JP2023511358A - 線維化、肥大または心不全の処置または予防における使用のための骨髄由来増殖因子 - Google Patents

線維化、肥大または心不全の処置または予防における使用のための骨髄由来増殖因子 Download PDF

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Abstract

本発明は、線維化および肥大の処置または予防における使用のための、タンパク質骨髄由来増殖因子(MYDGF)、または前記タンパク質をコードする核酸に関する。本発明はまた、心不全の処置における使用のための、タンパク質MYDGF、または前記タンパク質をコードする核酸にも関する。本発明はまた、線維化および肥大の処置における使用のためのかつ心不全の処置における使用のための、前記核酸を含むベクター、前記核酸を発現する宿主細胞、および方法にも関する。

Description

本発明は、線維化および肥大の処置または予防における使用のための、タンパク質骨髄由来増殖因子(MYDGF)または前記タンパク質をコードする核酸に関する。本発明はまた、心不全の処置または予防における使用のための、タンパク質MYDGFまたは前記タンパク質をコードする核酸にも関する。本発明はまた、線維化および肥大の処置における使用のための、ならびに心不全の処置または予防における使用のための、前記核酸を含むベクター、前記核酸を発現する宿主細胞および方法にも関する。
骨髄由来増殖因子(MYDGF)は、因子1(Factor1)としても知られる、ヒト染色体19上のオープンリーディングフレーム10(C19Orf10)にコードされるタンパク質である。該タンパク質は、2007年に、いわゆる線維芽細胞様滑膜細胞(FLS細胞)のプロテオーム解析において、滑膜中の新規分泌因子として記載された。該タンパク質の分泌と関節の炎症性疾患との間には相関性のあることが、実験的または統計学的な証拠は何もなしに推測されている(Weiler et al., Arthritis Research and Therapy 2007, The identification and characterization of a novel protein, c19orf10, in the synovium)。対応する特許出願では、関節の処置のため、ならびに増殖変化を受けている組織の診断および組織中の変化のモニタリングのための治療剤として、該タンパク質が特許請求されている(米国特許出願公開第2008/0004232A1号、Characterization of cl9orfl0, a novel synovial protein)。別の科学出版物には、肝細胞癌の細胞内で、該タンパク質の発現が亢進していると記載されている(Sunagozaka et al., International Journal of Cancer, 2010, Identification of a secretory protein c19orf10 activated in hepatocellular carcinoma)。組換え産生タンパクによって、培養肝細胞癌細胞に対する増殖亢進効果が明らかとなった。C19Orf10は最初はインターロイキンと考えられていたため、IL-25、IL-27およびIL-27Wとも称されていることに留意のこと。しかし、「IL-25」および「IL-27」という用語は当分野において一貫性なく使用されており、種々の異なるタンパク質を名付けるために使用されている。例えば、米国特許出願公開第2004/0185049号ではあるタンパク質がIL-27と称され、免疫応答のモジュレーションにおけるその使用が開示されている。このタンパク質は因子1とは構造的に異なる(配列番号1による因子1のアミノ酸列を、UniProt:Q8NEV9による「IL-27」のアミノ酸配列と比較のこと)。同様に、欧州特許出願公開第2130547A1号ではあるタンパク質がIL-25と称され、炎症の処置におけるその使用が開示されている。このタンパク質は当分野においてL-17Eとも称されており、因子1とは構造的に異なる(配列番号1による因子1のアミノ酸列を、UniProt:Q9H293による「IL-25」のアミノ酸配列と比較のこと)。
国際公開第2014/111458号では、非形質転換組織または非形質転換細胞の増殖の亢進およびアポトーシスの阻害における使用のための、特に急性心筋梗塞の処置における使用のための因子1が開示されている。さらに開示されているのは、医学的な使用のための、特に血管新生が疾患の発症または進行の一因となる疾患の処置または予防における使用のための、因子1の阻害剤である。
Korf-Klingebielら[Nature Medicine, 2015, Vol. 21(2):140-149]は、心筋梗塞後に骨髄細胞によってC19Orf10が分泌され、そのタンパク質が心筋細胞の生存および血管新生を促進すると報告している。著者らは、骨髄に由来する単球およびマクロファージがこのタンパク質を内因的に産生して心筋梗塞後の心臓を保護かつ修復することを示し、その名前を骨髄由来増殖因子(MYDGF)とすることを提案する。特に、心筋梗塞後の瘢痕サイズおよび収縮機能不全を低減するための組換えMydgfを用いた処置について報告する。
心不全は、持続的な血行力学的負荷、心筋損傷または遺伝子突然変異に応答して発症する恐れのある、予後不良を伴う臨床症候群である。慢性炎症が心不全の発病および進行の一因となり、治療薬の標的として浮上している(Adamo et al. Nat Rev Cardiol. 2020;17:269-285)。心不全と炎症の間の関係は双方向的であり、心臓、免疫系および末梢臓器の間のクロストークが関与する。心筋においては、炎症細胞に由来するサイトカインおよび増殖因子が心臓の実質細胞および間質細胞に作用することにより、収縮機能不全および有害な左心室(LV)リモデリングを促進する(Bozkurt et al. Circulation. 1998;97:1382-1391; Ismahil et al. Circ Res. 2014;114:266-282; Sager et al. Circ Res. 2016;119:853-864; Hulsmans et al. J Exp Med. 2018;215:423-440; Bajpai et al. Nat Med. 2018;24:1234-1245)。
マウスにおける、横行大動脈狭窄(TAC)手術によって課せられた心臓の急性圧負荷は、自然免疫系および適応免疫系が関与する炎症応答を誘起する(Martini et al. Circulation. 2019;140:2089-2107)。圧を加えられたが生存可能な心筋細胞から発するシグナルは、炎症カスケードを誘発する(Suetomi et al. Circulation. 2018;138:2530-2544)。数時間以内に、炎症誘発性サイトカインおよびケモカインの心臓発現レベルが増加し(Baumgarten et al. Circulation. 2002;105:2192-2197; Xia et al. Histochem Cell Biol. 2009;131:471-481)、一週間以内に、最も主要な免疫細胞サブセットが、圧負荷された心臓中でサイズを拡大する、および/または活性化の兆候を示す(Xia 2009; Liao et al. Proc Natl Acad Sci U S A. 2018;115:E4661-E4669; Patel et al. JACC Basic Transl Sci. 2018;3:230-244)。
線維化とは、修復性プロセスまたは反応性プロセス、例えば反応状態、良性状態または病的状態における、臓器または組織中での過剰な線維性結合組織の形成のことを言う。線維化する間に沈着した結合組織は、基本となる臓器または組織の正常な構造および機能に干渉するまたはそれらを阻害する可能性がある。
肥大とは、その構成細胞の拡大による、臓器または組織の容量の増加のことを言う。
肥大および線維化を処置するための手段および方法が依然として必要である。心不全を処置するための手段および方法も、依然として必要である。
本発明は、第1の態様において、線維化または肥大の処置または予防における使用のための、骨髄由来増殖因子(MYDGF)またはMYDGFの生物学的機能を呈するその断片もしくは変異体を提供する。
一実施形態によれば、MYDGFタンパク質またはMYDGFの生物学的機能を呈するその断片もしくは変異体は、心不全の処置または予防における使用のためのものである。好ましい実施形態によれば、心不全は慢性心不全である。さらなる実施形態によれば、心不全または慢性心不全は、駆出率が保たれた心不全(HFpEF)、駆出率が低下した心不全(HFrEF)、または駆出率が軽度低下した心不全(heart failure with mid-range ejection fraction)(HFmrEF)である。
好ましい実施形態によれば、MYDGFタンパク質は配列番号1を含む。あるいは、MYDGFタンパクは配列番号1の断片もしくは変異体を含み、それはMYDGFの生物学的機能を呈し、ここで前記変異体は配列番号1に対して少なくとも85%のアミノ酸配列の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
好ましい実施形態によれば、線維化は心臓、腎臓、肺および/または肝臓の線維化である。一実施形態によれば、線維化は間質性肺疾患、好ましくは進行性線維化性間質性肺疾患、より好ましくは特発性肺線維症である。
好ましい実施形態によれば、肥大は心筋細胞の肥大である。
さらなる態様によれば、本発明は、線維化または肥大の処置または予防における使用のための、増殖因子タンパク質MYDGFまたはMYDGFの生物学的機能を呈するその断片もしくは変異体をコードする核酸を提供する。
さらなる態様によれば、本発明は、心不全の処置における使用のための、増殖因子タンパク質MYDGFまたはMYDGFの生物学的機能を呈するその断片もしくは変異体をコードする核酸を提供する。
一実施形態によれば、前記核酸は、配列番号1に対して少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードする。
さらなる態様によれば、本発明は、線維化または肥大の処置または予防における使用のための、本発明の核酸を含むベクターを提供する。
さらに別の態様によれば、本発明は、心不全の処置における使用のための、本発明の核酸を含むベクターを提供する。
さらなる態様によれば、本発明は、線維化または肥大の処置または予防における使用のための、本発明の核酸または本発明のベクターを含む宿主細胞を提供する。好ましくは、前記宿主細胞は前記核酸を発現する。
さらに別の態様によれば、本発明は、線維化または肥大の処置または予防における使用のための医薬組成物であって、本発明のMYDGFタンパク質、核酸、ベクターまたは宿主細胞を含み、適した医薬賦形剤を含んでいてもよい、医薬組成物を提供する。
さらに別の態様によれば、本発明は、心臓機能の改善における使用のための医薬組成物であって、本発明のMYDGFタンパク質、核酸、ベクターまたは宿主細胞を含み、適した医薬賦形剤を含んでいてもよい、医薬組成物を提供する。
好ましい実施形態によれば、使用のための医薬組成物は、経口、静脈内、皮下、粘膜内、動脈内、筋肉内または冠動脈内の経路によって投与される。投与は、好ましくは、1回以上のボーラス注射および/または点滴による。
さらなる態様によれば、本発明は、線維化の処置方法を提供する。前記方法は、線維化の処置を必要とする患者に治療有効量のMYDGFまたはMYDGFの生物学的機能を呈するその断片もしくは変異体を投与することを含む。
一実施形態によれば、MYDGFは配列番号1またはMYDGFの生物学的機能を呈する配列番号1の断片もしくは変異体を含む。前記変異体は、配列番号1に対して少なくとも85%のアミノ酸配列の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
一実施形態によれば、線維化は心臓、腎臓、肺および/または肝臓の線維化である。
さらに別の実施形態によれば、MYDGFまたはMYDGFの生物学的機能を呈するその断片もしくは変異体は、1回以上のボーラス注射および/または点滴によって、好ましくは薬学的に許容される担体中において投与される。
さらなる態様によれば、本発明は、肥大の処置方法を提供する。前記方法は、肥大の処置を必要とする患者に治療有効量のMYDGFまたはMYDGFの生物学的機能を呈するその断片もしくは変異体を投与することを含む。
一実施形態によれば、MYDGFは配列番号1またはMYDGFの生物学的機能を呈する配列番号1の断片もしくは変異体を含む。前記変異体は、配列番号1に対して少なくとも85%のアミノ酸配列の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
好ましい実施形態によれば、肥大は心筋細胞の肥大である。
さらに別の実施形態によれば、MYDGFまたはMYDGFの生物学的機能を呈するその断片もしくは変異体は、1回以上のボーラス注射および/または点滴によって、好ましくは薬学的に許容される担体中において投与される。
さらなる態様によれば、本発明は、心不全の処置または予防を必要とする患者に治療有効量の増殖因子MYDGFまたはMYDGFの生物学的機能を呈するその断片もしくは変異体を投与することを含む、心不全の処置または予防方法を提供する。好ましい実施形態によれば、心不全は慢性心不全である。さらなる好ましい実施形態によれば、心不全または慢性心不全はHFpEFまたはHFrEFであり、好ましくはHFpEFはステージCもしくはステージDのHFpEFであるか、またはHFrEFはステージCもしくはステージDのHFrEFである。
一実施形態によれば、MYDGFは配列番号1またはMYDGFの生物学的機能を呈する配列番号1の断片もしくは変異体を含む。前記変異体は、配列番号1に対して少なくとも85%のアミノ酸配列の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
さらに別の実施形態によれば、MYDGFまたはMYDGFの生物学的機能を呈するその断片もしくは変異体は、1回以上のボーラス注射および/または点滴によって、好ましくは薬学的に許容される担体中において投与される。
骨髄由来増殖因子は、特発性肺線維症の患者由来の肺線維芽細胞において、トランスフォーミング増殖因子β1(TGFβ1)によって刺激されるSMADのリン酸化を阻害する。TGFβ1および/またはMYDGFの非存在下または存在下で培養した、特発性肺線維症の患者由来の肺線維芽細胞における、SMAD2(Ser465/467)およびSMAD3(Ser423/425)のリン酸化(α-チューブリン発現に対して正規化されている)。 骨髄由来増殖因子は、末期の心不全患者由来の左心室線維芽細胞におけるトランスフォーミング増殖因子β1(TGFβ1)によって刺激されるSMADのリン酸化を阻害する。TGFβ1および/またはMydgfの非存在下または存在下で培養した、末期の心不全患者由来の左心室線維芽細胞における、SMAD2(Ser465/467)およびSMAD3(Ser423/425)のリン酸化[非リン酸化SMAD2/3の発現に対して正規化されている]。 骨髄由来増殖因子は、末期の心不全患者由来の左心室線維芽細胞におけるトランスフォーミング増殖因子β1(TGFβ1)によって刺激されるSMADのリン酸化を阻害する。TGFβ1および/またはMYDGFの非存在下または存在下で培養した、末期の心不全患者由来の左心室線維芽細胞における、SMAD2(Ser465/467)およびSMAD3(Ser423/425)のリン酸化(非リン酸化SMAD2/3の発現に対して正規化されている)。 マウス骨髄由来増殖因子は、マウス胚線維芽細胞における、トランスフォーミング増殖因子β1(Tgfβ1)によって刺激されるSmadのリン酸化を阻害する。 MYDGFは、圧負荷の間の左心室(LV)リモデリングを減弱させる。(A)Mydgf野生型(WT)およびノックアウト(KO)マウスに、横行大動脈狭窄(TAC)手術または擬似手術を供した(7日目)。脛骨の長さに対するLVの質量比。典型的な、長軸方向の組織切片(7日目、スケールバー、1mm)および1群あたり6~15匹のマウスから得た概要データ。同じ遺伝子型の擬似に対して***P<0.001(ダネットの事後検定を用いた一元配置分散分析);P<0.05、##P<0.01(2つの独立したサンプルのt検定)。(B)LV心筋細胞の断面積。コムギ胚芽凝集素(WGA;スケールバー、50μm)を用いて染色した典型的な組織切片および1群あたり3~7匹のマウスから得た概要データ。同じ遺伝子型の擬似に対して<0.05、***P<0.001(ダネットの事後検定を用いた一元配置分散分析);P<0.05、###P<0.001(2つの独立したサンプルのt検定)。(C)単離された心室心筋細胞のサイズ。典型的な位相差顕微鏡画像(7日目、スケールバー、100μm)および1群あたり3~8匹のマウスから得た概要データ。同じ遺伝子型の擬似に対して***P<0.001(統計的検定);P<0.05(統計的検定)。(D)擬似手術またはTAC手術の7日後の典型的なLV圧容量ループ。 骨髄に由来するMYDGFは、左心室(LV)リモデリングを減弱させる。(A~E)Mydgf野生型(WT)またはノックアウト(KO)マウス由来の骨髄細胞(BMC)を、(→)KOまたはWTのレシピエントに移植した。骨髄の再構築後に、マウスに横行大動脈狭窄(TAC)手術を施し、14日間経過観察した。P<0.05、**P<0.01(2つの独立したサンプルのt検定)。(A)脛骨の長さに対するLVの質量比。1群あたり7~18匹のマウス。(B)LV心筋細胞の断面積。1群あたり4~5匹のマウス。(C)LVイソレクチンB4(IB4)内皮細胞密度。1群あたり4~6匹のマウス。(D)心エコー検査によって決定した、LV拡張末期面積(LVEDA)およびLV収縮末期面積(LVESA)。1群あたり5~10匹のマウス。LVEDA:P<0.05、WT右矢印KO対KO右矢印KO。LVESA:P<0.01、WT右矢印KO対KO右矢印KO(2つの独立したサンプルのt検定)。(E)面積変化率(FAC)。(D)と同じ動物。円は個々のマウスを表す。水平バーは平均値である。P<0.05、**P<0.01。(F)レンチウイルス遺伝子導入によって炎症細胞中にMYDGFを過剰発現させるための、(G~N)において使用された実験戦略(HSCは造血幹細胞のことを示す)。(G)レンチウイルスで形質導入したBMCの移植に続いてドキシサイクリンで1週間処置した、または処置しなかった、移植の6週間後のWTレシピエントマウス由来のBMCおよび脾細胞中のMYDGFおよびアルファ-チューブリンの発現を示す、典型的な免疫ブロット(4つのうちの)。(H)レンチウイルスで形質導入したBMCの移植に続いてドキシサイクリンで1週間処置した、または処置しなかった、移植の6週間後のWTレシピエントマウスにおけるMYDGFの血漿レベル。(I~M)すべての動物は、ドキシサイクリンで処置した。(I)レンチウイルスで形質導入したBMCの移植に続いてドキシサイクリンで1週間処置した、または処置しなかった、移植の6週間後のWTレシピエントマウス中のLVのMYDGFおよびGAPDHの発現を示す、典型的な免疫ブロット。(J~L、およびN)同じレンチウイルス擬似に対してP<0.05、**P<0.01、***P<0.001;##P<0.01、###P<0.001(テューキーの事後検定を用いた二元配置分散分析)。(J)脛骨の長さに対するLVの質量比。1群あたり6匹のマウス。(K)LV心筋細胞の断面積。1群あたり5匹のマウス。(L)IB4内皮細胞密度。1群あたり6~7匹のマウス。(M)LVEDAおよびLVESA。1群あたり6~8匹のマウス。LVEDAおよびLVESA:P<0.001、Lenti.対照TAC対Lenti.対照擬似。LVEDA:P<0.05、TAC Lenti.MYDGF対TAC Lenti.対照。LVESA:P<0.01、TAC Lenti.MYDGF対TAC Lenti.対照。(N)FAC。(M)と同じ動物。 心筋細胞肥大。新生仔ラットの心室心筋細胞を、エンドセリン1(ET1、100nmol/L)、アンジオテンシンII(AngII、100nmol/L)、インスリン様増殖因子(IGF、50ng/mL)および/またはMYDGF(別様に述べられない限り、100ng/mL)で24時間刺激した。(A)典型的な免疫蛍光顕微鏡画像。スケールバー、50mm。4~6回の実験から得た概要データ。(B)用量反応曲線。4回の実験から得たデータ。半数阻害濃度(half-maximal inhibitory concentration)(IC50)を、4パラメータロジスティック回帰により計算した。対照は、無刺激細胞のサイズを示す。(C)タンパク質含有量。3回の実験から得たデータ。(D)RT-qPCRにより決定したMyh7(ベータミオシン重鎖)、Nppa(ナトリウム利尿ペプチドA型)およびGapdhのmRNA発現レベル。7~13回の実験から得たデータ。無刺激対照に対してP<0.05、***P<0.001;P<0.05、##P<0.01、###P<0.001(テューキーの事後検定を用いた一元配置分散分析)。 リン酸化プロテオーム解析により、PIM1が、MYDGFのシグナル伝達の標的として同定される。(A~D)エンドセリン1(ET1、100nmol/L)および/またはMYDGF(100ng/mL)で8時間刺激した、新生仔ラットの心室心筋細胞(NRCM)のリン酸化プロテオーム解析。(A)リン酸化プロテオームデータおよびキナーゼ基質相互作用の予備的知識からキナーゼ活性を推論するためのボトムアップアプローチを例示するフローチャート。(B)リン酸化プロテオームデータセットの主成分解析(1条件あたり4つの生物学的レプリケート)。(C)リン酸化プロテオームの変化を例示するヒストグラム。赤色のバーは、無刺激対照と比較して、ET1によって有意に調節されるすべてのリン酸化部位(phosphosite)を表す(n=120、P<0.05、1を超えるlog倍率変化)。青色のバーは、ET1のみで刺激した細胞と比較した、ET1+MYDGFで刺激した細胞におけるこれらの部位の調節を示す。(D)ET1のみで刺激した細胞と比較した、ET1+MYDGFで刺激した細胞におけるキナーゼ活性の、基質に基づく推論。ET1および/またはMYDGFで16時間刺激したNRCMにおける、(E)PIM1タンパク質の発現および(F)キナーゼ活性。6回の実験。P<0.05、**P<0.01、***P<0.001(2つの独立したサンプルのt検定)。(G)ET1、MYDGFおよび/またはSMI4a(10μmol/L)で24時間刺激後のNRCMのサイズ。3回の実験。対照に対してP<0.05、P<0.05(テューキーの事後検定を用いた一元配置分散分析)。(H)スクランブルした(SCR)またはPIM1の、低分子干渉(si)RNAでトランスフェクションし、ET1および/またはMYDGFで24時間刺激した後のNRCMのサイズ。典型的な免疫ブロットは、siRNAトランスフェクション後のPIM1およびベータアクチンの発現を示す。4回の実験。対照に対して***P<0.001、##P<0.01(テューキーの事後検定を用いた一元配置分散分析)。 MYDGFは、PIM1を介してSERCA2aの発現を亢進させる。(A)MYDGF(100ng/mL)で刺激した新生仔ラットの心室心筋細胞(NRCM)における、PIM1、筋/小胞体Ca2+ATPアーゼ2a(SERCA2a)およびベータアクチンの発現を示す、典型的な免疫ブロットおよび概要データ。4~5回の実験。ベースラインに対してP<0.05(ダネットの事後検定を用いた一元配置分散分析)。(B)MYDGFおよび/またはSMI4a(10μmol/L)で16時間刺激したNRCMにおける、SERCA2aおよびベータアクチンの発現を示す、典型的な免疫ブロット(3つのうちの)。示している場合、スクランブルした(SCR)またはPIM1の低分子干渉(si)RNAで、細胞を最初にトランスフェクトした。(C)擬似手術または横行大動脈狭窄(TAC)手術を供したMydgf野生型(WT)およびノックアウト(KO)マウスにおける、左心室(LV)のSERCA2aおよびビンキュリンの発現を示す典型的な免疫ブロットおよび概要データ。1群あたり9匹のマウス。同じ遺伝子型の擬似に対して***P<0.001(ダネットの事後検定を用いた一元配置分散分析);P<0.05(2つの独立したサンプルのt検定)。(D)擬似手術またはTAC手術の7日後にWTおよびKOマウスから単離された心筋細胞における、SERCA2a、PIM1およびアルファ-チューブリンの発現を示す、典型的な免疫ブロットおよび概要データ。1群あたり5~6匹のマウス。同じ遺伝子型の擬似に対してP<0.05、***P<0.001;P<0.05、##P<0.01(テューキーの事後検定を用いた二元配置分散分析)。(E)WTまたはKOマウス由来の骨髄細胞を、(右矢印)致死的な放射線を浴びせたKOまたはWTのレシピエント中に移植した。骨髄の再構築後に、マウスにTAC手術を施し、14日間経過観察した。LVのSERCA2a、PIM1およびアルファ-チューブリンの発現を示す、典型的な免疫ブロットおよび概要データ。1群あたり8匹のマウス。P<0.05(2つの独立したサンプルのt検定)。(F)TACの7日後の、LVのSERCA2a、PIM1およびベータアクチンの発現を示す、典型的な免疫ブロットおよび概要データ。マウスには、Lenti.対照またはLenti.MYDGFで形質導入した骨髄細胞を移植しており、手術の1週間前からドキシサイクリンで処置した。***P<0.001(2つの独立したサンプルのt検定)。 MYDGFタンパク質治療。(A)処置レジメン。横行大動脈狭窄(TAC)手術後、マウスに、組換えMYDGF(10μg)の左心室(LV)内腔へのボーラス注射、それに続く3日間(B)、7日間(C)または42日間(D-I)の皮下点滴(10μg/日)を与えた。TAC手術した対照マウスを希釈剤のみで処置した(ボーラス注射および点滴)。(B)MYDGFの血漿レベル。1群あたり5~7匹のマウス。***P<0.001(検定)。(C)LVの筋/小胞体Ca2+ATPアーゼ2a(SERCA2a)およびアルファ-チューブリンの発現を示す、典型的な免疫ブロットおよび概要データ。1群あたり5~7匹のマウス。P<0.05(2つの独立したサンプルのt検定)。(D)TAC(1群あたり16~22匹のマウス)の7日後および42日後または擬似手術(9匹のマウス)の7日後の連続的な心エコー検査によって決定した、LV拡張末期面積(LVEDA)およびLV収縮末期面積(LVESA)。LVEDA:P<0.01、28日の時点での、TAC(対照およびMYDGF)対擬似。LVESA:P<0.01、7日および28日の時点での、TAC(対照およびMYDGF)対擬似(ダネットの事後検定を用いた一元配置分散分析)。LVEDA:P<0.01、28日の時点でのMYDGF対対照;LVESA:P<0.001 28日の時点でのMYDGF対対照(2つの独立したサンプルのt検定)。(E)面積変化率(FAC)。(C)と同じ動物。すべてのTAC群に対して***P<0.001(ダネットの事後検定を用いた一元配置分散分析);##P<0.01、###P<0.001 KO対WT(2つの独立したサンプルのt検定)。(F)28日の時点での、脛骨の長さに対するLVの質量比。1群あたり6~12匹のマウス。(G)28日の時点での、LV心筋細胞の断面積。1群あたり6匹のマウス。(H)28日の時点での、左心室におけるイソレクチンB4(IB4)内皮細胞密度。1群あたり6匹のマウス。(E~G)擬似に対してP<0.05、**P<0.01、***P<0.001(ダネットの事後検定を用いた一元配置分散分析);P<0.05、###P<0.001(2つの独立したサンプルのt検定)。(I)27匹の対照マウスおよび17匹のMYDGFで処置したマウスにおける、TAC後の累積生存率(cumulative survival)。P=0.05(ログランク検定)。
以下で本発明について詳細に記載する前に、本発明は、本明細書に記載の特定の方法論、プロトコールおよび試薬に限定されるものではなく、これらは変化し得るものと理解されたい。本明細書で使用される専門用語は特定の実施形態を説明するためだけのものであり、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される本発明の範囲を限定する意図はないことも理解されたい。別様に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、当業者によって通常理解されるものと同じ意味を有する。
定義
好ましくは、本明細書で使用される用語は、「A multilingual glossary of biotechnological terms: (IUPAC Recommendations)」, H.G.W. Leuenberger, B. Nagel, and H. Koelbl, Eds., Helvetica Chimica Acta, CH-4010 Basel, Switzerland, (1995)に記載の通りに定義される。
本発明を実施するためには、別様に指示されない限り、当分野の文献において説明されている化学、生化学、細胞生物学および組換えDNA技術の従来法が使用される(例えば、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd Edition, J. Sambrook et al. eds., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor 1989を参照のこと)。さらに、同様に当分野の文献において説明されている臨床心臓病学の従来法も使用される(例えば、Braunwald's Heart Disease. A Textbook of Cardiovascular Medicine, 9th Edition, P. Libby et al. eds., Saunders Elsevier Philadelphia, 2011を参照のこと)。
文脈上別様に要求されない限り、本明細書およびそれに続く特許請求の範囲全体を通して、「含む(comprise)」という語ならびに「含む(comprises)」および「含むこと」などの変形は、述べられた整数または工程あるいは述べられた整数または工程の群を含むことを暗示しているが、他の任意の整数または工程あるいは整数または工程の群を除外することは暗示していないことが理解されよう。本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、内容上別様に明確に規定されない限り、複数の指示対象を含む。
核酸分子は、ヌクレオチドモノマーから作られる重合体高分子として理解される。ヌクレオチドモノマーは、核酸塩基、五炭糖(例えば、これらに限定されないが、リボースまたは2’-デオキシリボース)および1~3個のリン酸基から構成される。典型的には、ポリヌクレオチドは、個々のヌクレオチドモノマーの間のホスホジエステル結合によって形成される。言及される本発明の文脈では、核酸分子にはリボ核酸(RNA)およびデオキシリボ核酸(DNA)が含まれるが、これらに限定されない。「ポリヌクレオチド」および「核酸」という用語は、本明細書において交換可能に使用される。
「オープンリーディングフレーム」(ORF)という用語は、アミノ酸に翻訳され得るヌクレオチドの配列のことを指す。典型的には、そのようなORFは、開始コドンと、それに続く3ヌクレオチドの倍数の長さを有する領域を通常は含有するが、所与のリーディングフレーム中に終止コドン(TAG、TAA、TGA、UAG、UAAまたはUGA)は含有しない。典型的には、ORFは、天然に存在するか、または人工的に、すなわち遺伝子工学的な手段によって構築される。ORFはタンパク質をコードし、それが翻訳されることが可能なアミノ酸がペプチド連結鎖を形成する。
「タンパク質」および「ポリペプチド」という用語は、本明細書において交換可能に使用され、長さまたは翻訳後修飾にかかわらず、アミノ酸の任意のペプチド結合連結鎖のことを指す。本発明において使用可能なタンパク質(タンパク質誘導体、タンパク質変異体、タンパク質断片、タンパク質セグメント、タンパク質エピトープおよびタンパク質ドメインを含む)は、化学修飾によってさらに修飾することができる。これは、そのような化学的に修飾されたポリペプチドが、天然に存在する20種のアミノ酸以外の化学基を含むことを意味する。そのような他の化学基の例としては、グリコシル化アミノ酸およびリン酸化アミノ酸が挙げられるが、これらに限定されない。ポリペプチドの化学修飾は、親ポリペプチドと比較して有利な特性、例えば、安定性の強化、生物学的半減期の増加または水溶性の増加のうちの1つ以上をもたらし得る。本発明において使用可能な、変異体に適用可能な化学修飾には:ペグ化、非グリコシル化親ポリペプチドのグリコシル化、グルカゴン様ペプチド1アゴニストのような低分子治療薬であって、エキセナチド、アルビグルチド、タスポグルチド、DPP4阻害剤、インクレチンおよびリラグルチドを含む低分子治療薬への共有結合、または親ポリペプチド中に存在するグリコシル化パターンの修飾が含まれるが、これらに限定されない。本発明において使用可能な、変異体に適用可能なそのような化学修飾は、翻訳時に、または翻訳後に起こり得る。
「アミノ酸」という用語は、天然に存在するアミノ酸ならびにアミノ酸誘導体を包含する。本発明の文脈における疎水性非芳香族アミノ酸は、好ましくは、Kyte-Doolittleの疎水性インデックスが0.5よりも大きく、より好ましくは1.0よりも大きく、さらにより好ましくは1.5よりも大きく、かつ芳香族ではない任意のアミノ酸である。好ましくは、本発明の文脈における疎水性非芳香族アミノ酸は、アミノ酸のアラニン(Kyte Doolittleの疎水性インデックスが1.8)、メチオニン(Kyte Doolittleの疎水性インデックスが1.9)、イソロイシン(Kyte Doolittleの疎水性インデックスが4.5)、ロイシン(Kyte Doolittleの疎水性インデックスが3.8)およびバリン(Kyte Doolittleの疎水性インデックスが4.2)、または上記で定義されたKyte Doolittleの疎水性インデックスを有するそれらの誘導体からなる群から選択される。
本明細書において使用される「変異体」という用語は、アミノ酸配列の1つまたは複数が変化することによって、それが由来するポリペプチドまたはその断片と比べて異なるポリペプチドのことを指す。タンパク質の変異体が由来するポリペプチドは、親ポリペプチドとしても知られる。同様に、タンパク質断片の変異体が由来する断片は、親断片として知られる。典型的には、変異体は、人工的に、好ましくは遺伝子工学的手な手段によって構築される。典型的には、親ポリペプチドは、野生型のタンパク質または野生型のタンパク質ドメインである。さらに、本発明において使用可能な変異体は、該変異体が親ポリペプチドの少なくとも1つの生物学的活性を呈するという条件で、該親ポリペプチドのホモログ、オルソログまたはパラログあるいは人工的に構築された変異体に由来してもよい。アミノ酸配列の変化は、アミノ酸の交換、挿入、欠失、N末端切断またはC末端切断あるいはこれら変化の任意の組合せであってもよく、それは1つまたは複数の部位において起こってもよい。好ましい実施形態では、本発明において使用可能な変異体は、総数が最大で23(最大で1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22または23)個の、アミノ酸配列の変化(すなわち交換、挿入、欠失、N末端切断および/またはC末端切断)を呈する。アミノ酸交換は保存的、および/または半保存的、および/または非保存的であってもよい。好ましい実施形態では、本発明において使用可能な変異体は、最大で1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22または23個のアミノ酸交換、好ましくは保存されたアミノ酸変化により、それが由来するタンパク質またはドメインとは異なる。
典型的な置換は、脂肪族アミノ酸間、脂肪族ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸間、酸性残基を有するアミノ酸間、アミド誘導体間、塩基性残基を有するアミノ酸間または芳香族残基を有するアミノ酸間でのものである。典型的な半保存的および保存的な置換は以下の通りである:
Figure 2023511358000001
A、F、H、I、L、M、P、V、WまたはYからCへの変化は、新たなシステインが遊離のチオールのままである場合に半保存的である。さらに、当業者であれば、立体的に要求される位置にあるグリシンを置換するべきではないことおよびアルファヘリカルまたはベータ-シート構造を有するタンパク質部分にPを導入するべきではないことは理解しているであろう。
あるいは、または加えて、本明細書で使用される場合の「変異体」は、それが由来する親ポリペプチドまたは親ポリヌクレオチドに対するある程度の配列同一性によって特徴付けることができる。より正確に言えば、本発明の文脈におけるタンパク質変異体は、その親ポリペプチドに対して少なくとも85%の配列同一性を呈する。好ましくは、問題のポリペプチドと参照ポリペプチドは、20、30、40、45、50、60、70、80、90、100またはそれを超えるアミノ酸の連続するストレッチにわたって、あるいは参照ポリペプチドの全長にわたって、示された配列同一性を呈する。好ましくは、問題のポリヌクレオチドと参照ポリヌクレオチドは、60、90、120、135、150、180、210、240、270、300またはそれを超えるヌクレオチドの連続するストレッチにわたって、あるいは参照ポリペプチドの全長にわたって、示された配列同一性を呈する。
「少なくとも85%の配列同一性」という用語は、本明細書全体にわたって、ポリペプチドおよびポリヌクレオチドの配列比較に関して使用される。この表現は、好ましくは、それぞれの参照ポリペプチドに対して、またはそれぞれの参照ポリヌクレオチドに対して、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性のことを指す。
タンパク質の断片はアミノ酸の欠失を含み、それはN末端切断、C末端切断または内部の欠失あるいはこれらの任意の組合せであってもよい。N末端切断、C末端切断および/または内部の欠失を含むそのような変異体は、本出願の文脈において「断片」と称される。断片は、天然に存在するもの(例えばスプライス変異体)でもよく、または人工的に、好ましくは遺伝子工学的な手段によって構築されてもよい。好ましくは、断片(または欠失変異体)は、親ポリペプチドと比較して、そのN末端において、および/またはそのC末端において、および/または内部において、好ましくはそのN末端において、そのN末端およびC末端において、またはそのC末端において、最大1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22または23アミノ酸の欠失を有する。
2つの配列を比較する場合であって、配列同一性のパーセンテージを計算するために比較する参照配列が指定されていない場合には、配列同一性は、別様に具体的に示されない場合、比較する2つの配列のうち長い方を参照して計算する。
ヌクレオチド配列およびアミノ酸配列の類似性、すなわち配列同一性のパーセンテージは、配列アライメントによって決定することができる。そのようなアライメントは、当分野において既知のいくつかのアルゴリズムを用いて、好ましくはKarlinとAltschulの数学アルゴリズム[Karlin & Altschul (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 5873-5877]を用いて、hmmalign(HMMER package, http://hmmer.wustl.edu/)を用いて、またはCLUSTALアルゴリズム[Thompson, J. D., Higgins, D. G. & Gibson, T. J. (1994) Nucleic Acids Res. 22, 4673-80]もしくはCLUSTALW2アルゴリズム[Larkin MA, Blackshields G, Brown NP, Chenna R, McGettigan PA, McWilliam H, Valentin F, Wallace IM, Wilm A, Lopez R, Thompson JD, Gibson TJ, Higgins DG. (2007). Clustal W and Clustal X version 2.0. Bioinformatics, 23, 2947-2948.]を用いて実施することができ、それらは、例えば、http://npsa-pbil.ibcp.fr/cgi-bin/npsa_automat.pl?page=/NPSA/npsa_clustalw.htmlまたはhttp://www.ebi.ac.uk/Tools/clustalw2/index.html上で入手可能である。好ましくは、http://www.ebi.ac.uk/Tools/clustalw2/index.html上のCLUSTALW2のアルゴリズムが使用され、ここで使用されるパラメータは、http://www.ebi.ac.uk/Tools/clustalw2/index.html上で下記のように設定されているデフォルトパラメータである:slow pairwise alignmentオプションの場合、Alignment type=Slow、protein weight matrix=Gonnet、gap open=10、gap extension=0,1、およびprotein weight matrix=Gonnet、gap open=10、gap extension=0,20、gap distances=5、No end gaps=no、出力オプション:format=Aln w/numbers、Order=aligned。
配列同一性(配列マッチング)のグレードは、例えばBLAST、BLATあるいはBlastZ(またはBlastX)を使用して計算してもよい。類似のアルゴリズムが、Altschul et al. (1990) J. Mol. Biol. 215: 403-410.のBLASTNおよびBLASTPプログラム中に組み込まれている。BLASTタンパク質検索は、例えば、http://blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgi?PROGRAM=blastp&BLAST_PROGRAMS=blastp&PAGE_TYPE=BlastSearch&SHOW_DEFAULTS=on&LINK_LOC=blasthome上で入手可能なBLASTPプログラムを用いて実施される。使用される好ましいアルゴリズムのパラメータは、http://blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgi?PROGRAM=blastp&BLAST_PROGRAMS=blastp&PAGE_TYPE=BlastSearch&SHOW_DEFAULTS=on&LINK_LOC=blasthome上で下記のように設定されているデフォルトパラメータである:Expect threshold=10、word size=3、max matches in a query range=0、matrix=BLOSUM62、gap costs=Existence:11 Extension:1、compositional adjustments=conditional compositional score matrix adjustment、ならびに因子1および因子2のポリペプチドと相同なアミノ酸配列を得るためのデータベースとしてnon-redundant protein sequences(nr)を共に用いる。
比較の目的でギャップ付きアライメントを得るためには、Altschul et al. (1997) Nucleic Acids Res. 25: 3389-3402に記載のGapped BLASTを利用する。BLASTおよびGapped BLASTプログラムを利用する場合、それぞれのプログラムのデフォルトパラメータを使用する。配列マッチング解析は、Shuffle-LAGAN(Brudno M., Bioinformatics 2003b, 19 Suppl 1:I54-I62)のような確立された相同性マッピング技術またはマルコフ確率場によって補完されてもよい。配列同一性のパーセンテージが本出願において言及される場合、これらのパーセンテージは、別様に具体的に指示されない場合は、より長い配列の完全長に対して計算される。
本明細書で使用される場合の「宿主」という用語は、本発明の核酸(例えばプラスミドまたはウイルスの形態における)が入った細胞のことを指す。そのような宿主細胞は、原核細胞(例えば細菌細胞)または真核細胞(例えば真菌細胞、植物細胞もしくは動物細胞)のいずれであってもよい。細胞は形質転換されていても形質転換されていなくてもよい。細胞は、例えば細胞培養液中の単離された細胞であっても、または組織の一部であってもよく、組織はそれ自体が単離されたものであっても、または臓器もしくは個体などのより複雑な有機的構造の一部であってもよい。
「骨髄由来増殖因子」、「MYDGF」、「因子1」、「MYDGFポリペプチドまたはタンパク質」あるいは「因子1ポリペプチドまたはタンパク質」という用語は交換可能に使用され、NCBI参照配列NM_019107.3(ヒトホモログ)において示されるタンパク質ならびにその哺乳動物ホモログ、特にマウスまたはラット由来のホモログのことを指す。ヒトホモログのアミノ酸配列は、ヒト染色体19上のオープンリーディングフレーム10(C19Orf10)中にコードされている。好ましくは、MYDGFおよび因子1タンパク質は、配列番号1によるアミノ酸配列を有するヒト因子1のコアセグメントを含むか、から本質的になるかまたはからなるタンパク質のことを指す。
タンパク質、変異体または断片がMYDGFの生物学的機能を呈するかしないかは、以下の実施例において記載されるいずれか1つの試験によって決定することができる。本発明によれば、本明細書において以下に提示される少なくとも1つの実施例において示される、本発明のMYDGFタンパク質を用いて得られた結果と比較して、あるペプチドまたはタンパク質を用いて得られた結果が、指示された対照に対して報告されたMYDGFの効果の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または100%を達成する場合に、そのようなペプチドまたはタンパク質はMYDGFの生物学的機能を呈する。
本明細書で使用される場合、「MYDGF」および「Mydgf」という用語は、共に骨髄由来増殖因子を示し、ここで「MYDGF」は、骨髄由来増殖因子のヒト変異体を指すために本発明において使用され、「Mydgf」は骨髄由来増殖因子のマウス変異体を指すために使用される。
本明細書で使用される場合の「心臓機能の改善」という用語は、例えば、収縮期および/または拡張期の心臓機能の改善を意味し、それは、例えば、心エコー検査、心臓磁気共鳴イメージング、心臓コンピュータ断層撮影または心室血管造影によって評価することができる。例えば、左心室の寸法の増加および心臓の収縮期機能の向上は心臓機能の改善の指標であり、例えば以下の実施例10において示されるように測定することができる。
「線維化」という用語は、臓器または組織の正常な構成物質としての線維組織の生成ではなく、修復性または反応性プロセスとしての線維組織の形成のことを表現する。それは、例えば、Farlex Partner Medical Dictionary、The American Heritage Medical DictionaryまたはPschyrembel Klinisches Woeterbuch, 261st ed., 2007において定義されているものと同じ意味を有する。
「肥大」という用語は、その構成細胞の拡大による、臓器または組織容量の異常に激しい増加のことを表現する。過剰増殖とは大きく異なり、肥大は、急速な分裂による細胞の高速の増殖によってではなく既存の細胞の拡大によってもっぱら生じる、組織または臓器の容量の増加を特徴とする。本明細書で使用される場合の「肥大」という用語は、例えば、Farlex Partner Medical Dictionary、The American Heritage Medical DictionaryまたはPschyrembel Klinisches Woeterbuch, 261st ed., 2007において定義されているものと同じ意味を有する。肥大は、例えば肥大に罹患した細胞または組織の表面積、断面積またはサイズを、肥大に罹患していない対照細胞または対照組織の表面積、断面積またはサイズと比較することによって、あるいは罹患細胞のタンパク質含有量を対照と比較することによって、評価または測定することができる。本発明に従って処置される肥大は、好ましくは病的肥大、例えば、病的なタイプの心肥大を促進することが知られているET1および/またはAngIIによって引き起こされる肥大である。
「間質性肺疾患」または「ILD」という用語は、Lederer et al., New England Journal of Medicine, 2018, Vol. 378(19):1811-1823、またはvan Cleemput, J. et al. Idiopathic Pulmonary Fibrosis for Cardiologists: Differential Diagnosis, Cardiovascular Comorbidities, and Patient Management; Adv Ther. 2019 Feb;36(2):298-317に記載の通りに理解されるべきである。
本明細書で使用される場合の、「心不全の処置および/または予防」という文脈における「心不全」という用語は、2016 ESC Guidelines for the diagnosis and treatment of acute and chronic heart failure [European Heart Journal, 2016; Vol. 37(27):2129-2200]において定義されているように理解されるべきであり、慢性心不全、駆出率が保たれた心不全(HFpEF)、駆出率が低下した心不全(HFrEF)、駆出率が軽度低下した心不全(HFmrEF)を含む。本発明の文脈においては、該用語は、HFpEFまたはHFrEF、特に、2017 ACC/AHH/HFSA Focused Update of the 2013 ACCF/AHA Guideline for the Management of Heart Failure[Journal of American College of Cardiology, 2017; Vol. 70(6):776-803]に記載のステージCもしくはステージDのHFpEFおよびステージCもしくはステージDのHFrEFのことも指すことが意図されている。実施形態の記載には、本申請全体にわたって使用される用語のさらなる定義および説明が含まれる。これら記載および定義は、別様に述べられない限り、本申請全体に対して有効である。
配列
本発明において使用される配列を以下にリストする。
配列番号1(31アミノ酸のN末端シグナルペプチドを欠く、ヒト因子1のアミノ酸配列):
VSEPTTVAFDVRPGGVVHSFSHNVGPGDKYTCMFTYASQGGTNEQWQMSLGTSEDHQHFTCTIWRPQGKSYLYFTQFKAEVRGAEIEYAMAYSKAAFERESDVPLKTEEFEVTKTAVAHRPGAFKAELSKLVIVAKASRTEL
配列番号2(24アミノ酸のN末端シグナルペプチドを欠く、因子1のマウスホモログのアミノ酸配列):
VSEPTTVPFDVRPGGVVHSFSQDVGPGNKFTCTFTYASQGGTNEQWQMSLGTSEDSQHFTCTIWRPQGKSYLYFTQFKAELRGAEIEYAMAYSKAAFERESDVPLKSEEFEVTKTAVSHRPGAFKAELSKLVIVAKAARSEL
配列番号3[N末端シグナルペプチド(太字および下線で示す)を含む、ヒト因子1のアミノ酸配列;UniProtKB-Q969H8]:
Figure 2023511358000002
配列番号4[N末端シグナルペプチド(太字および下線で示す)を含む、因子1のマウスホモログのアミノ酸配列;UniProtKB-Q9CPT4]:
Figure 2023511358000003
配列番号5は、配列番号3(NCBI Gene ID:56005)のMYDGFをコードするヒト因子1の核酸配列を示す。
配列番号6は、配列番号4(NCBI Gene ID:28106)のMydgfをコードするマウス因子1の核酸配列を示す。
実施形態
以下において、本発明の要素が記載される。これらの要素は特定の実施形態と共に列挙されるが、それらは、さらなる実施形態を作り出すために任意の様式および任意の数で組み合わされ得ると理解されるべきである。多様に記載される実施例および好ましい実施形態によって、明示的に記載される実施形態のみに本発明が限定されると解釈されるべきではない。本記載は、明示的に記載される実施形態と、任意の数の開示されるおよび/または好ましい要素とを組み合わせる実施形態を支持し、包含すると理解されるべきである。さらに、本出願において記載されるすべての要素の任意の並べ替えおよび組合せが、文脈上別様に指示されない限り、本出願の記載によって開示されるとみなされるべきである。
本発明者らは、MYDGFの抗線維化効果および抗肥大効果を初めて示す。発明者らは、マウスモデルにおけるMYDGFの投与が、肥大および線維化を阻害することを特に示す。これらの効果は、とりわけ心臓機能の改善のために使用することができる。従って、第1の態様では、本発明は、線維化または肥大の処置または予防における使用のための、タンパク質骨髄由来増殖因子(MYDGF)またはMYDGFの生物学的機能を呈するその断片もしくは変異体を提供する。
第2の態様では、本発明は、心不全の処置または予防における使用のための、タンパク質骨髄由来増殖因子(MYDGF)またはMYDGFの生物学的機能を呈するその断片もしくは変異体を提供する。好ましい実施形態によれば、心不全は慢性心不全または急性心不全であり、ここで急性心不全は心筋梗塞を含まない。好ましい実施形態によれば、急性心不全は急性圧負荷により誘導された心不全である。さらに提供されるのは、本使用のためのMYDGFまたはその断片もしくは変異体であり、ここで心不全または慢性心不全は、駆出率が保たれた心不全(HFpEF)、駆出率が低下した心不全(HFrEF)、または駆出率が軽度低下した心不全(HFmrEF)である。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、心不全と関連づけられる線維化および/または肥大を減弱させて、および/または心臓機能の改善によって、心不全を処置または予防する。
本発明の特に好ましい実施形態では、タンパク質は配列番号1のアミノ酸配列またはその断片を含む。好ましくは、タンパク質は、配列番号1に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有する。
本発明の本態様の好ましい実施形態では、タンパク質は、配列番号1のアミノ酸配列、配列番号1に対して少なくとも85%の配列同一性を有する、MYDGFの生物学的機能を呈するその断片もしくは変異体を含む。当業者は、親ポリペプチド中のどの位置にどの程度まで変異を導入することができ、どの位置をポリペプチドの機能を保つために維持しなければならないかを、過度の負担なく決定することが可能である。そのような情報は、例えば、当分野において周知のバイオインフォマティクスの方法によって同定、アラインおよび解析が可能なホモログの配列から入手することができる。そのような解析が、国際公開第2014/111458号の実施例7ならびに図6および図7中に例示的に記載されている。変異は、種間、好ましくは哺乳動物間で完全には保存されていないタンパク質の領域中に好ましくは導入される。本発明の特に好ましい実施形態では、MYDGFタンパク質は、配列番号1のアミノ酸配列またはMYDGFの生物学的機能を呈するその断片もしくは変異体を含むか、から本質的になるかまたはからなる。好ましくは、前記タンパク質は、配列番号1に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有する。
N末端欠失変異体も包含され、それは、例えば、アミノ酸位置1~24(配列番号1に基づいて)、すなわちN末端保存領域から、1つ以上のアミノ酸を欠いていてもよい。
C末端欠失変異体も包含され、それは、例えば、アミノ酸位置114~142(配列番号1に基づいて)から、1つ以上のアミノ酸を欠いていてもよい。
一方、MYDGFタンパク質にアミノ酸を付加することができる。そのような付加には、N末端における付加、C末端における付加、アミノ酸配列の内部における付加またはそれらの組合せが含まれる。本発明の第1の態様のタンパク質は、このように、例えば、得られるタンパク質の安定化または精製のために、付加アミノ酸配列をさらに含んでもよい。そのようなアミノ酸の例は、6×Hisタグ、mycタグまたはFLAGタグであり、これらは当分野において周知であり、タンパク質の任意の位置、好ましくはN末端またはC末端において存在させてもよい。特に好ましい付加配列は6×His-タグである。好ましくは、前記6×His-タグは、MYDGFタンパク質のC末端上に存在する。使用する発現システムによって、および上記のタグなどの付加的なアミノ酸が存在する場合にはそれによって、1つ以上の残存アミノ酸が、タンパク質のN末端および/またはC末端上に残る可能性がある。例えば、Ebenhoch R. et al., Nat Commun. 2019 Nov 26;10(1):5379、およびPolten F. et al., Anal Chem. 2019 Jan 15;91(2):1302~1308において示されているように、本発明によるMYDGFタンパク質およびMydgfタンパク質中には、そのようなアーテファクトが存在する可能性があることを強調する。
タンパク質を安定化するために、本発明の第1の態様のMYDGFタンパク質内部のプロテアーゼ切断部位に変異を導入することが好ましい場合もある(Segers et al. Circulation 2007, 2011を参照のこと)。当業者は、タンパク質内部の潜在的なタンパク質切断部位をどのように決定するかを知っている。例えば、タンパク質配列を、そのような解析を提供するウェブサイト、例えば、http://web.expasy.org/peptide_cutter/またはhttp://pmap.burnham.org/proteasesのようなウェブサイトにサブミットすることができる。配列番号1によるタンパク質配列を、http://web.expasy.org/peptide_cutter/にサブミットすると、低切断頻度(lower frequency)[10未満]を有する以下の切断部位が決定される。
Figure 2023511358000004
タンパク質の血清半減期を増加させるために、これらの部位を変えて、それぞれに同定されたプロテアーゼの認識/切断配列を取り除いてもよい。
本発明において、MYDGFは、線維化、特に心臓の線維化を阻害または予防することが示された。よって、本発明は、線維化の処置または予防における使用のための、MYDGFタンパク質またはMYDGFの生物学的機能を呈するその断片もしくは変異体を提供する。
本発明の文脈における線維化の処置または予防とは、例えば、線維化組織の量を低減すること、あるいは線維化組織の形成を予防することまたはそれを低減することを意味する。低減は、好ましくは、活性薬剤で処置していない対照組織に対して、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%または少なくとも90%の低減である。
いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、MYDGFは、普遍的な線維化促進増殖因子(profibrotic growth factor)であるトランスフォーミング増殖因子βを阻害し、それによって線維化を予防および/または処置する。
本発明において、MYDGFは、肥大、特に心筋細胞の肥大を阻害または予防することが示された。よって、本発明は、肥大の処置または予防における使用のための、MYDGFタンパク質またはMYDGFの生物学的機能を呈するその断片もしくは変異体を提供する。心筋細胞の肥大が処置または予防される場合、前記心筋細胞は、好ましくは、左心室もしくは右心室の心筋細胞または心房の心筋細胞である。
心臓の組織および/または心筋細胞などの細胞の肥大および線維化の処置および/または予防は、心臓の機能の改善のためにも使用することができる。このように、本発明はまた、心臓の機能の改善における使用のためのMYDGFも提供する。本発明の意味の範囲内での心臓機能は、収縮期および/または拡張期の心臓機能に関し、それは、例えば、心エコー検査、心臓磁気共鳴イメージング、心臓コンピュータ断層撮影または心室血管造影によって評価することができる。心臓機能を評価するための好ましい方法は、高分解能2D経胸壁心エコー検査(例えばLang et al., Eur Heart J Cardiovasc Imaging, 2015;16:233-270において例えば記載されている)であり、例えばマウスでは30MHzの線形変換器(Vevo 3100、VisualSonics)を使用する。そのような実験では、左心室(LV)拡張末期面積(LVEDA)および左心室収縮末期面積(LVESA)が、長軸ビューから決定される。LVEDA(mm)は、左心室拡張末期容量の2次元近似であり;LVESA(mm)は、左心室収縮末期の容量の2次元近似である。次いで、面積変化率(FAC)を、収縮期機能、すなわち心臓のパンピングまたは収縮機能の評価基準として計算する[(LVEDA-LVESA)/LVEDA]×100。このように、心臓機能の改善は、本発明によるMYDGFを用いた処置の前の同じ心臓の心臓機能と比較して、少なくとも10%またはそれよりも大きな、例えば15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%または100%よりも大きな、例えば110%、120%、130%、140%、150%、160%、170%、180%、190%、200%またはそれよりも大きな、例えばFACを評価することによって測定される収縮期および/または拡張期の心臓機能の改善を意味する。
MYDGFタンパク質は、例えば、得られるタンパク質の安定化または精製のために、付加アミノ酸配列をさらに含んでもよい。例えば、タンパク質を安定化させるために、MYDGFタンパク質内部のプロテアーゼ切断部位に変異を導入することが好ましい。適したタンパク質切断部位は、上記に記載の通りに同定することができる。
MYDGFタンパク質または該タンパク質を含む組成物は、インビボ(in vivo)、エクスビボ(ex vivo)またはインビトロ(in vitro)で、好ましくはインビボで投与することができる。
線維化または肥大した細胞または組織は、好ましくは、消化器系、内分泌系、排泄系、免疫系、外皮系、筋肉系、神経系、生殖器系、呼吸器系および骨格系あるいはそれらの組合せを含む群から選択される、個体の体の定義された系に属するか、または由来する。あるいは、線維化または肥大した細胞または組織は、好ましくは、皮膚、骨、心臓、軟骨、血管、食道、胃、腸、腺、肝臓、腎臓、肺、脳および脾臓を含む群から選択される、個体の体の定義された器官または臓器に属するか、または由来する。特に好ましい実施形態では、細胞または組織は、心臓に属するか、または由来する。
線維化または肥大した細胞または組織は、損傷を受けたか、または疾患にかかった細胞または組織であり得る。好ましくは、損傷または疾患は、遺伝的な/遺伝性の疾患、あるいは例えば虚血、再かん流傷害、炎症、感染症、外傷、機械的負荷、中毒または手術に起因する後天性の疾患によって引き起こされる。特に好ましい実施形態では、損傷は梗塞、特に心筋梗塞によって引き起こされる。特に好ましい別の実施形態では、損傷は、再かん流傷害によって引き起こされる。
特に好ましい実施形態では、線維化を負った細胞または組織は、心臓、腎臓、肺および肝臓の細胞または組織、最も好ましくは心臓の細胞または組織からなる群から選択される。IPF患者由来の細胞に基づく実施例15~18において示される結果は、ILDの観点での線維化に対する適用可能性を大いに示唆する。胚線維芽細胞に基づく実施例21および22において示される結果は、腎臓および肝臓などの他組織の線維化に対しても適用可能性を示唆する。
好ましい実施形態では、線維化は間質性肺疾患(ILD)である。好ましい一実施形態によれば、ILDは進行性線維化性間質性肺疾患、より好ましくは特発性肺線維症(IPF)である。このように、一実施形態によれば、MYDGFタンパク質またはMYDGFの生物学的機能を呈するその断片もしくは変異体は、Lederer et al., New England Journal of Medicine, 2018, Vol. 378(19):1811-1823, およびvan Cleemput, J. et al. Idiopathic Pulmonary Fibrosis for Cardiologists: Differential Diagnosis, Cardiovascular Comorbidities, and Patient Management, Adv Ther. 2019 Feb;36(2):298-317において定義される間質性肺疾患の予防または処置における使用のためのものである。さらなる実施形態によれば、ILDは、進行性線維化性ILD(PF-ILD)であり、特に特発性非特異的間質性肺炎(iNSIP)、分類不可能な特発性間質性肺炎(分類不可能なIIP)、自己免疫性の特徴を伴う特発性肺炎(IPAF)、慢性の過敏性肺炎(CHP)、環境性/職業性線維化性肺疾患、全身性硬化症間質性肺疾患(SSc-ILD)、またはリウマチ性関節炎間質性肺疾患(RA-ILD)である。
特に好ましい実施形態では、肥大を負った細胞または組織は、心臓の細胞または組織、より好ましくは心筋細胞である。
さらなる態様では、本発明は、線維化または肥大の処置または予防における使用のための、本明細書に記載の、MYDGFタンパク質またはMYDGFの生物学的機能を呈するその断片もしくは変異体をコードする核酸を提供する。本発明はまた、心不全の処置または予防における使用のための、本明細書に記載の、MYDGFタンパク質またはMYDGFの生物学的機能を呈するその断片もしくは変異体をコードする核酸も提供する。本発明による使用のための核酸は、好ましくは、配列番号1に対して少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードする。
核酸配列は、宿主細胞における発現を亢進させようと努力する中で最適化することができる。考慮すべきパラメータには、C:Gの含有率、好ましいコドンおよび阻害型二次構造の回避が含まれる。これらの要素は、特定の宿主において発現が亢進する核酸配列を得るための試みにおいて、様々なやり方で組み合わせることができる(例えば、Donnellyらの国際公開第97/47358号を参照のこと)。特定の宿主において発現が亢進する特定の配列の能力には、いつかの経験的な実験法が関与する。そのような実験法には、有望な核酸配列の発現を測定し、必要に応じてその配列を変えることが必要である。特定のアミノ酸配列と既知の遺伝子コードの縮重を用いて始めると、多くの異なるコード化核酸配列を得ることができる。遺伝子コードの縮重は、三連のヌクレオチドの複数の異なる組合せ、すなわち「コドン」よってほとんどすべてのアミノ酸がコードされていることによって生じる。特定のコドンが特定のアミノ酸に翻訳されることは、当分野において周知である(例えば、Lewin GENES IV, p. 119, Oxford University Press, 1990を参照のこと)。
本発明による使用のための核酸は、タンパク質の発現を制御するために配置された転写制御エレメントまたは発現制御配列をさらに含んでもよい。制御エレメントを伴うそのような核酸は、しばしば発現システムと称される。本明細書で使用される場合の「発現システム」という用語は、1種以上の目的の遺伝子産物を産生するように設計されたシステムのことを指す。典型的には、そのようなシステムは、「人工的」に、すなわち目的の遺伝子産物をインビボ、インビトロまたはエクスビボで産生するのに使用可能な遺伝子工学的な手段によって設計される。「発現システム」という用語は、さらに、ポリヌクレオチドの転写、mRNAスプライシング、ポリペプチドへの翻訳、ポリペプチドまたはタンパク質の翻訳時および翻訳後修飾ならびに1つ以上の細胞内区画へのタンパク質の標的化、細胞からの分泌および同じまたは別の細胞内へのタンパク質の取り込みを含む目的の遺伝子産物の発現も包含する。この一般的な記載は、真核生物の細胞、組織または生物体における使用のための発現システムのことを指す。原核生物系のための発現システムは異なる可能性があり、原核細胞用の発現システムがどのように構築されるかは当分野において周知である。
遺伝子発現カセット内に存在する調節エレメントには:(a)ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列に転写的に連結したプロモーター、(b)ヌクレオチド配列に機能的に連結した5’リボソーム結合部位、(c)ヌクレオチド配列の3’末端につないだターミネーター、および(d)ヌクレオチド配列に機能的に連結した3’ポリアデニル化シグナルが一般的には含まれる。遺伝子発現またはポリペプチドのプロセシングの亢進または調節に有用なさらなる調節エレメントも存在してもよい。プロモーターは、RNAポリメラーゼによって認識される、下流の領域の転写を媒介する遺伝子エレメントである。好ましいプロモーターは、転写のレベルの増加をもたらす強力なプロモーターである。強力なプロモーターの例は、前初期ヒトサイトメガロウイルスプロモーター(CMV)、およびイントロンAを含むCMV(Chapman et al, Nucl. Acids Res. 19:3979-3986, 1991)である。プロモーターのさらなる例としては、天然に存在するプロモーター、例えばEF1アルファプロモーター、マウスCMVプロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーター、およびSV40初期/後期プロモーターおよび[ベータ]アクチンプロモーター;ならびに人工のプロモーター、例えば合成の筋肉特異的プロモーターおよびキメラの筋肉特異的/CMVプロモーター(Li et al., Nat. Biotechnol. 17:241-245, 1999 , Hagstrom et al., Blood 95:2536-2542, 2000)が挙げられる。
リボソーム結合部位は、開始コドンに位置するか、またはその近くに位置する。好ましいリボソーム結合部位の例としては、CCACCAUGG、CCGCCAUGGおよびACCAUGGが挙げられ、ここでAUGは開始コドンである(Kozak, Cell 44:283-292, 1986)。ポリアデニル化シグナルは、転写されたRNAの切断およびポリ(A)テールのRNAへの付加に関わっている。高等真核生物におけるポリアデニル化シグナルでは、ポリアデニル化付加部位から11~30ヌクレオチドのところにAAUAAA配列を含有する。AAUAAA配列は、RNA切断のシグナル伝達に関与する(Lewin, Genes IV, Oxford University Press, NY, 1990)。ポリ(A)テールは、mRNAのプロセシング、核外への輸送、翻訳および安定性にとって重要である。
遺伝子発現カセットの一部として使用することができるポリアデニル化シグナルには、最小ウサギ[ベータ]グロビンポリアデニル化シグナルおよびウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナル(BGH)(Xu et al., Gene 272:149-156, 2001, Post et al.、米国特許第5,122,458号)が含まれる。
遺伝子発現またはポリペプチドのプロセシングの亢進または調節に有用な、存在してもよいさらなる調節エレメントの例としては、エンハンサー、リーダー配列およびオペレーターが挙げられる。エンハンサー領域は、転写を増加させる。エンハンサー領域の例としては、CMVエンハンサーおよびSV40エンハンサーが挙げられる(Hitt et al., Methods in Molecular Genetics 7:13-30, 1995、Xu, et al., Gene 272:149-156, 2001)。エンハンサー領域は、プロモーターと関連づけることができる。
本発明によるMYDGFタンパク質またはその変異体の発現は、調節することができる。そのような調節は、遺伝子発現の多くの段階において達成することができる。可能な調節段階は、例えば、これらに限定されないが、転写の開始、プロモータークリアランス、転写の伸長、スプライシング、核外への輸送、mRNAの安定性、翻訳の開始、翻訳効率、翻訳の伸長およびタンパク質フォールディングである。細胞内のMYDGFポリペプチドの濃度に影響を及ぼす他の調節段階は、タンパク質の半減期に影響を与える。そのような調節段階は、例えば、タンパク質の変性の調節である。本発明のタンパク質には分泌タンパク質が含まれるため、タンパク質を宿主細胞の分泌経路に導くことができる。分泌効率は、発現およびタンパク質の安定性を参照する調節段階と共に、細胞外でのそれぞれのタンパク質の濃度を調節する。細胞外とは、例えば、これらに限定されないが、培養培地、組織、細胞内基質もしくは空間、または血液もしくはリンパ液などの体液のことを指し得る。
上で述べた調節段階の制御は、例えば、細胞タイプもしくは組織タイプに依存しないか、または細胞タイプもしくは組織タイプに特異的であり得る。本発明の特に好ましい実施形態では、調節段階の制御は、細胞タイプもしくは組織タイプに特異的である。そのような細胞タイプもしくは組織タイプに特異的な調節は、好ましくは、核酸の転写を参照する調節段階によって達成される。この転写調節は、細胞タイプもしくは組織タイプに特異的なプロモーター配列の使用によって達成することができる。この細胞タイプもしくは組織タイプに特異的な調節からの結果は、様々なグレードの特異性を有し得る。これは、個別のポリペプチドの発現が、他の細胞もしくは組織タイプに比べて個別の細胞もしくは組織において亢進されること、または該発現が個別の細胞もしくは組織タイプに限定されることを意味する。細胞もしくは組織タイプに特異的なプロモーター配列は、当分野において周知であり、幅広い細胞もしくは組織タイプに対して入手可能である。
発現は、必ずしも細胞タイプもしくは組織タイプに特異的ではないが、生理的状態に依存することがある。そのような状態は、例えば炎症または創傷である。そのような生理的状態に特異的な発現も、上記で述べたすべての調節段階における調節によって達成することができる。生理的状態に特異的な発現のための調節の好ましいやり方は転写調節である。この目的のために、創傷または炎症に特異的なプロモーターを使用することができる。それぞれのプロモーターは、例えば、天然に存在する配列であり、それらは、例えば、免疫反応および/または創傷組織の再生の間に特異的に発現する遺伝子に由来し得る。別の可能性は人工プロモーター配列の使用であり、人工プロモーター配列は、例えば、2つ以上の天然に存在する配列の組合せによって構築される。
調節は、細胞タイプもしくは組織タイプに特異的かつ生理的状態に特異的であることができる。特に、発現は心臓に特異的な発現であることができる。好ましくは、発現は心臓に特異的および/または創傷に特異的である。
本発明によるMYDGFタンパク質またはその変異体の発現の調節のための別の可能性は、遺伝子発現の条件付き調節(conditional regulation)である。条件付き調節を達成するために、オペレーター配列を使用することができる。例えば、Tetオペレーター配列を、遺伝子発現を抑制するために使用することができる。Tetオペレーターと共にTetレプレッサーを用いた遺伝子発現の条件付き調節は、当分野において周知であり、多くの個別のシステムが、幅広い原核および真核生物用に確立されている。当業者は、どのように適したシステムを選び、それを個別の用途の特殊なニーズに適合させるかを知っている。
特に好ましい実施形態では、本発明による核酸の使用は、個体、好ましくは線維化または肥大を患っている個体に対する適用を含む。
さらなる態様によれば、本発明は、線維化または肥大の処置または予防における使用のための、あるいは心不全の処置における使用のための、本明細書に記載の、核酸または発現システムを含むベクターを提供する。
本明細書で使用される場合、「ベクター」という用語は、細胞に導入され得る、あるいはその中に含まれるタンパク質および/または核酸を細胞に導入し得る、タンパク質またはポリヌクレオチドあるいはその混合物のことを指す。本発明の文脈においては、導入されるポリヌクレオチドによってコードされる目的の遺伝子が、ベクターまたは複数のベクターの導入と同時に、宿主細胞内で発現されることが好ましい。適したベクターの例としては、プラスミドベクター、コスミドベクター、ラムダファージなどのファージベクター、繊維状ファージベクター、ウイルスベクター、ウイルス様粒子および細菌胞子が挙げられるが、これらに限定されない。
本発明の好ましい実施形態では、ベクターはウイルスベクターである。適したウイルスベクターには、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、アルファウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、麻疹ウイルスベクター、poxウイルスベクター、水疱性口内炎ウイルスベクター、レトロウイルスベクターおよびレンチウイルスベクターが含まれるが、これらに限定されない。
本発明の特に好ましい実施形態では、ベクターはアデノウイルスまたはアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである。
治療的投与に適したベクターを使用して、本発明による1種以上のMYDGFタンパク質またはその変異体をコードする核酸を、宿主の細胞、組織または個体に導入することができる。適したベクターは、好ましくは、許容されない副作用を引き起こすことなく、核酸を標的細胞にデリバリーすることができる。
特に好ましい実施形態では、本発明によるベクターの使用は、それを必要とする個体に対する適用を含む。
上記のMYDGFタンパク質またはMYDGFの生物学的機能を呈するその断片もしくは変異体をコードする核酸を含むベクターは、好ましくは、線維化または肥大の処置または予防における使用のための、あるいは心不全の処置における使用のためのものである。
さらなる態様によれば、本発明は、線維化または肥大の処置または予防における使用のための、あるいは心不全の処置における使用のための、本明細書に記載のベクターを含み、MYDGFタンパク質またはMYDGFの生物学的機能を呈するその断片もしくは変異体をコードする核酸を発現する宿主細胞を提供する。
さらなる態様によれば、本発明は、線維化または肥大の処置または予防における使用のための、あるいは心不全の処置における使用のための医薬組成物であって、MYDGFタンパク質またはMYDGFの生物学的機能を呈するその断片もしくは変異体を含み、適した医薬賦形剤を含んでいてもよい、医薬組成物を提供する。
「適した医薬賦形剤」という用語は、本明細書で使用される場合、薬理学的に不活性な物質、例えば、これらに限定されないが、治療活性成分を投与するのに共に用いる、希釈剤、賦形剤、界面活性物質、安定剤、生理緩衝溶液、または媒体のことを指す。「医薬賦形剤」は「医薬担体」とも呼ばれ、液体または固体であってもよい。液体担体には滅菌された溶液、例えば、水中の生理食塩水溶液ならびに石油、動植物または合成が起源の油、例えばピーナッツ油、大豆油、鉱物油、ゴマ油などを含むがこれらに限定されない油、が含まれるがこれらに限定されない。生理食塩水溶液ならびに含水ブドウ糖およびグリセロールの溶液も、特に注射液に対する液体担体として使用することができる。生理食塩水溶液は、医薬組成物が静脈内投与される場合に好ましい担体である。適した医薬担体の例が、E.W.Martinによる「Remington’s Pharmaceutical Sciences」に記載されている。本発明の好ましい実施形態では、担体は適した医薬賦形剤である。適した医薬賦形剤は、デンプン、グルコース、ラクトース、ショ糖、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、白亜(chalk)、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、グリセロールモノステアレート、滑石、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどを含む。そのような適した医薬賦形剤は、好ましくは薬学的に許容される。
「薬学的に許容される」は、動物、より具体的にはヒトにおける使用に対し、連邦政府または州政府の規制機関によって承認されているか、あるいは米国の薬局方または他の一般的に認知されている薬局方にリストされていることを意味する。
「組成物」という用語には、カプセルを形成する1つの担体としての封入材料を含む活性化合物の剤形であって、その中で活性構成成分が他の担体の有無にかかわらず1つの担体によって取り囲まれ、それゆえその1つの担体が活性化合物と結合する活性化合物の剤形が含まれることが意図されている。
「活性成分」という用語は、医薬組成物または剤形中の、生物学的に活性な物質、すなわち薬学的価値をもたらす物質のことを指す。本発明の文脈においては、活性成分はMYDGFタンパク質またはMYDGFの生物学的機能を呈するその断片もしくは変異体である。医薬組成物は、互いに協力または独立して作用してもよい1種以上の活性成分を含んでもよい。活性成分は、中性または塩形態として製剤化することができる。塩形態は、好ましくは薬学的に許容される塩である。
「薬学的に許容される塩」という用語は、例えば、これに限定されないが、本明細書に記載の、その断片もしくは変異体を含む本発明のMYDGFポリペプチドの塩のことを指す。適した薬学的に許容される塩には、例えば、本発明のポリペプチドの溶液を、薬学的に許容される酸、例えば塩酸、硫酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酢酸、安息香酸、クエン酸、酒石酸、炭酸またはリン酸の溶液と混合することにより形成することができる酸付加塩が含まれる。さらに、ペプチドが酸性部分を担持する場合、適したその薬学的に許容される塩には、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウムまたはカリウム塩);アルカリ土類金属塩(例えば、カルシウムまたはマグネシウム塩);および適した有機配位子(例えば、ハロゲン化物、水酸化物、カルボン酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、アルキルスルホン酸塩およびアリールスルホン酸塩などの対アニオンを使用して形成されるアンモニウム、四級アンモニウムおよびアミンのカチオン)を用いて形成される塩が含まれてもよい。薬学的に許容される塩の実例としては、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、炭酸水素塩、硫酸水素塩、酒石酸水素塩、ホウ酸塩、臭化物、酪酸塩、エデト酸カルシウム、ショウノウ酸塩、カンファースルホン酸塩、カンシル酸塩(camsylate)、炭酸塩、塩化物、クエン酸、クラブラン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、二塩酸塩、ドデシル硫酸塩、エデト酸塩、エジシル酸塩、エストル酸塩(estolate)、エシル酸塩(esylate)、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルセプト酸塩、グルコヘプトン酸塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリセロリン酸塩、グリコリルアルサニル酸塩(glycolylarsanilate)、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヘキシルレソルシン酸塩(hexylresorcinate)、ヒドラバミン(hydrabamine)、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシ-エタンスルホン酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、ヨウ化物、イソチオン酸塩(isothionate)、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、メタンスルホン酸塩、メチル硫酸塩、粘液酸(mucate)、2-ナフタレンスルホン酸塩、ナプシル酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、N-メチルグルカミンアンモニウム塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩(エンボン酸塩)、パルミチン酸塩、パントテン酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩/二リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、ポリガラクツロ酸塩、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、硫酸塩、塩基性酢酸塩、コハク酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオクル酸塩、トシル酸塩、トリエチオダイド、ウンデカン酸塩、吉草酸塩などが挙げられるが、これらに限定されない[例えばS. M. Berge et al., "Pharmaceutical Salts", J. Pharm. Sci., 66, pp. 1-19 (1977)を参照のこと]。
一実施形態によれば、活性成分を、有効量において、細胞、組織または個体に投与する。「有効量」とは、意図された目的を達成するのに十分な活性成分の量のことである。活性成分は治療剤であってもよい。所与の活性成分の有効量は、パラメータ、例えば成分の性質、投与経路、活性成分を与える個体のサイズおよび種ならびに投与の目的によって変わることになる。個々のケースにおける有効量は、当分野において確立された方法に従って、当業者が経験的に決定してもよい。本発明の文脈において使用される場合、「投与すること」には、個体へのインビボ投与ならびに細胞または組織へのインビトロまたはエクスビボでの直接投与が含まれる。
本発明の好ましい実施形態では、医薬組成物は、疾患または障害の処置に対してカスタマイズされる。本明細書で使用される場合、疾患または障害の、「処置する」、「処置すること」または「処置」とは、以下の1つ以上を達成することを意味する:(a)障害の重症度を低減すること;(b)処置されている障害に特徴的な症状の発現を制限または予防すること;(c)処置されている障害に特徴的な症状の悪化を阻害すること;(d)以前に障害を有したことのある患者において障害の再発を制限または予防すること;(e)以前に障害の症状を示した患者において症状の再発を制限または予防すること;(f)疾患または障害の発生後の死亡率の低下;(g)治癒すること;および(h)疾患の発病予防。「改善すること」という用語も、「処置すること」という用語に包含される。本明細書で使用される場合、疾患または障害の、「予防する」、「予防すること」または「予防」は、そのような疾患または障害が患者において生じることを予防することを意味する。
本発明の特に好ましい実施形態では、本発明による医薬組成物を用いた処置は、そのような処置を必要とする個体の処置を含む。
本発明によって企図される医薬組成物は、当業者に周知の種々のやり方において製剤化されてもよい。例えば、本発明の医薬組成物は、液体の形態、例えば溶液、エマルションまたは懸濁液の形態であってもよい。好ましくは、本発明の医薬組成物は、非経口投与用に,好ましくは静脈内投与、動脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、経皮投与、肺内投与、腹腔内投与、冠動脈内投与、心臓内投与または粘膜を介した投与用に、好ましくは静脈内投与、皮下投与または腹腔内投与用に製剤化される。経口投与または経肛門投与用の製剤もまた可能である。好ましくは、本発明の医薬組成物は滅菌水溶液の形態にあり、それは他の物質、例えば血液と等張の溶液を作製するのに十分な塩またはグルコースを含有していてもよい。水溶液は、必要であれば、適切に緩衝させるべきである(好ましくは3~9のpHに、より好ましくは5~7のpHに)。医薬組成物は、好ましくは単位投薬形態である。そのような形態では、医薬組成物は適切な量の活性構成成分を含有する単位用量に細分される。単位投薬形態はパッケージ化された製剤であってもよく、該パッケージは、バイアルまたはアンプルなどの、個別の量の医薬組成物を含有する。
医薬組成物は、好ましくは、静脈内、動脈内、筋肉内、皮下、経皮、肺内、腹腔内の、冠動脈内または心臓内経路によって投与され、ここでは当分野において既知の他の投与経路も含まれる。
医薬組成物を個体に対する処置として使用する場合には、医薬組成物の使用は、それぞれの疾患または状態に対する標準的処置と置きかえることができるか、あるいは標準的処置に加えて投与することができる。医薬組成物を追加的に使用するケースでは、医薬組成物を標準的治療の前に、標準的治療と同時に、または標準的治療の後で投与することができる。
医薬組成物は1回以上投与することがさらに好ましい。これは、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45または50回を含む。医薬品の投与のための期間は制限されない。好ましくは、投与は1、2、3、4、5、6、7または8週間を超えない。
医薬組成物の単回用量が、それだけで投与量の総量を構成してもよく、あるいはそれぞれの投与期間に、1回以上のボーラス注射および/または点滴としての投与が含まれてもよい。
さらなる態様によれば、本発明は、線維化の処置を必要とする患者に治療有効量のMYDGFまたはMYDGFの生物学的機能を呈するその断片もしくは変異体を投与することを含む、線維化の処置方法を提供する。前記方法では、MYDGFは、好ましくは、配列番号1、または配列番号1のMYDGFの生物学的機能を呈する、その断片もしくは変異体を含む。この点において、断片もしくは変異体は、配列番号1に対して少なくとも85%のアミノ酸配列の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
本発明の方法の好ましい実施形態では、線維化は、心臓、腎臓、肺および/または肝臓の線維化である。好ましい実施形態によれば、線維化は間質性肺疾患、より好ましくは進行性線維化性間質性肺疾患、最も好ましくは特発性肺線維症である。
本発明の本方法の好ましい実施形態によれば、MYDGFタンパク質またはMYDGFの生物学的機能を呈するその断片もしくは変異体は、1回以上のボーラス注射および/または点滴によって、好ましくは薬学的に許容される担体中において投与される。
さらなる態様によれば、本発明は肥大の処置方法を提供し、前記方法は、肥大の処置を必要とする患者に治療有効量のMYDGFまたはMYDGFの生物学的機能を呈するその断片もしくは変異体を投与することを含む。前記方法では、MYDGFは、好ましくは、配列番号1、または配列番号1のMYDGFの生物学的機能を呈するその断片もしくは変異体を含む。この点において、断片または変異体は、配列番号1に対して少なくとも85%のアミノ酸配列の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
本発明の方法の好ましい実施形態によれば、肥大は心筋細胞の肥大である。
本発明の方法の好ましい実施形態によれば、MYDGFタンパク質またはMYDGFの生物学的機能を呈するその断片もしくは変異体は、1回以上のボーラス注射および/または点滴によって、好ましくは薬学的に許容される担体中において投与される。
本発明の本方法の好ましい実施形態によれば、MYDGFタンパク質またはMYDGFの生物学的機能を呈するその断片もしくは変異体は、1回以上のボーラス注射および/または点滴によって、好ましくは薬学的に許容される担体中において投与される。
さらなる態様によれば、本発明は、心不全の処置または予防を必要とする患者に治療有効量の増殖因子MYDGFまたはMYDGFの生物学的機能を呈するその断片もしくは変異体を投与することを含み、好ましくは心不全が慢性心不全である、心不全の処置または予防方法を提供する。好ましい実施形態によれば、心不全の処置方法において、心不全または慢性心不全はHFpEFまたはHFrEFであり、好ましくはHFpEFはステージCもしくはステージDのHFpEFであるか、またはHFrEFはステージCもしくはステージDのHFrEFである。この点において、断片または変異体は、配列番号1に対して少なくとも85%のアミノ酸配列の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
本発明の本方法の好ましい実施形態によれば、MYDGFタンパク質またはMYDGFの生物学的機能を呈するその断片もしくは変異体は、1回以上のボーラス注射および/または点滴によって、好ましくは薬学的に許容される担体中において投与される。
実施例は、本発明をさらに例示し、より良い理解の助けとなるように考案されている。それらは決して本発明の範囲を限定するものとして解釈されてはならない。
実施例において使用される材料と方法
別様に述べられない限り、以下の材料および方法を実施例において使用した。
エンドセリン1(ET1)およびアンジオテンシンII(AngII)はsigma-Aldrich社から購入し、マウスインスリン様増殖因子1(IGF1)はR&D Systems社からから購入し、SMI4aはSelleckchem社から購入した(カタログ番号[#]S8005)。抗体は、Abcam社[筋/小胞体Ca2ATPアーゼ2a[SERCA2a]、ポリクローナル、#ab91032;アルファ-チューブリン、クローンEPR13478(B)]、Cell Signaling Technology社(ベータアクチン、クローン13E5;ビンキュリン、クローンE1E9V)、Eurogentech社(マウスMYDGF、ポリクローナル、特注品)(Korf-Klingebiel、2015)およびThermo Fisher社(PIM1、クローンG.360.1)から購入した。
組換えMYDGF。動物由来フリーの、化学的に定義された、タンパク質フリーのFreeStyle F17発現培地(Gibco社)中で培養したHEK293-6E細胞内で、C末端8×Hisタグを有する組換えマウスMYDGFを作製した(Karste et al. Methods Mol Biol. 2017;1586:313-324)。トランスフェクション効率は、GFPをコードする対照プラスミドをコトランスフェクトすることにより評価した。細胞培養液の上清(6L)を遠心分離により回収し、5kDaのPellicon2フィルター(Millipore社)を使用したProflux M12クロスフロー限外ろ過ユニット(Millipore社)内で、300mmol/LのNaClを含有するPBS(pH7.4)(PBS/NaCl)に対して透析ろ過することにより、15倍に濃縮した。濃縮物を、0.45/0.2μmのSartobran300カプセルフィルター(Sartorius社)を使用してろ過し、アジ化ナトリウム(0.05%)を加えた。MYDGFを、AEKTA pure 25 Mシステム(Cytiva社)および5mLのHisTrap excelカラム(Cytiva社)を使用することにより捕捉した。UVシグナルがベースラインに達するまで、カラムをPBS/NaClで洗浄した。イミダゾール(30mmol/L)で溶出した、組換えタンパク質を含有するフラクションをプールし、Vivaspin20(5,000MWCO)限外ろ過ユニット(Sartorius社)を使用して濃縮した。HiLoad 26/600 Superdex 75カラム(GE Healthcare社)を使用したサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により、タンパク質をさらに精製した。MYDGFを単一のピークにおいて溶出し、Vivaspin20(5,000MWCO)限外ろ過ユニットを使用して、2mg/mLまで濃縮した。タンパク質濃度を、分子吸光係数(1mg/ml=Abs280nm 0.95)により計算した。組換えタンパク質(総収量5.95mg/L)を、SDS-PAGEおよび質量分析(Bruker社)を使用するトリプシンのフィンガープリント法によって特徴付けた。タンパク質サンプルを液体窒素中で瞬間凍結し、マイナス80℃で保管した。
Mydgf欠損マウス。Mydgfの遺伝子欠失を伴うマウス(Mydgf tm1Kcw、マウスゲノムインフォマティクスID:5688472)が以前に記載されている。該動物(BALB/c×C57BL/6Jバックグラウンド)を、C57BL/6N系統に10世代戻し交配し、ヘテロ接合性交配によりそのバックグラウンドを維持した。すべての実験において同腹子を使用した。野生型および標的化された対立遺伝子を、ゲノムPCRによって検出した(Korf-Klingebiel, 2015)。
マウスの手術および機能評価。すべての外科手技は、ドイツのハノーバーの当局[ニーダーザクセン州消費者保護および食品安全局(Niedersaechsisches Landesamt fuer Verbraucherschutz und Lebensmittelsicherheit)]によって承認された。マウスを、ハノーバー医科大学の中央動物施設(central animal facility)内の個別換気ケージ内で、12時間の明暗サイクルにおいて飼育した。餌と水は自由に与えた。横行大動脈狭窄(TAC)手術(Rockman et al. Proc Natl Acad Sci U S A. 1991;88:8277-8281)を、8~10週齢のC57BL/6Nマウスにおいて実施した。0.02mg/kgのアトロピン(B.Braun社)および200mg/kgのメタミゾール(Zentiva社)で、該動物の皮下に前処置した。3~4%のイソフルラン(Baxter社)を用いて、誘導室内で麻酔を誘導した。経口挿管後、マウスに機械的に人工呼吸させ(Harvard Apparatus社、ミニベント Type 845)、1.5~2%のイソフルランを用いて麻酔を維持した。手術の間、温度コントローラー(Foehr Medical Instruments社)に接続した加熱パッドの上にマウスを置いて、直腸内温度を37℃に保った。左前外側の開胸を、手術用顕微鏡下で実施した。胸腺と脂肪組織を大動脈弓から分離させた後、6-0絹縫合糸を腕頭動脈と左頸動脈の間に置き、26ゲージ鈍針に対して結紮した。結び目を結んだ後、該針を取り出した。傷を閉じた後、マウスを人工呼吸器から切り離し、32℃のインキュベーター内で回復させた。擬似手術した対照マウスにおいては、大動脈の周りの結紮糸を結ばなかった。マウスに3週間の水泳訓練プロトコールを供して生理的肥大を誘導した(Heineke, Methods Mol Biol. 2013;963:279-301)。
フェイスマスクを介して1~2%のイソフルランで鎮静させたマウスにおいて、2D経胸壁心エコー検査を、20~46MHzの線形変換器(MX400、Vevo 3100、VisualSonics社)を用いて実施した。大動脈狭窄部位全体にかかる圧勾配および右総頸動脈と左総頸動脈の最大血流速度(Vmax)比を、ドップラー超音波検査により、TAC手術または擬似手術後直ちに決定した。LV拡張末期面積(LVEDA)およびLV収縮末期面積(LVESA)を、傍胸骨の長軸ビューから記録した。面積変化率(%)を、[(LVEDA-LVESA)/LVEDA]×100として計算した。
LVの圧容量測定のために、マウスに、2mg/kgのブトルファノール(Zoetis社)を皮下注射した。4%のイソフルランを用いて麻酔を誘導した。経口挿管後、マウスに0.8mg/kgのパンクロニウム(Actavis社)を腹腔内注射し、2%のイソフルランを用いて麻酔を維持した。1.4Fの微圧計を先端につけたコンダクタンスカテーテル(SPR-839、Millar社の機器)を、右頸動脈を介して左心室に挿入した。定常状態の圧容量ループを1kHzの速度においてサンプリングし、LabChart 7 Proソフトウェア(ADInstruments社)を用いてを解析した。
骨髄移植。7~9週齢のMydgf WTまたはKOのドナーマウスの大腿骨および脛骨から、骨髄細胞(BMC)をフラッシュさせた。赤血球を、NHCl溶解によって除去した。7~9週齢のMydgf WTまたはKOのレシピエントマウスに致死的な放射線(9.5Gy)を浴びせ、10個のBMC(106 BMCs)を尾静脈を介して移植した。移植後、マウスをシプロフロキサシン(Bayer社)で3週間処置した(飲み水中に100mg/L)。TAC手術を、移植の7~8数週間後に実施した。対照実験において本プロトコールを適用し、CD45.2レシピエントマウスに致死的な放射線を浴びせ、コンジェニックCD45.1ドナーマウス(B6.SJL-Ptprca Pepcb/BoyJ;ジャクソン研究所)から得たBMCを移植した。CD45.1(BioLegend社、クローンA20)(希釈度、1:16)およびCD45.2(BD Biosciences社、クローン104)(1:150)の抗体を使用したフローサイトメトリーによって示されるように、8週間後には、95%を超える血中白血球がCD45.1highであった。
レンチウイルス遺伝子導入。以前に記載されているように(Lachmann et al. Gene Ther. 2013;20:298-307)、tetO/CMVプロモーター制御下の完全長マウスMYDGFをコードするレンチウイルスおよび空の対照ウイルスを、HEK293T細胞中で生成した。骨髄に由来する炎症細胞における条件的付きMYDGF過剰発現を可能にするために、普遍的に活性なRosa26プロモーターの制御下で逆テトラサイクリン制御型トランスアクチベーター(reverse tetracycline-controlled transactivator)(rtTA-M2)タンパク質を発現する7~9週齢のR26-M2rtTAマウスから、造血幹細胞(HSC)を単離した。この目的のために、Miltenyi Biotec社のLineage Cell Depletion Kitを使用して、系列陰性(lin)骨髄細胞を磁気活性化細胞分取(MACS)により単離した。以前に記載されているように(Lachmann 2013; Kustikova et al. Exp Hematol. 2014;42:505-515 e507)、サイトカイン(kitリガンド、インターロイキン3、インターロイキン11、Flt3リガンド)を補った血清フリーStemSpan培地(Stem Cell Technologies社)中で細胞を拡大培養し、次いで、レトロネクチン(タカラバイオ社)で覆ったプレート内で、レンチウイルスベクター粒子を含有するHEK293T細胞上清で形質導入した。WTレシピエントマウスに致死的な放射線(9.5Gy)を浴びせ、Lenti.対照またはLenti.MYDGFで形質導入した1×10個のHSCを、尾静脈を介して移植した。移植後、マウスをシプロフロキサシンで3週間処置した。擬似手術またはTAC手術を、移植の7週間後に実施した。レンチウイルスで形質導入したHSCに由来する炎症細胞においてMYDGF発現を誘発するために、マウスをドキシサイクリン(飲み水中に2mg/ml)で、手術の1週間前から処置した。
MYDGFタンパク質治療。アルゼット浸透圧ミニポンプ(モデル2004、0.25μL/hの注入速度で28日間、6μLあたり10μgのMYDGFまたは希釈剤のみを充填した)を、TAC手術後直ちに皮下肩甲骨間のポケットに置いた。その後単回の腹腔内ボーラス注射を授けた(10μgのMYDGFまたは希釈剤のみ)。
アデノウイルス。SERCA2Aまたは赤色蛍光タンパク質DsRedをコードするアデノウイルスを、AdEasyアデノウイルスベクターシステム(Agilent Technologies社)を用いて生成した。TAC手術の5日前に、マウスにアデノウイルスを注射した(尾静脈を介して1×1010プラーク形成単位)。TAC後直ちに、マウスに2回目のアデノウイルスの注射を与えた。
MYDGF標的化液体クロマトグラフィー/多重反応モニタリング質量分析。マウスおよび患者から得たEDTA血漿サンプル中のMYDGF濃度を、標的化液体クロマトグラフィー/多重反応モニタリング質量分析(LC/MRM-MS)(Polten et al. Anal Chem. 2019;91:1302-1308)により決定した。
蛍光標識細胞分取(FACS)およびフローサイトメトリー。炎症細胞を、酵素消化およびFACSにより、左心室からから単離した(Hulsmans 2018;Korf-Klingebiel et al. Circ Res. 2019;125:787-801)。左心室を、1mg/mLのコラゲナーゼD(Roche社)、2.4mg/mLのディスパーゼ(Gibco社)および100U/mLのデオキシリボヌクレアーゼI(sigma-Aldrich社)を含有するPBS中で、37℃で30分間消化した。細胞懸濁液をろ過し(40μmのセルストレーナー、Falcon社)、洗浄し、4%のFCS、2mmol/LのEDTA、および精製されたマウスCD16/CD32抗体(BD Biosciences社、mouse BD Fc Block、クローン2.4G2)(1:55)を含むPBS中で、4℃で5分間インキュベートした。次いで、細胞を、以下の抗体と共に4℃で20分間インキュベートした:BD Biosciences社のCD45R/B220-PE(クローンRA3-6B2)(1:500)、CD90.2/Thy-1.2-PE(クローン53-2.1)(1:2500)、NK-1.1-PE(クローンPK136)(1:500)、CD49b/DX5-PE(クローンDX5)(1:500)、Ly6G-PE(クローン1A8)(1:500)およびCD11b-Alexa Fluor 700(クローンM1/70)(1:50);Miltenyi Biotec社のLy6C-APC(クローン1G7.G10)(1:8);ならびにBioLegend社のCD45-Brilliant Violet 570(クローン30-F11)(1:33)、F4/80-FITC(クローンBM8)(1:33)、CD3-PE/Cy7(クローン17A2)(1:33)およびCD19-PerCP/Cy5.5(クローン6D5)(1:33)。洗浄後、FACSAria IIu機器(Becton Dickinson社)上で、細胞を分取した。単球は、CD45high CD11bhigh(CD45R/B220、CD90.2/Thy-1.2、NK1.1、CD49b/DX5、Ly6G)low F4/80low Ly6Chighとして;マクロファージは、CD45high CD11bhigh(CD45R/B220、CD90.2/Thy-1.2、NK1.1、CD49b/DX5、Ly6G)low F4/80highまたはlow Ly6Clowとして;好中球は、CD45high CD11bhigh(CD45R/B220、CD90.2/Thy-1.2、NK1.1、CD49b/DX5、Ly6G)highとして;T細胞は、CD45high CD11blow(CD45R/B220、CD90.2/Thy-1.2、NK1.1、CD49b/DX5、Ly6G)high CD3high CD19lowとして;およびB細胞は、CD45high CD11blow(CD45R/B220、CD90.2/Thy-1.2、NK1.1、CD49b/DX5、Ly6G)high CD3low CD19highとして同定された。フローサイトメトリーの場合は、炎症細胞を、標識された上記の抗体と共にインキュベートした。次いで、細胞をTruCOUNTチューブ(BD Biosciences社)に加え、LSR IIフローサイトメーター(Becton Dickinson社)上でカウントし、FlowJo v10.6ソフトウェアを用いて解析した。
MACSによる内皮細胞および線維芽細胞の単離。LVの心筋を、コラゲナーゼI(Worthington社)およびデオキシリボヌクレアーゼI(sigma-Aldrich社)を用いて酵素的に消化した。細胞懸濁液をろ過し(30μmのセルストレーナー、Falcon社)、洗浄し、CD45マイクロビーズと共にインキュベートし、LDカラムに添加した。CD45low細胞のフロースルーフラクションを洗浄し、CD146 MicroBeadと共にインキュベートし、LDカラムに添加した。内皮細胞(CD45low CD146high)をカラムから溶出し、RNAの単離用に使用した(RNeasyキット、Qiagen社)。CD45low CD146low細胞のフロースルーフラクションを洗浄し、Feeder Removal MicroBeadと共にインキュベートし、LSカラムに添加した。線維芽細胞をカラムから溶出し、RNAの単離用に使用した(すべての試薬および設備はMiltenyi Biotec社から得た)。
組織の収集および解析。TAC手術または擬似手術後の異なる時点でマウスを屠殺し、左心室を取り出した。RNAを、RNeasyキット(Qiagen社)を使用して単離した。RIPAバッファー中でタンパク質ライセートを調製した。心室中部(Midventricular)のスライスをOCTコンパウンド(Tissue Tek)中に包埋し、液体窒素中で瞬間凍結し、マイナス80℃で保管した。6μmの凍結切片を調製した。切片をローダミンがコンジュゲートしたコムギ胚芽凝集素(WGA、Vector Laboratories社)で染色して、心筋細胞の境界を強調させた。200~400個の筋細胞の外周をなぞり、デジタル化して平均断面積を計算した。切片をフルオレセインがコンジュゲートしたGSL IイソレクチンB4(IB4、Vector Laboratories社)で染色して、毛細血管を可視化した。画像を蛍光顕微鏡(Axio Observer.Z1)によって取得した。Eurogentec社のポリクローナル抗体(1:100)およびFITC標識ポリクローナル二次抗体(Invitrogen社、#A24532)(1:200)で染色後に、共焦点蛍光顕微鏡(TCS SP2 AOBSスキャンヘッドを搭載したLeica DM IRB)により、6μmの凍結切片中のMYDGFを可視化した。切片を、CD11b抗体(Invitrogen社、クローンM1/70)(1:200)およびCy3標識ポリクローナル二次抗体(Jackson ImmunoResearch社、#712-165-153)(1:200)で共染色した。パイロット実験では、すべての二次抗体が低いバックグラウンドシグナルを与えることを見出した。切片をシリウスレッド(sigma-Aldrich社)で染色して、間質コラーゲン容量分率を光学顕微鏡を使用して定量化した。
心筋細胞の単離および培養。成体マウスの心室心筋細胞(AMCM)を、Alliance for Cellular Signaling(http://www.signaling-gateway.org/data/cgi-bin/Protocols.cgi?cat=0)から得たプロトコールを使用して、酵素消化により単離した。5%のFCSおよび10mmol/Lの2,3-ブタンジオンモノオキシム(sigma-Aldrich社)を補った199培地(sigma-Aldrich社)中で、AMCMをラミニンで覆った6ウェルプレート上に蒔き、細胞の長さと幅を、位相差顕微鏡およびデジタル画像解析装置(AxioVision、Zeiss社)により決定した。新生仔ラットの心室心筋細胞(NRCM)を、1~3日齢のスプラーグドーリーラットから、パーコール密度勾配遠心分離により単離した(Shubeita et al. A paracrine mechanism for myocardial cell hypertrophy. J Biol Chem. 1990;265:20555-20562)。NRCMを、5%のウマ血清、2.5%のFCS、グルタミンおよび抗生物質を補ったDMEM(Capricorn Scientific社、4部)と199培地(1部)中で、ゼラチンで覆った培養皿上に蒔いて一晩置いた。次いで、細胞をグルタミンと抗生物質のみを補ったDMEMと199培地に切り替え、種々の薬剤で24時間刺激した。NRCM表面積をPlanimetry法により決定し、タンパク質含有量をブラッドフォードアッセイ(Bio-Rad社)により決定した。Thermo Fisher社のリポフェクタミンRNAiMAX試薬およびsiRNA(PIM1:#4390771、ID:s128205;スクランブルしたもの:#4390843、Silencer Select siRNA-negative control)を使用して、NRCMをsiRNA[50pmol/10細胞(50pmol/106cells)]でトランスフェクトした。
定量的逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-qPCR)。RNeasy RNA単離キット(Qiagen社)を用いて全RNAを細胞および組織から単離した後、cDNAに逆転写し(SuperScript III逆転写酵素、Thermo Fisher社);mRNA濃度をTaqManアッセイまたはSYBR greenアッセイを用いて決定した(アニーリング、60℃で1分間;伸長、72℃で1分間)(すべての試薬はThermo Fisher社から得た)。標準曲線(TaqMan)または相対定量(SYBR green)を使用してデータを解析した。
プロテオミクスおよびリン酸化プロテオミクスのための試料調製。刺激後に、NRCM(1レプリケートあたり2×10個の細胞)を、氷冷PBSで2回洗浄し;24mmol/L トリス-HCl(pH7.6)、150mmol/L NaCl、1% NP-40、1% デスオキシコール酸ナトリウム、0.1% ドデシル硫酸ナトリウム、cOmplete miniプロテアーゼインヒビターカクテル(Roche社)およびPhosSTOP(Roche社)を含有する400μLの氷冷RIPAバッファーで可溶化し;-80℃で一晩凍結した。解凍後、サンプルをIKA Ultra-Turraxを用いて氷上で分散させ、14,000gで4℃で5分間遠心分離した。上清を新しい反応チューブに移し、タンパク質濃度をDCタンパク質アッセイ(Bio-Rad社)を用いて測定した。プロテオミクスの場合は、以前に記載されているように(Polten et al. Anal Chem. 2019;91:1302-1308)、50μgのタンパク質を、SDS-PAGEおよびゲル内トリプシン消化を使用してプロセシングした。具体的には、各ゲルのレーンを6つの部分に切り分けて別々に消化し、6つのペプチドサンプルを生成した。リン酸化プロテオミクスの場合は、改変されたフィルター支援サンプル調製(filter-aided sample preparation)プロトコールを使用した(Nel et al. J Proteome Res. 2015;14:1637-1642)。簡潔に言えば、300μgのタンパク質を、200μLの尿素バッファー(8mol/L 尿素、0.1mol/L Tris-HCl[pH9.5])と合わせて、10kDa Amicon Ultra-0.5mL遠心式フィルター(Merck社)にロードした。フィルター膜を200μLの尿素バッファーで2回洗浄し、100μLの、50mmol/Lのヨードアセトアミドの尿素バッファー溶液を加えることにより、暗所で20分間、遊離のシステインをカルバミドメチル化した。その後、フィルター膜を100μLの尿素バッファーで2回洗浄し、100μLの40mmol/L NHHCOで2回洗浄した。7μgの質量分析グレードのトリプシン(Serva社)を含有する120μLの40mmol/L NHHCO中で、トリプシン消化を実施した。37℃で一晩消化した後、ペプチドを40μLの40mmol/L NHHCOで2回溶出した。フロースルーを合わせ、12μLの10% トリフルオロ酢酸(TFA)を加えることによって酸性化し、次いで真空遠心分離によって乾燥させた。Thermo Scientific社のPierce Fe-NTAリン酸化ペプチド濃縮キットおよびPierce TiOリン酸化ペプチド濃縮キットを使用し、メーカーのプロトコールに従って、リン酸化ペプチドを濃縮した。簡潔に言えば、Fe-NTAカラムを平衡化した後、乾燥させた消化ペプチドを200μLの結合バッファー中に溶解し、カラムに添加し、室温で30分間インキュベートした。遠心分離した後、フロースルーを収集した。100μLの洗浄バッファーAを用いた2回の洗浄工程および200μLの洗浄バッファーBを用いた2回の洗浄工程後に、フロースルーおよび洗浄フラクションを合わせ、真空遠心分離によって乾燥し、TiOリン酸化ペプチド濃縮用スピンチップにロードした。洗浄後、スピンチップに結合したリン酸化ペプチドを溶出し、真空遠心分離によって乾燥させた。Fe-NTAカラムに結合したリン酸化ペプチドを、100μLの溶出バッファーで2回溶出した。溶出フラクションを合わせ、真空遠心分離により乾燥させた。Fe-NTAおよびTiOベースの濃縮工程から得られたリン酸化ペプチド溶出液を、Pierceグラファイトスピンカラム(Thermo Fisher社)を使用して脱塩した。
液体クロマトグラフィータンデム質量分析(LC-MS/MS)およびデータ処理。1レプリケートあたり6つのペプチドサンプルおよび2つのリン酸化ペプチドサンプルを、以前に記載されているように(Junemann et al. Front Microbiol. 2018;9:3083)、それぞれ30μLの高速液体クロマトグラフィーローディングバッファー(2% アセトニトリル、0.1% TFA)中で元に戻し、LTQ Orbitrap Velos質量分析計(Thermo Scientific社)に接続したUltiMate 3000 RSLCnanoシステム(Thermo Scientific社)を使用して別々に分析した。統合されているAndromedaペプチド検索エンジンをラットのUniProt Knowledgebase(Tyanova et al. Nat Protoc. 2016;11:2301-2319; UniProt Consortium. UniProt:a worldwide hub of protein knowledge. Nucleic Acids Res. 2019;47:D506-D515)に対して適用するMaxQuantソフトウェア(バージョン1.6.1.0)を用いて、生成されたスペクトルを解析した。プロピオンアミド化(C)(プロテオーム解析)またはカルバミドメチル化(C)(リン酸化プロテオーム解析)を固定修飾として設定し;リン酸化(S/T/Y)、酸化(M)、脱アミド(N/Q)およびN末端アセチル化を可変修飾として設定した。6アミノ酸を超えるペプチド長および最大で2つまでのトリプシン切断ミスを許可した。ペプチドおよびタンパク質レベルの両方に対して偽発見率(FDR)の閾値を0.01に設定し、match-between-runsアルゴリズムを適用した。潜在的な夾雑物およびリバースデータベースヒット(reverse database hit)を除外した。0.3のwidthおよび1.8のdown shiftを適用するPerseusソフトウェア(バージョン1.6.1.3)を使用して、レプリケートごとに別々に、log変換されたすべての測定強度の正規分布に基づいて欠損値を補完した(Tyanova et al. Nat Methods. 2016;13:731-740)。リン酸化プロテオーム解析の場合は、局在確率(localization probability)が0.75よりも大きなリン酸化部位のみを考慮した。少なくとも1つの実験条件から得た4つのレプリケートすべてで検出できないリン酸化部位を除いた。リン酸化部位の強度を、対応するタンパク質の存在量に対して正規化した。主成分解析は、Perseusによって計算したANOVAのP値が0.05未満のすべてのリン酸化部位に基づいた。主成分空間内のクラスターを、レプリケートの値の直線回帰に基づいて定めた。中央値が調整されたリン酸化部位の強度、ならびに行および列のツリーに対してユークリッド距離測定基準を使用するRのComplexHeatmapパッケージを用いて、教師なし階層的クラスタリングを実施した(Gu et al. Bioinformatics. 2016;32:2847-2849)。対比較の場合は、リン酸化強度の差を、対応するタンパク質の存在量の差に対して正規化した。少なくとも1条件でのプロテオームにおいて欠損している定量値、または有意に調節されていないタンパク質[両側独立t検定(2-sided unpaired t test)のP値>0.05]は、タンパク質の存在量比が1であるとみなした。Perseus、およびPhosphoSitePlusデータベース(Hornbeck et al. Nucleic Acids Res. 2015;43:D512-520; Hogrebe et al. Nat Commun. 2018;9:1045)から得たリン酸化部位のアノテーションを使用して、キナーゼモチーフ濃縮線形解析(Linear kinase motif enrichment analysis)を実施した。キナーゼと基質の関係を、測定されたリン酸化部位の周囲の配列認識モチーフに基づいて予想した。有意に調節されているリン酸化部位のキナーゼ基質モチーフを、フィッシャーの正確確率検定を用いて明確に濃縮した。有意に調節されているキナーゼ(Benjamini-Hochberg FDR<0.02)の場合は、すべての潜在的な標的を抽出し[キナーゼ-基質認識モチーフ陽性、局在確率>0.75、両側独立t検定(2-tailed unpaired t test)P値<0.05]、算術平均調節を決定した(Hogrebe 2018)。
PIMキナーゼ活性アッセイ。Pimキナーゼ活性を、Pim kinase enzyme systemおよびADP-Glo kinase assay(Promega、#V4032)を用いて測定した。
細胞内Ca2+濃度の測定。5%のFCSおよび10mmol/Lの2,3-ブタンジオンモノオキシムを補った199培地中で、AMCMを、ラミニンで覆ったカバーガラス上に蒔いた。3時間後、細胞を199培地に切り替え、1.5μmol/Lのfura-2,AM(Invitrogen社、#F1221)を37℃で20分間ロードし、15分間2回洗浄し、特注のかん流チャンバーに移した。NaCl 117mmol/L、KCl 5.7mmol/L、NaHPO 1.2mmol/L、CaCl 1.25mmol/L、MgSO 0.66mmol/L、グルコース 10mmol/L、ピルビン酸ナトリウム 5mmol/L、クレアチン 10mmol/LおよびHepes 20mmol/L(pH7.4)を含有する等張電解質溶液を用いた一定の再循環下で、MyoPacer EP刺激装置(IonOptix社)を用いて細胞を電気的に刺激した(Mutig et al. Mol Immunol. 2013;56:720-728)。刺激(1Hz、15V、4msのインパルス持続期間)に反応する、明確に定義された横紋を有する静止状態の棒状の心筋細胞をランダムに選択した。以前に記載されているように(Mutig 2013; Dobson et al. Am J Physiol Heart Circ Physiol. 2008;295:H2364-2372)、二重励起蛍光光電子増倍管システム(IonOptix社)を使用して、340nmと380nmの交互波長による励起後に510nmで放出される蛍光を測定することにより、単一細胞のCa2+トランジェントを記録した。fura-2,AMをロードしていない10個の細胞の群から、平均バックグラウンド蛍光を別々に記録し、340nm/380nm蛍光比(R)を計算する前に減算した。1細胞あたり20個のカルシウムトランジェントのデータを平均した。Fura-2,AM比の大きさ、fura-2,AM比の増加の最大速度、およびfura-2,AM比の減衰の時定数(τ)を、IonWizard 6.5を使用して解析した。
単細胞のサルコメアの収縮および弛緩の解析。5%のFCSおよび10mmol/Lの2,3-ブタンジオンモノオキシムを補った199培地中で、AMCMを、ラミニンで覆ったカバーガラス上に蒔いた。3時間後、細胞を199培地に切り替え、特注のかん流チャンバーに移し、上記のように電気的に刺激した。細胞ごとに、15~20サルコメアを含む目的の長方形の領域を定義し、倒立顕微鏡(Olympus IX71)に接続した可変速度CCDビデオカメラ(MyoCam-S、IonOptix社)を用いて、サルコメア長の変化を記録した。高速フーリエ変換(FFT)アルゴリズムを、電気的にペースを整えた収縮の間のサルコメア長の変化を記録するために使用した。1細胞あたり20~30個の単収縮のデータを平均した。収縮の大きさ、最大短縮速度および最大弛緩速度を、IonWizard 6.5ソフトウェア(IonOptics社)を用いて解析した。
ヒト血漿サンプル。重度の高勾配大動脈弁狭窄症(high-gradient aortic stenosis)(弁面積0.65±0.05cm、平均圧勾配51±3mmHg)の心エコーエビデンスを有し、待機的な経カテーテル的大動脈弁植え込み術(TAVI)をハノーバー医科大学で受ける予定であった11患者(76~86歳の年齢範囲、3男性および8女性)から、EDTA処理した血漿サンプルを得た。冠動脈疾患(50%超の任意の管腔径狭窄)、活動性の炎症または悪性疾患、30ml/min/1.73m未満の推定糸球体ろ過率、または心代償不全の兆候を有する患者は除外した。第2の血漿サンプルを、TAVIの3ヶ月後の定期フォローアップ検査の間に採取した。さらに、ハイデルベルク大学において募集した13人の明らかな健常人(75~84歳、3男性および10女性)から、EDTA血漿サンプルを得た(Giannitsis et al. Clin Biochem. 2020;78:18-24)。血漿サンプルを、-80℃で保管した。すべての参加者が書面によるインフォームドコンセントを提供し、現地の倫理委員会が本研究を承認した。
統計学的解析。マウス同腹子を、異なる実験群にランダムに割り振った。目視での精査に基づけば、データは正規分布しており、異なる群における分散は類似していた。標本サイズが小さいため、我々は分散の正規性または同一性について統計検定を適用しなかった。別様に述べられない限り、データは平均値±s.e.m.として提示する。2つの独立したサンプルのt検定を、2つの群を比較するために使用した。2つを超える群の間の比較については、独立変数が1つの場合には一元配置分散分析を、独立変数が2つの場合には2元配置分散分析を使用した。ダネットの事後検定を、単一対照群を用いた多重比較に対して使用した。テューキーの事後検定を、多重比較の調整のために使用した。0.05未満の両側P値が、統計学的な有意性を示すと考えた。K.C.W.は研究の全データに完全にアクセスすることができたのであって、データの完全性およびデータ解析に対して責任を負う。
[実施例1]
国際公開第2014/111458号において詳述されているように、MYDGFタンパク質(ヒト因子1;C19orf10)を同定した。ヒト因子1をコードする核酸配列が、NCBI遺伝子ID:56005(配列番号6)の下に入手可能である。N末端シグナルペプチドを含むヒト因子1のアミノ酸配列を、配列番号3において詳述する。実施例では、Ebenhoch R. et al., Crystal structure and receptor-interacting residues of MYDGF - a protein mediating ischemic tissue repair[Nat Commun. 2019 Nov 26;10(1):5379およびPolten et al. Plasma Concentrations of Myeloid-Derived Growth Factor in Healthy Individuals and Patients with Acute Myocardial Infarction as Assessed by Multiple Reaction Monitoring-Mass Spectrometry. Anal Chem. 2019 Jan 15;91(2):1302-1308]において詳述されているように、シグナルペプチドを含まないヒトMYDGFを使用し、発現した。
実施例において使用した、ヒトMYDGFに対するマウスホモログ:
発現された、ハツカネズミDNAセグメント、Chr17、ウェイン州立大学104(D17Wsu104e)。マウス因子1をコードする核酸配列が、NCBI参照配列:NM_080837.2(配列番号7)の下に入手可能である。N末端シグナルペプチドを含むマウス因子1のアミノ酸配列を、配列番号4において詳述する。N末端シグナルペプチドは関連する生物学的機能を有さないため、本発明では、配列番号2によるN末端ペプチドを含まないマウスMydgfを使用した。この目的のために、マウスMydgfのcDNA配列(内因性N末端シグナルペプチドおよびC末端6×Hisタグを含有する)を、pFlpBtM-IIプラスミドベクター中にクローニングし、HEK293-6E細胞内で発現した(Meyer S, et al. Multi-host expression system for recombinant production of challenging proteins. PLoS One. 2013;8:e68674)。シグナルペプチドを欠くマウスMydgfを、アフィニティークロマトグラフィーおよびサイズ排除クロマトグラフィーを使用して、馴化細胞上清(conditioned cell supernatant)から精製した。組換えMydgfの精製のために、6×Hisタグをタンパク質に付加した。
ヒトMYDGF(配列番号1)とマウスMydgf(配列番号2)の間で配列比較すると、両アミノ酸配列の間には92%の配列同一性があることが明らかになる。
[実施例2]
マウスおよびヒト骨髄由来増殖因子は、エンドセリン1(ET1)で刺激した新生仔ラット心室筋細胞(NRVM)の肥大(エンドポイント、細胞面積)を、用量依存的に阻害する。NRVMを、100nmol/LのET1(Sigma-Aldrich社から購入し、ここおよび以下で使用した)および/または組換えマウス骨髄由来増殖因子もしくは組換えヒト骨髄由来増殖因子それぞれ(Mydgf;HEK293細胞内で作製し、ここおよび以下で使用した/MYDGF;Ebenhoch R. et al., Crystal structure and receptor-interacting residues of MYDGF - a protein mediating ischemic tissue repair. Nat Commun. 2019 Nov 26;10(1):5379およびPolten F. et al. Plasma Concentrations of Myeloid-Derived Growth Factor in Healthy Individuals and Patients with Acute Myocardial Infarction as Assessed by Multiple Reaction Monitoring-Mass Spectrometry. Anal Chem. 2019 Jan 15;91(2):1302-1308に記載の通りにHEK293細胞内で作製し、ここおよび以下で使用した)で24時間刺激した。ET1はペプチドホルモンであり、インビトロおよびインビボの、心筋細胞肥大のプロトタイプのインデューサーである(Heineke J & Molkentin JD. Regulation of cardiac hypertrophy by intracellular signaling pathways. Nat Rev Mol Cell Biol 2006;7:589-600において概説されている)。心筋細胞肥大を、Planimetry法により判定した(エンドポイント、細胞面積)。結果を、以下の表2に示す。
Figure 2023511358000005
[実施例3]
マウスおよびヒト骨髄由来増殖因子は、エンドセリン1(ET1)で刺激した新生仔ラット心室筋細胞(NRVM)の肥大(エンドポイント、タンパク質含有量)を阻害する。NRVMを、100nmol/LのET1および/または100ng/mLの組換えマウス骨髄由来増殖因子もしくは組換えヒト骨髄由来増殖因子それぞれ(すなわち、MydgfもしくはMYDGFそれぞれ)で24時間刺激した。結果を、以下の表3に示す。
Figure 2023511358000006
[実施例4]
マウス骨髄由来増殖因子は、エンドセリン1(ET1)で刺激した成体ラット心室筋細胞(ARVM)の肥大(エンドポイント、細胞サイズ)を阻害する。ARVMを、100nmol/LのET1および/または100ng/mLの組換えマウス骨髄由来増殖因子(すなわちMydgf)で24時間刺激した。心筋細胞肥大を、形態計測(細胞の長さおよび細胞の幅)ならびにPlanimetry法(細胞面積)によって判定した。結果を、以下の表4に示す。
Figure 2023511358000007
[実施例5]
マウス骨髄由来増殖因子は、エンドセリン1(ET1)で刺激した新生仔ラット心室筋細胞(NRVM)における筋/小胞体Ca2+ATPアーゼ(Serca2a)タンパク質の発現を増加させる。NRVMを100nmol/LのET1および/または100ng/mLの組換えマウス骨髄由来増殖因子(すなわちMydgf)で24時間刺激した。次いで、Serca2aおよびビンキュリンタンパク質の発現レベルを免疫ブロットにより判定した。Serca2aは、心筋細胞におけるカルシウムホメオスタシスの不可欠なレギュレーターである。心不全の実験モデルおよびヒトの心不全では、心筋細胞におけるSerca2a(ヒトではSERCA2a)の発現が減少しており、それゆえ機能衰退および心不全が促進される。SERCA2aは、従って、心不全における処置標的として提案されている(Kawase Y & Hajjar RJ. The cardiac sarcoplasmic/endoplasmic reticulum calcium ATPase: a potent target for cardiovascular diseases. Nat Clin Pract Cardiovasc Med 2008;5:554-65において概説されている)。結果を、以下の表5に示す。
Figure 2023511358000008
[実施例6]
筋/小胞体Ca2+ATPアーゼ(Serca2a)のダウンレギュレーションは、エンドセリン1(ET1)で刺激した新生仔ラット心室筋細胞(NRVM)におけるマウス骨髄由来増殖因子の抗肥大効果を消失させる。NRVMを、Serca2a(Thermo Fisher Scientific社から購入、カタログ番号4390771、ID:s132037)を標的化する低分子干渉(si)RNAまたは対照siRNA(Thermo Fisher Scientific社、カタログ番号4390843)でトランスフェクトした。その後、NRVMを100nmol/LのET1および/または100ng/mLの組換えマウス骨髄由来増殖因子(すなわち)で24時間刺激した。心筋細胞肥大を、Planimetry法により判定した(エンドポイント、細胞面積)。結果を、以下の表6に示す。
Figure 2023511358000009
[実施例7]
マウス骨髄由来増殖因子は、トランスフォーミング増殖因子β1(Tgfβ1)で刺激した、新生仔ラット心室から単離された線維芽細胞(NRVF)において、抗線維化効果を促進する(エンドポイント、コラーゲン1A1および結合組織増殖因子[Tgfβ1]のmRNA発現)。NRVFを、組換えマウスTgfβ1(2ng/mL;R&D Systems社から購入し、ここおよび以下で使用した)および/または100ng/mLの組換えマウス骨髄由来増殖因子(Mydgf)で24時間刺激した。TGFβ1は、臓器線維化の重要なインデューサーである(Border WA & Noble NA. Transforming growth factor beta in tissue fibrosis. N Engl J Med 1994;331:1286-92において概説されている)。結果を、以下の表7に示す。
Figure 2023511358000010
[実施例8]
マウス骨髄由来増殖因子は、トランスフォーミング増殖因子β1(Tgfβ1)で刺激した、新生仔ラット心室から単離された線維芽細胞(NRVF)において、抗線維化効果を促進する(エンドポイント、α平滑筋アクチン[SMA]のプロモーター活性)。NRVFを、ヒトαSMAプロモーター断片(-259/+51塩基対)の制御下にホタルルシフェラーゼをコードするレポータープラスミドでトランスフェクトし、次いで組換えマウスTgfβ1(2ng/mL)および/または100ng/mLの組換えマウス骨髄由来増殖因子(Mydgf)で24時間刺激した。結果を、以下の表8に示す。
Figure 2023511358000011
[実施例9]
ヒト骨髄由来増殖因子は、新生仔ラット心室から単離された線維芽細胞(NRVF)において、トランスフォーミング増殖因子β1(Tgfβ1)によって誘導される遺伝子発現変化を部分的に減弱させる。NRVFを、組換えマウスTgfβ1(2ng/mL)および/または100ng/mLの組換えヒト骨髄由来増殖因子(MYDGF)と共に、4時間インキュベートした。ポリA RNAを単離し、cDNAに変換し、ライブラリー調製を行った後、次世代シーケンシングを使用して遺伝子発現のプロファイリングを行った。リードをラットの参照ゲノムに対してアラインし、各遺伝子にマッピングされたリードの数を数え、異なる処理条件全体にわたる差次的遺伝子(表9中に示す)を、0.1の補正p値カットオフ、1.5の倍率変化カットオフを適用するBioconductorのlimmaパッケージを用いてコンピュータで計算した。Tgfβ1でダウンレギュレートされた26遺伝子がMYDGFによってアップレギュレートされ、Tgfβ1で誘導された30遺伝子がMYDGFによってダウンレギュレートされた。
Figure 2023511358000012
Figure 2023511358000013
[実施例10]
マウス骨髄由来増殖因子のタンパク質療法は、横行大動脈狭窄(TAC)を供したマウスにおいて、抗肥大および抗線維化効果を促進する。C57BL6/N野生型マウスにTAC手術を施した(最初に、Rockman HA et al. Segregation of atrial-specific and inducible expression of an atrial natriuretic factor transgene in an in vivo mouse model of cardiac hypertrophy. Proc Natl Acad Sci USA 1991;88:8277-81において記載された)。TACは心臓の左心室を長期にわたって圧負荷に晒し、左心室(LV)肥大および間質線維化をもたらす(Houser SR et al. Animal models of heart failure: A scientific statement from the American Heart Association. Circ Res 2012;111:131-50において概説されている)。対照マウスに擬似手術(大動脈狭窄を行わない開胸術)を施した。TAC後直ちに、マウスに、10μgの組換えマウス骨髄由来増殖因子(Mydgf)の腹腔内ボーラス注射を与えた。その後、マウスを、7日間のMydgfの皮下点滴(浸透圧ミニポンプを介して10μg/日)で処置した。さらに別のTACマウスに、媒体のみ(0.9% NaCl)を注射および点滴した。42日後、LV肥大を重量測定によって判定し(エンドポイント、市販の基準バランスを使用するLV質量/体重);LV間質線維化をシリウスレッド染色によって定量化した。結果を、以下の表10に示す。
Figure 2023511358000014
[実施例11]
マウス骨髄由来増殖因子のタンパク質療法は、横行大動脈狭窄(TAC)を供したマウスにおける心臓機能を改善する。C57BL6/N野生型マウスにTAC手術を施した。対照マウスに擬似手術(大動脈狭窄を行わない開胸術)を施した。TAC後直ちに、マウスに、10μgの組換えマウス骨髄由来増殖因子(Mydgf)の腹腔内ボーラス注射を与えた。その後、マウスを、7日間のMydgfの皮下点滴(浸透圧ミニポンプを介して10μg/日)で処置した。さらに別のTACマウスに、媒体のみ(0.9% NaCl)を注射および点滴した。42日後、30MHzの線形変換器(Vevo 3100、VisualSonics社)を使用して、マウスに高分解能2次元経胸壁心エコー検査を受けさせた。左心室(LV)拡張末期面積(LVEDA)および左心室収縮末期面積(LVESA)を、長軸ビューから決定した。面積変化率(FAC)を、収縮期機能の評価基準として計算した[(LVEDA-LVESA)/LVEDA]×100。結果を、以下の表11に示す。
Figure 2023511358000015
[実施例12]
マウス骨髄由来増殖因子のタンパク質療法は、横行大動脈狭窄(TAC)を供したマウスから単離した左心室心筋細胞における、筋/小胞体Ca2+ATPアーゼ(Serca2a)タンパク質の発現を増加させる。C57BL6/N野生型マウスにTAC手術を施した。対照マウスに擬似手術(大動脈狭窄を行わない開胸術)を施した。TAC後直ちに、マウスに、10μgの組換えマウス骨髄由来増殖因子(Mydgf)の腹腔内ボーラス注射を与えた。その後、マウスを、7日間のMydgfの皮下点滴(浸透圧ミニポンプを介して10μg/日)で処置した。さらに別のTACマウスに、媒体のみ(0.9% NaCl)を注射および点滴した。7日後に、単離された左心室心筋細胞における、Serca2aおよびβ-アクチンタンパク質の発現レベルを、免疫ブロットにより測定した。結果を、以下の表12に示す。
Figure 2023511358000016
[実施例13]
マウス骨髄由来増殖因子のタンパク質療法は、横行大動脈狭窄(TAC)を供したマウスにおける、左心室心筋細胞の肥大を低減する。C57BL6/N野生型マウスにTAC手術を施した。対照マウスに擬似手術(大動脈狭窄を行わない開胸術)を施した。TAC後直ちに、マウスに、10μgの組換えマウス骨髄由来増殖因子(Mydgf)の腹腔内ボーラス注射を与えた。その後、マウスを、7日間のMydgfの皮下点滴(浸透圧ミニポンプを介して10μg/日)で処置した。さらに別のTACマウスに、媒体のみ(0.9% NaCl)を注射および点滴した。42日後、左心室心筋細胞の断面積を、コムギ胚芽凝集素で染色した組織切片において決定した。結果を、以下の表13に示す。
Figure 2023511358000017
[実施例14]
マウス骨髄由来増殖因子の遺伝子療法は、横行大動脈狭窄(TAC)を供したマウスにおける心臓機能を改善し、抗肥大および抗線維化効果を促進する。C57BL6/N野生型マウスに致死的な放射線を浴びせ、マウス骨髄由来増殖因子(Mydgf)をコードするレンチウイルスまたは緑色蛍光タンパク質をコードするレンチウイルス(GFP対照)で形質導入した骨髄幹細胞を移植した。このレンチウイルスのシステムは、以前に記載されている(Magnusson M et al. HOXA10 is a critical regulator for hematopoietic stem cells and erythroid/megakaryocyte development. Blood 2007;109:3687-96)。移植の6週間後、マウスにTAC手術を施した。対照マウスに擬似手術(大動脈狭窄を行わない開胸術)を施した。42日後、30MHzの線形変換器(Vevo 3100、VisualSonics社)を使用して、マウスに高分解能2次元経胸壁心エコー検査を受けさせた。左心室(LV)拡張末期面積(LVEDA)および左心室収縮末期面積(LVESA)を、長軸ビューから決定した。面積変化率(FAC)を、収縮期機能の評価基準として計算した[(LVEDA-LVESA)/LVEDA]×100。左心室肥大の評価基準としての左心室拡張末期の後壁の厚みを短軸ビューから決定した。LV間質線維化を、シリウスレッド染色によって定量化した。結果を、以下の表14に示す。
Figure 2023511358000018
[実施例15]
ヒト骨髄由来増殖因子は、特発性肺線維症の患者由来の肺線維芽細胞において、トランスフォーミング増殖因子β1(TGFβ1)によって刺激されるSMADのリン酸化を阻害する。特発性肺線維症の2患者由来の肺線維芽細胞を、100ng/mLの組換えヒト骨髄由来増殖因子(MYDGF;HEK293細胞内で作製し、ここおよび以下で使用した)の非存在下または存在下で、15、30または60分間、2ng/mLの組換えヒトTGFβ1(R&D Systems社から購入し、ここおよび以下で使用した)で刺激した。SMADのリン酸化(活性化)を、免疫ブロットによって判定した。SMADシグナル伝達経路は、TGFβ1の線維化促進効果の不可欠なメディエーターである(Walton KL et al. Targeting TGFβ mediated SMAD signaling for the prevention of fibrosis. Front Pharmacol 2017;8:461において概説されている)。結果を、以下の表15に示す。
Figure 2023511358000019
[実施例16]
ヒト骨髄由来増殖因子は、特発性肺線維症の患者由来の肺線維芽細胞の遊走を阻害する。特発性肺線維症の2患者由来の肺線維芽細胞を、コンフルエンシーに達するまで増殖させた。単層を200μLのピペットの先端でスクラッチし、洗浄し、2ng/mLのヒトトランスフォーミング増殖因子β1(TGFβ1)および/または100ng/mLの組換えヒト骨髄由来増殖因子(MYDGF)の非存在下または存在下で16時間培養した。刺激前(0時間)および刺激後(16時間)に、デジタル位相差画像をキャプチャーした。回復率(recovery)(%)を、[(0時間における無細胞面積(cell free area)-16時間における無細胞面積)/0時間における無細胞面積]×100として計算した。結果を、以下の表16に示す。
Figure 2023511358000020
[実施例17]
マウス骨髄由来増殖因子は、特発性肺線維症の患者由来の肺線維芽細胞の遊走を阻害する。特発性肺線維症の2患者由来の肺線維芽細胞を、コンフルエンシーに達するまで増殖させた。単層を200μLのピペットの先端でスクラッチし、洗浄し、2ng/mLのヒトトランスフォーミング増殖因子β1(TGFβ1)および/または100ng/mLの組換えマウス骨髄由来増殖因子(Mydgf)の非存在下または存在下で16時間培養した。刺激前(0時間)および刺激後(16時間)に、デジタル位相差画像をキャプチャーした。回復率(%)を、[(0時間における無細胞面積-16時間における無細胞面積)/0時間における無細胞面積]×100として計算した。結果を、以下の表17に示す。
Figure 2023511358000021
[実施例18]
ヒト骨髄由来増殖因子は、特発性肺線維症の患者由来の肺線維芽細胞において、トランスフォーミング増殖因子β1(TGFβ1)によって刺激されるSMADのリン酸化を阻害する。特発性肺線維症の患者由来の肺線維芽細胞を、100ng/mLの組換えヒト骨髄由来増殖因子(MYDGF)の非存在下または存在下で、5、15、30または60分間、2ng/mLの組換えヒトTGFβ1で刺激した。SMADのリン酸化(活性化)を、免疫ブロットによって判定した。ALK5/TGFβI型受容体の低分子阻害剤SB431542(10μmol/L;Sigma-Aldrich社から購入し、ここおよび以下で使用した)を陽性対照として使用した。結果を図1に示す。
[実施例19]
マウス骨髄由来増殖因子は、末期の心不全患者由来の左心室線維芽細胞において、トランスフォーミング増殖因子β1(TGFβ1)によって刺激されるSMADのリン酸化を阻害する。末期の心不全患者由来の左心室肺線維芽細胞を、100ng/mLの組換えマウス骨髄由来増殖因子(Mydgf)の非存在下または存在下で、30分間、2ng/mLの組換えヒトTGFβ1で刺激した。SMADのリン酸化(活性化)を、免疫ブロットによって判定した。ALK5/TGFβI型受容体の低分子阻害剤SB431542(10μmol/L)を陽性対照として使用した。結果を図2に示す。
[実施例20]
ヒト骨髄由来増殖因子は、末期の心不全患者由来の左心室線維芽細胞において、トランスフォーミング増殖因子β1(TGFβ1)によって刺激されるSMADのリン酸化を阻害する。末期の心不全患者由来の左心室肺線維芽細胞を、100ng/mLの組換えヒト骨髄由来増殖因子(MYDGF)の非存在下または存在下で、30分間、2ng/mLの組換えヒトTGFβ1で刺激した。SMADのリン酸化(活性化)を、免疫ブロットによって判定した。ALK5/TGFβI型受容体の低分子阻害剤SB431542(10μmol/L)を陽性対照として使用した。結果を図3に示す。
[実施例21]
マウス骨髄由来増殖因子は、マウス胚線維芽細胞(MEF)の遊走を阻害する。MEFを、コンフルエンシーに達するまで増殖させた。単層を200μLのピペットの先端でスクラッチし、洗浄し、2ng/mLのマウストランスフォーミング増殖因子β1(Tgfβ1)および/または100ng/mLの組換えマウス骨髄由来増殖因子(Mydgf)の非存在下または存在下で16時間培養した。刺激前(0時間)および刺激後(16時間)に、デジタル位相差画像をキャプチャーした。回復率(%)を、[(0時間における無細胞面積-16時間における無細胞面積)/0時間における無細胞面積]×100として計算した。結果を、以下の表21に示す。
Figure 2023511358000022
[実施例22]
マウス骨髄由来増殖因子は、マウス胚線維芽細胞(MEF)における、トランスフォーミング増殖因子β1(Tgfβ1)によって刺激されるSmadのリン酸化を阻害する。MEFを、100ng/mLの組換えマウス骨髄由来増殖因子(Mydgf)の非存在下または存在下で、30分間、2ng/mLの組換えマウスTgfβ1で刺激した。Smadのリン酸化(活性化)を、免疫ブロットによって判定した。結果を図4に示す。
[実施例23]
炎症細胞に由来するMYDGFは、圧負荷の間の心臓のリモデリングを減弱させる。圧負荷の間のMYDGFの機能を探索するために、Mydgf KOマウスおよびそのWT同腹子にTAC手術を供した。Mydgf KOマウスは正常に繁殖および発達し、ベースラインにおいて明白な心血管表現型を示さない(Korf-Klingebiel 2015)。大動脈狭窄の部位全体にかかる圧勾配および左総頸動脈と右総頸動脈の最大血流速度比は、WTおよびKOマウスにおいて類似していた。大動脈狭窄の過酷さは同等であるにもかかわらず、KOマウスはWTマウスよりも目立ったLV肥大を発症し(図5A)、心筋細胞サイズがより大きく増加していることが、TACの7日後および42日後の組織学的および単細胞検査(single-cell examination)により明らかであった(図5Bおよび5C)。WTマウスと比較して、KOマウスでは、7日目においてMyh6(アルファミオシン重鎖)のmRNA発現がより強く衰退し、7日目および42日目においてMyh7(ベータミオシン重鎖)のmRNAがより大きく増加し、42日目においてNppa(ナトリウム利尿ペプチドA型)のmRNAがより高まり、両時点においてNppb(ナトリウム利尿ペプチドB型)のmRNAが同様に上昇することが示された。
LV圧-容量測定により、KOマウスは、WT対照よりも、TAC後に目立った収縮期および拡張期機能不全を発症することが示された(図5D;表22)。
Figure 2023511358000023
加えて、骨髄キメラマウスを生成し、圧負荷の間のLV肥大および心臓機能のモジュレーションにおける炎症細胞に由来するMYDGFの重要性に特に取り組んだ。WT骨髄細胞(BMC)をKOマウスに移植すると、TACチャレンジ後のLV肥大(図6A)および心筋細胞肥大(図6B)が阻害され、心筋の毛細血管化が亢進し(図6C)、LV膨張(図6D)および収縮期機能不全(図6E)が減弱した。逆に、KO BMCをWTマウスに移植すると、肥大が増し、毛細血管密度が低下し、LVリモデリングおよび収縮期機能不全が悪化した(図6Aから図6E)。レンチウイルス遺伝子導入を使用して、WTマウスにおいて、誘導性の炎症細胞特異的なMYDGFの過剰発現を可能にした(図6F)。
Lenti.MYDGFで形質導入したBMCを移植したマウスでは、ドキシサイクリンを飲み水に加えることにより、BMC(ドキシサイクリンを加えないLenti.MYDGFに対し5.8±2.2倍)および脾細胞(ドキシサイクリンを加えないLenti.MYDGFに対し、9.1±2.7倍)において、MYDGFタンパク質の発現が亢進した(図6G)。TAC手術後、ドキシサイクリンで処置したLenti.MYDGFマウスは、ドキシサイクリンで処置したLenti.対照マウスよりも、MYDGFの血漿濃度が高く(図6H)、LV MYDGFの発現レベルが大きかった(図6I)。ドキシサイクリンで処置したLenti.MYDGFマウスは、ドキシサイクリンで処置したLenti.対照マウスよりも軽度のLV肥大をTAC手術後に発症し(図6J)、心筋細胞は小さく(図6K)、毛細血管密度はやや高く(P=0.11、図6L)、LV膨張は少なく(図6M)、収縮期機能は保たれていた(図6N)。従って、炎症細胞に由来するMYDGFは、長期にわたる圧負荷の間の非適応性肥大およびリモデリングを制限するのに必要かつ十分であると結論付けられる。
[実施例24]
リン酸化プロテオーム解析により、PIM1が心筋細胞におけるMYDGFのシグナル伝達の標的として同定される。インビトロの肥大モデルを確立して、MYDGFが心筋細胞を直接標的化するかどうか評価した。24時間のET1刺激により、新生仔ラット心室心筋細胞(NRCM)のサイズ(図7B)、タンパク含有量(図7C)、ならびにMyh7およびNppaのmRNA遺伝子発現(図7D)が増加した。組換えMYDGF単独ではこれらのエンドポイントに影響を与えなかったが、MYDGFを用いた共処置では、ET1に対する肥大応答が完全に妨げられ;MYDGFの抗肥大効果は濃度依存的であり、半数阻害濃度の7.6ng/mLで飽和可能であった(図7B)。MYDGFは、AngIIによって誘導される肥大を同様に阻害したが、IGF1に応答する肥大は減弱しなかった(図7A)。ET1とAngIIが病的なタイプの心肥大を促進するのとは対照的に、インスリン様増殖因子1(IGF1)は新生仔ラット心筋細胞において、MYDGFによって減弱されない生理的なタイプの心肥大を促進する。
MYDGFによって活性化されるシグナル伝達中間体を同定するために、リン酸化プロテオーム解析とそれに続くコンピュータによる基質ベースのキナーゼ活性推論(substrate-based kinase activity inference)を実施した(図8A)(Hogrebe et al. Nat Commun. 2018;9:1045; Strasser et al. Integr Biol. 2019;11:301-314)。MYDGFの非存在下または存在下でNRCMをET1で刺激した8時間後に、ハイコンテントLC-MS/MSデータを収集した。対応するタンパク質存在量の差に対してスケーリングした場合に、1,110個の異なるタンパク質中に分布する2,308個の定量化されたリン酸化部位のうちの423個が、4実験条件にわたって差次的にリン酸化された。
教師なし階層的クラスタリングおよび主成分解析(図8B)により、各条件由来の生物学的レプリケートは共にクラスター形成することが示され、よってワークフローの再現性が確認された。主成分空間において4条件はよく分離しており、それらが別個のリン酸化プロテオームシグネチャーと関連づけられることを示した。類似性の測定基準としてユークリッド距離を使用し、我々は、ET1とMYDGFで共処置したNRCMが、ET1と無刺激対照の間に位置付けられる中間表現型を示すことを観察した(図8B)。実際に、MYDGFは、ET1によって誘導されるリン酸化プロテオームの変化の多くを逆にした:すなわち、ET1で処理した細胞内でより強くリン酸化されたリン酸化部位(無刺激対照と比較して)は、ET1とMYDGFで共刺激した細胞内ではあまり強くリン酸化されない傾向にあり(ET1単独と比較して)、逆もまた同様である(図8C)。キナーゼ-基質相互作用の予備的知識(Hornbeck et al. Nucleic Acids Res. 2015;43:D512-520)をリン酸化プロテオームデータセットに適用して、ET1で処理した細胞において、MYDGFによって誘導されるキナーゼ活性の変化を推論した。差次的に調節されるリン酸化部位と、それらのそれぞれのキナーゼ基質モチーフの濃縮に基づけば、MYDGFは複数のタンパク質キナーゼの活性を変えることが予想され、それにはセリン/スレオニンキナーゼPIM1の強力な活性化が含まれた(図8D)。
PIM1ならびにそのアイソフォーム、PIM2およびPIM3は、類似の基質嗜好性を有するが、異なる組織発現プロファイルを有し(Selten et al. Cell. 1986;46:603-611; Qian et al. J Biol Chem. 2005;280:6130-6137; Nawijn et al. Nat Rev Cancer. 2011;11:23-34)、PIM1は心臓における主たるアイソフォームである(Muraski et al. Nat Med. 2007;13:1467-1475)。PIMキナーゼは恒常的に活性であり、タンパク質発現のレベルにおいて調節される(Nawijn 2011)。先行研究では、PIM1の過剰発現により、ET1によって誘導される肥大からNRCMが保護され(Muraski 2007)、それにより、PIM1が、心筋細胞においてMYDGFの効果を媒介する潜在的な候補として浮上した。我々のリン酸化プロテオームデータを実証して、無刺激およびET1で刺激したNRCMにおいて、MYDGFはPIM1の発現(図8E)およびキナーゼ活性(図8F)を増加させた。MYDGFの抗肥大効果は、低分子PIMキナーゼ阻害剤のSMI4a(Beharry et al. Mol Cancer Ther. 2009;8:1473-1483; Xia et al. J Med Chem. 2009;52:74-86)(図8G)およびsiRNAが媒介するPIM1のダウンレギュレーション(図8H)によって抑えられ、MYDGFが実際にPIM1を介してシグナル伝達することが示された。
[実施例25]
MYDGFは、PIM1を介して、心筋細胞におけるSERCA2aの発現を亢進させる。心筋細胞の収縮および弛緩に遅れをもたらすCa2+サイクリングにおける異常は、肥大しかつ不全の心臓においてよく見られる(Houser et al. J Mol Cell Cardiol. 2000;32:1595-1607)。筋/小胞体Ca2+ATPアーゼ2a(SERCA2a)の発現および/または活性の低下は、筋/小胞体へのCa2+隔離の減退につながり、心不全におけるCa2+の調節不良の一因となり得る(Luo et al. Circ Res. 2013;113:690-708)。PIM1がSERCA2a発現を刺激することが以前に報告されているため(Muraski et al. Nat Med. 2007;13:1467-1475)、SERCA2aの存在量がMYDGFによって制御されるかどうかについて探索した。実際に、MYDGFで刺激したNRCMにおけるPIM1の発現の増加は、Serca2aタンパク質の発現の増加と同時に進行した(図9A)。PIM1の阻害またはsiRNAが媒介するPIM1のダウンレギュレーションにより、Serca2aの上昇は妨げられ、MYDGFはPIM1を介してSERCA2aの発現を制御することが示された(図9B)。
インビボでは、擬似手術したWTとMydgf KOマウスにおいて、LV心筋のSERCA2aタンパク質レベルは同等であった(図9C)。TAC手術後、WTマウスにおけるSERCA2aの発現は、7日目ではまだ保たれていた(-17%、P=0.14)が、42日目では減っていた。両時点において、KOマウスにおけるSERCA2aの発現は、WTマウスにおけるものよりも有意に低かった(図9C)。擬似手術したWTおよびKOマウスの、単離されたLV心筋細胞におけるPIM1およびSERCA2aのタンパク質発現レベルは類似していた(図9D)。心筋細胞におけるTAC後のPIM1の発現はWTマウスにおいて増加したが、KOマウスにおいては増加しなかった。KOマウスがTAC後にPIM1をアップレギュレートできないことが、心筋細胞におけるSERCA2aの存在量の大幅な低下と関連づけられた(図9D)。
圧負荷された心臓において、炎症細胞に由来するMYDGFがPIM1およびSERCA2aの発現を調節するかどうかを特に明確にするために、Mydgfの骨髄キメラトランスジェックマウスおよび骨髄条件付きトランスジェックマウスにTAC手術を供した。TAC後のLVのPIM1およびSERCA2aの存在量は、WT BMCをMydgf KOマウス中に移植することにより高まった一方、KO BMCをWTマウス中に移植することにより減った(図9E)。さらに、ドキシサイクリンで処置したLenti.MYDGFマウスのLVのPIM1およびSERCA2aの発現レベルは、ドキシサイクリンで処置したLenti.対照マウスよりも高かった(図9F)。炎症細胞に由来するMYDGFは、圧負荷された左心室におけるPIM1およびSERCA2aの発現を亢進させるのに必要かつ十分であると結論付けられる。
[実施例26]
圧負荷の間のMYDGFの治療可能性を探索した。TAC手術後、タンパク質のデリバリー(10μg/日)を確実に継続させるために皮下に埋め込んだ浸透圧ミニポンプを使用して、マウスを組換えMYDGFで28日間処置した(図10A)。TACの3日後、MYDGFで処置したマウスのMYDGF血漿濃度は、希釈剤のみで処置した対照マウスよりも高かった(図10B)。TACの7日後、MYDGFで処置したマウスでは、単離された心室心筋細胞におけるSERCA2aタンパク質の発現がより豊富であり(図10C)、28日間の間にこれらの動物が発症したLV膨張(図10D)および収縮期機能不全(図10E)は、あまり目立たないものであった。抗リモデリング効果は、肥大応答の減弱(図10F)とそれに伴うより小さな心筋細胞(図10G)、LV心筋における毛細血管密度の増加(図10H)および顕著な生存利益(図10I)と関連づけられた。
特に実施例23、24、25および26により、マウスにおける、圧負荷によって誘導される心不全からのMYDGFによる保護が示される。TAC手術によって急性圧負荷を実行すると、単球およびマクロファージが主要なMYDGF産生細胞タイプとして新たに現れ、左心室におけるMYDGF存在量の迅速な増加を誘発した。循環CCR2high単球の動員および分化ならびに心臓の常在性マクロファージの増殖が、圧負荷の間のマクロファージプールの著しい増大につながった。
TACチャレンジ後、Mydgf KOマウスは、野生型マウスよりも大きな心筋細胞を伴う重度のLV肥大を発症した。KOマウスにおけるより大きな肥大は、Ca2+サイクリングおよびサルコメア機能の減退、より顕著な胎児性遺伝子の活性化、毛細血管密度の低下、間質線維化の亢進、ならびにLV膨張および収縮期と拡張期の機能不全によって特徴付けられたが、すべては圧負荷に対する非適応性応答の顕著な特徴である。
運動訓練は、心臓における骨髄系細胞の増大を惹起しなかった。よって、訓練したマウスおよび訓練しなかったマウスから得た左心室におけるMYDGFの発現は比較的低く、訓練したMydgf KOマウスは、それらの野生型同腹子と同じように生理的肥大を発症した。
心筋細胞に働きかけて、MYDGFは、細胞の肥大を減らし、かつSERCA2a発現を亢進させることより、Ca2+サイクリングおよびサルコメアの機能を改善した。リン酸化プロテオミクスにより、恒常的に活性なセリン/スレオニンキナーゼPIM1が、MYDGFの下流の1つの潜在的な標的として特定された。実際に、PIM1を阻害またはダウンレギュレートすることにより、培養心筋細胞におけるMYDGFの抗肥大効果およびSERCA2a誘導効果が消失した。
組換えMYDGFの処置により、持続性の後負荷ストレスの間の、LVの形状、収縮期機能および生存に対する有益な効果が媒介されることが示された。

Claims (28)

  1. 線維化または肥大の処置または予防における使用のための、骨髄由来増殖因子(MYDGF)またはMYDGFの生物学的機能を呈するその断片もしくは変異体。
  2. 好ましくは慢性心不全である心不全の処置または予防における使用のための、MYDGFまたはMYDGFの生物学的機能を呈するその断片もしくは変異体。
  3. 前記心不全または慢性心不全が、駆出率が保たれた心不全(HFpEF)、駆出率が低下した心不全(HFrEF)、または駆出率が軽度低下した心不全(HFmrEF)である、請求項2に記載の使用のためのMYDGFまたはその断片もしくは変異体。
  4. (i)配列番号1;または
    (ii)MYDGFの生物学的機能を呈する、配列番号1の断片もしくは変異体
    を含み、前記変異体が配列番号1に対して少なくとも85%のアミノ酸配列の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1、2または3に記載の使用のためのMYDGF。
  5. 前記線維化が、心臓および/または肺の線維化であり、好ましくは前記線維化が、間質性肺疾患、好ましくは進行性線維化性間質性肺疾患、より好ましくは特発性肺線維症である、請求項1または4のいずれか一項に記載の使用のための増殖因子MYDGF。
  6. 前記肥大が心筋細胞の肥大である、請求項1または4に記載の使用のための増殖因子MYDGF。
  7. 線維化または肥大の処置または予防における使用のための、増殖因子MYDGFまたはMYDGFの生物学的機能を呈するその断片もしくは変異体をコードする核酸。
  8. 心不全の処置または予防における使用のための、増殖因子MYDGFまたはMYDGFの生物学的機能を呈するその断片もしくは変異体をコードする核酸。
  9. 配列番号1に対して少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードする、請求項7または8に記載の使用のための核酸。
  10. 線維化または肥大の処置または予防における使用のための、請求項7または8に記載の核酸を含むベクター。
  11. 心不全の処置または予防における使用のための、請求項8または9に記載の核酸を含むベクター。
  12. 線維化または肥大の処置または予防における使用のための、請求項7に記載の核酸または請求項10に記載のベクターを含みかつ前記核酸を発現する宿主細胞。
  13. 心不全の処置または予防における使用のための、請求項8に記載の核酸または請求項11に記載のベクターを含みかつ前記核酸を発現する宿主細胞。
  14. 線維化または肥大の処置または予防における使用のための医薬組成物であって、請求項1、4~6のいずれか一項に記載のMYDGF、請求項6または8に記載の核酸、請求項9に記載のベクター、または請求項11に記載の宿主細胞を含み、適した医薬賦形剤を含んでいてもよい、医薬組成物。
  15. 心不全の処置または予防における使用のための医薬組成物であって、請求項2~6のいずれか一項に記載のMYDGF、請求項8または9に記載の核酸、請求項11に記載のベクター、または請求項13に記載の宿主細胞を含み、適した医薬賦形剤を含んでいてもよい、医薬組成物。
  16. 経口、静脈内、皮下、粘膜内、動脈内、筋肉内または冠動脈内の経路によって投与される、請求項14または15に記載の使用のための医薬組成物。
  17. 前記投与が1回以上のボーラス注射および/または点滴による、請求項16に記載の使用のための医薬組成物。
  18. 線維化の処置を必要とする患者に治療有効量のMYDGFまたはMYDGFの生物学的機能を呈するその断片もしくは変異体を投与することを含む、線維化の処置方法。
  19. 前記MYDGFが、
    (i)配列番号1;または
    (ii)配列番号1のMYDGFの生物学的機能を呈するその断片もしくは変異体
    を含み、前記変異体が配列番号1に対して少なくとも85%のアミノ酸配列の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項18に記載の方法。
  20. 前記線維化が心臓および/または肺の線維化であり、好ましくは、前記線維化が間質性肺疾患、好ましくは進行性線維化性間質性肺疾患、より好ましくは特発性肺線維症である、請求項18に記載の方法。
  21. 前記MYDGFまたはMYDGFの生物学的機能を呈するその断片もしくは変異体が、1回以上のボーラス注射および/または点滴によって、好ましくは薬学的に許容される担体中において投与される、請求項18に記載の方法。
  22. 肥大の処置を必要とする患者に治療有効量のMYDGFまたはMYDGFの生物学的機能を呈するその断片もしくは変異体を投与することを含む、肥大の処置方法。
  23. 前記MYDGFが、
    (i)配列番号1;または
    (ii)配列番号1のMYDGFの生物学的機能を呈するその断片もしくは変異体
    を含み、前記断片もしくは変異体が配列番号1に対して少なくとも85%のアミノ酸配列の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項22に記載の方法。
  24. 前記肥大が心筋細胞の肥大である、請求項22に記載の方法。
  25. 前記MYDGFまたはMYDGFの生物学的機能を呈するその断片もしくは変異体が、1回以上のボーラス注射および/または点滴によって、好ましくは薬学的に許容される担体中において投与される、請求項22に記載の方法。
  26. 心不全の処置または予防を必要とする患者に治療有効量の増殖因子MYDGFまたはMYDGFの生物学的機能を呈するその断片もしくは変異体を投与することを含み、好ましくは前記心不全が慢性心不全である、心不全の処置または予防方法。
  27. 前記心不全または慢性心不全がHFpEFまたはHFrEFであり、好ましくは前記HFpEFがステージCもしくはステージDのHFpEFであるか、または前記HFrEFがステージCもしくはステージDのHFrEFである、請求項26に記載の心不全の処置方法。
  28. 前記MYDGFが、
    (i)配列番号1;または
    (ii)配列番号1のMYDGFの生物学的機能を呈するその断片もしくは変異体
    を含み、前記断片もしくは変異体が配列番号1に対して少なくとも85%のアミノ酸配列の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項26または27に記載の方法。
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