとも40μm、少なくとも50μm、少なくとも60μm、少なくとも70μm、少なくとも80μm、少なくとも90μm、又は少なくとも100μmである。幾つかの実施形態では、複合足場のフィラメント、支柱、格子又は壁の厚さは少なくとも100μm、少なくとも200μm、少なくとも300μm、少なくとも400μm、少なくとも500μm、少なくとも600μm、少なくとも700μm、少なくとも800μm、少なくとも900μm、少なくとも1000μm、少なくとも250μm、少なくとも350μm、少なくとも450μm、少なくとも550μm、少なくとも650μm、少なくとも750μm、少なくとも850μm、少なくとも950μm、又は少なくとも150μmである。
幾つかの実施形態では、足場の多孔質ネットワーク、格子又は壁の細孔は均一な間隔で配置されている。幾つかの実施形態では、足場の多孔質ネットワーク、格子又は壁の細孔は反復パターンを有する。幾つかの実施形態では、足場の多孔質ネットワーク、格子又は壁の細孔は形状及びサイズが異なる。幾つかの実施形態では、多孔質ネットワーク、格子又は壁の細孔はサイズが一定である。
幾つかの実施形態では、足場の多孔質ネットワーク、格子又は壁の細孔は同一の形状を有する。幾つかの実施形態では、足場の多孔質ネットワーク、格子又は壁の細孔の形状は同一ではない。幾つかの実施形態では、細孔の形状は限定されず、任意の数の3D形状とすることができる。幾つかの実施形態では、細孔形状は多面体を含む。幾つかの実施形態では、細孔形状は立方体、角柱又は角錐を含む。幾つかの実施形態では、細孔形状としては、円形、正方形、長方形、楕円形、平行四辺形、三角形、十二面体(五角十二面体等)、3Dカゴメ、ダイヤモンド、八面体が挙げられるが、これらに限定されない。幾つかの実施形態では、細孔の形状は細胞遊走、細胞増殖、細胞分化及び組織成長を促進する。
幾つかの実施形態では、細孔形状が正方形又は長方形である場合、細孔の寸法は約50μm~200μm×約50μm~1000μmである。幾つかの実施形態では、細孔寸法は約50μm×50μm、又は50μm×100μm、又は50μm×150μm、又は50μm×200μm、又は50μm×250μm、又は50μm×300μm、又は50μm×350μm、又は50μm×400μm、又は50μm×450μm、又は50μm×500μm、又は50μm×550μm、又は50μm×600μm、又は50μm×650μm、又は50μm×700μm、又は50μm×750μm、又は50μ ×800μm、又は50μm×850μm、又は50μm×900μm、又は50μm×950μm、又は50μm×1000μmである。幾つかの実施形態では、細孔寸法は約100μm×100μm、又は100μm×150μm、又は100μm×200μm、又は100μm×250μm、又は100μm×300μm、又は100μm×350μm、又は100μm×400μm、又は100μm×450μm、又は100μm×1000μm、又は100μm×550μm、又は100μm×600μm、又は100μm×650μm、又は100μm×700μm、又は100μm×750μm、又は100μm×800μm、又は100μm×850μm、又は100μm×900μm、又は100μm×950μm、又は100μm×1000μmである。幾つかの実施形態では、細孔寸法は約150μm×150μm、又は150μm×200μm、又は150μm×250μm、又は150μm×300μm、又は150μm×350μm、又は150μm×400μm、又は150μm×450μm、又は150μm×500μm、又は150μm×550μm、又は150μm×600μm、又は150μm×650μm、又は150μm×700μm、又は150μm×750μm、又は150μm×800μm、又は150μm×850μm、又は150μm×900μm、又は150μm×950μm、又は150μm×1000μmである。幾つかの実施形態では、細孔寸法は約200μm×200μm、又は200μm×250μm、又は200μm×300μm、又は200μm×350μm、又は200μm×400μm、又は200μm×450μm、又は200μm×1000μmである。
幾つかの実施形態では、細孔開口部は、足場の多孔質ネットワークへの細胞の侵入を可能にするサイズである。幾つかの実施形態では、細孔開口部又は細孔直径は、約50μm~800μmである。幾つかの実施形態では、細孔の直径は約10μm~100μmである。幾つかの実施形態では、細孔の直径は、約100μm~700μmである。幾つかの実施形態では、細孔の直径は約150μm~600μmである。幾つかの実施形態では、細孔の直径は約200μm~550μmである。幾つかの実施形態では、細孔の直径は約250μm~500μmである。幾つかの実施形態では、細孔の直径は約300μm~450μmである。幾つかの実施形態では、細孔の直径は約350μm~400μmである。
幾つかの実施形態では、細孔の平均直径は約10μm、又は20μm、又は30μm、又は40μm、又は50μm、又は60μm、又は70μm、又は80μm、又は90μm、又は100μm、又は120μm、又は140μm、又は160μm、又は180μm、又は200μm、又は220μm、又は240μm、又は260μm、又は280μm、又は300μm、又は320μm、又は340μm、又は360μm、又は380μm、又は400μm、又は420μm、又は440μm、又は460μm、又は480μm、又は500μm、又は520μm、又は540μm、又は560μm、又は580μm、又は600μm、又は620μm、又は660μm、又は680μm、又は700μm、又は720μm、又は740μm、又は760μm、又は780μm、又は800μmである。
本明細書全体を通して、「μm」はマイクロメートルを意味し、本明細書では交換可能に「ミクロン」とも称される。
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、複合足場は、多孔質壁を形成する多孔質格子、又は複数の壁、例えば、多孔質ネットワークを形成する相互接続された壁を含み、本明細書において、各実施形態のいずれか及びそのいずれかの組み合わせに記載のように、各壁は複数の細孔で構成されている。
本明細書において、「多孔質格子」、「多孔質壁」及び「多孔質ネットワーク」という用語は、本明細書に記載の内部空洞を少なくとも部分的に囲む足場の部分を説明するのに交換可能に使用される。
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、足場は粗い表面を有する。幾つかの実施形態では、平均表面粗さ(Ra)は、約0.025マイクロメートル以上、例えば、約0.025~約50マイクロメートル、又は~約20マイクロメートルである。表面の粗さは、以下で更に詳述するように、例えば、折り畳まれた多孔質壁によって操作することができる(図15A~図15Cを参照)。
幾つかの他の実施形態では、足場は滑らかな表面を有する。
幾つかの実施形態では、足場はドーム形状を有する。幾つかの実施形態では、足場は自由形状を有する。幾つかの実施形態では、足場のサイズと形状はその使用用途に対応し、例えば、足場のサイズと形状は、特に移植対象の骨格によって決まる、足場を含むインプラントの所望のサイズと形状によって決まる。
幾つかの実施形態では、足場の体積は約1~約5mL、又は約5mL~約20mL、又は約20~約100mL、又は約100~約500mL、又は約50~約300mL(その間の中間値や部分範囲を含む)である。
幾つかの実施形態では、足場内の開空間は、少なくとも1個の空洞(例えば、本明細書に記載の内部空洞)と細孔を含む。幾つかの実施形態では、足場内の全開空間は体積が約1~約5mL、又は約5mL~約20mL、又は約20~約100mL、又は約100~約500mL(その間の中間値や部分範囲を含む)である。幾つかの実施形態では、足場内の開空間の総体積は500mLを超える。
幾つかの実施形態では、足場ネットワーク内の全開空間の体積(例えば、細孔と内部空洞の総体積)は、約1mL、2mL、3mL、4mL、5mL、6mL、7mL、8mL、9mL、10mL、11mL、12mL、13mL、14mL、15mL、16mL、17mL、18mL、19mL、20mL、25mL、30mL、35mL、40mL、50mL、60mL、70mL、80mL、90mL、100mL、110mL、120mL、130mL、140mL、150mL、160mL、170mL、180mL、190mL、200mL、210mL、220mL、230mL、240mL、250mL、260mL、270mL、280mL、290mL、300mL、350mL、400mL、450mL、又は500mLである。
幾つかの実施形態では、足場の体積は少なくとも1mL、少なくとも2mL、少なくとも3mL、少なくとも4mL、少なくとも5mL、少なくとも6mL、少なくとも7mL、少なくとも8mL、少なくとも9mL、少なくとも10mL、少なくとも11mL、少なくとも12mL、少なくとも13mL、少なくとも14mL、少なくとも15mL、少なくとも16mL、少なくとも17mL、少なくとも18mL、少なくとも19mL、少なくとも20mL、少なくとも25mL、少なくとも30mL、少なくとも35mL、少なくとも40mL、少なくとも50mL、少なくとも60mL、少なくとも70mL、少なくとも80mL、少なくとも90mL、少なくとも100mL、少なくとも110mL、少なくとも120mL、少なくとも130mL、少なくとも140mL、少なくとも150mL、少なくとも160mL、少なくとも170mL、少なくとも180mL、少なくとも190mL、少なくとも200mL、少なくとも210mL、少なくとも220mL、少なくとも230mL、少なくとも240mL、少なくとも250mL、少なくとも260mL、少なくとも270mL、少なくとも280mL、少なくとも290mL、少なくとも300mL、少なくとも350mL、少なくとも400mL、少なくとも450mL、又は少なくとも500mLである。
本明細書に記載の足場は、その中に内部空洞、例えば、本明細書に記載の多孔質壁によって少なくとも部分的に囲まれた内部空洞を含む。
幾つかの実施形態では、内部空洞の体積は約5mL~約300mL、又は約50~約250mL、又は約100~約200mL(その間の中間値や部分範囲を含む)である。幾つかの実施形態では、内部空洞の体積は、約20mL~約50mLである。幾つかの実施形態では、内部空洞の体積は約50mL~150mLである。幾つかの実施形態では、内部空洞の体積は約150mL~300mLである。
幾つかの実施形態では、内部空洞の体積は約50mL、60mL、70mL、80mL、90mL、100mL、110mL、120mL、130mL、140mL、150mL、160mL、170mL、180mL、190mL、200mL、210mL、220mL、230mL、240mL、250mL、260mL、270mL、280mL、290mL、300mL、又は350mLである。幾つかの実施形態では、内部空洞の体積は少なくとも50mL、少なくとも60mL、少なくとも70mL、少なくとも80mL、少なくとも90mL、少なくとも100mL、少なくとも110mL、少なくとも120mL、少なくとも130mL、少なくとも140mL、少なくとも150mL、少なくとも160mL、少なくとも170mL、少なくとも180mL、少なくとも190mL、少なくとも200mL、少なくとも210mL、少なくとも220mL、少なくとも230mL、少なくとも240mL、少なくとも250mL、少なくとも260mL、少なくとも270mL、少なくとも280mL、少なくとも290mL、少なくとも300mL、又は少なくとも350mLである。
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、内部空洞は少なくとも1個のチャンバを含む。本明細書において、「チャンバ」という用語は、例えば、本明細書に記載のマトリックスを含むことが可能な足場内(例えば、多孔質格子、ネットワーク又は壁内)の完全又は部分的に囲まれた空間又は区画を包含する。幾つかの実施形態では、内部空洞は最大20個のチャンバを含む。幾つかの実施形態では、内部空洞は最大30個のチャンバを含む。幾つかの実施形態では、内部空洞は1~30個のチャンバ、又は2~30個のチャンバを含む。幾つかの実施形態では、内部空洞は2~25個チャンバを含む。幾つかの実施形態では、内部空洞は2~15個のチャンバを含む。幾つかの実施形態では、内部空洞は10~30個のチャンバを含む。幾つかの実施形態では、内部空洞は10~20個のチャンバを含む。幾つかの実施形態では、内部空洞は15~30個のチャンバを含む。
幾つかの実施形態では、内部空洞は1個のチャンバ、又は2個のチャンバ、又は3個のチャンバ、又は4個のチャンバ、又は5個のチャンバ、又は6個のチャンバ、又は7個のチャンバ、又は8個のチャンバ、又は9個のチャンバ、又は10個のチャンバ、又は11個のチャンバ、又は12個のチャンバ、又は13個のチャンバ、又は14個のチャンバ、又は15個のチャンバ、又は16個のチャンバ、又は17個のチャンバ、又は18個のチャンバ、又は19個のチャンバ、又は20個のチャンバ、又は21個のチャンバ、又は22個のチャンバ、又は23個のチャンバ、又は24個のチャンバ、又は25個のチャンバ、又は26個のチャンバ、又は27個のチャンバ、又は28個のチャンバ、又は29個のチャンバ、又は30個のチャンバを含む。幾つかの実施形態では、内部空洞は少なくとも1個のチャンバ、少なくとも2個のチャンバ、少なくとも3個のチャンバ、少なくとも4個のチャンバ、少なくとも5個のチャンバ、少なくとも6個のチャンバ、少なくとも7個のチャンバ、少なくとも8個のチャンバ、少なくとも9個のチャンバ、少なくとも10個のチャンバ、少なくとも11個のチャンバ、少なくとも12個のチャンバ、少なくとも13個のチャンバ、少なくとも14個のチャンバ、少なくとも15個のチャンバ、少なくとも16個のチャンバ、少なくとも17個のチャンバ、少なくとも18個のチャンバ、少なくとも19個のチャンバ、少なくとも20個のチャンバ、少なくとも21個のチャンバ、少なくとも22個のチャンバ、少なくとも23個のチャンバ、少なくとも24個のチャンバ、少なくとも25個のチャンバ、少なくとも26個のチャンバ、少なくとも27個のチャンバ、少なくとも28個のチャンバ、少なくとも29個のチャンバ、少なくとも30個のチャンバを含む。
幾つかの実施形態では、内部空洞に2個以上のチャンバがある場合、チャンバは常にそのサイズ及び/又は形状が互いに異なっていてもよい。或いは、全てのチャンバは同一のサイズ及び/又は同一の形状を有する。
幾つかの実施形態では、内部空洞内に2個以上のチャンバがある場合、常に少なくとも2個、必要に応じて好ましくは全てのチャンバは、例えば、1個以上のチャネル又はトンネル、又は2個の(例えば、隣接する)チャンバを相互接続する他の中空構造によって相互接続される。幾つかの他の実施形態では、チャンバは直接接続されないが、その周辺の多孔質ネットワークによって接続される(例えば、その間の流体連通を可能にする)。幾つかの実施形態では、足場の内部空洞の幾つかのチャンバが相互接続されている。これらの実施形態の幾つかでは、チャンバの少なくとも2個、少なくとも幾つか、又は全ては少なくとも互いに流体連通しており、これは、例えば、1個以上のチャネル又はトンネル、又は2個の隣接するチャンバを相互接続し、その間の流体(例えば、血液及び/又はその成分)の流れを可能にする他の中空構造によって行われる。幾つかの実施形態では、2個以上のチャンバが相互接続され、細胞及び/又は他の生物学的成分を含む流体(例えば、液体)がその間を流れることが可能になる。
本明細書に記載の実施形態の幾つかでは、内部空洞の総体積は足場の総体積の約10~約90%(その間の中間値や部分範囲を含む)である。幾つかの実施形態では、内部空洞の総体積は足場の総体積の約10~約80%、又は約10~約70%、又は約10~約60%、又は約10~約50%、又は約10~約40%、又は約10~約30%、又は約10~約20%、又は約20~約90%、又は約20~約80%、又は約20~約70%、又は約20~約60%、又は約20~約50%、又は約20~約40%、又は約20~約30%、又は約30~約90%、又は約30~約90%、又は約30~約80%、又は約30~約70%、又は約30~約60%、又は約30~約50%、又は約30~約40%、又は約20~約90%、又は約20~約80%、又は約30~約70%、又は約30~約60%、又は約30~約50%、又は約30~約40%、又は約40~約90%、又は約40~約80%、又は約40~約70%、又は約40~約60%、又は約40~約50%、又は約50~約90%、又は約50~約80%、又は約50~約70%、又は約50~約60%、又は約60~約90%、又は約60~約80%、又は約60~約70%、又は約70~約90%、又は約70~約80%、又は約80~約90%である。
本明細書に記載の実施形態の幾つかでは、本明細書に記載の足場は、内部空洞を足場の最外面(例えば、多孔質格子、ネットワーク又は壁の最外面)と接続する少なくとも1個の注入ポートを含む。当業者であれば、「注入ポート」という用語が、本明細書に詳述するように、細胞、組織又はマトリックス等の物質の注入を可能にする穴、開口部又はオリフィスを意味することを理解するであろう。
幾つかの実施形態では、注入ポート開口部は、本明細書において各実施形態のいずれかに記載のように、細胞又は組織の注入及び/又はマトリックス注入用の針又はカニューレの挿入を可能にするサイズである。
幾つかの実施形態では、注入ポートは、適切な注入装置を使用して注入可能な直径を有する。幾つかの実施形態では、そのような装置としては、針、カニューレ、尖ったプラスチック先端アプリケータ、リザーバ、ステント、プランジャ、放出システム及びシリンジが挙げられるが、これらに限定されない。例示的な実施形態では、装置は最大20ゲージ又は最大18ゲージの針を有し、注入ポートの直径はそれに応じて設計される。
幾つかの実施形態では、注入ポートは、本明細書に詳述するように、マトリックスの注入を可能にする直径を有する。幾つかの実施形態では、注入ポートは、本明細書に記載のように、ECM成分、細胞及び/又は組織の注入を可能にする直径を有する。
幾つかの実施形態では、注入ポートは直径が約0.3mm~約3mm(その間の中間値や部分範囲を含む)である。幾つかの実施形態では、注入ポートは直径が約0.2mm~約2.5mmである。幾つかの実施形態では、注入ポートは直径が約0.5mm~約1mmである。幾つかの実施形態では、注入ポートは直径が約0.5mm~約2mmである。
幾つかの実施形態では、注入ポートは直径が0.2mm、0.3mm、0.4mm、0.5mm、0.6mm、0.7mm、0.8mm、0.9mm、1.0mm、1.2mm、1.3mm、1.4mm、1.5mm、1.6mm、1.7mm、1.8mm、1.9mm、2.0mm、2.1mm、2.2mm、2.3mm、2.4mm、2.5mm、2.6mm、2.7mm、2.8mm、2.9mm、又は3mmである。幾つかの実施形態では、注入ポートは直径が少なくとも0.2mm、少なくとも0.3mm、少なくとも0.4mm、少なくとも0.5mm、少なくとも0.6mm、少なくとも0.7mm、少なくとも0.8mm、少なくとも0.9mm、少なくとも1.0mm、少なくとも1.2mm、少なくとも1.3mm、少なくとも1.4mm、少なくとも1.5mm、少なくとも1.6mm、少なくとも1.7mm、少なくとも1.8mm、少なくとも1.9mm、少なくとも2.0mm、少なくとも2.1mm、少なくとも2.2mm、少なくとも2.3mm、少なくとも2.4mm、少なくとも2.5mm、少なくとも2.6mm、少なくとも2.7mm、少なくとも2.8mm、少なくとも2.9mm、又は少なくとも3mmである。
幾つかの実施形態では、対象への移植前にマトリックスを足場に充填し、その際少なくとも1個の注入ポートを介して注入を行う。幾つかの実施形態では、対象への足場の移植後に、足場の少なくとも1個の注入ポートを使用してマトリックスを足場に注入する。
幾つかの実施形態では、足場は最大20個の注入ポートを含む。幾つかの実施形態では、足場は最大30個の注入ポートを含む。幾つかの実施形態では、足場は1~20個の注入ポート(その間の中間値や部分範囲を含む)を含む。幾つかの実施形態では、足場は10~30個の注入ポートを含む。幾つかの実施形態では、足場は1~30個の注入ポート(その間の中間値や部分範囲を含む)を含む。幾つかの実施形態では、足場は5~25個の注入ポートを含む。幾つかの実施形態では、足場は1~15個の注入ポートを含む。幾つかの実施形態では、足場は20~30個の注入ポートを含む。幾つかの実施形態では、足場は10~20個の注入ポートを含む。幾つかの実施形態では、足場は15~30個の注入ポートを含む。
幾つかの実施形態では、足場は1個の注入ポート、2個の注入ポート、3個の注入ポート、4個の注入ポート、5個の注入ポート、6個の注入ポート、7個の注入ポート、8個の注入ポート、9個の注入ポート、10個の注入ポート、11個の注入ポート、12個の注入ポート、13個の注入ポート、14個の注入ポート、15個の注入ポート、16個の注入ポート、17個の注入ポート、18個の注入ポート、19個の注入ポート、又は20個の注入ポートを含む。幾つかの実施形態では、足場は少なくとも1個の注入ポート、少なくとも2個の注入ポート、少なくとも3個の注入ポート、少なくとも4個の注入ポート、少なくとも5個の注入ポート、少なくとも6個の注入ポート、少なくとも7個の注入ポート、少なくとも8個の注入ポート、少なくとも9個の注入ポート、少なくとも10個の注入ポート、少なくとも11個の注入ポート、少なくとも12個の注入ポート、少なくとも13個の注入ポート、少なくとも14個の注入ポート、少なくとも15個の注入ポート、少なくとも16個の注入ポート、少なくとも17個の注入ポート、少なくとも18個の注入ポート、少なくとも19個の注入ポート、又は少なくとも20個の注入ポートを含む。
本明細書に記載の実施形態の幾つかでは、足場は、足場の最外面の少なくとも一部を足場の内腔と接続する少なくとも1個の血管網経路を含む。これらの実施形態の幾つかによれば、血管網経路はプリント血管網経路である、即ち、本明細書に記載の複合足場と共に、本明細書に記載の積層造形によってバイオプリント又はその他で製造されたものである。これらの実施形態の幾つかによれば、血管網経路は、血管細胞及び組織の侵入を可能にするサイズである。幾つかの実施形態では、血管網経路は、それを含むインプラントを対象に移植する際に足場の血管新生を促進するように構成される。具体的には、血管網経路は、対象の血管網の足場への成長を促進するように構成される。足場の血管新生は、インプラント内の細胞と組織の成長を促進する。対象の血管網によって、本明細書に詳述のもの等、足場内の細胞と組織に酸素や他の栄養分が効率的に供給される。更に、対象の血管網によって、細胞廃棄物や細片の効率的な放出点がもたらされ、血管網によって、インプラントの領域から細胞廃棄物及び/又は細片を効率的に除去することができる。幾つかの実施形態では、血管網経路は、外科的処置による対象の血管への吻合を可能にするように設計及び構成されている。
幾つかの実施形態では、本明細書に記載の3Dバイオプリント分解性インプラントを対象に移植すると、プリント血管網経路は吻合によって対象の血管と外科的に結合することができる。幾つかの実施形態では、対象の血管は、足場の内部空洞内の細胞と組織が酸素や栄養分の一定の供給を受けるように、プリント血管網経路の少なくとも1個を介して結合する。
幾つかの実施形態では、足場は最大1000個の血管網経路を含む。幾つかの実施形態では、足場は1~約1,000個のプリント血管網経路(その間の中間値や部分範囲を含む)を含む。幾つかの実施形態では、足場は約10~約1000個の血管網経路を含む。幾つかの実施形態では、足場は1~約200個の血管網経路を含む。幾つかの実施形態では、足場は200~500個の血管網経路を含む。幾つかの実施形態では、足場は800~1000個の血管網経路を含む。幾つかの実施形態では、足場は500~800個の血管網経路を含む。幾つかの実施形態では、血管網経路の数は1~約100個である。幾つかの実施形態では、血管網経路の数は約100~約200個である。幾つかの実施形態では、血管網経路の数は約200~約300個である。幾つかの実施形態では、血管網経路の数は約300~約400個である。幾つかの実施形態では、血管網経路の数は約400~約500個である。幾つかの実施形態では、血管網経路の数は約500~約600個である。幾つかの実施形態では、血管網経路の数は約600~約700個である。いくつかの実施形態では、血管網経路の数は約700~約800個である。幾つかの実施形態では、血管網経路の数は約800~約900個である。幾つかの実施形態では、血管網経路の数は約900~約1000個である。
ここで図8Bを参照すると、本開示の幾つかの実施形態に係る例示的な3D足場10を示す。図示された実施形態(これに限定されるとは見なされるべきではない)では、足場10はドーム状であるが、他の形状も企図される。図示のドーム状の3D足場10は、約10mm×10mmの横寸法と約6.0mmの高さを有するが、他の寸法も企図される。足場10は多孔質であることが好ましい。図示の実施形態(これに限定されるとは見なされるべきではない)では、足場10の細孔12は正方形の細孔であるが、他の形状も企図される。この例示的な足場では、細孔12の寸法は約0.5mm×0.5mmであるが、他の寸法も企図される。
幾つかの実施形態では、足場10は多孔質ネットワーク(例えば、格子、格子によって少なくとも部分的に囲まれた内部空洞、及び内部空洞を足場の最外面と接続する少なくとも1個の注入ポートが挙げられるが、これらに限定されない)を含み、注入ポート開口部は注入装置(例えば、細胞又は組織注入用のカニューレ等が挙げられるが、これに限定されない)の挿入を可能にするサイズである。幾つかの実施形態では、足場は、本明細書において各実施形態のいずれかに記載のように、足場内に内部空洞を含む。
内部空洞を使用する実施形態における足場10の代表例を図10に概略的に示す。足場10の壁14が示すが、この壁14は必要に応じて多孔質であることが好ましく、内部空洞16は壁14内で少なくとも部分的に囲まれている。図10に示す内部空洞16は複数の接続ローブの形態であるが、本発明の幾つかの実施形態によれば、内部空洞16の他の形状も企図される。数個の注入ポート18も図示する。3個の注入ポートを図10に示すが、足場10は、本明細書に記載のように任意の数の注入ポートを含むことができ、いずれかのポートを欠いた構成も挙げられる。注入ポート18の少なくとも1個は、空洞16に材料を注入する注入装置20を受け入れるサイズである。図10には注入装置20としてシリンジを示すが、材料を注入するのに適したいずれかの装置(例えば、本明細書に記載のカニューレやピペット等が挙げられるが、これらに限定されない)を使用することができる。通常、注入装置20は空洞16に本明細書に記載のマトリックスを注入する。図10に示す非限定的な例としては、装置20はrhコラーゲン系マトリックス中SVFを注入する。
本発明の幾つかの実施形態では、本明細書において各実施形態のいずれか及びそのいずれかの組み合わせに記載のように、足場10の壁14は血管網22を含む。血管網22は壁14の最外面24を内部空洞16と局所的に接続する。好ましくは、血管網22は、血管成分、細胞及び組織が空洞16に侵入するのを可能にする大きさである。
本実施形態に適した別の構成を図14A~Dに示すが、これらは足場10の側面図(図14A)、上面図(図14B)、斜視図(図14C)及び代表的な画像(図14D)である。この構成では、足場10は複数の内部空洞16a、16b、16cを含み、これらは相互接続されるのが好ましい。図14A~Dに示す足場の総体積は通常、約160mL~約180mL、例えば、約168mLである。内部空洞16a、16b、16cの総体積は通常、足場の総体積の約30%~約50%、例えば、約40%である。例えば、足場の総体積が約168mLである場合、内部空洞の総体積は約49mLとすることができる。
更なる例示的実施形態を図15A~図15Cに示すが、これらは足場10の上面図(図15A)及び側面図(図15B~図15C)の概略図である。この実施形態では、足場10は、例えば、組織内部成長を増強するために、足場の表面積を増加させる襞を含む(破線で示す)。図15Aでは、空洞16を中央に示すが、空洞16が中央にない実施形態も企図される。図15A~図15Cに示す足場の横寸法は約10mm×10mmであり、高さは約5mmである。
バイオプリント複合足場の調製:
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、本明細書に記載の3D複合足場は、積層造形、例えば、3Dバイオプリンティングによって形成する。この3D複合足場(本明細書全体を通して単に「足場」又は「複合足場」、又はバイオプリント足場、又はバイオプリント複合足場、又は3Dバイオプリント複合足場、又は3Dバイオプリント足場とも称される)は、本明細書に記載のように、バイオプリンティング等の積層造形プロセスで形成された複合足場を包含する。
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、バイオプリント複合足場は、本明細書に記載のように、複合足場を含む軟部組織インプラントの所望の形状と寸法に概ね対応する構成パターンで硬化性配合物をバイオプリンティングすることによって形成し、複合足場は、本明細書において各実施形態のいずれか又はそのいずれかの組み合わせに記載のように、多孔質格子又は壁と、内部空洞と、1個以上の注入ポートとを含み、必要に応じて血管網経路を含む。
幾つかの実施形態では、3D足場のバイオプリンティングは、デジタルライトプロセッシング(DLP)、ステレオリソグラフィー(SLA)、インクジェットプリンタ、レーザープリンタ又は押出プリンタ、バイオプリンタ又はバイオプリンティングシステム等の製造システムによる、生物学的成分を含むバイオインク配合物を使用した製造プロセスを伴う。幾つかの実施形態では、3D足場デザインは、印刷に使用されるステレオリソグラフィー(STL)等の印刷可能なデジタルフォーマットに変換される。当業者であれば、本明細書に開示の3D足場及びインプラントのバイオプリンティングをサポートする利用可能な技術と市販のバイオプリンタに精通しているであろう。
当業者であれば、バイオプリント3D複合足場が、多孔質格子と、足場内の内部空洞と、内部空洞を足場の最外面と接続する少なくとも1個の注入ポートとを含む形態であり、注入ポートは、細胞又は組織注入用カニューレが挿入可能なサイズであることを理解するであろう。多孔質格子、内部空洞、血管網経路及び少なくとも1個の注入ポートの特徴は上で詳述されており、その説明も本明細書に十分盛り込まれている(例えば、形状、サイズ、生物学的特性、内部空洞チャンバの数、空洞体積、ポートの数、及び細孔サイズが挙げられるが、これらに限定されない)。
本発明の幾つかの実施形態の一様相によれば、本明細書において各実施形態のいずれか及びそのいずれかの組み合わせに記載の3次元複合足場の積層造形(AM)のプロセス(方法)が提供される。この様相の実施形態によれば、この方法は、本明細書において各実施形態のいずれか及びそのいずれかの組み合わせに記載のように、複合足場のサイズ、形状及び他の全ての特徴に対応する構成パターンで複数の層を連続的に形成して複合足場を形成することによって行う。この様相の実施形態によれば、各層の形成は、少なくとも1種の未硬化構築材料を分注し、分注した構築材料を硬化条件に曝露して、複合足場の少なくとも一部を構成する固化(硬化)材料を形成することによって行う。
幾つかの実施形態では、3Dバイオプリント複合足場を調製する方法は、以下で更に詳述するように、例えば、複合足場を光源で照射して、分注層を硬化条件に供する工程を更に含む。
本明細書全体を通して、「構築材料」という語句は「未硬化構築材料」又は「未硬化構築材料配合物」という語句を包含し、本明細書に記載のように層を連続的に形成して分注される材料をまとめて説明する。この語句は、最終物体(複合足場)を形成する未硬化材料、即ち、1種以上の未硬化モデリング材料配合物を包含し、場合によっては、支持体を形成するのに使用する未硬化材料、即ち、未硬化支持材料配合物も包含する。構築材料には、好ましくはプロセス中に如何なる変化も受けない(又は受けようとしない)非硬化性材料、例えば、(本明細書に記載の硬化性コラーゲン以外の)生物学的材料又は成分及び/又は本明細書に記載の他の剤又は添加剤も包含される。
本明細書に記載のように層を連続的に形成するのに分注する構築材料は、本明細書では「印刷媒体」又は「バイオプリンティング媒体」又は「バイオインク」とも交換可能に称される。
未硬化構築材料は1種以上のモデリング材料配合物を含むことができ、未硬化構築材料の分注は、異なるモデリング配合物の固化(例えば、硬化)時に物体の異なる部分が形成され、従って、異なる部分が異なる固化(例えば、硬化)モデリング材料、又は固化(例えば、硬化)モデリング材料の異なる混合物で形成されるように行うことができる。
本実施形態の方法では、本明細書に記載のように、足場の所望の形状、サイズ及び他の全ての特徴に対応する構成パターンで複数の層を形成することによって3次元複合足場を層状に製造する。
各層の形成は、2次元表面をスキャンしてそれをパターン化する積層造形装置によって行う。スキャン中に、装置は2次元の層又は表面の複数の標的位置に向かい、プリセットアルゴリズムに従って、各標的位置又は標的位置の群に関して、その標的位置又は標的位置の群が構築材料で占有されているかどうか、また、どの種類の構築材料をそこへ送達させるかを決定する。この決定は表面のコンピュータ画像に従って行われる。
AMを3次元インクジェット印刷によって行う場合、本明細書で定義の未硬化構築材料を1組のノズルを有する分注ヘッドから分注し、構築材料を支持構造上に層状に堆積させる。従って、AM装置は占有対象の標的位置に構築材料を分注し、他の標的位置を空けたままにする。装置は通常、複数の分注ヘッドを有しており、各分注ヘッドは、異なる構築材料(例えば、異なるモデリング材料配合物(各々は異なる生物学的成分、又は異なる硬化性材料、又は異なる濃度の硬化性材料を含む)及び/又は異なる支持材料配合物)を分注するように構成されている。従って、異なる標的位置は、異なる構築材料(例えば、本明細書で定義のモデリング配合物及び/又は支持配合物)で占有させることができる。
最終3次元物体(複合足場)は、固化モデリング材料、又は固化モデリング材料の組み合わせ、又は固化モデリング材料と支持材料の組み合わせ、又はそれらの変更物(例えば、硬化後の)で形成されている。このような操作は全て、積層造形(固体自由成形としても知られている)の当業者には良く知られている。
本発明の幾つかの例示的な実施形態では、2種以上の異なるモデリング材料配合物を含む構築材料を分注(各モデリング材料配合物はAM装置の異なる分注ヘッドから分注)して複合足場を製造する。モデリング材料配合物は、必要に応じて、好ましくは、分注ヘッドを同様に通過時に層状に堆積させる。層内のモデリング材料配合物及び/又は配合物の組み合わせは、物体(複合足場)の所望の特性に従って選択する。
本発明の幾つかの実施形態に係る例示的なプロセスは、本明細書に記載のように、複合足場の形状、サイズ及び他の全ての特徴に対応する3D印刷データを受信することによって開始する。データは、例えば、コンピュータ物体データに基づく製造指示に関するデジタルデータを送信するホストコンピュータから受信することができ、そのデータの形式は、例えば、標準テッセレーション言語(STL)又はステレオリソグラフィー輪郭(SLC)フォーマット、仮想現実モデリング言語(VRML)、積層造形ファイル(AMF)フォーマット、図面交換フォーマット(DXF)、ポリゴンファイルフォーマット(PLY)、医用におけるデジタル画像と通信(DICOM)又はコンピュータ支援設計(CAD)に適した他の任意のフォーマットとすることができる。
印刷データに従って、1個以上の分注(例えば、印刷)ヘッドを使用し、受取媒体上に本明細書に記載のように構築材料を層状に分注することによってプロセスが継続する。
用いる積層造形方法と選択の構成に応じて、液滴又は連続流の形態で分注を行うことができる。
受取媒体は、印刷システムのトレイ、又は生体適合性材料で形成又は被覆された支持体又は媒体、例えば、バイオプリンティングで一般に使用される支持媒体又は物品、又は事前に堆積した層とすることができる。
幾つかの実施形態では、受取媒体は、印刷物体を埋め込む型としての犠牲ヒドロゲル又は他の生体適合性材料を含み、その後、化学的、機械的又は物理的(例えば、加熱又は冷却)手段によって除去される。このような犠牲ヒドロゲルは、例えば、プルロニック材料又はゼラチンで形成することができる。
一旦未硬化構築材料が3Dデータに従って受取媒体上に分注されると、必要に応じて好ましくは、分注された配合物の固化によって方法が継続する。幾つかの実施形態では、堆積した層を硬化条件に曝露することによってプロセスが継続する。好ましくは、硬化条件を各層に適用することは、この層の堆積後且つ前の層の堆積前に行う。
本明細書で使用される「硬化」という用語は、配合物が固化するプロセスを表す。配合物の固化は通常、配合物の粘度の上昇及び/又は配合物の貯蔵弾性率(G’)の上昇を伴う。幾つかの実施形態では、液体として分注される配合物は、固化すると固体又は半固体(例えば、ゲル)になる。半固体(例えば、柔らかいゲル)として分注される配合物は、固化すると固体になるか、より硬い又はより強い半固体(例えば、強いゲル)になる。
本明細書で使用される「硬化」という用語は、例えば、モノマー材料及び/又はオリゴマー材料の重合及び/又はポリマー鎖の架橋(硬化前に存在するポリマーの架橋又はモノマー又はオリゴマーの重合で形成されるポリマー材料の架橋)を包含する。従って、硬化反応の生成物は通常、ポリマー材料及び/又は架橋材料である。本明細書で使用されるこの用語は、部分硬化、例えば、配合物の少なくとも20%又は少なくとも30%又は少なくとも40%又は少なくとも50%又は少なくとも60%又は少なくとも70%の硬化も包含すると共に、配合物の100%の硬化も包含する。
本明細書における「硬化に影響を及ぼす条件」又は「硬化を誘発するための条件」という語句は、本明細書では「硬化条件」又は「硬化誘発条件」とも交換可能に称せられ、硬化性材料を含む配合物に適用された際に本明細書で定義の硬化を誘発する条件を表す。このような条件としては、例えば、以下に記載のような硬化性材料への硬化エネルギーの印加、及び/又は硬化性材料と化学反応性成分(例えば、触媒、共触媒及び活性化剤)との接触を挙げることができる。
硬化を誘発する条件に硬化エネルギーの印加が含まれる場合、「硬化条件に曝露する」という語句とその文法的転用は、分注した層を硬化エネルギーに曝露することを意味し、曝露は通常、分注した層に硬化エネルギーを印加して行う。
「硬化エネルギー」は通常、放射線の印加及び/又は熱の印加を包含する。
放射線は、硬化する材料に応じて、電磁放射線(例えば、紫外線又は可視光線)、又は電子ビーム放射線、又は超音波放射線又はマイクロ波放射線とすることができる。放射線の印加(又は照射)は適切な放射線源によって行う。例えば、本明細書に記載のように、紫外線源又は可視光源又は赤外線源又はキセノン光源又は水銀光源又はランプ光源又はLED光源を使用することができる。
放射線に曝露すると硬化する硬化性材料又は系は、本明細書では「光重合性」又は「光活性化可能」又は「光硬化性」と交換可能に称される。
硬化エネルギーが熱を含む場合、硬化は本明細書及び当技術分野では「熱硬化」とも称され、熱エネルギーの印加を包含する。本明細書に記載のように、例えば、層が分注される受取媒体又は受取媒体を収容するチャンバを加熱することによって熱エネルギーの印加を行うことができる。幾つかの実施形態では、抵抗加熱器を使用して加熱を行う。
幾つかの実施形態では、分注した層に熱誘導放射線を照射して加熱を行う。このような照射は、例えば、堆積層上に放射線を放出するように作動するIRランプ又はキセノンランプによって行うことができる。
幾つかの実施形態では、セラミックランプ、例えば、約3μmから約4μm(例えば、約3.5μm)の赤外線放射をもたらすセラミックランプによる赤外線放射によって加熱を行う。
熱に曝露すると硬化する硬化性材料又は系は、本明細書では「熱硬化性」又は「熱活性化可能」又は「熱重合性」と称される。
本明細書に記載の実施形態の幾つかでは、分注した配合物を固化することは、本明細書で各実施形態のいずれかに記載の硬化条件、例えば、照射(照明)に対して分注した配合物を曝露することを含む。
幾つかの実施形態では、硬化条件への曝露は、短時間、例えば、3分未満、300秒未満、例えば、10秒~240秒、又は10秒~120秒、又は10秒~60秒の期間(その間の中間値や部分範囲を含む)に亘って行う。
本明細書に記載の実施形態の幾つかでは、本方法は、支持材料配合物が構築材料に含まれる場合、支持材料配合物の除去の前又は後に硬化モデリング材料配合物を後処理条件に曝露することを更に含む。後処理条件は通常、硬化モデリング材料を更に固化させることを目的としている。幾つかの実施形態では、部分的に硬化した配合物を後処理によって固化させて、完全に硬化した配合物を得る。
幾つかの実施形態では、本明細書で各実施形態のいずれかに記載のように、熱又は放射線への曝露によって後処理を行う。
幾つかの実施形態では、異なる分注ヘッドから異なる配合物を分注して複合足場を製造することが企図される。このような実施形態では、特に、所定数の配合物から配合物を選択し、選択した配合物とその特性の所望の組み合わせを定める能力が提供される。
本実施形態によれば、層において各配合物を堆積する空間位置を決める際には、異なる配合物が異なる3次元空間位置を占有するように行うか、又は2種以上の異なる配合物が実質的に同じ3次元位置又は隣接する3次元位置を占有して、堆積後に層内で配合物の空間的組み合わせが可能となるように行う。
従って、本実施形態では、広範囲の材料の組み合わせを堆積することができると共に、物体の各部分を特徴付けるのに望ましい特性に従って、物体の異なる部分が複数のモデリング材料配合物の異なる組み合わせから成る物体を製造することができる。
積層造形で利用されるシステムには、受取媒体と1個以上の分注ヘッドが含まれていてもよい。受取媒体は、例えば、印刷ヘッドから分注された材料を運ぶ水平面を有し得る製造トレイとすることができる。幾つかの実施形態では、受取媒体は、本明細書に記載のように、生体適合性材料で形成又は被覆されている。
分注ヘッドは、例えば、分注ヘッドの長手方向軸に沿って1列以上のアレイに配置された複数の分注ノズルを有する印刷ヘッドとすることができる。分注ヘッドは、その長手方向軸が割出方向と実質的に平行になるように設置することができる。
積層造形システムは、AMプロセス、例えば、所定のスキャン計画(例えば、標準テッセレーション言語(STL)フォーマットに変換され、制御装置にプログラムされたCAD構成)に従った分注ヘッドの動作を制御するマイクロプロセッサ等の制御装置を更に含むことができる。分注ヘッドは複数の噴射ノズルを含むことができる。噴射ノズルによって材料が受取媒体上に分注され、3D物体の断面を表す層が形成される。
分注ヘッドに加えて、分注した構築材料を硬化させるための硬化エネルギー源を設けることができる。硬化エネルギーは通常、放射線であり、例えば、紫外線又は熱放射線である。或いは、電磁放射線又は熱放射線以外の硬化条件を提供する手段、例えば、分注した構築材料を冷却する手段又は硬化を促進する試薬と構築材料を接触させる手段を設けることができる。
更に、AMシステムは、堆積と少なくとも部分的な固化を行った後、次の層を堆積する前に、各層の高さを平準化及び/又は規定するための平準化装置を含むことができる。
本実施形態によれば、本明細書に記載の積層造形方法は、生物学的物体をバイオプリンティングするためのものである。
本明細書で使用される「バイオプリンティング」とは、本明細書に記載の自動化又は半自動化のコンピュータ支援積層造形システム(例えば、バイオプリンタ又はバイオプリンティングシステム)と適合する方法によって、本明細書に記載の生物学的成分を含む1種以上の硬化性(例えば、モデリング)配合物(バイオインク配合物)を利用しながら積層造形プロセスを実行することを意味する。
本明細書全体を通して、「モデリング材料配合物」という語句(本明細書では「モデリング配合物」又は「モデリング材料組成物」又は「モデリング組成物」、又は単に「配合物」又は「組成物」とも交換可能に称される)は、本明細書に記載のように、最終物体(複合足場)を形成するために分注される未硬化構築材料(印刷媒体)の一部又は全てを表す。モデリング配合物は未硬化で硬化性のモデリング配合物であり、硬化条件に曝露すると、物体(複合足場)又はその一部を形成する。
バイオプリンティングという観点から、未硬化構築材料は、1種以上の生物学的成分又は材料(例えば、本明細書に記載の硬化性rhコラーゲン)を含む少なくとも1種のモデリング配合物を含み、本明細書及び当技術分野では「バイオインク」又は「バイオインク配合物」とも称される。
幾つかの実施形態では、バイオプリンティングは、好ましくは本明細書に記載の3次元印刷データに従った構成パターンでの未硬化構築材料の複数の層の連続形成を含む。形成された層の少なくとも1個、好ましくは大部分又は全ては(固化又は硬化前に)本明細書に記載の1種以上の生物学的成分(例えば、本明細書に記載の硬化性rhコラーゲン)を含む。必要に応じて、形成された層の少なくとも1個は(固化又は硬化前に)1種以上の非生物学的硬化性材料、及び/又は非硬化性生物学的又は非生物学的成分、好ましくは、印刷媒体及び/又はバイオインク中の生物学的成分(例えば、コラーゲン)の生物学的及び/又は構造的特徴に干渉しない(例えば、悪影響を及ぼさない)生体適合性材料を含む。
幾つかの実施形態では、バイオインク又は印刷媒体中の成分、例えば、非硬化性及び硬化性材料、及び/又は硬化を行うために適用される硬化条件は、バイオインク又は印刷媒体中の生物学的成分の構造的及び/又は機能的特性に大きく影響を及ぼさないように選択する。
本明細書に記載の実施形態の幾つかでは、構築材料(例えば、印刷媒体)はモデリング材料配合物(バイオインク)と必要に応じて支持材料配合物を含み、これらは全て、生物学的成分の生物学的及び/又は構造的特徴に干渉しない材料又はその材料の組み合わせを含むように選択する。
本明細書に記載の実施形態の幾つかでは、バイオプリンティング方法は、バイオインク中の生物学的成分の構造的及び/又は機能的特性に大きく影響を及ぼさない条件下で層を形成するように構成する。
幾つかの実施形態では、本明細書に記載のバイオプリンティングプロセス/方法を行うためのバイオプリンティングシステムは、バイオインク中の生物学的成分の構造的及び/又は機能的特性に大きく影響を及ぼさない条件下で層を形成できるように構成する。
本明細書に記載の実施形態の幾つかでは、積層造形(例えば、バイオプリンティング)プロセス及びシステムは、プロセスパラメータ(例えば、温度、せん断力、せん断歪み速度)が生物学的成分の機能的及び/又は構造的特徴に干渉しない(実質的に影響を及ぼさない)ように構成する。
本明細書に記載の実施形態の幾つかでは、積層造形プロセス(バイオプリンティング)は、少なくとも10℃又は少なくとも20℃の温度、例えば、約10~約40℃の範囲の温度、好ましくは約10℃~37℃、又は約20℃~37℃、又は約20℃~約30℃、又は約20℃~約28℃、又は約20℃~約25℃(その間の中間値や部分範囲を含む)、又は室温、又は37℃で行う。
本明細書に記載の実施形態の幾つかでは、上述の温度/温度範囲は、構築材料(例えば、少なくとも本明細書に記載の生物学的成分を含むモデリング材料配合物)を分注する温度であり、即ち、AMシステム内の分注ヘッドの温度及び/又は分注ヘッド内を通過する前にモデリング材料配合物が保持される温度である。
本明細書に記載の実施形態の幾つかでは、AMプロセスは、AMシステム(例えば、分注ヘッド及び/又はモデリング材料配合物)を室温未満の温度、例えば、20℃未満又は10℃未満の温度、又は5℃未満(例えば、4℃)まで冷却せずに行う。
本明細書に記載の実施形態の幾つかでは、AMシステムには、システム又はその一部(例えば、分注ヘッド及び/又はモデリング材料配合物)を室温未満の温度、例えば、20℃未満又は10℃未満の温度、又は5℃未満(例えば、4℃)まで冷却する手段がない。
本明細書に記載の実施形態の幾つかでは、生物学的成分(例えば、細胞)の構造的及び/又は機能的特性に悪影響を及ぼさないせん断力を印加しながら、積層造形プロセス(バイオプリンティング)を行う。せん断力の印加は、構築材料(例えば、少なくとも本明細書に記載の生物学的成分を含むモデリング材料配合物)を分注ヘッドに通すことによって行うことができ、構築材料をせん断力に付すとも見なされるべきである。
幾つかの実施形態によれば、バイオインクに含まれる生物学的成分の機能的及び/又は構造的特徴に影響を及ぼさない条件下(例えば、低せん断力及び室温又は生理学的温度)でAMバイオプリンティングプロセスを行いながら、必要な流動性(流動性を付与する粘度、例えば、10,000センチポアズ未満又は5,000センチポアズ未満、又は2,000センチポアズ未満)を維持し、更に分注した構築材料の硬化性を維持する。
バイオプリンティング方法及び対応するシステムは、積層造形を行うための当技術分野で既知の方法とシステムのいずれかとすることができ、そのようなシステムと方法の例は上述されている。適切な方法とシステムは、解像度、堆積速度、拡張性、バイオインク適合性及び使い易さ等の印刷機能を考慮して選択することができる。
例えば、適切なバイオプリンティングシステムは通常、分注システム(温度制御モジュールを備えるか又は常温)、ステージ(受取媒体)、及びCAD-CAMソフトウェアで指示されるx軸、y軸及びz軸に沿った動作を含む。形成された層の硬化を促進するように硬化エネルギー(例えば、光線又は熱放射線を印加)又は硬化条件を堆積領域(受取媒体)に適用する硬化源(例えば、光源又は熱源)及び/又は加湿器もシステムに含めることができる。複数の分注ヘッドを使用して数種の材料の連続分注を容易にするプリンタが存在する。
一般に、バイオプリンティングは、積層造形に関する既知の技術を用いて行うことができる。以下に幾つかの例示的な積層造形技術を列挙するが、他の如何なる技術も企図され
る。
3Dインクジェット印刷:
3Dインクジェット印刷は、非生物学的用途と生物学的(バイオプリンティング)用途の両方に使用される一般的な3Dプリンタである。インクジェットプリンタは、熱又は音響の力を利用して、最終構造の一部を支持又は形成することができる基材上に液滴を噴射する。この技術では、制御された量の液体が所定の場所に送られ、(1)インク滴の位置と(2)インク量が精密に制御された高解像度印刷(これは、微細構造印刷の場合、又は少量の生体反応性の剤又は薬物を添加する際に有益となる)を受け取る。インクジェットプリンタは、例えば、複数種の生物学的成分及び/又は生物活性剤を含む数種のインクで使用できる。更に、印刷は高速であり、培養プレートに応用できる。
3Dインクジェット印刷システムを利用するバイオプリンティング方法は、本明細書に記載の1種以上のバイオインクモデリング材料配合物を使用し、3D印刷データに従って、1個以上のインクジェット印刷ヘッドを使用して受取媒体上に配合物の液滴を層状に分注して行うことができる。
押出印刷:
この技術では、液滴ではなく材料の連続ビーズを使用する。このような材料のビーズを2Dで堆積し、ステージ(受取媒体)又は押出ヘッドがz軸に沿って移動し、堆積した層が次の層の基礎として機能する。3Dバイオプリンティング用途向けの生物学的材料押出の最も一般的な方法は、空気圧式又は機械式分注システムである。
ステレオリソグラフィー(SLA)及びデジタル光処理(DLP):
SLAとDLPは、光源を使用した選択的硬化によって、浴中の未硬化構築材料を層毎に固化材料に変えながら、未硬化材料を固化材料から後で分離/洗浄する積層造形技術である。SLAは、バイオプリンティングを含む様々な産業でモデル、試作品、パターン及び生産部品の形成に広く用いられている。
レーザーによる印刷:
3Dバイオプリンティングに採用された型のレーザーによる印刷技術は、金属を転写するために開発され、現在は生物学的材料への応用に成功しているレーザー誘起前方転写(LIFT)の原理に基づいている。この装置は、レーザー光線、集束系、エネルギー吸収/変換層、生体物質層(例えば、細胞及び/又はヒドロゲル)及び受取基板から成る。レーザーによるプリンタは、レーザー光線を吸収層に照射することで作動し、これによってエネルギーが機械的力に変換され、この力によって生体層から基板上に小さな液滴が押し出される。次に、光源を利用して基板上の材料を硬化させる。
レーザーによる印刷は一連の粘度に適合し、細胞生存率や細胞機能に影響を及ぼすことなく哺乳動物細胞を印刷することができる。細胞の堆積は、最大108個/mLの密度とし、1滴当たり細胞1個のマイクロスケール解像度で行うことができる。
エレクトロスピニング:
エレクトロスピニングは、電気力を用いてポリマー溶液又はポリマー溶融物の帯電した糸を引く線維製造技術である。
硬化性配合物:
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、複合足場の形成は、積層造形プロセスに関して本明細書で上述した実施形態に従って、1種以上の硬化性モデリング材料配合物と、必要に応じて支持材料配合物とをバイオプリンティングすることによって行う。
便宜上、1種以上の硬化性モデリング配合物の成分を、本明細書では硬化性配合物の成分として記載しているが、本明細書に記載の選択された構成パターンに従って、成分を2種以上の硬化性モデリング材料配合物に分割できることを理解されたい。
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、硬化性配合物は硬化性コラーゲンを含み、このコラーゲンは、本明細書において各実施形態のいずれか及びそのいずれかの組み合わせに記載の通りである。
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、硬化性配合物は、1種以上の硬化性部分又は基を特徴とする組換えヒトコラーゲン(rhコラーゲン)(本明細書では硬化性rhコラーゲンとも称される)を含む。
「硬化性」とは、本明細書では、適切な硬化条件に曝露すると本明細書で定義のように硬化又は固化することが可能な材料を意味する。
硬化性材料は通常、重合及び/又は架橋を経て固化又は硬化する。
硬化性材料は通常、重合性材料であり、適切な硬化条件又は適切な硬化エネルギー(適切なエネルギー源)に曝露すると重合及び/又は架橋する。或いは、硬化性材料は熱応答性材料であり、温度変化(例えば、加熱又は冷却)に曝露すると硬化又は固化する。場合によっては、硬化性材料は、硬化して固化材料を形成することができる小粒子(例えば、ナノ粒子又はナノクレイ)で形成されている。更に場合によっては、硬化性材料は、生物学的反応(例えば、酵素触媒反応)によって固化材料又は固体材料を形成する反応を経る生物学的材料である。
本明細書に記載の実施形態の幾つかでは、硬化性材料は光重合性材料であって、本明細書に記載のように放射線への曝露時に重合及び/又は架橋し、幾つかの実施形態では、硬化性材料は紫外線硬化性材料であって、本明細書に記載のように紫外線-可視光線への曝露時に重合又は架橋する。
本明細書に記載の実施形態の幾つかでは、硬化性材料を硬化条件(例えば、放射線、試薬)に曝露すると、鎖伸長、絡み合い及び架橋のいずれか又はその組み合わせによって重合する。架橋は化学的及び/又は物理的となり得る。
本明細書に記載の実施形態の幾つかでは、硬化性材料は単官能硬化性材料又は多官能硬化性材料とすることができる。
本明細書では、単官能硬化性材料は1個の硬化性基又は部分、即ち、硬化条件(例えば、放射線、カルシウムイオンの存在)に曝露すると重合、絡み合い及び/又は架橋することが可能な官能基又は部分を含む。
多官能硬化性材料は、2個以上、例えば、2個、3個、4個又はそれ以上の硬化性基を含む。多官能硬化性材料は、例えば、それぞれ2個、3個又は4個の硬化性基を含む二官能、三官能又は四官能硬化性材料とすることができる。
「硬化性基」とは、本明細書では、適切な硬化条件に曝露すると重合及び/又は架橋することが可能な官能基を意味する。
「硬化性コラーゲン」とは、本明細書に定義の1個以上の硬化性基を有する、本明細書で各実施形態に記載のコラーゲン(ヒト組換えコラーゲン)を意味する。本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、硬化性コラーゲンは、本明細書に定義の複数の硬化性基を含む多官能硬化性材料である。
本明細書では「硬化性コラーゲン」、「硬化性rhコラーゲン」及び「1個以上の(又は少なくとも1個の)硬化性基を有するrhコラーゲン」という用語は交換可能に使用される。
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、硬化性コラーゲンは、本明細書で各実施形態に記載のアミノ酸配列を含み、コラーゲンを形成するアミノ酸残基の少なくとも一部で、好ましくはアミノ酸残基の側鎖の官能基への硬化性基を含む化合物の(直接又はリンカーを介した)共有結合によって生成する1個以上(好ましくは複数)の硬化性基を有する。代替としては、又は加えて、例えば、硬化性基を含む化合物をアミン又はカルボン酸へ(直接又はリンカーを介して)共有結合させることによって、コラーゲンを形成する1個以上のユニットのそれぞれN末端及び/又はC末端に硬化性基を作製することができる。
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、本明細書に記載の硬化性コラーゲンの硬化性基の少なくとも一部は架橋性基であり、硬化条件に曝露すると架橋する。このような硬化性コラーゲンは、本明細書では架橋性コラーゲン、例えば、架橋性rhコラーゲン(例えば、本明細書に記載の植物によって産生されるrhコラーゲン)とも称される。
幾つかの実施形態では、硬化性基はフリーラジカル機構によって重合及び/又は架橋することができる。
このような硬化性基の例としては、アクリル基、例えば、アクリル酸基、メタクリル酸基、アクリルアミド基及びメタクリルアミド基が挙げられる。他のフリーラジカル硬化性基としては、チオール、ビニルエーテル、及び反応性二重結合を特徴とする他の基を挙げることができる。
幾つかの実施形態では、硬化性基は、カチオン重合や(カチオン又はアニオン)開環重合等の他の機構によって重合及び/又は架橋することができる。このような硬化性基の例としては、エポキシ含有基、カプロラクタム、カプロラクトン、オキセタン及びビニルエーテルが挙げられるが、これらに限定されない。
他の硬化性基としては、例えば、官能性カルボン酸とアミン基(各々は他方と反応して架橋する硬化性基である)との間のアミド結合の形成、触媒の存在下及び/又は紫外線への曝露時の重縮合によるイソシアネート基とヒドロキシル基との間のウレタンの形成、及び2個のチオール間のジスルフィド結合の形成が挙げられる。
他の如何なる硬化性基も企図される。
硬化性コラーゲンの硬化性基の生成は、本明細書に記載のように、硬化性基を含むか又はその硬化性基を発生可能な材料とコラーゲンに存在する化学適合性官能基とを直接化学反応させる手段によって行うか、又は当技術分野で良く知られる化学を用いたスペーサー又はリンカーの手段によって行うことができる。例えば、硬化性基と官能基を含む材料をコラーゲンの適合性官能基(例えば、アミノ酸側鎖の官能基)と反応させて、硬化性基がアミノ酸側鎖の置換基となるようにすることができる。
幾つかの実施形態では、適合性官能基は先ず、コラーゲンの固有の化学基の化学修飾によってコラーゲン内に生成し、続いて反応時に硬化性基を含むか又は生成する材料と反応する。
硬化性コラーゲンが1個を超える硬化性基を含む場合には、硬化性基は同一であっても異なっていてもよい。
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、本実施形態の硬化性コラーゲン内の硬化性基の少なくとも一部又は全ては、本明細書に記載の照射への曝露時に重合及び/又は架橋することができる光重合性基(例えば、紫外線硬化性基)である。
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、硬化性基は光硬化性基又は光重合性基(例えば、アクリレート又はメタクリレート)である。
アクリル系(例えば、メタクリレート)基を有する本明細書に記載の硬化性コラーゲンは、本明細書では、アクリル化又はメタクリル化又は(メタ)アクリル化コラーゲン、例えば、(メタ)アクリル化rhコラーゲンとも称される。
代替としては、又は加えて、硬化性基はチオール含有基であり、硬化時にジスルフィド架橋が得られる。
チオール含有基を有する本明細書に記載の硬化性コラーゲンは、本明細書ではチオール化コラーゲン、例えば、チオール化rhコラーゲンとも称される。
代替としては、又は加えて、硬化性基又は硬化性部分は(EDC等のカップリング剤を使用した)結合又は糖化等の化学反応によって硬化する。
幾つかの実施形態によれば、硬化性基は、硬化時にペプチド結合を形成するアミン及びカルボキシル基を含む。
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、本実施形態の硬化性コラーゲン内の硬化性基の少なくとも一部又は全部は、本明細書で定義のアクリル基(例えば、メタクリル基)である。
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、メタクリルアミド等のアクリル基は、アクリレート又はメタクリレート(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル又はメタクリルエステル、アクリル又はメタクリル無水物)を(例えば、リジン残基の)アミン官能基と反応させて作製することができる。
本発明の実施形態の幾つかによれば、本明細書に記載の硬化性コラーゲン内の硬化性基の数によって硬化の程度(例えば、架橋の程度)を決めることができ、その数を操作して所望の硬化度(例えば、架橋度)を得ることができる。
硬化度は、固化した材料の機械的及び/又は物理的及び/又は生物学的特性に影響を及ぼし、硬化度を操作して複合足場に所望の特性をもたらすことができる。
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、硬化性コラーゲンは、本明細書に記載のリジン残基との反応によって生成する複数のアクリルアミド又はメタクリルアミド硬化性基を有する。
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、硬化性コラーゲンは、コラーゲン内のリジン残基のアミン基を置換する複数のアクリルアミド又はメタクリルアミド硬化性基を有する。
幾つかの実施形態では、コラーゲン内のリジン残基の少なくとも50%、又は少なくとも60%、又は少なくとも70%がメタクリルアミド又はアクリルアミド基で置換されている。幾つかの実施形態では、硬化性コラーゲンは、そのリジン残基の70%~100%、又は80%~100%、又は90%~100%(その間の中間値や部分範囲を含む)がメタクリルアミド又はアクリルアミド基で置換されていることを特徴とする。
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、モデリング材料配合物は、固化すると、水性担体内のrhコラーゲンの架橋(場合によっては、モデリング配合物中の他の硬化性成分と共に架橋)によってヒドロゲル材料を形成する。
本明細書及び当技術分野では、「ヒドロゲル」という用語は、水を少なくとも20%、通常は少なくとも50%、又は少なくとも80%、最大で約99.99%(質量%)含む3次元線維ネットワークを表す。ヒドロゲルは、殆どが水であるが、液体分散媒内でポリマー鎖(例えば、コラーゲン鎖)によって形成された3次元架橋固体状ネットワークに起因して、固体又は半固体のような挙動を示す材料と見なすことができる。ポリマー鎖は、化学結合(共有結合、水素結合、及びイオン結合/錯体結合/金属結合、通常は共有結合)によって相互連結(架橋)している。
本明細書全体を通して、ポリマー鎖又はポリマー材料が記載される場合には、ペプチド、タンパク質、オリゴヌクレオチド及び核酸等のポリマー生物学的材料(例えば、高分子)を包含する。
ヒドロゲルは、柔らかくて脆くて弱いものから硬くて弾力性があり丈夫なものに至る物理的な形態をとり得る。柔らかいヒドロゲルは、弾性及び粘弾性パラメータを含むレオロジーパラメータによって特徴付けられる一方、硬いヒドロゲルは、引張強度パラメータ、弾性率、貯蔵弾性率及び損失弾性率(これらの用語は当技術分野で知られている)によって適切に特徴付けられる。
ヒドロゲルの柔らかさ/硬さは、特にポリマー鎖の化学組成、「架橋度」(鎖間の相互結合リンクの数)、水性媒体の含有量と組成、及び温度によって支配される。
本発明の幾つかの実施形態によれば、ヒドロゲルは、主な架橋ネットワークに化学的に結合していない高分子ポリマー要素及び/又は線維要素を含むこともあるが、むしろ機械的な絡み合い及び/又は浸漬を生じる。このような高分子線維要素は、(例えば、メッシュ構造のように)織ることができるか又は不織布にすることができ、幾つかの実施形態では、ヒドロゲルの線維ネットワークの強化材料として機能することができる。このような高分子の非限定的な例としては、ポリカプロラクトン、ゼラチン、ゼラチンメタクリレート、アルギネート、アルギネートメタクリレート、キトサン、キトサンメタクリレート、グリコールキトサン、グリコールキトサンメタクリレート、ヒアルロン酸(HA)、HAメタクリレート、及び他の非架橋天然又は合成ポリマー鎖等が挙げられる。
代替としては、又は加えて、このような高分子は、例えば、架橋剤として作用するか、又は(例えば、このような成分の硬化性誘導体を使用した際に)ヒドロゲルの3次元ネットワークの一部を形成することによって、ヒドロゲルの主な架橋ネットワークに化学的に結合する。
幾つかの実施形態では、ヒドロゲルは多孔質であり、幾つかの実施形態では、ヒドロゲル中の細孔の少なくとも一部はナノ細孔であり、平均体積がナノスケール範囲である。
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、rhコラーゲン含有モデリング材料配合物は1種以上の更なる材料、例えば、1種以上の更なる硬化性材料、1種以上の非硬化性材料及び/又は1種以上の生物学的成分又は材料を更に含む。
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、印刷媒体(構築材料)は1種以上の更なる材料、例えば、1種以上の更なる硬化性材料、1種以上の非硬化性材料及び/又は1種以上の生物学的成分を含む。
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、更なる材料はrhコラーゲン含有配合物又は1種以上の他のモデリング材料配合物に含まれる。
rhコラーゲン配合物又は1種以上の他のモデリング材料配合物に含めることができる更なる硬化性材料は、本明細書に定義のいずれかの硬化性材料とすることができ、生体適合性材料であることが好ましい。
幾つかの実施形態では、更なる硬化性材料は、本明細書に定義のヒドロゲルであるか又はそれを含み、架橋及び/又は共重合反応が生じる硬化条件に曝露すると、通常は更なる架橋及び/又は共重合によって固化モデリング材料を形成することができる。このような硬化性材料は、本明細書ではヒドロゲル硬化性材料とも称される。
本明細書に記載の実施形態の幾つかでは、硬化性材料は、本明細書に定義のヒドロゲル形成材料であるか又はそれを含み、架橋、重合及び/又は共重合、及び/又は絡み合い反応が生じる硬化条件に曝露すると、通常は架橋、絡み合い、重合及び/又は共重合によって固化モデリング材料としてのヒドロゲルを形成することができる。このような硬化性材料は、本明細書ではヒドロゲル形成硬化性材料又はゲル形成材料とも称される。
本発明の実施形態によれば、ヒドロゲルは生物起源であってもよく、合成的に調製してもよい。
本発明の幾つかの実施形態によれば、ヒドロゲルは生体適合性であり、生物学的部分がヒドロゲルに含浸又は蓄積すると生物学的部分の活性が維持される、即ち、生物学的部分の活性の変化が生理学的媒体中の生物学的部分の活性と比較して30%以下、又は20%以下、又は10%以下となる。
本実施形態に係るヒドロゲルを形成するのに使用可能なポリマー又はコポリマーの例としては、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリビニルピロリドン及び上述のいずれかのコポリマーが挙げられる。他の例としては、架橋基によって官能化されたか、又は適合性のある架橋剤と組み合わせて使用可能なポリエステル、ポリウレタン、及びポリ(エチレングリコール)が挙げられる。
幾つかの具体的で非限定的な例としては、ポリ(2-ビニルピリジン)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(N,N’-メチレンビスアクリルアミド)、ポリ(N-(N-プロピル)アクリルアミド)、ポリ(メタクリル酸)、ポリ(2-ヒドロキシアクリルアミド)、ポリ(エチレングリコール)アクリレート、ポリ(エチレングリコール)メタクリレート、及びヒアルロン酸、デキストラン、アルギネート、アガロース等の多糖類、及び上述のいずれかのコポリマーが挙げられる。
このようなポリマー鎖を形成するヒドロゲル前駆体(ヒドロゲル形成材料)(それらのいずれかの組み合わせを含む)が企図される。
ヒドロゲルは通常、二官能性、三官能性又は多官能性のモノマー、オリゴマー又はポリマーで形成されるか又はその存在下で形成され、これらをまとめて、2個、3個又はそれ以上の重合性基を有する、ヒドロゲル前駆体、又はヒドロゲル形成剤、又はヒドロゲル形成材料、又は本明細書に記載のように単に架橋剤と称する。1個を超える重合性基の存在によって、このような前駆体が架橋可能になり、3次元ネットワークの形成が可能となる。
架橋性モノマーの例としては、2個又は3個の重合性官能基(これらの内の1個は架橋性官能基と見なすことができる)を有するジアクリレート及びトリアクリレートモノマーのファミリーが挙げられるが、これらに限定されない。ジアクリレートモノマーの例としては、メチレンジアクリレート、及びポリ(エチレングリコール)nジメタクリレート(nEGDMA)又はジアクリレートのファミリーが挙げられるが、これらに限定されない。トリアクリレートモノマーの例としては、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、イソシアヌル酸トリス(2-アクリロイルオキシエチル)エステル、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、ポリ(エチレングリコール)nトリメタクリレート又はトリアクリレート、ペンタエリスリチルトリアクリレート及びグリセロールトリアクリレート、ホスフィニリジントリス(オキシエチレン)トリアクリレートが挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書に記載の実施形態の幾つかでは、硬化性材料は、モノマーであろうとオリゴマーであろうと単官能硬化性材料又は多官能硬化性材料とすることができる。
本実施形態に係るヒドロゲルを形成するのに使用可能なポリマー又はコポリマーの例としては、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリビニルピロリドン及び上述のいずれかのコポリマーが挙げられる。他の例としては、架橋基によって官能化されたか、又は適合性のある架橋剤と組み合わせて使用可能なポリエステル、ポリウレタン、及びポリ(エチレングリコール)が挙げられる。
幾つかの具体的で非限定的な例としては、ポリ(2-ビニルピリジン)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(N,N’-メチレンビスアクリルアミド)、ポリ(N-(N-プロピル)アクリルアミド)、ポリ(メタクリル酸)、ポリ(2-ヒドロキシアクリルアミド)、ポリ(エチレングリコール)アクリレート、ポリ(エチレングリコール)メタクリレート、ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート、ポリ(エチレングリコール)ジメタクリレート、及びデキストラン、アルギネート、アガロース等の多糖類、及び上述のいずれかのコポリマーが挙げられる。
このようなポリマー鎖を形成するヒドロゲル前駆体(ヒドロゲル形成材料)(それらのいずれかの組み合わせを含む)が企図される。
バイオプリンティングの分野で使用可能な硬化性材料は、主に動物又はヒト組織から単離できる天然由来の材料、例えば、マトリゲル、アルギネート、ペクチン、キサンタンガム、ゼラチン、キトサン、フィブリン、セルロース及びヒアルロン酸に基づくか、或いは組換えによって生成されたか又は合成的に調製された材料、例えば、ポリエチレングリコール;PEG、ゼラチンメタクリレート;GelMA、ポリ(プロピレンオキシド);PPO、ポリ(エチレンオキシド);PEO;PEG、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリグルタミン酸、ゼラチンメタクリレート;GelMA、PLGA/PLLA、ポリ(ジメチルシロキサン);ナノセルロース;プルロニックF127、短いジペプチド(FF)、Fmoc-FF-OH、Fmoc-FRGD-OH、Fmoc-RGDF-OH、Fmoc-2-Nal-OH、Fmoc-FG-OH等のFmoc-ペプチド系ヒドロゲル、及びポリカプロラクトン(PCL)、ポリ乳酸(PLA)又はポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)等の熱可塑性ポリマーに基づく。
本実施形態の状況で使用可能な硬化性材料の例としては、マトリゲル、ゼラチンメタクリレート(GelMA)、ナノセルロース(セルロースナノ結晶(CNC)、セルロースナノフィブリル(CNF)、及び微生物セルロースとも称される細菌バクテリアセルロース(BC)等の紫外線硬化可能なナノスケール構造材料)、プルロニック(登録商標)材料、例えば、低温では流動性があり、臨界ミセル濃度(CMC)を超える高温ではゲルを形成するプルロニックF127及び紫外線硬化可能なプルロニックF127-ジアクリレート(DA)、ヒアルロン酸(HA)、アクリル化ヒアルロン酸(AHA)、メタクリル化ヒアルロン酸(MAHA)、ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート(PEGDA)、アルギネート、キサンタンガム、ペクチン、グルタルアルデヒド、ゲニピン又はトリポリリン酸ナトリウム(TPP)等の化学剤で架橋できるキトサンが挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、硬化性配合物は、硬化性部分を有する生体適合性合成材料を更に含み、この材料は硬化すると(例えば、本明細書に記載の硬化条件に曝露すると)生体適合性合成ポリマーを形成し、本明細書では、硬化性生体適合性合成ポリマー又は硬化性合成ポリマーとも称される。
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、硬化性配合物は、本明細書に記載の1種以上の硬化性基(例えば、重合性基及び/又は架橋性基)を有する生体適合性合成ポリマー、即ち、硬化性生体適合性合成ポリマーを含む。このような材料は、本明細書では、修飾生体適合性合成ポリマー、又はその修飾誘導体、又はその光重合性修飾誘導体、又はその硬化性誘導体とも称され、通常は硬化すると、それ自体及び/又は配合物中の他の成分(例えば、硬化性rhコラーゲン及び/又は架橋剤)と架橋して架橋生体適合性合成ポリマーが得られる。
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、生体適合性合成ポリマーは、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)(PLGA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(PNIPAAm)、ポリ-4-ヒドロキシブチレート(P4HB)又はそれらのいずれかのコポリマー又はその組み合わせであるか、又はそれを含む。
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、硬化性配合物は、硬化条件に曝露すると、重合及び/又は架橋して上述の生体適合性合成ポリマーを形成する前駆体を含む。
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、硬化性配合物は、硬化性基を有するポリ乳酸(PLA)、硬化性基を有するポリグリコール酸(PGA)、硬化性基を有するポリカプロラクトン(PCL)、硬化性基を有するポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)、硬化性基を有するポリエチレングリコール(PEG)、硬化性基を有するポリビニルアルコール(PVA)、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(PNIPAAm)、硬化性基を有するポリ-4-ヒドロキシブチレート(P4HB)、及び硬化性基を有する上述のいずれかのコポリマーの内の1種以上を含む。
上述のポリマーの各々は1種以上の硬化性基を有することができる。
上述のポリマーの各々は、その元の構造の一部を形成する1種以上の硬化性基を有することができるか、又はそのような基をポリマーの1種以上の適合性官能基に直接又はリンカーを介して結合させることによって合成することができる。
1種以上の硬化性基を有する合成ポリマーも、本明細書では、修飾合成ポリマー又はその修飾誘導体と交換可能に称される。
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、硬化性配合物は、修飾PGA又はその修飾誘導体又はその光重合性修飾誘導体、修飾PCL又はその修飾誘導体又はその光重合性修飾誘導体、修飾PLGA又はその修飾誘導体又はその光重合性修飾誘導体、修飾PEG又はその修飾誘導体又はその光重合性修飾誘導体、修飾PVA又はその修飾誘導体又はその光重合性修飾誘導体、PNIPAAm又はその修飾誘導体、又はそれらのいずれかの組み合わせを含む。修飾としては、生体適合性合成ポリマーの(メタ)アクリル化やチオール化が挙げられるが、これらに限定されない。幾つかの実施形態では、修飾PEGはポリ(エチレングリコール)ジアクリレート(PEGDA)を含む。
本明細書に記載の実施形態の幾つかでは、硬化性配合物は、固化すると生体適合性合成ポリマーを形成するか、又は配合物中に存在する生体適合性合成ポリマーと反応する1種以上の多官能性硬化性材料(モノマー又はポリマー材料)を含む。そのような材料は、クロスリンカー、又はクロスリンカー剤又は架橋剤として作用し、本明細書ではクロスリンカー、又はクロスリンカー剤又は架橋剤とも称される。架橋剤は、合成ポリマー(例えば、修飾合成ポリマー)及び/又は本明細書に記載の硬化性コラーゲンと相互作用して、架橋ポリマーネットワークを形成することができる。例示的な架橋剤は、商品名SR9035で市販されているようなエトキシル化(15)トリメチロールプロパントリアクリレートを含む。同様の多官能性(例えば、二官能性又は三官能性)の架橋剤が企図される。幾つかの実施形態では、架橋剤は多官能性PEG(例えば、PEGジアクリレート又はPEGトリアクリレート)である。
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、硬化性配合物は、本明細書に記載のように生体適合性合成ポリマーを含み、配合物中の他の成分(例えば、本明細書に記載の架橋剤及び/又はrhコラーゲン)の存在下で硬化条件に曝露すると、例えば、架橋によって硬化することができる。
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、硬化性配合物は、本明細書において各実施形態のいずれか及びそのいずれかの組み合わせに記載の硬化性rhコラーゲンと、本明細書において各実施形態のいずれか及びそのいずれかの組み合わせに記載の、独立して1種以上の硬化性基を有する1種以上の生体適合性合成ポリマーとを含む。幾つかの実施形態では、硬化性配合物は本明細書に記載の架橋剤を更に含む。
また、硬化性配合物は、本明細書において各実施形態のいずれか及びそのいずれかの組み合わせに記載の硬化性rhコラーゲンと、例えば、架橋によって硬化することができる、本明細書において各実施形態のいずれか及びそのいずれかの組み合わせに記載の1種以上の生体適合性合成ポリマーとを含み、更に、ポリマーを架橋するか、又はポリマーを配合物中の1種以上の他の成分(例えば、硬化性rhコラーゲン、本明細書に記載の他の硬化性材料、及び/又は他のポリマー)と架橋して合成ポリマーの硬化を促進する本明細書に記載の架橋剤を含む。
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、1種以上の硬化性基を有する生体適合性合成ポリマーの各々は、独立して約100ダルトン~約100kDaの範囲(その間の中間値や部分範囲を含む)の平均分子量(Mw又はMn)を有する。幾つかの実施形態では、合成ポリマーのMnは、約400Da~約100kDa、又は約400Da~約50kDa、又は約500Da~約50kDa、又は約100Da~約10kDa、又は約500Da~約10kDa、又は約1000Da~約10kDa、又は約100Da~約5kDa、又は約1000Da~約5kDa、又は約2kDa~約10kDa、又は約5kDa~約10kDa(その間の中間値や部分範囲を含む)である。
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、硬化性配合物における硬化性rhコラーゲン(硬化性基を有するrhコラーゲン)の硬化性合成ポリマー(硬化性基を有する生体適合性合成ポリマー及び/又は架橋することができる生体適合性合成ポリマー)に対する比率は、約10:1~約1:10(その間の中間値や部分範囲を含む)とすることができ、例えば、約1:0.5~約1:2.0、又は約5:1~約1:5、又は約2:1~1:2、又は約1:1~1:10、又は約1:1~1:5、又は約1:1~2:1、又は約1:1~3:2、又は約3:2~2:1とすることができる。
幾つかの実施形態では、硬化性rhコラーゲンの硬化性生体適合性合成ポリマーに対する比率は、約1:0.5、又は1:0.6、又は1:0.7、又は1:0.8、又は1:0.9、又は1:1、又は1:1.1、又は1:1.2、又は1:1.3、又は1:1.4、又は1:1.又は1:1.6、又は1:1.7、又は1:1.8、又は1:1.9、又は1:2.0である。
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、硬化性配合物は、少なくとも1種の細胞外マトリックス(ECM)成分、例えば、ECMタンパク質(例えば、フィブリノゲン、コラーゲン、フィブロネクチン、ビメンチン、微小管結合タンパク質1D、神経突起伸長因子(NOF)、バクテリアセルロース(BC)、ラミニン及びゼラチンが挙げられるが、これらに限定されない)を更に含む。幾つかの実施形態では、ECM成分は(rhコラーゲンに加えて)、フィブロネクチン、ヒアルロン酸(HA)、ヘパリン、エラスチン又はラミニン、又は本明細書に詳述のように、それらのいずれかの組み合わせを含む。
これらの実施形態の幾つかでは、ECM成分は、本明細書に記載の1種以上の硬化性基を有する(本明細書では、硬化性ECM成分、又は修飾ECM成分又は架橋性ECM成分又は重合性ECM成分とも称される)。硬化性基はECM成分の官能基に直接又はリンカーを介して共有結合することができる。
例えば、配合物は、HA、修飾HA又はその重合性修飾誘導体(例えば、(メタ)アクリル化又はチオール化HA)の内の1種以上を更に含むことができる。
幾つかの実施形態では、硬化性ECM成分は修飾フィブロネクチン(例えば、(メタ)アクリル化又はチオール化フィブロネクチン)を含む。幾つかの実施形態では、硬化性ECM成分は修飾ヘパリン(例えば、(メタ)アクリル化又はチオール化ヘパリン)を含む。幾つかの実施形態では、硬化性ECM成分は修飾エラスチン(例えば、(メタ)アクリル化又はチオール化エラスチン)を含む。幾つかの実施形態では、硬化性ECM成分は修飾ラミニン(例えば、(メタ)アクリル化又はチオール化ラミニン)を含む。必要に応じて、配合物は、本明細書において各実施形態のいずれかに記載のように、例えば、架橋剤の存在下で架橋によって硬化することが可能なECM成分を含むことができる。このような硬化性ECM成分は、本明細書に記載の1種以上の硬化性基を有していても、有していなくてもよい。
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、硬化性モデリング配合物は、インテグリン結合材料、例えば、環状RGD含有材料等のRGD含有材料を更に含む。幾つかの実施形態では、インテグリン結合材料、例えば、RGD含有材料は、本明細書に記載の硬化条件に曝露すると、重合及び/又は架橋することが可能な硬化性材料である。硬化性RGD含有材料は硬化性基を有することができ、又は架橋剤と共に使用することができ、架橋剤の存在下で架橋可能である。
これらの実施形態の幾つかでは、インテグリン結合材料は硬化性であり、1種以上の硬化性部分又は硬化性基を有する。
従って、幾つかの実施形態では、インテグリン結合材料は、少なくとも1種のArg-Gly-Asp(RGD)部分、又はそのペプチド模倣体を含み、必要に応じて、他のアミノ酸、アミノ酸誘導体、又は他の化学基(例えば、アルキレン鎖)及び/又は本明細書において各実施形態のいずれか及びそのいずれかの組み合わせに記載の1種以上の硬化性基を更に含むことができる。
幾つかの実施形態では、RGD含有材料はオリゴペプチドである。オリゴペプチドは環状オリゴペプチド(例えば、単環式、二環式及び三環式オリゴペプチドを含む)又は線状オリゴペプチドとすることができ、Arg-Gly-Aspアミノ酸配列に加えて、1~10個のアミノ酸を含むことができる。
例示的なオリゴペプチドは、c[Arg-Gly-Asp-Phe-Lys]であるか、又はそれを含む環状ペプチドである。
幾つかの実施形態では、インテグリン結合材料は2個以上のArg-Gly-Asp含有部分を含み、これらの部分は同一であっても異なっていてもよい。
Arg-Gly-Asp含有材料の例としては、c(RGDfk)、RGD4C、及びHaubner et al.[J. Am. Chem. Soc. 1996, 118, 7881-7891]及びCapello, et al.[J. Nucl. Med. 2004, 45(10), 1716-20]や国際公開第97/06791号及び米国特許第5,773,412号明細書に記載のような他のRGD含有環状ペプチドが挙げられるが、これらに限定されない。
幾つかの実施形態では、RGD含有材料は、本明細書に記載のように、互いに連結されているか、又は1個以上のアミノ酸又は他のスペーサーのいずれかによって離間されている2個以上の-Arg-Gly-Asp-部分を含むことができる。
例示的な実施形態では、RGD含有材料は1個以上のシステイン残基を含み、幾つかの例示的な実施形態では、それはRGD4Cである。そのようなRGD含有材料は、分子間ジスルフィド結合を形成する手段によって、それ自身及び/又は配合物中の他のチオール化硬化性成分と架橋することができる。
幾つかの実施形態では、本明細書に記載のRGD含有材料のいずれも、本明細書に記載のように、アミノ酸側鎖内の官能基及び/又は末端アミン又はカルボキシレートに結合した、本明細書に記載の1個以上の硬化性基又は部分、例えば、1個以上の(メタ)アクリル基を含む。
或いは、RGD含有材料は1個以上のチオール基、例えば、システイン残基のチオール基を含み、この材料を硬化性材料とする。必要に応じて、チオール基をRGD含有材料に直接又はリンカーを介して結合することができる。
代替としては、又は加えて、本明細書に記載のRGD含有材料のいずれも、硬化性基又は部分を含むかどうかに関わらず、本明細書において各実施形態のいずれかに記載のように、ポリマー材料(好ましくは、本明細書において各実施形態のいずれかに記載の生体適合性合成ポリマー)、又はヒドロゲル形成材料、又はECM成分に結合することができる。1個以上のRGD含有部分又は材料は、この材料のポリマー骨格に直接又はリンカーを介して結合することができ、末端ユニット及び/又は骨格ユニットの1個以上に結合することができる。ポリマーは本明細書に記載の硬化性基を有することができ、又は架橋剤の存在下で架橋することが可能である。代替としては、又は加えて、RGD含有部分は、本明細書に記載のように、1個以上の硬化性基(例えば、チオール及び/又は(メタ)アクリル基)を有する。
例示的なRGD含有材料は、本明細書において各実施形態のいずれかに記載のように、PEG、例えば、PEG-DA又はPEG-TAに共有結合された、本明細書に記載の1個以上のRGD含有配列を含む。本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、rhコラーゲンの硬化性部分又は基と合成ポリマーの硬化性部分又は基は、同一の硬化条件に供された際に硬化可能である。これらの実施形態の幾つかでは、硬化条件は照射(照明)を含み、このような硬化性部分又は基は光硬化性(光重合性)部分又は基である。
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、rhコラーゲンの硬化性の部分又は基と合成ポリマーの硬化性の部分又は基、及びECM成分(存在する場合)の硬化性の部分又は基とインテグリン結合材料(存在する場合)の硬化性の部分又は基は、同一硬化条件に供された際に硬化可能である。これらの実施形態の幾つかでは、硬化条件は照射(照明)を含み、このような硬化性部分又は基は光硬化性(光重合性)部分又は基である。
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、モデリング材料配合物は、せん断速度ゼロ、37℃にて、当技術分野で良く知られている方法に従ってレオメータ(例えば、ブルックフィールドレオメータ)を使用して求めた際の粘度が2000センチポアズ以下、又は1500センチポアズ以下であることを特徴する。
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、モデリング材料配合物は、せん断速度5L/秒、室温にて、本明細書に記載のレオメータを使用して求めた際の粘度が2000センチポアズ以下、又は1500センチポアズ以下であることを特徴する。
本明細書に記載の実施形態の幾つかでは、硬化性組換えヒトコラーゲンを含むモデリング材料配合物中のその濃度は、0.5mg/mL~50mg/mL、又は0.5mg/mL~20mg/mL、又は1mg/mL~50mg/mL、又は1mg/mL~50mg/mL、又は1mg/mL~40mg/mL、又は1mg/mL~30mg/mL、又は2mg/mL~20mg/mL、又は5mg/mL~15mg/mL、又は1mg/mL~10mg/mLの範囲(その間の中間値や部分範囲を含む)である。
本明細書に記載の実施形態の幾つかでは、硬化性生体適合性合成ポリマーを含むモデリング材料配合物中のその総濃度は、1mg/mL~500mg/mL、又は10mg/mL~500mg/mL、又は1mg/mL~100mg/mL、又は10mg/mL~100mg/mL、又は50mg/mL~500mg/mL、又は50mg/mL~300mg/mL、又は1mg/mL~20mg/mL、又は5mg/mL~50mg/mLの範囲(その間の中間値や部分範囲を含む)である。
本明細書に記載の実施形態の幾つかでは、硬化性ECM成分(存在する場合)を含むモデリング材料配合物中のその総濃度は、0.01mg/mL~10mg/mL、又は0.01mg/mL~5mg/mL、又は0.01mg/mL~1mg/mL、又は0.05mg/mL~1mg/mLの範囲(その間の中間値や部分範囲を含む)である。
本明細書に記載の実施形態の幾つかでは、硬化性インテグリン結合材料(存在する場合)を含むモデリング材料配合物中のその総濃度は、硬化性rhコラーゲンに対して化学量論的であり、例えば、1~50μM、又は1~40μM、又は1~30μMの範囲(その間の中間値や部分範囲を含む)とすることができる。
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、硬化性組換えヒトコラーゲンを含むモデリング材料配合物中のその濃度は、配合物の総重量の0.01~10重量%、又は0.01~5重量%、0.05~10重量%、又は0.05~5重量%、又は0.1~2重量%、又は0.1~1重量%、又は10~50重量%、又は10~40重量%、又は10~30重量%、又は10~20重量%、又は20~40重量%、又は30~40重量%の範囲(その間の中間値や部分範囲を含む)である。
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、硬化性生体適合性合成ポリマー(又はその前駆体硬化性材料)を含むモデリング材料配合物中のその濃度は、配合物の成分の総重量(以下に記載の担体を含まない)の0.1~10重量%、又は0.1~5重量%、又は0.1~2重量%、又は0.5~2重量%、又は1~60重量%、又は1~50重量%、又は10~60重量%、又は5~50重量%、又は10~40重量%、又は5~30重量%、又は10~20重量%、又は5~15重量%の範囲(その間の中間値や部分範囲を含む)である。
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、本明細書において各実施形態のいずれかに記載の硬化性基を有するECM成分の濃度は、配合物の成分の総重量(以下に記載の担体を含まない)の0.001~0.1重量%の範囲(その間の中間値や部分範囲を含む)である。
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、硬化性(モデリング、バイオインク)配合物は、
本明細書において各実施形態のいずれか及びそのいずれかの組み合わせに記載の硬化性rhコラーゲン、例えば、本明細書に記載の複数の(メタ)アクリル基を有する本明細書に記載の(例えば、植物由来の)rhコラーゲンと、
本明細書において各実施形態のいずれか及びそのいずれかの組み合わせに記載の硬化性生体適合性合成ポリマー、例えば、本明細書において各実施形態のいずれか及びそのいずれかの組み合わせに記載のように、1種以上の硬化性基(例えば、(メタ)アクリル及び/又はチオール)基を有する、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(PNIPAAm)、ポリ-4-ヒドロキシブチレート(P4HB)又はそれらのいずれかのコポリマーの内の1種以上と、
本明細書において各実施形態のいずれか及びそのいずれかの組み合わせに記載のように、1種以上の硬化性基(例えば、(メタ)アクリル又はチオール)基を有する、本明細書において各実施形態のいずれかに記載のECM成分(例えば、ヒアルロン酸、フィブロネクチン、ヘパリン、エラスチン又はラミニンの内の1種以上)とを含む、及び/又は本明細書に記載の架橋剤と組み合わせて使用する硬化性ECM成分と、本明細書において各実施形態のいずれかに記載の硬化性RGD含有材料とを含む。
これらの実施形態の幾つかでは、配合物は水性担体(例えば、必要に応じて水溶性有機酸と混合した水)を更に含み、硬化性rhコラーゲンの濃度は1~10mg/mLの範囲であり、硬化性合成ポリマーの濃度は50~300mg/mLの範囲であり、ECM成分の濃度は0~1mg/mLの範囲であり、RGD含有材料の量はrhコラーゲンに対して化学量論的に調整する。
例示的な配合物を以下の実施例のセクションに記載する。
本発明の幾つかの実施形態に係る例示的な配合物は、本明細書に記載のように、硬化性rhコラーゲンを配合物の総重量の0.1重量%~1重量%、及び硬化性合成ポリマーを5~15重量%含む。
本発明の幾つかの実施形態に係る例示的な配合物は、本明細書に記載のように、硬化性rhコラーゲンを配合物の総重量の0.1~0.5重量%、及び硬化性合成ポリマーを10~15重量%含む。
これらの例示的な配合物中の硬化性生体適合性合成ポリマーは、例えば、多官能性(例えば、二官能性)PEG-アクリレート(例えば、PEG-DA)とすることができ、本明細書に記載のように、平均Mn値1以上とすることができる。例えば、各々が異なるMnを特徴とする1、2、3又はそれ以上のPEG-DAを含むことができる。
モデリング材料配合物中の硬化性rhコラーゲンの濃度は、配合物及び分注時に得られる固化配合物のレオロジー特性に影響を及ぼすことがあり、用いるAM方法及び条件や最終物体又はその一部の所望の特性に応じて操作することができる。同様に、硬化性生体適合性合成ポリマー(又はその硬化性前駆体)の濃度と種類(例えば、重合性基の量、平均Mn)は、配合物及び分注時に得られる固化配合物のレオロジー特性に影響を及ぼすことがあり、用いるAM方法及び条件や最終物体又はその一部の所望の特性に応じて操作することができる。
本実施形態によれば、構築材料は、本明細書で各実施形態のいずれかに記載のように、硬化性組換えヒトコラーゲンを含む少なくとも1種のモデリング材料配合物を含む。このようなモデリング材料配合物は、本明細書ではrhコラーゲン含有配合物とも称される。
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、硬化性配合物は担体を更に含み、これらの実施形態の幾つかでは、担体は水性担体である。
水性担体は水、pHが約4~約10、又は約6~約8、又は約7~約7.4の範囲であることを特徴とする緩衝液、塩基性水溶液又は酸性水溶液とすることができる。
水性担体は塩や他の水溶性材料を様々な濃度で含むことができる。幾つかの実施形態では、担体中の塩の濃度は、約0.1mM~約0.2M、又は約0.1mM~約0.1M、又は約0.1mM~約100mM、又は約0.1mM~約50mM、又は約0.1mM~約20mMの範囲(その間の中間値や部分範囲を含む)である。
幾つかの実施形態では、水性担体は塩を生理学的に許容し得る濃度で含んでおり、配合物が生理学的モル浸透圧濃度付近のモル浸透圧濃度を特徴とするようになっている。
幾つかの実施形態では、水性担体はリン酸塩、例えば、一塩基性リン酸ナトリウム(NaH2PO4)及び/又は二塩基性リン酸ナトリウム(リン酸水素ナトリウム、Na2HPO4)を含む。幾つかの実施形態では、リン酸塩の総濃度は約0.1Mである。
幾つかの実施形態では、水性担体はNaCl又は他の生理学的に許容し得る塩を含む。
幾つかの実施形態では、水性担体はリン酸緩衝液を含み、幾つかの実施形態では、水性担体は、一塩基性リン酸ナトリウム及び/又は二塩基性リン酸ナトリウムとNaClを含むリン酸緩衝食塩水を含む。
リン酸緩衝食塩水(PBS)は、市販のPBS(例えば、DPBS)又は望ましいpH及び/又はモル浸透圧濃度を特徴とする特注緩衝液とすることができる。
例示的な実施形態では、水性担体は、本明細書に記載のリン酸ナトリウム塩を約0.1Mの濃度で含み、NaClを約0mM~約200mMの濃度(その間の中間値や部分範囲を含む)で含むリン酸緩衝液を含む。
他の如何なる緩衝液も本実施形態の状況で使用可能である。
本明細書に記載の実施形態の幾つかでは、水性担体は酸を含む。
幾つかの実施形態では、酸の濃度は100mM未満であり、例えば、0.1mM~50mM、又は0.1mM~30mM、又は0.1mM~40mM、又は0.1mM~30mM、又は1~30mM、又は10~30Mm(その間の中間値や部分範囲を含む)とすることができる。
幾つかの実施形態では、酸の濃度は0.01~0.1重量%、又は0.01~0.05重量%の範囲(その間の中間値や部分範囲を含む)である。
酸は無機酸(例えば、HCl)又は有機酸(好ましくは上述の濃度で水溶性である(例えば、酢酸やピクリン酸))とすることができる。
本明細書に記載の生物学的材料以外の非硬化性材料も本明細書に記載の1種以上のモデリング配合物に含めることができ、例えば、配合物又は固化配合物及びそれによって形成された複合足場に特定の特性を付与する材料とすることができる。このような特性は、物理的特性(例えば、透明性や不透明性等の光学的特性、色、スペクトル特性、耐熱性、電気的特性等)、又は粘度、弾性、貯蔵弾性率、損失弾性率、剛性、硬度等の機械的又はレオロジー的特性とすることができる。
非硬化性材料の例としては、チキソトロピー剤、補強材、強化剤、充填剤、着色剤、顔料、染料等が挙げられる。
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、配合物は中性pH(例えば、約6~約8)を特徴とする。
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、配合物は、本質的に本明細書に記載の粘度パラメータを特徴とする。
2種以上のモデリング材料配合物を使用する実施形態では、2種以上の配合物は本明細書に記載のrhコラーゲン含有配合物であり、そこに含まれる更なる材料の存在、種類及び/又は濃度が互いに異なる。例えば、ある配合物は硬化性rhコラーゲンを含むことができ、他の配合物は硬化性rhコラーゲンと本明細書に記載の更なる硬化性材料の1種以上(例えば、硬化性合成ポリマー)を含むことができる。例えば、ある配合物は硬化性rhコラーゲンと更なる硬化性材料を含むことができ、他の配合物は硬化性rhコラーゲンと本明細書に記載の別の更なる硬化性材料を含むことができる。例えば、ある配合物は硬化性rhコラーゲンと更なる硬化性材料を含むことができ、他の配合物は硬化性rhコラーゲンと本明細書に記載の非硬化性材料を含むことができる。他の如何なる組み合わせも企図される。
本明細書に記載の実施形態の幾つかでは、構築材料中の全ての硬化性材料が同じ硬化条件下で硬化する。幾つかの実施形態では、全ての硬化性材料は光硬化性である。
本明細書に記載の実施形態の幾つかでは、硬化性材料を含むモデリング材料配合物は、硬化条件に曝露すると硬化性材料の硬化又は固化を促進する剤を更に含む。
剤の濃度は、硬化性材料の濃度及び所望の硬化度(例えば、所望の架橋度)に応じて決定することができる。
硬化性材料が光硬化性材料である場合、剤は光開始剤である。光開始剤は硬化機構(例えば、フリーラジカル、カチオン等)に応じて選択する。
フリーラジカル光開始剤は、紫外線や可視光線等の放射線に曝露するとフリーラジカルを発生し、それによって重合反応を開始するいずれかの化合物とすることができる。適切な光開始剤の非限定的な例としては、ベンゾフェノン、メチルベンゾフェノン、ミヒラーのケトン及びキサントン等のベンゾフェノン類(芳香族ケトン)、2,4,6-トリメチルベンゾリジフェニルホスフィンオキシド(TMPO)、2,4,6-トリメチルベンゾイルエトキシフェニルホスフィンオキシド(TEPO)、リチウムフェニル-2,4,6-トリメチルベンゾイルホスフィネート及びビスアシルホスフィンオキシド(BAPO)等のアシルホスフィンオキシド型光開始剤、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル及びベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾイン類及びベンゾインアルキルエーテル等が挙げられる。
光開始剤の例としては、Irgacure(登録商標)ファミリー、リボフラビン、ローズベンガル等が挙げられるが、これらに限定されない。
フリーラジカル光開始剤は単独で使用してもよく、共開始剤と組み合わせて使用してもよい。共開始剤は、光硬化性フリーラジカル系で活性なラジカルを発生するのに第2の分子を必要とする開始剤と共に使用する。ベンゾフェノンは、フリーラジカルを発生するのにアミン等の第2の分子を必要とする光開始剤の例である。放射線を吸収した後、ベンゾフェノンは水素引き抜きによって三級アミンと反応し、アクリレートの重合を開始するα-アミノラジカルを生成する。共開始剤の種類の非限定的な例としては、トリエチルアミン、メチルジエタノールアミン及びトリエタノールアミン等のアルカノールアミンが挙げられる。
適切なカチオン性光開始剤としては、例えば、重合を開始するのに十分な紫外線及び/又は可視光線への曝露時に非プロトン酸又はブレンステッド酸を形成する化合物が挙げられる。使用する光開始剤は、単一の化合物、2種以上の活性化合物の混合物、又は2種以上の異なる化合物の組み合わせ、即ち、共開始剤とすることができる。適切なカチオン性光開始剤の非限定的な例としては、アリールジアゾニウム塩、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、トリアリールセレノニウム塩等が挙げられる。カチオン性光開始剤の一例はトリアリールスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート塩の混合物である。
適切なカチオン性光開始剤の非限定的な例としては、P-(オクチルオキシフェニル)フェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネートUVACURE1600(Cytec Company(米国)から入手可能)、Irgacure250又はIrgacure270として知られるヨードニウム(4-メチルフェニル)(4-(2-メチルプロピル)フェニル)-ヘキサフルオロホスフェート(Ciba Specialty Chemicals社(スイス)から入手可能)、UVI6976及び6992として知られる混合アリールスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート塩(Lambson Fine Chemicals社(英国)から入手可能)、PC2506として知られているジアリールヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート(Polyset Company(米国)から入手可能)、Rhodorsil(登録商標)Photoinitiator2074として知られている(トリルクミル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(Bluestar Silicones社(米国)から入手可能)、Tego PC1466として知られるヨードニウムビス(4-ドデシルフェニル)-(OC-6-11)-ヘキサフルオロアンチモネート(Evonik Industries AG(ドイツ)から入手可能)が挙げられる。
硬化性配合物中の光開始剤の濃度は、配合物の総重量の0.1~3重量%、又は0.1~2重量%、又は0.5~2.5重量%、又は0.1~2重量%、又は0.5~1.5重量%の範囲とすることができる。
複合足場の化学組成:
幾つかの実施形態では、3Dバイオプリント複合足場は組換えヒトコラーゲン(rhコラーゲン)と生体適合性合成ポリマーを含む。
当業者であれば、「複合」又は「複合足場」という用語は、材料の組み合わせを含む足場を包含し得ることを理解するであろう。幾つかの実施形態では、複合足場は分解性である。幾つかの実施形態では、複合足場は生分解性である。幾つかの実施形態では、複合足場は生体適合性である。幾つかの実施形態では、複合足場は一部分解性である。幾つかの実施形態では、複合足場は機械的に分解可能な足場である。幾つかの実施形態では、複合足場は、生分解性である成分と機械的に分解可能な成分を含む。当業者であれば、複合足場の生体適合性成分が、所定の期間に亘って機械的に小片に分解した後、体内で徐々に再吸収又は代謝されることを理解するであろう。
幾つかの実施形態では、複合足場はコラーゲンを含む。幾つかの実施形態では、複合足場はrhコラーゲンを含む。幾つかの実施形態では、複合足場は本明細書において各実施形態のいずれかに記載のコラーゲンを含む。幾つかの実施形態では、コラーゲンはヒトコラーゲンを含む。幾つかの実施形態では、コラーゲンはrhコラーゲンを含む。幾つかの実施形態では、コラーゲンは植物由来コラーゲンを含む。幾つかの実施形態では、コラーゲンは、植物由来rhコラーゲンを含む。幾つかの実施形態では、コラーゲンは、架橋を経た本明細書に記載の架橋コラーゲン及び/又は硬化性rhコラーゲンを含む。幾つかの実施形態では、コラーゲンは、本明細書に詳述のように、架橋植物由来組換えヒトコラーゲンを含む。
幾つかの実施形態では、複合足場は、生体適合性合成ポリマー、例えば、重合及び/又は架橋を経た本明細書に記載の架橋生体適合性合成ポリマー及び/又は硬化性生体適合性合成ポリマーを含む。
当業者であれば、「生体適合性」という用語は、毒性、免疫反応、損傷等を誘発することなく生体組織又は器官と適合する材料を包含し得ることを理解するであろう。
当業者であれば、「合成ポリマー」という用語は、天然に存在しないポリマー及び/又は天然に存在する物質からは得られないポリマーであり、化学合成によって合成されるポリマーを包含し得ることを理解するであろう。
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、複合足場の化学組成は、本明細書において各実施形態のいずれか及びそのいずれかの組み合わせに記載の硬化性配合物を硬化条件に供した結果である。
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、硬化性配合物の成分中の全ての硬化性基又は部分は光硬化性(例えば、光硬化性、光重合性、UV硬化性)であり、複合足場の化学組成は、本明細書において各実施形態のいずれか及びそのいずれかの組み合わせに記載の硬化性配合物を照射(照射、例えば、紫外-可視照射)に供した結果である。
如何なる特定の理論によっても拘束されるものではないが、本明細書において各実施形態のいずれかに記載のように、複合足場を形成する場合、硬化性材料は、硬化条件に曝露すると互いに架橋して、本明細書に記載のヒドロゲルネットワークをもたらすと想定される。
当業者であれば、「架橋」、「架橋する」、又は「架橋性」という用語が、化学的相互作用(例えば、共有結合の形成、水素結合の形成、疎水性相互作用、親水性相互作用、イオン相互作用又は静電相互作用)によって少なくとも2個の分子が互いに結合することを意味することを理解するであろう。当業者であれば、架橋の様々な方法があることを更に理解するであろう。幾つかの実施形態では、このような方法では、例えば、架橋分子を生成する赤外線、紫外線、又は白色光源を用いた照明による光反応性分子及び光誘起反応を用いる。当業者であれば、架橋を用いて本明細書に記載の架橋分子を含むマトリックスや足場の安定性と強度を高めるが、マトリックスや足場が体内で所定期間に亘って分解、再吸収又は代謝される上で、架橋によってマトリックスや足場の特性が損なわれることがないことを理解するであろう。
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、硬化条件(例えば、照射)に曝露すると、硬化性材料は各々単独で(同一の硬化性成分で)及び/又は相互に架橋及び/又は重合を経て、架橋材料のネットワーク(必要に応じて本明細書に記載のヒドロゲルの形態)を形成する。
幾つかの実施形態では、複合足場は、架橋植物由来ヒトコラーゲンと2種の異なる合成ポリマー(例えば、架橋ポリマー)、3種の異なる合成ポリマー、4種の異なる合成ポリマー、5種の異なる合成ポリマー、6種の異なる合成ポリマー又は7種の異なる合成ポリマーを含む。幾つかの実施形態では、複合足場は、少なくとも2種の異なる合成ポリマー、少なくとも3種の異なる合成ポリマー、少なくとも4種の異なる合成ポリマー、少なくとも5種の異なる合成ポリマー、少なくとも6種の異なる合成ポリマー又は少なくとも7種の異なる合成ポリマーを含む。架橋rhコラーゲン及び架橋ポリマーの2種以上を互いに架橋して、本明細書に記載の架橋ネットワークを形成することができる。
生体適合性合成ポリマーに対するrhコラーゲンの範囲と具体的な比率は上述の通りであり、本明細書において各実施形態のいずれかに記載の硬化性配合物に関して記載された比率に従う。
幾つかの実施形態では、複合足場は架橋生体適合性合成ポリマーを含む。幾つかの実施形態では、架橋生体適合性合成ポリマーは、架橋PLA、架橋PGA、架橋PCL、架橋PLGA、架橋PEG、架橋PEGDA、架橋PVA、架橋ポリ-4-ヒドロキシブチレート(P4HB)、架橋PNIPAAm、又はそれらのいずれかの組み合わせを含む。
幾つかの実施形態では、複合足場は(架橋された)rhコラーゲンと、(例えば、架橋された)合成ポリマーと、少なくとも1種の細胞外マトリックス(ECM)成分、例えば、架橋ECM成分とを含む。幾つかの実施形態では、ECM成分はrhコラーゲンに加えて、本明細書に詳述のように、フィブロネクチン、HA、ヘパリン、エラスチン又はラミニン、又はそれらのいずれかの組み合わせを含む。幾つかの実施形態では、HAは架橋HAを含む。幾つかの実施形態では、ヘパリンは架橋ヘパリンを含む。幾つかの実施形態では、エラスチンは架橋HAを含む。幾つかの実施形態では、ラミニンは架橋ラミニンを含む。
幾つかの実施形態では、複合足場は2種の異なるECM成分、3種の異なるECM成分、4種の異なるECM成分、又は5種の異なるECM成分を含む。幾つかの実施形態では、複合足場は少なくとも2種の異なるECM成分、少なくとも3種の異なるECM成分、少なくとも4種の異なるECM成分、又は少なくとも5種の異なるECM成分を含む。rhコラーゲンと、1種以上の生体適合性合成ポリマーと、1種以上のECM成分とを架橋させて、これらの材料の少なくとも2種、少なくとも3種又は全てが互いに架橋して本明細書に記載のネットワークを形成するようにすることができる。
幾つかの実施形態では、コラーゲンは架橋コラーゲンを含む。幾つかの実施形態では、rhコラーゲンは架橋rhコラーゲンを含む。幾つかの実施形態では、硬化性(例えば、(メタ)アクリル化)rhコラーゲンは、硬化条件(例えば、照射/照明)下でそれ自体のみに対して架橋する。幾つかの実施形態では、硬化性(例えば、(メタ)アクリル化)rhコラーゲンは、硬化条件(例えば、照射/照明)下で他種の硬化性rhコラーゲン(例えば、チオール化rhコラーゲン)に対して架橋する。幾つかの実施形態では、硬化性(例えば、(メタ)アクリル化及び/又はチオール化)rhコラーゲンは、硬化条件下で、本明細書において各実施形態のいずれかに記載のように、硬化性配合物中の他の硬化性材料(例えば、(メタ)アクリル化/チオール化硬化性成分)に対して架橋する。幾つかの実施形態では、硬化性(例えば、(メタ)アクリル化)rhコラーゲンは、硬化条件(例えば、照射/照明)下で硬化性(例えば、(メタ)アクリル化)HAに対して架橋する。幾つかの実施形態では、硬化性(例えば、チオール化)rhコラーゲンは、硬化条件(例えば、照射/照明)下でチオール化HAに対して架橋する。幾つかの実施形態では、硬化性(例えば、(メタ)アクリル化)rhコラーゲンは、硬化条件下で硬化性(例えば、(メタ)アクリル化)PVAに対して架橋する。幾つかの実施形態では、硬化性(例えば、チオール化)rhコラーゲンは、硬化条件(例えば、照射/照明)下で硬化性(例えば、チオール化)PVAに対して架橋する。幾つかの実施形態では、硬化性(例えば、(メタ)アクリル化)rhコラーゲンは、硬化条件(例えば、照射/照明)下で硬化性(例えば、(メタ)アクリル化)PEGに対して架橋する。幾つかの実施形態では、硬化性(例えば、チオール化)rhコラーゲンは、硬化条件(例えば、照射/照明)下で硬化性(例えば、チオール化)PEGに対して架橋する。
幾つかの実施形態では、(メタ)アクリル化rhコラーゲンは、硬化条件(例えば、照射/照明)下でPEG-DAに対して架橋する。幾つかの実施形態では、チオール化rhコラーゲンは、硬化条件(例えば、照射/照明)下でPEG-DAに対して架橋する。幾つかの実施形態では、(メタ)アクリル化rhコラーゲンは、硬化条件(例えば、照射/照明)下でメタクリル化又はチオール化PLAに対して架橋する。幾つかの実施形態では、チオール化rhコラーゲンは、硬化条件(例えば、照射/照明)下でメタクリル化又はチオール化PLAに対して架橋する。幾つかの実施形態では、メタクリル化rhコラーゲンは、硬化条件(例えば、照射/照明)下でメタクリル化又はチオール化PGAに対して架橋する。幾つかの実施形態では、チオール化rhコラーゲンは、硬化条件(例えば、照射/照明)下でメタクリル化又はチオール化PGAに対して架橋する。幾つかの実施形態では、メタクリル化rhコラーゲンは、硬化条件(例えば、照射/照明)下でメタクリル化又はチオール化PCLに対して架橋する。幾つかの実施形態では、チオール化rhコラーゲンは、硬化条件(例えば、照射/照明)下でメタクリル化又はチオール化PCLに対して架橋する。幾つかの実施形態では、メタクリル化rhコラーゲンは、硬化条件(例えば、照射/照明)下でメタクリル化又はチオール化PLGAに対して架橋する。幾つかの実施形態では、チオール化rhコラーゲンは、硬化条件(例えば、照射/照明)下でメタクリル化又はチオール化PLGAに対して架橋する。幾つかの実施形態では、メタクリル化rhコラーゲンは、硬化条件(例えば、照射/照明)下でメタクリル化又はチオール化PNIPAAmに対して架橋する。幾つかの実施形態では、チオール化rhコラーゲンは、硬化条件(例えば、照射/照明)下でメタクリル化又はチオール化PNIPAAmに対して架橋する。
幾つかの実施形態では、メタクリル化rhコラーゲンは、硬化条件(例えば、照射/照明)下でメタクリル化OCに対して架橋する。幾つかの実施形態では、メタクリル化rhコラーゲンは、硬化条件(例えば、照射/照明)下でチオール化OCに対して架橋する。幾つかの実施形態では、メタクリル化rhコラーゲンは、硬化条件(例えば、照射/照明)下でN-(2-ヒドロキシエチル)アクリルアミド(HEAA)に対して架橋する。幾つかの実施形態では、チオール化rhコラーゲンは、硬化条件(例えば、照射/照明)下でN-(2-ヒドロキシエチル)アクリルアミド(HEAA)に対して架橋する。
分解性インプラント:
本発明の幾つかの実施形態の一態様によれば、本明細書において各実施形態のいずれか及びそのいずれかの組み合わせに記載の複合足場を含む軟部組織インプラントが提供される。
当業者であれば、「インプラント」、「インプラント可能」という用語が、対象(例えば、動物又はヒト、好ましくは哺乳動物)の身体に完全に又は部分的に、永久に又は一時的にインプラント、挿入、埋込み及び/又は移植することができる、例えば、対象の身体の組織、筋肉、器官又は他の部分に付着させることができる如何なる材料をも包含し得ることを理解するであろう。
各実施形態の幾つかによれば、軟部組織インプラントは生体適合性・分解性インプラントであり、これらの用語は本明細書全体で定義の通りである。
当業者であれば、「再吸収性」という用語と交換可能な「分解性」という用語は、対象内に移植された際に所定期間に亘って対象内で分解又は代謝される能力を包含し得ることを理解するであろう。幾つかの実施形態では、本明細書に記載のインプラントは生分解性インプラントを含む。幾つかの実施形態では、本明細書に記載のインプラントは機械的に分解されたインプラントを含む。幾つかの実施形態では、本明細書に記載のインプラントは生分解性インプラントと機械分解性インプラントの両方を含む。幾つかの実施形態では、本明細書に記載のインプラントは自然に分解可能なインプラントを含む。
幾つかの実施形態によれば、「インプラント」は、失われた生物学的構造を置換し、損傷した生物学的構造を支持し、及び/又は既存の生物学的構造を増強するために製造された医療デバイスである。幾つかの実施形態では、本実施形態に係るインプラントは、身体組織の再建及び/又は組織又は器官の機能の修復のためのインプラントである。
インプラントの例としては、例えば、乳房切除後の乳房再建用又は豊胸術用の乳房インプラント、唾液腺機能再建用の唾液腺インプラント、及び膵島機能(即ち、インスリン及び/又はグルカゴンの分泌)の修復用の膵臓インプラントが挙げられるが、これらに限定されない。更なる例を以下に記載する。各実施形態の幾つかによれば、軟部組織インプラントは、生体適合性・分解性インプラントであり、これらの用語は本明細書全体で定義の通りである。
幾つかの実施形態では、本明細書に記載のインプラントは約1~36ヶ月の期間に亘って徐々に分解することができる。幾つかの実施形態では、インプラントは約3~36ヶ月の期間内に分解する。幾つかの実施形態では、インプラントは約1~24ヶ月の期間内に分解する。幾つかの実施形態では、インプラントは約1~12ヶ月の期間内に分解する。幾つかの実施形態では、インプラントは約12~24ヶ月の期間内に分解する。幾つかの実施形態では、インプラントは約24~36ヶ月の期間内に分解する。幾つかの実施形態では、インプラントは約1ヶ月以内に分解する。幾つかの実施形態では、インプラントは約3ヶ月以内に分解する。幾つかの実施形態では、インプラントは約6ヶ月以内に分解する。幾つかの実施形態では、インプラントは約12ヶ月以内に分解する。幾つかの実施形態では、インプラントは約24ヶ月以内に分解する。幾つかの実施形態では、インプラントは約36ヶ月以内に分解する。幾つかの実施形態では、インプラントは1ヶ月未満の期間内に分解する。幾つかの実施形態では、インプラントは、3ヶ月未満の期間内に分解する。幾つかの実施形態では、インプラントは6ヶ月未満の期間内に分解する。幾つかの実施形態では、インプラントは12ヶ月未満の期間内に分解する。幾つかの実施形態では、インプラントは24ヶ月未満の期間内に分解する。幾つかの実施形態では、インプラントは36ヶ月未満の期間内に分解する。
幾つかの実施形態では、本明細書に記載の複合足場を含むインプラントは対象への移植後、経時的に分解する。幾つかの実施形態では、複合足場を含むインプラントは生体吸収性である。幾つかの実施形態では、本明細書に記載のインプラントは経時的に分解又は崩壊するように設計されており、足場は新たに形成された組織に置換される。幾つかの実施形態では、インプラントは生分解性又は自然溶解性インプラントを含む。幾つかの実施形態では、複合足場を含むインプラントは体内で溶解又は吸収される材料から製造される。幾つかの実施形態では、インプラントは所定期間に亘って分解する。幾つかの実施形態では、分解は、1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、12ヶ月、24ヶ月又は36ヶ月に亘る段階的な分解を含む。
幾つかの実施形態では、3Dバイオプリント分解性インプラントは、移植から最長36ヶ月までに分解する。幾つかの実施形態では、3Dバイオプリント分解性インプラントは、移植から最長24ヶ月までに分解する。幾つかの実施形態では、3Dバイオプリント分解性インプラントは、移植から最長12ヶ月までに分解する。幾つかの実施形態では、3Dバイオプリント分解性インプラントは、移植から24ヶ月~36ヶ月までに分解する。幾つかの実施形態では、3Dバイオプリント分解性インプラントは、移植から12ヶ月~24ヶ月までに分解する。幾つかの実施形態では、3Dバイオプリント分解性インプラントは、移植から6ヶ月~18ヶ月までに分解する。幾つかの実施形態では、3Dバイオプリント分解性インプラントは、移植から3ヶ月~12ヶ月までに分解する。幾つかの実施形態では、3Dバイオプリント分解性インプラントは、移植から1ヶ月~12ヶ月までに分解する。幾つかの実施形態では、3Dバイオプリント分解性インプラントは、移植から約3ヶ月以内、移植から約6ヶ月以内、移植から約7ヶ月以内、移植から約8ヶ月以内、移植から約9ヶ月以内、移植から約10ヶ月以内、移植から約11ヶ月以内、移植から約12ヶ月以内、移植から約13ヶ月以内、移植から約14ヶ月以内、移植から約15ヶ月以内、移植から約16ヶ月以内、移植から約17ヶ月以内、移植から約18ヶ月以内、移植から約19ヶ月以内、移植から約20ヶ月以内、移植から約21ヶ月以内、移植から約22ヶ月以内、移植から約23ヶ月以内、移植から約24ヶ月以内、移植から約25ヶ月以内、移植から約26ヶ月以内、移植から約27ヶ月以内、移植から約28ヶ月以内、移植から約29ヶ月以内、移植から約30ヶ月以内、移植から約31ヶ月以内、移植から約32ヶ月以内、又は移植から約33ヶ月以内、移植から約34ヶ月以内、移植から約35ヶ月以内、又は移植から約36ヶ月以内に分解する。
幾つかの実施形態では、本明細書に開示の3Dバイオプリント分解性インプラントは、それを必要とする対象に移植することができる。幾つかの実施形態では、乳房組織を置換又は再建するために3Dバイオプリント分解性インプラントを使用する。幾つかの実施形態では、乳房再建を必要とする乳房切除術を受ける対象で3Dバイオプリント分解性インプラントを使用する。幾つかの実施形態では、手術、疾患又は外傷に起因する美容処置、形成処置及び再建外科処置で3Dバイオプリント分解性インプラントを使用する。幾つかの実施形態では、3Dバイオプリント分解性インプラントは経時的に徐々に分解する。これらの実施形態の幾つかでは、3Dバイオプリント分解性インプラントは新たに形成された組織に置換される。
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、軟部組織インプラントは乳房インプラントである。
当業者であれば、「乳房インプラント」という用語は、豊胸、再建又は置換用に乳房組織の下部又は内部、又は胸筋の下部に挿入されるインプラントを包含し得ることを理解するであろう。
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、軟部組織は、顔面(例えば、鼻、耳、顎、頬、目、唇等)組織、首組織、筋肉組織、関節組織、顎組織、臀部組織、手組織、胸部組織、脳組織、肝臓組織、軟骨、結合組織、心臓組織、肺組織、性腺組織であり、軟部組織インプラントは、本明細書に記載のように、これらの組織の1種以上、及び/又はこれらの組織の1種以上を含む1個以上の口腔内、及び/又はこれらの組織の1種以上を含む1個以上の身体器官内又はその近傍に移植されるためのものである。
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、軟部組織インプラントは、唾液腺のインプラント、膵臓インプラント、骨インプラント、前十字靭帯断裂を再建するためのインプラント、頭蓋顔面再建インプラント、顎顔面再建インプラント、複雑な顎手術インプラント、腫瘍切除後の再建インプラント、メラノーマ切除後の組織再建用インプラント、頭頸部癌切除後の組織再建用インプラント、耳インプラント、鼻インプラント、胸壁再建インプラント、整形外科インプラント、軟骨再建インプラント、及び遅延火傷再建インプラントである。本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、軟部組織インプラントは、本明細書に記載の軟部組織の下部又は内部に移植するためのものであり、軟部組織又は軟部組織を含む身体器官の増強、再建、置換及び/又は再生のためのものである。
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、本明細書において各実施形態のいずれかに記載のように、本明細書に記載の軟部組織インプラントはマトリックスを更に含む。これらの実施形態の幾つかでは、マトリックスは複合構造の内部空洞の少なくとも一部を充填する。
これらの実施形態の幾つかによれば、マトリックスは、本明細書において各実施形態のいずれかに記載のrhコラーゲンを含み、必要に応じて、rhコラーゲンに加えて、本明細書において各実施形態のいずれかに記載の1種以上のECM成分を含み、必要に応じて、本明細書において各実施形態のいずれか及びそのいずれかの組み合わせに記載のインテグリン結合材料、更に必要に応じて、以下に詳述するように生体物質(例えば、細胞、細胞成分及び/又は脂肪組織又は脂肪抽出物)を含む。
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、軟部組織インプラントの調製は、本明細書において各実施形態のいずれか及びそのいずれかの組み合わせに記載のように、例えば、バイオプリンティングで複合足場を積層造形することによって行う。
本明細書に記載の軟部組織インプラントの調製は、本明細書において各実施形態のいずれかに記載の少なくとも1種の硬化性配合物を分注し、本明細書において各実施形態のいずれか及びそのいずれかの組み合わせに記載のように、足場の構成パターンで複数の層を逐次的に形成して本明細書に記載の複合足場を形成することによって行うことができる。
これらの層の少なくとも一部に関しては、本明細書において各実施形態のいずれか及びそのいずれかの組み合わせに記載のように、分注を行うのは、少なくとも1種の硬化性基を有する組換えヒトコラーゲンと、少なくとも1種の硬化性基を有する合成ポリマーとを含み、必要に応じて、硬化性基を有するECM成分及び/又は少なくとも1種の硬化性材料を有するインテグリン結合材料を含む配合物である。
実施形態の幾つかによれば、インプラントの調製は、本明細書において各実施形態のいずれか及びそのいずれかの組み合わせに記載のマトリックスを少なくとも足場の内部空洞内に、必要に応じて好ましくは足場の注入ポートを介して注入することを更に含む。
幾つかの実施形態では、3Dバイオプリント分解性インプラントを調製する方法は、バイオプリント複合足場を調製した後、複合足場又は本明細書に記載の組織マトリックスを含む複合足場を無菌培地中で維持する工程を含む。幾つかの実施形態では、無菌リン酸緩衝生理食塩水(PBS)やダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)等の無菌培地で足場を維持することは、生きた微生物の99%超が除去された環境でバイオプリント3D足場を維持することを包含することができる。当業者であれば、「無菌培地」という用語は、生きた微生物を実質的に含まない培地を包含し得ることを理解するであろう。
幾つかの実施形態では、インプラントを調製する方法は滅菌工程を含む。幾つかの実施形態では、滅菌はエチレンオキシド(EtO)滅菌の使用を含む。この場合、バイオプリント足場を乾燥し、標準的な手順によってEtOに曝露する。
幾つかの実施形態では、インプラントを製造する方法は、複合足場をバイオプリンティングすることと、必要に応じて、本明細書に記載のマトリックスを足場の内部空洞に充填することとを含み、バイオプリンティング及び/又は充填を無菌条件下で行う。
本明細書において各実施形態のいずれか及びそのいずれかの組み合わせに記載のインプラントを調製する例示的な方法は、
本明細書に記載の実施形態に従って(好ましくは無菌条件下で)複合足場をバイオプリンティングすることと、
必要に応じて足場を乾燥させる(例えば、凍結乾燥によって液体を除去する)ことと、
必要に応じて本明細書に記載の足場を滅菌することと、
必要に応じて、本明細書において各実施形態のいずれか及びそのいずれかの組み合わせに記載のように(好ましくは無菌条件下で)、本明細書に記載のマトリックスを足場の内部空洞に(好ましくは1個以上の注入ポートを介して)充填することと、を含む。
マトリックス:
幾つかの実施形態では、足場は少なくとも内部空洞内にマトリックスを含み、マトリックスは少なくとも1種の細胞外マトリックス(ECM)成分、及び細胞又は脂肪組織、又はそれらの組み合わせを含む。幾つかの実施形態では、足場は本明細書に詳述のマトリックスを含む。幾つかの実施形態では、マトリックスは少なくとも1種のECM成分を含む。幾つかの実施形態では、ECM成分はrhコラーゲン、HA、フィブロネクチン、ヘパリン、エラスチン又はラミニン、又はそれらのいずれかの組み合わせを含む。幾つかの実施形態では、マトリックスは細胞を含む。幾つかの実施形態では、細胞は周皮細胞、脂肪由来幹細胞、前脂肪細胞、内皮細胞、前駆細胞、造血細胞又は脂肪細胞、又はそれらのいずれかの組み合わせを含む。幾つかの実施形態では、細胞は、脂肪組織から単離された間質血管画分(SVF)を含む。幾つかの実施形態では、マトリックスは脂肪組織、例えば、最小限に処理した脂肪組織を含む。幾つかの実施形態では、マトリックスは脂肪抽出物、例えば、最小限に処理した脂肪抽出物を含む。幾つかの実施形態では、マトリックスの量は約5mL~約300mLである。
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、マトリックスは、本明細書において各実施形態のいずれか及びそのいずれかの組み合わせに記載のように、rhコラーゲンを含む。これらの実施形態の幾つかでは、rhコラーゲンは、それに結合した本明細書に記載の硬化性基又は部分を含まない。必要に応じて、rhコラーゲンは本明細書に記載の硬化性rhコラーゲンである。
本明細書に記載の実施形態の幾つかでは、rhコラーゲンは、本明細書に記載の架橋線維状コラーゲン、本明細書に記載のrhコラーゲン由来粒子(例えば、rhコラーゲン及び/又はrhゼラチンナノ粒子の形態)、及びそれらのいずれかの混合物である。
これらの実施形態の幾つかでは、マトリックスは、本明細書に記載の架橋線維状コラーゲンと、粒子状のrhコラーゲン及び/又はrhゼラチン(例えば、ナノ粒子の形態)とを含む。これらの実施形態の幾つかでは、本明細書に記載の架橋線維状コラーゲンと粒子状rhコラーゲン及び/又はrhゼラチン(例えば、ナノ粒子の形態)との重量比は約5:1~約5:1(その間の中間値や部分範囲を含む)である。これらの実施形態の幾つかでは、この比率は3:1~1:3、又は2:1~1:2、又は2:1~1:1、又は3:2~2:1、又は3:2~1:1(その間の中間値や部分範囲を含む)である。
本明細書に記載の実施形態の幾つかでは、rhコラーゲンは本明細書に記載の架橋線維状コラーゲンであるか、又はそれを含む。
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、マトリックスは、本明細書において各実施形態のいずれか及びそのいずれかの組み合わせに記載の1種以上のECM成分(例えば、ヒアルロン酸、フィブロネクチン、ヘパリン、エラスチン又はラミニン、又はそれらのいずれかの組み合わせ)を更に含む。
これらの実施形態の幾つかによれば、ECM成分では、本明細書において各実施形態のいずれかに記載のように、1種以上の硬化性基又は部分が結合していない。これらの実施形態の幾つかによれば、ECM成分は架橋性ECM成分であり、マトリックスは、本明細書において各実施形態のいずれかに記載のように、必要に応じて架橋剤を更に含むことができる。幾つかの実施形態では、ECM成分は、本明細書において各実施形態のいずれか及びそのいずれかの組み合わせに記載のように、硬化性ECM成分である。
これらの実施形態の幾つかによれば、ECM成分は、例えば、架橋剤によって及び/又はその化学構造中の固有の官能基によって架橋する。
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、マトリックスは、本明細書において各実施形態のいずれか及びそのいずれかの組み合わせに記載の1種以上のインテグリン結合材料(例えば、RGD含有材料、例えば、RGD4C)を更に含む。
これらの実施形態の幾つかによれば、本明細書において各実施形態のいずれかに記載のように、RGD含有材料には、1種以上の硬化性基又は部分が結合していない。これらの実施形態の幾つかによれば、RGD含有材料は架橋性であり、例えば、ジスルフィド結合を形成することが可能な1個以上のシステイン残基を含む。幾つかの実施形態では、マトリックスは、本明細書において各実施形態のいずれかに記載のように、必要に応じて架橋剤を更に含むことができる。幾つかの実施形態では、RGD含有材料は、本明細書において各実施形態のいずれか及びそのいずれかの組み合わせに記載のように、硬化性RGD含有材料である。
幾つかの実施形態では、ECM成分はrhコラーゲン、ヒアルロン酸(HA)、フィブロネクチン、ヘパリン、エラスチン又はラミニン、又はそれらのいずれかの組み合わせを含む。幾つかの実施形態では、ECM成分はコラーゲンを含む。幾つかの実施形態では、ECM成分は本明細書に詳述のコラーゲンを含む。幾つかの実施形態では、コラーゲンはヒトコラーゲンを含む。幾つかの実施形態では、コラーゲンは組換えヒトコラーゲン(rhコラーゲン)を含む。幾つかの実施形態では、コラーゲンは植物由来コラーゲンを含む。幾つかの実施形態では、コラーゲンは植物由来rhコラーゲンを含む。幾つかの実施形態では、コラーゲンは架橋コラーゲンを含む。幾つかの実施形態では、コラーゲンは修飾コラーゲンを含む。幾つかの実施形態では、rhコラーゲンは架橋性植物由来ヒトコラーゲンを含む。幾つかの実施形態では、rhコラーゲンは、本明細書に詳述のように、植物由来ヒトコラーゲンを含む。
幾つかの実施形態では、ECM成分は断片化ECM成分を含む。幾つかの実施形態では、ECM成分はヒアルロン酸(HA)を含む。幾つかの実施形態では、HAは修飾HAを含む。ヒアルロン酸(HA)にメタクリレート基を付加すると、光硬化性のヒアルロン酸-メタクリレート(HAMA又はMA-HA)が得られる。幾つかの実施形態では、HAは修飾HA又はその光重合性修飾誘導体を含む。幾つかの実施形態では、HAはメタクリル化HAを含む。幾つかの実施形態では、HAはチオール化HAを含む。幾つかの実施形態では、HAは架橋HAを含む。
幾つかの実施形態では、ECM成分は修飾フィブロネクチンを含む。幾つかの実施形態では、ECM成分は修飾ヘパリンを含む。幾つかの実施形態では、ECM成分は修飾エラスチンを含む。幾つかの実施形態では、ECM成分は修飾ラミニンを含む。
幾つかの実施形態では、マトリックスは架橋剤を更に含む。幾つかの実施形態では、架橋剤は光硬化性クロスリンカーを含む。幾つかの実施形態では、架橋剤はSR9035(エトキシル化(15)トリメチロールプロパントリアクリレート)を含む。幾つかの実施形態では、クロスリンカー剤は、4アームPEG-チオール、8アームPEG-チオール、4アームPEG-アクリレート、又は8アームPEG-アクリレートを含む。
幾つかの実施形態では、架橋剤は必ずしも光硬化性ではなく、適切な反応条件に供された際にマトリックス上のECM成分又は他の任意の成分を架橋することができる。
幾つかの実施形態では、ECM成分はフィブロネクチン又はその機能的断片を含む。幾つかの実施形態では、ECM成分はヘパリン又はその機能的断片を含む。幾つかの実施形態では、ECM成分はエラスチン又はその機能的断片を含む。幾つかの実施形態では、ECM成分はラミニン又はその機能的断片を含む。当業者であれば、ラミニンは脂肪細胞を取り囲み、前脂肪細胞の脂肪生成と脂肪細胞の脂質生成において重要であることを理解するであろう。
幾つかの実施形態では、マトリックスは2種の異なるECM成分、3種の異なるECM成分、4種の異なるECM成分、又は5種の異なるECM成分を含む。幾つかの実施形態では、マトリックスは少なくとも2種の異なるECM成分、少なくとも3種の異なるECM成分、少なくとも4種の異なるECM成分、又は少なくとも5種の異なるECM成分を含む。
幾つかの実施形態では、ECM成分を脱細胞化する(例えば、米国特許公開第2019/0022017号明細書に記載のように行うが、その開示を本明細書の一部を構成するものとしてここに援用する)。幾つかの実施形態では、ECM成分を所望の細胞と天然の脱細胞化ECMから調製する。天然組織をPBSで洗浄して残留血液を全て除去する。組織をスライスし、NaClの高低張溶液中でインキュベートする。次に、スライスをトリプシン-EDTA 0.05%と共に24時間インキュベートする(2回繰り返す)。続いて、化学物質を除去するために、組織をトリトンX-100+水酸化アンモニウム溶液で数回洗浄し、最後にリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で48時間の洗浄サイクルを数回、泡の残留物が得られなくなるまで行う。ECMの滅菌は、エタノール(70%)で2時間洗浄し、続いて再蒸留水で2回洗浄することによって行う。凍結乾燥したECMとプロテアーゼ酵素(例えば、ペプシン又は/及びコラゲナーゼ又は/及びトリプシン)を異なる濃度と生物活性で15mLの0.05M~0.2M HCl中で混合し、室温(25℃)で48時間、一定の撹拌を続けた。得られた消化ECMの粘稠溶液はpHが約3.0~4.0である。酵素の活性は、酵素の種類に応じて不可逆的に不活性化され、例えば、ペプシンの場合、pHは7.4に上昇する。可溶化されたマトリックスはECMタンパク質とペプチド断片を保持しているため、このマトリックスは、細胞とマトリックスの相互作用に必要な生化学的成分を保持している。溶液中に粒子が検出されない場合、ECMは完全に可溶化されたと見なされる。
脂肪組織ECMは、異なるドメインを示す大型で複雑なタンパク質を含んでおり、その配列と配置は高度に保存されている。コラーゲンはECMの重要な構造タンパク質であり、ECMで最も豊富なタンパク質である。脂肪組織ECMは、細胞の分化、増殖、生存、そして重要なこととして生理機能を調節及び促進する。幾つかの実施形態では、ECM成分は脂肪組織ECMを含む。幾つかの実施形態では、ECM成分は、同種異系脂肪組織ECMを含む。幾つかの実施形態では、ECM成分は自己脂肪組織ECMを含む。幾つかの実施形態では、脂肪組織ECMは、I~VII型コラーゲン、ラミニン、フィブロネクチン、エラスチン及びグリコサミノグリカン(GAG)を含む。
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、マトリックスはrhコラーゲンと、必要に応じて、本明細書に記載のように、他のECM成分及び/又はインテグリン結合材料と、必要に応じて1種以上の架橋剤とを含み、更に細胞成分、細胞及び/又は脂肪組織を含むことができる。
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、マトリックスはrhコラーゲンと、必要に応じて、本明細書に記載のように、他のECM成分及び/又はインテグリン結合材料とを含み、これらの成分の少なくとも1種は架橋している。幾つかの実施形態では、これらの成分の少なくとも2種が互いに架橋している。幾つかの実施形態では、ECM成分は架橋剤によって架橋している。
幾つかの実施形態では、このようなマトリックスは、本明細書に記載の複合足場に注入するのに使用可能である。
本発明の幾つかの実施形態の一様相によれば、少なくとも1種の細胞外マトリックス(ECM)成分と、細胞又は脂肪組織、又は細胞及び/又は脂肪組織の組み合わせとを含むマトリックスが提供される。幾つかの実施形態では、マトリックスは少なくとも1種の細胞外マトリックス(ECM)成分を含む。幾つかの実施形態では、マトリックスはrhコラーゲンを単独で又は更なるECM成分と組み合わせて含むと共に、細胞及び/又は脂肪組織を含む。
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、本明細書に記載のマトリックスは注入可能マトリックスである。
幾つかの実施形態では、そのようなマトリックスは、本明細書に記載のように、それを必要とする対象において治療する軟部組織部位に注入するのに使用可能である。
幾つかの実施形態では、マトリックスは、本明細書において各実施形態のいずれかに記載の少なくとも1種の細胞外マトリックス(ECM)成分と細胞を含む。幾つかの実施形態では、細胞は周皮細胞、脂肪由来幹細胞、前脂肪細胞、内皮細胞、前駆細胞、造血細胞又は脂肪細胞、又はそれらのいずれかの組み合わせを含む。
幾つかの実施形態では、マトリックスは周皮細胞を含む。当業者であれば、「周皮細胞」という用語は、毛細血管等の身体の血管を覆う内皮細胞を包む、空間的に隔離された収縮細胞を包含し得ることを理解するであろう。
幾つかの実施形態では、マトリックスは脂肪由来幹細胞を含む。幾つかの実施形態では、マトリックスは脂肪細胞を含む。幾つかの実施形態では、マトリックスは前脂肪細胞を含む。当業者であれば、脂質細胞としても知られる「脂肪細胞」という用語は、脂肪滴を含む細胞を包含し得ることを理解するであろう。
幾つかの実施形態では、マトリックスは内皮細胞を含む。当業者であれば、「内皮細胞」という用語は、血管やリンパ管や毛細血管等の体腔の表面を覆う内皮の細胞を包含し得ることを更に理解するであろう。
幾つかの実施形態では、マトリックスは造血細胞を含む。当業者であれば、「造血細胞」という用語は、血液細胞、赤血球に分化することができる造血幹細胞及び造血前駆細胞を包含し得ることを理解するであろう。
幾つかの実施形態では、マトリックスは前駆細胞を含む。当業者であれば、「前駆細胞」という用語は、特定の型の細胞に分化することに関与し、自己再生能力が制限されているか又は全くない単能性細胞を包含し得ることを理解するであろう。
幾つかの実施形態では、細胞は自己細胞を含む。幾つかの実施形態では、細胞は同種異系細胞を含む。従って、幾つかの実施形態では、細胞は対象から得ることができ、マトリックスを同じ対象に投与する。幾つかの他の実施形態では、適合するドナー(例えば、血液型がマッチする対象)から細胞を得ることができる。
自己又は同種異系の細胞及び細胞成分は、本明細書に開示の細胞を抽出及び調製するための当技術分野で良く知られ且つ認識されている方法を用い、例えば、図9に概略的に示される方法を用いて得ることができる。
幾つかの更なる実施形態では、マトリックスは脂肪組織を含む。当業者であれば、「脂肪組織」という用語は、脂肪細胞と微小血管細胞を含む複数の細胞型で構成される結合組織を包含し得ることを理解するであろう。幾つかの実施形態では、脂肪組織は特に幹細胞と内皮前駆細胞を含む。当業者であれば、「幹細胞」という用語は、様々な細胞型に分化する潜在力を有し、自己再生能力を有する多能性細胞を包含し得ることを理解するであろう。
幾つかの実施形態では、脂肪組織は脂肪抽出物を含む。当業者であれば、「脂肪抽出物」という用語は、脂肪(脂肪を貯蔵する結合組織を含む)を意味することを理解するであろう。幾つかの実施形態では、脂肪抽出物、脂肪細胞及び/又は組織は、例えば、吸引脱脂、脂肪吸引、及び/又は直接切除によって得ることができる。幾つかの実施形態では、脂肪抽出物又は脂肪組織は、例えば、腹部、大腿部、臀部、腕及び首を含む身体の様々な領域から抽出する。
幾つかの実施形態では、脂肪組織又は脂肪抽出物を均質化する。幾つかの実施形態では、脂肪抽出物は均質化脂肪抽出物を含む。幾つかの実施形態では、脂肪抽出物は最小限に処理した脂肪抽出物を含む。幾つかの実施形態では、脂肪抽出物は、本明細書に記載且つ以下の実施例のセクションで示すように、最小限に処理した均質化脂肪抽出物を含む。幾つかの実施形態では、脂肪組織又は脂肪抽出物を機械的に細断し、例えば、細かく砕く。幾つかの実施形態では、脂肪組織又は脂肪抽出物を約0.5mm2~5mm2の小片に砕く。幾つかの実施形態では、脂肪組織又は脂肪抽出物は、インプラント足場又は軟部組織への注入を可能にするために細断又は粉砕される。
当業者であれば、「均質化」という用語は、サイズと組成が実質的に類似したものを生成することを包含し得ることを理解するであろう。
幾つかの実施形態では、本明細書において各実施形態のいずれかに記載の脂肪組織は自己脂肪組織を含む。幾つかの実施形態では、本明細書において各実施形態のいずれかに記載の脂肪組織は同種異系脂肪組織を含む。幾つかの実施形態では、脂肪組織を対象から得て、同じ対象に投与することができる。幾つかの他の実施形態では、脂肪組織を適合するドナー(例えば、血液型がマッチする対象)から得ることができる。当業者であれば、脂肪組織を抽出及び調製するために利用可能な方法、例えば、本明細書に開示の方法についても精通しているであろう。
幾つかの実施形態では、細胞は、脂肪組織(例えば、自己脂肪組織)から単離された間質血管画分(SVF)を含む。幾つかの実施形態では、マトリックスは、脂肪組織(例えば、自己脂肪組織)から単離されたSVFを含む。幾つかの実施形態では、SVFは周皮細胞、脂肪由来幹細胞、前脂肪細胞、内皮細胞及び前駆細胞、及び単球とマクロファージを含む造血細胞を含む。幾つかの実施形態では、SVFはマトリックスの一部として移植する。3Dコラーゲン足場内に置かれたSVFは、インビトロで3Dオルガノイドに再編成し、毛細血管網を発達させる能力があり、このことは、SVF細胞が血管網の形成と血管新生を促進することを示唆している。当業者であれば、SVFを抽出する様々な方法があることを理解するであろう。一実施形態では、SVF細胞抽出の方法を実施例1で説明し、図9に概略的に示す。幾つかの実施形態では、SVFを自己対象又は異種対象から得ることができる。
幾つかの実施形態では、脂肪組織は、脂肪組織(例えば、自己脂肪組織)から単離し、最小限に処理した(例えば、酵素処理を経ていない)脂肪抽出物を含む。これらの実施形態の幾つかでは、脂肪抽出物は均質化脂肪抽出物である。
幾つかの実施形態では、マトリックスは、本明細書において各実施形態のいずれかに記載のように、少なくとも1種の細胞外マトリックス(ECM)成分と、細胞又は脂肪組織、又は細胞と脂肪組織の組み合わせとを含む。従って、幾つかの実施形態では、マトリックスは少なくとも1種のECM成分と細胞を含む。幾つかの実施形態では、マトリックスは少なくとも1種のECM成分と脂肪組織を含む。更に幾つかの実施形態では、マトリックスは少なくとも1種のECM成分、細胞及び脂肪組織を含む。
幾つかの実施形態では、マトリックスはrhコラーゲン、HA、フィブロネクチン、ヘパリン、エラスチン又はラミニン、又はそれらのいずれかの組み合わせと細胞を含む。幾つかの実施形態では、マトリックスはrhコラーゲン、HA、フィブロネクチン、ヘパリン、エラスチン又はラミニン、又はそれらのいずれかの組み合わせと脂肪組織を含む。幾つかの実施形態では、マトリックスはrhコラーゲン、HA、フィブロネクチン、ヘパリン、エラスチン又はラミニン、又はそれらのいずれかの組み合わせと、細胞及び脂肪組織とを含む。幾つかの実施形態では、マトリックスはrhコラーゲン、HA、フィブロネクチン、ヘパリン、エラスチン又はラミニン、又はそれらのいずれかの組み合わせとSVFを含む。幾つかの実施形態では、マトリックスはrhコラーゲン、HA、フィブロネクチン、ヘパリン、エラスチン又はラミニン、又はそれらのいずれかの組み合わせと最小限に処理した脂肪抽出物を含む。
幾つかの実施形態では、マトリックスにおけるECM成分の細胞又は脂肪組織に対する比率は、約5:95、10:90、15:85、20:80、25:75、30:70、40:60、45:55、50:50、55:45、60:40、65:35、70:30、75:25、80:20、85:15、90:10、又は95:5である。幾つかの実施形態では、ECM成分の細胞又は脂肪組織に対する比率は、5:95、10:90、15:85、20:80、25:75、30:70、40:60、45:55、50:50、55:45、60:40、65:35、70:30、75:25、80:20、85:15、90:10、又は95:5である。
幾つかの実施形態では、マトリックスは、少なくとも1種の細胞外マトリックス(ECM)成分と、細胞又は脂肪組織、又はそれらの組み合わせとを含み、ECM成分はrhコラーゲンを含むと共に、必要に応じてHA、フィブロネクチン、ヘパリン、エラスチン及び/又はラミニン、又はそれらのいずれかの組み合わせを含み、細胞は周皮細胞、脂肪由来幹細胞、前脂肪細胞、内皮細胞、前駆細胞、造血細胞又は脂肪細胞、又はそれらのいずれかの組み合わせを含むか、或いは細胞は、脂肪組織から単離された間質血管画分(SVF)を含む。
当業者であれば、「注入」又は「注入可能な」という用語は、幾つかの実施形態においては、本明細書に記載のように、対象又は足場へのマトリックスの任意のインビボ挿入又は導入を包含し、他の実施形態では、マトリックスの足場へのインビトロ挿入又は導入を包含することを理解するであろう。幾つかの実施形態では、対象への移植前にマトリックスを足場に注入する。幾つかの実施形態では、対象への移植後にマトリックスを足場に注入する。幾つかの実施形態では、マトリックスを対象に直接注入する。幾つかの実施形態では、本明細書に記載のマトリックスの使用は組織再生のためである。幾つかの実施形態では、本明細書に記載のマトリックスの使用は脂肪組織の再生のためである。
マトリックスの使用方法:
本明細書において各実施形態のいずれか及びそのいずれかの組み合わせに記載の軟部組織インプラントを調製及び/又は使用する方法で、本明細書に記載のマトリックスを使用することができる。幾つかの実施形態では、分解性軟部組織インプラントを調製する方法は、本明細書に詳述の足場の少なくとも内部空洞にマトリックスを注入する工程を含む。
幾つかの実施形態では、マトリックスは注入可能マトリックスを含む。幾つかの実施形態では、マトリックスを軟部組織(例えば、乳房)インプラントに注入する。幾つかの実施形態では、本明細書に記載のように、軟部組織インプラント足場の内部空洞にマトリックスを注入する。
幾つかの実施形態では、身体の関節又は組織又は周囲構造及び器官にマトリックスを注入することができる。幾つかの実施形態では、組織は軟部組織を含む。幾つかの実施形態では、軟部組織は、対象の顔、鼻、顎、乳房、頤、臀部、手、脚、足、胸、唇、又は頬の組織、又は本明細書に記載の他の軟部組織を含む。一実施形態では、軟部組織は乳房組織を含む。幾つかの実施形態では、光源を用いた注入部位の経皮照明によってマトリクスを注入後に架橋する。
幾つかの実施形態では、軟部組織の再建又は増強を必要とする対象においてそれを行う方法を本明細書で開示するが、この方法は軟部組織にマトリックスを注入することを含み、マトリックスは少なくとも1種の細胞外マトリックス(ECM)成分と、細胞又は脂肪組織、又はそれらの組み合わせとを含む。
幾つかの実施形態では、本明細書に開示のマトリックスは、ECM成分、例えば、rhコラーゲン、及びSVF、細胞及び/又は脂肪組織、例えば、均質化脂肪抽出物(例えば、最小限に処理したもの)を効果的に含む。
本明細書に記載のマトリックスを軟部組織に注入した後、ECM成分は脂肪由来細胞成分の増殖を促進し、それによって軟部組織の段階的な再生を可能にする。幾つかの実施形態では、注入されたマトリックスは新しい脂肪組織の伝播又は形成を促進する。従って、本明細書に記載のマトリックス及びその使用は、対象における軟部組織の修復又は増強又は再生、又はそれらのいずれかの組み合わせを可能にする。
ある実施形態では、本明細書に開示のマトリックスの使用は新しい組織の再生を促進する。ある実施形態では、本明細書に開示のマトリックスの使用は新しい脂肪組織の再生を促進する。ある実施形態では、本明細書に開示のマトリックスの使用は新しい組織の再生のためである。ある実施形態では、本明細書に開示のマトリックスの使用は脂肪組織の再生のためである。
幾つかの実施形態では、軟部組織の治癒の促進を必要とする対象においてそれを行う方法を開示するが、この方法は軟部組織にマトリックスを注入することを含み、本明細書において各実施形態のいずれかに記載のように、マトリックスは少なくとも1種の細胞外マトリックス(ECM)成分と、細胞又は脂肪組織、又はそれらの組み合わせとを含む。
幾つかの実施形態では、軟部組織の再建及び/又は増強及び/又は再生を必要とする対象においてそれを行う方法であって、この方法は、
マトリックスを軟部組織に注入することを含み、マトリックスは、
少なくとも1種の細胞外マトリックス(ECM)成分と、
細胞又は脂肪組織、あるいははそれらの組み合わせと
を含み、少なくとも1種のECM成分はrhコラーゲン、HA、フィブロネクチン、ヘパリン、エラスチン及びラミニン、又はそれらのいずれかの組み合わせを含み、細胞は周皮細胞、脂肪由来幹細胞、前脂肪細胞、内皮細胞、前駆細胞、造血細胞又は脂肪細胞、又はそれらのいずれかの組み合わせを含むか、或いは細胞は、脂肪組織から単離された間質血管画分(SVF)を含む。
マトリックスの成分は本明細書で詳述されている。幾つかの実施形態では、軟部組織の再建又は増強を必要とする対象においてそれを行う方法では、本明細書に記載のマトリックスのいずれかの実施形態を利用する。例えば、rhコラーゲンは植物由来ヒトコラーゲンを含むか、又は架橋rhコラーゲン又は修飾rhコラーゲンを含み、或いはECM成分は架橋ECM成分であるが、これに限定されない。
幾つかの実施形態では、マトリックスの使用方法は、表皮下の組織空間へのマトリックスの注入を含む。幾つかの実施形態では、マトリックスの使用方法は、真皮下(皮下)の組織空間へのマトリックスの注入を含む。幾つかの実施形態では、マトリックスの使用方法は、関節(例えば、損傷した関節が挙げられるが、これに限定されない)内の組織空間へのマトリックスの注入を含む。
幾つかの実施形態では、皮膚表面直下の様々な管腔及び空隙を遮断又は充填する方法において本明細書に記載のマトリックスを使用することができる。幾つかの実施形態では、組織増強を必要とする対象(例えば、ヒト患者)で組織増強を行う方法において本明細書に記載のマトリックスを使用することができ、その際、当技術分野で公知の方法を用いてマトリックスを目的の部位に導入する(例えば、増強が必要な組織部位又はその内部にマトリックスを注入する)。
当業者であれば、「再建」又は「増強」という用語は「再生」及び「修復」と交換可能に使用することができ、軟部組織を増大、充填、回復、増強又は置換するという意味を有することを理解するであろう。
当業者であれば、「増強」は、本明細書に記載のマトリックスを組織に供給するか、マトリックスで組織を増強又は置換することによって欠損(特に組織の損失や欠如による欠損)を修復、予防又は緩和することを包含し得ることを理解するであろう。増強は、天然の構造又は特徴の補足、即ち、例えば、唇、鼻、乳房、耳、器官の一部、顎、頬等のサイズを大きくするために既存の身体部分への構築物の追加も包含し得る。従って、組織増強としては、顔、首、手、足、指、つま先等の内部又は上における、溝、ひだ、しわ、瘢痕、顔の小さな窪み、唇裂、表面のしわ等の充填や縮小、手や足、指、つま先等の加齢や疾患による軽度の変形の矯正、発声をリハビリするための声帯や声門の増強、睡眠じわや表情じわの皮膚充填、老化によって失われた真皮と皮下組織の置換、唇の増強、目の周りのしわと眼窩溝の充填、豊胸、顎の増強、頬及び/又は鼻の増強、過度の脂肪吸引や他の外傷等による皮膚又は皮下の軟部組織の凹みの充填、にきびや外傷性瘢痕及び小じわの充填、鼻唇溝、鼻眉溝及び口下溝等の充填が挙げられる。
幾つかの実施形態では、適切な注入装置を使用して対象にマトリックスを挿入又は導入することができ、そのような装置の例としては、針、尖ったプラスチック先端アプリケータ、リザーバ、プランジャ、放出システム及びシリンジが挙げられるが、これらに限定されない。幾つかの実施形態では、マトリックスの注入に適したデバイスとしては、針、カニューレ、尖ったプラスチック先端アプリケータ、リザーバ、ステント、プランジャ、放出システム及びシリンジが挙げられるが、これらに限定されない。幾つかの実施形態では、局所注入(例えば、カテーテル投与、全身注入、局所注入、静脈内注入、又は非経口投与)によってマトリックスを投与することができる。
当業者であれば、「注入可能」という用語は、外科用針、カニューレ、他の外科用器具、又は他の送達手段(例えば、内視鏡的又は経皮的椎間板切除術で使用される機器)等の適切な送達装置を介した流れを可能にする質感や粘度を有するマトリックスについて説明し得ることを理解するであろう。本明細書に記載のマトリックスは、当技術分野で公知のように、カテーテル、カニューレ、針、シリンジ、管状装置等の適切なアプリケータを介して注入可能である。
ある実施形態では、本明細書に記載の実施形態のマトリックスの使用方法を開示するが、この方法ではマトリックスを表皮下の組織空間に注入して細胞成長促進足場を誘発し、マトリックスは少なくとも1種のECM成分と、細胞又は脂肪組織、又はその両方とを含み、コラーゲン含有組織の分解又は損傷による治癒又は置換を促進する。
幾つかの実施形態では、マトリックスの注入部位は、顔、鼻、顎、乳房、頤、臀部、手、脚、足、胸、唇又は頬の組織、又はそれらのいずれかの組み合わせを含む軟部組織を含む。
幾つかの実施形態では、マトリックスを使用する方法は、所定量のマトリックスを必要とする対象の必要部位に注入することを含み、この量の注入マトリックスによって空隙を充填する。幾つかの実施形態では、マトリックスを使用する方法は、所定量のマトリックスを必要とする対象の必要部位に注入することを含み、この量の注入マトリックスによって損傷組織の内部又は周囲を補う。
幾つかの実施形態では、注入マトリックスの量は、約2mL~約500mL、又は約5mL~約500mL、又は約5mL~約300mL、又は約10mL~約500mL、又は約10mL~約300mL、又は約50mL~約500mL、又は約50mL~約300mL、又は約50mL~約250mL、又は約50mL~約150mL、又は約100mL~約150mL(その間の中間値や部分範囲を含む)である。幾つかの実施形態では、注入マトリックスの量は約20mL~50mLである。幾つかの実施形態では、注入マトリックスの量は約50mL~150mLである。幾つかの実施形態では、注入マトリックスの量は約150mL~300mLである。
幾つかの実施形態では、注入マトリックスの量は約2mL、3mL、4mL、5mL、6mL、7mL、8mL、9mL、10mL、11mL、12mL、13mL、14mL、15mL、16mL、17mL、18mL、19mL、20mL、25mL、30mL、35mL、40mL、50mL、60mL、70mL、80mL、90mL、100mL、110mL、120mL、130mL、140mL、150mL、160mL、170mL、180mL、190mL、200mL、210mL、220mL、230mL、240mL、250mL、260mL、270mL、280mL、290mL、300mL又は350mLである。幾つかの実施形態では、注入マトリックスの量は少なくとも2mL、少なくとも3mL、少なくとも4mL、少なくとも5mL、少なくとも6mL、少なくとも7mL、少なくとも8mL、少なくとも9mL、少なくとも10mL、少なくとも11mL、少なくとも12mL、少なくとも13mL、少なくとも14mL、少なくとも15mL、少なくとも16mL、少なくとも17mL、少なくとも18mL、少なくとも19mL、少なくとも20mL、少なくとも25mL、少なくとも30mL、少なくとも35mL、少なくとも40mL、少なくとも50mL、少なくとも60mL、少なくとも70mL、少なくとも80mL、少なくとも90mL、少なくとも100mL、少なくとも110mL、少なくとも120mL、少なくとも130mL、少なくとも140mL、少なくとも150mL、少なくとも160mL、少なくとも170mL、少なくとも180mL、少なくとも190mL、少なくとも200mL、少なくとも210mL、少なくとも220mL、少なくとも230mL、少なくとも240mL、少なくとも250mL、少なくとも260mL、少なくとも270mL、少なくとも280mL、少なくとも290mL、少なくとも300mL、又は少なくとも350mLである。
幾つかの実施形態では、足場とは独立したマトリックスの使用は、マトリックスが足場内に含まれる場合よりも小さい体積の組織を再生させるためである。幾つかの実施形態では、足場とは独立したマトリックスの使用は、再生組織の形状又は寸法を提供する足場に依存しない、より小さい体積の組織を再生するためである。
幾つかの実施形態では、軟部組織の再建又は増強又は再生を必要とする対象においてそれを行う方法を開示するが、この方法は軟部組織にマトリックスを注入することを含み、マトリックスは少なくとも1種の細胞外マトリックス(ECM)成分と、細胞又は脂肪組織、又はそれらの組み合わせとを含み、ECM成分はrhコラーゲン、HA、フィブロネクチン、ヘパリン、エラスチン及びラミニン、又はそれらのいずれかの組み合わせを含み、細胞は周皮細胞、脂肪由来幹細胞、前脂肪細胞、内皮細胞、前駆細胞、造血細胞、又は脂肪細胞、又はそれらのいずれかの組み合わせを含むか、或いは細胞は、脂肪組織から単離された間質血管画分(SVF)を含む。
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、軟部組織の再建又は増強又は再生又は修復又は治癒を必要とする対象においてそれを行うための(足場とは独立した)本明細書に記載のマトリックスの使用が提供され、軟部組織の再建又は増強又は再生又は修復又は治癒は、本明細書に記載のように、マトリックスを軟部組織に注入することによって行う。
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、軟部組織の再建又は増強又は再生又は修復又は治癒を必要とする対象においてそれを行うための薬物の製造における(足場とは独立した)本明細書に記載のマトリックスの使用が提供され、軟部組織の再建又は増強又は再生又は修復又は治癒は、本明細書に記載のように、マトリックスを軟部組織に注入することによって行う。
幾つかの実施形態では、様々な美容処置、形成処置及び再建外科処置でマトリックスを使用することができ、身体の多くの異なる部分(例えば、顔、鼻、顎、乳房、頤、臀部、手、脚、足、胸、唇、及び頬が挙げられるが、これらに限定されない)に送達することができる。幾つかの実施形態では、マトリックスを使用して、手術、疾患又は外傷に起因する損傷軟部組織の修復することができる。幾つかの実施形態では、マトリックスを使用して軟部組織の空洞を充填し、組織又は臓器を増強する。幾つかの他の実施形態では、美容又は審美的目的で、例えば、しわ(小じわ)の充填、又は老化組織の修復においてマトリックスを使用する。幾つかの実施形態では、マトリックスの注入は、身体の関節/組織又は周囲構造及び器官に対するものとすることができる。
幾つかの実施形態では、光源を用いた注入部位の経皮照射/照明によって、マトリックスを注入後に架橋する。化粧品又は医療用途等、マトリックスを使用する方法の幾つかの実施形態では、本明細書において各実施形態のいずれかに記載のように、マトリックスは硬化性(例えば、光硬化性又は光重合性)の1種以上の成分を含むことによって光重合性である。幾つかの実施形態では、マトリックスは架橋性rhコラーゲンを含む。幾つかの実施形態では、マトリックスは修飾rhコラーゲンを含む。幾つかの実施形態では、マトリックスは、本明細書において各実施形態のいずれかに記載の硬化性rhコラーゲンを含む。幾つかの実施形態では、マトリックスは、本明細書において各実施形態のいずれかに記載のように、修飾HA、又は光重合性又は硬化性又は架橋性HAを含む。幾つかの実施形態では、マトリックスは、本明細書において各実施形態のいずれかに記載のように、修飾フィブロネクチン、又は光重合性又は硬化性又は架橋性フィブロネクチンを含む。幾つかの実施形態では、マトリックスは、本明細書において各実施形態のいずれかに記載のように、修飾ECM成分、又は光重合性又は硬化性又は架橋性ECM成分を含む。
通常、マトリックスを軟部組織に注入し、本明細書に記載のように硬化条件に曝露し、皮膚表面、即ち、身体の外側又は皮膚の外側から、又は注入部位に近接する表皮に適用する。
これらの実施形態の幾つかでは、本明細書に記載の注入可能マトリックスを利用する、軟部組織の再建又は増強を必要とする対象においてそれを行う方法は、光源で注入部位を照明する工程を更に含む。
幾つかの実施形態では、マトリックスは、本明細書において各実施形態のいずれか及びそのいずれかの組み合わせに記載のように、光開始剤を更に含む。
本明細書において、インプラントに関係なく使用される注入可能マトリックスに関する実施形態のいずれかに記載の注入用マトリックスは、本明細書では注入可能配合物とも称される。
本明細書に記載のマトリックスの使用に関する他の実施形態によれば、マトリックスをインプラントに、例えば、本明細書に詳述の複合足場の内部空洞に注入する。幾つかの実施形態では、マトリックスを対象への移植前に足場に注入する。幾つかの実施形態では、マトリックスを対象への移植後に足場に注入する。幾つかの実施形態では、マトリックスを本明細書に記載のインプラントの移植と組み合わせて対象に直接注入する。幾つかの実施形態では、注入ポートを介してマトリックスを足場に注入する。幾つかの実施形態では、足場の注入ポートの直径は、本明細書に記載のマトリックスの注入を可能にする大きさである。幾つかの実施形態では、注入ポートの直径は、本明細書に記載のECM成分、細胞又は組織の注入を可能にする大きさである。
幾つかの実施形態では、マトリックスは、例えば、本明細書において各実施形態のいずれかに記載のように、医療装置を通して注入可能である粘度を特徴とする。
幾つかの実施形態では、本明細書に記載のマトリックスは粘度が5~20Pa/秒、又は10~20Pa/秒、又は15~20Pa/秒の範囲である。
分解性軟部組織インプラントの使用方法
本発明の実施形態の幾つかによれば、本明細書において各実施形態のいずれか及びそのいずれかの組み合わせに記載の複合足場を含む、3Dバイオプリント生体適合性・分解性乳房インプラントを、それを必要とする対象に移植する方法であって、(a)足場を対象に移植する工程と、(b)足場の少なくとも1個の注入ポートを使用して、必要に応じて足場にマトリックスを注入する工程と、(c)必要に応じて工程(b)を繰り返す工程とを含む方法において、移植された足場は経時的に徐々に分解し、分解した足場は新たに形成された組織に置き換わる、方法が提供される。
本発明の実施形態の幾つかによれば、軟部組織(例えば、乳房組織)の置換又は再建又は再生(generating)又は増強又は修復又は治癒を必要とする対象においてそれを行う方法であって、(a)本明細書において各実施形態のいずれかに記載のインプラントを、それを必要とする対象の治療部位に移植し、(b)足場の少なくとも1個の注入ポートを使用して、必要に応じて足場にマトリックスを注入し、(c)必要に応じて工程(b)を繰り返して行う方法において、移植された足場は経時的に徐々に分解し、分解した足場は新たに形成された組織に置き換わる、方法が提供される。本発明の幾つかの実施形態の一様相によれば、軟部組織の増強及び/又は再建及び/又は再生及び/又は修復及び/又は治癒を必要とする対象におけるそれらの実施用である、本明細書において各実施形態のいずれか及びそのいずれかの組み合わせに記載のバイオプリント軟部組織インプラントであって、当該実施が、
軟部組織の増強及び/又は再建及び/又は再生及び/又は修復及び/又は治癒が望ましい身体器官又は体腔に足場を移植することと、必要に応じて、
本明細書において各実施形態のいずれかに記載のマトリックスを少なくとも足場の内部空洞内に、好ましくは足場の注入ポートによって、注入することと
を含むインプラントが提供される。
マトリックスの注入は移植の前又は後に行うことができる。
本発明の幾つかの実施形態の一様相によれば、軟部組織の増強及び/又は再建及び/又は再生及び/又は修復及び/又は治癒を必要とする対象においてそれを行う方法であって、
軟部組織の増強及び/又は再建及び/又は再生及び/又は修復及び/又は治癒が望ましい身体器官又は体腔に足場を移植することと、必要に応じて
本明細書において各実施形態のいずれかに記載のマトリックスを少なくとも足場の内部空洞内に、好ましくは足場の注入ポートによって、注入することと
を含む方法が提供される。
マトリックスの注入は移植の前又は後に行うことができる。
本発明の幾つかの実施形態の一様相によれば、軟部組織の増強及び/又は再建及び/又は再生及び/又は修復及び/又は治癒を必要とする対象においてそれを行うための医療装置として使用する、本明細書において各実施形態のいずれか及びそのいずれかの組み合わせに記載の軟部組織インプラントが提供される。当該医療装置は、軟部組織の増強及び/又は再建及び/又は再生及び/又は修復及び/又は治癒が望ましい身体器官又は体腔に足場を移植し、必要に応じて、本明細書において各実施形態のいずれかに記載のマトリックスを少なくとも足場の内部空洞内に、好ましくは足場の注入ポートによって、注入するためのものである。
マトリックスの注入は移植の前又は後に行うことができる。
幾つかの実施形態によれば、マトリックスの注入は移植後に行い、本明細書に記載のように、必要に応じて繰り返し行う。
幾つかの実施形態によれば、マトリックスを足場に注入する場合、マトリックスの量は、本明細書において各実施形態のいずれかに記載のように、約5mL~約300mLである。
本明細書に記載の実施形態の幾つかによれば、移植の後、プリント血管網経路を、本明細書に記載のように、対象の血管の少なくとも1個と吻合する。
複合足場を含む軟部組織インプラントの詳細は上に記載の通りである。このような説明は本明細書に十分に組み込まれている。本明細書に記載の複合足場を含む軟部組織(例えば、乳房)インプラントの実施形態は、軟部組織(例えば、乳房)インプラントを移植する方法、及び軟部組織を置換又は再建するための使用方法において使用することができる。
幾つかの実施形態では、本明細書に記載の複合足場は、治療対象の解剖学的構造に対応するサイズと形状でバイオプリントする。このようなパラメータは、例えば、画像データから得ることができ、この方法は、足場のサイズと形状に関する画像データを取得することと、画像データに従って足場をバイオプリンティングすることを更に含むことができる。
軟部組織インプラントの使用方法の幾つかの実施形態では、複合足場を含む軟部組織インプラントを対象に移植する工程の前にマトリックスを足場に充填し、少なくとも1個の注入ポートを介して注入を行う。軟部組織インプラントの使用方法の幾つかの実施形態では、複合足場を含む軟部組織インプラントを対象に移植する工程の前にマトリックスを足場に充填する。軟部組織インプラントの使用方法の幾つかの実施形態では、マトリックスを足場に充填せずに足場を対象に移植する。軟部組織インプラントの使用方法の幾つかの実施形態では、インプラントの血管新生を可能にするマトリックスなしで足場を対象に移植する。軟部組織インプラントの使用方法の幾つかの実施形態では、マトリックスを足場に充填せずに足場を対象に移植し、軟部組織インプラント移植の約1週間~24週間後にマトリックスを足場に充填する。軟部組織インプラントの使用方法の幾つかの実施形態では、足場を対象に移植する工程の後に、足場の少なくとも1個の注入ポートを用いてマトリックスを足場に注入する。マトリックスに含まれるECM成分、細胞、及び/又は脂肪組織は、新しい組織形成の基礎を提供する。幾つかの実施形態では、複合足場の分解又は生体再吸収又はそれらの組み合わせと同時に、マトリックス内に存在する細胞が増殖して足場の多孔性領域内に広がり、新しい組織を形成することができる。幾つかの実施形態では、複合足場の分解又は生体再吸収又はそれらの組み合わせと同時に、マトリックス内に存在する組織内の細胞が増殖して足場の多孔性領域内に広がり、新しい組織を形成することができる。幾つかの実施形態では、複合足場の分解又は生体再吸収又はそれらの組み合わせと同時に、マトリックス内のECM成分は、新しい組織の形成(例えば、細胞接着が挙げられるが、これに限定されない)のための3D構造支持をもたらすことができる。
軟部組織インプラントの使用方法の幾つかの実施形態では、移植の後、複合足場は経時的に分解し、新たに形成された組織と置き換わることができる。軟部組織インプラントの使用方法の幾つかの実施形態では、移植の後、複合足場は経時的に分解し、マトリックス及び新たに形成された組織の成分と置き換わることができる。幾つかの実施形態では、軟部組織インプラントは所定期間に亘って分解する。幾つかの実施形態では、軟部組織インプラントの使用方法に従って、インプラントは、軟部組織インプラントについて上述したように、1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、12ヶ月、24ヶ月、又は36ヶ月に亘って徐々に分解する。
軟部組織インプラントの使用方法の幾つかの実施形態では、複合足場は移植から最長36ヶ月までに分解する。軟部組織インプラントの使用方法の幾つかの実施形態では、複合足場は移植から最長24ヶ月までに分解する。軟部組織インプラントの使用方法の幾つかの実施形態では、複合足場は移植から最長12ヶ月までに分解する。軟部組織インプラントの使用方法の幾つかの実施形態では、複合足場は移植から12ヶ月~36ヶ月までに分解する。軟部組織インプラントの使用方法の幾つかの実施形態では、複合足場は移植から12ヶ月~24ヶ月までに分解する。軟部組織インプラントの使用方法の幾つかの実施形態では、複合足場は移植から6ヶ月~18ヶ月までに分解する。軟部組織インプラントの使用方法の幾つかの実施形態では、複合足場は移植から1ヶ月~36ヶ月までに分解する。軟部組織インプラントの使用方法の幾つかの実施形態では、複合足場は移植から3ヶ月~24ヶ月までに分解する。
軟部組織インプラントの使用方法の幾つかの実施形態では、3Dバイオプリント生体適合性・分解性軟部組織インプラント複合足場は、対象への移植から約6ヶ月以内、対象への移植から約7ヶ月以内、対象への移植から約8ヶ月以内、対象への移植から約9ヶ月以内、対象への移植から約10ヶ月以内、対象への移植から約11ヶ月以内、対象への移植から約12ヶ月以内、対象への移植から約13ヶ月以内、対象への移植から約14ヶ月以内、対象への移植から約15ヶ月以内、対象への移植から約16ヶ月以内、対象への移植から約17ヶ月以内、対象への移植から約18ヶ月以内、対象への移植から約19ヶ月以内、対象への移植から約20ヶ月以内、対象への移植から約21ヶ月以内、対象への移植から約22ヶ月以内、対象への移植から約23ヶ月以内、対象への移植から約24ヶ月以内、対象への移植から約25ヶ月以内、対象への移植から約26ヶ月以内、対象への移植から約27ヶ月以内、対象への移植から約28ヶ月以内、対象への移植から約29ヶ月以内、対象への移植から約30ヶ月以内、対象への移植から約31ヶ月以内、対象への移植から約32ヶ月以内、対象への移植から約33ヶ月以内、対象への移植から約34ヶ月以内、対象への移植から約35ヶ月以内、又は対象への移植から約36ヶ月以内にに分解する。
軟部組織インプラントの使用方法の幾つかの実施形態では、マトリックスを足場に注入する工程を繰り返す。軟部組織インプラントの使用方法の幾つかの実施形態では、対象への移植後にマトリックスを足場に繰り返し注入する。軟部組織インプラントの使用方法の幾つかの実施形態では、マトリックスを少なくとも1回足場に注入する。軟部組織インプラントの使用方法の幾つかの実施形態では、マトリックスを1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回又は10回足場に注入する。
軟部組織インプラントの使用方法の幾つかの実施形態では、マトリックスを足場に注入する工程は、対象への移植の1週間~24週間後に行う。
軟部組織インプラントの使用方法の幾つかの実施形態では、マトリックスを足場に注入する工程は、移植から最長24週間以内に行う。軟部組織インプラントの使用方法の幾つかの実施形態では、マトリックスを足場に注入する工程は、移植から最長12週間以内に行う。軟部組織インプラントの使用方法の幾つかの実施形態では、マトリックスを足場に注入する工程は、移植から最長12週間以内に行う。軟部組織インプラントの使用方法の幾つかの実施形態では、マトリックスを足場に注入する工程は、移植から1週間~24週間以内に行う。軟部組織インプラントの使用方法の幾つかの実施形態では、マトリックスを足場に注入する工程は、移植から12週間~24週間以内に行う。軟部組織インプラントの使用方法の幾つかの実施形態では、マトリックスを足場に注入する工程は、移植から6週間~18週間以内に行う。軟部組織インプラントの使用方法の幾つかの実施形態では、マトリックスを足場に注入する工程は、移植から1週間~12週間以内に行う。軟部組織インプラントの使用方法の幾つかの実施形態では、マトリックスを足場に注入する工程は、移植から3週間~24週間以内に行う。
軟部組織インプラントの使用方法の幾つかの実施形態では、マトリックスを足場に注入する工程は、対象への移植から約1週間以内、対象への移植から約2週間以内、対象への移植から約3週間以内、対象への移植から約4週間以内、対象への移植から約5週間以内、対象への移植から約6週間以内、対象への移植から約7週間以内、対象への移植から約8週間以内、対象への移植から約9週間以内、対象への移植から約10週間以内、対象への移植から約11週間以内、対象への移植から約12週間以内、対象への移植から約13週間以内、対象への移植から約14週間以内、対象への移植から約15週間以内、対象への移植から約16週間以内、対象への移植から約17週間以内、対象への移植から約18週間以内、対象への移植から約19週間以内、対象への移植から約20週間以内、対象への移植から約21週間以内、対象への移植から約22週間以内、対象への移植から約23週間以内、又は対象への移植から約24週間以内に行う。
軟部組織インプラントを移植する方法の幾つかの実施形態では、局所注入、例えば、カテーテル投与、全身注入、局所注入、静脈内注入、又は非経口投与によってマトリックスを投与することができる。軟部組織インプラントの使用方法の幾つかの実施形態では、マトリックスの注入に適した装置としては、針、カニューレ、尖ったプラスチック先端アプリケータ、リザーバ、ステント、プランジャ、放出システム及びシリンジが挙げられる。
幾つかの実施形態では、3Dバイオプリント分解性軟部組織インプラントを移植する方法は、移植工程(a)の前に足場の事前充填工程を含み、この場合、少なくとも1種のECM成分と、細胞又は脂肪組織、又はそれらの組み合わせとを含むマトリックスを足場に事前に充填する。
軟部組織インプラントを移植する方法の幾つかの実施形態では、少なくとも足場の内部空洞内にマトリックスを事前に充填する。軟部組織インプラントを移植する方法の幾つかの実施形態では、マトリックスは、少なくとも1種の細胞外マトリックス(ECM)成分と、細胞又は脂肪組織、又はそれらの組み合わせとを含む。軟部組織インプラントを移植する方法の幾つかの実施形態では、足場は本明細書に詳述のマトリックスを含む。軟部組織インプラントを移植する方法の幾つかの実施形態では、マトリックスは少なくとも1種のECM成分を含む。軟部組織インプラントを移植する方法の幾つかの実施形態では、ECM成分はrhコラーゲン、HA、フィブロネクチン、ヘパリン、エラスチン又はラミニン、又はそれらのいずれかの組み合わせを含む。幾つかの実施形態では、HAは修飾HA又はその光重合性修飾誘導体を含む。幾つかの実施形態では、HAは、本明細書に詳述のように、メタクリル化又はチオール化HAを含む。
軟部組織インプラントの使用方法の幾つかの実施形態では、マトリックスは細胞を含む。軟部組織インプラントを移植する方法の幾つかの実施形態では、細胞は周皮細胞、脂肪由来幹細胞、前脂肪細胞、内皮細胞、前駆細胞、造血細胞又は脂肪細胞、又はそれらのいずれかの組み合わせを含む。軟部組織インプラントを移植する方法の幾つかの実施形態では、細胞は、脂肪組織から単離された間質血管画分(SVF)を含む。軟部組織インプラントを移植する方法の幾つかの実施形態では、マトリックスは脂肪組織を含む。軟部組織インプラントを移植する方法の幾つかの実施形態では、脂肪組織は均質化脂肪抽出物を含む。
複合足場を含む軟部組織インプラントの使用方法の幾つかの実施形態では、事前に充填したマトリックスの量は、本明細書において各実施形態のいずれかに記載の通りである。
複合足場とマトリックスの詳細については上述されている。これらの詳細とその実施形態は本明細書に十分に組み込まれており、軟部組織インプラントの使用方法は、本明細書に記載の軟部組織インプラントとマトリックスの実施形態を含む。
本明細書に記載の軟部組織インプラントを移植する方法の幾つかの実施形態において、この方法は、プリント血管網経路の少なくとも1個を対象の血管の少なくとも1個と吻合する工程を含む。当業者であれば、「吻合」という用語が、対象の血管を本明細書に記載の軟部組織インプラント又は足場と外科的接合することを包含し得ることを理解するであろう。幾つかの実施形態では、プリント血管網経路の内の少なくとも1個を介して対象の血管を足場に結合する。幾つかの実施形態では、プリント血管網経路を介して対象の血管を結合して、足場の内部空洞内の細胞と組織が酸素及び栄養分の定常的な供給を受けるようにする。幾つかの実施形態では、外科的処置による対象の血管への吻合を可能にするように血管網経路を設計する。
本明細書に記載の軟部組織インプラントを移植する方法の幾つかの実施形態では、この方法は、プリント血管網経路を対象の血管の内の少なくとも1個と吻合する工程を含む。
本明細書に記載の軟部組織インプラントを移植する方法の幾つかの実施形態では、軟部組織インプラントは、必要とする対象に注入するrhコラーゲンと生体適合性合成ポリマーとを含む複合足場を含み、(a)足場を対象に移植する工程を含み、この場合、足場は、多孔質格子と、足場内の内部空洞と、内部空洞を足場の最外面と接続する少なくとも1個の注入ポートとを含み、注入ポートは、細胞又は組織注入用のカニューレの挿入を可能にするサイズであり、(b)必要に応じて、足場の少なくとも1個の注入ポートを用いてマトリックスを足場に注入する工程を含み、マトリックスは、少なくとも1種の細胞外マトリックス(ECM)成分と、細胞又は脂肪組織、又はそれらの組み合わせとを含み、(c)必要に応じて工程(b)を繰り返す工程を含み、移植した足場は経時的に徐々に分解し、分解した足場が新たに形成された組織に置き換わる。
本明細書に記載の軟部組織インプラントを移植する方法の幾つかの実施形態では、この方法は、移植工程(a)の前に足場の事前充填工程を含み、この場合、少なくとも1種のECM成分と、細胞又は脂肪組織、又はそれらの組み合わせとを含むマトリックスを足場に事前に充填し、ECM成分はrhコラーゲン、HA、フィブロネクチン、ヘパリン、エラスチン及びラミニン、又はそれらのいずれかの組み合わせを含み、細胞は周皮細胞、脂肪由来幹細胞、前脂肪細胞、内皮細胞、前駆細胞、造血細胞、又は脂肪細胞、又はそれらのいずれかの組み合わせを含むか、或いは細胞は、脂肪組織から単離された間質血管画分(SVF)を含む。軟部組織インプラントを移植する方法の幾つかの実施形態では、脂肪組織は均質化脂肪抽出物を含む。
本明細書に記載の軟部組織インプラントを移植する方法の幾つかの実施形態では、移植によってインプラントの血管新生を促進する。本明細書に記載の軟部組織インプラントを移植する方法の幾つかの実施形態では、足場は移植された細胞と組織を含む。本明細書に記載の軟部組織インプラントを移植する方法の幾つかの実施形態では、足場は生分解性であり、移植された足場は経時的に徐々に分解し、最終的に新たに形成された組織に置き換わるようになる。本明細書に記載の軟部組織インプラントを移植する方法の幾つかの実施形態では、足場は、細胞増殖、細胞分化及び組織成長を促進するECM成分を含む。適切に血管新生をもたらす能力は移植手順を成功させるのに重要である。酸素及び栄養分の供給と廃棄物の除去が遅れると、移植された細胞と組織に損傷を与える場合がある。
用途:
本明細書に記載の硬化性配合物、複合足場、マトリックス及びインプラントのいずれも、本明細書に記載の方法のいずれかで、軟部組織の増強、再建、修復及び/又は再生を必要とする対象においてそれを行うのに使用するためのものである。
本明細書に記載のマトリックスを、本実施形態に従ってそれ自体で(インプラントなしで)使用する場合、マトリックスは、例えば、本明細書に記載の軟部組織を充填及び/又は増強及び/又は修復するのに必要な用途で使用する軟部組織充填剤とも見なされる。
「組織再建」は、体内の組織の一部又は組織全体の修復又は置換、或いは器官の一部又は器官全体の修復又は置換を包含する。組織再建用のインプラント又はマトリックスは、組織再建のプロセスを支援するように設計されている。例えば、器官や身体部分内の支持結合組織の役割を引き継ぐことができる。生分解性材料から成る3次元足場を含むインプラントの場合、インプラントは支持結合組織の役割を一時的に引き継ぐことができる。
幾つかの実施形態では、本明細書に記載のインプラントは、細胞/組織移植、好ましくは遊離脂肪移植片の移植のためのレシピエント部位として予備血管新生結合組織を生成するためのものである。
幾つかの実施形態では、本明細書に記載の方法と使用は、外傷又は外科的処置後の瘢痕及び変形の治療に用いることができる。
幾つかの実施形態では、本明細書に記載の方法と使用は、軟部組織陥没の治療に用いることができる。
幾つかの実施形態では、本明細書に記載の方法と使用は、先天性変形の治療に用いることができる。
幾つかの実施形態では、本明細書に記載の方法と使用は、ポーランド症候群の治療に用いることができる。
幾つかの実施形態では、本明細書に記載の方法と使用は、ロンベルグ症候群の治療に用いることができる。
幾つかの実施形態では、本明細書に記載の方法と使用は、漏斗胸の治療に用いることができる。
幾つかの実施形態では、本明細書に記載の方法と使用は、乳房非対称又は臀部非対称又は顔面非対称等の構造的非対称の治療に用いることができる。
幾つかの実施形態では、本明細書に記載の方法と使用は、乳房切除後及び乳腺腫瘍摘出後の乳房再建に用いることができる。
幾つかの実施形態では、本明細書に記載の方法と使用は、脂肪異栄養症の治療に用いることができる。
幾つかの実施形態では、本明細書に記載の方法と使用は、組織増強(乳房、臀部)に用いることができる。
幾つかの実施形態では、本明細書に記載の方法と使用は、空洞の充填や体形矯正の改善を必要とする如何なる病態の治療にも用いることができる。
キット:
本発明の幾つかの実施形態の一様相によれば、
各実施形態のいずれか及びそのいずれかの組み合わせに記載の複合足場を形成するための1種以上の硬化性配合物と、
各実施形態のいずれか及びそのいずれかの組み合わせに記載のように、足場の内部空洞に注入するマトリックスを形成するためのマトリックス配合物とを含むキットが提供される。
幾つかの実施形態では、配合物をキット内で個別にパッケージする。幾つかの実施形態では、パッケージは光不透過性及び/又は空気不透過性である。
幾つかの実施形態では、キットは、本明細書において各実施形態のいずれかに記載の軟部組織インプラントの調製用に特定されており、本明細書に記載の実施形態に従って、配合物の使用方法に関する説明書を含むことができる。
本発明の幾つかの実施形態の一様相によれば、
各実施形態のいずれか及びそのいずれかの組み合わせに記載の複合足場と、
各実施形態のいずれか及びそのいずれかの組み合わせに記載のように、足場の内部空洞に注入するマトリックスを形成するためのマトリックス配合物と
を含むキットが提供される。
幾つかの実施形態では、足場と配合物とをキット内で個別にパッケージする。幾つかの実施形態では、パッケージは光不透過性及び/又は空気不透過性である。
幾つかの実施形態では、キットは、本明細書において各実施形態のいずれかに記載の軟部組織インプラントの調製での使用に特定されており、本明細書に記載の各実施形態のいずれかに従って、配合物と足場を組み合わせるための説明書を含むことができる。
本発明の幾つかの実施形態の一様相によれば、各実施形態のいずれか及びそのいずれかの組み合わせに記載のように、注入可能マトリックスを含むキットが提供される。
幾つかの実施形態では、キットは、本明細書において各実施形態のいずれかに記載の軟部組織インプラントの調製用に特定されており、本明細書に記載の実施形態に従って、配合物の使用方法に関する説明書を含むことができる。
幾つかの実施形態では、本明細書において各実施形態のいずれかに記載のように、キットは軟部組織充填剤としての使用に特定されている。
本明細書全体を通して、幾つかの実施形態によれば、各実施形態のいずれか及びそのいずれかの組み合わせに記載のように、ECM成分(例えば、硬化性ECM成分、コラーゲン、rhコラーゲン)について説明する際には、ECM成分はその断片及び分解生成物も包含する。
本明細書で使用される「約」という用語は、±10%又は±5%を意味する。
「含む(comprises)」、「含んでいる(comprising)」、「含む(includes)」、「含んでいる(including)」、「有する(having)」という用語及びその活用形は「含んでいるが、それに限定されない」ことを意味する。
「~から成る」という用語は「含んでおり、それに限定される」ことを意味する。
「~から本質的に成る」という用語は、組成物、方法又は構造が追加の成分、工程及び/又は部分を含み得ることを意味するが、これは、追加の成分、工程及び/又は部分が、請求項に記載の組成物、方法又は構造の基本的且つ新規な特性を実質的に変更しない場合に限られる。
本明細書で使用される、単数形を表す「a」、「an」及び「the」は、文脈が明らかに他を示さない限り、複数も対象とする。例えば、「化合物(a compound)」又は「少なくとも1種の化合物」という用語の場合には、複数の化合物が含まれ、それらの混合物も含み得る。
本願全体を通して、本発明の様々な実施形態は範囲形式にて示すことができる。範囲形式での記載は、単に利便性や簡潔さのためであり、本発明の範囲の柔軟性を欠く制限ではないことを理解されたい。従って、範囲の記載は可能な部分範囲の全て、及びその範囲内の個々の数値を具体的に開示していると考えるべきである。例えば、1~6のような範囲の記載は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6等の部分範囲だけでなく、その範囲内の個々の数値、例えば、1、2、3、4、5及び6も具体的に開示していると考えるべきである。これは範囲の大きさに関わらず適用される。
本明細書において数値範囲を示す場合、それは示される範囲内の任意の引用数(分数又は整数)を含むことを意図する。第1の指示数と第2の指示数「との間の範囲」という表現と、第1の指示数「から」第2の指示数「までの範囲」という表現は、本明細書で交換可能に使用され、第1の指示数及び第2の指示数と、それらの間の分数及び整数の全てを含むことを意図する。
本明細書で使用される「方法」という用語は、所定の課題を達成するための様式、手段、技術及び手順を意味し、化学、薬理学、生物学、生化学及び医療の各分野の従事者に既知のもの、又は既知の様式、手段、技術及び手順から従事者が容易に開発できるものが含まれるが、これらに限定されない。
本明細書で使用される「治療する」という用語は、病態の進行の抑止、実質的な阻害、遅延又は逆転、病態の臨床的又は審美的症状の実質的な寛解、或いは病態の臨床的又は審美的症状の出現の実質的な予防を包含する。
本明細書で使用される「対象」という用語は、動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトを包含する。「対象」、「個体」又は「患者」という用語は、本明細書では交換可能に使用される。一実施形態では、本明細書に記載の方法と使用のいずれかにおいては、対象はヒト対象を包含する。幾つかの実施形態では、対象は男性である。幾つかの実施形態では、対象は女性である。
明確さのために別々の実施形態に関連して記載された本発明の複数の特徴は、単一の実施形態において、これらの特徴を組み合わせても提供できることを理解されたい。逆に、簡潔さのために単一の実施形態に関連して記載された本発明の複数の特徴は、別々に提供してもよく、又は任意の適切な部分的な組み合わせにおいて提供してもよく、本発明の他に記載された実施形態において適切に提供してもよい。様々な実施形態に関連して記載される複数の特徴は、その要素なしで実施形態が不作用ではない限り、その実施形態の本質的な特徴であると見なしてはならない。
上述のように本明細書に記載され、後述の特許請求の範囲で請求される本発明の様々な実施形態及び様相は、以下の実施例によって実験的に支持される。
実施例
ここで、以下の実施例を参照するが、これらの実施例は、上述の記載と共に本発明の幾つかの実施形態を非限定的に説明するものである。
3Dバイオプリント分解性乳房インプラントの調製
インプラントの設計と調製:
血管新生が可能であり、3~36ヶ月に亘って徐々に分解する足場を含む例示的な乳房インプラントを設計し、実際に作成した。概して、硬化性rhコラーゲン系材料を含む硬化性配合物を使用した3D印刷によって足場を形成し、その後必要に応じて、細胞外マトリックス成分及び/又は自己脂肪細胞(例えば、rhコラーゲン系マトリックス中の脂肪抽出物又はSVF)を含むマトリックスを充填した(概略を図7及び図10に示す)。
足場の調製:
3D乳房分解性インプラント足場は、本明細書において各実施形態のいずれかに記載のように、メタクリル化rhコラーゲンを含む本明細書に記載の硬化性配合物を使用し、LabFabデスクトッププリンタ(3D Systems社製)を用いてバイオプリントした(図7、左上図)。
例示的な配合物においては、メタクリル化rhコラーゲン(0.5%)、ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート700(PEG-DA、平均Mn=700;0.5~2%)、エトキシル化(15)トリメチロールプロパントリアクリレート(SR9035として市販;1.0~2.5%)及びN-(2-ヒドロキシエチル)アクリルアミド(HEAA;12.0~40.0%)と、必要に応じて本明細書に記載のECM成分及び/又はRGD含有材料が全て水性担体(例えば、水)中に含まれていた。
更なる例示的な配合物においては、メタクリル化rhコラーゲン(0.1~1%)、本明細書において各実施形態のいずれかに記載の硬化性基を有する合成ポリマー(5~30%)、本明細書において各実施形態のいずれかに記載の硬化性基を有するECM成分、例えば、(メタ)アクリル化又はチオール化フィブロネクチン及び/又は(メタ)アクリル化又はチオール化ヘパリン(0.001~0.1%)、及び硬化性基を有するインテグリン結合材料(例えば、システイン含有RGD材料及び/又は本明細書に記載のPEG-DAに結合したRGD含有材料)(rhコラーゲンに対してほぼ化学量論量)が含まれていた。
例示的な3Dプリント足場は概して10mm×10mm×6mmの寸法を有するドーム形状であり、約0.5mm×0.5mmの寸法を特徴とする細孔を含んでいた。図8A~図8Cは、プリント3D足場の断面(図8A)、上面図(図8B)及び側面図(図8C)示し、細孔寸法は500ミクロン(マイクロメートル)であった。例えば、図10に図示及び本明細書に記載のように、足場は、その内部空間における少なくとも1個(例えば、2個)の注入ポートと血管網、及び足場の縁の周囲におけるプリント血管網経路を特徴とするように設計された。
本明細書に記載の、概してドーム形状の例示的な3Dプリント足場の更なる設計を図14A~図1B及び図15に示す。
材料/マトリックスの充填:
本発明の幾つかの実施形態に係る注入可能マトリックスは通常、1種以上のECM成分(例えば、コラーゲン、好ましくは本明細書に記載のrhコラーゲン、ヒアルロン酸、フィブロネクチン、ヘパリン、エラスチン、又はラミニン、及び/又はそれらのいずれかの組み合わせ)を含み、必要に応じて、細胞及び/又は脂肪組織に関連して本明細書に記載の脂肪抽出物(例えば、自己脂肪抽出物)を更に含む。自己間質血管画分(SVF)(インビトロ研究で使用)や自己均質化脂肪抽出物(インビボ研究で使用)等の自己脂肪抽出物を必要に応じて調製し、マトリックスと混合する。幾つかの実施形態では、以下で更に詳述するように、自己均質化脂肪抽出物を最小限に処理する。
自己脂肪抽出物の調製:
自己間質血管画分は通常、図9に示すように調製する。即ち、自己脂肪組織を氷冷PBSの入った50mLコニカルチューブに移した。蓋をしたコニカルチューブを激しく振って脂肪を洗浄した後、新しいチューブに移した。溶液が透明になるまで、この洗浄工程を繰り返した。次に、脂肪組織を細かく切断し、50mLの遠心分離管に移した。0.1%コラゲナーゼ溶液(1mg/mL)を試料に添加し、組織を穏やかに振盪(60サイクル/分)しながら37℃で60分間インキュベートした。完全培地(CM)(10%ウシ胎仔血清とP/Sを含むMEM)を管に添加して消化を中和した後、反転させて混合した。遠心分離によって材料を回収した後、管内に3個の層がはっきりと見えた。最上層には油脂が含まれていた。中間層は水層で赤色/透明に見えた。間質小胞画分(SVF)は管の底に茶色っぽいペレットとして存在し、他の層からは分離された。SVFをPBSに再懸濁させてコラゲナーゼを除去し、室温で5分間、700×gで遠心分離し、PBSに再懸濁させ、遠心分離によって回収した。SVFペレットを5mLのPBSに再懸濁させ、濾過して大きな組織粒子を除去し、新しい50mL遠心分離管の上に置いた100μmメッシュフィルターにピペットで移し、重力流で濾過した。フィルターを5mLのPBSですすぎ、室温で5分間、280×gで遠心分離した。上清を除去し、ペレットを適切量のCMに再懸濁させた。得られた溶液は、本質的にSVF細胞の単一細胞懸濁液で構成されている。トリパンブルー排除法を用いて生細胞をカウントした。
自己均質化脂肪抽出物は、図9及びそれに付随する説明で示した方法と同様の方法で調製したが、単離手順は、酵素消化を行わずに脂肪パッドの機械的ミンチ/均質化で停止させ、それによって最小限に処理した抽出物を得た。
マトリックス充填:
脂肪抽出物を架橋線維状rhコラーゲン(例えば、以下の実施例4に記載のX-Fb-rhCol-EDC20等のEDC X結合線維状rhコラーゲン)と混合して、図10に示すように、合計約500マイクロリットルの脂肪抽出物と足場への注入用のrhコラーゲン含有マトリックスを得た。足場の充填は18G注射針を備えた1mLシリンジを使用して行った。
例示的なマトリックスでは、rhコラーゲンと脂肪抽出物の重量比は1:3であった。
この方法を用い、生体適合性・分解性足場を3D印刷によって製造した。
特徴付け:
本発明の幾つかの実施形態に従って調製したインプラントの機械的特性は、背景技術の図1A~図6に例示するように、当技術分野にて公知且つ許容される方法を用いて確認する(Brandon et al. (2019) Bioengineering (Basel).6(2):43から採用)。
背景技術の図1A~図1Bは、インプラントの機械的特性を特徴付けるために使用される2個の平行プレート間の圧縮試験の例を示し、背景技術の図2は、射影歪みの関数としての分析試験用荷重の例示的なグラフを示す。背景技術の図3は、直径歪みの関数としての分析試験用荷重の例示的なグラフを示し、背景技術の図4は、面積歪みの関数としての分析試験用荷重の例示的なグラフを示し、背景技術の図5は、非常に低い圧縮荷重(「ピンチ」試験)で局所的な歪みを分析するためのセットアップを示し、背景技術の図6は、「ピンチ」試験で得られた結果の例示的なグラフを示す。
更なる詳細を後述する実施例3に記載する。
動物モデル研究
一般的な動物研究の例を図11に示す。3Dバイオプリント分解性乳房インプラントを様々な条件下(例えば、マトリックス(rhコラーゲン系マトリックス中のSVF又は脂肪抽出物)の足場への事前充填又は事後注入の有無等)でラットモデルに移植する。その後、移植した乳房インプラントについて、様々な時点で安全性と状態を評価する。
より詳細には、3Dバイオプリント分解性足場は、組換えヒトコラーゲン(rhコラーゲン)を本明細書に記載の生体適合性合成ポリマーと組み合わせて使用して印刷する。一実施形態では、足場は通常ドーム形状であり、注入ポートと、内部空洞と、プリント血管網経路とを含む。3Dバイオプリント分解性足場を移植前にEtOで滅菌する。
i. 3Dバイオプリント分解性足場をラットの背中に移植する。2~4種の異なるインプラント構成を評価し、これらの構成の内の1種にマッチするように処置した1個の足場を各ラットに移植する。4種の可能な構成は次の通りである。空の3Dバイオプリント足場(即ち、内部マトリックスも均質脂肪細胞も注入しない)。
ii. マトリックスは注入するが、均質脂肪細胞は注入しない3Dバイオプリント足場。
iii. 均質脂肪細胞を充填したマトリックスを注入した3Dバイオプリント足場。
iv. 3Dバイオプリント足場を使用せずにマトリックスと均質脂肪細胞の注入。
均質脂肪細胞を含むか又は含まないマトリックスの注入は、移植の前又は後に行う(図11を参照)。
ラットの通常の健康状態に対する移植の影響を評価すると共に、例えば、組織学的測定及び/又はイメージングを用いて、経時的な足場の分解及び足場全体での組織の再生と細胞分布を評価する。
予備研究:
皮下ラットモデルにおけるパイロット動物研究を実施した。脂肪抽出物を含むか又は含まない架橋線維状rhコラーゲン-EDC20を含む充填剤を(注入によって)rhコラーゲン系3Dプリント足場に充填し、充填した足場を、図12A~図12Cに示すように、ラットの背中に作成された皮下ポケットに移植した。
ラットの皮下モデルは、軟部組織増強用の人工足場と組み合わせたインプラントの生体適合性と再生可能性を推定するための一般的なモデルである。
研究目的:
本研究の主な目的は、皮下ラットモデルにおいて、脂肪抽出物の生存能を維持し、移植部位で新しい脂肪組織の再生を誘導するインプラントと軟部組織充填剤マトリックスの能力を評価することであった。本研究には、経時的な組織の統合と組織の再生、及び十分に機能する新生血管網の形成を評価するための組織学的評価が含まれていた。
主要評価項目は、組織再生と組織統合の徴候、及びインプラント/注入可能軟質充填剤部位の血管新生であった。
二次的評価項目は、注入可能軟質充填剤の経時的な体積保持率であった。
試験品と材料:
本明細書に記載のように、メタクリル化rhコラーゲン(0.5%)、PEGDA(0.5~2%)、SR9035(1.0~2.5%)、HEAA(12.0~40.0%)を含む配合物を使用して足場を調製した(実施例1、図7及び10を参照)。得られた3DプリントインプラントをETOで滅菌した。
20mMのEDC X結合線維状rhコラーゲン(X-Fb-rhCol-EDC20)を注入可能充填剤として使用した。
充填剤を複数のシリンジに分割し、凍結乾燥し、ETOで滅菌した。
注入用の脂肪抽出物は、実験当日に上述の実施例1に記載のように単離及び調製した。試験品の組成を表1に詳細に示す。
研究デザイン:
実験モデルはSprague-Dawleyラットの背中への皮下移植であった。群A及びBの各々には、2個の向かい合う皮下ポケットに3Dプリントインプラントを移植した。
全体として6匹の動物を全ての実験群に使用した。移植/注入の4週間後に動物を屠殺した。
群Bのインプラント用の脂肪移植片を単離するために更なる2匹のラットを屠殺した。
組織学的評価:
屠殺場所において移植部位を露出させ、肉眼で評価した。インプラントを切除し、4%PFAで固定し、組織病理学的評価に供した。
動物試験系:
種/系統:Hsd:Sprague Dawley(登録商標)SD(登録商標)
供給元:Harlan Laboratories Israel,Ltd.
性別:雌性
動物の総数:研究用6匹+脂肪採取用2匹
齢:10週齢
体重:試験開始時に約230グラム。処理開始時の動物の体重変動は平均体重の±20%を超えず。
動物の健康状態:本研究で使用する動物の健康状態は到着時に検査。健康な動物のみを実験室の条件に順応させ、研究に使用。
順化:7日間
収容:専用のHVAC(熱、換気、空調付きの動物施設で温度22±2℃、RH(相対湿度)55±15%)のIVCケージに動物を収容。温度と湿度を継続的にモニタリング。
食餌と水:動物には市販の齧歯動物用食餌(Harlan Teklad TRM Ra/Mouse Diet)を自由に与え、オートクレーブした水を自由に摂取させ、ステンレス製のシッパーチューブを備えたポリスルホンボトルを介して各ケージに供給。
環境:施設は外光に曝さず、12時間明と12時間暗の自動交互サイクルで維持。
識別:各ケージには研究名、動物番号、及び処理群に関連する詳細を付与。
終了:研究の終了時にCO2窒息により動物を安楽死させた。
研究手順
脂肪移植片の調製:
実験当日、SIAによって5匹のラットから脂肪組織を採取した。脂肪を無菌に保ち、氷上で運搬した。注入用の脂肪抽出物を生物学的安全フード内で調製した。脂肪組織を2個の5mLシリンジに分割し、更なるシリンジを用いて均質化した。均質化を行った後、シリンジを1000gで1分間遠心分離した。相分離が明確に観察された。上部の油画分は容易に除去できた。残りの脂肪抽出物を混合し、複数のシリンジに分割(3mL/シリンジ)し、rhコラーゲン充填剤と混合した(3:1)。
鎮痛及び麻酔:
3%O2に混合した2%イソフルランを使用して動物を鎮静させ、剃毛し、70%エタノールで消毒した。
移植手順:
群A及び群Bの動物を鎮静させて剃毛し、ラットの脊椎で正中切開術を1回行った。両側腹部に皮下ポケットを作成し、各ポケットに1個の足場を配置した。移植前に、脂肪抽出物を含むrhCol系マトリックス(群B)と脂肪抽出物を含まないrhCol系マトリックス(群A)を足場に注入した。
インプラントの設計と寸法は図8A~図8Dに示され、本明細書に記載されている。図12Aに示すように、18G針を使用し、指定細孔の1個(図10を参照)を介して約500マイクロリットルのマトリックスをドームに注入した。移植後(図12B)、図12Cに示すように、傷をクランプで閉じた。
最大5mgのrhコラーゲンで各動物を処理した。
術後ケア:
研究期間全体を通して、全ての動物の罹患率と死亡率を1日2回確認した。
器官/組織の回収と固定:
屠殺場所において移植/注入部位を露出させ、肉眼で評価した。ブレブとインプラントを上層皮膚とともに切除し、4%PFAで固定した。
組織学的測定:
回収/固定した試料に対し染色と組織学的評価を行なった。
パラフィンブロックを厚さ約4ミクロンの切片とした。切片をスライドガラスに載せ、ヘマトキシリン&エオシン(H&E)で染色して一般的な組織学的評価を行い、更にマッソントリクローム(MT)で染色して線維症の評価を行った。
写真の撮影は、顕微鏡(オリンパスBX60、シリアル番号7D04032)を使用し、対物倍率を×1.25及び×10として顕微鏡のカメラ(オリンパスDP73、シリアル番号OH05504)によって行った。写真の取得は、病理学的変化及び代表的な動物に対してのみ行った。
全てのスライドは1名の病理学者が検査した。
組織学的評価用の評点方式(ISO10993パート6より)を半定性的評価のために選択した。
結果:
両方の群のインプラントは移植4週間後もインタクトな構造を保っていた。血管の多いインプラントが見えたため、インプラントのすぐ近くに大きな脈管構造が観察された。
組織学的測定から抽出された主要なパラメータを図13Aにまとめる。炎症スコアは、評価した全ての炎症細胞(多形核細胞(PMC)、リンパ球、形質細胞、マクロファージ及び巨細胞)のスコアの合計として計算した。
両方のインプラント型の代表的な組織学的画像を図13B~図13Eに示す。
図13A~図13Eに示すように、両方の群において足場内部と足場鎖間で高い組織内部成長が実現した。両方の群で組織統合が低かったが、これはカプセル化と線維症に起因すると考えられる。群Bの1個の移植部位でのみ壊死が観察されたが、これは試料の汚染に起因すると考えられる。脂肪浸潤は軽度であり、大したことはなかった。炎症に関しては、単核炎症細胞の存在率が低いことからも分かるように、rhコラーゲンのみと組み合わせた3D足場(群A)では炎症率が低かった。
全体として、この研究から、3Dプリント足場が、全ての研究群で大きな有害組織反応を起こさずに組織の内部成長と再生に関して有望な結果を示したことが分かった。
具体的には、3Dプリント足場は移植後4週間もインタクトであり、両方の群において内部区画内とプリント鎖内で良好な組織内部成長が実現された。
インプラントの特徴付けと設計
本明細書に記載の乳房インプラントは経時的に分解するように設計されており、インプラントの内部空洞は新しく形成された組織に置き換わるが、分解期間の前や分解期間中にインプラントが対象内に存在する場合、長いタイムフレームが残る。インプラントの機械的特性は、本明細書に記載の分解性インプラントの強度と耐久性をもたらし、組織再生を促進して分解性インプラントを経時的に置換するのに重要な役割を果たす。
理想的には、足場/インプラントの機械的特性を分析するのに用いる方法は、指示組織(足場インプラントによって増強される組織)について、インビボ条件又はインビボにできるだけ近い条件でシミュレートする必要がある。同様に、足場は組織成長を効率的に促進する機械的特性を備えている必要がある。
幾つかの実施形態では、分析する機械的特性としては、多次元歪み及び接線係数、形状安定性、インプラント可動性、及び疲労破壊特性が挙げられるが、これらに限定されない。この情報は、インビボでの圧縮時のインプラントの耐久性を示す根拠となり得る。寸法歪みを示す情報は有用となり得るが、これは、圧縮荷重に応じて発生することがある幾何学的又は形状の変化を表すためである。接線係数は、弾性領域を超えて応力が加えられた材料の挙動を説明するのに有用である。接線係数は、材料が「軟化」又は「固化」によって応力や歪みに屈し始める際に発生する変化を定量化する。例えば、当業者であれば、接線係数を用いて、予想される「通常の」応力条件下での乳房インプラントの座屈破壊を定量化することができる。
幾つかの実施形態では、足場の機械的特性は、現時点において当技術分野で公知の方法を用いて分析することができる。評価用方法の例としては、Brandon et al., (2019) “New Evaluation Procedure for Multi-Dimensional Mechanical Strains and Tangent Moduli of Breast Implants: IDEAL IMPLANTR Structured Breast Implant Compared to Silicone Gel Implants”Bioengineering, 6:43. に記載の方法が挙げられる。Brandon et al.,(同文献)では、試験されたインプラントの機械的特性を特徴付ける一連の機械的分析について説明しており、例えば、2個のプレート間の圧縮試験(図1A及び図1B)や、非常に低い圧縮荷重での局所的な歪み(「ピンチング」)(図5)が挙げられる。Brandon et al., 2019(上述)で説明されている機械的分析は、静的及び動的条件の両方で行い、そこで説明されるように、潤滑剤の存在下と非存在下で行って摩擦力の有無による違いを試験した。
インプラントの多次元ひずみ分析は、例えば、図1A~図1Bに示す方法(但し、これには限定されない)によって行うが、これによって射影歪み、直径歪み、及び面積歪みを求める結果を得ることができる。
歪みは荷重(この場合は圧縮荷重)に応じたインプラントの寸法の変化率である。歪み値が低いほどインプラントの形状安定性が高くなる。ガイドとして図1A及び1Bを用い、以下の式によって射影歪み、直径歪み、及び面積歪みを計算することができる。
Brandon et al., 2019(上述)に記載の圧縮試験の結果を図2~図4に示すが、「乳房インプラントがその耐用期間に亘って受ける可能性のある高サイクル荷重、低サイクル荷重及び偶発的荷重」に関連している(上述のBrandon et al., 2019)。破線と実線は乾燥測定値と潤滑測定値の違いを示す。試験中に使用するプレートによってもたらされる摩擦は、繰り返し疲労と強度の予測に影響を及ぼす場合がある。
図1A及び図1Bに示す圧縮試験では、インプラント全体又はインプラントの大部分での圧縮力を測定するが、図5に示すように実施する「ピンチ」試験では、インプラントの外周での局所的な挟み込み又は圧迫に対するインプラントの耐性を試験する。局所抵抗はインプラントの自由な変形応答を示し、インプラントの触覚と明白な「柔らかさ」特性をシミュレートする。
乳房インプラントに対する局所的な横方向の圧縮力の結果を図6に示すが、これは、触覚、触知性、及び柔らかさを考慮した潤滑剤の存在下と非存在下(破線)での様々なインプラントの相対的傾向を示す。
幾つかの実施形態では、複合足場を含む分解性乳房インプラントは、圧縮荷重による影響を最小限に抑える形状と機械的特性を有する。幾つかの実施形態では、足場を含む分解性乳房インプラントは、局所的な圧縮荷重(「挟み込み」、局所的な「圧迫」)による影響を最小限に抑える形状と機械的特性を有する。幾つかの実施形態では、足場を含む分解性乳房インプラントは、女性の乳房と同様の感触を有する。幾つかの実施形態では、足場を含む分解性乳房インプラントは、女性の乳房と同様の柔らかさを有する。
幾つかの実施形態では、本明細書に開示の分解性インプラントは、市販の各インプラント(例えば、乳房インプラント)の±20%の範囲内の射影歪み、直径歪み、及び面積歪みを有する。
幾つかの実施形態では、本明細書に開示の分解性乳房インプラントは、Brandon et al., 2019(上述)において理想的な乳房インプラントに関して報告された各特性の±20%の範囲内で各々独立して射影歪み、直径歪み、及び/又は面積歪みを有する。
充填剤組成物
以下、本発明の幾つかの実施形態に係る例示的な軟部組織充填剤組成物について説明する。
例示的な架橋線維性rhコラーゲンを以下のように調製した。
原線維形成と洗浄緩衝液の調製:
原線維形成緩衝液(FB)の原液は、1000mLの再蒸留水(DDW)を23グラムのリン酸水素二ナトリウム(SPD)に添加し、その後、得られた緩衝液を0.22μmフィルターでろ過して調製した。次に、10NのNaOHを添加してpHを11.2に調整し、得られた緩衝液を使用するまで4℃で保存した。
洗浄緩衝液は、100mLのFBと、9mLのHClと、891mL(重量)のDDWを混合して調製した。10NのNaOHを添加してpHを7.24に調整し、得られた緩衝液を使用するまで4℃で保存した。
コラーゲンの原線維形成:
9部のrhコラーゲン(約3.1mg/mL)を1部のFBと混合し、混合物を室温で1時間穏やかに撹拌した。
繊維状コラーゲンのX結合:
20mMのEDCを線維状rhコラーゲンに添加し、得られた混合物を遮光して室温で2時間穏やかに撹拌した。
その後、混合物を4℃、10000rpmで25分間遠心分離した。上清を廃棄し、同量の洗浄緩衝液を添加し、得られた混合物を振盪、遠心分離した。この手順を3回繰り返した。得られたX結合線維状rhコラーゲンを4℃で保存した。
インビトロアッセイ:
X-Fb Coll-EDC20(5mg/mL)を含む水性配合物と、20%BDDE(1,4-ブタンジオールジグリシジル)(10mg/mL)で架橋したHAと混合したX-Fb Coll-EDC20(5mg/mL)を含む配合物を使用した。
配合物を凍結乾燥し、ETOで滅菌した。
実験の前に、配合物を1×DPBSで再構成した。
配合物を2個のシリンジ間で均質化した。
各配合物(100μL)を24ウェルプレートのトランスウェルに入れた。
1mLのDMEM培地をウェルの外部に添加した。
P#8 nHDF細胞を使用した。
100μLの細胞懸濁液(100K個の細胞/mL)を各トランスウェルの上部に置いた。
配合物を含まない空のトランスウェルの膜の上部に播種した100μLの細胞(100K個の細胞/mL)を対照として使用した。
プレートを37℃で1日間又は5日間インキュベートした。
各時点で、WSTアッセイを用いて細胞の生存率と増殖を評価した。WSTアッセイ検量線用の様々な濃度の細胞も播種した。
得られたデータを図16に示す。図示のように、インサートへのrhコラーゲン系充填剤の添加によって細胞増殖に対する有益な効果が示された。
本明細書に記載のrhコラーゲン由来ナノ粒子を調製する例示的なプロセスは以下の通りである。
rhコラーゲンを70℃で20分間処理してrhゼラチンに転化する。得られたrhゼラチン(3グラム)を激しく攪拌しながら40℃で200mLの脱イオン水に溶解する。ゼラチンが溶解したら、濃塩酸(10M以上)を使用して溶液のpHをpH2.5に調整する。その後、アセトン(600mL)を5mL/分の速度で添加する。アセトンの量は、乳白色の混合物が得られるまで、必要に応じて調整することができる。次に、1mLの25%グルタルアルデヒド溶液を添加し、得られた混合物を照明しながら、室温で一晩攪拌する。得られた反応混合物を15000gで15分間超遠心分離するか、又は得られたナノ粒子が沈殿してペレットになるまで超遠心分離する。
次に、ペレットを50mL(又はそれ以上)の75%アセトン水溶液に再分散させてナノ粒子を洗浄し、必要に応じて超音波処理を行い、完全な分散液を確実に形成する。遠心分離と再分散を3回繰り返す。
次に、溶液を200mLの丸底フラスコに移し、体積が約75%減少するまで蒸発又は蒸留によってアセトンを除去する。得られた溶液のpHをNaOHによって中性に調整し、溶液をコニカルチューブに移し、乾燥するまで凍結乾燥する。得られた粒子を使用するまで室温にて空気/水密封容器で保存する。
本発明をその具体的な実施形態との関連で説明したが、多くの代替、修正及び変更が当業者には明らかであろう。従って、このような代替、修正及び変更は全て、添付の特許請求の範囲の趣旨と広い範囲内に含まれることを意図するものである。
本明細書で言及した全ての刊行物、特許及び特許出願については、個々の刊行物、特許及び特許出願の各々が具体的且つ個別に本明細書の一部を構成するものとして援用される場合と同様に、それらの全体が本明細書の一部を構成するものとして援用されることは本出願人の意図である。更に、本願における如何なる参考文献の引用又は特定も、このような参考文献が本発明の先行技術として利用可能なことを容認するものとして解釈されるべきではない。各項の見出しが使用される範囲において、必ずしも限定として解釈されるべきではない。また、本出願のいずれの優先権書類もその全内容が本明細書の一部を構成するものとしてここに援用する。