JP2023513607A - フィラリア症の検出および予防のためのワクチンおよび方法 - Google Patents

フィラリア症の検出および予防のためのワクチンおよび方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2023513607A
JP2023513607A JP2022549106A JP2022549106A JP2023513607A JP 2023513607 A JP2023513607 A JP 2023513607A JP 2022549106 A JP2022549106 A JP 2022549106A JP 2022549106 A JP2022549106 A JP 2022549106A JP 2023513607 A JP2023513607 A JP 2023513607A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
protein
seq
cells
immunogenic composition
antigen
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2022549106A
Other languages
English (en)
Other versions
JPWO2021163448A5 (ja
Inventor
カリヤナサンダラム,ラマズワミー
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
University of Illinois
Original Assignee
University of Illinois
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Priority claimed from US16/790,277 external-priority patent/US11370814B2/en
Application filed by University of Illinois filed Critical University of Illinois
Publication of JP2023513607A publication Critical patent/JP2023513607A/ja
Publication of JPWO2021163448A5 publication Critical patent/JPWO2021163448A5/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Classifications

    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K39/00Medicinal preparations containing antigens or antibodies
    • A61K39/0003Invertebrate antigens
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P33/00Antiparasitic agents
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K39/00Medicinal preparations containing antigens or antibodies
    • A61K2039/51Medicinal preparations containing antigens or antibodies comprising whole cells, viruses or DNA/RNA
    • A61K2039/53DNA (RNA) vaccination
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K39/00Medicinal preparations containing antigens or antibodies
    • A61K2039/545Medicinal preparations containing antigens or antibodies characterised by the dose, timing or administration schedule
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K39/00Medicinal preparations containing antigens or antibodies
    • A61K2039/55Medicinal preparations containing antigens or antibodies characterised by the host/recipient, e.g. newborn with maternal antibodies
    • A61K2039/552Veterinary vaccine
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K39/00Medicinal preparations containing antigens or antibodies
    • A61K2039/555Medicinal preparations containing antigens or antibodies characterised by a specific combination antigen/adjuvant
    • A61K2039/55505Inorganic adjuvants
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K39/00Medicinal preparations containing antigens or antibodies
    • A61K2039/555Medicinal preparations containing antigens or antibodies characterised by a specific combination antigen/adjuvant
    • A61K2039/55511Organic adjuvants
    • A61K2039/55572Lipopolysaccharides; Lipid A; Monophosphoryl lipid A
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K39/00Medicinal preparations containing antigens or antibodies
    • A61K2039/70Multivalent vaccine
    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02ATECHNOLOGIES FOR ADAPTATION TO CLIMATE CHANGE
    • Y02A50/00TECHNOLOGIES FOR ADAPTATION TO CLIMATE CHANGE in human health protection, e.g. against extreme weather
    • Y02A50/30Against vector-borne diseases, e.g. mosquito-borne, fly-borne, tick-borne or waterborne diseases whose impact is exacerbated by climate change

Abstract

本発明は、動物をフィラリア症に対して免疫化するための、多価免疫原性組成物である。いくつかの態様において、多価免疫原性組成物の抗原は、タンパク質ベース、DNAベース、またはそれらの組み合わせである。本発明はまた、フィラリア線虫を検出してワクチンの有効性を決定するための、方法およびキットも提供する。

Description

緒言
本出願は、2020年2月13日に出願された米国出願第16/790,277号からの優先権の利益を主張し、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
本発明は、国立衛生研究所から授与された契約番号AI064745およびAI116441の下で政府の支援を受けてなされた。政府は本発明に一定の権利を有する。
背景
リンパ系フィラリア症は、フィラリア線虫であるWuchereria bancrofti、Brugia malayi、およびBrugia timoriによって引き起こされ、世界中で1億2000万人を超える人々に影響を与えている(WHO (1992) World Health Organ. Tech. Rep. Ser. 821:1-71)。世界保健機関の大量薬剤投与プログラムにより、リンパ系フィラリア症の発生率は世界の多くの地域で大幅に低下している(Hotez (2009) Clin. Pharmacol. Ther. 85(6):659-64)。それにもかかわらず、大量薬剤投与の有効性の欠如が、主にコンプライアンス違反のためにいくつかの流行地域から報告されている(Babu & (2008) Trans. R. Soc. Trop. Med. Hyg. 102(12):1207-13;El-Setouhy, et al. (2007) Am. J. Trop. Med. Hyg. 77(6):1069-73)。さらに薬剤耐性が、大量薬剤組み合わせのうちの少なくとも1つの薬剤について報告されている(Horton (2009) Ann. Trop. Med. Parasitol. 103(1):S33-40;Schwab, et al. (2007) Parasitology 134(Pt 7):1025-40)。効果的な制御には大量の薬剤を毎年投与する必要があるため、薬剤耐性寄生虫の選択には憂慮すべき懸念が存在する。したがって、この蚊媒介性感染症を制御するための多面的なアプローチが、早急に必要とされている。
リンパ系フィラリア症と同様に、イヌ科動物およびネコ科動物におけるディロフィラリア症(イヌ糸状虫病(heartworm disease))の処置には、イベルメクチン、ミルベマイシンオキシム、モキシデクチン、およびセラメクチンなどのマクロライド剤の使用が含まれており、これらは感染後最初の2ヶ月間、幼虫の発育を防止する。しかし、これらの薬剤は有効性のために毎月投与する必要があり、ペットの所有者にとって非常に高価となり得る。
ワクチン接種はこれらの感染症を制御するための1つの戦略であり、いくつかのサブユニット候補ワクチン抗原が実験動物で試験され、さまざまな結果が得られている(Bottazzi, et al. (2006) Expert Rev. Vaccines 5(2):189-98;Chenthamarakshan, et al. (1995) Parasite Immunol. 17(6):277-85;Dissanayake, et al. (1995) Am. J. Trop. Med. Hyg. 53(3):289-94;Li, et al. (1993) J. Immunol. 150(5):1881-5;Maizels, et al. (2001) Int. J. Parasitol. 31(9):889-98;Thirugnanam, et al. (2007) Exp. Parasitol. 116(4):483-91;Veerapathran, et al. (2009) PLoS Negl. Trop. Dis. 3(6):e457)。リンパ系フィラリア症は複雑なライフサイクルを持つ多細胞生物であり、多数の宿主調節分子を生成する。したがって、単一抗原ワクチンでこの感染症と戦うのは困難な場合がある。B. malayi寄生虫のファージディスプレイcDNA発現ライブラリーを、免疫個体からの血清を用いてスクリーニングすることにより、いくつかの潜在的ワクチン候補が同定された(Gnanasekar, et al. (2004) Infect. Immun. 72(8):4707-15)。しかし、候補ワクチン抗原のそれぞれは、DNA、タンパク質、またはプライムブーストワクチンとして与えられた場合に、さまざまな程度の保護を達成した(Veerapathran, et al. (2009)、上記)。
発明の概要
本発明は、Dirofilaria immitis(犬糸状虫)由来の2つ以上の抗原から構成される多価免疫原性組成物である。いくつかの態様において、抗原は、タンパク質ベース、DNAベース、またはそれらの組み合わせである。他の態様において、抗原には、豊富な幼虫転写産物(Abundant Larval Transcript)(ALT)、小型熱ショックタンパク質(HSP)12.6、チオレドキシンペルオキシダーゼ2(TXP2)、または任意にテトラスパニン(TSP)が含まれる。いくつかの側面において、抗原には、配列番号98または配列番号99のアミノ酸配列を有するALT抗原;配列番号100または配列番号101のアミノ酸配列を有するHSP12.6抗原;および/または配列番号83または配列番号101のアミノ酸配列を有するTXP2抗原が含まれる。ある側面において、ALT抗原は配列番号93のアミノ酸配列を有し;HSP12.6抗原は配列番号91のアミノ酸配列を有し;およびTXP2抗原は配列番号95のアミノ酸配列を有する。ある側面において、ALT抗原は配列番号121または配列番号122のアミノ酸配列を有し;HSP12.6抗原は配列番号81または配列番号123のアミノ酸配列を有し;TSP抗原は配列番号82のアミノ酸配列を有し;およびTXP2抗原は配列番号83または配列番号124のアミノ酸配列を有する。ある側面において、抗原は共有結合している。本発明はまた、多価免疫原性組成物をコードする核酸を保有する組換えベクター、組換えベクターを保有する組換え宿主細胞、および、アジュバントの多価免疫原性組成物への包含を提供する。防御免疫応答を対象に誘導し、動物をフィラリア症またはディロフィラリア症に対して免疫化する方法も提供される。これらの方法のいくつかの態様において、多価免疫原性組成物は、アジュバントと共に、例えば1以上の追加用量で皮下または筋肉内注射により投与される。
図1は、ワクチン接種マウスの血清中の、抗BmHSPおよび抗BmALT2 IgG抗体の力価を示す。6週齢のbalb/cマウスを、一価免疫原性組成物(BmhspプライムとrBmHSPブースト、またはBmalt2プライムとrBmALT2ブースト)および多価免疫原性組成物(Bmhsp/Bmalt2プライムと、rBmHSPおよびrBmALT2ブースト)によるプライムブーストアプローチを使用して免疫化した。血清中のIgG抗体の力価を間接ELISAを用いて測定した。提示されたデータは、最後のブースターから2週間後の抗体価である。結果は、二価および多価の両方の免疫原性組成物が、成分抗原のそれぞれに対して有意なIgG抗体を誘導することを示す。この知見はまた、一価および多価製剤中の抗原が、相乗的に作用して免疫応答を高めることを示す。N=5。統計的有意性**p<0.001、p<0.05。示された値は平均±標準偏差である。
図2A~2Bは、一価(BmHSPまたはBmALT2)または多価免疫原性組成物をワクチン接種したマウスの脾臓における、IL-4(図2A)およびIFN-γ(図2B)分泌細胞の数を示す。細胞をrBmHSPまたはrBmALT(1μg/ml)で刺激した後、ELISPOTアッセイを行った。脾臓細胞の単一細胞調製物をそれぞれの抗原で48時間刺激し、スポット形成細胞をカウントした。結果は、一価および多価の両方の免疫原性組成物がIL-4分泌細胞を促進したことを示す。多価ワクチン接種は、対照よりも多くのIL-4産生細胞を誘導した。IFN-γ産生細胞は比較的少なかった。これらの知見は、BmHSPとBmALT2が、多価ワクチン接種後のワクチン接種動物の免疫応答を相乗的に高めることをさらに裏付けている。N=5。結果は、3×10細胞あたりのスポット形成単位の平均数±SDとして表す。
図3は、マウスモデルにおいて多価免疫原性組成物により与えられる保護の程度を示す。マウスのBalb/c系統を、HAT(HSP/ALT2/TSP)ハイブリッドDNA、組換えHATタンパク質、または両方の組み合わせを、プライムブーストアプローチを使用して免疫化した。HATハイブリッドDNAをプライミングに使用した。プライミングの2週間後、マウスにHATハイブリッドタンパク質をブースト(追加免疫)した。マウスの別の群を、HATハイブリッドDNAまたはHATハイブリッドタンパク質で免疫化した。対照群のマウスには、ブランクベクターまたはミョウバンアジュバントのみを投与した。最後の免疫化の2週間後、マウスへのチャレンジを、Brugia malayiの20の感染幼虫を用いて、これらを免疫化マウスの腹腔内のマイクロポアチャンバーに配置することにより実施した。48時間後、幼虫の死滅を測定して、ワクチン接種の成功を決定した。
図4は、多価免疫原性組成物により誘導された、マカクにおけるBrugia malayi感染に対する保護を示す。すべての動物(ワクチン接種済みおよび対照)は、最後の免疫化の1か月後に130~180のBrugia malayiのL3でチャレンジした。チャレンジ後5、10、15、および18週目に、各マカクから10mlの血液を18:00~22:00時の間に収集し、ミクロフィラリアの存在についてノット変法(modified Knott technique)を用いてスクリーニングし、Hha-1反復についてPCRで分析した。ミクロフィラリア(Mf)陰性動物に感染がないことは、SXP-1(B. malayi診断抗原)ELISAによってさらに確認した。結果は、rBmHAXT+AL019(ミョウバン+グルコピラノシル脂質アジュバント安定エマルジョン)が、試験した他の製剤よりも優れた免疫原性組成物製剤であることを示す(群当たりn=10)。カイ二乗検定およびフィッシャーの正確確率検定を使用して、全群での比率を比較した。
図5は、抗体依存性細胞介在性細胞傷害(ADCC)アッセイの結果を示す。約10のBrugia malayi幼虫を、各マカクの2×10個の末梢血単核細胞(PBMC)および50μlの血清試料と共に、37℃で72時間インキュベートした。各ウェルでの幼虫の死滅を、光学顕微鏡で監視した。各データ点は、1匹の動物からの血清試料を用いた幼虫の死亡率を示す。「+」は、その群の殺幼虫活性の平均パーセントを示す。n=群あたり10匹のマカク。AL019群(ミョウバン+グルコピラノシル脂質アジュバント安定エマルジョン)と比較してP≦0.005。統計分析は、クラスカル・ウォリス検定に続き複数試験のボンフェローニ補正により実施した。rBmHAXT、組換えB. malayiHSP/ALT-2/TPX-2/TSPLEL。
図6は、イヌにおける薬剤感受性および薬剤耐性のDirofilaria immitisの殺傷に関するADCCアッセイの結果を示す。約8~10のD. immitis幼虫を、各イヌからの50万個のPBMCおよび100μlの血清試料と共に、37℃で96時間インキュベートした。各ウェルでの幼虫の死滅を、光学顕微鏡で監視した。各データ点は、1匹の動物からの血清試料を用いた幼虫の死亡率を示す。rBmHAXT、組換えB. malayiHSP/ALT-2/TPX-2/TSPLEL。
発明の詳細な説明
フィラリア症のための多価免疫原性組成物が、現在開発されている。豊富な幼虫転写産物(ALT2)、テトラスパニン(TSP)、小型熱ショックタンパク質(HSP)12.6、スズメバチ毒物アレルゲンホモログ様タンパク質(Vespid Venom Allergen homologue-Like protein)(VAL-1)、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)、およびチオレドキシンペルオキシダーゼ2(TPX-2)などの抗原およびその断片の組み合わせを、実験動物(すなわちマウス、スナネズミ、マストミス、マカク、およびイヌ)で試験し、Brugia malayiおよびDirofilaria immitisなどのフィラリア線虫による感染に対して>80%の保護を提供することが示された。したがって本発明は、フィラリア線虫抗原またはそれをコードする核酸から構成されるタンパク質ベースおよびDNAベースの組成物ならびに、免疫原性組成物の、ヒトおよび動物、特にイヌ科動物およびネコ科動物におけるフィラリア症を予防または制御するための使用を特徴とする。ワクチン接種に加えて、本発明は、フィラリア線虫の存在を検出するためのアッセイおよびキットも提供する。
本発明の目的のために、多価(multivalent)または多価(polyvalent)免疫原性組成物とは、いくつかの抗原から調製された免疫原性組成物またはワクチンを指す。いくつかの態様によれば、抗原は核酸分子であり、これは本明細書では「DNAベースの」抗原と呼ばれる。他の態様によれば、抗原はタンパク質またはポリペプチドであり、これは本明細書では「タンパク質ベースの」抗原と呼ばれる。本発明の多価免疫原性組成物は、2、3、4、5、6、もしくは10までの抗原またはそれらの断片を様々な順列組み合わせで構成することができる。具体的な態様において、多価免疫原性組成物は、2、3または4の抗原から構成される。いくつかの態様において、多価免疫原性組成物は、タンパク質抗原のみから構成される。他の態様において、多価免疫原性組成物は、DNAベースの抗原のみから構成される。さらに他の態様において、多価免疫原性組成物は、タンパク質およびDNAベースの抗原の混合物から構成される。
本発明の抗原は、例えば、抗原間の内部リボソーム侵入部位を含む単一核酸分子から、提供または発現することができる。さらに本発明の多価免疫原性組成物の抗原は、共有結合してハイブリッドまたはキメラ分子または融合タンパク質を形成することができ、ここで抗原は、互いに直接隣接している(例えば、短いスペーサーありまたはなしのインフレーム融合)。代替的に、本発明の抗原は、個々の抗原の混合物として提供することができる。さらに、本免疫原性組成物は、例えば2つの抗原を第3の非共有結合抗原と混合して含有する、ハイブリッド分子から構成可能であることが企図される。例として、本発明の多価免疫原性組成物は、ALT2をコードする核酸分子と混合されたキメラTSP-HSPタンパク質から構成することができる。
一態様において、多価免疫原性組成物の抗原は、1種のフィラリア線虫とは異なるタンパク質である。この態様の例として、多価免疫原性組成物は、B. malayiまたはD. immitisの1つ以上の株から単離されたALT2、HSP、およびTSP、および/またはTPX2またはGSTから構成される。別の態様において、抗原は同じであるが、ただし異なる種のフィラリア線虫に由来する。この態様の例として、多価免疫原性組成物は、W. bancrofti、B. malayi、B. timori、およびD. immitisから単離されたALT2抗原から構成される。なおさらなる態様において、多価免疫原性組成物は、異なる種のフィラリア線虫からの異なる抗原の組み合わせから構成される。例として、多価免疫原性組成物は、W. bancrofti、O. volvulusおよびL. loaから単離されたALT2抗原、ならびにB. malayiおよびD. immitisから単離されたHSP抗原から構成され得る。
多価DNAベースまたは多価組換えDNAベースの免疫原性組成物を調製するために、目的の遺伝子のDNA配列(DNA分子としても交換可能に使用される)は、対応するタンパク質をコードするDNAの全長を含む必要はない。同様に、融合タンパク質ベースまたは多価組換えタンパク質免疫原性組成物を調製する場合、タンパク質配列は全長タンパク質を含む必要はない。ほとんどの場合、エピトープ領域をコードするタンパク質または遺伝子の断片で、免疫化に十分である。エピトープ領域のDNA/タンパク質配列は、さまざまな株または種から遺伝子の対応する部分を配列決定し、それらを比較することによって見出すことができる。主要な抗原決定基は、最大の異種性を示すものである可能性がある。また、これらの領域は、タンパク質のコンフォメーション構造にアクセス可能に存在する可能性がある。抗原決定基をコードするタンパク質または遺伝子の1つ以上のかかる断片は、化学合成または組換えDNA技術によって調製することができる。タンパク質または遺伝子のこれらの断片は、必要に応じて、互いに連結するか、または他のタンパク質またはDNA分子にそれぞれ連結することができる。
本明細書に記載されるように、ALT2、TSP、VAL-1、GSTおよびHSP抗原は、フィラリア幼虫による感染に対する保護を提供するものとして同定された。したがって、具体的な態様において、本免疫原性組成物は、ALT2、TSP、VAL-1、TPX2、GSTおよび/またはHSPタンパク質抗原、および/またはALT2、TSP、VAL-1、TPX2、GSTおよび/またはHSPタンパク質、またはその断片を含む。これらの抗原のタンパク質および核酸配列は、GENBANKアクセッション番号および/または表1に列挙された配列で利用可能である。
Figure 2023513607000002
さらに、O. volvulusのTSPをコードするヌクレオチド配列は、GENBANKアクセッション番号JN861043の下に見出すことができる。本発明のタンパク質抗原および核酸分子は、全長分子または全長分子未満として使用することができる。この点で、本発明はさらに、上で参照したタンパク質抗原および核酸分子の断片の使用を含む。断片は、本明細書において、全長タンパク質抗原(例えば、表1に列挙されるもの)の20、30、40、50、60、70、80、90、100、150、もしくは200アミノ酸残基部分、または全長核酸分子(例えば、表1に列挙されるもの)の60、90、120、150、180、210、240、270、300、350、もしくは600ヌクレオチド部分として定義される。例示的なタンパク質断片には、TSPの大きな細胞外ループ(LEL)ドメイン(例えば、配列番号63または配列番号77のB. malayiTSPのLELドメインを参照)、およびHSP12.6のN末端欠失(cHSP;例えば配列番号64のB. malayiHSP断片を参照)、ならびにそれをコードする核酸分子(それぞれ、配列番号65および配列番号66を参照)を含む。ALT2、HSP、およびTSPタンパク質配列を含有する例示的な融合タンパク質は、配列番号70に記載されている。ALT2、HSPおよびTPX2タンパク質配列を含有する例示的な融合タンパク質は、配列番号73および配列番号97に記載されている。ALT2、HSP、TSP、およびTPX2タンパク質配列を含有する例示的な融合タンパク質は、配列番号74に記載されている。
具体的な態様において、本発明のタンパク質またはタンパク質断片は、動物において免疫応答を誘発するための1つ以上の抗原配列を有する。ある態様において、本発明のALT2タンパク質は、配列VSESDEEFDDSAADDTDDSEAGGGSEGGDEYVT(配列番号78)および/またはEFVETDGKKKECSSHEACYDQREPQ(配列番号79)を含むかまたはそれらからなるB. malayiALT2タンパク質または断片、または配列ASESQEETVSFEESDEDYEDDSE(配列番号98)および/またはFVESDGKMKHCKTHEACYDQREPQ(配列番号99)を含むかまたはそれらからなるD. immitisALT2タンパク質または断片であり、これらは、Bepipred線形エピトープ予測法(Larsen, et al. (2006) Immunome Res. 2:2)に基づいて予測されたB細胞エピトープである。他の態様において、本発明のHSPタンパク質は、配列WSAEQWDWPLQH(配列番号80)および/またはKLPSDVDTKTL(配列番号81)を含むかまたはそれらからなるB. malayiHSPタンパク質または断片、または配列NWSADQWDWPLQHNDDVVKVTNTNDK(配列番号100)および/またはKLPSDVDTKTL(配列番号81)を含むかまたはそれらからなるD. immitisHSPタンパク質または断片であり、これらは、予測されたB細胞エピトープである。さらなる態様において、本発明のTSPタンパク質は、配列KTGESEDEMQ(配列番号82)を含むかまたはそれらからなるB. malayiTSPタンパク質または断片あり、これらは予測されたB細胞エピトープである。なおさらなる態様において、本発明のTPX2タンパク質は、配列FIGQPAPNFKT(配列番号83)および/またはGEVCPANWHPGSETIKPGVKESKA(配列番号84)を含むかまたはそれらからなるB. malayiTPX2タンパク質または断片、または配列FIGQPAPNFKT(配列番号83)および/またはGEVCPANWQPGSEAIKPGVKESKA(配列番号101)を含むかまたはそれらからなるD. immitisTPX2タンパク質または断片であり、これらは予測されたB細胞エピトープである。
ある態様において、本発明のALT2タンパク質断片は、アミノ酸配列XESDEXDX(配列番号121)を含むかまたはそれらからなり、ここで独立して、XはVまたはFであり、XはSまたはEであり、XはEまたはDであり、XはFまたはYであり、XはDまたはEであり、およびXはSまたはDであり;または、FVEXDGKXKXCXHEACYDQREPQ(配列番号122)を含むかまたはそれらからなり、ここで独立して、XはSまたはTであり;XはMまたはKであり;XはEまたはHであり、XはSまたはKであり、およびXはSまたはTである。他の態様において、本発明のHSPタンパク質断片は、アミノ酸配列WSAXQWDWPLQH(配列番号123)を含むかまたはそれらからなり、ここで独立して、XはGluまたはAspであり;または、KLPSDVDTKTL(配列番号81)を含むかまたはそれらからなる。さらなる態様において、本発明のTPX2タンパク質断片は、アミノ酸配列FIGQPAPNFKT(配列番号83)、または、GEVCPANWXPGSEXIKPGVKESKA(配列番号124)を含むかまたはそれらからなり、ここで独立して、XはHまたはQであり、XはTまたはAである。
本発明のある態様に関して、本発明の多価免疫原性組成物は、フィラリア線虫由来の他の既知の抗原を含む。他の適切な抗原の例としては、限定されないが、以下が挙げられる:グルタチオンペルオキシダーゼ(Cookson, et al. (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:5837-5841;Maizels, et al. (1983) Parasitology 87:249-263;Maizels, et al. (1983) Clin. Exp. Immunol. 51:269-277参照);組換え抗原(BmR1; Noordin, et al. (2004) Filaria J. 3:10参照);クラスIIアミノアシルtRNAシンセターゼ(Kron, et al. (1995) FEBS Lett. 374:122-4参照);熱ショック同族70(hsc70)タンパク質(Selkirk, et al. (1989) J. Immunol. 143:299-308参照);パラミオシン(Li, et al. (1991) Mol. Biochem. Parasitol. 49:315-23参照);トロポミオシン(Hartmann, et al. (2006) Vaccine 24(17):3581-90);キチナーゼ(Adam, et al. (1996) J. Biol. Chem. 271(3):1441-7);豊富な幼虫転写産物(ALT)-1(Gregory, et al. (2000) Infect. Immun. 68(7):4174-9);免疫優性皮下抗原SPX1(Bradley, et al. (1993) Exp. Parasitol. 77(4):414-424)。いくつかの態様において、抗原は、W. bancrofti、B. malayi、O. volvulus、L. loa、L. loa、D. immitisおよびB. timoriの群から選択されるフィラリア線虫から得られる。ある態様において、抗原は以下である:それぞれ配列番号104および配列番号105に記載のアミノ酸配列を有するB. malayiもしくはDirofilariaトロポミオシン、またはその断片;それぞれ配列番号106および配列番号107に記載のアミノ酸配列を有するB. malayiもしくはDirofilaria、またはその断片;それぞれ配列番号108および配列番号109に記載のアミノ酸配列を有するB. malayiもしくはDirofilariaALT-1、またはその断片;それぞれ配列番号110および配列番号111に記載のアミノ酸配列を有するB. malayiもしくはDirofilariaSPX1、またはその断片;それぞれ配列番号112および配列番号113に記載のアミノ酸配列を有するB. malayiもしくはD. immitisの毒物アレルゲン抗原5様タンパク質、またはその断片;それぞれ配列番号114および配列番号115に記載のアミノ酸配列を有するB. malayiもしくはD. immitisマクロファージ遊走阻害因子(MIF)-1タンパク質、またはその断片;それぞれ配列番号116および配列番号117に記載のアミノ酸配列を有するB. malayiもしくはDirofilariaのMIF-2タンパク質、またはその断片;またはそれぞれ配列番号118および配列番号119に記載のアミノ酸配列を有するB. malayiもしくはDirofilariaシスタチンタンパク質、またはその断片。
本発明に従って、融合タンパク質および免疫原性組成物の抗原は、フィラリア線虫から単離される。この点において、単離された核酸分子またはタンパク質は、その自然環境から取り出された(すなわち、人間の操作を受けた)核酸分子またはタンパク質である。したがって「単離された」とは、核酸分子またはタンパク質が精製された程度を反映するものではない。具体的な態様において、抗原は精製される(例えば、95%を超える均一性まで精製される)。単離され任意に精製された本発明の核酸分子またはタンパク質は、その天然源から得ることができるか、または組換えDNA技術(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅もしくはクローニング)または化学合成を使用して、生成することができる。単離された核酸分子およびタンパク質はまた、例えば、宿主において免疫応答を誘導する、天然の対立遺伝子バリアントまたは異性体を含み得る。
本発明の一態様は組換えベクターを含み、これは、本発明の少なくとも1つの単離された核酸分子を、宿主細胞に核酸分子を送達できるベクターに挿入して含む、組換えベクターである。かかるベクターは異種核酸配列(単数または複数)を含有し、これ(ら)は天然では本発明の核酸分子に隣接しては見られない核酸配列であり、好ましくは核酸分子が由来する種以外の種に由来するものである。ベクターは原核生物でも真核生物でもよく、典型的にはウイルスまたはプラスミドである。組換えベクターは、本発明の核酸分子のクローニング、配列決定、および/またはその他の操作に使用することができる。
本発明は発現ベクターも含み、これは、本発明の核酸分子を、宿主細胞に形質転換された場合に核酸分子を発現可能な組換えベクター中に含む。好ましくは、発現ベクターは宿主細胞内で複製することもできる。発現ベクターは、原核生物または真核生物のいずれかであることができ、典型的にはウイルスまたはプラスミドである。本発明の発現ベクターには、細菌、真菌、寄生虫、昆虫、他の動物、および植物細胞を含む本発明の組換え細胞において機能する(すなわち、遺伝子発現を指示する)、任意のベクターが含まれる。本発明の好ましい発現ベクターは、細菌、酵母、蠕虫または他の寄生虫、昆虫および哺乳動物細胞において、遺伝子発現を指示することができる。
特に、本発明の発現ベクターは、転写制御配列、翻訳制御配列、複製起点、および組換え細胞と適合し本発明の細胞の核酸分子の発現を制御する他の制御配列などの、制御配列を含有する。特に、本発明の組換え分子は、転写制御配列を含む。転写制御配列は、転写の開始、伸長、および終止を制御する配列である。特に重要な転写制御配列は、プロモーター、エンハンサー、オペレーターおよびリプレッサー配列などの転写の開始を制御する配列である。適切な転写制御配列には、本発明の組換え細胞の少なくとも1つにおいて機能可能な、任意の転写制御配列が含まれる。様々なかかる転写制御配列が当業者に知られている。好ましい転写制御配列には、細菌、酵母、蠕虫もしくは他の内部寄生虫、または昆虫および哺乳動物細胞において機能するものが含まれ、例えば、限定はされないが、以下が挙げられる:tac、lac、trp、trc、oxy-pro、omp/lpp、rrnB、バクテリオファージラムダ(ラムダpおよびラムダpおよびかかるプロモーターを含む融合体など)、バクテリオファージT7、T7lac、バクテリオファージT3、バクテリオファージSP6、バクテリオファージSP01、メタロチオネイン、アルファ接合因子、ピキアアルコールオキシダーゼ、アルファウイルスサブゲノムプロモーター、抗生物質耐性遺伝子、バキュロウイルス、Heliothis zea昆虫ウイルス、ワクシニアウイルス、ヘルペスウイルス、アライグマポックスウイルス、その他のポックスウイルス、アデノウイルス、サイトメガロウイルス(前初期プロモーターなど)、シミアンウイルス40、レトロウイルス、アクチン、レトロウイルス長い末端反復、ラウス肉腫ウイルス、熱ショック、リン酸および硝酸転写制御配列、ならびに原核細胞または真核細胞における遺伝子発現を制御可能な他の配列。さらなる適切な転写制御配列には、組織特異的プロモーターおよびエンハンサー、ならびにリンホカイン誘導性プロモーター(例えば、インターフェロンまたはインターロイキンによって誘導可能なプロモーター)が含まれる。本発明の転写制御配列はまた、寄生蠕虫に天然に関連する天然の転写制御配列、例えばB. malayiまたはD. immitis転写制御配列などを含むことができる。
本発明の組換え分子はまた、(a)発現された本発明のタンパク質がそのタンパク質を産生する細胞から分泌されることを可能にする、分泌シグナル(すなわち、シグナルセグメント核酸配列)、および/または(b)本発明の核酸分子の融合タンパク質としての発現を導く融合配列、を含有し得る。適切なシグナルセグメントの例には、本発明のタンパク質の分泌を指示することができる任意のシグナルセグメントが含まれる。好ましいシグナルセグメントには、限定されないが、組織プラスミノーゲン活性化因子(t-PA)、インターフェロン、インターロイキン、成長ホルモン、組織適合性およびウイルスエンベロープ糖タンパク質シグナルセグメントが含まれる。さらに、本発明の核酸分子は、コードされたタンパク質をプロテオソームに指向させる融合セグメント、例えばユビキチン融合セグメントなどに、結合することができる。真核組換え分子はまた、介在配列および/または非翻訳配列を、本発明の核酸分子の核酸配列の周囲および/または中に含み得る。
本発明の別の態様は、本発明の1つ以上の組換え分子を保有する組換え宿主細胞を含む。核酸分子の細胞への形質転換は、核酸分子を細胞に挿入することができる任意の方法により達成することができる。形質転換技法には、トランスフェクション、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、リポフェクション、吸着、およびプロトプラスト融合が含まれるが、これらに限定されない。組換え細胞は、単細胞のままであるか、組織、器官、または多細胞生物に成長する可能性がある。本発明の形質転換された核酸分子は、染色体外にとどまることができ、または形質転換された(すなわち組換え)細胞の染色体内の1つ以上の部位に、それらの発現される能力が保持されるように組み込まれることができる。
形質転換に適した宿主細胞には、本発明の核酸分子で形質転換可能な任意の細胞が含まれる。宿主細胞は、形質転換されていない細胞、または少なくとも1つの核酸分子(例えば、本発明の1つ以上のタンパク質および/または多価免疫原性組成物の産生に有用な他のタンパク質をコードする核酸分子)ですでに形質転換されている細胞のいずれかであり得る。本発明の宿主細胞は、内因的に(すなわち、天然で)本発明のタンパク質を産生することができるか、または本発明の少なくとも1つの核酸分子で形質転換された後に、かかるタンパク質を産生することができる。本発明の宿主細胞は、本発明の少なくとも1つのタンパク質を産生することができる任意の細胞であり得、細菌、真菌(酵母を含む)、寄生虫(蠕虫、原生動物および外部寄生虫を含む)、他の昆虫、他の動物および植物細胞を含む。好ましい宿主細胞には、細菌、マイコバクテリア、酵母、蠕虫、昆虫および哺乳動物細胞が含まれる。より好ましい宿主細胞には、サルモネラ属、エシェリヒア属、バチルス属、リステリア属、サッカロミセス属、スポドプテラ属、マイコバクテリア、トリコプルシア属、BHK(ベビーハムスター腎臓)細胞、MDCK細胞(Madin-Darbyイヌ腎臓細胞株)、CRFK細胞(Crandellネコ腎臓細胞株)、CV-1細胞(例えばアライグマポックスウイルスの培養に使用される、アフリカサル腎臓細胞株)、COS(例えば、COS-7)細胞、およびベロ細胞が含まれる。特に好ましい宿主細胞には、大腸菌K-12誘導体を含む大腸菌;チフス菌(Salmonella typhi);ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium);Spodoptera frugiperda;Trichoplusia ni;BHK細胞;MDCK細胞;CRFK細胞;CV-1細胞;COS細胞;ベロ細胞;および非腫瘍形成性マウス筋芽細胞G8細胞(例:ATCC CRL 1246)が含まれる。追加の適切な哺乳動物細胞宿主には、他の腎臓細胞株、他の線維芽細胞株(例えば、ヒト、マウスまたはニワトリ胚線維芽細胞株)、骨髄腫細胞株、チャイニーズハムスター卵巣細胞、マウスNIH/3T3細胞、LMTK31細胞および/またはHeLa細胞が含まれる。一態様において、タンパク質は、免疫グロブリンプロモーターを使用する骨髄腫細胞株において、異種タンパク質として発現され得る。
組換え細胞は好ましくは、それぞれが本発明の1つ以上の核酸分子および1つ以上の転写制御配列を含む1つ以上の組換え分子で、宿主細胞を形質転換することにより産生され、その例は本明細書に開示されている。
組換えDNA技術は、形質転換された核酸分子の発現を、例えば以下を操作することにより改善するために使用することができ、例えば、宿主細胞内の核酸分子のコピー数、これらの核酸分子が転写される効率、得られた転写産物が翻訳される効率、および翻訳後修飾の効率などの効率を操作することによる。本発明の核酸分子の発現を増加させるのに有用な組換え技術には、限定されないが、以下が含まれる:核酸分子を高コピー数プラスミドに作動可能に連結すること、核酸分子を1つ以上の宿主細胞染色体に組み込むこと、ベクター安定配列のプラスミドへの添加、転写制御シグナル(プロモーター、オペレーター、エンハンサーなど)の置換または修飾、翻訳制御シグナル(リボソーム結合部位、シャイン・ダルガルノ配列など)の置換または修飾、本発明の核酸分子を宿主細胞のコドン使用に対応するように修飾すること、転写物を不安定化する配列の欠失、および制御シグナルを使用して、組換え細胞増殖を発酵中の組換え酵素の産生から一時的に分離すること。発現された本発明の組換えタンパク質の活性は、かかるタンパク質をコードする核酸分子を断片化、改変、または誘導体化することによって改善され得る。さらに、非コドン最適化配列を使用して、大腸菌などの宿主細胞で融合タンパク質を発現させることができるが(表1を参照)、DNAワクチンに関する態様において、核酸分子をコドン最適化して、哺乳類細胞での発現を促進することができる。この点に関して、BmALT2、B. malayiのN末端欠失HSP12.6(cHSP)、およびB. malayiテトラスパニンのLELドメインのコドン最適化配列は、それぞれ配列番号67、配列番号68、および配列番号69に示されている。さらに、組換え宿主細胞における組換えタンパク質の1つ以上の発現を容易にするために、タンパク質配列を操作することができる。例として、グリシン残基を、B. malayiALT2タンパク質のN末端メチオニン残基の後に挿入すると、このタンパク質の大腸菌での発現が改善することが見出された。
本発明の単離されたタンパク質ベースの抗原は、様々な方法で、例えば天然タンパク質の産生および回収、組換えタンパク質の産生および回収、ならびにタンパク質の化学合成などで、生成することができる。一態様において、本発明の単離されたタンパク質は、タンパク質を発現可能な細胞を、タンパク質を産生するのに有効な条件下で培養し、タンパク質を回収することによって産生される。培養するのに好ましい細胞は、本発明の組換え細胞である。効果的な培養条件には、タンパク質産生を可能にする効果的な培地、バイオリアクター、温度、pH、および酸素条件が含まれるが、これらに限定されない。有効な培地とは、細胞を培養して本発明のタンパク質を産生する、任意の培地を指す。かかる培地は典型的には、同化可能な炭素、窒素およびリン酸源、ならびに適切な塩、ミネラル、金属、およびビタミンなどの他の栄養素を有する、水性培地を含む。本発明の細胞は、従来の発酵バイオリアクター、振とうフラスコ、試験管、マイクロタイター皿、およびペトリ皿で培養することができる。培養は、組換え細胞に適した温度、pHおよび酸素含有量で行うことができる。かかる培養条件は、当業者の専門知識の範囲内である。
産生に使用されるベクターおよび宿主系に応じて、得られた本発明のタンパク質は、組換え細胞内に留まるか;発酵培地に分泌されるか;大腸菌のペリプラズムスペースなどの、2つの細胞膜の間のスペースに分泌されるか;または細胞もしくはウイルス膜の外面に保持され得るかの、いずれかであり得る。
本発明のタンパク質の回収は、タンパク質を含有する発酵培地全体を収集することを含むことができ、分離または精製の追加のステップを暗示する必要はない。本発明のタンパク質は様々な標準的タンパク質精製技法を使用して精製することができ、例えば、限定されることなく、アフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、濾過、電気泳動、疎水性相互作用クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、コンカナバリンAクロマトグラフィー、クロマトフォーカシング、示差可溶化(differential solubilization)などである。本発明のタンパク質は、好ましくは、実質的に純粋な形態で回収され、それによってタンパク質を治療用組成物として効果的に使用することが可能になる。例えば、動物用の治療用組成物は、実質的に毒性を示すべきではなく、好ましくは、処置された動物において抗体の産生を刺激できる必要がある。
本発明の一態様は、有効な様式で動物に投与された場合に、その動物をフィラリア症またはディロフィラリア線虫などのフィラリア線虫によって引き起こされるディロフィラリア症から保護することができる、免疫原性組成物またはワクチンである。いくつかの態様において、本発明は、動物を、フィラリア線虫が引き起こす疾患から処置または保護する方法を提供する。他の態様において、本発明は、動物、例えばイヌまたはネコを、ディロフィラリア症(イヌ糸状虫病)から処置または保護する方法を提供する。免疫原性組成物は、保護分子、例えば本発明の単離された抗原タンパク質、本発明の単離された核酸分子、ならびにそれらのハイブリッドおよび混合物などを含む。本明細書で使用される場合、本発明の多価免疫原性組成物は、効果的な方法でヒト、ネコまたはイヌなどの動物に投与されると防御免疫応答を誘導し、それによって、限定することなくW. bancrofti、B. malayi、O. volvulus、L. loa、D. immitis、Mansonella streptocerca、Dracunculus medinensis、M. perstans、 M. ozzardi、および/またはB. timoriを含むフィラリアまたはディロフィラリア線虫が引き起こす疾患を、処置、改善、および/または予防する。本発明の免疫原性組成物は、かかる治療に感受性のある任意の動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒト、イヌやネコなどのペット、および経済的食用動物および/または動物園の動物に投与することができる。
一態様において、本発明の多価免疫原性組成物は、宿主に投与された場合、例えば蚊などにおいてフィラリア線虫が発育するベクター内で、それらが宿主に餌を与える時に寄生虫を殺傷可能な抗体を発生することができる。
動物をフィラリア線虫が引き起こす疾患から保護するために、本発明の免疫原性組成物は、動物に効果的な様式で、組成物がその動物をフィラリア線虫が引き起こす疾患から保護することができるように、投与される。本発明の組成物は、感染を予防するために、感染前に動物に投与することができ(すなわち、予防ワクチンとして)、および/またはフィラリア線虫が引き起こす疾患を処置するために、感染後に動物に投与することができる(すなわち、治療ワクチンとして)。
本発明の組成物は、処置される動物が許容可能な賦形剤中に製剤化することができる。かかる賦形剤の例には、水、生理食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液、ハンクス液、および他の生理学的にバランスのとれた塩溶液が含まれる。非水性ビヒクル、例えば固定油、ゴマ油、オレイン酸エチル、またはトリグリセリドなども使用できる。他の有用な製剤には、増粘剤を含有する懸濁液、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、またはデキストランなどが含まれる。賦形剤は、等張性や化学的安定性を高める物質などの、少量の添加物を含有することもできる。緩衝剤の例には、リン酸緩衝液、重炭酸塩緩衝液およびトリス緩衝液が含まれ、防腐剤の例には、チメロサール、m-またはo-クレゾール、ホルマリンおよびベンジルアルコールが含まれる。標準的な製剤は、液体注射剤、または、注射用の懸濁液または溶液として適切な液体に取り込むことができる固体のいずれかであり得る。したがって、非液体製剤において、賦形剤はデキストロース、ヒト血清アルブミン、防腐剤などを含むことができ、これには、滅菌水または生理食塩水を投与前に添加することができる。
本発明の一態様において、免疫原性組成物はアジュバントを含むことができる。本明細書で定義される「アジュバント」は、本発明の免疫原性組成物の免疫原性を高める働きをする物質である。免疫アジュバントは、単独で投与された場合に弱い免疫原性である抗原に対する免疫応答を増強することができ、例えば、抗体価または細胞介在性免疫応答を誘導しないかまたは弱くし、抗原に対する抗体価を増加させ、および/または個人の免疫応答を達成するのに有効な抗原の用量を低下させることができる。したがって、アジュバントはしばしば免疫応答を高めるために与えられ、当業者に周知である。
免疫原性組成物の有効性を高めるのに適したアジュバントには、以下が含まれるが、これらに限定されない:
(1)アルミニウム塩(ミョウバン)、例えば水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、硫酸アルミニウム等;
(2)カルシウムベースの塩;
(3)シリカ;
(4)水中油型エマルジョン製剤(ムラミルペプチド(以下に定義)または細菌細胞壁成分などの他の特異的免疫刺激剤を含むかまたは含まないもの)、例としては以下:
(a)5%のスクアレン、0.5%のポリソルベート80、および0.5の%ソルビタントリオレアート(任意にさまざまな量のムラミルトリペプチドホスファチジルエタノールアミンを含有)を含有するMF59(WO 90/14837)を、 Model 110Yマイクロフルイダイザー(Microfluidics, Newton, MA)などのマイクロフルイダイザーを使用してサブミクロン粒子に配合したもの、
(b)10%のスクアレン、0.4%のポリソルベート80、5%のプルロニックブロックポリマーL121、およびthr-MDPを含有するSAFを、サブミクロンのエマルジョンにマイクロフルイダイズするか、またはボルテックスしてより大きな粒子サイズのエマルジョンにしたもの、
(c)2%のスクアレン、0.2%のポリソルベート80、および、米国特許第4,912,094号に記載の3-O-脱アシル化モノホスホリル脂質A(MPL(商標))、トレハロースジミコレート(TDM)、および細胞壁骨格(CWS)からなる群からの1種以上の細胞壁成分、好ましくはMPL+CWS(Detox(商標))を含有する、RiBi(商標)アジュバントシステム(RAS);および
(d)モンタニドISA;
(5)サポニンアジュバント、例えば次の商品名:QUIL-A(登録商標)またはQS-21 STIMULON(登録商標)(Antigenics, Framingham, MA)(例えば、US 5,057,540を参照)で販売されているものなどを使用することができ、またはこれらから生成された粒子、例えばISCOM(コレステロール、サポニン、リン脂質、および両親媒性タンパク質の組み合わせによって形成される免疫刺激複合体)およびIscomatrix(商標)(ISCOMと本質的に同一の構造を有するが、タンパク質を含まない);
(6)細菌成分(例えばエンドトキシン、特に超抗原、外毒素および細胞壁成分)およびリポ多糖類、合成脂質A類似体、例えばアミノアルキルグルコサミンホスファート化合物(AGP)など、またはCorixaから入手可能でありUS 6,113,918に記載されているそれらの誘導体もしくは類似体、;かかるAGPの1つは、2-[(R)-3-テトラデカノイルオキシテトラデカノイルアミノ]エチル2-デオキシ-4-O-ホスホノ-3-O-[(R)-3-テトラデカノイルオキシ-テトラデカノイル]-2-[(R)-3-テトラデカノイルオキシテトラデカノイルアミノ]-b-D-グルコピラノシド、これは529としても知られており(以前はRC529として知られていた)、水性形態または安定なエマルジョンとして製剤化される;
(7)合成ポリヌクレオチド、例えばCpGモチーフを含有するオリゴヌクレオチドなど(US 6,207,646);
(8)サイトカインおよびケモカイン(例、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、コロニー刺激因子(CSF)、エリスロポエチン(EPO)、インターロイキン2(IL-2)、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-10、IL-12、IL-15、IL-18、インターフェロンガンマ、インターフェロンガンマ誘導因子I(IGIF)、トランスフォーミング増殖因子ベータ、RANTES(活性化時に調節され、正常なT細胞が発現され、おそらく分泌される)、マクロファージ炎症性タンパク質(例えば、MIP-1アルファおよびMIP-1ベータ)、腫瘍壊死因子(TNF)、共刺激分子B7-1およびB7-2、リーシュマニア伸長開始因子(Leishmania elongation initiating factor)(LEIF));
(9)補体、例えば補体成分C3dの三量体など;
(10)トール様受容体アゴニスト、例えば、グルコピラノシル脂質アジュバント(GLA)などのTLR4アゴニスト;
(11)血清タンパク質、例えばトランスフェリンなど;
(12)ウイルスコートタンパク質、例えば、ロタウイルスキャプシドVP6タンパク質;および
(13)ブロック共重合体アジュバント、例えばHunter’s TITERMAX(登録商標)アジュバント(VAXCEL, Inc. Norcross, GA)。
ムラミルペプチドには、限定はされないが、N-アセチル-ムラミル-L-トレオニル-D-イソグルタミン(thr-MDP)、N-アセチル-ノルムラミル-L-アラニン-2-(1’-2’ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ヒドロキシホスホリルオキシ)-エチルアミン(MTP-PE)などが含まれる。
本発明のタンパク質アジュバントは、本明細書に記載の技術を使用して、タンパク質自体の形態で、またはかかるタンパク質をコードする核酸分子の形態で、送達することができる。
ある態様において、アジュバントはアルミニウム塩を含む。アルミニウム塩アジュバントは、ミョウバン沈殿ワクチンまたはミョウバン吸着ワクチンであり得る。アルミニウム塩アジュバントは当技術分野で周知であり、例えば、Harlow & Lane((1988) Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory)およびNicklas((1992) Res. Immunol. 143:489-493)に記載されている。アルミニウム塩には、限定はされないが、水和アルミナ、アルミナ水和物、アルミナ三水和物(ATH)、アルミニウム水和物、アルミニウム三水和物、水酸化アルミニウム(III)、アルミニウムヒドロキシホスファート硫酸塩、リン酸アルミニウムアジュバント(APA)、非晶質アルミナ、三水和アルミナ、またはトリヒドロキシアルミニウムが含まれる。
APAは、アルミニウムヒドロキシホスファートの水性懸濁液である。APAは、塩化アルミニウムとリン酸ナトリウムを1:1の体積比で混合してアルミニウムヒドロキシホスファートを沈殿させることにより製造される。混合プロセスの後、材料は高せん断ミキサーでサイズ縮小され、単分散の粒子サイズ分布が達成される。次いで、生成物を生理食塩水に対して透析濾過し、蒸気滅菌する。
ある態様において、市販のAl(OH)(例えば、商品名Alhydrogel(登録商標)として販売されている水酸化アルミニウムゲル)を使用して、50~200μgタンパク質/mg水酸化アルミニウムの比率でタンパク質を吸着する。タンパク質の吸着は、別の態様において、タンパク質のpI(等電pH)および培地のpHに依存する。pIが低いタンパク質は、pIが高いタンパク質よりも、正に帯電したアルミニウムイオンに強く吸着する。アルミニウム塩は、2~3週間かけてゆっくりと放出される抗原のデポーを確立し、マクロファージの非特異的活性化と補体活性化に関与し、および/または自然免疫機構を刺激する(おそらく尿酸の刺激による)。例えば、Lambrecht, et al. (2009) Curr. Opin. Immunol. 21:23を参照。
いくつかの態様において、アジュバントは、上記のアジュバントの2つ、3つ、またはそれ以上の混合物であり、例えばSBAS2(3-脱アシル化モノホスホリル脂質AおよびQS-21も含有する水中油型エマルジョン);またはGLAと組み合わせたミョウバン(AL019)である。
本発明の多価免疫原性組成物は、単回用量バイアル、複数用量バイアルとして、またはプレフィルドガラスまたはプラスチック注射器として製剤化することができる。
一態様において、本発明の多価免疫原性組成物は経口投与されるため、経口投与に適した形態、すなわち固体または液体製剤として製剤化される。固体経口製剤には、錠剤、カプセル剤、丸剤、顆粒剤、ペレット剤などが含まれる。液体経口製剤には、液剤、懸濁剤、分散液、乳剤、油剤などが含まれる。
液体製剤のための薬学的に許容し得る担体は、水性または非水性の溶液、懸濁液、エマルジョンまたは油である。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、およびオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルである。水性担体には、生理食塩水および緩衝媒体を含む、水、アルコール/水溶液、エマルジョンまたは懸濁液が含まれる。油剤の例は、動物、植物、または合成起源のものであり、例えば、ピーナッツ油、大豆油、オリーブ油、ヒマワリ油、魚肝油、別の海産物油、または牛乳もしくは卵からの脂質である。
医薬組成物は、等張性、低張性、または高張性であり得る。しかし、注入または注射用の組成物は、投与される場合、本質的に等張であることがしばしば好ましい。したがって組成物の貯蔵は、等張性または高張性であることが好ましい。組成物が貯蔵のために高張性である場合、投与前に希釈して等張液にすることができる。
等張剤は、塩などのイオン性等張剤または炭水化物などの非イオン性等張剤であり得る。イオン性等張剤の例には、NaCl、CaCl、KClおよびMgClが含まれるが、これらに限定されない。非イオン性等張剤の例には、マンニトール、ソルビトール、およびグリセロールが含まれるが、これらに限定されない。
少なくとも1つの薬学的に許容し得る添加剤が、緩衝液であることも好ましい。いくつかの目的のために、例えば、組成物が注入または注射用である場合、組成物は、溶液のpHを4~10の範囲、例えば5~9、例えば6~8の範囲に緩衝可能な緩衝液を含むことが、多くの場合に望ましい。
緩衝液は、例えば、トリス、酢酸塩、グルタミン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、リン酸塩、クエン酸塩、炭酸塩、グリシン酸塩、ヒスチジン、グリシン、コハク酸塩、およびトリエタノールアミン緩衝液から選択することができる。緩衝液は、特に製剤が非経口使用のためのものである場合、非経口使用のためのUSP適合緩衝液から選択され得る。例えば緩衝液は、以下の群から選択することができる:一塩基酸、例えば酢酸、安息香酸、グルコン酸、グリセリン酸、および乳酸など;二塩基酸、例えばアコニット酸、アジピン酸、アスコルビン酸、炭酸、グルタミン酸、リンゴ酸、コハク酸、および酒石酸など;多塩基酸、例えばクエン酸、およびリン酸など;および塩基、例えばアンモニア、ジエタノールアミン、グリシン、トリエタノールアミン、およびトリスなど。
非経口ビヒクル(皮下、静脈内、動脈内、または筋肉内注射用)には、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸リンゲルおよび固定油が含まれる。静脈内ビヒクルには、液体および栄養補充液、電解質補充液、例えばリンゲルデキストロースに基づくものなどが含まれる。例としては、水および油などの滅菌の液体であって、界面活性剤および他の薬学的に許容し得るアジュバントの添加を伴うかまたは伴わないものである。一般に、水、生理食塩水、デキストロース水溶液および関連糖溶液、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコールなどのグリコール、ポリソルベート80(PS-80)、ポリソルベート20(PS-20)、およびポロキサマー188(P188)が、特に注射液の場合に、好ましい液体担体である。油剤の例は、動物、植物、または合成起源のものであり、例えば、ピーナッツ油、大豆油、オリーブ油、ヒマワリ油、魚肝油、別の海産物油、または牛乳もしくは卵からの脂質である。
本発明の製剤はまた、界面活性剤を含有してもよい。好ましい界面活性剤には、限定はされないが以下が含まれる:ポリオキシエチレンソルビタンエステル界面活性剤、特にPS-20およびPS-80;エチレンオキシド(EO)、プロピレンオキシド(PO)、および/またはブチレンオキシド(BO)のコポリマー、商品名DOWFAX(商標)で販売されており、例えば線形EO/POブロックコポリマーなど;エトキシ(オキシ-1,2-エタンジイル)基の反復数が異なり得るオクトキシノール、オクトキシノール-9(Triton X-100、またはt-オクチルフェノキシポリエトシキエタノール)が特に好ましい;(オクチルフェノキシ)ポリエトキシエタノール(IGEPAL CA-630/NP-40);リン脂質、例えばホスファチジルコリン(レシチン)など;ノニルフェノールエトキシレート、例えばTergitol(商標)NPシリーズなど;ラウリル、セチル、ステアリルおよびオレイルアルコール由来のポリオキシエチレン脂肪族エーテル(Brij界面活性剤として知られている)、例えばトリエチレングリコールモノラウリルエーテル(Brij 30)など;およびソルビタンエステル、例えばソルビタントリオレアートおよびソルビタンモノラウレートなど。エマルジョンに含めるのに好ましい界面活性剤は、PS-80である。
界面活性剤の混合物を使用することができる。ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート(PS-80)などのポリオキシエチレンソルビタンエステルと、t-オクチルフェノキシポリエトキシエタノールなどのオクトキシノールとの組み合わせも適している。別の有用な組み合わせは、ラウレス9+ポリオキシエチレンソルビタンエステルおよび/またはオクトキシノールを含む。
ポロキサマーも本発明の組成物に使用することができる。ポロキサマーは、ポリオキシプロピレン(ポリ(プロピレンオキシド))の中央疎水性鎖と、隣接するポリオキシエチレン(ポリ(エチレンオキシド))の2つの親水性鎖から構成される、非イオン性トリブロック共重合体である。ポロキサマーは、商品名Pluronic(登録商標)でも知られている。ポリマーブロックの長さはカスタマイズできるため、わずかに異なる特性を有する多くの異なるポロキサマーが存在する。一般的な用語「ポロキサマー」の場合、これらのコポリマーは通常、文字「P」(ポロキサマー)の後に3桁の数字を付けて命名され、最初の2桁×100はポリオキシプロピレンコアのおよその分子量を示し、最後の数字×10は、ポリオキシエチレン含有量のパーセンテージを示す(例えば、P407=4,000g/molのポリオキシプロピレン分子量と70%のポリオキシエチレン含有量のポロキサマー)。Pluronic(登録商標)の商品名の場合、これらのコポリマーのコーディングは、室温での物理的形状を定義する文字(L=液体、P=ペースト、F=フレーク(固体))で始まり、その後に2桁または3桁の数字が続く。数値指定の最初の桁(3桁の数字においては最初の2桁)に300を掛けたものは、疎水性物質のおよその分子量を示す;最後の桁×10は、ポリオキシエチレン含有量のパーセンテージを示す(例えば、L61は、ポリオキシプロピレン分子量が1,800g/molで、ポリオキシエチレン含有量が10%のPluronic(登録商標)である)。US 3,740,421を参照。
好ましくは、ポロキサマーは一般に、1100~17,400Da、7,500~15,000Da、または7,500~10,000Daの範囲の分子量を有する。ポロキサマーは、ポロキサマー188またはポロキサマー407から選択することができる。製剤中のポロキサマーの最終濃度は、0.001%~5%重量/体積、または0.025%~1%重量/体積である。ある側面において、ポリオールはプロピレングリコールであり、最終濃度は1%~20%重量/体積である。ある側面において、ポリオールはポリエチレングリコール400であり、最終濃度は1%~20%重量/体積である。
本発明の製剤に適したポリオールは、高分子ポリオール、特にポリエーテルジオールであり、これには限定することなく、プロピレングリコールおよびポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルが含まれる。プロピレングリコールは、約425~約2700までの範囲の分子量のモノマーで入手可能である。ポリエチレングリコールおよびポリエチレングリコールモノメチルエーテルも、約200~約35000までの範囲の分子量範囲で入手可能であり、これには限定することなく、PEG200、PEG300、PEG400、PEG1000、PEG MME550、PEG MME600、PEG MME2000、PEG MME3350およびPEG MME4000が含まれる。好ましいポリエチレングリコールは、ポリエチレングリコール400である。本発明の製剤中のポリオールの最終濃度は、1%~20%重量/体積または6%~20%重量/体積であってよい。
製剤はまた、pH緩衝生理食塩水を含んでもよい。緩衝液は、例えば、トリス、酢酸塩、グルタミン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、リン酸塩、クエン酸塩、炭酸塩、グリシン酸塩、ヒスチジン、グリシン、コハク酸塩、HEPES(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)、MOPS(3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸)、MES(2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸)、およびトリエタノールアミン緩衝液から選択され得る。緩衝液は、溶液のpHを、4~10、5.2~7.5、または5.8~7.0の範囲に緩衝することができる。本発明のある側面において、緩衝液は、リン酸塩、コハク酸塩、ヒスチジン、MES、MOPS、HEPES、酢酸塩またはクエン酸塩の群から選択される。緩衝液はさらに、例えば非経口使用のためにUSP適合緩衝液から選択され得、特に医薬製剤が非経口使用のためのものである場合はそうである。緩衝液の濃度は、1mM~100mMの範囲である。緩衝液の濃度は、10mM~80mMの範囲である。緩衝液の濃度は、1mM~50mMまたは5mM~50mMの範囲である。
生理食塩水(すなわち、NaClを含有する溶液)が好ましいが、処方に適した他の塩には、限定はされないが、CaCl、KClおよびMgCl、およびそれらの組み合わせが含まれる。スクロース、トレハロース、マンニトール、ソルビトール、およびグリセロールを含むがこれらに限定されない非イオン性等張剤を、塩の代わりに使用することができる。適切な塩の範囲には、25mM~500mMまたは40mM~170mMが含まれるが、これらに限定されない。一側面において、食塩水はNaClであり、任意に20mM~170mMの濃度で存在する。
いくつかの側面において、本発明の組成物は、当業者に知られている1つ以上の方法、例えば非経口、経粘膜、経皮、筋肉内、静脈内、皮内、鼻腔内、皮下、腹腔内により対象に投与され、およびそれに応じて製剤化される。一態様において、本発明の組成物は、液体製剤の表皮注射、筋肉内注射、静脈内、動脈内、皮下注射、または呼吸器内粘膜注射によって投与される。注射用液体製剤には、液剤などが含まれる。
本発明の一態様は、本発明の組成物を動物にゆっくり放出することができる、制御放出製剤である。本明細書で使用される制御放出製剤は、本発明の組成物を制御放出ビヒクル中に含む。適切な制御放出ビヒクルには、生体適合性ポリマー、他のポリマーマトリックス、カプセル、マイクロカプセル、微粒子、ボーラス製剤、浸透圧ポンプ、拡散デバイス、リポソーム、リポスフェア、および経皮送達システムが含まれるが、これらに限定されない。本発明の他の制御放出製剤には、動物への投与時にin situで固体またはゲルを形成する液体が含まれる。好ましい制御放出製剤は、生分解性(すなわち、生侵食性(bioerodible))である。
好ましい制御放出製剤は、本発明の免疫原性組成物を、動物をフィラリア線虫による疾患から保護するための組成物の治療用量レベルを達成するのに十分な一定速度で、処置される動物の血液中に放出することができる。例えば、免疫原性組成物は、静脈内注入、経皮パッチ、リポソーム、または他の投与様式を使用して投与することができる。別の態様において、ポリマー材料は、例えば、ミクロスフェア内またはインプラント内で使用する。免疫原性組成物は、好ましくは、約1から約12ヶ月の範囲の期間にわたって放出される。本発明の制御放出製剤は、好ましくは少なくとも約1ヶ月間、より好ましくは少なくとも約3ヶ月間、さらにより好ましくは少なくとも約6ヶ月間、さらにより好ましくは少なくとも約9ヶ月間、およびさらにより好ましくは少なくとも約12ヶ月間、処置を実施することができる
本発明の免疫原性組成物またはワクチンは、動物に対して感染前に、感染を予防するために投与することができ、および/または、動物に対して感染後に、フィラリア線虫が引き起こす疾患を処置するために投与することができる。例えば、タンパク質、核酸およびそれらの混合物を、免疫療法剤として使用することができる。組成物を効果的な様式で投与するための許容可能なプロトコルには、個々の用量サイズ、用量数、用量投与の頻度、および投与様式が含まれる。かかるプロトコルの決定は、当業者によって達成され得る。適切な単回用量は、適切な期間にわたって1回以上投与された場合に動物を疾患から保護することができる用量である。例えば、タンパク質ベースのワクチンの好ましい単回用量は、動物の体重1キログラムあたり約1マイクログラム(pg)から約10ミリグラム(mg)のタンパク質ベースのワクチンである。ブースター接種は、最初の投与の約2週間から数年後に行うことができる。ブースター投与は、好ましくは、動物の免疫応答が動物を疾患から保護するのに不十分になったときに投与される。好ましい投与スケジュールは、動物の体重1kgあたり約10μg~約1mgのワクチンを、約1回~約2回、約2週間~約12ヶ月の期間にわたって投与するものである。投与様式には、皮下、皮内、静脈内、鼻腔内、経口、経皮および筋肉内経路が含まれるが、これらに限定されない。
免疫原性組成物が核酸分子を含む場合、免疫原性組成物は、動物においてその核酸分子の防御タンパク質中の発現を可能にする様式で、動物に投与することができる。核酸分子は動物に様々な方法で送達することができ、これには限定することなく以下が含まれる:裸の(すなわち、ウイルスコート中または細胞膜中にパッケージ化されていない)核酸を遺伝子ワクチンとして(例えば、裸のDNA分子として)投与すること(例えばWolff, et al. (1990) Science 247:1465-1468)に教示されているような、裸のDNA分子として);または組換えウイルスワクチンまたは組換え細胞ワクチンとしてパッケージ化された核酸分子を投与すること(すなわち、核酸分子はウイルスまたは細胞ビヒクルにより送達される)。
本発明の遺伝子(すなわち、裸の核酸)ワクチンは、本発明の核酸分子を含み、好ましくは複製または増幅能力のある本発明の組換え分子を含むことが好ましい。本発明の遺伝子ワクチンは、本発明の1つ以上の核酸分子を、例えば、ジシストロン組換え分子の形態で含むことができる。好ましい遺伝子ワクチンは、ウイルスゲノム(すなわち、ウイルスベクター)の少なくとも一部を含む。好ましいウイルスベクターには、アルファウイルス、ポックスウイルス、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、ピコルナウイルス、およびレトロウイルスに基づくものが含まれ、アルファウイルス(シンドビスまたはセムリキ森林ウイルスなど)に基づくもの、種特異的ヘルペスウイルスおよびポックスウイルスが、特に好ましい。タンパク質産生に適していると開示されているものを含む、任意の適切な転写制御配列を使用することができる。特に好ましい転写制御配列には、以下が含まれる:サイトメガロウイルス前早期(好ましくはイントロン-Aと組み合わせて)、ラウス肉腫ウイルス長い末端反復、および組織特異的転写制御配列、ならびにウイルスベクターが使用される場合にはウイルスベクターに内因性の転写制御配列。「強い」ポリアデニル化シグナルの組み込みも好ましい。
本発明の遺伝子ワクチンは、筋肉内、皮下、皮内、経皮、鼻腔内および経口投与経路を含む様々な方法で投与することができる。さらにワクチンは、遺伝子銃、皮膚パッチ、エレクトロポレーション、またはナノベースの送達によって送達できることが企図される。この点において、DNAベースおよびタンパク質ベースのワクチンは同時に投与することができる。遺伝子ワクチンの好ましい単回用量は、投与経路および/または送達方法に応じて、当業者が決定できるように、約1ナノグラム(ng)から約600μgの範囲である。適切な送達方法には、例えば、注射による、液滴として、エアロゾル化による、および/または局所的が含まれる。本発明の遺伝子ワクチンは、水性賦形剤(例えば、リン酸緩衝生理食塩水)のみに、または担体(例えば、脂質ベースのビヒクル)に含めることができる。
本発明の組換えウイルスワクチンは、ウイルスコートにパッケージされ、投与後に動物で発現され得る、本発明の組換え分子を含む。好ましくは、組換え分子はパッケージングまたは複製欠損であり、および/または弱毒化ウイルスをコードする。多数の組換えウイルスを使用することができ、これには、限定されないが、アルファウイルス、ポックスウイルス、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、ピコルナウイルス、およびレトロウイルスに基づくものが含まれる。好ましい組換えウイルスワクチンは、アルファウイルス(シンドビスウイルスなど)、アライグマポックスウイルス、種特異的ヘルペスウイルス、および種特異的ポックスウイルスに基づくものである。アルファウイルス組換えウイルスワクチンを製造および使用する方法の例は、PCT公開WO 94/17813に開示されている。
動物に投与されると、本発明の組換えウイルスワクチンは、免疫化された動物内の細胞に感染し、動物をフィラリア線虫が引き起こすフィラリア症から保護することができる保護タンパク質の産生を指示する。例として、本発明の組換えウイルスワクチンの単回用量は、動物の体重1キログラム当たり約1×10から約1×10ウイルスプラーク形成単位(pfu)であり得る。投与プロトコルは、タンパク質ベースのワクチンについて本明細書に記載された、投与経路として皮下、筋肉内、鼻腔内および経口によるものと同様である。
本発明の組換え細胞ワクチンは、本発明のタンパク質を発現する本発明の組換え細胞を含む。この態様のための好ましい組換え細胞には、サルモネラ、大腸菌、リステリア、マイコバクテリウム、S. frugiperda、酵母(Saccharomyces cerevisiae およびPichia pastorisを含む)、BHK、CV-1、筋芽細胞G8、COS(例えば、COS-7)、ベロ、MDCK、およびCRFKの組換え細胞が含まれる。本発明の組換え細胞ワクチンは様々な方法で投与できるが、経口投与が、好ましくは体重1キログラム当たり約10から約1012細胞の範囲の用量で可能であるという利点を有する。投与プロトコルは、タンパク質ベースのワクチンについて本明細書に記載されているものと同様である。組換え細胞ワクチンは、全細胞、細胞壁を取り除いた細胞、または細胞ライセートを含むことができる。
本発明の組成物のいくつかの態様において、すべての抗原は組成物中に同じ量で存在する。さらなる態様において、抗原は組成物中に異なる量で存在する(すなわち、少なくとも1つの抗原が、組成物中の他の抗原の1つ以上とは異なる量で存在する)。
特定の免疫原性組成物に対する成分の最適量は、対象における適切な免疫応答の観察を含む標準的な研究によって確認することができる。例えば、別の態様において、ヒトワクチン接種の投与量は、動物研究からヒトデータへの外挿によって決定される。別の態様において、投与量は経験的に決定される。
当技術分野で知られているように、フィラリア線虫には、それらが占める身体内のニッチに従って分類された3つの群がある:リンパ系フィラリア症、皮下フィラリア症、および漿液性腔フィラリア症。リンパ系フィラリア症は、ワーム(worm)であるW. bancrofti、B. malayi、およびB. timoriによって引き起こされる。これらのワームは、リンパ節を含むリンパ系を占有し、発熱、リンパ節炎(リンパ節の腫れ)、リンパ管炎(感染に反応したリンパ管の炎症)、およびリンパ浮腫(象皮症)を引き起こす。皮下フィラリア症は、Loa loa(アフリカの眼虫)、Mansonella stretocerca、O. volvulus、Dracunculus medinensis、またはDirofilaria immitisによって引き起こされ得る。これらのワームの多くは、皮膚の皮下層、脂肪層を占め、皮膚発疹、蕁麻疹様丘疹、および関節炎、ならびに色素沈着過剰および脱色素斑を呈する。Onchocerca volvulusは目に現れ、「河川盲目症(river blindness)」を引き起こす。大人のDirofilaria immitisは肺動脈に存在し、フィラリア症の原因物質である。漿液性腔フィラリア症は、腹部の漿液性腔を占有するワームM.perstansおよびM. ozzardiによって引き起こされる。漿液性腔フィラリア症は、皮下フィラリア症に似た症状を腹痛に加えて呈するが、その理由は、これらのワームが深部組織の住人でもあるからである。
Brugia malayiに感染したイヌは、臨床的なリンパ浮腫、陰嚢肥大、結膜炎およびヒトリンパ管フィラリア症と同様のリンパ管炎を発症する;ただし、病理は人間ほど深刻ではない。イヌは自然界で感染症を媒介するため、ヒトはイヌから、Brugia malayi感染症を有し得る。このように、人獣共通感染症は流行地域で一般的であり、イヌやネコは自然界で感染を媒介し、ヒトに感染を伝染させる。イヌやネコもまた、実験室条件下でBrugia malayiに感染する可能性がある。したがって、イヌのリンパ系フィラリア症に対して開発された免疫原性組成物は、ヒトにおける疾患の伝染を遮断する上でも重要である。
本発明の多価免疫原性組成物が、フィラリア線虫が引き起こすフィラリア症またはディロフィラリア症から動物を保護する有効性は、限定なく以下を含む様々な方法で試験することができる:防御抗体の検出(例えば、本発明のタンパク質を使用)、処置された動物内での細胞性免疫の検出、および/または処置された動物をフィラリア線虫でチャレンジして、処置された動物が疾患に対して抵抗性であり、疾患の1つ以上の徴候を示さないかどうかを決定すること。チャレンジ試験には、フィラリア線虫の幼虫を含むチャンバーの、処置動物への移植、および/または幼虫の処置動物への直接投与が含まれる。一態様において、治療組成物は、マウス、スナネズミ(Meriones unguiculatus)、マストミス(例えば、Mastomys natalensis)および/またはイヌなどの動物モデルで試験することができる。かかる技術は当業者に知られている。
抗フィラリア線虫抗体、例えば、動物のワクチン接種に起因する防御抗体または中和抗体の存在/量を検出するために、本発明はまた、有効性評価のための、ならびにフィラリアタンパク質への以前の暴露および/またはフィラリア線虫による感染を検出するための方法およびキットも提供する。かかる方法に従って、1つ以上の抗原性タンパク質/エピトープを動物からの生物学的試料と接触させ、生物学的試料中の抗原性タンパク質/エピトープと抗体との間の結合を、本明細書に記載のように定量的または定性的に決定する。ここで、抗原性タンパク質/エピトープに対する抗体の存在および/または量は、ワクチンの有効性、ならびにフィラリアタンパク質への以前の暴露またはフィラリア線虫による既存の感染の指標である。ある態様において、方法およびキットは、1つ以上の抗原またはエピトープの連続希釈がプリントされる、アレイベースの形式を使用する。いくつかの態様において、1つ以上のフィラリア線虫タンパク質が、1つ以上の固体表面または粒子上に存在する。他の態様において、1つ以上のフィラリア線虫タンパク質はアレイ内にあり、複数の抗体の存在の単一のアッセイでの評価が、アレイに基づくアプローチの多重化能力により可能である。この点で、アレイは、ALT2、TSP、VAL-1、TPX2、GSTまたはHSPタンパク質またはそのエピトープのうちの1つ以上を含有することができる。他の態様において、アレイは少なくとも、多価免疫原性組成物で使用されるタンパク質のそれぞれを含有する。例えば、HSP、ALT2およびTSPを含有する多価免疫原性組成物に対する防御抗体または中和抗体についてアッセイするために、アレイは、HSP、ALT2およびTSP、またはそれらの融合タンパク質を含有するであろう。
フィラリア線虫の存在を試験するために、本発明はまた、フィラリア線虫を検出するための方法およびキットを提供する。アッセイ方法は一般に、生体試料を、ALT2、TSP、VAL-1、TPX2、GSTおよびHSPまたはそれらの断片の群から選択されるフィラリア線虫タンパク質に対する1つ以上の結合剤と、in vitroで接触させるステップを含む。次いで、結合した結合剤を検出する。結合した結合剤は、ELISAアッセイのイメージリーダーなどの結合の自動検出を使用して検出することができ、結合した結合剤が検出された場合、結合した結合剤が検出されたことを示すデータを、例えば、コンピュータディスプレイまたは紙のプリントアウトに転送することができる。フィラリア線虫タンパク質の検出は、試料または試料を得た対象が、フィラリア症を有することを示す。したがって、検出により、対象の処置オプションを選択することができる。したがって一態様において、ALT2、TSP、VAL-1、TPX2、GSTおよびHSPの1つ以上が検出される場合、患者はフィラリア症に適した処置を受けることになり、これには限定することなく、ジエチルカルバマジン、メベンダゾール、フルベンダゾール、アルベンダゾール、イベルメクチン、またはそれらの組み合わせによる処置が含まれる。
生物学的試料は、目的のタンパク質(例えば、抗体または抗原/エピトープ)の存在または量について試験される任意の材料である。試料は、流体試料、好ましくは液体試料であり得る。本発明に従って試験することができる液体試料の例には、血液、血清、血漿、唾液、尿、眼液、精液、および脊髄液を含む体液が含まれる。粘性液体、半固体、または固体標本(例えば、ヒトの組織、または蚊もしくはハエの組織)を使用して、試料となり得る液体溶液、溶出液、懸濁液、または抽出物を作成できる。いくつかの態様において、生物学的試料は希釈されていない。他の態様において、試料は、検出用途に応じて希釈または濃縮される。
ある態様において、試料中のタンパク質を、モノクローナル抗体でコーティングされた固体表面を用いてタンパク質を捕捉することにより、濃縮することができる。次に、回収した捕捉タンパク質は、本明細書に記載の任意の適切な方法を使用して分析することができる。固体表面は、例えば、磁気ビーズ、ポリスチレンビーズ、または金ビーズなどのビーズ、またはガラス、プラスチック、またはシリコンチップを使用するアレイまたはマイクロアレイ形式であり得る。かかるタンパク質の捕捉は、マイクロ流体デバイスのチャネルの一部でもある。
本発明で使用する結合剤には、同種のフィラリア線虫タンパク質に特異的に結合する抗体、抗体断片、または抗体誘導体(例えばアプタマー)が含まれる。2つの実体間の特異的結合は、一般に、少なくとも10、10、10、10、または1010-1の親和性を指す。特異的結合を達成するには、10-1を超える親和性が望ましい。
結合剤が抗体である場合、抗体は、自然に(すなわち、免疫化)または部分的もしくは完全に合成的な手段によって、生成することができる。抗体は、モノクローナルまたはポリクローナルであり得、市販の抗体を含む。抗体は任意の免疫グロブリンクラスのメンバーであることができ、これには、ヒトクラスのいずれか:IgG、IgM、IgA、IgD、およびIgEを含む。二重特異性およびキメラ抗体もまた、本発明の範囲内に包含される。しかしながら、IgGクラスの誘導体が望ましい。さらに抗体は、ヒト、マウス、ラット、ヤギ、ヒツジ、ウサギ、ニワトリ、ラクダ、もしくはロバ起源、または天然もしくはヒト抗体を産生するために使用され得る他の種のもの(すなわち、組換え細菌、バキュロウイルスもしくは植物)であり得る。
例えば、天然に生成されるモノクローナル抗体は、古典的なクローニングおよび細胞融合技術、またはB細胞を捕捉し特定の抗体をコードする核酸を増幅する技術を使用して、生成することができる(例えば、US 20060051348を参照)。かかる方法において、タンパク質のコレクションまたは個々のタンパク質(例えば、ペプチドまたはポリペプチド)を最初の免疫化に使用することができ、抗体産生の文脈では、本明細書では抗原と呼ぶ。目的の抗原は典型的には、野生型マウスまたは近交系マウス(BALB/cなど)、またはラット、ウサギ、ニワトリ、ヒツジ、ヤギ、または天然抗体またはヒト抗体を産生できる他の動物種に投与される(例えば腹腔内注射など)。抗原は、単独で、またはアジュバントと混合して投与することができる。動物を例えば2回以上ブーストした後、脾臓またはラットの膝窩などの大きなリンパ節を摘出し、脾細胞またはリンパ球を単離し、周知の方法を用いて骨髄腫細胞と融合させる;例えばKohler & Milstein ((1975) Nature 256:495-497)またはHarlow & Lane (Antibodies: A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Laboratory, New York (1988))を参照。得られたハイブリッド細胞を次に、従来の方法で、例えば限界希釈を使用してクローニングし、目的のモノクローナル抗体を産生する得られたクローンを培養する(Stewart (2001) Monoclonal Antibody Productionを参照、これはBasic Methods in Antibody Production and Characterization, Howard and Bethell (eds.), CRC Press, Boca Raton, FL, pp.51-67にある)。
代替的に、抗体は、ファージディスプレイ法によって誘導することができる。ファージディスプレイ抗体を産生する方法は当技術分野でよく知られており、例えば、Huse, et al. ((1989) Science 246(4935):1275-81)を参照。抗体の選択は、目的のタンパク質(単数または複数)に対する結合親和性に基づく。
抗体断片は、全長抗体の特異的結合能力の少なくともかなりの部分を包含する。抗体断片の例としては、Fab、Fab’、F(ab’)、scFv、Fv、dsFv、ダイアボディ、Fd断片またはマイクロボディが挙げられるが、これらに限定されない。抗体断片は、例えばジスルフィド結合によって互いに連結された複数の鎖を含有することができる。断片はまた、任意に多分子複合体であってもよい。機能的抗体断片は、典型的には少なくとも約50のアミノ酸残基を含み、より典型的には少なくとも約200のアミノ酸残基を含む。抗体断片は、任意の手段で生成することができる。例えば、抗体断片は、無傷の抗体の断片化によって酵素的または化学的に生成することができ、または部分的な抗体配列をコードする遺伝子から、組換え的に生成することができる。代替的に、抗体断片は、完全または部分的に合成的に生成され得る。
タンパク質に特異的に結合するペプチドアプタマーは、一般に、アプタマーのライブラリー(例えば、Aptanomics SA, Lyon, Franceによって提供される)において合理的に設計またはスクリーニングされる。一般に、ペプチドアプタマーは、抗体の構造に基づいて設計された合成認識分子である。ペプチドアプタマーは、タンパク質足場の両端に取り付けられた可変ペプチドループで構成される。この二重構造の制約により、ペプチドアプタマーの結合親和性は、抗体のそれに匹敵するレベル(ナノモル範囲)に大幅に増加される。
本発明の結合剤の組換え産生は、従来の分子生物学技術および市販の発現系を使用して達成することができる。さらに結合剤は、固相技術を使用して生成することができる(例えば、Merrifield (1963) J. Am. Chem. Soc. 85:2149-2154;Seeberger (2003) Chem. Commun. (Camb) (10):1115-21参照)。タンパク質合成は、手動の技法または自動化を使用して実施できる。自動合成は、例えば、Applied Biosystems 431A Peptide Synthesizer(Perkin Elmer, Boston, MA)を使用して達成することができる。結合剤のさまざまな断片を別々に化学合成し、化学的方法を使用して組み合わせて、全長分子を生成することができる。
さらに、コンビナトリアルケミストリーアプローチを使用して、結合剤を生成することができる(例えば、Lenssen, et al. (2002) Chembiochem. 3(9):852-8;Khersonsky, et al. (2003) Curr. Top. Med. Chem. 3(6):617-43;Anthony-Cahill & Magliery (2002) Curr. Pharm. Biotechnol. 3(4):299-315を参照)。
本明細書に記載の結合剤は、標識することができる。いくつかの態様において、結合剤は、抗体を直接または間接標識に共有結合させることにより標識された抗体である。直接標識は、その自然な状態で、肉眼で、または光学フィルターの助けを借りて、および/または蛍光を促進するために紫外線などの刺激を加えて、可視できる実体として定義できる。使用できる着色標識の例には、金属ゾル粒子、金ゾル粒子、染料ゾル粒子、染色ラテックス粒子、またはリポソームに封入された染料が含まれる。他の直接標識には、放射性核種および蛍光または発光部分が含まれる。
酵素などの間接標識も、本発明に従って使用することができる。様々な酵素が標識として使用されることが知られており、例えば、アルカリホスファターゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、リゾチーム、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼおよびウレアーゼなどである。イムノアッセイにおける酵素の詳細な議論については、Engvall (1980) Methods of Enzymology 70:419-439を参照。
本明細書に記載のタンパク質(すなわち、抗体または抗原/エピトープ)は、表面に付着させることができる。診断目的でタンパク質を付着させることができる有用な表面の例には、ニトロセルロース、PVDF、ポリスチレン、ナイロン、または他の適切なプラスチックが含まれる。表面または支持体は、多孔性支持体であってもよい(例えば、US 7,939,342を参照)。
さらに、本発明のタンパク質は、粒子またはビーズに付着させることができる。例えば、フィラリア線虫タンパク質に対する抗体またはフィラリア線虫タンパク質自体は、例えばLUMINEXベースのマルチプレックスアッセイで使用されるように、超常磁性微粒子に共役させることができる。
本発明のフィラリア線虫タンパク質は、合成的に、または組換え核酸技術を使用して、単離および/または精製または生成され得る。精製は、部分的または実質的であり得る。フィラリア線虫タンパク質断片に関し、「断片」という用語は、本明細書に記載のタンパク質よりも短いアミノ酸配列を有するタンパク質を指す。好ましくは、かかる断片は、少なくとも5連続アミノ酸長または35アミノ酸長までである。ある態様において、タンパク質断片は、少なくとも1つのエピトープを含む。「エピトープ」とは分子の形質であって、一次、二次および/または三次ペプチド構造、および/または電荷などの、免疫グロブリン、T細胞受容体またはHLA分子によって認識される部位を形成するものである。代替的に、エピトープは、特定の免疫グロブリンによる認識に関与するアミノ酸残基のセット、またはT細胞の文脈では、T細胞受容体タンパク質および/または主要組織適合性複合体(MHC)受容体による認識に必要な残基として、定義することができる。
いくつかの態様において、本発明のタンパク質断片は、配列番号121のエピトープ、特に配列番号78または配列番号98のエピトープを含むかまたはそれからなる、ALT2の断片である。他の態様において、本発明のタンパク質断片は、配列番号122、特に配列番号79または配列番号99のエピトープを含むかまたはそれからなる、ALT2の断片である。さらなる態様において、本発明のタンパク質断片は、配列番号81または配列番号123、特に配列番号80または配列番号100のエピトープを含むかまたはそれからなる、HSPの断片である。ある態様において、本発明のタンパク質断片は、配列番号82のエピトープを含むかまたはそれからなる、TSPの断片である。他の態様において、本発明のタンパク質断片は、配列番号83または配列番号124、特に配列番号84または配列番号101のエピトープを含むかまたはそれからなる、TPX2の断片である。
本発明の断片は、ヒトもしくは非ヒト手段によって、単離、精製、または別様に調製/誘導することができる。例えばエピトープは、フィラリア線虫タンパク質断片を細菌培養物から単離することにより調製することができ、または当技術分野の標準的なプロトコルに従って合成することができる。合成エピトープはまた、アミノ酸模倣物から、例えば天然に存在するLアミノ酸のD異性体、またはシクロヘキシルアラニンなどの非天然アミノ酸から、調製することもできる。
いくつかの態様において、フィラリア線虫のタンパク質またはタンパク質断片は、抗体産生を促進するために、高分子量タンパク質担体に共役または融合される。いくつかの態様において、高分子量タンパク質は、ウシ血清アルブミン、サイログロブリン、オボアルブミン、フィブリノーゲン、またはキーホールリンペットヘモシアニンである。特に好ましい担体は、キーホールリンペットヘモシアニンである。
市販のものを含む任意の適切なイムノアッセイ法を使用して、本発明による特定のフィラリア線虫タンパク質、タンパク質断片、または防御/中和抗体の少なくとも1つのレベルを決定することができる。これらは当業者に知られているので、既知のイムノアッセイ技術の広範な議論はここでは必要とされない。典型的な適切なイムノアッセイ技術には、サンドイッチ酵素結合免疫測定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、競合結合アッセイ、均一アッセイ、不均一アッセイなどが含まれる。さまざまな既知のイムノアッセイ法が、例えばMethods in Enzymology (1980) 70:30-70 and 166-198で概説されている。
いくつかの態様において、イムノアッセイ法またはアッセイは、生物学的試料中のフィラリア線虫タンパク質またはタンパク質断片のレベルを測定するための、二重抗体技法を含む。この方法によれば、抗体の一方は「捕捉」抗体であり、他方は「検出」抗体である。捕捉抗体は固体支持体上に固定化され、該固体支持体は例えば、マイクロタイタープレートウェル、ビーズ、管、およびナイロンなどの多孔質材料、ガラス繊維、および他のポリマー材料など、当技術分野で知られているさまざまなタイプのいずれかであり得る。この方法において、目的の特定のタンパク質に対して生成された捕捉抗体、好ましくはモノクローナルでコーティングされた固体支持体、例えばマイクロタイタープレートウェルが、固相を構成する。希釈されていてもいなくてもよい生物学的試料に、典型的には少なくとも1、2、3、4、5、10、またはそれ以上の標準および対照を加えて固体支持体を分離し、インキュベートする。目的のタンパク質が試料中に存在する場合、これは問題のタンパク質に特異的な固定化抗体によって捕捉される。インキュベーションおよび洗浄後、検出抗体、例えばポリクローナルウサギ抗マーカータンパク質抗体を固体支持体に添加する。検出抗体は、捕捉抗体に結合したタンパク質に結合して、サンドイッチ構造を形成する。インキュベーションおよび洗浄後、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)などの酵素で標識された抗IgG抗体、例えばポリクローナルヤギ抗ウサギIgG抗体を、固体支持体に添加する。インキュベーションおよび洗浄後、酵素の基質を固体支持体に添加し、続いてインキュベーション、および酸溶液を添加して酵素反応を停止させる。
固定化酵素の酵素活性の程度は、固体支持体上の酸化酵素生成物の光学密度を適切な波長、例えばHRPの場合450nmで測定することによって決定する。波長での吸光度は、試料中の目的のタンパク質の量に比例する。マーカータンパク質標準のセットを使用して、吸光度対フィラリア線虫タンパク質濃度の標準曲線を作成する。この方法は45~50分で検査結果を得ることができ、各フィラリア線虫タンパク質の目的の濃度範囲にわたって感度が高く、特異性が高いため、有用である。
標準は、検出されるタンパク質の様々な濃度を含有する陽性試料であってよく、これにより、試薬および条件が各アッセイに対して適切に機能することを確実にする。標準はまた、典型的には、例えば汚染物質の検出のための陰性対照を含む。本発明の態様のいくつかの側面において、陽性対照は、検出不可能な量および明らかに検出可能な量を含む、異なる濃度に滴定されてもよく、いくつかの側面において、生物学的試料における検出の閾値レベルでシグナルを示す試料も含む。
本発明の方法は、Aurora Biosciences CorporationへのUS 6,426,050、US 5,910,287、US 6,229,603、およびUS 6,232,114に記載されているものを含む様々なアッセイ装置形式で実施することができる。本発明に従って使用されるアッセイ装置は、定量的または定性的な(存在する/存在しない)結果を提供するように配置することができる。いくつかの態様において、この方法は、マイクロタイタープレートまたはマイクロ流体デバイス形式の使用を含む。アッセイはまた、当技術分野で知られており多数の異なる試料に対してアッセイを行うことができる自動イムノアッセイ分析装置で行うこともできる。これらの自動分析装置には、連続/ランダムアクセスタイプが含まれる。かかるシステムの例は、US 5,207,987、US 5,518,688、US 6,448,089、およびUS 6,814,933に記載されている。市販されているさまざまな自動分析装置には、OPUS(登録商標)およびOPUS MAGNUM(登録商標)分析装置が含まれる。
本発明に従って使用できる別のアッセイ形式は、任意の場所のポイントオブケア(臨床現場)で実施できる迅速な手動試験である。典型的には、かかるポイントオブケアアッセイデバイスは、タンパク質が存在することを示す「陽性」、またはタンパク質が存在しないことを示す「陰性」のいずれかの結果を提供する。典型的には、試薬が一般的に機能したことを示す対照も、かかるポイントオブケアシステムに含まれる。ポイントオブケアシステム、アッセイ、およびデバイスは、妊娠検出などの他の目的のために十分に説明されている(例えば、US 7,569,397およびUS 7,959,875を参照)。したがって、本発明はまた、本発明のin vitroアッセイを実施するための、ポイントオブケア検査ストリップおよびマイクロ流体デバイスなどのデバイスを提供する。
本発明に従って使用されるアッセイ装置は、単一のアッセイを特定のタンパク質に対して実施するために、または複数のアッセイを体液の単一体積から、対応する多数の異なるフィラリア線虫タンパク質またはそれに対する抗体について実施するために、提供され得ることも認識されるべきである。いくつかの態様において、後者のタイプのアッセイ装置は、本発明に従って測定されたフィラリア線虫タンパク質または抗体、すなわち、ALT2、TSP、VAL-1、TPX2、GSTおよびHSPまたはそれらに対する抗体の1つ以上について、半定量的結果を提供することができる。これらのデバイスは、典型的には、タンパク質の濃度が閾値レベルを超える場合に、目的の特定のタンパク質が位置する場所で明確な視覚的に検出可能な着色バンドを提供するよう、適合されている。本発明に従って利用することができるアッセイタイプ、ならびに様々なアッセイ形式および自動分析装置のさらなる詳細な議論については、例えば、US 5,747,274を参照されたい。フィラリア線虫タンパク質の検出は、マルチプレックス技術を使用してさらに実施することができる。
他の態様において、本発明のアッセイまたはイムノアッセイは、フィラリア線虫タンパク質またはその断片または抗体に対する結合剤でコーティングされたビーズを含む。一般的に使用されるのは、ユニークな同一性を確立するために標識可能な、ポリスチレンビーズである。検出は、フローサイトメトリーで行う。他の種類のビーズベースのイムノアッセイは当技術分野で知られており、例えば、レーザービーズイムノアッセイおよび関連する磁気ビーズアッセイである(例えば、Fritzler, et al. (2009) Expert Opinion on Medical Diagnostics 3:81-89を参照)。
本発明の方法は、ロボット工学およびコンピュータ指向システムを使用して自動化することができる。生物学的試料は、試料入力から結果の出力まで完全にロボットステーションによって実施されるマイクロ流体デバイスなどのシステムに、注入することができる。結果を表示するステップも自動化して、同一システムまたはリモートシステムに接続可能である。したがって、試料分析をある場所で実施し、結果分析を別の場所で実施することができ、唯一の接続は例えばインターネット接続であり、その後に分析は、医療専門家または患者のいずれかによる読み取りに適した形式で表示される。
ある態様において、本明細書に記載の防御/中和抗体の任意の1つまたは任意の組み合わせの存在により、対象がフィラリア線虫に対する多価免疫原性組成物で免疫化されていることが同定される。したがって、抗体価に応じて、対象は追加のブースターワクチン接種を受けても受けなくてもよい。
いくつかの態様において、本明細書に記載のフィラリア線虫タンパク質の任意の1つまたは任意の組み合わせの存在により、対象がフィラリア線虫感染症を有すると同定される。したがって、対象はフィラリア症を有すると診断され、本発明のある態様において、ジエチルカルバマジン、メベンダゾール、フルベンダゾール、アルベンダゾール、イベルメクチンまたはそれらの組み合わせで処置される。一態様において、診断は、フィラリア線虫タンパク質のいずれか1つの存在が対象の試料中に検出された場合に、下すことができる。別の態様において、処置は、生物学的試料中で少なくとも2つのフィラリア線虫タンパク質が陽性と同定された場合に、処方または実施される。
本発明に従って提供されるキットは、1つ以上の結合剤、例えば、抗体または抗体断片、またはフィラリア線虫タンパク質、および任意に固体表面を有するデバイスを含む。いくつかの態様において、固体表面は、結合剤/タンパク質が結合するビーズ、スライド、アッセイプレート(例えば、マルチウェルプレート)またはラテラルフローデバイスである。いくつかの態様において、キットはさらに、1つ以上の標準または対照を含む。
いくつかの態様において、本発明は、多重イムノアッセイのためのマイクロプレートベースのアレイを提供する。いくつかの態様によれば、各ウェルは、列挙されたフィラリア線虫タンパク質の少なくとも1つに対する単一の抗体を含有することができる。他の態様において、各ウェルは、列記されたフィラリア線虫タンパク質の少なくとも2つ以上に対する抗体のアレイを含有する。ある態様において、プレートの各ウェルは、以下のタンパク質:ALT2、TSP、VAL-1、TPX2、GSTおよびHSPのうちの2つ、3つ、4つ、または5つに対する抗体を含む。具体的な態様において、プレートの各ウェルは、ALT2、TSP、VAL-1、TPX2、GSTおよびHSPのそれぞれに対する抗体を含む。
他の態様において、各ウェルは、本発明の少なくとも2つ以上のフィラリア線虫タンパク質のアレイを含有する。ある態様において、プレートの各ウェルは、以下のタンパク質:ALT2、TSP、VAL-1、TPX2、GSTおよびHSPのうちの2つ、3つ、4つ、または5つを含む。具体的な態様において、プレートの各ウェルは、ALT2、TSP、VAL-1、TPX2、GSTおよびHSPのそれぞれを含む。
他の態様において、本発明は、妊娠検出ストリップと類似の、使用が簡単なポイントオブケア診断検査ストリップを提供し、ここでストリップは、列挙されたフィラリア線虫タンパク質の少なくとも1つに対する少なくとも1つの抗体を含む。代替的な態様において、本発明は、使用が簡単なポイントオブケア診断検査ストリップであって、該ストリップが本発明のフィラリア線虫タンパク質の少なくとも1つを含むものを提供する。
検査ストリップは陽性対照および陰性対照を含み得て、これはユーザーに、試薬が適切に機能すること、および/または試料がストリップに適切に添加されたことを示す。ストリップは、ケーシングの有無にかかわらず、また追加の試薬の有無にかかわらず提供され得る。本明細書に記載の検査ストリップアッセイなどの、ラテラルフローアッセイ用の診断検査ストリップは、当技術分野で記載されているように構築することができ、例えば、US 2010/0129935;US 2009/0253119;およびUS 2009/0111171を参照。検査ストリップに適した材料には、限定はされないが、セルロース由来の材料、例えばろ紙、クロマトグラフィペーパー、ニトロセルロース、および酢酸セルロースなど、ならびに、ガラス繊維、ナイロン、ダクロン、PVC、ポリアクリルアミド、架橋デキストラン、アガロース、ポリアクリレート、セラミック材料などで作られた材料が含まれる。検査ストリップの材料(単数または複数)は、任意に処理されて、それらの毛細管流動特性または適用された試料の特性を変更することができる。例えば、検査ストリップの試料適用領域を緩衝液で処理して、適用試料のpHまたは比重を補正し、最適な試験条件を確保することができる。
本発明を、以下の非限定的な実施例によりさらに詳細に説明する。
例1:小型熱ショックタンパク質ワクチン
寄生虫。
B. malayiのL3は、University of Georgia, Athens, GAのNIAID/NIH Filariasis Research Reagent Resource Center(FR3)から入手した。
ヒト血清試料。
以下の臨床群の対象から、約10mlの血液試料を収集した:(1)流行性正常 (EN)対象、これらは無症候性で非ミクロフィラリア血症の個人であった;(2)無症候性のミクロフィラリア血症患者(Mf)であって、血液中に循環ミクロフィラリアを有し、夜間血液塗抹標本の顕微鏡検査により特定されたもの;(3)慢性病理(CP)患者、これはリンパ浮腫およびフィラリア症の他の慢性臨床症状を示した対象、および(4)非流行性正常対象(NEN)であって、非流行地域に住んでおり、循環寄生虫または抗体を有さず、いかなるフィラリア症の証拠もないもの。これらの血液試料から血清を分離し、使用するまで-80℃で保存した。
組換えB. malayi熱ショックタンパク質の発現および精製。
組み換えB. malayi小型熱ショックタンパク質12.6(rBmHSP)を生成するために、全長遺伝子配列をpRSET-A(N末端ヘキサヒスチジンタグ付き)にクローニングし、pLysS(Invitrogen, Carlsbad, CA)含有BL21(DE3)に形質転換して、タンパク質による毒性を最小化した。培養物の吸光度が0.6OD値に達したら、1mMのIPTG(イソプロピルチオ-d-ガラクトピラノシド)を培養物に加え、さらに3時間インキュベートして遺伝子発現を誘導した。細胞を溶解した後、総タンパク質を15%SDS-PAGEで分離し、hisタグ付きタンパク質の発現を確認した。続いて、ヒスチジンタグ付き組換えタンパク質の精製を、固定化コバルト金属アフィニティーカラムクロマトグラフィー(Clontech, Mountain View, CA)を使用し、製造業者の推奨に従って実施した。次いで組換えタンパク質を15%SDS-PAGEで分離し、クーマシーブリリアントブルーR250で染色した。カラム精製後、単一のバンドが得られた。
BmHSPの三次元モデル。
BmHSPタンパク質の三次元モデルを、相同性モデリングにより構築した。BLAST配列相同性検索を実施して、PDBデータベースのテンプレートタンパク質を特定した。最近結晶化されたタンパク質であるヒトα-クリスタリンAが重要な配列同一性を示したため、BmHSPをモデル化するためのテンプレートとして選択した。モデル構築は、MODELLE R9v6(Sali & Blundell (1993) J. Mol. Biol. 234:779-815)を使用して実施した。得られた三次元構造は、続いてPROCHECKプログラムを使用して検証した(Laskowski, et al. (1993) J. Appl. Cryst. 26:283-29)。PROCHECKにより予測された最良のモデルは-0.46のスコアを有し、これを、さらなるモデリングとRasmolプログラムを使用した3-D構造の生成のために選択した。
BmHSPの構造の分析。
BmHSPの二次構造およびタンパク質間相互作用部位は、European Molecular Biology Laboratory, HeidelbergのPDBsumおよびPredict Protein E-mailサーバーで予測した(Roos, et al. (1995) Parasitol. Today 11:148-150)。モチーフスキャンをPROSITEパターン分析を介して実施し、BmHSPの機能的モチーフを特定した。BmHSP配列のB細胞、T細胞、およびCTLエピトープは、Immune Epitope Database and Analysis Resource(lEDB)を使用して予測した。
BmHSPの系統解析。
BmHSPのアミノ酸配列を、異なる生物からのタンパク質の別の小型熱ショックファミリーのメンバーと比較した。以下の配列を分析した。アクセッション番号は括弧内に示す。Aconthocheilonema vitae(CAA48631);Archaeoglobus fulgidus(O28308);Artibeus jamaicensis(P02482);Aspergillus fumigatus(Q4WV00);Arabidopsis thaliana(O81822);Artemia persimilis(DQ310578);Azotobacter vinelandii(P96193);Brugia pahangi(CAA61152);Brugia malayi(AAU04396);Buchnera aphidicola(P57640);Bombyx mori(AF315318_1);Bradyrhizobium japonicum(P70918);Caenorhabditis elegans(Q7JP52);Coccidioides immitis(Q1E6R4);Carica papaya(Q69BI7);Caenorhabditis remanei(AAZ42349);Dictyostelium discoideum(Q54I91);Escherichia coli(ibpA;P0C054);Escherichia coli(ibpB;P0C058);Homo sapiens(P02489);Haemonchus contortus(AAN05752);Lygodactylus picturatus(Q6EWI0);Onchocercara volvulus(CAA48633);Ostertagia ostergi(CAG25499);Macaca mulatta(P02488);Mycobacterium tuberculosis(P0A5B7);Mus musculus(AAA37861);Nippostrongylus brasiliensis(BAI81970);Plasmodium falciparum(Q8IB02);Rattus(CAA42910);Saccharomyces cerevisiae(P15992);Solanum lycopersicum(O82545);Streptococcus thermophilus(P80485);Trichinella spiralis(ABJ55914);Trypanosoma brucei(Q57V53);Toxoplasma gondii(Q6DUA8)。すべてのsHSP配列のα-クリスタリンドメインをClustalWアルゴリズムを用いて整列し、データセットを使用してPHYLIPソフトウェアで系統樹を構築した。ツリーは、ポアソン補正されたアミノ酸距離を用い、隣接結合法を使用して作成した。
シャペロンアッセイ。
シャペロンの典型的な特徴の1つは、細胞タンパク質に結合して熱損傷から保護できることである。タンパク質は熱損傷にさらされると凝集する(熱凝集)。シャペロンはこの凝集を防ぐ。BmHSPが熱凝集を防止できるかどうかを判断するために、シトルリンシンターゼ(CS)(Sigma, St. Louis, MO)熱凝集アッセイを使用した。CSを選択したのは、このタンパク質が熱変性に非常に敏感であるためである。確立された方法を使用した(Gnanasekar, et al. (2009) Biochem. Biophys. Res. Commun. 386:333-337)。簡潔に言うと、1μMのCSを、100mMのNaClを含有する50mMのリン酸ナトリウムのpH7.4の緩衝液に懸濁させたBmHSP(2μM)の存在下または非存在下で、45℃に曝露した。BSAを対照として使用した。CSをBmHSPとモル比(1:2)で、0~40分のさまざまな時間間隔でインキュベートした。熱変性(凝集)は、分光光度計で360nmで監視した。
シャペロン活性についてのin vitroペプチド結合アッセイ。
熱ショックタンパク質のもう一つの特徴は、さまざまなタンパク質と結合できることである。BmHSPもこの機能を有するかどうかを決定するために、CSおよび別のタンパク質であるルシフェラーゼを、6M塩酸グアニジンで既知の方法に従って化学的に変性させた(Gnanasekar, et al. (2009)、上記)。次に、天然タンパク質と化学変性タンパク質を、96ウェルプレートに4℃で一晩コーティングした。PBSで洗浄後、ウェルを3%BSAで室温でブロッキングした。さらに洗浄した後、ウェルを、hisタグ付きrBmHSPと共に37℃で1時間インキュベートした。PBSで再度洗浄した後、最適に希釈した抗hisタグ付きHRPコンジュゲートを加え、37℃で1時間インキュベートした。最終洗浄後、ABTS[2,2’-アジノビス(3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸)]で発色させ、ODを405nmで測定した。
ヒト血清中の抗BmHSP抗体レベル。
Mf、CP、ENおよびNENなどの異なる臨床群に属する合計20の血清試料を、抗BmHSP IgG抗体の存在および力価について、間接ELISAを使用して分析した(Cheirmaraj, et al. (1992) J. Trop. Med. Hyg. 95:47-51)。簡潔に言うと、96ウェルマイクロタイタープレートのウェルを、炭酸緩衝液pH9.6中のrBmHSP(1μg/ml)で4℃で一晩コーティングし、3%BSAで37℃で1時間ブロックした。血清試料をウェルに加え、プレートを4℃で一晩インキュベートした。ウェルを洗浄した後、HRP標識したマウス抗ヒトIgGを加え(1:5000)、さらに1時間37℃でインキュベートした。ABTS基質を使用して発色させた。吸光度を、マイクロプレートリーダー(BIO-RAD, Hercules, CA)で405nmで測定した。対象の血清中の抗BmHSP IgG抗体のアイソタイプも、アイソタイプ特異的ELISAを用いて決定した。ビオチン化マウスモノクローナル抗ヒトIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4を二次抗体として使用し、アビジン-HRPコンジュゲート(Sigma, St. Louis, MO)を二次抗体として使用して発色させた。
コドン最適化BmHSPの、DNAワクチンのためのpVAXベクターへのクローニング。
コドン最適化されたBmhsp遺伝子を、真核発現ベクターpVAX(Invitrogen)に、インサート特異的プライマー(フォワードプライマー、BamHI部位を含有する5’-CGC GGA TCC ATG GAA GAG AAG GTG GTG-3’(配列番号1)、およびリバースプライマー、EcoRI部位を含有する5’-CCG GAA TTC TCA CTT GTC GTT GGT G-3’(配列番号2))を用いてクローニングした。PCRパラメータは次のとおりである:94℃で30秒間の変性、50℃で30秒間のプライマーアニーリング、72℃で30秒間のプライマー伸長、30サイクル;および72℃で5分間の最終伸長を行った。インサートDNAを配列決定して、両方の鎖上のクローンニングされたヌクレオチド配列の確実性を保証した。プラスミドは、大腸菌TOP10F’細胞で維持および増殖させた。その後プラスミドを、エンドトキシン非含有のプラスミド抽出キット(Qiagen, Hilden, Germany)を使用して精製した。DNAをアガロースゲル電気泳動で分析し、分光測光法で定量化した(OD260/280、比率>1.8)。
マウスの免疫化。
Charles River Laboratoriesから購入した6週齢のオスのBalb/cマウスを、これらの実験で使用した。この研究における動物の人道的な使用およびプロトコルは、College of Medicine, University of Illinois RockfordのIACUC委員会によって承認された。各群は5匹のマウスで構成され、すべてのマウスは3つの異なる免疫化レジメンを用いて、腹腔内に免疫化した。A群のマウスは、プライムブーストレジメンを用いて免疫化した。マウスは、50μlの用量に懸濁された100μgのエンドトキシン非含有のコドン最適化pVAX Bmhsp DNAで、2週間間隔で2回プライミングした。プライミング後、すべてのマウスに、ミョウバンに懸濁した15μgのrBmHSPタンパク質(各50μl)の2回のブースター用量を、2週間間隔で投与した。B群のマウスは、rBmHSPタンパク質のみで免疫化した。これらのマウスには、ミョウバンに懸濁した15μgのrBmHSPタンパク質の4用量を、2週間間隔で投与した。C群のマウスは、DNAのみで免疫化した。これらのマウスには、100μgのpVAX Bmhsp DNAの4用量を、2週間間隔で投与した。D群の動物には、100μgのpVAXベクター対照およびアジュバントを同じ間隔で投与し、陰性対照のままであった。血液試料は各マウスから、免疫化前および最後のブースター投与の1か月後に収集した。血清を分離した後、循環抗BmHSP IgG抗体の力価およびそれぞれのアイソタイプを決定した。BmHSPに対し高力価の抗体を示した血清を、本明細書に記載の抗体依存性細胞傷害(ADCC)アッセイに使用した。
マウスの血清中の抗BmHSP抗体レベル。
マウスの免疫化群および対照群の血清中の抗BmHSP IgG抗体レベルを、間接ELISAを用いて決定した(Veerapathran, et al. (2009) PLoS Negl. Trop. Dis. 3:e457)。IgG1、IgG2a、IgG2bおよびIgG3抗BmHSP抗体レベルもまた、マウス抗体アイソタイピングELISAキット(ThermoFisher Scientific, Rockford, IL)を用いて決定した。ABTS(2,2’-アジノビス(3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸))色素原基質で発色させ、吸光度をELISAリーダー(BIO-RAD)で405nmで測定した。
ヒトおよびマウス血清からの抗BmHSP抗体の欠乏。
抗BmHSP抗体は、EN対象および免疫化マウスのプールされた血清から、プール血清をHisタグ付きrBmHSPに結合したコバルトIMAC樹脂と共にインキュベートすることにより、確立された方法(Veerapathran, et al. (2009)、上記)に従って欠乏させた。簡潔に言うと、1mgのhisタグ付きrBmHSPを、2mlのベッドボリュームのIMAC樹脂に37℃で2時間結合させた。樹脂を10mlのPBS(pH.8)で1回洗浄した後、200μlのプールされた血清を加え、4℃で一晩インキュベートした。インキュベーション後、樹脂混合物を750rpmで2分間遠心分離し、上清を回収した。上清中の抗BmHSP抗体の欠乏は、本明細書に記載のようにELISAによって確認した。
EN対象のプールされた血清および免疫化マウスのプールされた血清からの、抗BmHSP IgG1、抗BmHSP IgG2a、抗BmHSP IgG2b、抗BmHSP IgG3および抗BmHSP IgG4抗体を、NHS(N-ヒドロキシスクシンイミジル)樹脂(Thermo fisher scientific)を使用して欠乏させた。簡潔に言うと、1μgのそれぞれのモノクローナル抗体を、NHS樹脂カラムに結合させた。樹脂をPBS(pH8)で2回洗浄した後、100μlの血清をカラムに通した。フロースルーを抗体欠乏血清として収集した。抗体の特定のアイソタイプの欠乏は、本明細書に記載のアイソタイプ特異的ELISAによって確認した。カラムをPBS(pH7.4)で3回洗浄した後、結合した抗体を、グリシン-HCl緩衝液(pH2.7)を使用して樹脂から溶出し、pHを1Mのトリス緩衝液(pH8)で7.4に調整した。回収した溶出液は、これもELISAによって再度確認されるように、特異的な抗体を含有していた。抗体が欠乏した血清も、溶出した抗体で再構成した。欠乏血清のアリコートを、ニート血清試料に対する以前のELISAにより決定した値を使用して、溶出した抗体で元の濃度に再構成した。次に、抗体が欠乏した血清、溶出した抗体、および再構成された血清試料を、ADCCアッセイで使用した。
抗体依存性細胞傷害(ADCC)アッセイ。
in vitroADCCアッセイは、既知の方法に従って実施した(Chandrasekhar, et al. (1985) Parasite Immunol. 7:633-641)。簡潔に言うと、B. malayiの10のL3を、正常なマウスから収集した2×10の腹膜細胞、50μlのプールされたマウス血清試料および50μlのRPMI 1640培地と共に、96ウェル培養プレート(Thermo Fisher Scientific)中でインキュベートした。37℃、5%COで48時間インキュベーションした後、幼虫の生存率を、光学顕微鏡を使用し400倍で決定した。透明かつ損傷した幼虫は死滅としてカウントした。さらに、死滅幼虫にも細胞の塊が付着しており、生存しているものよりも透明であった。活動的かつとぐろを巻く半透明の幼虫は、生存としてカウントした。ADCCは、幼虫の死亡率として、次の式を用いて算出して推定した:
死滅した幼虫の数÷幼虫の総数×100。
ADCCアッセイはまた、プールされたヒト血清試料を用いて本明細書に記載のように実施したが、ただし、ヒト血清試料を、正常な健康対象から収集した2×10個のPBMCおよび6~12のB. malayiのL3と共に、37℃、5%COで48時間インキュベートした。幼虫の生存と死滅は、上記のように決定した。
マウスにおける保護研究。
BmHSPのワクチンの可能性を、チャレンジ感染のマウスモデルで評価した。マウスは、プライムブースト、DNAのみ、またはタンパク質のみのアプローチを使用して、上記のように免疫化した。ベクターおよびミョウバン群は、陰性対照として機能した。免疫化動物および対照動物は、当技術分野で知られているマイクロポアチャンバー法を使用してチャレンジした(Abraham, et al. (1986) Immunology 57:165-169)。簡潔に言うと、マイクロポアチャンバーを、14×2mmのPLEXIGLASS(アクリル)リング(Millipore Corporations, Bedford, MA)および5.0μmのNUCLEOPOREポリカーボネート膜(Millipore Corporations)を使用して組み立てた。膜をPLEXIGLASSリングに、シアノアクリル接着剤と歯科用セメントで取り付けた。チャンバーを、ゲンタマイシンおよび抗真菌溶液を含有する滅菌RPMI培地に37℃で一晩浸漬した。チャレンジ実験の前に、マイクロポアチャンバーに、15%熱不活化ウシ胎児血清(FCS)を補充したRPMI 1640培地に懸濁させた20の生存している感染性L3を導入し、開口部を歯科用セメントで密閉した。次に、L3を含有したマイクロポアチャンバーを、各マウスの腹腔に麻酔下で外科的に移植した。外科的処置のために無菌条件に従った。移植の48時間後、動物を犠牲にし、チャンバーを腹腔から回収した。各チャンバーの内容物を空にし、細胞の接着および幼虫の死滅について、幼虫を顕微鏡で検査した。上記のADCCで説明したように、死滅幼虫と生存幼虫を特定した。保護率は、死滅寄生虫の数÷回収した総寄生虫の数×100として表した。
脾細胞増殖アッセイ。
上記実験の全マウスから脾臓を収集し、脾臓細胞の単細胞懸濁液を調製した。10%熱不活化FCSを補充した完全RPMI 1640培地に懸濁した約2×10細胞/ウェルを、rBmHSP(1μg/ml)、ConA(1μg/ml)と共に、または培地のみで、37℃、5%COで72時間インキュベートした。インキュベーション後、細胞増殖をDojindo Molecular Technologies, Inc.(Gaithersburg, MD)から購入した細胞数測定キット(CCK-8)を用いて決定した。脾臓細胞増殖の刺激指数は、式:刺激された細胞の吸光度÷刺激されていない細胞の吸光度、を用いて計算した。
サイトカイン分析。
免疫化マウスおよび対照マウスの脾臓細胞を、rBmHSP(1μg/ml)、ConA(1μg/ml)、または培地のみで、37℃、5%COで72時間上記のように培養した。72時間後、培養上清と細胞ペレットを、サイトカイン分析のために別々に収集した。サイトカインmRNAを測定するために、細胞ペレットをTRIZOL(フェノール、グアニジニウム、およびチオシアネート)試薬(GIBCO-BRL、Life technologies, Carlsbad, CA)に懸濁し、全RNAを製造業者の指示に従って抽出した。エタノールで洗浄した後、RNAペレットをRNAse非含有水(Sigma)に溶解し、DNase Iで処理した後、全RNA濃度をBeckman分光光度計を使用して260nmで決定した。全RNAの逆転写は、ファーストストランドcDNA合成キット(SABiosciences, Frederick, MD)を製造業者の推奨に従って使用して行った。目的遺伝子の発現の相対的な定量化は、Applied BioSystems 7300リアルタイムPCRマシン(Applied BioSystems, Foster City, CA)で測定した。PCR増幅は、LIGHTCYCLER-DNASYBR Green(シアニン色素)ミックス(SAbiosciences)を使用して実施した。反応は、次のPCR条件を使用して実施した:1サイクルの95℃で15分間の活性化ステップ、95℃で15秒間の変性ステップ、50℃で20秒間のプライマーのアニーリング、および72℃で15秒間の伸長ステップ。DNAは50サイクルで増幅した。蛍光DNA結合色素SYBR Green(シアニン色素)を監視した。RT-PCRデータアレイセットは、SABiosciencesのWebベースのデータ分析システムを使用して生成および分析した。
次いで、培養上清を脾細胞培養物から、rBmHSP(1μg/ml)、ConA(1μg/ml)または培地のみとのインキュベーションの72時間後に収集した。培養上清中のIL-2、IL-4、IFN-γ、およびIL-10タンパク質の分泌レベルは、ThermoFisher Scientificから購入したサンドイッチELISAキットを用いて決定した。各サイトカインの濃度は、組換えマウスIL-2、IL-4、IFN-γ、またはIL-10を使用してプロットした標準曲線から決定した。
統計分析。
統計分析をXL STATソフトウェアv.7.5.2(Kovach Computing Services, Anglesey, UK)を用いて実施した。比較可能な群間の統計的有意性は、適切なノンパラメトリック検定を使用して推定し、有意水準はp<0.05に設定した。
組換えBmHSP12.6(BmHSP)の発現。
BmHSPを、pRSET Aベクターにクローニングし、大腸菌BL21(DE3)PLysSでヒスチジンタグ付き(hisタグ付き)融合タンパク質として発現させた。続いて、組換えBmHSPタンパク質を、IMACカラムを用いて精製した。精製された組換えヒスタグ融合タンパク質の分子量は、約18kDaであることが判明した。カラム精製された組み換えタンパク質は、SDS-PAGEで単一のバンドとして現れた。
BmHSPの予測された三次元構造。
ヒトαクリスタリンA鎖のアミノ酸配列は、BmHSPと42%の類似性を共有する。ヒトαクリスタリンA鎖の結晶構造は既に利用可能であるため、これをテンプレートとして使用し、BmHSPの推定構造をModeller 9v6プログラムを用いてモデル化した。PROCHECK分析を使用し、テンプレートと比較して-0.41のスコアを示した最良のモデルを選択した(Laskowski, et al. (1993) J. Appl. Cryst. 26:283-29)。ラマチャンドランプロット分析も、BmHSP配列に対して実施した。これらの分析は、残基の92%が立体障害のない最も好ましい領域にあることを示した。追加の許容領域では、約6.7%の残基が検出された。ラマチャンドランプロット(Balazs, et al. (2001) Protein Eng. Des. Sci. 14:875-880)により予測されるように、最も好ましい領域で90%を超える残基を示したモデルが、最も理想的な三次元モデルであると予測された。BmHSPタンパク質の二次構造予測分析も、EMBLのPDBsumサーバーを用いて実施した。この分析は、BmHSP単量体の各α-クリスタリンドメインが、2つの逆平行シートに配置された7つのβストランドで構成される免疫グロブリンコアを有することを示した。BmHSPの二次構造予測では、BmHSPの構造に2つのシート、4つのベータヘアピン、1つのベータバルジ、7つのストランド、2つのヘリックス、7つのベータターン、および1つのガンマターンが示された。
以前の研究は、BmHSPがヒトIL-10受容体Iα鎖に結合することが示された(Gnanasekar, et al. (2008) Mol. Biochem. Parasit. 159:98-103)。BmHSP上のIL-10受容体結合部位を同定するために、予測的タンパク質間相互作用分析を行った(Ofran & Rost (2007) Bioinformatics 23:e13-e16)。予測分析の結果は、BmHSPのN末端断片(Met1からAsn26までのアミノ酸)が強力なタンパク質間相互作用領域を有することを示した。この領域のさらなる配列分析は、Val5からGlu42までのアミノ酸配列が、ヒトIL-10のヒトIL-10R結合領域と有意な配列同一性を有することを示した。これらの知見は、BmHSPのN末端領域が、BmHSPのヒトIL-10受容体Iα鎖への結合に関与し得ることを確認する。
BmHSPに関するモチーフおよび系統発生解析。
PROSITEで行ったモチーフ解析では、いくつかの推定翻訳後修飾部位、例えばN-グリコシル化部位(残基11~14および98~101)、プロテインキナーゼcリン酸化部位(残基83~85および100~102)、カゼインキナーゼIIリン酸化部位(残基68~71および88~91)およびN-ミリスチル化部位(残基40~45)などがBmHSP上に示された。同様のモチーフがヒトIL-10でも観察され、BmHSPがヒトIL-10機能を模倣している可能性があることをさらに示している(Gnansekar, et al. (2008)、上記)。BmHSPのエピトープマッピングにより、B細胞、T細胞、およびCTLエピトープ領域の存在が明らかになり、BmHSPが潜在的に免疫原性の高いタンパク質であることが示された(表2)。
Figure 2023513607000003
生物の異なる群からの代表的なsHSP配列を用いて行った系統発生解析では、BmHSP、C. elegansのHSP、およびC. remaniのHSPが、他の生物群から分離された単系統群を形成することが示された。
BmHSPはシャペロンである。これまでに報告されている熱ショックタンパク質のほとんどは、シャペロン機能を有する。BmHSPにも同様のシャペロン機能があるかどうかを判断するために、熱凝集反応を、モデル基質であるシトルリンシンターゼ(CS)を用いて行った。CSの42℃でのインキュベーションにより、タンパク質のアンフォールディングと、それに続く10分以内の凝集が起こった。BmHSPの、熱処理前のCSタンパク質への添加(モル比1:2)は、CSタンパク質の熱凝集を有意に(P<0.01)阻害した。非シャペロン対照タンパク質であるBSAは、CSタンパク質の熱誘導性の凝集に影響を与えなかった。
シャペロンタンパク質の別の機能は、変性タンパク質に特異的に結合できることである。BmHSPが変性タンパク質に特異的に結合できるかどうかを判断するために、rBmHSPを天然および変性CSまたは天然および変性ルシフェラーゼ基質とインキュベートした。これらの研究は、rBmHSPが、天然タンパク質または対照タンパク質と比較して、変性タンパク質基質に優先的に結合することを示した。したがってこれらの知見は、BmHSPが分子シャペロンとして作用し、寄生虫の細胞タンパク質を宿主の損傷効果から保護する可能性があることを確認した。
ヒトにおける抗体応答。
本明細書に提示された結果は、BmHSPがいくつかのT細胞およびB細胞エピトープを有することを示す。したがって、フィラリア症に感染した個体がBmHSPに対する抗体を保有しているかどうかを評価した。そのため、EN、CP、MfおよびNEN対象の血清中の抗BmHSP IgG抗体の力価を測定した。結果は、EN対象が最高レベルの抗BmHSP抗体を有することを示した(p<0.001)。IgG抗体のその後のアイソタイプ分析は、個体の感染群(MfおよびCP)と比較して、EN対象からの血清がIgG1およびIgG3抗BmHSP抗体の力価が高いことを示した。Mf保有者は、血清中に有意なレベルの抗BmHSP IgG2抗体のみを有した。同様に、CP個体は、血清中に有意なレベルの抗BmHSP IgG4抗体のみを有した。抗BmHSP IgG1およびIgG3レベルは、これらのMfおよびCP個体の血清で非常に低かった。抗BmHSP抗体は、NEN対象の血清では検出できなかった。
ADCCアッセイの結果。
BmHSPに対する抗体は、個体(MfおよびCP)の全感染群およびEN対象に存在したので、これらの抗体が機能的であるかどうかを判断した。抗体依存性細胞傷害アッセイを使用して、抗BmHSP12.6 IgG抗体がB.malayiに対して保護機能を持っているかどうかを試験した。これらの研究は、プールされたEN血清がPBMCのL3への付着を促進し、in vitroでB.malayiL3の有意な死滅(77.37%)を誘導したことを示し(表3)、一方、MfおよびCPからのプールされた血清は、ADCC機能に関与できなかったことを示した。これらの知見は、EN血清が抗寄生虫活性を有することを示した。この機能が抗体に関連しているかどうかを判断するために、抗体欠乏研究を実施した。EN血清から抗BmHSP抗体を欠乏させると、幼虫の死滅が大幅に減少し(21.42%)(表3)、MfまたはCP対象ではなく、EN対象の血清中の抗BmHSP抗体が、幼虫の殺傷に関与することが確認された。
Figure 2023513607000004
さらなる欠乏研究は、抗BmHSP抗体の抗寄生虫効果が、抗体のIgG1アイソタイプと関連していることを示した。IgG1抗体のEN血清からの欠乏は、ADCC機能を顕著に(40%)阻害した(表4)。抗BmHSP抗体欠乏EN血清を、溶出した抗BmHSP IgG1抗体で再構成すると、ADCC機能が回復した(表3)。したがってこれらの知見は、抗BmHSP IgG1抗体がADCC機能にとって重要であることを示す。
Figure 2023513607000005
マウスにおける抗体応答。
rBmHSPで免疫化したマウスは、有意なレベルの抗BmHSP IgG抗体を発生させた。より具体的には、プライムブーストワクチンレジメンは、DNAワクチン単独群と比較して、有意に高い力価のIgG抗体を誘導した(p<0.05)。しかし、rBmHSPタンパク質ワクチンは最高のIgG抗体価を誘導した。抗BmHSP IgG抗体のアイソタイプの分析は、主にIgG1、IgG2aおよびIgG2b抗BmHSP抗体が、ワクチン接種動物の血清中に存在することを示した。ADCCアッセイは、マウス血清を用いても実施した。これらの研究は、BmHSPワクチンを接種したマウスの血清が、対照血清(13%)と比較して、腹腔滲出細胞のL3への接着を促進し、ADCC機能(83.02%の幼虫の殺傷)に関与することを示した(p<0.002)(表5)。
Figure 2023513607000006
ヒト血清と同様に、IgG抗体の個々のアイソタイプをワクチン接種マウスの血清から欠乏させて、ADCC機能に関与する抗BmHSP抗体のアイソタイプを決定した。これらの研究の結果は、EN血清で観察されたものと同様に、抗BmHSP IgG1抗体がマウスにおけるL3のADCC媒介殺傷にも関与していることを示した(表6)。
Figure 2023513607000007
マウスにおけるBmHSPのワクチンの可能性。
BmHSPのワクチンの可能性を、Balb/cマウスにおいてマイクロポアチャンバー法を用いて評価した。結果は、BmHSPのプライムブーストワクチン接種レジメンおよびタンパク質ワクチンを使用して免疫化したマウスが、免疫化マウスの腹腔に移植したL3の、それぞれ72%および58%近くの死亡率を示したことを示した(表7)。対照群の動物に移植したチャンバーは、寄生虫の7%の死亡率しか示さなかったが、マウスの対照群とワクチン接種マウスの間の保護の差は有意であった(P<0.001)。一方、DNAワクチンのみで免疫化したマウスは、わずか31%の保護しか誘導しなかった。したがって、プライムブーストワクチン接種レジメンは、DNA単独またはタンパク質単独の免疫化プロトコルと比較して、チャレンジ感染に対するワクチン誘導保護を付与するのに、非常に効率的であるようであった。
Figure 2023513607000008
BmHSPワクチン接種マウスにおける免疫応答。
ワクチン接種マウスにおけるBmHSPに対する細胞免疫応答を決定するために、ワクチン接種マウスと対照マウスから収集した脾臓細胞をrBmHSPタンパク質の存在下で培養し、それらの増殖応答とサイトカインプロファイルを評価した。プライムブーストワクチンレジメンで免疫化した動物の脾臓細胞の増殖反応(刺激指数3.35±0.176)は、rBmHSPタンパク質単独ワクチン接種群(刺激指数2.22±0.018)またはBmhsp DNA単独ワクチン接種群(刺激指数3.53±0.102)と比較して、有意に(P>0.05)高かった。動物の対照群からの脾臓細胞は、rBmHSPに応答して増殖できず(刺激指数0.98±0.013)、培地のみの対照と同様であった。ワクチン接種動物からの脾臓細胞は、rBmHSPへの応答のリコールのために有意に増殖したので、培養上清中のサイトカインのレベルを測定した。これらの結果は、IFN-γが、rBmHSPによる刺激の72時間後において、ワクチン接種動物からの脾臓細胞により分泌された主要なサイトカインであることを示した。rBmHSPで刺激した脾臓細胞から収集したmRNAに対して、リアルタイムPCRサイトカイン遺伝子アレイを実施した。これらの結果は、Th1(IFN-γ、CD-28、IL-12、IL-2)およびTh2(IL-4、IL-5、IL-1R)サイトカイン遺伝子の両方が、ワクチン接種動物で有意に増加したことを示した。
例2:rBmALT2+rBmHSP多価免疫原性組成物
寄生虫。
Brugia malayiのL3は、University of Georgia, Athens, GAのNIAID/NIH Filariasis Research Reagent Resource Center(FR3)から入手した。
一価および多価DNAワクチンの構築。
一価DNAワクチンは、pVAX1ベクター中のBmhspまたはBmalt2で構成した。一価ワクチンを調製するために、コドン最適化BmhspまたはBmALT2遺伝子を、真核発現ベクターpVAX1(Invitrogen, Carlsbad, CA)に、インサート特異的プライマー(Gnanasekar, et al. (2004)、上記)を用いてクローニングした。多価免疫原性組成物は、同じpVAX1ベクター内のBmhspおよびBmalt2遺伝子で構成した。コドン最適化Bmhsp遺伝子をpVAX1ベクターに、終止コドンなしでPstI部位を含有するリバースプライマー(5’-CCG GAA TTC TCA CTT GTC GTT GGT G-3’;配列番号24)を用いて最初にクローニングした。次いで、コドン最適化Bmalt2遺伝子をこのクローンに、遺伝子特異的プライマーを用いて挿入した(Gnanasekar, et al. (2004)、上記)。3つの構築物すべてのPCRパラメータは、94℃で30秒間の変性、50℃で30秒間のプライマーアニーリング、72℃で30秒間のプライマー伸長、30サイクルであった;5分間の最終伸長を72℃で行った。インサートDNAを最終的に配列決定し、両方の鎖のクローニングされたヌクレオチド配列の確実性を保証した。プラスミドは、大腸菌TOP10F’細胞で維持および増殖させた。プラスミドは、エンドトキシン非含有のプラスミド抽出キット(Qiagen, Valencia, CA)を使用して精製した。DNAを、アガロースゲル電気泳動で分析し、分光光度計で定量化した(OD260/280、比率>1.8)。
組換えタンパク質の発現および精製。
すべての遺伝子を、pRSET-Aベクター(N末端ヘキサヒスチジンタグ付き)にクローニングして、組換えタンパク質を生成した。BmhspおよびBmalt2構築物を、タンパク質による毒性を最小限に抑えるために、pLysS大腸菌宿主(Invitrogen)含有BL21(DE3)に形質転換した。培養液の吸光度が0.6のOD値に達したら、1mMのIPTG(イソプロピルチオ-d-ガラクトピラノシド)を培養液に添加し、さらに3時間インキュベートして、遺伝子発現を誘導した。細胞を溶解した後、総タンパク質を15%および12%SDS-PAGEで分離して、hisタグ組換えBmHSP(rBmHSP)およびrBmALT2タンパク質の発現を確認した。次に組換えタンパク質を、固定化コバルト金属アフィニティーカラムクロマトグラフィー(Clontech, Mountain View, CA)を使用し、製造業者の推奨に従って精製した。次に、組換えタンパク質をSDS-PAGEで分離し、クーマシーブリリアントブルーR250および銀染色で染色した。これらの研究は、カラム精製後に単一のバンドが得られたことを示した。組み換え調製物中にエンドトキシンがあれば、組み換えタンパク質をポリミキシンBアフィニティカラム(Thermo Fisher Scientific, Rockford, IL)に通すことにより除去し、最終調製物中のエンドトキシンのレベルを、E-TOXATEキット(Sigma, St Louis, MO)を使用し製造業者の指示に従って決定した。エンドトキシンレベルは、これらの組換えタンパク質調製物では検出限界以下であった。
マウスの免疫化。
Charles River Laboratoriesから購入した生後6週のオスのBalb/cマウスを、これらの実験で使用した。この研究における動物の人道的な使用およびプロトコルは、College of Medicine, University of Illinois RockfordのIACUC委員会によって承認された。マウスをそれぞれ5匹ずつの4群に分けた。すべてのマウスを、DNAプライム-タンパク質ブーストワクチンレジメンを使用して、皮下で免疫化した。マウスのすべての実験群は、エンドトキシン非含有のコドン最適化DNAを50μlの量で2回注射してプライミングし、ミョウバンに懸濁した組換えタンパク質の2用量(各50μl)を2週間間隔で投与してブーストした。
A群のマウスは、100μgのpVAXBmhspでプライミングし、15μgのrBmHSPでブーストした;B群のマウスは、100μgのpVAX Bmalt2でプライミングし、15μgのrBmALT2でブーストした;C群のマウスは、100μgのpVAXBmhsp/Bmalt2 DNAでプライミングし、15μgのrBmHSPと15μgのrBmALT2でブーストした。D群のマウスには、100μgのpVAX1ベクターと50μlのミョウバンを投与し、対照とした。血液試料は各マウスから、免疫化前および最後のブースター投与の1か月後に収集した。血清を分離し、-80℃で保存した。
マウスにおける抗体応答の評価。
抗BmHSPおよび抗BmALT2抗体のレベルを、マウスの免疫化群および対照群の血清中で、間接ELISAを使用し確立された方法(Veerapathran, et al. (2009)、上記;Gnanasekar, et al. (2004)、上記)に従って測定した。簡潔に言うと、96ウェルマイクロタイタープレートのウェルを、炭酸緩衝液(pH9.6)中のrBmHSP、rBmALT2、またはrBmHSP(1μg/ml)で4℃で一晩コーティングした。ウェルを洗浄した後、非結合部位を、3%BSAを用いて37℃で1時間ブロックした。次に、希釈した血清試料をウェルに加え、さらに一晩4℃でインキュベートした。ウェルを洗浄した後、HRP標識ウサギ抗マウスIgGを添加し(1:5000)、さらに1時間37℃でインキュベートした。発色には、ABTS(2,2’-アジノビス(3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸))基質を使用した。吸光度を、マイクロプレートリーダー(BIO-RAD, Hercules, CA)で405nmで測定した。
マウスにおける保護研究。
一価および多価免疫原性組成物製剤のワクチンの可能性を、次にマウスモデルで評価した。マウスを上記のように、プライムブーストアプローチで免疫化した。ベクター+ミョウバン群は、陰性対照として機能した。免疫化動物および対照動物は、当技術分野で知られているマイクロポアチャンバー法を用いてチャレンジした(Abraham, et al. (1989) Am. J. Trop. Med. Hyg. 40(6):598-604)。簡潔に言うと、マイクロポアチャンバーを、14×2mmのPLEXIGLASS(アクリル)リング(Millipore Corporations, Bedford, MA)および、PLEXIGLASS(アクリル)リングにシアノアクリル接着剤および歯科用セメントを用いて付着された5.0μmのNUCLEOPOREポリカーボネート膜(Millipore Corporations)を使用して、組み立てた。チャンバーを、ゲンタマイシンおよび抗真菌溶液を含有する滅菌RPMI培地に、37℃で一晩浸漬した。チャレンジ実験の前に、15%熱不活化ウシ胎児血清(FCS)を補充したRPMI 1640培地に懸濁した20の生存している感染性L3を、マイクロポアチャンバーに導入し、開口部を歯科用セメントで密閉した。次に、L3を含有するマイクロポアチャンバーを、各マウスの腹腔に麻酔下で外科的に移植した。外科的処置のために無菌条件に従った。移植の48時間後、動物を犠牲にし、チャンバーを腹腔から回収した。各チャンバーの内容物を空にし、細胞の接着および幼虫の死滅について、幼虫を顕微鏡で調べた。幼虫の生存率は、顕微鏡で100倍で決定した。保護率は、死滅した寄生虫の数÷回収された総寄生虫数×100として表した。
マウスにおけるサイトカイン分析。
rBmHSPおよびrBmALT2特異的インターフェロン-γ(IFN-γ)およびインターロイキン-4(IL-4)分泌細胞の割合は、ELISPOTアッセイを使用して、対照およびワクチン接種マウスの脾臓で決定した。簡潔に言うと、MILLIPORE MULTISCREEN HTS Filterプレートを、PBS緩衝液中10μg/mlの濃度のモノクローナルラット抗マウスIFN-γまたはモノクローナルラット抗マウスIL-4抗体(BD Pharmigen, San Diego, CA)でコーティングした。プレートを洗浄した後、非特異的部位を、ウェルを10%ウシ胎児血清を含む完全RPMI中で室温で1時間インキュベートすることによりブロックした。次いで、10%熱不活化FBSを補充した完全RPMI 1640培地に懸濁した約3×10個の脾臓細胞を、各ウェルに添加した。細胞をrBmHSPまたはrBmALT2(1μg/ml)で刺激した。刺激されていない細胞は対照として機能した。37℃、加湿5%COで48時間インキュベートした後、プレートを洗浄し、2μgのビオチン化ラット抗マウスIFN-γまたはビオチン化ラット抗マウスIL-4抗体(BD Pharmigen)と共に、室温でさらに1時間インキュベートした。プレートを洗浄した後、ストレプトアビジン共役ホースラディッシュペルオキシダーゼ(Thermo Fisher Scientific)を各ウェルに加え(1:800)、室温で1時間インキュベートした。プレートを洗浄し、DAB基質(Thermo Fisher Scientific)を用いて発色させた。スポットの総数を、解剖顕微鏡下でカウントした。
統計分析。
統計分析をXL STATソフトウェアv.7.5.2(Kovach Computing Services, Anglesey, UK)を用いて実施した。比較可能な群間の統計的有意性は、適切なノンパラメトリック検定を用いて推定し、有意水準はp<0.05に設定した。
マウスにおける抗体応答。
最初に、多価免疫原性組成物が、各抗原成分に対する有意な抗体を誘発できるかどうかを決定した。以前の研究では、B. malayi抗原を同様にワクチン接種したマウスが、有意な宿主保護IgG抗体を誘発したことが示されている(Veerapathran, et al. (2009)、上記)。したがって、IgG抗体価を分析した。この分析の結果は、Bmhsp+rBmHSPおよびBmalt2+rBmALT2による一価免疫が、抗BmHSPおよび抗BmALT2 IgG抗体の有意な(p<0.005)力価を誘発したことを示した(図1)。多価免疫原性組成物は、有意なIgG抗体価も誘発した。多価免疫原性組成物の後に、マウスは、BmHSPとBmALT2の両方に対して同等にIgG抗体を生成し、抗原が干渉したり優位性を競ったりしないことを示唆する。興味深い知見は、多価免疫原性組成物が一価ワクチンと比較して、1.5倍から1.75倍高い力価(p<0.005)のIgG抗体を誘発したことであった(図1)。これらの知見は、多価製剤中の2つの抗原が、ワクチン接種したマウスにおける各抗原に対するワクチン誘導性の抗体応答を増加させることにより、相乗的に作用できることを示した。この知見はまた、ワクチン製剤においてこれら2つの抗原を組み合わせると大きな利点があることも示す。ワクチン接種後に強いIgG抗体応答が誘導されるとすれば、多価調製物中の成分抗原の濃度を下げることができる可能性もある。
多価免疫原性組成物は、マウスにおいて有意な保護を誘導する。
本明細書の結果は、有意なIgG抗体が、一価および多価の免疫原性組成物調製物によるワクチン接種後に誘発されたことを示した。ワクチン接種後に誘発された免疫応答が保護的であったかどうかを試験するために、ワクチン接種された動物を、B. malayiの生存第3期感染幼虫(L3)でチャレンジした。寄生虫はこれらの動物では成熟しないため、寄生虫を外科的に動物に移植すると、ワームのより良い回復が得られる。標準的マイクロポアチャンバーチャレンジ法(Abraham, et al. (1989)、上記)。これらの研究は、一価ワクチンで免疫化したマウスにおいて61%近くの保護が達成され得ることを示した(表8)。これは、陰性対照と比較して非常に有意であった(p<0.001)。この知見は、rBmHSPおよびrBmALT2が、リンパ系フィラリア症のワクチンに使用できることも示した。多価免疫原性組成物で免疫化したマウスでのチャレンジ実験は、一価ワクチン接種と比較して有意に(p<0.005)高い保護が達成できることを示した(表8)。これらの知見はまた、これらの動物におけるより高いIgG抗体価と明確に相関しており、rBmALT2およびrBmHSPが、プライムブーストレジメンとして投与された場合にワクチン接種動物の防御免疫応答を相乗的に増強できるという上記の知見を支持する(表8)。
Figure 2023513607000009
有効性をさらに実証するために、マウスを様々なプライム-ブーストの組み合わせで免疫化した。図3に示すように、HATハイブリッドタンパク質による免疫化後、またはHATハイブリッドDNAとHATハイブリッドタンパク質によるプライムブースト免疫化後に、マウスにおいて100%の保護が達成可能である。
サイトカイン応答。
ワクチン接種マウスにおける防御応答の免疫学的特徴を、ワクチン抗原に応答した脾臓細胞の分泌サイトカイン応答を評価することにより決定した。脾臓細胞をrBmHSPまたはrBmALTで刺激すると、脾臓細胞の有意な抗原特異的増殖が見られ、抗原に対する強力なリコール細胞応答が示唆された。これらの抗原応答細胞のサイトカインプロファイルを特定するために、IFN-γおよびIL-4分泌細胞をELISPOTアッセイを使用してカウントした。これらの研究の結果は、多価免疫原性組成物をワクチン接種したマウスからの脾臓細胞が、主にIL-4を分泌していることを示した(図2A)。IFN-γ分泌細胞の数は非常に低かった(図2B)。全体として、これらの知見は、ワクチン誘導による保護が主にTh2型応答によって媒介されることを示した。
例3:BmVal-1+BmALT2多価免疫原性組成物
血清。
この研究で使用した血清試料は、Mahatma Gandhi Institute of Medical Sciences, Sevagram, Indiaに保存されたアーカイブ試料からのものであった。これらの試料は、リンパ系フィラリア症の流行地域であるWardhaおよびその周辺の疫学的調査の一環として収集された。
この研究に利用可能な人口統計学的データはなかったが、血清試料を、循環寄生虫、寄生虫抗原の検出に基づき、またはリンパ系フィラリア症の臨床症状を評価することにより、ミクロフィラリア症(MF)、慢性病理(CP)、または流行性正常(EN)に分類した。循環ミクロフィラリアは、対象の血液中で既知の方法に従って検出した(Haslbeck, et al. (2005) Nat. Struct. Mol. Biol. 12:842-846、Yoo, et al. (2005) Biotechnol. Lett. 27:443-448)。循環抗原の存在は、Og4C3キットおよびWbSXPベースの酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)を使用して検出した。循環抗原またはミクロフィラリアを有さない対象はENとして分類し、ELISAによって検出した循環ミクロフィラリアおよび/または循環抗原を有する対象は、MFと見なした。リンパ浮腫およびフィラリア症の他の目に見える臨床症状を示す対象は、CPに群分けした。対照の非流行性正常(NEN)血清は、University of Illinois Clinic at Rockford, ILで収集した。
寄生虫。
Brugia malayiのL3は、University of Georgia, Athens, GAのNIAID/NIH Filariasis Research Reagent Resource Center(FR3)から入手した。
一価および多価DNAワクチンの構築。
一価ワクチンを調製するために、コドン最適化されたBmval-1またはBmalt-2遺伝子を、真核発現ベクターpVAX1(Invitrogen, Carlsbad, CA)に、インサート特異的プライマー(Yoo, et al. (2005)、上記;Huang, et al. (2005) Immunol. Lett. 101:71-80)を用いてクローニングした。多価免疫原性組成物を調製するために、コドン最適化Bmval-1遺伝子を最初に、PstI部位を持つ既に公開されているプライマー配列を使用して、終止コドンなしのpVAX1ベクターにクローニングした。次に、コドン最適化Bmalt-2遺伝子を、遺伝子特異的プライマーを使用してこのクローンに挿入した。すべての構築物のPCRパラメータは次のとおりである:94℃で30秒間の変性、50℃で30秒間のプライマーアニーリング、72℃で30秒間のプライマー伸長を、30サイクル;および5分間の最終伸長を72℃で行った。インサートDNAを配列決定して、両方の鎖上のクローンニングされたヌクレオチド配列の確実性を保証した。プラスミドは、大腸菌TOP10F’細胞で維持および増殖させた。プラスミドを、エンドトキシン非含有のプラスミド抽出キット(Qiagen, Valencia, CA)を使用して精製した。DNAをアガロースゲル電気泳動で分析し、分光光度計で定量化した(OD260/280、比率>1.8)。
組換えタンパク質の発現および精製。
組換えBmVAL-1およびrBmALT2を、pRSET-Aベクター中に発現させ、固定化コバルト金属アフィニティーカラムクロマトグラフィーを使用し公開された方法に従って精製した(Norimine, et al. (2004) Infect. Immun. 72:1096-1106;Shinnick, et al. (1988) Infect. Immun. 56:446-451)。組換え調製物中のエンドトキシンを、組換えタンパク質をポリミキシンBアフィニティーカラム(Thermo Fisher Scientific, Rockford, IL)に通すことにより除去し、最終調製物中のエンドトキシンのレベルを、E-TOXATEキット(Sigma, St Louis, MO)を使用し製造業者の指示に従って決定した。最終調製物中のエンドトキシンレベル(0.005EU/ml)は、これらの組換えタンパク質調製物中の検出限界未満であった。
ヒト血清の免疫反応性。
ヒト血清試料がBmVAL-1またはBmALT2に対する抗体を有するかどうかを決定するために、ELISAを実施した(Haslbeck, et al. (2005)、上記;Yoo, et al. (2005)、上記)。アイソタイプ特異的ELISAでは、アルカリホスファターゼ共役ヤギ抗ヒトIgG1、抗ヒトIgG2、抗ヒトIgG3、および抗ヒトIgG4抗体(Sigma)を二次抗体として使用した。
マウスおよびスナネズミに対する免疫化プロトコル。
これらの実験では、Charles River Laboratories(Wilmington, MA)から購入した生後6週齢のオスのBalb/cマウスおよび、35~40gmの異系交配したオスのモンゴリアンジャービル(スナネズミ)を使用した。動物は、実験動物の管理と使用に関するガイドのガイドラインに従って処理した。B. malayi寄生虫はマウスでは成体に成熟しないため、2つの異なる動物モデルを使用し、これによりL3期に対するワクチン誘導保護をマウスモデルにおいて評価することができる。さらに、重要な免疫学的パラメータをマウスで測定可能である。逆に、B. malayi寄生虫はスナネズミにおいて成熟した成体ワームに発育する。したがって、ワクチン誘導保護は、スナネズミの成体ワームの定着に対して評価可能である。
3セットの実験を実施した:(1)一価BmVAL-1ワクチン接種、(2)一価BmALT2ワクチン接種、および(3)多価mVAL-1/BmALT2ワクチン接種。各実験セットには、4つの群:(a)DNAプライム+DNAブースト(同種)、(b)タンパク質プライム+タンパク質ブースト(同種)、(c)DNAプライム+タンパク質ブースト(異種)、およびpVAX+ミョウバン対照、が存在した。各群はそれぞれ10匹の動物を含んでいた。すべての動物を、コドン最適化DNA(100μg)を50μl用量、または組換えタンパク質(150μg)+ミョウバンを50μl用量で、皮下で免疫化した。対照群には、100μgのpVAX1ブランクベクターまたは50μlのミョウバンを投与した。血液試料を頻繁に収集し、血清を分離して-80℃で保存した。マウスおよびスナネズミの免疫化に使用したプロトコルは次のとおりである。動物は予備採血し、最初の用量を0日目に投与した。2回目の用量は14日目に投与し、続いて採血した。3回目と4回目の用量はそれぞれ28日目と42日目に投与し、続いて動物から採血した。マウスを56日目にチャレンジし、58日目に保護を決定した。スナネズミを60日目にチャレンジし、155日目に保護を決定した。
マウスにおける保護研究。
チャレンジ研究は、マウスにおいて、20の生存している感染性B. malayiL3をマイクロポアチャンバーの腹腔に外科的に移植することにより、実施した(Veerapathran, et al. (2009)、上記;Abraham, et al. (1988)、上記)。外科的処置のため無菌条件に従った。移植の48時間後、チャンバーを腹腔から回収し、幼虫の生存率を光学顕微鏡で決定した。保護率は、死滅した寄生虫の数+回収された全寄生虫の数×100として表した。
脾細胞増殖およびサイトカインアッセイ。
脾臓細胞の単細胞懸濁液(ウェルあたり、200μlの培地に懸濁した0.5×10細胞)を各マウスから調製し、トリプリケートのウェル中で以下のいずれかと共に培養した:(1)1μg/mlのrBmVAL-1、(2)1μg/mlのrBmALT2、(3)1μg/mlのrBmVAL-1+BmALT2、(4)非特異的組換えタンパク質(1μg/mlのSchistosoma mansoniのG結合タンパク質)、または(5)培地中で刺激なし。すべての細胞を37℃、5%COで3日間インキュベートした。3日後、H-チミジン(ウェルあたり0.5μCi、Amersham Biosciences)を各ウェルに添加し、さらにインキュベートした。細胞を16時間後に採取し、H-チミジン取り込みを液体シンチレーションカウンターで測定し、刺激指数(SI)=(刺激された培養物の1分当たりのカウント数/非刺激培養物の1分当たりのカウント数)として表した。脾臓培養物から収集した細胞培養上清を、IFN-γ、IL-4、IL-5、およびIL-10について、eBioscience Inc.(San Diego, CA)から購入したELISAキットを使用してアッセイした。
免疫化マウスの血清中のBmVAL-1およびBmALT2特異的IgG抗体。
抗BmVAL-1および抗BmALT2特異的抗体の力価を、免疫化マウスの血清中で、ELISAを用いて決定した(Veerapathran, et al. (2009)、上記;Gnanasekar, et al. (2004) Infect. Immun. 72:4707-15)。免疫前の血清を対照として使用した。HRP共役ヤギ抗マウスIgGを、マウスアッセイ用の二次抗体(Thermo Fisher Scientific)として使用した。OPD(Sigma)を基質として使用し、光学密度(OD)を405nmで測定した。
抗BmVAL-1および抗BmALT2特異的IgG1、IgG2a、IgG2b、IgG3およびIgG4抗体は、Thermo Fisher Scientificから購入したマウス抗体アイソタイピングキットを使用して、マウスの血清中で測定した。すべてのELISAは製造業者の推奨に従って実施し、吸光度を405nmで読み取った。それぞれのHRP標識ヤギ抗IgGアイソタイプ抗体を二次抗体として使用し、OPD基質を用いて発色させた。
スナネズミにおけるチャレンジ試験。
スナネズミを100のB. malayiのL3でチャレンジし、ワームの定着を、チャレンジ後95日目に、確立された方法(Weil, et al. (1992)、上記)に従って決定した。スナネズミはB. malayiの寛容な宿主であり、ワームは約75日で成体のオスとメスに成熟する。スナネズミの対照群に成熟したワームが存在することは、チャレンジ後80日目に血液中にミクロフィラリアが認められることによって確認した。ワーム定着の減少率は、次の式を使用して算出した:対照ワームから回収したワームの平均数-ワクチン接種動物から回収したワームの平均数/対照動物から回収したワームの平均数×100。
統計分析。
統計分析は、SIGMASTATプログラム(Jandel Scientific, San Rafel, California)およびSTATVIEW(SAS Institute, Cary, NC)ソフトウェアを用いて行った。Wilcoxonの符号付き順位検定を使用して、対応のあるデータを比較した。群間の比較はMann-Whitney U検定を用いて行った。p<0.05のp値を統計的に有意であると見なした。
EN個体は、BmVAL-1およびBmALT2に対する高力価の抗体を有する。
有意な抗BmVAL-1および抗BmALT2 IgG抗体が、MF対象(p<0.01)およびCP対象(p<0.005)と比較して、EN対象の血清に存在した。NEN対象は、いずれの抗原に対するIgG抗体も保有していなかった。EN対象の血清中の抗体のIgGアイソタイプのその後の分析は、抗BmVAL-1および抗BmALT2抗体が、主にIgG1およびIgG3アイソタイプのものであることを示した。
免疫化マウスの血清における高力価の抗体応答。
B. malayi抗原をワクチン接種されたマウスは、有意な宿主保護IgG抗体を誘発することが示されている。したがって、免疫化マウスの血清中のIgG抗体価を決定した。BmVal-1による一価免疫とBmAlt2による一価免疫の両方が、マウスの血清中の抗BmVAL-1および抗BmALT2 IgG抗体の有意な(p<0.005)力価を誘発した。対照と比較して、プライムブースト免疫化群は最大の抗体価を与え、続いてタンパク質免疫化群およびDNA免疫化群であった。多価免疫原性製剤(BmVAL-1+BmALT2)による免疫化も、rBmVAL-1とrBmALT2の両方に対する有意なIgG抗体価を誘発し、力価は同等であり、抗原が互いに干渉したり、優位性を競ったりしないことを示す。興味深い知見は、多価免疫原性が、一価ワクチンのいずれもと比較して、マウスにおいて有意に高い(p<0.001)力価のIgG抗体を誘発したことであった。これらの知見は、多価製剤中の2つの抗原が、ワクチン誘導抗体応答を相乗的に増加させることを示した。
全体として、タンパク質ワクチン接種は、DNAワクチンと比較してより高い力価のIgG抗体を誘発し、タンパク質ワクチン接種は免疫原性が高いことを示した。別の観察は、異種プライムブーストアプローチが、同種プライムブーストアプローチよりも高い血清変換(seroconversion)を与えたことであった。したがって、全体的な異種プライムブーストアプローチは、抗体の最高の力価を刺激するように見えた。
IgG抗体サブセット分析は、BmVAL-1ワクチン接種が主に抗体のIgG1およびIgG2aアイソタイプを誘発したのに対し、BmALT2ワクチン接種は抗原特異的抗体応答のIgG1、IgG2aおよびIgG3アイソタイプを誘導したことを示した。抗原特異的IgG4抗体応答は明らかではなかった。プライムブーストアプローチは、IgGアイソタイプ応答を大幅に増幅した。多価ワクチン接種レジメンの後、抗原特異的抗体のIgG1、IgG2aおよびIgG3サブセットがマウスの血清中に存在した。
マウスの脾臓における抗原特異的応答。
rBmVAL-1またはrBmALT2のいずれかで刺激した免疫化マウスの脾臓細胞は、培地対照(SI 2.1±0.9)と比較して、有意に増殖した(それぞれSI 10.8±1.1およびSI 14.6±1.2)。多価構築物で免疫化したマウスの脾臓細胞は、rBmVAL-1(SI 18.9±2.6)およびrBmALT2(SI 23.5±3.1)の両方に応答し、強いリコール細胞応答が、多価構築物でのワクチン接種後にBmVAL-1またはBmALT2の両方に対して生成されたことを示す。
増殖した培養上清からのサイトカイン分析。
抗原応答細胞のサイトカインプロファイルを特定するために、それぞれの抗原(rBmVAL-1またはrBmALT2)で刺激したマウス脾臓細胞の培養上清を収集し、IFN-γ、IL-4、IL-5、およびIL-10のレベルを測定した。これらの結果は、rBmVAL-1に応答して、有意なレベルのIL-5およびIFN-γが脾臓細胞によって分泌されることを示した。rBmALT2で刺激した脾臓細胞は、主にIL-4とIL-5を分泌した。
多価免疫原性組成物は、マウスおよびスナネズミにおいて有意な保護を誘導する。
本明細書の結果は、有意なIgG抗体が、一価および多価の免疫原性調製物によるワクチン接種後に誘発されたことを示した。ワクチン接種後に誘発された免疫応答が保護的であるかどうかを試験するために、ワクチン接種動物を、B. malayiの生存している第3期感染幼虫(L3)でチャレンジした。寄生虫はマウスでは成熟に達しないので、標準的なマイクロポアチャンバーチャレンジ法を使用した(Gnanasekar, et al. (2004)、上記)。これらの研究は、39%から74%の保護が、マウスにおいて一価ワクチンによる免疫化後に達成されたことを示した(表9)。
Figure 2023513607000010
タンパク質ワクチン接種は、DNAワクチン接種よりも良好な結果をもたらした。プライムブーストレジメンは、全体的に最良の結果をもたらした。BmALT2によるワクチン接種は、BmVAL-1と比較してより高い保護率を示した。同様に、多価ワクチン接種レジメンは、一価ワクチン接種レジメンと比較して57%から82%の保護を与えた。これらの知見は、BmVAL-1とBmALT2は、多価免疫原性組成物として投与された場合、ワクチン接種動物の防御免疫応答を相乗的に増強することを示す。
チャレンジ後80日目にスナネズミの対照群から調製した濃厚血液塗抹標本の分析は、5匹のスナネズミすべてがミクロフィラリアに対して陽性であったのに対し、ワクチン接種されたスナネズミの末梢血ではミクロフィラリアは検出されなかったことを示した。15日後、動物を犠牲にし、腹腔、骨盤および胸腔内のオスおよびメスのワームをカウントし、対照群とワクチン接種群との間の結果を比較した(表10)。スナネズミのワクチン接種から得られた知見からも、多価プライムブーストレジメンが最高の保護率を示すことが確認された。メスのワームは、多価ワクチン接種動物からは回収されなかった。
Figure 2023513607000011
例4:BmHSP+BmALT2+BmTSP多価免疫原性組成物
寄生虫。
Brugia malayiのL3は、University of Georgia, Athens, GAのNIAID/NIH Filariasis Research Reagent Resource Center(FR3)から入手した。
pVAX Bmhsp+Bmalt2+Bmtsp DNAワクチンの構築。
Bmhspをコードするコドン最適化DNA配列は、BamHI制限部位を含有するフォワードプライマー:5’-CGC GGA TCC ACC GTG ATC CAT TGT CG-3’(配列番号25)および終止コドンなしのPstI制限部位を含有するリバースプライマー:5’-AAC TGC AGC TGT TTT CCA TTT CCA TTC-3’(配列番号26)で増幅し、pVAXベクターにクローニングした。得られたプラスミドをpVAX Bmhspと命名した。コドン最適化されたBmalt2 遺伝子は、フォワードプライマー:5’-AAC TGC AGA TGG GTA ACA AGC TCC TCA TCG-3’(配列番号27)および終止コドンなしのリバースプライマー:5’-CGC GAA TTC GGC GCA CTG CCA ACC TGC-3’(配列番号28)で増幅した。下線の配列は、それぞれフォワードおよびリバースプライマーのPstIおよびEcoRI制限部位を示す。次いで、増幅されたBmalt2 DNAインサートを、pVAX BmhspプラスミドのPstIおよびEcoRI制限部位でサブクローニングし、pVAX Bmhsp+Bmalt2プラスミドを得た。pVAXBmhsp+Bmalt2+Bmtspプラスミドの最終産物をクローニングするために、Bmtsp ECLドメインのみをコードする遺伝子配列を、EcoRIを含有するフォワードプライマー:5’-CGC GAA TTC ACC ATG GTC CTG GAG-3’(配列番号29)およびXbaI制限部位を含有する終止コドン付きのリバースプライマー:5’-GCT CTA GAT CAG TCC TTC TGG CTA G-3’(配列番号30)で増幅し、pVAX Bmhsp+Bmalt2プラスミドにクローニングした。HSP+TSP、TSP+ALTおよびHSP+ALTの二価構築物も、それぞれのプライマーを用いて構築した。
多価融合タンパク質であるpRSETA Bmhsp+Bmalt2+Bmtspの構築。
Bmhsp+Bmalt2+Bmtsp融合タンパク質は、上記と同じ方法で構築した。HSP、ALT2、TSPのプライマー配列は以下の通りである。Bmhsp、フォワードプライマー、BamHI含有の5’-CGG GAT CCA TGG AAG AAA AGG TAG TG-3’(配列番号31)、およびリバースプライマー、XhoI含有の5’-CCC TCG AGT GCT TTC TTT TTG GCA GC-3’(配列番号32)。Bmalt2、フォワードプライマー、XhoI含有の5’-CCC TCG AG A TGA ATA AAC TTT TAA TAG CAT-3’(配列番号33)または5’-AAC TGC AGA TGG GTA ACA AGC TCC TCA TCG-3’(配列番号27)、およびリバースプライマー、KpnI含有の5’-GGG TAC CCG CGC ATT GCC AAC CC-3’(配列番号34)。Bmtsp、フォワードプライマー、KpnI含有の5-GGG GTA CCC CGG CAA GGA TCA ATT TAA AA-3(配列番号35)、およびリバースプライマー、EcoRI含有の5-CGG AAT TCT CAA TCT TTT TGA GAT GAA T-3(配列番号36)を使用して、配列番号77のBmtsp断片を増幅した。配列番号63のテトラスパニン大型細胞外ループ(LEL)断片を増幅するためのプライマーも設計した。二価構築物(HA、HTおよびTA)も、pRSETAベクターに個別にクローニングした。
動物の免疫化。
6週齢のBalb/Cマウスを、100μgのDNAをDNAワクチンとして皮内(id)に、または15μgの組換えタンパク質をタンパク質ワクチンとして皮下(s.c.)に、または2用量のDNAおよび2用量のタンパク質をプライムブーストワクチンとして、免疫化した。マウスを無作為に1群あたり5匹のマウスの15群に分けた。1~3群の動物はHSP+ALT2(HA)で免疫化した。4~6群はHSP+TSP(HT)で免疫化し、7~9群はTSP+ALT2(TA)で免疫化した。10~12群のマウスは、多価免疫原性組成物HSP+ALT2+TSP(HAT)で免疫化した。動物の対照群には、pVAXベクターおよび/またはミョウバン(Infectious Disease Research Institute(IDRI))を与えた。この実験は、すべての群で2回繰り返した。
免疫化動物における抗体応答の分析。
3つのタンパク質すべてに対する、免疫化群および対照群の動物の血清中のIgG抗体レベルを、間接ELISAを用いて決定した(Anandharaman, et al. (2009)、上記)。簡潔に言うと、96ウェルマイクロタイタープレートのウェルを、pH9.6の炭酸緩衝液中の組換えタンパク質(rHSP、rALT2またはrTSP;1μg/ml)で、4℃で一晩コーティングし、3%BSAで37℃で1時間ブロックした。血清試料をウェルに加え、プレートを4℃で一晩インキュベートした。洗浄後、HRP標識マウス抗ヒトIgGを加え(1:5000)、37℃でさらに1時間インキュベートした。OPD(o-フェニレンジアミン)基質(Sigma Aldrich, USA)を使用して発色させた。吸光度を、マイクロプレートリーダー(BIO-RAD, Hercules, CA)で450nmで測定した。
免疫ブロット分析もまた、免疫化マウス血清を用いて行った。組換えタンパク質(rHAT、rALT2、rTSP、またはrBmHAT)で免疫化したマウスの血清試料を、免疫ブロット研究に使用した。ブロットの色は、ジアミノベンジジン(DAB)基質で発色させた。
ADCCアッセイ。
抗原の組み合わせの保護効果を評価するために、in vitroADCCを、二価および三価のワクチン構築物で免疫化したマウスからの血清を用いて行った。in vitroADCCアッセイは、既知の方法に従って実施した(Chandrasekhar, et al. (1990)、上記)。簡潔に言うと、腹腔浸出細胞(PEC)を正常Balb/cマウスから、腹腔を滅菌RPMI 1640培地で洗浄することにより収集した。細胞を洗浄し、10%ウシ胎児血清(FCS)を補充したRPMI 1640培地に懸濁した。B. malayiの10のL3を、96ウェル培養プレート(Thermo Fisher Scientifics, USA.)の2×10の腹腔浸出細胞(PEC)/ウェルに加え、50μlの免疫化マウス血清および50μlのRPMI 1640培地をトリプリケートでウェルに加え、5%CO中、37oCで48時間インキュベートした。幼虫の生存率は、48時間のインキュベーション後に顕微鏡で決定した。透明で損傷があり、細胞の塊が付着している幼虫は、死滅としてカウントした。ADCCを幼虫の死亡率として推定し、これは次の式を用いて計算した:死滅幼虫の数÷幼虫の総数×100。
IgG抗体の血清試料からの欠乏。
多価免疫原性組成物で免疫化したマウスの血清から、hisタグ付き組換え抗原に結合したコバルトIMAC樹脂を使用して、組換え抗原特異的IgG抗体を欠乏させた(Anandharaman, et al (2009)、上記)。簡潔に言うと、1mgのhisタグ付き組換えタンパク質(rHSP)を、2mlのベッドボリュームのIMAC樹脂に37oCで2時間結合させた。コバルトカラムを10ベッドボリュームのPBS(pH.8)で洗浄し、多価免疫原性組成物で免疫化したマウスからのプール血清200μlと共に、4℃で一晩インキュベートした。欠乏血清を含有する上清を、遠心分離によって収集した。抗HSP欠乏血清を、rALT2結合カラム中で4℃で一晩インキュベートした。抗HSPおよび抗ALT2欠乏血清を含有する上清を収集し、rTSP結合カラムでインキュベートした。抗HSP、抗ALT2、および抗TSP欠乏血清を収集し、使用した。特定の抗原に対するIgG抗体の欠乏は、ELISAにより上記のように確認した。次に、抗体が欠乏した血清をADCCアッセイに使用した。
免疫化マウスにおけるL3幼虫に対するin situ細胞毒性の分析(マイクロポアチャンバー技法)。
ワクチン接種の保護効果は、マイクロポアチャンバー法(Abraham, et al. (1989)、上記)を使用し、免疫化動物を感染性L3でチャレンジすることにより分析した。マイクロポアチャンバーは、14×2mmのPLEXIGLASS(アクリル)リングと5.0μmのNUCLEOPOREポリカーボネート膜(Millipore Corporations, Bedford, MA)を使用して組み立てた。移植の48時間後、動物を犠牲にし、チャンバーを腹腔から回収した。各チャンバーの内容物を、細胞接着および感染性L3の死滅について顕微鏡で調べた。寄生虫は、運動性がなく不透明で表面にいくつかの接着細胞があった場合、死滅と見なした。保護率は、次の式を使用して計算した:死滅した寄生虫の数÷回復した寄生虫の数×100。この実験は、各群5匹の動物で2回繰り返した。
脾細胞増殖。
ワクチン接種マウスおよび対照マウスを60日目に犠牲にし、脾臓を無菌的に取り出した。単細胞懸濁液を、10%熱不活化FCSを補充したRPMI 1640培地中に調製し、NYLON(脂肪族ポリアミド)メッシュ(BD Biosciences, Bedford, USA)に通した。細胞の生存率をトリパンブルー色素排除を用いて決定した後、ウェルあたり約2×10個の細胞を96ウェル培養プレート(ThermoFisher, USA)にトリプリケートで播種した。脾細胞を、1μg/100μl/ウェルの組換えタンパク質(rHSP、rALT2、またはrTSP)またはConA、または培地のみ(刺激なし)で、37oC、5%COの雰囲気で72時間刺激した。細胞増殖は、Dojindo Molecular Technologies, Inc.(Gaithersburg, MD)から購入した細胞数測定キット(CCK-8)を用いて決定した。脾臓細胞増殖の刺激指数は、次の式を使用して計算した:刺激細胞の吸光度÷非刺激細胞の吸光度。すべての培養物をトリプリケートで採取し、結果を平均S.I.±SEMとして表した。
リアルタイムPCR(RT-PCR)。
脾臓細胞ペレットのmRNAのサイトカインレベルを、リアルタイムPCRで分析した。ワクチン接種したマウスと対照群のマウスの脾臓細胞を、上記のように、96ウェルプレート中2×10細胞/100μl/ウェルの濃度で培養し、組換え抗原(1μg/ml)で刺激した。72時間後、細胞を遠心分離し(1000rpmで5分間)、全RNAを細胞ペレットから、TRIZOL(フェノール、グアニジニウムおよびチオシアネート)試薬(Invitrogen)を使用し製造業者の説明に従って抽出した。RNA抽出に続いて、ファーストストランドcDNAを、RT2 First Strand Kit(SuperArray Bioscience Corporation, Frederick, MD)により合成した。PCRアレイ分析を、製造業者のプロトコルに従って、RT2 Real-Time TM SYBR Green(シアニン色素)PCR Master Mixを使用して実施した。この混合物からのアリコートを96ウェルプレートに添加し、ここで各ウェルには予め分配された遺伝子特異的プライマーセットが含まれていた。発現された目的の遺伝子の相対的な定量化は、Applied BioSystem 7300リアルタイムPCRマシン(Applied BioSystems, Foster City, CA)で測定した。サイクルパラメータは次のとおりである;HOTSTART DNAポリメラーゼの活性化のために95℃で10分間、続いて95℃で15秒間の変性および60℃で1分間のプライマー伸長を40サイクル。RT-PCRデータアレイセットは、SABiosciencesのWebベースのデータ分析システムを使用して生成および分析した。結果は、ハウスキーピング遺伝子の発現を正規化することにより、対照マウスと比較した免疫化マウスの変化倍率で表した。
サイトカインアッセイ。
脾細胞培養上清を、組換え抗原(1μg/ml)または培地のみで刺激した72時間のインキュベーション後に収集した。培養上清中のIL-4およびIFN-γサイトカインの分泌レベルを、Thermo Scientifics, USAから購入したサンドイッチELISAキットを用いて決定した。すべての濃度を標準曲線から導出し、データはpg/mlで表した。
cHATプラスミドの構築および融合タンパク質の発現。
HSPのN末端領域はIL-10結合に関与しているため、この領域を削除し、cHAT組換えタンパク質を37KDaのHisタグ付きタンパク質として調製した。
組換えプラスミドの構築および融合タンパク質の発現。
B. malayiのL3期の全長hsp、alt2、およびtsp遺伝子を、予想されるサイズ(850bp)で構築した。これらの断片を、特定の制限酵素切断部位を有する発現ベクターpVAX1およびpRSETAに、さらに一方向にクローニングした。DNA配列分析の結果、遺伝子挿入方向が確認された。rBmHATは、45KDaのHisタグ付き融合タンパク質として発現され、これをSDS-PAGEで精製および分析した。結果は融合タンパク質が、任意のタンパク質の混入なしで純粋であることを示した。3つの抗原すべてに対する抗体の存在を、免疫ブロット分析により確認した。
免疫化マウス血清中の抗体価。
プライムブーストまたはタンパク質ワクチンで免疫化したマウスからの血清試料の平均ピーク抗体価は、DNA群と比較して有意に高かった(p<0.001)。rBmHATで免疫化した動物から収集した血清は、rALT2抗原に対して最大30,000の力価を示し、rHSPまたはrTSP抗原に対する抗体価は18,000~20,000の範囲であった。同様に、二価ワクチンで免疫化したマウスは、ALT2抗原に対して最大力価30,000を示し、抗HSPおよび抗TSP抗体は8,000~15,000の範囲であった。
抗体依存性細胞介在性の細胞傷害作用。
免疫細胞の、B. malayiのL3幼虫に対する抗体介在性接着および細胞傷害作用は、寄生虫を、血清および正常な免疫細胞と共に48時間インキュベーションした後に観察した。ADCCは、rBmHATまたはrWbHAワクチン構築物で免疫化したマウスの血清において、約90%(p<0.001)の最大細胞傷害作用を示した(表11)。rWbHTおよびrWbTAの二価ワクチン構築物もまた、それぞれ82%および87%の良好な保護を与え、これは一価ワクチン接種動物および対照動物と比較して有意であった(p<0.001)。HSP、ALT、およびTSP抗原に対して生成された抗体によって媒介される保護を評価するために、免疫化した血清からIgG抗体を欠乏させ、ADCCで使用した。欠乏抗体は、L3に対してわずか6%の保護を示した。
Figure 2023513607000012
in situ保護研究。
最終免疫化の2週間後、ワクチン候補の、免疫化された動物でフィラリア寄生虫を殺傷する能力を、in situマイクロポアチャンバー研究によって評価した。データは2つの同様の実験から組み合わされ、平均カウント±SEMとして表す。対照と比較したワーム負荷の減少率の分析は、多価免疫原性組成物(HAT)が、タンパク質およびプライムブーストワクチンに対して100%および94%の最大保護を付与することを示し、これは対照群(5%)と比較して、非常に有意な保護であった(表12)(P<0.0001)。興味深いことに、二価ワクチンHA、TA、およびHTのワーム減少率は、それぞれ90%、80%、および82%であり、これも対照と比較して有意に高かった。二価ワクチン群全体で、プライムブーストワクチン接種は、DNAおよびタンパク質ワクチン接種と比較してより保護的であった。
Figure 2023513607000013
脾細胞増殖。
ワクチン接種動物および対照動物から単離した脾臓細胞を、rHSP、rALT2、またはrTSPで個別にin vitroで刺激して、ワクチン接種動物におけるタンパク質特異的T細胞増殖を分析した。すべてのワクチンの組み合わせのプライムブーストレジメンおよび、タンパク質ワクチンとしてHATで免疫化したマウスは、最高の保護を示した。したがって、脾細胞は、免疫応答について分析されたこれらの動物からのみ収集した。それぞれの組換えタンパク質で刺激された二価および三価ワクチン接種動物の脾細胞は、一価および非刺激対照と比較して、有意に高い(P<0.001)増殖(平均S.I.=4.25~5.8)を示した。一価構築物で免疫化した脾臓細胞の増殖指数は、有意な増殖を示した。細胞の刺激は、陽性対照と同等であった。
RT-PCRアレイ。
ワクチン接種マウスの多価構築物に対する細胞免疫応答を決定するために、ワクチン接種マウスおよび対照マウスから収集した脾臓細胞をそれぞれの組換えタンパク質の存在下で培養し、それらの増殖応答とサイトカインプロファイルを評価した。ワクチン接種動物からの脾臓細胞は、応答のリコールのために有意に増殖したので、サイトカインmRNAのレベルを測定した。RT-PCRサイトカイン遺伝子アレイを、組換えタンパク質で刺激された脾臓細胞から収集したmRNAに対して実施した。これらの結果は、Th1(IFN-γ、IL-2)およびTh2(IL-4)サイトカイン遺伝子の両方が、ワクチン接種動物で有意に増加したことを示した。
サイトカインレベル。
ワクチン接種された脾臓細胞から単離したmRNAにおける、IFN-γおよびIL-4サイトカイン発現の存在を確認した後、上清中の同じサイトカインの分泌を調べた。データは、刺激なしの対照で正規化した。興味深いことに、上清で観察されたサイトカインプロファイルは、Th1に偏った免疫応答を示す有意に高いレベルのIFN-γを示した。これらの結果は、組換えタンパク質がIFN-γの産生を刺激し、Th1を介した保護応答を誘導したことを実証する。
例5:さまざまなアジュバント製剤におけるcHATワクチンの分析
cHATの調製。
以前の研究では、BmHSP12.6のN末端配列がヒトIL-10受容体に結合し、IL-10を介した応答を誘発できることが示された(Gnanasekar, et al. (2008) Mol. Biochem. Parasitol. 159(2):98-103)。IL-10は免疫抑制剤であるため、IL-10受容体結合配列をHSPから除去した。切断された配列をcHSPと呼ぶ。次にcHSPを使用して、多価HATハイブリッドワクチンのHSP遺伝子とHSPタンパク質を置き換えた。したがって、得られた新しいワクチンはcHATと呼ばれた。
マウスでのcHAT融合タンパク質ワクチンを用いた保護研究。
マウスは、4用量のcHAT融合タンパク質で2週間間隔で免疫化した。最後の免疫化の1か月後、ワクチン候補がフィラリア寄生虫を殺傷する能力をin situマイクロポアチャンバー研究により評価した。結果は、マウスをアジュバントとしてミョウバンを含むcHAT融合タンパク質で免疫化した場合、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)とミョウバンのみを投与した対照群(2%)と比較して、ワクチンは81%の保護を付与した(表13)(P<0.0001)ことが示された。次に、異なるアジュバントを試験して、アジュバントを変更するとcHATの保護能力が向上するかどうかを確認した。2つの追加のアジュバントを試験した:TLR4アゴニストを含有するミョウバン(Infectious Disease Research Institute, Seattle, Washingtonから購入)、およびALHYDROGEL(Sigma, St. Louis, MOから購入)。アジュバントなしのcHATは、対照のままとした。これらの研究の結果(表13)は、ミョウバン+TLR4アゴニストで78%の保護が達成され、ALHYDROGELアジュバント中に与えられたcHATで70%の保護が得られることを示した。これらの研究における興味深い知見は、アジュバントなしのcHATも72%の保護を示し、cHAT融合タンパク質ワクチンをアジュバントなしで投与しても、有意な保護が得られたことを示す。
Figure 2023513607000014
例6:HSP、ALT2、およびTSPのホモログ
ワクチン抗原、HSP、ALT2およびテトラスパニンのホモログは、O. volvulusおよびL. loaに存在する。O. volvulusおよびL. loaのHSP、ALT2、およびテトラスパニンのヌクレオチド配列を比較すると、すべてのフィラリア寄生虫からのタンパク質間に有意な配列相同性(>90%)があることがわかる。これらの知見は、例5で開発されたcHAT融合タンパク質ワクチンが、O. volvulusおよびL. loaに対するワクチンとして使用できることを示す。
一例として、O. volvulusのテトラスパニンをO. volvulusのL3 cDNAライブラリーからクローニングし、組換えタンパク質を調製した。表13で81%の保護を与えたcHATワクチンを接種したマウスからの血清試料を使用して、タンパク質を12%SDS-PAGEゲルで分離した後、組換えO. volvulusテトラスパニンをプローブした。B. malayiテトラスパニンを陽性対照として使用した。結果は、血清試料がO. volvulusテトラスパニンと有意に反応したことを示し、それにより、例5で開発されたcHATワクチンが、O. volvulusに対するワクチンとして有用であることを示した。
例7:アカゲザルモデルにおけるリンパ系フィラリア症に対する多価免疫原性組成物
寄生虫。
B. malayiの感染性第3期幼虫(L3)は、NIAID/NIH Filariasis Research Reagent Resource Center(University of Georgia, Athens, GA)から入手した。
多価融合タンパク質rBmHAT。
大腸菌BL21(pLysS)で発現する多価融合タンパク質rBmHATを精製し、Pierce High Capacityエンドトキシン除去レジンカラム(Thermo Fisher Scientific, Rockford, IL)で、本明細書に記載のようにエンドトキシンを除去した。
rBmHATの免疫化。
5匹のマカクそれぞれに、ABSL-2条件下で、100μgのAL007ミョウバン(IDRI, Seattle, WA)と混合した200μgのrBmHATワクチンを投与した。ミョウバン(AL007)のみを投与した5匹のマカクを対照とした。各動物をケタミン/キシラジンで麻酔し、ワクチンを各大腿部に筋肉内投与した(ワクチン接種ごとに大腿部あたり1つの注射部位)。動物は、4週間間隔で0、28、および56日目に免疫化した。筋肉内経路は臨床ワクチン試験に一般的に使用されるため、マカクについても同じ手順に従った。注射部位は、発熱の徴候、任意の有害反応(赤み、腫れなど)について、免疫化後7日間まで毎日監視した。
B. malayiL3チャレンジ。
ワクチンの最終投与から1か月後の84日目に、マカクをケタミンHClで麻酔し、400~500のB. malayiのL3で皮下にチャレンジした。10匹の免疫化マカクにチャレンジするのに必要な比較的多数のL3(500のL3/動物)の生産を容易にするために、動物を各群内で2つのサブ群に分けた。サブ群は、1週間間隔でチャレンジした。チャレンジの前にB. malayiL3をカウントし、顕微鏡下で生存率を調べた。生存可能な寄生虫のみをチャレンジに使用した。
チャレンジ後の各動物のモニタリング。
チャレンジ後、すべての動物を臨床徴候について毎日監視した。行動観察も、チャレンジ後の全期間にわたって同様に実施した。臨床モニタリングには、血清化学、血液学、全血球計算(CBC)分析(IDEXX)、およびCD4+/CD8+T細胞フローサイトメトリー分析が含まれていた。体重、身体状態、リンパ浮腫、およびリンパ節の測定値も、動物が処置(免疫化、チャレンジ、および採血など)のために鎮静されるたびに記録した。
試料収集。
血液試料と末梢血単核細胞(PBMC)を収集した。全血は、BD VACUTAINER SST管に製造業者の指示に従って収集した。ヘパリン添加血液(1ml)は、免疫化期間中は各動物の大腿静脈から、チャレンジ期間中は伏在静脈から収集した。採血部位の移動は、鼠径リンパ節の測定または浮腫の評価に対する潜在的な干渉を排除するためであった。血液試料は、全フォローアップ期間中、複数の時点で取得した。
PBMCの単離。
血漿分離後の血液ペレットをリン酸緩衝生理食塩水(PBS;1:2)で希釈し、勾配密度遠心分離法を2200rpmで30分間、90%HISTOPAQUE分離溶液(Sigma, St. Louis, MO)を使用して実施した。単核細胞を含有する不透明な界面を収集し、PBSで3回、800rpmでの遠心分離により洗浄した。PBMCを、トリパンブルー色素排除法を用いて計数し、10%FBS(100U/mlのペニシリン/ストレプトマイシン、および2mのML-グルタミン)を含有するRPMI 1640培地に再懸濁した。チャレンジ前に収集したPBMCを、T細胞増殖およびIFN-γ分泌について分析した。チャレンジ実験後に収集したPBMCは、T細胞増殖およびELISPOTアッセイについて試験した。増殖アッセイは、採血と同じ日に単離されたPBMCを用いて行った。10%FBSを含むRPMI培地に懸濁したPBMCを、ADCCアッセイおよびサイトカイン分析に使用した。
T細胞増殖およびフローサイトメトリー。
カルボキシフルオレセイン二酢酸スクシンイミジルエステル(CFSE)ベースのアッセイを、T細胞集団内の抗原特異的増殖の評価に使用した(Parish, et al. (2009) Curr. Protoc. Immunol. Chapter 4: Unit 49)。5mMのCFSEストック溶液(Invitrogen, Grand Island, NY)を製造業者の指示に従って調製した。最後の免疫化の4週間後に収集したPBMCを、10細胞/mlで5μMのCFSEに徐々に再懸濁し、暗所で37℃で15分間インキュベートした。細胞を遠心分離し、10%FBS(100U/mlのペニシリン/ストレプトマイシン、および2mMのL-グルタミン)を含有するRPMIで洗浄し、37℃でさらに30分間インキュベートした。次いで細胞を洗浄し、FBSを含有するRPMIに再懸濁し、24ウェルプレートにウェルあたり2×10細胞/mlで播種し、37℃で一晩インキュベートした。翌日、培地(約500μl)を除去し、細胞を1μg/mLのrBmHATで刺激した。RPMI培地のみでインキュベートした試料は、陰性対照として機能した。各動物の陽性対照として、細胞をフィトヘマグルチニン(PHA)で刺激した。細胞を培養し、5日間の刺激の後に採取した。PBS/0.2%FBSによる洗浄ステップの後、細胞をCD3-APC-Cy、CD4-PE、およびCD8-PerCPの抗体カクテルで表面染色し、室温で20分間インキュベートした。PBS/0.2%FBSによる追加の洗浄ステップの後、細胞をBD FACS CANTO IIフローサイトメーター(BD, San Jose, CA)で取得し、BD FACS DIVAソフトウェアv6.1.2で分析した。生存(live)リンパ球ゲート内に少なくとも50,000のイベントを取得した。
細胞数、血清化学および全血球計数(CBC)分析。
CBC、血清化学および好酸球数は、IDEXXの市販の自動血液学および血清化学分析装置を使用して分析した。研究の開始前に収集した試料は、各動物の正常参照ベースラインとして機能した。
IFN-γの分泌レベルの測定。
PBMC(1×10細胞)を1μg/mlのrBmHATで、37℃で5日間in vitroで刺激した。刺激後上清を採取し、IFN-γの分泌レベルについてのアッセイを、ELISAキット(Mabtech AB, Ashburn, VA)を使用し製造業者の指示に従って実施した。
ELISPOTアッセイ。
ELISPOTアッセイを実施して、ワクチン接種マカクおよび対照マカクのPBMC中の、抗原特異的IFN-γおよびIL-10分泌細胞を決定した。U-Cytech biosciences(Yalelaan, The Netherlands)から購入したサルのELISPOTキットを使用し、製造業者の指示に従ってスポット形成単位を決定した。チャレンジから20週間後に収集したPBMCを、96ウェルプレートに1×10細胞/mlで播種し、100ng/ウェルのB. malayi成体可溶性抗原(BmA)で37℃、5%COで24時間刺激した。ELISPOTプレートのウェルを、滅菌コーティング緩衝液で希釈した100μl/ウェルの捕捉抗体(抗IL-10または抗IFN-γ)でコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。プレートを滅菌コーティング緩衝液で2回洗浄した。プレートを200μl/ウェルのブロッキング緩衝液で室温で1時間ブロックした後、BmA抗原または培地のみで刺激済みのPBMC(陰性対照)を、100μl/ウェルでELISPOTプレートのウェルに加え、37℃、5%COで24時間インキュベートした。すべての細胞をプレートから除去し、膜を滅菌PBSで3回洗浄した。洗浄後、100μlの検出抗体を各ウェルに加え、室温で2時間インキュベートした。プレートを洗浄緩衝液で4回洗浄した後、アビジン-HRP試薬を添加し(100μl/ウェル)、室温で45分間インキュベートした。PBSでの最終洗浄後、新たに調製した3-アミノ-9-エチルカルバゾール(AEC)基質溶液を添加し(100μl/ウェル)、スポットの発生について、室温で10~60分間監視した。基質反応は、ウェルを200μl/ウェルの超純水で3回洗浄することにより停止させた。プレートを風乾した。スポットを、解剖顕微鏡を使用してカウントした。プレートは読み取りまで暗所に保管した。抗原特異的応答は、陰性対照ウェルのスポット数を抗原含有ウェルから差し引くことにより決定した。結果は、トリプリケートのウェルから得たスポットの平均値として示す。
マカクにおける血清抗体価の分析。
rBmHSP、rBmALT2、rBmTSPまたはrBmHATに対するIgG、IgG1、IgG2、IgG3、IgAおよびIgE抗体のレベルを、各アカゲザルの血清(ワクチンの最終投与の1ヶ月後に収集)中で、本明細書に記載の間接ELISAを用いて決定した。簡潔に言うと、96ウェルマイクロタイターELISAプレートのウェルを、0.05Mの炭酸水素緩衝液、pH9.6中の100ng/ウェルの抗原(rBmHSP、rBmALT2、rBmTSPまたはrBmHAT)でコーティングした。ウェルを0.05%PBS-TWEEN 20(PBS-T)中の3%BSAでブロックし、各マカクからの100μlの血清試料(PBS-T中、1:100~1:50,000の範囲で希釈)を各ウェルに加えた。ペルオキシダーゼに共役したヤギ抗サルIgG抗体(RocklandImmunochemicals, Gilbertsville, PA)を二次抗体として使用して、IgG力価抗体を決定した。OPD基質を使用して発色させ、吸光度をELISAリーダー(BioRad, Hercules, CA)で492nmで読み取った。アイソタイプ抗体、ビオチン化抗サルIgG1(1:2000)、IgG2(1:200)、IgG3(1:2000)、IgA(1:2000)、およびIgE(1:1000)抗体(NHP Reagent Resources, Boston, MA)を二次抗体として使用した。プレートを洗浄した後、最適に希釈したストレプトアビジン共役ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)を添加し、室温で60分間さらにインキュベートし、発色させた。
ADCCアッセイ。
PBMCは、未処置の健康な動物からのヘパリン化全血から、上記のように調製した。簡潔に言うと、10のB. malayiL3(10%FBSを含有する50μlのRPMI 1640培地に懸濁)を、2×10のPBMC(50μlのRPMI 1640中)および各動物からの50μlの血清(ワクチン最終投与の1か月後に収集)と共に、96ウェル丸底組織培養プレート中でインキュベートした。各血清試料に対して5回の反復を実施した。対照ウェルは、血清のみまたは細胞のみを含む培地で培養したB. malayiL3を含有していた。プレートを37℃、5%COで48時間インキュベートした。インキュベーション後、B. malayiL3を顕微鏡下で24時間および48時間に調べ、幼虫の生存率を決定した。死滅L3は、37℃で8時間の追加観察期間中、動きのない透明または直線的外観を持つものとして定義した。生存幼虫は、活動的かつとぐろを巻き、運動性があった。幼虫の死亡率は、死滅L3の数の、実験期間内に回収された総数に対する比率に100を掛けたものとして表した。5つのウェルでの平均の幼虫死亡率を計算し、各動物の保護率として表した。
マカクにおけるミクロフィラリア血症(Microfilaremia)(Mf)を決定するためのノット試験。
マカクの血液中のMfの存在は、ノット法を使用して以前に記載のように検出した(Liu, et al. (1989) J. Trop. Med. Hyg. 92:93-96)。マカクの末梢血を、Mfについてチャレンジ後5週間から20週間まで毎週スクリーニングした。簡潔に言うと、全血を15mlコニカル遠心管内で9mlの2%ホルマリン溶液(PBS中に調製)と混合した。管を室温で2分間ゆっくりと揺り動かし、1,500rpmで5分間遠心分離した。次に、管を完全に逆さまにしてすべての液体を除去することにより、上澄みを完全にデカントした。この後、5mlのACK溶解緩衝液(Quality Biologicals, Gaithersburg, MD)をペレットに添加し、管をボルテックスした。次に、2~3滴のメチレンブルー溶液(Fisher Scientific, Hannover Park, IL)を管に加え、ゆっくり混合し、5枚のガラススライドに塗布した。試料を乾燥させ、顕微鏡下で40倍対物レンズを使用して読み取った。伏在静脈と大腿静脈から収集した血液中のMf数を比較すると、同様の結果が得られた。
PCRによる末梢血中のMfの検出。
PCRベースのアッセイは、血液試料中のMfの存在の検出感度が高い(Mishra, et al. (2005) Acta Trop. 93:233-7;Tao, et al. (2006) J. Clin. Microbiol. 44:3887-93)。したがって、PCRベースのアッセイも使用して、すべてのマカクの血液試料におけるMfの存在を、チャレンジの20週間後に確認した。全血試料を10,000rpmで5分間遠心分離し、血清を含有する上清を-20℃で保存した。DNAをペレットから、DNEASY Blood & Tissue Kit(Qiagen, Valencia, CA)を使用し製造業者の指示に従って分離した。HhaIタンデムリピート用のプライマーは、Integrated DNATechnologies Inc.(Coralville, IA)で合成した。HhaIタンデムリピートのプライマー配列は、フォワード5’-GCG CAT AAA TTC ATC AGC-3’(配列番号75)およびリバース5’-GCG CAA AAC TTA ATT ACA AAA GC-3’(配列番号76)であった。PCRパラメータは、94℃で5分間の初期変性、続いて40サイクルの、94℃で1分、56℃で1分、72℃で1分、および72℃で10分の最終伸長であった。PCR反応後、10μlの各PCR産物を1%アガロースゲルで分析した。
PBMC増殖アッセイ。
チャレンジの10週間後に収集したPBMCを、96ウェル組織培養プレートで、10%FCSを補充したRPMI 1640中、1×10細胞/ウェルの濃度で培養した。細胞は、rBmHAT抗原(1mg/ml)またはコンカナバリンA(1mg/ml)または培地のみ(刺激なし)のいずれかにより、トリプリケートのウェルで刺激した。PBMCをトリプリケートのウェルで刺激し、プレートを37℃、5%COでインキュベートした。72時間後、細胞増殖を、細胞数測定キット(CCK-8)(Dojindo Molecular Technologies, Inc., Gaithersburg, MD)を用いて測定した。PBMC増殖の刺激指数は、式:刺激細胞の吸光度/非刺激細胞の吸光度、を用いて計算した。
統計分析。
データは平均±標準誤差として表す。一元配置分散分析(One-way ANOVA)検定(クラスカル・ウォリス)を抗体価およびT細胞増殖について、GraphPad Prismソフトウェアを使用して実施した。スチューデントT検定を保護研究のために実施した。≦0.001の確率(P)値を、統計的に有意であると見なした。
rBmHATワクチン接種はいかなる有害反応もマカクに誘発しない。
注射部位は、免疫化後7日間、任意の有害反応(赤み、腫れなど)の徴候がないか綿密に監視した。ワクチン接種動物または対照動物のいずれにも、有害反応はなかった。臨床モニタリングでは、体重の劇的な減少(元の体重の10%を超える)、食習慣の変化、またはその他の行動変化は見られなかった。免疫化後に毎日取得した温度測定では、いかなる有意な変動も見られなかった。温度測定はまた定期的に、埋め込まれたトランスポンダーを使用して実施した。ワクチン接種動物と対照動物の体温に有意な変動はなかった。
すべての動物の左脚および右脚のリンパ節を、チャレンジの約2週間前(ベースラインを確立するため)から始めて、チャレンジ期間を通して毎週モニタリングした。リンパ節をノギスで測定し、浮腫を観察した。測定値は、すべての群においてチャレンジ後5~8週間の間、両脚の鼠径リンパ節の平均サイズが全体的に増加したことを示した。ベースライン(14.5mm)と比較して、対照動物のリンパ節サイズは22±1mmであり、rBmHAT群は26.2±1mmであった。この期間の後、リンパ節のサイズは、すべてのマカクでチャレンジ前のレベル近くまで減少した。
B. malayiL3によるチャレンジは、マカクの体温を変化させなかった。血清化学および血液学(CBC)値の分析は、L3チャレンジ後の感染動物における好酸球数のわずかな増加を除き、すべての細胞型で正常範囲内にあることを示した。
多価免疫原性構築物中の3つの抗原はすべて、マカクにおいて免疫原性であった。
ワクチン接種されたマカクにおけるIgG抗体価の分析は、すべてのマカクが、rBmHATに対する3回目の免疫化後に高力価(1:40,000)のIgG抗体を発現したことを示した。次いで、ワクチン構築物中の3つの成分抗原のそれぞれに対する抗体の力価を分析した。すべてのマカクは、rBmHSP12.6(1:16,000)、rBmALT2(1:24,000)、およびrBmTSP-LEL(1:16,000)に対する高力価のIgG抗体を発生した。ワクチン接種された各マカクの間で、抗体の力価にわずかな個体差があった。比較ベースで、マカク#5242、#5258、および#5259は、成分抗原に対して最も高いIgG抗体の力価を示した(マカク#5258の抗rBmHSP12.6抗体およびマカク#5259の抗rBmTSP抗体を除く)。マカク#4996および#5254は、rBmALT2およびrBmTSPに対して、抗体の低い力価のみを示した(表14)。
Figure 2023513607000015
アイソタイプ分析は、ほぼすべての抗体が、試験した4つの抗原すべて(rBmHSP、rBmALT2、rBmTSPおよびrBmHAT)に対するIgG1アイソタイプであることを示した。IgG2、IgG3、IgA、およびIgEのレベルは、バックグラウンド値からの有意な差を示さなかった。
rBmHAT応答細胞が、免疫化アカゲザルのPBMCに存在した。
抗原特異的増殖応答を決定するために、PBMCを最後のワクチン接種の4週間後に収集した。細胞増殖の決定を、CFSE標識PBMCをrBmHATタンパク質で5日間刺激し、標識細胞をフローサイトメーターでカウントした後に行った。これらの結果は、免疫化動物における抗原応答細胞の増殖頻度が、対照動物(刺激指数2.2±1.42)と比較して3倍高い(刺激指数6.1±0.86)ことを示した。予想どおり、すべての動物のPBMCは、pan-Tマイトジェン、PHAで刺激すると、強力な増殖応答(刺激指数87.4±0)を示した。対照培地で培養したPBMCは、5日間のインキュベーション後に低レベルの増殖のみを示した。各試料の増殖頻度値は、培地のみの対照値を差し引くことによって得た。
抗原刺激に応答して増殖する、CFSE標識CD3+、CD4+、およびCD8+ PBMCの頻度を、フローサイトメトリーで決定した。これらの研究は、対照のマカクと比較して、すべての免疫化されたマカクで抗原応答性T細胞の増殖が増加していることを示した。サブセット分析は、免疫化された動物において、抗原応答T細胞の約12.7%がCD4+細胞であり、T細胞の7.9%がCD8+サブセットであることを示した。対照動物のPBMCにおけるrBmHAT抗原の存在下でのバックグラウンド増殖は、CD4+細胞で1.4%、CD8+細胞で2.3%であった。
免疫化されたサルのPBMC中の抗原応答細胞は、IFN-γを分泌する。
rBmHAT免疫化マウスおよびスナネズミ(gerbil)の脾臓における抗原応答細胞は、主に高レベルのIFN-γを分泌した。したがって、マカクもまた免疫化後のチャレンジ前に、同様の反応を示すかどうかを決定した。これらの研究は、3匹の免疫化マカク(#5242、#5258および#5259)からのPBMCがすべて、rBmHAT抗原で刺激されるとかなりの量のIFN-γを分泌したことを示した(表15)。マカク#4996および#5254からのPBMCの培養上清は、対照マカクからのPBMCと同様の、バックグラウンドレベルのIFN-γしか有しなかった。
Figure 2023513607000016
免疫化マカクの血清中の抗rBmHAT抗体は、B. malayiL3の死滅に関与することができる。
免疫化マカクの血清中の抗rBmHAT抗体の保護能力を決定するために、in vitroADCCアッセイを実施した。結果は、ワクチン接種したマカクからのPBMCがB.malayiL3の35%の殺傷に関与できることを示した(表16)。個々のマカクの血清を評価すると、ADCCにおける最大殺傷能力は、マカク#5258の血清で45%であった。マカク#5242と#5259の血清も、それぞれ殺傷率38%と35%の顕著な殺傷能力を示した。マカク#4996と#5259の血清は、ADCC特性が最も低く、それぞれ25%と31%の殺傷率を示した。これらのアッセイで対照マカクの血清を使用した場合、幼虫の死滅は発生しなかった。
Figure 2023513607000017
rBmHATによる免疫化は、マカクに部分的保護を与えた。
最後のワクチン接種の1か月後、10匹のサルすべてを500のB. malayiL3でチャレンジし、末梢血循環におけるMfの出現についてスクリーニングした。ノット試験およびPCR分析を使用して、Mfを検出した。ノット試験は、チャレンジ後5週目から毎週、動物が陽性になるまで実施した。これらの研究では、チャレンジを受けたマカクは、チャレンジ後10週目からMf陽性になった。チャレンジ後11~20週の間に、対照マカクのうち3匹がMf陽性になった。残念ながら、残りの2匹の対照マカクは、研究の終わりまで陰性のままであった。ワクチン接種群では、3匹のマカク(#5242、#5254、および#5259)が研究を通して陰性のままであった。しかし、ワクチン接種マカクのうち2匹(#4996と#5258)はMf陽性になった。感染をさらに確認するために、PCR分析を実施し、Hha1抗原特異的プライマーを使用して感染したサルの血液中のMf特異的DNAの存在を増幅した。PCR分析により、マカク#5249と#4996に感染が確認された。ノット法により同定された他の3匹の陽性動物は、PCRでは陰性であった。
rBmHAT応答細胞が、チャレンジ後の免疫化アカゲザルのPBMCに存在した。
チャレンジ後10週間で収集したPBMCをrBmHATで刺激して、抗原特異的T細胞応答を決定した。Mf陰性であったワクチン接種群の3匹の動物#5242(S.I.、0.928±0.01)、#5258(S.I.、1.091±0.16)、および#5256(S.I.、1.0181±0.13)のPBMCは、rBmHAT刺激により有意な増殖を示した。一方、Mf陽性のワクチン接種動物#4996(S.I.、0.258±0.12)および#5254(S.I.、0.379±0.03)の2匹は、rBmHAT刺激による有意な増殖を示さなかった。対照動物#4995(S.I.、0.280±0.03)、#5240(S.I.、0.415±0.09)、#5249(S.I.、0.300±0.26)、#5252(S.I.、0.507±0.03)、または#5253(S.I.、0.475±0.25)のいずれにも、優位な増殖は観察されなかった。コンカナバリンで刺激したPBMCのS.I.は、2.0~3.8の範囲であった。
好酸球数は、Mfを示す感染マカクで高かった。
ミクロフィラリア血症の個体は、血中で高い好酸球数を示す(Pearlman, et al. (1993) Exp. Parasitol. 76:200-8;Pearlman, et al. (1993) J. Immunol. 151:4857-64)。同様の知見はアカゲザルでも観察された。好酸球の絶対数は、チャレンジ前の13、9、および5週、チャレンジ当日、およびチャレンジ後1、5、10、および14週に決定した。その結果、チャレンジ後約10週間で、ミクロフィラリア血症のマカクの、末梢血中の好酸球数の頻度が増加したことが示された。Mfが陰性であった1匹のマカク(#5259)も、いくらかの好酸球増加症を示した。好酸球数は、末梢血にミクロフィラリアを有する対照マカクにおいて10倍高かった。
抗原特異的IgG抗体の高力価およびPBMCからのIFN-γの抗原特異的分泌の上昇は、免疫化マカクにおける保護と相関した。
免疫化群の2匹のマカクが、チャレンジ後に感染の存在を示したので、ワクチン誘導免疫応答を、免疫化群内の同様の応答の2匹の感染マカクおよび3匹の感染なしのマカクにおいて比較した。チャレンジ前後の値を比較した。チャレンジ前の値は、寄生虫チャレンジによるバイアスを排除した。免疫学的値の比較を表17に示す。
Figure 2023513607000018
結果は、IgG抗体の力価が、チャレンジ後に感染を発症しなかった3匹の免疫化マカクで有意に高かったことを示した。同様に、同じ3匹のマカクからのPBMCは、rBmHAT抗原で刺激されると、より高いレベルのIFN-γを分泌した。チャレンジ後に感染を発症した2匹の免疫化マカクからのPBMCは、rBmHAT刺激に応答したものと同様レベルのIFN-γを分泌できなかった。ELISPOTアッセイを、ワクチン接種マカクおよび対照マカクからのPBMCを使用して実施した。結果は、すべての感染マカクにおいて、IFN-γ分泌細胞と比較して、抗原特異的IL-10分泌細胞の数が有意に増加したことを示した。免疫化マカクのPBMCにおける、IFN-γのIL-10分泌細胞に対する比を比較すると、感染を示した2匹のワクチン接種マカクにおいて、IL-10分泌細胞の有意な増加があった(表18)。これらの知見は、免疫応答が誘発されたタイプと、ワクチン接種マカクにおける感染の確立の失敗との間の、明確な相関関係を示唆する。
Figure 2023513607000019
例8:価数の比較
組換え熱ショックタンパク質12.6(rHSP12.6)、豊富な幼虫転写産物-2(rALT-2)およびテトラスパニン大細胞外ループ(rTSP-LEL)タンパク質の、一価、二価および三価ワクチン接種試験を比較した。組換えタンパク質は、本明細書に記載のように調製した。二価免疫原性組成物および多価免疫原性組成物(配列番号70)は、融合タンパク質として生成した。マウス(N=5)を、タンパク質プライムブーストワクチンレジメンを使用して皮下に免疫化した。免疫化動物と対照動物は、B. malayiの生存の第3期感染幼虫(L3)で、マイクロポアチャンバー法を使用してチャレンジした。移植の48時間後、動物を犠牲にし、チャンバーを腹腔から回収した。各チャンバーの内容物を空にし、幼虫を100倍で顕微鏡検査して、幼虫の死滅を評価した。この分析結果を表19に示す。
Figure 2023513607000020
結果は、多価免疫原性組成物が、一価および二価組成物と比較して、ワクチン接種動物における防御免疫応答を相乗的に増強したことを示す。
B. malayi寄生虫はマウスにおいて成体に成熟しない。しかし、成体ワームの定着に対するワクチン誘導保護は、スナネズミで決定できる。したがって、一価、二価、および三価のワクチンをスナネズミで評価した。動物(N=10)を、組み換えタンパク質で皮下に免疫化した。スナネズミを100のB. malayi L3でチャレンジし、ワームの定着をチャレンジ後95日目に決定した。保護率の値は、対照スナネズミと比較したワーム定着の減少率として計算した。この分析結果を表20に示す。
Figure 2023513607000021
結果は、多価免疫原性組成物が、一価および二価ワクチンと比較して、ワクチン接種動物における防御免疫応答を相乗的に増強したことを示す。
例9:ワクチンの比較
本開示の一価、二価、および多価免疫原性組成物を、マウス、スナネズミおよびマストミスにおいて比較した。動物を記載のように免疫化し、B. malayiL3でチャレンジし、ワームの定着を決定した。これらの分析の結果を表21に示す。注目すべきことに、rBmHAXによる免疫化は、マウスにおいて98%の保護を与え、スナネズミにおいて97%の保護を与えた。これらの知見は、rBmHATとrBmHAXの両方がリンパ系フィラリア症の優れたワクチン候補であることを示す。
Figure 2023513607000022
例10:マウスモードにおけるリンパ系フィラリア症に対する四価融合タンパク質(rBmHAXT)ワクチン抗原
rBmHAXT組換えタンパク質のクローニング、発現および精製。
GenScript(Piscataway, NJ)から、以下の配列:bmhsp12.6(GENBNAKアクセッション番号AY692227.1)、bmalt-2(GENBNAKアクセッション番号JF795950.1)、bmtpx-2(GENBNAKアクセッション番号AF319997.1)、およびbmtsp(GENBNAKアクセッション番号JF795955.1)がpUC57ベクター中に供給された。遺伝子の増幅には、フォワード5’-CGG GAT CCA TGG AAG AAA AGG TAG TG-3’(配列番号31)およびリバース5’-CCC GAA TTC TTA ATG TTT CTC AAA ATA TGC TTT-3’(配列番号89)をBamHIおよびEcoRI用の制限部位と共に使用した。PCR増幅産物をpRSETA発現ベクターにクローニングし、コンピテントBL21(DE3)大腸菌細胞に形質転換して、6Xヒスチジンタグ付きの組換えタンパク質を発現させた。組換え融合タンパク質は、商品名SEPHAROSE(登録商標)(GE Healthcare Life Sciences, Pittsburg, PA)で販売されている固定化金属親和性Ni荷電アガロースクロマトグラフィーカラムを使用して精製し、300mMイミダゾールで溶出した。最終精製タンパク質調製物中のエンドトキシンは、エンドトキシン除去カラム(Thermo Fisher Scientific, Rockford, IL)を使用して除去した。組換えタンパク質の発現および純度は、12%SDS-PAGEゲルおよび抗His抗体(Qiagen, Valencia, CA)を使用したウェスタンブロットで確認した。タンパク質濃度を、Bradford試薬(Thermo Fisher Scientific)を用いて決定した。
アジュバント。
3つの異なるアジュバント製剤を、組換えBmHAXTと共に使用した。ミョウバン(AL007)および、合成TLR4アゴニストであるミョウバン+GLA(AL019)は、Infectious Disease Research Institute, Seattle, WAから購入し、マンノシル化キトサン(MCA)はPacific GeneTech, Hong Kongからのギフトであった。
動物および寄生虫。
Taconic biosciences(Hudson, NY)から購入した6~8週齢のBalb/cマウスを、これらの実験で使用した。この研究における動物の使用は、University of Illinois, Rockfordの動物管理委員会により、実験動物の管理と使用に関する国立衛生研究所のガイドラインに従って承認された。B. malayiの第3期感染幼虫(L3)は、NIAID/NIH Filariasis Research Reagent Resource Center(University of Georgia, Athens, GA)から入手した。
Balb/cマウスの免疫化。
免疫化のために、マウスを無作為に1群5匹ずつの7群に分けた:(1)rBmHAXT+AL007を皮下投与、(2)rBmHAXT+AL019を皮下投与、(3)rBmHAXT+MCA(初回用量を皮下投与、およびブースター用量を経口投与)、(4)AL007対照を皮下投与、(5)AL019対照を皮下投与、(6)MCA対照(初回用量を皮下投与、およびブースター用量を経口投与)、(7)rBmHAXT+MCA対照(すべての用量を経口投与)。各マウスに、15μgのrBmHAXTおよび15μgのそれぞれのアジュバント製剤の3用量を、15日間隔で投与した。
血清、腹水および脾臓の収集。
血液試料を、各マウスの顎下静脈から、0日目(免疫前)、次いで各免疫化の2週間後に収集し、室温で1時間保持して凝固させた。血清を分離し、アリコートをさらなる使用のために-80℃で凍結保存した。腹腔を500μlの滅菌生理食塩水で洗浄し、液体を各マウスから収集して処理した。次に、脾臓を各動物から収集し、10%FBSおよび1X抗生物質/真菌溶液(Sigma, St. Louis, MO)を補充したRPMI 1640完全培地で3回洗浄した
血清および腹水中のIgG抗体の力価。
血清試料中および腹水中のrBmHAXT特異的IgG抗体の力価は、間接ELISAを使用して評価した。ウェルを1μg/mlのrBmHAXTで4℃で一晩コーティングした。プレートの洗浄およびブロッキング後、希釈した(1:100、1:1,000、1:5,000、1:10,000、1:20,000および1:40,000)血清または腹水試料を添加し、室温で1時間インキュベートした。HRP共役ニワトリ抗マウスIgG抗体(Thermo Fisher Scientific)を二次抗体として使用し、1ステップUltra TMB-ELISA基質(Thermo Fisher Scientific)を用いて発色をさせた。反応を0.16MのHSOを使用して停止し、光学密度を450nmでBioTek Synergy 2 ELISAリーダーで決定した。
血清および腹水中の抗原特異的抗体アイソタイプのレベル。
rBmHAXT特異的抗体アイソタイプ(IgG1、IgG2a、IgG2b、IgG3、IgE、IgM)のレベルを、血清および腹水試料中、間接ELISAを用いて決定した。それぞれのアイソタイプ特異的ビオチン化ヤギ抗マウス抗体(Sigma)およびストレプトアビジン-HRP(1:20,000)を二次抗体として使用した。発色は、1ステップUltra-TMBで行った。反応を0.16MのHSOを使用して停止し、光学密度を450nmでBioTek Synergy 2 ELISAリーダーで決定した。
チャレンジ研究。
ワクチン誘発による保護を決定するため、以前に記載のように、マイクロポアチャンバーチャレンジ法を使用した(Dakshinamoorthy, et al. (2013) Vaccine 31(12):1616-22)。簡潔に言うと、B. malayiの20のL3をマイクロポアチャンバーに入れ、各マウスの腹膜に外科的に移植した。移植から72時間後、マイクロポアチャンバーを回収した。各チャンバーの内容物を空にし、幼虫をカウントし、細胞の接着と幼虫の死滅について顕微鏡的に調べた。透明で直線的で動きのない幼虫は死滅としてカウントした。活動的でとぐろを巻く半透明の幼虫は、生存としてカウントした。保護率は、死滅した寄生虫の数/回収された総寄生虫の数×100として表した。
脾細胞の培養上清中の分泌サイトカインのレベル。
脾臓細胞の単一細胞懸濁液を調製し、1μg/mlのrBmHAXTまたはConAで刺激した。刺激されていない脾臓細胞は、アッセイの陰性対照として保持した。72時間のインキュベーション後、培養上清を回収し、IL-2、IL-4、IL-6、IFNγ、TNFα、IL-10、およびIL-17Aのレベルを、サイトカインビーズアレイキット(BD Bio Sciences, San Jose, CA)を用いて決定した。
T細胞サブセットのフローサイトメーターによる分析。
上記の培養物からの脾臓細胞を次に洗浄し、蛍光標識抗マウスCD3(APC)、CD4(PE)、およびCD8(PE/cya7)で標識し、各細胞型の集団のパーセントをフローサイトメーターで決定した。簡潔に言うと、細胞を染色緩衝液(2%FBS+0.1%アジ化ナトリウム)中のFcγII受容体ブロッカーと共に4℃で30分間インキュベートし、続いて染色緩衝液で洗浄した。3つの蛍光標識抗体すべてを細胞に添加し、暗所で4℃で1時間インキュベートした。染色緩衝液で洗浄した後、細胞を4%パラホルムアルデヒドで固定し、BD FACSCalibur(商標)(BD Biosciences)フローサイトメーターで分析した。
上記の実験からの細胞の別のセットをCD3(APC)で染色し、CD3ゲート集団内で、CD62L(PE/Cya7)およびCCR7(PE)陽性T細胞を、T中央記憶細胞として同定した。細胞集団を細胞内IFN-γ(FITC)についても染色して、IFN-γ陽性のT中央記憶細胞の割合を決定した。
統計分析。
提示されたデータは平均±標準偏差(SD)である。異なる試料群間の平均差の統計的有意性は、ノンパラメトリッククラスカル・ウォリス検定を用いて分析した後、SPSSソフトウェア(v24.0, IBM, NY)を使用した複数検定のボンフェローニ補正を行った。有意水準はP<0.05として定義した。
rBmHAXT特異的IgG抗体の力価。
組換えBmHAXTタンパク質を調製し、発現させた。SDS-PAGEゲルでは、rBmHAXTの分子量は約60kDaで、単一のバンドとして現れた。最終的に精製された調製物中のエンドトキシンレベルは、<3EU/タンパク質0.1mgであった。rBmHAXT特異的IgG抗体の力価は、rBmHAXT+AL007群およびrBmHAXT+AL019群の血清で高かった(1:20000)(p<0.05)。しかし、力価はrBmHAXT+MCA群で低かった(1:10000)。すべての用量が経口投与されたrBmHAXT+MCA群では、抗原特異的抗体の力価は非常に低く、AL007、AL019およびMCAアジュバント対照群とほぼ同じであった。同様に、腹水を分析すると、rBmHAXT+AL019およびrBmHAXT+AL007ワクチン接種動物において、rBmHAXT+MCA群と比較して、抗原特異的IgG抗体の高い力価が観察された。IgG抗体の力価は、同じ動物からのそれぞれの血清試料と比較した場合、腹水においてより低かった。
血清および腹水中の抗体アイソタイプ。
rBmHAXTに対して生成される体液性免疫応答のタイプを決定するために、抗体アイソタイプIgG1、IgG2a、IgG2b、IgG3、IgE、IgM、およびIgAを、血清および腹水試料で決定した。結果は、rBmHAXT+MCA(すべて経口投与)群(これは対照と同様であった)を除くすべてのワクチン接種群(p=0.0001)において、IgG1が抗体の主要なアイソタイプであることを示した。IgG2aおよびIgG2b抗体の力価も、rBmHAXT+経口MCAワクチン接種群を除き、対照と比較してすべてのワクチン接種動物で有意に高かった(p<0.05)。ワクチン接種動物のIgG3、IgE、IgM、およびIgA抗体の力価は、対照と比較して有意な変化を示さなかった。重要なことには、高力価のIgG1抗体が、rBmHAXT+MCA皮下群および対照と比較して、rBmHAXT+AL007およびrBmHAXT+AL019ワクチン接種動物の腹水に存在した(p=0.0001)。すべてのワクチン接種動物の腹水中のIgG2aおよびIgG2b抗体の力価には、対照と有意な差はなかった。
rBmHAXT+AL019によるワクチン接種は、最大の保護を与えた。
ワクチン誘導の保護を、マイクロポアチャンバーチャレンジ法を用いて決定した。その結果、最大の保護がrBmHAXT+AL019(88.05±3.9%;p=0.0001)でワクチン接種した動物に観察され、続いてrBmHAXT+AL007(79.47±2.6%;p=0.0001)、およびrBmHAXT+MCA(78.67±5.47%;p=0.0001)であった。死滅した幼虫の表面にいくつかの細胞が付着しているのが見出された。これらの結果は、AL007(p=0.0037)およびMCA(p=0.02)と比較して、AL019がrBmHAXTに対するより優れたアジュバントである可能性があることを示す。rBmHAXT+経口MCAによるワクチン接種では17.97±5.75%しか付与されず、これはアジュバント対照群(AL007、20.55%;AL019、24.19%;およびMCA、15.742%)と同様であった。
rBmHAXTワクチン接種動物からの脾臓細胞は、Th1およびTh2サイトカインの両方を分泌した。
脾臓細胞の培養上清中のサイトカインレベルを、サイトカインビーズアレイを用いて決定した。結果は、Th1(IFN-γ、IL-2、IL-6、IL-17A)およびTh2(IL-4およびIL-10)サイトカインの分泌レベルが、rBmHAXT+AL019およびrBmHAXT+AL007ワクチン接種動物からの脾臓細胞の培養上清において、それぞれのアジュバント対照動物と比較して、有意に(p<0.05)増加したことを示した。rBmHAXT+MCAワクチン接種動物からの脾臓培養上清は、それぞれのアジュバント対照と比較して有意に高レベルのIFN-γ(p=0.01)およびIL-6(p=0.0001)を有していた。しかし、測定された他のサイトカインのレベルに有意差はなかった。rBmHAXT+経口MCA群の培養上清中のサイトカインレベルは、アジュバント対照と同様であった。
CM細胞が、rBmHAXTワクチン接種動物の脾臓で生成された。
脾臓細胞を37℃で72時間培養し、1μg/mlのrBmHAXTタンパク質で刺激した。72時間後、細胞を採取し、CD3/CD4/CD8抗体で染色し、フローサイトメーターで評価した。他の群と比較して、rBmHAXT+AL019で処置した群(p≦0.05)では、CD8細胞集団がわずかではあるが有意に増加した。脾臓中のTCM細胞の割合を決定するために、脾細胞をCD62L/CCR7抗体で染色し、フローサイトメーターで分析した。CD62L/CCR7に対して二重陽性であった細胞は、TCM細胞であると見なした。結果は、rBmHAXT処置動物が、使用したアジュバントに関係なく、高いパーセンテージのTCM細胞を示したことが示された(p≦0.001)。
CM細胞は、主にIFNγであった。
IFN-γを分泌するTCM細胞は、寄生虫感染におけるワクチン誘導の保護において主要な役割を果たすと考えられている(Maggioli, et al. (2016) Front. Immunol. 7:421)。したがって、細胞内IFN-γを発現したCD62LCCR7CM細胞のパーセンテージを測定した。結果は、rBmHAXT+AL019ワクチン接種動物からの細胞は、rBmHAXT+AL007ワクチン接種群およびrBmHAXT+MCAワクチン接種群と比較して、有意に(p<0.01)高いパーセンテージのIFNγCM細胞を有することを示した。
例11:非ヒト霊長類におけるヒトリンパ系フィラリア症に対する予防ワクチン
非ヒト霊長類。
40匹のオスまたはメスの無病のアカゲザル(3~5歳)をPrimGen(Hines, IL)から購入し、Rockville, MDにあるBioqualの施設で飼育した。すべての動物は研究への登録前に、フィラリア感染がないことについてのスクリーニングを、以下:ミクロフィラリアHha-1の存在について、血液をPCRで分析すること(Hoti, et al. (2003) Acta Trop. 88:77-81;Rao, et al. (2006) J. Clin. Microbiol. 44:3887-3893)、およびrBmSXP-1に対する抗体の存在について、血清を分析すること(Vasuki, et al. (2003) Acta Trop. 86:109-114;Abdul Rahman, et al. (2007) Filaria J. 6:10)により実施し、およびrBmHAXTタンパク質を、酵素結合免疫吸着法(ELISA)を使用して分析した。いずれかのタンパク質に対して陽性であった動物は、研究に登録しなかった。
寄生虫。
Brugia malayiの第3期感染幼虫(L3)は、NIAID/NIH Filariasis Research Reagent Resource Center(University of Georgia, Athens, GA)から入手した。
アジュバント。
2つの異なるアジュバントを、この研究で比較した。ミョウバン(AL007)およびミョウバン+合成TLR4アゴニストGLA(AL019)は、Infectious Disease Research Institute, Seattle, WAから購入した。
多価組換えタンパク質のクローニングおよび発現。
rBmHATタンパク質は大腸菌BL21(DE3)で発現され、本明細書に記載のように精製および分析した。多価融合タンパク質rBmHAT(bmhsp12.6、bmalt-2、およびbmtspで構成される)およびrBmHAXT(bmhsp12.6、bmalt-2、bmtpx2、およびbmtspで構成される)のコード配列(CDS)は、GenScript(Piscataway, NJ)で合成した。配列はpUC51ベクターで提供された。両方のCDSは、同じ遺伝子特異的プライマー(フォワードプライマー:5’-CGG GAT CCA TGG AAG AAA AGG TAG TG-3’、配列番号31、およびリバースプライマー:5’-CGG AAT TCT CAA TCT TTT TGA GAT GAA T-3’、配列番号36)をBamHIおよびEcoRIの制限部位と共に使用してPCR増幅し、6Xヒスチジンタグと共に発現ベクターpRSETA(Invitrogen, Carlsbad, CA)にクローニングした。bmhatおよびbmhaxtの両方についてライゲーションされた構築物は、大腸菌BL21(DE3)の発現株にさらに形質転換した。組換えタンパク質の発現は、1mMのIPTGで誘導した。組換えタンパク質は、ニッケルアフィニティーカラムクロマトグラフィー(GE Healthcare Life Sciences, Pittsburg, PA)を使用して精製し、組換えタンパク質の純度は、12%SDS PAGEゲル、および抗ペンタHis抗体(Qiagen, Velencia, CA)を用いたウェスタンブロットで確認した。最終調製物中のエンドトキシンは、エンドトキシン除去カラム(Thermo Fisher Scientific, Rockford, IL)を用いて除去した。rBmHATおよびrBmHAXTタンパク質の最終濃度は、Bradfordアッセイ(Qiagen)により決定した。
マカクの免疫化。
これは二重盲検ワクチン接種試験であった。合計40匹のマカクを、無作為に1群あたり10匹のマカクで3つの処置群および1つの対照群に分けた。処置したすべての動物には、150μgのワクチン抗原および2mgのアジュバントを4回、0、28、56、および84日目に投与した。処置群1にはrBmHAT+ミョウバンを投与し、処置群2にはrBmHAT+AL019を投与し、処置群3にはrBmHAXT+AL019を投与した。対照動物には、AL019アジュバントのみを投与した。注射部位は、任意の有害反応(発赤、腫れなど)について免疫化後7日間まで毎日監視した。血液試料を、各免疫化の前およびチャレンジの前に収集した。
細胞数、血清化学および全血球計数(CBC)分析。
CBCおよび血清化学は、IDEXXによる市販の自動血液学および血清化学分析装置を使用して分析した。研究の開始前に収集した試料は、各動物の正常な参照ベースラインとして機能した。
マカク血清中の抗原特異的抗体レベル。
rBmHAT-、rBmHAXT-、rBmHSP-、rBmALT-2-、rBmTPX-、またはrBmTSP特異的な総IgG、IgG1、IgG2、IgG3、IgM、およびIgE抗体のレベルを、各アカゲザルの血清において、本明細書の別の場所に記載のように間接ELISAを用いて測定した。
抗体依存性細胞介在性細胞傷害(ADCC)アッセイ。
ADCCアッセイを、本明細書の他の箇所に記載されているように実施した。約10の生存B. malayiL3のそれぞれを、2×10のPBMCおよび50μlの血清試料と共に、トリプリケートのウェルで5%CO、37℃でインキュベートした。インキュベーションの72時間後、B. malayiL3の生存率を決定した。幼虫の死亡率は、死滅L3の数と各ウェルから回収した総数の比率に100を掛けたものとして表した。
ADCCアッセイからの培養上清も収集して、ミエロペルオキシダーゼ(MPO)活性のレベルを、Biovision(Milpitas, CA)から購入したキットを用いて決定した;値を培養上清1mlあたりのmU/分として表す。
末梢血単核細胞(PBMC)の抗原特異的増殖。
PBMC(1ml中、1×10細胞/ウェル)を、5mMのカルボキシフルオレセイン二酢酸スクシンイミジルエステル(CFSE)と共に、暗所で37℃で15分間インキュベートした。インキュベーション後、細胞を洗浄し、37℃でさらに30分間インキュベートし、24ウェル組織培養プレートに1ml中2×10細胞/ウェルで播種した。500μlの培地を翌日除去し、rBmHAXT(500μl中1μg)をウェルに添加した。RPMI培地のみでインキュベートした細胞を陰性対照とし、コンカナバリンA(1mg/ウェル)で刺激した細胞を陽性対照とした。細胞を培養後5日目に採取し、抗CD3-APC抗体で標識し、4%パラホルムアルデヒドに室温で10分間固定し、データをBD FACSCalibur(商標)フローサイトメーターで取得し、ModFit LTソフトウェア(Verity Software House, Topsham, ME)で分析した。
3日間インキュベートした細胞の並行培養物を採取し、パラホルムアルデヒドで固定し、抗CD3-APC、抗CD4-FITC、抗CD8-PE、抗CD28-PE、または抗CCR7-FITCの組み合わせで標識した。細胞内IFN-γおよびIL-4は、固定および透過処理後に測定した。データをBD FACSCalibur(商標)フローサイトメーターで取得し、Flow Jo v10.1(FlowJo, LLC, Ashland, OR)で分析した。
細胞培養上清中のサイトカイン(GM-CSF、IFN-γ、IL-12p70、IL-1β、IL-4、IL-5、IL-6、IL-15、IL-16およびTNF-α)の分泌レベルを、抗体ベースのアカゲザルCytokine Quantibody Array GS1(RayBiotech, Inc., Norcross, GA)を使用し、製造業者のプロトコルに従って測定した。スライドアレイからの蛍光シグナルの強度をスキャンし、データの分析を、バックグラウンドシグナルを差し引き、陽性対照に対して正規化した後に実施した。
B. malayi感染幼虫(L3)チャレンジ。
最後の免疫化から1か月後、すべてのマカクを、130~180のB. malayiL3を皮下投与でチャレンジした。すべての幼虫の生存能力を顕微鏡で調べ、カウントし、生存可能な幼虫のみをチャレンジに使用した。チャレンジ後、すべてのマカクを、臨床生化学パネル(血清化学、血液学、全血球数分析およびCD4/CD8T細胞数)、物理的パラメータ(チャレンジ部位での有害反応の兆候、体重、体温、身体の状態、リンパ浮腫およびリンパ節の測定値)、および行動パターンにおける任意の可能な変化について、定期的に監視した。
マカクにおけるチャレンジ感染の定着の確認。
各マカクにおいて定着した成体ワーム数をカウントすることは、実際には困難である。しかし、いくつかの証拠を使用してマカクにおける活動性感染の存在を確認した;これには顕微鏡分析およびHha-I PCR分析を含む。顕微鏡分析では、チャレンジ後5、10、15、および18週目に、各マカクから10mlの血液を午後6時~10時の間に収集し、ミクロフィラリアの存在について、ノット変法を使用してスクリーニグした。Hha-I PCR分析では、200μlの血液試料からGen Elute血液ゲノムDNAキット(Sigma-Aldrich)を用いて分離したDNAを、Hha-Iタンデムリピート遺伝子について、以前に記載されているように(Hoti, et al. (2001) Bull. Entomol. Res. 91:87-92)PCR増幅し、増幅したPCR産物を配列決定して、Hha-I配列を確認した。
血清中の抗rBmSXP-1抗体の力価。
BmSXP-1は、B. malayi感染に対する高感度で特異的な診断抗原である。典型的には、単一性感染症(single sex infection)は、末梢循環にMfを有さない。したがって、顕微鏡とPCRのアプローチは、これらの潜伏感染を検出できない可能性がある。しかし、感染した対象または動物において活動的なワームが存在することは、BmSXP-1抗原に対するIgG4抗体の力価を測定することで確認できる。ELISAを使用して、マカクの血清中のこれらの抗体の力価を決定した。信頼できる市販の抗マカクIgG4抗体が得られなかったため、抗rBmSXP-1 IgG抗体の力価をマーカーとして使用して、潜伏感染を検出した。
リンパシンチグラフィ分析。
リンパシンチグラフィ分析を、本明細書の他の箇所に記載されているように実施した。
統計分析。
提示されるデータは、平均±標準偏差(SD)である。異なる試料群間の平均差の統計的有意性を、ノンパラメトリッククラスカル・ウォリス検定を使用して分析した後、SPSSソフトウェア(v24.0, IBM, NY)を用いた複数検定のボンフェローニ補正を行った。有意水準はP≦0.05と定義した。ワクチン誘導による保護を分析するために、カイ二乗検定を使用して全群の比率を比較し、必要に応じてフィッシャーの正確確率検定を使用した。オッズ比(OD)を計算して、群間の違いを決定した。
ワクチン候補による免疫化は、抗原特異的IgG抗体およびそれらのアイソタイプの高い力価を生成した。
rBmHATの分子量は約39kDaであり、rBmHAXTは約60kDaである。両方のタンパク質は、タンパク質1μgあたり10EU未満のエンドトキシンレベルで95%を超える純度に調製した。精製タンパク質によるマカクの免疫化は、高い力価の抗原特異的IgG抗体を生成した。IgG抗体は、融合タンパク質の各成分に特異的であった。最大IgG抗体価は免疫化の2回目の投与後に達成され(表22)、最大抗体価を達成するには2用量のワクチンで十分であることを示している。
Figure 2023513607000023
IgG1およびIgG2は、すべての免疫化動物の血清中のIgG抗体の最も主要なアイソタイプであった。IgG3抗体のレベルは、対照動物と比較して、rBmHAXT+AL019免疫化群の血清において有意に上昇した。IgMおよびIgE抗体は、ワクチン接種動物の血清中で、対照と有意な差はなかった。
抗原応答性記憶細胞は、ワクチン接種マカクの血液中に存在した。
ワクチン接種された動物からのPBMCの増殖指数は、それぞれの抗原に応答し、対照と比較して高かった。対照群の細胞は、5日間の培養中に1回しか複製せず、それに対してワクチン接種群では、細胞が最高で8世代まで分裂した。分裂中の抗原応答CD4およびCD8T細胞内の記憶細胞集団の評価では、CD28CCR7エフェクター記憶T細胞(TEM)とCD28CCR7中央記憶T細胞(TCM)の両方が、rBmHAXT+AL019およびrBmHAT+AL007で免疫化したマカクにおいて、選択的に増殖することが示された。TEM細胞は主に細胞内IFN-γに対して陽性であり、TCM細胞は細胞内IL-4に対して主に陽性であった。PBMCの培養上清の分析は、サイトカイン(GM-CSF、IFN-γ、IL-12p70、IL-1β、IL-4、IL-5、IL-6、IL-15、IL-16およびTNF-α)の分泌レベルの、AL019対照と比較した顕著な増加を示した。rBmHAXT+AL019ワクチン接種動物からのPBMCは、AL019対照と比較して、ほぼ10倍高いレベルのIFN-γを分泌した。
rBmHAXTによる免疫化は、最大の保護を与えた。
B. malayiL3によるチャレンジの10週間後、対照動物10匹中7匹(70%)が末梢血でMfを示し、実験が完了するまで(チャレンジ後18週間)Mf陽性であり続けた。しかしながら、rBmHAXT+AL019群では、10匹のマカクのうち3匹(30%)のみが血液中にMfを示した(図4)。これらの知見は、B.malayi特異的Hha-1の存在に関する血液試料のPCR分析、およびSXP-1抗原に対するIgG抗体に関するELISAによって、さらに確認された。血液を繰り返し検査しても、実験が完了するまで(18週後)陰性動物のいずれにもチャレンジ感染の証拠は見られず、rBmHAXT+AL019による免疫化が、対照群のミクロフィラリア血症ではないマカクの30%を調整した後、57.14%の保護を付与したことを示唆する(p=0.073、オッズ比=0.18)。rBmHAT+AL019群では10匹中5匹(p=0.649、オッズ比=0.42)、rBmHAT+AL007群では10匹中7匹(p=1.0、オッズ比=1.0)が、Mf陽性であった。異なる群間の統計的相関は、rBmHAXT+AL019が他のワクチン接種群およびAL019対照よりも優れた保護を与えることを示した(rBmHAXT+AL019対AL019対照、p=0.073;rBmHAXT+AL019対rBmHAT+AL019、p=0.649;rBmHAXT+AL019対rBmHAT+AL007、p=0.073およびrBmHAT+AL019対rBmHAT+AL007、p=0.649)。したがって、オッズ比に基づくと、AL019対照群がMf陽性であるオッズは、rBmHAT+AL019群がMf陽性であるオッズよりも2.33倍高かった。AL019対照群がMf陽性である確率は、rBmHAXT+AL019群がMf陽性である確率よりも5.43倍高かった。rBmHAT+AL019群がMf陽性である確率は、rBmHAXT+AL019群がMf陽性である確率よりも1.95倍高かった。これらの統計分析は、rBmHAXT+AL019免疫化によって与えられる保護が、rBmHAT+AL007およびrBmHAT+AL019免疫化よりも有意に優れていたことを示す。
抗体依存性細胞傷害(ADCC)アッセイも、ワクチン誘導保護を決定するためのin vitro代理として実施した。これらのアッセイはまた、rBmHAXT+AL019でワクチン接種されたマカクからの血清試料が、他の2つのワクチン接種群からの血清試料と比較して、B. malayiL3をin vitroで殺傷するのにより効率的であることを確認した(図5)。いくつかの細胞が死滅幼虫に付着しているのが見つかった。実際、死滅幼虫の多くは、インキュベーション後24時間以内に完全に細胞で覆われた。この研究では、細胞の形態は特定されなかった。しかし以前の研究では、結合した細胞は主に単球であることが示唆されている。これらの細胞の活性化状態を決定するために、これらのADCCアッセイからの培養上清中のミエロペルオキシダーゼ(MPO)レベルを測定した。結果は、対照動物からの血清を含むウェル(1.99mmol/分/ml)と比較して、ワクチン接種動物およびPBMCからの血清を含むウェルにおいて、MPOの分泌レベルの増加(2.08~2.78mmol/分/ml)を示し、MPO産生細胞の活性化が示された。
Mf陰性のワクチン接種動物は、リンパ病理を発症しなかった。
リンパ管内に生存する成体のフィラリア寄生虫は、重度の炎症を引き起こし、リンパ浮腫およびリンパ流の閉塞を引き起こす。この研究においてリンパ管閉塞の存在は、リンパシンチグラフィにより決定した。同じ動物の右脚と左脚のリンパ流を比較した。チャレンジ感染は右脚に施した。結果は、チャレンジ後16週目に、すべてのMf陽性動物の右脚のリンパ流が左脚と比較して有意に減少し、リンパの閉塞を示していることを示した。リンパ流は、ワクチン接種群のすべてのMf陰性動物において、右脚と左脚の間に有意差を示さなかった。したがってこれらの知見は、末梢血にMfを示さなかったワクチン接種マカクおよびチャレンジマカクでは、リンパの病理が最小限であるか、または存在しなかったことを示す。
例12:イヌにおけるDirofilaria immitis感染に対する予防ワクチン
免疫化プロトコル。
6匹のイヌを、1群3匹ずつの2群に分けた。第1群の各動物には、100μg用量のrBmHAXTワクチン+400μlのAL019アジュバント(40μgのTLR4アゴニスト+800μgのミョウバン)を皮下注射で3回投与した。第2群の各動物を対照として使用し、400μlのAL019アジュバントのみを皮下注射で3回投与した。注射は、0、30、および60日目に行った。さらに、0、30、60、および90日目に、20mLの血液を、免疫化前の各イヌの伏在静脈からEDTA管に収集した。すべての動物は、注射部位反応、発熱、食欲不振、アレルギー、脱毛、体重減少などの副作用について監視した。
イヌ血清中の抗原特異的抗体レベル。
rBmHAXT特異的総IgG、IgG1、IgG2、IgG3、IgMおよびIgE抗体のレベルを、各イヌの血清において、間接ELISAを使用し本明細書の他の箇所に記載のように決定した。
抗体依存性細胞介在性細胞傷害(ADCC)アッセイ。
ADCCアッセイは、本明細書の他の箇所に記載のように実施した。8~10の生存D. immitisL3のそれぞれを、正常なイヌの血液から分離した50万個のPBMC、200μlのRPMI 1640培地、および100μlの血清試料と共に、37℃、5%COでデュプリケートのウェルでインキュベートした。プレートをD. immitisL3の生存率について、24時間ごとに光学顕微鏡下で監視した。透明な、非運動性またはゆっくりと運動する幼虫は死滅と見なした。幼虫の死亡率は、死滅L3の数の、各ウェルから回収した総数に対する比率に、100を掛けたものとして表した。
rBmHAXTワクチンによる免疫化は、高力価の抗原特異的IgG抗体およびそれらのアイソタイプを生成した。
精製したrBmHAXTタンパク質によるイヌの免疫化は、抗原特異的IgG抗体の高い力価(1:20000以上)を生成した。3回の免疫化後のイヌの血清中のIgG1、IgG2、およびIgA抗体も、対照群と比較して有意に増加し、IgG1およびIgG2は、IgG抗体の最も主要なアイソタイプであった。血清試料の、D. immitis感染幼虫に対する防御抗体の存在に関する分析は、ワクチン接種動物の血清中に有意なレベルの防御記憶抗体が存在することを示した。これらの防御抗体はrBmHAXTに応答して増殖し、2~3回の免疫化後に感染幼虫の薬剤感受性(~60%)および薬剤耐性(~85%)の両方を抑制することができた(図6)。いくつかの細胞が死滅幼虫に付着しているのが見出された。さらに、ワクチン接種したイヌからの脾臓細胞の培養上清は、TNF-αおよびIL-10のレベルの上昇を示した。これらの知見は、rBmHAXTが、イヌやネコなどの動物のフィラリア感染に対する優れたワクチン候補であることを示唆する。
すべてのイヌを、50の薬剤感受性D. immitis感染幼虫を皮下注射してチャレンジした。チャレンジの6か月後、すべての動物を安楽死させ、定着した成体ワームを各イヌから回収した。その結果、rBmHAXTワクチン接種動物の平均ワーム負荷は、平均ワーム負荷が29.3±3.51であったAL019対照群と比較して、7±1.73であることが示された。この研究は、rBmHAXTのイヌへのワクチン接種が、薬剤感受性のD.immitisによるチャレンジ感染に対して76.11%の保護を付与することを示した。チャレンジ感染後、rBmHAXTワクチンを接種したイヌでは、オスとメスの寄生虫の数が減少した。
例13:マウスにおけるDirofilaria immitis感染に対するrBmHAXTおよびrDiHAXワクチンの比較
rBmHAXT組換えタンパク質のクローニング、発現および精製。
GenScript(Piscataway, NJ)により、bmhsp12.6(GENBNAKアクセッション番号AY692227.1)、bmalt-2(GENBNAKアクセッション番号JF795950.1)、bmtpx-2(GENBNAKアクセッション番号AF319997.1)、およびbmtsp(GENBNAKアクセッション番号JF795955.1)の配列がpUC57ベクター中に提供された。遺伝子は、フォワード5’-CGG GAT CCA TGG AAG AAA AGG TAG TG-3’(配列番号31)およびリバース5’-CCC GAA TTC TTA ATG TTT CTC AAA ATA TGC TTT-3’(配列番号89)をBamHIおよびEcoRIの制限部位と共に使用して増幅した。PCR増幅産物を、pRSETA発現ベクターにクローニングし、コンピテントBL21(DE3)大腸菌細胞に形質転換して、6Xヒスチジンタグ付きの組換えタンパク質を発現させた。組換え融合タンパク質は、商品名SEPHAROSE(登録商標)(GE Healthcare Life Sciences、Pittsburg、PA)で販売されている固定化金属親和性Ni荷電アガロースクロマトグラフィーカラムを使用して精製し、300mMのイミダゾールで溶出した。最終精製タンパク質調製物中のエンドトキシンは、エンドトキシン除去カラム(Thermo Fisher Scientific, Rockford, IL)を用いて除去した。組換えタンパク質の発現および純度は、12%SDS-PAGEゲルおよび抗His抗体(Qiagen, Valencia, CA)を使用したウェスタンブロットで確認した。タンパク質濃度を、Bradford試薬(Thermo Fisher Scientific)を用いて決定した。
rDiHAX組換えタンパク質のクローニング、発現および精製。
DiHSP 12.6(遺伝子=NDI.2.2.2.G00663)、DiALT-2(遺伝子=nDi.2.2.2.g08197)、およびDiTPX-2(遺伝子=nDi.2.2.2.g06574)のコンティグヌクレオチド配列を、Wormbase ParaSiteから、BmHSP12.6、BmALT-2、およびBmTPX-2配列をブラストすることにより得た。BmHSP12.6、BmALT-2、およびBmTPX-2タンパク質は、それぞれDiHSP 12.6、DiALT-2、およびDiTPX-2タンパク質と、97%、63%、および96%の配列類似性を共有することが見出された。DiHSPのヌクレオチドおよびアミノ酸配列は、それぞれ配列番号90および配列番号91で提供される。DiALT-2のヌクレオチドおよびアミノ酸配列は、それぞれ配列番号92および配列番号93で提供される。DiTPXのヌクレオチドおよびアミノ酸配列は、それぞれ配列番号94および配列番号95で提供される。DiHSP 12.6、DiALT-2、およびDiTPX-2のヌクレオチド配列を直線的に組み合わせ、得られたdihax遺伝子をInvitrogen Life Technologies(商標)により合成した。キメラ遺伝子(配列番号96)は、pET100/D-TOPO(登録商標)ベクター(ThermoFisher Scientific, Rockford, IL)で提供され、コンピテントBL21DE3大腸菌に形質転換され、rDiHAX融合タンパク質(配列番号97)が発現された。簡潔に言うと、一晩種培養物を、500mLの滅菌LBブロスに播種し、最適化条件および選択圧の下で、OD600に達するまで増殖させた。次いで、細菌細胞を1mMのIPTG(Research Products International, Mt. Prospect, IL)で誘導し、さらに4時間増殖させた。次いで細胞を、12,000rpm、4℃で30分間遠心分離することにより沈降(pellet down)させた。タンパク質の精製のために、ペレットを20mLのTris-Buffered Saline(TBS)に再懸濁し、150μlのリゾチームを溶液に加え、シェーカープラットフォームで室温で30分間インキュベートした。インキュベーション後、ペレットを、各1分で4サイクル、間に30秒の休止を挟んで超音波処理した。超音波処理後、ライセートを12,000rpm、4℃で30分間遠心分離した。上清を廃棄し、ペレットを洗浄し、15mLの8M尿素をペレットに加え、一定に混合しながら4℃で一晩インキュベートした。インキュベーション後、ライセートを12,000rpmで、4℃で30分間遠心分離し、上清を氷上で新しい50mLコニカル遠心管に収集した。組換えタンパク質は、N末端の6つのヒスチジン残基タグ付きで発現させた。これにより、固定化金属アフィニティクロマトグラフィー(IMAC)によるrDiHAXタンパク質の精製が可能になった。特に、抽出されたタンパク質を、シェーカー内で2mLのコバルト樹脂と室温で30分間インキュベートし、10mlのカラムに充填した。カラムを10mlのTBSで洗浄した後、TBS中に調製した10mMのイミダゾール30mLで洗浄した。次いで、結合したタンパク質を、TBS中に10%グリセロールを含有する300mMのイミダゾールで溶出した。rDiHAXタンパク質の純度および分子サイズは、14%SDS-PAGEゲルで評価した。組換えタンパク質の分子量は約60kDaであった。脱塩後、タンパク質溶液を高容量エンドトキシン除去樹脂カラム(ThermoFisher Scientific)に通すことにより、エンドトキシンを精製タンパク質から除去した。濃縮タンパク質試料中のエンドトキシンのレベルは、Pierce(商標)LAL Chromogenic Endotoxin Quantitation Kit を使用して分析した。精製されたrDiHAX調製物中のエンドトキシンの最終量は、タンパク質1mgあたり3EUであった。
実験計画。
Balb/cマウス(4~6週齢のオス)を1群あたり10匹のマウスに群分けし、15μgのrBmHAXTまたはrDiHAX抗原と共に、10μgのAL019(ミョウバン+GLA、合成TLR4アゴニスト)をアジュバントとして、皮下に免疫化した。4回の免疫化を2週間間隔で投与した。対照動物には、AL019アジュバントのみを投与した。血液試料を各マウスから、各免疫化の前および最後の免疫化の2週間後に収集して、抗原特異的IgG、IgG1、IgG2a、IgG2bおよびIgG3の血清レベルを分析した。ADCCアッセイを、10~15のD. immitisL3を免疫化マウスの血清50μlおよび対照マウスからの腹膜細胞1×10と共にインキュベートすることにより、実施した。チャレンジ実験も、15~20のD. immitisL3を含有するマイクロポアチャンバーをすべてのマウスの腹腔に配置することにより、実施した。幼虫の生存率はチャレンジ後72時間で決定し、脾臓細胞と腹水/細胞を、ワクチン誘導保護の免疫学的相関について分析した。
rBmHAXTおよびrDiHAXワクチンによる免疫化は、高力価の抗原特異的IgG抗体およびそれらのアイソタイプを生成した。
精製rBmHAXTおよびrDiHAXタンパク質によるマウスの免疫化により、高力価の抗原特異的IgG抗体が生成された。特に、結果は、免疫化された動物が、対照と比較して、rBmHAXTまたはrDiHAXに対するIgG1、IgG2a、IgG2bおよびIgG3抗体の高い力価(1:10000力価)を発生したことを示した(p<0.05)。
ADCC実験からの結果は、20±5.93%の幼虫を死滅させたAL019群からの血清試料と比較して、rBmHAXT免疫化マウスからの血清試料が93±8.83%の幼虫を殺傷し、rDiHAX免疫化マウスからの血清試料が76±5.69%の幼虫を殺傷したことを示した。チャレンジ実験では、幼虫の死亡率は、対照(7.3±2.42%)と比較して、rBmHAXTおよびrDiHAX免疫化マウスでそれぞれ83±4.14%および71±8.99%であった。特に、rBmHAXTおよびrDiHAXワクチンをrBmHAXTおよびrDiHAXタンパク質と共に接種した動物からの血清試料中の抗体には、ELISAおよびウェスタンブロット分析によって決定されるように有意な(p<0.05)交差反応性が存在した。
細胞免疫応答の分析は、AL019対照と比較して、ワクチン接種動物の脾臓において抗原特異的CD3CD62LCCR7記憶T細胞が増加していることを示した。rBmHAXTおよびrDiHAX群の両方からの脾臓細胞の培養上清は、IL-17A、IL-6、IFN-γ、およびIL-10のレベルの上昇を示した。
例14:rBmHAXTの筋肉内注射は、イヌのDirofilaria immitis感染に対する保護を提供する。
免疫プロトコル。
6匹のイヌを、1群3匹ずつの2つの群に分けた。第1群の各動物には、100μg用量のrBmHAXTワクチンおよび40μgのミョウバン吸着GLA-SE(AL019;水中油型エマルジョンとして製剤化されたTLR4リガンドGLA)を3回、0、28、および56日目にi/mで左側腹部に投与した。第2群の各動物は対照として使用し、アジュバントのみを3回、0日、28日、および56日にi/mで左側腹部に投与した。さらに、-1、0、28、56、および84日目に、血液試料をEDTA管に、免疫化前の各イヌの伏在静脈から収集した。血清試料を抗体価(IgG、IgG1、IgG2、IgA、IgM、およびIgE)について分析した。末梢血単核細胞を、ワクチン誘発記憶細胞およびそれらのサイトカイン産生について分析した。防御抗体は、ADCCアッセイを実施することにより決定した。すべての動物は、50の薬剤感受性D. immitis幼虫でチャレンジして、保護を決定した。バイタルサインおよび臨床検査パラメータ(CBC、尿検査、肝機能)を、注射部位反応(腫れ、発赤、痛み)と同様に監視した。
イヌ血清中の抗原特異的抗体レベル。
rBmHAXT特異的総IgG1、IgG2、IgGA、IgMおよびIgE抗体のレベルは、各イヌの血清で、間接ELISAを使用し本明細書の他の場所に記載のように決定した。
抗体依存性細胞介在性細胞傷害(ADCC)アッセイ。
ADCCアッセイは、本明細書の他の箇所に記載のように実施した。8~10の生存D.immitisL3のそれぞれを、正常なイヌの血液から分離した50万個のPBMC、200μlのRPMI 1640培地、および100μlの血清試料と共に、5%CO、37℃でデュプリケートのウェルでインキュベートした。プレートを、D. immitisL3の生存率について、24時間ごとに光学顕微鏡下で監視した。透明で非運動性またはゆっくり運動する幼虫は、死滅と見なした。幼虫の死亡率は、死滅L3の数の、各ウェルから回収した総数に対する比率に、100を掛けたものとして表した。
rBmHAXTワクチンによる免疫化は、高力価の抗原特異的IgGアイソタイプ抗体を生成した。
3回目のワクチン接種の28日後、rBmHAXT抗原をワクチン接種したイヌは、アジュバント対照群と比較して、IgG抗体価(1:10,000)の有意な増加(p<0.01)を示した。対照群と比較して、3回の免疫化後のイヌの血清中のIgG1、IgG2、およびIgA抗体も有意に増加し、IgG1およびIgG2は、IgG抗体の最も主要なアイソタイプであった。IgEおよびIgM抗体のレベルに変化は観察されなかったが、この分析は、ワクチン接種動物のワクチン抗原に対して生成された、バランスのよいTh1/Th2免疫応答を示した。ADCCは、rBmHAXTワクチンを接種した動物からの血清試料が、AL019対照群(20±12.17%)と比較して、69±16.82%の薬剤感受性幼虫を殺傷したこと(p<0.05)を示した。同様に、ADCCは、rBmHAXTワクチンを接種した動物からの血清試料が、AL019対照群(38.2±22.80%)と比較して、86±7.50%の薬剤耐性幼虫(p<0.05)を殺傷したことを示した。rBmHAXTワクチン接種動物では、AL019対照群(29.3±3.51)と比較して、薬剤感受性のワーム負荷は7±1.73(P=0.0025)であった。これは、ワクチン接種動物におけるワームの定着が76.11%減少したことを表す。実際、薬剤感受性D. immitisL3によるチャレンジ感染後のワームの回復は、AL019対照群と比較して、rBmHAXTワクチン接種動物で有意な減少を示した(6.67対29.33)。これらの分析結果は、rBmHAXTによる3用量のワクチン接種後に防御抗体が生成され、これらの抗体がin vitroで薬剤耐性および薬剤感受性の両方のD. immitis感染幼虫を殺傷するのに効果的であることを示す。さらに、チャレンジ研究では、ワクチン接種によりワームの定着が大幅に減少したことが示された。したがって、rBmHAXTワクチンのイヌにおける使用は安全である。

Claims (17)

  1. Dirofilaria immitis(犬糸状虫)由来の2つ以上の抗原を含む、多価免疫原性組成物。
  2. 抗原が、タンパク質ベース、DNAベース、またはそれらの組み合わせである、請求項1に記載の多価免疫原性組成物。
  3. 抗原が、豊富な幼虫転写産物(Abundant Larval Transcript)、小型熱ショックタンパク質(HSP)12.6、チオレドキシンペルオキシダーゼ2、またはそれらの断片を含む、請求項1に記載の多価免疫原性組成物。
  4. 豊富な幼虫転写産物が配列番号98または配列番号99を含み;小型熱ショックタンパク質12.6が配列番号100または配列番号101を含み;チオレドキシンペルオキシダーゼ2が配列番号83または配列番号101を含む、請求項3に記載の多価免疫原性組成物。
  5. 豊富な幼虫転写産物が配列番号93を含み;小型熱ショックタンパク質12.6が配列番号91を含み;チオレドキシンペルオキシダーゼ2が配列番号95を含む、請求項4に記載の多価免疫原性組成物。
  6. 抗原が共有結合している、請求項1に記載の多価免疫原性組成物。
  7. 請求項1に記載の多価免疫原性組成物をコードする核酸を含む、組換えベクター。
  8. 請求項7に記載の組換えベクターを含む、組換え宿主細胞。
  9. アジュバントをさらに含む、請求項1に記載の多価免疫原性組成物。
  10. 請求項1に記載の多価免疫原性組成物を対象に投与することを含み、これにより対象に防御免疫応答を誘導する、対象において防御免疫応答を誘導する方法。
  11. 多価免疫原性組成物の1以上の追加用量を対象に投与することをさらに含む、請求項10に記載の方法。
  12. 免疫原性組成物が、皮下注射または筋肉内注射によって投与される、請求項10に記載の方法。
  13. 多価免疫原性組成物が、アジュバントと共に投与される、請求項10に記載の方法。
  14. 2つ以上の抗原を含む多価免疫原性組成物を対象に投与することを含む、ディロフィラリア症に対して動物を免疫化する方法であって、ここで前記抗原が、配列番号121または配列番号122を含む豊富な幼虫転写産物抗原;配列番号81または配列番号123を含む小型熱ショックタンパク質12.6抗原;配列番号82を含むテトラスパニン抗原;および配列番号83または配列番号124を含むチオレドキシンペルオキシダーゼ2抗原から選択され、それにより対象をディロフィラリア症に対して免疫化する、前記方法。
  15. 多価免疫原性組成物の1以上の追加用量を対象に投与することをさらに含む、請求項14に記載の方法。
  16. 免疫原性組成物が、皮下注射または筋肉内注射によって投与される、請求項14に記載の方法。
  17. 多価免疫原性組成物が、アジュバントと共に投与される、請求項14に記載の方法。
JP2022549106A 2020-02-13 2021-02-12 フィラリア症の検出および予防のためのワクチンおよび方法 Pending JP2023513607A (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
US16/790,277 2020-02-13
US16/790,277 US11370814B2 (en) 2010-11-15 2020-02-13 Vaccine and methods for detecting and preventing filariasis
PCT/US2021/017813 WO2021163448A2 (en) 2020-02-13 2021-02-12 Vaccine and methods for detecting and preventing filariasis

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2023513607A true JP2023513607A (ja) 2023-03-31
JPWO2021163448A5 JPWO2021163448A5 (ja) 2024-02-20

Family

ID=77295222

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2022549106A Pending JP2023513607A (ja) 2020-02-13 2021-02-12 フィラリア症の検出および予防のためのワクチンおよび方法

Country Status (7)

Country Link
EP (1) EP4103225A2 (ja)
JP (1) JP2023513607A (ja)
CN (1) CN115209916A (ja)
AU (1) AU2021218797A1 (ja)
BR (1) BR112022015994A2 (ja)
CA (1) CA3167346A1 (ja)
WO (1) WO2021163448A2 (ja)

Family Cites Families (27)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US3740421A (en) 1966-09-19 1973-06-19 Basf Wyandotte Corp Polyoxyethylene-polyoxypropylene aqueous gels
US5057540A (en) 1987-05-29 1991-10-15 Cambridge Biotech Corporation Saponin adjuvant
US4912094B1 (en) 1988-06-29 1994-02-15 Ribi Immunochem Research Inc. Modified lipopolysaccharides and process of preparation
WO1990014837A1 (en) 1989-05-25 1990-12-13 Chiron Corporation Adjuvant formulation comprising a submicron oil droplet emulsion
US5207987A (en) 1990-05-21 1993-05-04 Pb Diagnostic Systems Inc. Temperature controlled chamber for diagnostic analyzer
US5604105B1 (en) 1990-10-12 1999-08-24 Spectral Diagnostics Inc Method and device for diagnosingand distinguishing chest pain in early onset thereof
US5639876A (en) * 1991-02-12 1997-06-17 Heska Corporation Nucleic acid molecules encoding novel parasitic helminth proteins
CA2139425A1 (en) 1992-07-01 1994-01-20 F. Thomas Gianino Automated analytical instrument having a fluid sample holding tray transport assembly
AU6172194A (en) 1993-02-08 1994-08-29 Paravax, Inc. Defective sindbis virus vectors that express (toxoplasma gondii) p30 antigens
US6207646B1 (en) 1994-07-15 2001-03-27 University Of Iowa Research Foundation Immunostimulatory nucleic acid molecules
US6113918A (en) 1997-05-08 2000-09-05 Ribi Immunochem Research, Inc. Aminoalkyl glucosamine phosphate compounds and their use as adjuvants and immunoeffectors
US6063338A (en) 1997-06-02 2000-05-16 Aurora Biosciences Corporation Low background multi-well plates and platforms for spectroscopic measurements
US6426050B1 (en) 1997-05-16 2002-07-30 Aurora Biosciences Corporation Multi-well platforms, caddies, lids and combinations thereof
US5910287A (en) 1997-06-03 1999-06-08 Aurora Biosciences Corporation Low background multi-well plates with greater than 864 wells for fluorescence measurements of biological and biochemical samples
US6229603B1 (en) 1997-06-02 2001-05-08 Aurora Biosciences Corporation Low background multi-well plates with greater than 864 wells for spectroscopic measurements
US6150135A (en) * 1997-05-23 2000-11-21 Heska Corporation Dirofilaria and brugia thioredoxin peroxidase type-2 (TPX-2) nucleic acid molecules, and uses thereof
US6448089B1 (en) 1999-10-12 2002-09-10 Aurora Biosciences Corporation Multiwell scanner and scanning method
US6814933B2 (en) 2000-09-19 2004-11-09 Aurora Biosciences Corporation Multiwell scanner and scanning method
US7459314B2 (en) 2003-02-13 2008-12-02 Inverness Medical Switzerland Gmbh Lateral flow immunoassay controls
US8003407B2 (en) 2004-07-29 2011-08-23 Relia Diagnostic Systems, Llc Lateral flow system and assay
US20060051348A1 (en) 2004-09-09 2006-03-09 Jorn Gorlach Method of producing a plurality of isolated antibodies to a plurality of cognate antigens
US7387890B2 (en) 2004-12-16 2008-06-17 Chembio Diagnostic Systems, Inc. Immunoassay devices and use thereof
US7939342B2 (en) 2005-03-30 2011-05-10 Kimberly-Clark Worldwide, Inc. Diagnostic test kits employing an internal calibration system
US7976795B2 (en) 2006-01-19 2011-07-12 Rheonix, Inc. Microfluidic systems
US20100129935A1 (en) 2008-11-25 2010-05-27 Sarah Daniel Maddison Pregnancy testing method
US20100196200A1 (en) 2009-02-05 2010-08-05 Jin Po Lee Biological test strip
CN110051832B (zh) * 2019-05-31 2020-11-10 四川农业大学 一种犬恶丝虫病疫苗

Also Published As

Publication number Publication date
AU2021218797A1 (en) 2022-08-25
BR112022015994A2 (pt) 2022-10-11
WO2021163448A3 (en) 2021-11-25
EP4103225A2 (en) 2022-12-21
WO2021163448A2 (en) 2021-08-19
CA3167346A1 (en) 2021-08-19
CN115209916A (zh) 2022-10-18

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US20130236490A1 (en) Multivalent Vaccine for Filariasis
US11370814B2 (en) Vaccine and methods for detecting and preventing filariasis
Malkin et al. Phase 1 study of two merozoite surface protein 1 (MSP142) vaccines for Plasmodium falciparum malaria
AU2006214694B2 (en) A plasmodium vivax hybrid circumsporozoite protein and vaccine
Torben et al. Role of antibodies in Sm-p80-mediated protection against Schistosoma mansoni challenge infection in murine and nonhuman primate models
Mwangi et al. DNA-encoded fetal liver tyrosine kinase 3 ligand and granulocyte macrophage-colony-stimulating factor increase dendritic cell recruitment to the inoculation site and enhance antigen-specific CD4+ T cell responses induced by DNA vaccination of outbred animals
Lu et al. Alpha-galactosylceramide enhances protective immunity induced by DNA vaccine of the SAG5D gene of Toxoplasma gondii
AU2012266880A2 (en) Compositions and methods for inducing immune responses against bacteria in the genus staphylococcus
Sánchez et al. Homologous prime-boost strategy with TgPI-1 improves the immune response and protects highly susceptible mice against chronic Toxoplasma gondii infection
WO2017011380A1 (en) Vaccine and methods for detecting and preventing filariasis
Babaie et al. Immunization of C57BL/6 mice with GRA2 combined with MPL conferred partial immune protection against Toxoplasma gondii
US20220332772A1 (en) Vaccine and methods for detecting and preventing filariasis
US20230089516A1 (en) Vaccine and Methods for Detecting and Preventing Filariasis
KR20200032169A (ko) 말라리아 백신
JP2023513607A (ja) フィラリア症の検出および予防のためのワクチンおよび方法
Nazeri et al. Vaccine adjuvants CpG (oligodeoxynucleotides ODNs), MPL (3-O-deacylated monophosphoryl lipid A) and naloxone-enhanced Th1 immune response to the Plasmodium vivax recombinant thrombospondin-related adhesive protein (TRAP) in mice
US20240115674A1 (en) Vaccine and methods for preventing filariasis and dirofilariasis
EP1240328B1 (en) Antigenic protein lppq of mycoplasma mycoides subsp. mycoides sc., its preparation and use
US11413336B2 (en) Coccidioides antigens and methods of their use
OA20058A (en) Malaria vaccine.
Lloyd et al. Induction of Protective Immunity against
by Recombinant Protection against Cutaneous
JPWO2019145792A5 (ja)

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20240209

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20240209